290: 2013/07/05(金) 23:27:28 ID:KFJ4fsHc
291: 2013/07/05(金) 23:29:28 ID:KFJ4fsHc
―3ヵ月後 旧教室
ワイワイ ガヤガヤ
マルコ「予想以上に大盛況だね。」
クリスタ「うん。立ち見までいる。内輪でこっそりやるつもりだったんだけど・・・。」
マルコ「ジャンが宣伝しまくってたからね。俺様のピアノを聴きに来いって。」
クリスタ「ベルトルト、大丈夫?顔色悪いし、冷や汗かいてる。」
ベルトルト「だ、だだ大丈夫。し、心配してくれて、あ、ありがとう・・・。」ブルブル
ライナー「しっかりしろ、ベルトルト。お前はやる時はやる男だ。」
292: 2013/07/05(金) 23:30:10 ID:KFJ4fsHc
クリスタ「そんなに緊張しないで。いつも通りに弾いたらいいんだよ。
一番真面目に練習してたんだから。この手はちゃんと弾き方を覚えてるよ。」ギュッ
クリスタはベルトルトの両手を握る。
クリスタ「大丈夫だから、ね?」ニコッ
ベルトルト「・・・うん。」///
ライナー「・・・クリスタ、俺も激しく緊張してる。」
クリスタ「・・・しょうがないなぁ。はい、ぎゅっ。」ニコッ
ライナー(発表会終わったら、正式にプロポーズしよう・・・心の中で。)
ジャン「俺の手も握ってくれよ。クリスタみたく上手く弾けるように。」
クリスタ「いいよ。いつも通り自信を持って。」ギュッ
アルミン「僕も。クリスタの手って、なんかご利益ありそうだね。」
クリスタ「ふふっ。そんなものないよ。・・・頑張ってね。」ギュッ
293: 2013/07/05(金) 23:31:41 ID:KFJ4fsHc
エレン「俺も、うわっ!」グイッ
ミカサ「エレンは私が。」ギュゥッ
エレン「痛いってば。力入れすぎ。指が折れちゃうだろ。」
クリスタ「はい、サシャも。特別出演ありがとう。」ギュッ
サシャ「たくさん練習しましたから、期待してて下さいね。」
ユミル「私も友情出演させてくれよな。」
クリスタ「えっ!?」
ユミル「はい、クリスタ用の伴奏譜。練習なしで弾けるだろ。」
クリスタ「・・・これって。ユミル、あなた!?」
ユミル「いいから。とにかく、ぎゅっ。」ムギュゥ
クリスタ「そんなに抱きしめないで。苦しいよ。」
294: 2013/07/05(金) 23:32:15 ID:KFJ4fsHc
ユミル「どっかプログラムに組み込んでよ。でも、最後のトリとかは嫌だからな。」
クリスタ「うん、うん・・・。ユミルと一緒に演奏できるなんて。・・・嬉しいよぉ。」ウルウル
ユミル「馬鹿。泣くのは演奏終わってからにしろ。」ナデナデ
クリスタ「うん。」グスッ
マルコ「そろそろ開始時間だね。始めようか。」
クリスタ「待って。その前に、マルコにも。」ギュッ
マルコ「ありがとう。」///
295: 2013/07/05(金) 23:32:49 ID:KFJ4fsHc
クリスタ「では・・・、コホン。」
クリスタ「みなさまお忙しい中お集まり下さいまして、誠にありがとうございます。
これから第1回クリスタピアノ教室発表会を行います。」
パチパチパチパチ
クリスタ「1番、ライナー・ブラウンさん ヘンデル作曲『サラバンド』」
ライナー「おう。」
スタスタスタスタ ペコリ
ライナー(クリスタ、俺の魂の咆哮を君に捧げよう。)
♪♪~♪♪♪~~
296: 2013/07/05(金) 23:33:41 ID:KFJ4fsHc
マルコ(うわっ、いきなりff。確か、pで厳かに始まる曲なはず。
この後、盛り上がっていく部分どうするんだろ・・・。)
クリスタ(それでいいよ、ライナー。小さくまとまった演奏は似合わない。
これは豪胆で無骨なライナーの『サラバンド』。)
ジャン(カッコいいな・・・、ちくしょう。)
エレン(超兄貴・・・。)
ユミル(ププッ。ライナーに熱い視線送ってんの野郎ばっかりじゃねぇか。男にはもてもてだな。)
297: 2013/07/05(金) 23:34:20 ID:KFJ4fsHc
ライナー「・・・」ペコリ
「うおぉぉぉぉぉ」パチパチパチパチ
「アニキ・アニキ・アニキ・アニキ・・・・」
クリスタ「ライナーらしくて、すごく良い演奏だったよ。」
ライナー「本当か?」
クリスタ「うん。この歓声が聴こえない?」
ライナー「・・・随分野太い歓声だな。」
エレン「アニキコールすげぇな。」
アルミン「ライナーは頼りになるから、入団当初から男子に人気あるしね。」
ライナー「複雑な気分だ・・・。」
298: 2013/07/05(金) 23:34:59 ID:KFJ4fsHc
クリスタ「コホン、静粛にして下さい。
2番、ベルトルト・フーバーさん シューマン作曲『見知らぬ国と人々について』」
ベルトルト「じゃ、じゃあ行ってくるね・・・。」
ライナー「ぶちかましてやれ。」
サシャ「ファイトー。」
スタスタスタスタ ペコリ
ベルトルト(いつも通り、いつも通り・・・。)
♪~~♪~~♪~♪♪~~~
300: 2013/07/05(金) 23:35:42 ID:KFJ4fsHc
マルコ(うん。優しく柔らかく、けれど深い音。短期間で随分練習したのが分かる。
アーティキュレーションを忠実に守った、まるで教科書のような演奏。
ライナーとは対照的だな。)
クリスタ(緊張で若干硬さは残ってるけど、落ち着いて弾けてる。
教えたことも全部できてる。すごいよ。
ただ、もう少し楽しそうに弾いてくれたらな・・・。)
ライナー(どこか哀愁の漂う曲だな。俺たちの故郷が目に浮かぶ・・・。)
サシャ(子どもの頃お母さんが歌ってくれた子守唄を思い出します・・・。)グスッ
ユミル(ベルトルさんよ・・・。弾いてる姿、カッコいいじゃねぇか。)
301: 2013/07/05(金) 23:36:40 ID:KFJ4fsHc
ベルトルト「・・・」ペコリ
「きゃぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチ
クリスタ「お疲れ様。人前での演奏はどうだった?」
ベルトルト「すごく緊張したけど・・・、自信がついたよ。」
クリスタ「うん。女の子たちの目がハートになってたよ。」
ベルトルト「や、やだなぁ・・・。」///
ジャン「つーか、何?この黄色い歓声。」
マルコ「ベルトルトが実はイケメンだってことに、女の子達、気が付いたんでしょ。」
ジャン「ちっ、おもしろくねぇ。」
302: 2013/07/05(金) 23:37:22 ID:KFJ4fsHc
マルコ「はは。次はジャンだよ。ジャンもモテてこいよ。」
ジャン「俺はミカサ一筋だ。他の女子はどうでもいい。」
クリスタ「続きまして・・・。3番 ジャン・キルシュタインさん。
ハチャトゥリアン作曲『少年時代の画集』より『エチュード』」
スタスタスタスタ ペコリ
ジャン「ミカサ、お前に捧げる。」
ミカサ「・・・・・」イラッ
♪♪~♪♪♪♪~♪♪~
303: 2013/07/05(金) 23:38:02 ID:KFJ4fsHc
マルコ(駄目だよ、ジャン。自分の彼女でもない子にそんなこと口に出して言ったら。
しかも大勢の前で。みんなドン引きだよ。巻き込まれたミカサが可哀想だよ。
これじゃ、いくら良い演奏をしても評価されない・・・。)
クリスタ(演奏は申し分ない。技術、表現力、どちらも合格点。
ただ、会場が悪い意味で静まり返った。次の人が弾きにくくなっちゃったよ。
もう、ジャンの馬鹿。)
304: 2013/07/05(金) 23:38:52 ID:KFJ4fsHc
ジャン「・・・・ふぅっ。ミカサ、俺のこと少しは見直したか?」ドヤァ
ミカサ「・・・・ちっ。」
マルコ「ジャン!お辞儀してさっさと下がる。」
ジャン「あ?ああ。」ペコリ
パチ・・・パチ・・・
マルコ「はぁー。もう、お前って奴は・・・。」
ジャン「何、怒ってんだよ。」
マルコ「見なよ。このまばらな拍手。」
305: 2013/07/05(金) 23:39:38 ID:KFJ4fsHc
ジャン「俺の演奏、そんなに酷かったか?結構うまく弾けたと思ったんだが。」
クリスタ「演奏はすごく良かったの。完璧だったの。ただ、演奏以前に問題があるの。」
ジャン「はぁ?分かんねぇな。」
マルコ「ジャン、後でゆっくり話そう。」
ジャン「何なんだよ、ったく。」
エレン「ジャン、すげーカッコ良かったぞ。お前、意外とやるんだな。見直したぜ。」
ジャン「てめぇに褒められてもな・・・。まぁ・・・、サンキュ。」
307: 2013/07/05(金) 23:41:02 ID:KFJ4fsHc
サシャ「私たちの出番はいつですか?」
アルミン「僕たちは大トリ。お楽しみは一番最後までとっておくんだってさ。」
サシャ「責任重大ですねー。緊張するので、今のうちにとっておいたパァン食べときます。」モシャモシャ
クリスタ「はいっ。次は4番 ミカサ・アッカーマンさん。バッハ作曲『プレリュード BWV846』」
マルコ「ミカサ、ごめん。なんか空気悪くて・・・。」
ミカサ「気にしない。私はエレンが聴いてくれさえすればいい。」
スタスタスタスタ ペコリ
♪♪♪♪♪♪♪♪~
309: 2013/07/05(金) 23:44:34 ID:KFJ4fsHc
マルコ(以前聴いた時より、ずっと進化している。
ダンパーペダルを使用しない、指ペダルだけの奏法で、ここまで音を美しく響かせるなんて。
それぞれの指が独立して機能している。動かしにくい薬指と小指を完全にコントロールしてる。
初心者には見えないよ。これでリズム感さえあれば・・・ね。)
クリスタ(硬質で洗練された音。やっぱりミカサはすごいな。
もっと上級者向けの曲を弾かせたかったけど、リズム感を治してあげれなかった。ごめんね。)
ジャン(美しい・・・。ピアノを弾くと美人度がさらに上がるな。)
エレン(ふぁー。この曲、聴きすぎて飽きてんだよなー。)
310: 2013/07/05(金) 23:45:31 ID:KFJ4fsHc
ミカサ「・・・・」ペコリ
パチパチパチパチ パチパチパチパチ
クリスタ「すごい拍手だよ。今までで一番良い演奏だったよ、ミカサ。」
ミカサ「ありがとう。」
マルコ「エレン、連弾しなくて良かったのか?」ヒソヒソ
エレン「ん?あー、あれね。いやさ、連弾するとミカサに変なスイッチ入るからここじゃ無理。」ヒソヒソ
マルコ「そ、そうなんだ。」ヒソヒソ
マルコ(ここのところ、グノーの『アヴェ・マリア』がやたら聴こえてきたんだけど・・・。
エレン、スイッチ押しまくってたんだね・・・。)
311: 2013/07/05(金) 23:46:28 ID:KFJ4fsHc
エレン「よし!次は俺の番だ。」
ミカサ「期待している。」
クリスタ「次は5番 エレン・イェ―ガーさん グリーグ作曲『小人の行進』」
ジャン「ぷっ。随分可愛らしいタイトルだなw」
サシャ「メルヘンを感じますね。」モシャモシャ
エレン「言ってろ。俺の駆逐ソングだ。」
アルミン「確かに、巨人から見れば僕らは小人だしね。」
マルコ「ほら、おしゃべりしてないで早く。」
スタスタスタスタ ペコリ
♪♪♪♪♪♪♪♪~
312: 2013/07/05(金) 23:47:16 ID:KFJ4fsHc
ジャン(ちょっ、可愛らしさのかけらもねぇ。)
ライナー(随分と邪悪な小人だな。)
ベルトルト(小人が大群で進撃してくる。)
サシャ(あっ、途中からメルヘン入りました。)モシャモシャ
ミカサ(ここは、私とエレンの幸せだった子ども時代の回想シーン。)
アルミン(で、また進軍するんだね。エレンらしい曲だよ。)
マルコ(そこまで難易度の高い曲じゃないけど、随分とテンポを上げてるな。
指示速度の倍速ぐらいの勢いじゃないか?
それでも中間部はテンポ緩めて曲想を変えてる。緩急のバランスが丁度いい。
それにしても、短期間でよくここまで精度を高めたな。
どんなに速くても決してミスがない。すべての音を外さずにちゃんと出せてる。
やっぱりピアノに関しては非凡な才能を持ってるね。)
313: 2013/07/05(金) 23:48:31 ID:KFJ4fsHc
エレン「・・・・・」ペコリ
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ
クリスタ「うん。すごく興奮した。エレン、最高だよ。」
ジャン「お前、ずりぃぞ。なんだそのカッコいい曲。」
ライナー「ジャン、曲の問題ではないだろう。腕だ。」
ベルトルト「僕らとはすでに別格だね。」
ミカサ「とても高揚した。良い演奏だった。」
エレン「そんなに褒めるな。照れるだろ。」
314: 2013/07/05(金) 23:49:19 ID:KFJ4fsHc
アルミン「次は誰?」
クリスタ「マルコだよ。」
ユミル「おっ、マルコも弾くのか。そりゃ、楽しみだ。」
ベルトルト「そういえば僕たち、マルコが弾くの聴いたことないね。」
ライナー「言われてみればそうだな。」
ジャン「なんか偉そうに解説とかしてるけど、実は大したこと無いんじゃねぇ。」
ユミル「バーカ。ジャンよりは間違いなく上手いぜ。」
ジャン「あん?弾けねぇやつは黙ってろよ。」
アルミン「まぁまぁ、落ち着いて。とりあえず聴こうよ。」
クリスタ「次は6番 マルコ・ボットさん シベリウス作曲『樹の組曲』より『樅の木』」
スタスタスタスタ ペコリ
♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪~
316: 2013/07/05(金) 23:50:28 ID:KFJ4fsHc
クリスタ(目に浮かぶのは深い冬空と雪の情景。そこに凛として立つ樅の木。
流れるようなアルペジオに始まり、主題の旋律は緩やかにじっくりと響きを楽しんで。
樅の木の周囲を舞う風のようなアルペジオに、私の心も遠くへ流されていく。
情感を込めて弾く曲、やっぱり上手だな。冬を耐え、春を待ちわびる樅の木・・・。)
ジャン(ぐっ、何だこの大人の男の雰囲気は。こんなの俺の知ってるマルコじゃねぇ。)
ライナー(ムーディーだ。極上のムーディーだ。)
ベルトルト(男の哀愁と人生の苦悩がつまってるよ。)
ユミル(くぅー、相変わらずぐっとくるぜ。)
317: 2013/07/05(金) 23:51:42 ID:KFJ4fsHc
マルコ「・・・・」ペコリ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ
クリスタ「さすがだね。みんな魅了されたよ。会場が良い意味で静まり返った。」
マルコ「ミスらなくて良かったよ。次は、クリスタの番だね。」
クリスタ「えっと、私とユミルの二重奏に変更で。」
マルコ「ユミル、練習間に合ったんだね。良かった。」
クリスタ「知ってたの?」
マルコ「以前、ユミルにヴァイオリンを手に入れたいって相談を受けてね。
地元のヴァイオリン工房を紹介したんだ。そこで弾き方も教えてもらってたみたい。」
クリスタ「ひどいなぁ。私だけ仲間はずれにして・・・。」
ユミル「ほら、拗ねんな。驚かせようと思って内緒にしてただけだろ。」
318: 2013/07/05(金) 23:52:33 ID:KFJ4fsHc
マルコ「曲は?」
クリスタ「これ。」ペラッ
マルコ「了解。」
ユミル「ちょっとチューニングするから。クリスタ、ラの音ちょーだい。」
クリスタ「うん。」ポーン
ライナー「あれって、ヴァイオリンか?」
ベルトルト「うん。ユミル、演奏できるのかな。」
ジャン「けっ、そばかす女にゃ似合わねぇよ。」
サシャ「みなさんすごい特技があるんですねぇ。」モシャモシャ
アルミン「いい加減食べるのやめようよ。僕たちこの次だよ。」
319: 2013/07/05(金) 23:56:05 ID:KFJ4fsHc
マルコ「えー、こほん、次は7番 クリスタ・レンズさんとユミルさんの二重奏で。
マスネ作曲『タイスの瞑想曲』」
クリスタ「テンポは?」
ユミル「アダージョぐらいで。」
クリスタ「わかった。」
♪♪♪♪♪♪♪~ ♪♪♪♪♪♪♪~
クリスタの伴奏から曲は始まり、ユミルのヴァイオリンが美しく歌いだす。
時々、お互いに目配せしながら、ゆったりとした演奏が続く。
320: 2013/07/05(金) 23:56:43 ID:KFJ4fsHc
マルコ(歌劇『タイス』の間奏曲。自由気ままに好き勝手生きている女タイスと
それを更正させようとする修道士の話。修道士に改心を勧められたタイスが、
正しい道を歩むべきかどうか葛藤するシーンで流れるのがこの曲だ。
それをユミルは知っているんだろうか・・・。いや、考えすぎかな。)
ベルトルト(美しい音だな。ヴァイオリンの音ってこんなに響くんだ。)
ジャン(くそっ、ユミルのこと、綺麗だとか思っちまったじゃねぇか。)
サシャ(はぁー。ユミル格好いいですね。いつもと違います。気品に満ち溢れています。)
ミカサ(意外。でも、とても素敵。)
ライナー(ユミルどいて。クリスタがよく見えない。)
321: 2013/07/05(金) 23:57:34 ID:KFJ4fsHc
演奏が終わると、二人は顔を合わせ微笑んだ。
クリスタ・ユミル「・・・・」ペコリ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・
クリスタ「うふふ。」
ユミル「へへ。」
マルコ「今日、一番の拍手だね。ユミルやるじゃないか。」
ユミル「まぁな。クリスタに恥かかすわけにはいかないし。」
322: 2013/07/05(金) 23:58:21 ID:KFJ4fsHc
クリスタ「すっごい楽しかった。ありがとうユミル。」
ユミル「別に。借りを作ったままにしときたくなかったし。」
クリスタ「借りって?」
ユミル「髪留め。」
クリスタ「あははっ。あんなことで、こんなに頑張ったの?じゃ、また買ってこなきゃ。」
ユミル「調子にのんな。」
サシャ「・・・あの、この最高潮に盛り上がってる中で歌うんですか?」
アルミン「そうみたいだね。」
サシャ「うぅぅぅ・・・。お腹が・・・。」チラッ
アルミン「大丈夫だよ。サシャも意外性では負けてないから。」
323: 2013/07/05(金) 23:59:12 ID:KFJ4fsHc
クリスタ「次は、本日最後のプログラムとなりました。
8番 アルレルト作曲『訓練兵団の歌』。独唱、サシャ・ブラウスさん
伴奏、アルミン・アルレルトさん。」
サシャ「呼ばれてしまいました。」
アルミン「ほら行こう。」
エレン「頑張れよ。」
ミカサ「楽しみにしてる。」
324: 2013/07/06(土) 00:00:08 ID:gKn5zThU
スタスタスタスタ ペコリ
アルミン「演奏を始める前に少しだけ・・・。
これから演奏するのは、僕の大切な仲間の思いが込められた歌です。
僕はこの歌を、仲間の思いを、大事にしたい。伝えたい。
できることなら、この駐屯地の訓練兵全員で歌いたい。
作曲は初めてだから、正直自信はない・・・。
だけど、ここにいる全員が納得するまで作り直す覚悟はあります。
・・・聴いて下さい。僕たちの歌を。」
326: 2013/07/06(土) 00:00:54 ID:gKn5zThU
♪♪♪♪~♪♪~
アルミンのピアノに合わせ、サシャは歌った。のびやかな歌声が教室中に響いた。
ジャン(おいおい。芋女のくせにめちゃくちゃ歌うめぇじゃねぇか。)
ミカサ(サシャらしい明るく澄んだ歌声。耳に心地いい。)
ライナー(人は見かけによらないもんだな。)
クリスタ(行進曲風かと思ったら、予想に反してすごくメロディアス。
キャッチーなサビに、語感を大切にした旋律。親しみやすい歌だわ。)
327: 2013/07/06(土) 00:01:54 ID:gKn5zThU
アルミン・サシャ「・・・・」ペコリ
「・・・・・・・・」シーン
アルミン「・・・・・・」ギリッ
サシャ「だ、だめでしたか・・・・・?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ
アルミン「えっ?」
「いいぜ。その歌気に入った。」
「私も歌いたい。」
「歌詞、教えてくれよ。」
「ここに来てない奴らにも教えないとな。」
鳴り止まない拍手の中、観客席から次々に声が上がった。
328: 2013/07/06(土) 00:03:03 ID:gKn5zThU
アルミン「うぅ・・・、みんな、ありがとう・・・。」グスッ
サシャ「良かったです・・・ぅ、ぅ、うえぇぇぇぇん・・・」
クリスタ「サシャ、あなたが歌ってくれたおかげよ。ありがとう。」ムギュゥ
サシャ「びぇぇぇぇん・・・。優しくしないで・・・ひっく、ください。
涙が、ひっく、止まらなく・・・なります・・・」グスッ
マルコ「アルミン、やったな。壁内初の快挙だ。」
アルミン「うん。ぐすっ、僕一人じゃできなかった。みんながいたから・・ぐすっ・・・」
329: 2013/07/06(土) 00:03:57 ID:gKn5zThU
エレン「お前はすげぇよ、やっぱり。」
ミカサ「アルミンはできる子。」ナデナデ
ジャン「ちょっ、アルミン、ふざけんな。」
ライナー「ジャン、お前のその反応、いい加減飽きたぞ。」
ジャン「ふんっ。今日、良いとこ無かったの俺だけじゃねぇか。」
ベルトルト「まぁまぁ。今日は全員、アルミンとサシャに持ってかれたよ。」
ジャン「ちっ、しょうがねぇか。」
その後、旧教室では「訓練兵団の歌」の大合唱がしばらく続いた。
彼らは歌うことの喜びを知り、人生を楽しむことを思い出した。
330: 2013/07/06(土) 00:04:42 ID:gKn5zThU
―その頃、教官室
キース「休日にわざわざご足労頂き、ありがとうございます。」
ザックレー総統「訓練状況を視察したかったのだが、平日はなかなか自由が利かなくてな。」
キース「事前に来訪をお伝え下されば、休日返上で訓練を実施致しましたが・・・。」
ザックレー「よい。訓練兵にも休みは必要だ。まぁ、そんなにかしこまるな。
今日はキースと久しぶりに飲もうと思ってな。いい酒を持ってきた。」
キース「はっ、ありがたく頂戴します。」
331: 2013/07/06(土) 00:05:23 ID:gKn5zThU
ザックレー「それより、先程から何か聴こえるのだが・・・。ピアノの音か?」
キース「訓練兵の中にピアノが弾きたいという物好きがおりまして。
余暇には自由に使用する許可を与えております。」
ザックレー「ふむ・・・。最近、貴族連中から兵士の教養の無さを批判されてな。
話相手にも遊び相手にもならん、と。
奴らは身辺警護を務める兵士を道化か何かと勘違いしとるらしい。
腹立だしいことこの上ないが、奴らの資金がなければ兵団が存続できないのも、また事実。
憲兵団を希望する訓練兵には、ピアノを習わせるのも一つの手だな。」
332: 2013/07/06(土) 00:06:01 ID:gKn5zThU
キース「しかし、憲兵団の希望者は多く、ピアノ一台では間に合わないかと。」
ザックレー「貴族連中の屋敷には、使われてないピアノなどゴロゴロしとるだろう。
もらい受けるよう交渉させよう。他の訓練兵駐屯地にも配備せねばな。」
キース「兵士にも教養が求められる時代ですか・・・。」
ザックレー「はっはっはっ。わしらは早く生まれて良かったのう。」
339: 2013/07/07(日) 00:19:32 ID:UTdaBkeE
―旧教室
発表会の熱気も冷め、静まり返った教室でクリスタ達は後片付けをしていた。
クリスタ「とりあえず、大成功かな。」
マルコ「うん。ライナーたちすごくピアノ上手になったね。それにユミルも。相当練習したでしょ?」
ユミル「ああ。なかなかまともな音が出なくてな。なんだあの頑固な楽器。もう二度と弾かねぇ。」
クリスタ「そんなこと言わないでよ。私、ユミルともっといろんな曲やりたいのに。」
ユミル「んー、じゃあ、キスしてくれたら考えてやるよ。」ニヤニヤ
クリスタ「いいよ。」シレッ
ユミル「・・・こう、恥ずかしがるとかさ、そういう反応が欲しいんだけど・・・。」
340: 2013/07/07(日) 00:20:55 ID:UTdaBkeE
クリスタ「ふふっ、ユミルの扱い上手になったでしょ。
それより、アルミンの曲ってマルコも作るの手伝ったんでしょ?」
マルコ「メロディーはアルミン一人で考えたよ。僕は伴奏譜に手を貸しただけ。」
ユミル「じゃ、作曲アルミン、編曲マルコってとこか。アルミン一人の手柄にしていいのかよ。」
マルコ「ははっ、そんな大したことはしてないから。僕の名前なんて出さなくていいよ。」
ユミル「アルミンに遠慮してんのか?」
マルコ「いや、本心で思ってるよ。」
341: 2013/07/07(日) 00:21:31 ID:UTdaBkeE
ユミル「いい人ぶってんじゃねぇよ。なんか、お前のそういうところ見てるとイライラすんだよ。
後ろに下がって人に譲ってばっかりで。そんな生き方楽しいか?この偽善野郎。」
クリスタ「ちょっと、ユミル。いきなり何言い出すの。」
マルコ「いいよ、クリスタ。ジャンにも同じようなこと言われてるから。
そうだね。僕はいい人でいたいんだ。その方が周囲との軋轢を生まないから。
偽善と呼ばれようが、僕はこういう生き方しかできない。強くないからね。」
ユミル「・・・喧嘩にもならん。つまんねぇ男だな。」
342: 2013/07/07(日) 00:22:14 ID:UTdaBkeE
マルコ「そういうユミルだって、本当はいい人になりたいんだろう?
今日、なぜ『タイスの瞑想曲』を演奏したんだ?」
クリスタ「?」
ユミル「はっ、意味はねぇよ。綺麗な曲だから。それだけだ。」
マルコ「確かに綺麗な曲だね。ただ、たくさんあるヴァイオリン曲の中で、敢えてあの曲をユミルは選んだ。
もっと簡単で華やかな曲もあったはずだ。・・・『タイス』の物語、本当は知っているんだろう?」
ユミル「・・・ああ、そうだよ。ヴァイオリン工房の親父がつまんねぇ話、聞かせてくれたよ。
だが、勘違いすんな。この曲を選んだのは、お前らへの警告だ。」
マルコ「警告?」
ユミル「タイスを改心させようとした修道士が最後どうなったか知ってるよな?
タイスに深入りし過ぎて堕落の道を辿るんだよ。つまり、私に深く関わるなってことだ。」
343: 2013/07/07(日) 00:22:50 ID:UTdaBkeE
クリスタ「ユミル・・・。」
ユミル「・・・気分わりぃ。先に宿舎戻るわ。」
ガラッ ピシャッ
クリスタ「近づいたと思ったらすぐに離れていく・・・。友達と思っているのは私だけなのかな。」
マルコ「そんなことないよ。何とも思ってない人のためにヴァイオリンなんて練習しない。
ただ、素直に生きれない何かを抱えているんだろう。それが何なのかは分からないけど・・・。」
クリスタ「どうすればユミル、心を開いてくれるかな。」
マルコ「放っとくしかないよ。ユミルが自分からそうしたいと思うまで。」
クリスタ「うん・・・。ユミルを信じて待つよ・・・。」
344: 2013/07/07(日) 00:23:34 ID:UTdaBkeE
―数日後 訓練場
キース「整列!!朝っぱらからお前らウジ虫野郎につきあってるんだ。ビシッとしろ。」
一同 ビシッ
アルミン「キース教官!」ハイッ
キース「何だ、アルレルト訓練兵。」
アルミン「訓練を始める前にキース教官のために歌いたいと思います!!」
キース「・・・・なぬっ?」
345: 2013/07/07(日) 00:24:16 ID:UTdaBkeE
アルミン「せーの・・・」
そこにいる訓練兵全員が一斉に歌いだした。
青空の下、大音声が響き渡る。
キース(これは何事だ。新手のボイコットか?何を企んでいるアルレルト。)
キース(だが、なかなか良い歌だ。連帯感のない訓練兵が、歌うことで一致団結している。)
346: 2013/07/07(日) 00:25:09 ID:UTdaBkeE
キース「何だ、この歌は?」
アルミン「訓練兵団の歌であります。」
キース「何だ、それは?」
アルミン「訓練兵有志で作った訓練兵のための歌であります。」
キース「なぜ歌った?」
アルミン「歌うことで士気が高まります。」
キース「こんな馬鹿げた計画を考えた豚野郎はお前一人か?」
アルミン(まずい、怒らせたか?)
アルミン「はっ。自分一人の一存であります。」
347: 2013/07/07(日) 00:25:50 ID:UTdaBkeE
キース「そうか・・・。では、アルレルト訓練兵に命じる。
毎朝、集合時にこの歌を全員に歌わせろ。一人の脱落者も出すな。」
アルミン「はっ。ありがとうございますっ!!」
キース「今日は訓練を始める前に、お前たちに伝えることがある。
憲兵団を希望するものは教養を身に付けろ、と上からの通達があった。
近日中に新たに2台のピアノがこの駐屯地に配備される予定だ。
音楽だけが教養ではない。よって無理強いはしない。
だがピアノの技能が、多少、点数に考慮されることは覚えておけ。」
348: 2013/07/07(日) 00:26:34 ID:UTdaBkeE
ザワザワ ザワザワ
「教養って、何だよそれ」
「兵士だろ?俺達。関係ねぇじゃん」
「ますます憲兵団が遠のいちまう。」
キース「黙れ!!これ以上無駄口を叩く奴は演習場50周だ。」
シーン・・・
キース「では、今日の訓練を開始する・・・」
キース(理不尽なことは重々承知だ。だが上の決定には逆らえない・・・。)
352: 2013/07/07(日) 15:35:49 ID:UTdaBkeE
それから数日後に2台の中古ピアノが搬入され、使用されてない他の教室にそれぞれ設置された。
憲兵団を希望できるのは成績上位10名のみ。
しかし、まだ訓練期間の半ば。定着しつつある成績順位を何とか覆したい。
その思いで憲兵団を目指す者は躍起になって、クリスタに教えを請いにきた。
クリスタだけでは手が足りず、見かねたマルコも先生役を買って出た。
そんなある日―――
353: 2013/07/07(日) 15:36:33 ID:UTdaBkeE
アニ「ねぇ、ライナー、ベルトルト。私にもピアノを教えてよ。」
ライナー「俺達が?無理だ。教えられるほどの技術は持ってない。」
ベルトルト「クリスタかマルコに習ったほうがいいよ。」
アニ「あの二人、忙しそうで。私まで世話になったら、なんか悪いかなって。」
ライナー「しかし、いくら憲兵団に入りたいからって、お前がそんなことを言い出すとは意外だな。」
ベルトルト「うん。ピアノなんてくだらないって一蹴するかと思ってた。」
アニ「仕方ないじゃないか。憲兵団にはどうしても入りたいし。それに・・・」
ライナー「それに?」
アニ「お前らが弾いてるのを見て、ピアノも悪くないって思ったんだよ。」
354: 2013/07/07(日) 15:37:08 ID:UTdaBkeE
ベルトルト「見に来てくれてたんだ、発表会。」
アニ「一応ね。」
ライナー「しかしなぁ。俺は教えるって柄じゃないし。」
アニ「基本的なことだけでいいんだ。後は自分で何とかするから。」
ベルトルト「いいよ。僕が教える。」
ライナー「ベルトルト?」
ベルトルト「ライナーよりは基礎はしっかり身についてると思うから。
触りぐらいしか教えれないけど、それでよければ。」
アニ「うん。頼むよ。」
ライナー(珍しいな。ベルトルトが自分から前に出るのは・・・。)
355: 2013/07/07(日) 15:37:59 ID:UTdaBkeE
―講義棟
マルコ「クリスタ、これからレッスン?」
クリスタ「うん。マルコも?」
マルコ「そう。何だか忙しくなったね。」
クリスタ「私は生徒が増えて嬉しいよ。でも、またマルコのお世話になっちゃった。ごめん。」
マルコ「ははっ、いいよ。あまり話したことのない女子と仲良くなるチャンスだと思ってる。」
クリスタ「そういえば、マルコの生徒って女の子ばっかり。」
マルコ「レッスン希望者募ったら、なぜか女子ばかりだった。」
クリスタ「ピアノ男子ってモテるんだよね。ピアノ女子は全然なのに・・・。」
マルコ「違うでしょ。男子はみんなクリスタに教えてもらいたかったんだよ。僕じゃなくて。」
356: 2013/07/07(日) 15:38:36 ID:UTdaBkeE
クリスタ「そうなのかな。確かに生徒の男子率は高いかも。
そうそう。ピアノの置いてある教室増えたから、分かりやすいように教室に名前つけたよ。
講義棟の奥から順番に第一、第二、第三音楽室ね。教室の入り口にプレートかけたから。」
マルコ「了解。じゃ、第一、第二がレッスン用で、第三を開放するんだね。」
クリスタ「うん。あっ、もう、第三音楽室が賑わってる。」
マルコ「あれは、ライナーとその仲間たち・・・。」
クリスタ「発表会終わってから、ライナー大人気だね。」
マルコ「うん。男子しかいないけどね。それにしてもすごいな。10人以上に囲まれてる。」
クリスタ「何やってるんだろう?」
マルコ「ちょっと覗いてみようか。」
357: 2013/07/07(日) 15:39:24 ID:UTdaBkeE
―第三音楽室
ライナー「よし、お前ら。今日はみんなで歌をうたうぞ。」
「『訓練兵団の歌』か?」
「アニキの伴奏で?くぅー、しびれるぜ。」
「みんな、盛り上がろうぜ。」
ライナー「馬鹿野郎。俺達にふさわしい、もっと魂の震える歌だ。」
「そんな歌が存在するのか?」
「教えてくれよ、アニキ。」
「頼むぜ、一発、ぶちかましてくれよ。」
358: 2013/07/07(日) 15:40:04 ID:UTdaBkeE
ライナー「モーツァルト大先生作曲『俺の尻をなめろ』。お前ら俺の後に続け。」
俺の尻をなめろ~♪ (俺の尻をなめろ~♪)
陽気にいこうぜ~♪ (陽気にいこうぜ~♪)
・・・・・・・・♪
・・・・・・♪
359: 2013/07/07(日) 15:40:44 ID:UTdaBkeE
―教室の外
マルコ(輪唱・・・。)
クリスタ(あんなに生き生きとしたライナー初めて見た。)
マルコ「ぷぷっ・・・、あはははっ。僕も混ざろうかな。楽しそうだ。」
クリスタ「ふふふっ。ライナーって面白いね。」
マルコ「でも、そろそろ行かないと。」
クリスタ「うん。生徒さんが待ってたら悪いしね。」
360: 2013/07/07(日) 15:41:57 ID:UTdaBkeE
―第二音楽室前
ミーナ「マルコ遅いよー。」
マルコ「ごめん。こんなに早く来てるとは思ってなくて。」
クリスタ「ミーナもピアノ習い始めたんだ。」
ミーナ「うん。マルコのレッスン、女の子にとっても評判いいんだよ。」
クリスタ「そうなんだ。」
ミーナ「親切で丁寧で、何より優しい。マルコ株急上昇中だよ。」
マルコ「ははっ。冗談でもそんなに褒められると嬉しいね。」
ミーナ「冗談じゃないよー。本気でマルコのこと狙ってる子もいるんだよー。」
マルコ「はいはい。時間がもったいないから、早くレッスン始めよう。」
ミーナ「うん。じゃあね、クリスタ。」クスッ
ガラッ ピシャッ
361: 2013/07/07(日) 15:42:28 ID:UTdaBkeE
クリスタ(・・・・なんか
・・・・よく分かんないけど
・・・・すっごく
・・・・おもしろくない。)
370: 2013/07/09(火) 22:35:17 ID:WQO9vPj.
>>1です。レスありがとう。元気でるよ。
続きです。
続きです。
371: 2013/07/09(火) 22:36:27 ID:WQO9vPj.
―食堂
コニー「サシャ、お前はどうすんだ?」
サシャ「何がですか?」
コニー「ピアノだよ。憲兵団入りたいんだろ?」
サシャ「うーん。まだどの兵団にするかは決めてませんが、ピアノはやりません。」
コニー「何だよ。憲兵団は希望しないのか?ピアノ弾けなきゃ入れないんだろ?」
アルミン「そんなことはないんだよ。
キース教官の意図がよく分からなくて、先日、僕とマルコで教官に詳細を尋ねたんだ。
そしたらね、ピアノが配備されたけど、別にピアノである必要はないんだって。
お偉いさんを楽しませる一芸を、何か身につければいいらしいよ。」
372: 2013/07/09(火) 22:37:12 ID:WQO9vPj.
コニー「何だそりゃ。芸人になれってのか。」
サシャ「なので私は、歌い手さんになることにしました。」
アルミン「サシャは歌が上手だからね。」
コニー「ずりぃ。俺はどうしたらいいんだよ。」
サシャ「身軽な身のこなしを生かして軽業師とかどうですか?」
コニー「おっ、それいいな。」
アルミン「うーん。教養を感じさせる芸じゃないと駄目だって教官が言ってたよ。」
コニー「どんな芸だよ、ソレ。」
373: 2013/07/09(火) 22:37:57 ID:WQO9vPj.
アルミン「みんなそれが思いつかないから、とりあえずピアノを習ってるんだよ。」
サシャ「私と一緒に歌いますか?」
コニー「人前で歌うとか、勘弁してくれ。」
サシャ「そうえいばコニーも私と同じ狩猟の民でしたよね。」
コニー「そうだ。お前ほど田舎者じゃねぇけどな。」
サシャ「・・・口笛とか指笛って得意じゃないですか?」
コニー「得意だぜ。・・・でも、それって芸なのか?」
サシャ「何でも極めれば一流の芸になります。」
アルミン「笛か・・・。いいかもしれない。
でも、さすがに口笛や指笛では貴族のお偉いさんは満足しないかもね。」
374: 2013/07/09(火) 22:38:32 ID:WQO9vPj.
コニー「ほら、やっぱダメじゃん。」
サシャ「良いアイディアだと思ったんですけど・・・。」
アルミン「簡単に吹けそうな笛、探してみようよ。」
サシャ「楽器の笛ですか?」
アルミン「うん。」
コニー「楽器はイヤだ。俺には向かん。」
サシャ「でも、憲兵団入りたいんですよね?このままだと入れないかもしれませんよ。」
アルミン「歌うか吹くか、さぁどっちを選ぶ。」
コニー「何でその二択しかねぇんだよ。」
サシャ「だったら自分で考えて下さい。私達はもう知りません。」
コニー「・・・・・あー、もう!いいよ、吹くよ。吹けばいいんだろ。」
375: 2013/07/09(火) 22:39:22 ID:WQO9vPj.
―男子宿舎
マルコ「ただいまー。」
ジャン「おう、遅かったな。」
マルコ「今日は3人もレッスン見たからね。疲れたよ。」
ジャン「俺も今日ピアノのレッスンだったんだけどよ、クリスタがマジ機嫌悪くてびびったわ。」
マルコ「クリスタが?」
ジャン「ああ。ずっとイライラしててよ。練習してない俺も悪いんだけどさ。初めて怒鳴られた。」
マルコ「レッスン前、話したときは普通だったけどなぁ・・・。」
376: 2013/07/09(火) 22:40:04 ID:WQO9vPj.
ジャン「情緒不安定。生理中だな。」
マルコ「そういうこと言うな。」
ジャン「マルコ、クリスタ襲うんだったら今日だぜ。中出ししてもガキはできねぇ。」
マルコ「最低だな、お前。」
ジャン「だってよ、マルコ、クリスタのこと好きだろ。」
マルコ「ああ、好きだね。仲間として。」
ジャン「はぁ?そんなん聞いてんじゃねぇだろ。最近やたら一緒にいるじゃねぇか。」
377: 2013/07/09(火) 22:40:39 ID:WQO9vPj.
マルコ「ふぅー・・・。ジャン、何かあった?今日はやけに絡んでくるね。」
ジャン「話逸らすなよ。」
マルコ「ミカサ絡み?エレンとミカサ、近頃良い雰囲気だもんね。付き合い始めてたりして。」
ジャン「なっ、そうなのか?」
マルコ「さぁ、知らないけど。でも、ジャンが最近やさぐれてんのはあの二人のせいだろ?」
ジャン「そうなんだよ。今日だって、あいつら俺の目の前で・・・」ウダウダウダウダ・・・
マルコ(ジャンは扱いやすくて助かる。
でも、傍から見ても僕がクリスタに好意を持っているようにみえるのか・・・。
それはマズイな。彼女の迷惑になるかもしれない。もっと普通にしてないと。)
378: 2013/07/09(火) 22:41:34 ID:WQO9vPj.
―女子宿舎
クリスタ「・・・ただいま。」ギュッ
椅子に座り本を眺めているユミルの背中に、クリスタは抱きついた。
ユミル「・・・珍しいな。クリスタから抱きついてくるなんて。何かあったか?」
クリスタ「・・・自己嫌悪中。」
ユミルの肩に顔を埋めて呟いた。
ユミル「じゃ、気の済むまでそうしてろ。」
ユミルは本を眺めたままだ。
379: 2013/07/09(火) 22:42:18 ID:WQO9vPj.
部屋の片隅では、ミーナたち女子が集まってガールズトークに花を咲かせていた。
かしましい話し声は嫌でもクリスタの耳に入ってくる。
女子A「だからさ、こう自然に手とか肩とか触れてくるじゃない?」
ミーナ「そりゃ、教えてるんだから触れもするでしょ。」
女子B「そうそう、あんただけじゃないからね。私だって触られたもん。」
女子A「いやいや、あれは絶対、私に気がある。めっちゃ優しく微笑んでくれるし。」
女子C「ばかじゃない?誰にだって笑ってるっつーの。」
女子B「ていうか、今までノーマークだったのに、なに急に熱あげてんの。」
380: 2013/07/09(火) 22:42:56 ID:WQO9vPj.
女子A「よくよく考えたらさ、マルコって成績優秀で憲兵団行くのほぼ確定してるし。
まぁ見てくれはパッとしないけど、将来性あるじゃん。」
ミーナ「その上、真面目で性格が良いからね。」
女子C「はははっ。理想の結婚相手ってわけ?」
女子B「気が早くねー?」
女子A「訓練期間中にしかチャンスはないでしょ。どうせ私ら憲兵団入れないんだから。」
ミーナ「言えてるー。私も頑張っちゃおうかな。」
女子A「えー、ミーナも狙ってんの?ズルくない?後から言うなんて。」
ミーナ「冗談だよぅ。そんな怒んないでよ。」
381: 2013/07/09(火) 22:43:34 ID:WQO9vPj.
クリスタ(うるさい、うるさい、うるさい・・・)ギュゥゥゥゥ
ユミル「ぐえっ、クリスタ苦しい。締まってるって。」
382: 2013/07/09(火) 22:44:13 ID:WQO9vPj.
女子B「でもさマルコもいいけど、ベルトルトの方が私はタイプだなー。」
女子C「だよね、だよね。あの寡黙な感じがたまらないよね。」
女子A「今日さ、私見ちゃったんだよねー。」
ミーナ「何を?」
女子A「ベルトルトとアニが音楽室に二人きりでいるとこ。」
女子B「うっそ、マジ?」
女子A「マジで。」
女子C「ちょっ、アニ、ざけんなよ。あいつ女子とは全然絡もうとしないくせに。」
女子B「男には媚売るんだ。サイアク。」
女子A「ちょっと優秀でカワイイからって調子乗ってんじゃない?」
女子C「ちっ、出来の悪い私らとは違いますってか。ただのビXチじゃん。」
383: 2013/07/09(火) 22:44:52 ID:WQO9vPj.
クリスタ「ちょっと、あなたたち「おいっ!!うるせぇ!!」
クリスタの声を遮ってユミルは怒鳴った。
ユミル「さっきからキャンキャンうぜぇんだよ。発情期のメス犬か、お前ら。
そんなに男が欲しいんなら、ウダウダ言わずにとっとと股開いて来い。」
ミーナ「そんなつもりじゃ・・・///」
女子A「はぁー、何かシラけるね。他の部屋行こ。」
女子B「そだね。ほらっ、ミーナも行くよ。」
ミーナ「う、うん・・・。」
384: 2013/07/09(火) 22:45:35 ID:WQO9vPj.
ガチャ パタン
クリスタ「・・・ユミル、ありがとう。でも、もう少し言い方が・・・。」
ユミル「はっ、もっと上品に怒れって?いいんだよ。ああいうクソ女にはあれぐらい言って。」
クリスタ「・・・・。ねぇ、ところでさっきから何読んでるの?」
ユミル「これ?クリスタの日記。」
クリスタ「!?ちょっと、何、勝手に人の日記読んでるのよ!!」
ユミル「そこに落ちてたから。」
クリスタ「落ちてません!しまってました!もう、早く返して!」
385: 2013/07/09(火) 22:46:33 ID:WQO9vPj.
ユミル「はい、返す。つーか、クリスタの日記ってぜんぜん面白くねぇな。
出来事ばっかり並べて、主観がほとんど入ってねぇじゃん。報告書みてぇ。」
クリスタ「人の日記勝手に読んどいて、さらにダメ出し?ありえないから。」
ユミル「はいはい、ごめんよ。・・・そろそろ寝るわ。っふぁー・・・」
クリスタ(・・・ユミルが盗み見るのを想定して、当たり障りの無い日記にしといて良かった。
でもアニのこと庇ったりして、悪ぶってるけど本当は優しくて仲間思い・・・。
早く素直になればいいのに。)
386: 2013/07/09(火) 22:47:21 ID:WQO9vPj.
―数日後 食堂
コニー「ジャ、ジャーン♪えっへん、皆の衆、コレが何か分かるか?」
エレン「木の棒。」
ミカサ「使い方によっては人を殺せるモノ。」
ベルトルト「吹き矢?」
ライナー「おいおい、そんな卑猥な道具こんなところで出すな。」
ジャン「えっ?マジで?そういう道具?」
ユミル「ダメだろ。アニの持ち物勝手に持ってきちゃ。」ニヤニヤ
ジャン「!?アニ・・・」///
アニ「馬鹿だろ、あんた。」
387: 2013/07/09(火) 22:48:11 ID:WQO9vPj.
クリスタ「あれは・・・横笛?」
マルコ「うん。ファイフかな。」
コニー「さすがマルコ。大正解だ。」
アルミン「この前の休日に僕とコニーとサシャで街に出掛けて買ってきたんだ。」
サシャ「コニーは憲兵団に入るため、ウォールローゼの笛吹き男になりました。」
コニー「言っとくけど好きで吹くわけじゃないからな。致し方なくだ。」
アルミン「楽器屋のおじさんが、これが一番簡単だよって勧めてくれて。
昔、外の世界では軍隊の行進とかに使われてたんだって。」
388: 2013/07/09(火) 22:48:54 ID:WQO9vPj.
エレン「へぇー。じゃあ俺達も行進の時にコニーに吹いてもらおうぜ。」
アルミン「でもね、行進にはファイフとドラムが必須なんだって。」
ミカサ「ドラム?」
アルミン「太鼓みたいなやつ。ドラムでリズムをとってファイフを吹くらしいんだけど。」
コニー「ドラムってめっちゃ高ぇの。俺らの財布じゃ買えねぇよ。」
389: 2013/07/09(火) 22:49:32 ID:WQO9vPj.
サシャ「なので、代わりにこれを買ってきました。じゃーん♪」
エレン「なんだ、これ?」
ライナー「お前ら、いい加減にきわどいグッズを昼間から出すのはやめろ。」
ユミル「あぁ、それ?昨晩アニが使ってたやつか。」ニヤニヤ
ジャン「!?アニ・・・」///
アニ「だから馬鹿だろ、あんた。」
ベルトルト「でも見たことの無い形だな。なんだろう。」
クリスタ「・・・カスタネットと」
マルコ「トライアングル。」
390: 2013/07/09(火) 22:50:20 ID:WQO9vPj.
サシャ「そうでーす。はい、アルミンはトライアングルをどうぞ。」
アルミン「え?え?」
サシャ「いきますよー。」
サシャ タン・タン・タン♪
アルミン チーン♪///
サシャ タン・タン・タン♪
アルミン チーン♪///
サシャ「アルミン、恥ずかしがっちゃ駄目ですよ。コニーのためです。はい、もう1回。」
ミカサ(かわいい・・・)
アニ(二人ともナデナデしたい・・・)
ジャン(なごむ・・・)
391: 2013/07/09(火) 22:51:03 ID:WQO9vPj.
サシャ「こんな感じです。さぁこれに合わせてコニーよ、吹くのです。」
コニー「スマン。まだ吹けん・・・。」
サシャ「えー!?そんな、がっかりです。」
コニー「だってよー、買ってまだ数日しか経ってないんだぜ。吹けねぇよ。」
エレン「どんな音かぐらい聴かせてくれよ。」
コニー「だから、いくら吹いても音が出ねぇんだよ。」
ライナー「ちょっとやって見せてみろ。」
コニー「いいけど・・・。スフゥー・・・、スフゥー・・・」
ジャン「あははは、何だよソレ。全然駄目じゃん。」
アルミン「吹き方にコツがいるって楽器屋のおじさん言ってたね。」
コニー「ちくしょ、何で鳴らないんだよ。」
392: 2013/07/09(火) 22:51:45 ID:WQO9vPj.
サシャ「・・・ちょっとコニー、笛貸して下さい。」パシッ
コニー「え?」
サシャ ピーーー ピッピーーー♪
コニー「うそ!?何で音出るんだよ。」
ベルトルト「サシャ、すごいね。」(間接キスしたね)
ジャン「ちゃんと音出んじゃん。」(ナチュラルに間接キスしたな)
アルミン「コツが分かるの?サシャ。」(恥ずかしくないのかな?間接キス)
サシャ「草笛です。草笛の時の唇の形です。」
コニー「こ、こうか?」
サシャ「うーん。口を軽く閉じて、唇を前に突き出して、さらに横に軽く引く・・・。」
コニー「うー・・・こう?」
サシャ「そうです。ではファイフをどうぞ。吹いてみて下さい。」
393: 2013/07/09(火) 22:52:32 ID:WQO9vPj.
コニー ピピーーー ピーピッピー♪
コニー「やった!音が出たぜ。ありがとな、サシャ。」
サシャ「お役に立てて嬉しいですよ。」
コニー「へへへっ。やる気が出たぜ。」ピーーー ピッピッピーー・・・♪
ミカサ「無邪気ね。」
ユミル「笛吹き男っつーより、笛を吹く少年だな。」
アニ「楽しそうでいいんじゃない。」
394: 2013/07/09(火) 22:53:02 ID:WQO9vPj.
アルミン「あとはちゃんと音程が出せるようになるだけだね。」
サシャ「コニーが上手になったら、行進の時、一緒に演奏しましょうね。」
アルミン「えっ?本気で言ってるの?」
サシャ「もちろんです。私、カスタネットのプロを目指します。
だからアルミンは、トライアングルのスペシャリストになって下さい。」
クリスタ「ふふっ、かわいい軍楽隊の誕生だね。」
アルミン「・・・マルコ。お金貸してくれない?ドラム買いたい。
トライアングルで行進とか恥ずかしすぎるよ・・・。」
マルコ「ははっ、だよね。みんなにカンパお願いしてみよっか。」
403: 2013/07/12(金) 18:49:58 ID:WqODutTw
―第二音楽室
マルコ「じゃあ、今日はここまでね。」
女子A「えー、もうちょっと教えてよー。今日は私で最後のレッスンなんでしょ?」
マルコ「ごめんね。レッスン時間は一人1時間って決めてるから。みんな平等にね。」
女子A「ぶぅー・・・。」
マルコ「ほら、拗ねないの。また来週ね。」
女子A「だったらー、マルコのピアノ聴かせてよ。」
マルコ「えっ?」
女子A「マルコが弾くんだったらレッスン時間に入らないでしょ?
私、マルコの演奏大好きなんだ。弾いてほしいなぁ。」
404: 2013/07/12(金) 18:50:30 ID:WqODutTw
マルコ「・・・・悪いね。今日はちょっと無理。」
女子A「えー、なんでー?」
マルコ「訓練でちょっと指を痛めちゃってさ。ごめんね。」
女子A「・・・そっか。しょうがないよね。また今度聴かせてね。」
マルコ「うん。じゃあね。もう暗いから気をつけて宿舎に帰ってね。」
女子A「送ってほしいなぁ、なんて。」チラッ
マルコ「はははっ、ここの片付けあるから。待たせたら悪いから、ね。」ニコッ
女子A「わかったよ。それじゃあ、おやすみなさーい。」エヘヘ
マルコ「お疲れさまー。」
405: 2013/07/12(金) 18:51:00 ID:WqODutTw
ガラッ ピシャッ
マルコ「・・・・・・・・・・ハァァァァァ。」
椅子に座り、背もたれに身体をあずける。
マルコ(あーーーー、もう無理。あの子、すっごい苦手。
だけど、波風を立てたくないから、嫌いな子にも優しくするし笑顔も向ける。
ピアノの先生なんて、みんな平等に扱わないと、どんな陰口叩かれるか分からないからね。
僕は精一杯やってるよ。必氏にいい人、演じているよ。
・・・ただ、ピアノだけは駄目なんだ。大切な人のためだけに弾きたいんだ。
それぐらいのわがまま、許してくれよ・・・。)
406: 2013/07/12(金) 18:51:30 ID:WqODutTw
片づけを終え、マルコは教室を出る。
マルコ(・・・ピアノの音が聴こえる。クリスタまだレッスンしてるのかな?)
第一音楽室の前まで来ると足を止めた。
教室の窓から中を覗くと、今までに見たことのない真剣な表情でピアノに向かうクリスタが見えた。
マルコ(全調のスケール・・・。地味だが技術の向上と維持には欠かせない基礎練習。
見えないところでちゃんと努力してるんだな。偉いよ。
・・・邪魔しちゃ悪いから帰ろう。)
407: 2013/07/12(金) 18:52:08 ID:WqODutTw
踵を返した時、声をかけられた。
クリスタ「誰かいるの?」
マルコ「ごめん、手を止めさせる気無かったんだけど・・・。」
クリスタ「マルコかー。・・・あぁ、良かった。そんなところに立ってないで入って来てよ。」
ガラッ
マルコ「どうしたの?」
クリスタ「講義棟って広いし古いでしょ。暗くなってから一人で教室にいるの苦手なんだ。」
マルコ「おばけとか幽霊とか出そうで?」
クリスタ「そう。ちょっとした物音や影なんかでビクッてなっちゃう。」
マルコ「はは。僕も怖がりだからその気持ち分かるよ。」
408: 2013/07/12(金) 18:52:39 ID:WqODutTw
クリスタ「でも今日は夜空が明るいからまだマシかな。」
マルコ「本当だね。あっ、満月だ。」
クリスタ「というわけで、一曲どうぞ。」
マルコ「ぷっ、何それ。練習中だったよね。」
クリスタ「ちょっと休憩。ゆっくり星空を眺めたい気分なの。」
マルコ「まぁ、いいけどさ。」
椅子に座り、弾き始める。
♪♪~♪~~♪♪♪~~
409: 2013/07/12(金) 18:53:16 ID:WqODutTw
クリスタ「ドビュッシーの『月の光』・・・」
窓枠に腰掛け、夜空を見上げながらつぶやく。
マルコは演奏の手をやすめず話しかけた。
マルコ「何か嫌なことでもあった?」
クリスタ「ううん・・・。」
マルコ「そう・・・。」
黙りこんだ二人の間にはゆったりとしたピアノの音だけが流れる。
夜の静けさに雫が一滴一滴落ちていくかのような繊細で甘美な旋律。
ゆるやかに螺旋を描きながらどこまでも下降していくメロディー。
儚げで幻想的な月の光。
410: 2013/07/12(金) 18:54:08 ID:WqODutTw
音に煽られ、気持ちが高ぶる。
お互いに募る思いはあった。すぐにでも吐き出したかった。
しかし思いを口にすることで、二人の間だけでなく仲間達との関係も壊れてしまうことのほうが怖かった。
あまりのもどかしさにクリスタは焦れた。
クリスタ「マルコの選曲はずるい・・・。」
マルコ「だって、月夜だから。」
クリスタ「ベートーベンのソナタ『月光』でもいいでしょ。」
マルコ「えー、悲壮感漂わせるの?」
411: 2013/07/12(金) 18:54:39 ID:WqODutTw
クリスタ「そのほうがマシ。中途半端に甘い雰囲気作らないでよ。」
マルコ「ははっ、期待した?」
クリスタ「何をかな?」
マルコ「さぁ、何だろうね。」
クリスタ「・・・・・ふぅー、もういいよ。明日はカンパお願いするんだよね。」
マルコ「うん。みんなが一斉に集まる夕食の時にでも声をかけようかなって。」
クリスタ「協力してくれるかな・・・。」
マルコ「分からない。でも、やるだけやってみよう。」
412: 2013/07/12(金) 18:55:11 ID:WqODutTw
―その頃
講義棟の外には怒りに肩を震わせる人影があった。
女子A(指に怪我してるとかやっぱウソじゃん。マジむかつく・・・)
413: 2013/07/12(金) 18:55:50 ID:WqODutTw
―翌日 食堂
アルミン「というわけで、軍楽隊に賛同して下さる方はカンパをお願いします。」
マルコ「今からバケツを回すので、協力してくれる方はお金を入れて下さい。」
ライナー「お前ら頼むぞ!」
ライナーの仲間たち「おう、アニキ!!」
エレン「ははっ、ライナーはすげぇな。」
ミカサ「人望があるのね。」
414: 2013/07/12(金) 18:57:08 ID:WqODutTw
アニ「ベルトルトも女子のとこ、お願いに行ったら。」
ベルトルト「えっ、なんで?」
サシャ「そうですよ。ベルトルトが行けばお金がいっぱい集まります。」
ベルトルト「でも、女子は苦手で・・・。」
ジャン「しょうがねぇ、俺が行ってくる。」
コニー「お前は行くな。」
ジャン「なんでだよっ。」
415: 2013/07/12(金) 18:57:51 ID:WqODutTw
ライナー「ところでユミル。お前はヴァイオリンどうやって手に入れたんだ?高いんだろ、あれ。」
ユミル「訓練兵になる前に小金は結構貯めてたからな。それでも足りない分は身体で払った。」
ライナー「身体でって、お前・・・。」
クリスタ「もうユミル、勘違いされる言い方しないの。
ユミルはね、休日にヴァイオリン工房で雑用係として働いて返したの。」
ライナー「兵士のアルバイトは禁止だが、お前にしてはまともな判断だったな。」
ユミル「盗んだとでも思ってたか?ライナーさんよ。」
ライナー「お前ならやりかねんからな。・・・いや、今のお前はやらないな。」
ユミル「何だそりゃ。」
416: 2013/07/12(金) 18:58:32 ID:WqODutTw
アルミン「あっ、バケツが戻ってきた。」
エレン「いくら入ってんだ?」
マルコ「えーと・・・。うん。ドラムが三個ぐらい買えそうだね。」
サシャ「やったーーー!みなさんご協力ありがとうございます!」
ミカサ「私たちもお礼を述べねば・・・」
エレン「だな。」
一同「ありがとうございました!!!」
「軍楽隊、期待してるぜ。」
「オレの金、無駄にすんなよ。」
「楽しみにしてるからねー。」
417: 2013/07/12(金) 18:59:04 ID:WqODutTw
アルミン「みんな・・・。僕は良い同期に恵まれて幸せだよ・・・。」グスッ
ミカサ「うん。期待に応えなくては。アルミンならきっとできる。」ナデナデ
エレン「集まった金、誰が持っとく?」
ジャン「男子寮はやめといた方がいいぜ。手癖の悪いやついるからな。」
コニー「部屋が散らかってるしな。失くしそうだ。」
クリスタ「分かった。それじゃ、私が預かっとくね。」
ライナー「クリスタなら安心だな。」
ベルトルト「うん。賛成だ。」
418: 2013/07/12(金) 18:59:42 ID:WqODutTw
マルコ「次の休日に、みんなで街の楽器屋さんへ行こう。」
サシャ「みんなで!?遠足みたいですね。」
コニー「やっべ。こんな大人数で遊ぶの初めてだ。何持って行こう。」
ジャン「間違ってもボールとか虫取り網とか持ってくるなよ。」
コニー「釣竿は?」
ジャン「どこ行く気だ?」
アルミン「ははは。楽しみだね。」
エレン「街出るの久しぶりだぜ。」
ミカサ「私が誘うと断るのに・・・。」シュン
419: 2013/07/12(金) 19:00:19 ID:WqODutTw
アニ「私はパス。」ガタッ
ライナー「相変わらずつれねぇな。どこ行くんだ?」
アニ「散歩。」スタスタスタ
クリスタ「アニも一緒に来ればいいのに・・・。」
ベルトルト「気にしなくていいよ。もともと団体行動が嫌いだから。」
ユミル「いいんじゃね?いろんな奴がいて。」
サシャ「じゃあ早速、どこのお店でご飯食べるかプランを立てましょう!!」
コニー「お前は食い物しか頭にないのか、芋女!!」
ワイワイワイワイ
420: 2013/07/12(金) 19:00:50 ID:WqODutTw
―別のテーブル
ミーナ「あっちのグループ、楽しそうだね。」
女子A「は?うちらと一緒じゃ、つまんないって?」
ミーナ「そ、そんなこと言ってないよ・・・。」
女子B「うざいよね。人から金とってさ。自分らだけ盛り上がって。」
女子C「だよね。目障り。」
ミーナ「そうかな・・・。」
女子A「・・・ねぇ、ミーナ。お願いがあるんだけどさ。」
ミーナ「何?」
女子A「ここじゃ、何だから外で話そ。」
421: 2013/07/12(金) 19:01:21 ID:WqODutTw
―講義棟の裏
アニ(ライナーの奴、すっかり仲間意識持っちゃって。大丈夫かあいつ・・・。
それにしても怪しい奴がいないか巡回するのも飽きたね・・・。
よくよく考えたら、なんで私だけ?ライナーとベルトルトも働けよ。
・・・・・ん?あれは・・・。)
422: 2013/07/12(金) 19:01:53 ID:WqODutTw
ミーナ「お願いって何?」
女子A「ミーナ、うちらって友達だよね。」
ミーナ「う、うん。」
女子B「うちらが相手してやんなかったら、ボッチだもんな。」クスクス
女子C「ズッ友だよねぇ。」
ミーナ「うん・・・。」
女子A「お願いっていうのはね―――――」
423: 2013/07/12(金) 19:02:28 ID:WqODutTw
―翌日 女子宿舎
ミーナ(体調が悪いって訓練さぼっちゃった。医務室抜け出してきたけど大丈夫かな・・・。)
ミーナ(・・・うん、誰もいないね。クリスタの持ち物はここの棚かな・・・。)
ゴソゴソゴソゴソ
ミーナ(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・
私だって本当はこんなことしたくない・・・・・・・・。)
424: 2013/07/12(金) 19:03:04 ID:WqODutTw
アニ「ねぇ。」
ミーナ「!?」ビクッ
アニ「私は訓練サボってるだけで、あんたが何しようと関係ないんだけどさ。」
ミーナ「あ、あの・・・。」オドオド
アニ「私はずるくて嫌なヤツだけど、それでも人間ではいたいわけ。
あんたは本当に家畜以下になりたいの?」
ミーナ「・・・・!!」
アニ「じゃあね。私は何も見てないから。」スタスタスタスタ
ミーナ(・・・・・・・・・・・)
ミーナ(・・・・・・私、何をしようとしていたんだろう・・・。
人の言いなりになって、それで何を得ようとしていたんだろう・・・。)
ミーナ「・・・ぅぅ・・ひっく、ううぅぅ・・・・うわぁぁぁぁん・・・」
425: 2013/07/12(金) 19:03:54 ID:WqODutTw
―翌日 食堂
賑やかに朝食を食べる声が響く中、ミーナは一人でテーブルに座っていた。
ミーナ(お金を盗めないって言ったら、やっぱりハブられちゃった・・・。
もう私には友達がいない・・・。独りでご飯食べるとか、氏ぬほどイヤだよ・・・。
明日からはトイレで食べよう。惨めだけど、独りでいるとこ見られるよりいいや。
でもこれでよかったんだ。恥ずかしい人間になるよりボッチの方がマシだよね・・・。)
426: 2013/07/12(金) 19:04:31 ID:WqODutTw
アニ「ここ、空いてる?」
ミーナ「!? う、うん。」
ミーナ(昨日のこと責められるのかな・・・。アニ、みんなにバラしちゃったかな・・・。)
アニ「何、堅くなってんのさ。」
ミーナ「あ、あの、ごめんなさい・・・。」
アニ「何のこと?私はここでご飯食べたいだけ。」
ミーナ「・・・・・・・・・・ありがとう」グスッ
427: 2013/07/12(金) 19:05:09 ID:WqODutTw
サシャ「おやおや?ミーナが泣いてますね。アニにパァン盗られましたか?あっ、ここ座りますよ。」
アニ「サシャじゃないんだから、そんなことしないよ。」
コニー「おっ、ミーナが泣いてる。サシャ、また人の飯奪ったんだろ。ここ座るぜ。」
サシャ「人聞きが悪いですね。ミーナはアニに泣かされたんです。」
コニー「おいおい、アニ。寝起きで機嫌が悪いからって蹴り入れるこたないだろ。そりゃ泣くわ。」
アニ「あんたが蹴られたいようだね。」ガタッ
コニー「うわっ、ちょっと、マジ勘弁。」ガタッ
クリスタ「うふふ。朝から賑やかだね。私もここ座ろうっと。」
ミーナ(クリスタ・・・)グスッ
428: 2013/07/12(金) 19:05:57 ID:WqODutTw
クリスタ「おはようミーナ。・・・って、どうしたの?コニーがいたずらした?」
コニー「オレじゃねぇし。」
クリスタ「大丈夫?」ヨシヨシ
ミーナ「・・・うぅ・・ひっく・ごめんね・・・ひっく、ごめんね・・・。」グスッ
クリスタ「??? 何で謝ってるの?ほら泣き止んで。」ヨシヨシ
コニー「しょうがねぇな。そんなに謝るんならミーナ軍楽隊に入れ。そしたら許してやる。」
クリスタ「許すって、ミーナが何かしたの?」
コニー「知らん。」
サシャ「でも軍楽隊に入ってくれたら嬉しいです。仲間が増えます。」
ミーナ「仲間・・・。」
サシャ「そうです。壁内一の軍楽隊を目指しましょう。」
429: 2013/07/12(金) 19:06:33 ID:WqODutTw
ミーナ「でも・・・、私なんか・・・。」
アニ「やってみたら?馬鹿が多いけど退屈はしないよ。」
クリスタ「一緒にがんばろうよ、ミーナ。」ニコッ
クリスタはミーナの手を握った。
クリスタの手は優しく温かかった。
ミーナ「・・・・・うんっ。よろしくね。」ニコッ
サシャ「では、新しい仲間にスープで乾杯です。」
コニー「こぼれるからやめとけ。」
430: 2013/07/12(金) 19:07:05 ID:WqODutTw
アニ「じゃ、私もう行くわ。」ガタッ
アニは食器を片付けに席を立つ。
途中、あるテーブルの前で止まった。
アニ「ねぇ、あんた。」
女子A「・・・なんか用?」
アニ「今日の対人格闘術の訓練、私と組んでくれない?」
431: 2013/07/12(金) 19:07:43 ID:WqODutTw
―休日
アルミン「こんにちはー。」
店主「おぉ、訓練兵の坊主。また来たのか。」
エレン「へぇ、ここが楽器屋か。見たことのないモノがいっぱいだな。どれどれ・・・」
ミカサ「エレン、勝手に触っては駄目。」
マルコ「ドラムはどこかな?」
クリスタ「ピアノ譜、置いてないかな・・・。」
コニー「おっ、ファイフまだあるじゃん。もっといっぱい買おうぜ。」
432: 2013/07/12(金) 19:08:16 ID:WqODutTw
ジャン「そういえば、アニとユミルは?」
サシャ「一生懸命お誘いしたのですが、面倒くさいって断られました。」
コニー「ミーナは?」
サシャ「もちろん誘いましたよ。でも、私なんかがってものすごく遠慮して来なかったです。」
コニー「なんだよ、それ。」
クリスタ「まだ私たちに慣れてないから緊張するんじゃない?」
ジャン「ははっ、確かにな。ライナーとか普通の女はビビっちまうよな。」
ライナー「それでいい。どうでもいい女に周りをうろちょろされたら面倒なだけだ。」
ベルトルト「それにしても、天井低いな。頭ぶつけそう。」
433: 2013/07/12(金) 19:08:55 ID:WqODutTw
※ ※ ※ ※
店主「今日は何が欲しいんだ?」
アルミン「軍楽隊に使うドラムです。」
店主「マーチング用のドラムだったらその辺だ。値段もいろいろだからな。じっくり見て決めるといい。」
アルミン「ありがとうごさいます。」
コニー「へぇ、太鼓っつっても、いろいろあるんだな。」
アルミン「どれがいいかなぁ・・・。」
434: 2013/07/12(金) 19:09:30 ID:WqODutTw
※ ※ ※ ※
クリスタ「あっ、これカワイイ。」
ミカサ「何?」
クリスタ「ちっちゃめのオカリナ。」
サシャ「うわー、綺麗な装飾がしてありますね。」
ミカサ「インテリアにもなりそうね。」
クリスタ「うん。自分のとユミルにもおみやげで買って帰ろう。」
435: 2013/07/12(金) 19:10:11 ID:WqODutTw
※ ※ ※ ※
ジャン「珍しいもんだらけだぜ。」
マルコ「うん。僕も初めて見るものがたくさんある・・・って、これは!!」
ベルトルト「どうしたの?」
マルコ「おじさん。これって、もしかしてビューゲル?」
店主「坊主よく分かるな。そうだ、ビューゲルだ。」
ジャン「なんだそれ?」
店主「いわゆる軍隊ラッパさ。昔、軍隊で命令の伝達に使われてたらしい。」
ベルトルト「へぇ。軍楽隊に組み込めるかな?」
店主「いや。ビューゲルは出せる音程が限られてるから演奏には向かない。
行軍時や日常生活の号令としてしか使えんよ。」
436: 2013/07/12(金) 19:10:52 ID:WqODutTw
ジャン「教官の怒鳴り声よりはラッパのほうがいいな。おっさん、これいくらすんだ?」
店主「これは非売品だ。もう壁内じゃ製造されとらんからな。」
ジャン「そこを何とかさぁ、頼むよ、おっさん。」ペコリ
マルコ「僕からもお願いします。」ペコリ
ベルトルト「僕からも」ペコリ
店主「・・・お前ら、今日ドラム何個買うんだ?」
マルコ「ええと、三個です。」
437: 2013/07/12(金) 19:11:24 ID:WqODutTw
店主「じゃあ、おまけでビューゲル、付けてやるよ。
ここにあっても埃をかぶるだけだしな。楽器は音を出してこそ価値がある。
そいつに命を吹き込んでやってくれ。」
ベルトルト「やった。」
ジャン「ホントにいいのかよ?」
店主「ああ。お前ら将来、立派な兵士になるんだろ?先行投資だ。」
マルコ「ありがとうございます。」
438: 2013/07/12(金) 19:12:03 ID:WqODutTw
※ ※ ※ ※
ライナー「こ、これは!?」
エレン「何だこれ?」
ライナー「こんなけしからんものが売っているとは・・・、ここの店主できる。」キラン
エレン「おーい、店主のおっさーん。」
店主「呼んだか。」
エレン「これって鞭みたいだけど、楽器なのか?」
店主「ああ。昔、外の世界にあったドイツってところの民族楽器だな。
ゴアスルシュノイツェンっていう立派な楽器だ。まぁ、ただの牛追い用の鞭だがな。」
439: 2013/07/12(金) 19:13:17 ID:WqODutTw
ライナー「親父、これを一つは自分用に、一つはプレゼント用で包んでくれ。」
店主「若造のくせに、お主なかなかやるな。」キラン
ライナー「親父さんには叶いませんよ。」ニヤリ
エレン「軍楽隊に鞭って必要なのか?」
ライナー「いや、これはあくまで個人的趣味だ。」
エレン「? プレゼントって誰にやるんだよ。」
ライナー「アニに決まってるだろうが。」
エレン「そんなもんもらってもアニは喜ばねぇだろ。」
ライナー「馬鹿野郎。『こんなもんいるか!!』って怒ったアニが、すかさず鞭でオレをパシーン。
最高じゃないか。」ハァハァ
エレン「変態だな。」
ライナー「お前も一つどうだ。ミカサにプレゼントしてみろよ。」
エレン「そんな殺傷能力の高そうなもんでミカサに叩かれたら、俺の身体がちぎれちゃうだろ。」
440: 2013/07/12(金) 19:14:17 ID:WqODutTw
―街の公園
サシャ「やっぱり、大人数で一緒に入れるお店ありませんでしたね。」モグモグ
アルミン「しょうがないよ。でもおいしいサンドウィッチ屋さん見つけたし。」モグモグ
ミカサ「木陰が気持ちいい。」モグモグ
エレン「外で食べるほうが気分いいぜ。」モグモグ
ベルトルト「でも、随分と買い込んだね。」モグモグ
マルコ「ドラム3台と追加でファイフ11本。おじさん、かなり値引きしてくれたから。
なんとか軍楽隊が形になりそうだよ。」モグモグ
441: 2013/07/12(金) 19:15:00 ID:WqODutTw
ライナー「そんなに買ったのか。演奏する奴いるのか?」モグモグ
クリスタ「募集するの。きっとやってみたい人がいるはず。もし応募がなかったら・・・。」モグモグ
マルコ「ライナー軍団に頼めるかな?」モグモグ
ベルトルト「ははっ、軍団なんだ。」モグモグ
ライナー「俺が頼めばやってくれる男たちだが・・・・、むさ苦しいぞ。」モグモグ
ジャン「ライナーがそれ言うか。」モグモグ
442: 2013/07/12(金) 19:15:39 ID:WqODutTw
ベルトルト「でもさ、ビューゲルは誰が吹くの?」モグモグ
アルミン「うーん。日常生活の号令で使うんだったら、時間に正確な人かなー。」モグモグ
マルコ「起床ラッパとか、誰よりも早起きできる人じゃないと無理だねー。」モグモグ
エレン「早起きかー。そういやダズって早起きじゃね?」モグモグ
ジャン「そうそう。年寄りかっていうぐらい早起きだな。」モグモグ
ライナー「奴がゴソゴソする音でこっちまで目が覚める。」モグモグ
マルコ「毎日、心配なことが多すぎて早く目が覚めるらしいよ。」モグモグ
ジャン「ダズに任せるか。」モグモグ
マルコ「余計、心配ごとが増えるんじゃないかな。まぁ、頼むだけ頼んでみようか。」モグモグ
443: 2013/07/12(金) 19:16:17 ID:WqODutTw
コニー「あー、公園来るんだったら、やっぱボール持ってくりゃよかった。」モグモグ
ジャン「お前、まだそれ言ってんのか。」モグモグ
コニー「だってよー、あそこにいる奴、いっぱいボールくるくる回して楽しそうなんだよー。」モグモグ
ジャン「馬鹿。ありゃ、大道芸人のジャグリングだ。ああやって芸を見せて金稼いでんだよ。」モグモグ
コニー「俺もやってみてぇな。小遣い稼ぎになるし。」モグモグ
ベルトルト「じゃあ、ファイフ吹いてみたら?上手に演奏したらチップもらえるかも。」モグモグ
コニー「やだよ。恥ずかしい。」モグモグ
ライナー「おいおい、恥ずかしがってちゃ軍楽隊できないだろう。」モグモグ
コニー「みんなと一緒だったら平気だ。一人は無理。」モグモグ
444: 2013/07/12(金) 19:16:57 ID:WqODutTw
ベルトルト「サシャは偉いよね。大勢の前で一人で歌ったんだから。」モグモグ
ジャン「羞恥心、田舎に忘れて来たんだろ。」モグモグ
コニー「なぁ、サシャ。ここで歌えって言われたら歌えるか?」モグモグ
サシャ「もちろんです。私は歌い手さんです。時と場所は選びません。」モグモグ
ライナー「すでにプロ意識を持ってるな。」モグモグ
ジャン「それじゃあ、歌ってみろよ。小銭稼げるかもしれねぇぜ。」モグモグ
マルコ「やめなよジャン。芸人みたいな真似、サシャにさせるなよ。」モグモグ
コニー「だって俺ら芸人にならなきゃいけねぇんだろ。」モグモグ
マルコ「だとしても、今はまだしなくていい。」モグモグ
サシャ「マルコは優しいですね。でも大丈夫です。私、歌うの好きなんです。」ヨイショ
445: 2013/07/12(金) 19:17:41 ID:WqODutTw
エレン「おっ、マジで歌うのか?」モグモグ
サシャ「はい。この前クリスタに教えてもらった歌が、今日はぴったりなんです。」
アルミン「なんて歌?」
サシャ「えと、ヘンデルの『ラルゴ』です。」
ジャン「チップ集めるものは・・・、この袋でいっか。」
ミカサ「サシャ、がんばって。」
サシャ「はい。聴いてて下さいね。」
サシャは人がたくさんいる方へ少し歩みを進めた。
446: 2013/07/12(金) 19:18:49 ID:WqODutTw
サシャ「みなさーん!!今から歌いますねー!!」
振り返る人々。
サシャは大きく息を吸い歌いだした。
Ombra mai fu こんな木陰は今までなかった
di vegetabile, 愛しくて 心地よくて
cara ed amabile, そして優しい
soave piu 緑の木陰
サシャの歌声に人々は集まった。
歌い終わると、歓声と拍手が起こった。
「よっ、姉ちゃん、うまいじゃねぇか。」
「いい声してるね。」
「初めて聴いたよその歌。すごくいい歌だね。」
用意した袋に、次々と硬貨が投げ込まれる。
447: 2013/07/12(金) 19:19:42 ID:WqODutTw
サシャ「お騒がせしてすいません。ありがとうございました。」ペコリ タッタッタッタ
エレン「すげぇな、サシャ。」モグモグ
サシャ「いやー、緊張しちゃいました。」
ジャン「どこがだよ。」モグモグ
サシャ「みなさんへの感謝の気持ちを込めました。伝わりましたか?」
コニー「ありゃ、何語だ?まったく分からん。」モグモグ
サシャ「壁の外の昔の言葉らしいですよ。
大体の意味はクリスタから聞いたんですけど、簡単にまとめると・・・」
ジャン「まとめると?」モグモグ
448: 2013/07/12(金) 19:20:24 ID:WqODutTw
サシャ「みなさんのことが大好きです!!って感じです。」
ミカサ「ふふ、サシャかわいい。」
コニー「お前そんなことよく平気で言えるな。こっちが照れるわ。」///
ベルトルト「サシャは真っ直ぐだね。」
ライナー「ああ。初めて女子から告白された。」///
ジャン「俺もだ。」///
エレン「お前らの脳内は快適だな。」
アルミン「クリスタ、歌詞の意味ってあれで合ってるの?」
クリスタ「うーん、ちょっと違うけど・・・。でも正解。」
コニー「小銭ばっかだけど、けっこう入ってんじゃん。何かおごれよ。」
サシャ「駄目です。帰りにケーキ買って、ミーナと一緒に食べるんです。」
449: 2013/07/12(金) 19:21:03 ID:WqODutTw
アルミン「・・・ねぇマルコ。サシャがちょっと歌っただけでチップがもらえたね。」
マルコ「そうだね。」
アルミン「・・・・・・・」
マルコ「・・・・・・・」
アルミン「・・・・多分、同じこと考えてるよね。」
マルコ「・・・・ああ、資金はあるに越したことはない。」
アルミン「やるしかないね。」
マルコ「寄付金集めのチャリティーコンサート。」
456: 2013/07/18(木) 00:12:13 ID:0/6DCNKs
後日、アルミンとマルコは軍楽隊の設立とチャリティーコンサート実施の許可をキース教官に申請した。
軍楽隊の設立は認められたが、コンサートに関しては兵士の対外活動になるので中央の承認が必要らしい。
「軍楽隊の出来次第では中央に申請してやってもいいぞ」とキース教官は温情を見せた。
なお、ビューゲルは日常生活の号令にのみ使用が許可された。
「壁外でラッパなんぞ吹いたら巨人に居場所を知らせるようなもんだろう。」
優秀な二人が意外と抜けていることに、キース教官は苦笑いした。
二人は礼を述べると教官室を後にした。
457: 2013/07/18(木) 00:12:57 ID:0/6DCNKs
アルミン「とりあえず軍楽隊を形にしないとね。」
マルコ「ああ、すべてはそれからだ。」
アルミン「僕、隊員募集のチラシ作って食堂の掲示板に貼っとくね。」
マルコ「僕も周りに声かけてみるよ。訓練兵団の軍楽隊だから仲間内だけでやるわけにはいかない。
今まであまり接点の無かった人たちにも参加してもらいたいね。」
アルミン「うん。自分達だけで盛り上がるのは良くないね。周りを巻き込んでいかなくちゃ。」
458: 2013/07/18(木) 00:13:37 ID:0/6DCNKs
―男子宿舎
ジャン「ダズ、頼む。ビューゲル吹きになってくれよ。」
ダズ「お、俺にはできない・・・。そんな責任のある役・・・。」
エレン「ダズしか適任がいないんだよ。なぁ、頼むよ。」
ダズ「なんで、急にラッパなんだよ。今まで通りカンカンカンって鐘の合図でいいじゃないか。」
コニー「そんなんカッコいいからに決まってるだろ。」
ダズ「だったらコニーが吹けばいいじゃないか。」
コニー「俺だって吹きてぇよ。でも早起きできん。」
ベルトルト「一番早起きのダズにやってもらえると僕たちすごく助かるんだけど。」
ダズ「これ以上、俺に負担をかけないでくれ。今の生活に付いていくのにいっぱいいっぱいなんだよ。」
459: 2013/07/18(木) 00:14:22 ID:0/6DCNKs
ライナー「ふぅー。ダズ、お前ここの生活楽しいか?」
ダズ「楽しいわけないだろ?万年落ちこぼれで、毎日教官にはどやされる。
男子からはグズの厄介者扱いを受け、女子からはいるだけでキモいって言われる。
開拓地に送られたくないから仕方なくここにいるだけだ。」
ライナー「だったら、ビューゲルを吹いてみろよ。お前にしかできない特技を身に付けろ。
そうすれば周囲のお前への評価も変わってくる。少しはここの生活を楽しもうとしろ。」
ダズ「そんな・・・、ラッパが吹けたところで何も変わらない・・・。」
460: 2013/07/18(木) 00:15:07 ID:0/6DCNKs
エレン「決めつけんなよ。少なくともここにいる俺たちはお前のこと尊敬する。」
ダズ「・・・尊敬・・・」
ベルトルト「自分のためでなく他人のために何かできる人は立派だよ。」
ダズ「・・・立派・・・」
コニー「何よりラッパが吹けるってカッコいいじゃん。憧れるぜ。」
ダズ「・・・憧れ・・・」
ジャン「どうだ、やってくれるか?」
ダズ「う、うん。俺、頑張ってみるよ。」
461: 2013/07/18(木) 00:15:38 ID:0/6DCNKs
コニー「よっしゃ!!じゃあ、早速吹いてみろよ。」
ダズ「できるかな・・・いくよ・・・ フスゥー・・・」
コニー「はははっ。やっぱそうなるよな。俺も最初はファイフ、ぜんぜん鳴らなかったし。」
ダズ「や、やっぱり俺には無理なんじゃ・・・。」
ジャン「心配すんな。吹き方にコツがあるんだろ。マルコとアルミンが帰ってきたら聞いてみようぜ。」
ライナー「何事も最初からはうまくいかないさ。大丈夫。お前ならできる。」
462: 2013/07/18(木) 00:16:18 ID:0/6DCNKs
―数日後 第三音楽室
軍楽隊員に応募したメンバーの初顔合わせが行われていた。
アルミン「こんなにたくさん集まるとは思わなかったよ。みんなありがとう。」
ミーナ「誰も来ないんじゃないかって心配してたのに・・・、嬉しいよ。」
サシャ「むさ苦しいライナー軍団を召集しなくてもよくなりました。」
コニー「うーんと、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・、俺たち除いて12人か。すげぇな。」
トーマス「なんかお前ら一生懸命だからな。手伝ってやりたくなった。」
サムエル「カンパ出したし。俺にも軍楽隊に参加する権利はあるよな?」
アルミン「もちろんだよ。」
ナック「俺らこれといった趣味もないからさ。自由時間はヒマしてんだ。」
ミリウス「ここには娯楽が何もないからな。面白そうなことには食いつくぜ。」
サシャ「そうです。みんなで合奏するのは絶対に楽しいはずです。」
463: 2013/07/18(木) 00:16:58 ID:0/6DCNKs
アルミン「ドラム3人、ファイフ12人の構成なんだけど希望の楽器ある?」
ハンナ「私はファイフやってみたい。」
フランツ「俺はドラムで。俺のビートがハンナのメロディーを支えるんだ。」
ハンナ「フランツ・・・///」
コニー「馬鹿夫婦・・・。」
アルミン「他のみんなは?」
「どっちでもいいぜ。」
「良くわかんないし。」
「アルミンが決めてくれよ。」
アルミン「分かった。じゃあ、ドラムは結構重たいから男子の方が良さそうだね。
フランツとトーマスと僕がドラムで。他のメンバーはみんなファイフで。」
トーマス「了解。」
ミリウス「かまわねぇぜ。」
464: 2013/07/18(木) 00:17:50 ID:0/6DCNKs
サシャ「ちょっと待って下さい。ファイフって全部で12本しかないんですよね。
ここには16人います。ドラムの人除いても1人余ります。」
ミーナ「あっ・・・、じゃあ、私は外してもらっても・・・。」
サシャ「駄目です!!それは絶対許しません!!」
コニー「珍しいなアルミン。計算間違えたか。」
アルミン「間違いじゃないよ。サシャには特別な役をやってもらおうと思って。」
サシャ「特別な役・・・ですか?」
アルミン「うん。僕ね、いろいろと軍楽隊について古い資料を調べたんだ。
それで分かったんだけど、軍楽隊にはドラムメジャーっていう指揮役が必要なんだって。」
サシャ「指揮・・・。具体的には何をするんでしょう?」
アルミン「軍楽隊の先頭で、メジャーバトンっていう杖を振って演奏を指揮したり隊を先導したり。
一番目立つ花形のポジションだよ。」
465: 2013/07/18(木) 00:18:33 ID:0/6DCNKs
サシャ「そんな重要な役割、私なんかでいいのでしょうか?」
アルミン「サシャだからお願いしたいんだ。だって緊張しなそうだから。」
コニー「ははっ、確かにな。先頭で杖振るとか、恥ずかしくって俺はできん。」
ミーナ「メジャーバトンっていうモノは用意してあるの?」
アルミン「それがまだ無いんだ。キース教官にお披露目するまでには用意しないと。」
サシャ「そんなの無くていいですよ。買ったら多分高いでしょうし。どっかで棒きれ拾ってきます。」
ミーナ「そんな。棒っきれじゃ格好がつかないよ。」
サシャ「いいんです。見た目よりバトン技術で勝負してやります。」
コニー「なぁ、アルミン。メジャーバトンってどんな形なんだ?」
アルミン「僕も本で見ただけだから正確には分からないんだけど、
1mくらいの細長い棒で片側に装飾がある、いわゆるメイスって呼ばれるものらしい。」
コニー「ふーん・・・・。」
アルミン「じゃあ、練習を始めよう。ファイフ隊はコニーとサシャに音の出し方を教えてもらって。
ドラム隊は僕とスティックの持ち方から練習しよう。」
466: 2013/07/18(木) 00:19:20 ID:0/6DCNKs
―数日後 自由時間 講義棟
マルコ「ドラムの音がする。今日も軍楽隊、頑張ってるね。」
クリスタ「アルミンの行動力ってすごいよね。作曲の次は軍楽隊まで作ろうとするんだもん。」
マルコ「うん。彼の前向きでひたむきな姿勢に仲間が自然と集まってくる。
1人じゃできないことでも仲間がいれば可能になる。
自分の能力を冷静に判断して、足りない部分は素直に人に頼れるところがアルミンの強みだね。」
クリスタ「うん。素直さか・・・。見習わないとな。
でもさ、仲間が集まるのはアルミンだけじゃないよね。・・・ほら、声が聞こえてきた。」
マルコ「ぷっ、本当だ。今日もやってるのか。ちょっと覗いて見ようか。」
467: 2013/07/18(木) 00:19:58 ID:0/6DCNKs
―第二音楽室
ライナー「よーし、お前ら。今日も歌って気分爽快すっきり寝るぞ。」
「腹から声出すぞー」
「軍楽隊の音に負けてらんねぇな」
「アニキ、今日は何の歌で?」
ライナー「俺の届ける最高のパーティーチューン。
モーツァルト第二弾『俺の尻を舐めろ、きれいにきれいにね』。お前ら俺の後に続け。」
さぁ俺の尻を舐めろ~♪ (さぁ俺の尻を舐めろ~♪)
きれいに美しく舐めあげろ~♪ (きれいに美しく舐めあげろ~♪)
・・・・・・♪
・・・・・♪
468: 2013/07/18(木) 00:20:59 ID:0/6DCNKs
―教室の外
マルコ「はははっ、相変わらず楽しそうだね。」
クリスタ「ふふふっ、前より人数増えてるし。すごい迫力。」
マルコ「うん。毎日こうやって歌っているからかな。上手くなってるね。」
クリスタ「ちょっとした合唱団みたい。ライナーってバリトンの結構いい声してるよね。」
マルコ「確かによく響くし声量もすごいね。・・・男性合唱か。いいかもしれない・・・。」
クリスタ「何が?」
マルコ「ほら、チャリティーコンサート。開催は軍楽隊の出来次第なんだけどさ。
アルミンは間違いなくキース教官に認められる軍楽隊を作る。
だから、コンサートでやる演目の案を早めに考えとこうと思って。」
469: 2013/07/18(木) 00:21:44 ID:0/6DCNKs
クリスタ「そうだね。準備は早い方がいいね。」
マルコ「アルミンは今手いっぱいだから。僕たちで考えないと。」
クリスタ「そっか。お客様に喜んでもらえる演目だよね・・・。」
マルコ「できるだけ訓練兵のみんなにステージに立ってもらいたいんだ。
軍楽隊とライナー合唱団は出演依頼をしてみるよ。ただ他の人たちも何かで出演できれば・・・。」
クリスタ「予算をかけずに団体でできるパフォーマンスか・・・。ダンスとか?」
マルコ「僕もそれを考えたんだけど。ファイフの音色で踊ればいいかなって。
ただ僕はダンスに詳しくないから。どんな踊りが相応しいのか分からないんだ。」
クリスタ「うーん。集団で踊るダンスは私も分からないなぁ・・・。」
470: 2013/07/18(木) 00:22:14 ID:0/6DCNKs
マルコ「だから、この前行った楽器屋さんで聞いてみるよ。あそこ民族楽器がたくさん置いてたから。
民俗音楽って踊るための曲が多いし。おじさん何か良いダンス知ってるかもしれない。」
クリスタ「うん。分からないことは素直に人に頼ろう。私も楽器屋さん一緒に行くよ。」
マルコ「ありがとう。それよりクリスタ、そろそろレッスンじゃないの?」
クリスタ「あっ、いそがなきゃ。でも、マルコは?ライナーに教室占領されてるけど・・・」
マルコ「今日はレッスン無しなんだ。なぜか生徒が急に減ってね。」
クリスタ「ふふっ、マルコ人気は一瞬だったんだね。」
マルコ「そうだよ。僕の人生でおそらく、最初で最後のモテ期はあっという間に終わったよ。
ほら、早く行かないと。生徒さん待ってるよ。」
クリスタ「うん。それじゃあ。」
471: 2013/07/18(木) 00:22:51 ID:0/6DCNKs
―男子宿舎
アルミン「疲れたー。腕がパンパンだよ。」
エレン「お疲れー。」
ジャン「ほらっ、ダズ、もう1回やってみろ。」
ダズ「う、うん。」 プォ~~~♪
アルミン「ダズ、すごいじゃないか。音、出るようになったんだ。」
ダズ「口の形とか息の出し方とか、いろいろ試してみたんだ。」
マルコ「あとは今のアンブシュアを保ったまま、息を出す速さを変えるんだ。」
ベルトルト「アンブシュアって?」
マルコ「唇の形のことらしいよ。僕もよく知らないけど格好つけて言ってみた。」
ダズ「息を出す速さを変えるのか・・・」 ポォ~♪プゥ~♪パァ~♪
エレン「おー、音が変わった。今のはド、ミ、ソだ。」
472: 2013/07/18(木) 00:23:29 ID:0/6DCNKs
マルコ「ビューゲルにはバルブが付いてないからね。
音程を吹き分けるには、息の速さやアンブシュアを変化させるしかないんだ。
でも出せる音は下から言うと、ド・ソ・ド・ミ・ソ・シ♭・ドだけだから。」
アルミン「自分のさじ加減なんだね。」
マルコ「うん。とにかくどう吹いたらどの音になるか身体で覚えるしかないね。」
ダズ「頑張るよ。こんな俺でも人に認めてもらえそうなものが見つかったんだ。
ビューゲルの練習始めてから少し前向きになれたよ。」
ジャン「良かったじゃねぇか。どんな場所にいても人生楽しまなきゃ損だからな。」
ダズ「ああ。お前らのおかげだ。感謝するよ。」
ライナー「礼はちゃんと吹けるようになってから言え。」
473: 2013/07/18(木) 00:24:21 ID:0/6DCNKs
アルミン「それより、コニーは隅っこで何やってんの?」
ジャン「あいつ、ここんとこ毎晩小刀でなんか削ってんだよ。」
エレン「今日はヤスリをかけてるな。」
ベルトルト「話かけても気付かないぐらい集中してるんだよ。」
マルコ「コニーがあんなに夢中で何かに取り組むの珍しいから、あえて放置してる。」
アルミン「ふーん。何だろうね。」
コニー「・・・・・できたーーーー!!!」
ベルトルト「!?びっくりした。急に大声出すなよ。」
コニー「ああ、すまん。あまりの完成度の高さについ興奮しちまってな。」
エレン「何、作ってたんだ?」
474: 2013/07/18(木) 00:25:00 ID:0/6DCNKs
コニー「じゃーん♪これ、何だと思う?」
ジャン「棒。」
エレン「ツルツルの棒。」
ベルトルト「超大型マッチ棒。」
ライナー「おまっ、ふつう手作りするか!?そんな夜のお楽しみ道具。」
ジャン「マジかっ!!・・・・って長すぎだろう。もう俺は騙されねぇ。」
ライナー「ふっ、甘いぞジャン。たとえば食堂のテーブルの下での使用を想像してみろ。」
ジャン「・・・・・すごくイイ。///」
エレン「お前ら想像力が豊かだな。」
アルミン「これって・・・、もしかしてメジャーバトン?」
コニー「そうだ。さすがに棒切れじゃ格好つかないからな。」
マルコ「へぇ。よくできてるじゃないか。先端の楕円体とか上手に削ったね。」
コニー「小刀の扱いは得意だ。」
アルミン「サシャ、きっと喜ぶよ。世界に一つしかないメジャーバトンだ。」
476: 2013/07/18(木) 00:25:54 ID:0/6DCNKs
ジャン「・・・コニーお前、これ何を削って作ったんだ?」
ベルトルト「長さといい質感といい・・・、どっかで見たことあるな。」
マルコ「まさか・・・。」
コニー「ん?対人格闘の棒術で使うやつを一本だけ拝借した。」
アルミン「拝借って・・・、許可とったの?」
コニー「いや、勝手に取ってきた。一本ぐらい構わんだろ。」
エレン「駄目だろ。不足があったら備品管理係が教官にどやされるぞ。」
ベルトルト「盗ってから数日経ってるから、すでに手遅れかもしれないけど。」
アルミン「今からでも教官に正直に話すべきだよ。」
コニー「えー、やだよ。怒られたくねぇし。せっかく作ったのに取り上げられたらどうすんだよ。」
477: 2013/07/18(木) 00:26:29 ID:0/6DCNKs
ジャン「コニー、お前馬鹿だろ。盗んだもんプレゼントされて喜ぶ女がどこにいるんだよ。」
コニー「別にプレゼントとかそんなんじゃねぇし。」
アルミン「でも元が盗品と分かったらサシャ悲しむよ。」
コニー「・・・そうか・・・。あーーー、どうすりゃいいんだよ。」
ジャン「明日、俺が一緒に教官のところ行ってやるよ。事情を説明すりゃ分かってもらえるだろ。」
コニー「いいのか?ジャン。」
ジャン「ああ。恋する男の気持ちは痛いほど分かるからな。」
コニー「だーかーらー、そんなんじゃねぇって。」
478: 2013/07/18(木) 00:27:07 ID:0/6DCNKs
―女子宿舎
ミーナ「唇が痛いよー。」
ハンナ「私も。口の周りの筋肉がつりそうだよ。」
クリスタ「二人ともお疲れ様。ファイフに慣れるまで大変そうだね。」
サシャ「でも、すごく上手になってますよ。ちゃんと曲に聞こえるようになりましたから。」
ミーナ「あはは。最初はひどかったもんね。」
ハンナ「サシャも棒切れ回すのすごく上手になったね。」
サシャ「はい。たくさん練習しました。おかげで手が豆だらけです。」
クリスタ「でも、いつまでも棒切れで練習するわけにはいかないよね。」
サシャ「大丈夫です。今度もっと形のいいやつ森で探してきます。」
479: 2013/07/18(木) 00:27:51 ID:0/6DCNKs
クリスタ「どっかで安く売ってないかな・・・。そうだ、今度街でるから探してみるね。」
ユミル「また街に行くのか?」
クリスタ「うん。」
ユミル「誰と?」
クリスタ「マルコとだけど。」
ミーナ「二人で?」
クリスタ「今のところ。」
ハンナ「それって、デート?」
クリスタ「違うよ。何か楽しいダンスを知らないか楽器屋さんに行って尋ねるの。」
ミーナ「ダンス?」
クリスタ「うん。ほらチャリティーコンサート開きたいなって話を前にしたでしょ。
できるだけたくさんの仲間にステージに立ってもらいたいんだ。
それで何かいいダンスはないかなって探してるの。そういうダンス知らないかな?」
480: 2013/07/18(木) 00:28:30 ID:0/6DCNKs
ハンナ「うーん、踊ったことすらないよ。」
ミーナ「私も。ダンスって見たことがない。」
クリスタ「そっか・・・。」
ユミル「楽しいかどうかは知らんが、踊りを教えてくれるババァなら心当たりあるぜ。」
クリスタ「ほんと?」
ユミル「ちょっと前までヴァイオリン工房に通ってただろ。
そこのオヤジのお袋さんってのが、大昔から壁外にあった踊りってのを伝承してるらしい。
オヤジはヴァイオリンのことフィドルって変わった呼び方するし。
多分どっかの民俗の末裔なんだろうな。」
481: 2013/07/18(木) 00:29:01 ID:0/6DCNKs
クリスタ「ユミル、一緒に街へ行ってくれない?工房のおじさん紹介してよ。」
ユミル「私とクリスタの二人ならいいぜ。」
クリスタ「イジワル言わないでよ・・・・。」シュン
ユミル「・・・まぁ、マルコに教わった工房だしな。しょうがない。三人で行くか。」
クリスタ「ありがとう。ユミル大好き。」ギュッ
ユミル「うんうん。訓練兵卒業したら結婚しような。」ナデナデ
482: 2013/07/18(木) 00:29:46 ID:0/6DCNKs
―翌日 訓練終了後
夕焼け空の下、コニーとジャンは演習場を走っていた。
ジャン「ちっ、何で俺まで処罰されんだよ。」
コニー「わりぃな、ジャン。でもお前が庇ってくれたからメジャーバトン取り上げられずに済んだ。
ありがとな。」
ジャン「ああ、一生オレ様に感謝しろよ。」
コニー「営倉行きも覚悟してたけど、意外と教官優しかったな。」
ジャン「そうか?飯抜き50周だぜ。鬼だろ。」
コニー「ジャンも優しいんだな。もっと自己中な奴だと思ってた。」
ジャン「はっ、これが憲兵団行きに響いたらどう責任とってくれんだよ。」
コニー「それが分かってて付き合ってくれたんだろ。お前、いい奴だ。」
483: 2013/07/18(木) 00:30:32 ID:0/6DCNKs
ジャン「はっ、野郎に褒められても嬉しくねぇよ。」
コニー「ミカサにもお前の良さが伝わるといいな。」
ジャン「うっせぇよ。それよりコニー、お前やっぱりサシャが好きだろう。」
コニー「何でだよ。」
ジャン「何日もかけて木の棒削るなんて、そんなめんどくせぇこと普通しねぇだろ。」
コニー「サシャには世話になってるからな。ありがとうの代わりだ。」
ジャン「礼なんて口で言えば済むだろ。ほら認めちまえよ、好きだって。」
コニー「もー、さっきから何なんだよ。お前、恋バナ好きの女子かよ。」
ジャン「俺は報われない片思い野郎を1人でも増やしたいだけだ。」
コニー「お前サイテーだ。やっぱり全然いい奴じゃねーな。」
484: 2013/07/18(木) 00:31:09 ID:0/6DCNKs
ジャン「コニー、お前は自分で気付いてないだけでサシャのことが好きなんだよ。」
コニー「何回もしつけぇよ。洗脳する気か。」
ジャン「ああ、走り終わるまでずっと言ってやる。お前はサシャが好き。」
コニー「違う。うっとしいな、俺もう先行くし。」ダッシュ
ジャン「あっ、待ちやがれ。お前はサシャが好きなんだよ。」
コニー「好きじゃねぇ。」
ジャン「好きなんだ!!!」
コニー「好きじゃねぇ!!!」
ジャン「大好きだ!!!!」
コニー「やめてくれ!!!!」
485: 2013/07/18(木) 00:31:46 ID:0/6DCNKs
―演習場の外れ
アニ「なにアレ?」
ミカサ「ジャンが大声で好きだと叫びながら、コニーを追いかけている。」
サシャ「夕焼け空の下、青春ですね。」
ミーナ「思わず何かに目覚めてしまいそう・・・・・・ハッ、だめだめ。」ブンブンブン
ユミル「ノーマルだろうがゲOだろうが本人の自由だ。放っとけ。」
クリスタ「そうだね。コニー、頑張って逃げてねー。」
486: 2013/07/18(木) 00:32:33 ID:0/6DCNKs
―翌日 第三音楽室
ガラッ
コニー「よう。」
サシャ「あっ、コニー。珍しく早いですね。今日も練習頑張りますよ。」
コニー「サシャあのさ・・・・・、コレやる。」
コニー(あいつらご丁寧にラッピングしてリボンまで付けやがって・・・。渡しづれぇ。)
サシャ「何ですか?おお!これは噂に聞くプレゼントってやつですね。」
コニー「いいから早く開けろよ。」
サシャ「食べられる物だといいですねー。じゃ、遠慮なく。」ビリビリビリ
コニー(豪快に破いたな。ラッピングしてもサシャの前じゃ意味ねぇっての。)
487: 2013/07/18(木) 00:33:19 ID:0/6DCNKs
サシャ「・・・・・・・・」ウルウル
コニー「サ、サシャ?」
サシャ「・・・・初めてです。」グスッ
コニー「何が?」
サシャ「食べ物以外を人から頂くのは・・・。」グスッ
コニー「お前の場合、ほぼ奪ってるけどな。」
サシャ「食べ物は食べたら無くなります。」グスッ
コニー「そりゃそうだ。」
サシャ「・・・でも、このバトンはずっと残ります。」グスッ
コニー「食えないしな。」
サシャ「・・・一生の宝物ですよ。コニー、ありがとうです。」ニコッ
コニー「あ、ああ。」///
コニー(涙目で微笑むとかカワイすぎるだろうが・・・、ハッ、やべぇ、ジャンに洗脳されてる)
488: 2013/07/18(木) 00:34:00 ID:0/6DCNKs
サシャ「でも、こんなのよく見つけましたね。どこで売ってたんですか?」
コニー「へへん、オレ様の手作りだ。」
サシャ「すごいです!コニーって意外と器用なんですね。」
コニー「ガキの頃から小刀で木を削って遊んでたからな。」
ガラッ
ミーナ「二人とも早いねー。」
サシャ「あっ、ミーナ見てください。コニー作のメジャーバトンです。」
ミーナ「うそ!?わー、すごい上手。コニーやるじゃん。」
コニー「だろ?もっと褒めてくれ。」
サシャ「うん。コニーは偉いです。」
ミーナ「このバトンがあれば、立派なドラムメジャーに見えるね。」
サシャ「駄目ですよ。宝物だから使いません。大事にしまっておきます。」
ミーナ「えっ?」
コニー「お前なぁ、オレが作った意味ねぇじゃん。ほら、出せよ。使えよ。」グイグイ
サシャ「いーやーでーすー。」グイグイ
489: 2013/07/18(木) 00:35:06 ID:0/6DCNKs
―休日
ユミル「オヤジ、邪魔するぜ。」
オヤジ「おぉ、ユミル久しぶりだな。元気しとったか。」
クリスタ「ここがヴァイオリン工房か・・・。木の優しい香りがする。」
マルコ「おじさん、お久しぶりです。」
オヤジ「マルコじゃないか。そうそう、ユミルにこの工房紹介してくれてありがとうな。
ぶっきらぼうだが真面目に働くいい娘だよ。」
ユミル「ふんっ、おだてても二度と手伝わねぇからな。」
オヤジ「はっはっはっ、あいかわらず素直じゃないな。ところで今日は何の用だ?」
490: 2013/07/18(木) 00:35:57 ID:0/6DCNKs
ユミル「前にオヤジのお袋さんが、どっかの踊りを継承してるとかって話してただろ。」
マルコ「そのダンスがどんなものなのか知りたくて。」
オヤジ「また、珍しいものに興味持ったな。まぁお袋は喜ぶが。それより、そちらのお嬢さんは?」
クリスタ「クリスタと言います。マルコたちと同じ訓練兵団に所属してます。」
オヤジ「こんな可愛い娘さんに兵隊やらせとるのか。世の中どうかしとるのぉ。
まぁ、わしが嘆いてもどうにもならんがな。
三人とも付いておいで。この工房の奥が住居で、そこにお袋はいるから。」
491: 2013/07/18(木) 00:36:35 ID:0/6DCNKs
ガチャッ
オヤジ「お袋、お客さんだ。自慢のダンスを教えて欲しいんだとさ。」
婆さん「まあまあ、よく来なすった。ささっ、そこの椅子にかけんしゃい。」
オヤジ「じゃあ、わしは仕事に戻るから、後は好きに話聞いてけ。」
マルコ「ありがとうございます。」
パタン
クリスタ「お邪魔します。」
ユミル「久しぶりだな婆さん。」
婆さん「おお、元気そうじゃないか。もう工房では働かんのか?」
ユミル「代金の分はきっちり働いたからな。もうゴメンだ。」
マルコ「あの、突然の訪問ですみません。
今日訪ねたのは、お婆さんが知っているダンスについて伺いたくて。」
婆さん「そうか、そうか。関心な若者もおるんじゃのぉ。
話せば長くなるが――――――――」
492: 2013/07/18(木) 00:37:12 ID:0/6DCNKs
お婆さんの話は想像以上に長かった。
要約すると、
・お婆さんはケルト系民俗の末裔でアイリッシュステップダンスなるものを継承している。
・このダンスは足を踏みならすタップダンスのようなもので、多人数で踊るのに向いている。
・代々一族で受け継いできたが後継者がおらず、自分の代で潰える覚悟をしていた。
・受け継いでくれる若者がいるなら喜んで教えたい。
マルコたちの探しているダンスにぴったりと当てはまった。
493: 2013/07/18(木) 00:37:48 ID:0/6DCNKs
マルコ「ではダンスメンバーが集まったら、講師をお願いできますか?」
婆さん「もちろんじゃ。踊りと言ってもハードじゃからな生きのいい奴らを集めてくれ。
あとは・・、そうじゃのぉ、リードダンサーとして美男美女が1人づつ欲しいのぉ。」
ユミル「むちゃ言うな婆さん。踊り手集めるだけでも大変だっつーの。」
婆さん「ほれ、そこのお嬢さんでもええんじゃぞ。」
クリスタ「いえ、私は・・・、他にやることがあってダンスはできないんです。すみません。」
婆さん「そうか、残念じゃのぉ。」
マルコ「できるだけ努力はしてみます。こちらの準備が整ったら、また改めてお願いに伺います。」
ユミル「じゃあな、婆さん。くたばるなよ。」
クリスタ「貴重なお話ありがとうございました。失礼します。」ペコリ
婆さん「気をつけてなー。」
494: 2013/07/18(木) 00:38:35 ID:0/6DCNKs
工房を後にし、帰路につく。
ユミル「あはははは、美男、美女って誰だよ。私らの団にそんなんいたか?」
クリスタ「ユミル笑いすぎ。」
マルコ「うーん、きれいな子はいるけど、踊ってくれるとは限らないしね。」
ユミル「へー、誰だよ。きれいな子って。」
マルコ「・・・アニとか?」
ユミル「ヒュ~♪お前、ああいうのがタイプなんだ。意外だな。」
マルコ「違うよ。一般的に見てきれいだってこと。」
クリスタ「そうだよね。アニは金髪碧眼で象牙のような白い肌。おとぎ話に出てくるお姫様みたい。」
ユミル「お前、なに自画自賛してんだよ。その通りだけど。」
クリスタ「えっ?」
マルコ「ははっ、クリスタも金髪、碧眼、白い肌だろ。」
クリスタ「やだ、そんなつもりで言ったんじゃないのに・・・///」
495: 2013/07/18(木) 00:39:21 ID:0/6DCNKs
ユミル「クリスタはきれい系っていうよりカワイイ系だな。アニとは全然違うし。」
クリスタ「でもアニはきれいだよ。美女の部類に入るよ。」
ユミル「けど、あいつは踊らねぇよ。」
マルコ「やっぱりそう思うよな。」
ユミル「集まった女の中から一番まともなの選べばいいじゃん。」
クリスタ「私アニに頼むだけ頼んでみる。もしかしたら引き受けてくれるかもしれないし。」
ユミル「やるだけ無駄じゃね。それより美男はどこにいんだよ。」
マルコ「・・・ジャンとか。」
ユミル「美男って分かってるか。見目麗しい男だぞ。」
496: 2013/07/18(木) 00:39:57 ID:0/6DCNKs
マルコ「いや、ジャンなら頼まなくても自分から名乗りを上げてくれそうだから、楽かなーって。」
ユミル「だったらベルトルさんに頼めよ。まだそっちのが男前だ。」
マルコ「ベルトルトは絶対に断るって。性格的に人前で踊るとか向いてないよ。」
クリスタ「声かけてみようよ。勝手に決め付けるのはよくない。」
マルコ「そうだね・・・。一応頼んでみるよ。」
クリスタ「そうそう。軍楽隊のお披露目って明日だよね。」
マルコ「うん。今日は猛特訓してると思う。帰ったら様子見にいこう。」
クリスタ「じゃあ、何か差し入れ買って帰らなきゃ。」
497: 2013/07/18(木) 00:40:43 ID:0/6DCNKs
―演習場
マルコ「おつかれー。頑張ってるね。」
サシャ「あっ、マルコにクリスタ。」
アルミン「ちょっと休憩しようか。僕もうクタクタだし。」
フランツ「俺も。ちょっとドラム降ろしたい。肩痛い。」
ミーナ「私も。喉かわいちゃった。」
サシャ「しょうがないですねぇ。はーい、みなさん休憩でーす。10分後に開始しまーす。」
クリスタ「ふふっ。サシャが仕切ってるんだ。」
サシャ「そうですよ。なんたってドラムメジャーですから。」
マルコ「コニー製のメジャーバトンちゃんと使ってるんだ。」
サシャ「はい。コニーがもう一本作る約束してくれたんで、心置きなく使ってます。」
コニー「いつになるか分からんがな。」
マルコ「もう備品盗むなよ。」ヒソヒソ
コニー「わかってるよ。」ヒソヒソ
499: 2013/07/18(木) 00:41:31 ID:0/6DCNKs
クリスタ「これ、みんなに差し入れ。召し上がって下さいな。」
サシャ「何ですかコレ?」
クリスタ「氷砂糖。体力回復には甘いものが一番。」
サシャ「どれどれ・・・パクッ、!!あんまーーーーい!おいしいーーーー!」
コニー「オレにも寄こせ。」
サシャ「はい、どうぞ。みんなに配って来ますねー。」
アルミン「砂糖なんて貴重なのに。高かったでしょ。気を使わせてごめんね。」
クリスタ「いいの。マルコと割り勘だし。みんな頑張ってるから少しでも役に立ちたかったの。」
マルコ「今日は最終調整かな。」
アルミン「うん。隊形変化の確認と歩き方や姿勢を統一する練習してた。」
500: 2013/07/18(木) 00:42:32 ID:0/6DCNKs
クリスタ「結局、何の曲を演奏することになったの?」
アルミン「『ブリティッシュ・グレナディアーズ(The British Grenadiers)』っていう昔の行進曲。
あと『忘れえぬ乙女(the girl I left Behind Me)』っていう行進曲も。」
クリスタ「すごいね。二曲も仕上げたんだ。」
アルミン「うん。一曲じゃ短くてなんかマヌケでさ。
リピートしようかとも思ったんだけど、どうせならもう一曲挑戦しちゃえって。」
クリスタ「練習見学していいかな?聴いてみたい。」
アルミン「もちろんだよ。むしろおかしな所がないかチェックしててね。」
マルコ「了解。しっかり見とくよ。」
サシャ「はーい、みなさん休憩終わりですよー。位置について下さーい。」
それぞれが配置につくのを確認すると、サシャのメジャーバトンが振られた。
501: 2013/07/18(木) 00:43:07 ID:0/6DCNKs
♪♪♪~~♪♪~~♪♪~
クリスタ「・・・・すごいね。きっちり動きが揃ってる。」
マルコ「うん。移動しながらって難しいはずなのに、少しも演奏がおろそかになってない。」
クリスタ「これなら明日は大丈夫そうだね。」
マルコ「問題は・・・、ダズのビューゲルだけかな・・・。」
502: 2013/07/18(木) 00:43:53 ID:0/6DCNKs
―男子宿舎
ジャン「ダズ、びびってんじゃねぇよ。」
ダズ「やっぱり俺には無理だよ・・・。」ガクブル
エレン「大丈夫だって。ちゃんと吹けてるし。」
ダズ「でも、みんなの前で、・・・・キース教官の前で吹くんだろ・・・。」ガクブル
ベルトルト「軍楽隊の行進開始の合図にビューゲル吹くって約束したんだろう?」
ダズ「あれはアルミンとコニーが勝手に決めたんだよ。俺は知らない。」ガクブル
エレン「知らないって無責任だな。ダズが了解してんの俺見たぞ。」
ダズ「俺は押しの強い人間には弱いんだよ。簡単に押し切られるんだよ。」ガクブル
ジャン「じゃあ、何のために練習してたんだよ。自己満足のためか?
違うだろ。お前を馬鹿にしてきた連中を、見返してやりたいんだろうが。」
ダズ「そうだ。俺だってやればできるって所を見せたくて努力したんだ。
でも、大勢の前で吹くことを考えたら震えが止まらないんだよ・・・・。」ガクブル
503: 2013/07/18(木) 00:44:37 ID:0/6DCNKs
ライナー「ダズ、お前格好つけようとしてるだろ。」
ダズ「えっ?」ガクブル
ライナー「ノーミスで完璧に吹いたところでダズはダズだ。
逆を言えば、ボロボロの演奏で終わったとしてもダズなんだよ。
お前はお前以上でもないし以下でもない。気負うな。」
ダズ「・・・・・・」
エレン「ライナー、俺にはお前の言ってる意味がよく分からん。」
ジャン「俺もだ。なんかの哲学か?」
ライナー「俺の持論だが、ありのままの自分をさらけ出せってことだ。
他人がどう思おうが関係ねぇ。これが自分なんだと開き直れ。
丸裸の俺を見やがれこの野郎ってな。」
エレン「最終的には裸見せたいだけじゃん。」
ジャン「お前はコニー並の馬鹿か。喩えだろうが。」
504: 2013/07/18(木) 00:46:34 ID:0/6DCNKs
ベルトルト「でも、ダズの不安とか緊張、僕も分かるよ。」
エレン「そういえばベルトルトも発表会の時、ガクブルしてたもんな。」
ベルトルト「うん。でもクリスタが、いつも通りにやればいいって手を握ってくれて。
あれでかなり気持ちが楽になったよ。」
ライナー「そうだったな・・・。しょうがねぇ、ダズ、俺が抱きしめてやる。」
ダズ「いや、意味が分からないし。」
505: 2013/07/18(木) 00:47:09 ID:0/6DCNKs
ライナー「遠慮するな。俺の熱い抱擁を受けやがれ。」ムギュゥゥゥ
ダズ「うわぁぁぁぁ!!ギブ・・・ギブ!!!マジで背骨が折れる!!」
ジャン「ちっ、ダズ、俺も抱きしめてやるよ。」ムギュゥゥゥ
ダズ「ちょっとやめろよ!!」
ベルトルト「あはは。僕も。」ムギュゥゥゥ
ダズ「だから何でだよ!!」
エレン「そんなん仲間だからに決まってんだろ!!」ムギュゥゥゥ
ダズ「!?・・・・・やめろよ、ホントに・・・」グスッ
ライナー「なっ、震え止まっただろ。心配すんな。なるようにしかならん。」
ダズ「ああ。明日、ありのままの俺を見ててくれ。」
506: 2013/07/18(木) 00:48:02 ID:0/6DCNKs
―翌日 演習場
アルミン「キース教官。先日お話した軍楽隊が無事仕上がりました。今から披露させて頂きます。」
キース「出来如何によっては廃止するかもしれんぞ。それでもやるのか?アルレルト訓練兵。」
アルミン「出来次第では、こちらの要望を飲んで下さる約束をしています。」
キース「いいだろう。貴様の作った軍楽隊見せてみろ。」
アルミン「はっ。」
軍楽隊のメンバーは配置につき楽器を構えた。
サシャの合図でダズのビューゲルが青空に鳴り響く。進軍ラッパの号令音。
甲高い響きの余韻が消えると、軍楽隊の行進が始まった。
軽快なリズム。楽しげなファイフの調べ。
無駄の無い統制のとれた動きに、見ていた訓練兵たちは釘付けになった。
507: 2013/07/18(木) 00:48:42 ID:0/6DCNKs
演奏が終わると、大きな拍手と歓声が起こった。
アルミン「キース教官。判断をお願いします。」
キース「・・・この軍楽隊はまだ上を目指せるのか?」
アルミン「はっ。楽器の数を増やすことによって、さらに迫力のある演奏が可能になります。
しかし、楽器を購入する予算が必要であります。」
キース「そうか・・・。アルレルト訓練兵。
貴様の作った軍楽隊を104期訓練兵団軍楽隊として正式に承認してやる。
活動の場は今のところ無いが、そのうち必要とされるかもしれん。
資金集めについては追って連絡する。以上だ。」
アルミン「はっ、ありがとうございます!!」
わぁぁぁぁぁぁぁ
軍楽隊員から喜びの声があがった。
ある者は肩を組み、ある者は抱き合い、込み上げてくる嬉しさを分かち合った。
壁内初の軍楽隊が誕生した瞬間だった。
521: 2013/07/22(月) 22:07:03 ID:.R5NlSlU
―訓練終了後 第三音楽室
トーマス「いやー、終わった終わった。」
ナック「これでしばらくはのんびりできるぜ。」
サシャ「何言ってるんですか。のんびりしている暇はないですよ。」
サムエル「そうなのか?」
サシャ「そうです。今度はステージの上で披露するんです。まだ決まってないですけど。」
ミリウス「マジかよ。アルミンの野望は底知れねぇな。」
ナック「じゃ決まったら教えてくれ。その時は練習に参加するから。俺はしばらく休む。」
ミーナ「駄目だよ。勝手に休んじゃ。せっかくファイフ隊の息が揃ってきたんだから。」
トーマス「まあまあ。連日の猛特訓でみんな疲れてるんだ。休息も必要だよ。」
522: 2013/07/22(月) 22:07:38 ID:.R5NlSlU
フランツ「だけど、教官に認められて良かったじゃないか。一歩前進だ。」
ハンナ「うん。みんな頑張ったもんね。特にフランツのドラム音は私の心に響いたよ。」
フランツ「ハンナの奏でるファイフも僕には一際輝いて聴こえたよ。」
ハンナ「やだ、フランツったら。」///
サムエル「音揃えてんだから、どれが誰の音とか分からないだろうが。」
コニー「馬鹿夫婦は放っとこうぜ。でも、みんな同じメロディーを吹かなくてもいいかもな。」
ミリウス「どういうことだ?」
コニー「うーんと何て言えばいいのかな、ファイフ隊も分かれて別々の音を出すっていうか・・・。」
ミーナ「メロディーパートを分けてハーモニーにしたいんだね。」
コニー「そうだ。よく分からんが多分それ。」
523: 2013/07/22(月) 22:08:13 ID:.R5NlSlU
ナック「面倒なこと言い出すなよ。今のままでいいじゃねぇか。」
サシャ「ナックは消極的ですね。軍楽隊、嫌になりましたか?」
ナック「そうじゃねぇけど。なんつーか、そこまで頑張る必要があるのかなって。
俺は暇つぶしで軍楽隊に参加しただけで、音楽に対して元々興味も熱意もないから。」
トーマス「冷めてるなぁ。みんなから拍手もらって何とも思わなかったのか?」
ナック「そりゃ褒められたら嬉しいよ。だが努力した割りに、得られた達成感は少なかった。」
ミリウス「まあ、俺ら冷やかし程度で入隊したからな。お前らと温度差があるのは確かだ。」
サシャ「そんな・・・。みんな楽しんでくれてると思ってました・・・。」
ナック「サシャは、はしゃぎ過ぎなんだよ。周りを見ずに突っ走りやがって。」
サシャ「ごめんなさい・・・。」
サムエル「お前そんな言い方はないだろう。サシャは一生懸命やってるだろ。
引っ張ってくれる奴がいないと、俺らなんかまとまんねぇよ。」
ナック「あれー、随分とサシャを庇うんだな。」
サムエル「お前の言い草が気に食わないだけだ。」
524: 2013/07/22(月) 22:09:30 ID:.R5NlSlU
ミリウス「俺は何のために軍楽隊やってるのか分からなくなってきた。」
コニー「何のためって、俺は憲兵団に入るためだが。」
ミリウス「コニーは憲兵団狙える位置にいるからな。だが俺たちはどう転んでも10位以内は無理だ。」
ナック「夢見すぎなんだよ、アルミンは。優秀な奴は他人も自分と同じようにできると勘違いするからな。
あいにく俺は出来の悪いダメ人間なんでな。アルミンの期待する駒にはなれん。」
ミーナ「駒だなんて・・・。アルミンはそんなふうに私たちのこと思ってないよ。」
ナック「そりゃ、ミーナはアルミンたち成績上位者と仲良いからな。
ちょっと前までは、おバカ女たちとつるんでたのに。
劣等生のお前がどういう手を使って取り入ったのかは知らんがな。」
ミーナ「!?・・・・ひどいよ・・・そんなふうに私のこと見てたんだ・・・」ジワッ
トーマス「ナック、いい加減にしろよ!軍楽隊に不満があるならはっきり言えよ!
ミーナに八つ当たりするな!」
ナック「言っていいのかよ。お前らの友達ごっこを壊さねぇように今まで我慢してきてやったのに!」
フランツ「まぁまぁ。二人とも落ち着いて。ナックは疲れてイライラしてるだけだよ。」
525: 2013/07/22(月) 22:10:12 ID:.R5NlSlU
ハンナ「喧嘩はやめてよ。今日はおめでたい日なんだから。仲良くしようよ。」
ナック「仲良く?冗談じゃねぇ。何でもかんでもアルミンのやつ勝手に決めやがって。
ステージで演奏?聞いてねぇっての。」
ミリウス「少しは俺らの考えも聞いてほしいよな。偉そうに指図して何様だよ。」
コニー「あーーーー!!!もう、面倒くせぇ!やる気のない奴は辞めちまえ!」
サシャ「!?コニー、何を言ってるんですか。そんなのダメです。」
コニー「いいんだよ。軍楽隊に入るのも辞めるのも本人の自由だろ。
楽しくないんだったら辞めればいい。」
ナック「ああ。そうさせてもらう。」ガタッ
ミリウス「俺も・・・・。」ガタッ
ミーナ「ちょっと二人とも待ってよ。」
526: 2013/07/22(月) 22:10:49 ID:.R5NlSlU
ガラッ
アルミン「遅くなってごめん。ダズにお礼言いたくて探してたらこんな時間になっちゃった。」
ナック「・・・・・」スタスタスタ
ミリウス「・・・・・」スタスタスタ
アルミン「ねえ、二人ともどうしたの?どこ行くんだよ。」
コニー「放っとけ。」
アルミン「放っとけって・・・・何かあったの?」
フランツ「あの二人ちょっと調子悪いみたいでさ。今日は帰るって。」アセアセ
ハンナ「そうそう。明日になったらきっと元気になってるよ。」アセアセ
トーマス「お前ら、ごまかしてもしょうがないだろ。」
サムエル「・・・あの二人、軍楽隊を抜けるって。」
アルミン「そんな!?急になんで?」
サシャ「・・・・私がいけないんです。みんなのことちゃんと見てなかったから。ごめんなさい。」
サムエル「サシャはちっとも悪くないだろ。あいつらが勝手すぎるんだ。」
アルミン「本当に何があったんだ?詳しく話してくれないか。」
527: 2013/07/22(月) 22:11:27 ID:.R5NlSlU
―第二音楽室
マルコ「そういうわけでさ、男声合唱団としてステージで歌ってもらいたいんだ。」
ライナー「俺は構わんが・・・・、お前らはどうだ。やる気あるのか?」
「アニキと一緒ならどこででも歌うぜ。」
「でっかい花火打ち上げてやるぜ。」
「伝説に残るステージにしてやる。」
ライナー「だそうだ。出演、受けてやるよ。」
マルコ「まだ日程は決まってないんだけど・・・。
というか開催できるかどうかも不確定で申し訳ないんだけどさ。
合唱の練習だけは始めてもらっていいかな?準備は早いに越したことはないから。」
ライナー「まあ、いつもここで歌っているからな。問題ないだろう。」
マルコ「ありがとう。助かるよ。」
ライナー「しかし男声合唱団って何か堅いな。
ステージデビューするからには、それっぽいチーム名が欲しいところだ。」
マルコ「ははっ、それはライナーたちで自由に決めていいよ。
528: 2013/07/22(月) 22:12:16 ID:.R5NlSlU
ライナー「お前ら、何か良い呼び名を思いつかないか?」
「ライナー合唱団とか?」
「ライナー・ブラウンと愉快な仲間達ってどうよ。」
「ライナー部隊?ブラウン一家?」
ライナー「おいおい、俺の名前を入れる必要はないぞ。こう、男らしい感じの何か・・・。
そうだ。お前ら、俺たちは何だ?」
「俺たちは・・・・」
「そうだった、いつもアニキが言っている。」
「俺たちは戦士だ。」
ライナー「正解だ。戦士の合唱団だ。・・・マルコ、これをカッコ良く言い換えてくれ。」
マルコ「えっ?無茶ぶりするなぁ・・・。うーん・・・・。」
ライナー「どうだ?男のロマンが溢れた感じで頼む。」
529: 2013/07/22(月) 22:14:53 ID:.R5NlSlU
マルコ「・・・メンネルコール・デス・クリーガーズ(Mannerchor des Kriegers)とか・・・。」
「やべっ、超かっこいい。」
「意味はまったく分かんねぇけど、何か強そうだ。」
ライナー「どういう意味だそれ?」
マルコ「そのまんま。メンネルコールが男声合唱団のことで、クリーガーズが戦士たち。
壁外に昔あったドイツって国の言葉。」
ライナー「前々からマルコは頭の良い奴だと思ってたが、壁外の言葉まで話せるのか。」
マルコ「話せないよ。壁外から伝わってきた歌曲ってドイツ語で書かれたものが結構あるんだ。
だから、たまたま知ってただけ。」
530: 2013/07/22(月) 22:15:38 ID:.R5NlSlU
ライナー「そうか。・・・‘メンネルコール・デス・クリーガーズ’、ちょっと長いな。
よし。お前ら、俺たちは今日から‘デス・クリーガーズ’だ。文句のある奴いるか?」
「あるわけないだろ。」
「アニキの意見に従うだけだぜ。」
「俺たち、デス・クリーガーズ!!」
ライナー「そうだ。略して‘デスクリ’。マルコ、協力感謝する。」
マルコ「まぁ、ライナー達が気に入ったんならいいけどさ・・・。」
ライナー「あとはステージで歌う曲決めないとな。俺たちの十八番は『俺の尻を舐めろ』だが。」
マルコ「うん、知ってる。でも、それ以外にしような。」
531: 2013/07/22(月) 22:16:22 ID:.R5NlSlU
―女子宿舎
クリスタ「アニ、お願い。リードダンサー引き受けて。」
アニ「だからさあ、何回頼まれても私はやらないから。」
クリスタ「アニしかいないの。一生のお願い。この通り。」ペコリ
アニ「いい加減諦めてよ。頭下げても無駄だから。」
クリスタ「だって運動神経の良い美人ってアニしかいないんだもん。」
アニ「ミカサに頼めば?」
ミカサ「・・・私はリズム感がないので、ダンスには向かない。」
アニ「サシャは?」
クリスタ「サシャは軍楽隊で手一杯なの。」
アニ「じゃあ、クリスタが自分でやればいいでしょ。」
クリスタ「私は伴奏とか他に役目があって・・・。
自分ができないことを人に頼むのは心苦しいんだけど、アニだけが頼りなの。」
532: 2013/07/22(月) 22:17:09 ID:.R5NlSlU
アニ「そもそも何でダンスなんかやるのさ?得意な奴でもいるの?」
クリスタ「ううん。みんな素人だよ。提案したマルコの意図は詳しく知らないけど・・・。
私ね、訓練兵になって周りを見て思ったんだ。
ここにいるのは、他人を追い落としてでも憲兵団入りを目指すギスギスした人たちと、
無気力で将来を悲観した人たちばかりだなって。
もちろん中には立派な志のある人たちもいるけど・・・、そういう人は僅かだよね。
何かの縁でせっかく同期になったんだから、もっとみんな仲良くなれたらいいなって。
一緒に何かを成し遂げたらきっと楽しいだろうなって。」
アニ「ご立派だね。あいにくと私は人生を悲観してないし、他人と馴れ合う気もないから。」
クリスタ「アニはそれでいいの?私アニが笑っているとこ見たことないよ。」
アニ「大きなお世話。無愛想なのは生まれつきだよ。」
534: 2013/07/22(月) 22:17:41 ID:.R5NlSlU
クリスタ「ねぇ知ってる?人間は笑うことを神様から許された唯一の動物なんだって。
こんな世の中だけど、私は人間らしく笑っていたいんだ。」
アニ「・・・・人間らしく、ね。」
ミカサ「いい加減引き受けてあげたら。気持ちの問題だけで、できない理由は無いんでしょう?」
アニ「・・・・はぁ、アンタたち面倒くさい。ちょっと散歩に行ってくる。」
ガチャ バタン
クリスタ「逃げられちゃった。」
ユミル「だから言ったろ。アニは絶対に引き受けないって。」
クリスタ「でも、私も諦めないもん。」
ユミル「クリスタ・・・・、お前頑固だな・・・・。」
535: 2013/07/22(月) 22:18:51 ID:.R5NlSlU
―翌朝 食堂
ミカサ「アルミン、どこか調子が悪いの?顔色が優れない。」
アルミン「・・・・何でもない。大丈夫だよ。」
エレン「昨晩、宿舎戻ってきてからずっとこの調子なんだよ。コニーも珍しく黙りこんでるし。
軍楽隊で何かあったのか?」
ミカサ「そういえばサシャたちも元気がなかった。問題があるなら話して、アルミン。」
アルミン「心配してくれありがとう。でも、これは僕の問題だから・・・。」ガタッ
ミカサ「待って、アルミン。」
エレン「ミカサ、そっとしといてやろうぜ。」
ミカサ「でも・・・。」
エレン「今は話したくないんだろ。見守ってやろうぜ。」
536: 2013/07/22(月) 22:19:26 ID:.R5NlSlU
―食堂掲示板前
マルコ「ダンサー募集のポスター貼ったよ。」
クリスタ「たくさん集まるといいな。それよりマルコはベルトルトに声かけた?」
マルコ「いや、まだだけど。クリスタは?」
クリスタ「アニにはやっぱり断られたよ。でも、まだまだアタックするんだ。」
マルコ「あんまりしつこいと嫌われるよ。」
クリスタ「うーーー、嫌われたくはないな。でも、もう一押しな気もするんだ。
なんだかんだ言ってアニって優しいじゃない?」
マルコ「そうだね。でもその優しさにつけこんで、無理強いしちゃ駄目だよ。」
クリスタ「うん。気をつけるよ。」
537: 2013/07/22(月) 22:20:11 ID:.R5NlSlU
―対人格闘訓練中
ユミル「なあ、アニ。今日は私と組まないか?」
アニ「やだ。」
ユミル「何でだよ。」
アニ「だって今まで一度も組んだことないじゃないか。何か裏があるに決まってる。」
ユミル「裏ねぇ、そりゃあるよ。じゃなきゃ、わざわざアニなんか誘わねぇし。」
アニ「一応聞いてあげる。どんな裏?」
ユミル「私が勝ったらリードダンサーやれ。アニが勝ったらクリスタを黙らせてやるよ。」
アニ「私にメリットがほとんどないじゃないか。」
ユミル「アニは強いだろ。ハンデをくれてやったと思え。」
アニ「はっ、馬鹿らしい。そんな勝負乗るわけないでしょ。」スタスタスタ・・・
538: 2013/07/22(月) 22:21:01 ID:.R5NlSlU
ユミル「逃げんなよ。私はクリスタに早くお前のこと諦めさせたいんだよ。」
アニ「・・・どういうこと?」
ユミル「あいつ頑固だからな。ケジメをつけてやらないと、いつまでもうるさいぞ。」
アニ「あんたはクリスタが私に纏わりついているのが気に入らないんだね。」
ユミル「そうだ。だからアニの得意な分野で敢えて勝負を挑んでやってんだ。」
アニ「・・・しょうがないね。受けてやるよ。」
ユミル「さすが、アニ。じゃ場所変えようか。教官の目の届きにくいところへ。」スタスタスタ
アニ「どこでもいいけど。どうせ一瞬で終わるから。」スタスタスタ
ユミル「・・・この辺りだな。人が多くて目立ちにくい。」
アニ「ルールは?」
ユミル「何でもあり。で、降参するか再起不能になった方が負け。」
アニ「くたばる前に降参してね。」
539: 2013/07/22(月) 22:21:42 ID:.R5NlSlU
ユミル「はいはい。・・・・じゃ、始めようか。」
ユミルが構えた瞬間、アニは左くるぶし目掛けて足払いにも似た蹴りを放つ。
ユミル(アニの得意技。計算通り・・・・)
ユミルはバックステップして蹴りをかわした。
アニから視線を離さないようさらに数歩下がり、
自分の後ろで棒術の訓練をしていた兵士から、使用していた棒を奪う。
ユミル「ちょっと借りるよ。」
「お、おい」
アニ「汚いね。」
ユミル「何でもありって言っただろ。」
アニ「わざわざここまで連れてきたのもそれが目的?」
ユミル「ああ。まともにやっても勝てる気がしないからな。」
540: 2013/07/22(月) 22:22:28 ID:.R5NlSlU
アニはユミルを見据えつつ周囲を窺った。棒を使用している兵士は近くにはもういなかった。
棒の長さは約1m。ただでさえリーチ差があるのに、棒を持たれてはアニが圧倒的に不利だった。
ユミル(突きは間違いなく捕られるな。かといって打ちや払いが当たる間合いには入ってこないしな。)
アニ(棒の間合いにさえ入らなければ問題ない。けどこれじゃ膠着状態から抜け出せない。)
睨みあったままの二人の不穏な空気に周囲が気付き、ざわつき始めた。
ユミル(ちっ、騒がれる前に終わらせたかったが・・・。しょうがねぇ。)
アニ(・・・・来るっ。)
ユミルは大きく一歩間合いを詰めた。
踏み出したユミルの右足が地面に着地するのと同時に狙いを定めたアニのローキックがはいった。
アニ(くっ・・・・・)
しかし、アニが蹴っていたのはユミルの右足ではなく、地面につきたてられた棒だった。
ユミルは棒を軸にし、そのままアニ目掛けて後ろ回し蹴りを放った。
とっさにに両腕で頭をガードするアニ。
しかし片足立ちだったため、2mほど吹っ飛び地面に横倒しとなった。
541: 2013/07/22(月) 22:23:05 ID:.R5NlSlU
ユミル「もらった!!」
頭上高く掲げた棒を、アニに向かって振り下ろした。
ガキッッッ!!!!!
ライナー「~~~~~~~ッッ!!」
ユミル「!?ライナー、何で割り込んでくるんだよ!!」
ユミルの渾身の一撃を右前腕でモロに受けとめ、ライナーは悶絶しのた打ち回った。
アニの方を見ると、クリスタが守るようにアニに覆い被さっていた。
アニを庇いに飛び出したクリスタを守ろうとライナーも出てきたのだろう。
ユミル「クリスタ!?お前そんなところにいちゃ危ないだろ。」
クリスタ「ユミルひどいよ。自分だけ武器もって一方的に・・・。こんなの訓練じゃないよ。」
ユミル「いや、訓練じゃないんだけどさ・・・。」
クリスタ「もう勝負はついてたじゃない!あんなのただの暴力だよ!ユミルの馬鹿!!」
ユミル「クリスタ・・・。」ショボン
542: 2013/07/22(月) 22:23:42 ID:.R5NlSlU
クリスタ「アニ、大丈夫?」
アニ「ああ、私はね。それよりライナー心配してやってよ。」ヨイショ
ライナー「骨は折れてなさそうだ・・・俺も大丈夫だ。」
クリスタ「ちゃんと医務室行って診てもらお。私も一緒に行くから。」
ライナー「あ、ああ。」
クリスタ「庇ってくれてありがとう。ライナーは優しいね。」ニコッ
ライナー「いや、当然のことをしたまでだ・・・///」(結婚しよ)
543: 2013/07/22(月) 22:24:19 ID:.R5NlSlU
―自由時間 第三音楽室
ミーナ「やっぱり来ないね。」
トーマス「まぁ、あんなふうに出て行ったんだ。顔出すのは気恥ずかしいだろう。」
ハンナ「本当に辞めたのかな・・・。せっかく上手になったのに・・・。」
フランツ「悲しまないでくれ、ハンナ。僕が説得してみせるから。」
ハンナ「フランツ・・・頼もしいわ。」///
サムエル「説得ねぇ。今日あいつらと話してみたけどさ、戻る気は無いってはっきり言われたよ。」
コニー「もういいじゃねぇか。新しい団員募集しようぜ。」
アルミン「それは駄目だ!!」
コニー「何でだよ。」
アルミン「新しい団員を迎えたら、ナックとミリウスの戻ってくる場所が無くなってしまう。」
コニー「そんな場所必要ねぇじゃん。あいつら戻ってくる気がねぇんだから。」
544: 2013/07/22(月) 22:24:58 ID:.R5NlSlU
トーマス「アルミンは二人に戻ってもらいたいんだな?」
アルミン「うん。僕のせいだから。僕が辞めたら二人は戻って来るかな・・・。」
コニー「お前、何言ってんだよ!!冗談じゃねぇぞ!!」
アルミン「うん。分かってる。みんなを巻き込んでおいて逃げるわけにはいかないよね。
最後の1人になっても僕は軍楽隊を続ける責任がある。
ただ・・・、僕はつくづく指揮官向きじゃないことを痛感したよ。」
ミーナ「アルミン・・・。」
アルミン「僕は一度目標を持ったら周りが見えないくらい集中しちゃうから。
軍楽隊を成功させるための計画や手段ばかりに気を取られて、
一番大切な仲間のことを考える余裕がなかった。」
サシャ「アルミンだけのせいじゃないですよ。私だって・・・。」
アルミン「僕は自分が指揮官向きじゃないって分かってたから逃げたんだ。
ドラムメジャーの役、サシャに押し付けて・・・。
サシャだって指揮官向きじゃないのにね・・・。ごめん。」
サシャ「謝らないで下さい。私、ドラムメジャーに任命されて嬉しかったんですから。」
545: 2013/07/22(月) 22:25:35 ID:.R5NlSlU
サムエル「結局、気の回るまとめ役が不在だったってのが根本的な問題なんだな。」
トーマス「でもさ、不満の出ない組織なんてないよ。何にでもケチつける人間はいるよ。」
アルミン「そうだとしても、みんなの意見に耳を傾けるべきだったんだ。
僕が軍楽隊を作ったのは、たくさんの人に音楽に触れてもらいたかったからだ。
辛い訓練生活を少しでも楽しくできればって、それだけなんだ。
だから、嫌な思いをさせたまま軍楽隊を辞めさせるわけにはいかないよ。」
コニー「もう!辛気臭ぇな。ごちゃごちゃ難しいこと話やがって。俺をのけ者にするな。」
ミーナ「うん。ここで私たちが暗くなっても仕方がないよ。
二人が戻ってきてくれるのを信じて待とうよ、ね。」
サシャ「・・・そうですね。じゃあいつも通り練習を始めましょう。」
546: 2013/07/22(月) 22:26:22 ID:.R5NlSlU
―演習場の外れ
アニ(夜の散歩は気持ちいいね。
最近は出歩いてるやつも少ないし、そろそろ見回りやめてもいいかな。)
♪~~♪♪~~♪~~
アニ(何の音だろう・・・。ファイフ?でも、もっと低くこもった音・・・。)
音のする方へ歩みを進めると、ユミルが積み上げられた資材の上に座っていた。
アニ「あんた、こんな夜中にそんなところで何してんのさ。」
ユミル「そりゃお互い様だろ。」
アニ「それ何?」
ユミル「これ?クリスタにもらったオカリナ。
アニに謝るまで部屋に戻ってくるなって追い出されてさ。暇つぶしのお供に持ってきた。」
アニ「じゃ、私を待ってたんだ。」
ユミル「そ。アニは夜になるといっつも徘徊してるから、外にいれば必ず会えると思ってさ。」
アニ「徘徊って・・・、ただの散歩なんだけど。」
548: 2013/07/22(月) 22:27:13 ID:.R5NlSlU
ユミル「散歩ねぇ。まぁ、宿舎に居たくない気持ちは分かるぜ。
頭の悪い女どもがやたらハイテンションできゃぴきゃぴ騒いでるからな。
次から次にくだらないことしゃべり続けて、何が面白いんだか。」
アニ「そういう子が普通だろ。一般的に見たらアンタや私の方がおかしいんだよ。」
ユミル「意外と寛容だな。じゃ、その広い心で私のことも許してくれ。スマン。」
アニ「何に対して謝ってるの?」
ユミル「知らん。ただアニに謝らないと野宿することになる。」
アニ「クリスタに説明すれば?何を賭けてたか。」
ユミル「はっ、そんなん格好つかねぇだろ。いいんだよ。悪者扱いは慣れてるから。」
アニ「今日の勝負だけど・・・」
ユミル「あれは無効だ。邪魔が入ったからな。」
549: 2013/07/22(月) 22:28:11 ID:.R5NlSlU
アニ「・・・あんた本気で棒を振り下ろす気だった?」
ユミル「さあな。振り下ろしたところでアニは避けてただろ?」
アニ「どうだろうね。・・・でも楽しかったよ、あんたとの勝負。」
ユミル「それはどうも。・・・そうそう、この紙にサインしてくんない?」
アニ「なんで?」
ユミル「ちゃんとアニに謝罪した証明もらってこいってさ。」
アニ「ぷっ、あはははは。あんたどこまでクリスタの尻に敷かれてんだよ。」
ユミル「・・・・お前、ちゃんと笑えんじゃん。」
アニ「!?う、うるさいな。ほらサインしてやるからその紙よこしな。」
ユミル「ああ。頼むわ。」
アニ 「・・・・・」カキカキカキ
アニ「はい、これでいい?」
ユミル「サンキュ。」
アニ「じゃ、私もう行くから。
・・・・あとクリスタに伝えてくれない?リードダンサー引き受けてもいいって。」
550: 2013/07/22(月) 22:29:13 ID:.R5NlSlU
―翌日 食堂
マルコ「やっぱり駄目?」
ベルトルト「うん。ごめん。人前で踊るとか僕には恥ずかしくてできないよ。」
マルコ「気にしないで。人には向き不向きがあるから。」
ジャン「しょうがねぇなぁ。リードダンサーっての、俺が引き受けてやるよ。」
マルコ「いや、ジャンには頼んでないし。」
ジャン「何だよ。運動の得意なイケメンを探してんだろ?俺の他に該当する奴いるか?」
マルコ「ふぅー、結局こうなるんだよね。いいよ、ジャンにお願いするよ。」
ジャン「任せとけ。」
クリスタ「みんなおはよう。マルコ、リードダンサー決まった?」
マルコ「おはようクリスタ。たった今ジャンに決まったところだよ。」
クリスタ「そっか。女子のリードダンサーはアニで決定だよ。」
マルコ「本当?よく引き受けてくれたね。」
クリスタ「うん。なぜか昨晩あっさりと了解してくれた。」
ジャン「じゃあ俺はアニと踊るのか・・・・。ボロボロにされそうだな。」
551: 2013/07/22(月) 22:29:51 ID:.R5NlSlU
ベルトルト「・・・・ごめん。やっぱり僕がリードダンサーやりたい。今更で悪いんだけど。」
マルコ「えっ?」
ジャン「もう遅ぇよ。俺に決定したんだから。」
ベルトルト「うん。申し訳ないと思ってる。でも譲ってくれ。」
ジャン「何だよ。あんなに無理だっつっといて。」
ベルトルト「なんだか無理じゃない気がしてきたんだよ。なんでかなー。あははは・・・」
ジャン「・・・・まっ、いいぜ。相手がミカサだったら氏んでも譲らんがアニだもんな。
自分から怪我しに行くことはねぇか。」
ベルトルト「ありがとう。ジャン。」
ジャン「そのかわり、後でゆっくり話を聞かせてもらうからな。」ニヤリ
ベルトルト「ぐっ・・・・」
クリスタ「やった。絶対引き受けないと思ってた二人が揃ったね。」
マルコ「これならお婆さんも納得してくれそうだ。あとは他のダンサーが集まるのを待つだけだね。」
552: 2013/07/22(月) 22:30:35 ID:.R5NlSlU
―第一音楽室
クリスタ「エレンにはコンサートの時、ソロでピアノ演奏してもらいたいんだ。」
エレン「それなんだけどさ・・・。ミカサってステージに立てるのか?」
クリスタ「えっ?」
エレン「軍楽隊、ダンス、男だらけの合唱団、みんなどこかに関わってるだろ?
でも、ミカサはどこにも属してない。リズム音痴だからって遠くから見てるだけだ。
俺達ばっかり楽しんでミカサが置いてけぼりになってる。何とかしてやりたいんだ。」
クリスタ「うふふ。エレン、ミカサに優しくなったね。」
エレン「そうか?変わったつもりはないけど。」
クリスタ「変わったよ。・・・・でもミカサか。私も気になってたんだ。
彼女の得意なことで、ステージで披露できそうなものを考えないとね・・・。」
553: 2013/07/22(月) 22:31:09 ID:.R5NlSlU
エレン「ミカサの他にもやること決まってない奴っているのか?」
クリスタ「うーんと、ジャンかな。」
エレン「ユミルは?」
クリスタ「ユミルはヴァイオリン担当予定。」
エレン「マルコは?」
クリスタ「マルコは今回は裏方に徹するんだって。
全体を把握している人間がステージ裏には絶対に必要だからって。」
エレン「そっか。・・・ミカサとジャンの二人でできることって何だ?」
クリスタ「エレンは、ミカサとジャンが組んでもいいの?ジャンはミカサが好きなんだよ?」
エレン「いいのって、なんか悪いのか?」
クリスタ(・・・エレンとミカサの関係ってよくわかんない。)
554: 2013/07/22(月) 22:32:07 ID:.R5NlSlU
―数日後 教官室
キース「アルレルト訓練兵、ボット訓練兵。
貴様ら発案のチャリティーコンサートの実施が中央にて承認された。
三ヵ月後、ウォールシーナ南端エルミハ区、王立公園内、野外ステージにて開催しろとの通達だ。」
アルミン「内地での開催でありますか?」
キース「ウォールローゼ内よりも内地のほうが圧倒的に富裕層が多いからな。
実施するなら寄付金が集まりやすいところで、という上層部の配慮だ。」
マルコ「しかし、エルミハ区はこの駐屯地から少々離れています。
開催にあたっての準備が困難かと思われます。」
キース「エルミハ区の憲兵団支部が全面的に支援してくれるそうだ。
ただし、集めた寄付金の7割を憲兵団に渡すことが条件だ。」
アルミン「そんな。半分以上も・・・・。」
555: 2013/07/22(月) 22:32:49 ID:.R5NlSlU
キース「アルレルト訓練兵。何か不満があるのか?今なら開催自体を白紙に戻すことも可能だが。」
マルコ「いえ、問題ありません。その条件で開催させて頂きます。」
アルミン「マルコ・・・。」
キース「では、こちらも開催の方向で調整していく。
貴様らは観衆の前で恥をかかぬよう、しっかりと芸に磨きをかけろ。
貴様らの評判が、兵団の評価に直結すると思え。」
アル・マル「はっ!!」
キース「それと軍楽隊に仕事をやろう。
一週間後、トロスト区で新たに設置した壁上固定砲の竣工式が執り行われる。
そこで演奏してほしいと、駐屯兵団からの依頼だ。
貴様らの初仕事だ。しっかりやってこい。」
アルミン「・・・・はっ!!」
556: 2013/07/22(月) 22:33:30 ID:.R5NlSlU
二人は教官室を後にした。
アルミン「7割も持っていかれるなんて・・・。」
マルコ「そのかわり堂々と準備は丸投げできる。
会場設営って人手がたくさんいるし、結構な肉体労働だからね。
それに、僕らだけでは舞台設備がまともに用意できないよ。
どんな公演でも開催しようとすると、それなりに経費がかかるんだ。
残念だけど僕らには資金がない。出演するだけで3割ももらえるんだ。好条件だよ。」
アルミン「マルコは前向きだね。・・・僕も前を見るしかないな。」
マルコ「ああ、軍楽隊の初仕事だ。でもアルミン、あまり嬉しそうじゃないね。どうかした?」
アルミン「・・・隊員が二人辞めたんだ。
僕は二人がいつでも戻ってこれるように、このことは隊内部だけの秘密にしてた。
でも、もう隠し切れないし、二人のことを待っている時間は無くなった。」
マルコ「一週間後か・・・。今から隊列の編成やり直すのは大変だ。」
アルミン「うん。でもやるしかないんだ。僕は逃げないって決めたんだ。」
557: 2013/07/22(月) 22:34:16 ID:.R5NlSlU
―第三音楽室
ミーナ「今日もやっぱり来ないね。」
トーマス「もう一週間以上か・・・。本当に戻ってくる気ないんだな。」
コニー「もういい加減あきらめろよ。」
サムエル「まぁ、そう言うなって。あいつら練習来ないで何やってんだろうな。」
フランツ「宿舎にチェスセット持ち込んで、二人でずっと指してるよ。」
ハンナ「フランツ、ちゃんと説得してるの?」
フランツ「もちろんさ。‘あの時は思わず頭に血が上って悪かったな'って言ってたよ。」
サシャ「じゃあ戻ってくればいいのに。」
フランツ「あいつら素直じゃないからな。何かきっかけを作ってやらないと戻り辛いんだろ。」
トーマス「きっかけねぇ・・・。」
558: 2013/07/22(月) 22:35:10 ID:.R5NlSlU
ガラッ
アルミン「お待たせ。みんな、僕たちの初仕事が決定したよ。」
コニー「ナニっ?」
ミーナ「仕事って?」
アルミン「駐屯兵団からの依頼でさ。トロスト区の壁上固定砲の竣工式で演奏して欲しいんだって。」
サシャ「いつですか?」
アルミン「一週間後。」
サムエル「えらい急だな。」
ハンナ「どうするの?二人欠けたままだよ。」
ミーナ「今から新しい隊員加えても絶対間に合わないよ。」
アルミン「そうだ。だから今からドリル・フォーメーションを変更する。
ここにいる14人でやるしかないんだ。」
559: 2013/07/22(月) 22:35:57 ID:.R5NlSlU
フランツ「いいのか?あいつらの復帰に一番こだわっていたのはアルミンだろ?」
アルミン「僕たちは正式な訓練兵団軍楽隊だ。団に属している以上、上官からの命令は絶対だ。
どういう状況であれ、任務の遂行が最優先だ。」
サシャ「・・・アルミン、自分で気付いてますか?すごく辛そうな顔してますよ。
そんな顔じゃ、楽しい演奏はできませんよ。」
アルミン「・・・サシャも人のこと言えないよ。」
サシャ「・・・・・」グスッ
560: 2013/07/22(月) 22:36:30 ID:.R5NlSlU
サムエル「しょうがねぇな。俺が今からナックとミリウスの野郎、連れてきてやるよ。」
トーマス「何か策があるのか?」
サムエル「ああ。だからお前ら、フォーメーションの変更とかせずに、いつも通り練習しててくれ。」
アルミン「サムエル・・・。」
サムエル「俺たち仲間だろ。信じろ。」
トーマス「それじゃ、俺もついて行こう。」
サムエル「あの二人が戻ってきても、何事も無かったかのように振舞ってやってくれ。
じゃあ、行って来る。」
561: 2013/07/22(月) 22:37:20 ID:.R5NlSlU
―第二音楽室
マルコ「右腕の打撲痕なかなか引かないね。まだ痛む?」
ライナー「触るとまだ痛むがな。だが、この痕を見るたびにクリスタは優しく声をかけてくる。
痕が消えかけたら・・・・マルコ、同じ場所を棒でしばいてくれないか。」
マルコ「嫌だよ。馬鹿言ってないで早く治せよ。骨に異常がなくてラッキーだったんだから。」
ライナー「そうだな。やっと訓練にも支障が出なくなってきたしな。それより今日は何をするんだ?」
マルコ「今日はベートヴェンの『交響曲第9番』の第4楽章で歌われる『歓喜の歌』を練習するよ。」
ライナー「それもステージで俺たちが歌うのか?」
マルコ「これは出演者全員で最後に歌ってもらう予定。
デスクリ以外は練習する時間ないから主旋律を歌ってもらって・・・。
デスクリは主旋律以外のパートを担当してもらいたい。」
562: 2013/07/22(月) 22:38:04 ID:.R5NlSlU
ライナー「いいぜ。この前、声の高さでパート分けしたばかりだしな。」
マルコ「うん。でもこれは混声4部合唱だから・・・・。第一テノールの人は?」
「なんだ?俺たちだけど。」
マルコ「ファルセット・・・えーと、裏声で歌える?」
「裏声って・・・こうか? アァァァァァ♪」
マルコ「そうそう。第一テノールには、本来女性が歌うアルトパートを歌って欲しいんだ。」
「ずっと裏声か?きついな・・・。」
マルコ「ずっとじゃなくていいよ。地声ででない音程のとこだけで。」
「それなら大丈夫だ。」
ライナー「俺も裏声には自信があるぞ。」
マルコ「ライナーは裏声よりもっと重要な仕事がある。この曲、歌いだしはバリトンの独唱なんだ。」
ライナー「独唱って、俺のソロか?」
マルコ「ああ。ライナーにしかできない役目だよ。」
ライナー「グループでデビューして、いきなりソロ活動か・・・。ファンに叩かれそうだな。」
563: 2013/07/22(月) 22:38:42 ID:.R5NlSlU
ガラッ
トーマス「お邪魔しまーす。」
サムエル「練習中、失礼する。」
マルコ「トーマスとサムエル。どうしたんだ?軍楽隊も練習中だろ?」
ライナー「お前らデス・クリーガーズに鞍替えか?大歓迎だ。」
サムエル「違うって。」
トーマス「ライナー、ちょっとマルコ借りてもいいかな?」
ライナー「構わんが・・・・、ちゃんと返せよ。今は俺たちの講師だ。」
トーマス「分かってるよ。」
マルコ「何か急用?」
サムエル「軍楽隊の危機を救うためにどうしてもお前の力が必要なんだ。」
マルコ「・・・・脱退者の件かな。」
トーマス「知ってるなら話が早い。とにかく付いて来てくれ。」
サムエル「詳しくは歩きながら説明する。」
564: 2013/07/22(月) 22:39:19 ID:.R5NlSlU
―男子宿舎
ミリウス「いい加減、チェス飽きたな・・・。」
ナック「ああ。」
ミリウス「・・・ヒマだなぁ。」
ナック「ああ。」
ミリウス「・・・こんなに時間って持て余すもんだっけ?」
ナック「ちょっと前まで馬鹿みたいに忙しかったからな・・・。感覚がおかしくなったんだろ。」
ミリウス「自由な時間が無くてストレス感じてたはずなのにな。
自由になってみたものの、やりたいことが一つも無かった。」
ナック「まぁ、俺らって最初からこんな感じだったし。元に戻っただけだ。」
565: 2013/07/22(月) 22:40:18 ID:.R5NlSlU
ガチャ
トーマス「よう、お前ら元気してるか?」
ナック「・・・・何だよ?説得しても戻る気ないって言ってあるよな。」
サムエル「説得なんてもうしない。今日はお前らとチェスで遊ぼうと思ってな。」
ミリウス「隊の練習は?」
トーマス「サボり。」
サムエル「練習に参加するのも欠席するのも自由だからな。休みたい時は休む。」
ナック「なんだ、説教かよ・・・。」
トーマス「違うって。本当にお前らとチェスで勝負しに来たんだ。
お前らが勝ったら、一ヶ月間洗濯、掃除、水汲みなんかの雑用を全部代わりにやってやる。
俺らが勝ったら、お前らは軍楽隊に戻る。どうだ?」
ミリウス「・・・それでマルコを連れてきてるのか。」
マルコ「はは・・・、よろしくね。」
566: 2013/07/22(月) 22:41:00 ID:.R5NlSlU
サムエル「ああ、こっちはマルコが指す。」
ナック「ずりぃだろ。頭脳戦で勝てるわけがない。そんな勝負受けねぇよ。」
トーマス「駒落ち戦でもか?」
マルコ「えっ?」
トーマス「こっちはハンデとして二駒落としてやるよ。」
マルコ「ちょっと聞いてないよ?チェスで駒落ちなんてありえないから。絶対に勝てない。」
ナック「二駒も落としてくれるのか。随分馬鹿にされてんだな。いいぜ、受けてやるよ。」
マルコ「おいおいおいおい。勝手に決めるなよ。」
サムエル「大丈夫だ。マルコなら勝てる。」
マルコ「お前らチェスやったことあるのか?」
トーマス「いや、全然。でもなんとなくルールは知ってる。」
サムエル「俺もそんな感じだ。」
567: 2013/07/22(月) 22:41:52 ID:.R5NlSlU
ナック「ほらマルコ、右手、左手どっちだ?」
マルコ「もう、どうなっても知らないからな・・・・・。右手で。」
ナック「・・・黒ポーンだ。じゃ、俺が先攻だな。」
ナックは白い駒をマルコは黒い駒を盤上に並べていく。
マルコ「で、どの駒を落とせばいいの?」
ナック「クイーンとビショップ。」
マルコ「ふざけんな。」
ナック「冗談。落としてくれるんなら何でもいいぜ。」
マルコ「じゃ、両端のポーンで。」
ナック「はじめるぜ・・・・」コトン
マルコ(チェスで勝って、軍楽隊にもどるきっかけを作ってやってほしいって話だったのに)コトン
ナック「・・・・」コトン
マルコ(・・・・負けないように尽くすしかないな。)コトン
568: 2013/07/22(月) 22:42:46 ID:.R5NlSlU
トーマス「へぇー、チェスって16駒で戦うんだ。」
ミリウス「お前、そんなことも知らないで勝負しかけてきたのか。」
トーマス「いや、たったの16駒だぜ、16駒。」
サムエル「そのうち2駒も落とすんだもんな。これは大打撃だなー。」
ナック「・・・何が言いたいんだよ。」コトン
トーマス「ん?言葉通りだよ。14駒しか無いと大変だなぁって。」
マルコ(ポーン、ナイト、ビショップを進めてきたか。
・・・‘ルイ・ロペス'。序盤戦のがちがちの定石だな。さて、どうしよう・・・)コトン
サムエル「ナック、お前さ自分のこと‘駒'だって言ってただろ。」
ナック「ああ、言ったさ。俺だけじゃなくお前らも駒だがな。」コトン
サムエル「そうだ。俺たちは駒にすぎない。ただナックは大きな勘違いをしてる。」
マルコ(とりあえずビショップの動きをルークでピンしとこう・・・)コトン
ナック「勘違いって何だよ。」コトン
569: 2013/07/22(月) 22:43:43 ID:.R5NlSlU
サムエル「お前はアルミンがプレイヤーだと思ってるだろ。」
ナック「ああ。俺たちは軍楽隊という盤上でアルミンに遊ばれている駒だ。」
マルコ(反対のビショップは完全にクィーン取りにきたな。ポーンが一歩も動かせない・・・)コトン
サムエル「そこが間違いなんだ。アルミンも駒の一つにすぎないんだよ。」
ナック「・・・・は?」コトン
ミリウス「じゃあ、誰がプレイヤーなんだよ。」
マルコ(しかし・・・なぜ定石通りに動くんだ?こっちは両端のポーンが無いんだぞ・・・。)コトン
サムエル「プレイヤーはいないんだ。」
ミリウス「だったら、俺たちは誰に従ってたんだよ。」
トーマス「最初から誰も命令なんてしてないんだよ。俺たちは自分の意思で軍楽隊に入ったんだ。
誰かに強制されたわけじゃない。」
サムエル「誰も動かしてくれない駒は、自分で考えて動くしかないだろ。
前進するのも、立ち止まるのも、諦めて盤上から降りるのも、すべて自分の責任だ。」
570: 2013/07/22(月) 22:44:30 ID:.R5NlSlU
ナック「・・・・・」コトン コトン
マルコ(・・・キャスリング。攻めてこないな。仕方ない、こっちから仕掛けるか。)コトン
ミリウス「じゃあ、アルミンな何なんだよ。あいつが軍楽隊を作ったんだろ?」
ナック「・・・キングだろ。」コトン パシッ
サムエル「本人にそのつもりはないだろうけどな。俺たちが勝手にキングだと思ってる。」
マルコ(・・・ポーンを取られたか。クィーンががら空きなのは見え透いた罠だよな。
・・・でも、ナックは・・・・・賭けてみるか。)コトン パシッ
トーマス「でもな、哀れなキングだ。周りの駒が進まないから身動きがとれない。」
ナック「・・・・・」コトン パシッ
サムエル「うちのクィーンは自由奔放すぎるしな。」
トーマス「まっすぐ進むことしか知らないお馬鹿なルークはうるさいし。」
サムエル「優しすぎるビショップ夫婦は不満のある奴をなだめるのに精一杯だ。」
マルコ(チェックのチャンスを敢えて避けてナイトを取った。これで確信したよ。
最初から勝つ気は無いんだ・・・。)コトン パシッ
571: 2013/07/22(月) 22:45:29 ID:.R5NlSlU
ミリウス「じゃあ、サムエルとトーマスは何の駒なんだよ。」
トーマス「俺たち?もちろんナイトだよ。」
ナック「けっ、そんな柄かよ。」コトン パシッ
サムエル「ナイトが二人揃ってお迎えに上がってんだ。素直になれよ。」
マルコ(駒の取り合いになってるけど・・・。ま、いっか。考えるのが馬鹿らしくなってきた)コトン パシッ
ナック「やなこった。」コトン パシッ
ミリウス「クィーンが迎えにきたら考えたかもな。」
サムエル「何!?お前もクィーン狙いなのか?」
ミリウス「狙いってわけじゃないけど、普通に可愛いじゃん。」
マルコ(・・・なごやかな雰囲気だね。もうチェスで勝負する必要無いんじゃ・・・。)コトン パシッ
サムエル「だよな。可愛いよな。ちょっと天然なところがツボすぎる。」
ナック「やめとけ。お前じゃ釣り合わねぇよ、成績が。」コトン パシッ
マルコ(でも普通に勝っても二人のためにならないな・・・。うん、この手でいこう。)コトン パシッ
572: 2013/07/22(月) 22:46:24 ID:.R5NlSlU
サムエル「そうなんだよ。お馬鹿そうなのに、めちゃくちゃ優秀なんだよ。」
ミリウス「そのギャップがいいんだろ?」
サムエル「よく分かってるな。ミリウスとは話が合いそうだ。」
ナック「トーマスは気になる女子いないのか?」コトン パシッ
トーマス「今のとこ、いないかな。」
サムエル「うそつけ。何かとミーナに絡んでるくせに。」
マルコ(へー、そうなんだ。)コトン パシッ
トーマス「それは、その、打ち合わせとかあるから話してるだけで・・・。」
ナック「お前はドラムでミーナはファイフだろ。打ち合わせることあんのかよ。」コトン パシッ
マルコ(よし、これでおしまい。)コトン
マルコ「ステイルメイト。引き分けだ。」
ナック「へっ?」
サムエル「引き分けって・・・。そんな勝負のつき方あるのか?」
573: 2013/07/22(月) 22:47:11 ID:.R5NlSlU
マルコ「チェスの試合で引き分けは珍しくないよ。
チェックされてない状態で有効な指し手がなくなると、引き分けになるんだ。」
ナック「ステイルメイトに持ち込むのは自分が不利な状況の時だろ。
マルコの方が優勢だったのに、なんでわざわざ引き分けにすんだよ。」
マルコ「じゃあナックはどうしてわざわざ僕を優勢にしたのかな。」
ナック「ちっ・・・、お前、面倒くせぇな。」
マルコ「引き分けの場合どうするか決めてなかったよね。」
トーマス「そうだな。どうしようか。」
サムエル「よし、ナックとミリウスに任せる。お前ら軍楽隊に戻るのか?戻らないのか?」
ミリウス「そんなこと言われても、な・・・。」
ナック「・・・自分の意思で決めろってことか。」
サムエル「そうだ。強制的に連れ戻しても、お前らまた不満爆発させて同じこと繰り返しそうだからな。」
トーマス「お前らがどちらを選ぼうと自己責任において自由だ。」
574: 2013/07/22(月) 22:48:01 ID:.R5NlSlU
ミリウス「・・・戻るよ。こんなふうに誰かに自分のこと望まれたことないから。」
ナック「・・・そうだな。誰からも期待されない生き方をしてきたもんな。
だけど、俺たちのこと必要としてくれる仲間ができたんだ・・・。軍楽隊に俺も戻る。」
サムエル「ふぅー、肩の荷が下りたぜ。絶対にお前ら連れ戻すって偉そうな口叩いて出てきたからな。」
トーマス「あっ、そうだ。一週間後に初仕事だから。トロスト区で演奏するんだって。」
ナック「なっ!!そんな話聞いてねぇよ。」
トーマス「うん。アルミンを含め、みんな今日知った。」
サムエル「はははっ、しばらく練習で忙しいぞ。チェスなんかやってる暇無くなったな。」
ミリウス「さっきの駒の話だが、お前らがナイトなら俺たちは何だ?」
サムエル「あ?ポーンに決まってるだろう。」
ナック「ちっ、やっぱ捨て駒かよ。」
575: 2013/07/22(月) 22:48:46 ID:.R5NlSlU
マルコ「でもプロモーション(昇格)できるのはポーンだけだ。
生き方次第でナイトにもクィーンにもなれる。お前ら二度と盤上から落ちるなよ。」
ナック「・・・・マルコ、くせぇよ。」
マルコ「えっ?」
ミリウス「うん。今のセリフはかっこつけすぎだな。」
マルコ「格好つけた気はないんだけど・・・。」
トーマス「マルコは顔に似合わず時々キザなこと言うからな。」
サムエル「実は俺もたまにひいてる。」
マルコ「お前らまで・・・。もう頼まれても二度と手は貸さないからな。」
トーマス「ははっ、冗談だって。今回はありがとう。ホントに助かったよ。」
マルコ「・・・ま、僕がいなくても二人は戻っただろうけど。
とにかく軍楽隊の初仕事だ。必ず成功させてくれよ。」
576: 2013/07/22(月) 22:49:32 ID:.R5NlSlU
―第三音楽室
サシャ「サムエルたち遅いですね。」
コニー「本当に連れて来れんのかよ。」
アルミン「うん。僕は信じてるよ。みんな、ナックとミリウスが戻ってきても普通にしといてね。」
フランツ「了解。」
577: 2013/07/22(月) 22:50:11 ID:.R5NlSlU
ガラッ
トーマス「遅くなってスマン。」
サムエル「俺らも練習に加わるぞ。」
ナック「・・・・。」
ミリウス「・・・・。」
ミーナ「ファイフ隊はこっち。今、パート分けしてたとこ。」(帰ってきた!!)
ハンナ「ナックとミリウスは今まで通りのメロディ吹いていいから。」(良かったぁ・・・)
ナック「あ、ああ。わかった。」
ミリウス「これが新しい楽譜か・・・。」
アルミン「僕がちょっと手を加えたんだ。主旋律より3度下の副旋律を加えたんだ。」
(戻ってきてくれてありがとう・・・。)
コニー「・・・・・・」ウズウズ
サシャ「・・・・・・」ウズウズ
579: 2013/07/22(月) 22:51:02 ID:.R5NlSlU
サムエル「俺はどっち吹くんだ?」
ミーナ「サムエルは下パート。一週間しか時間がないけど頑張ろうね。」
アルミン「やれるだけやってみよう。無理そうだったら元の譜面に戻せばいいだけだから。」
コニー「・・・・・・」ウズウズウズウズ
サシャ「・・・・・・」ウズウズウズウズ
フランツ「トーマス、ダブルストロークの練習しよう。」
トーマス「えー、俺苦手なんだよな・・・。」
フランツ「だから練習するんだろ。・・・・連れ戻してくれてありがとう。」ヒソヒソ
トーマス「俺一人の力じゃないけどな。」ヒソヒソ
コニー「だーーーー!!!もう!!!」
サシャ「みなさん、なんで普通にしてられるんですか!!!」
アルミン「コニー?サシャ?」
580: 2013/07/22(月) 22:52:05 ID:.R5NlSlU
サシャ「嬉しいの我慢するとか私には無理です。ナック、ミリウス。ずっと待ってたんですよー!!」
コニー「お前ら・・・お前ら・・・本当に良かった!!!」
フランツ「コニーは二人の復帰に積極的じゃなかったのに・・・。」
コニー「俺が辞めちまえって言って二人が出てったのに、そのこと誰も責めないだろ。
俺、言いすぎたって、悪かったって思ってんのに・・・
誰も怒ってくんないから態度変えれないだろ!!!」
ミーナ「もう、変な意地張って。」
アルミン「うやむやにした方がナックとミリウスの気が楽かなって思ったけど・・・。
僕だってすごく嬉しいんだ。もう、はっきりと言うよ。
ナック、ミリウス、戻ってきてくれてありがとう!!!」
サシャ「おかえりなさいです!!!」
ナック「あ、ああ・・・・ちくしょう・・・なんか照れくさいな。」
ミリウス「うん・・・。でも、こんなに喜んで迎えてくれる。戻ってきて正解だったな・・・。」
581: 2013/07/22(月) 22:53:00 ID:.R5NlSlU
―演習場
ジャン「ミカサと共演か。願っても無い役回りだな。感謝するぜ、クリスタ。」
クリスタ「どちらかと言うと競演だけどね・・・。」
エレン「あっ、来た来た。ジャン遅ぇよ。」
ジャン「は?何でエレンがいるんだよ。さてはお前もミカサと共演する気か?」
エレン「共演つったら共演かもしんねぇけど、俺は直接ミカサと絡まないから。」
ジャン「そうなのか?てめぇと同じ舞台に立つのは気に入らんが・・・ミカサのためだ。我慢してやる。」
エレン「ミカサはすでに準備して待ってるぜ。お前も早くしろ。」
582: 2013/07/22(月) 22:53:38 ID:.R5NlSlU
ジャン「そうか、ミカサは・・・・って、あいつ何持ってるんだ?」
エレン「サーベル。模造刀だけどな。」
ジャン「なぜ?」
クリスタ「はい、ジャンのサーベル。」
ジャン「お、おう。」パシッ
ミカサ「時間がもったいない。ジャン、用意ができたなら早くこっちへ来て。」
エレン「ミカサは二刀流だが、ジャンももう一本持つか?」
ジャン「いや・・・、なんとなく状況は理解できた。だが一つ教えてくれ。」
クリスタ「なあに?」
ジャン「俺はコンサート当日まで五体満足でいられるのか?」
583: 2013/07/22(月) 22:54:17 ID:.R5NlSlU
― 一週間後 トロスト区壁門前広場
大勢の観衆を前に、壁上固定砲竣工式が行われていた。
軍楽隊は式が行われている簡易舞台の袖で自分達の出番を待っていた。
サムエル「この門の向こうには巨人がぞろぞろいるんだろうな。」
ミーナ「こんなところで大きな音出して大丈夫かな。巨人が集まってきたらどうしよう・・・。」
トーマス「大丈夫だよ。新たに10門も壁上固定砲増設したんだ。
式典の最後に一斉射撃するらしいし。的がたくさんあった方がいいんじゃない?」
コニー「それにしても竣工式ってのは退屈だな。お偉いさんのつまんねぇ話ばっかりで。」
ナック「あんなに中身の無い話を延々とできるってある意味すげぇよな。」
ハンナ「街の有力者たちの自己アピールの場になってるね。」
サシャ「早く終わってくれませんかねぇ。お腹空いてきました。」
ミリウス「でもさ、よく結成したての得体のしれない軍楽隊なんか出そうと思ったよな。」
フランツ「きっと駐屯兵団の上層部に変人でもいるんだろう。」
アルミン「みんな静かにしようよ。駐屯兵団の人たちが睨んでるよ。」
584: 2013/07/22(月) 22:55:19 ID:.R5NlSlU
主賓たちの挨拶がひと通り終わり、進行役の兵士からアルミンに合図が送られる。
アルミン「みんな出番だ。サシャ、頼むよ。」
サシャ「はい。お任せ下さい。」
サシャは隊列の先頭に立った。
サシャ(セットアップ)
メジャーバトンで支持を出す。一斉に楽器を構える隊員たち。
サシャ(マークタイム)
バトンを動かすとドラムのリズムで足踏みが始まる。
8拍の足踏みの後、ファイフの演奏が加わり隊は前進し始めた。
先頭でくるくるバトンをサシャは回す。
サシャに導かれ、軍楽隊は広場の中央へ移動する。
サシャ(たくさんの人が見てくれてます。なんだかわくわくしますね。)
サシャはバトンを高く放り投げた。
585: 2013/07/22(月) 22:56:32 ID:.R5NlSlU
フォーメーション変形の合図。
ドラム隊を中央に残し、ファイフ隊は左右に分かれていく。
統率のとれたまったくズレの無い動きに、観衆から感嘆の溜息がもれる。
サシャは次から次に合図を送る。
マークタイム、ライトピンウィル、フォワードマーチ、レフトスピン・・・
規則正しい動きで、隊は変形を繰り返し観衆の目を楽しませた。
そして最初の陣形に再び戻る。
サシャはメジャーバトンの両端を持ち両手を高く掲げる。
それを合図に隊の動きは一斉に止まり、演奏は無事に終了した。
パチパチパチパチパチ・・・・
会場から送られる惜しみない拍手、歓喜の叫び、賞賛の声。
すべてが混ざり合い怒涛のように隊員たちに押し寄せた。
込み上げてくる喜びを必氏に押さえサシャは一礼をし、隊員たちを引き連れ待機場所に戻った。
586: 2013/07/22(月) 22:57:09 ID:.R5NlSlU
コニー「な、なぁ・・・、叫んでもいいか?」ウズウズウズウズ
サシャ「私も早く大声出したいです。」ウズウズウズウズ
アルミン「僕もだよ。でも式が終わるまで我慢しなきゃ。」ウズウズウズウズ
ミーナ「あっ、一斉射撃始まるみたい。」ウズウズウズウズ
トーマス「あれ撃ったら終わりだよな。」ウズウズウズウズ
ナック「早く撃ちやがれ。何カウントダウンとかしてんだよ。」ウズウズウズウズ
フランツ「5・・・」ウズウズウズウズ
ハンナ「4・・・」ウズウズウズウズ
サムエル「3・・・」ウズウズウズウズ
ミリウス「2・・・」ウズウズウズウズ
アルミン「1・・・」ウズウズウズウズ
全員「発射!!!・・・・やっったぁぁぁぁぁぁ!!!!」
砲撃の轟音の中、ありったけの大声で叫んだ。
初仕事の成功が嬉しかった。それ以上に大衆に受け入れられたことが誇らしかった。
迷い、悩み、苦しんだ分、隊員たちの喜びは大きかった。
587: 2013/07/22(月) 23:01:45 ID:.R5NlSlU
ここまでです。
きりのいい所まで書き溜めてからあげるので次も遅くなりそうです。すまぬ。
で、ここまで書いておいてナックとミリウスがどっちなのか分からないよ。
ナックが金髪?のつもりで書いてみた。間違いかな?
きりのいい所まで書き溜めてからあげるので次も遅くなりそうです。すまぬ。
で、ここまで書いておいてナックとミリウスがどっちなのか分からないよ。
ナックが金髪?のつもりで書いてみた。間違いかな?
591: 2013/07/22(月) 23:25:15 ID:6jsxIuBY
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