338: 2015/06/07(日) 00:28:41.79 ID:mhmJeXhU0

339: 2015/06/07(日) 00:29:54.26 ID:mhmJeXhU0
【朝】
【食堂】

ワイワイガヤガヤ

漣「――それでですね、最後にはご主人さまと神通さんが、那珂さんを無理やり食堂から引っ張り出しまして」

白雪「それ、本当なの?」アハハ

整備兵「漣、何の話だ?俺にも聞かせてくれよ」クルッ

白雪「」ビクッ

漣「整備兵さんも聞きます?間宮券が創設されたときの事件の話なんですが……あれ、白雪ちゃんどうしたの?」

白雪「え、えっと、私……」

漣「?」

整備兵「白雪、どうかし……」

白雪「す、少しおかわりをもらってきます!」ガタッ

タタタッ
艦隊これくしょん -艦これ- 艦娘型録 参
340: 2015/06/07(日) 00:31:00.09 ID:mhmJeXhU0
整備兵「……」

整備兵(昨日の夜から何となく受け答えがぎこちなかったが……避けられてるのか?)タラリ

漣「そんなにお腹空いてたのかな?普段はおかわりするところ見たことないのに……って白雪ちゃん、食器を持っていくの忘れてる」チラッ

整備兵(何だ?やはり昨日の……いやいや、でも俺、そんなにおかしな反応はしてないぞ。なんとか平静を装ったはず……!)ブツブツ

漣「……整備兵さん」ジー

整備兵「な、何だ?」

漣「白雪ちゃんと何かありました?」ズイッ

整備兵「は?い、いや別に、何も無いぞ?」アセアセ

漣「ごまかすのが下手すぎますよ……で、ケンカでもしたんですか?」

整備兵「してない」

341: 2015/06/07(日) 00:31:48.36 ID:mhmJeXhU0
漣「でしたら、どうしてあからさまに避けられてるんですか?」

整備兵(ああ、やっぱり避けられてたのか……)ズーン

整備兵「何でも無い。平気だ平気」

漣「強情ですねー……」

整備兵(この話を漣にするくらいなら、埠頭から助走付けて海に飛び込んだ方がまだマシだ)

整備兵「……とにかく、何でも無いんだ」

漣「ふーん……白雪ちゃんを困らせるようなことだけはしないでくださいよ?」ジロッ

整備兵「す、するかよ!」

整備兵(さ、漣の眼光が鋭くて怖い……!)

342: 2015/06/07(日) 00:32:46.91 ID:mhmJeXhU0
提督「静粛に。これより諸連絡を行う」ガタリ

シーン

提督「今日の連絡事項は三つ。まず一つ目は演習についてだ。演習に参加する六人が決定した」

鈴谷「よっ、待ってましたー!」パチパチ

瑞鶴(今日こそ演習に出て、あいつに勝つんだから!)

提督「一人目は……翔鶴。旗艦だ。よろしく頼むぞ」

翔鶴「はい、お任せください」ニコ

提督「二人目、瑞鶴……」

瑞鶴「やったーっ!翔鶴姉、頑張ろうね!」ブンブン

提督「……最後まで聞け。瑞鶴は副旗艦だが、実質翔鶴とのダブルリーダーだ。艦隊全体の指揮を預かっていることを忘れるな」

瑞鶴「分かってるわ。必ず勝利を掴んでみせるから!」フンス

343: 2015/06/07(日) 00:33:51.14 ID:mhmJeXhU0
提督「頼もしいな。さて、次。川内、神通、那珂の三人。翔鶴達の護衛として、奮戦を期待する」

那珂「他の鎮守府から人が来るなら、やっぱり艦隊のアイドルは欠かせないよねっ!」キャピッ

川内「……うう、眠い……あれ、誰か呼んだ?」

神通「ね、姉さん、演習です。演習のメンバーですっ」ワタワタ

川内「演習……夜戦!?夜戦もあるの!?」ガバッ

提督「残念ながら昼戦のみだ。元帥は、夕方には寄越日に向かって発たれることになっている」

川内「なんだ……あー、眠……」パタッ

神通「ね、姉さん……!」

提督「いや、起こさなくて良い。どうせ演習は午後だ。それまでには目を覚ますだろう」

神通「すみません……」

344: 2015/06/07(日) 00:34:48.69 ID:mhmJeXhU0
提督「最後は……漣。先ほどの三人と同様、主な任務は護衛だ。演習の経験もこの中で一番多い、期待しているぞ」

漣「了解しました!漣、頑張ります!」ピョンピョン

提督「以上の者は、追って指示される装備を持って一四○○に演習場に集合すること。遅刻は厳禁だ」

六人「はい!」


鈴谷「いやー、選ばれなかったね」

熊野「そうですわね……残念ですわ」シュン

鈴谷「ま、ゆったり海辺で見学するのも楽で良いじゃん。どうする?ジュースか何か持ってく?……あ、アイスの方が良いかな!」ニコニコ

熊野「人が本気で残念がっていますのに、何ですのこの温度差は……」シラー

345: 2015/06/07(日) 00:35:47.43 ID:mhmJeXhU0
龍驤「こりゃまたガチガチの機動部隊編成やな……元帥艦隊はどう来るんやろ?」

鳳翔「こちらが機動部隊なのは確実ですからね……。同じ機動部隊で来るか、戦艦部隊で接近を試みてくるか……元帥さんの艦隊は人数がこちらよりずっと多いですから、誰が出てくるか予想できませんね」

龍驤「それに加えて、毎回次から次へと新兵器を繰り出してくるし、ほんまに参ってまうわ。前、演習に初めて北上と大井が来たときなんか……」ズーン

鳳翔「……ふふっ、そういえば、あの時は私も龍驤さんも出撃組でしたね」

龍驤「せや。足元から突然魚雷が飛んできてドン……甲標的って何やねん。カ級やないんやで。ホンマに腰抜かしたわ」

鳳翔「確かあのお二人、演習の少し前に大規模改装されたんでしたね」

龍驤「とにかく、寄越日は次に何を出してくるかがさっぱり読めへんってことや」

鳳翔「ですが裏を返せば、私達はそのおかげでいつも新たな発見ができるんですから、損というわけではありませんよ」

龍驤「そらそうやけど……やっぱりあそことの演習は心臓に悪いわ」ハァ

346: 2015/06/07(日) 00:36:48.41 ID:mhmJeXhU0
提督「では二つ目の連絡だ。実は、こちらの方が演習の事より重要だ」

全員「」ゴクリ

提督「近く、北部太平洋及び中部太平洋を作戦海域とする大規模作戦を行うとの情報が軍令部から通達された」

全員「」ゴクリ

提督「以上だ」

全員「」ズコー

瑞鶴「提督さん、それだけじゃ何が何だか分からないじゃない!もっと詳しく説明してくれないと……」

提督「まだこれしか通達されていないんだから仕方無い。詳細な作戦時期や内容はこれから伝えられるだろうから、その時はまたこうして連絡する」

瑞鶴「ふーん……分かったわ」

提督「だが、この通達はどうやら本土の鎮守府と警備府全てに届いているようだ。今までの諸作戦と比べても、一、二を争う規模の作戦になるのは間違いない」

347: 2015/06/07(日) 00:37:47.04 ID:mhmJeXhU0
龍驤「何や急に話が大きくなってきたなぁ……」

提督「特別な備えは必要無いが、皆は改めて日々の訓練を大切にするように。そして、三つ目の連絡だが……関係があるのは整備兵と白雪だけだな」

白雪「はい……?」

整備兵「?」

提督「工廠長から伝言で、今日は工廠に一一○○に集合、とのことだ。……では、これで解散とする」

アーオワッター

イヨイヨエンシュウカー

ワイワイガヤガヤ

整備兵(一一○○……まだ時間があるな。どうしようか……そういえば、白雪は?)チラリ

348: 2015/06/07(日) 00:38:47.87 ID:mhmJeXhU0
白雪「……」チラッ

整備兵(う、ちょうど目が合った……)

白雪「……あの、整備兵さん」

整備兵「何だ?」

白雪「ま、また後で、工廠で!」クルッスタスタ

整備兵「え、おい……」

シーン

整備兵(た、多分、工廠で作業するときにちょっとは話せるようになるだろう……)

整備兵「俺もどこかで時間潰すか……」ズーン

349: 2015/06/07(日) 00:39:47.13 ID:mhmJeXhU0
【廊下】

整備兵(本当なら、部屋で本でも読むのが良いんだろうが……)スタスタ

整備兵(体を動かしたくなったので、建物の普段行かない場所を探索してみることにした)スタスタ

整備兵(しかし、変わり映えの無い扉が並んでいるだけであまり面白くないな……流石に閉まっている扉を開けるのはまずいだろうし)スタスタ

整備兵「……ん?あそこの扉、少し開いてるぞ……?」

整備兵「何の部屋だ……?」ノゾキコミ

龍驤「何や用か?」ジロッ

整備兵「おわぁっ!ひ、人が!?」

龍驤「わっ、誰やと思ったら整備兵はんか……。そら扉が開いてたら、普通は中に人おるやろ。驚かせんといてや」

350: 2015/06/07(日) 00:41:47.52 ID:mhmJeXhU0
整備兵「りゅ、龍驤……ど、どうしてこんなところに」

龍驤「それはウチのセリフや。キミこそ、自分の部屋ここから結構離れとるやろ」

整備兵「いや、俺は少し建物を探索していただけなんだが……」

龍驤「この鎮守府に来たばっかりなのに、えらい暇なんやなぁ」ケラケラ

整備兵「うっ」グサッ

龍驤「ま、ええわ。いつまでもキミを廊下に立たせとくわけにもいかへん。話は入ってからや」ガチャ

整備兵「ありがとう。それでここは……結構狭いけど、本がたくさん有るな。図書室か?」キョロキョロ

龍驤「正確には資料室やな。……キミ、この鎮守府が昔、ウチら艦娘やなくて本物のフネを運用してたんは知ってるやろ?」

整備兵「ああ……今から七十年前、日本が大戦に負けるまでのことか。俗に言う、一代目暮鎮守府ってやつだな。ここも、その跡地を再利用して建設したらしいが……」

351: 2015/06/07(日) 00:42:57.94 ID:mhmJeXhU0
龍驤「良く知っとるやないか。まさに、その一代目について、残っている古い資料やら記録やら、戦後に書かれた本やらが保管されてるのがこの部屋ってわけや」

整備兵「ほうほう……」チラッ

整備兵(鎮守府の沿革に古そうな構内見取り図、大戦中の主要な戦役に関する歴史書……この鎮守府のことに限らず、大戦全般に関する本も色々置いてあるな)

整備兵「龍驤はよく来るのか?」

龍驤「昔のことに興味があってな……ときどき来て本を読んどるんや。変やろか?」

整備兵「いや……歴史を勉強するのは、良いことだと思うぞ」

龍驤「ウチ、思うんや。ウチら艦娘は、一人一人に実在した艦艇の名前が付いとるやろ?でも、それはどうしてなんやろなーって。だって、本物の方はフネなのにウチは人型や。ウチとその本物のフネと、一体何が関係あるんやろな」

整備兵「龍驤……」

龍驤「せやからさしあたっては、自分の名前になってるフネとか昔の戦いとかその頃の鎮守府とか、そういうことを調べてみたら何か分かるかと思って、ここに来とるんや」

整備兵(確かにそのことはとても不可解だ……。艦の魂を持つ少女たち……そう言われて何となく受け入れていたが、そもそも魂って何なんだ?実在した艦艇と、一体何が繋がっている?)

整備兵(しかし今は俺にも……多分、どの艦娘にも提督にも全く分からない)

352: 2015/06/07(日) 00:43:50.16 ID:mhmJeXhU0
整備兵「……龍驤」

龍驤「何や、変にかしこまって」キョトン

整備兵「これから、俺もたまにここに来て良いか?」

龍驤「もちろんや」ニッ

龍驤「……にしても、キミ、こういうのに興味あるんか?」

整備兵「学生の頃から戦史とかを読むのが好きだったからな……一応心得はあるつもりだぞ。例えば、そうだな……龍驤、今読んでる本は何だ?」

龍驤「これや。ちょうど読み終わったところやけど……」スッ

整備兵「暮海軍工廠の創設と発展……か。これなら、何度も読んだことがあるぞ。俺もかなり気に入ってる本で、これを読んで整備兵の仕事に興味が湧いたと言っても良いくらいだ」

龍驤「ホンマか!」

整備兵「当時現役だった暮海軍工廠の工廠長が、戦中に書いた本なんだよな」ペラリ

353: 2015/06/07(日) 00:44:46.72 ID:mhmJeXhU0
龍驤「大正解や。流石やなぁ……こりゃ、いい助っ人が手に入ったで」

整備兵「この本の一番面白い章は第三章で……?」ピタッ

整備兵(良く考えたら、この本を書いた工廠長と、ここの工廠長って性格が似てるよな……リーダーシップがあって人望が厚いところとか、結構口が悪いところとか)

整備兵(工員を集めての演説癖までそっくりだ。人も妖精も、同じ職人なら言動まで似るのかもな)ニヤニヤ

龍驤「どないして第三章が面白いんや?そこで止められたら知りたくなるやろ」

整備兵「……ああ、悪い。いや、それがだな、実はこの章の最初から三ページ目に――」

ホンマカイナー!

ソウソウ、サラニソノウエ……

ウソヤロー!

ハハハ……

358: 2015/06/10(水) 23:52:23.88 ID:SNtMJkhU0
【工廠前】

整備兵「~♪」スタスタ

整備兵(楽しかった……時局柄、前大戦の知識は誰でも多少持っているが、趣味で本を読んだり調べたりする人はあまりいないからな)

整備兵(しかし龍驤の場合、趣味とは少し違うかもしれないが……)

ガラガラガラ

整備兵「来たぞ」

白雪「わっ……」

工廠長「おう。お嬢ちゃんならもう来てるぜ」

整備兵(……ここはごくごく自然体で。こちらがいつも通りの態度で押し切れば、白雪もそのうち慣れるはず!)

359: 2015/06/10(水) 23:53:18.78 ID:SNtMJkhU0
整備兵「よっ、白雪。早いな」

白雪「こ、こんにちは整備兵さん」ペコリ

整備兵(よし……やはり作戦は間違っていないな。普段通りが一番だ)

整備兵「それで工廠長、今日は何をするんだ?特に無ければ開発もしたいんだが……」

工廠長「悪いが、今日やる事ァほとんどが演習の準備と後始末になるだろうよ。演習の日はいつもそうと決まってる」

整備兵「ああ、そういえばそうだな」

白雪「具体的にはどんなことをするんでしょうか?」

工廠長「まず準備は、主に艤装を演習仕様にすることだな。弾を全てペイント弾に入れ替えて、審判を配置する」

白雪「ペイント弾に……審判、ですか?」

360: 2015/06/10(水) 23:54:20.73 ID:SNtMJkhU0
工廠長「おう。まさか、お嬢ちゃん達や艦載機連中を本当に大破や墜落させるわけにはいかねェからな。それぞれ一人妖精を乗っけてもらって、その妖精に損害を判断させる」

整備兵「艦載機にも一機に一人つくのか?確か、零戦とかは単座だろ?」

工廠長「主翼にでもへばりつくんだよ。近くにいなきゃ見えねェだろ?」

白雪「え、ええっ……!?」

整備兵「その審判をやる妖精っていうのは、どこから……?」

工廠妖精達「」ガタガタ

整備兵「……ん?」チラッ

工廠妖精A「あ、あっしなんて、戦闘機の係でさぁ!絶対ロールで振り落とされっちまうよぉ!」ガタガタ

工廠妖精B「何言ってるんスかっ!こちとら艦爆隊っスよ!?急降下爆撃って何メートル落ちるんっスか!?」ガタガタ

工廠妖精達「」ザワザワ

工廠妖精達「……」ガタガタガタガタ

361: 2015/06/10(水) 23:55:26.41 ID:SNtMJkhU0
整備兵「何だこれ……部下遣いが荒いどころの話じゃない……」ガーン

工廠妖精B「ちなみに、工廠長は高所恐怖症だからいつも審判はやらないんっスよ!」ビョンビョン

工廠長「んだとォ!?」ドンッ

工廠妖精B「す、すいませんっスー!」ドゲザァ

白雪「ほ、本当にそんなことをしても大丈夫なんですか?」

工廠長「演習の時は毎回やってるが、今のところ落っこちた奴はいねェよ」シレッ

整備兵「それも凄いな……!?」

工廠長「前準備はそんなとこだな。終わったら今度は後始末だ。艤装を元に戻して、お嬢ちゃん達の修復をする」

整備兵「ペイント弾やら審判やらを使うのに、修復が必要なのか?」

362: 2015/06/10(水) 23:56:18.44 ID:SNtMJkhU0

工廠長「ペイント弾の外殻も、流石に射出の衝撃に負けねェ程度には硬いからなァ。……まあ普通にやってりゃ、実際の被害は酷くても小破程度だ」

白雪「そうですか……」ホッ

工廠長「……ってな訳で若造、今日は大した仕事もできねェぞ。昼飯までそう時間が無ェから、整理を始めるのもあんまりお勧めできねえしなァ」

整備兵(……それならとりあえず、俺は俺の仕事をするか)

整備兵「じゃあ、艤装を演習用に転換する作業を見せてもらうかな」

工廠長「地味だが、見たいなら止めはしねェぜ」

整備兵「白雪も見て行くか?」

白雪「はい……ぜひ」ニコ

整備兵(白雪も……大体元に戻ったかな)ニコ

363: 2015/06/10(水) 23:57:18.50 ID:SNtMJkhU0
トンテンカンテン

工廠妖精A「」ソイヤッソイヤッ

工廠妖精B「」ソイヤッソイヤッ

整備兵「」スッ

工廠妖精A「……?」トリャッ

工廠妖精B「……?」ホイヤッ

整備兵「……」ジー

整備兵(こんなに小さな槌や鋸を、よく扱えるもんだ……その上、あの手作業で精密な模型のような艤装を作れてしまうのだから、凄いを通り越して末恐ろしい)

整備兵(……もしこの妖精達がいなかったら、人類は今頃どうなっていただろうか)

364: 2015/06/10(水) 23:58:26.93 ID:SNtMJkhU0
整備兵「……」ジー

白雪「整備兵さん」ヒソヒソ

整備兵「どうかしたか?」

白雪「妖精さんたちが、気にしているような感じが……」

整備兵「えっ……」

工廠妖精A「……何ですかい?」クルッ

工廠妖精B「……何っスか?」クルッ

整備兵「いや、悪い悪い。どんな風に作業しているのか、見てみたくてさ。今は何をしているんだ?」

工廠妖精A「艤装に追加の装甲板を取り付けてるんでさぁ!」

工廠妖精B「多少動きが悪くなっても、演習では参加部隊の負担を最低限に抑えるのが最優先っスから!」

365: 2015/06/10(水) 23:59:18.34 ID:SNtMJkhU0
整備兵「その金槌、少し見せてもらっても良いか?」

工廠妖精A「もちろんでさぁ!」スッ

整備兵「ありがとう」スッ

整備兵(小さくて持ちにくい……だがまあ、見た目通りの重さかな。触ってみた感じも普通の鉄だ)ギュッギュッ

整備兵(しかし……)

工廠妖精B「お嬢さん、よーく見てるっスよ?」フリフリ

白雪(……?見ていてほしいってことなのかな?)

白雪「……」ニコ

工廠妖精B「よーし!久々に本気出すっス!」グッ

工廠妖精A「普段から出してほしいもんだよ……」

366: 2015/06/11(木) 00:27:24.23 ID:6CbuCFRE0
工廠妖精B「」オラァッ

トンテンカンテン

白雪「……せ、整備兵さん!金槌で叩いただけで、板が鋲止めされていっています……穴も鋲も無いのにです!」

整備兵(……この工具、明らかに普通じゃない力を持ってるんだよな……)

白雪「お上手です」パチパチ

工廠妖精B「ふっ……」ドヤァ

白雪「良くできました」ナデナデ

工廠妖精B「ふぉおおおっ!?こんなに優しくされたのは初めてっスー!俺、心を射抜かれたっスー!」ピョンピョン

工廠妖精A「……そろそろ自重した方が良いんじゃあないかい?」ゲシゲシ

工廠妖精B「いででででっ!」

367: 2015/06/11(木) 00:28:19.97 ID:6CbuCFRE0
整備兵「白雪……あまりなでない方が良いんじゃないか?」

白雪「どうしてですか?」キョトン

整備兵「いや、そいつらただのオッサンだし……」

白雪「?」クビカシゲ

整備兵「……いや、何でもない。でも、仕事の手を止めさせちゃってるしさ」

白雪「そ、そうでした……すみません」パッ

工廠妖精B「ああ……」ショボーン

工廠妖精A「けっ、良い気味でさぁ……それで整備兵殿、そろそろ工具を返していただけますかい?」

整備兵「分かっ……いや、ちょっと待ってくれ。俺にも打たせてくれないか?」

工廠妖精A「本気ですかい?こいつはあっしらにしか使えませんよ?」キョトン

368: 2015/06/11(木) 00:30:08.66 ID:6CbuCFRE0
整備兵「もちろんそうだろうとは思っていたけど……触っていたら整備兵の血が騒いでさ。真似事だけで良い。少しだけ、適当な余った鋼板で良いんだ」

工廠妖精A「それなら……分かりやした」スッ

工廠妖精B「端材持ってきたっス!」ゴトッ

整備兵「すまない、ありがとう」スッ

白雪「何かするんですか?急に金槌を構えて……」

整備兵「少しだけ、俺も打たせてもらえることになったんだ」

白雪「それって……妖精さん達にしか使えないのでは……?」

整備兵「妖精にもそう言われたよ。けどまあ、実際に使ってみるのも情報収集だ」

白雪「さっき私に、妖精の仕事の手を止めさせるなって言いましたよね……」ジトー

369: 2015/06/11(木) 00:31:03.18 ID:6CbuCFRE0
整備兵「……こ、こういうことも調査のためには必要なんだよ」アセアセ

白雪「そうですか。……でしたらそれが終わるまで、私も妖精さんをなででいますからね」プクー

整備兵「それは、あー……いや、う、うん、良いんじゃないか?」

白雪「……」ナデナデ

工廠妖精B「あ゙ーいいっスー……ふへ……ふへえへへへ……」ヨダレダバー

整備兵(俺の精神衛生的には、妖精の言葉なんて聞こえない方が良かったかもしれない)

白雪「……」ニコニコナデナデ

整備兵(しかし声さえ聞かなければ、妖精も小動物みたいなものだ。微笑みながら小動物を可愛がる白雪……絵になるなぁ……)

整備兵「……」ポケー

370: 2015/06/11(木) 00:32:04.48 ID:6CbuCFRE0
工廠妖精A「オラオラァ!」ガンガンガンガン

工廠妖精B 「ぎゃぁっ、何するっスか!?やめろっス!」ダダッ

白雪「あっ……」シュン

工廠妖精A「こんにゃろっ、腑抜けてんな!……して整備兵殿、まだですかい?」イライラ

整備兵「……」ポケー

工廠妖精A「……何を見てるんですかい、整備兵殿?」ギロッ

整備兵「……うわっ、わ、別に!ごめんごめん、すぐ終わる!悪かった!」

工廠妖精A「こっちも時間がそれほど無いんでさぁ。頼みますよ……」ハァ

整備兵「よし……ふっ、はっ!」トンテンカンテン

371: 2015/06/11(木) 00:35:41.98 ID:6CbuCFRE0
工廠長「ん……お前ら、仕事はどうした?」トコトコ

工廠妖精B「整備兵殿が工具を見てみたいとのことでしたので、お貸しした次第っス!」

工廠長「あァん……?」

整備兵(久しぶりだな。あまり力は込められないけど……硬い鋼を打つこの感触、衝撃。整備兵の仕事はこうでないと)トンテンカンテン

鋼板「」シーン

白雪(妖精さんが打ったときのようなことは起こりませんね……)

工廠妖精A「……もちろん見ての通り、使えてはいませんが」ヒソヒソ

工廠長「当ったりめェだ。あれは俺達にしか使えねェんだからよ」

整備兵「~♪」ハナウタ

整備兵(そういえば、海軍工廠で働きたいと初めて思ったのも、実際に近所の工場で作業を手伝わせてもらったときだったな……)トンテンカンテン

372: 2015/06/11(木) 00:37:49.41 ID:6CbuCFRE0
鋼板「」シーン

工廠妖精B「それにしても夢中で叩いてるっスね……。そろそろ止めるっスか?」

工廠長「そうだな……お前らがずっと働けねェのも困りもんだ」

整備兵(やっぱり良いな、この仕事は……。地味で船にも乗れないが、俺にとっては一番誇れる仕事だ)トンテンカンテン

白雪「整備兵さん、多分、もうそろそろ……」

カンッ

整備兵「ん?」ピタッ

工廠妖精A「何の音ですか……い……」

鋼板「」トマッテル

白雪「……!」

373: 2015/06/11(木) 00:42:39.25 ID:6CbuCFRE0
整備兵「待ってくれ、これ、人間には使えないんじゃ……」

工廠妖精B「こっ、工廠長!見てくださいっス!一本だけっスけど、鋲が打たれてるっス!」

工廠長「何だとォ!?」ズイッ

整備兵「……」

工廠長「……こんなデタラメな事が……チッ。おい若造、時間切れだ!俺達は作業を続けるから、工具を返したらもう帰れ!」

整備兵「あ、ああ。時間を取らせて悪かった。でも、その鋼板……」

工廠長「でももヘチマも無ェよ!とりあえず出てけ!」グイグイ

整備兵「うわっ、きゅ、急に押すなよ!」

工廠長「お嬢ちゃんも帰った帰った!」グイグイ

工廠妖精B「お嬢さん、申し訳ないっスー!」

白雪「わわっ……!」

ポイッ ガラガラガラ ピシャッ

374: 2015/06/11(木) 00:45:34.61 ID:6CbuCFRE0
整備兵・白雪「……」

ザザーン ザザーン

整備兵「……全く、ひどい追い出し方をするな。確かに、しつこく長居した俺も悪いけどさ」イテテ

白雪「それにしても、さっきのは何だったんでしょう?妖精さん達の道具を、整備兵さんが使えるなんて……」

整備兵「俺も、ただぼんやりと打っていただけなんだが……なぜだ?」

白雪「整備兵さんだけが工廠の妖精さんたちと話せることと、関係があるのでしょうか……?」

整備兵「いや、分からない。……あれ?そういえば白雪こそ、さっきは工廠長とだけは話せていたよな?」

白雪「あっ……言い忘れていました。これです」サッ

375: 2015/06/11(木) 00:48:32.48 ID:6CbuCFRE0
整備兵(無線のイヤホン……か?)

白雪「本当は私の艤装に付属している通信用機器なんですが、整備兵さんより先に到着したときに、話せないと不便だろうと工廠長さんが予備を渡してくれたんです。私と話すときは、話すと同時に小型電鍵でその内容を送ってくれる、と。同時通訳みたいなものでしょうか?」

整備兵「便利なことを考えるなぁ……というか工廠長、会話しながら電鍵って器用だな。手の中でやってたのか?全然気づかなかったぞ……」

白雪「本当にありがたいです。これで、お仕事も今までより頑張れます」

整備兵「それは心強いな……。さてと、それじゃあとりあえず食堂に行くか。昼が近いし、その後は演習だ」ヨッコイショ

白雪「はい」スッ

ザザーン ザザーン

376: 2015/06/11(木) 00:53:23.77 ID:6CbuCFRE0
工廠長「……」

工廠妖精A「工廠長……」

工廠長「……」

工廠長(……くそっ、また相談事が増えちまったじゃねェか)

工廠妖精A「……」チラッ

工廠妖精B「白雪さん……」

工廠妖精A「……」ゲシッ

工廠妖精B「あだだだだっ!」

382: 2015/06/20(土) 19:13:40.03 ID:yVErxIhj0
【旧港跡地】

ミーンミンミンミン

白雪「少し出発が早すぎたでしょうか……」トコトコ

整備兵「と言っても、10分やそこらの差だ。すぐに他のみんなも来るだろう」スタスタ

整備兵「しかし、寄越日の艦隊と演習ってことは、元帥が来るってことなんだよな……まさか会える日が来るとは思わなかった」

白雪「どんな方なんでしょう?」

整備兵「うーん……軍内では、知略に戦術に指導力、あらゆる分野に長けた稀代の軍人と言われていたかな」

白雪「何だか厳格そうな方ですね……」

整備兵「まあ、俺も軍籍はそこそこ長く持ってるけど、ここに来る前に軍で働けていた期間はそう長くなかったからあまり良くは知らないかな」

白雪「軍籍を持っていたのに軍で働けなかったんですか?てっきり、深海棲艦が現れてから軍は人手不足だと思っていましたが……?」

383: 2015/06/20(土) 19:14:26.20 ID:yVErxIhj0
整備兵「結局、整備に関しては妖精がいれば人間はいらないからな。その上、新しく艦娘を建造できるのも妖精だけだ」

白雪「!確かに……」

整備兵「工作学校を出た後は、機械に触れない仕事ばかりして稼がないといけないから大変だったよ」ハハハ

白雪「整備兵さんは本当に機械が好きなんですね」

整備兵「同期の奴らもみんなこんな感じだよ。そうじゃなきゃ、整備の仕事……特に工廠勤務の仕事には就かない。何だかんだ言っても、やっぱり海軍に入るからには、俺も含めてみんな船で海を行くのが好きだからな。白雪もそうだろ?」

白雪「そうですね……はい。この前の訓練で初めて海に出ましたが、とても楽しかったです。何となく、ここが私の居場所なんだな……と思いました。私の場合は、艦娘だからかもしれませんけれど」ニコ

整備兵「そうかもな」ハハハ

ザザーン ザザーン

整備兵「ところで……この辺はあまり手入れされていないみたいだな。やたら不規則な段差が多いし、岸壁のコンクリートも古い」キョロキョロ

384: 2015/06/20(土) 19:15:22.62 ID:yVErxIhj0
白雪「普段は立ち入れないからかもしれませんね」

整備兵「地面に金属の土台みたいなものもたくさんあるが、錆びていて良く分からないな……と、何か立ってるな。これは……!?」

白雪「地上に据え付ける型の対空機銃……でしょうか?」

整備兵「錆びも酷いしボロボロだが、地面にはちゃんと固定されてるな。少し見てみる」スッ

整備兵(銃架の支持力が相当弱っている……このままだと明日にでもバラバラに崩れ落ちそうだ)ジッ

整備兵(それでもここまで持っていたのは、偶然木の陰になっていたからか。しかしこの機銃、作りが古いな。まるで……)

白雪「待ってください。この機銃……出撃のとき、鈴谷さんと熊野さんが使っていたものに似ています。そちらは連装でしたが……」

整備兵「……ああ、白雪の言う通りだ」パッ

整備兵「旧日本海軍が使っていた九六式25ミリ機銃の単装型だ。もちろん艦娘の艤装じゃなくて、本物のな」

385: 2015/06/20(土) 19:16:21.30 ID:yVErxIhj0
白雪「どうして、こんなところに……?」

整備兵「いや……あながち不自然とも言えないかもしれない」

白雪「そうなんですか?」

整備兵「暮は大戦以前から軍港の街で、旧海軍時代もここには鎮守府があったからな。その頃設置された防御陣地が、解体されずに残っていたと考えれば……」

白雪「それなら、この辺りに金属の土台がいくつもあったのも、地面に段差が多いのも説明できますね……」チラリ

整備兵「しかし見たところ、この一挺以外はどれも銃身から何から風化して残っていないな……あるのは基礎だけだ」キョロキョロ

白雪「ですが整備兵さん、これなら深海棲艦にも効く武器になるのでは……?」

整備兵「いや、流石に状態が悪すぎて、このままだととても使えないと思うぞ……」

整備兵(……だが、白雪の言う通りこれは貴重なものだ。放置しておくのはかなり惜しい)

整備兵「……よし、決めた」

白雪「?」キョトン

386: 2015/06/20(土) 19:17:27.97 ID:yVErxIhj0
整備兵「駄目元だが、提督に許可を貰って直せるかどうか試してみよう。使える状態にできれば、何かの役に立つかもしれない」

白雪「それは良いですね!」

整備兵(まあ、ここ最近妖精のトンデモ技術ばかり見てきたせいで、普通の機械をいじる時間が欲しいっていう理由もあるんだけどな……)

整備兵(しかし、まさか大戦期の兵器の本物を見つけられるとは……本でしか見られないとばかり思っていたぞ)ニヤニヤ

白雪「――さん!整備兵さん!」

整備兵「……ん、どうした?」

白雪「ええと、時間が……」

整備兵「……」トケイチラッ

整備兵「……走るぞ白雪!」ダダッ

白雪「そ、そんなっ!?」ガーン

387: 2015/06/20(土) 19:18:30.96 ID:yVErxIhj0
タッタッタッ……

白雪「はぁっ……はぁっ……」

整備兵(だいぶ疲れてるな……そりゃそうか、艤装を着けてない限りは普通の女の子だもんな)

整備兵(しかしまずいな。さっきの場所で時間を使い過ぎた。このペースじゃ間に合わないぞ……)

整備兵「白雪、大丈夫か?辛かったら無理しないで歩いて良いんだぞ?」

白雪「すみません……。整備兵さんは先に行ってください。私は後から遅れて着きますから」

整備兵「元はと言えば俺のせいなのに、そんなことできるか。そこまで薄情者じゃないよ」

整備兵(とはいえ、一体どうしたものか……。考えろ、考えろ……)

整備兵(俺の方はまだまだ体力に余裕があるんだが……そうだ!それなら、俺が白雪をおぶるか何かして……!)

388: 2015/06/20(土) 19:19:22.94 ID:yVErxIhj0
整備兵(……いや待て待て!それはつまりだ、その……身体の無用な接触が生まれるという問題があるんじゃないのか……!?)

整備兵(第一どうなんだ?突然そんな提案されておいそれと乗っかるか普通?……だが今は非常事態、そうでもしないと恐らく遅刻だ……!)

整備兵「……し、白雪!」

白雪「はぁっ……はぁっ……はい、何でしょう?」

整備兵「の、乗って良いぞ、背中に」

白雪「……」

整備兵「……」

整備兵(言ってしまったっ!これは……さ、流石にドン引きされるだろうな……)ダラダラ

白雪「で、ですがあの、汗もかいていますし……」

整備兵(忘れてた……!けど確かに、背中も少し汗ばんでる……そりゃ嫌だろ。当たり前だ……)ズーン

389: 2015/06/20(土) 19:20:21.31 ID:yVErxIhj0
整備兵「そ、そうだよな!男の汗臭い背中なんて触りたくないよな!ははは、冗談だよ、冗だ……」

白雪「いえ、そうではなくて……わ、私が、かいているという話で……///」ウツムキ

整備兵「……へ?」

白雪「で、ですが、そうしないと整備兵さんも遅れてしまうんですよね……それなら、あの、お願いします……///」カーッ

整備兵「ほ、本当に良いのか……?」

白雪「はい……」

整備兵「じゃ、じゃあ……」シャガミ

白雪「しっ、失礼します……!」スッ

トンッ

390: 2015/06/20(土) 19:21:25.82 ID:yVErxIhj0
整備兵(うっ、し、白雪の腕が首に回ってる……息遣いもいつもより断然近い)

整備兵(背中が熱い……直射日光とかとはまた違った種類の熱で……)

ギュッ

整備兵(そ、そんなにしがみつかれると背中にその、あれだ、あれが……)

整備兵「……はァっ!」バシッ

白雪「どっ、どうしたんですか!」

整備兵「いや、じ、自分の頬に蚊が止まっていただけだ!」アセアセ

整備兵(……それ以上具体的に想像したら本当に最低の屑野郎だぞ!落ち着け!良識と常識を持て!)ブンブン

391: 2015/06/20(土) 19:22:19.43 ID:yVErxIhj0
グラッ

白雪「わっ……!?」ギュッ

整備兵「あああああッ!」バシッバシッ

白雪「整備兵さん!?」

整備兵「こ、今度は反対側の頬に二匹だ。夏は蚊が多くて大変だな。ははは……」

整備兵(無心無心無心無心無心……)

整備兵「飛ばすぞ!落ちないようにな!」

白雪「は、はいっ!」

整備兵(俺は何も考えていない俺は何も考えていない俺は何も考えていない……)

タッタッタッタッタッ……

392: 2015/06/20(土) 19:23:25.24 ID:yVErxIhj0
【演習場岸壁】

ダダダダダッ

整備兵「悪い……ギリギリになった……」ゼエゼエ

提督「早く出た割には遅かったな。二人して迷ったか?」

整備兵「そ、そんなとこだ……」ハハハ

白雪「うぅ……///」メソラシ

提督「……まあ良いだろう。すぐに始めるぞ」

整備兵(着く直前で下ろすことに気づけて本当に良かった……)

提督「演習に参加する者は全員揃ったな?」

翔鶴「はい」

393: 2015/06/20(土) 19:25:51.12 ID:yVErxIhj0
提督「では、元帥閣下にその旨無線で連絡する」スッ

提督「全ての準備が整いました。……はっ。所定位置までは――」

整備兵「元帥はどこにいるんだ?この辺りにはいないみたいだが……」ヒソヒソ

漣「船に乗って、元帥艦隊の人たちと一緒に沖合にいると思いますよ?私たちがこの後陸側から出発して、十分距離が開いた状態から演習開始です」

白雪「でもそうなると、実際に戦闘するまで相手の艦隊構成が分からないんじゃ……?」

漣「そうそう。だから、偵察とか索敵を通じて相手艦隊に誰がいるのかを探りながら戦うの。今はこっちも向こうも、相手が六人だってことしか分かってない」

白雪「本格的だね……」

整備兵「ん……漣、それ電探か?」

394: 2015/06/20(土) 19:28:18.63 ID:yVErxIhj0
漣「おっ、これに気づくとはなかなか通ですね?」

整備兵「そりゃ整備兵だしな」

漣「最近開発に成功した対空電探です。最新兵器を載せてもらえるのも、ご主人さまに頼りにされている証拠ですね」ドヤァ

整備兵「あーそうだな」

漣「雑な反応ですね……」

整備兵「開発の経緯を知ってるから素直に喜べないんだよ……」

白雪「あはは……」

提督「諸君、今回の演習は無司令で行うことに決まった」

395: 2015/06/20(土) 19:29:19.11 ID:yVErxIhj0
提督「諸君、今回の演習は無司令で行うことに決まった」

翔鶴「……」ゴクリ

白雪(無……司令?)

漣「直前の作戦会議以外、戦闘中はそれぞれの司令官が一切指揮を執らないで、艦隊が自分たちだけで戦闘する方式のことだよ」ヒソヒソ

整備兵(難しい方法だな……だが、そのやり方なら実際の戦闘で必要なとっさの現場判断力が鍛えられる。元帥と提督……やっぱり高度な演習だ)

提督「事前の作戦会議は現在から5分間だ。……集まれ」

翔鶴・瑞鶴・川内・神通・那珂・漣「」ゾロゾロ

ヒソヒソ……ザワザワ……

396: 2015/06/20(土) 19:31:31.90 ID:yVErxIhj0
提督「時間だ。これより、寄越日鎮守府演習艦隊との実戦演習を開始する。全員出航、所定の位置に付け」

翔鶴「皆さん、行きますよ!」スッ

瑞鶴「ええ!」グッ

川内「良く寝たらようやく頭が冴えてきたよ……さーて、一発かましてやりますか!」ガチャッ

神通「……軽巡洋艦神通、参ります」キリッ

那珂「例え相手が寄越日でも……那珂ちゃん以外、海軍に主役はいらないんだよっ!」キャハッ

漣「ご主人さま!漣の勇姿、ばっちりご覧になってくださいね!」ピョン

提督「もちろんだ。遠慮はいらん。あちらさんに暮の意地を見せてやれ」ニヤッ

整備兵「皆、頑張れよー!」

白雪「気を付けてくださいねー!」フリフリ

提督「元帥閣下、いつでも出撃可能です――はっ、了解。……艦隊、出撃せよ!」

全員「「「おーっ!」」」

402: 2015/06/27(土) 01:47:39.08 ID:GNASjuMD0
審判妖精「み、皆!艤装でも服でも良いからとにかくしっかり掴まれぇっ!」

審判妖精「氏地に赴く仲間達、そして艦載機係の者達にも……敬礼!」ビシッ

審判妖精達「い、行くぞぉぉぉっ!!」ビシッ

グラグラッ

審判妖精「うわーっ!滑る!滑り落ちる!」ジタバタ

審判妖精達「大丈夫かぁー!?」

瑞鶴(……?何だか腕が重いわね……って!)

瑞鶴「ちょっと!妖精さん大丈夫!?」グイッ

403: 2015/06/27(土) 01:48:35.83 ID:GNASjuMD0
審判妖精「め、面目ない……」プラーン

瑞鶴「危ないからちゃんと肩に乗ってて……さっ、速度上げるわよ!」

審判妖精「」ウワァァァ

審判妖精達「」イキテ、イキテコウショウニカエルンダァァァ!

ギャアアアアアア……

整備兵「……南無三」

提督「何見てるんだ?ぼさっとしてないでこれ立てとけ。少しは日差しが弱まるだろう」ヒョイ

整備兵「こんなバカでかいパラソルどこにあったんだよ……まあ良いか」キャッチ

404: 2015/06/27(土) 01:49:23.27 ID:GNASjuMD0
提督「ほら、双眼鏡に通信機だ……こちらの艦隊の無線を傍受することしかできんが。後、椅子も一つずつ取れ。長丁場になるかもしれん」ポイポイ

白雪「ありがとうございます」ペコリ

整備兵「そういえば提督」

提督「何だ?」

整備兵「さっきの会議は何を話したんだ?提督のことだから、何か対元帥艦隊用の作戦を持ってきたんじゃないか?」

提督「そういうものも少しはあるが……相手の戦力があまり読めない以上、大したことは言えないな」

整備兵「ほー……?」

白雪「見てからのお楽しみということですね」

提督「その通りだ」

405: 2015/06/27(土) 01:50:38.34 ID:GNASjuMD0

【海上】

瑞鶴「翔鶴姉。海岸からの距離、もう十分よ」

翔鶴「ええ。……では漣ちゃん、よろしくね。敵艦隊、おそらく1時方向から2時方向の間です」

漣「任しといてください!」ダッ

川内「気をつけて行ってきなよー!」

神通「空襲には気をつけてくださいね……漣さんがやられてしまっては元も子もありませんから」

漣「もっちろんです!ご主人さまにもらった電探、無駄にはしませんよ!」フリフリ

翔鶴「他の皆さんは一旦この場所で停止、航空戦に備えます。良いですね?」

ハ-イ!

リョウカイ!

406: 2015/06/27(土) 01:52:04.31 ID:GNASjuMD0
漣「さてさて……翔鶴さんたちからはだいぶ先行しましたね。この辺にしましょうか」スイー

漣「電探起動、対空捜索開始……と」

漣「あとはじっと待つ……ですね」





ピッ……ピピッ……ピピピッ……

漣「……来たっ!」ピョン

漣「――こちら漣。敵航空隊発見。2時方向および11時方向より中規模編隊。二手に分かれてますね」

翔鶴『了解しました。距離と機種をお願いします』

407: 2015/06/27(土) 01:52:49.17 ID:GNASjuMD0
漣「2時方向の敵、距離10000。11時方向……距離12000。機種はもう少し接近したら目視で確認します」

瑞鶴『確かに、まだ遠いわね……でも無理するんじゃないわよ?』

漣「はい、では!」プツッ

漣(なかなか緊張しますね……!)

漣「とりあえず、念のため高角砲を準備しておきましょうか」イソイソ

??「……」ジッ

漣「……っと、敵地で機関停止はご法度でしたね。警戒航行、警戒航行っと」スイー

??「……」ブクブク

408: 2015/06/27(土) 01:53:39.67 ID:GNASjuMD0
漣「敵編隊との距離、7500および9500まで接近。どちらの編隊も、先頭に52型、その背後の高空に……彗星、低空に……天山です。それより遠方に他の編隊は認められません」

翔鶴『ご苦労様です。その様子だと、相手側艦載機の更新は無いようですね』

漣「……あっ、識別表示が見えました」

瑞鶴『どこ!?どこの機体!?』

漣「戦闘機、爆撃機、雷撃機……全て加賀航空隊の塗装ですっ!」

瑞鶴『やっぱり来たわねっ……!前はこっちが21型だったから分が悪かったけど、今なら性能はほぼ互角。絶対制空権は渡さないんだから!』

翔鶴『落ち着いて瑞鶴。体力を温存しないと。……漣さん、ありがとうございます。情報はほぼ集まりましたので、そろそろ離脱に移ってください』

漣「はい!了、か……」

漣(……?)クルッ

シュッ

409: 2015/06/27(土) 01:54:27.66 ID:GNASjuMD0
漣(雷跡……っ!?)

漣「う、おりゃぁっ!」グイッ

ゴロンゴロンゴロン……

漣「うわっ、わっ、おっ、とっと……」ヨロヨロ

漣「Σ(゚д゚|||)アブナッ!」

??「……」ススッ

漣(微かだけど、水面下に影が……!)

漣「……そこ、なのねっ!」ドォン

??「……」ヒラリ

漣「くっ、すばしっこいですね……」

410: 2015/06/27(土) 01:55:24.05 ID:GNASjuMD0
翔鶴『漣ちゃん、どうしました!?』

漣「現在、敵の水中戦力と交戦中です。さっきのは雷撃を受けたので、回避するときに転んだだけです……多分、北上さんか大井さんの甲標的かと!」

翔鶴『雷巡とは厄介ですね……敵の航空隊が到着するまでに、私達のところまで戻れますか?』

漣「何とか振り切ってみます。動きのトロい甲標的ごとき、速力では負けてませんからいけますよ!」

翔鶴『……では、頼みます。何にせよ、空の方は任せてください。漣ちゃんは、とにかく全力でその甲標的を!』

漣「はいっ!」プツッ

??「……」ブクブク

漣「駆逐艦が、接近戦で潜航艇に負けてたまりますか!」ダッ

??「……」スススッ

漣(今まで見てきたのと違って、やけに動きが速いですね……でも、)スッ

漣「そんな浅い所にいたら、すぐに潜望鏡撃ち抜かれますよっ!」バァン

411: 2015/06/27(土) 01:56:19.49 ID:GNASjuMD0
??「……」ヒラリ

漣「ちぃっ……」ダッ

漣(方向転換も機敏な上、正確にこっちの航跡を追って来てる……化け物ですかあの潜航艇は)

漣(それなら……)

漣「」ピタッ

??「……」ピタッ

漣「どうぞ。真正面ですよ?撃たないんですか?」クイクイ

??「……」ジッ

漣「……」

??「……!」シュバッ

412: 2015/06/27(土) 01:57:21.23 ID:GNASjuMD0
漣「見え、ましたっ!」ヒョイッ

??「……!?」

漣「ま、今のは普通かわせませんよね。昔ご主人さまと特訓しまくったおかげで、漣はできますが」

漣(これでかわした魚雷は2本。そして甲標的の魚雷搭載数も2本……)ニヤリ

漣「この勝負、漣がもらっ……」

??「……!」シュバッシュバッ

漣「え、ちょっ」

パァン

413: 2015/06/27(土) 01:58:41.42 ID:GNASjuMD0
漣「うっくぅぅー……」フラフラ

漣「……」チラッ

審判妖精「漣、小破!……と、整備兵さんと違って聞こえてないのか……」ミブリテブリ

漣(小破の合図……確かに塗料は付かなかったけど、今度こそ海面にばっちり全身打ちましたからね)

??「……」スイー

漣(まさかまだ魚雷を持ってるなんて……一体何なんですかあれは)ドンッドンッ

??「……」ヒラリハラリ

漣(とりあえず、釘付けにされないように敵編隊から離れつつ戦わないと……)

漣「……漣、これは結構な難敵の予感がしますよっ!」ダダッ

??「……」スイー

414: 2015/06/27(土) 01:59:48.96 ID:GNASjuMD0
翔鶴「漣ちゃんから続報がありません。……まずいですね」

瑞鶴「なるべく早く航空隊を送るべきよ。あっちの編隊に追いつかれたら、漣一人じゃひとたまりも無いわ」

翔鶴「そうね……そうしましょう。できればもう少し引きつけたかったけれど……」スッ

瑞鶴「……」スッ

翔鶴・瑞鶴「第一次攻撃隊、発艦!」

ブゥン ブゥン ブゥン

翔鶴「戦闘機隊の皆さんは、漣ちゃんを見かけたら対潜戦闘を援護してあげてください!」

暮零戦妖精A「」リョウカーイ

川内「なかなか敵は姿を現さないね……」キョロキョロ

神通「相手の方々が、大人しく航空戦の開始まで待機しているとも思えないのですが……」キョロキョロ

那珂「きっと、那珂ちゃんの主役オーラに恐れをなして近づいて来ないんだよっ!」イェーイ

415: 2015/06/27(土) 02:00:30.87 ID:GNASjuMD0
ツーツートントンツー……

神通「」ピクッ

川内「神通の零式水偵から?」

神通「はい。……ええと、はい……っ、やはり来ましたか……」

那珂「どうしたのー?」

神通「相手方戦艦が一名、単艦にて10時方向より高速接近中とのことです!」

川内「こっちが準備を整えないうちの殴り込みってことか……!」

瑞鶴「どうする?艦載機はほとんど航空戦用だから、あまりそっちには振り向けられないわよ……?」

那珂「でも、こういうときのための作戦はもう立ててあるよね?」

神通「ええ。このまま座して待っていても、射程と火力に勝る戦艦が相手では不利になるだけです。それならば……」

416: 2015/06/27(土) 02:01:41.21 ID:GNASjuMD0
川内「……断固反撃に転じ、水雷戦隊の本職を遂行すべし、ってね!」

神通「翔鶴さん、瑞鶴さん。私と川内姉さんとで、敵戦艦の接近を阻止します。那珂ちゃんを置いて行きますから……」

那珂「ま、まさかの那珂ちゃん置いてけぼりー!?」ガーン

神通「那珂ちゃん、翔鶴さん達の護衛をしっかりと頼みましたよ」

那珂「ぶー、ずるーい。那珂ちゃん、頼まれると嫌とは言えないんだよー?」スチャッ

神通「ありがとうね、那珂ちゃん」ニコ

翔鶴「例の戦艦対策ですね、分かりました。一筋縄ではいかないでしょうが、どうかよろしくお願いします」

瑞鶴「でも、これってものすごい賭けよ?私達の方の戦力が最低限になるんだから。せめて敵艦載機の襲来までには帰ってきてよね」

417: 2015/06/27(土) 02:02:17.56 ID:GNASjuMD0
川内「私と神通なら、きっと大丈夫だって。まっかせてよ!」

神通「それでは……皆さんも、お気を付けて」クルッ

川内「じゃあね!」フリフリ

那珂「二人とも、ファイトだよっ!」ピョンピョン

瑞鶴「雷撃隊なら少しだけど予備があるわ……発艦!二人を支援して!」ヒュッ

九七妖精「」マカセロ

翔鶴(ここまではほぼ予想の範囲内……しかし、綱渡りなことに変わりはありません。気を引き締めないと……)

瑞鶴「翔鶴姉、リラックスリラックス」

翔鶴「……そうね」ニコ

418: 2015/06/27(土) 02:03:25.20 ID:GNASjuMD0
川内「でさ、相手は誰なの?さっきは戦艦としか言ってなかったけど……」

神通「それが、水偵妖精さんも分からないみたいで……。主砲は連装らしいのだけれど、艤装が見慣れない形をしている、と……」

川内「ふーん……でもまあ連装砲ってことは、またいつもの金剛型四姉妹の誰かじゃない?ちょっと改装したとかさ」

神通「おそらくは……」コクリ

川内「しっかし金剛型か……二対一とはいえ、あんまり真正面から戦いたくないね」

神通「それは同感です……あの速力、火力、命中精度。全て侮れない方々です」

川内「気が付いたら全員射程距離に入ってて初弾から次々命中、気が付いたら金剛さん一人相手に艦隊が半壊してたー……なんてこともあったっけ」アハハ

神通「はい……ですから、今日こそは射程に収められる前に懐に潜り込まなければなりません」

川内「そうだね……ん、そろそろ見えてくるかな?」カシャン

神通「……」スッ

419: 2015/06/27(土) 02:04:29.77 ID:GNASjuMD0
??「……」キョロキョロ

神通「見えましたっ――」

川内「夜じゃないのが残念だけど、いっちょやってやるか!」

ダッ

??「……!?」

神通「面舵一杯!神通、砲撃戦参ります!」ドォン

川内「取舵一杯!魚雷斉射、てぇー!」バシュンバシュン

??「くっ……!」ガシャッ

川内「今さら主砲なんか構えたって、間に合わないよっ!」

??「……!」ドゴォン

420: 2015/06/27(土) 02:05:17.96 ID:GNASjuMD0
川内「甘い甘いっ!」ドォンドォン

??「……」スッ

神通(やはり身のこなしは一流ですね……まだこの距離ではかすりもしませんか)ジッ

神通「……撃てっ!」ドォン

川内「まだまだぁ……!」ダダッ

??「……」ドゴォン

川内「――うわっ!あ、危なっ!」ヒョイッ

神通「川内姉さん、副砲にも注意して!」

川内「分かってる分かってる!……それなら、一気に距離を詰めるまで!」クルッ

神通「姉さん、あまり無茶は……。……仕方ありません」スッ

421: 2015/06/27(土) 02:06:30.95 ID:GNASjuMD0
??「……っ」ドゴォンドゴォン

川内「当たらないってば!」ヒョイ

神通「……」ヒラリ

神通(砲撃の照準がまるでなっていません……それこそ、初めて砲を持った艦娘かというくらいに。とても金剛さん達とは思えません)

神通(一体、どういうことでしょうか……)

川内「神通、距離600切った!そろそろだよね!?」

神通「……はい。ここから最大火力を叩き込めば、相手も無傷ではいられないでしょう」

川内・神通「よーい……」

川内「主砲、全門斉射ぁっ!」ドゴォン

神通「魚雷発射用意、撃……」

422: 2015/06/27(土) 02:07:21.03 ID:GNASjuMD0
……ボチャン

神通(……自分以外の、魚雷発射音?)チラリ

ブクブクブクブク……

神通(魚雷……こちらに向かって!?どうして……!?)

神通「……姉さんっ!12時、雷跡二本!回避――」

川内「えっ――う、そっ」

パァン パァン

ベチャッ

423: 2015/06/27(土) 02:10:59.69 ID:GNASjuMD0
審判妖精「川内、中破!」バッ

審判妖精「神通、小破!」バッ

川内「ち、くしょっ……」ベットリ

神通「姉さん、とにかく下がって――」グイッ

??「……この国では、初めて出会った人には丁寧に名前を名乗るのが礼儀だと聞いたわ」

神通「……っ!」クルッ

ビスマルク「Guten Tag.ビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルクよ。どうぞよろしく」ニコッ

429: 2015/07/09(木) 23:56:25.76 ID:Zq2yF0ff0
漣「……」ジリジリ

??「……」ジリジリ

漣「……ほいさ!」タッ

??「……」ススッ

漣「もういっちょ!」ドォン

??「……」ヒラリ

シュバッ

漣「まーた魚雷ですかっ!」ダダッ

??「……」スススッ

漣「はぁっ、はぁっ……。こんなんじゃ埒が明きませんよ……」

430: 2015/07/09(木) 23:57:55.63 ID:Zq2yF0ff0
漣(第一、ソナーも爆雷もありませんし。よく西方海域に出ていた川内さんたちなら、対潜戦闘にも慣れてるんでしょうけど)

漣(確かに、ちょっとずつ翔鶴さんたちの方には近づいてますが……)

??「……」ブクブク

漣(あれに進路を妨害され続けたら、帰り着くより先に敵の編隊に捕まりそうですね)

漣(あっちは漣を仕留めても、足止めしても良い。対して、こっちは一人で疲労は溜まる一方……)

漣「……どっちにせよ、タダでは帰さないってことですか」

??「……」シュバッシュバッ

漣「ちぃっ……」ダッ

漣「……って、えっ!」コケッ

漣(まずっ、足がもつれて……)

魚雷「」スイー……

漣(せ、せめて機関部だけは――)ギュッ

431: 2015/07/09(木) 23:58:50.21 ID:Zq2yF0ff0
バリバリバリッ!

漣「……へっ?」

パァン パァン

ベチャベチャッ

漣「う、わわわっ!」サッ

暮零戦妖精A「」ヤッホーゲンキー?

暮零戦妖精B「」アンマリソウハミエナイネー

漣「まさか……翔鶴さん達の零戦ですか!?」

暮零戦妖精A「」ア、ソノヘンマンベンナク

暮零戦妖精B「」リョウカーイ

432: 2015/07/09(木) 23:59:42.45 ID:Zq2yF0ff0
バババババッ!

??「……くっ、あともう少しだったのに……」ブクブクブク……

暮零戦妖精B「」ニゲハジメタケド-?

暮零戦妖精A「」フカオイハキンモツヨ

??「……」スィー

漣「あ、いなくなった……逃げ足も速いですね。……みなさん、航空支援感謝します!」フリフリ

暮零戦妖精A「」フリフリ

暮零戦妖精B「」タッシャデナー

ブゥン……

漣「……ふぅ。今度こそ、さっさと帰りましょう」クルリ

433: 2015/07/10(金) 00:00:32.77 ID:6jYnaKG70
トントンツーツーツー……

翔鶴「……第一次攻撃隊、まもなく加賀さんの航空隊と接敵するとのことです。事前の計画通り、敵編隊の合流を阻止し二方向から挟撃する飛行ルートに入りました」

瑞鶴「漣の索敵のおかげで相手の動向がバッチリ把握できてるのは良いけど……まだ帰って来ないのかな」

翔鶴「先ほど戦闘機隊から、漣さんと交戦していた甲標的らしき敵を撤退させたとの報告がありました。そろそろ戻ってきても……」

漣「すみません、遅くなりましたー!」フリフリ

那珂「あっ、漣ちゃん!良かったーっ!」フリフリ

翔鶴「無事だったのね」

瑞鶴「遅いから心配したわよ……そんなにしつこい相手だったの?」

漣「しつこいなんてもんじゃないですよ。すばしっこくて、避けるわ魚雷をばら撒くわ……」

434: 2015/07/10(金) 00:01:32.53 ID:6jYnaKG70
那珂「それってまさか、深海棲艦の潜水艦がまぎれこんでたんじゃないの!?」

漣「魚雷が塗料入りだったのでそれは無いですが……追い払うだけで精一杯だったので、この後また現れるかもしれません」

瑞鶴「……」

翔鶴「……ですが、一度撤退させられた以上、またすぐにこちらの制空空域へのこのこ入り込んできたりはしないでしょう。今はまず航空戦に備えます。念の為、対潜警戒も意識はしておいてください」

漣・瑞鶴「……」コクリ

那珂「まっかせてー!」

漣「ところで、川内さんと神通さんはどこに?」

翔鶴「ええ、あの二人でしたら先ほど――」

435: 2015/07/10(金) 00:02:46.86 ID:6jYnaKG70
神通「雷跡三、右、左、また右です!」

川内「オーケー、見えてる!」ヒラリ

ビスマルク「上ががら空きね!」ドゴォン

神通「いえ、その程度ではまだ遅いです……!」サッ

ビスマルク「流石は日本の巡洋艦、すばしっこいわね……」

川内「そこぉっ!」ドォン

ビスマルク「でも、火力なら負けはしないわよ!」ドゴォンドゴォン

神通「っ!」ズザザッ

川内「うぁっ!……どうする?近づけば魚雷、離れれば砲撃。避けられることには避けられるけど、このままじゃどうにもならないよ……!」ヒソヒソ

神通「こちらの攻撃パターンを完全に読まれていますね……ですから例えば、こちらもビスマルクさんのように多様な攻撃を同時に行えればあるいは……」

436: 2015/07/10(金) 00:03:36.44 ID:6jYnaKG70
川内「そうは言っても、射程の短い主砲と魚雷しか積んでない軽巡じゃ……」

神通「効果があまり無くても、あちらの注意を逸らせる程度でも、何か他に攻撃手段があれば……!」

……ブゥン

川内「……?」クルッ

神通「あれは……!」

九七妖精「」ヘイオマチ

川内「あれ、瑞鶴の雷撃機じゃない!?」

神通「追いかけてきてくれたんですね!」

九七妖精「」テキカンハッケンー

川内「……あれなら、いけるかも!」

神通「ええ!」

437: 2015/07/10(金) 00:04:25.02 ID:6jYnaKG70
九七妖精「」モクヒョウメノマエー

神通「例え当たらなくても、雷撃後に必ず隙ができるはずです。私達も行きましょう」カシャン

川内「了か……」

パァン パァン

神通「?」

九七妖精「」ウワッ

パァン パァン

九七妖精「」ダンマクコスギー

ビスマルク「堂々と突っ込んでくるとは舐められたものね。私の国のFlakを甘く見ないで!」

審判妖精「左主翼、敵高射砲弾命中!小破!」

438: 2015/07/10(金) 00:05:29.80 ID:6jYnaKG70
九七妖精「」エ、アタッテナイヨ

審判妖精「嘘をつくな嘘を!バッチリ塗料付いてるのが見えるぞ!」

九七妖精「」ウルサーイフリオトスゾー

審判妖精「おい待て!やめろロールするな!うわぁぁぁっ……!」グルングルン

川内「艦攻が離れていく……あのくらいじゃ、戦艦には簡単に対処されるのか……」

神通「何かあと一歩、あと一歩が……いえ、待ってください。航空機というのは良い作戦かもしれません。川内姉さん、確かまだ偵察に出していない水偵がありましたよね?」

川内「一機だけなら……でも、どうやって使う?」

神通「限界まで意図を読まれないために、まず――」ヒソヒソ

川内「――分かった。じゃあその間に、神通はさっきの艦攻に作戦を伝えて!」

439: 2015/07/10(金) 00:06:21.28 ID:6jYnaKG70
神通「はい。それでは、一旦離れましょう。そろそろ……」カシャン

川内「……鉛弾が飛んでくる頃合いだからね」ニヤッ

……ドゴォン!

ビスマルク「何回かわしても、時間稼ぎにしかならないわよ!……あら、あれは……?」

川内水偵「」ブゥン

ビスマルク「あの軽巡の水偵……Flak!」

カカッ カカカカッ

川内水偵「」ヒラリ

川内水偵「」クルッ

ブゥン……

440: 2015/07/10(金) 00:07:18.99 ID:6jYnaKG70
ビスマルク(逃げられたわね……さしずめ増援を呼びに行ったか、向こうの本隊に状況を報告しに行ったか……)

ビスマルク(……でも良いわ。それまでに、私があの二人に勝てば良いだけの事よ)フフッ

ビスマルク「……Feuer!!」ドゴォン

川内「うっ、わ!爆風広っ!」ズザザッ

川内「神通、まだ!?」クルッ

神通「もうすぐです!」

ビスマルク「よそ見してる暇なんて無いわよ!」ドォンドォン

川内「ま、まずっ……」

バシュッ

441: 2015/07/10(金) 00:08:21.43 ID:6jYnaKG70
川内「……あれ?当たってない?」

ビスマルク「……!?今の弾は、必中コースに入っていたはずよ……!」

神通「……ええ。確かに、間違いなく当たっていたはずでした。弾がそのまま進んでいたらでしたが」カシャン

ビスマルク(単装砲……まさか)

神通「……」

ビスマルク「フフッ、砲弾で砲弾を弾くなんて。日本の艦娘は皆、侍か忍者なのかしら?」

神通「ビスマルクさんの副砲弾が徹甲榴弾でしたから何とか軌道を逸らせました。徹甲弾なら危なかったですね」

ビスマルク「今日は、面白い戦いがたくさんできそうね?」

神通「褒めていただけて嬉しいですが、私達もあなたをそう長く戦線に居続けさせる気はありませんので」ニコ

ビスマルク「……良い度胸ね。嫌いじゃないわ!」

442: 2015/07/10(金) 00:09:23.72 ID:6jYnaKG70
ドォン カカカッ ドゴォンドゴォン

神通「姉さん、艦攻がもうすぐ来ます!」ザザッ

川内「こっちも準備万端だよ。よし!水雷戦隊、この川内に続けぇっ!」ダッ

神通(二人しかいませんが……って、そんなことを言っている場合ではないですね)ダッ

ビスマルク(……二人して突っ込んでくる?もしかして、自棄になったのかしら?)

ビスマルク(でも、勝利を急ぐ事にはリスクが伴うものよ……!)ドォン

川内「まだまだっ!」サッ

神通「……」ドォン

ビスマルク(そこまでは来られても、私のところにはたどり着け……)

443: 2015/07/10(金) 00:10:23.75 ID:6jYnaKG70
ブゥン

ビスマルク(……?)

九七妖精「」リベンジダーオー

ビスマルク(さっきの艦攻……まだいたのね。でも、同じ手は何度やっても通用しないわよ)

カカカカッ

九七妖精「」アーコレハムリダワ

ベチャベチャベチャッ

審判妖精「胴体及び右主翼に被弾多数!撃墜!」バッ

九七妖精「」キビシーイ

444: 2015/07/10(金) 00:11:26.60 ID:6jYnaKG70
審判妖精「だから公正に判断していると何度言ったら」

九七妖精「」チョットトンデカラセンセンリダツシヨー

審判妖精「……って聞けぇぇぇ!」グルングルン

ビスマルク「あとは貴女達二人だけ……っ?!」クルッ

ヒュウウウ……

川内水偵妖精「」コウイウヤクモシンセンカモ

ビスマルク「水偵……離れていったはずじゃ……!」

神通「ご存知ですよね?水偵は爆弾も積めるんです」バシュン

ビスマルク「!」チラッ

ビスマルク(もう緩降下態勢に入ってる……!機銃……は、艦攻に向けてたから旋回が間に合わない……!)

445: 2015/07/10(金) 00:12:41.59 ID:6jYnaKG70
ビスマルク「副砲、対空射撃用意!Feuer!」

川内水偵妖精「」バクダントウカー

ビスマルク「……っ」サッ

ドォォォン!

審判妖精「川内水偵1番機、撃墜ぃぃぃっ!」グルングルン

審判妖精「ビスマルク、小破!」

ビスマルク「……はぁ、はぁ」

ビスマルク(何とか直撃は免れたわね。結構追いつめられたけど、後はあの二人を仕留めるだけ……)

神通「……そこですね」ザッ

川内「や。ようやく近づけたよ」バッ

446: 2015/07/10(金) 00:13:53.60 ID:6jYnaKG70
ビスマルク「な、何ですって……!?」

川内「軽巡の取り柄って、速力くらいしか無いからさ。やっぱり夜戦も昼戦も、至近魚雷戦が一番だよね!」

ビスマルク「くっ、まだ!Feue……あ、あら?」スカッ

川内「機銃は海面ぎりぎり向いてる上に、副砲は仰角最大じゃさすがにね……?」ニッ

ビスマルク「まさかあなた達、このために……!?」

川内「神通、魚雷斉射準備。決着だよ」ガシャン

神通「はい」ガシャン

ビスマルク「……完璧ね。負けたわ、あなた達には」



審判妖精「――ビスマルク、大破航行不能。速やかに演習から離脱してください」

453: 2015/07/31(金) 00:31:09.56 ID:G6PjBZaz0
暮零戦妖精B「」フタリガカッタッテサ-

暮零戦妖精A「」ダレニ?

暮零戦妖精B「」センカンニ

暮零戦妖精C「」ナマエハ-?

暮零戦妖精B「」ビス…ナンダッケ?

暮零戦妖精C「」ソコシラナインカイ

暮零戦妖精A「」ソロソロシズカニ

暮零戦妖精C「」タイチョウキビシー

454: 2015/07/31(金) 00:32:06.62 ID:G6PjBZaz0
翔鶴『まもなく敵の攻撃隊の索敵範囲に入ります。制空と邀撃、頼みましたよ』

暮零戦妖精A「」ゼンイン、キアイイレテケヨー

暮零戦妖精達「」オー

翔鶴『攻撃隊の皆さんは、制空戦から距離を取り護衛機と共に敵艦隊を目指してください。最優先目標は……航空母艦、加賀です』

九七妖精達「」リョーカイ

九九妖精達「」ラジャッ

暮零戦妖精A「」ジャ、イッチョイクカ-

暮零戦妖精A「」ゼンキ、コウカ-!

暮零戦妖精達「」ウォー!

ブゥン――

455: 2015/07/31(金) 00:33:05.86 ID:G6PjBZaz0
パンッ……パパパパンッ

加賀零戦妖精A「」カチャカチャ

ツーツートントントン……

加賀零戦妖精A「」ワレテキセントウキノコウゲキヲウク

ヒュッ

暮零戦妖精C「」オラー!トツゲキダー!

加賀零戦妖精A「」ソンナニサケバナクテモイーデショウニ

暮零戦妖精C「」モンドウムヨウッ

バババババッ

加賀零戦妖精A「」ヒラリ

暮零戦妖精C「」コンドコソハ……カツ!

加賀零戦妖精A「」……アイカワラズアツクルシイブタイデスネ

456: 2015/07/31(金) 00:34:08.31 ID:G6PjBZaz0
翔鶴「航空隊が交戦を開始しました。瑞鶴、川内さんと神通さんは?」

瑞鶴「戦闘してる間に私達から結構離れちゃったから、戻るまでもう少しかかるみたい」

漣「そうなると、しばらくは防空に不安が残りますね……」

那珂「でもその分、今回は機体が更新されて今までより強くなってるんだよねっ!なら大丈夫じゃないかな?」

翔鶴「だと良いのですが……加賀さんの航空隊の錬度は侮れません」

瑞鶴「も、もちろん大丈夫よ!何てったって新型機だし!提督さんが、うちの航空隊の錬度は加賀とだって肩を並べられるくらいだってこの前言ってたし!」

那珂「あれ、でもよく考えたら、新型になったのは戦闘機だけなんだっけ?」クビカシゲ

漣「それに『肩を並べられるくらい』って、勝ってるわけではないってことですしね……」ボソッ

瑞鶴「う……」タラリ

瑞鶴「……もうっ!何でそうやって士気下げるような事ばっかり言うのよ!」ムキー

457: 2015/07/31(金) 00:35:07.60 ID:G6PjBZaz0
暮零戦妖精C「」ソコダ-オエー

加賀零戦妖精A「」ニゲテバッカジャイラレマセンカ

バシュン

暮零戦妖精C「」アブナッ

加賀零戦妖精A「」シンチョウサ、ダイジデスヨー

暮零戦妖精C「」チッコシャクナッ

パンッ  パパパパンッ

加賀零戦妖精A「」ヒョイッ

暮零戦妖精C「」……ソウクルトオモッタ

加賀零戦妖精A「」ナニガ……?

458: 2015/07/31(金) 00:36:01.52 ID:G6PjBZaz0
バッ

暮零戦妖精B「」ニヤリ

暮零戦妖精B「」イラッシャイマセ

加賀零戦妖精A「」……アア、ソウイウヤツデスカ-

クルッ

加賀零戦妖精A「」ナメナイデクダサイヨ

暮零戦妖精B「」ヤバッ

審判妖精「暮鎮守府零戦2番機被弾、中破!」

暮零戦妖精C「」ソノチュウガエリハハンソク-

暮零戦妖精B「」マテー!

459: 2015/07/31(金) 00:37:04.07 ID:G6PjBZaz0
加賀零戦妖精「」イヤ、フツーマチマセンッテ

スッ

暮零戦妖精A「」カチャリ

暮零戦妖精A「」……ニガサンヨ

加賀零戦妖精「」ウワ、マダイマシタカ

暮零戦妖精A「」チャンスハイッシュン……イマッ!

加賀零戦妖精A「」……クッ

ベチャベチャベチャッ

審判妖精「暮鎮守府零戦1番機被弾、小破!……う、酔った……うぷっ」グルングルン

審判妖精「寄越日鎮守府零戦1番機被弾、撃墜!……おえっ気持ち悪っ……」グルングルン

460: 2015/07/31(金) 00:38:01.92 ID:G6PjBZaz0
暮零戦妖精B「」サスガッ!

暮零戦妖精A「」グッ

――ブゥン

加賀零戦妖精B「」ヨクモタイチョウヲッ!

暮零戦妖精A「」チョクジョウ!カイヒッ!

暮零戦妖精C「」マズイッ

ベチャッ

審判妖精「暮鎮守府零戦3番機被弾、撃墜!」

暮零戦妖精B「」チクショウッ

暮零戦妖精A「」イッタンキョリヲトレッ

461: 2015/07/31(金) 00:39:12.37 ID:G6PjBZaz0
暮零戦妖精D「」オリャ-ライゲキキフゼイガ-

天山妖精「」ヒラリ

暮零戦妖精D「」アツマラレルトキツイ-

ベチャベチャッ

審判妖精「寄越日鎮守府天山12番機被弾、撃墜!」

審判妖精「寄越日鎮守府天山15番機被弾、撃墜!」

暮零戦妖精D「」ヨシッ

加賀零戦妖精B「」ハラガマルミエデスヨット

暮零戦妖精A「」シタダヨケロッ

暮零戦妖精D「」ナッ……

審判妖精「暮鎮守府零戦4番機被弾、大破――」

天山妖精「」コウブジュウザモアルンデス

バシュン

審判妖精「――撃墜!」

462: 2015/07/31(金) 00:40:03.76 ID:G6PjBZaz0
暮零戦妖精B「」チィッ

暮零戦妖精A「」ニキヒトクミッ!コリツヲサケロ-!


アブナイサガレ-

ナンノコレシキッ!

審判妖精「寄越日鎮守府零戦11番機被弾、撃墜!」

審判妖精「暮鎮守府零戦9番機被弾、撃墜!」


暮零戦妖精A「」ニバンキ!ボカンニジョウキョウホウコク!

暮零戦妖精B「」リョウカイ!


審判妖精「寄越日鎮守府彗星7番機――」

審判妖精「寄越日鎮守府天山6番機――」

審判妖精「暮鎮守府零戦8番機――」

463: 2015/07/31(金) 00:41:07.74 ID:G6PjBZaz0
翔鶴「――制空隊から連絡が来ました。戦闘機数で二倍近いという数的優位もあり戦況は全体として優勢のようですが……抵抗も激しく消耗戦になっているとのことです」

瑞鶴「攻撃隊の方は?」

翔鶴「そちらは護衛機も含めて損害は軽微よ。被害のほとんどは制空隊から出ているみたい」

瑞鶴「……まあ、一筋縄じゃいかない相手だとは思ってたわ。押し負けないだけでも優勢は優勢よ。この調子なら対空戦闘はかなり楽になりそうね」

ピピッ ピピッ

瑞鶴「通信機鳴ってるよ?」

漣「また制空隊から連絡ですか?」

翔鶴「いえ。確か、この通信帯は直掩機のはずなのだけれど……」カチャッ

翔鶴「……」

翔鶴「!」

464: 2015/07/31(金) 00:42:15.60 ID:G6PjBZaz0
??「こんなにずーっと隠密行動してると、いい加減肩が凝ってくるクマー」

??「いやいや、逆に隠密じゃなかったら進むだけでも大変だし」

??「もう少しの辛抱ですよ」

??「でもさー、ホントに加賀さん一人にして大丈夫だったの?」

??「五航戦ごときに遅れは取りませんって言って、どれだけ止めても意地張ってたんだから仕方ないじゃないですか」

??「加賀は本当に翔鶴達と張り合うのが好きだクマ」

??「実際張り合ってるのは瑞鶴さんとだけだけどねぇー」

??「まあ、青葉は心配してませんけど」

??「加賀さんなら安心ってこと?」

??「それもありますが……加えて今回の加賀さんには秘密兵器がありますし、ね」

465: 2015/07/31(金) 00:43:21.92 ID:G6PjBZaz0
ブゥン

??「ん?あれって翔鶴さんトコの零戦じゃない?」

??「秋雲は目が良いクマね」

??「流石は"寄越日の画伯"……って、感心している場合じゃないですよ。発見されたってことですから」

??「元よりそういう予定だクマ」

??「そりゃそうだけどさー。警戒してってことじゃない?」

??「ヴォー!頑張るクマー!」グッ

??「それは警戒っていうより吶喊だよねぇー」

??「ともかく、ここからは全速で行きます。ちゃんとついて来てくださいよ」

??「重巡が軽巡と駆逐艦に言うセリフじゃないクマ」

??「い、言われてみれば確かにそうですね……」

466: 2015/07/31(金) 00:44:09.17 ID:G6PjBZaz0
ザバッ

??「私はどうすれば良いの?」

??「無理に早く来なくて良いですから、とにかくこっそりとお願いします」

??「了解よ」

??「上手くいけば大物が狙えますよ。何と言っても、相手はまだイムヤさんの存在すら知りませんから♪」

??「分かったわ」ニコッ

ブクブクブク……

??「では、行きましょう!」

467: 2015/07/31(金) 00:45:08.86 ID:G6PjBZaz0
瑞鶴「距離5500……私達の攻撃隊よりも手前!?もうすぐ目視できる距離じゃない!」

漣「3人でしたよね!誰と誰と誰ですか!?」カシャン

翔鶴「青葉さんを先頭に、球磨さんと秋雲さんが続いていたそうです。今度は全員面識がある方ですね」

那珂「こんな大事なときなのに、那珂ちゃんは姉妹で一人だけ仲間外れってひどいよー!」

漣「それにしても、敵艦隊はいつの間にそんな近くまで……」

瑞鶴「そうよ。よりによって、あれだけ航空部隊を送った正面から真っすぐ敵が来てるのよ。どうして見つけられなかったのかしら……」

翔鶴「……いえ、案外、見つけられないように仕向けられていたのかもしれないわね」

漣「どういうことですか?」

468: 2015/07/31(金) 00:47:11.99 ID:G6PjBZaz0
翔鶴「私達は、加賀さんの航空隊を早くに発見して挟撃するルートに航空隊を出しました。つまり、ギリギリまで加賀さんの航空隊に見つからないルートを進んだということです。しかし、それは逆に言えば、加賀さんの航空隊に見つかるルートには飛行機を飛ばさなかったということになります」

瑞鶴「……ってことはつまり、青葉達がその偵察できていなかったルート近辺を通ってきたとしたら辻褄が合うってこと?」

翔鶴「……」コクリ

那珂「でもそうすると、漣ちゃんが加賀さんの航空隊の位置を把握してたってことも知られてることになるよね?」

漣「いえ……それは確かに知られています。あの甲標的っぽいのに」

翔鶴「……となれば、早急に対策を立てなければなりません。敵水上艦隊の接近を阻止しつつ、敵空母への攻撃を実施する必要があります」

瑞鶴「でも、青葉達がここまで来てるなら今頃加賀の方は丸裸じゃない。攻撃隊をいくらか呼び戻して青葉達への攻撃に転用するべきよ。……良かった。もう少し遅かったら無駄に戦力を偏らせることになってたわ」

翔鶴「そう……そうね……」

翔鶴(確かに、攻撃隊は引き返せばまだ十分青葉さん達に追いつける位置にいる。でも、こんなにちょうど良く呼び戻せるタイミングで敵が見つかるなんてこと……考え過ぎかしら)

469: 2015/07/31(金) 00:48:21.11 ID:G6PjBZaz0
瑞鶴「制空隊から連絡よ。『敵攻撃隊、組織的戦力をほぼ喪失。補給のためこれより残存機は帰投する』!やったわ!」フフン

翔鶴「……」

瑞鶴「ね、翔鶴姉?今なら、一番良いタイミングで青葉達を攻撃できるわ」

翔鶴(加賀さんには直掩隊が付いているとはいえ、一人相手に攻撃隊全てを投入するのは確かに戦力過剰……適正数に戻して余力を制空権下の敵部隊攻撃に回す。何も、間違いは無いはず……)

翔鶴「……分かったわ。攻撃隊の爆撃機・雷撃機の半数を、青葉さん達の攻撃に向かわせましょう。直掩機も偵察を中止させてその援護に回します」

瑞鶴「漣、那珂。砲撃戦の準備は良い?」

漣「はい。ですが、私達だけで大丈夫でしょうか……?」カシャン

瑞鶴「バッチリ航空支援するから安心して。ね?」

那珂「そうだよ漣ちゃん!那珂ちゃんがいれば、絶対にセンターは抜かせないからっ!」

470: 2015/07/31(金) 00:49:39.28 ID:G6PjBZaz0
漣「分かりました。……漣、やってやりますよ!」ニコッ

漣「……ですが、下がらないんですか?特に空母のお二人は……」

翔鶴「あまり陸から距離がありませんので、下がると浅瀬に乗り上げるかもしれませんから。それに、制空隊の皆さんをできるだけ早く回収してあげたいですし」

漣「了解です!」

瑞鶴「まあ、急に色々慌ただしくなっちゃったけど、これで相手の戦力がほとんど明らかになったと思えば気が楽よね」

漣「加賀さん、青葉さん、球磨さん、秋雲さん、ビスマルクさん。で、多分最後の一人が、私を追ってきたあの……」

那珂「でも那珂ちゃん、潜水艦の艦娘がいるなんて聞いたことないよー?」

瑞鶴「私もよ」

翔鶴「私もです」

漣「もちろん漣もです……そもそも、服を着たままどうやって潜るんでしょうか?」

翔鶴「寄越日は規模も他の鎮守府とは段違いですし、新しい艦娘が頻繁に着任するらしいですから。この際、もう何が現れても驚いてはいられませんね」

漣「なんだか、演習をするたびに未知への耐性が付いていく感じがします……」

瑞鶴「それ言えてる!」アハハ

471: 2015/07/31(金) 00:52:17.77 ID:G6PjBZaz0
本日はここまで。ようやくまとまった時間が取れました。次回は今日明日中にできると思います。

476: 2015/08/02(日) 09:55:06.11 ID:6zwqh9bb0
球磨「敵襲クマー!」ドォンドォン

審判妖精「暮鎮守府九七艦攻20番機被弾、撃墜!」

九七妖精達「」コウドサゲロー!

青葉「思ったより数が多いですね」

秋雲「ほら青葉、遅れてるよ~?」スイー

青葉「しょうがないじゃないですか……。遅いんですし」バシュン

審判妖精「暮鎮守府九七艦攻14番機被弾、撃墜!」

秋雲「ほらー!球磨もあんまり前行かないの!」

球磨「悪かったクマ。つい本能で小さいものは追いかけてしまうんだクマ」クルリ

477: 2015/08/02(日) 09:56:06.00 ID:6zwqh9bb0
九九妖精達「」ネラエ-!ソコノジュウジュンダ-!

秋雲「青葉、装填まだ時間かかる?」

青葉「よいしょっと……もう少しです」ガチャガチャ

秋雲「んじゃ、それまでは秋雲さんの独壇場ってわけねー」カシャン

九九妖精達「」トウカジュンビ-!

秋雲「艦載機ども!秋雲さんの対空射撃、ちゃーんと見ときなよー?」スッ

シャッ つ10cm連装高角砲+高射装置

シャッ つ13号対空電探改

秋雲「照準よしっ!」

478: 2015/08/02(日) 09:57:10.90 ID:6zwqh9bb0
バババババッ!

審判妖精「暮鎮守府九九艦爆22番機被弾、撃墜!」

審判妖精「――暮鎮守府九九艦爆25番機――」

審判妖精「――府九九艦爆――」

九九妖精達「」ウワーッ

九九妖精A「」ナニガオキタンダー!?

ワーワーキャーキャー

球磨「見た目は地味だけど、球磨のことも忘れてもらっちゃ困るクマー」ドォン

審判妖精「――被弾、撃墜!」

479: 2015/08/02(日) 09:57:59.22 ID:6zwqh9bb0
九七妖精A「」カンバクタイハナニヤッテルンダロー?

九七妖精B「」サァ?

青葉「……よし、準備完了です!」カチャリ

九七妖精A「」シャゲキクルヨー

九七妖精B「」アタラナケレバドウトイウコトハナイ

青葉「撃てっ!」ドゴォン

九七妖精A「」ヒラリ

九七妖精B「」マッタク、マトハズレモイイトコ……

480: 2015/08/02(日) 09:58:57.95 ID:6zwqh9bb0
パァン!

九七妖精A「」ナニ!?

ベチャベチャッ

審判妖精「暮鎮守府九七艦攻19番機――」

九七妖精B「」グラリ

九七妖精A「」アイボウーッ!

九七妖精A「」イッタイ……!

パァン!

審判妖精「暮鎮守府九七艦攻――」

481: 2015/08/02(日) 09:59:55.10 ID:6zwqh9bb0
瑞鶴「どういうことなのよ、これ……!」

翔鶴「……駄目だわ。雷撃隊も爆撃隊も、攻撃開始以降全く連絡が取れないの」

瑞鶴「相手には戦闘機の一機もいないのよ?なのに……」

ブゥン

漣「あれ、見てください!制空隊の零戦です!」

瑞鶴「帰ってきたのね!……でも、様子が変じゃない?」

暮零戦妖精B「」クルッ

ドォン

暮零戦妖精B「」ベチャリ

482: 2015/08/02(日) 10:01:02.18 ID:6zwqh9bb0
那珂「う、撃ち落とされちゃったよっ!?」

瑞鶴「何、あれ……あんなに正確な対空射撃、鈴谷達でもできないわよ!」

暮零戦妖精A「」ヒラリ

瑞鶴「頑張って!あともう少しで……」

パァン パァンパァン

暮零戦妖精A「」モエツキタゼ……

翔鶴「そんな……。あの炸裂音、一体……」

漣「敵艦発見!青葉さん、球磨さん、秋雲さん……例の三人です!」

翔鶴「もう来てしまいましたか……!」

那珂「それに、なんか全員元気そうだよ!?」

483: 2015/08/02(日) 10:02:03.42 ID:6zwqh9bb0
青葉「」ドヤァ

秋雲「」ドヤァ

球磨「」クマァ

瑞鶴「ものすごく勝ち誇った顔しててムカつく……!」

翔鶴「皆さん、原因は分かりませんが航空攻撃の効果は薄かったようです……そして、ここまで接近されてしまっては仕方ありません。港の方角へ後退しながら砲撃戦で決着を付けましょう」

漣「了解しました!漣が最後尾行きます!」ダッ

那珂「那珂ちゃんも行っくよー!」ピョン

484: 2015/08/02(日) 10:02:59.61 ID:6zwqh9bb0
球磨「敵の空母が見えたクマ!これは球磨達の勝ちだクマ!」

青葉「追撃しちゃいますよ!」

秋雲「よぉ漣ぃー!久しぶりー!」

漣「お久しぶりです秋雲さん」カシャン

秋雲「他人行儀だなぁ~。秋雲さんって呼んでいいのは秋雲だけだってー」カシャン

漣「……」ザッ

秋雲「……」ザッ

漣・秋雲(――来るっ!)カッ

485: 2015/08/02(日) 10:04:08.76 ID:6zwqh9bb0
ドゴーン ドゴーン

那珂「うわーん!どうして一対二なのー!」ピョンピョン

球磨「ふっふっふ……せいぜい存分に逃げ惑うクマ!」バシュン

青葉「それ、青葉達が悪役になってません?」バシュン

那珂「漣ちゃんは秋雲ちゃんと一騎打ちしてるし……もしかして那珂ちゃん、一人ぼっち……」ウルウル

??「――そんなことはありませんよ」

球磨「何か言ったクマ?」

青葉「いえ、何も?」

那珂「そっ、その声はっ!」

486: 2015/08/02(日) 10:04:54.82 ID:6zwqh9bb0
ドゴォン

球磨「クマ!?」

青葉「新手ですか!」

神通「遅くなってすみません。……何とか間に合いました」ニコ

川内「妹をいじめる奴は放っておけないからね!」

球磨「ええい小癪な奴らだクマ!まとめて地獄に送ってやるクマ!」ガオー

青葉「球磨さんノリノリですね」

川内「旧式艦に負けてたまるか!」ガシャン

球磨「言うほど差は無いクマ!」ガシャン

487: 2015/08/02(日) 10:05:58.83 ID:6zwqh9bb0
翔鶴「瑞鶴、港までの距離は?」

瑞鶴「えーと……これ以上下がるのはもう危険かも。水深があんまり無いから」

ドゴーン ドゴーン

クマー! ナッカチャーン!

翔鶴「皆頑張ってくれているけれど、押し込まれるのも時間の問題ね……」

瑞鶴「……しょうがない。翔鶴姉、あれ出せる?」

翔鶴「……仕方ないわね。分かったわ」

――シュッ

瑞鶴「魚雷!?……翔鶴姉っ!」ドン

488: 2015/08/02(日) 10:06:56.77 ID:6zwqh9bb0
審判妖精「瑞鶴、中破!」パッ

審判妖精「翔鶴、小破!」パッ

??「……」ブクブク

翔鶴「瑞鶴、大丈夫!?」

瑞鶴「うん、まだ中破だから……あの夜戦バカもいつも言ってるし。『中破は無傷』って」

翔鶴「……多分、今のが漣ちゃんの言っていた甲標的もどきね」チラリ

瑞鶴「うん。問題は、浮上してくれないと見つけることもできないってことだけど……あっ」

翔鶴「何か思いついたの?」

489: 2015/08/02(日) 10:08:15.25 ID:6zwqh9bb0
瑞鶴「もう少し陸側までおびき寄せれば、水深が足りなくなって浮上してくるかも。空母をみすみす見逃すはずも無いし、私達が逃げればきっと追ってくるはず」ヒソヒソ

翔鶴「……そうね」ヒソヒソ

瑞鶴「――せーのっ!」

翔鶴・瑞鶴「」ダッ

??「……!」スススッ

ガンッ

??「ぁ、痛っ!」ザバッ

翔鶴「!」

??「!」

490: 2015/08/02(日) 10:08:59.67 ID:6zwqh9bb0
瑞鶴「み、水着だ……」

伊168「な、何よ!泳ぎやすいんだから良いじゃない!」

翔鶴・瑞鶴・伊168「……」

伊168「ってそんなこと言ってる場合じゃないわよ!」ジャキッ

瑞鶴「翔鶴姉!」ガシャン

翔鶴「ええ!」ガシャン

伊168「えっ、あなたたち、何で空母なのに砲持ってるのよ!?」

瑞鶴「空母だって、元々はたくさん副砲を積んでたのよ?護身用に、ね♪」

伊168「15.5センチ三連装砲持ってる空母なんて初めて見たわよ!」

491: 2015/08/02(日) 10:09:59.06 ID:6zwqh9bb0
球磨「クマー!」ドォン

翔鶴「球磨さん……もうここまで……!?」

神通「くっ……すみません翔鶴さん。前進を許しました」ザッ

青葉「やっぱり、重巡と軽巡じゃ砲火力が段違いですね」

川内「はぁっ、はぁっ……」

那珂「な、那珂ちゃんもピンチかもっ……!」

秋雲「ふぅ、漣も、結構鍛えてるみたいだねぇー……」ゼエゼエ

漣「秋雲さんも、です……っ」

492: 2015/08/02(日) 10:11:01.63 ID:6zwqh9bb0
球磨「って、どうして翔鶴と瑞鶴が砲構えてるクマ!?」

瑞鶴「あんた達を……吹っ飛ばすためよ!」ドォン

球磨「クマー!?」

ベチャベチャベチャッ

審判妖精「球磨、中破!」パッ

審判妖精「青葉、小破!」パッ

球磨「やったクマね!そっくりそのまま返してやるクマ!」ダッ

翔鶴「私と瑞鶴も支援します!全員、順次輪形陣を組みつつ砲撃戦から雷撃戦に移ってください!」

漣・川内・神通・那珂「はい!」

493: 2015/08/02(日) 10:11:55.55 ID:6zwqh9bb0
球磨「クマクマクマクマクマ!!」ヒュンヒュン

神通「は、速いっ……!」

川内「止まれっ!」ドォン

漣「左舷魚雷、斉射っ!」シュッ

球磨「効かないクマー!」ヒョイッ

神通「瑞鶴さん!下がってください!」ドンッ

秋雲「オマケの魚雷だよ……もう一斉射!」シュッ

バァンッ!

審判妖精「神通、秋雲、青葉、中破!」パッ

494: 2015/08/02(日) 10:12:58.64 ID:6zwqh9bb0
ウワー キャー

瑞鶴「あっぶない――みんな固まりすぎ!」

那珂「ら、雷跡っ!1時と3時と9時と11時と……多すぎるよー!」アワアワ

瑞鶴「艦隊全速後退!とにかく魚雷を――」

翔鶴「後退はダメです!瑞鶴、後ろを見て!」

瑞鶴「後ろ?……えっ、もう岸がすぐ――!?」

球磨「こうなったら、この一撃で勝負を付けてやるクマ!」シュッ

青葉「く、球磨さん!ストップストップ!」

瑞鶴「ちょっ、待ちなさいよっ!こんな所で魚雷なんて撃ったら……!」

翔鶴「全員、身を守って――!」



ドンガラガッシャーン

495: 2015/08/02(日) 10:13:57.75 ID:6zwqh9bb0



加賀「……ふう」

暮零戦妖精E「」ナ、ナニコレー……

――ブゥン

九七妖精達「」ヤラレタッ

九九妖精達「」テッテキハドコダッ!

暮零戦妖精F「」トテモオイツケナイゾ……ウワー!

――ブゥン

暮零戦妖精E「」……ウエカ!?

ベチャッ

審判妖精「暮鎮守府――」

加賀「……なかなか良い機体ね。明石さんにお礼を言っておかないと」

503: 2015/08/05(水) 00:52:00.61 ID:E62F/Uln0
「――さん!整備兵さん!」

整備兵「……はっ!」ガバッ

白雪「大丈夫ですか!……痛たっ」サスリサスリ

整備兵「あ、ああ……って、俺なんでこんなとこに転がってるんだ?」ビッショリ

整備兵(確か演習を見ていて……そうだ。なぜか知らないが演習中の艦隊が岸に突っ込んできて巻き込まれたんだった)

提督「これはまた随分と派手にやってくれたな……」パラソルノカゲ

整備兵「……おい提督、俺のパラソル盗って盾にしただろ。そのせいでこっちはまともに海水浴びてんだぞ」

提督「工員服と違って第二種軍装は洗うのが大変なんだよ。まあ良いだろ、涼しくなって」ヨッコイショ

整備兵「なんて奴だ……」クルッ

504: 2015/08/05(水) 00:53:02.23 ID:E62F/Uln0
整備兵「白雪、立てるか?どこか怪我してないか?」

白雪「いえ、特に怪我は……でも、今は」

整備兵「良かった。とりあえず、周囲の安全を確認しないといけないな。ほら、引っ張るから白雪も立って……」グイッ

パサッ

整備兵(パサッ?)

白雪「あっ……!?」

整備兵「な……」

整備兵(白雪のセーラー服の前が、何というか……ごっそり破れて落ちている)

白雪「……ううっ」ウズクマリ

505: 2015/08/05(水) 00:54:00.84 ID:E62F/Uln0
整備兵「わ、悪かった!ほら、俺の上着貸すから……!」

整備兵(って、ずぶ濡れなんだった……)

白雪「だ、大丈夫です……。整備兵さんのせいではありませんから……」グスッ

漣「また白雪ちゃんを泣かせてるんですか、整備兵さん」スタスタ

整備兵「違う。というか、そもそもの原因は漣たちがぶつかってきたことだろうが……って、おい!漣も、服っ!」

漣「艦娘のダメージの受け方はこういうものなんです。整備兵さんの方が気にしなければ良いんですよ」シレッ

整備兵「いや、もう少しこう、恥じらいというものを……」メソラシ

506: 2015/08/05(水) 00:54:58.26 ID:E62F/Uln0
提督「……それで漣、何が起こったんだ?」

整備兵(提督は顔色一つ変えていない……やっぱり慣れなのか?)

漣「あ、何見てるんですかご主人さまー。そんなに気になっちゃいます?」ニヤニヤ

整備兵「俺のときと態度が違」

提督「だから見ていないといつも言っているだろう。良いから早くこの大事故の説明をしろ」ハァ

漣「ショボーン(´・ω・`)」

提督「それと、まずは全員工廠へ移動して艤装の修理だ。元帥閣下にも事情を伝えて、工廠までご足労頂けるように頼んでおく」

507: 2015/08/05(水) 00:57:04.58 ID:E62F/Uln0
【工廠】

工廠長「一体どうなってんだよこれはァ!?」バァン

整備兵「仕方ないだろ、事故なんだから……ほら、鋼材こっちに置いとくぞ」

工廠長「だからってなァ、ただの演習で本物の大破が五人も六人も出るなんざ有り得ねェだろうが!このせいで俺達全員今日は徹夜だぞ!?」

整備兵「待て。それ、俺も入ってるのか?」

工廠長「工廠で働いてんだから当たり前だろォ!?」

整備兵(勘弁してくれよ……)ガックリ

ワーワー

整備兵「……?」チラッ

508: 2015/08/05(水) 00:58:07.49 ID:E62F/Uln0
工廠妖精A「そっちがそういうことするからでさぁ!」

工廠妖精達「そうだそうだ!」

零戦妖精達「」ソコヲナントカー

工廠妖精B「それならもう判定に口出ししないっスね?無駄なロールもしないっスね?」

九七妖精達「」モチロンデゴザイマスー

工廠妖精達「前もそんなこと言ってただろー!」

工廠妖精達「この口だけ野郎がー!」

九九妖精「」コノトオリー

509: 2015/08/05(水) 00:59:23.33 ID:E62F/Uln0
整備兵「……何か揉めてるみたいだぞ?」

工廠長「演習の後はいつもああだ。艦載機の連中が遊び感覚で審判を振り落とそうとしただの何だので、ストライキ寸前まで行ったりする。まあ、最終的にはいつも俺達が折れるがな」

工廠妖精B「……分かったっス。今回は許してやるっス。次やったら今度こそ、そっちの艦載機を全部スクラップにしてやるっスよ?」

零戦妖精達「」ハハーアリガタヤー

整備兵「しかし、どうも悪いのは艦載機の妖精の方に見えるけどな……」

工廠長「俺達には俺達の仕事があって、あいつらにはあいつらの仕事がある。最終的に職務を遂行するためなら、時には譲ることも必要だ。……俺達工廠の妖精は、全員ちゃんとそのことが分かってンだよ。それだけだ」

漣「すいませーん!お風呂、空いてますか?」

510: 2015/08/05(水) 00:59:59.38 ID:E62F/Uln0
工廠長「」コクリ

漣「ありがとうございます。さっ、白雪ちゃん、早く早く!」グイグイ

白雪「整備兵さん、そんなに時間はかからないと思いますので……戻るまでよろしくお願いします」

整備兵「えーと……分かった」メソラシ

漣「ではっ!」

ダダダッ

整備兵「風呂……って、工廠に風呂があるのか?てっきり宿舎にあるものとばかり……」

工廠長「ここで風呂に行くって言ったら、ただの風呂のことじゃねェ。修復に行くってことだ」

整備兵「修復に風呂が必要なのか?」

511: 2015/08/05(水) 01:01:09.22 ID:E62F/Uln0
工廠長「まァ……まず若造も気づいたとは思うが、お嬢ちゃん達はあんな大事故起こしたってのにピンピンしてただろ?」

整備兵「ああ」

工廠長「ありゃァな、艤装と服が直接の傷を引き受けてるからなんだよ。戦いで酷くやられても、お嬢ちゃん達は目に見える怪我をほとんどしない。俺達が修理しなきゃならねェのは艤装と服だけだ」

整備兵「それは……良いな」

工廠長「だがな、そのダメージは怪我としては残らなくとも、お嬢ちゃん達の体に疲労として残る」

整備兵「走っていて転んでも擦り傷はできないけど、走った分の疲れは残るって感じか?」

工廠長「どっちかと言うと……走っていて転んでも擦り傷はできねェが、転ばずに走ったときより余計に疲れるって方が近いかもしれねェな。で、その疲労を解消する施設が風呂だ」

整備兵「なぜ、風呂……」

512: 2015/08/05(水) 01:02:02.12 ID:E62F/Uln0
工廠長「さっきも言ったが、もちろん普通の風呂じゃあない。疲労が良く取れる湯が入ってるからな。さっきのお嬢ちゃん達なら、ものの二、三時間ですっかり元気になるはずだ」

整備兵「一体何が入ってるんだその風呂……」

工廠長「後、高速修復材と呼ばれる液体を追加投入すると効果が高まる。どんな疲れも数秒で吹き飛ぶようになるな」

整備兵「本当に何が入ってるんだよ……!?」

整備兵(……待てよ。風呂の湯の成分を検査してみるのもありかもしれないな。何が修復を可能にしているのかのヒントになるかもしれない)

整備兵「その風呂の湯、少しもらうことってできるか?」

工廠長「……あァん?」

整備兵「いや、湯を少し。どうも気になってさ……」

513: 2015/08/05(水) 01:02:56.46 ID:E62F/Uln0
工廠長「……若造。俺も男だから分からないでもねェが……」

整備兵「ん……?何の話だ?」

工廠長「……残り湯集めるってのはちょいと趣味が悪いんじゃねェか?」ヒキッ

整備兵「そうじゃねえよ!」

工廠長「どっちにせよ修復用の風呂はお嬢ちゃん達以外立ち入り禁止だ。何だかんだ言っても一応風呂だからな。若造も自分の風呂が無ェってわけじゃねえだろ?」

整備兵「まあ、そりゃそうだけど……それなら、高速修復材の方はどうだ?」

工廠長「使いきりの量しか無ェから、ちょっと分けるってこともできねえ。それに貴重品だ。一つたりともやれねェよ」

整備兵「……ケチだな」ボソッ

工廠長「あァん!?」

514: 2015/08/05(水) 01:04:11.38 ID:E62F/Uln0
ガラガラガラ

整備兵「誰か来たのか?」クルッ

提督「こちらです、元帥閣下」スタスタ

元帥「うむ」スタスタ

整備兵(あの人が、元帥……!)バッ

整備兵「……」ビシッ

提督「こちら、工廠に勤務している整備兵です」

元帥「ふむ、君が例の……」ビシッ

元帥「提督から話は聞いておるよ。調査の具合はどうじゃね?」

整備兵「えー……。まだ開始したばかりでして、ご期待に添えるような進捗は……」

515: 2015/08/05(水) 01:05:12.14 ID:E62F/Uln0
元帥「ふぉっふぉっふぉっ!」

整備兵「」ビクッ

元帥「分かっておるよ。老い先は短くとも、流石にそこまでせっかちではないわい」

整備兵「は……はっ、ありがとうございます」ペコリ

整備兵(想像していたよりも、茶目っ気のある人みたいだ……)

元帥「ところで、整備兵君。君さえ良ければじゃが、近々会わせたい者がおる」

整備兵「……?」

元帥「寄越日鎮守府の工廠を運営しながら、君と同じように妖精の整備技術について調査している艦娘じゃ。名を明石と言う」

516: 2015/08/05(水) 01:06:01.72 ID:E62F/Uln0
整備兵(明石……工作艦だな)

元帥「同じ調査をしている者同士、意見交換などできると良い刺激になるじゃろう。どうかね?」

整備兵「ありがたいお話です。是非とも、お願いいたします」

元帥「うむ。では暇を見てこちらへ派遣するから、それまでは引き続き職務に励んでくれたまえ」

整備兵「はっ!」

ガラガラガラ

元帥「おお、加賀か」

加賀「他の皆がここにいると聞きましたので」スタスタ

517: 2015/08/05(水) 01:07:09.89 ID:E62F/Uln0
元帥「高速修復材を使わせておるから、終わり次第ぼちぼち戻って来るじゃろう」

加賀「では、秘書艦として私もここで待つことにします。……あら、あなたが整備兵さんね」

整備兵「ああ、初めまして。加賀は特に損傷を受けていないんだな」

加賀「空母というのは、元来後方にいて戦闘に直接巻き込まれたりはしないものよ。……それが分かっていない子もいるみたいだけれど」フン

整備兵(ああ……確かに、これは相当対抗心を燃やしてるな……)アハハ

元帥「しかし提督君、あの電探運用はなかなかのものじゃった。さながらレーダーピケット艦じゃな」

提督「元帥閣下に予測されていなければ、ですがね。元帥閣下の艦隊の戦略こそ、素晴らしいものでした」

元帥「ほう。どのようにじゃ?」

518: 2015/08/05(水) 01:10:02.45 ID:E62F/Uln0
提督「我々の攻撃隊が加賀へ集中していても青葉達へ集中していても、集中した側には流石に損害が出たでしょう。しかし絶妙なタイミングで攻撃隊の分割を誘い、対抗できるギリギリの戦力で各個撃破することで空母の少なさを補う……素晴らしい戦略です」

元帥「それだけ分かっていれば、君も凡庸とは言えまい」ニコ

提督「それと元帥閣下。今回は、潜水艦と外国の艦がいましたね」

元帥「伊168とビスマルクのことじゃな。伊168は演習への参加が初めてじゃが、実はかなり昔から寄越日におったのじゃよ。これまでは他の潜水艦娘と同じく南西諸島海域での資源確保作戦に忙しかったから、あまり他の作戦に参加できなかったのじゃ」

元帥「そして、ビスマルクの方は本当に新入りじゃ。着任は今日の朝じゃったからな。提督君の言う通りドイツの戦艦娘じゃ」

整備兵「着任が、今朝ですか……!?」

元帥「この国の艦娘の力をどうしても早く見たいと言うものじゃからな。急遽演習艦隊に加えたのじゃ。じゃから、まだ砲撃などで拙い所が多く見られたのう」

519: 2015/08/05(水) 01:10:55.65 ID:E62F/Uln0
バタン

翔鶴「ふぅ……」トコトコ

瑞鶴「あ、提督さん。本当に私達だけ高速修復材もらって良かったの?」トコトコ

提督「二人は今日と明日、夜間警備の係だからな。あまり長風呂されても困る」

瑞鶴「あ、そういうことか。なーんだ……って」ジロッ

加賀「こんにちは。翔鶴さん、瑞鶴さん」

翔鶴「こんにちは、加賀さ……」

瑞鶴「久しぶりね加賀。……会えて嬉しいわ」キッ

加賀「私は別に嬉しいとも思わないけれど」

瑞鶴「……っ、こっちこそ、コソコソ後ろに隠れて出てこないお高くとまった空母と会っても嬉しくも何とも無いわよ」ビキビキ

520: 2015/08/05(水) 01:12:04.01 ID:E62F/Uln0
翔鶴「ちょっと、瑞鶴……」

加賀「敵の接近を許す方が空母としては失格ね。艦載機の錬度だけでなく指揮能力も上げなければ、機動部隊の強化には繋がらないわ」

瑞鶴「うっ……。こ、こいつ……!」グヌヌ

ワーワーギャーギャー

整備兵(あー……始まってしまった)

提督「……申し訳ございません元帥閣下。後でよく言い聞かせておきますので」キリキリ

元帥「構わんよ。人も艦娘も、皆多かれ少なかれ衝突して育ってゆくものじゃ」

整備兵「……とは言っても、流石に張り合い過ぎな気もするな……」ポツリ

521: 2015/08/05(水) 01:13:03.56 ID:E62F/Uln0
青葉「ですよねぇ」

整備兵「うわあっ!?」クルッ

青葉「はじめまして。寄越日鎮守府所属、重巡洋艦青葉です!以後お見知りおきを!」

整備兵「は、はぁ……一体どこから出てきたんだ?」

青葉「そこは気にしちゃダメですよ。それにしても、ここの工廠はやっぱりミステリアスですね。特に資源収支の辺りとか」パラパラ

整備兵「おい、それ開発記録か?勝手に見て良いものじゃ……」

青葉「まあまあ、良いじゃないですか。これは面白いネタになりますよ……」メモメモ

整備兵「何のネタだよ……」

522: 2015/08/05(水) 01:14:10.49 ID:E62F/Uln0
青葉「では整備兵さんも、一発インタビューを。まずは職務に対する抱負をどうぞ!」

整備兵「……ノーコメントだ」

青葉「何ですか。面白くないですね。……ですが、この鎮守府は他とは違うことだらけですから。悪く言えば変、良く言えば見ているだけで楽しいですよ」

整備兵「まあ、それは俺も思ったことがあるが……」

青葉「ここを舞台に映画を作っても良いくらいなんじゃないでしょうか。こう記録映画風に、対深海棲艦戦争の真っただ中、一風変わった方法で戦果を上げ続ける一つの鎮守府があった……みたいな」

整備兵「そこまでずば抜けて変わってると言われ続けると流石に嬉しくないな……」

青葉「あはは、すみません。ともかく、これからもお互いに頑張っていきましょう」ポンポン

523: 2015/08/05(水) 01:17:35.18 ID:E62F/Uln0
整備兵「……そうだな」ニコッ

青葉「では、青葉は加賀さんを連れて行きますので。そのあと、他の四人が戻り次第、青葉達は寄越日へ帰ります。またいつか会いましょう!」スッ

整備兵「?」

青葉「握手ですよ。親交の握手です」

整備兵「あ……ああ。青葉も元気でな」ギュッ

青葉「もちろんです♪」サッ

<マアマアカガサン、マアマアマアマア

<チョッナニヨアンタ!

<イヤーゴメイワクオカケシマシタ!イヤースミマセン!デハ!

<サテ、ワシモモドルトスルカノウ

ガラガラガラ……ガタン

531: 2015/08/07(金) 00:07:31.31 ID:0PM6LSlP0
>>527
事故による被害が双方甚大で誰が誰に有効打を与えたのか分からなくなってしまったため、勝ち負けの判定も今回は付かなくなったと脳内補完をお願いします。
本文中ではっきりと説明するべきでしたね。すみません。

532: 2015/08/07(金) 00:10:02.99 ID:0PM6LSlP0
【工廠】
【夕刻】

整備兵「工廠長、燃料足りなくなったら言ってくれ。中途半端に開いてるドラム缶がある。……それにしても提督、俺を鎮守府に入れることは元帥にも話してたのか」

提督「当たり前だ。どこの馬の骨とも分からないお前みたいな人間に許可無く艦娘の情報を与えたら、俺の首が飛ぶぞ」

整備兵「馬の骨扱いかよ」

提督「しかし元帥も、軍内では珍しく妖精の技術を調査することに積極的でな。案外素早く話が通った」

整備兵「寄越日では明石という艦娘が俺と同じ調査をしているらしいが、それも元帥のお膝元だからってことか」

提督「明石は寄越日の工廠を最初期から運営している、海軍一の艦娘の専門家だそうだ。以前から俺も、色々と有用な情報を持っているかもしれないと思っていた」

整備兵「となると、明石との意見交換の機会を作るよう元帥に掛け合ったのもお前か?」

提督「当然だ」

533: 2015/08/07(金) 00:11:02.91 ID:0PM6LSlP0
整備兵「……いやあ、流石出来る奴だよ提督は」バンバン

提督「やめろ」グイ

提督「俺が引き込んだわけだからな。協力できることがあればやってみるのが筋というものだ。……そのかわり、明石からはきっちり情報を引き出せ。こっちには届かない話がごまんとあるはずだ」

整備兵「ああ、もちろんだ。それぐらいは心得てる」

提督「じゃあ、俺は執務室に戻る。今日はせいぜい働け」ヒラヒラ

整備兵「言われなくてもそうするしかないんだよ……」

ガラガラガラ……ガタン

整備兵(……さて、と)

534: 2015/08/07(金) 00:12:07.64 ID:0PM6LSlP0
整備兵(工廠の整理もだいぶ進んできたことだ。明石に会うまでに、俺の方でも妖精の技術について色々調べておかないとな)

整備兵(しかし、まずどの方向から調べてみるかという問題がある)

整備兵(もちろん、最も優先すべき調査対象は艤装そのものだ。幸い、ここには修理中の装備がたくさんある。今日は無理かもしれないが、雑用が忙しくないときにその構造を実際に見ることはできるだろう)

整備兵(実際に見るといえば風呂や高速修復材、変な力を発揮する工具なんかも調べたいが……覗きで捕まるのは最悪だし、修復材は渡せないと言われた。工廠妖精から工具を借りてまた仕事を中断させるのも良くない。ここは後回しだな)

整備兵(……そして、艤装そのものと同じくらい気になるのは妖精達自身だ。一番の疑問は当然、なぜ俺にだけ工廠の妖精達の声が聞こえるのか、ということだ)

整備兵(一方で、艦載機の妖精の声は聞こえなかったのも謎だ。工廠の妖精達と装備の妖精達は確かに性格が違うように見えるが、何か他にも違いがあるんだろうか?)

整備兵(他にも、撃墜された艦載機の搭乗員妖精の行方や、そもそも妖精はどこから生まれてくる何なのかということも全く分からない)

整備兵(それを探るためには、やっぱり妖精達に直接話を聞いてみないといけないだろうが……気軽に話せるのは工廠長くらいか。装備の妖精達は見分けすらつかないし、出撃のとき以外はどこにいるかも……)

整備兵「……とりあえず、できることからやってくか」ノビー

535: 2015/08/07(金) 00:13:02.86 ID:0PM6LSlP0
【深夜】

整備兵「白雪、その書類に今日使った資材量記録したらもう上がって良いぞ」

工廠妖精B「……!」ピクッ

白雪「整備兵さんは、まだ残るんですか?」

整備兵「修理が終わるまでは帰るなって工廠長から厳命されてるんだ。これだけ一度に何人も艤装が使えない状態はまずいから、今は猫の手でも借りたいんだとさ」フワァ

白雪「やっぱり、私ももう少し……力仕事はあまり力になれませんけど、書類仕事なら……」チラリ

工廠妖精B「そうそう、それが良いっスよ!」

整備兵「お前は黙っとけ」コツン

工廠妖精B「うびゃっ」

536: 2015/08/07(金) 00:13:57.38 ID:0PM6LSlP0
整備兵「……いや、白雪は明日も訓練があるからダメだ。俺はいざとなったら明日一日寝てられるし大丈夫だよ」

工廠長「あァん!?誰が明日は寝て良いって言った!?これが終わったら、明日はそのまま通常業務だ!」

白雪「……」

整備兵「あー……」ハハハ

白雪「……分かりました。でしたら、せめて今少し休憩をはさんでください。夕食を取ってからずっと働きづめです」

整備兵「まあ、な……」

白雪「良いですよね、工廠長さん?」ズイッ

工廠長「いや、今抜けられるとな……」ウデグミ

白雪「今抜けられると、何でしょう?」ズイッ

537: 2015/08/07(金) 00:14:58.56 ID:0PM6LSlP0
工廠妖精B「腰に手を当てて詰め寄る白雪さんも、ちょっとキツめでまた良いっス……俺も詰め寄られたいっス……」ウヘヘ

整備兵「……何とかしてくれこの妖精」ハァ

整備兵(とは言っても、白雪が自分の意見を前面に出すことってあまり無いよな……)

工廠長「……わーったわーった!確かに、集中力が落ちたらそれはそれでこっちが困るからな……短めに頼むぜ」ケッ

白雪「分かりました。では、お茶を淹れてきますね」ニコ

白雪「給湯室はどこでしょうか?」

工廠長「そこの扉入って右だ」クイッ

白雪「ありがとうございます」ニコ

工廠長「……けっ」

538: 2015/08/07(金) 00:15:57.23 ID:0PM6LSlP0
【工廠前 岸壁】

ザザーン ザザーン

整備兵「この辺で良いか……よいしょっと。ほら、白雪も」

白雪「休憩とは言いましたけれど、出てきてしまっても良かったんでしょうか……?」コシオロシ

整備兵「いや……折角休むなら、外に出た方が休んだ気がするだろって工廠長が言ってさ」

白雪「そうだったんですか……」

整備兵(本当は、白雪がいると工廠妖精Bの作業効率が地に落ちるから今だけでも出ろって言われたんだけどな……)

整備兵「工廠長も、さっき白雪に叱られて遠慮したのかもしれないぞ?」

539: 2015/08/07(金) 00:16:59.83 ID:0PM6LSlP0
白雪「し、叱ってなんか……///」カーッ

整備兵「口調が割とそんな感じだったけどな」ハハハ

白雪「やっ、やっぱり、きちんと休みは取るべきですから!整備兵さんの体調を考えてです!」

整備兵「ありがとう。白雪は真面目だな」ニコ

白雪「笑わないでください」プイ

整備兵「ごめんごめん」

白雪「……はい、どうぞ。緑茶です。漣ちゃんに、夜は目が覚めるように淹れたての濃い緑茶が良いと聞いて、練習したんです」ニコ

緑茶「」ホカホカ

540: 2015/08/07(金) 00:18:08.73 ID:0PM6LSlP0
整備兵(少し、冷ましてから飲むかな……)フーフー

白雪(あっ……)ハッ

白雪「すみません。夏なのに暑いお茶って、よく考えるとおかしかったですね……」シュン

整備兵「えっ?ま、まあ……でも、冷ませば良いし」

白雪「でも、余計な労力を使わせてしまって……」

整備兵「あと……あれだ!夏は冷たいものばかり飲みがちだから、ちょうど良いかもしれない」

整備兵「それにほら、潮風も涼しくて白雪のお茶との……そう、コントラストが良い感じだ!」

541: 2015/08/07(金) 00:19:04.01 ID:0PM6LSlP0
白雪「……」クスッ

整備兵「な、何だ?」

白雪「ふふっ……どうして整備兵さんが必氏になるんですか。普通、ここで言い訳をするのは私の方ですよ?」クスクス

整備兵「は、ははは……お、ちょっと冷めてきたかな」ゴクリ

整備兵(……!)

整備兵「……おいしい。凄く。今まで自分で淹れてきた茶が、ただの湯みたいだ……!」

白雪「そ、それは言い過ぎでは……」

542: 2015/08/07(金) 00:20:35.68 ID:0PM6LSlP0
ザバッ

秋雲『くぅー!久々の暮の風呂は良いねぇー』グテー

漣『寄越日のも暮のも変わりませんよ……』グテー

秋雲『そ、れ、でー……どうなのよ最近は?』ニヤリ

漣『……何がですか』ジロッ

秋雲『提督とのことだよー』

漣『別に何も変わりませんよ』

秋雲『えぇー、何それ。もう何年秘書艦やってるんだか。いい加減、実は漣ご主人さまのことがっ……そうだったのか、俺もっ……きゃーっ、二人は幸せなキスをして終了っ!みたいな展開が』

漣『』ガシッ

秋雲『ちょまっ、溺れる!艦娘なのに溺れて氏ぬ!』ガボガボ

543: 2015/08/07(金) 00:21:16.64 ID:0PM6LSlP0
漣『』ヒョイ

秋雲『ひどいねぇ。貴重なアドバイスを無下にするなんて』プカプカ

漣『別に何のアドバイスにもなってませんよ……』

秋雲『秋雲さんはー、ただ自分の心に忠実であれって言ってるんだよ?どうも漣は、口は回るくせに大事なことは言わないというかさー』

漣『確かに、秋雲さんがこっそり描いて売りさばいてる漫画は自分の心に忠実ですけどね』ジトッ

秋雲『あれはあれ、これはこれだよー。……まあでも、秋雲が本当に心の奥底から描きたいのはまた違ったものなんだよねぇ。別に媒体も漫画とは限らないから、そう……例えば、真実の恋とか?』

漣『何言ってるんですか、全く……とにかく、今ご主人さまは真剣に艦隊を指揮して深海棲艦と戦っているんです。そういうことは……』

秋雲『そんな時だからこそ、そういうことが大事なんだと思うけどねぇ……ま、いっか』

544: 2015/08/07(金) 00:22:01.02 ID:0PM6LSlP0



漣(……はぁ、眠れませんね)パチッ



ザザーン ザザーン

漣(適当に海の方へ来てしまいましたが、確かこちらには工廠しかありませんでしたね)

漣(この辺で引き返しますか……あれ?)

白雪「」ニコニコ

整備兵「」ニコニコ

545: 2015/08/07(金) 00:23:00.91 ID:0PM6LSlP0
漣(何してるんでしょうか……?)ジッ

漣(……ああ、白雪ちゃんがお茶を淹れてあげたんですね。練習の成果が発揮できたみたいで何よりです)

漣(盗み聞きも悪いですし、戻りましょう……)クルリ

漣(流石にあの二人はまだ会ったばかりですし、そういうのとは違うって分かりますが……)スタスタ

漣「……やっぱり、自分と重ねちゃいますよねー」ノビー

漣「まあ良いか。さっさと……おや?」

漣(執務室の明かりが点いていますね)

漣「……」

546: 2015/08/07(金) 00:24:13.63 ID:0PM6LSlP0
【提督執務室】

提督「……」カリカリ

コンコン ガチャ

漣「こんばんは、ご主人さま~♪」

提督「漣か。どうした?」

漣「いえ。遅くまでお仕事を頑張っているご主人さまに、お茶のサービスをと思いまして」

提督「もう夜も遅いだろう。わざわざ気を遣わなくても、」

漣「いえいえ!夕方はお風呂に浸かりっぱなしだったので、体力があり余っているんですよ」

提督「それなら、淹れてくれるに越したことは無いが……」

漣「了解です」ニコ

漣「ところで、何の書類を書いているんですか?昼には、そんなにたくさん無かったと思うんですけど……?」

提督「……『鎮守府間演習試合中の衝突事故に関する釈明と再発防止策』だ」

漣「Σ(;゚ロ゚)ゲッ」

547: 2015/08/07(金) 00:24:59.93 ID:0PM6LSlP0
漣「……と、ともかくお茶ができました!どうぞ!」スッ

提督「ありがとう。……うむ、旨いな」

漣「もちろんです。漣が何百回提督にお茶を淹れたと思ってるんですか」フンス

漣(……これで良いんです。こうして、今までと同じように過ごして行ければ。例え、何も変わらなくても……)

提督「……む」

漣「どうしました?」キョトン

提督「甘いな……玉露を入れたのか?」

漣「前も入れましたよ?同じ煎茶と玉露の組み合わせです」

548: 2015/08/07(金) 00:25:58.24 ID:0PM6LSlP0
提督「いや、だが今回の方が上手になっているな」

漣「えっ……」

提督「玉露の甘みを引き出して渋味を抑えるために、前よりも温度が低く抑えられている。いや……もしかしたら、夏だからあえて温めにしたのか?」

漣(……!)

漣「そ、そこまで細かく味わっているとは思いませんでした……」

提督「まあ……自然と、な。こっちこそ、何百回漣に茶を淹れられたと思っているんだ」

漣(自然と、ですか……)

提督「もう一杯、もらえるか?」

漣「……喜んで!」ニコッ

549: 2015/08/07(金) 00:28:12.37 ID:0PM6LSlP0
【工廠】

女神「こんばんは……」

工廠長「おう、女神か。ちょうど良い所に来た。……話があるんだが、良いか?」

女神「またすぐに別の場所へ発たなければなりませんので、どうか手短に……。そういえば、整備兵さんは……?彼がいると思ったのですが」

工廠長「若造なら、今は外で女と茶でも飲んでんだろうよ」

女神「それは良いですね……」ニコ

工廠長「良いもんかよ……だが、この話は若造がいない今しか出来ねェんだ。本題に入るぞ」

女神「ええ、どうぞ……」

550: 2015/08/07(金) 00:29:02.34 ID:0PM6LSlP0
工廠長「例のレシピはもう終わりだ。あんたには悪いが、俺が独断で中止した。流石にここの艦隊に与える影響が大きすぎる。資源という意味では問題ねえが、更新の遅れが無視出来ねェ」

女神「ああ、その話ですか……。きっと、整備兵さんや白雪さんに説得されたんでしょう……?」

工廠長「……まあな」

女神「分かりました……。大丈夫です。私の方からも、そろそろ止めるように言おうと思っていたところでしたから……」

工廠長「そいつは良かったぜ。俺達としても、あのレシピを使い続けるのは気が進まなかったからな。……それともう一つ。これを見ろ」ポイ

ガシャン

551: 2015/08/07(金) 00:30:00.81 ID:0PM6LSlP0
女神「鋲が打たれた鉄板ですね……。これが何か……?」

工廠長「……若造がやった。妖精の工具でな」

女神「……それは、驚きですね」

工廠長「驚きですねじゃねェ!どういうことだ?こいつは俺達にしか……」

女神「……知識は感情に、感情は心に、心は魂に」

工廠長「何の話だ?」

女神「つまり、経験は重要ではないのですよ……。過去を持っていなくとも、過去を知れば、それが魂になるのです……。工廠長、貴方も少しは期待したのではないですか……?」

552: 2015/08/07(金) 00:30:57.06 ID:0PM6LSlP0
工廠長「……バカバカしいこった」

女神「でしたら、整備兵さんに声が聞こえたとき、全てを気のせいにすることにすることもできたでしょう……。そうしなかったのなら、それは貴方がわずかでもそういう存在を求めたからに違いありません……」

工廠長「……チッ」

女神「私はその試みに反対しません……。私達の目的にも、決して反してはいません……。ですが、どうするかは貴方が決めることです……」

工廠長「……最後に良いか?若造も……『そうなる』ことは、あるのか?」

女神「そうですね――」



女神「――彼がそう、望めばですが」

553: 2015/08/07(金) 00:32:09.55 ID:0PM6LSlP0
本日はここまで。大体ですが、ここまでで序盤戦が終了、ここから中盤戦です。
次回も明日か明後日になります。

556: 2015/08/10(月) 09:35:01.39 ID:nx8qxGlj0
【??】

??「~~!」ブルブルブルブル

??「……ぷっ。頃してやるって目でこっち睨んでる」ニヤニヤ

??「ええと……流石にこれはやり過ぎじゃありません?」キョロキョロ

??「何を今さらー。一緒に作った共犯が引かないでよー」

??「いや、確かにそうですけど……」

??「   !      !」ガタガタガタガタ

??「あははっ、もっと震えだした。でも残念ながら声は出せませーん」

??「……」

??「あ、もう静かになっちゃったか。残念。まあ、まだまだ先は長いからねぇ……」

557: 2015/08/10(月) 09:37:08.96 ID:nx8qxGlj0
【朝】
【工廠】

整備兵「ぁー……肩痛い。腰痛い。腕痛い」ノビー

工廠長「どうだ?全部終わったか?」

整備兵「何とかな……」

工廠長「そろそろ終わりが見えてきたぞ。修理も全て、午前の訓練には間に合いそうだ」

整備兵「それは良かった」

工廠長「で、一旦若造の仕事も終わりだ。開発がしたかったら、俺達が修理を終わらせてから……そうだな、朝飯の後くらいからだな」

整備兵「なら工廠長、朝食まではまだ少し時間がある。修理の様子を見ていても良いのか?」

558: 2015/08/10(月) 09:38:08.79 ID:nx8qxGlj0
工廠長「……」ピクッ

整備兵「ん、ダメなのか?」

工廠長「いや、まだそうは言ってねェが……なんで、そんなもんが見てみてェんだ?」

整備兵「それはもちろん……」

整備兵(……いや、ちょっと待て)

整備兵(確か、まだ工廠長に俺の目的を話したことは無かったはずだ。だから、今ここで普通にその目的を話してしまえば工廠長の質問に対する答えになる)

整備兵(しかし、俺の目的――妖精の技術を調査すること――は、工廠長の側から見れば……妖精達の技術を盗むことを意味するんじゃないか?)

559: 2015/08/10(月) 09:39:28.38 ID:nx8qxGlj0
整備兵(今のところ工廠長は色々な情報をくれるし、妖精達が自分達の仕事内容を隠そうとする素振りも無い。案外、快く技術を分けてくれるかもしれないが……)

整備兵(……それでもやっぱり、工廠の妖精達が仕事に誇りを持っているということは考慮した方が良いように思える。そしてかつ、完全にごまかしにかかるのもかえって怪しいから、あくまで自然に……)

整備兵「……妖精達の整備技術に興味があるからだ。同業者として、さ」

整備兵(これも嘘じゃない。この鎮守府に来たきっかけとしては正しくないが、知れば知るほど妖精の技術を調査したい気持ちが増すのもまた事実だ)

工廠長「……」ジロリ

整備兵「……」

工廠長「……どうするかは俺が決めること、か」ボソッ

整備兵「……?」

工廠長「何でもねェ。……よし分かった。好きに見せてやるから、ついて来い」

560: 2015/08/10(月) 09:40:57.33 ID:nx8qxGlj0
カーンカーンカーン

バチッバチバチッ

工廠妖精達「ふっ!ふっ!」

整備兵「おお……ちゃんと見たことが無かったけど、やっぱりすごいな」

工廠妖精A「工廠長、どうしたんですかい?」

工廠長「若造が修理の様子を見たいってんで、連れてきたんだよ」

工廠妖精A「……そうでありましたか!おはようございます、整備兵殿!」ビシッ

整備兵「おはよう。別に早起きしたわけでもないけどな」

工廠妖精B「おはようございますっス!……して、白雪さんは?」

561: 2015/08/10(月) 09:42:01.83 ID:nx8qxGlj0
整備兵「まだ寝てるに決まってるだろ。諦めろ」

工廠妖精B「ああ、俺も白雪さんと一緒にお休みしたいっス……!」

整備兵「……妖精じゃなかったら、提督に頼んで憲兵隊を呼んでやれたんだが」ハァ

整備兵「ところで、今二人は何を修理してるんだ?」

工廠妖精A「魚雷発射管と魚雷でさぁ!」

整備兵「これが、九三式酸素魚雷……!」

整備兵(……のミニチュア版か)

整備兵「俺の腕の長さも無いぞ……こんな細かい配線よく扱えるな」ジー

工廠妖精A「あっしらの経験の賜物でさぁ」フンス

562: 2015/08/10(月) 09:42:58.75 ID:nx8qxGlj0
整備兵(でも……見た感じ、大体の構造は本物とそっくりに見えるな。気室、ジャイロ、スクリュー……)

工廠妖精A「見ても良いですが、この魚雷は組み立て中ですから触らないようにしてくださいよ」

工廠妖精B「安全装置が外れたら、蹴飛ばしただけで工廠を粉々にするかもしれない代物っス」

整備兵「そっちにあるのは何だ?」

工廠妖精B「修理の終わった12.7センチ連装砲っス。漣さんのものっスね。持ってみるっスか?」

整備兵「良いのか?……よいしょっと」ヒョイ

整備兵「おお……砲塔の根元辺りの形が本物とは違うのか。握れる部分が付いてるんだな」ギュッギュッ

工廠妖精A「その横にある突起を握りこんで押すと射撃でさぁ。もちろん今はロックが掛かっていますが……」

整備兵「射撃がここか……じゃあ、旋回と仰角の調節は……」

563: 2015/08/10(月) 09:44:30.24 ID:nx8qxGlj0
ピョコン

砲妖精「」ホウシンノナカカラコンニチハ

整備兵「よ、妖精?」

工廠妖精B「もう中に戻ってたっスか。早いっスね」

砲妖精「」シゴトネッシンナノデ

工廠妖精A「艦載機と同じで、それ以外の装備も細かい動作は妖精がやるんでさぁ。その連装砲も、弾の発射以外は全て妖精が受け持つんでさぁ」

整備兵「すごいもんだ……まるで、本物の船の乗員みたいに働くんだな」

工廠長「……」

564: 2015/08/10(月) 09:45:19.90 ID:nx8qxGlj0
整備兵「でもこれ、構造的に艦娘じゃない人間にも扱えるんじゃないか?」

工廠妖精B「妖精が言うことを聞かないから、まず照準ができないっス」

整備兵「うーん……だけど、照準できなくても射撃はこの部分を押せば良いだけなんだよな。それならできそうだが……」

工廠長「生身の人間が使うのは、やめておいた方が身のためだな」

整備兵「そうなのか?」

工廠長「考えてもみろ。人体の耐久力に対して反動が大きすぎる。艦娘は艤装が衝撃を肩代わりするから良いが……もし人間が使えば、」

整備兵「……」ゴクリ

工廠長「五体満足じゃいられねェかもしれないぜ……?」ニヤリ

工廠妖精A「」ニヤリ

工廠妖精B「」ニヤリ

565: 2015/08/10(月) 09:46:13.70 ID:nx8qxGlj0
整備兵「……じゃあ、これは返しておくから」ソソクサ

工廠妖精B「怖がりすぎっス……とは言っても、ここの区画にはもうその砲とさっきの魚雷くらいしか無いっすスよ。他はほとんど奥にしまうか、宿舎に届けちゃったっスから」

整備兵「それなら、もう一度さっきの魚雷を見るか……ん」

工廠妖精A「何ですかい?」

整備兵「これは……ちょうど今から、奥から二番目の……そこのバルブ締めるところか?」

工廠長「……!」

工廠妖精A「な、なんと……」

工廠妖精B「よ、良く分かったっスね!?」

566: 2015/08/10(月) 09:47:45.82 ID:nx8qxGlj0
整備兵「ああ、良かった……合ってたか。俺が知ってる、本物の方の魚雷と構造が同じだったからな」

工廠長「良く覚えてんな、そんなモン……」

整備兵「そっちの魚雷の仕組みは、軍でも勉強したし個人的にものめり込んだことがあったからさ」ハハハ

工廠妖精B「それならもう、整備兵殿も修理の仕事をすれば良いんっスよ!そうすれば、白雪さんもきっと一緒に来てくれるから……へっへっへ」

整備兵「心の声漏れてるぞ」

整備兵(でも、もしそうできれば妖精の技術のことがより分かるかもしれない。絶好の機会だ……!)

工廠妖精A「……工廠長、どうですかい?」クルッ

工廠長「……」ウデグミ

整備兵「……」

567: 2015/08/10(月) 09:48:39.21 ID:nx8qxGlj0
工廠長「……そう、だな。やってみるか。若造も、いつまでも荷物運びじゃつまんねェだろ。まァ、そんなに期待はしねェが」

整備兵「ほ、本当に良いのか?そんなに気軽に!?」ズイッ

工廠長「工廠を吹き飛ばしかねない様子なら即クビだがな」

整備兵「いや、俺も物凄く嬉しいんだが、仕組みはともかくどの装備も小さいから手先が……」

工廠長「そりゃ若造、いきなり魚雷みてェな繊細な部分を任せるわけ無ェだろうが!まずは基礎から、デカい部品からだ!」

整備兵「へ、へいへい……」

整備兵(まあ、そりゃそうか)

整備兵「……と、朝食の時間だ。一旦抜けさせてもらうぞ」

工廠長「おう」

工廠妖精A「頑張っていきやしょう!」

工廠妖精B「ご飯の後の作業には、白雪さんを是非連れ」

568: 2015/08/10(月) 09:52:01.46 ID:nx8qxGlj0
ガラガラガラ……ガタン

整備兵「ふう。眠い分、飯で体力を補わないとな……つらい」スタスタ

整備兵(……しかし、無茶な夜勤のおかげで、まだ朝なのにもういくつか大きな収穫があった)

整備兵(一つ目はもちろん、修理の仕事を勉強させてもらえるようになったことだ)

整備兵(そして二つ目はそれとも関係があるが……見たところ、艦娘達の武装の構造は、小さくなっていることを除けば現実の大戦期の兵器と何ら変わりないということだ)

整備兵(……まあ、さっき見た連装砲のように、艦娘が装着するための構造が追加されていることはあるが)

整備兵(このことは重要だ。艦娘の装備は妖精にしか扱えないとはいえ、別に未知の機械というわけじゃなく、その構造が人間にも理解できるということが分かったからな……)

整備兵「よし……ここからだ。頑張るぞ」グッ

569: 2015/08/10(月) 09:53:45.36 ID:nx8qxGlj0





工廠妖精A「工廠長、これで良いんですかい?」

工廠長「……ああ。昨日女神と話をしてから、良く考えて出した結論だ」

工廠妖精A「女神さんは何と?」

工廠長「てめえで勝手に決めやがれ、だとさ」フン

工廠妖精A「それは……また何とも……」

工廠長「……とにかく、俺は若造を巻き込んでいく方に決めた。このことが、戦いを終わらせるためにも良い方向に働くはずだ。これからは、そのために技術を全力で差し出していくしかねェ」

570: 2015/08/10(月) 09:54:28.75 ID:nx8qxGlj0
工廠妖精A「技術だけなら良いですが……工廠長やあっしら自身のことに興味を持たれたら、どうなさるおつもりですかい?」

工廠長「流石に、そこまで勘が良いとは思えねェな。……昔の俺だって、いきなりそんなことを言われたら絶対信じねェよ」

工廠妖精A「それは、あっしもです……しかし、もしもそうなったら……?」

工廠長「……」

工廠長(……畜生。決心したつもりでも、迷いは消えねェもんだな……)

工廠妖精B「ああ白雪さん、まだっスか……。もう六時間と四十七分も離れ離れに……」ウロウロ

工廠妖精A「」ゲシッ

工廠妖精B「」ゴフッ

574: 2015/08/25(火) 21:25:10.66 ID:+bSnai8C0
【数日後】
【食堂】

漣「いやー、朝一番の鳳翔さんのお味噌汁は最高だね!」プハー

白雪「はい……」

漣「あれ、どうしたの?元気無いけど……」

白雪「少し、整備兵さんが心配で……」

漣「……?」チラッ

整備兵「……はぁ」モグモグ

漣「確かに暗い雰囲気……でも確か、この前は新しく艤装の整備を教えてもらえることになったって喜んでたよね?」

白雪「それがどうも、思い通りに進んでいないみたいで……」

575: 2015/08/25(火) 21:26:03.86 ID:+bSnai8C0
【工廠】

工廠長「全ッ然駄目だこんなモン!実戦で使ったら氏人が出るぞ!」バンッ

整備兵「す、すまん……」

工廠長「溶接の位置がズレてる上に、成形も雑!もっと正確にやれねェのか!?」

整備兵「でも手の震えはどうにも……」

工廠長「若造がやるっつったから教えてやってんだろォ!?弱音吐く前に努力しろ努力!」

整備兵「く……!」スッ

バチッ バチバチッ

工廠長「さっきとなーんも変わってねェだろうが!」

整備兵「う……」

工廠長「ずっとこんなもん繰り返してても何も進みやしねェ……一旦お開きだ!若造、ちっと休んで気合い入れ直して来い!次は午後、分かったな!?」スタスタ

576: 2015/08/25(火) 21:27:00.75 ID:+bSnai8C0
ガラガラガラ……ガタン

整備兵「はぁ。厳しいな……」ドンヨリ

整備兵(最初こそ楽観的に構えていたが、艤装の整備は想像以上に大変な仕事だった)

整備兵(部品が小さいので、手元が少しでも狂えば即品質不良が起こる。そして、実際の兵器には無い艤装独特の機構も覚えきれないほど膨大)

整備兵(極めつけは妖精の工具だ。以前まぐれで鋲を打てたときのように何とかなるかと思ったら、そんなに簡単なものではなかった)

整備兵(どう使おうとしてもダメなときは全くダメ。あの魔法のような作用が出ることがあるのは百回か二百回に一度くらいだ)

整備兵(構造が分からないから、当然コツもテクニックも無い。毎日がむしゃらに使い続けていても、効果が発揮される確率は一向に上がる気配が無い)

整備兵(やっぱり妖精にしか使えないのが当然で、人間の俺が使おうというのは無茶なんだろうか……)

577: 2015/08/25(火) 21:28:01.39 ID:+bSnai8C0
整備兵(それに、ここ数日は朝から晩まで整備の練習をやっているにも関わらず、身体的にも精神的にも全く慣れが出てこない)

整備兵(数日くらいでは……とも思うが、ここまで集中しているのに仕事の断片すら飲み込めないのはもどかしい)

整備兵(俺だって、機械に関してはそこまで物覚えが悪い方ではないはずなんだが……)

整備兵(……そんなことを悶々と考えていたから、ついに工廠長から暇を出されたのかもしれない)

整備兵「今、何時だ……?」チラッ

整備兵(十一時か。白雪……は、軽巡洋艦と駆逐艦の合同砲撃訓練だったっけ)

整備兵「昼食もまだ先だし、どうするか……」スタスタ

龍驤「」スタスタ

578: 2015/08/25(火) 21:29:00.14 ID:+bSnai8C0
整備兵(……ん、あれは)

整備兵「おーい、龍驤!」

龍驤「お、整備兵はんか。どないしたんや?工廠は反対方向やで?」

整備兵「いや……艤装の整備を手伝ってるんだけど、なかなか上達しなくてな。工廠長に、気合い入れ直して来いって追い出されたんだ」ハハハ

龍驤「そ、そら災難やな……」

整備兵「龍驤はどこに行くところだったんだ?」

龍驤「資料室や。時間が空いたから、また本でも読もうかと思て。……せや、ならキミも一緒にどうや?昼まで暇やろ?」

整備兵「そうだな……ありがとう。行くよ」

579: 2015/08/25(火) 21:30:05.22 ID:+bSnai8C0
【資料室】

整備兵「今はどの本を読んでるんだ?」

龍驤「今は……こっちの、こっちの、これやな。もうほとんど読み終わったようなもんや」

整備兵「旧帝国海軍海戦史、大戦期編……か。今回は歴史の本だな。ちなみに、どうして読もうと思ったんだ?」

龍驤「ウチは、大戦のことを全然知らへんから。大戦で、ウチやこの鎮守府の皆と同じ名前のフネがどんな風に戦ったんか……それを知りたいと思ったんや」

整備兵「そうか……」

龍驤「……ま、大体のフネは大戦が終わる前に沈んでしもたみたいやけど」

整備兵「……ああ」

580: 2015/08/25(火) 21:31:05.30 ID:+bSnai8C0
龍驤「1942年8月、第二次ソロモン海戦……道中色々あったようやけど、孤立して結果的に囮みたいな形になってしもた『龍驤』は、複数の爆撃と雷撃を受けて沈没。そう書いてあったわ」

整備兵「……あまり、読んでいて気持ちの良いものじゃないよな」

龍驤「せやけど、ウチはあんまり気にしてへん。ウチとこのフネとは、やっぱり全くの別物やと思うし。……でも、なーんか違和感があるような気もするんや」クビカシゲ

整備兵「どういう意味だ?」

龍驤「上手く表現でけへんのやけど……『龍驤』の沈没のところを読んでると、ふと、その映像が思い浮かんでくるような感じになるんや」

整備兵「『龍驤』が海に沈んでいく光景が、か?」

龍驤「というより……海中から上を見てる自分が、沈んでいく感じっていう方が近いやろか。こうやって『龍驤』は沈んでったんやろな……みたいな。そんな、光景や」

整備兵「……?」

581: 2015/08/25(火) 21:32:07.48 ID:+bSnai8C0
龍驤「デジャヴ……ちゅうのとは、ちょっと違う話やけど。ま、感情移入のしすぎやろなぁ。同じ名前のフネに、勝手に親近感が湧いたのかもしれへん」ニッ

整備兵(……そんなに、簡単な話なのか?いや、でも龍驤は最初から『龍驤』について特に何も知らなかった。となると、やっぱり艦娘の龍驤と艦艇の龍驤は無関係ということに……)

龍驤「それで、や」ペラリ

龍驤「この本読んで、ウチが一番気になったんはさっき言った部分なんやけど……もう一つ、気になるところがあるんや。ここやな」ペラリ

整備兵「?」ノゾキコミ

龍驤「1945年……」

整備兵「暮軍港空襲……これか。ここは大戦のさらに前からずっと海軍の拠点だったからな。……狙われるのも、無理はなかったかもしれない」

龍驤「このときもまた、何隻もフネがやられたんやな……」

整備兵(天城、榛名、伊勢、日向……このとき沈んだ艦の艦娘も、どこかの鎮守府にいるのだろうか)

582: 2015/08/25(火) 21:33:02.22 ID:+bSnai8C0
龍驤「あと、特にここや。6月22日の空襲」チョンチョン

整備兵「……暮海軍工廠造兵部空襲。工廠機能喪失、工員の氏傷者多数……か」

整備兵(空襲での艦への被害はいくつかの本で読んだことがあったが、工廠の被害について詳しくは知らなかったな……)

龍驤「なんや、無性に悲しくなったんや。フネに乗ってて沈められるのも辛いやろうけど、工廠で働いてて爆弾落とされるのも同じくらい辛いやろな、て」

整備兵「……しかも、自分達が作っているものを壊されながら、だもんな」

龍驤「せやなぁ……」

整備兵(同業者として、その悲しみを想像するのは難しくない……俺にとってみれば、ここの工廠がある日突然深海棲艦に破壊されるようなものだ)

整備兵(そのときの工員達はどんな思いだったんだろうか。……そして、俺に整備兵の仕事の面白さを教えてくれたあの本の著者の工廠長。彼はどんな気持ちで、空襲の日を迎えたんだろうか)

583: 2015/08/25(火) 21:34:04.71 ID:+bSnai8C0
整備兵(しかし、暮軍港空襲のことを知っていながら、今日まで俺は工廠の被害を意識したことがあまり無かった)

整備兵(……恥ずかしい、な)

龍驤「……キミ、キミ!」ポンポン

整備兵「ん。……悪い、ちょっと考え事してた」

龍驤「いや、謝るのはウチや。暇潰しに誘っておいて、暗い話ばかりして。堪忍な」シュン

整備兵「そんなことは無いさ。普段考えてなかったことが考えられて、知識が深まった。良い時間だったよ……と、もうこんなに時間が経ったのか」

龍驤「ほな行こか。さっさと行かへんと、お腹空かせた水雷組が鍋空っぽにするで」パタン

整備兵「それはもっともだ」ハハハ

584: 2015/08/25(火) 21:35:01.52 ID:+bSnai8C0
【午後】
【工廠】

整備兵「……」トンテンカンテン

整備兵(……あれ?)

整備兵「……」トンテンカンテン

整備兵(どうしてだ……手先が定まる。朝やったときよりも、思い通りに工具を動かせる)

整備兵(妖精の工具も、十回に一回くらいは効果を発揮するみたいだ。明らかに確率が高まっている)

整備兵(どうすれば上手くいくかが、何の手掛かりも無いのになぜか分かる……そんな気分だ)

整備兵「……こ、工廠長。出来たぞ」

585: 2015/08/25(火) 21:36:00.97 ID:+bSnai8C0
工廠長「あァん?こんなに早く出来るわけ無ェだろ。真面目にやんねェなら……な、何だこりゃァ!?」ガタッ

整備兵「……」

工廠長「おい、貸せ!早くしろ!……ん、良し、良し、良し……何てこった」

整備兵「ど、どうだ……?」

工廠長「新米としちゃ、十分合格点がやれる出来だ。……若造、今朝までのは一体何だ?手抜いてたんじゃねェのか?」ジロッ

整備兵「そんなことするか!なぜか、今朝までと違って上手く出来たんだ……」

工廠長「じゃあ、慣れたってことか?」

整備兵「いや……」

整備兵(今朝までは、慣れどころか身に付いている実感すら無かった。こんな短時間で急激に伸びるわけが……)

586: 2015/08/25(火) 21:37:01.37 ID:+bSnai8C0
整備兵「……あれかもな。やっぱり、一旦作業をやめて休んだのが効いたかもしれない」

工廠長「んなことで、ここまで変わるとは思えねェけどなァ……?」ジー

整備兵「まあ、俺もそれは思ったけど……」

整備兵(他にさしたる理由も見当たらない)

ガラガラガラ

白雪「こんにちは、整備兵さん、工廠長さん」ペコリ

整備兵「白雪!」ニコッ

工廠長「よう、お嬢ちゃん」

587: 2015/08/25(火) 21:38:02.14 ID:+bSnai8C0
白雪「整備兵さん、何だか……」

整備兵「ああ……バレたか。いや、実は整備の練習の調子が良くてさ」

白雪「本当ですか!」

工廠長「おう。今朝までの調子が続くようなら、もう止めようかとも思ってたがな……今さっきの出来なら、まだ見込みがある」

白雪「良かったです!」ニコ

整備兵「いやぁ、俺も驚いてるくらいだよ」ハハハ

588: 2015/08/25(火) 21:39:11.25 ID:+bSnai8C0
工廠長「おい。ちょっと上手くいったからって、気ィ抜くんじゃねェぞ!今やってんのは基本も基本だ。まだまだ難しくなるから覚悟しとけ!」ムスッ

整備兵「分かってる。……じゃあ、キリが良いから、この辺で今日の分の装備開発を済ませることにするか」

白雪「はい。早く戦闘機の更新も始めたいですね」

工廠長「ったく、ちゃんと聞いてんのか……?」ブツブツ

整備兵「」ニコニコ

白雪「」ニコニコ

工廠長「……けっ」

598: 2015/08/28(金) 00:43:00.09 ID:HCx1Mk7O0
【数日後】
【食堂】

漣「いやー、朝一番の鳳翔さんの焼き魚は最高だね!」パクパク

白雪「はい……」

漣「あれ、どうしたの?元気無いけど……」

白雪「少し、整備兵さんが心配で……」

漣「……また?」チラッ

整備兵「」ガツガツ

整備兵「ごちそうさまでした!」ガタッ

599: 2015/08/28(金) 00:44:02.73 ID:HCx1Mk7O0
鳳翔「あまり早く食べては体に毒ですよ」ニコ

整備兵「あー……すみません。でも、急いで工廠に行かないといけないので!」ペコリ

ガチャバタン

漣「あれ、でもこの前と違って元気そうだけど……。にしても、白雪ちゃんはいつも整備兵さんのこと気に掛けてあげてるよね。漣だったら、整備兵さんもいい大人なんだから別に放っておいて良いかーとか思っちゃうけど」ノビー

白雪「それは……私は補佐官なんだから、当たり前だよ」

漣「ふむふむ、さすがは白雪補佐官殿!」

白雪「へ、変な呼び方はやめてよ……」

漣「それで、今回は整備兵さんがどうしたの?」

白雪「ええと、実は――」

600: 2015/08/28(金) 00:45:02.00 ID:HCx1Mk7O0
漣「……ほうほう。つまり、整備兵さんはスランプを脱してから寝る間も惜しんで工廠で作業をしていると」

龍驤「さらにその上、工廠の通常業務もこなしながら空き時間もどこかへ出かけていて、休む暇も無い生活を送っていると」

漣「だから心配、と」

白雪「うん。そうなんだ……って、龍驤さん!?」ガタッ

龍驤「そんなに驚かなくてええやろ。それとも、聞かれたくない話やったか?」ニッ

白雪「そ、そういうわけでは……」

漣「そうだよ白雪ちゃん。龍驤さんなら、先輩として良いアドバイスをくれるかも!」

龍驤「で、まず大事なんは、白雪がその問題にどう対処したいかっちゅうことや。まさか仕事するなとも言えへんし」ウーン

白雪「はい……整備技術の調査ができるのは良いことですから。けれど、あまり仕事量が多くても良くないと思うんです」

601: 2015/08/28(金) 00:46:59.62 ID:HCx1Mk7O0
漣「だけど、白雪ちゃんも仕事を手伝ってあげてるし、言うほど大変じゃないんじゃないかな?」

白雪「うん……でも、事務作業をお手伝いすることはできても、整備兵さんにしかできない仕事や工廠の仕事以外の負担は私にも……」

龍驤「あー、空き時間に出かけてることなら、仕事やないから気にする必要無いで」

白雪「そうなんですか?」キョトン

龍驤「多分それ、ウチと資料室行ってるときやから」

白雪「資料室、ですか……?」

漣「あっ、白雪ちゃんは知らないよね。この鎮守府や海軍について古い本がたくさん置いてある部屋のことだよ。あんまり行く人はいないかな……」

龍驤「懐古趣味っちゅうか軍事趣味っちゅうか……そんなようなトコで話が合うから、最近は毎日ウチと整備兵はんで本読みに行っては色々話してるんや」

白雪「それなら、気分転換はできているんですね……いえ、ですが!」キリッ

602: 2015/08/28(金) 00:48:00.97 ID:HCx1Mk7O0
白雪「やっぱり、休息が足りていないことには変わりないと思うんです。私が何か、疲労を取るお手伝いをできれば良いな、と……」

漣「疲労を取る、つまり癒やし……何だろ?」ウーン

龍驤「難しく考える必要はあらへんのやないか?男連中なんて、白雪みたいな子が茶出して肩の一つでも揉んどけばたちまち疲労回復やろ……あら、塩どこや塩」キョロキョロ

漣「でも、それだと何だかインパクトに欠けません?」

龍驤「インパクト言うてもなぁ……それならマッサージはマッサージでも、踏んでみるとかどうや?」ニヤッ

白雪「え、えっと……それはやりすぎでは……」

漣「なら、自分がされて癒やされることを考えてみるとか?」

龍驤「ちなみにウチが一番癒やされるんは、訓練の後、岸壁で鳳翔に膝枕してもらう時や」

漣「そんなことしてもらってるんですか……」

603: 2015/08/28(金) 00:49:03.17 ID:HCx1Mk7O0
龍驤「いや、これがホンマにええんやって……。漣も白雪も、一度経験したらやめられなくなること間違いなし。そのままズブズブとはまっていくんや……くれぐれも気をつけるんやで」

白雪「膝枕って、そんなに危ないものだったんですか……!?」

龍驤「ってなわけで、膝枕、どや?」パチン

白雪「それは……えっと、龍驤さんと鳳翔さんなら普通にできますけど……!」アセアセ

白雪(私と整備兵さんだと、また話は別じゃないかな……。そういうのはもっとこう、深い仲の人がするものなんじゃ……)

漣「うーん……確かに、整備兵さんに白雪ちゃんの膝枕は贅沢すぎる気もするかも」アハハ

白雪「ど、どういう意味……!?」

龍驤「となると、膝枕はしないんか?」

白雪「し……しません。普通な方法でいくことにします」プイ

604: 2015/08/28(金) 00:50:01.76 ID:HCx1Mk7O0
龍驤「なんや。つれない返事やな」ガッカリ

白雪(露骨にがっかりされてる……!)

漣「まあ、頑張ってしてあげれば整備兵さんは何でも喜ぶと思うから大丈夫じゃないかな?」

漣(何だかんだで、整備兵さんは白雪ちゃんのことをかわいがってますし)

龍驤「あんまり面白味あらへんけど……ま、頑張りや。ウチはもう出るで」ガタッ

白雪「は、はい。相談に乗ってくれて、ありがとうございました」ペコリ

龍驤「いやー、こりゃ面白くなりそうやと思ったんやけどなー。いやぁー残念やわー……」チラッチラッ

スタスタスタ……

白雪(……もしかして私、からかわれてただけかな……)ハァ

605: 2015/08/28(金) 00:51:02.86 ID:HCx1Mk7O0
【夜】
【工廠】

白雪「整備兵さん、今日の分の書類処理が全て終わ……」

バチッ バチバチッ

整備兵「……」ジッ

白雪(……集中してるみたいだから、少し待っていようかな)

整備兵「……」カチャカチャ

白雪(本当に真っすぐ、手元だけを見てるんだなぁ……)

606: 2015/08/28(金) 00:52:00.17 ID:HCx1Mk7O0
整備兵「……よし、できた」フゥ

白雪「お疲れさまです。書類、全て片付きました」

整備兵「ああ、白雪か。ごめん、気づかなくて」

白雪「いえ。それだけ集中していたということですから」ニコ

整備兵「白雪のおかげで俺も調査に没頭できるんだ、ありがたいよ。……それじゃあ、流石にもう遅いから帰るか」

整備兵(ふー、首と肩がバキバキだ……眼精疲労ってやつか)ノビー

白雪「あの、整備兵さん……良ければですが、肩をお揉みしましょうか?」

整備兵「え……?」

607: 2015/08/28(金) 00:52:59.68 ID:HCx1Mk7O0
白雪「見たところ、細かい作業でお疲れのようですし……もちろん、整備兵さんが良ければですが」

整備兵「う、ん……確かに肩は凝ってる、けど……」

整備兵(提案はありがたいが……果たしてこれは受けてしまって良いのか?肩揉みは、普通補佐官にやらせる仕事じゃないような気がする)

整備兵(そもそも補佐役の女の子に肩揉ませるとか、もしそんな偉そうな奴がいたら絶対軽蔑するぞ)

整備兵(しかし自分がされる側になるとしたら、嫌な気はするわけないし……どうしたものか)

白雪(……さ、流石にお節介すぎたかな。よく考えたら、肩揉みは普通補佐官がする仕事じゃないような気がするし……)

白雪(でも、結局それくらいしか思いつかなかったし、何もしなかったら整備兵さんだけじゃなくて漣ちゃんや龍驤さんにも悪いよね……)

白雪「……」ジッ

608: 2015/08/28(金) 00:54:02.66 ID:HCx1Mk7O0
整備兵(白雪の視線から決意を感じる……これだと、むしろ受けない方が白雪を嫌な気分にさせてしまうかもしれない)

整備兵(……そうだ。人の親切は快く受け取らないと。そう、だから俺は別に肩を揉んでもらいたいとかそういうのではなくて……)ウンウン

整備兵(そうそう。ただ単に、白雪の親切心を無駄にしないため。間違えてもらっちゃ困る。ただそれだけのために……)ブツブツ

整備兵「……そ、それなら、頼もうかな」

白雪「本当ですか!」パァァ

整備兵「だけど、白雪こそ良いのか?今だって白雪は十分仕事してくれてるし……」

白雪「でも、整備兵さんがお疲れでしたら私が放っておくわけにはいきませんから」ニコ

整備兵「うっ……」

整備兵(や、優しさが眩しくて何も言葉を返せない……)

609: 2015/08/28(金) 00:55:01.78 ID:HCx1Mk7O0
……ギュッギュッ

白雪「ど……どうですか?」

整備兵「」ビクッ

白雪「す、すみません。強かったでしょうか?」

整備兵「……いや、違う違う!ちょうど良い力加減だ。上手いよ」

整備兵(耳元で急に白雪の声がして驚いてしまった……俺が緊張してどうする。ともかく落ち着こう……)

白雪(良かった……ぶっつけ本番だったから心配だったけど、何とかなったみたい……)

整備兵「お、思えば、生まれてこのかた他人に肩を揉んでもらうことなんて無かったからさ……いや待て、それは当たり前か。とにかく、自分でするのとは全然違うな……と。もちろん良い意味で」

白雪「やっぱり、手が届きにくいところとかもありますしね」

整備兵「そうそう」

610: 2015/08/28(金) 00:56:00.33 ID:HCx1Mk7O0
白雪「……」ギュッギュッ

整備兵「……」

整備兵(こういうときって、何を話せば良いんだろうか。いやむしろ、余計な話をし続けるのも良くない気が……)

白雪「……」ギュッギュッ

整備兵(それにしても……本当に上手いな。強すぎず、弱すぎず、的確な場所を……)

白雪「……」ギュッギュッ

整備兵(ふぅ……心地良いとはまさにこのことを言うんだろう……)

整備兵(……あれ、気が抜けたら、何だか、急に、眠く……)

611: 2015/08/28(金) 00:57:17.99 ID:HCx1Mk7O0



ギュッギュッ

白雪「……?整備兵さん?」

整備兵「……」ウツラウツラ

白雪(あっ……)

白雪「……やっぱり、疲れていたんですね」

白雪(少しは、整備兵さんをリラックスさせることができたのかな……?)

白雪(……でも、どうしよう。すぐに起こせば良いのかもしれないけど、眠っていてほしい気もするし……)

白雪(かと言って部屋まで連れて行くのも無理で、ここに置いて行くわけにも……)

612: 2015/08/28(金) 00:58:13.59 ID:HCx1Mk7O0



龍驤『となると、膝枕はしないんか?』



白雪「……!」ハッ

白雪(そ、それはもう完全に補佐官の仕事じゃないと思う……!)

白雪(で、でも……膝枕はすごく癒やされるって龍驤さんも言っていたよね)

白雪「……」キョロキョロ

白雪(今なら誰もいないし、少しくらいなら試してみても……)

白雪「……よいしょっ、と」スッ

ポフッ

白雪(頭だけでも、結構重いんだ……。あまり動かないようにしないと)プルプル

613: 2015/08/28(金) 00:59:01.23 ID:HCx1Mk7O0
白雪「……」ドキドキ

白雪(……ど、どうしてこんなに緊張するんだろう。脚に乗せてるだけなのに)

白雪「」チラッ

整備兵「Zzz……」

白雪「」メソラシ

白雪「……」ドキドキドキドキ

白雪(やっぱり、こっそり膝枕しているという状況が良くないのかも……。と、とにかくもう終わりにしなきゃ)

白雪(……って、一回膝枕しちゃったら起こさないと下ろせないよ!な、何やってるの私……!)

白雪「うぅ……」ナミダメ

614: 2015/08/28(金) 01:00:06.27 ID:HCx1Mk7O0





工廠妖精B「白雪さんの善意につけ込み己の下卑た欲望を満たそうとする奸賊め――整備兵、この世に生きる価値も資格も無い貴様に、俺が引導を渡してやるっス!御覚悟ぉぉぉッ!」ダッ

工廠妖精A「……」ゲシッ

工廠妖精B「」ヒラリ

工廠妖精A「……なっ!?」

工廠妖精B「俺の白雪さんへの想いが俺に無限の力を与えてくれるっス……。ふはははは!もはや何物も俺を止めることは出来ないっスよ!」

工廠妖精A「ひっ、非常呼集!砲科と魚雷科の全工員を投入!何としても奴を止めるんでさぁ!」

工廠妖精達「待てやぁぁぁ!」ダダダッ

ウワー ハナセー ウルセーシズカニシテロー

工廠妖精B「……む、無念。白雪さん、すまないっス……」ジタバタ

工廠長(あー、全員で覗き見ってのはちょいと趣味が悪すぎたかもしれねェな……)

工廠長(……ま、良いか)

625: 2015/08/29(土) 23:43:01.74 ID:oyrpz1TH0
【朝】

チュンチュンチュン

整備兵「……?」パチッ

整備兵(ここは……工廠?……そうか。昨日の夜、白雪に肩を揉んでもらっている間に寝ちゃったのか)

整備兵(……ん?工廠の床ってコンクリだったはずだよな……何だか、柔らかくて温かい……?)チラッ

整備兵「なっ……!?」

整備兵(お、おい待て!どうして白雪に膝枕されているんだ……!?)

整備兵(昨日頼んだのは、確かに肩揉みだけだったはずだ。膝枕なんて頼んだ覚えは無い。これは絶対だ……)

整備兵(となると、白雪が自分からしてくれたのか?……いや、そうする理由も無いだろう。やっぱり俺が、知らない間に白雪に膝枕させたのか?)

整備兵(だが、幸い白雪はまだ寝ている。こっそり起きれば気づかれないはずだ。事情を聞くのはそれからで良い)チラッ

626: 2015/08/29(土) 23:44:05.40 ID:oyrpz1TH0
白雪「……すぅ、すぅ……」

整備兵(艤装を外して眠っていると、本当に普通の子供……いや、もう子供ってほど幼くもないか。とにかく、人間にしか見えないな……)ジッ

整備兵「……」ボー

整備兵(……ってまずいまずい、寝顔を見るのは非常識だ)

整備兵(では、失礼して……)ムクリ

白雪「ん、ぅ……?」パチッ

整備兵「あ……」

白雪「せ、整備兵さん……!///」カーッ

整備兵「ま、待ってくれ!退く!今退くから!」ガバッ

627: 2015/08/29(土) 23:45:01.79 ID:oyrpz1TH0
白雪「……」ズーン

白雪(どうしようか悩んでる間に寝ちゃったんだ……。何て言い訳しよう)

整備兵「……ええと、ごめん」ペコリ

白雪「ど、どうして整備兵さんが謝るんですか?」

整備兵「いや……多分これ、俺がさせたんだと思うから。でも俺、昨日肩を揉んでもらっている最中に眠ったみたいで、記憶が……」

白雪「いえ、違います!そうではなくて……」

整備兵「違うのか?」

白雪「そうではなくて……」

白雪(否定したは良いけど、私の方からしたとは言えないし……。それなら)

628: 2015/08/29(土) 23:46:15.57 ID:oyrpz1TH0
白雪「わ、私も、肩揉みの最中に眠ってしまったみたいで。多分、二人とも眠っている間に、自然に整備兵さんが倒れ込んでこうなったのではないかと……」

整備兵「そう、か……」

整備兵(ただ倒れ込んだだけであの姿勢になるとは思えないが、白雪が言うならきっとそうなんだろう……)ウーン

整備兵「それじゃ、とりあえず食堂に行こうか。朝食の時間だ」

白雪「……あの、整備兵さん」

整備兵「?」

白雪「疲れ、少しは取れましたでしょうか?」

整備兵「もちろん。すごく楽になった。気づかないうちに、結構疲れが溜まってたんだな」

白雪「それは良かったです。よければ、また……」

629: 2015/08/29(土) 23:47:00.70 ID:oyrpz1TH0
整備兵「……で、でも、しばらくは良いよ。多分、また途中で寝て迷惑かけるからさ。それに、しょっちゅうやらせても白雪に良くない。白雪も途中で寝るくらい疲れてたんだろ?」

整備兵(本音は、こんなの何度もやってもらってたらいずれまた何か事故が起きそうだからだ……。膝枕だからまだ何とかなったが、万一白雪と気まずくなるようなことが起こったら……!)

白雪「……そ、そうですね。整備兵さんの言う通りです」

白雪(何言ってるの私!次に何か変なことしたら今度こそ言い訳できないし、もうやめておいた方が良いに決まってるよ……)

整備兵「大丈夫か?足、しびれてないか?」

白雪「はい、平気です……」

白雪(でも……)


整備兵『……いや、違う違う!ちょうど良い力加減だ。上手いよ』


白雪(少し……残念、かも)

630: 2015/08/29(土) 23:48:03.13 ID:oyrpz1TH0
【食堂】

龍驤「おっ、白雪。どうやった、昨日は?」パクパク

白雪「ど、どうと言われても……」

漣「そうそう。結構夜遅くまで待ったのに帰って来なかったし、今朝も漣が起きたらもういなかったから、ずっと気になってたんだ」モグモグ

白雪「あの……少し肩を揉んであげて、とりあえず、疲れは取れたって言ってもらえました」

龍驤「ええやん!これは整備兵はんもドハマリやろ。またやってくれー言うて、泣きつかれたんやないか?」

白雪「そ、そんなことないです。もう、しばらくはやめておこう……ということになりました」

漣「ええっ!?なんで!」

龍驤「何や?まさか白雪、整備兵はんが嫌がるくらい肩揉みが下手なんか?」

631: 2015/08/29(土) 23:48:59.83 ID:oyrpz1TH0
白雪「えっ……」ポロッ

カチャン

漣「白雪ちゃん、箸!落としたよ!」

白雪「あ……ごめん。ありがとう」

龍驤「何動揺しとるんや。冗談や。疲れが取れた言うてたんやないか」コツン

白雪「は……はい、そうですよね。そういう理由ではないと思うんですが、とにかくやめておこうということに……ほら漣ちゃん、早く食べないと訓練に遅れるよ!」アセアセ

龍驤(これは、何か訳ありやな……)

漣(怪しい……)

632: 2015/08/29(土) 23:50:04.70 ID:oyrpz1TH0
【工廠】

ガラガラガラ……ガタン

整備兵「おはよう」

工廠長「おう、入れ」

整備兵「早速、整備の練習の続きを……」

工廠長「……したいところだが、今日はそうはいかねェ」

整備兵「別の仕事か?」

工廠長「ああ。今日の朝早く、他の艦隊の支援に出てた空母のお嬢ちゃんが帰ってきたからな。その艦載機の整備と補充をしなきゃなんねェ」

整備兵「翔鶴と瑞鶴、もう帰ってきてたのか!」

633: 2015/08/29(土) 23:51:07.21 ID:oyrpz1TH0
整備兵(二人が、寄越日の艦隊の南方海域進出を支援するために数日前から派遣されていたのは知っていたが……帰投予定日は昨日だったのか。色々あり過ぎて忘れていた)

工廠長「てなわけで、まずは仕事だ。……手ェ出すんじゃねえぞ。まだ艦載機は若造じゃ力不足だ」

整備兵「分かったよ……」





ガッシャンガッシャン

カーンカーンカーン

工廠妖精A「魚雷の補充が必要な班は報告!補充理由として使用か搭載機喪失かを述べること!」

工廠妖精達「「「了解ー!」」」

634: 2015/08/29(土) 23:52:03.01 ID:oyrpz1TH0
工廠妖精B「損害の少ない機から修理するっス!特に発動機を損傷した機は最後に回すっス!良いっスね!」

工廠妖精達「「「了解ー!」」」

整備兵「お疲れ、二人とも」

工廠妖精A「おはようございます、整備兵殿」

工廠妖精B「……ふん」ジロッ

整備兵「……俺、何かしたか?」

工廠妖精A「整備兵殿は気にしなくて良いことでさぁ」

635: 2015/08/29(土) 23:53:10.38 ID:oyrpz1TH0
工廠妖精A「今回の艦載機の損害状況でさぁ。さ、どうぞ」スッ

工廠長「おう。……今度の出撃はかなり消耗が大きいな。艦攻は半数が未帰還か……」

工廠妖精B「何でも、南方海域では敵が新型艦載機を大量に投入してきて、制空権の確保がこれまでより難しくなっているらしいっス」

工廠長「そうか……まァ良い。前線のことをどうこう言っても仕方ねェ。俺達の仕事は、いつでも十分な物資と武器を供給することだ。修理と補充を急げ!」

工廠妖精A「了解!」

工廠妖精B「了解っス!」

整備兵「……」


龍驤『……撃墜された機体の妖精は、果たしてどうなったんやろなー、ってとこやろ?』


整備兵(いつまでも、技術的な方面からだけ調べてるわけにはいかないよな。そろそろ、そっちの方についても情報を集めなければ)

636: 2015/08/29(土) 23:54:02.17 ID:oyrpz1TH0
整備兵「……となれば、青葉じゃないがまずはインタビューだな」

整備兵(えーと、紙とペンはあるな。よし)

整備兵「忙しいところ悪いんだが、ちょっと良いか?」

零戦妖精A「?」クビカシゲ

整備兵「質問したいことがいくつかあるんだ。手短に済ませるから、聞いてくれないか?」

零戦妖精A「」コクリ

整備兵「ありがとう。答えるときは、この紙に書いてくれ」スッ

零戦妖精A「」コクコク

637: 2015/08/29(土) 23:55:04.17 ID:oyrpz1TH0
整備兵「じゃあ、まず……俺と、君みたいな艤装を動かしている妖精達は本当に話せないのか?」

零戦妖精A「」カキカキ

『ほんかんのことばがせいびへいどのにきこえないだけ。そういういみなら、たしかにはなせない』

整備兵(平仮名しか書けないのか。……字も、あまり上手くはないな)

整備兵「俺は工廠で働いている妖精達の声なら聞くことができるんだが、どうしてか分かるか?」

『わからない』

整備兵(……にべもないな)

638: 2015/08/29(土) 23:56:02.48 ID:oyrpz1TH0
整備兵「それじゃあ……工廠の妖精達のことは、どう思ってる?」

『いつもがんばっている。ほんかんたちとちがってまじめ。すごいとおもっている』

整備兵(何だか単純というか、子供みたいな感想だな……)

整備兵「艦載機の妖精達は、真面目じゃないのか?」ハハハ

『ふまじめなときも、たまにあるかもしれない。ほんかんはひこうたいちょうなので、すこしはんせいしている』

整備兵「飛行隊長なのか。戦闘機隊の?」

『はい』

639: 2015/08/29(土) 23:57:16.11 ID:oyrpz1TH0
整備兵「ちょっと話を変えるぞ。自分が生まれたときのことを覚えてるか?」

『うまれる、ということばのいみがわからない』

整備兵「……それなら、言い方を変えるよ。覚えている中で、一番昔の出来事は何だ?」

『せんとうきにのって、そらにとびだしたこと』

整備兵(つまり、翔鶴達に撃ち出された矢が戦闘機に変わった瞬間のことを言っているのか?となると、妖精達はその瞬間に生まれてくるということになるが……)

整備兵「今までに出撃した回数は何回だ?」

『ごかい』

整備兵「五、回……?ちなみに、さっき教えてくれた一番最初の出来事は、そのうちの一回目の出撃のときのことだよな?」

『はい』

640: 2015/08/29(土) 23:58:01.52 ID:oyrpz1TH0
整備兵「……分かった。これで最後の質問だ。気を悪くしないでほしいんだが……撃墜されると、君達はどうなるんだ?」

零戦妖精A「……」

零戦妖精A「」カキカキ

『おとされたことがないから、わからない』

『それに、おとされたらかえってこられないから、だれもそのしつもんにはこたえられない』

整備兵「その……通りかもな。ありがとう。それじゃ、またな」

零戦妖精A「」フリフリ

整備兵「……ふぅ」クルッ

641: 2015/08/29(土) 23:59:03.74 ID:oyrpz1TH0
整備兵(過去に、翔鶴達が五回より多く戦闘機隊を発艦させているのは確実だ。そして、あの妖精は今まで撃墜されたことが無いと言っている)

整備兵(つまり、あの妖精は五回前の戦闘から出撃を行っていて、それ以前は別の妖精が出撃していたことになる)

整備兵(さらに、あの妖精が言っていた「落とされたら帰って来られない」という言葉を考慮すると、おそらくあの妖精の前任だった飛行隊長は撃墜され、「帰って来られなかっ」たのだろう)

整備兵(だからそのかわりに、あの妖精が後任になった。……龍驤の話と照らし合わせても、一応筋は通る)

整備兵「……これじゃ、まるで消耗品だな」

整備兵(しかし、まだこの筋書きが正しいのかの確証は持てない。あくまでも推測だ)

整備兵「……必要なのは、実験か」

整備兵(提督のところへ行こう。もらうべきは一時外出許可と……)

整備兵(……次の出撃の、計画だ)

647: 2015/09/09(水) 23:44:41.15 ID:T8TtuXup0
【街】

整備兵「鎮守府の外に出るのも久しぶりだな……」

整備兵(まずはここ……電機屋だ)

整備兵(一時は原料不足から製造業も壊滅に追い込まれたが、資源地帯の奪回と共に回復の兆しを見せ始めている。今では民間消費財の生産も部分的にだが可能だ)

整備兵(ええと、受信機に送信機、電池、ケーブル……)キョロキョロ

整備兵(こんなものかな)

整備兵(それにしても、少し前は無かったような機械がこんなに……欲しい、いじりたい)プルプル

整備兵(しかし、ようやくまともな職に就いたとはいえ、突然散財するとなると何だか罪悪感が……!)

整備兵「くっ……これで、お願いします」

店主「あい、まいどありー」

648: 2015/09/09(水) 23:46:05.48 ID:T8TtuXup0
整備兵(……貧乏根性が抜けないのも困ったもんだ)スタスタ

整備兵(ん?何の店だ……?)チラッ

整備兵「菓子屋……か」

整備兵(菓子なら、使う金額もたかが知れているだろう)

ガラッ

整備兵(懐かしいな……子供の頃は、こういう店にもよく来ていたっけ。最近じゃ、主食以外の食べ物なんて買うことも出来なかったが)

整備兵(……お、これは!)

整備兵「すいません、これ二袋」

店主「あいよ」

649: 2015/09/09(水) 23:47:14.07 ID:T8TtuXup0
【数日後】
【工廠】

ガラガラガラ……ガタン

工廠長「よう、来たな。残念だが今日も練習は途中までで中断するぜ。今から……」

整備兵「今から出撃する艦隊が、午後には帰投するからだろ?」

工廠長「何だ、知ってたのか」

整備兵(わざわざ、前々から提督に予定を問い合わせておいたからな)

工廠長「それなら話は早ェ。帰投次第、修復作業に移行。それまでは自由練習だ」

650: 2015/09/09(水) 23:48:12.19 ID:T8TtuXup0
整備兵「分かった」

整備兵(……さて、艦載機の準備をしてる区画は確かあっちだったな)クルッ

整備兵「悪い。忙しいところだけど、ちょっと良いか?」

零戦妖精A「?」クビカシゲ

整備兵「今日の出撃なんだが、もし重量に問題が無ければこれを持って行ってほしいんだ」スッ

零戦妖精A「」カキカキ

『このくらいなら、もんだいない

651: 2015/09/09(水) 23:50:04.50 ID:T8TtuXup0
整備兵「ありがとう。それと、とにかく肌身離さず持っていてほしいんだが……」

『ひこうふくのなかにしこめばよい?』

整備兵「ああ。帰ってきたら俺がすぐ受け取りに来るから、そのとき返してくれ」

零戦妖精A「」コクリ

『では、そろそろしゅつげきなので』

零戦妖精A「」スタスタ

整備兵(……よし。あと何人かにも渡しておかないと。急ごう)

652: 2015/09/09(水) 23:50:59.97 ID:T8TtuXup0



整備兵「……」カチャカチャ

ガラガラガラ……ガタン

白雪「今日も整備の練習ですね。お疲れ様です」

整備兵「いや、今日は違うんだ。別の調査をしようと思ってさ」

白雪「別の、ですか……?」

整備兵「……白雪は、不思議に思ったこと無いか?撃墜された艦載機の妖精達は、どうなるんだろうな……って」

白雪「た……確かに、それは分かりませんね」

整備兵「龍驤に聞いたら、今まで救助されたり帰って来たりした妖精はいないそうだ」

白雪「……!」

653: 2015/09/09(水) 23:52:07.02 ID:T8TtuXup0
整備兵「でも、本当に妖精が帰って来ないと決まったわけじゃない。俺はどうも、あのどこか呑気な妖精達が簡単に氏んでしまうとは思えない……」

整備兵(何か奇跡的なことが起こってひょっこり戻って来ていたりはしないかと考えることも、たまにあるほどだ)

整備兵「……というか、思いたくないだけなのかもな。だから、調査をするんだ」

白雪「どうやって調べるんですか?」

整備兵「艦載機の妖精に発信機を持ってもらって、GPSで居場所を探知する」

白雪「GPS……というのは?」

整備兵「あー、簡単に言うと、地球のどこにいても居場所が分かる仕組みだ」

整備兵(衛星のメンテナンスに割ける資源が減って精度は昔より落ちたが、まだ何とか機能している……ありがたい)

654: 2015/09/09(水) 23:53:12.30 ID:T8TtuXup0
整備兵「今組み立ててるこの機械で居場所の情報を受け取って、艦載機の妖精が今どこにいるのかを知る。そして、途中で居場所の信号が途絶えた妖精や居場所が海上で動かなくなった妖精がいたら……」

白雪「……」

整備兵「ただ、このやり方は全然道徳的じゃない……妖精が撃墜されるのを待っているも同然だからな」

整備兵(……まるでハゲタカだ。獲物が氏ぬのを待ち、データというエサを手に入れる)

白雪「そんな……」

整備兵「でも、俺はこのことをはっきりさせておきたい。俺の仕事は技術自体もそうだが、それを持っている妖精についても調べることだからさ」ウツムキ

白雪「……」

整備兵「まあ、言い訳にしか聞こえないと思うけど」

655: 2015/09/09(水) 23:54:17.02 ID:T8TtuXup0
白雪「……いえ、私には分かります。整備兵さんが最終的には私たち艦娘や妖精さんたちのためになることをしようとしているだけだ……と。私も手伝います」

整備兵「そう言ってもらえると、少し気が楽になるよ」

白雪「……」

整備兵(暗い雰囲気になってしまった……白雪を面倒事に巻き込むのは迷惑だったかもしれない)

整備兵「……そうだ白雪、飴いるか?この機械の材料を買いに出たとき、久々に見かけて買ったんだ」

白雪「飴……ですか?はい、それなら……」

656: 2015/09/09(水) 23:55:05.28 ID:T8TtuXup0
整備兵「ほら」スッ

白雪「どうして、ポケットではなく作業着の袖から……!?」

整備兵「昔からこの飴が好きでさ。工作学校時代は作業前も作業後も所持品検査が厳しかったんだが、このやり方でこっそり持ち込んで隙を見て食べていた」

白雪「そ、そんなに好きだったんですか……。真ん中に穴が開いて、何だか浮き輪みたいな形です。黄色いですが、何味なんですか?」

整備兵「パイナップルだ。まあ、海上輸送が難しい今じゃ、本物のパイナップル果汁がどのくらい使われてるか分からないけどな」

白雪「世知辛いですね……ぁむ。……はい、おいしいです」ニコ

整備兵「もちろん。俺の一押しだからな」パク

657: 2015/09/09(水) 23:56:09.31 ID:T8TtuXup0
【夕方】

工廠長「艦隊が帰投!総員配置に付け!」

工廠妖精A「砲、魚雷、機関、全て受け入れ体制完璧でさぁ!」

工廠妖精B「艦載機も収容完了っス!修理開始するっス!」

整備兵(……よし、今だな)

白雪「……」

整備兵(欠けている機は……五番機、十二番機……)

整備兵「白雪、さっき書いたメモを取ってくれ」

白雪「はい」スッ

658: 2015/09/09(水) 23:57:13.11 ID:T8TtuXup0
整備兵「……」チラッ

整備兵(全体の損害は少ないにも関わらず、信号が途絶えた機は全て例外なく戻って来ていない)

整備兵(雷撃隊も爆撃隊も同じだ。……やっぱり、帰って来られないというのが真実だったのか)

整備兵(信号が途絶えなかった機は……良かった、戻って来ている。まずは、あれだな)

整備兵「受け取りに来たぞ」

零戦妖精A「」ピョコン

659: 2015/09/09(水) 23:58:02.02 ID:T8TtuXup0
零戦妖精A「」ドウゾ

整備兵「ありがとう。無事で良かった」

零戦妖精A「」フンス

『まかせてください。たいちょうですから』

整備兵「ああ……流石だな」ニコ

整備兵(妖精の様子は、今までと同じだ。氏の危険で溢れた戦場へ行くという緊張が全く無いように見える……いや、もはやそれが、当たり前になっているからだろうか)

660: 2015/09/09(水) 23:59:07.02 ID:T8TtuXup0
白雪「次で最後の機です。戻って来ています」

整備兵「ああ。……結局、最初の予想の通りみたいだな」

白雪「はい、残念ですけれど……」

整備兵「当たり前と言えば当たり前か。……妖精だから都合良く何かが働いて助かっているんじゃ、なんてのが馬鹿馬鹿しい考えだったのかもしれない」

白雪「私たち艦娘が沈んでいなくても、妖精さんたちは……いつも辛い思いをしているんですね」ウツムキ


龍驤『せやなあ……もち、ウチもそれなりには辛いで。空母娘はそういう点で不利なんや。砲や機銃の妖精と違って、艦載機の妖精とはどうしても離れて戦わなアカン。戦闘方法から来る、一種の宿命なんやろうな』

龍驤『その話、他ではせえへん方がええで。ウチなんかはまあ結構慣れとるけど、みんなやっぱり何となく気になるときはあるんや』


整備兵(……龍驤、その言葉の意味がようやく分かったかもしれない)

661: 2015/09/10(木) 00:00:03.54 ID:IGk1Y8M10
整備兵「ありがとう。受け取りに来たぞ」

零戦妖精G「」ピョコン

白雪「ありがとうございました」ニコ

整備兵(さっさと片付けて、この機械は部屋にしまうとするか。とりあえず、またしばらくは技術面からの調査に重点を置き直そう……)

工廠長「――おい!」

白雪「」ビクッ

整備兵「な、何だ工廠長?」クルッ

662: 2015/09/10(木) 00:01:03.06 ID:IGk1Y8M10
工廠長「今、艦載機の妖精から何か受け取ってただろ。何だそりゃ?若造が渡したのか?」

整備兵「えーと、あー、これは……」

工廠長「教えたくねェってか?おら、見せてみろ!」ヒッタクリ

整備兵「待て!ちょっと待て!」

ポロッ

発信機「」コロリ

工廠長「……」ジー

白雪「あっ……!」

整備兵「あ……」

663: 2015/09/10(木) 00:02:00.83 ID:IGk1Y8M10
整備兵(良く考えたら、工廠長に言わずに持たせたのはまずかったか……?)タラリ

工廠長「……拾っとけ。作業に戻るぞ」

整備兵「そ、それだけか?」

工廠長「別に興味無ェからな。重量も飛行には影響が無い程度みてェだし」クルッスタスタ

整備兵「そうか、そ、それなら良かった。ははは……」

白雪「怒られませんでしたね……さっきはどうなるかと思いました」ホッ

整備兵「今度からは、あまり思いつきで行動しないようにするよ。こっそり悪事を働いてるみたいな気分だ……」

664: 2015/09/10(木) 00:03:00.81 ID:IGk1Y8M10



工廠妖精A「工廠長!さっきの、発信機――」

工廠長「分かってるから静かにしろ!……俺が気づいてねえわけ無ェだろうが」ヒソヒソ

工廠妖精A「ということは、整備兵殿はやはり技術だけでなく……」ヒソヒソ

工廠長「ああ」

工廠妖精A「良いんですかい?」

工廠長「……別に、悪いことじゃねェだろうが」

工廠妖精A「ですが、整備兵殿は手に入れた情報を他の者にも報告しますよ?もし、あっしらの出自が掴まれて知れ渡ったら皆大混乱でさぁ。そうなれば、何が起こるか想像も……」

工廠長「もう少し様子を見る。何度も言うが、別に知られたらまずいことでもねェ」

工廠妖精A「それなら、どうして工廠長の口から全部話さないんですかい?……やっぱり、迷っているんじゃないですかい?」

工廠長「……違う。こんな訳の分からない話、突然他人から言われて信じる奴がいるか。……それだけだ」

工廠妖精A「……」

665: 2015/09/10(木) 00:04:16.03 ID:IGk1Y8M10
本日はここまで。
急に立て込んでしまい更新が遅れました。ごめんなさい。
整備兵「鎮守府で働け?」提督「そうだ」【後編】

666: 2015/09/10(木) 00:23:41.57 ID:RCooc1LXO
乙です

引用: 【艦これ】整備兵「鎮守府で働け?」提督「そうだ」