338: 2015/03/01(日) 00:37:36.28 ID:5L3ZvZIx.net


【ラブライブ】希「私がウチになれたのは。」【その1】
【ラブライブ】希「私がウチになれたのは。」【その2】

「んーっ。」

「もう春やなあ…」

両手を合わせて伸びをして

カーテンを開けて外を見る


「…ふふっ。」

いつからやろ?

この景色が色づいたのは

いつからやろ?

学校に行くのが楽しみになったの


一年前の自分を思い出す

「…もう、一年経ったんやね。」

あの頃から


「…おっと、そろそろ出ないとな。」
#8 やりたいことは

339: 2015/03/01(日) 00:42:04.70 ID:5L3ZvZIx.net
学校に続く桜並木

そのアーチをくぐり抜けた先にある、音ノ木坂


色んな事があった去年

今でも、ちゃんと思い出せる

ウチがして来た事


全部、ここで起こった事

その中で、出会えた人・もの

それが、今のウチを作るなにもかも。



ポン、と肩を叩かれた

「…おはよう、希。」

「おはよ、にこっち。」


黒いツインテを揺らして、横に並ぶ

340: 2015/03/01(日) 00:43:10.91 ID:5L3ZvZIx.net
「今年もよろしくな?にこっち。」

「それは、初詣の時に言ったじゃない。」

「えへ、何となく♪」

「…まあいいわ。」

「それより、クラス替えに寄ってはアンタ一人なのかもよ?」

「あ、忘れてた。」

「…にこっち、遊びに行ってもいい?」


「…アンタ、ほんとに変われたの?」

「にこ離れしなさいよね。」

そうは言っても、にこっちも嬉しそうやん?


「そりゃあ、他の皆とも仲良くするけど…」

「にこっちは、トクベツやん?」


「なっ…!?///」

341: 2015/03/01(日) 00:49:35.92 ID:5L3ZvZIx.net
「…あら?そのトクベツに、私は入っていないのかしら。」

「おはよ、えりち。」

「ちゃんと、入っとるよ?」

「…にこっちもえりちも、大好きやもん♪」


「「…!///」」


「ん?照れてるん?」

ニヤっと笑って、二人を見る


「…はあ。希は今日も絶好調ね。」

「ホント、いつのまにこんなひねくれた性格になったのよ。」


「変えてくれた人のが、うつってしまっただけやもーん。」

「ちょっと、それどういう意味!?」

342: 2015/03/01(日) 00:50:42.96 ID:5L3ZvZIx.net
たわいない話をして、並木道を抜ける

この門をくぐれば、新しい一年が始まる

ここにいる二人といれば、何だって出来る


もう、あのときとは違う

振り返らない


ここがまた、新しいスタート

どんな事があっても、今のウチらなら乗り越えられる

本気で、そう思える


…ここに来て、良かった



校舎を見上げると、春風が吹いた


「さ、いこっか♪」


そう言って、足を踏み出した

343: 2015/03/01(日) 10:39:09.50 ID:5L3ZvZIx.net
「クラス分け、張り出されてるわよ。」

生徒が、掲示板の前に集まってる

「今になって緊張して来た…」

もし、二人と離れてしまったら…


「今更どうしようもできないし…」

「とにかく、見てみない?」

えりちに言われて、三人で掲示板の前に


「えーっと…」


「…」


あ、ウチの名前、あった!

同じクラスは…


「あ。」


「ふふっ。今年も、よろしくね?」

えりちがウインクした

344: 2015/03/01(日) 10:39:37.46 ID:5L3ZvZIx.net
「にこっちは?」


「に…」

「にこだけ、違うクラス…」


「に、にこっち…」

まさか、言ってた本人がそうなるなんて

「あ、でも、部員の子は同じクラスやん!」

「え、ほんと!?」

「うん、ほら!」

掲示板を指差す


「…よかった。」ボソッ


なんだかんだ、にこっちも不安なんやね


「それじゃ、教室に行きましょうか。」

345: 2015/03/01(日) 10:40:07.28 ID:5L3ZvZIx.net
階段を使って、今までとは違う階に

見慣れた風景でも、高さが変わると新鮮に思える


「…さ、ここでお別れね。」

「にこっち、寂しくなったらいつでも来るんよ?」

「べっ、別に寂しくなんか…!」


「…でも、たまにはお邪魔するわ。」


「もう、にこっちも素直じゃないなあ♪」

ぎゅっと、抱きしめてみる

「ちょっと、離しなさい!!」


じたばたするにこっちを離して

服の乱れを軽く直す

346: 2015/03/01(日) 10:42:05.43 ID:5L3ZvZIx.net
「…それじゃ、行くわ。」

「またね、にこっち。」

にこっちは、教室に入って行った


「私たちも、行きましょうか。」

「うん♪」


ガラッと扉を開け、中に入る

見知った顔や、初めて見る顔もそこにはある


みんなと、早く仲良くなりたいなあ…


数人が、こっちに近づいてくる

「おはよう!希ちゃん、絵里ちゃん。」

「今年も、同じクラスだね!」

「ええ、よろしくね。」


ここで、今年は一体どんな事が起こるのか

今からワクワクしてる

楽しい一年に、なりますよーに♪

347: 2015/03/02(月) 02:49:32.83 ID:t3ItBqDd.net
-----


「…」

「どうしたの?希。」

「楽しい…一年に、なるはずやったのに…」

「勉強、ここまで難しいん…?」


学校が始まって一ヶ月

新しい友達もできて、順風満帆!

…やったはずが

まさか勉強でつまずくなんて


「…でも、意外ね。」

「希は、案外勉強できると思ってたのに。」

えりちが、くすくす笑う


「赤点は、回避できてるけど…」

「あんまり、楽しくないんよ…」

348: 2015/03/02(月) 02:50:13.00 ID:t3ItBqDd.net
「まあ、確かに一年生の頃に比べれば難しくはなってるわね。」

「えりちが羨ましいよ…」

「私は、ちゃんと予習と復習をしてるから。」

「希は、家に帰ったらだらけきっちゃうんでしょう?」


「うん…なんとなく、気分が乗らなくて。」

「もうすぐ、定期考査があるのに…」


「…仕方ない。」

「放課後、一緒に勉強しましょうか。」

「ほんま!?」


神さんは、ここにおったんやね

「その代わり、ちゃんと勉強するのよ?」

「はーい!」

349: 2015/03/02(月) 02:50:46.76 ID:t3ItBqDd.net
「それに…」

「どうやら危ないのは、希だけじゃ無いみたいだし。」

そう言って、えりちは視線を向ける


「…にこぉ。」


「にこも、どうにかしないと…ね。」


まさか、赤点取ったら部活が一時禁止になるなんて…な


「それもあるわ…」

「でも、それ以上に。」

「部長が赤点なんて…流石に笑えないでしょ?」


にこっちの顔に、覇気が無い


て言うか、にこっちよく進級できたね

350: 2015/03/02(月) 02:51:19.82 ID:t3ItBqDd.net
「…絵里。」

「私もお願いしていい?」

「もちろん。」


「部活のためにも、ここは頑張らなきゃ…!」


「うんうん、にこっち頑張って♪」

「アンタも似たり寄ったりじゃない…」

「ウチは、ぎりぎり赤点だけは回避してるから。」


「…どんぐりの背比べ、ね。」


「「うっ…」」


流石えりち

痛いとこを突いてくるなあ…


「ほら、喋ってる暇はないわよ?」

「うん、それじゃあ頑張ろかー。」

「おー…」

351: 2015/03/02(月) 02:51:59.19 ID:t3ItBqDd.net
---

某ファーストフード店で教科書を開く



開いて…閉じた


「…希?」

「あはは…」


いや、流石に全教科危ないってことは無いんよ?

英語とか、国語はまだ出来る方やし…

ただ、理科はちんぷんかんぷん

摩擦係数やら、molやら熱化学方程式やら…


だいたい、こんなの覚えて使うときが来るとは思わんし…


「ほら、教科書開いて。」

「理科は、暗記さえすれば7割とれるんだから。」

「うう…頑張ります…」

352: 2015/03/02(月) 02:52:36.73 ID:t3ItBqDd.net
「…にこも、やるわよ?」

「!?あ、うん…!」

さっと何かをポケットに入れた

「…えりち、右ポケット。」


「う、裏切り者!」

「はい、没収ー。」

「ま、待って!」

「せめてフォロワーに返事してから…」


あ、えりちがめっちゃニコニコしてる

これは…あかんで、にこっち


「…ねえ、部長さん。」

「部活、どうなってもいいのかしら…?」


「に…」

「にっこにっこにー!」


…ぷちん

「あ、終わった。」

思わず、口からでた

360: 2015/03/03(火) 18:40:09.89 ID:arhhvZHq.net
そこからのえりちはすごかった

冷静に、にこっちを追いつめて行く

「私がいてもしないってことは…」

「帰っても問題ないという事よね?」

「え…」

「さ、希。行きましょうか。」

そう言ってえりちは荷物をまとめる


「え…にこは…?」

「え?私がいなくても勉強できるんでしょ?矢澤さん♪」

「に、にこぉ…」


ごめん、にこっち

ウチも必氏なんよ…

にこっちの視線を感じつつ、えりちの後に着いて行く

361: 2015/03/03(火) 18:47:43.39 ID:arhhvZHq.net
たたたっと、にこっちが追いかけてくる

「ご、ごめんって絵里!」

「あら?別に怒ってはないわよ?」

「それに、一人で勉強する邪魔になっちゃだめだから…」

えりちはまた、歩を進める

「ちょ、ちょっと待って!にこには、絵里ちゃんが必要ニコ♪」

決めポーズ…も、むなしく

えりちは一切振り返らない

「わ、悪かったって!」

「お願いだから、勉強教えて…!」

「何でもするから!」


ピタっと、えりちが立ち止まる

「…本当に?」

362: 2015/03/03(火) 18:48:29.71 ID:arhhvZHq.net
「ほ、ほんとほんと!」

「今なら、すっごく頭に入る気がするの!」


くるっと、えりちが振り返る

「そう?」

「なら、一人でやっても大丈夫ね♪」

「そ、そんなぁ…」

そしてえりちはスピードをあげた


見かねたウチが、えりちに声をかける

「え、えりち…」

「ウチも、にこっちと一緒にしたいかな~…なんて。」

「…」

「う、ウチも頑張るから!」

「…そう。」

「それじゃ、この課題を全部やりましょうか♪」


ニコニコしながら、分厚い冊子をとりだした


…にこっち、ウチも恨むで

363: 2015/03/03(火) 18:54:13.73 ID:arhhvZHq.net
カリカリ…と鉛筆が走る音だけがする

鬼教官…もとい、えりちは

ウチらの後ろで仁王立ちしてる


一切妥協を許さない雰囲気に

ウチらは手を止めず書き続ける


「えりち、ここがちょっと…」

「どれ?」

「質量パーセント濃度って…」

「ああ、食塩水ね。」


聞いたら、ちゃんと教えてくれる

こういうとこは、やっぱりすごいなあ…


「…ほら、ちゃんと聞いてるの?」

「は、はい!」

364: 2015/03/03(火) 19:03:28.63 ID:arhhvZHq.net
「溶液とか溶質とか、言葉が…」

「難しく考えるから、分からなくなるのよ。」

「溶液は、お湯。」

「そこに溶質である紅茶葉を入れたら、何パーセントの紅茶が出来るのか、ってだけ。」

「ってことは…?」

「だから、分母は出来上がった紅茶の量。」

「分子は、入れた紅茶葉の量。」

「それに100をかけるだけよ。」


おお、わかりやすい…!

「じゃ、じゃあ、これは!?」

にこっちが、横から割り込んでくる


『40%の食塩水200gに300gの水を入れると何%の食塩水ができるか』


「…自分で考えなさい。」

えりち、まだ許してないみたい…

365: 2015/03/03(火) 19:09:42.90 ID:arhhvZHq.net
「う、ウチも知りたいかなーって。」

実際、ウチもわからんし

「…これも、さっきの応用よ。」

「今、濃度は分かってるのよね?」

「40%…」

「そう。って事は、まずは最初の食塩水に入れた溶質の質量を求めるの。」

「じゃあ、分母は200?」

「そうよ。で、分子が分からないから、xと置く。」

「それで、xについて解けばいいのよ。」

「えーっと、x/200、かける100=40%やから…」

紙に書いて、計算してみる

「そうか、x=80や。」

「…正解。」

「それじゃ、次も求められるでしょ?にこ。」


「え!?ええっと…」

366: 2015/03/03(火) 19:28:13.03 ID:arhhvZHq.net
にこっちが、うんうん唸りながら悩む

「…これが解けたら、許してあげる。」

「え!?えっと…じゃあ…」


「さっきの食塩水に、水を300g混ぜるから…分母は500。」

「それに、溶質の質量が…80g?」

「そう。」

「えっと、分子に80を置いて、100をかける…」


カリカリ…と動いた、にこっちの手が止まる


「分かった!16パーセント!!」

にこっちが立ち上がる

「…」

「…あれ?」




「くすっ。正解。」

367: 2015/03/03(火) 19:28:45.79 ID:arhhvZHq.net
「よ、よかったぁ~…」

ドサッと、にこっちが椅子に座る

「これで、もう覚えたでしょ?」

「た、多分…」


「…ちゃんとやれば、出来るんだから。」

「最初から、ちゃんとやる事。」

「…はい。」


えりち、にこっちのお姉さんみたい


くすくすと笑ってると、えりちが口を開く


「…で、希。」

「手が止まってるようだけど?」

「や、やります!!」




…やっぱり、鬼教官や

368: 2015/03/03(火) 19:36:20.95 ID:arhhvZHq.net
-----


「…それじゃ、今日はここまでにしましょうか。」

「お、終わった…」

「疲れたにこぉ…」

「ふふっ。二人とも、お疲れさま。」

「やれば出来るじゃない。」


も、もうこりごりや…


「…えりち、ありがとな?」

「うん…これだけ勉強したら、テストだって…」


「何言ってるの?」

「これからテストまで、毎日続けるわよ?」

「そ、そんな…」

「当たり前じゃない。」



学生って…大変なんやね

369: 2015/03/03(火) 19:42:59.22 ID:arhhvZHq.net
-----

そして、定期考査も終わって、テストも帰って来た

ウチは、えりちのお陰で

自己最高点を10点も超える事ができた

「頑張ったじゃない、希。」

「うん、ありがとな。」

「でも…当分、勉強はいいかな…?」

「へえ…?」

「う、うそうそ!ちゃんとやるよ!!」


「…にこは、どうだったかしら?」

「赤点は、無いと思うけど…」


「とりあえず、屋上で待ってよっか。」

370: 2015/03/03(火) 19:43:35.54 ID:arhhvZHq.net
屋上で、えりちとにこっちを待ってる

「…にこっち、遅いなあ。」

「先に、お昼食べてた方がいいかしら?」

「うーん、もうちょっと待ってみよか…」


そんな話をしていると、屋上の扉が開いた

にこっちが、とぼとぼ歩いてくる


「に、にこっち…?」

にこっちの目は、遠くを見てる


「にこ、もしかして…」

まさか、にこっち…




「…てた。」


「え?」



「全部…平均点、超えてた。」

372: 2015/03/03(火) 20:13:28.45 ID:arhhvZHq.net
「や…」

「やったやん、にこっち!」

「希…」


「お疲れさま、にこ。」

「絵里。」

「良かったわね。」


「あ、ありがと…」

「アンタのお陰よ。」


「ふふっ。」

えりちは笑って、にこっちの頭を撫でた

「なっ…!?」

「よく…がんばったわね。」

「…///」


えりちって、飴と鞭の使い方が上手いよな…

373: 2015/03/03(火) 20:14:44.13 ID:arhhvZHq.net
「さて、無事にこっちも赤点免れたことやし。」

「お昼食べよっか。」

「そうね♪」


こうして、三人でお昼を食べた

いつか一人でいたこの屋上が

二人になって、三人になって


こうして日なたに座る事も、普通になった



「にこっち、これも~らいっ!」

「ちょっと!」

「じゃあ、私はこれを…」

「せ、せめてにこにも何かちょうだいよ!」


毎日毎日がたのしくて

まるで、これから来る梅雨のじめっぽさも

吹き飛ばしてくれるように

374: 2015/03/03(火) 20:24:03.29 ID:arhhvZHq.net
-----

…とは、言ったものの


「やっぱり、梅雨は好きじゃないなあ…」


無駄に長い髪の毛が爆発するし

お手入れだって大変やし…

なにより、毎日暗いと気が滅入りそう


にこっちも、外で練習できないって文句言ってる

「ああ、今すぐ晴れんかなあ…」


「…どうしたの、ぼーっとして。」

「…えりちの髪、綺麗やね。」

「いきなり何?」

「いやあ…ウチの髪、湿気でぼさぼさやから。」

「ちゃんとトリートメントはしてるの?」

「うん、してるけど…」

376: 2015/03/03(火) 20:33:03.84 ID:arhhvZHq.net
「希の場合、お風呂上がりに髪の毛を乾かしてないとか…」

「まあ、流石にそれはないわね。」


「え、なんで分かったん?」

「…もう少し、女子だって自覚してみたら?」


…だって、めんどくさいし


「えりち、乾かしに来て?」

「貴女が堕落の一途をたどるから、だめね。」

「えりちのいけず~。」


6月になって、気分は下がる一方で

なにか、楽しいことでも起こらんやろか…

377: 2015/03/03(火) 20:33:42.05 ID:arhhvZHq.net
そんな期待は、降り続く雨にかき消される


雨、雨、雨


ずっと、雨が続く


「今日も雨、かあ…」

呟くと、机に突っ伏した


何か…眠気が…

自習なのも手伝ってか、まぶたが重くなる

起きてないと、えりちに怒られるのに…


そうは思っても、眠気に誘われるウチ


そっと、目を閉じた----

379: 2015/03/03(火) 20:42:43.37 ID:arhhvZHq.net
「…ちゃん。」

「…ぞみちゃん!」


声につられて、がばっと飛び起きる

「…あれ?」

教室の時計は、お昼の時間を指していた


「ぐっすりだったね♪」

「…そうね。」

「涎の後がつくぐらい…ね。」


「え、えりち…」

やってもうた…って顔のウチと

にこやかな顔のえりち


「…そんなに余裕なら、次の試験は一人で大丈夫そうね♪」

「そっ…!」

380: 2015/03/03(火) 20:43:16.24 ID:arhhvZHq.net
そんなあ…と、言いかけて

ふと窓の外を見た


「…にこっち?」

渡り廊下に、にこっちの姿


「希、聞いてるの?」

「え!?えっと…」


チラッと目を戻すと、にこっちはいなくなってた

「…まだ、寝ぼけてるの?」

「むぐっ!?」

えりちに、鼻をつままれた

「…さ、ご飯にしましょう?」

「ふぁーい…」

381: 2015/03/03(火) 20:46:47.96 ID:arhhvZHq.net
「…ごちそうさまでした。」

手を合わせた後、お弁当をしまう

いつもなら、ここで一眠り…やけど

授業中寝たせいか、あんまり眠くない

「それじゃ、私は職員室に行って来るわね。」

「いってらっしゃい、えりち。」

うーん、えりちもいないとなると…



ガラララッ

「ごめーん、にこっちいるー?」

隣のクラスに顔を出してみた

「あ、希ちゃん…」

「お、久しぶり!にこっち、どこ行ったか知ってる?」

「え?えと…あの…」


「…にこちゃんなら、知らないよ。」

「おお、二人ともいたん?」

「でもそっか、知らなかったら仕方ないか…」

383: 2015/03/03(火) 20:52:36.87 ID:arhhvZHq.net
「あの、希ちゃん…?」

「ん?どしたん?」

「あの、えっと…」

「?」


「う、ううん!何でも無い!」

「それじゃあね!」


そう言って、急ぎ足で教室を出て行った

「…?」


どうしたんやろ?


とりあえず、ウチも教室を出た

384: 2015/03/03(火) 20:53:21.48 ID:arhhvZHq.net
「う~ん…」

えりちも、にこっちも捕まらんとなると…


考えながら歩いていると

屋上に続く階段についた


「…そういえば。」

「雨の日に屋上って、上がった事ないなあ…」

まあ、屋根が無いからそもそも出ても意味ないんやけどね


「あれ?でも…」


屋上の扉の前が、少し濡れてる

誰か、外にでたんかな…?

「いやいや、今日は土砂降りやし…」


ガチャッと、ノブを回してみる

冷たい扉が、開いた

385: 2015/03/03(火) 21:02:46.20 ID:arhhvZHq.net
「うわ…やっぱり、すごい雨。」

風に吹かれて、雫がウチの顔にも当たる

「やっぱり、こんな時に外に出る子はいないよな。」


振り返ろうとした時

目の端に桃色の何かが映った


「…にこっち?」


次の瞬間、駆け出した


「にこっち!!何してるん!?」

「にこっち!!」


揺すぶっても、反応がない

ずっと、虚空を見つめてる


「と、とりあえず中に…!」

386: 2015/03/03(火) 21:03:21.75 ID:arhhvZHq.net
ぐいっと、引っ張ろうとした手が止まる

…にこっちは、動かない


「にこっち…」

「…ほっといて。」

「出来ると思う?」

「いいから。」

「こんなとこいたら、風邪ひくやん。」

「とりあえず中入ろう?な?」

手を引っ張ろうとした…けど

はらわれた


「いいから、ほっといて。」

「もう…いいの。」


「一体、何があったんよ…?」

387: 2015/03/03(火) 21:04:04.31 ID:arhhvZHq.net
雨の中動かないにこっち

足下に目をやると

雨でぐしゃぐしゃになった紙があった

「これ…」

拾い上げて、開いてみる

所々、読めなくなってる…けど


「……届?」

なんやろ…

入部届け?

え、でも、入部届けに『しんにょう』ってあったっけ?



え?しんにょうって…


「にこっち!!これ!!」



にこっちの目は、遠くを見ていた

390: 2015/03/03(火) 21:39:31.68 ID:arhhvZHq.net
「一体、何があったんよ…」

にこっちはまだ、目を合わさない


「…な、にこっち。」

「とにかく、中入ろ?」

「…いいから。」

「良くないって!風邪引くやん!!」


「良いって言ってんでしょ!?」


急な大声に、ドキッとする


「もう…ほっといて。」

そう言ってまた、宙を見つめる


雨が、顔にかかる


…泣いてるん?にこっち

391: 2015/03/03(火) 21:40:06.01 ID:arhhvZHq.net
「…早く、帰りなさいよ。」

にこっちが、口を開いた

「だから、にこっちも…」

「私は、いいから。」


「…服、びしょびしょやん。」

「早く、着替えよ?」


「…別に。」


キーン…コーン…


「…ほら、授業始まるで?」

「いいから、ほっといてって。」


「嫌や!!」


「…」


「…にこっちが入るまで、ウチもここにいる。」

392: 2015/03/03(火) 21:41:15.49 ID:arhhvZHq.net
どれくらい、時間が経ったんやろ

お互い、黙りっぱなしで


雨に濡れて、びしょびしょになっても

そんなの…気にしてられんかった


「私は…」

にこっちが、告げる

「…」

「アンタには、関係な…」

「…?」


どさっ…




「にこっち!!!」


ウチには、全てがスローに見えた---

393: 2015/03/03(火) 21:45:49.12 ID:arhhvZHq.net
「希!!」

勢い良く保健室の扉を開けて、えりちが飛び込んでくる

「えりち…」

ウチは、口に指を当てる

「あ…にこ…」

にこっちは、まだ目を覚ましてない

「ごめんな?授業勝手に休んで…」

「そうじゃなくて!」

「教室にいたら、クラスの子が飛び込んで来て!」

「二人とも、びしょ濡れで保健室に、って…」


「一体、何があったのよ…!」


「…ウチも、詳しくは分からん。」

「でも…」

ウチは、あの紙をえりちに差し出す





「これって…!!」

394: 2015/03/03(火) 21:46:33.01 ID:arhhvZHq.net
「退部…届…」

「やっぱり、そうやんなあ…?」

「…にこは、何て?」

「…なにも。」



「なにも…言ってくれんかった。」


「…そう。」


無言の時間が、続く


「…あのとき。」

「?」

「屋上に行く前、あの子達に会ったんよ。」

「あのとき、少し様子がおかしかった。」

「もっと早く気付いて、聞いてれば…」

395: 2015/03/03(火) 21:47:45.43 ID:arhhvZHq.net
「そしたら…」

「そしたら、こんな事には…!」


ぎゅっ


「…まずは、泣き止みなさい。」

「それと…希のせいなんかじゃないわ。」

「にこが、自分でしたことよ。」


「でも…でも!」


「貴女には、まだ出来る事があるでしょう?」


「…」


「今は…私がいるから。ね?」


「えりち…ッ!!」



言葉にならなかった

ただただ、枯れるまで---泣いた

400: 2015/03/04(水) 09:46:34.52 ID:C/MpjZGx.net
「…落ち着いた?」

「…」

ウチは、こくりと頷く

「…にこ、まだ目を覚まさないわね。」

「…うん。」


コンコン…

誰かが、ドアをノックした


「はい。」

えりちが答える


「…すみません。」

「貴女達は…!」


「にこちゃん…希ちゃん…」





「「ごめんなさい!!」」

401: 2015/03/04(水) 09:47:34.72 ID:C/MpjZGx.net
「…ちょっと、説明してもらえるかしら。」

えりち…怒ってる



「貴女達の事は、希から聞いた。」

「一度、諦めようとした事も。」

「続けようって、決めた事も。」

「…だからこそ、分からない。」


「どうして今、またこうなってるのか。」

「どうして今、にこが倒れているのか。」

「私は直接貴女達と関わった事は無い。」

「でも…教えてくれないかしら?」



「中途半端な気持ちなら。」

「…私は、貴女達を許せない。」

402: 2015/03/04(水) 09:53:10.85 ID:C/MpjZGx.net
「えりち、さすがに…」

「いいんです。」

「本当の、事ですから…」


「…希ちゃん。」

「あの時、言った事覚えてる?」

「…うん。」


「私たち、変わりたいって、思ってた。」

「にこちゃんみたいに、可愛くなって。」

「歌ったり、踊ったり…それが、大好きだった。」

「…でも。」



「…」




「…限界は、あるんだよ。」

403: 2015/03/04(水) 09:53:43.34 ID:C/MpjZGx.net
「え…?」


「いくら頑張っても。」

「どれだけ練習しても。」

「私たちじゃ、無理だった。」

「にこちゃんに追いつけなくて。」


「…前に、意識の問題だ、って言ってもらったけど。」

「私からすれば、その意識だって才能だよ。」


「絢瀬さんの事も、クラスの子達から聞きました。」

「今までのイメージより、もっと丸くなったって。」

「親しみやすくなった、って。」



「…」



「…結局、全ては才能なんだよ。」

404: 2015/03/04(水) 09:54:40.89 ID:C/MpjZGx.net
「頑張れば報われる、なんて言うけど。」

「それは、その人の才能が開花しただけ。」

「希ちゃんや、絢瀬さんみたいに。」

「…ましてや、もともとその才能があったにこちゃんに。」

「私たちが、並べる訳無かったんだよ…」


「そ、そんなん、頑張ってみんと…!」


「にこちゃんにも、言われたよ。」

「頑張っていれば、いつか芽を出す、って。」

「だったら…!」

だったら、もう少し頑張ってみたら…




「いつかっていつ?」

「後、一年とちょっとしか無くて。」

「それでも耐えていれば、本当に?」

405: 2015/03/04(水) 09:55:32.96 ID:C/MpjZGx.net
「…!」


「ここにいても、私たちは変われなかった。」

「変わりたかったけど、無理だった。」


「…そんな才能、持ってないんだもの。」


「そんなの…」


「…変わろうと思えば、変われる。」

「にこちゃんが、言ってました。」


「…けど結果は、同じ。」

「意識の差が埋められる訳でもなく。」

「努力が、実る訳でもなく。」



「ただ…ただ、どんどん差が開いて行くだけだった。」






「…もう、疲れたよ。」

406: 2015/03/04(水) 09:57:01.40 ID:C/MpjZGx.net
「…」

「…」

ウチもえりちも、何も言えんかった

この子達が、頑張ってたこと、知ってるから



「…それじゃ、これで失礼します。」

「あっ…!」


「…ごめんね、希ちゃん。」

「ばいばい。」

無機質な扉の音を聞いて

ウチは、口を開いた


「…ウチのした事は、間違ってたんかな。」

あの時、ウチが楽屋に飛び込んでなければ

にこっちに、同意していれば

あの子達を、元気づけていなければ…




ここまで辛くはならなかったんかな…

407: 2015/03/04(水) 09:57:54.30 ID:C/MpjZGx.net
「希…」


「ごめん、えりち。」

「ちょっと…にこっちと、二人にしてくれん?」


「…分かった。」

「放課後、迎えに来るわ。」


そう言って、えりちも出て行く


「にこっち…」


「にこっちは今、悲しいん?」

「…それとも、怒ってる?」


「ウチの、せいなんかな?」


「ウチが…ウチが、余計な事したから…」



にこっちの手に、雫が落ちる

この小さな手で

一体、どれほどの物を抱えて来たんやろ

408: 2015/03/04(水) 09:58:30.54 ID:C/MpjZGx.net
「ん…」


「!…にこっち!?」

「あれ?屋上にいたんじゃ…」


ぎゅっ


「…希?」

「にこっちのあほ…」


「…なんで、泣いてるのよ。」

「にこっち、倒れたんよ?」


「…ああ。」

「馬鹿ね…自業自得なのに。」


「にこっちの、あほ…」


それ以外、言えなかった

抱きしめる以外、何もできんかった

411: 2015/03/05(木) 00:21:38.47 ID:WSpOzB9d.net
「…もう、大丈夫だから。」

「…なにがよ。」

「いいから、離して。」


そっと、にこっちから離れる


「…」

「…もう、私の事は放っておいて。」

「…なんで?」

「なんでそんなこと言うん?」


「…」

「ウチじゃ、にこっちの力にはなれんの?」

「にこっちが、ウチを変えてくれたやん。」

「だから、今度はウチが…」




「もういいって言ってんでしょ!?」

412: 2015/03/05(木) 00:22:19.89 ID:WSpOzB9d.net
「え…?」


「もう、ほっといてよ!!」

「確かに、希は変わった!」

「私がしたことかもしれない!!」

「でも!」

「それじゃあ、希は何が出来るって言うのよ!!」


「それは…」


「希がいたら、あの子達が帰ってくるの!?」

「また、部員が増えるの!?」


「また…!」

「また、笑えるようになるの…?」




泣き叫ぶにこっちが

ウチには、とても小さく見えた

413: 2015/03/05(木) 00:32:01.64 ID:WSpOzB9d.net
「なにか…なにかできるかも…」

「なんにも出来ないわよ!!」

「私がアンタを変えたように!」

「アンタは私を変えてくれるの!?」

「私は…!」

「私は、何一つ変われなかった!!」

「ずっと一人だった!!」



「そして…また、一人になるのよ。」

「…」


「こんな夢、叶うわけないじゃない…」


「で、でも!!」

これからもきっと頑張れば…!




「アンタの占いみたいには、なれないのよ…」

414: 2015/03/05(木) 00:32:51.97 ID:WSpOzB9d.net
「…ッ。」

「アンタ言ったわよね。」

「変化があるって。」

「きっと上手く行く、って。」


「…何一つ、上手くなんていって無いじゃない。」

「所詮、占いなのよ。」


「結果、変われなかったんだから!!!」


「…」

「…」


「…出てって。」

「でも…」


「出てってってば!」

415: 2015/03/05(木) 00:44:09.71 ID:WSpOzB9d.net
「こんな事言うの、間違ってるって分かってる。」

「アンタの気持ち、踏みにじってるのも分かってる。」


「…でも。」

「結果上手く言ったアンタの顔を、今は見たくない。」


「…」


「私の事、許さなくて良い。」

「でも、お願い。」


「…一人にして。」



「…分かった。」

「ごめんな、にこっち。」


「…ばいばい。」



不思議と、この時涙は出んかった

ただただ、悔しかった



そして、もう会えないかのように

静かに、扉を閉めた---

416: 2015/03/05(木) 00:45:33.74 ID:WSpOzB9d.net
「…希。」

保健室を出たら、えりちがいた


「…ごめんなさい。」

「…」

「聞くつもりは無かったのだけれど…」

「…」


何も言わず、首を振る


「…とりあえず、帰りましょう?」

「…」

「希…!」

「…」


ぐいっと、腕を引っ張られる



…ごめん、えりち


今は…何もしたくないんよ

417: 2015/03/05(木) 00:53:21.74 ID:WSpOzB9d.net
気付いたら、家の前まで来てた

どうやって帰って来たかも、覚えてない


でも、えりちがずっと繋いでくれてる

左手の暖かさは、覚えてる


「…希。」

「…」

「家、着いたわよ。」

「…ひとりで、大丈夫?」

「…」



何も、考えられん

えりちが、何て言ってるのかもわからない


ただ、にこっちの言葉が頭を埋める

418: 2015/03/05(木) 00:53:57.58 ID:WSpOzB9d.net
「ねえ、希!」


ごめんなあ…えりち

そんな顔、せんといてよ



えりちは、笑ってる顔が…

一番、綺麗なんやから…



…あれ?


えりち…どこ行ったん?

何も、見えない



「…希っ!!」


ウチの記憶は、そこで途切れた---

419: 2015/03/05(木) 01:00:21.73 ID:WSpOzB9d.net
---ふと、目が覚めた

ここは…?


ウチの、家のベッド?

あれ?

いつの間に家に入ったっけ…?


当たりを見渡す

ベッドのそばに、えりちがもたれて寝てた


「えりち…」


だんだん、思い出す


…そっか、家まで来て、倒れたんや


運んでくれたんやね、ありがとう


そっと、えりちの頭を撫でる


「んん…」

「えりち、ごめんな?」

420: 2015/03/05(木) 01:01:02.23 ID:WSpOzB9d.net
「…ん。」

「希…?」

「おはよう、えりち。」

えりちが、ガバッと飛び起きる

「嘘!?寝てた!?」

「…みたいやね。」

「それより、大丈夫なの!?」


「…うん、ありがと。」

「はあ…ビックリさせないでよ…」


そう言って、えりちは大きなため息をつく


ウチ、心配かけさせてばかりやな…



「…きっと、疲れてたのよ。」

「そう…なんかな。」


「色々…あったから。」

「…うん。」

421: 2015/03/05(木) 01:01:33.68 ID:WSpOzB9d.net
「それより、お腹空いてない?」

「おかゆ、作っておいたんだけど…」


「何から何まで、ごめんなあ…」

「いいのよ。」

「そのかわり、早く元気になりなさい。」


「…うん。」


「とりあえず、温めて持ってくるから。」

「もう少し、横になってて?」


「…うん。ありがとう。」



時計を見たら

もう夜の10時過ぎ


えりち、ずっと看病してくれてたんやね

ウチなんかのために

422: 2015/03/05(木) 01:02:04.84 ID:WSpOzB9d.net
「…ごめん。」

ぽつりと、呟く

誰に対してなのかは、自分でも分からなかった


-----

「…ごちそうさま、えりち。」

「もう、いいの?」

「…うん。」

「残しちゃって、ごめんな?」

「いいのよ。」

「無理して、食べる必要ないわ。」

「…うん。」


「それじゃ、そろそろ私は帰るから。」

「…」

「…希?」



きゅっと、えりちの裾を掴む

423: 2015/03/05(木) 01:02:35.97 ID:WSpOzB9d.net
「…」

「…」

「…しょうがないわね。」

えりちは、電話をかけ始めた


「もしもし?亜里沙?」

「今日、友達の家に泊まるから。」

「…うん、そう。」

「戸締まりしっかりして…うん。」

「それじゃ、朝に帰るから。」



「えりち…」


「ほら、そんな泣きそうな顔しないの。」

「でも…」

「いいから。」

「今日は一日、そばにいるから。」


「…うん。」

424: 2015/03/05(木) 01:03:11.04 ID:WSpOzB9d.net
---


えりちとベッドで肩を並べる

シングルは、二人には少し狭いけど…


「ねえ、希。」

「やっぱり、私ソファで寝るわよ?」

「…」

えりちの腕にしがみつく

「もう…」

そう言いながらも、えりちは頭を撫でてくれた


「…ほら、もう寝ましょう?」

「…うん。」


「おやすみなさい、希。」

「おやすみ、えりち。」

425: 2015/03/05(木) 01:03:43.73 ID:WSpOzB9d.net
---


えりちの寝息が聞こえ始めた頃

すうっと、目を開ける


「…」

目に入るのは、天井

浮かぶのは、にこっちの顔


「…ッ。」


声を押し頃して、泣いた

隣にいるえりちに、感づかれないように


この手の温かさを、消してしまわないように


枕に顔を埋めて、泣いた



どうか、気付かれませんように---

433: 2015/03/06(金) 00:50:51.75 ID:Rn09ipq/.net
---

「38度2分、かあ…」

あの日から高熱が出て

ウチは家でごろごろしてる

そりゃ、あれだけ雨に打たれたらな…


「…これも、自業自得、か。」


自虐的に呟いても、誰も返してはくれない


「えりちに笑われそう。」

…あかん、あかん

一人でいると、独り言が増えるってホントなんやね


ウチの意思とは裏腹に、体は言う事を聞いてくれない

起き上がるのもしんどくて

ずっとベッドに横たわってる

434: 2015/03/06(金) 00:52:15.29 ID:Rn09ipq/.net
pipi…


「…返事も無いなあ。」


ウチが熱を出した日から

にこっちも、学校を休んでるみたい

大丈夫?ってメールにも、返信は無い


「…もう、これで終わりなんかな。」


浮かぶ涙を必氏にこらえる

「…ううん。」

「きっと、またあの頃みたいに戻れる。」


三人で、笑い合ったあの時みたいに


ごろん、と寝返りをうって

えりちが買って来てくれた水に手を伸ばす

435: 2015/03/06(金) 00:53:11.47 ID:Rn09ipq/.net
「…ん。」

美味しい


熱を出したからなのか

それとも、気持ちが沈んでるからなのか

…お腹が全然減らない


「喉は乾くのになあ…」


えりちが色々買って来てくれたけど

どれも、食べれんかった


「えりちにも、いっぱい迷惑かけてるなあ…」


何かしてあげたいとこやけど

体が動かないからどうしようもない



「…寂しい。」

436: 2015/03/06(金) 00:54:00.68 ID:Rn09ipq/.net
prrrr


「…電話?」

「もしかして…!」

pi


『希?起きてた?』

「あ、うん…」

『何か、買って来てほしいものある?』

「ううん、大丈夫。」

『…何か食べた?』

「えっと…」

『…流石に何日も食べないと治らないわよ?』

「…うん、分かってる。」

『じゃ、もう少ししたらそっちに行くから。』

「うん。ありがと、えりち。」


pi


「…そんな訳、無いやんな。」

437: 2015/03/06(金) 01:01:36.45 ID:Rn09ipq/.net
コンコン

「…希、起きてる?」

「あ、えりち。いらっしゃい。」


「一応、ゼリーとか買って来たけど…」

「…今は良いかな。」

「冷蔵庫、入れといて?」


「…寝込んでから、ずっとそれじゃない。」

「あはは…ごめん。」


「…」

「…」


「…ねえ。」

「お願いだから、何か食べて?」


「…」


「ごめん、えりち。」

438: 2015/03/06(金) 01:02:42.72 ID:Rn09ipq/.net
「…いいのよ。」

「それじゃ、また明日来るから。」


「別に、いいのに。」

「元気なったら、ちゃんと学校行くから。」

「だから、無理して来なくても…」


「無理してるのは希じゃない!!」

「たった数日でこんなに痩せて!!」

「辛いのは分かる!」

「けど、こんな希を見たくなんかない!!」


…えりちの泣くとこ、初めて見た


「お願いだから…」

「お願いだから、早く元の希に戻ってよ…」


「ごめんなあ、えりち。」

「自分でも、分かってはいるんやけど…」

439: 2015/03/06(金) 01:04:24.68 ID:Rn09ipq/.net
「希…」

「多分、もう少し。」

「時間が、欲しいんやと思う。」


「でも、希の体が…!」


「心配してくれて、ありがと。」

「でも…もう、ウチの事は気にしなくてええよ。」


「えりちまで、辛い思いする必要は無いから。」


ウチが、してしまったことやし


「…」

「…」

「大丈夫、だから。」

「心配、せんといて。な?」


えりちの手を、握る

440: 2015/03/06(金) 01:05:10.88 ID:Rn09ipq/.net
「えりちには、迷惑かけてばっかりでごめん。」

「いつか、ちゃんと何かで返すから。」


「そんな事いいから。」

「早く、元気になって…」


「うん。」

「だから、また学校で会お?」

「このままやと、えりちに甘えてしまうだけやもん。」


「でも…!」


「…大丈夫。」

「ウチは、大丈夫だから。」


「希…」


「な?えりち。」


頑張って、笑顔を作る

ちゃんと、笑えてるかな?


---だから、えりちも笑って?

441: 2015/03/06(金) 01:29:57.18 ID:Rn09ipq/.net
「…ふう。」

えりちが帰って、また一人になる


「…ほんとは、辛いよ。」

ひとりは、寂しい


ひとりが嫌やから、変わったのに

結局また、ひとり


「…にこっち、どうしてるんやろう。」


ウチより長い間雨に打たれて

その後、あんなに無茶したんやもん


「…心配なんよ、にこっち。」


えりちもウチを見て、同じように思ってるんかな?


水を取ろうとして目に入る

やせ細った右手


…今、にこっちよりも軽いんちゃうかな?

442: 2015/03/06(金) 01:39:06.11 ID:Rn09ipq/.net
---

「ん…」

いつの間にか、寝てたみたい


悪夢でも見たんじゃないか、ってくらい

汗びっしょりになってる


「ああ、気持ち悪い…」


でも、一人で動く元気も無い


時計を見ると、夜の8時過ぎ

えりちが帰って、3時間くらいか…



「んん…べとべとする。」

重たい体を起こして、洗面所に向かう


「ああ…あかん。」

言うのが早いか遅いか

廊下に倒れ込む


床、ひんやりして気持ちいい…

443: 2015/03/06(金) 01:39:53.13 ID:Rn09ipq/.net
-----


「んん…」

不意に、目が覚める

「…あれ?」

いつのまにか、ベッドに戻ってる

服も、着替えてるし…


「それに、なんかいいにおい…」


ガチャッ


「…目が覚めた?」


「うそ…」


だって、そんな…

きっと、夢やんな?

だって…



「何よ?」


「にこっち…」

446: 2015/03/06(金) 01:51:25.44 ID:Rn09ipq/.net
「…ほんとに、にこっちなん?」

「はぁ?」

「にこじゃなかったら、誰なのよ。」


…間違いない

やっぱり、にこっちや


「にこっち…!」

思わず、飛びつく


「ちょっ!?」

「にこっち…」


ぎゅっと、力いっぱい抱きしめる


「…アンタ、痩せ過ぎ。」

「にこがお姫様だっこ出来るって、相当よ?」


「だって…だって…」

「はいはい。」

「まずは、ちゃんとベッドに座りなさい。」

447: 2015/03/06(金) 01:52:01.74 ID:Rn09ipq/.net
にこっちに、ベッドに戻される


「ちょっと待ってなさい。」

そう言うとにこっちは、キッチンの方に向かった


---

「…はい。」

「おかゆ作ったんだけど…食べれる?」


「…多分。」

「あれから、何も食べてないんだって?」

「そりゃあ、こんなに痩せる訳よ。」

「何日経ったと思ってんの?」


「うん…」


「ほら、冷めないうちに食べて。」

「…残したら、許さないから。」

448: 2015/03/06(金) 01:52:40.45 ID:Rn09ipq/.net
スプーンに、少しだけ掬ってみる

「ふーっ…ふーっ…」

おそるおそる、口にいれる


「…あつっ!」


「…はあ。」

「貸しなさい。」

「え…?」


「ふーっ…ふーっ…」

「…はい。」


「に、にこっち…!?」

「いいから、口開けなさいよ。」


「え、えっと…」

「ほら、早く!」


「う、うん…///」

449: 2015/03/06(金) 01:59:32.00 ID:Rn09ipq/.net
「…美味しい?」

「…うん。」


「ま、このにこにーが作ったんだから、トーゼンだけど!」

「…」

「な、何か言いなさいよ…///」


「…にこっち、なんで来たん?」

「…」

にこっちは、答えない


「…ごめん、変な事聞いて。」

「でも…」


「…絵里が、ウチに来たのよ。」


「…えりちが?」


「…」

450: 2015/03/06(金) 02:00:14.34 ID:Rn09ipq/.net
-----


「…何しにきたのよ。」


「…正直。」

「にこのした事、私は許せない。」

「希が、どんな気持ちでにこの事を見て来たか。」

「どんなに、にこに感謝しているか。」

「知らない訳じゃないでしょう?」


「…そんなことを言いに、家まで来たの?」


「…」

「…それでも、希にはにこが必要なのよ。」


「…はあ?」

「もう、終わった事じゃない。」



「…にこ、お願い。」

「希を…助けてあげて。」

451: 2015/03/06(金) 02:00:57.15 ID:Rn09ipq/.net
「ちょ、ちょっと!!」

「何でアンタが頭下げるのよ!?」


「今!!」

「…今、希を助けてあげられるのは、にこだけなのよ…」

「あの日から高熱が出てる。」

「なのに、何も口にしてくれない。」

「日に日に痩せて行く希を、もう見たくないの!!」

「あんなにやせ細って…」

「なのに、にこの心配ばかりしてる!!」


「…正直、悔しいわよ。」

「あんなに酷い事言われて、それでもにこの事しか考えてないんだもの。」



「希が…?」

452: 2015/03/06(金) 02:02:55.38 ID:Rn09ipq/.net
「…でも。」

「だからこそ…」

「希が元気になってくれるなら。」

「また笑ってくれるなら!」

「…私は、いくらでも頭を下げるわ。」


「希が変われたきっかけが、にこであるように。」

「私にとってはそれが希なの。」

「感謝しても、しきれない。」


「そんな希が、これ以上苦しんでるのを見るのは嫌なの!」

「だから…!!」



「だからお願い、にこ。」

「希を…助けてあげて。」


「お願い…」



-----

454: 2015/03/06(金) 02:12:25.79 ID:Rn09ipq/.net
「にこっち?」


「…何でも無いわ。」


「…ありがとな、にこっち。」

「…別に。」


「…」

「…」


「…また、一緒に笑える?」

「にこっちと、えりちと三人で…」


「色んなとこ遊びに行ったり、勉強したり。」

「また、買い食いしたりとか…」


「元気なったら、いっぱい二人としたいんよ。」

「だから…」


「だから、また…!」


前が、見えないや…

455: 2015/03/06(金) 02:18:40.51 ID:Rn09ipq/.net
ぎゅっ


「…!にこっち…」


「…あの時は、ごめんなさい。」

「希が悪いんじゃない。」

「こうなってしまったのは、にこのせい。」


「にこっち…」


「初めてのステージの時。」

「あの時に、もう結果は出てたのよ。」

「だから、今回みたいな事があっても、仕方なかったの。」


「…所詮、高校の部活なんだから。」



「あの子達に言われて、思ったの。」

「…にこの意識は、才能だって。」

「でもそれは、にこの中でだけなの。」

456: 2015/03/06(金) 02:20:39.20 ID:Rn09ipq/.net
「だから…」

「にこも、変わらなくちゃいけない。」

「変われなかったんじゃ、ない。」

「変わろうと、してなかったの。」

「希と知り合って。」

「一人でいる事が少なくなって。」

「…それに、甘えてた所もあると思う。」

「でも…」

「でも、希がいてくれたから…」

「毎日が、楽しかった。」

「笑える日が、増えた。」

「幸せって、こういう事なのかな、って。」


「じゃあ…!」



「…だから。」








「これで…お別れよ。」

463: 2015/03/06(金) 10:16:12.82 ID:Rn09ipq/.net
「え…?」

にこっち…今なんて?


「今日で、私たちはおしまい。」

「明日からは、それぞれの道を進むの。」


「なんで…」

「これからだって、一緒に…!」



「…それじゃ、だめなのよ。」


「え…」


「私は、私の目指す物のために。」

「一人で、やらなきゃいけないの。」


「アンタ達がいると、甘えちゃうから。」

「逃げ道を、作っちゃうから。」



「だから…終わりにしましょ?」

464: 2015/03/06(金) 10:16:54.79 ID:Rn09ipq/.net
「いやや…」

「そんなん、嫌!」


「わがまま言わないの。」


そう言って、にこっちはウチから離れる


「にこっち…行かんとって…」

にこっちに、追いすがる


「…希。」

「…」


「私、言ったわよね。」

「希は変われた。」

「でも…」


「私がいなくちゃ元に戻るなら。」

「それは変われたとは言えないわ。」


「…」



「だからここで、終わりにするの。」

465: 2015/03/06(金) 10:17:28.58 ID:Rn09ipq/.net
「お互い、頼らずに。」

「一人で、歩いて行くために。」


「でも…」


「希の気持ちは、正直嬉しい。」

「あんな酷い事言ったのに、受け入れてくれるんだもの。」


「…だから、終わりにするの。」


「そんな…」


「いつからか…」

「いつの間にか、共依存みたいになってたのよ。」

「私たちは。」



「だからこそ、ここで終わりにしなきゃいけないの。」

「私たち自身のために。」

466: 2015/03/06(金) 10:33:13.20 ID:Rn09ipq/.net
「今すぐ理解してとは言わない。」

「…でも、分かって。」


「これから学校に行って、会ったとしても。」

「挨拶ぐらいはするわ。」

「それでも、一緒にはいない。」


「…それぞれが、自分の道を進むの。」



「そんなん…」



「生徒会、誘われてるんでしょ?」

「なんでそれ、知って…」


「前に、少し聞いちゃったのよ。」

467: 2015/03/06(金) 10:33:55.35 ID:Rn09ipq/.net
「ここで離れても、嫌いになった訳じゃない。」

「…希の事を、嫌いになんてなれない。」


「でも、そういうのは今日で終わり。」


「だから…」



「…もういい。」

「希…?」


「もういい。」

「そこまで言うんやったらもう知らん。」


「にこっちの勝手にしたらいい。」


「…」


「そのかわり、ちゃんと叶えて。」

「したい事、にこっちの夢を。」


「…」

468: 2015/03/06(金) 10:34:25.90 ID:Rn09ipq/.net
「…でも、ウチは信じてる。」

「いつかまた、三人で笑えるって。」


「…」

「…ありがとう、希。」


「アンタは…」

「私の一番の、親友だったわ。」


「…」


「それじゃあね。」

「ちゃんと、ご飯食べるのよ?」



「…またね。」



にこっちが出て行く


『またね』って言葉が

『さよなら』に聞こえた

469: 2015/03/06(金) 10:44:18.41 ID:Rn09ipq/.net
-----


どれくらい、時間が経っただろう

ふいに、ドアをノックされた


「にこっち…?」


「ごめんなさい、私よ。」

「えりち…」



「にこが、来たみたいね。」

「えりちが、呼んでくれたんやね。」

「…たいしたことは、してないわ。」

「…」

「…」


「…なあ、えりち。」

「何?希。」


えりちは、なんで…


「何でえりちは、こんなにウチを気にしてくれるん?」

470: 2015/03/06(金) 10:45:08.38 ID:Rn09ipq/.net
「…正直、えりちに嫌われても仕方ないと思ってる。」

「色々、してくれてるのに…」

「ウチは、にこっちの事しか考えれてないし。」

「なのに、なんで…」


ぎゅっ



「…希。覚えてる?」

「私を変えてくれたのが、希だって。」


「あれは、えりちが変わりたいって思ったから…」


「もしかしたら、そうなのかもしれない。」

「でも、そんな私に手を差し伸べてくれたのは、希なの。」


「私を、変えてくれた人。」

「私に…力をくれた人。」



「そんな人が辛い時は、助けてあげないと。」

「そう思うのは…私だけじゃないでしょう?」

471: 2015/03/06(金) 10:45:57.92 ID:Rn09ipq/.net
「…!」


「…ごめん、えりち。」


えりちも、今のウチと同じ気持ちやったんやね


「ウチ、自分の事で精一杯で…」


例えれば、それは三角関係みたいに


「…いつもウチの事を見ててくれて、ありがとう。」


それぞれが違う人を見てた



「やっと、分かった。」

「ウチが、何をしないとあかんのか。」

「希…」


「えりち。」

「いつも支えてくれて、ありがとう。」


「…今度は、ウチが支えるから。」








「生徒会、手伝うよ。」

472: 2015/03/06(金) 10:46:40.47 ID:Rn09ipq/.net
「希…!」


「…ほら、泣かんとって?」

「待たせて、ごめんな。」


えりちが、首を振る


「その言葉で、十分よ…」

「十分、私は救われた…」


ほんとに、何も見えてなかった

こんなに、大切に思ってくれる人がいることも


何を、すべきなのかも

…ありがとう、にこっち

ウチも、また歩き始めるよ




「…ありがとう、えりち。」


「…ただいま。」



「おかえり…希。」

476: 2015/03/07(土) 01:54:04.39 ID:CxxXurtO.net
---

それからウチは、えりちと一緒に

生徒会に向けて、動き出した


この学校を、存続させたい

ウチらの気持ちは、その一つだけやった



ウチらが変われたこの場所を

きっかけをくれた場所を守るために


水面下での活動が始まった




「…けど、なかなか進まんなあ。」

「そんな簡単に事が進むなら、そもそも廃校にはならないでしょう?」

「それはそうやけど…」

477: 2015/03/07(土) 01:54:33.84 ID:CxxXurtO.net
「とにかく。」

「この話はタブーなんだから、絶対に言っちゃ駄目よ?」

「それは分かってるよ。」

「でも、それが言えん事には…」


「まあ、いきなり皆に声をかけるのもおかしいし…」

「そもそも、ウチらまだ生徒会役員と違うから。」

「あんまり表立った行動もできんしね。」


「…とにかく、出来る事から始めましょう。」

「時間は、幾ばくもないわ。」


「…うん!」

478: 2015/03/07(土) 01:55:17.99 ID:CxxXurtO.net
あの決別の日から、ひと月

季節は、夏に突入した


生徒会選挙は9月

そこから何かが出来たとして

ウチらの卒業まで一年とちょっとしかない


だからこそ、今から何かをしないといけないんやけど…



「やっぱり、無理があるよな…」

「泣き言言わないの。」

「…やるって、決めたんでしょう?」


「…うん。」

479: 2015/03/07(土) 02:00:46.05 ID:CxxXurtO.net
にこっちとえりちが、示してくれた道

今のウチが、出来る事


にこっちが始めた活動を、終わらせないために

えりちの思いの詰まった場所を、消さないために


そして何より、ウチ自身のために


この学校は、続いてほしい


…ウチみたいな子は、きっといる

そんな子達に、この場所で

変わるきっかけが出来るように

480: 2015/03/07(土) 02:01:17.25 ID:CxxXurtO.net
果てしない夢を語ってるだけなんかも

…でも、もしもそれが叶うなら


その可能性がゼロじゃないなら

ウチは、頑張ってみたいんよ


また、三人で笑える日がくるように


三人の思い出の詰まった、この場所で




「…ふう、こんなところかしら。」

「アンケート?」


「ええ。まあ、目安箱みたいな物だけど。」

「少しでも生徒から、こんなのがあれば、って話が出ればと思って…」

481: 2015/03/07(土) 02:01:54.10 ID:CxxXurtO.net
「でも、これをどうするん?」

「理事長から生徒に向けて、配ってもらおうと思って。」

「ああ、あの綺麗な人やね。」

「廃校の話を出すのは無理だから…」

「せめて、学校をより良くするために、って名目で。」


「なるほど…」


「もうすぐ夏休みだし。」

「この機会を逃したら、二ヶ月ほど猶予が無くなっちゃうのよ。」


むむ…それは、由々しき事態やん?

こんなん、協力するしかないやんな♪

482: 2015/03/07(土) 02:02:48.85 ID:CxxXurtO.net
ごめんなさい、今日はこれで

明日の朝、多めに更新しますので

486: 2015/03/07(土) 10:54:08.14 ID:CxxXurtO.net
---

えりちの目論みは、半分成功した

生徒のみんなも、いろいろ思う所があるらしく

アンケートは予想以上の結果が帰って来た


…ただ、実現できそうなのはほとんど無かったけど

それでも、生徒の気持ちがわかっただけでも、収穫やった


夏休みに入って、時間の出来たウチらは

それをまとめる作業に入った訳やけど…


まとめているうちに

やらなあかん事がいっぱいでてきて


ブルーな気持ちを一新すべく

今日はそれから少し離れてみることにした

487: 2015/03/07(土) 10:54:49.53 ID:CxxXurtO.net
---


「…で、どうしてプールなの?」

「だって、夏なんよ?」

「照りつける日差し、熱い砂浜。」

「塩のにおいと、はしゃぐ女の子達。」


「これこそ夏の醍醐味やんか!!」


「…プールだけどね。」

「それはほら、お金の関係で…」



ちょびーっと生活費が苦しくて

学生に無料開放してる市民プールに来た


「…まあ、確かに夏らしい事はしてないからね。」

「そうそう!」

「ウチら、女子高生なんやから!」

488: 2015/03/07(土) 10:55:44.94 ID:CxxXurtO.net
「とにかく、早く着替えて泳ぎましょう?」

「はーい♪」


そう言って、脱ぎ始めるえりち

うーん…やっぱり、スタイルいいな


つるっと、お腹を触ってみる

「ひゃあっ!?」


…うん、すべすべしてる


「ちょっと希!何やってるの!?」


えりちは脱いでる途中で、うちの事が見えてない


それにしても…


この目の前で揺れるものは、けしからんなあ…

489: 2015/03/07(土) 11:02:21.57 ID:CxxXurtO.net
誰にも見せられないような顔をして

えりちの背後に回る


「うう、脱げない…」

「ちょっと希、手伝って?」

「…ちょっと待っててなー。」


えりちが、万歳した状態で止まってる

この機、逃す訳にはいかんやん?


それっ


「わしわし~♪」


「いやあぁぁぁ!?」

490: 2015/03/07(土) 11:02:58.28 ID:CxxXurtO.net
「おお…!これは…!」

思わず、驚きの声を上げる

メリハリのついたスタイルなのに

ここはすごく柔らかくて…


「ウチ、もう氏んでも良い…」



「…じゃあ、氏になさい。」

いつの間にか、えりちは脱ぎ終わってた


「あ、あははー…」

「覚悟は、出来てるんでしょうね?」

「に…にっこにっこにー☆」


「…」


「す、すみませんでした…」

491: 2015/03/07(土) 11:03:31.07 ID:CxxXurtO.net
「…」

えりちが、すごくニコニコしてる

これは…終わったな


「…さあ、希。」

「こういう事をするってことは。」

「される覚悟もあるんでしょう?」


「い、いや、ウチはそんなに柔らかくないし…?」


がしっと腕を掴まれて、壁際に追い込まれる

「今なら、まだ誰もいないし…」


えりちがそっと、お腹を撫でる

「ひゃっ…!?」



あかん、変なスイッチ押してしまったかも…

493: 2015/03/07(土) 11:19:30.94 ID:CxxXurtO.net
「さて、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょうか♪」

えりちは、ウチのチャームポイントに手を伸ばす


「え、えりち。待っ…」

「すぐ、終わらせるわ♪」


「あッ…///」

「なによ、希もすごく柔らかいじゃない。」


片手でウチの腕を押さえつつ

もう片方がウチの体を這う


「やっ…ちょお…ッ///」

「…あら、案外かわいらしいのね。」

「えりち…待っ…ンッ///」

「どうしたの?希。」

ウチに構わず、えりちは手のひらを動かす

494: 2015/03/07(土) 11:20:08.10 ID:CxxXurtO.net
「…そろそろ、懲りたかしら?」

「ちがっ…えりち…」

「?」

「みんな…見てるんよ…///」

周りには、他の学生達

こんなん…ただの痴女やん…


「あっ…///」


えりちも、分かってなかったみたいで…


「「…」」


------


「希、悪かったわよ…」

「ウチ、もうお嫁に行かれへん…」


「も、元はと言えば、希が…!」

495: 2015/03/07(土) 11:20:48.05 ID:CxxXurtO.net
「「…はあ。」」


「来て早々、何してるんだろ…」

「えりちに辱めをうけるし…」

「の、希が始めたんでしょ!?」

「でも、あんな舐めるようには触ってないもん。」

「う…だ、だって、希色っぽいんだし…」


「初めてやったのに…」

「待って、その発言はどうかと思うわ。」


「…えりち、場合に寄っては責任とってな?」

「なっ…!?///」



ばしゃっと、えりちに水をかける

「ッ…!?」

「えりちのあほー!」


まだ少し冷たいプールに、飛び込んだ

496: 2015/03/07(土) 11:33:01.71 ID:CxxXurtO.net
「…ふう。」

「いやー、結構遊んだなー。」

「そうね。そろそろ、お腹もすいて来たし…」

「一旦、お昼にしましょうか。」


「…あれ?希ちゃん?」

「え…?」

「あ、絵里ちゃんもだ!久しぶりー!」


「あ、クラスの…」


「なーんだ、来るなら言ってくれたらよかったのに!」

「なんや、皆もきてたんやね。」

「最近暑くなってきたからさ、たまにはね♪」


「よかったら、一緒にご飯行かない?」

「…えりち?」

「ええ、行きましょうか♪」

497: 2015/03/07(土) 11:33:52.47 ID:CxxXurtO.net
---

更衣室に、財布を取りに来る

「いやー、まさか皆来てるなんてな。」

「まあ、この辺でプールはここしか無いし。」

「案外、これが普通なのかしら。」


「それにしても…」

「なんかこういう所のごはんって、美味しく感じん?」


「ああ…確かに。」

「プラスチックの、いかにもマズそうって感じの見た目なのにね。」


「ああ、なに食べよっかな~♪」


「食べるのは良いけど、お腹出してるのよ?」

「食べ過ぎたら…」


「うっ…」


冷たい、汗が流れた

えりち、よく見てるなあ…

498: 2015/03/07(土) 11:41:04.72 ID:CxxXurtO.net
「…!」

「どうしたの?希。」


「ごめん、えりち。」

「先に行っといてくれん?」


「いいけど…どうしたの?」

「いやあ…お花を摘みに…」


「…はいはい。」

えりちが、苦笑する


「待ってるから、早く来なさい。」

「ありがと、えりち。」




えりちを送り出して、トイレに向かう


トイレを通り過ぎて、お子様プールの方へ

499: 2015/03/07(土) 11:41:49.98 ID:CxxXurtO.net
「…やっぱり。」


「げっ…。」


「あ!希さん!お久しぶりです。」

「希おねーちゃん、久しぶりー♪」


子供用プールで、同じ顔が三人並んでた



-----


「まさか、アンタ達も来てるなんて…ね。」

「…さっき、クラスの子達にも会ったで?」

「うわ、まさか…」

「今日は、虎太郎くんは?」

「流石にまだ危ないし、今日はママと家にいるわ。」

「そっか…」


「「…」」


「…最近、どう?」

「漠然とした質問ね。」

「…ごめん。」


「そうね…」



「まだ、諦めてないわよ。」

500: 2015/03/07(土) 11:42:23.83 ID:CxxXurtO.net
「…そっか。」

「何?アンタ、まさかにこが諦めると思ってたの?」

「ううん、違うよ!」

慌てて、手を横に振る


「…ただ。」

「寂しく、無いんかなあ…って。」

「…」


「…そうね。」

「心配しないで、とは…」

「とてもじゃないけど言えないわ。」

「でもね。」


「私は一人でも、絶対に諦めない。」

「アイドルになる、それが私の目標。」



「…うん。」

やっぱり、にこっちや

ぶれずに、しっかり前向いてる

501: 2015/03/07(土) 11:42:48.40 ID:CxxXurtO.net
「ねーねー、希お姉ちゃん!」

「一緒に遊ぼー?」

ここあちゃんが、駆け寄って来た


「ごめんな?」

「人、待たせてるから…」

「また今度、一緒に遊ぼ?」


「えー。」

「…ほら、ここあ。迷惑かけないの。」

「はーい。」


「希さん。また、うちに来てくださいね♪」

「ありがと、こころちゃん。」


「…それじゃ、にこっち。」

「行くね?」


「ええ。またね。」

「うん。頑張ってな。」


「…ありがとう。」

502: 2015/03/07(土) 11:47:41.28 ID:CxxXurtO.net
「お待たせー!」

「希ちゃん、遅ーい!」

「ごめん、ごめん。」

「トイレ混んでてさあ…」


「…本当?」

「うっ…」

やっぱり、えりちは鋭いなあ…

「ま、とにかく。」

「お昼にしましょうか。」

「「はーい!!」」


こうして皆といる、日常も

話す事はめっきり減ったけど

にこっちとの、静かに過ごす時間


どっちもウチにとっては大切で

どっちも、無くしたくないもの


だからウチは

やれる事を、やる


改めて、心に誓った

506: 2015/03/08(日) 01:10:34.25 ID:A9TWSb6M.net
再開します

507: 2015/03/08(日) 01:11:10.82 ID:A9TWSb6M.net
9月---


夏休み開け

ウチらは教室で、ポスター作りに取りかかってた


「…よし、これで完成かしら。」

「いい感じやない?」

「それじゃ、先生の所まで持って行きましょうか。」


『絢瀬絵里に清き一票を』

…なんて、書く日が来るとは夢にも思わんかった♪


でも、初めて二人で作ったポスター

何となく、思い入れが強くなってしまう



えりちと廊下を歩いていると

理事長とばったり出くわした

508: 2015/03/08(日) 01:11:56.74 ID:A9TWSb6M.net
「あら。絢瀬さんと…東條さんね?」

「え?ウチの名前、知ってたんですか?」


「もちろん♪」

「生徒の事は、ちゃんと頭に入ってるわ。」

「貴女の名前も、持つ雰囲気が変わった事も。」


「…!」


「まあ、生徒数が少ないから覚えられる、ってだけの話なんだけれど。」

くすくすと笑いながら、理事長は続けた



「…そういえば、今は何をしていたのかしら?」


「あ、生徒会選挙に使うポスターを…」

509: 2015/03/08(日) 01:12:35.62 ID:A9TWSb6M.net
理事長の目が丸くなる

「…?」

えりちと二人で、顔を見合わせる

なんか、変な事言ったかな…?



「えっと…理事長?」

「ああ、ごめんなさい。」

「一応、見せてもらってもいいかしら。」

「これです。」

そう言って、丸めていたポスターを広げる


「あら、素敵じゃない!」


一瞬で明るくなったその顔は

まるでウチらと同じ学生のように見えた

511: 2015/03/08(日) 01:24:26.36 ID:A9TWSb6M.net
「これを、今月の選挙で使いたいのですが…」

「そうねえ…」

理事長はまた、難しい顔をする


「あの、何か…?」

「その、頑張ってこんなに良い物を作ってくれて。」

「非常に申し訳無いんだけれど…」




「会長の立候補者は絢瀬さんだけだから。」

「選挙をせずに、就任なのよね…」




今度はウチらの目が丸くなる


…そんなこと、すっかり忘れてた

512: 2015/03/08(日) 01:25:05.99 ID:A9TWSb6M.net
「でも、せっかく作ってくれたんだから…」

「思い切って、校内に張っちゃいましょうか♪」


「え、でも…」

「なにより、皆に知ってもらえるチャンスでしょ?」

「それは…」

確かに、そうやけど


二人で、目を合わせる


「「…ふふっ。」」


「いやあ、すっかり忘れてたなー。」

「本当ね。希に振り回されたわ。」

「ちょっと、えりち…?」

513: 2015/03/08(日) 01:36:44.43 ID:A9TWSb6M.net
---


理事長にポスターの事を頼んで、学校を後にする


「…本当、なんで気付かなかったのよ?」

「完全に、選挙に向けて準備してたもんなあ…」


「全く…」

「選挙に勝つには、運気が必要だ、って誰かさんが言うから。」

「デザインまでこだわったのに。」


「おっと、乗ったえりちも同じやで?」

「背景の色とか、めっちゃこだわってたくせに…!」



「ふふっ。でも…いいじゃない。」

「これも、私たちの思い出でしょ?」


「…そうやね。」

514: 2015/03/08(日) 01:37:27.04 ID:A9TWSb6M.net
「こうして、小さな事でも。」

「誰かと思い出が作れる学校。」

「どこの学校もそうかもしれないけど…」

「私たちにとっては、ここしか無いのだから。」


「…廃校させる訳には、いかないもの。」


「そうでしょ?希。」


振り返るえりちの顔が夕日に照らされて

思わず、見とれてしまう


「…?どうしたの?」

「ううん!」


「生徒会、がんばろーなっ♪」

えりちの腕に飛びつく

「もう…」


夕焼けのその向こうへ、ウチらは向かった

515: 2015/03/08(日) 01:45:19.59 ID:A9TWSb6M.net
----

えりちの生徒会就任から2週間


やはりえりちには人前に立つ才能があるようで

そのカリスマ性とも言うべき力で

ウチら生徒会のメンバーを引っ張ってくれてる


たまに、常識知らずな所もあるけど…ね


「希、話を聞いてるの?」

「えっ?も、もちろん聞いてるよ!」


「…そう。それじゃ、希の意見を聞かせてもらおうかしら?」


「えっと…」


あかん

何の話してたっけ…?

516: 2015/03/08(日) 01:50:59.85 ID:A9TWSb6M.net
「…はあ。」

「ちゃんと聞いてよね、副会長さん。」

「…はーい。」


「それじゃ、もう一度説明するわよ?」

「部活動の予算管理だけど…」


やっぱり、えりちはすごいなあ…

成り行きで副会長になったけど…

ウチがいなくても回る気がする


「で、希はどう思う?」

でも、こういう最終決定はちゃんと聞いてくれるとことか

やっぱり、性格やね


「うん、いいと思うで?でも、例えば…」


同調しつつも、自分の意見はしっかり伝える

…えりちから、教わった事

518: 2015/03/09(月) 00:27:51.61 ID:uZUNMv5T.net
お待たせしました

明日は休みなので
書き溜めた分全部あげます

519: 2015/03/09(月) 00:28:35.27 ID:uZUNMv5T.net
<生徒会長の絢瀬絵里さん

<校内におられましたら、職員室までお越し下さいませ

<繰り返します…


「あら?何かしら?」

「えりち、まさか非行を…?」

「希は私をなんだと思ってるのよ…?」

「正直に話すなら今やで、えりち。」

「だから、話すも何も…」


「とにかく、行ってくるから。」

「ん、わかった。」

「申請する書類のまとめ、やっとくよ。」


「本当、仕事ができるんだか出来ないんだか…」

「でも、よろしくね。」


「いってらっしゃ~い。」



よし、それじゃ始めよか!

521: 2015/03/09(月) 00:32:22.17 ID:uZUNMv5T.net
「ん~…だいたい、こんなもんやね。」

後はウチだけで出来るからって

他の役員たちには帰ってもらった


…一応、副会長としての仕事はせんとな

「えりち、遅いなあ…」


今すぐやらないといけない分は終わったし

えりちが来るまで何をしようか…


鞄から、カードを取り出す

「久々に、やってみよかな。」


カードをプールして、ひとつにまとめる


「さて、今の状況は…」

一番上のカードを、めくる

522: 2015/03/09(月) 00:33:27.99 ID:uZUNMv5T.net
『塔』のカード

それも、逆位置

意味するのは…


緊迫・突然のアクシデント


「なんなん、これ…」

タロットの中で唯一

正位置でも逆位置でも悪い意味を持つカード

それが、なんで今…?



占いの結果に呆然としていると

えりちが、飛び込んで来た

523: 2015/03/09(月) 00:41:04.68 ID:uZUNMv5T.net
「…希!!!」


「えりち!?」


えりちは、肩で息をしてる

「ど、どうしたん…?」

占いの結果が、頭をよぎる


「…はあ、はあ。」


この短い時間が、じれったい


「…ごめん。」

「何があったん…?」



「落ち着いて聞いてね?」

「アイドル研究部が…」






「…廃部になるって。」

524: 2015/03/09(月) 00:49:19.79 ID:uZUNMv5T.net
「…は?」

「だから…」

「ちょっと待って!」

「なんで!?」


えりちに詰め寄る

「…だから、落ち着きなさい!!」


えりちの大声で、少し正気に戻る


「…ごめん、えりち。」


「いいのよ。ただ、ちゃんと聞いて。」

「さっき先生から、廃校がほぼ決定する事を伝えられたの。」

「だから、それをウチらでどうにかしようって…」

「言ったわよ!!」


「…言ったからこそ、こうなったの。」

525: 2015/03/09(月) 00:50:05.03 ID:uZUNMv5T.net
「どういう…こと?」

「私たちが、なんとかするって。」

「廃校を阻止するために、生徒会に入ったって。」

「だから、決定するのはもう少し待ってほしい、って。」

「私は…そう、伝えたわ。」


「…うん。」


「先生方の答えは、イエス。」

「絢瀬さんが言うなら、もう少し賭けてみる、って。」


「よかった…」


「でも…」

「ぎりぎりまで決定を伸ばすには、予算が足りないのよ。」

「だから、先生は。」


「廃校を決定しないのなら…」

「部員のいない部活は今年度いっぱいで、廃部にするって。」

526: 2015/03/09(月) 01:04:12.05 ID:uZUNMv5T.net
「そんな…」


「…現時点で廃部が決まってるのは5つ。」

「そのなかに、アイドル研究部も入ってるの。」


「なんで、廃部なんかに…」

「どんなに小さな部活でも。」

「存在するだけで部費を捻出しないと駄目なのよ。」

「だから…」


「そんなん、大人の事情やんか…」

「ただ、例外があって。」


「今年中に部員が増えるか。」

「何かしら大きな業績を残せば、廃部は無くなるそうよ。」


「大きな、業績…」

528: 2015/03/09(月) 01:11:09.74 ID:uZUNMv5T.net
「それすら、私たちの理想が実現しなければ。」

「一年足らずの話だけど…」



「それでも、その二つのどちらかを満たさないと…」

「…廃部になる。」


業績…

アイドル研究部の、業績って…?


「にこに関して言えば…」

「前みたいにライブをして、お客が一定数以上いれば。」

「そして、その子達がもっと見たいって思えれば。」

「…きっと、存続できるはずよ。」


「ライブ…」


苦い記憶が、よみがえる

また、あんな事になったら…

529: 2015/03/09(月) 01:17:58.14 ID:uZUNMv5T.net
「…とにかく。」

「もう決まってしまった事を話してもしょうがないわ。」


「このことは…」

「希から、にこに伝えて。」


「ウチから…?」

えりちが、困った顔をした


「…私が言うと、非情になりすぎてしまう気がするの。」

「学校の決定を、私たちが変えることは出来ない。」


「私じゃ、従って、としか言えないと思うから。」

「だから…お願い、希。」


「えりち…」


ウチが、伝える?

どうやって…?

530: 2015/03/09(月) 01:26:08.86 ID:uZUNMv5T.net
その日は一日、何も考えれんかった

えりちと、生徒会室の戸締まりをして

学校からでた


…けど、どうも家に帰る気がしなくて


公園のベンチに、腰を下ろした


「なんで、廃部になんか…」


あんなに頑張ってるにこっちが

にこっちの夢が、消えてしまう…


そんなの…




「…こんな所で何してるのよ?」


「にこっち…」


一番会いたくない時に

一番会いたい人に会ってしまった

531: 2015/03/09(月) 01:33:43.32 ID:uZUNMv5T.net
---


「…ほら、入って。」

「お邪魔します…」

なんとなく断れずに、家まで招かれてしまった


「あ、希さん!お久しぶりです♪」

「希おねーちゃん、こんばんはー。」


「…二人とも、久しぶり。」

「元気やった?」


「はい♪」

「あ、虎太郎は寝ちゃってるんですけど…」

「そっか、起こさんようにしないとな。」



にこちゃんの部屋に、通される

「…久しぶりね、ここにアンタが来るのも。」

「…うん。」

532: 2015/03/09(月) 01:38:00.88 ID:uZUNMv5T.net
「…で、何があったの?」

ウチの隣に座って、にこっちが尋ねる

「それは…」


…口から、出てこない

引き延ばしても、いいことないのに…



「…部活の事?」

「え…」



「…やっぱり。」

「なんで…?」


「前に言ったでしょ?」

「アンタは、分かりやすいって。」

「今日会ってから一度も、目を見て無いじゃない。」


…そんな事、言われるまで気付かんかった

533: 2015/03/09(月) 02:06:43.38 ID:uZUNMv5T.net
「…詳しく、教えて?」

「…うん。」

言葉を選びながら、にこっちに伝える


---


「…そう。」

全部聞き終わると、にこっちが呟く

「にこっち…」


「…そんな、心配そうな顔しないの。」

「なんとなく…分かってた事だから。」

「でも…」


「要するに、結果を出せばいいんでしょ?」

「…ライブ、やるわよ。」


「でも…」


「一人じゃ出来ないって、誰が決めたの?」

「私は、やってみせる。」

「自分の、夢のために。」

534: 2015/03/09(月) 02:07:17.93 ID:uZUNMv5T.net
「にこっち…」

「教えてくれて、ありがと。」

「言ってくれたのが、希で良かったわ。」

「…先生に言われたら、きっと反発しちゃうから。」


「…」


「…ほら、元気だしなさいよ。」

「変わったんでしょ?」

「もっと、笑いなさい。」


「にこっちぃ…」

思わず、抱きつく

「…まったく。」


にこっちが、頭を撫でてくれる

「私の前では、いつまでもあの頃のままね。」


にこっちの笑顔、久々に見た気がする

535: 2015/03/09(月) 02:24:20.07 ID:uZUNMv5T.net
部屋の扉を、ノックされる


「お姉様、そろそろ…」

「はいはい、今行くわよ。」


「…よかったら、ご飯食べてく?」

「え?」

「どうせアンタの事だから、またコンビニとかでしょ?」

「う…」


「準備するから、リビングで待ってて。」

「でも…」

「いいから。」


今日のにこっち、すごく優しい

ウチが…沈んでるからかな

536: 2015/03/09(月) 02:24:59.90 ID:uZUNMv5T.net
---

「…ごちそうさまでした。」

「はい、お粗末様。」


にこっちのご飯はすごく美味しくて

思わず、顔が緩んでしまう


「ねーねー、希おねーちゃん。」

「ん?どうしたん?」

「今日、泊まって行きなよ!」

「へっ?」


「…ホント、希ってば気に入られてるわね。」

「にこっち…」


「私は、構わないけど?」

「でも…」


「…お布団、もう一枚出しておきますね。」

こころちゃんが、テキパキと動く

「…みんな、アンタの事が好きなのよ。」

537: 2015/03/09(月) 02:25:33.23 ID:uZUNMv5T.net
にこっちの言葉に泣きそうになりながらも

みんなとお風呂に入って、パジャマに着替える


「にこっち…」

「何よ!?」

「それしかないんだから、仕方ないじゃない!」


にこっちの服を借りたけど、胸元が…


「悪かったわね、誰かさんみたいに大きくなくて!」


そんなこと言ってないのに…


---


皆で、川の字で布団に入る

「明日も学校だから、もう寝るわよ。」

538: 2015/03/09(月) 02:26:13.88 ID:uZUNMv5T.net
「えー!」

「まだ、希おねーちゃんと話したいのに!」

「駄目。」

「…はーい。」

こういう所は、やっぱりお姉ちゃんなんやね


「…ほら、希も早く寝なさい。」

「いつもより早く起きないと、家に帰れないわよ?」


「…ありがと、にこっち。」

「おやすみなさい。」



---


「…絶対、廃部になんかさせない。」

「私が作ったんだから…」

539: 2015/03/09(月) 02:35:27.99 ID:uZUNMv5T.net
それからにこっちは

以前にも増して活動的になった

ビラ配りや、告知をいっぱいして

ライブだってした


一人でも、とても大きく見えた

どんな時だって、笑顔やった


「…上手く行くといいわね。」

「…きっと、上手く行くよ。」

「あんなに、頑張ってるんやもん。」


そう

にこっちなら、大丈夫


きっとまた、笑顔で乗り越えられる


そう、信じてる









-----信じてた

540: 2015/03/09(月) 02:39:55.26 ID:uZUNMv5T.net
---11月

年末度、活動報告


先生方とえりち、ウチで生徒会の活動報告を行う


淡々と進められた報告会は

最後の議題である部活動の報告だけになった


「えー。それでは。」

「以前話していた廃部の件ですが…」


にこっち…!



「変更は無し。」

「よって該当する部活動は、本年度をもって廃部とします。」





あんなに、頑張ったのに…?

541: 2015/03/09(月) 02:40:33.44 ID:uZUNMv5T.net
「ちょ、ちょっと待ってください!!」

「希…」


「アイドル研究部は、もうちょっと待ってもらえませんか!?」

「きっと…きっと、後少しで…!」


「そうは言っても…」

「先日のライブも、お客さんは少なかったみたいじゃない。」

「それに、未だ部員は一人。」

「…むしろ、今までよく保った方よ?」


「そんな…!」


「…東條さん。」

「貴女が、アイドル研究部と密な関係であることは知ってるわ。」

542: 2015/03/09(月) 02:41:05.08 ID:uZUNMv5T.net
「…それでも。」

「生徒会役員としてここにいる以上。」

「感情ばかりで動くのは、賢いとは言えないわよ?」


「それは…」


「とにかく。」

「この決定は覆る事はありません。」


「以上の部活動は、今年で廃部とします。」



「…」



「それでは、報告会を終わります。」

「…おつかれさまでした。」

543: 2015/03/09(月) 03:12:36.92 ID:uZUNMv5T.net
四時ごろから再開します

545: 2015/03/09(月) 03:58:34.83 ID:uZUNMv5T.net
「…」

「ねえ、希…」


「…ウチ、理事長先生のとこ行ってくる。」

そう言って、理事長室に向かう


「ちょっと、希!?」

えりちが、慌てて着いて来た


「…気持ちは分かるけど。」

「今更、無理よ。」


「提示された条件も、クリア出来なかったんだし…」


「…」


「ちょっと、希ってば!」

えりちに、腕を掴まれた

546: 2015/03/09(月) 03:59:08.33 ID:uZUNMv5T.net
「…落ち着いて。」

「…落ち着いてるよ。」

「でも、納得がいかん。」

「だから、直接理事長にかけあってみる。」


「無理に決まってるでしょう!?」

「やってみんと分からんやん!!」



「…ウチが、したくてしてることやから。」

「えりちは、生徒会室に戻ってて。」


「…無理ね。」

「希が行くなら、私も行く。」

「えりち…」


「今更、水臭い事言わないでよ。」

「…聞いてみなくちゃ、分からないものね。」

547: 2015/03/09(月) 03:59:50.11 ID:uZUNMv5T.net
---


「どうにか、なりませんか!?」


「貴女の気持ちも分かるけど…」

「廃校か、廃部か。」

「どちらかに決めないと、八方ふさがりなのよ。」

「…ごめんなさいね。」

理事長は、続ける


「…それに。」

「もし、アイドル研究部だけを存続させてしまうと…」

「他の廃部になった部活に、顔向けできないでしょう?」


「それなら、他の部活も…という形には出来ませんか?」

「部費の件だって、話せばきっと…!」


「えりち…」

548: 2015/03/09(月) 04:07:22.04 ID:uZUNMv5T.net
「それは無理よ。」

「例え、部費がゼロでも構わないという部活がいたとしても…」

「校内で活動する以上、設備にお金はかかるのよ。」

「貴女達高校生に、大人の事情を伝えるのはいけない事だけど…」

「それほど、この学校が窮地に立たされているという事を理解して頂戴。」


「…」


「…私だって、できるなら生徒達の夢を壊したくはない。」

「でも、そうする事で訪れるのは廃校よ。」

「だったら私は、理事長として。」

「より多くの生徒を守らなければならない。」

「…言ってる意味、貴女達なら分かるでしょう?」


「…はい。」

549: 2015/03/09(月) 04:07:44.33 ID:uZUNMv5T.net
-----

「駄目…だったわね。」

「…」

「…もう、どうしようも無いわ。」

「…」

「…ウチは、諦めん。」

「あんなに頑張ってるの見て来たんやもん。」

「許してくれるまで、何度だって頼みに行く。」


「希…」





それからウチは、何度も

毎日、理事長室に向かった


何度断られようと

何度も、何度も、頭を下げた

無理なのは分かってた

でも、何もせずにはいられなかった

550: 2015/03/09(月) 04:09:02.12 ID:uZUNMv5T.net
---


「…今日も、だめだったのね。」

「…うん。」


「ほら、落ち込んでどうするの?」

「…」

「…ふう。今日はもう、帰りなさい。」

「えりちは?」

「私はもう少し、整理してから帰るわ。」

「なら、ウチも…」

「いいから。」

「貴女は、ちゃんと休みなさい。」


「…目の下のクマ、目立つわよ。」

気付かれちゃってたか…


「…ごめんな、えりち。」

「いいのよ。」


そう言って、ウチは生徒会室から出た







「…よし。」

551: 2015/03/09(月) 04:20:28.61 ID:uZUNMv5T.net
-----

コンコン

「…はい。」

「失礼します。」


「…絢瀬さん。どうしたの?」

「今日は、私もお願いに来ました。」


「…廃部の事ね。」

「…」


「…貴女は、肯定的なんだと思っていたわ。」

「…そうですね。」

「以前までの私なら、希を抑える側にいたと思います。」


「でも、今は…」


「彼女達を、応援したいんです。」


「彼女…達?」

552: 2015/03/09(月) 04:21:08.75 ID:uZUNMv5T.net
「希は…」

「彼女は、まっすぐで。」

「いつも、人の事を考えて動いています。」

「誰かのためって決めたら、それに向かって一直線で。」

「周りの意見や、声なんて気にせずに、ぶつかって行くんです。」

「…そんな、馬鹿な子なんです。」

「…」


「…でも、彼女がこうなったのは、ある人の背中を見てたからです。」

「その子は、いつだって前向きで。」

「胸を張って、信念をもって生きています。」

「諦める事を知らない、辛くても笑顔でいる。」

「…希が目標とする、馬鹿な子です。」


「…でも、そんな馬鹿な彼女達だから…出きる事が、あるんじゃないか、って。」


「…そう、思えるんです。」

553: 2015/03/09(月) 04:27:23.28 ID:uZUNMv5T.net
「…貴女は、もっと達観してる人だと思ってたわ。」

「もちろん、良い意味でね。」


「…そうですね。」

「馬鹿な子達と、一緒に馬鹿な事をしてると…」

「私まで、馬鹿になってしまったみたいです。」


「ふふっ。若いって、すばらしいわね。」

「…でも、思いだけじゃどうにもならない事だってあるのよ。」


「…」

「分かってます。それでも、私は彼女達に賭けてみたいんです。」

「…これを、見てください。」

「…これは?」

「嘆願書です。」




「…廃部の危機に晒されている、部活。」

「その部長さんから、預かってきました。」

554: 2015/03/09(月) 04:28:08.29 ID:uZUNMv5T.net
「…もっと、続けていたい。」

「もっと、こんなことがしたい。」

「自分たちには、こんな夢がある。」


「…そういった事が、書かれています。」


「…」


「…これを出したからって、どうにかなるとは思いません。」

「こんなのは、ただの理想論です。」


「…ですが、私たち生徒会が目指すのも。」

「そんな、理想の学校なんです。」



「廃校は、私たち生徒会がなんとしても阻止してみせます!」

「だからどうか、廃校が決まる最期のその時まで!」

「彼女達に、夢を追いかけさせてあげてください!」



「お願いします!!」



「…」

559: 2015/03/09(月) 17:59:57.92 ID:uZUNMv5T.net
-----


「うそ…?」

「本当よ。」

「理事長から、正式に通達が来てね。」

「廃部の話が、無しになったわ。」


「ほんまに…?」

「ええ。」


「やったー!!」

思わず、飛び跳ねる


「さっそく、にこっちに伝えんと!!」

「あ、でも…」

「?」

「どうして理事長は、辞めてくれたんやろ?」

「あんなに、反対してたのに…」

560: 2015/03/09(月) 18:00:34.99 ID:uZUNMv5T.net
「…きっと、希が何度も頭を下げたからじゃ無いかしら。」

「うーん…」


「まあ、どうしてかは分からないけれど。」

「とにかく、部の存続は決まった。」

「まずは、にこに伝えて来なさい。」

「きっと、さっきの希と同じ反応するわ♪」


「…うん!」

「行ってくる!!」



やった…!

やったやった…!


にこっち、これからもアイドル続けられる!!




おめでとう、にこっち…!

561: 2015/03/09(月) 18:11:34.75 ID:uZUNMv5T.net
---


「にこっち!!」

「どうしたの、希?」

「ちょっと、こっちに…!」

「ちょっ!?引っ張らないでよ…!」




「…で、一体なんなの?」

にこっちを、屋上に連れて来た

「えっと…えっとな!」


「廃部の話、無くなったんよ!!」


「…え?」

「理事長が、取りやめてくれてん!」

「だから、これからも活動できるんよ!」

562: 2015/03/09(月) 18:23:46.91 ID:uZUNMv5T.net
「うそ…」

「ほんとやって!!」


「…」

「…にこっち?」



「…グスッ。」

「…泣いてるん?」


「べ、別に!?」

「きっと、このにこの活動が認められたって事よね!!」


「無駄じゃ…なかったんだ…」


「にこっち…」


本当に、そうなんかな…?

あんなに、先生達に否定されてたのに…

563: 2015/03/09(月) 18:24:23.04 ID:uZUNMv5T.net
…ううん、きっと努力が実ったんや!


「にこっち、おめでとう。」

「これからも、頑張ってな♪」


「トーゼンよ!!」

「もっと頑張って、学校一のアイドルになるんだから!」

「そこから、もっと有名になってやるわ!!」



「うん、楽しみにしてる。」

「みてなさい、希。」

「一人でも出来るってことを、証明してみせるわ!」


「…よし!」

「もっともっと、アピールしなきゃ…!」


「まずはライブね!!」

「客席を、にこのファンで埋め尽くすわよ!!」

564: 2015/03/09(月) 18:24:56.08 ID:uZUNMv5T.net
こんなに笑顔のにこっち、久々に見た


…これできっと、大丈夫


後は…ウチらが、頑張る番


にこっちが作り上げた部活を

皆が頑張る部活を


ウチらが、守るんや!


「本当におめでとう、にこっち。」

「ウチも、頑張るな?」


「ええ!」

「最高の学園生活にするわよ!!」


「…うん!!」

565: 2015/03/09(月) 18:34:49.85 ID:uZUNMv5T.net
---


「…あ。」

「こんにちは、矢澤さん。」

「どうも…」

「これからも、頑張ってね?」



「あ、あの、理事長!」

「…はい?」

「部活の事…ありがとうございました!!」


「感謝する相手が、違うわよ?」

「…え?」


「感謝するなら、貴女の友達に…ね。」


「どういう…事ですか?」



「あの二人がいなかったら…」

「私は、取りやめてなんかいなかったから。」

566: 2015/03/09(月) 18:38:39.63 ID:uZUNMv5T.net
「それって…」

「東條さんはね。」

「毎日、私の所に来て頭を下げてたの。」

「絶対に、努力は実るから。」

「もう少し、待ってほしい、って。」


「絢瀬さんは、他の部活に掛け合って…」

「みんなが何をしたいか。」

「どんな夢を叶えたいか。」

「それぞれの部活から、嘆願書を持って来たわ。」


「…それに。」

「あの生徒会長が、声を荒げてまで頭を下げたのよ?」

「…信じてみたいと、思うじゃない。」

567: 2015/03/09(月) 18:39:12.59 ID:uZUNMv5T.net
「そんな…」


「いい友達を、持ったわね。」

「私も…期待してるのよ?」

「あの子達に、そこまで言わせる貴女の事。」


「頑張ってね♪」


「ありがとう…ございます。」


「それじゃ、私はここで。」







「希…」

「絵里…」


『きっと、このにこの活動が認められたって事よね!!』


「…ッ!」




「バカ…みたい。」

568: 2015/03/09(月) 18:55:10.04 ID:uZUNMv5T.net
-----


「いやー…それにしても、良かったなあ♪」

「ふふっ…さっきから、そればっかり。」

「だって、嬉しいやんか。」


「…でも、それとこれとは話が別。」

「これで、私たちは今まで以上に頑張らなきゃいけなくなったのよ?」


「…分かってる。」

「それでも、やっぱり良かった。」

「…」

「…そうね。」



「それじゃ、書類の整理、終わらせるわよ?」

「はーい!」



ガラッ

「…」

「…あれ、にこっち?」

569: 2015/03/09(月) 18:55:43.82 ID:uZUNMv5T.net
「どうしたん、生徒会室まで来て…」


「…どういう事よ。」

「え…?」


「一体…何様のつもりよ…」

「ど、どうしたん?にこっち…」


「理事長から聞いたわよ!!」

「アンタ達が、影で動いてたって!!」


「…!」

「それは…」


「アンタ、毎日理事長に頭下げたんだって!?」

「努力はきっと実る、って!」


「でもそれは、にこっちが…」

「アンタに私の何が分かるのよ!!」

570: 2015/03/09(月) 18:56:22.85 ID:uZUNMv5T.net
「にこ、そんな言い方…!」

「アンタもよ、絵里!!」


「他の部活と嘆願書まで作って!!」

「みんなの想いを無駄にしないでほしいって!」

「夢を追いかけさせてあげてほしいって、頭下げたそうじゃない!!」


「えりち、それって…」

「…」


「何勝手な事してんのよ!!」

「結局、アンタ達のお陰じゃない!!」


「良い友達を持った、って…」

「そんな事、私は望んでない!!」


「にこっち!!」

571: 2015/03/09(月) 18:57:11.55 ID:uZUNMv5T.net
「これじゃ、私が馬鹿みたいじゃない!!」

「結局、私ひとりの力じゃ何も出来ない!!」


「理事長のお情けで、活動を続けられるだけじゃない!」

「私は、何もできてない!!」


「にこっち…」


「いつだって、そう!」

「私は、アンタ達に頼りたくない!」

「自分自身の力で、勝ち取りたいの!!」

「なのに…」

「なのに最後は、いつもアンタ達が入ってくる!!」


「こんなの…」

「こんなので、私が喜ぶと思う…?」


「いつまでも、私はアンタ達に支えられて…」

「それで、胸はってアイドルやります、なんて言えると思う…?」

573: 2015/03/09(月) 19:04:16.16 ID:uZUNMv5T.net
「…だったら、辞めなさい。」

「えりち!?」


「私たちがした事が、間違ってるとは思わないわ。」

「現に、他の部活の人たちも、活動を再開してる。」


「私は、私ができる事をしただけよ。」

「もし、それが嫌だと言うなら…」

「辞めなさい。」


「アンタ、何様のつもりよ!」

「自分が何でも出来るからって、こんなことしたの!?」

「ありがた迷惑よ!」


「…私は。」

「生徒会長になった時に決めたの。」

「この学校を、守るって。」

「ここにいる生徒達のために、動くって。」

574: 2015/03/09(月) 19:05:12.92 ID:uZUNMv5T.net
「その生徒の中に、貴女も入ってる。」

「ただ…それだけの理由よ。」


「…だから。」

「嫌なら、辞めなさい。」

「人の好意を否定してまで、やりたくないと言うのなら。」

「貴女は、そこまでの器でしかなかったという事よ。」


「…好き勝手言ってんじゃないわよ!!」


「なら、努力しなさい!!」

「…結果がどうあれ、貴女には一年の猶予が与えられた。」

「それをどうするかは、貴女次第よ。」


「このまま変な意地を張ってチャンスを無駄にするのか。」

「それとも、成功を目指すのか…」


「…ッ!!」


「にこっち、待って…!」

「放っておきなさい。」

575: 2015/03/09(月) 19:05:47.23 ID:uZUNMv5T.net
「えりち…」

「できるだけの事はやった。」

「これから先は、にこ自身の問題よ。」

「でも…」


「これ以上は、余計惨めな気持ちにさせるだけよ。」

「…」


「希も、薄々感づいてはいたんでしょう?」

「にこの頑張りだけじゃ、無理だって。」

「それは…!」

「だから、あんなに必氏に頭を下げたんじゃないの?」

「自分が、なんとかしないと、って…」


えりちは…間違ってない

576: 2015/03/09(月) 19:06:21.12 ID:uZUNMv5T.net
「…結局は、何だって自己満足なのよ。」

「相手のためを思っても。」

「相手には伝わらない事がある。」

「にこっち…」


「私たちは、みんな傲慢なの。」

「全て上手く行くなんて事、ありはしない。」

「…フィクションじゃ無いんだから。」



「…だから。」

「もう、にこの事は放っておきなさい。」


「そんな…!」

577: 2015/03/09(月) 19:11:34.64 ID:uZUNMv5T.net
「…希。」

「貴女が生徒会に入ったのは、なぜ?」

「それが揺らぐなら…」


「貴女も、辞める事を勧めるわ。」

「え…?」


「もう一度、自分がどうしたいかを考えなさい。」

「時には、今日みたいに何かを捨てなければならない時が来る。」

「思いだったり、友情だったり…」

「自分の中の、曲げられない物を守るために。」

「時には…非情にならないといけないの。」


「曲げられない、物…?」


「私は、この学校を守ると誓った。」

「貴女がくれた想いを、守ると決めたの。」

578: 2015/03/09(月) 19:12:14.56 ID:uZUNMv5T.net
「それこそが、私の曲げられない物。」

「信念…とも、言うべき物よ。」


「だから、選びなさい。」

「自分が、何をしたいか。」

「何を、望むのか。」

「そして…」


「何を、捨てるのかを。」


何かを、捨てる…?

そんな事、出来ないよ

だって…


だって、全部大切な物なんよ…?

579: 2015/03/09(月) 19:13:09.41 ID:uZUNMv5T.net
「えりち…」


「…ごめんなさい。」

「貴女は、悪くないわ。」

「そんなんと違うよ…」

「えりちは、これでよかったん…?」


「良かったも何も。」

「私は、私がするべきと思った事をしただけよ。」


本当に…?

にこっちに嫌われてまで

えりちがやりたかった事がこれなん…?


「…さあ、仕事を終わらせましょう?」

「あと、一年しかないんだから。」






ウチらの間に大きな溝が出来たまま

それを修復する事はできなかった

…そのやり方が、ウチには分からなかった



そして、そんな傷跡を残したまま

18の、春が来た---

580: 2015/03/09(月) 19:13:54.42 ID:uZUNMv5T.net
一旦終わり

9時くらいに再開します

584: 2015/03/09(月) 21:04:09.46 ID:uZUNMv5T.net
-----


あれから、ウチらがやったいくつかの案もむなしく

時間だけが過ぎて行った


そして、時間が経つにつれて…

えりちから、笑顔が消えた


まるで、何か焦ってるみたいな…

そんな感じ


それでも、ウチはウチのために

そして、えりちのために


えりちの隣に、立つって決めた

585: 2015/03/09(月) 21:04:37.06 ID:uZUNMv5T.net
えりちが一生懸命頑張るのなら

ウチが、えりちの息抜きになろう

えりちが迷ってる時は

えりちの背中を押そう

そう…決めたんよ


そう思った、矢先…

校内に、廃校の張り紙が張り出されるようになった



「なんで…」

「まだ、時間は…」

「行くわよ、希。」

「私たちが出来る事が、まだあるでしょう?」

「…」

586: 2015/03/09(月) 21:05:13.41 ID:uZUNMv5T.net
---

それからウチらはまず

理事長の娘である、後輩の南さんの所に向かった

「いくらなんでも、私たちに報告無しに生徒に発表なんて急すぎるわ。」

「…でも、流石に娘さんも知らんのとちゃうかな?」

「だから、聞きにいくんでしょ?」

「動かなければ、何も変わらないわ。」

「…うん!」





それでも、やっぱり聞かされてはいないようやった

悪い事、しちゃったかな?


…でも


あの、真ん中にいた子

あの子だけは、どこか違う所を向いてた気がする



…昔の、えりちみたいやった

587: 2015/03/09(月) 21:11:28.04 ID:uZUNMv5T.net
コンコン

「失礼します。」

「…?」

えりちと、理事長の前に並ぶ

あんな事が発表された後やけど…

「…生徒会としても、学校存続に向けて。」

「活動していこうと思います。」

「発表には、入学希望者が定員を下回った場合…」

「廃校という決定をせざるを得ない、とありました。」


ウチも、続ける

「つまり、定員を上回れば…」


「…たしかに。」

「ですが…そう簡単に生徒が集まらないからこそ。」

「この結果なんです。」

588: 2015/03/09(月) 21:12:06.89 ID:uZUNMv5T.net
「なにか良い方法があるんですか?」

「…」

何も…ない

だって、どれも成功なんてしなかったから…


「思いつきで行動しても、簡単に状況は変わりません。」

「…生徒会は、今いる生徒の学園生活を。」

「よりよくする事を考えるべきです。」

「でも、このまま何もしない訳には!」

「えりち!」

思わず、止める

「…ありがとう、絢瀬さん。」

「貴女が、そこまで学校の事。」

「生徒の事を考えてくれているのは、知っています。」

589: 2015/03/09(月) 21:12:48.79 ID:uZUNMv5T.net
「…だからこそ。」

「あの時、貴女を信じてみようと思ったの。」

「結果が伴わなくても。」

「貴女の努力は、確かにこの学校のためにあった。」

「それは事実よ。」

「…だから。」

「その気持ちだけ、ありがたく受け取っておくわ。」


「…」

えりちが、下を向く


…そう、えりちは頑張った

何があろうと、前を向いて来た

でも…やっぱり

ウチらだけじゃ、無理なんかな


なにか、変化があれば…

590: 2015/03/09(月) 21:22:03.01 ID:uZUNMv5T.net
---

生徒会室で、今後の事を考える

「…」

なんて声をかけて良いかも、分からない


すると、ドアをノックされた

「失礼します。」


あれ?この子らは、お昼の…



「生徒会長に、お願いがあって来ました!」

「…お願い?」

「これです!」

そう言って、彼女は一枚の紙を机に置いた


「…これは?」

「アイドル部、設立の申請書です。」

591: 2015/03/09(月) 21:22:47.82 ID:uZUNMv5T.net
「…それは見れば分かります。」

「では、認めて頂けますね?」

「いいえ。」

「え…?」

えりちの返答に、三人がたじろぐ

「部活は同好会でも、最低5人は必要なの。」

ロングヘアの子が、口を開いた

「…ですが、校内には部員が5人以下のところも沢山あるって聞いてます。」

「…私たちが入学した頃は、それも可能だった。」

「でも今は、最低5人いないと認められないの。」

「そんな…」


確かに、それは本当の事

入学したての頃は、にこっち一人で部活を立ち上げたんやから

592: 2015/03/09(月) 21:23:15.97 ID:uZUNMv5T.net
でも…

なんとなく

ここで、終わらせたら駄目な気がした

そんな目を、真ん中の子はしてたんよ


「あと二人やね…」

何となく、助け舟をだしてみた

ほんの小さな、気まぐれ

でも、何かが起こる気がした

「あと、二人…分かりました。」

「行こ。」

三人が、出て行こうとする

「…待ちなさい。」


えりちが、そんな彼女達を呼び止めた

593: 2015/03/09(月) 21:24:21.81 ID:uZUNMv5T.net
「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?」

「貴女達2年生でしょ?」

「廃校をなんとか阻止したくて…!」

「スクールアイドルって、今すごい人気があるんですよ?だから…」

彼女の言葉を、えりちが遮る

「だったら、例え5人揃えて来ても…」

「認める訳にはいかないわね。」

「ええっ!?どうして…」

「部活は生徒を集めるためにやる物じゃない。」

「思いつきで行動した所で、状況は変えられないわ。」

…そう

ウチらは、見て来たから

自分の夢に向かってひたむきに努力するにこっちを

努力しても、結果を変えられない、自分たちを

594: 2015/03/09(月) 21:30:17.79 ID:uZUNMv5T.net
そうしてえりちは、彼女達を返しちゃった

もちろん、えりちの言ってる事はもっともや

3年間、変えようと必氏になって来たのが、ウチらなんやもん

それでも、気付いてる?


自分を変えたいって言った時の、えりち

さっきの子と、そっくりなんよ…?


どんな事があっても、頑張るんと違うん?


「…さっきの。」

「誰かさんに聞かせたい台詞やったなあ…」

ちょっと意地悪に、えりちに言ってみる

「いちいち一言多いのよ、希は…」

「ふふっ。それが、副会長の仕事やし…♪」

よかった

えりちも、思う所はあるみたい


「でも…」

「「どうすればいいの…?」」

595: 2015/03/09(月) 21:38:31.41 ID:uZUNMv5T.net
---

次の日になって

彼女達は、またやってきた

「…朝から何?」

えりちも、朝やからか少し機嫌が悪い

「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして!」

「部活動に関係なく。」

「生徒は自由に講堂を使用できると、生徒手帳に書いてありましたので。」

…この子、もしかしたらすごい真面目な子なんかも

だって、ウチはそんなの知らなかったし…?

えりちに隠れて、苦笑する

それで、時間は…

「新入生歓迎会の日の放課後やなあ…」

「…何をするつもり?」

「ライブです。」

彼女は、恥ずかしがる事も無く、そう言った

…だれかに、そっくりやね

597: 2015/03/09(月) 21:56:27.81 ID:uZUNMv5T.net
えりちが疑いの目を向けるから…

ちょっと、この子らの味方をしたくなった

…まあ、部活と違って、単に使用許可を申請してるだけやしね


えりちを制して、許可を出す

3人は笑顔で、生徒会室を出て行った



「…なぜあの子達の味方をするの?」

えりちに聞かれる

ウチは、窓を開けて…こう答えた

「…何度やっても、そうしろって言うんや。」

「カードが…」

部屋に、風が舞い込む

「カードが、ウチにそう告げるんや!」

599: 2015/03/09(月) 21:56:55.41 ID:uZUNMv5T.net
風に舞ったタロットが

壁に打ち付けられる

一枚のカードだけが、表を向いていた

『太陽』のカード

意味するのは…


「成就・兆し。」


「なんとなく…」

「なにかが、変わる気がするんよ。」


「…」


「もちろん、頑張るのは彼女達や♪」

600: 2015/03/09(月) 21:57:32.20 ID:uZUNMv5T.net
そして、いつの間にか校内には

彼女達のポスターが貼られるようになった

手書きの、なんとも可愛らしいポスター

そして下には、グループ名募集の文字

「ふふっ。名前はまだ、無い…か。」


今日は、生徒会の仕事も一段落したし

早めに、バイトに向かう

結局、居心地が良くて

3年間、ここでずっとバイトしてる


境内を掃いて回ってると、

男坂の方で声が聞こえた


…あ、あの子たちや

601: 2015/03/09(月) 21:58:15.42 ID:uZUNMv5T.net
頑張ってる姿がなんとなくほっとけなくて

思わず、声をかけてみた


…せっかくこんなとこにいるんやから

しっかり、お参りしとかんとね♪


真剣に手を合わせる3人を見て

にこっちの事を思い出す


「…初ライブ、上手く行きますように。」

「「上手く行きますように。」」




「…あの3人、本気みたいやな。」


応援、したくなってしまった

602: 2015/03/09(月) 22:04:32.51 ID:uZUNMv5T.net
…だからかな?

ほーんのちょっと、魔が差して

小さく丸めた手紙を、廊下のボックスに入れてみた


なんとなく、励みになればと思って



…えりちが、お昼に彼女達に会って来たみたい

「いざやってみて、出来ませんでした…じゃ、意味が無いでしょ。」


えりちは、そう言って仕事をする

確かに、それはその通りやけど…



えりち、可能性は誰にでもある、って言ったよな


…ならウチは、その小さな可能性を、信じてみたいんよ

603: 2015/03/09(月) 22:09:24.12 ID:uZUNMv5T.net
---

風の噂に聞く所によると

彼女…高坂穂乃果ちゃん達は作曲者を探してるみたい


いろいろ探ってみると

一年生の子が、ピアノがうまいって話やけど…

どうも、断られたらしくて



そんなある日、バイトをしてると

男坂の下から、練習中の穂乃果ちゃんたちを覗く

赤い髪の女の子を発見した


…ああ、なるほど

どっかの誰かさんと一緒で、素直じゃないんやね♪

604: 2015/03/09(月) 22:10:01.62 ID:uZUNMv5T.net
後ろからそーっと近づいて

その小さめの物をもみしだく


おお、これはなかなか…

可能性を秘めてるな?


驚く彼女に、少しだけ声をかける


「…恥ずかしいんなら、こっそりという手もあると思うんや。」

「だから何?」

「…分かるやろ?」


ウチが言えるのは、ここまで

それでも、彼女に響かなかったら…


ま、それはその時考えよっか♪

607: 2015/03/09(月) 22:23:49.76 ID:uZUNMv5T.net
数日後、彼女らはすごく元気になってた

いつでも笑顔で練習してるとこを見ると


…上手くいったみたいやね♪


それから、校内のポスターにも変化があった

『グループ名募集中』

の文字が消されて

『みんな来てね~』

に、変わってた


そして、その上に大きく…


『μ's』の文字が



「…ふふっ。」

思わず、笑みがこぼれる

まさか、こうなるなんて…な

608: 2015/03/09(月) 22:24:21.08 ID:uZUNMv5T.net
そして、初ライブの日がやってきた---


新入生歓迎会を終え

生徒会室で帰る準備をしていると

ふいに、えりちが講堂の方を見た


「気になる?」

「希…」

「…ウチは、帰ろうかな♪」

そう言って、生徒会室から出る


…もちろん、向かう先は

あの子達が立つ、あの場所へ

609: 2015/03/09(月) 22:31:07.13 ID:uZUNMv5T.net
「これは…!」

お客さんは、ゼロやった


想定してた事の一つとは言え

これじゃ、流石にあの子達でも…


「にこっち…」

あの時を思い出して

少し、辛くなる

…そんな、時やった




<~♪

曲が、流れ出した

「まさか…!」


「…」


「…ふふっ。」

やっぱり、すごいなあ…

610: 2015/03/09(月) 22:31:53.87 ID:uZUNMv5T.net
そっと、壁に寄りかかる


…彼女達なら、大丈夫

きっと、ウチらが出来なかった事を

届かなかった夢に、手が届く

そんな、気がした


そして、きっとそれは…

そこの壁に隠れてる、素直じゃない子も

…きっと、えりちにだって伝わる



精一杯、突き進んで

諦めなくて

そんな子達が、学校を守るために動いてる


…なあ、えりち

こんな子達、えりちに止められる…?

612: 2015/03/09(月) 22:41:55.88 ID:uZUNMv5T.net
----曲が終わる

肩で息をする彼女達の前に、えりちが来た

「…どうするつもり?」

えりちの問いかけに、穂乃果ちゃんは迷い無く答えた

「続けます。」

「なぜ…?」

「これ以上続けても、意味があるとは思えないけど。」

「やりたいからです!」

「今、私…もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます。」

「きっと海未ちゃんも、ことりちゃんも。」

「こんな気持ち、初めてなんです!」

「やってよかったって、本気で思えたんです!」



「…今は、この気持ちを信じたい。」

613: 2015/03/09(月) 22:44:39.64 ID:uZUNMv5T.net
「このまま誰も、見向きもしてくれないかもしれない。」

「応援なんて、全然もらえないかもしれない。」

「でも、一生懸命頑張って。」

「私たちがとにかく頑張って、届けたい…!」

「今、私たちがここにいる…この想いを!」

「いつか…」

「いつか私たち、必ず…!」

「ここを満員にしてみせます!!」




…やっぱり、面白い子達やなあ

「ふふっ。完敗からのスタート、か…♪」



なあ…にこっち、えりち

ウチ、この子達と、共に歩んでみたい

きっと、もっと楽しくなる

そして、廃校の事だって…


ウチも、今感じたこの気持ちを…信じてみたいんよ





---そして、ウチは講堂を後にした

614: 2015/03/09(月) 22:47:55.55 ID:uZUNMv5T.net
今日はここまで
やっと、本編に絡ませる事ができました

進行度は6割ちょっとなので
いつ終わるのやら…
気長に見ててください

それでは

615: 2015/03/09(月) 22:53:35.45 ID:161xzoSD.net
本編に絡むSSは良作揃いな気がする
まってる

618: 2015/03/09(月) 23:01:21.46 ID:qja8Tkr6.net
この濃さでまだ六割とか有能すぎる…

621: 2015/03/09(月) 23:24:26.69 ID:uZUNMv5T.net
寝る前に一つ
だいぶサイドストーリー省いてるので
もし需要があるなら
全編終わったあとに、それは投下します
【ラブライブ】希「私がウチになれたのは。」【その3】

引用: 希「私がウチになれたのは。」