505: 2015/04/12(日) 18:10:13.90 ID:Zbg5Emiq0



前回翔鶴「瑞鶴、あまり提督の邪魔をしちゃだめよ?」【5】

 ―気がつけば、海の上に立っていた


――気がつけば、異形のモノに囲まれていた


―――気がつけば、戦闘を開始していた


――――気がつけば、自分が何者であるかを理解した そして目の前のモノが敵であることも"思い出した"


自分は艦娘で相手は倒すべき敵、深海棲艦


多勢に無勢……被弾多数で戦況はあまりにも劣勢だけど、負けるものか 今度こそ……絶対に 自分の使命を果たすんだ


尊敬する先輩たちに誇れるよう 会えなかった妹たちのために誇れるよう



??「まだ……まだ、沈みません。沈むものか! 今度こそ絶対に艦隊の防空を……っ!」



その時、轟音とともに目の前の敵が次々に吹き飛んでいった


同時に頭上を雷みたいな音とともに信じられない速さで駆け抜けていく見たこともない航空機の群れ



??「あれは、一体……」


艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(3) (角川コミックス・エース)

506: 2015/04/12(日) 18:15:27.39 ID:Zbg5Emiq0


提督「捉えた! 友軍は、味方は無事か?!」

瑞鶴「上空管制中の彩雲より入電。味方を囲んでいた深海棲艦は殲滅。雲龍たちの誘導弾がやってくれたわ。私の出番がなかったわね……でも空母が見当たらない。近くにいなかったのかしら」

提督「まあいないならいないで一安心だ。それで味方は大丈夫か」

瑞鶴「黒煙を上げているも無事な模様よ。沈んでないわ。ただ、煙のせいで上からじゃ誰なのか判別がつかないみたい。一応攻撃終了につき帰投するわ」

提督「無事ならそれでいい。本当なら本土まで護衛していきたいが……」

雲龍「なんなら私たちは単独で帰るけド?」

提督「冬月たちの体調を考えるとそうも言ってられないだろう。申し訳ないがここは応急救援物資だけ渡しt



ガタガタッ



――――しテ! 離してくださイ!

……離セ

ちょぉーっと、ここを通してくれると嬉しいンですけどねー


ちょ、お、おお落ち着いてみんな……!!  あぅっ!



提督「……ん? なんだか仮眠室の方が騒がしいな。どうしたんだ」



バンッ!



冬月「司令官! 冬月たちを行かせてくださイ!」

雲龍「あなたたチ……どうしたノ?」

提督「ふ、冬月?! それに夏月に花月まで」

夏月「……私ハ征くゾ」

花月「どうしても行かなきゃいけないンですよね―」

提督「な、何の話だ? それに行くって何処に」

冬月「あの傷ついた友軍を……! 秋月姉さまを助けに行クンデス!」クワッ

瑞鶴「!!」



冬月「あソコこにいルノハ秋月姉さまナンでス! "私タチには分かる"ンでスッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


507: 2015/04/12(日) 18:20:13.95 ID:Zbg5Emiq0

提督「お、おい冬月……?」ソノ目……

冬月「オネガイシマス……行カセテ、クダサイ……!」

夏月「………………」

花月「………………」


妖精1『?! 電探に反応です。敵編隊接近ですッ。大編隊です!』


提督「ッ。数は?!」


妖精2『西北西、距離三八○○○、数一○○以上です!』


提督「くっ。まさかさっきの偵察機……俺たちのことも見つけてたのか!」

鳳翔「もしくは今傷ついている……秋月さん? のとどめを刺しに来た可能性もあります」

瑞鶴「ど、どうしよう提督さん。直掩機下ろしちゃったし攻撃隊も帰ってきたばかりで補給が……」

雲龍「私たちも同じヨ。どうしても時間がかかるワ」

冬月「姉サマ!!」ダッ

夏月「敵機……狩ルッ」ダッ

花月「イキマス」ダッ

提督「あっ、こら三人とも――ッ!!」

瑞鶴「それよりも提督さん! 私たちも対空戦闘に備えないと!」

雲龍「距離的にも私たちが発艦させるのはギリギリヨ。間に合わないかもしれなイ」

神通「私たちは対空戦に出ます。吹雪、大丈夫ですか?」

吹雪「ちょっと突き飛ばされた時に腕をぶつけただけです。大丈夫です!」

神通「よろしい。では行きます」ダッ

吹雪「はい!」タタタッ

鳳翔「提督。私も艦載機を出しますね」

提督「鳳翔……。しかし鳳翔の艦載機では」

鳳翔「こんな事もあろうかと、ちゃんと戦闘機の子も連れてきています。数は少ないですが頼りになりますよ」

瑞鶴「私たちも補給を急ぐわ!」

雲龍「全力で出したのがこんなところでアダに……」クッ

提督「……すまないがよろしく頼む。細かい指示は出さないが、ただ一つ。絶対にみんな生きて還るぞ。いいな?」


………………


夏月「……前方、敵機ダ。ワンサカイルゾ」

花月「アラアラァ。獲物ニハ事欠カナイワネェ」

冬月「対空戦用意。全兵装開放及ビ緊急特射機能ヲ使用スル。即応弾限界装填。弾切レト砲塔ノ爆発ニ十分注意ヲ。絶対ニ姉サマヲ……助ケル」

夏月「……ウム。征クゾ」

花月「花月モホンキ、出シチャウワァ」


冬月「――――総員、突撃!」ガシャンッ



………………

…………

……

508: 2015/04/12(日) 18:25:12.99 ID:Zbg5Emiq0

……ゴゴゴゴオォォォォォォォォォォ


秋月「くっ……今度は敵機、ですか。せっかくの対空戦なのに、身体と装備がボロボロではどうしようもないか」フラフラ

秋月「まだ何もできていないのに、今度こそ護るって決めたのに。ここまで、ですか……今回は早かったなぁ」フラフラ



深海タコヤキ艦載機『』ヒャッハアァァァァァァァァッ!!



秋月「せめて……一撃だけでも」ググッ



深海タコヤキ艦載機『チェゲバラ?!』ボンッ!



秋月「え?」ナニ



――サマー!!



秋月「こ、声が。どこから……」



――ネエサマー!!



秋月「?! 敵――――じゃ、な…い……? あれは」



??『前方ニ展開、姉サマヲ護レ! ココガ我ラ秋月型対空駆逐艦末裔ノ本懐ゾッ』

??『……右舷接近ノ奴ハ、貰ウゾ』

??『ジャア花月ガ反対側ネェ』



――それは突然戦場に割り込んできた


―――私のことを"姉さま"と呼ぶ異形と同じ色の目をした子たち


――――私は……あの子たちのことを、知っている……?



??『……各砲、各個ニ全力迎撃。一機モ逃ガスナ! 撃チ方、始メッ』クワッ


509: 2015/04/12(日) 18:30:14.77 ID:Zbg5Emiq0

妖精1『敵編隊、ふた手に分かれたです』

妖精2『秋月さんに向かった編隊は、助けに行った冬月さんたちの対空砲火で七面鳥のごとく撃ち落とされてるです』

妖精1『電探の反応がみるみる減っていく……。あれはきっと新装備の特射モードです。今頃主砲を機関砲のごとく撃ちまくってるです』

妖精2『パラオの七面鳥撃ちです?』

妖精1『七面鳥撃ちです』

妖精2『七面鳥が食べたいです』


瑞鶴「……その言い方やめて。あと連呼しないで」


妖精1『テヘペロです。こちらに接近中の編隊、高度四○○○で数はおよそ五○程です』

妖精2『機関全速。回避運動開始です』


瑞鶴「こっちはそろそろ補給が終わるわ。でも回避始まっちゃったし発艦ギリギリ間に合わないか……」

雲龍「同じク。ここは鳳翔に任せるしかないわn―――!」

瑞鶴「どうかしたの」

雲龍「ふ、ふフ……うふフフフっ。ソコにいたのネェ」

瑞鶴「う、雲龍?」

雲龍「……見ィツケタ」ニタァ

瑞鶴「」ビクッ

雲龍「瑞鶴姉、回避運動が終わったら即攻撃隊を出すわヨ。速度が合わないから後から頑張ってついてきてネ」

瑞鶴「えっ? じゃ、じゃあ!」

雲龍「フフ……ッ。空母は二杯カ。詰めが甘かったのは認めるけれどコケにされたお返しが必要よネ。ヤられっぱなしはキライだわァ」




神通「鳳翔さん、来ました!」




鳳翔「今回は潜水艦も現れず出番がありませんでしたからね。皆さんにとってもようやくといったところでしょうか」


零戦妖精『』ネー

九七妖精『』ツマンナカッタ


鳳翔「数は五○程だとか。私たちを狙うにしてはずいぶんと舐められたものですね」ニコニコ


零戦妖精『』ウンウン


鳳翔「一人五機墜とすだけの簡単なお仕事です。秋月さんたちも心配なので時間を掛けず手早く仕留めましょうか」


零戦妖精『』グッ!


鳳翔「ふふっ。気合充分ですね。では――――」スッ





鳳翔「風向きヨシ。零式戦十機、全機同時発艦、開始」グイッ


522: 2015/04/16(木) 19:30:17.83 ID:p+CNCNpG0


??『………………』ザザッ



秋月「あ、あなたたち……?」



??『……バラけると面倒ダ。早速一発お見舞いスルゾ』ジャキンッ

??『一番砲対空燃料気化弾装填完了』

??『同じく―』

??『ウム。撃ッ!!』ドンッ!


??『姉サマ! 目ヲ瞑ッテ!』



秋月「え、え?」


パパパパパッ――――!! ズズ……ン!


秋月「うわあッ?! く……っ」メガ



??『先頭集団消滅確認。正面ニ回リコンデキタ雷撃機、割リ当テ一~九。電探連動ヨシ。斉射』


ドッドッドッドッド……ボンッ


??『……三番砲暴発、使用不可。敵機制圧完了。砲身交換急ゲ。続イテ右舷上空急降下接近、数十八。左舷雷撃機展開シツツ接近、数九』

??『マカセロ。上ハ全部貰ウゾ』

??『一番・二番砲使用不能。機銃併用開始。ウルサイカラ近ヅイチャダメヨォ』


ブオォォォ……ブオオォォォォ


??『……艦爆、殲滅。主砲三基破損、一基機能低下ダ』

??『了解。敵機撤退ヲ開始。逃スナ』

??『ハァイ』

??『堕チロ』


ズドドドドッ……!!


523: 2015/04/16(木) 19:35:21.06 ID:p+CNCNpG0


秋月「」ボーゼン



??『――――残存機、ナシ。殲滅完了』

??『……他愛ナイ』

??『コレガ本当ノ、砲塔マデ無クナッテ放心、ヨネェ』




秋月「あ、あの……」



??『ッ?!』サササッ



秋月「え?」ナゼ セ ヲ……?



??『あのッ。ご、ご無事……デス、か?』



秋月「えっ? あ、はい。なんとか、大丈夫です……が」



??『……良カッタ』

??『あンしン、したわぁ』



秋月「あなたひょっとして……冬月、でしょう? あとの二人も、名前は分からないけれど同じ秋月型……」



冬月「………………」

夏月「………………」

花月「………………」


524: 2015/04/16(木) 19:40:40.44 ID:p+CNCNpG0

秋月「ど、どうしてこっちに顔を向けてくれないの?」

冬月「確かに私は8番艦の冬月でス。でも……ごめんなさイ。秋月姉さまにこんな顔や身体は見せられないし、お見せしたくないのでス」グッ

夏月「……我ラ、秋月型の面汚シ」

花月「一度敵の手に墜ちた裏切り者なンです」

秋月「敵の、手に……?」



冬月「お助けできたことは本当に嬉しいですシ、このまま胸を張って憧れの姉さまにお会いしたかっタ。でも、今の冬月たちにはその資格はないのでス」

秋月「資格……」

冬月「いつか、いつか海が平和になったラ……その時h


秋月「ありがとう。助けてくれて。でも、妹たちに助けてもらう姉じゃあ姉である資格はないですね! これでおあいこ!」


冬月「えッ?」

秋月「それに、憧れと言われてもいまいちピンとこないというか。防空駆逐艦とか偉そうなことを言っておいて結局護りきれず沈んでしまったというか」ウン

夏月「姉サマ……?」

秋月「とにかく、資格だの何だのそんなことは気にしてません! むしろ会えなかったぶんまで妹たちの顔が見たい。いえ、見ます!」マワリコミッ



冬月「あ」

夏月「ム」

花月「ッ!」





秋月「……うん。やっと見られた」


525: 2015/04/16(木) 19:45:44.50 ID:p+CNCNpG0

冬月「ヘン、ですよネ。目とか半分黄色いし髪の毛もおかしな色。腕や足も一部白かったりっテ……化け物みたいニ」

秋月「そんなことは気にしません。眼や肌の色が違う人なんてたくさんいます」

夏月「し、シカシ……」

秋月「何より、妹たちを"そんな事"で差別する姉は姉じゃありません!」フンスッ

花月「………………」

秋月「あなたたちにもいろんな事があったんでしょう。それでいいんです。こちらこそこんなボロボロの姿で情けないけれど……こんにちは、ひさしぶり、はじめまして、おかえりなさい――いろんな事が頭に浮かぶけれど、まずは "ありがとう" あなた達こそ秋月にとって誇りそのものです」ニコッ

冬月「ねえさマ……! ごめんなさイ、ごめんなさイ……ッ!」ポロポロ

夏月「う、ウゥ……ッ!」ポロポロ

花月「姉さま……」ポロポロ

秋月「もう泣かないで。それよりも、あなた達の名前を教えて? ちゃんと挨拶をしたいから」

夏月「……私ハ夏月。11番艦だが45年4月生まレダ」

花月「花月、です。姉さまの沈ンだ二ヶ月後に生まれました。秋月型最終艦です」

秋月「夏月に花月……二人とも良い名ですね。そう、秋月には11人もの妹が……。そうだ、涼月や初月、他のみんなも一緒ですか?」

冬月「……いいエ。残念ですが私たちだけでス」

秋月「そうですか……。でもこうして妹たちに会えたんだから、きっと逢えますね」



ゴオオォォォォォ……!



秋月「? あれは……さっきの航空機」

冬月「うちの攻撃隊ですネ。全力編成みたいなんで、きっと雲龍さんたちがさっき来た敵機の母艦を仕留めに行くんだと思いまス」

夏月「……母艦、見ツケタカ」

花月「これであンしンねぇ」

秋月「雲龍さん? あの雲龍型のですか? でもあんなの見たことない……」

冬月「元は未成機ですかラ。とは言え自慢の航空隊ですヨ!」

秋月「あの飛行機といいあなたたちの装備といい、沈んだ後に一体何があったんだろう」

冬月「いろいろあったんデス」

夏月「……アア」



提督『――――おぉーい! みんな大丈夫か―!』



秋月「?」

冬月「司令官でス。あちらも無事なようですネ」

秋月「司令官?」

夏月「……そう言エバ、放り出してきてシマッタ」

花月「あはは……」


533: 2015/04/17(金) 21:05:24.19 ID:L/ZrNFA/0


―船室内―

冬月「司令官。ご紹介しまス。我らが秋月型、その栄光たる一番艦の秋月姉さまでス!」

秋月「え、栄光はチョット……。防空駆逐艦秋月です。この度は助けていただきありがとうございますっ!」ビシッ

提督「提督だ。被害は受けているようだが無事で一安心だ。狭い船内だが、しばし寛いでくれ」

花月「さあさぁ、姉さまはこちらにどうぞ」

瑞鶴「久しぶりねー秋月。あ、でもこの姿じゃ初めましてか」

秋月「はい! 瑞鶴さんもお元気そうで何よりです」

雲龍「あなたを襲った敵機の母艦は艦隊含めて一隻残らず仕留めておいたから、安心してネ」

秋月「も、もう仕留めたんですか?」

雲龍「もちろン」フンス

瑞鶴「私の攻撃隊が着いた頃には取り巻きしか残ってなかったんだけどー」

雲龍「早い者勝ちヨ。……この場合は"速い"者勝ち、かしらネ」

瑞鶴「噴式相手に追いつけるわけがない」

天城「昔かラ言うではありませんか。兵ハ神速ヲ尊ぶ、と。つまリ速いことはイイことなのです」

瑞鶴「納得行かない!」

秋月「えっと……?」

提督「あー、疲れているところ早速で申し訳ないが、状況だけ確認させてもらってもいいかな。一体どうして一人でこんな所に? 護衛はいたのか?」

秋月「はい。いえ、ここには一人だけです。それがその、自分でも何がなんだかよくわからなくて。気がついたらここにいた、としか……すみません。ハッキリと答えられません」

提督「気がついたらと言うことは、本隊にいたわけではないのか?」

秋月「本隊? なんですかそれは 小沢機動部隊のことでしょうか」

瑞鶴「」ピクッ

提督「小沢?」

瑞鶴「……フネだった私たちがいた最後の機動艦隊よ。と言っても中身の無いハコだけだったけどね。そこで私も秋月も沈んだの」


534: 2015/04/17(金) 21:11:13.44 ID:L/ZrNFA/0

提督「ふむ……これはどういう事だろうか?」

鳳翔「さ、さあ。何ぶん初めてなものでなんと言ったらいいものか……」ウーン

瑞鶴「ねえ秋月。最後の記憶ってある? やっぱりエンガノ?」

秋月「最後……。対空迎撃中に意識が吹き飛んでから、なにか暗い所を彷徨っていたような……? それで、気がついたらここに」

瑞鶴「んー、と言うことはいきなりここに出てきたってことなのかな。艦娘として」

提督「そんな事ってあるのか?」

瑞鶴「私たちにもわかんない」

提督「うーん……。とりあえず、自分が何者で艦娘がなんであるかは分かるかい?」

秋月「はい。それはわかります。あと戦っている相手がなんなのかも。でも、なんだか記憶が混ざりあっているというか……地に足がついてないというか、不思議な感じです」

提督「以前の雲龍たちのこともあるし、妖精さんに見てもらった方がいいかな」ヒソヒソ

鳳翔「そう、ですね。所属とかもないみたいですし」ヒソヒソ

秋月「?」

提督「なあ秋月。もし良ければうちに来るかい? 小さな鎮守府だが俺たちは歓迎しよう」

秋月「よろしいのですか?」

提督「このままだと行く宛もないだろうし、何より今の君は大破状態だ。いつまでもそのままってワケにはいかないだろう」

秋月「そ、そうですね……」←服も破れているので大きいタオルを借りている

提督「それに、なにより冬月たちも喜ぶ」

秋月「あっ……!」パァッ

提督「ンンッ。駆逐艦秋月、我が鎮守府へようこそ。貴艦の活躍を大いに期待する。よろしくな」ニコッ

秋月「は、はい! 秋月、防空駆逐艦として艦隊をお護りします!」ビシッ


535: 2015/04/17(金) 21:15:20.94 ID:L/ZrNFA/0

提督「あ、そうだ秋月。その冬月たちのことなんだが……」

秋月「?」

提督「もう顔を合わせてしまっている以上隠し事にもならないが、実は鎮守府にいる他の皆にはナイショにしてほしい」

冬月「………………」

秋月「内緒ですか? それは、何故……」

提督「詳しくはおいおい話すか冬月たちから聞いてもらうとして、ここにいる者達以外には存在を知られてはいけないんだ。彼女たち自身のためにも」

瑞鶴「あとは翔鶴姉ぇも知ってるわ。今回は鎮守府にいるけど」

雲龍「今こうして一緒に話してるけど、戻ったら普段は別々の生活を送ってるのヨ。少なくとも、この戦いが終わるまではネ」

夏月「……ウム」

花月「隔離生活って、なンだか妙な響きよねぇ」

秋月「で、ではこれからは冬月たちには会えないのですか?」

提督「大っぴらにはな。でも秋月はもう存在を知っているし何よりも身内だ。いくつか制限はかけるが好きな時に会いに行ってもらって大丈夫だよ」

瑞鶴「いれば、だけどね」

提督「……まあな」



秋月「……自分たちを一度敵の手に墜ちた裏切り者と言っていたのですが、それと関係があるんですか?」

提督「裏切り者か。何と言うか言い得て妙だな。言ってしまえば彼女たちは元深海棲艦なんだ。だから艦娘に戻った今でも名残として身体の一部に特徴が見られる。冬月たちの目、見ただろう?」

秋月「あ……そういう事、だったんですか」

提督「戻った事自体も奇跡に近く原因も不明だし方法も答えもない。つまり他に例がない以上うかつに存在がバレたり上に報告があがると、彼女たちが危険な目に合うかもしれない。だからこそ俺たちは秘密にしたんだ。当事者を除いてね」

瑞鶴「私は後から知った側だけど」

提督「好奇心は怖いな……。ま、まあとにかく。秋月も他の者の前でうっかり口に出さないように気をつけて欲しい。当事者の一人としてね」

秋月「わ、わかりました」

提督「うん。よろしく頼む。さてと……じゃあ還るか。秋月を含めて戦闘不能艦4人じゃあどうしようもない。戦力低下もいいとこだしまた襲われる前に撤退だ」

瑞鶴「えっ? 4人ってだれ?」

提督「冬月たちだよ。身体は元気だが艤装がダメだ。もう使いものにならない」

瑞鶴「じゃあ攻撃を受けたの?」

冬月「いえ、そうではないんですガ……」

夏月「……主砲、壊レタ」

花月「ほンき、出し過ぎました」

瑞鶴「? まあ壊れちゃったのなら仕方ないわね」

提督「妖精さん。鎮守府へ帰投しよう。あと本隊へ向けて暗号を頼む。内容は"空腹でござる"で」



妖精1『はいです』

妖精2『私もお腹が空いたです』グゥー


536: 2015/04/17(金) 21:20:24.85 ID:L/ZrNFA/0


秋月「……そんな事があったんですね」←コトの顛末を聞いた

冬月「改めてすみませン。我らが情けないばかりニ」

夏月「……誘惑に負ケタ」

秋月「もう過ぎたことです。それよりもあなた達が今無事でいられることの方が重要ですから」

雲龍「そうネ。見つけたのが鳳翔で出会ったのが提督で良かったワ」

秋月「皆さんは別々の生活を送っているとありましたが、普段はどうしているんですか?」

天城「天城たちハ出撃ができなイ後悔がありましたので……。主ニ出撃を」

夏月「……ウム」

雲龍「ヘタすると月の半分は部屋を空けてる事の方が多いわネ」

秋月「そ、そんなに出撃されてるんですか?」

雲龍「楽しいわヨ」

秋月「」エー

冬月「で、でもこれからしばらくは出撃もできませんかラッ」ネ?



………………

…………

……


537: 2015/04/17(金) 21:25:27.53 ID:L/ZrNFA/0


提督「――――と言うわけで、新しくこの鎮守府に加わることになった秋月だ。みんな、よろしく頼む」

秋月「秋月です。よろしくお願いいたします!」



ヨロシクー



提督「作戦参加記念と歓迎会はこの後やるとしてだ。誰かここの案内をしてもらえると助かるのだが……」

白露「はいはーい! あたしたちが案内しまーす!」イッチバーン

提督「じゃあ白露たちにお願いするよ。秋月、何かわからないことがあったらいつでもここに来て構わないから。自分の家だと思って寛いでくれ」

秋月「は、はい!」

白露「それじゃ秋月、いくよー!」

村雨「まずはこの建物からかしらね?」

春雨「お風呂も案内しましょうっ」

提督「ははは。それじゃあ頼んだよ。よし、じゃあ今日もいつもと変わらず頑張っていこう。解散!」



………………



白露「そう言えば、秋月って一人部屋なんでしょ? 寂しくないの?」

春雨「もしよろしければ、春雨たちの部屋に来ますか?」

秋月「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫っ。なんたって秋月には11人も妹がいるんですから! 今はまだ一人ですが、そのうちきっと賑やかになりますよ」



秋月「(それに――――)」


540: 2015/04/17(金) 21:30:22.66 ID:L/ZrNFA/0


―夜―

時雨「昼間はああ言っていたけれど、やっぱり少し心配だよね」

村雨「もう一度誘ってみましょうか」



knock knock knock



夕立「いないっぽい?」

白露「もういっかいっとー」



knock knock knock



春雨「もうお休みされてしまったのでしょうか?」

時雨「ここに来たばかりだからね。慣れない環境だから疲れたのかもしれない」

村雨「今日の所はそっとしておきましょうか」

夕立「また今度誘うっぽい―」



………………

…………

……



冬月「姉さまの隣は私でス!」

夏月「……冬月、ズルイ」

花月「ここは公平にジャンケンなンてどうかしらー」

秋月「ま、まあ三人とも落ち着いて……」ネ?



イッソ ワタシガ ウエ ニナルワァ
エェッ?!



雲龍「ここも賑やかになったわネ」

天城「はい。雲龍姉様」ニコニコ

葛城「まあ、明るいのは悪いことじゃなイよね。あの子たちも楽しそウだし」

雲龍「それにしても、昼間会わないぶん夜一緒に寝ようなんてよく考えついたこト」

天城「しばらくハ出撃ガ出来ませんからね。ちょうどいいかもです」

雲龍「私たちもたまにはゆっくりと休みましょうカ」ノビー

葛城「みンなー。もう電気消スよ―」


ハーイ


冬月「姉さま、おやすみなさイ」

秋月「はい。おやすみなさい」



秋月「(一人だけど、ひとりじゃないから)」


546: 2015/04/19(日) 20:00:08.16 ID:en4fI1Lo0

・---・オマケノ鎮守府シリーズ・---・


――ソノ1 鎮守府


武蔵「ところで提督よ。結局のところ戦闘は行ったのか?」

提督「ん? ああ。増援が来た時はちょっと驚いたがなんとかこなしてきたよ。みんなが普段どういう風に戦ってるか観察できたかな」

武蔵「そう、か。それは良かったな……うん。戦えたことは喜ばしい。羨ましいぞ妬ましい」

提督「?」

利根「本土接近の敵機動部隊なんておらんかったではないか……」ジー

筑摩「私たち、毎日哨戒に出ていたんですよ?」

川内「夜戦できなかった……」

提督「いや、来るなんて言ってないだろ? 前回来たから今回も可能性として……」

利根「吾輩たちを騙しおったな! 純情を弄びおったな?!」

川内「夜戦の恨みは怖いんだぞ―!」

武蔵「そうだ。戦闘の恨みは恐ろしい。これは我らをしばらく優先的に出撃させてもらわねばな」

利根「交渉の余地はない!」

筑摩「姉さんもこう言ってますし、提督の誠意ある回答を希望します」

提督「あ、あー……その事なんだがなぁ」

武蔵「なんだ。資源は全回復ではないとは言え戻ったのであろう? 練度のことなら気にするな。撃ってればどうにかなる!」

川内「夜戦してればどうにかなるよ!」

提督「すまん! 諸事情によりまた"なくなった"」ゴメンネ

武蔵「」

利根「な、な……」

筑摩「あら……」

川内「」ヤセン……




―鎮守府の備蓄資源―

燃料:員数外くらいなら……
弾薬:撃った弾を戻したいくらい
鋼材:リサイクル要推奨
ボー:なんで赤土じゃダメなんですか!


547: 2015/04/19(日) 20:05:12.08 ID:en4fI1Lo0

――ソノ2 コワレタ


工廠妖精1『これはしばらく使い物にならないです』

工廠妖精2『直すのにも時間が掛かるです』


提督「そうか……。まあやむを得ないか」


工廠妖精1『冬月さんたちは、直るまでの間は従来の兵装です』


冬月「うぅ、これに慣れた後だト……」

夏月「……重イ。遅イ。弱イ」

花月「こンなのじゃハエも墜とせないわあ」

秋月「なにを贅沢言っているのです。兵器の性能に頼らず己の腕で勝負しないと!」ウムッ

冬月「そうは言いますガ……。姉さまを護れたのもこれのお陰ですシ」

夏月「……一度使うと戻レナイ」

花月「ねぇ」

秋月「あの時は気づかなかったけど、よくよく考えたらかなりの連射速度だったような? ずいぶんコンパクトだしこれは主砲……機関砲?」

夏月「主砲ダ。間違いナイ」

花月「ただちょぉっっとだけ、速く撃てるンですけどね」


工廠妖精1「通常で毎分三○発。緊急時の特射モードを使うと毎分一ニ○発撃てるようになるです」


秋月「ひゃっ?! えぇッ!」ウソンッ


工廠妖精1「即応弾の弾倉が限界装填で各砲一ニ○発なので、それぞれ撃ちっぱなしで三○秒で打ち止めです」

工廠妖精2「しかも砲塔耐久の限界を超えて撃つので射撃後はこの通り壊れちゃいます」

工廠妖精1「ヘタすると撃ってる最中に暴発するかもですが、秋月さんも欲しいです?」

工廠妖精2「今なら三銃身回転式機関砲と音響感知式対潜魚雷もセットにつけちゃいます」


秋月「いえ、秋月は結構です……」コワイ

提督「それで、修理にどれくらい時間かかりそうかな」


工廠妖精1「半月もあれば……です」タブン


提督「なんだ。じゃあ少しの辛抱じゃないか」


工廠妖精2「ただ、直すための材料というか資源がちょっと多いです」

工廠妖精1「なにせ特製品なのです」


提督「そうなのか? まあみんなが頑張ってくれたおかげである程度回復したから大丈夫だ」

冬月「雲龍さんからもこちらの資源を使っても良いと許可をもらってまス!」

提督「で、どれだけ必要なんだ?」


工廠妖精1「そうなのです? じゃあ全部でこれくらいお願いするです」スッ


提督「?!」デデドン!



資源が(再び)消えた日


548: 2015/04/19(日) 20:10:07.21 ID:en4fI1Lo0

――ソノ3 鳳翔のホンキ


提督「指揮官として特定の誰かを贔屓するのは良くないんだが、今回の作戦であえてMVPを選ぶとしたら……」

翔鶴「話を聞く限りですとやはり冬月さんたちでしょうか?」

提督「まあそれもあるな。なんせ秋月を護りながら三人で五○機近い敵機を墜としたんだから。だが、上には上がいるんだよ」

翔鶴「上?」

提督「鳳翔だよ。鳳翔は一人でやっぱり五○機近い敵機を墜とした。それも今となっては旧式の零戦十機で」

翔鶴「そ、それはまたなんとも」スゴイ

提督「フネから見てたが、まず全部いっぺんに発艦させるって時点ですごい。矢を何本持ったんだって話。しかも回避運動中だぞ?」

翔鶴「私には到底出来ません……」

提督「後はもう手品でも見てるかの様な、それはそれは鮮やかなお手前ですよ。練度は極めるとこうなるって言う良い見本を見せてもらった」

翔鶴「私たちとの模擬戦でも、こちらが数や性能において格段に優っているはずなのに優勢を取れることがめったにありません」

提督「妖精さんの腕も確かだが、やっぱり鳳翔だよ。右に左にフネが動いてるのに甲板でニコニコしながら立ってられるんだぜ? まるで運動会で我が子の勇姿を見てるお母さんみたいに」

翔鶴「逆立ちしても真似できませんね」

提督「改めて鳳翔の凄さを確認した。いい経験だったよ」

翔鶴「私も瑞鶴もまだまだ精進しないといけませんね」






鳳翔「あ、あの……」←横で聞かされている



549: 2015/04/19(日) 20:15:07.26 ID:en4fI1Lo0

――ソノ4 ユウレイ秋月


瑞鶴「どう秋月。ここでの暮らしにはもう慣れた?」

秋月「はい! 皆さんがとても良くして下さるので、もうすっかり」

瑞鶴「そりゃ良かった」

翔鶴「いろいろ大変なこともあるでしょうけれど、何かあれば遠慮せず言ってくださいね」

秋月「ありがとうございます。再び翔鶴さんや瑞鶴さんと一緒に戦えるだけで秋月は満足です」

瑞鶴「健気な……」

秋月「今度こそ、ええ。今度こそ秋月がお護りいたします!」

瑞鶴「まあ、期待してるわ」


瑞鶴「(出撃自体あまりないなんてのは……今言わなくてもいいよね?)」


翔鶴「あ、そう言えば私、秋月さんの妙なウワサを聞いたんだけれど……」

秋月「秋月のですか? なにかしたかなぁ」

瑞鶴「隙あらば質素な食生活を送ろうとしてるって?」

秋月「うぅ。どうにも昔の癖が抜けなくて、つい……」アゥ

翔鶴「違うわよ。白露ちゃんたちが言ってたんだけれど、夜に訪ねてもいつも出ないって」

瑞鶴「アンタそんなに早く寝てるの?」

秋月「あ、それは……その」チラチラ

瑞鶴「?」

翔鶴「……なるほど。冬月さんたちですね。今は私たちしかいないので話して構いませんよ」

秋月「は、はい。部屋は頂いたのですが、寝る時はいつも向こうなので」

瑞鶴「あーそういう事か。そりゃあ白露たちが来ても出ないわけだわ」

翔鶴「提督が秋月さんの部屋を一階にしたからなにか理由があるとは思ってましたが……」

秋月「外に出なくても部屋から直接行けるようにしてもらったのですが。や、やっぱりダメでしょうか……?」

翔鶴「いいえ。せっかくの姉妹艦ですもの。特にあの子たちは出かけたがりだから、一緒にいられる時はいないとね」

瑞鶴「でも、ちゃーんと周りの注意は忘れずにね。鍵の締め忘れでバレましたーなんて笑い話にもならないから」

秋月「はい。しっかり心がけてます」

翔鶴「あなたもよ瑞鶴。好奇心旺盛なのはいいけれど、うっかり話さないようにね?」

瑞鶴「藪蛇だったか……」


へびさん


550: 2015/04/19(日) 20:18:00.13 ID:en4fI1Lo0
これにて一連の作戦は終了 雲龍さんたちも(たぶん)出番はありません あしからずです
次回からまた日常モードですが、よろしければまたお付き合いください

556: 2015/04/21(火) 19:30:20.96 ID:Ydpl+o9B0

・---・アル日ノ鎮守府:翔鶴型 秋月・---・


大鯨「今日のお夕飯は洋風にしてみました。甘ぁいコーンをたっぷり使ったコーンスープに、メインは濃厚なデミグラスソースの煮込みハンバーグ。お野菜は食べやすいように一口サイズになってますし、別添の人参は甘く煮詰めたグラッセにしてありますよ」

鳳翔「ごはんとパンはお好きな方をお召し上がり下さいね。もちろん、両方でも構いませんよ」ニコニコ

深雪「うっひょろほ~い! 肉だ肉だ!」

白露「イチバンおっきいやつをちょーだい!」イッチバーン

利根「なんじゃとッ。大鯨よ、吾輩にもイチバンいいものを頼むぞ」

夕立「うっひょろほーいって、なあに?」

叢雲「そんなの私が知るわけ無いでしょ」



キャーキャー!!



瑞鶴「みんなお肉料理だと眼の色変えるよねえ」

翔鶴「場所柄、お魚を使うことが多いからかしらね」

瑞鶴「って言うか駆逐艦の子たちに平然と混ざってる利根って一体……」

翔鶴「瑞鶴も大きいの貰ってきたら?」

瑞鶴「わ、私はこの普通のでいいの!」

秋月「………………」

翔鶴「秋月さん、どうかしましたか? 具合でも悪いの?」

秋月「あ、いえっ。そう言う訳ではないのですが、その」

瑞鶴「なぁに。アンタまだ食生活慣れてないの?」

秋月「あはは……。もちろんハンバーグを頂けるのはとても嬉しいのですが、どうしても頭の何処かで『最後の晩餐じゃあ?』とか『コレで明日からはカンパン生活か』なんて考えてしまって……」

瑞鶴「不憫すぎる」

翔鶴「まだそう日も経っていませんから違いに戸惑うのも無理はないかと。ゆっくりでいいから慣れていきましょうね」

秋月「すみません……」

瑞鶴「別に謝ることじゃないわよー。こう言う時はにっこり笑って大口開けてパクっとひと口! ……あむっ。むぐむぐ……んんーっ、肉料理の醍醐味はやっぱりハンバーグよねぇ♪」キラキラ

翔鶴「ちょっと瑞鶴。まだいただきますしてないでしょう」

瑞鶴「みふぉんをみふぉんー(見本よ見本ー)」モグモグ

翔鶴「もぅ」

秋月「ふふっ」ニコニコ


557: 2015/04/21(火) 19:35:16.16 ID:Ydpl+o9B0


イタダキマース!



秋月「ううぅ……牛缶よりも圧倒的に美味しい」モグモグ

瑞鶴「缶詰と比べること自体まず問題なのよ」

秋月「早く慣れたいと思う反面、これに慣れたらまた質素に戻った時の反動が……」コワイ

瑞鶴「不器用ねえ」

翔鶴「瑞鶴。そんな事言っちゃダメよ」

瑞鶴「そもそも、作ってるのはあの鳳翔さんと大鯨よ。これでマズイとか言ったらもう鎮守府全員を敵に回して戦争よ戦争」モグモグ

秋月「大鯨さんと言う方にあまり馴染みがないのですが、これだけ料理がお上手ですとやっぱりスゴイ方なのですか?」

翔鶴「むしろ秋月さんには"龍鳳"の方が聞き覚えがあるかしらね」

秋月「龍鳳さん……あ、あぁ! 乙部隊で隼鷹さんたちと一緒だった」

翔鶴「ええ。それで大鯨と言うのは空母に改装される前の名前なの」

瑞鶴「潜水母艦大鯨ってねー。ま、今じゃ潜水母艦の前に『航空』が入るけど」

秋月「……航空潜水母艦、ですか? 初めて聞く艦種です」

翔鶴「大鯨さんにもいろいろと思う所がありまして……。それで提督がその意向を尊重して、本来であれば不可能なはずの航空艤装を妖精さんにお願いしたんです」

瑞鶴「潜水母艦でありながら空母でもある。まあ、おかげでちょっと航空戦力は龍鳳よりも劣ることになっちゃったけどね」

秋月「な、なんだかここはその……えっと」

翔鶴「変わってる、って?」

秋月「あぅ。すみません……」

翔鶴「いいえ。秋月さんの仰る通りここはちょっと変わっています。アノこともありますし」

秋月「………………」コクン

瑞鶴「でも悪いことじゃないでしょ? 空気は軽いかもしれないけど、居心地はいいし料理も美味しい。そして提督さんも優しいしで、うん。マーヴェラス」

秋月「軍らしくない。と言われるととても納得できます」

翔鶴「提督がそう言うのをとても嫌っていらっしゃるから」

瑞鶴「自分も軍人なのにね―」

翔鶴「そこが提督の良い所でもあります」

瑞鶴「そこに翔鶴姉ぇが惚れたのかなぁ」ニヤニヤ

秋月「?」


558: 2015/04/21(火) 19:40:39.66 ID:Ydpl+o9B0

秋月「そう言えば、肝心の司令がいらっしゃいませんね。もう食べ始めてしまいましたが良かったのでしょうか」

翔鶴「まだ書類作業が残っているとかで……終わったら来るそうよ」

瑞鶴「最初は翔鶴姉ぇも残ってようとしてたんだよねー」

翔鶴「秘書艦なんだから当然でしょう」

瑞鶴「結局提督さんに諭されてここにいるわけだけど」

翔鶴「……食べ終わったらすぐに戻ります」

秋月「翔鶴さんと司令は信頼しあっていますよね。素晴らしいと思います!」

瑞鶴「そりゃもうお互いホの字でございますからぁ?」ニヤニヤ

翔鶴「瑞鶴。はしたないわよ」

秋月「ホの字……。好き合っているということですか?」

瑞鶴「そーそー。しかも外泊したほどの仲よ」

翔鶴「が、外泊と言っても先の作戦のための会議へ出席しただけです。遠方なので日帰りは難しかったから……」

瑞鶴「私はその時絶対なんかあったと踏んでるんだけど、秋月はどう思う?」

秋月「え、えぇっと……。あ、秋月はその時まだここにいなかったので」

翔鶴「勘ぐりはやめてって言ったでしょう瑞鶴。何もありませんでした」

瑞鶴「ナニも?」

翔鶴「………………」



ゴチンッ



瑞鶴「……痛い」アゥ

秋月「あ、あはは」


すめばみやこですヨ


563: 2015/04/25(土) 21:10:33.82 ID:pPH6xvVE0

・---・アル日ノ鎮守府:翔鶴 提督・---・


翔鶴「困りましたね……」

提督「あぁ。ほんと困ったなぁ」



資源在庫表『』



翔鶴「まさかまた制限をかけることになるとは思いませんでした」

提督「俺もだ。だがしかしこうするより他はなかったしあの子たちを責めるのはお門違いってやつだ」

翔鶴「もちろんです。ですが、真実を知っている私たちはともかくそれ以外の方たちには納得がいってないみたいで……」

提督「だよなぁ……。作戦から還って来たら資源がなくなりましたなんて、誰が聞いても納得しないし信じるわけがない」

翔鶴「私も知らなかったら何かの冗談だと思ったでしょうね」



資源在庫表『』ナンドミテモ スウジハ フエンッ!


564: 2015/04/25(土) 21:15:46.60 ID:pPH6xvVE0

提督「また一から貯め直すより他はないかな」

翔鶴「川内さんたちや駆逐艦の子たちには申し訳ないですが……」

提督「船団護衛に重巡以上は効果はあるが収支は赤字にしかならないからね。どうしても負担の掛かり方が偏ってしまう」

翔鶴「戦力があるところだったら、戦闘組・遠征組で分けられるんでしょうけれどね」

提督「我が鎮守府は全員が戦闘要員だ」

翔鶴「私たち大型艦はまたしばらく出撃不能です」

提督「あー武蔵たちの追求を受ける日々が辛いよ。だが皆の練度を上げることも重要だ。なけなしの資源をやりくりしてどうにか訓練なり演習なりに出してあげないと」

翔鶴「この間武蔵さんが仰っていましたね。練度は撃っていればどうにかなる、と」

提督「逆に言えば撃たなければどうにもならないってことだね。確かにたくさん撃てば感覚も鍛えられるから言い得て妙だ」

翔鶴「なにか良い案はないでしょうか……」

提督「コトが戦闘である以上資源を使わずにって言うのは無理だよなあ。しかし動かすための資源はドカ貧」ムゥ

翔鶴「使用する資源は少なくて、かつ効果が見込める方法……かぁ」ウーン



ワーワー!!



提督「……ん? なんだか外が賑やかだなぁ」ドレドレ

翔鶴「吹雪ちゃんたちですね。みんなでボールを使って遊んでいるみたいです」

提督「俺も子供の頃はやれドッジボールだのなんだので遊んだっけ」

翔鶴「今日は天気も良いので、外に出るのにはちょうどいい日かもしれません」

提督「花粉も落ち着いたしな。……ん、待てよ。ドッジボール……」

翔鶴「?」


565: 2015/04/25(土) 21:20:56.05 ID:pPH6xvVE0


吹雪「はいっ! 白雪ちゃん」ポーン

白雪「っとと……深雪ちゃん、いくよ」ポーン

深雪「任せろッ。行くぜ、瑞鶴さんに深雪スペシャル!」バシッ

瑞鶴「うわぁ?! ちょちょっと、みんなで続けようって話してたのにどうしてスマッシュかますのよ!」

深雪「いやーついウッカリ」テヘペロ

利根「瑞鶴がヘマするから吾輩の所まで来ないではないか……」

瑞鶴「私のせいじゃないっての。もう、じゃあもう一回ね」

吹雪「まずは10回を目指して頑張りましょう」

瑞鶴「いくわよ。それっ」ポーン

利根「うむっ。吹雪よ、吾輩の天空トスを受けてみよ!」



筑摩「ふふっ。姉さん楽しそう」ニコニコ

提督「賑やかじゃないか」

翔鶴「こんにちは」

筑摩「あら、提督に翔鶴さん。お疲れさまです」

提督「あれはバレーのラリーか?」

筑摩「みたいですね。みんなで長く続けようとしているみたいです」

翔鶴「筑摩さんは入らないんですか?」

筑摩「ええ。こうして利根姉さんたちのことを眺めているので十分楽しんでます」

提督「観戦も悪くないが、やはりみんなで動いてこそ楽しいものだぞ。と言うわけで筑摩、みんなでドッジボールでもやらないか?」

筑摩「ドッジボール……ですか?」

提督「訓練の一環と称した運動ってやつをネ。例の資源のせいで再び艦隊行動を制限しないといけなくなったから」

筑摩「と言うことは、あれはやはり事実だと……?」

提督「信じられないのもわかるけれどね。俺が移動するのに使ったフネの修理にどうしても必要だったんだ」



翔鶴「(表向きは提督のフネのためと言うことになってます。いますが……)」



566: 2015/04/25(土) 21:25:55.50 ID:pPH6xvVE0

瑞鶴「……あれ。提督さんと翔鶴姉ぇだ」

白雪「司令官。お疲れさまです」

深雪「おいーっす」

提督「やあ。みんな元気だな」

利根「それはもう。出撃もないせいで元気は有り余っとるな!」

提督「そんなみんなに訓練と遊びを両立させた素晴らしいものを教えてあげようかと」

吹雪「訓練と遊び、ですか?」

瑞鶴「そんなのあったっけ?」

提督「ドッジボールだ」

瑞鶴「ドッジボール? なんでまた」

提督「相手にボールをぶつけないといけない以上、当然狙って投げるだろう? それ即ち砲雷撃と同じことだ」

吹雪「それは……」ネー

白雪「まあ、似てると言えなくもないような?」ネー

提督「更に狙われるということは避けるということ。それ即ち回避と同じだ」

利根「おぉ、確かにその通りじゃ」

瑞鶴「ここで素直に納得しちゃいけないような気がする」

提督「正直に言えばこじつけだけどね。だけど感覚を鍛えるにはちょうどいいんじゃないか? 避けるための反射神経にしっかり動くための下半身の安定にって」

瑞鶴「それならまあ、うん」

提督「本当なら海の上であれこれさせてあげたいけれど、今しばらくはコレで我慢してもらえないだろうか」

吹雪「い、いえ。私たちはそんな! むしろ気を使って頂いて申し訳ないくらいで……」

利根「ふむ。訓練や実戦に備えての基礎固めといったところかのぅ。艤装を扱える腕や足腰がなければ意味もないしの」

提督「遊びながら鍛えられる。そして誰でも出来る。資源を貯めないといけない現状ではこれが一番かなと」



白露「イチバン?!」バッ


567: 2015/04/25(土) 21:30:40.63 ID:pPH6xvVE0

提督「おおぅ?! 白露か」

白露「なになに? なんか面白いことですかー?」キラキラ

時雨「白露。まあ落ち着こうよ」

夕立「提督さん。あそぼあそぼー」ガバッ

提督「こ、こら夕立。背中に乗りかかるなって。は、話が進まない」

夕立「夕立、結構暇っぽい―」アソボー

提督「最近夕立の瑞鶴化が激しい件について!」

瑞鶴「ここで私なの?!」

村雨「はいはーい。夕立はこっちで大人しくしてましょうねー。はい、ステイ」

春雨「司令官。夕立姉さんがご迷惑をおかけいたします」ペコリ

夕立「姉妹の扱いがぞんざいっぽいー……」

提督「ま、まあそこまでじゃないから大丈夫だよ。とにかく、ドッチボールをやってみるのはどうかなと。もちろんそれ以外でも構わないよ」

瑞鶴「んー。まあ暇つぶしには持ってこいかもね。身体も動かせればいい運動になるし」

深雪「訓練再開までの準備運動ってかー。いよっし、ここは深雪サマ大活躍で弾みをつけてやるぜぃ!」

白露「イチバンは渡さないよ! あたしだってやる時はやるんだから」

時雨「そう言えば、夕立は身体が鈍ってるって言ってたよね」

村雨「私たちが狙ってあげるからたくさん逃げてみるー?」

春雨「し、集中攻撃は好きではありませんが……姉さんたちのためなら、春雨、やります」フンス

夕立「っぽいー?!」


提督「これでしばらくはなんとかなる……かな?」

翔鶴「そうですね。身体を動かせればなんとかなるかと」

提督「子供の頃なら俺も参加したんだがなぁ。いかんせん歳を取り過ぎた」

翔鶴「あら、まだ十分お若いではないですか」

提督「兵学校卒業以来机や書類相手ばかりですっかり鈍った」

翔鶴「だからこそ、と言うのもありますよ?」

提督「……む」


ドッジボールが訓練科目に(しばらく)追加されました


573: 2015/04/28(火) 19:15:35.21 ID:6DXZfzU+0

・---・鶴タチノ休息・---・


瑞鶴「戦闘から帰ってきたらまた長い休みが待っていたのでしたっと」

翔鶴「こればかりはどうしようもないわね」

瑞鶴「前に鳳翔さんからもチラッと聞いたけどさ、ウチって本当に資源に余裕が無いんだね」

翔鶴「基本は配給が全てだから……遠征だけでは限界があるわ」

瑞鶴「一時間半とか三時間位でパッと資源が稼げる遠征ってないものかねぇ」メメタァ

翔鶴「そう、ねぇ。もしあったら資源に苦労することはないかも?」

瑞鶴「そもそもさ、あの子たちの艤装修理のために使っちゃったわけだけど、あれって直せたんだ。深海棲艦の技術なんでしょ?」

翔鶴「普通だったら直せないらしいんだけれど、そこはもう妖精さんの技術というか腕というか」ネ?

瑞鶴「私たちもあぁ言うの装備できたら誰にも負けないんだろうけどねー」

翔鶴「妖精さん曰く、資源さえあれば量産は出来るって言ったたわよ」

瑞鶴「ホントっ?! じゃあ私も噴式震電とか橘花改とか……」

翔鶴「でも私たちには絶対に扱えないわ。例えどんなに訓練してもね」

瑞鶴「えーそんなことナイと思うけどなぁ。やってみないと分かんないじゃん」

翔鶴「……一度だけね、装備したことがあるの」

瑞鶴「そうなの?」

翔鶴「まだ雲龍さんたちが来たばかりの頃よ。技術調査の一環で私たちが扱えるかを試してみたんだけれど……」

瑞鶴「ど?」

翔鶴「艦載機式符を矢に変えた上で試したんだけれど、噴式機の吐き出す熱に甲板が耐えられなくて失敗したわ」

瑞鶴「うわぁ……」

翔鶴「他にも色々調査したけれど、結局は専用装備ということで結論付けたの」

瑞鶴「そっかあ。でも、雲龍たちの艦載機はしょうがないとしても、冬月たちが使ってるあの高角砲はもうちょっとどうにかした方がいいんじゃない? 本気出したら絶対壊れるってちょっと……」

翔鶴「それこそがロマンだって妖精さんは言ってたわ」

瑞鶴「ピーキーすぎるロマンって一体」ウーム


高性能とピーキーはロマン枠


578: 2015/04/30(木) 08:26:20.58 ID:oNGsjYI/0

・---・チェーンジ・---・


翔鶴「提督。まもなくニ三○○です」

提督「もうそんな時間かぁ」

翔鶴「そろそろお休みになってくださいね」

提督「だな。幸か不幸か出撃が無くなったせいで書類が少なくて済む。素直に喜べないがね」

翔鶴「ですね」クスクス

提督「そう言えばさっきから妙に静かになったが……」チラリ



瑞鶴「Zzz……」グースカピー



翔鶴「もう瑞鶴。眠たいならここのベッドじゃなくてちゃんと部屋に戻りなさい」

瑞鶴「……んぅー」ゴロン

提督「まあまあ。こんな時間だから仕方ないだろう。どれ、おネムな姫様を部屋まで運んであげるとするかな」

翔鶴「提督は瑞鶴に甘すぎです」ムゥ

提督「そうかなぁ」



knock knock      knock knock



翔鶴「あら、誰か来ましたね」

提督「こんな時間に誰か用かな。どうぞー」



ガチャッ



秋月「あ、あのぉ。夜分遅くにすみません司令。秋月です……」ソローリ

提督「秋月? どうしたんだ」

翔鶴「何かありましたか?」

秋月「いえ、その。そうではないんですが……あのー」キョロキョロ

提督「???」

翔鶴「???」

秋月「えっと……。も、もう大丈夫ですよ!」

提督「は?」ダイジョブ?



ガタンッ

??『こんばんハ。提督』



提督「雲龍ッ?!」ビクッ


579: 2015/04/30(木) 08:30:54.32 ID:oNGsjYI/0

雲龍「こんな夜更けにゴメンなさいネ。でも、どうしても相談したいことがあって来たノ」

提督「いや、それはまあ構わないんだが……一体何処から出てきてるんだよ」

翔鶴「本棚の裏に隠し通路が」イツノマニ

雲龍「ちょっと、ネ。何かあった時のために作ってもらったノ」

提督「まあその前にアレだ。秋月、悪いがドアを閉めて鍵をかけてくれるか。見られたり来たれたりしたらマズイ」

秋月「は、はい。失礼します」ガチャン

翔鶴「まるでこの間の作戦前みたいですね」

雲龍「……そう言えバ。あの時もこんな時間だったわネ。みんな揃ってここへ来たっケ」

提督「最近隠れる気がなくなってきてないか? ちゃんとリスクは頭に入れててくれよな」

雲龍「わかってるワ。安心してちょうだイ」

提督「それで、相談とはなにかな。こうまでして来たってコトはなにか重大な事でも?」

雲龍「実は妹の葛城のことデ――――」



ガタッ

??『あっ、こ、こラ葛城。ダメでしょう!』

葛城「いいじゃんいいジゃん。もう、雲龍姉ぇも天城姉ぇも心配症なんダから―」ヒョコッ

提督「は……?」

翔鶴「か、葛城……さん?」エ

天城「す、すみませン提督。それニ翔鶴さんも。夜分失礼します……」

雲龍「」アチャー

葛城「翔鶴さんニ提督。こんバんは」オテテフリフリ

提督「え、あ……え?」

雲龍「まあえっト。こういう訳でネ」ウン

葛城「聞いてよ二人ともー。雲龍姉ぇたちったら変なコト言ウのよ。私が変わっタって!」

提督「うん。まあなんだ。キミは本当に葛城だよな?」

葛城「ちょ、あなたまでそんなことを言うの? みんなしてホント失礼ちゃうワねっ」

提督「」エー


580: 2015/04/30(木) 08:36:14.02 ID:oNGsjYI/0

葛城「私が雲龍型三番艦葛城でなくてなんだって言ウのよ」

天城「か、葛城。とにかくちょっト落チ着いてっ。ね」オロオロ

提督「えーっと……これは一体どうしたものか。夕飯何食べた?」

雲龍「みんなと同じものヨ。まさか持ってきてくれる鳳翔がヘンなもの入れるとは思えないシ」

提督「うん。それは俺も同意だ」

翔鶴「葛城さんはいつから……こんな?」

雲龍「ご飯食べ終わって、お風呂で転寝をしてたノ。それで上がってきたラ……」コウ

天城「あ、天城たちモ少々混乱気味でして」ハイ

葛城「だぁから私は普通だッての!」

雲龍「ボクっ子で、私に似て少しのんびり屋だったはずなのニ……」

葛城「いやいや、雲龍姉ぇこそ誰のこと言ってルのさ。私がボクっ子? のんびり屋? ありえないでシょー」ナイナイ

天城「もっとオ淑やかナ性格のはずなんですが……」

葛城「私は十分にお淑ヤかよ!」



イヤイヤイヤ

アリエマセン

ムキィーッ!



提督「……これはまぁ、うん。確かにここへ来るわなあ」

翔鶴「あはは……」

提督「ガラリと性格は変わってるが、葛城であることに違いはないみたいだ」

翔鶴「そのようですね。しかし、なんと言うかこう、今の葛城さんを見てると――――」



瑞鶴「……んぅーウルサイなぁ。こんな時間になんなのよぉ」ムクリ



雲龍「あ、瑞鶴姉」イタノ

葛城「」ピクッ

瑞鶴「えぇ……雲龍? なんでアンタがここにいんの。それに天城に葛城まで」ゴシゴシ

天城「すみません。オ休みのところ」ペコリ

雲龍「実は葛城が――――――」

葛城「ず、瑞鶴センパイ! お疲れさまです!!」ズイッ



瑞鶴「……は?」


葛城さんの性格がVer1.50になりました


586: 2015/05/03(日) 10:00:33.31 ID:U2qiiPyI0
注:この後の葛城サンの発言に他意はありません 念のため



・---・スキスキ センパイ!・---・


葛城「瑞鶴センパイ! お疲れさマです!!」ズイッ

瑞鶴「は、はぁ? アンタ葛城よね? 急にどうしたのよ」

葛城「私、瑞鶴センパイのファンなンです! 憧れてマすっ! お慕い申し上げてマすッ!」ズズズイッ

瑞鶴「ちょちょちょ……たっタンマ! 説明を、誰か説明をお願いーっ」ヘルプミー

天城「はいはい。いいかラ葛城ハ落チ着きなさい。瑞鶴さんガ困っているでしょう」

雲龍「葛城、ステイ」

葛城「私は犬じャない!」

瑞鶴「な、なんなのよ一体。私が寝てる間に何が起こってるわけ……?」

翔鶴「えっと……。実は葛城さんの性格が変わってしまったみたいなの。この通りに」

瑞鶴「変わるとかそんな次元じゃないわよ」コレ

提督「結果は見ての通りだが原因は不明。本人も変わったという記憶はないと言ってるし、どうしたものか」

瑞鶴「やっぱり元深海棲艦なのが関係してるの?」

提督「可能性があるともないとも言えないな」

葛城「もぅ。みんなして私のことヘンって言っテるし。私の方こそ説明して欲しいくラいよ」

雲龍「頭が痛くなってくるわネ」

天城「雲龍姉様ニ同じく……」


587: 2015/05/03(日) 10:05:20.21 ID:U2qiiPyI0

提督「とりあえず現状は把握した。原因がわからない以上追求しても押し問答になりそうだから先を見よう。葛城、今自分が置かれている状況はわかってるよな? 自分が何者であり、どうして他の艦娘とは違うがということだ」

葛城「それはわかっテるわ。私たちは元深海棲艦。髪の毛の先端が色が違うのも、手や足の一部が違う色なのもそのせいダって」

提督「ふむ。記憶は問題なさそうだな。じゃあ、何か変わったこととかあるかな」

葛城「そう言わレても……」

提督「なければそれでいいが、どんな些細な事でも構わないよ」

葛城「ウーん。この状況以外にないカなあ」

提督「じゃあ今度は雲龍たちに聞いてみようか。普段と比べて性格以外で何が変化はあるかな」

雲龍「性格の部分が強すぎて他が出てこないけれド……強いて言うならバ」

天城「葛城って、瑞鶴さんのことこんなニ大好きでしたっけ? もちろン普段仲ガ悪いとかではなくて」

葛城「なに言ってるのよ天城姉ぇ。瑞鶴センパイは私たち雲龍型……いいえ、全空母憧れの的じャない!」


雲龍・天城『えっ?』

提督・翔鶴『えっ?』





瑞鶴「え?」ナゼニ



588: 2015/05/03(日) 10:10:43.69 ID:U2qiiPyI0

葛城「瑞鶴センパイと言えば、開戦から機動部隊の最期までを戦い抜いた歴戦の猛者! 敵機動部隊と何度も雌雄を決した豪傑なのよっ。格下相手と序盤のオイシイ所だけ持ってって後半の激戦を知らずにさっさとリタイアした先達たちとは格が違ウのよ!」←葛城サンの個人的見解でス

瑞鶴「」エー

翔鶴「そ、それは多方面に波紋を広げそうな……」ヤメテ

葛城「しかも戦った戦場尽くをほぼ無傷で凌いダのよ? 最期は物量の前に矢尽き刀折れて沈んじゃったけど、誰もが認める数多の戦果をあげ続けて、次なる戦いのために被害は受けないナんて。これで憧れないなんて選択肢あると思う? ないワよね」

瑞鶴「」

雲龍「まぁ、それは確かにねエ」ウン

天城「天城モ否定はできません……」

翔鶴「わ、私も最期以外は一応一緒にいたんだけれど……ね。被害担当艦としてDEATHが」ホ口リ

葛城「そんなセンパイにあやかりたくて、私も迷彩をおソロにしたし、頑張って弓道だって覚えたんダから!」

雲龍「そう言えば、あの子の艤装私たちと……」

天城「は、はい。いつノ間にカ弓に」

瑞鶴「て言うか、アレ私にとっては氏装束だからイヤなんだよなぁ」

葛城「あ、あれ?」アレ?


589: 2015/05/03(日) 10:15:33.19 ID:U2qiiPyI0

葛城「せ、センパイ。いつもの迷彩柄のお召し物は……?」

瑞鶴「だから、あれは私にとって縁起の良いものじゃないから着ないわよ。ほら、翔鶴姉ぇと同じでしょ」

葛城「あ、ぅ……。でっでも、そのお召し物もとっても似合っテます! さすガです!」

瑞鶴「」ナンテコッタ


提督「な、なんと言うか……。性格と同時に凄まじいまでの瑞鶴愛が芽生えたというか」ナァ

翔鶴「姉として妹が慕われるのは喜ばしく誇らしいのですが……」ネェ

天城「なんだカ葛城ノ性格ヤ言動まデ瑞鶴さんそっくりニ感じますね」

雲龍「……性格ばかりで気づくのが遅れたけど、アナタ胸縮んダ?」ドタプーン

天城「えっ?」ドタプーン

葛城「なッ?!」ペターン

雲龍「何もソコまで瑞鶴姉に似せなくてモ」

翔鶴「瑞鶴?」

瑞鶴「なんでここで私を見るのよ翔鶴姉ぇ!」

葛城「わ、私だって好きで小さいわけじゃなイもん! 雲龍姉ぇたちが大きすぎるから余計目立ツだけ! ねっセンパイ?」

瑞鶴「だからここで私にふらないで。同じ姉妹なのに、どうして……」ブツブツ

葛城「そもそも私の機関が二人と違って駆逐艦からの流用ダから……ブツブツ」

翔鶴「あ、あはは……」



雲龍「まア。私の妹だから大きくはなるでショ。そのうチ。きっト。たぶン……?」

葛城「とっとニかく! 私の憧れは瑞鶴センパイなの。センパイみたいに活躍できるようにこれからも研鑽スるわ」

提督「その心がけは大事かもな。雲龍たちにとって瑞鶴は立派なお姉さんというわけだ。普段は難しいがいろいろ教えてあげたらどうだ」

瑞鶴「まあそれはもちろんいいけど……。結局、葛城の性格はどうするの?」

提督「棚上げだな。現状慣れてないだけで問題はなさそうだし、何かあったらまたその時にでも」

雲龍「そうネ。葛城が私たちの妹なことに変わりないシ」

天城「今感じていル違和感も、徐々ニ慣れていくト思います」

葛城「だから私は……まあ、もうイっか」ウン

提督「さ、それじゃあ時間も遅いしもう寝るとしよう。秋月もソファーじゃあカワイソウだ」

瑞鶴「あ」ソウイエバ



秋月「………………」Zzz


590: 2015/05/03(日) 10:20:19.66 ID:U2qiiPyI0

翔鶴「私たちが盛り上がっている間に寝てしまったんですね」

提督「なんだかんだ0時前だしね。冬月たちもとっくに寝てるんじゃないかな」

雲龍「今回のことでこっちの事前偵察を頼めるのが秋月しかいなかったかラ……」

天城「申シ訳ないことをしてしまいました」

提督「俺が向こうまで運んでいこう。瑞鶴たちもせっかくだから一緒に寝てくればどうだ?」

葛城「あ、それ賛成っ! 提督(あなた)イイコト言うじャない。センパイ、一緒に寝まシょう!」

瑞鶴「いいけど……」

翔鶴「よろしいのですか?」

提督「出撃もできないし、明日の昼前までだったらなんとか誤魔化せておけるだろうから。朝鳳翔にはそれとなく言っておくさ」ヨイショ

秋月「んんっ……ふゆづき……」ギュッ

提督「軽いなあ。早く食生活にも慣れてもらわないと」

瑞鶴「いいなあ」ウズウズ



………………

…………

……


591: 2015/05/03(日) 10:25:14.54 ID:U2qiiPyI0

―数日後―

翔鶴「提督。こちらの書類についてですが」

提督「それは確か先週送られてきたヤツのどっかに……」



コココンココ コココ



翔鶴「あら。今日もいらっしゃったみたいですね」

提督「……はぁ。いまは大丈夫だぞ―」



ガタンッ

葛城「こんニちは。瑞鶴センパイいる?」ヒョコッ

提督「瑞鶴なら今食堂にお菓子取りに行ってるが……」

葛城「フーん。じゃあちょっと待たせてもらおウかなー」

提督「………………」

葛城「あ、これ美味シそう。いただきマーす」サクサク

提督「なあ、葛城よ」

葛城「んー?」モグモグ

提督「来るなとも言わないし拒否することもないが、もう少し慎重になってくれよ。存在がバレたらマズイのは分かるだろ?」

葛城「それはわかってルわよ。だからこうしてちゃんと確認してるデしょ?」モウヒトツ

提督「いや、まあそうなんだが……」

葛城「だいたい雲龍姉ぇも天城姉ぇも気にして遠慮しすぎナのよ。冬月たちは秋月のこともあるしまあしょうがなイけど」

翔鶴「むしろお二人の考えが推奨なんですがね……」

提督「バレたらどうするんだかな」

葛城「いつバレるかなんて後ろ向きに心配するよりも、私は確認した上で堂々と瑞鶴センパイに会いに来るわ!」フンスッ

提督「……まあ、前向きなのはいいことなのか?」

翔鶴「ど、どうなんでしょう」ウーン



ガチャッ



瑞鶴「ただいまー……って、あれ? アンタまた来てたの」

葛城「こんニちは! センパイ」

瑞鶴「ホント元気ねぇ。あ、コレ食べる? 鳳翔さんに作ってもらったの」

葛城「ゼヒ!」キラキラ

提督「……ノックもせず開けるのは瑞鶴だけ。だがもし誰かがうっかり開けたらと思うと」

葛城「なに言ってルのよ。センパイはそれだけあなたの事を信頼してるんデしょ。ね、センパイ」

瑞鶴「うん? んー……んっ。まあね!」←気にしてなかった

提督「……ホント、頼むぞー」


ずいかく が ふたり?


597: 2015/05/06(水) 19:10:26.20 ID:GfUC5sUm0

・---・アル日ノ鎮守府:利根・---・


利根「筑摩よ。来るべき戦に備えて本日の訓練は索敵は念入りに行なうぞ」

筑摩「そうですね。本日は貴重な燃料を使用しての戦闘訓練ですので、無駄には出来ません」

利根「うむっ! 瑞鶴に大鯨、他の偵察機はいらん。我らが利根型が全方位を務めるぞ」

大鯨「わかりました。では攻撃はお任せください」

瑞鶴「はいはい。じゃあ私はその分直掩機を上げておこうかな」

利根「相手は武蔵率いる打撃艦隊。懐深く攻めこまれては軽装な我らに勝ち目はない。先手必勝で叩くぞ」

瑞鶴「翔鶴姉ぇが補佐に入ってるから油断も出来ないしね。でも、まずはセオリー通り来るかも?」

利根「ふふふふ……いつまでも新参者と侮るなかれ。利根機動艦隊、いざ出陣じゃ!」

筑摩「確実に先手を取りましょう。索敵機、発艦開始します」ガションッ

利根「吾輩も続くぞ。発艦じゃッ……って、むぅ?」ガコッ

筑摩「姉さん。どうかしましたか?」

利根「あれ、おかしいのぅ。カタパルトが……」ガコンガコン

那珂「だいじょうぶー?」

夕立「故障っぽい?」

利根「へ、平気じゃ。この位ちょっと力を入れてしまえば……!」グググッ

瑞鶴「ちょ、ちょっとそんなに乱暴にしたら」

利根「くっ……この……!」グギギ



バキン!



『あ』



利根「あ」コワレタ


598: 2015/05/06(水) 19:15:48.88 ID:GfUC5sUm0


提督「――――それでさっきからしょんぼりしてるのか」

瑞鶴「そりゃあんな無理に力入れたら壊れるわよねえ」



利根「吾輩のカタパルトが……」

筑摩「姉さん。元気を出してください。ね? 機械な以上故障する時もありますよ」

利根「ち、ちくまあ」オロローン


筑摩「(あぁ、しょんぼり顔に涙を浮かべる姉さんも不謹慎ですがまた保護欲をソソりますね)」ハァハァ


提督「とりあえず、壊れた利根のカタパルトは修理に出した。まあ明日にでも直るんじゃないかな」

利根「肝心な時はいつもそうじゃ。航空機を運用できない吾輩なんぞ、ただの重巡以下……散っていった戦友たちに申し訳もたたん」

提督「誰も散ってないって。今日のことは残念だったがまた訓練日を作るから」ネ

利根「……寝る」トボトボ



ゴソゴソゴソ



提督「そう言いつつ何故ここのベッドで寝るのか」

瑞鶴「やっぱり目の前にベッドがあるからじゃない? 私もよく使うし」

提督「初雪や加古もそうだが、使用目的が明らかに間違っている……!」

瑞鶴「気にしない気にしない。じゃ、私は先部屋に戻ってるわね」

筑摩「私も姉さんの分のお洗濯物を畳まないといけないので、失礼いたします」

提督「利根はこのままでいいのか?」

筑摩「そう、ですね。では起きたら戻るよう伝えていただけますか」

提督「了解だ」


利根「Zzz」


599: 2015/05/06(水) 19:21:03.27 ID:GfUC5sUm0

提督「………………」サラサラ

利根「Zzz」

提督「………………」ペタン

利根「Zzz」

提督「………………」オワッタ


提督「(マジ寝か)」



knock knock

翔鶴『翔鶴です』



提督「はいよー」



翔鶴「戻りました提督……って、あら?」

提督「お疲れさま。ありがとう翔鶴」

翔鶴「いいえ。これくらいなんともありません。それよりも……瑞鶴、またここで寝てるの?」


瑞鶴?『Zzz』


翔鶴「まったくもう。寝るならちゃんとお部屋で寝なさいっていつもいつも――――?」アレ

提督「ははは。残念ながら瑞鶴ではないのだ」

翔鶴「利根さん……ですね」


利根『Zzz』


提督「今日のことでチョットな。まあ、不貞寝というやつだろう」

翔鶴「髪型とリボンでつい瑞鶴とばかり……」

提督「似てるよなあ。同じ格好させて後ろ向きに立たれたら判断付かないかもしれないよ」

翔鶴「ですね。でも、瑞鶴の方が少し背が高いかもしれません」

提督「そう言うワケだから、ここは静かに書類作業といこうじゃないか」

翔鶴「あ、その事ですが提督。妖精さんがお話があると」

提督「妖精さんが? なんだろう」

翔鶴「急ぎではないと言っていましたが……」

提督「まあ、せっかくだから休憩がてら行ってみようかな。翔鶴はどうする?」

翔鶴「お供いたします」

提督「ん。じゃあちょっと行ってくるか。利根はまあ、しばらくこのままでもいいだろう。せっかくぐっすり眠ってるみたいだし」


……この判断が後の騒動カッコカリを引き起こすこととなる……?


600: 2015/05/06(水) 19:25:09.95 ID:GfUC5sUm0
葛城が好みすぎて生きるのが辛い
瑞鶴が好きならきっとみんなも葛城が好きになるはず 逆に秋津洲の声が低くて驚いたくらい
葛城の出番増やそうの会ですがよろしければまたお付き合いください

E6だけで三日、資源にして五万以上は使った……ローマは出なかった 酒匂も磯風も出なかった

601: 2015/05/06(水) 20:04:53.05 ID:gWUQ2IDSo
葛城かわいいよ葛城

602: 2015/05/06(水) 20:31:20.58 ID:xUjc4a8GO
乙です


引用: 翔鶴「瑞鶴、あまり提督の邪魔をしちゃだめよ?」