282: 2014/06/04(水) 23:08:03.13 ID:zIn6wSRkO
283: 2014/06/04(水) 23:08:49.93 ID:zIn6wSRkO
鈴谷「──────提督ー!」
鈴谷「間宮さんからアイス貰ってきたよー!」
ドタドタと慌ただしい足音に続いて、扉が勢いよく開け放たれる。立っていたのは満面の笑みと共に両手にアイスを携えた鈴谷。
仕事に集中していて気付かなかったが、ふと壁にかけられた時計に目をやってみると、時計の針は何時の間にか三時を指していた。
休憩を入れるのには丁度いい。
提督「そうか、なら休憩にするか」
鈴谷「疲れたときには甘いものだよねー♪」
ちゃぶ台の上に散らばっている書類をまとめて端に寄せる俺と、部屋の隅に積まれた座布団を引き出して俺の対面へと腰を降ろす鈴谷。
そして俺が片付けを済ませた頃には、すでに鈴谷はスプーンを用いてアイスをその口に運んでいた。
鈴谷「んー、美味しー♪」
提督「鈴谷のはバニラか?」
鈴谷「うん! ……提督、こっちの方が良かった?」
提督「……いや、このチョコで構わない」
鈴谷がスプーンをくわえたまま、こてん、と首を傾げる。俺は別に問題ない、と返したつもりだったのだが、鈴谷の目つきが険しくなった。
そうして無言でアイスを俺に差し出してくる。
提督「……どうした?」
鈴谷「提督、バニラの方が良いんでしょ? 見れば分かるよ。てゆーかバレバレ?」
提督「…………顔に出したつもりは無かったんだがな」
鈴谷「提督のことなら手に取るように分かるに決まってるじゃーん♪」
提督「……そうか?」
そう言って、「食べかけでごめんねー」と鈴谷がケラケラ笑う。鈴谷が良いのなら、と思った俺は交換に応じることにした。
まだ一切口を付けていないチョコアイスを鈴谷へと差し出す。
鈴谷「──────んあー……」
提督「……何のまねだ?」
差し出したアイスには目もくれず、鈴谷がその小さく可愛らしい口を開けながらこちらを見る。
……いや、何を求めているのかは分かるのだが。
提督(…………まぁ交換してもらった身だしな)
提督(多少の我が儘は許してやるか)
スプーンでアイスを掬い、鈴谷の目の前へと差し出す。
差し出された鈴谷が、目を丸くした。
提督「ほら、あーん」
鈴谷「──────ふぇ?」
281: 2014/06/04(水) 23:07:13.46 ID:zIn6wSRkO
鈴谷投下ー。
284: 2014/06/04(水) 23:09:34.78 ID:zIn6wSRkO
鈴谷「────な、ななななっ!?」
鈴谷「えっ、ちょっ、なんでっ!? なんでそーなるの!?」
瞬く間にその顔を朱に染めた鈴谷が、素早くその身体を退かせた。
その予想外の反応に、俺はスプーンを差し出した状態のままで固まる。
目線があっちこっちに泳いでいる、明らかに混乱の最中にいるであろう鈴谷と、俺の目が合った。
提督「……違ったか?」
鈴谷「い、いや、間違ってないけど! 間違ってはないけどぉ…………!」
鈴谷「…………いつもの提督ならそんなことしないじゃーん……」
鈴谷「なんでなんで……! こ、心の準備とか……! …………うぅ……!」
頭を抱えながらうんうんと唸り始める鈴谷。
見ている分にはかなり愉快なのだが、腕を上げた状態でこのままなのは正直辛い。
意を決し、口を開く。
提督「……で、食べないのか?」
鈴谷「──────────っ」
ピタリ、と動きが止まる。
そのまま数秒停止した後、鈴谷は目を伏せて恥ずかしそうにしながら、俺の方を向いた。
鈴谷「…………食べ、る……うん……」
提督「そうか。なら早くしろ」
提督「すでに溶け始めてきてるからな」
鈴谷「わ、分かってるってば!」
鈴谷「…………あぅ……えっと、その……」
提督「…………はぁ」
提督「…………ほら、あーん」
鈴谷「あ、あーん…………」
鈴谷「────あむっ」
鈴谷「────────」
提督「…………どうだ?」
鈴谷「…………………………」
鈴谷「…………なんかよく分かんない」
再度目を伏せ、鈴谷はボソボソと呟いた。
鈴谷「だからその……もう一回……いい?」
────その日俺は、結局アイスを口にすることが出来ず終いになるのだった。
292: 2014/06/08(日) 18:42:23.43 ID:Q9qb26QOO
大和の場合
293: 2014/06/08(日) 18:43:12.53 ID:Q9qb26QOO
提督「──────んっ……」
提督(頭が痛い……。飲み過ぎたか?)
頭を襲う鈍痛に引っ張られ、意識が徐々に戻ってくる。ガンガンと鳴り響くような痛みに目も開けられないが、それのおかげで思考の方は落ち着きを取り戻しつつあった。
目を閉じ、暗闇に視界を預けたまま、途切れ途切れになっている記憶を繋げていく。
提督(俺の部屋、のはず……えーと)
提督(……昨日は良いお酒が手に入ったということで飲める奴らで集まって飲んだんだったな)
提督(それで途中で歯止めが利かなくなって、俺も相当やばかったから巻き込まれないように早めに退散して……)
提督(いや待て)
提督(俺だけじゃない。俺ともう一人居た。そいつと一緒にあの場を抜け出して……)
大和「んんっ……」
提督「……お前だったか」
誰かが身をよじったかのような振動が、俺にかけられている布団を通して伝わり、さらに正面から聞こえてきたその声に、俺はようやく目を開けた。
飛び込んでくる凛々しさのある端正な顔立ち。
キリッとしていてなおかつ優しさをも含んでいるその瞳は、今はまぶたによって閉ざされており、薄い桃色に彩られたその艶やかな唇からは、小さく寝息がこぼれている。
戦艦大和。
うちの鎮守府のエースが、そこにいた。
大和「──────んぅ……」
大和「……てい、とく?」
文字通り俺の目の前にいる大和がうっすらとまぶたを上げ、疑問の声をあげる。
慌てた俺は何を言えばよいかまったく分からず、そのまま固まってしまう。
そんな俺をよそに、大和が口を開いた。
大和「提督……♪」
提督「なっ……!?」
大和「ふふっ、提督は温かいですね……」
背後に腕を回され、強く抱きしめられる。
大和との間に感じる柔らかい感触が、さらに俺の思考の混乱を加速させた。
提督「は、離せっ」
大和「……嫌です」
ムスッとした表情で答える大和。
これが寝起きだからなのか、それとも昨日の酔いがまだ残っているからなのか。その真偽のほどは分からない。
とにかく抜け出そうと力を入れてみるが、ビクともしなかった。
大和「ふふっ♪」
提督(……もう好きにしてくれ)
それどころか俺が身をよじることが楽しいのか、笑みを深め力を強める大和。ふんわりと漂ってくる甘い匂いに頭がクラクラしそうになる。
結局、しばらくして俺は抵抗を止めた。
そしてそのさらに数十分後、大和が顔を真っ赤にしながら慌てて謝り倒すその時まで、俺は様々な誘惑に耐えることとなるのだった。
294: 2014/06/08(日) 18:44:05.65 ID:Q9qb26QOO
瑞鳳の場合 2
295: 2014/06/08(日) 18:44:38.65 ID:Q9qb26QOO
瑞鳳「────どう?」
提督「……中々」
瑞鳳「えへへ、でしょー?」
日が高く上がった真っ昼間。
食事を終え執務室に戻ってきた俺と瑞鳳は、まだ仕事をする時間には早いということもあり、お遊びに興じていた。
お遊び、といっても何ということはない。
ただ俺が瑞鳳の体を引っ張ったり撫でたり揉んだりするだけである。言葉だけで捉えると相当アレだが、疚しさは一切無い。
先日俺に頬を引っ張られた際にその感覚が癖になった瑞鳳の欲求を満たし、俺はその柔らかい肌触りに癒やされるという、まさにwin-winの関係なのである。
重ねて言うが疚しさは無い。全くもって健全だ。
提督「……そろそろいいか?」
瑞鳳「うん」
瑞鳳「やっぱり耳たぶじゃ物足りないわねぇ……」
提督「やっぱりこれが一番か」
瑞鳳「ひょうひょう、ほれほれー♪」
頬を引っ張られながらも、蕩けた表情を見せる瑞鳳。手の平や二の腕、ふくらはぎや太ももなども試してみたが、やはりこれが一番らしい。
左右に引っ張り、手の平で押し、円を描くようにこねる。そのたびに瑞鳳の口の端から息が漏れた。
しばらくしてから手を離す。
とろん、とした目つきに変わった瑞鳳が、こちらを見つめていた。
提督「もうそろそろ仕事の時間だな……」
瑞鳳「そ、そうね……」
瑞鳳「それじゃあ次で最後にしよ?」
提督「頬か?」
瑞鳳「えっと、その…………ここで」
そう言って恥ずかしそうに服の裾を捲る瑞鳳。健康的な肌色をしたお腹が、俺の視界に姿を見せる。
ちらりと見えたおへそに、何故か唾を飲んでしまった。
確認の意を込めて、瑞鳳へと視線を向ける。
提督「……あー…………瑞鳳?」
瑞鳳「…………だめ?」
────その後どうしたのか。
それは俺と瑞鳳二人だけの秘密である。
297: 2014/06/08(日) 18:45:49.99 ID:Q9qb26QOO
ストレスの対処法は人それぞれだ。
好きな物を食べるというやつもいれば、ひたすらに体を動かすというやつもいるし、酒を浴びるほどに飲むというやつもいれば、とにかく寝るというやつもいる。
…………さて、それを踏まえた上で俺はどうやってストレスを解消するのか。
答えは簡単。『可愛いものを見る』である。
かといってぬいぐるみなどの少女チックなものが好きだというわけではない。俺が好きなのはカルガモの親子とかの見ていて微笑ましいと思うものだ。
しかしこの鎮守府では、それらのものを見るのには一切縁がない。
ではどうやってこの鎮守府でそういったものを見て、ストレスを解消するのか。
それもまた、単純な答えである。
…………ギャップって、可愛いよね。
298: 2014/06/08(日) 18:46:22.32 ID:Q9qb26QOO
鳥海「し、司令官さん……あの、その……」
提督「どうした鳥海? 具合でも悪いのか?」
鳥海「い、いえっ。体調はむしろ良いくらいですっ」
提督「なら問題ないな」
鳥海「うぅっ…………!」
座布団の上に胡座をかき、その俺の胡座の上に鳥海を座らせる。左手は抱きしめるようにお腹へと回し、右手は撫でるためにその頭に置かれているため、鳥海は動きようがなく俺のなすがままにされている。
俺の視界からでは肩の辺りがほんのりと赤くなっているということしか分からない。だがしかし、その顔は朱に染まっていると見て間違いないだろう。じっとしているのが恥ずかしいのか、体がせわしなく揺れているのがその証拠だ。可愛い奴め。
鳥海「わ、私の計算では……こんなこと……!」
提督「止めるか?」
鳥海「………………」
鳥海「そ、その……データが多いに越したことはありませんよね……?」
提督「そうだな。悪いがもう少し付き合ってくれ」
鳥海「は、はいっ」
俺だって毎回こうなるというわけではない。こうなるのは積もりに積もったストレスが爆発したときだけで、ここの鎮守府の奴らは何回かそれを見たことがあるという事もあり、比較的大人しく従ってくれる。何ともありがたいことだ。初めて爆発させた時は提督が偽物とすり替わっていると言われたくらいだから、めざましい進歩といえるだろう。
そして毎回自分の行動を思い出して後悔することになるというのが分かりきったパターンと化しているのだが、今の俺は気にすることもなくただただ鳥海の反応を楽しむことに精を出すのだった。
鳥海(う、噂には聞いていましたけど……)
鳥海(いつもの司令官さんと違ってこれはこれで……)
鳥海「……良いものですね」
提督「何か言ったか?」
鳥海「な、何も言ってませんっ! はいっ!」
299: 2014/06/08(日) 18:48:01.85 ID:Q9qb26QOO
投下終了。
今更ながらタイトルに後悔。
それではまた。
300: 2014/06/08(日) 18:52:30.73 ID:kq1sA0TLo
乙
引用: 提督「甘えん坊」
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