440: 2014/06/20(金) 15:35:56.21 ID:hOjNUE1LO

久しぶりの艦これ。
大型二回→長門×2


前回提督「甘えん坊」由良、羽黒、瑞鶴の場合


長門投下ー。


441: 2014/06/20(金) 15:36:33.35 ID:hOjNUE1LO


     長門の場合



442: 2014/06/20(金) 15:37:07.68 ID:hOjNUE1LO


長門「────ふむ、ふむ……」

提督「……………………」

長門「悪くないな、皆がねだるというのも頷ける」

提督「……………………」

長門「こう、何だ? 胸の奥が暖かくなるというか、満たされていくというか…………」

長門「とにかくこれは良い。私は今まで何故これをしてもらわなかったのか分からんな」

提督「……そうか」

提督「なら、もういいか?」

長門「いや、足りん。もうしばらく撫でてくれ」

提督「……了解」

 夕暮れに染まる鎮守府、その執務室。
 座布団に胡座をかく俺の胸に顔をうずめ、幸せそうな表情で頭を撫でられている長門。
 背中側に腕を回されているため離れることも出来ず、かれこれ三十分はこの状態が続いていた。

 時折こちらの様子を伺うように顔を上げる長門。
 それに合わせて撫でてやると、その表情が綻ぶ。

長門「もしかすると提督の手の平からは私達艦娘を魅了する成分が溢れているのかもしれんな」

提督「……そんなわけあるか」

長門「いや、分からないぞ? 提督は私達艦娘を統べる存在なんだ。そういう力があってもおかしくはない」

提督「だとしたらいらない能力だな」

長門「だが私達には必要だ。体験するとよく分かる」

 そう言ってスリスリと額をこすりつけてくる長門。回された腕に力が込められたため、少し息苦しい。

長門「────ふふっ」

 楽しそうな笑い声があがる。
 普段何も望まない長門が珍しく頼みごとをしてきたものだから快く了承したが、まさかこういうことになるとは露にも思わなかった。

 『私の頭を撫でてくれ』だなんて、言われた時の俺の顔は、さぞ愉快なものだったことに違いない。

長門「どうした、手が止まっているぞ」

 考え、つい手が止まる。
 催促を受け、ため息を吐いた。

提督(……これ、いつ解放されるんだ?)

 そんなことを考える俺をよそに、長門はこちらに向けて不敵な笑みを浮かべるのだった。

艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(3) (角川コミックス・エース)

443: 2014/06/20(金) 15:37:54.73 ID:hOjNUE1LO




長門「────よし、今日はこれくらいでいいだろう」

長門「これからはMVPを取る度によろしく頼む」

長門「……狙い目は駆逐艦かな?」

提督「お願いだから戦艦を狙ってくれ」

長門「ふふっ、善処しよう」

長門「────期待しているぞ?」





459: 2014/06/23(月) 22:09:39.28 ID:v6Y67y5lO


     夕張の場合



460: 2014/06/23(月) 22:10:19.24 ID:v6Y67y5lO


提督「────よく来たな。さぁメロンを食べようか」

夕張「………………えぇー?」

夕張「もしかして提督、そのためだけに私を呼んだの?」


 文句を言いつつも用意されていた座布団へと腰を降ろすと、対面に座っている提督から私の目の前にスプーンが差し出される。
 受け取り視線を下に降ろせば、既に半分にカットされて種も取り終えられた美味しそうなメロンが視界に入った。

 ゴクリ、と唾を飲む。


夕張「一人半分って贅沢じゃない?」

提督「知り合いからのお土産なんだがあいにく一つしかなくてな……。無理に分ければ喧嘩が起きかねん」

提督「だから、な?」

夕張「……私を選んだ理由は?」

提督「名前」

夕張「……今日だけはこの名前に感謝するわ」


 互いに「いただきます」と言い、スプーンをその身に潜らせる。抵抗も無しにさっくりと掬われた果肉を口いっぱいに頬張ると、何とも言えない幸福感が私を包み込んだ。

 ……美味しい。それしか言えない。

 提督の方を見てみると、私と同じ気持ちを抱いたのか、その頬は類を見ないほどに緩んでいた。


提督「……美味いなこれは」

夕張「私も予想以上かも……」

夕張「でもこれだけ美味しいのなら、独り占めした方が良かったとか思ってるんじゃない?」

提督「ははっ、まさか」

提督「むしろ夕張と一緒に食べているから、こんなにも美味しいと感じるのかもしれないぞ?」

夕張「…………ばか」


 軽口を言うほど機嫌が良いのだろう。
 楽しそうに提督は笑っていた。

 対する私は恥ずかしさを隠すように続けてメロンを口に入れる。
 普段からこのくらいフランクなら…………いや駄目だ。私達の身が保たないのが目に見えている。
 というよりそんな提督だったなら刺される数は両の手ですら到底数え切れないほどになっていたに違いない。

 ……そう考えると、やっぱりこの提督が一番『らしい』感じがした。


提督「夕張もいつもよりご機嫌だな? そんなに美味かったか?」

夕張「……うん、そうね」

夕張「とっても美味しいわね♪」

提督「そうかそうか。やっぱり美味いよなぁ、これ……」


 そう言って自分のことのように喜ぶ提督。
 そんな提督を見て、私の頬も自然と緩むのだった。



461: 2014/06/23(月) 22:11:33.47 ID:v6Y67y5lO



提督「なぁ、夕張?」

夕張「んー?」

提督「メロンは中心が甘いと思われがちだが、本当は花痕部────つるが付いているところの裏側の部分が、一番甘いということを知ってるか?」

夕張「ええ、知ってるわよ」

提督「俺も今思い出したんだが……切るときに気付けばよかったな。おかげで俺の方にしか無い」

夕張「気にしなくていいし、全部食べていいから」

提督「……いいのか?」

夕張「ええ」





夕張「────十分甘いしね♪」






474: 2014/06/24(火) 21:27:54.50 ID:+5HwgCf5O


     吹雪の場合



475: 2014/06/24(火) 21:28:25.57 ID:+5HwgCf5O


吹雪「────司令官、前々からお聞きしたいことがあったんですけど……」

提督「別に構わん。だが、答えるかどうかは内容によるぞ?」


 カリカリとペンの走る音が執務室に響く。
 山のように高く積まれた書類の処理作業を開始してから、かれこれ三十分は経った頃だろうか? お互いが保ってきていた沈黙は、本日の秘書艦である吹雪によって破られた。

 言葉を返しつつ、返されつつも、俺と吹雪はその手を止めはしない。「それで構いませんから」と前置きをした吹雪が、言葉を続けた。


吹雪「司令官はここに来る前、何をされていたのですか?」

提督「ここに来る前、か……」


 ペンを持つ手の動きが止まる。
 それに合わせて、向かいから発せられていた音も鳴り止んだ。


提督「ふむ…………」


 顎に手を当て、記憶を掘り返す。
 期待に目を輝かせ、こちらを食い入るように見つめる吹雪が実に可愛らしい。

 ……だがしかし、その期待に応えられるかというと、そういうわけではなかった。


提督「着任時の挨拶では実家の手伝いとしか言わなかったしな……」

吹雪「ご実家では何のお仕事を?」

提督「なに、大したことはない。ただの農家だ。主に米を作っている」

吹雪「へぇー! そうだったんですかー!」


 驚きの声をあげる吹雪。
 そんなに驚くようなことでもないだろうとは思ったが、吹雪の反応の微笑ましさに、思わず笑みがこぼれてしまう。

 そのためか、ついつい言葉が続いてしまった。


提督「今でも収穫時期になると手伝いに行くぞ。本当なら田植えの方も手伝いたいが……深海悽艦は悠長に待ってはくれないからな」

吹雪「……あっ、だからお休みだったりしたんですね」


 何かを思い出したのか、吹雪がポンと手を打つ。
 完全な私用であるため、休む理由を今まで誰かに伝えたことはなかったのだが、つい口が滑ってしまったようだ。

 後悔したが、もう遅い。


吹雪「……あの、今年も手伝いに行ったりします?」



476: 2014/06/24(火) 21:28:55.13 ID:+5HwgCf5O


 その言葉で、吹雪の意図は読めたのだが、俺は会話を続けることにした。

 何も知らない風を装い、吹雪を見る。


提督「深海悽艦が大人しければ、だがな」

提督「……親父もお袋もいい年だし、二人に任せるのは心配だ」

吹雪「そ、そうなんですか……へぇー……」


 しきりにうんうんと頷く吹雪。
 俺はというと、その微笑ましさに笑いを堪えるしかない。


吹雪「だ、誰か手伝いに来てくれる人とかいないんですか?」

提督「……忙しくなければ手伝いに来てくれる人はいるだろうな。だが、収穫の時期はどの農家もそう変わらん。よそを手伝う暇など無いだろう」

吹雪「…………そう言えば私、有給余ってますね」

提督「……どうした藪から棒に?」

提督「休息も大事だからな。大切に使うんだぞ?」

吹雪「むぅ……」


 吹雪が悔しそうに頬を膨らませる。
 その表情が妙に面白かった。


提督「……来たいのか?」

吹雪「い、いいんですかっ!?」


 俺の一言に身を乗り出し、食いついてくる。
 最初からそのつもりだったろうに、という言葉は飲み込んであげておいた。


吹雪「ご両親にもお会いすることになるんですよね……! ふ、服とかどうしよう……!」


 俺の返答を待たず、既に行く気でいる吹雪。
 ここでその気分を落としてやるほど、俺はひどい人間ではない。

 わたわたとせわしなく手を動かしては、あーだこーだと一人で問答を繰り返す吹雪に、一応の忠告を投げかける。


提督「他の奴には言うなよ?」

吹雪「もちろんですっ!」

吹雪「絶対誰にも言ったりしませんから!」

提督「そ、そうか……」

提督(……嫌な予感しかしないな)

吹雪「ふふっ♪ 楽しみですね、司令官!」


 そんな俺の思いも露知らず、吹雪は楽しそうに笑う。
 対する俺はといえば、予想が外れてくれることを密かに願うばかりだった。



477: 2014/06/24(火) 21:29:35.26 ID:+5HwgCf5O










 そして後日、願い虚しく俺のもとには大勢の艦娘達が訪ねてくることになり、俺はその状況に大きなため息を吐くことになるのだった。



478: 2014/06/24(火) 21:30:06.61 ID:+5HwgCf5O


投下終了。

それではまた。



479: 2014/06/24(火) 21:34:42.93 ID:m19WoqtiO


引用: 提督「甘えん坊」