97: 2008/12/16(火) 23:11:49 ID:mYZ+w0Ud
唐突に“私”は目覚めた。
ここ、どこだろう。辺りを見回す。誰も居ない。
身体を起こす。どうやらベッドの上みたい。横に薬と、水の入ったコップが置かれている。
「誰か? 誰かいませんか?」
声を掛けてみるけど、何の返事も無い。
ベッドから降りてみる。横に揃えて靴が置かれている。試しに履いてみる。
サイズがぴったり。私のものみたい。
ふと、言い知れぬ悪寒に襲われた。毛布を掴むと、身体に巻き付ける。
私、何やってるんだろう。と言うか、ここ、何処? 誰か居ないの?
誰か……誰だろう。私はそもそも誰を捜しているのだろう?
そしてもっと大事な事に気付いた。
“私”は誰なんだろう?
毛布を被ったまま、私はその部屋からそーっと抜け出した。
廊下にしては妙に広く、天井も高い。
なんか、お城みたいな感じ。
廊下に響くのは私だけの足音。
窓ガラスに、私の陰が写る。辛うじて、毛布を被っている姿しか分からない。
鏡を見たい。私は、どう言う顔をしているんだろう。
やがて大広間に出た。見知らぬ人が何人か居た。慌てて陰に身を隠す。
何か、ここに来てはいけない様な気がしたから。
指を指された。
私は慌てて逃げ出した。遠くに居た筈なのに、何で気付かれるんだろう。
階段を昇り、誰も居ない所で一息付いた。息が荒い。止まらない。
「何してるんだろう」
冷静に考えてみる。そもそも何でこんな所に居るのか。
身体を見る。寝間着姿みたいだけど、何か囚人が着せられる服にも見える。
私、捕まってたのかも。
だとしたら、ここに居たら……逃げ出した事がばれたら……。
私は様子を窺い、外へ出る道を探した。
ここは何処? どうして私はここに? あの人達は誰? 私は誰?
でも、聞こうにも聞けない。聞いたらいけない様な気もして。
廊下を進んだところで、前の方から人が前からやって来るのに気付いた。
手近なところを見つけて隠れる。辺りを見る。台所みたいだ。
身を縮めて隠れていると、その人は運悪く私の居る台所にずかずかと踏み込んで来て、鉢合わせした。
「lwh! tyghsh!?」
驚いている。私も驚いてしまった。
「kmjhbgvfcd!!!!」
何かわめいているけど、何処の言葉だろう? さっぱり分からない。
「ごめんなさい!」
私は強行突破に出た。その人を突き飛ばして、全力で逃げた。
その人はまだ怒っていたけど、追っては来なかった。暫く走って、息を整える。
見た事ない人だった。何処の国の人だろう? ここは何処?
「tygh? yhbgvf?」
突然後ろから声を掛けられる。
大柄な女の人だ。私は逃げ出した。
「tygh!? drftgyh!?」
毛布を掴まれる。毛布を離して逃げようとした。でもその人は素早く私の腕を掴む。
「tygh!? dmkjhrftgyh!?」
「離して! お願い離して!」
相手も何か言ってるけど、本当に何を喋っているか意味が全く分からない。
振り解こうと頑張ったけど、物凄い力で腕を握られる。
……この人、ここの看守なのかな。私、このまままた捕まって閉じこめられるのかな。
「dfrtgy! cvgbtyghgwhjs! plkjhbcdbn!?」
大声で怒鳴ってる。ああ、やっぱり捕まるんだ。
ここ、どこだろう。辺りを見回す。誰も居ない。
身体を起こす。どうやらベッドの上みたい。横に薬と、水の入ったコップが置かれている。
「誰か? 誰かいませんか?」
声を掛けてみるけど、何の返事も無い。
ベッドから降りてみる。横に揃えて靴が置かれている。試しに履いてみる。
サイズがぴったり。私のものみたい。
ふと、言い知れぬ悪寒に襲われた。毛布を掴むと、身体に巻き付ける。
私、何やってるんだろう。と言うか、ここ、何処? 誰か居ないの?
誰か……誰だろう。私はそもそも誰を捜しているのだろう?
そしてもっと大事な事に気付いた。
“私”は誰なんだろう?
毛布を被ったまま、私はその部屋からそーっと抜け出した。
廊下にしては妙に広く、天井も高い。
なんか、お城みたいな感じ。
廊下に響くのは私だけの足音。
窓ガラスに、私の陰が写る。辛うじて、毛布を被っている姿しか分からない。
鏡を見たい。私は、どう言う顔をしているんだろう。
やがて大広間に出た。見知らぬ人が何人か居た。慌てて陰に身を隠す。
何か、ここに来てはいけない様な気がしたから。
指を指された。
私は慌てて逃げ出した。遠くに居た筈なのに、何で気付かれるんだろう。
階段を昇り、誰も居ない所で一息付いた。息が荒い。止まらない。
「何してるんだろう」
冷静に考えてみる。そもそも何でこんな所に居るのか。
身体を見る。寝間着姿みたいだけど、何か囚人が着せられる服にも見える。
私、捕まってたのかも。
だとしたら、ここに居たら……逃げ出した事がばれたら……。
私は様子を窺い、外へ出る道を探した。
ここは何処? どうして私はここに? あの人達は誰? 私は誰?
でも、聞こうにも聞けない。聞いたらいけない様な気もして。
廊下を進んだところで、前の方から人が前からやって来るのに気付いた。
手近なところを見つけて隠れる。辺りを見る。台所みたいだ。
身を縮めて隠れていると、その人は運悪く私の居る台所にずかずかと踏み込んで来て、鉢合わせした。
「lwh! tyghsh!?」
驚いている。私も驚いてしまった。
「kmjhbgvfcd!!!!」
何かわめいているけど、何処の言葉だろう? さっぱり分からない。
「ごめんなさい!」
私は強行突破に出た。その人を突き飛ばして、全力で逃げた。
その人はまだ怒っていたけど、追っては来なかった。暫く走って、息を整える。
見た事ない人だった。何処の国の人だろう? ここは何処?
「tygh? yhbgvf?」
突然後ろから声を掛けられる。
大柄な女の人だ。私は逃げ出した。
「tygh!? drftgyh!?」
毛布を掴まれる。毛布を離して逃げようとした。でもその人は素早く私の腕を掴む。
「tygh!? dmkjhrftgyh!?」
「離して! お願い離して!」
相手も何か言ってるけど、本当に何を喋っているか意味が全く分からない。
振り解こうと頑張ったけど、物凄い力で腕を握られる。
……この人、ここの看守なのかな。私、このまままた捕まって閉じこめられるのかな。
「dfrtgy! cvgbtyghgwhjs! plkjhbcdbn!?」
大声で怒鳴ってる。ああ、やっぱり捕まるんだ。
98: 2008/12/16(火) 23:12:41 ID:mYZ+w0Ud
涙が出てきた。私、もうおしまいだ。
「tygh? mkmywq? mlptrvbf?」
大柄な人は私の顔を覗き込んで、心配そうな顔をした。どうしてそんな顔をするの?
ぞろぞろと集まってきた。……若い女の子ばっかり。どうして?
「tygh?」「tygh?」「pnkhsth?」
皆、私の顔を見て同じ様な単語を言ったり、何か心配そうな顔をしたり、不思議そうな顔をしてる。
私は涙がこらえられなかった。大声で泣いてしまった。もう私、おしまいだ。
自分が何者かも分からないまま。
「tygh?」「myhtgfvsdcgsdv?」「rjdc! fvbn!?」
周りに集まった人達は何か言っている。でも何を言っているか全然分からなくて。
余計に自分が惨めになった。
大柄な人は他の人に何か言われて、首を横に振って、手を離した。
あ、今なら。
私はもう一度逃げられるか賭けに出た。けどやっぱり無駄だった。周りのみんなが私を掴み、組み伏せた。
「tyghjdyt!」「plmrtyhbvsdcgtygh?」「pnkhsth!?」
今度はもうだめ。終わった。何もかも。涙が止まらない。
「mkbr、cdfghj?」
また誰かがやって来た。みんなに何か言ってる。みんなはそれに答えてなにか口々に言ってる。
上を見た。
見た事無い人。白い服を着てる。その人は私の顔をじっとみると、なにか言ったけど、
私が分からないと言った顔をしていたのに気付いたのか、ちょっと考えた後、顔を近付けて、言葉を発した。
「おい宮藤。お前、何をしてるんだ?」
その人ははっきりと私に分かる言葉で言った。あ、分かる。その言葉なら。この人なら、何か聞いても大丈夫かも?
「すいません! 私、私……一体誰なんですか?」
その人はひどくびっくりした。周りにいる人は私が何を言ってるのか分からない顔をしている。
「私、なんでここに居るんですか? この人達、誰なんですか? ここは何処なんですか?」
私の言葉が通じたのか通じないのか、白い服の人は首を傾げると、周りの人に何か言った。
今度は周りの人達がびっくりしている。口々に私に向かって何か言っている。さっきからのその分からない言葉の端に、
頻繁に「ミヤフジ」もしくは「ヨシカ」と言う単語が聞こえてくる。
白い服を着た人……よく見ると、眼帯をしてる……は、大きな人に私を立たせて、何か言った。
大きな人は私をぐいと引っ張る。
ああ、やっぱりどっかに連れて行かれるんだ。ひっ! と悲鳴を上げると、眼帯の人は言った。
「慌てるな。お前をどうこうしようと言う訳じゃない。落ち着け」
「なら、どうして私をこんな目に!?」
「訳も分からず逃げられたら困るからな。自分の事も分からないのに何処へ行くつもりだ?」
「あ……」
「ともかく、一度戻るぞ」
ああ、やっぱり戻されるんだ、あの部屋に……。
と思ったら、別の部屋に連れ込まれた。他の人もぞろぞろついてくる。
部屋の扉を閉めて、私をベッドの上に座らせて、眼帯の人は言った。
「まあ落ち着け。水でも飲んで、深呼吸しろ。誰もお前を傷付けようとか思ってない。安心しろ。私が保証する」
水の入ったコップを渡される。そう言えば喉が渇いていた。一気に飲み干す。
少し、落ち着いた。息を整える。
周りに居る人達も、なんか私を心配してくれてるみたい。
「自分の名前も覚えてないのか」
「はい。私、誰なんですか?」
「冗談ではないよな?」
「はい。私、何も覚えてないんです!」
「困ったな」
その人は首をひねった。
周りからは、さっきから頻繁に「ミヤフジ」と単語が飛んでくる。たまに「ヨシカ」と言う単語も。
「みやふじ? ……よしか?」
「それがお前の名だ」
「みやふじ……よしか」
「そう。お前は扶桑からここブリタニアに来た、ウィッチだ」
「扶桑って何ですか? ブリタニアって? ウィッチって何ですか?」
「扶桑は、お前と私が今喋っている言葉を使う国だ。お前と私の生まれ故郷でもある」
「ブリタニアは?」
「今居る場所だ」
「tygh? mkmywq? mlptrvbf?」
大柄な人は私の顔を覗き込んで、心配そうな顔をした。どうしてそんな顔をするの?
ぞろぞろと集まってきた。……若い女の子ばっかり。どうして?
「tygh?」「tygh?」「pnkhsth?」
皆、私の顔を見て同じ様な単語を言ったり、何か心配そうな顔をしたり、不思議そうな顔をしてる。
私は涙がこらえられなかった。大声で泣いてしまった。もう私、おしまいだ。
自分が何者かも分からないまま。
「tygh?」「myhtgfvsdcgsdv?」「rjdc! fvbn!?」
周りに集まった人達は何か言っている。でも何を言っているか全然分からなくて。
余計に自分が惨めになった。
大柄な人は他の人に何か言われて、首を横に振って、手を離した。
あ、今なら。
私はもう一度逃げられるか賭けに出た。けどやっぱり無駄だった。周りのみんなが私を掴み、組み伏せた。
「tyghjdyt!」「plmrtyhbvsdcgtygh?」「pnkhsth!?」
今度はもうだめ。終わった。何もかも。涙が止まらない。
「mkbr、cdfghj?」
また誰かがやって来た。みんなに何か言ってる。みんなはそれに答えてなにか口々に言ってる。
上を見た。
見た事無い人。白い服を着てる。その人は私の顔をじっとみると、なにか言ったけど、
私が分からないと言った顔をしていたのに気付いたのか、ちょっと考えた後、顔を近付けて、言葉を発した。
「おい宮藤。お前、何をしてるんだ?」
その人ははっきりと私に分かる言葉で言った。あ、分かる。その言葉なら。この人なら、何か聞いても大丈夫かも?
「すいません! 私、私……一体誰なんですか?」
その人はひどくびっくりした。周りにいる人は私が何を言ってるのか分からない顔をしている。
「私、なんでここに居るんですか? この人達、誰なんですか? ここは何処なんですか?」
私の言葉が通じたのか通じないのか、白い服の人は首を傾げると、周りの人に何か言った。
今度は周りの人達がびっくりしている。口々に私に向かって何か言っている。さっきからのその分からない言葉の端に、
頻繁に「ミヤフジ」もしくは「ヨシカ」と言う単語が聞こえてくる。
白い服を着た人……よく見ると、眼帯をしてる……は、大きな人に私を立たせて、何か言った。
大きな人は私をぐいと引っ張る。
ああ、やっぱりどっかに連れて行かれるんだ。ひっ! と悲鳴を上げると、眼帯の人は言った。
「慌てるな。お前をどうこうしようと言う訳じゃない。落ち着け」
「なら、どうして私をこんな目に!?」
「訳も分からず逃げられたら困るからな。自分の事も分からないのに何処へ行くつもりだ?」
「あ……」
「ともかく、一度戻るぞ」
ああ、やっぱり戻されるんだ、あの部屋に……。
と思ったら、別の部屋に連れ込まれた。他の人もぞろぞろついてくる。
部屋の扉を閉めて、私をベッドの上に座らせて、眼帯の人は言った。
「まあ落ち着け。水でも飲んで、深呼吸しろ。誰もお前を傷付けようとか思ってない。安心しろ。私が保証する」
水の入ったコップを渡される。そう言えば喉が渇いていた。一気に飲み干す。
少し、落ち着いた。息を整える。
周りに居る人達も、なんか私を心配してくれてるみたい。
「自分の名前も覚えてないのか」
「はい。私、誰なんですか?」
「冗談ではないよな?」
「はい。私、何も覚えてないんです!」
「困ったな」
その人は首をひねった。
周りからは、さっきから頻繁に「ミヤフジ」と単語が飛んでくる。たまに「ヨシカ」と言う単語も。
「みやふじ? ……よしか?」
「それがお前の名だ」
「みやふじ……よしか」
「そう。お前は扶桑からここブリタニアに来た、ウィッチだ」
「扶桑って何ですか? ブリタニアって? ウィッチって何ですか?」
「扶桑は、お前と私が今喋っている言葉を使う国だ。お前と私の生まれ故郷でもある」
「ブリタニアは?」
「今居る場所だ」
99: 2008/12/16(火) 23:13:37 ID:mYZ+w0Ud
「どうして私がここに? この人達、一体誰で、何なんです?」
「お前と同じ、ウィッチだ。そしてお前の大切な仲間達だ。私もそう」
「仲間……」
私は呆然と、辺りを見回した。周りの人は、いつしかみんな心配そうな顔をしていた。
「宮藤、お前は扶桑語しか喋れなくなっているのか。それで皆の言葉が分からないんだな。
ここへ来る道中で、ブリタニア語もしっかりマスターした筈なのにな」
「わかりません」
「そうか。まあ、無理しなくていい。お前はここでウィッチとして、人のためになる事をしてきた」
「ウィッチって、何ですか」
「全然覚えてないのか。まあ仕方ないか」
「あの」
「なんだ?」
「貴方の名前は?」
「私か? 今更自己紹介もヘンだが……坂本美緒だ。坂本、で構わない」
「さ、坂本……さん」
「そう。それでいい」
「坂本さん。私、どうしたら良いんですか?」
坂本さんは、溜め息をつくと、言った。
「どうしようもないな」
「そんなあ」
「但しひとつだけ言っておく。ここはお前の第二の我が家でもあるんだ。逃げる必要なんてないし、
逃げたところでもっと訳が分からなくなるぞ? だから逃げるな。怯えるな。安心しろ。誰も危害は加えない」
「本当ですか?」
「大丈夫だ。私が保証する」
「ありがとうございます」
「何をどう勘違いしたかは知らんが……周りに居るみんなはお前の事を心配しているんだぞ。そしてあとひとつ。ここはお前の部屋だ」
「はあ」
「ともかく、暫くすれば記憶も戻るだろう」
坂本さんは席を立った。
「ま、待って下さい」
思わず腕を取ってしまった。
「どうした?」
「私、自分が誰なのかも分からなくて……みんなが話してる言葉も分からなくて……これからどうしたらいいのか。
私の言葉、他に分かる人居ないんですか?」
「この基地には、私以外居ないな」
「ええ? そんなあ」
「今更扶桑海軍に送る訳にもいかんし……どうしたものか」
坂本さんも困っている。でも私はもっと困ってる。言葉も通じなければ、コミュニケーションが取れない。
そもそも、私は宮藤芳佳と言われても……それって誰なの? 本当に私なの?
「仕方ない。暫くお前の横に居てやるか」
「お前と同じ、ウィッチだ。そしてお前の大切な仲間達だ。私もそう」
「仲間……」
私は呆然と、辺りを見回した。周りの人は、いつしかみんな心配そうな顔をしていた。
「宮藤、お前は扶桑語しか喋れなくなっているのか。それで皆の言葉が分からないんだな。
ここへ来る道中で、ブリタニア語もしっかりマスターした筈なのにな」
「わかりません」
「そうか。まあ、無理しなくていい。お前はここでウィッチとして、人のためになる事をしてきた」
「ウィッチって、何ですか」
「全然覚えてないのか。まあ仕方ないか」
「あの」
「なんだ?」
「貴方の名前は?」
「私か? 今更自己紹介もヘンだが……坂本美緒だ。坂本、で構わない」
「さ、坂本……さん」
「そう。それでいい」
「坂本さん。私、どうしたら良いんですか?」
坂本さんは、溜め息をつくと、言った。
「どうしようもないな」
「そんなあ」
「但しひとつだけ言っておく。ここはお前の第二の我が家でもあるんだ。逃げる必要なんてないし、
逃げたところでもっと訳が分からなくなるぞ? だから逃げるな。怯えるな。安心しろ。誰も危害は加えない」
「本当ですか?」
「大丈夫だ。私が保証する」
「ありがとうございます」
「何をどう勘違いしたかは知らんが……周りに居るみんなはお前の事を心配しているんだぞ。そしてあとひとつ。ここはお前の部屋だ」
「はあ」
「ともかく、暫くすれば記憶も戻るだろう」
坂本さんは席を立った。
「ま、待って下さい」
思わず腕を取ってしまった。
「どうした?」
「私、自分が誰なのかも分からなくて……みんなが話してる言葉も分からなくて……これからどうしたらいいのか。
私の言葉、他に分かる人居ないんですか?」
「この基地には、私以外居ないな」
「ええ? そんなあ」
「今更扶桑海軍に送る訳にもいかんし……どうしたものか」
坂本さんも困っている。でも私はもっと困ってる。言葉も通じなければ、コミュニケーションが取れない。
そもそも、私は宮藤芳佳と言われても……それって誰なの? 本当に私なの?
「仕方ない。暫くお前の横に居てやるか」
100: 2008/12/16(火) 23:14:39 ID:mYZ+w0Ud
坂本さんは、私の横にいてくれた。食事の時も、風呂の時も。
そしてタイミングを見計らって、周りの人の紹介もしてくれた。
みんな聞いた事の無い名前だけど、にこにこしたり、心配そうな顔をしたりで、確かに私に何か悪さをしようとか
そう言う感じは無かった。
ミーナ中佐、と言う人は、私の事を心配してくれて、言葉はわからないけど、ちょくちょく顔を出しては、
坂本さんと私に声を掛けてくれた。なんか落ち着いた感じのお姉さんだ。
最初に台所で会った人は……ペリーヌさんとか言った……食事の時とか、何故か私を睨んでいる。
やっぱり突き飛ばしたのがまずかったかな。
「聞いていて分かると思うが……いや、分からないかも知れんが、ここは軍隊だ。一応な」
坂本さんは不意に言った。
「ぐ、軍隊……ですか。鉄砲を持って、人を頃すんですか」
「人は殺さない。我々が戦っているのはネウロイと呼ばれる謎の存在だ」
「ネウロイ……」
「お前はつい数日前まで、ネウロイと戦っていたのだぞ? それも忘れたのか?」
「はい」
「何か思い出せる事は無いか? 何でも良い」
「何か……」
私は頭を抱えた。何もない。辛うじて扶桑と呼ばれる国の言葉が話せるだけで、何も。
自分の事すら分からないのに。
「私は、誰?」
「お前は宮藤芳佳だ。それ以上でもそれ以下でも無い。扶桑の誇る、ウィッチだ」
「坂本さん。ウィッチって、何ですか?」
「窓の外を見てみろ」
言われた通り外を見る。何人かが、宙を飛んでいる。足に何か付けている。
「あれがウィッチだ」
「足に何か付けてますね?」
「あれはストライカーと言って……いわば魔法の箒みたいなもんさ。簡単に言うと、私達の魔力を強くする。
そしてその力で空を飛び、ネウロイを倒す」
「ネウロイって何ですか」
「それは……、明確に答えられる者は居ないだろう。簡単に言うと、人間ではない、我々の敵だ。そうとしか言えないな」
「敵……」
「今のお前は戦う以前のレベルだ。まずは日常生活から再スタートしないとな」
「はい」
坂本さんは不意に笑った。
「なんだか、初めてお前に会った時を思い出したよ。こうして扶桑の言葉をたくさん使うのも久し振りだ」
「そうなんですか」
「ここは色々な国の者が集まっている。ブリタニア語を共通語としているが……せめてそれくらいは覚えないとな」
「はい」
「以前はすらすら話せて冗談も言えたんだ。すぐにまた覚えるさ」
扉がノックされ、大きな人が入ってきた。私を掴まえた人だ。確か、バルクホルンさんと言った。
おじぎをすると、私をちらっと見た後、坂本さんと何か話している。
バルクホルンさんは、ちょっと怖そうな人だけど、背中を見てると何かたくましい。戦う人って感じがする。
坂本さんと話して、バルクホルンさんは笑った。何か冗談を言っているみたい。
その姿は、何故だか少し懐かしい感じがして
「お姉ちゃん?」
と呟いていた。
「お姉ちゃん、だと?」
坂本さんが聞き返してきた。
「いえ、何となく思っただけで」
「そうか。本人に聞いてみるか」
坂本さんはバルクホルンさんに私の言葉を伝えると、急に顔を真っ赤にしてうろたえた。
おかしな人だ。
「からかうな、と奴は言ってるぞ」
「そんなあ。私、ちょっと思い出しそうな気がしたんです」
「まあ、たまに錯覚する事もあるからな。気にするな」
坂本さんも笑った。
そしてタイミングを見計らって、周りの人の紹介もしてくれた。
みんな聞いた事の無い名前だけど、にこにこしたり、心配そうな顔をしたりで、確かに私に何か悪さをしようとか
そう言う感じは無かった。
ミーナ中佐、と言う人は、私の事を心配してくれて、言葉はわからないけど、ちょくちょく顔を出しては、
坂本さんと私に声を掛けてくれた。なんか落ち着いた感じのお姉さんだ。
最初に台所で会った人は……ペリーヌさんとか言った……食事の時とか、何故か私を睨んでいる。
やっぱり突き飛ばしたのがまずかったかな。
「聞いていて分かると思うが……いや、分からないかも知れんが、ここは軍隊だ。一応な」
坂本さんは不意に言った。
「ぐ、軍隊……ですか。鉄砲を持って、人を頃すんですか」
「人は殺さない。我々が戦っているのはネウロイと呼ばれる謎の存在だ」
「ネウロイ……」
「お前はつい数日前まで、ネウロイと戦っていたのだぞ? それも忘れたのか?」
「はい」
「何か思い出せる事は無いか? 何でも良い」
「何か……」
私は頭を抱えた。何もない。辛うじて扶桑と呼ばれる国の言葉が話せるだけで、何も。
自分の事すら分からないのに。
「私は、誰?」
「お前は宮藤芳佳だ。それ以上でもそれ以下でも無い。扶桑の誇る、ウィッチだ」
「坂本さん。ウィッチって、何ですか?」
「窓の外を見てみろ」
言われた通り外を見る。何人かが、宙を飛んでいる。足に何か付けている。
「あれがウィッチだ」
「足に何か付けてますね?」
「あれはストライカーと言って……いわば魔法の箒みたいなもんさ。簡単に言うと、私達の魔力を強くする。
そしてその力で空を飛び、ネウロイを倒す」
「ネウロイって何ですか」
「それは……、明確に答えられる者は居ないだろう。簡単に言うと、人間ではない、我々の敵だ。そうとしか言えないな」
「敵……」
「今のお前は戦う以前のレベルだ。まずは日常生活から再スタートしないとな」
「はい」
坂本さんは不意に笑った。
「なんだか、初めてお前に会った時を思い出したよ。こうして扶桑の言葉をたくさん使うのも久し振りだ」
「そうなんですか」
「ここは色々な国の者が集まっている。ブリタニア語を共通語としているが……せめてそれくらいは覚えないとな」
「はい」
「以前はすらすら話せて冗談も言えたんだ。すぐにまた覚えるさ」
扉がノックされ、大きな人が入ってきた。私を掴まえた人だ。確か、バルクホルンさんと言った。
おじぎをすると、私をちらっと見た後、坂本さんと何か話している。
バルクホルンさんは、ちょっと怖そうな人だけど、背中を見てると何かたくましい。戦う人って感じがする。
坂本さんと話して、バルクホルンさんは笑った。何か冗談を言っているみたい。
その姿は、何故だか少し懐かしい感じがして
「お姉ちゃん?」
と呟いていた。
「お姉ちゃん、だと?」
坂本さんが聞き返してきた。
「いえ、何となく思っただけで」
「そうか。本人に聞いてみるか」
坂本さんはバルクホルンさんに私の言葉を伝えると、急に顔を真っ赤にしてうろたえた。
おかしな人だ。
「からかうな、と奴は言ってるぞ」
「そんなあ。私、ちょっと思い出しそうな気がしたんです」
「まあ、たまに錯覚する事もあるからな。気にするな」
坂本さんも笑った。
101: 2008/12/16(火) 23:15:34 ID:mYZ+w0Ud
数日経って、坂本さんの代わりに大人しそうな子がやって来る様になった。
確か、リーネちゃんと言う子だ。みんなの中で私と一番仲が良かったらしい。
何かあるたびに、私に構ってくれる。
同い年くらいなのに、すごい面倒見が良くて、しっかりしてる。
そして、私を心配してくれるのか、時折すごい寂しそうな顔をしてる。
私は何も記憶に無いのに、リーネちゃんには有るんだ。羨ましい。
でも、私とリーネちゃんは言葉の壁に遮られて、コミュニケーションすらままならない。
一生懸命ブリタニア語を覚えようと頑張っているけど、「はい」「いいえ」位しかまだ分からない。
ある日ぼんやりと外を眺めていると、突然大きな音が聞こえた。長く、不気味な音だ。
外を慌ただしく走っていく音が聞こえる。それも大勢。何か有ったのかな。
暫くすると、基地の滑走路から、坂本さんの言っていた魔法の箒をつけた人達が空に飛んでいった。
何処へ、何をしに行くのだろう。いつ帰ってくるのかな。心配になった。
部屋の外に出て、辺りをきょろきょろとしていると、ミーナ中佐が来た。
不安そうな私の顔を見たのか、にっこり笑うと、私の肩を掴んで、部屋に戻した。
そして指でバツのマークを付け、下を指さし、にこっと笑うと、そっと扉を閉めた。
外に出ちゃダメ、と言う事なのかな。
そう言えば坂本さんは言ってた。私は少し前まで戦っていた、と。
私はどうすれば良いんだろう。でも、何も出来ない自分が情けなくなって、涙が出た。
その時、扉が開かれた。リーネちゃんだ。
私が泣いている事に気付いたリーネちゃんは、慌てて飛んでくると私の涙を拭った。
何かを言っている。言葉の中に「ヨシカ」と幾つも入っている。
多分私を慰めてくれているのだろう。その優しさに私は溺れたのか……
リーネちゃんの胸で泣いた。
リーネちゃんは優しくて、私をそっと抱くと、頭を撫でてくれた。
涙が止まらない。
「ごめんね、リーネちゃん……私、何も出来なくて」
勿論言葉は通じない。でも、分かってくれた様な顔をしてくれた。
暫くそのままで居た。
すると、リーネちゃんは、私を抱く腕の力を緩めた。
「?」
リーネちゃんも、いつしか涙が出ていた。前のリーネちゃんと私は、どれくらい仲が良かったんだろう?
そんなに心配してくれるなんて。
リーネちゃんは、私の名を呼んで……
突然、キスをしてきた。
な、なんでいきなり? 私、そんなつもりじゃ……リーネちゃん、やめて!
でも、何故か拒めない。身体はひきつっているのに、頭の奥で何かが疼く。
リーネちゃん、私とどんな仲だったの? 私……
リーネちゃんは私をベッドに押し倒すと、何か呟いた。謝っているのかな。
次に激しく私の名を呼んで、叫んだ。
何を言いたいの?
リーネちゃんは何を言っているの?
だけど、彼女はそのまま、私に覆い被さって……
私はされるがまま……
唇を奪われ、服を奪われ……私は……
触れ合う身体。リーネちゃんの髪が解ける。私の顔に掛かる。
この匂い……
リーネちゃんの胸が、私に当たる。肌の匂い……
何処か、なつかしい様で、それでいて、とても愛しい様で……
あ。
私の中で、真っ暗闇だった扉が開いた様な。
頭を覆っていたものが“砕けた”音がした。
確か、リーネちゃんと言う子だ。みんなの中で私と一番仲が良かったらしい。
何かあるたびに、私に構ってくれる。
同い年くらいなのに、すごい面倒見が良くて、しっかりしてる。
そして、私を心配してくれるのか、時折すごい寂しそうな顔をしてる。
私は何も記憶に無いのに、リーネちゃんには有るんだ。羨ましい。
でも、私とリーネちゃんは言葉の壁に遮られて、コミュニケーションすらままならない。
一生懸命ブリタニア語を覚えようと頑張っているけど、「はい」「いいえ」位しかまだ分からない。
ある日ぼんやりと外を眺めていると、突然大きな音が聞こえた。長く、不気味な音だ。
外を慌ただしく走っていく音が聞こえる。それも大勢。何か有ったのかな。
暫くすると、基地の滑走路から、坂本さんの言っていた魔法の箒をつけた人達が空に飛んでいった。
何処へ、何をしに行くのだろう。いつ帰ってくるのかな。心配になった。
部屋の外に出て、辺りをきょろきょろとしていると、ミーナ中佐が来た。
不安そうな私の顔を見たのか、にっこり笑うと、私の肩を掴んで、部屋に戻した。
そして指でバツのマークを付け、下を指さし、にこっと笑うと、そっと扉を閉めた。
外に出ちゃダメ、と言う事なのかな。
そう言えば坂本さんは言ってた。私は少し前まで戦っていた、と。
私はどうすれば良いんだろう。でも、何も出来ない自分が情けなくなって、涙が出た。
その時、扉が開かれた。リーネちゃんだ。
私が泣いている事に気付いたリーネちゃんは、慌てて飛んでくると私の涙を拭った。
何かを言っている。言葉の中に「ヨシカ」と幾つも入っている。
多分私を慰めてくれているのだろう。その優しさに私は溺れたのか……
リーネちゃんの胸で泣いた。
リーネちゃんは優しくて、私をそっと抱くと、頭を撫でてくれた。
涙が止まらない。
「ごめんね、リーネちゃん……私、何も出来なくて」
勿論言葉は通じない。でも、分かってくれた様な顔をしてくれた。
暫くそのままで居た。
すると、リーネちゃんは、私を抱く腕の力を緩めた。
「?」
リーネちゃんも、いつしか涙が出ていた。前のリーネちゃんと私は、どれくらい仲が良かったんだろう?
そんなに心配してくれるなんて。
リーネちゃんは、私の名を呼んで……
突然、キスをしてきた。
な、なんでいきなり? 私、そんなつもりじゃ……リーネちゃん、やめて!
でも、何故か拒めない。身体はひきつっているのに、頭の奥で何かが疼く。
リーネちゃん、私とどんな仲だったの? 私……
リーネちゃんは私をベッドに押し倒すと、何か呟いた。謝っているのかな。
次に激しく私の名を呼んで、叫んだ。
何を言いたいの?
リーネちゃんは何を言っているの?
だけど、彼女はそのまま、私に覆い被さって……
私はされるがまま……
唇を奪われ、服を奪われ……私は……
触れ合う身体。リーネちゃんの髪が解ける。私の顔に掛かる。
この匂い……
リーネちゃんの胸が、私に当たる。肌の匂い……
何処か、なつかしい様で、それでいて、とても愛しい様で……
あ。
私の中で、真っ暗闇だった扉が開いた様な。
頭を覆っていたものが“砕けた”音がした。
102: 2008/12/16(火) 23:16:30 ID:mYZ+w0Ud
頭の中がクリアになる。
思い出す。
何もかも。
「リーネちゃん?」
「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん。私……私……」
「思い出したの? 芳佳ちゃん?」
「ああ、分かる。分かるよ、リーネちゃんの言葉。リーネちゃんなんだね。思い出した……私、自分の事」
「本当に? 良かった。心配したんだよ?」
リーネちゃんは私に抱きつくと、涙を流した。
「リーネちゃん、有り難う。リーネちゃんのお陰で、思い出した」
「本当? きっかけは?」
「リーネちゃんの、涙と……」
「あとは?」
「リーネちゃん」
「何それ? おかしな芳佳ちゃん」
「さっき、何て叫んでたの? よく聞き取れなかったけど」
「それは……恥ずかしいから、言わない」
「そんな。また記憶無くそうかな」
「やめて」
その夜、戦闘から帰還した隊の皆に、改めてお詫びをした。
ご迷惑を掛けてすみませんでした……と。
「良かったじゃん、ミヤフジ。いきなり毛布被って廊下から出てきた時は、お化けごっこでもしてるのかと思ったよ」
「ごめんなさい、驚かして」
「宮藤。何故私の事を……あんな風に言ったんだ?」
「え? いや、全然意味は無いです。何となく」
「からかうなよ。まったく」
バルクホルンさんの顔が赤い。
「まったく、この豆狸は……」
「ああ、ごめんなさい。突き飛ばしたのは決して……」
「突然毛布姿で驚かされて、突き飛ばされたわたくしの身にもなってごらんなさい!」
「ごめんなさい」
「まあそう言うなペリーヌ。良かったじゃないか、記憶が戻って」
「……確かに、少佐にこれ以上迷惑を掛けずに済むならよろしくてよ」
「芳佳、記憶喪失になる方法教えて?」
「え? ルッキーニちゃん何で?」
「あたしもそれやってみたい」
「こら。軽い遊びじゃないんだぞ?」
「えーだってー」
「良かったナ宮藤。扶桑の言葉叫んで錯乱してる時は、私もサーニャもホント驚いたゾ」
「芳佳ちゃん、良かったね……」
「ごめんね、心配かけて」
「宮藤さん、もう大丈夫なのね?」
「はい、ミーナ中佐。この通り」
「そう。良かったわ」
「よし、復帰祝いと行くか。こっちも戦いが終わったばかりだし、景気付けに一杯いくか!」
「坂本さん……色々ご迷惑掛けました」
坂本さんは、いつもの通り豪快に笑うと、私と肩を組んで言った。
「結果良ければそれでよし、だ。気にするな気にするな」
でも、私はひとつだけ、どうしても気になる事が有った。
何故、記憶を失ったのか。
それだけは未だに思い出せない。
リーネちゃんなら、何か知ってるかも知れない。
後でもう一度、リーネちゃんに聞いてみよう。
そうしたら、分かるかも知れない。
その、匂いとかで……。
end
思い出す。
何もかも。
「リーネちゃん?」
「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん。私……私……」
「思い出したの? 芳佳ちゃん?」
「ああ、分かる。分かるよ、リーネちゃんの言葉。リーネちゃんなんだね。思い出した……私、自分の事」
「本当に? 良かった。心配したんだよ?」
リーネちゃんは私に抱きつくと、涙を流した。
「リーネちゃん、有り難う。リーネちゃんのお陰で、思い出した」
「本当? きっかけは?」
「リーネちゃんの、涙と……」
「あとは?」
「リーネちゃん」
「何それ? おかしな芳佳ちゃん」
「さっき、何て叫んでたの? よく聞き取れなかったけど」
「それは……恥ずかしいから、言わない」
「そんな。また記憶無くそうかな」
「やめて」
その夜、戦闘から帰還した隊の皆に、改めてお詫びをした。
ご迷惑を掛けてすみませんでした……と。
「良かったじゃん、ミヤフジ。いきなり毛布被って廊下から出てきた時は、お化けごっこでもしてるのかと思ったよ」
「ごめんなさい、驚かして」
「宮藤。何故私の事を……あんな風に言ったんだ?」
「え? いや、全然意味は無いです。何となく」
「からかうなよ。まったく」
バルクホルンさんの顔が赤い。
「まったく、この豆狸は……」
「ああ、ごめんなさい。突き飛ばしたのは決して……」
「突然毛布姿で驚かされて、突き飛ばされたわたくしの身にもなってごらんなさい!」
「ごめんなさい」
「まあそう言うなペリーヌ。良かったじゃないか、記憶が戻って」
「……確かに、少佐にこれ以上迷惑を掛けずに済むならよろしくてよ」
「芳佳、記憶喪失になる方法教えて?」
「え? ルッキーニちゃん何で?」
「あたしもそれやってみたい」
「こら。軽い遊びじゃないんだぞ?」
「えーだってー」
「良かったナ宮藤。扶桑の言葉叫んで錯乱してる時は、私もサーニャもホント驚いたゾ」
「芳佳ちゃん、良かったね……」
「ごめんね、心配かけて」
「宮藤さん、もう大丈夫なのね?」
「はい、ミーナ中佐。この通り」
「そう。良かったわ」
「よし、復帰祝いと行くか。こっちも戦いが終わったばかりだし、景気付けに一杯いくか!」
「坂本さん……色々ご迷惑掛けました」
坂本さんは、いつもの通り豪快に笑うと、私と肩を組んで言った。
「結果良ければそれでよし、だ。気にするな気にするな」
でも、私はひとつだけ、どうしても気になる事が有った。
何故、記憶を失ったのか。
それだけは未だに思い出せない。
リーネちゃんなら、何か知ってるかも知れない。
後でもう一度、リーネちゃんに聞いてみよう。
そうしたら、分かるかも知れない。
その、匂いとかで……。
end
103: 2008/12/16(火) 23:17:45 ID:mYZ+w0Ud
以上です。
……やっぱり記憶喪失ネタは難しい!
勢いだけで、すいませんホントに。無謀な挑戦でしたorz
ではまた~。
……やっぱり記憶喪失ネタは難しい!
勢いだけで、すいませんホントに。無謀な挑戦でしたorz
ではまた~。
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