1: 2009/04/21(火) 11:00:31.89 ID:uJzj5pMm0
桜田ジュンは、来期から中学校に復学する為に頑張っている。
今日も自室の机で、今までの遅れを取り戻すべく、数学の勉強をしている。
しかしもう夜半、眠気が勉強の邪魔をする。
眠気を覚ます為に、独り言を呟きながら勉学に勤しむ。
「ここは…aとXを…掛けるから……あ~違うな~」
ふと傍にある時計を見やる、そこには22:56とデジタル表示されていた。
「今日はここまでにするかな…」
これ以上は眠気に勝てない事を理解したジュンは、大きな伸びを行ってから教科書を閉じた。
「あら?お勉強はもう終わりなのかしら?」
ベッドの方から声が聞こえジュンが振り向くと、そこには真紅がいた。
自身と同じ丈程のくんくん探偵のぬいぐるみをいとおしげに抱え、
頭にヘッドホンを付けた真紅が、ベッドのへりに座っていた。
小さな頭に、人間用の大きなヘッドホン、そしてくんくん探偵のぬいぐるみ…。
赤い綺麗なドレスに全く合わない、その滑稽な出で立ちは、ジュンを呆れさせるに十分だった。
「起きてたのか真紅、静かだからもう寝たのかと思った、プッ…何その格好?…って言うか何聞いてるんだ?」
くんくん探偵のぬいぐるみをベッドに置き、重労働そうにヘッドホンを外す真紅。
「え、何か言ったかしら?」
「いや、何を聞いてるのかって言ったんだけど」
今日も自室の机で、今までの遅れを取り戻すべく、数学の勉強をしている。
しかしもう夜半、眠気が勉強の邪魔をする。
眠気を覚ます為に、独り言を呟きながら勉学に勤しむ。
「ここは…aとXを…掛けるから……あ~違うな~」
ふと傍にある時計を見やる、そこには22:56とデジタル表示されていた。
「今日はここまでにするかな…」
これ以上は眠気に勝てない事を理解したジュンは、大きな伸びを行ってから教科書を閉じた。
「あら?お勉強はもう終わりなのかしら?」
ベッドの方から声が聞こえジュンが振り向くと、そこには真紅がいた。
自身と同じ丈程のくんくん探偵のぬいぐるみをいとおしげに抱え、
頭にヘッドホンを付けた真紅が、ベッドのへりに座っていた。
小さな頭に、人間用の大きなヘッドホン、そしてくんくん探偵のぬいぐるみ…。
赤い綺麗なドレスに全く合わない、その滑稽な出で立ちは、ジュンを呆れさせるに十分だった。
「起きてたのか真紅、静かだからもう寝たのかと思った、プッ…何その格好?…って言うか何聞いてるんだ?」
くんくん探偵のぬいぐるみをベッドに置き、重労働そうにヘッドホンを外す真紅。
「え、何か言ったかしら?」
「いや、何を聞いてるのかって言ったんだけど」
2: 2009/04/21(火) 11:02:08.00 ID:uJzj5pMm0
するといかにも上機嫌に、真紅が笑顔で答えた。
「これ?くんくん探偵のドラマCDよ、 金糸雀が私にプレゼントしてくれたの」
道理でニコニコ顔で、ぬいぐるみを抱えていた訳だとジュンは納得した。
耳だけでなく、全身でくんくんを感じたかったという事か…。
しかし何もそこまでやるか?こんな真夜中に。
「金糸雀ったら、こんなに気の利いたプレゼントを私にくれるなんて、本当に良い子だわ…。
今度紅茶でもご馳走しようかしら……もちろん淹れるのはジュンだけど」
眠いので突っ込む気にはならず、スルーするジュン。
しかし間髪入れずに、急に真顔になった真紅が言う。
「それにしても…ちょっと終わるのが早すぎるのではなくて?」
「何の話だ真紅、ドラマCDの事か?」
「違うわよ、お勉強の事よ。」
僕の勉強の事にいつも無関心な真紅が、そんな事を言い出すなんて…。
珍しい事もあるもんだと思い、ジュンは静かに話を聞いた。
「ジュン…真面目にやりなさい、まだ眠りの時間には早すぎるのではなくて?
折角私が家来に気を利かせて、この重たいヘッドホンとやらを、我慢していると言うのに…」
「いや、もう眠りの時間だぞ、もうすぐ23:00になるし」
「あら、そんな筈無いわ、さっき時計を見たら20:00だったのよ、正確には20:02ね。
お勉強は貴方自身の問題だから、あまりとやかく言う気は無いけど…もう少し頑張った方が良いのではなくて?」
「これ?くんくん探偵のドラマCDよ、 金糸雀が私にプレゼントしてくれたの」
道理でニコニコ顔で、ぬいぐるみを抱えていた訳だとジュンは納得した。
耳だけでなく、全身でくんくんを感じたかったという事か…。
しかし何もそこまでやるか?こんな真夜中に。
「金糸雀ったら、こんなに気の利いたプレゼントを私にくれるなんて、本当に良い子だわ…。
今度紅茶でもご馳走しようかしら……もちろん淹れるのはジュンだけど」
眠いので突っ込む気にはならず、スルーするジュン。
しかし間髪入れずに、急に真顔になった真紅が言う。
「それにしても…ちょっと終わるのが早すぎるのではなくて?」
「何の話だ真紅、ドラマCDの事か?」
「違うわよ、お勉強の事よ。」
僕の勉強の事にいつも無関心な真紅が、そんな事を言い出すなんて…。
珍しい事もあるもんだと思い、ジュンは静かに話を聞いた。
「ジュン…真面目にやりなさい、まだ眠りの時間には早すぎるのではなくて?
折角私が家来に気を利かせて、この重たいヘッドホンとやらを、我慢していると言うのに…」
「いや、もう眠りの時間だぞ、もうすぐ23:00になるし」
「あら、そんな筈無いわ、さっき時計を見たら20:00だったのよ、正確には20:02ね。
お勉強は貴方自身の問題だから、あまりとやかく言う気は無いけど…もう少し頑張った方が良いのではなくて?」
3: 2009/04/21(火) 11:03:24.15 ID:uJzj5pMm0
実は真紅は、重いヘッドホンの苛つきと、時間の勘違いから出た誤解で、ジュンに八つ当たりしていただけだった。
しかも言い分を全く聞き入れない…まあいつもの事だとジュンは無視する。
「大体私が寝ていないのだから、今が23:00の筈は無いわ…私は時間の管理にはうるさいのよ。
それなのにジュンときたら、私に嘘をついてまで眠りたいなんて、よっぽどお勉強が嫌いなのかしら…」
ジュンはデジタル時計を真紅に向け、無言で指差した。
すると真紅は呆れ顔で言った。
「そこまでして眠りにつきたいのかしら?時計をいじるなんて貴方らしい方法ね。
悪いけど私はだまされないのだわ…そんな事を思いつく暇があるなら、紅茶を淹れてきなさい」
何でそこまで言われなければならないのかと、流石にイラッとしたジュンは反論した。
「なら自分の懐中時計を見てみろよ、全く…」
これで自分の嫌疑は晴れるはず、そう思ったジュンは机の上の筆記用具を片付け始めた。
しかしまた真紅がヒステリックな口調で言う。
「本当に分からず屋の家来だわ、見なさい、まだ20:26だわ」
そんな馬鹿なと思いつつ、ジュンは真紅の懐中時計を見た…確かに時計は20:26を指している。
しかし良く見ると、針の動きが停止している事に気付いた。
これは勝ったな、とジュンは心の中でほくそ笑んだ。
「そこまで言うなら、くんくん時計の時間も見てみろよ、親愛なるくんくんが真実を示してくれるぞ」
しかも言い分を全く聞き入れない…まあいつもの事だとジュンは無視する。
「大体私が寝ていないのだから、今が23:00の筈は無いわ…私は時間の管理にはうるさいのよ。
それなのにジュンときたら、私に嘘をついてまで眠りたいなんて、よっぽどお勉強が嫌いなのかしら…」
ジュンはデジタル時計を真紅に向け、無言で指差した。
すると真紅は呆れ顔で言った。
「そこまでして眠りにつきたいのかしら?時計をいじるなんて貴方らしい方法ね。
悪いけど私はだまされないのだわ…そんな事を思いつく暇があるなら、紅茶を淹れてきなさい」
何でそこまで言われなければならないのかと、流石にイラッとしたジュンは反論した。
「なら自分の懐中時計を見てみろよ、全く…」
これで自分の嫌疑は晴れるはず、そう思ったジュンは机の上の筆記用具を片付け始めた。
しかしまた真紅がヒステリックな口調で言う。
「本当に分からず屋の家来だわ、見なさい、まだ20:26だわ」
そんな馬鹿なと思いつつ、ジュンは真紅の懐中時計を見た…確かに時計は20:26を指している。
しかし良く見ると、針の動きが停止している事に気付いた。
これは勝ったな、とジュンは心の中でほくそ笑んだ。
「そこまで言うなら、くんくん時計の時間も見てみろよ、親愛なるくんくんが真実を示してくれるぞ」
4: 2009/04/21(火) 11:04:45.79 ID:uJzj5pMm0
真紅は仏頂面で振り返り、自分の棚にあるくんくん時計の時間を見た、23:00だった。
「…!?そんな筈無いわ?私の時計は20:26なのよ!?くんくんは私の味方でしょ!?そうよねくんくん?」
真紅はまじまじと自分の懐中時計を眺め、小さく数回振った、その表情には多少動揺が見える。
部屋にしばしの沈黙が流れた後、ジュンに向き直った真紅は澄まし顔で言った。
「時計が、止まっているのだわ」
そう言い捨てて、何事も無かったかのように、自分の鞄に向かって厳かに歩き出した。
そしてもったいぶった動作で鞄に入り、
「もう眠りの時間だわ、おやすみ、ジュン」
そう言って鞄を閉じた。
部屋に突然の静寂が訪れた。
その一連の動作を目の当たりにし、ジュンは呆気に取られた。
「…って言うか、僕に謝罪は無いのか!?」
そう言いつつベッドを見る、くんくん探偵とCDプレーヤーとヘッドホン、全てが置きっ放しだった。
「全くもう、しょうがないな…」
ベッドの上の物を真紅の棚に片付け、もう一度鞄を見やると、ドレスの裾が少しはみ出ていた。
「出てるぞ、ドレスの裾が」
鞄が少しだけ開いて、ドレスの裾がするすると中に入っていった。
暫くして鞄から、ふてくされた声が聞こえた。
「ジュン…早く寝なさい!」
鞄がパタンと音を立てて閉じた。
「やれやれ…おやすみ、真紅」
ジュンは机のデジタル時計をベッドに戻し、部屋の電気を消して眠りに付いた。
「…!?そんな筈無いわ?私の時計は20:26なのよ!?くんくんは私の味方でしょ!?そうよねくんくん?」
真紅はまじまじと自分の懐中時計を眺め、小さく数回振った、その表情には多少動揺が見える。
部屋にしばしの沈黙が流れた後、ジュンに向き直った真紅は澄まし顔で言った。
「時計が、止まっているのだわ」
そう言い捨てて、何事も無かったかのように、自分の鞄に向かって厳かに歩き出した。
そしてもったいぶった動作で鞄に入り、
「もう眠りの時間だわ、おやすみ、ジュン」
そう言って鞄を閉じた。
部屋に突然の静寂が訪れた。
その一連の動作を目の当たりにし、ジュンは呆気に取られた。
「…って言うか、僕に謝罪は無いのか!?」
そう言いつつベッドを見る、くんくん探偵とCDプレーヤーとヘッドホン、全てが置きっ放しだった。
「全くもう、しょうがないな…」
ベッドの上の物を真紅の棚に片付け、もう一度鞄を見やると、ドレスの裾が少しはみ出ていた。
「出てるぞ、ドレスの裾が」
鞄が少しだけ開いて、ドレスの裾がするすると中に入っていった。
暫くして鞄から、ふてくされた声が聞こえた。
「ジュン…早く寝なさい!」
鞄がパタンと音を立てて閉じた。
「やれやれ…おやすみ、真紅」
ジュンは机のデジタル時計をベッドに戻し、部屋の電気を消して眠りに付いた。
5: 2009/04/21(火) 11:06:30.51 ID:uJzj5pMm0
「…です…ですよー」
「朝…起きる…です…」
ジュンは聞こえてくる声を、取り合えず無視していた。
昨日は就寝が遅かった為、出来れば寝かせて欲しかったのだ。
しかし暫くすると、腹部に軽い衝撃が走った、2回、3回と衝撃は増えていく。
さすがに痛みに絶えかね、ゆっくりと薄目を開けた。
見ると翠星石が布団の上で、勢い良く飛び跳ねている姿が見えた。
きっとこれは悪い夢なんだと念じても、腹部の痛みに阻害される。
「朝ですよ!いい加減起きるです!このチビ人間!」
これ以上寝ていると、更なる痛みに襲われると察し、ジュンはしぶしぶと上半身を起こす。
「やっと起きやがったです…全く毎日良く寝るチビです!その割には全然育たないですけど!」
「朝…起きる…です…」
ジュンは聞こえてくる声を、取り合えず無視していた。
昨日は就寝が遅かった為、出来れば寝かせて欲しかったのだ。
しかし暫くすると、腹部に軽い衝撃が走った、2回、3回と衝撃は増えていく。
さすがに痛みに絶えかね、ゆっくりと薄目を開けた。
見ると翠星石が布団の上で、勢い良く飛び跳ねている姿が見えた。
きっとこれは悪い夢なんだと念じても、腹部の痛みに阻害される。
「朝ですよ!いい加減起きるです!このチビ人間!」
これ以上寝ていると、更なる痛みに襲われると察し、ジュンはしぶしぶと上半身を起こす。
「やっと起きやがったです…全く毎日良く寝るチビです!その割には全然育たないですけど!」
6: 2009/04/21(火) 11:10:42.64 ID:uJzj5pMm0
ジュンはのそのそとメガネを掛けながら、翠星石に言った。
「朝から良くそこまで口が回るな、さすが性悪人形…」
悪態をつきながら時間を見る…まだ7:00だった。
「何でおまえは、いつも朝が早いんだ?老人じゃあるまいし…」
すると翠星石は一段と高くジャンプして、ジュンの腹部に尻で落ちてきた。
「ぐへえっ!!」
「チビ人間におババ呼ばわりされる覚えはねーです!!」
落下の反動でベッドから飛び降りる翠星石。
「今日の朝ごはんは翠星石のとっておきです!さっさと下に来るです!」
そう言ってそそくさとドアに向かって行く、去り際にジュンに向き直って言った。
「そう言えば、まだ挨拶がなかったです、…おは…ようですジュン…」
少し照れくさそうに下を向く翠星石。
ジュンはまだ痛みの残る腹部をさすりながら返事をした。
「おはよう…翠星石」
「…ふん!」
バタンと大きな音を立ててドアを閉める翠星石。
しかし階段を下りる彼女の顔は、嬉しそうな笑顔だった。
「朝から良くそこまで口が回るな、さすが性悪人形…」
悪態をつきながら時間を見る…まだ7:00だった。
「何でおまえは、いつも朝が早いんだ?老人じゃあるまいし…」
すると翠星石は一段と高くジャンプして、ジュンの腹部に尻で落ちてきた。
「ぐへえっ!!」
「チビ人間におババ呼ばわりされる覚えはねーです!!」
落下の反動でベッドから飛び降りる翠星石。
「今日の朝ごはんは翠星石のとっておきです!さっさと下に来るです!」
そう言ってそそくさとドアに向かって行く、去り際にジュンに向き直って言った。
「そう言えば、まだ挨拶がなかったです、…おは…ようですジュン…」
少し照れくさそうに下を向く翠星石。
ジュンはまだ痛みの残る腹部をさすりながら返事をした。
「おはよう…翠星石」
「…ふん!」
バタンと大きな音を立ててドアを閉める翠星石。
しかし階段を下りる彼女の顔は、嬉しそうな笑顔だった。
7: 2009/04/21(火) 11:12:13.52 ID:uJzj5pMm0
ジュンが一階のリビングに入ると、甲高い声が響いた。
「あ~、ジュン~おはようなの~~」
涎掛けを付けた雛苺が、朝食が乗った食卓から呼び掛ける。
その声に追随して、のりもジュンにキッチンから挨拶する。
「あら、ジュン君おはよう」
「あぁ、雛苺おはよう、姉ちゃんもおはよう」
そのやりとりを遮るように、翠星石が言い放つ。
「ほら!挨拶はいいからとっとと座るです!早くとっておきを食べるです!」
翠星石に急かされて、のそのそと朝食が乗った食卓に着席するジュン。
テーブルに乗っている朝食をまじまじと見る…いたって普通のメニューに見える。
花丸目玉焼き、パン、牛乳、サラダ、ヨーグルト、そして雛苺だけ苺大福。
まあ花丸目玉焼きが普通かと言われると、それは返答に困るが。
「さあ早く食べるです!とっておきを食べるです!」
ジュンはどれがとっておきなのか分からず、思わず聞いた。
「なあ、どれがとっておきなんだ?いたって普通の朝食じゃないか?」
「あ~、ジュン~おはようなの~~」
涎掛けを付けた雛苺が、朝食が乗った食卓から呼び掛ける。
その声に追随して、のりもジュンにキッチンから挨拶する。
「あら、ジュン君おはよう」
「あぁ、雛苺おはよう、姉ちゃんもおはよう」
そのやりとりを遮るように、翠星石が言い放つ。
「ほら!挨拶はいいからとっとと座るです!早くとっておきを食べるです!」
翠星石に急かされて、のそのそと朝食が乗った食卓に着席するジュン。
テーブルに乗っている朝食をまじまじと見る…いたって普通のメニューに見える。
花丸目玉焼き、パン、牛乳、サラダ、ヨーグルト、そして雛苺だけ苺大福。
まあ花丸目玉焼きが普通かと言われると、それは返答に困るが。
「さあ早く食べるです!とっておきを食べるです!」
ジュンはどれがとっておきなのか分からず、思わず聞いた。
「なあ、どれがとっておきなんだ?いたって普通の朝食じゃないか?」
8: 2009/04/21(火) 11:18:55.82 ID:uJzj5pMm0
「全く…ちび人間はとんだ鈍ちんです、まだ寝ぼけてるですか?良く見るです」
そう言って翠星石はヨーグルトの容器を、スプーンでリズミカルに叩いた。
チン、チン、とリビングに涼しげな音が響きわたる。
言われてヨーグルトを見るジュン、何か半透明の物が入っている事が分かった。
「これが…とっておき?」
「そ~ぅです!さあ一気にとっとと食べるです!」
「いや、一気にって言われても…」
「あらあら、翠星石ちゃんは朝からせっかちなのねー」
「翠星石はせかちなのー、朝からせかちなのー」
リビングの皆がジュンを眺めて、今か今かとヨーグルトを食べるのを待っている。
その勢いに押されて、恐る恐る半透明の物体を、スプーンで口に運ぶ。
噛み締めると、口の中に一気に苦味が広がった、その強烈な苦味で、即座に飲み込むのがやっとだった。
翠星石が身を乗り出して、目をくりくりさせてジュンに聞く。
「どうですジュン?どんな味ですか?」
「いや、苦いんだけど…何これ?」
そう言って翠星石はヨーグルトの容器を、スプーンでリズミカルに叩いた。
チン、チン、とリビングに涼しげな音が響きわたる。
言われてヨーグルトを見るジュン、何か半透明の物が入っている事が分かった。
「これが…とっておき?」
「そ~ぅです!さあ一気にとっとと食べるです!」
「いや、一気にって言われても…」
「あらあら、翠星石ちゃんは朝からせっかちなのねー」
「翠星石はせかちなのー、朝からせかちなのー」
リビングの皆がジュンを眺めて、今か今かとヨーグルトを食べるのを待っている。
その勢いに押されて、恐る恐る半透明の物体を、スプーンで口に運ぶ。
噛み締めると、口の中に一気に苦味が広がった、その強烈な苦味で、即座に飲み込むのがやっとだった。
翠星石が身を乗り出して、目をくりくりさせてジュンに聞く。
「どうですジュン?どんな味ですか?」
「いや、苦いんだけど…何これ?」
9: 2009/04/21(火) 11:23:32.73 ID:uJzj5pMm0
「おっほん!これはキダチアロエです!翠星石が育てたです!」
そう言って腰に手を当て、椅子の上に得意気に立って、ふんぞり返った。
「ジュンは翠星石のマスターになったのだから、病気でもされたらたまんねーです!
だからキダチアロエで毎日健康!医者上がったり!ですぅ~」
「ヒナも手伝ったの~、アロエにお水いっぱいあげたの~」
ジュンを見ながら両手を大きく広げて、雛苺も得意気に言った。
「チビ苺は水をやっただけですぅ~、そんなの大した貢献じゃねーです!
ここまで育ったのは庭師の如雨露のおかげです!
チビチビが水やってただけなら、今でもアロエはチビのままですぅ~」
「そんな事無いもん!ヒナも象しゃんジョウロで頑張ったもん!」
その2人をキッチンから、のりが優しく諭す。
「あらあら、2人ともジュン君の為に頑張ったのねー、翠星石ちゃんも雛苺ちゃんもありがとうね~」
「そうなの!ヒナ、ジュンの為に頑張ったの~」
「ちっ、ちげーです!チビ人間の為なんかじゃねーです!……これは…その…、
マスターがおっ氏んじまったら翠星石は力が出せないです!だから……だから翠星石の為…なんですぅ!」
そう言って腰に手を当て、椅子の上に得意気に立って、ふんぞり返った。
「ジュンは翠星石のマスターになったのだから、病気でもされたらたまんねーです!
だからキダチアロエで毎日健康!医者上がったり!ですぅ~」
「ヒナも手伝ったの~、アロエにお水いっぱいあげたの~」
ジュンを見ながら両手を大きく広げて、雛苺も得意気に言った。
「チビ苺は水をやっただけですぅ~、そんなの大した貢献じゃねーです!
ここまで育ったのは庭師の如雨露のおかげです!
チビチビが水やってただけなら、今でもアロエはチビのままですぅ~」
「そんな事無いもん!ヒナも象しゃんジョウロで頑張ったもん!」
その2人をキッチンから、のりが優しく諭す。
「あらあら、2人ともジュン君の為に頑張ったのねー、翠星石ちゃんも雛苺ちゃんもありがとうね~」
「そうなの!ヒナ、ジュンの為に頑張ったの~」
「ちっ、ちげーです!チビ人間の為なんかじゃねーです!……これは…その…、
マスターがおっ氏んじまったら翠星石は力が出せないです!だから……だから翠星石の為…なんですぅ!」
10: 2009/04/21(火) 11:27:24.99 ID:uJzj5pMm0
そんなやり取りを全く無視して、ジュンはさっきの翠星石の言葉について考えていた。
『キダチアロエで毎日健康!医者上がったり!ですぅ~』って言っってたよな?何か変な言い回しだけど。
…って事はこれが毎日出てくるのだろうか?こんな苦い物が!?これは結構ピンチじゃないか!?
「なあ、翠星石はもうコレを食べたのか?」
「いーえ、まだです、まずマスターであるジュンに食べてほしかったのです。
マスターの事を第一に考える翠星石は、やっぱり薔薇乙女で一番心優しいドールですぅ~~」
その言葉を遮るように、雛苺が口を挟む。
「さっき翠星石が言ってたの!取り合えずジュンに食べてもらって、安全性の確認ですぅ~!って」
「よ、余計な事言うんじゃね~です!このおバカ苺!」
やっぱり食べてないのか、と納得は出来た。
しかし、折角自分のために作ってくれた物だけに、正直に苦いと言うのは可哀想だと感じたジュンは、
言葉を慎重に選びながら、2人を見て話した。
「ちょっと苦い…けど、おいしかったよ」
すると翠星石は満面の笑顔で、
「当~然です~、この私が育てたんだから当たり前です~」
と、誇らしげに言い放った。
雛苺も負けじと、
「ヒナも手伝ったの~、おいしく育てたの~」
と、ふてくされながら言った。
『キダチアロエで毎日健康!医者上がったり!ですぅ~』って言っってたよな?何か変な言い回しだけど。
…って事はこれが毎日出てくるのだろうか?こんな苦い物が!?これは結構ピンチじゃないか!?
「なあ、翠星石はもうコレを食べたのか?」
「いーえ、まだです、まずマスターであるジュンに食べてほしかったのです。
マスターの事を第一に考える翠星石は、やっぱり薔薇乙女で一番心優しいドールですぅ~~」
その言葉を遮るように、雛苺が口を挟む。
「さっき翠星石が言ってたの!取り合えずジュンに食べてもらって、安全性の確認ですぅ~!って」
「よ、余計な事言うんじゃね~です!このおバカ苺!」
やっぱり食べてないのか、と納得は出来た。
しかし、折角自分のために作ってくれた物だけに、正直に苦いと言うのは可哀想だと感じたジュンは、
言葉を慎重に選びながら、2人を見て話した。
「ちょっと苦い…けど、おいしかったよ」
すると翠星石は満面の笑顔で、
「当~然です~、この私が育てたんだから当たり前です~」
と、誇らしげに言い放った。
雛苺も負けじと、
「ヒナも手伝ったの~、おいしく育てたの~」
と、ふてくされながら言った。
15: 2009/04/21(火) 11:31:58.82 ID:uJzj5pMm0
ありがと、じゃあ続き。
そんな雛苺をキッと見据えて翠星石は言う。
「まぁ~だそんな事を言うですかチビチビ!私が育てたんです!この分からんちん!」
雛苺も負けじと応酬する。
「分からんちんは翠星石なの!ヒナも頑張ったの!」
のりは不穏な空気を感じ取り、興奮する2人に言った。
「あらあら…そんなにおいしく育ったのだったら、2人とも早く食べた方が良いんじゃないのー。
そうしないとジュン君に全部食べられちゃうわよー」
そんな事が言えるって事は、姉ちゃんもまだ食べてないんだろうな…と思いつつ2人の様子を見るジュン。
「ジュンに全部…食べられる…」
2人は小声でハモりながらヨーグルトを見て固まっている。
「いや、少し苦いから止めたほうが…」
ジュンが言い切る前に、自分のヨーグルトをがっしりと掴んで、ほぼ同時に口の中へ頬張る2人。
流石は食い意地二大巨頭、食べられる前に食べると言う事か…。
2秒程の沈黙の後で、ジュンの眼鏡の左右のレンズに、ほぼ同時に二つのアロエが飛んできた。
「にげ~ですぅ!まずいですぅ!最悪ですぅ~~!」
「おいしくないの~、お口の中がザラザラするの~」
「あらあらー、2人共どうしたのー」
2人の異変に気付いて、食卓の方を見るのり。
しかしのりは2人の事はそっちのけで、ジュンを見て笑った。
「ジュン君…ジュン君の眼鏡に…プッ…アロエが…二つも…くっ付いて…」
そんなのりの笑い声と、翠星石と雛苺の苦悶の声を聞いて、ジュンも笑うしかなかった。
そんな雛苺をキッと見据えて翠星石は言う。
「まぁ~だそんな事を言うですかチビチビ!私が育てたんです!この分からんちん!」
雛苺も負けじと応酬する。
「分からんちんは翠星石なの!ヒナも頑張ったの!」
のりは不穏な空気を感じ取り、興奮する2人に言った。
「あらあら…そんなにおいしく育ったのだったら、2人とも早く食べた方が良いんじゃないのー。
そうしないとジュン君に全部食べられちゃうわよー」
そんな事が言えるって事は、姉ちゃんもまだ食べてないんだろうな…と思いつつ2人の様子を見るジュン。
「ジュンに全部…食べられる…」
2人は小声でハモりながらヨーグルトを見て固まっている。
「いや、少し苦いから止めたほうが…」
ジュンが言い切る前に、自分のヨーグルトをがっしりと掴んで、ほぼ同時に口の中へ頬張る2人。
流石は食い意地二大巨頭、食べられる前に食べると言う事か…。
2秒程の沈黙の後で、ジュンの眼鏡の左右のレンズに、ほぼ同時に二つのアロエが飛んできた。
「にげ~ですぅ!まずいですぅ!最悪ですぅ~~!」
「おいしくないの~、お口の中がザラザラするの~」
「あらあらー、2人共どうしたのー」
2人の異変に気付いて、食卓の方を見るのり。
しかしのりは2人の事はそっちのけで、ジュンを見て笑った。
「ジュン君…ジュン君の眼鏡に…プッ…アロエが…二つも…くっ付いて…」
そんなのりの笑い声と、翠星石と雛苺の苦悶の声を聞いて、ジュンも笑うしかなかった。
16: 2009/04/21(火) 11:32:47.61 ID:uJzj5pMm0
「全く朝から騒々しいのだわ…」
真紅は昨日の夜更かしが効いたのか、気怠そうにリビングに入ってきた。
「あら真紅ちゃん、おはよう」
「おはよう…のり、ところでジュンはどこかしら?」
「ジュン君はキッチンにいるわよー、眼鏡を…プッ…洗って…」
「おい!洗濯のり!もう時間じゃないのか?」
眼鏡を食器用洗剤で洗いながら、ジュンはのりに言った。
「あら?いっけなーい!もうこんな時間だわ!真紅ちゃんのご飯はレンジにあるからねー」
そう言いながらリビングをあたふたと出て行くのり、玄関でドタバタと音を立てた後に、
「じゃあみんな、行ってきまーす!」
と言い残し、皆の返事も聞かずに飛び出していった。
そんなのりの慌しさを見て、真紅は微笑みながら言った。
「全く、のりは淑女のたしなみがなっていないわね」
「それはそうとして…」
今度はジュンに向かって、不遜な態度で言い放つ。
真紅は昨日の夜更かしが効いたのか、気怠そうにリビングに入ってきた。
「あら真紅ちゃん、おはよう」
「おはよう…のり、ところでジュンはどこかしら?」
「ジュン君はキッチンにいるわよー、眼鏡を…プッ…洗って…」
「おい!洗濯のり!もう時間じゃないのか?」
眼鏡を食器用洗剤で洗いながら、ジュンはのりに言った。
「あら?いっけなーい!もうこんな時間だわ!真紅ちゃんのご飯はレンジにあるからねー」
そう言いながらリビングをあたふたと出て行くのり、玄関でドタバタと音を立てた後に、
「じゃあみんな、行ってきまーす!」
と言い残し、皆の返事も聞かずに飛び出していった。
そんなのりの慌しさを見て、真紅は微笑みながら言った。
「全く、のりは淑女のたしなみがなっていないわね」
「それはそうとして…」
今度はジュンに向かって、不遜な態度で言い放つ。
17: 2009/04/21(火) 11:33:31.97 ID:uJzj5pMm0
「眼鏡掃除が終わったら、紅茶を淹れて頂戴。
他にも頼みたい事があるのだけれど…それは後にするわ」
自分の要求を言い終わり、真紅はきびすを返して食卓に向かう。
ジュンは真紅の顔も見ずに、ぶしつけな返事をした。
「へいへい…分かりましたよ、淑女の真紅様」
真紅は椅子に座ると、目の前の2人を見て、怪訝な顔をする。
「2人共、朝から何て顔をしているのかしら?まるで梅干の様だわ」
翠星石と雛苺は、まだアロエの苦さが残っている為か、眉間に皺を作って項垂れていた。
「全く…何なのかしら?二人揃って…気分が台無しだわ」
真紅はヨーグルトに手を掛けた。
翠星石はその様子を薄目で眺め、少し心が躍った。
その様子をジュンが目ざとく見つけて、真紅に忠告した。
「真紅!そのヨーグルトは止めとけ!」
翠星石は心の中で舌打ちをした。
「何故主人の私が、家来の言う事を聞かなくてはならないのかしら?朝のヨーグルトは淑女のたしなみよ」
ジュンの言い方が気に入らなかったらしく、聞く耳持たずでヨーグルトを口に入れる真紅。
やはり2秒程の沈黙があった後、勢い良くアロエが口から飛び出した。
雛苺の頭に当たり、翠星石の頭を経由して、またジュンの眼鏡に着弾した。
翠星石は心の中で、特大のガッツポーズをした。
他にも頼みたい事があるのだけれど…それは後にするわ」
自分の要求を言い終わり、真紅はきびすを返して食卓に向かう。
ジュンは真紅の顔も見ずに、ぶしつけな返事をした。
「へいへい…分かりましたよ、淑女の真紅様」
真紅は椅子に座ると、目の前の2人を見て、怪訝な顔をする。
「2人共、朝から何て顔をしているのかしら?まるで梅干の様だわ」
翠星石と雛苺は、まだアロエの苦さが残っている為か、眉間に皺を作って項垂れていた。
「全く…何なのかしら?二人揃って…気分が台無しだわ」
真紅はヨーグルトに手を掛けた。
翠星石はその様子を薄目で眺め、少し心が躍った。
その様子をジュンが目ざとく見つけて、真紅に忠告した。
「真紅!そのヨーグルトは止めとけ!」
翠星石は心の中で舌打ちをした。
「何故主人の私が、家来の言う事を聞かなくてはならないのかしら?朝のヨーグルトは淑女のたしなみよ」
ジュンの言い方が気に入らなかったらしく、聞く耳持たずでヨーグルトを口に入れる真紅。
やはり2秒程の沈黙があった後、勢い良くアロエが口から飛び出した。
雛苺の頭に当たり、翠星石の頭を経由して、またジュンの眼鏡に着弾した。
翠星石は心の中で、特大のガッツポーズをした。
18: 2009/04/21(火) 11:34:56.74 ID:uJzj5pMm0
食卓の朝食は翠星石に片付けられ、今はジュンの淹れた紅茶が三人分と、ジュースが一杯並んでいる。
雛苺は食後のジュン登りで先程まではご満悦だったが、ジュースを頭の上から取ろうとして真紅に手を叩かれ、
今は少々むくれている。
そんな雛苺を無視して、真紅は紅茶をうつむき加減に飲みながら、小声で呟いた。
「…全く…朝から非道い目にあったわ…」
ジュン達はここぞとばかりに真紅に真顔で突っ込んだ…翠星石だけはシニカルな表情を浮かべていたが。
「たまには人の話を聞けよな、淑女の真紅様」
「そーですぅ、チビ人間が止めとけって言ったのに、真紅は本当にあまのじゃくです~」
「そーなのー、真紅はジュンの言う事を、もっと素直に聞いたほうがいいのー」
「三人そろってうるさいわね…それより何であんな物が、朝食に並んでいたのかしら?」
「あれはキダチアロエです、育てたのは……!育てたのは何と!雛苺ですぅ~!」
「?…」
雛苺は食後のジュン登りで先程まではご満悦だったが、ジュースを頭の上から取ろうとして真紅に手を叩かれ、
今は少々むくれている。
そんな雛苺を無視して、真紅は紅茶をうつむき加減に飲みながら、小声で呟いた。
「…全く…朝から非道い目にあったわ…」
ジュン達はここぞとばかりに真紅に真顔で突っ込んだ…翠星石だけはシニカルな表情を浮かべていたが。
「たまには人の話を聞けよな、淑女の真紅様」
「そーですぅ、チビ人間が止めとけって言ったのに、真紅は本当にあまのじゃくです~」
「そーなのー、真紅はジュンの言う事を、もっと素直に聞いたほうがいいのー」
「三人そろってうるさいわね…それより何であんな物が、朝食に並んでいたのかしら?」
「あれはキダチアロエです、育てたのは……!育てたのは何と!雛苺ですぅ~!」
「?…」
19: 2009/04/21(火) 11:36:20.18 ID:uJzj5pMm0
雛苺は突然の指名に、目を丸くして固まった。
翠星石はそれを尻目に、身振り手振りまで使って雄弁に語り始める。
「庭師の如雨露を使って育てたアロエが、あんなに苦い訳ねーです!もっとおいしく育つに決まってるです!
…ってえ事は、チビ苺の100均じょうろの呪いのせいで、まずくなったに決まってるです!
そぉ~に決まってるです!ファッキン100均!です!」
そういう言葉を何処で覚えてくるんだろうか?と、ジュンが考えていると、頭上からの大声に妨害された。
「違うもん!象しゃんジョウロに呪いなんか無いもん!だって巴が買ってくれたんだもん!!」
雛苺の怒号に合わせて髪の毛を引っ張られるジュン、しかしだんだん引っ張られる力が弱まっていく。
「だって…巴が…呪いなんか…ヒクッ…無い…」
雛苺はしゃくり上げながら泣いてしまった。
真紅は泣いている雛苺を無視して、翠星石に言う。
「私が聞いたのは、何故あのアロエがヨーグルトに入っていて、朝食に並んでいたのかと言う事なのだけれど」
「それは…ジュンに…食べてもらって…健康に…なって」
翠星石は下を向いたまま、口を尖らせて真紅に答えた。
「じゃあ、ジュンの為にアロエを2人で育てて、ヨーグルトに入れたと言う訳ね?」
「そう…です、ジュンが…喜ぶ…おいしい…って…言って、おいしい…?お・い・し・い!?」
翠星石はアロエを食べた後の、ジュンの言葉を思い出した、『ちょっと苦いけど、とてもおいしかったよ』?
でも実際は苦マズかった訳で、おいしかったと言う必要は全く無い訳で、
苦マズいって言ってくれてれば翠星石は食べてなかった訳で、それはつまり…翠星石の被害妄想スイッチが入った。
翠星石はそれを尻目に、身振り手振りまで使って雄弁に語り始める。
「庭師の如雨露を使って育てたアロエが、あんなに苦い訳ねーです!もっとおいしく育つに決まってるです!
…ってえ事は、チビ苺の100均じょうろの呪いのせいで、まずくなったに決まってるです!
そぉ~に決まってるです!ファッキン100均!です!」
そういう言葉を何処で覚えてくるんだろうか?と、ジュンが考えていると、頭上からの大声に妨害された。
「違うもん!象しゃんジョウロに呪いなんか無いもん!だって巴が買ってくれたんだもん!!」
雛苺の怒号に合わせて髪の毛を引っ張られるジュン、しかしだんだん引っ張られる力が弱まっていく。
「だって…巴が…呪いなんか…ヒクッ…無い…」
雛苺はしゃくり上げながら泣いてしまった。
真紅は泣いている雛苺を無視して、翠星石に言う。
「私が聞いたのは、何故あのアロエがヨーグルトに入っていて、朝食に並んでいたのかと言う事なのだけれど」
「それは…ジュンに…食べてもらって…健康に…なって」
翠星石は下を向いたまま、口を尖らせて真紅に答えた。
「じゃあ、ジュンの為にアロエを2人で育てて、ヨーグルトに入れたと言う訳ね?」
「そう…です、ジュンが…喜ぶ…おいしい…って…言って、おいしい…?お・い・し・い!?」
翠星石はアロエを食べた後の、ジュンの言葉を思い出した、『ちょっと苦いけど、とてもおいしかったよ』?
でも実際は苦マズかった訳で、おいしかったと言う必要は全く無い訳で、
苦マズいって言ってくれてれば翠星石は食べてなかった訳で、それはつまり…翠星石の被害妄想スイッチが入った。
21: 2009/04/21(火) 11:37:33.70 ID:uJzj5pMm0
下を向いていた翠星石が、ジュンの方へゆっくりと顔を上げる、ジュンは嫌な予感がした。
「こぉぉぉのぉぉぉチビ人間!はめやがったですねぇぇぇー!!」
翠星石が突然目の前から消えた!?と思った矢先、ジュンは脛に大きな衝撃を感じた、凄く、痛い、です。
真紅が無表情にテーブルの下を覗くと、鬼の形相でジュンの脛を蹴り上げている翠星石がいた。
「痛てえぇぇ~!!」
ジュンは痛みで後ろに仰け反った、雛苺は泣きながらも、落ちないように髪の毛を掴んでこらえた。
翠星石はスッキリした面持ちで、優雅に椅子に座り直して言った。
「ざまーみろですチビ!翠星石をだまして、あんな苦マズいアロエを食べさせた報いです!」
そう言って紅茶を一気に飲み干す。
「…ち…違う…ヒクッ…ジュン…違うよ…」
雛苺が肩を震わせてしゃくり上げながら、弱弱しく呟いた。
「ジュンは…おいしい…って…ヒクッ…違う…本当は…」
「翠星石、ちょっとあなたは早合点しすぎではなくて?」
「な、何がですか!?」
「こぉぉぉのぉぉぉチビ人間!はめやがったですねぇぇぇー!!」
翠星石が突然目の前から消えた!?と思った矢先、ジュンは脛に大きな衝撃を感じた、凄く、痛い、です。
真紅が無表情にテーブルの下を覗くと、鬼の形相でジュンの脛を蹴り上げている翠星石がいた。
「痛てえぇぇ~!!」
ジュンは痛みで後ろに仰け反った、雛苺は泣きながらも、落ちないように髪の毛を掴んでこらえた。
翠星石はスッキリした面持ちで、優雅に椅子に座り直して言った。
「ざまーみろですチビ!翠星石をだまして、あんな苦マズいアロエを食べさせた報いです!」
そう言って紅茶を一気に飲み干す。
「…ち…違う…ヒクッ…ジュン…違うよ…」
雛苺が肩を震わせてしゃくり上げながら、弱弱しく呟いた。
「ジュンは…おいしい…って…ヒクッ…違う…本当は…」
「翠星石、ちょっとあなたは早合点しすぎではなくて?」
「な、何がですか!?」
22: 2009/04/21(火) 11:39:08.39 ID:uJzj5pMm0
「2人はジュンの為にアロエを育てた、それはとても素晴しい事だわ、苦労もあったでしょう。
そんな優しい食べ物を口にして、たとえ不味かったとしても、本当の事が言えるかしら?小心者のジュンに」
最後の言葉に引っかかりを感じたが、脛は痛いし、髪は引っ張られるしで、ジュンは反論する気力が無かった。
「…」
翠星石はそっぽを向いて黙っている、視線の先には庭のアロエがあった。
「ジュンは、貴女を騙そうとしてアロエを褒めた訳では無いのよ」
雛苺もやっと泣き止んだのか、少し苦しそうに言った。
「そう…なの…ジュンは…優しいの…」
暫くの沈黙があった後、翠星石が突然大声を出した。
「あ~もう!辛気臭いですぅ~」
椅子からピョンと飛び降りて、ジュンの所へ歩き出す、そして頭上の雛苺を見て照れ臭そうに言った。
「ファッキン如雨露に呪いは無いです…巴は悪くない…です」
言い終わって翠星石はジュンを見る、が、すぐに横を向いてしまい、そのまま話す。
「次はもっと、ちゃんとした物を…作る…です」
「いいんだよ、気にするなよ」
ジュンは翠星石の頭にそっと手をかざす、翠星石の肩が一瞬ビクッと動いたが、そのまま動かない。
横を向いているので、表情は窺い知れなかった。
雛苺もジュンの頭上から、翠星石の頭に手を差し出したが、指の先しか届かなかった。
しかし雛苺は愛らしい笑顔で、翠星石の頭に触れている。
そんな優しい食べ物を口にして、たとえ不味かったとしても、本当の事が言えるかしら?小心者のジュンに」
最後の言葉に引っかかりを感じたが、脛は痛いし、髪は引っ張られるしで、ジュンは反論する気力が無かった。
「…」
翠星石はそっぽを向いて黙っている、視線の先には庭のアロエがあった。
「ジュンは、貴女を騙そうとしてアロエを褒めた訳では無いのよ」
雛苺もやっと泣き止んだのか、少し苦しそうに言った。
「そう…なの…ジュンは…優しいの…」
暫くの沈黙があった後、翠星石が突然大声を出した。
「あ~もう!辛気臭いですぅ~」
椅子からピョンと飛び降りて、ジュンの所へ歩き出す、そして頭上の雛苺を見て照れ臭そうに言った。
「ファッキン如雨露に呪いは無いです…巴は悪くない…です」
言い終わって翠星石はジュンを見る、が、すぐに横を向いてしまい、そのまま話す。
「次はもっと、ちゃんとした物を…作る…です」
「いいんだよ、気にするなよ」
ジュンは翠星石の頭にそっと手をかざす、翠星石の肩が一瞬ビクッと動いたが、そのまま動かない。
横を向いているので、表情は窺い知れなかった。
雛苺もジュンの頭上から、翠星石の頭に手を差し出したが、指の先しか届かなかった。
しかし雛苺は愛らしい笑顔で、翠星石の頭に触れている。
23: 2009/04/21(火) 11:40:17.58 ID:uJzj5pMm0
「ところで2人は、キダチアロエをどうやって調理したのかしら?」
雛苺は無邪気に答えた。
「うゅ?ちょーり?切って剥いて入れただけなの!」
「…それではダメね、苦いはずだわ」
「それは…どういう事です?」
「アロエは煮沸しないとダメよ、そのままでは苦いだけだわ」
三人は真紅をまじまじと眺めた、そして「ほおー!」と揃って感嘆の声をあげた。
真紅は少し照れ臭そうに言った。
「な…何?当たり前の事を言っただけだわ!」
その様子を見て、翠星石はシニカルな表情で言った。
「真~紅~、普段料理なんか、これっぽっちもしねーくせに、そういう事だけは博識ですぅ~」
「ほえ~~、真紅すごいの~」
「ふ…フン!どうでもいいじゃないの…そんな事」
そう言い残して、テレビ前のソファーへと歩き出す、きっとくんくん探偵を見るんだろう。
ジュンは雛苺を宥め下ろして、真紅の隣に座った。
雛苺は無邪気に答えた。
「うゅ?ちょーり?切って剥いて入れただけなの!」
「…それではダメね、苦いはずだわ」
「それは…どういう事です?」
「アロエは煮沸しないとダメよ、そのままでは苦いだけだわ」
三人は真紅をまじまじと眺めた、そして「ほおー!」と揃って感嘆の声をあげた。
真紅は少し照れ臭そうに言った。
「な…何?当たり前の事を言っただけだわ!」
その様子を見て、翠星石はシニカルな表情で言った。
「真~紅~、普段料理なんか、これっぽっちもしねーくせに、そういう事だけは博識ですぅ~」
「ほえ~~、真紅すごいの~」
「ふ…フン!どうでもいいじゃないの…そんな事」
そう言い残して、テレビ前のソファーへと歩き出す、きっとくんくん探偵を見るんだろう。
ジュンは雛苺を宥め下ろして、真紅の隣に座った。
24: 2009/04/21(火) 11:41:15.17 ID:uJzj5pMm0
無言でくんくん探偵を見る2人、暫くしてジュンが真紅に話しかけた。
「さっきは…助かったよ」
テレビから目を離さずに答える真紅。
「あら、何の事かしら?」
ジュンは決まりが悪そうに言った。
「…小心者の代弁をしてくれた事だよ」
「私は、泣いて話せない雛苺の気持ちを代弁しただけよ、それ以外の意向は無いわ」
「雛苺の為かよ、お礼言って損した」
「お礼に損とか得とか言う概念を持つなんて、卑しい家来だわ」
「何だよその言い方!僕はそんなつもりじゃ…」
言いかけて真紅を見る、上品に小さく吹き出して笑っていた。
「フフッ…ジュンをからかうと、くんくん探偵よりも面白いのだわ」
「何だよもう…この呪い人形め」
真紅は微笑みながら、ジュンを見つめて言った。
「優しさから出た言葉でも、時には誤解を招く事もあると言う事よ、覚えておきなさい、でも…」
「え?」
「貴方のそういう所、嫌いでは無いわ」
「真紅…」
「さっきは…助かったよ」
テレビから目を離さずに答える真紅。
「あら、何の事かしら?」
ジュンは決まりが悪そうに言った。
「…小心者の代弁をしてくれた事だよ」
「私は、泣いて話せない雛苺の気持ちを代弁しただけよ、それ以外の意向は無いわ」
「雛苺の為かよ、お礼言って損した」
「お礼に損とか得とか言う概念を持つなんて、卑しい家来だわ」
「何だよその言い方!僕はそんなつもりじゃ…」
言いかけて真紅を見る、上品に小さく吹き出して笑っていた。
「フフッ…ジュンをからかうと、くんくん探偵よりも面白いのだわ」
「何だよもう…この呪い人形め」
真紅は微笑みながら、ジュンを見つめて言った。
「優しさから出た言葉でも、時には誤解を招く事もあると言う事よ、覚えておきなさい、でも…」
「え?」
「貴方のそういう所、嫌いでは無いわ」
「真紅…」
26: 2009/04/21(火) 11:42:49.44 ID:uJzj5pMm0
テレビのくんくん探偵が驚きの声をあげる、『あぁ~~!この血痕は~~!』
真紅は即座にテレビに向き直り、前のめりで胸元に両手を組んで叫ぶ。
「どうしたのくんくぅん~~~!私が付いてるわぁ~~!あら?邪魔なネコ警部だわ!そこをおどきなさい!」
その変わり身の早さにジュンは唖然とした、いやむしろ感心した。
暫くすると、キッチンの方から言い争う声が聞こえてきた。
「全く!チビ苺は学習能力がね~です!」
「そんな事無いもん!今度はうまくいくもん!」
「上手くいきっこね~です!入れる前から分かるです!」
どうやら真紅に聞いた事を、早速試しているらしいが、そのわりには雲行きが怪しい…。
ジュンは気になってキッチンに向かった。
「おいどうした…って、それは?」
真紅は即座にテレビに向き直り、前のめりで胸元に両手を組んで叫ぶ。
「どうしたのくんくぅん~~~!私が付いてるわぁ~~!あら?邪魔なネコ警部だわ!そこをおどきなさい!」
その変わり身の早さにジュンは唖然とした、いやむしろ感心した。
暫くすると、キッチンの方から言い争う声が聞こえてきた。
「全く!チビ苺は学習能力がね~です!」
「そんな事無いもん!今度はうまくいくもん!」
「上手くいきっこね~です!入れる前から分かるです!」
どうやら真紅に聞いた事を、早速試しているらしいが、そのわりには雲行きが怪しい…。
ジュンは気になってキッチンに向かった。
「おいどうした…って、それは?」
27: 2009/04/21(火) 11:44:09.81 ID:uJzj5pMm0
見ると雛苺は、頭の上にショートケーキの乗ったお皿を持っていた。
「あ~ジュン~、見ちゃだめなの~!」
「雛苺、まさかそれをヨーグルトに入れるつもりなのか?」
「そうなの!きっとおいしいの!」
「おいしい訳ねーです!チビ苺は料理の"さしすせそ"を全く理解してねーです!」
「いや、お前も理解してないだろ…」
「と・に・か・く!ジュン!早くチビチビを止めるです!」
ジュンは急いでショートケーキを引ったくって、冷蔵庫に突っ込んだ。
雛苺は突然の事で、両手を上げたままポカーンとしていた。
暫くして、ようやく事態を理解したのか、雛苺は泣き出してしまった。
「騒々しいのだわ!早く何とかしなさい!ジュン!」
真紅がヒステリックに叫んだ。
翠星石を見やると、我関せずと言った様子で、澄まし顔でアロエを切っている。
何で僕がこんな破目に…。
「あ~ジュン~、見ちゃだめなの~!」
「雛苺、まさかそれをヨーグルトに入れるつもりなのか?」
「そうなの!きっとおいしいの!」
「おいしい訳ねーです!チビ苺は料理の"さしすせそ"を全く理解してねーです!」
「いや、お前も理解してないだろ…」
「と・に・か・く!ジュン!早くチビチビを止めるです!」
ジュンは急いでショートケーキを引ったくって、冷蔵庫に突っ込んだ。
雛苺は突然の事で、両手を上げたままポカーンとしていた。
暫くして、ようやく事態を理解したのか、雛苺は泣き出してしまった。
「騒々しいのだわ!早く何とかしなさい!ジュン!」
真紅がヒステリックに叫んだ。
翠星石を見やると、我関せずと言った様子で、澄まし顔でアロエを切っている。
何で僕がこんな破目に…。
28: 2009/04/21(火) 11:46:08.84 ID:uJzj5pMm0
ジュンは雛苺の前に片膝を付いてしゃがんで、雛苺の肩を掴んで言った。
「雛苺!雛苺聞いてくれ!」
「うぁ~~~~ん!うわ~~~ん!」
「違うんだ雛苺!意地悪した訳じゃ無いんだ!ヨーグルトにショートケーキは合わないんだ!」
「だって~~ジュンは~~~!ジュンは~~~、苦いって~~~」
「確かに苦いって言った!言ったから!」
「ケーキ!ケーキは~~甘いから~~~」
「甘くするなら砂糖!砂糖入れればいいから!」
ああ、もう埒が開かない!落ち着け!考えろ僕!……!!
「雛苺聞いてくれ!甘い物が二つなんだ!おいしい物が二つなんだ!」
「雛苺!雛苺聞いてくれ!」
「うぁ~~~~ん!うわ~~~ん!」
「違うんだ雛苺!意地悪した訳じゃ無いんだ!ヨーグルトにショートケーキは合わないんだ!」
「だって~~ジュンは~~~!ジュンは~~~、苦いって~~~」
「確かに苦いって言った!言ったから!」
「ケーキ!ケーキは~~甘いから~~~」
「甘くするなら砂糖!砂糖入れればいいから!」
ああ、もう埒が開かない!落ち着け!考えろ僕!……!!
「雛苺聞いてくれ!甘い物が二つなんだ!おいしい物が二つなんだ!」
29: 2009/04/21(火) 11:46:56.26 ID:uJzj5pMm0
「ケ~~キ~~~!ケ~キ~~~が~~~…二つ~~二つ~…二つ?」
良しっ!食いついた!取り合えず泣き止んだ!
「雛苺聞いてくれ!ヨーグルトはケーキを入れなくても甘く出来るんだ!砂糖で甘く出来るんだ!」
「ヒクッ…甘く…出来るの?」
「そうだよ、砂糖を入れればアロエを入れても苦くならないし、甘くなるんだよ」
「二つ…ヒクッ…二つって…何なの?」
「それは、ほら、ヨーグルトは砂糖で甘く出来るだろ?そうするとケーキを使わなくても良いだろ?」
「うゅ…ケーキはそのままなの…」
「そうすれば、ほら、ヨーグルトとケーキ、甘い物が二つ食べれるだろ?お得だろ?」
「…甘い物が二つ……!?ほぇ~~~ジュン凄いの~~~!お得なの~~~!」
「そうだろ?そうだろ?だからもう泣かないで」
「うぃ!分かった!ヒナもう泣かないの!」
そう言って真紅のほうに走って行った、真紅に二つの甘い物の説明をしている様だ。
真紅は全く聞いてないみたいだけど。
良しっ!食いついた!取り合えず泣き止んだ!
「雛苺聞いてくれ!ヨーグルトはケーキを入れなくても甘く出来るんだ!砂糖で甘く出来るんだ!」
「ヒクッ…甘く…出来るの?」
「そうだよ、砂糖を入れればアロエを入れても苦くならないし、甘くなるんだよ」
「二つ…ヒクッ…二つって…何なの?」
「それは、ほら、ヨーグルトは砂糖で甘く出来るだろ?そうするとケーキを使わなくても良いだろ?」
「うゅ…ケーキはそのままなの…」
「そうすれば、ほら、ヨーグルトとケーキ、甘い物が二つ食べれるだろ?お得だろ?」
「…甘い物が二つ……!?ほぇ~~~ジュン凄いの~~~!お得なの~~~!」
「そうだろ?そうだろ?だからもう泣かないで」
「うぃ!分かった!ヒナもう泣かないの!」
そう言って真紅のほうに走って行った、真紅に二つの甘い物の説明をしている様だ。
真紅は全く聞いてないみたいだけど。
31: 2009/04/21(火) 11:48:36.03 ID:uJzj5pMm0
はぁ…どっと疲れた…だから子供は苦手なんだよ…。
そんな疲れきったジュンに、翠星石はニヤニヤしながら言った。
「チビ人間は、良いパパになれるです~~、チビパパですぅ~~」
「何だよそれ?おちょくってるのか?」
「そうじゃねーです、チビ苺は幸せ者だって言ってるんです」
「そうか?どうして?」
翠星石は、まるでドラマのヒロインの様な素振りで語り始めた。
「私達ドールは成長しない、だから翠星石には幼い頃の記憶は無いです…
お父様に魂を頂いた時には、すでに幼少時代は過ぎていた…」
「…ハア」
「あるのは今の精神年齢で体験した、過去のマスターとの思い出だけ…
幼い頃の思い出が欲しいと願っても、それは叶う事は無い…お父様に甘えた記憶の無い…薄幸の美少女…」
そんな疲れきったジュンに、翠星石はニヤニヤしながら言った。
「チビ人間は、良いパパになれるです~~、チビパパですぅ~~」
「何だよそれ?おちょくってるのか?」
「そうじゃねーです、チビ苺は幸せ者だって言ってるんです」
「そうか?どうして?」
翠星石は、まるでドラマのヒロインの様な素振りで語り始めた。
「私達ドールは成長しない、だから翠星石には幼い頃の記憶は無いです…
お父様に魂を頂いた時には、すでに幼少時代は過ぎていた…」
「…ハア」
「あるのは今の精神年齢で体験した、過去のマスターとの思い出だけ…
幼い頃の思い出が欲しいと願っても、それは叶う事は無い…お父様に甘えた記憶の無い…薄幸の美少女…」
32: 2009/04/21(火) 11:50:21.22 ID:uJzj5pMm0
「プッ!美少女!?お前は今でも、十分幼いと思うけどな、僕は」
「なっ!?やっぱりお前はお子様です!このお馬鹿!」
そう言ってアロエを投げつける翠星石。
「うわっ!何だよこの悪魔人形!」
「うるせーです!とっととケツまくってあっちへ行けです!」
「何なんだよ…全く…」
ソファーに歩いていくジュン、そんなジュンの後ろ姿を見ながら翠星石は呟く。
「ちょっとチビ苺が…羨ましかっただけです…フン!」
33: 2009/04/21(火) 11:52:07.08 ID:uJzj5pMm0
「これは…とても美味しいわ」
「翠星石スゴイの~、甘くておいしいの~~」
「当ったり前でっす~!この翠星石にかかれば、五つ星シェフも裸足で逃げ出すです~~」
2人は出来上がったアロエヨーグルトに感嘆の声をあげる、1人文句を言っている者もいたが。
「…何で僕のは、半分以上が砂糖なんだ?すごい甘いんだけど…」
「フン!鈍感なお子様には甘口がお似合いです!」
「これじゃ毎日健康どころか、医者通いになりそうなんだけど…」
「うるせ~です!ちっとは外に出て、医者にでも通った方が健康に良いです!このヒキコモリ!」
「僕はヒキコモリじゃないぞ!何だよこの減らず口!」
「キイィィィィ!減らず口とはこの口が!この口が言ったですか!」
「あがががが・・・なっ、なにをするんた!」
そんな2人のやりとりを無視して、淡々と食べる真紅と雛苺、
雛苺はアロエヨーグルトとショートケーキの二つを交互に食べていた。
34: 2009/04/21(火) 11:54:41.95 ID:uJzj5pMm0
「さて、そろそろ夫婦喧嘩は済んだかしら?」
お互いの口の両端を引っ張り合っている翠星石とジュン。
「ふ、ふうふじゃれ~れす!こいつはかこさいていの、おこさまますた~れふ!」
「ほくかおこさまなら!おまえはかきんちょのあくまと~るた!」
「貴方達…無様ね」
そう言ってステッキで2人の手を叩く真紅、2人は痛みで手を離した。
真紅は2人を哀れむような目をしながら言った。
「私に言わせれば、貴方達は救いようの無いお子様だわ…」
ジュンは真紅に聞こえない様に、小声で言った。
「何がお子様だよ…それならお前は小姑じゃないか…」
翠星石は聞こえたのか、小さく吹き出した。
「プフッ…真紅は小姑ですか?…」
「そう思わないか翠星石?…あいつは昔からああなのか?」
「真紅は昔から、一寸変な子です…プフッ…ジュン、眼鏡ずれてるです、超ダセーです」
「お前だって…プッ…ヘッドドレスが曲がってるぞ、超ダセェぞ」
ジュンと翠星石は、お互いの姿を見て笑いあった。
35: 2009/04/21(火) 11:56:14.95 ID:uJzj5pMm0
「貴方達何を笑っているのかしら?それよりジュン!先程言った、紅茶の後にやって欲しい事なのだけど」
「頼み事か?そう言えば確かに言ってたな」
「この薇を、巻いて頂戴」
そう言って懐から懐中時計を取り出した、昨日の夜止まっていた時計だった。
「何だよ…薇なんか、自分で巻けよ」
「そうしたいのだけれど、無理なのよ…」
「何で?」
「硬いのよ、今までこんな事は無かったのだけれど…」
何だそんな事かと、ジュンは拍子抜けして時計を受け取った。
「この懐中時計の、ここを回せば良いんだよな?」
「当たり前じゃない…他にどこを回せば良いというのかしら?」
「何だよ、一応確認しただけなのに…」
ふてくされながらもジュンは竜頭をつまんで、ゆっくり回す…いや、回らない。
「どうかしらジュン?巻く事が出来て?」
「いや…すごく硬い、ちょっと待ってて」
「頼み事か?そう言えば確かに言ってたな」
「この薇を、巻いて頂戴」
そう言って懐から懐中時計を取り出した、昨日の夜止まっていた時計だった。
「何だよ…薇なんか、自分で巻けよ」
「そうしたいのだけれど、無理なのよ…」
「何で?」
「硬いのよ、今までこんな事は無かったのだけれど…」
何だそんな事かと、ジュンは拍子抜けして時計を受け取った。
「この懐中時計の、ここを回せば良いんだよな?」
「当たり前じゃない…他にどこを回せば良いというのかしら?」
「何だよ、一応確認しただけなのに…」
ふてくされながらもジュンは竜頭をつまんで、ゆっくり回す…いや、回らない。
「どうかしらジュン?巻く事が出来て?」
「いや…すごく硬い、ちょっと待ってて」
36: 2009/04/21(火) 11:57:41.94 ID:uJzj5pMm0
物置からペンチを持ってきたジュン、真紅は不安そうに時計を見ている。
「傷付けないように、慎重にやるから」
「分かったわ、お願いね、ジュン」
いつの間にか翠星石と雛苺も近くでジュンを応援していた。
「しっかりするですチビ人間!ここが男の上げ時ですよ!」
「ジュン~~~アイト~~~アイトなの~~~!」
しかし全然回らない、これ以上力を込めたら時計が壊れると感じ、ジュンはペンチを手放した。
「駄目なのね…やはり」
真紅は少し沈んだ顔で、時計を受け取ろうとしたが、そこに翠星石が割り込んで、時計を引っ手繰った。
「ちょいと翠星石にも、やらせてみろです!」
皆一抹の不安が過ぎったが、そんな事はおかまいなしに竜頭を巻こうとする。
「う~~~!この~~!たかが時計の分際で~~~!」
竜頭を巻こうと必氏な顔の翠星石、10秒程頑張ったが、突然ケロッと普段の表情に戻って、巻くのを止めた。
「やっぱり駄目です~~、薔薇乙女一可憐で、か弱い翠星石では、お役に立てないです~~」
ジュンはニヤニヤしながら言った。
「そうだよな~、薔薇乙女一可憐で、か弱い翠星石じゃあ、無理も無いよな~」
「…お前が言うと、何か含みがあるみたいでムカつくです…」
「傷付けないように、慎重にやるから」
「分かったわ、お願いね、ジュン」
いつの間にか翠星石と雛苺も近くでジュンを応援していた。
「しっかりするですチビ人間!ここが男の上げ時ですよ!」
「ジュン~~~アイト~~~アイトなの~~~!」
しかし全然回らない、これ以上力を込めたら時計が壊れると感じ、ジュンはペンチを手放した。
「駄目なのね…やはり」
真紅は少し沈んだ顔で、時計を受け取ろうとしたが、そこに翠星石が割り込んで、時計を引っ手繰った。
「ちょいと翠星石にも、やらせてみろです!」
皆一抹の不安が過ぎったが、そんな事はおかまいなしに竜頭を巻こうとする。
「う~~~!この~~!たかが時計の分際で~~~!」
竜頭を巻こうと必氏な顔の翠星石、10秒程頑張ったが、突然ケロッと普段の表情に戻って、巻くのを止めた。
「やっぱり駄目です~~、薔薇乙女一可憐で、か弱い翠星石では、お役に立てないです~~」
ジュンはニヤニヤしながら言った。
「そうだよな~、薔薇乙女一可憐で、か弱い翠星石じゃあ、無理も無いよな~」
「…お前が言うと、何か含みがあるみたいでムカつくです…」
37: 2009/04/21(火) 11:58:34.62 ID:uJzj5pMm0
「そんな事より真紅、いつものアレ使えば良いじゃないか」
「アレ?アレでは良く分からないわ?」
「あれだよ、赤の呪いだよ」
「赤の…呪い?赤の呪い……!?」
真紅はジュンの脛を思い切り蹴った、悶えるジュンに真紅は言った。
「あれは時間の薇と言うのよ!家来なら覚えておきなさい!」
「イテテ…だからその、時間の薇とやらで直せば」
真紅の表情が少し曇った。
「そうね…試してみる価値はありそうね、でも…」
「アレ?アレでは良く分からないわ?」
「あれだよ、赤の呪いだよ」
「赤の…呪い?赤の呪い……!?」
真紅はジュンの脛を思い切り蹴った、悶えるジュンに真紅は言った。
「あれは時間の薇と言うのよ!家来なら覚えておきなさい!」
「イテテ…だからその、時間の薇とやらで直せば」
真紅の表情が少し曇った。
「そうね…試してみる価値はありそうね、でも…」
38: 2009/04/21(火) 11:59:53.12 ID:uJzj5pMm0
懐中時計を床に置いて、そこから少し離れた所に真紅が立っている。
その後ろにジュン、翠星石、雛苺が横に並んで立っている。
「では、始めるわ」
真紅は右手を上に掲げて、意識を集中した。
右手の人差し指から赤い光が溢れて、リビングが照らされる。
ジュンは指輪から鈍い痛みを感じ始める…普段は熱い感覚なのだが、今回は何故か違った。
懐中時計は赤い光を発し、長針、短針、秒針が、目にも止まらぬ速さで反時計回りに回転していた。
10秒程経った頃、真紅の指先からの光が弱まり、ジュンも指輪からの痛みが消えた。
真紅は右手を下ろして、下を向いて静かに立ち尽くしている。
後ろの3人は、我先にと懐中時計へ向かったが、ジュンは体に少し違和感を感じた。
懐中時計を覗き込む3人…。
「動いて…ないよな?これ」
「うゅ、動いてないの…」
「ちょっと!どういう事です!?真紅!」
39: 2009/04/21(火) 12:01:33.84 ID:uJzj5pMm0
3人が真紅の方に振り返った、真紅は両膝を突いて項垂れていた。
ジュンが駆け寄った。
「真紅?どうしたんだ!?」
か細い声で真紅は答えた。
「…大丈夫よ、少し疲れただけだわ、それよりジュンは…」
「ああ、少しだるいけど、そこまで酷くない」
しかし、実際はかなり疲労していた、今までにない疲労感だった。
突然ジュンは翠星石に突き飛ばされた、ついでに雛苺に踏まれた。
「真紅!?真紅!?大丈夫ですか!気を確かにです!」
「真紅~~起っき~~おっきするの~~~!」
姉妹の愛情の前には、僕は蚊帳の外か…。
ちょっと落胆したジュンは、その光景を微笑ましく見守る…筈だった。
見ると翠星石は真紅の肩を掴んで、力強く前後に揺らしていた。
それに合わせて真紅の頭もガクガクと前後に揺れる。
「お、おい!翠星石!もうちょっと優しく…」
「…全くもう…、鬱陶しいのだわ!」
真紅の髪の毛で、翠星石と雛苺が吹っ飛んだ。
「ジュン!私をソファーまで運びなさい!」
ジュンはやれやれと思いつつ、いつもと変わらない真紅の態度に安堵した。
40: 2009/04/21(火) 12:03:17.60 ID:uJzj5pMm0
「そう、やはり時計は動かないのね…」
ソファーで真紅は寂しそうに言った。
ジュンは何故直らなかったのか、何故指輪から痛みを感じたのかを考えていた。
「時計は、複雑なのよ…」
「え?」
「ガラスとか、紙とか…構造は単純だわ、でも時計は様々な部品で構成されている」
「つまり、複雑すぎて直らない、って事か?」
「いえ…もっと力を使えば、もしかしたら…」
「でも、さっき以上の力を使えば、真紅と僕は…」
「そうね、これ以上は危険、大切な時計だけど…諦めるしかないわね…」
そのやりとりを聞いていた翠星石は、テーブルの上で腕を組んで、鼻息を荒らげて言った。
「フン!お前ら本当にお目出度い奴等です!」
41: 2009/04/21(火) 12:04:22.17 ID:uJzj5pMm0
「な!?何なんだよ急に!」
「この翠星石にかかれば、お前らの悩みなんてチョチョイのポイ!でっす~~!」
「ほえ~~、翠星石、何だか自信満々なの~~~」
「お前の自信満々は、いつも僕の自信喪失と直結してるんだよな…」
「今のうちに好きなだけ吠えてろです負け犬、後で翠星石の有難味にひれ伏す事になるですから」
「翠星石、詳しい話を聞かせて頂戴」
「蒼星石のマスターは時計屋のおじじです!真紅の時計も、きっと直せるです!」
「あぁ…確か柴崎さん…だっけ?そういやnのフィールドが時計だらけだったな、時計屋だったのか」
「そぉ~です!蒼星石のマスターは、どこかの穀潰しとは程遠い、立派な職人ですぅ~~」
「当たり前だろ!僕は中学生なんだから、一応」
「でも…この時計は…」
そう言って真紅は下を向いた。
42: 2009/04/21(火) 12:05:10.21 ID:uJzj5pMm0
「真紅どうした?直して貰えよ、何か不都合でもあるのか?」
「いえ、確かに翠星石のアイデアは名案だわ、でも私の時計は…」
「何なんだよ、はっきり言えよ」
「いえ……何でもないわ、そうと決まれば、翠星石!」
「はい?」
「蒼星石のマスターに、この時計を渡して頂戴…出来るだけ早くお願いするわ」
「合点です!この翠星石にお・ま・か・せです~」
43: 2009/04/21(火) 12:05:57.95 ID:uJzj5pMm0
翠星石はアロエヨーグルトの入ったタッパーと、真紅の懐中時計を持って、鞄で飛んでいった。
そしてその光景を金色の双眼鏡で、桜田家周辺の民家の屋根から眺める者が居た、金糸雀である。
「ちょっと!どういう事かしら!翠星石はどこへ飛んでいったかしら!」
ピチカートがチカチカと点滅を繰り返して答える。
「そう…蒼星石の所に行ったのよね、真紅の時計を持って、そーよねそーよね!それ位分かってるかしら!
…でも、あの家から邪魔者が一匹消えたのは、こっちにとっては好都合かしら!」
金糸雀はまた偵察を始めた、しかし時間が経つにつれて、次第に苛立ち始めた。
「あ~!真紅はまだ行動を起こさないのかしら?私の計画ではもうすぐ動く筈なのに~!」
そんな金糸雀の思いが通じたのか、真紅が二階へと移動する姿が双眼鏡に映し出された。
「そうよ真紅!早くあれを使うかしら!私の仕掛けた最強のトラップを使うかしら~!」
双眼鏡に映る真紅は、ヘッドホンで、くんくん探偵ドラマCDを聞き始めた。
金糸雀はその光景を見て奇声をあげた。
「あ~~~~~!そうじゃない!そうじゃないかしら~~~!」
金糸雀は真紅の予想外の行動に、地団駄を踏んで悔しがった。
その結果バランスを崩して屋根から落ちた。
そしてその光景を金色の双眼鏡で、桜田家周辺の民家の屋根から眺める者が居た、金糸雀である。
「ちょっと!どういう事かしら!翠星石はどこへ飛んでいったかしら!」
ピチカートがチカチカと点滅を繰り返して答える。
「そう…蒼星石の所に行ったのよね、真紅の時計を持って、そーよねそーよね!それ位分かってるかしら!
…でも、あの家から邪魔者が一匹消えたのは、こっちにとっては好都合かしら!」
金糸雀はまた偵察を始めた、しかし時間が経つにつれて、次第に苛立ち始めた。
「あ~!真紅はまだ行動を起こさないのかしら?私の計画ではもうすぐ動く筈なのに~!」
そんな金糸雀の思いが通じたのか、真紅が二階へと移動する姿が双眼鏡に映し出された。
「そうよ真紅!早くあれを使うかしら!私の仕掛けた最強のトラップを使うかしら~!」
双眼鏡に映る真紅は、ヘッドホンで、くんくん探偵ドラマCDを聞き始めた。
金糸雀はその光景を見て奇声をあげた。
「あ~~~~~!そうじゃない!そうじゃないかしら~~~!」
金糸雀は真紅の予想外の行動に、地団駄を踏んで悔しがった。
その結果バランスを崩して屋根から落ちた。
44: 2009/04/21(火) 12:07:47.35 ID:uJzj5pMm0
「うぅ~~、平気よ…ピチカート…」
少し涙目になりながら、金糸雀は答えた。
「それにしても真紅の奴~~!何で私の渡したトラップを、一人で聞くのかしら!」
「カナはみんなで聞いてねって言って、真紅にあのCDを渡したのに~。
そうしたら一つの部屋にみんなが集まるから、その隙に侵入する筈だったのに~~」
ピチカートがまばゆく光りだした。
「えつ!?真紅は自分へのプレゼントだと思ってる!?」
「そっ、そんな事ないかしら!カナはちゃんとみんなで聞いてねって言ったかしら!しかも貸しただけかしら!」
ピチカートは光を弱め、ゆっくりと金糸雀の周りを回転する。
「そう…よね、確かにあの時の真紅は、人の話なんか聞いてないほどに、浮かれていたかしら…」
「あの時、真紅は言ってたかしら…姉妹からこんなにも素敵なプレゼントが頂けるなんて、夢のようだって…。
あんなに嬉しそうな顔の真紅は、今まで見た事無かったかしら…」
金糸雀は真紅の笑顔を思い出した。
その笑顔は金糸雀の計画の事になど全く気付かず、心から微笑んでいるかのような…。
疑う事を知らない、そんな晴れやかな笑顔だった。
「カナはそんな笑顔を…裏切ってしまったのかしら…」
45: 2009/04/21(火) 12:10:27.07 ID:uJzj5pMm0
「…あらァ?こんな所で何を愚図っているのかしら?」
色気のある声が、金糸雀の頭上から厳かに響く。
「…貴女は、水銀燈!」
金糸雀は、突然の邂逅に狼狽した、しかし身動きする事が出来なかった。
それほどまでに、水銀燈の眼差しには無言の圧力があった。
「相変わらず、下らない偵察を続けているようねェ…金糸雀ちゃん」
「うっ…五月蝿い…かしら…」
金糸雀は複雑な心境だった、真紅達は私の名前をちっとも覚えてくれないのに、水銀燈は何故覚えてくれてるのかと。
一番覚えて欲しくない相手なのに…。
そんな金糸雀を、上品に微笑みながら上空から眺める水銀燈、しかし目は笑っていなかった。
「何か…用かしら」
「決まってるじゃなぁい、私はね………アリスゲームをしに来たのよ!」
水銀燈は素早く金糸雀の背後に回り込み、首を締め上げた。
足が地面から離れ、金糸雀は苦悶の表情を浮かべ、水銀燈の腕にしがみつきながら必氏に藻掻いた。
「や…止めて…」
「止めてですってぇ?…貴女は本当にお馬鹿さんねぇ………でも」
水銀燈は金糸雀の首から手を離した。
金糸雀は地面に落下し、力無く跪き、呼吸を荒らげて咳き込んだ。
「貴女の持っている情報が、私の気持ちを満たす事が出来たなら…今回は見逃してあげるわ…そう…今回は」
左手の甲を口元に当てて、水銀燈は静かに微笑んだ。
47: 2009/04/21(火) 12:11:40.22 ID:uJzj5pMm0
「…カナの…ケホッ…情…報…?」
「そうよぉ、貴女が偵察して手に入れた、真紅の情報よ…簡単な取引でしょう?」
「真紅の…情報…」
「私知ってるのよ…貴女が真紅の周りで、鼠の様にチョロチョロしてる事…何か知ってるでしょ?真紅の弱み…」
水銀燈は目を細め、流し目で金糸雀を見やった。
「まぁ、貴女の事だから、大した情報は得られないでしょうけど…もし私の気持ちを満たせないなら…」
水銀燈の羽根が右手に集まり、美しい輝きを放つ剣へと変化した。
そして水銀燈はその剣を金糸雀に向けた。
「貴女は…ジャンクになる!」
水銀燈は美しい声で凄んだ。
その赤い瞳は慈悲のかけらも無い、サディストの目だった。
48: 2009/04/21(火) 12:13:25.16 ID:uJzj5pMm0
金糸雀は震えながら、真紅の笑顔を思い出していた。
カナが貸したくんくんのCDを、自分へのプレゼントと勘違いして、浮かれている真紅の笑顔…。
そしてそれがカナの罠だと知らずに、大喜びしてはしゃぎ回る真紅の笑顔…。
姉妹からこんなにも素敵なプレゼントが頂けるなんて、夢のようだと言って、カナの手を握った時の真紅の笑顔…。
カナはそんな笑顔を、裏切れるのかしら…水銀燈に。
金糸雀の震えがピタリと止まった、水銀燈は金糸雀の様子から、条件を呑んだと解釈した。
しかし金糸雀はその一瞬の隙を突いて、その場を飛び退きバイオリンを構えた。
水銀燈は動じる事無く、剣先を金糸雀に向き直した。
「貴女…何のつもりかしら?」
「カナは…カナは…もう…裏切らないかしら!」
バイオリンから衝撃波が発せられ、水銀燈に直撃した。
しかし水銀燈は、その場を一歩も動かず、先程と同じポーズで立っていた。
ただ一つ違っていたのは、水銀燈の前で黒い羽根が、ハラハラと美しく舞っていた事だ。
水銀燈は、黒い羽根で衝撃波を防いでいた。
「貴女…本当に…お馬鹿さんね!」
そう言い終わるやいなや、水銀燈は無数の黒い羽を、金糸雀に向けて飛ばす。
金糸雀は、嵐の様に飛んでくる黒い羽根で目が開けられない。
それでも片手を目の前にかざし、薄目を開けてバイオリンを構え、攻撃に備える。
薄目で見える狭い光景の中に、突然銀色に光る物体が現れた、それは水銀燈が放った剣だった。
49: 2009/04/21(火) 12:15:33.39 ID:uJzj5pMm0
咄嗟に剣を避けた金糸雀だったが、避けた剣はバイオリンの弦を引き裂き、そのまま壁に突き刺さる。
切れた弦が頬に当たり、反射的に目を閉じた金糸雀が、目を開けた時、眼前に水銀燈がいた。
水銀燈は右腕を体正面から力強く振り切り、金糸雀の頬を手の甲ではたいた。
体が宙に投げ出され、きりもみ状態で地面に落下した後、数回転がってから、金糸雀は力無くうつ伏せに倒れた。
金糸雀を見下ろす水銀燈の赤い瞳、まるで獲者を見定める蛇の様な目に、金糸雀は動く事さえ出来ず、
泣く事すら出来なかった。
「フン…つまらなかったわねェ」
吐き捨てる様に言って、右手を壁に刺さった剣に向ける水銀燈、剣は壁から抜け、右手に収まった。
水銀燈は剣を両手に持ち直し、ゆっくりと頭上に構えた。
「真紅を守って、貴女は氏ぬ…とんだ茶番だわ、そう言うのって…私…反吐がでるのよ!」
その時、水銀燈の横で強烈な黄緑色の光が発せられた、それはピチカートだった。
ピチカートは猛スピードで水銀燈に突っ込む。
「何?この期に及んで…見苦しいわ!」
水銀燈は左手で素早くピチカートを掴み取り、握り潰す。
暫くして水銀燈は、握り潰していた手を緩めた。
50: 2009/04/21(火) 12:16:23.71 ID:uJzj5pMm0
「…そう…真紅の時計が、停止したの…フフッ」
水銀燈は静かに、そして上品に微笑んだ。
その満足気な微笑みを見て、金糸雀は事態を察知した。
「ピ…ピチカート?まさか!?」
「…貴女の人工精霊は、とっても物分かりが良くってよ、お馬鹿さんの貴女と違って」
「何で?…ピチカート…どうして!?」
「私は約束は守るわ…それが貴女の様なお馬鹿さんだとしても、運が良かったわねェ…金糸雀」
金糸雀は俯いて、両拳を強く握り締めて泣いた。
「真紅の時計…忙しくなりそうねぇ、さようなら、お馬鹿さんの金糸雀ちゃあん」
そう言い残して上空へと消える水銀燈、金糸雀はそんな水銀燈には目もくれず、ただ俯いて泣いていた。
その横で、今にも消え入りそうに、弱弱しい光を発するピチカートが、ゆらゆらと漂っている。
「…そう…そうよね、ピチカートの選択は…正しかったかしら…でも…でも…カナは」
金糸雀は自分の不甲斐なさに悔しくなり、しゃくり上げるように泣いた。
「ヒクッ…カナがもっと…強かったら…真紅の事…ヒクッ…真紅の…笑顔を…」
53: 2009/04/21(火) 12:19:16.92 ID:uJzj5pMm0
金糸雀イメージ違う?すまん。続きです。
遥か上空を、水銀燈は飛んでいた、先程の金糸雀とのやりとりを思い出しながら…。
「あんなガキでも、役に立つものねェ…」
本当は約束を守る気など、微塵も無かった、金糸雀のローザミスティカを奪うつもりだった。
その方が今後の戦闘に有利に働くし、アリスになる確実な方法だと思っていた。
しかし水銀燈は途中で考えを変えた、それ程までに、金糸雀の情報は大きい収穫だった。
水銀燈は真紅の時計の事を考えた、あの時計は…そう、私は真紅の時計を知っている!
その時計が停止した、それはつまり…。
水銀燈は無意識に微笑んでいた、これから自分が行うべき事を考えている内に、笑みが抑えられなくなっていた。
遥か上空を、水銀燈は飛んでいた、先程の金糸雀とのやりとりを思い出しながら…。
「あんなガキでも、役に立つものねェ…」
本当は約束を守る気など、微塵も無かった、金糸雀のローザミスティカを奪うつもりだった。
その方が今後の戦闘に有利に働くし、アリスになる確実な方法だと思っていた。
しかし水銀燈は途中で考えを変えた、それ程までに、金糸雀の情報は大きい収穫だった。
水銀燈は真紅の時計の事を考えた、あの時計は…そう、私は真紅の時計を知っている!
その時計が停止した、それはつまり…。
水銀燈は無意識に微笑んでいた、これから自分が行うべき事を考えている内に、笑みが抑えられなくなっていた。
55: 2009/04/21(火) 12:23:07.84 ID:uJzj5pMm0
真紅…貴女はこれから悶え、苦しむわ、この私の手によって。
その時貴女は、私に何と言うのかしら?
卑怯?
俗悪?
鬼畜?
あのブサイクな面で、私を罵倒するのかしら?
でも私は、貴女のそんな顔が好き、貴女の狼狽える、ブサイクな顔が大好き。
その顔を見る為なら、私は何でもする、そう…何でも。
だってそうしないと、貴女に受けた屈辱は癒えない、私にとって耐え難い屈辱…。
私は貴女に負けた、でも貴女はローザミスティカを奪わなかった、何故?
憐み?
情け?
温情?
反吐が出るわ!貴女はアリスゲームを冒涜した、親愛なるお父様のアリスゲームを冒涜したわ!
私にとって最大の屈辱、それはお父様を侮辱される事。
真紅…貴女は私のみならず、お父様も侮辱したのよ!
私はそれを許さない!お父様を侮辱した貴女を、絶対に許さない!!
そして、お父様を侮辱した貴女がアリスになるなんて、絶対に認めない!
…そう、アリスになるのは私、お父様を一番愛している私!
きっとお父様は分かっているのよ、だから私は再び生を得た、お父様のお慈悲によって…。
その時貴女は、私に何と言うのかしら?
卑怯?
俗悪?
鬼畜?
あのブサイクな面で、私を罵倒するのかしら?
でも私は、貴女のそんな顔が好き、貴女の狼狽える、ブサイクな顔が大好き。
その顔を見る為なら、私は何でもする、そう…何でも。
だってそうしないと、貴女に受けた屈辱は癒えない、私にとって耐え難い屈辱…。
私は貴女に負けた、でも貴女はローザミスティカを奪わなかった、何故?
憐み?
情け?
温情?
反吐が出るわ!貴女はアリスゲームを冒涜した、親愛なるお父様のアリスゲームを冒涜したわ!
私にとって最大の屈辱、それはお父様を侮辱される事。
真紅…貴女は私のみならず、お父様も侮辱したのよ!
私はそれを許さない!お父様を侮辱した貴女を、絶対に許さない!!
そして、お父様を侮辱した貴女がアリスになるなんて、絶対に認めない!
…そう、アリスになるのは私、お父様を一番愛している私!
きっとお父様は分かっているのよ、だから私は再び生を得た、お父様のお慈悲によって…。
56: 2009/04/21(火) 12:24:04.41 ID:uJzj5pMm0
でも真紅、貴女には分からないわよねぇ、だって貴女はジャンクだもの。
今の貴女は、ぬるま湯の様な環境で、身も心も萎えたジャンクですもの。
だから、私が壊してあげる、貴女を粉々にしてあげる。
でも、せめてものお情けよ、貴女が本気で私と戦えるように、お膳立てしてあげる。
貴女が私を憎しむように、私を粉々にしたいと本気で思えるように、仕向けてあげる。
だって本気の貴女に勝たないと、私の心は癒えないの…私が受けた屈辱は癒えないのよ!
だから本気でかかってきなさい!でも最後に勝つのは私……そう…そうよ…勝つのは私!!。
「真紅を倒すのは!この私!!」
57: 2009/04/21(火) 12:28:26.12 ID:uJzj5pMm0
「やあ、翠星石、久しぶりだ…」
蒼星石が言い終わる前に、翠星石は勢いを付けて抱きついた。
「蒼星石~~!久しぶりです~~!少し大きくなったです~~~!」
「ちょ!ちょっと…落ち着いて翠星石!僕は大きくなんかなってないよ!」
「そんなの分かってるです、人間式の挨拶を言ってみただけです」
「全く…困った姉だよ、翠星石は」
柴崎家の居間の卓袱台の上に、アロエヨーグルトと緑茶が四人分並んでいる。
そして卓袱台を囲む様に、2人の人間と、2人のドールが座っている。
「…それで、お子様には甘口がお似合いだって、言ってやったです!ザマーミロです!」
「アラアラ…翠ちゃんったら、チビ人間さん…あらやだ!ジュン君だったわね」
「いいんですオババ、あんな奴は名前で覚える必要はねーですよ」
「相変わらずだねぇ翠星石は、昔のマツによー似とるわ」
「オジジ!そりゃ本当です?」
蒼星石が言い終わる前に、翠星石は勢いを付けて抱きついた。
「蒼星石~~!久しぶりです~~!少し大きくなったです~~~!」
「ちょ!ちょっと…落ち着いて翠星石!僕は大きくなんかなってないよ!」
「そんなの分かってるです、人間式の挨拶を言ってみただけです」
「全く…困った姉だよ、翠星石は」
柴崎家の居間の卓袱台の上に、アロエヨーグルトと緑茶が四人分並んでいる。
そして卓袱台を囲む様に、2人の人間と、2人のドールが座っている。
「…それで、お子様には甘口がお似合いだって、言ってやったです!ザマーミロです!」
「アラアラ…翠ちゃんったら、チビ人間さん…あらやだ!ジュン君だったわね」
「いいんですオババ、あんな奴は名前で覚える必要はねーですよ」
「相変わらずだねぇ翠星石は、昔のマツによー似とるわ」
「オジジ!そりゃ本当です?」
58: 2009/04/21(火) 12:30:12.91 ID:uJzj5pMm0
「ああ、こう見えても昔のマツは、ワシに向かってそりゃあもう…」
「貴方!変な事言わないで下さいな、折角翠ちゃんが作ってくれたのに、美味しく食べられないでしょ?」
「おーおー…、上手くはぐらかされたわ…でも翠星石も蒼星石も、昔のマツに興味津々みたいじゃぞ?」
「そうですねマスター、僕も詳しく聞きたいな」
「翠星石も聞きたいです!オババのお転婆っぷりを、後世に伝えるです!」
「貴方達!もう…知りません!」
マツの武勇伝を和やかに、笑いながら話し合い、至福の時間は過ぎてゆく…。
ひとしきり笑いあった後、蒼星石が翠星石に話しかける。
「ところで翠星石は、今日は何の用事で来たの?まさかジュン君との惚気話をしに来ただけじゃないよね?」
「のっ!惚気てなんかいねーです!蒼星石のおバカ!!」
「全く君は…素直じゃないな」
「う、うるせーです!そんな事よりこれです!これ!」
翠星石は鞄から、真紅の懐中時計を取り出して、卓袱台の中央に置いた。
「これは…懐中時計だね、止まっているみたいだけど」
「これは真紅のです、壊れてしまったみたいで、動かないです」
「あぁ…あの赤色のドレスの子ね、あの子には本当にお世話になったわね」
62: 2009/04/21(火) 13:11:09.38 ID:uJzj5pMm0
元治は食い入る様に懐中時計を見ていた、その時計の不思議な魅力が元治を惹きつけていた。
「翠星石や、ちょっとその時計を、見せてもらってもいいかね?」
「はいです、どうせオジジに渡すつもりだったですから」
「ちょっと翠星石!それはどういう意味なの?」
「単刀直入に言うと、オジジに直してほしいです!」
蒼星石は素早く翠星石の隣に移動して、耳打ちした。
「翠星石は、お金持ってるの?修理代」
「ある訳ねーです、でも直してほしいです」
「…君は、困った世間知らずだね…」
そんなやりとりを余所に、元治は懐中時計を、角度を変えてはまじまじと眺め、やがて感嘆の声をあげた。
「おぉ…これは素晴しい時計だ!実に丁寧に作られている!」
「あら貴方、貴方がそんな顔をするなんて、珍しいわねぇ…」
元治の様子を見た翠星石は、ここぞとばかりに不遜な態度で言い放った。
「気に入ってくれたです?じゃあ早く直してほしいです、オジジ」
「翠星石や、ちょっとその時計を、見せてもらってもいいかね?」
「はいです、どうせオジジに渡すつもりだったですから」
「ちょっと翠星石!それはどういう意味なの?」
「単刀直入に言うと、オジジに直してほしいです!」
蒼星石は素早く翠星石の隣に移動して、耳打ちした。
「翠星石は、お金持ってるの?修理代」
「ある訳ねーです、でも直してほしいです」
「…君は、困った世間知らずだね…」
そんなやりとりを余所に、元治は懐中時計を、角度を変えてはまじまじと眺め、やがて感嘆の声をあげた。
「おぉ…これは素晴しい時計だ!実に丁寧に作られている!」
「あら貴方、貴方がそんな顔をするなんて、珍しいわねぇ…」
元治の様子を見た翠星石は、ここぞとばかりに不遜な態度で言い放った。
「気に入ってくれたです?じゃあ早く直してほしいです、オジジ」
63: 2009/04/21(火) 13:13:40.60 ID:uJzj5pMm0
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続けます。
その翠星石の態度を見て、蒼星石は戸惑った顔をしながら元治に言った。
「すいませんマスター、翠星石が自分勝手な事を言って…。
大体翠星石は、お金を持ってないのに…頼み方だってこんな…」
「いやいや、蒼星石や、いいんじゃよ気にせんでも」
「だってマスター、修理するからにはお金が…」
元治は蒼星石の肩に、優しく手を乗せて言った。
「ワシはな、蒼星石、お前には本当に感謝しておるんじゃよ。
一樹を救ってくれて、マツを救ってくれて、そしてワシも救ってくれた…。
そんな蒼星石に困った事が出来たのなら、今度はワシが救う番じゃて」
「マスター…」
「今回は、直接的には蒼星石を救う事にはならない、でも蒼星石の姉妹は困っている。
義理堅い蒼星石の事だ…姉妹が困っているのに、知らん振りは出来ないじゃろ?」
「…」
続けます。
その翠星石の態度を見て、蒼星石は戸惑った顔をしながら元治に言った。
「すいませんマスター、翠星石が自分勝手な事を言って…。
大体翠星石は、お金を持ってないのに…頼み方だってこんな…」
「いやいや、蒼星石や、いいんじゃよ気にせんでも」
「だってマスター、修理するからにはお金が…」
元治は蒼星石の肩に、優しく手を乗せて言った。
「ワシはな、蒼星石、お前には本当に感謝しておるんじゃよ。
一樹を救ってくれて、マツを救ってくれて、そしてワシも救ってくれた…。
そんな蒼星石に困った事が出来たのなら、今度はワシが救う番じゃて」
「マスター…」
「今回は、直接的には蒼星石を救う事にはならない、でも蒼星石の姉妹は困っている。
義理堅い蒼星石の事だ…姉妹が困っているのに、知らん振りは出来ないじゃろ?」
「…」
64: 2009/04/21(火) 13:15:11.32 ID:uJzj5pMm0
「そんな顔しなさんなって、ワシはもう蒼星石の事は、家族だと思っておるんだから。
そして家族の姉妹の悩みは、ワシの悩みじゃて…金なんか、取れる訳無いじゃろ」
「マス…おじいさん…」
「それに、さっきの翠星石の頼み方…昔のマツにそっくりじゃったわい!小生意気な所が!」
「まっ!貴方ったら何を!」
「さて、早速始めるとするかの、もし良かったら一緒に見んか?」
蒼星石は、作業場に向かう元治の背中に、深いお辞儀をした。
翠星石は、蒼星石に右手で頭を押さえられて、いけ好かない表情でお辞儀させられていた。
マツはそんな2人を見て、昔の夫婦生活に思いを馳せていた。
65: 2009/04/21(火) 13:16:54.12 ID:uJzj5pMm0
注意深く懐中時計を分解し始める元治。
そしてその作業台のへりに蒼星石と翠星石が座って、作業を眺めている。
元治は時計を少しずつ解体しては、驚きの声をあげる。
「この薔薇のレリーフ…良く出来ているわい…」
蒼星石は作業の邪魔にならない様に、静かに作業を見守っている。
翠星石はもう飽きてきたのか、欠伸していた。
解体も幾分か進み、元治は時計の構造に多少の違和感を感じ、翠星石に質問した。
「ところでこの時計は、どういう経路で赤いお嬢さんに渡ったんじゃ?」
「zzz…ふぇ?何です?毛色?」
「いや…こうして中の構造をまじまじと見ると、不思議な所が多くての…」
「毛色…オジジに…毛は無い…です…zzz」
蒼星石はやれやれと言った表情で翠星石を一瞥した後、元治に答えた。
「すいませんおじいさん、真紅の物なので、詳しい事は翠星石には分からない筈、もちろん僕も…」
「そうか…これは私感だが、これは市販では手に入らない時計じゃな、おそらく」
「どういう事ですか?」
「例えばこの歯車、こんな形の歯車…ワシは今まで見た事が無い、こんな形の物を大量生産するのは無理じゃ」
「…」
67: 2009/04/21(火) 13:19:49.68 ID:uJzj5pMm0
「それに材質も変わっておるな、真鍮、鉛、炭素鋼…凄いこだわりじゃな、適所適材で使い分けておるよ。
こんな面倒な事は普通はせんよ、工業品なら特に…時計に相当な思い入れが無い限りはな」
「つまりこの時計は、個人で作られた物だと?」
「そう、しかも歯車の組み合わせも難解じゃ、メモを取りながらでないと、元に戻す事も適わないじゃろうな。
ワシも長年時計を見てきたから、多少の自信はあったが、こんな作りの時計は初めてじゃよ…。
むしろ感心させられるわい、何でこんなに複雑な組み合わせで、時計として成り立っているのか…。
これを作った奴は、相当な技量の持ち主じゃな…しかもまだ腑に落ちない点がある」
「腑に落ちない点…何ですか?」
「部品の経年劣化の度合いからして、相当昔に作られた物のようだが、大まかな構造自体は最近の時計に近い。
そんな前の時代にこんな設計を思いつくとは…あまりに凄すぎて震えるよ」
「…直す事は…難しそうですか?」
「時計が動かなくなる大半の原因は決まっておるからな、そこを見て、直して、戻す…。
元に戻す事は非常に難しそうじゃが、まあ何とかなるじゃろ、時間は掛かりそうじゃがな。
…蒼星石と翠星石は向こうでマツと待っていなさい、長くなりそうじゃからな」
「いえ、僕はおじいさんと一緒に見てます、何か手伝える事があったら言って下さい、でも翠星石は…」
蒼星石は翠星石を見た、見事な涎を垂らして寝ていた。
68: 2009/04/21(火) 13:21:03.08 ID:uJzj5pMm0
「んもぅ…翠星石!翠星石起きて!」
「zzz…にゃ…何です!?私は…寝てないですよ?……終わったですかオジジ?」
「もう!しっかりしてよね翠星石!向こうでおばあさんとお茶でも飲んでてよ、時間が掛かりそうなんだ」
「そうするです…向こうで寝るです…」
そう言って、フラフラと居間に向かう翠星石、元治と蒼星石はそんな翠星石を見て笑いあった。
「じゃあ蒼星石にはメモを取ってもらうかの、頼めるかな?」
「はい!勿論です、おじいさん!」
69: 2009/04/21(火) 13:22:01.63 ID:uJzj5pMm0
蒼星石が翠星石の体を優しく揺さぶる。
「翠星石!翠星石起きて!終わったよ、時計の修理」
「…うぅ…そ…蒼星石?…」
「時計の修理が終わったよ、翠星石」
「…終わったですか…うぅ…お腹がすいたです…」
「もう!起きたと思ったらすぐそれかい?全く困った姉だよ、君は」
「みんな!夕飯が出来たわよ!早くいらっしゃいな」
「さあ蒼星石、疲れただろ…夕飯にしよう、翠星石も今夜は食べて行かんかい?」
「もちろんご馳走になるです!オババの手料理は明日への活力です!」
卓袱台を囲んで夕食を食べる四人、元治が申し訳なさそうに翠星石に言った。
「まず先に、謝らなければいけないな、すまないね翠星石、時計は直せなかった」
時計を翠星石に渡す、確かに見た目は元に戻っているが、針は動いていない。
「え!?直らなかったですか?オジジ…腕が鈍ったです?」
「おじいさんを悪く言わないでよ翠星石、直せなかったのは理由があるんだよ」
「理由…ですか?何です?」
「簡単に言うと、壊れてないんだ、あの時計は」
「翠星石!翠星石起きて!終わったよ、時計の修理」
「…うぅ…そ…蒼星石?…」
「時計の修理が終わったよ、翠星石」
「…終わったですか…うぅ…お腹がすいたです…」
「もう!起きたと思ったらすぐそれかい?全く困った姉だよ、君は」
「みんな!夕飯が出来たわよ!早くいらっしゃいな」
「さあ蒼星石、疲れただろ…夕飯にしよう、翠星石も今夜は食べて行かんかい?」
「もちろんご馳走になるです!オババの手料理は明日への活力です!」
卓袱台を囲んで夕食を食べる四人、元治が申し訳なさそうに翠星石に言った。
「まず先に、謝らなければいけないな、すまないね翠星石、時計は直せなかった」
時計を翠星石に渡す、確かに見た目は元に戻っているが、針は動いていない。
「え!?直らなかったですか?オジジ…腕が鈍ったです?」
「おじいさんを悪く言わないでよ翠星石、直せなかったのは理由があるんだよ」
「理由…ですか?何です?」
「簡単に言うと、壊れてないんだ、あの時計は」
70: 2009/04/21(火) 13:23:54.71 ID:uJzj5pMm0
「?…蒼星石、何言ってるです?あの時計は壊れてるです、だって動かないですよ」
「いや、ワシと蒼星石で全ての部品を見たんだが、壊れてる箇所は何一つ無かったんじゃ。
確かに経年劣化で多少の傷や色落ちはあったが、部品自体には何の異常も見当たらなかったんじゃよ」
「そう…ですか…何かの部品が足りてないとか、そういう事も無いです?」
「部品も全部揃っていてな…逆に、あれだけ完璧に部品が揃っていて、状態も良好なのに、
動かない理由が分からないんじゃよ、今のワシでは…ただ一つ気になる事があってな」
「気になる事…何です?」
「一つだけ、無駄に付いている部品があってな、黒色の小さな四角い部品で、竜頭に直結しているんじゃが…。
構造上、その部品はいらない筈なんじゃよ、時計としては」
「黒い部品…ですか」
「あまりにも小さすぎて、ワシには四角い部品としか判断出来なかったが…。
その部品を外しても時計は動かなかったから、ますます謎が深まってな、何の為に付いている部品なのか…」
「オジジにも分からなかった…」
「そうなんじゃよ、本当にすまないね翠星石、あの真紅と言う子にも申し訳が立たなくて…」
「いいですよオジジ、真紅は分かってくれるです!だってオジジはやるべき事はちゃんとやったです!見てたです!」
「よく言うよ翠星石は、ずっと寝てた癖に…涎まで垂らしてさ」
「いや、ワシと蒼星石で全ての部品を見たんだが、壊れてる箇所は何一つ無かったんじゃ。
確かに経年劣化で多少の傷や色落ちはあったが、部品自体には何の異常も見当たらなかったんじゃよ」
「そう…ですか…何かの部品が足りてないとか、そういう事も無いです?」
「部品も全部揃っていてな…逆に、あれだけ完璧に部品が揃っていて、状態も良好なのに、
動かない理由が分からないんじゃよ、今のワシでは…ただ一つ気になる事があってな」
「気になる事…何です?」
「一つだけ、無駄に付いている部品があってな、黒色の小さな四角い部品で、竜頭に直結しているんじゃが…。
構造上、その部品はいらない筈なんじゃよ、時計としては」
「黒い部品…ですか」
「あまりにも小さすぎて、ワシには四角い部品としか判断出来なかったが…。
その部品を外しても時計は動かなかったから、ますます謎が深まってな、何の為に付いている部品なのか…」
「オジジにも分からなかった…」
「そうなんじゃよ、本当にすまないね翠星石、あの真紅と言う子にも申し訳が立たなくて…」
「いいですよオジジ、真紅は分かってくれるです!だってオジジはやるべき事はちゃんとやったです!見てたです!」
「よく言うよ翠星石は、ずっと寝てた癖に…涎まで垂らしてさ」
71: 2009/04/21(火) 13:26:01.86 ID:uJzj5pMm0
「そ、蒼星石!薔薇乙女一可憐で、可愛い翠星石は、涎なんか垂らさねーですよ!見間違いです!」
「そうだよね!薔薇乙女一可憐で、可愛い翠星石は、涎なんか垂らさないよね、僕の見間違いかな?」
「…蒼星石、何か誰かに似てるです…」
「まあまあ…それより翠ちゃんは、今日はお泊りかしら?もう遅いわよ」
「おお、そうするといい、マツも翠星石に本の読み語りが出来なくて、最近寂しがってたからのぅ」
「貴方!私は別に寂しがってなんか…」
「その割には、本棚の本が、どんどん増えていってるんじゃがな」
「もう…知りません!」
「…し、しゃ~ね~な~です!翠星石も久しぶりに、オババのお話が聞きて~な~~…ですぅ」
「じゃ、決まりだね!僕がジュン君の家に電話しておくよ!」
「そうだよね!薔薇乙女一可憐で、可愛い翠星石は、涎なんか垂らさないよね、僕の見間違いかな?」
「…蒼星石、何か誰かに似てるです…」
「まあまあ…それより翠ちゃんは、今日はお泊りかしら?もう遅いわよ」
「おお、そうするといい、マツも翠星石に本の読み語りが出来なくて、最近寂しがってたからのぅ」
「貴方!私は別に寂しがってなんか…」
「その割には、本棚の本が、どんどん増えていってるんじゃがな」
「もう…知りません!」
「…し、しゃ~ね~な~です!翠星石も久しぶりに、オババのお話が聞きて~な~~…ですぅ」
「じゃ、決まりだね!僕がジュン君の家に電話しておくよ!」
72: 2009/04/21(火) 13:27:08.54 ID:uJzj5pMm0
…夜も深まり、皆がそろそろ眠りに付く前に、蒼星石は翠星石に話しかけた。
「翠星石、さっきは有難う、おばあさんの為に気を使ってくれて」
「…そりゃあ、オババが寂しがる姿なんか、翠星石は見たくないですから…それに」
「何だい?」
「オジジとオババは…蒼星石の家族ですから…オジジはそう言ってくれたから…大切にしたいです」
「フフッ…君は僕の双子の姉だから、翠星石も家族の一員だよ?」
「なっ!?翠星石は違うです!もうこの家の者じゃねーです!」
「そうだよね、君はもうジュン君に嫁いでしまったからねー」
「ななっ!?もう知らねーです!蒼星石のおバカ!!」
「とにかく、有難う翠星石、僕は君が姉で本当に良かったって思ってるよ…それが言いたかったんだ」
「蒼星石…今日は隣同士で寝るです、鞄を並べて寝るですよ、一緒にオババのお話を聞いて寝るです…」
「うん、それはいいね、だって家族だもん!」
「翠星石、さっきは有難う、おばあさんの為に気を使ってくれて」
「…そりゃあ、オババが寂しがる姿なんか、翠星石は見たくないですから…それに」
「何だい?」
「オジジとオババは…蒼星石の家族ですから…オジジはそう言ってくれたから…大切にしたいです」
「フフッ…君は僕の双子の姉だから、翠星石も家族の一員だよ?」
「なっ!?翠星石は違うです!もうこの家の者じゃねーです!」
「そうだよね、君はもうジュン君に嫁いでしまったからねー」
「ななっ!?もう知らねーです!蒼星石のおバカ!!」
「とにかく、有難う翠星石、僕は君が姉で本当に良かったって思ってるよ…それが言いたかったんだ」
「蒼星石…今日は隣同士で寝るです、鞄を並べて寝るですよ、一緒にオババのお話を聞いて寝るです…」
「うん、それはいいね、だって家族だもん!」
74: 2009/04/21(火) 13:31:06.09 ID:uJzj5pMm0
翠星石が元治の家に泊まった夜、真紅は夢を見た。
それは普段とあまり変わらない、ありきたりの夢の筈だった。
突然の来訪者が訪れるまでは…。
「…真…、…真…紅…」
「…誰…?私を…呼んでいる?」
「…真…紅…、私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
「何故…私を呼ぶの?忘れる?…貴方は誰?」
「私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
「貴方は誰なの?姿が…ぼんやりとしていて…今一度問うわ、貴方は誰?名を答えなさい」
「名?…私の…名前は…、うぐぁぁ!」
来訪者の突然の雄叫びに、真紅は杖を突き出し戦闘態勢を取った。
しかし来訪者は、突然頭を抱え込み、両膝を付いて俯いた。
真紅は警戒しながら、来訪者に近づく。
「貴方…敵では無さそうね、顔を上げなさい」
それは普段とあまり変わらない、ありきたりの夢の筈だった。
突然の来訪者が訪れるまでは…。
「…真…、…真…紅…」
「…誰…?私を…呼んでいる?」
「…真…紅…、私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
「何故…私を呼ぶの?忘れる?…貴方は誰?」
「私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
「貴方は誰なの?姿が…ぼんやりとしていて…今一度問うわ、貴方は誰?名を答えなさい」
「名?…私の…名前は…、うぐぁぁ!」
来訪者の突然の雄叫びに、真紅は杖を突き出し戦闘態勢を取った。
しかし来訪者は、突然頭を抱え込み、両膝を付いて俯いた。
真紅は警戒しながら、来訪者に近づく。
「貴方…敵では無さそうね、顔を上げなさい」
75: 2009/04/21(火) 13:32:08.54 ID:uJzj5pMm0
来訪者は俯いたまま、まるで呪文のように同じ言葉を繰り返す。
「…何故…完成しないんだ…、何故…」
「今一度貴方に問うわ、貴方は誰、何故私の夢に入り込んだの?」
「人の…寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…」
真紅はその言葉に息を呑んだ、私はその言葉を知っている!聞き覚えがある!…でも…まさか?
「貴方!貴方は誰なの!?その言葉はどこで聞いたの?何故私を知っているの?」
「…時間が…私の…時間、戻す事が…何故…出来ない…」
そう呟きながら、来訪者はゆっくりと顔を上げる、その顔を見て真紅は狼狽えた。
「!…貴方は!?まさか!そんな筈は…」
「…真…紅…、私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
そう言い残して、来訪者は突然姿を消した。
「待って!待って頂戴!貴方の名前は!私は貴方に言わなければならない事が!」
真紅の叫びが虚しく木霊する…長い思案と沈黙の後、ゆっくりと立ち上がり、呟いた。
「…何故…貴方は私の夢に現れたの?…忘れないでとは…どう言う意味なの?…」
「…何故…完成しないんだ…、何故…」
「今一度貴方に問うわ、貴方は誰、何故私の夢に入り込んだの?」
「人の…寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…」
真紅はその言葉に息を呑んだ、私はその言葉を知っている!聞き覚えがある!…でも…まさか?
「貴方!貴方は誰なの!?その言葉はどこで聞いたの?何故私を知っているの?」
「…時間が…私の…時間、戻す事が…何故…出来ない…」
そう呟きながら、来訪者はゆっくりと顔を上げる、その顔を見て真紅は狼狽えた。
「!…貴方は!?まさか!そんな筈は…」
「…真…紅…、私を…忘れない…で…くれ、頼む…」
そう言い残して、来訪者は突然姿を消した。
「待って!待って頂戴!貴方の名前は!私は貴方に言わなければならない事が!」
真紅の叫びが虚しく木霊する…長い思案と沈黙の後、ゆっくりと立ち上がり、呟いた。
「…何故…貴方は私の夢に現れたの?…忘れないでとは…どう言う意味なの?…」
77: 2009/04/21(火) 13:33:41.13 ID:uJzj5pMm0
次の日の朝、翠星石は時計を持って帰って来た。
「結局直らなかったです…すまんです真紅」
翠星石は真紅に懐中時計を渡しながら、申し訳なさそうに言った。
真紅は、心ここに在らずと言った面持ちで、言葉無く受け取った。
「どうしたの真紅?そんなにショックだった?」
蒼星石が真紅を気遣って声をかける、蒼星石は時計の修理内容を説明する為に、桜田家に来ていた。
「…いえ、何でもないわ、有難う蒼星石」
「それより聞きたいんだ真紅、その時計はどうやって手に入れたんだい?」
「この…時計?」
「僕のおじいさんが不思議がっていてさ、こんな時計は見た事無いとか、相当な技術の持ち主だとか、
黒い部品が何なのかとか、凄く入れ込んでいたから…差し支え無ければ色々教えてくれないか?」
「そーですそーです!勿体振らずに教えろです!」
「そうね、でもこの時計の経緯は…ジュンにも説明しておきたいわ」
「あの秘密主義の真紅が…珍しい事もあるもんです!じゃあ呼んでくるです!」
「結局直らなかったです…すまんです真紅」
翠星石は真紅に懐中時計を渡しながら、申し訳なさそうに言った。
真紅は、心ここに在らずと言った面持ちで、言葉無く受け取った。
「どうしたの真紅?そんなにショックだった?」
蒼星石が真紅を気遣って声をかける、蒼星石は時計の修理内容を説明する為に、桜田家に来ていた。
「…いえ、何でもないわ、有難う蒼星石」
「それより聞きたいんだ真紅、その時計はどうやって手に入れたんだい?」
「この…時計?」
「僕のおじいさんが不思議がっていてさ、こんな時計は見た事無いとか、相当な技術の持ち主だとか、
黒い部品が何なのかとか、凄く入れ込んでいたから…差し支え無ければ色々教えてくれないか?」
「そーですそーです!勿体振らずに教えろです!」
「そうね、でもこの時計の経緯は…ジュンにも説明しておきたいわ」
「あの秘密主義の真紅が…珍しい事もあるもんです!じゃあ呼んでくるです!」
78: 2009/04/21(火) 13:36:39.77 ID:uJzj5pMm0
ここからオリジナルキャラが出て来ます、勝手な事してゴメン。
桜田家のリビングに集まった4体の人形と、1人の人間。
テーブルの上には、真紅の懐中時計が置かれている。
皆が揃った所で、真紅が静かに話し始める。
「ごめんなさいねジュン、突然呼び出して」
ジュンは真紅のいつもと違う様子に戸惑いながら、返事をする。
「いや…いいんだ、それより何か変だぞ真紅?大丈夫なのか?」
「大丈夫よジュン…、これから私が話す事は、私の時計の話…そして私の過去の話」
「真紅の…過去?以前のマスターとか?」
「そうよジュン、聞いて頂戴、私を軽蔑するかもしれないけど…」
「軽…蔑?
「もったいぶってないで早く始めろです!」
「そうね…この懐中時計はずっと昔のマスターに頂いた物、時計職人だったのよ…とても優秀な」
「へえ、そんな人とも契約してたんだ」
桜田家のリビングに集まった4体の人形と、1人の人間。
テーブルの上には、真紅の懐中時計が置かれている。
皆が揃った所で、真紅が静かに話し始める。
「ごめんなさいねジュン、突然呼び出して」
ジュンは真紅のいつもと違う様子に戸惑いながら、返事をする。
「いや…いいんだ、それより何か変だぞ真紅?大丈夫なのか?」
「大丈夫よジュン…、これから私が話す事は、私の時計の話…そして私の過去の話」
「真紅の…過去?以前のマスターとか?」
「そうよジュン、聞いて頂戴、私を軽蔑するかもしれないけど…」
「軽…蔑?
「もったいぶってないで早く始めろです!」
「そうね…この懐中時計はずっと昔のマスターに頂いた物、時計職人だったのよ…とても優秀な」
「へえ、そんな人とも契約してたんだ」
79: 2009/04/21(火) 13:37:52.13 ID:uJzj5pMm0
「その人は本当に優秀だった、名前はフラーケと言うわ。
フラーケは人形の私が動いている事に、只ならぬ関心を持った、技術職人の性ね。
意思を持って動く人工物に、意思を持たない人工物を作る職人が興味を持つ、自然な流れだわ」
「でもフラーケは、私を人工物としては扱わなかった、一人の人間として接してくれた。
そしてこうも言っていた。
『君を超える物を創る事が私の目標になった、私は時計作りで君のお父様を越えてみせる』と。
人間として接してくれたのは、お父様への敬意だったのね、きっと」
「フラーケは私を、実の娘のように可愛がってくれたわ、彼は一人身だったから寂しかったのね、きっと。
そして私は、そんなフラーケの仕事を見るのが大好きだった。
まるで魔法の様に作られていく時計たち、そして時計に、情熱と愛情を持って接するフラーケ…」
「きっと私は、フラーケにお父様を投影していたんだわ。
お父様はきっと、この様な情熱と愛情で私達を創って下さった、そして私達を愛して下さった…。
そう思うだけで私は充たされた、寂しさから開放された…」
「でもある晩、私は泣いていた。
何故お父様は私にお会いになって下さらないのか?何故アリスにならないと会って下さらないのか?
今の私はお父様に愛されていないのか?…。
そんな思いが涙になってしまったのね…私は自暴自棄になった、フラーケに自身の解体をお願いしたわ」
「!?」
フラーケは人形の私が動いている事に、只ならぬ関心を持った、技術職人の性ね。
意思を持って動く人工物に、意思を持たない人工物を作る職人が興味を持つ、自然な流れだわ」
「でもフラーケは、私を人工物としては扱わなかった、一人の人間として接してくれた。
そしてこうも言っていた。
『君を超える物を創る事が私の目標になった、私は時計作りで君のお父様を越えてみせる』と。
人間として接してくれたのは、お父様への敬意だったのね、きっと」
「フラーケは私を、実の娘のように可愛がってくれたわ、彼は一人身だったから寂しかったのね、きっと。
そして私は、そんなフラーケの仕事を見るのが大好きだった。
まるで魔法の様に作られていく時計たち、そして時計に、情熱と愛情を持って接するフラーケ…」
「きっと私は、フラーケにお父様を投影していたんだわ。
お父様はきっと、この様な情熱と愛情で私達を創って下さった、そして私達を愛して下さった…。
そう思うだけで私は充たされた、寂しさから開放された…」
「でもある晩、私は泣いていた。
何故お父様は私にお会いになって下さらないのか?何故アリスにならないと会って下さらないのか?
今の私はお父様に愛されていないのか?…。
そんな思いが涙になってしまったのね…私は自暴自棄になった、フラーケに自身の解体をお願いしたわ」
「!?」
80: 2009/04/21(火) 13:39:03.02 ID:uJzj5pMm0
「お父様に愛されていないのなら、貴方に解体してもらい、構造を見てもらう事で、貴方の役に立ちたいと。
お父様を超える手助けをしてから、私は消滅したいと…」
「そんな…真紅」
「私もあの頃は精神的に幼かったのね、今思うと馬鹿な事を言ったものだわ…。
でもそんな私に、フラーケは懐中時計をくれた、そしてこう言ってくれたわ、
『自分の娘を、愛さない父親なんていない、それは時計でも、人形でも、同じ事だ…。
今後寂しさに縛られる事があったならば、その時計に捧げた私の愛情を、思い出しなさい』…と。
私はその言葉で、立ち直る事が出来た…その時計に触れていると、私も愛されていると思う事が出来た」
「…」
「でも…フラーケとの生活は、長くは続かなかった…」
「何があったの?真紅?」
お父様を超える手助けをしてから、私は消滅したいと…」
「そんな…真紅」
「私もあの頃は精神的に幼かったのね、今思うと馬鹿な事を言ったものだわ…。
でもそんな私に、フラーケは懐中時計をくれた、そしてこう言ってくれたわ、
『自分の娘を、愛さない父親なんていない、それは時計でも、人形でも、同じ事だ…。
今後寂しさに縛られる事があったならば、その時計に捧げた私の愛情を、思い出しなさい』…と。
私はその言葉で、立ち直る事が出来た…その時計に触れていると、私も愛されていると思う事が出来た」
「…」
「でも…フラーケとの生活は、長くは続かなかった…」
「何があったの?真紅?」
81: 2009/04/21(火) 13:41:13.16 ID:uJzj5pMm0
「フラーケは、私の能力…時間の薇を見てから、変わってしまった。
時計職人としての、只ならぬ嫉妬が芽生えてしまった。
『私の作る時計は、現在を映し出す事しか出来ない!しかし時間の薇は、過去を映し出す事が出来る!
時間を巻き戻す事が出来る!君のお父様に出来る事が、何故私には出来ない!』
そう言って、彼は時計作りを止め、時間の薇の研究に全身全霊を傾けたわ、過去を映し出す時計を作る為に」
「彼は、摂り付かれた様に、時間の薇の研究を続け、やがて衰弱していった…。
私にはどうする事も出来なかった、彼の時計職人としての人生を狂わせてしまった私に、何が言えて?
私は、罪悪感から契約を解除した、彼には告げずに…その後の彼がどうなったのか…私には…分からない…」
「真紅…それはあんまりじゃないか?何故最後まで見届けなかったんだ?フラーケさんは…」
「仕方が…なかったのよ…。
契約を解かなければ、彼は衰弱して命を落としていた…逼迫していたのよ。
確かに私には、フラーケを見届ける義務があった!責任があった!
…でも…でも…私は…私には…そう…する…しか………」
真紅の涙が頬を伝う…。
その涙は震えながら握り締められた、か弱い小さな手の甲に落下して、静かに弾けた。
リビングに嗚咽が響きわたる。
普段気丈な真紅が不意に見せたその弱弱しい姿を、ジュン達は泣き止むまで、ただ見守る事しか出来なかった…。
時計職人としての、只ならぬ嫉妬が芽生えてしまった。
『私の作る時計は、現在を映し出す事しか出来ない!しかし時間の薇は、過去を映し出す事が出来る!
時間を巻き戻す事が出来る!君のお父様に出来る事が、何故私には出来ない!』
そう言って、彼は時計作りを止め、時間の薇の研究に全身全霊を傾けたわ、過去を映し出す時計を作る為に」
「彼は、摂り付かれた様に、時間の薇の研究を続け、やがて衰弱していった…。
私にはどうする事も出来なかった、彼の時計職人としての人生を狂わせてしまった私に、何が言えて?
私は、罪悪感から契約を解除した、彼には告げずに…その後の彼がどうなったのか…私には…分からない…」
「真紅…それはあんまりじゃないか?何故最後まで見届けなかったんだ?フラーケさんは…」
「仕方が…なかったのよ…。
契約を解かなければ、彼は衰弱して命を落としていた…逼迫していたのよ。
確かに私には、フラーケを見届ける義務があった!責任があった!
…でも…でも…私は…私には…そう…する…しか………」
真紅の涙が頬を伝う…。
その涙は震えながら握り締められた、か弱い小さな手の甲に落下して、静かに弾けた。
リビングに嗚咽が響きわたる。
普段気丈な真紅が不意に見せたその弱弱しい姿を、ジュン達は泣き止むまで、ただ見守る事しか出来なかった…。
82: 2009/04/21(火) 13:43:32.88 ID:uJzj5pMm0
「この時計は…その事に対しての戒め。
人間の人生に、大きな関わりを持ってはいけないと言う、私の決意。
ジュンは…こんな私の事を、軽蔑したかしら…」
「僕は…そうは思わない」
「…え?」
「確かにフラーケさんの人生に、大きな影響を与えたのは真紅だ。
でも、フラーケさんは決して、不幸じゃ無いと思う」
「…慰めは…止めて…頂戴…」
「真紅はフラーケさんに、目標を与えたんだ…彼は言ったんだろ?
『君を超える物を創るのが私の目標になった、私は時計作りで君のお父様を越えてみせる』って。
時間の薇を理解するのは、確かに難しいかも知れない、氏ぬ気で取り組まなきゃ出来る訳無い。
だから彼は氏ぬ気で頑張った、衰弱してまで」
「…」
人間の人生に、大きな関わりを持ってはいけないと言う、私の決意。
ジュンは…こんな私の事を、軽蔑したかしら…」
「僕は…そうは思わない」
「…え?」
「確かにフラーケさんの人生に、大きな影響を与えたのは真紅だ。
でも、フラーケさんは決して、不幸じゃ無いと思う」
「…慰めは…止めて…頂戴…」
「真紅はフラーケさんに、目標を与えたんだ…彼は言ったんだろ?
『君を超える物を創るのが私の目標になった、私は時計作りで君のお父様を越えてみせる』って。
時間の薇を理解するのは、確かに難しいかも知れない、氏ぬ気で取り組まなきゃ出来る訳無い。
だから彼は氏ぬ気で頑張った、衰弱してまで」
「…」
83: 2009/04/21(火) 13:44:08.58 ID:uJzj5pMm0
「でも彼の人生は充実してたと、僕は思う…だって頑張れる目標があったんだから。
ローゼンを超えるって言う目標が、彼を衰弱させたんだとしても、それは仕方が無い事だと思う…。
だってあまりにも目標が大きすぎるから。
でも彼はそれを超えようと頑張った、それは本人の意思だ、別に真紅に言われてやった事じゃ無い。
だから真紅はきっかけを与えたにすぎないんだ、とても大きなきっかけを」
「ジュ…ン…」
「僕がフラーケさんだったとしたら、感謝すると思う。
私にきっかけを与えてくれてありがとう…って、きっとそう思ってる筈だよ、だってそれは…」
「…?」
「…それは、僕も同じ気持ちだからだよ…。
現実に立ち向かうきっかけを与えてくれて、ありがとう…真紅…」
真紅の頭を優しく撫でるジュン、真紅はジュンの暖かさに触れながら、ただ静かに泣いていた…。
ローゼンを超えるって言う目標が、彼を衰弱させたんだとしても、それは仕方が無い事だと思う…。
だってあまりにも目標が大きすぎるから。
でも彼はそれを超えようと頑張った、それは本人の意思だ、別に真紅に言われてやった事じゃ無い。
だから真紅はきっかけを与えたにすぎないんだ、とても大きなきっかけを」
「ジュ…ン…」
「僕がフラーケさんだったとしたら、感謝すると思う。
私にきっかけを与えてくれてありがとう…って、きっとそう思ってる筈だよ、だってそれは…」
「…?」
「…それは、僕も同じ気持ちだからだよ…。
現実に立ち向かうきっかけを与えてくれて、ありがとう…真紅…」
真紅の頭を優しく撫でるジュン、真紅はジュンの暖かさに触れながら、ただ静かに泣いていた…。
84: 2009/04/21(火) 13:45:33.37 ID:uJzj5pMm0
暫くして泣き止んだ真紅は、厳かに話し始めた。
「契約を解いた時、彼は枕元でうわ言のように、同じ言葉を繰り返していたわ…、
『人の寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…』と。
そして私は今日、夢でフラーケを見たわ、
『…真紅…、私を…忘れないでくれ、頼む…』と、繰り返し言っていたわ…」
「真紅の…夢に、フラーケさんが?」
「フラーケは私に、何かを伝えたいのだわ…私はそれを突き止めたいの。
でもその為には、ジュンの協力が必要なのよ。
だから私は、貴方に過去の事を話した…蔑まれる覚悟で」
「蔑んだりはしないよ、真紅の決断は正しかった、それでいいじゃないか。
でも協力って何?だってフラーケさんはもう…この世には…」
「nのフィールドに、きっと手掛かりがある、確信は無いけど、私はそう感じる…。
だからジュンも一緒に来てほしいの、私1人では30分程しか入っていられないから…」
「よし、分かった、一緒に行こう」
「契約を解いた時、彼は枕元でうわ言のように、同じ言葉を繰り返していたわ…、
『人の寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…』と。
そして私は今日、夢でフラーケを見たわ、
『…真紅…、私を…忘れないでくれ、頼む…』と、繰り返し言っていたわ…」
「真紅の…夢に、フラーケさんが?」
「フラーケは私に、何かを伝えたいのだわ…私はそれを突き止めたいの。
でもその為には、ジュンの協力が必要なのよ。
だから私は、貴方に過去の事を話した…蔑まれる覚悟で」
「蔑んだりはしないよ、真紅の決断は正しかった、それでいいじゃないか。
でも協力って何?だってフラーケさんはもう…この世には…」
「nのフィールドに、きっと手掛かりがある、確信は無いけど、私はそう感じる…。
だからジュンも一緒に来てほしいの、私1人では30分程しか入っていられないから…」
「よし、分かった、一緒に行こう」
85: 2009/04/21(火) 13:46:19.44 ID:uJzj5pMm0
その時、2人を呼び止める声が聞こえた。
「ちょ~っと待つです!お前ら大事な事を忘れてやいないかい?です!」
「翠星石…何?」
「私達も一緒に手分けして探すですよ!そのフラーケとやらを!」
翠星石、蒼星石、雛苺は真紅の側に駆け寄った。
「貴方達には、関係の無い事なのよ?」
「何を言ってるんだい真紅、僕達は姉妹じゃないか、姉妹の悩みは、僕の悩みさ」
「そ~なの、ヒナは時計職人フラーケさんに、会ってみたいの!」
「と、言う事で決まりです~、さあ真紅!フラーケとやらの特徴を教えるです!」
「貴方達…ありがとう…」
「ほら真紅、嬉し泣きしすぎて時計を忘れるなよ、お前の大事な宝物だろ?」
「そうね…この時計は、私の大切な…宝物」
「ちょ~っと待つです!お前ら大事な事を忘れてやいないかい?です!」
「翠星石…何?」
「私達も一緒に手分けして探すですよ!そのフラーケとやらを!」
翠星石、蒼星石、雛苺は真紅の側に駆け寄った。
「貴方達には、関係の無い事なのよ?」
「何を言ってるんだい真紅、僕達は姉妹じゃないか、姉妹の悩みは、僕の悩みさ」
「そ~なの、ヒナは時計職人フラーケさんに、会ってみたいの!」
「と、言う事で決まりです~、さあ真紅!フラーケとやらの特徴を教えるです!」
「貴方達…ありがとう…」
「ほら真紅、嬉し泣きしすぎて時計を忘れるなよ、お前の大事な宝物だろ?」
「そうね…この時計は、私の大切な…宝物」
86: 2009/04/21(火) 13:47:46.48 ID:uJzj5pMm0
左目に薔薇模様の眼帯を付けた人形は、紫色の水晶の立ち並ぶ空間で、凛として立っている。
やがて彼女は、一つの小さな水晶を手に持ち、それを眺めた。
その水晶には、桜田家の光景が映し出されていた。
「…真紅…」
彼女の名は薔薇水晶。
薔薇水晶は、槐の言葉を思い出していた。
『…私は、真紅を超える作品が、作れたのだろうか…』
その言葉が、薔薇水晶の頭の中で、嫌と言うほど繰り返される。
槐が何気なく言った一言、そのたった一言が彼女を苦しめる…。
「…私は…、真紅より…強い」
薔薇水晶はそう呟いて、立ち並ぶ水晶の一つに片手をかざした、その水晶は一瞬で粉々に砕け散った。
破片に映りこむ薔薇水晶の姿、その姿には強い憤りが見て取れる。
お父様は真紅を特別視している、その事実が薔薇水晶を更に苛立たせる…。
私は、真紅に勝たなければならない、それがお父様の願い。
私はお父様の願いを叶える為に創られた、ならばそれに応えなければならない…。
そして、それだけがお父様に心から愛してもらえる、たった一つの方法…。
薔薇水晶は、過去の真紅との戦いを思い出した。
その時の真紅は、まるで戦いを拒んでいるかの様に見えた。
そしてその振舞いは、薔薇水晶を苛立たせるに、十分だった。
やがて彼女は、一つの小さな水晶を手に持ち、それを眺めた。
その水晶には、桜田家の光景が映し出されていた。
「…真紅…」
彼女の名は薔薇水晶。
薔薇水晶は、槐の言葉を思い出していた。
『…私は、真紅を超える作品が、作れたのだろうか…』
その言葉が、薔薇水晶の頭の中で、嫌と言うほど繰り返される。
槐が何気なく言った一言、そのたった一言が彼女を苦しめる…。
「…私は…、真紅より…強い」
薔薇水晶はそう呟いて、立ち並ぶ水晶の一つに片手をかざした、その水晶は一瞬で粉々に砕け散った。
破片に映りこむ薔薇水晶の姿、その姿には強い憤りが見て取れる。
お父様は真紅を特別視している、その事実が薔薇水晶を更に苛立たせる…。
私は、真紅に勝たなければならない、それがお父様の願い。
私はお父様の願いを叶える為に創られた、ならばそれに応えなければならない…。
そして、それだけがお父様に心から愛してもらえる、たった一つの方法…。
薔薇水晶は、過去の真紅との戦いを思い出した。
その時の真紅は、まるで戦いを拒んでいるかの様に見えた。
そしてその振舞いは、薔薇水晶を苛立たせるに、十分だった。
87: 2009/04/21(火) 13:49:06.99 ID:uJzj5pMm0
「…何故…、戦わない…」
薔薇水晶は自問した、私は全力で真紅に戦いを挑んだ、でも真紅は戦わなかった…何故?
私はお父様の為に戦っている、それなら真紅は?真紅は何の為なら戦うの?
アリスになる為?ならば何故、あの時の真紅は戦わなかったの?
また槐の言葉が脳裏を過ぎる。
『…私は、真紅を超える作品が、作れたのだろうか…』
そう、私は勝たなければならない、真紅を超えなければならない。
でも、ただ勝つだけでは、真紅を超えた証明にはならない。
無抵抗な真紅を倒しても、それは強さの証明にはならない。
真紅を超える作品の証明にはならない…。
真紅を超える作品と証明する為には…真紅を本気にさせなければならない。
本気の真紅に勝利する事こそが、お父様の望み、そして私の存在理由。
薔薇水晶の持っていた小さな水晶に、真紅の姿が映し出される。
『そうね…この時計は、私の大切な…宝物』
時計を愛しむ真紅が映し出される。
薔薇水晶は呟いた。
「…真紅の…大切な…宝物、時計…」
そう呟いた薔薇水晶の口元は、小さく歪んで微笑していた。
「…私は…真紅の…大切な物を…、壊す!」
薔薇水晶は自問した、私は全力で真紅に戦いを挑んだ、でも真紅は戦わなかった…何故?
私はお父様の為に戦っている、それなら真紅は?真紅は何の為なら戦うの?
アリスになる為?ならば何故、あの時の真紅は戦わなかったの?
また槐の言葉が脳裏を過ぎる。
『…私は、真紅を超える作品が、作れたのだろうか…』
そう、私は勝たなければならない、真紅を超えなければならない。
でも、ただ勝つだけでは、真紅を超えた証明にはならない。
無抵抗な真紅を倒しても、それは強さの証明にはならない。
真紅を超える作品の証明にはならない…。
真紅を超える作品と証明する為には…真紅を本気にさせなければならない。
本気の真紅に勝利する事こそが、お父様の望み、そして私の存在理由。
薔薇水晶の持っていた小さな水晶に、真紅の姿が映し出される。
『そうね…この時計は、私の大切な…宝物』
時計を愛しむ真紅が映し出される。
薔薇水晶は呟いた。
「…真紅の…大切な…宝物、時計…」
そう呟いた薔薇水晶の口元は、小さく歪んで微笑していた。
「…私は…真紅の…大切な物を…、壊す!」
88: 2009/04/21(火) 13:50:54.56 ID:uJzj5pMm0
真紅はnのフィールドの扉を、片っ端から開いていく、そして扉を開いては落胆の表情をする。
そんな事が何百回も続き、次第に心身共に疲労していく。
そんな真紅を気遣って、ジュンが声をかける。
「なあ真紅、そろそろ休んだほうがいいんじゃないか?」
「貴方は黙っていて頂戴!私の事は、私が決めるわ」
「何だよその言い方!僕はただ…」
「彼は私を待っている!私はそれに応えたいのよ!」
そう叫んだ真紅の表情には焦りが見えた、そんな真紅をジュンは優しく諭す。
「あいつらも手伝ってくれてるんだから、もうすぐ見付けられるさ」
真紅とジュン、翠星石と雛苺、そして蒼星石と言う3つのグループで扉を探している。
しかし探し始めてから、かなりの時間が経過していた。
正直に言うと、フラーケがまだ本当に存在しているのか、ジュンは半信半疑になってきていた。
フラーケは真紅の昔のマスター、しかも相当昔の…。
もう氏んでいる筈、それは当たり前だ、それは真紅も重々承知だろう。
それなのに何故、ここまでして真紅は探し続けるのか?単なる悪夢を見ただけじゃないのか?
それでも必氏に扉を開け続ける真紅、小さな希望に縋って扉を開け続ける真紅…。
ジュンは何だか真紅の事が、いじらしく思えた。
そんな事が何百回も続き、次第に心身共に疲労していく。
そんな真紅を気遣って、ジュンが声をかける。
「なあ真紅、そろそろ休んだほうがいいんじゃないか?」
「貴方は黙っていて頂戴!私の事は、私が決めるわ」
「何だよその言い方!僕はただ…」
「彼は私を待っている!私はそれに応えたいのよ!」
そう叫んだ真紅の表情には焦りが見えた、そんな真紅をジュンは優しく諭す。
「あいつらも手伝ってくれてるんだから、もうすぐ見付けられるさ」
真紅とジュン、翠星石と雛苺、そして蒼星石と言う3つのグループで扉を探している。
しかし探し始めてから、かなりの時間が経過していた。
正直に言うと、フラーケがまだ本当に存在しているのか、ジュンは半信半疑になってきていた。
フラーケは真紅の昔のマスター、しかも相当昔の…。
もう氏んでいる筈、それは当たり前だ、それは真紅も重々承知だろう。
それなのに何故、ここまでして真紅は探し続けるのか?単なる悪夢を見ただけじゃないのか?
それでも必氏に扉を開け続ける真紅、小さな希望に縋って扉を開け続ける真紅…。
ジュンは何だか真紅の事が、いじらしく思えた。
89: 2009/04/21(火) 13:52:23.47 ID:uJzj5pMm0
「…もう少し、頑張ってみるか!」
「当たり前じゃない!貴方は私の家来なんだから、黙って付いて来ればいいのよ!」
「お前!もう少し言い方ってもんが…」
ジュンの言葉が途切れる、ジュンは真紅の背後を訝しげな表情で見つめる。
「…な、何なのかしら?私の後ろに、何か見えて?」
振り向く真紅、そこには月の形をした、黄色く光る入り口の様な物があった。
そこから兎の顔にシルクハットを被り、燕尾服を着た何者かが、ゆっくりと出てきた。
「貴方!…ラプラスの魔…」
ラプラスの魔は、おどけるように話し始めた。
「これはこれは…兎の巣穴に迷い込んだ羊が2匹…これは偶然?それとも必然?」
「何の用かしら?私は急いでいるのだけれど」
「望む者は逃げてゆき、望まぬ者は迫ってくる…しかし全ての願望は、やがて一つの場所へと導かれる」
ジュンは今までの経験から、この兎は自分達には危害を加えないと判断し、少し強気に出た。
「あんたの言ってる事は、相変わらず意味不明だよな…急いでるから手短に頼む」
「おや?少年は気が短い…そしてそれは私も同じ、舞台は役者を待っています、遅れる事の無きように…」
そう言ってラプラスの魔は、月の形をした入り口の横に立ち、胸元に手を置き会釈する。
「当たり前じゃない!貴方は私の家来なんだから、黙って付いて来ればいいのよ!」
「お前!もう少し言い方ってもんが…」
ジュンの言葉が途切れる、ジュンは真紅の背後を訝しげな表情で見つめる。
「…な、何なのかしら?私の後ろに、何か見えて?」
振り向く真紅、そこには月の形をした、黄色く光る入り口の様な物があった。
そこから兎の顔にシルクハットを被り、燕尾服を着た何者かが、ゆっくりと出てきた。
「貴方!…ラプラスの魔…」
ラプラスの魔は、おどけるように話し始めた。
「これはこれは…兎の巣穴に迷い込んだ羊が2匹…これは偶然?それとも必然?」
「何の用かしら?私は急いでいるのだけれど」
「望む者は逃げてゆき、望まぬ者は迫ってくる…しかし全ての願望は、やがて一つの場所へと導かれる」
ジュンは今までの経験から、この兎は自分達には危害を加えないと判断し、少し強気に出た。
「あんたの言ってる事は、相変わらず意味不明だよな…急いでるから手短に頼む」
「おや?少年は気が短い…そしてそれは私も同じ、舞台は役者を待っています、遅れる事の無きように…」
そう言ってラプラスの魔は、月の形をした入り口の横に立ち、胸元に手を置き会釈する。
90: 2009/04/21(火) 13:53:45.35 ID:uJzj5pMm0
「入った方が、良いんだよな?」
「それは貴方達の考え方次第…待っているのは歓喜?それとも悲哀?」
「ジュン!行きましょう!…ラプラス、一応…礼を言うわ」
2人は少し警戒しながら、月の入り口を潜った。
ラプラスの魔は、口元を緩めて笑う。
「彼らは勇敢?それとも無謀?…私は喜劇の案内者、そして喜劇の傍観者…大いなる余興の幕開けまで、今暫く…」
91: 2009/04/21(火) 13:54:51.82 ID:uJzj5pMm0
月の扉を潜った2人の前に扉が1つ、広大な空間の中に無造作にポツンと浮かんでいた。
その扉は他の扉と比べて、明らかに小さく、ジュンの背の高さと同じ程だった。
しかも見るからに古ぼけていて、扉の淵は腐りかけていた。
2人は緊張した面持ちで扉を見詰める。
「これが、僕達が探していた扉?…」
ジュンはやっと扉を見つけた事に安堵し、真紅に言った。
「あいつらに連絡した方が良いんじゃないか?結構時間も経ったし、心配してるだろ?」
「そうね、…ホーリエ!」
赤い光を発して、人工精霊は真紅の目の前で静止する。
「あの子達に伝えて頂戴、扉は見つからなかったと…もうすぐ私達は戻ると、お願いね」
ジュンは耳を疑った、今真紅は何と言った?扉が…見付からなかった?
「おい真紅!一体何を…」
「黙って!これは私の問題!あの子達には関係無い…そしてジュン、貴方にも」
思わぬ言葉に、ジュンは激怒した。
「何だよそれは!ここまで来て!」
「…ごめんなさいジュン、けれど私には…こうするしか無いの」
真紅はゆっくり浮上して、ジュンの頬に口付けをした。
突然の睡魔がジュンを襲う、ゆっくりと崩れ落ちるジュン。
「そんな…真…紅…、…どう…して?…」
その扉は他の扉と比べて、明らかに小さく、ジュンの背の高さと同じ程だった。
しかも見るからに古ぼけていて、扉の淵は腐りかけていた。
2人は緊張した面持ちで扉を見詰める。
「これが、僕達が探していた扉?…」
ジュンはやっと扉を見つけた事に安堵し、真紅に言った。
「あいつらに連絡した方が良いんじゃないか?結構時間も経ったし、心配してるだろ?」
「そうね、…ホーリエ!」
赤い光を発して、人工精霊は真紅の目の前で静止する。
「あの子達に伝えて頂戴、扉は見つからなかったと…もうすぐ私達は戻ると、お願いね」
ジュンは耳を疑った、今真紅は何と言った?扉が…見付からなかった?
「おい真紅!一体何を…」
「黙って!これは私の問題!あの子達には関係無い…そしてジュン、貴方にも」
思わぬ言葉に、ジュンは激怒した。
「何だよそれは!ここまで来て!」
「…ごめんなさいジュン、けれど私には…こうするしか無いの」
真紅はゆっくり浮上して、ジュンの頬に口付けをした。
突然の睡魔がジュンを襲う、ゆっくりと崩れ落ちるジュン。
「そんな…真…紅…、…どう…して?…」
92: 2009/04/21(火) 13:55:48.98 ID:uJzj5pMm0
「水銀燈に出来る事は、私にも出来るのね、やっぱり」
うつ伏せに眠るジュンに、優しく微笑みながら真紅は呟いた。
「ここから先の出来事は、貴方にとって大きな災いになるかも知れない。
あのラプラスの事だもの…安全の保障は無いわ、だから少しの間眠っていて頂戴、ジュン…」
「ホーリエ!さっきの発言は取り消すわ!ジュンの事を見ていて頂戴、お願いね」
赤い光を点滅させながら、ジュンの上で螺旋飛行を行うホーリエ。
真紅は一つ深呼吸をして、扉のノブに手を掛けた、そしてゆっくりと扉を開く。
「私は、自身の過ちに、けじめをつける…」
うつ伏せに眠るジュンに、優しく微笑みながら真紅は呟いた。
「ここから先の出来事は、貴方にとって大きな災いになるかも知れない。
あのラプラスの事だもの…安全の保障は無いわ、だから少しの間眠っていて頂戴、ジュン…」
「ホーリエ!さっきの発言は取り消すわ!ジュンの事を見ていて頂戴、お願いね」
赤い光を点滅させながら、ジュンの上で螺旋飛行を行うホーリエ。
真紅は一つ深呼吸をして、扉のノブに手を掛けた、そしてゆっくりと扉を開く。
「私は、自身の過ちに、けじめをつける…」
93: 2009/04/21(火) 13:57:09.84 ID:uJzj5pMm0
扉の中へゆっくりと入った真紅、その中は暗く、足元さえも見えない。
暫く目を慣らせてから、慎重に歩みを進める。
「全く…暗すぎるわね、ホーリエが必要だったかしら?」
真紅は先程ホーリエに言った命令を、少し後悔した。
『人の寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…か』
暗闇から、か細い声が聞こえた、声のする方向に真紅は向き直る。
「誰なの?フラーケ?フラーケなの!?」
『…その…声は、誰だ…?』
声のする方向から、突然光が発せられた、眩しさに目を瞑る真紅、少しづつ薄目をあけてゆく。
完全に目を開き、光の中に立つ人物を見た瞬間、真紅の頬を涙が伝った、無意識に涙が出ていた。
そこにはくたびれた麻のシャツの上に、茶色のベストを羽織り、黒色のズボンと皮靴で身を固め。
オールバックの銀髪、口元に威厳のある髭を蓄えた、初老の男が驚いた顔で立っていた。
「フラーケ!フラーケなのね!?私よ!真紅よ!!」
フラーケの元へ泣き叫びながら駆け寄る真紅、そんな真紅を片膝を付き、両手を広げて受け止めるフラーケ。
「フラーケ!フラーケ!私!貴方に謝らなきゃ!貴方に謝らなきゃ!!」
今まで抱えていた感情を、一気に吐き出さんと子供のように泣き叫ぶ真紅。
そんな真紅を、フラーケは優しい声で宥める。
「おやおや真紅…君はこんなに泣き虫だったかね?」
暫く目を慣らせてから、慎重に歩みを進める。
「全く…暗すぎるわね、ホーリエが必要だったかしら?」
真紅は先程ホーリエに言った命令を、少し後悔した。
『人の寿命は…短すぎる…、私には…時間が足りない…か』
暗闇から、か細い声が聞こえた、声のする方向に真紅は向き直る。
「誰なの?フラーケ?フラーケなの!?」
『…その…声は、誰だ…?』
声のする方向から、突然光が発せられた、眩しさに目を瞑る真紅、少しづつ薄目をあけてゆく。
完全に目を開き、光の中に立つ人物を見た瞬間、真紅の頬を涙が伝った、無意識に涙が出ていた。
そこにはくたびれた麻のシャツの上に、茶色のベストを羽織り、黒色のズボンと皮靴で身を固め。
オールバックの銀髪、口元に威厳のある髭を蓄えた、初老の男が驚いた顔で立っていた。
「フラーケ!フラーケなのね!?私よ!真紅よ!!」
フラーケの元へ泣き叫びながら駆け寄る真紅、そんな真紅を片膝を付き、両手を広げて受け止めるフラーケ。
「フラーケ!フラーケ!私!貴方に謝らなきゃ!貴方に謝らなきゃ!!」
今まで抱えていた感情を、一気に吐き出さんと子供のように泣き叫ぶ真紅。
そんな真紅を、フラーケは優しい声で宥める。
「おやおや真紅…君はこんなに泣き虫だったかね?」
95: 2009/04/21(火) 13:58:10.66 ID:uJzj5pMm0
「だって私!私は!貴方に酷い事をした!貴方に内緒で旅立った!貴方を置いて行った!」
号泣する真紅を、フラーケは優しく撫でた。
「いいんだよ真紅…もう泣くのはおよし、君の選択は正しかった、そう…正しかった、それでいいじゃないか」
真紅は泣きながらフラーケの顔を見た、フラーケの優しい目を見た。
「私は、私は正しかったの?許してくれるの?私の決断を…」
「私は分かっているよ真紅、君がどれほど悩み、苦しんで、導き出した決断なのかを…。
だからもう泣くのはおよし、真紅、君に涙は似合わない、そうだろ?」
「フラーケ…ううっ…フラーケ…」
真紅は我を忘れて号泣した、フラーケはそんな真紅をいつまでも優しく撫でていた。
号泣する真紅を、フラーケは優しく撫でた。
「いいんだよ真紅…もう泣くのはおよし、君の選択は正しかった、そう…正しかった、それでいいじゃないか」
真紅は泣きながらフラーケの顔を見た、フラーケの優しい目を見た。
「私は、私は正しかったの?許してくれるの?私の決断を…」
「私は分かっているよ真紅、君がどれほど悩み、苦しんで、導き出した決断なのかを…。
だからもう泣くのはおよし、真紅、君に涙は似合わない、そうだろ?」
「フラーケ…ううっ…フラーケ…」
真紅は我を忘れて号泣した、フラーケはそんな真紅をいつまでも優しく撫でていた。
96: 2009/04/21(火) 13:59:20.19 ID:uJzj5pMm0
ようやく落ち着きを取り戻した真紅が、フラーケに問いかける。
「フラーケ、貴方は何故、私の夢に入り込んだのかしら?」
「真紅の夢?私が?私は何と?」
「私を忘れないでくれ、頼む…と貴方は言っていたわ、これは?」
「そうか…私はそう言ったのか、驚かせたね、真紅。
だが私は、君の夢に入った覚えは無い。
あったとしてもそれは、無意識にやった事だ、すまない」
「そう…でも私は貴方を忘れた事は無い、だって貴方は私の大切な…」
フラーケは真紅の言葉を遮り、唐突に語り始めた。
「私は消えかけていたんだ、この世界から、確かnのフィールド…だったか?君に昔、名前を教わったな。
私はオカルトは信じない、そう決めていた、だが君と出会って考えが変わった。
この世には科学では解明出来ない事がある、私はそれを受け入れるしかなかった…。
そりゃそうだ、歩くオカルトが私の娘になったのだからな」
その言葉を聞いて、真紅は吹き出した。
「プッ、貴方は私の事を、よくそう言ってたわね…歩くオカルトだって…とても懐かしいわ」
「フラーケ、貴方は何故、私の夢に入り込んだのかしら?」
「真紅の夢?私が?私は何と?」
「私を忘れないでくれ、頼む…と貴方は言っていたわ、これは?」
「そうか…私はそう言ったのか、驚かせたね、真紅。
だが私は、君の夢に入った覚えは無い。
あったとしてもそれは、無意識にやった事だ、すまない」
「そう…でも私は貴方を忘れた事は無い、だって貴方は私の大切な…」
フラーケは真紅の言葉を遮り、唐突に語り始めた。
「私は消えかけていたんだ、この世界から、確かnのフィールド…だったか?君に昔、名前を教わったな。
私はオカルトは信じない、そう決めていた、だが君と出会って考えが変わった。
この世には科学では解明出来ない事がある、私はそれを受け入れるしかなかった…。
そりゃそうだ、歩くオカルトが私の娘になったのだからな」
その言葉を聞いて、真紅は吹き出した。
「プッ、貴方は私の事を、よくそう言ってたわね…歩くオカルトだって…とても懐かしいわ」
97: 2009/04/21(火) 14:00:32.51 ID:uJzj5pMm0
「nのフィールドは精神の世界、これは君と行動を共にして得られた知識だ。
精神と肉体は切り離せないと、私はそう思っていた、だが君がその考えを変えた。
そのおかげで私は今も、ここに居られる、強い信念があれば、この世界に身を留める事が出来る。
私にはやり残した事がある、私はそれを、どうしても成就させたい」
「それは過去を映し出す時計の事ね、貴方が生前に半生を懸けて挑んだ…完成、したのかしら?」
「さっきも言ったが、強い信念があれば、この世界に身を留める事が出来る。
私の信念…つまり過去を映し出す時計を完成させる事、後は分かるね?真紅」
「ごめんなさい…軽率だったわ」
「話を戻そう、私は消えかけていた、強い信念があったにも拘らず、私は消えかけていた…それは何故か?
私はこう考えた、私を覚えてくれている人、その人から私の記憶が消えた時、精神は氏ぬ…と。
つまり人は氏んで、肉体が滅んでも、誰かがその人を覚えていてくれれば、その人は氏んでいないんだ…。
覚えてくれている人の心の中に、生きていられる、そしてそれが精神なんだと、私は考えた。
…正直言うと、こんなオカルト的な臭い発言は、したくないんだがな」
「フフッ…貴方らしいわね、続けて頂戴」
「私は一人身だったし、もう過去の人間だ、こんなに長く私の事を覚えている人間はいない。
なので私の事を覚えてくれているのは、他でもない真紅、君以外はいないと考えた。
だから私は君の時計を止めた、君の心に生きる、私の精神を、再び強く輝かせる為に、私が消えない為に」
「私の…時計?消えない…為?」
精神と肉体は切り離せないと、私はそう思っていた、だが君がその考えを変えた。
そのおかげで私は今も、ここに居られる、強い信念があれば、この世界に身を留める事が出来る。
私にはやり残した事がある、私はそれを、どうしても成就させたい」
「それは過去を映し出す時計の事ね、貴方が生前に半生を懸けて挑んだ…完成、したのかしら?」
「さっきも言ったが、強い信念があれば、この世界に身を留める事が出来る。
私の信念…つまり過去を映し出す時計を完成させる事、後は分かるね?真紅」
「ごめんなさい…軽率だったわ」
「話を戻そう、私は消えかけていた、強い信念があったにも拘らず、私は消えかけていた…それは何故か?
私はこう考えた、私を覚えてくれている人、その人から私の記憶が消えた時、精神は氏ぬ…と。
つまり人は氏んで、肉体が滅んでも、誰かがその人を覚えていてくれれば、その人は氏んでいないんだ…。
覚えてくれている人の心の中に、生きていられる、そしてそれが精神なんだと、私は考えた。
…正直言うと、こんなオカルト的な臭い発言は、したくないんだがな」
「フフッ…貴方らしいわね、続けて頂戴」
「私は一人身だったし、もう過去の人間だ、こんなに長く私の事を覚えている人間はいない。
なので私の事を覚えてくれているのは、他でもない真紅、君以外はいないと考えた。
だから私は君の時計を止めた、君の心に生きる、私の精神を、再び強く輝かせる為に、私が消えない為に」
「私の…時計?消えない…為?」
99: 2009/04/21(火) 14:01:45.47 ID:uJzj5pMm0
「私が作った時計が止まる事で、君の中の私は再び思い出される、私の事を思い出してくれる、そう思った。
そうすれば私は、消えないで済む、効果はあった…しかし君には悪い事をした、すまない…」
「私の中のフラーケが…消えかけていたの?嘘だわ…そんな事…無い…」
「真紅、君は今、幸せかい?」
「…それは…分からない、まだアリスにはなっていないし…お父様にもお会い出来ていない…」
「分からない…か、義理の父として言わせてもらうが、君はきっと、今、幸せなんだと思う」
「何故?私はお父様にお会いする事が…」
「人の心は、きっと容量に限界がある、だから幸せな事柄が心を満たせば、悪い事は消し去られる。
君にとっての悪い事、その中に私への後悔、きっとそれがあった…だがそれが、私の精神を生かしてくれていた。
しかし、君の中の幸せな事柄が、私への後悔を…つまり私の事を少しだけ忘れさせたんだ。
だがそれは悪い事じゃ無い、むしろ私には嬉しい事だ…自分の娘の幸せを悲しむ父親はいない、そうだろ?」
「フラーケ…」
「でもまあ今のは、人の心に対しての私の仮説だから、歩くオカルトに当てはまるかは分からないがな!ハハハ!」
「フフッ…そうね、感動して損したわ、お父様」
「とにかく、私はそうして、真紅の中の私を、少しだけ思い出してもらった。
折角幸せだった所を、すまなかったな…だが私にはそうするしか無かった、許してほしい」
「私が貴方にした事に比べれば、大した事では無くてよ、でも…どうやって時計を止めたの?」
そうすれば私は、消えないで済む、効果はあった…しかし君には悪い事をした、すまない…」
「私の中のフラーケが…消えかけていたの?嘘だわ…そんな事…無い…」
「真紅、君は今、幸せかい?」
「…それは…分からない、まだアリスにはなっていないし…お父様にもお会い出来ていない…」
「分からない…か、義理の父として言わせてもらうが、君はきっと、今、幸せなんだと思う」
「何故?私はお父様にお会いする事が…」
「人の心は、きっと容量に限界がある、だから幸せな事柄が心を満たせば、悪い事は消し去られる。
君にとっての悪い事、その中に私への後悔、きっとそれがあった…だがそれが、私の精神を生かしてくれていた。
しかし、君の中の幸せな事柄が、私への後悔を…つまり私の事を少しだけ忘れさせたんだ。
だがそれは悪い事じゃ無い、むしろ私には嬉しい事だ…自分の娘の幸せを悲しむ父親はいない、そうだろ?」
「フラーケ…」
「でもまあ今のは、人の心に対しての私の仮説だから、歩くオカルトに当てはまるかは分からないがな!ハハハ!」
「フフッ…そうね、感動して損したわ、お父様」
「とにかく、私はそうして、真紅の中の私を、少しだけ思い出してもらった。
折角幸せだった所を、すまなかったな…だが私にはそうするしか無かった、許してほしい」
「私が貴方にした事に比べれば、大した事では無くてよ、でも…どうやって時計を止めたの?」
100: 2009/04/21(火) 14:03:21.40 ID:uJzj5pMm0
「それは…私にも良く分からん、私独自の部品か…多分」
「蒼星石が言っていた、黒の部品の事ね」
「何かね?その蒼星…石?石と話すのか?全く君は…どこまでオカルティックな娘なんだ?」
「フラーケには話した事も、会ってもらった事も無かったわね、私の姉妹よ」
「そうか…まあいい、黒の部品、それは私独自の製作手法、私のみが知る私独自の部品…。
きっとこの部品が、私の気持ちに応えてくれたんだろう…何しろ私は、時計を愛しているからな!
自分が作った時計は特に…」
「フラーケ?…貴方、本調子が出てきたのではなくて?」
「そうだな…もうじき、過去を映し出す時計が完成するからな、見るかね?」
「ええ、喜んで」
「蒼星石が言っていた、黒の部品の事ね」
「何かね?その蒼星…石?石と話すのか?全く君は…どこまでオカルティックな娘なんだ?」
「フラーケには話した事も、会ってもらった事も無かったわね、私の姉妹よ」
「そうか…まあいい、黒の部品、それは私独自の製作手法、私のみが知る私独自の部品…。
きっとこの部品が、私の気持ちに応えてくれたんだろう…何しろ私は、時計を愛しているからな!
自分が作った時計は特に…」
「フラーケ?…貴方、本調子が出てきたのではなくて?」
「そうだな…もうじき、過去を映し出す時計が完成するからな、見るかね?」
「ええ、喜んで」
102: 2009/04/21(火) 14:04:30.41 ID:uJzj5pMm0
真紅はフラーケのフィールドを一望した。
先程までは真っ暗で何も見えなかったが、改めて見ると、広い割には殺風景な空間だった。
沢山の言語の書物が入った本棚、工具が散らばった状態で載っている作業机、時計が沢山並べられたガラスケース、
貧相なベッド…その他の物は、暗闇に隠れている為か、確認出来なかった。
暫くして真紅は、部屋の片隅の暗がりに、何やら不思議な塊がある事に気付いた。
良く見ると、全体のほとんどが歯車で構成されており、何とも不恰好な形をしている。
歯車の大きさもまちまちで、何百と言う歯車が複雑に組み合わされている。
そして所々に、剥き出しの基盤や、理解出来ない部品も付いている…どうやら最近の技術も取り入れられている様だ。
塊は机と同じ程の大きさがあり、不恰好ながらも独特の整然さが感じ取れる。
ただ一つ気になったのは、歯車の塊の中に、一部空間があった事だった、そこが不恰好と思わせる要因なのか?
「これが…過去を映し出す…時計?」
「なかなかの目利きだね、そう…これが、過去を映し出す時計…?ところで真紅、もっと良い呼び名は無いのか?
もっとこう…何と言うか…偉大な…荘厳な感じで…」
「え…?だって貴方は、そう呼んでたじゃないの?」
「…そうだったか?もっとこう…まあいい、もうじき完成するから…それより真紅、君の時計を見せなさい」
「直してくれるのね!貴方の時計が壊れて不便だったわ、本当に」
「いや…違う、時計は…直さない」
「…?直さないの?何かしら?貴方お得意のサプライズかしら?あのアロエの時の様に?」
真紅は微笑みながらフラーケに時計を渡した、フラーケは時計を持ってガラスケースに移動した。
「確かに、サプライズかもしれないな…出て来なさい…」
先程までは真っ暗で何も見えなかったが、改めて見ると、広い割には殺風景な空間だった。
沢山の言語の書物が入った本棚、工具が散らばった状態で載っている作業机、時計が沢山並べられたガラスケース、
貧相なベッド…その他の物は、暗闇に隠れている為か、確認出来なかった。
暫くして真紅は、部屋の片隅の暗がりに、何やら不思議な塊がある事に気付いた。
良く見ると、全体のほとんどが歯車で構成されており、何とも不恰好な形をしている。
歯車の大きさもまちまちで、何百と言う歯車が複雑に組み合わされている。
そして所々に、剥き出しの基盤や、理解出来ない部品も付いている…どうやら最近の技術も取り入れられている様だ。
塊は机と同じ程の大きさがあり、不恰好ながらも独特の整然さが感じ取れる。
ただ一つ気になったのは、歯車の塊の中に、一部空間があった事だった、そこが不恰好と思わせる要因なのか?
「これが…過去を映し出す…時計?」
「なかなかの目利きだね、そう…これが、過去を映し出す時計…?ところで真紅、もっと良い呼び名は無いのか?
もっとこう…何と言うか…偉大な…荘厳な感じで…」
「え…?だって貴方は、そう呼んでたじゃないの?」
「…そうだったか?もっとこう…まあいい、もうじき完成するから…それより真紅、君の時計を見せなさい」
「直してくれるのね!貴方の時計が壊れて不便だったわ、本当に」
「いや…違う、時計は…直さない」
「…?直さないの?何かしら?貴方お得意のサプライズかしら?あのアロエの時の様に?」
真紅は微笑みながらフラーケに時計を渡した、フラーケは時計を持ってガラスケースに移動した。
「確かに、サプライズかもしれないな…出て来なさい…」
103: 2009/04/21(火) 14:06:08.06 ID:uJzj5pMm0
ガラスケースが光を発し、逆十字の柄が入った黒いドレスを纏った、赤い目の人形がゆっくりと現れた。
その人形は優雅にガラスケースに座り、フラーケを一瞥して、苛立ちを隠さずに言った。
「…話が長すぎるのよ…オッサン…」
真紅は突然の出来事に狼狽えた、自分が今見ている光景が信じられなかった…まさか?そんな?
驚きのあまり声も出せない真紅に、美しい微笑みを浮かべながら水銀燈は言った。
「フフッ…貴女のうろたえる表情は…何時見てもブサイクねェ…」
支援ありがとうございます、助かります。
その人形は優雅にガラスケースに座り、フラーケを一瞥して、苛立ちを隠さずに言った。
「…話が長すぎるのよ…オッサン…」
真紅は突然の出来事に狼狽えた、自分が今見ている光景が信じられなかった…まさか?そんな?
驚きのあまり声も出せない真紅に、美しい微笑みを浮かべながら水銀燈は言った。
「フフッ…貴女のうろたえる表情は…何時見てもブサイクねェ…」
支援ありがとうございます、助かります。
105: 2009/04/21(火) 14:07:18.28 ID:uJzj5pMm0
桜田家のリビングでは、翠星石、蒼星石、雛苺が沈んだ表情を浮かべて、ソファーに座っていた。
蒼星石は、自身の限界までnのフィールドでフラーケの扉を探していた為、大きな疲労を抱えていた。
そんな蒼星石を気遣って、翠星石と雛苺は側に付き添っていた。
「真紅とジュン君…まだ戻ってこないね…」
「そうですね…まだ薇は切れてないと思うですけど…」
「うゅ…心配なの…」
突然トイレの方から、大きな音がした、翠星石は飛び上がって驚いた。
「GYAAAAAああぁぁ!!何です!今のは何の音です!?」
蒼星石に抱きついて震える翠星石、蒼星石は苦しそうに言った。
「…お…おち…落ち着いて…翠星石…、僕が…見に行く…から」
そんな2人を、キョトンとした目で雛苺は見ていた。
蒼星石は慎重に歩みを進める、その後ろを蒼星石の袖口を引っ張りながら、翠星石が付いて行く。
雛苺はそのまた後ろで、くんくんのぬいぐるみを抱え込んで付いて来る。
廊下を半分ほど歩いた所で、反対側の角から何者かが現れた、金糸雀だった。
「…う、見つかった…かしら」
蒼星石は、自身の限界までnのフィールドでフラーケの扉を探していた為、大きな疲労を抱えていた。
そんな蒼星石を気遣って、翠星石と雛苺は側に付き添っていた。
「真紅とジュン君…まだ戻ってこないね…」
「そうですね…まだ薇は切れてないと思うですけど…」
「うゅ…心配なの…」
突然トイレの方から、大きな音がした、翠星石は飛び上がって驚いた。
「GYAAAAAああぁぁ!!何です!今のは何の音です!?」
蒼星石に抱きついて震える翠星石、蒼星石は苦しそうに言った。
「…お…おち…落ち着いて…翠星石…、僕が…見に行く…から」
そんな2人を、キョトンとした目で雛苺は見ていた。
蒼星石は慎重に歩みを進める、その後ろを蒼星石の袖口を引っ張りながら、翠星石が付いて行く。
雛苺はそのまた後ろで、くんくんのぬいぐるみを抱え込んで付いて来る。
廊下を半分ほど歩いた所で、反対側の角から何者かが現れた、金糸雀だった。
「…う、見つかった…かしら」
106: 2009/04/21(火) 14:08:39.07 ID:uJzj5pMm0
「金糸雀!全く…脅かさないでよね!」
「何だ、ガナり屋でしたか…ビビって損したです」
「ガナり屋って何なのかしら!そんな商売してないかしら!!いい加減名前を覚えてほしいかしら~!!」
「そうやって、がなり立てるから、ガナり屋なんじゃないの?」
「そ~ぅですぅ~!流石は双子の姉妹ですぅ~!以心伝心です~!」
「うわ~い!ガナり屋!ガナり屋~~~!」
「雛苺…意味、分かってる?」
「…まあいいかしら、真紅はどこ?」
「真紅は今、nのフィールドにいるけど…何で?」
金糸雀の表情が曇る、その一瞬の表情を、蒼星石は見逃さなかった。
「金糸雀…君は、何かを隠しているね?」
「何だ、ガナり屋でしたか…ビビって損したです」
「ガナり屋って何なのかしら!そんな商売してないかしら!!いい加減名前を覚えてほしいかしら~!!」
「そうやって、がなり立てるから、ガナり屋なんじゃないの?」
「そ~ぅですぅ~!流石は双子の姉妹ですぅ~!以心伝心です~!」
「うわ~い!ガナり屋!ガナり屋~~~!」
「雛苺…意味、分かってる?」
「…まあいいかしら、真紅はどこ?」
「真紅は今、nのフィールドにいるけど…何で?」
金糸雀の表情が曇る、その一瞬の表情を、蒼星石は見逃さなかった。
「金糸雀…君は、何かを隠しているね?」
108: 2009/04/21(火) 14:09:59.84 ID:uJzj5pMm0
その一言で、金糸雀の表情は一変した、突然静かに泣き始めた。
「カナは…カナは…真紅を…裏切って…」
金糸雀は蒼星石に駆け寄って、胸に顔を埋めて泣いてしまった。
「ちょ…ちょっと、何なのさ!?金糸雀?」
「!何ですこのガキンチョは!?その胸はか弱い翠星石の為にあるんです!早く離れろです~~!」
「うゅ…金糸雀…泣いてるの?元気無いの?ヒナも悲しいの…」
「みんな落ち着いてよ!翠星石引っ張らないでよ!金糸雀も落ち着いてよ!雛苺も泣かないでよ!
あ~~…もう!リビングで話し合おうよ!」
「カナは…カナは…真紅を…裏切って…」
金糸雀は蒼星石に駆け寄って、胸に顔を埋めて泣いてしまった。
「ちょ…ちょっと、何なのさ!?金糸雀?」
「!何ですこのガキンチョは!?その胸はか弱い翠星石の為にあるんです!早く離れろです~~!」
「うゅ…金糸雀…泣いてるの?元気無いの?ヒナも悲しいの…」
「みんな落ち着いてよ!翠星石引っ張らないでよ!金糸雀も落ち着いてよ!雛苺も泣かないでよ!
あ~~…もう!リビングで話し合おうよ!」
109: 2009/04/21(火) 14:10:58.96 ID:uJzj5pMm0
やっと泣き止んだ金糸雀は、今まで自分に起こった事を、事細かく皆に伝えた。
真紅の笑顔の事、水銀燈との戦闘の事、自身の弱さの事…そして真紅の時計を巡って、水銀燈が何かを企てている事。
「真紅の事は、いけ好かないけど…今回は助けたいかしら!」
「そうか…そんな事があったんだね金糸雀」
「カナは助かる為に…真紅を裏切ってしまった…カナが弱かったから…だから弱いなりの罪滅ぼしかしら!」
「いや…金糸雀、君は強いよ!だってこうして僕らに、全てを打ち明けてくれたじゃないか」
「じゃあ早く!みんなnのフィールドに付いて来て欲しいかしら!真紅が危ないかしら!」
「うぃ!ヒナは真紅の家来だから…頑張るの!」
「分かった!みんなで真紅を助けよう!…って翠星石!?泣いてるの?」
「うぅ…感受性に長けた翠星石は…こういう話に弱いですぅ、
裏切りとか…罪滅ぼしとか…グスッ…いじらしいですぅ…」
そう言って、勢い良く蒼星石の胸に飛び込む翠星石。
蒼星石は、飛び込まれた勢いでずれた帽子を被り直しながら、呆れ顔で言った。
「全く…本当に君は、よく分からない姉だよ…」
「フフッ…分からなくていいですよ………さあ、お前ら行くですよ!真紅の所へ!」
真紅の笑顔の事、水銀燈との戦闘の事、自身の弱さの事…そして真紅の時計を巡って、水銀燈が何かを企てている事。
「真紅の事は、いけ好かないけど…今回は助けたいかしら!」
「そうか…そんな事があったんだね金糸雀」
「カナは助かる為に…真紅を裏切ってしまった…カナが弱かったから…だから弱いなりの罪滅ぼしかしら!」
「いや…金糸雀、君は強いよ!だってこうして僕らに、全てを打ち明けてくれたじゃないか」
「じゃあ早く!みんなnのフィールドに付いて来て欲しいかしら!真紅が危ないかしら!」
「うぃ!ヒナは真紅の家来だから…頑張るの!」
「分かった!みんなで真紅を助けよう!…って翠星石!?泣いてるの?」
「うぅ…感受性に長けた翠星石は…こういう話に弱いですぅ、
裏切りとか…罪滅ぼしとか…グスッ…いじらしいですぅ…」
そう言って、勢い良く蒼星石の胸に飛び込む翠星石。
蒼星石は、飛び込まれた勢いでずれた帽子を被り直しながら、呆れ顔で言った。
「全く…本当に君は、よく分からない姉だよ…」
「フフッ…分からなくていいですよ………さあ、お前ら行くですよ!真紅の所へ!」
110: 2009/04/21(火) 14:12:33.67 ID:uJzj5pMm0
「ほら、約束の時計だ」
フラーケは真紅の時計を、水銀燈に渡した。
水銀燈はフラーケの頬を、艶かしく撫でながら、耳元で呟いた。
「貴方と組んで、本当に良かったわぁ…次は私が、約束を守る番ねェ…」
真紅は驚愕の表情のまま、身動きも出来なかった。
フラーケの側で呟いているのは水銀燈、時計を渡したフラーケ。
フラーケは何故、時計を渡したの?
様々な考えが真紅の脳裏を過ぎる…でも全く真相が見えない。
「さあ真紅ゥ?…この時計、フラーケの愛情が篭った時計を、私はどうすると思う?」
その水銀燈の言葉で真紅は我に返った、これは現実…信じられないけど正真正銘の現実。
問いかけてきた水銀燈には目もくれず、必氏の表情でフラーケに問いかける。
「何故!?水銀燈と貴方が!時計を!どうして!?私は!?」
フラーケは静かに語り始めた。
「私は…約束を交わしたんだ、真紅」
「水銀燈は、私に言った、時間の薇を貴方に渡す、その代わり、真紅の時計を渡せ…と」
「私を恨むなよ真紅、君と出合った事、全ては…それが元凶だったんだ…」
真紅はフラーケの言った事を理解しようとした、約束?時間の薇?時計?渡す?…元凶?
フラーケは真紅の時計を、水銀燈に渡した。
水銀燈はフラーケの頬を、艶かしく撫でながら、耳元で呟いた。
「貴方と組んで、本当に良かったわぁ…次は私が、約束を守る番ねェ…」
真紅は驚愕の表情のまま、身動きも出来なかった。
フラーケの側で呟いているのは水銀燈、時計を渡したフラーケ。
フラーケは何故、時計を渡したの?
様々な考えが真紅の脳裏を過ぎる…でも全く真相が見えない。
「さあ真紅ゥ?…この時計、フラーケの愛情が篭った時計を、私はどうすると思う?」
その水銀燈の言葉で真紅は我に返った、これは現実…信じられないけど正真正銘の現実。
問いかけてきた水銀燈には目もくれず、必氏の表情でフラーケに問いかける。
「何故!?水銀燈と貴方が!時計を!どうして!?私は!?」
フラーケは静かに語り始めた。
「私は…約束を交わしたんだ、真紅」
「水銀燈は、私に言った、時間の薇を貴方に渡す、その代わり、真紅の時計を渡せ…と」
「私を恨むなよ真紅、君と出合った事、全ては…それが元凶だったんだ…」
真紅はフラーケの言った事を理解しようとした、約束?時間の薇?時計?渡す?…元凶?
111: 2009/04/21(火) 14:16:26.73 ID:uJzj5pMm0
フラーケは真紅の困惑の表情など、全く気に掛けず話し続ける。
「私は行き詰まった、過去を映し出す…時計?ケッ!気に入らない名前だが、とにかく製作に行き詰まった。
私は百年ほど懸けて、ここまでの装置は作る事が出来た、後は時間の薇をはめ込むだけの所までな。
だがそれからの何百年は…生き地獄だった、時間の薇が完成しないんだ、分かるか?真紅?この気持ちが?…」
突然フラーケは叫んだ。
「何っ百年も懸けたのに完成しないんだ!!
必氏に考えても!必氏に作っても!時間の薇が完成しないんだ!!」
フラーケは怒りを露に、机の工具をなぎ払った。
フィールド内に、床に落ちた工具の鈍い音が鳴り響く。
「私は行き詰まった、過去を映し出す…時計?ケッ!気に入らない名前だが、とにかく製作に行き詰まった。
私は百年ほど懸けて、ここまでの装置は作る事が出来た、後は時間の薇をはめ込むだけの所までな。
だがそれからの何百年は…生き地獄だった、時間の薇が完成しないんだ、分かるか?真紅?この気持ちが?…」
突然フラーケは叫んだ。
「何っ百年も懸けたのに完成しないんだ!!
必氏に考えても!必氏に作っても!時間の薇が完成しないんだ!!」
フラーケは怒りを露に、机の工具をなぎ払った。
フィールド内に、床に落ちた工具の鈍い音が鳴り響く。
112: 2009/04/21(火) 14:17:37.49 ID:uJzj5pMm0
「私は何百年も、自身の技術の未熟さに苦しめられたんだ…いくら頑張っても、君のお父様を超えられない…。
何百年も生き恥をさらしてきたんだ…己の無能さを呪いながら、でも私は氏ねなかったんだ…何故だと思う?
お前だ真紅!お前のせいで!愛するおまえの所為で!!」
「お前が私を覚えている所為で、私は氏ねなかった…。
誰かが覚えている限り、精神は残る…さっきお前に説明したよな?私はもう残りたくなかった!消滅したかった!
なのにお前の所為で、私は生き恥をさらして、己の無能を呪いながら何百年も生きるしか無かったんだ!
何故お前は、私の事を忘れてくれなかった?何故こんなにも苦しめた?何故こんなにも私を生かしたんだ!!」
「私は時計を止めたよな?あれはお前への復讐だ!何百年も私を苦しめた復讐の為だ!!
私の事を強く思い出せば、お前は無邪気に、ここにやってくる…時間の薇を持ってお前はここへやってくる!
ここにお前が現れた時、解体するつもりだった、以前言ってたろ?解体してほしいって?
解体して時間の薇の秘密を奪うつもりだった、そうやって装置を完成させるつもりだった…。
そうすれば私の思いは成就され、私は塵に還る事が出来る!そして愛しく憎いお前も氏ぬ!」
「だが現れたのは水銀燈、しかしこいつは、良い話を持ってきた。
真紅を陥れる巧妙な罠を手土産に、こいつはやってきた。
こいつは凄い奴だよ…真紅の夢に干渉出来るんだからな!ククッ…大したもんだよ!
…私はその話に乗った、どうせ頃すなら、絶望させて頃した方がいいからな!!
さっきの演技も、こいつが考えたんだ…しかし傑作だな真紅!今のお前の表情は!!ククッ…クハハハ!!」
興奮するフラーケを、水銀燈は優しく撫でながら言った。
「貴方ぁ…ちょっと沸点が低すぎよぉ…カルシウム不足?まあいいわ、後は私にまかせなさい」
真紅を見下しながら、水銀燈は続ける。
「まぁ…そう言う訳なの、だから貴女はここで…絶望したまま氏になさい!」
何百年も生き恥をさらしてきたんだ…己の無能さを呪いながら、でも私は氏ねなかったんだ…何故だと思う?
お前だ真紅!お前のせいで!愛するおまえの所為で!!」
「お前が私を覚えている所為で、私は氏ねなかった…。
誰かが覚えている限り、精神は残る…さっきお前に説明したよな?私はもう残りたくなかった!消滅したかった!
なのにお前の所為で、私は生き恥をさらして、己の無能を呪いながら何百年も生きるしか無かったんだ!
何故お前は、私の事を忘れてくれなかった?何故こんなにも苦しめた?何故こんなにも私を生かしたんだ!!」
「私は時計を止めたよな?あれはお前への復讐だ!何百年も私を苦しめた復讐の為だ!!
私の事を強く思い出せば、お前は無邪気に、ここにやってくる…時間の薇を持ってお前はここへやってくる!
ここにお前が現れた時、解体するつもりだった、以前言ってたろ?解体してほしいって?
解体して時間の薇の秘密を奪うつもりだった、そうやって装置を完成させるつもりだった…。
そうすれば私の思いは成就され、私は塵に還る事が出来る!そして愛しく憎いお前も氏ぬ!」
「だが現れたのは水銀燈、しかしこいつは、良い話を持ってきた。
真紅を陥れる巧妙な罠を手土産に、こいつはやってきた。
こいつは凄い奴だよ…真紅の夢に干渉出来るんだからな!ククッ…大したもんだよ!
…私はその話に乗った、どうせ頃すなら、絶望させて頃した方がいいからな!!
さっきの演技も、こいつが考えたんだ…しかし傑作だな真紅!今のお前の表情は!!ククッ…クハハハ!!」
興奮するフラーケを、水銀燈は優しく撫でながら言った。
「貴方ぁ…ちょっと沸点が低すぎよぉ…カルシウム不足?まあいいわ、後は私にまかせなさい」
真紅を見下しながら、水銀燈は続ける。
「まぁ…そう言う訳なの、だから貴女はここで…絶望したまま氏になさい!」
113: 2009/04/21(火) 14:18:52.67 ID:uJzj5pMm0
真紅は突然吐き気を催し崩れ落ちた、必氏に吐き気を堪える、涙が止まらなかった。
目の前の光景が、フラーケ言葉が、真紅には耐えられなかった。
フラーケが…あの優しかったフラーケが…。
私の所為で何百年も苦しんでいたの?
私の所為で何百年も生き恥をさらしたの?
私の所為で変わってしまったの?
「…フ…フラーケ?は?私を…もう…娘と…して…愛して…無い…の?…」
「今も愛しているよ…頃したい程にな!!」
その一言で真紅の理性は崩れた、涙がとめどなく流れた、慟哭がフィールドに響き渡った。
目の前の光景が、フラーケ言葉が、真紅には耐えられなかった。
フラーケが…あの優しかったフラーケが…。
私の所為で何百年も苦しんでいたの?
私の所為で何百年も生き恥をさらしたの?
私の所為で変わってしまったの?
「…フ…フラーケ?は?私を…もう…娘と…して…愛して…無い…の?…」
「今も愛しているよ…頃したい程にな!!」
その一言で真紅の理性は崩れた、涙がとめどなく流れた、慟哭がフィールドに響き渡った。
114: 2009/04/21(火) 14:19:58.32 ID:uJzj5pMm0
「さぁ、私がこの時計をどうするのか?答えはまだかしらぁ?」
妖艶な薄笑いを浮かべて、真紅の懐中時計を正面にかざす水銀燈。
「時っ間切れー、貴女…話す事も出来ない程に壊れちゃったのかしらぁ?」
真紅はまだ崩れ落ちて号泣していた、水銀燈は痺れを切らせ叫んだ。
「あんた…いい加減にしなさいよ!」
水銀燈が放った黒い羽が、真紅の巻き毛を切断して床に刺さった。
真紅は泣き崩れた表情のまま、力なく顔を上げ、水銀燈を見た。
水銀燈は左手で時計を正面にかざし、右手には剣を握っていた。
「貴女の大切な物を壊すのは…これで何度目かしらねェ…フフッ…」
「…水銀燈…止めて…頂戴…それだけは…お願い…だから」
「フフッ…何かしら?お願いだから?止めて?ですってぇ…?」
水銀燈は目を細めて、真紅を微笑みながら見下し、暫くして突然鬼のような形相で叫んだ。
「止めて欲しけりゃ!本気で掛かってきなさい!真紅!!」
その言葉を吐き捨てる様に言った直後に、水銀燈は時計を自身の頭上に高々と投げた。
素早く剣を両手に持ち直し、落下地点で時計を切る為に構えた水銀燈。
真紅はその一連の動作がスローに感じられた、だが自身の体は、微動だに出来なかった。
目を瞑る事しか出来なかった…。
真紅が目を開けた時、時計は無かった、しかし何故か、地面に散らばってもいなかった。
ただ、水銀燈が真っ暗な空間を、忌々しい表情で睨んでいる事だけが、理解できた。
妖艶な薄笑いを浮かべて、真紅の懐中時計を正面にかざす水銀燈。
「時っ間切れー、貴女…話す事も出来ない程に壊れちゃったのかしらぁ?」
真紅はまだ崩れ落ちて号泣していた、水銀燈は痺れを切らせ叫んだ。
「あんた…いい加減にしなさいよ!」
水銀燈が放った黒い羽が、真紅の巻き毛を切断して床に刺さった。
真紅は泣き崩れた表情のまま、力なく顔を上げ、水銀燈を見た。
水銀燈は左手で時計を正面にかざし、右手には剣を握っていた。
「貴女の大切な物を壊すのは…これで何度目かしらねェ…フフッ…」
「…水銀燈…止めて…頂戴…それだけは…お願い…だから」
「フフッ…何かしら?お願いだから?止めて?ですってぇ…?」
水銀燈は目を細めて、真紅を微笑みながら見下し、暫くして突然鬼のような形相で叫んだ。
「止めて欲しけりゃ!本気で掛かってきなさい!真紅!!」
その言葉を吐き捨てる様に言った直後に、水銀燈は時計を自身の頭上に高々と投げた。
素早く剣を両手に持ち直し、落下地点で時計を切る為に構えた水銀燈。
真紅はその一連の動作がスローに感じられた、だが自身の体は、微動だに出来なかった。
目を瞑る事しか出来なかった…。
真紅が目を開けた時、時計は無かった、しかし何故か、地面に散らばってもいなかった。
ただ、水銀燈が真っ暗な空間を、忌々しい表情で睨んでいる事だけが、理解できた。
116: 2009/04/21(火) 14:21:22.28 ID:uJzj5pMm0
「貴女…何のつもりかしら?」
水銀燈が真っ暗な空間に言い放つ、そこから左目に薔薇模様の眼帯をしている人形が、ゆっくりと現れた。
それは薔薇水晶だった。
真紅の時計を右手に持ち、正面にかざしながら、無表情に片言で話す。
「貴女…何の…つもり…?」
「私の邪魔をするつもりなの!」
「貴女の…邪魔を…する…つもり…なの…」
そう言って、小さく口元を歪めて笑った。
フラーケは痺れを切らせて、水銀燈を怒鳴った。
「おいお前!何をしているんだ!早く真紅を殺せ!時間の薇を私に渡せ!」
水銀燈はフラーケを横目で睨みながら答えた。
「五月蝿いわよオッサン!どうせアンタは時間の薇を手に入れられない!」
フラーケはその言葉に、表情が凍った。
「何故!?お前は確かに言ったじゃないか!?真紅を頃し、時間の薇を渡すと!?」
「貴方本当にお馬鹿さんねェ…真紅が氏んだら時間の薇の効果は無くなるのよ!だからアンタは手に入れられない!」
水銀燈は畳み掛けるように続けた。
「あんたが真紅をジャンクにしても!私が真紅をジャンクにしても!あんたは時間の薇を手に入れられない!
アンタが自分で作らなければ、手に入らないのよ!あんたは昔っから…救い様の無いお馬鹿さんねェ」
フラーケは信じられないと言った目で水銀燈を見ながら、肩を揺さぶり、そして弱弱しく言った。
「おい…嘘だろ?そんな事ないだろ?おまえは私を騙したのか?今の言葉は嘘なんだろ?時間の薇は…」
水銀燈が真っ暗な空間に言い放つ、そこから左目に薔薇模様の眼帯をしている人形が、ゆっくりと現れた。
それは薔薇水晶だった。
真紅の時計を右手に持ち、正面にかざしながら、無表情に片言で話す。
「貴女…何の…つもり…?」
「私の邪魔をするつもりなの!」
「貴女の…邪魔を…する…つもり…なの…」
そう言って、小さく口元を歪めて笑った。
フラーケは痺れを切らせて、水銀燈を怒鳴った。
「おいお前!何をしているんだ!早く真紅を殺せ!時間の薇を私に渡せ!」
水銀燈はフラーケを横目で睨みながら答えた。
「五月蝿いわよオッサン!どうせアンタは時間の薇を手に入れられない!」
フラーケはその言葉に、表情が凍った。
「何故!?お前は確かに言ったじゃないか!?真紅を頃し、時間の薇を渡すと!?」
「貴方本当にお馬鹿さんねェ…真紅が氏んだら時間の薇の効果は無くなるのよ!だからアンタは手に入れられない!」
水銀燈は畳み掛けるように続けた。
「あんたが真紅をジャンクにしても!私が真紅をジャンクにしても!あんたは時間の薇を手に入れられない!
アンタが自分で作らなければ、手に入らないのよ!あんたは昔っから…救い様の無いお馬鹿さんねェ」
フラーケは信じられないと言った目で水銀燈を見ながら、肩を揺さぶり、そして弱弱しく言った。
「おい…嘘だろ?そんな事ないだろ?おまえは私を騙したのか?今の言葉は嘘なんだろ?時間の薇は…」
117: 2009/04/21(火) 14:23:03.21 ID:uJzj5pMm0
「あぁ…もう…鬱陶しいわねぇ!!」
水銀燈はフラーケの頬を思いっきり引っ叩き、倒れたフラーケを冷笑しながら言った。
「まだ分からないの?確かに私は貴方を騙したわよ!でも良いじゃない?真紅は私の手で壊れるんだからぁ…
アンタはそこで、真紅の解体ショーを眺めてるがいいわ!」
床に仰向けに倒れたフラーケは、過去に自分を殺そうとしていた頃の水銀燈を、思い出していた。
そうだこいつは、私を悪夢の中に放り込んで、廃人にしようとした。
そうだこいつは、私の薬指を、契約の指輪をはめた薬指を、切断しようとした。
そうだこいつは、青く燃え盛る黒い羽で、私を焼き殺そうとした。
そんなこいつに、簡単にだまされた、時間の薇につられて、私は簡単にだまされたんだ!
フラーケは天井のランプを眺めた、不意に自分の滑稽さが可笑しくなり、狂ったように哄笑した。
水銀燈はフラーケの頬を思いっきり引っ叩き、倒れたフラーケを冷笑しながら言った。
「まだ分からないの?確かに私は貴方を騙したわよ!でも良いじゃない?真紅は私の手で壊れるんだからぁ…
アンタはそこで、真紅の解体ショーを眺めてるがいいわ!」
床に仰向けに倒れたフラーケは、過去に自分を殺そうとしていた頃の水銀燈を、思い出していた。
そうだこいつは、私を悪夢の中に放り込んで、廃人にしようとした。
そうだこいつは、私の薬指を、契約の指輪をはめた薬指を、切断しようとした。
そうだこいつは、青く燃え盛る黒い羽で、私を焼き殺そうとした。
そんなこいつに、簡単にだまされた、時間の薇につられて、私は簡単にだまされたんだ!
フラーケは天井のランプを眺めた、不意に自分の滑稽さが可笑しくなり、狂ったように哄笑した。
118: 2009/04/21(火) 14:24:12.67 ID:uJzj5pMm0
「さて…真紅をジャンクにする前に、小賢しい妹の相手をしようかしらねェ…」
水銀燈は薔薇水晶に向き直り、剣先を向けた。
「泥棒猫ちゃん…その時計を返しなさい、返答によっては…貴女…ジャンクになるわよ!」
薔薇水晶は全く動じず、凛とした姿勢で、無表情に答えた。
「これは…真紅の…大事な時計、だから…私が壊す!」
握っていた時計が軋む音をたてた刹那、薔薇水晶の頬を青く燃える黒い羽が掠った。
「私は言ったわよ…返答によっては、ジャンクにすると!」
水銀燈は薔薇水晶に向かって、剣を構え飛び掛った。
薔薇水晶は右手に持った時計を左手に移し、水晶の柱を眼前に放出して壁を作った。
しかし水晶の壁は水銀燈の一太刀で、放出させた刹那に粉々に粉砕された。
水銀燈は先の一太刀の勢いで体を回転させながら、薔薇水晶の懐に一瞬で潜り込んだ。
そして、立ち上がりながら攻撃しようとしたが、薔薇水晶の右手には既に水晶の剣が握られていた。
水晶の剣を無表情に振りかぶる薔薇水晶。
だがその一太刀に水銀燈は咄嗟に反応し、背中で剣を構え防御した。
フィールド内に、ぶつかり合う剣の、鈍い金属音が響き渡る。
水銀燈は背中で剣を受け止めたまま体をひねり、ぶつかり合う剣を薔薇水晶の正面に移動させ、柄を握り直した。
鍔迫り合いになった2人、薔薇水晶が口元を歪めて言った。
「貴女…強い、でも…私も…強い!」
水銀燈も冷酷な笑みを浮かべて言い放つ。
「真紅をヤる前に、あんたのローザミスティカを奪うのも、悪く無いわね!」
水銀燈は鍔迫り合いに打ち勝ち、間髪入れず薔薇水晶を蹴り上げた、蹴られた勢いを空中で頃し、静止した薔薇水晶。
薔薇水晶は時計を持った左手を使って、無言で手招きした。
「生意気な妹ね…後悔するわよ!」
2人は空中で剣を交えながら、フィールドの暗がりへと消えていった。
水銀燈は薔薇水晶に向き直り、剣先を向けた。
「泥棒猫ちゃん…その時計を返しなさい、返答によっては…貴女…ジャンクになるわよ!」
薔薇水晶は全く動じず、凛とした姿勢で、無表情に答えた。
「これは…真紅の…大事な時計、だから…私が壊す!」
握っていた時計が軋む音をたてた刹那、薔薇水晶の頬を青く燃える黒い羽が掠った。
「私は言ったわよ…返答によっては、ジャンクにすると!」
水銀燈は薔薇水晶に向かって、剣を構え飛び掛った。
薔薇水晶は右手に持った時計を左手に移し、水晶の柱を眼前に放出して壁を作った。
しかし水晶の壁は水銀燈の一太刀で、放出させた刹那に粉々に粉砕された。
水銀燈は先の一太刀の勢いで体を回転させながら、薔薇水晶の懐に一瞬で潜り込んだ。
そして、立ち上がりながら攻撃しようとしたが、薔薇水晶の右手には既に水晶の剣が握られていた。
水晶の剣を無表情に振りかぶる薔薇水晶。
だがその一太刀に水銀燈は咄嗟に反応し、背中で剣を構え防御した。
フィールド内に、ぶつかり合う剣の、鈍い金属音が響き渡る。
水銀燈は背中で剣を受け止めたまま体をひねり、ぶつかり合う剣を薔薇水晶の正面に移動させ、柄を握り直した。
鍔迫り合いになった2人、薔薇水晶が口元を歪めて言った。
「貴女…強い、でも…私も…強い!」
水銀燈も冷酷な笑みを浮かべて言い放つ。
「真紅をヤる前に、あんたのローザミスティカを奪うのも、悪く無いわね!」
水銀燈は鍔迫り合いに打ち勝ち、間髪入れず薔薇水晶を蹴り上げた、蹴られた勢いを空中で頃し、静止した薔薇水晶。
薔薇水晶は時計を持った左手を使って、無言で手招きした。
「生意気な妹ね…後悔するわよ!」
2人は空中で剣を交えながら、フィールドの暗がりへと消えていった。
119: 2009/04/21(火) 14:26:26.39 ID:uJzj5pMm0
真紅は号泣を強引に抑え、咽びながら跪いた体勢で周囲を見回した。
フラーケが仰向けに倒れているのが見え、フラーケに駆け寄った。
「フラーケ!?どうしたの!フラーケ!」
フラーケは嘲笑を浮かべて、真紅に言った。
「…ククッ…何だお前は?私の話を聞いてなかったのか?理解出来なかったのか?」
真紅は無理に笑顔を作って返事をしようとした、しかし引き攣ったその表情は笑顔とは程遠い物だった。
「理解は…出来た…出来ない…」
「私はおまえが憎いんだぞ?頃したい程…」
「もう止めて頂戴!!」
真紅は両拳を握り締め、俯いて叫んだ。
「私の知っているフラーケは…優しいフラーケは、もう…いないの?此処にはもう…いないの?」
真紅はフラーケの胸元を、優しく撫でた。
「…ああ…いないね、残念ながら今ここに居るのは、復讐しか考えていない、おまえの知らないフラーケだ」
「そう…分かった…私の所為で、貴方は変わったのね?…私に復讐したいのね?」
「何回言わせるんだ真紅…そうだよ!おまえは何百年も私を苦しめた!」
「分かった…やりなさい、復讐しなさい…私はここにいるわ」
そう言って、笑顔で座りなおす真紅、そして静かに目を閉じた。
「…何のつもりだ真紅?私は本当にやるぞ?」
「分かっているわ、貴方は昔からそう…こうと決めたら…最後までやる…そういう人だもの…」
「解った口を聞くな!私の事が…おまえに分かる訳無い!私の苦しみが理解出来る訳無い!」
フラーケは床に転がっていたハンマーを拾い上げ、頭上に構えた。
「さようなら、私の愛しい娘…そして狂おしいほど憎い娘ッ!」
フラーケが仰向けに倒れているのが見え、フラーケに駆け寄った。
「フラーケ!?どうしたの!フラーケ!」
フラーケは嘲笑を浮かべて、真紅に言った。
「…ククッ…何だお前は?私の話を聞いてなかったのか?理解出来なかったのか?」
真紅は無理に笑顔を作って返事をしようとした、しかし引き攣ったその表情は笑顔とは程遠い物だった。
「理解は…出来た…出来ない…」
「私はおまえが憎いんだぞ?頃したい程…」
「もう止めて頂戴!!」
真紅は両拳を握り締め、俯いて叫んだ。
「私の知っているフラーケは…優しいフラーケは、もう…いないの?此処にはもう…いないの?」
真紅はフラーケの胸元を、優しく撫でた。
「…ああ…いないね、残念ながら今ここに居るのは、復讐しか考えていない、おまえの知らないフラーケだ」
「そう…分かった…私の所為で、貴方は変わったのね?…私に復讐したいのね?」
「何回言わせるんだ真紅…そうだよ!おまえは何百年も私を苦しめた!」
「分かった…やりなさい、復讐しなさい…私はここにいるわ」
そう言って、笑顔で座りなおす真紅、そして静かに目を閉じた。
「…何のつもりだ真紅?私は本当にやるぞ?」
「分かっているわ、貴方は昔からそう…こうと決めたら…最後までやる…そういう人だもの…」
「解った口を聞くな!私の事が…おまえに分かる訳無い!私の苦しみが理解出来る訳無い!」
フラーケは床に転がっていたハンマーを拾い上げ、頭上に構えた。
「さようなら、私の愛しい娘…そして狂おしいほど憎い娘ッ!」
120: 2009/04/21(火) 14:27:47.16 ID:uJzj5pMm0
フラーケがハンマーを振り下ろすのと同時に、フラーケの背後から苺わだちが伸び、腕を一瞬で縛り上げた。
苺わだちは、腕から下半身まで一気に伸び、全身を拘束した。
フラーケはバランスを崩し、仰向けに倒れた。
真紅を呼ぶ声が遠くから聞こえた、ジュンの声だった。
真紅はゆっくりと目を開けて、声のする方に向き直った。
そこには息を切らせて走ってきたジュンと、翠星石、蒼星石、雛苺、金糸雀が立っていた。
ホーリエは真紅の周りを纏わり付くように飛行し、手の中に消えていった。
そんな仲間達を、無表情に見つめる真紅。
「貴方達…どうして来たの?」
その真紅の異様さに、少し怖気づきながらもジュンが話しかけた。
「どうしてって…真紅が危険だって…こいつらが」
蒼星石が真紅の前に駆け寄って言う。
「金糸雀が、水銀燈が真紅を狙ってるって教えてくれたんだ!それで僕達はnのフィールドに入った。
そうしたらラプラスが現れて、導かれるままに…」
「扉の入り口で、ジュンがお昼寝してたです!叩き起こして引っ張ってきたです!」
「部屋の暗がりで、剣のぶつかりあう音が聞こえたかしら!水銀燈の他に、まだ誰か居るかしら!」
「うゅ…この人、悪い人なの?真紅をいじめようとしたの?」
「雛苺、その人は悪い人では無いわ…解いてあげて頂戴」
即座にその言葉に反応して、蒼星石は言った。
「駄目だ雛苺!解いちゃ駄目だ!」
「うゅ…どっち…なの?」
苺わだちは、腕から下半身まで一気に伸び、全身を拘束した。
フラーケはバランスを崩し、仰向けに倒れた。
真紅を呼ぶ声が遠くから聞こえた、ジュンの声だった。
真紅はゆっくりと目を開けて、声のする方に向き直った。
そこには息を切らせて走ってきたジュンと、翠星石、蒼星石、雛苺、金糸雀が立っていた。
ホーリエは真紅の周りを纏わり付くように飛行し、手の中に消えていった。
そんな仲間達を、無表情に見つめる真紅。
「貴方達…どうして来たの?」
その真紅の異様さに、少し怖気づきながらもジュンが話しかけた。
「どうしてって…真紅が危険だって…こいつらが」
蒼星石が真紅の前に駆け寄って言う。
「金糸雀が、水銀燈が真紅を狙ってるって教えてくれたんだ!それで僕達はnのフィールドに入った。
そうしたらラプラスが現れて、導かれるままに…」
「扉の入り口で、ジュンがお昼寝してたです!叩き起こして引っ張ってきたです!」
「部屋の暗がりで、剣のぶつかりあう音が聞こえたかしら!水銀燈の他に、まだ誰か居るかしら!」
「うゅ…この人、悪い人なの?真紅をいじめようとしたの?」
「雛苺、その人は悪い人では無いわ…解いてあげて頂戴」
即座にその言葉に反応して、蒼星石は言った。
「駄目だ雛苺!解いちゃ駄目だ!」
「うゅ…どっち…なの?」
121: 2009/04/21(火) 14:29:18.17 ID:uJzj5pMm0
「蒼星石!余計な口出しは無用だわ!雛苺!早く解きなさい!」
蒼星石は真紅の肩を力強く掴み、真紅の目を直視して言った。
「何故なんだ!この人は君を壊そうとした!僕は見た!そんな人の拘束を解くなんて!僕には出来ない!」
ジュンもすかさず弁護する。
「そうだよ真紅!お前おかしいぞ?さっきだって僕を置いていって…これも自分の問題だって言うのか!」
真紅の頬を涙が伝った、そして力無い声で答える。
「そう…そうよ、これは私の問題…私が引き起こしてしまった…最大の過ち…私は…ここで終わりにする…」
真紅の涙、項垂れた姿、そして今の言葉の意味を理解出来ず、皆が静まった。
その静寂をフラーケが破る。
「お前ら…早く決めたらどうだ!私をどうしたいんだ?」
真紅がフラーケの側に駆け寄り、宥める。
「御免なさい、こんな筈じゃなかった…私が解くわ」
必氏の形相で苺わだちを強引に引き千切っていく真紅…引き千切る指に、無数の傷が付いてゆく…。
ジュン達は、真紅の狂気じみた行動を目の当たりにし、ただ呆然と立ち尽くしていた。
だが蒼星石だけは真紅の元に歩み寄り、襟を掴んで強引に引っ張り、フラーケから引き離した。
「いい加減にしないか真紅!この人は君を壊そうとした!何故そんな人を庇う!僕には分からない!」
真紅は蒼星石を睨んで突き放した。
「私の邪魔を…するのかしら?私の問題に…土足で入り込むのかしら?」
その2人の間に、翠星石が割って入る。
「お前らいい加減にするです!頭冷やせです!」
蒼星石は真紅の肩を力強く掴み、真紅の目を直視して言った。
「何故なんだ!この人は君を壊そうとした!僕は見た!そんな人の拘束を解くなんて!僕には出来ない!」
ジュンもすかさず弁護する。
「そうだよ真紅!お前おかしいぞ?さっきだって僕を置いていって…これも自分の問題だって言うのか!」
真紅の頬を涙が伝った、そして力無い声で答える。
「そう…そうよ、これは私の問題…私が引き起こしてしまった…最大の過ち…私は…ここで終わりにする…」
真紅の涙、項垂れた姿、そして今の言葉の意味を理解出来ず、皆が静まった。
その静寂をフラーケが破る。
「お前ら…早く決めたらどうだ!私をどうしたいんだ?」
真紅がフラーケの側に駆け寄り、宥める。
「御免なさい、こんな筈じゃなかった…私が解くわ」
必氏の形相で苺わだちを強引に引き千切っていく真紅…引き千切る指に、無数の傷が付いてゆく…。
ジュン達は、真紅の狂気じみた行動を目の当たりにし、ただ呆然と立ち尽くしていた。
だが蒼星石だけは真紅の元に歩み寄り、襟を掴んで強引に引っ張り、フラーケから引き離した。
「いい加減にしないか真紅!この人は君を壊そうとした!何故そんな人を庇う!僕には分からない!」
真紅は蒼星石を睨んで突き放した。
「私の邪魔を…するのかしら?私の問題に…土足で入り込むのかしら?」
その2人の間に、翠星石が割って入る。
「お前らいい加減にするです!頭冷やせです!」
122: 2009/04/21(火) 14:30:43.49 ID:uJzj5pMm0
「いい加減にしてくれ!真紅!」
叫び声が木霊した、ジュンの叫びだった。
「何故1人で抱え込むんだ?そんな悲しい事が、何故平気で出来るんだ?
僕達は真紅が危ないと思って…助けが必要だって、そう思って来たんだ…なのに何だよ!
お前は僕達を突き放し、自分を壊そうとする人を庇う…意味が分からないよ!」
フラーケは嘲笑を浮かべて言った。
「おやおや仲間割れか…もう好きにしなさい…」
「真紅!訳を教えるかしら!このままじゃ、埒が開かないかしら!」
「…みんな…グスッ…ケンカは…やめてなの」
「教えてやれ…」
フラーケがポツリと言った。
「真紅、こいつらに教えてやれ…私の苦しみ…絶望…狂気…全部説明してやれ…」
真紅は信じられないと言った表情で、フラーケを見やった。
「何故!?これは私と貴方の問題!この子達には関係無いわ!」
「分からないのか真紅?もうこれは、お前と私だけの問題じゃ無いんだ…。
こいつらはもう…関わってしまったんだ」
「…分かったわ…貴方がそう言うのなら…敬愛する貴方がそう望むのなら…」
「敬愛する貴方…か…、フッ…全く君は、お目出度いな」
叫び声が木霊した、ジュンの叫びだった。
「何故1人で抱え込むんだ?そんな悲しい事が、何故平気で出来るんだ?
僕達は真紅が危ないと思って…助けが必要だって、そう思って来たんだ…なのに何だよ!
お前は僕達を突き放し、自分を壊そうとする人を庇う…意味が分からないよ!」
フラーケは嘲笑を浮かべて言った。
「おやおや仲間割れか…もう好きにしなさい…」
「真紅!訳を教えるかしら!このままじゃ、埒が開かないかしら!」
「…みんな…グスッ…ケンカは…やめてなの」
「教えてやれ…」
フラーケがポツリと言った。
「真紅、こいつらに教えてやれ…私の苦しみ…絶望…狂気…全部説明してやれ…」
真紅は信じられないと言った表情で、フラーケを見やった。
「何故!?これは私と貴方の問題!この子達には関係無いわ!」
「分からないのか真紅?もうこれは、お前と私だけの問題じゃ無いんだ…。
こいつらはもう…関わってしまったんだ」
「…分かったわ…貴方がそう言うのなら…敬愛する貴方がそう望むのなら…」
「敬愛する貴方…か…、フッ…全く君は、お目出度いな」
123: 2009/04/21(火) 14:31:44.47 ID:uJzj5pMm0
真紅はこのフィールドで起こった事柄をホーリエに託して、ジュン達の前へ飛ばした。
「貴方達…その記憶に触れる前に、気を強く持ちなさい、でないと痛い目に合うわよ」
ジュン達は手を重ね、ホーリエに翳した、真紅の記憶が伝達されていく…。
フラーケの狂気、水銀燈の微笑、真紅の号泣、薔薇水晶の謎めいた行動…皆が全てを理解した。
しかし皆俯いたまま黙り込んで、行動をおこす気にはならなかった。
それほどまでに痛ましい記憶だった…長い沈黙が続いた。
その沈黙を破り、全てを理解した上で蒼星石が行動に移った。
「ジュン君と雛苺!君達は真紅の側に!僕は時計を取り返しに行く!」
「私を置いて!何処行くです!翠星石も行くです!」
「駄目だ!危険だ!僕1人で行く!君はフラーケさんの夢の中へ!庭師の如雨露で心の木を!」
「カナも蒼星石と行くかしら!元はと言えば、カナが時計の事をバラしたからかしら!
だから行かなきゃならないかしら!」
「…金糸雀、君は本当に強くなったね…分かった、僕の後ろに付いていて!でも翠星石は…!?」
翠星石は項垂れて、力無く静かに泣いていた。
「何故…全部1人で決めてしまうです?何故翠星石の話を…聞いてくれないです…?
想いは蒼星石と…一緒なのです…グスッ…私だって大事な妹を…危険な目に遭わせたくないのです!」
その姿を見て、居た堪れなくなった蒼星石は、翠星石を優しく抱きしめながら言った。
「…君は、こうなってしまうと…僕の言う事には耳を貸さないよね…。
分かった、一緒に行こう…でも無茶な事はしないでね?約束だよ?
フラーケさんは動けないし、真紅はジュン君の言う事しか耳を貸さない…行こう!3人で時計を取り返そう!」
3人は剣音の鳴り響く暗がりへ勢い良く飛び出し、やがて姿を消した。
「貴方達…その記憶に触れる前に、気を強く持ちなさい、でないと痛い目に合うわよ」
ジュン達は手を重ね、ホーリエに翳した、真紅の記憶が伝達されていく…。
フラーケの狂気、水銀燈の微笑、真紅の号泣、薔薇水晶の謎めいた行動…皆が全てを理解した。
しかし皆俯いたまま黙り込んで、行動をおこす気にはならなかった。
それほどまでに痛ましい記憶だった…長い沈黙が続いた。
その沈黙を破り、全てを理解した上で蒼星石が行動に移った。
「ジュン君と雛苺!君達は真紅の側に!僕は時計を取り返しに行く!」
「私を置いて!何処行くです!翠星石も行くです!」
「駄目だ!危険だ!僕1人で行く!君はフラーケさんの夢の中へ!庭師の如雨露で心の木を!」
「カナも蒼星石と行くかしら!元はと言えば、カナが時計の事をバラしたからかしら!
だから行かなきゃならないかしら!」
「…金糸雀、君は本当に強くなったね…分かった、僕の後ろに付いていて!でも翠星石は…!?」
翠星石は項垂れて、力無く静かに泣いていた。
「何故…全部1人で決めてしまうです?何故翠星石の話を…聞いてくれないです…?
想いは蒼星石と…一緒なのです…グスッ…私だって大事な妹を…危険な目に遭わせたくないのです!」
その姿を見て、居た堪れなくなった蒼星石は、翠星石を優しく抱きしめながら言った。
「…君は、こうなってしまうと…僕の言う事には耳を貸さないよね…。
分かった、一緒に行こう…でも無茶な事はしないでね?約束だよ?
フラーケさんは動けないし、真紅はジュン君の言う事しか耳を貸さない…行こう!3人で時計を取り返そう!」
3人は剣音の鳴り響く暗がりへ勢い良く飛び出し、やがて姿を消した。
125: 2009/04/21(火) 14:34:23.89 ID:uJzj5pMm0
「さて…しゃべる石も都合良く居なくなったな」
フラーケは立ち上がった、苺わだちが足元にバラバラと散らばり落ちる。
右手にはナイフが握られていた。
ジュンは驚愕の表情を浮かべた。
「何故?…苺わだちが?…切れてる?」
驚くジュンに、フラーケが答える。
「時間稼ぎだよ、真紅が出来事を語り伝えてる間に、切ろうと思っていた…真紅、全く君はお目出度い!
でもまさか…あんな手段で伝えるとは…少しあせったぞ!でもまあ、こうして切る事が出来たから、まあいい。
ここは私の空間だ、何処に何があるのかは、私が一番知っている、ナイフの位置、鋸の位置…」
フラーケの足元から、ゆっくりと苺わだちが伸びる、それを即座に察知したフラーケは、
右手に持ったナイフを雛苺へ向けて投げた。
ナイフは雛苺の足元に、大きな音を立てて刺さった。
「お嬢ちゃん…人の話は最後まで聞きなさい!!」
雛苺はフラーケの常軌を逸した眼差しに畏怖を抱き、瞳にうっすらと涙が浮かべ、しおれる様にしゃがみこんだ。
恐怖に駆られる子供の雛苺には、苺わだちを出す事など…もう、出来なかった。
「フラーケ!お止めなさい!復讐の相手はこの私よ!この子は関係無い!」
「さっき言ったろ?こいつらはもう関わった…関わってしまったんだ」
真紅はうっすらと目に涙を浮かべながら言った。
「貴方…本当に…変わってしまった…私の所為で、私の知る優しいフラーケは…もう本当にいないのね…」
「そうだよ?だから…氏んでくれ真紅、私の為に!」
ポケットからドライバーを取り出して、ゆっくりと真紅の前に歩み寄るフラーケ。
2人の間に人影が飛び込んできた、それはジュンだった、両手を広げてフラーケを静止した。
「もう止めて下さい!」
フラーケは立ち上がった、苺わだちが足元にバラバラと散らばり落ちる。
右手にはナイフが握られていた。
ジュンは驚愕の表情を浮かべた。
「何故?…苺わだちが?…切れてる?」
驚くジュンに、フラーケが答える。
「時間稼ぎだよ、真紅が出来事を語り伝えてる間に、切ろうと思っていた…真紅、全く君はお目出度い!
でもまさか…あんな手段で伝えるとは…少しあせったぞ!でもまあ、こうして切る事が出来たから、まあいい。
ここは私の空間だ、何処に何があるのかは、私が一番知っている、ナイフの位置、鋸の位置…」
フラーケの足元から、ゆっくりと苺わだちが伸びる、それを即座に察知したフラーケは、
右手に持ったナイフを雛苺へ向けて投げた。
ナイフは雛苺の足元に、大きな音を立てて刺さった。
「お嬢ちゃん…人の話は最後まで聞きなさい!!」
雛苺はフラーケの常軌を逸した眼差しに畏怖を抱き、瞳にうっすらと涙が浮かべ、しおれる様にしゃがみこんだ。
恐怖に駆られる子供の雛苺には、苺わだちを出す事など…もう、出来なかった。
「フラーケ!お止めなさい!復讐の相手はこの私よ!この子は関係無い!」
「さっき言ったろ?こいつらはもう関わった…関わってしまったんだ」
真紅はうっすらと目に涙を浮かべながら言った。
「貴方…本当に…変わってしまった…私の所為で、私の知る優しいフラーケは…もう本当にいないのね…」
「そうだよ?だから…氏んでくれ真紅、私の為に!」
ポケットからドライバーを取り出して、ゆっくりと真紅の前に歩み寄るフラーケ。
2人の間に人影が飛び込んできた、それはジュンだった、両手を広げてフラーケを静止した。
「もう止めて下さい!」
127: 2009/04/21(火) 14:36:09.32 ID:uJzj5pMm0
真紅は即座にジュンの足元へ向かい、ジュンの足を掴んで引っ張り、制止させようとした。
「ジュン!?止めなさい!この人にはもう!人の心は無いのよ!貴方が氏ぬわ!」
「ほう…やっと本音が出たか、真紅」
ジュンは真紅の制止を無視して続けた。
「フラーケさん!貴方はもう十分真紅を苦しめた!絶望させた!だからもう止めて下さい!お願いします!」
「お前に何が分かる!お前に私の絶望が分かってたまるか!そこをどけ!少年!」
「どきなさいジュン!私が消えればいいの!私が罪を償えばいいのよ!」
必氏の表情でジュンにしがみつく真紅を無視して、ジュンはフラーケに言った。
「フラーケさん!僕は真紅のマスターとして、貴方に聞きたい事がある!答えて欲しい!」
ジュンは毅然とした態度で言い放った、しかし掌には大量の汗が滲み出し、額を冷たい汗が伝っていた。
「君が?マスター?こんなお子様が?フフッ…ハハハハ!」
「そうだ!僕は真紅のマスターだ!だから貴方に聞きたい!」
フラーケはジュンの手を見た、確かに指輪を嵌めている事を確認した。
「ハハハ…分かった、余興として話を聞いてやろう、聞いたらそこをどけ!」
「分かりました…答えてもらったら、僕は下がります」
「じゃあ話せ、手短に」
「貴方は真紅のマスターになって、幸せでは無かったのですか?」
「何を言っている?見れば分かるだろ?これがその結果だ…話は終わりか?」
「ジュン!?止めなさい!この人にはもう!人の心は無いのよ!貴方が氏ぬわ!」
「ほう…やっと本音が出たか、真紅」
ジュンは真紅の制止を無視して続けた。
「フラーケさん!貴方はもう十分真紅を苦しめた!絶望させた!だからもう止めて下さい!お願いします!」
「お前に何が分かる!お前に私の絶望が分かってたまるか!そこをどけ!少年!」
「どきなさいジュン!私が消えればいいの!私が罪を償えばいいのよ!」
必氏の表情でジュンにしがみつく真紅を無視して、ジュンはフラーケに言った。
「フラーケさん!僕は真紅のマスターとして、貴方に聞きたい事がある!答えて欲しい!」
ジュンは毅然とした態度で言い放った、しかし掌には大量の汗が滲み出し、額を冷たい汗が伝っていた。
「君が?マスター?こんなお子様が?フフッ…ハハハハ!」
「そうだ!僕は真紅のマスターだ!だから貴方に聞きたい!」
フラーケはジュンの手を見た、確かに指輪を嵌めている事を確認した。
「ハハハ…分かった、余興として話を聞いてやろう、聞いたらそこをどけ!」
「分かりました…答えてもらったら、僕は下がります」
「じゃあ話せ、手短に」
「貴方は真紅のマスターになって、幸せでは無かったのですか?」
「何を言っている?見れば分かるだろ?これがその結果だ…話は終わりか?」
128: 2009/04/21(火) 14:37:17.51 ID:uJzj5pMm0
「貴方は幸せだった筈だ!どうかその事を思い出して下さい、お願いします!」
「思い出す?幸せ?私に幸せなど無かった!」
「違う!貴方は思い出したくないだけだ!自分に嘘を付いているんだ!」
「ほぉ…何を根拠に?」
「貴方は消えようと思えば!いつでも出来た筈なんだ!
時間の薇が完成しない苛立ちを!真紅にぶつけているだけなんだ!」
「面白い…続けろ」
「貴方は何故何百年も!このフィールドに残ったんですか!装置を完成させる為じゃなかったんですか!
その強い信念があったから!ここに残れたんじゃないんですか!
真紅が貴方の事を覚えていようと!貴方が製作に挫折した時に、本当に消滅したいと思っていれば、
消滅出来た筈なんだ!」
「ケッ…戯言を」
「真紅の時計が止まる寸前!貴方が一番消えかかっていた時に!何故貴方は消滅しなかったんだ!
本当に真紅に復讐する為だけに残ったんですか?違う!僕はそう思わない!そんなの悲しすぎる!
だからフラーケさん!貴方が此処に残った当初の、強い信念を思い出して下さい!お願いします!!」
「長いぞ…終わりにしろ!そこをどけ!」
「思い出す?幸せ?私に幸せなど無かった!」
「違う!貴方は思い出したくないだけだ!自分に嘘を付いているんだ!」
「ほぉ…何を根拠に?」
「貴方は消えようと思えば!いつでも出来た筈なんだ!
時間の薇が完成しない苛立ちを!真紅にぶつけているだけなんだ!」
「面白い…続けろ」
「貴方は何故何百年も!このフィールドに残ったんですか!装置を完成させる為じゃなかったんですか!
その強い信念があったから!ここに残れたんじゃないんですか!
真紅が貴方の事を覚えていようと!貴方が製作に挫折した時に、本当に消滅したいと思っていれば、
消滅出来た筈なんだ!」
「ケッ…戯言を」
「真紅の時計が止まる寸前!貴方が一番消えかかっていた時に!何故貴方は消滅しなかったんだ!
本当に真紅に復讐する為だけに残ったんですか?違う!僕はそう思わない!そんなの悲しすぎる!
だからフラーケさん!貴方が此処に残った当初の、強い信念を思い出して下さい!お願いします!!」
「長いぞ…終わりにしろ!そこをどけ!」
129: 2009/04/21(火) 14:38:27.97 ID:uJzj5pMm0
「嫌だ!僕は退かない!貴方に答えを貰っていない!」
「答え?真紅への復讐!それが答えだ!少年!!」
「違う!貴方はまだ真紅を愛している!今真紅を壊したら!貴方はもっと絶望する!」
「知った口を聞くな小僧!お前に私の気持ちが分かる訳無い!」
「貴方は以前大切なものを失った筈だ!それは真紅だ!何も言わずに貴方から旅立った真紅だ!!
その悲劇を貴方はもう一度繰り返すんですか!その絶望をもう一度繰り返すんですか!!」
「もう黙れ小僧!そんな…そんな筈は無い!絶望などでは無い!私にとって唯一の希望なんだ…
私が消滅するにはこの方法しか無いんだ!今すぐそこを退け!!」
「嫌だ!僕は退かない!!」
「私の邪魔をするな小僧!!掻き乱すな!!そこを退け!!お前も頃すぞ!!」
「僕にとって真紅は大切な存在なんだ!だから僕は退かない!絶対退かないぞ!!」
「そうか分かった…じゃあお前も氏ね!!」
フラーケは素早くドライバーを振り上げ、ジュンに向けて振り下ろした。
だがジュンには当たらなかった、即座にジュンが周囲を確認すると、真紅が部屋の片隅に倒れていた。
ジュンは真紅の元へ駆け寄った。
雛苺は真紅が倒れる姿を目の当たりにし、恐怖に駆られる感情を必氏に抑え、巴の笑顔を思い描いた。
『巴お願い!ヒナ怖いの!だからお願い!ヒナに…ヒナに勇気を分けて!』
雛苺は勇気を振り絞って恐怖に打ち勝ち、フラーケに苺わだちを放出し、再び拘束した。
「答え?真紅への復讐!それが答えだ!少年!!」
「違う!貴方はまだ真紅を愛している!今真紅を壊したら!貴方はもっと絶望する!」
「知った口を聞くな小僧!お前に私の気持ちが分かる訳無い!」
「貴方は以前大切なものを失った筈だ!それは真紅だ!何も言わずに貴方から旅立った真紅だ!!
その悲劇を貴方はもう一度繰り返すんですか!その絶望をもう一度繰り返すんですか!!」
「もう黙れ小僧!そんな…そんな筈は無い!絶望などでは無い!私にとって唯一の希望なんだ…
私が消滅するにはこの方法しか無いんだ!今すぐそこを退け!!」
「嫌だ!僕は退かない!!」
「私の邪魔をするな小僧!!掻き乱すな!!そこを退け!!お前も頃すぞ!!」
「僕にとって真紅は大切な存在なんだ!だから僕は退かない!絶対退かないぞ!!」
「そうか分かった…じゃあお前も氏ね!!」
フラーケは素早くドライバーを振り上げ、ジュンに向けて振り下ろした。
だがジュンには当たらなかった、即座にジュンが周囲を確認すると、真紅が部屋の片隅に倒れていた。
ジュンは真紅の元へ駆け寄った。
雛苺は真紅が倒れる姿を目の当たりにし、恐怖に駆られる感情を必氏に抑え、巴の笑顔を思い描いた。
『巴お願い!ヒナ怖いの!だからお願い!ヒナに…ヒナに勇気を分けて!』
雛苺は勇気を振り絞って恐怖に打ち勝ち、フラーケに苺わだちを放出し、再び拘束した。
131: 2009/04/21(火) 14:40:08.27 ID:uJzj5pMm0
「真紅!?真紅!!」
ジュンは真紅の上半身を優しく起こした、意識は在った、だが左腕は無かった。
そこに付いている筈の左腕は、部屋の片隅に無造作に、ただひっそりと落ちていた。
「…ジュン?私生きてるの?まだ生きてるの?」
「ああ…生きてる、生きてるよ…」
優しく微笑むジュン、だが真紅は不可解な言葉を口走った。
「…何故!?何故まだ生きてるの?フラーケ?フラーケは何処!?」
左腕が無い事にも気付かぬ素振りで、周囲を見回し、苺わだちに拘束されるフラーケの側へ駆け寄った。
「フラーケ!?フラーケ!私まだ生きているのよ!止めを刺して頂戴!早く刺して頂戴!」
苺わだちに拘束されているフラーケを、泣きながら右手で揺さぶり、基地外じみた言葉を口走り続ける真紅。
「私が憎いんでしょ?頃したいんでしょ!?…雛苺!早くほどきなさい!命令よ!」
雛苺は変わり果てた真紅の姿に、声も無く、ただボロボロと泣いていた。
そんな痛ましい光景を目の当たりにし、ジュンは泣きながら真紅を怒鳴った。
「真紅!!もう止めてくれ!!」
真紅は即座に狂ったように反論した。
「だってフラーケは!あの優しかったフラーケは!私の所為で何百年も苦しんだのよ!
私の所為で変わってしまったのよ!私がいなければ彼は苦しみから解放されるのよ!
私はいない方が良いの!私が氏ねば良いの!だって私は…」
ジュンは真紅の上半身を優しく起こした、意識は在った、だが左腕は無かった。
そこに付いている筈の左腕は、部屋の片隅に無造作に、ただひっそりと落ちていた。
「…ジュン?私生きてるの?まだ生きてるの?」
「ああ…生きてる、生きてるよ…」
優しく微笑むジュン、だが真紅は不可解な言葉を口走った。
「…何故!?何故まだ生きてるの?フラーケ?フラーケは何処!?」
左腕が無い事にも気付かぬ素振りで、周囲を見回し、苺わだちに拘束されるフラーケの側へ駆け寄った。
「フラーケ!?フラーケ!私まだ生きているのよ!止めを刺して頂戴!早く刺して頂戴!」
苺わだちに拘束されているフラーケを、泣きながら右手で揺さぶり、基地外じみた言葉を口走り続ける真紅。
「私が憎いんでしょ?頃したいんでしょ!?…雛苺!早くほどきなさい!命令よ!」
雛苺は変わり果てた真紅の姿に、声も無く、ただボロボロと泣いていた。
そんな痛ましい光景を目の当たりにし、ジュンは泣きながら真紅を怒鳴った。
「真紅!!もう止めてくれ!!」
真紅は即座に狂ったように反論した。
「だってフラーケは!あの優しかったフラーケは!私の所為で何百年も苦しんだのよ!
私の所為で変わってしまったのよ!私がいなければ彼は苦しみから解放されるのよ!
私はいない方が良いの!私が氏ねば良いの!だって私は…」
132: 2009/04/21(火) 14:42:08.61 ID:uJzj5pMm0
「いい加減にしてくれ!!」
ジュンは溢れる涙をそのままに、俯いたまま弱弱しい声で話し始めた。
「真紅…お前は自分が氏ねば、問題が解決すると思っている、全てが丸く収まると思ってる…。
そんな訳無い!お前が氏んだら、残されたみんなはどうなるんだ…僕はどうなるんだ!」
「真紅が…フラーケさんに与えた苦しみは大きいよ…確かに真紅の所為で変わってしまったよ…。
でもそれは…真紅が望んでやった事じゃないだろ?知らずに起こっていた事なんだろ?
…こんな事実を聞かされたら…気が動転する…自分が居なければいいと思う…それは分かるよ…
でもここで!真紅が氏んだら!残された僕はどうなるんだ!僕はどうしたらいいんだよ!!」
「だから真紅…頼むから…僕を見てくれよ…僕達を見てくれよ…もう悲しい事言わないでくれよ…
君がフラーケを愛しているように……僕も真紅を愛しているんだ…僕を置いて行かないでくれよ…頼む…よ…」
ジュンは溢れる涙をそのままに、俯いたまま弱弱しい声で話し始めた。
「真紅…お前は自分が氏ねば、問題が解決すると思っている、全てが丸く収まると思ってる…。
そんな訳無い!お前が氏んだら、残されたみんなはどうなるんだ…僕はどうなるんだ!」
「真紅が…フラーケさんに与えた苦しみは大きいよ…確かに真紅の所為で変わってしまったよ…。
でもそれは…真紅が望んでやった事じゃないだろ?知らずに起こっていた事なんだろ?
…こんな事実を聞かされたら…気が動転する…自分が居なければいいと思う…それは分かるよ…
でもここで!真紅が氏んだら!残された僕はどうなるんだ!僕はどうしたらいいんだよ!!」
「だから真紅…頼むから…僕を見てくれよ…僕達を見てくれよ…もう悲しい事言わないでくれよ…
君がフラーケを愛しているように……僕も真紅を愛しているんだ…僕を置いて行かないでくれよ…頼む…よ…」
133: 2009/04/21(火) 14:43:42.02 ID:uJzj5pMm0
「やれやれ…とんだ三文芝居だな、少年」
「五月蝿い!黙れ!お前の所為で真紅は…真紅は!!」
「でもまあ…気に入ったよ、悪くない」
「!?」
ジュン達はその言葉に驚き、声も出なかった。
また何かを企んでいるのかとも考えたが、フラーケの目に狂気はもう、無かった。
ジュンを横目で見つめて、フラーケは静かに言った。
「僕を置いて行かないでくれ…か、私と同じだな…」
「私と…同じ?僕と…貴方が…同じ?」
「五月蝿い!黙れ!お前の所為で真紅は…真紅は!!」
「でもまあ…気に入ったよ、悪くない」
「!?」
ジュン達はその言葉に驚き、声も出なかった。
また何かを企んでいるのかとも考えたが、フラーケの目に狂気はもう、無かった。
ジュンを横目で見つめて、フラーケは静かに言った。
「僕を置いて行かないでくれ…か、私と同じだな…」
「私と…同じ?僕と…貴方が…同じ?」
134: 2009/04/21(火) 14:44:36.23 ID:uJzj5pMm0
「確かに私は、真紅と共に暮らした生活が…好きだった、幸せだった、真紅の事を愛していた…。
思い出してしまったよ、不覚にも今、真紅の左腕を傷付けてしまった…事で…ウウッ…。
…こんな事で…思い出すなんて……こ…こんな事でしか…思い出せないなんて…。
…ウウッ…私は…私は…愛する娘に…何て事を…」
「…私は…愛する…娘を…ウウッ…傷付けてしまった…。
…何故…気付かなかったんだ…私は…もう…心が…壊れているんだ…。
真紅…私は君に…何と言えば…許してもらえる…何と詫びたらいいんだ…。
消えれば…良かったのは…ウウッ…私のほう…だったんだ…」
真紅はフラーケを静かに抱きしめ、優しい笑顔で見つめながら語る。
「良いのよフラーケ…自分を責めないで頂戴…。
私が犯した過ちは、この程度で許される事では無いの…だから私に、貴方を責める事など…出来ないわ。
それに私の腕で貴方を救う事が出来たのなら、私にはこれ以上の喜びは無いのよ。
おかえりなさい…私の優しいお父様」
「…真紅…ううっ…真…紅…私の…愛しい…娘…」
フラーケの号泣がフィールドに響き渡る、その号泣が治まるまで、真紅はいつまでもフラーケを抱きしめていた…。
思い出してしまったよ、不覚にも今、真紅の左腕を傷付けてしまった…事で…ウウッ…。
…こんな事で…思い出すなんて……こ…こんな事でしか…思い出せないなんて…。
…ウウッ…私は…私は…愛する娘に…何て事を…」
「…私は…愛する…娘を…ウウッ…傷付けてしまった…。
…何故…気付かなかったんだ…私は…もう…心が…壊れているんだ…。
真紅…私は君に…何と言えば…許してもらえる…何と詫びたらいいんだ…。
消えれば…良かったのは…ウウッ…私のほう…だったんだ…」
真紅はフラーケを静かに抱きしめ、優しい笑顔で見つめながら語る。
「良いのよフラーケ…自分を責めないで頂戴…。
私が犯した過ちは、この程度で許される事では無いの…だから私に、貴方を責める事など…出来ないわ。
それに私の腕で貴方を救う事が出来たのなら、私にはこれ以上の喜びは無いのよ。
おかえりなさい…私の優しいお父様」
「…真紅…ううっ…真…紅…私の…愛しい…娘…」
フラーケの号泣がフィールドに響き渡る、その号泣が治まるまで、真紅はいつまでもフラーケを抱きしめていた…。
135: 2009/04/21(火) 14:46:23.14 ID:uJzj5pMm0
号泣が治まり、冷静さを取り戻したフラーケが、ジュンを見つめて言った。
「少年よ…私が、過去を映し出す時計を、何故何百年も必氏に作ろうとしていたか、分かるか?」
「いいえ…分かりません、そもそも過去を映し出す時計と言う物が、何なのか…」
「精神を過去へ送る装置…とでも言えばいいのか?
…私は装置を完成させて…真紅との幸せな日々を、取り戻したかった…」
「真紅…との、幸せな日々…」
「真紅が突然いなくなった夜、あの前に私は戻りたかった。
そして真紅に『私を置いて行かないでくれ』と一言…言いたかったんだ」
「!?」
ジュン達は驚愕の表情でフラーケを見た。
ただ真紅のみ、フラーケに覆い被さるようにして、静かに泣いていた。
「…フラーケ…やはり私の選択は…間違っていたのね…ううっ…私が元凶だったのね…」
真紅の頬を涙が伝った、その涙はフラーケの手に落ち、弾けた。
「少年よ…私が、過去を映し出す時計を、何故何百年も必氏に作ろうとしていたか、分かるか?」
「いいえ…分かりません、そもそも過去を映し出す時計と言う物が、何なのか…」
「精神を過去へ送る装置…とでも言えばいいのか?
…私は装置を完成させて…真紅との幸せな日々を、取り戻したかった…」
「真紅…との、幸せな日々…」
「真紅が突然いなくなった夜、あの前に私は戻りたかった。
そして真紅に『私を置いて行かないでくれ』と一言…言いたかったんだ」
「!?」
ジュン達は驚愕の表情でフラーケを見た。
ただ真紅のみ、フラーケに覆い被さるようにして、静かに泣いていた。
「…フラーケ…やはり私の選択は…間違っていたのね…ううっ…私が元凶だったのね…」
真紅の頬を涙が伝った、その涙はフラーケの手に落ち、弾けた。
137: 2009/04/21(火) 14:48:42.09 ID:uJzj5pMm0
「それは違うぞ真紅、あの時の私は衰弱していた、君の選択は正しい、間違いない。
間違えていたのは私だ、時間の薇の研究にかまけて、君の葛藤に気付かなかった私だ。
だからその頃に戻って、やり直したかったんだ…。
可笑しいだろ?だからもう泣かないで、笑っておくれ、真紅」
真紅は笑う事など…出来なかった、ただ泣く事しか出来なかった。
「…私が一言…声を…掛けてさえいれば…こんな事には…ううっ…フラーケ…」
「その事を、思い出させてくれたのは、少年…いや、ジュン君だ、礼を言わねばならないな、有難う」
「僕が?…礼?」
「そうだ…さっき君は言ったな、『僕を置いて行かないでくれ…頼む』と真紅に言ったな。
その言葉が、私の当初の目的を思い出させてくれたんだ…ジュン君、有難う。
私は長く生きすぎた、その所為で壊れてしまったんだな、私の心は。
こんな大事な事を忘れるほどに、壊れてしまっていたんだな…心底情けないよ」
「いえ…そんな…僕も必氏で…」
「ただ、私はもう、壊れてしまった…もっと早く気付くべきだったんだ、自分の心が壊れている事に。
人の精神は、何百年も生きれる様には出来ていない…私は神の規則を破った罰を受けたんだ。
何百年も生きている私に、裁きが下ったんだ、そして君達に迷惑を掛けた…すまなかった」
「それは…何故そう思うのですか?心が壊れていると…フラーケさんはもう立ち直った…」
間違えていたのは私だ、時間の薇の研究にかまけて、君の葛藤に気付かなかった私だ。
だからその頃に戻って、やり直したかったんだ…。
可笑しいだろ?だからもう泣かないで、笑っておくれ、真紅」
真紅は笑う事など…出来なかった、ただ泣く事しか出来なかった。
「…私が一言…声を…掛けてさえいれば…こんな事には…ううっ…フラーケ…」
「その事を、思い出させてくれたのは、少年…いや、ジュン君だ、礼を言わねばならないな、有難う」
「僕が?…礼?」
「そうだ…さっき君は言ったな、『僕を置いて行かないでくれ…頼む』と真紅に言ったな。
その言葉が、私の当初の目的を思い出させてくれたんだ…ジュン君、有難う。
私は長く生きすぎた、その所為で壊れてしまったんだな、私の心は。
こんな大事な事を忘れるほどに、壊れてしまっていたんだな…心底情けないよ」
「いえ…そんな…僕も必氏で…」
「ただ、私はもう、壊れてしまった…もっと早く気付くべきだったんだ、自分の心が壊れている事に。
人の精神は、何百年も生きれる様には出来ていない…私は神の規則を破った罰を受けたんだ。
何百年も生きている私に、裁きが下ったんだ、そして君達に迷惑を掛けた…すまなかった」
「それは…何故そう思うのですか?心が壊れていると…フラーケさんはもう立ち直った…」
138: 2009/04/21(火) 14:49:35.57 ID:uJzj5pMm0
「いや…完全ではない、君達が断片的に過去の記憶を思い出させてくれただけだ…。
だがそれが、今の私を辛うじて保っている、ただそれだけだ…。
私は人間の寿命の限界を超えている、人の範疇から大きく外れている、だから壊れた」
「…」
「人は思い出をしまえる容量が決まっている、そしてそれは年齢と共に減っていく…私は長く生きすぎた。
もう容量は、殆んど残っていないだろう…これが神の規則を破った罰だ」
「その少ない容量を、時間の薇が完成しない苛立ちが占拠して、幸せな記憶を押し潰した。
数百年分の苛立ちと絶望が、私の心を復讐と狂気に染めた…そして私は壊れた。
人は思い出を頼りに、形成されていくんだろうな…。
幸せな思い出が無くなった時、人は壊れる…だからいずれ、幸せの記憶が消えたら、私はまた壊れる」
ジュンは先程のフラーケの言葉に、引っ掛かりを感じていた…『私と同じだな』と言う言葉に。
確かに僕は、この人と同じかも知れない…別の意味でも。
僕も、絶望と自己嫌悪に押しつぶされそうになった事がある、僕の場合はのりが救ってくれたけど…。
でもこの人には、絶望と自己嫌悪から救ってくれる人が、誰一人いなかったんだ。
数百年このフィールドに一人閉じこもって、自身の苦悩を打ち明ける相手すらいなかったんだ…。
僕には分かる、絶望と苦悩が人をどう変えるのか…そして、分かるからこそ、この人を救いたい。
でも、どうすればいい?どうすれば救える?僕に何が出来るのか?
だがそれが、今の私を辛うじて保っている、ただそれだけだ…。
私は人間の寿命の限界を超えている、人の範疇から大きく外れている、だから壊れた」
「…」
「人は思い出をしまえる容量が決まっている、そしてそれは年齢と共に減っていく…私は長く生きすぎた。
もう容量は、殆んど残っていないだろう…これが神の規則を破った罰だ」
「その少ない容量を、時間の薇が完成しない苛立ちが占拠して、幸せな記憶を押し潰した。
数百年分の苛立ちと絶望が、私の心を復讐と狂気に染めた…そして私は壊れた。
人は思い出を頼りに、形成されていくんだろうな…。
幸せな思い出が無くなった時、人は壊れる…だからいずれ、幸せの記憶が消えたら、私はまた壊れる」
ジュンは先程のフラーケの言葉に、引っ掛かりを感じていた…『私と同じだな』と言う言葉に。
確かに僕は、この人と同じかも知れない…別の意味でも。
僕も、絶望と自己嫌悪に押しつぶされそうになった事がある、僕の場合はのりが救ってくれたけど…。
でもこの人には、絶望と自己嫌悪から救ってくれる人が、誰一人いなかったんだ。
数百年このフィールドに一人閉じこもって、自身の苦悩を打ち明ける相手すらいなかったんだ…。
僕には分かる、絶望と苦悩が人をどう変えるのか…そして、分かるからこそ、この人を救いたい。
でも、どうすればいい?どうすれば救える?僕に何が出来るのか?
140: 2009/04/21(火) 14:51:01.05 ID:uJzj5pMm0
「そこで真紅、君に頼みたい、私を…頃してくれ」
「!?」
「私が行った今までの行いは、決して許される事ではない…私は責任を取りたい。
幸い私は今、拘束されている、だからお願いだ真紅、私を…頃してくれ…頼む」
「…何を言うの!?馬鹿は事は言わないで頂戴!もう止めて頂戴!!」
「愛する君に殺されるなら、私は本望だ、私は壊れてしまった…君を殺そうとした…ジュン君までも…。
水銀燈の申し出を簡単に受ける程にまで、壊れてしまった…時間の薇が欲しいという一心で。
君が壊れる事が分かっていながら、ただ自分が助かりたい一心で…そんな私を罰してほしい」
「…フラーケ…貴方…」
「それに今の状況では、事が解決する為の手段は他に無い…私が氏ぬ以外は無いんだ。
君が氏んでは駄目だ、ジュン君が悲しむ…そこの少年に、私と同じ思いはして欲しくない。
君との幸せな思い出が少しでも残っている今、私はその記憶を忘れない内に消滅したい…。
お願いだ、私に止めを!」
俯いて、目を瞑りながら熟考する真紅…。
長い時間を掛けた後、決意を帯びた真っ直ぐな眼差しでフラーケを見つめ、真紅は静かに言った。
「そう…分かったわ、私なりの方法で良ければ…それで良くて?」
真紅の右手が、フラーケの手中にあるドライバーに向かう。
そしてドライバーを静かに譲り受け、フラーケの胸部の側面付近に、静かに座り直した。
まさか真紅はフラーケさんを、本当に頃すつもりなのか?まさか!?
「真紅!?止めろ!僕はそんな事望まない!僕はこの人を救いたいんだ!」
141: 2009/04/21(火) 14:53:43.95 ID:uJzj5pMm0
「貴方は黙って!私を…信じて頂戴」
ドライバーを床に置き、右手からホーリエを呼び出し、フラーケの手元に飛ばした。
フラーケの掌が赤く光り、周囲を照らした。
光が消えた後、フラーケの頬を涙が伝った。
「私の……真紅…いとおしい…真紅…」
「真紅…フラーケさんに…何をしたんだ?」
「彼に、過去の思い出を見せた…私と共に歩んだ幸せな日々…それを見せたのよ…。
私はフラーケに一度助けられた、時計を頂いた事で助けられたわ…。
だから今度は私の番よ、私にはこんな事しか出来ないけど…。
私に愛するフラーケを頃す事など、出来る訳無い…だからこんな事しか出来ない…許して頂戴、フラーケ」
「真紅…私は今、幸せだよ、君との思い出が完全に蘇った…こんな幸せな事は無い。
しかし…いずれこの記憶も忘れられる…私は壊れているから…」
「その時は…私を忘れそうになったら、私の時計を止めて頂戴、出来るわよね?貴方の愛情が篭った時計だもの。
そうしたら私はすぐ、貴方の元へ駆けつける、何があっても絶対駆けつける…そしてまた記憶を、貴方に移すわ。
これは私に科せられた原罪、そして貴方への贖罪…。
…御免…なさい…私なりの方法は…これしか…思いつかないのよ…」
「真紅…ありがとう真紅…私は過去を映し出す時計を完成させる、絶対に完成させる…。
そして真紅に『私を置いて行かないでくれ』と…絶対に伝える、それでこの喜劇は、終わらせるよ」
「フラーケ…ううっ…フラーケ!!」
真紅はフラーケを抱きしめて号泣した、フラーケも苺わだちを解かれて、真紅を抱きしめて泣いた。
ジュンはその姿を見て、まるで実の親子を見ているような、そんな不思議な錯覚を覚えた…。
ドライバーを床に置き、右手からホーリエを呼び出し、フラーケの手元に飛ばした。
フラーケの掌が赤く光り、周囲を照らした。
光が消えた後、フラーケの頬を涙が伝った。
「私の……真紅…いとおしい…真紅…」
「真紅…フラーケさんに…何をしたんだ?」
「彼に、過去の思い出を見せた…私と共に歩んだ幸せな日々…それを見せたのよ…。
私はフラーケに一度助けられた、時計を頂いた事で助けられたわ…。
だから今度は私の番よ、私にはこんな事しか出来ないけど…。
私に愛するフラーケを頃す事など、出来る訳無い…だからこんな事しか出来ない…許して頂戴、フラーケ」
「真紅…私は今、幸せだよ、君との思い出が完全に蘇った…こんな幸せな事は無い。
しかし…いずれこの記憶も忘れられる…私は壊れているから…」
「その時は…私を忘れそうになったら、私の時計を止めて頂戴、出来るわよね?貴方の愛情が篭った時計だもの。
そうしたら私はすぐ、貴方の元へ駆けつける、何があっても絶対駆けつける…そしてまた記憶を、貴方に移すわ。
これは私に科せられた原罪、そして貴方への贖罪…。
…御免…なさい…私なりの方法は…これしか…思いつかないのよ…」
「真紅…ありがとう真紅…私は過去を映し出す時計を完成させる、絶対に完成させる…。
そして真紅に『私を置いて行かないでくれ』と…絶対に伝える、それでこの喜劇は、終わらせるよ」
「フラーケ…ううっ…フラーケ!!」
真紅はフラーケを抱きしめて号泣した、フラーケも苺わだちを解かれて、真紅を抱きしめて泣いた。
ジュンはその姿を見て、まるで実の親子を見ているような、そんな不思議な錯覚を覚えた…。
142: 2009/04/21(火) 14:55:07.35 ID:uJzj5pMm0
そこに何者かが叫びながら飛びこんできた。
「せぇぇいやああああぁぁぁぁ!!」
ゴロゴロと地面を転がって、雛苺と衝突して止まった、金糸雀だった。
「真紅!何を悠長に泣いてるかしら!…って!殺人鬼と泣いてるかしらぁぁぁ!?」
金糸雀は慌てて雛苺の後ろに隠れ、苺わだち!苺わだち!と必氏の形相で訴える。
でも雛苺はさっきの衝突で、気絶していた。
「この人は…フラーケはもう、大丈夫よ」
訝しげな表情で、金糸雀は答えた。
「本当?本当かしら!?…それより真紅!時計!ほら時計よ!…って言うか貴女!左手!!」
気絶した雛苺を盾に、真紅に向かって、時計を持った右手だけを目一杯伸ばして、時計を渡そうとした。
右手がプルプルと震えていた、まだフラーケが信じられなくて、近寄りずらいんだろう…。
真紅は時計を受け取って確認した、確かに私の時計、フラーケの愛情が篭った時計。
時計は動いていた、フラーケに真紅との幸せな思い出が戻った事で、再び動き出したのだ。
「金糸雀!取り返してくれたのね!夢のようだわ!本当にありがとう!」
そう言って真紅は泣き笑いを浮かべながら、金糸雀に飛び付いた。
「そんなに強く抱きつかないで欲しいかしらぁ!苦しいかしらぁ!」
言葉ではそう言いつつも、金糸雀は嬉しかった。
これで真紅に借りを返せた、真紅の笑顔を私は守れたんだ!
「せぇぇいやああああぁぁぁぁ!!」
ゴロゴロと地面を転がって、雛苺と衝突して止まった、金糸雀だった。
「真紅!何を悠長に泣いてるかしら!…って!殺人鬼と泣いてるかしらぁぁぁ!?」
金糸雀は慌てて雛苺の後ろに隠れ、苺わだち!苺わだち!と必氏の形相で訴える。
でも雛苺はさっきの衝突で、気絶していた。
「この人は…フラーケはもう、大丈夫よ」
訝しげな表情で、金糸雀は答えた。
「本当?本当かしら!?…それより真紅!時計!ほら時計よ!…って言うか貴女!左手!!」
気絶した雛苺を盾に、真紅に向かって、時計を持った右手だけを目一杯伸ばして、時計を渡そうとした。
右手がプルプルと震えていた、まだフラーケが信じられなくて、近寄りずらいんだろう…。
真紅は時計を受け取って確認した、確かに私の時計、フラーケの愛情が篭った時計。
時計は動いていた、フラーケに真紅との幸せな思い出が戻った事で、再び動き出したのだ。
「金糸雀!取り返してくれたのね!夢のようだわ!本当にありがとう!」
そう言って真紅は泣き笑いを浮かべながら、金糸雀に飛び付いた。
「そんなに強く抱きつかないで欲しいかしらぁ!苦しいかしらぁ!」
言葉ではそう言いつつも、金糸雀は嬉しかった。
これで真紅に借りを返せた、真紅の笑顔を私は守れたんだ!
144: 2009/04/21(火) 14:56:54.83 ID:uJzj5pMm0
「こっちが解決したなら、とっとと逃げるかしら!」
真紅達の背後から叫び声が聞こえた、翠星石と蒼星石が必氏の表情で、真紅に空中で訴えていた。
「そうだよ真紅!水銀燈から早く逃げよう!…!?」
「今の水銀燈はヤバイです!ケツまくって逃げるです!とっととズラかるですぅ!…真紅!左手が!?」
2人は真紅の異変に気付き、真紅の側に降り立った。
真紅を心配して、深刻な表情の2人に微笑みながら答える。
「左手は…私の行いの報い、でもきっと親愛なる家来が直してくれるわ…そうでしょ?ジュン?」
ジュンは頭を掻きながら、答えた。
「…うん…まあ…多分…きっと…」
そんな曖昧なジュンの元へ歩み寄り、脛にパンチを食らわせる真紅。
悶えるジュンに真紅が言い放つ。
「早く拾ってきなさい!全く…気の利かない家来を持つと、身が持たないわ」
「ジュン君!雛苺もお願い!さあ真紅、早く逃げよう!」
「ええ、分かったわ、有難うみんな…ジュン!急ぐわよ!…また会いましょう、フラーケ…」
「ああ真紅…その少年を大切にな…それより、ジュン君に私からも質問がある、いいかな?」
「はい、何ですか?フラーケさん」
「君は良くこんな、我が儘女王のマスターが務まるな、まだ若いのに…」
「まあ…その…マスターと言うか…家来です…けど…」
「そうか、家来か…フフッ…ワハハハハハ!」
真紅達の背後から叫び声が聞こえた、翠星石と蒼星石が必氏の表情で、真紅に空中で訴えていた。
「そうだよ真紅!水銀燈から早く逃げよう!…!?」
「今の水銀燈はヤバイです!ケツまくって逃げるです!とっととズラかるですぅ!…真紅!左手が!?」
2人は真紅の異変に気付き、真紅の側に降り立った。
真紅を心配して、深刻な表情の2人に微笑みながら答える。
「左手は…私の行いの報い、でもきっと親愛なる家来が直してくれるわ…そうでしょ?ジュン?」
ジュンは頭を掻きながら、答えた。
「…うん…まあ…多分…きっと…」
そんな曖昧なジュンの元へ歩み寄り、脛にパンチを食らわせる真紅。
悶えるジュンに真紅が言い放つ。
「早く拾ってきなさい!全く…気の利かない家来を持つと、身が持たないわ」
「ジュン君!雛苺もお願い!さあ真紅、早く逃げよう!」
「ええ、分かったわ、有難うみんな…ジュン!急ぐわよ!…また会いましょう、フラーケ…」
「ああ真紅…その少年を大切にな…それより、ジュン君に私からも質問がある、いいかな?」
「はい、何ですか?フラーケさん」
「君は良くこんな、我が儘女王のマスターが務まるな、まだ若いのに…」
「まあ…その…マスターと言うか…家来です…けど…」
「そうか、家来か…フフッ…ワハハハハハ!」
145: 2009/04/21(火) 15:01:46.79 ID:uJzj5pMm0
その時、青く燃え盛る羽根が、ジュン達の方へ複数飛んできた。
皆辛うじてよける事が出来たが、羽根は本棚に当たり、本棚が燃え出した。
燃え盛る本棚を、必氏に消そうとするフラーケ。
「貴女たち、私を置いて…何処へ行くのかしら?」
水銀燈が暗闇から静かに現れた、冷笑を浮かべながら…。
「水銀燈!フラーケを騙した貴女は…許さない…ッ!」
真紅は怒りを露にして、水銀燈を睨みつけた。
「あらぁ真紅ゥ…やっと怒ったのねェ…左手の八つ当たり?まあいいわ、怒ったのなら私と勝負しなさい!」
「私は貴女の思い通りにはならない!貴女には私と戦うよりも前に、やらなければならない事があるわ!
今までの非道な行い、今すぐ詫びなさい!これは命令よ!」
「侘びるゥ?アンタ筋金入りの馬鹿ねェ…やっぱり馬鹿は氏ななきゃ治らないのかしら?
もしよかったらアタシが治して差し上げてよ?今この場でアナタをジャンクにする事で!」
「詫びる気は無いのね…分かったわ、貴女を無理矢理にでも懺悔させる!私が詫びさせるわ!
…私を怒らせた事、せいぜい後悔するのね…」
「そうよ真紅ゥ…その目よ!私が望んでいたのはその目なのよォ!でも…もう一息って所かしら?ねェ?」
そのやり取りを聞いて、ジュンが制止した。
「今はやめろ真紅!挑発に乗るな!早く逃げよう!」
皆辛うじてよける事が出来たが、羽根は本棚に当たり、本棚が燃え出した。
燃え盛る本棚を、必氏に消そうとするフラーケ。
「貴女たち、私を置いて…何処へ行くのかしら?」
水銀燈が暗闇から静かに現れた、冷笑を浮かべながら…。
「水銀燈!フラーケを騙した貴女は…許さない…ッ!」
真紅は怒りを露にして、水銀燈を睨みつけた。
「あらぁ真紅ゥ…やっと怒ったのねェ…左手の八つ当たり?まあいいわ、怒ったのなら私と勝負しなさい!」
「私は貴女の思い通りにはならない!貴女には私と戦うよりも前に、やらなければならない事があるわ!
今までの非道な行い、今すぐ詫びなさい!これは命令よ!」
「侘びるゥ?アンタ筋金入りの馬鹿ねェ…やっぱり馬鹿は氏ななきゃ治らないのかしら?
もしよかったらアタシが治して差し上げてよ?今この場でアナタをジャンクにする事で!」
「詫びる気は無いのね…分かったわ、貴女を無理矢理にでも懺悔させる!私が詫びさせるわ!
…私を怒らせた事、せいぜい後悔するのね…」
「そうよ真紅ゥ…その目よ!私が望んでいたのはその目なのよォ!でも…もう一息って所かしら?ねェ?」
そのやり取りを聞いて、ジュンが制止した。
「今はやめろ真紅!挑発に乗るな!早く逃げよう!」
146: 2009/04/21(火) 15:03:19.04 ID:uJzj5pMm0
「そうはいかなくてよ?メイメイ!」
その瞬間メイメイが発した強烈な光がフィールドを照らし、皆が目を閉じた。
その後目を開けた一同は、ジュンがいない事に気付いた。
「ジュン!何処!何処に行ったの!ジュン!」
必氏の形相でジュンを探す真紅、しかし一向に見つからない。
「何かお探しのようねェ…真紅、お探し物はこれかしら!」
暗闇から、右手に水晶の剣を携えた薔薇水晶が、静かに出てきた。
その傍らに、ジュンがいた…。
ナイフほどの大きさで、鋭利な先端を持つ水晶を首元に当てられ、苦悶の表情を浮かべるジュンが立っていた。
薔薇水晶は口元を歪め、微笑を浮かべながら言った。
「…真紅…時計…ちょうだい…」
その瞬間メイメイが発した強烈な光がフィールドを照らし、皆が目を閉じた。
その後目を開けた一同は、ジュンがいない事に気付いた。
「ジュン!何処!何処に行ったの!ジュン!」
必氏の形相でジュンを探す真紅、しかし一向に見つからない。
「何かお探しのようねェ…真紅、お探し物はこれかしら!」
暗闇から、右手に水晶の剣を携えた薔薇水晶が、静かに出てきた。
その傍らに、ジュンがいた…。
ナイフほどの大きさで、鋭利な先端を持つ水晶を首元に当てられ、苦悶の表情を浮かべるジュンが立っていた。
薔薇水晶は口元を歪め、微笑を浮かべながら言った。
「…真紅…時計…ちょうだい…」
147: 2009/04/21(火) 15:04:45.42 ID:uJzj5pMm0
燃え盛る本棚を号泣しながら、フラーケは眺めていた。
もう終わりだ…もう時間の薇を創る事は出来ない…。
真紅との約束が、守れなくなってしまった…。
「…あぁ…私の…研究の成果が…私の…全てが…」
被害を最小限に食い止めようと、蒼星石は翠星石に叫ぶ。
「翠星石!火を消して!早く!」
「合点!スイドリーム!」
翠星石の如雨露から大量の水が放出されて、炎は鎮火した。
本棚は、半分ほど焼けてしまい、黒く変色していたが、辛うじて形は残っていた。
「…ううっ…私の…私の成果が…もう終わりだ…私はもう…」
フラーケが悲しみに暮れているのを見て、金糸雀が話しかけた。
「さ、殺人鬼さん?貴方、泣いてるの?悲しいのかしら?」
「…そうだ…真紅との…約束が…あの部分に…重要な…事柄が…」
金糸雀は真紅との約束と言う部分に引っかかりを覚えた。
まあ折角だから、真紅にもうちょっと恩に着せてもいいかな?と言う策略が、瞬時に弾き出された。
「こんなのカナが直すかしら!だからカナが殺人鬼さんを助けたって、真紅に大~げさに言いふらして欲しいかしら!」
黒こげた本棚を修復する金糸雀、フラーケは信じられないと言った表情で金糸雀を見て言った。
「…お嬢さんも…持っているのか…その…能力…時間の薇を…」
得意気な表情で、金糸雀が答えた。
「当ったりきかしら!真紅以上の能力かしら~!だから大~げさに、真紅にこの事を言っといてかしら!」
真紅以上と言うのは、実は嘘だったが…。
完全に本棚は修復され、金糸雀が得意気に言い放った。
「殺人鬼さん!ど~かしら?真紅以上でしょ?…ねえ、ちょっと、聞いてるのかしら~!」
フラーケは下を向いてボソボソと、ある言葉を繰り返していた。
「…これなら…いける…これならば…いける筈…」
もう終わりだ…もう時間の薇を創る事は出来ない…。
真紅との約束が、守れなくなってしまった…。
「…あぁ…私の…研究の成果が…私の…全てが…」
被害を最小限に食い止めようと、蒼星石は翠星石に叫ぶ。
「翠星石!火を消して!早く!」
「合点!スイドリーム!」
翠星石の如雨露から大量の水が放出されて、炎は鎮火した。
本棚は、半分ほど焼けてしまい、黒く変色していたが、辛うじて形は残っていた。
「…ううっ…私の…私の成果が…もう終わりだ…私はもう…」
フラーケが悲しみに暮れているのを見て、金糸雀が話しかけた。
「さ、殺人鬼さん?貴方、泣いてるの?悲しいのかしら?」
「…そうだ…真紅との…約束が…あの部分に…重要な…事柄が…」
金糸雀は真紅との約束と言う部分に引っかかりを覚えた。
まあ折角だから、真紅にもうちょっと恩に着せてもいいかな?と言う策略が、瞬時に弾き出された。
「こんなのカナが直すかしら!だからカナが殺人鬼さんを助けたって、真紅に大~げさに言いふらして欲しいかしら!」
黒こげた本棚を修復する金糸雀、フラーケは信じられないと言った表情で金糸雀を見て言った。
「…お嬢さんも…持っているのか…その…能力…時間の薇を…」
得意気な表情で、金糸雀が答えた。
「当ったりきかしら!真紅以上の能力かしら~!だから大~げさに、真紅にこの事を言っといてかしら!」
真紅以上と言うのは、実は嘘だったが…。
完全に本棚は修復され、金糸雀が得意気に言い放った。
「殺人鬼さん!ど~かしら?真紅以上でしょ?…ねえ、ちょっと、聞いてるのかしら~!」
フラーケは下を向いてボソボソと、ある言葉を繰り返していた。
「…これなら…いける…これならば…いける筈…」
148: 2009/04/21(火) 15:06:03.94 ID:uJzj5pMm0
「ジュン!ジュンに何て事を!薔薇水晶!」
真紅は必氏の表情で薔薇水晶に叫んだ、だが薔薇水晶は無表情に同じ言葉を繰り返すのみだった。
「…真紅…時計…ちょうだい…」
「この子ったら、何考えてるか分からないと思っていたけど、意外と話せば分かる子だったわぁ、
時計が欲しいだけだったなんて…口下手なんだからねェ…」
水銀燈が薔薇水晶に冷笑を浮かべて言った、薔薇水晶は無表情に、ただ真紅を見つめている。
水銀燈は心の中で薔薇水晶を憐れんでいた、時計を執拗なまでに欲する薔薇水晶を憐れんでいた。
この子は本当にお馬鹿さん、今更時計ごときで真紅は本気で怒らないのよ?せいぜい悲しむだけなのよ?
まあ貴女が得意気に時計を壊している間に、私はフラーケの元に行くけどね…。
真紅にこれ以上無い程の苦痛と怒りを与える為に…。
「止めるんだ薔薇水晶!君は!何て事をするんだ!」
「チビ!…ジュンを離すです!!」
蒼星石達はジュンを人質にされて、全く動けない。
ジュンの苦悶の表情に堪え兼ねた真紅は、薔薇水晶に向かって毅然たる態度で叫んだ。
「分かったわ!時計は渡す!だからジュンを!」
「物分かりが良いわよ真紅ゥ…さあ、早く行きなさい!」
ゆっくりと薔薇水晶の方へ歩み寄る真紅、蒼星石達はその姿を固唾を呑んで見守った。
真紅は必氏の表情で薔薇水晶に叫んだ、だが薔薇水晶は無表情に同じ言葉を繰り返すのみだった。
「…真紅…時計…ちょうだい…」
「この子ったら、何考えてるか分からないと思っていたけど、意外と話せば分かる子だったわぁ、
時計が欲しいだけだったなんて…口下手なんだからねェ…」
水銀燈が薔薇水晶に冷笑を浮かべて言った、薔薇水晶は無表情に、ただ真紅を見つめている。
水銀燈は心の中で薔薇水晶を憐れんでいた、時計を執拗なまでに欲する薔薇水晶を憐れんでいた。
この子は本当にお馬鹿さん、今更時計ごときで真紅は本気で怒らないのよ?せいぜい悲しむだけなのよ?
まあ貴女が得意気に時計を壊している間に、私はフラーケの元に行くけどね…。
真紅にこれ以上無い程の苦痛と怒りを与える為に…。
「止めるんだ薔薇水晶!君は!何て事をするんだ!」
「チビ!…ジュンを離すです!!」
蒼星石達はジュンを人質にされて、全く動けない。
ジュンの苦悶の表情に堪え兼ねた真紅は、薔薇水晶に向かって毅然たる態度で叫んだ。
「分かったわ!時計は渡す!だからジュンを!」
「物分かりが良いわよ真紅ゥ…さあ、早く行きなさい!」
ゆっくりと薔薇水晶の方へ歩み寄る真紅、蒼星石達はその姿を固唾を呑んで見守った。
149: 2009/04/21(火) 15:08:21.35 ID:uJzj5pMm0
ジュンを人質に取った薔薇水晶と、時計を正面に掲げた真紅が対峙した、緊張が真紅を襲う…。
薔薇水晶の目を睨みつけながら、真紅が言った。
「先にジュンを解放しなさい、でなければ…時計は渡さない」
「…真紅…早く…時計…ちょうだい…」
「…止めるんだ真紅…時計は…フラーケさんとの…約束…」
「…時計はまた…フラーケに頂けばいいのよ…ジュン…」
水銀燈は真紅を睨みながら言った。
「あぁ…もう…じれったいわねェ!早くしなさいよ!真紅!!」
水銀燈が真紅に罵声を浴びせた瞬間、水銀燈の背後に水晶の柱が、壁のようにそそり立った。
「!?」
水銀燈は咄嗟に振り返りながら、水晶の柱を剣で砕いた。
その勢いを利用して、薔薇水晶の方向に向き直った…しかしそこには、地面に落ちている水晶のナイフと、
仰向けに倒れているジュン、驚きの表情をして水銀燈を見やる真紅しかいなかった。
「薔薇水晶!?」
次の瞬間、水銀燈は鈍い衝撃を感じた、それは胴回りから感じた衝撃だった。
水銀燈は目の前の光景が、落下する感覚を覚えた、突然の事態が理解出来なかった。
薔薇水晶の目を睨みつけながら、真紅が言った。
「先にジュンを解放しなさい、でなければ…時計は渡さない」
「…真紅…早く…時計…ちょうだい…」
「…止めるんだ真紅…時計は…フラーケさんとの…約束…」
「…時計はまた…フラーケに頂けばいいのよ…ジュン…」
水銀燈は真紅を睨みながら言った。
「あぁ…もう…じれったいわねェ!早くしなさいよ!真紅!!」
水銀燈が真紅に罵声を浴びせた瞬間、水銀燈の背後に水晶の柱が、壁のようにそそり立った。
「!?」
水銀燈は咄嗟に振り返りながら、水晶の柱を剣で砕いた。
その勢いを利用して、薔薇水晶の方向に向き直った…しかしそこには、地面に落ちている水晶のナイフと、
仰向けに倒れているジュン、驚きの表情をして水銀燈を見やる真紅しかいなかった。
「薔薇水晶!?」
次の瞬間、水銀燈は鈍い衝撃を感じた、それは胴回りから感じた衝撃だった。
水銀燈は目の前の光景が、落下する感覚を覚えた、突然の事態が理解出来なかった。
150: 2009/04/21(火) 15:09:14.97 ID:uJzj5pMm0
それは薔薇水晶が起こした事だった。
水晶の柱を作った直後、ジュンを側面に突き放した勢いで、水銀燈に突進していた。
そして水銀燈が柱を壊す為に後ろに振り向き、目を逸らしている間に接近し、突進の勢いを利用して、
水銀燈の胴体を水晶の剣で切断したのだった。
水銀燈の下半身は膝を付き、上半身はうつ伏せに崩れ落ち、目を見開いたまま、水銀燈は静かに息絶えた。
「水銀燈!!」
突然の事に、今までの非道を忘れたのか、真紅が叫んだ。
ジュンの元に駆けつける事も、今は思いつかなかった。
間を空けず薔薇水晶は、ジュンと真紅の間に、水晶の柱をそびえ立たせた。
水銀燈のローザミスティカが、ゆっくりと薔薇水晶に、眩い閃光を上げて入り込む。
薔薇水晶は満足気な微笑を浮かべ、ジュンを見やった。
「…真紅…貴女の…大切な物…時計じゃ…ない…」
水晶の柱を作った直後、ジュンを側面に突き放した勢いで、水銀燈に突進していた。
そして水銀燈が柱を壊す為に後ろに振り向き、目を逸らしている間に接近し、突進の勢いを利用して、
水銀燈の胴体を水晶の剣で切断したのだった。
水銀燈の下半身は膝を付き、上半身はうつ伏せに崩れ落ち、目を見開いたまま、水銀燈は静かに息絶えた。
「水銀燈!!」
突然の事に、今までの非道を忘れたのか、真紅が叫んだ。
ジュンの元に駆けつける事も、今は思いつかなかった。
間を空けず薔薇水晶は、ジュンと真紅の間に、水晶の柱をそびえ立たせた。
水銀燈のローザミスティカが、ゆっくりと薔薇水晶に、眩い閃光を上げて入り込む。
薔薇水晶は満足気な微笑を浮かべ、ジュンを見やった。
「…真紅…貴女の…大切な物…時計じゃ…ない…」
151: 2009/04/21(火) 15:10:43.78 ID:uJzj5pMm0
薔薇水晶は先程の真紅との対峙で、気が付いてしまったのだ。
水銀燈のお姉さまは、今は隙だらけ、敵ではない。
真紅は時計を私に渡そうとした、それは何故?
私は真紅のマスターを人質にしていた、だから真紅は私に時計を渡そうとした。
真紅には時計より大切な物がある、私は真紅の大切な物を壊す!
そうして真紅を怒らせて、その真紅に勝ち、お父様に認めてもらう、真紅より上と認めてもらう。
つまり真紅が一番大切な物は、その大切な物は…。
翠星石と蒼星石が同時に動いた、翠星石はジュンを助ける為に大木を生やした。
蒼星石は薔薇水晶に、庭師の鋏を構えて飛び掛った。
だが一歩遅かった…。
薔薇水晶は既にジュンの腹部に、水晶の剣を打ち込んでいた。
その圧倒的なスピードは、水銀燈の羽根の力によるものだった。
薔薇水晶はその圧倒的なスピードを生かして、飛び掛る蒼星石を蹴り飛ばし、壁に激突させ、気絶させた。
翠星石の生やした大木は、虚しく天井まで伸びていく…。
「ジュン!!」
「蒼星石!!」
2人の叫びが、フィールドに虚しく木霊した…。
水銀燈のお姉さまは、今は隙だらけ、敵ではない。
真紅は時計を私に渡そうとした、それは何故?
私は真紅のマスターを人質にしていた、だから真紅は私に時計を渡そうとした。
真紅には時計より大切な物がある、私は真紅の大切な物を壊す!
そうして真紅を怒らせて、その真紅に勝ち、お父様に認めてもらう、真紅より上と認めてもらう。
つまり真紅が一番大切な物は、その大切な物は…。
翠星石と蒼星石が同時に動いた、翠星石はジュンを助ける為に大木を生やした。
蒼星石は薔薇水晶に、庭師の鋏を構えて飛び掛った。
だが一歩遅かった…。
薔薇水晶は既にジュンの腹部に、水晶の剣を打ち込んでいた。
その圧倒的なスピードは、水銀燈の羽根の力によるものだった。
薔薇水晶はその圧倒的なスピードを生かして、飛び掛る蒼星石を蹴り飛ばし、壁に激突させ、気絶させた。
翠星石の生やした大木は、虚しく天井まで伸びていく…。
「ジュン!!」
「蒼星石!!」
2人の叫びが、フィールドに虚しく木霊した…。
152: 2009/04/21(火) 15:12:14.56 ID:uJzj5pMm0
翠星石は一目散に蒼星石の元に向かった、壁に埋まった蒼星石を必氏に助けようとしている。
真紅は水晶の柱を、必氏に壊して、ジュンの元に駆け寄った。
ジュンの腹部には、水晶の剣が深々と突き刺さっていた。
「ジュン!?ジュン!しっかりして!ジュン!!」
ジュンは真紅の声に気付き、僕は大丈夫だと返答しようとした。
しかし口に力が入らず、片言で喋る事しか出来なかった。
「…真…紅…?僕は?…ゲフッ!」
口から大量の血を吐き、苦しそうに咳き込むジュン。
「ジュン!?ジュン!ジュン!!」
「…お姉さま…真紅…怒った?…」
薔薇水晶が新たに水晶の剣を右手に作り直して、真紅の側面に立ち憚った。
「……貴女の…大切な物…壊したの…私…真紅?…怒った?」
「怒った…?それだけの…理由で?…貴女は…こんな事を…!?」
「…そうよ…だから…戦って…早く…真紅…」
「嫌よ!!私は戦わない!貴女の思い通りにはならない!貴女はお父様の言付けを破った!人を傷付けた!」
「そう…なら…この子は氏ぬ…助けたいなら…私と…戦って…早く…」
「助けたい…なら?戦って…!?」
「貴女が…私を…早く…倒せれば…この子は助かる…選択して……助けるか…見頃しにするか…」
真紅は水晶の柱を、必氏に壊して、ジュンの元に駆け寄った。
ジュンの腹部には、水晶の剣が深々と突き刺さっていた。
「ジュン!?ジュン!しっかりして!ジュン!!」
ジュンは真紅の声に気付き、僕は大丈夫だと返答しようとした。
しかし口に力が入らず、片言で喋る事しか出来なかった。
「…真…紅…?僕は?…ゲフッ!」
口から大量の血を吐き、苦しそうに咳き込むジュン。
「ジュン!?ジュン!ジュン!!」
「…お姉さま…真紅…怒った?…」
薔薇水晶が新たに水晶の剣を右手に作り直して、真紅の側面に立ち憚った。
「……貴女の…大切な物…壊したの…私…真紅?…怒った?」
「怒った…?それだけの…理由で?…貴女は…こんな事を…!?」
「…そうよ…だから…戦って…早く…真紅…」
「嫌よ!!私は戦わない!貴女の思い通りにはならない!貴女はお父様の言付けを破った!人を傷付けた!」
「そう…なら…この子は氏ぬ…助けたいなら…私と…戦って…早く…」
「助けたい…なら?戦って…!?」
「貴女が…私を…早く…倒せれば…この子は助かる…選択して……助けるか…見頃しにするか…」
153: 2009/04/21(火) 15:13:10.78 ID:uJzj5pMm0
真紅はジュンを見た、腹部からの出血は剣が刺さっている為に、何とか微量で抑えられているが、
額に吹き出る汗、口からの出血、青ざめた顔、そして指輪の輝きから、残された時間は少ない事が窺い知れた。
真紅はジュンの手を優しく握り締めながら、薔薇水晶を睨み付けた。
「私と…どうしても…戦いたいのね…貴女…こんな手を…使ってまで」
「…そうよ…だから…アリスゲームを…早く…真紅…」
「…薔薇水晶…同じ…ローゼンメイデンとして…貴女の考え…行いは…許せない…ッ!」
怒りを露にする真紅を、弱弱しい声でジュンが制止した。
「真紅…止めろ…もういい…君はもう…戦わない…そうだろ?…そう…決めたんだろ?」
「何を言っているのジュン!この子は!貴方を!!」
「僕は…気高い…誇りと…精神を持った…真紅が…そんな真紅が…好きなんだ…。
だから…僕の為に…信念を…曲げないで…頼む…よ」
「ジュン!私は貴方を失いたくないの!私の信念なんていいの!私は貴方の為に戦う!!貴方を絶対助ける!!」
「……真紅……早く…戦って……でないと…その子も…貴女も……氏ぬ!!」
薔薇水晶は水晶の剣を、頭上にゆっくりと振りかぶり、真紅に向けて振り下ろした。
だが次の瞬間には、薔薇水晶の体は、何故か空中に投げ出されていた。
背中から剣を胸部に突き刺されて…。
額に吹き出る汗、口からの出血、青ざめた顔、そして指輪の輝きから、残された時間は少ない事が窺い知れた。
真紅はジュンの手を優しく握り締めながら、薔薇水晶を睨み付けた。
「私と…どうしても…戦いたいのね…貴女…こんな手を…使ってまで」
「…そうよ…だから…アリスゲームを…早く…真紅…」
「…薔薇水晶…同じ…ローゼンメイデンとして…貴女の考え…行いは…許せない…ッ!」
怒りを露にする真紅を、弱弱しい声でジュンが制止した。
「真紅…止めろ…もういい…君はもう…戦わない…そうだろ?…そう…決めたんだろ?」
「何を言っているのジュン!この子は!貴方を!!」
「僕は…気高い…誇りと…精神を持った…真紅が…そんな真紅が…好きなんだ…。
だから…僕の為に…信念を…曲げないで…頼む…よ」
「ジュン!私は貴方を失いたくないの!私の信念なんていいの!私は貴方の為に戦う!!貴方を絶対助ける!!」
「……真紅……早く…戦って……でないと…その子も…貴女も……氏ぬ!!」
薔薇水晶は水晶の剣を、頭上にゆっくりと振りかぶり、真紅に向けて振り下ろした。
だが次の瞬間には、薔薇水晶の体は、何故か空中に投げ出されていた。
背中から剣を胸部に突き刺されて…。
154: 2009/04/21(火) 15:14:41.60 ID:uJzj5pMm0
薔薇水晶は背中から刺された剣の衝撃で、空中へ投げ出され、胸部を貫通した剣先から地面に落下した。
剣先は地面に刺さり、その衝撃で薔薇水晶の左目の眼帯が外れ、音も無く落ちた。
左目から涙が溢れ、頬を伝う…その涙が何を訴えているのかは、知る由も無い…。
薔薇水晶は剣を刺されたまま、手足を地面にだらりと垂らし、静かに息絶えた。
薔薇水晶を絶命させたその剣は、水銀燈の剣だった。
水銀燈が薔薇水晶の背中に向けて、投げ放った剣だった。
水銀燈は上半身のみで、ズルズルと音を立てながら這い蹲り、真紅の元へゆっくりと向かっていた。
小声で何かを呟きながら、瞳孔が開ききった狂気を帯びた瞳で、ただ真紅のみを見つめ、
真紅の元へ、ゆっくりと向かっていた。
「…あの…忌々しい…妹…許さない…真紅を…倒すのは…この私!ククッ…コノ…ワタシ…」
剣先は地面に刺さり、その衝撃で薔薇水晶の左目の眼帯が外れ、音も無く落ちた。
左目から涙が溢れ、頬を伝う…その涙が何を訴えているのかは、知る由も無い…。
薔薇水晶は剣を刺されたまま、手足を地面にだらりと垂らし、静かに息絶えた。
薔薇水晶を絶命させたその剣は、水銀燈の剣だった。
水銀燈が薔薇水晶の背中に向けて、投げ放った剣だった。
水銀燈は上半身のみで、ズルズルと音を立てながら這い蹲り、真紅の元へゆっくりと向かっていた。
小声で何かを呟きながら、瞳孔が開ききった狂気を帯びた瞳で、ただ真紅のみを見つめ、
真紅の元へ、ゆっくりと向かっていた。
「…あの…忌々しい…妹…許さない…真紅を…倒すのは…この私!ククッ…コノ…ワタシ…」
155: 2009/04/21(火) 15:15:27.77 ID:uJzj5pMm0
「水銀燈…止めて…もう止めて…」
水銀燈のおぞましい姿と、恐ろしい気迫を持つ狂気の眼差しで、真紅は不意に過去の記憶が呼び覚まされた。
『そうよこの子…水銀燈は…ローザミスティカが無くても…動いていた…、
お父様に会いたい一心で…その純粋な想いのみで…動きだしたのよ…この子は』
真紅は水銀燈の狂気の目を、涙を浮かべ、恐怖に駆られながら、ただ見つめる事しか出来なかった…。
「……シンクヲ…タオスノハ…コノワタシ……アリスニ…ナルノハ…コノ…コノワタシ…」
薔薇水晶に入り込んでいたローザミスティカが、まばゆい光を放ちながら水銀燈に戻った。
そんな事など微塵も気にかけず、ただ真紅に狂気の眼差しを向けて、這って進む水銀燈。
ローザミスティカが戻り、這いずる速度が速まり、そのおぞましさが増した水銀燈に、
真紅はただ涙を流し、恐怖するしかなかった。
「お願い…もう…これ以上…止めて…私達を…苦しめないで…水銀燈…お願い…」
「シンクゥゥゥ…シン…ク…シィィィンクゥゥゥ…オトウサマ…二…アイサレルノハ…コノ…ワタシ…」
歯を食いしばり、ズルズルと音を立てながら、真紅の元へ向かう水銀燈。
ただ真紅を倒し、復讐すると言う執念だけで動く水銀燈に、真紅の訴えなどは聞き入れられる筈は無かった。
「…シィンクゥゥゥ…ダカラ…シニナ…サイ…シィンクゥ……」
「もう止めて!お願い!もう嫌よ!!ジュン!目を覚まして!ジュン!!」
「シ…ンク…シ…ン…ク…シィィィンクゥゥゥ!!」
水銀燈のおぞましい姿と、恐ろしい気迫を持つ狂気の眼差しで、真紅は不意に過去の記憶が呼び覚まされた。
『そうよこの子…水銀燈は…ローザミスティカが無くても…動いていた…、
お父様に会いたい一心で…その純粋な想いのみで…動きだしたのよ…この子は』
真紅は水銀燈の狂気の目を、涙を浮かべ、恐怖に駆られながら、ただ見つめる事しか出来なかった…。
「……シンクヲ…タオスノハ…コノワタシ……アリスニ…ナルノハ…コノ…コノワタシ…」
薔薇水晶に入り込んでいたローザミスティカが、まばゆい光を放ちながら水銀燈に戻った。
そんな事など微塵も気にかけず、ただ真紅に狂気の眼差しを向けて、這って進む水銀燈。
ローザミスティカが戻り、這いずる速度が速まり、そのおぞましさが増した水銀燈に、
真紅はただ涙を流し、恐怖するしかなかった。
「お願い…もう…これ以上…止めて…私達を…苦しめないで…水銀燈…お願い…」
「シンクゥゥゥ…シン…ク…シィィィンクゥゥゥ…オトウサマ…二…アイサレルノハ…コノ…ワタシ…」
歯を食いしばり、ズルズルと音を立てながら、真紅の元へ向かう水銀燈。
ただ真紅を倒し、復讐すると言う執念だけで動く水銀燈に、真紅の訴えなどは聞き入れられる筈は無かった。
「…シィンクゥゥゥ…ダカラ…シニナ…サイ…シィンクゥ……」
「もう止めて!お願い!もう嫌よ!!ジュン!目を覚まして!ジュン!!」
「シ…ンク…シ…ン…ク…シィィィンクゥゥゥ!!」
156: 2009/04/21(火) 15:17:13.52 ID:uJzj5pMm0
水銀燈が真紅の首を絞めようと飛び掛かった。
真紅は咄嗟に身を固め、目を瞑った。
だが、暫くして真紅は違和感を感じた、水銀燈の手の衝撃が、一向に掛からなかった。
ゆっくりと真紅が目を開けると、水銀燈が自分の目の前で制止していた。
狂気の表情を浮かべ、真紅の首に手を伸ばした姿勢のまま、空中で静止していた。
真紅はすぐさまジュンを見やった、ジュンもまた、苦悶の表情のまま、
腹部に刺さった水晶の剣に手を当てた状態で、静止していた。
真紅は異変に気付き、周囲を見回した、壁に埋まり気絶している蒼星石、
蒼星石を助けようと、涙を流しながら必氏に救出しようとしている翠星石、
串刺し状態の薔薇水晶…全てが静止していた。
「こ…これは…?」
真紅が呆然としていると、叫び声が聞こえた。
真紅は声のする方向に向き直した、フラーケが過去を映し出す時計の方から、真紅を呼んでいた。
「真紅!急げ!急いでこっちに!!」
真紅は咄嗟に身を固め、目を瞑った。
だが、暫くして真紅は違和感を感じた、水銀燈の手の衝撃が、一向に掛からなかった。
ゆっくりと真紅が目を開けると、水銀燈が自分の目の前で制止していた。
狂気の表情を浮かべ、真紅の首に手を伸ばした姿勢のまま、空中で静止していた。
真紅はすぐさまジュンを見やった、ジュンもまた、苦悶の表情のまま、
腹部に刺さった水晶の剣に手を当てた状態で、静止していた。
真紅は異変に気付き、周囲を見回した、壁に埋まり気絶している蒼星石、
蒼星石を助けようと、涙を流しながら必氏に救出しようとしている翠星石、
串刺し状態の薔薇水晶…全てが静止していた。
「こ…これは…?」
真紅が呆然としていると、叫び声が聞こえた。
真紅は声のする方向に向き直した、フラーケが過去を映し出す時計の方から、真紅を呼んでいた。
「真紅!急げ!急いでこっちに!!」
157: 2009/04/21(火) 15:18:15.29 ID:uJzj5pMm0
真紅がフラーケの元に、息を切らせて辿り付くと、金糸雀が過去を映し出す時計の空洞部分に向けて、
何かを行っていた。
「真紅!早く!手伝って!手伝って欲しいかしら~!」
金糸雀が必氏の表情で、空洞部分に行っている事、それは時間の薇だった。
装置の空洞部分が黄金色の光を発し、歯車は軋む音を立てながら、鈍い動きでゆっくり回転していた。
機械の鈍い振動が、地面に響いていた。
「早く!早く手伝って!真~~紅~~!」
フラーケが真紅に、強い口調で言った。
「真紅!この空洞に時間の薇の力を使え!このお譲さんだけでは足りないんだ!」
唐突にそう言われて、事態が飲み込めず、うろたえる真紅にフラーケは怒鳴った。
「真紅早くしろ!ジュン君を助けたいなら!私を信じて時間の薇を使え!このお譲さんだけでは駄目なんだ!」
真紅はジュンと言う言葉に反応して、即座に装置に近づき、右手を空洞に向け、時間の薇の能力を放出した。
空洞が赤黄色に輝き、周囲を眩く照らした。
真紅はあまりの眩しさに、目を細めながらも装置を見ると、歯車は白煙を撒き散らし、低音を唸らせながら、
先程とは比べ物にならない速度で、異常を感じさせる程に高速回転していた。
軋む音も一層大きくなり、地面も大きく揺れた。
真紅達は歯車に集中していた為に気付かなかったが、静止していた人物は光の粒子に変化し、
赤黄色に輝きながら、消滅していた。
ただ1人、薔薇水晶を残して…。
何かを行っていた。
「真紅!早く!手伝って!手伝って欲しいかしら~!」
金糸雀が必氏の表情で、空洞部分に行っている事、それは時間の薇だった。
装置の空洞部分が黄金色の光を発し、歯車は軋む音を立てながら、鈍い動きでゆっくり回転していた。
機械の鈍い振動が、地面に響いていた。
「早く!早く手伝って!真~~紅~~!」
フラーケが真紅に、強い口調で言った。
「真紅!この空洞に時間の薇の力を使え!このお譲さんだけでは足りないんだ!」
唐突にそう言われて、事態が飲み込めず、うろたえる真紅にフラーケは怒鳴った。
「真紅早くしろ!ジュン君を助けたいなら!私を信じて時間の薇を使え!このお譲さんだけでは駄目なんだ!」
真紅はジュンと言う言葉に反応して、即座に装置に近づき、右手を空洞に向け、時間の薇の能力を放出した。
空洞が赤黄色に輝き、周囲を眩く照らした。
真紅はあまりの眩しさに、目を細めながらも装置を見ると、歯車は白煙を撒き散らし、低音を唸らせながら、
先程とは比べ物にならない速度で、異常を感じさせる程に高速回転していた。
軋む音も一層大きくなり、地面も大きく揺れた。
真紅達は歯車に集中していた為に気付かなかったが、静止していた人物は光の粒子に変化し、
赤黄色に輝きながら、消滅していた。
ただ1人、薔薇水晶を残して…。
158: 2009/04/21(火) 15:19:29.16 ID:uJzj5pMm0
真紅と金糸雀は、これ以上は放出出来ない所まで、時間の薇の能力を機械に流し込み、疲労の為崩れ落ちた。
過去を映し出す時計は、歯車の停止する甲高い高音を上げながら、徐々に速度を落とし、やがて静止した。
歯車は熱を帯びたのか、白い煙を揚げ、油の臭いを撒き散らしていた。
真紅と金糸雀は周囲を見回した。
先程まで静止していた人物が消えている事にようやく気付き、フラーケに問いかけた。
「フラーケ!ジュン!ジュンは何処!!」
「何故薔薇水晶だけ残ってるかしら!気持ち悪いかしら!ひょっこり動いたりしないかしら~!」
フラーケは膝を付き、俯いていた。
「大丈夫…ジュン君は無事だ、他の者も…全員無事だ……、ただあの子はもう…精神が無いから…」
そう言って力無く、薔薇水晶を指差した、指先が震えていた。
「フラーケ!貴方!大丈夫なの!?フラーケ!」
フラーケは両手の掌を、腕を曲げた状態で胸元に掲げ、大丈夫だと言う意思表示をした。
フラーケは、膝を付いた体勢で静かに語った。
「ジュン君の肉体は、滅びかけていた、あの出血では無理も無い…。
だから、精神を過去へ送り、肉体が健全な頃の過去に移した。
成功している筈だ、真紅は分かるだろ?マスターと指輪で繋がっているから…」
真紅は確かに、ジュンの力が流れ込んでいる事を、感じ取っていた。
「それではジュン!ジュンは無事なのね!有難うフラーケ!フラーケ!!」
真紅は右手でフラーケを抱きしめ、泣きながら無邪気な子供のように笑った。
過去を映し出す時計は、歯車の停止する甲高い高音を上げながら、徐々に速度を落とし、やがて静止した。
歯車は熱を帯びたのか、白い煙を揚げ、油の臭いを撒き散らしていた。
真紅と金糸雀は周囲を見回した。
先程まで静止していた人物が消えている事にようやく気付き、フラーケに問いかけた。
「フラーケ!ジュン!ジュンは何処!!」
「何故薔薇水晶だけ残ってるかしら!気持ち悪いかしら!ひょっこり動いたりしないかしら~!」
フラーケは膝を付き、俯いていた。
「大丈夫…ジュン君は無事だ、他の者も…全員無事だ……、ただあの子はもう…精神が無いから…」
そう言って力無く、薔薇水晶を指差した、指先が震えていた。
「フラーケ!貴方!大丈夫なの!?フラーケ!」
フラーケは両手の掌を、腕を曲げた状態で胸元に掲げ、大丈夫だと言う意思表示をした。
フラーケは、膝を付いた体勢で静かに語った。
「ジュン君の肉体は、滅びかけていた、あの出血では無理も無い…。
だから、精神を過去へ送り、肉体が健全な頃の過去に移した。
成功している筈だ、真紅は分かるだろ?マスターと指輪で繋がっているから…」
真紅は確かに、ジュンの力が流れ込んでいる事を、感じ取っていた。
「それではジュン!ジュンは無事なのね!有難うフラーケ!フラーケ!!」
真紅は右手でフラーケを抱きしめ、泣きながら無邪気な子供のように笑った。
159: 2009/04/21(火) 15:20:20.87 ID:uJzj5pMm0
「過去を映し出す時計は、精神を過去へ送る装置と、さっき説明したね、真紅。
消えた子達は、過去に送られた…でも大丈夫、そんなに遠い過去へは行ってない筈だ、制御した」
「本当!?本当かしら!?」
「ただし…ここに居た記憶は、残らない…それは君達も例外ではない」
「そんな!折角貴方と会えたのに!フラーケと分かり合えたのに!」
「仕方ないんだ…戻った過去より先の記憶は、いわば未来の記憶…あってはならないんだよ。
そこはまだ未知の領域で、まだ私にも理解が出来ていないんだ…すまない真紅」
「仕方…ないのね」
「このフィールドを出たら、君達の肉体は消える…同じ世界に2つの肉体は、いられないんだ。
君達もこのフィールドから出れば、過去に精神が戻される。
今は君達の持つ、時間の薇の効果で、此処に留まっていられる様だが…」
「殺人鬼さん?…具体的には、どこまで戻るのかしら?」
「それは…分からない…済まない、だが…こうするしか無かった、ジュン君を助けるには…」
「そうね…貴方の判断は正しかったわ…ありがとうフラーケ…?!フラーケ!!」
消えた子達は、過去に送られた…でも大丈夫、そんなに遠い過去へは行ってない筈だ、制御した」
「本当!?本当かしら!?」
「ただし…ここに居た記憶は、残らない…それは君達も例外ではない」
「そんな!折角貴方と会えたのに!フラーケと分かり合えたのに!」
「仕方ないんだ…戻った過去より先の記憶は、いわば未来の記憶…あってはならないんだよ。
そこはまだ未知の領域で、まだ私にも理解が出来ていないんだ…すまない真紅」
「仕方…ないのね」
「このフィールドを出たら、君達の肉体は消える…同じ世界に2つの肉体は、いられないんだ。
君達もこのフィールドから出れば、過去に精神が戻される。
今は君達の持つ、時間の薇の効果で、此処に留まっていられる様だが…」
「殺人鬼さん?…具体的には、どこまで戻るのかしら?」
「それは…分からない…済まない、だが…こうするしか無かった、ジュン君を助けるには…」
「そうね…貴方の判断は正しかったわ…ありがとうフラーケ…?!フラーケ!!」
160: 2009/04/21(火) 15:22:02.86 ID:uJzj5pMm0
フラーケは後ろに崩れ落ち、仰向けになって倒れた。
「フラーケ!どうしたのフラーケ!しっかりして!!」
フラーケは先程より衰弱した様子だった、真紅に弱弱しい声で語った。
「私のフィールドはもうすぐ…消滅する、お別れだ…真紅…」
真紅はフラーケの頬に触れながら、号泣して叫んだ。
「嫌ッ!どうしてなの!フラーケ!」
「君達の時間の薇の力は…過去を映し出す時計の…転送能力に使った。
過去を映し出す…時計の動力には…私の精神力を使った…つまりこのフィールドを形成する力。
私は力を使い切った…だからもうすぐ…このフィールドは消える…つまり私も消える」
「何故!?どうしてそんな危険な事を!!貴方の精神力を!!」
「それがこの機械の動力源なんだ…ただ送る人数が多すぎたな…ここまで力を使うとは思わなかった…だがいいんだ。
時間の薇が…完成していなかったから…今迄使う事が出来なかったが…君達のおかげで動かせた…それで十分だ。
私の理論は正しかった…過去を映し出す時計は…完成した…もう私に悔いは無い…2人共…ありがとう」
「でも!貴方の目的とは違う使い方をしてしまったわ!貴方の長年の目的は…ううっ…私達の所為で…」
「フラーケ!どうしたのフラーケ!しっかりして!!」
フラーケは先程より衰弱した様子だった、真紅に弱弱しい声で語った。
「私のフィールドはもうすぐ…消滅する、お別れだ…真紅…」
真紅はフラーケの頬に触れながら、号泣して叫んだ。
「嫌ッ!どうしてなの!フラーケ!」
「君達の時間の薇の力は…過去を映し出す時計の…転送能力に使った。
過去を映し出す…時計の動力には…私の精神力を使った…つまりこのフィールドを形成する力。
私は力を使い切った…だからもうすぐ…このフィールドは消える…つまり私も消える」
「何故!?どうしてそんな危険な事を!!貴方の精神力を!!」
「それがこの機械の動力源なんだ…ただ送る人数が多すぎたな…ここまで力を使うとは思わなかった…だがいいんだ。
時間の薇が…完成していなかったから…今迄使う事が出来なかったが…君達のおかげで動かせた…それで十分だ。
私の理論は正しかった…過去を映し出す時計は…完成した…もう私に悔いは無い…2人共…ありがとう」
「でも!貴方の目的とは違う使い方をしてしまったわ!貴方の長年の目的は…ううっ…私達の所為で…」
161: 2009/04/21(火) 15:22:51.98 ID:uJzj5pMm0
「もういいんだ…目的なんて…今の私の心には、真紅との幸せな思い出が溢れている…それで満足だよ」
「フラーケ…ジュンの為に…ありがとう…ううっ…あの子も喜ぶはずよ…」
「真紅…ジュン君を…大切にな…あの子は良い子だ…真紅を心から愛している…家来じゃないぞ…」
「…ううっ…分かった…大切にする…敬意を払うわ…」
「もう一つ…いいか?私の最後の…頼みだ」
「何でも……言って頂戴…」
「君達のお父様は…きっと私の様に…私以上に…生きている筈だ…彼もきっと…心が…壊れてる…」
「!?」
「今の私は…君の過去の…水銀燈との戦いの…記憶が…蘇っている…、そして今……目の前で…
アリスゲームを見た…惨すぎる…こんな事…自分が創った娘に…こんな仕打ちが…思いつくのは…ありえない…」
「…」
「だから…救ってやってくれ…君達のお父様を…でもここを…出たら…忘れてしまう…ん…だったな…
…可笑しいな…だから…笑っておくれ…最後に…笑顔を…見せておくれ…真紅…」
「私は忘れない!絶対に貴方の事!絶対にお父様を救うわ!!…だからもう…ううっ…無理しないで…頂戴」
「さあ…そろそろ行きなさい…もうじき崩壊する…さようなら…私の愛しい娘…真紅」
「…さようなら…フラーケ…親愛なる……お父様…」
「フラーケ…ジュンの為に…ありがとう…ううっ…あの子も喜ぶはずよ…」
「真紅…ジュン君を…大切にな…あの子は良い子だ…真紅を心から愛している…家来じゃないぞ…」
「…ううっ…分かった…大切にする…敬意を払うわ…」
「もう一つ…いいか?私の最後の…頼みだ」
「何でも……言って頂戴…」
「君達のお父様は…きっと私の様に…私以上に…生きている筈だ…彼もきっと…心が…壊れてる…」
「!?」
「今の私は…君の過去の…水銀燈との戦いの…記憶が…蘇っている…、そして今……目の前で…
アリスゲームを見た…惨すぎる…こんな事…自分が創った娘に…こんな仕打ちが…思いつくのは…ありえない…」
「…」
「だから…救ってやってくれ…君達のお父様を…でもここを…出たら…忘れてしまう…ん…だったな…
…可笑しいな…だから…笑っておくれ…最後に…笑顔を…見せておくれ…真紅…」
「私は忘れない!絶対に貴方の事!絶対にお父様を救うわ!!…だからもう…ううっ…無理しないで…頂戴」
「さあ…そろそろ行きなさい…もうじき崩壊する…さようなら…私の愛しい娘…真紅」
「…さようなら…フラーケ…親愛なる……お父様…」
162: 2009/04/21(火) 15:23:29.84 ID:uJzj5pMm0
真紅は、涙を流しながら優しく微笑み、フラーケの手を慈しむ様に握った。
フラーケの体は黄金色の光を発しながら、霧の様な粒子に変化し、風に流される様に消えた。
真紅はその光景を、ただ静かに見守った…。
フラーケの体は黄金色の光を発しながら、霧の様な粒子に変化し、風に流される様に消えた。
真紅はその光景を、ただ静かに見守った…。
163: 2009/04/21(火) 15:24:17.86 ID:uJzj5pMm0
フラーケが消滅した直後に、地震の様な揺れが2人を襲った。
その揺れは大きく、本棚は倒れ、ガラスケースは割れ、ベッドは大きく動いた。
それでも真紅は、フラーケのぬくもりの余韻に浸りながら、静かに座っていた。
「真紅~~!?ちょっと~~!早く逃げるかしら~~!」
金糸雀は真紅の巻き毛を背中から掴んで、背負い投げでもするかの様な勢いで、強引に引っ張った。
「金糸雀!?こんな時に!無神経よ!しかも貴女レディに失礼よ!わきまえなさい!!」
すると金糸雀は、無邪気な笑顔で答えた。
「いいんだもん!どーせ此処を出れば、全て忘れるかしら!真紅に何しても、忘れちゃうかしら~~!」
「貴女…私は絶対忘れないわよ!!」
「ほらほら!その意気で!殺人鬼さんの事も忘れないように!頑張って逃げるかしら!!」
「金糸雀!?…貴女…ありがとう…」
「お礼はいいから!戦略的撤収!かしら~~っ!」
その時、金糸雀の頭を悲しい考えが、不意に過ぎった。
記憶が消えると言う事は、つまり真紅に媚売った事が、全部おじゃんじゃん!
…まあいいわ、私は前向き、頭脳派金糸雀!これしきでへこたれないかしら~~~!
その揺れは大きく、本棚は倒れ、ガラスケースは割れ、ベッドは大きく動いた。
それでも真紅は、フラーケのぬくもりの余韻に浸りながら、静かに座っていた。
「真紅~~!?ちょっと~~!早く逃げるかしら~~!」
金糸雀は真紅の巻き毛を背中から掴んで、背負い投げでもするかの様な勢いで、強引に引っ張った。
「金糸雀!?こんな時に!無神経よ!しかも貴女レディに失礼よ!わきまえなさい!!」
すると金糸雀は、無邪気な笑顔で答えた。
「いいんだもん!どーせ此処を出れば、全て忘れるかしら!真紅に何しても、忘れちゃうかしら~~!」
「貴女…私は絶対忘れないわよ!!」
「ほらほら!その意気で!殺人鬼さんの事も忘れないように!頑張って逃げるかしら!!」
「金糸雀!?…貴女…ありがとう…」
「お礼はいいから!戦略的撤収!かしら~~っ!」
その時、金糸雀の頭を悲しい考えが、不意に過ぎった。
記憶が消えると言う事は、つまり真紅に媚売った事が、全部おじゃんじゃん!
…まあいいわ、私は前向き、頭脳派金糸雀!これしきでへこたれないかしら~~~!
164: 2009/04/21(火) 15:25:02.68 ID:uJzj5pMm0
地震の揺れがさらに大きくなり、フィールドの隅が崩れ始めた。
2人は走る事をあきらめ、飛行して逃げる。
扉まで、最大速度で突き進む、その甲斐があったのか、フィールド崩壊までかなりの余裕が出来た。
金糸雀はさっさと扉を開けて、光の中へ飛び込んでいった。
真紅は、主人との別れを悲観する子犬の様な眼差しで、フィールド内を一望してから、
ドレスの裾を持ち、足を交差させ、上品に挨拶をしながら言った。
「私は真紅…誇り高いローゼンメイデン第5ドール…そして幸せな…親愛なる貴方の娘」
真紅は扉をゆっくりと潜り、光の中に溶け込んでいった…。
2人は走る事をあきらめ、飛行して逃げる。
扉まで、最大速度で突き進む、その甲斐があったのか、フィールド崩壊までかなりの余裕が出来た。
金糸雀はさっさと扉を開けて、光の中へ飛び込んでいった。
真紅は、主人との別れを悲観する子犬の様な眼差しで、フィールド内を一望してから、
ドレスの裾を持ち、足を交差させ、上品に挨拶をしながら言った。
「私は真紅…誇り高いローゼンメイデン第5ドール…そして幸せな…親愛なる貴方の娘」
真紅は扉をゆっくりと潜り、光の中に溶け込んでいった…。
166: 2009/04/21(火) 15:26:15.51 ID:uJzj5pMm0
扉を出た真紅は、自分の体がまだ存在している事に驚いた、左腕もまだ治っていなかった。
そして、フラーケのフィールドでの記憶も、まだ残っていた。
肉体は消滅する筈だったのでは?私はどうなってしまうの?
薇も切れかけていて、もう左足を動かす事が出来なくなっていた。
自身の体が、どこかに流されている感覚も無かった。
音も無く、見渡す限りが白い光の広大な空間の中に、真紅はポツンと浮かんでいた。
次第に右足も、細かい痙攣をおこすように、動かなくなっていった。
真紅は、今おかれている自分の環境に孤独感を抱きながら、絶望的な恐怖も感じていた。
突然目の前に、月の形をした黒い入り口の様な物が現れた。
そこから兎の顔にシルクハットを被り、燕尾服を着たラプラスの魔が、拍手をしながらひょっこりと出てきた。
そして人を小馬鹿にする様な口調で、しきりに同じ言葉を繰り返していた。
「ブラーボー!おお!ブラーボー!」
「ラプラス…貴方!」
そして、フラーケのフィールドでの記憶も、まだ残っていた。
肉体は消滅する筈だったのでは?私はどうなってしまうの?
薇も切れかけていて、もう左足を動かす事が出来なくなっていた。
自身の体が、どこかに流されている感覚も無かった。
音も無く、見渡す限りが白い光の広大な空間の中に、真紅はポツンと浮かんでいた。
次第に右足も、細かい痙攣をおこすように、動かなくなっていった。
真紅は、今おかれている自分の環境に孤独感を抱きながら、絶望的な恐怖も感じていた。
突然目の前に、月の形をした黒い入り口の様な物が現れた。
そこから兎の顔にシルクハットを被り、燕尾服を着たラプラスの魔が、拍手をしながらひょっこりと出てきた。
そして人を小馬鹿にする様な口調で、しきりに同じ言葉を繰り返していた。
「ブラーボー!おお!ブラーボー!」
「ラプラス…貴方!」
167: 2009/04/21(火) 15:27:34.33 ID:uJzj5pMm0
ラプラスは拍手を止め、丁寧にお辞儀をする。
「これはこれは真紅様、素晴しい喜劇の主役女優様!」
真紅は苛立ちを隠さぬ口調で反論した。
「喜劇…貴方にとっては…これは喜劇だとでも言うの…」
「私は喜劇の案内者、そして喜劇の傍観者…しかし今回の演目は、間もなく終了…」
「何をしに来たの…」
「水晶の少女は今何処、迷子の少女は今何処…それは貴女のすぐ後ろ、見えない敵にご用心…」
「迷子?…後ろ?」
真紅は力無く後ろに振り向いた、特に何も見当たらず、ただ白い空間が広がっているだけだった。
真紅は前に向きなおした、眼前に無表情な薔薇水晶が浮いていた。
「!?」
だが動く様子は無く、ただ力なく浮遊していた。
「これはこれは…貴女のお探し物は虚像?それとも現実?」
そう言って薔薇水晶を肩に担ぎ、ラプラスは真紅の元を離れ、黒い入り口の前で向き直した。
「これはこれは真紅様、素晴しい喜劇の主役女優様!」
真紅は苛立ちを隠さぬ口調で反論した。
「喜劇…貴方にとっては…これは喜劇だとでも言うの…」
「私は喜劇の案内者、そして喜劇の傍観者…しかし今回の演目は、間もなく終了…」
「何をしに来たの…」
「水晶の少女は今何処、迷子の少女は今何処…それは貴女のすぐ後ろ、見えない敵にご用心…」
「迷子?…後ろ?」
真紅は力無く後ろに振り向いた、特に何も見当たらず、ただ白い空間が広がっているだけだった。
真紅は前に向きなおした、眼前に無表情な薔薇水晶が浮いていた。
「!?」
だが動く様子は無く、ただ力なく浮遊していた。
「これはこれは…貴女のお探し物は虚像?それとも現実?」
そう言って薔薇水晶を肩に担ぎ、ラプラスは真紅の元を離れ、黒い入り口の前で向き直した。
168: 2009/04/21(火) 15:28:30.63 ID:uJzj5pMm0
「貴方…その子を…どうするつもり…」
「私は、私の為に舞台を作り、私の為に幕引きをする…ただそれだけの事…」
「呼び戻すのね…その子を…」
「それでは、次の舞台まで、しばしのご休息を…次の余興は歓喜?それとも悲哀?」
そう言って、薔薇水晶を担ぎながら丁重にお辞儀をした。
「まだ続くのね…アリスゲームは…」
「ところで貴女は今、迷子になっておられる様子…過去のしがらみの中で、迷子になっていらっしゃる様子…」
「そうね…貴方に言わせれば、正しく迷子になっている…と言った所かしら?」
「何が正しいのかは、貴女が一番分かっている筈…私がお手伝いをいたしましょう…私の為に」
「!?」
真紅の真下に、ぽっかりと黒い空間が現れた。
突然重力を感じ、落下する真紅。
「ラプラス!貴方!?」
「主演女優賞の貴女には、特別なご褒美をご用意致しました…ククッ…絶望めされ…」
「私は、私の為に舞台を作り、私の為に幕引きをする…ただそれだけの事…」
「呼び戻すのね…その子を…」
「それでは、次の舞台まで、しばしのご休息を…次の余興は歓喜?それとも悲哀?」
そう言って、薔薇水晶を担ぎながら丁重にお辞儀をした。
「まだ続くのね…アリスゲームは…」
「ところで貴女は今、迷子になっておられる様子…過去のしがらみの中で、迷子になっていらっしゃる様子…」
「そうね…貴方に言わせれば、正しく迷子になっている…と言った所かしら?」
「何が正しいのかは、貴女が一番分かっている筈…私がお手伝いをいたしましょう…私の為に」
「!?」
真紅の真下に、ぽっかりと黒い空間が現れた。
突然重力を感じ、落下する真紅。
「ラプラス!貴方!?」
「主演女優賞の貴女には、特別なご褒美をご用意致しました…ククッ…絶望めされ…」
169: 2009/04/21(火) 15:29:30.69 ID:uJzj5pMm0
真紅は真っ暗な闇の中を、猛スピードで落下しながら、ラプラスの言った最後の言葉の意味を考えた。
しかし途中で考えは妨げられた、体の末端が光る粒子となり、消滅していたのだ。
指先、足先…消滅の速度はどんどん速まり、真紅はただ恐怖するしかなかった。
「嫌!助けてフラーケ!フラー…ケ!?…フラー…ケ…?」
真紅は咄嗟に出た叫びに違和感を感じた。
フラーケ?何故昔のマスターの名前を呼んだの?こんな時に?
消滅の速度はどんどん速まり、もうすでに下半身と、腕は無かった。
私は何故こんな目にあっているの?アリスゲームに負けたの?私は消滅するの?
「嫌!こんなの嫌よ!助けて!私怖いの!助けてジュン!」
消滅する体を、怯える目で見つめながら、真紅はただ一つの事を考えていた。
そうよ、ジュンが…ジュンがきっと導いてくれる、私を助けてくれる…。
私が困った時は、何時だってあの子は駆けつけてくれる…今回だってきっと…。
真紅の体は完全に消滅し、そこにはただ真っ暗な空間が残るのみだった。
真紅を失った空間は収縮を始め、次第に速度を上げていき、やがて何も無くなった…。
しかし途中で考えは妨げられた、体の末端が光る粒子となり、消滅していたのだ。
指先、足先…消滅の速度はどんどん速まり、真紅はただ恐怖するしかなかった。
「嫌!助けてフラーケ!フラー…ケ!?…フラー…ケ…?」
真紅は咄嗟に出た叫びに違和感を感じた。
フラーケ?何故昔のマスターの名前を呼んだの?こんな時に?
消滅の速度はどんどん速まり、もうすでに下半身と、腕は無かった。
私は何故こんな目にあっているの?アリスゲームに負けたの?私は消滅するの?
「嫌!こんなの嫌よ!助けて!私怖いの!助けてジュン!」
消滅する体を、怯える目で見つめながら、真紅はただ一つの事を考えていた。
そうよ、ジュンが…ジュンがきっと導いてくれる、私を助けてくれる…。
私が困った時は、何時だってあの子は駆けつけてくれる…今回だってきっと…。
真紅の体は完全に消滅し、そこにはただ真っ暗な空間が残るのみだった。
真紅を失った空間は収縮を始め、次第に速度を上げていき、やがて何も無くなった…。
170: 2009/04/21(火) 15:30:34.43 ID:uJzj5pMm0
「もう一つ…いいかい?私の最後の…頼みだ」
「どきなさいジュン!私が消えればいいの!私が罪を償えばいいのよ!」
「リカイは…出来た…出来ない…」
「まぁ…そう言う訳なの、だから貴女はここで…絶望したまま氏になさい!」
「スイセイセキ、さっきは有難う、おばあさんの為に気を使ってくれて」
「カナは…カナは、もう…裏切らないかしら!」
「?…」
・
・
・
173: 2009/04/21(火) 15:36:03.50 ID:uJzj5pMm0
桜田ジュンは、来期から中学校に復学する為に頑張っている。
今日も自室の机で、今までの遅れを取り戻すべく、数学の勉強をしている。
しかしもう夜半、眠気が勉強の邪魔をする。
眠気を覚ます為に、独り言を呟きながら勉学に勤しむ。
「ここは…aとXを…掛けるから……あ~違うな~」
ふと傍にある時計を見やる、そこには22:56とデジタル表示されていた。
「今日はここまでにするかな…」
これ以上は眠気に勝てない事を理解したジュンは、大きな伸びを行ってから教科書を閉じた。
「あら?お勉強はもう終わりなのかしら?」
ベッドの方から声が聞こえジュンが振り向くと、そこには真紅がいた。
自身と同じ丈程のくんくん探偵のぬいぐるみをいとおしげに抱え、
頭にヘッドホンを付けた真紅が、ベッドのへりに座っていた。
小さな頭に、人間用の大きなヘッドホン、そしてくんくん探偵のぬいぐるみ…。
赤い綺麗なドレスに全く合わない、その滑稽な出で立ちは、ジュンを呆れさせるに十分だった。
「起きてたのか真紅、静かだからもう寝たのかと思った、プッ…何その格好?…って言うか何聞いてるんだ?」
くんくん探偵のぬいぐるみをベッドに置き、重労働そうにヘッドホンを外す真紅。
「え、何か言ったかしら?」
「いや、何を聞いてるのかって言ったんだけど」
今日も自室の机で、今までの遅れを取り戻すべく、数学の勉強をしている。
しかしもう夜半、眠気が勉強の邪魔をする。
眠気を覚ます為に、独り言を呟きながら勉学に勤しむ。
「ここは…aとXを…掛けるから……あ~違うな~」
ふと傍にある時計を見やる、そこには22:56とデジタル表示されていた。
「今日はここまでにするかな…」
これ以上は眠気に勝てない事を理解したジュンは、大きな伸びを行ってから教科書を閉じた。
「あら?お勉強はもう終わりなのかしら?」
ベッドの方から声が聞こえジュンが振り向くと、そこには真紅がいた。
自身と同じ丈程のくんくん探偵のぬいぐるみをいとおしげに抱え、
頭にヘッドホンを付けた真紅が、ベッドのへりに座っていた。
小さな頭に、人間用の大きなヘッドホン、そしてくんくん探偵のぬいぐるみ…。
赤い綺麗なドレスに全く合わない、その滑稽な出で立ちは、ジュンを呆れさせるに十分だった。
「起きてたのか真紅、静かだからもう寝たのかと思った、プッ…何その格好?…って言うか何聞いてるんだ?」
くんくん探偵のぬいぐるみをベッドに置き、重労働そうにヘッドホンを外す真紅。
「え、何か言ったかしら?」
「いや、何を聞いてるのかって言ったんだけど」
174: 2009/04/21(火) 15:36:40.22 ID:uJzj5pMm0
するといかにも上機嫌に、真紅が笑顔で答えた。
「これ?くんくん探偵のドラマCDよ、 金糸雀が私にプレゼントしてくれたの」
道理でニコニコ顔で、ぬいぐるみを抱えていた訳だとジュンは納得した。
耳だけでなく、全身でくんくんを感じたかったという事か…。
しかし何もそこまでやるか?こんな真夜中に。
「金糸雀ったら、こんなに気の利いたプレゼントを私にくれるなんて、本当に良い子だわ…。
今度紅茶でもご馳走しようかしら……もちろん淹れるのはジュンだけど」
眠いので突っ込む気にはならず、スルーするジュン。
しかし間髪入れずに、急に真顔になった真紅が言う。
「それにしても…ちょっと終わるのが早すぎるのではなくて?」
「何の話だ真紅、ドラマCDの事か?」
「違うわよ、お勉強の事よ。」
僕の勉強の事にいつも無関心な真紅が、そんな事を言い出すなんて…。
珍しい事もあるもんだと思い、ジュンは静かに話を聞いた。
「ジュン…真面目にやりなさい、まだ眠りの時間には早すぎるのではなくて?
折角私が家来に気を利かせて、この重たいヘッドホンとやらを、我慢していると言うのに…」
「いや、もう眠りの時間だぞ、もうすぐ23:00になるし」
「あら、そんな筈無いわ、さっき時計を見たら20:00だったのよ、正確には20:02ね。
お勉強は貴方自身の問題だから、あまりとやかく言う気は無いけど…もう少し頑張った方が良いのではなくて?」
「これ?くんくん探偵のドラマCDよ、 金糸雀が私にプレゼントしてくれたの」
道理でニコニコ顔で、ぬいぐるみを抱えていた訳だとジュンは納得した。
耳だけでなく、全身でくんくんを感じたかったという事か…。
しかし何もそこまでやるか?こんな真夜中に。
「金糸雀ったら、こんなに気の利いたプレゼントを私にくれるなんて、本当に良い子だわ…。
今度紅茶でもご馳走しようかしら……もちろん淹れるのはジュンだけど」
眠いので突っ込む気にはならず、スルーするジュン。
しかし間髪入れずに、急に真顔になった真紅が言う。
「それにしても…ちょっと終わるのが早すぎるのではなくて?」
「何の話だ真紅、ドラマCDの事か?」
「違うわよ、お勉強の事よ。」
僕の勉強の事にいつも無関心な真紅が、そんな事を言い出すなんて…。
珍しい事もあるもんだと思い、ジュンは静かに話を聞いた。
「ジュン…真面目にやりなさい、まだ眠りの時間には早すぎるのではなくて?
折角私が家来に気を利かせて、この重たいヘッドホンとやらを、我慢していると言うのに…」
「いや、もう眠りの時間だぞ、もうすぐ23:00になるし」
「あら、そんな筈無いわ、さっき時計を見たら20:00だったのよ、正確には20:02ね。
お勉強は貴方自身の問題だから、あまりとやかく言う気は無いけど…もう少し頑張った方が良いのではなくて?」
175: 2009/04/21(火) 15:37:18.18 ID:uJzj5pMm0
実は真紅は、重いヘッドホンの苛つきと、時間の勘違いから出た誤解で、ジュンに八つ当たりしていただけだった。
しかも言い分を全く聞き入れない…まあいつもの事だとジュンは無視する。
「大体私が寝ていないのだから、今が23:00の筈は無いわ…私は時間の管理にはうるさいのよ。
それなのにジュンときたら、私に嘘をついてまで眠りたいなんて、よっぽどお勉強が嫌いなのかしら…」
ジュンはデジタル時計を真紅に向け、無言で指差した。
すると真紅は呆れ顔で言った。
「そこまでして眠りにつきたいのかしら?時計をいじるなんて貴方らしい方法ね。
悪いけど私はだまされないのだわ…そんな事を思いつく暇があるなら、紅茶を淹れてきなさい」
何でそこまで言われなければならないのかと、流石にイラッとしたジュンは反論した。
「なら自分の懐中時計を見てみろよ、全く…」
これで自分の嫌疑は晴れるはず、そう思ったジュンは机の上の筆記用具を片付け始めた。
しかしまた真紅がヒステリックな口調で言う。
「本当に分からず屋の家来だわ、見なさい、まだ…22:59…だ…わ…!?…!!え!?……!…」
しかも言い分を全く聞き入れない…まあいつもの事だとジュンは無視する。
「大体私が寝ていないのだから、今が23:00の筈は無いわ…私は時間の管理にはうるさいのよ。
それなのにジュンときたら、私に嘘をついてまで眠りたいなんて、よっぽどお勉強が嫌いなのかしら…」
ジュンはデジタル時計を真紅に向け、無言で指差した。
すると真紅は呆れ顔で言った。
「そこまでして眠りにつきたいのかしら?時計をいじるなんて貴方らしい方法ね。
悪いけど私はだまされないのだわ…そんな事を思いつく暇があるなら、紅茶を淹れてきなさい」
何でそこまで言われなければならないのかと、流石にイラッとしたジュンは反論した。
「なら自分の懐中時計を見てみろよ、全く…」
これで自分の嫌疑は晴れるはず、そう思ったジュンは机の上の筆記用具を片付け始めた。
しかしまた真紅がヒステリックな口調で言う。
「本当に分からず屋の家来だわ、見なさい、まだ…22:59…だ…わ…!?…!!え!?……!…」
176: 2009/04/21(火) 15:38:11.60 ID:uJzj5pMm0
毅然とした態度で言い放った語尾がしおれ、俯いて震える真紅を見て、ジュンは拭き出した。
「プッ!何だよ!?時間も忘れてくんくんCDにのめり込んだのか?プッ…ハハハ!」
大笑いするジュンに、真紅は俯いたまま歩み寄り、蹴りを入れた。
「いてえぇぇ!何だよ!?八つ当たりすんなよな!」
「紅茶でも…飲みなさいよ…」
「え…?今なんて?」
「寝る前に…飲みなさいよ…私が…淹れるわよ…」
「プッ!何だよ!?時間も忘れてくんくんCDにのめり込んだのか?プッ…ハハハ!」
大笑いするジュンに、真紅は俯いたまま歩み寄り、蹴りを入れた。
「いてえぇぇ!何だよ!?八つ当たりすんなよな!」
「紅茶でも…飲みなさいよ…」
「え…?今なんて?」
「寝る前に…飲みなさいよ…私が…淹れるわよ…」
178: 2009/04/21(火) 15:38:54.45 ID:uJzj5pMm0
ジュンは真紅が言った言葉に、固まった。
真紅が…僕に…紅茶を淹れる?何これ?夢?現実?
ようやく落ち着きを取り戻しジュンは真紅を見た、俯いたまま肩を震わせ、両拳を硬く握り締め真紅は立っていた。
その様子から、恥ずかしくて上手く謝れないのだろうと感じ取ったジュンは、優しく真紅に言った。
「ありがとう真紅…じゃあ頂くよ」
その言葉を聞いた真紅は、俯いたまま踵を返して、ドアへと向かった。
去り際に背中を向けたまま、真紅は優しい口調で言った。
「ジュン…感謝しなさい…」
言葉の意味と、優しい口調のギャップに、違和感を感じたジュンは振り返った。
しかしもう真紅の姿は無かった。
「紅茶を淹れてあげるから感謝しなさいって事?…何なんだろ?変な奴」
真紅が…僕に…紅茶を淹れる?何これ?夢?現実?
ようやく落ち着きを取り戻しジュンは真紅を見た、俯いたまま肩を震わせ、両拳を硬く握り締め真紅は立っていた。
その様子から、恥ずかしくて上手く謝れないのだろうと感じ取ったジュンは、優しく真紅に言った。
「ありがとう真紅…じゃあ頂くよ」
その言葉を聞いた真紅は、俯いたまま踵を返して、ドアへと向かった。
去り際に背中を向けたまま、真紅は優しい口調で言った。
「ジュン…感謝しなさい…」
言葉の意味と、優しい口調のギャップに、違和感を感じたジュンは振り返った。
しかしもう真紅の姿は無かった。
「紅茶を淹れてあげるから感謝しなさいって事?…何なんだろ?変な奴」
179: 2009/04/21(火) 15:39:55.66 ID:uJzj5pMm0
暫くして、ドアから声が聞こえてきた。
「ちょっとジュン!開けて頂戴!早く…開けて頂戴!」
ジュンがドアを開けると、両手を使い、頭の上にお盆を乗せた真紅が立っていた。
お盆の上には、紅茶が入ったティーカップが一つ、少しこぼれた状態で乗っかっていた。
真紅の両腕は震え、体はフラフラと揺れていた。
「早く…早く取りなさい!ジュン!」
ジュンは慌ててお盆を手に取り、慎重に机に運んだ。
真紅はヘッドホンとCDプレーヤー、くんくんのぬいぐるみを手際良く片付けて、鞄に向かった。
もう寝るんだろうと察したジュンは、真紅に言った。
「真紅…ありがとう、お休み」
「お休みなさいジュン…私の大切なマスター…」
「ブッ!?」
ジュンはその言葉に紅茶を吹いた、紅茶が不味かったと言う事も少なからずあった。
「ちょっとジュン!開けて頂戴!早く…開けて頂戴!」
ジュンがドアを開けると、両手を使い、頭の上にお盆を乗せた真紅が立っていた。
お盆の上には、紅茶が入ったティーカップが一つ、少しこぼれた状態で乗っかっていた。
真紅の両腕は震え、体はフラフラと揺れていた。
「早く…早く取りなさい!ジュン!」
ジュンは慌ててお盆を手に取り、慎重に机に運んだ。
真紅はヘッドホンとCDプレーヤー、くんくんのぬいぐるみを手際良く片付けて、鞄に向かった。
もう寝るんだろうと察したジュンは、真紅に言った。
「真紅…ありがとう、お休み」
「お休みなさいジュン…私の大切なマスター…」
「ブッ!?」
ジュンはその言葉に紅茶を吹いた、紅茶が不味かったと言う事も少なからずあった。
180: 2009/04/21(火) 15:40:42.46 ID:uJzj5pMm0
真紅が壊れたのではないかと心配して鞄を見やると、ドレスの裾が少しはみ出ていた。
「出てるぞ、ドレスの裾が」
鞄が少しだけ開いて、ドレスの裾がするすると中に入っていった、暫くして鞄からか細い声が聞こえた。
「ありがとうジュン…お休みなさい」
鞄がパタンと音を立てて閉じた。
「おやすみ、変な真紅」
ジュンは不器用に紅茶を淹れる、愛らしい真紅の姿を想像しながら、不味い紅茶を一気に飲み干し。
机のデジタル時計をベッドに戻し、部屋の電気を消して眠りに付いた。
「出てるぞ、ドレスの裾が」
鞄が少しだけ開いて、ドレスの裾がするすると中に入っていった、暫くして鞄からか細い声が聞こえた。
「ありがとうジュン…お休みなさい」
鞄がパタンと音を立てて閉じた。
「おやすみ、変な真紅」
ジュンは不器用に紅茶を淹れる、愛らしい真紅の姿を想像しながら、不味い紅茶を一気に飲み干し。
机のデジタル時計をベッドに戻し、部屋の電気を消して眠りに付いた。
181: 2009/04/21(火) 15:41:09.83 ID:uJzj5pMm0
真紅は夢を見た、それは過去のマスターの夢…父親のように敬愛した、フラーケの夢。
眩しい光が窓から入り込み、作業台の片隅を照らす…。
真紅はフラーケの作業台の縁に座って、微笑みながら時計を見ている。
まるで魔法の様に作られていく時計たちを、優しい微笑を浮かべながら、ただ静かに眺めていた。
そしてその時計を、情熱と愛情が篭った瞳で見つめ、黙々と組み上げてゆくフラーケ。
不意にフラーケは真紅に向き直り、優しい笑顔を浮かべる。
2人はただ静かに見つめ合い、いつまでも微笑みあっていた…。
END
眩しい光が窓から入り込み、作業台の片隅を照らす…。
真紅はフラーケの作業台の縁に座って、微笑みながら時計を見ている。
まるで魔法の様に作られていく時計たちを、優しい微笑を浮かべながら、ただ静かに眺めていた。
そしてその時計を、情熱と愛情が篭った瞳で見つめ、黙々と組み上げてゆくフラーケ。
不意にフラーケは真紅に向き直り、優しい笑顔を浮かべる。
2人はただ静かに見つめ合い、いつまでも微笑みあっていた…。
END
184: 2009/04/21(火) 15:43:42.43 ID:uJzj5pMm0
支援ありがとうございました!終わりです。
初めて書いた小説なので、幼稚な表現とかが結構あったと思うのですが、
最後まで読んでくれた方には、大変感謝しています。
出来れば感想とかも欲しいのですが…。
初めて書いた小説なので、幼稚な表現とかが結構あったと思うのですが、
最後まで読んでくれた方には、大変感謝しています。
出来れば感想とかも欲しいのですが…。
188: 2009/04/21(火) 15:49:21.31 ID:1wUHKwpo0
乙
なかなか面白かった
なかなか面白かった



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