1: 2015/03/17(火) 01:03:25.65 ID:Bjq1I4IS.net

2: 2015/03/17(火) 01:05:15.62 ID:Bjq1I4IS.net
---


「おはよ、にこっち。」

「…おはよう、希。」


今日から、新学期が始まる

行ってすぐ全校集会やし

なんとなく、待ち合わせて行く事にした


「絵里は?」

「えりちは、この先で待ってるよ。」








「おはよう、二人とも。」

「おはよ。」

「おはよう、えりち。」

「晴れて、良かったね♪」
#8 やりたいことは

3: 2015/03/17(火) 01:05:58.43 ID:Bjq1I4IS.net
「今日は、誰かさんの晴れ舞台だものね。」

「…ほーんと、何であの子にしたんだか。」


「にこっちも、わかってくるせに♪」

「ま、まあ…そりゃあね。」

「彼女なら…きっと。」

「私達以上に、この学校を盛り上げてくれるはずだから。」


「…それでも、やっぱりウチらが支えんとね。」

「そうね。」

「やっぱり…まだまだ、不安だもの。」

「ま、にこはちゃんと活動できたらいいけどね。」


「…まったく、素直やないんやから♪」


「ふんっ!」


「ほら、もう着くわよ?」

4: 2015/03/17(火) 01:06:53.56 ID:Bjq1I4IS.net
----


講堂で、理事長の演説が始まる

「…音ノ木坂学院は。」

「入学希望者が予想を超える結果となったため。」

「来年度も、生徒を募集する事になりました。」

「3年生は、残りの学園生活を、悔いの無いよう過ごし。」

「実りのある毎日を、送って行ってもらえたらと思います。」


「そして1年生、2年生は。」

「これから入学してくる、後輩達のお手本となるよう。」

「気持ちを新たに、前進していってください。」



「…理事長、ありがとうございました。」

「続きまして、生徒会長挨拶。」

「生徒会長、よろしくお願いします。」




…えりちが、立ち上がる

5: 2015/03/17(火) 01:07:21.24 ID:Bjq1I4IS.net
しん、とした空間に

えりちの拍手がこだまする

それは、彼女に託した想いからか

それとも、彼女へのエールなのか


えりちの拍手につられて

胸を張って、舞台袖から現れた



マイクに向かうその一歩一歩が

彼女が積み重ねて来た過去のように


壇上に立つその姿は

ウチには、凛々しく見えた



…まるで、就任した時のえりちみたいに

7: 2015/03/17(火) 01:08:03.19 ID:Bjq1I4IS.net
「…みなさん、こんにちは!」

後ろから、なぜか歓声が聞こえる


「この度、新生徒会長となりました。」

「スクールアイドルでおなじみ…」

「高坂穂乃果です!!」


「…」


「…?」

「どうしたのかしら…?」

穂乃果ちゃんは、そのまま立ってる


「あー…えー…」

「…」


一つだけ、訂正


えりちに似てるのは…


マイクの前まで、やったね

8: 2015/03/17(火) 01:09:10.67 ID:Bjq1I4IS.net
そのあと、海未ちゃんたちのお陰で

なんとか挨拶も終わって

集会は解散になった


「…もう、穂乃果ったら。」

「でも、あれくらいの方が、案外向いてるんかも?」


「あれで、仕事がちゃんと出来るなら…ね。」


----

生徒会室の中から、声が聞こえる

「生徒会長って、大変なんだねえ…」


二人して吹き出してから、中に入る


「…わかってくれた?」

「ぅ絵里ちゃん!」

「うふふ…頑張ってるかね?君達。」

「希ちゃんも…!」

9: 2015/03/17(火) 01:10:19.46 ID:Bjq1I4IS.net
ちょっと格好つけて入ったのに

そこには触れてくれんかった

「…」

少し、寂しかったりも…する

「…大丈夫?」

「挨拶、かなり拙い感じだったわよ?」


「…えへへ、ごめんなさい。」

「それで、今日は?」


「特に、用事はないけど…」

「どうしてるかな、って。」

「自分が推薦した手前もあるし…心配で。」

おっと、ウチも切り替えんと


「明日からまた。」

「みっちりダンスレッスンもあるしね♪」

10: 2015/03/17(火) 01:10:57.56 ID:Bjq1I4IS.net
「…カードによれば。」

「穂乃果ちゃん、生徒会長として…」

「相当苦労するみたいよ?」


いつのまにか、ウチの代名詞みたいになったこのカード

使い方は最早合ってるとは言えんかもやけど…

なんとなく、このカードも喜んでる…気がした


「ええーっ!?」

「…だから二人とも、フォローしたってね?」

もちろん、ウチらもそのつもり♪


「気にかけてくれて、ありがとう♪」

「いえいえ。」

「困った事があったらいつでも言って?」

「何でも手伝うから。」


「…ありがとうっ!!」

11: 2015/03/17(火) 01:11:42.30 ID:Bjq1I4IS.net
「心配…しなくても、大丈夫そうやね。」

「ふふっ、そうかもね。」


「…?」


「それじゃ、私達はこれで。」

「また、後でな♪」


「うんっ!」

「2人とも、ありがとう!」





生徒会室を出て、部室に向かう

「なーんや、ちょっと拍子抜けかも?」

「…まあ、まだ始まったばかりだしね。」

「むしろ、これから…」


前から、花陽ちゃんが走ってくる


「おーい、どうした…」

12: 2015/03/17(火) 01:12:17.42 ID:Bjq1I4IS.net
「あっ!!」

「お二人は、部室で待っていて下さい!!」


そう言うと花陽ちゃんは、また駆けて行く

「ちょっと、廊下は走っちゃ…!」

えりちが言い終わる前に

にこっち達も走って来た


「ちょっ!にこっち!?」

「話は後!!」

「部室で待ってなさい!!」


「「…?」」


「…とりあえず、部室いこっか?」

「ええ…」


-----


「もう一度、ラブライブ!?」

13: 2015/03/17(火) 01:13:28.09 ID:Bjq1I4IS.net
花陽ちゃんから知らされた報告は

第2回ラブライブが開催されるというもの


どうやら、前回の反響が大きかったらしく

今回は、前回以上に設備なんかも大きくなってるらしい


そして何と言っても今回は

今までのランキング形式ではなくて

各エリアで行う審査…

いわゆるリーグ形式で本戦出場チームが決まるらしい

って、事は…


「でも待って!」

「地区予選があるって事は…」

えりちが、一番始めに気付く

「私達…A-RISEとぶつかるって事じゃない?」


「「…あ。」」

14: 2015/03/17(火) 01:14:31.59 ID:Bjq1I4IS.net
花陽ちゃんが、膝から崩れ落ちる

「…終わりました。」

「だーめだー…」

にこっちも、頭を抱える

…なんたって、直に目の前で見てしまったもんね


みんなが落ち込む中、海未ちゃんが口を開く

「確かにA-RISEとぶつかるのは苦しいですが。」

「だからといって諦めるのは早いと思います!」


「…海未の言う通りね。」

「やる前から諦めていたら、何も始まらない。」

「今までだって、そうやって来たでしょう?」


「…それもそうね。」

真姫ちゃんが、答える


「エントリーするのは自由なんだし。」

「出場してみてもいいんじゃないかしら?」

15: 2015/03/17(火) 01:15:11.14 ID:Bjq1I4IS.net
「大変だけど、やってみよう?」

花陽ちゃんが、起き上がる


…でも

穂乃果ちゃんが、すごく落ち着いてる

普通なら、飛び跳ねて喜びそうやのに…


「…穂乃果?」


「ふう…」


「出なくても、いいんじゃない?」


「「ええーっ!?」」

「ほ、穂乃果ちゃん…?」

「今、なんと…?」


屈託の無い笑顔で、穂乃果ちゃんは繰り返す





「ラブライブ、出なくてもいいと思う♪」

16: 2015/03/17(火) 01:16:33.29 ID:Bjq1I4IS.net
さて、新スレ立ててすぐですが
明日早いので、今日はここまでにします

明日も更新するので、楽しみに待っててください

19: 2015/03/17(火) 20:59:27.50 ID:Bjq1I4IS.net
「ほーのーかー!!」

にこっちが穂乃果ちゃんを隣の部屋へ連れて行く


鏡の前に座らせて…

「穂乃果、自分の顔が見えますか?」

「見え…ます。」

「では、鏡の中の自分はなんと言ってますか?」

海未ちゃんがこんなにうろたえるとこ、初めて見たかも


…でも、なんで穂乃果ちゃんは

ラブライブに出なくていいと思うんやろ?

「私は…」

「歌って踊って、みんなが幸せなら、それで…」


「今までラブライブを目標にやって来たじゃない!」

にこっちが詰め寄る

一番、ラブライブに思い入れが強いのは、にこっちやし

20: 2015/03/17(火) 21:00:01.54 ID:Bjq1I4IS.net
みんなが穂乃果ちゃんに声をかけるけど

穂乃果ちゃんは、黙ってばっかり

…でも、なんとなく

穂乃果ちゃんの、本心じゃないような


「…そうだ!」

「明日からまたレッスン大変になるんだし。」

「今日は寄り道して行かない?」


みんな、思う所はあるけど…

とりあえず、穂乃果ちゃんに着いて行く事にした




いろいろ遊び回って

一旦、ゲームセンターで落ち着いたけど…

やっぱり、みんな戸惑ってる

21: 2015/03/17(火) 21:00:28.91 ID:Bjq1I4IS.net
「…」

なんとなく、その空気に息が詰まって

外に、出てみた

街頭のディスプレイには、A-RISEのメンバーが


「…希ちゃん、どうしたの?」

穂乃果ちゃんが、気にして出て来てくれた

「…ううん、何でも。」

「はい、ジュース。」

穂乃果ちゃんが、手渡してくれる

「ありがと♪」

「…あ。」

穂乃果ちゃんも、ディスプレイに気がついたみたい


「…やっぱり、すごいね。」

「A-RISE?」

「うん。穂乃果達とは、違うっていうか…」

22: 2015/03/17(火) 21:01:05.73 ID:Bjq1I4IS.net
「…これ、美味しいね。」

ジュースを一口飲んで、声をかける

「でしょ!?」

「穂乃果の、オススメなんだよ♪」

そうやって無邪気に笑う穂乃果ちゃん

特に、変なとこは見えないけど…


「ねえ、穂乃果ちゃん。」

「ん?どーしたの?」


「本当に、出なくていいと思ってる?」

「…」

「やっぱり、みんなは出たいよね…」



「…ウチの、勝手な想いを言わせてもらえたら。」

「出来れば、最後までみんなといたいんよ。」


「…最後?」


「ほら、行こ?」

「みんな待ってるよ♪」

23: 2015/03/17(火) 21:01:45.11 ID:Bjq1I4IS.net
あの後、解散してから

みんなと電話で話したけど

…やっぱり、穂乃果ちゃんの考えは分からんかった

それでも、やりきれなくて

頭の中が、もやもやする


なにか、気付く事できないかな…?


-----


「…えりち。」

次の日

廊下で、えりちと会った

「どうしたの?」

「…」

「本当に、出なくていいと思う?」

「…!」

「きっと穂乃果ちゃんも。」

「なにか、あるんやと思う。」

24: 2015/03/17(火) 21:02:20.43 ID:Bjq1I4IS.net
「そりゃあ、私達に穂乃果の考えは分からないけど…」

「…」


「なにか、考えがあるの?」

「無いけど…でも。」

「なんとなく、無理してる気がするんよ。」


「前のえりちみたいに。」

「何かを、我慢してるような…」



「…でも、何かは分からないんでしょう?」

「言ってくれないのなら、無理に聞いても一緒よ。」


「…うん。」

「でもやっぱり。」


「ウチは、9人一緒がいいな。」

「…最期まで。」



「…そうね。」

26: 2015/03/17(火) 21:17:03.41 ID:Bjq1I4IS.net
---


曇り空の中

ウチらは神田明神にいた

なんでも、我慢できなくなったにこっちが

穂乃果ちゃんに、勝負を挑んだみたいで…


「あっ!」

にこっちのズルで、スタートした階段ダッシュ

それでも、穂乃果ちゃんは着いて行く


そんな時、にこっちがつまづいた


「!にこっち…」


穂乃果ちゃんが、慌てて駆け寄る

「もう、ズルするからだよ…」

「…うるさいわね。」

「ズルでもなんでもいいのよ。」

「ラブライブに出られれば…!」




「にこちゃん…」

27: 2015/03/17(火) 21:17:35.90 ID:Bjq1I4IS.net
降り出した雨を避けようと

ウチらは、雨宿りしてた


「…ねえ、希ちゃん。」

「ん?どうしたん?」

「昨日言ってた、最後って…」


「…そうよ。」

えりちが、答える


「3月になったら、私達3人は卒業。」

「こうしてみんなと一緒にいられるのは、あと半年。」


「…それに、スクールアイドルでいられるのは、在学中だけ。」

「そんな…」


やっと見つけたウチらの居場所

いれなくなるのは寂しいけど…

それでも、いつか終わりは来る

28: 2015/03/17(火) 21:18:11.10 ID:Bjq1I4IS.net
「…別にすぐ卒業しちゃう訳じゃないわ。」

「でも…ラブライブに出られるのは、今回がラストチャンス。」

「これを逃したら、もう…」


「…本当は、ずっと続けたいと思う。」

「でも、この9人でラブライブに出られるのは。」

「今回しか無いのよ。」


「…私達も、そう。」

えりちの後に、花陽ちゃんが続く

「例え予選で落ちちゃったとしても。」

「9人で頑張った足跡を残したい…!」

「凛もそう思うにゃー!」


「やってみても…いいんじゃない?」


「…」

29: 2015/03/17(火) 21:18:36.03 ID:Bjq1I4IS.net
「穂乃果。」

「絵里ちゃん…」


「前に、穂乃果の家で言った事、覚えてる?」

「…うん。」


「私は…ううん、私達は。」

「穂乃果のおかげで、今ここにいる。」

「だから…私達の事を考えてくれているのなら。」

「私達は、貴女を支えたいの。」


「…」


「…ことりちゃんは?」

「私は、穂乃果ちゃんが選ぶ道なら…どこへでもっ♪」


「…また自分のせいで。」

「みんなに迷惑をかけてしまうのでは、と心配しているんでしょう?」


「…!」

30: 2015/03/17(火) 21:19:15.22 ID:Bjq1I4IS.net
「ラブライブに夢中になって。」

「周りが見えなくなって。」

「生徒会長として…」

「学校のみんなに迷惑をかけるような事があってはいけない…と。」


「…」

「全部、バレバレだねっ。」

「始めたばかりの時は、何も考えないで出来たのに…」

「今は何をやるべきか、分からなくなるときがある。」

「…でも、一度夢見た舞台だもん。」

「やっぱり私だって出たい!」


「生徒会長やりながらだから…」

「また迷惑かける時もあるかもだけど…」




「本当はものすごく出たいよ!!」

31: 2015/03/17(火) 21:19:44.35 ID:Bjq1I4IS.net
「…!」

「みんな、どうしたの…?」

みんなで、穂乃果ちゃんの前に並ぶ

「穂乃果、忘れたのですか?」

「…?」


『だって可能性感じたんだ、そうだ進め---』

『後悔したくない、目の前に』


「僕らの道がある---」


ウチらの気持ちは、ひとつ


「「やろうっ!!」」


「…!」


「よ~し!!」

「やろう!」

「ラブライブ、出よう!!」

32: 2015/03/17(火) 21:20:20.15 ID:Bjq1I4IS.net
そう言うと、穂乃果ちゃんは

雨の中を走って行く


「…穂乃果!?」


雨雲に向かって仁王立ち

大きく息を吸い込んで…


「雨、止めー!!!」


すっごく通った声で、穂乃果ちゃんは叫んだ

みんな、いきなりの行動に声も出せずにいると…



「うそ…?」



雨雲が切れて

お日様が顔を出す


さっきまで土砂降りやってんよ…?

これには流石に

スピリチュアルガールを自称するウチも驚いた


穂乃果ちゃん…やっぱり何か持ってるんやろか?

33: 2015/03/17(火) 21:20:58.82 ID:Bjq1I4IS.net
「…本当に止んだ!!」

「人間その気になれば、何だってできるよ!!」

「ラブライブに出るだけじゃもったいない!」

「この9人で残せる…最高の結果!」


穂乃果ちゃんが、空を指す


「…優勝を目指そう!!」




「優勝!?」

ここにいる誰もが驚く

…だって、ほんのちょっと前まで出ないって言ってたのに


…でも、だからこそ

ウチらのリーダーは穂乃果ちゃんなんよ


「おもしろそうやん♪」




「ラブライブの、あの大きな会場で精一杯歌って!」


「私達…一番になろう!!」

34: 2015/03/17(火) 22:02:25.42 ID:Bjq1I4IS.net
と、みんなで決めた次の日

ウチらは重大な問題に直面する事になった


「「ええーっ!?」」

「どういう事!?」

花陽ちゃんが説明する


「大変です…!」

「ラブライブの予選で発表できる曲は。」

「今までに未発表のものに限られるそうです…」


「未発表…?」

「って事は…つまり今までの曲は使えない、って事?」


花陽ちゃんは、続ける

「参加希望チームが予想以上に多く…」

「中にはプロのアイドルのコピーをしている人たちも。」

「エントリーを希望して来たらしくて…」

35: 2015/03/17(火) 22:02:51.17 ID:Bjq1I4IS.net
…つまり


「この段階でふるいにかけよう、って訳やね。」


「これから1ヶ月たらずでなんとかしないと…」

「ラブライブに出られない、って事よ。」


そうは言っても、今から新曲となると…


「こーなったらば仕方ない。」

「こんな事もあろうかと…」

「私がこの前作詞した、『にこにーにこちゃん』という詩に曲をつけ…」


「実際の所どうするんや…?」

「スルー!?」


にこっち、今突っ込んでる余裕ないんよ



「…なんとかしなきゃ!!」

36: 2015/03/17(火) 22:03:14.09 ID:Bjq1I4IS.net
「でも、一体どうすれば…」

穂乃果ちゃんが頭を抱える


「…作るしかないわね。」

えりちが言う

「どうやって…」


「真姫!」


「…!」

「もしかして…」



「ええ…」

「合宿よ!!」



「…いたっ!?」

えりちの頭を叩く

「ちょっ!?希!?」


「なに、人に任せてるん…?」

37: 2015/03/17(火) 22:03:41.84 ID:Bjq1I4IS.net
「…だって、作るしかないじゃない!」

「それは分かるし、そのために合宿をやった方がいいのも分かる。」

「でも、最初に真姫ちゃん頼るのはどうなん?」


「だ、だって前回もそうだったし…」


もう一度、叩いてみた


「ま、また…!」


「あんな、えりち。」

「いくら切羽詰まってるとは言え。」

「人の家あてにするなんて…」


「ちょ、ちょっと希…」


「とりあえず、真姫ちゃんに謝ろっか♪」


「は、はい…」

38: 2015/03/17(火) 22:04:14.57 ID:Bjq1I4IS.net
えりち、親しみやすくなったのはええけど

昔あった賢さがどんどん無くなってる気がする…




まあ、何はともあれ

時間がないのも事実やし

真姫ちゃんに、聞いてみる


「…まあ、確かにビックリはしたけど。」

「多分大丈夫だと思うから。」


「…うん、ありがとうな?」

「べっ、別に、これくらい…///」


「いやいや、ちゃんと感謝せんとな♪」

「な?えりち。」


「…ありがとう、真姫。」

「ありがとう、真姫ちゃん!」

みんなが口々にお礼を言う


「…はいはい、分かったから。」

39: 2015/03/17(火) 22:04:48.75 ID:Bjq1I4IS.net
-----


無事、真姫ちゃんのご両親からの許可も出て

週末、山の麓の別荘へ


「綺麗…!」

「空気が澄んでるねー。」

停車駅で降りると、新鮮な空気に包まれる


「やっぱり真姫ちゃん、すごいにゃー!」

「こんな所にも別荘があるなんて…」


凛ちゃんと花陽ちゃんに褒められて

素直じゃない真姫ちゃんは少し嬉しそうや


お話もそこそこにして

とりあえず別荘に向かおうとしたけど…



「…あれ?」

凛ちゃんが立ち止まる

40: 2015/03/17(火) 22:07:32.30 ID:Bjq1I4IS.net
>>39ミス
付け忘れ


「…どうかした?」

「何か…足りてない気がしないかにゃ?」

「忘れ物?」

「忘れ物じゃないけど。」

「なにか、足りてない気が…」

43: 2015/03/18(水) 21:18:41.64 ID:NSFol7q+.net
「どうしたのですか?ことり、凛。」

「海未ちゃん…」

「凛ちゃんが、何か足りてないって…」

「足りてない?」

「忘れ物ですか?」

「ううん、そんなんじゃないんだけど…」


「まったく、穂乃果じゃあるまいし。」

「忘れ物なんかするわけ…」


にこっちが、止まる

「…にこ?」


「…ねえ、足りないってまさか。」

「…!」




「「穂乃果(ちゃん)!?」」

44: 2015/03/18(水) 21:19:22.52 ID:NSFol7q+.net
「ことり!今すぐ穂乃果に電話!」

「は、はいっ!」

えりちが指示を出す


「希ちゃん、穂乃果ちゃんは今どこに!?」

「むむ…ウチの占いやと、一駅先に…そうや!」


「よーし、凛ちゃん!」

「今すぐに走って追いつくんや!」

「了解にゃ!!」

凛ちゃんがダッシュする


「って、出来る訳ないにゃー!!」

「やんなー…」



「遊んでる場合ではありません!!」


なんとか穂乃果ちゃんに連絡をとって

次の駅で帰って来てもらった

45: 2015/03/18(水) 21:20:13.51 ID:NSFol7q+.net
「たるみ過ぎです!!」

バス停で合流した穂乃果ちゃんを、海未ちゃんがしかる

「だって、みんな起こしてくれないんだもーん!!」

「ひどいよっ!!」

涙目になる穂乃果ちゃんを、ことりちゃんが慰める

「ごめんね?」

「忘れ物ないか確認するまで気付かなくて…」


「…そもそも、遊びに来たのではないのですよ!?」


「まあまあ、海未ちゃん。」

「こうやって無事合流できた訳やし…」


「とにかく、新曲作りのための合宿です!」

「1秒たりとも惜しいのですよ!?」


「…はーい。」


「…それじゃ、行きましょ?」

「もう、すぐそこだから。」

真姫ちゃんに案内されて、別荘へ

46: 2015/03/18(水) 21:20:36.76 ID:NSFol7q+.net
-----


別荘について

一通りみんなで探検する

…やっぱり、真姫ちゃんの家ってすごいんやね

「ピアノ!」

「お金持ちの家でよく見るやつ!」

「…そして暖炉!!」


穂乃果ちゃん達は大はしゃぎ


「すごいにゃー!」

「初めて暖炉みたにゃー!!」

「ここに火を…!」

「つけないわよ?」

真姫ちゃんが制する

「まだそんな寒くないでしょ?」

47: 2015/03/18(水) 21:21:06.27 ID:NSFol7q+.net
「…それに。」

「冬になる前に煙突を汚すと。」

「サンタさんが入りにくくなるって。」

「パパが言ってたの。」


「…パパ。」

「サンタ…さん?」

二人の頭には?マーク


「素敵♪」

「優しいお父さんですね。」

ことりちゃんと海未ちゃんが声をかける

「…ここの煙突はいつも、私が綺麗にしていたの。」

「去年までサンタさんが来てくれなかった事はなかったんだから。」




「…証拠に、中見てごらんなさい?」

48: 2015/03/18(水) 21:21:39.46 ID:NSFol7q+.net
中を見ると、サンタさん?からのメッセージ

雪だるまと、サンタさんの絵

…そして、『Thank you』の文字



「真姫ちゃん、お父さんから愛されてるんやね。」

「…そうね。」

えりちと二人で声を潜める

真姫ちゃんは、とっても誇らしそうや





「…ぷぷぷ。」

あ、止めるの忘れてた


「アンタ…っ。」

「真姫が、サンタ…」


「にこちゃん!!」

49: 2015/03/18(水) 21:22:07.68 ID:NSFol7q+.net
「それは駄目よ!!」

花陽ちゃんとえりちが急いで止める

「…いたいいたい!!」

「何よ!?」


「駄目だよ!!」

「それを言うのは重罪だよっ!!」

「そうにゃ!」

「真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!!」


穂乃果ちゃん達も加わる


にこっち…もし言ってしまったら…わかってるよね?


「だってあの真姫よ!?」

「あの真姫が…」


「ダメー!!!」

穂乃果ちゃんが、にこっちを押し倒す

50: 2015/03/18(水) 21:22:49.39 ID:NSFol7q+.net
「…?」

真姫ちゃんはひとり、蚊帳の外

「一体、どうしたっていうのよ…?」


「だ、だって、真姫…」

「サンタっていうのは…!」



「にこっち…?」

「ひっ…!」


「それ以上言ったら…」

「どうなるかわからんにこっちじゃないやろ…?」


後ろからにこっちのそれに手を当てる


「…サンタさんに、大きくなるようお願いしてみよか?」

手のひらに、力を入れる


「け、結構よ…」

51: 2015/03/18(水) 21:23:11.74 ID:NSFol7q+.net
「そ?」

「なら、着替えて練習いこっか♪」


「…ふう。」




「ねえ、にこちゃん。」

「さっき言ってた事って…」


「あ、真姫ちゃん。」

「えっとね、サンタっていうのは…」



「…にこっち♪」

「は、はいっ!!」


「さあ、真姫ちゃん。」

「今年もサンタさんが来てくれるように、頑張ろっ♪」


「もちろんよ!」

52: 2015/03/18(水) 21:23:40.53 ID:NSFol7q+.net
海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃんを残して

ウチらは近くの開いた場所へ

あの3人の邪魔にならないよう

ウチらは、ステップの練習をする


「…さあ、まずは基礎練習から!」

えりちの指示で、ウチらは動く


今頃、あっちの3人も頑張ってるんかな?



----



「んっ…ぷはー!」

「気持ちいいねー。」

練習の合間の休憩やけど

空気が美味しいくて、つい横になっちゃう


「眠くなっちゃうね…」

「って、寝てる!?」

花陽ちゃんの横で

穂乃果ちゃんが可愛い寝息を立ててる

53: 2015/03/18(水) 21:24:05.92 ID:NSFol7q+.net
「…ちょっと、休憩は5分よ?」

えりちが呼びにくるけど

なんか、力が抜けちゃって…


「分かってるわ。」

にこっちが答えるけど、なにかに気付く

「…?」


「ああっ!!」

「私のリストバンド!!」

リスが、にこっちのリストバンドを咥えてる

「可愛いにゃ~。」

「そうね~…って!」

「言ってる場合じゃないでしょ!?」

「返しなさーい!!」


にこっちがリスを追いかける

54: 2015/03/18(水) 21:24:37.11 ID:NSFol7q+.net
「あっ!ちょっとにこ!」

「にこちゃん、待つにゃー!!」

「凛まで…!」


「あ、えりちそっちは…!」

二人を追ったえりちを追いかける


確か、そっちは急な坂道が…




「…えりち?」

「駄目。」

「どこかに行っちゃったみたい。」

「下に落ちてないといいんやけど…」


「流石に、大丈夫でしょ。」

「きっとすぐ、取り返して戻って来るわ。」


「穂乃果を起こして練習しましょう?」

「うん…」

55: 2015/03/18(水) 21:24:58.67 ID:NSFol7q+.net
-----

「1・2!1・2!」

えりちのかけ声でステップを踏む


「穂乃果、ちょっとバランス崩れてるわよ!」

「はいっ!」

「花陽も、タイミングが遅い!」

「は、はいっ!」



「…それじゃ、一旦休憩にしましょうか。」

「あんまりやり過ぎて、身体壊すのも駄目だし。」


「それにしても、にこっち達遅いなあ…」

「もう、30分ぐらい経ってるよね。」

「大丈夫かなあ…?」


花陽ちゃんが、不安そうな顔をする

「…この辺、猛獣とかはいないらしいけど。」

「猛獣っ!?」

56: 2015/03/18(水) 21:25:24.97 ID:NSFol7q+.net
「まさか、そんなのいる訳…」

そう言いかけた時

後ろの茂みの奥からガサゴソと音が聞こえた

「…え?」


音は、次第に大きくなる


「え、絵里ちゃん…」

「大丈夫よ、穂乃果。」

「猛獣なんて、いるはず…」


「…でも、なんか近づいて来てない?」

「ちょ、ちょっと希!」

「怖がらせないでよ!」


「いや、でも…」


その時、それは茂みから飛び出して来た

57: 2015/03/18(水) 21:25:58.05 ID:NSFol7q+.net
「…!!」

穂乃果ちゃんと花陽ちゃんは

二人で抱き合ってる

えりちも、しゃがんで小さくなって…


「…って、にこっち?凛ちゃん?」


「脅かさないでよ…」

「お、脅かしたい訳じゃ…」


「っていうか、何でびしょ濡れなん?」

「さ、寒いにゃあ…」


「と、とにかく中に入って?」

「風邪引く前に、早く…!」



…真姫ちゃんに、謝らないとあかんかな

62: 2015/03/19(木) 20:01:09.25 ID:AQ86FPon.net
「「…へっくしゅん!!」」

風邪を引くといけないから

真姫ちゃんには申し訳ないけど

暖炉を使わせてもらう事に


「もう…無事だからよかったけど。」

えりちも心配してたしなあ…

「ごめんなさーい…」


「すごい!本物の暖炉!」

「少しは心配しなさいよ!」

元気になって、ちょっとうるさくなって来たから


「静かにしないと…!」

「上で海未ちゃん達が作業してるんやし。」


「あ、そっか。」

「真姫ちゃんは…?」

穂乃果ちゃんに言われて、気付く

確かに、真姫ちゃんどこいったんやろ?

63: 2015/03/19(木) 20:01:37.88 ID:AQ86FPon.net
そのとき、花陽ちゃんが部屋に来た

「お茶用意しました~。」


「あ、じゃあ海未ちゃん達には私が持って行くよ。」

「…ほんと?ありがとう♪」

「それじゃ、行ってくるね。」


穂乃果ちゃんが、2階に向かう


「…それにしても、海未たちは大丈夫かしら?」

「まあ、ウチらが手伝える事って言ったら…」


そんな話をしていると

上からドタドタと走る音が聞こえた


「…穂乃果かしら。」



「だあああああああああ!!」



「「!?」」

64: 2015/03/19(木) 20:02:13.65 ID:AQ86FPon.net
大声にビックリしてると

穂乃果ちゃんが駆け下りて来た


「ちょっと穂乃果!」

「もうすこし静かに…」


「大変だよ!!」

「海未ちゃん達が!!」



-----


「「スランプ!?」」

どうやら、上手く進まず

外で現実逃避してたみたい


「…つまり。」

「今までよりも強いプレッシャーがかかっているという事?」


「…はい。」

「気にしないようにはしているのですが…」

「上手く行かなくて。」

「予選敗退になったらどうしよう、って思うと…」

65: 2015/03/19(木) 20:03:31.84 ID:AQ86FPon.net
「ま、私はそんなの関係なく進んでたけどね。」

真姫ちゃんの虚勢もむなしく…

「その割には譜面真っ白にゃ!!」

「って、勝手に見ないで!」

落ち込んでる3人をみて

やっぱり負担をかけすぎた事に後ろめたさを感じてしまう


「…確かに、3人に任せっきりって言うのは良くないかも。」

「そうね。責任も大きくなるから。」

「負担もかかるだろうし…」

えりちと花陽ちゃんが、顔を見合わせる

それなら…

「じゃあ、みんなで意見出し合って。」

「話しながら曲を作って行けばいいんじゃない?」


「…そうね。」

「せっかく9人揃ってるんだし。」


にこっちも、肯定してくれる

66: 2015/03/19(木) 20:04:11.16 ID:AQ86FPon.net
「…しょうがないわねー。」

「私としては、やっぱり『にこにーにこちゃん』に曲を…」


「なーんて9人で話してたら。」

「いつまで経っても決まらないよ…?」

今は、時間がないんやから


「…そうだ!」

えりちが、割り箸を用意する

「せっかく9人いるんだから。」

「グループで別れましょうよ♪」



-------

表に出て、えりちが進める

「…それじゃ、3班に別れましょ?」

海未ちゃんたちが先に3つに別れて

ウチらが、その後に割り箸を引く

「…決まりね。」


「ことりを中心に、衣装を決める班と。」

ことりちゃん、穂乃果ちゃん、花陽ちゃんのグループ

「海未を中心に作詞する班。」

海未ちゃん、凛ちゃん、そしてウチ

「そして、真姫を中心に作曲する班。」

真姫ちゃん、えりち、にこっち

67: 2015/03/19(木) 20:04:40.91 ID:AQ86FPon.net
…うん♪

良い別れ方と違うかな?


案外、このメンバーでユニット組むのも良いかもね


「…ようし。」

「じゃあユニット作戦で。」

「曲作り頑張ろー!!」


「「おーっ!!」」


「…おー。」

真姫ちゃん、ちゃんと言うだけ可愛いな♪



----

さて、それじゃウチらはウチらで動こうか


「海未ちゃん、どうする?」

「何か話してたら、イメージ湧くかにゃ?」


「…いいえ。」

「二人とも、準備をして下さい。」


「「…?」」

70: 2015/03/19(木) 20:41:44.05 ID:AQ86FPon.net
------


「にゃあああぁぁぁあ!!」

「りーん!!」

「絶対にこの手を離してはなりません!!」


「氏にますよー!?」

「いやー!!」


ウチらは今、切り立った崖の近く

とても過酷な山登りのルートにいた


海未ちゃんが、山に登ればインスピレーションが

と言うので

せっかくやる気が出てる海未ちゃんを止めるのも気が引けて

凛ちゃんを説得して来た訳やけど…



「今日はこんなのばっかりにゃー!!」

「ファイトが足りんよー!?」


来たものの…

過酷すぎて、作詞できる訳も無く

海未ちゃんに付き合ってる

71: 2015/03/19(木) 20:42:16.89 ID:AQ86FPon.net
「…ふう。落ちなくてよかったです。」

「うう…」


「希、大丈夫ですか?」

「ウチは平気!」


凛ちゃんは泣きそうになってるけど…

ウチは、少しだけわくわくしてる


「…雲がかかってきた。」

「山頂まで行くのは無理やね。」


「そんな…」

「ここまで来たのに…!」

すごく悔しそうな海未ちゃん

その顔も新鮮やけど…

「ひどいにゃ!」

「凛は全然こんなとこ来たくなかったのにー!!」


そろそろ、凛ちゃんのケアもしないとな♪

72: 2015/03/19(木) 20:42:41.13 ID:AQ86FPon.net
「…仕方ありません。」

「今日はここで明け方まで天候を待って。」

「翌日アタックをかけましょう。」


「…山頂アタックです!!」


「まだ行くのぉー!?」

「当然です!」

「何しにここに来たと思っているんですか!?」



「作詞に来たはずにゃー!!」

涙声で訴える凛ちゃん


「…はっ。」

「まさか忘れてたのー!?」


やっぱり、そんなとこやと思った

73: 2015/03/19(木) 20:43:11.90 ID:AQ86FPon.net
「そ、そんな事はありません!」

「山を制覇し、成し遂げたという充実感が。」

「創作の源になると私は思うのです!」


ふふっ

海未ちゃんの言いたい事も分かるけど

ここは、ウチの出番かな♪

「まあまあ、海未ちゃん。」

「気持ちは分かるけど…」

「ここまでにしといた方が、いいよ。」


「ですが…」

「山で一番大切なんは…なにか知ってる?」

理屈が好きな海未ちゃんには

ちょっと意味深な事が効果的なんよね


「チャレンジする勇気やない。」

「諦める勇気。」

「…分かるやろ?」

って、この間見たテレビで言ってた事やけど♪

74: 2015/03/19(木) 20:43:45.05 ID:AQ86FPon.net
「凛ちゃん、下山の準備。」

「晩ご飯はラーメンにしよ♪」

「ほんと!?」

凛ちゃんの顔が明るくなる

…やっぱり、この辺が正解やったみたいやね♪



今まで、周りの人ばっかり気にしてたけど

そのお陰で、変化が分かるようになった


気付く事、ただそれだけだけど


…今までは、気付いても言う勇気がなかったから

でも、今は

言っても、受け入れてくれる仲間がいる



だから、怖くない

胸を張って、言葉にできる


それが、素直なふたりやから

…ついつい、口数が多くなってしまうのは事実やけどね

75: 2015/03/19(木) 20:44:24.37 ID:AQ86FPon.net
「下に食べられる草が沢山あったよ♪」

「海未ちゃんも手伝って?」


「それにしても、こんな事にまで詳しい希って…」

「謎にゃあ…」


「…ん?」


「あ、いえ…」

「ねえねえ、希ちゃん!」

「どんなのが食べれるの?」

「さっき見つけたのは、オオバコ、アカツメクサ。」

「あとは、葛とかやね。」


「葛と言えば、秋の七草ですよね。」

「お、海未ちゃん良く知ってるやん♪」


「時期は少し早いけど、見つけたから。」

76: 2015/03/19(木) 20:44:54.27 ID:AQ86FPon.net
3人で、歩いてさっき見つけた場所へ


少し開けた、広場みたいな所

「ここは…」


「寝床にも、ぴったりやろ?」

「…本当に。」

「希は、謎が多いですね。」


「ふふっ。褒め言葉として、受け取っておくよ。」


「ねーねー希ちゃん!」

「凛、お腹減ったにゃー!」


「それじゃ、一緒に採ろうか。」

「そういえば、ちょっとしたデザートも見つけたよ♪」


「ええっ!?デザート!?」

「さあ、レッツゴー♪」

「「おー!」」

77: 2015/03/19(木) 20:45:23.54 ID:AQ86FPon.net
-----


「いっぱいとれたね!」

「うん、これだけあったら大丈夫かな?」


「では、調理しましょうか。」

「その前に、少しアクを抜かないと駄目だから。」

「お湯を沸かして、重層をいれるよ♪」


「希は、料理も出来るのですか?」

「ううん、実は苦手なんよ。」

「いつも、コンビニ弁当とかばっかり食べてて…」


「そーなの?」

「…ちょっと、恥ずかしいんやけどね。」

「少し…意外でした。」

「そう?」


「ええ。」

「ほんと!」

「希ちゃんって何でも出来ると思ってた!」


「ふふっ。」

「そう思ってもらえて、嬉しいよ♪」

79: 2015/03/19(木) 20:47:17.00 ID:AQ86FPon.net
「よし、アクも抜けたみたいやし。」

「ラーメンを湯がいてる間に、かき揚げをつくろっか♪」

「わーい!!」


------


「お腹いっぱいにゃー。」

「美味しかった?」

「うん!!」

「凛、初めてこういう野草食べた!」

「私もです。」

「案外、悪くないのですね。」


「…なら、よかった。」

ほっと、胸を撫で下ろす

「もちろん、希が私達のために作ってくれたものですから。」

「その気持ちが、なにより嬉しいですよ。」


「海未ちゃん…」

「凛もそう思うにゃ!」

「希ちゃん、ありがとうっ!」

80: 2015/03/19(木) 20:47:49.37 ID:AQ86FPon.net
少し、目頭が熱くなったけど…

気を取り直して


「…さ、凛ちゃん。」

「お待ちかねのデザート、どうぞ。」


「わあ…!」

「真っ赤だね!」


「これは、一体…?」

「ガマズミって言う、野草の実なんよ。」

「まあ、一口食べてみて♪」


「いっただっきまーす!!」

凛ちゃんが、ぱくっと口に放り込む

「~!!すっぱいにゃー!!」


「確かに、酸っぱいですね…」

「でも、ほのかな甘みが、口に広がります。」

81: 2015/03/19(木) 20:48:38.95 ID:AQ86FPon.net
「…あ、分かった!」

「アセロラジュースみたいな感じ!」


「ああ、確かに。」

「そう言われてみれば、そうですね。」


「…なるほど、確かにそんな感じやね♪」

「この草もホントは食べれたんやけど…」

「栄養が、実にいっちゃってるから。」


「そうでしたか。」

「でも、どうしてこれを?」


「これ、実は疲労回復にいいみたいなんよ。」

「明日からも、頑張らないとだめだからね。」

「…今日の疲れを、残さないように♪」



「ありがとうございます、希。」

「希ちゃん、ありがとっ!!」


「満足してもらえたら、ウチも嬉しいよ。」





「…それじゃ、そろそろ寝る用意しよっか♪」

82: 2015/03/19(木) 20:49:11.93 ID:AQ86FPon.net
食事の用意を片付けて

テントに入って、夜空を見上げる


「綺麗だにゃ~…」


「…星はいつも自分の事を見てくれる。」

「星空凛って言うくらいなんやから。」

「星を好きにならないとね♪」

「うん!」



「…星座も詳しいみたいですね。」

海未ちゃんも、興味があるみたい

「一番好きな星座とか、あるの?」


「そうやね…」

「印象に残ってるのは、南十字星かな。」

今でも、目を瞑れば思い出せる

でも、この話はまだ内緒♪


「南…十字星?」

「ペンギンと一緒に見たんやけどね♪」


「「…南極!?」」

83: 2015/03/19(木) 20:49:46.54 ID:AQ86FPon.net
驚いてる二人を横目に

満天の夜空を見上げる

「…!」


「あ、流れ星!」

「えっ?」

「どこどこ!?」

二人が、反応する


そっと、起き上がって

「南に向かう流れ星は、物事が進む暗示。」

海未ちゃんの力に、少しでもなれるように


「希…」


「一番大切なのは、本人の気持ちよ?」

軽く笑って、海未ちゃんを見る

さ、そろそろ寝ようか

中に入った時、少しだけ聞こえた

「…元々無かったですよ。」


あちゃ…やっぱりバレてたか

84: 2015/03/19(木) 20:50:14.00 ID:AQ86FPon.net
「…」

かすかに、別荘からピアノの音が聞こえる


疲れたからか、凛ちゃんはもう夢の中

お疲れさま、凛ちゃん


「…ウチらの想いは、いつも一緒やで。」

「…!」


別荘に向かおうとする海未ちゃんに、そっと告げる


「…ありがとう、ございます。」

そう言うと、海未ちゃんは行ってしまった


「ふわぁ…」


気が抜けたからか、一気に眠くなる


「…おやすみ、ふたりとも。」


静かに、目を閉じる

きっと、大丈夫


ウチらなら

85: 2015/03/19(木) 20:50:43.50 ID:AQ86FPon.net
------


「…」

降り注ぐ日差しに、目を開ける

「もう、朝か…」

ごそごそと起き上がると

凛ちゃんも、起きてくる

「おはよー…」

「あれ、海未ちゃんは?」

「海未ちゃんは、一足先に向かってるよ。」

「ウチらも、降りよっか♪」





別荘の前に着くと、穂乃果ちゃんが来た

「…穂乃果ちゃん。」


「凛ちゃん、希ちゃん…」

「みんな…!」

後から、えりちとにこっち、花陽ちゃんも来た

86: 2015/03/19(木) 20:51:15.64 ID:AQ86FPon.net
「どうしたの?」

「起きたら、ことりちゃん達がいなくなってて…」


「…多分、中にいると思うよ?」

「知ってるの?希ちゃん。」

「なんとなく…ね。」



みんなで、そーっと別荘に入る

くたくたに疲れて寝てる、3人の姿があった



「…まったく、しょうがないわね。」

「ゆっくり、寝かせといてあげようか。」

3人とも、お疲れさま♪


「そうね…」

「でも、起きたらすぐ練習よ?」

えりちが、譜面を手に取る

「みっちり…ね。」


花陽ちゃんが、みんなに毛布をかけてあげる

87: 2015/03/19(木) 20:51:44.80 ID:AQ86FPon.net
「それって…!」

みんなが頑張って作った、新しい曲

思わず、それぞれ顔を見合わせる


きっと、他のユニットでも

なにか、いいことがあったんやと思う


「それじゃ、ウチらは先に練習してよっか♪」

「ええ、みんな着替えたら表に集合!」


「「はーい!!」」





海未ちゃんたちが来る前に

出来る事を練習する


「…お、きたきた。」

「海未ちゃん!ことりちゃん!真姫ちゃん!」


「おはようございます。」

「毛布、ありがとうっ♪」

「ま、良いもの作ったんだからね。」

88: 2015/03/19(木) 20:52:14.64 ID:AQ86FPon.net
「1・2・3・4!」

「5・6・7・8!」


海未ちゃんのかけ声で、ステップを踏む


これで、ラブライブに向けて道が開けた

後は、予選までに完璧にする事


不安は、一つもない…と言ったら嘘になるけど

それでも、前向いて頑張ろう


ウチら9人なら、きっと進める

あの、ラブライブの頂点へ…!



「ねえねえ!せっかくだし!」

「みんなで、ポスターつくろうよ!!」

「ポスター?」

穂乃果ちゃんが、また提案する

89: 2015/03/19(木) 20:52:52.40 ID:AQ86FPon.net
「横断幕、って言うかさ!」

「これから、やるぞー!って気になるような!」


「…いいんとちゃう?」

「そうね、せっかくだし。」



「ここから、再スタート、って事ね。」

「新曲も、決まったし…!」


「よーっし!いっぱい書くにゃー!!」

「…ま、いいんじゃない?」


「では、そうしましょうか。」

「うん、楽しそうっ♪」


みんなの気持ちを一つに、それを作る


真ん中には大きく、μ'sの文字


夢はもちろん






『目指せ!ラブライブ優勝!』

95: 2015/03/20(金) 21:30:05.12 ID:vs0QZ3db.net
---

合宿明け


ラブライブ予選の新しい情報が入った

花陽ちゃんの説明に寄ると

今回のステージはネット配信に対応してるみたい

つまり、好きな場所でライブが出来るという事

でも…


「各グループの持ち時間は5分。」

「エントリーしたチームは、出演時間が来たら。」

「自分たちのパフォーマンスを披露。」

「この画面から全国に配信され。」

「それを見たお客さんがよかったグループに投票。」

「…順位が決まるのです。」


海未ちゃんの分かりやすい説明を聞いて

今一度、ウチらの立場を考える


「そして上位4組が最終予選に…と、言う訳ね。」

96: 2015/03/20(金) 21:30:38.51 ID:vs0QZ3db.net
「4組…狭き門ね。」

真姫ちゃんの言う事も、もっともや

それに…


「特にこの東京地区は、一番の激戦区。」

中途半端なライブじゃ、到底受かりっこ無い


「それに、なんといっても…」

「A-RISE…」

…そう

同じ地区に、彼女たちがいる事

前回の優勝も考えて

4組のうちひとつは決まったも同然

ウチらはなんとかして

残りの3組に入らないと駄目なん

97: 2015/03/20(金) 21:31:09.61 ID:vs0QZ3db.net
「…でも、ポジティブに考えよう?」

「あと3組進めるんだよ!」

穂乃果ちゃんの声に

みんなの顔が少し明るくなる


「今回の予選は、会場以外の場所で歌う事も認められてるんだよね?」

「ええ。」

「だったら、この学校をステージにしない?」

「ここなら緊張しなくてすむし♪」

「自分たちらしいライブが出来ると思うんだ。」


確かに、名案やけど

すこし、気になるのは…



「甘いわね!」

そんなウチの気持ちを、にこっちが代弁する

98: 2015/03/20(金) 21:31:38.04 ID:vs0QZ3db.net
「にこちゃんの言う通り!」

花陽ちゃんも加勢しちゃった

「中継の配信は一回勝負。」

「やりなおしは効かないの…」

「失敗すれば、そのままそれが全世界の目にさらされて…!」

中庭で、にこっち達の指導が入る

「それに、画面の中で目立たないといけないから。」

「目新しさも必要になるのよ!」

「目新しさ…」


「…たとえば、セクシーな衣装とか?」

思わずふざけてみたけど

海未ちゃんが小さくなってしまった


「…無理です。」

「海未ちゃーん!」

「…こうなるのも久しぶりだね♪」

99: 2015/03/20(金) 21:32:11.68 ID:vs0QZ3db.net
なんとなくそれが楽しくなって

もう少し、遊んでみる

「えりちのセクシードレス姿も、見てみたいなあ…♪」

「…!」

「ええ…?」

「おお!セクシャルハラスメンツ!!」

穂乃果ちゃんは間違った方向にノリノリやけど…

「…無理です。」

海未ちゃんは戻らない

「セクシードレス…」


あ、海未ちゃんのちょっとした妄想癖が始まってしまった

「は、離して下さい!!」

「私は嫌ですっ!!」

逃げようとする海未ちゃんを、穂乃果ちゃんが押さえる


…一体、何で想像したんかな?

100: 2015/03/20(金) 21:32:49.48 ID:vs0QZ3db.net
「…ふん!」

「私も、やらないからね?」

「またまた~。」

「部長には誰もお願いしてな…っ!」

「つねるわよー?」

「もうつねってるにゃー…」

にこっちたちの漫才を遮って、花陽ちゃんが話す


「というか、何人かだけで気を引いても…」

「…確かに、そうだよね。」

「て言うか、こんな所で話してるより…」

「やる事あるんじゃない?」

真姫ちゃんが発言する

やることって…


…!


なるほど

真姫ちゃんも、ちょっと大人になったかな?

な~んて♪

101: 2015/03/20(金) 21:33:26.18 ID:vs0QZ3db.net
「真姫ちゃん、やることって?」

「…そこの海未を見れば分かるじゃない。」

「それと、花陽も。」


「ええっ!?私も!?」


「…とりあえず、お昼に放送室に来て?」


「「…?」」


---


真姫ちゃんが、放送室のドアをノックする

「はーい。」

「失礼します。」

「あ、西木野さん。」

「ごめんね、いきなり。」

「朝、言ってた事だけど…お願いできる?」

「ねえ真姫ちゃん、朝言ってた事って?」


「放送室を、使わせてもらえるか、よ。」

「本番の練習になるでしょ?」


「西木野さんのお願いだし、いいですよ♪」

102: 2015/03/20(金) 21:34:04.53 ID:vs0QZ3db.net
「…ほんとに!?」

「はい、お昼の放送でよければ、構わないですよ?」

「…彼女、放送部員なの。」

「こうやって実際マイクに向かって。」

「校内のみんなにアピールすれば…」

「応援してもらえるし。」

「中継されるときの練習にもなるでしょ?」


「…真姫ちゃん、ナイスアイディア!」

穂乃果ちゃんが褒める後ろで

凛ちゃんと花陽ちゃんが驚いた顔をしてる


「…どうしたの?」


「真姫ちゃんが、同じクラスの子と仲良くなるなんて…」

「ビックリ…」

それでも、二人の顔はうれしそう♪

「なっ…!!」

「べ、別に、ただ日直で一緒になって。」

「少し話しただけよ!!」

真っ赤な顔で否定する

103: 2015/03/20(金) 21:34:31.56 ID:vs0QZ3db.net
「「…ふふっ。」」

すっごく、微笑ましい光景


「よーっし!」

「それじゃあ早速、やってみよう!」

穂乃果ちゃんが、マイクの前に立つ


…ここまでは、良かったんやけど


海未ちゃんが緊張して

『園田海未役の園田海未です』

とか言ったり

花陽ちゃんが焦って好きなご飯の話したり


挙げ句の果てには穂乃果ちゃんが

ボリューム目一杯の状態で叫んだりと


それはもう、むちゃくちゃやった


「…もう!何やってんのよ!?」

真姫ちゃんが怒る

104: 2015/03/20(金) 21:35:05.84 ID:vs0QZ3db.net
「でも、μ'sらしくて良かったんじゃない?」

「それって褒め言葉…?」


真姫ちゃんの友達のお陰で、少し和んだけど

未だ、状況は変わってない


…どうしようか


「前途多難やなあ…」

「さあ、あとは場所ね。」


カメラで中継できる所なら、場所は自由

でも、自由って言っても

ウチらの学校で使える所は、もう既に使ってしまってて

目新しさ、って意味ではあんまりで…


秋葉に出て来たけど、やっぱり決まらずに

ぼーっとしたウチらは、UTX高校の前に来てた

105: 2015/03/20(金) 21:58:19.60 ID:vs0QZ3db.net
「…あ、新曲できたんやって。」

「多分、予選に向けてよね…」

「CD、買わなくっちゃ…」


にこっちだけ、何かちょっと違うけど

でもやっぱり、注目度が違うよね


…そんな人と


「…!」

「にこっち!?」


にこっちが、急に走り出した

「どうしたのかしら…?」

「いこ、えりち!」

ウチらも、遅れて走り出す


遠くで、花陽ちゃんが走ってるのも見えた

106: 2015/03/20(金) 21:58:58.89 ID:vs0QZ3db.net
「にこっち達は…」

UTX高校の中に入る

本当は、入っちゃ駄目なんやと思うけど

にこっち達が入って行ったし…


奥の方に進むと、みんながいた

それどころか…


「それは前から知ってるからよ?」

「…μ'sの皆さん。」


A-RISE

綺羅ツバサと、他のメンバーがそこにいた



「ちょっと穂乃果、どういう…」

「私も、何がなんだか…」


「とりあえず、ついて来て?」

あんじゅさんに、先導される


「…!貴女は…」

107: 2015/03/20(金) 21:59:36.47 ID:vs0QZ3db.net
ツバサさんと、目が合った

「あ…お久しぶりです。」

「希さんね。久しぶり♪」


「希ちゃん、知り合いなの!?」

「は、花陽ちゃん、近いよ…///」


「…ほら、置いて行かれるわ。」

「先に上がりましょう?」


早足で、前のみんなについて行く

…でも、ツバサさんが覚えていてくれたなんて




校内の、カフェに案内された

「ゆっくりくつろいで?」

「ここはこの学校のカフェスペースになっているから、遠慮なく♪」


「は、はあ…」

流石の海未ちゃんも、驚いてる

108: 2015/03/20(金) 22:00:09.00 ID:vs0QZ3db.net
あんじゅさんが、口を開く

「貴女達も、スクールアイドルでしょう?」

「しかも同じ地区。」

「一度、挨拶したいと思っていたの。」

ツバサさんが、それに続く


「…高坂穂乃果さん。」

「…!」

「下で見かけた時、すぐ貴女だと分かったわ。」

「映像で見るより本物の方が、遥かに魅力的ね♪」


「人を引きつける魅力…カリスマ性とでも言えばいいのだろうか。」

「9人いても、なお輝いている。」

…と、英玲奈さん


「私達ね?」

「貴女達の事、ずっと注目していたの。」


「「…えっ?」」

109: 2015/03/20(金) 22:00:44.81 ID:vs0QZ3db.net
「実は前のラブライブでも…」

「一番のライバルになるんじゃないか、って思っていたのよ?」


「そ、そんな…」

「貴女もよ。」

「絢瀬絵里。」

「ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている。」


「そして西木野真姫は。」

「作曲の才能がすばらしく…」

「園田海未の素直な詩と、とてもマッチしている。」


「星空凛のバネと運動神経は。」

「スクールアイドルとしては全国レベルだし。」


「小泉花陽の歌声は。」

「個性が強いメンバーの歌に、見事な調和を与えている。」

110: 2015/03/20(金) 22:01:31.84 ID:vs0QZ3db.net
「牽引する穂乃果の対になる存在として。」

「9人を包み込む包容力を持った東條希。」

「…!」

「…それに。」

「秋葉のカリスマメイドさんまでいるしね。」

「…!」


「いや、元と言った方が良いのかしら?」


「…///」


素直に、驚いた

ウチらの事、ここまで調べてるなんて


「…そして、矢澤にこ。」

にこっちには、一体…


「…いつもお花ありがとう♡」


「「ええっ!?」」

「あれからもずっと、応援してくれてるよね。」

「すごく嬉しいよ♪」

111: 2015/03/20(金) 22:02:02.03 ID:vs0QZ3db.net
みんなの視線が、にこっちに刺さる

まあ…ウチは知ってたけど


「あ、いや、その…」

「にこ…そうなの?」

「ていうかにこちゃん、あれからって…?」


「い、いや~、μ's始める前から。」

「ファンだったから~…」


「って、そんなことはどうでもよくて!!」

「私の良い所は!?」

にこっち、もういじられ方知られてるんやね


「ふふっ。」

「グループに無くてはならない、小悪魔、ってところかしら?」


「はわわ~♡」

「小悪魔…うふっ♡」


にこっちがもだえてる

112: 2015/03/20(金) 22:02:36.23 ID:vs0QZ3db.net
「なぜ、そこまで…」

えりちが、不安そうな顔で聞く

確かに、たかが同じ東京地区ってだけなのに…


「これだけのメンバーが揃っているチームは、そうはいない。」

「だから注目もしていたし…」

「応援もしていた。」

「そして何より…」


「負けたくないと思ってる。」

「「…!」」


「ま、もう一つ理由はあるけど…」


「…でも、貴女達は全国一位で、私たちは…」

海未ちゃんを遮って、あんじゅさんが話す

「それはもう過去の事。」

「私達はただ純粋に。」

「今この時、一番お客さんを喜ばせる存在でありたい。」


「…ただそれだけ。」

A-RISEが言うと、言葉の重みが違う

113: 2015/03/20(金) 22:03:05.48 ID:vs0QZ3db.net
ツバサさんが、立ち上がる

「μ'sの皆さん。」

「お互い、頑張りましょう?」

「そして、私達は負けません。」

3人が、出て行こうとする


「あのっ!!」

穂乃果ちゃんが、立ち上がった

「A-RISEのみなさん。」

ウチらも、立ち上がる

…だって、決めたから


「私達も負けません!」

「…!」


「今日はありがとうございました!」



「…あははっ。」

「貴女って面白いわね…!」

114: 2015/03/20(金) 22:03:31.58 ID:vs0QZ3db.net
ツバサさんは続ける

「ねえ。」

「もし歌う場所が決まっていないんなら。」

「うちの学校でライブやらない?」


「「え…っ!?」」


「屋上にライブステージを作る予定なの。」

「もしよかったら、ぜひ♪」

「一日考えてみて?」

その言葉に、穂乃果ちゃんは即答した


「…やります!!」


穂乃果ちゃんのこの姿勢

やっぱり、すごいなあ…


「…そう言ってくれると思った♪」

「それじゃ、また詳しい事は連絡するわね。」

そう言って、出口の方に案内される

115: 2015/03/20(金) 22:04:07.25 ID:vs0QZ3db.net
「…そうだ。」

「ね、希さん。」

ツバサさんが近くに来て

小さな声でささやく


「…さっき言ってた、もうひとつの理由。」


「貴女がいたからよ♪」

「えっ?」

無邪気に笑う、ツバサさん


「…前に会ったときの貴女は、どこか無理してた。」

「何かを、ずっと我慢してるみたいで。」

「でも、μ'sのライブを見て。」

「今日…貴女を見て。」


「変わった、気がしたの。」


「ツバサさん…」

「ま、単なる勘だけど♪」

「ステージ、楽しみにしてる。」

「またね?」


「あ、ありがとうございます!」

116: 2015/03/20(金) 22:04:31.92 ID:vs0QZ3db.net
ツバサさんは、気付いてた

一度しか会った事の無いウチの事を

…そんなに、分かりやすいかな?


自分のほっぺたを引っ張ってみる


「…いたい。」


「なにやってんの、希?」

「あ、ごめんにこっち。」


これで、場所が決まった

…あとは、本番で出し切るだけ





---そして、ライブ当日を迎える

118: 2015/03/20(金) 22:32:37.43 ID:vs0QZ3db.net
---


「おおーっ!」

「すごーい!!」

ステージになる屋上から、下を見下ろす

絶景が見えるこの場所で

ウチらは今日、予選が行われる…けど

穂乃果ちゃんは、のんきな声を上げてる


「ウチらの学校とは大違いやね。」

「こんなにいいステージを使う事が出来て。」

「本当によかったね♪」


「…そこは、A-RISEに感謝せんとね。」


「よし、そろそろ着替えなきゃだね。」

「いこっ?希ちゃん。」


「…頑張ろうな、穂乃果ちゃん。」

「ん?」


「もっちろん!!」

119: 2015/03/20(金) 22:33:02.11 ID:vs0QZ3db.net
「お、あれは…」

ウチらの控え室に、A-RISEが来てた


「あ、こんにちは!」

穂乃果ちゃんが挨拶する


「いよいよ予選当日ね。」

「今日は同じ場所でライブが出来て、嬉しいわ。」

「予選突破を目指して。」

「互いに高め合えるライブにしましょう?」

差し出された手を、穂乃果ちゃんがとる

「…はい!」


「それじゃ、私達は先に上がってるわ。」

「またあとで、会いましょう。」




「…よし。」

「私達も行くよ!!」


「「おーっ!!」」

120: 2015/03/20(金) 22:33:32.29 ID:vs0QZ3db.net
---

暗くなった夜空に

紫を基調としたライトが映える

初めて見る、A-RISEのライブ

その空気に、思わず息を飲む


心を、そのまま引っ張られたみたいに

ウチらは、その曲が終わるまで立ち尽くしていた



「やっぱりA-RISEのライブには、私達…」


花陽ちゃんが言った言葉に

ウチらの夢が、霞む

分かってはいたけど、こんなに差があるなんて


「…叶わない。」

「認めざるを得ません。」


「…」

ここまで、来たのに

みんなの心が、折れ---

121: 2015/03/20(金) 22:34:01.93 ID:vs0QZ3db.net
「そんな事ない!!」


「「…え?」」


「A-RISEのライブがすごいのは当たり前だよ。」

「せっかくのチャンスを無駄にしないよう。」

「私達も続こう!!」


穂乃果ちゃんが、手を前に出す

みんなで、ピースで円を作る


今までやって来た事、無駄にしたくない


みんなを、信じて

みんなが信じてくれる、自分を信じて




ウチらは、歌って踊るだけ

122: 2015/03/20(金) 22:34:25.10 ID:vs0QZ3db.net
「…A-RISEはやっぱりすごいよ。」

「こんな凄い人達とライブが出来るなんて…!」


「自分たちも、思いっきりやろう!」

みんなで、チカラを込める

「「おーっ!」」


「よーしっ!」

「それじゃ行くよ?」



「μ's!」

「ミュージック…」


「穂乃果ー!」


後ろで、声がした

123: 2015/03/20(金) 22:34:53.54 ID:vs0QZ3db.net
「…!」

学校の生徒が

みんなの、ともだちが

ウチらを、見に来てくれた


「手伝いにきたよ♪」

穂乃果ちゃんのともだちが、言う


「…希。」

「?」

「ほら、あそこ。」


「え…?」

ウチの、クラスの子達もいた


μ'sに入ってから、遊びに行く事も出来なかったのに


「…ああいう人たちに、私達は支えられてるのね。」

「…うんっ。」

まだ、涙を見せちゃダメ

後少し

ライブが、終わるまで…

124: 2015/03/20(金) 22:35:50.78 ID:vs0QZ3db.net
「…さあ、行こう!」


今まで、全く知らなかったウチらが

今、ここでこうして歌ってる


小さな、キッカケが

今のウチらを繋いでる


何度も、立ち止まって

苦しんで、泣いて

それでも、みんながいたから

みんなが、笑ってくれたから


そんなみんなに支えられて

ウチらはここまで来た

迷ってでも、進んで来れた

足下を、照らしてくれたから


ここからが、再スタート

こんなところで、終われない


ここが、ウチらの新しい青春の始まり





『ユメノトビラ』

130: 2015/03/21(土) 20:41:10.29 ID:OLB6a4ze.net
-----


「凛たち…合格したの?」

「予選を突破した…?」

「…」

「「やったー!!」」


予選通過チーム発表の日

穂乃果ちゃんの変な夢に振り回されたりしてけど…


合格、してた


思わず、みんな駆け出す

「…希!」

「うん!」


ウチらも、自分のクラスへ

131: 2015/03/21(土) 20:41:41.06 ID:OLB6a4ze.net
「ほんと!?」

「合格したの!?」


「うん!!」

クラスの子達に、報告する

「よかったあ…」

「ちょ、泣かんといてよ…」

「だって、今までの希ちゃん見てたら…」

「そうだよ!」

「こんな事、夢にも…!」


「みんな…」


「おめでとう、希ちゃん!!」

「…ありがとう。」


みんなと、抱き合う

みんな、自分の事みたいに喜んでくれて

それが、嬉しいような、申し訳ないような

132: 2015/03/21(土) 20:42:14.39 ID:OLB6a4ze.net
「みんな、本当にありがと。」

「始めてから、ほとんど話せてすらなかったのに…」

「この間の、応援だって…」


「ううん!」

「私達、みんな知ってたよ?」

「希ちゃんが、頑張ってるって。」

「ライブのときもそう。」

「ネットで、動画も見たり…」

「みんなで、応援してたの!」


「…ほんとに、ありがとう。」


「それに…」

「…?」

「私達も、勇気をもらったの。」

「希ちゃんたちから。」


「…頑張ったら、叶えられるんだ、って!」


「みんな…」

133: 2015/03/21(土) 20:43:19.98 ID:OLB6a4ze.net
「ほら、これからが本番でしょ?」

「ずっとずっと応援してるから!」


「…うん!」







みんなと別れて、教室を出る

出た所で、声をかけられた



「…希ちゃん。」

「…!」


「予選突破、おめでとう。」

「…ありがと。」

「本当に…叶えちゃったね。」

「…」

「にこっちには、言わんでええの?」

「そんな資格…ないから。」

134: 2015/03/21(土) 20:43:43.29 ID:OLB6a4ze.net
「資格とかじゃないよ?」

「…今まで、一緒にやってきた事は事実やん。」


「それでもやっぱり…」

「にこちゃんには、直接言えないよ。」

「…そっか。」


「…やっぱり、これも才能って思う?」

「…ううん。」

「少し嫉妬してるんだ、希ちゃん達に。」

「え?」



「もし…諦めずにいたら。」

「そこに立ってたのは、私達だったのかな…って。」



「…」

135: 2015/03/21(土) 20:44:15.99 ID:OLB6a4ze.net
「本当は、こんな事言おうなんて思ってなかった。」

「…でも、あんなに喜ぶ希ちゃんを見たら。」


「…なんだか、応援したくなっちゃって。」

「そんなん…」


「もしかしたら、私達が間違ってたのかもしれない。」

「才能なんかじゃ無いって。」

「努力したら、叶うんだって。」


「…でも、やっぱり今の9人だから。」

「私は、ここまで来たんだって思ってる。」


「だから、なんて言うか…」

「きっと、これが運命だったんだよ。」


「だって、にこちゃん。」

「私達といた時より、輝いてる。」


「それは間違いなく、希ちゃん達がいるから。」

136: 2015/03/21(土) 20:44:42.43 ID:OLB6a4ze.net
「でも、にこっちは…」


「うん。多分今なら、前までの友達には戻れるかもしれない。」

「でも、それはいいの。」


「だって、壊した張本人だから。」

「今更、友達ヅラなんか出来ないよ。」


「でも、せっかく…」


「だから、にこちゃんに伝えて?」



「おめでとう。」

「絶対に、夢を叶えて…って。」


「え…?」


「μ's、応援してるから。」

「にこちゃんの、新しい居場所。」

137: 2015/03/21(土) 20:45:12.39 ID:OLB6a4ze.net
「…わかった。」


「ごめんね、変なお願いして。」

「ううん、いいよ。」

「それじゃ、これで…」

そう言って、去ろうとする


「…今度、ご飯でもいこっか。」

「…え?」

「だって…ウチら、友達やろ?」

「…」


「出来た繋がりは、どんな事があっても切れないんよ?」

「…確かに、色々思う所はあるけど。」

「二人の気持ちも、分かるから。」



「…せっかく仲良くなったんやもん。」

「ウチは、友達でいたいよ。」

「希ちゃん…」


「だから…な?」



「…うん。」

138: 2015/03/21(土) 20:45:45.12 ID:OLB6a4ze.net
最後は笑顔で手を振って

屋上に来たけど…

にこっちがいない


そういえば、皆で出て行った時から見てない


「にこちゃん、どこ行ったんだろ…」


「穂乃果ちゃん!あれ!」

凛ちゃんの指差す方を見ると

小さなツインテールが目に入った


「とりあえず、一旦降りましょう。」


皆で、にこっちのところへ。






「にこちゃーん!」

「…!」

139: 2015/03/21(土) 20:46:21.05 ID:OLB6a4ze.net
「どこ行くの!?」

「大声で呼ぶんじゃないわよ!」

「どうしたの?」

「練習始まってるよ?」


「…今日は、ちょっと、用があるの。」


「それより!」

「最終予選近いんだから!」

「気合い入れて練習しなさいよ!?」


そう言うとにこっちは帰って行ってしまった


「…どうする?」

「にこちゃんにしては、何か変ね…」

「確かに、にこなら一番練習やりたそうなのに…」


「…ついて行ってみようか。」

「えっ…?」


「だって、なにかあるなら、相談してほしいもん!」

「穂乃果…」


「じゃ、決まりやね♪」

140: 2015/03/21(土) 20:46:47.13 ID:OLB6a4ze.net
にこっちについて行くと

スーパーに入って行った

「よし、入り口で様子を見よう!」

穂乃果ちゃん達が、入り口に回る


「…えりち、こっち。」

「希…?」


えりちを連れて、裏口へ

「にこっちなら、逃げるときここを使うと思う。」

「まさか、流石にそれは…」


そんな話をしていると

中が騒がしくなって来た


「まさか…」

えりちにコクッと頷いて

ウチは扉の氏角に隠れる

141: 2015/03/21(土) 20:47:09.14 ID:OLB6a4ze.net
「…!?」

やっぱり、にこっちが飛び出て来た

「さすがにこ。」

「裏口から回るとはねえ…」

「ハラショーよ、希!」


後ずさりするにこっちを後ろから捕まえる

「さあ、大人しく訳を聞かせて~?」


「っ…はあっ!!」

にこっちに、するりと逃げられた

「ちょおっ!?」


しまった

掴むとこ無いのに油断した…!

142: 2015/03/21(土) 20:47:35.92 ID:OLB6a4ze.net
にこっちを追いかけて、裏路地を走る

「まてー!」

狭いパーキングの、奥に逃げる

追いかけようとしたけど…

「…ッ!」

「そんな…」

まさか、大きいせいで通れないとか…


「…初めて、呪うわ。」

後ろから、穂乃果ちゃん達がやってきた


「にこちゃんは!?」

「…」

もう、こうなったら…

ごめんな、凛ちゃん


「行くんや、凛ちゃん!」

143: 2015/03/21(土) 20:48:07.71 ID:OLB6a4ze.net
「なんか不本意だにゃー!!」

「んふっ♡」

ちょっとだけ、いい気分♪


「にこちゃん、いないにゃー。」


それでも、にこっちを見失ってしまった

「どうしよっか…」

「少し、休みましょう。」

「まだ、花陽達も追いついてないことですし…」



「それじゃ、ウチはもうちょっと探してみる。」

「にこっちの行きそうなとこ当たってみるから。」

「なんかあったら連絡して?」



「あっ、希ちゃん…」


にこっちと行った事あるとこ、回ってみよう

144: 2015/03/21(土) 20:48:56.39 ID:OLB6a4ze.net
「うーん、ここにもいないか…」

依然、穂乃果ちゃん達からの連絡は無し

「あんまり、気が進まんけど…」

「にこっちの家、行ってみよか。」



ドアチャイムを鳴らしても

誰も出てこない

「にこっち、まだ帰ってないんかな…?」


一旦皆と合流するために

マンションのエントランスまで降りたんやけど

みんなも来てたみたい

「どうやら大丈夫だったみたいですね…」


「…こころちゃん?」

久しぶりだけど、変わってない

「あれ?希さんじゃないですか!」

「お久しぶりです!」

丁寧に、頭を下げられた

「久しぶり、こころちゃん♪」

153: 2015/03/22(日) 21:39:50.28 ID:cJTENSYj.net
「希ちゃん…こころちゃんの事、知ってるの?」

「何回か、にこっちの家にはお邪魔した事あるから…」


「希さんは、よく来て一緒に遊んでくれたんです。」

「ここあも、会いたがってましたよ?」


「それより、一体なんなんですか?」

「どうしたん?海未ちゃん。」

「いえ、ここに来るまで隠れながら来たので…」

どういう事やろ…?

「もしかしてにこちゃん。」

「頃し屋に狙われてるとか…」


「何言ってるんです?」

「マスコミに決まってるじゃないですか。」



「「…えっ?」」

154: 2015/03/22(日) 21:40:19.67 ID:cJTENSYj.net
「パパラッチですよ!」

「特にバックダンサーの皆さんは。」

「顔がバレているので危険なんです…!」

「来られる時は、先に連絡をください。」


「バックダンサー?」

そう言えば、初めて会った時

ここあちゃんがそんな事言ってたような…


「…誰がよ。」

真姫ちゃんがすごく嫌そうな顔してる


「スーパーアイドル矢澤にこの。」

「バックダンサー…μ's。」


「「はああ!?」」


「いつも聞いてます。」

「今、お姉様から指導を受けて。」

「アイドルを目指していられるんですよね?」


こころちゃんは、すごく誇らしげに語る

155: 2015/03/22(日) 21:40:53.50 ID:cJTENSYj.net
「…なるほど。」

「状況が読めて来ました。」


「…忘れてたわ。相手はにこちゃんだもんね。」


「頑張って下さいね?」

「ダメはダメなりに、8人集まれば。」

「なんとかデビューくらいはできるんじゃないか、って。」

「お姉様、言ってましたから♪」


「何がダメはダメなりよ!」

真姫ちゃん、相手は子供やから…

そんな気遣いも意に介さず、こころちゃんは続ける


「そんな顔しないでください。」

「スーパーアイドルのお姉様を見習って。」

「いつも…」

「にっこにっこにー☆…ですよ?」


あら、可愛らしい

156: 2015/03/22(日) 21:41:19.11 ID:cJTENSYj.net
「はい、みなさんご一緒に♪」

「にっこにっこにー☆」


「…ねえ、こころちゃん?」

「はい?」

「ちょっと、電話させてくれる?」

「はいっ!」

えりちが携帯を取り出す

留守番電話サービスに繋がった


『にっこにっこにー☆』

『アナタのハートにラブにこっ。』

『矢澤にこでーすっ!』

『今、電話に出られません。』

『ご用の方は、発信音の後に…』

『にっこにっこにー☆』

ピー

「もしもし?」

「私、貴女の『バックダンサー』を勤めさせて頂いてる。」

「絢瀬絵里と申します。」

157: 2015/03/22(日) 21:41:46.75 ID:cJTENSYj.net
えりちが目を見開く

「もし聞いていたら…」


「すぐ出なさい!!」

「出なさいよ!!にこちゃん!!」

「バックダンサーってどういう事ですか!?」


えりち、真姫ちゃん、海未ちゃんがすごく怒ってる


「…?」

「あの、希さん、これは…?」


「え?あはは…」

「とりあえず、にこっち待たせてもらっても良いかな?」

「はい、もちろん♪」

「ここあももうすぐ帰ってくると思うので、中にどうぞ!」


「…それじゃみんな。」

「とりあえず、上がらせてもらおう?」

158: 2015/03/22(日) 21:42:16.20 ID:cJTENSYj.net
「お邪魔します。」

「ここが、にこちゃんの家…」


「弟の虎太郎です。」

「ばっくだんさあ…」

ああ、虎太郎くんもか…


「虎太郎くん、久しぶり。」

「ままー…」

虎太郎くんに、抱きつかれる

「あはは…久しぶりやね…」

ウチの立ち位置は、相変わらずなんやね


「希が…ママ…?」

「ちょ、えりち引かんといて!」

「え、じゃあ、にこちゃんのお母さんって希ちゃんなの!?」

「穂乃果ちゃん!」

「まだウチ高校生やから!」


「ままー…」

はあ、今日は厄日なんかも…

159: 2015/03/22(日) 21:42:49.59 ID:cJTENSYj.net
「お姉様は、普段は事務所が用意した。」

「ウォーターフロントのマンションを使っているんですが…」

「夜だけ、ここに帰ってきます。」

こころちゃんは、お茶を用意する

「ウォーターフロントってどこよ…?」

真姫ちゃんも呆れてる

「もちろん秘密です!」

「マスコミに嗅ぎ付けられたら、大変ですから…」


「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう…?」

「μ'sの写真動画を見れば。」

「私達がバックダンサーで無い事くらいすぐ分かるはずなのに…」

確かに、花陽ちゃんと海未ちゃんの言う通り

そういえば、ウチが最後にここに来たのも

去年やったしなあ…

160: 2015/03/22(日) 21:43:23.37 ID:cJTENSYj.net
「ねえ、虎太郎くん。」

「お姉ちゃんが歌ってるとことか、見た事ある?」

ことりちゃんの問いかけに

虎太郎くんは壁に貼ってあるポスターを差した


「μ'sのポスターだ…!」

「いや、なんかおかしい。」

真姫ちゃんの言葉に、よく見てみると…


「「合成っ!?」」


まさか、穂乃果ちゃんとにこっちの顔を

入れ替えてるなんて…


にこっちの部屋の中も

前まで他のスクールアイドルで溢れてた壁が

にこっちのポスターに変わってる

それに、そのポスターも上から張り替えてるし…


「これ、私の顔と入れ替えてある…」

えりちも、困惑してる

161: 2015/03/22(日) 21:43:51.97 ID:cJTENSYj.net
「わざわざ、こんな事まで…」

「涙ぐましいと言うか…」

うん、なんかもう呆れを通り越しちゃった


その時、玄関が開く音がした


「…!」

「アンタ達…」


にこっちが帰って来たみたい


「にこちゃん…」

「お姉様、お帰りなさい!」

「バックダンサーの方々が、お姉様にお話があると…」

「そ、そう…」


「…申し訳ありません。」

「すぐに済みますので、よろしいでしょうか…?」

優しすぎる声とは裏腹に

海未ちゃんの顔は般若のそれに見えた

162: 2015/03/22(日) 21:44:23.45 ID:cJTENSYj.net
「え、えっと…」

「こころ、悪いけど、私…」

「今日、仕事で向こうのマンションに行かなきゃいけないから…」

「じゃ!」


にこっちがダッシュで逃げる


「待てー!!」

一番怒ってる3人が追いかける


「…凛たち、どうしよっか?」

「とりあえず、鞄はここにあるんだし…」


「ま、あの3人を待ってみよか。」


数分後、家の扉が開く


「…ただいま。」

お、捕まえてきたみたい


それに…

163: 2015/03/22(日) 21:44:56.49 ID:cJTENSYj.net
「あ!希お姉ちゃん!」

「久しぶり!」


「…久しぶり、ここあちゃん。」

「希お姉ちゃんも、バックダンサーになったんだよね!」

「お姉ちゃん、凄いでしょ!!」


「あー…うん、にこっちは凄いよ。」

「今から、にこっちに色々教えてもらうんよ♪」


「そーなの?」

「それじゃ、あっちで待ってるね!」




「…さあ、にこっち。」

「こころちゃんたちに嘘教えた理由。」


「た~っぷり、教えてもらおうか…」


「ちょ、ちょっと、希…?」


「わしわし~!!」

「いやああぁぁぁあぁああ!!」

164: 2015/03/22(日) 21:45:27.47 ID:cJTENSYj.net
「大変申し訳ありません。」

「私、矢澤にこ。」

「嘘をついておりました…」

にこっちが、机に頭をつける


「…ちゃんと頭を上げて説明しなさい?」

「…」

にこっちが、頭を上げる


「い、いやだなあ…」

「みんな、怖い顔して。」

「アイドルは笑顔が大切でしょ?」

「…さあ、みんなでご一緒に。」

「にっこにっこに…」


「にこっち。」

「ふざけてて…ええんかな?」


正位置の氏神のカードを見せる

意味は---終局・清算・決着

165: 2015/03/22(日) 21:45:59.49 ID:cJTENSYj.net
「…はい。」


「…で、どういうことなん?」

「そうね…まずは、急に帰った理由を説明してもらおうかしら。」


「それは…」

「…」


「お母さんが、出張なの。」

「…出張?」


「…そう。」

「それで2週間ほど、妹達の面倒見なくちゃいけなくなったの。」

「だから、練習休んでたのね。」


「ちゃんと言ってくれればいいのに…」

「そうだよ、にこちゃん。」

「花陽達に言ってくれれば、何か手伝えたかもしれないのに…」


「…」


「それより、どうして私達が。」

「バックダンサーと言う事になってるんですか?」

166: 2015/03/22(日) 21:46:27.23 ID:cJTENSYj.net
「そうね…」

「むしろ問題はそっちよ。」

海未ちゃんとえりちが、詰め寄る

「そ、それは…」

「「それは!?」」


「にっk…」

「それは禁止やよ?」

ごまかそうとするにこっちに、先手を打つ


「さ、ちゃんと話して下さい?」

「にこちゃん…」


「…」

「元からよ。」

「元から?」

花陽ちゃんが、尋ねる


「そう。」

「家では元から、そういう事になってるの。」

167: 2015/03/22(日) 21:46:50.88 ID:cJTENSYj.net
「…別に。」

「私の家で私がどう言おうが、勝手でしょ?」


「でも…!」


「お願い。」

「今日は帰って。」


「にこちゃん…」


「バックダンサーの件は、謝るわ。」

「…でも、今日はほっといてくれない?」


「…分かった。」

「行こう?みんな。」

「希…」


「ほら、あんまり遅くまでいるとご飯の邪魔やし…な?」

「…にこちゃん、また明日ね?」


「…」

168: 2015/03/22(日) 22:01:13.61 ID:cJTENSYj.net
「…困ったものね。」

真姫ちゃんが呟く

「でも、元からってどういう事なんだろう…」

「にこちゃんの家では。」

「元から私達はバックダンサー?」


ううん、多分…

「…希?」


「…多分。」

「元からスーパーアイドルだった、って事やろな。」

「…どういう事です?」


「にこっちが1年の時。」

「スクールアイドルやってたって話は、前にしたやろ?」

「きっとその時、こころちゃん達に話したんやないかな。」


「…ウチが初めてにこっちの家にお邪魔した時。」

「ここあちゃんに、バックダンサーの人?って聞かれたんよ。」

169: 2015/03/22(日) 22:01:40.90 ID:cJTENSYj.net
「そのときはまだ、一人でやってた時やったから。」

「そのときの、にこちゃんの夢を話したんと違うかな。」

「いつか、バックダンサーを付けて、ライブをする、って…」


「それから少し経って。」

「他の部員も入って。」

「ライブが出来るようになったから。」


「アイドルになったって。」

「そう…言ってしまったんやと思う。」


「そっか…」


「ちょっと、そこの広場に行こか。」

「話…長くなりそうやし。」


一旦話を切って、移動する

170: 2015/03/22(日) 22:02:14.34 ID:cJTENSYj.net
「…さっきの続きやけど。」

「前に、初ライブの話はしたよね。」


「失敗…してしまったときの事ですよね。」

「うん。」

「あの時に、アイドルへの姿勢の話になったんやけど。」

「にこっちのそれは、才能と言えるくらい、ずば抜けてたんよ。」


「だからって言うのも、あるんやと思う。」

「絶対、アイドルになってみせるって、にこっちは思ってた。」


「…だから、部員の子達が辞めて。」

「その夢が途絶えちゃった時も。」


「妹さん達に、ダメになったとは言いだせなかった。」


「にこっちが1年のときから。」

「あの家ではずっと、スーパーアイドルのままなんやと思う。」

171: 2015/03/22(日) 22:02:43.95 ID:cJTENSYj.net
「…確かに、ありそうな話ですね。」

「もう、にこちゃんどんだけプライド高いのよ。」

「真姫ちゃんと同じだね♪」

「茶化さないの…!」


「でも…プライド高いだけなのかな?」

「アイドルに…すごい憧れてたんじゃないかな?」

「本当にアイドルでいたかったんだよ…」

「私も、ずっと憧れていたから…分かるんだ。」


花陽ちゃん…


「一年の時、私…見た事ある。」

「その時、私は直接話した事もなかったし…」

「アイドルにも、興味なかったから。」


「本当は、希にファーストライブも誘われてたんだけど。」

「生徒会の事で、行けなかった…」


「…えりち。」

172: 2015/03/22(日) 22:03:15.30 ID:cJTENSYj.net
「希が、私とにこを繋いでくれて。」

「それから話すようになっても…」

「にこの活動には、触れなかった。」


「そのあと、アイドル研究部が廃部の危機になったとき。」

「私は、よかれと思って理事長に頭を下げた。」

「でも、結果にこの思いを裏切る形になって。」


「…それから、ほとんど話す事は無くなったの。」

「希から、聞いてはいたけど。」

「あの時、ちゃんとにこと話し合っていれば、って。」




「…そうすれば、にこの気持ちに、気付いてあげられたのかな。」


「…にこちゃん、色んな事、抱えてたんだね。」

「にこっちは自分の事、あんまり言いたくないみたいやから。」

「…多分、気にされるのが嫌なんやと思う。」

173: 2015/03/22(日) 22:03:37.98 ID:cJTENSYj.net
「でも…なんだか寂しいよ。」

「せっかく凛たち、一緒にいるんだよ?」

「…そうね。」


「私達、にこちゃんの事何も知らなかったんだね…」


「「…」」


「…そうだ!」

穂乃果ちゃんが立ち上がる


「だったら、叶えちゃえばいいんだよ!」

「え…?」

「にこちゃんの、こころちゃん達に見せた夢を。」

「私達が、叶えてあげれば良いんだよ!!」


「それって…」


「うん!」

「にこちゃんの、ソロコンサートだよっ!!」

174: 2015/03/22(日) 22:04:06.21 ID:cJTENSYj.net
---

ピンポーン…


「誰よ、こんな時間に…」

「お姉様、お客さんですか?」

「ああ、座ってていいわよ。」


pi

「…どちら様?」

『あ、にこっち?』

「希!?アンタ何して…」

『にこっち、入れてー。』

「…は?」






ガチャッ


「こんばんは、にこっち。」

「…何しに来たのよ。」

「お母さんいないと大変かな、って。」

「お手伝いしに来たんよ♪」

175: 2015/03/22(日) 22:04:30.60 ID:cJTENSYj.net
「…必要ないわ。」

「別に、にこだけで…」

「あ、希おねーちゃん!」

「ここあちゃん、こんばんは♪」

「ねーねー!遊びに来たの?」

「皆が、寂しいかと思ってね。」


「やったー!!」

「入って入って!」

「ちょっとここあ…」


「お邪魔するよ、にこっち。」

「ま、待ちなさいよ…!」




「あ、希さん!」

「こんばんは、こころちゃん。」

「ご飯は食べた?」

「いえ、そろそろ用意しようかって、お姉様が…」

176: 2015/03/22(日) 22:05:01.47 ID:cJTENSYj.net
「ちょっと希、どういうつもりよ?」

「ん?」

「にこっち達に、ごちそうしようかと思って♪」

「何でいきなり…」

「にこっちが大変な時に、何も出来ないのは嫌だって。」

「…みんなが、言ったんよ。」


「…」


「だから、好きに動けるウチが。」

「にこっちの家事を手伝えるかな、って。」


「…別に、そこまで大変じゃないわよ。」

「練習、出られないくらいで…」


「ふふっ。」

「まあ、たまにはいいやん?」

「最近、ウチも料理練習してるんよ♪」



「…そう。」

177: 2015/03/22(日) 22:05:31.54 ID:cJTENSYj.net
-----


「「ごちそうさまでした!」」

「はい、お粗末様。」


「それじゃ、片付けるから。」

「みんなはそっちで遊んでていいよー。」


「いいわよ。」

「片付けは、にこがやるから。」


「いいから、にこっちもそっち行った。」

「ちょっ、希?」


「たまにはいいやん?」

「にこっちは、今日は休んでて♪」


「そういう訳にはいかないわよ。」

「もう…にこっちは頑固やなあ。」

「希に言われたくはないわよ。」

178: 2015/03/22(日) 22:05:59.51 ID:cJTENSYj.net
「…それじゃ、にこっち。」

「片付け、ウチがやるから。」

「今日泊まらせて?」


「…は?」


「久しぶりに、こころちゃんたちとも遊びたいし。」

「…な?にこっち。」


「…なにが目的よ?」

「別にー?」

「ただ、ウチも一人じゃ寂しいんよ。」


「…はあ。」


「ありがと、にこっち♪」



「…それじゃ、後は頼むわ。」

「はーい。」

179: 2015/03/22(日) 22:06:28.15 ID:cJTENSYj.net
----


「希おねーちゃんの胸、おっきい…」

「ちょ、あんまり見んといて?」

「だって、おねーちゃん無いんだもん!」


「ここあちゃん、にこっちの前でそれ言ったらあかんよ?」

「…でも、どうして今日は急に来られたんですか?」

「ちょっと、こころちゃん達に聞きたい事があったんよ。」

「私達に?」

「そう。」

「…よし、ここあちゃん体流そっか♪」

「はーい!」




「…ふう。」

「お風呂は気持ちいいなー。」

「ちゃんと浸からないとあかんよ?」

「はーい。」

180: 2015/03/22(日) 22:07:03.04 ID:cJTENSYj.net
「なあ、こころちゃん、ここあちゃん。」

「なーに?」

「にこっちの歌ってるとこ、見たくない?」

「え、見れるんですか?」

「今度、ウチらの学校でライブをする事になったんよ。」

「…よかったら、来ない?」


「行きたい!行きたい!」

「…ここあちゃん、静かに。」

「…!」


「行っても、いいんですか?」

「もちろん♪」

「あ、でも、こころちゃん達が来る事は、にこっちには内緒な?」

「当日、驚かせたいから♪」


「ねえねえ、ホントにお姉ちゃんが歌ってるとこ、見れるの?」

「一番前で、見せてあげるよー?」


「やったあー!!」

181: 2015/03/22(日) 22:07:34.13 ID:cJTENSYj.net
「それじゃ、ライブの日、迎えにくるから♪」

「はい!」

「おめかしして、待ってます!」


「うん、楽しみにしといてな?」


「「はいっ!」」




-----


「…ふう。」

「にこっち、おかえり。」

「当たり前のように、部屋にいるのね。」

「まあ、ウチとにこっちの仲やん?」


「最初の頃は、ソファの端っこにしか座れなかったのにね。」

「そっ…それは忘れてよ///」


「…ふふっ。懐かしいわね。」

182: 2015/03/22(日) 22:08:08.24 ID:cJTENSYj.net
「…」

「…で、今日来たほんとの理由はなに?」

「だから、ウチも寂しかったんよ。」

「…本音は?」

「…」


「なあ、にこっち。」

「ウチらの前では、もう強がらなくてもいいと思うよ?」

「…」


「μ'sのみんなは、にこっちの事も受け入れてるよ。」

「本当の、仲間やと思ってる。」

「今日ウチが来たのも、全員行きたいって言うから。」


「…みんな、にこっちの力になりたいと思ってる。」


「…大きなお世話よ。」

「うん、分かってる。」


「にこっちも、そんなウチらの気持ち、分かってるやろ?」





「…そうね。」

184: 2015/03/22(日) 22:27:56.50 ID:cJTENSYj.net
---


ライブ当日

連れて来たこころちゃん達を穂乃果ちゃんに託して

ウチは、えりちと用意する


「…それにしても。」

「1週間でよく作れたわね。」

「まあ、今回はウチらも手伝ったし。」


「…それで、上手く行くのかしら?」

「さあ?」

「ちょっと、希…」

「もうみんな、分かってるやろ?」


「見返りを求めてる訳じゃないやん?」






「おーい、連れてきたよー!」

「おかえり、穂乃果。」

「それじゃここは私達に任せて、穂乃果はこころちゃん達をお願い。」

「りょーかいっ!」

185: 2015/03/22(日) 22:28:27.08 ID:cJTENSYj.net
「さ、にこっちはこっち。」

「これに着替えて?」







「これって…」

「にこにピッタリの衣装を。」

「私と希で考えてみたの。」


「…やっぱりにこっちには。」

「可愛い衣装がよく似合う♪」


「…スーパーアイドル、にこちゃん。」


「希…」


「今、扉の向こうには。」

「貴女一人だけのライブを心待ちにしている。」

「最高のファンがいるわ。」


「絵里…」

186: 2015/03/22(日) 22:28:51.51 ID:cJTENSYj.net
「さあ、みんな待ってるわよ?」


「…」


「ありがとう。」


「…にこっち。」

「…?」


にこっちの耳元で、そっと告げる

「…元、部員の子達からの伝言。」

「『おめでとう。絶対に、夢を叶えて。』…って。」


「…!」


「もう、一人じゃないよ。」



前を向いて

にこっちは、ステージに出て行った

187: 2015/03/22(日) 22:29:13.03 ID:cJTENSYj.net
にこっちの衣装に

にこっちの笑顔に

こころちゃん達の目の色が変わる

「あいどる…」


「こころ、ここあ、虎太郎。」

「歌う前に、話があるの。」

「「えっ…?」」


「…実はね。」

「『スーパーアイドルにこ』は、今日でおしまいなの!」

「「ええー!?」」

「アイドル、辞めちゃうの…?」


「ううん、辞めないよ。」

「これからは…」

「ここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやって行くの!」

188: 2015/03/22(日) 22:29:37.56 ID:cJTENSYj.net
「でも皆さんは、アイドルを目指している…」

「ばっくだんさあ…」


「…そう思ってた。」

「けど違ったの。」


「これからは、もっと新しい自分に変わって行きたい。」

「この9人でいられるときが、一番輝けるの!」

「一人でいるときよりも。」

「ずっと、ずっと…」



「今の私の夢は。」

「宇宙ナンバー1アイドルにこちゃんとして。」

「宇宙ナンバー1ユニット、μ'sと一緒に。」

「より輝いて行く事!」



「…それが、一番大切な夢。」

「私のやりたい事なの!!」


「お姉様…」

189: 2015/03/22(日) 22:38:01.95 ID:cJTENSYj.net
「だから…」

「これは私が一人で歌う、最後の曲。」


曲が、流れ始める


きっと、ウチらの気持ちは

にこっちに届いたと思う


この9人だから、目指せる場所があって

この9人だから、叶えられる夢がある


順番とか、期間とかも関係ない

ウチらが、ウチららしくいれる場所


それが、μ's


最終予選に向けて

また一歩、進めた気がする







---そして、曲が終わる

190: 2015/03/22(日) 22:42:01.93 ID:cJTENSYj.net
「…」


「聞いてくれて、ありがとう。」

「これで、にこ一人のライブはおしまい。」

「これからは、ここにいる皆と、夢を目指すの。」


「お姉ちゃん…」

「だから…ここあ達には、その最初の観客になってもらうわよ!」


「え?」

「にこっち…?」



「…ほら、アンタ達も出て来なさい。」

「海未、曲は…」


「…!」


「分かりました。」

「それで、いいんですね?」



「…私から、アンタ達への返事よ。」

「ほんと、バカな連中ばっかりなんだから。」



「にこちゃん…!」

「さあ、最高のステージにするわよ!」


「聞いて下さい---」





『愛してるばんざーい!』

202: 2015/03/24(火) 00:04:06.91 ID:bTjy28fm.net
Side Story

Find The Answer In The Holiday

203: 2015/03/24(火) 00:04:39.58 ID:bTjy28fm.net
prrrr


prrrr


pi


「…もしもし、えりち?」

「うん、まだ起きてたよ。」


「遅くにどうしたん?」

「…うん。」


「うん。」


「あ、やっぱりそうなんや。」


「…うん、ウチも良いと思うよ?」

「うん。」



「それじゃ、前に言ってた事、考えんとね。」

「うん、あと少しやし…」


「とりあえず明日は練習もお休みやし。」

「一日、ちょっと考えてみるよ。」

204: 2015/03/24(火) 00:05:28.66 ID:bTjy28fm.net
「…え?」

「ああ、違うんよ。」


「でも、それは前から考えてた事やし。」

「海未ちゃんも、言ってたやろ?」


「そう。」

「ちょうどいいチャンスやと思う。」



「ふふっ。」

「…きっと、大丈夫。」


「なにも心配なんかいらんよ。」


「えりちも、信じてるやろ?」


「…うん、それじゃ。」

「おやすみ、えりち。」








「…」

205: 2015/03/24(火) 00:06:31.89 ID:bTjy28fm.net
-----


「んん~…っ。」

「やっぱり朝は気持ちいいな~。」



「…でも、ずいぶんと涼しくなって来た。」

「もう夏も、終わりやね。」


この夏に感じた薫風が

秋風に変わり始めた日


ウチはいつものように

神田明神のバイトをしてた


「…さて、あらかた掃除も終わったし。」

「一旦、休憩にしようかな?」


ほんの少し色づき始めた葉の隙間から

木漏れ日が差し込む

少しずつあったかくなる境内の端に座って

日向ぼっこをする

206: 2015/03/24(火) 00:07:19.70 ID:bTjy28fm.net
「…あかん。」

「このままやと、寝てしまいそう…」

すっと立ち上がり、境内を見渡した


心地よい風が髪を揺らす

バイトの時は後ろで縛ってるから

いつものように、とはいかないけど


それでも、風の揺らぎを髪の毛で感じる


「あと、半年もないんやね…」


ぽつり、と呟く


降り注ぐ暖かい日差しが

ウチを励ましてくれてるように感じた


「ふふっ…ありがとう。」


また、口に出る

端から見たら、危ない子やなあ

207: 2015/03/24(火) 00:07:51.05 ID:bTjy28fm.net
今日はせっかくの日曜なのに

参拝する人も少なくて

ついつい、気が緩んでしまう


「何か、面白い事ないかなあ…?」


「…だ~れだ?」


「…へ?」

パッと、目を塞がれた

急にかけられた、とても柔らかい声

聞き間違いでなければ、これは…



「…花陽ちゃん?」


「えへへ、バレちゃった。」


振り返ると、可愛い服に身を包んだ

花陽ちゃんがいた

208: 2015/03/24(火) 00:08:26.17 ID:bTjy28fm.net
「おはよう、希ちゃん。」

「おはよう、花陽ちゃん。」


「今日はお出かけ?」

「何となく、早く起きちゃったから。」

「天気もいいし、散歩してみようかな、って思って。」

少し顔を赤らめて、彼女は言う

…なんて、可愛いんやろう


「希ちゃんは、バイト?」

「うん♪」

「あ、でも今は、休憩してたんよ。」


休日に会う花陽ちゃんは、どこか新鮮で

「…よかったら、ちょっと話さない?」


何となく、声をかけてみた

209: 2015/03/24(火) 00:09:08.25 ID:bTjy28fm.net
「うん、いいよっ♪」


「それじゃ、日当りも良いし、こっちに座ろっか。」



花陽ちゃんをさっきの場所に案内して

色んな事を、話してみた

最近の1年生の様子とか

今はまってることとか

旬な食べ物とか


花陽ちゃんの優しい話し方が

暖かい日差しと相まって

すっごく、心地いい気分になれる


「でね、その時二人が…」

「そうなん?」


「そうなの!真姫ちゃんも可愛くて…」


誰かの話をするときの花陽ちゃんは

すっごく楽しそう

210: 2015/03/24(火) 00:09:37.65 ID:bTjy28fm.net
「あ、ごめんね、花陽ばっかり…」

「ん?ええよ?」

「花陽ちゃんの話おもしろいし♪」


「あ、ありがとう…///」


「それにしても。」

「やっぱり、1年生は仲いいね♪」

「うん、いつも楽しませてもらってるよ。」


「やっぱり、元気な凛ちゃんが引っ張って行く感じかな?」


「基本は…そうだね。」

「いっつも凛ちゃんは、私を気にかけてくれてる。」

「気がついたら真姫ちゃんも巻き込んでて…」

「でも、それが嫌って思った事は一度も無いんだ♪」

「いつのまにか、皆で楽しく笑ってるの。」



「いつか、私もなにかしてあげられたらいいのになあ…」

211: 2015/03/24(火) 00:10:09.55 ID:bTjy28fm.net
「花陽ちゃんのその気持ちは…」

「きっと、2人とも知ってるよ。」

「それに、花陽ちゃんがいるから。」

「凛ちゃんは、凛ちゃんらしく…」

「真姫ちゃんも、花陽ちゃんの前では素直でいれるんやと思う。」


「ありがとう、希ちゃん。」

「μ'sに入る前はね。」

「いつも、凛ちゃんに頼ってばっかりだった。」

「それに、甘えてたの。」

「真姫ちゃんも、私の事気にしてくれてた。」

「それなのに、自分で無理、って決めつけて。」


「…だから、穂乃果ちゃんに誘われて。」

「初めて自分の言葉で、アイドルやりたい、って言えたの。」


「…それはきっと。」

「あの時屋上で、凛ちゃんと真姫ちゃんが。」

「私の背中を押してくれたから。」



「…今の私があるのは、2人のおかげだよ。」

212: 2015/03/24(火) 00:15:18.05 ID:bTjy28fm.net
「って、この話は希ちゃん知らないよね。」



「…ううん、知ってるよ。」


「え?」


「実は、見てたんよ。」

「屋上の、上のところで。」


「ええっ!?」


「…その時、ウチはえりち達と少しすれ違ってて。」

「花陽ちゃんに、勇気をあげた2人に。」

「理解してくれる友達がいる、花陽ちゃんに。」



「…すっごく、憧れてたんよ。」



「そう…だったんだ。」

214: 2015/03/24(火) 00:15:53.89 ID:bTjy28fm.net
「…もし、だけど。」

「もし…もしも、あのときの花陽の行動が。」

「2人の、気持ちが。」

「希ちゃん達の力になれたのなら。」



「…私は、役に立てたのかな?」


少し、寂しそうに笑う花陽ちゃん


「もちろん♪」

「花陽ちゃんが、真姫ちゃん達からもらった勇気。」

「その勇気のひとかけらを、ウチはもらったんよ。」



「…だから、勇気をだして。」

「μ'sに、入る事ができたん。」


「希ちゃん…」

215: 2015/03/24(火) 00:16:29.09 ID:bTjy28fm.net
「ありがとうね、花陽ちゃん。」

「ううん…」

「…!」

「…?」


「どういたしまして…で、いいのかな?」

「もちろん♪」



「えへへ///」

「なんだか、否定しちゃったら。」

「希ちゃんの頑張りを、否定しちゃう気がして…」


「ありがと、花陽ちゃん。」

「その気持ち、ちゃんと届いてるから。」




「…うん!」

216: 2015/03/24(火) 00:23:14.12 ID:bTjy28fm.net
----


花陽ちゃんと別れて

後片付けをして、街に出て来た

今日は人も少ないからって

バイト早上がりしちゃった


「お、あれは…!」


駅前のケーキ屋さんの前で

深く帽子をかぶった

癖っ毛の女の子がキョロキョロしてた



「ま~きちゃん♪」

「ひゃあっ!?」

肩に手を置いた瞬間、飛び上がる


「の、希か…」

「脅かさないでよ…!」


「ごめん、そんなに驚くとは…」

217: 2015/03/24(火) 00:23:33.13 ID:bTjy28fm.net
「…で、何してたん?」

「べ、別に?」



「ケーキ、見てたみたいやけど…」

「な、何でもないわ!」



表に出ているボードには

『ペアセット』の文字が



「…真姫ちゃん、ウチ、ケーキが食べたいんよ。」

「…え?」


「ペアセットっていうのがあるみたいやし…」

「よかったら、付き合ってくれへん?」


「…!」

218: 2015/03/24(火) 00:24:00.53 ID:bTjy28fm.net
「の、希が食べたいって言うんなら。」

「仕方ないから付き合ってあげてもいいけど…?」


「それじゃ、入ろっか♪」



「…ありがと///」

「ん?何か言った?」


「何でも無いっ!」

「…ふふっ。」






「それで、今日は何してたん?」

「楽譜を買いに…」

「何か、新しい曲のきっかけになればと思って。」


「…ほんと、真姫ちゃんはピアノが大好きなんやね♪」

219: 2015/03/24(火) 00:24:27.19 ID:bTjy28fm.net
「トーゼンでしょ?」


「あ、でもこの場合…」

「大好きなのはピアノじゃなくて、μ'sなんかな?」


「…!///」


「…真姫ちゃん?」

「そっ…///」


真姫ちゃんが、ゆでだこみたいに赤くなっちゃった



「…真姫ちゃんも、だいぶ素直になったね。」

「も、元から素直なんだからっ…!」


そんな赤い顔で言われても

説得力ないけどな?



「凛ちゃん達の、おかげかな?」

220: 2015/03/24(火) 00:38:22.30 ID:bTjy28fm.net
「…そう、ね。」

おや?


「凛達には…感謝してるわ。」

「花陽は、いつも私をちゃんと見てくれて。」

「少しでも様子が変だったりすると、声をかけてくれて。」

「…励ましてくれる。」


「…凛も。」

「ううん、凛は特に。」

「私に、色んな事を教えてくれた。」

「気分が乗らないときでも、手を引っ張って。」

「これしよう、あれしよう、って私を連れてくの。」


「最初は、落ち着きが無いだけだと思ってたけど…」

「単に、不器用なのよ。」

「花陽みたいに、声をかけられないから。」

「なんとかして、笑顔にさせようとしてくるの。」


「…たまに、的外れなんだけどね。」

221: 2015/03/24(火) 00:38:50.24 ID:bTjy28fm.net
いつの間にか、真姫ちゃんは笑顔になってた

そんな真姫ちゃんを見てるウチを見て

思い出したかのように顔を朱に染める


「…こんなこと。」

「言うはずじゃなかったのに…///」



「ふふっ。」

やっぱり、真姫ちゃんは変わったよ



「…希のその雰囲気、たまにムカつくわ。」

「…へ?」


「なんでも知ってるような顔をして。」

「それでも、自分は表に立たないで、フォローする感じ。」


「…もう少し、やりたい事とか言ってくれてもいいのに。」


「真姫ちゃん…」

222: 2015/03/24(火) 00:39:24.15 ID:bTjy28fm.net
「…!」

「こっ、これは、前に凛達と話してて!」

「たまたま、思い出しただけ!」

「そう、たまたまよ!!」



「…うん、ありがとう真姫ちゃん。」


「…」


「もし、言いたい事があるなら。」

「…言っても良いんだから。」


「希も…」

「み、μ'sの一員なんだから…///」


「だ、だから!」

「何かあったら、言いなさいよね!」

「この真姫ちゃんが、解決してあげるんだからっ!」



「…」

「ふふっ。」

223: 2015/03/24(火) 00:39:53.95 ID:bTjy28fm.net
「わ、笑わないでよ!///」



「ふふっ。」

自然に、笑みがこぼれる


「…真姫ちゃん。」

「何よ…」


「真姫ちゃん、やっぱり面倒な子やね♪」

「希に言われたくないっ!!」



ムキになって言い返す真姫ちゃんが

とっても可愛く見えたけど

…それ以上に


なんとなく、あたたかくなった


「ありがとう、真姫ちゃん。」


「…うん///」

224: 2015/03/24(火) 00:48:30.24 ID:bTjy28fm.net
-----



「もう、日が暮れて来たなあ…」

真姫ちゃんを家まで送って

街中をブラブラしてみたけど


「…そういえば、お昼食べてないな。」

真姫ちゃんと、ケーキは食べたけど…


「晩ご飯、何にしようかなー。」


冷蔵庫の中身を思い出そうとする

「…外食しようか。」


ちょっと、めんどくさくなっただけ

い、いつもじゃないし…


夕暮れのオレンジの光の中を

とぼとぼと家に向かって歩いて行く

225: 2015/03/24(火) 00:48:51.97 ID:bTjy28fm.net
ニャーニャー


「猫かな?」

声の出所を探してみる


ニャー

…カワイイニャー


「…あれ?」


どうやら、近くの公園から聞こえる

中に入って鳴き声のする方へ


「この、茂みの裏から…」


ぴょこっと、顔を出してみる


「あ、希ちゃん!」




猫だと思ったのは、凛ちゃんやった

226: 2015/03/24(火) 00:49:30.61 ID:bTjy28fm.net
「…凛ちゃん、何してるん?」

「ネコさんがいたから、話しかけてたの!」

「どこ?」

「あそこだよ!」


みると、2メートルくらい先に、子猫がいた

「あんまり近寄ると、くしゃみしちゃうから…」


凛ちゃんが、悲しそうな顔をする

「そっか、アレルギーあるもんな…」


「えへへ…」

「だから、ここから声かけてたの!」

「今日は楽しかった?って。」


「ふふっ。答えは何て?」


「すっごく、楽しかったって!!」

227: 2015/03/24(火) 00:49:53.50 ID:bTjy28fm.net
「それはよかった♪」

「うん!」


「希ちゃんは、どうしてここに?」

「んー…」

「可愛らしい、鳴き声が聞こえたからかな?」


「…!」

「それって…///」


「ふふっ。」

「可愛かったよ、凛ちゃん。」


「り、凛は可愛くなんて…」


「そう?」

「ウチは、凛ちゃんすっごく可愛いと思うよ?」


「て、照れるにゃー…」

228: 2015/03/24(火) 00:50:23.97 ID:bTjy28fm.net
「でもでも、かよちんや真姫ちゃんの方が!」

「ずっとずっと可愛いんだよ?」

「いいにおいするし、女の子らしいし!」

「おしゃれだし…」


「凛は、こうやって泥んこになってる方が似合うから…」


「凛ちゃん…」



「ご、ごめんね?」

「いきなり、こんな話…」


「でも、やっぱりみんな凄いよ。」

「ステージ衣装もかわいいし…」

「本当に、アイドルって感じで!」



「…凛ちゃんも、一緒に踊ってるんよ?」

「それは…そうだけど…」

229: 2015/03/24(火) 00:59:58.65 ID:bTjy28fm.net
「…凛ちゃん、ブランコ乗ろっか♪」

「え?」





揺れるブランコ

隣には凛ちゃん


少しだけ漕いで、体を揺らす


「…ウチな?」

「初めてにこっちにスクールアイドル誘われた時、断ったんよ。」

「…え?」

「1年生の時やけど…」

「あんな可愛い衣装、絶対似合わないって。」

「そう…思ってたん。」


「…」

230: 2015/03/24(火) 01:00:30.99 ID:bTjy28fm.net
「何度もにこっちに誘われて。」

「その度に、そんな可愛くない。」

「自分には絶対似合わない…」

「そう、思ってたんよ。」


「でも、希ちゃんこんなに可愛いのに…!」


「ふふっ。ありがと、凛ちゃん。」


「…でもな?」

「ウチは、自分の事を可愛いと思った事は無いよ?」

「そんなに、自意識過剰じゃないし…」

「むしろ、自分に自信が無いんよ。」


「ほんとに、μ'sにいて良いのかな、とか。」

「よく…考えた事もある。」



「…だって、周りの子達は、みんな可愛くて。」

「ウチなんか、到底敵わない、って思ってたんよ。」

231: 2015/03/24(火) 01:01:04.23 ID:bTjy28fm.net
「希ちゃん…」


「みんなにはあんまり言ってないけど。」

「ウチ、自分に自信がなかった。」

「ずっと、周りを気にして、過ごしてた。」

「だから、友達もいなかったし、毎日一人やった。」


「…ずっと、逃げてたん。」


「…」



「でも、にこっちに会って。」

「えりちと出会って。」

「変わりたい、って。」

「本気で、思ったんよ。」


「…でも、やっぱりそんな勇気、ウチには無かった。」


「そんな時に背中を押してくれたのが、えりちとにこっちやった。」

「あの二人に会えたから、ウチは変われた。」

232: 2015/03/24(火) 01:01:30.43 ID:bTjy28fm.net
「いっぱい、声かけてもらった。」

「希は可愛い、希なら変われる、って。」

「でも、そんなの自分じゃ信じられないし…」


「何度か、反発した事もあった。」

「…それでも、2人はウチを信じてくれた。」

「変われるって、信じてくれたんよ。」



「…だから、ウチは決めたん。」

「自分に自信なんか、一つもない。」


「…でも、ウチを信じてくれる人がいる。」

「支えてくれる人がいる。」


「…だったら、その人たちを信じてみよう、って。」


「凛ちゃんにも、そんな人達がいるやろ?」





「かよちん…」


「真姫ちゃん…」

233: 2015/03/24(火) 01:08:07.14 ID:bTjy28fm.net
「…凛ね。」

「いつも、思うんだ。」

「2人に、迷惑かけてないかな、って。」


「凛、楽しそう、って思った事は何でもやってみたくて。」

「そこに、大好きな2人がいたら、もっと楽しくなる、って思って。」

「考えるより先に、2人を引っ張っていっちゃうの。」


「それで真姫ちゃんと衝突する事もあって。」

「…何度も、かよちんに助けてもらって。」


「…凛、2人に嫌われてないか、たまに不安になるんだ。」


「…」



「もちろん、2人とも優しくしてくれるし…」

「いつも、凛と一緒にいてくれる。」

「でも…凛、それに甘えてるのかな、って。」

234: 2015/03/24(火) 01:08:52.24 ID:bTjy28fm.net
「穂乃果ちゃんが、倒れた時。」

「それで、ことりちゃん達との事があって。」

「凛…思ったの。」


「凛も、こうなるんじゃないか、って。」

「いつの間にか、2人と離れてたら、どうしようって。」


「ときどき…怖くなるの。」



そっと、後ろから抱きしめる


「…希ちゃん?」


「それは…間違ってるよ、凛ちゃん。」

「…」

「今日、実は2人と会ってたんよ。」

「ほんとに、偶然なんだけどね。」





「…2人とも、凛ちゃんに感謝してたよ。」

「…!」

235: 2015/03/24(火) 01:09:25.25 ID:bTjy28fm.net
「花陽ちゃんも、真姫ちゃんも。」

「凛ちゃんが迷惑なんて、一言も言わなかった。」


「凛ちゃんの存在は。」

「2人に、勇気をあげてるんよ?」


「そんなこと…」


「確かに、穂乃果ちゃんと凛ちゃんは似てるんかもしれん。」

「もしかしたら、また同じような事があるかもしれん。」


「…でも、2人に共通して言えるのは。」

「誰かのために、行動すること。」



「花陽ちゃんに勇気をあげて、μ'sに入れたのも。」

「真姫ちゃんを笑顔にさせようとしたのも。」


「全部ぜんぶ、凛ちゃんが2人を思ってしたことやろ?」


「…だから、2人は凛ちゃんを信頼してる。」

「凛ちゃんのこと、信じてるんよ。」

236: 2015/03/24(火) 01:09:56.20 ID:bTjy28fm.net
「でも…でも…ッ!」


「そんな優しい凛ちゃんを、だれが嫌いになると思う?」

「そんな凛ちゃんが、みんな大好きなん。」


「うっ…えぐっ…」


「だから…自分が信じられないなら。」

「花陽ちゃん達を信じてあげて?」

「もちろん、ウチも凛ちゃんは可愛いって思う。」

「凛ちゃんの事、信じてる。」


「…同じ、μ'sの仲間なんやから。」


「自分を信じてくれる、みんなを信じて?」

「…ウチと、同じように。」


「そうすればきっと。」

「凛ちゃんも、変われるよ。」

238: 2015/03/24(火) 01:19:27.38 ID:bTjy28fm.net
「希ちゃん…」


「ほらほら、可愛い顔が台無しやで?」

「これ、使って?」

ハンカチを、手渡す


「ありがとう…」








「…落ち着いた?」

「…うん。」


「今すぐ、変わらなくて良い。」

「ウチだって、何年もかかったから。」


「…でも、覚えておいて?」

「みんな、凛ちゃんが大好き、ってこと。」


「…ありがとう、希ちゃん。」

「どういたしまして♪」

239: 2015/03/24(火) 01:19:56.33 ID:bTjy28fm.net
「さ、凛ちゃん。」

「よかったら、ラーメン食べに行かない?」

「ウチがおごるよ♪」


「…えっ?」

「今日、晩ご飯の用意してないから…」

「もし、よかったら…ね?」


「…!」

「ありがとう、希ちゃん!」

「よーっし、そうと決まればダッシュにゃ!!」


「あっ!…もう。」


走り出した凛ちゃんが、立ち止まる


「希ちゃーん!」

「…?」


「凛も、希ちゃんのこと、大好きだよー!!!」




「…ッ。」

慌てて、目を拭う


「…ふふっ。」

「それじゃ、凛ちゃん!」

「ラーメン屋さんまで競争や!」


「望む所にゃっ!!」

240: 2015/03/24(火) 01:20:22.48 ID:bTjy28fm.net
------


「…あ、もしもしえりち?」


「うん。」

「あ、寝てた?」


「ごめん、ごめん。」



「…うん。」


「ウチ、決めたよ。」

「やっぱり、あの子が良いと思う。」


「…そう。」


「うん。」


「きっと、上手く行く。」

「あの子1人じゃない。」

「周りには、皆がいる。」


「…信じよう?」


「…うん。」

241: 2015/03/24(火) 01:21:20.99 ID:bTjy28fm.net
「…え?」

「なんでって?」


「…」



「ふふっ。」



「そうやね…」




「ウチと、似てたからかな?」




…きっと、変われる

信じてくれる、仲間がいるから




「…ウチを信じてくれて、ありがと。」

「ウチも、みんなを信じてる。」



「…クサいとか言わんといてよ。」

「もう、切るよ?」



「うん、おやすみ。」

pi




「…頑張ってな、凛ちゃん。」

253: 2015/03/25(水) 22:00:45.52 ID:Vh3PEhe5.net
------



「今日も雨やね…」

「低気圧が近くに迫ってるみたいだから。」

「もう少し、続くかもね。」


「週末まで時間もないから、どうにかしないとなあ…」


「そうなのよね。」

「元々告知が来てたけど。」

「まさか修学旅行と重なるなんて…」


「でも、ファッションショーでのステージって。」

「めっちゃワクワクするよねっ♪」


「ふふっ。」

「確かにね。」


「でも、まずは練習できないと…」


「…?」

254: 2015/03/25(水) 22:01:37.74 ID:Vh3PEhe5.net
部室から、声が聞こえる


「…もう飽きたにゃ。」

「それはこっちの台詞。」


「…やっぱり、どうにかしてモチベーションを保たないとね。」

えりちが、ぼそっと告げる


「仕方ないよ、凛ちゃん。」

「2年生は修学旅行だし。」

「絵里ちゃんと希ちゃんは、その間生徒会のフォローを…」



「…そうよ。」

えりちが、扉を開けて中に入る


「気合いが入らないのは分かるけど…」

「やる事はやっておかなきゃ。」


「今日も生徒会?」

「…まあね。」

255: 2015/03/25(水) 22:02:09.07 ID:Vh3PEhe5.net
「3人が戻って来たら。」

「運営しやすいように整理しとくって張り切ってるんや♪」


「ええーっ!?」

「また練習凛たちだけ!?」


「…今週末は例のイベントでしょ?」

「穂乃果達が修学旅行から帰って来た次の日よ。」


「こっちでフォーメーションの確認して。」

「合流したら、すぐ出来るようにしておかなきゃ。」


「…でも、まさかファッションショーで歌ってほしいって言われるなんて。」

真姫ちゃんが少し難しい顔をする


「きっとモデルさん達と一緒のステージって事だよね。」

「気後れしちゃうね…」


花陽ちゃんも、不安そう

256: 2015/03/25(水) 22:02:38.96 ID:Vh3PEhe5.net
「…そうね。」

「絵里や希はいいけど…」


にこっちの方を見る

「…なに?」

にこっちも察したみたい


さて、ウチらは生徒会室に戻らんと…


「別に気にする事は無いわ。」

「じゃあね?」

「…」

「穂乃果ちゃん達は。」

「野生のちんすこう探しに夢中で。」

「ライブの事なんてすっかり忘れてるやろうから…」

「にこっち達がしっかりしといてね♪」


そう言って、ドアを閉める


「…ふふっ。」

257: 2015/03/25(水) 22:03:09.77 ID:Vh3PEhe5.net
「…なによ、野生のちんすこうって。」

えりちに聞かれる


「いやあ、出発前にな?」

「穂乃果ちゃんが、沖縄と言えば?って聞くから。」

「野生のちんすこうは美味しいよ、って答えたんよ。」

「そしたら、信じちゃって…」



「知らない所で何やってるのよ。」

「ま、海未がいるから大丈夫だとは思うけど…」



「それより、言ってた事するんやろ?」

「…そうね。」


「ウチは、この間電話した通り。」

「なら、穂乃果に確認をとりましょ?」

258: 2015/03/25(水) 22:03:40.60 ID:Vh3PEhe5.net
-----


生徒会室で、えりちが穂乃果ちゃんに電話をかける


「あ、穂乃果?」

「どう?楽しんでる?」


「…なんで?」

ん?どうかしたんかな?


「…今週末のイベントなんだけどね。」

「ちょっと相談があって…」

「今、にこ達4人が練習してるんだけど。」

「雨のせいもあって、モチベーションが続いてないの。」

「イベントまで時間もないし。」

「練習を引っ張る存在がいた方がいいと思って。」


「それに、これからの事も考えて。」

「穂乃果達がいない間、誰かをリーダーにしないか、って希と話してたの。」

259: 2015/03/25(水) 22:04:04.93 ID:Vh3PEhe5.net
「…ありがとう。」

「それで、誰にするかなんだけど…」



「私と希で話したんだけどね…?」

えりちと、顔を見合わせる


「凛が、いいんじゃないか、って。」


「うん、そう。」

「希が、すごく推してるのよ。」

「凛が、一番向いてる、って。」

「穂乃果はどう思う?」


「…うん。」


「ええ、そのつもりよ。」

「分かった。」


「それじゃ、そっちも楽しんで?」


「それじゃあね。」

260: 2015/03/25(水) 22:04:30.51 ID:Vh3PEhe5.net
「凛ちゃんで決定?」

「ええ。」

「穂乃果も、凛なら大丈夫だろう、って。」


「それにしても、希がこんなに勧めるなんて。」

「珍しいわね。」


「ちょっと、お休みの日に…ね。」

「教えてくれても良いのに。」


「ふふっ。」

「…まあ、希の言う事なら信じるわ。」


「じゃあ、今日から?」

「天気の事もあるし…明日にしましょう?」


「確か、夕方から晴れだったから。」

261: 2015/03/25(水) 22:05:03.45 ID:Vh3PEhe5.net
そして次の日

教室に集まってるみんなに、伝えたんやけど…



「えええーーっ!?」

「凛がリーダー!?」

凛ちゃんの驚きようは凄かった

…まあ、確かにいきなりだけど


「そう。」

「暫定でもリーダーを決めておいた方がまとまるだろうし。」

「練習にも力が入るだろうと思って。」


「もちろん。」

「穂乃果達が修学旅行から帰ってくるまでよ?」


「で、でも…」

「穂乃果ちゃん達にも連絡して。」

「相談した結果なんよ。」

262: 2015/03/25(水) 22:05:31.43 ID:Vh3PEhe5.net
「ウチとえりちも、みんな。」

「凛ちゃんがいいって♪」

まあ、ウチが一番推してるけどね


「…2人はどう?」

真姫ちゃんたちに聞いてみる

「いいんじゃない?」

「私も凛ちゃんがいいと思う!」

…よかった


「ちょ、ちょっと待ってよ…」

「何で、凛?」

「絶対、他の人の方が良いよ…!」


「絵里ちゃんとか!」

263: 2015/03/25(水) 22:06:02.80 ID:Vh3PEhe5.net
「私は生徒会の手伝いがあるし…」

「それに、今後のμ'sの事を考えたら。」

「1年生がやった方がいいでしょう?」


「だったら真姫ちゃんがいいにゃ!」

「ええっ!?」

「歌もうまいし、リーダーっぽいし!」

「真姫ちゃんで決まり!!」


「…」

やっぱり、一度話したくらいじゃ

そう、自信なんてつかんよね

ウチだって、そうやったし…


「…話聞いてなかった?」

「皆、凛がいいって言ってるのよ?」



「でも、凛は…」

264: 2015/03/25(水) 22:06:32.62 ID:Vh3PEhe5.net
「…嫌なの?」

花陽ちゃんが心配そうな顔で見る

「嫌って言うか…」

「凛はそういうの向いてないよ。」


「…意外ね。」

「凛だったら、調子良く引き受けるかと思ってたけど…」



「…凛ちゃん、結構引っ込み思案な所もあるから。」

「特に…自分の事に関してはね。」

この2人を見てると

ウチは、上手く行くと思うんやけど…



「…凛。」

「…!」

えりちが、凛ちゃんの手を握る

265: 2015/03/25(水) 22:07:04.99 ID:Vh3PEhe5.net
「いきなり言われて戸惑うのは分かるけど…」

「みんな、凛が適任だと考えてるのよ?」


「その言葉、ちょっとだけでも信じてみない?」


「でも…」


「…」


「分かったよ。」

「絵里ちゃんがそこまで言うなら…」


「ありがとう、凛。」

えりちが立ち上がる


「さあ、そろそろ雨も止みそうだし…」

「放課後の練習はじめて?」


「…」

…なにかが、引っかかる感じ

267: 2015/03/25(水) 22:21:58.21 ID:Vh3PEhe5.net
「…大丈夫かしら。」

「えりち…」


「やっぱりまだ、凛には早すぎたんじゃ…」

「でも、いつか決めないと駄目な事やし。」

「現状やと、一番凛ちゃんがあってるとは思うよ?」


「…」


「とりあえず、少しだけ様子を見てみよ?」

「案外、上手くいくかも…」


とはいえ

やっぱり、急にできる物じゃないと思うけど


…せめて

凛ちゃんの性格が裏目に出ない事を祈ろうか

269: 2015/03/25(水) 22:22:20.48 ID:Vh3PEhe5.net
「…それじゃあね、希。」

「うん、えりち。」

「また明日♪」


放課後

えりちと別れて、家の方に


「上手くいったかなあ…」

そんな事を考えてると

前に、花陽ちゃんと真姫ちゃんを発見した


「お~い、2人とも!」

「あ、希ちゃん…」


「あれ、凛ちゃんは?」

「それが…」

「?」



話を聞いてみると

どうやら、先に帰ってしまったみたいで

270: 2015/03/25(水) 22:23:01.70 ID:Vh3PEhe5.net
「…もしかしたら。」

「まだ、昔の事…」

「え…?」


「凛ちゃん、小学校の頃。」

「ずっと男の子みたい、って言われてて。」

「スカートとか履いてくと…」

「からかわれたりして。」


「もう気にしてないのかなって、思ってたんだけど…」

「そう言えば、私服でスカート履いてるの、見た事ないわね。」



「そっか…」

だから、あんなに自分に自信がないんやね

ウチの時とは、違う


…でも、だからこそ

ウチは、凛ちゃんが適任やと思う



「あんなに、可愛いのに…」

271: 2015/03/25(水) 22:23:23.38 ID:Vh3PEhe5.net
-----


生徒会室の扉を開ける

「えりち、おはよー。」


「…希。」


えりちが難しい顔してる

「なんかあったん?」


「…バッドニュースよ。」

「穂乃果達、帰って来れないって。」

「…え?」

「台風の影響で、飛行機が飛ばないらしいのよ。」

「って事は、イベントは?」

「この6人で出るしかないみたいね。」


「…」


「幸い、今からなら修正は効くけど。」

「センター…か。」


「…そう。」

272: 2015/03/25(水) 22:23:54.76 ID:Vh3PEhe5.net
「ウチは…。」


「やっぱり、凛ちゃんが良いと思う。」

「きっと、断られると思うけど…」


「…そろそろ、教えてくれてもいいんじゃない?」

「私も、どうして希がそこまで凛にするのか。」

「知りたいの。」


「…分かった。」


「前の、日曜の事なんやけど…」


------


「…そう。」

「そんな事があったのね。」


「昨日、花陽ちゃんの話も聞いて。」

「…何か、してあげたいんよ。」


「…わかったわ。」

「でも、凛が本気で断ったら、この話は無し。」

「いやいやさせても、きっと上手く行かないから。」


「…ありがとう、えりち。」

273: 2015/03/25(水) 22:24:36.45 ID:Vh3PEhe5.net
------


「…って事なのよ。」

「ええーっ!?」

「帰って来れない!?」


「そうなの。」

「飛行機が欠航になるみたいで…」

「じゃあ、ファッションショーのイベントは?」

「残念だけど…」

「6人で歌うしかないわね。」


「…急な話ね。」


週末にイベントを控えての事もあって

やっぱりみんな動揺してる


「でもやるしかないでしょ?」

「アイドルはどんなときも。」

「最高のパフォーマンスをするものよ。」


「にこっ♪」

274: 2015/03/25(水) 22:24:55.83 ID:Vh3PEhe5.net
こういう時のにこっちは凄い

変に悩んだりしないで、前を向いてる

少し、みんなの不安も薄れた気がした


「そうやね♪」

「それで、センターなんだけど…」


えりちが、凛ちゃんを見る


「…えっ?」


「とりあえず、隣に来てくれるかしら?」






皆で、隣の部室へ

「…希。」

「はーい♪」

275: 2015/03/25(水) 22:25:20.95 ID:Vh3PEhe5.net
そう言って、カバーを外す

ウエディングドレスをモチーフにした

可愛いステージ衣装


「うううう、うそ…」

「わあ…!」


信じられない、って顔の凛ちゃんの横で

花陽ちゃんの顔が輝く


「ファッションショーだから…」

「センターで歌う人はこの衣装で、って指定が来たのよ。」


「綺麗!」

「ス・テ・キ♡」


花陽ちゃんは、とっても嬉しそうや



「女の子の憧れ、って感じやね♪」

276: 2015/03/25(水) 22:25:51.46 ID:Vh3PEhe5.net
「これを…着て、歌う…?」

「凛が…?」

子猫みたいに震える凛ちゃん


「穂乃果がいないとなると…」

「今は貴女がリーダーでしょ?」

にこっちが、凛ちゃんの肩に手を置く


「こ、これを…」

「凛が…?」


「はっ…ははっ…」

「はははっ…ははーっ!」


「何笑ってんの…」


「しゃーっ!!」

凛ちゃんの威嚇のポーズ

思わずにこっちが尻餅をつく


「凛が壊れた!!」

真姫ちゃん、言い方…

277: 2015/03/25(水) 22:26:15.50 ID:Vh3PEhe5.net
「もー、どーにかしなさいよっ!」

凛ちゃんは止まらない


「あっ!野生のちんすこうがっ!!」

「どこっ!?」


外を指す凛ちゃんにつられてしまった

そのスキに、逃げようと扉に手をかけるけど…



「なっ…鍵が…!」

「なんでにゃ!?」


「…何でだと思う?」

にこっちも臨戦態勢に入る


「さ、さあ…?」


「それはいつも貴女に…」

「捕まえられてるからよーっ!!」


にこっちの手が凛ちゃんに襲いかかる

278: 2015/03/25(水) 22:26:39.93 ID:Vh3PEhe5.net
その手を振りほどいて

凛ちゃんは一目散に駆けて行くのであった。」


「…って、解説せずに追いかけなさいよ!」

「はーい。」


「…ところでえりち。」

「なに?」


「野生のちんすこうって…」

「もう、それはいいから!!」



------

凛ちゃんを探しつつ、屋上へ


「…やっぱり、ここにいたね。」

「の、希ちゃん…!」

「みんなもおるよ?」

「さあ、凛!観念しなさい!」


「凛ちゃん…」

279: 2015/03/25(水) 22:27:03.43 ID:Vh3PEhe5.net
「…無理だよ。」

「どう考えても似合わないもん。」


「そんな事ないわ。」

「そんな事あるっ!」


「だって凛…」

「こんなに、髪短いんだよ?」


「ショートカットの花嫁さんなんて、いくらでもいるよ?」


「そうじゃなくて…」

「こんな女の子っぽい服。」

「凛には似合わない、って話…」


「普段はともかく…」

「ステージじゃスカート履いてるじゃない。」

真姫ちゃんもフォローするけど

280: 2015/03/25(水) 22:27:35.00 ID:Vh3PEhe5.net
「それはみんなと同じ衣装だし。」

「端っこだから…」


「とにかく。」

「μ'sのためにも、凛じゃ無い方がいい。」

そう言うと、凛ちゃんは下を向く

…やっぱり、ここが何か引っかかるんやけど


それよりも、やる気をなくしちゃ駄目だし

この辺が、引き際なんかな…?


「でも実際、衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作ってあるから…」

「凛ちゃんだと手直しが必要なんよね。」


凛ちゃんの顔が、すっごく笑顔になる


「でしょでしょ!?」

「やっぱり凛じゃない方がいいよ!」

「…ね?」

281: 2015/03/25(水) 22:29:16.99 ID:Vh3PEhe5.net
「やった方がいいにゃ!」

「かよちん可愛いし、センターにピッタリにゃ!」


「でも…」

「凛ちゃん、いいの?」


「…いいに決まってるにゃ。」

「本当に…?」

「ッ…もちろん!」


「凛…」

「…決まりみたいね。」

えりちが、締める


「それじゃ、みんなは練習に戻って?」

「衣装に関しては、花陽がセンターって事で。」

「また後で、衣装合わせをしましょう。」


「凛ちゃん…」

282: 2015/03/25(水) 22:29:48.82 ID:Vh3PEhe5.net
----


ガラッ


「…おかえり、希。」

「穂乃果ちゃん、なんて?」

「…そっか、って。」


「穂乃果も、どこか期待してた部分があったみたい。」

「…希も、ごめんなさい。」


「なんでえりちが謝るん?」

「今まで、希がこうしたい、って言った事、あんまりなかったから。」

「出来れば、叶えてあげたかったけど…」


「…ええんよ。」

「これも、仕方の無い事やし。」

「…」

「でもな、えりち。」

「…?」

「もしかしたら。」

「もしかするかも…な。」

283: 2015/03/25(水) 22:30:12.84 ID:Vh3PEhe5.net
「…どう?」

ちょっとした業務を片付けて

花陽ちゃんの衣装合わせへ


「わあ~っ!」

さっきとは打って変わって笑顔な凛ちゃん

「かよちん、綺麗~。」

「そ、そうかな…?」


「うん、やっぱりかよちんが一番似合うにゃ!」

「頑張ってね?」

「凛、応援してるから!」


「アナタも歌うのよ?」

「そっか…あはは。」



「予想通りピッタリやね♪」

「脇をちょっとだけ絞った方が良いかもしれないわね。」

284: 2015/03/25(水) 22:30:50.92 ID:Vh3PEhe5.net
えりちと、花陽ちゃんの衣装の打ち合わせ

何処かカラ元気な凛ちゃんが、部室から出て行く


…途中で、花陽ちゃんの姿を見てたのを

花陽ちゃんとウチは、見逃さなかった




「…ねえ、絵里ちゃん、希ちゃん。」

「どうしたの?花陽。」


「このままで…いいのかな?」

「それは…」


「私達も、期待してたんだけどね。」

「やっぱり今からでも、凛ちゃんに…」


「…」


「どうしたらいいのかなあ…」

「それは、花陽ちゃん次第だよ?」


「希ちゃん…」

285: 2015/03/25(水) 22:46:40.74 ID:Vh3PEhe5.net
-----


「…ふう、さっぱりした。」


「それにしても、夜が少し冷えて来たな。」

「湯冷めしないように、もうお布団入ろうか…」

「…」


「明後日、か。」


prrrr


prrrr



「…なるほど、そうきたか♪」


pi


「もしもし?花陽ちゃん?」

『あ、希ちゃん?』

『まだ起きてた?』

286: 2015/03/25(水) 22:47:07.12 ID:Vh3PEhe5.net
「うん、起きてたよ。」

『良かった…』

「…決めたんやろ?」

『え?』


「凛ちゃんの事。」

「…どうするか。」


『…すごいね、希ちゃん。』


「何となく、そんな気がしたんよ。」

「花陽ちゃんの事だから。」


『…えへへ。』

『うん、決めたよ。』

『さっきまで、穂乃果ちゃんと電話してて。』

『穂乃果ちゃんにも、希ちゃんと同じ事言われちゃった。』



『…私が、決める事、って。』


「…そっか♪」

287: 2015/03/25(水) 22:47:32.55 ID:Vh3PEhe5.net
「それじゃ、聞かせてもらおうかな?」

「花陽ちゃんが、どうしたいのかを。」


『…うん。』


-----


『と、言う訳なんだけど…』

「うん。」

『どうかな?』


「…ふふっ。」

『希ちゃん?』


「花陽ちゃんが、そう決めたんやろ?」

「だったら、ウチらに聞くんじゃなくて…」

「手伝って、って言ってくれたらいいんよ?」


『…!』

『手伝って…くれますか?』


「もちろんっ♪」

288: 2015/03/25(水) 22:48:00.53 ID:Vh3PEhe5.net
-----


「…と、言う事で。」

「作戦会議、初めよっか♪」


「なにが、という事で…よ。」

「…あれ?」

「アンタと花陽が私達を集めたってことは。」

「つまり…そういう事でしょ?」


「あはは…流石にこっち。」


「まったく…わざわざ、練習終わってから集合だなんて。」

「それも、もったいぶって来るまで言わないし…」


「そうよ、希。」

「それに、希が言ってた『もしかしたら』を、私も信じたいの。」


「えりち…」

289: 2015/03/25(水) 22:48:35.46 ID:Vh3PEhe5.net
「…で、実際どうするの?」

「凛は、嫌だ、って言ってる訳でしょ?」


「その事なんだけど…」

「多分、凛ちゃん。」

「あの衣装、着てみたいんだと思う。」


「…でも、自分に自信が無くて。」

「可愛いって、自分で思えなくて…」

「だから、苦しいんだと思う。」

「だから、困ってるんだと思う。」


「私もそうだから、分かるんだ。」

「私も、自分に自信が無いの。」

「…でも、凛ちゃんは絶対可愛いよ。」

「一番、似合うと思う。」


「…ま、自分の見た目なんか気にするあたり。」

「ある意味にこ達より女の子らしいじゃない。」

290: 2015/03/25(水) 22:49:11.95 ID:Vh3PEhe5.net
「…確かにそうね。」

「そうやって悩んで。」

「でも、みんなの事を考えてる凛が。」

「一番…向いてると思う。」

「リーダーにも…センターにも。」



「…と、言う訳で、決まりやね♪」

「…どーせ、またアンタが何か仕組んだんでしょ?」

「なんの事かなー?」


「ま、いいんじゃない?」

「ダンスも、凛と花陽の場所を変えるだけだし。」

「隣同士だから、なんとかなるでしょ。」


「それじゃ、明日の朝一に少し合わせて。」

「凛には、当日サプライズしましょうか♪」


「えりちの案に賛成の人!」


「「はーい!」」

291: 2015/03/25(水) 22:49:38.98 ID:Vh3PEhe5.net
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そして当日

ウチらの、出番のちょっと前


えりちがモデルの勧誘されてたけど…

確かにクォーターは反則やんな


「凛ちゃん、そろそろ準備せんと!」


ランウェイに釘付けになってる皆を、控え室に






「じゃあみんな!」

「着替えて最後にもう一度、踊りを合わせるにゃ!」


なんだかんだで、凛ちゃんもリーダーっぽく成長したかな?

これなら、きっと…


「凛ちゃんの衣装、そっちね!」

花陽ちゃんが、上手く誘導する

292: 2015/03/25(水) 22:50:10.66 ID:Vh3PEhe5.net
「わかったにゃ!」

その間に、ウチらはさっさと着替える


「…!」


おっと、気付いたみたい


「えっ…?」

「あれ…?」



「かよちん間違って…」

「…!」


皆で、凛ちゃんの前に並ぶ

「間違ってないよ。」

「貴女がそれを着るのよ、凛。」


「な、何言ってるの?」

「センターはかよちんで決まったでしょ?」

293: 2015/03/25(水) 22:50:44.63 ID:Vh3PEhe5.net
「それで練習もしてきたし…」


「大丈夫よ。」

「ちゃんと今朝、皆で合わせて来たから。」

「…凛がセンターで歌うように。」


「そ、そんな…」

「冗談はやめてよ…!」


「冗談で言ってると思う?」

にこっちに言われてどぎまぎする凛ちゃんに、笑いかける


「で、でも…」

「…凛ちゃん、私ね?」

花陽ちゃんが、前に出る


「凛ちゃんの気持ち考えて…」

「困ってるだろうな、って思って…引き受けたの。」

294: 2015/03/25(水) 22:51:20.83 ID:Vh3PEhe5.net
「でも…!」

「思い出したよ?」

「私がμ'sに入った時の事。」


「今度は私の番。」

「…」

「凛ちゃん。」

「凛ちゃんは、可愛いよっ?」


「えっ?」


「みんな言ってたわよ?」

「μ'sで一番女の子っぽいのは、凛かもしれない、って。」

真姫ちゃんが、笑顔で言う


「そ、そんな事…」

「そんな事あるっ!!」


「だって、私が可愛いって、思ってるもん!」

「抱きしめちゃいたい、って思うくらい、可愛いって思ってるもん!!」

295: 2015/03/25(水) 22:51:57.09 ID:Vh3PEhe5.net
「…ッ。」


「希ちゃんに、言われたんだよね?」

「なら…私達を、信じて?」


「…そうよ。」

「みんなの想いは、ひとつなんだから。」

「…だから、今度は私達が背中を押す番。」

「今まで凛が信じてくれた私達が。」

「今度は、凛を信じたいの。」



「見てみなさいよ、あの衣装…」


「一番似合うわよ、凛が。」

「…」


真姫ちゃんと花陽ちゃんが

凛ちゃんの背中を押す


この3人は、いつもこうやって進んでく

296: 2015/03/25(水) 22:52:34.65 ID:Vh3PEhe5.net
「…本当に。」

「本当に…信じていいの?」


「信じて?凛ちゃん。」


「凛、本当に可愛い?」

「みんなの事信じたら、本当に…」



「本当に…変われるかな?」



「「もちろんっ!!」」


「みんな…」


「さあ、凛。」

「お客さんが、お待ちかねよ?」


「…」


「…!」

297: 2015/03/25(水) 23:07:39.59 ID:Vh3PEhe5.net
立つのは、ランウェイの入り口

歩くのは…凛ちゃん


ライトの光を浴びて

客席から、声が上がる


「は、初めまして。」

「音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sです。」


盛り上がる客席から、何度も声が聞こえる


『かわいい』って


「ありがとうございます。」

「えっと…本来メンバーは9人なんですが。」

「今日は都合により6人で歌わせてもらいます。」

凛ちゃんの横に、皆で並ぶ


「…でも。」

「残り3人の想いも込めて歌います。」




「…それでは!」

「一番可愛い私達を、見ていって下さい!!」

298: 2015/03/25(水) 23:08:46.34 ID:Vh3PEhe5.net
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ファッションショーで大成功を収めた次の日


凛ちゃんは、花陽ちゃん達と遊びに行ったみたい


…可愛い、ピンクのワンピースで


そして、月曜日

屋上で柔軟をしていると

可愛い膝上スカートの似合う

可愛い女の子がやって来た

ショートカットを少し結んで

短い髪が、風に揺れる


「よーっし!」

「さあ、今日も練習…」

「いっくにゃー!!」



こうしてウチらは、進んで行く

昔の自分とお別れして

新しい自分に出会ってく

そのきっかけをくれる、μ'sの仲間



いつだって、どんな時だって

信じられる---ともだち

307: 2015/03/26(木) 22:21:25.72 ID:YdxG6Eac.net
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10月も半ばをすぎたある日

ウチらはえりちに呼ばれて

近くのファーストフード店に集まった


「…ハロウィンイベント?」

「ええ。」

「みんなハロウィンは知ってるでしょ?」

えりちが説明する


「ああ、ここにも飾ってあるカボチャとかの?」

花陽ちゃんの言う通り

店内はハロウィンの装飾で溢れてる


「そう、実は今年…」

「秋葉をハロウィンストリートにするイベントがあるらしくてね?」


「地元のスクールアイドルであるA-RISEと…」

「μ'sにも、出演依頼がきてるのよ。」

308: 2015/03/26(木) 22:21:47.46 ID:YdxG6Eac.net
「ほえ~…」

「予選を突破してからというもの。」

「なんだか凄いねえ…」

穂乃果ちゃんが間抜けな声をあげる


「でもそれって、歌うってこと?」

真姫ちゃんに答える

「そうみたいやね。」

「ありがたい話だけど…」

「この前のファッションショーといい。」

「そんな事やってていいの?」

「最終予選も近いのに…」


「そうよ!」

「私達の目標は、ラブライブ優勝でしょ?」

309: 2015/03/26(木) 22:22:13.83 ID:YdxG6Eac.net
「たしかにそうだけど…」

「こういう地道な活動も重要よ?」

「知名度を増やせば、私達のファンも増えるし…」

「イベントには、テレビ局の取材も来るみたいだし。」

「テレビっ!?」

にこっちが飛び上がる

「…態度変わりすぎ。」


「A-RISEと一緒って事は、みんな注目するよね。」

「緊張しちゃうなあ…」

「でも、それだけ名前覚えてもらうチャンスだよ!」


凛ちゃんも、あの日以来

今まで以上に積極的になった気がする


「…そうよ!」

「A-RISEよりインパクトの強いパフォーマンスで…」

「お客さんの脳裏に私達の存在を焼き付けるのよ!」

310: 2015/03/26(木) 22:22:41.21 ID:YdxG6Eac.net
「おお~っ!」

「真姫ちゃん!これからはインパクトだよ!」

にこっちの姿勢に

穂乃果ちゃんのテンションも上がる

緊張なんてどこへやら

いつの間にか、いつものウチらに戻ってる


でも…


「ところで穂乃果…」

真姫ちゃんが、それを言う

「貴女、こんな所にいていいの?」


「生徒会長の仕事は…」

花陽ちゃんが、おそるおそる聞くと

途端に、真っ青になる穂乃果ちゃん

311: 2015/03/26(木) 22:23:11.21 ID:YdxG6Eac.net
穂乃果ちゃんが言葉を失った時

後ろから、ふたつの足音


「…ごきげんよう。」

「さ、探したんだよお…?」


困り顔のことりちゃんと

穏やかな顔の海未ちゃん


「へえー…」

「これからは、『インパクト』なんですね…?」


「あははははは…」

穂乃果ちゃん、ご愁傷さまです


「こんなインパクト、いらない…!」



この後穂乃果ちゃんは

海未ちゃんにこってり絞られたようやった

312: 2015/03/26(木) 22:23:36.31 ID:YdxG6Eac.net
-----


「インパクト、なあ…」

「漠然としすぎよね…」


「でも、A-RISEのやった事。」

「彼女達にしか出来ない事とは言え…」

「観客の心をつかんだのは、間違いないわ。」


駅前のカフェで

真姫ちゃんとえりちと作戦会議…もとい、おしゃべり



えりちにイベントの話を聞いてから

穂乃果ちゃん、凛ちゃん、にこっちで

秋葉のイベントのPRに行ったんやけど…


結果として、A-RISEの引き立て役になっただけだった

313: 2015/03/26(木) 22:24:11.68 ID:YdxG6Eac.net
「確かに、前哨戦って言葉がピッタリやね。」

「…そうね。」

「今のままじゃ、最終予選で勝てっこないもの。」


「とは言え…良い案が出ないのも、事実なのよね。」


「「う~ん…」」


「そういえば、にこっち達は?」

「にこが、悔しいから3人でどうすべきか考える、って。」


「にこちゃん、イライラしながら帰って来たものね…」

「にこっちは、ポーズを邪魔されたんが一番の理由かな?」


そういう所は、心が狭いよなあ…

まあ、にこっちらしいけど

314: 2015/03/26(木) 22:24:41.69 ID:YdxG6Eac.net
「…とにかく、この件をどうにかしないと難しいわね。」

「曲があっても、衣装や振り付けが間に合わなかったら意味がないし…」


「一応練習はしてるけど。」

「確かに、修正するなら早い方がいいわね。」

「でもやっぱり、衣装はハロウィンっぽくするのが一番とちゃうかな?」


「それはそうだけど…」

「A-RISEが映像でそれを見せちゃってる分。」

「インパクトは少ないと思うわ。」


「…同感。」

「でも、ハロウィンって聞くと。」

「なんとなく希がイメージになるのよね。」


「…ウチ?」


「その良く分からない雰囲気、魔女っぽいじゃない。」

「えー、真姫ちゃん酷いなあ。」

315: 2015/03/26(木) 22:25:17.24 ID:YdxG6Eac.net
----


「やるからには、思い切り変えましょう!」

次の日、海未ちゃんの一声に

穂乃果ちゃんが続ける


「海未ちゃんが、色んな部活の格好をしてみたらどうか、って!」

「って訳で、色々借りて来たよ!!」


「これは…」

そこには、バラバラの衣装

バレーにラクロス

これは…白衣?


「穂乃果ちゃん、これって…?」

「みんなに似合いそうな衣装を借りて来たの!」



「あとこれ、自己紹介文!」

「穂乃果達が考えたんだ♪」

316: 2015/03/26(木) 22:25:59.59 ID:YdxG6Eac.net
ウキウキな穂乃果ちゃんを見て、えりちがまとめる


「…まあ、確かに新しい事をやってみるのもいいかもね。」

「みんな、せっかく穂乃果たちが用意してくれたし。」

「一度、やってみましょう?」



「それじゃ、みんなそれぞれの衣装に着替えてね♪」

穂乃果ちゃんに言われて、それぞれの衣装を手に取る



「こ、これは…!」

「あーっ、かよちんの可愛い♪」


「ちょっ…なんで私がこれなのよ…」

「あら、可愛いわよ、にこ。」

「ちょっとそれイヤミ…?」

「…」

まあ、見てて面白いから黙っとこかな

そして、着替えて実践してみたんやけど…

317: 2015/03/26(木) 22:26:28.11 ID:YdxG6Eac.net
書きだめ終了

まったり行きます

318: 2015/03/26(木) 22:46:45.50 ID:YdxG6Eac.net
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「アナタの想いをリターンエース!」

「高坂穂乃果です!」


「誘惑リボンで狂わせるわ!」

「西木野真姫!」


「むかないで!まだまだ私は青い果実!」

「小泉花陽です!」


「スピリチュアル東洋の魔女!」

「東條希!」


「恋愛未満の化学式…」

「園田海未です!」


「私のシュートで、ハートのマークつけちゃうぞ♡」

「南ことり♪」

319: 2015/03/26(木) 22:47:37.35 ID:YdxG6Eac.net
「キュートスプラーッシュ!!」

「星空凛!」


「必殺のピンクポンポン!」

「絢瀬絵里よ!」


「…そして私!」

「武道のセンター、矢澤にこにこ!」




「「私達…」」

「「部活系アイドル!」」

「「μ'sですっ!!」」



全員で、ポーズをとる


…うん、バッチリ♪








な、訳も無く…

320: 2015/03/26(木) 22:52:16.22 ID:YdxG6Eac.net
「って、私、顔見えないじゃない!!」

にこっちが暴れだす


「いつもと違って新鮮やね♪」

「うんうんっ!」

ウチは、楽しかったんやけどなあ…?


「スクールアイドルって事を考えると…」

「色んな部活の服を着るというコンセプトは。」

「悪くないわね。」

「だよねだよね!」


「でも、これだとなんか…」

「フザけてるみたいじゃない!!」


うーん…

確かに、お遊戯会、って感じやしね

インパクトは確かにあるけど

これでステージは厳しいかな?

321: 2015/03/26(木) 23:02:02.92 ID:YdxG6Eac.net
----


「一体これのどこが新しさに繋がるのよ!!」

「すみません。」

「提案した私が愚かでした…」

海未ちゃんが沈んでる…


「でも、ちょっと楽しかったね!」

「そんな事言ってる場合じゃないでしょう!?」

にこっちは、凄くご機嫌斜め…


「A-RISEはこうしてる間にも!」

「日々進化を遂げているのよ!?」

にこっちはA-RISEへの対抗意識がすごい

…でも、それが悪い方向に向かないといいんやけど


「…やっぱり、見た目じゃないかな?」

「一番分かりやすいのは…」

みんなで、ことりちゃんの顔を見る

322: 2015/03/26(木) 23:02:29.36 ID:YdxG6Eac.net
「衣装を、奇抜な物にするとか…?」

「確かに。」

「それが一番手っ取り早いとは思いますが…」


「それはすでに先ほど…」


「「うーん…」」


「…ほな。」

「ウチがカードの知らせを。」

「伝えるしかないようやな…」


そっと机の上にカードを出して

一枚、めくってみる

「…CHANGE?変化ってこと?」

「それなら、さっきもやったじゃない。」

にこっちが言う

323: 2015/03/26(木) 23:07:31.32 ID:YdxG6Eac.net
「ううん。」

「このチェンジの意味は。」

「自分らしさを変えずに、変化する事。」


「…って事は?」

「って事は…」




------


ガチャッ


(穂)「おはようございまーす!」

(穂)「…あっ。」


(穂)「ごきげんよう。」

(こ)「海未、ハラショー。」

(穂)「絵里、早いですね。」


(穂・こ)「そして凛も!」


(海)「…!」

324: 2015/03/26(木) 23:08:20.42 ID:YdxG6Eac.net
(海)「う…うぅ…」

(海)「無理ですっ!」

(穂)「駄目ですよ、海未。」

(穂)「ちゃんと凛になりきってください!」



(海)「…」

(穂)「貴女が言いだしたのでしょう?」

(穂)「空気を変えてみた方がいいと!」


(穂)「さあ、凛!」

(海)「…………!」

(海)「にゃーっ!!」

(海)「さあ、今日も練習、いっくにゃー!!」


(凛)「…ナニソレ。」

(凛)「イミワカンナイ。」

325: 2015/03/26(木) 23:08:54.90 ID:YdxG6Eac.net
(穂)「真姫!」

(穂)「そんな話し方はいけません!」

(凛)「…面倒なヒト。」


ガチャッ

(真)「ちょっと凛!」

(真)「それ私の真似でしょ!」

(真)「やめてっ?」

(凛)「…オコトワリシマス。」

(真)「…ッ!」


(穂)「おはようございます…希?」

(真)「…!」

(真)「うう…」


(海)「あーっ!」

(海)「喋らないのはずるいにゃー!」

326: 2015/03/26(木) 23:09:36.08 ID:YdxG6Eac.net
(こ)「…そうよ?」

(こ)「みんなで決めたでしょ?」

(真)「べっ、別にそんな事…!」

(海)「…にゃ?」

(真)「言った覚え…ないやん?」

(穂)「おお希…!すごいです…!」


ガチャッ


(花)「にっこにっこにー☆」

(花)「アナタのハートに、にこにこにー!」

(花)「笑顔とどける矢澤にこにこ♪」

(花)「青空も…にこっ☆」


(穂)「おお…!」

(こ)「ハラショー!」

328: 2015/03/26(木) 23:10:20.25 ID:YdxG6Eac.net
(こ)「にこは…思ったよりにこっぽいわね。」

(花)「にこっ☆」

(に)「にこちゃーん?」

(に)「にこはそんな感じじゃないよー?」

(穂)「ことり…!」


タタッ

(希)「いやー!」

(希)「今日もパンがうまいっ!」

(穂)「うっ…」


(こ)「穂乃果…また遅刻よ?」

(希)「ごめーん。」

(穂)「わ、私って…こんな?」

(こ)「ええ。」

(穂)「…」


ガチャッ


(絵)「大変ですっ…!」

「「…?」」

329: 2015/03/26(木) 23:10:57.03 ID:YdxG6Eac.net
(穂)「…どうしたのです?」


(絵)「…はあー…」

(絵)「すう…はあー…」


(絵)「…」

(絵)「み、みんなが…」


(絵)「みんながーーっ…!」









(絵)「…変よ。」


(こ)「…そうね。」

(穂)「うん…」



まあ、楽しめたし良いかなー…なんて


あはは…

330: 2015/03/26(木) 23:12:18.15 ID:YdxG6Eac.net
今日はここまで

書いてて思ったけど
ここは映像ありきで楽しむのがベストだと思う
文字だけだと何やってるか分かんない

とりあえず、明日6話終わります

332: 2015/03/26(木) 23:26:46.09 ID:PXG8vulY.net
乙です
すごく好きなシーンだしほっこりした笑
どうしてもギャグパートは心情を掘り下げるのが難しくなるよね

【ラブライブ】希「私がウチになれたのは。」【その5】

引用: 希「私がウチになれたのは。」2