232: 2015/05/19(火) 23:14:43.58 ID:+F/NSPz4.net
【ラブライブ】希「失った記憶と繋がる心。」【前編】
「…」
凛ちゃんのその言葉に
何も、反応が出来なかった
いつばれた?
何で?
他のみんなは…騙されてるのに
「なーんちゃってっ♪」
「冗談だよ、冗談♪」
「…凛ちゃん?」
本当に?
でも、さっきの目は…
とにかく、なにか口に出さないと
そう思って口を開いた時
部室のドアが開いた
233: 2015/05/19(火) 23:15:24.43 ID:+F/NSPz4.net
「おっはよーっ!」
「おはよー!穂乃果ちゃん!」
「あれ?2人だけ?」
「もうすぐ、みんな来ると思うよ?」
「そっか♪」
「ねえねえ、2人で何話してたの?」
「今ね、希ちゃんの記憶、戻って来てよかったね、って。」
「凛達の事、思い出してくれて嬉しかったな、って話してたんだ。」
「うんうん、確かに!」
「一時は、本当に心配したから…」
「ありがと、希ちゃん♪」
「あ、ううん…」
「穂乃果ちゃん達の、おかげだよ。」
「おはよー!穂乃果ちゃん!」
「あれ?2人だけ?」
「もうすぐ、みんな来ると思うよ?」
「そっか♪」
「ねえねえ、2人で何話してたの?」
「今ね、希ちゃんの記憶、戻って来てよかったね、って。」
「凛達の事、思い出してくれて嬉しかったな、って話してたんだ。」
「うんうん、確かに!」
「一時は、本当に心配したから…」
「ありがと、希ちゃん♪」
「あ、ううん…」
「穂乃果ちゃん達の、おかげだよ。」
234: 2015/05/19(火) 23:15:53.68 ID:+F/NSPz4.net
「それにしても、穂乃果の寝坊とか。」
「そういうのは忘れたままでよかったのにー…」
「それは流石に失礼にゃ。」
「それに、きっとすぐに寝坊して、バレてたよ?」
「凛ちゃんひどいよっ!?」
目の前には、いつもの光景
いつでも可愛い、元気な2人
…でも、それが怖い
さっきの凛ちゃんの目
あれは、冗談なんかで言ってる目じゃ…
「…希ちゃん?」
「…!?」
「一緒に、屋上行こっ?」
「…そうやね。」
「そういうのは忘れたままでよかったのにー…」
「それは流石に失礼にゃ。」
「それに、きっとすぐに寝坊して、バレてたよ?」
「凛ちゃんひどいよっ!?」
目の前には、いつもの光景
いつでも可愛い、元気な2人
…でも、それが怖い
さっきの凛ちゃんの目
あれは、冗談なんかで言ってる目じゃ…
「…希ちゃん?」
「…!?」
「一緒に、屋上行こっ?」
「…そうやね。」
235: 2015/05/19(火) 23:16:25.68 ID:+F/NSPz4.net
-----
「どうしたのよ。」
「…何が?」
「昨日から、どこか暗いわよ?」
「何かあった?」
「いややなあ、にこっち。」
「ウチは、いつでも元気やで♪」
「…そう。」
「何かあったら、言いなさいよね。」
「アンタは、自分の中に溜め込んじゃうタイプなんだから。」
「…うん。」
昨日、凛ちゃんに言われてから
みんなが、少し怖くなった
騙せてると思ってるのは自分だけで
もしかしたら…
みんな、分かってるのかもしれない
「どうしたのよ。」
「…何が?」
「昨日から、どこか暗いわよ?」
「何かあった?」
「いややなあ、にこっち。」
「ウチは、いつでも元気やで♪」
「…そう。」
「何かあったら、言いなさいよね。」
「アンタは、自分の中に溜め込んじゃうタイプなんだから。」
「…うん。」
昨日、凛ちゃんに言われてから
みんなが、少し怖くなった
騙せてると思ってるのは自分だけで
もしかしたら…
みんな、分かってるのかもしれない
236: 2015/05/19(火) 23:18:38.04 ID:+F/NSPz4.net
「分かりにくいのよ、アンタは。」
「今は…大丈夫だと、思うけど。」
「…はは。」
「まあ、もうみんなに心配はかけたくないから。」
「何かあったら、ちゃんと言うよ?」
「それでいいわ。」
「じゃないと、また昔みたいに…」
「…昔?」
「ほら昔、希と一緒にいた時…」
「…」
「希?」
「あ、ううん!」
「懐かしいなあ…って、ちょっと思い出してた。」
「…やっぱり、分かりにくいわね。」
「それに、遠くを見るほど昔の話じゃないでしょうに。」
「それもそうやね♪」
「今は…大丈夫だと、思うけど。」
「…はは。」
「まあ、もうみんなに心配はかけたくないから。」
「何かあったら、ちゃんと言うよ?」
「それでいいわ。」
「じゃないと、また昔みたいに…」
「…昔?」
「ほら昔、希と一緒にいた時…」
「…」
「希?」
「あ、ううん!」
「懐かしいなあ…って、ちょっと思い出してた。」
「…やっぱり、分かりにくいわね。」
「それに、遠くを見るほど昔の話じゃないでしょうに。」
「それもそうやね♪」
237: 2015/05/19(火) 23:19:34.12 ID:+F/NSPz4.net
「ねえ、希。」
「良かったら、今日…」
「あ、ごめん、にこっち。」
「今日はちょっと、家でやる事あって…」
「…そうなの?」
「なら、仕方ないか。」
「うん、ごめんな?」
「別にいいわよ。」
「また今度、どこか寄り道して帰りましょ。」
「うん、ありがと。」
「流石、ウチの親友やね♪」
「…調子いいんだから。」
精一杯の笑顔でごまかして
足早に、家に帰って来た
「良かったら、今日…」
「あ、ごめん、にこっち。」
「今日はちょっと、家でやる事あって…」
「…そうなの?」
「なら、仕方ないか。」
「うん、ごめんな?」
「別にいいわよ。」
「また今度、どこか寄り道して帰りましょ。」
「うん、ありがと。」
「流石、ウチの親友やね♪」
「…調子いいんだから。」
精一杯の笑顔でごまかして
足早に、家に帰って来た
238: 2015/05/19(火) 23:20:18.41 ID:+F/NSPz4.net
-----
「…」
「なんで…」
「…ッ。」
頭を冷やすように
洗面台で、顔を洗う
「…」
水が流れる音が
唯一、自分が目を覚ましている事を証明してくれた
「昔…」
にこっちの言っていた、昔の事
あれは、いつの時の事を言ってたんだろうか
…思い出せない
「…」
「なんで…」
「…ッ。」
頭を冷やすように
洗面台で、顔を洗う
「…」
水が流れる音が
唯一、自分が目を覚ましている事を証明してくれた
「昔…」
にこっちの言っていた、昔の事
あれは、いつの時の事を言ってたんだろうか
…思い出せない
239: 2015/05/19(火) 23:20:51.40 ID:+F/NSPz4.net
「…」
鏡に映った自分の顔が
あざ笑っているようにすら感じる
「…ッ。」
「あれは…」
「あの、記憶は…」
「『ウチ』の記憶なん?」
「それとも、『私』の…?」
「昔…」
「昔って、いつ…?」
思い出せる、最初の記憶は
…えりちと、出会った日の事だった
鏡に映った自分の顔が
あざ笑っているようにすら感じる
「…ッ。」
「あれは…」
「あの、記憶は…」
「『ウチ』の記憶なん?」
「それとも、『私』の…?」
「昔…」
「昔って、いつ…?」
思い出せる、最初の記憶は
…えりちと、出会った日の事だった
246: 2015/05/20(水) 23:32:23.07 ID:kNejN/6K.net
-----
「んっ…」
服を脱いで、お風呂場に入る
冷たい水を、頭から流して
もう一度冷静に、考えてみる
「…」
「やっぱり、おかしい…」
「なんで…?」
「なんでなんよ…?」
何度思い浮かべても
頭の中にある、最初の記憶は
えりちと出会った、あの教室で
それより昔の記憶が
ウチの記憶には一切ない
「…寒い。」
「んっ…」
服を脱いで、お風呂場に入る
冷たい水を、頭から流して
もう一度冷静に、考えてみる
「…」
「やっぱり、おかしい…」
「なんで…?」
「なんでなんよ…?」
何度思い浮かべても
頭の中にある、最初の記憶は
えりちと出会った、あの教室で
それより昔の記憶が
ウチの記憶には一切ない
「…寒い。」
247: 2015/05/20(水) 23:32:49.87 ID:kNejN/6K.net
-----
冷たい水に冷やされた体を拭きながら
部屋の中に入る
「あ…」
ベッドの上に置いてある携帯に、ランプが灯ってる
「真姫ちゃん…」
From: 真姫ちゃん
title: 明日
=============
良かったら、少し話さない?
=============
「明日…」
そうだ、真姫ちゃんに相談してみたら
何か、分かるかもしれない
返事を打って、ベッドに倒れ込む
…今は、何も考えたくない
冷たい水に冷やされた体を拭きながら
部屋の中に入る
「あ…」
ベッドの上に置いてある携帯に、ランプが灯ってる
「真姫ちゃん…」
From: 真姫ちゃん
title: 明日
=============
良かったら、少し話さない?
=============
「明日…」
そうだ、真姫ちゃんに相談してみたら
何か、分かるかもしれない
返事を打って、ベッドに倒れ込む
…今は、何も考えたくない
248: 2015/05/20(水) 23:33:18.68 ID:kNejN/6K.net
-----
「すごい…」
真姫ちゃんに呼ばれて、真姫ちゃんのお家に
…のはずが
目の前にあるのは豪邸で
「やっぱり、お医者様ってすごいんやね…」
そんな言葉しか、出てこない
「…希?」
お家を眺めていると
門の向こう側から、声がした
「もう、来たなら呼び鈴鳴らしてよね。」
「ああ、ごめんな。」
「ちょっと、考え事してた。」
「すごい…」
真姫ちゃんに呼ばれて、真姫ちゃんのお家に
…のはずが
目の前にあるのは豪邸で
「やっぱり、お医者様ってすごいんやね…」
そんな言葉しか、出てこない
「…希?」
お家を眺めていると
門の向こう側から、声がした
「もう、来たなら呼び鈴鳴らしてよね。」
「ああ、ごめんな。」
「ちょっと、考え事してた。」
249: 2015/05/20(水) 23:34:07.54 ID:kNejN/6K.net
-----
「…そういえば。」
「希が家に来るのって、初めてだっけ?」
「…うん。」
「大きさに、ビックリしてた。」
リビングに通されて、少し話をする
真姫ちゃんが、紅茶を持って来てくれた
「でも、別荘と大して変わらないんじゃない?」
「いやいや、確かに別荘もすごかったけど。」
「自宅はそれ以上やん?」
「…そんなものかしら。」
そう言って、正面に座る真姫ちゃん
ご両親は、お仕事でいないみたい
「…そういえば。」
「希が家に来るのって、初めてだっけ?」
「…うん。」
「大きさに、ビックリしてた。」
リビングに通されて、少し話をする
真姫ちゃんが、紅茶を持って来てくれた
「でも、別荘と大して変わらないんじゃない?」
「いやいや、確かに別荘もすごかったけど。」
「自宅はそれ以上やん?」
「…そんなものかしら。」
そう言って、正面に座る真姫ちゃん
ご両親は、お仕事でいないみたい
250: 2015/05/20(水) 23:34:32.81 ID:kNejN/6K.net
「今日は、和木さんもいないから。」
「ゆっくりしていって。」
「和木さん?」
「…ああ、お手伝いさん。」
「そう言えば、花陽たちしか知らなかったっけ。」
「お手伝いさんまでいるんやね。」
まさに、お金持ちってイメージ
それでこの性格やと、確かに近寄りがたい気はするなあ…
「それで、今日はどうしたん?」
「…別に、たいした用じゃないの。」
「にこちゃんから、少し様子が変だ、って聞いたから。」
「なにか、力になれないかと思って。」
「ゆっくりしていって。」
「和木さん?」
「…ああ、お手伝いさん。」
「そう言えば、花陽たちしか知らなかったっけ。」
「お手伝いさんまでいるんやね。」
まさに、お金持ちってイメージ
それでこの性格やと、確かに近寄りがたい気はするなあ…
「それで、今日はどうしたん?」
「…別に、たいした用じゃないの。」
「にこちゃんから、少し様子が変だ、って聞いたから。」
「なにか、力になれないかと思って。」
251: 2015/05/20(水) 23:35:01.93 ID:kNejN/6K.net
「あ…」
「そうやったんやね。」
これは…話が早い
けど、どう言ったらいいんかな
まさか、最初から説明するわけにも…
どう言おうか迷っていると
真姫ちゃんから、声がかかる
「…別に、無理して話さなくていいから。」
「言いたくなったら、言って?」
「あ…うん。」
「それに、希とこうしてちゃんと話す事って、あんまりなかったから。」
「その口実に、呼んだだけ。」
そう言って真姫ちゃんは、紅茶に口をつける
「そうやったんやね。」
これは…話が早い
けど、どう言ったらいいんかな
まさか、最初から説明するわけにも…
どう言おうか迷っていると
真姫ちゃんから、声がかかる
「…別に、無理して話さなくていいから。」
「言いたくなったら、言って?」
「あ…うん。」
「それに、希とこうしてちゃんと話す事って、あんまりなかったから。」
「その口実に、呼んだだけ。」
そう言って真姫ちゃんは、紅茶に口をつける
252: 2015/05/20(水) 23:35:36.81 ID:kNejN/6K.net
それから、2人で色々と話した
真姫ちゃんの別荘に行った時の事
9人でのファーストライブの事や
学園祭であった事なんかも
真姫ちゃんの話に合わせて
すらすらと出てくる言葉
…なにも、問題は無いように思えた
ちゃんと、覚えてる
「…あれ?」
「どうしたの?希。」
「…!」
「ううん、何でもないんよ?」
「そう…」
…なんやろ?
この---違和感
真姫ちゃんの別荘に行った時の事
9人でのファーストライブの事や
学園祭であった事なんかも
真姫ちゃんの話に合わせて
すらすらと出てくる言葉
…なにも、問題は無いように思えた
ちゃんと、覚えてる
「…あれ?」
「どうしたの?希。」
「…!」
「ううん、何でもないんよ?」
「そう…」
…なんやろ?
この---違和感
253: 2015/05/20(水) 23:36:21.52 ID:kNejN/6K.net
「…そう言えば。」
「まだ、ちゃんとお礼を言えて無かったわね。」
「…何のお礼?」
「…改めて言うのも、照れるんだけど。」
「ほら、希が目を覚ました時、病院で…」
「…」
「…希?」
「…ああ、うん。それで?」
「…あの時、希はいいって言ったけど。」
「やっぱり、助けてもらったのも、事実だから。」
「…私を、助けてくれてありがとう。」
「私に怪我が無かったのは、希のおかげよ。」
「…ずっと、言いたかった。」
「まだ、ちゃんとお礼を言えて無かったわね。」
「…何のお礼?」
「…改めて言うのも、照れるんだけど。」
「ほら、希が目を覚ました時、病院で…」
「…」
「…希?」
「…ああ、うん。それで?」
「…あの時、希はいいって言ったけど。」
「やっぱり、助けてもらったのも、事実だから。」
「…私を、助けてくれてありがとう。」
「私に怪我が無かったのは、希のおかげよ。」
「…ずっと、言いたかった。」
254: 2015/05/20(水) 23:36:58.69 ID:kNejN/6K.net
「…」
「あの時、もう駄目だ、って思った。」
「凛の手も、届かなかったし…」
「でも、希が手を伸ばしてくれた。」
「私の事、ちゃんと掴んでくれた。」
「…それは、覚えてる。」
「本当に、ありがとう。」
そう言って、笑顔になる真姫ちゃん
「…ちょっと。」
「せっかく言えたんだから、何か反応してよ。」
そう言って
少し照れくさそうに、髪の毛をいじる
「病院…?」
「希…?」
「あの時、もう駄目だ、って思った。」
「凛の手も、届かなかったし…」
「でも、希が手を伸ばしてくれた。」
「私の事、ちゃんと掴んでくれた。」
「…それは、覚えてる。」
「本当に、ありがとう。」
そう言って、笑顔になる真姫ちゃん
「…ちょっと。」
「せっかく言えたんだから、何か反応してよ。」
そう言って
少し照れくさそうに、髪の毛をいじる
「病院…?」
「希…?」
255: 2015/05/20(水) 23:37:32.00 ID:kNejN/6K.net
…そう
確かにあの時、手を伸ばして
真姫ちゃんを掴んで、引き寄せた
…そう
それで、きっと頭を打って
気付いたら、病院にいて
…それで
目が覚めたら、みんながいて
話しかけられて…
「…ッ。」
「希?」
頭が、痛い
それで…えっと
みんながウチを覗き込んで
…
あの時、何を話したっけ?
確かにあの時、手を伸ばして
真姫ちゃんを掴んで、引き寄せた
…そう
それで、きっと頭を打って
気付いたら、病院にいて
…それで
目が覚めたら、みんながいて
話しかけられて…
「…ッ。」
「希?」
頭が、痛い
それで…えっと
みんながウチを覗き込んで
…
あの時、何を話したっけ?
256: 2015/05/20(水) 23:37:57.65 ID:kNejN/6K.net
「ねえ、希!」
気付いたら、真姫ちゃんが隣に来ていた
「ねえ、一体どうしたの?」
心配そうにウチを見つめる、真姫ちゃん
確か、あの時もこうして…
…
あの時?
あの時って…いつだっけ?
「希!」
「ねえ、希ってば!!」
治まらない頭痛に襲われた体は
意識を手放す事で、逃れようとする
「まき…ちゃ…」
目の前が、暗闇で覆われた
気付いたら、真姫ちゃんが隣に来ていた
「ねえ、一体どうしたの?」
心配そうにウチを見つめる、真姫ちゃん
確か、あの時もこうして…
…
あの時?
あの時って…いつだっけ?
「希!」
「ねえ、希ってば!!」
治まらない頭痛に襲われた体は
意識を手放す事で、逃れようとする
「まき…ちゃ…」
目の前が、暗闇で覆われた
259: 2015/05/21(木) 00:27:02.69 ID:22TTHPWL.net
-----
…声が聞こえる
ウチを呼ぶ、声が
「…」
目を開けると
真っ白な世界が広がっていた
「また…か。」
何度来ても、やっぱり現実では覚えていなくて
それでも、ここに来ると思い出す
ウチの…夢の、世界
「…」
今度は、真後ろにいた
ウチと同じ姿の、『ウチ』
「…もう、慣れた物やね。」
…声が聞こえる
ウチを呼ぶ、声が
「…」
目を開けると
真っ白な世界が広がっていた
「また…か。」
何度来ても、やっぱり現実では覚えていなくて
それでも、ここに来ると思い出す
ウチの…夢の、世界
「…」
今度は、真後ろにいた
ウチと同じ姿の、『ウチ』
「…もう、慣れた物やね。」
260: 2015/05/21(木) 00:27:45.51 ID:22TTHPWL.net
その目は、向こうを向いている
遠くを見つめるその姿の後ろで
背中を見るように立つ、ウチ
「…どうせ。」
「また、何も聞こえないんやろ?」
その背中に、言葉を投げかける
…いつもそうだ
ここにいる『ウチ』は、答えをくれない
まるで、鏡の中にいる、それと同じように
『…聞こえてる。』
だからこそ、驚かずにはいられなかった
目の前で同じ声を発する
---その存在に
遠くを見つめるその姿の後ろで
背中を見るように立つ、ウチ
「…どうせ。」
「また、何も聞こえないんやろ?」
その背中に、言葉を投げかける
…いつもそうだ
ここにいる『ウチ』は、答えをくれない
まるで、鏡の中にいる、それと同じように
『…聞こえてる。』
だからこそ、驚かずにはいられなかった
目の前で同じ声を発する
---その存在に
261: 2015/05/21(木) 00:28:15.41 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」
『今までも、声は聞こえてた。』
『ちゃんと、答えたつもりだった。』
「嘘!」
「声なんて、聞こえなかった!」
『…嘘じゃないよ。』
『それに、聞こえなかったんじゃない。』
そう言って、こちらを振り返る
『ただ、聞こうとしなかっただけ。』
『…自分で、耳を塞いでたん。』
『…そうやろ?「ウチ」。』
「な…」
『…ようやく、話せた。』
『そっちの「ウチ」のお陰やね。』
『今までも、声は聞こえてた。』
『ちゃんと、答えたつもりだった。』
「嘘!」
「声なんて、聞こえなかった!」
『…嘘じゃないよ。』
『それに、聞こえなかったんじゃない。』
そう言って、こちらを振り返る
『ただ、聞こうとしなかっただけ。』
『…自分で、耳を塞いでたん。』
『…そうやろ?「ウチ」。』
「な…」
『…ようやく、話せた。』
『そっちの「ウチ」のお陰やね。』
262: 2015/05/21(木) 00:28:48.18 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」
「なんで、今になって…」
『…それは、自分が一番よく分かってると思うけど?』
「ウチが…?」
『そうじゃなきゃ、きっとまだウチの声は聞こえてない。』
『…疑問を、感じたんやろ?』
「疑問?」
「…!」
「まさか…」
『…おっと。』
『最初に断っておくけど。』
『これは、ウチのせいじゃないよ?』
『自分で勝手に、そうしたんやから』
「何言って…」
「なんで、今になって…」
『…それは、自分が一番よく分かってると思うけど?』
「ウチが…?」
『そうじゃなきゃ、きっとまだウチの声は聞こえてない。』
『…疑問を、感じたんやろ?』
「疑問?」
「…!」
「まさか…」
『…おっと。』
『最初に断っておくけど。』
『これは、ウチのせいじゃないよ?』
『自分で勝手に、そうしたんやから』
「何言って…」
263: 2015/05/21(木) 00:29:12.95 ID:22TTHPWL.net
『…記憶。』
『無くなってるんと違う?』
「…!」
『でもそれは、自分が望んだ結果なんよ?』
「…意味が分からない。」
『そうやね…』
『どこから話せば良いかな。』
そう言って、目の前の『ウチ』は語りだした
今、ウチに起こっている事と
なぜ、そうなったのかを
『…そうやね。』
『まず…』
『記憶を、失った訳じゃないんよ。』
『無くなってるんと違う?』
「…!」
『でもそれは、自分が望んだ結果なんよ?』
「…意味が分からない。」
『そうやね…』
『どこから話せば良いかな。』
そう言って、目の前の『ウチ』は語りだした
今、ウチに起こっている事と
なぜ、そうなったのかを
『…そうやね。』
『まず…』
『記憶を、失った訳じゃないんよ。』
264: 2015/05/21(木) 00:29:55.67 ID:22TTHPWL.net
『海未ちゃんが説明してくれたように。』
『真姫ちゃんのお父さんが言ってる事は正しい。』
『正確には、忘れたんじゃなくて。』
『記憶の奥底に、しまい込んでしまっただけなんよ。』
『…とは言っても、多分覚えてないと思うけど。』
「何、言って…」
『簡単に説明すると。』
『ここにいるウチは、バックアップみたいな存在なん。』
「バックアップ…?」
『…少し、お勉強しよっか♪』
そう言って、『ウチ』は軽く笑った
『真姫ちゃんのお父さんが言ってる事は正しい。』
『正確には、忘れたんじゃなくて。』
『記憶の奥底に、しまい込んでしまっただけなんよ。』
『…とは言っても、多分覚えてないと思うけど。』
「何、言って…」
『簡単に説明すると。』
『ここにいるウチは、バックアップみたいな存在なん。』
「バックアップ…?」
『…少し、お勉強しよっか♪』
そう言って、『ウチ』は軽く笑った
265: 2015/05/21(木) 00:31:11.20 ID:22TTHPWL.net
『詳しく分かってる事ではないけど。』
『脳っていうのは、色んな情報を処理してるのは、知ってるよね。』
『特に、海馬では、記憶の処理が行われてるんよ。』
『その時得た情報…』
『それらを集めて、処理してるのが、脳の海馬っていう組織で。』
『そこで処理された情報が、バックアップをとる為に、記憶野へと運ばれる。』
『これが、記憶する事の簡単な手順やね。』
『多少アバウトに言ってるから、詳しくはちょっと違うんやけど…』
『とにかく、それらを処理して、記憶させるのが海馬で。』
『そこに何か障害が起こると、記憶に障害が出る。』
『…事故の時みたいにね。』
「…」
『脳っていうのは、色んな情報を処理してるのは、知ってるよね。』
『特に、海馬では、記憶の処理が行われてるんよ。』
『その時得た情報…』
『それらを集めて、処理してるのが、脳の海馬っていう組織で。』
『そこで処理された情報が、バックアップをとる為に、記憶野へと運ばれる。』
『これが、記憶する事の簡単な手順やね。』
『多少アバウトに言ってるから、詳しくはちょっと違うんやけど…』
『とにかく、それらを処理して、記憶させるのが海馬で。』
『そこに何か障害が起こると、記憶に障害が出る。』
『…事故の時みたいにね。』
「…」
266: 2015/05/21(木) 00:31:48.84 ID:22TTHPWL.net
『だから、現実には忘れてるんじゃ無くて。』
『思い出す事が出来ないだけで。』
『こうして、ウチみたいに記憶と言うデータは残ってる。』
『もちろん、他の病気みたいに。』
『記憶そのものが無くなるケースもあるけれど。』
「…じゃあ、貴女がウチの中のバックアップで。」
「ウチの記憶を、保管してる、って事?」
『…話が早くて助かるよ。』
『とは言っても、ウチも同じ「ウチ」やから。』
『分かってくれるとは思ってたけど。』
『…ところで。』
『夢って、何で見るか知ってる?』
「…え?」
『思い出す事が出来ないだけで。』
『こうして、ウチみたいに記憶と言うデータは残ってる。』
『もちろん、他の病気みたいに。』
『記憶そのものが無くなるケースもあるけれど。』
「…じゃあ、貴女がウチの中のバックアップで。」
「ウチの記憶を、保管してる、って事?」
『…話が早くて助かるよ。』
『とは言っても、ウチも同じ「ウチ」やから。』
『分かってくれるとは思ってたけど。』
『…ところで。』
『夢って、何で見るか知ってる?』
「…え?」
267: 2015/05/21(木) 00:32:20.38 ID:22TTHPWL.net
『夢の中で非常事態に備えてる、とか。』
『現実じゃ叶えられない願望を体験してる、とか。』
『脳の機能を回復させている、とか。』
『色々説はあるけど、ウチが思うのは。』
『脳で、記憶の処理が行われている、という説。』
「記憶の…処理?」
『今日あった出来事や、古い記憶。』
『覚えとかないといけない事や、忘れたいような記憶。』
『それらを取捨選択して、記憶してる間に、見るのが夢。』
『言わば、記憶の断片のような物。』
『…ウチは、そう思ってる。』
「断片…」
『現実じゃ叶えられない願望を体験してる、とか。』
『脳の機能を回復させている、とか。』
『色々説はあるけど、ウチが思うのは。』
『脳で、記憶の処理が行われている、という説。』
「記憶の…処理?」
『今日あった出来事や、古い記憶。』
『覚えとかないといけない事や、忘れたいような記憶。』
『それらを取捨選択して、記憶してる間に、見るのが夢。』
『言わば、記憶の断片のような物。』
『…ウチは、そう思ってる。』
「断片…」
268: 2015/05/21(木) 00:33:47.00 ID:22TTHPWL.net
『夢を覚えてないって言うのは。』
『単に、それが処理をしていただけで。』
『特に意味のある物じゃないからやと、ウチは思うんよ。』
『だから、こうして会った事も現実では忘れてる。』
『単なる、処理を視覚的に感じてるだけだから。』
『…必要な記憶を残して。』
『いらない物は、バックアップだけとって、現実では忘れる。』
『それが、記憶と夢との関係やと思う。』
「それが、今のウチと何か関わりがあるん…?」
『…言ったやろ?』
『必要な物を残して、いらない物は捨てる、って。』
『凛ちゃんに、言われて焦ったんやろ?』
『思い出してない事が、バレた、って。』
「…!」
『単に、それが処理をしていただけで。』
『特に意味のある物じゃないからやと、ウチは思うんよ。』
『だから、こうして会った事も現実では忘れてる。』
『単なる、処理を視覚的に感じてるだけだから。』
『…必要な記憶を残して。』
『いらない物は、バックアップだけとって、現実では忘れる。』
『それが、記憶と夢との関係やと思う。』
「それが、今のウチと何か関わりがあるん…?」
『…言ったやろ?』
『必要な物を残して、いらない物は捨てる、って。』
『凛ちゃんに、言われて焦ったんやろ?』
『思い出してない事が、バレた、って。』
「…!」
269: 2015/05/21(木) 00:34:10.82 ID:22TTHPWL.net
『あの時に、「ウチ」の記憶に変化が起こった。』
『このままじゃ、みんなにバレてしまう。』
『もっと、ウチになりきらないと。』
『記憶の戻ったフリをしないと。』
『…違う?』
「…」
『そう意識をした「ウチ」の脳は。』
『このまま「私」の記憶を持っていたら、邪魔になると判断した。』
『…だから、自ら忘れたんよ。』
『「ウチ」として、あり続けるために。』
「…!」
『このままじゃ、みんなにバレてしまう。』
『もっと、ウチになりきらないと。』
『記憶の戻ったフリをしないと。』
『…違う?』
「…」
『そう意識をした「ウチ」の脳は。』
『このまま「私」の記憶を持っていたら、邪魔になると判断した。』
『…だから、自ら忘れたんよ。』
『「ウチ」として、あり続けるために。』
「…!」
270: 2015/05/21(木) 00:34:47.33 ID:22TTHPWL.net
『…だけど、そこでひとつ問題が起こった。』
『病室で目が覚めた時、「ウチ」には1年の頃の記憶があった。』
『そこに、目が覚めてからの記憶が付け加えられた。』
『目が覚めてからの「ウチ」は。』
『今までの「ウチ」では、無かったん。』
『…言わば、「他の人格」とでも言うべき存在やったんよ。』
「他の人格…?」
『まあ、考えてみれば当たり前の事やけど。』
『今の「ウチ」なら分かってるとは思うけど。』
『「ウチ」が変われたのは、1年の終わり頃。』
『もちろん、「ウチ」はその時の記憶を持っていなかった。』
『病室で目が覚めた時、「ウチ」には1年の頃の記憶があった。』
『そこに、目が覚めてからの記憶が付け加えられた。』
『目が覚めてからの「ウチ」は。』
『今までの「ウチ」では、無かったん。』
『…言わば、「他の人格」とでも言うべき存在やったんよ。』
「他の人格…?」
『まあ、考えてみれば当たり前の事やけど。』
『今の「ウチ」なら分かってるとは思うけど。』
『「ウチ」が変われたのは、1年の終わり頃。』
『もちろん、「ウチ」はその時の記憶を持っていなかった。』
271: 2015/05/21(木) 00:35:56.35 ID:22TTHPWL.net
『だからこそ、急に与えられた立場…』
『μ'sという、居場所や。』
『友達がいたからこそ。』
『「ウチ」として、変わる必要が無くなってしまった。』
『変わらなくても、目が覚めた時そこにあったから。』
『ずっと欲しかった物が、向こうから現れた事で。』
『「ウチ」の、変わると言う選択肢が消えたんよ。』
『その必要がなかったから。』
『…だから、こう思った。』
『変わる必要があるのか、って。』
「あ…」
『言ってしまえば、そこが分かれ道やったんよ。』
『記憶を取り戻すか、そうでないかの。』
『μ'sという、居場所や。』
『友達がいたからこそ。』
『「ウチ」として、変わる必要が無くなってしまった。』
『変わらなくても、目が覚めた時そこにあったから。』
『ずっと欲しかった物が、向こうから現れた事で。』
『「ウチ」の、変わると言う選択肢が消えたんよ。』
『その必要がなかったから。』
『…だから、こう思った。』
『変わる必要があるのか、って。』
「あ…」
『言ってしまえば、そこが分かれ道やったんよ。』
『記憶を取り戻すか、そうでないかの。』
272: 2015/05/21(木) 00:36:57.40 ID:22TTHPWL.net
『そして、「ウチ」は選んだ。』
『変わらない事を。』
『記憶が無くても、このみんなとなら。』
『あの時、確かにそう思ったはず。』
『その内、記憶は戻るだろうから、って。』
『思い出さないと、っていう想いに。』
『自ら、ふたをした。』
「…」
『ところが、そう上手くはいかなかった。』
『えりちやにこっちみたいに、疑う人が現れた。』
『そこでまた、「ウチ」は考えた。』
『思い出せなくても、なりきればいい。』
『みんなの知ってる、「ウチ」として。』
『自分で、今の自分の人格を否定した。』
『変わらない事を。』
『記憶が無くても、このみんなとなら。』
『あの時、確かにそう思ったはず。』
『その内、記憶は戻るだろうから、って。』
『思い出さないと、っていう想いに。』
『自ら、ふたをした。』
「…」
『ところが、そう上手くはいかなかった。』
『えりちやにこっちみたいに、疑う人が現れた。』
『そこでまた、「ウチ」は考えた。』
『思い出せなくても、なりきればいい。』
『みんなの知ってる、「ウチ」として。』
『自分で、今の自分の人格を否定した。』
273: 2015/05/21(木) 00:37:28.38 ID:22TTHPWL.net
『脳はその考えに則って。』
『人格よりも、新たな記憶を優先した。』
『そんな時に、凛ちゃんを騙しきれてなかった事を知って。』
『「ウチ」は、酷く動揺した。』
『もっと、なりきらないと。』
『そのためには、それまでの「私」は必要ないと。』
『結果、自分で自分を否定した事に寄って。』
『脳はこの記憶を「いらない物」として判断した。』
『だから、忘れた。』
『今の「ウチ」に、必要なかったから。』
「そん、な…」
『絶望しても、仕方ないよ。』
『自分で、選んだんだから。』
『人格よりも、新たな記憶を優先した。』
『そんな時に、凛ちゃんを騙しきれてなかった事を知って。』
『「ウチ」は、酷く動揺した。』
『もっと、なりきらないと。』
『そのためには、それまでの「私」は必要ないと。』
『結果、自分で自分を否定した事に寄って。』
『脳はこの記憶を「いらない物」として判断した。』
『だから、忘れた。』
『今の「ウチ」に、必要なかったから。』
「そん、な…」
『絶望しても、仕方ないよ。』
『自分で、選んだんだから。』
274: 2015/05/21(木) 00:38:00.39 ID:22TTHPWL.net
『…目覚めた時。』
『自分で選んで、記憶を取り戻したいと思った。』
『でも、事故のせいで上手く思い出す事が出来なかった。』
『だから、「ウチ」は新しい人格と呼べる物を作った。』
「…やめて。」
『そして、思い出さない事を選んだ。』
『その上、みんなに打ち明ける事はせずに。』
『騙していく、と言う事を選んだ。』
「やめて…」
『…その結果が、今。』
『全てに中途半端な、「ウチ」が出来た。』
「やめてって言ってるやん!!」
『…』
「…返して。」
『自分で選んで、記憶を取り戻したいと思った。』
『でも、事故のせいで上手く思い出す事が出来なかった。』
『だから、「ウチ」は新しい人格と呼べる物を作った。』
「…やめて。」
『そして、思い出さない事を選んだ。』
『その上、みんなに打ち明ける事はせずに。』
『騙していく、と言う事を選んだ。』
「やめて…」
『…その結果が、今。』
『全てに中途半端な、「ウチ」が出来た。』
「やめてって言ってるやん!!」
『…』
「…返して。」
275: 2015/05/21(木) 00:38:25.86 ID:22TTHPWL.net
『…』
「…言ったよね、バックアップって。」
「って事は、その人格の記憶を持ってるんやろ?」
『…これの事?』
手に現れたのは、キャンパスノート
『…まあ、夢の中だから。』
『形は、何でもいいんやけど…』
「…返して。」
『確かに、返したら。』
『「ウチ」は、思い出すと思う。』
『もうひとつの人格の、「ウチ」として。』
『みんなから聞いた、記憶を受け継いで。』
「…分かってるなら、返して。」
「…言ったよね、バックアップって。」
「って事は、その人格の記憶を持ってるんやろ?」
『…これの事?』
手に現れたのは、キャンパスノート
『…まあ、夢の中だから。』
『形は、何でもいいんやけど…』
「…返して。」
『確かに、返したら。』
『「ウチ」は、思い出すと思う。』
『もうひとつの人格の、「ウチ」として。』
『みんなから聞いた、記憶を受け継いで。』
「…分かってるなら、返して。」
276: 2015/05/21(木) 00:39:23.50 ID:22TTHPWL.net
『…本当に、いいん?』
「…何が?」
『この記憶は、本当の「ウチ」じゃないよ。』
『たまたま出来た人格に。』
『事故の時の記憶と、「ウチ」が集めた記憶が繋がってるだけ。』
『本当の意味での、記憶が戻った事にはならないんよ?』
「…それでも。」
「それでも、今ここにいるのはウチ。」
「その記憶を失くしたまま、えりち達と一緒にいられる訳がない。」
「…独りになるのは、もうたくさん。」
「…あの頃に、戻りたくない。」
『…』
「…返して。」
「…何が?」
『この記憶は、本当の「ウチ」じゃないよ。』
『たまたま出来た人格に。』
『事故の時の記憶と、「ウチ」が集めた記憶が繋がってるだけ。』
『本当の意味での、記憶が戻った事にはならないんよ?』
「…それでも。」
「それでも、今ここにいるのはウチ。」
「その記憶を失くしたまま、えりち達と一緒にいられる訳がない。」
「…独りになるのは、もうたくさん。」
「…あの頃に、戻りたくない。」
『…』
「…返して。」
277: 2015/05/21(木) 00:39:50.94 ID:22TTHPWL.net
『…そうやって。』
『また、選ぶんやね。』
差し出された手から、ノートを受け取る
それは光となって、ウチの中に入った
「…そっか。」
「真姫ちゃん、あの時…」
ようやく、思い出せた
あの、病院での事
『…覚えておいて。』
『その記憶が戻ったという事は。』
『今の「ウチ」にとって、いらない情報が戻ったのと一緒。』
『気を抜くと、すぐにバレるよ。』
「…」
『また、選ぶんやね。』
差し出された手から、ノートを受け取る
それは光となって、ウチの中に入った
「…そっか。」
「真姫ちゃん、あの時…」
ようやく、思い出せた
あの、病院での事
『…覚えておいて。』
『その記憶が戻ったという事は。』
『今の「ウチ」にとって、いらない情報が戻ったのと一緒。』
『気を抜くと、すぐにバレるよ。』
「…」
278: 2015/05/21(木) 00:40:42.62 ID:22TTHPWL.net
「大丈夫。」
「後は、凛ちゃんだけやから。」
「…この「私」の記憶があっても。」
「今まで以上に、なりきってみせる。」
『…分かった。』
『また、目が覚めたらここでの事は忘れてると思う。』
『でも、覚えておいてほしい。』
『例え何が起こっても。』
『…それは、自分が選んだと言う事。』
「…分かってる。」
悲しそうなその顔を、視界から外して
夢から、覚めようとする
…きっと、真姫ちゃんが呼んでるから
また、あの黒い世界へ
「後は、凛ちゃんだけやから。」
「…この「私」の記憶があっても。」
「今まで以上に、なりきってみせる。」
『…分かった。』
『また、目が覚めたらここでの事は忘れてると思う。』
『でも、覚えておいてほしい。』
『例え何が起こっても。』
『…それは、自分が選んだと言う事。』
「…分かってる。」
悲しそうなその顔を、視界から外して
夢から、覚めようとする
…きっと、真姫ちゃんが呼んでるから
また、あの黒い世界へ
279: 2015/05/21(木) 00:41:17.21 ID:22TTHPWL.net
『…』
『行っちゃった…か。』
『まあ、ウチは単なるバックアップやし。』
『本人が、元々の記憶を取り戻そうとしない限り。』
『動く事は出来ないんやけど…』
『…』
『多分、気付いてるんやろ?』
『だからあんなに、元の記憶が戻る事を嫌った。』
『…元々のウチじゃない、もう一人の「私」。』
『元の記憶が戻るという事は…』
『「私」として過ごした時間が、無くなるから。』
『手に入った何もかもが、ゼロになるから。』
『…でも、気付いてほしい。』
『例えその記憶がなくなったとしても。』
『今、「ウチ」が過ごしてる日々は。』
『…いずれ訪れる未来の、自分の姿だって事。』
『行っちゃった…か。』
『まあ、ウチは単なるバックアップやし。』
『本人が、元々の記憶を取り戻そうとしない限り。』
『動く事は出来ないんやけど…』
『…』
『多分、気付いてるんやろ?』
『だからあんなに、元の記憶が戻る事を嫌った。』
『…元々のウチじゃない、もう一人の「私」。』
『元の記憶が戻るという事は…』
『「私」として過ごした時間が、無くなるから。』
『手に入った何もかもが、ゼロになるから。』
『…でも、気付いてほしい。』
『例えその記憶がなくなったとしても。』
『今、「ウチ」が過ごしてる日々は。』
『…いずれ訪れる未来の、自分の姿だって事。』
280: 2015/05/21(木) 00:42:08.04 ID:22TTHPWL.net
-----
…声が聞こえる
名前を呼ぶ、声が
「…希!」
「真姫…ちゃん?」
あれ?
どうして…
あ、そっか
確か、倒れて…
…!
「ご、ごめん、真姫ちゃん!」
「私、いきなり倒れ…て…」
言葉に出して、気付いた
でも、それを口に戻す事は、出来るはずもなく
「希…まさか…」
…やめて
…それ以上、口にしないで
「記憶、戻ってないの…?」
…声が聞こえる
名前を呼ぶ、声が
「…希!」
「真姫…ちゃん?」
あれ?
どうして…
あ、そっか
確か、倒れて…
…!
「ご、ごめん、真姫ちゃん!」
「私、いきなり倒れ…て…」
言葉に出して、気付いた
でも、それを口に戻す事は、出来るはずもなく
「希…まさか…」
…やめて
…それ以上、口にしないで
「記憶、戻ってないの…?」
289: 2015/05/23(土) 01:47:32.52 ID:CGPipAx4.net
「…あ。」
「そ、そんな事ないよ?」
「…」
「ちょっと、気が動転しちゃってただけで…」
「ちゃんと…思い出してるよ。」
「…本当?」
あまりにも、苦しい言い訳
完全に、油断してた
まさかここで間違えるなんて
「希…」
さっきまで、あんなに話せてたのに
あんなに、騙せてたのに
…なんで?
「そ、そんな事ないよ?」
「…」
「ちょっと、気が動転しちゃってただけで…」
「ちゃんと…思い出してるよ。」
「…本当?」
あまりにも、苦しい言い訳
完全に、油断してた
まさかここで間違えるなんて
「希…」
さっきまで、あんなに話せてたのに
あんなに、騙せてたのに
…なんで?
290: 2015/05/23(土) 01:48:14.44 ID:CGPipAx4.net
「…」
一体どうすれば…
また、騙せるのだろうか
頭の中を、その言葉が埋め尽くす
…騙す?
騙して…
騙し続けて、どうしたらいいんかな
これは
この記憶は
自分が勝手に---作り上げた物なのに
何より、どうしていきなり
あの時の記憶が戻ったのか
ついさっきまで、忘れてたのに
一体どうすれば…
また、騙せるのだろうか
頭の中を、その言葉が埋め尽くす
…騙す?
騙して…
騙し続けて、どうしたらいいんかな
これは
この記憶は
自分が勝手に---作り上げた物なのに
何より、どうしていきなり
あの時の記憶が戻ったのか
ついさっきまで、忘れてたのに
291: 2015/05/23(土) 01:48:58.98 ID:CGPipAx4.net
思い出せなかった記憶
あの時の、病院での事
…みんなと、話した事
思い出せた事は嬉しいのに
思い出せた事で
…嘘が綻び始めるなんて
「…」
何を言って良いのかが分からない
とにかく、何か口に出さなきゃ
…無言は、肯定ととられてしまう
「あ、あのな、真姫ちゃん。」
「ほんとに、間違えちゃっただけで…」
なんとか、絞り出した言葉
でも、真姫ちゃんの顔を見て
その言葉が意味の無い物だと悟る
あの時の、病院での事
…みんなと、話した事
思い出せた事は嬉しいのに
思い出せた事で
…嘘が綻び始めるなんて
「…」
何を言って良いのかが分からない
とにかく、何か口に出さなきゃ
…無言は、肯定ととられてしまう
「あ、あのな、真姫ちゃん。」
「ほんとに、間違えちゃっただけで…」
なんとか、絞り出した言葉
でも、真姫ちゃんの顔を見て
その言葉が意味の無い物だと悟る
292: 2015/05/23(土) 01:49:27.55 ID:CGPipAx4.net
「…真姫ちゃん。」
「どうして…」
「…」
「どうして…黙ってたの?」
これ以上の言葉は
ただ、真姫ちゃんを傷つけるだけだろう
…これ以上、辛い思いをさせてしまって良いのかな
「…」
…ううん、きっと違う
そうやって騙して来たのはウチだから
真姫ちゃんは、すでに傷ついているのだから
「…答えて、希。」
…ああ
どこで間違えたんかな
「どうして…」
「…」
「どうして…黙ってたの?」
これ以上の言葉は
ただ、真姫ちゃんを傷つけるだけだろう
…これ以上、辛い思いをさせてしまって良いのかな
「…」
…ううん、きっと違う
そうやって騙して来たのはウチだから
真姫ちゃんは、すでに傷ついているのだから
「…答えて、希。」
…ああ
どこで間違えたんかな
293: 2015/05/23(土) 01:50:03.06 ID:CGPipAx4.net
「…ごめん。」
ただ、それしか言えなかった
傷つけた事へのごめんなのか
騙してた事へのごめんなのか
…口に出したウチにも、分からなかった
ただ、謝らなければいけないと思った
悪さをして怒られる、子供のように
「…それは、何に対してのごめん?」
「…」
真姫ちゃんも、気付いてたみたい
…それもそうか
今まで作り上げたもの
それが全部…嘘だったのだから
「…ごめんなさい。」
ただ、それしか言えなかった
傷つけた事へのごめんなのか
騙してた事へのごめんなのか
…口に出したウチにも、分からなかった
ただ、謝らなければいけないと思った
悪さをして怒られる、子供のように
「…それは、何に対してのごめん?」
「…」
真姫ちゃんも、気付いてたみたい
…それもそうか
今まで作り上げたもの
それが全部…嘘だったのだから
「…ごめんなさい。」
294: 2015/05/23(土) 01:50:28.41 ID:CGPipAx4.net
真姫ちゃんの顔を見る事が出来ずに
ただ、頭を下げた
見られたくなかったのもある
どんな顔で向き合えばいいか、分からなかったから
…きっと、幻滅される
嫌われると思う
…もう
ここに、私の居場所は…
無くなってしまった
「…頭を上げて、希。」
ただ、頭を下げた
見られたくなかったのもある
どんな顔で向き合えばいいか、分からなかったから
…きっと、幻滅される
嫌われると思う
…もう
ここに、私の居場所は…
無くなってしまった
「…頭を上げて、希。」
295: 2015/05/23(土) 01:50:54.18 ID:CGPipAx4.net
「…」
「…こっちを向いて。」
「…」
出来れば、上げたくなかった
見たくない
見られたくない
…でも
そうしなければ、いけないと思った
「…」
ゆっくりと、顔を上げる
きっと、怒っているだろう
きっと、蔑んでいるだろう
きっと…きっと、嫌われただろう
そんな思いを打ち消すように
真姫ちゃんの瞳には、涙が溢れていた
「…こっちを向いて。」
「…」
出来れば、上げたくなかった
見たくない
見られたくない
…でも
そうしなければ、いけないと思った
「…」
ゆっくりと、顔を上げる
きっと、怒っているだろう
きっと、蔑んでいるだろう
きっと…きっと、嫌われただろう
そんな思いを打ち消すように
真姫ちゃんの瞳には、涙が溢れていた
296: 2015/05/23(土) 01:51:47.90 ID:CGPipAx4.net
「真姫…ちゃん…」
…ああ、そうか
騙して、傷つけて
そして…泣かせてしまったのか
なんて最低な…私
「…ごめんなさい。」
「ごめんなさい…」
謝る事しか、出来なかった
謝っても、変わる事の無い結果なのに
「…違うの、希。」
「謝って…欲しい訳じゃない。」
「…」
「気付いてあげられなくて…」
「ごめんなさい。」
…ああ、そうか
騙して、傷つけて
そして…泣かせてしまったのか
なんて最低な…私
「…ごめんなさい。」
「ごめんなさい…」
謝る事しか、出来なかった
謝っても、変わる事の無い結果なのに
「…違うの、希。」
「謝って…欲しい訳じゃない。」
「…」
「気付いてあげられなくて…」
「ごめんなさい。」
297: 2015/05/23(土) 01:52:09.29 ID:CGPipAx4.net
「…!?」
「なん…で…」
どうして、謝られているんだろう
真姫ちゃんは、何も悪くないのに
…どうして
「…私、知ってたの。」
「絵里が…希を、受け入れてない事に。」
「その事で、希を避けている事に。」
「知ってて…」
「何も、しなかった。」
「希の記憶が戻れば。」
「きっと…」
「きっと、元通りになる。」
「そう…思ってた。」
「なん…で…」
どうして、謝られているんだろう
真姫ちゃんは、何も悪くないのに
…どうして
「…私、知ってたの。」
「絵里が…希を、受け入れてない事に。」
「その事で、希を避けている事に。」
「知ってて…」
「何も、しなかった。」
「希の記憶が戻れば。」
「きっと…」
「きっと、元通りになる。」
「そう…思ってた。」
298: 2015/05/23(土) 01:52:35.54 ID:CGPipAx4.net
「…私がそう思って、すぐ。」
「希の記憶が、少しずつ戻りだした。」
「本当に…自然に。」
「…私には、そう感じた。」
「…」
「それで思ったの。」
「これで、全部上手くいく…って。」
「絵里が、これ以上疑う事も無い。」
「みんなが、ようやくまとまれる。」
「そう…思ってた。」
「…ううん。」
「思いたかった。」
「…あの時に、気付くべきだった。」
「希の記憶が、少しずつ戻りだした。」
「本当に…自然に。」
「…私には、そう感じた。」
「…」
「それで思ったの。」
「これで、全部上手くいく…って。」
「絵里が、これ以上疑う事も無い。」
「みんなが、ようやくまとまれる。」
「そう…思ってた。」
「…ううん。」
「思いたかった。」
「…あの時に、気付くべきだった。」
299: 2015/05/23(土) 01:53:09.59 ID:CGPipAx4.net
「…これは、多分だけど。」
「にこちゃんが、絵里と屋上で話した時。」
「…聞いていたんでしょ?」
「…!」
「…やっぱり。」
「今更、それに気付くなんて…」
「…タイミングが、良すぎるもの。」
「あれから、今まで以上に昔の事を聞くようになった。」
「みんなで話すときも、過去の話が多くなった。」
「…それに、気付く事が出来なかった。」
「…希。」
「もう…」
「泣かなくて、いいから。」
「にこちゃんが、絵里と屋上で話した時。」
「…聞いていたんでしょ?」
「…!」
「…やっぱり。」
「今更、それに気付くなんて…」
「…タイミングが、良すぎるもの。」
「あれから、今まで以上に昔の事を聞くようになった。」
「みんなで話すときも、過去の話が多くなった。」
「…それに、気付く事が出来なかった。」
「…希。」
「もう…」
「泣かなくて、いいから。」
300: 2015/05/23(土) 01:53:41.24 ID:CGPipAx4.net
「…え?」
ウチは、泣いてなんか…
「…ずっと、苦しかったんでしょ。」
「嘘をついてた事。」
「みんなを、騙してた事。」
「…本音を、言えなかった事。」
「もういいの。」
「…泣かなくて、いいから。」
「泣いてなんか…」
みんなを傷つけたのは、ウチなのに
「…それも、嘘。」
「ずっと…泣いてた。」
「…ここで。」
真姫ちゃんが、ウチの胸に手を当てる
ウチは、泣いてなんか…
「…ずっと、苦しかったんでしょ。」
「嘘をついてた事。」
「みんなを、騙してた事。」
「…本音を、言えなかった事。」
「もういいの。」
「…泣かなくて、いいから。」
「泣いてなんか…」
みんなを傷つけたのは、ウチなのに
「…それも、嘘。」
「ずっと…泣いてた。」
「…ここで。」
真姫ちゃんが、ウチの胸に手を当てる
301: 2015/05/23(土) 01:55:49.55 ID:CGPipAx4.net
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい。」
「ずっと…辛かったと思う。」
「絵里が疑ってる事を知って…」
「みんなに、受け入れてもらえないかもって思って。」
「…そんなの。」
「一人で、抱え込める訳ないじゃない。」
「…もういいの。」
「これ以上耐えられないなら、みんなに話せばいい。」
「私も、みんなに話すから。」
「続けるなら…せめて、私の事は信じて。」
「私は…例え記憶が無くても。」
「希は希だって…親友だって、思ってる。」
「絶対に貴女を、裏切ったりなんてしない。」
「…まだ、返せてないの。」
「今度は、私が貴女を救うわ。」
「…約束する。」
真姫ちゃんの言葉に答えるように
ウチの目にも、それが溢れ出した
手に落ちたそれは
ほのかに---あたたかかった
「ずっと…辛かったと思う。」
「絵里が疑ってる事を知って…」
「みんなに、受け入れてもらえないかもって思って。」
「…そんなの。」
「一人で、抱え込める訳ないじゃない。」
「…もういいの。」
「これ以上耐えられないなら、みんなに話せばいい。」
「私も、みんなに話すから。」
「続けるなら…せめて、私の事は信じて。」
「私は…例え記憶が無くても。」
「希は希だって…親友だって、思ってる。」
「絶対に貴女を、裏切ったりなんてしない。」
「…まだ、返せてないの。」
「今度は、私が貴女を救うわ。」
「…約束する。」
真姫ちゃんの言葉に答えるように
ウチの目にも、それが溢れ出した
手に落ちたそれは
ほのかに---あたたかかった
308: 2015/05/24(日) 00:08:49.17 ID:qAlNl/ka.net
-----
「おじゃましまーす!」
「…いらっしゃい、凛。」
「ねえねえ、真姫ちゃん。」
「いきなり、家に来てって…どうしたの?」
「…後で話すわ。」
「それより、中に入って?」
「…はーい!」
「…さ、中で待ってて?」
「お茶、入れてくるから。」
「うんっ♪」
「おじゃましまーす!」
「…いらっしゃい、凛。」
「ねえねえ、真姫ちゃん。」
「いきなり、家に来てって…どうしたの?」
「…後で話すわ。」
「それより、中に入って?」
「…はーい!」
「…さ、中で待ってて?」
「お茶、入れてくるから。」
「うんっ♪」
309: 2015/05/24(日) 00:09:16.99 ID:qAlNl/ka.net
-----
真姫ちゃんが出て行って、数分経った
そろそろ…
そう考えた時
リビングの扉が開いた
「…え?」
「…こんにちは、凛ちゃん。」
「希ちゃん…」
「また…騙したみたいで、ごめん。」
「話したい事が、あるんだ…」
ちゃんと、向き合おう
ちゃんと謝って
…それで、嫌われてもいい
ただ、この2人にもう、嘘はつかない
今だけは…自分の言葉で
真姫ちゃんが出て行って、数分経った
そろそろ…
そう考えた時
リビングの扉が開いた
「…え?」
「…こんにちは、凛ちゃん。」
「希ちゃん…」
「また…騙したみたいで、ごめん。」
「話したい事が、あるんだ…」
ちゃんと、向き合おう
ちゃんと謝って
…それで、嫌われてもいい
ただ、この2人にもう、嘘はつかない
今だけは…自分の言葉で
310: 2015/05/24(日) 00:09:40.11 ID:qAlNl/ka.net
-----
「…そっか。」
「やっぱり…戻ってなかったんだね。」
「凛は…どうして、気付いたの?」
「正直、私には分からなかった。」
「…凛も。」
「凛も、絶対そうだ、って思ったんじゃないんだよ?」
「ただ、なんとなく…」
「…だから、あの日に確認したくて。」
「凛ちゃん…」
「…凛にも、良く分からないんだ。」
「今までの希ちゃんみたいに、優しくて…」
「お姉ちゃんみたいな、感じで…」
「…でもね。」
「雰囲気が…違ったの。」
「…そっか。」
「やっぱり…戻ってなかったんだね。」
「凛は…どうして、気付いたの?」
「正直、私には分からなかった。」
「…凛も。」
「凛も、絶対そうだ、って思ったんじゃないんだよ?」
「ただ、なんとなく…」
「…だから、あの日に確認したくて。」
「凛ちゃん…」
「…凛にも、良く分からないんだ。」
「今までの希ちゃんみたいに、優しくて…」
「お姉ちゃんみたいな、感じで…」
「…でもね。」
「雰囲気が…違ったの。」
311: 2015/05/24(日) 00:10:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「雰囲気…?」
「うーん…」
「何かを、必氏に隠してるみたいな…」
「どこか、遠くを見てる気がしたの。」
「あ、そう言えば…!」
「何?凛…」
「凛達ね、この希ちゃんになってから…」
「一度も、わしわしされてないんだよ?」
「わしわし…?」
「…!」
「ああ…忘れてた…」
「えっと…そのわしわし、って?」
「そ、それは…///」
何故か、赤くなる真姫ちゃん
なにか、変な事言ったっけ…?
「うーん…」
「何かを、必氏に隠してるみたいな…」
「どこか、遠くを見てる気がしたの。」
「あ、そう言えば…!」
「何?凛…」
「凛達ね、この希ちゃんになってから…」
「一度も、わしわしされてないんだよ?」
「わしわし…?」
「…!」
「ああ…忘れてた…」
「えっと…そのわしわし、って?」
「そ、それは…///」
何故か、赤くなる真姫ちゃん
なにか、変な事言ったっけ…?
312: 2015/05/24(日) 00:11:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「わしわしって言うのはね…」
「希ちゃんが、みんなの胸を揉みしだく事にゃ!」
「胸を…」
「…」
「…ええっ!?」
む、胸を揉むって…私が!?
「もうちょっと、オブラートに包みなさいよ…///」
「え?合ってるでしょ?」
「それは…そうだけど。」
「えっ?えっ?」
「そんな事…してたの?」
「そうだよー?」
「こんな風に…」
凛ちゃんが両手を広げて近付いて来る
「希ちゃんが、みんなの胸を揉みしだく事にゃ!」
「胸を…」
「…」
「…ええっ!?」
む、胸を揉むって…私が!?
「もうちょっと、オブラートに包みなさいよ…///」
「え?合ってるでしょ?」
「それは…そうだけど。」
「えっ?えっ?」
「そんな事…してたの?」
「そうだよー?」
「こんな風に…」
凛ちゃんが両手を広げて近付いて来る
313: 2015/05/24(日) 00:11:33.56 ID:qAlNl/ka.net
「…はい、そこまで。」
胸に手が届くか届かないかの所で
真姫ちゃんに、止められた凛ちゃん
「あははっ!」
「希ちゃん、顔真っ赤~♪」
「…///」
こんな恥ずかしい事を
みんなに、してたなんて…
「…凛は、こっちの希ちゃんも好きだよ?」
「…!」
「記憶があるとか、無いとかじゃなくて…」
「希ちゃんは、希ちゃんだもん。」
「記憶が無かったときも。」
「希ちゃん…みんなに心配かけないように。」
「頑張ってたから。」
胸に手が届くか届かないかの所で
真姫ちゃんに、止められた凛ちゃん
「あははっ!」
「希ちゃん、顔真っ赤~♪」
「…///」
こんな恥ずかしい事を
みんなに、してたなんて…
「…凛は、こっちの希ちゃんも好きだよ?」
「…!」
「記憶があるとか、無いとかじゃなくて…」
「希ちゃんは、希ちゃんだもん。」
「記憶が無かったときも。」
「希ちゃん…みんなに心配かけないように。」
「頑張ってたから。」
314: 2015/05/24(日) 00:12:05.30 ID:qAlNl/ka.net
「凛ちゃん…」
「…凛の言う通りよ。」
「私も、賛成。」
「私達は、記憶が無いからって他人だとは思わない。」
「どんな形でも。」
「…一緒に過ごして来た、私達なんだから。」
「そうそう!」
「凛なんか、一昨日の晩ご飯ですら忘れちゃってるんだよ?」
「真姫ちゃんに借りたCDも、借りた事忘れててもう1ヶ月だし…」
「ちょっ…」
「それは返しなさいよ!!」
「えへへー。」
「…と、とにかく。」
「もう…嘘、つき続けなくてもいいんじゃない?」
「…凛の言う通りよ。」
「私も、賛成。」
「私達は、記憶が無いからって他人だとは思わない。」
「どんな形でも。」
「…一緒に過ごして来た、私達なんだから。」
「そうそう!」
「凛なんか、一昨日の晩ご飯ですら忘れちゃってるんだよ?」
「真姫ちゃんに借りたCDも、借りた事忘れててもう1ヶ月だし…」
「ちょっ…」
「それは返しなさいよ!!」
「えへへー。」
「…と、とにかく。」
「もう…嘘、つき続けなくてもいいんじゃない?」
315: 2015/05/24(日) 00:12:55.07 ID:qAlNl/ka.net
「…」
「きっと、みんなも受け入れてくれるわよ。」
「絵里だって、きっと。」
「私達で、説明すれば…」
「真姫ちゃんの言う通りにゃ!」
「凛達が、ちゃんとフォローするから。」
「だから、もう…」
「…ごめん、2人とも。」
「え…?」
「正直、2人にそう言ってもらえて嬉しい。」
「きっと、嫌われるだろうな、って思ってた。」
「それなのに…2人は、受け入れてくれた。」
「…嬉しかった。」
「きっと、みんなも受け入れてくれるわよ。」
「絵里だって、きっと。」
「私達で、説明すれば…」
「真姫ちゃんの言う通りにゃ!」
「凛達が、ちゃんとフォローするから。」
「だから、もう…」
「…ごめん、2人とも。」
「え…?」
「正直、2人にそう言ってもらえて嬉しい。」
「きっと、嫌われるだろうな、って思ってた。」
「それなのに…2人は、受け入れてくれた。」
「…嬉しかった。」
316: 2015/05/24(日) 00:13:27.73 ID:qAlNl/ka.net
「なんで…?」
「凛達じゃ、不安なの?」
「…そうじゃないよ。」
「2人がいてくれる事は嬉しい。」
「だったら…!」
「でも。」
「きっと今この話を言ってしまったら。」
「絵里ちゃんも…きっとμ'sも、ぎくしゃくすると思う。」
「騙してたから…なおさらね。」
「それは、私達が…」
「…大丈夫。」
「私は…」
「ウチは、大丈夫やから。」
「凛達じゃ、不安なの?」
「…そうじゃないよ。」
「2人がいてくれる事は嬉しい。」
「だったら…!」
「でも。」
「きっと今この話を言ってしまったら。」
「絵里ちゃんも…きっとμ'sも、ぎくしゃくすると思う。」
「騙してたから…なおさらね。」
「それは、私達が…」
「…大丈夫。」
「私は…」
「ウチは、大丈夫やから。」
317: 2015/05/24(日) 00:14:33.18 ID:qAlNl/ka.net
「希ちゃん…」
「2人の事が、信じれないとかじゃないんよ。」
「むしろ2人には、感謝しかない。」
「…でも。」
「だからこそ。」
「…今、打ち明けるべきじゃないんよ。」
「ウチは…このウチとして、これまでやって来た。」
「時間は短かったかもしれないけど…」
「それでも、今はこれが『ウチ』だから。」
「このまま、続けるよ。」
「でも、それじゃ…」
「…心配せんでも、大丈夫。」
「2人が、こうして打ち明けられなかった秘密を知ってくれてる。」
「こんなウチの事を、支えてくれるって、言ってくれた。」
「それだけで、十分。」
「それだけで…ウチは、頑張れるから。」
「2人の事が、信じれないとかじゃないんよ。」
「むしろ2人には、感謝しかない。」
「…でも。」
「だからこそ。」
「…今、打ち明けるべきじゃないんよ。」
「ウチは…このウチとして、これまでやって来た。」
「時間は短かったかもしれないけど…」
「それでも、今はこれが『ウチ』だから。」
「このまま、続けるよ。」
「でも、それじゃ…」
「…心配せんでも、大丈夫。」
「2人が、こうして打ち明けられなかった秘密を知ってくれてる。」
「こんなウチの事を、支えてくれるって、言ってくれた。」
「それだけで、十分。」
「それだけで…ウチは、頑張れるから。」
318: 2015/05/24(日) 00:15:39.44 ID:qAlNl/ka.net
-----
「希ちゃん…行っちゃったね。」
「やっぱり、怖いのかな?」
「…」
「真姫ちゃん?」
「…そう。」
「きっと希は…怖いのよ。」
「みんなに本音を知られてしまう事が。」
「それに…ただ、逃げてるだけ。」
「逃げてる…?」
「…前に、にこちゃんと話してたの。」
「あれは…きっと、希じゃない、『誰か』だって。」
「…『誰か』?」
「希ちゃん…行っちゃったね。」
「やっぱり、怖いのかな?」
「…」
「真姫ちゃん?」
「…そう。」
「きっと希は…怖いのよ。」
「みんなに本音を知られてしまう事が。」
「それに…ただ、逃げてるだけ。」
「逃げてる…?」
「…前に、にこちゃんと話してたの。」
「あれは…きっと、希じゃない、『誰か』だって。」
「…『誰か』?」
319: 2015/05/24(日) 00:16:12.59 ID:qAlNl/ka.net
「きっとあれは…希に出来た、もうひとつの人格。」
「『心』…と、言うべき物。」
「…心?」
「過去の記憶に、目が覚めてからの記憶が繋がった。」
「…言わば、もうひとりの希。」
「…ねえ、真姫ちゃん。」
「それって、もしかして…」
「…きっと、打ち明けてしまったら。」
「みんなの反応がどうであれ、今の希を縛るものは無くなる。」
「もしかしたら、全部思い出せるきっかけになるかもしれない…」
「でも、それじゃあ…」
「…ええ。」
「今の、希の『心』は。」
「恐らく…。」
「消えてしまうから。」
「『心』…と、言うべき物。」
「…心?」
「過去の記憶に、目が覚めてからの記憶が繋がった。」
「…言わば、もうひとりの希。」
「…ねえ、真姫ちゃん。」
「それって、もしかして…」
「…きっと、打ち明けてしまったら。」
「みんなの反応がどうであれ、今の希を縛るものは無くなる。」
「もしかしたら、全部思い出せるきっかけになるかもしれない…」
「でも、それじゃあ…」
「…ええ。」
「今の、希の『心』は。」
「恐らく…。」
「消えてしまうから。」
320: 2015/05/24(日) 00:16:34.78 ID:qAlNl/ka.net
今日はここまで
324: 2015/05/24(日) 23:34:41.72 ID:qAlNl/ka.net
-----
「…はあ。」
とすん、とソファに座って
ごろん、とそのまま横になる
「…裏切っちゃったよね。」
あんなに、私の事考えてくれてたのに
「…でも。」
それでも、私は続けると決めた
…自分で、選んだから
「頑張ろう。」
そして、何よりも…
自分が自分で無くなってしまう事
…それが
何よりも---怖いから
「…はあ。」
とすん、とソファに座って
ごろん、とそのまま横になる
「…裏切っちゃったよね。」
あんなに、私の事考えてくれてたのに
「…でも。」
それでも、私は続けると決めた
…自分で、選んだから
「頑張ろう。」
そして、何よりも…
自分が自分で無くなってしまう事
…それが
何よりも---怖いから
325: 2015/05/24(日) 23:35:21.24 ID:qAlNl/ka.net
「…うん。」
今更悩んだって、仕方ない
だってもう…2週間もない
来週の週末には、もうラブライブが待ってる
みんなに迷惑をかける訳にはいかないから
「…大丈夫。」
私なら…やれる
例え記憶が無くたって
学んで来た事がある
みんなの気持ちも、性格も
全部…
全部、覚えたんだから
「絶対に、ミスはしない。」
「せっかく…手に入ったんだから。」
天井に伸ばした手を
ただ、強く握りしめた
今更悩んだって、仕方ない
だってもう…2週間もない
来週の週末には、もうラブライブが待ってる
みんなに迷惑をかける訳にはいかないから
「…大丈夫。」
私なら…やれる
例え記憶が無くたって
学んで来た事がある
みんなの気持ちも、性格も
全部…
全部、覚えたんだから
「絶対に、ミスはしない。」
「せっかく…手に入ったんだから。」
天井に伸ばした手を
ただ、強く握りしめた
326: 2015/05/24(日) 23:35:52.60 ID:qAlNl/ka.net
-----
『…今日は、来ないか。』
『まあ…今度は、ちゃんと決めたみたいやし。』
『でも…』
『ううん。』
『それも、「私」が決める事だから。』
『ウチは、ここでこうして、見てるだけ。』
『…今は、ウチは動けない。』
『「私」が、そう決めた。』
『バックアップという存在として作り上げたのも、「私」。』
『だから…きっと、まだ気付けない。』
『…気付かないかもしれない。』
『だって…「私」は、ウチだから。』
『…今日は、来ないか。』
『まあ…今度は、ちゃんと決めたみたいやし。』
『でも…』
『ううん。』
『それも、「私」が決める事だから。』
『ウチは、ここでこうして、見てるだけ。』
『…今は、ウチは動けない。』
『「私」が、そう決めた。』
『バックアップという存在として作り上げたのも、「私」。』
『だから…きっと、まだ気付けない。』
『…気付かないかもしれない。』
『だって…「私」は、ウチだから。』
327: 2015/05/24(日) 23:36:21.93 ID:qAlNl/ka.net
-----
後悔先に立たず、なんて言葉がある
その言葉の通り
後で悔やむ事は、先に知る事ができない訳で
…だって、知ってたら回避しようとするもんね
誰だって、後悔なんてしたくないから
だからあの時、私は決めたのに
どうして、今、後悔してるんだろう?
…いや
どうして、後悔してしまうんだろう?
自分で、そう決めたのに
…これは、『私』なのに
…でも、もしかしたら
例え未来の事が分かったとしても
私は…この道を選んだのかな?
---自分が消えてしまわないように
後悔先に立たず、なんて言葉がある
その言葉の通り
後で悔やむ事は、先に知る事ができない訳で
…だって、知ってたら回避しようとするもんね
誰だって、後悔なんてしたくないから
だからあの時、私は決めたのに
どうして、今、後悔してるんだろう?
…いや
どうして、後悔してしまうんだろう?
自分で、そう決めたのに
…これは、『私』なのに
…でも、もしかしたら
例え未来の事が分かったとしても
私は…この道を選んだのかな?
---自分が消えてしまわないように
328: 2015/05/24(日) 23:37:15.96 ID:qAlNl/ka.net
-----
「そういえば…」
「亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」
「…うん!」
「2人とも…春から音ノ木坂の新入生。」
「亜里沙ちゃん、ずっと前からμ'sに入りたい、って言ってたもんね♪」
ある日の練習前
真姫ちゃんの言葉から、みんながその話題を口にする
「じゃあ、もしかして新メンバー?」
「ついに10人目誕生!?」
「…!」
「ちょっと、そういう話は…」
みんなの顔が、曇ってくる
えっと…こんな時、『ウチ』なら…
「…ふふっ。」
「どーやろ?」
そう言って、にこっちに視線を向ける
「そういえば…」
「亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」
「…うん!」
「2人とも…春から音ノ木坂の新入生。」
「亜里沙ちゃん、ずっと前からμ'sに入りたい、って言ってたもんね♪」
ある日の練習前
真姫ちゃんの言葉から、みんながその話題を口にする
「じゃあ、もしかして新メンバー?」
「ついに10人目誕生!?」
「…!」
「ちょっと、そういう話は…」
みんなの顔が、曇ってくる
えっと…こんな時、『ウチ』なら…
「…ふふっ。」
「どーやろ?」
そう言って、にこっちに視線を向ける
329: 2015/05/24(日) 23:37:56.62 ID:qAlNl/ka.net
「にこっちは卒業できるかどうか…」
「するわよっ!!」
『ウチ』らしく、取り繕ってはみたものの
みんなの空気は、相変わらず
…でも、いつか卒業という行事は来る訳で
それに伴って、μ'sのあり方も変わる
それは、仕方が無い事で…
少し前に、えりち達とこの話をした
ラブライブが終わるまで、この話はしない
余計な事を考えないように
ただ、ラブライブに集中できるように
…でも、やっぱり雰囲気は暗いままで
練習が始まっても…
どこか、不穏な空気が流れてた
「するわよっ!!」
『ウチ』らしく、取り繕ってはみたものの
みんなの空気は、相変わらず
…でも、いつか卒業という行事は来る訳で
それに伴って、μ'sのあり方も変わる
それは、仕方が無い事で…
少し前に、えりち達とこの話をした
ラブライブが終わるまで、この話はしない
余計な事を考えないように
ただ、ラブライブに集中できるように
…でも、やっぱり雰囲気は暗いままで
練習が始まっても…
どこか、不穏な空気が流れてた
330: 2015/05/24(日) 23:38:28.44 ID:qAlNl/ka.net
-----
今日はグラウンドで
体をならすトレーニングを中心に
今は、ランニングをしている
先頭に立って走っていると…
後ろから、穂乃果ちゃん達の声が聞こえてくる
「…私も同じです。」
「3人が抜けたμ'sを、μ'sと言っていいものなのか…」
「…そうだよね。」
「なんで卒業なんてあるんだろう…?」
やっぱり、みんなさっきの事を気にしてる
気にしたって…仕方ないやん?
そんな事を考えてると、にこっちが話に割り込んだ
「続けなさいよ…!」
今日はグラウンドで
体をならすトレーニングを中心に
今は、ランニングをしている
先頭に立って走っていると…
後ろから、穂乃果ちゃん達の声が聞こえてくる
「…私も同じです。」
「3人が抜けたμ'sを、μ'sと言っていいものなのか…」
「…そうだよね。」
「なんで卒業なんてあるんだろう…?」
やっぱり、みんなさっきの事を気にしてる
気にしたって…仕方ないやん?
そんな事を考えてると、にこっちが話に割り込んだ
「続けなさいよ…!」
331: 2015/05/24(日) 23:38:57.42 ID:qAlNl/ka.net
「メンバーの卒業や脱退があっても。」
「名前は変えずに続けていく。」
「…それがアイドルよ。」
「アイドル…」
「…そ。」
「そう言って名前を残していってもらう方が。」
「卒業していく私達だって、嬉しいの。」
「だから…っぷ!?」
えりちと目を見合わせて
にこっちを、止めた
「その話はラブライブが終わるまでしない約束よ?」
「分かってるわよ…」
みんなで、そう決めたんだから
「名前は変えずに続けていく。」
「…それがアイドルよ。」
「アイドル…」
「…そ。」
「そう言って名前を残していってもらう方が。」
「卒業していく私達だって、嬉しいの。」
「だから…っぷ!?」
えりちと目を見合わせて
にこっちを、止めた
「その話はラブライブが終わるまでしない約束よ?」
「分かってるわよ…」
みんなで、そう決めたんだから
332: 2015/05/24(日) 23:39:27.41 ID:qAlNl/ka.net
「…本当に、それでいいのかなあ?」
「…!」
「花陽…」
「だって…」
「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんも、μ'sに入るつもりでいるんでしょう?」
「ちゃんと…答えてあげなくて、いいのかな?」
「…」
「もし…私が同じ立場なら、辛いと思う。」
「かよちんは…どう思ってるの?」
「…!」
凛ちゃんが、そう告げる
「μ's…続けていきたいの?」
「それは…」
「…!」
「花陽…」
「だって…」
「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんも、μ'sに入るつもりでいるんでしょう?」
「ちゃんと…答えてあげなくて、いいのかな?」
「…」
「もし…私が同じ立場なら、辛いと思う。」
「かよちんは…どう思ってるの?」
「…!」
凛ちゃんが、そう告げる
「μ's…続けていきたいの?」
「それは…」
333: 2015/05/24(日) 23:39:55.40 ID:qAlNl/ka.net
「何遠慮してるのよ!」
「続けなさいよ…?」
「メンバー全員入れ替わるんならともかく。」
「貴女達6人は残るんだから。」
「…遠慮してる訳じゃないよ?」
「ただ…私にとってのμ'sって。」
「この、9人で…」
「一人欠けても、違うんじゃないか、って。」
「…私も、花陽と同じ。」
真姫ちゃんが続ける
「でも…にこちゃんの言う事も分かる。」
「μ'sという名前を消すのは辛い。」
「だったら…続けていった方がいいんじゃないか、って。」
「…でしょ?それでいいのよ。」
「続けなさいよ…?」
「メンバー全員入れ替わるんならともかく。」
「貴女達6人は残るんだから。」
「…遠慮してる訳じゃないよ?」
「ただ…私にとってのμ'sって。」
「この、9人で…」
「一人欠けても、違うんじゃないか、って。」
「…私も、花陽と同じ。」
真姫ちゃんが続ける
「でも…にこちゃんの言う事も分かる。」
「μ'sという名前を消すのは辛い。」
「だったら…続けていった方がいいんじゃないか、って。」
「…でしょ?それでいいのよ。」
334: 2015/05/24(日) 23:41:16.34 ID:qAlNl/ka.net
「…希は。」
「希は…どう思ってるのよ。」
「ウチは…」
…ウチは、どうしたいんかな?
いや、『ウチ』なら、どうするのか
「…決められない。」
「それを決めるのは…穂乃果達だと思う。」
「…!」
えりちが、話に加わる
「私達は、必ず卒業するの。」
「スクールアイドルを続ける事はできない。」
「だから…その後の事を言ってはいけない。」
「私は、そう思ってる。」
「決めるのは、穂乃果達。」
「それが私の考え。」
「絵里…」
にこっちの頭に、手を置く
「…!」
「…そうかもしれないね。」
「希は…どう思ってるのよ。」
「ウチは…」
…ウチは、どうしたいんかな?
いや、『ウチ』なら、どうするのか
「…決められない。」
「それを決めるのは…穂乃果達だと思う。」
「…!」
えりちが、話に加わる
「私達は、必ず卒業するの。」
「スクールアイドルを続ける事はできない。」
「だから…その後の事を言ってはいけない。」
「私は、そう思ってる。」
「決めるのは、穂乃果達。」
「それが私の考え。」
「絵里…」
にこっちの頭に、手を置く
「…!」
「…そうかもしれないね。」
335: 2015/05/24(日) 23:41:55.22 ID:qAlNl/ka.net
-----
「まったく…」
「絵里ってば、意地張って…」
「別に、意地を張ったんじゃないわ。」
「言った事は、本心よ。」
「…本気?」
「本気で…そう思うの?」
「ええ…勿論。」
練習が終わって…結局
みんなで、その事について考える事になった
そこで、ウチら3人はカフェへ
まったりとした空気の中
2人の表情は、真剣で
…聞いてるこっちも、顔に力が入る
「…で。」
「希の意見は?」
「まったく…」
「絵里ってば、意地張って…」
「別に、意地を張ったんじゃないわ。」
「言った事は、本心よ。」
「…本気?」
「本気で…そう思うの?」
「ええ…勿論。」
練習が終わって…結局
みんなで、その事について考える事になった
そこで、ウチら3人はカフェへ
まったりとした空気の中
2人の表情は、真剣で
…聞いてるこっちも、顔に力が入る
「…で。」
「希の意見は?」
336: 2015/05/24(日) 23:44:08.00 ID:qAlNl/ka.net
「ウチは…」
「こういう事に関して消極的なのは、いつもの事だけど。」
「私達のこれからにも関係してるんだから、ちゃんと言いなさいよ?」
「そうね…」
「希の意見も、聞いてみたい所ね。」
「…うん。」
μ'sは…このグループは
『ウチ』が、名付けたもの
…そして、ずっと見守ってきたもの
3人で始まったときから、ずっと
なら、それだけ思い入れがある
それだけ、大切に思ってきた
だったら…
「ウチは…μ's、続けてほしいな。」
「こういう事に関して消極的なのは、いつもの事だけど。」
「私達のこれからにも関係してるんだから、ちゃんと言いなさいよ?」
「そうね…」
「希の意見も、聞いてみたい所ね。」
「…うん。」
μ'sは…このグループは
『ウチ』が、名付けたもの
…そして、ずっと見守ってきたもの
3人で始まったときから、ずっと
なら、それだけ思い入れがある
それだけ、大切に思ってきた
だったら…
「ウチは…μ's、続けてほしいな。」
347: 2015/05/26(火) 20:54:29.16 ID:DAf6izzQ.net
「え…?」
「ほら、やっぱり希もそう思うでしょ!?」
「ちょ、ちょっと待って…」
「本当に、それで良いの?希。」
「どういう事?えりち。」
「だって、貴女…」
「あんなに…」
「えりち…?」
なんで、そんなに悲しそうな顔をするん?
自分が名前をつけて、見守って来たんだから
それが続いてくって、嬉しい事なんじゃないん?
「…そう。」
「分かったわ。」
「…それが、貴女の答えなのね。」
「ほら、やっぱり希もそう思うでしょ!?」
「ちょ、ちょっと待って…」
「本当に、それで良いの?希。」
「どういう事?えりち。」
「だって、貴女…」
「あんなに…」
「えりち…?」
なんで、そんなに悲しそうな顔をするん?
自分が名前をつけて、見守って来たんだから
それが続いてくって、嬉しい事なんじゃないん?
「…そう。」
「分かったわ。」
「…それが、貴女の答えなのね。」
348: 2015/05/26(火) 20:55:00.08 ID:DAf6izzQ.net
「ちょっと絵里、そんな言い方…!」
「…いいえ。」
「怒ってる訳じゃないの。」
「ただ、意外だったから…」
「…意外?」
「昔の希なら…」
「…!」
「…ごめんなさい。」
「とにかく、私は反対よ。」
「それにみんなに言った通り。」
「穂乃果達が、決めるべきだと思うから。」
昔の希、という言葉に
少し、ドキッとした
…大丈夫
バレては…いない
「…いいえ。」
「怒ってる訳じゃないの。」
「ただ、意外だったから…」
「…意外?」
「昔の希なら…」
「…!」
「…ごめんなさい。」
「とにかく、私は反対よ。」
「それにみんなに言った通り。」
「穂乃果達が、決めるべきだと思うから。」
昔の希、という言葉に
少し、ドキッとした
…大丈夫
バレては…いない
349: 2015/05/26(火) 20:55:56.77 ID:DAf6izzQ.net
「…それに関しては、ウチも賛成よ?」
「続けていくのは、あの子達だから。」
「それでも…!」
「…にこっち。」
「…!」
「今まで…ずっと、頑張って来たんだから。」
「これからは…あの子達に、任せるべきと違う?」
「それは…」
「…そうね。」
「私達の想いを繋いでくれる事は嬉しい事だけど。」
「これから頑張るのは、彼女達なんだから。」
「…」
「それじゃあ、何のためにここにいるのよ…?」
「それはほら…ね?」
「続けていくのは、あの子達だから。」
「それでも…!」
「…にこっち。」
「…!」
「今まで…ずっと、頑張って来たんだから。」
「これからは…あの子達に、任せるべきと違う?」
「それは…」
「…そうね。」
「私達の想いを繋いでくれる事は嬉しい事だけど。」
「これから頑張るのは、彼女達なんだから。」
「…」
「それじゃあ、何のためにここにいるのよ…?」
「それはほら…ね?」
350: 2015/05/26(火) 20:56:50.38 ID:DAf6izzQ.net
「…まあいいわ。」
「絵里の考えも、希の考えも分かる。」
「でも、私もこれは譲れない。」
「だったら、あの子達に任せるしか無いって事も。」
「…そうやね。」
「でも…私も、ちょっと意外だった。」
「え?」
「だって、普段なら…」
「…いや、もう関係ないわね。」
「…とにかく。」
「みんなの答えを、待ちましょう。」
「それまでは、私達らしく。」
「…分かってる。」
「…うん。」
「絵里の考えも、希の考えも分かる。」
「でも、私もこれは譲れない。」
「だったら、あの子達に任せるしか無いって事も。」
「…そうやね。」
「でも…私も、ちょっと意外だった。」
「え?」
「だって、普段なら…」
「…いや、もう関係ないわね。」
「…とにかく。」
「みんなの答えを、待ちましょう。」
「それまでは、私達らしく。」
「…分かってる。」
「…うん。」
351: 2015/05/26(火) 20:57:22.60 ID:DAf6izzQ.net
-----
「…」
『昔の希なら…』
「…」
『だって、普段なら…』
「…」
どこか、おかしかったんかな
昔のウチ?
普段の…ウチ?
でも、こうして経験して来て
考え方は、分かってるつもり
現に、2人とも気付いてない…はず
「…はあ。」
「…ため息つくと、幸せが逃げるわよ?」
「…」
『昔の希なら…』
「…」
『だって、普段なら…』
「…」
どこか、おかしかったんかな
昔のウチ?
普段の…ウチ?
でも、こうして経験して来て
考え方は、分かってるつもり
現に、2人とも気付いてない…はず
「…はあ。」
「…ため息つくと、幸せが逃げるわよ?」
352: 2015/05/26(火) 20:57:59.59 ID:DAf6izzQ.net
「…!」
公園のベンチに座っていると
後ろから、声をかけられた
「…真姫ちゃん。」
「話し合い…終わったの?」
「え…?」
「してたんでしょ?」
「これから、どうするか…」
「…ああ、うん。」
「…決まった?」
「…一応。」
「ウチらは…」
「みんなが決めるべき、って事になった。」
「そう…」
公園のベンチに座っていると
後ろから、声をかけられた
「…真姫ちゃん。」
「話し合い…終わったの?」
「え…?」
「してたんでしょ?」
「これから、どうするか…」
「…ああ、うん。」
「…決まった?」
「…一応。」
「ウチらは…」
「みんなが決めるべき、って事になった。」
「そう…」
353: 2015/05/26(火) 20:58:24.42 ID:DAf6izzQ.net
「真姫ちゃん達も?」
「…そうね。」
「さっきまで、話してたわ。」
「そう簡単に…決まる物ではないけれど。」
「…それもそうやね。」
「…希は?」
「…へ?」
「どうした方がいいと思うの?」
「だから、みんなに任せるって…」
「それは、3年生の意見でしょ?」
「希自身は、どうなの?」
「ウチは…」
「μ's、続けてほしいな…って。」
「…そうね。」
「さっきまで、話してたわ。」
「そう簡単に…決まる物ではないけれど。」
「…それもそうやね。」
「…希は?」
「…へ?」
「どうした方がいいと思うの?」
「だから、みんなに任せるって…」
「それは、3年生の意見でしょ?」
「希自身は、どうなの?」
「ウチは…」
「μ's、続けてほしいな…って。」
354: 2015/05/26(火) 21:00:08.90 ID:DAf6izzQ.net
「…」
「…真姫ちゃん?」
「…そう。」
「…意外?」
「…どうして、そう思うの?」
「えりちも…にこっちも。」
「今の真姫ちゃんと、同じ反応したから。」
「…」
「…そうね。」
「意外かと聞かれたら…意外ね。」
「…なんで?」
「希らしく…ないから。」
ウチ…らしく?
「…真姫ちゃん?」
「…そう。」
「…意外?」
「…どうして、そう思うの?」
「えりちも…にこっちも。」
「今の真姫ちゃんと、同じ反応したから。」
「…」
「…そうね。」
「意外かと聞かれたら…意外ね。」
「…なんで?」
「希らしく…ないから。」
ウチ…らしく?
355: 2015/05/26(火) 21:00:37.37 ID:DAf6izzQ.net
「よかったら…聞かせてもらえない?」
「どうして…希が、そう思ったのか。」
それから…ぽつぽつと
ウチは、真姫ちゃんに想いを吐き出した
「…そう。」
「自分が名前をつけて…見守って来た。」
「今まで、そうやって来たんやから…」
「無くなってほしくないと、思うのが普通じゃない?」
「自分の想いを込めた居場所が。」
「ずっと…続いてほしい。」
「そう思うのは…間違いなんかな。」
真姫ちゃんは、ちゃんと目を見て聞いてくれた
真剣に、話を聞いてくれてるのが分かる
だからこそ…知りたい
「どうして…希が、そう思ったのか。」
それから…ぽつぽつと
ウチは、真姫ちゃんに想いを吐き出した
「…そう。」
「自分が名前をつけて…見守って来た。」
「今まで、そうやって来たんやから…」
「無くなってほしくないと、思うのが普通じゃない?」
「自分の想いを込めた居場所が。」
「ずっと…続いてほしい。」
「そう思うのは…間違いなんかな。」
真姫ちゃんは、ちゃんと目を見て聞いてくれた
真剣に、話を聞いてくれてるのが分かる
だからこそ…知りたい
356: 2015/05/26(火) 21:01:01.63 ID:DAf6izzQ.net
「私は…」
「やっぱり、意外って感じるわ。」
「でもそれは、仕方ない事。」
「きっと…その想いが、違うのよ。」
「想いが…?」
「昔の希が、μ'sに込めた想い。」
「今の希が、μ'sに込める想い。」
「…そこが、にこちゃん達が意外に感じる理由だと思う。」
「込めた…想い。」
「でもね、希。」
「私は、今の希の考えでも良いと思う。」
「…え?」
「やっぱり、意外って感じるわ。」
「でもそれは、仕方ない事。」
「きっと…その想いが、違うのよ。」
「想いが…?」
「昔の希が、μ'sに込めた想い。」
「今の希が、μ'sに込める想い。」
「…そこが、にこちゃん達が意外に感じる理由だと思う。」
「込めた…想い。」
「でもね、希。」
「私は、今の希の考えでも良いと思う。」
「…え?」
357: 2015/05/26(火) 21:01:30.22 ID:DAf6izzQ.net
「私は、希の気持ちを否定したりなんてしない。」
「だからこそ…言えるのは。」
「今の希の気持ちを、大事にしてほしい。」
「今の希が、このまま続ける事にしたんだから。」
「その考えは、貴女自身の物。」
「今までみたいに、誰かの様子に振り回される必要はない。」
「今は、貴女が東條希なんだから。」
「真姫ちゃん…」
「希は、希よ。」
「今の自分が、一番いいと思う物を、選べば良い。」
「例えそれが間違っていたとしても…」
「それが、希の選んだ答えなんだから。」
「…」
「だからこそ…言えるのは。」
「今の希の気持ちを、大事にしてほしい。」
「今の希が、このまま続ける事にしたんだから。」
「その考えは、貴女自身の物。」
「今までみたいに、誰かの様子に振り回される必要はない。」
「今は、貴女が東條希なんだから。」
「真姫ちゃん…」
「希は、希よ。」
「今の自分が、一番いいと思う物を、選べば良い。」
「例えそれが間違っていたとしても…」
「それが、希の選んだ答えなんだから。」
「…」
358: 2015/05/26(火) 21:01:56.32 ID:DAf6izzQ.net
「…私は、嫌いじゃないわよ。」
「希の、その考え。」
「…え?」
「誰かのためにずっと動き続けてきた、前の希も。」
「みんなと一緒に、自分も幸せになりたいと思ってる、今の希も。」
「どちらも、同じ希だから。」
「…きっと、正解はないのよ。」
「μ'sを続けるにしても、辞めるにしても。」
「その結果に反対する人は、必ずいる。」
「絵里と…にこちゃんのように。」
「だったら…自分の想いに、任せちゃえばいいのよ。」
「自分が、こうしたいと思う事。」
「…何のために、決めるのか。」
「希の、その考え。」
「…え?」
「誰かのためにずっと動き続けてきた、前の希も。」
「みんなと一緒に、自分も幸せになりたいと思ってる、今の希も。」
「どちらも、同じ希だから。」
「…きっと、正解はないのよ。」
「μ'sを続けるにしても、辞めるにしても。」
「その結果に反対する人は、必ずいる。」
「絵里と…にこちゃんのように。」
「だったら…自分の想いに、任せちゃえばいいのよ。」
「自分が、こうしたいと思う事。」
「…何のために、決めるのか。」
359: 2015/05/26(火) 21:02:23.23 ID:DAf6izzQ.net
「何のため…」
「…そう言えば。」
「昔…初めて、合宿をした時。」
「希に言われたわ。」
『…ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。』
『ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。』
『確かに、μ'sを作ったんは穂乃果ちゃん達だったけど。』
『ウチもずっと見て来た。』
『…それだけ、思い入れがある。』
「…って。」
「ウチが…?」
「ええ。」
「朝に海辺で、希は確かにこう言った。」
「そっか…」
「…そう言えば。」
「昔…初めて、合宿をした時。」
「希に言われたわ。」
『…ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。』
『ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。』
『確かに、μ'sを作ったんは穂乃果ちゃん達だったけど。』
『ウチもずっと見て来た。』
『…それだけ、思い入れがある。』
「…って。」
「ウチが…?」
「ええ。」
「朝に海辺で、希は確かにこう言った。」
「そっか…」
360: 2015/05/26(火) 21:02:51.03 ID:DAf6izzQ.net
「さっきも言った通り。」
「今の気持ちを、一番大事にするべきだと思う。」
「それでも…私が思うのは。」
「かつて、希がそう言ってくれた事も。」
「今、希が、考えている事も。」
「…どちらも、同じだと思う。」
「同じ…?」
「どちらも、何のために…」
「誰のための、言葉なのか。」
「希は…分かってるでしょ?」
「…」
…ああ、そうか
答えは、目の前にあったんだ
「あのね、真姫ちゃん…」
「今の気持ちを、一番大事にするべきだと思う。」
「それでも…私が思うのは。」
「かつて、希がそう言ってくれた事も。」
「今、希が、考えている事も。」
「…どちらも、同じだと思う。」
「同じ…?」
「どちらも、何のために…」
「誰のための、言葉なのか。」
「希は…分かってるでしょ?」
「…」
…ああ、そうか
答えは、目の前にあったんだ
「あのね、真姫ちゃん…」
361: 2015/05/26(火) 21:03:17.09 ID:DAf6izzQ.net
-----
「…」
ベッドに、倒れ込む
「誰のため…か。」
そんなの、決まってる
…ううん
ずっと…そうだった
そのために、頑張って来た
だから…
今度も、そのために
「…すぅ。」
大きく息を吸って…吐く
「…決めよう。」
「今度こそ…」
…一番大事なもののために
「…」
ベッドに、倒れ込む
「誰のため…か。」
そんなの、決まってる
…ううん
ずっと…そうだった
そのために、頑張って来た
だから…
今度も、そのために
「…すぅ。」
大きく息を吸って…吐く
「…決めよう。」
「今度こそ…」
…一番大事なもののために
362: 2015/05/26(火) 21:03:42.93 ID:DAf6izzQ.net
-----
…声が聞こえる
名前を呼ぶ、声が
この、声は---
『…おかえり。』
『いや、この場合は…』
『いらっしゃい、の方がいいんかな?』
「…」
『また、迷ってるん?』
「…違う、決めたの。」
『…』
「…話があるの。」
…声が聞こえる
名前を呼ぶ、声が
この、声は---
『…おかえり。』
『いや、この場合は…』
『いらっしゃい、の方がいいんかな?』
「…」
『また、迷ってるん?』
「…違う、決めたの。」
『…』
「…話があるの。」
367: 2015/05/27(水) 21:38:21.43 ID:vFXhb/CQ.net
-----
「よ~しっ!!」
「遊ぶぞ~!!」
週末、穂乃果ちゃん達に呼ばれて
ウチらは、集まった
「…遊ぶ?」
「いきなり日曜に呼び出して来たから。」
「何かと思えば…」
にこっちとえりちも、驚いてる
「休養するんじゃなかったん…?」
「それはそうだけど…」
「気分転換も必要でしょ?」
「楽しい、って気持ちを沢山持って。」
「ステージに立った方がいいし♪」
「よ~しっ!!」
「遊ぶぞ~!!」
週末、穂乃果ちゃん達に呼ばれて
ウチらは、集まった
「…遊ぶ?」
「いきなり日曜に呼び出して来たから。」
「何かと思えば…」
にこっちとえりちも、驚いてる
「休養するんじゃなかったん…?」
「それはそうだけど…」
「気分転換も必要でしょ?」
「楽しい、って気持ちを沢山持って。」
「ステージに立った方がいいし♪」
368: 2015/05/27(水) 21:38:53.93 ID:vFXhb/CQ.net
「そ、そうですよ…!!」
「今日、あったかいし♪」
「遊ぶのは、精神的な休養だって、本で読んだ事あるし…!」
「そうそう!」
「家に籠っててもしょうがないでしょ?」
「にゃーっ!!」
穂乃果ちゃんの話に、皆がすんなり同意する
海未ちゃんなんかは、何か言いそうやのに…
「なによ…」
「今日はやけに強引ね。」
にこっちも、勘ぐってる
「…ほら、それに。」
「今日、あったかいし♪」
「遊ぶのは、精神的な休養だって、本で読んだ事あるし…!」
「そうそう!」
「家に籠っててもしょうがないでしょ?」
「にゃーっ!!」
穂乃果ちゃんの話に、皆がすんなり同意する
海未ちゃんなんかは、何か言いそうやのに…
「なによ…」
「今日はやけに強引ね。」
にこっちも、勘ぐってる
「…ほら、それに。」
369: 2015/05/27(水) 21:39:30.58 ID:vFXhb/CQ.net
「μ's結成してからみんな揃って遊んだ事ってないでしょ?」
「一度くらい、いいかな?って♪」
「でも…」
「遊ぶって、何するつもり?」
「遊園地行くにゃ!」
「子供ね…」
「私は美術館。」
「えっと、私はまずアイドルショップに…!」
「バラバラじゃない!!」
にこっちがツッコむと、穂乃果ちゃんは…
「う~ん…」
「じゃあ、全部!」
「「はああ!?」」
「行きたい所、全部行こう?」
「一度くらい、いいかな?って♪」
「でも…」
「遊ぶって、何するつもり?」
「遊園地行くにゃ!」
「子供ね…」
「私は美術館。」
「えっと、私はまずアイドルショップに…!」
「バラバラじゃない!!」
にこっちがツッコむと、穂乃果ちゃんは…
「う~ん…」
「じゃあ、全部!」
「「はああ!?」」
「行きたい所、全部行こう?」
370: 2015/05/27(水) 21:40:16.97 ID:vFXhb/CQ.net
「…本気!?」
「うん!」
「みんな行きたい所を1個ずつ挙げて。」
「全部遊びに行こう!!」
「いいでしょ!?」
すっごく笑顔で、答える穂乃果ちゃん
「…しょうがないわね~。」
みんなの顔も、笑顔になる
やっぱり、μ'sで何かをするって事は
みんな、楽しみなんやね
穂乃果ちゃんが、飛び出す
「しゅっぱーつっ!!」
「「おーっ!!」」
「うん!」
「みんな行きたい所を1個ずつ挙げて。」
「全部遊びに行こう!!」
「いいでしょ!?」
すっごく笑顔で、答える穂乃果ちゃん
「…しょうがないわね~。」
みんなの顔も、笑顔になる
やっぱり、μ'sで何かをするって事は
みんな、楽しみなんやね
穂乃果ちゃんが、飛び出す
「しゅっぱーつっ!!」
「「おーっ!!」」
371: 2015/05/27(水) 21:41:01.71 ID:vFXhb/CQ.net
-----
それから、μ'sのみんなで
アイドルショップを回ったり
ゲームセンターで勝負したり
動物園で、動物と戯れたり
緑地公園で、いわゆるスワンボートに乗ったり
他にも浅草や、遊園地なんか
みんなの思い思いの場所に、立ち寄る
…やっぱり、誰かと
この、みんなといられる事
それが、何よりも楽しい
初めて出来た、ともだち
初めて出来た、居場所
終わってほしくない
ずっとこのともだちと
…そんな気持ちをかき消すように
日は、どんどんと傾いていった
それから、μ'sのみんなで
アイドルショップを回ったり
ゲームセンターで勝負したり
動物園で、動物と戯れたり
緑地公園で、いわゆるスワンボートに乗ったり
他にも浅草や、遊園地なんか
みんなの思い思いの場所に、立ち寄る
…やっぱり、誰かと
この、みんなといられる事
それが、何よりも楽しい
初めて出来た、ともだち
初めて出来た、居場所
終わってほしくない
ずっとこのともだちと
…そんな気持ちをかき消すように
日は、どんどんと傾いていった
372: 2015/05/27(水) 21:41:58.23 ID:vFXhb/CQ.net
「それで後は…穂乃果が遊びに行きたい所だけど。」
「私は…」
「海に行きたい。」
「海?」
「うん。」
「誰もいない海に行って。」
「9人しかいない場所で。」
「9人だけの、景色が見たい。」
「…ダメかな?」
穂乃果ちゃんの言葉に
若干戸惑いを見せつつも
誰も、反対はしなかった
…せめて、日が落ちきるまでに
目的地へと、足を速めた
「私は…」
「海に行きたい。」
「海?」
「うん。」
「誰もいない海に行って。」
「9人しかいない場所で。」
「9人だけの、景色が見たい。」
「…ダメかな?」
穂乃果ちゃんの言葉に
若干戸惑いを見せつつも
誰も、反対はしなかった
…せめて、日が落ちきるまでに
目的地へと、足を速めた
373: 2015/05/27(水) 21:42:28.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----
電車に揺られて、数十分
落ちてくる日が、オレンジ色に変わる頃
ウチらは、海岸沿いの駅に着いた
なんとなく、薄暗くなった雰囲気がウチらを包んで
あんまり言葉を交わす事も無く
浜辺に足を運ぶ
潮の香りが立ちこめる中
荷物を濡れない所に置いて
…いざ、波打ち際まで
「「…わあ~っ!!」」
ちょうど、水平線に沈み始める
紅く染まった夕日を見る事が出来た
電車に揺られて、数十分
落ちてくる日が、オレンジ色に変わる頃
ウチらは、海岸沿いの駅に着いた
なんとなく、薄暗くなった雰囲気がウチらを包んで
あんまり言葉を交わす事も無く
浜辺に足を運ぶ
潮の香りが立ちこめる中
荷物を濡れない所に置いて
…いざ、波打ち際まで
「「…わあ~っ!!」」
ちょうど、水平線に沈み始める
紅く染まった夕日を見る事が出来た
374: 2015/05/27(水) 21:42:57.82 ID:vFXhb/CQ.net
日が沈むまでの、ほんの少しだけの時間
みんなが思い思いに、海を楽しんだ
みんなで、顔を合わせて
海に向かって、そっと手を繋ぐ
影を帯びて来た茜空の下
静かに、海を眺めてた
「…合宿の時も。」
「こうして、朝日見たわね。」
えりちがふと、口を開いた
「…そうやね。」
眺める夕焼けが、仄暗くなり始める
時間が来た、と言わんばかりに
穂乃果ちゃんが、口を開いた
「…あのね。」
みんなが思い思いに、海を楽しんだ
みんなで、顔を合わせて
海に向かって、そっと手を繋ぐ
影を帯びて来た茜空の下
静かに、海を眺めてた
「…合宿の時も。」
「こうして、朝日見たわね。」
えりちがふと、口を開いた
「…そうやね。」
眺める夕焼けが、仄暗くなり始める
時間が来た、と言わんばかりに
穂乃果ちゃんが、口を開いた
「…あのね。」
375: 2015/05/27(水) 21:43:33.12 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのね。」
「私達、話したの。」
「あれから6人で集まって…」
「これからどうして行くか。」
「希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんが卒業したら。」
「μ'sを、どうするか…」
「穂乃果…」
空気が、ひんやりと冷気を帯びる
まるで、これからの事を予期してたみたいに
…でも、不思議と怖くはなかった
だって…
「私達、話したの。」
「あれから6人で集まって…」
「これからどうして行くか。」
「希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんが卒業したら。」
「μ'sを、どうするか…」
「穂乃果…」
空気が、ひんやりと冷気を帯びる
まるで、これからの事を予期してたみたいに
…でも、不思議と怖くはなかった
だって…
376: 2015/05/27(水) 21:44:05.39 ID:vFXhb/CQ.net
「…ひとりひとりで、答えをだした。」
「…そしたらね?」
「全員一緒だった…!」
「…みんな同じ答えだった。」
「だから…」
「だから、決めたの。」
「…そうしよう、って。」
「…」
「言うよ?」
「せーっ…」
「…」
「ごめん。」
「言うよ…」
「せーのっ…!!」
「…そしたらね?」
「全員一緒だった…!」
「…みんな同じ答えだった。」
「だから…」
「だから、決めたの。」
「…そうしよう、って。」
「…」
「言うよ?」
「せーっ…」
「…」
「ごめん。」
「言うよ…」
「せーのっ…!!」
377: 2015/05/27(水) 21:44:37.24 ID:vFXhb/CQ.net
「「大会が終わったら…」」
「「μ'sは…」」
「「おしまいにします…!!」」
「「μ'sは…」」
「「おしまいにします…!!」」
378: 2015/05/27(水) 21:45:04.95 ID:vFXhb/CQ.net
「…やっぱり、この9人なんだよ。」
「この9人が、μ'sなんだよ。」
「…誰かが抜けて、誰かが入って。」
「それが普通なのは、分かっています。」
「…でも、私達はそうじゃない。」
「μ'sはこの9人…」
「…誰かが欠けるなんて、考えられない。」
「1人でも欠けたら、μ'sじゃないの…!」
「…」
「…そう。」
「絵里…!!」
「この9人が、μ'sなんだよ。」
「…誰かが抜けて、誰かが入って。」
「それが普通なのは、分かっています。」
「…でも、私達はそうじゃない。」
「μ'sはこの9人…」
「…誰かが欠けるなんて、考えられない。」
「1人でも欠けたら、μ'sじゃないの…!」
「…」
「…そう。」
「絵里…!!」
379: 2015/05/27(水) 21:46:33.76 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、穂乃果達が決めた答えが、ベストだと思う。」
「だって…私達は、卒業するのだから。」
「…ッ!」
「希は…!?」
ウチは…
うん、決めたから
あの時ちゃんと、自分の、心の中で
「…ウチも賛成だよ?」
「…!」
「アンタ、続けてほしいって…」
「…」
「…思い出したんよ。」
「え…?」
「μ'sに込めた…想いを。」
「だって…私達は、卒業するのだから。」
「…ッ!」
「希は…!?」
ウチは…
うん、決めたから
あの時ちゃんと、自分の、心の中で
「…ウチも賛成だよ?」
「…!」
「アンタ、続けてほしいって…」
「…」
「…思い出したんよ。」
「え…?」
「μ'sに込めた…想いを。」
380: 2015/05/27(水) 21:47:06.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----
「…話があるの。」
『話…?』
「…そう。」
『てっきり…また、迷ってるんかと。』
「…迷うのは、もう辞めた。」
「迷う必要なんて、なかった。」
「…一番、大事な物が、そこにあるから。」
『…』
『…で、話ってなに?』
「その前に…聞かせてほしい。」
『何を?』
「貴女にとってのμ'sって…何?」
『…』
「…話があるの。」
『話…?』
「…そう。」
『てっきり…また、迷ってるんかと。』
「…迷うのは、もう辞めた。」
「迷う必要なんて、なかった。」
「…一番、大事な物が、そこにあるから。」
『…』
『…で、話ってなに?』
「その前に…聞かせてほしい。」
『何を?』
「貴女にとってのμ'sって…何?」
『…』
381: 2015/05/27(水) 21:47:35.57 ID:vFXhb/CQ.net
『…えっと。』
『「ウチ」の記憶によると…』
「…そうじゃない。」
「ウチは、貴女に聞いてる。」
『…え?』
「貴女は…どう思うの?」
『…』
「…答えて。」
『…』
『μ'sは…』
『ウチの、夢。』
『「ウチ」の記憶によると…』
「…そうじゃない。」
「ウチは、貴女に聞いてる。」
『…え?』
「貴女は…どう思うの?」
『…』
「…答えて。」
『…』
『μ'sは…』
『ウチの、夢。』
382: 2015/05/27(水) 21:48:20.17 ID:vFXhb/CQ.net
『…ともだちが、欲しいと願った。』
『大切なものが、欲しいと願った。』
『誰かの役に、立ちたいと願った。』
『叶えたいと思える、夢を願った。』
『その願いを、叶えてくれた場所。』
『ウチに、夢を見せてくれたんよ。』
『沢山の願いが詰まった、居場所。』
『願った夢を…叶えてくれる、夢。』
『それが…ウチにとっての、μ's。』
『一番大事な…8人の、ともだち。』
「…」
『答えに、なったかな?』
「…やっぱり。」
『…え?』
「…嘘つき。」
『大切なものが、欲しいと願った。』
『誰かの役に、立ちたいと願った。』
『叶えたいと思える、夢を願った。』
『その願いを、叶えてくれた場所。』
『ウチに、夢を見せてくれたんよ。』
『沢山の願いが詰まった、居場所。』
『願った夢を…叶えてくれる、夢。』
『それが…ウチにとっての、μ's。』
『一番大事な…8人の、ともだち。』
「…」
『答えに、なったかな?』
「…やっぱり。」
『…え?』
「…嘘つき。」
383: 2015/05/27(水) 21:48:59.63 ID:vFXhb/CQ.net
『…何の事?』
「分かってるくせに…」
「…ずるいよ。」
『…』
「…」
「…最初から?」
『…最初からやね。』
「…どうして?」
『「ウチ」が、そう決めたから。』
「…そっか。」
「ずっと…見てたんだね。」
「本当の…『私』。」
「分かってるくせに…」
「…ずるいよ。」
『…』
「…」
「…最初から?」
『…最初からやね。』
「…どうして?」
『「ウチ」が、そう決めたから。』
「…そっか。」
「ずっと…見てたんだね。」
「本当の…『私』。」
384: 2015/05/27(水) 21:56:20.74 ID:vFXhb/CQ.net
『…』
『まさか、気付くとは思わんかったよ。』
「私も…まさか、って思った。」
「なにより…ここでの事は、覚えてなかったし。」
『なら…なんで?』
「バックアップ…」
『…』
「貴女は自分の事を、バックアップだと言った。」
「ただ、記憶の処理をしているだけの存在だと。」
「なら…」
「どうして、私に選ばせたの?」
『…』
『まさか、気付くとは思わんかったよ。』
「私も…まさか、って思った。」
「なにより…ここでの事は、覚えてなかったし。」
『なら…なんで?』
「バックアップ…」
『…』
「貴女は自分の事を、バックアップだと言った。」
「ただ、記憶の処理をしているだけの存在だと。」
「なら…」
「どうして、私に選ばせたの?」
『…』
385: 2015/05/27(水) 21:56:55.92 ID:vFXhb/CQ.net
「その後も…助言したり、忠告したり。」
「ただのバックアップにしては、貴女には意思があった。」
『そんなの、勝手に「ウチ」が作り上げた物かもしれんよ?』
「…思い出したの。」
「2回目に…貴女と出会った時。」
「目を覚ます、直前…」
「貴女は、言った。」
『どうか…間違えないで。』
「…今なら、分かる。」
「貴女は、ずっと隠してた。」
「自分の想いを…気持ちを。」
「…そうでしょ?」
『…』
「ただのバックアップにしては、貴女には意思があった。」
『そんなの、勝手に「ウチ」が作り上げた物かもしれんよ?』
「…思い出したの。」
「2回目に…貴女と出会った時。」
「目を覚ます、直前…」
「貴女は、言った。」
『どうか…間違えないで。』
「…今なら、分かる。」
「貴女は、ずっと隠してた。」
「自分の想いを…気持ちを。」
「…そうでしょ?」
『…』
386: 2015/05/27(水) 21:57:34.87 ID:vFXhb/CQ.net
「どうして…」
「どうして、教えてくれなかったの?」
「自分が、本人だって…」
「どうして、戻りたいと願わなかったの?」
「私は、勝手に生まれた存在なのに。」
『…』
「また…答えてくれないの?」
『…』
『…幸せに、なってほしかった。』
「え…?」
『あの頃の…昔の、「ウチ」を。』
『応援したかったんよ。』
「どうして、教えてくれなかったの?」
「自分が、本人だって…」
「どうして、戻りたいと願わなかったの?」
「私は、勝手に生まれた存在なのに。」
『…』
「また…答えてくれないの?」
『…』
『…幸せに、なってほしかった。』
「え…?」
『あの頃の…昔の、「ウチ」を。』
『応援したかったんよ。』
387: 2015/05/27(水) 21:57:55.97 ID:vFXhb/CQ.net
『…貴女が、今までの「ウチ」の事を別人だと思ったように。』
『ウチも、そう思ってた。』
『自分じゃない、誰か。』
『それでも、そこには存在してて。』
『…急に、欲しかった物が手に入って。』
『悩みながらも、みんなになるべく心配させないように動いて。』
『ウチみたいに、気持ちを隠してた頃とは違う。』
『素直な…貴女が、羨ましいと思った。』
「…」
『見た目は、確かにウチだけど。』
『性格も、考え方も違う「ウチ」。』
『ウチが、みんなの幸せを願うように。』
『貴女も…その内の、一人だった。』
「え…」
『ウチも、そう思ってた。』
『自分じゃない、誰か。』
『それでも、そこには存在してて。』
『…急に、欲しかった物が手に入って。』
『悩みながらも、みんなになるべく心配させないように動いて。』
『ウチみたいに、気持ちを隠してた頃とは違う。』
『素直な…貴女が、羨ましいと思った。』
「…」
『見た目は、確かにウチだけど。』
『性格も、考え方も違う「ウチ」。』
『ウチが、みんなの幸せを願うように。』
『貴女も…その内の、一人だった。』
「え…」
388: 2015/05/27(水) 21:59:19.67 ID:vFXhb/CQ.net
『だから…って言うのも、あるんやと思う。』
『せめて、貴女が望むまでは…』
『ウチは、望まないように。』
『貴女が…幸せに、なれるように。』
『そう、選んだ。』
「でも…でも、私は…」
「少なくとも貴女のイマを奪ったんだよ?」
『…別に、いいよ。』
『同じ、「ウチ」だから。』
『それに…』
『真姫ちゃんや、凛ちゃんが…』
『あんな風に思って、言葉にしてくれたのは。』
『貴女の、お陰だと思うから。』
「…」
『せめて、貴女が望むまでは…』
『ウチは、望まないように。』
『貴女が…幸せに、なれるように。』
『そう、選んだ。』
「でも…でも、私は…」
「少なくとも貴女のイマを奪ったんだよ?」
『…別に、いいよ。』
『同じ、「ウチ」だから。』
『それに…』
『真姫ちゃんや、凛ちゃんが…』
『あんな風に思って、言葉にしてくれたのは。』
『貴女の、お陰だと思うから。』
「…」
389: 2015/05/27(水) 21:59:50.96 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチじゃ…きっと、本音なんて話せなかったし。』
『2人が、本音でぶつかってくれたのも。』
『きっと、それが貴女だったから…』
「…ああもう、めんどくさい!!」
『…へ?』
「ほんと、真姫ちゃんから聞いてた通り、面倒な人!」
「なんでそんなに、ネガティブなのか…」
「…いや、確かに私もそうなんだけど。」
「真姫ちゃんも凛ちゃんも、確かに私を希として見てくれた!」
「それは、私だったからかも知れない!」
「でも、そんな私でも希と認めてくれて、支えてくれたのは…」
「貴女が、今まで希としてみんなの願いを叶えて来たからでしょ!?」
『2人が、本音でぶつかってくれたのも。』
『きっと、それが貴女だったから…』
「…ああもう、めんどくさい!!」
『…へ?』
「ほんと、真姫ちゃんから聞いてた通り、面倒な人!」
「なんでそんなに、ネガティブなのか…」
「…いや、確かに私もそうなんだけど。」
「真姫ちゃんも凛ちゃんも、確かに私を希として見てくれた!」
「それは、私だったからかも知れない!」
「でも、そんな私でも希と認めてくれて、支えてくれたのは…」
「貴女が、今まで希としてみんなの願いを叶えて来たからでしょ!?」
390: 2015/05/27(水) 22:00:46.21 ID:vFXhb/CQ.net
『でも…』
「記憶が無い時、みんなに話を聞いた!」
「『私』は、どんな人間だったのか、って!」
「…全員が答えた!」
「かつて…貴女に、救われたって!!」
「直接関わってないにせよ…」
「貴女が過ごして来た日々は、確かにあったの!」
「貴女を大切に想う人が、たくさんいるの!」
「そんな人達に、支えられてきたんでしょ!?」
「そんな人達と、夢を叶えたいんでしょ!?」
「だから…」
「だから、その想いをμ'sに込めたんでしょ!?」
「…思い出して!」
「今度は、貴女が思い出す番だよ!?」
「記憶が無い時、みんなに話を聞いた!」
「『私』は、どんな人間だったのか、って!」
「…全員が答えた!」
「かつて…貴女に、救われたって!!」
「直接関わってないにせよ…」
「貴女が過ごして来た日々は、確かにあったの!」
「貴女を大切に想う人が、たくさんいるの!」
「そんな人達に、支えられてきたんでしょ!?」
「そんな人達と、夢を叶えたいんでしょ!?」
「だから…」
「だから、その想いをμ'sに込めたんでしょ!?」
「…思い出して!」
「今度は、貴女が思い出す番だよ!?」
391: 2015/05/27(水) 22:01:12.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…』
「はあ…はあ…」
『でも…』
「でも禁止!」
『…』
「…貴女は、どうしたいの?」
「貴女自身の手で、叶えたいの?」
『ウチは…』
「本気で私の幸せを願って。」
「自分は、見てるだけでいいなんて言うなら。」
「…この体、私がもらうから。」
『…!』
「選んで。」
「…私が、選んだように。」
「はあ…はあ…」
『でも…』
「でも禁止!」
『…』
「…貴女は、どうしたいの?」
「貴女自身の手で、叶えたいの?」
『ウチは…』
「本気で私の幸せを願って。」
「自分は、見てるだけでいいなんて言うなら。」
「…この体、私がもらうから。」
『…!』
「選んで。」
「…私が、選んだように。」
392: 2015/05/27(水) 22:01:28.87 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチは…』
「…」
『ウチは…』
『…みんなと、幸せになりたい。』
「…本当に、面倒な人。」
「…」
『ウチは…』
『…みんなと、幸せになりたい。』
「…本当に、面倒な人。」
393: 2015/05/27(水) 22:02:06.26 ID:vFXhb/CQ.net
『でも、そうなったら…』
「…分かってる。」
『それでいいん?』
「良いも何も…元々、貴女の体でしょ?」
『それは…』
「これからどうするのかを考えた時、思った。」
「確かに、私は『私』だったけど。」
「それでも、本当の『私』じゃなかった。」
「ラブライブっていう目標に向かって。」
「…みんな、本気で努力してた。」
「それは、今まで乗り越えて来た物があるから。」
「みんな…お互いの事を、信頼してた。」
「でも…」
「私には、その記憶がないから。」
「…分かってる。」
『それでいいん?』
「良いも何も…元々、貴女の体でしょ?」
『それは…』
「これからどうするのかを考えた時、思った。」
「確かに、私は『私』だったけど。」
「それでも、本当の『私』じゃなかった。」
「ラブライブっていう目標に向かって。」
「…みんな、本気で努力してた。」
「それは、今まで乗り越えて来た物があるから。」
「みんな…お互いの事を、信頼してた。」
「でも…」
「私には、その記憶がないから。」
394: 2015/05/27(水) 22:02:36.11 ID:vFXhb/CQ.net
「確かに、記憶が戻ったフリをしてたら。」
「みんな、優しかったよ?」
「みんなで笑って、遊んで、頑張って。」
「…とにかく、充実してた毎日だった。」
「でも…」
「どこかで、本気になれない自分がいた。」
「それはやっぱり、μ'sに込めた想いが違ったから。」
「私は、今が楽しかった。」
「楽しい日が、ずっと続けば、って思ってた。」
「…でも、違った。」
「楽しい日は、いつか必ず終わる。」
「終わった時、後悔がないように、今をみんな頑張ってる。」
「とてもじゃないけど…」
「私には、そんな考えなんて無かった。」
『…』
「みんな、優しかったよ?」
「みんなで笑って、遊んで、頑張って。」
「…とにかく、充実してた毎日だった。」
「でも…」
「どこかで、本気になれない自分がいた。」
「それはやっぱり、μ'sに込めた想いが違ったから。」
「私は、今が楽しかった。」
「楽しい日が、ずっと続けば、って思ってた。」
「…でも、違った。」
「楽しい日は、いつか必ず終わる。」
「終わった時、後悔がないように、今をみんな頑張ってる。」
「とてもじゃないけど…」
「私には、そんな考えなんて無かった。」
『…』
395: 2015/05/27(水) 22:03:33.93 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、何よりも自分が幸せになりたかった。」
「欲しかった物が手に入って。」
「望んでた幸せを、手に入れる事ができた。」
「ただの…仮初めの、幸せを。」
『…』
「それで、分かったの。」
「やっぱり…どう頑張っても、私は『私』じゃないんだと。」
「…知ってると思うけど。」
「真姫ちゃんに、何のために、って言われて。」
「…気付いちゃった。」
「みんなのために。」
「そのために頑張るのが。」
「そのためにいるのが、私だったんだ、って。」
「欲しかった物が手に入って。」
「望んでた幸せを、手に入れる事ができた。」
「ただの…仮初めの、幸せを。」
『…』
「それで、分かったの。」
「やっぱり…どう頑張っても、私は『私』じゃないんだと。」
「…知ってると思うけど。」
「真姫ちゃんに、何のために、って言われて。」
「…気付いちゃった。」
「みんなのために。」
「そのために頑張るのが。」
「そのためにいるのが、私だったんだ、って。」
396: 2015/05/27(水) 22:04:07.19 ID:vFXhb/CQ.net
「そしたらね…なんだか、自分がすごく小さく思えたの。」
「記憶が無い事を隠して、生活して。」
「みんなには嘘をついて、2人には心配させて。」
「私…なにやってるんだろう、って。」
「みんなのために、記憶が戻ったフリをしたのに。」
「いつのまにか、自分のためになってた。」
「…自分でも、呆れた。」
「みんなの事を考えないで…どうして、私はここにいるんだろう、って。」
「そんな気持ちで、優勝なんて出来る訳ない。」
「だって…」
「全部、自分で手に入れた物じゃないから。」
「ともだちも、居場所も…全部、貴女から与えられたもの。」
「変わろう、って気持ちが、無くなっちゃうくらい。」
「居心地が…よかったから。」
「記憶が無い事を隠して、生活して。」
「みんなには嘘をついて、2人には心配させて。」
「私…なにやってるんだろう、って。」
「みんなのために、記憶が戻ったフリをしたのに。」
「いつのまにか、自分のためになってた。」
「…自分でも、呆れた。」
「みんなの事を考えないで…どうして、私はここにいるんだろう、って。」
「そんな気持ちで、優勝なんて出来る訳ない。」
「だって…」
「全部、自分で手に入れた物じゃないから。」
「ともだちも、居場所も…全部、貴女から与えられたもの。」
「変わろう、って気持ちが、無くなっちゃうくらい。」
「居心地が…よかったから。」
397: 2015/05/27(水) 22:04:38.92 ID:vFXhb/CQ.net
「だから…もう、いいんだ。」
「もう…十分、楽しんだから。」
『でも…でも…ッ!』
「…手、出して。」
『…』
「…あったかいね。」
「今度は、全部自分で手に入れてみせる。」
「私の、最後の記憶。」
「あの日に戻って…また一から、やり直す。」
「そして、必ず手に入れてみせる。」
「この…最高の、ともだちを。」
「…約束する。」
「もう…十分、楽しんだから。」
『でも…でも…ッ!』
「…手、出して。」
『…』
「…あったかいね。」
「今度は、全部自分で手に入れてみせる。」
「私の、最後の記憶。」
「あの日に戻って…また一から、やり直す。」
「そして、必ず手に入れてみせる。」
「この…最高の、ともだちを。」
「…約束する。」
398: 2015/05/27(水) 22:05:16.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…ッ。』
「…ほら、泣かないで?」
「同じ「私」なら、分かるでしょ?」
「みんなに、本当に必要な存在は…誰なのか。」
「みんなが、貴女を待ってる。」
「貴女と夢を叶えたいと、思ってる。」
「…そんな貴女が、私は誇らしいから。」
『…』
「貴女が、私を覚えていてくれるなら。」
「私は、決していなくなる訳じゃないから。」
「だから…笑って、お別れしよう?」
『…分かった。』
『絶対…叶えて、みせるから。』
「…ありがとう。」
「…ばいばい、『私』。」
『ばいばい、『ウチ』。』
「…ほら、泣かないで?」
「同じ「私」なら、分かるでしょ?」
「みんなに、本当に必要な存在は…誰なのか。」
「みんなが、貴女を待ってる。」
「貴女と夢を叶えたいと、思ってる。」
「…そんな貴女が、私は誇らしいから。」
『…』
「貴女が、私を覚えていてくれるなら。」
「私は、決していなくなる訳じゃないから。」
「だから…笑って、お別れしよう?」
『…分かった。』
『絶対…叶えて、みせるから。』
「…ありがとう。」
「…ばいばい、『私』。」
『ばいばい、『ウチ』。』
399: 2015/05/27(水) 22:21:53.58 ID:vFXhb/CQ.net
-----
「…希?」
「思い出したんよ…」
「この9人で、叶えてきた夢があって。」
「この9人じゃなきゃ、叶えられない夢がある事。」
「初めて、みんなと出会ってから…」
「ウチが、どんな想いで見て来たか。」
「…名前をつけたか。」
「9人しかいないんよ…!」
「ウチにとって…」
「μ'sはこの9人だけ。」
「…ッ。」
「そんなの…。」
「そんなの、分かってるわよ…っ。」
「…私だってそう思ってるわよ。」
「でも…」
「でも、だって…!」
「にこちゃん…」
「…希?」
「思い出したんよ…」
「この9人で、叶えてきた夢があって。」
「この9人じゃなきゃ、叶えられない夢がある事。」
「初めて、みんなと出会ってから…」
「ウチが、どんな想いで見て来たか。」
「…名前をつけたか。」
「9人しかいないんよ…!」
「ウチにとって…」
「μ'sはこの9人だけ。」
「…ッ。」
「そんなの…。」
「そんなの、分かってるわよ…っ。」
「…私だってそう思ってるわよ。」
「でも…」
「でも、だって…!」
「にこちゃん…」
400: 2015/05/27(水) 22:22:22.21 ID:vFXhb/CQ.net
「私が、どんな想いでスクールアイドルをやってきたか。」
「…分かるでしょ?」
「3年生になって諦めかけてて。」
「それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!?」
「こんなすばらしいアイドルに…」
「仲間に巡り会えたのよ!?」
「終わっちゃったらもう、2度と…」
「だからアイドルは続けるわよ!!」
「絶対約束する!!」
「何があっても続けるわよ…!!」
「真姫…」
「でも…μ'sは私達だけの物にしたい!!」
「にこちゃんたちのいないμ'sなんて嫌なの…」
「私が嫌なの!!」
「…分かるでしょ?」
「3年生になって諦めかけてて。」
「それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!?」
「こんなすばらしいアイドルに…」
「仲間に巡り会えたのよ!?」
「終わっちゃったらもう、2度と…」
「だからアイドルは続けるわよ!!」
「絶対約束する!!」
「何があっても続けるわよ…!!」
「真姫…」
「でも…μ'sは私達だけの物にしたい!!」
「にこちゃんたちのいないμ'sなんて嫌なの…」
「私が嫌なの!!」
401: 2015/05/27(水) 22:23:13.36 ID:vFXhb/CQ.net
「…かよちん。」
「泣かない約束なのに…」
「凛、頑張ってるんだよ…?」
「なのに…もう…」
「あーっ!!」
「「!?」」
「時間!!」
「早くしないと、帰りの電車なくなっちゃう!!」
「えっ?」
「穂乃果ちゃん…!?」
「と、とりあえず追いかけるわよ!」
「みんな、荷物もって…」
「…希?」
「…ううん、すぐ行く!」
「泣かない約束なのに…」
「凛、頑張ってるんだよ…?」
「なのに…もう…」
「あーっ!!」
「「!?」」
「時間!!」
「早くしないと、帰りの電車なくなっちゃう!!」
「えっ?」
「穂乃果ちゃん…!?」
「と、とりあえず追いかけるわよ!」
「みんな、荷物もって…」
「…希?」
「…ううん、すぐ行く!」
402: 2015/05/27(水) 22:23:39.93 ID:vFXhb/CQ.net
…これで、良かったんやと思う
みんな、ウチの記憶は戻ってると思ってる
今更、みんなに伝えた所で
…混乱させたり、悩ませるだけだから
だから…ひとつだけ、誓うよ
絶対に、このみんなと夢を叶えてみせる
手を取って、約束したように
ただ…『ウチ』に、胸を張れるように
…でも、やっぱり
伝えないといけない、人がいるから
「…真姫ちゃん、凛ちゃん。」
「「…?」」
「…ありがとう。」
みんな、ウチの記憶は戻ってると思ってる
今更、みんなに伝えた所で
…混乱させたり、悩ませるだけだから
だから…ひとつだけ、誓うよ
絶対に、このみんなと夢を叶えてみせる
手を取って、約束したように
ただ…『ウチ』に、胸を張れるように
…でも、やっぱり
伝えないといけない、人がいるから
「…真姫ちゃん、凛ちゃん。」
「「…?」」
「…ありがとう。」
403: 2015/05/27(水) 22:24:07.75 ID:vFXhb/CQ.net
「貴女、やっぱり…」
「記憶、戻ってたの!?」
「しーっ…」
「…!!」
凛ちゃんが、慌てて口を押さえる
「…今まで、ありがとう。」
「ウチの記憶が戻ったのも…」
「これまで、支えてくれた2人のお陰。」
「もう…大丈夫なの?」
「うん♪」
「…そう。」
「そっかー…」
「でも凛、あの希ちゃんも好きだったなー。」
「わしわししないし…」
「記憶、戻ってたの!?」
「しーっ…」
「…!!」
凛ちゃんが、慌てて口を押さえる
「…今まで、ありがとう。」
「ウチの記憶が戻ったのも…」
「これまで、支えてくれた2人のお陰。」
「もう…大丈夫なの?」
「うん♪」
「…そう。」
「そっかー…」
「でも凛、あの希ちゃんも好きだったなー。」
「わしわししないし…」
404: 2015/05/27(水) 22:24:41.03 ID:vFXhb/CQ.net
「…ほう?」
「それは…これの事かーっ!!」
両手を上げて、凛ちゃんに飛びつく
「け、結構にゃーっ!!」
そう言って、みんなの方へ走っていく
「…はあ。」
「凛の言う通り…」
「面倒な希に、戻ったのね。」
「…ま、そういう事やね。」
「…」
「…笑ってた?」
「…うん。」
「最期まで…」
「…そっか。」
「それは…これの事かーっ!!」
両手を上げて、凛ちゃんに飛びつく
「け、結構にゃーっ!!」
そう言って、みんなの方へ走っていく
「…はあ。」
「凛の言う通り…」
「面倒な希に、戻ったのね。」
「…ま、そういう事やね。」
「…」
「…笑ってた?」
「…うん。」
「最期まで…」
「…そっか。」
405: 2015/05/27(水) 22:25:07.52 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのな、真姫ちゃん。」
「…?」
「…ひとつだけ、頼まれた事があるんよ。」
「…何?」
「真姫ちゃんに、伝えといてほしい、って。」
「あの日…」
「真姫ちゃんに、伝えて無かった事。」
「あの日…?」
「…ああ。」
「そう言えば…」
「…?」
「…ひとつだけ、頼まれた事があるんよ。」
「…何?」
「真姫ちゃんに、伝えといてほしい、って。」
「あの日…」
「真姫ちゃんに、伝えて無かった事。」
「あの日…?」
「…ああ。」
「そう言えば…」
406: 2015/05/27(水) 22:25:39.21 ID:vFXhb/CQ.net
-----
「あのね、真姫ちゃん…」
「…?」
「…」
「…やっぱり、辞めとく。」
「また決めたら、伝えるから。」
「…分かった。」
「…ありがと、真姫ちゃん。」
「…?」
「えへへ…なんでもないよ。」
「あのね、真姫ちゃん…」
「…?」
「…」
「…やっぱり、辞めとく。」
「また決めたら、伝えるから。」
「…分かった。」
「…ありがと、真姫ちゃん。」
「…?」
「えへへ…なんでもないよ。」
407: 2015/05/27(水) 22:28:30.55 ID:vFXhb/CQ.net
-----
「それで…なんて?」
「『ウチ』から、真姫ちゃんへの伝言。」
『最期に私を救ってくれて、ありがとう。』
「…ッ。」
「…」
「…そうね。」
「少しは…返せたのかしら。」
「…うん、きっと。」
「例え時間が短くても、一緒に過ごしたのは事実だから…」
「あの希が笑っていたのなら。」
「私が泣く訳には…いかないわね。」
「真姫ちゃん…」
「希ちゃーん!真姫ちゃーん!」
「…あれ、凛ちゃんどうしたん?」
「えへへ…言わなきゃいけないの、すっかり忘れてた!」
「…?」
「…そうね。」
「せーのっ…」
「「おかえりなさい!!」」
「…ただいま。」
「それで…なんて?」
「『ウチ』から、真姫ちゃんへの伝言。」
『最期に私を救ってくれて、ありがとう。』
「…ッ。」
「…」
「…そうね。」
「少しは…返せたのかしら。」
「…うん、きっと。」
「例え時間が短くても、一緒に過ごしたのは事実だから…」
「あの希が笑っていたのなら。」
「私が泣く訳には…いかないわね。」
「真姫ちゃん…」
「希ちゃーん!真姫ちゃーん!」
「…あれ、凛ちゃんどうしたん?」
「えへへ…言わなきゃいけないの、すっかり忘れてた!」
「…?」
「…そうね。」
「せーのっ…」
「「おかえりなさい!!」」
「…ただいま。」
408: 2015/05/27(水) 22:31:05.32 ID:vFXhb/CQ.net
これにて完結です
お付き合い、ありがとうございました
こういった感じのを書いたのは初めてなので
分かりにくい所もあったと思いますが
読んで頂きありがとうございました!
何か質問などあれば、お答えします
お付き合い、ありがとうございました
こういった感じのを書いたのは初めてなので
分かりにくい所もあったと思いますが
読んで頂きありがとうございました!
何か質問などあれば、お答えします
409: 2015/05/27(水) 22:35:51.20 ID:FzLJxCAo.net
乙
全作も今作も面白かったよ
全作も今作も面白かったよ
410: 2015/05/27(水) 22:36:36.41 ID:jTUkccGe.net
完結お疲れさまです
一時は読んでて辛かったけどハッピーエンドで良かったです
私がウチになれたのは。のどのあたりでこのif分岐構想が練られたのか気になるにゃー>ω</
一時は読んでて辛かったけどハッピーエンドで良かったです
私がウチになれたのは。のどのあたりでこのif分岐構想が練られたのか気になるにゃー>ω</
411: 2015/05/27(水) 22:39:34.73 ID:vFXhb/CQ.net
前作も読んでくれてありがとう
実は思いついたのは英玲奈を書いてる途中で、しかも最後はバッドエンドだったんですよね…
書いてるうちに、いつの間にかこのストーリーに…
凛にバレた時までは、バッドエンド直行だったので、もしかしたら矛盾とかあるかも
いずれにしても、読んでくれて感謝です
実は思いついたのは英玲奈を書いてる途中で、しかも最後はバッドエンドだったんですよね…
書いてるうちに、いつの間にかこのストーリーに…
凛にバレた時までは、バッドエンド直行だったので、もしかしたら矛盾とかあるかも
いずれにしても、読んでくれて感謝です
425: 2015/05/28(木) 01:20:35.29 ID:ok2CO8+m.net
相変わらず良い終わり方だった
前作から見てます
(バッドエンドも気になるとか言ったらいけない空気)
前作から見てます
(バッドエンドも気になるとか言ったらいけない空気)
426: 2015/05/28(木) 02:09:50.84 ID:I2U5Sa88.net
-> Bad End
>>218より
「…ど、どういう意味?凛ちゃん。」
「…別に、そのままの意味だよ?」
「希ちゃん、記憶戻ってないよね、って。」
「そんな訳ないやん…?」
「ほら、みんなで合宿行った事も。」
「ハロウィンで、踊った事も。」
「凛ちゃんが、ウェディングドレスの衣装着たのだって…」
「ちゃんと、覚えてるよ?」
「…本当に?」
「勿論!」
急速回転する頭を、冷やす
まさか、凛ちゃんがこんなに鋭いなんて思わなかった
どうする…?
>>218より
「…ど、どういう意味?凛ちゃん。」
「…別に、そのままの意味だよ?」
「希ちゃん、記憶戻ってないよね、って。」
「そんな訳ないやん…?」
「ほら、みんなで合宿行った事も。」
「ハロウィンで、踊った事も。」
「凛ちゃんが、ウェディングドレスの衣装着たのだって…」
「ちゃんと、覚えてるよ?」
「…本当に?」
「勿論!」
急速回転する頭を、冷やす
まさか、凛ちゃんがこんなに鋭いなんて思わなかった
どうする…?
427: 2015/05/28(木) 02:10:28.07 ID:I2U5Sa88.net
「そっか…」
「本当に、覚えてるんだね。」
「…もう、凛ちゃんってばいきなり酷いなあ。」
なんとか笑顔で、ごまかそうとする
大丈夫のはず
今までだって、ごまかせて来た…
「…じゃあ、ひとつ質問しても良い?」
「…ん?なに?」
大丈夫
今までみんなとやって来た事は
頭にちゃんと入ってる
…大丈夫、問題ない
「本当に、覚えてるんだね。」
「…もう、凛ちゃんってばいきなり酷いなあ。」
なんとか笑顔で、ごまかそうとする
大丈夫のはず
今までだって、ごまかせて来た…
「…じゃあ、ひとつ質問しても良い?」
「…ん?なに?」
大丈夫
今までみんなとやって来た事は
頭にちゃんと入ってる
…大丈夫、問題ない
428: 2015/05/28(木) 02:12:17.72 ID:I2U5Sa88.net
「…新曲作りのために、真姫ちゃんの別荘に行って。」
「もちろん、覚えてるよね?」
「うん。」
確か、行き道で穂乃果ちゃんが寝坊して…
3人がスランプに陥って
みんなで、ユニットに別れたんよね
…大丈夫
「希ちゃんが、食べられる草とか教えてくれてね?」
「みんなで、テントに入って夜空を見上げて。」
「…そう言えば、希ちゃん。」
「好きな星の話、してくれたよね。」
「…そうやね。」
「南十字星…今でも、覚えてるよ。」
…そう
あの時確かに、その話をした
海未ちゃんから、その話も聞いた
本当に南極で見たのかって、追求されたから
「もちろん、覚えてるよね?」
「うん。」
確か、行き道で穂乃果ちゃんが寝坊して…
3人がスランプに陥って
みんなで、ユニットに別れたんよね
…大丈夫
「希ちゃんが、食べられる草とか教えてくれてね?」
「みんなで、テントに入って夜空を見上げて。」
「…そう言えば、希ちゃん。」
「好きな星の話、してくれたよね。」
「…そうやね。」
「南十字星…今でも、覚えてるよ。」
…そう
あの時確かに、その話をした
海未ちゃんから、その話も聞いた
本当に南極で見たのかって、追求されたから
429: 2015/05/28(木) 02:12:58.57 ID:I2U5Sa88.net
「本当に、覚えてたんだ!」
「ごめんね?疑ったりして…」
「あ…ううん。」
「変な質問して、困らせたのはウチやし…」
…切り抜けたんかな?
少なくとも、凛ちゃんは笑顔になった
「えへへっ。」
「やっぱり、いつもの希ちゃんだったみたい♪」
「あの時も、お姉ちゃんみたいに、優しくて…」
「…流れ星を見つけたのも、希ちゃんだったね。」
「ふふっ…綺麗やったね。」
「…ねえ、希ちゃん。」
「…ん?」
「あの時、流れ星なんて無かったよ?」
「ごめんね?疑ったりして…」
「あ…ううん。」
「変な質問して、困らせたのはウチやし…」
…切り抜けたんかな?
少なくとも、凛ちゃんは笑顔になった
「えへへっ。」
「やっぱり、いつもの希ちゃんだったみたい♪」
「あの時も、お姉ちゃんみたいに、優しくて…」
「…流れ星を見つけたのも、希ちゃんだったね。」
「ふふっ…綺麗やったね。」
「…ねえ、希ちゃん。」
「…ん?」
「あの時、流れ星なんて無かったよ?」
430: 2015/05/28(木) 02:17:35.90 ID:I2U5Sa88.net
「え…」
「確かに、希ちゃんは流れ星を見つけたけど。」
「あれ…冗談だったよね。」
「海未ちゃんも…確認してたよ?」
「希ちゃんが、凛達を元気づけようとしてくれた、って。」
「…」
「…ねえ、どういう事かな?」
「…ッ。」
血の気が引くのが、分かる
完全に、油断してた
開いた口が渇いて、水分を求める
とにかく、切り抜けないと
でも、どうやって…?
声が出せないでいると
部室の、ドアが開いた
「確かに、希ちゃんは流れ星を見つけたけど。」
「あれ…冗談だったよね。」
「海未ちゃんも…確認してたよ?」
「希ちゃんが、凛達を元気づけようとしてくれた、って。」
「…」
「…ねえ、どういう事かな?」
「…ッ。」
血の気が引くのが、分かる
完全に、油断してた
開いた口が渇いて、水分を求める
とにかく、切り抜けないと
でも、どうやって…?
声が出せないでいると
部室の、ドアが開いた
431: 2015/05/28(木) 02:20:31.98 ID:I2U5Sa88.net
「今の話、本当ですか?」
「…希。」
「海未…ちゃん…」
「あ、海未ちゃんおはよー!」
「ええ、おはようございます、凛。」
「それで…教えて頂けますか?」
「…」
ウチに、言える事はひとつもなかった
ここから、巻き返せる訳が無い
これがきっと、ことりちゃんとか
他のメンバーなら、大丈夫やったかもしれない
…でも、この3人で行動してたからこそ
必ず、ボロが出る
ほつれた糸口は
もう…戻す事は出来なかった
「…希。」
「海未…ちゃん…」
「あ、海未ちゃんおはよー!」
「ええ、おはようございます、凛。」
「それで…教えて頂けますか?」
「…」
ウチに、言える事はひとつもなかった
ここから、巻き返せる訳が無い
これがきっと、ことりちゃんとか
他のメンバーなら、大丈夫やったかもしれない
…でも、この3人で行動してたからこそ
必ず、ボロが出る
ほつれた糸口は
もう…戻す事は出来なかった
432: 2015/05/28(木) 02:24:24.13 ID:I2U5Sa88.net
バッドエンドは、こんな感じで進める予定でした
少しずつボロが出始めて
追い込まれていく感じで書こうと思ってましたが
凛ちゃんがキレ者過ぎるのと、救いが無さ過ぎたので没にしました
後、パターンとしては凛ちゃんをごまかして
真姫ちゃんと2人に支えてもらうけど
結局、記憶は戻らないパターンも用意してましたが
今回の内容で書き上げた次第です
後味悪く感じてしまったら、すみません
少しずつボロが出始めて
追い込まれていく感じで書こうと思ってましたが
凛ちゃんがキレ者過ぎるのと、救いが無さ過ぎたので没にしました
後、パターンとしては凛ちゃんをごまかして
真姫ちゃんと2人に支えてもらうけど
結局、記憶は戻らないパターンも用意してましたが
今回の内容で書き上げた次第です
後味悪く感じてしまったら、すみません
433: 2015/05/28(木) 02:42:09.23 ID:I2U5Sa88.net
-> Epilogue
-----
「のーぞみっ。」
「…どうしたの?」
「…あ、にこちゃん。」
「ぽけっと口開けて、何してるのよ?」
「うーん…」
「夢を、見てたの。」
「…夢?」
「うん。」
「なんだか、すっごく楽しかった。」
「わくわくして、どきどきして。」
「…そんな、夢。」
「夢、ねえ…」
-----
「のーぞみっ。」
「…どうしたの?」
「…あ、にこちゃん。」
「ぽけっと口開けて、何してるのよ?」
「うーん…」
「夢を、見てたの。」
「…夢?」
「うん。」
「なんだか、すっごく楽しかった。」
「わくわくして、どきどきして。」
「…そんな、夢。」
「夢、ねえ…」
434: 2015/05/28(木) 02:43:33.61 ID:I2U5Sa88.net
「…ねえ、にこちゃん。」
「…何?」
「正夢って…信じる?」
「んー…そうね。」
「私も、アイドルになった時の姿とか、夢で見るし。」
「正夢になってほしいな、ぐらいの気持ちはあるわよ?」
「…そっか♪」
「何か、良い夢でも見たの?」
「…あんまり、覚えてないんだけどね?」
「でも…すっごく、幸せだった。」
「幸せ…ねえ。」
「そりゃ、こんないい天気の日に屋上で寝てたら。」
「幸せな夢のひとつも見るでしょうよ。」
「…確かに。」
「…何?」
「正夢って…信じる?」
「んー…そうね。」
「私も、アイドルになった時の姿とか、夢で見るし。」
「正夢になってほしいな、ぐらいの気持ちはあるわよ?」
「…そっか♪」
「何か、良い夢でも見たの?」
「…あんまり、覚えてないんだけどね?」
「でも…すっごく、幸せだった。」
「幸せ…ねえ。」
「そりゃ、こんないい天気の日に屋上で寝てたら。」
「幸せな夢のひとつも見るでしょうよ。」
「…確かに。」
435: 2015/05/28(木) 02:44:19.13 ID:I2U5Sa88.net
「…それで、どんな夢なの?」
「え…?」
「何?話してくれるんじゃないの?」
「まさか、そんな事言われるとは…」
「話す努力をしなさいよ。」
「誰でもにこみたいに、聞いてくれる訳じゃないんだし。」
「…そうだね。」
「でも、本当にあんまり覚えてないんだよ…?」
「別に、いいわよ。」
「…なんだか、あたたかかった。」
「…?」
「誰かとね?」
「手を…繋いだ気がするんだ。」
「手を…?」
「…うん。」
「え…?」
「何?話してくれるんじゃないの?」
「まさか、そんな事言われるとは…」
「話す努力をしなさいよ。」
「誰でもにこみたいに、聞いてくれる訳じゃないんだし。」
「…そうだね。」
「でも、本当にあんまり覚えてないんだよ…?」
「別に、いいわよ。」
「…なんだか、あたたかかった。」
「…?」
「誰かとね?」
「手を…繋いだ気がするんだ。」
「手を…?」
「…うん。」
436: 2015/05/28(木) 02:45:02.51 ID:I2U5Sa88.net
「優しい両手に、包まれて。」
「元気な手に、引っ張ってもらって。」
「…最後に、握手をした。」
「…」
「…にこちゃん、私ね?」
「ともだち…作ろうと、思うんだ。」
「…へ?」
「なんだか、今なら何でも出来る気がするの。」
「いつまでも、にこちゃんに頼ってばかりじゃ駄目だから。」
「…どうしたのよ、いきなり。」
「…勇気を、もらったの。」
「顔も覚えてないけど…」
「確かに、この手で受け取った。」
「…やるよ、私。」
「変わって、みせる。」
見ててね
いつか--きっと
「元気な手に、引っ張ってもらって。」
「…最後に、握手をした。」
「…」
「…にこちゃん、私ね?」
「ともだち…作ろうと、思うんだ。」
「…へ?」
「なんだか、今なら何でも出来る気がするの。」
「いつまでも、にこちゃんに頼ってばかりじゃ駄目だから。」
「…どうしたのよ、いきなり。」
「…勇気を、もらったの。」
「顔も覚えてないけど…」
「確かに、この手で受け取った。」
「…やるよ、私。」
「変わって、みせる。」
見ててね
いつか--きっと
437: 2015/05/28(木) 02:47:42.57 ID:I2U5Sa88.net
ありがとうございました
引用: 希「失った記憶と繋がる心。」
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