1: 2009/04/27(月) 01:28:27.62 ID:6gUD9pwZ0
「ふぁー・・・・・・、よく寝たですぅ」

翠星石がのそっと鞄から出てくる。

辺りをキョロキョロと見渡す。

まだ、翠星石以外には誰も起きていない様子。

「ふふッ ジュンの寝顔可愛いですぅ」

翠星石がジュンの顔をジーッと眺める。
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
6: 2009/04/27(月) 01:31:04.39 ID:6gUD9pwZ0
翠星石が物音を立てないようにジュンの部屋を出て、キッチンに向かう。

「さて、ジュンが起きる前にスコーンでも焼くとするですぅ」

いそいそと、下準備に取り掛かる。

「さぁて、あとは焼くだけですぅ」

タン、タン、と軽快なリズムで踊り出す。

「美味しく焼かれろですぅ」

やがて、香ばしい匂いが桜田家を包む。

「さぁて、ジュン達を起こすとするですぅ」

7: 2009/04/27(月) 01:34:10.31 ID:6gUD9pwZ0
翠星石がジュンのベッドによじ登る。

「んしょ・・・・・・、このベッドはムダに高いから困るですぅ」

そして、ジュンのお腹の辺りに立つ。

「ジュン、起きるですぅ!」

足踏みをする、ジュンのお腹の上で。

「う、うわあぁああッ!」

10: 2009/04/27(月) 01:37:10.50 ID:6gUD9pwZ0
「とっとと顔を洗ってきやがれですぅ! 元気な朝は翠星石のスコーンから!」

「ですぅ!」

翠星石の顔がほのかに桃色に染まる。

「それじゃ、翠星石は先に下に行ってるですぅ!」

パタパタと走り去る。

「なんだったんだ・・・・・・?」

12: 2009/04/27(月) 01:39:45.16 ID:6gUD9pwZ0
「あ、翠星石 悪いけど今日は朝食はいらない」

笑顔のまま、固まる。

「どうしてですぅ・・・・・・?」

「いやさ、昨日夜食にカップ麺食べたからお腹すいてないんだ」

翠星石の顔が曇る。

「ふん、勝手にするといいですぅ」

15: 2009/04/27(月) 01:43:30.58 ID:6gUD9pwZ0
ジュンが再び自室に行く。

入れ替わるように真紅と雛苺が降りてくる。

「おっはよーなのーッ!」

「朝から元気ね、雛苺は」

リビングが再び騒がしくなる。

「チビチビ、今日の朝ごはんは山盛りスコーンですぅ」

「うわーい! やったのぉー!」

16: 2009/04/27(月) 01:46:40.58 ID:6gUD9pwZ0
朝食を終え、退屈な午前が始まる。

「ふぁ・・・・・・ 退屈ですぅ」

真紅はくんくんのDVDに夢中。

雛苺は「ふんふーん♪」と鼻歌混じりに落書きしている。

「あ、こらッ! 床にまでクレヨンの跡を付けるんじゃねえですぅ!」

「床は大きなキャンパスなのー!」

「うるさいわ、静かにして頂戴」

18: 2009/04/27(月) 01:49:56.01 ID:6gUD9pwZ0
だらだらと時間が流れる。

時計を見ると、もう11時になろうとしていた。

「・・・・・・そろそろ昼飯の用意でもするですぅ」

しかし、翠星石はキッチンではなくジュンの部屋に向かう。

カチャ

「入るですぅ」

20: 2009/04/27(月) 01:53:08.61 ID:6gUD9pwZ0
「翠星石か、何の用だ?」

ジュンが勉強しながら聞いてくる。

「ジュン、昼飯は食えるですか?」

「ああ、朝食を抜いた事を後悔するくらい腹が減ってきた」

「美味しそうなスコーンだったから余計に惜しいことをした」、と付け加える。

翠星石の口が自然とにやける。

「お前がどうしてもっていうなら・・・・・・、明日もスコーンを焼いてやるですぅ」

23: 2009/04/27(月) 01:56:06.70 ID:6gUD9pwZ0
聞きたいことだけ聞くと、ささっとキッチンへ向かう。

行くときと違い、顔にしまりはないが。

「チビチビ、皿を出すのを手伝えですぅ」

「わかったのー!」

雛苺がトテテとキッチンへ小走りする。

「実は、今日はひなも料理にチャレンジしたいのー!」

26: 2009/04/27(月) 02:00:09.29 ID:6gUD9pwZ0
「チビチビが料理・・・・・・ ふぅん、やってみろですぅ」

「うわーい! ひな頑張るのー!」

翠星石が雛苺に野菜を渡す。

勿論、既に切ってある。

「それじゃ、チビチビにはサラダを作ってもらうですぅ」

雛苺が「うぃ!」と言ってせっせと盛り付ける。

「それじゃ、翠星石は目玉焼きでも焼くですぅ」

28: 2009/04/27(月) 02:04:25.68 ID:6gUD9pwZ0
匂いにつられたかのようにジュンと真紅が食卓に座る。

「お前らも少しは手伝えですぅ!」

仕方なく、皿を並べるのを手伝う二人。

テキパキと指示を出す翠星石の顔は、笑っていた。

「さて、お昼だからこんなもんでいいですぅ」

「いただきますですぅ」

30: 2009/04/27(月) 02:07:14.12 ID:6gUD9pwZ0
ジュンが昼食を完食するのを見て、再び翠星石の口元が緩む。

「おいしかったですぅ?」

「ああ、旨かった」

「このサラダはヒナが作ったのー!」

雛苺も、手伝ったという事をアピールする。

「ああ、サラダも美味しかったよ」

31: 2009/04/27(月) 02:10:19.47 ID:6gUD9pwZ0
お昼、再びジュンが自室に篭る。

真紅は相変わらずDVDを見続けている。

「チビチビ、後片付けを手伝うのを忘れてるですぅ」

翠星石が雛苺の方を向く。

「すぅ・・・・すぅ・・・・」

翠星石は、諦めて1人で後片付けをした。

「さて、蒼星石の所にでも行くとするですぅ」

37: 2009/04/27(月) 02:14:23.99 ID:6gUD9pwZ0
「やあ、そろそろ来ると思っていたよ」

「ひゃぁあああああああああ!?」

蒼星石が鏡の前で待ち構えていて、翠星石が驚く。

「ご、ごめん そんなに驚くなんて思わなかったよ」

翠星石が顔を真っ赤にしながら愚痴を言う。

「あ、姉を驚かせるなんて言語道断ですぅ!」

40: 2009/04/27(月) 02:17:41.84 ID:6gUD9pwZ0
蒼星石が「機嫌を直してよ」と言いながら翠星石の前に紅茶を置く。

「この紅茶に免じて今日のところは勘弁してやるですぅ」

「それで、今日は何の用事かな?」

蒼星石は質問する。

大方いつもみたいにジュン君の事だろうと思いながら。

「妹に会いにいくのに理由なんてねえですぅ」

蒼星石は「またジュン君のこと?」なんて言わなくて良かったと安心した。

41: 2009/04/27(月) 02:21:16.41 ID:6gUD9pwZ0
「それで、あいつが何て言ったと思うですぅ!?」

翠星石が「ムキーッ!」と怒り出す。

「わ、わからないな・・・・・・」

「美味しいスコーンを目の前にして『腹が減ってない』って抜かしやがったですぅ!」

結局、ジュンの話になる。

「翠星石・・・・・・、もしかして紅茶で酔ってる?」

44: 2009/04/27(月) 02:25:07.20 ID:6gUD9pwZ0
「ふぅ、散々愚痴ったらだいぶ楽になったですぅ」

「僕で良ければいつでも相談に乗るよ」

蒼星石がニコッと笑う。

「あ、そういえば今何時ですぅ?」

「んー、もう6時前だね」

翠星石が慌てて鏡の前に行く。

「そろそろ夕飯の用意をしねえとまずいですぅ!」

48: 2009/04/27(月) 02:28:56.93 ID:6gUD9pwZ0
「今帰ったですぅ・・・・・!?」

翠星石が家に帰ると、我が目を疑った。

キッチンの人口密度が過去最高になっていた。

「おかえり、今日は僕達が夕食を作るよ」

ジュンがフライパンを不器用に振りながら言う。

「そういうこと、貴女はテレビでも見ているといいわ」

真紅が包丁で材料を切りながら言う、とてもあぶなっかしいが。

「翠星石ー! ヒナと一緒に遊ぼうなのー!」

50: 2009/04/27(月) 02:30:38.69 ID:6gUD9pwZ0
翠星石が雛苺の相手をしている間に、のりが帰ってきた。

「ジュン君が料理・・・・・・! お母さん達に報告しなきゃぁ!」

一段と桜田家が賑やかになる。

「やめろよ、恥ずかしいだろ・・・・・・」

「むぅ、じゃあお姉ちゃんも手伝っていい?」

キッチンに、また一人増える。

54: 2009/04/27(月) 02:34:41.00 ID:6gUD9pwZ0
「それじゃ、頂きます」

真紅が音頭を取る。

「私が作ったのだから私に言わせなさい」と、本人の強い要望で。

翠星石が一口、箸を運ぶ。

目から一滴の涙が流れたように見えた。

「もしかして・・・・・、まずかったか?」

「いえ、美味しいですぅ ・・・・・・けど、何故か涙が出ちゃうんですぅ」

57: 2009/04/27(月) 02:37:32.82 ID:6gUD9pwZ0
多分、翠星石が生きてきた中で1,2を争うほど楽しい夕食が終わる。

「後片付けも僕らがやっとくから先に風呂入ればいいぞ」とジュンに言われる。

「それじゃ、お言葉に甘えちゃうですぅ」

翠星石が屈託のない笑顔をジュンに見せる。

たぶん、ずーっと見せたことのないような笑顔。

「お前もそんな風に笑うんだなぁ」

59: 2009/04/27(月) 02:39:58.00 ID:6gUD9pwZ0
「ふぅ、さっぱりしたですぅ」

翠星石の体から湯気が出ている、よほど温まったのだろう。

「なんか、今日は暇ですぅ」

「みんなが手伝ってくれて・・・・・・、本当に暇ですぅ」

素直にお礼も言えない、けど皆はそれを分かっている。

「ふふ、髪の毛の水が目に入ったですぅ」

目を手で擦りながら「もう今日は寝るですぅ」と言い、

ジュンの部屋に走っていく。

61: 2009/04/27(月) 02:43:17.64 ID:6gUD9pwZ0
鞄の中で翠星石が考える。

『こんな平和な生活がずっと続けばいいですぅ』

アリスゲームがある限り、それは叶わないとも分かっていた。

しかし、アリスゲームはなくならないだろう。

『せめて、1日でも長く・・・・・・ ジュンといたいですぅ』

翠星石が少し頬を赤くする。

『明日はもっといい日になるですよね、ジュン?』

fin

オチの弱さに定評のある>>1の提供でお送りしました。

翠星石をメインとしてほのぼの系を書いてみました

gdgdになってないよね?

文才がほしい

引用: 翠星石「んん・・・・・む、もうこんな時間ですぅ」