1: 2009/05/09(土) 00:41:36.27 ID:Gpaoxk+x0
電話の前に立ち、ジーッとそれを見つめる。
昔はよく喋ったり遊んだりもしたけれど、最近はそういう機会が無かった。
だから、悩んでいた。

「考えていても仕方がないわ・・・・・・」

受話器を取った勢いでそのまま番号を押す。
呼び出すまでのコール音がカウントダウンに聞こえる。

カチャ

「もしもし、桜田です」

4: 2009/05/09(土) 00:45:36.55 ID:Gpaoxk+x0
久しぶりに聞く私に向けての桜田君の声。
少し、緊張する。

「あの・・・・・・巴、柏葉巴です」

ジュンが息を飲み込む音が受話器越しに聞こえた。

「な、何だ柏葉か・・・・・・ それで、何の用だ?」

スゥッと息を吸い込み、一気に用件を告げる。
他に話したいことは山ほどあるけど、今は胸にしまって。

「桜田君・・・・・・、悪いけど雛苺を返してもらうわ」

8: 2009/05/09(土) 00:49:53.07 ID:Gpaoxk+x0
少しの間が出来る。
受話器からはジュンの呼吸の音が聞こえていた。
多分私も同じなんだろう、と思い少し受話器を口から遠ざけた。

「柏葉・・・・、悪いけど今から僕の家に来れないか?」

少し考えれば分かる回答なのに、全く想定外だった。
だがジュンがそう言う以上は、従うしかないだろう。

「分かった、今から行くわ」

カチャ、と電話を置き玄関へ向かった。
途中の鏡で少し髪の毛を整えて。

11: 2009/05/09(土) 00:54:53.77 ID:Gpaoxk+x0
ゆっくり、ゆっくりとジュンの家に向かった。
決して行きたくない訳じゃない、ゆっくり行きたかった。

通常の1,5倍程度の時間を掛けてようやくジュンの家にたどり着いた。

「すぅ・・・・・・」

ただチャイムを鳴らすだけなのに、緊張する。
この時間だとまだジュンのお姉さんは家に帰っていない。

つまり、2人きりということ。

窓から、紅い人形が覗いていた。

14: 2009/05/09(土) 01:00:04.65 ID:Gpaoxk+x0
ゆっくりと玄関の扉が開く。
チャイムを鳴らす前に。

「よ、よお・・・・・・ 元気そうだな」

ジュンがぶっきらぼうに言う。
そして、手で中に入れと合図する。

「お邪魔します」

玄関に足を踏み入れると、雛苺が飛びついてきた。

「トゥモエーーーッ!」

17: 2009/05/09(土) 01:04:56.39 ID:Gpaoxk+x0
抱きしめた雛苺からは、ジュンの匂いがした。

「あ、おい雛苺 あんまり迷惑かけるなよ」

「気にしないで」

キュッと力を入れて抱きしめる。
こんなにも柔らかく、暖かい。
本当に人形なのだろうか、と疑ってしまうほどに。

「巴苦しいのー・・・・・・」

ついつい、力を入れすぎてしまったみたい。

「ご、ごめん・・・・・・」

20: 2009/05/09(土) 01:09:52.78 ID:Gpaoxk+x0
ジュンに案内されてリビングへ向かう。
雛苺は嬉しそうに私を見上げながら横を歩いている。

「まぁ、座ってくれ」

そう言うと、ジュンは台所へ向かった。

「柏葉も紅茶でいいか?」

別に構わないのに・・・・・・。
でもこういう小さな気遣いで心が温まる。

「ええ」

24: 2009/05/09(土) 01:14:52.86 ID:Gpaoxk+x0
コトッと音を立てて私の前に紅茶が置かれる。
そして、私の隣にも。

「あら、ありがとう」

予想を裏切り、ジュンは私の向かいの席に座った。
そして、隣にはさっき窓から覗いていた紅い人形。

名前は、真紅といったっけ。

「ここに真紅がいるのは事情があるんだ」

ジュンが話し始めると、雛苺は私の膝の上に乗ってきた。

28: 2009/05/09(土) 01:19:55.38 ID:Gpaoxk+x0
「真紅に相談してみたんだが、柏葉と雛苺はもう契約が切れているんだろ?」

そう、私と雛苺の契約は隣に座っている真紅によって断ち切られた。
別に恨んでなんていない、そうでもしないと私はここにいなかったから。

「ええ」

「今雛苺は真紅を通して僕の力で動いているんだ」

雛苺の目を見ると、少し悲しそうに頷いた。
ああ・・・・・嘘じゃないんだ、と悟る。

「つまり、僕の元を離れると雛苺は深い眠りについてしまう」

「らしい」とジュンが弱気に付け足す。

31: 2009/05/09(土) 01:24:52.51 ID:Gpaoxk+x0
「それじゃ、雛苺は桜田君の元から離れられないの?」

頭の中では理解できているはずなのに、自然と口が動いた。
少しの沈黙のあと、ジュンが首を振った。

「ああ、本当にごめん」

謝ることは無い。
無理を言ったのは私の方なのに、と声を掛けたかったが声が出なかった。

「2人とも、どうして悲しい顔をしているのー?」

雛苺が沈黙を破る。

36: 2009/05/09(土) 01:29:54.22 ID:Gpaoxk+x0
「私ね、もう雛苺とは暮らせないの」

納得しろ、とは言わない。
ただ、分かって欲しい。

「うゆ、それは昨日真紅から聞いたの」

雛苺が不思議そうな顔をしてみせる。

「雛苺、言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」

紅い人形、もとい真紅が口を挟む。

「だって巴が毎日ジュンの家に来ればいいことなのー」

39: 2009/05/09(土) 01:32:52.99 ID:Gpaoxk+x0
私の心臓がドキッと大きく脈を打った。
顔が熱い。

「なななな、何を言っているんだ雛苺」

ジュンも動揺しているように伺える。
もちろん、私だって負けないくらいに動揺している。

「そうよ、雛苺 桜田君に迷惑になってしまうわ」

何か変なこと言ったのだろうか、ジュンが私の方向を見据える。

「僕は全然迷惑じゃ・・・・・・」

43: 2009/05/09(土) 01:39:33.63 ID:Gpaoxk+x0
「桜田君・・・・・・」

しまった、という顔をしている。
お互いに目を逸らした。

「2人とも顔が赤いのー!」

雛苺の一言で、再びお互いに目を合わす。

「か、柏葉さえ良ければ僕は・・・・・・」

「私も、桜田くんの迷惑じゃなければ」

雛苺が私といた時には見せたことのない、満面の微笑みを見せた。

「それじゃ決まりなのー!」

fin
起承転結の起あたりかな

オチry>>1ry
続き浮かんだら書こうと思うけど
需要次第かな、今は書かないけど

文才が欲しい
最近ネタ切れ気味だ、おやすみお前ら

え、書き溜め? 知らんがな^^

引用: 巴「桜田君・・・・・・、悪いけど雛苺を返してもらうわ」