1: 2009/05/14(木) 22:01:23.17 ID:15Pm4KvR0
遠くから桜田家の窓を見つめて、ポツリと呟いた。
その瞳には、5人で仲良く遊んでいる水銀燈の妹達が映っていた。

「・・・・・・」

それ以上は何も言葉を出さなかった。
ただただ、遊んでいる妹達を見つめていた。

やがて少し薄ら笑いを浮かべ、その場を飛び去った。
当初の目的すら果たさず、誰にも見つからずに。
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

7: 2009/05/14(木) 22:05:19.03 ID:15Pm4KvR0
バサッ・・・・・・バサッ・・・・・・、と華麗な羽音が病室に近づく。
その音をもっとよく聞こうと、めぐの手は窓に伸びた。

「おかえり、天使さん」

水銀燈が、触らないで と少し険しい表情を向ける。

「私を天使って呼ぶなんて何のつもりなのぉ?」

「出会った頃の事を思い出したのよ」

少し、ほんの少しだけ水銀燈が動揺した。

「過去を省みるなんて・・・・・・、もう長くないんじゃなぁい?」

少しの雑談を終えた後、めぐの歌を聴きながら病室を後にする。
めぐには見えなかっただろうが、少し安心した顔をしていた。

11: 2009/05/14(木) 22:09:42.42 ID:15Pm4KvR0
随分と寂れ、人の気配など皆無となってしまった礼拝堂。
水銀燈は、その場所を拠点に生活していた。

訪れるものなどいない。
人間も、人形も。

その冷たい静かさは、考える事を助長する。

水銀燈はいつも1人でアリスゲームについて考えていた。
ただ、いつも答えが出ることは無かった。

「・・・・・・考えていても仕方がないわ、おやすみお父様」

結局、今日も答えが出ないまま休息を取る事になった。

13: 2009/05/14(木) 22:12:25.59 ID:15Pm4KvR0
いつも変わらぬ、刺激のない毎日を送っていた。
アリスゲームを挑みに行っても毎日のように、真紅の家には他の妹がいる。
とても仲良く、まるでアリスゲームを忘れているかのように遊んでいる。

その光景を見るたびに、水銀燈の戦意は削がれていった。
人数が多いから不利、そんな理由じゃない別の何かで。

だが、水銀燈は真紅の家に行く事をやめない。

水銀燈はアリスゲームに異常なまでの執着心を持っていた。
"それ以外にする事がない"と言われればそれまでだが。

そして、今日も真紅の家に向かう。

18: 2009/05/14(木) 22:17:07.07 ID:15Pm4KvR0
少し高い屋根の上に足場を見つけ、その場所から妹達の様子を伺う。
今日も真紅のもとに、水銀燈とまだ見ぬ第7ドールを除いたドールズが集まっていた。

「馴れ合い・・・・・・ねぇ」

普段通り仲良く遊んでいる妹達をただただ見つめる。
最早、見守っているようにも見えた。

しかし、今日に限って水銀燈は重大なミスを犯してしまう。
偶然なのか、いつかは覚悟するべきことだった。

水銀燈と真紅の目が合う。



最初の方で頑張って書き溜めたの出しすぎた

20: 2009/05/14(木) 22:22:37.73 ID:15Pm4KvR0
それからの行動は早かった。
すぐに水銀燈が来ているという事が他の妹達に知れ渡る。

そして、全員が水銀燈を見つめる。
とても姉を見るような目じゃない、冷え切った目で。

はぁ・・・・・・、と大きくため息を落とし水銀燈が真紅の家へと勢いよく飛ぶ。

ガシャン、と窓ガラスが飛び散る。
その音の大きさに割った本人でさえも少し驚いた。

「随分乱暴な挨拶ね、水銀燈」

24: 2009/05/14(木) 22:26:49.70 ID:15Pm4KvR0
真紅の言葉を聞き、高らかに笑う。
水銀燈の目はいつの間にか、凄みを帯びた冷えた目になっていた。

「あなた達は本当にお馬鹿さぁん・・・・・・、アリスには相応しくないわぁ」

水銀燈の言葉が伝わるかどうかのうちに、残りのドールは臨戦態勢に入っていた。
水銀燈は出遅れた訳ではない、少しだけ様子を見た。

「水銀燈、退いてくれないか? 流石の君でも少々分が悪いよ」

水銀燈に、ジャキっと鋏を向ける。

「どうして水銀燈は翠星石達の平和を壊そうとするですぅ・・・・・・?」

26: 2009/05/14(木) 22:31:34.06 ID:15Pm4KvR0
「妹と違って、翠星石はほぉんとに弱虫ねぇ?」

フフ、と鼻で笑う。
ようやく、水銀燈が臨戦態勢に入った。
その水銀燈の動きを見て、真紅が雛苺と金糸雀を自分の後ろに退かせた。

「弱者を庇うなんて本当に不細工ねぇ、真紅ぅ?」

「この状況では君が1番の弱者だ、水銀燈」

有無を言わさずに、蒼星石が水銀燈に斬りかかる。
ただ、追い払うかのように。

「これで本気なのぉ?」

29: 2009/05/14(木) 22:36:25.67 ID:15Pm4KvR0
水銀燈が勢い良く無数の黒い羽を放つ。
真っ直ぐに、真紅に向かって。

「まずは・・・・・・真紅からぁ!」

「真紅! 避けるかしらッ!」

2人を庇っていた真紅は避ける事が出来なかった。
くっと目を閉じて痛みに耐えていた。

「真紅ッ!」

蒼星石が水銀燈から視線を外し、真紅のもとへと向かう。

「ちぃッ・・・・・・」

31: 2009/05/14(木) 22:41:08.32 ID:15Pm4KvR0
これ以上はムダだと、水銀燈が攻撃の手を止める。
既に真紅は十分なダメージを負っていた。

「水銀燈・・・・・・どうしてこんなに酷いことをするの?」

目には涙を溜め、嗚咽を押し頃しながら雛苺が問う。
釣られたように、翠星石も金糸雀も問う。

「・・・・・・明日、nのフィールドで決着をつけましょぉ?」

水銀燈が、威圧的な声で言う。

「質問の答えになってねえですぅ!」

とうとう翠星石が泣き出してしまった。
だが、気に留めることもなく水銀燈は真紅の家を後にした。

34: 2009/05/14(木) 22:46:47.11 ID:15Pm4KvR0
その羽で、真っ直ぐにめぐの病室へと向かった。
大して弱った訳でもない、しかし羽音がいつもよりも弱弱しかった。

「水銀燈、何だかお疲れのようね?」

めぐが自分の手をさすりながら水銀燈に微笑みかける。
その手を見つめながら「ええ」と答える。

「めぐ、今日もアレを歌って頂戴」

「ええ、構わないわ」

めぐが歌う間、水銀燈はずっとメグの手を見つめていた。
指輪をさする手を。

やがて病室に近づく足音を聞き、水銀燈は立ち去った。
小さく「さようなら」と言い残して。

36: 2009/05/14(木) 22:51:43.51 ID:15Pm4KvR0
家に帰ると心が休まる、という事は水銀燈には無かった。
強いて言うならめぐと話している間がそれに近い。

静かな礼拝所で1人考える。
アリスゲームについて、妹について、メグについて。

雛苺の一言が心に残る。
『どうしてこんなに酷いことをするの?』

めぐの指輪をさする姿が頭に浮かぶ。

楽しく過ごす妹達の姿を思い出す。

やがて、1つの結論に辿り着いた。
いや、最初から水銀燈は知っていたかもしれない。

37: 2009/05/14(木) 22:56:56.54 ID:15Pm4KvR0
翌日、日が少し高くなった頃に水銀燈が目を覚ます。
ほんの少しだけ目を閉じ、キッと目を開く。
覚悟が決まったようだ。

「今日は良い天気ねぇ・・・・・・」

fin

オチry>>1ry

明るいSSを書こうと思ったらこれが浮かんだ。
書き方を変えてみたら、自分の文章能力の無さに気付いた。
っていうか短かった 文字の量の割りに。
長いの書けない、書きたくても書けない

ラノベ並みに書くぞー!っていつも思ってから書いてるのに

51: 2009/05/14(木) 23:18:27.94 ID:15Pm4KvR0
なんか上手く伝わらなかったみたいだなぁ
まぁ、見てくれてありがとう!

いい夢見ろよ!

64: 2009/05/15(金) 00:40:12.93 ID:Qu3ucykLO
いち乙

引用: 水銀燈「ふぅん・・・・・・、無様ねぇ」