ヴィーネ「本当はガヴに案内してもらおうと思ってたんだけど、天界は退屈だから行きたくないって言って……」

タプリス「だからって魔界に行ってしまうなんて……。天真先輩が汚されてしまいます！」

ヴィーネ「魔界はそんな怖い場所じゃないからね？」

タプリス「す、すみません。そういえば胡桃沢先輩は天界には興味がないんですかね？」

ヴィーネ「その逆よ。前に天界に忍び込もうとした前科があるから、今回は申請が通らなかったの」

タプリス「なんと！　やはり恐るべき悪魔だったのですね！　天真先輩が心配です……」

ヴィーネ「ただ馬鹿なだけよ」

ー天界ー

ヴィーネ「わあっ、すごい！　大地が空に浮かんでる！　空気も美味しいわ！」

タプリス「ここからは羽で移動します。ついてきてください」

ヴィーネ「わかったわ。羽を出すのも久しぶりね」

ﾊﾞｻｯ

タプリス（月乃瀬先輩の羽、ちっちゃくて可愛いです……）

ヴィーネ「のどかな風景ね。緑がいっぱいで、川の水も透き通ってる」

タプリス「これが普通ですよ。魔界は違うんですか？」

ヴィーネ「そうね。荒野に黒い森、真っ赤な川や濁った湖、ドス黒い海にはクラーケンや海坊主……」

タプリス「怖いです！　絶対に行きたくないですぅ！」

ヴィーネ「そう？　賑やかで楽しいわよ？」

タプリス「ここが天界のおすすめスポット、何でも屋さんです！」

ヴィーネ「『シエルストアー』……コンビニっぽいわね」

タプリス「私の行きつけのお店なんです。さあ入りましょう！」

ｶﾞﾁｬ

ヴィーネ（手動のドア……）

タプリス「わあ！　新作が入荷してるです！　早速試着してみるです！」

ｶﾎﾟｯ

タプリス「シュコー　シュコー　シュコー　シュコー」

ヴィーネ「ガスマスク！？」

タプリス「シュココー♪　シュココココー♪」

ヴィーネ「いや、何言ってるか分からないから！」

タプリス「ここのカフェは最近できたんです。ドーナツが美味しいと評判です！」

ヴィーネ「へえ、可愛いお店ね。天界にもこういう場所があるのね」

タプリス「そうですね、近年は下界の文化を積極的に取り入れていく方向で天界も動いているみたいです」

ヴィーネ「ガヴは天界のおやつは豆しかないって言ってたけど、あれは冗談だったのね」

タプリス「天使は人々の模範となる暮らしをしなくてはなりません。そのために質素倹約であることが望まれます」

ヴィーネ「それじゃあガヴの家は比較的厳しい教育方針なのね」

タプリス「さすが天真先輩ですね！　立派なご両親です！」

ヴィーネ（そりゃ今のガヴじゃ耐えられそうにないわね……）

ヴィーネ「天界では普段どんな料理を食べるの？」

タプリス「基本的には質素なものが多いですね。豆のスープやキノコの炒め物とか」

ヴィーネ「健康的でいいじゃない。今流行りのロハスってやつ？」

タプリス「安心してください！　今日は月乃瀬先輩が来るということで母が御馳走を用意してくれてますから！」

ヴィーネ「そんな、気を使わなくてもいいのに」

タプリス「いえいえ、お世話になってる先輩をおもてなしするのは当然です！」

ヴィーネ「ありがとうタプちゃん」

タプリス「確かジェリードイールと、ハパンシラッカのパイを作るって張り切ってました！」

ヴィーネ「初めて聞く料理だけど、きっと美味しいんでしょうね。楽しみだわ！」

ー下界ー

サターニャ「ヴィネットが天界から戻ってこないのよ」

ラフィエル「きっと天界の居心地が良くて帰りたくないんでしょうね」

ガヴリール「やっぱりあいつは悪魔じゃなくて天使の方が向いてるのかもな」

ガヴリールドロップアウト

『無言の帰国』

ー完ー

短いですがおわりです。読んでくださってありがとうございました。

乙乙
これ、ヴィネットドロップアウトじゃねえか