276: 2014/10/27(月) 21:06:55.19 ID:r5ebAwqpo
皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

シリーズ最初へ:【艦これ】提督「暇っすね」
このpart最初へ:【艦これ】提督「暇じゃなくなった」

前回:【艦これ】提督「暇じゃなくなった」part3


277: 2014/10/27(月) 21:14:57.91 ID:r5ebAwqpo
???「言うとおりにナサイ」

???「フフッ、随分なナリになっちゃって…」

???「聞きシニ勝る、と言うコトか…」

装空鬼「敵の戦力ヲ見誤った結果ヨ」


金剛「なっ…!」

榛名「見た事のない…深海棲艦…!」


ピーコックの非難の言葉を遮るように、新たに四匹の深海棲艦が姿を現す。


ピーコック「装甲空母鬼、南方棲鬼、航空棲鬼、南方棲戦鬼…!」

フェアルスト「リコリスの命令ね、キット…」

南戦鬼「リコリスにとっては私達ヨリも、貴様達が重要ナンダそうだ…」

航空棲鬼「フフッ、拗ねちゃって、カワイイのね?」

南戦鬼「フン…」

南方棲鬼「これは命令ヨ。撤退しなサイ」

装空鬼「後ヲ引き継ぐ」

ピーコック「くっ…!」

フェアルスト「後味は最低ネ…」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
278: 2014/10/27(月) 21:30:24.24 ID:r5ebAwqpo
苦々しい表情で二人は金剛と榛名を一瞥し、踵を返してその場を後にする。

そして入れ代わるようにして四匹の深海棲艦が二人の前に立ちはだかった。


金剛「流石に、冗談が過ぎるネ…」

榛名「お姉さま…」

金剛「榛名、多分赤城達は救出に成功してるはず……比叡達がどれだけ痛めつけられているかは解らないけど、
五人でなら速力を落とさず退避は出来るはずネ」

榛名「お姉さま、何を言って…!」

金剛「相手は簡単に逃がしてくれる相手じゃないワ。ピーコックとフェアルスト…この二匹を前にして気付いた
事は、大本営で錬度を上げた榛名達が絶対今後も必要って事ネ」

榛名「一人で残るって言うんですか!?それに、今後も必要なのはお姉さまも一緒です!」

金剛「考えてる暇はないヨ。それに、全員が残ったら救出しに来た意味まで無くなる。作戦を思い出すネ!捕ら
われた艦娘の安全を確保し、現地より撤退する事!それが、今回の私達の任務…!」

榛名「ですけど!」

金剛「誰かが、殿を勤めないと無理ヨ」

榛名「それなら私が…!」

金剛「榛名、貴女には提督の下に戻るって言う特別な任務もあるデショ」

榛名「それは皆一緒です!」

金剛「そうネ…けど、榛名が戻らなかったら、提督が泣くヨ。だから、貴女は戻るべきなの」

榛名「お姉さま!」

金剛「榛名…私は、貴女達の長女として何かできたかな」

榛名「え…?」

金剛「例え、出来てなかったとしても、私は貴女達の姉で本当に良かった。私の覚悟、今ここで見せるヨ!」

榛名「」(お姉さまの覚悟を、決意を、無駄にする訳にはいかない…ごめんなさい、お姉さま…!)バッ

装空鬼「あら、敵前逃亡ナノ?」

南方棲鬼「敵に背を見せるナンテ…愚かネ」ジャキッ

金剛「何処狙ってるネ!」サッ

航空棲鬼「……まさか、一人で私達ヲ相手にスル気?」

金剛「私一人じゃ不満デスカ?」

南戦鬼「些末な問題ダ。どうせ朽ち果テル…」

279: 2014/10/27(月) 22:06:22.63 ID:r5ebAwqpo
-珊瑚諸島海岸-

赤城「皆さん!」

衣笠「赤城さん!」

羽黒「助けに、来てくれたんですか…」

大鳳「当然じゃない。仲間なんだから」

比叡「川内に北上、あんた達その怪我…」

霧島「大丈夫なの…!?」

川内「はは、艤装ぶっ壊されてうち等より怪我がヒドイお二人さんに言われちゃ形無しだってば」

北上「全くさ~、どっちが患者かわっかんないよね~」

時雨「皆、ありがとう」

春雨「うぅ…」

北上「ほらほら、泣くな!女の子でしょ!」ポンポン

川内「北上、それを言うなら男の子だ。バカやってないでさっさとここから撤退するよ!」

霧島「赤城さん、まさか四人で来たわけじゃないわよね?」

赤城「はい、今金剛さんと榛名さんであの二匹を食い止めてくれています」

大鳳「急いで戻って加勢に向かわないと…!」

榛名「皆…!」

比叡「榛名…!?」

280: 2014/10/27(月) 22:22:43.05 ID:r5ebAwqpo
霧島「榛名、金剛お姉さまは…」

榛名「はぁ、はぁ…話は、後…今は、早くこの海域から撤退する事を考えて!六人は、艤装を壊されてるだけ?」

衣笠「いや、まぁ…ちょっとあちこちやられちゃってはいるけど、速度が落ちる事は多分ないと思う」

羽黒「はい、なんとか、ですが…」

榛名「うん、了解。一応、六人を庇うようにして輪形陣で進みましょう」

赤城「解りました!」

榛名「それじゃ、六人をお願いしますね」

大鳳「え?」

比叡「榛名、あんた何言ってんのさ」

榛名「金剛お姉さまは、私達の撤退を促す為に深海棲艦とたった一人で交戦中です。はじめは、お姉さまの意志
とか、決意とか、無駄にしちゃいけないって、そう思って、背を向けてしまった…けど、私は『もう二度と』空
を眺めているだけなんてイヤなんです!今度こそ、お姉さまは私が守ります!」

北上「え、ちょ…今度こそって、はい?榛名っち、何言ってんのさ…」

川内「もう二度とって、前にも生氏の危機に陥った事でもあるの…?」

霧島「は、榛名…?」

榛名「必ず、お姉さまと一緒に戻って見せます!だって、私は金剛型三番艦……お姉さまの妹だからっ!お姉さ
まが困ってるのに、助けないなんて、そんな事出来ません!」

比叡「……榛名、ごめんね。こんなナリでさ。頼んだよ、お姉さまの手助け、本当なら私もしたいけど、今回は
ぜーんぶ、あんたに譲るからさ」

霧島「私達の分まで、お願い…お姉さまを、金剛お姉さまを助けて!」

榛名「はい!」

285: 2014/10/28(火) 21:37:34.04 ID:pKboPKp4o
-金剛-

金剛「くっ」サッ


ボゴォォォン


金剛「」(こいつ、わざと…精度を落として!) 大破

航空棲鬼「あら、今度は回避デキタみたいね。もっとも…フフッ、手元が狂って射線が逸れちゃったカラ…なん
ダケどね?」ニヤッ

装空鬼「……ダトしても時間の問題ネ。畳み掛けるワヨ」

南戦鬼「私の砲撃ハ……ホンモノよ」ジャキッ

南方棲鬼「フフフ……もう、終わりカモしれないワネェ……コレならどうカシラ?」ジャキッ


反撃の暇すら与えず、四匹の深海棲艦は一方的に金剛を攻め立てる。


金剛「二匹、同時……」

南戦鬼「コノ世に……」

南方棲鬼「別れヲ……」

286: 2014/10/28(火) 21:38:06.83 ID:pKboPKp4o
金剛「」(ごめんネ、提督……皆揃って、帰れそうにないヨ。折角、救ってもらったのに……折角、姉妹皆と、
会えて、やっと姉妹揃って……今度こそ、私が守るって、誓ったのに……私は、こんなにも無力。姉としての勤
めすらも……けれど、せめて、矢尽き刀折れようと……この金剛、一矢報いてみせマス!)ググッ

装空鬼「……マダ、動けるノカ?氏地に立ち、背水の陣で構え……マサに、氏力を振り絞るか。敵なガラ見事ナ
底力と言ったトコロかしら…?」

金剛「私は…超弩級戦艦として、技術導入を兼ねて英国ヴィッカース社で誕生した……金剛デスッ!」ザッ

航空棲鬼「なんだ、この…コイツは、何かヘンだ……ッ!早く、仕留めろッ!!」

金剛「」(提督……どうか武運長久を……私……ヴァルハラから見ているネ……願わくば、妹達を……私亡き後
も、支えて上げて欲しいネ……)ダッ

南戦鬼「特攻カッ!させんッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン



287: 2014/10/28(火) 21:38:51.80 ID:pKboPKp4o
既に満身創痍。

それでも金剛の放つ気迫に四匹は気圧された。

結果、南方棲戦鬼の放った一撃は金剛の横を掠め、遥か後方で大爆発を起こす。

まさに虫の息。あと一撃でも撃ち込まれれば一たまりもない状況。

鬼気迫る金剛の心境を現すかのように、空に暗雲が立ち込め、降り注ぎ始めた雨は彼女の涙の如く大降りとなる。

今、金剛の中には様々な感情が渦巻いている事だろう。しかし、それでも絶対に変わらないものがある。

ずっと姉妹で、ずっと一緒に、時として切磋琢磨し、競い合い、共に歩んできた彼女たち四姉妹。

同じ時を刻んで、同じ未来を信じて、同じ痛みを知って、それらを乗り越えてきたからこそ通じ合うものがある。

一人じゃない。

今の金剛を突き動かすのは今わの際になっても妹達を思う姉の姿そのものであり、それこそが彼女の原動力。

288: 2014/10/28(火) 21:42:00.83 ID:pKboPKp4o
金剛「……守って、みせマス!恐れなさい、深海棲艦!私は、食らいついたら離さないワ!!」ドォン ドォン

南方棲鬼「バ、バカな……ッ!」


ボゴオオォォォォン


装空鬼「なっ……南方棲鬼ッ!」

南方棲鬼「ぐっ……小賢しいィッ!!」 小破

航空棲鬼「ナンなんだ……貴様は、一体、ナンなんだッ!!」

金剛「ふふ……私は、金剛型一番艦の、戦艦、金剛…デス……十分、時間は、稼げたよ、ネ……?」フラッ…

装空鬼「この艦娘ハ……確実に仕留めナケレバ終わらナイ……!」ジャキッ


ヒュン ヒュン……ボゴオオォォォォン


装空鬼「ぐっ……!」 小破

南方棲鬼「な、何事ダ…!?」

榛名「……」

装空鬼「キサマ…!」

金剛「はる、な……どう、して……」

榛名「以前に、北上さんが言ってました。仲間や姉妹を助けるのに、理由がいるのかって…どうしてって、私は
金剛型三番艦。四姉妹の三女、金剛お姉さまの妹ですから。私達が揃えば、乗り越えられない壁なんて一枚だっ
てありはしません!何より、私がお姉さまを見捨てるなんて、それこそありえません!」

289: 2014/10/28(火) 21:42:42.95 ID:pKboPKp4o


ドオオォォォン ボゴオオォォォン


その声に応えるかのように、四匹を唐突な砲撃の嵐が襲う。

嵐による視界不慮と雨音、風音、唸りを上げる雷雲と降り注ぐ雷。

悪天候のはずのその全てが、見事艦娘の味方となって文字通り天をも味方につけた起氏回生の一斉射撃。


南戦鬼「ガッ……!」 小破

航空棲鬼「キャッ……!」 小破

装空鬼「今度は、ナンだ…!」キョロキョロ


──砲撃、命中を確認した!装備換装を急げっ!臆すな、全艦──


長門「この長門に続け!!」

榛名「な、長門さん…!」

長門「貸しだ、榛名。釣りまで取っておけ」

先輩『聞こえる?榛名ちゃん。貴女と金剛ちゃんをうちの隊で援護するわ』

榛名「先輩提督…!?」

先輩『全く、あのヒヨっ子…自分の艦隊なんだからもっとしっかり指揮執れってのよ!いい、艦隊の皆。たっぷ
りとヒヨっ子に恩を売るのよ。そこの海域で吹き荒れてる嵐は直に収まる。そしたら一気に攻勢に転じなさい!』

290: 2014/10/28(火) 21:43:23.11 ID:pKboPKp4o
翔鶴「お任せ下さい!良いわね、瑞鶴」

瑞鶴「勿論!翔鶴ねぇに合わせるわ!」

天龍「おっし、酒匂!お前も一緒に合わせて行けよ!」

酒匂「ひゃ~!敵さんずらり~」

龍田「ウフフ、親友に手出しをしてる腐れ深海棲艦はどこかしら~♪」

榛名「み、皆さん…どうして…」

長門「ふっ、理由など不要だ。仲間だから助けた。何より、さっきも自分で言ってただろう。この場、この瞬間
において、お前達を見捨てるなど私にとっても万に一つ、億に一つもありえん!」

天龍「へへっ…榛名、金剛、遅れてすまなかったな。この嵐で翔鶴と瑞鶴の艦攻艦爆飛ばせなくってよ」

龍田「けれどもう安心よ~」

金剛「はは……榛名も、皆も、大好きネ……」

装空鬼「……散れ。総員散レッ!」サッ

南方棲鬼「オノレ…!次こそ…ッ!」サッ

航空棲鬼「この屈辱ハ忘れナイ…ッ!」サッ

南戦鬼「……次コソ、沈めルゾ……ッ!」サッ

長門「嵐の切れ目を見極めろ!翔鶴、瑞鶴、天龍、龍田、酒匂は追撃に入れ!他の艦隊は金剛の救出、榛名の援
護にそれぞれ回れ!」

294: 2014/10/31(金) 22:26:33.61 ID:0xj5hheTo
皆様こんばんは
仕事忙しくて更新滞ってました
少し更新します

295: 2014/10/31(金) 22:27:43.52 ID:0xj5hheTo
-帰投中-

赤城「……そうでしたか。了解しました。こちらは引き続き、六名を警護する形で帰投しますね」

比叡「赤城、榛名と、お姉さまは…」

赤城「こちらとは逆方面から、先輩鎮守府の主力艦隊の救援があったようです。榛名さんも金剛さんもその艦隊
と合流し、無事であると提督から情報を頂きました」

衣笠「良かったぁ…」

羽黒「本当に、良かったです…」

北上「取り敢えず、一安心か~」

川内「…けどさ、私もはじめて対峙したけど、上位に君臨してるっていう、あの深海棲艦の幹部連中?あれは、
本腰入れて掛からないとちょっと…ううん、かなりマジでヤバイかもね」

比叡「情けないのは私達さ」

霧島「……ええ、不意を突かれたと言ってもこっちは六人、相手はたった二匹だったのに……」

時雨「動けなかったよ。悔しいな」

春雨「……」

衣笠「あんな連中がこの先の海にまだまだ居るんだよね」

大鳳「今回合間見えた連中、確か離島棲鬼と戦艦棲姫って言ったかしら」

北上「名前は……確か戦艦棲姫ってのがフェアルスト」

川内「離島棲鬼って奴はピーコックって呼ばれてたね」

北上「深海棲艦の中には人に近い姿をしてる奴もいるって言うけど、あいつらは艤装がおまけみたいな感じで、
完全に人型として独立してる感じにすら見えたね」

赤城「フェアルストと呼ばれていた深海棲艦の艤装は、まるで巨人か何かのようで凶悪に感じました」

大鳳「私の艦爆艦攻隊と北上さんの雷撃を真正面から受け止めて無傷だったくらいだしね」

羽黒「とにかく、持ち帰れる材料を元にして検証が必要かと思います」

霧島「ええ、そうね」

時雨「まずは、戻って…傷を癒そう。春雨、もう直鎮守府だから、頑張るんだよ」

春雨「は、はい!」

296: 2014/10/31(金) 22:49:55.69 ID:0xj5hheTo
-帰路道中-

長門「……そうか。いや、問題ない。ああ、お前達はそのまま鎮守府に進路をとってくれて構わない。ん?酒匂
が煩いって……それを私に言われても困る。んん、あぁ…解ったよ、解った。戻ったら相手をしてやると、そう
酒匂に伝えてくれ。通信はこれで切るぞ」


ブツ……


榛名「大変そうですね、長門さんも」

長門「同時着任した酒匂に何かと懐かれてな。まぁ、陸奥のようなタイプとは違い、また可愛らしい妹ができた
と思っているよ」

榛名「またそんな…陸奥さんが拗ねますよ?」

長門「はは、あいつが拗ねるのか?それはそれで見てみたいものだが、見たら見たで、何かと煩そうだ」

先輩『もしもーし、金剛ちゃんは大丈夫そう?』

長門「ん、あぁ提督。問題ない。後続の駆逐艦達に応急要員の妖精を載せてきたからな」

先輩『そう、ならいいけど。榛名ちゃんも、大きな怪我とかしてないわね?』

榛名「はい、ご心配ありがとうございます。でも、どうして…」

先輩『私達が駆けつけてきたのか、でしょ。結構偶然だったんだけどね』

長門「そっちの提督鎮守府付近での任務があってな。まぁ、付近と言っても結構離れてはいたんだが、さっき少
しだけ一緒にいたと思うが…翔鶴の妹の瑞鶴、それと私に懐いてる酒匂の二人が私達が居た鎮守府を見てみたい
と言ってな」

先輩『で、長門達がそっちの鎮守府付近まで行ってみるとなんか厳戒態勢取ってるって言うじゃない?』

長門「私には見覚えのある光景だったものでな。直感的に何かあると踏んで、先輩提督へ一報を投じ、先輩提督
から提督へ連絡が行ったという訳だ」

先輩『相手は援軍の類が発覚した場合は容赦無く人質は処刑するって事だったみたいだけど、折良く榛名ちゃん
達が抜錨してから結構な時間が経過してるって言うのも相まってね』

長門「ただし、援軍が向かっていると深海棲艦に悟られてお前達の状況が不利になる事は避けたかった。故に、
あの嵐を待って、それに乗る形で接触を図ったというのが事の顛末だ」

297: 2014/10/31(金) 23:29:06.76 ID:0xj5hheTo
先輩『まぁ、結果として金剛ちゃんを危険に晒す結果になっちゃったんだけどね』

金剛「気にして、ないネ。まさに、天からの助け……感謝しても、しきれないヨ」

榛名「お姉さま、無理して喋らないで下さい!」

長門「それはそうと、捕らわれていた者達は大丈夫だったのか?」

榛名「はい。艤装は反撃を受けない為でしょうが、全て破壊されていましたが、身体的には…ただ、今回戦った
相手…離島棲鬼のピーコックと戦艦棲姫のフェアルスト……どちらも想像を絶する強さを見せてきました」

長門「深海棲艦の幹部クラスと言う奴だな。一体、何匹居るんだ」

先輩『以前に戦った泊地棲姫と比べて、どうだったの?』

榛名「正直、泊地棲姫を遥かに凌ぎます。恐ろしいと感じたのは勝負の最中、まだピーコックとフェアルストは
全力を出し切っていなかった、と言う事です」

長門「私と木曾、大鳳の三人で泊地棲姫は制圧できたが…」

榛名「今回は私と川内さん、赤城さんがピーコックを、金剛お姉さまと北上さん、大鳳さんでフェアルストをそ
れぞれ相手にしたんですが、川内さんと北上さんが途中負傷してしまって…レ級の時みたいに各個撃破されない
ためにも、二人を一旦下げて、そのまま空母組と合流させて人質になってた比叡お姉さま達の救出に向かっても
らったんです」

先輩『それじゃ、その間その二匹を二人がそれぞれタイマンで相手してたの!?』

金剛「結局、私は榛名を援護する形でしか、活躍は無理だったケドネ」

榛名「もう…その後一人で四匹相手にしてた人が何言ってるんですか。本当に心配したんですからねっ!」

長門「榛名、その位にしてやれ。金剛の立つ瀬が無くなる」

金剛「うぅ…フォローになってないヨ、長門…」

榛名「金剛お姉さまには怪我が完治したらたっぷりとお説教させて頂きます!」

金剛「What!?そ、それどういう事ネー…?」

先輩『あらあら、時として妹の追及は怖いわよ~。じゃ、あとは長門に任せたわ』

長門「引き受けた。あぁ、そうだ…」

先輩『ん?』

長門「東奔西走させられたんだ。今日は私は提督鎮守府で一泊して行く事にする。酒匂の相手は任せたぞ、先輩提督」

先輩『えっ!?ちょ、ちょ、たんま!あんたねぇ!酒匂があんた居なかった時のトラブり具合知ってる!?ねぇ、
知ってる!?ほんっと、マジでやb……』


ブツン……


榛名「ぁ……」

長門「よし、私は自由だ……ふふ、自由だ」

金剛「な、何だか開放されきった顔、してるネー…」

榛名「一体、長門さんに何が…」


かくして今回の事件は収束を向かえた。

だが戻った榛名達の報告によって幾つか露見した新たな深海棲艦幹部クラスの戦力に提督をはじめ、近隣鎮守府

の課題は山積みとなってしまった。

だが一先ずは目先の勝利と全員が無事帰還した喜びに鎮守府の皆の顔は包まれていた。

298: 2014/10/31(金) 23:34:58.44 ID:0xj5hheTo
~蘇る記憶~




299: 2014/10/31(金) 23:35:32.23 ID:0xj5hheTo
-???-

リコリス「……」

ポート「リコリス?」

アクタン「リコリス、難しいカオしてるー」

リコリス「…ゴメンなさい。考え事が思うヨウに纏まらなクテ…」

ポート「今回のピーコックとフェアルストの一件カシラ?」

リコリス「正直、勇み足ダッタと言わザルを得ない。ケド、それを抜きにシテも艦娘達ノ力は日に日に増してイル」

アクタン「皆でやっつけちゃえばイイのに!」

ポート「アクタンの提案も強ち間違いトモ言い切れないワネ」

リコリス「そのツモリで差し向けたノヨ。南方棲鬼達を…」

ポート「泊地棲姫を仕留めた頃ヨリも、確実に強さヲ増してイルと言うの?」

リコリス「多少の驕りガあったと仮定シテ、それでもピーコックとフェアルストのコンビよ。ソコから援軍とし
て差し向ケタのはどれも一人で一艦隊程度は壊滅へ追い込メル程の実力ヲ持っているハズの者達……」ギリッ…

アクタン「……」オロオロ

ポート「新鋭はコノ事実を…」

リコリス「黙ってイタわ。つまり、情報がコチラには降りてきてナイと言う事ヨ…!」

ポート「近代化改修、か……」

???「結局、詰が甘かった。ソレだけでしょう?」

リコリス「中間棲姫…」

中間棲姫「沈んダトは言っても、その辺りの割り切りがハッキリしていたのは泊地棲姫ヨ」

???「それに胡坐を掻いて慢心デモしてれば、火傷の一つや二つじゃ済まナイんじゃないかしら?」

リコリス「空母棲鬼…」

中間棲姫「言っておくけど…」

空母棲鬼「私達は出陣シナイわよ」

リコリス「…解ってイル。だからこそ、奴らのトラウマを再び解き放つ…」

中間棲姫「惨いコトを…」

空母棲鬼「アラアラ……下手をすれば火の塊とナッテ、沈んでしまうワネ」

ポート「装甲空母鬼達はドウしてるのカシラ?」

中間棲姫「どうも何モ…」

空母棲鬼「戻ってキテから荒れ狂ってるノガ二匹…不貞腐れてルノが三匹ヨ」

アクタン「うぅ、皆仲良くスレばいいのニィ!」

空母棲鬼「…貴女は純粋ネ、アクタン」

アクタン「ン?」

中間棲姫「素直、と言うコトよ」

アクタン「ウン!だってポートがウルサイもん!」

ポート「はぁ…私のせいナノ?」

リコリス「フフッ、教育担当ハ大変ね?」

ポート「アナタね…」

リコリス「それじゃ、私は次の任務に取り掛カル」

ポート「全く……」

300: 2014/10/31(金) 23:45:51.09 ID:0xj5hheTo
-執務室-

提督「…過去の記憶?」

比叡「うん、過去って言うか…なんだろう、ほら…よくさ、前世の記憶、とかなんかそういう自分が生まれるよ
りもっと前の記憶とか覚えてたりする人たまにいるじゃない?」

提督「あぁ、スピリチュアル的なやつか」

比叡「金剛お姉さまがピンチの時に、あの子一度私達の救出の為にお姉さまの下離れてさ…けど、やっぱり見捨
てるなんて事出来ないって言って…そん時にあの子、『もう二度と空を眺めているだけなんてイヤなんです!今
度こそ、お姉さまは私が守ります!』って言ったんだ」

提督「空を、眺めているだけ…?」


──『榛名、いつも夢に見るんです。青く澄み渡る空、その空をジーッと見据えて、なんでそんな事してるのか
解らないんですけど、でもずっと空を見上げてて、そうしてなきゃいけないような気がして、ふっと気付くと目
が覚めてるんです。今の私の現状と何か関係あるのかなって考えては、結局答えは出ずって感じで…』──


提督「なぁ、比叡」

比叡「あ、はい?」

提督「…お前、自分と同じ名前の軍艦が何十年も前に実在してたって話、信じるか?」

比叡「は…?えぇ!?え、ちょっと提督何言ってるの?」

提督「似た話、榛名だけじゃないんだよ。後から知ったことなんだが、神通はこの鎮守府に来る以前に、コロン
バンガラ島ってところで激戦を繰り広げたらしいんだ。が、大本営に立ち寄った時に資料館に寄ってその内容に
ついて調べて見たことがある」

比叡「そ、それで…?」

提督「……コロンバンガラ島は実在する。実際に激戦だった。コロンバンガラ島沖海戦……ただし、今から数え
て七十一年前の話だ。神通は、その時代に当たり前だが生まれてはいない」

比叡「何ですか、それ…」

提督「俺も不思議に感じた。驚いたのは、実際に神通と言う名の軽巡洋艦がその七十一年前に存在していたって
ことだよ。華の二水戦と通称された、当時の日本海軍にとっての最強艦隊。その旗艦を最も長く勤め上げたのが
神通なんだと」

比叡「あ、あの…それって、つまり?」

提督「つまり、榛名や神通には…自身が生まれるよりも前の、言ってしまえば軍艦であった頃の記憶が断片的に
だがある、と言うことだ。それがどういった経緯でなのかまでは解らない。旧日本軍の資料も大本営で探して見
たが細部に渡っては存在しなかった。何故存在しないのかも解らない。簡易的な年表や略歴、戦歴はあっても、
その細かい内容となると途端に資料がなくなる」

比叡「……それ、素直に解釈すれば……」

提督「あぁ、隠蔽だな。何が目的で何を隠蔽したいのか、そこまでは解らん。とにかく、気になる部分も多いだ
ろうが現時点ではなるべくその話題には触れるな。折を見て話すタイミングだと思えば俺から告げる」

比叡「う、うん。けどさ、もしもだよ…もしも、それで榛名の身がどうにかなっちゃうっていうなら、私は迷わ
ず榛名に告げるよ。大事な妹だからね」

提督「あぁ、是非そうしてくれ」

304: 2014/11/01(土) 21:20:17.69 ID:VR9kM8xQo
-金剛私室-

霧島「全く、どれだけ心配した事か…」

金剛「う~、もう榛名に十分絞られたネ。勘弁して欲しいヨ」

霧島「いいえ、そうはいきません。日頃から金剛お姉さまにはお世話になりっ放しですから、こういう時くらい
妹に甘えて下さい」

金剛「はぁ、しかし病室は回避できたけど体の自由が思うようにいかないって言うのは不憫ネー」

霧島「自業自得です」

金剛「うっ…比叡も榛名も霧島も厳しすぎるネー!」

霧島「お医者様からも今日一日安静にすれば大丈夫とお達しきてるじゃないですか。我慢です」

金剛「はぁ…紅茶が飲みたいネー」

霧島「それはそうと、お姉さま」

金剛「ん?」

霧島「お姉さまは、前世、と言うのを信じますか?」

金剛「突然、何ヨ」

霧島「あ、いえ…前世とか、そういったのを信じるとして実際に夢でも記憶でも、前世の記憶や映像を見たこと
があるのかなって、少し疑問に思ったものですから」

金剛「不確かなモノには否定的な霧島にしては随分と興味を示すのネ?」

霧島「その、榛名が、ちょっと心配で…」

金剛「What?どういう事ネ?」

305: 2014/11/01(土) 21:32:44.36 ID:VR9kM8xQo
霧島「────そういう訳で、何か意味があるのかなと。私なりに持てる資料全てを総動員して調べては見まし
たが、根拠となるような材料が全くなくて…」

金剛「私が感じたものとは少し違うネ」

霧島「え?」

金剛「私が感じた事があるのは俯瞰の風景と悪夢だけネ…」

霧島「あの、それは一体、どういう…」

金剛「一度目は、あの後輩提督に負けた時ネ……」



一度目は地獄を髣髴とさせるような映像だったネ。

一面焼き払われ、海面は火の海と化し、そこに私一人がただ呆然と立ち尽くす……そんな映像だったヨ。

仲間だった艦娘は誰一人、立っていなかった。

傍らに居たはずの比叡も……私が気付いた時には既に水底へ沈む顔の半分が見て取れただけだったネ。

必氏に手を伸ばしても届かなくて、そのまま比叡は深い海の底へ沈んでいった。

その時初めて絶望と言う言葉を思い知ったワ。

けど、本当の絶望、本当の地獄、本当の悪夢はそこじゃなく、その先に存在してた。

次々と沈んでいったはずの皆が浮かび上がってきたネ。

悲しみと憎しみと……あらゆる負を撒き散らして、彼女達は深海棲艦として生まれ変わっていた。

二度目は、深くて静かな海の底。

微かな光すらも私の居る場所には届かなくて、ああ……氏ぬんだって、私はそう直感で感じ取ったネ。

結局私は、妹達を見守る事しかできないのかって思ったら、凄く悔しくて悲しくて、氏にたくない、生きたいっ

て願ってたヨ。

そう思うと同時に、湧き上がってきたのは怒りネ。

どうして私がこんな目に遭うのか…何故、私なのか…氏ぬもんかって……何度でも、何度でも、何度でも、私は

何度だって蘇ってみせるって……根拠もないのに確信に近い形で強く想ってたネ。

そして目が覚めた時、私の顔を覗き込んでたのは……比叡だったよ。

306: 2014/11/01(土) 21:47:30.35 ID:VR9kM8xQo
霧島「お姉さま…」

金剛「Oh…霧島、そんな心配そうな顔はNo!ダメデース!私は今、こうして生きてるネー!私はね、霧島…貴女
達妹を救えて、こうしてまた四姉妹で居られる事が、本当に幸せネ」ニコッ

霧島「榛名にも、金剛お姉さまにも、私も比叡お姉さまも…本当に感謝してます。けど危険を顧みないのはやっ
ぱり金剛お姉さまに似てしまってるんでしょうね、あの子…」

金剛「What!?」

霧島「だって、金剛お姉さまの無鉄砲振りは比叡お姉さまは勿論、榛名や私にもきっちり受け継がれてますから」

金剛「それ、どーいう意味ネー!」

霧島「ふふっ、無茶が好きって事ですよ。良くも悪くも、ね」

金剛「No kidding!それじゃまるで私がダメな姉みたいじゃないデスカー!」

霧島「いいえ、お姉さまは私達にとって最高のお姉さまです。さて、それじゃ私はちょっと先ほどの考えを提督
にも聞いてみようかと思いますので、一旦失礼しますね」

金剛「むー、何だか話を逸らされた気がするヨー…」

307: 2014/11/01(土) 22:10:38.03 ID:VR9kM8xQo
-執務室-

霧島「────と言う訳で…」

提督「……ホント、お前ら姉妹だな」

霧島「は…?」

提督「これであとは金剛に相談されたら金剛四姉妹コンプリートだな」

霧島「あ、あの、何を仰ってるのか解らないんですが…」

提督「その記憶の話だ」

霧島「そ、それじゃ、まさか比叡お姉さまや榛名も…?」

提督「まぁ、はじめは榛名だな。夢に見るんだそうだ。ずっと空を見据えて、けどなんで自分がそんな事をして
るのかは解らないが、それでもそうしないとならないような気がしていると…結局、それが何なのか、どういう
意味合いがあるのか、解らないまま目が覚める。お前や比叡が疑問に思う核心部分だ。結論から言えばその件に
ついては答えは出てない」

霧島「けど、それじゃ金剛お姉さまが見たっていう夢は…」

提督「考えられるのは心象世界の具現化」

霧島「それは一体…」

提督「例えば、願望と言うものがあるだろう?まぁ俺も専門じゃないから掻い摘むが…ようは個々の心の奥底に
眠っている、もしくは抱いているモノが夢の中で具現化した、と言うのが可能性の一つだ」

霧島「けど、それでは金剛お姉さまの夢の辻褄が合いません」

提督「そうだな。もしも金剛の願望が夢の通りだとするなら、それは殺戮だ。己以外の全てを淘汰し、滅ぼし尽
くして無くしてしまう、と言う願望」

霧島「そんな…!」

提督「そこで二つ目のケース。自分の想像しうる最大最悪の結末。言い換えるならば、決して起こって欲しくな
いという願望。これなら金剛の夢と抱く感情に違和感はなく、辻褄も合う」

霧島「金剛お姉さまの件は、何となく解りましたが、榛名のは…」

提督「そう…比叡にも言ったんだが榛名が夢で見たのは推測でしかないんだけど、これこそが正真正銘…前世の
記憶と言うものなんだろう」

霧島「前世の、記憶…?」

提督「そうだ。お前達が生まれる遥か昔、お前達の根源が存在した。その根源に宿った記憶が遥か未来になって
も尚、色褪せずにお前達に刻み込まれている。なんてな風に解釈すれば、まぁ辻褄としては合うな」

霧島「…突拍子もないわ」

提督「そう、突拍子もない。根拠もないから立証のしようもない。だからこの事は他言するな。プラスに働くと
もマイナスに働くとも解らない。とにかくパズルのピースが不揃いすぎる…いや、少なすぎるって方がしっくり
くるか。とにかく、不確定要素の塊ってことだけは確かだからな」

霧島「解りました…」

提督「言っておくが霧島、独自に調べる事も厳禁だ」

霧島「うっ…」

提督「お前、今ここ去ったら速攻で調べようとか思ってただろ」

霧島「あ、あははは…」

提督「調べてるの発覚したらお前自慢のマイクセットがどうなってもしらんぞ」

霧島「え゛……」

提督「解ったら自室に戻れ」

308: 2014/11/01(土) 22:27:30.91 ID:VR9kM8xQo
-記憶-

最初に夢として見た記憶は霧島と二人、手を繋いで海を眺めていた事。


「やっと海に出れるね」

「ええ、そうね」

「頑張ろうね、霧島」

「ええ、頑張りましょう、榛名」


そんなやり取りだったと思う。

自分で言ったのに何を頑張るのか、それが解らなくて隣の霧島をジッと見ていた。

その視線に気付いた霧島が何か言ってるけど、口だけが動いてて声が聞こえなくて、気付くと私は涙を流して目

を覚ましていた。

頬を伝う涙の冷たさに、あの夢は一体なんだったのかを深く考えさせられた。

その次に夢に見た記憶。悔しさや悲しさが込み上げてくるのが解る。

夕日に照らされた空がオレンジ色に染まる。

本来ならロマンチックに見える夕焼けの空も、その時の私には戦火に広がる禍々しい空を連想させた。

遠くから聞こえてくる艦載機のエンジン音。

合図だと直感的に悟って私は霧島と共に────部隊の護衛に当たっていた。

何の部隊だったのか、それがどうしても思い出せなくて凄くモヤモヤした感じがしたのを覚えてる。

309: 2014/11/01(土) 22:34:29.84 ID:VR9kM8xQo


「なんとしても…皆さんを守ります!」

「真上…直上!?誘爆を防いで!!」

「飛行甲板に直撃。そんな……馬鹿な」

「飛行甲板に被弾?!」

「そんな…皆!」

「……たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せます!」


何処かで聞いた声、馴染みのあるはずの声、それなのに誰なのかが思い出せない。

思い出せないまま、視界が赤く染まって周囲を炎で染め上げていく。

声が枯れるまで叫んでも、どれだけ奮戦しても、私の思いは届かなかったように思う。

そして三つ目、水底へ静かに沈んでいく金剛お姉さまを尻目に、私は戦場を撤退する。

悔しくて、悲しくて、気持ちは引き返して今すぐにでも、お姉さまを引き上げたいと思っているのに体が言う事

を聞いてくれず、その距離は見る見る広がって、気付けば私は一人、未だ青い空をずっと睨み続けている。

来る日も来る日も、私はただ黙ってジッと空を睨み続け、いつ終わるとも知れないその状況を静観していた。

313: 2014/11/02(日) 23:53:54.97 ID:zuep6UR8o
-榛名私室-

榛名「……夢、また」


コンコン


榛名「あ、はい?」

北上「北上だけど~、榛名っち今だいじょ~ぶ?」

榛名「あぁ、はい。ちょっと待ってくだs……」

北上「んじゃ入るねー」

榛名「へ?」


ガチャ


北上「おっ…榛名っちの寝巻き姿、レアだねえ、しびれるねえ…!」

榛名「ちょ、鍵掛けてあるのにどうして!?」

北上「え?あぁ、これこれ、私特製のマスターキー」チャラッ


ザッ


北上「へ?」

榛名「そこおっ!」バシッ

北上「あっ」

榛名「今回だけは不問にします。犯罪抑止です」

北上「ちょ~!それ作るの苦労したんだからね~!」

榛名「労力割く所が違います!これは没収です」

北上「そ、そんなぁ!」

榛名「…提督に報告しますよ?」

北上「ゲ、ゲスい選択肢選んでくるね、榛名っち…」

榛名「私も成長しました。泣き寝入りするのはよくないと!」

北上「」(確実に提督の影響だろうなぁ…ホント明るい子に戻ったよなぁ)

榛名「な、何ですか?」

北上「うんにゃ、仕方ないから鍵は諦めようかと。まぁそれはそれとして、ちょっと付き合って欲しい所あるか
らさ、パパッと着替えちゃってよ」

榛名「えっと、はぁ…解りました」

北上「集合場所は執務室裏の花壇ね」

314: 2014/11/03(月) 00:12:56.81 ID:I/bsQuHAo
-花壇-

北上「はいっ、という訳でやって参りました!執務室裏の花壇です!」

提督「あのさ、お前何をしたいの?」

赤城「うふふ、北上さんは見てる分には楽しいんですけどね」

榛名「私達だけなんですか?」

北上「そっ、まぁ…赤城っちや榛名っちには勿論だし、一応提督にも知らせておく方がいいかなって」

提督「はぁ?なんだ、お前何か隠し事でもしてたのか」

北上「提督~、女の子には秘密の一つや二つはあるもんだよ」

提督「そうなの?」

榛名「」コクッ

赤城「」コクッ

提督「まぁいいや」

北上「いいのかよっ!」

赤城「それより、ここに何かあるんですか?」

北上「ん、まぁね。三人の後ろにはさ、提督が作ってくれた大井っち達の慰霊碑、あるじゃない?」

提督「ん、あぁ…結局骸を回収してきっちり埋葬してやれたのはこの三人しか居なかったからな。本当なら全員
をちゃんと弔ってやりたいと……」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……」クルッ

北上「」ニヤニヤ

赤城「北上さん、どうしたんです?」

榛名「ん?」

提督「いち、に、さん、はいっ!」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……マジか」

赤城「え?」クルッ

榛名「何がですか?」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

北上「三人に会わせたかった人たち~」

315: 2014/11/03(月) 00:21:51.68 ID:I/bsQuHAo
榛名「うそ……」

赤城「加賀、さん…」

加賀「久しぶりね、赤城さん」

武蔵「随分と逞しくなったものだな」

大井「ご無沙汰してます、提督大佐」

提督「なんだ、これは。まだ真昼間だぞ」

北上「まぁ、守護霊的な?」

赤城「本当に、加賀さんなんですか!?」

加賀「ええ、立場はもう違うけれど、もう一度赤城さんとこうして話を出来るとは思いませんでした」

榛名「武蔵さん…」

武蔵「託した物が重荷になってないみたいで何よりだ。貴様ならば出来ると信じている」

榛名「大和さんも、誇りにしていいと、仰って下さいました」

武蔵「フッ、余計な事を…が、別に構わん。貴様は貴様の道を行け。貴様の歩む道を阻む者が在ろうが、その全
てを貴様が背負う私の嘗ての相棒が蹴散らしてくれる。貴様は臆さず、ただ真っ直ぐ進めばいい」

榛名「はい…!」

316: 2014/11/03(月) 00:22:19.95 ID:I/bsQuHAo
北上は以前、自分が体験した事、彼女達から告げられた事実を三人に掻い摘んで話した。

三人の現状の事、艦娘の秘密の一端、氏後起こるであろう事、そして深海棲艦の秘密の一端。

武蔵達から教えられた内容の全てを北上は話していく。

勿論、何故北上が何度となくこの場所に足を運んでいたのかと言う突込みに対して、花が枯れては阿武隈の苦労

が台無しになってしまうのでそれが可哀想だから花に水遣りをしていた、などとは口が裂けても言わなかったが…

その説明を傍から見て、一番笑いを堪えていたのは大井だろう。

319: 2014/11/03(月) 22:21:15.30 ID:kiFcRyk3o
皆様こんばんは
今日も少しだけ更新

320: 2014/11/03(月) 22:41:21.25 ID:kiFcRyk3o
提督「つまり、お前達はこの慰霊碑に宿った、と言ってもいい訳か」

加賀「そうね。この姿になって初めて解った事もあるから、強ち無駄氏にではなかったと言う事かしら」

提督「だがしかし、深海棲艦が元はお前達と同じ艦娘だという確証がどうしても得られんことにはな…」

武蔵「それもあくまで感覚的な話に過ぎん。事実、我々はこうしてここに居る。敵としてではなく、な」

大井「必要なのは、これが全ての艦娘に当てはまる事なのか否か、でしょうね」

提督「確かに…この現象は俺も初めてだ」

武蔵「だが少なくともあの時一戦交えた深海棲艦、貴様等はレ級と呼んでいるが、あれは言い換えれば近代兵器
のそれに近いものがある」

加賀「つまりつい最近生まれ出たもの、と言う事ね」

大井「逆に北上さん達が一戦交えたという通称幹部クラスの深海棲艦はそれと対を成す最古の深海棲艦と言うべ
きかもしれません」

加賀「私達が……いいえ、貴方達が進化と言う過程を経て成長を遂げたように、深海棲艦もまた同じように成長
をし、進化し続けているのではないかと…」

赤城「それじゃまさか、大別して見ればピーコックやフェアルストは私達の先輩に当たるって言うんですか!?」

武蔵「受け入れ難い事実の一つだな」

榛名「…泊地棲姫と戦ってたとき、彼女は言ったんです」

北上「へ、何を?」

榛名「何度でも、何度でも、何度でも……私達艦娘を水底へ沈め続けるって……」

提督「それは俺も通信越しに聞いた。そこで幾つか疑問が生じた。何度でも、と言う事はあいつらは何度となく
艦娘と戦っていたということだ。そして艦娘風情が、と言う言葉には自分達と艦娘を天秤に掛けてくらべてる節
も見られる。それはつまるところ、やはり艦娘と深海棲艦にはどこかしらで交わっている部分が存在するという
間接的な証拠にも繋がる」

321: 2014/11/03(月) 22:50:57.26 ID:kiFcRyk3o
武蔵「私も戻れるのか、青い海の上に…」

提督「え?」

武蔵「…どこのどいつかは知らんがな、そんな声が風に乗って届いてきた事があった」

大井「苦しんでいるような声に、聞こえましたね」

提督「苦しんでいるような声?」

赤城「深海棲艦の声、なのかもしれませんね」

榛名「え…?」

赤城「北上さんから告げられた話と突き合わせると、辻褄は合うと思いますよ?私達が氏んでしまうと武蔵さん
達の様に何処か思い入れのある場所や拠り所を見つけてそこに留まりその場所を守護する存在となるか、散った
場所で負の感情に取り込まれ深海棲艦となるか、また別の存在として輪廻転生するか、と言う事ですが……では
深海棲艦が沈んだ先は何処にあるのでしょうか」

北上「なるほど、考えもしなかった…」

榛名「…私も、戻れるのか、青い、海の、上に…深海棲艦も、もしかしたら生まれ変わってるのかもしれません」

北上「うん、辻褄は合うかも」

加賀「けれど業が深ければ再びその身は深海棲艦として生まれ変わり、負の輪廻で廻り続けるのではないかしら」

大井「だとすれば、悲しい事ね」

322: 2014/11/03(月) 23:11:15.93 ID:kiFcRyk3o
提督「……なるほどな。幾つか解けなかった謎の一端が明かされるか」

赤城「どういう事です?」

提督「当事者も含めない事にはなんともな。ともかく、こうして会話できただけでも行幸だ。俺は話を纏めてる
から、あとはお前達で思いを紡いでおけ。今度、先輩にも手を合わせに来てもらうよ」

武蔵「フッ、その時は腰を抜かして喜ぶように趣向でも凝らしてやるか」

加賀「面白そうですね。心なしか気分が高揚します」

大井「ふふっ、そうね。とびっきりを用意しておきましょう」

北上「」(ゲスいわぁ…)

榛名「あ、あははは…」(なんだか笑えない冗談真顔でやりそう…)

赤城「加賀さんったら…」


かくして、提督は金剛達の話と今回北上経由で知らされた艦娘の秘密の一端、その事実を目の前にして幾つかの

仮説に確信を得るに至った。

だがそれは提督を含め、鎮守府全体をも大きく揺るがす結果となる事をまだ彼は知る由もない。

しかし同時に、艦娘にとっての新たな一面と彼女達に秘められた本来の力を引き出す切っ掛けにもなると提督は

考え、その考えは結果として正しい方向へと現状向かっている。

そして同時に、彼はその先に見える未来に何が待ち受けていようと艦娘を決して裏切らないと改めて誓った。

326: 2014/11/08(土) 20:05:00.79 ID:zRmAMC8jo
~閑話休題・晩秋の宴~



-演習場-

利根「ふぅ…午前中はこれくらいにしておくかのう」

阿武隈「はぁ、はぁ、はぁ、と、利根さん…容赦、なさすぎだし!」

利根「莫迦を言え。鈍った体を解してやっておるんじゃ、気合いを入れんか!そもそも稽古を付けろと言うてき
たのはお主じゃろうが。我輩は我輩で試したい事もあったんじゃが、まぁ午後はお主でそれを試す事にするか」

阿武隈「じ、実験台ってこと!?」

利根「言葉の選び方が雑じゃのう。人柱、と言うが良い」

阿武隈「同じじゃない!」

利根「細かい奴じゃのう」

阿武隈「ど、どっちがぁ!?」

利根「兎にも角にも、午後は午前以上にみっちりやるから、今の内にしっかり体を休めておくんじゃぞ」

阿武隈「ぶーぶー」

327: 2014/11/08(土) 20:16:14.82 ID:zRmAMC8jo
夕張「いやー、あっちは鬼軍曹だねぇ」

陸奥「呆けてる場合?そろそろボーナスタイム終わりにするわよ?」

夕張「いぃ!?ちょ、ちょっとタンマ!」

陸奥「タンマは三回まで、もう使い切ってるわよ?」

夕張「そ、そんなぁ!」

陸奥「それじゃあ…」ポキ

夕張「ひぃ…」

陸奥「がっつりと…」ポキポキ

夕張「はわわわ…」

陸奥「反撃ってことで…」ポキポキポキ

夕張「きっと今の私の顔には氏相が見えているんだ…」

陸奥「…って思ったけどお昼休憩みたいね。ざ~んねん」クルッ

夕張「た、助かったぁ…」

陸奥「な~んちゃってぇ!」ブンッ

夕張「きゃあっ!」サッ

陸奥「あら、避けれるのね」

夕張「し、心臓に悪いってば!」

陸奥「っていうか、ふふっ…夕張の悲鳴って結構かわいいのね」

夕張「んなっ///」

陸奥「北上にボイスレコーダー借りて録音しとくんだったなぁ」

夕張「鬼畜生か何かですか…」

陸奥「さて、不意打ち失敗しちゃったし、今度こそご飯ね~」クルッ

夕張「……」ビクビク

陸奥「もう攻撃しないわよ。ほら、午後もあるんだからシャキッとしなさいよ!」

夕張「…午後に、氏期が延びただけか…」

328: 2014/11/08(土) 20:44:25.49 ID:zRmAMC8jo
鈴谷「ふぃー、実戦仕立ての演習ってのは、これはこれで疲れるなぁ」

熊野「ですけど普段は気付き難い自分や相手の良い部分悪い部分を見つけるのにも最適ですし、身内との連携を
図る上でも非常に高効率な演習内容ですわ」

鈴谷「だねぇ…っていうか、朝のミーティング…提督いきなり個人面談するとか言ってたけどさー、なんか変な
質問っていうか、言ってる事が私よく解んなかったんだよねぇ」

熊野「鈴谷さんはもう面談済まされましたの?」

鈴谷「うん、午前中だった」

熊野「そうでしたの。わたくしは午後一でしたわね、確か」

鈴谷「んじゃ、午後は少し遅れてから演習再開だねー。取り敢えずシャワー浴びてご飯いこー!いえーい、今日
のご飯はな~んだ~ろな~♪うふふ、テーンションあ~~がるぅ~~!」

熊野「全く、そのノリいい加減にしてくれませんこと?」

鈴谷「むふふ、む~りでーっす!」キャッキャ

329: 2014/11/08(土) 21:03:43.54 ID:zRmAMC8jo
-執務室-

提督「そうか、うん。ありがとう」

大鳳「あの、これは一体?」

提督「ん?ああ、この間大本営に立ち寄った時にたまたま心療内科に精通してる先生と話をする機会があってな。
艦娘のメンタルケアや精神的負担を減らすにはどういったことをすればいいのかってのを聞いてな。艦娘と一対
一で会話をして、不安に思うことや疑問に思うことなんかを色々聞いてストレス発散に務めるのはどうかってア
ドバイスもらったもんでな」

大鳳「はぁ、そうだったんですか。ふふ、提督も大変ですね。先輩提督ならご飯食べてパーッとやれば悩みも吹
っ飛ぶわよって相談すると決まって宴会が始まりましたよ」

提督「はんぱねぇな、あの人…」

大鳳「それじゃ、私はこれで」

提督「おう。今日は待機日だから訓練は程ほどに、整備は欠かさずにな」

大鳳「はい!」


ガチャ……パタン


提督「大鳳は特に夢に見ることも記憶に留めてることもなし、か。やっぱり特定の条件が何か揃う事で呼び起こ
されるのか?榛名、金剛、神通……そして、さっき面談したヴェールヌイ。金剛と似た内容だったのは、やはり
氏に直面して見た心象風景の実体化か。本人でも現実と夢の境界線がハッキリとしていなかったのもそれならば
納得がいくか…」


コンコン…


提督「ん、午前中のラストか。入っていいぞ」

330: 2014/11/08(土) 21:25:04.46 ID:zRmAMC8jo
瑞鳳「失礼します!」

提督「おっ、ちっこいの来たな」

瑞鳳「ちっこいって言わないで下さいよ!赤城さん達も直に私の頭ポンポンするんですよ!?」

提督「愛されてるってことだろ?素直に喜んどけ」

瑞鳳「む~…それより、面談って何ですか?学校じゃあるまいし、進路相談って訳でもないですよね?」

提督「はは、進路相談か。お前達の場合は『しんろ』は『しんろ』でも『針路』の相談になりそうだがな」

瑞鳳「うん?」

提督「…漢字の勉強しとけ」

瑞鳳「むぅ…」

提督「まぁそんな堅くならずに聞いてくれて構わない。簡単な質問と雑談で終わりだからな」

瑞鳳「はぁ、そうなんですか?」

提督「時に瑞鳳は覚えのない記憶があったり、変な夢を見たりとかってあるか?」

瑞鳳「はい?」

提督「単に忘れてるだけでなんか記憶にあるとか、俗に言う怖い夢ってのを定期的に見ているとか、そんなよう
な身に覚えのない記憶や嫌な夢だな」

瑞鳳「うーん…怖い夢とか嫌な夢っていうのは、特に…記憶も別に、身に覚えのないようなものとかはないです」

提督「そうか。いや、それなら別に構わないんだ。それはつまり瑞鳳が現時点で充実して精神的には安定してい
るってことの証明だからな」

瑞鳳「えっと…これ、だけ?」

提督「ん?ああ、そうだぞ」

瑞鳳「面談って言うから、なんだか色々と考えちゃった…」

提督「はは、そうか。それは悪いことをしたな。でまぁ、最近は調子とかはどうなんだ」

瑞鳳「うーん、赤城さんや飛龍さんと一緒に練習する事が多いんですけど、やっぱりあの二人は凄いなーって」

提督「どう、凄いんだ?」

瑞鳳「えっ?あっと、それは…弓の扱い方もそうですけど、何より尊敬するのはその集中力かなって…」

提督「俺からすれば瑞鳳の集中力も立派なもんだがな」

瑞鳳「お二人だけじゃありません!大鳳さんだって、龍驤ちゃんだって…この間の演習戦で本当に凄かったな。
龍驤ちゃんは本当に凄かったんですよ。あの大鳳さん相手に勝ったんですから!」

提督「ほぅ…あいつがねぇ。初めて会ったときは小うるさい奴だと思ったもんだ」

瑞鳳「ひどっ」

331: 2014/11/08(土) 21:38:29.09 ID:zRmAMC8jo
提督「けどな、あいつは人一倍頑張り屋なんだよ。自分でも解らないくらいに頑張って頑張って、頑張りすぎて
倒れるまで自分がオーバーワークしてることにも気付かないくらい頑張る」

瑞鳳「た、倒れるまでって…」

提督「瑞鳳は他の鎮守府とうちの鎮守府、なんか違うなーって思ったことあるか?」

瑞鳳「あっ、はい!先輩提督の所も、不動提督の所も、艦隊毎で統制がされてますけど、提督は毎回違うなって」

提督「正解」

瑞鳳「あの、なんでですか?」

提督「俺はお前たちを順位で格付けするってことをしてないだけだよ。大抵の鎮守府は実力順に第一艦隊を担っ
ていくもんだが、俺はそれをしていない。なんでか…」

瑞鳳「ふんふん」

提督「お前たちの関係を第一に考えてるから、かな。どうしたって優劣ってのは出てくるものだし、戦艦と駆逐
艦じゃそんなの単純な戦力で見ても戦艦が上なのは当たり前だろ?」

瑞鳳「そ、それは、まぁ…」

提督「けど、駆逐艦だって戦艦を淘汰することはできる。夜戦だ。夜戦での駆逐艦は全てにおいて逆転を可能に
するだけの火力を秘めている。勿論、綱渡りの部分も多分にあるが、それを補うのが連携だ」

瑞鳳「なるほど」

提督「で、連携って部分で話が戻ってくるわけだ」

瑞鳳「はい?」

提督「さっきも言ったとおり、俺は格付けをしてそれを艦隊にそのまま反映させるってことはしていない。その
時のお前たちのコンディション、向かう任務先での得手不得手を考慮した上で人選する」

瑞鳳「い、いつもポンポン名前呼んで艦隊決定してるけど、それもちゃんと考えられてたんだ…」

提督「そう言うこと。ちょっとは見直したか?」

瑞鳳「は、はい!」

提督「まっ、冗談は置いておくとしてだ。そうやって色んな連中と組むのと毎度同じ連中と任務をこなすのじゃ
やっぱり大きな違いが生まれて来るんだよな。どっちにもメリットデメリットは存在するが、俺はその部分には
別に着眼点を置いてない。まぁ、多少は無きにしも非ずって部分はあるが、それを前面には出さん」

瑞鳳「それじゃ、何を基準に決めるんですか?」

提督「お前たちの気持ちを最優先にしている。お前たちは本当に良くやってくれる。万が一にも氏を覚悟しなけ
ればならない場面も一度や二度じゃないはずだ。それでも尚、お前たちは前に進んで歩みを決して止めずに先へ
向かっていく。脅威へ立ち向かってくれる。俺はそれを誇りに思う。だからこそ、俺なんかがお前たちを量るこ
となんてできやしないんだよ。その代わり、全員を平等に出来る限り扱ってやろうってのが本心だ。やろうって
言い方もまた驕りかもしれないけどな。まぁそれによって満遍なくお前たちの、艦娘同士の繋がりが太くなって
結果として連携も紡ぎやすくなる」

332: 2014/11/08(土) 22:04:38.01 ID:zRmAMC8jo
瑞鳳「ふふっ」

提督「な、なんだよ」

瑞鳳「ん~、いや~、榛名さんが提督好きなのもなんだかわかるなーって」

提督「はぁ!?今の話の何処に榛名が関係あんだよ!」

瑞鳳「あはは!赤城さんの言うとおり、提督って榛名さんの名前出すとホントわっかりやすいなぁ…」ニヤニヤ

提督「あ、赤城の奴…!」

瑞鳳「知ってました?空母組じゃ提督って結構ポイント高いんですよ~?」

提督「はぁ?なんだよ、ポイントって…」

瑞鳳「龍驤ちゃんはまぁ提督ラブなの解ってますけどね」

提督「なんだよそれ」

瑞鳳「飛龍さんまだはちょっと出会ったばかりで解りませんけど、赤城さんも大鳳さんも提督には好意的ですよ?」

提督「ん、まぁ好意的なのはありがたいけどな。神通のファーストリアクションが今のところ俺の中でのベスト
スリーに入るショックな対応だったのは覚えてる」

瑞鳳「へ?」

提督「声掛けたら子猫の如くプルプル震えて後退りされて脱兎の如く逃げられた」

瑞鳳「えっ…」

提督「うん、流石にショックだろ?」

瑞鳳「あははは!」

提督「笑いごとじゃねぇんだぞ!?」

瑞鳳「あー、可笑しい。うふふっ」

提督「ったく、笑ったままアゴ外れちまえ」

瑞鳳「はー、面白い話聞けたし良かった良かった♪」ニコニコ

提督「こいつ…とにかく、話は以上だ。取り敢えず瑞鳳は特に問題なしって事だな。集中力の話も気になるなら
持ち前のスキンシップ力使って赤城や飛龍に直接聞いてみろ。お前が見立てるとおりで、俺が言うのもなんだが
まさに空母組の中じゃトップレベルなのは認めるところだ。同じ型である以上、手本に出来る部分、盗める部分
は多いにあるだろうから、それを吸収してもっと躍進してみせろ」

瑞鳳「はい!頑張ります!」


シツレイシマシター ガチャ……パタン


提督「ったく、ただの人生相談だったな。が、瑞鳳は瑞鳳で考えさせられるところでもあるのかもな。さてと、
俺も飯食いに行くかーって、まだちょっと早いか?暇つぶしがてら皆が何してるのか見て回るのもたまにはいい
かもしれんな」

338: 2014/11/09(日) 21:22:11.55 ID:yQeygLGdo
-グラウンド-

木曾「くそがぁっ!」

北上「うぅ、駆逐艦マジうざい…!」

川内「は、速いなぁ…」

神通「お、追いつける気が、しません…」

島風「あれ、もう追いかけっこしないの?」ピョン ピョン

夕立「まだまだやれるっぽい」ノビノビー

Bep「うん、私もまだまだ余裕がある」

暁「まだ走れるわよー?木曾達は走んないの?」ニヤニヤ


電「暁お姉ちゃんが生き生きとしてるのです」

春雨「夕立お姉ちゃんも…」

白露「純粋に考えて私達の速さに軽巡クラスたってそうそうついてこれないでしょー」

時雨「僕達が本気で走れば、それはね」

339: 2014/11/09(日) 21:45:05.98 ID:yQeygLGdo
木曾「ぜってぇ捕まえる…!」

北上「上等っしょ…重雷装の本気、見せてやりましょうかね」

川内「このまま終わる訳にはいかないよねぇ」

神通「流石にこれでは、川内型の名折れです」


メラメラメラ……


夕立「あ、あれ…」

Bep「どうやら、火が着いたみたいだね」

島風「吹き消してやるんだからっ!」

暁「よーし、このまま逃げ切って楽しいお昼ご飯に突入よ!」

駆逐艦ズ「「「おーっ!!」」」


提督「グラウンドに着てみれば、なんか面白そうなことやってんなぁ。みたとこ雷巡・軽巡組と駆逐組で鬼ごっ
こか、ありゃあ…どう考えても北上たちに正攻法で勝負してても勝ち目ねぇだろ…」


木曾「何でもアリって言ったのはてめぇ等だ。文句は言わせねぇぞ…!」

北上「木曾っち、打ち合わせ通りね~」

川内「神通、私達も行くよ!」

神通「はい…!」

暁「目が、マジね…」

島風「こわー…」

夕立「ハンモック張ってでも逃げ切ってみせる…!」

Bep「ふふ、ただの鬼ごっこに非ず、だね。皆、固まるのは良くない。散開して互いの位置に注意していこう」

暁「おっけーよ!」

島風「よーし、連装砲ちゃん、一緒に行くよ!」

夕立「駆逐艦の本気、見せるっぽい!」

340: 2014/11/09(日) 22:12:55.97 ID:yQeygLGdo
提督「なるほど、運動量で勝る駆逐組と技術面でそれを補う雷巡・軽巡組か。これはこれで見ものだ…多分、暁
たちは散り散りになって的を絞らせないようにするだろうが…相手に北上が居たのが運の尽きかぁ?あいつはこ
と勝負事に関しちゃ手は抜いてこねぇぞ」


北上「川内っちと神通っちは追いかける振り……私はまず、状況把握するから木曾っちでガチ捉まえに行く振り
かな。きっとあの子等的を絞らせないようにバラッバラに動くと思うけど、必ずどっかに同じ動き混ざってるは
ずだから、うちはそれを誘発させる動きをする」

川内「オッケー。それを私と神通で看破して先を読むって訳ね」

北上「ご名答。木曾っちは手近に居るのにガンガンプレッシャーかけてってよ」

木曾「おう、任せとけ!へへっ、何とかは兎を狩るのにも全力を尽くすってな」

神通「川内姉さん、私は右舷へ向かいます」

川内「よっし、私は左舷だね。左右から追い込み漁と行きますか!木曾は真正面から散らしてってよ」

木曾「おう、任せな!そんじゃ行くぜ!!」


提督「ははっ、ありゃあガチだな。さっきは勝ち目ないかもって思ったが、これはこれで解らないかもな」


電「あ、司令官なのです」

春雨「わ、笑ってる…?」

白露「ああ見えて提督って戦術組むの上手なんだよ、春雨!」

春雨「ええ、そんな言い方はひどいよ、白露お姉ちゃん」

時雨「おーい、てーとくー!」

341: 2014/11/09(日) 22:31:18.89 ID:yQeygLGdo
提督「ん?なんだ、あいつらも見てたのか」テクテク


電「お疲れ様なのです」ペコリ

提督「おう、お疲れ」

白露「デスクワークは?」

提督「終わり。午前の面談も一通り終わったからな。余った時間を散策だ。そしたらグラウンドでまた随分と楽
しそうなことしてたからな」

時雨「眺めながら笑っていたけど、提督はこの勝負、どうみてるんだい?」

提督「なんだ、笑ってるところ見られたか。油断も隙もないな…まぁ、そうだな。見てた感じ鬼ごっこだろ?」

電「なのです!」

提督「単純な追いかけっこじゃ、まず間違いなくお前たちに追いつける他の艦なんて居やしない。が、それもや
り方次第でどうにでもなるってのをこれから北上たちが披露してくれるさ。それを看破して往なせるかどうかが
暁たちの腕の見せ所だな」

白露「えっ、北上さん達が何しようとしてるか解るの!?」

提督「ん、まぁ…なんとな~く、だな。良いか?まず、暁たちのあの立ち位置からして恐らく、北上たちの動き
出しに合わせて四方へ散れるよう、全員散開してるだろう。それも互いの邪魔にならない程度の距離を置いて、
それぞれが動きやすいようにな」

時雨「うん、それは解る」

春雨「ふんふん…」メモメモ

提督「かたや北上たちだが、川内と神通がそれぞれ左右に大きく展開、木曾はど真ん中でその後方に北上…四対
四で勝負してるのに輪形陣を崩したような中途半端な位置取り。恐らく、序盤は木曾が駆けずり回って全員へ威
嚇も込めた立ち回りをするはずだ。それを左右の川内たちが外へ逃げないように包囲、北上はそれを分析して、
各個撃破を狙うつもりだろう。見てろ、始まるぞ」

342: 2014/11/09(日) 22:58:36.04 ID:yQeygLGdo
木曾「っしゃあ!行くぞ、駆逐艦共っ!!」ザッ

暁「ふん、捕まえてごらんなさい!」サッ

Bep「そう簡単にはいかないよ!」サッ

夕立「なんのまだまだー!」サッ

島風「ふふっ、おっそーい!」サッ

川内「こっから先は行かせないよ」ザッ

暁「っと…横から!響!」

Bep「ナルマーリナ。油断はしないさ」

島風「ぉう!」キキィッ

神通「逃がしません」ザッ

夕立「うわぁ、静かに獲物を狙う目だ…」ジリジリ…

木曾「オラオラ、止まってるとあっさり捕まえるぜ!」タッタッタッタッ

暁「くぅ~、思いの他厄介ね…!」

Bep「この状況で北上さんは一体…」

北上「……」ジー

夕立「み、見てるだけって…」

島風「んっもー!やる気なさすぎー!」

343: 2014/11/09(日) 23:12:02.99 ID:yQeygLGdo
電「し、司令官の読みどおりなのです…」

春雨「はー…」

時雨「見事と言う他ないね」

白露「さ、流石…」

提督「いいか、不慣れな場合は状況を瞬時に把握しようとするな。まずは見ることが大事だ。こちらの状態、数、
陣形、個々の特性、また相手の特性、数、陣形、距離、解るだけの情報をとにかくまずは見て、情報として仕入
れるんだ。仕入れた情報を精査してそれは初めて状況として盤面に表せる。お前たちには申し訳ないが、この勝
負は恐らく北上たちの勝利だ。勝因は戦略のない暁たちと戦略のあった北上たち、この一点に尽きる。ヴェール
ヌイならあるいは途中で北上の思惑に気付くかもしれないが、気付いた時には既にって状況だろうな」

白露「そ、そんな先まで見通せるもんなの?」

提督「見通せなきゃならないんだ。戦術眼は持って生まれる才能として備えてる奴も居るが、大抵は鍛えて得る
からな。じゃなきゃ、お前たちを気付かぬ内に氏地へ送り出してしまう。出来るようになれとまでは言わないが、
少しは学んでみて損はないぞ、戦術ってのはな。それこそ、キス島の時のお前たちの戦術、あれは立派なものだ
ったぞ」

時雨「そう言ってもらえると励みになるね」

提督「さて、と…何を賭けて勝負してるのかは知らんが、喧嘩にならない程度で頑張れよ」

春雨「最後まで見ていかないんですか?」

提督「そうしたいのは山々だがな。お前たちが俺の代わりに良く見て、後学に生かせ」

春雨「は、はい!」

344: 2014/11/09(日) 23:43:04.75 ID:yQeygLGdo
-弓道場-

赤城「ふぅ、今のは少し引きが甘かったでしょうか」

飛龍「うーん、そうですね。赤城さんの事ですから、実戦と練習でやはり無意識的に加減を調整してしまってる
んじゃないかと…」

赤城「意識して修正しないと直せそうにないですね」

飛龍「それに比べて、瑞鳳は安定してるね」

瑞鳳「えっ」

赤城「はい、射法八節一連の流れが実に鮮やかです」

瑞鳳「えぇ…そ、そんな」

飛龍「瑞鳳さ、私や赤城さんに何か負い目とかそういうの感じてるみたいだけど、全然そんな事ないと思うよ?」

瑞鳳「えぇ!?」(バ、バレてた!)

赤城「瑞鳳さんは射法八節には何ら問題はありませんが、継続させる集中力でしょうか」

瑞鳳「うぅ…」(これもバレてたぁ…)

飛龍「んー、でも私も赤城さんも言うほど集中って続いてないよね」

赤城「そ、それを言われると立つ瀬が…」

飛龍「あははっ、けどそこら辺はやっぱその日の調子次第って部分は大きいよね」

瑞鳳「お、お二人に比べればそれでもやっぱり私、集中力が持続しないことが多いかなって…」

赤城「うふふ、だけどそれを補って他の部分が秀でてるじゃないですか」

瑞鳳「えぇ、そんな事ないですって!」

飛龍「謙遜謙遜♪あっ、そろそろお昼ですよ!」

瑞鳳「えっ、もうそんな時間!?」

赤城「最近、ご飯大盛りを要求しても並しか盛ってくれないので、今日こそは…!」

瑞鳳「あ、赤城さんは少し控えるべきですよ!」

赤城「えぇ!?」

飛龍「あははっ、そこには同意しとく~」

赤城「そんな、飛龍さんまで!」

飛龍「だって赤城さん、ご飯食べた後すっごい眠そうな顔で弦引いてるんだよ?危なっかしくてさぁ」ニガワライ

赤城「うぅ、お腹一杯になるとどうしても今度は眠気が…」

瑞鳳「一航戦の誇りって一体…」

赤城「と、時と場合によります!」

瑞鳳「加賀さんが草葉の陰で泣く、というか…」

飛龍「いやぁ、頭にきました。とか言ってそう」

瑞鳳「あはは、加賀さんってそうなんですか?」

赤城「お、怒ると怖いです…」

瑞鳳「じゃあ、怒られないようにシャキッとしましょう」

赤城「はぁ、お小遣いで買える分にも限度があるのが世知辛いですね」

瑞鳳「そう言えば以前に翔鶴さんと何か計画立ててませんでしたっけ?」

赤城「五分で頓挫しました」

飛龍「何を閃いて一瞬で諦めたのさ…」

瑞鳳「あ~、それはですね……」

345: 2014/11/09(日) 23:44:07.52 ID:yQeygLGdo
本日はここまで

346: 2014/11/09(日) 23:49:01.20 ID:rwU9I4Oho
乙です


次回:
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」part5


引用: 【艦これ】提督「暇じゃなくなった」