348: 2014/11/10(月) 20:22:40.52 ID:8q8lDt6So
皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

シリーズ最初へ:【艦これ】提督「暇っすね」
このpart最初へ:【艦これ】提督「暇じゃなくなった」

前回:【艦これ】提督「暇じゃなくなった」part4


349: 2014/11/10(月) 20:37:25.91 ID:8q8lDt6So
-食堂-

飛龍「あっはっはっは!」

赤城「もう、飛龍さん笑いすぎです!」

提督「おっ、何やら楽しそうだな」

瑞鳳「あっ、提督!」

赤城「あ、提督…」

提督「ん、どうした赤城?」

赤城「あ、いえ…何でも///」モゴモゴ

提督「ん?」

飛龍「くくく…」ニヤニヤ

瑞鳳「あはは…」ニガワライ

提督「おいおい、何だよ」

赤城「ひ、秘密です!///」

飛龍「んふふ~、そうそう。提督っ!女子トークには時として秘密にしなきゃならない事もあるって事なのっ」

提督「はぁ?」

瑞鳳「ほらほら、提督はあっちあっち~!」

提督「おお、おいこら押すなって…解ったよ。聞かないって…!」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
350: 2014/11/10(月) 20:58:24.86 ID:8q8lDt6So
提督「はぁ~、ったくわけ解らん」ガタッ

比叡「んお」

霧島「あら」

榛名「あっ」

金剛「Oh…」

提督「え?」

金剛「Hey!提督ぅ~、私達と一緒にランチしたいのは解るけどさ~、今日はちょっと遠慮して欲しいネ~」

提督「はい!?」

榛名「提督、ごめんなさい!」

提督「え?」

霧島「今は!」

比叡「ダメです!」

提督「えっ、ちょっ、何、何なの!?どういうことなの!?」

351: 2014/11/10(月) 21:23:57.88 ID:8q8lDt6So
提督「くっそぉ…なんだってんだ。ちくしょう、しゃーない。この隅っこなら…」

北上「ふぁ~、あれ提督じゃん」

提督「……」

北上「な、何さ…」

提督「退けとか言うのか」

北上「え、いや…別に言わないけど」

木曾「おう、北上!お前ハンバーグ定食でよかったよな?っと、よう提督」

提督「よう…」

木曾「え、なんか暗くね…?」

北上「なんか解んないけど隅に追いやられたんだって~」

川内「おっ、居た居た!駆逐艦連中はあっちの席で纏まるってさ」

神通「ですのでお二人で居た龍驤さんと大鳳さんを連れてきました。利根さん達は午前中、演習してた組で纏ま
ってるみたいでしたのでお声は掛けてません」

大鳳「大勢で食べるほうが楽しいからね。お邪魔させてもらおうかなって」

龍驤「おおっ、こっちの席提督おるやんかぁ!当たりやん♪」

木曾「ほらほら、提督!んなしょげ返ってねぇで一緒に飯食おうぜ!」

神通「川内姉さんはどれにしますか?」

川内「んー、どーしよっかなー。神通と一緒で良いや」

神通「そうですか?それじゃあ…カレーうどん、っと…」

龍驤「うちらも決めんで、大鳳!」

大鳳「ええ、そうね」

龍驤「提督はどないするん?」

提督「ん、あ~、どうすっかな。ってもやっぱこれだな」トン…

龍驤「提督、ほんまカレー好きやなぁ」

提督「カレーライスは海軍の誇りだ」

大鳳「それじゃ私はしょうが焼き定食」

龍驤「うちはどないしよ。寒ぅなってきたし、やっぱ中華丼やな!」

352: 2014/11/10(月) 21:43:13.28 ID:8q8lDt6So
木曾「へへっ、にしてもよ、こうやって提督と一緒に飯食うのって何気に久しぶりだよな」

北上「あ~…確かにねぇ」

川内「大体、私達が食べ終わった後に一人で食べてること多いもんね」

神通「傍らには大抵秘書艦の榛名さんがいらっしゃいましたけどね?」

提督「んだよ、しゃーないだろ。執務がきっかり定時で終わることなんてそうそうないんだし、必然的に手伝っ
てもらってる榛名も昼食は遅れること多かったよ。まぁ、そういった場合は悪いと思うから奢ってやってるが…」

北上「お~、初いねえ、熱いねえ…!」

提督「うっせ」

木曾「ははは!まぁよ、だから久々だなってんだよ。で、どうよ」

提督「はぁ?何が」

木曾「榛名以外の艦娘に囲まれて食べる飯はうめぇかって聞いてんだよ」ニヤニヤ

北上「おっ、おおっ?そこんとこど~なのさ~、提督~?いつもは榛名っちとア~ンとかしてんの?してんの?」ニヤニヤ

木曾「おいおいマジかよ。背中痒いぜ、おい」ケタケタ

北上「木曾っちが聞いたんでしょ~!」キャッキャ

提督「マジこの姉妹うぜぇんだけど…」プルプル

神通「うふふ」

川内「素直になりなよ、提督♪」

提督「わざとらしく語尾を躍らせるな!」

龍驤「せやけど、あれやんな。提督も最近は少し落ち着いてきてるんとちゃう?」

大鳳「以前はもっと騒がしかったって事なの?」

龍驤「うちが最初におった鎮守府の提督はそらぁもう熱血を地で行くようなやる気マンやったで」

提督「お、おい龍驤やめろって!」

353: 2014/11/10(月) 21:59:04.23 ID:8q8lDt6So
川内「へぇ…」ニヤニヤ

木曾「おいおい、マジかよ…キャラ違くねぇか、提督~?」ニヤニヤ

提督「う、うっせぇな!龍驤も要らないこと一々思い出すなっての!」

龍驤「にしし、まーまー細かい事気にせんと、仲良うご飯しよや♪」

神通「ほらほら、提督。折角のカレーライス、冷めてしまいますよ?」

川内「提督ー、神通がよそってくれるなんて滅多にないんだよ?超レア!普段より数倍美味いかもね!」

神通「ちょ、ちょっと川内姉さん!変なこと言わないで下さい!///」

大鳳「ホント、神通って戦闘のときと雰囲気違うから面白いねぇ」

神通「えぇ!?」

川内「私と訓練してるときなんかもそりゃあもう、食い頃すぞってくらいの顔つきになるよね」

神通「表現が酷すぎませんか!?」

提督「ははっ、そんな鬼気迫る特訓してるのか?」

神通「もう、提督まで…」

川内「ほら、なんだっけ。神通、あれあれ…えーっと」

神通「はい?」

川内「ほら、神通が最近心がけてるあれだって!なんてったっけ、じん、じん…」

提督「仁義礼智信」

川内「そーそー、それそれ!私には何か小難しくって何言ってんだかさっぱりなんだけどさ、神通ってば最近は
それを心がけてるとかで、あれ以来神通の動きとかなぁんか良くってさぁ。姉としては足元いつ掬われるのかっ
て感じでヒヤヒヤもんなわけさ」

提督「ほぅ…」ニヤ

神通「な、なんですか急に///」

大鳳「あら、神通…なんだか顔赤いわよ?」

神通「へ?あ、いや、えっと、なっ、何でもありません!///」

北上「あらら、神通っちってこういう話苦手系?」

龍驤「なんや神通、熱でもあるんとちゃうか?めっちゃ顔赤いで」

提督「ほら、お前ら余りからかうな。神通も困ってるだろ。神通なりの練習方法があるんだろ?別に恥じること
じゃないさ。むしろ良いことだ、そうだろ?」

木曾「まぁ、そうだけど…その、なんだ、じんぎ、れいちしん?って、なんなんだ。提督は知ってるみてぇだけ
ど、神通も勿論知ってんだろ?」

354: 2014/11/10(月) 22:11:24.18 ID:8q8lDt6So
神通「ま、まぁ、そうですが…説明、となるとちょっと難しい、と言うか…てい、提督でしたら上手に説明でき
るのではないでしょうか…」

北上「えー、提督にそんな小難しいことわかんの?」

川内「よっ!我が鎮守府の長!提督!賢いって所見せてちょーだいよ!」

提督「お前絶対馬鹿にしてるよな?」

川内「え、してないって…!ホントだよ!?」

大鳳「煽りにしか見えなかったわ…」

川内「マジで…」

提督「ったく…神通の言った仁義礼智信ってのはな、儒教の中にある一説で孔子を始祖とする思考や信仰の体系
のことだ。そんなかに五常と呼ばれる言葉がある。それが仁義礼智信だ。五常の徳性を拡充することによって、
父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道を全うすることを説いている」

龍驤「な、なんや…むっちゃワケ解らん言葉が羅列されてんで…」

川内「え、なんて…?」

北上「お、おぉ…?」

木曾「やべ、寝そうだった」

大鳳「む、難しい…」

神通「……」(覚えるのに私だって苦労しましたよ…)

提督「はぁ、真面目な話したらコレだよ」

北上「あ、いや、なんか、そのごめんね?侮ってたわ」

提督「お前、俺のことなんだと思ってたの?」

北上「え…頭のねじが一本吹っ飛んでるけどやる時はやる人?」

提督「任務報告書を日記形式でしか掛けないポンコツがほざくな、戯け」

北上「ぐぬぬ…!」

大鳳「霧島なら知ってるかな…」

提督「さぁ、どうだろうな。知ってるかもしれないし、知らないかもしれない。どっちにしろあいつに聞いたら
最後と思えよ。お前が理解するまで、またあいつ自身が理解するまで開放されないぞ、きっと…」

大鳳「う……」

提督「さて、と…お前ら喋ってるだけで手が休みっぱなしだぞ。俺は先に戻るからな」

木曾「えっ…!?て、提督何時の間に完食してんだよ!」

提督「お前らが俺から神通に矛先変えて弄繰り回してた辺りで食い終わってたよ」

龍驤「さ、流石や…」

提督「まっ、たまにはこういうのも悪くないな。楽しかったよ。午後は何するのか知らんが、ほどほどにな。そ
れじゃ俺は先に戻るぞ」ガタッ

大鳳「はい、また機会があればご一緒しましょう!」

北上「じゃーねー」

358: 2014/11/11(火) 21:32:48.38 ID:7zgo3nP0o
-グラウンド-

羽黒「いきますよ!」パシッ

イムヤ「それっ」ポンッ

ゴーヤ「そっちにもいっくよー!」ポンッ

イク「はいなのねー!」


ベシッ


イク「はうっ」

ゴーヤ「クリーンヒットでち…」

提督「おっ、羽黒に水中娘達が陸地とは珍しい。はは、それでイクは顔面でボールキャッチして何してるんだ?」

イク「うぅ、顔面で受けたかったわけじゃないのね…」

羽黒「あ、司令官さん」

イムヤ「水中と海上、それに地上じゃ物の動きって全然違うじゃない?動体視力、集中力、視野の強化、色々と
できることはあるって事よね」

提督「ほう、いい着眼点だな」

イムヤ「午後は今度は近海で駆逐艦の子たちと演習形式で特訓予定よ」

羽黒「私はそのお手伝いです」

提督「…そうだったのか。普段、あまり活躍の場を設けれなくて済まないな」

イムヤ「え?」

提督「遠征、遠征、戻ったら休暇を隔ててまた遠征。正直、俺でも嫌気が差すときがある。だから、当事者であ
るお前たちはもっとしんどいだろうなって思ってな」

イムヤ「ふふ、何を言うのかと思えば…」

ゴーヤ「要らない心配でち!」

提督「え?」

ゴーヤ「ゴーヤ達は縁の下の力持ち!ゴーヤ達無くして、この鎮守府は成り立たないって長門さんからのお墨付
きなのでち!」フンス

イク「イクはまだ日が浅いけどスケジュールとかを見ると、提督が気を遣ってくれてるのはそれだけでも解った
のね!そうそう出来る気遣いじゃないと思うの!」

イムヤ「そーいう事よ!ってワケで、司令官!」

359: 2014/11/11(火) 21:50:51.15 ID:7zgo3nP0o
提督「な、何だよ」

イムヤ「特訓の邪魔でーす♪」

羽黒「気に病むだけ損かもしれませんよ?」

提督「はぁ、ったく…わーかったよ。だが特訓でも無理無茶はするんじゃないぞ」

イムヤ「だいじょーぶ♪」ウィンク

ゴーヤ「適度に休憩は取ってるよ~!」

イク「まず体力が続かな~い!」

羽黒「ふふっ」

イムヤ「って事よ。無茶のしようがないでしょ?」

提督「ははっ、確かにその様子じゃあそうだな。んじゃ、頑張れよ~」

イムヤ「ま~たね~!」

ゴーヤ「……行ったでちか?」

イク「うん、今度は道場の方へ向かったみたい」

羽黒「ふぅ…」

イムヤ「さっき金剛さんから連絡があって、食堂でニアミスしたみたいだけど、さり気無く北上さん達が囲い込
んで事なきを得たみたい」

ゴーヤ「は~、見事に今日は全員が待機の日って事だから、ちょっと心配でち」

イク「鬼門は駆逐艦の子たちなのね」

イムヤ「きっちり口止めはしてあるけど、どこでぼろが出るか解らないしね。こっちも早い所片付けないと!」

ゴーヤ「りょ~かいでち!」

イク「オッケーなのね!」

羽黒「お任せ下さい!」

360: 2014/11/11(火) 22:01:18.79 ID:7zgo3nP0o
-道場-

提督「流石に誰も居ないか。にしても、折角の待機日だってのにどいつもこいつも午前中は張り切ってたなぁ」

提督「…っと、そろそろ執務室戻らないとな。残りの連中に前世の記憶があるのかどうか、探りを入れないこと
には今後の方針も決めれない」


利根「……あ、危なかったのう」

阿武隈「まさか道場に来るなんて、想定外」

陸奥「誰よ、ここなら安全に作業できるとか言ったの」

夕張「け、計算ミス…でもバレてなかったし結果オーライじゃない?」

鈴谷「熊野は午後一で面談って言ってたし、怪しまれない程度に午前中の続きしつつ、作業続行だね!」

陸奥「全く、あの四姉妹もまた随分と手の込んだ事を考え付くわね。私ですら気付くの遅かったのに…」

鈴谷「でもさ~、提督ってこういうの好きそうじゃん?」

夕張「きっと号泣ものですよ!」

利根「やれやれ、我輩は普通でもよいとおもうんじゃが…」

阿武隈「とか何とか言って、結構利根さん熱心に取り組んでるじゃない。あたし的にはいいと思うけどな~」

利根「ぬぐ、目敏い奴じゃな、お主…」

361: 2014/11/11(火) 22:25:17.46 ID:7zgo3nP0o
-執務室-

提督「は~、珍しくこう書類作業もないと暇っすねぇ…」


コンコン


提督「お、きたか。入っていいぞ」

熊野「失礼しますわ」

提督「おう、入れ入れ」

熊野「あら、珍しく執務デスクが綺麗ですのね。普段は書類の山ですのに…」

提督「そーなんだよ。結構レアだろ、この状態。もう二度と見れんかもしれないぞ」

熊野「ふふ、けれどどこか暇を持て余す、と言った表情ですわね?それで、今日の面談と言うのはどのような事
を伺いたいのかしら?」

提督「そう畏まらんでもいいって。単にお前たちの今のコンディションや状態を把握しておきたいと思って一人
一人に聞ける機会が出来たから実施してるに過ぎん。因みに熊野はこれまでに身に覚えのない記憶があったり、
不意に嫌な夢、怖い夢みたいなのを断続的に見たりした経験ってあるか?」

熊野「なんですの、それ。身に覚えのない記憶と言われましても、よく解りませんわ。嫌な夢や怖い夢、と言う
のもわたくしが知る限りではありませんし…」

提督「うーん、そうか。いや、身に覚えのない記憶ってのは例えばだけどさ、行ったことのない海域の記憶があ
るとか、なんでそうしてるのか自分でも解らないんだけど、そうしてないとならないっていう…なんていうか、
使命感みたいなのに突き動かされてそうしてるって感じ?」

熊野「は、はぁ…?ちょっと、よく解りませんわね」

提督「だよな。俺も言ってて少し不安になるくらい解らんわ。けどまぁ、話を聞いてる限り熊野はそういったこ
とがなさそうだから安心した。言い換えればそれは熊野が現時点で充実してて特に問題もない状態だってことに
他ならないんだからな」

熊野「そのような曖昧な終わり方で宜しいんですの?」

提督「はじめに言っただろ。単にお前たちの現状を簡単に把握しておきたいだけだって。もしもそこで不安に思
うことがあれば言ってくれれば何かしらの手助けが出来るし、変調があればそれに気付いてやれるかもしれない」

熊野「ふふ、まるでカウンセラーの先生か何かですわね?」クスッ

提督「免許皆伝ってわけじゃねぇけどな。ま、何はともあれ熊野は大丈夫ってことだ。貴重な時間付き合っても
らって悪かったな。もう戻っていいぞ」

熊野「そうですの?それじゃ、これで失礼いたしますわ。あ、そうそう…」

提督「ん?」

熊野「夕方くらいに食堂に来て欲しいと、先ほど金剛さんから言伝を頼まれていましたの」

提督「金剛が?」

熊野「ええ、なんでも見せたいものがあるとか…」

提督「そうか、解った。しかし夕方くらいって言っても幅広いな」

熊野「あの方はアバウトですから、仕方ありませんわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマル辺りに立ち寄れ
ば丁度いいかもしれませんわね」

提督「だな。りょーかいだ。お疲れさん」

熊野「はい、それでは失礼いたしますわ」


ガチャ……パタン


提督「さて、あと残ってるのは……」

362: 2014/11/11(火) 22:54:01.47 ID:7zgo3nP0o
-食堂-

金剛「そっちドーネ!?」

榛名「こっちは終わりました!」

霧島「こちらも準備完了です、お姉さま!」

比叡「よしっ!私のほうも完了しました!」

金剛「Good job!流石、私の自慢の妹達ネー!Hey!駆逐艦の皆、そっちの準備は終わってるネー?」

暁「カンペキよ!」

Bep「うん、微塵も隙はない」

夕立「装飾もあと少しで終わるっぽい!」

白露「あとはー、こっちの部分取り付ければかんりょーっ!」

金剛「Great!提督はあと暫くは執務室から出てこないヨ!この時間内で一気に終わらせるネ!」

榛名「私は一度、道場の方で別作業中の利根さん達のお手伝いへ行って来ます」

霧島「それなら私も付き合うわ」

金剛「OK!そっちは榛名と霧島に任せるネー。比叡は北上達の手伝いをお願いするヨ。私は赤城達の方へいって
くるから、終わり次第、ドンドン設置して欲しいネ!」

比叡「お任せ下さい!」

363: 2014/11/11(火) 23:15:46.45 ID:7zgo3nP0o
-道場-

鈴谷「おっ、熊野おつかれーぃ♪」☆(ゝω・)v

利根「さり気無く時間は伝えてきたか?」

熊野「完璧ですわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマルの間に食堂へと」

阿武隈「さっすがー!」

榛名「それじゃ、ラストスパートといきましょう!」

陸奥「任せなさい!」

夕張「いやー、それにしてもホントよく気付いたよね」

利根「なぁに、言いだしっぺは榛名なんじゃろ?金剛達はそれに賛同して率先して手伝っていると聞く。つまり
あれじゃな、愛の成せる業と言う事じゃな」

榛名「と、利根さん…!///」

阿武隈「おー」

夕張「おー」

鈴谷「きゃー!テーンションあーがるぅー!」

熊野「うふふ」

陸奥「形無しね?」

榛名「もう…///」

364: 2014/11/11(火) 23:27:24.36 ID:7zgo3nP0o
-執務室-

提督「ふぃー、赤城で終わりかな」

赤城「お疲れ様です」

提督「まっ、お前は武蔵たちの一件を北上からも聞いてるから別段隠す必要もないが…」

赤城「欠けた記憶と覚えない悪夢、残念ですが私にはまだ経験のない事ですね。ただ、榛名さんと幾度となく共
に海域へ赴いて感じたことですが、彼女は少し背負いすぎな部分があります。時としてそれは彼女自身を苦しめ
る結果に繋がるかもしれません。だからと言って軽薄になれ、見て見ぬ振りをしろと言う訳ではありませんが…」

提督「ああ、解ってるよ。ただお前の言うことも最もだ。確かにあいつは自分の信念に真っ直ぐだ。それに反す
る相手が深海棲艦と言う点において、今のところ歯車は綺麗にかみ合っているから常にそのパフォーマンスを最
大限に発揮することができてる。だがそこに異物が混入されれば、たちまち歯車はその働きを止める」

赤城「提督は直に難しく考えすぎです」

提督「へ?」

赤城「私のモットーは簡潔に解り易く、です」

提督「お、おう…」

赤城「提督じゃないと、ダメなんですよ?榛名さんが頑張ってしまうのも、無理してしまうのも、意地悪く言え
ば提督のため、如いてはこの鎮守府のため、ですから提督があの子を支えて上げて下さいね」

提督「これは手厳しいね…」

赤城「勿論、あの子は私達のためにも奮起してしまいますから、そういった時は勿論私達が歯止めになってあげ
ますけどね。ホント、榛名さんは皆さんから愛されてると思います。提督もですけどね?」

提督「愛されてるか?今日だってお前らに邪険に扱われたしなぁ…」

赤城「あ、あれは不可抗力です!」

提督「追いやられた先じゃ金剛たちにご飯一緒は無理デースって更に隅に追いやられたし?」

赤城「あ、あはは…」

提督「愛されてるか?」

赤城「ええ…言うほど実感がないのかもしれませんが多分に、私が思うにはですけどね?」

提督「はぁー、本当かなぁ…」

赤城「自分の部下を信じなくて何を信じるんですか?」

提督「ねぇ、知ってる赤城…」

赤城「はい?」

365: 2014/11/11(火) 23:55:14.95 ID:7zgo3nP0o
提督「部下が上司に対してね、この隠し撮りに成功したDVDをばら撒かれたくなかったら今日の遠征任務は無し
にしろーって、脅迫してくると思う?」

赤城「えー…」アセ

提督「あとはねー、あっ、提督チーッス!鈴谷今日は遠征って気分じゃないからお散歩で気分転換してきまーっ
す♪じゃ~ぁね~ぃ」☆(ゝω・)v

赤城「……」

提督「とかとかー、あとはー…」

赤城「あ、いえ…もう十分です」

提督「あ、そう?」

赤城「それでも皆提督が大好きなんだと思いますよ!」

提督「押し切ってきたな…」

赤城「横綱相撲は結構得意です」

提督「受け止めず往なしてるだろ、お前…」

赤城「時と場合によります!」

提督「こいつ…」

赤城「あ、もうヒトロクマルマル過ぎてますね。金剛さんに呼ばれてるんじゃないんですか?」

提督「あ、そういやそうだった。てか赤城にも金剛の奴伝言頼んでたのか?」

赤城「ふふ、彼女会う子皆に言ってましたからね。私も漏れなく伝えてくれと頼まれてました」

提督「どんだけだよ」

赤城「私も用がありますから、一緒に食堂まで行きましょうか」

提督「赤城が食堂に用ってつまみ食いしか想像できんぞ」

赤城「……」スッ

提督「じ、冗談。冗談だから無言で矢筒から矢を抜き取らないで」

366: 2014/11/12(水) 00:03:27.95 ID:Y8Lspnovo
-食堂-

提督「ってことで着てみたけど……え?」

赤城「あら、うふふっ、思ってたより豪勢ですね」

提督「え?は?豪勢って、今日って何か祝い事の日だったか?」

赤城「もう、自分で忘れてるなんて相当ですよ?」

提督「え?」

榛名「提督!提督がここに着任されて今日で丁度一年経過したんですよ?忘れちゃったんですか?」

提督「あ……」

金剛「Hey!提督!Congratulations memory in an anniversary!」


パン パン パン


提督「うおっ」

瑞鳳「これから先も宜しくね、提督!」

飛龍「めでたいって言うのはいいねっ!」

陸奥「少しなら羽目を外してもいいけど、火遊びはダメよ?」

提督「お前ら…」

木曾「おら、もうちょい嬉しそうにしろっての!」

北上「鳩が豆鉄砲食らった顔って奴だね~」

衣笠「あははっ、提督が忘れてるんじゃ仕方ないよね~?」

羽黒「一生懸命隠してた私達がちょっと悲しいですね」

提督「今日ずっと、これ作ってたってのか!?」

暁「感謝しなさいよね!」

白露「私達の提督がいっちばーん!」

榛名「さぁ、提督こちらへ」

イムヤ「ヒューヒュー♪」

鈴谷「やーだー、テーンションあーがるぅ~~♪」

龍驤「よっ、だいとーりょー!」

提督「ええい、一々囃すな!」


かくして提督の着任から丁度一年経過したその日を祝う計画は、艦娘達の努力によって大成功を収めた。

そしてここから、彼女達の過酷な戦いの幕も上がる。

371: 2014/11/12(水) 21:09:48.89 ID:FiDrY2yEo
~覚醒~



-某海域-

大和「…こちら大和。深海棲艦の殲滅に成功しました」

ビスマルク「同じくビスマルクよ。こっちも深海棲艦一群の壊滅に成功したわ」

那智「…では、これより帰投します。尚、その後の敵の接触が無いとも言い切れませんので、警戒は密に」

雲龍「了解よ。警戒態勢は以前変わらず密に。特に潜水艦への警戒は怠らないで。稼動全機……」

祥鳳「待って下さい、雲龍さん」

雲龍「…何?」

摩耶「あれだろ、RPGで言う所のボスってヤツさ。あたし等の前に堂々と現れる辺り、オツムはからっきしかぁ?」

雲龍「あれは、資料にあった…」

レ級「……」

大和「戦艦レ級、ですね」

ビスマルク「よもやここで?」

那智「ちっ、こちらの戦闘データを測られた可能性もある。確実に沈めなければ…」

雲龍「ちょっと、待って…!」

那智「なっ……」


レ級1「……」

レ級2「……」

レ級3「……」

レ級4「……」

レ級5「……」

レ級6「……」

372: 2014/11/12(水) 21:26:36.76 ID:FiDrY2yEo


摩耶「おいおい、冗談だろ…」

祥鳳「戦艦レ級だけの、艦隊…!?」

大和「でも、何か変です。隊列は整ってますが、こちらへ仕掛けてくる素振りが無い」

ビスマルク「……その後方に控えているのが大本命、と言う事かしらね」

リコリス「お初にお目にかかるワネ。元帥お抱えノ第一艦隊カシラ?」

大和「…随分と情報がそちらは揃っているみたいですね」

リコリス「アラ、そうでもナイわよ?で、元帥の栄えある第一艦隊デいいのカシラ?」

ビスマルク「だとしたら、なんだと言うの?」

リコリス「この場で潰スワ」

摩耶「…んだと、てめぇっ!」

リコリス「フフッ、なんて冗談ヨ。見た所、戦艦二人に空母、軽空母、重巡の即席艦隊ミタイね。中々お外に出
て来ナイ陰気な元帥に警告シニきて上げたノヨ」

祥鳳「警告、ですって?」

リコリス「元帥に伝えナサイ。同じ過ち、同じ争い、同じ歴史ヲいつマデ続けるのかッテネ」

大和「同じ、過ちですって…?」

リコリス「その様子じゃ、目に見エル履歴しか閲覧シテきてないミタいね。哀れな子達……ソレとも、副作用が
無かったダケで、運良く力のみヲ手に入れたのカシラ?だとシタラ、尚の事不幸なのカシラ…」

ビスマルク「貴女、何を言ってるの…?」

リコリス「さぁ、何カシラねぇ?ただ、一つ言えるコトはコノまま私達とぶつかり続けレバ、滅びるのは確実に
貴女達、と言うコトになるのかしら」

雲龍「意味が解らないわ。脅しなら通用しないわよ」

リコリス「脅し?とんでもナイ。さっきも言ったデショウ。これは警告ヨ…取り返しのつかナクなる前に、賢明
ナ判断ヲするコトを願ってるワ」クルッ

373: 2014/11/12(水) 21:45:40.81 ID:FiDrY2yEo
-大本営-

大和「元帥、以上が此度に私達が体験した顛末です」

ビスマルク「奴の口振りは元帥が何かを隠していると暗に示唆する内容だったわ」

元帥「そうか…」

大和「元帥?」

元帥「…何でもない。報告は解った。危険な目に遭わせてしまって済まなかったな」

ビスマルク「いえ、それが本来の私達の任務です。気遣いは無用かと思いますけど…」

元帥「ふっふ、そう強がるな。報告は解った。今日は二人とも下がっていいぞ」

大和「は…?」

ビスマルク「まだ秘書業務は残っていると思うけど?」

元帥「調査任務を遂行してくれた褒美だ。遠慮せずに今日はもう休んでいい。同行した那智、摩耶、雲龍、祥鳳
にもそれぞれ通達しておけ」

ビスマルク「し、しかし…!」

大和「ビスマルク、それ以上は…」

ビスマルク「くっ…」

大和「了解致しました。ではお言葉に甘えて本日の業務、終了とさせて頂きますね」

ビスマルク「ダンケ、シェーン…失礼します」

374: 2014/11/12(水) 22:01:35.37 ID:FiDrY2yEo
摩耶「ふー、やっぱ仕事の後の一っ風呂は最っ高だなぁ!」

祥鳳「一日掻いた汗を流す…疲れも一気に消えますね」

雲龍「そうねぇ。それにしても、一戦を交える事にはならなかったとは言え、戦艦レ級の艦隊にそれを指揮して
いたあの白髪に紅の瞳の深海棲艦…距離を置いていたとはいっても、あの圧倒的な威圧感…寒気がしたわ」

那智「解せんのはそれだけではない。奴の発していた言葉もまたこちらからしてみれば不可解だ。脅しではなく
警告とは、言っている意味が理解しかねる」

摩耶「よう、那智」

祥鳳「お疲れ様です」

那智「ああ。あと、大和から通達だ。本日の任務は終了、その後は各自自由時間だそうだ」

雲龍「わざわざそれを伝えるためだけに?」

那智「ふん。どちらにしろ塩水を被ったままでは具合が良くないからな。事の次いでだ」

摩耶「かーっ!今日の元帥は気が利いてるなんてもんじゃねぇなぁ、おい!」

祥鳳「別段、荷が重い任務と言う訳でもなかったんですけれど、どうしたんでしょうか」

那智「私が知るか。だが上からの命令ならば絶対だ。休めといわれれば休みもするさ」

雲龍「相変わらずの鉄面皮ね」

那智「どうとでも言え。いざという場合に備え、戦術行動が取れなくては本末転倒だからな。休養も戦いの内だ」

375: 2014/11/12(水) 22:15:22.36 ID:FiDrY2yEo
-大本営・大会議室-

大将1「宜しいのですか?飛行場姫・リコリスと名乗る深海棲艦のメッセージは確実にこちらの隠匿してきた履歴
を指して述べております」

元帥「仮にそうだとしても大和やビスマルクをはじめとした艦娘達は一人としてその事実には差し当たって気付
いてはおらん。無駄を排除した上で執り行った近代化改修も滞りなく成功した」

大将2「ですが、万が一という事もあります。先の提督大佐の所に居る艦娘にも元帥殿の指示の下、近代化改修を
施したと聞き及んでおります。そちらの方面からもしもその万が一が起これば…」

大将3「ならば、逐一監視して、情報を常に手綱として握っておけばいいでしょう。諜報には智謀大将よりも隠密
大将の方が長けているのではないですか?」

隠密「やれと言われればやりましょう。海軍の規律に反する俗物は余さず炙り出し、白日の下に晒して然るべき
刑罰を科し、断罪に処するべきです」

智謀「恐ろしい事をサラッと口にしますね。私には貴方の方がよっぽど極悪非道に見えますが?」

隠密「尻尾を出さない女狐がどの口でほざくのか。今の憲兵など自力で動こうとしない駄犬に等しい以上、我々
が彼奴等の手足を動かす人形師として成らねばならんのですよ」

智謀「」(それもこれも貴方の思惑通りでしょうに…それこそどの口が言うのか)

隠密「おや、智謀殿にしては珍しく何か物言いの表情ではないですか」

智謀「いえ、別に。提案と推薦を課せられたのは隠密提督。そこに私が土足で足を踏み入れるわけにはいかない
でしょう。出された決定には無論従います。元帥殿の発言こそがそのままの意なのですから」

隠密「では…元帥殿、宜しいですね?」

元帥「決して手は出すな。提督大佐にはこの私自ら着せてしまった恩のある男だ。無用の混乱と疑心を彼に植え
つけたくはない…」

隠密「心得ました。お言葉の通りに任務を遂行してご覧に入れましょう」

376: 2014/11/12(水) 22:29:30.65 ID:FiDrY2yEo
-演習場-

赤城「はぁー…これは、また…」

飛龍「す、凄いね…」

提督「…榛名と金剛の二人だけで陸奥、大鳳、衣笠、川内の四人を、ねぇ…」


川内「はは、マジで…?」 中破

衣笠「じょーだんでしょ」 中破

大鳳「つ、強い…!」 小破

陸奥「実際に肌で感じて初めて解るってこの事ね」 小破

金剛「はぁ、はぁ、はぁ…」 中破

榛名「まだまだ、やれますよ…!」 中破


比叡「霧島、どれだけ把握できた?」

霧島「そ、想像を超えてます。とても全てを把握なんて無理でした」

提督「制空権を奪うだけなら大鳳一人で事足りたのまでは良かったが、それを物ともしない瞬発力が金剛と榛名
には備わってるみたいだな。最初から空を制すことが出来ないと解っていれば、自然と空への警戒も強まる」

赤城「だとしても、大鳳さんのハリケーン・バウはそう易々と往なせるものではありませんよ」

飛龍「うん、決して大鳳の錬度は低くない。衣笠の精密射撃に川内のスピード、陸奥さんのパワー、バランスも
取れてて戦術を行使するにはとてもいいと思ってたんだけど…」

提督「金剛と榛名の連携がそれを容易く上回ったな。出だしがともかく凄まじく早かった。大鳳の先制攻撃から
始まって、状況把握から戦術展開、どちらが殿を務めるのか、互いの針路、射線の確保と一瞬でそれらをやって
のけたのには流石に俺も脱帽ものだった」

比叡「何より驚いたのは二人の動きですよ」

霧島「金剛お姉さまは左右の切り替えし、榛名はお馴染みの三次元の動き…キレも相当なものでした」

比叡「瞬間的な動きの速さなら駆逐艦の子等に迫るものがあったよ」


陸奥「まだやれるって、そのナリで本気で言ってるの?こっちの艤装はまだ一番二番砲塔共に無傷、そっちはど
うみても、二人とも主砲が使い物にならないように見えるけど?」

金剛「じゃあ、見せるしかないネ、榛名」

榛名「はい、お姉さま」

川内「…くるよ、皆!」

衣笠「外さないわよ!」

大鳳「慢心も出し惜しみもしない。さぁ、飛び立ちなさい!第二次攻撃隊、全機発艦!」

陸奥「手負いの狼ほど怖いってね。気を緩めちゃダメよ!」

377: 2014/11/12(水) 22:38:38.63 ID:FiDrY2yEo
-執務室-

榛名「ふぅ、すみません。遅れました」

提督「いや、いい。それより最近、皆演習に力はいってるな」

榛名「ここ最近、やはり深海棲艦が強くなってきてるのもあるんだと思います。私自身も実際にレ級や泊地棲姫、
ピーコックと言った存在と相対してその実力差に愕然としたのも事実です」

提督「だが、断言してもいい。今のお前はそこらの深海棲艦は勿論、艦娘相手にも全く引けを取らないだけの力
を秘めているし、実際に発揮している。少なくとも、俺が知る限りではお前に長門、金剛、赤城、神通、夕立、
ヴェールヌイ…」

榛名「え?」

提督「近いものを感じるのは飛龍、大鳳、陸奥、衣笠、羽黒、川内、北上…」

榛名「あの、近いものって言うのは…」

提督「俺の中での仮説に過ぎん。ある程度の条件が整っているものを俺は仮定的にそう表現している。つまり、
覚醒している、もしくは覚醒しかかっていると言うことだ」

榛名「かく、せい…?」

提督「考えられるのは近代化改修だろうな。それと、個々が内に秘めている古の記憶だ。前世の記憶なんて表現
する場合もあるが、数十・何百年も前の記憶を有するというのはそれだけで不可思議だからな」

榛名「あの、提督?」

提督「榛名、恐らくだがお前たちは進化の過程にある」

榛名「あの、改装と言う意味で、ですか?」

提督「いや、進化と言うよりはやはり覚醒しかかっている、と言う方が正しいかもな」

榛名「覚醒、しかかっている?」

提督「幾つか立てた仮説の中では最もしっくりくるもんだ」

378: 2014/11/12(水) 22:54:13.07 ID:FiDrY2yEo
まず、以前に北上経由で教えてもらい、実際に武蔵、加賀、大井たち三人から生の情報を得られた。

艦娘の氏後のことだ。艦娘は氏後、幾つかの選択肢が存在することが彼女たちの言葉から判明している。

一つは依り代となる場所や物があった場合、そこに根付き守護者のようになる。これは今の武蔵たちの状態だな。

二つ目、天寿を全うした魂は輪廻転生をして別の存在として生まれ変わる、と言うものだ。

これはまだ実際に目にしたわけではないし、立証のしようもない。

だが、一つ目の事象を体現していた武蔵たちの言葉だから、ある程度の信憑性も伺える。

そして三つ目、これが最も恐れていた事実だ。抱いた艦娘自身の念が強すぎて反転し、深海棲艦として生まれ変

わると言うもの。その言葉とつき合わせて、今までの深海棲艦の言葉を省みると、符合する部分が幾つかある。

で、これらの話は言わば覚醒に至るまでの基盤に過ぎない。

次に榛名や一部の艦娘が断片的に覚えている前世の記憶や謎の夢だ。

これは恐らく、最初の艦娘の氏後の話が若干かぶさってくる可能性もある。

そうじゃなかった場合は先天的に元から刻み込まれていたか、もしくは後天的だとすればその原因は近代化改修

がそれにあたると俺は睨んでいる。

先天的に元から刻み込まれている、というのはこれも憶測の域を出ないが実際に存在していたとされるお前達と

同じ名を冠した旧海軍の艦の残心とも言うべき記憶の結晶体だ。

榛名の場合は恐らく先天的なものだろう。実際にお前の名と同じもので、俺も調べて見つけた資料がある。

金剛型巡洋戦艦その三番艦として建造された高速戦艦・榛名。

竣工は1915年4月19日 損失は1945年7月28日とある。

断言はしきれない。だが、それでも思うところがある。お前は、旧日本海軍が建造した戦艦榛名、その生まれ変

わりなのかもしれない。故に、戦艦榛名がその身に刻んだ記憶の断片をお前もまた記憶として保持し、夢として

みていたのかもしれない。

そこに敵として現れた深海棲艦。その強さの前に今度こそ負けまいと、今度こそ護りきると、お前はそう誓って

力を振るった。その想いと過去の記憶がシンクロして今のお前のずば抜けた身体能力が備わった。

過去の記憶と現在の記憶が合わさって未来の力に生まれ変わった。つまり、これが俺が仮定とする覚醒だ。

382: 2014/11/15(土) 22:54:30.45 ID:rs4qGF2No
榛名「そんな、事が…本当にあるんですか?」

提督「解らん。所詮、確証も何も得てない推論のみで編み上げたもの。机上の空論と言われれば反論のしようも
ないのは解りきっている。だが、そうとしか思えない。更に、旧日本海軍の資料と言うのは現在、大本営で厳重
に保管され、それを閲覧することは一般人は無論、俺たち海軍提督にすら許されていない」

榛名「そんな、先代の偉業を何故隠匿する必要があるんです?」

提督「それも解らん。だが、そこに何か隠されているのもまた事実なのかもしれない。実際、榛名の記述を探し
出すのにも相当苦労を強いられた」

榛名「……」

提督「まぁ、色々と喋ったが榛名は今のまま、気にせず居てくれ」

榛名「提督…」

提督「さっ、折角この間はお前たちからサプライズパーティ開いてもらったし、業務頑張らなきゃまた怒られち
まうからな。最近は特に暁一派に合わせて白露一派もお小言増えてきてるからな…」

榛名「またそうやって暁ちゃん達の悪口を…」

提督「レディの私が言ってるんだから言うこと聞きなさいっ!ってお前、言うこと聞くか?」

榛名「……事と、次第によるかと」

提督「電の場合は素直なんだよ。頑張ったので頭撫でて欲しいのですって言うから」

榛名「は、はい?」

提督「暁の場合がさっきの奴ね」

榛名「えっと、え?」

提督「白露は一番にゴールしたからごほうび~!ってタックルかましてくる」

榛名「タ、タックル…」

提督「ぽいすけと時雨、春雨はまだ大人しくていいんだがな」

榛名「ぽ、ぽいすけって…夕立ちゃんの事ですか!?」

提督「え、そうだけど?」

榛名「なんてヒドイあだ名を…」

提督「だってあいついっつも語尾にぽいぽいつけてるだろ。ぽいすけって言うと飛んでくるぞ」

榛名「それでいいのか、夕立ちゃん…」


夕立「っくしゅん!ふぅ、風邪っぽい?」


提督「ま、話は取り敢えず終わりだ。早いとこ書類片付けるぞ」

榛名「あ、はい。了解です」

383: 2014/11/15(土) 23:08:54.45 ID:rs4qGF2No
-???-

新鋭「提督鎮守府の艦娘達に一杯食わされたんですってね?」

フェアルスト「何をしにキタ」

ピーコック「お呼びじゃなインだけド、何か用カシラ?」

新鋭「あらあら、辛辣なお言葉ね。これでも一応パートナーなんだもの、心配くらいはするわよ?」

ピーコック「心配…?フフッ、どの口が言うのカシラ。リコリスは貴女に疑心ノ念を既に抱いてイルわよ」

フェアルスト「無論、私達は基より信用ナドしてイナイ」

新鋭「あら、そう…それよりも、他の子達はどうしたのかしら?」

ピーコック「知らなイワ。用があるナラ自分で探しなサイ」

新鋭「居ないと言うのなら別にそれでもいいわ」

フェアルスト「ドウ言う意味だ」

新鋭「こういう意味よ」サッ


ドォォン ボゴオオォォン ドガアアァァァン


フェアルスト「なっ…!」

ピーコック「フェアルスト…ッ!」サッ

新鋭「…さあ、始めましょうか。深海棲艦狩りを…」ニヤ

384: 2014/11/15(土) 23:25:36.26 ID:rs4qGF2No
ピーコック「うぐっ……フェアルスト…!」 中破

フェアルスト「大丈夫よ。掠った程度ダカラ……ピーコック…ッ!?」 小破

ピーコック「無事なら、ソレデいいわ。それより、どういうツモリよ、シンエイ…!」

フェアルスト「海軍の、モグラと言うワケか…!」

新鋭「冗談はやめて。あんな腐りきった組織と一緒にされるなんて真っ平御免よ。本当だったら一網打尽に出来
る機会を選びたかったけど、まぁ主力級の貴方達なら申し分ないわね」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

フェアルスト「なんだ、ソイツ等は…」

ピーコック「どういうコトなのヨ!くっ、何なの、ソイツ等は……ッ!」

385: 2014/11/15(土) 23:38:03.05 ID:rs4qGF2No
新鋭「さぁ、何かしら?まぁ、初お披露目って事で…これが私の艦隊よ」

フェアルスト「艦隊?艦隊ダト…?貴様、どこまで…ッ!どこまで私達ヲ馬鹿にスル気だ…ッ!!」

新鋭「堕ちた分際で何を偉そうに…使役してもらえる存在がいるだけありがたいと思いなさい?」

フェアルスト「キサマァ…!」

新鋭「彼女達は私の最高傑作よ。従順で、命令のみに忠実。素晴らしいと思わない?艦隊、兵器と言うのはこう
在るべきなのよ。感情なんて起伏のあるものを排除し、ただ障害となるものを無機質に、無感情に、踏み潰すが
如く、只管に蹂躙する。それでこそのマッサークルドール。見せて上げるわ、貴方達を実験台にしてね?」

フェアルスト「逃げろ、ピーコック…」

ピーコック「フェアルスト、あなた…」

フェアルスト「イケッ!ピーコックッ!!誰でも構わナイ。この際、信じヨウと信じまいト、海軍だろうとナン
だろうと、コノ事実を公に伝えろ。出来るナラ味方に、リコリスに……頼んだワヨ、ピーコック…」

ピーコック「こんな、ハズじゃ…くっ!」ダッ

フェアルスト「無事でイテね、ピーコック……イツカ……静かな……ソンナ……海で……私も……」クルッ

新鋭「念仏は唱え終わったかしら?」

フェアルスト「……念仏を唱えるノハそっちよ。余り見縊らナイで貰いたいワネ。私は戦艦棲姫・フェアルスト。
余さず貴様らをコノ場で殲滅スル…ッ!!」

新鋭「ソロモン海戦の亡霊が…逆に沈めて墓標を立てて上げるわよ」

386: 2014/11/15(土) 23:56:55.56 ID:rs4qGF2No
-某海域-

ピーコック「くそっ、クソッ……!逃げるコトしか、出来ないナンて…!」

ヲ級?「……アナタハ……」

ピーコック「…ッ!?なっ…空母、ヲ級…?いや、規格にそぐわナイ。アナタ、まさか…」

ヲ級?「」コクッ

ピーコック「そう、それで…たった一匹で何ヲしようと言うのカシラ」

ヲ級?「ナニモ…タダ、ワタシハ、ジユウヲアイシタ」

ピーコック「その結果がそのザマでは、自由と言うヨリもむしろ傀儡、道化に近いワネ。結局、そのナリで受け
入れらレル場所ナンテ何処にもナイ」

ヲ級?「シッテル。コノサキニアルチンジュフデモ、ソコノテイトクニキョゼツサレタ。デモ、ソノマエノチン
ジュフデハ、ハンブンウケイレテクレタ…」

ピーコック「何ですって…?」

ヲ級?「イマハ、マダ、ダメダト…フシギナヤツダッタ。ミナリダケデミレバ、ワタシハ、シンカイセイカン…
フツウニ、カンガエレバ、ナヤムヒツヨウナド、ナイノニ…」

ピーコック「人間が、深海棲艦に情けヲ掛けたトデモ言うの!?」

ヲ級?「ナサケトハ、チガウ、タブン。カットウ…アノジテンデハ、カレハワタシジャナク、カンムスヲエラン
ダトイウダケノコト……リトウ、セイキ……ドコカ、カナシイカオ」

ピーコック「……ッ!煩いッ!!お前に何が解るッテ言うノ!?深海にも、コノ青い海の上でサエ、居場所のな
い分際デッ!!」

ヲ級?「……ゴメンナサイ。デモ……」スッ

ピーコック「ぇ……?」

ヲ級?「ワタシヲ、ハンブンハ、ウケイレテクレタ、チンジュフ。コノ、ホウガクニアル…」

ピーコック「フッ、私にソコへ向かえと?」

ヲ級?「ヒコウジョウキヤ、コウワンセイキタチノバショ、ワタシニハワカラナイ…シンロガナケレバ、ススミ
ヨウガナイデショウ?ワタシハ、コノアオイウミヲ、モウイチド、アユンデミタイダケ…」

ピーコック「……行きなサイ。貴女は、本当に愚かネ」

ヲ級?「ヨク、イワレテタ」ニコッ

ピーコック「機会がアレば、また会いまショウ。その時は、私が貴女に居場所ヲ作って上げるワ」ニコッ

ヲ級?「アリガ、トウ…」

392: 2014/11/16(日) 21:55:57.23 ID:CkzWmIM6o
-母港-

龍驤「港は今日も異常なしっと~」

飛龍「龍驤、慢心はダメ!ゼッタイ!」

龍驤「わ、わかっとるって…!」

提督「おーい、そろそろ昼だ。交代要員飛ばしたら戻ってきていいぞ」

飛龍「あっ、はーい!ヨシッ、それじゃ今日も宜しくね、皆!」ヒュン ヒュン

龍驤「さーて、うちんとこもお仕事お仕事ー!」ヒュン ヒュン

飛龍「それじゃ戻ろっか!」スタスタ

龍驤「せやな!」テクテク

提督「うーん…秋空快晴、凪ぐ風が少し肌寒いが、照る太陽と相まって逆にこれはこれで心地良いかもなぁ」

飛龍「テートク!呼びに来た人が遅れるってどーかと思いますよっ!」

提督「おっと、悪い悪い…いやぁ、執務室に篭ってるとな、どーもこう、天気が良いと空の下でのんびりとした
くなるんだよ」

龍驤「あー、解る解る。うちも雨降っとると、どーも調子でぇへん時あるもん」

飛龍「あはは、まぁ…提督の場合は執務がお仕事ですからね。ん?」ジー

提督「どうした、飛龍?」

龍驤「ありゃ?」

提督「なんだよ、龍驤まで」

飛龍「艦載機の子達が戻ってきました」

龍驤「うん、うちの子等も戻ってきとるなぁ」

393: 2014/11/16(日) 22:38:56.70 ID:CkzWmIM6o


ブゥゥゥゥゥン……


飛龍「よっと…敵が現れましたか?」

艦載機妖精「キュウエンシンゴウ」

飛龍「救援信号?」

提督「どういう事だ。狼煙も何も上がってないし、何より同じ海軍提督や各鎮守府に所属する艦娘達なら専用の
チャンネルがそれぞれにあるはずだ。わざわざ哨戒中の艦載機に信号を発信するものか?」

龍驤「せやけど、万が一って事もあるやん。そのまんま放置して、後で本物やったらうちらも寝覚め悪いで…」

榛名「あ、提督、飛龍さん、龍驤ちゃん。遅いから見に来ちゃいましたよ。どうかしたんですか?」

提督「あぁ、榛名。それがな────」


榛名「飛龍さんと龍驤ちゃんの艦載機が、それぞれ同じ救援信号を受信して引き返してきたって事ですか?」

飛龍「うん、時間からすればそれほど離れてないと思う」

龍驤「こうしててもしゃあないで。取り敢えずいってみな!」

提督「仕方ない。俺も同行する。榛名、悪いが一緒に頼む」

榛名「あ、はい!解りました」

394: 2014/11/16(日) 23:03:39.21 ID:CkzWmIM6o
-近海-

提督「この辺りか?」

飛龍「その筈なんですが…」

龍驤「別に孤島ある訳やあれへんし、なんかあったら解る思うんやけどなぁ…」

榛名「…居ます」

提督「お、何処だ?」

榛名「……」

提督「榛名?」

榛名「姿を現しなさい、ピーコック!」

提督「何…?」


ザバァァァァ……


ピーコック「……」 中破

飛龍「え…?」

龍驤「な、なんや…ボロボロやないか。そないなナリで自分、まさか特攻でも仕掛ける気ぃか!?」

榛名「貴女…」

ピーコック「……解ってイル。私は、貴様達にとっての外敵でアリ、淘汰すべき相手。だから、私の言葉にソノ
耳ヲ傾ける必要も別にナイ。だが、もしも貴様達ガ、何かの気紛れでも構わナイ、その耳をこちらへ傾けてクレ
ると言うのなら…私の知る全てヲこの場で晒そう」

提督「何が目的だ。そして何故、お前はそこまで痛んでいる」

ピーコック「目的は、ナイ」

395: 2014/11/16(日) 23:19:18.74 ID:CkzWmIM6o
榛名「…貴女が一人で居る事が既に異常なんです。貴女と共に居たフェアルストはどうしたんですか」

ピーコック「フェアルスト……彼女ハ、私の身代わりトシテ、鉄底海峡ノ水底へと再び沈んだ」

飛龍「えっ…!?」

提督「アイアンボトムサウンド…」

ピーコック「…一つ、教えろ…海軍提督。静かな時代で、タダ静かな時ヲそっと過ごす…それは我等が望ンデは
ならないコトか?」

提督「…望むほどに、捜し求めるものがあるのだとするなら、それはお前たちにとって必要なことなのかもしれ
ないのは認める。だが、それとこの世界を闇へ染め上げていいのとは訳が違う」

ピーコック「……フッ、道理だナ。私の首は好きにスレばいい。その前に、コチラの情報の全てヲ貴様達に明け
渡すコトを約束する」

榛名「…待って下さい」

龍驤「は、榛名ちゃん?」

ピーコック「…まだ、何かアルの?」

榛名「共に歩んだ仲間を置き去りにして、貴女は戦わずに氏ぬって言うんですか?」

ピーコック「抗い様のナイ戦力を前に、貴様は無謀と解って尚、足ヲ前に踏み出せルト言うのか?氏を以て退路
ヲ切り開いた同胞(はらから)の努力ヲ、貴様は無駄にシロと言うのか。私の役割は、コノ情報ヲ信頼デキル者へ
託すコトだ。貴様達ナラ、情報を活用スルだけの知恵は持ち合わセテいるだろう」

榛名「そんな事を言ってるんじゃありません!そこまで解っているなら、せめて無念を晴らそうとは思わないん
ですか!?一矢報いるという意地は見せないんですか!?そんな、意地も何もない相手に、私達は苦戦を強いら
れたって言うんですか!?」

提督「榛名…」

榛名「簡単に氏なせるもんですか。自分の業としっかり向き合って下さい。それが、沈んでいった仲間達へのせ
めてもの弔いになるんです。フェアルストがどういう想いで貴女を生かしたのかなんて私には解りません。です
が貴女がそれを理解しないのはお門違いです!」

ピーコック「…クドイ人ね」

榛名「んなっ…!」

ピーコック「艦娘のクセに、深海棲艦に説教スルなんて…他から見レバ異形にしか映らナイでしょうネ」

396: 2014/11/16(日) 23:34:15.27 ID:CkzWmIM6o
ピーコックは一呼吸置いてこれまでの経緯を詳細に語った。

無論、リコリスの計画している内容は伏せた上で、彼女達に要らぬ火の粉が及ばないように配慮した上で、自分

が関わった内容の全てを包み隠さず提督達に語った。

新鋭提督との繋がり、その新鋭提督による内部反乱。

引き連れていたのは新鋭の操る傀儡に等しい艦隊である事。

その後直に自らは退避した為にその全容を確認するには至らなかった事。


提督「新鋭…!」

飛龍「ピーコックの話じゃ、既にフェアルストは…」

ピーコック「足止めをそのママ続けてイタのだとしたら、既に沈んでイルでしょうネ。で、私の処遇はドウする
つもりナノかしら?」

提督「逃げも隠れもしない、と言う口振りだな」

ピーコック「ええ、今はネ?」

提督「そうか。なら、行っていいぞ」

ピーコック「……ハ?」

提督「今回だけは見逃してやる。ただし、次にもし敵として立ち塞がるならその時は容赦無く撃滅する」

ピーコック「艦娘が艦娘ナラ提督も提督ネ。狂ってるトシカ言いようが無いワ」

提督「こちらにも思うところがあるんだよ。この戦いは恐らく終焉を迎えることは決してない。榛名たち艦娘と
お前たち深海棲艦が争い続ける限り、悠久に等しい歳月を経ても終わりはきっと見えない」

ピーコック「ナンですって…?」

提督「お前たちの中にもそのことに気付いてる奴は居るんじゃないのか?気付いてなくとも、この運命にどうに
かして抗おうとしている奴が居ても不思議じゃないと俺は思っているがな。俺はそれに終止符を打つ策を練る。
だから、お前も生きてみろ、ピーコック。生きていれば、別の世界が待ってるかもしれんぞ」

ピーコック「世迷言ヲ…」クルッ

提督「…忘れるな、ピーコック。必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるよ
うにしてみせる」

ピーコック「……ッ!」ピクッ

提督「だから…この時代を、行く末を、この俺を、艦娘たちを、少しでいいから信じてみてくれ」

397: 2014/11/16(日) 23:46:19.66 ID:CkzWmIM6o
-鉄底海峡-

時間は少しだけ遡る。新鋭提督率いる謎の艦隊の襲撃を受けたピーコックとフェアルスト。

フェアルストは自身を庇って手傷を負ったピーコックの身代わりとなる為に彼女を逃がし、自身はその場に留まった。

本来であれば共に逃げ果せる事も可能だったのかもしれない。

しかし、フェアルストはあえてそうしなかった。


フェアルスト「フフッ…自分の行動力に驚嘆スル」 大破

新鋭「あら、随分としぶといわね?さっきのは直撃コースだったと思うんだけどなぁ…」

フェアルスト「直撃?ナラバそうなのだロウな。先の戦いで交エタ艦娘の一撃に比べレバなんと軽いコトか」

新鋭「…なんですって?」ギリッ…

フェアルスト「ナルホド、艦娘か…よもや、ここにきてその艦娘に教示ヲ貰うコトになろうトハ…」ググッ

新鋭「貴女、その、容姿は……っ!」

フェアルスト「お前も、知っていたんじゃナイのか…私達の元がナンだったのか」パリパリ…

新鋭「ば、馬鹿な…こんな事が…」

フェアルスト「目の前にあるのが現実だとするなら、これが紛れもない真実よね」

新鋭「過去の、亡霊ではないと、言うの…?」

フェアルスト「ふふっ、覚悟を決めるというのは、こういう事ね。艦娘にも、深海棲艦にも、未来が残されてい
るという確かな証。ならば私はそれを邪魔する存在に対し全力を賭して応戦し、この希望を今の世代に託そう」

新鋭「ありえない。まさか、浄化?いえ、違う…しかし、この姿は……ちっ、全艦!こいつは危険よ。徹底的に
叩きのめし、殲滅しなさいッ!!」

フェアルスト「面白い。一体や二体の損害は覚悟してもらうわ。さぁ、沈みたい者から掛かって来なさい!ここ
を貴女達の終わりの海域にしてあげる。アイアンボトムサウンドに、沈みなさいッ!!」

398: 2014/11/16(日) 23:48:16.02 ID:CkzWmIM6o
-???-

リコリス「ピーコック……!?」

アクタン「ピーコック、どうシタの」オロオロ

ポート「アナタ、まさか…!」

ピーコック「全てを、説明スルわ」 中破


中間棲姫「フェアルストが、沈んだ…?」

空母棲鬼「やはり、シンエイは信用ナラなかったワネ…」

リコリス「相手が一枚も二枚も上手ダッタ…認めるシカないみたいネ」

ポート「早急に対策を練らなけレバ…」

南方棲鬼「対策ナド既にあってナイも同然。シンエイを撃滅スル以外に何ガある!?」

装空鬼「落ち着きなサイ。今、私達は四面楚歌ダト言うコトよ」

南戦鬼「海軍カラの追撃、シンエイからの闇討ち、どちらモ対処しなけレバならない…」

航空棲鬼「我々がこウモ後手に回るトハ…」

ピーコック「…話すべきコトは話した。暫く、一人にサセてもらう…」

アクタン「アッ、ピーコックゥ…」

ポート「今は、一人にシテあげなサイ。アクタン…」


ピーコック「……」

提督(必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるようにしてみせる)

ピーコック「」(…賭け事は余りスキじゃないケド、どうせ当たるナラ大当たり、ソレ以外は全てハズレよね。
提督大佐……イイワ、貴方にベット全て上乗せで賭けてアゲル。私の命も含メテネ…)

405: 2014/11/18(火) 22:29:22.45 ID:dC9zbEf1o
~Re-Battle~



-執務室-

提督「今日だけで既に三件か…何が、どうなってるんだ」

榛名「今のところ、先輩鎮守府近海と不動鎮守府近海にはそれらしい敵影は見て取れないみたいです」

提督「不幸中の幸いとでも言えばいいのか」


ピー、ピー、ピー……


提督「ちっ、こんな時に……はい、こちら提督鎮守府…こ、これは、大将殿……」

榛名「…?」

提督「は…?い、今からですか!?いや、ですが、今は…!は、はい、解りました。直にそちらへ向かいます」

榛名「どうされたんですか?」

提督「……すまん。少し留守にする」

榛名「えっ、あ、はい…あの、お帰りはどれくらいに?」

提督「解らん。暫く空けることになるかもしれん。万が一に備えて提督代行をお前に任せ、一切の権限を一時的
に全て預ける。現時点を以て、お前の発言力は俺と同等となる」

榛名「え、ちょ、ちょっと提督!?」

提督「……」サッ カリカリカリ…スッ…

『この執務室は盗聴されている。今の会話も全てだ。今後は他鎮守府との連絡手段を考慮してくれ。あと、この
紙も後の証拠として挙げられる訳にはいかない。俺が執務室を出たら即時廃棄しろ』

榛名「……ッ!」

提督「…必要なことはメモに纏めておいた。後は任せるぞ、榛名」

榛名「は、はい…!」クシャ…

406: 2014/11/18(火) 22:47:30.02 ID:dC9zbEf1o
-会議室-

夕張「信じられない」

北上「こっちも三つ、見つけたよ~。取り敢えずこの会議室はもう大丈夫かな?」

榛名「助かりました」

夕張「鎮守府に盗聴器仕掛けるなんて普通の奴じゃまず無理よ。一体どうやって…」

北上「榛名っち、これ全員に通達してあんの?」

榛名「念入りに調べた場で、北上さんと夕張さんのお二人だけです。どこで会話が漏れるか解らない以上、皆が
集まってる場所で大々的に知らせるのは相手に情報を与えるだけかと…ただ、これを仕掛けた犯人ですが、提督
の態度から凡その見当がつきます」

北上「誰さ?」

榛名「大本営の誰かです。提督が留守にする直前です。提督の言動や表情から、大本営から連絡が来たのは明白
です。これがもしも不動提督や先輩提督からなら、提督はもっと砕けた表情、表現になるはずです」

夕張「なるほど…」

北上「んでもさ、なんで大本営がそんな身内を騙す、みたいな真似してるわけ?私が提督の不逞を探ろうと仕掛
けてるのとはワケが違うじゃん?」

榛名「北上さん…?」ギロリ…

北上「ひぃ…!ちょ、たんま!今はもう仕掛けてないって!ホントだよ…?」

夕張「ま、まぁまぁ…取り敢えずさ、犯人が大本営の誰かだとして、その目的は?」

榛名「タイミングが色々と良過ぎるんです」

夕張「と、言うと?」

榛名「まず、これは皆さんにも知らせてありますが、ピーコックの件です」

北上「和解チックな展開になったって奴?」

榛名「はい、その後です。今度は立て続けに近隣の鎮守府が新鋭元提督と思われる艦隊からの襲撃を受けて被害
が拡大しているという報告。こちらでも何か対策を取ろうかと言う矢先に、提督への緊急招集の命令」

夕張「素直に考えて、ピーコックとの和解の件から既に盗聴はされていたって考えていいよね。それで今度は、
折り悪く新鋭元提督が反旗を翻し、表へと出てきた」

北上「ピーコック達と新鋭が切れたって情報は出回ってない。全員が集まった席でもそれは口にしてなかった」

榛名「結論、大本営は私達…と言うよりは提督を深海棲艦側の、もしくは新鋭元提督のスパイと睨んだ。提督も
何か感じる部分があったみたいで、今わの際で私に提督と同等の権限を付与されていきました」

北上「正直な話、私等だけで抱えれる規模の話じゃないよ」

夕張「かといって、皆に伝えるにしても駆逐艦の子達には混乱しか与えないと思う」

榛名「建物自体が盗聴されている以上、恐らく提督鎮守府で開示している通信チャンネルも傍受されている可能
性が非常に大きいです」

北上「んだね。でも、この場合、夕張っちがここにいるのはある意味幸いなんじゃないの~?」

榛名「はい。夕張さん、先輩提督、もしくは不動提督宛に直通で繋げられるチャンネルの開示、開発をお願いで
きますか?出来れば、大本営に感付かれないように、と言うのが最も好ましいですが…」

夕張「箱庭の中に篭ってばっかじゃどうしようもないでしょ。やってやるわよ。提督のためでもあるしね」ウィンク

榛名「ありがとうございます!」

北上「よし、そんじゃ私と榛名っちはジワジワと話を浸透させていこう。まずは理解度の高い戦艦組と空母組。
そんで細かい内容を伝えないとならないであろう重巡組と軽巡組。ただし感情移入が結構激しい軽空母の二人は
注意ね。瑞鳳も龍驤もその場でガーっといっちゃう可能性もあるから、冷静になれそうな赤城っちや飛龍っちと
かで囲った上で説明が必要になるよ」

榛名「はい!」

407: 2014/11/18(火) 23:13:39.76 ID:dC9zbEf1o
-大本営・聴取室-

隠密「提督大佐、また随分と大胆な事をしてくれましたね」

提督「大胆なこと?」

隠密「惚けますか。君は敵である深海棲艦と繋がっているのではありませんか?」

提督「何を言って…それは新鋭元提督でしょう!」

隠密「ええ、あの駄狐は無論の事、そして君もその駄狐の一派でしょう?」

提督「なっ…!」

隠密「離島棲姫・ピーコック…貴方はこの深海棲艦と組み、あの駄狐とも繋がった。そうでもなければこれまで
の彼奴等の奇襲は成立しないのですよ。何故なら!今までに狙われた奇襲ポイントはあの駄狐が海軍を離反して
間も無く、全ての巡回航路を変更してあったのですからね!」

提督「早計な…!」

隠密「早計?ほざくな、若輩の大佐風情が!」

提督「元帥…元帥殿はどうお考えなんですか!」

隠密「たかが一大佐風情の動向や処遇を元帥殿が一考されるとでも思ったのか?分を弁えなさい!俗物めっ!!」

提督「」(信じたくはないが元帥殿の差し金なのか?だとしても、身内の動向を探るためだけにあの人が盗聴や
盗撮と言った非道徳的な手法を執るものか?)

隠密「口を割らないというのなら、君のところの艦娘も同罪と見做し、鎮守府単位での処罰を検討してもいいの
ですよ?君の可愛い艦娘達が逐一解体処分される様はさぞ圧巻でしょうなぁ」

提督「あいつらは関係ないでしょう…!?」

隠密「おや、連帯責任と言う言葉を知りませんか?提督と言うリーダーに従属する下の者達にとっても、提督の
しでかした悪行に気付けなかったというのは深慮に欠けていたと見做すべきです。であれば、罰を課すのは必然
と言うもの。不貞を働く逆賊に等しい行い…これこそ万氏に値する所業と言えましょう!」

提督「……っ!」

隠密「おやおや、自身のしでかした過ちを棚に上げて私を睨むのはお門違いと言うもの。素直に真実を吐いて、
大人しく刑罰に従うなら君が従えていた艦娘共は無罪放免、別の鎮守府への転属を約束すると言っているのです」

提督「犯してもない罪を認めろと、貴方は仰るんですか!?」

隠密「往生際の悪い…ならば、鎮守府単位での隠蔽があったという事ですね?これは海軍始まって以来の前代未
聞の大事件ですよ!?艦娘を謀り、洗脳した挙句に自身の悪事の片棒を担がせようとは…」

提督「勝手に話を進めるな!」

隠密「戯言は結構。さぁ、さっさと……」

408: 2014/11/18(火) 23:38:58.52 ID:dC9zbEf1o


バンッ!!


隠密「むっ!?」

智謀「隠密大将殿、非常に解せない手法を以て事を運ばれたようですね」

提督「」(隠密大将……不動提督と同じ階級。その男と同等の言動を有して対峙するこの女性も、それじゃ大将
クラスなのか。何故、大将クラスの人物がこうも大佐程度の俺の動向を注視するんだ)

智謀「身内監査と言えど、私は到底認める訳にはいきませんね」

隠密「だが証拠がある!確固たる証拠が!!これをどう説明つける!?」

智謀「貴方の非人道的な行いの前では、正当な証拠も不当なものに、白いものも黒く濁る、と私は言ってるんです」

隠密「私を愚弄するつもりか、智謀提督ッ!」

提督「…!」(この人が、不動提督の言っていた智謀大将提督なのか…!)

智謀「愚弄?その言葉、そのまま隠密提督、貴方へお返しします。常々思っていましたが、貴方は一重の境を容
易く超えすぎる。結果が全ての時代は当の昔に終焉を向かえ、今は順序と秩序、道徳の世が優先されるんですよ」

隠密「それを温いと言っているのです!」

智謀「温い?それを説いたのが現海軍トップの元帥殿です!現在の海軍が掲げる言葉を否定する事は元帥殿を否
定するのと同義。大将の権限を持って命じます。隠密提督、貴方を現時点を持って大将の階級を剥奪、海軍の定
めた法の規律を乱し、あまつさえそれを正当化した罪は極刑に値する!」

隠密「なぁ…!?」

智謀「隠密、私が気付いていないとでも思っていましたか?元帥殿への媚売りが些か度を越していたようですね」

隠密「き、貴様…図ったな!?」

智謀「図る?何処までも落魄れたものですね。身から出た錆に全身を蝕まれても尚、自ら描いた理想郷に思いを
馳せ、現実を直視できずに溺れる。哀れを通り越して滑稽です。続きは憲兵にでも話して下さい。私は、貴方の
言う理想郷になど微塵も興味がありませんので…」

409: 2014/11/18(火) 23:53:32.05 ID:dC9zbEf1o
智謀「さて…結果として貴方を出汁として使ってしまった事については謝罪致します。常々、彼の行いには憤り
を覚えていたものですから…元帥殿の名を盾に自分の都合の良い様に物事を形成する。それが白なのか黒なのか
など端から考えない。結果としてこうした悲劇が幾度も繰り返された」

提督「だとしても、俺に対する嫌疑が晴れたわけじゃないって言いたいんでしょう?」

智謀「…ふむ、見かけに寄らず貴方は奥深くまで読み取ってくれますね」

提督「言葉の端々に『結果として』とか『~については』って、さっきの隠密提督の所業についての謝罪だけだ
ったでしょう。俺に対しての謝罪は一つもない。それはつまり嫌疑が晴れていないってことだ」

智謀「ふふっ…素晴らしい読解力です。では本題に入りましょう。隠密が仕入れた資料、これについては非合法
でありながらも確証として見るには十分足る資料、決定打とも言えますね。何故、深海棲艦とあの距離で会話を
成立させ、あまつさえ見逃しているのでしょう?」

提督「奴にこちらを傷つける意思がなかったからだ」

智謀「それは何故です?」

提督「あいつもまた裏切られた側だからだ」

智謀「それは身内に?それとも……」

提督「新鋭元提督だ」

智謀「…結構。ここ最近の周辺海域における哨戒任務中の艦隊の襲撃について、貴方が知る情報は?」

提督「何もない。憶測で言えるのは、水面下で動いていた新鋭が海面に姿を現した」

智謀「何故、深海棲艦側の襲撃だと疑わないのです?」

提督「新鋭は離島棲姫・ピーコックやリコリスと呼ばれる上位の深海棲艦と手を組んで今まで海軍に仇名してき
たのは知ってるはずだ。だがピーコックからもたらされた情報はその新鋭が彼女達を裏切ったと言う事実。そし
てそれは直結してリコリスとも縁を切ったと言う証拠になる。そうなれば深海棲艦側の構図としては四面楚歌、
海軍と新鋭の板挟み状態。そんな状況下で海軍側に手を出すなんて愚策は新米提督でも思いつきゃしない。結論
として消去法に則れば新鋭側による襲撃にいきつく。深海棲艦側は恐らく逃げの一手のはずだ。最も、この内容
が真実ならば、という前提であるのも確かだけど…」

智謀「……うん、実に面白い。私の推察と些かも違いません。私に不足していた情報が貴方のもたらした情報と
リンクし、一つの形を生み出した。形になったという事は、貴方は真実のみを私に述べたという事。これに異物
たる虚偽が混ざっていれば、形は歪に、内容は破綻し説明には成り得なかったでしょう」

提督「そりゃどーも…」ムスッ…

智謀「そう拗ねないで下さい。私とこうして対等に会話を楽しめる人はそう多くないんですよ。個人的には是非
友達になって欲しいくらいです」

提督「あんたが友達少ないのはわかったよ…」

智謀「褒め言葉として受け取っておきます。さて、ある程度、事の顛末は解りました。提督大佐、貴方の拘束を
現時点を以て解除します。ただし、一つだけこちらが提案する条件を呑んで頂きたい」

410: 2014/11/19(水) 00:10:57.20 ID:uz1uMevEo
提督「そりゃまあ『保釈金代わり』が必要でしょうね。身内の錆で生じた失態…無条件で出すには大本営的にも
スタンスが悪い。なら、建前はどうあれ少しばかり面倒ごとを引き受ける代わりに無罪放免ってことにすれば、
そちらとしては一つの刑罰を科したことにもなって非難は免れると…」

智謀「理解度が高くて助かりますね。恥を承知で願い出ています。出来れば、隠密の件は元帥殿の耳には触れさ
せたくない。何より、貴方は元帥殿と密接な関わりのある人なのでしょう?元帥殿の言動も、貴方へ火の粉が及
ぶのは極力避けているように見られました」

提督「さいですか。それで、俺に…と言うよりはうちの鎮守府に何をさせたいんですか」

智謀「率直に申し上げます。討伐戦です。現在、とある鎮守府が新鋭の魔の手に陥落し、彼女の根城と化してい
ます。その前線海域には貴方のところの艦娘が発見したとされる戦艦レ級が三匹、首を揃えて防衛線を張ってい
るとの情報も届いているのです。強行偵察を敢行しようにも、レ級の存在が危惧され思うような戦果が得られな
いという状況なのです」

提督「それを、殲滅しろと?」

智謀「その通りです」

提督「大将殿達の艦隊があるでしょう」

智謀「おいそれと出撃させる訳には行かない艦隊ばかりです。だから恥を承知でと前置きをしたのです。無論、
貴方からしてみれば恥と言う言葉すらも上辺のプライドと思うかもしれませんが…」

提督「解ってるなら話が早いですね?」

智謀「取引がイーブンじゃないのは承知しています。その上で、頼んでいるんです」

提督「取引っていうなら、じゃあこっちも条件出して良いってことですよね?」

智謀「」(この男…本当に大佐程度で納まる器か?ネゴシエイトが通用する相手には到底思えない。それとも、
ただのやけくそだとでもいうの?先の会話のやり取りといい、掴み所が薄い…)

提督「どーなんすか、智謀大将殿」

智謀「……私の権限が及ぶ範囲で、最大限の譲歩をします」

提督「なら話は早い。旧日本海軍の艦に関する資料、その閲覧を許可願いたい」

智謀「なんですって……?」

提督「時間は限られますよ?うちの艦娘達は修羅場なんて幾らでも潜ってる。こうみえて俺って結構好かれてる
らしいんですよ。彼女たちから。だから……俺が戻るの遅れれば遅れるほど、隠密さんの言ってた虚偽が真実に
色味変えていきますよ」

智謀「艦娘が反乱を起こすとでも言うのですか」

提督「護るものに応じて、うちの奴らはあなたたちにとって天使にも悪魔にも変わるかもしれないっすね」

418: 2014/11/19(水) 22:12:54.24 ID:Vzzg8n8no
-執務室-

提督『……てなワケでこの一件は収束した。早まったことしてないだろうな?』

榛名「は、はい!大丈夫です!………多分」ボソッ

提督『…おい、今語尾にコソッと多分って付け加えただろ!?』

榛名「……空耳では?」

提督『なんで間があるんだよ!』

榛名「榛名は大丈夫です!」

提督『お前の安否確認してねぇから!』

榛名「あーー……とく~、き……ます、か~?てー……」ポチッ


プツン……ツー、ツー、ツー


榛名「よ、よし…」

北上「うちらってあれかな、まさかの?」

夕張「そのまさか?」

榛名「あ、はい。世間一般でいう所の勇み足、という奴かもしれません」

木曾「あっはっは!やっちまったなぁ!?」バンバン

赤城「わ、笑い事じゃありませんよ、木曾さん?」

木曾「いやだってよ、あの北上がすげぇ神妙な面持ちでなんか語りだすからよ。やんごとなき事態かこりゃあ?
って思うわけじゃん?蓋を開けたらお前、勇み足って!あっはっはっは!」

北上「マジむかつく…」

夕張「でも、盗聴器は取り敢えず全て取り外しは出来ましたし、艦娘全体に通達してたわけでもないし、今この
場限りで言えば、問題解決でいいかなって思うけど…結局、専用のチャンネルもまだ作成段階で止まってますか
ら、余計な心配と言うか情報と言うか、先輩鎮守府等に先走って伝えずに済みましたし…」

榛名「はぁ…提督が帰ってきたら小言が待ってる、って思うと少し気が重いです」

419: 2014/11/19(水) 22:30:52.59 ID:Vzzg8n8no
-大本営・軍議室-

提督「……あんのやろ」

智謀「…随分と、君の部下は愉快な群れを為しているようだね」

提督「はぁ、頭痛が痛いとかもうそういうレベルだ。褒め言葉として受け取っておきます」

智謀「故に君の先の発言が非常に興味深くてね。彼女達が天使にも悪魔にもなる、という一言が私としては畏怖
を覚えたと同時に、今の会話の一端で済し崩しに形が定まらなくなった」

提督「オンオフがあるってことですよ」

智謀「ふむ…まぁいい。しかし、通信先の艦娘の動揺振りを見ると、どうやら本気で君を奪還…この大本営自体
を敵に回す算段だったようだね」

提督「ある意味このタイミングは行幸でしたよ……最も、要らない荷物背負わされましたがね」

智謀「ふふ、その憎まれ口といい度胸といい、大佐にしておくのが勿体無いほどなんだがね、君と言う存在は…」

提督「階級が上がれば栄転異動でしょ。俺はあいつらと同じラインからは動きませんよ」

智謀「だろうな。絆と言うものが実在するという、良い見本を目の当たりにさせてもらったよ」

提督「それで、具体的にはどうしたらいいんですか」

智謀「うむ、頼んでおいて薮から棒なのだけど、出現海域が特定できてないのが現状でね。しかし、かといって
大所帯で目星を適当につけて待伏せて見た所で、斥候を放たれこちらの情報だけを与える結果にしかならない」

提督「新鋭は、あの女は凄まじく頭の切れる奴だと思います。考えていることも解らず、何を目的にしているの
かも解らない以上、迂闊に懐へ飛び込むのはまさに自殺行為です」

智謀「困ったね。見事に後手に回った…戦術においてここまで頭を悩ませたのは何時以来か…法則も無し、まさ
に無秩序型の典型なんだが、一般的な無秩序型とは欠片もリンクしない。むしろ秩序型に分別される」

提督「なんですか、その無秩序型とか秩序型ってのは…」

420: 2014/11/19(水) 23:03:54.04 ID:Vzzg8n8no
智謀「君はプロファイリングと言うものを知っているかい?基本的な構造は、『こういう犯罪の犯人はこういう
人間が多い』という統計学に基いて犯罪者の傾向やパターンを推論する事をプロファイリングと言う」

提督「大本営じゃそんなもんまで取り入れてるのか…しかし、意思無き深海棲艦にそれは適用しようがない」

智謀「そう、今まではね。しかし、ここ最近の深海棲艦には統率と言うものが取れ始めている上に、我々と意思
疎通をはかれる存在まで出現している。リコリスがまさに代表的だけど、君の話じゃ他にも意思疎通がはかれる
深海棲艦がいるようだし、そうなると群れは組織的になり、軍となる。大将が現れ、参謀が就き、部隊長、兵士
とピラミッド式に最初は形を成していくだろう」

提督「ですが、現状目の前の敵は暫定で新鋭です」

智謀「そう、故にこのプロファイリングで新鋭の傾向やパターンと言うのを割り出そうとしてたんだがね」

提督「予測は立てて見ても全て空振りと…」

智謀「そういう事だ。しかも、襲われた鎮守府の事後報告にはこんな内容も含まれていてね」スッ…

提督「敵の中には資料として見聞した……馬鹿な、泊地棲姫!?あいつは……」

智謀「そう、挙がってきている報告が真実なら、元君のところ所属、現在は鋼鉄の艦隊の異名を取る先輩提督の
秘書艦・長門。彼女達によって撃滅された深海棲艦だ」

提督「ありえない。一体、どんなトリックが…」

智謀「夢幻の幻影ではないのは確かなようだ。実際に攻撃は放たれ、こちらの攻撃も命中していたという」

提督「一体、新鋭は何をしようとしてるんだ…」

智謀「それが解れば苦労はしないよ。だが、私の推論の一つを披露するなら、大本営から持ち出された内容と、
新鋭が以前に唱えていた持論が思いのほか結びつく事…そしてそれは推し進めてはならない、禁断の方法である
という事だ」

提督「禁断の方法?」

智謀「奴は、新鋭は艦娘の力を過大評価していたのさ。究極の戦闘兵器という呼称を以てな」

提督「究極の、戦闘兵器だと…」

智謀「艦娘はアンドロイドのような存在でないのは周知の事実だ。何処にでも居る、普通の女の子達なんだよ」

提督「……」

智謀「だが妖精達が造り上げる艤装の数々は屈強な男共が数人掛りでも扱えないような代物ばかりだ。それを、
彼女達艦娘は容易く扱えた。私が初めて目の当たりにしたのは駆逐艦の少女でね。名を確か吹雪と言った」

提督「駆逐型一番艦、駆逐艦の吹雪」

智謀「そうだ。君に渡したその資料にあるものと同じ名だよ。最も、資料の方は旧日本海軍の軍艦の名だがね。
後に艦娘と呼ばれる彼女達には普通の人とは違った別の力を宿しているみたいでね。それが起因となって艤装を
容易く操り、使う事が可能であると結論付けられた」

提督「その結論がなされた理由の一端が、この資料ですね?」

智謀「さて、それは君の持論に委ねる事にしようか。話が逸れたね。そういった未知の力を宿す艦娘を量産しな
い手はないと説いたのが新鋭だ。彼女の説いた説は合理的且つ非人道的な内容だった。つまり────」

421: 2014/11/19(水) 23:15:51.38 ID:Vzzg8n8no
-???-

新鋭「あはははは!これが海軍の少将、中将が率いている精鋭なの?だとしたら片腹痛い所の話じゃないわね」

少将「まさか、わざと招き入れたというのか…」

中将「罠だったと…!」

新鋭「はぁ~あ……骨がない、つまらない。貴方達が連れてきた連合艦隊、大した事無さ過ぎない?あれじゃい
てもいなくても同義じゃない。艦娘の使い方、間違えてたんじゃないの?」

少将「貴様、言わせておけば…!」

新鋭「ちゃんと実戦経験を積ませて戦わせて…きっちりと錬度を上げて上げなくちゃ、夜伽の錬度しか上がって
ないんじゃ意味ないわよ?」

中将「下郎がッ!言葉も選べん畜生へ成り下がったか、新鋭!!」

新鋭「艦娘も深海棲艦も、その全てを知っている私に偉そうな口を利かないでよ」

中将「全てを知っているだと?」

新鋭「相反する者達が手を結ぶとどうなるか、自分達の艦隊で味わったでしょう。水底へ沈んでいった可愛い可
愛い艦娘達はどうなってしまうのかしらね?」

少将「なに…?」

新鋭「まぁ、貴方達はここで氏ぬんだから、関係ないか?」

中将「貴様ぁ……ッ!!」

422: 2014/11/19(水) 23:16:17.26 ID:Vzzg8n8no
短いですが、本日はここまで


次回:
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」part6


引用: 【艦これ】提督「暇じゃなくなった」