361: 2015/05/05(火) 22:03:47.49 ID:rZBXRv8Co
362: 2015/05/05(火) 22:05:10.36 ID:rZBXRv8Co
-離艦の計-
心悸「あぁ?百貫と連絡がつかねぇだと?」
天城「は、はい…」
心悸「あの野郎、何してやがんだ…」
航戦艦娘「提督、ハズレと進撃の艦隊の動きが若干、様子が変わりました」
心悸「んだと?」
航戦艦娘「ですが、これは逆に好機と見るべきでしょう。斥候の話では大半が痛み分け、中・大破の状態であり、
身動きが取れない状況にあるという報告でした」
心悸「ほぅ…あの進撃の艦隊を相手に痛み分けかよ。ハズレの分際で中々やるじゃねぇか。まぁ、確かに勝手に弱って
くれてるんなら、これ以上の好機はねぇな。一気に潰すぞ…百貫の野郎は後でシメりゃいい。どっちにしたってそれだけ
の深手負ってりゃ逃げる力なんざ残ってねぇだろ。嬲り頃しにしてやれ!」
航戦艦娘「了解」
天城「…………」
心悸「解ってんだろうな、天城。氏にたくなかったら従え…てめぇには選ぶ権利なんざねぇんだからな」ニヤッ
天城「解って、います…」
心悸「てめぇの考える戦略には俺様も一目置いてる。だからこそ、日に三度のワガママを許してやってるんだ。
氏にたくなけりゃ氏に物狂いで相手の首を取って来いッ!」
天城「……航空母艦天城、新生第一航空戦隊…抜錨致します!」
航戦艦娘「天城さん、戦果を期待しますよ」
天城「…解っています」
装甲空母艦娘「それじゃ始めましょう?私達の大好きな殲滅戦を…!」
重巡艦娘「氏体に鞭打つみたいで気が引けるわね」
軽巡艦娘1「欠片もそう思ってないくせに」
軽巡艦娘2「ね~、むしろ率先してやる方でしょ」
重巡艦娘「くすっ…仲良しこよしのお遊戯艦隊を見てると虫唾が奔るのよ」
天城「手負いとは言え、相手はこちらの数の倍です。火力を一極集中させ、確実に一人ずつ倒します。
私と装甲空母さんの艦載機発艦後、駆逐艦から順に殲滅していき、甲板を損傷している空母組を最後に回す形をとります」
航巡艦娘「相手方に戦艦型は居ないみたいだし、面倒そうな重巡型を私は狙うわ。構わないわよね?」
天城「……解りました。航戦さんは重巡型を撃滅後、戦列に戻る形でお願いします」
心悸「あぁ?百貫と連絡がつかねぇだと?」
天城「は、はい…」
心悸「あの野郎、何してやがんだ…」
航戦艦娘「提督、ハズレと進撃の艦隊の動きが若干、様子が変わりました」
心悸「んだと?」
航戦艦娘「ですが、これは逆に好機と見るべきでしょう。斥候の話では大半が痛み分け、中・大破の状態であり、
身動きが取れない状況にあるという報告でした」
心悸「ほぅ…あの進撃の艦隊を相手に痛み分けかよ。ハズレの分際で中々やるじゃねぇか。まぁ、確かに勝手に弱って
くれてるんなら、これ以上の好機はねぇな。一気に潰すぞ…百貫の野郎は後でシメりゃいい。どっちにしたってそれだけ
の深手負ってりゃ逃げる力なんざ残ってねぇだろ。嬲り頃しにしてやれ!」
航戦艦娘「了解」
天城「…………」
心悸「解ってんだろうな、天城。氏にたくなかったら従え…てめぇには選ぶ権利なんざねぇんだからな」ニヤッ
天城「解って、います…」
心悸「てめぇの考える戦略には俺様も一目置いてる。だからこそ、日に三度のワガママを許してやってるんだ。
氏にたくなけりゃ氏に物狂いで相手の首を取って来いッ!」
天城「……航空母艦天城、新生第一航空戦隊…抜錨致します!」
航戦艦娘「天城さん、戦果を期待しますよ」
天城「…解っています」
装甲空母艦娘「それじゃ始めましょう?私達の大好きな殲滅戦を…!」
重巡艦娘「氏体に鞭打つみたいで気が引けるわね」
軽巡艦娘1「欠片もそう思ってないくせに」
軽巡艦娘2「ね~、むしろ率先してやる方でしょ」
重巡艦娘「くすっ…仲良しこよしのお遊戯艦隊を見てると虫唾が奔るのよ」
天城「手負いとは言え、相手はこちらの数の倍です。火力を一極集中させ、確実に一人ずつ倒します。
私と装甲空母さんの艦載機発艦後、駆逐艦から順に殲滅していき、甲板を損傷している空母組を最後に回す形をとります」
航巡艦娘「相手方に戦艦型は居ないみたいだし、面倒そうな重巡型を私は狙うわ。構わないわよね?」
天城「……解りました。航戦さんは重巡型を撃滅後、戦列に戻る形でお願いします」
363: 2015/05/05(火) 22:10:21.89 ID:rZBXRv8Co
航戦艦娘「…これは、どういう事よ!?」
装甲空母艦娘「そんな、さっき斥候に放った時はまだ…」
天城「そ、そんな…居ない!?」
重巡艦娘「一体どうなって……あっ」
軽巡艦娘1「これは……」
軽巡艦娘2「まさか、おびき寄せられた…!?」
木曾「よう、コソ泥共」
満潮「ホント馬鹿ね。笑っちゃうくらいにさ」
神通「悔い改めてもらいます」
漣「計画通り……ッ!」ニヤッ
夕立「さあ、素敵なパーティしましょう?」
長良「よーし、全力全開っ!」
北上「おぉっと、これは壮観だね~」
時雨「凄いな、読み通りだ」
加賀「良い作戦指揮です」
赤城「凄い…相手の出方をここまで予測して動くなんて…」
鳥海『作戦名:離艦の計、発動します!各自、先の概要に沿って行動を開始して下さい。少なくとも相手は固まって
行動しようと尽力するはずです。念入りに、料理して差し上げましょう』メガネキランッ
364: 2015/05/05(火) 22:16:32.79 ID:rZBXRv8Co
天城「それに、何故…どうして、手負いのはずでは…!」
鳥海『大方、上空ギリギリの距離から斥候に及んだのでしょう。ですがこちらには今、空母の中でも最高クラスの二人が
揃っているんです。見落とす訳無いじゃありませんか。更に言えば、わざと逃し嘘の情報を与えるのも、非常に楽でした』
天城「まさか……嘘の、情報……そんな、それじゃ」
赤城「あなた達の策略に溺れる事無く、無事ご覧の通りです」
加賀「姑息な手段の数々…海軍の名折れと言うのもおこがましい限りです。命を惜しみ、保身に走り、私利私欲を求めて
名声にのみ執着する。それほど名が重要?どれほどの価値が、その名にあるのかしら。高邁な精神は永遠なり、です」
天城「一航戦の、赤と青……!」
赤城「一航戦…!」
加賀「…出撃します」
動揺を露にする天城達を尻目に、赤城と加賀がその口火を切った。
天城「装甲空母さん、備えて下さい!!」サッ
装甲空母艦娘「言われなくたって…!」サッ
天城「負ける訳には、いかないんです!天城航空隊発艦、始め!です!」ヒュン ヒュン
装甲空母艦娘「一航戦が何よ…!名前先行の古参なだけでしょうが!」ヒュン ヒュン
鳥海『相手に空母が二人以上居るのなら、これを赤城さんと加賀さんの二人で封頃して下さい。制空権を奪ってしまえば、
残された艦隊はもう、鳥かごに取り残された哀れな的に成り果てるでしょう』
赤城「艦載機のみなさん、用意はいい?」キリキリ…
加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」キリキリ…
鳥海『大方、上空ギリギリの距離から斥候に及んだのでしょう。ですがこちらには今、空母の中でも最高クラスの二人が
揃っているんです。見落とす訳無いじゃありませんか。更に言えば、わざと逃し嘘の情報を与えるのも、非常に楽でした』
天城「まさか……嘘の、情報……そんな、それじゃ」
赤城「あなた達の策略に溺れる事無く、無事ご覧の通りです」
加賀「姑息な手段の数々…海軍の名折れと言うのもおこがましい限りです。命を惜しみ、保身に走り、私利私欲を求めて
名声にのみ執着する。それほど名が重要?どれほどの価値が、その名にあるのかしら。高邁な精神は永遠なり、です」
天城「一航戦の、赤と青……!」
赤城「一航戦…!」
加賀「…出撃します」
動揺を露にする天城達を尻目に、赤城と加賀がその口火を切った。
天城「装甲空母さん、備えて下さい!!」サッ
装甲空母艦娘「言われなくたって…!」サッ
天城「負ける訳には、いかないんです!天城航空隊発艦、始め!です!」ヒュン ヒュン
装甲空母艦娘「一航戦が何よ…!名前先行の古参なだけでしょうが!」ヒュン ヒュン
鳥海『相手に空母が二人以上居るのなら、これを赤城さんと加賀さんの二人で封頃して下さい。制空権を奪ってしまえば、
残された艦隊はもう、鳥かごに取り残された哀れな的に成り果てるでしょう』
赤城「艦載機のみなさん、用意はいい?」キリキリ…
加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」キリキリ…
365: 2015/05/05(火) 22:21:29.66 ID:rZBXRv8Co
ビュビュッ
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
引き絞った矢を一点見据えて真っ直ぐに飛ばす。
一糸乱れぬ二人の呼吸と矢を放つタイミング。
まるで鏡面の絵を見るかのような互いの姿。
二条の矢が上空へと舞い上がり、無数の艦載機となって編隊を成して目標へ飛翔する。
ダダダダダダッ
ボゴオオオォォォォォン
装甲空母艦娘「なっ…!」
天城「そ、そんな…私の烈風達が…瞬、殺…」
鳥海『空母隊を制圧した後、次に狙うのは主戦力となる存在です。艦隊の主力を担うとなれば、相応の戦力を有します。
つまり、戦艦や航空戦艦、居なければ継続して全体を支配しえる空母隊です』
木曾「おいおい、一人前に出すぎだろ」
長良「逆パターンは初めてだなぁ…」
神通「逆パターン…?」
長良「大体、私一人で大勢相手にしてたからね!」
北上「あはは、そんなのあたしは御免被るね。無理無理…」
航戦艦娘「くっ…あの重巡が司令塔なのは明白なのに…!」
木曾「頭を叩けばどうにかなるって考えがそもそもなってねぇんだよ」
航戦艦娘「たかが雷巡風情が…ッ!」
北上「軽巡や雷巡が戦艦に勝てないなんて道理、だぁれが決めんのさ」
神通「この場は、罷り通りません。お引取りを…」チャキッ
長良「はぁ~、刀剣の艤装なんて凄いなぁ…っていうかカッコイイなぁ」
木曾「あぁ?そんな珍しいもんでもねぇだろ。それよりも、あっちシカトしてやんなよ」ニヤッ
航戦艦娘「貴様等……!纏めて血祭りに上げてやるッ!!」ジャキッ
366: 2015/05/05(火) 22:22:05.97 ID:rZBXRv8Co
鳥海『挑発は程ほどに…ですがそこで戦艦クラスを制圧できれば勝ちは確定でしょう』
鳥海の弄した離艦の計。
まずは空を制圧する事から作戦は始まる。
制空権を奪い、相手から空の目を奪う事でこちらの正確な場所を特定させないようにする。
目視は出来ても正確な距離が把握できなければ精密な射撃は出来ないという事の表れだ。
次に一発が怖い艦娘を孤立させる事。
次発装填が遅いとは言え、戦艦クラスの艦娘に自由に砲撃を許しては一溜まりもないからだ。
今回の相手は航空戦艦、しかも鳥海にとっては嬉しい誤算として相手は単身先行してきていた。
多勢に無勢、と言う言葉があるが今回はまさにこの言葉がしっくりときただろう。
しかも相手は一癖も二癖もある連中ばかり、これを一人で制圧する事ができれば恐れるものは逆に無いのかもしれない。
航戦艦娘「く、そ……!なんで、私が、負けるのか…?」 大破
長良「航戦さんさ、自分の特性理解してないでしょ」
航戦艦娘「な、に…」
長良「私達艦娘はさ、それぞれに特性があるじゃない?それを理解してないようじゃ、誰と戦ったって勝てないよ」
神通「鳥海さん、こちら軽巡組は制圧完了しました。次のステップへ」
鳥海『ありがとうございます』
航戦艦娘「一体、何を……」
木曾「俺等にゃ提督以外に軍師がいるみてぇでな」ニヤッ
北上「艤装は全部破壊したし、まぁ大人しくしててくださいなっと」
371: 2015/05/10(日) 18:28:40.76 ID:ie5H3Udqo
天城「ダメ、どれだけ放っても制空権を奪えない…」
装甲空母艦娘「くそっ、くそっ!なんでよ、どうして…あんな奴等より、優れているのに!!」ダッ
天城「装甲空母さん、迂闊に前に出ては…!」
装甲空母艦娘「黙りなさい!人間の女と同じ分際で!!」
天城「……っ」
加賀「諦めが悪いですね」
装甲空母艦娘「五月蝿いッ!コロス……頃して、やる……ッ!!」ギロッ
赤城「あの、目は…!」
我を忘れたかのような装甲空母のその瞳に、二人は心当たりがあった。
キメラ男を制圧しに向かった先の泊地で無尽蔵に湧いて出てきたゾンビの如き深海棲艦の群れ。
今まで戦ってきた深海棲艦とは明らかに違うその様相を忘れる事などなかった。
加賀「既に、人を捨てていましたか。どちらにせよ、この勝負は決しました」ビュッ
無常にも放たれた矢は真っ直ぐ装甲空母へと飛来し手前で艦載機へと散開、一斉攻撃を開始する。
ボゴオオオォォォォォォン
装甲空母艦娘「カン、ムス、風情……ガ……」 轟沈
加賀「残り一人は話の手合いは可能と判断します」
赤城「鳥海さん、こちらもオールクリアです」
鳥海『感謝します』
372: 2015/05/10(日) 18:29:39.70 ID:ie5H3Udqo
主戦力を一気に奪い浮き足立っている艦隊を分断するのに労力は必要ない。
艦隊として固まる中心に一点放火を浴びせて物理的に艦隊の陣形を断絶。
そこからは各個が離れるように砲撃を夾叉させ、孤立するように誘導する。
結果として陣形は完全に崩壊し、互いの連携すらも取れない状況が生まれる。
夕立「ふふっ、より取り見取りっぽい?」
満潮「そうね、どれから狙ってやろうかしら」
漣「完全に射撃ゲーのノリですね~」
時雨「全く、緊張感が無いね」クスッ…
鳥海『空母組、軽巡組はオールクリアです。計略は成りました、あとは詰めるのみです』
満潮「オッケー。大体やり方が汚いのよ…自分達にとって都合が悪くなると直に証拠事消し去ろうとする」
漣「汚い方々の十八番ですからねぇ。ほ~んと、メシマズです」
373: 2015/05/10(日) 18:35:27.29 ID:ie5H3Udqo
駆逐艦娘「て、提督……!」
心悸「あぁ?あんだよ」
駆逐艦娘「ぜ、前線に出ていた天城艦隊……全滅しました!」
心悸「な、に……?」
駆逐艦娘「旗艦天城は艤装全てを破壊され捕虜に、それ以外の艦娘はその殆どが轟沈です……」
提督『聞こえてるかね、蛆虫糞虫塵虫野郎の心悸君』
心悸「……ッ」ガタッ
提督『てめぇの船は既に包囲されている。進撃のクソガキも直にもう一方の襟首もって合流するだろうよ。
今回だけ言い訳を言わせてやるから十秒で言えよ、蛆虫君』
心悸「てめっ……」
提督『なぁんて言わせるわけねぇだろバァカ。頭の中身はお花畑かよ糞虫野郎が。発言が許されるのは人間までなんだよ塵虫。
分を弁えろ虫風情の雑魚が』
心悸「提督ぅ……ッ!てめぇ……!!」
提督『悔しいか?あ?どうせてめぇの事だからギョロ目動かしてニヤニヤして椅子にでも踏ん反り返ってたんだろ?
くくっ、馬鹿の典型だなお前。いや~、今俺様はひっっっじょうに気分がいい!貴様の馬鹿面を想像するだけでもう
最っっっ高に楽しくて仕方が無い!じ・つ・に、結構!いや~、屑共の悔しがる顔ほど溜飲の下がるものはない』
駆逐艦娘「て、提督…どうしますか…」
心悸「くそが……くそがああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
提督『糞はてめぇだよ、心悸。身の程を弁えろ糞虫が。やっと面ぁ出してくれたんだ。こっちゃあ辛酸舐めすぎて最早
感覚麻痺してるからよ。覚悟しとけよ……目に物を見せてやる』
374: 2015/05/10(日) 18:35:54.36 ID:ie5H3Udqo
鳥海が弄した離艦の計は完璧過ぎるほど完璧に決まり、天城達を一瞬の下に封殺、殲滅した。
後に赤城達は、あのまま戦い続けていれば勝敗の行方は本当にどうなっていたか解らなかったかもしれない、と零した。
即席で形成された艦隊をいとも容易く自分の描いた策に添って誘導する手腕と戦術用法の数々。
身内ですらも改めて驚嘆するほどの戦果を鳥海は上げた。
375: 2015/05/10(日) 18:41:45.25 ID:ie5H3Udqo
~牙城崩落~
-力の差-
浮き足立つ、という言葉がある。
先の大本営直営部隊、鋼鉄、不動の艦隊がそうだった。
不安や恐れで落ち着きを失い、逃げ腰になる。
一度生まれた恐怖はそう易々と拭えるものではない。
同じように、正体の解らないものに対する不安はその気持ちを助長させ、結果として本来のパフォーマンスを落とす結果になる。
だがそれを糧とし、力と変える者達もいる。
そういった者達にとって、力でねじ伏せようとするのは極めて逆効果となる。
反発する力が尋常ではなく、また決して屈しないという強い信念を備えている。
力に力で真っ向からぶつかって行く、純粋な馬力で雌雄を決する形となる。
結論として、単純明快だが力が強い方が勝つ。
提督の指揮した艦隊を智の艦隊とするなら、進撃の指揮した艦隊は勇の艦隊。
まさに智勇兼備の豪傑無比の艦隊である。
長門「言ったはずだ、邪魔をするなと」
戦艦艦娘「そんな、まさか…」 中破
長門「艦娘の矜持を捨て去っている貴様等に、この私が負けるものか!誇りを失い、悪の傀儡(かいらい)と成り果て、
無法の限りを尽くす…そんなものは力などではない!」
戦艦艦娘「私達は、生まれ変わったのよ!新しい力を手に入れて、提督達が夢見る時代を築き上げるのよ!」
長門「『その姿』が生まれ変わったというのなら、そうなのだろうな。だが、それは最早進化ではない。
新たな命として生み出された、貴様は深海棲艦だ!せめてもの手向けとして受け取れ、ここを貴様の墓標としよう」ジャキッ
戦艦艦娘「深海、棲艦だと…?ふざけるなッ!ワタ、シは……あ、アァ……そん、な…嘘、ダ……」
長門「一度は敗れ、私達を追い詰めた連中も貴様等と同じだったよ。見た目にそぐわない回復力と持久力に耐久力を備え、
圧倒的な物量と火力で波状攻撃を受けた。成す術も無く艦隊諸共沈められそうになったほどだ。だが改めて思ったよ。
私はまだまだ強くなれると…!」
戦艦艦娘「ドウして、ワタシは…艦娘ノ、はずナノに……ッ!」
長門「貴様の言う『進化』による代償なのだろうな。同じ戦艦の好として同情はしてやる。だが慰めなどはしない。
そうなったのは貴様自身の甘えと抜かりだ。潔く沈め、水底へ…」
戦艦艦娘「負ける、モノかあああああぁぁぁぁァァァァァーーッ!!」グオッ…
長門「遅い!」ドォン ドォン
376: 2015/05/10(日) 18:43:07.02 ID:ie5H3Udqo
半ば我を忘れ、殺意のみで襲い来る戦艦艦娘。
しかし長門はそれに動じず、きっちりと相手の動きを見て主砲を構えて真正面から迎え撃つ。
ボゴオオオォォォォォォォン
結果、防御も何もしない無防備な状態で長門の砲撃を全身で受け止めてしまった戦艦艦娘はもんどり打って倒れる。
水面に少しだけ浮き、その姿はゆっくりと水面下へと沈んでいく。
その姿をしっかりと己の瞳に焼付け、長門は静かに顔を上げて百貫をその鋭い眼光で見据えた。
長門「敢えて上官に対する口の利き方をしない。この下郎め…艦娘は、貴様の都合のいい人形などでは断じてないぞ!」
百貫「くふっ……人形じゃなければなんだ?よもや人などとはいうまいな?」
長門「この期に及んでまだ…!」
百貫「戦艦長門、そんなに私があの艦娘を深海棲艦にしていた事実が憎いか?」
長門「当たり前だ!!」
百貫「そうか…しかしね、あれは彼女が望んでああなった結果だよ。自らの意思で、彼女はああなったのさ」
長門「デタラメを言うな!」
百貫「証拠は?」
長門「なに?」
百貫「デタラメだという証拠はあるのかい?」
長門「貴様…!」
百貫「くふっ…」ニヤァ…
381: 2015/05/10(日) 23:55:43.07 ID:ie5H3Udqo
空母艦娘「ほら、さっきまでの威勢はどうしたのよ!私を許さないんで、しょ!」ビュン ビュン
瑞鳳「……」サッ
ボボボボボボボボンッ
空母艦娘「逃げ回ってばっかりで、何が、できるって、言うのかしら!?」ビュン ビュン
瑞鳳「……」スッ…
ボボボボボボボボンッ
再三に渡る空母艦娘の間断無き艦爆艦攻に瑞鳳は防戦一方のように見えた。
だが、驚くべき事はその全てを被弾せずに回避しているという事だ。
瑞鳳には祥鳳を傷付けられたと言う大義名分もそうだが、他者に託された想いも背負っている。
飛龍『ゴメンね、瑞鳳。私もできる事なら蒼龍が受けた分を返したいけど……』
瑞鳳『任せて下さい。同じ空母組の好じゃないですか!それに私、嬉しいんです』
飛龍『え?』
瑞鳳『だって、赤城さんや飛龍さんみたいな一線で活躍している方達に『お願いね』って、ふふ…おこがましいかも
しれないですけど、頼まれ事をされるっていうのが、なんだか認めてもらってるような気がして…』
飛龍『あはは、バカだなぁ。私だって赤城さんだって、瑞鳳の事もう随分前から認めてるよ?ううん、認めるとか
認めないとか、そういうんじゃないよ。少なくとも私が知る中で、瑞鳳は間違いなくトップクラスの軽空母だよ』
瑞鳳『え、えぇ…!?///』
飛龍『だからさ、宜しくね。けど、慢心はダメ、ゼッタイ!オーケー?』
瑞鳳『…はいっ!』
382: 2015/05/10(日) 23:56:10.05 ID:ie5H3Udqo
瑞鳳「すー、はー…」チャキッ…
大きく息を吸い込み、ゆっくりと弓を起こして矢を番える。
瑞鳳はいつでも我武者羅で一所懸命で、努力を惜しまない子だ。
努力とは必ずしも実るとは限らないし、それが花開く瞬間もまた区々だろう。
それでも彼女の努力は報われて然るべきなのかもしれない。
その努力こそが、彼女の原動力であり彼女自身を支える大きな自信の表れでもある。
狙いは一点、瑞鳳の技の数々は一線を張る赤城達により手解きされたものだ。
これはその中でも瑞鳳が真っ先に会得した強襲技。
瑞鳳「アウトレンジ、決めます!」ビュオッ
斜め上空へと放たれた矢は空中で無数の艦載機へとその姿を変えて大空へと飛翔する。
シルバー、ブラック、ホワイト、色とりどりに塗装された艦載機は遅れて放たれた空母艦娘の艦載機と正面からぶつかる。
ボゴボゴボゴボゴボゴォォォォォン
空母艦娘「なっ」
383: 2015/05/10(日) 23:56:42.92 ID:ie5H3Udqo
空中で無数の爆発が起こり、爆煙の中から翼で煙を切り裂き出現したのは瑞鳳の艦載機群。
瑞鳳の表情が俄かに緩む。
彼女にははっきりと見えた。
艦載機を操る妖精と呼ばれる存在。
小さな仕事人、彼女達も立派な戦線を支える艦娘達のサポーターだ。
その彼女達からのサイン。
瑞鳳へ向けて親指を立て、ある者は敬礼し、そして瑞鳳の声を聞く。
瑞鳳「敵機直上より急降下!全てをなぎ払え!」バッ
空母艦娘「あ、ありえな……」
ダダダダダダダッ
ボゴオオオォォォォォォォン
空母艦娘の声を掻き消し、艦爆艦攻隊の一斉攻撃が空母艦娘を襲う。
攻撃の嵐が止んだ後には、なんとかその場に立つのが精一杯の空母艦娘が、瑞鳳を睨んでよろめきながら立っているだけだった。
空母艦娘「こんな、ハズでは……」 大破
瑞鳳「……」スッ…
384: 2015/05/10(日) 23:57:10.07 ID:ie5H3Udqo
無言のまま瑞鳳は矢筒から矢を抜き取り、弓へと番えてその切っ先を迷う事無く空母艦娘へ差し向ける。
長門の言葉が思い起こされる。
艦娘としての矜持を忘れ、悪に手を染め、堕ちる所まで堕ちる。
提督の為に、陸で暮らす人々の為にと尽力している艦娘達も居る中で、内部をかき乱そうとする。
瑞鳳にはそれも納得できなかった。
本気で怒った。
許せなかった。
そんな事の為に、祥鳳や蒼龍達が傷付けられたと言う事実が何より許せなかった。
瑞鳳「謝って…あなた達が傷つけた人達に、謝ってよ!」
空母艦娘「クダ、らない…ククッ、私は……力を、手に、イレタ……この、程度の傷、スグに……」
瑞鳳「そう…でも、それは力なんかじゃないよ。ただ堕ちただけ…あなたは、深海棲艦に成り下がったんだよ」
空母艦娘「ナニを、言っている……?」
瑞鳳「自分の姿すらも、認識できないの…?自分すらも解らない人が、他人をどうこう言う資格なんてないんだから!」
空母艦娘「ダマ、れ……!私は、栄誉アル、百貫中将提督ノ、艦娘ダゾッ!!」
瑞鳳「だったら私は、信頼置ける新月大将提督の切り込み隊長よ!せめて、私の手であなたを葬って上げる!」チャキッ
真っ直ぐに構え直した弓に矢を番え、瑞鳳は引き絞る指の力を解放する。
放たれた一条の矢は無数の艦載機となって海面を飛翔し、標的たる空母艦娘に向かって弾丸の雨を降らせた。
海面を水飛沫が伝い、空母艦娘を真っ直ぐに通過すると同時に彼女の体が幾度か跳ねるように後方へと押し戻される。
バシャアァァァァァ……
堪える事もせず、空母艦娘はそのまま仰向けに海面に揺蕩い、そのまま言葉を発する事無く静かに水底へと沈む。
388: 2015/05/12(火) 21:48:56.47 ID:tDtFjiJQo
皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします
本日も宜しくお願いします
389: 2015/05/12(火) 21:49:55.79 ID:tDtFjiJQo
矢矧「強さは実力だけで決まるものじゃないわ。それでも、結果論で言えばこの勝負は私の勝ちよね?」
軽巡艦娘「き、さま……!」 中破
矢矧「少し腑に落ちないのよ。阿賀野姉ぇを大破にまで追い込んだ奴が『こんなに弱い』はずはないのよね」クスッ…
軽巡艦娘「私が、弱い、ですって…!?」
矢矧「弱いじゃない。少なくとも私の相手にはならないわね。火力も無い、照準もブレるし、持久力もない……
それだけならまだしも自分で戦術すらも組めないようじゃ、最早弱いなんて言葉で片付けるのも疑わしいわ。雑魚よ」
軽巡艦娘「付け上がるな、お前如きに…!」ザッ
矢矧「」スッ…
軽巡艦娘「この私が、負けるものかぁ!」ジャキッ
ドン ドンッ
サッ
ボゴオオォォォォォン
矢矧「狙いそれで定めてるわけ?そうだとしたら、お話にならないわね!」ザッ
矢矧は主砲を構え直すと同時に海面を蹴って一気に軽巡艦娘との距離を詰める。
それを迎え撃とうと軽巡艦娘も構え直して矢矧に向かい突撃を開始する。
390: 2015/05/12(火) 21:50:31.23 ID:tDtFjiJQo
ザザザザザザザザッ
互いに併走して同時に手にする主砲を構える。
ドン ドン ドン ドンッ
ボボボボボボボボボンッ
ザザザッ
岩礁を挟んで次の瞬間、軽巡艦娘の視界から矢矧が消える。
軽巡艦娘「なっ!?ど、何処に…!」
矢矧「障害物は有効利用しないとね?」
軽巡艦娘「っ!?」ザッ
背後から届いた声に軽巡艦娘は咄嗟に腕を振り回して反転しつつ無差別に主砲を乱射する。
ドン ドン ドン ドンッ
ジャキッ
しかし、そのどれもが空を凪ぐだけで物へと直撃する事無く通過する。
矢矧自身は軽巡艦娘の動きに合わせ、同じ角度で身体を反転させて彼女の背後を取ったまま砲弾の装填された主砲の
砲身を軽巡艦娘の首筋へと宛がい止まる。
軽巡艦娘「あ、あぁ……」
矢矧「チェックメイト…あなたの負けね」スッ…
そう呟いた矢矧は狙いを逸らして軽巡艦娘の艤装に狙いを定め、バックステップと同時に砲撃する。
ドン ドンッ
ボゴオオォォォォォン
軽巡艦娘「きゃあっ」 大破
矢矧「私、余り器用じゃないのよ。腕の一本や二本は勘弁して欲しい所ね。それだけの業を背負ったんだから、当然よね?」
軽巡艦娘「……う、ぐっ、どう、して…なんで、殺さない、のよ……」
矢矧「あら、あなた氏にたいの?勿論、あなたがそう望むのなら躊躇わないわ。でも、そうさせない為に私自身が止める」
軽巡艦娘「なん、ですって…」
矢矧「簡単に氏んでもらったら困るからよ。きっちり責任とってもらわない事にはね?その状態で我を忘れないって事は、
あなたは『アレ』を投与されて無かったみたいだし…尚の事、氏んでもらう訳にもいかないわ」
391: 2015/05/12(火) 21:51:02.18 ID:tDtFjiJQo
利根「ふん、他愛無いのう」 被害軽微
航巡艦娘「おのれぇ…!」 小破
利根「鍛錬を怠り、自分よりも劣る者だけを弄り、そうして仮初の自尊心を確立させておったんじゃろうが…
生憎と我輩にはその考えがよう理解できんでな」
航巡艦娘「我等が、弱いとでも言うのか!?」
利根「事実、弱かろう。お主等には氏線を越えた者が発する気が全く感じられんのじゃ。それは言わば存在感そのもの。
言ってる意味が解るか?艦娘や提督等が放つ光…練磨によってのみ沸き上がる、即ち闘志よ。主等はただの人形に過ぎぬ。
深海棲艦を始めとし、如いては人や艦娘にまで手をかける殺戮人形じゃ。それの何処が艦娘か、恥を知れ!」
航巡艦娘「だからなんだ。知った事か!鉄屑同様に捻り潰し、二度とそのような口を叩けないようにしてやる!!」ジャキッ
利根の言葉に激昂し、航巡艦娘は主砲を構えて突撃の姿勢を見せる。
それに合わせて利根は腕に仕込んだカタパルトから艦載機を発艦させる。
航巡艦娘「小バエを放って何をする気だ」
利根「その小バエにお主はこれから打ちのめされるのじゃ」ニヤッ
航巡艦娘「戯言を…っ!」サッ
利根「戯け、阿呆が!我が艦載機から逃れられるとでも思うたか!」ジャキッ
392: 2015/05/12(火) 21:51:34.77 ID:tDtFjiJQo
航巡艦娘の行く先を観測し、利根の正確な射撃が放たれる。
放った艦載機から発せられる上空からの目。
鷹の目とも言える第三の目から齎される情報は利根の氏角を皆無にする。
そして同時に、相手の状況を詳らかにし丸裸にしてしまう。
空を制圧する事の重要性を一瞬の後に航巡艦娘は理解する。
ドン ドンッ
ボゴオオオォォォォォン
航巡艦娘「がっ…!」 中破
利根「ふん、莫迦めが。空の重要性を軽視するからそういう目に遭う。戦場を舐めるな、青二才が!」ジャキッ
航巡艦娘「ただで、負けるかああぁぁぁッ!!」ジャキッ
利根「いいや、詰みじゃ。大人しく縛に付けぃ!」ジャキッ
ドン ドン ドン ドンッ
ボゴオオォォォォォン
ボボボボボボボンッ
利根「筑摩、お主の無念は代わりに吾輩が晴らしてやったぞ。なんせ吾輩の方がお主より少しお姉さんなのだからな。
この結果は当然と言えよう」 小破
航巡艦娘「そんな、私、が……」 大破
393: 2015/05/12(火) 21:52:20.63 ID:tDtFjiJQo
重巡艦娘「っていうか、貴方達って姉妹なの?」
雷巡艦娘「あぁ、だからあの那智って子のことでご執着な訳ね」
妙高「……」
足柄「……」
重巡艦娘「ふふっ、そんな怖い顔しないでよ。こっちだって提督命令だったんだもの…逆らえる訳ないじゃない?」ニヤッ
雷巡艦娘「そうそう……それに、私達は相手を頃して何ぼじゃないのよ。邪魔をする奴は誰だって頃してやるわよ。
それが例え艦娘だろうと、鎮守府単位だろうと、なんだろうとね!」
足柄「そう、それなら瑣末で不出来、プロとして見るなら半人前以下の低レベルな仕事内容ね。あなた達が襲撃した
艦隊の艦娘は誰一人として轟沈はしてないわ。最悪大破がいい所…頃すって言うなら、確実に仕留めなさい?」
妙高「止めなさい足柄、失礼ですよ。その程度の実力しかないんですから」ニコッ
足柄「あはっ、それもそうね。ごめんなさいね?分不相応な成果を上げると、どうしても気が大きくなっちゃうものよね」
重巡艦娘「…言わせておけば!」
雷巡艦娘「いいわ、それなら貴女達はきっちりと息の根を止めてこの世から葬って上げるわよ!」
足柄「ですって、妙高姉さん?」
妙高「はぁ、仕方ありませんね。大本営直営隊としての実力、お見せしましょうか」
重巡艦娘「面白い…暗部と呼ばれる連中が正面切っての戦闘にどれだけ慣れてるのか、見せてもらおうじゃない!」
足柄「言っておくけど、伊達や酔狂で本部の代行者、やってる訳じゃないのよ…ねっ!」ザッ
妙高「私達はこの地位に誇りと名誉を以て臨んでいます。何れ訪れる平和、遠い未来に輝く光を支える為に!」ザッ
妙高と足柄、二人は同時に駆け出す。
それぞれ戦闘において大本営内でも指折りの二人だ。
極秘警護から要人警護、あらゆる防衛に携わってきたイージスの名を冠するに等しい盾、妙高。
テロの阻止から叛乱、暴徒、深海棲艦の侵攻を僅か三名で退けた事もある前線における矛、足柄。
元帥直属護衛艦隊を第一の手とするなら、彼女達は第二、第三の手。
常にその圧倒的な戦力を以て他を凌駕し圧倒する最高戦力の一端を担う。
認識を誤った者がどのような結末を迎えるのか、それが今から実践される。
ドン ドン ドン ドンッ
ボボボボボボボボボン
重巡艦娘と雷巡艦娘による砲雷撃を掻い潜り、二人は速度を落とす事無く一気にそれぞれとの距離を詰める。
初めに動いたのは足柄だった。
398: 2015/05/17(日) 00:28:34.59 ID:GUvsS6K3o
足柄「第一戦速、砲雷撃…!その身で思う存分に味わいなさいな!」ドン ドンッ
雷巡艦娘「ちっ!」サッ
ボボボボボボボン
真横に飛び退き、足柄の斉射をなんとか回避した雷巡艦娘だが、その空白の時間だけで足柄には十分だった。
餓えた狼、聞こえは悪いが事戦場においてこの狼と例えられた彼女の力は畏怖するものである。
ヒュッ
音も無く。
サッ
静かに。
ジャキッ
視野に納めた獲物を。
ドン ドンッ
狙い撃つ。
雷巡艦娘「なっ、いつの間に……!」
ボゴオオォォォォォォン
雷巡艦娘「うぐっ…」 中破
足柄「あら、結構丈夫ね。だ・け・ど…こんなんじゃ帰さないわ。突撃よ!突撃ぃー♪」ザンッ
軽快な台詞とは裏腹に姿勢を低くした状態から、凄まじい瞬発力を見せて足柄が一気に雷巡艦娘へ迫る。
左右にフェイントを混ぜて海原をまさに縦横無尽に駆け巡る。
399: 2015/05/17(日) 01:00:45.10 ID:GUvsS6K3o
雷巡艦娘「このっ、ウロチョロと…!」ドン ドンッ
サッ
ボボボボボボン
照準を絞らせない動きで足柄は一瞬の内に雷巡艦娘との差を再び詰めて主砲を構える。
その頃には先の不敵な笑みは消え、獲物を捕らえる狼の如き鋭い眼光を携えていた。
足柄「私、妙高姉妹の三女なんだけどね?自分を馬鹿にされるのはまぁ、頭にくるけどそこまでイラッとはこないのよ。
ただ、姉や妹を貶されるのは我慢ならないのよね。あなた達、既に逆鱗に触れてるのよ。私達のね…!」
雷巡艦娘「何が逆鱗よ。ふざけんじゃないわよ!ちょっと素早い程度で、調子に乗ってんじゃないわよ!」ジャキッ
足柄「その程度の錬度で中将の艦隊ですって?鼻で笑っちゃうわね。腰の据え方、構え、狙い、定め、全部なってないわ!
そんな見せ掛けだけの構えで撃った所で、日が暮れようと移動してる物には夾叉すらしないでしょうね」
雷巡艦娘「なっ」
足柄「特別講師を買って出て上げるわ。実践で教えて上げる。ありがたく思いなさいな!」ザンッ
尚も雷巡艦娘との距離を詰めて、足柄は手にする主砲を真っ直ぐに構える。
本来、移動しながらの射撃と言うのは射線の確定からして難しくなる。
ただでさえ反動のある砲撃を動きながら行おうと言うのだから、狙いを定めるのにも相当な集中力と忍耐力が必要になる。
つまり、それを卒無くこなすと言うのは言い換えれば射撃においてはスペシャリストの域にあるという事でもある。
足柄は他の姉妹達と比べるとどれもが何かしら劣っていた。
末っ子の羽黒には火力で劣り、足回りでは妙高に、対空への警戒では那智に遅れをとった。
だが、足柄はその持ち前の執念で粘り強さと言うものを身に付けた。
そしてそれは後付ではあっても足柄に一つの隊の旗艦を受け持たせるほどにまで昇華され、一つのスキルとして確立した。
餓えた狼、何事にも貪欲で、狙った獲物は逃さない。
負けてなるものかと言う執念こそが、彼女を支える一つのバックボーンなのだ。
400: 2015/05/17(日) 01:01:12.39 ID:GUvsS6K3o
雷巡艦娘「は、速い…!」
足柄「ボサッとしてていいのかしら!?弾幕を張りなさいな!最も、もう遅いけどね!十門の主砲は伊達じゃないのよ!」
ドン ドン ドン ドンッ
ボゴオオオォォォン
ボゴオオォォォォン
雷巡艦娘「あぐっ…!」 大破
足柄「推して知るべしってね。これは当然の結果よ。講義に入るまでも無かったようね」
401: 2015/05/17(日) 01:08:15.80 ID:GUvsS6K3o
時間は少し遡り、同時に動き出した妙高と足柄、先行したのは足柄だった。
その背を見送り、視線を重巡艦娘へ移して妙高は静かに足を止めて主砲を構える手を下ろす。
妙高「では、参りましょうか」
重巡艦娘「澄ました顔して、ホント気に入らないわね」
妙高「そうですか?これでも十分、憤りを感じています。だからと言う訳では有りませんし、余りこういう事はしたくないのですが、
あなたに実力の差、と言うものを知らしめる事にしました」
重巡艦娘「はぁ?実力の差ですって?」
妙高「開始から五分間、私はここから一歩も動きませんので、どうぞご自由に砲雷撃を開始して下さい」
重巡艦娘「なん、ですって…!」ギリッ…
妙高「最も案山子になる気は有りませんので、防衛行動は取りますけどね?」
そういうと妙高は自然体で構え、真っ直ぐに重巡艦娘を見据える。
その表情、姿勢に重巡艦娘は激怒し一気に駆け出した。
重巡艦娘「舐めた真似を!頃してやる!!」ザッ
真っ直ぐに駆け出した重巡艦娘はその姿勢のまま主砲を構える。
そして何の躊躇いも無く一気に斉射した。
ドン ドンッ
それと同時に妙高も宣言通り、その場からは動かずに主砲だけを構えて狙いを定め引き金を引く。
ドン ドンッ
ボンッ ボボボンッ ボボボボボンッ
結論から言えば、妙高は重巡艦娘の放った全ての砲弾を己の主砲で残らず迎撃しきってしまった。
飛んできたのは余波として凪いだ爆風の欠片程度。
妙高の切り揃えられたボブカットの髪の毛が若干、靡いた程度だ。
それを見届け、重巡艦娘は愕然とした表情で動きが止まった。
402: 2015/05/17(日) 01:10:12.87 ID:GUvsS6K3o
妙高「鳩が豆鉄砲でも食らったような顔ですね。ですけど残り四分ですから、時間は有効に使った方がいいと思いますよ?」
重巡艦娘「くっ、戯言を…!」ザッ
重巡艦娘は妙高の言葉に我に返り、再び動き出し主砲を構え直す。
短絡的思考、と言えばそれまでだが最も理に適った手法、それは近距離まで近付いての射撃。
重巡艦娘はそれを実践しようと前へと出た。
だが妙高は変わらぬ姿勢で表情だけを少し綻ばせて問いかけた。
妙高「そんなに『遠くて』当たりますか?」
重巡艦娘「何、を…」
妙高「あぁ、そうですね。確かにそれ以上近付きすぎれば放った砲撃の爆風が自らにまで及んでしまうかもしれない。
それは若干、宜しくありませんからその距離が丁度良いのかもしれませんね」
重巡艦娘「こいつ…っ!」ジャキッ
妙高「残り三分です」ジャキッ
重巡艦娘「氏ねえええぇぇぇぇッ!!」ドン ドンッ
妙高「お断りします」ドン ドンッ
ボボボボボボボボボボンッ
殆ど同時、互いの距離は砲撃到達の時間にすればほんの僅かな時間しかない。
待ってから狙っていては自らの近くで爆発が起こり、最悪飛散した砲弾の破片を一身に受けてしまう恐れすらある。
妙高は相手の砲身の先、射線の予測点を見極め同時に砲撃を行ったのだ。
結果、互いの丁度中間で砲弾同士が接触し、大爆発が巻き起こる。
重巡艦娘「ぐっ…!」
妙高「……」
押し寄せてきた熱風に重巡艦娘は顔をしかめて片腕で顔を遮る。
妙高は先と変わらぬ姿勢のまま、真っ直ぐに爆発した地点を凝視する。
妙高は移動するもの、動くものを狙い撃つのに凄まじく長けている。
最早それは妙技では納まらず、特技と言うには語弊がある。
名実共に誰もが認める神業の域にまで達している。
彼女がイージスの名を背負う一つの理由がこの射撃スキルにある。
あらゆる侵入を迎撃し、あらゆる凶弾を撃ち落す。
決して崩れない、何ものをも寄せ付けない堅牢な盾。
これをイージスの盾と例えない訳にはいかない。
403: 2015/05/17(日) 01:10:40.20 ID:GUvsS6K3o
妙高「…残念ですが五分経過してしまったみたいです。潔く咎を認め、その場に折れればよかったと思いますよ」
重巡艦娘「ふざ、けるな…ッ!!」ジャキッ
妙高「五分では互いの実力の差を感じるには少なすぎましたか?で、あれば…」ジャキッ
妙高「致し方ありません…追撃戦に移行します!」
妙高は大本営の中でも極めて温厚、温和、平和主義者で通っている。
争いを好まず、四姉妹の仲でも羽黒に匹敵する程に争いを嫌う。
だからこそ、自分と真逆の思考、行動、発言をする者を酷く嫌う事がある。
顔には出さないし突っかかりもしないが、自らに及ぶ被害、身内や友に及ぶ被害が出た場合、彼女は修羅となる。
それでも、最後の最後まで仏の選択肢を残し続ける。
どこかで認め諦めるかもしれない、少しでも罪の意識があるのなら、それは争いにまで発展させるべきではない。
そういう思考から最後の最後まで彼女は対人に関してはその矛を収め続ける。
しかし、その彼女の言葉すらも届かない場合は最早どうする事も出来ない。
文字通り、力で捻じ伏せる他ない。
そして矛を抜き放ってしまった場合、妙高は少しでも早く終わるように、全力を尽くす。
妙高「終わらせます」ザッ
重巡艦娘「追撃ですって…?ふざけないで、頃してやる…!」ザッ
二人は同時に駆け出し、主砲を手前に翳してその距離を見る間に縮める。
ドン ドンッ
サッ
ヒュン ヒュン
先に仕掛けたのは重巡艦娘だったが、それを見越して妙高は斜め前方へと一際大きく踏み込んで射線から外れる。
結果、妙高の真横を重巡艦娘の放った砲撃が通過し、妙高自身は重巡艦娘の側面を捉える形になった。
重巡艦娘「しまっ……!」
妙高「…撃ちます!」
ドン ドンッ
ボゴオオオォォォォォン
有無も言わさぬ至近距離からの一斉射。
爆煙の立ち昇る中、ユラユラと揺れる影が浮かび上がり、それは力無く崩れるようにフッと消える。
ザバァァァ……
何かを打ち付けるような海面の音がその後に響き、妙高は静かに目を伏せてそこから視線を外した。
407: 2015/05/24(日) 19:33:30.86 ID:brFFLN5Wo
皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします
本日も宜しくお願いします
408: 2015/05/24(日) 19:35:50.98 ID:brFFLN5Wo
-禁忌-
百貫「さぁ、ほら…証拠を私の前に提示したまえよ、戦艦長門ッ!」
長門「まだ貴様はそんな戯言を…!」
進撃『じゃあ、証拠の提示をしましょうか、百貫中将殿?』
百貫「っ!?その、声は…君は、進撃か…!」
進撃『私の鎮守府の配属艦娘もその戦線には参列してるんです。鋼鉄さんと不動さんが手隙じゃないと言うのなら、
私が代わりに指揮を執るしかないですからね。新月大将は忙しい方ですので…』
百貫「私が、深海棲艦と手を組んでいるという証拠があると言うのかい?」
進撃『別に深海棲艦と手を組まなくても、あなた達なら深海棲艦の細胞や艤装と言った類は幾らでも手に入れられるでしょう?』
百貫「何…?」
進撃『キメラの男……彼とあなた達は繋がっているんですからね!』
百貫「貴様……!」
進撃『もう言い逃れは出来ませんよ。一部の艦娘にはそれを強要或いは強制させ、艦娘と深海棲艦のハイブリットを生み出した』
百貫「…………」
進撃『キメラの泊地に存在したゾンビの様な深海棲艦の群れは研究によって生み出された艦娘の成れの果て。
自我を失い、深海棲艦の特色が色濃く反映され、制御が利かなくなったものをその場に放ったんでしょうね。
制御できるハイブリット型の深海棲艦艦娘を海軍内部へ送り込み、内部から海軍を壊滅させるのが狙いですか?』
百貫「」(…彼も言っていた。やはりこの男は、頃しておくべきだった。大佐の器じゃない頭のキレ、確実に私達の障壁に
なりうると言う彼の言葉は現実のものになった。ならば、今この場に置いて私にできることは……)
進撃『反論が無いのは肯定と受け取りますよ、百貫中将殿』
百貫「……そうだね、これはもう逃げ場がなさそうだ。ならば……」スッ…
進撃『…っ!長門、彼を止めろ!!』
長門「ッ!」
百貫「さぁ、ほら…証拠を私の前に提示したまえよ、戦艦長門ッ!」
長門「まだ貴様はそんな戯言を…!」
進撃『じゃあ、証拠の提示をしましょうか、百貫中将殿?』
百貫「っ!?その、声は…君は、進撃か…!」
進撃『私の鎮守府の配属艦娘もその戦線には参列してるんです。鋼鉄さんと不動さんが手隙じゃないと言うのなら、
私が代わりに指揮を執るしかないですからね。新月大将は忙しい方ですので…』
百貫「私が、深海棲艦と手を組んでいるという証拠があると言うのかい?」
進撃『別に深海棲艦と手を組まなくても、あなた達なら深海棲艦の細胞や艤装と言った類は幾らでも手に入れられるでしょう?』
百貫「何…?」
進撃『キメラの男……彼とあなた達は繋がっているんですからね!』
百貫「貴様……!」
進撃『もう言い逃れは出来ませんよ。一部の艦娘にはそれを強要或いは強制させ、艦娘と深海棲艦のハイブリットを生み出した』
百貫「…………」
進撃『キメラの泊地に存在したゾンビの様な深海棲艦の群れは研究によって生み出された艦娘の成れの果て。
自我を失い、深海棲艦の特色が色濃く反映され、制御が利かなくなったものをその場に放ったんでしょうね。
制御できるハイブリット型の深海棲艦艦娘を海軍内部へ送り込み、内部から海軍を壊滅させるのが狙いですか?』
百貫「」(…彼も言っていた。やはりこの男は、頃しておくべきだった。大佐の器じゃない頭のキレ、確実に私達の障壁に
なりうると言う彼の言葉は現実のものになった。ならば、今この場に置いて私にできることは……)
進撃『反論が無いのは肯定と受け取りますよ、百貫中将殿』
百貫「……そうだね、これはもう逃げ場がなさそうだ。ならば……」スッ…
進撃『…っ!長門、彼を止めろ!!』
長門「ッ!」
409: 2015/05/24(日) 19:38:37.89 ID:brFFLN5Wo
長門も異変に気付き、海面を蹴りだそうと前のめりになる。
だがそれよりも遥かに早く、百貫は腰に差していた軍刀を抜き放ち、その切っ先を自らの喉元へ突きつけ、一気に押し込んだ。
ズッ……
百貫「ぐっ…がはっ…!ぐ、ぐふふ……さ゛ら゛は゛……」ドサッ…
長門「こいつ…!」
進撃『……追い詰めすぎたか、くそ…俺はバカだ!手掛かりを見す見す氏なせるなんて…』
瑞鳳「長門さん!」
長門「瑞鳳、無事だったようだな」
瑞鳳「勿論!」
矢矧「こちらも片付いてるようね」
長門「ああ、滞りなくだ。利根、妙高に足柄はどうした?」
利根「終わっておるわ」
妙高「お待たせ致しました」
足柄「ふふ、流石は選りすぐりの艦娘ね。全員無事で何よりだわ」
進撃『皆、済まない。証拠となるはずの百貫中将を見す見す自殺させる結果になった』
足柄「何ですって…!?」
妙高「…逆に言えば、それほどまでに統率された一群という事でしょう。己の貸した失態を自らの氏で帳消しにする。
早々真似のできる事ではありませんし、そこまでするという事は闇はより一層深いと見るべきでしょう」
進撃『後は、あちらさんの戦果に頼らざるを得ない』
足柄「ハズレ鎮守府の提督さんね」
進撃『みんなは残された百貫の艦隊の残存艦娘の保護と、無力化させた艦娘の監視を継続して欲しい』
瑞鳳「進撃提督は?」
進撃『俺は提督と合流し、事の顛末を伝える。まぁ、愚痴を聞かされに行く、とも言うな』
長門「心中察するよ。だがそれも仕事と割り切るべきかな、なぁ進撃提督」
進撃『へぇへぇ、解っておりますよ。鋼鉄艦隊の秘書艦様』
410: 2015/05/24(日) 19:39:37.68 ID:brFFLN5Wo
提督「おぉおぉ…随分と豪勢な作戦司令室だなぁ、おい。いくつがまともに機能するのかひっっっじょうに興味をそそる」
心悸「てめぇ…ッ!」
提督「よう糞虫君。俺様の想像通り、いい具合に歪んだ顔がこれまたひっっっじょうに俺様の曇った心を晴らしてくれる。
いやぁ、じ・つ・に愉快だ!その顔を見るために俺様は生きてきたと言っても過言ではないのかもしれない」
心悸「ぶっ頃してやる!」
提督「ほざくなよ、捕虜に成り下がった分際で。せめて五体満足の状態でほざけ、この塵虫が」ニヤッ
鳥海「周囲の警戒、オールクリアです」
提督「おう、ご苦労。んじゃま、進撃のクソガキがくるまで語ろうじゃねぇか、糞虫心悸君」ドカッ
カチンッ……シュボッ
提督は手近にあった椅子を蹴り上げると、そこに大またを開いて座る。
胸ポケットからタバコとジッポを取り出すと火を点けて一服する。
提督「はぁ~…さて、と……で、誰の差し金だよ。居るんだろ?お前みたいな脳筋低脳スカタンポンがこんな仰々しい
策なんて思いつくはずねぇからな。天地がひっくり返って宇宙旅行が貧困層でも出来るくらいの偉業が成されても、
まずお前じゃ無理な発想だ。おら、答えろよ蛆虫君」
心悸「言うワケねぇだろ、氏んで出直せよ白夜」
提督「くくっ、舌噛み切って自滅する勇気もねぇボンクラが偉そうに吠えてんじゃねぇよ。ただの遠吠えにゃ威嚇効果は
ねぇんだからよ、ちったぁ頭使えって。知恵を蓄える代わりにもやしでも栽培してんじゃねぇのか?」
鳥海「」(あなたに口で勝てる人が居るなら是非見て見たいです)
提督「……んだよ、その物言いたげな顔は」
鳥海「いいえ、別に?」
木曾「おう、ハズレの提督さんよ。うちの提督が到着した」
提督「そうか。まさか手ぶらじゃねぇよな?」
木曾「あぁ?手土産でも寄越せってのかよ。ったく、ゲンキンな奴だな、あんた」
提督「だぁほ、あんなクソガキの持ってくるガチの手土産なんぞ怖くて手も付けられねぇよ、バァカ」
木曾「チッ、口の減らねぇオッサンだ」
心悸「てめぇ、進撃と共闘してやがったのか!」
提督「人間ってのは学習するもんでな。一度殲滅戦を経験すると、次は同じ鉄踏まねぇように頭使うようになるんだよ。
お陰で俺ぁてめぇらよりも頭の回りが以前よりも良くなったらしい」ニヤッ
411: 2015/05/24(日) 19:40:50.58 ID:brFFLN5Wo
ガチャ……
提督「よう、クソガキ」
進撃「お疲れ様です、提督」
心悸「進撃、てめぇ…」
進撃「百貫中将は氏にましたよ、心悸中将」
提督「てめっ……」
進撃「将校剣を自分の喉元に突き立ててそのまま一気にやられちゃいました」
提督「やられちゃいましたじゃねぇだろ!てめぇ、その毒舌で一気に捲くし立てて追い込みやがったな…!」
心悸「百貫が、氏んだ、だと…」
提督「どうやら、てめぇよりあいつの方が何倍も忠誠心は高かったみてぇだな?いや、てめぇの掲げる信念を曲げなかった。
それに対する最大の誠意……ま、少なくとも暴れる事しか能のないてめぇとじゃ比べるべくも無いって事だ。
何より、これで俺様は確信を持って行動が取れる。ようやく尻尾を掴んだんだ…くくっ、ここからはてめぇ等のシナリオじゃねぇ。
俺様のシナリオ、俺様の計略、俺様の時間だ!」
心悸「ぐっ……」
進撃「提督、心悸中将をどうするつもりですか」
提督「あぁ?んなもん決まってんだろうが。口利けなくなるまでボコボコにした上で社会的に抹頃して生まれた事を後悔させ、
生きている事を懺悔させ、氏にたくなるまで徹底的に追い込んだ上で絶対に氏なせねぇだけだ」
木曾「」(うっへぇ……どんな生き方すりゃこんな発想生まれんだよ)ヒクッ……
鳥海「」(キチOイとはこの人のために生まれた言葉に違い無いわよね…)ハァ……
進撃「」(鬼悪魔でもここまで無慈悲になれるのか疑うレベルだな…)ゲンナリ……
提督「んだよ、言いてぇ事あんなら口利けや!」
木曾「ははっ、いやもう好きにしろよ。俺はもうどーでもいいや。提督、俺は戻ってるぜ」
進撃「えっ」
木曾「あんだよ」
進撃「いや、なんでもない」
鳥海「私も捕縛した艦娘の処遇についての意見提案に赴きます。では」ペコリ
進撃「えっ」
鳥海「え?」
進撃「いっちゃうの?」
鳥海「はい」キッパリ
進撃「」(超帰りたいんですけど…)
提督「クソガキ、てめぇ百貫見す見す氏なせといてまさか『じゃあ俺はこれで』とか言えるとでも思ってんのか」
進撃「解りました、解りましたよ…お供しますよ。氏なば諸共、毒を食らわば皿まで、一蓮托生……何でもござれですよ。
個人的に、俺も聞きたい事は山ほど有りますからね」
その後、心悸は文字通り私刑(リンチ)を受けたという。
だが肉体的ではなく、言葉による口撃によるものだったそうだ。
粗方収拾が付いた後、進撃の一報で元帥へ通達がなされ心悸と百貫による暴乱は一時の収束を見せた。
しかし心悸は最後までその計画の全貌を明かさないまま、獄中で自ら舌を噛み切り自害し果てた。
その報は提督にも直に知らされるが、彼にとっては予定調和だったようでさしたる驚きは見せなかった。
420: 2015/06/14(日) 09:32:58.06 ID:8KpTkhQ7o
~光を求めて~
-更なる高みへ-
切っ掛けは、摩耶のお見舞いに赴いた艦娘病院での事だった。
私はこの頭脳さえあれば大抵の事は切り抜けられると、今までずっとそう信じて生きてきた。
窮地に立とうと、混迷の渦中に身を投じようと、この頭脳をフル回転させれば切り抜けられないものはないと。
姉妹で大本営への配属が決まった時、正直とても嬉しかったのを覚えている。
けど、私は希望する部隊への配属はされなかった。
古巣と言っても、既に解体され別の提督が鎮守府に着任し、そこにもう私の居場所はなかった。
ふふっ、結局紆余曲折を経て、また同じ提督の下に戻ったけど、相変わらずの俺様には辟易しますね。
あぁ、話が脱線してしまいました。
大本営の望まない部隊、望まない役職を押し付けられ、私は意固地になって自らその地位を捨てる事を決意しました。
摩耶には本気で怒られ、本気で心配され、本気で引き止められました。
でも、今ここにいる私が本当の私なのだと、今だから胸を張って言える気がします。
そんな決意を密かに秘めて臨んだ数々の戦場。
弄した戦術・戦略に他の艦娘達も当たり前のように応えてくれる。
これ程の喜びはいつ以来に味わうのかも解らない。
気付けば、私はここの皆を本当に愛しているのだと痛感しました。
でも、それ以上にやはり私は誰よりも摩耶を愛しているのかもしれません。
あの暴乱が終わって、いの一番で私は今ここにいます。
愛する姉妹を傷付けられ、愛する皆が同じ目に遭わないとも限らない。
以前に一度だけ、摩耶から電文が写真を添えて届いた事がありました。
421: 2015/06/14(日) 09:33:40.79 ID:8KpTkhQ7o
『元気か、鳥海。あたしは晴れて艤装を改装して防空巡洋艦にバージョンアップだぜ。へへっ、写真添えてあるだろ?
軍装も改めたんだぜ?どーだよ、結構イケてるだろ!まぁ、ちっとばかしスースーするんだけどな』
お揃いだった白い襟に紺のセーラー、赤いリボンに白のスカート。
写真の摩耶は襟は同じ白でエメラルドグリーンのセーラーに襟とお揃いのワンポイントリボン、ミントグリーンのスカート。
チャームポイントなのか、セーラーと同じ色のミニハットを被っていた。
姉の高雄や愛宕と、色は違うけどお揃いのキャップ。
ちょっと可愛いとか思った私が憎い。
今回の暴乱を経験して、もう頭脳だけでは駄目だと改めて痛感した。
私は新しい力を得る為に、その糸口を得る為にここに居る。
提督「錬度としちゃ十分に戦力と見なせる訳だが、それでも尚、気概は変わらねぇってのか?」
鳥海「変わりません」
提督「だったらもう何もいわねぇよ。だがてめぇが思うような気楽なもんじゃねぇぞ。言い換えれば改造人間ってなもんだ。
近代化改修と同じだけの苦労を伴い、それが吉と出るかも定かじゃねぇ。あとは、てめぇの心構え次第だ」
422: 2015/06/14(日) 09:34:19.99 ID:8KpTkhQ7o
今、提督と鳥海は工廠室前に来ている。
一部の選ばれた中将以上の鎮守府には艦娘を強化する工廠施設が存在する。
無論、他の鎮守府にも存在はするがその規模と機能は大きく隔たりがある。
改修や改造、新しい武装の製造と多岐に渡る工廠室だが、ハズレ鎮守府に存在するそれは必要最低限の設備が揃うのみ。
故に艦娘の基本性能を向上させる改造ともなれば他の鎮守府以上の労力が伴ってしまう。
鳥海「では、暫くの間は全く戦力になりませんので」
提督「おう、氏んだら墓くらいは作ってやるから安心して氏んでろ」
鳥海「本当、あなたは昔も今も変わりませんね」
提督「ふん、それが取り柄でこれが俺様だ。反論は認めん」
鳥海「するだけ無駄でしょう。それじゃ、精々期待せず待ってて下さい。では」ペコリ
ピッピッピッ シャー ガチャンッ
鳥海は一礼して開かれた扉の中へと消えて行き、程なくして扉も再び閉じられた。
提督はそれを確認後、立ち入り禁止の札を下げてその場を後にした。
満潮「鳥海の更なる改修?」
漣「みたいですよ~」
長良「ほえ~、更にレベルアップするって事かな」
加賀「総合的な戦力強化という事でしょう」
423: 2015/06/14(日) 09:35:01.22 ID:8KpTkhQ7o
ガラッ……
提督「あぁ?何してんだ、お前等」
満潮「見て解んないの?お茶してるんだけど」
提督「訓練日だよな?殴り頃すぞ、クソチビまな板」
満潮「あんた馬鹿?休憩してるって言ってるのよ、アホ面オヤジ」
漣「よっ、今日も始まりました!ご主人様とみっちゃんの夫婦漫才!」
長良「あははははっ!」パチパチパチ
加賀「はぁ…」
提督「ちっ、大層なご身分だな。だからと言って羽の伸ばしすぎもどうかと思うがね」
加賀「当事者としては、その後の成り行きが開示されないのは不服と言うものです」
提督「はぁ?」
加賀「今回の一件についてです」
提督「そんで休憩時間利用してチンケな憶測ごっこかよ」
加賀「しかしその後が気になるのも事実です」
提督「あぁ?そんなもん、お前等が気にしてどうにかなるのか?くだらねぇ気を回してる暇があるなら自身を鍛えろ」
漣「あ、ちょ、みっちゃん!それ、ダメなパターン!やばっ、ギブギブ…!ぐるじい……」パンパン
満潮「うっさい!絞め頃す!」ギリギリ…
長良「ヤバイ、ちょーウケる!」ケタケタッ
424: 2015/06/14(日) 09:37:06.49 ID:8KpTkhQ7o
加賀「……あっちは放っておきましょう。話を戻します」
提督「…アホか、あいつ等は…」
加賀「戦闘が終わった後、主犯格の提督一名が現場で氏亡。残る一人も獄中で自ら命を絶ったと聞いています」
提督「てめぇはどっからそういう情報仕入れんだよ」
加賀「」スッ…
提督「ケータイかよ!誰だよ相手は!」
ピッピッ…スッ…
【一航戦 赤城さん/カテゴリー:親友】
提督「あんのクソガキ……艦娘にいらねぇ情報をペラペラと…っ!」
加賀「それで、あなたは本丸をもう見据えて作戦を次の段階へ進めようとしているのではないかしら?」
提督「あぁ?」
加賀「その第一歩が鳥海の更なる改修ではないかと、私は思っているわ」
提督「んな大層なお題目はねぇよ。真面目一辺倒の鉄面皮空母ちゃんは直に勘ぐるみてぇだがな」
加賀「……」イラッ
提督「あいつが自分から言い出した事だ。もっと強くなるにはどうしたらいいのかってな」
加賀「彼女が自ら…?」
提督「あいつは元々、こんな所に居るような存在じゃあなかったんだよ」
加賀「それは、どういう意味ですか?」
提督「てめぇで本人に聞け。俺は執務室に戻る」
提督「…はぁ、ったく…着任当初は他人の『た』の字も気に掛けねぇ分際だったくせに、あーだこーだと口煩い」
カチンッ……シュボッ
提督「はぁ~~……進撃のクソガキが百貫氏なせてなきゃあ、もうちょい情報は得られたんだろうが……」
提督「……いや、くくっ…そんな事ぁもうどうでもいいか。さて、と……」ガタッ…
戻ってきた少しの日常と示された艦娘の決意、そして落ちこぼれ認定の烙印を押された者達の心境の変化。
提督は人知れず小さく笑いをかみ締めていた。
相手を貶める事によって生じる冷笑ではなく、蔑む事によって生じる失笑でもなく、それは紛れもない笑み。
その笑みを残して、その日提督はハズレ鎮守府から姿を消した。
429: 2015/06/27(土) 21:40:11.55 ID:urWWAiCco
-友-
漣「みっちゃん、そっちはどうだったです!?」
満潮「居なかったわ」
長良「鎮守府周辺見てきたけど、何処にも居なかったよ」
加賀「……提督」
満潮「加賀、最後に会話してたのあんたでしょ。様子が変だったとかなかったの?」
加賀「普段と変わりなかったとしか言いようが無いわ」
満潮「あのアホ面オヤジ…!鳥海だってまだ工廠室から戻ってないのに」
長良「けどさ、本当に司令官は私達の事を見捨てたのかな?」
漣「…信じたくないです」
満潮「この状況で信じるも信じないも…」
漣「信じたくないです!」
満潮「さ、漣…」
漣「ご主人様は口は悪いし性根は腐ってるし自分勝手でワガママでクソを地で行く畜生ですけど…」
満潮「暴言しか今のところ確認できてないわね」
漣「ご主人様は絶対に私達を見捨てたりはしないと思うです!」
満潮「っとに…だったら、私達だけは疑っちゃダメよね」
加賀「緊急事態に変わりはありません。鳥海には悪いけれど、呼び戻してくるわ」
長良「あっ」
加賀「……?」
鳥海「その必要はありません」
漣「お、おぉ…!」
長良「露出が激しい…!」
鳥海「ど、何処を見てるんですか!全くもう…何はともあれ、鳥海、参りました。皆さんに心配を掛けた分とお礼、
海戦にてお返しできればと思います」
加賀「鳥海、具合などは問題ありませんか?」
鳥海「ええ、大丈夫。工廠の妖精さん達の手助けもありましたから」
長良「いや~、でも軍装まで変わってるとは~」
満潮「まぁ、似合ってるんじゃないの?」
漣「工口さは格段にあがってるです」
鳥海「もう!」
加賀「緊張感の無さは相変わらずです」
鳥海「折角ですから、摩耶とお揃いのものにしてもらったんです」
加賀「摩耶…確か、彼女は」
鳥海「ええ、まだ意識が戻ってないの。でも、あの子は強い子だからきっと大丈夫って、私は信じてるわ」
加賀「そうですか。それなら、私からは別に何も言う事はありませんね」
鳥海「ふふっ…それより、皆さん集まってどうかしたんですか?加賀さんは私を呼びに来ようとしていたみたいですけど」
長良「あっ、そうそう!ねぇ、鳥海って司令官と少し前まで同じ鎮守府で上官と部下の関係だったんだよね?」
鳥海「はい、そうですね」
満潮「あのアホ面オヤジ、消えちゃったのよ」
漣「みっちゃん、そっちはどうだったです!?」
満潮「居なかったわ」
長良「鎮守府周辺見てきたけど、何処にも居なかったよ」
加賀「……提督」
満潮「加賀、最後に会話してたのあんたでしょ。様子が変だったとかなかったの?」
加賀「普段と変わりなかったとしか言いようが無いわ」
満潮「あのアホ面オヤジ…!鳥海だってまだ工廠室から戻ってないのに」
長良「けどさ、本当に司令官は私達の事を見捨てたのかな?」
漣「…信じたくないです」
満潮「この状況で信じるも信じないも…」
漣「信じたくないです!」
満潮「さ、漣…」
漣「ご主人様は口は悪いし性根は腐ってるし自分勝手でワガママでクソを地で行く畜生ですけど…」
満潮「暴言しか今のところ確認できてないわね」
漣「ご主人様は絶対に私達を見捨てたりはしないと思うです!」
満潮「っとに…だったら、私達だけは疑っちゃダメよね」
加賀「緊急事態に変わりはありません。鳥海には悪いけれど、呼び戻してくるわ」
長良「あっ」
加賀「……?」
鳥海「その必要はありません」
漣「お、おぉ…!」
長良「露出が激しい…!」
鳥海「ど、何処を見てるんですか!全くもう…何はともあれ、鳥海、参りました。皆さんに心配を掛けた分とお礼、
海戦にてお返しできればと思います」
加賀「鳥海、具合などは問題ありませんか?」
鳥海「ええ、大丈夫。工廠の妖精さん達の手助けもありましたから」
長良「いや~、でも軍装まで変わってるとは~」
満潮「まぁ、似合ってるんじゃないの?」
漣「工口さは格段にあがってるです」
鳥海「もう!」
加賀「緊張感の無さは相変わらずです」
鳥海「折角ですから、摩耶とお揃いのものにしてもらったんです」
加賀「摩耶…確か、彼女は」
鳥海「ええ、まだ意識が戻ってないの。でも、あの子は強い子だからきっと大丈夫って、私は信じてるわ」
加賀「そうですか。それなら、私からは別に何も言う事はありませんね」
鳥海「ふふっ…それより、皆さん集まってどうかしたんですか?加賀さんは私を呼びに来ようとしていたみたいですけど」
長良「あっ、そうそう!ねぇ、鳥海って司令官と少し前まで同じ鎮守府で上官と部下の関係だったんだよね?」
鳥海「はい、そうですね」
満潮「あのアホ面オヤジ、消えちゃったのよ」
430: 2015/06/27(土) 21:40:48.10 ID:urWWAiCco
鳥海「は?」
漣「だーかーらー!私達を放置プレイなのです!」
長良「でね、鳥海なら司令官の行き先とかわかんないかなーって」
加賀「取り敢えず、この鎮守府内や周辺には居ない事は確認済みです」
鳥海「そう言われても、別に私はあの人のお目付け役という訳ではありませんでしたし…」
長良「前の鎮守府じゃ鳥海はどういったポジションだったの?」
鳥海「第一艦隊の参謀を務めていました。白夜の艦隊、その中でも私の提唱する戦術についてこられるメンバーのみで構成され、
白夜鎮守府の中では所謂、精鋭部隊と呼ばれる存在でした」
満潮「え、それちょっと凄くない…?」
漣「嫉妬するです」
長良「転落人生ってヤツかな?」
鳥海「もう少しオブラートに包んだ表現を覚えて下さい…とにかく、通称として謳われた白夜の艦隊はその当時では圧倒的な
強さを見せていたと思います。メンバーは旗艦である航空戦艦の扶桑さんを筆頭に私鳥海、同じく航空戦艦の山城さん、
軽空母の千代田さん、駆逐艦の睦月さんと弥生さん、以上が当時の白夜の艦隊第一艦隊です」
加賀「山城…」
鳥海「どうかしました?」
加賀「いえ、山城と言う名前に覚えがあったので」
鳥海「とにかく、司令官さんの足取りを調べたり行方を追うのは困難に思います」
長良「えーっ!それじゃ、どーするの!?」
満潮「何もしないってワケ?」
鳥海「ええ、厳密には。ただ、私達には私達にしか出来ない事があるじゃありませんか」
漣「私達にしか出来ない事?」
431: 2015/06/27(土) 21:41:44.97 ID:urWWAiCco
加賀「深海棲艦と戦う事、でしょうか」
鳥海「その通りです」
満潮「そりゃあ、そうかもしれないけどさ」
鳥海「今出来る事、それを私達は全力で行えばいいのだと思います。前線での指揮は私が受け持ちます。
加賀さんは提督の代わりに決断をお願いします」
加賀「…………」
鳥海「私達は、成長しているはずです。前線での指揮は私が執ります。それによって生じた責任は全て私が請け負います。
ですが、あなたが下した決断は全員で吟味した上で齎された結果です。誰があなたを責めようと思いますか。
私達は戦友であり、仲間であり、同じ時を共有した友です。ここに、あなたを信じない者は誰一人としていません」
長良「私達の仲じゃん?っていうか、加賀は仲間を信じられない?」
満潮「別に取って食ったりなんてしないわよ。私だって信じてる。この鎮守府の面子は全員信じてるわ」
漣「一蓮托生ってやつですよ~。氏なば諸共、世は情け!」
加賀「…ありがとうございます。私は、良い友を持ったようです。では、差し当たっての今後の方針について決定を下します。
私はまず、この事を元帥へ報告しに大本営へ赴きます。提督の様子からして、まだ身内に敵は居る模様です」
満潮「尻尾だけってワケね」
漣「怖気しかしないです」
長良「司令官は目星付いてたのかな?」
鳥海「そうだとして、姿を晦ませたのが何かしらのサインだとするなら…」
加賀「何れ邂逅を果たせると思います。では、早速で申し訳ありませんが…」
鳥海「はい、留守はお任せ下さい。提督代理」
加賀「……」
鳥海「…何か?」キョトン
加賀「少し、その呼称はむず痒いです。では」ペコリ
満潮「あれってさ…」
長良「あははっ」
漣「照れてますね、絶対!これは貴重ですよ!加賀さんのテレ!ワクテカです!!」
432: 2015/06/27(土) 21:42:20.14 ID:urWWAiCco
-真実-
『一航戦、加賀。入ります』
ガチャ……パタン……
加賀「失礼します」
元帥「来る頃だろうと思っていたが…よもや艦娘が来るとはな」
加賀「我が鎮守府の提督の消息が途絶えました。今回はその報告と今後の方針についての指示を仰ぎに参上した次第です」
元帥「彼が消えた…?」
加賀「この場に着てまでつく嘘ではないと解ってもらえると助かるのだけれど」
元帥「一体、何があったんですか」
別にこれと言った事象が起こった訳でも、変化が生じた訳でもないと加賀は思っている。
強いてあげるなら、今まで以上に自分達の絆は強固なものになったと、その程度だろう。
提督自身に何か意識改革が起こったのかもしれないし、自らで何かを成そうとしているのかもしれない。
本当のところなど一つとして解っていない。
事実として眼前にあるのは忽然と消えた提督の消息とその所在、それだけだ。
加賀は何一つとして偽る事無く、事実の全てを詳らかに語った。
元帥「……そうですか。話は変わりますが、君は提督の過去と言うのを存じていますか?」
加賀「薮から棒ですね。それが今回の一件と何か関連があるのでしょうか?」
元帥「少なくとも、心悸と彼には浅からぬ因縁があるのは事実だよ」
加賀「……どんな因縁があるんですか?」
元帥「私が語ったと言うのは内密にしてもらうよ」
元帥はそれを前置きにして静かに口を開いた。
『一航戦、加賀。入ります』
ガチャ……パタン……
加賀「失礼します」
元帥「来る頃だろうと思っていたが…よもや艦娘が来るとはな」
加賀「我が鎮守府の提督の消息が途絶えました。今回はその報告と今後の方針についての指示を仰ぎに参上した次第です」
元帥「彼が消えた…?」
加賀「この場に着てまでつく嘘ではないと解ってもらえると助かるのだけれど」
元帥「一体、何があったんですか」
別にこれと言った事象が起こった訳でも、変化が生じた訳でもないと加賀は思っている。
強いてあげるなら、今まで以上に自分達の絆は強固なものになったと、その程度だろう。
提督自身に何か意識改革が起こったのかもしれないし、自らで何かを成そうとしているのかもしれない。
本当のところなど一つとして解っていない。
事実として眼前にあるのは忽然と消えた提督の消息とその所在、それだけだ。
加賀は何一つとして偽る事無く、事実の全てを詳らかに語った。
元帥「……そうですか。話は変わりますが、君は提督の過去と言うのを存じていますか?」
加賀「薮から棒ですね。それが今回の一件と何か関連があるのでしょうか?」
元帥「少なくとも、心悸と彼には浅からぬ因縁があるのは事実だよ」
加賀「……どんな因縁があるんですか?」
元帥「私が語ったと言うのは内密にしてもらうよ」
元帥はそれを前置きにして静かに口を開いた。
433: 2015/06/27(土) 21:43:01.21 ID:urWWAiCco
彼は元・白夜の艦隊と称された精鋭艦隊を率いる中将だった。
戦術眼では右に出る者は恐らく現時点を置いても居ないだろう。
彼の眼は常に未来を視ていたらしい。
白夜の艦隊は旗艦を航空戦艦の扶桑が務め、随艦に航空戦艦の山城、重巡洋艦の鳥海、軽空母の千代田、
駆逐艦の睦月と弥生、六名により構成されていた。
航空戦に憂いがあるように見受けられる編成だが、千代田の戦力とそれを補助する扶桑と山城姉妹のサポートもあり、
空での制空権争いも他と引けを取らない、優秀なものだった。
そんな精鋭揃いの艦隊が、とある海域において大敗を期し、撤退を余儀無くされる事態が発生した。
その撤退救出作戦発動の際に先陣を務めたのが心悸だ。
結果から言えば無残なものだった。
旗艦の扶桑を始めとし、山城、鳥海は大破、千代田、睦月、弥生はロストした。
満身創痍だった扶桑達三名は後少しと言う所で敵の凶弾の雨に晒され、扶桑は自らの身を呈して山城と鳥海の身を守った。
無論、扶桑は吹き荒れる嵐のような凶弾の全てをその身に受けて轟沈したと聞く。
彼女が報われてたとするのなら、それは────
扶桑「敵の、撤退を、確認しました……」
提督「扶桑…!」
扶桑「提督……」
提督「待ってろ、応急要員の妖精は万が一を考えて連れてきている!お前を氏なせるものか」
扶桑「提督……覚えて、ますか」
提督「何をだ」
扶桑「ずっと、昔に…小さな、男の子と…約束を、しました」
提督「約束…?」
扶桑「はい。その子の父親の乗る船が、深海棲艦に襲撃され……遺体すらも、揚がらず…彼は途方にくれていました」
提督「…………」
扶桑「だから、提督も、私も……あの子に誓ったじゃありませんか」
提督「ああ……」
二人『君に誓う。同じ悲劇は決して起こさない』
扶桑「……」クスッ
提督「……」
扶桑「提督」
提督「っ!」
扶桑「不幸ですね、提督────」
434: 2015/06/27(土) 21:43:31.08 ID:urWWAiCco
元帥「────今わの際で、提督の膝元で果てる事ができた事、なのかもしれんな」
加賀「今話にあった内容の何処に、心悸との交わりがあるのかしら」
元帥「ふっ、あぁすまない。私とした事が、無駄が過ぎたな。これでは本末転倒だ。あの時、先陣を務めたはずの心悸の艦隊は
その全てが無傷、被害は軽微なもので凡そ前線に赴いていたとは思えなかったそうだ」
加賀「それは、つまり」
元帥「表向きは援軍として駆けつけ、本質は見て見ぬ振り、と言う訳だ。だが確たる証拠は無く、不問に処されている」
加賀「元帥から見て、不審に感じる点は何処でしょうか」
元帥「提督の入れ知恵なのか、君自身の意見なのか…そこは非常に興味をそそるが今は受け流す方が賢明かな?
ふふ…そう邪気を孕んだ目を向けないでくれ。こう見えて友達は少ない方なんでね、これ以上嫌われても悲しくなる一方だ。
君が思うとおりだよ。心悸にここまで計画性のある行動は取れない。私が彼を大将にしたいと考えたのも、理由の一つとして
近くに置いて監視をする為でもあったのさ。実力は確かにあったが、その手段が私個人としては気に入らない。
過去にも似た行為を行う輩が居てね。彼も元大将の位に座していた存在だったが、先の騒乱と合わせて進撃提督と
私に出し抜かれてボロを出したと言った所だ」
加賀「では、やはり元帥も心悸の裏に隠れて彼自身を操っていた存在が居ると見ているのですね?」
元帥「相違無い。キメラ男の行方も掴めないばかりか、それに係っていた部隊の決壊事案。ロストが出なかったのは
不幸中の幸いと言うべきだが、それで済ませられるほど優しいものではない。何より───」
加賀「───これ以上黙ってやられる道理はない」
元帥「ふっ……その通り、良い気概だ。伊達や酔狂で提督の下、秘書艦を務めていた訳ではないようだ」
加賀「…………」
元帥「さて、これは私の独り言だから君はそれをたまたま聞いていたという事で構わない」
加賀「は…?」
実は内々に調査を進行していく中で不審な点が幾つか浮上した。
一つは一部の中将率いる鎮守府の動きが局地的に活性化しているという事だ。
活性化しているのに戦果は伴っていない。
挙げられる理由として実戦を行っておらず、演習やある種の実験を定期的に行っているという事。
基本的に身内同士や同じ区画での演習戦等は大本営への報告は不要だ。
それによって生じた自損事故等については無論、自己申告の命が課せられるが、内々で処理してしまう鎮守府が殆どだな。
これらの戦果の伴わない活性化は鎮守府単位で見ればさしたる事はないが、全体として見ると非常に目立つ。
監視の対象として挙げられていたのは次の鎮守府群だ。
435: 2015/06/27(土) 21:44:16.61 ID:urWWAiCco
・煉獄の艦隊を指揮するエリート提督の鎮守府
・忌避の艦隊を指揮する蛇蝎提督の鎮守府
・鬼刻の艦隊を指揮する心悸提督の鎮守府
・鮮血の艦隊を指揮する百貫提督の鎮守府
・隷属の艦隊を指揮する元中将の位に就いていたキメラ男こと、キメラ元提督の要塞
この内、心悸の艦隊と百貫の艦隊は君達が制圧し、監視対象だった彼等も自らその命を絶った。
残るのは三名、エリート提督、蛇蝎提督、キメラ元提督だ。
中でもエリート提督は非常に狡猾でヘマをしない、尻尾を掴むのにも辛酸を舐め続けた。
だが、ついに糸口を掴んだ。と同時に、提督が姿を晦ましたわけだ。
加賀「狙いは、エリート提督ですか」
元帥「重ねて言おう。これは私の独り言だ。君がその後どういう決断を下し、どういう行動を取ろうと、我々海軍は
一切の認知をしない。海軍界隈での認識として、落ちこぼれである君たちを我々が自ら先導し、道を示す事は許されない。
期待を抱くのなら、潔くこの件からは身を引け。我道を貫くのなら、歴史に名を連ねずとも、私の記憶の中で君たちは
英雄として認識し続ける」
加賀「地位や名声で全ての人が動くわけではないわ。そう、私達は存在を認識されない存在です。故に存在しない者。
提督が言うであろう言葉を代弁させて頂きます」
好きなだけ利用するならすれば良い。
後で手放した事を一生後悔するほどの偉業を成して取り返しのつかない事態を引き起こしてやる。
一番なんぞ欲しい奴にくれてやる。
俺たちは常に二番手、人知れず一番手の裏を行く。
表舞台で躍りたいヤツは躍らせておけ、躍り終わった後で周りを見れば既に事は済んだ後だ。
合ってない目の焦点を必氏になって合わせて見ておけ。
加賀「────目に物を見せてやる」
元帥「…………」
加賀「…では、失礼致します」ペコリ
ガチャ……パタン……
大和「……歴戦の勇、と表現するのがとても似合う艦娘だと思いました」
元帥「全く、黙ってじっと聞いてるだけなんて、君も少し意地が悪くなったんじゃないか?」
大和「加賀に敬意を表していただけです。他意は有りませんよ?」
元帥「ふっ……しかし、あの目を見る限り先の独り言は蛇足だったようだな」
大和「もとより、彼女達は自分達がするべき事を把握しているんだと思います。提督の行方を伺いに着たのも、
何か情報が欲しい、と言うよりは知っているなら聞いておこう、くらいの考えなのかもしれませんね。
実際にエリート提督の事などは寝耳に水、という表情でしたから」
元帥「かもしれないな。さて、それじゃ我々も動くとしよう。この海軍を内部から破壊しよう等、夢物語も甚だしいくらいの愚弄振りだ。
ただ黙って見ているだけと思ったら大間違いだという事を証明してやる必要がある」
大和「例に漏れず身内を傷付けられてもいますから…戦意は全員、漏れなく充填完了しています。士気も極めて高いでしょう」
元帥「そうだな、先の騒乱で既に習わされている。これ以上、後手に回る必要も謂れもない。持てる戦力全てを出して、
奴等を徹底的に叩き潰す。深海棲艦を利用した叛乱など、決して許すな!いけ、大和…第一第二艦隊、共に抜錨だ!」
大和「賜りました。旗艦大和、第一主力艦隊出撃致します」
436: 2015/06/27(土) 21:44:47.55 ID:urWWAiCco
取り敢えずここまで
437: 2015/06/27(土) 22:46:49.38 ID:XYR9Ya6CO
乙です
次回:【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」part7
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります