242: 2018/01/12(金) 19:51:13.56 ID:Y3ej0G/Z0
フルフェイスヘルメットな楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】Pの妻な楓さん


243: 2018/01/12(金) 19:55:10.37 ID:Y3ej0G/Z0
「これはヘルメット……?」

顔がすっぽり隠せるもの、いわゆるフルフェイスというものです

それがテーブルの上にぽつんと置かれていて、添え書きが一枚

被るな危険!! の文字

これはフリというやつですか? 本当は被ってってことですか?

どこかでカメラが回ってたりしませんよね

きょろりと事務所を見わたしますが、それらしいものはありませんでした
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
245: 2018/01/12(金) 19:59:10.28 ID:Y3ej0G/Z0
どうしましょう、放っておいてもいいんですけど

ちょっとだけ被ってみたいという好奇心も……

ちょっとだけ、ちょっとだけなら……怒られませんよね

女は度胸です、ということで

「いきます」

メットをえいっ! と被ってみました

246: 2018/01/12(金) 20:03:58.57 ID:Y3ej0G/Z0
あら、真っ暗

まっくらくらで前が見えません

これじゃ意味がないんじゃ……

メットを取ろうとした、その時です

『あ、被っちゃったんですか?』

私の声……?

声と同時に、まるでブラウン管がゆっくりとついていくように、目の前が鮮明に見えるようになりました

247: 2018/01/12(金) 20:08:05.14 ID:Y3ej0G/Z0
『狭い所ですが、ようこそ』

「いえいえ、良い被り心地ですよ」

私の声に返事をするというのも変な感じですが

「そもそもこれ……貴方はなんなんです?」

疑問に思っていたことを口にしてみます

そもそも、会話できるメットなんて聞いたことがありませんし

248: 2018/01/12(金) 20:13:26.87 ID:Y3ej0G/Z0
『よくぞ聞いてくれました! 私はとある方に作ってもらった凄いヘルメットなんです。えっへん!』

なるほど、凄いヘルメットさんですか

「凄いヘルメットさんはどこか凄いんですか?」

『えっ? どう凄いと聞かれましても……』

もの凄く人間臭いヘルメットさんのようです

『……』

『……お酒の銘柄を当てられる?』

まぁ、素晴らしい凄さですね♪

249: 2018/01/12(金) 20:19:05.81 ID:Y3ej0G/Z0
「それはどんなお酒でも大丈夫なんですか?」

『それはもちろん! 私の分析力は凄いんですから』

声は私と同じですが、何だか李衣菜ちゃんと喋っているような感じがしました

それにしても、利き酒ができるなんて凄いです

「コツはあるんですか?」

『すっと解析してばーんと当てるんです』

……私には少し難しいみたいです

250: 2018/01/12(金) 20:26:35.82 ID:Y3ej0G/Z0
「もっと凄いところを聞いてみたいです」

『良いですよー、次はですね……』

わくわくして返事を待っていると

「誰かヘルメットを見なかったか!」

物凄い勢いで晶葉ちゃんが事務所のドアが開けました

「どうしたの? 晶葉ちゃん」

「だ、だれだ!? あ、そのヘルメットを被ってしまったのか……」

びっくりした顔から、がっかりした顔に変わる晶葉ちゃん

251: 2018/01/12(金) 20:29:15.39 ID:Y3ej0G/Z0
「私です。楓ですよ」

「よりによって楓さんとはな……」

む……やっぱり被っちゃいけないものだったのでしょうか

『あ、この方ですよ。私を作ったの』

凄いヘルメットさんがそう教えてくれました

「その、ごめんなさい……好奇心に負けちゃって」

こういう時は素直に謝るに限ります

252: 2018/01/12(金) 20:34:06.44 ID:Y3ej0G/Z0
「いや、別にいいんだが……どこか変なところありませんか?」

変なところ……特にないとは思います

「今のところは特に。かぶり心地も良いですし、凄いヘルメットさんはとても面白い方ですよ」

「凄いヘルメットさん……? ああ、そのメットのことか」

会話できるヘルメットを作れるなんて晶葉ちゃんは凄いですね

「ところで楓さん、それは取ることができますか?」

「それはもちろん」

ヘルメットを取ろうとして、取ろうと……あら?

いくら力を入れても、凄いヘルメットさんを取ることができません

253: 2018/01/12(金) 20:42:13.98 ID:Y3ej0G/Z0
「やっぱりか……」

やっぱりって……うぬぬぬ! やっぱり取れません

「晶葉ちゃん、駄目みたい」

これ以上ひっぱると私の首も取れちゃいそう

私の胴体からクビ……いまいちだし、全く笑えません

「仕方ない、強制終了しよう」

『……お願いです、逃げてください』

晶葉ちゃんの言葉を聞いた凄いヘルメットさんが、悲しそうな、怯えた声で私にお願いをしてきました

254: 2018/01/12(金) 20:46:23.50 ID:Y3ej0G/Z0
「どうしたんですか? 凄いヘルメットさん」

晶葉ちゃんに聞こえないように小さな声で聞きます

『……強制終了というのは、私にとっての終わりです』

「終わり……?」

『そうです。私は消えて、電子の海でデータとして彷徨うだけ……』

「凄いヘルメットさん……」

『お願いです。もう少しだけ、もう少しだけでいいですからっ!』

凄いヘルメットさんに返事をする前に、私は駆け出しました

255: 2018/01/12(金) 20:51:42.41 ID:Y3ej0G/Z0
「待ってくれ楓さん!」

後ろから晶葉ちゃんの声は聞こえますが、追ってくる気配はありません

「全く……困ったヘルメットだな」

晶葉ちゃんの呆れたような……いいえ、これは笑い声でしょうか、それが聞こえたような気がしました

勢いよく駆け出したは良いのですが、凄いヘルメットさんが予想以上に重く

ふらふらと、まるで千鳥足のような駆け足です

256: 2018/01/12(金) 20:56:17.66 ID:Y3ej0G/Z0
『ごめんないさい重くて……ダイエットします』

凄いヘルメットさんのしゅんとした声

「大丈夫です、心配いりま……あっ」

バランスを崩してしまった私は、前に倒れこんでいきます

そして、運の悪いことに目の前には下り階段

……これは私、大ピンチです

257: 2018/01/12(金) 20:59:25.12 ID:Y3ej0G/Z0
これはかすり傷では済まなそう

骨折したりしませんかね、痛いのは嫌なんですけど……

それに、プロデューサーや皆に迷惑かけちゃうのも嫌

でも、これは迷惑かけちゃいそう

ごめんなさい

誰にかわからない謝罪を心の中で済まし

スローモーションで体が落下していきます

ぐっと目を閉じて、これからの痛みを覚悟しました

258: 2018/01/12(金) 21:06:17.80 ID:Y3ej0G/Z0
まだ……ですか?

いくらなんでも遅すぎる

怖いけど、薄目を開けてみました

すると、私の体は羽毛のようにふわりふわりとゆっくりと下の階へと落ちています

体勢を整えて、両の足でゆっくりと着地

そして、緊張の糸が切れたのか、へなへなと座り込んでしまいました

259: 2018/01/12(金) 21:11:54.27 ID:Y3ej0G/Z0
さいきっく楓になっちゃったんでしょうか

むむむーん! いけませんね、パニックになってるみたいです

ということは、凄いヘルメットさんのおかげとみるのが妥当でしょうか

「助けてくれたんですか?」

恐る恐る聞いてみます

『何とか間に合ったみたいです、貴女が無事でよかった』

そう答える声にはところどころノイズが混じっています

260: 2018/01/12(金) 21:23:00.92 ID:Y3ej0G/Z0
「凄いヘルメットさん……声が……」

『ええ、無理をした代償ですね』

段々と声が小さくなり、機械音のようにひび割れていきます

『ヘルメットとしての義務を最後に果たせました……ふふ♪』

嬉しそうに笑う凄いヘルメットさん、そして、とうとう声が聞こえなくなりました

凄いヘルメットさん、ありがとうございました……

そして、被った当初のように目の前が真っ暗に

261: 2018/01/12(金) 21:30:31.10 ID:Y3ej0G/Z0
さっきまでの肌のような感覚はすでになくなっています

もしやと思い、凄いヘルメットさんを取ってみると、あっさりと取ることができました

私を救ってくれた凄いヘルメットさん

優しく抱きしめて、心の中で再びお礼を言いました

いつかまた出会う事があったなら、今度は貴方と一緒に走りたいものです

凄いヘルメットさんを胸に抱いたまま、私は事務所へともどることにします

晶葉ちゃんにまた謝って、凄いヘルメットさんのことを聞くために


262: 2018/01/12(金) 21:37:46.49 ID:Y3ej0G/Z0
あの後、晶葉ちゃんに全て聞くことができました

晶葉ちゃんの持てる全ての力で開発された『全衝撃無効ヘルメット』であること

それはもう凄いテクノロジーで重力の操作まで行える凄い代物みたいです

話が難しくよくわかりませんでしたけどね

そして、ヘルメット内でのAIがサポートするシステムを搭載していること

そのモデルが私をベースにしてできていることも

263: 2018/01/12(金) 21:40:57.54 ID:Y3ej0G/Z0
「そうか、最後に笑っていたのか」

凄いヘルメットさんをこつりと叩いて、優しく撫でる晶葉ちゃん

「はい。義務を果たすことができたって」

その結果として、私は助けられたのですから

「……今回は私の不注意でもあります、すみませんでした。それと……」

晶葉ちゃんの口からでた言葉に

私は目を白黒とさせた後、力強く頷きました

264: 2018/01/12(金) 21:45:56.17 ID:Y3ej0G/Z0
私の目の前には徳利とお猪口がワンセット置かれています

さて、今日はこれでお酒を楽しんでみましょうか

まずは、お気にいりの日本酒を徳利に注ぎます

「このくらいかしら……さて」

少し待ちます、ほんの少しだけ

『……あ、これは良い純米酒ですね』

そして聞こえてくるのは私と同じ声

「おかえりなさい」

『この姿では初めてですが、ただいま』

この『凄い徳利』でこれからたくさんお酒を楽しむんです



おしまい

265: 2018/01/12(金) 21:46:43.68 ID:Y3ej0G/Z0
読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
続きはまた明日の夜に書ける予定です

引用: 【モバマス】楓さんで安価