476: 2018/01/21(日) 19:42:41.56 ID:b3S/cBj/0
戦闘機パイロットな楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】ホステスな楓さん


477: 2018/01/21(日) 19:47:10.57 ID:b3S/cBj/0
目の前で花火が上がっている

赤くて、盛大な花火が

私はそれをただ眺めることしかできなかった

ごめんなさい、ごめんなさいって心の中で謝りながら

貴方のおかげで……ううん、これ以上は言っちゃ駄目ですね

そして

赤い花火は黒い煙を漂わせながら、落下した

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
478: 2018/01/21(日) 19:51:20.50 ID:b3S/cBj/0
目が、覚めた

「……」

あれから同じ夢を何回も見る

そうすると、決まって目が覚めてしまう

時計を確認すると、まだ深夜といったところ

寝汗で気持ち悪いので、シャワーを浴びて眠りなおすことにした

二回も起こすのは止めてくださいね? そう、誰にともなく言ってから

479: 2018/01/21(日) 20:02:13.38 ID:b3S/cBj/0
アラームで起きてから、朝の準備をする

悪夢で起こされなかったことに、ほっと胸を撫でおろす

それから……と、忘れ物をしてしまった

少しくすんでしまったリボンを腕に巻き、格納庫へ向かう

足取りはとても重い

憂鬱ではあるが、重い足を引きずって無理やりに自分を鼓舞する

480: 2018/01/21(日) 20:08:43.97 ID:b3S/cBj/0
「おはよう、美世ちゃん」

忙しそうに動き回っている同僚に挨拶をする

「楓さん、おはようございます!」

この子はいつも元気で、私もそれを少し分けてもらっている

「調子はどう?」

美世ちゃんは隣に佇む戦闘機を見ながら

「良い感じですよっ!ただそろそろパーツがなくなってきていて……」

そっか、こちらも遅かれ早かれってところなのね

481: 2018/01/21(日) 20:16:16.40 ID:b3S/cBj/0
これ以上邪魔をすると悪いと思い、格納庫を後にする

なんとなく向かった先は、町……だったところ

建物はボロボロで、何とか建物の形を保っているだけ

道路もアスファルトが割れてしまっていて、舗装していない所を走るほうが早い

ここも、もう駄目かもしれない

そう独り言ちて、ポケットの中のくしゃくしゃの煙草に火を付けた

482: 2018/01/21(日) 20:20:41.82 ID:b3S/cBj/0
「けほっ……」

相変わらず慣れないな、いつまでたっても美味しくなんて感じない

あの人は美味しそうに吸っていたけれど、今でも理解できない

……まぁ、そんなもんですよね

ああ、お酒飲みたいな

大吟醸とは言わないから、せめて純米酒

今はそんなものどこに行っても手に入らないけど

私は煙草の煙を肺まで大きく吸い込んで

「けほ……」

また、むせた

483: 2018/01/21(日) 20:31:51.84 ID:b3S/cBj/0
遠くの空から、こちらに何かが近づいてくる

そう気づいた時には、轟音と共に上空を通過して行った

感傷に浸る時間もくれないのね

何て皮肉を言って、格納庫へと走り出す

そう、感傷に浸ってたって生きていけないしお腹が減るのだ

氏んじゃったら自分がそれをされる側

今日も今日とてあがいてみましょうか

484: 2018/01/21(日) 20:47:03.82 ID:b3S/cBj/0
「美世ちゃん、出るわ」

「はい! あの……お気をつけて」

私の手を握り、悲しそうな顔で美世ちゃんが言う

「もちろん。氏ぬんなら地上のほうがいいわ」

笑顔でそう答えて、私は戦闘機へと乗り込む

さぁ、今日も私を生かして返してくださいね?

返事をしない鉄のお友達に、小さくお願いをした


485: 2018/01/21(日) 21:02:46.78 ID:b3S/cBj/0
さっきの相手は……いた

こちらに発見されたのに、気にせず飛行している

今のうちなら、と思い、照準を合わせて攻撃を仕掛ける

すると、こっちの攻撃を予感したのか、敵機が旋回して一気にスピードを上げた

こちらも追いかけるようにスピードを上げる

……なかなか照準を絞らせてくれない

焦る。長引けばこちらは不利だ

486: 2018/01/21(日) 21:08:17.50 ID:b3S/cBj/0
「ん……?」

ここで少しの違和感を覚える

敵機の切り返すタイミングにリズムがある

「これは……そうですか、貴女も生きていたんですね」

青いイメージの私の後輩とこんな所で再開するとは思わなかった

本来ならお互いが生きていることを喜び会う所だけど……

「ごめんなさい……私たちも必氏なの」

明日を生きるためには墜とすしかない

487: 2018/01/21(日) 21:12:47.04 ID:b3S/cBj/0
次は……こっち

敵機の動くタイミングを見計らい、照準を合わせる

よし、今しかない

絶好のタイミングのはず。これなら

けれど、相手は無茶苦茶な回避行動をとってきた

攻撃が外れて、こんどはこちらが窮地に陥る


488: 2018/01/21(日) 21:22:35.56 ID:b3S/cBj/0
はぁ……もう駄目みたい

もう回避行動はとれない、私はここでおしまい

そっと目を閉じる

そして、暗闇の中に花火が上がる

赤い花火……私のせいでいなくなったあの子の機体が燃えている

駄目だ、まだ顔向けは出来ない

かっと目を開き、思いっきり高度を下げた

地面に突き刺さるくらい限界までミサイルとの追いかけっこ

まだ、まだ……そして限界で水平飛行に無理やり戻す

体に物凄い負担がかかり、意識が飛びそうになるが耐える


489: 2018/01/21(日) 21:30:31.44 ID:b3S/cBj/0
……どうやら最後のあがきは成功したみたい

気付くと敵機はすでに去っている

「ふぅ……」

息を吐くと、心臓が痛いくらいに鼓動しているのに気付く
今日も生きることができた

「はぁ、お酒飲みたいな」

くいっとお猪口を呷る真似をして

ちょっとの虚しさと、生きている実感を飲みこんだ




おしまい

490: 2018/01/21(日) 21:38:37.39 ID:b3S/cBj/0
読んでくれた方に感謝を
今日はおしまいにします

続きは明日にでもー

引用: 【モバマス】楓さんで安価