622: 2018/01/27(土) 21:40:08.01 ID:c6fikxNd0
実は密かにPと付き合っている楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】ふたOりな楓さん


623: 2018/01/27(土) 21:47:06.90 ID:c6fikxNd0
私は皆に嘘をついている

事務所の誰もしらない私の秘密

いいえ、私とプロデューサーの二人の秘密

本当は関係をもってはいけないはずなのに

お仕事だけの関係じゃなければいけないのに

でも、私はあの人を求めて

あの人は私を求めてくれた

私は……誰にも知られてはいけない、恋に落ちた

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
624: 2018/01/27(土) 21:54:13.27 ID:c6fikxNd0
スマートフォンが震える

ライトの色からすると、lineかな

ロックを解除して確認してみると、あの人からのlineだった

『今夜九時、あの場所で』

短い文章だけど、ちょっと嬉しい

わかりました、と返事をした


625: 2018/01/27(土) 21:59:38.38 ID:c6fikxNd0
ウィッグをつけて、眼鏡もかける

姿見の前でくるりと回って、チェック

うん……高垣楓とはばれないでしょう

あの場所、私とあの人の秘密の居酒屋さん

個室が用意されていて、他のお客さんの目にもつかない

本当なら、高垣楓として堂々と飲みに行きたいけれど

事情が事情だから、そこは我慢しないといけないですね

626: 2018/01/27(土) 22:05:38.36 ID:c6fikxNd0
お家からタクシーであの場所へ向かう

周りを気にしないように、そして、こっそりとしない

私はただの一般人。そう演じる

しばらくして、あの場所へと到着した

久しぶりの二人で飲めると思うと、わくわくとした気持ちになる

627: 2018/01/27(土) 22:11:01.80 ID:c6fikxNd0
扉を開くと、女性の店員に出迎えられた

いらっしゃいませ、と声は控えめで、落ち着いた接客

連れが来ていることを告げると、奥の個室へと案内された

純和風の造りになっていて、個室の入り口は襖になっている

逸る気持ちを抑えて、その襖をゆっくりと開けると、あの人が……いた

こちらに気付いたようで、笑顔でこちらに来るように催促される

628: 2018/01/27(土) 22:17:19.23 ID:c6fikxNd0
「寒かったでしょう、熱燗にしますか?」

「良いですね、お酒の種類は任せます」

熱燗と肴を数品頼み、そろったところで静かに二人で乾杯をした

お銚子を三本ほど開けると、プロデューサーの表情が変わる

「楓さん、俺不安なんです」

この人はお酒が入ると、どうも気が小さくなってしまう


629: 2018/01/27(土) 22:22:51.05 ID:c6fikxNd0
「いつか二人の関係がばれてしまうんじゃないかって……」

特にここ最近は、私との関係についてのことが多い気がする

確かに公にできる関係じゃないし、ばれたらきっと大変なことになってしまう

マスコミなんかに知られたら……と思うとぞっとする

けれど、だからと言って別れることなんてできない

「大丈夫、です。私と貴方が黙っていればばれませんよ」

私は彼を安心させるように、返事をした

630: 2018/01/27(土) 22:30:54.21 ID:c6fikxNd0
…………
………
……んん、今何時?

ベッドに備え付けている時計を確認する

まだ時間に余裕はある、もうすこし寝ることができる

隣で眠る彼も、まだ夢の中みたい

……子供みたいな寝顔ね

つんっとおでこを突いて、彼に抱き着くようにして二度目の夢の中へ……



誰にも言えないけれど、幸せな時間が続くと思っていた

けれど、世間の目と、アイドルとしての私の立ち位置はとても危ういものだった

631: 2018/01/27(土) 22:33:33.73 ID:c6fikxNd0
「楓さん、見てもらいたいものがあります」

「何でしょうか」

お仕事が終わり事務所へ戻ると、ちひろさんに手招きされた

「人に聞かれたくないので、こちらへ」

どうやら大事な話みたい

わたしは声を出さずに頷いた

632: 2018/01/27(土) 22:38:56.84 ID:c6fikxNd0
後をついていくと、いつも使われていない会議室の前でちひろさんが足を止めた

「ここなら大丈夫です」

ちひろさんに続いて入室すると、ちひろさんが内側から鍵をかけた

そんなに聞かれたくない話なのかしら……?

「これに見覚えはありますか?」

ちひろさんが取り出したのは、数枚の写真

私はそれを見て絶句する

それは、私と彼の逢瀬の時の写真だった

633: 2018/01/27(土) 22:43:31.81 ID:c6fikxNd0
「うそ……なんで……?」

あんなに気を付けていたはずなのに、どうして?

それに、変装していない私が映っているのは何故?

二人っきりの時以外はずっと変装していたのに……

「楓さんはこう思っているでしょう、一体何故と?」

そう言うちひろさんの顔は無表情だ

「これは、とある筋にお願いして手に入れたものです」

犯罪すれすれですけどね、と付け加えた

637: 2018/01/27(土) 23:00:04.56 ID:c6fikxNd0
「私も驚きました、まさか楓さんとうちのプロデューサーができているなんて」

一枚の写真を手に取って、一瞥してから私に向き合う

「私としては応援したいところです。けれど、社会とよそ様はそれを許してくれません」

なんで……秘密がばれた……どうしよう

「一度プロデューサーとお話をしてください」

私の肩をぽんと叩き、ちひろさんが会議室から去って行こうとする

638: 2018/01/27(土) 23:04:29.48 ID:c6fikxNd0
「……待ってください」

私は何とか声を出して、ちひろさんを呼び止める

「はい、なんでしょうか?」

「……このことは他の誰かに言いましたか?」

しばらくすると、ちひろさんは笑顔でこう言った

「いいえ、今のところ私だけに留めています」

「……そう、ですか」

「ええ、私と楓さんの、二人だけの秘密ですね」

そう言い残して、私だけが会議室に取り残された


639: 2018/01/27(土) 23:12:38.50 ID:c6fikxNd0
とうとうばれてしまった

私とプロデューサーとの秘密が

とりあず、プロデューサーとお話をしないといけない

私は震える手でスマートフォンを取り出して、電話をかける

何回かのコールの後、プロデューサーが電話に出てくれた

『今は事務所のはずですよね、何かありました?』

「あの……お話したいことがあります」

私の声色で何かを察したのか

『わかりました、今日は車で送っていくのでその時にでも』

「……よろしくお願いします」

怖い……彼にどう伝えたらいいのか、とにかく怖い




640: 2018/01/27(土) 23:16:01.31 ID:c6fikxNd0
窓の外がオレンジから群青色に変わったころ

プロデューサーが事務所へともどってきた

「お疲れ様です。ああ、ちひろさん、楓さんを送っていきますので」

「ええ、安全運転でお願いしますね」

ちひろさんは何食わぬ顔でプロデューサーに返事をした

「それじゃ楓さん、行きましょうか」

「はい……お先に失礼します」

ちひろさんに挨拶をすると

「はい、お疲れ様でした」

ちひろさんは変わらぬ笑顔で私に返した

641: 2018/01/27(土) 23:22:38.93 ID:c6fikxNd0
「それで、一体なにがあったんですか?」

車に乗り込んでからすぐに、プロデューサーがそう聞いてきた

「……ばれちゃいました」

何回か深呼吸してから、そう答える

私の声を聞いてから、プロデューサーの顔が青くなっていく

「まさか……俺たちの関係が?」

それに、無言で頷く

「嘘だろ……あんなに気を使ってたのに……」

プロデューサーが信じられないと言った風に俯く

642: 2018/01/27(土) 23:28:39.54 ID:c6fikxNd0
車内の空気が酷く重く感じる

どろりとしていて、とても暗い

「……どうしたら、いいでしょうか?」

ちひろさんは話し合えと言った

二人で話し合って……でも、それからどうするの?

ばれてしまった以上、この関係を続けることは不可能に近い

けれど、けれど……この人と別れたくはない

好き、愛してる、何て言葉で片付けられないほど、この人の事を想っている


643: 2018/01/27(土) 23:32:41.29 ID:c6fikxNd0
「……わかりました、俺が掛け合ってみます。だから、泣かないで」

気付けば私は泣いていたみたい

視界が涙でぼやけていて、笑っているはずの彼の顔がよく見えない

「お願いします……私、私は……貴方の事を」

「大丈夫、大丈夫だから」

私の肩を抱きしめる彼の体はとても温かくて

安心しきってしまった私は、涙が枯れるまで泣き続けた

644: 2018/01/27(土) 23:37:55.69 ID:c6fikxNd0
「それじゃあ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

随分と恥ずかしいところを見せてしまった

お家で目を冷やさないと……そんな事を考えながら車を降りようとすると

「楓さん」

「んっ……」

唇が触れるくらいの軽いキス

「今日はゆっくりと休んでください」

「わかりました、お気をつけて」

唇に残る感触を名残惜しみながら、彼の車を見送った


646: 2018/01/27(土) 23:45:38.27 ID:c6fikxNd0
そして、翌日のこと

インタビューのお仕事が終わった後、プロデューサーに呼び出された

指定された場所は……昨日と同じ会議室

胸騒ぎがする、とても嫌な……

ドアを三回ノックすると、どうぞ、と返事があった

私は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら入室した

647: 2018/01/27(土) 23:51:42.60 ID:c6fikxNd0
椅子に掛けている彼の顔色はどうも優れない

ふぅ、と息を吐いてからプロデューサーは私と向き合った

「単刀直入に言うと、交換条件を出されましたよ」

「交換条件……?」

恐る恐る聞き返す

「ええ……今の関係を続けるなら俺はクビ、それが嫌なら……」

それが嫌なら、今の関係を破棄する……

そういうことですよね





648: 2018/01/27(土) 23:55:26.19 ID:c6fikxNd0
「うちの事務所も大事にはしたくないみたいで、俺だけがクビなら別に構いません」

彼は苦笑いしながら言う

「……それは嫌です」

貴方と離れ離れにはなりたくない

お仕事に行くときも笑顔で送ってくれて、帰ってくるときも迎えて欲しい

他愛ないお話をして笑いあっていたい

貴方がいない事務所でのお仕事なんて、絶対に……嫌

649: 2018/01/28(日) 00:02:05.38 ID:IP7qx7NA0
「楓さん……」

「ほとぼりがさめて……今度は貴方と堂々とお付き合いできるように頑張ります、頑張りますから……」

今は……さようなら、私の愛したプロデューサー

私は涙声でお別れを言った

……涙がとまらない、私の中の水分がなくなっちゃうくらい

「楓さん」

彼に抱き寄せられた

「いや……いやぁ、顔……見ないでください」

こんな事されたらもっと辛くなってしまう



650: 2018/01/28(日) 00:09:38.61 ID:IP7qx7NA0
辛くなってしまうはずなのに、私は彼を求めてしまった

顔を上げて、キスをねだる

目を閉じると、彼の唇が触れる

ずっと貴方のぬくもりが……ずっと貴方の感触がのこるように

そんな長くて熱いキスが終わるころには、私の涙も止まっていた

「これからはプロデューサーと担当アイドルに戻るけど……また、戻れるように頑張りましょう」

プロデューサーの言葉に頷いて、私は笑顔で返事をした

651: 2018/01/28(日) 00:16:44.05 ID:IP7qx7NA0
プロデューサーがいなくなった会議室で気持ちの整理をする

今は我慢しなくちゃいけない

また、二人の関係を元通りにするために

そう……とにかくお仕事を頑張って、皆に認めてもらって

彼との時間を再開させられるために

……よし、今日は川島さんと早苗さんを誘って飲みにでもいきましょうか

二人の元気を少しでもわけてもらうことにしよう

頬を軽く叩いて、気持ちを整理し終えた私は事務所へと向かう

二人はまだお仕事中だから、ゆっくり待つとしましょう

652: 2018/01/28(日) 00:25:00.10 ID:IP7qx7NA0
事務所のドアを開けると、そこにはプロデューサーとちひろさんの二人だけ


そして、二人はまるで愛し合うかのように抱き合い、唇を重ねていた

さっきまで触れていた彼の唇がちひろさんの唇に触れている……

ちひろさんは閉じていた目をゆっくりと開け、私にほほ笑む

まるで私に見せつけるように、そして、私をあざ笑うかのように

……そうだ、何かおかしいと思っていた

あの写真もおかしいと思ったけれど、私が彼にばれたと伝えた後、誰にとは聞かれなかった


653: 2018/01/28(日) 00:34:58.80 ID:IP7qx7NA0
じゃあ誰に掛け合ったの? 誰にばれたか知っていたの?

ちひろさんは私との二人だけの秘密と言っていた

……そうすると、もう答えは一つだけ

そうか、私は一人で踊っていたんだ

ステージでもなく、ちひろさんとプロデューサーの掌で

くるくる、くるくる、回って、ステップを踏んで

一人のステージに、ちひろさんとプロデューサー二人の観客

なんて最悪なステージ……

カーテンコールと同時に私は目の前が真っ暗になって

意識を手放した



おしまい

654: 2018/01/28(日) 00:36:36.15 ID:IP7qx7NA0
読んでくれた方に感謝を
明日ってか今日か、お祭り行くんで書けないっス
月曜日は書ける思います

引用: 【モバマス】楓さんで安価