765: 2018/01/31(水) 21:41:24.62 ID:Bg6gBDvq0
小料理屋な楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】ヴァンパイアハンターな楓さん


766: 2018/01/31(水) 21:45:38.27 ID:Bg6gBDvq0
仕事終わりの帰り道

通り慣れた道から帰ろうと思って、ふと考える

たまには違う道から帰ってみよう

そう思って、いつもの道から一本ずれた道へ歩き出す

ずいぶんと入り組んだ道だ……ちょっと薄暗いし

そして、暗闇を薄く照らす提灯を掲げる店が一軒

『小料理 楓』

看板には達筆でそう書かれていた
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
767: 2018/01/31(水) 21:53:34.44 ID:Bg6gBDvq0
趣のある外装と提灯の灯りで、どこか幻想的でもある

小料理屋か……一人で入ったことないんだよな

高い場合もあるし、どうしようか

そう悩んでいると、店の入り口にいる女性と目が合った

……とんでもないレベルの美人さんだ

こちらを見て、薄くほほ笑んでいる

もっと近くで見たい、そう思った時にはもう入り口の扉に手をかけていた

768: 2018/01/31(水) 21:59:28.70 ID:Bg6gBDvq0
給料日を迎えたばかりだし、こうなりゃやけだ

扉を開けると、さきほどの女性がにこやかに出迎えてくれる

「いらっしゃいませ。外は寒いでしょう、どうぞ中へ」

身近で見ると、さきほどより魅力的に感じる

淡い緑色の着物と、後ろで結った髪、それと白いうなじに目を奪われる

「お好きな席に掛けてくださいね、とは言ってもそんなに席はないんですが」

女性を目の前でみたいばかりに、カウンターの真ん中を陣取った

769: 2018/01/31(水) 22:10:20.03 ID:Bg6gBDvq0
「お飲み物は何になさいますか?」

注文を聞かれて、はっとする

「とりあえずビール……じゃなくて熱燗で」

今日は寒いし、酒をちびちびやろう

「今日みたいな日にはぴったりですね、少々お待ちください」

慣れた手つきでお燗をしていく

まくった袖から見える腕はすらりとしていた




770: 2018/01/31(水) 22:14:36.89 ID:Bg6gBDvq0
酒を待っている間、手持無沙汰なので店の中を見回してみる

あまり広くはなくて、席はカウンターが七席ほどだ

店の人間は……この女性だけ、ってことはこの人が女将兼板前をしているのか

若そうなのに一人で店を切り盛りしてるなんて大したもんだ

一人でうんうんと頷いていると

「お待たせしました、熱燗とお通しです」

お通しの美味そうな匂いに、腹の虫がくぅっと鳴いた


771: 2018/01/31(水) 22:20:08.88 ID:Bg6gBDvq0
「では、一献どうぞ」

女将さんがお酌をしてくれるようだ

「ありがとうございます」

お猪口を傾けると、燗された酒の香が広がる

「こいつは美味い酒ですね」

「喜んでもらえて良かったです、お通しも冷めないうちにどうぞ」

これはふろふき大根と……もう一品がわからない


772: 2018/01/31(水) 22:29:49.77 ID:Bg6gBDvq0
丸くて、黄色がかった衣がついていて、それにとろみをつけた出汁が張ってある

「頂きます」

「お召し上がりくださいな」

箸を入れるとさくりと子気味良い感触

中身は白雪のように淡い白さ

それに出汁をたっぷりと絡めて口の中へ入れた

773: 2018/01/31(水) 22:36:08.34 ID:Bg6gBDvq0
ふわふわとさっくりとした食感、それを包む濃厚な出汁の味

これは噛むのが楽しい料理だ、それに美味い

「白身魚の真薯を湯葉に包んで揚げてみたんです」

「初めて食べた料理ですけど美味いですね」

俺が素直に伝えると、女将さんが嬉しそうに顔を綻ばせた

続いて食べたふろふき大根もとてもうまく炊けており

この二品のせいで、俺の腹の虫が大騒ぎしだしてしまった

774: 2018/01/31(水) 22:56:18.84 ID:Bg6gBDvq0
お品書きを手に取り、目を走らせていると良いものを見つけた

「この金目鯛の煮つけをください」

「はい。少々お待ちくださいね」

流石に良い値段だが、今日は奮発しよう

「この時期の金目鯛は美味しいですよ、ほっぺが落ちちゃうくらいに」

「それは楽しみだ」

煮つけがくるまで、女将さんの調理姿を肴に酒を呷る

775: 2018/01/31(水) 23:07:51.81 ID:Bg6gBDvq0
「お待たせしました、金目鯛の煮つけです」

皿からはみ出しそうな立派な金目鯛だ

ふわりと湯気が上がり、その匂いが食欲を刺激する

何の抵抗もなく箸が入り、ほろりとした身をこぼさないように口に運ぶ

「……美味い」

甘辛く煮つけているのに、魚の味も損なわれていない

これは味付けのせいか、それともこの金目鯛の美味さなのか

酒が進み、気付けばお銚子が空いてしまった

もう一本つけてもらうか? いや、ここはどっちかと言うと……

776: 2018/01/31(水) 23:12:25.32 ID:Bg6gBDvq0
「ふふっ、炊き立てのご飯も合いますよ?」

俺の考えを読み取ったかのように、女将さんが言った

「お願いします、大盛で」

「はい、わかりました♪」

こんなに美味い煮つけを白飯で追っかけたら……おっと、よだれが

「はい、どうぞ」

目の前につやつやのご飯が置かれた

……よし、俺の腹の虫を黙らせてやるとするか

777: 2018/01/31(水) 23:25:55.81 ID:Bg6gBDvq0
金目鯛の身をたっぷりと箸で取ってから、飯の上でバウンドさせる

それからすかさず口に運び、それから白飯を追っかける

……これが幸せってやつか

白飯が金目鯛の味を……もう御託はいいや

とにかく、もう食べる事しか頭にない

煮つけ、白飯、煮つけ、白飯、ここに完璧なループが生まれる

778: 2018/01/31(水) 23:29:28.58 ID:Bg6gBDvq0
「まぁ、凄い食べっぷり♪ おみおつけもどうぞ」

「頼んでないですよ?」

「サービスです、そんなに美味しそうに食べてもらえるお礼です」

それならありがたく頂戴することにしよう

「アラのおみおつけです、ほんの少し酒かすが入っています」

女将さんの説明を聞きながら、汁を啜る

魚のアラがたっぷりで、身をこそぎながら食べるのが楽しい

779: 2018/01/31(水) 23:36:09.77 ID:Bg6gBDvq0
「ふぅ……ご馳走様でした」

我を忘れて箸を動かしていたら、いつの間にか食べ終わっていた

「こちらこそ、ご馳走様でした」

はて? こちらから何かご馳走した覚えはない

「あなたの美味しそうに食べているお顔、です」

そう言われて、何だか恥ずかしくなってきた

780: 2018/01/31(水) 23:42:34.59 ID:Bg6gBDvq0
食後のお茶を飲みながら、余韻を楽しむ

それにしても、本当に美味かった

それに、女将さんも美人だし……

ちらりと女将さんを見ると、また目が会った

「どうかなさいましたか?」

そう言う女将さんの笑顔は少し悪戯っ子のようだ

「いえ……美味かったです、また来ますね」

「ありがとうございました、お待ちしています」

店の外まで見送ってくれる女将さんを背に、いつもとは違う帰り道を歩く

たまには道を変えてみるのもいいもんだ

ふと上を見上げてみると、綺麗な月が輝いて

俺の帰り道を明るく照らしていた



おしまい

781: 2018/01/31(水) 23:44:03.05 ID:Bg6gBDvq0
読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです

二月になりますが、変わらずにお付き合い頂ければ幸いです
それではまた明日

引用: 【モバマス】楓さんで安価