884: 2018/02/04(日) 13:34:29.67 ID:7XMPZ4Fa0
アルコール依存な楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】三段腹な楓さん


885: 2018/02/04(日) 13:41:07.21 ID:7XMPZ4Fa0
「楓ちゃん、ちょっと飲みすぎじゃない?」

あきらかにいつものペースより早い

「大丈夫ですよ早苗さん。お酒は裏切りませんし」

なにその意味深なセリフ……きっとこの子はそんな深い意味はないとは思うけど

「よし、あたしが付き合ってあげるから無理しないでね!」

「もちろんです。お酒を飲んでも飲まれるなって言いますし」

いつものやりとりだけど、今回は楓ちゃんの雰囲気が違う気がした

でも、あたしはそんなことには全然気が付かなかった
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
886: 2018/02/04(日) 13:45:27.51 ID:7XMPZ4Fa0
「はぁ……ちょっと酔っちゃいましたねぇ」

ふらふらと千鳥足の楓ちゃん

「……何かあったの?」

これだけ楓ちゃんが酔うなんて珍しい

切り上げるタイミングと言うか、ぎりぎりのところはちゃんと考えて飲んでいたと思うのに

けど、今の楓ちゃんはそれに当てはまらない

そこら辺の疲れたおじさんみたいに、ゾンビみたいな足取りをしてる

887: 2018/02/04(日) 13:48:39.53 ID:7XMPZ4Fa0
「ほら、タクシー捕まえたから乗った乗った」

「ええー、早苗さんはどうするんですかぁ?」

まるで子供みたいに拗ねた表情の楓ちゃんの背中を押していく

もう、私よりたっぱがあるから扱いづらい……

「あたしも帰るの。楓ちゃんも寄り道しないで帰るのよ?」

楓ちゃんがしばらくあたしの顔を見てから

「わかりました。おやすみなさい」

ちょっと悲しそうな、切なそうな表情をして、手を振った

888: 2018/02/04(日) 13:54:08.11 ID:7XMPZ4Fa0
楓ちゃんと飲んだ翌日

あたしが事務所に入ろうとすると、どこかぽやぽやとした表情で楓ちゃんが歩いているのを見つけた

「おはよう楓ちゃん。……なんかお酒くさい気がするけど」

昨日は日付が変わる前には家に着いていたはず、あれから寝たらこんなに匂うはずがない

「おはようございます早苗さん。ちゃんとお家で寝たんですけど、夜中に目が覚めてしまって」

えへへ、と笑顔を浮かべる楓ちゃん

「もしかして……それから飲んでたの?」

「眠れるかなって思ったんですけど、駄目でしたね」

やっぱりこの子……何かあったんじゃないの?

889: 2018/02/04(日) 14:09:08.02 ID:7XMPZ4Fa0
レッスン中に楓ちゃんがふらりと倒れたかと思うと、そのまま嘔吐した

他のアイドル達がしぃんとしているなか、響くのは楓ちゃんの苦しそうなうめき声だけ

あたしはすぐにタオルを持って駆け寄り、楓ちゃんの声をかける

「大丈夫? 医務室に連れて行ってあげるから我慢してね」

マストレさんにアイコンタクトを送って、あたしは楓ちゃんに肩を貸す

身長差があるけど、このぐらい……気合いよね、気合い

吐しゃ物を残してきちゃったのは気が引けるけど、この場合は仕方ないわよね

890: 2018/02/04(日) 14:13:45.12 ID:7XMPZ4Fa0
このプロダクションは女性に対しての福利厚生が整ってる

医務室にいる方も女性だし、何かあった時はとても助かるの

「睡眠不足と……それに、深酒のせいですかねぇ」

「そうですか……」

相槌を適当に打つけど、あたしも楓ちゃんの状態は聞かなくてもわかる

「今日のレッスンとお仕事はキャンセルです。今日は寝かせておいてあげましょう」

「すみません、よろしくお願いします」

あたしはお辞儀をして、医務室を去る

さて……楓ちゃんがこんな風になっているのに、担当のプロデューサーは何をしているのかしら

891: 2018/02/04(日) 14:16:52.39 ID:7XMPZ4Fa0
あたしは事務所に向かうと、音なんて気にしないでドアを開けた

楓ちゃんの担当は……いた

「ねぇ、ちょっとお話いいかな」

「はぁ……いいですけど」

楓ちゃんのプロデューサーはきょとんとした顔であたしに応える

はぁってなによ、はぁって! 楓ちゃんがあんな風になってるのにあんたは何してるの?

ふつふつと怒りが湧いてくるけど、ここじゃまずいと思って屋上に場所を変えた

892: 2018/02/04(日) 14:20:50.74 ID:7XMPZ4Fa0
「さっき、楓ちゃんがレッスン中に倒れて嘔吐したの」

冷たい風が吹く屋上で、あたしは彼にありのままを伝えた

「高垣さんが……?」

驚いたような表情をしているけど、その裏には違う感情をあるような気がする

「ねぇ、楓ちゃんに何があったか知ってる……わよね?」

ここ最近の楓ちゃんはまるで自分の体を痛めつけるかのような行動をとっている気がするし

なにより、原因はきっとこの男にあるんじゃないかって、警察官だったころのあたしの勘がそう言っている

893: 2018/02/04(日) 14:25:03.01 ID:7XMPZ4Fa0
「……じ、実はですね」

担当プロデューサーが重い口を開く

「少し前に、その……高垣さんと関係を作ってしまいまして、それから……」

あたしは絶句しちゃった

男と女の関係がもつれるほど、面倒なことはないけど

へぇ……楓ちゃんがこの男とねぇ……ちょっと見る目がないんじゃないの、楓ちゃん?

そりゃ、悪い噂も聞かないし、優しい人ってのは知っているけどさ

でもねぇ、関係がある女をほっぽっているのはどういうことなの?

894: 2018/02/04(日) 14:29:37.69 ID:7XMPZ4Fa0
さっきの一言から、口を開かない担当プロデューサー

まるで、あたしの言葉をまっているような……ちっ、はっきりしない男ね

あたしが舌打ちをすると、びくりと身を縮めるのも気に入らない

「それで、それからどうしたの?」

話が進まないので、仕方なく、本当に仕方なく言葉をかける

「俺が、高垣さんを振ったんです……」

苦笑いをしながら、担当プロデューサーはあたしにそう言った

895: 2018/02/04(日) 14:33:14.44 ID:7XMPZ4Fa0
「はぁ!? あんたが楓ちゃんを振った? なによ、なにが気に入らなかったの?」

ずいっと担当プロデューサーに近づいて、睨む

「そ、その……俺と高垣さんはプロデューサーとアイドルの関係ですし……」

あたしの視線から逃げるように目をそらし、言葉を続ける

「やっぱりね、良くないって思ったんですよ……はい」

へらへらと笑いながら、いけしゃしゃあと喋る男に、あたしは堪忍袋の緒が切れた

897: 2018/02/04(日) 14:38:15.16 ID:7XMPZ4Fa0
あたしの右手が勝手に動いて、男の頬をびんたしてた

「……いってぇ」

「いてぇじゃないわよ! 楓ちゃんはもっと痛い気持ちを味わったのよ?」

この男はきっと楓ちゃんの体が目当てだったに違いない

楓ちゃんは押したら断れなさそうだし、顔だけは良いこの男に騙されたんだ

それに、さっきからあたしの胸ばかり見てるのにはとっくに気付いてる

ああ、楓ちゃん……あなたはもっと男を見る目を磨くべきね

あたしはまだ怒りが収まらず、そのへらへらとした顔を、もう一度ぶった

898: 2018/02/04(日) 14:44:24.83 ID:7XMPZ4Fa0
もうこの男とはなすことはない、あたしはそう判断して、医務室へと向かう事にした

「え……楓ちゃん、帰ったんですか?」

「ええ、片桐さんとすれ違いですね」

タイミングが悪かったようだ、ちっ……あんな男に時間をとられるなんて癪ね

「意識もはっきりしていましたし、明日は大丈夫だと思いますよ」

「わかりました、お手数をおかけしました」

あたしは深くお辞儀をしてから医務室を後にした

……楓ちゃん、本当に大丈夫なの?

どうにももやもやして、LINEを送ったけど、楓ちゃんからの返事はなかった

899: 2018/02/04(日) 14:48:09.23 ID:7XMPZ4Fa0
あの事があってから、三日目

いまだに連絡もないし、楓ちゃんが事務所に来ていない

ちひろさんもあの男も焦っているようで、あたふたとしている

しまいには「高垣さんの様子を見てきてくれませんか?」だって

はん……あんたに言われなくてもこっちはそのつもりだっての

けど、午前中は収録の仕事があったので、それが終わると同時にタクシーを拾って楓ちゃんのマンションへと向かう

900: 2018/02/04(日) 14:51:56.50 ID:7XMPZ4Fa0
……この部屋よね

何度も来たことがある部屋なのに、今日は身構えちゃう

インターホンを何度か鳴らして……返答がない

楓ちゃんはこの部屋にいるはずなんだけど、どうしよう

試しにドアノブを捻ってみると、ぎぃと音と共にドアノブが回った

もしかして事件とかに巻き込まれてないわよね?

心臓の鼓動が高鳴るなか、あたしは楓ちゃんの部屋へと入った

901: 2018/02/04(日) 14:55:20.11 ID:7XMPZ4Fa0
楓ちゃんは……いた

机に突っ伏すようにして、グラスに入ったお酒を飲んでる

「あ……早苗さ~ん♪」

あたしに気付いたのか、楓ちゃんが明るい声を出した

「不用心すぎるわよ、それに……」

部屋中がお酒臭い

アロマか何かわからないけど、それと相まって変な匂いがしてる

それに、部屋に転がっているお酒の瓶の数が、尋常じゃないことを物語ってる


902: 2018/02/04(日) 15:06:23.17 ID:7XMPZ4Fa0
「早苗さんも飲みましょうよぉ……」

「楓ちゃん、あんたねぇ……」

楓ちゃんに近づいて説教でもしてやろうと思って、あたしは思いとどまる

「あ……」

言葉が、出てこない

「どうしたんですかぁ……?」

つやつやしてた髪はぼさぼさで、綺麗だった瞳も濁ってる

目の下にはクマができているし、私にグラスを渡そうとしている手は……ふるふると震えていた

「あ、ああ……」

あたしの目の前にいるのはアイドルの高垣楓じゃない

……お酒に溺れざるを得なかった、一人の弱い女性

903: 2018/02/04(日) 15:10:46.10 ID:7XMPZ4Fa0
「きゃあ……早苗さんはあったかいですねぇ♪」

体が勝手に動いて、楓ちゃんを抱きしめてた

「もう良いのよ楓ちゃん。もう、無理しなくていいの……」

「……早苗さんも、お酒と一緒で、私と一緒にいてくれるんですねぇ」

ぼろぼろな顔で、痛々しい笑顔を作る楓ちゃん

「うん、楓ちゃんの傍にいるから……もう安心だから」

数日会わなかっただけなのに、とても細くなってしまったような楓ちゃんを抱きしめながら

あたしは涙が止まらなかった




おしまい

905: 2018/02/04(日) 15:13:25.66 ID:7XMPZ4Fa0
大変だ、楓さんを介抱しにいかなくちゃ……

お酒はほどほどに、ガシャもほどほどに
何事も適量というものがあるんです

それでは読んでくれた方に感謝を
再開は夜からにします
ではではー

引用: 【モバマス】楓さんで安価