嫁「結婚してから、今年でもう10年になるんだね」

嫁「長かったような…短かったような…」

嫁「覚えてる？プロポーズしてくれた時のこと」

嫁「あの時のあなた、かっこよかったなあ…」

嫁「あ、いやいや！今でもかっこいいよ」

嫁「別に！今かっこよくないとかそういう意味じゃなくって！」

嫁「子供も今年でもう9歳かぁ…春からは3年生だ」

嫁「いい？子供に寂しい思いさせたら私が許さないんだから」

嫁「私だって寂しいよ…あんまり会いに来てくれないし…」

嫁「でもせめて、せめて子供には寂しい思いをさせたくないから…」

嫁「ごめんね……私がもっと傍にいてあげられたらよかったのに……」ｸﾞｽｯ

嫁「………そうだよね、私が泣いてても仕方ないもんね…」

嫁「もっと、色んなところとかにも行きたかったなあ…」

嫁「あなたが忙しかったからあんまり二人でどこかに行くことも少なかったけど…」

嫁「仕方ないよ、仕事だもん」

嫁「でも…付き合ってた時に連れていってくれた、あの夜景の見えるところとか……とっても綺麗だった」

嫁「……あそこでいきなり…キスされたのはちょっとビックリしたけど」

嫁「だって！いくらロマンチックだなんとかでもいきなりそんなことされたら誰だってびっくりぐらいするよ！」

嫁「普段そんなことしないくせに、ぎゅーもしてくれなかったのに」

嫁「ほんと、わかんない人」

嫁「で？最近どうなの？」

嫁「え！？まだ家片付けてないの？！」

嫁「こうやって会えるんだからさ、全部捨てるかまとめるかしてほしいなー」

嫁「もー、そんなんじゃモテないぞ」

嫁「まあ…気持ちはわかるけどさ……私は構わないから」

嫁「むしろ、そっちのほうがあの子にとってもいいと私は思うし」

嫁「あっ、違う違う！別にあなたが頼りないとかそういうわけじゃないから！」

嫁「ふぅ…なんだか疲れちゃった」

嫁「…これ、傍から見たらあなたが1人で喋ってるみたいに見えるのかな？ははっ、なんだか面白いね」

嫁「変な人だよ、こんな所でぶつぶつ喋ってるとか完全にちょっとヤバい人みたいだもん」

嫁「あ、いつもありがとうねこれ、美味しく頂いてまーす」

嫁「そういやこないだ蓋開けといてくれなかったでしょ、飲めなかったんだからね」

嫁「はいはい、私は酒好きの嫁ですよっと」

嫁「それにしても暑いねー、毎年暑くなってない？」

嫁「普通こういうのって涼しいイメージあるけどね、ヒヤッとするみたいな」

嫁「ほら、あっちにもいっぱい」

嫁「はははっ…冗談だよ、いくらなんでもこんな熱い昼時に出てこないって」

嫁「あー私？出来れば暑いし出てきたくなかった」

嫁「あはは、ごめんごめん…そっちのほうが暑いし来るの大変だしね」

嫁「……もうそろそろ、行っちゃう感じ？」

嫁「そりゃそうだよね、いつまでもいる訳にいかないし」

嫁「また…当分会えなくなるね」

嫁「もー、泣かないでよ……私まで泣きそうになるじゃん………うぅ…」

嫁「もしかしたらもう会えなくなるかもしれないって思ったら……いまみたいにもう私が出てこれなくなったりしたら………」

嫁「ぅう…………ごめんね………ほんと……わたしのせいで…………」

嫁「もっと、あなたにすきって言いたかった…」

嫁「もっと、あなたと一緒に生きてたかった…」

嫁「もっと、家族で永く暮らしたかった……」

嫁「もっと…もっと……」

嫁「……いまさら言っても…どうにもなんないけど………」

嫁「ほんと……ごめんね………うぅ………」

嫁「………うん、もう大丈夫…」

嫁「…じゃあ、また1年ちゃんとあなたが生きれるように、私が目標を考えてあげる」

嫁「うーん……じゃあ……来年までに再婚するってのはどう？」

嫁「私がしていいって言ってるんだからさ、それならあなたも気持ち的にしやすいでしょ？」

嫁「もちろん1年でできるなんて思ってないよ、でもまだまだ若いんだからさ、あなたにはとにかく幸せになってほしいから」

嫁「それでいちゃいちゃ見せつけられたら嫉妬して化けて出たりして、はははっ」

嫁「いい？約束破ったら怒るからね、ちゃんとしてよ」

嫁「…なんかいろいろ言い過ぎちゃったかな」

嫁「あなたなら大丈夫、元嫁が言うんだから間違いない」

嫁「今年は送り火の時、晴れてたらいいなあ…去年めっちゃ濡れたし…」

嫁「……じゃ、そろそろバイバイかな」

嫁「来年のお盆、またここで待ってるから」

嫁「あなたと会えるの………楽しみにしてるね」

おわり

おわりです
お前らも嫁いなくても墓参りぐらい行けよ