102: 2015/05/17(日) 08:27:38.12 ID:pk6/ckzy0
おはようございます。
読み返すと、艦これ要素は添えるだけなアレ。


最初へ:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」


軽い鎮守府日常パート。

103: 2015/05/17(日) 08:31:45.13 ID:pk6/ckzy0

翌日 工廠

夕張「ハアァァァー……」

由良「ああ居た居た夕張……って何その顔!?」

夕張「なにー……なんかよーうかーい……?」

由良「夕張の顔が妖怪じみてるわ。目は真っ赤だしクマはスゴいし……」

夕張「あー……昨日思いっきり泣いたから寝不足で……」

由良「その顔、女子としては色々アウトよ」

夕張「いや、うん……分かってるけど……コレ見たらまた泣けてきた……」


左サイド全体に大きく擦り傷がついたワンエイティ

酷い所は塗装の下地まで剥げ、凹みもある


由良「ああ、コレ。話には聞いていたけど、随分派手にいったみたいね」

夕張「……誰から聞いたの」

由良「今朝早くから、青葉が動画付きで皆に吹いて回っていたから」

夕張「アオバワレェ……」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
104: 2015/05/17(日) 08:33:28.15 ID:pk6/ckzy0

由良「で、コレどうするの?」

夕張「直すに決まってるじゃない。この際だからボディ補強もしっかりやって……」

由良「ということは、まだ夜中のドンチャン騒ぎを続けるってことね」ハァ

夕張「ドンチャン騒ぎって」

由良「提督もそうだけど、ウルサイのよこのクルマ。夜中にウルサイのは川内だけで充分ですっ」

川内「なにー……よんだー……?」

由良「呼んでないからっ。どっから出てきたの、この夜行性の生き物」

川内「呼んでないのー……今は眠いんだからさー……」フアァー

由良「もう昼過ぎよ」

夕張「川内と同レベル……不幸だわ」

川内「ねむねむねむ……」

由良「何なのウチの軽巡は……っ」

105: 2015/05/17(日) 08:37:08.25 ID:pk6/ckzy0

若葉 トコトコ

由良「また増えた」

川内「夕張を励ますんじゃないのー……」

由良「タンバリン持ってるけど?」

川内「……陽気に踊るんじゃない?」

由良「若葉ってそんなキャラじゃないでしょ」

若葉 ツンツン

夕張「なーに……若葉ちゃ 若葉「いじけるなベイビー」

若葉 トコトコ

夕張「……?」

川内「……え」

由良「今の何」

若葉 クルッ

若葉「エレクトリックサーカス」

ピシャッ

夕張「 」

川内「……もう一回寝直してくるわ」

由良「由良も……」

106: 2015/05/17(日) 08:38:44.61 ID:pk6/ckzy0

鎮守府・外

青葉「ですからっ!青葉見たんです!」

古鷹「そ、そう……」

最上「もう、朝から聞いてるよー」

青葉「深夜の都心高速は、ドラマが一杯だったんです!」

青葉「不肖、青葉!感動しました!」

古鷹「う、うん……」

最上「それはいいんだけどね」

青葉onママチャリ

青葉「さっきからどうしたんですか二人とも。青葉の話も上の空じゃないですか!」

最上「いや、だってさ……」

古鷹「ねえ青葉、その自転車で何処へ行くの?」

青葉「取材に決まってるじゃないですか!」

107: 2015/05/17(日) 08:41:22.64 ID:pk6/ckzy0

最上「まさかとは思うけどさー……青葉、それ乗って都心高速行く気じゃ……」

青葉「何を今更」シレッ

最上「うわぁ!?」

古鷹「やっぱり!」

青葉「これから様々な都高ランナーの方達に突撃取材を敢行して!」

青葉「同乗させてもらい、その様子を撮影していく所存です!」

古鷹「待って青葉!それ自転車だよ!?」

最上「そうだよ!それに都心高速は高速道路だよ!?」

青葉「それ位知ってます」ハン

古鷹「 」

最上「 」

青葉「幸いこの鎮守府から湾岸線は近いですからね!いざ、出撃しちゃいま~す!」チリンチリン

古・最 ハッ

青葉「ぱーぱーぱぱぱ・ぱーぱーぱっぱ♪」←ロッキーっぽいテーマ

最上「う、うわあぁ~!!?」ガシッ

古鷹「ダメェ~!」ガシッ

青葉「何ですかさっきから!離してくださいよぉ!」ググッ

摩耶「……ああ?さっきから、うるせえなぁ……」

最上「あ!摩耶!いい所に!」

古鷹「お願い!青葉を止めるの手伝ってぇ!」

摩耶「止めるって……コイツ何する気だよ」

古鷹「自転車で都心高速に行こうとしてるの!」

摩耶「提督っ!それか叢雲呼べっ!この馬鹿どうにかしろーっ!!」


―余談。

その後、深夜になると多数の撮影機材を持ったセーラー服の少女が出没し、

出くわすやいなや「画を撮らせてください!青葉の趣味なんです!」と同乗走行を求められるという噂が実しやかに噂され、

某自動車雑誌の読者投稿コーナーにおいて「湾岸の青葉さんを探せ!」という題目で大喜利のネタにされるようになるのは、また別のお話である。

108: 2015/05/17(日) 08:44:01.56 ID:pk6/ckzy0

執務室

ワーギャー

提督 カリカリ

叢雲 カリカリ

提督「……何か呼ばれた気がする」

叢雲「気のせいじゃない」カリカリ

提督「ちょっと行って来る」ガタッ

叢雲「待ちなさい」

提督 ピタッ

叢雲「昨晩、夕張が事故起こしたそうじゃない」カリカリ

提督「まあ、盛大な自爆だな。青葉の映像でも見るか?」

叢雲「その映像を見て知ったのよ」カリカリ

提督「さいですか」

叢雲「アンタ、自分の立場を分かっているんでしょうね?」

提督「一応、小さい鎮守府ながらも提督であります……」

叢雲「そうよ。アンタがこの鎮守府の代表。責任者よ」

提督「ハイ、そうですね……」

109: 2015/05/17(日) 08:46:10.54 ID:pk6/ckzy0

叢雲「個人の趣味だからとやかく言うつもりは無い。だけど、アンタの場合は度が過ぎている」

叢雲「挙句部下の艦娘を連れ出し、その艦娘が事故を起こした。大したスキャンダルだわ」

叢雲「今回は幸い怪我人は無し。夕張は……まあ見れたモンじゃないけど」

叢雲「しかし、一歩間違えれば大惨事。護るべき立場の人間が壊す・犯す」

叢雲「この言葉の意味、分かるわよね?」

提督(ヤッベェ……これ一番怒ってる時の顔だ)

コンコン

時雨「提督!凛として時雨の『テレキャスターの真実』を間違えずに弾けるようになったよ……って、あ」ガチャ

提督「やぁ時雨……おめでとう」

時雨「……お邪魔だったかな?」

叢雲「いいえ、そんなことないわ。丁度終わったところよ」

時雨「そう……ならいいんだけど」

叢雲「ところで、さっきから外で騒いでいる連中は何をしているの?私と提督を呼んでいたみたいだけど」

提督(さっき気のせいって言ってたじゃん)

時雨「ああ……青葉が自転車で都心高速に行くって聞かないんだ。最上や古鷹が必氏で抑えているところさ」

提督「何してるんだアイツ……」

叢雲「あまり黙らないようなら、酸素魚雷をお見舞いしてやりなさい。私が許可するわ」

提督「え、ちょ」

時雨「了解。ちょっと入渠させて頭を冷やしてもらおう」

叢雲「お願いね、時雨」

時雨「大丈夫、行ってくるよ」バタン

提督「え、えー……」

叢雲「いつまでつっ立ってるの?片付ける書類はまだあるんだから、早く執務に戻りなさい」

提督「は、はーい……」

117: 2015/05/18(月) 09:23:21.00 ID:vFMI5Ywl0

鎮守府・外 喫煙所

提督「あー……やっと一服できる」

山城・摩耶・龍驤 スパー

提督「……何だこの組み合わせ」

龍驤「いや、何でただタバコ吹かしてるだけでそんな顔されなアカンの」

提督「だって妙な威圧感があるんだもん、この面子」

龍驤「そらまあ、こんな綺麗どころが集まっとるんやし?怖気づくのもしゃーないで自分」

提督「そういう意味じゃねーよ。どう見てもレディースの集会だよコレ」

摩耶「つーかさぁ、ここで吸ってるのアタシら位しか居ないんだから今更文句言うんじゃねーよ」

提督「ならせめてキティッパ(キティちゃんのスリッパ)履いてうろつくの止めてもらえませんかね」

摩耶「関係ないだろ。それに楽だし可愛いから別にいいじゃん」

提督「可愛いって言う割にはキティちゃんの顔、汚れてないか?」

龍驤「ホンマや。それやただの野良猫やんけ」

摩耶「うわ、ホントだ。しかもちょっと剥がれてる」

山城 スパー

118: 2015/05/18(月) 09:26:18.03 ID:vFMI5Ywl0

提督「で、我関せずみたいに振舞ってる山城よ。お前また勝手にCD持ち出したろ」

山城「あら、そうでしたっけ」

山城「最近CDがやたらと増えて、部屋にあるカラーボックスに収まりきらなくなって不幸だと思っていたけど……提督のCDも混ざっていたから急に増えたのね」

提督「どんだけ持って行っているんだよ」

山城「さあ?今まで食べたパンの枚数よりは少ないんじゃない?」フー

提督「ハァ……まあいいや」

山城「提督は簡単に折れてくれるから楽だわー幸運だわー」

提督「黙ってればつけ上がりやがってコイツ……美人だけど」

摩耶「結局顔かよ」

龍驤「まあ、たかがCD如きでネチネチつまらんこと言うても、器が小っさく見られるだけやしね」

摩耶「そもそも提督に器なんてあったのか?」

龍驤「そらーアレや、どんな海より深ぁい色の器を持っとるわ」

摩耶「へー……そうは見えないけどな」

提督「いや、よく聞け摩耶。海より深い色だからね?器の深さじゃなくて色の深さだからね?」

摩耶「ああ色か。ややこしい」

山城「今の楽しみは、提督が予約しているシロップ16gの新譜を先に聴いて独占することね。ウフフ……幸福だわ」

提督「おい!」

若葉「スモーキン・ビリー」

龍驤「今の何?」

摩耶「知らね」モウイッポンスオウ


119: 2015/05/18(月) 09:28:46.52 ID:vFMI5Ywl0

談話室

瑞鳳 ジー

瑞鳳 ジーー

浜風「瑞鳳さん、まだ青葉さんの映像見てらしたんですか」

浦風「ほんまによう飽きんわいねぇ」

瑞鳳 ジーーー

浜風「聞こえていない……?」

浦風「もっしもーし?」

瑞鳳 ジジジー

浜風「ダメね」

浦風「ごっつい集中力じゃ」

瑞鳳 ボソボソ

浜風「??」

浦風「何じゃろ?」

瑞鳳「赤城さんのFD……サイドポート加工で約400馬力位かな。そうするとタービンは多分T04Z辺りを組んでいるハズね。だとすればまだ余力がある。足回りはそれほど締めてなさそう……フロント10にリヤは8キロ……いや、それよりもう少し硬いか。判別が難しいところね……」ブツブツ

浜風「!?」ビクッ

浦風「怖っ!なんか怖いわっ!」

120: 2015/05/18(月) 09:30:24.49 ID:vFMI5Ywl0

瑞鳳「あら?二人とも、どうかしたの?」

浜風「それはこちらの台詞ですよ」

浦風「急に呪文みたいなもんぼやき始めよるき、ビックリしたわ」

瑞鳳「赤城さんのFDを研究していただけで、何をそんなに驚いているのよ」キョトン

浜風「研究……ですか」

浦風「研究してどうするん?」

瑞鳳「え?面白くない?」

浜風「ごめんなさい、よく分かりません」

浦風「ウチには警察24時で流れとる暴走族の映像にしか見えんわ」

瑞鳳「それは……行為自体は褒められたものではないけど」

瑞鳳「この映像には様々な情報が集約されているの。提督と夕張のワンエイティは大体の仕様は知っているからいいんだけど、他の鎮守府の、それも一航戦として名高い赤城さんよ。その赤城さんのFDならば実に興味深いじゃない?例えばここのシーン、夕張のワンエイティが跳ねているギャップも赤城さんのFDはショックをスッと吸収している。夕張はまだ仕上がっていないから仕方ないにしても、この動き一つとっても得られることは沢山ある。これは私の推測だけど、赤城さんは都高環状線に絞ってFDを弄っているわ。都高環状で通用すれば、どんなステージでも対応出来るなんて聞いたことあるけど、大袈裟でもなさそうね。あとこのシーンもうんたらかんたら」

浜・浦「はぁ……」

若葉「サタニック・ブンブン・ヘッド」

浜風「何ですか今の」

浦風「知らんわ」

121: 2015/05/18(月) 09:35:16.85 ID:vFMI5Ywl0

浜風……書けば出る書けば出る……

今回で鎮守府パート一旦終了。
次回登場する艦娘は皆大好きあの姉妹。
赤城さんの時点で察しはつきますね。


126: 2015/05/18(月) 20:54:30.80 ID:vFMI5Ywl0

夜・執務室

提督「んん~……っ、さて、今日はそろそろ休むかなぁ」

叢雲「そうね。キリもいいし終わりにしましょ」

提督「何か一杯呑みたい気分」

叢雲「呑むの?今日も出るかと思ったのに」

提督「流石に昨日の今日では出ないって」

叢雲「あら意外。ま、大人しくしてくれるなら何よりだわ」

提督「じゃ、とりあえず何かもっt 川内「提督!」バアン

提督「どわっ!?何だよ川内」

叢雲「ノックくらいしてから入りなさいよ」

川内「そんなことよりさ!私に隠れて夜戦してるでしょ!」

提督「……はぁ?」

叢雲「何を言ってるの」

川内「とぼけても無駄だからね!夜に夕張と一緒に出掛けて、夜戦しているの知ってるんだから!」

提督「……叢雲、コイツも俺と夕張が何をやってるのか知らないクチ?」

叢雲「さあ?この様子じゃ本気で知らないんじゃない?」

提督「朝から青葉があんだけ宣伝しておいて?」

叢雲「この子、昼間は寝惚けているから憶えていないんじゃないの?」

提督「んなアホな」


127: 2015/05/18(月) 20:59:31.63 ID:vFMI5Ywl0

川内「二人でコソコソ何話してるのさ……あ!さてはこれからの夜戦の打ち合わせね!ずるい!」

提督「行かないっての。今日はもう休むんだから」

叢雲「いいんじゃない?口で説明するより、実際に見せてあげた方が早いわ」

提督「いやいや、お前俺のこと止める側だろ?促してどうするんだよ」

叢雲「言ったでしょ?節度さえ守ってくれれば口出ししないって。それに……」チラ

川内 ジトー

叢雲「川内が黙って退くタイプに見える?」

提督「ええぇぇー……」

川内「さあさあさあ!」

提督「ああー……もう分かったよ!可愛い川内の為だ!着いて来い!」

128: 2015/05/18(月) 21:01:21.78 ID:vFMI5Ywl0
工廠

夕張 ワンエイティ修復中

提督「夕張ぃ」

夕張「ん?どうしたんですか提督?」

提督「前に買ったアレさ……何処に置いたっけ?」

夕張「アレ……?もしかして、買うだけ買って放置してるアレですか?」

提督「そうそう。と言うか、今すぐ動かせる?」

夕張「提督が放置しているから、代わりに私が面倒見てますので大丈夫です」

提督「ああ……すまん」

夕張「そうですよー?感謝してくださいね」

川内「うわっ!?夕張のワンエイティ傷だらけじゃん!ナニコレ!?」

夕張「アンタ昼間も見てるでしょうが」

提督「……ホントに何も知らないんだな」

129: 2015/05/18(月) 21:03:30.26 ID:vFMI5Ywl0

夕張「……っと、アレでしたね。持って来ますよ」

提督「ああ、頼むよ」

川内「てーいーとーくー。それより何の為にココに来たのー?早く行こうよぉ」

提督「せっかちさんだな。お前に渡したいモノがあるから少し待ってろって」

川内「それって夜戦に関係あるの?」

提督「あるとも。これが無くちゃあ始まらない」

川内「……じゃあ待つ」

提督「よしよし……っと、来たな」

川内「?」

パアアァァァァン……

夕張「お待たせしました。例のアレです」

提督「おおう、スゴい調子が良さそうだな。アイドリングも安定しているし」

夕張「でしょー?色々苦労したんですよ?」

130: 2015/05/18(月) 21:05:52.93 ID:vFMI5Ywl0

川内「ねえ、なにこれ?」

提督「NSR250、しかもまさかのハチハチ(88年式)だ!今となっては超貴重だぞ?」

夕張「古さは否めないけど、バッチリ仕上げてあるから峠辺りなら良い線行くんじゃないかしら?」

川内「え?峠……?」

夕張「あとは装備ね。まずはこのヘルメット。半ヘルじゃ危ないから当然フルフェイス」

川内「ああ……うん???」カポ

夕張「それとコレ、ツナギも着ておきなさい。いくら艦娘だからと言っても、肌を露出したまま乗るのは危ないし」

提督「これらの装備は妖精さん達が一瞬で作ってくれました」

妖精ズ イエーイ

川内「着替えればいいの?」

提督「おう。俺達はここで待ってるから」

川内「よく分からないけど分かった」

艦娘着替え中

131: 2015/05/18(月) 21:07:45.00 ID:vFMI5Ywl0

川内「終わったよー」←ライダースーツ&フルフェイス装備

提督「おお、カッコいいカッコいい」

夕張「似合うじゃない」

川内「え、うん。ありがと……?」

提督「事態を飲み込めていないようだな」

夕張「それでもちゃんと着て跨る辺り律儀ね」

川内「ねえ、これどういうこと?何で今私バイクに乗せられているの?」 

提督「だからお前ご所望の夜戦装備だ。なかなか様になってるぞ」

川内「これと夜戦がどう繋がるのか、さっぱり分からないんだけど……」

提督「だから、俺と夕張が普段やっていることを体験してもらう為さ」

川内「???」


132: 2015/05/18(月) 21:09:30.12 ID:vFMI5Ywl0

提督「夕張のクルマは今修復中で出せないから、代わりにそのNSRに乗ってもらって、川内にも体験してもらおうという俺の粋な計らい」

川内「ええと……これはアレなの?所謂走り屋ってヤツ?」

提督「今あんまりその言葉使わない気もするが、まあそうなるな」

川内「で、たまに提督と夕張が出かけていたのは、峠を走り回る為?」

夕張「基本は都高だけど、たまに行くわね」

川内「つまり、夜戦じゃない……?」

提督「ある意味夜戦だけどな」

夕張「間違ってはいないですね」

川内「………」

川内「騙したなあぁっ!!!」

133: 2015/05/18(月) 21:17:20.37 ID:vFMI5Ywl0

提督「騙したも何も、お前が勘違いしてただけだろうに」タバコスパー

夕張「皆知ってると思ったんだけど、アンタといい青葉といい知らない子もいるみたいだけど」

提・夕「ねー?」

川内「何か腹立つ!特に提督!いい歳して何が『ねー?』だよ!」

提督「人は誰でも平等に歳を取るものさ。特にハタチ越えたらあっという間だよ」

夕張「あんまり怒ると肌荒れるわよ?アンタは只でさえ夜型なんだから」

提督「夜な夜な走り回っているお前も変わらないだろ」

夕張「そこが悩みというか、ジレンマなんですよね。お肌の曲がり角も実は20歳位から始まるらしいし」

川内「ムキー!私まだピチピチの十代だもん!那珂程じゃなくても多少は気使ってるし!」

提督「十代がピチピチて」

夕張「ちゃんと気にしている辺りは川内も単なる夜戦馬鹿じゃないんですね」

川内「うぅー……っ」

川内「何なら触る!?触って確かめる!?見てこの肌の輝き!」ヌギヌギ

夕張「止めなさい馬鹿!」

134: 2015/05/18(月) 21:21:47.59 ID:vFMI5Ywl0

5分後……

川内「取り乱しました」

提督「落ち着いて何よりだ」

夕張「け、軽巡の中じゃアンタが一番錬度高いんだから、暴れられると困るのよ……」ゼーゼー

提督「それでも被害を出さずキッチリ止めたのは、常日頃の鍛錬の賜物だな」

夕張「どうも……」ハーハー

提督「でも、本人同意の上で川内の肌に触れられるチャンスだったのに……惜しいことをした」チェッ

夕張「なんだとこの野郎」

提督「悪ノリが過ぎたな。で、どうする川内?」

川内「何が?」

提督「いや、お前が望んでいた夜戦ではないのは分かってもらえたわけだし、今日はお開きにするか?」

川内「うーん……確かにそうだけど。ねえ、このバイクって私が乗ってもいいの?」

夕張「元は提督がたまたま見つけて、盆栽にでもしようと思ってたみたいだから、アンタが乗っていても別にいいんじゃない?」

川内「盆栽?植えるの?」

夕張「盆栽みたいに、自分で手を入れて飾り物にすることね」

提督「2ストってあんまり乗ったことないから怖いんだよ」

川内「へー……」

135: 2015/05/18(月) 21:29:59.74 ID:vFMI5Ywl0

夕張「ただでさえ貴重なレーサーレプリカだから気持ちは分からなくもないけどね」

提督「おうよ。国内で2ストが絶滅した今、こんな刺激的なモノは二度と出ないだろう」

夕張「でも走る為のバイクなんだから、乗らなきゃ勿体無いわ」

川内「うーん……二輪の講習は訓練時代に受けたから、一応乗れるんだよね」

提督「え?そんな講習あったの?」

夕張「有事の際、陸での移動手段として運転講習が組み込まれていました」

提督「マジか」

夕張「大型は乗れませんけど、免許もありますよ」

川内「折角貰えるんなら、貰っちゃおうかな」

提督「誰もあげるとは 夕張「決まりね!今日からそのNSRはアナタのモノよ!」

川内「わーい!やったー!」

提督「それ、100万近くしたんだけど……」

夕張「あら?あの子の顔見ても断れます?」

川内 キラキラ

提督「無理」

夕張「でしょ?」

川内「ねえ!これから出かけようよ!」

136: 2015/05/18(月) 21:36:35.23 ID:vFMI5Ywl0
>>135 ×訓練時代 ○訓練生時代


Hakone

提督「ということでHakoneにやって来た」

川内 フンス

提督「ここまでそこそこの距離があったけど、運転には慣れたか?」

川内「そうだなぁ……最初は戸惑ったけど、一定の回転数以下に落とさなければ良いんだね」

提督「2ストはパワーバンドに入った途端別次元の加速だからな。俺はその感覚に慣れなくて未だに怖い」

夕張「それが楽しいんじゃないですか」

提督「クルマも二輪も全域フラットな特性の方が乗りやすくて楽だ」

川内「じゃあ提督は、それが弱点だと思うの?」

提督「言い方を変えれば、な」

川内「でもさー、それを分かっているんだったらそれに合わせればいいだけじゃない?」

提督「ぬ?」

川内「その特性を理解してるんだったら、別に弱点っていう風にはならないと思うけどなぁ」

提督「ぬおっ!乗り始めて小一時間程度の娘っこのクセに、鋭いことを」

夕張「なかなかの着眼点ね」

提督「……ま、まあこんな所で立ち話してもなんだしな。早速上ってみようか」

川内「オー!」

「Hey!ちょーっと待つデース!」

137: 2015/05/18(月) 21:43:58.69 ID:vFMI5Ywl0

提督「このパターンは……」

夕張「昨日の青葉と同じですね」

提督「でも今日は居ないぞ」

夕張「湾岸にチャリで行こうとしてたらしいじゃないですか」

提督「時雨に酸素魚雷ぶち込まれてドッグ行きだ」

夕張「何それ怖い」

「ゴチャゴチャウルサイですネー!シャラップ!」

提督「ところでさ、このカタコトな口調って……」

夕張「どう考えても、あの鎮守府の……」

川内「誰だ!姿を見せろ!」

ライトピカーッ!

提督「うおっ眩し」

夕張「なにアレ」

川内「クッ……照明弾!?」

提督「よく見ろ、クルマのヘッドライトだ」

夕張「四台分ですね」

138: 2015/05/18(月) 21:47:43.23 ID:vFMI5Ywl0

「アナタ達ですネー!最近この辺りを荒らしているというのは!」カーン

川内「あ!武器持ってる!ヤる気!?」

提督「何で角材持ってるのあの人」

夕張「というか何この茶番」

川内「誰だ!」


「一号!金剛!」

「二号!比叡!」

「さ、三号!榛名です!」

「四号!霧島!」


四人「我ら、金剛レーシング!」ビシィッ


提督「 」

夕張「 」

川内「こ、金剛レーシング!?」

139: 2015/05/18(月) 21:52:18.75 ID:vFMI5Ywl0

コンゴウレーシングダ!
ココイラデハトップトウワサノアノ!?
キャーステキー!
バーニングラーブ!

提督「い、いつの間にギャラリーが!?」

夕張「私帰ってもいいですか?提督は川内とタンデムして帰って来てください」

提督「置いてかないで。あとレーレプでニケツは無理」

川内「それで、その金剛レーシングが何の用よ!?」

金剛「フッフッフッ。ワタシ達はこの辺りではナンバーワンを自負させてもらってマース」

比叡「そして最近、何処の馬の骨とも分からないヤツが暴れ回っていると聞いて!」

霧島「この金剛レーシング!キッチリ落とし前をつけさせるべく立ち上がったのよ!」

三人「ワーッハッハッ!」

提・夕(帰りたい……)

榛名「……あの、金剛お姉さま」

金剛「どしたネ榛名」

榛名「いえ、あちらの方って以前演習でお会いした市川鎮守府の提督さんでは?」

金剛「ワッツ?」

提督「ヘロー、ミス・コンゴー。ハウワイユー?」

金剛「 」

比叡「 」

霧島「 」

金剛「……ち、違うネー。ワタシ、イギリス人と日本人のハーフ、カレンといいマース」

金剛「ホラ、見てくだサーイ。このユニオンジャックのパーカー。可愛いデショー?」

提督「おう、各所で言われているネタを自分から言うのやめーや」

川内「何の話?」

夕張「中の人の話よ」

川内「中?那珂?」

140: 2015/05/18(月) 21:55:28.89 ID:vFMI5Ywl0

提督「お前達はあの鎮守府の金剛姉妹か。ホントに何やってんの?」

金剛「Oh……まさかこんな所で」

比叡「どうしましょう、お姉様」

提督「別に上に報告するとかそうことはしないよ。俺らだって普段同じ様なもんだからな」

夕張「私なんか昨日事故ってますしね」ズーン

金剛「それなら安心デース!」

提督「……で、見たところ金剛はハチロクか」

夕張「赤城さんもFDだったし、流れ的に榛名さんがハチロクに乗っていても別に不思議は……あれ?」

金剛レビン
比叡レビン
榛名86
霧島86

提督「……違う86だな」

霧島「私はBRZです」

提督「ハチロクですらない!」

夕張「せめてそこは統一しましょうよ!」

141: 2015/05/18(月) 22:03:14.03 ID:vFMI5Ywl0

夕張「せめてそこは統一しましょうよ!」

金剛「そんなことより!ワタシ達自慢のマシーンを紹介しまショウ!」

提督「いや、もうホント結構ですから……」

金剛「遠慮しないネー!」


金剛のAE86レビン
前期型のホワイトツートン
4A-G改スーパーチャージャー仕様で推定260馬力
内装は不必要なものは全て取り外され、ロールゲージが張り巡らされたスパルタンな仕様
見た目はノーマル風だが、N2仕様同等の幅まで拡がる純正形状ワイドフェンダーを装備
自慢はオルガン式フットペダルとサイド管

比叡のAE85レビン
ホワイトツートンの後期型
金剛とほぼ同仕様ながらパワーが若干下で推定250馬力
違いはフットペダルとサイド管か否か
見た目には分からないが、実はハチゴーベースなのは内緒の話


提督「思っていた以上に本気仕様だぞコレは」

川内「中がガラガラ」

夕張「金剛さんなんかサイド管ですよ。車検通らないんじゃ……」

金剛「その時は通常のモノに戻していマース」

提督「ご苦労なことで」

144: 2015/05/18(月) 22:10:07.79 ID:vFMI5Ywl0

榛名の86
カラーはレッド
ボルトオンターボ仕様で約320馬力
金剛・比叡とは違い内装や快適装備も残っている

霧島のBRZ
カラーはブラック
遠心式スーパーチャージャー仕様で約300馬力
後部座席を取り払いロールバーを装備しているが、榛名同様快適装備は残したまま


提督「民間造船所組は86とBRZか」

夕張「榛名さんはてっきりパンダトレノだとばっかり」

榛名「確かに以前はトレノに乗っていましたが、数ヶ月程前にエンジンブローしまして」

霧島「榛名が今の86に乗り換えたのはつい最近なんですよ」

提督「だから榛名の方は作りかけな感じがするのか」

榛名「トレノの時は5A-G仕様にしていました」

提督「イナゴか。そりゃまた渋い」

川内「イナゴ?バッタ?」

提督「5A-G仕様の排気量だよ。1750ccだからイナゴ」

川内「成る程」


154: 2015/05/20(水) 00:23:35.18 ID:6wXEgdsR0

提督「さて、金剛達のクルマも見終わったし、俺達は帰らせてもらおうか」

夕張「そうですね」

川内「えーっ?もう帰るのー?」

提督「……いや、なんかもう疲れたし」

夕張「これ以上居ると厄介事に巻き込まれそうですしね」

川内「まだ全然走ってないけど!」

提督「帰ろう。帰ればまた来れるから。な?」

霧島「……『ステルス』に『インターセプター』」メガネクイッ

提・夕 ピクッ

霧島「かつて都高ランナーの間では『迅帝』と並び、誰しも一度は耳にしたと伺っています」

金剛「何のことデスか?」

榛名「『迅帝』なら榛名も聞いたことがあります。800馬力を優に超える青色のGT-Rを操っていた、とか」

155: 2015/05/20(水) 00:28:22.22 ID:6wXEgdsR0

霧島「ええ。そのモンスター級のRと同等の実力を持ち、環状においては敵は無しと謳われた脅威のワンエイティ」

霧島「互いに壱撃離脱をモットーとしていた為、実際にその姿を見た者はごく僅かとも」

比叡「文字通りの存在だったのね」

霧島「それ故噂だけが独り歩きして、通り名も幾つかあったようですが」

金剛「それで、その話に何の関係があるデスか霧島」

霧島「分かりませんか?『ステルス』と呼ばれたのはブラック、そして『インターセプター』と呼ばれたのはミッドナイトパープル……それぞれカラーリングは違いますが、同一人物と見て間違いないでしょう」

榛名「そのワンエイティって……」

比叡「え、嘘……」

金剛「そう云えば、提督もパープルのワンエイティネー」


156: 2015/05/20(水) 00:30:39.94 ID:6wXEgdsR0

霧島「しかし、二台は突然姿を消しました。『迅帝』はクルマが炎上する程の大事故を起こし氏亡。『インターセプター』も同時期に行方をくらませています」

夕張「氏亡って……岩崎さん生きてるじゃないですか」ヒソヒソ

提督「コラ、シーッ!」ヒソヒソ

霧島 メガネキラーン

夕張 ムグッ

提督「ほら見ろ……」

川内「ねえ?さっきから何の話?」

提督「あー……うん。まあ……」

霧島「そちらの提督の過去の話ですよ」

金剛「霧島、それリアリー?」

霧島「あくまで憶測でしたが、その反応を見るにカマ掛けて正解だったようですね」

157: 2015/05/20(水) 00:37:45.64 ID:6wXEgdsR0

提督「夕張が余計なこと言うから……」

夕張「ごめんなさーい……」

比叡「ということは、ホントに提督がその『インターセプター』なの!?」

榛名「す、スゴい……そんな話が、本当にあるなんて」

霧島「以前演習で伺った際、そのワンエイティを見かけてふと、今の話を思い出したんです」

霧島「何せ十年以上前の事だから、それを知る人も少なく……確たる証拠も見つけていません」

提督「精々都市伝説程度にしか思っていないヤツが殆どだっていうのに、よく調べたなぁ」

霧島「戦況分析が得意なものですから。そのテの話は勝手に舞い込んで来るんですよ」

提督「そういうもんかね……」

158: 2015/05/20(水) 00:40:41.18 ID:6wXEgdsR0

金剛「ヌッフッフ……そんな話を聞いてしまったら、こちらも黙っていられませんネ!」

提督「ホレ見ろ、完全に面倒臭そうな方向に進んでるぞ」

夕張「冗談じゃねえ」

提督「これは最早避けられないディスティニーなのさ……」

川内「二人して急に何なの、その口調……」

金剛「こちらもナンバーワンとして……そーんなレジェンドな人を目の前にしたら、居ても立ってもいられませんヨ!」

金剛「さあ!ワタシと勝負しt 提督「断る」

金剛「ワッツ!?」

提督「やる気無い」

金剛「 」

提督「まあ、それで退くとは思えんからな。仕方ないから相手してやろう」

提督「夕張が」

夕張「……え?」

159: 2015/05/20(水) 00:45:32.48 ID:6wXEgdsR0

提督「頑張れよ夕張」

夕張「アイエエエエエ!?ワタシ!?ワタシナンデ!?」

提督「しんどい」

夕張「嫌ですよ!私のはあんあ状態ですし、提督のクルマに乗って来ただけですよ!?」

提督「俺のでやればいい。同じワンエイティだ、苦労はしないだろ」

夕張「……仮に私が乗るとして、金剛さんに勝てますか?」

提督「100パー無理。相手が悪過ぎる」タバコスパー

夕張「尚更拒否します!」

提督「拒否を拒否!」

夕張「ひでぶ」


160: 2015/05/20(水) 00:48:14.81 ID:6wXEgdsR0

提督「考えてみろ。相手はここらで一番だぞ。どうしたってお前が敵う相手じゃない」

夕張「なら提督が行けばいいじゃないですか」

提督「話は最後まで聞け。その一番の走りを間近で見るチャンスだ」

夕張「そりゃあ、まあ……そうですけど」

提督「しかも、以前から俺のワンエイティを運転してみたかったんだろ?ダブルチャンスだ」

夕張「う……それは……」

提督「これからまた新しくクルマを作り直すんだ。何かの参考になればと思い、俺はあえてお前を推しているんだぞ」

夕張「ああ、もう……分かりました。分かりましたよ。私が乗ればいいんでしょ乗れば」

提督「それでこそ我が艦隊の一員だ!」

夕張「何でこんなことに……」

提督「これが逃れられないディスティニーさ。あ、そうそう」

夕張「……まだ何かあるんですか?」

提督「さっき100パー勝てないって云ったけど、俺のクルマに乗る以上負けは認めない」

夕張「……は?」

提督「繰り返す。負けは認めない」

夕張「慈悲は無いんですか」

161: 2015/05/20(水) 00:50:21.71 ID:6wXEgdsR0

「おい!金剛さんが出るぞ!」
「マジかよ!相手は誰だ!」
「都高から来たワンエイティだってよ!」
「急げ!見逃すぞ!」

提督「おうおう、スゴい人気だ。流石金剛姉妹」

夕張 ←顔面蒼白

提督「どうした夕張。真っ青だぞ」

夕張「アハハー……ホント、誰かさんのせいで」ナミダメ

提督「心配するな。心細いと思って隣に川内を乗せてやった」

川内 サムズアップ

夕張「ちょ!?仮にも昨日事故ってる人の横に乗せますか!?」

提督「だからこそだ。川内が乗っていることでストッパーになる」

夕張「あとついでに撮影係も兼ねてるからな。川内はウチじゃ一番肝が据わってるし、青葉みたいに気絶することもないだろ」

川内「ま、よろしくねっ」

夕張「もう帰りたい……」

162: 2015/05/20(水) 00:52:14.19 ID:6wXEgdsR0

提督「いいか夕張。お前は日が浅い分、まだまだ未熟だ」

夕張「今度は何ですか……」

提督「お前は未熟だ。未熟故に勝負所を見誤る」

夕張「ウッ」グサッ

提督「昨日の結果がまさにそれだ。普段は慎重過ぎる位なのに、無理して突っ込めばどうなるか、分かることだろ」

夕張「ウゥッ」グサッ

提督「ま、そもそも相手のペースにノせられていただけなのに、それを自分の実力と勘違いしていた時点でお察しだな。胸は小さいクセに自意識過剰だな」

川内「何それダサい。胸は小さいクセに」

夕張 チーン

川内「夕張轟沈確認。合掌」

提督「南ー無ー」

163: 2015/05/20(水) 00:54:33.87 ID:6wXEgdsR0

金剛「ヘイヘイ!敵を前にして戦意消失デスかー?情けないデース」

夕張「もう止めて……私のライフはゼロよ……」

提督「ではここでいつもの三か条。峠編復唱開始」

夕張「ひとーつ。センターラインは割らないこと……」

提督「基本中の基本。対向車が来ることを常に想定しろ」

夕張「ひとーつ。スローインファストアウトを心がけること……」

提督「そうだ。出口が見えてからアクセルオンだ」

夕張「ひとーつ。交通ルールを守ること……」

川内「え?最後ウソでしょ?」

提督「おっと。今日は相手が居るから違うな」

夕張「え?何ですか?」

提督「テールライトを追うな。前を見ろ、だ」

164: 2015/05/20(水) 00:56:50.11 ID:6wXEgdsR0

比叡「お姉様!比叡も着いていってよろしいですか!?」

金剛「んー……夕張さんは、イエスorノー?」

夕張「別に構わないですよ……その代わり私を後追いにさせてください」

比叡「よしっ!気合!入れます!」

金剛「比叡は元気だけど、夕張さんはダウナーですネ」

夕張「お気遣いなく……ああ、不幸だわ……」

川内「山城みたいになってる……」


夕張with川内(提督の)180SX vs 金剛レビン&比叡レビン


165: 2015/05/20(水) 01:07:15.06 ID:6wXEgdsR0

榛名「上り一本勝負!二本目の街灯を目安に加速開始のローリングスタートでお願いします!」

金剛「イエーイ!すぐにミラーの点にしてあげますヨー!」

比叡「お姉様が見てる前で無様な真似は出来ない!最初から全力で行きますよ!」

荒々しい咆哮を上げる二台のレビン―


川内「夕張。目標は?」●REC

夕張「谷底に落ちないこと……」フフフ

川内「冗談でもやめてよ」

テンションだだ下がりの夕張……


提督「流石にサイド管はウルサイな」

霧島「比叡姉さんもほぼストレートの直管ですよ」

提督「マジか。それ聞いたら余計やかましく感じる」

傍観者気分の提督―


金剛「さあ!ワタシの実力、見せてあげるネー!」


173: 2015/05/20(水) 21:43:02.33 ID:6wXEgdsR0

夕張「うぅ……」

川内「ちょっといい加減にしなよ。乗ってる私まで不安になるでしょ」

夕張「だって勝てない相手に負けるなって、ただの嫌がらせじゃない……」

川内「ええー?そうは思わないけど」

夕張「他人事だと思って適当なこと言ってるでしょ」ジトー

川内「違う違う。要するに心理戦じゃない?」

夕張「……心理戦?」

川内「クルマはよく分からないけど、勝負事なら私にも分かるよ」

川内「つまりさ、相手に『勝った』と思わせないことが重要でしょ」

夕張「……言ってることが分からないんだけど」

川内「じゃあ夕張はこの場合、どうやったら勝ちなのさ?」

夕張「それは……金剛さん達を抜いてトップでゴール」

川内「でもセンターラインを越えちゃダメなら、抜くのは無理でしょ」

夕張「そうね……登山車線で抜くって方法もあるけど、余程のパワー差がなければ無理だろうし、みすみすそんなチャンスを貰えるとも思えない」

川内「そしたら、夕張の言う条件だと負け確定だね」

夕張「結局ダメじゃない……」


174: 2015/05/20(水) 21:50:09.81 ID:6wXEgdsR0

川内「じゃあ、抜く事が無理でも終始後ろに着けていたら、相手はどう思う?」

夕張「……ん?」

川内「ここって云わば、金剛さん達のホームでしょ?」

川内「戦艦クラスの艦娘は大抵そうだけど、よその話を聞く限り、とりわけ金剛の艤装に適合した人達は自分に絶対の自信を持っていて、あらゆる面で積極的な性格の人が多いみたいでさ」

川内「それでいて、あの金剛さんは走りの実力もトップレベル」

川内「でも、そのホームでよそ者相手に完全に振り切ることが出来なかったら」

川内「そんな性格の金剛さんなら、この事実をどう思うかな?」

夕張「……多分、悔しがるわね」

川内「ピンポーン」

夕張「……うそ?そういうことなの?」

川内「抜けないなら離されなければいい。そしたら、あの二人は内心勝ったとは思わないんじゃない?」

夕張「……川内。アンタただの夜戦馬鹿じゃなかったのね」

川内「ふふん。勝負はココも使わなきゃ」アタマトントン

川内「相手をよく見て状況を把握する。戦闘においての基本でしょ」

夕張「それでもキツいことには変わらないけど……」

川内「そこはそれ。でも、少しは見方が変わったでしょ?」

夕張「そうね……何とか喰らいつかなきゃ!」

175: 2015/05/20(水) 22:13:10.23 ID:6wXEgdsR0

二つ目の街灯を過ぎた途端、金剛・比叡の駆る二台のレビンは猛然と加速を始めた。

上りでの勝負なので一見すれば出力の高い180SXが有利に見える。

しかし、相手は自他共に認めるこの場所トップの実力者二人組。

とりわけ金剛レーシングのリーダー、金剛の速さは頭一つ飛び抜けている。

パワーの差は当然考慮した上で、むしろその程度の要素は彼女にとっては些細なことかも知れない。

川内も語る通り、金剛の性格は云わば情熱的。明るく親しみやすい人当たりで、妹達を含め尊敬の念を集めている。

ドライビングにもその性格は現れており、積極的にガンガン攻めるタイプ。

比叡はそんな金剛仕込みのドラテクで、豪快かつ攻撃的。

どちらも一度波にのってしまえば手が付けられない、凄まじいまでの速さでコースを駆け上がるのだ。

そんな彼女達が駆るAE86もまた、彼女達のスペシャルマシンに仕立てあがっている。

元々1トンを切るAE86に徹底的な軽量化を施し、パワーも推定ながらノーマル比の2倍以上(AE86の馬力表示はグロス値=エンジン単体での計測。現代はネット値=車体搭載時に近い状態での計測。AE86はグロス値で130馬力、ネット値に換算すると約110馬力程度になる)。

ロールケージで張り巡らされた室内は、まさにレーシングカーの様相。

――これで遅いわけがない。

点と点を飛ぶように旋回する様は、研ぎ澄まされた日本刀の如く。

小型な車体のレビンながら、高速戦艦・金剛型の愛機として相応しい圧倒的な戦闘力を有していた。

176: 2015/05/20(水) 22:17:19.31 ID:6wXEgdsR0

夕張「何なのアレ!ホントにハチロク!?」

川内「おーっ!はっやーい!楽しーい!」

夕張「こっちの方が出力が上な分、なんとかついて行けているけど……離されるのは時間の問題だわ……!」

川内「あのハチロクっていうの?漫画とかで有名みたいだけど、実際そんな速いもんなの?」

夕張「まさか。このワンエイティも20年以上前の古いクルマだけど、ハチロクはそれより更に前。もう旧車の域よ」

夕張「今となっては有利な部分は車体の軽さだけ。4A-Gは確かに良いエンジンかもしれないけど、それ以外はほぼ並よ」

川内「でも素人目の私から見ても速いって」

夕張「だから驚いているのよ!」

川内「クルマってあんな動きするんだ……もうワープだね」

夕張「あのコーナリングは反則モノだわ……見た目以上に何か仕込んでいる様ね……」

177: 2015/05/20(水) 22:20:18.81 ID:6wXEgdsR0
麓付近

提督「あの二台……特に金剛のハチロク、リヤの足回りごっそりと変えているだろ」

霧島「よく気が付きましたね。以前金剛姉さんが何処からか廃車のS14を持って来て、リヤメンバーを移植しました」

榛名「比叡お姉様も同じ様なことをしようとしたのですが、あまりに挙動が違い過ぎるからと見送られ、ホーシングの強化程度に留めています」

提督「馬鹿だねえ……そこまでやるかね普通」

霧島「目下の目標として全国制覇を掲げていますから、生半可なモノには乗れないそうです」

榛名「ですが、それ故代償も大きく……」

提督「代償?」

霧島「見ての通り内装はドンガラ状態、快適装備も一切無し。加えて直管の爆音マフラーにSタイヤ……日常生活では到底乗れる代物ではありません」

榛名「その為金剛お姉様も比叡お姉様も、普段の移動手段はオンボロの小型スクーター……」

提督「……うん?」

榛名「しかも半ヘルで二人乗り……」ブワッ

霧島「金剛型の長女・次女ともあろう人が情けない」ハァ

提督「……想像するとシュールだな」

178: 2015/05/20(水) 22:26:02.09 ID:6wXEgdsR0

提督「それにしたって、ハチロクのマルチリンク化なんて最早魔改造じゃねえか」

榛名「お姉様達は、一度決めたらとことん一直線ですから」

霧島「既にハチロクの形をした何かです」

榛名「私と霧島は、そこまで踏み切ることが出来ませんし……流石としか言いようがありません」

提督「で、廃車のシルビア持って来たんだろ?その内4A-G捨ててSR20でも載せるんじゃないのか?」ハハハ

霧島「……どうやらそれも計画してるみたいですね」

榛名「流石に次はナンバー切って、サーキット専用にするとも言っていました」

提督「ハチロク乗るのやめちまえよ、もう」

榛名「でも、提督もワンエイティにかなり拘りがある方だとお見受けしますが」

提督「他のクルマより愛着があるって程度だよ。そこまで拘りがあるわけじゃない」

霧島「ふむ……」

179: 2015/05/20(水) 22:30:24.21 ID:6wXEgdsR0

榛名「どうしたの霧島?」

霧島「成る程、今の提督の発言で一つ確信が得られました」

榛名「確信?」

提督「………」タバコクワエ

霧島「確かに『ステルス』はワンエイティとしては奇跡的な速さを誇っていたのは事実です。これは間違いありません」

霧島「しかし、それにも限界があります。ましてや都高という他に類を見ない特殊なステージです」

霧島「仮に極限までチューニングされたとしても、ワンエイティで800馬力級のGT-Rと肩を並べるというのは、到底不可能だと考えます」

榛名「それはそうだけど……」

霧島「……実は『ステルス』と『インターセプター』の調べを進めている内に、時期によってある食い違いがありました。それは『インターセプター』は色だけでなく、全く別の姿であったと」

榛名「別の姿?」

180: 2015/05/20(水) 22:33:15.67 ID:6wXEgdsR0

提督「回りくどいな……何が言いたい」シュボッ

霧島「真の『インターセプター』は青いBNR32……いいえ、『魔王GT-R』と呼ばれていた」

榛名「魔王……GT-R……」

提督「オイオイ、何だその魔王Rって。大鶴義丹がやってた頃のVシネ版湾岸ミッドナイトか?」

霧島「ええ、名前の由来はまさにそれです。劇中では悪魔のZに代わって主人公が新たに託されたクルマでしたね」

霧島「RB26改2.7LにTD06ツインターボ……ブースト2キロ時には800馬力。これは劇中での設定ではなく実際に同仕様の車両を製作、撮影に使用されていた。90年代においては魔王の名に恥じぬスペックです」

霧島「一方実際に都高に存在した魔王は詳細こそ不明ですが、一説によると800馬力弱。これでも充分以上ですね」

霧島「そんな魔王を従えていたのが、それまで『ステルス』『インターセプター』と呼ばれていた人物……他でもなく提督、貴方です」

181: 2015/05/20(水) 22:36:35.95 ID:6wXEgdsR0

提督「……750」

提督「………2.8L仕様のRX6タービン二機掛けで750馬力」スパー

榛名「……え?」

提督「魔王の仕様だ。全部説明したら夜が明ける」

霧島「否定しないんですね」

提督「……そこまで調べたのには改めて驚かされたが、それも十年以上前だ。昔乗っていたクルマを知られたところで、別にどうってことはないよ」

榛名「確かにそれほどまでのGT-Rなら、ワンエイティでトップレベルだった提督ならば本当に敵無しになりますよ」

提督「ああ。ワンエイティが途端に色褪せたヨ」

霧島「それが何故またワンエイティに?」

提督「言ったろ?愛着があるって。ただそれだけの話だ」

霧島「ですが、それだけが本当の 提督「霧島」

提督「これは俺がまだ一般人だった頃の話だ。軍に入ってからの経歴なら兎も角、これ以上の詮索は不躾だとは思わないか?」

霧島「……出過ぎた真似をして、申し訳ありません」

提督「いや、こちらこそスマンな。あのクルマにはどうにも良い思い出が無くてな……出来れば忘れたかったんだ」

182: 2015/05/20(水) 22:43:51.30 ID:6wXEgdsR0

提督「調べの通り、迅帝とは交友関係があってな」

提督「『ステルス』は黒くて目立たないからっていつの間にか勝手に呼び始められたけど、『インターセプター』は自分から名乗ってたんだ」

提督「考えたのはアイツだけどな。隠密偵察機よりも迎撃機の方が似合うってね」

提督「その友人が大事故を起こした。それも目の前でな」

提督「ま、今じゃアイツもピンピンしているが、名が知られて粋がっていた小僧からすれば、ショッキングな出来事には違いない」

提督「次は自分がそうなるかもしれない……そう考えたら、とてもじゃないが正気で居られなかった。心底恐怖した俺はやがてRを手放し、都高を降りた」

提督「それから歳を取ってある程度心に余裕が出来た。クルマは嫌いになれなかったし、今度は無理しない程度に……どうせなら、青春時代を共に駆け抜けた思い出のクルマにもう一度乗ろうと」

提督「それが今のワンエイティってわけ。どうだ、よくあるオッサンの小話だろ?」

榛名「い、いえ……」

提督「長くなったナ。どうだ霧島、これで納得してもらえたか?」

霧島「ええ……」

提督「それなら良かった」ニコ

霧島「………」

提督「それよりも今走っている連中を気にしようぜ?今どうなってるかな」

189: 2015/05/22(金) 09:04:16.41 ID:I+jvhBBR0

小ネタ 湾岸の青葉さん


「フッフッフッ……潜入成功」

青葉「やって来ました湾岸線!いやあ、それっぽいクルマも多いですねぇ」

青葉「古鷹さんと最上さんには全力で止められましたが、やはり知ってしまった以上は自分の目で!五感で!取材するべきです」

青葉「そういえば来る途中、料金所から大量の白煙が出ていたけど……あれは何だったのでしょう?火事ではないみたいだし、それに何だかゴムの焼き切れる匂いがしたけど」

青葉「後で映像を確認してみましょう……何か映っているかも」

青葉「さて、ただパーキングに来ただけでは何の意味もありません。早速取材を受けてくれそうな人を探さないと!」

青葉「お、あの人なんか良さそうですね。見た目は中々の爽やかなイケメンさんです」

青葉「スミマセーン!そこのお兄さん、ちょっとお時間よろしいですか?」

「ん?僕のこと?」

青葉「そうです!ずばり聞きますがお兄さんは走り屋の人ですか!?」

「一応、そうなるかな……最近はあまり来ないけどね」

青葉「ビンゴ!実は青葉、走り屋さん達の取材をしたくてですね。記念すべき第一号として、是非お兄さんを取材させていただければと」

「走り屋の取材なんて珍しいね。で、僕はどうすればいいかな?」

青葉「そうですね。まずはお兄さんのクルマを拝見させてください」

「いいよ。ちょうどそこに停めてある青いのが僕のクルマだよ」

190: 2015/05/22(金) 09:08:18.30 ID:I+jvhBBR0

青葉「これは……インプレッサですね?それも最新型!」

「んー、ちょっと惜しい。これはインプレッサじゃなくて、WRXっモデルだね」

青葉「それは失礼しました。まだまだ勉強不足ですね」

「ベースはインプレッサだから、間違いないではないけどね。正直僕も人に説明する時にはインプって言っちゃうし、他の人もそう呼んでいるんじゃないかな」

青葉「なるほどぉ。それにしてもカッコいいですね。何か手を入れられているんですか?」

「車高落としてブーストアップをした位だよ。今のクルマってこれだけでも相当速いから驚いたよ」

青葉「以前はどのようなクルマに?」

「インプレッサはGDB……二世代前の丸目から順に乗り継いで、これで三台目。その前はサンヨンのRに乗っていたよ。Rも速かったけど、インプは軽くてよく曲がってくれるから、操る楽しさみたいなのはこちらが上かな」

「あとV35のクーペにも乗っていたけど、パワーがあってもちょっと重かったね。快適だけどさ(笑)」

青葉「ほほう。そういえば、元レーサーの土屋圭市氏が90年代当時の国産各メーカーのスポーツカーを試乗した際に、初代インプレッサでドリフトしながら『楽しーい!GT-R要らなーい!』とはしゃいでいたことがありましたね。動画サイトで見ました」

「それ僕も見た。当時とはモデルが違うとはいえ、乗り継いでみて気持ちが分かったヨ」

青葉「いやあ、しかしカッコいいですねえ。このリヤバンパーに小さく貼られた『壱・撃・離・脱』のステッカー……も?」

「どうかしたかい?」

青葉「あ、いえ。おかまいなく」

青葉(この言葉、最近何処かで聞きましたね。はて?)

191: 2015/05/22(金) 09:10:05.56 ID:I+jvhBBR0

青葉「それよりお兄さん、折り入ってお願いがあります。よろしければ青葉を横に乗せていただいて、走行シーンを撮影させてもらうことは可能でしょうか?」

「本当に変わってるね、君。そんなお願いされるの初めてだ」

青葉「画を集めるのが好きなんです。趣味なんです。勿論決して悪用したり、お兄さんに害を与えることはしません。何なら誓約書も用意してありますよ!」ピラ

「そこまでしなくても、こんな可愛い子のお願いなら喜んで受けさせてもらうよ。じゃあ、この辺を軽く回る感じでいいかな?」

青葉「本当ですか!?有難うございます!」

青葉「そういえばお兄さんのお名前を伺っていませんね」

「そういえばそうだね。君は……青葉ちゃんでいいのかな?」

青葉「はい!この近くの鎮守府に所属する艦娘です!」

「艦娘……もしかして、提督の所の?」

青葉「おや?提督をご存知なのですか?」

「彼とは十年来の付き合いがあるよ。昔は一緒に無茶もしたもんだ」

青葉「ほえー……まさかこんな形で提督のご友人に会えるとは。世間は狭いもんですねえ」ハッ

192: 2015/05/22(金) 09:11:54.98 ID:I+jvhBBR0

>>58回想

提督「そうだっけ?前に俺の友達の岩崎に乗せてもらったことあるじゃないか」

夕張「私の意識が速攻で壱・撃・離・脱したからノーカンです!」

青葉「なんだ、夕張さんも気絶してたんですね」プッ

提督「アイツは色々キレ過ぎだからなぁ」

回想終了


青葉 ダラダラ

「そういえば、ちょっと前にも艦娘……夕張ちゃんだっけ。会ったことがあるよ。彼女、ワンエイティぶつけちゃったらしいけど、大丈夫だった?」

青葉「え、ええ……幸い怪我などは無かったのですが、クルマ以上に本人の方が凹んでいます」

「そうだよねえ。僕も昔はよくクルマをぶつけたりして……その度に泣きたくなったよ」シミジミ

青葉「あ、あははー……」

「さて、じゃあ早速行こうか。乗って乗って」

青葉「ところで……お兄さんのお名前は……」

「そうだったね。危うく忘れるところだった」


迅帝「僕は岩崎。宜しくね、青葉ちゃん」

青葉「 」

193: 2015/05/22(金) 09:17:12.57 ID:I+jvhBBR0

ホンペンダヨー


夕張「あーっもう!コーナー抜ける度にジリジリ離されてる!」

川内「あはは、夕張が焦ってるー」

夕張「アンタは何でそんな楽しそうなのよ!」

川内「こんな非現実なスピード感、つまらないワケないっしょ。艤装もこれ位のスピード出たら楽しいのに」

夕張「戦闘の前に身体が吹っ飛ばされるわ!」

川内「というかさ、何でそんな焦ってるの?」

夕張「このままじゃ負け確定だからよ!今あんまり話しかけないで!」

川内「いや、負けたところで別に命取られるんじゃないんだからさ。気にしなくていいと思うけど?」

夕張「……提督の性格を考えてみなさい」

夕張「ただでさえ昨日は事故ったのに、今日提督のクルマで負けたりしたら……一週間位は延々とバカにし続けてくるわ」

川内「まあ、そうなるね」

夕張「あと、三式爆雷と三式ソナーを駆逐・軽巡全員分一晩で作れとか長10センチ砲作れとかもあったわ。次は53センチ艦首魚雷でも作れとか言い出すんじゃ……」

川内「それは酷い」

194: 2015/05/22(金) 09:21:23.55 ID:I+jvhBBR0

夕張「……っと、無駄話してたら余計に離される!」

川内「あ、そうそう。私気になってたんだけどさー」

夕張「今度は何!?」

川内「出る前に提督が最後に言ってた『テールライトを追うな。前を見ろ』ってどういう意味かな」

川内「運転してたら前を見るなんて当たり前でしょ?何でわざわざそんなこと言ったのかなーってさ」

夕張「そういえばそんなこと言ってたわね……あまり気にしてなかった」

川内「提督って普段は適当だけど、こういう事に関しては意味の無いことってあまり言わないでしょ」

夕張「うん……まあ……そうだっけ?」

川内「とにかく、現状打破するヒントがあるかもよ?」

夕張「うーん……」

195: 2015/05/22(金) 09:27:37.15 ID:I+jvhBBR0

金剛「ちゃんと着いて来ている。意外とデきるみたいネ」

比叡『お姉様!悠長に構えていると追いつかれますよ!』デンワゴシ

金剛「何も焦る必要ないデスよ比叡。ジリ貧なのはアチラの方ネ」

金剛「それにあの子のテクニックというより、あのワンエイティの性能に助けてもらっている……そんな風に見えるネ」

比叡『流石お姉様!バトルの最中でも素晴らしい観察眼です!』

金剛「それでも油断はノーよ比叡。ワタシ達はパワーで劣る以上、少しミスでワンチャンありマスよ」

比叡『お姉様!ワンチャンは英語ではないと思います!』

金剛「そんな事気にする暇があるなら集中するネ比叡」

比叡『ハイ!スミマセン!』

196: 2015/05/22(金) 09:29:24.78 ID:I+jvhBBR0

金剛(それにしても……)

金剛(あのワンエイティ、いくらオーナーではない夕張が乗っているからとはいえ、あの程度なの?)

金剛(最も、彼女自身のテクニックは別に悪くない。充分評価出来るレベル)

金剛(それでも、どうにも腑に落ちない)

金剛(仮にも難関とされるループウェイで一時代を築いたマシン。確かに完成度は高いようだけど、それでも常識の範囲内。特に際立った『何か』を感じない)

金剛(どれだけ提督の腕が立つかは知らないけど、あのマシンでトップになるには難しい。実は何か隠して……いや、意図的に抑えている?)

金剛「比叡」

比叡『何でしょうかお姉様』

金剛「より注意深く後ろの動きを見てほしいヨ。変わったことがあればすぐフォローするネ。OK?」

比叡『了解です!任せてください!』

金剛(杞憂であればいいけど、このままイージーに終わるのもつまらない)

金剛(さあ、夕張さん。私をもっと楽しませてくれることが出来るかしら?)

197: 2015/05/22(金) 09:31:48.50 ID:I+jvhBBR0

夕張(確かに提督の言葉も引っかかるけど、それ以上にこのワンエイティが気になる)

夕張(エンジンは私のより全然力があるし、足もしなやかに動く。これだけパワーがあるのに動きが破綻することもない)

夕張(すごく乗りやすい。本当によく出来ている)

夕張(その反面……何か違和感があるのよね)

夕張(思えばこのクルマ、結構大きめのタービンが組んであった。提督はもっと小さいのに変えたがってたけど)

夕張(どうも、タービンの大きさに対してブースト圧が低く設定されている気がする)

夕張(そういえば、このセンターコンソールに付いてるキルスイッチは何に使うのかしら?聞いた事無かったな)

川内「どしたの夕張。何か考え事?」

夕張「まあ、ちょっと気になることが」

川内「ダメだよ集中しなきゃ。また少し差が開いてるよ」

夕張「それはそうだけど……というか、アンタはホント平然としてるわね」

アッサリーシッジミーハマグリサーン♪

川内「あ、提督から着信だ」

夕張「何よ今の歌……」

198: 2015/05/22(金) 09:35:04.43 ID:I+jvhBBR0

川内「こちら川内です。こんな時にどうしたの?」

川内「今?少しずつ離されてるよ。うん。分かった」

夕張「なに?冷やかし!?」

川内「提督が夕張に伝えたいことがあるって。スピーカーに切り替えるよ」

提督『おう夕張。今どの辺だ?』

夕張「中腹を過ぎた位です!というか、こんな時に電話なんか掛けて来ないでよ!用件は何ですか!?」

提督『じゃあ簡潔に言うけど、そこにキルスイッチがあるじゃろ?』

夕張「あ、ちょうど気になってたんですよ。コレ何ですか?」

提督『そのクルマの隠し機能♪それをONにして、シフトノブのとこのフタを開けて、中にあるスイッチを押せば起動だ』

夕張「何この無駄なギミック……」カチッパカッ

川内「スゲー!カッケー!」

提督『ワハハ、川内はコレの良さを分かってくれたか。ところで、さっきの三か条ちゃんと憶えてるか?特に最後』

夕張「『テールを追うな。前を見ろ』ですか。何だったんですかアレ」

提督『目が良くなるオマジナイかナ。そのボタン押した後は特に意識しろ』

夕張「どういうことですか……じゃあ、押しますよ」ポチッ

提督『最後に一つ……振り落とされるなよ?』プツッツーツー

ブースト圧1.2キロ→1.7キロ

夕張「……は?え――っ」

川内「~~っ!??」

199: 2015/05/22(金) 09:40:58.79 ID:I+jvhBBR0

ピッ

提督「やれやれ、アイツ上手く使えるかな」

榛名「あの、何が起きるんですか?」

提督「あのワンエイティね、普段の状態だと半分位しかエンジンを使い切れてないのヨ」

榛名「半分……ですか?」

提督「まあ半分ってのは言い過ぎだけど、実際乗ると全然違うからなぁ」

霧島「つまり……意図的に押さえていた性能を開放する、ということですか」

提督「そういうこと。あのクルマの場合、ブースト圧の増加とそれ用に合わせた燃調セッティングにECUのマッピングを変更だ」

榛名「それで、どれ位の差が?」

提督「んー。普段が400ちょいなんだけど、確か500馬力超える位は出たかなぁ」

榛名「ご……ッ!?」

提督「だって東名の2.2LコンプリートSRにT67だぜ?この組み合わせでパワーが出ない方がおかしい」

霧島「そこは流石に、かつて『インターセプター』と呼ばれていたワンエイティ……と云ったところですか」

提督「俺の名が売れたのは、Rじゃなくてワンエイティのおかげだ。あの場所を走る以上パワーはある程度必要になる」

提督「まあ、当時とは違うクルマだけどな」

提督「エンジンは買った方が安いからってコンプリートエンジンにして、あとは手元に残っていたパーツを使って組んだ。差異はあれど仕様はほぼ一緒だヨ」


200: 2015/05/22(金) 09:43:51.85 ID:I+jvhBBR0
ちょっと休憩。
タービンがT67ってやっぱりやりすぎだろうか。

201: 2015/05/22(金) 11:57:52.19 ID:liKagnGVO
やり過ぎなくらいでちょうどいい

次回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その3】


引用: 夕張「クルマ買いました!」