206: 2015/05/23(土) 00:14:54.81 ID:DGqOWpUO0

ちょっと休憩だって……?ククク、もう深夜じゃねえか。

最初へ:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」

前回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その2】



207: 2015/05/23(土) 00:18:35.62 ID:DGqOWpUO0

夕張 ←エンジン特性が急に変わって驚いてる

川内 ←体感する加速Gが強くなって驚いてる

夕張「速い速い速い!目が追いつかないって!」

川内「おぅ……」

夕張「何なのよコレ!もう違うクルマじゃない!」

川内「アッハハー……マジで凄いや」

左コーナー出口、アクセルオンで滑り始めるリヤタイヤ――

夕張「――ッ!」

まるっきり性格が変わった180SXを必氏で乗りこなそうとする夕張。

右に左に振られる車体を何とかコントロールしていく。

夕張「……3速からホイールスピンってバカじゃないの!?どれだけパワー出てるのよコレ!」

川内「ハラショー。コイツは力を感じる……」

夕張「無理しておどけなくていいから!」

川内「いや……どうなってるのコレ」

夕張「さっきのボタン押したらブーストアップしたのよ!多分これが本来のこの子の姿ってことでしょ!」

川内「……行ける?」

夕張「戻し方分からないし、やるだけやってみせる」

川内「無理しないでよ?ホントに谷底なんて嫌だからね」

夕張「わ、私だって嫌よそんなの!」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
208: 2015/05/23(土) 00:20:42.66 ID:DGqOWpUO0

比叡『お姉様!ワンエイティの挙動が不安定になっています!』

金剛「Mu……オーケー、そのまま様子を見ててネ」

比叡『何かトラブルでしょうか?』

金剛「それは分からないケド、何か動きがあったと見て間違いないヨ」

比叡『タイヤの熱ダレやモチベーションの低下も考えられますが』

金剛「確かに有り得るネ。バット、もう終盤……何か仕掛けてくる可能性も充分ありマス」

比叡『用心するに越した事はない、ということですね!』

金剛「イエス。引き続き警戒をお願いしマス」

比叡『分っかりました!』

金剛(さて、どうなりますかね……)

金剛(比叡の言う通り、何かトラブルがあったと考えるのが普通だわ)

金剛(しかし……私の中で何かが告げている。まだ終わりじゃない、と)

金剛(まだまだ足りないの……もっと、もっとよ!)

209: 2015/05/23(土) 00:22:46.04 ID:DGqOWpUO0

バトルは終盤に差し掛かっていた。

当初は予期せぬ出力特性に翻弄されていた夕張だが、ある程度落ち着きを取り戻し、徐々にこの180SXを理解し始める。

自らが所有する180SXと、同じ車種だとは到底思えない。

何から何まで似ても似つかないのだ。

それは同時に今後自分のクルマを仕上げていく上で、大いなる指針になったと後に彼女は振り返る。

大型タービンを軽々と回す2.2Lの強靭なエンジン。

意のままに無駄なく動く完成されたサスペンション。

それらに対して若干柔いが、芯がブレることなく入力を受け止めるボディ。

どれ一つとっても、夕張にとって新鮮だった。

夕張(乗り方が分かってきた……この子は乗り手次第で、善にも悪にもなる)

210: 2015/05/23(土) 00:27:11.89 ID:DGqOWpUO0

夕張(決して誤魔化さず、きちんと乗れば想像以上に応えてくれる……いや、この子が応えているのか、私が導かれているのか)

夕張(だからこそ、少しでも楽をしようとすれば、途端に牙を向く)

夕張(アクセル、ブレーキ、ハンドル……一つ一つの動作で、この子の意を汲み取って)

夕張(捻じ伏せるのではなく理解する。これが『クルマとの対話』ってことかしらね)

夕張(ワンエイティでも、ここまで出来るんだ……)

夕張は、このクルマに惹かれていた。

そして同時に、これは自分と愛機の一つの可能性でもある――と

川内「追いついてるよ!やるじゃん!」

夕張「まだ気は抜けない……最後まで分からないって!」

夕張(終わりも近い……お願いっ!力を貸して!)

211: 2015/05/23(土) 00:29:34.49 ID:DGqOWpUO0

比叡『………!?お姉様!ワンエイティが近付いてきています!』

金剛「やはり来たネ……随分待たせてくれたじゃないデスか」

比叡『いずれ抑えることが出来なくなる……しかし、このまま何とか逃げ切って 金剛「退きなさい、比叡」

比叡『……お姉様?何を?』

金剛「ソーリーね比叡……ちょっと1on1でバトルしてみたくなったヨ」

比叡『……私ならまだイケます!だからそんなこと……』

金剛「違うデス比叡。貴方のせいじゃない……」

比叡『ならば、どういう……!?』

金剛「私がね、抑えられないのよ。この昂ぶる感情を、この湧き上がる高揚感を。血肉が沸騰しそうで……ゾクゾクしてくるの(英語)」

比叡『お姉様……?』

金剛「自分でもおかしいとは思うのよ?でも、こうなってしまってはもう止められないし、止まらない。私の性格を分かっているでしょ?欲しいものはどんな手段でも手に入れる。徹底的にやらないと気が済まないの」

金剛「強欲なの、とても……こ。れが私の背負ったカルマなのかもね(英語)」クスクス

比叡『ですが……』

金剛「……これは私自身の問題なの。良い子だから、一歩退いてもらえる?(英語)」

比叡『分かり……ました』

金剛「サンクス。後でとっておきの紅茶を入れてあげるネー」

比叡『お姉様……どうかご武運を!』


川内「左ウインカー……?比叡さん、どうしたんだろ」

夕張「道を譲ってくれるみたいね……」

川内「何かあったのかな?」

夕張「トラブルでもなさそうだけど……譲ってくれるなら、遠慮なく前に出ましょ!」

212: 2015/05/23(土) 00:32:40.74 ID:DGqOWpUO0

麓付近

霧島「しかし、ちょっと心配になるわね……」

榛名「そうね。何も起こらなければいいけど……」

提督「何の話だ?」

榛名「実は金剛お姉様、相手が強ければ強い程燃えてくるタイプなのですが……」

霧島「先程の電話のせいで、火に油を注いでしまっていないかと心配で」

提督「要は負けず嫌いなんだろ?別に珍しくもない」

榛名「それが普通の負けず嫌いなら良いのですが……」

霧島「良くも悪くも、金剛という人物は快活で積極的。非常にエネルギッシュかつアグレッシブな女性です」

霧島「しかし裏を返せば熾烈とも言えます。まるで全てを焼き尽くす業火のように……火に油とは、まさにこのことです」

榛名「かつて艦だった頃は『鬼の山城』と並び『地獄の金剛』と謳われ恐れられていました。一度はお聞きになられたことがあるのでは?」

提督「戦艦は出撃が無い分、乗組員への訓練が半端じゃなかったらしいな。というか訓練というよりただのシゴキ、イジメみたいなもんだったと」

榛名「金剛お姉様の名誉の為にも申し上げますが、勿論普段その様なことはありませんよ?」

榛名「いつも相手を気遣い、時には一歩退いて相手を立てることも出来る、素敵な女性です!」

霧島「ただ自分が興味有る事には一切の妥協無く徹底的に熱を入れるものですから……」

提督「まあ、あんな思い切りのいいハチロク乗ってる時点で察しがつくナ」

226: 2015/05/25(月) 11:11:01.33 ID:HkVD8Ika0


――バトルは最終局面に突入する。

提督の180SX「インターセプター」に順応し、確実に差を詰めてきた夕張に対して、金剛は突如比叡を下げて一対一の真っ向勝負を仕掛けた。

勝負の流れは夕張に向きつつある。

それでも金剛は不敵な笑みを浮かべていた。

このステージは高速コーナーが主体で道幅も広く、スピードレンジは周辺のステージと比べても圧倒的に高い。

そんな環境でも、自らの名前を用いた金剛レーシングを率いる金剛は無類の強さを誇っている。

一見すれば不利とされる旧式のAE86をベースに、レーシングカーさながらのボディワークにS14のリヤメンバー移植と、ストリートマシンとしては過激なメイキングを施し、どんなに最新鋭の車種だろうと、どんなにパワーがある相手だろうと難無く蹴散らしてきた。

勿論、金剛自身の驚異的なドライビングテクニックが重なった上での結果であることも付け加えておこう。

特にブレーキングの技術と思い切りの良いコーナーへの進入は、後に川内が撮影した映像を確認した提督が「同じクルマでも俺にはムリ」と圧倒されたほどだ。

「あの場所にはハチロクの皮を被った魔王が住んでいる」と冗談交じりに揶揄されているのも納得出来る(全くの出鱈目でもないが)。

常に格上の車種を手玉にしてきた彼女にとって、所詮2L級のターボ車を相手にするのはいつもの日常……ごく当たり前のプロセスなのだ。

227: 2015/05/25(月) 11:13:05.83 ID:HkVD8Ika0

では、今回はどうだろうか。

提督本人が相手をしていたら状況はまた変化していただろう。

しかし、実際に乗り込んでいるのは彼の部下であり、自分と同じ艦娘の夕張だ。

彼女も同じく180SXに乗り、提督の手解きを受けながら腕を磨いてはいるものの、経験が浅く際立った技術を持っているわけでもない。

金剛からすれば、いつも軽くあしらう凡庸な連中と然したる差は無い。

ましてや他人のクルマで、しかも助手席に同僚の艦娘・川内を乗せているのだ。

いくら都高で「忘れられた伝説」の逸話を持つ180SXであっても、自分が負ける要素は無い。そう考えていた。

しかし現に、夕張が背後に迫っているのだ。

金剛「いい。いいネ……最高ヨこのバトル!」

彼女の熱量はピークに達していた。

自らが追い込まれている状況でも尚、沸き立つ感情を曝け出す。

それは走りにも表れ、より攻めの姿勢となりペースが上がる。

追随する夕張達の眼に映るのはレビンのテールランプが残す一閃の赤い光だけだった。

逃げる、逃げる、逃げる。

228: 2015/05/25(月) 11:14:37.66 ID:HkVD8Ika0

夕張「ムリムリムリムリ!」

川内「流石に向こうも本気だねえ……追いつきそうで追いつかない」

夕張「何であんな速度で平気なのよ!?」

川内「でも、このままじゃ負けちゃうよ?」

夕張「それは嫌……ってうわ!?もうあんなトコに!?」

川内「残りあとどれ位?」

夕張「このコーナー含めてもあと数箇所!最後に短いストレートで終わり!」

川内「ふーん……それにしても、こんな暗い所をよくこんな速度で走れるよね」

夕張「夜戦馬鹿のアンタがそんなこと言っても説得力無いっての」

川内「いやいや、感覚が全然違うもん。ホラ、夜戦って風の匂いや波の立ち方とか、兎に角五感フルに働かせて相手の状況を察知したりするじゃん?」

川内「でも今は助手席に座って撮影しているだけだからね。自分で運転しているならまた違う感覚だろうけど、さっきから金剛さんのテールランプしか見えなくてこう……視界が狭まる感じがして怖いもん」

夕張「……あっ」

川内「ん?どしたの?」

夕張「提督の言ってたことって、そういうことだったんだ……」

川内「え?何が?」

夕張「『テールを見るな、前を見ろ』よ!それどころじゃなくなって意味を考えてなかったけど!」

夕張「ただでさえ暗い峠道をこの速度で走るのよ?自ずと視界が狭まる状況で前のテールランプばかりを見ていたら……!」

川内「見えるものも余計に見えなくなるってことね」

夕張「そういうこと!それに相手との距離を意識し過ぎて焦ってミスをする可能性も高くなる!」

川内「でも今更分かっても遅くない?もう終わりでしょ?」

夕張「意味は分からなくても実践していたから問題無し!」

川内「あ、そう……」

229: 2015/05/25(月) 11:17:53.46 ID:HkVD8Ika0

金剛「このまま終わってしまうのが勿体無いデス……最高の夜だったネ」

金剛「でもバトルはバトル!これでフィニッシュするネー!」

金剛「このコーナーでラスト!踏み抜くヨ!」

「おい!来たぞ!」
「どっちが前だ!?」
「金剛さんだ!」
「速えぇ……あれホントにハチロクか!?」
「コウチャガノミタイネー」

コーナーを抜け、猛然と加速するレビン。少し遅れて180SXが続く。

二台はゴール手前の短いストレートに突入……パワー差があっても追いつくには厳しい距離だ。

川内「これが最後のストレート?短っ!」

夕張「ダメ……届かないっ」

誰しもが金剛の勝利を確信し、夕張も自身の敗北を悟った。

あの提督、今度は何を作れと言い始めるのだろうか……そこまでシミュレートしていた。

金剛「アイ!アム!ザ!ゴーッッッド!!」


――ボフンッ!


夕張「へ?」

川内「なに?爆発?」

夕張「私じゃないよね……?」

川内「うわっ、あれ下から火噴いてない?」


金剛「NOOOOOOOOOOOO!!!!!??」


山頂付近に、エンジン以上の音量で金剛の絶叫が響いた。

230: 2015/05/25(月) 11:19:56.41 ID:HkVD8Ika0

ゴール地点

霧島「一体何回目だと思ってるんですか!エンジンだってタダじゃないんですよ!?」

金剛 シュン

霧島「だから毎回熱くなり過ぎるなと毎回毎回ッ!」

金剛「霧島ヨぉ……声が聞こえるんデース」

霧島「何ですか?言い分があるならどうぞ」

金剛「……頭の中で『もっと熱くなれよぉ』って声が聞こえるんデース」

霧島 プチッ

霧島「姉さんの頭には炎の妖精でも住んでいるんですか!?それともディアブロですか!?難波先輩ですか!?そもそも貴女は今怒られている自覚はあるんですかぁ!?」グリグリ

金剛「ノー!ふざけた事は謝るからグリグリはノーよ!」

霧島「そんなにお望みならば横浜の海にダイブして頭を冷やしてもらいましょうか!?」グリグリ

金剛「イタイイタイ!ちょ、やめアッー!」

比叡「ヒエー!霧島、ストップストップ!」


231: 2015/05/25(月) 11:22:52.91 ID:HkVD8Ika0
ギャーギャー

夕張「この幕切れは予想外だったわ……」

川内「試合に勝って勝負に負けたって感じだね。あ、コーラ買ったけど飲みゅ?」クピクピ

夕張「頂くわ。あと瑞鳳の真似のつもりなら止めなさい。アンタがやるとキモい」

川内「………」クピクピ

夕張「なに?何見てんのよ」

川内「キャハッ☆」

夕張「決めた。はっ倒す」

提督「おう、お疲れ二人とも」

川内「あ、提督だ」

夕張「お疲れ様です。どうやって来たんですか?」

提督「榛名の86に乗せてもらってな。金剛のハチロクが大破炎上なんて比叡が電話掛けてくるもんだから、大慌てで飛んできたんだがな……」

榛名「大事にならずに済んで良かったです」

232: 2015/05/25(月) 11:25:54.97 ID:HkVD8Ika0

夕張「それにしても……霧島さんのあの怒り方を見るに、もしかして金剛さんは何度も?」

榛名「ええ、今回で11回目ですね」

夕張「じゅ、11回も……」

提督「どうしたらそんな回数になるんだよ。俺だって2回位しかないってのに」

榛名「金剛お姉様は熱くなると周りが見えなくなるタイプですので、エンジンの不調も気付いてなかったのかと」

川内「エンジンってそんなに壊れるもんなの?」

夕張「個体差にもよるけど、よほど無理なことしなければそんなに壊れることはないわ……」

提督「まさか榛名のエンジンブローも金剛のせいだったりして」

榛名「はい。金剛お姉様が試乗中、シフトチェンジをミスしてオーバーレブを……」

提督「マジだった」

夕張「お気の毒に……」

比叡「お、お姉様あぁぁ……」

霧島「フン!」

金剛 チーン

242: 2015/05/26(火) 16:50:30.87 ID:zrfqmN8g0

金剛「まだ頭が痛いネー」

霧島「自業自得です!」

金剛「ただでさえエンジンブローしてバトルにも負けたのに、この仕打ちはあんまりデース」

夕張「ちょっと待ってください!私の勝ちなんですか!?」

金剛「先にゴールしたのは夕張さんネ。バトルは結果が全てヨ」

夕張「えー……勝った気なんて全然しないんだけど……」

川内「相手が負けって認めているんだし、ここは素直に喜んでおけば?」

夕張「でもさぁ……」

川内「そうじゃないと提督からの条件未達成ってことで、明日から烈風作れとか無茶吹っかけてくるんじゃない?」

提督 ニヤリ

夕張「……わ、わーい勝ったー嬉しいなー(棒)」

金剛「イエース!ユーアービクトリー!」

比叡「全く嬉しそうじゃないんだけど……」

霧島「向こうにも何か事情があるようですね」

提督「で、金剛のハチロクはどうするんだ?とても自走して帰れるような壊れ方じゃないぞ」

霧島「ご心配には及びません。金剛姉様がクルマを壊すのは日常茶飯事なので、牽引ロープは各自一本必ず載せてあります」

榛名「普段だったらローダーを手配するところですが、流石にこの時間に頼むのは非常識ですし」

霧島「そもそも今回のブローも本人の責任ですから、独りで押して帰ればいいんですよ」ケッ

金剛「やめてください氏んでしまいマス」

提督「それなら別に構わんが、金剛よ」

金剛「ワッツ?」

提督「公道で走るなら、自走して帰るまでが一つのコースだと思え」

提督「今回は大した事にならなくて良かったが、ただでさえ一般住民に迷惑を掛けるようなことをしているんだ。責任感っていうのもおかしいけど、走る以上はその意識を強く持たないと」

提督「もしかしたら壊れた拍子に操縦不能になって事故、最悪関係のない人までも巻き込みかねなかったんだからな」

金剛「反省しマス……」

夕張 グサッ

川内「何で夕張まで落ち込んでいるの?」

夕張「いやホラ、昨日の今日だからさ……」

243: 2015/05/26(火) 16:54:03.27 ID:zrfqmN8g0

金剛「それにしても、途中でワンエイティが速くなったのは一体どんなマジックデスか?」

比叡「あ、それ私も気になる!途中で挙動がおかしくなっていたし……」

夕張「ああ、あれは急にパワーが出るようになったから、ちょっと戸惑っちゃいまして」

提督「俺が電話を掛けて、ブースト圧を上げる為の操作をさせたのよ。普段は400よりちょい上だけど、フルで使ったら500馬力以上は難いな」

金剛「ワオ!」

夕張「500!?そんなに出るなんて初めて聞きましたけど!?」

提督「ん?そうだっけ?」

夕張「そうですよ!乗ってみて分かりましたけど、今までサバ読んでましたね!?」

提督「約400馬力(400とは言っていない)」

夕張「括弧を使うな!」

比叡「ヒエー。急に100馬力も上がったら、誰だってああなりますねぇ」

金剛「ハチロク一台分のパワーアップネー……」

提督「まあここは高速コースだけど、普段の仕様じゃあ夕張だとちょっちキツいと思ってね」

川内「提督ならそのままでも行けたの?」

提督「さあて、どうかな?」ニヤリ

244: 2015/05/26(火) 16:55:35.05 ID:zrfqmN8g0

金剛「……都高には提督みたいな人が沢山居るんデスか?」

提督「今はどうだか知らないけど、現役の頃は俺より速いヤツなんてゴロゴロ居たよ。それこそさっき言ってた岩崎もそうだし、カリスマと呼ばれた白いFDとか、環状の四天王と言われていた33Rの福田さん、アリスト乗っている佐々木に、フザけた見た目してるけどバカっ速な赤い34Rの宮川だろ。ハチロクで有名な小早川兄は確かレーサーになったらしいし。あと、S14の黒江って子や帰国子女の美津江も速かった。それとBMW乗ってる志穂ちゃんとか可愛かったなぁ……あとレースクイーンのマミちゃん(ry」

金剛「ストップ!もう沢山デス」

夕張「最後の方女性の名前ばっかりでしたけど」

川内「都高に出会いを求めるのは間違っているだろうか?」

提督「……兎に角、それだけ多く居たってことだ」

金剛「Mu……」

比叡「お姉様、どうかしましたか?」

金剛「He that stays in the valley, shall never get over the hill.」

提督「なんだって?」

比叡「『井の中の蛙』ってことですか」

金剛「イエス!どうやらワタシはフロッグだったようネー」

榛名「どういうことですか?」

金剛「確かにワタシはココではナンバーワン。ですが、そう言い切れるのはココだけってことヨ。今回のバトルで分かったデス」

提督「だがハチロクでその地位まで上り詰めたのは間違いなくお前の腕だろ。他でも充分通じるハズだ」

金剛「それでも納得出来ないヨ。満足した時点で終わりネー」

提督「満足したら終わり、か……それは一理あるな」

金剛「そこで提督!ゼヒ弟子にして下サイ!」

245: 2015/05/26(火) 17:01:01.31 ID:x2UW5gUu0

提督「ハイ?」

金剛「市川鎮守府に異動願いを出しマス!それで手取り足取り教えて欲しいネ!」フカブカー

提督「手取り足取り……ホホウ、悪くな痛いっ!」

夕張「あら、提督どうかしました?」

川内「スカート覗きじゃない?」

夕張「ヤダーキモーイ」

川内「スカート覗きが許されるのは小学生までよねー」

提督「お前ら……どっちがケリ入れたんだ」

夕張「川内」
川内「夕張」

提督「つまりどっちもだな……憶えておけよコノヤロー」

金剛「ダメですか……?」

提督「上目遣いはアカン反則だ……」

金剛「じゃあ脱ぎますか!?」ヌギヌギ

提督「何が『じゃあ』だよもっと止めないでください!」

夕張「本音が出てるわ」

川内「明日叢雲に言いつけてやろう」

246: 2015/05/26(火) 17:04:15.35 ID:x2UW5gUu0

提督「まあ走りの部分は置いといて、戦艦が増えると心強いな。今は扶桑姉妹しか居ないし」

金剛「モチロン!比叡達もそれでいいデスよネ!」

比・榛・霧「え?」

提督「ん?」

金剛「ワッツ……?」

霧島「何言ってるんですか?」

金剛「何かおかしいデス?」

提督「ホントに来れるなら有り難いけどさ……」チラ

霧島「いきなり戦艦クラス四隻が異動出来る訳ないでしょう。行くならお独りでお願いします」

榛名「例え金剛お姉様が抜けても榛名は大丈夫です!」

比叡「金剛レーシングの看板は私達が守ってみせます」

金剛「……んん?」

提督「ここまで人望が無い金剛って初めて見た」

金剛「え、嘘?皆本気で言ってる?ホントにワタシだけ?」

夕張「キャラを忘れてかけてる……」

川内「だいぶ動揺してるのね」

金剛「え?マジ?」

247: 2015/05/26(火) 17:08:57.76 ID:x2UW5gUu0

叢雲「で?」

提督「そんなワケで金剛が着任しました」

金剛 ズーン

叢雲「で?」

提督「妹達に異動することを止められなかったので、ガチ凹みしています」

金剛 ズーン

叢雲「で?」

提督「ギャグ要員が増えました」

金剛「誰がギャグ要員デスか」

叢雲「そう、分かったわ」

金剛「スルーしないでくださいヨ!」

叢雲「で、何で工廠にクルマが五台も並んでいるのかしら?」

提督「は?」

叢雲「なに?知らないの?」

提督「全く存じ上げません」

金剛「ココにあるクルマは何台あるデスか?」

提督「俺と夕張、あと作業用のサニトラがある。それにお前のが増えたから四台だ」

金剛「アンノウンカーですネ!」

叢雲「そもそも工廠はアンタ達のガレージじゃないって何度も言ってるんだけど」

夕張「提督、何か知らないクルマが置いてあるんですけど」ガチャ

提督「今聞いた」

金剛「どんなクルマですカー?」

提督「……クルマとカーを掛けた駄洒落か?」

叢雲「早速ギャグ要員の仕事をこなしているわね。ギャグはお寒いけど」

金剛「違いマスって!」

提督「で、車種は?」

金剛「無視しないでくだサーイ!」

叢雲「金剛、ちょっとうるさい」

夕張「鉄仮面!鉄仮面です!」


254: 2015/05/26(火) 21:51:00.26 ID:GwT7E6WT0

続・湾岸の青葉さん


青葉「うう……酷い目にあいました」

青葉「まさかあの人が夕張さんを気絶させた岩崎さんだったとは……確かに意識が壱・撃・離・脱しても仕方ありませんね」

青葉「しかし!今回は気絶しなかった!青葉、成長しています!」

青葉「……でも次はもう少しソフトな方にしたいですね」

青葉「さて、次は……おおっ?」

青葉「なにやら珍しそうなクルマが入って来ましたねー」

青葉「見た目からすると結構古い型のようですが、丸目のライトが可愛らしいです」

青葉「車種はー……あれは確か、フェアレディZでしたか」

青葉「それにしても、今日は青色のクルマに縁がありますねぇ」

青葉「あ、止まりました。チャンスですね!」

青葉「そこのお兄さーん!ちょっとインタビューさせてもらってもいいですか!?」

――翌日 食堂

提督「そういえば青葉の姿がないようだが、アイツ今日非番だっけ?」モグモグ

最上「よく分からないけど『あれはクルマじゃない……まるで悪魔のような……』って、変なこと呟いて引きこもっていたよ」

提督「なんだそりゃ」

最上「あ、提督。醤油取って」




255: 2015/05/26(火) 22:24:08.10 ID:GwT7E6WT0

小ネタ 違いの分かる女


由良「ふぅ……遠征の後に飲むコーヒーは美味しいわ」

コソコソ……

夕張「由良がコーヒーを飲んでいる」

川内「よし。今こそ作戦決行だね」つラジカセ

夕張「カメラのセットもオッケー。じゃあ再生っと」カチャッ


♪ダバダーダーバダバダーダバダー


由良「!?」キョロキョロ

夕張「キタキタ。今の十代には確実に通じない由良ネタよ!」

川内「実際私達もリアルタイムでは見てないからね!」

夕張「でも分かる人には出オチよね」

川内「それは言わないの」

由良 ←満更でもなさそうにコーヒーを飲む

夕張「なんかその気になって優雅に飲んでいるけど、由良がやっても割と様になるものね」●REC

川内「どうでもいいけど由良って美乳だよね」

由良 ←足を組む

夕張「クッ……見えそうで見えない」


♪ダバダーダバダーダー

川内「サバだーイカだーワー(同じ音程で)」

由良 ブハッ

夕張「何よその歌詞」

川内「提督が唄ってた」

由良「サバとイカってなによ……ククッ」

夕張「ツボに入ってるわね」

川内「必氏で笑いを抑えようとしてるんだけど」

由良「……って、二人して達影でコソコソと何やってんのよ……」クククッ


今日も軽巡組は仲良しです。


263: 2015/05/28(木) 18:06:39.46 ID:/TrVZE1F0

小ネタ 今の十代には分からないレースゲームネタ


夕張「そういえば疑問だったんですが……」

提督「ん?どうした?」

夕張「いえ、提督が若い頃ってどうやってクルマのチューニング費用を賄っていたのかなって」

提督「なんだ、お前金無いのか?」

夕張「……自分でやるとはいえ、今回の修理費だけでも結構な額になりますから」

提督「まあ、この手のクルマだと余計に金が掛かるからな。俺もある程度は自分でやっていたよ」

夕張「なので、同じワンエイティだし一応参考になるかなーと思いまして」

提督「別に特別なことしてないって。バイトだよバイト」

夕張「どんなバイトですか?」

提督「ビルの警備。今思うと面白かったなアレ」

夕張「へー……ホントに普通ですね」

提督「ああ。夜勤だったんだけど、そのビルが最初はおっかないところでさ。デカいネズミが居たり、泥棒が居たり……」

夕張「なんだか物騒ですね」

提督「おお。慣れてきた頃には毘沙門天が出てきてさ。どうしようかと思ったよ」

夕張「……んん?」

提督「その後三人で組んで回ったけど、そこもとんでもない所でさ。氏神や自縛霊とかの化け物に混じって女王様だのカーニバル女だの……」

夕張「ちょちょちょ!」

提督「あと金粉に塗れた女も居たな!最初は笑ったけど、ソイツを倒すとなかなか……」

夕張「ストップストップ!何ですかそれ!」

提督「だからビルの警備だって。その時使ってた剣は今でも大切に持っているぞ」

夕張「剣!?警備のバイトに剣!?」

提督「あかねとマリアン、元気かなぁ……」


普通に考えればあのゲームは色々おかしい。

264: 2015/05/28(木) 18:09:06.72 ID:/TrVZE1F0

ホンペンハジマリマス


工廠

夕張「ホラ、アレですよアレ」

提督「銀黒のDR30スカイライン後期型……間違いなく『鉄仮面』だな」

金剛「なんで鉄仮面と云うデス?」

提督「ヘッドライトの間にある開口部、つまりフロントグリルだ。前期型には大きなグリルがあるのだが、マイナーチェンジ後の鉄仮面は見ての通りグリルレスになってナ。より無骨な印象になったことから、そう呼ばれるようになったっぽい」

金剛「確かに『カタハ』な感じがするネー」

夕張「硬派って云いたいんですか?」

提督「しっかし渋いなぁ……俺、歴代スカイラインの中だとサンニーと同じ位好きなんだ」

夕張「しかも見た目ピカピカですよ。とても30年前のクルマとは思えない……」

金剛「ワタシのハチロクと大違いヨ」

夕張「金剛さんのは特殊過ぎます」

提督「内装、鉄板剥き出しだもんな」

夕張「ん?中で寝てるのは……瑞鳳?」

瑞鳳 ムニャムニャ……


265: 2015/05/28(木) 18:11:44.20 ID:/TrVZE1F0

提督「何でこんな所で寝てるんだ?」

金剛「可愛い寝顔ネ」

夕張「コレ、瑞鳳が買ったのでしょうか?」

提督「とりあえず起こすか。お、鍵開いてる」ガチャ

瑞鳳「ムニャ……」Zzz

提督「ヅホー。起きろー」ユサユサ

瑞鳳「瑞鳳のクルマ……古くても活躍出来るんだからぁ……」Zzz

夕張「起きませんね」

夕張「とても幸せそうヨ」

提督「起きないとチューしちゃうぞー」

夕張「瑞鳳!今すぐ起きなさい!犯されるわよ!」ガシッ

瑞鳳「 」ユッサユッサ

金剛「提督、まさか……」

提督「濡れ衣です。露骨に引かないでもらえますか」

266: 2015/05/28(木) 18:13:51.84 ID:/TrVZE1F0

瑞鳳「んぅ……はれぇ、提督さんに夕張ぃ……?」

夕張「おはよう瑞鳳。何でこんな所で寝ているのよ?」

瑞鳳「ああそうだぁ……夕べ納車されたのが嬉しくって、中でそのまま寝ちゃったんだぁ」ファー

提督「気持ちは分かるが、いくら暖かくなったとは云え艦娘といえど風邪引くぞ?」

瑞鳳「ふぁーい……」

提督「で、早速だがヅホよ。この鉄仮面はどうしたんだ」

瑞鳳「えーっとね、提督さんと夕張がいつも楽しそうにクルマの話しているから、つい……エヘヘ」

夕張「よく物陰から覗いていたものね」

金剛「随分な物好きですネー」

提督「その物好きの所に自ら異動して来たのはどこのドイツだ」

金剛「ドイツじゃないヨ。イギリスネ」

提督「そういう意味じゃない」

瑞鳳「何で金剛さんが居るの?」

夕張「話せば長くなるけど、提督の下で修行をしたいって」

瑞鳳「修行?」

267: 2015/05/28(木) 18:16:34.92 ID:/TrVZE1F0

提督「それにしてもホントに綺麗だなー。よく見つけてきたもんだ」

瑞鳳「あ、うん。頑張って探したんだから!」


瑞鳳のDR30スカイライン
後期2ドアのシルバーツートン
ダウンサス、エアクリ&マフラー交換程度のライトチューン
お約束のエイトスポーク、R32風大型リヤスポイラーが目を惹く
モデル末期のターボCなのでかなり貴重
パワーは推定約220馬力


夕張「でも、どうして鉄仮面なの?同じ価格帯でもっと良いモノもあったでしょう」

瑞鳳「うーん……最初はZ31や20ソアラ、あとサイバーCR-Xも考えたんだけど、どうにもピンと来るのが無くて」

夕張「どっちにしても古いクルマばっかりね……」

瑞鳳「それにこの目!四角いシルエット!レトロで可愛いでしょ?」

提督「可愛いっていうのか、それ」

夕張「……分からない」

金剛「ワタシは分かるネ。カクカクした形がブロックアートみたいでキュート」

瑞鳳「やっぱり!?流石ハチロク乗り!」

金剛「ヤーヤー、どうもデース」

夕張「思わぬところで打ち解けてる……」

268: 2015/05/28(木) 18:22:13.94 ID:/TrVZE1F0

提督「それにしても……今は西暦何年だっけ」

夕張「どうしたんですか急に」

提督「いや、ホラ……並んでいるクルマがさ」

180SX ←89年デビュー

AE86 ←83年デビュー

DR30 ←81年デビュー

提督「夕張のワンエイティは今風だからいいけどさ……」

夕張「ああ、確かに」

瑞鳳「狙ったように昭和のクルマばっかりね」

夕張「ワンエイティも中身はS13だから実質昭和のクルマよね」

提督「ココだけあれか?平成初期の大黒パーキングか、開始当初のいか天か?」

金剛「ハチ○ヒーローとか、高速○鉛が取材に来るかも知れまセーン」



269: 2015/05/28(木) 18:24:44.17 ID:/TrVZE1F0

提督「やれやれ、一挙に二台も増えるとは思わなんだ」

夕張「叢雲ちゃんの頭痛が酷くなりそうな……」

提督「だが俺は謝らない」

夕張「何故か瑞鳳と金剛さんは仲良くなってるし」

瑞鳳「うわぁ、金剛さんのハチロクスゴーい!」キャイキャイ

金剛「ベリー苦労したからネ!」

提督「さて……鉄仮面の謎も解けたことだし、お前ら散れ!仕事するぞー」

夕張「あら、提督からそんなこと云うなんて珍しい」

提督「一応提督だからな。書類も溜まっているし、放って置くと叢雲が怖い……」

金剛「尻に敷かれてマスね」

瑞鳳「今に始まったことじゃないよ」

270: 2015/05/28(木) 18:26:55.15 ID:/TrVZE1F0

提督「俺は執務室に戻るとして……意気投合したついでだ、ヅホは金剛に施設の案内をしてやってくれ」

瑞鳳「はーい!」

金剛「宜しくデース!」

提督「それと午後には大型輸送船が湾内に入ってくる予定だからそれの受け入れ警備な。お前ら二人とも艦隊に入れるから準備しておいて」

金剛「警備任務にワタシも入れるのデスか?」

提督「戦艦が増えたとなっちゃあ、深海棲艦も迂闊に手を出しづらくなるだろうからな。抑止力の為にも金剛にはドンと構えていて欲しいのヨ」

金剛「了解デス!」

夕張「じゃあ私はワンエイティの整備に戻りm 提督「お前も書類の整理だ」ガシッ

夕張「そういう事務仕事なら由良とか古鷹さんに任せればいいじゃないですかー……」

提督「今日は二人とも非番なの!それに……叢雲と二人だとまたチクチク言われそうで心細いんだよ……」

夕張「尚更行きたくないですよ。冗談じゃねぇ」

提督「唐突なレーラグはやめれ。この前美味しい蕎麦屋見つけたから、奢ってやるって……な?」

夕張「……まだ足りませんね」

提督「よし、じゃあ耳貸せ」ボソボソ

夕張「……っ!仕方ないですねー……今回だけですよ?」ニヤニヤ

金剛「急に態度が変わったネ」

瑞鳳「買収よ、きっと」

271: 2015/05/28(木) 18:35:08.30 ID:/TrVZE1F0

瑞鳳案内中……

金剛「ココはそれほど大きな所ではないデスが、艦娘はどれ位居るんデスか?」

瑞鳳「んー……大体20人位じゃないかな?」

金剛「随分少ないデスね」

瑞鳳「鎮守府とは銘打っているけど、あくまで横須賀からの分署だからね。基本的には横須賀のサポートだったり、湾周辺の護衛・警備が主な仕事よ。たまに新人の育成とかもあるよ」

金剛「ワッツ!?そうだったんデスか!?」

瑞鳳「皆略して市川鎮守府って呼んでるから、ややこしいのよね」

金剛「知らなかったデース……」

瑞鳳「こんな感じね。何か質問はある?」

金剛「Mu……そういえば正規空母が居ない気がするネ」

瑞鳳「基本的には私や龍驤、あと千歳さんで賄ってるの。扶桑さん達やモガミンも居るけどね」

金剛「正規空母が居ないとは……驚きネ」

瑞鳳「大体横須賀とかに回っちゃうから仕方ないよ」

金剛「成る程ネー」

瑞鳳「他の所よりは暇だしちょっと退屈かも知れないけど、その分提督さんには色々自由にさせてもらっているの。何だかんだで良い所だよ!」

金剛「提督からしてアレですからネ」

瑞鳳「アハハ。でもそんな所に異動願いを出すなんて、金剛さんも似たようなものじゃない」

金剛「イエース!変わっているのは充分承知ネ!」

272: 2015/05/28(木) 18:37:39.71 ID:/TrVZE1F0

浦風「……ありゃ?金剛姉さん?」ヒョコッ

金剛「ワオ浦風!そういえば市川に所属してたネ!」

浦風「浜風もおるよ。しかし急にどしたんけ。突然コッチに異動するー聞いた時は驚いたきぃ」

金剛「この鎮守府に興味が出たんデスよ!元気だったネ?」

浦風「モチロンじゃ!金剛姉さんも相変わらずじゃねえ」

金剛「ワタシはいつでもワタシネ!」

瑞鳳 ジー

浦風「瑞鳳?何見とるん?」

金剛「どうかしましたカ?」

瑞鳳「いや、二人とも羨ましいなーって。何とは言わないけど」ジー

浦・金「??」

瑞鳳(胸……)

273: 2015/05/28(木) 18:38:45.13 ID:/TrVZE1F0

執務室

叢雲「ハイ次。ここにサイン」

提督「ん。あ、この任務報告書も送っておいて」

叢雲「こっちの整備記録は?」

提督「それはまだ最終確認が終わってないから出しちゃダメ」

叢雲「了解」

夕張(実際仕事してみると、私が手伝うことってあんまり無いんだよなー……)

叢雲「夕張、手が止まっているわ」

夕張「あ、ゴメン」

叢雲「全く……いつも好き勝手しているんだから、執務の手伝い位しっかりやってよね」

夕張「面目ない」

274: 2015/05/28(木) 18:40:02.88 ID:/TrVZE1F0

提督「そう言うなって。元はと云えば俺が巻き込んでいるようなもんだし」

叢雲「それもそうね。どっかのバカが普段から真面目にやれば、私もここまで苦労することもないんだけど」

提督「仰るとおりです……叢雲様にはいつも助けられています。感謝しきれません正に女神様ですハイ」

叢雲「ハイハイ、言ってなさい」

提督「凛とした佇まい、仕事上での実力、あと黒タイツ(ボソッ)、どれをとってもこんな自分には勿体無い程です有難うございます」

叢雲「……ホント、次から次へと口だけは達者ね」

夕張(途中で何か聞こえたけど……)

叢雲「ま、いいわ。これ送ってくるから、ちゃんとやってなさいよ」バタン

提督「………」

夕張「………あの、黒タイツって……」

提督「………」

夕張「……提督?」

提督 ニヤッ

夕張「ヒィッ!?」


286: 2015/05/30(土) 12:55:05.83 ID:CjO7z6Xj0

夜・食堂

扶桑「ごちそうさまでした」

山城「姉様、もう召し上がらないんですか?」

扶桑「ええ。ちょっと出掛けて来るわ。デザートのプリンあげる」

山城「えっ、ウソそんな……!姉様がプリンを!?こ、幸福だわ!」

提督「……あいつの幸福指数って低すぎやしないか」モグモグ

最上「だって山城だもん」モグモグ

時雨「仕方ないよ」モグモグ

夕張「あれ?川内が居ないんだけど」

由良「摩耶さんとバイクで何処かに行ったわ」ズズー

提督「ん?摩耶も単車乗ってたっけ?」

最上「昔から乗ってたみたいだよ。ボクはよく分からないけど、ファミマレプリカだっけ?」モグモグ

提督「『エディ・ローソン』のローソンな。色合い似てるけどコンビニじゃない」

夕張「カワサキか……」


287: 2015/05/30(土) 12:57:17.79 ID:CjO7z6Xj0

山城「……ちょっといいかしら」

提督「どうした山城。プリンならやらんぞ」

山城「違うわよ。姉様のことなんだけど……最近夜外出することが多くて」

提督「え?そうなの?」

山城「昨夜も喫煙所に向かう途中、マッドハニーの『ヒア・カムズ・シックネス』を口ずさんでいたら……姉様がフラッと出掛けて行くところを見かけて……」ハァ

提督「それより、お前のその選曲の方が気になるわ」

山城「元はと云えば提督の趣味じゃない」ムスッ

最上「どんな曲なの?」

夕張「『レンコン好きです!』って空耳で有名な曲よ」

時雨「シアトル出身のガレージバンドさ。ニルヴァーナのカート・コベインにも影響を与えたんだよ。演奏は下手だけどカッコいいんだ」

最上「へー。皆詳しいね」

若葉 ヒョコッ

由良「あら、若葉」

若葉「THERE GOES SICKNESS IN MY DADDY'S CAR」ヒュンッ

由良「!?」ビクッ

288: 2015/05/30(土) 13:00:11.33 ID:CjO7z6Xj0

山城「マッドハニーはどうでもいいの。姉様が夜に何してるか知らない?」

提督「姉バカのお前が知らないのに俺が知るわけないだろ」

由良「若葉はなんだったの……」

時雨「気にしなくていいと思うよ」

提督「そもそも、何で俺に聞けば分かると思ったんだよ」

山城「提督が無理矢理連れ出して、やらしいことしているんでしょ!」

提督「俺のこと何だと思ってるんだ」

山城「クルマと音楽好きのオッOイ星人」サラリ

提督「ぐっ……当たりだよチクショウめ」

夕張「昼間、黒タイツがどうとか言ってましたよね……?」

提督「女性の美しさを愛でて何が悪い」

夕張「その結果が胸と黒タイツ?」ジトーッ

山城「兎に角、姉様に何かあったらただじゃおかないから!覚悟なさい!」

提督「そんなに心配なら扶桑さんに首輪でも付けておけよ」

夕張「ちょっ……!」

山城「姉様に首輪……?」

モウソウチュウ……

シミュレーション

山城「アリねそれ……ウフフ、ウフフフフ……」

提督「うん、たまんねえ。しょーりゅーけんだ」

夕張「ダメだコイツら、早く何とかしないと」

若葉「サタニック・ブンブン・ヘッド」

由良「若葉まだ居たの!?」ビクッ


289: 2015/05/30(土) 13:02:40.73 ID:CjO7z6Xj0

工廠

夕張「ああー……今日はやたら疲れた。でもクルマ直さないとなぁ……」

金剛「Mu……今回ばかりはダメかしら……(英語)」

夕張「あら?金剛さん?」

金剛「Oh!夕張さん!どうしましたカ?」

夕張「私はワンエイティの修理を。金剛さんこそ、難しい顔してどうしたんです?」

金剛「エンジンを見てたんデスが、ハチロクも限界かナーって」

夕張「そんなことないですよ。とてつもなく速かったじゃないですか」

金剛「デスが、エンジンだけじゃなくボディもボロボロネ。これを機に乗り換えも考えてマース」

夕張「まだまだイけると思うけど……」

金剛「……この子には少し無理させ過ぎたネ。それに都高に上がるなら、その内限界が来るヨ」

夕張「そうですか……新しいクルマに候補はあるんですか?」

金剛「考え中ネー。S2000かNSXか……」

夕張「また随分性格が違うクルマを」

金剛「都高、特にループウェイにステージを絞ったら、ハイパワーよりもトータルバランスが大事だと思うネ」

金剛「しっかり踏めて、ちゃんと曲がる。何よりスタビリティが必要ヨ」

夕張「スタビリティ……安定性ですね」

金剛「イエース。AWD(オール・ホイール・ドライブ)の方が有利なのは分かりマスが、ワタシはあくまでリヤ・ドライブのマシンで勝負したいネ」

290: 2015/05/30(土) 13:05:05.64 ID:CjO7z6Xj0

夕張「金剛さんは、そもそも何で走るようになったんですか?」

金剛「ワタシ?最初はマンガの影響ネ」

夕張「ああ……だからハチロクですか」

金剛「デヘヘ……でも、ある時見たんですヨ。スゴいクルマを」

夕張「スゴいクルマ?」

金剛「古いフェアレディZとポルシェ。たまたまシーサイドをドライブしてたら見かけたネ」

夕張「そ、その組み合わせって、まさか……」

金剛「ノンノン!Zはレッド!ポルシェはマルーンだったヨ!」

夕張「流石にそうですよね……ハハ」

金剛「イエー。その二台が目の前を通り過ぎた時、ゾクッと来ました」

金剛「とてもビューティフルで、震えたネ。ワタシが知らなかっただけで、こんなマシンが本当に存在するんだって……感動したんデスよ」

夕張「そんなクルマが……提督なら何か知ってるかな」

金剛「だから、都高は少し憧れだったネ。ワインディングにも速い人は沢山居たけど、あの二台のようなマシンは未だに見たことないヨ」

夕張「じゃあ、今はその二台に会うことが目的ですか?」

金剛「それもありマス。でも、ここまでやった以上はハンパな状態で終わらせたくないからデスね」

金剛「それに……降りる時はきっと、自分で分かるハズデース」

291: 2015/05/30(土) 13:06:35.47 ID:CjO7z6Xj0

金剛「夕張さんはどうデスか?」

夕張「え、私?」

金剛「イエス。夕張さんは何で走っていマスか?」

夕張「私かぁ……何でだろ。元々機械弄りが好きだから、その延長だったけど」

夕張「クルマ買って色々弄っていたら、提督が『じゃあ都高に上がってみる?』って云われて、何となく走って」

金剛「そこで都高に上がろうと誘う提督もどうかしてるネー」

夕張「そうですよね。でも、誘いに乗って走っている内にどんどん楽しくなって今に至るんですけど……あんまり理由になってないですね」

金剛「グッド!良いと思うヨ!」

夕張「そうですか?」

金剛「理由なんて無理に探す必要無いネ!やってる内にきっと見つかるヨ!」

夕張「うーん……そんなもんですかね?」

金剛「まずは何事も楽しまなくちゃ!損デスよ!」

夕張「……なんだか金剛さんと話してると、元気がもらえるなぁ」

金剛「よく言われるネ。それってどういうことデス?」

夕張「言葉通りですよ。まるで、太陽みたい」

金剛「Oh!サンシャイン!それは嬉しいデース」

夕張(走る理由か……あんまり考えたことなかったけど、私にも見つかるかな)

金剛「でもまず、お互い修理デスね」ハァ

夕張「……ですね」

292: 2015/05/30(土) 13:08:50.08 ID:CjO7z6Xj0

喫煙所

提督 写真を眺めてる

龍驤「なんや、まだ起きとったんかい」

提督「そういうお前はどうなんだよ」

龍驤「それもそうやな。で、何見とったんよ?んん?」

提督「……昔の写真だよ」

龍驤「ほっほう。見してみぃ……って、扶桑さんが写っとるやん」

提督「やっぱ似てるよな。別人だぜソレ」

龍驤「似とるゆうレベルちゃうで!瓜二つやん!誰だれ!?」

提督「……昔の恋人。たまたま見つけてさ」

龍驤「不躾かも知れへんが、なんで別れたん?」

提督「俺があまりにもクルマにのめり込むもんだからさ。愛想尽かされて居なくなった」タバコスパー

龍驤「キミも罪作りな男やなぁ。こんな別嬪さん放って置いて」

提督「だろ?で、今こうして眺めてたわけ。女々しいだろ」

龍驤「ホンマや。あまりに女々しうてコッチが辛いわ」ワハハ

提督「……だから時々、扶桑さんを見るとドキっとするんだよ。仕草から口調からソックリでビビるんだ」

龍驤「ほーん。でもまあ、キミには叢雲みたいなキツめの性格の方が合ってるわ」

提督「やっぱり?分かる?」

龍驤「そらウチかて付き合い長いんやから見てれば分かる」タバコトリダシ

龍驤「……大方、何も言わずに受け入れてくれるもんやから、調子こいて走り回っとったんやろ。で、爆発」

提督「大正解。流石我が隊のご意見番」

龍驤「誰が呼んでんねんソレ」

293: 2015/05/30(土) 13:10:59.25 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「夕張もそやけど、ウチには分からん世界やで。同じトコグルグル周って何がオモロイん?」

提督「そりゃあ、やってみないことには分からないわな。今度横に乗るか?」

龍驤「嫌や。あんなケッタイなクルマ、乗りとうないわ」

提督「ケッタイ言うなや。あれでも相当金掛かってるんだぞ」

龍驤「知らんわそんなん。嫌なもんは嫌や」

提督「なんだよ、たまにはドライブデートにでも誘ってやろうと思っても皆断るんだから」

龍驤「……ホンマに何でやねん。付きおうた恋人にもそれが原因で逃げられとるのに、何で降りようとせんねん」

提督「……さて、ね。降りる気が無いからじゃないか?」

龍驤「阿呆。答えになっとらんわ」

提督「俺自身が分かってないんだ。一回降りたってのに、いい歳してまた戻ってるんだ。自分でもワケ分からん」

龍驤「なんや。一回は止めてるんか」

提督「つるんでたヤツが目の前で事故ってな。その時は二度と走らないと思ってた」

龍驤「せやけどまた戻ってるやん」

提督「だーかーら、自分でも分からないんだよ」

294: 2015/05/30(土) 13:14:26.71 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「……ウチのオトンが若い時、浪速環状でヤンチャしとったらしいんや」

提督「親父さん環状族だったのか?」

龍驤「写真しか見とらんから知らんわ。当時シビック云うたら環状族みたいなノリやったんやろ?」

提督「らしいな。府警のシビック狩りは有名だったみたいだし。で、それがなんだよ」

龍驤「そこそこ大きなチームに入って、先輩にもそれなりに着いて行けるようになった頃な、大事故に巻き込まれてん」

龍驤「まあオトンとクルマは無傷やった。けどその事故の当事者やった連れのクルマはアタマからひしゃげてしもてな。助手席乗ってたヤツが前のガラス突き破って明後日の方向向いて転がってたらしいわ」

提督「何したらそんなになるんだよ」

龍驤「止まってたトラックに突っ込んだらしいで。危うくオトンもぶつけるトコやったと」

龍驤「で、そんなんやから助手席のヤツは即氏。運転してたのもロールバーやっけ?あれに頭を強く打って間もなく氏んだそうや」

龍驤「その光景見たオトンは大層震え上がってその場でゲーゲー吐いたそうや。人の命なんてこんな簡単なもんなんかって。んで、ほとぼり冷める頃には降りたと」

龍驤「ああ、それ以来肉がダメになったとも言っとったわ」

295: 2015/05/30(土) 13:20:34.06 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「ここまで聞いて感想は?」

提督「人の命は尊いものだなぁ。僕にはとても出来ない」

龍驤「小坊が無理矢理書いた作文かいっ。しかもワケ分からんし」

提督「……別に、よく聞く話だからな。実際、顔見知りに氏んだヤツも居たし」

龍驤「そんなら、何でや」

提督「……ケリ、つけたいのかね」

龍驤「ケリ?」

提督「ああ。あの日置き忘れてしまった自分に、ケリをつけたいのかも」

龍驤「うわっ、クッサ~。鼻が曲がる~」

提督「人がちょっとセンチメンタルな気分に浸って喋ったっていうのに台無しじゃねえか」

龍驤「ウォエ~」

提督「そんなに!?と言うか、年頃の女の子がそんな声出しちゃいけません!」

龍驤「冗談や。でも、そんなん要らんねん。君が氏んだらどうするんやって話や」

提督「けどそんなこと云ったら、お前らだって明日轟沈して居なくなるかもしれないだろ」

龍驤「そんなんキミは望んでないやろ」

提督「ああ。誰一人欠けるのは嫌だ」

龍驤「ウチかて誰かが氏ぬところなんて見とうない。ウチだけやない。皆そう思っとる」

龍驤「だからこそ、これだけは約束してな。ちゃんと帰って来ること。そうすれば、多少のお痛は目を瞑ってやるわ」

提督「……約束するよ」

龍驤「もし氏んだりしたら、あの世まで艦載機飛ばしたる。安心して寝れると思わんことや」

提督「お前ならやれそうで怖いわ」

龍驤「……そんで一生恨むからな」

提督「そうしてくれ。出来る限りナ」


296: 2015/05/30(土) 13:23:23.14 ID:CjO7z6Xj0
扶桑姉様に首輪……?うっひょお!たまんねぇ!
しょーりゅーけーん!!

一旦投下終了。

297: 2015/05/30(土) 13:32:35.63 ID:e/DKKf5Po

車もバイクもはよ免許とりたいわ

次回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その4】


引用: 夕張「クルマ買いました!」