501: 2015/07/19(日) 20:50:16.41 ID:eOIEjXR10

こんばんわ。
夕立の水着グラを見て、ようやく夕立を改二にする決心がつきました。
あと如月も育成開始。

最初へ:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」

前回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その5】


502: 2015/07/19(日) 20:53:18.19 ID:eOIEjXR10

小ネタ 祝!阿武隈改二

川・由「おーっ」

阿武隈 ドヤッ

川内「久しぶりに会ったと思ったら、改二になってる!」

由良「おめでとう阿武隈。私も嬉しいわ」

阿武隈「えへへ……今までと勝手が違うから、慣れるまでちょっと大変そうだけど……」

川内「え?そんなことなかったけど」

由良「川内は殆ど変わらなかったじゃない」

川内「ところでさ、これ何するの?飛行甲板?」

阿武隈「大発と甲標的に対応する為の艤装だって」

川内「マジ?甲標的も積めるなんて反則じゃん」

阿武隈「流石に雷巡程の火力は出せないけど……」

川内「そこまで行ったらもう軽巡じゃないでしょ」

夕張「いいわねー……私にも使える様にしてくれないかしら」

阿武隈「ちょ、急に出てこないでよ」

夕張「ねえ、ちょっと私にも……」

阿武隈「貸すわけないでしょ!」

由良「私も……ちょっと気になるかな……」テレッ

阿武隈「いくら由良の頼みでもダメ!」

川内「じゃあ夜戦しようよ夜戦!」

阿武隈「やらないったら!」

夕・由「改二……改二……」ジリジリ

川内「やーせーんー!」

阿武隈「あーもう皆うるさーい!」


由良改二もあんな格好になるのかな?
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
503: 2015/07/19(日) 20:55:39.03 ID:eOIEjXR10

川内「どうだったー?」

由良「44秒2よ。夕張より全然速い」

川内「ふっ、こんなトコだね」

夕張「 」

長良「おーっ、やるねぇ」

五十鈴「私のベストにも並ぶなんて……」

瑞鳳「じゃあ、今回の勝負は川内の勝ちだね」

夕張「 」

由良 夕張の口に水を注ぐ

夕張「……ンッブィ!ゲホゲホッ!」

由良「いつまで呆けてるの。終わっちゃったよ」

夕張「ゲホッ……もうちょい優しくしてよ……」

由良「丁度良いかと思ったから。で、何か言いたいことは?」

夕張「はぁ……私の方がスローリィ?」

由良「そうなっちゃうわね」

夕張「悔しいけど……負けは負けね……」

川内「あれ、何かアッサリ」

由良「終わりってことでいいの?」

夕張「泣きの一戦、お願いします!」

由・川「ですよねー」

瑞鳳「そんなにドライバーになりたいの?」

夕張「川内に負けたまんまなのが気に食わないだけっ」

瑞鳳「ああ、そういう……」

504: 2015/07/19(日) 20:57:15.52 ID:eOIEjXR10

長良「でも、再戦したところで今の夕張じゃ勝ち目無いと思うよ?」

五十鈴「川内の方がインテRとの相性良さそうだしね」

瑞鳳「もうお互いの愛機で一戦やっちゃうのは?」

長良「あ、それアリ」

五十鈴「でも川内はバイクでしょ?クルマの方が有利なんじゃない?」

長良「川内のバイクって何だっけ?」

川内「ヌー子だよ。本田ヌー子」

由良「NSRね」

瑞鳳「で、夕張はワンエイティ。結構良い勝負になると思わない?」

川内「……その案乗ろうかな。一度夕張と本気でヤリ合いたかったんだよね」

由良「今のは本気じゃなかったの?」

川内「あ、今だって本気だったよ?そうじゃなくて、夕張とあの黄色いワンエイティを墜としたいわけ。それも、都高でね」

川内「勿論リスクは承知の上。でもどうせなら、自分が不利な所でやった方が燃えるでしょ」

長良「すっごい分かるソレ!」

瑞鳳「おなじく」

五十鈴「アンタ達は黙ってなさい」

夕張「………」

川内「で、どうする?あとは夕張が決めていいよ」

夕張「――ソレ、遊びで云ってるんじゃないわよね」

川内「当然」ニヤリ

ゴゴゴゴゴ……

瑞鳳「何で不穏な感じになってきてるの?」

由良「これじゃあ、どっちが再戦望んでいるのか分からないわね」

長良「都高かぁ……私も参加していい?」

五十鈴「バレたらライセンス取り消されるわよ」

長良「でもさー、アレ使ったら結構良いセン行くと思わない?」

五十鈴「そりゃあ、AWに比べたらねぇ……」

瑞鳳「何の話?」

長良「秘密兵器ってとこかな」

由良「それはいいけど、あんまりあの二人を煽るようなことしないでよね?」

長良「大丈夫大丈夫!」

505: 2015/07/19(日) 20:59:51.20 ID:eOIEjXR10

数日後・夜、都高深峰線

叢雲「で?何で私を連れて来たの?」

提督「偶には長年世話になってる秘書艦様とドライブデートがしたくてな」

叢雲「無理矢理クルマに押し込むような真似をしないと、女を誘うことも出来ないワケ?」

提督「だって、そうでもしないと乗ってくれないだろ?」

叢雲「アンタから誘われたことなんて今まで記憶にないんだけど」

提督「そうだっけ?」

叢雲「別にいいけど。で?」

提督「で……って?」

叢雲「私を横に乗せた本当の理由」

提督「……今度だけは、独りじゃ怖くてなぁ」

叢雲「今回に限らず、いつも怖がってるんじゃなかったの?だから毎回夕張達を連れて行くんでしょ」

提督「……察しがいいこと」

叢雲「今更何を怖がる必要があるのよ。とっくの昔に失くしたもんだと思ってたけど?」

提督「バカ言え。今まで一度足りとも怖くないなんて……思ったことはあるけど、恐怖心は常に持っているよ」

叢雲「ふーん」

提督「なんだよ。何か言いたげだな」

叢雲「ちゃらんぽらんのクセに、随分気弱な発言だと思ってね」

提督「……俺は小心者だよ」

叢雲「知ってた」

提督「テメェ……」

叢雲「結局は不安や恐怖から逃れる為でしょ。とっくの昔から知っているわ」


506: 2015/07/19(日) 21:04:58.76 ID:eOIEjXR10

叢雲「それでも解せないわ。別に夕張や川内でも乗せておけばいいじゃない。何で私なの?」

提督「……お前となら、まだ乗り越えられると思ったんだよ」

叢雲「はぁ?」

提督「一番長く付き合いがあって、俺のことを一番理解してくれているお前だから、今夜は隣に居て欲しかったんだよ」

叢雲「私は統計的にアンタの性格を当てはめただけ。勝手なイメージで私を見ないでちょうだい」

提督「それでも、内面を一番読めてるのはウチじゃお前だ」

叢雲「今アンタとの距離が近い立場に居るのは夕張でしょ」

提督「……今はお前じゃなきゃダメなんだ」

叢雲「どうしても?」

提督「どうしても」

叢雲「……まあ、どのみちこの状態じゃ降りることも出来ないしね。貸しにしとくわよ?」

提督「すまんな。ワガママで」

叢雲「何を今更」

提督「……だな」

叢雲「もう一つ。本当に乗り越える気があるなら、今夜でしっかりケリをつけなさい。こんな煩くて乗り心地の悪いクルマ、二度と乗りたくないから」

提督「分かってるよ」


西行きの湾岸線合流。

提督の前に現れたのは、一台の青いクルマだった。


提督「ああ……やっぱりお前はインプよりそっちの方が似合うわ」


BNR34スカイラインGT-R・改 “迅帝”

VS

RPS13 180SX・改 “インターセプター”

507: 2015/07/19(日) 21:07:57.07 ID:eOIEjXR10

同時刻・湾岸線大黒々PA


長良「お待たせー」

由良「姉さん、遅い。全然遅い。見てよコレ」

夕張 ガルル

川内 ガルル

長良「おー、睨み合ってるぅ」

由良「ホントにこの二人は……一度火が付くと面倒なのよね」

長良「アハハ。由良も大変だねぇ」

由良「そういえば五十鈴姉さんは?」

長良「明日遠征入ってるから寝るって。瑞鳳はどうしたの?」

由良「今日はこの近辺の空母揃って飲み会ですって。ただその代わり……」

青葉「恐縮ですっ!」ヒョコッ

由良「青葉さんが来たわ」

青葉「何やら愉快なことになっていると聞いたので、同行取材をと思いまして!」

長良「確かに愉快な状況ではあるね」

由良「で、何で姉さんのクルマが変わってるの?」

長良「ああ、コレ?ピャンさんからステップアップを勧められて、ちょっと借りてるんだ」

青葉「ほぉ……これは……」

508: 2015/07/19(日) 21:11:14.27 ID:eOIEjXR10

長良のメガーヌRS

まさかの元ニュルFF最速マシン。
ピャン氏が所属するショップの開発車両らしい。
ノーマルから比べて若干のパワーアップ、足回りの変更もあるようだ。
カラーはグレー。


青葉「何ですかコレ」

由良「ルノーのメガーヌRS……実車は初めて見るわ」

長良「いやぁ、こんな凄いクルマがあるなんて知らなかったよ。ミスターじゃ太刀打ち出来ないわ」

青葉「見た目からして只者では無さそうなのは分かりますけど、そんなに凄いんですか?」

由良「ニュル・ブルクリンク北コースでFF最速タイムを保持していたの。今はシビックに抜かれちゃったみたいだけど」

長良「7分54秒だったかな。昔のGT-RやNSXよりも速いんじゃない?」

青葉「日本を代表するスポーツカーの記録を破るなんて、やっぱり世界は広いんですねぇ」

由良「どちらも20年位前の記録だけどね。今のGT-Rは……7分8秒だって」ケンサク

青葉「おおぅ……最早別世界」

夕張「ニュルならBMWのM3CSLに乗りたい!」

川内「その前にニュルって何!?美味しいの!?」

長良「喧嘩してても仲が良いよね、アナタ達」


509: 2015/07/19(日) 21:20:33.30 ID:eOIEjXR10

長良「ところでさ、川内ってバイクじゃなかったの?」

由良「提督さんに相談したら、バイクで都高は不利な上に危ないからせめて四輪にしてやれって」

長良「その結果がアレ?」

青葉「あのクルマなら青葉を知ってます」

由良「まあ、条件としては悪くないと思うけど」


Z34フェアレディZ・ニスモ

まさかのニスモZ。勿論新車。
流石にガタが目立つワンエイティに代わり、提督が鬼の72回ローンで秘かに購入。
変更点は少なく、ほぼノーマル。
慣らし完了後、まだ数回しか乗ってないらしい。
川内にキーを渡した際の顔は、FXで金を溶かした人のようだったとか。
カラーはホワイト。


夕張「何で川内がZなのよ!私だって運転どころか、存在すら知らなかったのに!」

川内「へっへーん!羨ましいだろー。新車だぞー」

夕張「羨ましいわよ!後で感想聞かせなさいよ!?」

長良「うっひゃあ。ニスモZじゃない。あれ提督さんのクルマ?」

青葉「みたいです。青葉が思うに、両者のいがみ合いが深まった原因の一端になってますよねアレ」

由良「夕張にバレたら確実にオモチャにされそうだからって隠してたらしいの」

長良「それにしても太っ腹だなぁ。確か600万近いでしょ」

青葉「ろっ!?」

由良「そうね。私が同じ立場なら貸さないわ」

青葉「で、でも乗換えを考えているなら、いつものワンエイティの方が良いと思いますけど……」

由良「あのクルマは相当ピーキーで、いくら川内でも乗るのは厳しいみたいよ。かと云ってサニトラじゃ相手にもならないし、インテRで行くにも車検切れだし、泣く泣くといったところね」

※前回の練習場にはローダーで持って行きました。

川内「夕張でも乗れたんだから私も乗れると思うけどなぁ」

夕張「あそこは道幅広いから何とかなったのよ。あんなの都高じゃ怖くて乗れないわ」

517: 2015/07/20(月) 12:05:34.19 ID:oKXKa/4k0

川内「で、どう行く?」

夕張「そうね。横羽経由で環状線に入って一周。最初の案内板を越えたらスタート。内か外かは……」

川内「内がいい!」

夕張「……内回りね。分かったわ」

由良「何か理由あるの?」

川内「提督が有利なのは内回りって言ってた」

長良「何で?」

夕張「殆ど3速で行けるからでしょ。シフトチェンジが少なければ運転に集中出来るもの」

長良「あ、そっか」

川内「コッチは新型だからね。悪いけど、今回も勝たせてもらうよ」

夕張「言ってくれるじゃない……」

長良「じゃあ由良と青葉さんは私のクルマに」

青葉「了解ですっ!」

由良「二人も乗って大丈夫なの?」

長良「いやぁ……正直着いて行くだけで精一杯だと思うけど、離されないように頑張るよ」

青葉「フフフ……これは中々良い画が撮れそうです」

長良「ん?画って?」

青葉「最近、都高を走る方々に声を掛けて同乗走行をさせてもらっているんです。その際カメラを回して走行シーンを撮影しておりまして」

由良「前は自転車で侵入してたみたいだしね」

長良「え?マジ?」

青葉「流石に今はバイクで移動してますよ」

由良「バイク?いつの間に買ったんですか?」

青葉「陸自払い下げのオフロードバイクなんですが、弱m……いえ、交渉したところ、快く譲って頂きました」

由良(今弱みって言いかけた……)

518: 2015/07/20(月) 12:09:42.70 ID:oKXKa/4k0

長良「時に青葉さん。都高については詳しいよね?」

青葉「青葉は走り屋さんではないですが、情報についてはそれなりに」

長良「じゃあさ。夕張ってココだと結構速いの?」

青葉「そうですね……『美少女が乗っている黄色のワンエイティ』として、そこそこ名前は売れているみたいです。しかし都高は人外魔境ですからね。格付けしたら恐らくB級といったところでしょうか」

長良「じゃあ本気でかかれば私でも何とかなるかな」

青葉「それは青葉の口からは何とも」


川内「じゃあ、ケリつけようよ」

夕張「当然。これ以上負けっぱなしは尺だからね」


Z34 フェアレディZ・ニスモ

VS

RPS13 180SX・改 “快速メロンちゃん”


夕張「……って、ちょっと!誰が呼んでるのよソレ!」

青葉「一部の方達がそう呼んでるらしいです。正体がバレてるわけでもないのに、偶然の一致といいましょうか」

夕張「どうせなら何かこう厨二臭い通り名にしてよ!色物じゃない!」

青葉「青葉に言われましても。ちなみに、メロンっていうから巨Oなのかと思ったら、貧相だったという報告も……」

夕張「ソイツ連れて来なさい!今すぐ!実験台にしてあげるから!」

ギャーギャー

由良「……ん?」

長良「どうしたの由良。早く乗りなよ」

由良「あ、うん……」

由良(今、扶桑さんっぽい人が居た気がするけど……まさかね?)


519: 2015/07/20(月) 12:13:41.26 ID:oKXKa/4k0

夕張180SX・車内

夕張「さて、と……まさか川内がニスモZに乗ることになるとはね」

夕張「でも、いくらメーカー直系のワークスチューンとは云え、私のワンエイティが劣るという理由にはならないわ」

夕張「ただ黙って今を迎えたワケじゃない……各部を手直ししているし、パワーもZと同等」

夕張「それに、都高ならまだ私に分がある」チラッ

夕張「……そう言ってこの前は負けてるし、油断は禁物ね」

夕張「水温、油温、油圧、ブースト……全て正常」

夕張「行こう、ワンエイティ」

夕張(それにしても、快速メロンはないわぁ……)


川内Z・車内

川内「んふふー。新車だ新車ー。何事も新しいモノは気持ちが良いよねぇ」

川内「しっかし夕張が本気を出してきた以上、こういう速そうなクルマじゃないと勝てそうにないしね」

川内「普段意識してなかったけど雰囲気あるよねぇ……どう見たって速いもん、夕張のクルマ」

川内「でも提督だって、このZだったら負けることはないって言ってくれたし」

川内「……あれ、もしかして提督が乗ったら負けないってことだったりして」

川内「うーん。ま、何とかなるか」

川内「さあ……」クスッ


私 と 夜 戦 し よ ?


520: 2015/07/20(月) 12:15:23.05 ID:oKXKa/4k0

長良メガーヌ車内

長良「いいねえ。二人とも、何か速そうなオーラ出してるじゃない」

由良「でも川内はまだ初心者よ?いくらZに乗っていても分が悪いんじゃない?」

長良「確かにね。でもこの前のタイムアタックだって、川内がひっくり返しているんだし、やってみないと分からないよ」

由良「それはそうだけど……」

♪ヒャクマンゴクノォホコリヨカ~ガ~ミィサキィ~

青葉「おや、メールが」

由良「何故に加賀岬……」

青葉「最新の情報は常にチェックしておかないと。それに結構良い歌ですよ?」

由良「ふーん」 ←提督の影響でコールター・オブ・ザ・ディーパーズにハマった

長良「私、音楽には疎いから……」←と言いつつ、ランニング時に聴くのは主にピロウズ

青葉「何やら誰も得をしない裏設定が公開された気がしますが、それよりちょっと大変なことが都高で起こっているようですよ」


521: 2015/07/20(月) 12:19:05.33 ID:oKXKa/4k0

由良「大変なこと?」

青葉「迅帝と遭遇したという報告が入りました」

長良「何それ?」

由良「迅帝って……確か提督さんの友達の岩崎さんのことよね」

青葉「そうです。ただ、目撃者の証言によると青いR34型だったそうなんです」

由良「でも岩崎さんのクルマは新型のWRXでしょ?」

青葉「その通りです。青葉も以前お会いしたことがありますが、その時も確かに青いWRXでした」

青葉「そもそも、今現在岩崎さんのことを迅帝と呼ぶ人は当時を知る人以外は殆ど居ません。あくまでやたらと速いWRXの人という程度です」

青葉「一方、迅帝の話は人によって差異はあれど、確実に根付いています。真偽は分からずとも、かつて最速と謳われた青いR34型が居た、と」

長良「ねえ、何の話?」

由良「似たクルマという可能性もあるでしょ」

青葉「否定できません。迅帝Rはアブフラッグエアロのフルチューンと云われています。今回目撃されたRも仕様も同じ。外見だけなら真似しようと思えば真似できますし、青いR34型は今でもそう珍しくはありません」

青葉「ですが恐らく本物でしょう。何せ一緒に走っていたのが紫色のワンエイティのようですから」

由良「……それって、まさか」

青葉「間違いなく司令官です。迅帝の伝説とは違い、司令官の話は殆ど知られていませんが」

長良「ねえ、だからどういうこと?」

由良「要するに、ウチの提督さんとその友達が競り合ってるってこと」

青葉「しかもそのどちらも、かつて都高でトップクラスの実力を誇った、と」

長良「でもそれって随分前の話でしょ?」

由良「そう。提督さんの話は夕張から聞いたけど、何で今更……」

青葉「そこまでは分かりませんが、もしかしたら鉢合わせる可能性もありますよ」

522: 2015/07/20(月) 12:21:46.30 ID:oKXKa/4k0

何やら不穏な情報に戸惑う由良達をよそに、夕張の180SXと川内のZは完全なバトルモードに突入していた。

先行するのは川内Z……ほぼテール・トゥ・ノーズの接戦である。

大黒々線から横羽線に合流――一般車両はかなり少ない。

パワー的にはほぼ互角だが、3.7Lの大排気量によって生み出されるトルクと、空気抵抗に勝るZがやや有利か。


川内「流れが良いね。環状線に入る前に勝負付いちゃうかな!?」


一方の夕張はブースト圧を最大限にして追走。こちらも負けていない。

夕張「ブースト1・2キロで380馬力。今度はスクランブルじゃなくて、キッチリ出せる最大パワーよ!」


♪カガミィサキィ~

青葉「またしても新情報……イッ!?」

長良「変な声上げてどうしたの?」

由良「今度は何?」

青葉「……最近トップクラスの実力と噂されている“暴食の殲滅者”がこちらに近付いてきているとの情報が……」

長良「随分物騒な名前だね」

由良「そもそも、その情報は何処から来ているのかしら」

青葉「青葉が地道に構築したネットワークですよ。それより気を付けてください。何せその人は……」ピカッ

長良「っ!?」

由良「な、なに?」

青葉「来ました。あの赤いFD3S型……間違いありませんっ」


「フフ。またお会いしましたね、夕張さん」


青葉「横須賀所属の正規空母……赤城さんです!」

530: 2015/07/23(木) 23:17:29.66 ID:ruM7a1Ex0

小ネタ 鈴谷アフター


鎮守府裏・ガレージ


鈴谷「……うーむ」

摩耶「あっちぃー……クソあっちぃー」ダラダラ

熊野「暑いのは同意ですが、流石に言葉遣いが下品ですわよ」

摩耶「しゃーねぇだろー……暑いもんは暑いんだっ」

鈴谷「あれ?二人とも何してんのさ」

熊野「あら鈴谷。貴女こそこんな所でどうされたの?」

摩耶「……あ、ガジガジ君買ってこようぜ」

鈴谷「今確実に鈴谷の髪見て連想したよね」

摩耶「で、難しい顔してどうしたんだよ」

鈴谷「いやさ、これなんだけど……」


HCR32スカイライン

>>385にて提督から譲り受けたスカイライン。2ドア。
吸排気、車高調、ブーストアップ+αのお約束仕様。
見た目は羽無し&GT-Rバンパー。ガンメタのTE37Vがポイント。
カラーはブルーイッシュシルバー。


摩耶「へえ、サンニーか。見た目からして馬鹿(提督)の趣味かコレ」

鈴谷「何か鈴谷に是非乗ってもらいたいって云って、無理矢理押し付けられた」

熊野「色合いは鈴谷に合いますけど……もっとエレガントなデザインの方がよろしいんじゃなくて?」

鈴谷「エレガントは兎も角、確かにこんな厳つい感じは趣味じゃないしねー」

摩耶「タダで貰えるんだったら貰っとけばいいだろ。クルマは有って困らないんだし」

鈴谷「えー……後で何かありそうで怖い」

熊野「あら、そんな些細なこと。一捻りで黙らせてしまえば解決しますのに」

摩耶「お前が言うと冗談に聞こえねぇ……」

熊野「私、冗談を言ったつもりはありませんが」

摩耶「やめてやれ」

531: 2015/07/23(木) 23:18:48.26 ID:ruM7a1Ex0

鈴谷「でさ、どうしようか」

摩耶「お前が乗らないならアタシが乗る」

鈴谷「も、貰ったのは鈴谷だしっ!」

摩耶「でも趣味じゃないんだろ?」

鈴谷「そうだけど……色合いとか、後ろのランプは丸くて可愛いし……」

摩耶「実は気に入ってるのか?」

熊野「ところで、ガジガジ君はどうされたの?」

摩耶「今それ聞くのかよ。最上型マイペース過ぎるだろ」

鈴谷「えー……どうせなら32アイスが良いー」

熊野「でしたら、このクルマでガジガジ君を買いに行きませんこと?」ポンッ

摩耶「あー……もうそれでいいや。ホレ、運転」

鈴谷「え?摩耶が運転するんじゃないの?」

摩耶「コレは鈴谷のクルマなんだろ?なら運転するのは持ち主がするべきだ」

鈴谷「ちょ、マニュアルなんて運転出来ないって!」

続け

532: 2015/07/23(木) 23:33:17.13 ID:ruM7a1Ex0

小ネタ 市川鎮守府のクルマ達

①サニートラック

丸目のロングボディ。
主に輸送用として設立当初から配備されていたが、今ではタダのオモチャ。
夕張が整備を覚える為にあちこち手を加え、川内が練習の為に振り回しているので結構ガタガタ。
1.3L化、ワタナベ・エイトスポーク、室内には小型扇風機を設置。
提督の趣味で東名サニーを模したカラーリングにされてしまったので、無駄に派手。


②キャラバン(E24)

ハイエースでダンケダンケなら、ウチはキャラバンでウラウララーじゃ!
……等と、意味不明な供述をry
主に艦娘達の遠征・お出掛け用にネットオークションで購入。落札価格5万円。
最近クーラーの効きが悪くなったと不評が出ているとか。
ブラックのボディにインパル・シルエットホイールが特徴。


夕張「ホント日産の旧型車が好きですよね」

提督「何を言う。どちらも実に機能的なクルマだろうが」

夕張「キャラバンは同意しますが、サニトラは完全にオモチャ扱いじゃないですか」

提督「率先してオモチャにしているお前が言うな」

夕張「ところで、仮にですけど今後本編に増えそうなクルマを予想してみてくださいよ」

提督「そうだな……唐突にメガーヌが出て来たから、外車はもっと出していいかもな」

夕張「やっぱりポルシェとかフェラーリですかね?先日>>1が湾岸でナローとディーノに遭遇して大興奮していたみたいですし」

提督「それもアリだが、もうちょいマニアックなトコにいきたくない?」

夕張「マニアック……例えば?」

提督「パンテーラ」

夕張「古っ」

提督「国内で初めて300キロ突破したのはパンテーラだぞ?」

夕張「ゲーリー・アラン・光永パンテーラですね」

提督「国産ならスープラ・シルビア・ランエボの定番所もいいけど、マークⅡ兄弟やセフィーロみたいな4ドア勢があってもいいよな」

夕張「それまでこのSS続きますかね?」

提督「それは知らん」


>>1が通っていた幼稚園の送迎バスは、この型のホーミーでした。

533: 2015/07/23(木) 23:36:43.12 ID:ruM7a1Ex0

夕張「あのFDって……もしかして」ピッ

夕張「川内、聞いてる?後ろからとんでもないのが来ちゃったんだけど」

川内『なに?あの赤いの、夕張の知り合い?』デンワゴシ

夕張「あれ多分赤城さんよ。前に私がぶつけた時、一緒に走ってた……」

川内『ああ、そうなの?ウチだけかと思ったら、他の鎮守府でもこんな事してる艦娘って居るんだね』

夕張「そういえば青葉さんの映像見てなかったわね、アンタ」

川内『しっかしさぁ……気に食わないなぁ』

夕張「なにがよ」

川内『折角夕張と夜戦を楽しもうと思ったのに、空母が横からしゃしゃり出てくるなんてさー……うん、ウザい』

夕張「ちょっと?川内?」

川内『で?赤城さん、速いの?』

夕張「少なくとも私よりは速いわ、間違いなく」

川内『ふーん。私とどっちが速いと思う?』

夕張「一応言っておくけど、アンタが敵う相手じゃないし、そもそもZは提督のクルマなんだから無理しちゃダメよ」

川内『あのねぇ、私怒ってるの。水差されて。ホンット最悪』

川内『だからさー。環状まで多少はセーブしようと思ったけど、もう本気で踏むからね。いつまでも後ろに居られても邪魔だし』

夕張「本気って……今の話聞いてた?」

川内『夕張もちゃんと着いて来てよね。今夜を楽しみにしてたんだから』プツッ

夕張「川内!?ああ、もう……今の、完全にキレちゃった時の声だ……」

534: 2015/07/23(木) 23:37:55.24 ID:ruM7a1Ex0

川内が駆るニスモZは、名前の通りメーカー直系のチューニングマシンではあるが、あくまでノーマル。

購入後に変更した点といえば、精々機械式LSDが追加した程度である。

夕張180SXだけならば実力的に互角の勝負が出来るものの、赤城RX-7の闖入によって状況は一転。

実力・経験・クルマの完成度……どれも赤城が上回る。


川内「……ああー、どうしてやろうかなぁ」


しかし、彼女にとっては些細な事だった。

唐突に現れて我が物顔で抜きにかかるRX-7が気に入らない。

道を譲って先行させてしまえばいいが、どう見ても喧嘩を売られている。

チラチラとミラーに映るRX-7のライトが腹立たしい。

川内の顔から、笑みが消えていた。


川内「当然……墜とされる覚悟はあるんだよね?」


VQ37が低く吼える。

535: 2015/07/23(木) 23:39:01.30 ID:ruM7a1Ex0

長良「ちょちょちょっ!川内速いって!」

青葉「流石、夜戦ニンジャーと呼ばれるだけありますね。まるで流れるようです」

長良「赤城さん入った途端、ペース上がりすぎだよぉ」

由良「でも……キツいのは川内の方だと思う」

長良「確かに。赤城さんはまだ余裕ありそうだし……」

青葉「あとは最後尾につける夕張さんがどう動くか、ですが」

由良「今は様子見ってとこなのかな」

青葉「それでもこのペースに着いて行く辺り、流石ですね」

長良「とにかく!このままじゃ引き離されちゃうから、本気で行くよ!」

青葉「わわっ!」

由良「姉さん、これ借り物でしょ!」

長良「ちょっと黙ってて!」

青葉「コッチも火が点いちゃってますよぉ!」

536: 2015/07/23(木) 23:43:28.41 ID:ruM7a1Ex0

狭い横羽線を驚異的なペースで駆け抜ける川内Z。

猫の目のように目まぐるしく状況が変わる都高で、まるで全てを見切っているかのように一般車両の間を縫う様は、流石歴戦の艦娘……取り分け夜戦に情熱を注ぐ川内型一番艦と云うべきか。

しかし由良の言葉通り、余裕は微塵も無い。


川内「……っ!」


どんなに必氏で踏み込んでも、まるでサーチライトの如くRX-7のヘッドライトが室内を照らしてくる。

離れない――。

大粒の汗が首筋を伝う。


赤城「なかなか良い腕前ね。だけど、詰めが甘い」


空港西トンネル手前の下り左コーナーで、いよいよ赤城が動きを見せる。

ブレーキングのポイントを奥に取り、アウト側からZを抜きに掛かった。

荒れた路面をものともせず、ほぼカウンターステア無しの見事なコーナリング。

一方無理なペースと重い車重が祟ってか、Zのタイヤは熱ダレ気味。

ズルズルと外に逃げて行く車体は、川内が思い描くラインと大きな誤差が出ていた。


川内「~~~っっ!!」


あっさり先行を許してしまったことが更に彼女の気に触れたのか、尚もアクセルを緩めようとしない。

必氏に食らいつこうとするものの、コーナー出口で挙動が乱れてしまった。

赤城RX-7は既に遥か前方。

たった一つのコーナーで、ここまで差が付いてしまうのか。

云い様もない敗北感が込み上げる。

修正に気を取られている内に、今度は夕張180SXが抜いて行った。


夕張『無茶し過ぎよ!諦めなさい!』

川内「やだっ!」

夕張『タイヤもエンジンもタレてきてるでしょ!それ提督のクルマなんだから、これ以上無理すると何が起きるか分からないわよ!?」

川内「このまま負けるなんてヤダッ!」

夕張『意地張るなっ!今回ばかりは相手が悪過ぎる!』

川内「うぅ~っ……!!」

537: 2015/07/23(木) 23:44:50.68 ID:ruM7a1Ex0

由良「赤城さん、流石に鮮やかね……」

青葉「一方の川内さんは大きく乱れてしまいました」

由良「むしろ、ここまで走れたことが驚異的よ」

長良「同感っ。正直私もキツい」

由良「Zがアレだものね。二人乗っているコッチだって相当厳しくなるわよ」

長良「これ以上はリスキーかな……川内も諦めてくれるといいけど」

青葉「しかし何で赤城さんも夕張さんも、まだ余裕があるのでしょう?川内さんに離れることなく着いて行っていたのですし、条件は同じハズでは?」

長良「クルマの差もあるけど、一番は『自分のクルマじゃない』ってトコじゃないかなぁ」

青葉「どういうことでしょう?」

長良「例えば、艤装に限らず普段使っているモノを変えると、勝手が分からなくて扱いにくかったりするでしょ?」

青葉「そうですね。性能も大事ですが、やっぱり使い慣れたモノが一番です」

長良「それと同じで、普段使っていないモノ。ましてや初めてのクルマで慣れないコースを走るワケだから、本人が気付かなくても負担は大きかったんだと思うよ」

青葉「しかし、先日行ったというタイムアタックは?川内さんと夕張さんの差をなるべくイーブンにする為、初めてのコース・初めてのクルマで走ったとお聞きしましたが」

長良「小さいとは云えサーキットを走るのと、都高を走るのは全く違うよー」

由良「サーキットと違ってエスケープゾーンゾーンは無いし、一般車両の動きも見なないといけないし……見ている以上に磨り減っちゃいそうよね」

長良「そういうことっ。ホント狂気沙汰だよ」

青葉「確かに命が幾つあっても足りないと思います」

長良「それに、あっちの二人は慣れている分ペース配分も出来ているんじゃない?短距離ランナーが長距離走れないのと同じでさ」

青葉「そうなると、ここから先は夕張と赤城さんの一騎打ちですか」

由良「提督さん達の動きも気になりますね」

青葉「もしかしたら、この先の大井Uターンで鉢合わせる可能性もあるし……ん?誰か携帯鳴ってますよ?」

由良「あ、大井からラインだ」

青葉「……監視されてるんですかねぇ」

長良「なにそれ怖い」

545: 2015/07/29(水) 13:45:59.95 ID:78bbHWmf0
照月出るのかーどんな娘になるのかなー。

>>540 随伴艦のクセにさりげなくMVPをかっさらう二航戦と金剛姉妹ェ。
案の定如月より先に飛龍が改二になりましたが、蒼龍には勝った!
しかしイベントは空母勢を育てておけと発表されているにも関わらず、駆逐艦を育てている>>1に未来はあるのか。

>>541 パンテーラ復活は知りませんでした……。
超弩級の高額スーパーカーより、パンテーラやエスプリみたいな安価なスーパーカーの方が魅力を感じます。
それでも高いモンは高いのですがww

>>542 長良は改でも改二勢に匹敵する性能だし……(目そらし)
正直マトモな状態だったら皆喰える位ですよね、これだとww

>>543 公式発表を全然チェックしていなかったので、知りませんでした。
これで演習で秋月を見る度嫉妬する日々からオサラバや!

違うSSを検索していたら偶然まとめサイトにこのスレが載っているのを発見したのですが、コメント欄を見て凹む>>1……。
艦これというアイコンに趣味を押し付けているのだから仕方ないとは思いつつ、それでも書くのは辞めない。

546: 2015/07/29(水) 13:48:32.11 ID:78bbHWmf0

小ネタ 浜風いじり

浜風←本日の秘書艦

提督 カリカリ

浜風 カキカキ

提督 ハンコポン

浜風「提督、サインお願いします」

提督「ん」

浜風「……ここの計算は……」デンタクパチパチ

提督「時に浜風よ」

浜風「何でしょうか」

提督「その前髪さぁ……」

浜風「『前が見えるのか』という質問ですか?よく聞かれますが、特に差し支えは……」

提督「いや、バンドでもやってた人なのかなと。銀髪だし」

浜風「……は?」

提督「ということで、メインストリーム嫌い御用達だったハズが、テレキャスに代わってすっかりギタボの定番ギターになってしまった、この白いフェンダー・ジャズマスターを持ってみてくれ」

浜風「あの……提督?意図が全く見えないのですが……」E:ジャズマス

提督「おお、似合う似合う。ストラップでパイスラッシュとは中々工口いな」

浜風「何処見てるんですか」

提督「どうせマカロンが好きなんだろ。で、お気に入りのカフェでよく分からん作家のよく分からん小説とか読んでるんだろ」

浜風「い、いいじゃないですか別に!」←図星

提督「しょっちゅう空の写真とか撮ってそう」

浦風「お、よう分かっとるねぇ。なんやトイカメラ持って花だの高架線だの撮ってるきぃ」

提督「やはりな」

浜風「浦風は何処から出て来たの!?」

提督「海外旅行に行くならインドかロンドン」

浦風「『モデル』ではなく『被写体』と呼べ」

提督「行く気も無いイベントのフライヤーを部屋に貼っている」

浦風「好きな漫画家は○本大洋と南○太」

提督「服を買う時は下北か高円寺」

浦風「メガネでカーディガンを着こなす細身の男が好み」

浜風「アーーッ!!アーーッ!!私は何も聞こえなーいっ!!」

提督「コピペにあるようなの適当に言ったのに、全部当たりかよ」

浦風「そういうのを通過したんよ」


wikiのコメ欄に「(浜風は)シューゲOザーが好きそう」と書いた人、怒らないから名乗り出なさい。

547: 2015/07/29(水) 13:50:39.03 ID:78bbHWmf0

夕張「川内はこのまま降りてくれればいいけど……アイツやたら負けず嫌いだからなぁ」


川内Z、スローダウン――。

夕張180SX……ブースト、タレ無し。油温・水温、正常の範囲。

タイヤの接地感、充分。その他異常、無し。

まだいける。


夕張「由良から言ってもらった方が言う事聞きそうね。ちょっと任せておこう」ピッ

夕張「もしもし由良?ちょっと川内にTEL入れて、この先どっかで降りさせて」

由良『それはいいけど、夕張はどうするの?』

夕張「このまま赤城さんを追うわ。リベンジもしたいしね」

由良『分かった。無理しないでよね』

青葉『あ、夕張さーん。ちょっとよろしいですか?』

夕張「どうしたんです?」

青葉『実は青葉の情報網によると、司令官と迅帝を見かけたという情報が入ってまして』

夕張「迅帝って岩崎さんのことでしょ?何で今更その呼び方を……」

青葉『いえ、この呼び方だからこそ意味があるんです。情報によると青いR34型と紫色のワンエイティが競り合っていたそうなので、片方は恐らく司令官、青いR34は……』

夕張「そっか……今岩崎さんのことを迅帝って呼ぶ人は居ないけど、現役時代の岩崎さんと同じクルマだから……」

青葉『そういうことです。迅帝が復活したと既に大騒ぎになってますよ』

夕張「でも、何で今それを?」

青葉『目撃場所から考えて、もしかしたらこの先で遭遇する可能性があるからですよ。低い確率だとは思いますが、念の為ご報告をと思いまして』

夕張「了解です。仮に遭遇する可能性があるポイントは?」

青葉『大井ですね。湾岸からのUターン』

夕張「……それ、確実にぶつかるわ」

青葉『なんとっ!?』

由良『どうして言い切れるの?』

夕張「R相手に最高速勝負なんか持ち込むハズないでしょ。岩崎さんが前でも多分Uターンするよ」

青葉『成る程っ。確かに』

夕張「というかね……」


夕張「 既 に 遭 遇 し ち ゃ っ た っ ぽ い 」

548: 2015/07/29(水) 13:53:11.61 ID:78bbHWmf0

赤城「おや、あの二台は……」


大井ジャンクション。

先頭を走る赤城の前に現れたのは、二台のクルマだった。

一台は見覚えがある。以前PAで見かけた提督の180SXだ。

そしてもう一台、見覚えの無いR34GT-R……。

見ているだけでヒリつくような空気を放つソレは、何処かで聞いたことがある。


赤城「そう……これが、迅帝……」


かつて都高の帝王として君臨していた、伝説として語られている存在。

大事故によって氏亡したとも伝えられているが、今目の前に居る。

では、あのワンエイティは……?

他者を圧倒する存在感を示すR34に対し、まるで闇に溶け込むあのクルマ……。

存在感が無いハズなのに、まるでナイフの切っ先を向けられているような、静かな狂気。

さながらステルス戦闘機。

以前見た時は、こんな雰囲気は感じなかった。


赤城「……そういえば、かつて環状において迅帝以上とも云われたワンエイティが存在していたらしいですね」

赤城「確か、インターセプター」


そうか、それならば納得がいく。

俄かに信じられないことだが、御伽噺だと思っていたあのワンエイティも実在していたのだ。

血沸き肉踊る……昔やったゲームの魔王も、こんな気分だったのだろうか。


赤城「本来の予定とは違いますが、まさか伝説級の二台に逢えるとは。これだから、都高は面白いわ」


赤城RX-7、撃墜体勢。

加速、加速――っ!!

549: 2015/07/29(水) 13:54:05.23 ID:78bbHWmf0

提督「言うなれば、俺とアイツは陰と陽だ」

叢雲「どういうこと?」

提督「アイツが都高で名を上げていく一方、やっぱりワンエイティで速いってうのは絵空事みたいでさ。当時、誰も信じてくれなかったのヨ(笑)」

叢雲「こんな地味なクルマに乗ってるせいじゃない?」

提督「まあな。むしろ乗り換えてからの方が売れたなぁ」

叢雲「そもそも、ここで名前が売れたところで何が残るの?」

叢雲「プロとして稼げるわけでもない、非合法の上にしか存在出来ないアンタ達は何を理由に?」

提督「さあな。結局は自己満足でしかないし」

提督「ゲームのハイスコアと一緒じゃないか。名前を刻んだところで誰が得するわけでもないし、リセットされれば消えちまう。それでもスコアを伸ばそうとあの手この手でプレイを積み重ねる。後になって振り返れば無益な時間だろうが、その瞬間はそれが全てなワケだ」

叢雲「本当に無益ね」

提督「まあな。でも伝わるヤツには伝わる。だがクルマなんて走ればいい。こんな行為は何とも馬鹿げていて無意味だ」

叢雲「そこまで分かっていて尚、か。救いようがないわ」

提督「俺もヤツも救って欲しいなんて思ってないさ。気が付いたら戻れなくなった、ただそれだけだよ」

叢雲「あら、私には降りる理由を探しているようにしか見えないけど?」ニヤニヤ

提督「……お前ホンット、可愛くねえなぁ」

叢雲「後ろ、何か来てるわよ」

提督「っと……なんだ。タイミング良過ぎないか、夕張ぃ」

550: 2015/07/29(水) 13:56:08.77 ID:78bbHWmf0

提督・岩崎組と夕張・赤城が邂逅する頃――。


川内「………」

由良「いつまでブスくれてるのよ。充分走れていたじゃない」

川内「でも負けた。あの赤いのはおろか、夕張も平然と私を抜いた……」

由良「ココは夕張のホームよ。不利なことなんて分かっていたハズでしょ?」

川内「でも、悔しいものは悔しい……」

由良「全く。なら次負けないようにすればいいだけのことでしょ。こんな所でイジけているだけなら、誰でも出来るわ」

川内「別にイジけてなんかっ……ないし……」

長良「ハイ川内。ポカリ飲みな。奢ってあげるから」

川内「ソルティライチが良かった……」

長良「図々しい!」ペットボトルでゴン!

川内「痛っ!」

長良「あーっ!でもホント疲れた!こんなの二度とやりたくないっ!(笑)」

由良「姉さんもお疲れ様」

長良「でも素直に降りてくれて良かったよ。正直私も目一杯だったからさ」

川内「……それでも着いて来てたじゃん」

長良「たまたまだよ。夕張のラインをなぞったから上手く行っただけだから」

川内「………」クピクピ

青葉「ああ、どうもコンバンワ。ええ、ハイ……え!?それは確かなんですか!?」

長良「どうしたんだろ?」

由良「さあ……」

青葉「んー。またまたトンでもないことになりそうですよ」ピッ

長良「なになに?今度はお化けでも出たの?」

由良「お化けって……」

青葉「いえ、あながち間違いじゃないですよ。この写真を見てください」つスマホ

由良「これは……?」

青葉「最近巷を賑わす謎のクルマです。その見た目から“戦艦”と呼ばれています」

長良「陸にも戦艦っているんだね」

由良「これが一体?」

青葉「どうにもコレが湾岸線で目撃されたらしいんですよ。いや、今日は一体何なんですかねぇ」

長良「もしかして、これもヤバめなヤツ?」

青葉「ヤバめもヤバめ。曰く付きとでも云いましょうか。見たら不幸になるとか、一週間の間に事故に合うとか、ドライバーは深海棲艦とか……」

由良「最後は流石に嘘でしょ」

青葉「人の噂なんて面白くなる様に尾ひれ羽ひれ付いて伝わるものです」

長良「青葉さんが言うと説得力あるね……」

551: 2015/07/29(水) 13:57:23.39 ID:78bbHWmf0

青葉「ドライバー、目的、出現する日時など全て不明。逆にエンカウントするのが珍しいので、そんな噂が出たのでしょう」

青葉「分かっているのは、三菱のGTOということだけ。何でもつばさ橋で340キロ近く出ていたなんて話も……」

川内「GTO……?」ピクッ

由良「川内?」

川内「ちょっと、それ見せて」ガバッ

青葉「あっ、優しくぅ」

由良「変な声出さないでくださいよ」

川内「……やっぱり、アイツだ」

青葉「ご存知なのですか!?」

川内「ちょっと前に山城から扶桑さんの尾行調査を頼まれたことがあったんだけど、その時にコイツと出くわしたんだ」

青葉「で、では正体を!?」

川内「それは分からないけど、扶桑さんを見失った直後にコイツが現れたから、何か関係あるかもしれないなかなって」

青葉「確かに夜中扶桑さんが出掛ける姿を何度か目にしましたが、まさか扶桑さんが“戦艦”のドライバーという可能性が……」メモメモ

川内「だから分からないんだって」

由良「……そういえば、さっきパーキングで扶桑さんっぽい人を見かけたわ」

青葉「な、なんとぉ!?」

由良「私服だし遠目で見ただけだから断定は出来ないけど、あんな綺麗な人はそうそう居ないと思うし……」

青葉「こ、これは大スクープですよぉ!謎の“戦艦”は戦艦・扶桑だった!」

長良「でも決定的な証拠が無いよ」

青葉「今から湾岸に行っても会えないですかね……」

川内「会えたところで、着いて行くのは無理だよ。あのクルマは……異様過ぎる」

長良「異様……?」

川内「長良が最初に言ってたじゃん。お化けでも出たのって」

川内「あれは間違いなく……化け物だよ」

552: 2015/07/29(水) 13:58:42.81 ID:78bbHWmf0

~~♪ピッ

夕張「あ、もしもし提督!?こんな所で何やってるんですか!?」

提督『おお夕張。奇遇だな』

夕張「奇遇だなじゃないですよ!何で岩崎さんがR乗って、しかも提督とバトってるんですか!?」

提督『ん?何であのRが岩崎だと思ったんだ?』

夕張「どう見たってかつての迅帝のクルマじゃないですか!そもそも提督と一緒に走りそうな人なんて、岩崎さん以外居ないでしょ!」

提督『失敬な。俺にだって一緒に走る知人位……』

夕張「黙れボッチスター」

提督『うるせえ!まあこっちもワケ有りなんだよ。というかお前も、厄介なモン連れて来るんじゃねえか』

夕張「私は本当に偶然です!今夜川内と決着つけようと思ったら、赤城さんに会っちゃって……」

提督『今やってたのかよ!?Zは?俺のZは!?』

夕張「戦線離脱しただけですよ。無事だから安心してください」

提督『ホッ……』

叢雲『アンタ達、またバカな事やってたの?』

夕張「アイエッ!?叢雲なんで!?」

叢雲『この馬鹿に拉致されたのよ。いい加減解放してもらいたいわ』

夕張「それはご愁傷様……」

叢雲『冗談じゃないわ、全く』


提督『とりあえず先に言っておくけど、見ての通り俺と岩崎とで勝負してるの。余計な真似すんなよ』

夕張「私は邪魔する気ありませんよ。どうせ着いて行けないし。だけど……」

提督『赤城さんだなぁ……やる気満々じゃねえか』

夕張「まさかこのまま三つ巴ですか?」

提督『だから俺の相手は岩崎であって、お前らなんかお呼びじゃねえの。散れ散れ』

夕張「そんなこと言われても……」

提督『ああ、じゃあもう何とかして赤城さんを抑えろ。その間に逃げるから』

夕張「どの道無茶な注文ですねコンチクショー」

提督『泣き言なんて聞きたくないよ。何とかしな』

提督『あ、それと同じ相手に二回も負けたり、この前みたいに事故ったりしたら承知しねえからな。負けたら罰としてアイス一週間抜き!』

夕張「ぐっ……分かってますよ!」

叢雲『何なのそのしょうもない罰』

提督『じゃあ震電10個作るまで帰れまテンとか?』

叢雲『悪くないわね』

夕張「せめて作れるものでお願いします」

553: 2015/07/29(水) 14:02:28.26 ID:78bbHWmf0

提督と夕張が馬鹿な会話をしている間にも時間は進む。

赤城RX-7は180SXとGT-Rを標的として捉え、撃墜体勢に移行。

最大420馬力を搾り出す13B……数字上では迅帝Rはおろか提督180SXにすら及ばない。

しかし、赤城もココで出会ってしまった以上、避けて通ることなど出来なかった。


赤城「都高を突き詰めれば、セブンはRに敵わない……確かにその通りでしょう」


分かってはいる。

RX-7の動きは、自身の見慣れた艦載機と同様。

急降下、急旋回……高度なチューンドマシンを地上の戦闘機と例える者が居るが、それが一番似合うのは他ならずRX-7である、と赤城は確信している。
そしてGT-Rは戦闘機ではなく、対地用の爆撃機だ、と。

だがここは地上だ。
クルマは空を飛ばない。

三次元的に動き回る戦闘機とは違い、クルマは平面状を走るもの。

ノーマルで徹底された車体の軽さが、かえって仇となる。

ネガティブに捉えれば、安定性に欠いた不安定な機体。

戦闘において重要視すべきことは、最大限の能力を常に発揮できる安定性と信頼性。
GT-Rの美点はそこにある。

それでも、赤城はRX-7を選んだ。
このクルマを信用して。

RX-7の美点とは何か。

軽量コンパクトなロータリーエンジン?

50対50の最適な前後重量バランス?

いや、違う。


赤城「不完全だからこそ、進化してきたんです。分かっているから付き合えるんです」


そしてもう一台、180SXが居ることがより彼女の闘志を燃えさせた。

成り立ちは違えど、同じFR……現状の都高で考えられる、最高のFR使い。

意識しないハズがない。


赤城「まずは前に出させてもらいますよ、インターセプター!」

554: 2015/07/29(水) 14:06:10.33 ID:78bbHWmf0

一方の夕張。

実力派どころか、かつてのトップランカー二人と現役のトップランカーの中に居るワケだが……


夕張(場違い感半端ねぇぇぇぇっ)


青葉の情報通りなら、夕張の実力も決して侮れない位置まで来ているものの、この面子を相手にするのは厳しいところ。

しかし赤城へのリベンジを果たしたいのもまた事実。


夕張「と云うか、提督も岩崎さんも速過ぎ……どうなってるのアレ」


環状線外回りに入っても尚、三台のペースは変わらないどころか更に加速する。

芝ふ公園の複合コーナー。

迅帝、提督、赤城、夕張と続けざまに進入。

突っ込みでは提督・赤城が迅帝に肉薄する。

しかし、圧倒的なパワーとトラクションで迅帝Rが引き離そうとする……が。

提督が離れない――。


夕張「ええー……何で着いて行けるのよ。どういうことなの……」


目を疑う光景だった。

あろうことか、後輪を滑らせながらコーナーを脱出する。

スピードレンジが高い都高では、多少の空転は致し方ない、が。

あの速度は何だ。

提督の180SXに機能的なエアロは装着されていない。

速度が上がれば上る程、如何に空気の流れを制するかがポイントとなる。

特に後輪駆動でリヤが軽くなりがちな180SXには、大型のGTウイングは挙動の安定・抑制の為にも有効な手段だ。

しかし夕張の知る限り、フロントのアンダーパネルとリヤに装着された小型スポイラー程度。

ほぼ足回り等のメカニカル部分のみでトラクションを稼いでいることになる。

常軌を逸脱し過ぎて理解が追いつかない。


夕張「でも、なんて綺麗なの……」


ミッドナイトパープルの流麗な車体に映りこむ、水銀灯とビル郡の光。

一切の隙も無くコントロールされるその姿。

刹那に広がるその光景に、思わず息を飲んだ。


夕張「これが、インターセプター……」

562: 2015/08/04(火) 14:47:18.49 ID:DShBPCzg0

川内「青葉ぁ、それ何見てるの?」

青葉「リアルタイム中継ですよ。こちらが夕張さんのクルマに付けられたカメラの映像を。合わせてGPSを介した位置情報を表示しています」タブレット

長良「見せて見せてー」

青葉「コレは出撃時に使用している中継システムを簡素化したものですが、やはり精度抜群ですね」

由良「あ、成る程」

長良「それって提督が使ってるヤツ?」

青葉「その通りです。今となっては珍しいモノではありませんが、私達艦娘を陰から支える技術の一つですね」

夕張『速い速いぃ~っ!置いてかないでぇ!』

長良「音もバッチリだね」

由良「完全にテンパってる」

青葉「コレを応用すれば、スピードやタイム計測は勿論、装着しているクルマの状態……例えばアクセル開度やGの掛かり方、水温・油温等のあらゆるデータを確認することが出来るそうですよ」

長良「すっごーい。私も欲しいなぁ」

青葉「夕張さんがテストしている最中なので、仕上がれば装着してもらえると思います」

川内「で、今どの辺なの?」

青葉「霞トンネルに入った所です。迅帝、司令官、赤城さん、夕張さんの順ですね」

長良「でもスゴいもんだね。何だかんだ離されずに着いて行ってる」


563: 2015/08/04(火) 14:48:07.46 ID:DShBPCzg0

霞トンネル――。

白銀に輝くトンネル内を駆ける3台の獣……と、夕張。

近未来的な景色とは裏腹に、右へ左へ連続する先の見えない高速コーナーのせいで、精神は確実に削がれる。

しかし、走ることを止めない。

瞬きをすれば、途端に姿を消してしまうような“迅帝”と“インターセプター”

かつての伝説を目の前にして、虎視眈々と墜とす機会を伺う赤城。

そして、この狂乱に紛れ込んでしまったと言わざるを得ない夕張。

漫画的な表現をすれば、体験したこともないスピード域に対応出来ずにグルグルと目を回しながらマシンを操っているような。

それでも最後尾で必氏に喰らいつき、三台から離されずに留まり続けているのは見事だ。


夕張「氏ぬ!氏ぬ!無理無理っ!」

提督『夕張ー、無理しなくていいぞー』

夕張「こんな時に話しかけないでください!何でそんなに余裕なの!?」

提督『いつも岩崎相手にしてたら、自然とこうなる』

夕張「んなバカな!」

提督『しっかし俺もヤツも歳かなぁ。赤城さんはまだしもお前すら振り切れないとは、昔よりキレがなくなったかなぁアッハッハ』

夕張「あーっ!ムカつく!その言い方すっごいムカつく!」

叢雲『アンタも充分余裕ありそうね……』

夕張「と云うか、どうする気ですか。どう見ても膠着してますよコレ」

提督『時機に終わるさ。正直エンジンがタレてきてるし。アイツと赤城さんも苦しいハズ』

夕張「それならさっさと終わって欲しいもんですけどねぇ……」

提督『だから、お前も無理しなくていいんだって。降りるなら今の内だぞー』

夕張「意地ですよ!意地!」

提督『そんなもんトイレに捨てて流しちまえ。こんな所で使う言葉じゃない』

564: 2015/08/04(火) 14:48:50.44 ID:DShBPCzg0

夕張「そもそも何で今更こんなことしてるんですか!?」

提督『俺が都高走るなんて今に始まったことじゃないだろ』

夕張「そうじゃなくて!今になって岩崎さんがRを引っ張り出して、提督とバトルになってるかってことですよ!」

提督『ああ、そっち?それ今無理』

夕張「ハァ!?」

提督『赤城さんが来た』


トンネル出口、上りながら急旋回する左コーナー。

赤城RX-7が提督のインに着き、提督180SXと並ぶ。

ブレーキング勝負はほぼ互角。

旋回性とトラクションで有利なRX-7が、CPから引き離しにかかる……が。


赤城「……っ!?」


グリップを失い乱れる挙動を抑えつけクリアーしようとするも、提督180SXは既に眼前に居た。

そして不幸にも、出口先の数百メートル先に進路を塞ぐ一般車の影。オーバーテイクするにも、距離が足りない。

テンポを乱された赤城は減速。その隙に提督180SXは射程圏内から離脱していく。


赤城「……最も得意とする区間で決めきれなかった」

赤城「マシンの熱ダレ……いえ、これは勝負所を見誤った私が未熟。セブンは応えてくれていた」

赤城「これがかつての伝説。まだまだ精進が必要ね」


赤城RX-7、スローダウン――。

565: 2015/08/04(火) 14:49:53.50 ID:DShBPCzg0

青葉「赤城さんが退きましたね」

由良「夕張は?」

青葉「まだ着いてっていますよ。やりますね」

長良「でも、夕張もそろそろキツいと思うなぁ」

青葉「それでも迅帝と司令官のペースは変わらないのですが、それは……」

由良「もうお化けね」

川内「赤城さん退いたんでしょ?じゃあそろそろ終わるよ」スマホポチポチ

青葉「して、その根拠は」

川内「勘」

長良「わー、すっごい根拠」

由良「で、川内は何見てるの?」

川内「中古車情報サイト」

由良「何でよ」

川内「夕張と勝負する為だよ。シルビア……か。良いかも」

青葉「勝つことが目的なら、もっと速いクルマを選べばいいんじゃないでしょうか。ランサーとかインプレッサとか」

川内「だーかーらー。それで勝っても面白くないじゃん」

青葉「勝負はより確実で最善の方法を取るべきだと思いますが……」

川内「ワレアオバに言われてもなぁ」

青葉「ほっといてください!」

川内「CBR900かぁ。これ速そう」

由良「バイクは普通に速いヤツに行くのね」

川内YZF600……サンダーキャットだって!雷猫!カッコ良い!」

由良「サンダーキャットって、山猫のことよ?」

川内「……え?」

566: 2015/08/04(火) 14:50:38.29 ID:DShBPCzg0

数日前・市川PA

提督「おう、コッチだ」スパー

岩崎「いい加減、タバコ止めたらどうだい」

提督「それは医者の視点か?」

岩崎「一般論として、かな。僕らもいい歳だからね」

提督「それをお前が言うのかよ。インプはどうしたんだ」

岩崎「あっちは街乗り用だからね」

提督「何が街乗りだよ(笑)。で、何でまた今更Rなんだ」

岩崎「別に今更なんて思っていないさ。僕らより上の人達だって乗っているんだから」

岩崎「しばらくインプレッサを乗っていたけど、やっぱり僕はRが好きなんだなって再認識出来たよ。いや、むしろ―」

提督「本当に好きなのはRB26、だろ」

岩崎「お、ご名答」

提督「ホントに変わらないなぁ……お前は」

岩崎「君こそ全く変わっていないじゃないか。あのワンエイティが証拠だよ」

提督「いやいや、俺だって好みも変わるさ。それに、いい加減ガタも来てるからさ……つい買っちゃったんだよね」

岩崎「何を?」

提督「Z」

岩崎「魔王の次は悪魔かな?」

提督「アホ言え。34のZだよ。ニスモのヤツ」

岩崎「似合わない」

提督「うっせ」

567: 2015/08/04(火) 14:51:25.52 ID:DShBPCzg0

岩崎「……魔王はどうする気なんだ?」

提督「どうするも何も、今までと変わらねえよ」

岩崎「このままガレージの肥やしかい?」

提督「今更乗れって云うのか。アレに」

岩崎「夕張ちゃんなら、喜んで乗ってくれそうだけど」

提督「絶対嫌だ」

岩崎「分からないね。いつまでも過去に捉われていたら、進むモノも進まないよ」

提督「……そんなんじゃねえよ」

岩崎「誰よりもあのRが好きだったじゃないか」

提督「Rは今でも好きだよ。クルマが好きになったキッカケだしな。でも……あのRは別だ」

岩崎「まだ忘れられないのかい?彼女のことを」

提督「………」

岩崎「元々アレは彼女のクルマだったしね。手元に置いておきたいのも分からなくもないが……」

提督「これ以上、あのクルマのせいで誰かが狂うのを見たくないんだ」

岩崎「狂う?僕らはとっくに狂っていると思っていたけどなぁ」

提督「お前、ココを走ることに抵抗は無いか?」

岩崎「……あるよ。どんなに取り繕っても、僕らの行為は正当化出来ない。出来るはずもない」

岩崎「それでも、僕らはここに居る。いつだって忘れたりしないさ」

提督「だから何だってんだよ。口では認めていようと、やってることは結局同じだろ」

岩崎「だからだよ。僕らはその業を一生背負って生きていくしかない。愚か者としてね」

岩崎「それに、身体に悪いものは旨いものって言うしね」

提督「本音はそれかい」

岩崎「元々そんな所から始まってるんじゃない?そして引き返せなくなった。自分から登っておいて降りることが出来なくなった猫みたいなものさ」

提督「降りれない猫ね……確かにその通りだわな」

568: 2015/08/04(火) 14:52:07.79 ID:DShBPCzg0

岩崎「久々に走ろうか」

提督「はぁ?」

岩崎「いつまでも吹っ切れないなら、さっさと終わらせようじゃないか。“環状のインターセプター”さん」

提督「終わらせる?」

岩崎「そのままの意味だよ。僕のRがワンエイティを潰す」

岩崎「完膚なきまで叩き潰して、その次は……魔王だ」

提督「ああ?お前、環状で俺に勝ったことないだろ」

岩崎「それ以外では負けた記憶がないなぁ」

提督「オメーのハンペンRに俺が千切られるワケねぇべ」

岩崎「ハンペンって……何処の方言なのソレ」

提督「おっと。つい地元の方言が」

岩崎「君は茨城出身なのかい?」

提督「いや、神奈川生まれの神奈川育ち」

岩崎「ああ、そう……」

提督「まあ、いいや。受けてやるよ」

岩崎「……本気で来い。僕らの因縁、いい加減ケリをつけよう」

提督「そうだな。終わらせるか、俺らの青春を」


叢雲「男ってバカな生き物ね……」

569: 2015/08/04(火) 14:52:55.35 ID:DShBPCzg0

夕張「赤城さんが道を譲ってる……前に出るのはいいけど」

夕張「出たら出たで何すればいいか分からないわ……」

夕張「さて、と……どうしたものかしら」

夕張「竹橋を過ぎたし、環状線なら江戸橋、京橋、銀座……京橋か」ブルッ

夕張「でも今の私なら大丈夫だ。問題ない」


環状線で屈指のツイスティック区間を抜け、神田橋ジャンクションへ。

先頭の迅帝、夕張の予想に反して左側の深峰・向島方面のレーンを選択。

多少ペースを落とす……。


夕張「深峰線?また湾岸へ出るのかしら?」

提督『あー、夕張。多分このまま横浜まで行くから、先に帰ってもいいぞ』

夕張「横浜までって、湾岸で勝負したら提督が不利じゃないですか。だから大井でUターンしたんでしょ?」

提督『そんなこと言ってたらアイツの相手なんか務まらねえよ。このクルマでもある程度の最高速勝負は出来る』

夕張「で、でもぉ……」

提督『いいから帰れって。今日はこれで仕舞いだ。じゃあな』ピッ

夕張「あ、ちょっと!?なんなのよもう!」

夕張「でも……何か嫌な感じ。少し寒気がするような」


ジャンクションを過ぎた辺りで、無意識にルームミラーを確認する。

今しがた抜いた商用車のバンのライトが見えた。

クルマの通りは少ない。渋滞の情報も無い。流れは最良である。

それでも、胸につっかえる不安感。

以前見かけた、あの黒いGTOを見た時のような……。

そしてもう一度、確認……環状の方からクルマが来るようだ。影も見える。

しかし、やたら低く幅が広い。

――何より、速い。


夕張「まさか……」


Z15A GTO・改 “戦艦”

出現――

570: 2015/08/04(火) 14:53:47.34 ID:DShBPCzg0

漆黒に染まったそのGTOの姿は、かつての大日本帝国の戦艦を髣髴とさせる、圧倒的な存在感を示していた。

しかし、この寒気は何だ。

ゆっくりと夕張の背後に着く。

まるで周りだけ時間の流れが違うような、この空気は……。


夕張「またコイツ……一体何なの!?」


青葉「せ……“戦艦”が……」アワワワ

川内「!?」ガバッ

川内「やっぱりコイツだ……!」


叢雲「後ろに何か来たわよ……知り合い?」

提督「いや、全くの初対面だ」

叢雲「何なのアイツ……このプレッシャー、まるで深海棲艦じゃない」

提督「赤城さん以上にややこしいヤツが来ちまったなぁ……どっから嗅ぎつけたのやら」

叢雲「どうする気?」

提督「さてね……見逃してくれるようなヤツでもなさそうだし、このままランデブーかね」

叢雲「アンタの目的はどうするのよ。決着つけるんでしょ」

提督「とは言ってもねぇ……来るぞ」

571: 2015/08/04(火) 14:54:46.53 ID:DShBPCzg0

小ネタ ある日の峠

川内「んーっ!夜通し走ったけど、やっぱりヌー子に乗るのは楽しいなぁ。提督に感謝だね」

川内「でも、もう少し低回転からパワーが出てくれると楽そうだなぁ……」

川内「摩耶さんはリッターのSSに乗れって言ってたし、いっそ大型免許も取ろうかな」

川内「ま、いっか。今度夕張に相談してみよっと」

「アナタが最近売り出し中のNSRさんっぽい?」

川内「ぽい?」

夕立「おはようございます。もしかして川内さん?」

川内「およ、夕立じゃない。何してるのこんな所で」

夕立「それは夕立の台詞っぽい。川内さんが噂のNSRだったの?」

川内「え、私噂になってるの?照れるなぁ」

夕立「みーんな噂してるよ。NSRに乗ったすっごく速い女の子。まさか川内さんとは思わなかった」

川内「私は気紛れに走ってるだけだよ。で、夕立は?」

夕立「同じっぽい。たまにココに来るの」

川内「へー。もしかしてあのバイクがそう?」

夕立「うん。ZX9Rなんだけど、ちょっと扱いづらいっぽい」

川内「うわー、速そうだね」

夕立「ところで川内さん。夕立、お願いがあるっぽい」

川内「ん?なになに?」

夕立「ココは夕立のテリトリーだから、あ ん ま り 調 子 に 乗 ら な い で く れ る ?」ザワッ

川内「……それは私への宣戦布告かな?」

夕立「最近なかなか速い人が居なくって、夕立つまんない。でも、川内さんが相手なら楽しめるっぽい!」

川内「勝負したいのなら受けて立つよ。でも……」


川内「噛 み つ く 相 手 を 間 違 え る な よ 、犬 っ こ ろ 」

夕立「さあ……」クスッ


素 敵 な パ ー テ ィ ー し ま し ょ う ?


夕立には夢繋がりでユメタマを。
こんな展開考えたけど、続けるかは微妙っぽい!

579: 2015/08/05(水) 22:21:45.73 ID:ck8zhFYs0

提督「しかし、とんでもねえなアイツ……コイツで勝てるかなぁ」

叢雲「確かに雰囲気は凄いけど……ホントにクルマなの、アレ」

提督「都高ってのは面白いモンでさ。時々居るんだよ、ああいう得体の知れないヤツが」

叢雲「……前の人は?」

提督「あれは自他共に認める化け物だよ。ただ、アイツが正統派なら後ろのGTOは……異形だな」

叢雲「異形?」

提督「そうだな。何だろな……三式機龍化したメカキングギドラ」

叢雲「……よく分からないわ」

提督「いや、俺にも分かんね。上手い例えが見つからねえや」

提督「要するに、有り得ないのよ。少なくとも今まで生きてきた中であんなGTOは知らないね」


深峰線に突入する四台。

新環状線と呼ばれる中でも、高速コーナーを主体に構成された区間だ。

新木場ランプ手前、夕張180SXをあっさりパスするGTO……提督180SXに照準を合わせる。

S字進入で二台が並ぶ。


夕張「パワーは岩崎さん位ありそうね……でもっ」

夕張「GTO相手にブレーキングで負けられないでしょ!」


パワーは劣っていても、重量級のGTOならばコーナーで勝負出来ると踏んだ夕張がブレーキングで差を詰めた……だが。


夕張「ちょちょちょっ!立ち上がり速すぎでしょ!」


コーナー脱出時には、有り余る強大なトルクと四輪駆動の利を活かし、夕張を置き去りにする。

加速するGTOの巨体が揺れる。


夕張「はっやーい……何の冗談よ」

夕張「詰められたのは入り口だけ……コーナーまで速いんじゃ、どうしょうもないじゃない」


高速域は、迅帝RとGTOの独断場。

2Lターボ車の180SXはじわじわと離されていく。

250キロ級のハイスピードバトル……夕張はまだ、これより先のスピードは知らない。


夕張「計算上280キロ位までは出せるはずだけど……そこまで持って行ったことないのよね」

夕張「最高速トライ……行けるかっ」


湾岸線、合流――!

580: 2015/08/05(水) 22:22:47.04 ID:ck8zhFYs0


提督「こっから先はヤバい領域だぜ……湾岸じゃ、あの二台には勝てそうも無い」

叢雲「……ちょっと、今何キロ出てるのよ」

提督「290!」

叢雲「に……っ!?バカじゃないの!?」

提督「40ノットの島風だって、時速に直せば約74キロだしな。軽く4倍だ」

叢雲「海上だから出せるんでしょ!ココは公道よ!」

提督「一応300はギリで越えるんだよ、このクルマ。でも、そこから先に持って行くのは無理……」

叢雲「あの二台は……?」

提督「320は出るだろう。もしかしたらGTOの方が上かも知れん。元はと云えば高速ツアラーだしな」

叢雲「高速って言っても限度があるでしょ!」

提督「……並ぶぞ」


最高速トライ。

何かあれば一瞬で全てが吹き飛ぶ狂気の世界。

水を得た魚のように、GTOの速度が増していく。

海底トンネルに入る頃には、下り勾配も相まって既に300キロに迫っていた。

提督の180SXとGTOが横並びになる。

300、301、302……いかに提督といえど、180SXに余裕は無い。

581: 2015/08/05(水) 22:23:49.59 ID:ck8zhFYs0

一瞬、提督は横に並ぶGTOを見た。

ハッキリ言って、最高速勝負に持ち込めるようなクルマではない。

抜かされるのも時間の問題。ならばせめて、ドライバーの顔だけでも拝んでやろうと、そう思ったのだ。

オレンジ色のナトリウムランプに照らされるその横顔は、彼のよく知った顔だった。


扶桑 ニコッ

提督「……ふ……そう……?」


扶桑が微笑んだその直後――

ガシャン!


提督「ッ!?」

叢雲「な、何よ今の音!?」


エンジンルームから突如鳴り響いた破壊音。


提督「エンジン氏んだわ……クラッチ間に合って良かったぁ」

叢雲「ちょ、そんな急に壊れるもんなの!?」

提督「こんな使い方してるんだ。壊れる時は壊れるさ」

叢雲「……一応聞くけど、もしクラッチ切ってなかったらどうなってたの?」

提督「エンジンロックして、どっかに吹っ飛んでたな。おお怖い怖い」

叢雲「き、気楽に言うわね……」

提督「しっかし、前兆は無かったんだけどな。俺だけじゃなく、コイツも鈍ってたのかね」

582: 2015/08/05(水) 22:24:59.81 ID:ck8zhFYs0

夕張「ちょ、提督白煙出てる!何!?なんなの!?」

提督『あー、もしもし夕張?生きてるかー?』

夕張「コッチの台詞ですよ!どうしたんですか!?」

提督『分からん。ロッカーアームが飛んだのかね』

夕張「白煙出てますって!どう考えてもロッカーアームどころじゃないですよ!」

提督『マジでか。そりゃあ吹けないワケだ。中から氏んだかなぁ』

夕張「何でそんなに落ち着いてるんですか!?信じらんない!」

提督『生憎SRのブローは慣れっこだからねぇ……』

夕張「兎に角、このままじゃ立ち往生ですから出口まで押しますよ!」

提督『凹ませるなよぉ』

夕張「保障できません!大人しくしててください!」

提督『俺のワンエイティが氏んでいく……』

夕張「うっさい!」

583: 2015/08/05(水) 22:25:43.49 ID:ck8zhFYs0

大井ランプ出口付近

提督「うーむ……やっぱりバラさないと分からんな」

夕張「………」

提督「何でお前がそんな顔してるんだよ。理由はどうあれ、いずれは壊れたんだ。それが偶々今日だったってだけだろ」

夕張「それは……そうですけど……」

叢雲「で、今夜はどうする気?夕張のクルマ、二人しか乗れないみたいだけど」

提督「お前は夕張に乗せてもらえ。俺は適当に帰る」

夕張「適当にって……ワンエイティはどうするんですか?」

提督「明日ローダーで持って行ってくれ」タバコ

夕張「人任せですか」

提督「ま、適当にやっといてくれ」

夕張「あっ、ちょっと!何処行くんですか!」

提督「テキトーに帰るわ。じゃな」ノシ

叢雲「この辺ってタクシー拾えるの?」

夕張「多分居ないと思う……」

叢雲「ま、アイツなら何ともないでしょ。さっさと帰りましょ」

夕張「え、ええ……」

584: 2015/08/05(水) 22:26:55.39 ID:ck8zhFYs0

叢雲「……何なのかしらね」

夕張「エンジンが壊れた理由?詳しく見てみないことには……」

叢雲「違うわよ。アイツといい扶桑さんといい、何でこんな馬鹿げたことしてるのかってことよ」

夕張「扶桑さん……?」

叢雲「あの黒いクルマ、ドライバー扶桑さんだったわ」

夕張「ハァ!?」 

叢雲「私も見たから間違いないはずよ」

夕張「おおう……もうワケが分からない」

叢雲「それはコッチの台詞だわ。どういうことなの」

夕張「まさか本当に扶桑さんがGTOのドライバーだったなんて……」

叢雲「それと……クルマってあんなに速くなるものなの?」

夕張「車種によるね。提督のクルマでもギリギリ300キロ出るみたいだけど……」

叢雲「出てたわ。304キロ。バカかと」

夕張「そんなに出るの!?ヒエー……」

叢雲「このクルマは?」

夕張「め、メーター読みで270キロ……」

叢雲「話にならないじゃない」

夕張「 」

叢雲「離れていった……公道で300キロだっていうのに」

叢雲「ホント、狂ってるわ」

夕張「………」

585: 2015/08/05(水) 22:27:47.64 ID:ck8zhFYs0

翌日

夕張「うーん……ロッカーアームは外れてるけど、これだけが原因とは思えないわ……」カチャカチャ

川内「ロッカーアームって?」

夕張「簡単に言えばバルブを支える部品なんだけど、SRは高回転域でコレがズレることがあるのよ。でも提督のエンジンはラッシュアジャスターを廃しているし、下手するとバルブスプリングが波打ってブローした可能性もあるわね」

川内「???」

夕張「要は、持病の尺が悪化したってこと」

川内「ふーん……」

夕張「と云うか、何で着いてきたのよ」

川内「私もさ、クルマ買おうと思ってるんだ」

夕張「マジ?」

川内「大マジ」

夕張「何買うのよ」

川内「考え中ー。シルビアとか良いなって思うけど」

夕張「ランエボとかにしとけばいいじゃない」

川内「皆それ言うんだけど、そんなに良いの?」

夕張「ワンエイティよりはよっぽど速いよ。四駆だし」

川内「じゃあ、何で夕張はワンエイティに乗ってるの?」

夕張「パーツは多いし、人気車種だから色々なノウハウもあるからね。運転も含めて沢山の技術が学べると思ったからよ」

夕張「でも単純に速い車に乗りたかったら、ランエボやインプレッサ、二駆ならFDやS2なんかが良いんじゃない?シルビア・ワンエイティは年式の割に高くなってるし」

川内「じゃあ、やっぱりシルビアにしよっと」

夕張「人の話聞いてた?」

川内「ただ速いだけじゃ面白くないし、FDは赤城さん、S2は金剛さんのクルマでしょ?被るじゃん」

夕張「それはそうだけど」

川内「うん!決めた!シルビアにする!」

夕張「それはいいから、ローダーに積むの手伝ってよ」

586: 2015/08/05(水) 22:28:35.22 ID:ck8zhFYs0

執務室

金剛「ヘーイ!提督ぅ!私とバトルしてくだサーイ!」バンッ

叢雲「アイツなら帰って来てないわよ」カキカキ

金剛「ワッツ?何処行ったデース?」

叢雲「知らないわ。昨夜大井で別れたっきりだもの」

金剛「何かあったデスか?」

叢雲「アイツのエンジンがおシャカになって一晩放置。今夕張と川内が取りに行ってるわ」

金剛「リアリィ?じゃあ、私とのバトルは?」

叢雲「さあ?壊れ方の程度が分からないけど、あの様子じゃ当分無理じゃない?」

金剛「シット!折角ループウェイを走りこんだっていうのに!」

叢雲「あのねぇ……アンタもいい加減にしなさいよ」

コンコン

叢雲「はーい。どなた?」

扶桑「失礼します」ガチャ

叢雲「悪いけど金剛。席を外してもらえる?」

金剛「どうかしましたカ?」

叢雲「いいから。あとコレ、今度の哨戒任務の内容だから確認してちょうだい」

金剛「……オーケー。提督が帰って来たらバトルの件伝えてくださいネ」

587: 2015/08/05(水) 22:29:50.98 ID:ck8zhFYs0

扶桑「ふふ、提督は人気者ね」

叢雲「ココの連中は揃いも揃ってバカばかりで嫌になるわ」

扶桑「あら。皆素直で良い子達ばかりだと思うけれど」

叢雲「……で、昨夜のアレは何なの?」

扶桑「アレ……とは?」

叢雲「昨夜の都高での件よ。貴女は良識のある大人の女性だと思っていたけど、私の見当違いだったかしら?」

扶桑「ああ……都高、ですか。提督のクルマはどうなったの?」

叢雲「さあ?今夕張達が取りに行っているけど、クルマに関しては無知だから知らないわ」

扶桑「そう。じゃあ、当分あのワンエイティが動かないのかしら。だとすれば……」


扶桑「……ようやく“魔王”に逢える……」


叢雲「魔王……?貴女何言って……」

扶桑「……昨夜でようやく証明された。私のクルマは、インターセプターはおろか迅帝さえも凌駕する……」

扶桑「私も伝言お願いします。私を相手にするなら、魔王でなければ話にならない、と」

叢雲「ちょっと!まだ何も聞いちゃいないわよ!」

扶桑「ねえ叢雲さん。提督の目に、私はどんな風に映っていたのでしょうか」

叢雲「知らないわ、そんなこと」

扶桑「そうよね……では、失礼します」ガチャ

バタン

金剛「………」

扶桑 ニコッ

588: 2015/08/05(水) 22:30:48.33 ID:ck8zhFYs0

夜・工廠

夕張 カチャカチャ

金剛「バリー。居ますカー?」

夕張「あら、金剛さん。どうしましたか?」

金剛「提督のクルマがブローしたって聞いたヨ。昨日、何があったネ」

夕張「湾岸で踏み抜いたらブローってトコですね。エンジン降ろしてみましたが、クラッチはイってるわバルブは欠けて腰下までヤられてるわで、もうズタズタですよ」

金剛「Oh……なかなか酷い有様ネー」

夕張「もう新たにエンジン作り直さなくちゃダメかも知れません。ただ、提督はZ買ったみたいだし、もしかしたらこのまま廃車ってことも考えられますね」

金剛「ワッツ?Z買ってたんデスか?」

夕張「34Zのニスモですよ。私も昨日知りました」

金剛「それで、肝心の提督は……」

夕張「帰って来ませんね……負けて凹むような性格では無いと思うのですが……」

金剛「負けた?誰にデスか!?」

夕張「負けたっていうのは語弊がありますけど、例のGTOと走っている最中に壊れたんで……」

金剛「Mu……昼間扶桑と叢雲が話していた件デスね。GTOのドライバーが扶桑だったとは」

夕張「……私も驚きました」

金剛「実はそれで一つ聞きたいことがあるヨ」

夕張「何でしょう?」

金剛「魔王……とは、何デスか?」

夕張「……!!」

589: 2015/08/05(水) 22:31:50.71 ID:ck8zhFYs0

金剛「知ってる顔ですネ」

夕張「ええ……」

金剛「扶桑が言ってたヨ。『やっと魔王に逢える』と」

夕張「扶桑さんが?何でソレを……」

金剛「I Don't know.よく分かりませんが、ターゲットはその魔王ネ」

金剛「その魔王とは何デスか?まさか、ツチヤケーイチのDVDじゃないハズですネ?」

夕張「……私もちょっと前に知っただけですから、詳しいことは分かりませんが……」

夕張「かつて提督が乗っていたという青い32Rです。今でも離れたガレージに保管されています」

金剛「ワオ」

夕張「2.8LにRX6のツインターボ。あまりの速さから、畏怖を込めて魔王と呼ばれたそうです」

夕張「一度だけ実物を見ましたが……ハッキリ言って異常な雰囲気なクルマでした」

金剛「異常?」

夕張「佇んでいるだけなのに……まるで喉下にナイフを突き立てられているような、そんな空気を纏っていたんです」

金剛「オカルトっぽいネー」

夕張「そう思います。悪魔のZが実在したら、きっとこんな妖しさを持っているんだろうなって」

夕張「でも提督はただ保管しているだけで、ずっと乗っていないそうなんです」

金剛「どうしてソレを扶桑が知っていたか……デスね」

590: 2015/08/05(水) 22:32:22.68 ID:ck8zhFYs0

夕張「でも、扶桑さんが魔王の為にあのGTOを仕上げたというのなら、少し納得出来ます。あのGTOも、大口径を直に向けられるような殺気がありましたから」

金剛「Mu……」

夕張「私が知っているのはこれ位です。大した情報ではないですが……」

金剛「ノンノン。充分ヨ」

夕張「いえ……」

金剛「それにしても、提督がそんなモンスターを隠していたとは驚きネ」

夕張「そして扶桑さんのGTO……これからどうなっちゃうのかな」

金剛「ところでバリー!Hakoneのリベンジネー」

夕張「……へっ?」

金剛「ワタシはインターセプターとバトルする為にココに来ましたが、インターセプターがサタンになってしまっては流石にクラス違いヨ」

金剛「バット、いずれはサタンにも勝ちますが、その前に……バリーにパーフェクトウィンをしておかないとネー」

夕張「ええっ!?私アレで勝ったなんて思ってませんよ」

金剛「コレはワタシの問題ネ。バリー、いざ尋常に勝負!デスよ!」

夕張「え、えー……」

591: 2015/08/05(水) 23:18:00.81 ID:ck8zhFYs0

小ネタ 現在の夕張ワンエイティの仕様を妄想する

エンジンはGT-SSタービンとポンカムの定番仕様。
なるべく高額にならないように流用パーツや、自作品が目立つ。
エンジン本体は手を加えていないものの、バランス取りはしたらしい。
その内排気系も自作したり、I/Cを中置きにしたりと色々企てている。
パワーは最大約380馬力。

足回りは車高調は勿論、S14用のメンバーを使って強化。
ブレーキはローターとパット、ブレーキホースを交換。そろそろキャリパーも交換したい。
タイヤはフロント215-17インチ、リヤは235-17インチでギリギリか。
ホイールはガンメタの5本スポーク。勿論5穴化してある。

ニスモのカッパーミックスクラッチとLSDを装備。
ミッションはノーマルだが、ファイナルは色々変えてるようだ。
フライホイールは自分で軽量化した。

エアロは提督に派手と言われたが、実は後期純正風エアロ。
低めのGTウィングが無かったら東北仕様に見えなくもない。
パステルイ工口ーに穴開きカーボンボンネットが映える。

ロールバー装着の為、後部座席は取り払い。
快適装備は残しているので、街乗りも出来る(燃料ポンプの音がうるさいが)。
シートは中古の黒いセミバケ。ハンドルはナルディ・クラシック。
MP3プレイヤーを繋いで、お気に入りの曲をかけては熱唱している。


592: 2015/08/05(水) 23:25:02.27 ID:ck8zhFYs0
一旦終わり。
バトルシーンをもっと濃厚にしたいけど、ボキャブラリーが……。

夕張ワンエイティの仕様は、なるべく現実的な仕様で考えました。
考えている間は凄く面白かったのですが、一番困ったのはホイール……合うサイズを考えたらキリが無いww
あと燃料ポンプのくだり、友人のS14がスゴく喧しかった記憶があるので付け足しました。

609: 2015/08/06(木) 22:19:33.27 ID:3PMUbUZHo

次回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その7】


引用: 夕張「クルマ買いました!」