599: 2015/08/06(木) 21:49:20.34 ID:Qhpx1Qcf0
相変わらず羅針盤に嫌われている>>1です。
いよいよバケツが200切った……イベ前だってのにどうするんだコレorz
最初へ:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」
前回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その6】
いよいよバケツが200切った……イベ前だってのにどうするんだコレorz
最初へ:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」
前回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その6】
600: 2015/08/06(木) 21:50:31.00 ID:Qhpx1Qcf0
夕張「金剛さんとバトルかぁ……もう少しサスと燃調詰めたいんだけどなぁ」カチャカチャ
夕張「提督の足回り研究すれば、碓氷SPLならぬ都高SPLとして売り出せそうよね、うん」
夕張「とりあえず、何日か待ってもらって実走で詰めていくしかないわね」
由良「夕張ー。居る?」
夕張「ん?どうしたの?」
由良「川内見なかった?今度の哨戒任務の件で話があったんだけど」
夕張「さっきヌー子に乗って何処か行ったわ」
由良「えぇ?もうホントに落ち着きがないんだから」
夕張「と・こ・ろ・で。ちょっとお願いがあるんだけど……」
由良「断る」
夕張「ちょっと。まだ何も言ってないけど……」
由良「どうせ私にメリットが無いようなお願いでしょ」
夕張「うっ……確かに実走セッティングだから、由良に得はないけど」
由良「セッティングなら一人でやればいいじゃない」
夕張「運転しながら空燃比とPCモニター見るなんて、阿修羅にでもならなきゃ無理です」
由良「阿修羅って……ああ、顔が四つあるからってことね。空燃比ってCPUでも弄るの?」
夕張「そそっ。昨日走った時にちょっとモタつくところがあったから、燃調と点火を見直したいのよ」
由良「そうねぇ。何か奢ってくれるなら考えてあげる」
夕張「……間宮さんとこでいい?」
由良「よろしい」
601: 2015/08/06(木) 21:51:56.00 ID:Qhpx1Qcf0
喫煙所
山城 フゥー
叢雲「山城」
山城「……どうかした?」
叢雲「一本頂戴」
山城「あら珍しい。アークロイヤルだけど」
叢雲「変なの吸ってるわね」アリガト
山城「気に入ってるんだけど、あまり売ってないのよね」つライター
叢雲「……意外とキツい」
山城「そう?結構甘いと思うけど」
叢雲「タバコなんて暫く吸ってなかったし。ああ……クラっときた」
山城「それで?何か話が有って来たんじゃないの?」
叢雲「大方予想はついているでしょ。扶桑さんのことよ」
山城「それなら私も聞きたいことだらけよ。何で姉様が暴走族になっているのかって」
叢雲「姉様大好きなアンタでも分からないの?」
山城「皆目検討もつかないわ。クルマに興味があったことさえ驚きなんだから」
叢雲「……そう」
602: 2015/08/06(木) 21:53:04.61 ID:Qhpx1Qcf0
山城「姉様が前に言っていたの。提督とは信頼関係は築けているのに、何処か距離感があるって」
叢雲「そんなこと言っていたの……あのバカはどうしようもないわね」
山城「何か思い当たることがあるの?」
叢雲「……アイツが酔っ払った時に、少し聞いたことあるわ」
叢雲「扶桑さんは、見た目や仕草も昔の彼女と瓜二つだって。まともに顔が見れないと」
山城「……想像以上に女々しい理由ね。その人とはどうなったのよ」
叢雲「氏んだわ」
山城 タバコポロッ
叢雲「都高で事故を起こしたそうよ。一緒に走っていたクルマはその人を庇って大破」
叢雲「でも大破した方は生き残って、今でもピンピンしてるわ。この前会ったし」
山城「ちょっと待って……状況が分からないわ」
叢雲「……不可解な話だけど、それだけの事故にも関わらず彼女が乗っていたクルマは小傷が付いた程度。それでも、ドライバー彼女は亡くなってしまった」
叢雲「そして、そのクルマは未だアイツが所有・保管している」
叢雲「扶桑さんの狙いはそのクルマ……魔王とか言ってたわね」
山城「魔王……」
叢雲「忌み嫌っているのか、忘れたくないからなのかは知らないけど、今でもたまにエンジンだけ掛けてるみたいよ」
山城「それで……何で姉様がその魔王を狙う必要があるのよ」
叢雲「さあね。肝心の当事者達が行方をくらましている以上、私達にはどうすることも出来ないわね」
603: 2015/08/06(木) 21:54:51.37 ID:Qhpx1Qcf0
都高・湾岸線
夕張「いやー助かるわぁ。由良が理解ある人で本当に良かった」
由良「夕張と一緒に居たら嫌でも覚えちゃったわよ」
夕張「でも、燃調と点火まで見れるなんて大したものよ」
由良「パワーFCってそういうものじゃないの?簡単に弄れるって感じで」
夕張「付けてる人が皆平等に弄れるワケじゃないわ。やっぱりある程度の知識と経験が無いと」
由良「知識と経験ねぇ……」PCカタカタ
夕張「あ、ココちょっと息継ぎある」
由良「うん……少し濃くなってるわね」ホセイ
夕張「それにしても……」
由良「なぁに?」カタカタ
夕張「私達、艦娘だよね……」
由良「何を今更」
夕張「最近、艤装よりクルマ触ってる時間の方が長いんだけど……マジで」
由良「その内憲兵さんの立ち入りがあるかもね」
夕張「考えるだけでも恐ろしい……」
由良「世間一般で見たら問題児しか居ないからね、ウチの鎮守府」
604: 2015/08/06(木) 21:56:14.50 ID:Qhpx1Qcf0
由良「タービン換えたんだっけ」
夕張「うん。GT-SSにね。だからCPUも改めてセットアップし直す必要が出ちゃったのよ」
由良「何馬力位出てるの?」
夕張「常時320馬力位で、最大380ってトコね」
由良「ふーん。結構出るんだ」
夕張「それでもやっぱり湾岸はキツいよ。岩崎さんどころか、提督にもトップで離されたもん」
由良「あの人達が異常なだけでしょ」
夕張「それもそうね」
由良「それにしても、このクルマに幾ら掛けたのよ」
夕張「え、えーっとぉ……幾ら位かなぁアハハ……」
由良「全く、給料日近くになると毎回ご飯せびられるコッチの身にもなってよね」
夕張「反省してまーす」
由良「本音は?」
夕張「今月も多分お願いしまーす……」
由良 ハァ
605: 2015/08/06(木) 21:57:41.91 ID:Qhpx1Qcf0
由良「何か音楽掛けてもいい?」
夕張「別にいいけど、セッティング中なのを忘れないでよ」
由良「ハイハイ。再生っと」
♪~
由良「凄い低音……なにこれ」
夕張「提督お薦めのデス・フロム・アバヴ1979ね。テンション上がるわぁ」
由良「これベースの音なの?」
夕張「ベースとドラムの二人組だからね。シンセ通して音を作ってるみたい」
由良「へぇ~。結構カッコいいかも……」
♪~
由良「次は音像がキラキラしてる……昔の邦楽?」
夕張「これは首都高速トライアル2の主題歌、斉藤さおりの『目がすべて』ね」
由良「ジャンルに節操がないわね」
夕張「目がぁ全てさぁ♪」
♪~
由良「急に歌謡曲になったわよ」
夕張「ああー、コレは『ヘドラをやっつけろ』だわ」
由良「アンタのプレイヤーの中身、どうなってんのよ」
夕張「トンボもぉ♪鳥もぉ♪」
夕張「みなごぉろぉしぃ~♪」
由良「曲調と歌詞がここまで合ってない曲も珍しいわ」
夕張「シュールでしょ?」
由良「あとは何が入ってるの?」
夕張「リッジやワイプアウトのサントラとか、ルースターズの『恋をしようよ』とか」
由良「最後何でそれピックアップしたし」
606: 2015/08/06(木) 21:59:05.70 ID:Qhpx1Qcf0
夕張「ゲッタップルーシー!」
由良「ゲットアップルーシー」カタカタ
夕張「ゲットアップルーシー!」
由良「ちょっと踏み込んで」
夕張「あ、ハイ」
由良「ハーフで開けて……」
夕張「……おっ」
由良「レブまで全開で加速」
夕張「お、おおぅ……」
由良「うん。反応を見るに良い感じみたいね」
夕張「由良ったら、ROMチューンの才能があるんじゃない?」
由良「元のデータがあるから詰められるのよ」
夕張「じゃあ、私の成果?」
由良「でもガバガバ。今までよくこれで走れてたわね」
夕張「しょうがないじゃない……一人で全部やろうとすると難しいのよ」
由良「このFCコマンダーは飾り?」
夕張「……待って。後ろ、何か来てる」
由良「また赤城さんじゃないの」
夕張「それはそれで嫌だけど……この音、ロータリーじゃない」
夕張「――来るっ!」
607: 2015/08/06(木) 22:14:21.84 ID:Qhpx1Qcf0
♪~(某ブルーベリー色の全裸の巨人が出現する時の音)
夕張「うひゃあ!?」ビクゥ
由良「あ、川内からメールだ」
夕張「なな、なんでそんな怖い音を着信設定にしてるのよ……!」
由良「分かりやすくていいかなって思ったんだけど」
夕張「センスを疑うっ!」
由良「あ、でも青色のGT-Rよ。あながち間違いでもないようね」
夕張「青色のR……?」
由良「すっごく速そう。それに綺麗な青色……」
夕張「……提督……」
由良「え……?」
夕張「由良っ!ブースト圧マックスに設定して!追うわよ!」
由良「ちょっと。どうしたの急に」
夕張「あれ提督のRよ!」
由良「ウソ!?」
夕張「前に一度見せてもらったから間違いない!あんなR……他に居るわけがない!」
由良「でも、このクルマで追いつけるの!?」
夕張「無理かもしれないけど!それでも追わなきゃ!」
夕張「今見失ったら、二度と提督に会えない気がする!」
BNR32 スカイラインGT-R・改
“魔王”
――再始動。
617: 2015/08/07(金) 23:13:44.59 ID:7a6qOlBf0
小ネタ 鈴谷とドリフト
夕張「えっ、ドリフト?」
鈴谷「うん!バリちゃんなら出来ると思って」
夕張「一応それなりには出来るつもりだけど……急にどうしたの?」
鈴谷「ホラ、提督からクルマ貰ったじゃん?それでこの前、熊野と摩耶と一緒に出掛けたんだけど……」
~回想~
鈴谷「あーもう!マニュアルめんどーい!」
熊野「ちょっと鈴谷。もっとマトモな運転は出来なくて?」
鈴谷「そんなこと言ったってクルマ乗るの実習以来だもん!」
熊野「ガックンガックンで酔いそうですわ……」
摩耶「別に難しいことなんかないだろ。半クラで発進したら、あとはギア変える時以外は殆ど使わないし」
鈴谷「摩耶はあんなバイク乗ってるからでしょ!何でこんな目に……」
熊野「信号が変わりましたわ」
摩耶「ホレ、発進して右折」
鈴谷「分かってるよー……ってウワ!?」
摩耶「アクセル踏み過ぎだバカ。カウンター当てろ」
鈴谷「うわわわっ!?」
熊野「グエッ」←頭ぶつけた
鈴谷「……と、止まった。氏ぬかと思った……」
熊野「有り得ませんわー……」キュー
摩耶「流石にヤバかったぜ」
鈴谷「今のなにー……?」
摩耶「急にアクセル入れて曲がりゃあそうなる」
鈴谷「ああ……ドリフトってやつ……?」
摩耶「あれじゃただのタコ踊りだ。ま、何事もなくて良かったな」
~終了~
鈴谷「なーんてことがあって……チョー焦ったよぉ」
夕張「ホントによく事故らなかったわね……」
鈴谷「で、二度とあんなこと起きないようにドリフトを覚えようと思ったのです!」ビシッ
夕張「いや、その理屈はおかしい……か?あれ?」
618: 2015/08/07(金) 23:16:23.31 ID:7a6qOlBf0
夜・埠頭
夕張「結局教えることになってしまった……」
鈴谷「バリちゃん!早く早く!」
夕張「分かったって……じゃあまず基本から。今回は私のクルマだけど、FRであれば操作自体は変わらないからね」
①パワースライド
夕張「ハンドル切りながらガツンとアクセル踏む。すると……」
鈴谷「おお、滑ってる滑ってる」
夕張「これがパワースライド。アクセルの踏み過ぎによって起こるオーバーステアね。鈴谷がやったのはコレじゃない?」
②サイドターン
夕張「コーナー手前で減速、ハンドルを切りつつサイドを引く。すると後輪がロックすることによってテールが流れ始めるから……」
鈴谷「お、おぉー……」
夕張「あとはアクセルを開けてカウンターを当てる。これがサイドターン。低速でもやりやすいし、ドリフトではポピュラーなやり方ね」
鈴谷「さっきよりも横向いてる時間が長かった……」
③クラッチ蹴り
夕張「進入時にクラッチを蹴ると一瞬高回転になる。すると後輪が空転するから……」
鈴谷「うわわ、速いぃっ」
夕張「これもテールを流すキッカケ作りの一つね。サイドターンよりもスピードがある分、最初はちょっと難しいかも」
夕張「でも、回転数が落ち込んだ時にコレを使えば飛距離が伸ばせるわ。覚えておいて損は無いね」
④直ドリ
夕張「これは応用編。とりあえずクラッチ蹴ってキッカケを作り……」
鈴谷「直線で横向いてるぅっ!」
夕張「溜めたらアクセル抜く。すると今度は反対方向に振られるから逆ハン」
鈴谷「ギャー!!事故る事故る!!」
夕張「で、もう一回振ってコーナー進入。この時角度が足りないと思ったらサイド引くのもアリね」グイッ
鈴谷「 」
夕張「あとは同じね。ハンドルとアクセルで調整。そしてコーナー脱出」
夕張「今のは簡単なヤツからやっていったけど、普通にブレーキからキッカケを作ったり、慣性を利用する速いドリフトの方法もあるけど、やってみる?」
鈴谷「も、もうイッパイでち……」チーン
619: 2015/08/07(金) 23:19:16.22 ID:7a6qOlBf0
おまけ
夕張「ある程度なら勝手に戻ろうとするから、ハンドル持たなくてもいいのよね」パッ
鈴谷「やめてーーー!!!!」
深夜の埠頭にこだまする鈴谷の絶叫……鈴谷は無事にドリフトを習得出来るのか!?
続かない!
620: 2015/08/07(金) 23:21:02.83 ID:7a6qOlBf0
夕張「台場線に入っていく……?」
由良「着いて来いってことかな」
夕張「それならまだ好都合よ。湾岸じゃ勝ち目はないけど、環状だったら着いて行ける!」
由良「それにしても速い……」
夕張「パワーの差で云ったら、この子の倍は出てるでしょうしね」
由良「古くてもそこはGT-Rってことかな」
夕張「峠ならまだしも、都高でR相手にワンエイティで追いかけるなんて無謀だもの」
夕張「虹色大橋手前のS字……詰めるならココ!」
会心の慣性ドリフトでクリアーする夕張。
今までで最高のコーナリングだと自信を持って言える。
それでも……魔王Rに届かない。
夕張「追いつかない……っ」
由良「どんどん離されてるよ!」
夕張「まだチャンスはある!ココから先はテクニカル区間……タダでは済まさないんだから!」
621: 2015/08/07(金) 23:21:55.51 ID:7a6qOlBf0
虹色大橋を渡りきると、芝浦の下り連続コーナー。
直線で離された分を少しでも取り戻そうと、夕張は持ちうる力の全てをぶつける。
右、左、そして右……スリッピーな路面も相まって、都高でも屈指の難所である芝浦コーナーを丁寧に捌いていく。
抜ける頃には僅かではあったが、その差は確実に埋まっていた。
初戦の赤城の時とは違う。
自分の走りが出来ている。
そして、ちゃんと成長している――!
テールを追うな。前を見ろ。
いつか提督に投げかけられた言葉を頭の中で復唱する。
特徴的なリング状のテールランプはまだ遠い。
それを追ってはダメだ。目指すのはその先だ。
クルマは自分が向いた方向にしか進まない。
ハンドルを握る手は、若干汗ばんでいた。
夕張「内回り……集中集中」フー
由良「うん。空燃比、排気温度、共に問題無し。まだ行けるよ」カタカタ
夕張「了解!お願い、ワンエイティ――ッ!」
環状に入っても夕張の集中力は途切れない。
それどころか、この緊張感が心地良くさえ思えた。
その原因はやはり、前を行く魔王Rによってもたらされたものだろう。
あまりの速さから魔王と恐れられた、迅帝と並ぶアンダーグラウンドの主。
しかし名前とは裏腹に、摩天楼の灯火に浮かぶ姿は無骨な印象の強いR32とは一線を画す。
どこまでも深く、見ていれば溺れてしまいそうな……妖艶とも取れるブルー。
それはこの都高が持つ独特の空気に飲まれているのか、あるいはRの魔力によって脳髄から犯されてしまったのか。
夕張「怖い話とかさ、時々無性に見たくならない?」
由良「どうしたのよ急に」
夕張「私が思うに……あれって現実の延長線上にある非現実を、少しでも垣間見たいっていう意識が何処かにあるんじゃないのかなって」
夕張「何であのクルマが魔王と呼ばれているのか……少し分かった気がする」
628: 2015/08/12(水) 01:00:26.80 ID:6qffyFYx0
小ネタ 江風と邂逅
江風「改白露型の江風だ!ま、よろしく頼むよ」
夕・由「おおー」パチパチ
夕張「制服がスタイリッシュ」
由良「カッコカワイイ」
江風「おいおい、褒めても何も出ないぞ」
江風「まあ、何て言っても改白露型だからな!バランスの良い身体だろ?」
夕・由「バランス……」
白露「江風来たってホントー!?」バーン
夕立「ぽいーっ!」ドタドタ
村雨「失礼しまーす」
江風「おお、姉貴達。よっす」
夕・由 ジーッ
白露「ん?どしたの二人とも」ボイン
夕立「ぽい?」バイン
村雨「……視線が……」ボイーン
江風「何だよ。何処見てんだよ?」ストーン
夕張「そうね。確かにバランスの良い身体ね」ホロリ
由良「大丈夫。まだまだこれからよ」カタポン
江風「分かんねえけどスッゲェムカつく」
むしろ姉貴共がアンバランス。
何がとは言わない。
629: 2015/08/12(水) 01:04:33.31 ID:6qffyFYx0
二台は環状・内回りに突入。
魔王Rのテールランプは赤く尾を引き、浮かんでは消える。
コーナーの進入で差を詰めても、クリップ~出口では魔王Rが圧倒的優位。
暴力的な加速の前に、夕張180SXは為す術もなく。
タービンを交換し、CPUのリセッティングによってワンランク上の速さを手に入れたハズなのに、今ばかりは非力な軽自動車のようにさえ思えた。
パワーが足りない。スピードが足りない。
埋まらない差は夕張を苛立たせ、それが呼び水の如くヒリヒリと焦燥感を煽ってくるのだった。
夕張「もーうっ!!全然追いつかない!!」
由良「落ち着いて。離されてはいないよ」
夕張「環状ならどうにかなると思ったのに……!」
由良「インターセプターだっけ。簡単にはいかないよね」
夕張「どうせならもう少し大きいタービン入れれば良かったかしら。T518とかGT2835とか……」
由良「多分結果は変わらないと思う」
夕張「……うぅっ」
由良「したらばは後。今は提督さんでしょ」
夕張「……うんっ」
630: 2015/08/12(水) 01:07:43.79 ID:6qffyFYx0
由良「それにしても提督さん、何であのクルマに乗っているんだろう。折角Zがあるのに」
夕張「扶桑さんを止める為……だと思う」
由良「扶桑さん?どういうこと?」
夕張「あの黒いGTOのドライバー……扶桑さんだったみたい」
由良「……冗談でしょ」
夕張「叢雲はハッキリ見たって。まさかとは思ったけど……」
由良「でも止めるって言っても、どうやって?」
夕張「それは分からないけど、扶桑さんの狙いはどうやらあのRらしいの。ワンエイティはブローしちゃったし、Zじゃ勝負にすらならない」
由良「出し惜しみしている場合じゃない……ってことね」
夕張「多分。何があったか知らないけど、あのクルマには嫌な思い出があるみたいだから、ずっと放置していたみたいだし」
由良「とても放置していたようには見えないけど……」
夕張「そうね。いくらガレージに入れていても、綺麗過ぎる」
夕張「提督は『これはただの機械だ』なんて否定していたけど、やっぱり何か特別な力があるとしか思えないわ」
由良「魔王なんて呼ばれている位だから、魔力でも持ち合わせているのかもね」
夕張「魔力……そうね。確かに魔力があるわね」
631: 2015/08/12(水) 01:09:18.28 ID:6qffyFYx0
夕張「深峰線へ?」
由良「また湾岸に出るのかな」
夕張「そのまま市川に帰ってくれないかなぁ……」
由良「だったらいいけど、それはないでしょ」
夕張「そうよねぇー……」
由良「でもまた湾岸に出られたら、追いつけっこないね」
夕張「その前に銀座で差が埋まらないんじゃ、深峰線の間に置いて行かれそう」
由良「弱気になるなっ。気持ちで負けたら終わりだよ」
夕張「それはそうだけど……って、あれ?」
由良「……この上って行くのが深峰線よね?」
夕張「うん。コッチは向島線……」
由良「真っ直ぐ行ったら何処に繋がるの?」
夕張「中央環状にぶつかるわ。でも何で……」
由良「……箱崎出口で降りたわね」
夕張「え、あれ?もしかして……」
由良「どうしたの?」
夕張「ココで降りると下がロータリーになっているんだけど、そこにパーキングエリアがあるのよ」
由良「そんな案内標識あった?」
夕張「あまりに小さい所だから、混雑を避ける為にわざと表示してないの。Uターンがてらに使うこともあるんだけど、偶に閉鎖されている時もあるわ」
由良「知らなかった……」
夕張「でも好都合だわ。いい?提督がクルマから降りたら即拘束よ。聞きたいことが山ほどあるからね!」
由良(さっきまで不安と焦りで一杯の表情だったのに……急に元気になっちゃって)クスクス
夕張「……何で笑ってるの」
由良「べっつにー」
632: 2015/08/12(水) 01:12:20.11 ID:6qffyFYx0
箱崎パーキング
提督「おーっす夕張。由良も居たn 夕張「食らいやがれぇ!!」トビゲリ
提督「ひでぶっ!」
夕張「何が『おーっす』ですか!丸一日勝手に鎮守府空けるし!Rは動いてるし!」
提督「ちょっ!痛い痛い」
夕張「ホントに心配したんですからね!」
提督「悪かったって。ホントは昼前には帰るつもりだったんだけど、コイツの整備が遅れちゃってさ……」
「あら、職務放棄を人のせいにする気ですか?」
由良「え?」
提督「おー居た居た。来てくれないかと思ってましたよ」
「守る気が無いなら最初から約束しませんよ」フフ
提督「へいへい。そういう人でしたね」
「貴女達は彼の所の艦娘ね」
夕張「あ……ハイッ。市川所属の兵装実験軽巡、夕張です」
由良「同じく、長良型軽巡洋艦・4番艦の由良です」
「夕張さんに由良さんね。はじめまして」
夕張「あのぅ……失礼ですが、貴女は?」
「あらいけない。うっかりしていたわ」
朝日「敷島型二番艦、朝日と申します。工作艦に改装された戦艦……って言えば、分かるかしら」
提督「俺のワンエイティとRを組み上げた張本人だ。昔っから世話になってるのヨ」
夕・由「……え?」
641: 2015/08/14(金) 15:42:52.25 ID:kCyzMtjQ0
小ネタ 川内と江風
川内「うーん……キャブ絞り過ぎたかなぁ」カチャカチャ
江風「川内さーん。夜戦行かないの夜戦ー」
川内「これ終わったら行くよー」
江風「マジ!?じゃあ早く早く!」
川内「慌てない慌てない。峠は逃げないよー」
江風「……は?峠?」
川内「うん。峠」
江風「何しに?」
川内「夜戦しに」
江風「いやいや、アタシら艦娘だよ?山に行ってどうするのさ?」
川内「あー、カウル付けるの面倒だし、このままでもいっか」
江風「ちょっと!質問に答えてって!」
川内「そうだ。江風に着任祝いがあるんだ。夕張ー」
夕張<ハーイ
江風「え?なになに?新しい装備?」キラキラ
夕張「お待たせー?これが江風ちゃんの装備よ」
スズキ・RGV250Γ
江風「……なにこれ」
夕張「VJ22の後期型よ。規制でカタログ値は40馬力だけど、きっちり整備してあるから50位は出ているハズよ♪」
江風「え?え?」
川内「これでようやく、『SRTいちかわ水雷魂withSP夕張』が始動ね」
夕張「ハイこれ。江風ちゃんのメット」つドラヘル
江風「あ、ちょっと可愛い……」
江風の色合いが何となくガンマを彷彿させる。
642: 2015/08/14(金) 15:49:07.30 ID:kCyzMtjQ0
小ネタ 川内と江風・その2 ~多分知られていないレースゲーネタ~
今日も峠が私を呼んでいる。
どうした……もうお仕舞か……
もっと速く走れないのか……もっと深く倒せないのか……
目にもの見せてやるから待ってろよ!
私は眠い目をこすりながらイグニッションキーを捻る。
相棒は一発で目を覚ます。
コイツはいつも目覚めがいい。
高回転型エンジンが不安定にむずかりアクセルを強請る。
イヤと云う程回してやるからお前の方がヘバるなよ!
エンジンに火を入れた私は暖機の間に缶コーヒーで、
自分のハートに火を入れる。
オイルの焦げる匂いに心が躍り、
私も一気に目覚める。
――行くぜ、相棒!
アクセルを捻るとキャブレターが鳴き、
レブ・カウンターが躍る!
心地良いエキゾースト・ノートに酔いしれながら、
いつものワインディングロードを目指す!
私はいつしか、バイクと一体になり
エンジンもタイヤも私のハートも熱くなった!!
私は心の中でフラッグを振る。
……そして今、私は熱い風になった。
江風「ヤッベェ……バイク、チョー楽しい」
川内「そうでしょそうでしょ?」
江風「川内さん!こうなりゃ全国制覇目指しましょう!いちかわ水雷魂の名を全国に!」
川内「お、いいじゃん。江風ったら、やる気だねぇ」
夕張「洗脳が完了しました」
由良「ロクでもないわね、アンタ達」
文の元ネタは「峠・伝説 最速バトル」より
首都高バトルを生み出したBPSよりスーファミ末期に発売されたバイクゲーです。
説明書無しでは一見さんお断り状態だけど面白い。
あと、Nチビで首都高走れます。オヌヌメ。
643: 2015/08/14(金) 15:51:17.35 ID:kCyzMtjQ0
夕張「こ……工作艦・朝日って、私達の大先輩じゃないですか!」
由良「何で提督さんと……」
提督「昔、大黒で知り合った」
夕張「いやいやいや……」
提督「俺だって最初は驚いたんだぜ?朝日さんが元艦娘だって知ったのは着任してからだ」
提督「今でこそ艦娘の存在はのっぴらきになったが、当時は重要機密でな。軍関係者の中でもごく一部にしか伝わっていなかった。当然、一介の暴走族風情の俺が知る由もない訳ヨ」
朝日「彼と出会った時には既に退役した身でしたし、一応守秘義務もあったものでしたから」
由良「では何故、提督さんのクルマに手を入れるようになったのですか?」
提督「『Mid-knight』ってチーム、知っているか?」
夕張「都高を走っていて知らない方がモグリですよ……って、まさか」
提督「おうよ。L28改ツインターボのS130。それが朝日さん」
夕張「 」
由良「え?どういうこと?」
夕張「……かつて湾岸に君臨していた伝説のチームよ。その中でも有名だったのはワークスチューンの930ターボと、ABRエアロのZ……同チームの看板マシンね……」
提督「湾岸で実測300キロオーバー。Rやスープラが台頭し始めた頃に、130でこの数字は驚異的だった。ガキの頃に憧れたZが目の前に現れた時は、ホントに興奮したよ」
朝日「懐かしいですね。実際にそこまで出ませんでしたが」
由良「もしかして、そこに止まっているZがそうですか?」
提督「おう。今は赤くなったけど、当時はグレーだったな」
夕張「ちょっと見て来ていい!?」
由良「後にしなさい」
提督「……で、聞けばチューニングはほぼ自分でやっていると。ワンエイティのチューンに悩んでいたこともあって、兎に角拝み倒して以来付き合いが出来たってとこかな」
朝日「最初は自分以外のクルマには責任が持てないと断っていたのですが、彼の走りや考え方を知り了承したのですよ。彼はちゃんと、分かってくれると」
夕張「分かってくれるとは……?」
朝日「正確には知ろうとする姿勢ですね。作業する際は必ず手伝わせていたのですが、一つ一つの作業の意味を考え、キチンと自分の言葉として消化して発する。コレって案外難しいのですよ」
提督「そうですかね?」
朝日「先入観や予備知識というのは、時として価値その物を歪めてしまいます。やがて個が構築されていくと、自分の価値観に無いモノはまず否定してしまう。その方が楽ですからね」
朝日「彼にはそれを感じなかった。若さ故の無知ということもあったのでしょうが、何処かセンスがあったのでしょうね」
644: 2015/08/14(金) 15:54:12.81 ID:kCyzMtjQ0
夕張「センス……ですか」
朝日「これはあくまで私の考え方ですが、センスというのは情報の取捨選択の上手さだと思っています」
朝日「言い換えれば本質を見極める力ですね。だからセンスがある=上達の早さに繋がると」
朝日「人は分かりやすい結果を求めがちです」
朝日「極力無駄を省き、最良の結果を得たい。その考え方は間違いではありません。占いなんかがそうですね」
朝日「ですが……無駄だと決めつけ切り捨ててしまうと、案外それなりの結果しか得られないものです。彼はそれが許せなかったみたいですね」
提督「大事なことは、自分で気が付かなければ意味がない。ただ教わるだけでは身に付かない……ってね」
朝日「あら、それは誰からの受け売り?」
提督「朝日さんからですよ。ここでの走り方、クルマに対する姿勢、考え方……みーんな都高と朝日さんとから教わったんです」
由良「つまり、朝日さんは提督さんにとって師匠みたいな人だったんですね」
提督「まあな。Zを買ったのだって、朝日さんに憧れていたって部分も大きい」
朝日「嬉しいこと言ってくれますね」
提督「事実ですから」
夕張「ところで、朝日さんは何故ココに?」
朝日「Rの様子を見に来ました。この様子だと、問題は無いようですね」
提督「問題があるとすれば俺の方かな。夕張如きを離せないなんて、やっぱり鈍ったんだなぁ……」
夕張「ムカーッ!人がどれだけ心配したかも知らないで!」
提督「だからそれは悪かったって」
朝日「さて、ココで立ち話をしていても他の方に迷惑が掛かりますし、私のガレージに移動しましょう。良ければ、お二人もどうですか?」
由良「いいんですか?」
朝日「ええ。提督としての彼の話も聞きたいですからね」
由良「では、お言葉に甘えて」
夕張「あの130を間近で見れるチャンス……流石に気分が高揚するわっ!」
提督「お前なぁ……」
朝日「ウフフ。では、参りましょうか」
645: 2015/08/14(金) 15:58:48.44 ID:kCyzMtjQ0
朝日のガレージ
夕張「……まさかココまで来るのにも全開だなんて……」ゼィゼィ
朝日「夕張さんも中々の実力をお持ちのようだったので、つい踏んでしまいました」
夕張「それは素直に褒められていると思っていいんですよね……」
朝日「勿論。彼の部下だけあって、昔の彼の走りにソックリ」
提督「俺の方が速かったと思うけどナ」
朝日「いえいえ、夕張さんの方が速い位」
提督「いーやっ、そんなことないねっ」
夕張「何ムキになってるんですか……」
朝日「大人げないというか、子供っぽいところは昔からですね」
由良「ところでこの建物……ガレージと云うより貸倉庫に見えるのですが……」
朝日「作業も出来る広いガレージとなると、こういう所の方が都合が良いのですよ。さあ、どうぞ」ガラガラ
夕・由「お邪魔しまーす……」
朝日「明かりを点けますね」
ラーイトアーップ!!
夕張「お、おおー……っ!!」
由良「スゴい……プロのショップみたい」
提督「むしろプロだよ、この人。そこにあるヨーロッパだって、レストアついでにロータリー載せようとしてるんだし」
夕張「ふえぇぇぇ……」
由良「31、32、33……歴代Zが並んでるズラリと」
朝日「Zは特に思い入れがあるんですよ。でも、純粋なZは32までだと思いますね」
夕張「え?どうしてですか?」
提督「33はルノー提携後のクルマだからな。スポーツカーとしては成功した部類とは云え、朝日さんなりに思う所があるんだろ」
朝日「概ね当たりです。よく出来たクルマではあるのですが」
夕張「な、成程……」
646: 2015/08/14(金) 16:04:05.95 ID:kCyzMtjQ0
朝日のS130フェアレディZ
ABRエアロのレッドパール。
L28改3.1L+TD06タービン×2仕様。
インジェクション+モーテック制御等、各部に現代のパーツを奢る。
NAでも充分速いらしい。
最大出力は約600馬力。
夕張「ノスタルジーな見た目に反して、中身はかなり現代的ですね」
朝日「思い出に浸るのではなく、速いZを作ることが目的ですから」
提督「でもL型って以外は最早別物だよなぁ。これでゼロヨン11秒前半出るし」
夕張「11秒!?下手な四駆より速いじゃないですか!」
提督「しかも、ちゃんと公道で乗れる仕様だからな。驚異としか言えん」
夕張「ヒエー……魔王Rがあんなに速くなったのも納得出来るかも……」
提督「……そうだな」
朝日「組んだ人間からすれば、このクルマが曰く付になってしまったのは悲しいですが」
提督「………」
朝日「その様子だと、まだ話していないみたいですね」
提督「……どうしてもなぁ、このRを見ると思い出しちまうから……」
夕張「……提督。結局このRは何故魔王と呼ばれるのか、どうしてこのRを頑なに拒否するのか……いい加減、話してくれませんか?」
由良「これ以上は執務や士気にも悪影響ですよ。観念してください」
提督「……観念って」
朝日「向かい合うと決めたから、私の元に来たのではないのですか?」
夕張「提督!」
由良「提督さん」
提督「……ああ、もう分かったよ。でも、あんまり他の奴に言うなよ?特に青葉」
その頃の青葉――
青葉「動かないから『あれ?』と思い、ギア弄ったらローに入ってもうウイリーです……」
青葉「おのれkwsk……」ガクッ
摩耶「何だとこの野郎」
647: 2015/08/14(金) 16:06:17.31 ID:kCyzMtjQ0
提督「そもそもこのRは、俺のクルマじゃないのよ」
夕張「え?」
提督「正確には、その当時付き合っていた彼女のクルマだ」
提督「まあ変わり者でさ。華奢で線の細い見た目のクセに、機械科の大学出でな。知り合った時には、既にこのRに乗っていた。まあ、殆どノーマルだったけど」
提督「その頃、俺も岩崎も都高では名前が売れていた。で、何処から聞きつけたのか、実際にそんな速いワンエイティが居るのか見てみたかったと」
由良「本当に変わった人だったんですね……」
提督「そっから意気投合して、男女の関係になるまでにもそう時間は掛からなかった。お互いクルマが好きだったし、同い年だったから話題も事欠かない」
朝日「私の所にもよく顔を出しては、作業を手伝ってくれていました」
提督「一方でワンエイティでは限界を感じ始めていた。乗り換えを考えていると打ち明けたら、このRに乗れと勧められたんだ」
提督「色を塗り替え、エンジン・足回り・ボディ……出来ることは全てやった。完成した時には、感極まって泣いていたな」
朝日「これが当時の写真です。岩崎君も一緒に写っていますね」
由良「……え!?」
夕張「扶桑さんにソックリ……!?」
提督「最初に扶桑と会った時は腰抜かしたよ。生まれ変わって艦娘になったのかって思ったわ」
夕張「生まれ変わって……?」
提督「……氏んだよ。このクルマでな」
夕・由「……!?」
提督「このRが組み上がった時は、そりゃあもう速かった。あれだけ苦労していたワンエイティは一体何だったんだって程にな」
提督「で……俺と岩崎が見た目と速さから、Vシネ版の湾岸ミッドナイトに肖って魔王Rと呼び始めた。今思えば、それがコイツを本当に魔王にしてしまうキッカケだったのかもな」
648: 2015/08/14(金) 16:08:26.49 ID:kCyzMtjQ0
提督「そんなもんだから、俺とRは連戦連勝。湾岸じゃあついて行くことが出来なかった岩崎のRとも対等になった」
提督「あの迅帝とタメを張るんだ……噂はあっという間に広まり、最初はシャレで呼び始めた魔王の名が、いつしかコイツを表す通り名になった」
朝日「とてもじゃないけれど、私のZでは太刀打ち出来なくなりました。嬉しい反面、少し寂しくなりましたね」
提督「ところが……アイツが乗ると何故かグズる。最初はABSの誤作動で危うく突っ込みかけた」
提督「まあ当時でも32Rは既に古いクルマだったからな。ちゃんと原因も調べてたこともあって、その時は特に気にしなかった」
提督「しかしその後も不調は続いた。ドライブシャフトが折れたり、エキマニが割れたり、サーモスタッドが壊れたり……アテーサのヒューズがトんだ時は流石に引いたわ(笑)」
朝日「でも彼女が乗ると高確率で不具合が起きるから、君は故障センサー扱いしていたじゃないか」
夕張「え、ひどっ」
提督「余計な事言わないでください……」
由良「でも不思議ね……まるでクルマに拒絶されているみたい」
提督「ああ。だがそれでもアイツはこのRを心底愛してやまなかった。時間があればコイツに向き合い、その細い指を油で黒くしていた」
提督「ついにコイツも観念したのか、次第に不可思議な故障は無くなった。そもそもアイツのクルマだけどな」
提督「すると、今度はアイツの方がRに乗る時間が増えた。まるで取り憑かれたように、寝ても醒めてもRのことばかりだ」
朝日「実は都高における魔王Rの逸話は、殆ど彼女が作り出したものでした。つばさ橋で340キロ出ていた、内回り霞ストレートで300キロオーバー、環状6分切り……実しやかに囁かれた噂は、数多く存在していました」
提督「確か、横浜でゼロヨン10秒切ったなんて話もあったな」
朝日「私が聞いた話では、筑波の走行会で58秒フラットを叩き出したなんていうのもありましたよ」
夕張「どれも出来そうだから怖い……」
提督「いや、いくらなんでも大げさ過ぎだ。ゼロヨンは10秒中盤、筑波は精々1分フラットってとこだ」
夕張「それでも充分とんでもない記録じゃないですか……」
由良「じゃあ、最高速もそこまでは出なかったんですよね?」
提督「……メーター読みで近い速度は出た」
夕張「 」
朝日「確か、330キロは出ていたハズですね」
由良「 」
649: 2015/08/14(金) 16:10:44.11 ID:kCyzMtjQ0
提督「それからしばらく経ったある日だ。アイツから電話があった」
提督「これから岩崎と走ってくる……今日は凄く調子が良いなんて、いつにもなく興奮気味だったよ」
提督「それで翌朝のニュースだ。都高で事故があったなんて流れていて、ふと見たら岩崎のRがグチャグチャになって転がっていた」
提督「あのバカやりやがったのかと思ったら、女性が一人氏亡なんて出た。年齢も同じ。連絡しても繋がらない」
提督「頭が真っ白になったよ……」
朝日「二人が事故を起こしたのは環状外回りの京橋ランプ付近。ブレーキ痕は、岩崎君のものしか確認出来なかったそうです」
夕張「きょ、京橋!?」
提督「お前が赤城とヤった時と、ほぼ同じ場所だ。偶然とは云え心臓が止まるかと思ったぜ」
夕張「……そんな……」
朝日「翌日、私が魔王Rを引き取りに行きました。彼は心神喪失状態ですし、関わった者として、自分にも責任がありますからね」
朝日「引き取り自体は警察が渋ったので多少時間は掛かりましたが、現車を見ることは出来ました」
朝日「岩崎君のRがあんな状態では、魔王Rも当然再起不能だろうと思ったのですが……まるで何事も無かった様に、ほぼ無傷」
朝日「警察の方も少し気味悪がっていましたね。今まで何回も悲惨な現場を見て来たが、こんなケースは初めてだ……と」
提督「せいぜい擦り傷があった程度だからな……笑えたよ。笑い過ぎて壊れるかと思った」
提督「そして気付いた。最後の最後に、またコイツは裏切りやがった。アイツを身代わりにして生き残ったんだってな……」
提督「後はお前が知っての通りだ。あのガレージに押し込んで、生かさず殺さず置いていたのヨ」
夕張「でも……提督言ってたじゃないですか!クルマはただの機械だって……!」
提督「……そうだ。それに気付いたのは、お前達艦娘のおかげだよ」
夕張「え……?」
提督「人によっては、艦娘を兵器だと云うヤツがいる。だがそれを操っているのは紛れもなく、感情を持った人間なんだ。機械は結局、人間があってこそだ」
提督「それに気付いたのは……最初に叢雲を預かり、そして小さいながらも艦隊を任されるようになってから……」
提督「やっぱりさ、俺はクルマが好きなのよ。例え連れが大事故を起こし、付き合っていた女が氏んでいても……やっぱりクルマは好きだった。憎めなかった」
提督「何より、アイツが愛したクルマだ。これ以上無下にしていたらアイツが悲しむかもしれない。それでも向き合えるようになったのは、ようやく今になってから……随分時間が掛かったけどな」
由良「それで……提督さんは、このRで何をする気ですか?」
提督「……扶桑を止める。何処でRの存在を知ったのかは置いといて、これ以上放っておいたら、かつての俺みたいになっちまう」
提督「クルマのせいで狂う人間なんて、もう見たくもないからな……」
650: 2015/08/14(金) 16:35:24.48 ID:kCyzMtjQ0
提督「俺が話せるのは概ねこんなモンだ」タバコ
朝日「火気厳禁」ヒョイ
提督「へいへい……」
夕張「………」
由良「………」
朝日「言葉が出ないようですね」
提督「だからあんまり話したくなかったんだよ。この二人は特に古株で付き合い長いし」
朝日「ルールの無い喧嘩は頃し合い」
夕張「……?」
朝日「私が艦娘として学び、都高で再確認したことです」
夕張「どういうことですか?」
提督「……あの頃の都高は熱気が異常でさ。毎日何処かしらのチームが走っていた」
提督「中には白熱しすぎて、とんでもない化け物を連れて来る奴が居るのヨ。岩崎しかり、俺しかり」
朝日「しかし事故も増大していました。古参の人達からすれば、実に走りにくくなりましたね」
提督「……そうだな。WRCにおけるグループBみたいなモンだ」
由良「無秩序ですね……」
提督「ああ、まるで制御が効かない。正直なところ、アイツと岩崎の事故も起こるべくして起きた」
夕張「つまり、扶桑さんのGTOみたいなのが沢山居て……」
提督「そう。事故ったり、氏んだりだ」
提督「あのGTOは怖いよ。正にその頃を思い出させる」
由良「だからこそ……末路が分かっているからこそ、何としても止めるべき、と」
提督「そういうことだ。特に夕張……出来ればお前には関わって欲しくないと思っている」
提督「これは俺自身の決着と後始末だ。ましてや、相手は俺の部下だしな」
夕張「……最後まで」
夕張「最後まで見守ることは……ダメなんですか?」
提督「……それをお前が望むなら、止めないよ。止める権利は無いさ」
661: 2015/08/15(土) 19:05:15.70 ID:z+ssuANH0
補足的な小ネタ
由良「朝日さんのS130って、元ネタがあるのよね?」
夕張「そう。知っている人にはすぐ分かると思うけど、ABR細木のミッドナイトレーシングS130ね」
由良「どんなクルマなの?」
夕張「キャブ仕様のL28改ツインターボ。悪魔のZのモデルになったと言われているわ」
由良「そういえば、彼女のカレラに同じくミッドナイトのポルシェが出ていたような」
夕張「コレも有名なクルマね。途中でも語られている通り、Zと並んでミッドナイトの930ターボも全国的な知名度があったの」
由良「わざわざ本国のポルシェにエンジン送って組んでもらっていたらしいしね……」
夕張「ちなみに、彼女のカレラは>>1は断片的にしか読んでいませんっ」
由良「大鶴義丹主演のVシネマ版湾岸ミッドナイトには、同じくABRボディの白いS130も登場していました」
夕張「ネタバレすると、原作では北見ポジションの人物がS130のドライバーで、悪魔のZとのバトル後に、魔王Rを残して行方を眩ませてしまう……って感じだったハズ」
由良「大昔に視聴したっきりだから、内容はうろ覚えね」
夕張「朝日さんは、一応それを意識しての登場だったけど……ねえ?」
由良「まさかのオリジナル艦娘だし……」
夕張「朝日さんの容姿はご想像にお任せします!ただし、元艦娘ということもあってか、実年齢より遥かに若く見えるということだけ追記しておきますね」
由良「では引き続き、本編をお楽しみください」
662: 2015/08/15(土) 19:06:27.10 ID:z+ssuANH0
帰路 都高深峰線
由良「……提督さんにも、色々あったんだね」
夕張「そうね……」
由良「……夕張」
夕張「なに……?」
由良「夕張?大丈夫?ファ○通の攻略本よ」
夕張「……は?」
由良「ゴメン。今の無し」
夕張「お、おう……」
由良「……今のは完全にスベった。氏にたい……」
夕張「手で覆い隠す程恥ずかしくなるなら最初から言わないでよ……こっちまで恥ずかしい」
由良「……由良のキャラじゃなかった」
夕張「ああ、もう。そういうのいいから!」
由良「……提督さん、今日はちゃんと帰るって言ってたよね」
夕張「そうね。帰らなきゃ叢雲にボコられそうだし」
由良「酸素魚雷の刑ね、確実に」
夕張「……結局、走ることって何なのかな」
由良「さあ……私には分からないわ」
由良「朝日さん……いつでもおいでって言ってたし、聞いてみればいいんじゃない?」
夕張「そうする。艦娘の頃の話とかも聞きたいし」
由良「……で、さっきから後ろに居るのって……」
夕張「やめてよ……気にしないようにしてたんだから……」
663: 2015/08/15(土) 19:08:23.22 ID:z+ssuANH0
由良「緑色のハチロクね」
夕張「そうね……」
<おねえさまあああああああ
由良「何か聞こえるよ」
夕張「どんな声量してるのかしら……」
由良「知り合い?」
夕張「多分、由良も知ってる人……前会った時と色が違うけど」
<黄色いワンエイティ!噂は本当だったんだ!
由良「……横に並んだ」
夕張「あー……」
「やっぱり!夕張さんですね!」
夕張「ああ、うん……案の上だわ」
由良「あの人は……」
比叡「初都高!気合!入れて!!行きます!!!」
夕張「何で比叡さんがココに居るのよ……」
由良「都高走行中でも聞こえる声ってスゴいね」
664: 2015/08/15(土) 19:10:19.41 ID:z+ssuANH0
鎮守府最寄りのコンビニ
比叡「お久しぶりです!夕張さん!」アクシュ
夕張「どうしたんですか比叡さん。わざわざココまで……」
比叡「お姉様が心配になって来ちゃいました!」テヘッ
夕張「はぁ。ところで、前とクルマ変わってませんか?」
比叡「ハコ換えしました!これでバッチリです!」
夕張「そ、そうですか……」
由良(やっぱり声大きい……)
比叡のAE86カローラ・レビン改二
ボディ剛性で有利な2ドアに乗り替え。
グリーンメタリックに全塗装。
時代を逆行する直管の爆音マフラーがトレードマーク。
中身は以前のハチゴー改のままと見せかけて……
比叡「エンジンはSR20!リアメンバーもマルチリンクに換装!以前とは別モノですよ!」
由良「つまりシルビアですよね、中身」
夕張「ついにハチロクとしては禁断の領域に……」
比叡「これもひとえに金剛レーシングの名を受け継ぎ、そしてお姉様を目指す為です!」
由良「でも金剛さん、S2000に乗り換えましたよ?」
比叡「……えっ?」
夕張「知らなかったんですか……」
665: 2015/08/15(土) 19:12:45.70 ID:z+ssuANH0
比叡「そ、そんな……金剛レーシングは……ハチロクで売っていたのに……」ガクゥ
夕張「でも、榛名さんと霧島さんは86とBRZじゃないですか」
比叡「榛名は元々ハチロクのトレノですよ。お姉様がエンジン壊しちゃったけど……」
夕張「ああ、そういえばそんな事言ってたような……」
比叡「あ、そうそう。その榛名のハチロク、新しいエンジンを組んだので復活したんですよ。今度はフォーミュラトヨタ用の4A-Gです」
夕張「うわ、マニアならヨダレものじゃないですか」
比叡「それもまた速いんですよー。お姉様程ではないけど」
夕張「今度Hakoneに行ったら、是非見させてもらいたですね」
由良「盛り上がってるとこ悪いけど、ちょっといいかな?」
夕・比「??」
由良「いや、中に居る人って……」チラ
金剛@マンガ立ち読み中
比叡「お、お姉様!?」ガビーン
夕張「あの人こんな時間に何してんの……」
由良「金剛姉妹ってフリーダムね」
666: 2015/08/15(土) 19:14:34.38 ID:z+ssuANH0
<アリアッシター
金剛「やっぱりToL○veるはサイコーネー」
比叡「お姉様あああぁぁぁぁぁ」ダダダダダ
金剛「ん……OH!比叡!比叡じゃないデスか!」
比叡「お姉様!お久しぶりです!」ダキッ
金剛「どしたノ比叡。草木もスリープなウシミツアワーですヨ」
夕張「そのウシミツアワー?ってのにコンビニでT○Loveる立ち読みしている方が驚くわ……」
由良「さっきから伏字が仕事してない気がするんだけど」
比叡「ああ……久々に体感するお姉様のお胸の感触……感激ですっ!」グイグイ
金剛「くすぐったいヨ比叡」
夕張「で、ホントに何してたんですか」
金剛「ダカラ、ToLove 夕張「それはもういいですって」
比叡「私もお姉様とトラブりたいです!」パフパフ
由良(この人何言ってるのかしら)
金剛「実は暑くて寝付けないからミッドナイトウォークしてたヨ。バリー達は?」
夕張「CPUのセットアップがてら、都高に行ってました。提督にも会えましたよ」
金剛「リアリィ!?提督は!?」
夕張「今晩中には戻るそうです。これ以上鎮守府を空けていると叢雲の報復が怖いみたいなので」
金剛「既に手遅れな気がしマース」
由良「今は朝日さんという元艦娘の方のガレージに居ます。その帰りに、比叡さんと会ったんですよ」
金剛「ワオ!朝日デスか!?」
比叡「ご存じなのですか?お姉様」モゴモゴ
金剛「ネームだけネ。同じルーツを持ってマスし」
夕張「そう言えば、戦艦・朝日も英国生まれでしたね」
比叡「でもその朝日さんとやらが、市川の提督とどんな関係があるんですか?」ムニムニ
由良「比叡さんはそろそろ金剛さんの胸の中で話すの止めませんか?」
667: 2015/08/15(土) 19:17:05.68 ID:z+ssuANH0
金剛「提督のクルマは朝日が……驚きネ」
比叡「それに魔王Rと戦艦……都高は恐ろしいです……」ヒエー
夕張「……いや、比叡さんのハチロクの方がブッとんでますって」
由良「魔改造の度合いで云ったらトップクラスですよ……」
金剛「でも、ようやく謎が解けたヨ。前に見た赤いZは朝日だったんデスね」
夕張「そういえば、都高に来るキッカケの一つでしたもんね」
金剛「イエス。ポルシェの方も聞いたら分かるかもネー」
夕張「それで、扶桑さんを止める為にRを復活させて、最終調整といったところです」
金剛「そうなると、都高は暫くブレイクですネ」
比叡「どうしてですか?」
金剛「そんなモンスターが居る中にアタックしたら迷惑が掛かりマース。流れを見ることも大切ネー」
比叡「そんなのお姉様らしくないですよぉ。蹴散らしちゃいましょう!」
金剛「ノンノン。今は扶桑が先決ヨ。二人のバトルを邪魔しないことネ」
比叡「ブー……」
夕張「でも、失礼ですが私も意外です。扶桑さんより先に自分とバトルしろって言うかと思いました」
金剛「ワタシも今は市川の艦娘ヨ。自分のことばかり言ってられないデス」
金剛「それにHakoneでもよくありましたが、横からチャチャ入れられるのは気に食わないヨ」
夕張「……流石Hakoneの女王」
由良「少し見直したかも……」
比叡「素敵です!お姉様!」
金剛(話を聞く限り、今の私じゃ勝てそうにないし……せめてS2をパワーアップしてからね)メソラシ
668: 2015/08/15(土) 19:19:02.02 ID:z+ssuANH0
その頃――どっかの峠
川内「やるじゃん江風。私に着いて来れてる」
江風「まだまだ全然でしょー……川内さん、本気じゃなさそうだし」
川内「あ、バレた?」ニシシ
江風「チェッ、悔しいけどしゃーないなぁ」
川内「もっとスパッと曲げちゃっていいと思うよ。そっちの方が低速は速そうだし、出口でグワっとさ」
江風「うーん……右のヘアピンとか、もっとギャーって行きたいんだけど、対向車来ないか怖くって」
川内「そこは気配を感じ取るしかないよ。夜戦と一緒で」
江風「気配ねぇ……」
川内「今だって耳を澄ませば……」
江風「あ……クルマの音だ。コッチに来てる?」
川内「上って来てるね。夕張だったら車種分かるんだろうけど」
江風「それにしても、随分飛ばしてない?タイヤ鳴いてるし」
川内「うん。間違いなく速いねコレ」
江風「どうすんのさ?」
川内「折角だから待ってみようか。もしかしたら一勝負出来るかも」
江風「いいねぇ。そろそろバトルってのをしてみたかったんだ」
川内「ま、相手を見てからだね」
669: 2015/08/15(土) 19:21:39.03 ID:z+ssuANH0
「やった♪やった♪トレノが直った嬉しいな♪」ランランルー
「ブローした時は本当に悲しかったけど……少しずつ直していって良かったなぁ」
「86も素敵なクルマだけど、トレノは見た目も可愛いし」
「それにこの4A-Gのサウンド……ああ、堪らないっ」
江風「随分独り言が多い奴だな。大丈夫かアレ」
川内「何か聞き覚えのある声だなぁ……あ、そうだ」
江風「どしたの?」
川内「何かトラブルがあった時でも対処出来るように探照灯持ち歩いているんだ。これで照らしてみよう」テレレレッテレー
夕張特製LED小型探照灯!
赤く光らせることも出来るから夜戦は勿論、天体観測にも使えるぞ!
ライトセーバーごっこにもモッテコイ!
軽量アルマイト仕立て。単四電池を二本使用。
江風「って、ただの懐中電灯じゃん」
川内「こういうのは気分が大事なのよ。じゃ、行ってくる」ピカー
江風「顔を下から照らすな!怖いって!」
ガサッ
「あら?何だろう……?」
川内「ドーモ。ヤセン=ライダーです」ピカー
「~~っ!?血!?血塗れの顔がーーっ!!」
川内「あ、間違えてレッドライトにしちゃってた」
「はわわわわわ……艤装……艤装を……」ガタガタ
川内「落ち着いてって。私だよ私。市川の川内だって。榛名さん」
榛名「……え?」
670: 2015/08/15(土) 19:25:19.76 ID:z+ssuANH0
榛名「ううっ……怖かった……」
川内「アハハ、ゴメンゴメン」
榛名「本当に驚いたんですよ!お化けかと思って……ちょっと腰が抜けちゃいました……」
江風(お化けって聞くと白くて丸くて尻尾がニョロニョロしてて舌ベローンって出してるイメージだな……)ソウゾウチュウ
川内「で、随分嬉しそうだったけど何かあったの?」
榛名「ハイ。ブローしてしまったトレノに新しいエンジンが搭載されたので、つい嬉しくなっちゃって……」ハッ
川内「そういえば金剛さんに壊されたんだっけ」
江風「もしかしてウチの金剛さん?」
川内「そうそう。前は榛名さんと同じ所だったけど、ちょっと前に一人だけ異動して来たんだ」
江風「へー。その割にはメチャメチャ馴染んでるよな、あの人」
榛名「あ……あの……」
川内「ん?どしたの?」
榛名「もしかして……見てました……?」
川内「見てた?パンツなら見えたけど」
江風「あれじゃない?クルマ降りた直後から小躍り気味で跳ね回ってたこととかさ」
榛名「わああああああ!!!!」
川内「しょうがないじゃん。こんな時間に山の中で人に会うことなんかまず無いし、エンジン組み上がった直後じゃテンションも上がっちゃうよね」
江風「というか、パンツ見えたの?何色だった?」
川内「黒に白地のラインが入ってた。コ○プのと色が反転した感じ」
江風「ほうほう……黒とはまた工口工口っすなぁ」
榛名 orz
川内「でも私も今黒だよ。ホラ」ピラ
江風「あ、ホントだ。てか、少しは恥じらい持とうぜ」
榛名「色々見られていても……榛名は大丈夫です……」
671: 2015/08/15(土) 19:27:30.08 ID:z+ssuANH0
榛名「何だか色々失った気がします……」
川内「まあまあ。それにしても、そのハチロク随分良い音してるね」
榛名「分かります!?」パァ
榛名のAE86スプリンター・トレノ改二
後期型3ドアのホワイトツートン。
金剛にエンジンを壊されたトレノを修復した。
フォーミュラ・トヨタ用の5バルブをベースにしている。
金剛・比叡号がイロモノならば、こちらは正統派に仕上がっている。
パワーは推定200馬力。
榛名「この4A-Gは元々フォーミュラ・トヨタ用のエンジンなので本来はウェーバーのキャブ仕様なのですが、それを4連スロットルのインジェクションに変更、更にドライサンプ化してあります。当初はキャブも面白いかと思ったのですが、やはり信頼性の面ではインジェクションの方が扱いやすいですからね。それと一部分ではありますがグループA仕様のパーツも使っているので9千近くまで回せますよ。ブロー以前の仕様は所謂イナゴだったのですが、良質なレース用エンジンということもあり、排気量はあえてそのままにしています。それと4連スロットルなので吸入方式は当然Dジェトロになるのですが」ペラペラ
江風「あ艦これ」
川内「エンジン以外の所にも火が入っちゃったみたいだね」
榛名「……あっ、失礼しました。4A-Gのことになるとつい夢中になっちゃって」エヘヘ
江風「お、おう……」
川内「好きなんだねぇ」
江風「そういえばコレ何だっけ。マンガとかで有名なんでしょ?」
榛名「イニDですね。主人公も同じハチロクのトレノですが、あちらは前期型です」
江風「やっぱり速いの?」
川内「夕張は今となっては並以下って言ってた」
榛名「流石に30年以上前のクルマですから……」
川内「私達のバイクもそれ位前だけどね」
榛名「そもそもイニDの4A-GはグループA仕様のエンジンを搭載しているという設定ですが、実はよく見るとエキマニが変わっていたりと純粋なグループA仕様ではないんです。公式でフォーミュラトヨタのパーツが使われているとの発表があったので、私とは逆にインジェクションをキャブ化した格好ですね。また劇中では『1万1千までキッチリ回せ』という台詞で4A-Gは超高回転型のイメージが着きましたが、そもそもそこまで回してもパワーのピークは過ぎているしエンジンに負担を掛けるだけなのであまり意味は無いように思えます。事実途中からは9千回転でレブリミットが設定されました。それと、これはあくまで個人的な意見ですが、あのマンガによってハチロクの中古価格が不必要なまでに高騰したことが残念で」ペラペラ
川内「わー、また火が入った」
江風「トーキングマシンだな」
榛名「あくまで4A-G搭載車に乗りたい人は、ハチロクではなくトイチ以降のカローラ系がおススメです!最終のカリーナも穴場ですよ!」
江風「この人トヨタの回し者か?あと誰に言ってるんだ」
川内「戦艦・榛名って川崎造船所出身なのにね」
672: 2015/08/15(土) 19:31:27.05 ID:z+ssuANH0
榛名「そういえば川内さんはNSRでしたね。江風さんは……」
川内「何て言ったっけ、コレ」
江風「スズキのガンマでしょ」
川内「そう、それそれ」
榛名「ガンマ……確かNSRと並ぶ、レーサーレプリカを代表する一台でしたね」
江風のRGV250Γ
川内同様の手口で乗せられた夜戦用決戦兵器。
青白ワークスカラーの90年式VJ22型。
夕張の手によりオーバーホールはされているが、ほぼノーマル。
今後、江風の成長次第でステップアップしていく予定。
江風「気に入ってるのはこのヘルメットだっ」
榛名「あら可愛い。ドラえ○ん風ですね」
川内「私何故かポ○モン風にされた。コイツなんだっけ」
江風「多分ゲッコウ○じゃね?」
榛名「ピ○チュウなら偶に見ますけど……」
川内「ルビサファまでしか知らないから分かんない」
江風「それよりさ!榛名さんと夜戦したい!」
榛名「夜戦というのは……砲撃戦ですか?それとも……」
江風「もっちろん!あたしのガンマと!」
榛名「ええっと……バイクとの勝負はあまりしたことはないのですが……」
川内「待って。それなら私がやりたい。だってさ……」
川内「速そうな雰囲気がプンプンするんだ。金剛さんと同等か、それ以上にね」
江風「ええー!?川内さんズルいー!」
川内「多分江風じゃ勝てないよ。マトモにやったら夕張より上じゃないかな?」
榛名「……そんな。金剛姉様の方が速いと思いますけど……」
榛名「ど う し て も と 云 う な ら 、榛 名 は 大 丈 夫 で す 」ニコッ
江風「………!?」ゾクッ
川内「ねっ?言ったとおりでしょ?」
江風「さ、さっきまでと全然違うじゃん……ホントに同じ人!?」
川内「痺れちゃうよねぇ。最高だよ」
681: 2015/08/18(火) 00:37:28.36 ID:sAR6JBAW0
小ネタ 水雷魂 ←90年代の走り屋チームに実在しそう
江風「SRTいちかわ水雷魂withSP夕張の江風っていうんだ。よろしく」
江風「最速の走り屋になるため、全国の走り屋スポットに遠征し峠を攻めている」
江風「応援してくれ」
江風「……って、これ何なのさ?」
川内「うんうん。上出来上出来」
※SFCソフト「峠・伝説 最速バトル」より引用
江風「しっかし、チームとは云ってもあたしと川内さんしか居ないってのもなぁ」
川内「もう一人位誰か入らないかなー」
瑞鳳「うわ、何でこんな所にオイルが溜まってんのー……」
夕張「何そのボロいバイク。どうしたのソレ」
瑞鳳「ネトオクで見つけたんだ。暇な時にレストアして遊ぼうかなって」カチャカチャ
夕張「それ50Fでしょ?今ホンダの2スト選ぶなんて、苦行もいいところね」
瑞鳳「……そんなにヤバい?」
夕張「NSRの時……純正部品無さ過ぎて禿げかけた」ハイライトオフ
瑞鳳「えー……折角良いオモチャが見つかったと思ったのにぃ」
夕張「ヤマハだったら希望があったのに……」
<どーもー。AKSツール出張サービスでーす
夕張「ハーイ。今行きまーすっ」
瑞鳳「あ、私も欲しい工具があったんだ」パタパタ
速水「ここ、鎮守府ですよね……?」
叢雲「頭痛い……」
若葉「暴かれた世界」トコトコ
速水「何ですか今の」
瑞鳳はクルマより原チャリ弄って遊んでいる方が似合うと思い始めた。
682: 2015/08/18(火) 00:39:18.99 ID:sAR6JBAW0
スタート地点
榛名「スタートのタイミングはそちらに任せます」
川内「随分余裕そうだねぇ」
榛名「まさか。川内さんの噂は存じていますので」
川内「へえー……ま、いいけどさ」
江風(スッゲェ緊張感……これが峠の夜戦かっ)
川内「夜戦を楽しめれば満足だしね。じゃ、行くよ!」
絶妙なクラッチミートで、ロケットスタートを決める川内。
僅かにフロントタイヤを浮き上がらせ、矢の様に飛んでいく。
しかし榛名のトレノはすぐ後方。
遅れて江風のガンマだ。
川内「やっぱりタイミング合わせて来たかぁ。大人しそうなクセに走りはマジだね」
川内「江風は……ああ、だいぶ離されちゃってる」
川内「あんまり気にしてられないなぁ……あの子、無理しなきゃいいけど」
最初のコーナーまでの直線。
2サイクルエンジンの鼓動と4A-Gの甲高い音が合わさり、さながら管楽器のオーケストラのよう。
ふと後方の江風は、ある違和感に気付く――
江風「ええええ!?川内さん、何でアクセル全開のままシフトアップ出来るんだよ!?」
江風「NSRに出来るなら、ガンマにも……って無理無理無理!」
江風「たまに火吹いてるし……一体どうなってんだ?」
683: 2015/08/18(火) 00:40:39.84 ID:sAR6JBAW0
まるでレール上を走るように、一切のブレも無い滑らかなコーナリング。
タイヤの性能をフルに使い、僅かに後輪をスライドさせて駆け抜ける様は、時代を築き上げた往年のGPレーサー達を彷彿とさせる。
NSRを手に入れてからの短い期間。
徹底的に研ぎ澄まされたその走りは、日本刀の如く。
闇夜の中でも鋭く、鮮やかに光る。
榛名(速いっ……ライダーとは何回か交えたことはあったけれど、これは間違いなくトップクラス)
榛名(安心感さえ覚えるライディング。特に切り返しが異様に早い)
榛名(それにこの立ち上がり……四駆を相手にしているようだわ)
榛名(テクニックだけじゃない。私のトレノと同様、マシンも細部まで作りこまれている)
榛名(見た目こそアンダーカウルが無い普通のNSRのようだけど、中身は峠に絞ったセッティングのようね)
榛名(シフトアップの度にアフターファイヤーが出ているのは、恐らく点火カットを利用したセミオートシフト……)
榛名(そうすればアクセルを戻すことなく、途切れずに加速することが出来る)
榛名(本当に走り慣れている……走りのリズムが違う分、抜くことは難しそうね)
榛名(しかし、勝てない相手ではない!)
684: 2015/08/18(火) 00:42:17.73 ID:sAR6JBAW0
川内「よっ、ほっ……と。やっぱ簡単には引き離せないかぁ」
川内「まあ、このコースは短いし、スピードも結構ノるから、このまま逃げ切れれば……いや、そういう考えが通用する相手じゃないな」
川内「見えなくする位に考えないとね。集中集中っと」
レーサーレプリカのヘッドライトは、あまりに頼りない。
照らす為の装置は意味を為さずに、鈍色の道路をほんの少し白濁色に切り取るだけ。
頭上に瞬く星空の方が、遥かに明るく思える。
先の様子さえも掴めない。
それでも右へ左へ……躊躇いもなく突っ切る。
艦娘としての能力か、天賦の才か。
躍るテールランプは、さながら優雅に宙を舞う赤い蝶……
江風「……って言うのは中二臭いか」
江風「しっかし、何であんなスピードで突っ込めるかねぇ」
江風「榛名さんもキレッキレだな。どうなってんだよ、あの二人」
江風「コーナー一つで差が開く。これは流石にあたしの練度不足ってことか」
江風「……つうかこのまま差が開いて、こんな辺鄙な所に一人置いて行かれたら……」
江風「………」
江風「……お、お化けなんてないさ♪お化けなんて嘘さぁ♪」←既に涙目
685: 2015/08/18(火) 00:43:43.76 ID:sAR6JBAW0
川内「お、江風着いて来てる。やるじゃん」チラ
川内「しかし参ったな。もうすぐゴールだってのに離れないし」
川内「立ち上がりはコッチが上。でもコーナーのスピードは向こうの方がちょっと速い……かな」
川内「クルマの安定感は羨ましいなぁ。タイヤが多いんだから当たり前か」
川内「さて……仕掛けて来るなら、そろそろかな」
ギャラリーコーナー手前。
長く続いたランデブー走行も、いよいよ終盤。
ここに来てついに照準を合わせたのか、榛名トレノが牙をむく。
コーナー入口。榛名トレノは、あろうことかほぼノンブレーキで進入!
慣性によって外へ逃げようとするトレノ
しかしそれを見越していたのか、川内は早めに車体の向きを変えてクリッピングポイントを手前に取る。
自身が有利な脱出からの加速で、詰められた差を帳消しにしようと試みる。
コーナーで繰り広げられるドッグファイト。
タイヤ・トゥ・バンパーとでも呼ぶべき超接近戦。
これで決着か――
ズルッ
川内「あっ……マズい……」
686: 2015/08/18(火) 00:45:20.00 ID:sAR6JBAW0
ギャラリーコーナー出口
川内「ゴメンッ。大丈夫だった?」
榛名「榛名もトレノも大丈夫です。川内さんの方は?」
川内「コッチも平気。いやぁ冷や汗出たわ」
江風「ええっと……何が起きたんだ?あたしには榛名さんがスピンしてる所しか見えなかったんだけど……」
川内「コーナーの出口でリアが滑っちゃってさ。危うくコケそうになって、それを避けようとした榛名さんがスピン。危なかったぁ……」
榛名「でもお互い怪我が無くて良かったです」
江風 アングリ
川内「それにしてもよく止められたね。あんなの普通突っ込んじゃうよ?」
榛名「いえ、川内さんにも驚きました。まさかあの状態から立て直すなんて」
江風(あたしにゃ、どっちも化けモンに見えるわ……)
川内「ま、今回は私の負けかな。センター割ってたら、とっくに抜かされていただろうからね」
榛名「そんなことありません。こちらも目一杯でしたし、ましてや抜くなんて……」
川内「謙遜しないでって。最後は詰められてたし、ミスったのは私なんだから」
榛名「でしたら、また次の機会に決着をつけましょう」
川内「うーん……そうね。今夜は楽しかったし、また走ろうっ♪」
榛名「はい!勿論です!」
川内NSR・江風Γ vs 榛名トレノ
対戦結果……C 戦術的敗北
687: 2015/08/18(火) 00:46:43.55 ID:sAR6JBAW0
翌日・談話室
川内「……ってなことがあってさぁ」
夕張「アンタも染まったわね」
川内「まあねぇ。実際楽しいし」
夕張「そういえば、クルマ買うとか言ってたけど結局どうしたの?」
川内「ん?ちょっと良いモノ見つけたから、今度見に行く」
夕張「ふーん。やっぱりシルビア?」
川内「まあね。そうだ、夕張も着いて来てよ。私一人だと、ちょっと不安だからさ」
夕張「うん。いいわよ」
川内「それより提督も大変だねぇ。さっき執務室行ったら叢雲にシバかれてた」
夕張「あー……でしょうね」
川内「結局あの黒いクルマも扶桑さんだったんでしょ?それにあの青いR……存在感が半端じゃなかった」
夕張「今思うと、よくあんなの追いかけようって気になったなぁ……」
川内「私なら道譲るね。怖いもん」
夕張「真っ先に飛び掛かりそうなヤツが何言ってんの」
川内「……これからどうなるんだろうねぇ」
夕張「分からないわよ、そんなこと……」
川内「あ、今までのクルマはどうするんだろ?」
夕張「ワンエイティ?今はZもあるし、廃車かもね……勿体無い気もするけど」
川内「パーツ貰っちゃえば?使える所もあるでしょ」
夕張「ミッションは確かに欲しいわね……R33用とはいえ、容量的に強化されるし……」ムムム
川内「それで、夕張が二代目インターセプター名乗るとかどう?」
夕張「無茶言わないでよ……」
688: 2015/08/18(火) 00:51:58.10 ID:sAR6JBAW0
執務室
提督「……ホントにスミマセンでした」ボロッ
叢雲「全くよ!このクソ忙しい時期に職務放棄なんて……どういう神経してるのよっ!?」
提督「おっしゃる通りです、ハイ……」
叢雲「それで?扶桑さんについてはどうする気?」
提督「……直に止めてみせるさ。その為にRを引っ張り出して来たんだ」
叢雲「前に言っていたヤツね……」
提督「……あれ?お前に話してたっけ?」
叢雲「あのクルマは当時の彼女のモノ。そして事故を起こして亡くなったこと。クルマは手放さずに今も持っている……要約すると、こんな具合でしょ?」
提督「ああ……うん。そうだな」
叢雲「昔アンタが珍しく泥酔していた時に聞いたわ」
提督「うわ……全然覚えてねぇ」
叢雲「普段お酒を呑むことなんてないから印象に残ってたのよ」
提督「酒呑んだら運転出来ないだろ?」
叢雲「危険運転もアウトよ馬鹿」
提督「……本当にすまなかった。無理矢理お前を連れ出したっていうのに、ケリ着けられなかった」
叢雲「別にいいわよ、そんなこと。二度と乗らないけど」
提督「ハハッ。大丈夫だ……次はもう無いよ」
叢雲「……ようやく?」
提督「ああ」
叢雲「そう。私は役に立った?」
提督「おかげさまでな。ホント、お前にはいつも迷惑掛けっぱなしだ」
叢雲「もう慣れたわ……とっくにね」
金剛「………」ドア越し
金剛(降りる……かあ。その前に、私と勝負してくれないかしら?)
青葉「おや金剛さん。そんな所でどうしたんですか?」
金剛「Oh!何でもないデースHAHAHA!」
青葉「??」
689: 2015/08/18(火) 00:53:33.51 ID:sAR6JBAW0
休日・国道沿い
川内「着いた着いたっ。ココだよ」
夕張「何でこの道って中古車販売店が多いのかしらね?」
由良「途中に金色のクルマが並んでいる所があったけど、あれもクルマ屋さん?」
夕張「あー、確かにクルマ屋ね。全国的にも有名なショップなの」
川内「えーっと、何処にあるのかなー。スミマセーン」
「ハイ。いらっしゃいませ」
川内「あ、先日電話した“カワウチアヤネ”なんですが」
「カワウチ様ですね。ご来店有難うございます。どうぞこちらへ」
由良「今の本名なのかしら……」
夕張「私も外じゃ“綾瀬”って名乗ってるよ。お……このS15、オーテックバージョンね」
由良「それ夕張の没ネームじゃない」
川内「何の話してるの?さ、行こ行こ」
「お問合せ頂いたのはコチラになりますね。どうぞご覧ください」
川内「ありがとう」
夕張「S15ね。見た目は綺麗だけど……」
川内「そ。どうかなぁ?」
夕張「ふーむ……」ギシギシ
夕張うーん……」ノゾキコミ
由良「どうなの?」
夕張「悪くはないけど、結構使い込まれているみたいね。ホラ、ココなんか溶接が剥離しちゃってる」
由良「ホントだ。ちょっと浮いているね」
夕張「ゴム類の劣化は仕方ないとして、この値段を考えるとちょっと割高かな。最も、シルビアを買おうと思ったらこういう点はある程度覚悟しないといけない部分ではあるけどね」
夕張「同じS15なら、そこにあるオーテックバージョンの方がまだ良さそうかな。真っ先に目に入ったのはそっちだったから」
川内「出来ればターボの方が良いんだけどなぁ……やっぱすぐには見つからないかぁ」
夕張「S15も十年以上前のクルマだし、気長に見ていかないと」
川内「ちぇっ。まあ仕方ないか……ん?」
690: 2015/08/18(火) 00:55:07.26 ID:sAR6JBAW0
由良「川内?ボーっとしちゃって、どうしたの?」
夕張「あんまり遅いと置いて行くわよー(たまには言ってみたかったのよね、この台詞)」
川内「……ねえ。コレはどうかな?」
夕張「どれどれ?」
SW20・MR2
国産量産車では初となるミッドシップ・レイアウトを採用したMR2の二代目モデル。
初代のAW11から車格を上げ、2Lの3Sエンジンを搭載。
90年代のトヨタを代表する一台である。
夕張「MR2じゃない。奥にあるから気付かなかった」
由良「長良姉さんが乗ってるよね」
夕張「あっちは初代のAWで、これは二代目のSW20……Ⅰ型かな?」
由良「Ⅰ型?何か違うの?」
夕張「SWは大きく分けるとⅡ型までの前期型、Ⅲ型以降の後期型になるんだけど、後期型との見た目の違いはサイドモールの有無とリアガーニッシュかな」
夕張「それでこのⅠ型は最も危険なクルマと云われていたの。一瞬でスピンモードに入って、プロでも手を焼いていたそうよ。プレスを招いたテスト走行時には、半分以上がクラッシュしたなんて話も……」
由良「たんに欠陥なんじゃないの?」
夕張「実際にそう言われていたわ。それ以降は徐々に改善されて、Ⅲ型のターボモデルでは20馬力アップ。車体そのものも熟成が進んでいる分、Ⅰ型はちょっと見劣りしちゃうかもだけど。未だにⅤ型のNAが完成形という意見も強いしね」
夕張「でも、世界でも貴重な2Lのミッドシップマシンだからね。3Sは結構丈夫、ピーキーな特性はタイヤのサイズを変えるだけである程度は軽減出来るみたいだし、チューニングベースにはうってつけじゃないかしら」
由良「ふーん……で、川内が全く動かないのですが」
夕張「年式の割に程度は良さそうね。大きな修理跡も無いし、結構良いかも」
691: 2015/08/18(火) 00:56:11.56 ID:sAR6JBAW0
川内「……にする」
夕張「え?」
川内「コレ買います!コレにする!」
由良「清々しいまでの即決」
夕張「川内の思い切りの良さ、結構尊敬してるわ」
川内「ね!?ね!?良いでしょ!?」
夕張「低年式な分各部のヤレはあるだろうけど、これなら問題無いと思うわ。キッチリ整備してあげるから任せなさいっ」
川内「やったぁ!待ちに待ったクルマだぁ!」
由良「でも本当にいいの?当初の目当てはシルビアだったじゃない」
川内「直感」キリッ
由良「ホントにもう……流石ね」
夕張「でも、直感っていうのもアリだと思うな。自分が乗りたいと思えるモノが一番でしょ」
川内「スミマセーン!これ買うんでキー下さいっ!」
夕張「いきなり納車出来るワケないでしょ!」
692: 2015/08/18(火) 01:05:56.28 ID:sAR6JBAW0
バトルシーン、特にラストはもっと書き込める余地があったと投下してから気付く。
全体的にアッサリし過ぎてしまった……。
川内のクルマですが、ニーハンのレプリカみたいなクルマって何だろうと考えた結果、こんな車種になりました。
最初は本当にS15の予定でしたが……
・これ以上SR搭載車増やしても変わり映えしない(比叡までSRだし)
・SW20は色々書けることが多い
以上の点から、直前で変更しました。尚、次点はFCだったり。
一応このスレの着地点も見えて来ましたが、ちゃんと終われるのかコレ……。
次回:【艦これ】夕張「クルマ買いました!」【その8】
引用: 夕張「クルマ買いました!」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります