【咲-Saki-】照「…私の家…来る？」 : SSまにあっくす！

1: 2012/08/07(火) 20:25:02.36 ID:9xngRJZD0

照菫のSSです
菫「遊園地に行かないか、照」の後の話ですが読んでなくても多分？大丈夫だと思います

2: 2012/08/07(火) 20:26:02.14 ID:9xngRJZD0

―とある夏の金曜日―

ﾐｰﾝﾐﾝﾐﾝﾐﾝﾐﾝﾐﾝﾐｰﾝ

ｼﾞｰﾜｼﾞｰﾜｼﾞｰﾜｼﾞｰﾜ

菫「暑いな…」ﾊﾟﾀﾊﾟﾀ

照「…」

菫「…うう…」

照「…」

菫「はあ………………」ｸﾞｯﾀﾘ

照「………？」

4: 2012/08/07(火) 20:28:36.08 ID:9xngRJZD0

照「暑いとはいえ…元気がない」

照「何か…あったの」

菫「ん…何かあったってほどでもないんだけどな」

菫「実は、数日前に家のエアコンが故障してしまってな」

菫「明後日になったら新しいのが届くんだがな…はあ」ｹﾞﾝﾅﾘ

照「…今年は特に暑い」

菫「ああ…」

照「…」

照「菫…明日は、どうやって過ごすつもり」

菫「ん…そうだな」

菫「部活も珍しく休みだし、どこか図書館にでも行って時間を潰すしかないかと思ってるが」

9: 2012/08/07(火) 20:32:05.81 ID:9xngRJZD0

照「…………………」

照「…私の家…」

照「来る？」

菫「！」

菫「お前の…家？」

照「…」ｺｸﾝ

菫「（照の家か…そういえば、家は知ってるが中に入ったことはなかったな）」

菫「…いい、のか？」

照「明日は母が出かけて一日中帰ってこない…」

照「昼頃からならずっといてもらっても、問題ない」

菫「……………（照の…家…）」

12: 2012/08/07(火) 20:35:13.71 ID:9xngRJZD0

菫「…それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうことにしようかな」

照「！」

菫「ありがとうな、照」

照「…」ｺｸﾝ

菫「（…しかし）」

菫「（照が自分から誘いをかけてくれるなんてな」

菫「（珍しいこともあるもんだ…）」ｸｽｯ

14: 2012/08/07(火) 20:38:25.79 ID:9xngRJZD0

―土曜日・照宅―

菫「（ここで間違いなかったよな、照の家）」

菫「（…）」

菫「（な、なんだろう…訳もなく緊張するな）」

菫「…」そーっ

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

菫「…」ｿﾜｿﾜ

ｶﾞﾁｬ

照「はい」

菫「き、来たぞ」

照「…上がって」

菫「お邪魔します…」

17: 2012/08/07(火) 20:41:09.84 ID:9xngRJZD0

照「そこに座って、麦茶持ってくる」

菫「あ、ああ」

菫「…」ｿﾜｿﾜ

菫「（落ち着かない…）」

照「はい」ｺﾄﾝ

菫「ああ、ありがとう」

菫「…」ｺﾞｸｯ

菫「ふぅ…」

19: 2012/08/07(火) 20:44:21.31 ID:9xngRJZD0

菫「しかし、何して過ごそうか」

照「…」

菫「お互い遊び慣れてないからな…」

菫「近くにレンタルショップあるし、DVDでも借りてくるか」

照「別にかまわない」

菫「…そうだ」ﾆﾔ

菫「夏だし、ホラー映画でも見るか？」

照「！」ﾋﾞｸｯ

照「……菫」

菫「ふふっ、冗談だって」

20: 2012/08/07(火) 20:47:34.12 ID:9xngRJZD0

菫「ふーむ、しかし別に見たい映画なんてないしな」

照「私も特にない」

菫「………」

菫「ちょうど今日から夏休みだし、早めに課題終わらせておくのもいいかもな」

菫「一応、課題は持ってきてあるんだ」

照「…勉強、教えてほしい」

菫「照は勉強はそれほど得意でもなかったな」

菫「よし、それじゃそうするか」

23: 2012/08/07(火) 20:50:08.94 ID:9xngRJZD0

菫「まずは数学から始めるか」

菫「………」ｶﾘｶﾘ

照「………」ｶﾘｶﾘ

菫「………」ｶﾘｶﾘ

照「…」

照「菫、ここ…」

菫「ん？ここはな…」

菫「三次方程式だから、まずはこうくくって変形してからこの式をＸと置くと…」

照「…」

24: 2012/08/07(火) 20:52:20.79 ID:9xngRJZD0

――――――

菫「だから解は？」

照「x=-3,1,4」

菫「だな」

照「…菫、分かりやすい」

菫「そ、そうか？あまり人に勉強を教えたことはなかったんだが」

25: 2012/08/07(火) 20:53:23.25 ID:9xngRJZD0

照「………」ｶﾘｶﾘ

菫「………」ｶﾘｶﾘ

照「…」

照「菫、ここ…」

菫「ん？どれどれ」

菫「これは階差数列だから元の数列をａｎ、等比数列をｂｎとして…」

照「……………」

27: 2012/08/07(火) 20:55:53.66 ID:9xngRJZD0

菫「ｎ≧２のとき…」

照「…」ｼﾞｰ

菫「だから…」

照「…」ｼﾞｰｰ

菫「こうなって…」

照「…」ｼﾞｰｰｰ

菫「…ん？」

照「！」ﾋﾞｸｯ

菫「…私の顔に、何かついてるか？」

照「……なんでもない」

菫「？そうか」

菫「で、次はｎ＝１の時…」

照「…」

29: 2012/08/07(火) 20:59:36.12 ID:9xngRJZD0

――――――――

照「………」ｳﾄｳﾄ

菫「………」ｶﾘｶﾘ

照「………」

菫「…ん？」

照「………」ｽｰ

菫「（寝たのか…）」

菫「（まあ、そんなに課題急ぐ時期でもないし寝かしといてやるか）」

照「………」ｽｰ

菫「（………）」

菫「（いつも貼り付けたような仏頂面してばっかの奴だけど…寝てる姿は､可愛いな）」ｸｽｯ

31: 2012/08/07(火) 21:02:05.45 ID:9xngRJZD0

菫「（………）」

菫「（結局、照の本当の笑顔を見たのは遊園地の時の一回きりだな）」

菫「（…）」

菫「（無理にまた笑ってくれなんて言わないけど…）」

菫「（怒ってる顔だって､泣いてる顔だっていいから）」

菫「（…また、いつもと違う顔、見せてくれよな）」

菫「（なあ…照）」

照「………」ｽｰ

菫「………」

菫「………」そーっ

ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

照「…ん…」

菫「…ふふっ」

33: 2012/08/07(火) 21:05:17.41 ID:9xngRJZD0

菫「………」ｶﾘｶﾘ

菫「………」ｶﾘｶﾘ

菫「………」ｳﾄｳﾄ

菫「私も少し…眠くなってきたな」

照「………」ｽｰ

菫「照もまだ起きそうにないし…少し寝るか」

菫「……………」

菫「………」ｽｰ

34: 2012/08/07(火) 21:08:00.92 ID:9xngRJZD0

―――――
―――
―

菫「（………）」

菫「（………）」

菫「（……ん）」

菫「（あれ…）」

菫「（私は、何をしてたんだっけ）」

菫「（それに、何だろう…この…暖かい感触）」

37: 2012/08/07(火) 21:11:25.29 ID:9xngRJZD0

菫「（…人の…手）」

菫「（が…私の髪に）」

菫「（…誰かが私の頭を…撫でて、る？）」

菫「（何で…私は、どこで…）」

38: 2012/08/07(火) 21:13:30.49 ID:9xngRJZD0

菫「（て…る？）」

菫「（なんで、照が…）」

菫「（…でも）」

菫「（照の手、温かい）」

菫「（それに…優しくて、気持ち良い）」

菫「（心が…落ち着く…）」

菫「（…また…眠く…）」

39: 2012/08/07(火) 21:15:43.85 ID:9xngRJZD0

―――――――

菫「…ん…」

ﾑｸｯ

菫「………」ﾎﾞｰｯ

照「………」ｶﾘｶﾘ

菫「………」

40: 2012/08/07(火) 21:18:04.67 ID:9xngRJZD0

菫「（照…起きて普通に勉強してる）」

菫「（あれは…夢、だったのか？）」

菫「（…でも）」

菫「（微かだけど確かに頭に残ってる、この感触は…）」

菫「（………）」

菫「（ふふっ）」

菫「（まあ、いいか…）」

42: 2012/08/07(火) 21:21:55.27 ID:9xngRJZD0

――――――

菫「もうこんな時間か…そろそろ晩御飯の時間だな」

菫「…そうだ、今日は私が料理を作ろう」

照「！…菫の…料理？」

菫「ああ、料理にはそれなりに自信があるんだ」

照「…分かった」

照「冷蔵庫の中は自由に使ってもらってかまわない…材料切るくらいは手伝う」

菫「お、そうか？それじゃお言葉に甘えるとするよ」

43: 2012/08/07(火) 21:23:23.56 ID:9xngRJZD0

―――――

照「いただきます」

菫「いただきます」

ｶﾁｬｯ

照「………」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

菫「…どうだ？」

照「！…おいしい」

菫「そ、そうか？なら良かった」

照「…いいお嫁になる」

菫「ははっ、貰い手がいるかどうか分からないけどな」

照「………」

45: 2012/08/07(火) 21:25:08.44 ID:9xngRJZD0

菫「ごちそうさまでした」

照「ごちそうさまでした」

菫「さて、皿洗いするか」

照「…」ｺｸﾝ

ｼﾞｬｰ

ｶﾁｬｶﾁｬ

ｷｭｯｷｭｯ

48: 2012/08/07(火) 21:27:46.48 ID:9xngRJZD0

照「………菫」

照「さっき、お風呂を沸かしておいた」

照「皿洗いが終わった後…入ってもらってもいい」

菫「！　風呂、か…」

菫「汗かいた時のために着替えは一応持ってきてあったけど…」

菫「………」

菫「（せっかく、初めて照の家に来たことだし…）」

49: 2012/08/07(火) 21:31:12.83 ID:9xngRJZD0

菫「照、よ、良かったら一緒に入らないか？」

照「！」ﾋﾟｸｯ

菫「あ、いや一人のほうが良かったらそれでもいいんだが…」

菫「せっかくの機会だし、な？」

照「………………………………」

照「かまわない」

50: 2012/08/07(火) 21:34:10.67 ID:9xngRJZD0

―――――――

菫「ふぅ、いいお湯だ…気持ちいいな」

照「…うん」

菫「………」

菫「（二人で風呂なんてかなり気恥ずかしいかと思ったけど…）」

菫「（お湯が乳白色なせいもあって、そうでもないな）」

照「…」

照「…」ｼﾞｰｯ

菫「？」

菫「（な、なんか見つめられてる…？）」

51: 2012/08/07(火) 21:37:34.65 ID:9xngRJZD0

照「…」ﾁﾗｯ

照「…」ﾁﾗｯ↓

菫「（胸を見比べてる…のか？）」

照「……………」

照「…」ｽﾞｰﾝ

菫「（なんか落ち込んでる）」

52: 2012/08/07(火) 21:40:47.94 ID:9xngRJZD0

菫「もしかしておまえ…胸小さいの、気にしてるのか？」

照「！」

照「…別に」

菫「本当に、か？」

照「…うん」

菫「………」ｼﾞﾄｰ

照「…」

菫「本当の本当にか…？」

照「…………………………」

照「…」ｼｮﾎﾞｰﾝ

菫「（…そんな落ち込まなくても）」

53: 2012/08/07(火) 21:44:04.54 ID:9xngRJZD0

菫「別に、そんなに良いもんでもないぞ？」

菫「寝る時邪魔だし、運動すると痛いし」

照「……それは、嫌味」

菫「う…」

菫「まあ、別にいいじゃないか」

菫「気にした所で自分でどうにかなるもんでもないだろ？」

照「……………」

照「人に触られ…と…」

照「大きくな……って…」

菫「　え　」

55: 2012/08/07(火) 21:46:14.71 ID:9xngRJZD0

菫「（き、聞き間違いだよな？）」

照「…」ｼﾞｰ

菫「！」

菫（な、なぜそんな目で見つめてくる…？）」

照「…」ｼﾞｰ

菫「な……え……？｣

照「…」ｼﾞｰ

菫「ま、まさか私が…？」

照「…」ｼﾞｰ

菫「あ…いや…その…」ｱﾀﾌﾀ

菫「そんな…わた、私は……///」ｵﾛｵﾛ

照「……………………………」ｼﾞｰｰｰｰ

56: 2012/08/07(火) 21:48:55.44 ID:9xngRJZD0

照「…冗談」

菫「…………………」

菫「」ｽﾞｺｰ

菫「…分かり辛すぎるだろ！」

照「…ごめん」

57: 2012/08/07(火) 21:51:02.71 ID:9xngRJZD0

照「シャワー、先に使わせてもらう」

菫「あ、ああ」

ｼｬｰｰ

菫「（はあ、まったく…照が慣れない冗談なんて言うからいまだに心臓が…）」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

菫「（…あいつの冗談なんて、本当に初めて聞いたな）」

菫「（ま、まさか実は本気だったとか…？いやいやいやそんなまさか）」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

照「………」ﾜｼｬﾜｼｬ

59: 2012/08/07(火) 21:54:11.67 ID:9xngRJZD0

―――――――

ｼｬｰｰ

ｷｭｯ

菫「………」ﾁｬﾎﾟﾝ

照「……………」

菫「……………」

菫「…そろそろ、上がるか」

61: 2012/08/07(火) 21:57:29.01 ID:9xngRJZD0

菫「ふぅ…いいお湯だったな」

菫「さて、テレビでも見ようか」

＼ﾌﾟｯﾌﾟｰ／

＼ｶﾞﾔｶﾞﾔ／

菫「ん？｣

菫「何だか、外が騒がしいな」

照「……………」

62: 2012/08/07(火) 21:59:48.65 ID:9xngRJZD0

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

菫「な、なんだ？道路が車で込み合ってるし、たくさんの人が…」

菫「親子連れにカップルに…浴衣を着てる人もたくさんいる」

菫「祭りでもあるのか？」

照「…そろそろ…始まる」

菫「え？」

63: 2012/08/07(火) 22:02:31.11 ID:9xngRJZD0

ﾋｭﾙﾙﾙﾙ

ﾄﾞｰｰｰﾝ

菫「……花火？」

ﾄﾞｰｰﾝ

ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

菫「…わ……綺麗」

菫「凄いな…ベランダから、こんなにはっきり見えるなんて…」

65: 2012/08/07(火) 22:06:46.85 ID:9xngRJZD0

照「私の…一番の、穴場」

菫「もしかして、このために呼んでくれたのか？」

照「……………」

照「一緒に…見て…みたかった」

菫「！」

菫「…ありがとう…照」

66: 2012/08/07(火) 22:08:25.01 ID:9xngRJZD0

ﾄﾞｰｰﾝ

菫「すごい…人の笑顔みたいだ」

ﾄﾞｰｰﾝ

照「…ハート型…」

ﾄﾞｰｰﾝ

ｼｭﾜｱｱ

菫「…光が、蛍みたいに広がってく」

ﾄﾞﾝ

ﾄﾞｰｰﾝ

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

菫「………」

照「………」

菫「（空が…光の花で埋め尽くされてる…）」

68: 2012/08/07(火) 22:09:56.02 ID:9xngRJZD0

菫「………」

菫「（白糸台に入ってからは、花火なんて見に行ったことなかったな…）」

菫「（ましてや照と一緒に花火なんて…考えたこともなかった）」

照「………」

菫「（照の顔…いつもより、優しい）」

菫「（瞳に花火が映って…綺麗…）」

71: 2012/08/07(火) 22:13:05.51 ID:9xngRJZD0

ﾄﾞｰｰﾝ

菫「…綺麗だな…」

照「………」

ﾄﾞｰｰﾝ

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

ｼｭﾜｱｱ

照「………」

照「本当に」

照「綺麗…」

ﾂｰｯ

菫「…？」

菫「…あ…」

72: 2012/08/07(火) 22:16:13.75 ID:9xngRJZD0

菫「（照…泣いて…るのか？）」

菫「（花火を見て…）」

照「………」

菫「（涙が頬を伝って…）」

菫「（花火に照らされて、光ってる）」

菫「（………人の涙って、こんな…）」

菫「（こんな、綺麗なものだったかな）」

74: 2012/08/07(火) 22:19:33.38 ID:9xngRJZD0

ﾎﾟﾛｯ

菫「！」

菫「（あ、あれ…何で私まで）

菫「（感動で涙を流すことなんて…一度もなかったのに…）」

菫「（………）」

菫「（隣に照が…いるからなのかな）」

75: 2012/08/07(火) 22:22:13.89 ID:9xngRJZD0

菫「（………）」

菫「（なんだろう）」

菫「（花火への感動だけじゃなくて…この感覚は…前にも）」

菫「（…そうだ、照の笑顔を初めて見た時と同じ）」

菫「（暖かくて、胸が苦しくて）」

菫「（心の一番奥から湧き上がってくる…あの…）」

77: 2012/08/07(火) 22:24:56.69 ID:9xngRJZD0

菫「………」

照「………」

ｼｭｵｵｵｵｵ

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

菫「…クライマックスだな」

照「………」

ﾋｭﾙﾋｭﾙﾋｭﾙﾋｭﾙ

ﾄﾞｰｰﾝ

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞｰｰｰﾝ

78: 2012/08/07(火) 22:27:48.02 ID:9xngRJZD0

……………

ﾋｭﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙ…

ﾄﾞｰｰｰｰｰｰｰｰｰﾝ

ﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

菫「（…今までで一番大きくて綺麗な光の花が…）」

菫「（光の雨に変わって…消えた）」

照「……………」

菫「…照」

菫「また来年も、一緒に見られたらいいな」

照「…うん」

79: 2012/08/07(火) 22:31:53.67 ID:9xngRJZD0

―――――――

菫「…さて、もうこんな時間か」

菫「私はそろそろ帰るとするよ」

照「…」

菫「照…誘ってくれて、本当にありがとうな」

照「…また来てくれても、かまわない」

菫「ああ、また今度遊びに来るよ」

81: 2012/08/07(火) 22:33:25.51 ID:9xngRJZD0

照「………」

菫「………」

菫「それじゃ、またな」

照「…気を付けて」

82: 2012/08/07(火) 22:36:50.24 ID:9xngRJZD0

菫「（今日は遊びに来て、良かったな）」

菫「（…といっても遊びらしい遊びはしてないけど）」ｸｽｯ

菫「（……まだまだ何考えてるか分からない奴だけど…）」

菫「（また、照の新しい顔を見ることができた）」

菫「（………）」

菫「（以前私の中に生まれた、正体の分からない気持ち）」

菫「（今はあの時よりもっと強く…心を締め付けてくる）」

83: 2012/08/07(火) 22:38:55.79 ID:9xngRJZD0