1: 2020/07/17(金) 18:00:48.355 ID:PdNdPCmV0.net
男「寝てねえわ~」

女「……」

男「あ~……寝てねえわ~」

女「……」

男「ぜんっぜん寝てねえわ~」

女「……」

男「寝てなさ過ぎてつらいわ~、つらすぎるわ~」

女(寝てない自慢ウッザ……)
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

3: 2020/07/17(金) 18:04:02.419 ID:PdNdPCmV0.net
男「俺がどんだけ寝てないか解説してやろうか?」

女「あーはいはい。どうぞどうぞ」

男「じゃあ、キリよく昨日の夜0時からにするか」

男「休みだったし、俺は借りてきた映画を3本ほど見た」

男「一本目はコメディ、二本目はサスペンス、三本目はアクション」

男「明け方にアクションなんて見るもんじゃないな」

男「朝ののんびりした雰囲気とテンションが全然釣り合わなくなった」

女「ふうん、つまり徹夜したってことね」

6: 2020/07/17(金) 18:07:06.418 ID:PdNdPCmV0.net
男「全部見終わって……朝7時頃になったら朝食だ」

女「なに食べたの?」

男「トーストと目玉焼き」

男「トーストの上に目玉焼き乗せるやつやったら……ずり落ちて大惨事になっちまったぜ」

女「あれ食べるの結構難しいよね」

男「んで、午前中は町をぶらぶらしてた」

男「買い物したり、DVD借りたり、コーヒー飲んだりしてな」

7: 2020/07/17(金) 18:09:15.944 ID:PdNdPCmV0.net
男「昼はラーメンライス」

女「わぁお、炭水化物+炭水化物」

男「まだ若いからいいんだよ」

男「午後は寝ころんでスマホいじりだ」

女「ラーメン食べて寝転んでって、今に太るよ。……ってちゃんと寝てるじゃん」

男「意識がなくなったとはいってないだろ。ずっと動画見てた」

8: 2020/07/17(金) 18:12:30.388 ID:PdNdPCmV0.net
男「夕飯食って、夜はまたDVD見て、朝になったら仕事に出発。休み明けだから忙しかった」

男「……で、今に至るってわけだ」

女「なるほど」

女「あれ? ちょっと待って、一睡もしてなくない?」

男「そうなんだよ」

男「俺は……寝てないんだよ!」

男「なのに全く眠くならないんだ!」

女「……!」

9: 2020/07/17(金) 18:15:21.487 ID:PdNdPCmV0.net
女「ちょっと待って、いつから寝てないの?」

男「あれから……もう……どのぐらいになるか……」ガタガタ

女「あれから?」

男「最初のうちはよかったけど、眠れないってことがこれほど苦しいもんだと思わなかった!」

男「寝るってことがどれだけ人間にとって大事かよぉっく分かった!」

男「寝たいのに眠れない……俺の心と体のバランスはもう限界なんだ!」

女「なんで、そんなことになったのよ。ちゃんと説明してよ!」

11: 2020/07/17(金) 18:20:02.154 ID:PdNdPCmV0.net
男「あの日、俺は……悪魔を呼び出したんだ」

女「悪魔……?」

男「悪魔が出る映画を見たのをきっかけに色々と調べてさ……本当に軽い気持ちだった」

男「悪魔はいった。もし、自分とゲームをして勝ったら、どんな願いも叶えてやると」

男「ただし、お前が負けたら“睡眠”を頂くと」

男「そして俺は負けて……“睡眠”を奪われた」

女「……!」

男「どんな薬を飲んでも、医者にかかってもダメだった」

男「俺はもう……一生眠れないんだぁぁぁぁぁっ!!!」

女「一体どんなゲームをしたの?」

男「それは――」

12: 2020/07/17(金) 18:22:38 ID:PdNdPCmV0.net
女「……」

男「考え込んで、どうした?」

女「私なら……もしかしたら何とかしてあげられるかもしれない」

男「ええっ!?」

女「とにかく……もう一度悪魔を呼び出してみてよ」

男「分かった……それなりに準備がいるから、深夜にまた会おう」

13: 2020/07/17(金) 18:26:30.793 ID:PdNdPCmV0.net
男「魔法陣を描いて……四方に何でもいいから氏体を用意して……今回は魚四匹だ」

男「深夜2時ジャストに“悪魔よ”と唱える」

男「悪魔よ!」

女「悪魔よ!」

男「成功だ! 来るぞ……!」




フハハハハハ…

15: 2020/07/17(金) 18:29:43.595 ID:PdNdPCmV0.net
悪魔「我を呼び出したのは……貴様らか」

悪魔「うん? 貴様は見た顔だな」

男「久しぶり、だな……」

悪魔「どうだ? “睡眠”を失った気分は? 24時間起きていられて得した気分だろう!」

男「ぐ……!」

悪魔「フハハハハ……いい表情だ!」

女「ねえ、悪魔さん。彼に“睡眠”を返してあげてよ」

悪魔「それはならぬ。我とゲームをして負けた以上、この男はずっとこのままだ」

16: 2020/07/17(金) 18:32:33.604 ID:PdNdPCmV0.net
女「悪魔さんはゲームに勝ったら願いを叶えてくれるんだよね?」

悪魔「その通りだが」

女「だったら私とゲームをして、私が勝ったら返してあげてよ」

悪魔「……よかろう。ただし、貴様が負けたら貴様の“睡眠”も頂くぞ」

女「オッケー」

男「は!?」

男「ちょっと待ってくれ! 俺はてっきり君が悪魔祓いの方法でも知ってるのかと思って、呼び出したんだぞ!」

女「んなもん知るわけないでしょ」

男「もし、君まで“睡眠”を奪われたら……!」

女「そうなったらそうなったで、どうなるか興味あるし」

男「バカ! 寝ないってのは本当に辛いんだ!」

18: 2020/07/17(金) 18:35:08.536 ID:PdNdPCmV0.net
悪魔「ではゲームを始めるぞ」

女「どうぞ」

悪魔「場所を移す。女だけ我についてこい!」

ブワァァァァァ…



男「……」

男「行ってしまった……」

19: 2020/07/17(金) 18:39:35.917 ID:PdNdPCmV0.net
女「ここは……?」

悪魔「我が作り出した異空間だ。邪魔者は入らぬ」

悪魔「食事に関してはここに漂う瘴気で賄えるから、心配せんでよい」

女「瘴気で栄養補給って仙人にでもなった気分」スゥ…

女「彼からも聞いたけど、一応ゲームの内容を教えてくれる?」

悪魔「ここにボタンが二つある。我の物と、貴様の物だ」

悪魔「このボタンは30分ごとに、小さくアラームを鳴らす」

悪魔「そのアラームが鳴ってから、10秒以内にボタンを押せなかった方の負けだ」

悪魔「ちなみに、お互いに妨害行為は一切認められない」

悪魔「会話するぐらいならいいが、露骨にボタン押しを阻害するような行為は即負けだ」

悪魔「我は悪魔だが、ゲームにはフェアに挑むと誓おう」

女「オッケー、分かったわ」

悪魔「ゲーム……スタートだ!」

20: 2020/07/17(金) 18:41:09.490 ID:PdNdPCmV0.net
30分経過……

ピーピー

女「あー、これがアラームね。音量は大きくないけど、普通の会話程度で聞き逃すほどのもんでもないわね」

女「ほいっ」ポチッ

悪魔「ふん」ポチッ

女「なるほど、これを繰り返すわけだ」

悪魔「そういうことだ」

22: 2020/07/17(金) 18:44:06 ID:PdNdPCmV0.net
1時間経過……

ピーピー

女「ほいっ」ポチッ

悪魔「……」ポチッ



3時間経過……

女「えいっ」ポチッ

悪魔「……」ポチッ



6時間経過……

女「また鳴った」ポチッ

悪魔「……」ポチッ

23: 2020/07/17(金) 18:47:16 ID:PdNdPCmV0.net
24時間経過……

女「よっと」ポチッ

悪魔(ここからだ……)ポチッ

悪魔(このゲームは……30分ごとのアラームを聞き逃さないでいられるか、を競うものではない)

悪魔(つまるところ、“眠気”との戦い!)

悪魔(さあ、人間よ。どこまで我と根比べできるか、見せてもらおうではないか!)

24: 2020/07/17(金) 18:50:25 ID:PdNdPCmV0.net
3日経過……

ピーピー

女「だんだんとこのアラーム音が可愛く思えてきたわ」ポチッ

悪魔「余裕だな」ポチッ

悪魔(たしか、この女と一緒にいた男はこのぐらいで脱落していたか)

悪魔(こいつ……なかなか粘るではないか。こうでなくては面白くない)

26: 2020/07/17(金) 18:53:17 ID:PdNdPCmV0.net
10日経過……

ピーピー

女「お、鳴ったわ」ポチッ

悪魔「……」ポチッ

悪魔(人間の寝ないでいられた世界記録は、たしか11日間……)

悪魔(もうそろそろ、限界のはずなのだが……)

悪魔(ふん……悪魔が人間に負けるはずがない!)

28: 2020/07/17(金) 18:56:42 ID:PdNdPCmV0.net
悪魔(ゲーム開始からどれぐらい経ったか……)

女「ちょっと瘴気吸おうっと」スゥ…

悪魔(この女はまるで眠りに落ちる気配がない……。なんなんだ、この女は!?)

悪魔「……」ウト…

悪魔「ぐっ!?」

ピーピー

悪魔「うわっ!」ポチッ

女「ほいっ」ポチッ

30: 2020/07/17(金) 18:59:28 ID:PdNdPCmV0.net
ピーピー

悪魔「ZZZ……」

女「お、きたきた」ポチッ

悪魔「――ハッ!」

女「10秒経過~、私の勝ちね」

悪魔「あああ……そんなバカな……!」

女「約束通り、彼の“睡眠”は返してもらうわ、悪魔さん」

悪魔「ぐぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

…………

……

31: 2020/07/17(金) 19:03:12 ID:PdNdPCmV0.net
女「ふぅ~、やっと終わった」

男「あ、戻ってきた!」

男(といってもこっちはほとんど時間経過してないけど)

男「どうだった?」

女「勝ったわ。大勝利!」

男「ホントかよ!?」

女「あの悪魔、フェアなのは間違いないから、もうあなたぐっすり眠れると思うよ」

男「あ、ありがとう……!」

32: 2020/07/17(金) 19:05:43 ID:PdNdPCmV0.net
男「どのぐらいかかった?」

女「んー、ちゃんと数えてないけどかなりかかったよ」

男「しかし、よく勝てたな……悪魔相手に」

男「眠くなった時はどうやって目を覚ましてたの?」

女「眠くなるもなにも、私そもそも起きてないし」

男「……え?」

33: 2020/07/17(金) 19:09:13 ID:PdNdPCmV0.net
男「起きてないって……どういうこと?」

女「ようするに、今私は眠ってるの。こうして喋ったりしてるのはある種の夢遊病みたいなもん」

男「いつから……?」

女「生まれてからずっと。一瞬たりとも起きてたことがないの」

男「だけど、こうやって意思疎通できてるし、どう見ても起きてるじゃん!」

女「そうなんだけどさ。脳波とか調べると、完全に睡眠状態にあるんだってさ。不思議でしょ?」

男「……!」

女「だから正直、あなたの寝てない自慢にイラッともきたの。こっちは起きてないのにさ」

男「君が起きたら……君はどうなっちゃうの?」

女「分かんない。起きたことないから」

女「あの悪魔だったら、もしかしたら私を起こせたかもしれないね。もう会うつもりもないけど」

34: 2020/07/17(金) 19:12:28 ID:PdNdPCmV0.net
男「とにかく……どうもありがとう」

女「どういたしまして」

女「あ、そうだ! せっかくだから私の今までの人生について語らせてよ!」

女「助けてあげたんだから、それぐらい聞いてくれるでしょ?」

男「も、もちろんいいよ」

男(彼女のおかげで、俺は久しぶりに“睡眠”を取り戻せたけど……)

男(彼女の“起きてない自慢”を聞くため、まだしばらく眠れそうにないな……)







―おわり―

35: 2020/07/17(金) 19:17:53 ID:Nk9p46n2r.net

女は進化した人類みたいなもんなのかも

36: 2020/07/17(金) 19:17:59 ID:EM4DVAIy0.net
ちょとおもしろかた

引用: 男「寝てねえわ~、全然寝てねえわ~」女(寝てない自慢ウッザ……)