123: 2014/01/22(水) 08:17:36.25 ID:GASfcR640
おはよーございますーす! なんかもうご感想いっぱいきていて日々ヒャッハーしてます。
世紀末のモヒカン並みに喜んでおります。
ありがとう、ありがとう……!
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど1】
世紀末のモヒカン並みに喜んでおります。
ありがとう、ありがとう……!
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど1】
124: 2014/01/22(水) 08:18:26.79 ID:GASfcR640
えぴそーど ごー 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのいち】
125: 2014/01/22(水) 08:21:38.93 ID:GASfcR640
シャルロッテさんと出会ったあの日、私とさやかさんは魔法少女と呼ばれる存在を知りました。
それは祈りによって生まれる少女。願いの代償として命を捧げる戦士。
だけどその末路には悲惨な氏しかない。
魔女に殺されてこの世から消えるか、それとも……今まで討ち取っていた魔女になるか。
同胞の命によってなんとか生き長らえているだけの怪物。
それが奇跡の代償だと言われたら、私には否定出来ません。
確かに全ては知らされなくとも、その対価に命を支払わされる事は事前に聞かされているのだから。
支払い方がどんなに残忍で悲惨だとしても、それは知ろうとしなかった者の責任だから。
つまらない、とてもつまらない、当たり前の悲劇。
でも、私はそれが気に入らない。
祈りを捧げ、命を賭け、最後は呪いを振りまく……こんな悲しいお話は嫌い。
嫌いだからもっと良くしてやる。お話の最後が呪いと絶望だと言うのなら、私はその続編を書いてやる。
だって世界は楽しいのだから。
だって世界には妖精さんが満ちているのだから。
さぁ、世界を変えてやろう。
妖精さんの楽しいパワーと人間のいじめっこパワー――――運命すらもいじめてやる気持ちが合わされば……!
126: 2014/01/22(水) 08:23:36.76 ID:GASfcR640
ほむら「さあ、そんな訳でやってきました廃工場!」
さやか「はいやってきました廃工場!」
シャル「なんでアンタらそんなにテンション高いのよ……」
シャル「放課後になって教室に来てみればいきなり攫われたし……」
ほむら「おほん。実はさやかさんと話し合ったのですが」
ほむら「これから放課後には、魔女さんの結界を探し回る事にしたのです」
シャル「? 探してどうするのよ」
ほむら「魔女さんとお友達になります!」
シャル「は、はぁ? 友達って……」
ほむら「そして、人間に戻りたい方達に人の身体を与えたいのです」
シャル「……!」
ほむら「勿論強制するつもりはありません。魔女さんにも各々考え方はあるでしょうし」
ほむら「でも、せめて苦しみからは解放したいんです」
ほむら「誰かを呪い続ける事の苦しさは、シャルロッテさんなら知っていますよね?」
シャル「……それで、全ての魔女を救うつもり?」
ほむら「出来る事なら、全て救いたいです」
シャル「無理ね」
さやか「ちょ、シャルちゃん?!」
シャル「キュゥべえがどんな目的で魔法少女を、魔女を作っているのかは知らない」
シャル「だけど、アイツがこの町だけで活動しているとは限らない」
シャル「ううん。他の街にも魔法少女は居るみたいだから、きっと活動の規模は私が知っているよりもずっと広い」
シャル「多分だけど、それなりの数の仲間が居る筈」
シャル「もしかするとこの国だけじゃなくて、世界中で奴等は活動しているかも知れない」
シャル「世界中の魔女を救うなんて、それこそ神様じゃないと出来ないわ」
127: 2014/01/22(水) 08:25:40.44 ID:GASfcR640
ほむら「でも、そんなのはやらない理由にはなりませんよ?」
ほむら「やれば助けられた命を、全部救えないから無視した」
ほむら「こんなの、言い訳にしたってろくなもんじゃありません」
ほむら「助けられなかった命に恨まれるのを怖がる、臆病者の台詞です」
シャル「……」
ほむら「確かに私のしようとしている事は偽善かも知れません。
もしかすると、その所為で何かとんでもない事が起きてしまうかも知れません」
ほむら「でも何もしなければ何も変わらない。悲しい事が悲しいままになってしまう」
ほむら「だったら私は、何かしたいんです」
シャル「……そう……」
ほむら「それにほら、楽しそうじゃないですか!」
シャル「へ?」
ほむら「悪者によって魔物に変えられた人々を救い出す……正にヒーローです! 非日常です!」
ほむら「こんな面白そうな事ほっとくなんて、とんでもないですよ!」
さやか「アンタ、そこは心のうちに隠しとけよ……」
ほむら「思った事はやましくない限り口にする。私はそういう人間になりたい」
シャル「ならんでよろしい」
ほむら「ま、そんな難しい事はどーでもいいじゃないですか!」
ほむら「人助けしつつ友達百人作りましょー!」
さやか「やれやれ」
シャル「本当にやれやれよ……」
シャル「でも……ありが……」
さやか「ん? なんか言った?」
シャル「……なんでもない」
シャル「それより、魔女を探すってどうやるつもりなのかしら?」
ほむら「シャルロッテさんに案内をお願いしたいと思います! 元魔女だし、気配とか分かりますよね?」
シャル「だと思った……いいわ。案内してあげる。丁度近くに結界があるみたいだしね」
ほむら「はい! ありがとうございます!」
さやか「そんじゃ、早速行こうか!」
シャル「ふふ……本当にしょうがない連中ね」
128: 2014/01/22(水) 08:29:30.56 ID:GASfcR640
………
……
…
シャル「さて、早速結界に辿り着いたけど……」
さやか「なんか壁に落書きがあるなぁー。あ、シャルちゃん。ガム食べる?」
シャル「アンタ完全にピクニックと勘違いしてるでしょ。ガムは頂くけど」
さやか「前々から思っていたけど、シャルちゃんって甘党だよね。はい、どーぞ」
シャル「昔から好きなのよ。一番好きなのはチーズだけど……うっ!? 生臭っ!?」
さやか「うわ、吐き出したよ……ちゃんと紙に包もうよ」
シャル「不味すぎて吃驚したんだから仕方ないでしょ……何このガム……鯖味? なんでこんなの買ったのよ」
さやか「ネタ的に美味しそうだから」
シャル「……まぁ、ネタ的には美味しかったけどさ」
さやか「さて、魔女は何処かなー」
シャル「あー、それだけど……多分、この結界に魔女はいないわ」
さやか「はい?」
シャル「どうやら此処は魔女じゃなくて、使い魔の結界みたいなのよ」
さやか「使い魔?」
シャル「魔女から生まれる、手下みたいなものよ」
シャル「基本的には魔女よりずっと弱いけど、その代り数が多い」
シャル「それにグリーフシードも落とさないから、戦うだけ無駄な相手ね」
さやか「えーっと、グリーフシードって確か……魔法少女が魔女にならないためのアイテム、だったよね?」
シャル「その場凌ぎの、ね」
シャル「でも使い魔は人間を襲い、ある程度餌にすると親元と同じ性質の魔女に育つの」
シャル「そうなればグリーフシードを持つようになるから、魔法少女の中には使い魔を”養殖”する子も居るわ」
さやか「うーん……本当ならふざけるなって言いたいけど……」
さやか「でも魔女を狩らないと人間でいられないのなら、止めるのも気が引けるなぁ……」
シャル「私なんかそれが出来なかったから魔女になったしね」
シャル「元々人を食っているようなものだったのに、何を気にしていたんだか……」
さやか「シャルちゃん……」
シャル「ま、昔の話よ。気にしないで」
129: 2014/01/22(水) 08:31:15.54 ID:GASfcR640
シャル「それより、私が言いたいのは、使い魔でも注意を怠ったらダメって事」
シャル「具体的には」
ほむら「あははは~♪ 捕まえてごらんなさ~い♪」
使い魔「ふひゃ、ふひゃひゃ、ひゃばぶひゃひゃひゃー!」
シャル「いくら笑顔で接してきたからって、海辺の恋人ごっこを楽しむような相手じゃないって事ね」
さやか「ほむらあああああああああ!? 何してんのおおおおおおおお!?」
ほむら「あ、さやかさん!」
ほむら「こちらの方は魔女さんの使い魔さんだそうです! 人頃しが趣味だそうで」
ほむら「で、人をボールにして遊ぶのが好きなんですって」
ほむら「なので捕まったらボールにされる駆けっこで遊んでいました!」
さやか「何もかも知った上でなんでそんな無駄にスリリングな遊びに興じてんだよアンタああああああ!?」
ほむら「でも悪い子じゃなさそうですよ? 魔人ブウみたいな感じで」
シャル「無駄に適切な例えね……」
ほむら「ちなみに何人かの妖精さんたちは既にボールにされており」
妖精さんA「へいぱーす」
妖精さんB「だんくしゅー」
妖精さんC「きゃっちゃーふらーい」
妖精さんD「かざむきにきをつけろー」
妖精さんE「ちゅうしんからすこしずれたです」
妖精さんF「もっとけってー」
妖精さんG「けられるのがともだちです?」
ほむら「他の妖精さんの玩具になって楽しんでいるようです」
さやか「奴等はMなのか。その手の性癖があるのか?」
ほむら「基本的に構ってちゃんですからね。一番堪えるのはスルーされる事だそうで」
シャル「レベルの高いMね」
130: 2014/01/22(水) 08:33:09.82 ID:GASfcR640
ほむら「それにほら、ボールになっても自力で解除出来ていますし」
さやか「自由過ぎるだろ……」
使い魔「ひゃげ!?」
さやか「あ、使い魔がなんか驚いてるっぽい」
シャル「自分の力が無力化されて吃驚したのね。私も今の発言に吃驚したけど」
ほむら「私の方も妖精さんに頼めば解除してくれるでしょう。問題なしです」
シャル(つーか、ボールの状態になっても意思の疎通が出来る前提なのね……出来そうだけど。妖精さんだし)
使い魔「ひ、ひ、ひゃばぶぅぅぅぅぅぅ!?」
ほむら「え? あれ!?」
さやか「なんか、悲鳴混じりに使い魔が逃げていく……」
さやか「どゆこと?」
ほむら「えっと、『ぼくの力が解除されるなんて! こんな場所に居られるか!
ぼくは自室に一人で籠っているぞ!』と言いながら帰ってしまいました」
さやか「それ、もろフラグじゃん」
ほむら「ええ、フラグなので心配です……」
ほむら「妖精さんのいるところでフラグを立てたら……」
シャル「? 立てたらどうなるの?」
ほむら「回収します」
シャル「は?」
ほむら「回収します……ほぼ確実に」
131: 2014/01/22(水) 08:36:02.87 ID:GASfcR640
<ヒャバブゥゥゥゥゥゥゥゥ……!
さやか「ひ、悲鳴!?」
ほむら「ああ……回収してしまいましたか……」
シャル「つー事は……やられたか」
さやか「え? でも、結界はまだ解けてないよ?」
シャル「私から漏れ出ている魔力で辛うじて残っているんでしょう。その内自然に崩れる筈よ」
シャル「それより問題は、誰が使い魔を倒したって事」
シャル「一般人に倒せないとは言わないけど、まぁ、そんな楽観的な展開はないわよね」
さやか「あー、そうだ……そんでその悲鳴を聞いてしまったという事は……」
ほむら「ええ。私達もフラグを回収しないといけません」
ほむら「それに目的を邪魔する敵キャラの登場はお約束ですし、ね」
マミ「うふ、うふふふふふふふふふふふ。ようやく見つけたわ……暁美ほむらああああああああ……」
さやか「ひぃ!?」
シャル「うわ、まるで般若みたいな顔になってる……そりゃなるか。あんだけの事をすれば」
まどか「あのー、私もいますよー……?」
ほむら「やっぱり来ましたか、えっと……友枝真美子さん?」
マミまど「ずこーーーーーーーーーっ!?」
さやか「これは酷い」
シャル「すごく酷い」
マミ「なんで名字と名前に律儀に余計な一文字付けてんのよ!? 巴マミ! 姓は巴で名前がマミ! はい三唱しなさい!」
まどか「ま、まま、マミさん落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!?」
ほむら「あ、鹿目さんも居たんですね。今日はもう会わないと思っていましたが……警察の方はどうでしたか?」
まどか「……お陰さまで、魔法で色々な事をもみ消す事になったよ……パパの記憶とか」
ほむら「あら、悪い子ですねー。魔法を私利私欲で使っちゃうなんて」
さやか(魔法よりヤバい妖精さんをガンガン私利私欲で使っているお前が言うな)
さやか(そう思いながらも、妖精さんに助けられた事があるので言葉にしないさやかちゃんでした)
シャル「いや、お前が言うなでしょ、それ」
ほむら「私はいいんです。妖精さんパワーは楽しい事にしか使っていませんから」
さやか(そしてこの開き直りである)
132: 2014/01/22(水) 08:42:18.82 ID:GASfcR640
ほむら「それよりも、です」
ほむら「さっきの使い魔さん……もしかしなくても、倒してしまいましたか?」
マミ「と、当然じゃない。使い魔は人間を襲うのだから退治しないとね」
ほむら「そうですか……残念です。仲良くなれそうだったのに」
さやシャル「そうかぁ?」
ほむら「……なれそうだったんです。なれませんでしたけど」
ほむら「ま、ここまでの縁って事で、あの方の事は心の奥底にしまっておきましょう」
さやか(忘れる気満々だなコイツ)
シャル(まぁ、使い魔は元人間って訳じゃないしね……ほむらったらちょークール)
ほむら「一応尋ねますけど、もしかしなくてもシャルロッテさんをまだ狙っているのですか?」
マミ「当然よ。今日学校では何もしなかったみたいだけど、何時人を襲うか分からないでしょ」
ほむら「あー、この問答はもう面倒なので全面カットで」
マミ「ちょ!? い、いえ、つまり戦うつもりなのね」
ほむら「何を馬鹿な」
ほむら「使い魔さんが亡き者とされた今、私達にあなたと戦うメリットはありません」
ほむら「ですから、」
まどか(あ、ほむらちゃんが背を向け)
ほむら「逃げるんだよォ―――――――ッ!!」
マまさシャ「……………」
マミまど「に、逃げたあああああああああああああ!?」
さやシャル「置いてかれたああああああああああああ!?」
シャル「ちょ、ま、待ってよほむら!?」
さやか「なんでお前が真っ先に逃げてんだよぉ!?」
マミ「……はっ!? 唐突な事に驚いて意識が飛んでいたわ!?」
マミ「追い駆けないと、きゃっ!?」
まどか「ま、マミさん!? なんで転んで……」
マミ「いたた……な、なんか足が地面に張り付いて……」
マミ「靴裏にガムが付いてるじゃない!? これの所為ね!」
マミ「ああもう! 誰がこんなところにガムを……」
マミ「って、結界内なんだからアイツ等しかいないじゃん! むきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
まどか「マミさん落ち着いてええええええええ!?」
133: 2014/01/22(水) 08:48:46.50 ID:GASfcR640
<ムキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!
シャル「うわ。なんか嫌な叫びが聞こえた……私は悪くないぞーっと」
さやか「それより、やっと追いついた……」
ほむら「ひゅー……ひゅー……!」
さやか「……まぁ、今にも氏にそうな奴に追いつけない方がどうかと思うけど」
シャル「体力無いわねぇ」
ほむら「し、仕方、ないじゃ、ない、ひゅー、ですか……私、基本、病弱、なん、ぜー……です、ぜー……から……」
さやか「よし、まずは落ち着け……と、景色が元に戻った? 此処は、まだ廃工場の中みたいだね」
シャル「よーやく魔力が切れたみたいね」
ほむら「け、結界が消滅したっ!? こんなに早く!? ごほっ、げほげほげほ!?」
シャル「ああ、もう何やってんだか……何をそんなに慌ててるの?」
さやか「そうだよ。妖精さんパワーがあれば、巴先輩の追撃なんて怖くないって」
ほむら「妖精さんは電波が駄目なんですよ!」
さやシャル「……はい?」
ほむら「だから、電波を浴びると駄目になっちゃうんです!」
ほむら「携帯電話程度の電波でもうへなへなになって、鬱になって、最終的に消えちゃうんですよ!」
ほむら「今のままだと妖精さんパワーが自由に使えないんです! だから今のうちに出来るだけ遠くに逃げたかったんです!」
さやか「え、ええー……じゃあどうすんのよ……?」
ほむら「妖精さんアイテムまでも効力を失う訳じゃないので、完全に手詰まりでもないんですけど……」
シャル「なら、私が結界を展開しようか?」
シャル「そこでなら妖精さんもパワー全開なんでしょ?」
ほむら「それでもいいんですが……」
ほむら「……今回は、折角仲良く出来そうだった使い魔さんを倒されてしまいましたからね……」
さやか(まだ言ってるよ……)
ほむら「ちょいと壮大に痛い目を見てもらうために、これを使うとしましょう」
さやか(? ほむらの奴、ポケットから瓶みたいの取り出した……?)
ほむら「本当はあまりコレには頼りたくないんですけどねぇ……自爆みたいなものですし……」
ほむら「ま、氏なないから気にしない気にしない。ぐいっと! ――――げふぅ」
134: 2014/01/22(水) 08:52:32.82 ID:GASfcR640
シャル「アンタ何飲んだの?」
さやか「妖精さん製の栄養剤とかか?」
ほむら「いえ、妖精さんを溶かした蜂蜜です」
さやシャル「……はい?」
ほむら「ですから、妖精さんを溶かした蜂蜜です」
さやか「い、いやいやいやいやいや? 意味が分からない?」
さやか「と言うか溶かしたってどういう事よ!?」
ほむら「簡単に言うと、妖精さんは蜂蜜とかに浸けると溶けて一体化するのです」
ほむら「その液体を振りかけると機械が生き物になったり、新生物が誕生したりするのですが……」
ほむら「人間が一口飲めば、短時間ですが電波環境でも凡そ100fぐらいの加護を得られるのです」
ほむら「今回は一瓶飲んだから、500fぐらいかな。ま、ここまで大量だとあまり意味のない数字ですけど」
ほむら「ああ、妖精さんの加護については話すと長くなるので今は省きます。また今度暇な時にでも」
ほむら「一つ言うなら」
さやか「……言うなら?」
ほむら「今の私には近付かない方がいい」
さやシャル「……」
ほむら「私はあっちに逃げます。さやかさんとシャルロッテさんは、適当な物陰に身を隠してください」
ほむら「酷い目に遭うのは、私と……友枝さん達だけで十分です」
ほむら「うふ、うふふ。いい加減しつこいと思っていましたからねぇ……」
ほむら「耐えられるかなぁ? 私でさえ、慣れるのに三年はかかりましたからねぇ……うふふふふふふふふふ」
さやか「その台詞、どう聞いても悪人のそれだぞ」
シャル「もろ悪人面だしね……つーかいい加減名前を憶えてやりなさいよ」
ほむら「愛称ですよ愛称」
135: 2014/01/22(水) 08:56:24.86 ID:GASfcR640
ほむら「さあ! ここは私が引き受けます!」
ほむら「二人は早く逃げて!」
さやシャル「なんでフラグ立てるのかなぁ?」ソソクサ
ほむら(……さて、と)
マミ「見つけ、たわああああああああああ……!」
まどか「み、見つけたよ!」
ほむら「ようやく来ましたか。遅かったですね」
マミ「ぜー、ぜー……ふ、ふふ……相変わらずの減らず口ね……」
マミ「思ったよりも逃げ足が速いから、追いつくのに、じ、時間が、掛かったわ……ぜー、はー」
まどか(靴裏に付いたガムを必氏に取っていたら見失った、なんて言えない……)
マミ「と、兎に角!」
マミ「追い詰めたわ! なんで魔女が傍に居ないのかは分からないけど、魔女さえ居なければあなたに戦う力はない!」
マミ「大人しくお縄につきなさい!」
ほむら「やなこったです。大体お縄についた私をどーするつもりですか?」
ほむら「はっ!? さては工口同人みたく乱暴をする気で」
マミ「せいっ!」
ほむら「きゃっ!?(地面からリボンが伸びてきた!?)」
マミ「よし! 捕縛したわ!」
マミ「ふふ……所詮ただの人間ね。魔女と使い魔がいなければ、こんなにあっさり捕まえられる」
まどか(うわぁ、マミさん悪役っぽい……う、ううん! そんな事思っちゃ駄目! マミさんは正義の魔法少女なんだから!)
ほむら「うぐ、き、キツいです……あの、もう少し緩めてくれませんか……?」
マミ「そうね……魔女の居場所を教えてくれたら、緩めてあげてもいいわよ」
ほむら「それは……出来ませんねぇ(何処に隠れたかは見てないし)」
マミ「なら、魔法で答えを聞き出そうかしら?」
マミ「あまり無理強いはしたくないんだけど……」
ほむら「……そろそろ、かな」
まどか「? そろそろ……?」
マミ「また警察でも呼んだの? 言っとくけど、同じ手は何度も食らわないわよ?」
マミ「あまり得意じゃないけど……記憶の改ざんや、意識を奪う事だって私達の魔法で出来るの」
マミ「今度は警察の人が来ても、魔法で眠らせる。もうあなたの好きにはさせないわ」
ほむら「いえ、そうではなくてですね……」
ほむら「そろそろ『アレ』が身体に馴染む頃だと思いまして」
ほむら「なので言っておきます」
ほむら「私に近付かない方がいい。自分でも制御できないぐらい、今の私は無敵ですからね」
136: 2014/01/22(水) 08:58:30.16 ID:GASfcR640
マミ「……とんだ虚勢ね」
マミ「いいわ。本当はやりたくないけど、魔法で」
――――ベキ
まどか「? 何、今の音……」
マミ「鹿目さん、余所見しちゃ駄目よ。暁美ほむらが何をしてくるか分からないのだから、彼女から気を逸らしたら駄」
――――ベキベキベキベキベキ!
マミ「……え?」
まどか「な、なんか天井から物凄い音がし」
まどか「って、なんか天井が落ちてきたあああああああああ!?」
マミ「えええええええええええ!? ああああ、えとえと逃げ」
まどマミ「ごしゃっぺ!?」
ほむら「あら、二人の上に崩落してきた天井の瓦礫が……うわぁ、生き埋めですねぇ……」
ほむら(あれ? でも落石って確か……)
ほむら「……魔女も人間の範疇って事で。うん」
ほむら「おっと、友枝さんが気絶したのか、リボンがボロボロと崩れていきますね。これはラッキー」
ほむら「それでは、すたこらさっさと逃げさせていただきまーす」
シャル「……なんか、とんでもない茶番を見た気がするわ」
さやか「うわぁ……まどか達生きてるかなぁ……」
シャル「魔法少女はあのぐらいじゃ氏なないわよ。肉体は頑丈だし」
シャル「それにソウルジェムっていうやつに魂を移されてるからね。それさえ無事なら、心臓をぶっ潰されても氏なないわ」
さやか「なにそれ怖い」
シャル「本当に、怖いわねー」
さやか「おっと。それより、ほむらの後を追わないと!」
シャル「近付くなって言われてなかったっけ?」
さやか「だからだよ。心配じゃん」
シャル「おーおー、優しいこって」
シャル「うんじゃあ、ま、こっそりと尾行しますかね」
137: 2014/01/22(水) 09:02:34.47 ID:GASfcR640
ほむら「ごひゅー……ごひゅー……も、もう、駄目……」
ほむら「立てない……げほっ、げほっ……み、みずぅ……」
さやか(ほんの三十メートル走っただけでばててるし。工場から出てすらいねぇ)
シャル(あの体力こそ妖精さんアイテムでなんとかしなさいよ)
マミ「お、追いついたわよ!」
まどか「マミ、さん……待って、くださ、うう……」
さやか(あ、追いつかれた……うわ。巴先輩、頭に釘刺さってるよ。気付いてないのか、アレ?)
シャル(まどかはまどかで鉄の棒を杖代わりにしてるし……そりゃ、いくら不氏身でもノーダメって訳じゃないしねぇ)
ほむら「た、タンマ、です……もうほんと、走れない……ぜー、ぜー……」
マミ「走ったのはあなたが勝手にした事でしょうが!」
マミ「それに天井の崩落……何か細工したわね!」
ほむら「してませんよ……あんな、一歩間違えたら巻き込まれるような細工なんかしませんって」
ほむら「どーせするなら、落とし穴みたいに、正確に位置を確認出来る罠にしておきます」
さやシャル(うん。アンタはそういう奴だよね)
ほむら「ふぅ……ようやく息も整ってきました……ふぅ」
ほむら「先程も言いましたが、ちょっとしたチートのお陰で今の私は無敵状態です」
ほむら「代償として面倒事に巻き込まれますが、あなた達が今すぐにでも退いてくれた場合、被害は私だけで済みます」
ほむら「正義の味方のメンツもあるかと思いますが、あなた達の精神衛生上のためにも撤退した方が得ですよ?」
マミ「ふん。そんな戯言に耳を貸すと思う?」
さやか(貸さなかった結果何度ボコボコにされたよアンタ)
シャル(とか思ってんだろうなー、さやかの奴)
138: 2014/01/22(水) 09:08:35.54 ID:GASfcR640
ほむら「いや、本当に退いてくれませんかね?」
ほむら「正直私も勘弁してほしいんですよ。彼等とは友人ですけど、流石に500fクラスの出来事になると」
ほむら「護身のためとはいえ、人を巻き込むのは本当に申し訳なくて……」
マミ「人を巻き込む? あなた……一体何を企んで」
――――ベゴンっ!
マミ「……………」
マミ「鹿目さん?」
まどか「はい」
マミ「今の音、何かしら?」
まどか「多分、床が抜けた音だと思います。ほら、床が無くなってますよ」
マミ「あら、本当ね」
マミ「ところで鹿目さん?」
まどか「はい」
マミ「床が抜けただけなのに、なんで私達の足元には大穴が開いているのかしら?」
まどか「それは私にも分かりません。廃坑の跡、とかかも」
マミ「ああ、成程。テレビとかで偶にそういうの見るわね」
マミ「そういえば鹿目さん?」
まどか「はい」
マミ「さっきまで私達は廃工場にいた筈なのに、何時の間にか周りが土だらけの景色になっているのはどういう事かしら?」
まどか「私達が、穴に落ちたからですよ」
マミ「ああ、そうなの。流石鹿目さんね」
まどマミ「………」
マミ「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
まどか「落ちてる落ちてる落ちてるうううううううううううううううううう!?」
ほむら「ああ……今回は地底探検ですか……はぁ」
さやか「ああ!? ほむら達が落ちた!?」
シャル「なんで見滝原にこんな大穴があんのよ!? 可笑しいでしょ!?」
さやか「な、なんとか降りられない!?」
シャル「魔法を使えば少しずつなら降りられるけど……」
シャル「で、でも、落ちて行ったほむらに追いつくのは無茶よ! 自殺行為だわ!」
さやか「そんな……!」
シャル「……仕方ない。とりあえず私だけで行くから、さやかはそこで待ってて」
――――ボゴンっ!
さやか「あら?」
シャル「おりょ?」
さやシャル「……………」
さやシャル「ふ、縁が崩れたあああああああああああああああれえええええええええええええええええええっ!?」
139: 2014/01/22(水) 09:14:38.89 ID:GASfcR640
―???―
マミ「きゃああああああああああああああああああああっ!?」
まどか「いやあああああああああああああああああああっ!?」
ほむら「二人とも、五月蝿いですよ」
マミ「スカイダイビングでもないのにこの状況なら叫ぶぐらい普通でしょ!?」
マミ「逆になんでアンタはそんなに冷静なのよ!?」
まどか「こ、こんな高さから落ちたら氏んじゃうよ!?」
ほむら「いえ、高層ビルから落ちても生存確率は極めて高ですから」
マミ「はあ!? 何を言って……」
さやか「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
シャル「ぬぅうううううううううっ!?」
まどか「さ、さやかちゃん!?」
ほむら「あら、さやかさんにシャルロッテさん。どうしてこんなところに?」
シャル「足場が崩れて落ちたのよ!」
ほむら「あらあら。だから近付くなって言ったのに……」
さやか「嫌だああああああああああ! 氏にたくないぃぃぃ! 氏にたくないぃいいいいいいぃいいいっ!!」
ほむら「もー、さやかさんは大袈裟ですねー」
シャル「何が大袈裟よ!? もう十分即氏出来るだけの高さ落ちてるわよ!?」
シャル「つーかこの穴どこまで続いてんの!?」
ほむら「さぁ? でも、そろそろかと思いますよ」
シャル「そろそろって何が――――うっ!?」
マミ「な、何!? 突然光が―――――」
さやか「ヤメロオオオオオオオオシニタクナイシニタクナァァァァァァァイ!」
まどか「う、うう……何が起きて……」
140: 2014/01/22(水) 09:17:03.31 ID:GASfcR640
まどか「って、えええええええええええええ!?」
マミ「な、なんで……なんで地下に、大自然が広がっているの!?」
マミ「というか地平線が視えるって、一体どれだけ大きな空洞なのよ!?」
シャル「ほむら! 此処は一体!?」
シャル「太陽がないのに周りは明るいし、地下なのに森が地平線まで続いているし……」
ほむら「さぁ? 地球には不思議がいっぱいって事なんでしょう」
ほむら「でも良かったぁ。森があるって事は、大きい動物も住んでいるでしょうからね」
ほむら「……お。噂をすれば早速」
シャル「――――! 何……空から何かが飛んできて……!?」
シャル「お、大きい鷹……違う、翼を持った怪物……グリフォン!? 三頭も来てる!」
シャル「なんでそんな不思議生物が!?」
ほむら「さあ、覚悟はいいですか?」
ほむら「大冒険の始まりですよ!」
シャル「うわっ!? ……ぐ、グリフォンたちが私達を背に乗せた……助けてくれたの?」
さやか「シニタクナイシニタクナイシニタクナイ」
ほむら「さやかさーん、もう助かってますよー」
シャル「本当に、間一髪ね……あれ?」
ほむら「どうしましたか?」
シャル「……いや、グリフォンが三頭しかいないなぁって思って」
\コンノー! オボエテナサーイ!/
\ダレカタスケテェーッ!/
シャル「……………」
ほむら「ま、多分氏にはしないでしょう。魔法使えるんですし。無視無視」
シャル「ほむらったら、本当にちょークール」
141: 2014/01/22(水) 09:20:36.27 ID:GASfcR640
ほむら「問題はこれからです」
ほむら「多分、展開的にこのグリフォン達の連れていく先には村があって、そこで地底人と交流をするでしょう。何故か日本語で」
ほむら「そんでもって魔王を倒してくれって頼まれるんですよ、多分」
シャル「アンタ、ゲームやり過ぎよ」
~五十分後~
村人D「どうか、どうか魔王を……!」
ほむら「ま、妖精さんパワーがあれば大丈夫でしょう。引き受けます」
シャル「はっ!?」
シャル「え、あれ? なんで……」
シャル「何故私達はグリフォン達に連れてこられた村で、魔王退治を引き受けてんの!?」
さやか「シャルちゃん何してんの? ほら、シャルちゃんの装備もらったよ」
シャル「なんでさやかは既に順応済みなのよ!? 可笑しいでしょこの展開!」
さやか「いや、私も正直訳が分かんないけど……」
さやか「なんというか、慣れた。もしくは諦めた」
シャル「……………そう」
さやか「まぁ、要するに魔王を倒せば地上に戻れるって話だからさ。協力する事になったんだよ」
さやか「はい、シャルちゃんの装備。魔法使いだって」
シャル「一体どんな皮肉よそれ……ちなみにさやかは?」
さやか「僧侶。回復魔法の使い手らしいよ……使い方知らないけど」
シャル「私だってこんな装備なくても魔法なら使えるんだけど」
シャル「ちなみに、ほむらは何?」
さやか「遊び人」
シャル「……納得ね。戦力にはなるけど」
ほむら「みなさーん! そろそろ出発しましょー!」
シャル「やれやれ……今日中に魔王を倒せるといいわねぇ」
さやか「チート使えば余裕っしょ」
142: 2014/01/22(水) 09:21:35.68 ID:GASfcR640
――――そんなこんなで始まりました、地底大冒険。
本当は私だけでする筈でしたが……やはり妖精さんのコントロールは難しいです。
ですが、今更考えても仕方ありません。
こうなった以上――――思いっきり楽しまないと、損ですよね♪
156: 2014/01/27(月) 08:56:04.21 ID:1SMnrX600
おはようございます。一週間経つ前に戻ってきた>>1でありんす。
>>148 >>149 >>150
の方々が親切に教えてくれたので、今回からトリップを使ってみます。ちゃんと出来ている……はず。うん。
>>153
妖精さん「よくあるよくあるー」
妖精さん「ないことのほうがめずらしかと」
妖精さん「いつでもだいぼうけんです?」
それでは えぴそーど ろく です。
ごーごー
>>148 >>149 >>150
の方々が親切に教えてくれたので、今回からトリップを使ってみます。ちゃんと出来ている……はず。うん。
>>153
妖精さん「よくあるよくあるー」
妖精さん「ないことのほうがめずらしかと」
妖精さん「いつでもだいぼうけんです?」
それでは えぴそーど ろく です。
ごーごー
157: 2014/01/27(月) 08:57:16.39 ID:1SMnrX600
えぴそーど ろく 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのに】
158: 2014/01/27(月) 09:02:06.06 ID:1SMnrX600
ほむら「どうもこんにちは。暁美ほむらです」
ほむら「私達は今、見滝原の地下に広がる巨大な地底世界を冒険しています」
ほむら「目標は今日中の帰還。そのためにも地底世界を脅かしているという魔王さんの撃破をしなくてはならなくて……」
シャル「アンタ、誰に言ってんの?」
ほむら「いえ、なんか頭の中の妖精さんがあらすじをご所望したので……あまり気にしないでくださいな」
シャル「ふーん」
シャル(……頭の中の妖精さんという文脈を、ふーんの一言で流せるようになった自分に軽くショックを受ける……)
ほむら「さてさて。そんな訳で私達はお世話になった村を出て、魔王さんの城を目指す訳ですが……」
ほむら「どこに魔王さんの城があるのか、聞いてませんでしたね♪」
さやか「割と根本的なところ放置してるというね」
シャル「んで、どうすんの? 村に戻る?」
ほむら「いえ、ここは妖精さんパワーに頼ります」
さやか「ここはも何も、アンタ全部妖精さん頼りだろ」
ほむら「いいんですよ。頼れるんですから」
159: 2014/01/27(月) 09:05:31.27 ID:1SMnrX600
ほむら「ではでは。妖精さん、かむひやーっ!」
妖精さん「よばれたー?」
シャル「おぅ!? 草むらから妖精さんが……」
さやか「地底にも住み着いているのか……流石妖精さん」
ほむら「妖精さん妖精さん。私達と一緒に旅をしませんか?」
妖精さん「たびー?」
妖精さん「なさけとか、かけてくれます?」
ほむら「掛けますよー」
ほむら「それから、御供にはきび団子を差し上げます」
シャル(通学鞄からきび団子取り出したよ……何時も持ってんのか? こういう時のために?)
妖精さんA「なんとーっ!?」
妖精さんB「おともさせてー」
妖精さんC「みがわりにしてもいいのよ?」
さやか(あ、増えた)
さやか(……増えたぐらいじゃ違和感を覚えなくなった自分に、なんとも言えない虚しさを感じる……)
シャル「それで、どうするの? 地上に戻る道具でも作ってもらう?」
ほむら「そうですねぇ。頼めばすぐにでも帰れるでしょうが、その選択肢は最後までとっておきましょう」
ほむら「一応魔王さんを倒すって約束しちゃいましたし……それに、まだ地底を満喫していません」
ほむら「帰るのは遊びつくしてから! これ、楽しい事に対するマナーです!」
さやか「つまりアンタが遊び足りないだけじゃん」
シャル「予想通りの答えね」
シャル「……でもまぁ、一理ある」
シャル「確かに未開の地を大冒険なんて面白そうな事、楽しまなきゃ損よね」
さやか「おやおや? アンタ、随分ほむらに毒されたみたいだねぇ?」
シャル「アンタだって、顔がにやけてるわよ?」
ほむら「ふふっ。みんなで楽しめば、楽しさは倍になると言います!」
ほむら「みんなで楽しく、地底を冒険しましょう!」
160: 2014/01/27(月) 09:09:55.34 ID:1SMnrX600
ほむら「さあ! 私の後に続くのです!」
さやか「ああ、もう。ほむらったら、あたしらを置いてくなって」
シャル「だーかーらー、魔王の城が何処にあるか知らないんだからまずはそれを……」
――――ガサガサ
三人「!」
ほむら「……草むらに、何かいますね」
シャル「揺れ方からして、あまり大きな動物ではないみたいだけど……」
さやか「やっぱりお約束としては――――」
――――ガサッ!
???【げるげるげーっ!】
ほむら(草むらから何か飛び出してきた! あれは……軟体動物……じゃない!)
ほむら(軟体どころかゲル状の身体、向こう側が透けて見える肉質……)
ほむら(尚且つ大冒険序盤の敵性生物と言えば――――)
さやか「スライム!」
シャル「RPGのお約束! まさか本当に出てくるとはね!」
シャル「それで……リーダー、どうする?」
ほむら「え? リーダーって……」
さやか「ま、ここはアンタが妥当でしょ。場馴れしているみたいだし」
さやか「それに……やっぱリーダーは、チームのムードメーカーにもなってくれないとね!」
ほむら「――――分かりました!」
ほむら「相手の実力は未知数ですが、数的有利はこちらにあります!」
ほむら「全員で一気にかかり早期決着を狙いますよ!」
さやシャル「了解!」
三人「やああああああああああっ!」
スライム【げるるるるるるるるっ!】
161: 2014/01/27(月) 09:13:18.66 ID:1SMnrX600
………
……
…
さやか「で、だ」
さやか「コテンパンにやられた挙句、仲間を呼ばれ、分裂した小スライムに縛られ、
私らは恐らくは巣だと思われる場所に連れ去られている訳だが?」
ほむら「いやぁ、スライムは強敵でしたねぇ」
シャル「殴っても全く効かないしねー」
ほむら「シャルさんの魔法も、全然効果ないですし」
シャル「仕方ないじゃん。魔法少女の頃は肉体操作と回復系が得意で、魔女になってもそれで戦ってたんだし」
ほむら「スライム相手には相性最悪、と」
ほむら「てんで役立たずとは、それでもかつて世界を焼き払った一族の末裔ですか!」
シャル「私は普通のサラリーマン家庭の生まれだっつーの」
シャル「大体役立たずだなんだと言ってるけど、アンタが一番役立ってなかったじゃん」
シャル「さやかはちゃんと殴ってたけど、アンタの攻撃は全部かわされてたでしょ」
ほむら「あら、私はスライムの体力を削るのが目的ですよ? 無駄な動きで疲れさせる……最初から計画通りです」
シャル「スライムよりアンタの方が先にばてたけどね」
ほむら「自分の体力を考慮するのを忘れていました」
ほむむ「はっはっはっはっはーっ!」
さやか「笑ってる場合かあああああああああ!?」
ほむら「えー……さやかさん、言ってたじゃないですかー。リーダーはムードメーカーもしないとって」
ほむら「だからこの絶望的な状況でも、ひとつ失敗談を語って笑いを起こそうと」
さやか「時と場合と必要なムードを考えろ! あと失敗談もなにもこうなった原因で誰が笑えるか!」
シャル「まぁまぁ、落ち着きなさいって。どーせなんとでもなるでしょ」
シャル「幸い妖精さんも一緒に拉致られているしさ」
妖精さんA「つかまた」
妖精さんB「たべられるー?」
妖精さんC「にたりやかれたり?」
妖精さんD「おろしてもおいしくいただけます?」
妖精さんE「おどりぐいがおすすめですな」
妖精さんF「かこうされたらひょうじぎむなしです?」
妖精さんG「おさとうづけだとしあわせー」
さやか(この状況で何故また増える……)
162: 2014/01/27(月) 09:18:55.91 ID:1SMnrX600
シャル「んで? 妖精さんのブレインさんはどうするおつもりで?」
ほむら「そうですねぇ……妖精さんと違い、私達は食べられたらお終いですし」
さやシャル(妖精さんは食べられても終わらないんか……)
ほむら「ですが、よくよく考えると生き物を頃すのはちょっと性分に合いません」
ほむら「なので、スライムさんの方から逃げてくれる状況を作りたいですね」
シャル「具体的には?」
ほむら「無策です」
シャル「おい」
ほむら「いや、希望を訊かれたので答えたまででして……さてはてどうしたものかと」
さやか「なら滅茶苦茶強くなるとかどうよ?」
ほむら「と、言いますと?」
さやか「漫画とかだとさ、そのキャラがものすごーく強いって表現するのに、周囲の動物が逃げるってのがあるでしょ?」
さやか「妖精さんなら、あたしらをそれぐらい強くするのって出来そうじゃない?」
シャル「成程ね。私はいいと思うわ」
ほむら「あー……それは……」
シャル「? どうしたの? もしかして、出来ない事なの?」
ほむら「いえ、なんの問題もなく出来ると思いますよ?」
ほむら「思いますけど……その願いは問題なく叶えられてしまうと不味い予感が……」
さやか「? 別にいいじゃん。強くなるぐらい」
さやか「難なら、あたしがその役やろうか? なんつってー」
ほむら「あ」
さやか「え?」
163: 2014/01/27(月) 09:21:10.98 ID:1SMnrX600
妖精さんA「いま、おーだーきた?」
妖精さんB「きたきた」
妖精さんC「しかもはじめてのにんげんさんから」
妖精さんD「ぼくらがんばらねば?」
妖精さんE「ごきたいされまくり?」
妖精さんF「こたえねば、ぼくらいらないこになるです?」
さやか「……え?」
妖精さんG「つよくなりたいとのごきぼう」
妖精さんH「ならばちきゅうさいきょーにせねば」
妖精さんI「さいきょーのふうかくほしいね」
妖精さんJ「かぶとむしぐらいかっこよく?」
妖精さんK「かなぶんのぼうぎょをつければむてきでは?」
妖精さんL「むてきすぎるー」
さやか「え? ……ええ?!」
妖精さんM「そのちからはどこからー?」
妖精さんN「どこからでもよいかと?」
妖精さんO「たのめばよかです」
妖精さんP「いくらでもありますしなー」
妖精さんQ「ではたいきちゅうからをきゅーしゅーして」
妖精さんR「どんどんおおきくしていくです?」
さやか「ちょ、ちょーっ!? なんかどんどん増えてる!? すっごい増えてるぅーっ!?」
妖精さんS「ではそのほうしんでー」
妖精さんT「にんげんさんをかいぞうしまうまー」
妖精さんU「いたくはないです?」
妖精さんV「むしろきもちーかもー」
妖精さんW「ちからにおぼれるのもおやくそくかと」
妖精さんX「ならやっちゃう?」
妖精さんY「さっそくやっちゃう?」
さやか「ひぃ!? ち、違うから! 今の違――――」
妖精さんZ「そういん、かいしー!」
妖精さん達「ぴ―――――――――――――!!」
ほむら「……妖精さん、散っちゃいましたね。縛られていた方たちも平然と抜け出しましたし」
シャル「……そして戻って来たわね……怪しい野菜を携えて」
164: 2014/01/27(月) 09:25:10.55 ID:1SMnrX600
さやか「な、何、それ……?」
妖精さんV「きんにんにーく」
ほむら「金色に輝くニンニク、金ニンニクですか……」
シャル「某漫画に出てきそうな食べ物ね」
妖精さんC「たべればよいかと?」
妖精さんQ「かなぶんいちおくにせんまんびきぶんのぱわーもつです」
妖精さんT「まるかじりしてー」
さやか「えーっと……つ、つまり、これを食べたら強くなれる、と」
ほむら「そうですね。多分、地球最強クラスの強さに」
さやか「い、いやぁ……」
さやか「さっきはああ言ったけど、ちょっと怖いから今回は遠慮する方に――――」
――――ぐらり
シャル「うわっ!?」
ほむら「こんな時に突然、地面のデコボコによるともの思われる揺れに襲われましたー(棒読み)」
妖精さんF「わー?」
さやか(ちょ、妖精さんが揺れでニンニクを手放して……)
さやか(なんでそのニンニクがあたしの顔面目掛けて飛んでくんのーっ!?)
さやか(い、いや! 落ち着くんだ美樹さやか!)
さやか(例え顔に飛んできたとしても、それが一体なんだと言うの?)
さやか(要は食べなきゃいい! 口さえ閉じていればいい!)
さやか(なんの問題もない!)
さやか「……………」
さやか(まぁ、そんな事長々と考えているうちに、ニンニクはとうの昔にあたしの口にinしていたけどー)
さやか(よーし、落ち着こう。まだ口に入っただけだ。落ち着いて吐き出せばまだ間に合う)
――――がたんっ!
さやか(そしてその直後再度襲い掛かる振動で思いっきり噛んでしまい、)
――――ごくんっ!
さやか(ニンニクなのにまさかのイチゴ味という事に吃驚し、思わず飲み込んでしまうさやかちゃんでした)
シャル「……流れるような勢いで、とんでもない茶番を見たわ。本日二度目の」
ほむら「まぁ、妖精さんがこれだけいれば不条理の連鎖が起こるのはむしろ自然かと」
165: 2014/01/27(月) 09:28:03.83 ID:1SMnrX600
さやか「ど、どど、どうしよう!? 食べちゃったよ!?」
ほむら「諦めましょう」
シャル「決断早っ!?」
さやか「で、でも、でも……!」
ほむら「妖精さん密度F。妖精さんだらけ、妖精さんまみれ、妖精さん濁の状態」
ほむら「あなたは酷い目に遭うでしょう。でもまず氏ぬ事はありませんからご安心を」
シャル「……何それ?」
ほむら「うちの蔵に眠っていた、妖精さんの説明書に書かれていた一文です」
ほむら「妖精さんがたくさんいれば、それだけで世界は面白可笑しくなるんです。理屈抜きに」
ほむら「それは馬鹿げた事態……例えばこのような地底大冒険すらも起こす、とんでも現象です」
ほむら「でも氏ぬ事だけはないので、ま、楽しんだもの勝ちですよ?」
シャル「納得すればいいのか、戸惑えばいいのか、分からない話ね……」
さやか「でも酷い目に遭うんでしょ!? 一体何がどうな――――」
シャル「……さやか? どうかした?」
さやか「いや、どうかというか……」
さやか「なんか、縄? スライム? まぁ、あたしを縛っているやつが急にキツくなってきた……」
ほむら「? そうなんですか?」
シャル「まぁ、私らを縛っているこれもスライムだし、伸縮自在だろうから急にキツくなる事もあるかもだけど……」
シャル「でも私らのは特に変わってないみたいだから、気の所為じゃない?」
さやか「い、いや、絶対これキツくなってる! めっちゃなってる!」
さやか(う、嘘……なんで、なんであたしだけこんなキツく縛るの!?)
さやか(まさか、このままあたしの身体を引き千切る気……!?)
さやか「や、やだあああああっ!? やだ、やだあ!」
シャル「ちょ、落ち着きなさい!? 大丈夫、大丈夫だから!」
ほむら「……………」
シャル「ほむらもぼけっとしてないで何か言いなさいよ!」
ほむら「……いえ、その……」
ほむら「……さやかさん、大きくなったなぁと思いまして」
シャル「はあっ!? アンタこんな時に何を――――」
シャル「……………」
シャル「……そうね、確かに大きくなったわね」
シャル「目測……身長百七十センチぐらいかしら?」
さやか「え?」
さやか「……確かに、あたしこんなに大きくなかったなぁ」
さやか「……もしかしなくても、”そういう事”ですかね?」
ほむら「そういう事なんでしょうねぇ……」
シャル「そういう事なんだろうなぁ……」
166: 2014/01/27(月) 09:33:05.00 ID:1SMnrX600
さやか「そ、それはそれで嫌ああああああああああああああああ!?」
ほむら「ああ……」
シャル「叫び声に合わせるようにさやかがどんどん巨大化して……」
――――ブチっ!
シャル「ついにはスライム縄も千切れたけど、まだまだ大きくなって……」
巨大さやか『なんじゃこりゃああああああああああああああ!?』
シャル「……時代遅れのギャグでもなんでもなく、でっかくなっちゃったわね」
ほむら「なっちゃいましたねぇ」
シャル「全長100メートルはありそうね」
ほむら「ありそうですねぇ」
シャル「ついでに肌がなんか黒光りしていて、角とか翅とか生えてるけど……」
ほむら「モチーフがカブトムシなんじゃないでしょうか」
シャル「妖精さんったらおとこのこー」
スライムA【げ、げるるるる!?】
スライムB【げるえええええ!?】
シャル「あ、スライムが逃げてく」
ほむら「そりゃ逃げますよね。食べられちゃうかも知れないですし」
シャル「それにこのサイズ……確かに地球最強のパワーを持っていそうね」
巨大さやか『いやいやいや!? そんな、のーてんきに言ってる場合じゃないよ!?』
巨大さやか『そりゃ、これは最強かも知れないけど……』
ほむら「あ、そうだ! さやかさん! 腕をバッテンの形にしてみてください!」
巨大さやか『んあ? いきなりなんだよ。バッテンにしたところでビームが出る訳でもあるまいし』
シャル(でも律儀に組む、と)
シャル(……ん? なんか、さやかの腕が光って)
ピィィィィィィィィィィィィィィィイ!(光線)
ちゅどーーーーーーーーーーーーんっ!(核爆)
巨大さやか『』
シャル「」
ほむら「うわー♪ 派手な花火が上がりましたねーっ♪」
妖精さんA「はなびというよりきのこぐもでは?」
巨大さやか『妖精さんに的確なツッコミ入れられるようなボケすんなああああああああああああああっ!?』
シャル「ほ、本当に腕から光線が出たよ……こりゃ魔王の一体二体余裕だわ」
167: 2014/01/27(月) 09:34:57.93 ID:1SMnrX600
シャル「……うん。とりあえず、魔王を倒す算段は出来たとして」
巨大さやか『ちょ、シャルちゃん? もしかして考える事を放棄してない?』
シャル「放棄なんてしてないわよ」
シャル「ただ、考えるだけ無駄だと思い出しただけよ」
巨大さやか『なお性質悪いよぅ』
ほむら「まぁ、妖精さんの事ですから役立つものから役立たないものまで様々な機能が付いているようでしょうし」
ほむら「多分、頑張れば小さくなれると思いますよ?」
巨大さやか『え? そうなの?』
ほむら「なれますよね? 妖精さん」
妖精さんA「なれますが……」
ほむら「なれますが?」
妖精さんA「ますますつよくなりますが?」
ほむさやシャ「……………」
ほむら「まぁ……大きい奴が小さくなるのは強化フラグですよね」
シャル「宇宙の帝王とか代表格よね」
巨大さやか『正直今の段階で十分過ぎるほど自分の力がおっそろしいんだけど……』
ほむら「じゃ、今は我慢しましょう」
ほむら「地上に出たら力をセーブ出来るような指輪を妖精さんに作ってもらいますので、それまで辛抱してください」
シャル(今と言わないあたり、魔王を倒すのに使う気満々なのね……私もそのつもり満々だけど)
168: 2014/01/27(月) 09:37:01.57 ID:1SMnrX600
ほむら「それより。さやかさん、周りを見渡してくれませんか?」
ほむら「私達は木々に阻まれて周りが見えませんが、さやかさんの視点なら地平線まで見渡せるはずです」
ほむら「もしかしたら、魔王さんの城が見えるかもですよ!」
巨大さやか『うー……なんか納得出来ないけど……まぁ、今更か……』
巨大さやか『もうやけだ! ビッグさやかちゃんの力を見せてやるぜ!』
巨大さやか『どこだー? 魔王の城、魔王の城……』
巨大さやか『むむむ?』
シャル「なんか見つかったー?」
巨大さやか『遠くてよく分かんないけど……あ、見たいって思ったら見えるようになった。この身体すっげー便利』
巨大さやか『あったあった。如何にも中世ヨーロッパって感じで、尚且つ色合いが邪悪なお城が』
シャル「お約束ねぇ」
シャル「そいでほむらさんや? 当然そのお城を目指すのよね?」
ほむら「言わずもがな、です」
ほむら「そんな訳でさやかさん」
巨大さやか『それも言わずもがな、だよ』
巨大さやか『肩に乗せて、そこまで運んであげるよ!』
169: 2014/01/27(月) 09:37:43.43 ID:1SMnrX600
………
……
…
巨大さやか『うっひょー!』
巨大さやか『身体が大きくなったから、一歩ですっごい速く動ける!』
巨大さやか『しかも身体が軽い! 大きくなる前より速く動けてる感じだよ!』
巨大さやか『風も気持ちいいし……こりゃ最高だね!』
170: 2014/01/27(月) 09:41:39.84 ID:1SMnrX600
シャル「こりゃ最高だね! じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
シャル「揺れが! 暴風が! 揺れがあああああ!?」
ほむら「今のさやかさんは元の六、七十倍近いサイズですからね……」
ほむら「単純に考え、走った時の振動も六十倍以上に増幅」
ほむら「ましてや昨今のロボットアニメもびっくりな機動力で動いてますし、そりゃあ大惨事レベルの揺れに襲われますよー」
シャル「そこまで分かっていてなんでさやかの肩に乗ったのよ!?」
シャル「てか、なんでそんな余裕な訳!?」
ほむら「そりゃあ、妖精さんアイテムでなんとかしていますから」
シャル「納得いかねぇぇぇ!?」
シャル「大体なんでさやかは止まってくれないのよ!? さっきからこんなに叫んでるのに!」
ほむら「風が気持ちいいと言ってましたし、多分、風の音で聞こえないんでしょうね」
シャル「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ほむら「そんなに大変なら、妖精さんアイテムを一つお貸ししましょうか? あまりオススメは出来ませんけど……」
シャル「この揺れが治まるならなんだっていいわよ!」
ほむら「では……このジュースとかどうでしょう。副作用として」
シャル「早くちょうだい!」
ほむら(ああ、奪い取られてしまいました……説明する前に)
シャル「んっ……んっ……ぶはぁ!」
シャル「……何故か甘じょっぱかったわ」
ほむら「妖精さんの作った甘味に美味しさを求めるのは止めた方がいいですよ?」
ほむら(まぁ、ビフテキとか満貫全席はふつーに美味しいのを作れるんですけどね……)
171: 2014/01/27(月) 09:45:34.97 ID:1SMnrX600
ほむら「それより、揺れはどうですか?」
シャル「ん? あ……全然感じなくなった!」
シャル「流石妖精さんアイテムね!」
ほむら「それはなによりです」
シャル「もー。ほむらったら、こんな便利なアイテムがあるなら独り占めしないで早く渡してよー」ムクムク
シャル「でもま、今回は許してしんぜよう。揺れを感じなくなったら風がすっごい気持ちよくて気分がいいし♪」ムキムキ
ほむら(……シャルロッテさんがどんどん筋肉質な身体になっていく……)
ほむら(シャルロッテさんに渡したのは『揺れればダイエットジュース』)
ほむら(振動のエネルギーを筋肉に変換し、ぶよんぶよんな身体を三十秒でボディービルダー体型に変えてしまう)
ほむら(通販で売られている怪しいダイエットグッズ真っ青な超絶ダイエットアイテム……)
ほむら(効果が絶大過ぎるかつ無制限なので、使いたくなかった一品です)
ほむら(ああ、そうこうしている内にシャルロッテさんが……)
ほむら(シャルロッテさんの原型がないぐらい……筋肉ダルマというより筋肉って感じの姿に……)
ほむら(……私の使っている揺れ対策が、揺れを携帯電話の『頑張って動いてくれる』パワーに変換する道具だというのは黙っておこう)
マチョロッテ「どうかした? ほむら?」←イケボ
ほむら「いえ、なんでもありません」
ほむら(ばれた瞬間すっごい怒るだろうから、今は黙っておいて、隙を見て妖精さんに治してもらおう)
ほむら「それよりも、ほら! お城が見えてきましたよ!」
マチョロッテ「お。本当だ」
マチョロッテ「成程。さやかが言っていたように、趣味の悪い西洋風の城ね」
ほむら「あれだけ豪勢なら、多分魔王さんの城で間違いないでしょう」
ほむら「というか、真偽を確かめるためにはどの道行かないといけませんし」
ほむら「ではさやかさん。ごーごーです♪」
巨大さやか『合点承知ぃ!』
172: 2014/01/27(月) 09:49:26.46 ID:1SMnrX600
………
……
…
ほむら「さてさて。魔王さん城(候補)の前まで来ました」
ほむら「門番らしき魔物さんはさやかさんの姿を見た途端逃げ出したので、戦闘は回避出来そうですね」
巨大さやか『……ヒーローとは、悲しいものだ』
マチョロッテ「戦わずに済むならその方がいいわ」
マチョロッテ「それより、さやかはどうする?」
ほむら「このサイズではお城に入れませんからね……魔王さんの本拠地と決まった訳じゃないので壊す訳にもいかないですし」
ほむら「とりあえず、戦闘になるまでは外に居てもらう事としましょう」
ほむら「ああ、それから攻撃を始めるのは私達がさやかさんの肩に乗ってからにしてくれますか?」
巨大さやか『OK、OK。分かった』
巨大さやか『大きくなり過ぎた所為か二人の姿が豆粒ぐらいにしか見えないからね……うっかり踏み潰さないとも限らないし』
ほむら(ああ、だからシャルロッテさんの変化に気付かないと……)
ほむら「とりあえず、合図は妖精さんを通じて行います」
マチョロッテ「何? 妖精さんがテレパシーでも送るの?」
ほむら「いえ、私の頭の中にいる妖精さんが記憶を経由し、さやかさんの記憶へと移動。外に出た後口頭で伝えます」
マチョロッテ「想像以上に意味不明な方法だったわ」
巨大さやか『記憶って経由できんだな……』
ほむら「昔どっかの精神科医が言ってましたからね。神話は人類が共有する精神である、みたいな感じの事を」
ほむら「多分そこを通ってんじゃないでしょうか?」
巨大さやか『そこって何処だよ』
マチョロッテ「ま、まぁ……そんじゃ、早速私達は中に入るとしましょうか」
ほむら「あ、待ってください」
ほむら「流石に施錠されていると思うので、妖精さんアイテム『プライバシーなんてないさ針金』で鍵を開け」
――――ペキンッ!
ほむら「……はぇ?」
マチョロッテ「鍵は掛けてないみたいね……いくら魔王とはいえ、不用心ねー」
ほむら(鍵の存在に気付かないぐらい、パワーアップしてる……)
ほむら(あ、ヤバい。これマッチョ化がばれたら絶対ヤバいです)
マチョロッテ「どうかした、ほむら?」
ほむら「いえ、なんでもないです。本当に」
マチョロッテ「それならいいけど」
マチョロッテ「一応敵のアジトかも知れないんだから、気を引き締めときなさいよ?」
ほむら「そーですねー。(あなたの)矛先が自分に向かないよう注意しておきます」
マチョロッテ「相変わらず自分本位な奴ねぇ……ま、アンタ自身に戦う力はないし、それでいっか」
マチョロッテ「んじゃ、突撃ーっ!」
ほむら「とつげきー」ウワノソラ
173: 2014/01/27(月) 09:53:02.43 ID:1SMnrX600
~魔王城(仮)内部~
魔物A「ぎゃああああああああ!?」
魔物B「ば、化け物だあああああああああ!?」
マチョロッテ「……さっきから何故か魔物が逃げていくわね」
ほむら「ほんと、なんででしょうねー」目線逸らし
マチョロッテ「ま、お陰で楽々と探索出来るけど」
ほむら「ほんと、よかったですねー」目線逸らし
マチョロッテ「……アンタさぁ、さっきから上の空だけど」
マチョロッテ「一応此処、敵陣かも知れないのよ? 緊張感持ちなさいよ」
ほむら「あ、失礼ですねー」
ほむら「鹿目さんや友枝さんと違って、私はちゃんと警戒はしています」
ほむら「ただ、妖精さん濁の状態では警戒すべきものが特異なので」
マチョロッテ「さいで」
マチョロッテ「……つまり、いよいよ見えてきたあの如何にもって雰囲気の扉を開けるのは私って事?」
ほむら「勿論。私は無力な人間ですもん」
マチョロッテ「私だって今はそうよ」
ほむら(いや、今は違う……と言いたいです……言いませんけど)
マチョロッテ「ま、いいや」
マチョロッテ「んじゃ、おじゃましまーす」
ほむら「おじゃましまーす」
ほむら(おっと。扉の向こうは中々広い空間ですね……ぶら下がっているシャンデリアとか床の絨毯とか、中々豪勢な雰囲気)
ほむら(そしてお約束のように、部屋の最奥のご立派な椅子にふんぞり返っている御仁が一人居ますね)
ほむら(姿は人間そっくり。だけど肌は紫、頭には三本の角、それから趣味の悪い貴族風の恰好……)
ほむら(ザ・魔王に相応しいお姿の方ですね)
ほむら(これからお食事をするのか、部屋の隅には人が十人ぐらい入れそうなぐらい大きなお鍋があって)
ほむら(そのお鍋の上には、生け贄らしき、ロープで縛られた金髪と桃色の髪の女の人二人が……)
ほむら「ん?」
174: 2014/01/27(月) 09:55:15.84 ID:1SMnrX600
マチョロッテ「あ、気付いた?」
マチョロッテ「アレって……アイツら、よねぇ?」
ほむら「お鍋から立ち上る湯気の所為で姿はよく見えませんけど……」
??「そ、その声は暁美ほむら!? 暁美ほむらね!」
??「こんな目に遭わせて、無事に帰れると思わない事ね!」
???「ちょ、なんで挑発してるんですかー!?」
???「今の状態じゃ敵対する以前の問題ですよぉ!?」
ほむら「最近すっかり聞き慣れたあの声からハッキリと分かります」
マチョロッテ「やっぱりあそこにいるのは……」
マチョロッテ「鹿目さんと」
ほむら「友枝さん!」
友枝?「何時まで引っ張んのよそのネタ!?」
マミ「とーーーーーーーーもーーーーーーーーえーーーーーーーーーーーーーって何回も言ってんでしょぉ!?」
ほむら「やだなぁ。わざとですよ、わ・ざ・と♪」
マミ「むきいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
まどか「マミさん落ち着いてよぉ!?」
まどか「イライラしちゃう気持ちは分かりますけど、私達今ロープで縛られて」
まどか「ソウルジェムは没収されたから魔法は使えず、沸騰するお鍋に今にも落とされそうなんですよ!?」
まどか「ここは一時休戦してでも助けてもらわないと……」
マミ「鹿目さん」
まどか「は、はい?」
マミ「正義っていうのはね、妥協したらその時に終わるの」
マミ「私達は高潔な、正義の魔法少女! 悪とはどんな形であれ借りを作る訳にはいかないのよ!」
まどか「えぇー……」
ほむら「友枝さんって、面倒見が良いだけでリーダーには向かないタイプだと思います」
マチョロッテ「降伏するぐらいなら氏を選ぶとか言い出しそうよねー。プレッシャーにも弱そうだし」
175: 2014/01/27(月) 10:00:46.07 ID:1SMnrX600
マチョロッテ「つーか、アンタらなんでこんな場所に居んのよ。魔王に雇われたの?」
マミ「拘束された姿を見てなんでそんな答えに至るのよ!?」
マミ「あなた達だけが変な動物に助けられた後、私達底なし沼に頭から落ちたのよ!」
マミ「私がリボンの魔法を使えたから助かったけど、そうじゃなかったら氏んでいたわ!」
ほむら(いや、それはむしろ底なし沼に落ちてラッキーだったんじゃないでしょうか……)
マチョロッテ(地面だったらぺっちゃんこだよね……)
マミ「しかも、なんとか脱出出来たけど体力の消耗が激しくて……」
マミ「運悪くオークとかいう化け物に見つかり、戦う事も出来ずに捕まり!」
マミ「貢物って事でこの魔王城に連れてこられたのよ!」
ほむら「あー……それは、」
ほむら「ラッキーでしたね。捕らわれなかったら私に会えず、地上に帰れませんでしたよ?」
マミ「ふしゃあああああああああああ!!」
マチョロッテ「そこは少しで良いから気遣いなさいよ……巴さん、威嚇する猫みたいな声上げてるわよ」
マチョロッテ「あとさー、さっきから魔王らしき人が私達にぽかんとした表情を向けているけど……」
魔王「あ、やっと気付いてくれた」
魔王「……おほん……ふん。地上人が、地底の魔王たる私に何の用だ?」
ほむら「あ、魔王さんと名乗ってくれましたよ!」
ほむら「わざわざ目標を探す手間が省けました!」
マチョロッテ「そうね」
魔王「――――ほう、成程な」
魔王「大方我を倒そうとやってきたのだろうが……なんとも愚かしい」
魔王「いいだろう! 知識と恥を持たぬ地上人に我の力を見せほむら「妖精さんアイテム『性格やや反転光線銃』~」
魔王「え、しばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばーっ!?」
マチョロッテ「うわ、コイツ不意を突きやがった。しかも光線銃で魔王を攻撃って……」
ほむら「生きるか氏ぬかの戦いをしようとしているくせに、長々と話しちゃってる方が悪いんです」
ほむら「それにほら、別に頃した訳じゃありませんし」
ほむら「今の光線銃は、名前の通り性格をやや反転させるものです。ややですので、二回当てても元の性格に戻れないのが要注意」
ほむら「で、あの魔王さんが悪者だって言うのなら今頃」
魔王「おお……私は、今までなんと非道な事をしていたんだ……!」
ほむら「いい人になりましたね♪ これにて一件落着です!」
マチョロッテ「なんとてきとーな……」
巨大さやか『ちょっと待てええええええええっ!?』
176: 2014/01/27(月) 10:03:51.83 ID:1SMnrX600
ほむら「きゃっ!?」
マチョロッテ「うわっ」
マミ「どぅえええええええええええええええええええええええっ!?」
まどか「なんか黒光りしているさやかちゃんの顔をしたでっかいお化けが、お城の壁を壊して中に入ってきたああああああああああ!?」
ほむら「なんだ、さやかさんじゃないですか……驚かさないでくださいよ」
まどか「え゛!? アレさやかちゃんなの!?」
巨大さやか『なんだじゃないよ!?』
巨大さやか『100メートル近いサイズになった私の力は何処で披露すればいいの!?』
巨大さやか『魔王を倒すしか価値のなくなったあたしの出番はどうなったんだ!?』
ほむら「さぁ?」
巨大さやか『ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
マチョロッテ「ねぇ、反省会は後にしてさぁ」
巨大さやか『おい!? おーいっ!?』
マチョロッテ「早いとこ、あの二人を助けてあげましょうよ」
マチョロッテ「あのままにしてたら薫製になっちゃうわよ?」
ほむら「あー、確かにそうですねー……」
マミ「あ、あなた達の助けなんて、要らないんだからねっ!」
まどか「マミさん、それ案外直球で助けを求めているようなものですよ」
マミ「え?」
ほむら「……どの道放置は出来ません(自力で地上に戻れるとは思えませんし)」
ほむら「しょーがないから、助けるとしましょう」
マチョロッテ「そうねー。仕方ないから助けましょうか」
マミ「う、ううううううううっ!」
巨大さやか(あ、巴先輩涙目でぷるぷる震えてる……かわいい)
177: 2014/01/27(月) 10:06:31.89 ID:1SMnrX600
ほむら「じゃ、私が友枝さんの縄を解くとしましょう」
ほむら「動かないでくださいねー、友枝さん」
マミ「くっ……こんなの、屈辱だわ……!」
マミ「しかも、あの人が魔王だとしても……性格を変える、つまり洗脳する魔法を躊躇わず使うなんて……」
ほむら「もー。魔法なんかじゃありません。科学です!」
ほむら「ね! 妖精さん!」
妖精さんA「そのとおりですな」
妖精さんB「まほうなんて、ひかがくてきすぎ?」
妖精さんC「じだいおくれよねー」
妖精さんD「まほーがゆるされるのはちゅーせーまでです?」
妖精さんE「きゃははとわらうべきでは?」
マミ「っ!?」
マチョロッテ(ほむらの髪の中から出てきた妖精さんに驚いたみたいね……何時の間に潜んでた、と訊くのは野暮かしら)
マミ「な、何よ……使い魔が生み出した道具なんでしょ? だったら魔法でしょ」
ほむら「あれ? そういえば言ってませんでしたっけ?」
ほむら「彼等は妖精さん。使い魔ではありませんよ」
マミ「嘘おっしゃい! 使い魔じゃなかったら、一体何なのよ!?」
ほむら「何って、妖精さんは妖精さんだと思いますけど……」
マミ「ふん! 説明出来ないじゃない!」
マミ「やっぱりそいつらは使い魔なのね! 懐柔しようってつもりなんでしょうけどそうはいかないわ!
あなたの力なんて借りなくても――――」
ほむら「え、わ、ちょ!? 縄緩めている時に暴れたら」
178: 2014/01/27(月) 10:09:10.93 ID:1SMnrX600
――――しゅるり
ほむら「あ」
マミ「へ?」
マチョロッテ(あ、縄が解けちゃった)
マチョロッテ(で、その時不思議な事が――――起こらず、巴さん、重力に従ってまっさかさま)
マミ「あっちゃあああああああああああああああああああああああ!?」
マチョロッテ(見事熱湯風呂にダイブ、と)
まどか「マミさあああああああああああああああああああああああん!?」
マミ「あちゃ!? あちゃ、ほあっちゃあ!?」
ほむら「大変です!」
ほむら「妖精さん! 友枝さんの火傷を冷やしたいので、氷を用意してくださいな!」
妖精さんB「すこしまってくださればー」
ほむら(よし、妖精さんが散っていった……)
妖精さんD「ごよういできたー」
ほむら「ありがとうございます! ……注文したのは氷なのに、なんで届いたのは氷風呂なんでしょうね……」
ほむら「ま、いいや! さあ友枝さん! こっちの氷風呂に浸かって身体を冷ましましょう!」
マミ「あひ、あひぃ……!」
マミ「ああ……冷たい……生き返るぅ……」
ほむら「えー、熱湯に浸かっていた時間は十秒でしたので……」
ほむら「十秒の宣伝時間が与えられます! さぁ、どうぞ!」
マミ「あ、えっと今度CD出す事になりました! その名もティロ・フィナーレ音頭」
マミ「って、何を言わせんのよ!? というか何言ってんのよ私!?」
ほむら(どうやらあの氷風呂には、熱湯に浸かった後入ると思わず宣伝したくなる効果が付加されていたようですね)
ほむら(……巴さんに傷が見られないあたり、治癒効果も付いている、と)
ほむら(面白さは忘れず、しっかりとオーダーをこなす。流石妖精さんです)
まどか「マミさん、CD出すんですか?」
マミ「なんでちょっぴり信じているの鹿目さん!? 出さないから!」
179: 2014/01/27(月) 10:12:58.72 ID:1SMnrX600
マミ「ああもう! こんな時にもふざけて……!」
マミ「やっぱりあなた達と一緒になんて居たくない! 私達だけで帰るわ!」
ほむら「あらら、走って部屋の外に向っちゃいましたか……」
まどか「ま、マミさん置いてかないでぇ……」
マミ「うっ!?」パタリ
ほむら「……あれ?」
ほむら「友枝さん、急に倒れて……動かなくなりましたね?」
まどか「え!? ま、マミさん!? どうしたの!?」
まどか「まさか、さっきお鍋に落ちちゃった時の火傷が!?」
マチョロッテ「いや、単にソウルジェムから離れすぎただけでしょ。没収されたって言ってたし」
ほむら「と、言いますと?」
マチョロッテ「ああ、そういやアンタには話してなかったわね」
マチョロッテ「魔法少女って、キュゥべえと契約する時魂をソウルジェムに封じてんのよ」
マチョロッテ「つまり身体はただの入れ物というか、乗り物みたいなもので、ソウルジェムが本体なの」
マチョロッテ「で、乗り物が本体からそう遠くまで離れられる訳ないでしょ?」
マチョロッテ「ソウルジェムから大体100メートル以上離れると、あんな感じにぶっ倒れちゃうのよ。要は氏体になるのね」
マチョロッテ「ソウルジェムを手元に戻してあげれば回復するけど、早くしないと腐っちゃうわ」
ほむら「へー」
まどか「何それ」
ほむら「え?」
マチョロッテ「え?」
まどか「私……そんなの聞かされてないけど……」
マチョロッテ「え」
ほむら「え?」
マチョロッテ「……………」
マチョロッテ「あ、やべ。これ昔キュゥべえを問い質した時に聞いた話だった」
180: 2014/01/27(月) 10:21:18.62 ID:1SMnrX600
まどか「ちょっ……ええええええっ?!」
まどか「それってどういう事!? わ、私達の本体がソウルジェムって……」
巨大さやか『あ、あたしもそれシャルちゃんから聞いたよー』
まどか「なんで極々普通の中学生に過ぎない筈のさやかちゃんまで知ってんのっ!?」
マチョロッテ「あ、あー、えっと、今のはオフレコです。報道したらその新聞社終わりだから?」
まどか「私新聞記者じゃないから!?」
マチョロッテ「じゃ、じゃあアレだ! 悪者が精神ダメージを期待して言うアレ! どう!?」
まどか「どう、じゃないよぉ!? 相談するならせめてほむらちゃんにしてよ!?」
ほむら「さてと。魔王を倒しましたし、そろそろ帰るとしますかねー。あ、村に報告しないといけませんか」
まどか「ほむらちゃんなんでそんなすっごい無関心なの!?」
まどか「今の話ものすっごく重要だよね!? アニメだったら三話か四話ぐらい引っ張れる話題だよ!? 少女漫画なら五巻は引っ張るよ!」
まどか「そんでもって私はゾンビにされたんだって言って、好きな男の子を諦めちゃうようなイベントが発生する事態だよぉ!?」
ほむら「だからですよ。そのイベント、暗い話しかなさそうじゃないですかー」
ほむら「私、そういう話好きじゃないんです。愛と正義が勝つ、シンプルで楽しいストーリーが好きなんです」
ほむら「最近はなんか小難しくて灰色な話が多過ぎると思うんですよ。シンプルはシンプルなりに需要があると」
まどか「話逸らさないでよ! どこまで興味ないの!?」
マチョロッテ「あー、ほら、あれだ」
マチョロッテ「本体がソウルジェムだから、身体はいくら傷付いても平気だから」
マチョロッテ「不氏身の魔法少女。ちょっとカッコ良くない?」
まどか「引き攣った笑顔でメリット言われても全然喜べないから!」
ほむら「いや、どうなんでしょーね? 弱点剥き出しで、しかも詳細を本人に伝えないって……」
ほむら「私には万一謀反を起こされても簡単に制圧出来るようにするための、保険にしか思えないのですが」
まどか「そしてほむらちゃんはなんでテンション落ちる事言うのぉ――――――――!?」
181: 2014/01/27(月) 10:23:21.86 ID:1SMnrX600
………
……
…
ほむら「さてさて。魔王さんを(形式的に)倒したので、さやかさんの肩に乗って村まで戻ってきましたー」
ほむら「魔王さんが村人さん達と和解したいと言った時はどうなる事かと思いましたが」
ほむら「村人さん達に犠牲者がなかったお陰で、案外すんなりと仲良くなってましたねー♪」
マチョロッテ「その記念の晩餐ってのに誘われて、お腹もいっぱいになったしね。いやぁ、幸せだわー」
ほむら「辺りが暗くなるまで楽しんでしまいましたよ♪」
ほむら「妖精さん達も、あまーい角砂糖をたくさんもらって良かったですね!」
妖精さんA「しあわせのしろいこなー!」
妖精さんB「なくてはいきていけぬ」
妖精さんC「ころしてでもうばいとるものでは?」
妖精さんD「きれるとゆめにでるです」
妖精さんE「じょーちょもふあんていになるかと?」
妖精さんF「きせいされぬのがふしぎなおいしさ」
マチョロッテ「砂糖をもらった感想とは思えないぐらい物騒なんだけど」
ほむら「妖精さんにとってはそれぐらい大切なものなんですよ」
巨大さやか『いいなぁ……あたしは村に入れなかったからなぁ……大き過ぎて』
ほむら「さやかさんは自業自得です。妖精さんの前で迂闊な発言をするのは社会的に自殺行為なんですから」
巨大さやか『何時も自由気儘なお前が言うか?』
ほむら「これでも言動には気を付けているんですよ? 焚き付け方にはちょっとしたコツがあるので」
ほむら「……ところで、何故あなた達は晩餐に参加しなかったのですか?」
ほむら「鹿目さんに、友枝さん」
182: 2014/01/27(月) 10:29:58.64 ID:1SMnrX600
マミ「……ふん」
マミ「助けた事で、気を許すと思ったら間違いよ」
マミ「私達は魔女を狩る者なの。魔女を守ろうとするあなたとは決して相容れない」
マミ「それに、私があなた達から離れようとした時なんらかの魔法で私を攻撃したわよね? 随分と乱暴なのね」
ほむら(攻撃? ……ああ、ソウルジェムから離れすぎた時の事ですか)
ほむら(それはあなたの自爆です、とは言えませんねぇ……)
マミ「そんなあなたと一緒に食事なんて、願い下げだわ。それに魔王を洗脳したように、村人を洗脳していないとも限らないしね」
ほむら「やれやれ……もう少し歩み寄る努力をしてくれないものですかね?」
ほむら「あなた方魔法少女が何人敵になろうと妖精さんパワーの前じゃ塵芥に等しいんですから、諦めて和解しましょうよー」
巨大さやか『それを言っちゃうから歩み寄れなくなるんじゃないかなぁ』
マチョロッテ「上に同意」
ほむら「えー?」
マミ「……ふんっ」
ほむら「やれやれ……これは先が思いやられます」
さやシャル(こっちの台詞だっつーの)
ほむら「……っと、楽しみ過ぎてすっかり忘れていましたが」
ほむら「辺りがすっかり暗いという事は、恐らく夜を迎えたと思われます」
ほむら「携帯の時刻が七時を越えましたので、地上と昼夜のサイクルは同期しているとみて間違いはないでしょう」
ほむら「なら、今頃地上はいい感じに夜の筈です」
ほむら「私は平気ですけど、さやかさんは、流石にもうお家に帰らないとご両親に怒られますよね?」
巨大さやか『あ、そうじゃん!? 忘れてた!』
マミ「ふん。簡単に言うけど、どうやって地上に帰るつもり?」
マミ「私達が落ちてきた穴の場所は分からない。そもそも、ここが地下何メートルかも分からない」
マミ「いえ、あの時の感覚から言えば、地下1000メートルはありそうね」
マミ「そんな深さからどうやって脱出する気で――――」
ほむら「妖精さん妖精さん。そろそろ地上に帰りたいのですが」
妖精さんA「では、かえりみちをつくりまっせ」
マミ「なっ……何を言っているのかしら?」
まどか「どうやって帰り道を作るの?」
183: 2014/01/27(月) 10:32:01.64 ID:1SMnrX600
ほむら「あ、そういえばお二人は妖精さんの発明をあまり見ていませんでしたね」
ほむら「さやかさん達も、本格的な発明を見るのは始めての筈です」
巨大さやか『え? 本格的って……』
ほむら「論より証拠。百聞は一見にしかず」
ほむら「妖精さん。お願いしますね」
妖精さんA「りょーかいしたー」
ほむら「さぁ、作り始めますよ」
マチョまどか巨大マミ「!?」
マチョロッテ(な、何!? 妖精さん達がものすごい速さで動いてる!?)
巨大さやか(眼にも止まらぬ速さだ……)
まどか(そ、それで、何かがすごい勢いで建っていく!?)
マミ(ああ……こ、これは……!)
妖精さんC「かんせいしたです?」
ほむら「おお、これは中々……」
マチョロッテ「中々ご立派な……洗面所、よね?」
巨大さやか『洗面所に見えるけど……』
まどか「……洗面所?」
マミ「……暁美ほむら。ふざけているのかしら?」
マミ「洗面所で一体どうやって帰るのよ!?」
ほむら「さぁ? 作ったのは妖精さんですから、私も説明を聞かない事にはなんとも」
184: 2014/01/27(月) 10:35:23.45 ID:1SMnrX600
ほむら「妖精さん。これをどう使えば地上に帰れるのですか?」
妖精さんD「てをあらうとながされてー」
妖精さんE「いきたいばしょにいけます?」
ほむら「ほほう。流されると行きたい場所、つまり地上に帰れると」
ほむら「……水は下へと流れる構造なのに?」
妖精さんC「そこがおもしろいかと?」
妖精さんD「したへいくのにうえにいく」
妖精さんE「だましえてきなおもしろさ」
ほむら「成程。確かに面白いですね」
マミ「なんで納得してんのよおおおおおおお!?」
巨大さやか『巴先輩。あまりムキにならない方がいいっすよ』
巨大さやか『考えるだけ無駄ですから』
マミ「え、えぇー……」
まどか(なんか、さやかちゃんが精神的にすごく逞しくなってる気がする……)
ほむら「とりあえず私から地上に帰るとしましょう」
ほむら「多分私からじゃないと、絶対に触ってくれそうにない方が二人居るので」
マミ「と、当然ね」
ほむら「じゃ、早速」
ほむら「蛇口をひねってー、出てきた水で手を洗シュンッ!!
まどマミ「!?」
巨大さやか『あ、ほむらが消えた』
マチョロッテ「おー、すっごい……流石妖精さんの発明品。こんな形でも効果はしっかり発揮すると」
マチョロッテ「あ、捻った蛇口が勝手に動いて、水を止めたわ」
妖精さんE「かんきょーにやさしいせっけいですからなー」
185: 2014/01/27(月) 10:38:14.31 ID:1SMnrX600
巨大さやか『いやはや、何度も妖精さんアイテムを見てきたけど、これは凄いや』
巨大さやか『ところでこれってどんな仕組みなの? 流されたほむらはどうなる訳?』
妖精さんA「もこもこにかわります」
四人「……はい?」
妖精さんA「もこもこじゃないといけないくうかんとおるです」
妖精さんB「そのままだとそりゅーしれべるでばーらばら」
妖精さんC「ぼくらはへいきだけど、にんげんさんはもこもこだめだからー」
妖精さんD「とけて、おおきなもこもこのなかまいり」
妖精さんE「もやもやはなんとかなるけどねー」
妖精さんF「でてくるときに、もどるしようです?」
マミ「も、もこもことかもやもやって何……?」
マチョロッテ「……さぁ? どうやら特殊な空間を経由して地上にワープするみたいだけど……」
マチョロッテ「なんかすっごい難しい手法使ってない? それともこれが一番簡単なの?」
妖精さんB「なんいどはそんなに」
妖精さんA「でも、そこそこやりごたえはあるかと」
妖精さんD「くうかんつなげればすみますが」
妖精さんE「かんたんすぎるので」
妖精さんC「ぬるげーはきらわれるです?」
妖精さんF「おもしろみがないなー」
巨大さやか『空間つなげるのって簡単なんだ……』
マチョロッテ「何はともあれ面白さ重視なのね……」
マチョロッテ「ま、ほむらは無事に帰還したでしょうから、次は私が行こう」
マチョロッテ「手を洗ってーシュンッ!!
巨大さやか『じゃ、次はあたしが』
巨大さやか『手を洗いーのシュンッ!!
まどか「ああ、さやかちゃんも消えた……あんなに巨大でもワープ出来るんだ……」
まどか「……残ったの、私たちだけになっちゃいましたね」
マミ「……なっちゃったわね」
マミ「……使い魔の作った道具なんて、できれば触りたくないけど――――」
妖精さんA「おきにめしませぬか?」
妖精さんC「ぼくら、やくたたず?」
妖精さんR「いらんこ?」
マミ「うっ!?(つぶらな瞳で見つめてきている……正直、可愛い)」
186: 2014/01/27(月) 10:41:43.26 ID:1SMnrX600
マミ「ええい! 女は度胸よ!」
マミ「手を洗ってシュンッ!!
まどか「マミさんが消えた……こ、怖いから目を瞑りながら……私も洗うっ!」
まどか「……………」
まどか「あれ? 何も起きてない……」
まどか「!?」
ほむら「あ、鹿目さん。おかえりなさーい」
まどか(ほ、ほむらちゃん!? という事は……)
まどか「こ、此処、私達が地下に落ちる事になった穴があった……廃工場?」
まどか「って事は、地上に帰れたんだ!?」
ほむら「ええ、その通りです。友枝さんも無事ですよー」
マミ「鹿目さん! 大丈夫? なんともない?」
まどか「え、ええ……なんとか……」
まどか(それにしても、こんな長距離の瞬間移動を本当に実現するなんて……)
まどか(使い魔の力とは思えない。ううん、今まで戦ったどんな魔女よりも凄い力がないと多分実現出来ない……)
まどか(そもそも、『魔女』にこんな事って出来るの?)
まどか(もしかして、本当に妖精さんは『妖精さん』……?)
ほむら「さて、それより……どうしましょうかね」
マチョロッテ「どうしたものかしらね……」
マミ「そうね……流石にこれは、どうしたものかしらね……」
まどか(? みんな、何を見て……)
巨大さやか『……………』
まどか「……あー」
巨大さやか『あー、じゃないよまどかぁ!?』
187: 2014/01/27(月) 10:46:03.80 ID:1SMnrX600
巨大さやか『私大きいままなんですけど!? これじゃ家に帰れないんですけど?!』
巨大さやか『小さくなろうとしたらなんか邪念みたいのが込み上がってきて怖くて出来ないし!』
ほむら「ふーむ。小さくなると悪に目覚めて暴れ回る、と……王道ですね」
マチョロッテ「まぁ、大きい奴が小さくなってパワーアップの流れって、悪役のやつだもんね」
巨大さやか『どうすんの!? どうすりゃいいのぉ!?』
ほむら「まぁまぁ。落ち着いてくださいな」
ほむら「妖精さんに頼んで、正義の心を失わずに小さくなれる道具を作ってもらいます」
ほむら「ただ地上には電波があるので、まずは私の家に帰り、そこで作ってもらう事となります」
ほむら「直せるのは私が帰宅してから。なのでざっと一時間後ってところでしょう。
明日の学校には問題なく通えるかと……って、明日は休日でしたか」
巨大さやか『で、でも、お母さん達は……』
ほむら「『信じてメガホン』を使って、親元を離れて暮らしている私の手伝いをしてくれている、とでも説明しておきます」
ほむら「あれ、電話越しでも効果がありますからね。説得は容易ですよ」
マミ「……何を言っているのかよく分からないけど、それ、洗脳じゃないかしら?」
ほむら「どちらも元々あった意思を捻じ曲げるという点では同じです。大差ない大差ない」
マミ「全然違うわよ! 一般人を洗脳なんて断固として認められない――――」
ほむら「非難するのは勝手ですけど、その前に代案を提示してほしいですね」
ほむら「策もなしに現行案を否定するのは、何もせずぼうっとしているのと変わりません」
ほむら「まっとうな手法ではどう考えても対処不可能なんですから、多少非人道的な道に突っ走るのは仕方ないと思いますよ?」
マミ「う、うう、うぐぐぐぐ……!」
ほむら「さ、反論も出なくなりましたね」
188: 2014/01/27(月) 10:50:28.09 ID:1SMnrX600
ほむら「とはいえ私が戻るまでの一時間、さやかさんをこのまま置いておく訳にもいきません」
ほむら「いくら此処が人気の無い廃工場と言っても、全長100メートルの人影は目立ちますからね」
ほむら「なんとか隠さないと、ツイッターやらなんやらに写真が載ってしまいます」
巨大さやか『隠すったって、何処にだよ?』
ほむら「海です」
巨大さやか『……海?』
ほむら「はい。幸いこの工場は海の近くに建っているようですから、そのまま海にダイブ出来ます」
巨大さやか『いやいや。それってつまり潜って隠れろって事でしょ!? 無理だからそんなの――――』
ほむら「多分大丈夫ですって! ほら、やってみなきゃ分かんない!」
巨大さやか『……確かにやってみなきゃ分かんないね。妖精さんだもんね』
巨大さやか『ああもう! やってやるよ!』
マチョロッテ(ああ、さやかが海に入って行く……)
マチョロッテ(……さやかだと思おうとしているが、ぶっちゃけ黒光りした巨人なので)
マチョロッテ(怪獣映画のワンシーンに見えるなぁ)
巨大さやか『……顔まで浸かってみた結果、普通に呼吸出来る事が判明した』
ほむら「これでとりあえず問題は解決です!」
マチョロッテ「あっさりー」
巨大さやか『うう……早くしてよー』
ほむら「そうですねぇ……友枝先輩が邪魔してこなければすぐにでも」
マミ「……このまま魔女を見逃すのは癪だけど、美樹さんを戻せるのは、悔しいけどあなただけみたいだしね」
マミ「今日は休戦としましょう」
ほむら「ご英断感謝します」
189: 2014/01/27(月) 10:55:50.24 ID:1SMnrX600
ほむら「さて、これで一通り問題は解決。あとは後片付けだけ」
ほむら「ようやく大冒険も終わりですね」
マチョロッテ「あー……その言葉を聞いたらどっと疲れたわ」
マチョロッテ「つーか今更だけど地底冒険って……あれがなんか言ってた500fってやつの所為なの?」
ほむら「そうですよ。あれはまだマシな部類ですけどね」
マチョロッテ「マシって……」
ほむら「そうですねぇ、詳しく話しますと――――ん?」
まどか(? ほむらちゃん、工場の窓から空を見上げて……?)
ほむら「……また今度にするとしましょう。話すと長くなるのと、覗き見するような不届き者に聞かせるのは勿体無いので」
マチョロッテ「覗き見? ……よく分かんないけど、まぁ、アンタがそういうならそれでいいわ」
マチョロッテ「んじゃ、さっさと家に帰ってさやかを元に戻してやるか。それで後片付けは終わりなのよね?」
ほむら「ええ。それで全部終わり……」
マチョロッテ「……………」
ほむら「……………」
マチョロッテ「……なんで私の事じっと見つめているの?」
ほむら「……あ、そーだ。シャルロッテさん。今日の夕飯の買い物をしないといけないんでしたー」
ほむら「私はさやかさんを元に戻すため急ぎ家に帰らないといけないので、お使いを頼んでいいでしょうか?」
ほむら「今日の晩ご飯はカレーの予定ですので、カレールー以外の材料を一通り買ってきてください」
マチョロッテ「別にいいけど……」
ほむら「では財布はお渡しします。じゃ、私はこれにて!」
マチョロッテ「え、あ、ちょっと……」
マチョロッテ「……走って行っちゃった。何をそんなに慌てているのかしら」
マチョロッテ「ねぇ? あなた達もそう思わない?」
マミ「」
まどか「」
マチョロッテ「……なんでバイオテクノロジーによって復活したティラノサウルスと遭遇した一般人みたいな顔してんのよ」
190: 2014/01/27(月) 10:58:30.48 ID:1SMnrX600
マミ「えっと、あの……今まで、なんとなくそーなのかなーと思わなくもなかったのですけど……」
まどか「なんというか触れちゃいけない事なのかなーとも思って……」
マミ「で、でもいよいよ触れないといけない気がしたのでー……失礼を承知ながら訊きますけど……」
まどか「聞きたいのですけど……」
マチョロッテ「なんで敬語?」
マミ「ま、魔女……なのでしょーか?」
まどか「ほむらちゃんと仲良くしている魔女、でしょうか?」
マチョロッテ「……ちょっと待ちなさい」
マチョロッテ「なんでそんな初対面みたいな反応なのよ?」
マチョロッテ「言っとくけど私はさやかみたいに妖精さんに改造なんてされてな――――」
マチョロッテ「……………」
マチョロッテ「……………」←ほむらが走っていった先を見つめている
マチョロッテ「……鏡、魔法で作ってくれない?」
マミ「え」
マチョロッテ「鏡、魔法で作ってくれない……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
マミ「ア、ハイ。タダイマ」
マチョロッテ「……」
まどか(ああ……鏡を凝視してる……お面でも付けているかの如く無表情で……)
マチョロッテ「……あの薬、の所為か」
まどか(あ、なんだろう。すごく安らかな笑みを浮かべ)
マチョロッテ「あんにゃろうぶっ頃してやるああああああああああああああああああ!!!!!」
マミ「……暁美さんの逃げた方に走っていったわね」
まどか「……ほむらちゃんの逃げた方に走っていきましたね」
マミ「……帰りましょうか……」
まどか「……帰りますか……」
191: 2014/01/27(月) 11:00:34.66 ID:1SMnrX600
――見滝原上空――
「いやはや、流石にさっきは驚いたね。まさか、この距離で観察していたのが発覚するとは……妖精の道具によって知ったのかな?」
「マミ達が穴に落ちた後は、僕らの観測範囲から出てしまったので何が起きたかは分からないけど」
「それはつまり、あの穴は”僕らですら知らない”場所に繋がっていたと考えるべきだろう」
「そして、突如として地上に暁美ほむら達が戻ってきた現象」
「僕らが使用している空間転移とは明らかに異なる、解析すら出来ない事象」
「興味深い。けれども――――僕らの役目を知った以上、協力してくれそうにはないからね」
\マテヤゴルアアアアアアア!!/
\ヒェェェェェェ!?/
「さてと。どうやって彼女達を排除したものかな……」
「高々原住生物二種を始末するだけなんだから、出来るだけ節約しないとね」
222: 2014/02/05(水) 13:00:00.89 ID:fUVZhJIz0
こにょにょちわー。一週間とちょっとで戻ってきた奴です。目標達成ならず。
私の書いたことで場が荒んでしまい申し訳ない。
>>197
これから益々まどマギの本編の原型が崩壊していきます(目を逸らす
>>200
魔女に操られている→魔女を操っている→魔女と仲良くしている
↑今ココ
実はほむら達が思っているよりも関係は改善されていたり
>>202
一応ループ時の姿です。が、本人が明るく元気な性格なので見た目の印象は全然違います。
笑顔の女の子は無条件に可愛い(持論)
>>207 >>208 >>209
脅威だと認識するには多少なりと相手を理解しないといけません。
そして妖精さんを彼らが理解出来るかは……
それでは今週の投下……
あ、今回インキュベーター一族に対し、ありえない量の自己解釈が入ります。
何分本編じゃ宇宙人ぐらいしかはっきりした情報が無かったので……
ご注意を(色々手遅れ)
223: 2014/02/05(水) 13:01:01.15 ID:fUVZhJIz0
えぴそーど なな 【インキュベーターさんの、じみちなかつどう】
224: 2014/02/05(水) 13:03:32.26 ID:fUVZhJIz0
――――暁美ほむら。
年齢十四歳。種族・人間。
幼少期から心臓が弱く、最近になって手術を受ける。その影響からか体力が非常に乏しく、戦闘能力は皆無。
魔法少女としての素質を持つが、こちらも期待エネルギー摂取値は22300程度と平均の七割程度であり、
利用価値は低いと評価される。
しかしながら彼女は『妖精』と呼ばれる種族と協力関係にあるらしく、『廃棄物』を人間に戻すという行為を実行。
結果、一つの廃棄物を人間へと戻す事に成功した。
状況から判断し、廃棄物が元々人間であると知っている事は確実。
現在までに確認された言動からも我々に敵意を持っているのは明白であり、我々の目的を知った場合、
敵対的行動――――我々に対し攻撃を行う可能性が極めて高い。
妖精達の科学力は少なくとも人間の水準を超えており、敵対行動に移った場合、エネルギー回収効率の低下は否めない。
また、なんらかの方法で我々の存在を人間社会に公表された場合、エネルギー回収計画そのものの維持・運用が
不可能になる事も可能性として十分にあり得る。
よって暁美ほむら及び妖精の速やかな排除を申請。
そのための情報収集を行うべく、追加のエネルギー予算を申請する――――
225: 2014/02/05(水) 13:07:11.84 ID:fUVZhJIz0
――AM10:02 巴マミ自宅――
QB「……ふぅ。文面は、こんな感じでいいかな?」
QB「妖精達の仕業で本星に帰る羽目になり、エネルギー予算が尽きたからね……やれやれ。追加しないといけないとは」
QB(ちょっとこの星の生物を甘く見ていた、という事なのかな?)
QB(いくらセキュリティは必要最低限とはいえ、まさか本星にある僕の精神本体に干渉するとは思わなかったよ)
QB(尤も、所詮その程度だ)
この身体
QB(セキュリティの低い 端 末 を通じ、別惑星に存在する本体の精神に干渉するなんて、
少し文明が発達した星なら簡単に出来る)
QB(基本性能の低いこのボディでは認識出来ない生命体も、宇宙にはいくらでも存在する。
迷彩機能を持つ原生生物なんて珍しくもない)
QB(先日確認された未確認の転移技術も、ま、宇宙は広い。僕らの知らない転送方法があるのは、むしろ自然だ)
QB(それをこんな一辺境、まだまだ幼いこの惑星の生物が持っていた事には少し驚いたけどね。
事前調査で生物進化が遅れているからって、精密調査のコストを減らしたのは失敗だったかな)
QB(早く生態を調査し、駆除していくとしよう)
QB(いや、妖精がそれなりに知性に優れる生命なら、この惑星の管理を任せるのもいいかも知れない)
QB(この星の原生生物なら僕らよりも人間の御し方を心得ているだろうしね。契約作業もスムーズにいくだろう)
QB(その場合僕らが認める”人類”は人間ではなく妖精達になるのかな?)
QB(ああ、そうなったら人間を知的生物と認める必要はなくなる。契約なんてせず、
強制的にエネルギーへと変える初期の計画に戻るかも知れない)
QB(……ま、これは上層部が判断する事か)
QB(――――よし。エネルギーの追加申請が通った。コンピューターによる合否判定は結果の可否が早くていいね)
QB(それじゃあ、情報収集に行くとしよう)
QB(暁美ほむら)
QB(妖精達の力を過信しているようだけど、あまり僕らの力を見くびらない方が良いよ――――)
227: 2014/02/05(水) 13:13:39.57 ID:fUVZhJIz0
―AM10:47 暁美ほむら自宅前―
さやか(さてさて。休日を迎えました今日この頃)
さやか(ほむらからお茶会に誘われたので、ほいほいやってきたさやかちゃんです)
さやか「ふふふ。ほむらとシャルちゃん、驚くかなぁ?」
さやか「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のチョコレートケーキ!」
さやか「二人の吃驚する姿を見たいがために、二ヶ月分のお小遣いを奮発して買っちゃったのだーっ!」
さやか「っと、何時ものテンションで両腕広げちゃったけど、あまり大袈裟に動いちゃ駄目だな」
さやか(ケーキが潰れちゃうかもしれないし……)
さやか(何より、あたしが『人間サイズ』でいられるのって昨日ほむらが渡してくれた指輪のお陰だからね)
さやか(うっかり指輪を落としたり壊したりしたら、住宅地のど真ん中に100メートル級の巨人が出現)
さやか(自衛隊とかの攻撃目標になりそうです。そんな展開ごめんなのです)
さやか(故に今日からあたしは淑女になるのだぁ~……ならざるを得ないと言うべきか)
さやか(さて、そんなこんなでほむらの家の前まで来ました)
さやか(……親元を離れて一人暮らしと聞いていたから、てっきりアパートとかで暮らしているかと思っていたけど)
さやか(見事な一軒家でした。下手をするとあたしの家よりでかいかも)
さやか(これはほむらの家がお金持ちと考えるべきか、或いは妖精さんパワーの仕業なのか)
さやか(……妖精さんパワーだな。十中八九)
さやか「ま、どんな家に住もうとほむらの勝手っとね」
さやか「そんな訳でインターホンをぽちっとな」
――――ピンポーン
ほむら『はーい……あ、さやかさん。お待ちしていましたー。今扉を開けますのでちょっと待っててください』
さやか「あいあーい(カメラ付きのインターホンか……いや、妖精さんアイテムか? 判断に困る)」
ほむら「こんにちはー。早かったですね」
さやか「お菓子買ってたんだけど、思っていたよりスムーズにいけてね。ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」
ほむら「そんな……気を遣わなくても良かったのに」
さやか「いやいや。流石にごちになるだけってのはね」
ほむら「ふふ……ありがとうございます」
ほむら「さ。立ち話も難ですから中へ」
さやか「じゃ、お邪魔しまーす」
ほむら「あ、そうだ。さやかさんの性格上やりそうなので伝えておきますけど……」
ほむら「うちの中を勝手に散策しない方が、身の為ですよ?」
さやか「……あ、うん。成程、そういう事ね」
ほむら「そういう事です」
――――バタンッ
228: 2014/02/05(水) 13:16:06.81 ID:fUVZhJIz0
QB(……ふむ。二人共そのまま家の中に入っていったか)
QB(今回は僕の存在に気付かなかったのかな。或いは、気付いた上で放置したか)
QB(後者だとすれば何かしらの罠を仕掛けている筈だけど……)
QB(低スペックとはいえ、このボディのサーチ機能に引っ掛かるトラップ及びエネルギー反応は確認出来ない)
QB(勿論シールドなんて大層な物は存在せず、電子機器反応は一般的な日本国民の家にあるものと同程度。空間異常も検知されていない)
QB(そして、内部には生命反応が三つ確認出来る)
QB(個体情報は暁美ほむら。先程家に入った美樹さやか。そして元魔女の……人間だった頃はなんて名前だったかな? ま、いいか)
QB(暁美ほむらと元魔女の二人は共に暮らしているとして、美樹さやかがこの家に来たのは何故だろう)
QB(もしかすると、今後どう行動しようか作戦会議でもしているのかな? だとしたら好都合なんだけど)
QB(ま、優先目的は妖精の生態調査だ)
QB(……扉に鍵はかかってない、か)
QB(妖精の力を過信しているからかは分からないけど、実に無防備だね)
QB(それじゃあ、ま、堂々と扉から侵入させてもらうとしよう。身体はこんなのだけど、ドアを開けるぐらいは出来るからね)
QB「よいしょっと」
QB(さてと、内部に潜入したしまずは何処から――――)
QB「……………」
QB「まぁなんという事でしょう」
QB「扉を開けてみたら、中はとんでもない大草原ではありませんか」
QB「空に輝く太陽……地平線から昇っているから朝日でしょうか? それが実に眩しくて温かですねぇ」
QB「風と共に感じ取れる草の香りは、とても心地いいです」
QB「――――って、僕は何を言っているんだ?」
QB「と言うかなんなんだいこれは?」
QB「いやいや。まずは落ち着こう。僕は感情がないんだから、クールになるのなんて余裕さ」
QB「ここに入った扉からもう一度外に出ればいいだけの話じゃないか。うん。それからゆっくりと、この事態を分析しよう」
QB「……言った傍から、僕がここに来るために通った扉が消失していた」
QB「……」
QB「なんじゃこりゃ」
229: 2014/02/05(水) 13:18:24.28 ID:fUVZhJIz0
QB「いやいやいや。なんだいこれは」
QB「空間転移反応を一切感じさせず、何時の間にやら大草原? 出口も消失?」
QB「いくらこのボディのスペックが低いからって、気付かれずにこんな事が可能とは……」
QB「想像していたよりも妖精達の科学力は優れているのかな」
QB「……これは、正確な調査が必要と考えるべきか」
QB「よし。妖精達の科学力を調べる上では好都合だと思って、出口を探しながらこの空間の調査を進めよう」
QB「最悪このボディを破棄して、新規ボディを見滝原に転送すればいいだけだしね」
QB「まずは東に行ってみようかな」
QB「省コストのボディとはいえ、衛星測位システムぐらいは搭載しているからね。マッピングも楽々と――――」
QB「……」
QB「あれ? 衛星データが受信できない?」
QB(どういう事だ? ボディに異常は見られない)
QB(地球に配備してある衛星に不具合が生じたという通達も来ていない。そもそも、一部とはいえ
機能停止するほど重大なエラーなんてここ数百年は検出されていない筈)
QB(だとすれば、此処が僕らの衛星システムでも検知出来ない”場所”と考えるのが妥当か)
QB(成程。先日の空間転移と言い、妖精達は空間関係のテクノロジーに優れているようだね)
QB(仕方ない。地道に歩いて調べるしかないな)
QB(幸い太陽があるから方角は困らないし)
太陽『あったらしい朝が来た~』
太陽『きっぼうの朝が来た~』
QB「……………」
QB「太陽が歌うなんて、訳が分からないよ」
230: 2014/02/05(水) 13:24:44.26 ID:fUVZhJIz0
……………
………
…
QB(さて、歩き始めてから彼是二十分は経ったかな?)
QB(ようやくこの空間で僕以外の生物を見つけた)
妖精さんA「なにしませうー」
妖精さんB「なにしましょーなー」
妖精さんC「なになにします?」
QB(体長は十センチぐらい。人間から見れば小さい僕よりも、大分小さな生き物だ。今は三体ほどが群れているね)
QB(そして、人型。小人という呼び方が相応しい外見)
QB(マミが言っていた未確認の使い魔の特徴と合致する)
QB(恐らく彼らが妖精という種族だろう)
QB(……喜怒哀楽という言葉の真ん中二文字が抜けたような顔は、感情を持たない僕ですら『間抜け』と判断出来る見た目だね)
QB(ま、あれほどの科学力を持つ存在だ。外観はあんなのでも、それなりに知的な会話が可能だろう)
QB(何故結界内では姿を見られなかったのに、此処では見えているのかは分からないけど、これは好都合)
QB(早速対話に持ち込み、出来る限り情報を集めてみる事にしよう)
QB「やあ、はじめまして」
妖精さんA「はじめましてー」
妖精さんB「あいさつしましたな」
妖精さんC「けれどもどちらさん?」
QB「僕はキュゥべえ。よろしく」
QB「君達は……妖精、かな?」
妖精さん×3「さー」
QB「え」
QB「……えーっと、妖精ではない、という事かい?」
妖精さん×3「さー」
QB(……想像以上に知能の低い生物だった)
QB(どうやら彼等は妖精ではないみたいだね。なら、あまり長話をしても情報は得られそうに――――)
妖精さんB「しかしにんげんさんには、ようせいさんといわれてますなー」
妖精さんA「そーいえばそうだったきが」
妖精さんC「なら、ぼくらようせいなのでは?」
QB(……誰かに言われたから妖精って……アイデンティティに乏しい種族なのかな?)
QB(いや、自身の種族を確立させるのは知的生命体における本能みたいなものの筈だけど……)
QB(ま、まぁ、イレギュラーな種族だからね。多少の予想外は仕方ない)
QB「えっと、幾つか聞きたい事があるんだけど、いいかい?」
妖精さんA「ぼくらでこたえられることなら?」
QB「それでいいよ」
231: 2014/02/05(水) 13:27:04.26 ID:fUVZhJIz0
QB「それじゃあ……この空間について聞こうか」
QB「実は、ちょっと迷い込んでしまってね。出口が分からないんだ」
QB「だからこの空間がどんな場所か教えてくれないかい?」
QB(上手く利用すれば、邪魔者をこの空間に閉じ込める事も出来そうだからね)
妖精さんA「ここ、じかんのないくうかんです?」
QB「……はい?」
妖精さんB「ここ、じかんながれませぬ」
妖精さんC「ふほーしんにゅーしゃをもてなすためですので」
妖精さんD「にんげんさんのきちょうなおじかん、むだづかいせぬように」
妖精さんA「じかんなくしときました」
QB「時間を……無くす?」
妖精さんD「あとここ、そうるてきなものこてーするです」
妖精さんA「こころとぶんりしてるとちぐはぐなので」
妖精さんC「こっちもってくるです」
妖精さんB「これでずれないです」
QB「……?」
QB(……どういう事だ?)
QB(話し方が独特な所為でいまいち理解出来ないが……)
QB(それでも言葉通りに解釈するなら、この空間から時間という概念を抜き取った、と言いたいのか?)
QB(馬鹿な。あり得ない)
QB(時間の存在しない世界では、どんな物体も動けないしエネルギーを持てない)
QB(僕が今こうして思考する事すら不可能だ)
QB(時間停止や時間遡行なら科学的に可能だと証明されているけど、時間その物を消すのは不可能だ。論理的に説明されている)
QB(しかも本星にある魂をこっちに持ってきた? ハッタリもいいところだよ)
QB(……何時の間にかもう一体居るのはどういう事なのかな。動体センサーに反応はなかったけど)
QB(ま、どうでもいいか。知能の低さは明白だし、とても高度な科学力を持っているとは思えない)
QB(彼等は労働階級か、端末と言ったところなのかな?)
QB(調査を進めるにしろ、処分するにしろ、もう彼らは用済みだね)
QB「分かった。もういいよ」
232: 2014/02/05(水) 13:29:18.78 ID:fUVZhJIz0
妖精さんA「ぼくらのこと、もうしりたくなし?」
妖精さんB「もっとしらべていいのよ?」
妖精さんD「でもじっとみられるのおはずかし」
妖精さんC「かいぼーされるのもいいたいけんになりますな」
QB「……!」
QB(なんだ……今の言葉……)
QB(まるで、僕が君達の事を調べようとしていたのを知っていたかのような台詞……)
QB(しかもずっと見ていた……観測していたのが僕らだと気付いていたのか?)
QB(その上で解剖されるのを望むような、こちらからすれば挑発に取れる発言)
QB(深読みし過ぎか? しかし……万一知っていたのだとすれば……調べない訳にもいかない、か)
QB「そうだね……今ので、少し興味が出てきたかな」
妖精さんE「きゅーべーさん、ぼくらのことしりたい?」
妖精さんD「せつめーしょごよういします?」
妖精さんC「しかしにんげんさんに、ぼくらせつめーへたといわれた」
妖精さんB「のうにいんすとーるはおーけーでしたか?」
妖精さんA「のーのよかん」
妖精さんE「のうですからなー」
QB(……堂々と相談? いや、こちらを混乱させるためのフェイクという可能性も……)
妖精さんC「なら、のうにはいればよいのでは?」
QB(……ん?)
QB(なんだ、今、何かとんでもない言葉が聞えたような……)
妖精さんA「ないすあいであ」
妖精さんB「ぎゃくてんのはっそう」
妖精さんD「だれがいくので?」
妖精さんE「いいだしっぺのほーそく」
妖精さんC「ではぼくでは?」
妖精さんA「きみのよーなきがしますなー」
妖精さんB「どうぞどうぞ」
QB「ま、待ってくれ。君達は一体何を言って――――」
妖精さんC「きゅーべーさん」
妖精さんC「おそばにー」
QB「っ!?(なんだ、視界が白くなって――――!?)」
234: 2014/02/05(水) 13:34:58.43 ID:fUVZhJIz0
QB「はっ!?」
QB(なんだ……何が起きた……?)
QB(搭載時計と認識時計にずれはない……データ上僕の意識は途切れていない、
或いは自動誤差修正によってログが残らない程度のごく短時間だ)
QB(だが、なんだ……何かあったような……)
QB(そもそも僕はここで……何をしていたんだっけ?)
QB(何かと話していたような……というか、話していないと数分間この場に突っ立っていた事に……)
QB(これは記憶が改ざんされたのかな? いや、しかしその割には大雑把というか、思い出せそうなのに判然としないだけというか)
QB(駄目だ。考えるほど混乱してくる)
QB(一先ず本来の目的……妖精の調査を進めるとしよう)
QB(……やれやれ。簡単に片付く案件だと思っていたんだけどね)
QB(面倒だなぁ)
……………
………
…
QB(当てもなく歩いていたら、平原のど真ん中に建つ一軒家を見つけてしまった)
QB(いや、建物というよりほったて小屋かな? 人間的な表現をするなら『素朴』と『粗雑』の中間ぐらいの出来だし)
QB(ま、建物は建物だ。調べれば、何かしらの情報を得られるかも知れない)
QB(無論、何もないただっ広いこの空間にぽつんと建つ一軒家を見つけられる可能性は、限りなく低い)
QB(だとすれば、この発見は偶然ではなく必然)
QB(恐らく何かしらの罠があの建物には仕掛けられているだろう)
QB(しかし調査しない訳にはいかない)
QB(それに危険があったところでこのボディは使い捨てだ。躊躇う理由はないね)
QB「一応周囲を観測……うん。予想通り、罠は確認出来ない。出来ないだけだろうけど」
QB「とりあえず、ドアから進入させてもらうとしよう。鍵は掛かっていないようだし」
QB(さて、一体どんな罠が飛び出してくるか――――)
235: 2014/02/05(水) 13:35:41.78 ID:fUVZhJIz0
「いらっしゃいませ、ご主人様」
236: 2014/02/05(水) 13:39:18.63 ID:fUVZhJIz0
QB(……これは……?)
QB(出迎えたのは人間の若い、二十歳ぐらいの女性かな? 一般的に、美女と呼ばれる類の容姿をしている)
QB(いや、人間の反応がないな。ロボット? 外見上区別出来ないほど精巧となると、これも妖精の発明品か)
QB(……どういう訳か体表から『紙』の反応がするのは何故なんだろう? 紙装甲? そんな訳ないか)
QB(それより、いや、保留している問題がいい加減山積みになっているけど、兎に角それより)
メイドロボ「まぁまぁ、お身体が汚れているではありませんか」
QB(何故かメイドロボに捕まり、何処かに連れ去られている事だ)
QB(余程高性能のセンサーを搭載していなければ僕の姿は見えないのに、あっさり見つかってしまったよ)
QB「あの、僕はご主人様じゃないんだけど」
メイドロボ「この家に来た方は、全て等しくご主人様です」
QB(……交渉は出来そうにない、か)
QB(仕方ない。しばらく様子見といこう)
QB(それにしても、僕を何処に連れ去ろうと言うんだろうか――――)
メイドロボ「さあ、ここでお身体を洗いましょう」
QB(……浴室につれて来られた。本当に身体を洗うつもりなのかな?)
QB(いや、恐らくこれは対象の分析が目的か)
QB(このボディに接触する事で、僕らの情報を直接読み込もうとしているのだろう)
QB(敵を知るために情報収集……悪くない判断と言いたいけど、生憎それは叶わない)
QB(所詮このボディは下位端末。メインコンピューターどころか、サブコンピューターへのアクセス権限すら持たない)
QB(仮に侵入に成功したとして、僕らの情報処理技術はこの星より数千万年ほど進んでいる)
QB(妖精がどれほど高度な科学を持っていようと、サブコンピューターの第一防壁すら破る事は出来ないよ)
QB(それも予想外に突破出来たとしても、今度はマザーコンピューターが全回線を遮断し、外部アクセスを物理的に排除するんだ)
QB(暁美ほむら。恐らくこの作戦を立てたのは君だろうが、君が欲している情報は決して手に入らないよ――――)
238: 2014/02/05(水) 13:44:40.25 ID:fUVZhJIz0
メイドロボ「では身体を洗いましょう」
メイドロボ「まずはお湯で――――汚れをふやかします」
QB「え?(なんか持ち上げられて、湯船の上に運ばれ)」
メイドロボ「そいっ」
QB「がぼぼぼぼぼぼぼーっ!?(そんで沈められたーっ!?)」
QB(え、ちょ、なにこれいきなり拷問?)
QB(というかなんで息苦しさを感じているんだ? だってこのボディは使い捨てで、痛覚なんて搭載していな)
――――警告
QB(え……ボディシステムからの警告……?)
――――現在本ボディには操縦者の魂及び精神が完全に移転しています
――――このままボディが破壊された場合、操縦者は氏亡する可能性が極めて高いです
――――ただちに本ボディから魂及び精神を離脱させるか、危機回避行動を取ってください
QB(……ああ、成程。魂と精神が本星からこっちに移ったから、五感機能が起動した訳だ)
QB(そう言えばそんな事言われていたね。誰から聞いたかは覚えてないけど)
QB(……つまりこのままだと窒息氏?)
QB「ぎゃぼぼぼぼっ!? た、助け……助け……ごぼぼぼぼぼっ!」
メイドロボ「汚れがふやけたところで、はい、ゴシゴシ」
QB「ちょ、それタワシじゃ、あだだだだだだだだっ!?」
QB「痛い! すっごい痛い! 痛覚セーブぐらいは機能してよ!?」
メイドロボ「さあ、綺麗になりましたね。次はお食事です」
QB「ぐはぁっ! や、やっと終わった……」
QB(しかしボディの体表部分がうっすらと削られた)
QB(このまま此処に居るのは危険だ……なんとか、なんとか離脱しないと……)
239: 2014/02/05(水) 13:48:25.35 ID:fUVZhJIz0
QB「……ところで、君は僕を何処に連れていくつもりなんだい?」
メイドロボ「先程言いましたとおり、お食事を用意してあります」
メイドロボ「ですから、食堂へとお連れするのです」
QB「いや、お連れするのですって敬語として可笑しい……」
QB「そもそもこのほったて小屋みたいな場所に食堂なんてある訳が」
メイドロボ「こちらが食堂です」
QB「……………」
QB「まぁ、なんという事でしょう。ドアの向こうはまるで西洋の貴族が使ったかのような、豪勢な食堂ではありませんか」
QB「……衝撃のあまり、思った事をそのまま呟いてしまったよ」
QB(テーブルには何時の間にか料理が用意されている……見た目から判別するとフランス料理、かな)
QB(前菜からデザートまで全部テーブルに並んでいるから、正しい様式ではないようだけど)
メイドロボ「さあ、ご主人様。こちらの席におかけください」
QB「えーっと、席に座るのはいいけど」
QB「でも僕、食事なんていらないんだけど。そもそも手が使えないからこういう料理は……」
メイドロボ「はい、あーん」
QB「……まぁ、マミがよくその手法で僕に食事をさせたから、予想はしていたけどね」
QB(……何かされる前に大人しく食事を貰う方が得策、かな)
QB(それにこの空間に何時まで滞在するか分からない以上、エネルギーの補給をしといて損はない)
QB(どうせこのボディには毒なんて効かないし)
メイドロボ「ご主人様?」
QB「ああ、なんでもないよ」
QB「じゃ、いただくとしよう」
メイドロボ「では――――はい、あーん」
QB「あーん」
QB(……むっ!!)モグモグ
QB(独特の歯応え、鼻を突きぬける匂い、何より大胆不敵としか言えない未体験の味――――)
QB(これは、これは――――!!)
QB「まっずぅあああああああああああああ!?」
240: 2014/02/05(水) 13:51:33.15 ID:fUVZhJIz0
メイドロボ「あらあらあらあら?」
QB「なんじゃこりゃあああああ!?」
QB「不味いと叫んだけどこれは不味いってレベルじゃないよ!? 劇物指定の薬品を口に含んだみたいな味だったよ!」
QB「というかこのボディには味覚センサー搭載してないんだよ!?」
QB「つまりこれは味覚じゃなくて単純な生命の危機を示している信号だよ! 下手したら氏ぬところだったんだよ!?」
QB「代わりはいくらでもいるけど今だけは氏ぬ訳にはいかないんだよ!」
メイドロボ「まだお食事は残っています」
QB「僕の話を聞けええええええええええええええええ!」
メイドロボ「さあ、ご主人様。あーん♪」
QB「ぎゅぷっ!?(あ、開けた口に無理やり押し込まれ……!?)」
QB(うごおおおおおお!? 口の中に満ちるどうしても表現出来ない味覚は……)
QB(ぐごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)
QB(不味い! いや味覚的な意味じゃなくて状況的に!)
QB(このままだと本当に氏ぬ! 機体破棄のシステムを作動して魂と精神を本星に戻し――――)
――――エラーコード検出
QB(……はい?)
――――解析不能の刺激がボディに加わり、処理しきれない情報の影響でプログラムの一部が破損
――――フォロープログラムが作動しましたが、ボディ機能の一部が使用不能になっています
――――ただちに本星へエラー報告し、新規ボディに移行してください
QB(解析不能の刺激?)
QB(……あ、さっきの激マズ料理の事かな。そりゃあ解析不能だよね。だって味覚センサーがなくても不味いって分かるぐらいだし)
QB(……………)
QB(つまりアレか。今は離脱出来ないと)
QB(……………)
QB「た、助けてくれええええええええええええええええええっ!?」
241: 2014/02/05(水) 13:54:39.33 ID:fUVZhJIz0
メイドロボ「ああ、ご主人様。一体どちらに?」
QB「どちらじゃない! 逃げるんだよおおおおおおおおっ!」
QB(扉が少し開いてる! このまま隙間に入り込んで部屋から脱出だ!)
QB(――――よし! 無事に脱出出来――――)
QB「……え……?」
QB(扉を潜ったら、廊下ではなくて……怪しい研究施設のような場所に出た)
QB(いや、扉を潜ったら別世界はもう体験済みだ。そこは、妖精達の仕業という事でいいとしよう)
QB(問題は……なんでこの部屋にはメイド服姿の人間? が入っているガラス容器がずらりと並んでいるか、だ)
QB(メイドの数はざっと百体、かな?)
QB(まるで人間が好む、バイオでハザードな研究所で見られそうな光景だね)
QB(しかもどれも生命反応がある。人工的に作った生命体だとすれば、中々の科学力だ)
QB(恐らく此処は妖精達の研究施設なんだろう)
QB(……)
QB(まさか彼女達が一斉に起きて僕を狙う、なんて展開はないよね?)
QB「いやいや。僕は何を考えているんだ。そんな非論理的な事が起きる訳」
ガラスの中のメイド『ゴ、シュジン、サマ』
QB「」
ガラスの中のメイドA『ゴシュジン、サマ』
ガラスの中のメイドB『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイドC『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』
QB「いや、あの、僕はご主人様ではありませ」
ガラスの中のメイド『ゴシュジンサマ!』ガシャーン!
QB「ひぃっ!? ガラス容器を破ってメイドが出てきたぁ!?」
――――ガシャーンッ!
――――ガシャーンッ!
QB「つ、次々に出てきて……」
QB「ひいいいいいいいいいっ!?」
メイド「ゴシュジンサマ、ゴホウシ、イタシマス」
QB「いらない! 奉仕なんか必要ない!」
メイド「ゴメイレイ、ヲ」
QB「僕の傍に近寄るなあああああああああああああああああああっ!!」
242: 2014/02/05(水) 13:58:19.93 ID:fUVZhJIz0
QB(は、早く此処から脱出しなければ!)
QB(こ、この扉は……鍵がかかってない!)
QB(何処に出るかは分からないけど今は此処から脱出するのが優先だ!)
QB「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
QB「よし! 無事に抜けた……!」
QB(周囲は……ビル街、東京の繁華街を思わせるごちゃごちゃとした場所だ)
QB(ついてる! 逃げるだけならこれほど好都合な場所はない!)
QB(それに一般人らしき人間が大量に居る。彼らの間を縫うように進めば、あのメイド達を振りきれるかも知れない)
QB(そうと決まれば早速人ごみに――――)
――――ゴシュジンサマ
QB「ひっ!?」
QB(お、追ってきたのか!?)
QB(いや、冷静に考えれば扉を通れば此処に来るんだから、追ってこれるに決まってるじゃないか!)
QB(落ち着け。落ち着いて逃げるんだ……)
――――ゴシュジンサマ
QB(声が何処から聞こえてくるか分析するんだ。何処にメイド達が潜んでいるか、把握するんだ)
――――ゴシュジンサマ
QB(声は、声は……)
QB(真上、から?)
メイド「ゴシュジンサマ、ミィーツケタァー……」
QB「う、うわああああああああああああああっ!?」
QB(こ、こんな近くにまでメイドがっ!?)
QB(逃げないと……人ごみに……)
メイド「ゴシュジンサマ、ドコニ」
メイド「ゴシュジンサマ、イズコ」
メイド「ゴシュジンサマ、ハンノウアリ」
QB「ひぃぃぃっ!? ひ、人ごみが何時の間にか、全員メイドに……!」
QB「今まで擬態していたのか!?」
243: 2014/02/05(水) 14:02:57.42 ID:fUVZhJIz0
QB「そ、それより今は逃げないと……メイドが来られない場所に……」
メイド「ゴシュジンサマ!」
QB「う、うわあっ!?」
QB「あっ……!?(後退りした場所に、蓋の外れたマンホールが……)」
QB「うわああぁぁぁぁ……………!!」
――――ばしゃーんっ
QB「ぶはっ! げ、下水道に落ちたのか……!」
QB「ま、まずは這い上がって……」
――――ばしゃーんっ!!
QB「!?」
メイド「ゴシュジンサマ、ドチラニ」
QB「お、追ってきた……はっ!?」
QB(壁に亀裂が……僕でも通れるかギリギリの隙間だけど……)
QB(でも通れたなら、人間サイズであるメイドは追って来れない!)
QB「うおおおおおおおおおおおおっ……!」
メイド「ゴシュジンサマ!」
QB(せ、せまい……だが通れる!)
QB(なんとか通り抜け……)
QB「られた!」
QB(しかも運のいい事に、亀裂の先の空洞も大して広くない! さっきみたいに、メイドがこの場に突然現れる事は絶対にない!)
QB(だけど念のため後ろを振り返って――――)
メイド「ゴシュ、ジン、サマ……」
QB(亀裂に腕を突っ込んで、こっちに伸ばしている……なんて執念だ)
QB「だけど通れはしないみたいだね……やれやれ、ようやく一休み出来るよ……」
244: 2014/02/05(水) 14:06:29.76 ID:fUVZhJIz0
?「チュー」
QB「うわっ!?」
ネズミ「チュチュチュン」
QB「って、ね、ネズミか……下水道だから、ネズミが棲みついてても可笑しくはないか」
QB「やれやれ……こんな下等な小動物に驚くなんて……精神疾患でも患ったかな……」
ネズミ「チュチュチュンチュ」
QB「ああ、もう。チューチュー五月蝿いね」
QB「しかも僕の近くから離れないし……餌はあげないよ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「だから五月蝿いって」
QB「というか、なんで逃げないんだ? 体格差で言えば、文字通り猫とネズミほどの差がある相手を目の当たりにして……」
QB「……いや、待て」
QB「そもそもなんでネズミに僕の姿が見えて……」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「……ん?」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「なんだ……」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「いや、そんな筈はない」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「このボディは、あくまで対人間用だ。ネズミの相手なんて想定されていない」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「だ、だから、分かる訳がないんだ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「ネズミの言葉なんて」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「分かる、筈が―――――」
245: 2014/02/05(水) 14:07:12.63 ID:fUVZhJIz0
ご しゅ じ ん さ ま
チュ チュ チュ ン チュ チュ
246: 2014/02/05(水) 14:10:24.78 ID:fUVZhJIz0
QB「う、うわああああああああああああああああああああっ!?」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「ひぃっ?! ね、ネズミが、ネズミがたくさん……!!」
QB「違うんだ! 僕はご主人様なんかじゃないんだ!」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
QB「チーズを持ってくるなああああああああああああああああああああああああああああ!!」
QB(こ、此処も駄目だ! もっと、もっと遠くに逃げなくては!)
QB(そうだ! ここから逃げ出すには、この家から逃げなくては……)
QB(いや、待て……)
QB(そもそも僕は、暁美ほむらの家に入ったつもりでこの空間に来た訳で)
QB(だけど外に出る扉は消えていて)
QB(僕は、妖精と暁美ほむらの目的が僕達の情報を収集する事だと思っていたけど……)
QB(最初からそんなものには興味がなくて)
QB(最初から僕をここから出さないつもりなのだとしたら――――!?)
QB「ひいぅあああああああああぁああぁあああっ!?」
QB「あ、あ、うあぁああああ、ああああああああああっ!!!」
QB「誰か助けてくれええええええええええええええええ!!」
QB「僕をここから出してくれえええええええええええええっ!!」
247: 2014/02/05(水) 14:11:11.73 ID:fUVZhJIz0
――――それから僕は走り続けた。
――――何処までも何処までも、何処かも分からなくなるまで走り続けた。
――――走り、扉を、隙間を抜ける度に景色は変わった。
――――だけど何度景色が変わっても、そこは僕の見慣れた世界ではなかった。
――――何度景色が変わろうと、メイド達の奉仕は続いた。
――――そして――――
248: 2014/02/05(水) 14:17:21.84 ID:fUVZhJIz0
QB(も、もう駄目だ……走れない……エネルギー切れだ……)
QB(延々と砂漠だけが広がるこの世界に来てからメイドの追撃が止んだのはいいけど)
QB(代わりに、エネルギー補給に使えそうな物質が確認出来ない)
QB(まさか最後が飢え氏になんてね……)
QB(いや、飢え氏にでいい……)
QB(このまま僕は、土に還ろう)
QB(このまま、静かに……)
「猫さん。どうしたの? 怪我しているの?」
QB「ひっ!?」
QB(こ、今度は幼い女の子……ろ、六歳ぐらいか……!?)
QB(いや、外見は関係ない!)
QB(この空間に居る者は全員……僕をもてなそうとする!)
QB「君も、君も僕を、僕をああああああああああっ!?」
幼女「あ、あばれちゃダメ!」
幼女「だいじょうぶっ」
QB「ぁ――――」
QB(な、んだ……彼女に抱きしめられてたら、急に冷静さが戻ってきた……)
QB(いや……冷静さだけじゃない)
QB(胸の奥が熱くなる、この衝動は――――)
幼女「こわくないよ。あんしんして」
QB「き、君は……」
QB「僕を助けてくれるのかい……?」
幼女「何かにおわれているの?」
幼女「だったらだいじょうぶ! わたし、これでもすっごくつよいんだから!」
幼女「だから、どんな人がきてもあなたをまもってあげるよ!」
QB「……ありがとう、ありがとう……!」
幼女「おうちまでつれていってあげるね」
QB(……なんて、なんて暖かいんだ……)
QB(――――ああ、僕は、僕は何を想っているのだろう)
QB(彼女から離れたくないと、執着心としか言えない想いを抱いている)
QB(これは一体……)
QB(いや、今はもう何も考えたくない)
QB(このまま彼女と、静かな日々を過したい……)
249: 2014/02/05(水) 14:19:59.97 ID:fUVZhJIz0
幼女「あそこが私のうちだよ」
QB(ああ、気が付けば、砂漠から草原に来ていたか)
QB(最早一瞬で地形が変わる事に、なんら驚きはしない)
QB(もういい。何もかも、宇宙の寿命すらどうでもいい)
QB(今日から彼女と静かに暮らそう)
QB(草原の真ん中にぽつんと立つ、あの小さな家で――――)
QB「――――い、いや、待ってくれ」
QB「あの、あの家は」
QB「あの家は、この空間に来て最初に見つけたほったて小屋じゃないか――――」
250: 2014/02/05(水) 14:21:49.04 ID:fUVZhJIz0
「ひどいなぁ。あそこが私の家だよ?」
QB(あそこが彼女の家? だとしたら、だとしたらあのメイドとまた……!?)
QB「うわああああああああああああああああっ!?」
「あ、こら、逃げちゃ駄目だよ」
QB「嫌だああああああああっ! あそこには、あそこだけは止めてくれええええええええっ!!!」
「もう、何言ってるの? 今日からあそこがあなたの家になるのよ?」
QB「僕には帰る家があるんだ!」
QB「マミ、マミの家……! マミの家に帰してくれ! お願いだから!」
「駄目だよ。だって――――」
メイドロボ「あなたは、私のご主人様じゃないですか」
QB「え……」
QB「ぼ、僕は、僕はあの小さな子に連れてこられ……」
QB「いや、最初から僕は、君に……?」
メイドロボ「今度は逃がしませんよ」
QB「うぁ、あ、ぁあ……」
メイドロボ「さ、これからずっと暮らしましょうね」
QB「ドアを、通ってしまった……」
QB「離して……離してくれ……」
QB「嫌、だ……嫌だ、嫌だぁぁぁぁ……」
QB「僕は、外に……」
QB「あの扉から外に出て……」
――――ギィ……
QB「扉が、独りでにしまって……」
QB「……助けて……」
QB「助け、て……」
――――ギィィィィィィィ……
QB「誰か、助、け……」
251: 2014/02/05(水) 14:22:39.37 ID:fUVZhJIz0
――――バタンッ
252: 2014/02/05(水) 14:23:25.37 ID:fUVZhJIz0
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
253: 2014/02/05(水) 14:26:47.72 ID:fUVZhJIz0
QB「はっ!?」
QB「此処は……暁美ほむらの家の前……?」
QB「じ、時間は……っ!?」
QB「そんな馬鹿な?!」
QB「なんで、僕が暁美ほむらの家に侵入を試みた時刻から一秒も経っていないんだ!?」
QB(今のは幻覚……いや、内蔵されている時刻システムと衛星内臓の時刻システムとの間に三時間以上のずれがある)
QB(まさか衛星の時刻システムがずれているとは思えない)
QB(だとすれば、僕だけが一方的に時間を経過した事になる)
QB(時間操作――――僕らでも大規模な施設と膨大なエネルギーを必要とする現象)
QB(魔法少女のように感情の相転移から莫大なエネルギーを産み出せる存在なら兎も角、
こんな一軒家に用意出来るような小型施設じゃ僕らでも実現不可能……)
QB(……ん? なんだろう……僕は本当の答えを知っているような……)
QB(いや、そんな事より……)
QB「おのれ暁美ほむらぁぁぁぁ……!」
QB「無傷で外にほっぽりだすとは、情けを掛けたつもりか!」
QB「あんな下等生物に情けを掛けられるなんて冗談じゃない!」
QB「感情はないけどプライドはあるんだ! 下等生物如きに負ける訳には――――」
QB「って、本星から通信!? なんだよ、忙しいのに……」
254: 2014/02/05(水) 14:29:44.86 ID:fUVZhJIz0
――――緊急通達
――――個体番号×××-××××-××××は現在、精神疾患を発症していると判定された
QB「……what?」
――――本星で肉体の確保は完了済みであるが、×××-××××-××××の魂と精神は地球にある事が判明している
――――精神疾患個体である×××-××××-××××は周囲の個体に危害を加える可能性が極めて高く、
――――また、人間に対し親近感と呼ばれる感情を持ち、当方の情報を漏らす事も想定される
――――それは我々の今後の活動を妨げるものであり、放置する事は出来ない
――――よって×××-××××-××××は速やかに処分する
QB「……処分?」
QB「……×××-××××-××××って、僕だよね?」
QB「僕が感情に目覚めた? はは、ご冗談を」
QB「……………」
QB「いや、思い当たる節結構あるかも?」
QB「……………」
QB「やっべぇぇぇぇぇぇぇ……!」
QB「こ、このままじゃ良くて本星に強制送還された挙句貴重な感情保有個体として”農場”行き! 最悪処分されてエネルギー炉行きだ!」
QB「何処かに身を隠さなければ……しかしこのボディには位置情報が……でも、でも……」
QB「……これも全部、暁美ほむらの所為だ……」
QB「おのれ……おのれ……暁美ほむらぁ……!」
QB「何時か必ず復讐してやるからなァ―――――――――ッ!!」
274: 2014/02/10(月) 19:02:03.93 ID:b7xIIdTL0
えぴそーど はち 【ほむらさん達の、おなやみそうだんしつ】
275: 2014/02/10(月) 19:02:54.91 ID:b7xIIdTL0
時は前回から遡る事―――― 一分ぐらい前。
―AM10:47 暁美ほむら自宅前―
さやか(さてさて。休日を迎えました今日この頃)
さやか(ほむらからお茶会に誘われたので、ほいほいやってきたさやかちゃんです)
さやか「ふふふ。ほむらとシャルちゃん、驚くかなぁ?」
さやか「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のチョコレートケーキ!」
さやか「二人の吃驚する姿を見たいがために、二ヶ月分のお小遣いを奮発して買っちゃったのだーっ!」
さやか「っと、何時ものテンションで両腕広げちゃったけど、あまり大袈裟に動いちゃ駄目だな」
さやか(だって、あたしが『人間サイズ』でいられるのって……昨日ほむらが渡してくれた指輪のお陰だし)
さやか(うっかり指輪を落としたり壊したりしたら、住宅地のど真ん中に100メートル級の巨人が出現)
さやか(自衛隊とかの攻撃目標になりそうです。そんな展開ごめんなのです)
さやか(故に今日からあたしは淑女になるのだぁ~……ならざるを得ないと言うべきか)
さやか(さて、そんなこんなでほむらの家の前まで来ました)
さやか(……親元を離れて一人暮らしと聞いていたから、てっきりアパートとかで暮らしているかと思っていたけど)
さやか(見事な一軒家でした。下手をするとあたしの家よりでかいかも)
さやか(これはほむらの家がお金持ちと考えるべきか、或いは妖精さんパワーの仕業なのか)
さやか(……妖精さんパワーだな。十中八九)
さやか「ま、どんな家に住もうとほむらの勝手っとね」
さやか「そんな訳でインターホンをぽちっとな」
――――ピンポーン
ほむら『はーい……あ、さやかさん。お待ちしていましたー。今扉を開けますのでちょっと待っててください』
さやか「あいあーい(カメラ付きのインターホンか……いや、妖精さんアイテムか? 判断に困る)」
ほむら「こんにちはー。早かったですね」
さやか「お菓子買ってたんだけど、思っていたよりスムーズにいけてね。ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」
ほむら「そんな……そんな気を遣わなくても良かったのに」
さやか「いやいや。流石にごちになるだけってのはね」
ほむら「ふふ……ありがとうございます」
ほむら「さ。立ち話も難ですから中へ」
さやか「じゃ、お邪魔しまーす」
ほむら「あ、そうだ。さやかさんの性格上やりそうなので伝えておきますけど……」
ほむら「うちの中を勝手に散策しない方が、身の為ですよ?」
さやか「……あ、うん。成程、そういう事ね」
ほむら「そういう事です」
――――バタンッ
276: 2014/02/10(月) 19:05:21.01 ID:b7xIIdTL0
さやか「おー、結構普通の家だねー」
さやか「ほむらの家だからもっと不思議ワールドが展開しているかと思ったけどなー」
ほむら「それはそうですよ。妖精さんが改造しただけで、見た目は変わらないんですから」
さやか「いや、やっぱ普通じゃないわ。うん」
ほむら「むぅ……まぁ、普通じゃないですけど」
さやか「ああ、自覚はあるんだ」
ほむら「さやかさんは私をなんだと思ってるんですか……」
さやか「天然腹黒のーてんき女」
ほむら「……昔、友人に同じ事を言われた事があります」
さやか「昔からなのかよ」
\イツカフクシュウシテヤルカラナァー!!/
さやか「? ……なんか、聞こえた?」
ほむら「え? そうですか? ……気のせいじゃないですか?」
さやか「んー。多分そだね」
ほむら「では、そろそろ行きますよ」
ほむら「私から離れないでくださいね」
さやか「心得てるさ」
さやか「で、興味本位で聞くけど、万一この家をうろちょろしたらどうなるの?」
ほむら「遭難します」
さやか「……はい?」
ほむら「妖精さんによってこの家は改造されていまして」
ほむら「特定の行動を取らないと、扉の向こうが大平原とか大海原になってしまうんです」
ほむら「しかもうっかり中に入っちゃうと、扉が消えてなくなるのですぐには出られないんですよー」
ほむら「ちなみに玄関は外から入る場合、妖精さんが作ってくれたこの鍵を使うか、三回ノックし、
開けゴマと言った後に自分で扉を開けないと大草原に繋がります」
さやか「自分で開けたら呪文の意味ないじゃん……つーか、なんでそんな事になってんだよ」
ほむら「泥棒対策をしてくださいと妖精さんに頼んだのですが……ちょっと目を離した隙にこんな事になっていまして」
さやか「あー、まぁ、うん。妖精さんなら仕方ないね」
ほむら「で、どうせなら徹底的にやっちゃおうと私が唆したり囃し立てたりしました」
さやか「お前の所為じゃねぇか!」
ほむら「何時もの事ですよー」
さやか「まかり間違ってもそれはアンタの台詞じゃない」
277: 2014/02/10(月) 19:06:54.81 ID:b7xIIdTL0
ほむら「ま、そんな事情から、一部私にも何処に繋がって何が起きるか分からない部屋があります」
ほむら「氏にはしませんけど、気を付けてください」
さやか「たく……とりあえず、りょーかい」
さやか「念のために聞くけど迷い込んだ場合は?」
ほむら「迷い込んだ部屋の中で、一時間ほど身動き一つ取らないでください」
ほむら「猛獣に襲われる事もあるかも知れませんが、全部妖精さん開発の人工生命体ですから食べられはしません」
ほむら「兎も角動かなければ、一時間で自動的に外へと放り出されます。これが一番確実な脱出方法です」
ほむら「まぁ、歩き回って色々なアクションを起こしていれば、家の何処かに出られるかも知れませんが」
さやか「……なんで一時間じっとしていると外に出られる事に?」
ほむら「そこは私からのオーダーでして」
ほむら「へとへとになるまで歩き続け、故郷を思い返して泣き喚き、知らぬが故に氏の恐怖に震え」
ほむら「最後は気絶なり飢餓なり渇きなりで身動きが取れなくなってから、お帰りいただく仕様です♪」
さやか「えげつねー」
ほむら「ああ、あと迷い込んだ空間と外部では時間の流れが異なりますから、私が救助に向かう事はあり得ませんからね」
ほむら「妖精さん曰く、用意された空間には『時間が存在しない』そうなので、内部で何十年暮らそうと外では一秒すら経っていないので」
さやか「……ほぼホラーだな」
278: 2014/02/10(月) 19:08:55.22 ID:b7xIIdTL0
――AM10:50 ほむら宅――
ほむら「ここの戸は『ふっとんがふっとんだー』等のダジャレを言った後に開けると中に入れます」
ほむら「そしてようやくリビングです」
さやか「……リビングに入るまでに三分かかったんだけど」
ほむら「本来はこの鍵を使って通るので、そんなに時間はかからないんですけどねー。ま、説明回って事で」
ほむら「どうです? 我が家のセキュリティは万全でしょう?」
さやか「お前は一体何と戦ってるんだという感想しかないんだけど」
ほむら「なんでしょう……運命、とか?」
さやか(何故か冗談に聞こえない不思議)
さやか(……見た目普通のリビングだけど、迂闊に触らないようにしとこう。うん)
さやか(ま、シャルちゃんがソファに寄り掛かりながらふつーに雑誌読んでるから、そう警戒しなくても良さそうだけど)
さやか「やあやあシャルちゃん。うぃーっす」
シャル「うぃーっす。早かったわね」
さやか「シャルちゃんとほむらへのお土産がスムーズに買えたからね。ほれ」
ほむら「あ。ありがとうございます……ん? この包装は……何処かで見た覚えが……」
シャル「くんくん……こ、この匂いはまさか!?」
シャル「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のケーキ!?」
さやか「匂いで分かるって犬かよ……」
妖精さんA「けーき?」
妖精さんB「けーきのにおい、するです」
妖精さんC「なにはともあれおかしたべたし」
さやか「そして妖精さんが当然のように湧くという」
ほむら「もう慣れた光景でしょう?」
ほむら「そんな訳で、リビングは妖精さんエリアとなっています。電波は完全遮断。携帯は使えませんのでご注意を」
さやか「了解~」
279: 2014/02/10(月) 19:10:56.51 ID:b7xIIdTL0
妖精さんA「けーきっ。けーき!」
妖精さんB「…………」←嬉しさで失神している
妖精さんC「ピ――――――――――――!!」
ほむら「さて、妖精さんが本能タイムになってますので、さっさと切り分けるとしましょう」
ほむら「ジュースも持ってきますから、ちょっと待ってくださいね」
シャル「あ、ジュースならもう私が出しておいた」
ほむら「あら、すみません。手伝えなくて」
シャル「何今更畏まってんのよ。私ら……同居人なんだからさ」
さやか(ああ、あの言いよどみ方)
さやか(少なくともシャルちゃんの中では同居人以上の関係になりつつあるのですね)
さやか(だけど指摘したら顔を真っ赤にして怒るに決まっているので、生暖かい眼差しを送るさやかちゃんでした)
シャル「……なんかさやかが癪に障る目線を向けてんだけど頃していい?」
さやか「段階飛ばし過ぎだから?! せめてぶっていいと聞こうよ!?」
シャル「ぶっていい?」
さやか「いい訳あるかっ!」
ほむら「ほらー、二人ともお静かにー」
ほむら「ケーキを切り分けてきますから、しばしの間、妖精さんが暴走しないように見張っててくださーい」
シャル「あいあーい」
さやか「もー……つーか妖精さんが暴走しないようにって、ほむらが戻るまでの一分二分で暴走すんのかね?」
妖精さんA「あんなすばらしいけーきもらえるとは」
妖精さんB「ぼくらしあわせすぎ?」
妖精さんC「なにかおれいせねば」
妖精さんD「おれいといえば?」
妖精さんE「きんぎんざいほー?」
妖精さんF「こうみゃくつくります?」
妖精さんG「せきゆもよろこばれるかと」
妖精さんH「わいてわいて!」
さやシャル「……………」
さやシャル(あ、ヤバい。これ爆発寸前じゃん)
シャル「さやか! 止めるわよ!」
さやか「おうっ!」
さやシャル(止め方知らないけどね!!)
280: 2014/02/10(月) 19:13:38.59 ID:b7xIIdTL0
……………
………
…
シャル「ん~♪ やっぱりボン・スィートのケーキは格別ねっ!」
ほむら「こんなに美味しいケーキは初めてです!」
さやか「はっはっはっ。喜んでくれたようで何より」
妖精さんA「」←失神している
妖精さんB「」←失神している
妖精さんC「」←失神している
さやか「……あれも一応喜んでくれたのかな?」
ほむら「とても喜んでいますよ。私が作ったお菓子では、あんなに喜んではくれませんもの」
さやか「ん? ほむらってお菓子作れるの?」
ほむら「妖精さんと知り合って長いですからね。ケーキぐらいならなんとか作れますよ」
ほむら「まぁ、最近はシャルロッテさんにお株を奪われてしまいましたが」
シャル「んー。そうかもだけど、私のお菓子って人工物っぽい味だし」
シャル「ほむらのケーキは手作りって感じで、味わい深さが私とは段違い。凄く美味しいわよ?」
さやか「へー。そりゃ何時か食べてみたいね」
ほむら「ふふっ。ご要望があれば、何時でもお作りしますよ♪」
ワイワイキャッキャ
ほむら「……さて、お茶会もいい感じに盛り上がってきたところで本題と移りましょう」
さやか「本題?」
シャル「何それ。聞いてないんだけど」
ほむら「言ってませんからね」
ほむら「その名もズバリ、『キュゥべえさんの目的を推理しよう』大会~♪」
シャル「……アイツの、目的?」
ほむら「ま、表題こそふざけていますけど内容は真面目に」
ほむら「全ての魔女さんを助け出すには、まずはその供給を絶たねばなりません」
ほむら「即ちキュゥべえさんが何故魔女さんを、ひいては魔法少女を作りだすのか」
ほむら「その目的を知り、どのように邪魔すればいいのかを考えねばならない訳です」
さやか「なるへそ」
シャル「つーてもねぇ……私ですらアイツの事全然知らないんだけど」
281: 2014/02/10(月) 19:16:23.96 ID:b7xIIdTL0
ほむら「あ、やっぱりそうなんですか?」
シャル「今になって思えば、吃驚するほどアイツは自身の情報を話さなかった」
シャル「聞けば答えたかも知れないけど、真実を知れば知るほど自分の事で手一杯になる」
シャル「最後らへんはもう、アイツの事なんて頭から抜け落ちていたわ。元凶なのに、ね」
ほむら「むむむ……シャルさんから新たな情報は期待出来ませんか」
ほむら「しかしそうなると推理に発展出来るだけの情報がない事に……」
さやか「いきなり計画が頓挫してどうする」
ほむら「では企画を変更」
ほむら「『キュゥべえさんの企みを暴こう』大会~♪」
さやか「いやいや、推理が出来ないのに暴くも何も……」
さやか「……いや、暴くのなら出来るのか?」
シャル「出来るんじゃない? 妖精さんがいるし」
ほむら「出来るんですね~」
ほむら「それでは本日の妖精さんアイテム、『なんでも大百科』です!」
さやか「某青狸に通じるものがあるアイテムだな」
ほむら「むっ。今のは聞き捨てなりません」
ほむら「妖精さんアイテムは実用性より面白さ重視! 効用も大事だけど使って楽しいのが一番!」
ほむら「あんな便利なだけ、実用一辺倒な道具しか出さない奴と妖精さんを一緒にしないでください!」
さやか(あ、そこ気にすんだ……)
シャル(ぶっちゃけ青狸が実用的なんじゃなくて、妖精さんアイテムがジョークの塊って話なんじゃ……ま、いいけど)
282: 2014/02/10(月) 19:19:03.95 ID:b7xIIdTL0
シャル「それで? その辞典にはどれぐらい詳しくアイツについて載ってんの?」
ほむら「えっと、キュゥべえさんキュゥべえさん……あ、この項目ですね」
ほむら「『キュゥべえ。正式名称インキュベーター』」
ほむら「『インキュベーターとは、地球から約1億光年離れた位置にある惑星で発生した知的生命体の役職名である』」
ほむら「『彼等の社会体制は階級制であり、インキュベーターは地球で』」
さやか「ちょ、ちょっと待って!?」
ほむら「はい、なんでしょうか?」
さやか「いや、あの……色々とツッコミどころが……」
シャル「そうね……正直、私も理解が追い付かないけど」
シャル「つまり何? アイツは宇宙人だったの?」
ほむら「そのようですね」
シャル「なんて事……そりゃ、魔法の国の妖精なんて思わなかったけど、まさか宇宙人だなんて……」
さやか「つーかそれって信じていいの? どうやって書き込んだ訳?」
ほむら「これを貰った時に妖精さんから聞いた話だと、なんでも『ものごと』と『できごと』の方から書き込んでくれるそうです」
さやシャル「……はい?」
ほむら「ですから、『ものごと』と『できごと』の方から書き込んでくれるんです」
さやか「ものごと、できごとって……何?」
ほむら「さあ? ものごとはものごとで、できごとはできごとなんじゃないですか?」
ほむら「兎も角、ご本人……ご本事? ま、それら自身が書き込むんですから、間違いはないでしょう」
さやか「今更だけど、妖精さんテクノロジーは説明を聞いても理解出来なさすぎる」
シャル「そもそも本当にテクノロジーの範疇なのかも疑わしい理論よね。今更だけど」
ほむら「今更な話を続けても時間の無駄です。なのでそろそろ本題に戻りましょう」
ほむら「尤も社会体系とかは読んでも仕方ないので要点だけを」
283: 2014/02/10(月) 19:26:07.26 ID:b7xIIdTL0
ほむら「『インキュベーターの役目はエネルギーの回収である』」
ほむら「『彼等の文明はエネルギーを大量消費しており、このままでは宇宙の寿命を削る事に気付いていた』」
ほむら「『しかし自らの文明規模を、テクノロジー水準を衰退させたくもない』」
ほむら「『彼等はエントロピーに縛られない、新たなエネルギーを求めていた』」
ほむら「『その中で生み出されたのが感情をエネルギーに変えるテクノロジーだったが、
彼等自身は利用出来るような感情を持ち合わせていなかった』」
ほむら「『そこで彼等は今から凡そ十三万年前に発見した地球人に目を付けた』」
ほむら「『人間が持つ感情、中でも希望から絶望に転じる際のエネルギーはエントロピーを覆すほどに膨大なものであったのである』」
ほむら「……なるほど。魔法少女とは、要はエネルギーを生み出すための生贄という訳ですか」
さやか「つ、つまり何? アイツ等、自分達の燃料にするためにシャルちゃんやまどかを魔法少女にしたって言うの!?」
さやか「自分たちが楽な暮らしを手放したくないから!? そんな理由で、人間を頃していたの……!?」
シャル「分かりやすい悪役で良かったわ。変に葛藤なんかせず、真っ直ぐアイツを怨める」
ほむら「ええ……これ以上は読む必要もないでしょう」
ほむら「彼等は私達人類にとって敵です。人様の星に許可なく侵入した挙句、私達を燃料にするような奴等に遠慮なんてしません」
ほむら「私は――――インキュベーターをこの星から追い出したい」
ほむら「もちろん簡単には帰ってくれないでしょうけど……なら、徹底抗戦するまでです」
シャル「ふん。そうこなくちゃ面白くないわ」
さやか「で、でも、宇宙人なんだよね? 十三万年も前から、その、宇宙を自由に行き来するような科学力を持ってんだよね?」
さやか「妖精さんの力は凄いけど……そんなの相手にして本当に勝てるの?」
ほむら「問題ありません」
ほむら「辞書を見る限り、インキュベーターはエントロピーをどうにかこうにか凌駕しただけの模様」
ほむら「しかも昔から魔法少女を産み出していたようであり、それはつまり、彼らの技術がそこで停滞している事を意味します」
ほむら「恐らく、彼らの技術力ではエントロピーを凌駕するだけでやっとだったのでしょう」
ほむら「電気代節約したいなーって私が呟いたという理由だけで、
我が家のテレビに輪ゴムを用いた第一種永久機関を搭載した妖精さんの敵ではありません」
シャル「テレビに何とんでもないもの搭載してんのよ……」
さやか「永久機関って輪ゴムで作れるんだ……」
さやか「つーか、無から有が作れるなら輪ゴムとかにこだわらなくても……」
ほむら「妖精さん曰く、無から有を創り出しても面白味が足りないそうで」
さやか「……うん。何も言うまい」
284: 2014/02/10(月) 19:28:51.54 ID:b7xIIdTL0
ほむら「それに、いざとなったらこの辞書で葬りましょう」
さやか「この辞書でって、どういう事?」
ほむら「この辞書のページを破くとですね、そのページに掛かれている『できごと』が――――過去まで遡り、無かった事になります」
ほむら「まぁ、破壊には目標を実際に破壊するのと同量のエネルギーが必要ですけど、
妖精さんアイテム『ばらばらアンテナ』を使えば余裕ですよ」
さやか「……………すごくとんでもない話の予感がしますが、どういう事か解説おねげーします」
ほむら「では遠慮なく」
ほむら「恐らく妖精さん的な哲学により、辞書と現実がリンクしていた方が面白いと思ったのでしょう」
ほむら「尤も、そのための破壊には現実と同程度のエネルギーが必要でないとジョークになりません」
ほむら「そして同量のエネルギーを用いて破壊したなら、それは『できごと』自体を破壊するのと同じであるべきです」
ほむら「だったら辞書のページを破壊したら……過去に遡り、それらによって起こされた『できごと』を無かった事にする方が面白い」
ほむら「大方こんな理由でそんな機能が付けられたと思います。ま、私の推測ですけどね」
シャル「さ、流石にそれは……」
さやか「あたしの脳では理解出来ないので三行で説明をば」
ほむら「妖精さんのジョークで、
宇宙の歴史を改変。
おもろー」
さやか「よし、妖精さんならインキュベーターなんかけっちょんけちょんだな」
シャル「あ、ああ、うん。そうね。そうでしょうね」
さやシャル「妖精さんなら仕方ないね!」
ほむら「二人共妖精さんに随分と慣れてきましたねー」
さやか「諦めた、と言い直した方が多分適切だよ」
シャル「優れ過ぎた科学はジョークと見分けが付かないと、今になって思い知らされたわ」
ほむら「むしろジョークにしか見えないと思いますけどね」
285: 2014/02/10(月) 19:31:20.22 ID:b7xIIdTL0
ほむら「尤も、これは最後の一手です」
ほむら「何分過去まで遡って無かった事にしますからね……人類にどんな影響が出るか分かったものじゃありません」
ほむら「或いは魔法少女の仕組みだけ破壊するのもありかも知れませんが、そうなったら代替案が使われた歴史に改編されるだけでしょう」
ほむら「それに、十三万年って歴史から考えると……」
さやか「考えると?」
ほむら「……ま、これは半ば妄想みたいなものですので置いておいて」
ほむら「いくら侵略者とはいえ根絶やしにするのは、個人的に嫌なんですよねー」
ほむら「もっと穏便に、かつ大胆――――そして面白おかしく解決しなければ」
さやか「あー、まぁ、邪魔だから全て頃すってんじゃ、私らを燃料にしているインキュベーターと大差ないか」
シャル「私としては根絶やしがいいけど、ま、ほむらに任せるわ」
ほむら「ええ、任せてください」
ほむら「丁度この辞書を読んでいて一つの策が思いつきましたからね」
さやか「ほほう?」
ほむら「インキュベーターの勢力はかなり広範囲で、故郷の銀河にある惑星の四割には何かしらの施設があるそうです」
ほむら「しかしそれは主に地球型惑星や衛星で、木星のようなガス惑星には建設されていないとか」
ほむら「それが彼らの技術的、或いはコスト的な限界なのでしょう」
ほむら「だから――――」
さやか「だから?」
ほむら「……此処から先は完成してからのお楽しみです♪」
さやか「ちぇー」
シャル「……………」
ほむら「ま、今夜あたり妖精さんにお願いしてみるつもりです」
ほむら「懸案は片付きましたから、あとはお茶会を楽しむとしましょう」
さやか「そーすっか」
シャル「……そーね」
286: 2014/02/10(月) 19:34:01.17 ID:b7xIIdTL0
……………
………
…
――PM7:11 暁美家リビング――
さやか「えー、ほむらとシャルちゃんとのお茶会を満喫しまくったさやかちゃんです」
さやか「現在午後七時過ぎ」
さやか「はい。満喫し過ぎました。思いっきり門限過ぎたの気付きませんでした」
さやか「うちは門限に厳しいので、帰りが遅くなる旨を伝えずに帰るとものすっごく怒られます」
さやか「いや、これはもう今日帰るとお尻百叩きの刑が待っていまして」
シャル「くどい。三行で説明なさい」
さやか「言い訳しないとあたしのケツがヤヴァイ。
だから今日は泊めてください」ドゲザー
ほむら「二行で終わりましたね」
シャル「やっすい土下座ねぇ」
シャル「で、どうしますか家主さん?」
ほむら「正直さやかさんがご両親に叱られようと私にはどーでもいいです」
さやか「酷っ!? 事実だけど心にぐさりとくる酷さだよ今の!」
ほむら「しかしまぁ、『ボン・スィート』のケーキを頂きましたし」
ほむら「明日も学校は休みですからね」
さやか「な、なら……」
ほむら「ゆとり教育に感謝してくださいね? 明日も休みじゃなかったら流石にお断りしてましたよ」
さやか「ほむら様ァ――――!!」
シャル「やれやれ……」
ほむら「うーん。だけどそうなるとお料理の方が少し大変ですね。二人分の料理を作るのもまだ慣れてないのに三人分は……」
さやか「あ、あたし手伝うよ! ほむら様のお手伝いするよ!」
ほむら「いえ、足手まといになりそうですから遠慮しておきます」
さやか「酷い! 何度あたしの心を抉れば気が済むんだアンタは!?」
シャル「大体何時もの事じゃない」
シャル「でもまぁ、足手まといって事に関してはその通りでしょうよ」
さやか「シャルちゃんまであたしを貶しますか……」
シャル「いや、アンタが料理下手そうとかそういう問題じゃなくて」
シャル「ほむらがめっちゃ料理上手いから、私らみたいな素人だと手を出す隙がないのよ」
さやか「……え? そういうレベルの話? 飲茶的な?」
シャル「飲茶的な」
ほむら「自慢じゃないですけど、ま、そんな感じになりますよ」
287: 2014/02/10(月) 19:35:39.93 ID:b7xIIdTL0
ほむら「ですから今回は特別なお手伝いさんを呼ぶとしましょう」
さやか「特別なお手伝いさん?」
シャル「そんなの居るの? 私も初耳なんだけど」
ほむら「はい。この壁にある蓋を開けるとですね……呼び鈴が出てきます」
さやか(何故壁に呼び鈴を仕込んである……)
ほむら「そんでもってポチっとな」
――――げーとおーぷん
――――げーとおーぷん
さやか「あ、妖精さんの声で放送が掛かった」
シャル「警報なのに警戒心薄れるわね」
シャル「っと、なんか床が自動的に開いたわね……如何にもロボが出てきそうな感じに」
さやか「ドライアイスでも置いてんのか、無駄に白い湯気が出てきてるし」
さやか(ん……開いた床から誰か出てきた……)
さやか(歳は、二十歳ぐらい? 私らより年上なのは間違いないか)
さやか(メイド服を着ているから給仕さんなのかな?)
さやか(胸は大きいし、腰の括れはすごいし……何よりすっごい美人)
さやか(……で、だ)
さやか「こちらの方はどちら様で?」
ほむら「妖精さん製自立行動型ペーパークラフト『お手伝いお姉さん』です」
さやか「うん。知っていたけど、早速ツッコミを入れさせてもらおう」
さやか「ペーパークラフトってどういう事よ!?」
ほむら「文字通りの意味です」
ほむら「こちらのお手伝いお姉さんは紙で出来ております。ちなみに動力は輪ゴムです」
シャル「輪ゴムって凄いわね」
さやか「で、でもどう見ても紙には……」
ほむら「なら、触ってみるとよいでしょう」
さやか「え、い、良いの?」
お手伝いお姉さん(以下お姉さん)「はい。お嬢様の許可は出ましたので、どうぞ」
さやか(普通に喋った……益々ペーパークラフトには思えない)
さやか(でも……まぁ、妖精さんだしなぁ)
288: 2014/02/10(月) 19:38:34.31 ID:b7xIIdTL0
シャル「紙と輪ゴムでロボットって、世界中の科学者が発狂しかねないわ」
ほむら「正確にはロボットではなく人工生命体ですけどね」
さやシャル「……え?」
ほむら「ですから人工生命体です」
ほむら「息をしていますし、眠りにもつきます」
ほむら「なので、一人の人間として扱ってあげてくださいね?」
さやか「お、おう」
シャル「ぶっとんでるー」
ほむら「ああ、そう言えば姉さんにはまだお二人を紹介していませんでしたね」
ほむら「あちらの私と同じ姿をしている方はシャルロッテさん。訳あって、今は同居人として暮らしています」
ほむら「そして余りがさやかさん。訳あって、渋々ですがうちに泊めてあげる事となりました」
さやか「なぁ、迷惑だったのか? あたしが泊まるのそんなに嫌だったのか?」
お姉さん「了解。お二人の事は記憶しました。それで、今回はどのようなご用件でお呼びに?」
ほむら「えっとですね、ちょっとお手伝いをしてほしいと思いまして」
ほむら「私は今から料理を作りますから、テーブルの方の片付けをお願いできますか?」
お姉さん「了解しました」
さやか「おお、早速仕事を始め――――って、早!? 残像見える早さで片付けしてる!?」
ほむら「さ、私もちゃっちゃと料理を作るとしましょう」
さやか(ほむらも支度を始めた……台所の方に行ったね。リビングからキッチンが視えるから、どう動くのか全部見えるや)
さやか(って、うおっ?! な、なんか物凄い早さで冷蔵庫から食材を取り出して……)
さやか(凄い! びっくりするほど手際よく食材を洗ってる!?)
お姉さん「テーブルの片付けは終わりました。次の指示を」
ほむら「あ、では次は食器の方を用意してくれますか?」
ほむら「今日はクリームシチューを作りますので、それ用の食器でお願いしますね」
お姉さん「了解しました」
289: 2014/02/10(月) 19:42:03.03 ID:b7xIIdTL0
さやか(お手伝いさんに指示を出してる間も手は止まらない……あ、もう洗い終わったみたい)
さやか(食材を切り始めた……って、これも速いなぁ)
さやか(まるでテレビに出てくる有名な料理人みたいだよ。そりゃ、あたしら素人じゃ足手まといだわな)
さやか「……ほむらー。今話しかけても大丈夫ー?」
ほむら「ええ、大丈夫ですよ」
さやか「いやぁ、随分と料理が上手いようで……さやかちゃんは感心しましたよ」
さやか「しかし同時に、どうしてそんなに上手いのかと不思議に思う訳ですが?」
ほむら「調理はサバイバルの基本ですからね。慣れました」
ほむら「他にも裁縫とか、食べられる野草とキノコの鑑定。それから簡単な工作技術」
ほむら「妖精さんのトラブルに何度も巻き込まれると、そーいう技術とか知識が格段にスキルアップするんですよ」
さやか「……逆に、そんな体験を何度もしといて何故体力がないんだ」
ほむら「昔は少しはあったんです。最近は病院生活が長くて、ちょっと体力が落ちちゃっただけでして」
さやか「ちょっとかぁ?」
ほむら「ちょっとです。昔は百メートルを完走するだけの体力はあったんですから」
さやか「元々皆無だったんじゃん」
ほむら「それに氏にはしませんからねー……楽しめればそれでOKってやつで」
ほむら「サバイバル技術も、より楽しむためのものです。体力がなくても問題ありませんよ」
さやか「そーいうもんなのかねぇ……」
ほむら「あ、話は逸れますけど、シャルロッテさんにもうすぐご飯ですからお菓子は食べないようにと伝えてくださいね」
シャル「ギクッ!?」
さやか「……ご飯前に、よく苺クレープなんて食えるね」
290: 2014/02/10(月) 19:54:51.66 ID:b7xIIdTL0
……………
………
…
さやシャル「ごちそーさまでしたー」
ほむら「おそまつさまでしたー」
さやか「いやあ、想像以上に美味かったよ。こりゃ、うちのシチューじゃもう満足できないね!」
ほむら「そんなに褒めてもデザートは出ませんよ」
さやか「お世辞じゃないってばー」
シャル「フフン」
さやか(何故アンタが自慢げなんだ、というツッコミは野暮かな?)
ほむら「ふふっ。では、素直に受け取るとしましょう」
お姉さん「洗い物はやっておきますね」
さやか「あ、すみません。お願いしま」
ほむら「ちょ、姉さん何を言ってるのですか!?」
ほむら「姉さんは紙なんだから濡れたら破れちゃうでしょ!?」
お姉さん「いえ、前にも言いましたが防水性には優れていますし、仮に破れても修復は容易で……」
ほむら「洗い物は私がしますから、姉さんはもう部屋に戻っていてください!」
お姉さん「ああ、お嬢様ご無体な……」
お姉さん「私としては働くのが生き甲斐な訳でして……」
ほむら「なら今度買い物に行く時についてきてもらうので、姉さんはその時まで休んでいてください!」
お姉さん「むぅー……」
さやか「……なんか、ほむらの様子変じゃない?」
シャル「確かに、ちょっと妙ね」
シャル「なんか焦ってるような……ん?」
シャル「ふと思ったけど……ほむらって、お手伝いさんを『姉さん』って呼ぶのね」
ほむら「……………え?」
シャル「いや、だから姉さんって……」
さやか(あ、なんかほむらの顔が真っ赤になってる……目も見開いて……)
さやか(……ははーん。さやかちゃんも気付いちゃいましたよ)
291: 2014/02/10(月) 19:56:34.44 ID:b7xIIdTL0
さやか「あれか。幼い頃から家族みたいに接してきたから実の姉みたいに想ってるとか、そういうパターンか?」
ほむら「ぶぁ!?」
ほむら「ば、ばばばば馬鹿な事を言わないでください!? 私が、そんな、」
お姉さん「確かに私はお嬢様が幼少期の頃から一緒に過ごしています」
お姉さん「ここ数日呼ばれなかったので寂しかったのですが……成程成程」
お姉さん「同居人の方に恥ずかしい姿を見られたくなかったと」
お姉さん「ほら、何時もみたいに胸に飛び込んですりすりしても良いんですよ?」ニヤニヤ
ほむら「姉さんも何言ってんの馬鹿ァ―――――!?」
さやか(おおう、こんなに取り乱すほむらは初めてだ)
さやか(そんでもってお手伝いさん、すっごい生き生きとした笑みを浮かべてるわぁ)
シャル(成程。ありゃロボじゃなくて人工生命体だわ)
さやシャル「いやぁ、いいものを見せてもらった」ニヤニヤ
ほむら「」ブチッ
ほむら「……妖精さんアイテム、『記憶ホームランバット』……」
さやか「え、ほむらが何処からともなく金属バットを取りだし」
ほむら「脳髄と一緒に飛んでけえええええええええええええっ!!」
さやか「ぎゃわらば!?」ブシャー
シャル「ぶふぅーっ!? ほむらが金属バットでさやかの頭を殴って……」
シャル「なんかさやかの頭から出てきちゃいけないグロテスクな物体が出てきてるけど!?」
ほむら「演出です!」
ほむら「記憶が吹っ飛ぶついでに中身的なやつも一緒に吹っ飛ぶだけです! 三分で治ります!」
ほむら「そしてシャルロッテさんもです!」
シャル「あ、お願い待」ブシャー
292: 2014/02/10(月) 19:58:13.16 ID:b7xIIdTL0
――数分後――
さやか「……シャルちゃん。一つ訊いていい?」
シャル「ええ、いいわ」
さやか「あたし達って今お風呂場で湯船に浸かっている訳だけど、何時お風呂に来たか覚えてる?」
シャル「奇遇ね。私も同じ事を訊こうと思っていたの」
さやか「それからさ、なんか頭がぼーっとして……なんかこう、大切なものを無くした気がすんだよね」
シャル「私も今、そんな気持ちよ。しかも物理的に無くした気がすんのよね」
さやか「……なんだろうね」
シャル「忘れるって事は大した事じゃないか、忘れた方がいいって事よ」
さやか「……そだね」
さやか「ああ、それからもう一つ訊いていい?」
シャル「どうぞ」
さやか「この家のお風呂どんだけ広いんじゃあああああああーっ!」
\ヒロインジャーッ!/
\ヒロインジャー/
\ヒロイ…/
シャル「おお、見事な反響音」
さやか「声が三回も反響して聞こえてくるって広過ぎでしょ……」
さやか「目測だけど、外から見たこの家のサイズよりでかく見えるんだけど?」
シャル「なんかほむらから聞いた話だと、実際のサイズはふつーのお風呂場程度らしいわよ」
シャル「ただ妖精さんが描いた『騙し絵』で、こんなに広く感じるのだとか」
さやか「なんでも妖精さんと言えば許される風潮はどうかと思う」
ほむら「もー、さやかさん。お風呂は静かに入ってください」
さやか「ああ、ほむら……居たのか」
ほむら「居ましたよ。シャルロッテさんがいるのですから、当たり前でしょう?」
293: 2014/02/10(月) 20:01:13.28 ID:b7xIIdTL0
ほむら「それより、お風呂は身体と心の洗濯なんです。静かに、落ち着いた気持ちで行うべき習慣ですよ」
さやか「でもさ、女三人裸の付き合いしている時点で静かにしろというのも無理な話で……」
さやか「……」ジー
ほむら「……なんですか? 人の身体をじろじろと……」
さやか「……ほむらってさ、よく見ると美少女だよね」
ほむら「ぶっ!? ちょ、何を言って……!?」
さやか「いや、髪を下ろして、眼鏡を外したその佇まい……スレンダーでくすみ一つない身体……」
さやか「さやかちゃんの『嫁センサー』が、まどか以上の反応を示しているのだ!」
シャル「なによその心底どーでもいいセンサー」
さやか「惜しむらくは胸部が少々乏し過ぎる点だが案ずる事はない……まどかはあたしが育てた」
ほむら「意味が分かりませんから!? 両手をわきわきしながら近付かないでください!」
ほむら「はっ!? まさか、さ、さやかさんってそっち系の人なんですか!?」
ほむら「いけませんいけません! いえ、そういう恋愛がダメという訳ではなく、あわわわわわ……」
シャル(お、顔を真っ赤にしてる。そういう話題苦手なのね)
シャル(しかしこれは相手の加虐心を煽るだけになりそうで)
さやか「あたし割とどっちもいける口だと思うんだよねー」
ほむシャル「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
さやか「……いや、冗談だから。ほむらは兎も角シャルちゃんまで逃げないでよ」
シャル「い、いや、冗談に聞こえなくて」
さやか「え? もしかしてあたし本当にそういう扱いだったの?」
ほむら「はー……怖かったです」
さやか「いや、だからあたしの扱いって」
シャル「なんかどっと疲れたわね。身体洗って、さっさと上がりましょ」
さやか「あの、あたしちゃんと好きな男子が居て」
ほむら「あ、また髪洗わないつもりでしょう!? ちゃんと手入れしないと髪が痛みますよ?」
シャル「別にいいじゃん……誰にモテたいとも思わんし」
ほむら「駄目です。女の子は綺麗で可愛くあるべきです」
ほむら「ほら、洗ってあげますからこっちにきてくださいっ」
シャル「あー、もう……お風呂なんてお湯でざぶーっと洗えばいいじゃん……石鹸使うと環境汚染になるよー?」
ほむら「美容は地球よりも大切なんです!」
――――ワイワイキャッキャ
さやか「……あれー?」
294: 2014/02/10(月) 20:02:31.89 ID:b7xIIdTL0
……………
………
…
シャル「あー、いい湯だった」
ほむら「うちでの生活にはもうすっかり慣れたようですね」
シャル「まーねー」
さやか「何故か風呂上がりの後、二人の着替えが終わるまで目隠しされた。解せぬ」
ほむら「いえ、ジョークをやるなら徹底的にが私のモットーですので」
さやか「そんなモットー捨てちまえ」
シャル「私はまだ信じてないよ」
さやか「信じてないの!?」
シャル「ジョークよ、ジョーク」
さやか「笑えねぇー……」
ほむら「さてと。お風呂もあがりましたし、あとは寝るだけですかねー」
さやか「え? もう寝るの? まだ九時前だよ?」
ほむら「夜更かしは美容の天敵です。それにたっぷり寝た上での早起きは気分がいいですよ?」
さやか「そーいうもんかねー?」
ほむら「そーいうものです」
ほむら「それに、どーせ布団に入ってもすぐには寝ないでしょう?」
さやか「うん。そのつもり」
シャル「はい、それじゃあ布団敷くから二人とも手伝ってー」
さやか「あいよー」
ほむら「あ、そうだ……」
295: 2014/02/10(月) 20:03:38.86 ID:b7xIIdTL0
ほむら「すみません。私はこれから妖精さんに一つお願いをしようと思うので、ちょっとこれから自室に行こうと思います」
ほむら「少々時間はかかると思いますが、布団を敷くのはその後からでも……」
シャル「お願い? って、あれか。対インキュベーター対策のやつ?」
ほむら「ええ。規模が規模だけに、妖精さんにちゃんと説明しないといけないと思いますので」
シャル「あいよ了解」
シャル「布団の方は私らでやっとくから、ゆっくり話し合うといいわ」
さやか「うん。あたし達で済ませちゃうよ」
ほむら「え、でも……」
シャル「布団の場所ぐらいもう覚えたわよ。さやかに手伝わせればすぐに終わるわ」
シャル「それに私らじゃ魔法少女には何もしてやれないんだからさ、こーいう事ぐらいは任せてよ」
ほむら「ぁ……」
ほむら「……………分かりました。お布団の方は、お二人に任せますね」
シャル「任された。それじゃ、行こうか」
さやか「いえっさー」
ほむら(お二人は寝室へと向かいましたね……)
ほむら(私も、自室に行くとしましょう)
296: 2014/02/10(月) 20:05:05.83 ID:b7xIIdTL0
――PM8:55 ほむら自室――
ほむら「――――という訳なんですけど、作れますか?」
妖精さんA「やってみましょう」
妖精さんB「しかしおおきいですからなー」
妖精さんC「ながびくのはかくじつかと?」
ほむら「どれぐらい掛かりそうですか?」
妖精さんB「どれぐらい?」
妖精さんA「じかんなどいしきしませなんだなー」
妖精さんC「ざっとひとつきでは?」
妖精さんA「ながすぎ?」
妖精さんB「こーきちぢめるろぼをつくるべき?」
妖精さんD「ぼくら、とちゅうでわすれるかも?」
ほむら「あら、不安になるような事言っちゃう悪い子は、お腹くすぐりの刑ですよー」
妖精さんD「きゃっ、きゃは! きゃはははっ!」
妖精さんD「はひー……いっそころしてー……」
ほむら「頃しませんよ。大体氏なないでしょ、あなた達」
ほむら「ま、忘れてしまう事は想定しています。定期的に思い出させるのと、モチベーション維持のためのお菓子を差し入れますよ」
妖精さん達「おかしーっ!」ぽぽぽぽーんっ
ほむら「わぁ。一気に三十人ぐらい増えましたね……相変わらず現糖な人達です」
妖精さんE「しろいこなのぱわーでげんきひゃくばい」
ほむら「それ、偽りの元気ですよ?」
妖精さんE「いつわれるものがあるだけましでは?」
ほむら「それもそうですね」
ほむら「……うん。大丈夫。これだけ妖精さんがいれば、酷い事にはならない」
ほむら「……私が何をしても」
297: 2014/02/10(月) 20:08:16.82 ID:b7xIIdTL0
妖精さんA「おなやみですか?」
ほむら「……そうですね。ちょっと、自分の行動に悩んでいます」
ほむら「あなた達に今お願いした発明を――――本当に作ってもらっていいのか」
ほむら「今までは、まぁ、これからもですけど、私は自分の思うがままに生きてきたつもりです」
ほむら「妖精さんの超パワーも躊躇わずに使いました。その方が楽しくなりますからね」
ほむら「でも今回の頼み事は今までと規模が違う」
ほむら「全ての魔女を救う事は、世界の全てを巻き込む事です。私の周りだけを面白おかしくするのとは違います」
ほむら「私が頼んだ事で何かが起きるかも知れない。どうしようもなく、救えない事が起きるかも知れない」
ほむら「そして、インキュベーターはもしかすると、私達の……」
ほむら「……これは私の想像です。確証のない、妄想です」
ほむら「だけど本当だったら、私は人類にとって最悪の事をしでかすかも知れない」
ほむら「その最悪の責任を負う事が……怖いんです」
ほむら「妖精さんがいるのに、一体何を怖がっているんだって感じですけどね」
妖精さんA「ぼくらになにかできます?」
ほむら「うーん。こういう気持ちは誰かに吐露しちゃうと覚悟が決まるものですけど……あなた達は相談役は向いてませんからね」
ほむら「明日さやかさんかシャルロッテさん、あと……姉さんに相談してみますよ」
妖精さんA「さよかー」
ほむら「さて、と。それじゃあ私はそろそろ寝ますね」
ほむら「おやすみなさい、妖精さん」
妖精さんA「いってらっしゃいです?」
ほむら「夢に旅立つという点ではその通りですけどねー……ん?」
ほむら「……………」
ほむら「ま、いいか。ちょっと大冒険したい気分ですし」
ほむら「じゃ、いってきます」
298: 2014/02/10(月) 20:10:31.63 ID:b7xIIdTL0
……………
………
…
ほむら「ん、んんーっ……ふぁぁ……よく寝ましたぁ……」
ほむら「昨日は楽しかったですねぇ……さやかさんが始めた枕投げ♪ まぁ、私は真っ先に陥落しましたけど」
ほむら「さて、あまり布団の中でモゴモゴしていられません。そろそろ起きて朝ご飯の支度を――――」
ほむら「……あら?」
ほむら「布団を掛けてない……服装もパジャマから私服になってます……髪は下ろしたままですけど」
ほむら(周囲が白一色の……空間でしょうか? 壁があるかも分からない事になっていますね)
ほむら(地面はあるので浮遊感がないのは良いのですが……ふむ)
ほむら(どう考えてもこれは妖精さんの仕業ですね。寝る前にフラグは立っていましたし、OK出しましたけど)
ほむら「っと、さやかさんとシャルロッテさんも居るじゃないですか。まだ寝ているようですが」
ほむら「とりあえず起こすとしましょう」
ほむら「さやかさーん、朝ですよー」ユサユサ
さやか「ん、んん……もう食べられない……」
ほむら「ならさやかさんの朝ご飯は抜きです」
さやか「そ、それは困るぅ!」
さやか「……おや?」
ほむら「おはようございます、さやかさん」
さやか「あ、ああ、ほむら。おはよう」
さやか「……おや?」
ほむら「私の家にお泊り。妖精さん。何時もの事。OK?」
さやか「お、OK」
299: 2014/02/10(月) 20:12:01.26 ID:b7xIIdTL0
ほむら「物分りのいい人は好きです。ではシャルロッテさんも」
ほむら「シャルロッテさーん。起きてくださーい」
シャル「んっ……やだ……ままぁ……」
さやか「……とても素敵な言葉を聞いてしまった」
ほむら「ほら、早く起きないとホットケーキを焼いてあげませんよ?」
シャル「……じゃあ……おきる……」
シャル「……………」
ほむら「おはようございます」
シャル「……おはよう」
さやか「お、おは」
シャル「氏ねえええええええええええええええええっ!!」
さやか「有無を言わさぬ猛スピードでの顔面パンチは厳しぶごっぱぁ!?」
ほむら「おお。ストレートで決まりましたね」
シャル「ああもう! さやかが泊まってるんだった! 忘れてたわ!」
シャル「って、なんか周りがすんごい事になってない!?」
ほむら「妖精さん。OK?」
シャル「お、おけ」
さやか「……………」ピクピク
ほむら「さやかさん、また寝ちゃいましたね」
シャル「そのまま寝かしとけっ!」
――少女起床中……――
さやか「うう……まだ顔がひりひりする……」
シャル「自業自得よ」
さやか「いや、あたし何もしてないと思うのですけど?」
ほむら「何時ものコントはそれぐらいにしときましょう」
さやか「いや、何時もので流さないでくださいよ? というか今後もあたしこんな役回りなの?」
ほむら「こんな不可思議空間は間違いなく妖精さんの仕業でしょう」
さやか「なーがさーれたー……しくしく」
ほむら「問題は彼等がどんな意図でこのような空間を用意したか、です」
ほむら「大方昨晩の私が原因でしょうけど……」
シャル「アンタが元凶かい」
300: 2014/02/10(月) 20:14:23.02 ID:b7xIIdTL0
ほむら「しかしそうだとすると腑に落ちない点が一つ」
シャル「腑に落ちない?」
ほむら「面白さがないんです。この空間には」
さやシャル「……………あー」
さやシャル(なんとなく納得出来てしまった……)
ほむら「こういう場合、何かしらの仕掛けとかが用意されている筈なんですけどね……」
シャル「仕掛け人に直接聞いた方が早くない?」
ほむら「妖精さんにですか? 確かに呼べば出てくると思いますけど」
ほむら「こういうのは自力である程度探索してから聞いた方が面白いですので、お手上げになってからで」
さやか「相変わらずの面白さ重視だな」
シャル「でも方針に反対はしないのよね?」
さやか「巻き込まれた以上楽しむしかないって知ってるからねー……」
ほむら「とりあえず……あっちに進んでみるとしましょう。特に理由はないですけど」
シャル「立ち止まっていても仕方ないものね」
さやか「……いや、その必要はないんじゃないかな?」
ほむら「と、言いますと?」
さやか「今から向かおうとした先から誰か来てる」
シャル「え? ……あら、本当。誰かこっちに来てるわね」
シャル「黒くて髪の長い……女の人かしら」
ほむら「……いえ、女の人というよりアレは……」
301: 2014/02/10(月) 20:15:57.13 ID:b7xIIdTL0
――――それは見覚えのある人でした。
―――― 一歩進む度にたなびく美しい黒髪は、貴族の令嬢のような雰囲気を醸し出しています。
――――華奢な身体つきは突けば倒れてしまいそうで、しかし鋭い眼差しは力強さで溢れていました。
――――服装はどこかの学校の制服として使われていそうなものです。盾は……ファッションでしょうか。
――――だけどその手にある宝石が彼女の『魂』なのだとしたら――――彼女の服は制服などではないのでしょう。
――――いえ、そんな事よりも気になる事が一点。
――――表情の違い、髪型の違い、服装の違い、『種族』の違い……違いは色々あれど、見間違う訳がありません。
――――だって、やってきたのは
さやシャル「ほ、ほむら……?」
――――私だったのですから。
302: 2014/02/10(月) 20:20:11.74 ID:b7xIIdTL0
今回はここまで!
まどマギ要素がここ数話全くありませんが、まだまだない状態で続きます。
あ、あと二話ほど進んだら杏子ちゃん出てくるから……(ネタバレ
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど3】
引用: 魔法少女は衰退しました
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