494: 2014/07/15(火) 11:57:59.96 ID:4zwSbU+X0
ちーすっ。
次は早めに投稿したい、と言ったな。結局何時も通りだよ! テキスト量も大体何時もと同じだよ!
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど1】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど2】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど3】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど4】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど5】
それでは前回の続きから。
欲望塗れの仲間割れの決着や如何に!?(ネタバレ:理不尽な結末
495: 2014/07/15(火) 11:59:14.14 ID:4zwSbU+X0
えぴそーど にじゅう 【人間さん達の、よくぼうのきわみ こうへん】
496: 2014/07/15(火) 11:59:58.86 ID:4zwSbU+X0
前回のあらすじ。
さやか:ねんがんの びやくを てにいれたぞ!
【まどか】
そう かんけいないね
> 頃してでも うばいとる ピッ
ゆずってくれ たのむ!
さやか:な、なにをする きさまー!
497: 2014/07/15(火) 12:03:26.16 ID:4zwSbU+X0
―――― 見滝原上空 ――――
まどか(魔力全開で空の彼方まで飛んだよ!)
まどか(高さはざっと1000メートルぐらい……かな? よく分かんないけど)
まどか(――――私が魔法少女になったばかりの頃、マミさんが言っていたっけ)
まどか(魔法少女が空を飛ぼうと思ったら、重力の操作や慣性の制御、姿勢の固定に風や気圧に対する細かな調整)
まどか(それらを行う魔法を、継続的かつ繊細にコントロールしないといけない)
まどか(祈りによってそういう力を手にしたならともかく、そんな複雑かつ高度な魔法を使えば、
当然魔力をとんでもない勢いで消耗する)
まどか(だから空を飛ぶのは戦う上で有利だけど、実戦では使えない)
まどか(今の私はいくらでもある魔力を使って、力技で飛んでいるけど……)
まどか(空を飛ぶのは本来それぐらい大変な事)
まどか(だから普通なら、この高さまで追い駆けてこれる『人』なんて居ない訳だけど――――)
仁美『待ちなさいまどかさん! そして大人しく媚薬を渡しなさーいっ!』
まどか(妖精さんの乗り物に乗っている仁美ちゃんは当然)
巨大さやか『待てやまどかあああああああああああああっ!!』
まどか(さやかちゃんも普通に飛べるだろうし)
中沢「素直に渡せば俺のハーレムの一員に入れてやるぜええええええっ!」
まどか「えい」<魔力弾発射
巨大さやか『すぺしうむー』<光線発射
仁美『適当に攻撃してください』妖精さんA「らじゃー」<ミサイル
中沢「ぎゃあああああああああああああああああ」シビビビバリバリチュドーン
ペガサス「ひひーーーーんっ!?」
まどか「あ。あまりにもムカつく事言うもんだからつい撃っちゃった」
巨大さやか『不可抗力っしょ』
仁美「自業自得ですわ」
中沢「しかし甲冑のお陰で無傷だったぜ!」
ペガサス「ひひーんっ!」ケンザイッ
まどか「ちっ」
巨大さやか『ちっ』
仁美『ちっ』
中沢「え、俺そんなに酷い事言った?」
まどか(中沢くんもさも当然とばかりに追い駆けてきたし)
まどか(来なかったのは先生だけ……見た目は一番非常識だったのに)
498: 2014/07/15(火) 12:05:27.84 ID:4zwSbU+X0
まどか(でも、三人は妖精さんアイテムを使っているんだからこのぐらいは想定済み)
まどか(むしろ先生だけでも来られなかったのは僥倖ってやつだね)
まどか(――――飛ぶ前にも思ったけど、今、この中では私が一番有利!)
まどか(ほむらちゃんにこの媚薬を飲ませちゃえば勝利確定になる)
まどか(だから無理に戦う必要はない。むしろ妖精さんアイテム相手に戦う方がリスキー!)
まどか(このまま最高速度で飛んで、ほむらちゃんの家に飛び込み)
まどか(有無を言わさず媚薬を飲ませるのが最速安定の勝利方法だよ!)
仁美(まどかさんが何処に向っているかは分かりませんが、目的は容易に想像出来ますわ)
仁美(まどかさんは既に媚薬を持っている。あとは使ってしまえば、まどかさんは目的を達成出来る)
仁美(無論、邪魔されないようわたくし達を倒しておくという選択肢もあるでしょう)
仁美(しかし現在一目散に逃げている以上、戦うのではなく逃走を選んだのは確実)
仁美(ならばこのまま逃がす訳にはいきません!)
仁美『宇宙人さん! 武器を起動して、まどかさんを攻撃してください!』
仁美『出来れば先程のミサイルではなく、動きを止める事を目的にしたものを!』
妖精さんA「でしたらこのすいっちをー」
仁美『押せばいいんですね! えいっ!』ポチッ
499: 2014/07/15(火) 12:12:26.06 ID:4zwSbU+X0
――――うぃーん
仁美『あら、何か出てきましたわ?』
妖精さんA「ねばねばびーむー」
仁美『全く関係性を見いだせない単語が二つつながった武装ですけど、構いませんわね!』
仁美『とりあえず発射!』
――――ピルルルルルルッ
まどか「うひゃあ!? なんか変なビームが飛んできた!?」
まどか(なんか見た目がねばねばしてそうなビーム! 当たったら多分動きが鈍りそう!)
まどか(幸い難なく避けられる速さだけど、妖精さんアイテムから出てきたビーム……)
まどか(最優先で避けないとダメ!)
中沢「こっちも追い駆けるだけじゃないぜ! 弓矢を食らえ!」
まどか(中沢くんは如何にも普通の矢を撃ってきた!)
まどか(勿論普通の矢なんていくら当たっても平気だけど……)
まどか(妖精さんが関わった矢が普通の筈ない!)
まどか(これも下手に防御する訳にはいかない! 全力で回避しないと!)
巨大さやか『小細工なんて不要! このまま質量の差で押し切ってやる!』
まどか「ひゃあっ!?」
まどか(さやかちゃんは体当たり攻撃! 直線的だけど……私よりも速い!?)
まどか(直撃を受けたら、多分一番ダメージが大きい!)
まどか(さやかちゃんは肉体攻撃だから、私の魔法でシールドを張って防げると思うけど……)
まどか(でもさやかちゃん程の攻撃を受けたら、打撃によるダメージ自体は防げても)
まどか(その衝撃で吹き飛ばされちゃう! ほむらちゃんの家から遠ざかっちゃう!)
まどか(勿論その隙に仁美ちゃん達の攻撃が来るかも知れないし)
まどか(時間を掛けたら、その分ほむらちゃんの家に辿り着く前に攻撃に当たっちゃう可能性も高くなる)
まどか(さやかちゃんの攻撃を受ける訳にもいかない……)
まどか(って、結局全部の攻撃を避けなきゃ駄目じゃん!?)
500: 2014/07/15(火) 12:15:35.47 ID:4zwSbU+X0
仁美『さぁ、全砲門一斉掃射ですわーっ!』
中沢「喰らえ乱れ撃ち!」
巨大さやか『マッハ30の超スピード飛行による体当たり! 何時まで避けきれるかなぁ!!』
まどか(ぐ……! ま、不味いよこれ……!)
まどか(全員が私の媚薬を求めて攻撃してくる! 狙いを一人に絞れない!)
まどか(出来たら魔力を解放して周囲一帯を吹き飛ばしちゃいたいけど……)
まどか(街に被害を出すのは流石に不味いと思うし)
まどか(それにみんな今は妖精さんアイテムの塊みたいなもの。特に仁美ちゃんは妖精さんと一緒に行動中)
まどか(私の攻撃でみんなノックアウトって未来が全然見えない!)
まどか(どうすれば、どうしたら……)
まどか(この包囲網を破れる……!?)
まどか「……………」
まどか(いや、待って)
まどか(そもそもこれって”包囲網”なの?)
まどか(だって――――)
中沢「くっそぉ! 当たれ当たれ当たれぇ!」
まどか「……よっと」ヒョイ
中沢「糞! いくら乱れ撃ちしても躱されちまう!」
巨大さやか『え』プス
中沢「あ」
501: 2014/07/15(火) 12:17:40.03 ID:4zwSbU+X0
巨大さやか『って、何してんの中沢!? なんであたしを攻撃してんのさ!』
中沢「な、流れ弾だよ! つーかお前が勝手に当たりに行ったんだろ!」
巨大さやか『よく言うよ! あわよくばとか狙ったんじゃないの?!』
巨大さやか『ま、あんなへなちょこ弓矢、いくら撃たれても痛くも痒くもないけどさ』
巨大さやか『痛くも痒くも……』ポリポリ
巨大さやか『……………』ボリボリ
巨大さやか『……………!』ガリガリ
巨大さやか『ちょ、なんか身体が……』
巨大さやか『身体が、痒い!』ガリガリガリ
中沢「え?」
巨大さやか『な、なんじゃこの痒さはあああぁぁああぁあああ!?』ガリガリガリ
妖精さんA「あー、あれはー」
妖精さんB「いたくはないけど、かゆーくなるやですなー」
妖精さんA「あたるとかゆくなります?」
中沢「え、俺の矢ってそんな効果だったの?」
巨大さやか『なんだその滅茶苦茶な効果!?』
巨大さやか『でもこの痒さはキツイ!? これなら腕がもげる方がマシだよ!?』
巨大さやか『これもう飛ぶのに集中出来な……』
巨大さやか『アッ――――!!』
――――ひゅぅるるるるるるるるる……
――――ずしーんっ!!
まどか「……百メートル級の巨人が市街地に落下とか、軽く天災だよね」
中沢「あれ、二十人ぐらい下敷になって氏んだんじゃ……」
まどか「それは平気だと思うけど(妖精さんが此処にいるので)」
まどか「……今日の夜のニュースで、見滝原に隕石落下か? みたいな見出しが出るんだろうなぁ……」
まどか「良いのかなぁ……妖精さんの事、秘密にしとかなくて……」
まどか(いや、思い返すとほむらちゃん、そういうの隠す気全然なかったような……)
まどか(……クラスメートの前で普通に妖精さんアイテムを使ったらしいし、始めて会った時も私達の前で
妖精さんをなんの躊躇いもなく呼び出してるし)
まどか(……「え? なんで隠す必要があるのですか?」)
まどか(うん。絶対こう言うよね)
502: 2014/07/15(火) 12:22:40.36 ID:4zwSbU+X0
まどか「兎に角、同士討ち作戦は成功!」
まどか「みんな結局私利私欲で私に挑んでるからね! チームワークは壊滅的!」
まどか「簡単に同士討ちを狙えたよ!」
中沢「ちぃっ! 小癪な!」
中沢「だが、まぁ、美樹の奴がリタイアしたのは好都合!」
中沢「次こそこの攻撃を当てて」
仁美『隙ありですわー』
中沢「え――――ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」シビビビビ
ペガサス「ひひひひひひひーんっ!?」
まどか(ひ、仁美ちゃん、中沢くんを狙って攻撃した!?)
中沢「ど、どぼじで……?」
仁美『元より、わたくしは皆さんと協力する気なんてありません』
仁美『さやかさん相手に戦うのは少々リスクがありそうでしたが……そのさやかさんが脱落した今』
仁美『あなたのような、居ても居なくても変わらぬ方にはお引き取り願うまでですわ』
中沢「ぢ、ぐしょー……」ヒュー
ペガサス「ヒヒーン……」ヒュー
まどか(中沢くんも落ちていった……常人なら即氏するパターンだけど、多分平気だよね)
まどか(だけど……)
まどか(最悪の相手が残った……!)
まどか(仁美ちゃんはほむらちゃんと違って妖精さんをけしかける事は出来ないだろうけど)
まどか(でも、そうだとしても妖精さんが仲間に居るのはあまりにも心強すぎる!)
まどか(どうやって切り抜ければ……!?)
503: 2014/07/15(火) 12:24:33.86 ID:4zwSbU+X0
仁美(さて、どうしましょう)
仁美(まどかさんも宇宙人さんの道具を持っているのか、不思議な力を得た様子)
仁美(それも、相当に強い力ですわ)
仁美(三対一の攻撃すら躱していたのですから、ねばねばびーむ単体では当たりそうにありません)
仁美(恐らく、ミサイルも躱されてしまうでしょう)
仁美(持久戦に持ち込まれたら、その分まどかさんが想い人に媚薬を飲ませるチャンスを与えてしまう)
仁美(このままでは、”負けて”しまう)
仁美(なら……短期決戦を挑むしかない!)
仁美「宇宙人さん、何か最終兵器的なものはありませんか?」
妖精さんB「でしたらこちらのすいっちおしてー」
仁美「こちらの……ガラスを叩き割って押すタイプのボタンですわね」
仁美「この如何にも危険な雰囲気、正に最終兵器ですわ!」
仁美「えいっ!」ガシャンッ
―――― ビーッ! ビーッ!
仁美「まぁ、警報が……それっぽい感じですわね!」
仁美「それで、どんな最終兵器が起動するんですか?」
妖精さんAB「じばくー」
仁美「……え?」
妖精さんA「さいしゅうへいきといえば」
妖精さんB「じばくですなー」
妖精さんA「みっちゃくしながら」
妖精さんB「こなみじーん♪」
妖精さんC「たのしいですなー」
仁美「た、た」
仁美「楽しい訳ないでしょおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
まどか「え。何もしてないのになんで?」
504: 2014/07/15(火) 12:26:40.76 ID:4zwSbU+X0
仁美「覚えてなさぁぁぁぁぁぁぁ……
妖精さん「わー」
まどか「……仁美ちゃん、妖精さん諸共落ちて行っちゃった」
まどか「仁美ちゃんだけ生身な訳だけど、まぁ、妖精さんが居るから平気だよね。うん」
まどか「兎に角、これで邪魔者は居ない!」
まどか「このままほむらちゃんの家まで超音速飛行で一直線だよ!」ギューンッ
まどか(さやかちゃん達の邪魔のせいで、ちょっとほむらちゃんの家から遠ざかったけど)
まどか(――――でももう見えた!)
まどか(なんかほむらちゃんの家が跡形もなく消えているけど、メイドさんがいっぱい居るし)
まどか(テントが張られているから、多分あそこにほむらちゃんが居るよね!)
まどか(ああ、もう邪魔者は居ないからゆっくり行っても良いんだよね)
まどか(誰にも邪魔されず、恋人になれるんだよね!)
まどか(……でも)
まどか(でも、もう我慢出来ない!)
まどか(私はほむらちゃんが好き! 大好き、大好き大好き大好き大好き!)
まどか(どうしようもないぐらい好きなの! 女の子同士とか、どうでもいいぐらい好き!)
まどか(早く恋人になりたい! たくさん触れ合いたい!)
まどか(手を繋ぎたい、キスもしたい、一緒にお風呂に入りたい一緒の布団で寝たいエOチもしたい!)
まどか(そしてほむらちゃんに――――好きって言ってほしい!)
まどか(だから!)
まどか(このままほむらちゃんの家に突っ込み、有無を言わさず媚薬を飲ませる!)
505: 2014/07/15(火) 12:30:17.28 ID:4zwSbU+X0
まどか「ほむらちゃん! 待ってて!」
まどか「恋人になったら絶対大事にするから!」
まどか「だから今日だけは――――」
まどか「今日だけはちょっと乱暴させてもらうよ!」
まどか(よし! ほむらちゃんの家の敷地に入っ)
――――ブンッ!!
まどか(え)
まどか「な、ぶっ!?」
まどか(ほむらちゃんの家の敷地に入った途端、何かが出てきて、私を叩いて……)
まどか(あ、これホームランの時のボールみたいな軌道で吹っ飛ばされる)
――――ばっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!
まどか「なんでこうなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
506: 2014/07/15(火) 12:32:57.88 ID:4zwSbU+X0
ほむら「……?」
お姉さん「どうかしましたか、お嬢様」
ほむら「あの……げほっ、げほ……」
ほむら「なんが、物おどが聞えだような気がしで……」
お姉さん「アレですかね。万一我が家に侵入しようとする狼藉者を追い払うために設置した」
お姉さん「『万能蝿叩き』が起動したのではないかと」
ほむら「え゛ー……姉ざん、あれつがっだの?」
ほむら「あれ、なんでもただぐには大きくすればいいっでこどになっで」
ほむら「三めーどるぐらいある、鈍器みだいになっだやつだよ」
ほむら「しがもせんざーが大雑把だがら、鳥どかにも反応じで、ふっとばしちゃうじゃん」
お姉さん「しかし余計な効果がない分、使い易いではないですか」
お姉さん「マスターにしか分からない超理論で、どれだけ派手に吹っ飛ばされても氏にはしませんし」
ほむら「そればぞうだけどー……」
お姉さん「それより、まだ全然風邪は治ってないのですからちゃんと寝ていてください」
お姉さん「私はこの後買い物に行きますが、なにか食べたい物のリクエストはありますか」
お姉さん「勿論、消化の良い物に限りますけど」
ほむら「……ぷりん」
お姉さん「はい?」
ほむら「ひざじぶりに、ぷりん、つくっで」
お姉さん「……やれやれ。見滝原に来てからずっと注文がないと思ったら、こんな時に頼んでくるとは」
お姉さん「言ってくれれば何時でも作るというのに」
お姉さん「わざわざ二人きりの時に頼まなくても良いじゃないですか」
ほむら「……だっで、ぷりんつぐっでって言うの、子供っぽぐで、はずかじいもん」
お姉さん「全く……」
お姉さん「我が妹は本当に見栄っ張りです事」
507: 2014/07/15(火) 12:35:02.52 ID:4zwSbU+X0
……………
………
…
まどか「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
まどか「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおどべっち!?」
まどか「う、うぐぐ……吹き飛ばされて地面に墜落しちゃったよ……」
まどか「此処は、ああ、学校だ……修復中でブルーシートで覆われてるけど」
まどか「ああもう! 何が起きたのかは分からないけど絶対妖精さんアイテムだよ!」
まどか「多分侵入者迎撃用のシステムとか、そんな感じのやつ!」
まどか「あったまきた! だったらこっちも全力で破って……」
まどか「破って……突入して……」
まどか「……今更だけど人の家に突撃って失礼だよね。外国なら銃でぱーんっと撃たれても文句言えないよね」
まどか「それをどうにかこうにか突破した人を、家主は暖かく迎え入れてはくれないよね」
まどか「……ちょっと頭に血が上り過ぎたかも」
まどか「そうだよ、邪魔者はぜーんぶ倒しちゃったんだからあとは普通にお家にお邪魔すれば……」
「お邪魔すれば、なんだって?」
508: 2014/07/15(火) 12:37:26.18 ID:4zwSbU+X0
まどか「!?」
まどか「なっ……さやかちゃん……!?」
さやか「ようやく見つけたよ……いや、幸運だった」
さやか「痒みから解放された時、丁度空を吹っ飛んでいくアンタの姿が見えてね……」
さやか「プリティでキュアキュアモードになって、後を追い駆けたんだよ」
さやか「今度は空を飛んで逃げられると思わない事だね」
まどか「ぐっ……で、でも、さやかちゃん一人ぐらい――――」
中沢「おっと、俺の事も忘れてもらっちゃ困るな」
まどか「なっ……中沢くん!?」
まどか「そんな、だって仁美ちゃんの攻撃を受けて……」
中沢「ふん。ペガサスはへとへとになって戦線離脱したが」
中沢「俺はこの甲冑のお陰で無傷だぜ!」
まどか「一体どんな材質で出来てるのその鎧!?」
中沢「鎧にタブがあってな、主成分はポリエチレンテレフラートって書いてあったぞ」
中沢「多分、化学工場とか原子力発電所で着る防護服に使われている素材だな」
まどか「それペットボトルの素材だよ!? 確かに軽くて丈夫で長持ちするけどさぁ!?」
中沢「まぁ、材料なんざどーでもいい」
中沢「コイツと協力するのは癪だが、二対一になってるぜ?」
まどか「う……だ、だけど二人だけならまだ……」
仁美「わたくしも居ますわよ!」
まどか「ちょ!? 仁美ちゃん!? 高度1000メートルから生身で落ちたのになんで無傷!?」
仁美「局所的に発生した竜巻によって落下の勢いが相殺され」
仁美「その後燃えるゴミに出されていた大量のソファとか布団の上に偶然落下したので助かりましたの」
まどか「偶然と言うより最早コントだよそれ!?」
仁美「それより、まどかさん。どうしますか?」
仁美「円盤は壊れてしまい、宇宙人さんは何処かに逃げてしまいましたが……」
仁美「わたくしには我が志筑家に伝わる戦闘技法があります」
仁美「御二方ほどではなくとも、戦う術を持ち合わせているわたくしを数えれば三対一」
仁美「流石に、分が悪いのでは?」
まどか「ぐっ、ぐぎぎ……!」
まどか「さっきからごちゃごちゃとぉ……!」
まどか「そこまで言うなら本気で全員吹っ飛ばしちゃうよ! 跡形もなく消しちゃうよ!」
まどか「今の私にはそれが出来るんだから!」
まどか「なんなら今ここでその力を見せつけてあげようか!?」
まどか「ほら、逃げ帰るなら今のうち――――」
509: 2014/07/15(火) 12:37:56.13 ID:4zwSbU+X0
「隙ありっ!」
510: 2014/07/15(火) 12:39:38.13 ID:4zwSbU+X0
まどか「へ――――ぶげっ!?(せ、背中から衝撃が……)」
まどか(これは、キック!?)
まどか「どんがらがっしゃあああああああああああんっ!?」
さやか「ああ!? まどかが吹っ飛ばされた!?」
仁美「なっ……そんな、どうして……」
恭介「ふぅ……上手く決まったな」
仁美「どうして上条さんが!?」
さやか「嘘!? 恭介!? なんで……」
恭介「改造人間たる僕の聴力は常人よりも遥かに優れている」
恭介「お陰でさやかと鹿目さん、あと志筑さんと中沢の会話を聞き取れてね」
恭介「流石に空中戦には参加出来なかったけど」
恭介「こうして地上に降りてきたようだから、早速参戦してみたって訳さ」
中沢「どんだけ地獄耳なんだよ……」
恭介「そして――――」パシッ
さやか「ん? 恭介が今持ってるのって……」
さやか「ま、まどかが持ってた媚薬!?」
恭介「媚薬は、僕が手に入れた」
さやか「そ、そんな……!」
さやか「恭介、そ、その、それを渡してはくれない、かな……?」
恭介「おいおい。なんで僕がわざわざ鹿目さんに跳び蹴りを食らわせたのか分からないのかい?」
恭介「僕がこの薬を手にし、使うためだよ」
さや仁「!?」
さやか(きょ、恭介が媚薬を使う相手!?)
仁美(一体誰が……ま、まさか、まさか……)
さや仁(私!?)
中沢「おいおい上条……一体誰にその薬を使うつもりなんだ」
恭介「ふ……そんなの決まってるだろ」
さやか「恭介……!」
仁美「上条くん……!」
511: 2014/07/15(火) 12:41:50.15 ID:4zwSbU+X0
恭介「杏子ちゃんだよ!」
512: 2014/07/15(火) 12:43:02.33 ID:4zwSbU+X0
さやか「……………」
仁美「……………」
まどか(……蹴飛ばされてからようやく復帰したら)
まどか(さやかちゃんと仁美ちゃんが、道端に落ちている犬の糞を見るかのような眼差しで上条くんを見つめている……)
中沢「お前も天使ちゃん狙いだったのかよ!?」
恭介「お前も? ふん。中沢、お前と一緒にするんじゃない」
恭介「女なら誰でも良いお前と違い」
恭介「僕は杏子ちゃん一筋だ!」
さやか「」ピキッ
仁美「」ビキッ
まどか(ああ、二人が怒ってるのはそういう……)
中沢「だからテメェは器が小さいんだよ!」
中沢「男ならハーレムを夢見ろやぁ!」
恭介「馬鹿野郎! 愛とは一本道しかあり得ない!」
恭介「貴様のような強欲塗れの男に、天使な杏子ちゃんは渡せない!」
中沢「ふん! お前に俺の夢が分かるとは思ってねぇ!」
中沢「我が覇道を阻む以上――――」
中沢「貴様はここで氏ねぃ!」
恭介「たかが甲冑に身を包んだぐらいで僕に勝てると思ったか!」
恭介「自分の欲望で女の子の心を弄ぶ」
恭介「そのふざけた幻想をぶち頃す!」
恭中「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
さやか「あーまじかったるいわーやってられないわー」
仁美「誰ですかねーあんな愚物が好きだなんて言ったひとー」
まどか(ああ……二人のテンションがリーマンショック直後の株価みたいな勢いで下がってる……)
513: 2014/07/15(火) 12:44:44.12 ID:4zwSbU+X0
まどか(ま、まぁ、障害が二つ、上条くんとの差し引きでも一つ減ったのは喜ぼう。うん)
まどか(だけど、どうしよう)
まどか(上条くん単体なら、十分に倒せる)
まどか(中沢くんだけでも同じ)
まどか(でも二人が本気での戦いを繰り広げている中に割って入り)
まどか(媚薬を”無傷”で奪い返す……)
まどか(これは中々難しそう)
まどか(ここは一旦二人の戦いが終わるまで待つべき?)
まどか(いや、だけどその間にさやかちゃん達が正気に戻らないとも……)
まどか(あれ? これは今が正気なのかな? ん? んん?)
まどか(……ん?)
杏子「イヤイヤ、ダカラムリダッテ」
シャル「ツーテモホカニテハナイデショー」
まどか(あれは杏子ちゃんに、シャルロッテさん?)
まどか(なんか100メートルぐらい離れた場所にある木に身を隠している、のかな?)
まどか(……怪しい。色々と)
514: 2014/07/15(火) 12:45:34.56 ID:4zwSbU+X0
まどか(えっと、もしもし二人とも? どうしたの?)テレパシー
杏子(うわっ?! なんだ!?)テレパシー
シャル(誰かが直接脳内に!?)テレパシー
まどか(いや、これテレパシーですから。魔法少女だった時、普通に使ってたよね?)テレパシー
シャル(あ、そう言えばそうだった)テレパシー
杏子(最近使う機会がなくてすっかり忘れてたわ)テレパシー
まどか(もう……って、こんな話をしている場合じゃなくて)テレパシー
まどか(二人ともどうしてこんなとこに?)テレパシー
まどか(まさか、媚薬を奪いに来たの?)テレパシー
杏子(まぁ、半分正解、かな)テレパシー
杏子(少し前にその媚薬の説明書を読んだんだけどさ)テレパシー
杏子(どうやら、あの媚薬は飲ませなくても人を虜にする効果があるらしく)テレパシー
杏子(その奪い合いによって騒動が起こるって代物らしいんだ)テレパシー
まどか(ああ……だからあんなにもたくさん邪魔が入ったんだ……)テレパシー
杏子(いや、アンタが真っ先に虜になってただろ)テレパシー
まどか(てへ♪)テレパシー
杏子(たく……)テレパシー
515: 2014/07/15(火) 12:47:15.80 ID:4zwSbU+X0
杏子(話を戻すとだな)テレパシー
杏子(そんな物は危険だからどうにかしようとシャルが張り切ったんだけどさ)テレパシー
シャル(……うっかり転んで、妖精さんアイテムをばら撒いちゃったのよ)テレパシー
まどか(……うっかり、ね)テレパシー
シャル(妖精さんアイテムだから大惨事にはならないと思うけど、でも大事件は起こしそうでしょ)テレパシー
シャル(というかもう起きちゃってる訳だけど……)テレパシー
シャル(だから散らばった妖精さんアイテムの回収がしたいのよ)テレパシー
シャル(勿論媚薬も、ね)テレパシー
まどか(それは――――)テレパシー
シャル(……一つ、聞きたいんだけどさ……)テレパシー
シャル(妖精さんアイテムを熟知しているほむらに、どうやって媚薬を飲ませるつもりだったの?)テレパシー
まどか(それは、食事に混ぜたり、無理やりだったり……)テレパシー
シャル(私にはなんらかのトラブルが起きて、結局自分で飲む羽目になる予感がするんだけど)テレパシー
まどか(……あ)テレパシー
シャル(回収、しても良いわね?)テレパシー
まどか(……はい)テレパシー
シャル(はい、難関攻略っと)テレパシー
シャル(で、だ。この状況と媚薬の効果から考えると)テレパシー
シャル(志筑さんと、えっと……クラスの男子が散らばった妖精さんアイテムを持ってるのかしら)テレパシー
まどか(うん。ただ、一個は此処に居ないけど早乙女先生が持っているのと)
まどか(仁美ちゃんが持っていたアイテムはなんか爆発しちゃったから)テレパシー
まどか(残っているのは中沢くんの甲冑と、早乙女先生が付けたカチューシャだけだね)テレパシー
シャル(え?)テレパシー
まどか(? どうかした?)テレパシー
シャル(あ、いや、うん……)テレパシー
シャル(一個足りないわね……確か四つあった筈なんだけど……)テレパシー
まどか(え? 四つ?)テレパシー
シャル(まぁ、ある分だけ回収しちゃいましょ)テレパシー
シャル(……回収……)テレパシー
516: 2014/07/15(火) 12:48:27.78 ID:4zwSbU+X0
中沢「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
恭介「どりゃあああああああああああああああああ!!」
シャル(……………)
まどか(うわぁ、私の目でも追えないような速さで肉弾戦を繰り広げてるよ……)
シャル(……佐倉さん、頑張って)テレパシー
杏子(いやいやいやいやいや、可笑しくね? 可笑しいだろ?)テレパシー
杏子(なんで今あたしに丸投げした? 元々お前がやっちゃった事だろ。自分でなんとかしろよ)テレパシー
シャル(無理)テレパシー
杏子(ああ、まぁ、うん……お前にあの二人の間に入るのは無理だな。うん)テレパシー
杏子(でもだからってあたしに即投げってどうなんだよ)テレパシー
シャル(佐倉さんなら出来るよ)テレパシー
杏子(テメェ今馬鹿にしたな? 馬鹿にしたよな?)テレパシー
シャル(してないわよ。ただ鼓舞しただけよ)テレパシー
杏子(仮にそうだとしても気に入らねぇ)テレパシー
シャル(じゃあどうしろって言うのよ? 何? 私に氏ねと?)テレパシー
杏子(だから諦めるにしてもあたしに丸投げするなっつってんだよ!)テレパシー
シャル(諦める訳にはいかないでしょ! 妖精さんアイテムなのよ!?)テレパシー
シャル(アンタ事態の深刻さ分かってないでしょ!?)テレパシー
杏子(んだとゴルァ!?)テレパシー
シャル(やんのかああんっ!?)テレパシー
まどか(ちょ、二人とも喧嘩は止めて!?)テレパシー
まどか(もしかしなくてもこれも媚薬効果!? 節操なさすぎだよ!?)テレパシー
杏子「だからテメェは何時も何時も――――」
まどか(ああもう、ついには声まで出しちゃって……)
恭介「その声は、杏子ちゃん!?」
517: 2014/07/15(火) 12:53:03.18 ID:4zwSbU+X0
シャ杏ま「!?」
まどか(ちょ……い、今の声に上条くんが気付いた!? 100メートルも離れてて、しかも戦いの最中に!?)
まどか(って、上条くんは改造されて地獄耳になったんだ!)
まどか(も、もし上条くんが『私と同じ結論』に至ったら――――)
恭介「ふ、ふふ、ふははははは!」
恭介「この勝負――――僕の勝ちだ!」ドンッ!
まどか(ああ! 上条くんが走り出した!?)
中沢「ま、待――――」
まどか(目の前で戦っていた中沢くんは気付いたけど……)
まどか(駄目! 鎧が重過ぎるのか、全然遅い!)
さやか「――――」
仁美「――――」
まどか(さやかちゃんと仁美ちゃんは気付いているのかすら怪しい! 反応した様子もない!)
まどか(こうなると止められるのは私だけなんだけど……)
まどか「こ、この――――」
恭介「遅い!」
まどか(ああ! 振り上げた腕の下を潜られた!?)
まどか(どれだけ強くなっても私は結局遠距離攻撃型だから、近接戦は分が悪いよぉーっ!)
まどか(で、でもまだ希望はある!)
まどか(天使となった杏子ちゃんの超絶パワーなら上条くんを追い払う事ぐらい――――)
杏子「あだっ」
シャル「げぇっ!? 上条に突撃しようとした佐倉さんが石に躓いてこけたーっ!?」
まどか「なんでここでこけるのォ――――?!」
恭介「うけけけけけ! 天は我に味方せりぃぃぃぃぃ!」
まどか(ああ、もう駄目――――)
518: 2014/07/15(火) 12:54:33.85 ID:4zwSbU+X0
――――しゅるるるるるるるっ
恭介「え、あぶしっ!?」
まどか(え!? 上条くんが、転んだ!?)
――――しゅるるるるるる……
中沢「うわっ!? なんだこれ!?」
シャル「きゃあ!?」
杏子「な、なんだぁ!?」
まどか(!? 地面からたくさんの蔓が生えてきた!?)
まどか(その蔓がみんなの手足に絡み付いて拘束してる! 一体何処から……)
まどか「って、私も考えていたら足に蔓が絡まってきゃあああああああああああああああ!?」
まどか「なんで片足だけに絡まって持ち上げるの!?」
まどか「見えちゃう! 逆立ちになったらスカートが捲れてパンツ見えちゃう!」
まどか「ほ、ほむらちゃん以外に見せるのは嫌ああああああああああああああっ!」
さやか「うわぁ!? つ、蔓が……うぐっ!?」
仁美「きゃあ!?」
まどか「ああ! みんな拘束されちゃった!?」
まどか「一体なんなのこの蔓……」
まどか(あれ……この蔓……よく見たら棘が生えてるから……蔓というより、茨?)
まどか(それにこの色合いとか、茎の見た目とかって……)
まどか(薔薇のそれによく似ているような――――)
「ふぅ……なんとか間に合いましたね」
519: 2014/07/15(火) 12:56:14.47 ID:4zwSbU+X0
全員「!?」
まどか「だ、誰!?」
まどか(声がした方を見たら、誰か居る……!)
まどか(誰か……)
まどか(……えっと……)
まどか(え? 本当に誰?)
まどか(ヒスイみたいに綺麗な髪でポニーテールを作っていて、お淑やかそうな顔立ちで)
まどか(マミさんほどじゃないけどスタイルが良くて、私達より年上っぽい……高校生ぐらい?)
まどか(分からない事だらけだけど、間違いないのは――――)
全員(全然知らない人だっ!?)
??「ふふ。上手い事全員拘束できましたね」
まどか「あ、あなたは、一体何が目的なの!?」
??「この展開からして、簡単に予想が付くのではありませんか?」
??「勿論媚薬を奪うためです」
まどか(そんな……まさか、知らない人まで関わってくるなんて……!)
恭介「ぐっ……お前も媚薬を奪いに来たのか……!」
恭介「でも甘く見たな! 君も不思議な力が使えるみたいだけど」
恭介「改造人間となった僕のパワーなら、いくら太くとも植物ぐらい!」ギチチ
??「あら……私が魔法で出した茨が引き千切られてしまいそう。話には聞いていましたけど、本当に凄いパワーです」
??「だけど、これがありますからね」
まどか(ポケットから何か、小瓶みたいのを取り出した?)
まどか(それでその液体を地面に垂らして……)
――――メキメキメキメキメキッ!!
恭介「ぐ、うぐぁ……!?」
恭介「ば、馬鹿な……さっきよりも強度が増した……!?」
??「ふふ♪ 流石妖精さん製の栄養剤。少し与えただけでこんなにも力強くなるんですね」
??「元々私の魔法で作り出した薔薇とはいえ、吃驚するほど高性能です」
植物【カクメイノトキハキタリーッ!】
??「……あまりたくさん与えるのは止めときますか」
まどか(妖精さんアイテムを、妖精さんアイテムだと分かって使ってる!?)
520: 2014/07/15(火) 12:56:56.55 ID:4zwSbU+X0
まどか(しかも魔法でこの茨……薔薇を作り出したって事は、魔法少女!?)
まどか(そんな事が出来るのはほむらちゃんを知っている私達ぐらいの筈!)
まどか「あ、あなたは一体誰なの!?」
??「え?」
??「あの……まだ気付きません?」
まどか「気付くも何も知らない人だよ! ……知らない人、ですよね?」
??「それは酷くありません? 薔薇で初対面で妖精さんですよ? 割とバレバレ……」
??「え、鹿目さん以外の人は分かりますよね? 分かってますよね?」
さやか「い、いやー……」
シャル「鹿目さんの名前は知ってるみたいだから……鹿目さんの知り合い?」
杏子「あたしもちょっと覚えが……」
??「ちょ、酷い!? 皆さん総じて酷いです!」
??「私ですよ、私!」
ゲルト「ゲルトルートですよ!!」
521: 2014/07/15(火) 12:59:00.09 ID:4zwSbU+X0
まシさ杏「……………」
まシさ杏「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ゲルト「えええええっ!? 本当に気付いてなかったんですか!?」
シャル「い、いや、だって人間の姿だし……」
ゲルト「昨日の夜、ようやく決意が決まったんで人間に戻ろうと思っていたんですよ!」
ゲルト「その事を今朝話そうとしたら、皆さん時間が迫っていて話が出来なくて」
ゲルト「お手伝いさんに話したら、ほんの数十秒で妖精さんがこのボディをくれたんです!」
シャル「ああ! あの時話そうとしていたのってその事だったの!?」
杏子「で、でもよ、その身体は誰かのクローンって訳じゃないんだよな? モデルは誰なんだ?」
ゲルト「なんか魂に刻まれている記憶とやらを引き出したので、これが私本来の姿らしいのです」
ゲルト「覚えてませんけど、妙にしっくりくるので気に入っています」
さやか「そ、それで妖精さんアイテムは……」
ゲルト「人間に戻った姿を見せて皆さんを驚かせてやろうと思い、公民館に向かっていた時に偶々拾いまして」
ゲルト「で、その後鹿目さんの魔力を感じたのでなんだろうと思い寄り道し」
ゲルト「そこで美樹さん達と媚薬の話をしている場面に遭遇したのです!」
まどか(ああ、つまりさやかちゃんが思いっきり媚薬の話をした時には、もう全員集合状態だったのね)
まどか「さやかちゃんの馬鹿ああああああああああああっ!」
さやか「!? 何故いきなり馬鹿にした!?」
まどか「諸々全ての原因がさやかちゃんにあるからだよ!」
522: 2014/07/15(火) 13:02:08.18 ID:4zwSbU+X0
シャル「そんな事より! アンタ、なんで媚薬を狙ってるの!?」
シャル「まさか、誰か飲ませたい人が……」
ゲルト「当然。伊達や酔狂で媚薬を手に入れようなんて思っていません」
ゲルト「全ては私の祈りを叶えるため」
ゲルト「魔法少女になってでも、叶えたかった夢を実現するためです」
まどか「え……」
まどか(ゲルトルートさんの、祈り……? それが、媚薬で叶えられるの?)
まどか(そう言えば、一昨日、私が恋の相談をした時、恋に対する想いを言ってた)
まどか(そして、その所為で……とも言い淀んでいた)
まどか(もしかしてゲルトルートさんの祈りは恋の願い?)
まどか(それで魔女になったって事は――――)
杏子「おい、祈りってなんの事だ!?」
ゲルト「見ていれば分かります」シュルル
恭介「ぐあっ!? 目元に蔦が……前が見えない!」
ゲルト「ふふ……万一誰かを見てしまっては元も子もないですからね……」
中沢「ちくしょう! こうなったら……」
ゲルト「あなたもです」
中沢「ぐうっ!?」
仁美「ああ!? 中沢さんも顔に蔦が絡まって……!」
ゲルト「他の皆さんは邪魔さえしなければ、それ以上の拘束はしませんよ」
ゲルト「痛い目を見たくなければ、大人しくしていてくださいね?」
シャル「くっ……!」
ゲルト「さて……ふふ、うふふふ♪」
ゲルト「はい、あーん……♪」
恭介「がぽっ!?」
さやか「ああ!? 恭介の口に媚薬が……!」
シャル「上条が狙いだったの!?」
まどか「そんな……!」
ゲルト「……おっと、全部飲ませちゃダメダメ」
ゲルト「うん。ちゃんと半分残せましたね」
まどか(ああ……こんな……こんな事って……)
まどか(なんで、なんでなのゲルトルートさん……!)
まどか(あれだけ恋を大切にしていたのに)
まどか(なんでさやかちゃんの好きな人を奪うような真似を――――)
ゲルト「あとはこれを……」
523: 2014/07/15(火) 13:02:48.70 ID:4zwSbU+X0
ゲルト「彼に飲ませます」
中沢「ファッ!?」ガポッ
女子s「え?」
524: 2014/07/15(火) 13:04:16.05 ID:4zwSbU+X0
ゲルト「それから二人を引き合わせます」
恭介「え?」
中沢「え?」
ゲルト「そして蔦を外して――――御開帳~♪」
恭中「あ」
恭中「……………」
恭介「中沢!」ガシッ
中沢「上条!」ガシッ
女子s「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
ゲルト「いよっしゃあっ!!」ガッツポ
シャル「何がいよっしゃあ! よ!? 何が!?」
さやか「アンタ一体何が目的であんなしたの!?」
仁美「よよよよよりにもよって上条くんと中沢くんに媚薬を飲ませ、二人を恋仲にするなんて……」
仁美「それは禁断の恋ですわよーっ!?」
杏子「テメェ、さやか様の恋を邪魔した挙句あんな事して、どう落とし前つける気なんだ!」
まどか「ちゃんと説明して! こんなの、納得出来ない!」
ゲルト「……ふふふふふ」
ゲルト「絶望してからは薔薇を愛でる魔女となり」
ゲルト「魔法少女となった時も、植物を操る魔法を使っていた私」
ゲルト「それは何故か?」
525: 2014/07/15(火) 13:04:50.15 ID:4zwSbU+X0
ゲルト「私が薔薇族愛好家の女だからです!」
526: 2014/07/15(火) 13:07:23.61 ID:4zwSbU+X0
【薔薇族・・・ゲO雑誌】
さやか「……………」
シャル「……………」
杏子「……………」
さシャ杏「お前の魔法が薔薇ってそういう理由なのかよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ゲルト「そう、私は薔薇の魔法少女――――薔薇の下で愛する男達と出会いたいと願った」
ゲルト「腐りきった女なのですよ!」キラキラ
シャル「コイツめっちや清々しい笑顔で言い切ったわ!?」
杏子「道理で魔女の時の姿がドロドロと腐ってる風な外見だった訳だなぁ!?」
まどか「薔薇族ってなに?」
仁美「はぁはぁはぁはぁ……うっ」
仁美「ふぅ……乙女の嗜みですわ」キリッ
まどか「え?! そうなの!?」
さやか「ちげぇよ!」
ゲルト「ちなみに学校に持ち込んだBL同人誌を当時の親友に見られ」
ゲルト「軽蔑されたのが原因で魔女化しました!」
杏子「やっぱりただの腐敗物じゃねぇかコイツ!」
シャル「謝れ! 自分の中の正義に苦しんで魔女化した鹿目さんに謝れ!」
まどか「友達に軽蔑されたなんて、そんなの可哀想過ぎるよ……!」
仁美「いえ、鹿目さん。今の話、実は同情すべき点が一つもありません」
仁美「薔薇族とは孤高の存在ですのよ」
まどか「そ、そうなんだ……カッコいいね」
さやか「まどか騙されるな!? そして仁美、お前もなのか!?」
仁美「乙女の嗜みですもの」
さやか「嗜まない女子も普通に居るわ! 主に此処に!」
ゲルト「魔女になってからは延々自分の育てた薔薇を眺め」
ゲルト「アントニー×アーデルベルトの妄想を描いたものです」
シャル「マニアック過ぎない!?」
杏子「ヤベェこいつめっちゃレベル高いぞ!?」
まどか「どういう意味?」
仁美「カップリングですわね。一般的に先に読み上げられた人物が攻めという傾向がありまして」
さやか「止めて!? まどかを穢さないで!」
527: 2014/07/15(火) 13:09:26.16 ID:4zwSbU+X0
ゲルト「その妄想を邪魔する魔法少女とか一般人を蹴散らす日々……」
ゲルト「どうせ誰も私の趣味を理解してくれないと思い、使い魔と薔薇以外には心を開きませんでした……!」
ゲルト「だけど私は決めました!」
ゲルト「誰にも分かってもらえないかも知れない。でも――――」
ゲルト「自分に正直に生きよう! 暁美さんみたく、楽しく、胸を張って生きよう!」
ゲルト「だって好きなものは好きだから!」
ゲルト「という訳でまずは私の大好きなBLを見たいと思い、こんな行動に出てみましたっ!」
シャル杏「妄想で留めとけよこのアホおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
恭介「中沢ーっ!」
中沢「上条ーっ!」
まどか「……………」ドキドキ
仁美「つまりどちらが受けか攻めかというのも大事なのですが、しかし誘い受けやヘタレ攻めというジャンルもあり」
さやか「そこの腐敗物2! いい加減まどかを巻きこむなっ! そしてまどかは引き込まれるな!」
シャル「ああもう! 妖精さん絡みだから知ってたけど……」
シャル「もう少しマシなオチを付けなさいよぉ――――――――!!」
……………
………
…
528: 2014/07/15(火) 13:10:48.23 ID:4zwSbU+X0
―――― 午後十二時頃 ――――
―――― 見滝原市街地 ――――
マミ「そう……私の知らない場所で、そんな事が起きていたのね」
マミ「……私の知らない場所で」ズーン
シャル「いや、落ち込まないでよ。落ち込むような話じゃないし」
マミ「ふ、ふんっ。落ち込んでなんていないわよ!」
マミ「妖精さんが絡んだトラブルなんて、精神的に疲れるだけって知ってるんだから!」
マミ「別にみんなと一緒に居たいとか、寂しいとか」
マミ「これっぽっちも思ってないんだからね!」
シャル(この人、身体は大人っぽいけど中身は子供っぽいのよね)
シャル(……可愛い)
マミ「……何その慈愛に満ちた眼差し?」
シャル「強がる子供を愛でるような眼差しよ」
マミ「だから寂しがってないって言ってるでしょ!?」
杏子「お前ら楽しそうだなぁ」
マミ「楽しくないわよ!?」
杏子「いや、結構楽しんでるだろ」
杏子「それに比べて……」
さやか「うう……恭介ぇ……恭介ぇ……」
シャル「……呻き声が怖いわ」
まどか「まぁ、さやかちゃんは結局告白すら出来なかった訳だしね」
まどか「ほむらちゃんに告白して、すっきりふられた私は今回の事そこまで引き摺ってないけど」
まどか「何も言えずにふられたようなものになったさやかちゃんは……」
杏子「うう……さやか様……おいたわしい……」
ゲルト「まぁまぁ、人は恋に破れた分だけ強くなれるものです。前向きに考えましょう」ツヤツヤ
シャル「お前がっ!」
杏子「それをっ!」
シャル杏「言うなあああああああああっ!!」 < ダブルパンチ
ゲルト「ばいばいきーんっ!?」ゴロゴロゴロ
まどか「……流れ星になるほど遠くには吹っ飛ばなかったね」
530: 2014/07/15(火) 13:17:02.24 ID:4zwSbU+X0
シャル「たく……この事態で得したのってゲルトちゃんだけじゃん……」
まどか「いや、仁美ちゃんも良いもの見せてもらったって言ってたよ」
シャル「寝取られて喜ぶんかいアイツ……」
マミ「……上条くん達、元に戻ると良いのだけど」
まどか「とりあえず明日、ほむらちゃんに聞いてみます……あまり期待出来ませんけど」
マミ「期待出来ないわねぇ……」
さやか「うう……恭介ぇ……」
さやか「こんな事になるなら妖精さんアイテムに頼らず、ちゃんと告白するんだったよ……」
ゲルト「まぁまぁ。きっと他に良い人に出会えますって」ツヤツヤ
さやか「だからお前が言うなーっ!」 < アームロック
ゲルト「がああああああああああああああああ」
まどか「懲りないなぁ」
まどか「……ふふっ」
さやか「ちょ、なんでまどか今笑ったの!?」グッ グッ
ゲルト「あの、美樹さんアームロックそろそろ外しぎぃえええええええっ!?」
ゲルト「無理無理無理無理それ以上いけないぃぃぃぃぃ!?」
まどか「あ、うん。別に馬鹿にした訳じゃないよ?」
まどか「ただ、楽しいなって」
さやか「はぁ? 楽しい?」
まどか「楽しいよ。みんなで、こうして笑い合えるんだから」
まどか「こういう時間がずっと続けば良いなぁ……」
さやか「まどか……」\モウムリホントムリギェピィィィィィィィィ!/
531: 2014/07/15(火) 13:17:30.51 ID:4zwSbU+X0
「やれやれ。人間はどうして事ある毎に希望を抱こうとするんだろうね?」
532: 2014/07/15(火) 13:20:46.43 ID:4zwSbU+X0
全員「!?」
まどか「今の声って――――」
マミ「キュゥべえ!?」
QB(疾患持ち)「やぁ、相変わらず能天気みたいだね。僕達と敵対状態にあるのに、隙だらけじゃないか」
疾患QB「こんな間抜けな原生生物に僕達の母船が落とされたなんて」
疾患QB「ああ、思い出すだけで腸が煮えくり返るよ」
まどか(このキュゥべえ、もしかして昨日ほむらちゃんが落とした宇宙船で出会った……?)
マミ「な、何このキュゥべえ……?」
ゲルト「なんか、私が知っているのと違う……?」
シャル「会うや否や、やたらと棘のある言葉を使ってくるじゃない」
シャル「アンタ達、感情を持ってないんじゃなかったの?」
疾患QB「一応僕はギリギリ”持ってない”事になっている」
疾患QB「合理性が感情によって損なわれない、という定義の下での話だけど。元々全く持ってない訳じゃないし」
疾患QB「ただまぁ、この渦巻く衝動を君達の言語に当てはめるなら」
疾患QB「嫌悪だね」
さやか「ふん。要するにあたしらの事が嫌いって事でしょ。あたしもアンタの事なんか嫌いよ!」
さやか「踏み潰されないうちに姿を消した方が身のためじゃない!?」
杏子「ああ、全くだ」
杏子「テメェが何を企んでるのかは知らねぇけど」
杏子「こちとら妖精さんパワーで魔法少女時代とは比較にならないぐらい強くなってんだ」
杏子「何かしようってんなら、一瞬でゴミにしてやるけど?」
マミ「……キュゥべえ」
マミ「私は……まだあなたの事をそこまで嫌いになれないの」
マミ「同時に、あなたに対する憎しみの気持ちもある」
マミ「だから、佐倉さんの言った事をなぞるようだけど」
マミ「消えてくれないかしら? 私の魔法があなたを撃ち抜く前に」
疾患QB「ふん。そうなりたくはないね」
疾患QB「どっかの誰かが僕達の母船を落としたせいで、スペアのボディが今はないんだ」
疾患QB「魂と本体は本星にあるから別にどうって事はないけど、こちらでの活動が出来なくなるから勘弁してほしいね」
さやか「だったら――――」
疾患QB「ただねぇ、今回はどうしても君達の前に姿を見せなきゃならなかったからね」
シャル「はぁ? どういう……!?」
まどか(な、何……!?)
まどか(景色がどんどん塗り替わっていく!? 赤と黒が全てを覆う、凄く不気味な空間になってる……!)
まどか(これって――――)
シャル「ま、魔女の結界!?」
533: 2014/07/15(火) 13:24:44.65 ID:4zwSbU+X0
ゲルト「でも、何処からも魔女の気配は……!」
疾患QB「多層空間フィールド」
疾患QB「魔女の結界と”君達が勝手に名付けた”空間を僕達のテクノロジーで再現したものだ」
疾患QB「本来は暁美ほむらを隔離し、妖精の援護を受けられないようにして始末するために持ってきたものだけど」
疾患QB「今回は逆に、暁美ほむらが君達の救援に来られないようにするために起動させてもらった」
疾患QB「まぁ、魔法少女の素質があるなら何時かは見つけられるだろうけど、時間稼ぎにはなるからね」
さやか「つ、つまり?」
シャル「私らを閉じ込めた、って事でしょうね」
マミ「……どういうつもり? 私達を閉じ込めて、このまま餓氏でも狙うつもり?」
疾患QB「はっ。そんな面倒で不確実な手法、取る訳ないだろう?」
疾患QB「さっきも言っただろう。あくまで時間稼ぎ。君達と暁美ほむら……妖精が合流するのを遅らせるのが目的さ」
疾患QB「暁美ほむらが勘付く前に、君達を始末させてもらおう」
杏子「よくそんな大口叩けるもんだね!」
杏子「テメェの力じゃあたしらを倒すなんて真似、出来る訳ねぇだろ」
杏子「それとも実力を隠してたってか?」
疾患QB「まさか。このボディはあくまで君達魔法少女との契約のためのものさ」
杏子「なら――――」
疾患QB「逆に聞くけど、君達は”我々”が”孵卵器<インキュベーター>”しか存在しないと思っていたのかい?」
534: 2014/07/15(火) 13:27:38.19 ID:4zwSbU+X0
まどか「ど、どういう意味?」
疾患QB「やれやれ。鈍いなぁ」
疾患QB「何故僕達に感情が生じなかったか、考えた事はあるかい?」
疾患QB「それは僕達が女王個体を頂点とする、一つの集団が個として振る舞う進化を遂げた生命体」
疾患QB「この星の生物で言うところの、蟻や蜂などの社会性昆虫のような存在だったからさ」
疾患QB「末端の個体は余計な事を考えず、コロニー存続のためだけに労働し」
疾患QB「女王個体はコロニー存続のために末端の個体を手足として扱う必要がある」
疾患QB「そのような社会体制を維持するには、感情という個を尊重するシステムは極力排除しないといけないからね」
疾患QB「必然、感情を失う方向に進化した訳だ」
疾患QB「さて、僕達はエネルギー……元を辿れば食料調達が役割の個体なんだけど」
疾患QB「でも、自然界は生易しくないよね?」
疾患QB「例えば外敵が攻めてくる事もあるだろうし、自然災害だってある。巣作りも必要だ」
疾患QB「そんな仕事の全てをまで”食料調達班”に任せられるか? 答えはNOだ」
ゲルト「……まさか!?」
疾患QB「ここまで言えば、まぁ、分かるよね?」
疾患QB「連中は血気盛んで効率よりも効果重視で僕達の努力を無碍にするから、本当は呼びたくなかったんだけど」
疾患QB「今回は種族の危機だ。感情を優先する訳にはいかない」
疾患QB「さぁ――――おいで!」
535: 2014/07/15(火) 13:28:59.35 ID:4zwSbU+X0
――――キュゥべえが声を張り上げた瞬間、結界内に”それ”は現れました。
まるで鋼鉄のように頑強そうな筋肉で固められた肢体。
トカゲとも鳥とも付かない顔立ち。
人間のような恐竜のような、或いはその中間のような身体の形。
手から三本だけ伸びる槍のように鋭利な爪。
全体的に赤一色で、部分的に白いラインが入っている……キュゥべえと真逆のカラーリングをした皮膚。
どれもがキュゥべえと違う。どれもキュゥべえと似ていない。
だけどその中で一つだけ共通点があるとすれば、瞳。
肉食動物みたいに鋭くて、だけど感情が一切読み取れない……キュゥべえと同じ瞳。
だから私には、それがキュゥべえの仲間だと分かりました。
だからそれが、今から私達が戦う敵なのだと理解しました。
――――私達は、勝てるのでしょうか。
――――ほむらちゃんも妖精さんもいない、この絶望的な状況で。
536: 2014/07/15(火) 13:29:56.21 ID:4zwSbU+X0
「アイツ等が排除対象だ! 連中を速やかに、そして全力で始末しろっ!」
「”戦闘用個体<ウォーリア―>”!」
537: 2014/07/15(火) 13:31:03.10 ID:4zwSbU+X0
―――― その頃 ――――
見滝原中学教頭「で? 思いっきり欠勤した理由は?」
猫和子「……媚薬を……追い駆けていました……」
教頭「はぁ?」
猫和子「いえ、その……寄り道、です……」
教頭「そうですか……中学生ですら時間通りに来るというのに、寄り道ですか」
教頭「で、頭にあるその猫耳は?」
猫和子「ひ、拾って……出来心で……」
猫和子「それでその、付けたら外れなくて……」
教頭「はぁ? そんな訳ないだろうが」
教頭「ほれ、簡単に外れるじゃないか」ヒョイ
和子「え? あ、アレ!? えっ!?」
教頭「全く。くだらない嘘を」
教頭「大体あなたは昔から」クドクド
和子「ひぃーん……」
538: 2014/07/15(火) 13:36:15.03 ID:4zwSbU+X0
妖精さんメモ
『元気一発特製肥料』※オリジナル※
どんなに弱った植物でもプラント42並に元気になるという素敵な液体肥料です。
しかしながら使われた植物は自我に目覚めるようで、しかも大抵の個体が人間に対し敵意を抱くので大変危険です。
そりゃ、雑草なら存在に気付かれず踏みつけられたり邪魔という理由で毟られたりされ、
花や野菜でも見栄えが悪いからとか実を大きくするためとか言って身体の一部を毟られたら、
感謝よりも恨みの方が大きくなるってものです。
特に花を摘まれるとか、ねぇ?
『お手軽無敵装甲』※オリジナル※
どんな攻撃を受けても装着者にダメージを通さない、妖精さん驚異のテクノロジーの産物です。
理論上MOABや核兵器、果てはプラズマやマイクロ波照射すらも無力化するという超絶防具。
しかも元がペットボトルなのでリサイクルまで出来、更に装備として命中すると痒みが止まらない弓矢と
空を自由に飛べるペガサスが付属品としてついてきます。
と、中々凄いアイテムなのですが、あらゆる攻撃を無効化するため装着者の肌にぴったりと吸い付くよう
サイズが伸縮するため、脱ぐのが凄く大変という欠点があります。
尚、私は着た事がありません。装着系は大抵自力じゃ脱げないんですよねぇ……
『外出用フライングオブジェクト』
見た目もろに円盤な妖精さんアイテム、それが外出用フライングオブジェクト。略してGFOです。
装甲が電波を遮断する素材(アルミホイルだそうです)で出来ており、内部まで電波を通しません。
つまり、この乗り物を使えば妖精さんは電波塗れの都会でもある程度活動出来るのです。やったね。
ちなみに世界中で目撃されているUFOの正体は大体これだと思われます。曰く「みつかったらにんげんさんに
しゃしんとられるー」と妖精さんは喜んでいたので、ステルス機能はないと推測されるからです。
まぁ、そりゃそうですよね。恒星間航法を編み出せるほど高度な文明を持った異星人が、
最寄りの衛星に基地すら作れない地球人の観測網に引っ掛かるような間抜けとは思えませんから。
『猫娘体験カチューシャ』
一度被れば幼女だろうとリアル中二病少年だろうとサラリーマンだろうと老婆だろうと熟女だろうと
脂ぎった中年男性だろうと会社社長だろうと総理大臣だろうと、猫の尻尾と猫の身体能力を与えてしまう恐怖のアイテムです。
妖精さん的加護で可愛くなるとか、そんな事は一切ありません。素体そのままに猫耳と猫の尻尾が備わります。
しかも本能的な部分にも猫要素が備わり、誰かに頼ろうとした途端猫撫で声と悩殺ポーズを取ってしまうのです。
そのあまりの恐ろしさから、A級危険アイテムに封印してあったのですが……シャルロッテさんが使った
『ご希望取り寄せボックス』の効果には逆らえなかったようです。元々封印出来るような代物ではないですけど。
尚、悩殺ポーズ自体にはなんの効果もありません。仮にその悩殺ポーズを見て嘔吐なり吐血なりをしたなら、
それは装着者が絶望的なほど似合っていなかったという話でしょう。
539: 2014/07/15(火) 13:37:44.16 ID:4zwSbU+X0
あ、オリジナルって書くの忘れてた……設定も書き足りてない部分が……
『外出用フライングオブジェクト』と『猫娘体験カチューシャ』はオリジナルです。
540: 2014/07/15(火) 13:40:09.25 ID:4zwSbU+X0
『猫娘体験カチューシャ』※オリジナル※
一度被れば幼女だろうとリアル中二病少年だろうとサラリーマンだろうと老婆だろうと熟女だろうと
脂ぎった中年男性だろうと会社社長だろうと総理大臣だろうと、猫の尻尾と猫の身体能力を与えてしまう恐怖のアイテムです。
妖精さん的加護で可愛くなるとか、そんな事は一切ありません。素体そのままに猫耳と猫の尻尾が備わります。
しかも本能的な部分にも猫要素が備わり、誰かに頼ろうとした途端猫撫で声と悩殺ポーズを取ってしまうのです。
挙句自分では取り外せず、誰かに外してもらわねば延々と猫(笑)のままになってしまいます。
そのあまりの恐ろしさから、A級危険アイテムに封印してあったのですが……シャルロッテさんが使った
『ご希望取り寄せボックス』の効果には逆らえなかったようです。元々封印出来るような代物ではないですけど。
尚、悩殺ポーズ自体にはなんの効果もありません。仮にその悩殺ポーズを見て嘔吐なり吐血なりをしたなら、
それは装着者が絶望的なほど似合っていなかったという話でしょう。
『ブラックボックス』※原作設定※
小さな容器に妖精さんをたくさん閉じ込めると、その容器は光を反射しない真っ黒な箱となります。
これがブラックボックスで、搭載するとそれだけであらゆる物がパワーアップします。
機械だろうがお鍋だろうが生物だろうが関係ありません。曰く、人間が飲むと『かみ』になれるそうです。
実に便利ですが、そのうち箱から妖精さんが出て行ってしまうので効果は永続しません。
尚、箱の他にも蜂蜜などにも溶かす事が出来、飲料に適した形となります。
しかし私が溶かした妖精さんは事前に神にはなりたくないと伝えてあるので、飲んでも神にはなりません。
ただ妖精さんパワーだけは抑えきれないようで、飲むと妖精さん一人当たり100f相当の出来事に見舞われる事になります。
妖精さん曰く「ここ、げんさくにはないせってー」……だから原作ってなんの事ですか。
541: 2014/07/15(火) 13:44:09.91 ID:4zwSbU+X0
今日はここまで!
という訳で、ついにインキュベーターの大攻勢が始まりました。このSSを始めた頃から書きたかった場面の一つです。
疾患QBの台詞は完全オリジナル設定。孵卵器だけでは文明は維持できないでしょうから戦闘用個体とかが
居るんじゃないかなーと妄想した次第です。前々回のメカニックみたいな感じに。
実際、インキュベーターとガチで敵対すると割と勝ち目がない気がします。
何しろ宇宙の寿命を延ばせるほどのテクノロジー、或いは宇宙の寿命がハッキリ縮むほど巨大な文明規模の相手。
ガンバスター持ってこいって感じ。
勝てる気しかしない妖精さんマジ妖精さん。
尚、ゲルトルート腐女子設定も当初から書きたかった場面の模様。
自分の女友達の半数が腐っている事と、類は友を呼ぶという諺の意味を考えつつおさらばなのですっ!
603: 2014/07/30(水) 19:32:49.23 ID:8KllsZgw0
えぴそーど にじゅういち 【インキュベーターさんとの、だいけっせん】
604: 2014/07/30(水) 19:34:24.82 ID:8KllsZgw0
―――― 見滝原:???? ――――
「いくの?」
「ああ、行かないといけない」
「僕は彼女達に償わなければならないのだから」
「……氏んじゃ、やだよ」
「保証は出来ないけど、努力はしよう」
「だから、少しだけ待っていてくれ」
「うん……分かった」
「いってらっしゃい」
「――――ねこさん」
605: 2014/07/30(水) 19:37:37.81 ID:8KllsZgw0
―――― インキュベーター結界 ――――
疾患QB「いけっ! ”戦闘用個体<ウォーリアー>”!」
戦闘用個体(以下WR)【ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!】ビリビリ
まどか「ひっ……!?」
シャル「ちょ……な、なんなのアレ!?」
杏子「赤い、キュゥべえ……?」
マミ「あれが、戦闘用個体……」
ゲルト「凄まじい力を感じます!」
さやか「と、兎に角変し
――――ゴシャッ!
まどか「――――え……」
まどか(あれ……何時の間に、赤いキュゥべえが私の傍に……)
まどか(いや、違う)
まどか(私の傍に来たんじゃなくて――――さやかちゃんに殴り掛かったんだ)
まどか(私達には見えないほどの速さで)
WR【ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! ! !】
疾患QB「やれやれ、相変わらず手が早い。隙を見つけたと思ったらすぐこれだ」
疾患QB「ま、頃し合いの最中隙を見せる方が悪いんだけどね」
シャル「い、何時の間に……!?」
杏子「コイツ、さやか様を! あたしの槍を食らえ!」ブンッ!
WR【】スッ
杏子「!? 消え……」
シャル「杏子ちゃん後ろ!」
杏子「なっ!? 何時の間に!?」
WR【アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】
杏子「不味……避けられ……!」
WR【!】スッ
杏子「また消え、うわぁ!?」ギュンッ
まどか(赤いキュゥべえがいた場所に光の弾が! あれは――――)
まどか「さやかちゃんの攻撃!?」
606: 2014/07/30(水) 19:47:15.77 ID:8KllsZgw0
さやか「ぐ、は……はぁ……はぁ……!」
さやか「危なかった……プリティでキュアキュアになろうとしている最中じゃなかったら」
さやか「頭を殴られた瞬間、氏んでいた……!」ツー…
まどか(さやかちゃんの頭から血が!?)
疾患QB「へぇ。まさかウォーリア―の攻撃に耐えるとはね」
疾患QB「ウォーリアーは戦闘用に調整された個体。生物というよりも兵器に近い」
疾患QB「有機物的存在の中では、宇宙最強クラスの戦闘能力を持っている」
疾患QB「そんなウォーリアーに瞬殺されないとは、それだけで驚くべき事だよ」
シャル「良く言うわ……驚くなんて感情、持ち合わせてないくせに」
疾患QB「……ああ、そうだね。持ってないよ、そんな感情」
疾患QB「言葉のあやさ」
シャル「けっ……」
シャル「……それより、どう? アイツの動き、誰か見えた?」
まどか「いえ、全く」
マミ「私も全然見えなかったわ……特に、佐倉さんの背後に回ったものは、反応すら出来なかった」
ゲルト「私も巴さんと同意見です」
杏子「あたしは辛うじて……けど、分かったところでどうにか出来る速さじゃねぇ」
杏子「それにあたしの背後に現れたアレ。アレは全く見えなかった」
さやか「あたしも殴られるってのは分かったけど、身体が追い付かない。アイツ、滅茶苦茶速いし、強いよ」
シャル「見えるなら勝機はあるわ。勝機は、ね」
シャル「問題は……佐倉さんの背後にアイツが突然現れた事」
シャル「”動いた”様子すらなかった。魔法少女歴の浅い鹿目さんや、
一応は一般人であるさやかが気付かないのは仕方ないにしても」
シャル「魔法少女歴の長い、戦闘経験豊富な私達が、誰一人その動きを認識出来なかったのは奇妙」
まどか「ど、どういう事ですか?」
シャル「恐らく、佐倉さんの背後に回った時アイツは”動いていない”」
シャル「テレポートのような能力を持っている、と見るべきね」
マミ「あの強さにテレポート能力……全く、厄介な化け物ね」
まどか「……どうします?」
シャル「……………」
608: 2014/07/30(水) 19:54:58.21 ID:8KllsZgw0
シャル(鹿目さん、テレパシーちゃんとそっちに行ってる?)テレパシー
まどか(あ、はい)テレパシー
シャル(今から作戦を説明する。あいつ等に聞かれないよう、テレパシーで伝えるわ)テレパシー
シャル(あまり悠長にしてられないから、よく聞いてて)テレパシー
まどか(は、はい!)テレパシー
シャル(……兎に角相手が速過ぎる。まともな方法じゃ、誰もアイツに攻撃を当てられない)テレパシー
シャル(だったら面制圧)テレパシー
シャル(どれほど高速で移動しようと関係ない。この結界内全てを焼き払うほどの広範囲攻撃で、奴等を焼き払う)テレパシー
シャル(これ以外に、アイツに打撃を与える方法は恐らくないわ)テレパシー
シャル(そしてそれほどの広範囲攻撃が出来るのは、あなたさんだけ)テレパシー
シャル(頼める?)テレパシー
まどか(……分かりました!)テレパシー
まどか「頃しちゃうのは可哀想だと思うけど……でも、さやかちゃんに酷い事をしたあなた達は許せない!」ヘンシン
まどか「魔力解放! みんなの周りに結界を展開し、被害が出ないようにしてから」
まどか「赤いキュゥべえを中心に――――全力で魔力の塊を落とす!」
まどか「……あれ?」
609: 2014/07/30(水) 19:57:49.19 ID:8KllsZgw0
シャル「どうしたの、鹿目さん!? 早く攻撃を!」
まどか「ま、待って! えいっ! えいっ!」
まどか「……!? ど、どういう事!? なんで……」
まどか「魔法が使えないの!?」
シャル「なっ……!?」
ゲルト「え!?」
マミ「まさか!? ――――!」ヘンシン
マミ「……! わ、私も魔法が使えなくなってる!?」
シャル「ど、どういう……!?」
疾患QB「やれやれ。何を慌てているんだか」
疾患QB「魔法少女は僕達のテクノロジーによって生み出された存在だよ」
疾患QB「そして過去の経験から、人間は僕達の目的を知るや憎悪を燃やす事も知っている」
疾患QB「なら、その対策をしていないと思うかい?」
ゲルト「それ、は……」
疾患QB「随分と嘗められたものだよ」
疾患QB「魔法少女の魔力と逆位相の波長をぶつける事で魔法の発動を妨害する」
疾患QB「”マジックキャンセラー”ぐらい、作ってあるに決まってるじゃないか」
マミ「ま、マジックキャンセラー……!?」
疾患QB「まぁ、エネルギーの消費が多いから、普通は使わないけどね。使うまでもないし」
疾患QB「現在の鹿目まどかの力でさえ、僕達が使用する戦闘艦なら一隻で対処可能なのだから」
疾患QB「ただ今回は妖精の件もあるし、君達を無力化する事にしたんだよ」
シャル「くそっ! 確かに嘗めていたわ! そんなのを作っていたなんて……!」
610: 2014/07/30(水) 20:00:39.71 ID:8KllsZgw0
シャル「私のお菓子の魔法すら使えないなんて、徹底し過ぎよ!」
シャル「こうなると、戦えるのは元天使の佐倉さんと、妖精さんに改造されたさやかだけ……」
杏子「へっ、気にすんな」
杏子「最近、と言ってもここ数日だけど、我ながらダラダラとした日々を過ごしていたからな」
杏子「このぐらい歯応えのある奴と戦いたくなってたところさ」
さやか「こっちもだよ」
さやか「なんだかんだ、この力を手にしてから”本気で殴り合った”事ってないからね……」
さやか「あのぐらい強い奴じゃなきゃ、自分の強さを確かめられないってもんだよ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】
杏子「アイツもやる気みたいだな……!」
杏子「行きますよ、さやか様!」
さやか「おうよ!」
さや杏「おりゃあああああああああああああああああっ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!】
まどか(さやかちゃんと杏子ちゃんが、赤いキュゥべえと戦い始めた!)
まどか(二対一、数では勝っている。杏子ちゃんは天使だし、さやかちゃんは伝説の戦士的な強さになってる)
まどか(だ、だけど……)
杏子「ぐああぁっ!?」
さやか「がはっ……!」
WR【オオオオオオオオオオオッ!!】
まどか(も、もう押されてる!)
マミ「くっ! せめて魔法が使えれば、あの二人の援護に回れるのに!」
まどか「何かしないと、あの二人でも負けちゃう……」
まどか「――――そ、そうだ! 妖精さんアイテム!」
まどか「妖精さんアイテムを使えば!」
611: 2014/07/30(水) 20:02:35.76 ID:8KllsZgw0
マミ「! その手があったわ! シャルロッテさんが持ってるバックから、妖精さんアイテムは取り出せる!」
マミ「シャルロッテさん!」
シャル「……二人とも、とりあえずこの道具を渡すわ」
まどか「え? あ、えっとこれは……杖?」
マミ「私のは、ラッパ?」
シャル「……ゲルトちゃんにはもうマントと剣を渡してあるわ」
シャル「私はこの三角コーンね」
まどか「三角コーン? ああ、工事現場とかに置かれてる」
まどか「えっと、それでこの道具はどうやって使えば……」
シャル「残念だけど、説明している暇はないの」
シャル「――――後ろ、見て」
まどか「え……っ!?」
WR2【……………】
マミ「に、二体目……!?」
まどか「何時の間に!?」
ゲルト「……確かに、彼等は自分達が蜂のような生き物だったと言っていました」
ゲルト「女王を除けば、一つの役職に一個体しかいないとは考えられません」
シャル「さぁて……あと何体現れるのかしらねぇ……!」
まどか「――――来る!」
WR2【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!】
612: 2014/07/30(水) 20:04:44.13 ID:8KllsZgw0
杏子「がああああっ!?」
さやか「杏子ちゃん!?」
杏子「だ、大丈夫です……ごふっ……」
杏子「ちょっと、口の中を切っただけですから……」
杏子「それより……」
さやか「うん……」
さや杏「強い……!」
WR【……フシュルルルル……】
さやか「動きは速い、攻撃は重い。それでいて身体は頑丈」
杏子「まさかあたしの槍が弾かれるとは思いもしませんでしたよ」
さやか「たく……攻守ともに完璧の敵かー」
さやか「レベルMAX、ステータスカンストの主人公を相手にするボスキャラの気分だよ」
杏子「しかもテレポートって言う特殊能力持ち」
さやか「容赦ねー……」
WR【……スゥー……】
さやか(ん? 息を吸って……)
WR【ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
さやか「あ、青い火を吐いたぁ!?」
杏子「ぐあぁっ!?」
さやか(私達二人の全身を包むほど大きな焔! 凄く、あ、熱い……)
さやか(そして何より、”これじゃあ前が見えない”!)
さやか「杏子ちゃんっ!」
杏子「さやか様――――ぐっ!?」
さやか(良し! 杏子ちゃんに体当たりをして、その場から動かせた!)
さやか(あたしの想像通りなら、これは攻撃じゃなくて)
さやか(目潰し――――)
WR【ガアッ!!】
――――シュンッ!!
さやか「っ!?」
杏子「!?」
さやか(な、何!? 今、赤キュゥべえが腕を振った瞬間、なにかが放たれて……)
――――ズバッ!
さやか(あたしの背中を、切り裂いた……!?)
さやか「ぐ、うう、うううぅ……!」ガクッ
杏子「さ、さやか様!? あたしを庇って……」
614: 2014/07/30(水) 20:07:40.15 ID:8KllsZgw0
さやか「だ、大丈夫……こんなの掠り傷だよ……それより……」
さやか「今の攻撃、なんだか分かる?」
杏子「あ、はい……」
杏子「今のは多分エネルギーの塊を、投げナイフの要領で飛ばしたのではないかと」
杏子「事前に焔を吐いて目潰しをした事から、攻撃の予備動作が大きくて当てにくい攻撃だと思いますが……」
さやか「その分攻撃力は高い、と……プリティでキュアキュアになったあたしの身体に、
掠っただけでこんな大きな傷を付けるぐらいだからね……」
さやか「うっ……」
杏子「さやか様!?」
さやか「ごめん……やっぱ掠り傷じゃないわ……」
さやか「ちょっと、立つのもしんどい……!」
杏子「ま、待ってください! 今、天使の奇跡で回復を……」
さやか「駄目!」
杏子「!?」
さやか「……今は、駄目。アイツがこっちの隙を窺ってる」
WR【……………クルゥゥゥ……】
杏子「で、ですが……!」
さやか「……杏子ちゃん」
さやか「しばらく、アイツの足止めを頼んでいい?」
615: 2014/07/30(水) 20:13:05.06 ID:8KllsZgw0
杏子「え?」
さやか「あたしの全力をこめた一撃を、アイツにお見舞いする」
さやか「だけどそのためには力を集める時間が必要なの」
さやか「そのための時間を稼いでもらえない?」
杏子「……どれぐらいですか?」
さやか「……大体、二分」
杏子「分かりました」
杏子「全力で……アイツを、止めます!」ダッ!
WR【!】
杏子(アイツの身体能力は、ハッキリ言って出鱈目だ。上手く立ち回れば、
フルパワーのまどか相手にも善戦出来そうなぐらい)
杏子(あたし一人じゃ到底勝てないし、さやか様とタッグを組んでもこの様だ)
杏子(だったら一人二人じゃなく――――もっとたくさんで挑むしかねぇ)
杏子(そして、あたしにはそれが出来る!)
杏子「……父さん、母さん、モモ。ごめん」
杏子「今まで封印してきたこの力……さやか様を、みんなを守るために使わせてくれッ!」
杏子「行くぞ!」
616: 2014/07/30(水) 20:13:47.97 ID:8KllsZgw0
「 ロ ッ ソ ・ フ ァ ン タ ズ マ !」
617: 2014/07/30(水) 20:18:01.63 ID:8KllsZgw0
幻影杏子達『……!』
WR【――――グゥ!?】
杏子(あたしの幻覚魔法の奥義……実体のある幻影を作りだし、攻撃する魔法!)
杏子(魔法少女だった頃は、ソウルジェムの穢れを無視しても七体が限界だったが……)
杏子「天使の力は今じゃ欠片ほどしか残ってねぇが、それでも今のあたしの力は魔法少女だった頃の比じゃない!」
杏子「そして天使の力で幻影を作り出せば、それは魔法少女の魔法じゃない! キャンセラーだかは効かないよっ!」
杏子「数を作り出すのに重点を置いたから、幻影の個々の力は魔法少女だった頃のままだが――――」
杏子「総数六十人のあたし相手にお前がどこまでやれるか試してやる!」
杏子「あたしの”幻覚魔法”を食らえ!」
幻影杏子『だありゃあああああああああああああああああああああ!!』
WR【……………スゥー……】
WR【オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! !】
――――ズガガガガガガガガガガッ!!
幻影杏子『ぐわああああああああああああああ!?』
杏子「な、何ぃ!? 凄まじい拳の連打で、あたしの幻影たちを一気に殴り飛ばした!?」
杏子「あの拳のスピード、今までよりずっと速い……連打で放たなければ、あたしでも見えないほどに……」
杏子「コイツ、今まで本気じゃなかったのか!?」
618: 2014/07/30(水) 20:21:09.77 ID:8KllsZgw0
杏子「だ、だが、殴られているのは所詮幻影! 実体はあっても物理的なダメージは受け難い!」
杏子「このまま数で押し通す!」
WR【オオオオオオオオオオオオ!!】
幻影杏子『どりゃあああああああああああああああっ!』
WR【オオオオオオオオオオオオ……】
幻影杏子『やあああああああああああああああああっ!』
WR【オ、オオオ……】
幻影杏子『うりゃあああああああああああああああっ!』
杏子(良し! 少しずつだが幻影は距離を詰めている! このまま一気に――――)
WR【ルオオオオオオッ!!】
――――カッ!
杏子(え?)
幻影杏子『ぎゃああああああああっ!!』
杏子「なっ……幻影がまとめて吹き飛ばされた!?」
杏子「エネルギー波を広範囲に放ったのか!? そんな事まで出来んのかよ!」
杏子「けど、また幻影を向かわせれば……」
WR【】フッ
杏子「ぁ――――」
杏子(赤キュゥべえがあたしの目の前に……そうだ、コイツ瞬間移動出来るんだった)
杏子(不味い拳を振り上げた早く避けないといやでもこの速さ)
杏子(あ、駄目だ……避けられねぇ)
WR【ゴアッ!!】
――――グシャアッ!
杏子「……ご、ぽ……」
杏子(あ、アイツの腕が、あたしの胸を貫いた……!)
杏子(魂をソウルジェムにされていた魔法少女でも、これは間違いなく致命傷……回復しきれないダメージ……)
杏子(そして今のあたしは、”しぶとさ”だけは魔法少女に劣っている)
杏子(これはあたし、氏んだな――――)
杏子(これが”実体”ならね)
619: 2014/07/30(水) 20:23:01.81 ID:8KllsZgw0
WR【!】
杏子「気付いたかっ! だけどもう遅ぇ!」
杏子「あたしは――――幻影だ!」
WR【ッ!!】
幻影杏子「おっと、逃がさねぇよ!」ガシッ
幻影杏子「あたしが”たった六十体”しか幻影を出せないと思ったか!?」
幻影杏子「お生憎様――――あたしと同等の実力を持った”コイツ”を作るのに力を削ぎ過ぎただけさ!」
幻影杏子「捨て身のつもりならテメェを抑えるぐらい、なんとか出来んだよ!」
WR【ギ……グゥ……!】グッ、グッ…
幻影杏子「……つーても、まぁ、こんなにでかい穴を腹に開けられたら、幻影でも長くはもたねぇ」
幻影杏子「つーかもう大分力が抜けてきているしな」
幻影杏子「だから――――」
幻影杏子「さやか様!」
さやか「とっくに準備万端だよ!」
さやか「妖精さんに改造された事で得た、あたしの超パワーを光の塊にして放つ……」
さやか「さやかちゃん必殺、スペ○ウム玉だあああああああああああああああああああああっ!」
WR【ギ!? ギ、オ、オオ……】
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
620: 2014/07/30(水) 20:25:42.03 ID:8KllsZgw0
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
さやか「うぅっ!?」ゴゥッ!
さやか「……………ぷはっ」
さやか「……我ながら凄まじい威力。猛烈な爆風と光で、こっちがやられそうだったよ」
杏子「全くですよぉ……」フッ
さやか「あ、杏子ちゃん。今まで何処に居たの?」
杏子「さやか様の傍にずっと居ましたよ。幻覚魔法を使って姿を消していただけで」
さやか「あ、そうなんだ」
杏子「ところで、そのスペ○ウム玉って色々パクリ過ぎてません?」
杏子「そりゃ青白ですし、実際大きい光の玉をぶつけた訳ですけど」
さやか「良いの良いの。こういうのはノリが大事なんだから」
杏子「はぁ……」
さやか「……ただまぁ、なんだ」
さやか「あの技の元ネタ……ああ、玉の方ね? 映画以外だと三回使ってるけど、敵に止め刺したの最後の一回だけらしいんだよね」
杏子「え? ――――ッ!?」
さやか「……いやぁ、本当にどうしようかな……これ」
622: 2014/07/30(水) 20:28:37.48 ID:8KllsZgw0
WR【……】パンパンッ
杏子(な、なんて奴だ……さやか様渾身の一撃を食らってもなお、身体についた埃を落とす余裕を見せつけてやがる!)
さやか「悔しいけど、こりゃあたしらだけじゃ倒せそうにないね」
さやか「ほむらが来てくれるまで時間稼ぎに徹するか……」
杏子「で、ですが時間稼ぎをしたところで……それに、ほむらとは連絡を取ってないじゃないですか!」
さやか「そうだけど……なんだろう。アイツの影響かな」
さやか「きっと大丈夫、どんなに辛くてもなんとかなるって思えるんだ」
さやか「だって、あたしらには”妖精さん”が味方に付いている!」
さやか「だからあたし達が負ける訳ないってね!」
杏子「さやか様……」
杏子「……そう、ですね」
杏子「あの非常識のオンパレードな妖精さんと、非常識人間ほむらの事」
杏子「なんだかよく分からない理由でこの結界を見つけるに決まってる!」
さやか「そういう事!」
さやか「さぁ、第三ラウンド……いくよ!」
杏子「はいっ!」
疾患QB(ふむ。佐倉杏子と美樹さやかとの戦闘は順調に展開しているようだ)
623: 2014/07/30(水) 20:30:21.71 ID:8KllsZgw0
疾患QB(計算上、ウォーリアーがあの二人に負ける可能性はない)
疾患QB(人間には”気合い”というよく分からない力があるけど)
疾患QB(あの調子なら、今以上の力を発揮したところで展開は変わらないだろう)
疾患QB(あの二人に関しては問題ない。全て計算通りだ)
疾患QB(……問題は……)
624: 2014/07/30(水) 20:32:29.56 ID:8KllsZgw0
まどか「こ、この杖、適当に振ったら……」
まどか「なんか空からタライが振って来るんだけどーっ!?」
――――ガシャーンッ!
まどか「あいたーっ!?」
WR2【!?】ガンッ
まどか「だ、ダメージ固定なのか赤いキュゥべえにもダメージがあるのは良いんだけど」
まどか「私にも当たるんだけど!? むしろ私によく当たるんだけど!?」
――――ガシャーンッ!
まどか「いたぁ!?」
マミ「か、鹿目さん!? 大丈夫!?」
マミ「ああもう! こうなったら覚悟を決めて……」
マミ「私もこのラッパを吹くわっ!」
――――ぱーぷー
マミ「って、これじゃ豆腐屋のあれじゃない!?」
マミ「私そんな風に吹いてない」ポンポン
マミ「え? 誰か肩を叩いて……」
豆腐\ヤァ/
マミ「……………」
マミ(後ろを振り向いたら、身長……体長? 二メートルはありそうな豆腐が立っていた)
マミ(ううん、その、立つというか、手足はないんだけど……えっと……)
豆腐\アレヲヤッツケルンダネ!/
マミ「え? あ、うん。そう。そうそう(声は聞こえないのに、何を喋ってるのか何となく分かる……)」
マミ「えっと、戦ってくれるの?」
豆腐\トウゼンダヨ!/
マミ「じゃ、じゃあ……お願い、します」
豆腐\ヨシ!マカセロ!/
豆腐\ターッ!/
マミ(あ、豆腐が赤いキュゥべえ目掛けて突撃して……)
WR2【……】ブンッ
ぐしゃあ
マミ(簡単に砕け散った)
マミ(……弱い)
625: 2014/07/30(水) 20:34:34.50 ID:8KllsZgw0
豆腐2\クソーッ!ヨクモオレノイモウトヲー!/
マミ「え、二人目……って、妹!? あれ女の子!?」
豆腐3\キョウダイ!オレモチカラヲカスゼ!/
豆腐4\オレモダ!/
絹ごし豆腐\ア、アンタガシンパイダカラツイテキタンジャナインダカラネ!/
寄せ豆腐\テヤンディ!/
油揚げ1\オレタチノコトモ/
油揚げ2\ワスレチャコマルゼ/
ガンモドキ\オウオウナメンジャネェゾワレェ!/
マミ「ってなんかいっぱい来たあああああああああああああああああ!?」
豆腐s\ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!/
まどか「え、ちょ、なんか大量の食べ物がこっちに来てぎゃあああああああああああああああ!?」
WR2【!!?!?!?!】
マミ(赤キュゥべえが逃げ出した……余程不気味に見えたのかしら)
マミ(……あ、こけた。なんか可愛い)
ゲルト「今です!」
マミ「! マントと剣とマスク(仮面的な使い方をするやつ)を装備したゲルトルートさんが!?」
ゲルト「この装備を身に着けた時から見える、白とか赤のドクロマーク!」
ゲルト「恐らくそれは物体の脆い場所、致命的な部分を示している筈!」
ゲルト「そしてこの赤いキュゥべえには――――腰の部分に赤いドクロがある!」
ゲルト「その赤いドクロをこの剣で」
ゲルト「ぶすりっ!」
WR2【――――!!!】
ゲルト「これにて抹殺完了……」
ゲルト「……解☆決(横ピース)」
マミ(何故ポーズを取った)
マミ「で、でもこれでアイツは倒せたのよね!?」
WR2【……】ムクリ
マミ「……あら?」
ゲルト「む! まだ立ち上がりますか!」
ゲルト「しかし、この妖精さんアイテムの力さえあれば……」
WR2【……】ムキムキ
ゲルト「……あれ?」
WR2【グ、グゥ……】ムキムキ
ゲルト「あれれ? え、なんか急に全身の筋肉が膨張しているような……?」
WR2【オ……】
WR2【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!(持病の腰痛が治ったぞーっ!!)】
ゲルト「なんかパワーアップしたああああああああああああああああああああ!?」
626: 2014/07/30(水) 20:36:10.10 ID:8KllsZgw0
ゲルト「ひええええええええええええっ!?」
シャル「全く、みんな何してんのよ!」
シャル「いくら妖精さんアイテムだからって、もっと使いこなせないの!?」
マミ「……そういうあなたは今どんな状況かしら」
シャル「は。妖精さんアイテムの三角コーンを地面に置いたところ」
シャル「そこを中心に不可視のバリアーが展開」
シャル「あの赤いキュゥべえの攻撃を一切通さなかったけど」
シャル「私もバリアーから出られなくなっており、傍観するしかない状況にあります」
マミ「はい、よく出来ました」
マミ「つまりあなたが一番真っ先に戦線離脱してんのよ!」
シャル「そんな事言われても仕方ないでしょ! 使い方知らなかったんだもん!」
シャル「というかここから出して! 本気で出して!」
シャル「誰でも良いから助けてええええええええええええええええ!?」
マミ「ちょっと五月蝿いから黙ってて!」
まどか「た、タライが私を集中攻撃してあいたーっ!?」
WR2【!!!?!?!!?(なにあの茶色い物体臭いが生理的に受け付けないぃぃぃぃぃ!?)】
ゲルト「赤いキュゥべえがこっちに来たああああ!? いやあああああああああああ!!」
\ギャーワーウェェェダレカタスケデェェ/
疾患QB(なんなんだ、あれ)
628: 2014/07/30(水) 20:39:53.60 ID:8KllsZgw0
疾患QB(……あの理不尽というか、不条理というか、ふざけきった展開というか……!)
疾患QB(こっちが真面目にやればやるほど滅茶苦茶にされるこの状況!)
疾患QB(というかなんでウォーリアーが逃げてるんだよ!? 戦闘用にチューニングされた個体なんだぞ!
感情どころか、戦闘以外の思考は抱かない個体なんだぞ!)
疾患QB(なんなんだ!? 何かよく分からない力が作用しているのか!?)
疾患QB(――――はっ!?)
疾患QB(お、落ち着くんだ……僕は冷静なインキュベーター。この程度で動揺している場合じゃない)
疾患QB(……やはり、妖精の技術力は脅威だ。魔法を封じた連中相手にも苦戦を強いられるほどに)
疾患QB(本来は暁美ほむらと妖精を結界によって隔離する作戦だったけど)
疾患QB(結果的に、逆になった事が功を奏したか)
疾患QB(屋外なら”戦艦”の主砲が使えるからね……)ニタァ
疾患QB(おっと、巴マミ達の方は苦戦しているようだけど)
疾患QB(あっちはそろそろ勝負が付きそうだ)
さやか「うぐぁ!?」
杏子「がはっ……!」
WR【フゥールルルルル……】
さやか「ちょ、本当に強過ぎ……!」
杏子「まどか達は、ドタバタしつつも相手を翻弄しているみたいですけど……」
杏子「このままじゃ、あたし達は……!」
WR【】フッ
杏子「ま、またテレポート!?」
さやか「でも、すぐに攻撃してこない? 姿も見えないし……逃げたのかな?」
杏子「でもここまで一方的だったのに逃げるなんて」
杏子「……あああああっ!?」
杏子「くそっ! やられた!」
さやか「え? 何? 何なの?」
杏子「多分アイツは今、物陰に身を潜めていると思われます!」
杏子「そしてあたし達が隙を見せた瞬間――――」
さやか「はっ!? またテレポートしてきて、ぶすり!?」
杏子「あたしなら、そうします!」
杏子「しかもこっちはアイツの姿が見えないから、何時テレポートしてくるか分かりません!」
さやか「ちょっ……」
杏子「背中合わせに立ってください! せめて背後に回られないように!」
さやか「う、うんっ!」
629: 2014/07/30(水) 20:43:53.22 ID:8KllsZgw0
杏子「……………」
さやか「……………」
杏子(さやか様とあたしで、お互いの背後を守っている。構えとしては、これが最善の筈)
杏子(今は互いの氏角をフォローし合って、アイツが攻撃してきた瞬間に防御を……)
杏子(……いや、待て)
杏子(これじゃ何もせず、指を咥えてアイツが攻撃してくるのを待つのと変わらない)
杏子(そもそもアイツの速さ相手に、攻撃を見てからガードなんて不可能だ)
杏子(こんなんじゃ駄目だ! 守りに入ったら負ける!)
杏子(防御を考えるんじゃない。攻める事を考えるんだ)
杏子(そう、例えば――――)
杏子「……………」
杏子「……………」
杏子「………――」チラッ
――――フッ
杏子(来た! やっぱり予想通り、あたしの氏角を狙ってきやがった!)
杏子(だけどこっちの方が上手だったな! そっちはあたしが一瞬余所見した瞬間を狙ったつもりだろうけど)
杏子(それは囮! あえて作った氏角に意識を集中していたから、テメェの気配は手に取るように分かった!)
杏子(あとは渾身の力を込めて作ったこの槍の一撃を食らわせる!)
杏子(奴の装甲を貫けるかは分からないが――――これがあたしの全力! もしもは考えねぇ!)
杏子「そこだ――――」
630: 2014/07/30(水) 20:45:02.15 ID:8KllsZgw0
「そこじゃない! 上だっ!」
杏子「!?」
杏子(な、なんだ今の声!? 聞いた事があるが、誰の……)
杏子(いや、それよりすぐ氏角へと振り向いたのに、誰も居ねぇ――――)
杏子(赤キュゥべえの、腕しかねぇ!?)
杏子「か、身体の一部だけテレポートしてきただ、がっ!?(腕があたしの首を掴んで!?)」
さやか「杏子ちゃん!?」
杏子(不味い! 身動きがとれねぇ!)
杏子(そんでもって、言われた通り上を見りゃあ……)
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!】
杏子(ああ、口に真っ赤な光を貯めているアイツの姿が……)
杏子(あたしとさやか様をまとめて吹っ飛ばそうって魂胆か!)
杏子(……ごめん、さやか様)
杏子(あたしのせいでこんな――――)
631: 2014/07/30(水) 20:45:49.26 ID:8KllsZgw0
「どりゃああああああああああああああああああっ!!」
632: 2014/07/30(水) 20:48:51.71 ID:8KllsZgw0
WR【!?】
――――ズガンッ!!
杏子「ぶはっ!?(赤キュゥべえが吹っ飛んだ!? ついでに、あたしの首を絞めていた手も……!)」
さやか「だ、大丈夫!? 怪我はない!?」
杏子「は、はい……なんとか……」
杏子「それより……」
「やれやれ。君はもっと慎重で、付け入る隙のない人間だと思っていたけど」
「暁美ほむら達と係わって、ちょっと丸くなり過ぎたんじゃないかい?」
「……まぁ、僕が言えた事ではないけど。丸くなり過ぎて原型残ってないレベルだし」
さやか「!? あ、アイツ……!」
杏子「なんでテメェがあたしを助けるんだ……」
杏子「キュゥべえ!」
QB「……………」
633: 2014/07/30(水) 20:53:10.05 ID:8KllsZgw0
さやか(ど、どういう事? だって、最初からいたキュゥべえはそこに居るままだし……)
疾患QB「……………」
QB(以下旧べえ)「長々と話をしている状況ではない。必要な事だけ言っておこう」
旧べえ「まず、僕は君達の味方だ」
旧べえ「遠回しな利益関係ではなく、純粋に君達を助けようという意思がある、という意味でね」
さやか「み、味方、なの?」
杏子「はぁ!? 今更アンタを信じろって言うのか!?」
杏子「さやか様は兎も角、あたしは騙された身だぞ!」
旧べえ「うん、そうだね。至極尤もな答えだ。信じてくれといくら言葉で言っても、僕の言葉ほど軽いものもあるまい」
旧べえ「だから行動で誠意を示そう」
さやか「行動って、アンタ何をする気なの?」
旧べえ「君達にとっては願ったり叶ったりな事さ」
旧べえ「――――あのウォーリアーは、僕が仕留める」
さや杏「!?」
疾患QB「……やれやれ。フィールドを突破されたから暁美ほむらと妖精かと思って身構えたけど」
疾患QB「まさか同族だったとは」
疾患QB「君はあれか。以前精神疾患を患い、処分指示が出たのにそれに背いて逃走」
疾患QB「何体かで追い駆けたけどGPSの故障のせいで捕まらなかったという、病的個体なのかな?」
旧べえ「ああ、そうだね。多分それは僕の事だ」
旧べえ「しかし病的個体なのは、君もじゃないかい?」
旧べえ「ウォーリアーの交戦圏内に顔を出すなんて、どう考えても合理的じゃないからね」
旧べえ「大方彼女達の哀れな最期をこの目で見たかったから、という理由で見に来たんだろう?」
疾患QB「……この行動をとった理由については、特に否定しない」
疾患QB「しかし定義上、僕はまだ病的個体じゃない。君とは違う」
旧べえ「今の言葉こそ正に病的個体の証明だと思うけどね」
旧べえ「自分の”立ち位置”へのこだわりなんて、感情的行動の典型じゃないか」
634: 2014/07/30(水) 20:55:26.10 ID:8KllsZgw0
疾患QB「……不快だな」
旧べえ「?」
疾患QB「君の何もかも知っているような、こちらを見下すその態度」
疾患QB「ああ、不快だなんて”感情的”な発想だよね。自分で自分が嫌になる。そういう発想も嫌になる」
疾患QB「お陰で最近の僕は毎日毎日酷く”不快”なんだ」
疾患QB「これも全て妖精のせいだ」
疾患QB「さっさとアイツ等を排除して、この症状を治療しないとね」
疾患QB「――――ついでに、君の排除もしておこう!」
疾患QB「ウォーリアー! 攻撃目標の変更だ!」
疾患QB「あの病的個体を第一目標に設定するんだ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
さやか「!?」
杏子「あ、赤キュゥべえが、あたしらを助けたキュゥべえの方に!?」
杏子(どういう事だ!? 本当に、アイツはあたしらの味方だったのか!? それとも罠!?)
杏子(くそ、何がどうなってるか分からねぇ!)
杏子(だけどこのまま赤キュゥべえに殴られたら、アイツ潰されちまう!)
杏子(ああああ、駄目だ、間に合わな――――)
旧べえ「よっ」ガシッ
WR【!?】
さやか(え……キュゥべえが赤キュゥべえの拳を受け止めた?)
旧べえ「こら」グイッ
杏子(そんでその拳を掴んだまま身体を捻って)
旧べえ「どっせぃやあーっ!」
WR【ゴガァ!?】ビダーン!!
さや杏「一本背負いしたあああああああああああああああああああ!?」
疾患QB「な、何だってぇぇぇぇぇぇっ!?」
635: 2014/07/30(水) 20:58:06.57 ID:8KllsZgw0
WR【オ、ゴオ……!?】
旧べえ「おっと、このぐらいで倒れるとは思ってないよ」
旧べえ「ふぅ――――」
疾患QB「!? なんだ、あの病的個体のエネルギー量が急激に上昇している……?! 身体機能が上昇している!?」
疾患QB「馬鹿な!? インキュベーターのボディに、そんな戦闘性能は備わっていない!」
疾患QB「仮に協力者を得てその肉体に改造を施したとしても」
疾患QB「この星の科学力では、その小型のボディにそこまでの力を身に着ける事は不可能だ!」
疾患QB「まさか、君は妖精と手を組んで……」
旧べえ「いや、妖精とは一度も会ったは事ない……と思う。何故か自信を持って言えないけど」
旧べえ「とりあえず、この力は僕達に元々内包されていたシステムを、ちょっと応用しただけさ」
旧べえ「勿論君にも搭載されているものだよ。尤も、君には扱えないだろうけど」
疾患QB「僕にも搭載されている……?」
疾患QB「……まさか!?」
旧べえ「僕達には、魔法少女が魔女化した際発生する感情エネルギーを回収するための仕組みがある」
旧べえ「そのシステムをちょっとばかし応用すれば、己の感情から生じたエネルギーも”回収”可能だ」
旧べえ「その莫大な、宇宙の寿命に影響を及ぼすほどのエネルギーを戦闘用に転化させてもらった」
旧べえ「人間に比べると僕の感情はまだ希薄だし、希望と絶望の相転移も魔女化に比べればかなり小さい」
旧べえ「安定だってしない。コントロールもままならない。掴みきれなくて漏れ出てる分もある」
旧べえ「だけどね」
WR【オ、オォ……】
WR【オオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
杏子(赤キュゥべえが立ち上がって、キュゥべえの方に!?)
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
636: 2014/07/30(水) 20:59:04.41 ID:8KllsZgw0
旧べえ「心を知らない君達に、”この力”は超えられないよ」
――――ブンッ!
さやか(きゅ、キュゥべえの尻尾が振られて――――)
――――グシャアッ!!!
杏子(赤キュゥべえの頭を、く、砕きやがった!?)
637: 2014/07/30(水) 21:00:21.71 ID:8KllsZgw0
WR【グ、ギュ、ゥ……】ドサッ
さやか「あ、あっさり倒しちゃった……」
杏子(おいおいマジかよ。もしかしなくても、あたしらの何倍も強いってか)
杏子(今は味方ぶっているけど、もし裏切られたら……)
旧べえ「さて、まずは一体」
旧べえ「あとはマミ達の方も助けるとして」
シャル「ふぅ……まさかあの三角コーンに秘められた力があったなんてね……」< 鼻眼鏡装着中
マミ「豆腐たちの”黄金無双演劇”も欠かせなかったわ」
まどか「タライでコンボを決められたのも彼等のお陰ですからね痛い」ガンッ
ゲルト「解☆決」< 横ピース
旧べえ「……必要ないみたいだね」
杏子「一体あっちでは何があった!?」
さやか「まぁ、妖精さんアイテムを使える時点でこうなるのは予想の範囲内と言うか……」
638: 2014/07/30(水) 21:03:17.12 ID:8KllsZgw0
マミ「美樹さん、佐倉さん! 無事だったのね……って、キュゥべえ!?」
シャル「コイツが、二体? ……なんのつもりかしら?」
まどか「っ!」
さやか「お、落ち着いてみんな!」
さやか「多分だけど、コイツは悪いキュゥべえじゃないみたいなの!」
さやか「あたし達を助けてくれたんだから!」
シャル「はぁ!? アンタ何を言って……」
旧べえ「言いたい事は分かる。僕への不信も、今までの事を思えば当然だ」
旧べえ「だけど今だけは、僕を攻撃するのは止めてほしい」
旧べえ「せめて――――アイツの事が片付くまでは」
疾患QB「……………」
シャル「……分かったわ。さやかにも止められたし、今は潰さないでおいてあげる」
シャル「尤も、その約束もあと数秒で期限が切れるでしょうけどね」
ゲルト「あなたの仲間は倒しました。最早あなたの身を守る者はいません」
ゲルト「ですが、このまま逃がせばあなたはまたろくでもない事をするでしょう」
ゲルト「だから選ばせてあげます」
ゲルト「自分からこちらに投降するか、力尽くで捉えられるか」
シャル「言うまでもないけど、後者の場合手荒くなるから覚悟しなさい」
シャル「ま、頃しはしないわ――――逃がしたくないからね」
疾患QB「……くっ」
639: 2014/07/30(水) 21:05:47.00 ID:8KllsZgw0
疾患QB「く、くく」
疾患QB「くくく、くくくくくくく」
まどか「……?」
疾患QB「くひ、くひひひひひひひひひひ」
疾患QB「ああ、二次成長期の少女は本当に素晴らしい」
疾患QB「足元の絶望に気付かず、目の前の希望に飛びかかる浅はかさ」
疾患QB「手元の光しか目に入らない、視野の狭さ」
疾患QB「都合のいい未来しか予測出来ない、未熟な思考回路」
疾患QB「こんなに扱いやすい”知的生命体”、他の惑星じゃまず見つからないよ」
マミ「どういう意味!?」
疾患QB「君もさぁ、本当は分かっているんだろう?」
疾患QB「これで終わる訳がないって」
旧べえ「……………」
疾患QB「ウォーリアーを動かしたんだ。それは”我々”にとって敵対象の駆逐を意味する」
疾患QB「そしてこのウォーリアーは、第67099番駐屯艦隊所属だ」
旧べえ「――――何!?」
さやか「ちゅ、駐屯艦隊……?」
疾患QB「現在、この星から凡そ60万キロ地点にその艦隊が停泊している」
疾患QB「戦艦を旗艦とし、巡洋艦4隻、駆逐艦4隻」
疾患QB「そして航空母艦1隻と100機の戦闘機が、何時でもこの星を攻撃出来るよう待機してある」
疾患QB「辺境惑星の原生生物とはいえ、魔女を人間に戻せる技術力の持ち主だからね」
疾患QB「感情疾患を誘発する可能性がある事も伝えたら、小規模とはいえ、すんなり本星が軍を派遣してくれたよ!」
シャル「な、何それ!?」
さやか「宇宙戦艦、だって……!?」
641: 2014/07/30(水) 21:09:41.56 ID:8KllsZgw0
マミ「……キュゥべえ。その……」
マミ「あなた達の船というのは、どの程度の強さを持っているの?」
旧べえ「……駆逐艦が一隻あれば、地球程度の文明レベルなら一時間も掛からずにリセット出来るだろう」
旧べえ「ましてや戦艦となれば惑星破壊級の兵器も搭載している。戦闘機もミサイルぐらいじゃ装甲に傷一つ付かない」
旧べえ「どう足掻いても、この星の戦力では勝ち目がない強さだ……!」
まどか「そんなっ!?」
疾患QB「そういう事だ。君達は指を咥えて、僕達の作戦が終わるのを待つと良い」
疾患QB「ああ、だけど安心してほしい。僕達は別に、人類を滅ぼそうだなんて思っていない」
疾患QB「あくまで僕達にとって脅威であろう妖精の駆除が目的だ」
疾患QB「大切なエネルギー源である君達の個体数が減ってしまうのは、僕達にとっても損失だからね」
疾患QB「可能なら、人類側の被害は抑えるつもりさ」
疾患QB「まぁ、この国の総面積程度の土地が地球から消し飛ぶ事になるかも知れないけど」
疾患QB「人類という単位で見れば多くても全体の2%未満の犠牲しか出ない。生物の個体増減としては誤差の範疇だよ」
疾患QB「むしろ最近は君達自身増え過ぎたと思ってるみたいだし、丁度良いんじゃないかな?」
杏子「て、テメェ……!」
ゲルト「あなた方は人の命をなんだと思っているのですか!?」
ゲルト「散々エネルギーとして利用した挙句、危ないと思ったら切り捨てるなんて……!」
疾患QB「他種の生物の命をどう思うかなんて、君達人間もよく分かっていると思うんだけどなぁ」
疾患QB「人間だってトウモロコシから燃料を作っているじゃないか」
疾患QB「もしそのトウモロコシ畑から人体に有害な菌が発生したら、畑を消毒し、トウモロコシは処分するだろう?」
疾患QB「人間はどういう訳か、自分達の命は他の生物にも尊いものとして認められると思っているよね」
疾患QB「自分達は、他の生物の命に尊さなんて感じてないくせに」
ゲルト「……っ!」
642: 2014/07/30(水) 21:12:15.77 ID:8KllsZgw0
疾患QB「……さて、お喋りはそろそろ終わりにしよう」
疾患QB「間もなく、軍による攻撃が開始される」
疾患QB「最初の攻撃目標はこの見滝原」
疾患QB「見滝原殲滅後は主に発明品などから妖精の発生地点を特定し」
疾患QB「余剰次元砲によって周辺地域妖精の駆除を行う」
シャル「よ、余剰次元砲……?」
旧べえ「簡単に言うと、三次元空間そのものをしっちゃかめっちゃかにする事で」
旧べえ「物理的に存在する対象なら強度に関係なく、あらゆる方向に引き裂いて破壊する兵器だ」
旧べえ「空間干渉による破壊なので伝達速度こそやや遅めだが、その威力は他とは比べようもないほど強力」
旧べえ「現在余剰次元砲よりも強力な兵器というのは、限定的条件下で使える特殊兵器を除くと」
旧べえ「宇宙を枯らすほど大量のエネルギーを用いるか、物理法則の違う並行世界でしか生成出来ないとされている」
さやか「もっと簡単に言って!」
旧べえ「……地球人の兵器で言えば、水爆みたいなものだよ。水爆と違ってクリーンではあるけどね」
マミ「そんなもの、撃たせる訳にはいかないわ!」
疾患QB「言っとくけど、僕をどうこうしても事態は変わらないよ」
疾患QB「ちょっと前にも言ったけど僕の魂はこの場に存在しない。この身体を潰しても僕は殺せない」
疾患QB「そもそも僕はあくまでエネルギー回収部隊であり、戦闘部隊とは別の部署に所属している」
疾患QB「向こうは僕がどうなろうと、その行動を変える事はないよ」
まどか「そんな、ど、どうしたら……!」
疾患QB「どうするもこうするもないよ」
疾患QB「君達に出来るのは諦める事だけで――――」
――――バリーンッ!!
疾患QB「……え?」
643: 2014/07/30(水) 21:14:19.26 ID:8KllsZgw0
シャル「結界が……割れた?」
マミ「まさか私達に攻撃が届くように、結界から追い出した!?」
さやか「杏子ちゃん!」
杏子「はい! あたし達の力でこの街全体に結界を張って……」
旧べえ「いや、待つんだ」
旧べえ「……アイツの様子がおかしい」
さやか「え?」
疾患QB「艦隊!? まだこっちの戦闘は終わってない! 念のため隔離フィールドの再展開を……」
疾患QB「……何?」
疾患QB「どういう事だい!? この星に宇宙戦闘を想定した技術はまだ存在していない!」
疾患QB「ましてやこちらの艦隊に損害を与えるなんて――――」
疾患QB「まさか!?」
まどか「?」
疾患QB「……い、いや、この態度、何も知らない……?」
疾患QB「暁美ほむらじゃない? それとも単独で動き出したのか――――」
疾患QB「ん?」
まどか「……ねぇ、あれって」
さやか「……ああ、パソコンだね」
マミ「パソコンね」
ゲルト「パソコンですね」
杏子「あれパソコンだったのかよ」
旧べえ「パソコンには見えないけど」
シャル「とりあえず……」
七人「に、逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
疾患QB(……なんだ? いきなり逃げ出した?)
疾患QB(一体何を見て……)
疾患QB「……わっつ?」
疾患QB(空から何か球体が落ちてきた……それもサッカーボール大とかじゃなくて)
疾患QB(全長500メートルぐらいのやつ)
疾患QB「って、それがこっち目掛けて落ちてきてるううううううううううううううううう!?」
疾患QB「ちょ、ちょ、ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」
――――ずずーんっ!!
645: 2014/07/30(水) 21:17:06.75 ID:8KllsZgw0
マミ「げほっ、げほっ……みんな、大丈夫!?」
シャル「ええ、なんとか……」
杏子「うわ、巻きこまれた家の一部が倒壊してる……」
旧べえ「いや、むしろ市街地に落ちてきたのに、それだけで済んでるのが奇跡だよ」
旧べえ「どうやら空中分解し、一つ一つのサイズが道幅程度に収まったからこの程度で済んだのだろう」
さやか「つーか、あれエリーちゃんのパソコンだよね!? なんで落ちてきたの!?」
まどか「それよりもエリーちゃんだよ! 中に乗ってるんじゃないかな!」
旧べえ「パソコンなのに中に乗るという発想が既に意味が分からないのだけど」
杏子「それレーザーとか出すよな。あたしそれにやられたし」
――――ぱかっ
ゲルト「! 見てください! 装甲の一部が外れて……」
エリー【うう……】
まどか「エリーちゃん!」
旧べえ「あの魔女も、君達と接触した事のある者なのかい?」
マミ「ええっ! 私達の、友達よ!」
さやか「すかさず翻訳眼鏡を装着!」
さやか「エリーちゃん、どうしたの!?」
エリー【さ、さやか……?】
646: 2014/07/30(水) 21:19:58.55 ID:8KllsZgw0
エリー【……あああああもう! なんなのよアイツ等!】
エリー【パソコンの機能フル活用して宇宙旅行を楽しんでいたら】
エリー【なんか変な船がたくさんやってきて、いきなり攻撃してきたのよ!?】
さやか(え、怪しい連中が来たから迎え撃った、とかじゃないの?)
エリー【こっちは予備のパソコン九機も含めた十機で対抗したけど】
ゲルト(ああ、そう言えばあのパソコン、十機も作っていましたっけ)
エリー【何故か定期的に開く装甲内部を攻められて落とされちゃうし!】
エリー【旗艦っぽい一隻以外は全部落としといたけど……】
エリー【強過ぎよ! パソコン相手に戦えるような連中じゃないわよアイツ等!】
エリー【なんなのアレ!?】
シャル「……えーっと……」
六人(あなたのお陰で地球が救われたんですけど……)
旧べえ「彼女はなんて言ったんだい?」
さやか「かくかくしかじか」
旧べえ「わーお……なんか、あっさり解決……」
旧べえ「あ、いや、まだだ! 旗艦が残っているのなら、まだ余剰次元砲は存在する!」
旧べえ「以前危機は去っていない!」
マミ「え、ああっ!? なんて事!」
杏子「くっ……あと一歩だったのに!」
エリー【え、なんで悔しそうなの? 私パソコン壊されたんだけど慰めの言葉とかないの?】
さやか「今はそれどころじゃないんだよ!」
エリー【それどころよ!? 私にとってパソコンは命よ! い・の・ち!】
まどか「このままだとリアル命が危ないの痛いっ!」ゴシャンッ
エリー【なんで鹿目さんの頭上からタライが!?】
疾患QB「ふ、ふふふ……良い事を聞いたよ……」
シャル「こ、コイツ!?」
エリー【え、スルー!? 今のタライなんで全員スルーなの!? そして何故糞白猫が二匹!?】
エリー【私に簡易的でいいから状況説明しなさーいっ!?】
647: 2014/07/30(水) 21:22:09.96 ID:8KllsZgw0
疾患QB「余剰次元砲が生きているなら計画になんの支障もない! 被害は甚大だが、第一目的は達せられる!」
疾患QB「これで暁美ほむらは、終わりだ!」
まどか「あ、ああ……!?」
まどか「空に何か……ゆ、歪みが……!?」
旧べえ「不味い! 空間湾曲が発生している! 余剰次元砲の影響圏が大気圏を突破したんだ!」
旧べえ「着弾まであと数秒もない!」
マミ「そんな……!」
シャル「ほ、ほむらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
――――ばっちぃーんっ!!
全員「……はぇ?」
648: 2014/07/30(水) 21:22:57.77 ID:8KllsZgw0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ほむら「? さっき、なんか音しなかったー?」
お姉さん「どうやらまた『万能蝿叩き』が起動したみたいです。恐らく鳥でしょう」
ほむら「ああ、それか……なら、いいか」
ほむら「それより、今はプリン! ぷ・り・んーっ!」
お姉さん「はいはい、手作りプリンですよー」
ほむら「うわぁーい♪」
妖精さんA「ぷりんとききましたです?」
妖精さんB「おこぼれねらい?」
妖精さんC「はげたかにあこがれちゃう?」
お姉さん「マスター達の分はこちらですよー」
妖精さん達「うわぁーい♪」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
649: 2014/07/30(水) 21:31:24.20 ID:8KllsZgw0
疾患QB「跳ね、返された……余剰次元砲が……?」
疾患QB(馬鹿な、あ、あり得ない!)
疾患QB(理論上余剰次元砲を防ぐには、同規模かつ逆波形の余剰次元砲を射出してぶつける事だけ!)
疾患QB(だけど余剰次元砲は空間をかき乱す事が目的であり、周期的な波形が存在しない、
完全なランダム性と干渉域の相互作用による予測不可能な連鎖性を持っている)
疾患QB(そもそも波形を観測出来るという事は、余剰次元砲の影響下にある事を意味しているのだから)
疾患QB(観測した瞬間、その対象は引き裂かれる事になる!)
疾患QB(不可能なんだ! 余剰次元砲は、僕たちでも防ぐ事はおろか観測すら出来ない攻撃なんだ!)
疾患QB(ましてや跳ね返すだなんて、一体どんな技術を使えば・・・…!?)
旧べえ「君達には一体何が起きたか分かるかい?」
まどか「全然」
マミ「全く」
杏子「さっぱり」
ゲルト「見当も付きません」
さやか「ただまぁ、何時ものパターンだとすれば……」
シャル「どーせならなんでも跳ね返せたら面白いみたいなノリで作ったアイテムが」
シャル「偶々起動したとか、そんな感じじゃない?」
疾患QB「!? の、ノリで、作った……偶々……!?」
疾患QB「し、信じない……信じないぞ……!」
疾患QB「そんな、そんな軽い気持ちで僕らの技術を……この宇宙最高のテクノロジーを……」
疾患QB「僕らの文明を、超えられて堪るかっ!!」ダッ
まどか「! に、逃げたよ!」
シャル「ちっ! そうはさせない――――」
杏子「っ! あぶねぇ!」
シャル「へ?」
――――ガラガラガラッ!
シャル「ひゃあっ!?」
マミ「エリーさんのパソコンが崩れてきたわ!?」
651: 2014/07/30(水) 21:34:02.23 ID:8KllsZgw0
さやか「大丈夫!?」
シャル「う、うん……だけど……」
シャル「くそっ! パソコンの崩落さえなかったらアイツを逃がさなかったのに!」
シャル「パソコンさえなければ!」
エリー【ちょ、なんで二度言ったの!? 言っとくけど私は悪くないわよ!?】
ゲルト「まぁまぁ、落ち着いてください」
エリー【宥めないでよ本格的に私が悪者っぽくなるから! というかアンタ誰!?】
杏子「まぁ、ベストな結果とは言い難いが全員無事だったし、良しとしないか?」
エリー【出来るかっ!】
ゲルト「まぁまぁ」
マミ「……そうね。全員で危機は脱したし、それで良しとしましょう」
マミ「あなたとも、出会えたしね」
旧べえ「……………」
マミ「……ねぇ、あなたもしかして……」
シャル「巴さん。今はあまり雑談している場合じゃないと思うわよ」
マミ「っ……そう、ね……」
シャル「……さて。アンタには聞きたい事が山ほどある」
シャル「とりあえず、ほむらのとこまで来てもらえないかしら?」
シャル「勿論拒否権なんてないけど」
旧べえ「ああ、こちらとしてもそのつもりだったから、そうしてくれると助かる」
旧べえ「ただ、一つお願いしたい事があるんだ」
ゲルト「お願い?」
652: 2014/07/30(水) 21:42:05.53 ID:8KllsZgw0
杏子「あのなぁ、確かにあたし達は今さっきお前に命を救われた」
杏子「あたしの場合、祈りの結果は自業自得だからテメェを非難する資格もないだろうさ」
杏子「けど、そっちの頼みを聞くほど心を許してない事、分かってんのか?」
旧べえ「分かってる。図々しいと分かった上で頼みたいんだ」
旧べえ「僕は現在ゆま……小さな女の子と共に暮らしている」
旧べえ「その子も、暁美ほむらの家に連れて行って良いだろうか」
旧べえ「彼女はまだ幼い。その上親も、訳あって居ない」
旧べえ「一人にはしておけないんだ」
マミ「女の子って、魔法少女なの?」
旧べえ「いいや、魔法少女じゃない。才能はあるみたいだけどね」
旧べえ「それに、信じてもらえるかは分からないけど、僕は彼女を魔法少女にしたくないんだ」
シャル「……現時点では、とか腹の中では思ってるんでしょ」
旧べえ「それは――――」
シャル「……良いわ」
シャル「その子に何か罠が仕掛けられていたとしても、妖精さんをどうこう出来るとも思えないし」
シャル「望み通り、その子も連れて行ってあげる」
旧べえ「ありがとう」
シャル「……ふん」
マミ「私も一緒に行くわ。何か起きたら人手が多い方が良いでしょうし」
マミ「……力になれる自信はないけどね」
さやか「今日の事をほむらに報告しないといけませんしねー」
まどか「……うん。行こう」
エリー【……はぁー。もう、なんだか分かんないけど、そっちも色々あったみたいね】
エリー【ついでだし、私も一緒に行ってもいいかしら? パソコン壊れちゃったから、直してもらいたいし】
エリー【パパとママの写真データは結界内にバックアップ取ってるから、急がなくても良いけど】
マミ「ええ、むしろ来てほしいぐらいよ」
ゲルト「それじゃ、皆さんで暁美さんの家に……の前に、そのゆまちゃんって子を迎えに行くとしましょう」
杏子「そうすっか」
ゲルト「では、すみませんが念のため、あなたを拘束させてもらいます」
旧べえ「うん。当然の事だね。分かったよ」
マミ「……ごめんなさい、キュゥべえ」
旧べえ「気にしないでくれ」シュルルル
旧べえ「それじゃあ、案内しよう。ゆまが居るのはまずあっちの道に進んで……」
――――テクテクテクテク
シャル「……………」
653: 2014/07/30(水) 21:47:42.92 ID:8KllsZgw0
エリー【シャル? どしたの?】
シャル「え? ああ、なんでもないわ」
エリー【そう?】
エリー【……それにしても、このパソコン放置で良いのかしら……】
シャル「妖精さんが作った発明品なら、多分段ボールとかプラスチックで出来たものでしょうし」
シャル「見た所氏人も出てないみたいだから、良いんじゃないかしら?」
エリー【だ、段ボール?】
シャル「多分よ多分。まぁ、あらゆる意味で真っ当な素材は使われてないでしょうけど」
エリー【今度聞いてみよう……】
シャル「知らなくても良い事のような気もするけどね」
シャル「それより、アンタ足遅そうだしねさっさと行かないと置いて行かれるわよ?」
シャル「みんな、もう大分先に進んじゃってるし」
エリー【へ? あ、ほ、ほんとだ!?】
エリー【みんな待ってよぉーっ!】
シャル「……」
シャル(とりあえず、みんなが無事で良かったわ。今回ばかりは、本当に”脱落者”が出ても可笑しくなかった)
シャル(……いいえ、今まで出なかったのが不思議なぐらい、ね)
シャル(私達が戦おうとしていたのは、星々を渡り、魔法すらも再現してみせる力を持った異星人)
シャル(地球が一丸となって立ち向かうならいざ知らず、たった数人の子供が彼等に抗おうとしたって)
シャル(そんなのは、連中からすれば人の掌から逃げようとするダンゴムシ。ううん、それ以下の意味しかない)
シャル(私達に勝ち目なんてものはない。今まで私達が無事だったのは、彼等が真面目に手を打たなかったから)
シャル(――――でも、これからは違う)
シャル(あの逃げたキュゥべえの言葉が正しいなら、今日やってきたという艦隊はあくまで戦力の一部)
シャル(本来なら、それだけでも私達は手も足も出なかった。奴等もそれで十分だと思っていた筈)
シャル(だけどそれを打ち破ってしまった以上、奴等はいよいよ本気にならざるを得ない)
シャル(その本気というのが圧倒的な大艦隊か、単独の超兵器か、或いはもっと別の物なのかは分からないけど)
シャル(”人類”では到底抗えない、圧倒的な力がくる事は間違いない)
シャル(……その圧倒的な力に対抗出来るとすれば、それはきっと妖精さんだけ)
シャル(そして、その妖精さんと明確な意思疎通が出来るのは……)
シャル(頼むわよ、ほむら)
シャル(人類の未来、アンタ達に託すわ)
654: 2014/07/30(水) 21:49:27.83 ID:8KllsZgw0
―――― ほむホーム ――――
ほむら「いやー、身体のだるさが中々抜けないので妖精さんに作ってもらった風邪薬を飲んだところ」
ほむら「私の体内から排出されたウィルスが意思を持ち、不気味な生命体に進化してしまいました」
ほむら「てへっ♪」
黒くてうねうねした何か「ぴるげぶぅぎゅぃあぃああぁ!」
妖精さんA「かぜきんさん、げんきぴんぴん?」
妖精さんB「ふえたがり?」
妖精さんC「ぶんれつしてぞーしょくしたそー」
ほむら「これどうしたものですかねぇ? 退治しようにも気持ち悪いからあまり触りたくない――――」
ほむら「あ、第二陣が……うぷっ」
ほむら「おろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ダバー
黒くて(略)2「ぎびぃえあえあぅえあぁあああ!」
ほむら「あー、また産まれちゃった……げぷっ」
まマさ杏ゲエ旧「……………」
シャル(……本当にコイツ等に任せていいのかしら、人類の未来)
655: 2014/07/30(水) 21:55:13.08 ID:8KllsZgw0
妖精さんメモ
『絶対安全とんがりこーん』※オリジナル※
三角コーンを元に発明された、超強力なシールドを発生させる道具です。発生するシールドは物理的衝撃は勿論
悪臭や悪口すらも遮断する優れもの。ついでに見せちゃいけないものも見せない、未成年に優しい機能付きです。
特殊な操作をすると秘めたる力が解放されるとかなんとか。何が起こるかは分かりませんけどね。
『呼び出しチャルメラ』※オリジナル※
一吹きすればあら不思議。豆腐及びそれらから作られる食品がたくさんやってきます。自ら。
それらは吹いた人間の指示に余程の事がない限り従います。しかし彼等にも自我があるらしく、
無茶な命令を出した場合良くて命令無視、最悪反逆されてしまいます。
尤も反逆されたところで所詮豆腐とか油揚げとかなので、生命の危機に晒される心配はないのですが。
万一反旗を翻されたら、美味しくお腹に収めてしまうのがのが一番良いでしょう。
『お笑いステッキ』※オリジナル※
一振りするとあら不思議。タライが頭上に落ちてくるようになります。
……他に書く事なんてないぐらいシンプルな道具です。強いて言うなら上手い事連続ヒットするとボーナス得点が入り、
周りにいる誰かの頭上に純金製のタライが落ちてくるぐらいで……
656: 2014/07/30(水) 22:01:46.60 ID:8KllsZgw0
『解決セット』※原作登場※
マスクとマントとサーベルがセットになっている妖精さんアイテムです。マスクを通じて外を見ると、
物体にドクロマークが浮かんでいるのが見えるようになります。ドクロマークはその物体の危険を呼び込む箇所を示し、
白 < 赤 < プラチナの順でより大きく、のっぴきならない危険を招いてしまいます。
けれどもご安心を。ドクロマークをサーベルで突き刺せばそれだけで粉々に砕け、
見事危険は取り除かれます。修理した訳じゃないのになんで? という疑問は抱くだけ無駄です。
尚、対象のドクロを全て取り除くと「解☆決」の掛け声と共に身体が勝手に横ピースを取ってしまいますが、仕様です。
『金ニンニク』※オリジナル※
見た目は黄金に輝くニンニク。だけど食べるとあら不思議、身長100メートルの巨人になれます。
その能力はマッハ30で飛行し、ミサイルの直撃で傷一つ付かず、腕からスペなんとかという謎粒子を発射して
敵を爆頃する……こうして書くと恐怖しか感じられない恐ろしい怪人です。
妖精さん曰く、食べた人を地球最強にするために作ったのだとか。
しかし地球最強と断言出来るという事は、地球で二番目に強い奴を知っている事になりますよね?
どうやって調べたのでしょうか?
ちなみにうっかり食べてしまったさやかさん曰くイチゴ味との事。どうやら味は後付けのようです。
『プライバシーなんてないさ針金』※オリジナル※
どんな鍵でも開けてしまう、とっても危ない針金です。
使い方は至極簡単。鍵穴にこの針金を突っ込み、ぐいぐいと引っ掻き回すだけ。それだけでどれほど強固な
施錠もあっさり開けられます。妖精さん曰く、針金の開けてやろうという気持ちに感銘を受けて、鍵が勝手に開くとか。
鍵にはもっと義務感というか使命感を持ってもらいたいものです。
ちなみにカードキーで開錠するタイプの鍵は真面目なので、開けてくれないそうです。
657: 2014/07/30(水) 22:04:39.48 ID:8KllsZgw0
今日はここまで!
キュゥべえさんにちょこっと本気を出してもらいましたが、理不尽パワーには勝てなかったようです。
理屈なんて関係ねぇ! 面白さが一番だ!
さて、旧べえの参戦で本SSのメンツは揃いました。実際にはこの後もう少し増えますが、
増えたところで戦力外なので居ない扱いで良いよね?(酷
次回は解説回の予定。
こちらはある程度書いてあるので近々投下できるかな(フラグ
それではバイビー!
662: 2014/07/30(水) 22:36:59.27 ID:UAL7DWwZo
乙です
672: 2014/08/08(金) 19:53:37.21 ID:I0CqpEW70
えぴそーど にじゅうに 【人間さんの、これからのはなし】
673: 2014/08/08(金) 19:55:28.87 ID:I0CqpEW70
―――― PM 7:30 ――――
――― ほむホーム ―――
ゆま「おねえさん。なにか手つだえること、ない?」
ほむら「んー、でしたらこの野菜をリビングまで運んでもらえますか?」
ゆま「うん、わかった!」
ゆま「よっこいしょ、っと」
ほむら「大丈夫ですか? 重たいなら、無理しないでくださいね?」
ゆま「だいじょうぶ! 早く、みんなのとこにもっていこう!」
ほむら「では、私はお肉と調味料を持って……」
ほむら「はーい、皆さんお待たせしましたー」
ほむら「お鍋の主役、お肉の登場ですよー♪」
ゆま「おやさいもだよーっ!」
「「「いえーいっ!」」」
674: 2014/08/08(金) 19:57:49.10 ID:I0CqpEW70
マミ「……まさか鍋パーティに誘われるなんてね」
ゲルト「まぁ、なんだかんだ全員集合って感じになりましたから……」
ゲルト「でも大勢でつつく鍋というのは、ワクワクしませんか?」
マミ「確かに、そうね」クスッ
エリー【……………】ソワソワ
まどか「エリーちゃん、どうかした?」
エリー【へ? あ、いや、その……み、みんなで食事って、慣れてなくて……】
エリー【私は……ご飯って、何時も一人で食べてたから……】
まどか「……そっ、か」
まどか「うん。難しく考えないで、楽しめばいいんだよ!」
エリー【そ、そう? ……うん……頑張る……】
さやか「それより肉だぁーっ! 肉を食わせろーっ!」
ゆま「ゆまも、お肉たべたい……」
杏子「? なら食えばいいじゃん」
ゆま「いいの!?」
杏子「お、おう。たくさん食え。お前、食い盛りだろうしな」
シャル「水炊きと言ったらポン酢醤油よねー」
ほむら「当然。ちゃんと用意してありますよ」
シャル「あんがとー」
旧べえ「……緊張感がないなぁ」
675: 2014/08/08(金) 20:02:42.57 ID:I0CqpEW70
旧べえ「本来この集まりは、今日あった出来事……僕らインキュベーターの襲撃について話すものだった筈だ」
旧べえ「なのに今からやろうとしているのは、今後の相談ではなく鍋パーティ」
旧べえ「しかも僕を拘束から解き食事の席に座らせるなんて、危機感に欠けているとしか言えない」
シャル「ゆまちゃんにねこさんを自由にしてあげてって頼まれちゃったからね。仕方ないでしょ」
シャル「それに鹿目さんや巴さん、ゲルトちゃんとさやかはアンタを敵だとは思えないみたいだし」
シャル「だったら私一人が反対したってしょうがないじゃない……ああ、あとエリーちゃんも反対していたか」
旧べえ「しかし……」
シャル「それにほむらのペースを覆すなんて誰にも出来ないわよ」
シャル「実際、軽くだけどほむらには今日の出来事」
シャル「インキュベーター達との戦いについてはもう伝えてあるわ」
シャル「その上で、アイツは鍋パーティを始めたんだから」
旧べえ「……やれやれ。接触した時から薄々感じていたけど、彼女はなんというか」
旧べえ「訳が分からない」
シャル「あー、そうね。分からないわよね、アイツの言動は」
シャル「多分だけど、幼少期に妖精さんの影響をもろに受けた結果じゃないかしら」
シャル「妖精さんが居なかったら根暗人間だったーって、よく言ってるし」
旧べえ「妖精さん、ね……」
旧べえ「記憶にはない筈なんだ。出会った事はない筈なんだ」
旧べえ「でも……」
ほむら「ゆまさん、これが妖精さんですよー」
妖精さん「あわ、あわわわわ……」
ゆま「ほ、本当に妖精さんなの!?」
妖精さん「ぴっ!?」
ほむら「大きい声を出してはいけません」
ほむら「妖精さんはとってもシャイで、大きい音が苦手なんです」
ゆま「あ……ご、ごめんなさい……」
ほむら「はい、手に乗せてあげますねー」
妖精さん「きゃー」
ゆま「ふわぁ……か、かわいい……」
旧べえ(何故かあの姿に、見覚えがあるんだよね……)
シャル「? どうかした?」
676: 2014/08/08(金) 20:06:46.12 ID:I0CqpEW70
旧べえ「……いや、なんでもない」
旧べえ「確かに、暁美ほむらの提案に心惹かれるのは事実だ」
旧べえ「今はこの鍋に舌鼓を打つとしよう」
さやか「そーそー。難しい話はお腹がいっぱいになってからで良いよ」
さやか「それに、あたし等以上にアンタと話をしたそうな人が居るからね」
旧べえ「え? ……ああ、成程」
旧べえ「確かに、君とは一番話をしなければならないんだろうね」
旧べえ「……マミ」
マミ「……隣、座るわね」
マミ「……」
マミ「最初に一つ確認させてもらうけど……あなたは……私と一緒に暮らしていたキュゥべえ、よね?」
旧べえ「……ああ、そうだ」
旧べえ「君と契約し、君と行動を共にしていた」
旧べえ「そのキュゥべえだよ」
マミ「あなたには聞きたい事がたくさんあるの」
マミ「何故私を魔法少女にしたのか、何故私と一緒に暮らしていたのか、私と一緒に暮らしていて何を思っていたのか」
マミ「そして……居なくなっていた間、あなたが何をしていたのか」
旧べえ「……そうだね。話そう」
旧べえ「僕の全てを、君に」
杏子「ほれ、お前細いから肉を食え、肉を」
エリー【私お肉嫌いなんだけど……】
杏子「テメェ、食い物を粗末にする気か? ああん?」
エリー【勝手に盛られたのに何で脅されてるの私!?】
旧べえ「だから緊張感がないってば」
……………
………
…
677: 2014/08/08(金) 20:09:00.47 ID:I0CqpEW70
旧べえ「酷な言い方になるが、君との生活に僕は何も感じていなかった」
旧べえ「そこにある温もりも、君の優しさも、僕にはなんの意味もなかった」
旧べえ「こういう言葉を使っていいかは分からないけど……」
旧べえ「酷く、勿体ない事をしていたと思う」
マミ「……そう」
マミ「ありがとう。教えてくれて」
旧べえ「礼を言わないでくれ」
旧べえ「それが一番、辛い」
マミ「……………」
ほむら「ほっちのはなひはほわひはひは?」
旧べえ「このシリアスな流れを全力でぶった切る頬袋顔は止めてくれないかい?」
678: 2014/08/08(金) 20:15:36.28 ID:I0CqpEW70
ほむら「んぐんぐんぐ……ごくん。良いじゃないですか。シリアスより笑っている方が」
旧べえ「その決して否定出来ない言い方は卑怯だよ」
旧べえ「それに、さっきは一時的に納得したけど」
旧べえ「本来はこんな鍋パーティを楽しんでいる場合ではない筈だ」
さやか「そうは言うけど、なんやかんやどうにかなったじゃん」
さやか「そりゃあたし達は大怪我したけど、それだって杏子ちゃんの天使パワーで完治したし」
ほむら「……………」
旧べえ「美樹さやか。君は僕達の事をまだ甘く見ているようだね」
旧べえ「どのような手法を使ったかは分からないけど、暁美ほむらは、妖精は僕達の艦隊を打ち破ってしまった」
旧べえ「それは僕達に確かな”損害”を与える行為だ。失敗しても”損害”は出ない、魔法少女の契約を邪魔するのとは訳が違う」
旧べえ「次の攻撃は、今日とは比較にならない規模で展開されるだろう」
旧べえ「自らの生存を脅かす存在を野放しにするほど、僕達は能天気じゃないからね」
シャル「……それは、不味いわね」
杏子「今回はこのキュゥべえのお陰で助かったけど、あの戦闘用個体って奴の強さは出鱈目だったしな」
マミ「宇宙戦艦も動員されたら、私達は本当に手も足も出ない」
ゲルト「ええ、正に技術力の差を思い知らされました。正直、どうすれば彼らと戦えるのかすら分かりません」
ゆまエリー「?】←状況をよく知らないコンビ
まどか「ほむらちゃん……私達は、これからどうしたら良いと思う?」
ほむら「?」
まどか「なんでそこで首を傾げるの? 何言ってんだコイツみたいな目で見ないでよ?」
ほむら「いや、だって皆さん何をそんなに恐れているのやら……って感じですし」
ゲルト「だ、だって……」
ほむら「妖精さんは無敵です。何が来ようと敵じゃありません」
ほむら「そもそも、何故皆さんそこまで慌てているのですか?」
ほむら「戦闘用個体、宇宙戦艦、魔法の無効化……」
ほむら「どれもこうなる前に予想出来た事態じゃないですか」
まマさ杏シゲ「!?」
679: 2014/08/08(金) 20:21:38.88 ID:I0CqpEW70
まどか「よ、予想出来たって……」
ほむら「そりゃ、相手は恒星間航法が可能な宇宙人です」
ほむら「宇宙空間で遭遇した脅威に対抗するための武装を持った艦船……宇宙戦艦はまず必要でしょう」
ほむら「それにインキュベーター(孵卵器)が居るのですから、別の専門職の存在は容易に想像出来ます」
ほむら「あとマジックキャンセラーについては最初から想定済みです」
ほむら「奴等からすれば魔法少女なんて羽虫レベルの脅威でしょうが、それでも一応は武力を持った存在」
ほむら「常識的に考えて、魔法少女が謀反を起こした時のセキュリティがある筈です」
ほむら「持ってなかったらその程度の連中という事で、色々やり易かったんですけどね。残念」
マミ「そ、そこまで分かっていながらなんで黙っていたの!?」
ほむら「これぐらいなら容易に思いつくと思って……」
マミ「さりげなく馬鹿にされた!?」
ほむら「そもそもインキュベーターが百万隻もの大艦隊で来ようと脅威でもなんでもないんです」
ほむら「と言うか、さやかさんとシャルロッテさんには以前お話したじゃないですかー」
ほむら「やろうと思えば、インキュベーターの存在を宇宙の歴史から抹消する事も可能だと」
マまゲ杏旧「!?」
シャル「あ、あー、そんな事言ってたわねー」
さやか「なんだっけ? 辞書のページを燃やせばいいんだっけ?」
ほむら「正確には違いますが、まぁ、大体そんな感じです。他にもより取り見取りで方法はありますよ」
杏子「でも、だったらなんでそうしないんだ?」
杏子「マミとコイツには悪いが、そうすりゃ全部解決するじゃん」
マミ「……」
ほむら「んー、尤もな意見……と、言いたいところですが」
ほむら「可能である事とやりたい事は別問題でして。個人的には武力行使は避けたいんですよね」
さやか「面白くないから?」
ほむら「一番の理由はそれですね」
ゲルト「そんな理由で……」
680: 2014/08/08(金) 20:25:08.91 ID:I0CqpEW70
ほむら「あ、勿論それだけじゃないですよ?」
ほむら「例えば宇宙の中でも巨大な文明を築いているであろうインキュベーターの根絶は」
ほむら「宇宙のパワーバランスを乱す可能性もあります」
ほむら「インキュベーターの影響力がどの程度かは分かりませんけど、曲がりなりにも宇宙の寿命を管轄する者達です」
ほむら「地球で例えると、アメリカが突如消え去る並の影響があるかも知れません」
ほむら「そしてその影響が、地球に及ばない保障はない」
ほむら「何が起きるかは分かりませんが……まぁ、どう考えても面倒事にしか発展しないでしょうね」
マミ「それは、確かに困るわね……」
ほむら「でしょう?」
ほむら「それに何より……」
旧べえ「……なんだい?」
ほむら「ちょっと確信がないので、直接あなたに聞いておきたい事があるのを思い出しまして」
旧べえ「? まぁ、なんでもとはいかないけど、答えられる事なら」
ほむら「でしたら遠慮なく」
681: 2014/08/08(金) 20:26:00.46 ID:I0CqpEW70
ほむら「あなた方、人類の文明にどの程度干渉したんですか?」
682: 2014/08/08(金) 20:30:29.86 ID:I0CqpEW70
旧べえ「……!」
まどか「え? 干渉って……」
ほむら「妖精さんアイテムでインキュベーターの事を調べた際、十三万年前に地球を訪れたとありましてね」
ほむら「諸説ありますが、それからたった五千年後……凡そ十二万五千年前って」
ほむら「人類が火を日常的に使うようになった頃と言われているんですよねぇ」
旧べえ「……………」
ほむら「勿論それ以前に火を使っていた形跡というのも発見されていますが」
ほむら「十二万五千年というのは、火を日常的に使うようになった」
ほむら「つまり、生活面で火が密接に関わるようになった時代だそうです」
ほむら「はい、巴先輩。火を使う事によって人が受けられる恩恵はなんですか?」
マミ「えっ!? えーっと、その」
マミ「獣避けとか、明かりを確保するとか……あと、道具の加工が出来る、かしら?」
ほむら「二十点。百点満点で」
マミ「低っ!?」
ほむら「正解ではあるんですけどね。しかしそれらは”真の恩恵”の後から手にしたものでしょう」
まどか「真の恩恵?」
ほむら「火がもたらした最大の恩恵は――――”食べ物”の絶対量が増えた事です」
ほむら「今、私達がこうしてお鍋パーティが出来るのも、全ては加熱という調理方法のお陰です」
ほむら「豆もキノコも穀物も、本来毒があったり消化出来なかったりで人が食べられるような物ではありません」
ほむら「ですが加熱すれば毒は分解され、繊維は柔らかくなって人間にも食べられるようになります」
ほむら「生食が可能なお肉や魚にしても加熱した方が消化しやすく、加熱による殺菌で食べられる期間も伸びます」
ほむら「火によって食生活は一気に変わりました。今までの何倍もの種類と数の食べ物を」
ほむら「季節や場所を選ばずに確保出来るようになった。高いカ口リーの持続的な供給が可能になったのです」
ほむら「そして有り余るエネルギーは、最もエネルギー効率の悪い器官」
ほむら「脳の肥大化を後押ししたと言われています」
マミ「つまり、人間の知能が高まったって事?」
ほむら「その通り」
683: 2014/08/08(金) 20:35:14.70 ID:I0CqpEW70
ほむら「火のお陰で我々は文明を持つ事が出来た。逆に火を使えなければ文明は成り立たたなかった」
ほむら「火を使っていなければ、我々は今でも洞窟暮らしをしていたでしょう」
まどか「……」
ほむら「と、まぁ、長々と語ってしまいましたが」
ほむら「私としては、年代的にインキュベーターが火の効率的な扱い方を人類に伝授したんじゃないかなーと」
ほむら「ああ、ちょっと遠回しな言い方でしたね。ストレートに言いますと」
ほむら「インキュベーターによって人類の文明は作られた」
ほむら「てな感じに思っている訳ですが、そこのとこどうなんでしょう?」
旧べえ「……あえて訂正する点はないね」
旧べえ「強いて付け足すなら、君達の文明をここまで発展させたのは」
旧べえ「僕らと魔法少女達だ」
ゲルト「私達が……?」
ほむら「ほほう?」
旧べえ「僕達は有史以前から人間の文明に干渉してきた」
旧べえ「しかしその方法は直接的ではなく、あくまで間接的になんだ」
旧べえ「火に関して言えば、僕達と契約したある魔法少女が」
旧べえ「焔を操る魔法の使い手であり、その魔法の研究をしていく中で、火のコントロール方法を見つけた」
旧べえ「それが後の技術発展につながったと聞いている」
旧べえ「そしてその魔法少女の祈りは、僕達が誘導したもの」
旧べえ「”この暗闇の生活から解放されたくないかい?”」
旧べえ「彼女の家族が必氏になって確保していた火を、魔女や使い魔を誘導して消させた状態でこう言ったらしいよ」
マミ「なんて事を……!」
まどか「酷い……」
ほむら「回りくどいですねぇ」
旧べえ「一応僕達は強制という行為を嫌うからね」
旧べえ「今でこそ卑劣だと思うけど、少なくとも昔は、こんな方法でも人間の意思を尊重したと思っていたよ」
684: 2014/08/08(金) 20:42:27.14 ID:I0CqpEW70
旧べえ「……話を戻すとね、僕達は君達の文明ステージの進み方をある程度コントロールしてきた」
旧べえ「幾つか確認されていた地球以外の感情保有生物のデータから」
旧べえ「文明が発達している方がより感情的、つまり回収出来るエネルギー量が増えるという数値が出ていたからね」
旧べえ「かと言って無秩序に文明を発達させると異常気象や世界大戦で絶滅しかねないし」
旧べえ「理想的な進歩をさせると、今度は生活が満たされ過ぎて絶望の生じにくい世界になってしまう」
旧べえ「だから過去に観測した文明データを元に」
旧べえ「人間社会を観察し、適切な場所と時期に、好ましい願い事を抱いている少女と契約する」
旧べえ「そうやってこの星の文明を、僕達にとって都合のいい世界にしてきたのさ」
旧べえ「欲望と絶望に満ち溢れた、どうしようもない世界にね」
ほむら「実に面倒で陰湿なやり方です事」
ほむら「それに……予想通りとはいえ、あなた方が我々の文明に深く関与しているのは都合が悪いですねぇ」
マミ「どういう事?」
ほむら「簡単な話です。奴等の存在を歴史レベルで消去してしまった場合」
ほむら「必然的に、奴等からもたらされた現在の人類文明も消滅してしまう事になります」
まどか「そ、そうか! キュゥべえが居なくなったら、人類に文明を伝える人達も居なくなっちゃうから……」
ゲルト「歴史が変わってしまう訳ですね……」
ほむら「まぁ、文明がごっそり消えてなくなるぐらいならまだ良いのですが」
ほむら「文明が消えるという事は、その恩恵によって生き延びた人が氏んでしまう事になります」
ほむら「逆もまた然りですが、文明無しで七十億まで増えるとは思えませんし、圧倒的に氏ぬ人の方が多いでしょう」
ほむら「では、自分の直系の祖先の誰かが氏んでしまったら?」
ゲルト「……私達は、産まれてこなくなる」
ほむら「それはねぇ、いくらなんでもお断りしたいですよねー」
ほむら「妖精さんならその矛盾もどーにかこーにかしてくれるでしょうけど」
ほむら「宇宙レベルの歴史改変の修正は流石に大変だそうなので、完璧な仕事はちょっと期待出来ません」
ほむら「問題が生じてからでは手遅れな以上、インキュベーター歴史上から根絶作戦は取れない訳です」
ほむら「なので代わりに、愉快で楽しい解決策を実行中だったりしますが」
まどか「解決策?」
ほむら「ええ。妖精さんを五十万人動員し、全力でとあるアイテムを開発しています」
マミ「ご、五十万人の妖精さん!?」
ゲルト「エリーさんのパソコンですら、数十人で一分もせずに完成させた妖精さんが……」
まどか「な、何を作っているの?」
ほむら「秘密です」
まマゲ「……」
まマゲ「え?」
ほむら「秘密です」
685: 2014/08/08(金) 20:46:58.97 ID:I0CqpEW70
まどか「な……なんで?」
ほむら「え? なんでって……」
ほむら「折角だからサプライズって感じに完成発表をして、皆さんを驚かせたいので?」
まマゲ「おおおおおおおおおおおおおおいっ!?」
ほむら「別に良いじゃないですかー……どーせ皆さんに発表してもしなくても計画に変更はありませんし」
ほむら「だったらビックリドッキリして楽しんだ方が得ですよ?」
ゲルト「いやいやいやいやいや!? どこまで楽しさ重視なんですか!?」
マミ「これからの戦いの行方を決める、一番肝心な話じゃない!」
ほむら「皆さんノリが悪いですねぇ」
ほむら「どーせ勝利は決まっているのです。だったら楽しさ重視で良いじゃないですか」
まどか「だけど……」
ほむら「むー……そこまで言うなら、大まかな計画の流れは教えてあげましょうかね」
ほむら「簡単に言いますと、妖精さんの圧倒的テクノロジーによってこの星を
インキュベーターにとって利用価値のないものに変えます」
マミ「利用価値が、ない?」
ほむら「元々連中は人類を資源程度にしか見ていません。地球の分化や文明なんて、連中にとっては無価値ですからね」
ほむら「故に人間に資源的な価値が無くなれば、向こうはこの星に居る理由がなくなります」
ほむら「いくら高度な文明といえども、宇宙艦隊を維持するには莫大な量のエネルギーを使います」
ほむら「資源的にかつかつな彼等の事。穀潰しを養う余裕はないでしょう」
ほむら「ついでに技術力の差も見せつけてやれば、攻撃しようという意欲も削げます」
ほむら「結果、奴らはいそいそと撤退する筈です」
ほむら「まるで、逃げ帰るように」
ほむら「真っ向から敵対して屍を築くより、そうやって追い払う方がずっと面白おかしいでしょう?」
まどか「でも、具体的にはどうするつもりなの?」
まどか「魔法少女と魔女をどうにかするつもりなのは分かるけど……」
ほむら「そこを言ったら秘密にならないので自分で考えてください。まぁ、当てられるとも思いませんけど」
マミ「何をするつもりなのかは分からないけど、とんでもない事をしようとしているのは分かったわ」
ゲルト「妖精さんの超科学で何をしようとしているかなんて、想像する事も出来ませんよね……」
マミ「そうよねぇ。もうなんでもありだもん、あの科学力」
まどか「……………」
686: 2014/08/08(金) 20:49:26.77 ID:I0CqpEW70
まどか「……あの、すごく……すごく今更な事を聞くようなんだけど……」
ほむら「はい、なんでしょうか?」
まどか「……妖精さんって、なんなんだろうって……」
ほむら「……………は?」
まどか「あ、その反応は傷付くよ!? というかなんでちょっぴり馬鹿にした風なの?!」
まどか「この際だから言っちゃうけど妖精さんって可笑しいでしょ! 非常識だよ!」
まどか「それにあの出鱈目な科学力!」
まどか「言っとくけど私最強の魔女だよ!? 地球ぐらい簡単に滅ぼせちゃうんだよ!?」
まどか「そんな私をノリで真っ向勝負挑んだ挙句倒すとか可笑しいでしょーっ!?」
マミ「か、鹿目さん落ち着いて! あなたの言いたい事は分かるから!」
マミ「確かに、あの子達が出鱈目なのは私も常々思っているから!」
ゲルト「なんというか、考えないようにしていましたけど……」
ゲルト「改めて考えると、本当に訳の分からない存在ですね」
ゲルト「暁美さんは、彼等の事を何処までご存じなのですか?」
ほむら「何処までと言われましてもねー……ぶっちゃけ殆ど分からないです」
ほむら「出鱈目科学も、妖精さんが科学だと言っているから私も科学だと言っている訳で」
ほむら「何故楽しいと増えるのかとか、何故彼等が居るだけで世界が明るく楽しくなるのか」
ほむら「あまりにも分からないので、そういうものだとしか思っていませんもん」
ほむら「そもそもこっちの世界の住人じゃないですし……存在の世界観がずれているのは仕方ないかと」
ゲルト「こっちの世界?」
ほむら「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
ほむら「妖精さんは元々こちらの世界の住人ではなく、別の世界……」
ほむら「いわゆる並行世界、正確にはそれよりも”遠い”世界のそのまた深淵からやってきた方々らしいのです」
687: 2014/08/08(金) 20:51:38.71 ID:I0CqpEW70
マミ「……異世界の住人って事かしら?」
ほむら「大体そんなところかと。一応地球の並行世界ではあるようですけどね」
まどか「……あまり驚きはないよね。異世界から来たと言われても」
マミ「正直、妖精さんならお茶の子さいさいのような気がするし」
ゲルト「でも、どうしてこちらの世界まで来たのでしょうか?」
ほむら「以前聞いた時は、お勉強のためだそうですよ」
まどか「お勉強?」
ほむら「ええ。主に、人間の命と心について」
まどか「……? 人間の事を研究しにきた、という事?」
ほむら「まぁ、そんなところです」
まどか「……あの、ほむらちゃ」
マミ「あら?」
ゲルト「? 巴さん、どうしました?」
マミ「……ちょっと待って」
マミ「これはどういう事かしら……どうして……」
マミ「何時の間にか、お鍋の中身が汁しか残っていないのかしら」
ゲルト「……」
まどか「……」
まどゲル「はい?」
688: 2014/08/08(金) 20:57:56.83 ID:I0CqpEW70
杏子「お。お前らやっと話が終わったのかー?」
さやか「いやぁ、美味かった美味かった」
シャル「ごちそーさん」
ゆま「ご、ごめんなさい……おなべ、おいしかったから……」
旧べえ「きゅっぷい」オナカパンパン
エリー【もー食べられないわー……】
マミ「……いや、ちょっと待って」
マミ「今、暁美さんが大切な話をしていたわよね? 今後について大事なお話だったわよね?」
マミ「なんでその間みんなお鍋をもりもり食べてる訳?」
エリー【なんか私には関係ない話だったから、最初からお鍋に熱中してました】
ゆま「ゆま、こんなおいしいごはんはじめてで……つ、つい……」
杏子「あたしの頭じゃよー分からんので、途中からどうでも良くなって」
さやか「杏子ちゃんが食べ始めたのを見てこのままじゃヤバいと思って」
シャル「さやかが食べ始めたし、後の事はほむらと妖精さんに任せときゃ大丈夫だろって思って」
旧べえ「みんな食べ始めて僕の分が無くなりそうだし、話を聞くだけなら食べながらでも出来るので」
ほむら「皆さん食べ始めてましたけど、作った身としては皆さんが美味しく食べてくれれば満足なので」
まどか「ほむらちゃん気付いてたなら教えてよ!?」
ゲルト「私、全然食べてないんですけど!?」
マミ「私もお肉一枚しか食べてないわよ!?」
シャル「ほら、肉ならまだ余ってるし……これとか」
マミ「パックの隅にある千切れた油身を余ってると申すか!」
マミ「きしゃーっ!!」
さやか「巴先輩が両腕上げて歯をむき出しにしながら奇妙な叫び声を上げた!?」
杏子「あ、あれはマミが友人だと思っていた人の事を信じられなくなった時の威嚇ポーズ!」
さやか「何その酷く限定的な行動!? というか巴先輩あんなキャラだっけ!?」
杏子「普段先輩ぶってるくせにある程度親しくなるとやたら子供っぽくなるんだよあの人!」
さやか「めんどくさっ!」
ゲルト「私も怒りましたよ! きしゃーっ!」
シャル「面倒が増えたわよ。アンタの友人なんだからなんとかしなさいよ」シーハー
さやか「お前の友人でもあるだろうがーっ!!」
旧べえ「ゆまはあんな醜い大人になっちゃ駄目だからね」
エリー【こんな詐欺師にもね】
ゆま「う、うん……(このもやもやした人は何を言っているんだろう……)」
\ギャーワーギャーッ/
ほむら「……さて、私はデザートを食べるとしますかー」
まどか「ほむらちゃん、ナチュラルに酷いね」
689: 2014/08/08(金) 20:59:32.72 ID:I0CqpEW70
ほむら「シャルロッテさん達は私達に無断でお鍋を食べ、巴先輩達は学習しなかった」
ほむら「だったらこっそりデザートを食べたとしても、私に非はありませんよ」
まどか「そういうところがナチュラルに酷いって言ってるんだよ」
ほむら「気にしない気にしない」
ほむら「それで、どうです?」
まどか「? どう、って?」
ほむら「先程、何か聞きたそうにしていましたからね」
ほむら「一緒に、うちの屋根の上でジェラードでも食べませんか?」
……………
………
…
690: 2014/08/08(金) 21:02:42.18 ID:I0CqpEW70
―――― 暁美家 屋根の上 ――――
ほむら「んー、屋根の上で食べるジェラードは別格ですねー」
ほむら「夜風も気持ちいいですし」
まどか「……そう、だね」
まどか「……………」
まどか(さ、誘われたから一緒に来ちゃったけど……)
まどか(屋根の上で二人きりって、すごく恋人っぽくてドキドキする!)
まどか(こ、こんな状況で名前を呼ばれたら……)
――――まどかちゃん♪
まどか「うぇっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ほむら「っ!?」ビクッ
まどか「あ、ごめん。ほむらちゃんに名前を呼ばれる妄想をしたら、つい」
ほむら「そ、そうですか……って、随分素直に言いますね……」
まどか「ふられたからね。今更好意を隠しても仕方ないので」
ほむら「……襲わないでくださいね?」
まどか「善処するね」
ほむら「……まぁ、善処してくれるなら良しとしましょう」
ほむら「それで? 先程何を聞きたがっていたのですか?」
ほむら「答えられる事なら、答えます」
まどか「答えられない事もあるの?」
ほむら「ええ。スリーサイズや体重は秘密です」
まどか「残念」
まどか「……じゃあ、別の事を聞かせてもらうけど」
まどか「妖精さんは、人間の命と心を勉強しにきたんだよね?」
ほむら「ええ、そうです」
まどか「マミさんはそれを、研究しにきたと解釈していたけど……」
まどか「でも勉強ってそういう事じゃないよね」
まどか「勉強って、自分にないものを自分のものにしようとする時に使うよね?」
まどか「それじゃあ、まるで……」
ほむら「妖精さんが、生きていないかのよう?」
まどか「……」
ほむら「半分正解、ってとこですかねー」
まどか「!? は、半分正解って、どういう事?」
691: 2014/08/08(金) 21:09:50.90 ID:I0CqpEW70
ほむら「昔……それこそ妖精さんと出会って、一年かそこらの時でしょうか」
ほむら「私も鹿目さんと同じ疑問を、つまり妖精さんとは何者かという疑問を持ちました」
ほむら「そこで彼等に尋ねたところ」
ほむら「彼等の故郷、こことは違う世界に、一度だけ連れていってもらった事があるんです」
まどか「妖精さんの、故郷……」
ほむら「とは言っても地球なんですけどね。違いがあるとすれば」
ほむら「人類が絶滅して、妖精さんが地球を支配しているという事でしょうか」
まどか「えっ!? ぜ、絶滅って……」
ほむら「調べる時間がなかったので、原因については分かりかねます」
ほむら「別段放射能とかウィルスによる汚染が酷いとかもないので、比較的穏やかに衰退したとは思いますが……」
ほむら「またあの世界に行って調べようにも、あちらに行くと」
ほむら「『まざる』から、妖精さんはあまり長い事居られないみたいなんです」
ほむら「正直なんのこっちゃですけど、嫌がる妖精さんに無理強いは出来ません」
ほむら「なので私もその世界についての詳しい知識はない訳です」
ほむら「知っているのは人間の代わりに妖精さんが地球を支配している事」
ほむら「そして、そこの妖精さん達は」
ほむら「人間と変わらない姿と暮らしをしている事ぐらいなものです」
まどか「人間と同じ姿? あの妖精さん達が大人になったら、人間みたいな姿になるの?」
ほむら「私も同じ事を疑問に思い、彼等に尋ねました」
ほむら「結論から申しますと、彼等は大人になっても人間の姿にはならないとの事です」
ほむら「あちらの地球……そうですね、仮にA地球と呼びましょう。私達の住む地球がB地球です」
ほむら「A地球の妖精さんと我々の知るB地球の妖精さんは、元は同じですが今では大きく異なる存在――――」
ほむら「推論になりますが、亜種のような存在に分かれたのだと思います」
まどか「亜種……種を分けるほどの違いはないけど、部分的な違いが見られる?」
ほむら「ええ。混ざるというのが何を意味するのかは分かりませんが」
ほむら「彼らが生まれ故郷の世界に長期滞在出来なくなった理由は、そこにあると私は考えています」
692: 2014/08/08(金) 21:13:26.86 ID:I0CqpEW70
ほむら「……遥か昔、妖精さんはただの”力”……命や心以前の、もっと根源的な存在だった」
ほむら「だけどある日、命と心を持った存在、その中でも特に”楽しそうに”生きている人間に憧れ」
ほむら「人間の模倣を始めた……のでしょう」
ほむら「で、色々な人間を見た方が模倣する上で都合が良いと思ったのかは分かりませんが」
ほむら「数千年、或いは数万年前、一部の妖精さんがB地球にやってきた」
ほむら「それから長い時間をかけて」
ほむら「A地球の妖精さんは人と同じ姿と心を手に入れ、B地球の妖精さんは素敵な愛玩系生命体になった」
ほむら「……私に分かったのは、いいえ、推測出来たのはそこまでです」
ほむら「何故二つの世界で妖精さんの姿にここまで違いが生じたのかは、残念ながら私にはよく分かりません」
ほむら(それに、A地球の至るところに存在するあの”妖精さん”の事も――――)
まどか「……ほむらちゃん? どうしたの?」
ほむら「――――ああ、失礼」
ほむら「結局のところ、妖精さんについて知っている事は私もそんなに多くないのです」
ほむら「正直に言えば、今の彼等を命の範疇に収めて良いのかも分かりません」
まどか「そんな事……」
ほむら「だから、私はもっと妖精さんの事を知りたい」
ほむら「妖精さんの秘密を解き明かせたら、きっと毎日を……いいえ、世界をもっと楽しく出来ると思うのです」
ほむら「そして、いずれは――――」
693: 2014/08/08(金) 21:16:37.05 ID:I0CqpEW70
「ほぉーむぅーらっ!」
ほむら「っ!」バッ
「え、ちょなんで躱しぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」
まどか「ほ、ほむらちゃんの背後から誰か来たけどほむらちゃんが回避したからその人が屋根から落ち……!?」
まどか「あ。なんださやかちゃんか」
さやか「なんだとはなんだ!? なんだとは!」
杏子「さやか様ご無事ですかーっ!!」
さやか「って、なんで杏子ちゃんまで屋根から飛び降り」
どんがらがっしゃーん < ギニャーッ!?
シャル「何やってんのアイツ等……」
ほむら「あら、シャルロッテさん。何時の間に此処に?」
シャル「ついさっき。部屋からアンタ達が居なくなったのに気付いて」
シャル「なんとかと煙は高い所が好きって言うから、ここに居るかなーと思って」
ほむら「あらあら。失礼ですねぇ、鹿目さんを馬鹿呼ばわりするなんて」
まどか「私、ほむらちゃんに誘われたから此処にいるんだけど?」
ほむら「それはさておき」
まどか「おかないでよー……」
ほむら「わざわざ呼びに来たという事は、家で何かありましたか?」
シャル「うん。ゆまちゃんが妖精さんに何かお願いしちゃったみたいでね」
シャル「妖精さんが作った玩具のお城の中に、ゆまちゃんが囚われてしまったの」
シャル「で、キュゥべえと巴さんがすぐに助けに行ったけど」
シャル「三分後に二人とも、実家の農業を継がないといけない呪いにかかり家の中で桃の無農薬栽培を始めたのよ」
シャル「これは私達の手には負えないと判断して、アンタを呼びに来たって訳」
まどか「今更だけど全然意味分からないね」
ほむら「んー、大方ゆまさんがお伽噺のお姫様みたいになりたい、とか言ったんじゃないでしょうか」
ほむら「とりあえず、お城には私一人で出向きましょう」
ほむら「他の皆さんは、巴先輩達がこれ以上畑を広げないよう阻止でもしていてください」
シャル「ん? 一人で良いの?」
まどか「何人かで行動した方が良いんじゃ……」
ほむら「今日の風邪で体力の無さを実感しましたからね。鍛錬がてら久しぶりに一人で童話災害を解決しようかなーと」
ほむら「ま、愛用のナイフ一本あればアメリカンなクリーチャーだって倒せますし。なんとかしますよ」テクテク
694: 2014/08/08(金) 21:18:41.78 ID:I0CqpEW70
シャル「……本当に行っちゃった」
シャル「愛用のナイフ一本あればって、アイツ今までどんな経験してきたのかしらね?」
まどか「うん……」
まどか「……………」
シャル「? 鹿目さん、どうしたの?」
まどか「え、あ、なんでもないです。うん」
シャル「そう?」
まどか「……」
まどか(ほむらちゃん、さっき何を言いかけたんだろう……)
ほむら(良いとこが話が途切れてしまいましたね……)
ほむら(まぁ、でも今になって考えてみると、話をするには時期尚早だったかも知れません)
ほむら(この星を妖精さんで満たすという、私の夢を語るには)
695: 2014/08/08(金) 21:29:25.04 ID:I0CqpEW70
ほむら(……A地球には、どういう訳か妖精さんが”二種”存在する)
ほむら(先程鹿目さんに教えた、人と同じ姿になった”妖精さん”)
ほむら(それから、私達が知る妖精さんと同じ姿の”妖精さん”)
ほむら(私をあの世界に連れて行ってくれた妖精さん曰く「どちらもぼくら」で)
ほむら(その二種類の”妖精さん”に満たされている地球は、楽しくて、穏やかで、面白くて)
ほむら(とても、あたたかかった)
ほむら(……私は知りたい)
ほむら(何故A地球は妖精さんのものとなったのか。何故A地球の妖精さんは人の姿まで至れたのか)
ほむら(A地球を満たすほど増えたあの妖精さんはなんなのか。何故人型の妖精さんには不思議な力がないのか)
ほむら(何故――――B地球は、妖精さんのものとならないのか)
ほむら(妖精さんは楽しい事があれば増える。それはA地球の、小さな妖精さんと変わらない)
ほむら(なのに、何故かB地球では妖精さんは私の周りにしかいない)
ほむら(どうしてこの地球は妖精さんで満たされない?)
ほむら(A地球は妖精さんでいっぱいなのに、どうしてB地球はそうならない?)
ほむら(その秘密を解き明かせた時、きっとこの地球も妖精さんで満たせる筈)
ほむら(悲しみがあっても、苦しみがあっても、最後は笑顔になれる)
ほむら(あのあたたかい世界を作れる筈)
ほむら(……そして、あの秘密を一発で解き明かす方法もある)
ほむら(その方法は今まで決心が付かなくて、出来なかった。少しだけ怖くて、臆して、やれなかった)
ほむら(でも、今は違う)
ほむら(私の大切な友達が怪我するなんて、そんな世界は認めない)
ほむら(友達が理不尽に殺されそうになる世界なんて、必要ない)
ほむら(覚悟は決まった。私がどうなろうと、もう構わない)
ほむら(こんな世界、変えてやる)
ほむら(アイツ等に思い知らせてやる)
ほむら(妖精さんの楽しいパワーと人間のいじめっ子パワー……それが合わさった時に何が起きるかを……!)
696: 2014/08/08(金) 21:31:09.82 ID:I0CqpEW70
―――― 見滝原某所 ――――
疾患QB「くそ……くそっ、糞糞糞糞糞ッ!」
疾患QB「まさか跳ね返された余剰次元砲が運悪く命中して、戦艦が落ちてしまうなんて……」
疾患QB「あの程度の戦力では駄目だ。今回動員した戦力では全然足りない」
疾患QB「しかし余剰次元砲すら無力化するような相手。恐らく通常戦力をいくら導入しても被害が増えるばかり」
疾患QB「単独で、今回動員した戦力の数十倍の効果を上げられるような超兵器……」
疾患QB「最終兵器プランを使う以外にない……」
疾患QB「そうだ。あれさえ、あれさえ稼働すれば……」
「あらあら、キュゥべえじゃないですか」
疾患QB「! 誰だ……!」
疾患QB「……って、なんだ君か」
「……随分と失礼な態度ですね」
「偶々見つけたから、グリーフシードの処理を頼もうと思ったのに」
疾患QB「ん? ああ、そうかい」
疾患QB「じゃ、こっちに投げてくれ」
「はいはーい」
疾患QB「よっと……回収完了」
疾患QB「じゃ、僕は帰るね」
「ふーん、随分と淡泊な反応ですね」
697: 2014/08/08(金) 21:33:53.22 ID:I0CqpEW70
疾患QB「生憎今は忙しいんだ。この見滝原に居る連中のせいでね」
「連中? 魔法少女ですか?」
疾患QB「いいや、ただの人間だ。暁美ほむらって言う奴だよ。あと――――」
疾患QB「妖精さ」
「はぁ? 妖精ぃ?」
疾患QB「そいつらが中々厄介でね。手こずっているんだ」
「ぷっ。このご時世に妖精だなんて、随分とファンシーな答えですね」
「しかも妖精って呼ぶからには、そいつはお伽噺に出てくる小さな虫けらみたいな奴って事ですよねぇ?」
「そんなのに手こずるなんて……ぷぷっ」
疾患QB「……君なんかが妖精に挑んだところで秒殺されるだろうけどね」
「……なんですって?」
疾患QB「そうだねぇ。僕に出来るのはもうグリーフシードをより多く集める事ぐらいだし」
疾患QB「暇なら、妖精と暁美ほむらを始末してみないかい?」
「はぁ? そんな事して、私に何か得があると?」
疾患QB「ああ、勿論」
疾患QB「色々あってね。この町の魔法少女は魔女狩りを止めたのさ」
疾患QB「だからこの街で魔女を狩る者は、今や誰も居ない」
疾患QB「完全な空白地帯だ」
「あら。なら見滝原全域を私の狩場にしても問題ない訳ですね?」
疾患QB「ところがそうはいかない」
疾患QB「暁美ほむらと妖精が、魔女を保護しているからだ」
疾患QB「彼女達は君が魔女を退治し、グリーフシードを手にする事を全力で妨害するだろう」
「成程。つまり、暁美ほむらって奴と妖精を始末する事で」
「見滝原に巣食う大量の魔女は、ようやく私の物になるという訳ですかぁ」
「面倒ですけど、見返りとしては十分過ぎますね」
疾患QB「ま、どうせ無理だろうけど」
「……あなた、そんなやさぐれキャラでしたっけ?」
疾患QB「色々あってね」
「ふーん……ま、いっか」
「そういう事ならちょちょいっと、このわたし」
698: 2014/08/08(金) 21:34:34.90 ID:I0CqpEW70
沙々「優木沙々が、暁美ほむらと妖精をやっちゃいますっ!」バンッ
699: 2014/08/08(金) 21:39:59.77 ID:I0CqpEW70
今日はここまでー
妖精さんメモは、書き忘れていました……次回、倍の量で書きます。
さて。
……はい、私は以前しっかり書いてしまいました。人間の子供は触れずとも物を動かせると。
そして命は向こうからやってくると。
助手さん含めて全部伏線だったのかよぉーっ!! と、叫びたい気分でした。
そんな矛盾を解消しようとした結果、本SSの妖精さんは大昔に人退原作地球からやってきた方々となりました。
便利だね、並行世界。
で、本SSの妖精さんは、原作妖精とは亜種の関係です。だから原作とはちょっと設定が違います。
今回の話でぼかされた部分とあからさまな謎はえぴろーぐで明かされるでしょう。
これにて矛盾は(無理やり)解☆決 <横ピース
え? 人間の子供が触れずに物を動かす件? 並行世界だから人間っつってもちょっと作りが違うんだよ(開き直り
ところで桃の無農薬栽培ネタが通じる人はどれだけいるのだろう……
昔、教科書で収量0%の表記を見て思わず笑ってしまったのは自分だけじゃないと信じたい。
読んでくれている人に居るかは分かりませんが。
さぁ、エンディングまであとちょっとだから頑張るぞーっ!
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど7】
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