718: 2014/08/22(金) 22:54:54.37 ID:QJwJb94h0
どうも、お久しぶりでこんばんはな>>1です。
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど1】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど2】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど3】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど4】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど5】
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【えぴそーど6】
それでは沙々にゃん登場回。果たして彼女はほむら達に勝てるのか!(ネタバレ:無理)
乞うご期待!
719: 2014/08/22(金) 22:56:54.71 ID:QJwJb94h0
えぴそーど にじゅうさん 【優木沙々さんの、もぎとれみたきはら】
720: 2014/08/22(金) 22:58:33.11 ID:QJwJb94h0
優木沙々。
それはキュゥべえに「自分より優れた者を従わせたい」と願い、魔法少女になった者。
その祈りから生まれた魔法は「洗脳」であり、魔女を操り、魔女を用いて魔女を狩る戦い方を主にしている。
そして彼女の魔女は人を襲わない――――なんて事は、ない。
何故なら魔法少女の使命は魔女を狩る事であって、人間を守る事ではないのだから。
彼女は己の欲望に正直で、そのためなら他者の犠牲すらも厭わない。
それはかつて巴マミ達が嫌悪した『悪の魔法少女』であり、佐倉杏子が最後までなれなかった『魔法少女の正しい姿』。
これは、『本来の時間軸』には現れなかったそんな魔法少女の
理不尽で不条理でハートフルな一日の話である……
721: 2014/08/22(金) 23:02:09.11 ID:QJwJb94h0
―――― 見滝原駅 ――――
沙々「くふふふ……ついにやってきました見滝原」
沙々(キュゥべえの話によれば、ここに暁美ほむらと妖精がいて、たくさんの魔女を保護しているとの事)
紗々(そして、この見滝原の縄張りを収めているのも彼女達)
沙々(そんな彼女たちを潰せば晴れてこの縄張りはわたしのものとなり)
沙々(同時に、大量のグリーフシードがわたしのものとなる訳です♪)
沙々(キュゥべえはやたらとわたしを煽ってきましたが……全く問題ありません)
沙々(わたしの魔法は『洗脳』)
沙々(わたしより優れている者、わたしが嫌いな奴を従わせたい――――その願いから生まれたわたしの魔法は)
沙々(わたしが憎たらしいと思った相手なら、どんな奴でも効力を発揮する)
沙々(まぁ、全てに劣っていれば効力はないのですが、そんな奴は恐れるに足りません)
沙々(魔法で洗脳し、わたしへの警戒心を失わせ)
沙々(隙を見せたところで後ろから……どんっ)
沙々(これでお終い。楽なもんです♪)
沙々(仮に、そう仮にですが)
沙々(キュゥべえ曰く『厄介な』相手。なんらかの方法でわたしの魔法を無力化したとして)
沙々(それすら問題じゃありません)
沙々(だってわたしには下僕である、十匹の魔女が支配下にある)
沙々(どれも使い魔から育てた魔女で、その実力は折り紙付き)
沙々(普通の魔法少女なら魔女を一匹相手にするのも大変です。それが十匹も現れたら一方的に嬲られるだけ)
沙々(更に、いざとなったら備蓄として持ってきた四つのグリーフシードを魔女にする事も出来る)
沙々(暁美ほむらがどれだけ強かろうと、わたしの勝利は揺らがない……)
沙々「さぁ、面倒はさっさと片付けて、早いところお楽しみタイムに入りたいものです」
沙々「この街の全てを洗脳し、わたしの下僕にするというお楽しみを、ね」
沙々「くふふふふふふふふふふ」
……………
………
…
722: 2014/08/22(金) 23:06:54.46 ID:QJwJb94h0
―――― 暁美家・外側 ――――
沙々「ふむ。キュゥべえから聞いた住所通りなら、此処が暁美ほむらの家ですかぁ……」
沙々「こんな立派な一軒家に住むなんて、ああ憎らしい……」
沙々「……ふふ。早速魔法が利く条件を満たしてしまいましたねぇ、暁美さん」
沙々(さて。今日は休日だから学校は休み。朝も早いですし、暁美ほむらはまだ家に居る筈です)
沙々(インターホンで呼び出し、玄関から出てきたところを不意打ちで魔法を食らわせる……と行きたいところですが)
沙々(キュゥべえからの情報によると、暁美ほむらは三人の同居人と共に暮らしているとか)
紗々(呼び出しで暁美ほむらが出るとは限りませんし、仲間の前で洗脳しても、呼びかけとかで魔法が解けかねない)
沙々(しかも同居人の一人は佐倉杏子)
沙々(風見野で活動をしていた魔法少女の中では最も力を持っていたベテラン)
沙々(噂でしか聞いた事のない相手ですが、ベテラン魔法少女と共に居るのは厄介です)
沙々(勿論、魔女を保護する暁美ほむらと共に暮らしているのなら、彼女も魔女狩りを止めている筈)
沙々(グリーフシードが枯渇し、今頃”魔法が使えなくなっている”可能性もありますが)
沙々(流石に、ベテラン相手にそこまで油断しちゃう訳にはいきません)
沙々(まずは情報収集。家の中での会話を盗み聞きし)
沙々(誰かが一人になった瞬間を狙い、そいつに洗脳魔法を掛ける)
沙々(一人成功すればあとはとんとん拍子です。その一人に、暁美ほむらをここまで連れてきてもらい)
沙々(わたしを友達だと紹介させた上で、暁美ほむらと二人きりになるよう取り計らせる)
沙々(そうなればもうわたしの勝利は確定です)
沙々(さあ、壁に耳を当て、魔法で神経を尖らせて中の音を聞けば――――)
723: 2014/08/22(金) 23:08:11.60 ID:QJwJb94h0
きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
724: 2014/08/22(金) 23:09:36.62 ID:QJwJb94h0
沙々「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
沙々「ぎぃやあああ!? み、耳が!? 魔法で神経尖らせ過ぎて耳が、耳がああああああああああ!?」
沙々「な、なんなんですか今の悲鳴は……中で、一体何が起きたんですか……!?」
沙々(ぐっ……出鼻を挫かれたが……しかし、これはチャンス)
沙々(ただならぬ事態が起きたのなら、混乱に乗じて洗脳魔法を掛けやすいかも知れない)
沙々(何が起きたか知っておかねば――――)
―― 暁美家・内側 ――
ほむら「きゃあああああああっ! 嫌あああああああああああっ!!!!?」
杏子「……ほむらの奴、なにをそんなに叫んでんだ?」
シャル「ああ、アレが出たのよ。アレ」
杏子「アレ?」
シャル「台所の黒い帝王」
杏子「ああ、ゴキブリね」
725: 2014/08/22(金) 23:13:24.82 ID:QJwJb94h0
ほむら「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? その名前を出さないでくださいぃぃぃぃ!?」
ゲルト「あらあら。暁美さんが随分と可愛らしくなっちゃって……暁美さんにも苦手なものってあったんですね」
ゲルト「……でも、サバイバル経験が豊富なら平気であるべきなんじゃ?」
ゲルト「森の中だと結構たくさんいますよね?」
ほむら「野生種は平気なんです! あちらの餌は落ち葉とか枯れ木で、こっちの食べ物には集らないですし!」
ほむら「で、でも台所に出る奴は……」
シャル「ひゅー、おっとめー♪」
ほむら「うう……台所のあちこちに病原菌をばら撒かれたらと思うと……」
ほむら「サバイバルで一番怖いのは下痢による脱水なんです……あれは……マジで氏にます……!」
シャル「……怖がる理由に乙女らしさはなかったわね」
杏子「ある意味安心したけどな」
杏子「でもゲルトが怖がらないのは意外だなぁ」
ゲルト「そうですか?」
杏子「いや、お前、あたしらのメンツじゃ一番乙女っぽいと思うし。なんつーか、ゴキブリ見たらきゃーきゃー可愛く叫びそう」
シャル「あー、確かに。そんなイメージ」
ゲルト「私ってそんなイメージなんですか……」
杏子「で? なんで平気なんだ?」
ゲルト「うーん、平気というか……」
ゲルト「昔、ハエの悟り遺伝子について調べていたら、なんかゴキブリの見た目って大した事ない気がしまして」
ゲルト「それに薔薇を育てていると虫と出会う機会も多いですし……ハバチの群れとかアブラムシの大群とか」
ゲルト「アレらに比べれば、まだゴキブリはマシな部類だと私は思いますね。私は、ですけど」
杏子「ふーん(悟り遺伝子ってなんだろ?)」
ほむら「ひぃぃぃ!? 何処に、何処にぃぃぃぃぃぃ!?」
726: 2014/08/22(金) 23:15:08.75 ID:QJwJb94h0
シャル「あーもう、五月蝿いわねぇ……妖精さんにゴキブリホイホイでも作ってもらえば良いじゃん」
ほむら「そんな悠長な方法取ってられません! いえ、そもそも何匹居るかも分からないのですよ!?」
ほむら「確実に根絶しなければ安心出来ません!」
シャル「じゃあどうすんのよ」
ほむら「この『問答無用根こそぎ害虫ニュークリアボマー』で全てを破壊し尽くします!」ヒョイ
シャル「え?」
杏子「うわぁ。黒い球体に導線って、もろに爆弾だアレ……」
ほむら「これは半径300メートルに特殊な爆風を生じさせ」
ほむら「あらゆる生命体を吹っ飛ばす、究極の爆弾なのです!」
ゲルト「何それ怖いんですけど」
ほむら「これを使い、あの黒い悪魔を根こそぎ追い払ってやります……ふ、ふふふふふふ」
杏子「いやいやいやいやいや、落ち着け。兎に角落ち着け」
杏子「そんなもの使ったらあたしら氏んじゃうから。絶対氏ぬから」
ほむら「ご安心を。吹っ飛ぶだけで氏にはしません。安心安全、優しさがモットーの妖精さんアイテムですから」
ほむら「まぁ、氏ぬほど痛いんですけど」
シャル「氏ぬほど痛いの!?」
ゲルト「あの本当に止め」
ほむら「起動っ!」
シャゲ杏「あ」
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!
―――― 外側 ――――
沙々「え」
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!
……………
………
…
727: 2014/08/22(金) 23:17:20.60 ID:QJwJb94h0
ほむら「……えー、半径300メートルを吹き飛ばすと言いましたが、実は例外がありまして」
ほむら「使用者の安全を守るため、爆弾を中心にした半径2メートルは爆風の影響を受けない仕組みとなっています」
ほむら「ですから私の傍に居た皆さんは心配せずとも良かったんですよ♪」
シャル「ふっざけんなあああああああああああああああああああああああ!!」
杏子「マジで氏ぬかと思ったぞ!?」
ゲルト「し、心臓止まるかと思った……」
ほむら「いやいや。皆さん大袈裟ですねぇ」
ほむら「さっきも言いましたけど、直撃を受けても氏ぬほど痛いだけで、氏にはしないんですから」
杏子「でも氏ぬほど痛いんだろ!?」
シャル「言っとくけど魔法少女って痛み慣れしてないんだからね!? 痛覚のコントロールが出来るから!」
ゲルト「そもそも慣れていても痛いのは嫌です!」
ほむら「あ、今日は買い物に行きたいので、皆さん支度の方お願いします」
シャゲ杏「聞けよ!」
ほむら「昨日は鍋パーティで食材大放出しちゃいましたからねぇ。冷蔵庫の中がすっからかんなんですよ」
シャゲ杏「だから聞けって!」
ほむら「ちなみに買い物を手伝ってくれなかった悪い子のお昼は抜きになります」
シャル「ちょっと着換えてくる」
杏子「歯磨きしてくらぁ」
ゲルト「携帯(妖精さん製)の充電しとかないと……」
ほむら「そうそう、それで良いのです」
ほむら「暁美家の胃袋を誰が握っているのか、それさえ分かればねぇ」←ゲス顔中
シャゲ杏(くっ、逆らえない……!)
728: 2014/08/22(金) 23:18:41.36 ID:QJwJb94h0
―――― 暁美家・外側 ――――
沙々「」プスプス
沙々(うぎ、おぐおぉあぁああぁぁ……!? し、氏ぬほど痛ぇぇえぇぇぇぇぇ!)
沙々(な、何をされたか分からないが攻撃か……!?)
沙々(い、いや、落ち着けわたし!)
沙々(そうだ。中での会話で、ゴキブリ退治って言ってたじゃないか)
沙々(キュゥべえが厄介だと言っていたから、多少力があるのは想定内)
沙々(その力の使い方が……ちょ、ちょっとダイナミックだっただけです)
沙々(むしろあの力を洗脳で手に入れれば、今後のわたしにとって大いに役立ちます!)
沙々(くふ、くふふふ……このわたしをコケにした報い、受けてもらいますよぉ……)
沙々(……………)
沙々(でもその前に全身が痛くて堪らないので、魔法で回復しとこう……)
沙々(……回復魔法、苦手だから魔力使うなぁ……)
沙々(……グリーフシードのストック、あと三つになっちゃった……)
……………
………
…
729: 2014/08/22(金) 23:21:27.48 ID:QJwJb94h0
―――― 見滝原商店街 ――――
ほむら「えーっと、人参、ジャガイモ、ベーコンにニンニクに……」
ほむら「うん、買い物はこれぐらいで良いですね」
シャル「や、やっと終わった……?」
杏子「おーもーいー……」
ゲルト「暁美さん、手ぶらじゃないですか……少しは持ってくださいよ……」
ほむら「私は朝昼晩で皆さんの料理を作っているのですよ? そのぐらいは楽させてくださいよ」
ゲルト「それは、まぁ、そうだとは思いますけど」
シャル「ちなみにお昼と晩ご飯はなんの予定?」
ほむら「お昼は親子丼、晩ご飯は野菜たっぷりのミネストローネをメインにしようかと」
ほむら「ミネストローネはバートリ・メルジェーベトが喜びそうな、色鮮やかなやつに仕上げてみせますのでご期待ください」
ゲルト「鮮血じゃないですかそれ」
シャル「そこでツッコめるゲルトちゃんも大概よね」
杏子「意味が分かっているお前もな」
沙々「……」コソコソ
730: 2014/08/22(金) 23:24:12.78 ID:QJwJb94h0
沙々(家から四人揃って出てきたので後を付けてきましたが……買い物のようですね)
沙々(見たところ四人の仲は割とクールな感じ)
沙々(わたしの周りにいた馬鹿どもみたいにべたべたしていないのは好感が持てますし)
沙々(一人になるタイミングが多い、という意味でも喜ばしい事ですねぇ)ニタァ
沙々(まさかトイレまで一緒に行く、なんて事はないでしょう)
沙々(その時を狙い、誰かを仲間に引き入れれば――――)コソコソ
ほむら「ああ、そうだ……郵便局行ってお金下ろさないと」
シャル「たくさん買ったからねー」
杏子「つーかさ、わざわざ食材を買う必要ってないんじゃないか?」
杏子「妖精さんに頼めば食材ぐらいいくらでも持ってきてくれるだろ」
ほむら「お金とは経済における血液のようなものです。巡らせれば全身に栄養が行き渡り、活力が漲ります」
ほむら「しかし留まらせれば、エネルギーは巡らない。周りが徐々に壊氏していく」
ほむら「ましてや不必要に貯め込めば、他が必要としているエネルギーの循環すら止めかねません」
ほむら「私のようにお金がなくても生きていける者こそ、積極的にお金を使うべきなのですよ」
杏子「ああ、金は天下の回りものってやつね」
ほむら「まぁ、あと何から作られたのか分からないってのもありますが」
ゲルト「え」
ほむら「安全性はバッチリですから気にしませんけどね、少なくとも私は」
ほむら「さて、郵便局に行くにはこっちの道を曲がって……」
\ワイワイガヤガヤ/
ほむら「むむ? なんですかこれ……野次馬だらけじゃないですか」
シャル「うわ、この人ごみを掻き分けるのは大変ね……何? 事故?」
ほむら「みたいですけど、一体なんの――――」
ほむら「あ」
シャル「ん? どうし……ああ」
ゲルト「そう言えばコレ、今まで触れずにいましたけど」
杏子「まぁ、日曜八時のアニメじゃあるまいし、勝手に消える訳がないんだけど……」
731: 2014/08/22(金) 23:26:13.84 ID:QJwJb94h0
【エリーのパソコン(全長500メートル)の残骸】<デーン
ほむら「……どうしましょうかねぇ、これ」
< ッテ、ナンジャコリャアアアアアアアア!?
シャル「ん? なんか悲鳴が……」
ほむら「どっかの誰かが初めてこれを見たんじゃないですか?」
ゲルト「確かに、初めてこれを見れば誰でも叫びますよね……」
杏子「うわ、なんかどっかの研究所の博士みたいな奴が破片を調べてるぞ」
シャル「そりゃ調査員みたいな連中も来るわな」
ほむら「……ふむ」ゴソゴソ
ほむら「妖精さんアイテム『でっかい蚊』~」
シャル「うわ、体長2メートル近いでっかい蚊が……何それ?」
ほむら「モスキート音ってありますよね? 若い人にしか聞こえない音ってやつで」
ゲルト「あ、昔テレビで見ました」
ほむら「あれを使って人を追っ払うという着想の元、私が妖精さんを唆し」
ほむら「彼等の遺伝子工学によって、人間が恐怖を感じ逃げ出す羽音を出せるほど巨大な蚊を生み出してもらいました」
ほむら「それがこの『でっかい蚊』です」
シャル「遺伝子工学ってレベルじゃない大改造だと思う」
杏子「つーかモスキート音、もう関係ないじゃん」
ほむら「良いんです。彼等に望むものを作ってもらうには、こういう面白さ重視の発想が大事なのです」
ほむら「さ、あのパソコンの残骸に群がる人々を追い払ってくださいな」
蚊【ブブブブブブブッ!】ギューン
野次馬「ん? う、うわぁ!?」「巨大な蚊が!」「ひぃー! 血を吸い尽くされるー!」
「な、なんだありゃあ!」「退避! 退避ーっ!」「助けてくれぇーっ!」
ドタバタ……
シャル「……呆気ないほど簡単に全員追い払えたわね」
ゲルト「野次馬は兎も角、調査をしている人はもう少し奮闘してほしかったです」
杏子「で? 追い払ったって事は、中に入るんだよな?」
ほむら「当然です」ヒョイ
732: 2014/08/22(金) 23:29:04.03 ID:QJwJb94h0
ほむら「一応アレ、妖精さんアイテムですし、片付けられるのなら片付けた方が良いでしょうからね」
ほむら「人間は勿論、インキュベーターにも解析出来るとは思いませんが」
ほむら「万一流用する形でこの技術を使われたら」
ほむら「悪い事にはならないでしょうが、しっちゃかめっちゃかにはなるでしょうからね」
ゲルト「ああ……確かにそうなりそうですよね……」
杏子「しかしこんなでっかい破片、どうやって回収するんだ?」
ゲルト「小さいやつでも三メートルぐらい、大きいものは百メートルぐらいありそうですよ?」
ゲルト「特別大きなあの破片なんて、まるで塔みたいにそびえてますし」
ほむら「問題はそこですよねぇ……」
シャル「別に無理して回収しなくても良いんじゃないかしら。どーせ解析出来ないし、応用されても困らないんだし」
シャル「見滝原の新しい観光名所にしちゃえばいいじゃん」
ほむら「いやー、観光名所にするのはちょっと……これ、結構バランス悪そうですよ」
ほむら「こんな感じに突いたら簡単に倒れちゃいそうで……」ツンツン
――――グラッ
ほシャゲ杏「あ」
沙々(暁美ほむら……まさか巨大な怪生物まで使役しているとは……)
沙々(癪ですが、キュゥべえの言い分を少しは認めないといけませんね)
沙々(一対一に持ち込んでも、果たして魔法を掛けるチャンスがあるかどうか――――)
沙々(ん?)
沙々(なんですか? 空が急に暗くなりましたが……)
沙々(嫌ですねぇ。今日の天気予報は晴れだったのに、もし雨でぬれたらテレビ局に魔女を送ってや)
沙々(……あれ? なんか塔みたいな塊が段々大きくなってきて)
沙々(あ、こっちに倒れてきてるのか)
沙々「って、なんで倒ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
733: 2014/08/22(金) 23:30:37.63 ID:QJwJb94h0
< ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ほむら「……………」
シャル「……倒れたわね」
ほむら「……ええ」
シャル「……どうなさるおつもりで?」
ほむら「逃げましょう」
シャル「グッド」
ゲルト「グッド、じゃないでしょおおおおおおおおおおおおおおお!? 大惨事ですよ大惨事ぃ!?」
ゲルト「あれ軽く数百人氏んでいても可笑しくない規模の大崩落じゃないですかーっ!?」
ほむら「大丈夫です! あんな状態でも妖精さんアイテムですから氏者は出ません!」
シャル「退却よ! たいきゃああああああああああくっ!」
杏子「ちょ、お前らマジで逃げるのかよ!?」
ゲルト「え、え、ぁ、うわぁぁぁぁぁんっ!?」
沙々「ご、っぱぁ!?」ズガンッ
734: 2014/08/22(金) 23:32:03.70 ID:QJwJb94h0
沙々「ごほっ、げほげほ……! な、なんとか瓦礫の山から這い出る事が出来た……」
沙々「瓦礫が軽くなかったら生き埋めだったぞ……つーかめっちゃ軽いんだけどなにこれ? 発泡スチロール?」
沙々「いや、なんにせよ魔法少女じゃなかったらマジで氏んでいた……そのぐらいには重かった……!」
沙々「ぐぎぎぎぎ……! じ、事故とはいえ、こんなダメージを追う事になるとは!」
沙々「……まずは魔法で怪我を治して……」
沙々「ちっ! グリーフシードをまた一つ使ってしまいました……あと、二つ……」
沙々「いや、消費した分は奴等を消せばいくらでも取り返せるとして」
沙々「このわたしが嘗められっぱなしだなんて、認められるか!」
沙々「アイツ等全員、必ずぶっ潰してやる……!」
沙々「滅茶苦茶に、心が壊れるまでねぇ……!」
……………
………
…
735: 2014/08/22(金) 23:33:47.51 ID:QJwJb94h0
ほむら「ごひゅー……ごひゅー……ごひゅー……!」
シャル「相変わらず体力ないわねぇ……言い出しっぺのくせに、真っ先にダウンしちゃって」
ゲルト「少しは身体を鍛えた方が良いのでは……?」
ほむら「ひゅ、げほっ、げほげほ、ごほっ! げほげほげほ!」
シャル「何言ってんのか分かんないわよ」
ゲルト(何か言おうとしているのは分かるんですね)
杏子「……と言うかさ、がむしゃらに逃げていたら」
杏子「どっかの廃工場に来ちまったな」
シャル「そうねー……あれ?」
ゲルト「? どうしました?」
シャル「いや、なんか此処見覚えが……ああ、思い出したわ」
シャル「此処、以前地底探検をする事になった工場だわ」
ゲル杏「地底探検?」
シャル「あの時はまだ二人とも、私達と知り合ってすらいなかったからねー」
シャル「簡単に言うと――――」クイクイ
シャル(ん? 裾を引っ張られた……ほむらに?)
シャル「どうしたの、ほむら?」
ほむら「げほ! げほげほ! がっ、げほっ!」
シャル「何? あっちを見ろって言いたいの?」
シャル(何処かを指さしてるみたいね。えっと、指が向いている方にあるのは……穴?)
シャル(随分と大きい穴、って、あれは……)
シャル「……そう言えば、あの後塞いだ訳じゃなかったわね」
ほむら「げほげほっ! ごほっ!」
シャル「確かに、向こうから出てこないとも限らないか。あまり長居しない方が良さそうね」
シャル「みんな、早くこの工場から出ましょう」
ゲルト「え? え、ええ……そうですね。廃工場みたいですし、不法侵入ですもんね」
杏子「……あとで理由、説明してくれよ」
シャル「それはほむらに聞いてよ。私はコイツに”言われて”逃げ出すんだから」
スタスタスタ……
沙々「ぶはっ! ようやく追いつきました……!」
736: 2014/08/22(金) 23:35:49.76 ID:QJwJb94h0
沙々(って、誰も居ないじゃないですか……すれ違ったか、それとももっと奥に行ったのか)
沙々(取り巻の魔法少女達の魔力を追わないと……)
――――ガラッ
沙々「!」
沙々(なんの音……って、工場のど真ん中に開いた穴が崩れた音のようですね……)
沙々(……いやいや、なんですかあの穴は?)
沙々(軽く五メートル以上ある大穴じゃないですか。めっちゃ危険ですよアレ)
沙々(なんなんですかこの街……)
沙々(確かに噂で変なデザインの学校があるだとか、やたらでかい病院があるとか聞きましたが)
沙々(でもあんな超巨大な塔というか瓦礫? があるとか)
沙々(廃工場にでっかい穴が開いているとか)
沙々(そういう非常識な噂は聞いた事なかったのですけど……何? 暁美ほむらが魔女を保護した事による影響?)
沙々(魔女の数が増えればそりゃ奇妙な事件も増えるでしょうけど、でもだからってこれは……)
――――ガラガラ……
沙々(……あの穴、崩落しませんよね? さっきからどんどん崩れてるみたいなんですが)
沙々(いえ、ここまで離れていれば大丈夫だと思いますし)
沙々(万一ここまで崩落が広がっても、魔法少女の身体能力なら離脱可能な筈)
沙々(何も恐れる必要はありません)
――――グルルルルル……
沙々「ちょっと待て」
737: 2014/08/22(金) 23:37:31.40 ID:QJwJb94h0
沙々「え? 何? 何なの今の鳴き声? 獣?」
沙々(あの穴に犬でも落ちているのでしょうか? まぁ、助けてやる義理もないのですが)
沙々(……そうですねぇ。その憐れな面を拝んでおくのも良いかも)
沙々(暁美ほむらのせいで大分ストレスが溜まってますし、ここらでスッキリとした気持ちになりたいところ)
沙々(さーて、どんな奴が落ちたのかなーっと)
グリフォン【グルルルルル……】
沙々(へぇー、鷹の頭と翼を持ちつつ、下半身はライオンと言われているグリフォンそっくりな犬ですねぇ)
沙々「……………」
沙々「ぐ、ぐぐぐぐグリフォンんんんんんんんんんんんんんんんんんん!?」
グリフォン【ギャアアアアアアアアアアアアアアスッ!!】バッ
沙々「ぎょえーっ!? 穴からグリフォンが飛び出してきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
沙々「というかなんでグリフォンがリアルに実在しちゃってるんですか!?」
沙々「そりゃ魔女とかキュゥべえとか妖精とか居ちゃうこんな世の中ですけど」
沙々「それでもグリフォンは非常識過ぎるでしょおおおおおおおおおお!?」
グリフォン【ガオンッ!】
沙々「ひっ!? つ、爪で攻撃してきた!? あわわわわ……!」
738: 2014/08/22(金) 23:39:18.68 ID:QJwJb94h0
沙々「そ、そうだ、変身すれば……!」ヘンシン
沙々「く、くふふふふふ……そうだ、変身すればこんな怪物、恐れる必要はない」
沙々「一対一なら魔法で洗脳しちゃえばいいんです! なんの問題もない!」
グリフォンB【ギィオオオオン!】
グリフォンC【ガルルル】
グリフォンD【オオオンッ!!】
グリフォンE【ギャアアアアアアアスッ!】
沙々「言った傍からいっぱい出てきたあああああああああああああああああ!?」
沙々「なんなんですかこれぇ!? ちょ、無理無理!」
沙々「そ、そうだ魔女! 私の育てた魔女を戦わせましょう!」
沙々「ま、魔女ども行け! いけぇ!」
魔女*10【オオオオオオオ】
グリフォン*5【ギャオオオオオオオオオオンッ!】
沙々「ひぃっ!? なんかちょっとした怪獣決戦みたいになってるぅ!?」
魔女【オオッ!】
沙々「ぐぇ!? 魔女の攻撃の流れ弾がみぞおちにっ!?」
グリフォン【ギャオンッ!】
沙々「げふっ! 吹っ飛んできたグリフォンがわだじの上にっ!?」
魔女【オ――――!】
グリフォン【ギシャアッ!】
魔女【オオッ!?】
沙々「ほげっ!? わ、わたしを押し潰しているグリフォンの上に、他のグリフォンの攻撃を受けた魔女が積み……」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
沙々「!? な、何この音!?」
沙々「まさか工場が崩れようとしているんじゃ……」
――――ベキ、ガラガラガラ、ズドーン!
沙々「まさかじゃなくて現在進行形だったァ――――――――!?」
沙々「ひぃぃぃ!? だ、脱出、脱出……!」
沙々「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ズズーンッ……
……………
………
…
739: 2014/08/22(金) 23:41:22.87 ID:QJwJb94h0
沙々「う、うぅ……げほ、げほ……」
沙々「い、命、からがら……崩れゆく廃工場から、脱出、出来ました、が……」
沙々「服は、ボロボロ……治療で、グリーフシードは、使い果たし……」
沙々「魔女は、回収する暇がなく、全部、廃工場に、置き去り……」
沙々「氏んではいない、でしょうが……しかし、グリーフシードがない、今……」
沙々「洗脳、魔法も……ろくに、使えず……回収は、不可能……」
沙々「こ、んかい、は……引き上げないと……」
沙々「家に、二個だけ、グリーフシードのストックが、あります……」
沙々「あれを使って、魔力を回復、し、て……」
沙々「地元の、魔女を洗脳、し、て……」
沙々「それから、戦力の再編と……グリーフシードの、備蓄を作って……」
沙々「うう……地元に籠ってた方が良かった、かも……」
沙々「なんなんですか、この街ぃ……魔境ですかぁ……」
沙々(もう、精神的に疲れ、た、です……おうち、帰って、寝たい……)
沙々(そうだ……平穏に暮らせればいいじゃないですか……下手に縄張りを奪わなくても、今のままで十分楽しいですし……)
沙々(うん、そうだ……家族と一緒に笑って暮らせれば、それで良いじゃあないですかぁ……)
沙々(優木沙々は静かに暮らしたい……植物のように……平穏な、日々を……)
「はふぅー……今日は疲れましたねぇー」
沙々「!?」ビクッ
沙々(な、なん……!?)
沙々(今の声は、まさか!)
740: 2014/08/22(金) 23:42:30.68 ID:QJwJb94h0
ほむら「ただ買い物にきただけなのに、やたらとドタバタしてしまいましたよー」
沙々(あ、あああああ暁美ほむらあああああああああああ!?)
742: 2014/08/22(金) 23:45:46.26 ID:QJwJb94h0
沙々(な、なんで此処に!? 偶然遭遇しちまったのか!?)
沙々(い、いや、ここまで来て偶然だと思えるか?! いや、偶然だと思うべきじゃない!)
沙々(まさか、わたしの存在に感付いている……!? だとしたら、今までの出来事は……)
沙々(しかしどれも事故みたいなものだし、そう決めつけるのも……)
沙々(と、兎に角、様子を窺いましょう!)
沙々(逃げるにしてもどうするにしても、情報が無くては……)コソコソ
シャル「いや、ドタバタの原因は大体アンタのせいでしょうが」
ゲルト「暁美さんがあの瓦礫をつつかなければ……」
杏子「いや、でもつついただけで倒れたって事は、あれ、本当にヤバかったんじゃないか?」
杏子「ほむらのお陰で人が居ない状態になってたんだし、そう責めるなって」
ほむシャゲ(佐倉さんマジ天使)
ほむら「はぁー……それにしても疲れました……」
ほむら「お金を下ろすのはまた今度で……別にすっからかんでもありませんし」
ほむら「このまま真っ直ぐお家に帰りましょう」
シャル「さんせーい。こっちはもう買い物袋を持つのもしんどいし」
ゲルト「走り回ったからか、お腹が空いてきましたよー」
杏子「だな。さっさと帰って……」
杏子「ん?」
ほむら「? 佐倉さん、どうしました?」
シャル「ちょっとー、面倒事とか見つけないでよー?」
杏子「いや、悪い。もう遅いわ」
743: 2014/08/22(金) 23:50:11.15 ID:QJwJb94h0
杏子「あれって……ナイフ、だよな?」
シャル「え? ……うわ、本当だ。ナイフが落ちてるじゃん。気持ち悪いわねぇ」
ゲルト「誰かの落し物でしょうか?」
ほむら「うーん、刃渡りは凡そ15センチ、ですか」
ほむら「法律上刀身が6センチ以上の刃物は正当な理由なしでは持ち運べません」
ほむら「また理由があって持ち運ぶ時も梱包などの安全対策が必須ですから、もろに銃刀法違反な代物ですね」
ほむら「落し物、というよりも証拠品と言うべきでしょうか」
シャル「いや、そんな詳しい解説求めてないから」
ゲルト「というか、なんでそんな事知っているのですか……」
ほむら「これでもナイフ愛好家ですので……ナイフ一本あれば狩りも護身も道具作りも出来ますからね」
ほむら「流石に平時は持ち歩きませんけど」
シャル「ふーん。アンタの事だから、刀身6センチ以下のナイフを持ってくると思ったわ」
ほむら「いえ、刀身6センチ以下でも正当な所持目的がない場合軽犯罪法違反になります。護身用は認められませんし」
ほむら「それに使い慣れたナイフが12センチのやつなんで、あまり小さいと手に馴染まないんです」
ほむら「ま、何度も氏線を潜り抜けた相棒の代わりはいないってところですよ」
シャル「……ガチっぽい解答されると反応に困るわ」
ゲルト「氏線を潜り抜けたって、今まで本当にどんな経験してきたんですか……」
杏子「それよりさ、あのナイフどうすんの? 警察とかに通報した方が良い訳?」
ほむら「ああ、そうですね。そうした方が良いでしょうね。もしかすると、銃刀法じゃ済まない事件の証拠かも知れませんし」
ほむら「一応警察に通報しておきましょう」
カサッ
744: 2014/08/22(金) 23:52:11.00 ID:QJwJb94h0
ほむら「……………」
シャル「ん? 木になんか黒いものが――――」
シャル「あら」
杏子「ああ、ゴキじゃん。夏が近くなると、外でも偶に見るよなー」
杏子「……そういやコイツ、ゴキブリ駄目なんだっけ」
シャル「野生種は平気って言ってたし、大丈夫なんじゃない?」
ゲルト「……いや、あれチャバネじゃないですか。屋内種、というか外来種だから日本の野生には棲んでないやつです」
シャル「って、事は――――」
ほむら「ほみゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!?」
シャゲ杏(ほみゅう?)
ほむら「ご、ごき、ごき、チャバネ!?」
ほむら「ひぃぃぃぃ!? げ、下痢は、下痢は嫌ああああああああああああああ!」
シャル「何がアイツをあそこまで駆り立てるのだろうか」
ゲルト「発言が発言だけに、あまり知りたくはないですね……」
ほむら「な、なに、何か武器……」
ほむら「!」
ほむら「これ……!」
ほむら「――――妖精さんアイテム『筋力アップダンベル』!」
シャル「うわっ!? なんかダンベルを取り出した!?」
ほむら「そして――――」
杏子「空いた手で落ちてたナイフを拾って――――」
ほむら「どりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
――――ブンッ!!
シャゲ杏「投げたあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
杏子(つーかなんてスピードだ!? あたしの目でも追えねぇ速さだぞ!?)
シャル(絶対あの妖精さんアイテムの効果だ!)
ゲルト(ダンベルなのに鍛える前にパワーアップって順序が可笑しいですよ!?)
杏子(などと時間制限を限りなく無視した事を思っている間に、猛烈な速さで放たれたナイフがゴキブリに――――)
G【】スッ
シャゲ杏「避けたああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
745: 2014/08/22(金) 23:54:12.69 ID:QJwJb94h0
――――カッ!
ほむら「ちぃっ! 外した!」
ほむら「何処だ!? 何処に逃げたあああああああああああああああ!」
シャル「ちょ、ほむら口調変わってる!? 別人みたいになってるから!?」
杏子「……アイツの事はシャルに任せるか」
ゲルト「投げましたね」
杏子「お前もな」
杏子「……つーか、ナイフどっかに飛んでいっちまったな。木に刺さらず、弾き返されちまったから」
杏子「マジで弾丸並の速さで飛んだから、すっげー遠くに飛んじまっただろうなー」
ゲルト「探すのもなんか面倒臭いですし……ほっときますか」
杏子「指紋出てきてもほむらのだしな。それでトラブっても、アイツならなんとかするだろ。多分」
ゲルト「ですね」
杏子「……しかし妖精さんアイテムで腕力アップさせてから投げたみたいだし」
杏子「あれ、何処まで飛んでいくんだろうな」
ゲルト「隣町まで吹っ飛びそうな速さでしたよねー」
ほむら「ほぎゃああああああああああああああああああああああああああ!? 足、足元にぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
沙々(……どうやら、わたしの存在には気付いていないみたいですね)
746: 2014/08/22(金) 23:55:27.83 ID:QJwJb94h0
沙々(なんか今はゴキブリに気を取られているみたいですし)
沙々(このままこっそり逃げるとしましょう)
沙々(ええ、そうです。もうこの街には近付かない……)
沙々(わたしは地元に引き籠ってひっそりと――――)
カッ
沙々(ん?)
カッ
カッ
沙々(なんですか、この音……)
カッ カッ カッカッカッ
沙々(何かが、跳ね返っているような……?)
カッカッ カッ カッ カッ
沙々(近付いているような……?)
カッカッカッカッカッカッ
沙々(というかこの音って)
沙々(さっき暁美ほむらが投げたナイフが木に弾かれた時の音――――)
カッ!!
沙々「って、なんかナイフがこっちに飛んできどうふっ!」グサッ
747: 2014/08/22(金) 23:58:09.84 ID:QJwJb94h0
沙々「うぎゃあああああ!? な、ナイフが、額に!? 額にぃぃぃぃぃ!?」
沙々「ぐ、ぐ、ぐぉぅふっ!?」ズルリッ
沙々「な、なんかめっちゃ深く突き刺さりましたけど、なんでわたし生きてんの!? いや氏にたくないですけど!」
沙々(というかどういう事だオイ!?)
沙々(このナイフ、遠目で見ていたから確信は出来ないが……)
沙々(間違いなく、暁美ほむらがぶん投げたナイフ!)
沙々(つまりあの猛烈な速さで投げたナイフが、壁とか電柱とか木とかで跳ね返り続け)
沙々(そして最後はわたしの頭にクリーンヒット!?)
沙々(ふざけんな! 跳弾したナイフに当たるって、B級映画でも見ないシーンだわっ!)
紗々(狙ってやったとしたらあまりにも馬鹿馬鹿し過ぎて逆に偶然を疑うっつーの!)
沙々(仮に狙ってやったとしたら、あっちがこっちを完全に把握してなきゃ無理――――)
沙々「……!?」
沙々(まさか、奴等は本当にわたしの存在に気付いている!?)
沙々(いや、でもわたしの姿はアイツ等にはまだ見られていない筈! 知りようがない!)
沙々(知りようが……)
沙々(で、でも、知っていると考えたら、全て辻褄が合う……?)
748: 2014/08/23(土) 00:02:10.29 ID:DPdQquyP0
沙々(そうだ、今朝からずっと可笑しいじゃないか!)
沙々(家に近付いたら爆発に巻き込まれ!)
沙々(暁美ほむらがつついた巨大な瓦礫がわたしの方に倒れてきて!)
沙々(後を付けて入った廃工場で怪物に襲われた挙句!)
沙々(投げナイフの跳弾でこっちの頭を正確に射抜きやがった!)
沙々(あんな事が全部偶然起こるなんて……あり得ない! 少なくとも暁美ほむらは、わたしの存在に気付いてる!)
沙々(しかし一体どうやって!? どうやってわたしの事を知った!?)
沙々(いや、それよりも一体何処まで知っている!?)
沙々(いくら後を追ったからって、いきなり頃しにくるぐらいだ……間違いなく、わたしの魔法は調べている筈)
沙々(わたしの魔法が調べられるのなら、もう何を調べる事が出来ても可笑しくない……)
沙々(わたしの縄張り、行動パターン、生活サイクル……それら全てを知っていても不思議じゃない)
沙々(そして、す、住んでいる場所も……!?)
沙々(あり得る! わたしの魔法を知っているのなら、家を知るぐらい余裕だ!)
沙々(家を知っているのなら、わたしが眠った隙に暗頃する事が出来る!)
沙々(ここで家に帰ったら、殺される……いや、そもそも帰れるのか?)
沙々(もうグリーフシードのストックはない。魔女も居ない。新たな魔女を洗脳する余力もない)
沙々(そんな状態で、何時攻撃されるか分からない中、家に帰る……)
沙々(出来る訳がない!)
沙々(……今日、今ここで暁美ほむらとはケリを付けなければならない)
沙々(あの強大で、こちらの全てを見透かしているであろうアイツを……)
沙々(……もう、あの手を使うしかない……)
沙々(最後の、あの手段を……!!)
……………
………
…
749: 2014/08/23(土) 00:04:41.67 ID:DPdQquyP0
―――― 見滝原公園 ――――
まどか「あ、ほむらちゃん、みんな。やっほー」
さやか「よーっす」
ほむら「あら、こんにちは」
杏子「よぉ、まどか。それからごきげんよう、さやか様」
シャル「相変わらずさやかにだけ態度違うわね」
ゲルト「今日はお二人でお出かけですか?」
さやか「うん。映画見に行ってた」
まどか「出来ればほむらちゃんと二人きりでラブストーリーな映画を見たかったけどね」
まどか「今日はさやかちゃんで我慢です」
さやか「おうおう、言ってくれるな」
ほむら「私、ラブストーリー系とか退屈で寝ちゃうタイプなんですよねぇ」
まどか「ウェヒー……」
さやか「そしてこの結果である」
マミ「あら。みんなこんなところに集まってどうしたの?」
ゲルト「あ、巴さん。こんにちはー」
杏子「別に集まっていた訳じゃないけどな。そういうマミは?」
マミ「私はキュゥべえとゆまちゃんの家に寄ってて……」
ほむら「ゆまさんのお家ですか?」
マミ「ええ。詳しくは聞けなかったけど、あの二人って今、二人だけで暮らしているみたいでね」
マミ「キュゥべえは兎も角、ゆまちゃんはまだ小学生だから色々大変でしょ?」
ほむら「大変というか、児童相談所に通報すべきレベルだと思いますけど」
マミ「……キュゥべえがゆまちゃんから七時間以上かつ三メートル以上離れると、発作を起こしてしまうらしいから……」
ほむら「了解。細かい事は気にしない事にします」
750: 2014/08/23(土) 00:06:28.51 ID:DPdQquyP0
マミ「えっと、それでね? どんな場所で暮らしているのかとか、ご飯はどうしているのかとか」
マミ「そういうのを見てきたの」
ゲルト「それで、巴さんの意見としては?」
マミ「うーん、本人がそれで幸せならいいんじゃない……ってレベルかしら」
ほむら「つまり、傍目にはあまりよろしくない環境だと」
マミ「ええ。本当は無理やりにでも児童相談所に連れて行くべきなんでしょうけど……」
ほむら「まぁ、事情がありそうですし、今回は特別という事にして、今度みんなでお邪魔するとしましょう」
ほむら「妖精さんアイテムも使えば、現状よりずっとマシな生活環境に出来るでしょうし」
マミ「そうしてくれると助かるわ」
シャル「話は終わった? なら、そろそろ帰りたいんだけど……」
杏子「両手の買い物袋が重い……」
マミ「あ、ごめんなさい! 引き留めちゃったわね」
ゲルト「いえいえ」
ほむら「それじゃあ、そろそろ帰らせていただきますね――――ん?」
さやか「? どうかした?」
ほむら「……誰か、こっちに来ますね」
さやか「へ? 誰かって……」
シャル「……確かに、誰か来たわね。まっすぐ、こっちに向かって」
まどか「……?」
沙々「……く、ふ、くふ、くふふふ……」フラフラ
751: 2014/08/23(土) 00:09:42.96 ID:DPdQquyP0
マミ「……何かしらあの子。ちょっと……不気味……?」
ほむら「……そうこうしていたら、まぁ、向き合う形で対峙する事になった訳ですが」
ほむら「えーっと、何かご用でしょうか?」
沙々「……くふ、くふふ」
沙々「くふふふふふふ」スッ
まどか「!? あ、あれは――――」
シャル「ソウルジェム!?」
ゲルト「という事は、魔法少女!?」
ほむら「……穏やかじゃありませんね。いきなりソウルジェムを見せてくるとは」
ほむら「我々の前に姿を現したという事は、恐らく私達の事はキュゥべえから多少は聞いている事でしょう」
ほむら「目的はなんですか? この見滝原の魔女を狩りたいとかでしょうか?」
ほむら「もしそうなら、こちらも相応の対応をさせていただきますが――――」
沙々「……く、くふ」
沙々「くふ、くふふふふふ」
沙々「くふふふふふふふふ」
ほむら「……笑ってばかりで埒があきません」
ほむら「仕方ありません。みなさん、少々強引ですが、あの方を気絶させてもらえませんか?」
ほむら「妖精さんに頼んで記憶の抽出を」
沙々「くふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっ!」ダッ
ほむら「っ!?」
ほむら(突然走り出してきた!? まさか、直接攻撃!?)
杏子「ちっ! 出遅れた……が、遅ぇ!」
シャル「その程度の速さでどうにか出来ると思って――――」
752: 2014/08/23(土) 00:10:51.93 ID:DPdQquyP0
沙々「マジ、すいませんっしたぁ……!」ドゲザ
全員「……え?」
沙々「命だけは助けてくださぃ……!」プルプル
全員「……え?」
最終手段 ザ☆命乞い
753: 2014/08/23(土) 00:12:44.58 ID:DPdQquyP0
沙々「殺さないでぇぇ……!」ガクガク
全員「……………」
ほむら「……なんで皆さん私の事を見るのですか」
シャル「いや、どう考えてもあんたが原因でしょ」
さやか「魔法少女をこんな震えるまで怖がらせるとか……」
ゲルト「暁美さんならあり得ると言いますか」
まどか「ほむらちゃん以外にこういう展開を起こせる人は居ないと思うし……」
ほむら「いやいやいや!? 濡れ衣ですよ!」
ほむら「私は今回何もしていませんよ!? この人が勝手に謝ってきただけですから!」
さやか「あ、普段はトラブルの原因って自覚はあるのね」
ほむら「そういう時はわざとやってますので」
杏子「おい」
マミ「でもねぇ……」
ほむら「むぅ! そこまで言うなら確かめましょう!」
ほむら「そこのあなた、一体誰に対して命乞いをしていると言うのですか?」
ほむら「怒りませんし、怒らせませんから、正直にお答えください」
沙々「……あ……」
沙々「あなた様でございます……ほむら様ぁ……!!」
ほむら「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
全員「……………」←軽蔑の眼差し
ほむら「え、あ、いや、ちが……」
沙々「な、なんでもしますから……命だけは、命だけはぁぁぁぁぁ……!」
ほむら「ええええええええええええええええええええええええ!?」
754: 2014/08/23(土) 00:14:31.01 ID:DPdQquyP0
暁美ほむらに虐められ、逆らってはいけない存在を知った沙々にゃんは悪の魔法少女から足を洗いました。
しかし機嫌を損ねたら殺されるという強迫観念で、ほむらに媚びずにはいられない体質になっており、
沙々にゃんは心の傷が癒えるまで実家に帰れなくなっていました。
無論責任は虐めた側にあるので、ほむらが責任を持って沙々にゃんの心の傷を癒す事になりました。(賛成7:反対1で)
こうして暁美家には新たな居候が増え、ますます賑やかになったのです(注:ハートフル要素)。
めでたしめでたし。
755: 2014/08/23(土) 00:15:18.89 ID:DPdQquyP0
ほむら「いや何一つめでたくないですよね!? というかなんで私が虐めた事になってるんですか!?」
沙々「ほむら様ああああああああああああああ!」
ほむら「ちょ、は、離れ……!」
まどか「……不潔」
ほむら「うぇぇぇええええええええええええええええっ!?」
ほむら「な、なんでこんな事になってるのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
757: 2014/08/23(土) 00:16:27.75 ID:DPdQquyP0
疾患QB(……やはり、優木沙々も駄目だったか)
疾患QB(まぁ、結末自体は予想通りだ……暁美ほむらの仲間になるという結末だけは)
疾患QB(それでいい。問題ない)
疾患QB(あんな脆弱な下等生物が一匹増えたところでこちらの勝利は揺らがない)
疾患QB(……く、くくく、くひひひひひひひ)
疾患QB(ああ、もう少し。もう少し)
疾患QB(あとほんの数日で、暁美ほむらと妖精も終わりだ)
疾患QB(最終兵器プラン……)
疾患QB(『ワルプルギス(魔女達)の歴史』が完成するんだからね――――)
761: 2014/08/23(土) 00:22:49.45 ID:DPdQquyP0
妖精さんメモ
『ほっぷすてっぷ洗面台』※オリジナル※
妖精さんが地底から脱出するためだけに作ってくれたアイテムです。外観は正に洗面台ですね。
その効力はこの洗面台の水で手を洗った人間を『もこもこ』に変え、特殊な空間を経由させる事で任意の場所に
移動させるというもの。妖精さんはその空間を生身で移動出来るようですが、人間は『もこもこ』にならないと
素粒子レベルでバラバラにされてしまうそうです。これだけ聞くと安全性に疑問を抱くかも知れませんが、
しかしそこは妖精さんアイテム。「ほどけたいなー」と思いながら通らない限り、大丈夫だそうです。
……ところで解けたいってどういう意味でしょうね? こっちの人間はそう思わない、とかなんとか……
そもそもこっちの人間の意味が――――(以下考察を殴り書きしている)
『ペーパークラフト生命体』※原作設定 メイドさんはオリジナル※
妖精さんテクノロジーの中で、飛び抜けて人を驚かせてくれるのがこのペーパークラフト生命体でしょう。
文字通り彼等は紙で出来ており、動力は輪ゴムとなっています。
しかしそれだけなら精巧なだけの、人間でも作れる図画工作。
妖精さんテクノロジーで生み出された彼等は、紙でありながら恒常性や新陳代謝機能を持ち、
搭載したスペックによっては自己増殖機能や世代交代・自然淘汰による進化すらも成し遂げる。
つまり妖精さんは人間では出来ない生命の創造を、有機物という枠すらすっぽ抜けたレベルで実現しているのです。
我が家のメイドさんはお手伝いとして生み出していただいたので、生物的機能の一部は持ち合わせておりません。
しかし自らの意思で考え、食事(何故か普通の食べ物で大丈夫だったりします)もし、睡眠や休息を必要とする。
そんな彼女達は誰がどう見ても生物であり、地球よりも重いと言われる命だと私は思っています。
『なんでも大百科』※オリジナル※
この世のあらゆる『できごと』『ものごと』の方から記載してくれる、究極の大百科です。
あまりにも情報量が多く、全てを記載した状態だととても持ち運べないサイズなので、検索した言葉が紙に映る
仕組みとなっています。
『できごと』『ものごと』自身が記載しているので事実をありのまま書いてあり、議論の予知のない真実を
知る事が出来る……と言いたいのですが、何分『ご本人』が書かれているので、他の『できごと』『ものごと』に
関する記載に関しては大雑把、或いは稀にですが事実と異なっていたりするのが難点です。
ちなみに検索した言葉が表示されているページを破壊すると、その『できごと』や『ものごと』が無かった事になります。
所謂歴史・法則の改変であり、とんでもない事のような気がしますが、妖精さんアイテムでは珍しいものではありませんね。
762: 2014/08/23(土) 00:24:55.08 ID:DPdQquyP0
『お悩み相談空間』※オリジナル※
妖精さんが私の悩みを解決しようと思い、作ってくれた特別な空間です。
並行世界に存在する自分を呼び込む事で、相談に乗ってくれる人を増やしてくれる……という、
実に妖精さん的な発想で成り立っています。ちなみに入る事は出来ても出口は存在せず、恐らくは
ちゃんと悩みを相談しないと外には出られない仕組みとなっているのでしょう。
残念ながらそれを確かめる前に定員オーバーで空間が壊れてしまい、調べる事が出来なくなってしまいました。
ちょっと残念。
『記憶ホームランバット』※オリジナル※
すっきり爽快! これで頭を一発殴れば脳髄と一緒に記憶が吹っ飛びます!
……初めてこのバットの説明書を見た時、使うのを躊躇ったのを今でも覚えています。
あの時は私もまだ妖精さんに慣れていませんでしたからねー
今では面倒臭い時、何かをもみ消したい時、憂さを晴らしたい時に重宝している、素敵なアイテムです♪
763: 2014/08/23(土) 00:26:43.66 ID:DPdQquyP0
『問答無用根こそぎ害虫ニュークリアボマー』※オリジナル※
ゴ■■■(ペンで塗り潰されている)……台所の黒い奴に困っていた私に、妖精さんが送ってくれた便利グッズです。
スイッチを押すとその瞬間大爆発。生命体だけに有効である特殊な爆風によって周囲300メートルのあらゆる害虫、
ついでに犬とか猫とかネズミとかアライグマとか人間とかを根こそぎ吹っ飛ばしてくれる最強防虫アイテムとなっています。
それだけだと単なる兵器なのですが、しかしそこは心優しい妖精さん。
あくまで吹っ飛ばすだけで、爆風を受けても氏ぬほど痛いだけで氏にはしない素敵仕様。
更に使用者とその身近な人を守るために爆弾の半径2メートルには効果が及ばないようになっています。
さぁ、皆さんもこの爆弾を使って清潔で安全な生活を送りましょう!
『でっかい蚊』※オリジナル※
とにかくでっかい蚊です。妖精さんのバイオテクノロジーによって生み出されました。
……あまり書く事ないです。血も吸わないですし……というかベースになったのがユスリカだし……
強いて言えば、見た目が気持ち悪い、でしょうか?
『筋力アップダンベル』※オリジナル※
ああ、筋肉が欲しい。だけどトレーニングは面倒臭い。
そんな時に便利なのがこのアイテム。なんと持つだけで、見た目は変わらないけど途轍もないパワーが身に着きます!
……と、筋トレ全否定の便利アイテムです。ダンベルなのに筋トレ不要とはこれ如何に。
まぁ、それが妖精さん的に面白かったのでしょう。
ちなみに具体的にどれぐらいパワーアップするかは分かりませんが、以前使った時は片手で大人のゾウを持ち上げる事が
出来ましたので参考までに。
818: 2014/09/22(月) 08:17:51.93 ID:kdRp0TYt0
えぴそーど にじゅうよん 【人間さん達と、わるぷるぎすのよる】
819: 2014/09/22(月) 08:19:54.31 ID:kdRp0TYt0
―――― 祈りの魔女の結界 ――――
エルザマリア(以下エルザ)【――――――――】
――――シュババババッ!
シャル「くっ! たくさんの触手が……いや、これは、使い魔!?」
まどか「だとしたら切ったりする訳にはいかないよ!」
まどか「だって私達は、あの人達を助けに来たのだから!」
シャル「でも攻撃が激し過ぎるわ!」
シャル「せめてあの使い魔の攻撃をどうにかしないと!」
さやか「どうすればあの魔女に、誰も傷付けずに近付けるんだ!!」
ほむら「そんな時はこれ」
ほむら「妖精さんアイテム『何時の間にかコード』~」テッテレー
シャル「はい、暁美さん。それはどのような道具なのかしら?」
ほむら「家電のコードって、気を付けて使っていても、何時の間にかぐっちゃぐちゃになってたりするじゃないですか」
まどか「はいはい。確かによくなってますねー」
ほむら「その原理を応用し、このコードをゆらゆら~と揺らす事で」
ほむら「ひも状の物体の誰もが持っている『あ~なんか絡みたい~』という気持ちを誘発」
ほむら「その結果!」
エルザ【私の使い魔達ががんじがらめのしっちゃかめっちゃかにーっ!?】
使い魔【タスケテゴシュジンサマー】
エルザ【キィヤアアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアア!?】
妖精さんA「つかいまさん、もみくちゃがおすき?」
妖精さんB「にんげんさんのてでもてあそばれたい」
妖精さんC「ゆびでころころされたいですなー」
妖精さんD「なにそれかちぐみやんけ」
エルザ「ギョエアアアアアアヘンナイキモノガワタシノアタマノウエニィィィィィ!?」
さやか「妖精さんのお陰で魔女も使い魔も正気に戻った!」
ほシャまさ「これにて一件落着!」
沙々「ほむら様凄い! ほむら様カッコいい!」<紙吹雪を撒いている
マミ「何この茶番」
……………
………
…
820: 2014/09/22(月) 08:22:11.84 ID:kdRp0TYt0
エルザ「助けてくれてありがとうございます……」キラキラ
まどか(美少女だ)
エルザ「狂っていた自分を正気に戻してくれただけでなく」キラキラ
さやか(正統派清純系美少女だ)
エルザ「人間だった頃の姿を、私の古い記憶から呼び起こし」キラキラ
シャル(見ていると心が洗われるような美少女だ)
エルザ「再び、人としての生を与えてくれるなんて……!」キラキラ
マミ(同性なのに見ていると涎が出てくる美少女だ)
エルザ「もしかしてあなたは、神の使いでは……!?」キラキラ
沙々(嫉妬心を覚えるよりも感動してしまうレベルの美少女だ)
ほむら「神様なんかより凄い妖精さんのお友達ですよー」
ほむら「まぁ、当の妖精さんは(電波がある外に出たので)今はいませんが」
ほむら「それより、これからどうされます?」
ほむら「妖精さんが私の頭の中にお帰りになる前に、世界の記憶とやらをお話したところ」
ほむら「あなたが魔女になったのは今から凡そ半年前との事」
ほむら「両親はご存命のようですし、帰宅してあげた方が宜しいのではないでしょうか?」
ほむら「多分、毎日眠れない日々を送っていると思いますよ?」
エルザ「はい……今すぐにでも、家族の元に帰りたいのが本心です……」キラキラ
ほむら「了解です。妖精さんに頼み、お家を探してもらいます」
ほむら「居なくなっていた半年間の事も妖精さんパワーで穏便かつ円滑に解決しましょう」
エルザ「何から何まですみません……」キラキラ
ほむら「んー、私は謝られるより、褒め称えられる方が好きなんですよねぇ」
エルザ「……ありがとうございます。何から何まで」キラキラ
ほむら「いえいえ♪」
821: 2014/09/22(月) 08:24:39.94 ID:kdRp0TYt0
杏子「うーす。そっちも終わったようだなー」
ゲルト「どもー」
旧べえ「やれやれ……」
まどか「あ、杏子ちゃん。ゲルトルートさんとキュゥべえも」
さやか「そっちも終わったみたいだねー」
杏子「ええ。魔女の結界が二つあったからって、二手に分かれて大丈夫なのかと心配しましたが……」
杏子「妖精さんのお陰でなんとかなりました」
杏子「そんな訳でさやか様、あたし頑張ったから頭なでなでしてください」
さやか「……まぁ、それぐらいならしてあげよう。うん」
杏子「えへへー♪」
シャル(……着実に飼いならされている気がするわ。双方とも)
ゲルト「えーっと、こちらが私達が……まぁ、やったのは妖精さんですが……人間に戻した、パトリシアさんです」
パトリシア「ど、どうも……」
シャル「あ、委員長」
パトリシア「?!」
さやか「え? 知り合い?」
シャル「いや、全然知らない人だけど……」
シャル「ただ、なんとなくそんな風に呼びたくなったので」
パトリシア「うう……ここでも委員長呼びだなんて……」
パトリシア「私、本当は保険委員なのに……」
さやか(あ、昔から委員長呼ばわりなんだ……)
まどか(保健委員……ちょっと親近感)
ほむら「えーっと、いいんちょさんはこれからどうされるおつもりですか?」
まどか(そしてほむらちゃん、保健委員さんと呼んであげるつもりはないのね)
822: 2014/09/22(月) 08:27:16.12 ID:kdRp0TYt0
ほむら「家族の元に帰りたいという事なら、妖精さんパワーでお家を探します」
ほむら「仮に……”帰りたくない”というのであれば」
ほむら「我が家の居候として迎え入れる事も出来ます」
ほむら「どうします?」
パトリシア「え、えと……どう、と言われましても……」
パトリシア「私、もう何年も前から魔女になってますし……家族の事とかよく思い出せないし……」
パトリシア「仮に帰るとしても、いきなり帰ると騒ぎが大きくなりそうですし……」
ほむら「ふむ。確かに」
ほむら「でしたら……一週間前後で、ご家族の元に帰すとしましょう」
まどか「? 一週間って、何かあるの?」
ほむら「実は頼んでいた妖精さんアイテムの完成が見えてきたのです」
シャル「それって、五十万人の妖精さんを導入して作ってるやつ?」
ほむら「いえーす! それさえ完成すればパトリシアさんがお家に帰っても大した騒ぎにはならない筈です!」
マミ「? どういう事?」
ほむら「それを言ったらサプライズになりません。なので秘密です」
ほむら「でも、まぁ、一言で言うなら……」
ほむら「あのアイテムが完成すれば、世界が変わります」
ほむら「魔法少女と魔女だけではない。人類の歴史が根底から覆るのです」
ほむら「その結果、世界はより良くなる」
ほむら「……と、良いなぁ」
シャル「うわっ、一気に信用出来なくなった……」
ほむら「ふふふ。もう手遅れです。私を始末しようとアイテムは問題なく完成するでしょう」
ほむら「最早インキュベーターが何をし、どんな結果を出そうと無駄です」
ほむら「勝利は既に我々の手の内にあるのですよ」
ゲルト「完全に悪人の台詞ですね、これ」
シャル「伏線と言うべきかフラグと言うべきか……」
まどか「悪ぶったほむらちゃんカッコいいなぁ」
さやか「お前はいい加減目を覚ませ」
823: 2014/09/22(月) 08:37:48.02 ID:kdRp0TYt0
ほむら「まぁ、連中をぎゃふんと言わるのもパトリシアさんをお家に帰すのも」
ほむら「全てはそのアイテムが完成してからです。それまでは今までと変わりません」
ほむら「当面は見滝原の魔女さんの安全を確保。余裕があれば風見野などの他の街にも行きましょう」
ほむら「他の魔法少女と交戦になるかも知れませんが、そうなったら妖精さんアイテムで捕獲しちゃいましょうか」
さやか「捕獲って……まぁ、捕獲した方が良いか」
マミ「簡単には説得出来ないでしょうからね……経験者は語らせてもらうわ……」
ほむら「まぁ、皆さん、今更そこらの魔法少女に負ける事もないでしょうし。交戦しても些末な問題ですよね」
シャル「……そう言えばさ、質問なんだけど」
ほむら「はい?」
シャル「グリーフシードから、人間に戻す事は出来ないの?」
シャル「グリーフシードってソウルジェムとかから穢れをある程度吸うと、また魔女が生まれるんだけど」
シャル「だったらグリーフシードを孵化させて魔女にしてから人間に戻せば」
シャル「魔女を倒されちゃっても、どうにかなりそうじゃない?」
シャル「今更だけど、それが出来れば急がなくても良いんじゃないかなーって思って」
ほむら「ああ、それは無理です」
シャル「……断言したわね」
ほむら「妖精さんが唯一出来ない事。それが氏者の蘇生ですから」
まどか「でも、なんで? グリーフシードって元々魔法少女の魂なんだし……」
ほむら「皆さんを人間に戻せたのは魂だけでなく、精神も残っていたから出来た事です」
ほむら「”専門家”の前でこういう事を話すのも難ですけど」
ほむら「妖精さん曰く、魔女というのはグリーフシード、或いはソウルジェムに留めておけなくなった精神のようですからね」
ほむら「”最初”の魔女さんは文字通り魔法少女の心及び絶望な訳ですが」
ほむら「そこに改めて注ぎ込んだ呪いが元の心と同じ訳ないじゃないですか」
ほむら「再度魔女さんを誕生させても、それは良く似た別人……」
ほむら「いえ、姿形以外別物と言っても良いでしょう。人間の身体を与えても『元に戻した』とは言えませんよ」
さやか「なら、尚更魔女退治を止めないとね……」
ほむら「そういう事です」
ほむら(……ただ、妖精さんが気になる事を言っていましたけどね。「たましいはごほんにんのですがー」って)
ほむら(そりゃそうでしょうけど、わざわざ言うってことは何かあるのかなー)
824: 2014/09/22(月) 08:41:01.22 ID:kdRp0TYt0
ほむら「……ところでさっきから悩んでいる様子ですが、何か意見でもありましたか?」
ほむら「キュゥべえさん」
旧べえ「……いや、意見というほどではないんだけど……」
旧べえ「何か、こう……忘れているような……」
ほむら「忘れるなら大した事ではないのでは?」
旧べえ「うーん……そう、なのかなぁ……割と重要な事だった気がするんだけど……」
ほむら「そうに違いありませんよ」
ほむら「――――さて」
ほむら「沙々さんが私達の……まぁ、メンツに加わり、三日が経ちました」
ほむら「学校も始まりましたので、放課後に魔女探しを行うようになりましたが……」
ほむら「一昨日はズライカさんとギーゼラさん、昨日はウアマンさんとイザベルさん」
ほむら「そして今日はエルザマリアさんとパトリシアさん。六名の救出と、かつてない大成果です」
沙々「流石ほむら様! よっ! 日本一!」
シャル「まぁ、今までサボり過ぎというか、ドタバタしていたと言うか……」
マミ「……ドタバタの原因ですみません……」
まどか「魔女探しの邪魔してごめんなさい……」
シャル「……ほじくり返してごめんなさい」
ほむら「はいはい、謝罪の連鎖は面白くないですから」
ほむら「この調子で見滝原の魔女さんを可能な限り人間に戻していくとしましょう」
ほむら「そりゃあれが完成すればその必要もないのですけど……魔法少女が魔女さんを倒しちゃうかもですし」
ほむら「魔女さんによる犠牲者も減らさないといけません」
ほむら「皆さん、ここからが正念場です!」
ほむら「魔女さんを、人間を、魔法少女を!」
ほむら「みーんなまとめて、楽しさで巻き込んでやりましょう!」
全員「おーっ!!」
旧べえ「……うーん……何を忘れているんだったかなぁ……?」
825: 2014/09/22(月) 08:43:27.99 ID:kdRp0TYt0
「暗証番号を入力してください……照合中……承認されました」
「システム起動。各部チェック……異常なし」
「感情エネルギー充填率97%」
「第二承認を要求……照合中……承認確認」
「第二起動シークエンス開始。各部署への起動申請開始」
「資源開発部への起動申請……承認」
「技術開発部への起動申請……承認」
「軍事部への起動申請……承認」
「政治部への起動申請……承認」
「女王への起動申請……承認」
「全部署の承認確認。第三起動シークエンスへと移行」
「各部封印を順次解除しています。第一封印解除まであと――――」
……………
………
…
826: 2014/09/22(月) 08:46:21.92 ID:kdRp0TYt0
―――― 三日後・ほむホーム ――――
妖精さん「いじょーで、けいかほうこくです?」
ほむら「……うん。ありがとうございます」
ほむら「説得が完了していない区画は、あと此処だけ……」
ほむら「立ち退く訳ではないのですから、もう少し協力してくれても良いのに」
妖精さん「みなさん、けっそくつよいですからなー。よそものははぶにするです?」
ほむら「結束と言うか融合じゃないですかねぇ……まぁ、良いです」
ほむら「そこの説得を終えたら、どれぐらいで起動出来ますか?」
妖精さん「にじかんぐらいでは?」
ほむら「頑張って一時間にしてください」
妖精さん「あひーん。にんげんさんののるま、おきびしー」
ほむら「流石に私が現場で指揮を執りますよ。無駄を……適度に省けば、行程を半減出来るでしょうから」
ほむら「説得は今日中に終わりそうですか?」
妖精さん「あとひとおしってかんじ」
妖精さん「けっそくつよいので、くうきよまぬのはきらわれますし?」
ほむら「でしたら今日は私も行くとしましょう。そんでもって、今日中に完成させます」
ほむら「妖精さん、残った区画に案内してもらえますか?」
妖精さん「それではまずぼーごふく、よういせねばですな」
ほむら「ああ、そう言えば交渉現場は危険地帯でもありましたね……お願いします」
妖精さん「おっまかせー」テテテ・・・
シャル「おふぁよー……」
ほむら「あ、シャルロッテさん。おはようございます……今日は随分と早いお目覚めですね」
シャル「アンタと妖精さんの話し声が聞こえたからね」
827: 2014/09/22(月) 08:48:24.24 ID:kdRp0TYt0
シャル「それで? どっか出掛けるつもりなの?」
ほむら「ええ」
ほむら「事ある毎に言ってきましたが、妖精さんを総動員して作っているアイテムがありましたよね?」
ほむら「どうやらアレの完成が間近らしいので、私が現場指揮を執ろうと思いまして」
ほむら「ここまでやればほっといても大丈夫かと思いますが、すんなり出来ればそれに越した事はありませんからね」
シャル「すんなりいかない前提なのね」
ほむら「すんなりいく訳がないでしょう?」
シャル「それもそっか」
妖精さん「にんげんさーん、ごよういでけたー」
ほむら「あ、はーい! 今行きまーす」
ほむら「そんな訳ですので、ちょっと行ってきます」
ほむら「出来れば午前中には帰りたいですけど、そう思惑通りにいくとも思えません」
ほむら「学校は休ませてもらいます」
シャル「あいあい……って、休むつもりなら私服で行けばいいじゃん。なんで制服着たままなの?」
ほむら「いや、万一汚れたら困りますし」
シャル「アンタの中で制服は汚れてもいい服なんかい……」
ほむら「割とみんなそんな感じに着ていると思いますけどねぇ……話を戻しますけど」
ほむら「もう出ないと行けませんから、お弁当を作っている時間はありません」
ほむら「お昼は申し訳ありませんが、コンビニで買ってください」
シャル「ん。分かった。朝も適当に冷蔵庫漁って良いわよね?」
ほむら「それでお願いします。晩ご飯は……作業が終わらなくても、一度こっちに帰って支度しますね」
ほむら「では、いってきます」
シャル「いってらっしゃーい」
――――とたとた
シャル「……行った、わね。行ったと言っても家の中のドアを潜っただけなんだけど」
シャル「アレって以前、ほむらが入る手順を間違えて家を爆破した時のドアなのよねぇ」
シャル(で、その危険なドアはほむらと妖精さん以外立ち入り禁止で)
シャル(尚且つ五十万人の妖精さんが働いている現場につながっている、と)
828: 2014/09/22(月) 08:53:47.10 ID:kdRp0TYt0
シャル(しっかし、まぁ……アイツは妖精さんに何を作らせているのかしら)
シャル(完成したら世界が変わるらしいけど……)
シャル(あれ? でもあれって、地球をインキュベーターにとって無価値に変えるアイテムって前に言ってたわよね?)
シャル(そりゃ、今まで地球を支配していたインキュベーターが居なくなったら世界が変わったと言えるけど……)
シャル(……そもそもアイツは、どうやってインキュベーターを追い払うつもり?)
シャル(ハッキリしているのは武力じゃない、面白おかしい方法って事)
シャル(それ以外なら割となんでもありだから、想像しようがないんだけど)
シャル(しかも妖精さんを五十万人も動員し、半月以上掛けて準備するほど大規模な――――)
シャル(いや、待って)
シャル(そもそもそのアイテム、何処で作ってるの?)
シャル(エリーちゃんの壊れたパソコンは、しっかり第三者に見られている)
シャル(と言うより、妖精さんアイテムは魔女や使い魔、結界やキュゥべえと違い、誰にでも見えている)
シャル(だったらなんで、五十万人の妖精さんが今も作っているアイテムは誰にも見つからない?)
シャル(インキュベーターはなんだかんだ妖精さんを警戒しているみたいだし)
シャル(妖精さんアイテムが半月も掛けて作られていたら、妨害工作ぐらいしてきそうなものよね)
シャル(なのに何もしないって事は、まだ見つかっていない? 五十万人でえっさほいさと作っている物が?)
シャル(……考えろ。妖精さんは一見出鱈目で、実際思っている以上に出鱈目だけど)
シャル(出鱈目なりに筋道を通している)
シャル(誰にも見つからず、世界を変えるアイテムを仕掛けられる場所は――――)
シャル「って、そんなの分かるかーっ!」
杏子「朝から元気だなぁ、お前」
シャル「へ? あ、ああ、佐倉さん、おはよう」
杏子「はよー」
829: 2014/09/22(月) 08:56:07.44 ID:kdRp0TYt0
杏子「で? なんでそんなに元気なんだ?」
シャル「元気と言うか、ちょっと知的な遊びに興じていただけよ。ちなみに負けたわ」
杏子「誰にだよ……」
ゲルト「おはようございます。皆さん、今日は早いですね」
シャル「ゲルトちゃん、おはよ」
杏子「よー。他の連中は?」
ゲルト「エルザマリアさん達ですか? 皆さんまだ寝ていますよ。昨日は大騒ぎでしたから、疲れたみたいです」
シャル「あー、そういやそうだったわね……最近体験した騒ぎの規模が大き過ぎて感覚が可笑しくなってるわ」
杏子「妖精さんを巻きこんでガチの戦争だったもんなぁ……」
ゲルト「結局どっちが勝ったんでしたっけ……」
シャル「……あまり思い出したくないわ」
ゲルト「……時に、暁美さんは?」
杏子「ああ、そういや居ないね」
シャル「用があって出掛けたわ。帰りは、今日中の予定」
ゲルト「つまり学校はお休み、と」
ゲルト「あの人、出席日数大丈夫なんですかね……」
シャル「ダメな時は多分妖精さんパワーでなんやなんやする気がする」
ゲルト「なんやなんや……しそうですね」
杏子「まぁ、今日に関しては気にしなくて良さそうだけどなー」
シャル「? どゆこと?」
杏子「ほれ、テレビ見てみなよ」
テレビ【現在××県、○○県全域に避難指示が発令されています。該当地域にお住まいの方は近くの避難所に避難を……】
シャル「……××県って、見滝原がある県じゃん。避難指示?」
杏子「なんか台風が来るみたい」
シャル「ふーん。随分と季節外れな台風ね」
ゲルト「いや、台風じゃなくてスーパーセルってテロップに……まぁ、良いですけど」
830: 2014/09/22(月) 09:03:24.05 ID:kdRp0TYt0
ゲルト「それで、どうします? テレビを見る限り、大きな被害を出しかねないようですけど」
シャル「んー……間違いなく避難所よりもこの家の方が安全でしょうけど……」
シャル「鹿目さん達は避難所に行くだろうし、どうせならみんなでわいわいしたいから」
シャル「家の事はメイドさんに任せて、私らは避難所に遊びに行きましょうか」
ゲルト(限りなく不謹慎な発言ですけど、家の耐久値としては確かにそんな気分)
杏子「じゃあ、なんか持ってくか? トランプとか」
シャル「ボードゲームと花札も持っていきましょ」
ゲルト「いや、曲がりなりにも避難なんですから文庫本ぐらいにしておきましょうよ……」
――――チャラララチャッララランラ
シャル「おう? 私の(妖精さん製)携帯が」
シャル「はい、もしもし?」
まどか【あ、シャルロッテさん? まどかです】
シャル「ああ、鹿目さん。どうしたの?」
まどか【あの、実はほむらちゃんに話があって……】
まどか【でもいくら電話を掛けてもつながらないから】
シャル「こっちに掛けてきた、と」
シャル「悪いけど、ほむらの奴はさっき出掛けちゃったわ。多分通話出来ないぐらい遠くに」
シャル「午前中に帰ってくるつもりとは言ってたけど」
まどか【そうなんですか……うーん、どうしよう……】
シャル「何か緊急の用事?」
まどか【え? あ、そんな緊急ってほどじゃ】
まどか【居なくても大丈夫ですけど、でもほむらちゃんが居たら心強かったと言いますか】
シャル「いや、アイツが居たら心強いじゃ済まないと思うんだけど」
まどか【……それならそれで良いんじゃないかな。平和、だし】
シャル「ちょっと言い淀んだわね」
シャル「で? 結局要件ってなんなの?」
まどか【えーっと、実はキュゥべえ、あ、仲間になってくれた方の子からの伝言で……】
シャル「キュゥべえから?」
まどか【はい】
831: 2014/09/22(月) 09:04:00.69 ID:kdRp0TYt0
まどか【ワルプルギスの夜が出現した、との事です】
832: 2014/09/22(月) 09:09:48.82 ID:kdRp0TYt0
……………
………
…
沙々「……いや、まぁ、ぐっすり寝ていましたよ?」
沙々「でもそれってつまりわたしに反対する暇がなかった訳で」
沙々「つーか魔法が危険で犯罪臭いって理由で没収された今のわたしは文字通り一般人ですよ?」
沙々「戦力どころか完全に足手まといのお荷物な訳でして」
杏子「ぐちぐち言ってないでハッキリ言えよー」
沙々「じゃあ、そうします」
沙々「――――なんでわたしもワルプルギス戦に参加させられてるんですかぁぁぁぁぁぁぁ!?」
沙々「他の魔女ズはみんなお家でお留守番なのに! 何故わたしだけ!?」
杏子「お前、監視しとかないと絶対ろくな事しないだろ? ほむら、家に居ないし」
沙々「わたしあの人が視界に居ないと逆に精神不安定になるんですけどぉ!? つか今まさにそんな状態だし!」
ゲルト「その不安定な精神で何かされても困りますからね」
沙々「だったら家に閉じ込めておけばいいじゃないですか!? 連れて回るってアグレッシブ過ぎでしょ!?」
ゲルト「え? 閉じ込められたいのですか? もしかして、M?」
沙々「最強最悪の魔女と戦うぐらいならその方がマシって話です!」
まどか「ほ、ほむらちゃんの家に監禁なんて……は、破廉恥だよぅ……///」
沙々「監禁って本当は破廉恥なもんじゃないですからね!? あとなんで嬉しそうなんだ!?」
巨大さやか『まどかは相変わらずほむら大好きだなー』
沙々「大好きで済むの!? つーかでかっ!? 100メートルぐらいあるし!? あと黒い!」
833: 2014/09/22(月) 09:13:16.18 ID:kdRp0TYt0
巨大さやか『ん? ああ、沙々っちにはまだ見せていなかったっけ?』
巨大さやか『これが一応、あたしのフルパワーモード』
巨大さやか『ちなみに腕からスペシウムな光線が撃てます』
沙々「光の巨人!?」
まどか「あ、ちなみに私も今日はフルパワーモードだよ」
まどか「射撃特化だけど、多分さやかちゃん5人分ぐらいの力はあるんじゃないかな」
沙々「あれの五倍!?」
杏子「あたしはぶっちゃけ抜け殻みたいなもんだからなー」
杏子「精々普通の魔法少女10人分の力しかないよ」
沙々「十分過ぎますよね!? それ十分過ぎますよね!?」
マミ「そうよ、佐倉さん。あなたの力は十分頼りになるじゃない」
マミ「私達なんて魔法が撃ち放題ってぐらいしか長所ないし」
ゲルト「ですよねぇ」
沙々「だから十分強いって言ってんだろゴラァ!」
沙々「なんだよこの戦えなきゃ役立たずみたいな雰囲気! わたしをハブしてんのかああん!?」
シャル「……すみません」
沙々「え」
シャル「無力ですみません……役立たずです……」
沙々「え、いや、アンタ魔法使えるし……」
シャル「私、近接戦闘タイプ。さやかとか佐倉さんも、近接タイプ」
沙々「ぁ(察し)」
シャル「遠距離攻撃は……お菓子を投げつけます……」
沙々「……………」
沙々「……その……」
沙々「な、仲間ダヨ?」
シャル「同情すんなああああああああああああああああああ!」
沙々「コイツめんどくせええええええええええええええええ!」
旧べえ「……真面目にやってよ……」
834: 2014/09/22(月) 09:16:31.82 ID:kdRp0TYt0
巨大さやか『いや、実際問題相手の強さが分からないからいまいち真面目になれないんだよねぇ』
旧べえ「それは、そうかも知れないけど、だとしても気が緩み過ぎだと思わないかい?」
旧べえ「というか上条恭介はどうした」
旧べえ「聞いた話だとそこそこ力があるらしいから、可能なら彼も戦力に加えたいと伝えた筈だけど」
巨大さやか『中沢といちゃついてこっちの話を聞かなくてムカついたから、巨大化して踏み潰しといた。あと埋めといた』
旧べえ「……さいですか」
ゲルト「暁美さん、あの人達の事、結局今の今までほったらかしですからね……グッド」
杏子「ぶれないな、お前」
まどか「……それで、ワルプルギスの夜って結局どんな魔女なの?」
杏子「あ、話題戻すんだ」
まどか「いや、この話題は流石にやりっぱなしには出来ないから……」
マミ「ワルプルギスの夜に関しては、私も噂でしか聞いた事がないわね」
マミ「さっき優木さんが言っていたように、最強最悪の魔女らしいけど……」
旧べえ「僕も実際に顕在化した瞬間を見た訳ではないけど」
旧べえ「まず、非常に巨大だ」
巨大さやか『ふむふむ』
旧べえ「一度この世に実体化すれば、数千人が犠牲になると言われている」
まどか「そんな!」
旧べえ「……当然その力も強大で、並の魔法少女では歯が立たない」
杏子「へっ、やりがいがあるじゃん」
旧べえ「……それで、えーっと……魔女だからいくらでも魔法が使える」
マミ「当然ね」
ゲルト「でしょうね」
旧べえ「……えーっと、えーっと……」
シャル「つーかさ、ぶっちゃけ鹿目さんで倒せないの?」
旧べえ「……ぶっちゃけ倒せるんじゃないかなー、多分一撃で」
全員「じゃあ余裕じゃん」
835: 2014/09/22(月) 09:18:25.49 ID:kdRp0TYt0
まどか「魔法が封じられていなければ私、地球を滅ぼせちゃうし」
巨大さやか『時間的に余裕があったから、あたしも最強モードに変身出来たし』
マミ「魔法使いたい放題だから何も考えずに全力出せるし」
杏子「いざとなったら天使の奇跡でなんとか出来るし」
旧べえ「……あれぇ……わ、ワルプル戦ってこんなんじゃ……あれぇ……?」
シャル「楽勝なら良いじゃない」
杏子「むしろ倒さないように気を遣わなきゃなぁ」
巨大さやか『まどか、気を付けなよ?』
まどか「その言葉そっくりそのままお返しするよ、さやかちゃん」
ゲルト「作戦としては弱らせたところを私と巴さんの魔法で拘束。暁美さんが帰ってくるまで抑えておく、ですかね」
マミ「そうね。まぁ、魔法が封じられてなければどうとでもなるでしょ」
沙々「なんなのこの化け物集団……って、向こうの雲、なんか変じゃありませんかぁ?」
まどか「え? 雲……」
まどか「!」
ゲルト「……いえ、あれは雲じゃない……視認出来るほど強大な、魔力の塊です!」
巨大さやか『つまり、あの向こうにその魔力を出してる奴がいると』
マミ「そしてそれだけ巨大な魔力を生み出せる存在と言ったら……」
杏子「此処に居るメンツを除けば、『一人』だけだな」
シャル「……来るわ」
836: 2014/09/22(月) 09:19:49.70 ID:kdRp0TYt0
マミ「みたい、ね――――さっさと終わらせて、お茶会といきましょう!」
⑤
旧べえ「確かに。ゆまも待たせているし、早く片付ける事に異論はないね」
④
杏子「そんじゃあ、いっちょやりますか!」
まどか「うんっ!」
②
ゲルト「……あれ?」
□
シャル「ちょっと待って……なんか、様子が――――」
氏
837: 2014/09/22(月) 09:23:10.67 ID:kdRp0TYt0
マミ「!? な、何、この魔力……!?」
氏ね呪われろ
杏子「おい、どうなってんだよ!?」
氏ね消えろ呪われろ氏ね見るな黙れゲルト「な、なんなの、なんなんですかアレ……!?」
氏ね消えろどうして黙れ氏ね失せろ潰れろわたし見るな頃す氏ねこんな馬鹿氏ね頃す氏ね邪魔氏ね
事に氏ね頃す呪う呪うなって頃す氏ねなんで気持ち悪いどうして氏ねクズ氏ね呪ってやる氏ね氏ね
巨大さやか『ちょっと、まどか一人で楽勝な相手じゃなかったの!?』
嫌だ氏ねこんな氏ね頃す氏ね場所氏ね呪ってやる怖い氏ねキモいシネ消えろ氏ね呪ってやる氏ね氏ね頃す氏氏ね
氏ね誰か氏ね氏氏頃す氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね頃す頃す頃す氏ね頃す氏ねお願い殺氏ね氏ね頃す氏ね氏ね氏ね氏ね
旧べえ「馬鹿な……こんな、こんな事が……!?」
氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね
氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏
氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね
氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏
まどか「く、る――――」
氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏氏
838: 2014/09/22(月) 10:16:38.28 ID:kdRp0TYt0
―――― たす氏て ――――
839: 2014/09/22(月) 10:18:10.47 ID:kdRp0TYt0
――――黒い感情。呪いの濁流。殺意の形。
――――全てが、初めて経験するものでした。私が、世界を滅ぼす魔女になった時よりもずっと強い”力”でした。
――――未体験の力の塊は雲……そう見えていた、或いは無意識にそう思おうとしていた黒い魔力の向こうから感じます。
――――願わくば、晴れないで欲しい。
――――この期に及んでそう思ってしまうほど圧倒的な力は、私達の願いを聞き入れてはくれず。
――――魔力の塊はやがて霧のように消え、そして、それが姿を現したのです。
―――― 巨大な、グリーフシードが ――――
857: 2014/09/24(水) 19:23:12.97 ID:iaPx5EvQ0
えぴそーど にじゅうご 【ほむらさんと、むてきのともだち】
858: 2014/09/24(水) 19:26:54.64 ID:iaPx5EvQ0
まどか「な、何……なんなんですか、アレ……!?」
マミ「何処からどう見ても、その……グリーフシードだけど……」
ゲルト「ちょっと大き過ぎますよね……」
巨大さやか『パッと見、あたしの何倍もあるみたいなんだけど……』
杏子「デカいだけならまだ良かったんですけどねぇ……」
シャル「で、出鱈目過ぎる魔力だわ……!」
シャル「鹿目さんの比じゃない……あんな魔力、そんな、あり得な……」
シャル「!?」
――――ゴオッ!!
杏子「ぐあっ!? こ、攻撃か!?」
ゲルト「風とか、衝撃波の類……?」
マミ「違う! これは……魔力……」
マミ「魔法という形にしなくても物理的干渉力を持つほどの、圧倒的出力の魔力だわ!」
沙々「」ゴロゴロゴロー
まどか「あ、沙々さんが魔力の余波で吹っ飛ばされてる」
巨大さやか『ああ、なんかあのグリーフシードが現れた瞬間気絶してたね』
シャル「プレッシャーに耐えられないとか、マジで小物だったわね……」
巨大さやか『助け……なくても良いか』
巨大さやか(この状況だと、ここに居るより遠くに吹っ飛ばされた方が安全だろうからね……)
マミ「キュゥべえ! あれがワルプルギスの夜なの!?」
巨大さやか『どう考えてもあたしらで楽勝な相手じゃないよね、アレ……』
まどか「一体どういう――――」
旧べえ「……馬鹿、な……そんな、馬鹿な……」
まどか「――――キュゥ、べえ……?」
859: 2014/09/24(水) 19:27:54.60 ID:iaPx5EvQ0
旧べえ「あり得ない、あり得る筈がない。こんな、だって、それは……」
旧べえ「それは、最終兵器プランだった筈だ!」
旧べえ「こんな一辺境惑星の、ましてやたった一種族を根絶やしにするために動員するものじゃない!」
旧べえ「段階を飛ばし過ぎている! たった数隻の艦隊が潰されただけでこれを動員するなんて馬鹿げている!」
マミ「ど、どうしたのキュゥべえ!? 何か分かったの!?」
旧べえ「分かるも何もあれは――――」
「全く。精神疾患を患うと冷静さというものを損なうから嫌だね」
まどか「!? こ、この声は――――」
シャル「……キュゥべえ……と言っても、仲間になった奴が此処にいる以上」
巨大さやか『またアンタか、ってやつだね』
疾患QB「そういう事さ」スッ
杏子「っ!」チャキッ
疾患QB「おっと、その物騒な物はしまってほしいものだね」
疾患QB「以前も言ったけど、今はボディのスペアがないから潰されると色々面倒なんだよ」
疾患QB「ま、僕の話を聞きたくないのなら、それも構わないけどね。所詮”これ”は端末なんだし」
860: 2014/09/24(水) 19:30:57.23 ID:iaPx5EvQ0
マミ「……佐倉さん」
杏子「ちっ……分かったよ」
疾患QB「やれやれ。やっと落ち着いて話が出来る」
疾患QB「暁美ほむらは存在自体が腹立たしいが、彼女の冷静さだけは評価に値するよね」
疾患QB「君達みたいに、感情で行動を起こすような原始的生物を見ているとさ」
杏子「御託はいい……目的はなんだ」
疾患QB「何って、前と同じだよ。君達の散り際を、今度こそ見に来たのさ」
疾患QB「まぁ、前回と違って暁美ほむらがこの場に居ないのは、こちらとしても予定外だったけどね」
疾患QB「何しろ今回の攻撃目標は君達じゃなくて、暁美ほむらと妖精なのだから」
シャル「……!」
疾患QB「しかし弱ったなぁ。直接的な識別が出来ないからなんとも言えないけど」
疾患QB「観測結果からの推測では、妖精は常に暁美ほむらの傍に現れているようだから」
疾患QB「彼女がこの場に居ないのなら、きっと妖精も居ないのだろう」
疾患QB「わざわざ探すのも面倒だし、彼女達が何処に居るのか教えてもらえないかい?」
疾患QB「そうしたら、今回は君達に手を出さないからさ」
まどか「ふざけないで! ほむらちゃんを売るなんて真似、出来る訳ないでしょ!?」
シャル「まぁ、アイツの事だから売ったところでへらへらしながら切り抜けそうだけど」
シャル「生憎私達の誰もアイツの居場所を知らないし」
シャル「何より、アンタのメリットになる事をするなんて反吐が出るわ」
巨大さやか『それに今まで何度も邪魔してきたあたしらを放置する気なんてないんでしょ。今回は、なんて言ってるし』
巨大さやか『いくらあたしが馬鹿でも、それぐらいは想像付くっての』
疾患QB「そうかい。残念だね」
疾患QB「ま、そういう事なら遠慮なく君達も排除させてもらうとしよう」
疾患QB「”ワルプルギスの歴史”を使ってね」
ゲルト「ワルプルギスの歴史ってのは、あの巨大なグリーフシードの事ですね……」
疾患QB「そうさ。本来この町を襲撃したであろう”ワルプルギスの夜”とは、別物と言っていい」
疾患QB「それに”ワルプルギスの歴史”というのは僕達が使用しているコードネームだし」
疾患QB「単純にワルプルギス(魔女達)と呼称する方が本質を言い表しているだろうね」
疾患QB「っと、御託が長くなってしまったか。そろそろ――――」
シャル「悪いけど、先手は譲らないわ」
861: 2014/09/24(水) 19:33:45.34 ID:iaPx5EvQ0
シャル「さやか!」
巨大さやか『おう! 先手必勝!』
巨大さやか『スペシウムっぽいビーム……フルパワー!!』
―――― ビガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア ――――
まどか「さ、さやかちゃんの腕から、青白い光が……!」
マミ「前が見えない……!」
ゲルト「これが、美樹さんの本気……す、凄まじい力です……!」
杏子「流石さやか様だ! あの巨大なワルプルギスを飲み込むほどの光を発射するなんて!」
疾患QB「ふむ。流石は妖精のテクノロジーによって改造された身だと誉めるべきか」
疾患QB「あんな威力の光線、以前僕達が関与して生まれさせた鹿目まどかの魔女でも、直撃を受けたら倒されかねないね」
疾患QB「しかし、魔女を救い出すのが君達の目的だったんじゃないのかい?」
シャル「……感情を持ってないのなら、意味のない質問をするんじゃないわよ」
シャル「アンタに言われるまでもなく、私も……躊躇わずにやったさやかにも、分かってるんだから」
疾患QB「――――成程。一理ある」
巨大さやか『だ、駄目、だ……!』
杏子「さやか、様……?」
巨大さやか『コイツ……対峙した時から何となく思っていたし』
巨大さやか『ぶっちゃけ怯ませられたらいいなぁーぐらいな気持ちでの攻撃だったけどさぁ……』
巨大さやか『全然効いてないってのは、流石に想定外っ!!』
全員「!?」
ワルプルギス(WP)【――――■■■■■■■■■■■!!】
――――カッ!
巨大さやか『っ!? あ、あたしの光線が押し返され……ぐああああああああああああっ!?』
杏子「さ、さやか様ぁ!?」
マミ「う、嘘!? あの攻撃を受けて無事なだけじゃなくて、一瞬で押し返すなんて……!?」
まどか「私でも難しそうなのに……!」
862: 2014/09/24(水) 19:35:17.05 ID:iaPx5EvQ0
疾患QB「やれやれ。今ので無駄だと分かってくれればいいんだけどね」
疾患QB「ワルプルギスに君達は勝てない」
疾患QB「個である限り、それは決して覆せない不変の定理さ」
マミ「……どういう意味?」
疾患QB「僕の口から語るより、そっちのインキュベーターから聞いた方が君達は信頼出来るんじゃないかな?」
疾患QB「ワルプルギスは止めといてあげるから、じっくり話を聞いておくといい」
疾患QB「その上で、再度選択させてあげよう。僕達に降伏するかどうかをね」
疾患QB「ま、今の彼がちゃんと話せる”精神状態”かは甚だ疑問だけど」
マミ「え……?」
旧べえ「……」ガタガタ
シャル「ちょっと、何震えてんのよアンタ……」
旧べえ「……駄目だ……勝てる訳がない……」
旧べえ「あれは……僕達の、我々の最終兵器なんだ……」
旧べえ「この宇宙に、アレを倒せる者なんて存在しない……!」
マミ「どういう、事……?」
863: 2014/09/24(水) 19:44:07.54 ID:iaPx5EvQ0
旧べえ「……君達は、何故僕達がグリーフシードを回収しているか知っているかい?」
シャル「それは……確か、そのままだと危険だから……?」
シャル(……危険だから、何が問題なのかしら……コイツらは人間の事をエネルギー源としか思っていない筈)
シャル(絶対に人類の身を案じてはいない)
シャル(それにグリーフシードを回収しなければ、魔法少女は危険な物を身近に置くことになる)
シャル(精神的負担は大きくなり、魔女化を促せる筈)
シャル(……つまり、回収した方が自分達の益になるから、という事ね)
マミ「……あなた達に、メリットがある?」
旧べえ「そう……その一つが、エネルギーの回収」
旧べえ「ソウルジェムから発生した穢れも、希望と絶望の相転移反応ほどではないけど感情エネルギーとして使える」
旧べえ「また、グリーフシードは周囲の呪いや負の感情を吸収し、再度魔女として孵化するためのエネルギー」
旧べえ「つまり絶望の感情エネルギーとして蓄える性質を持つ」
旧べえ「だからこそグリーフシードにソウルジェムの穢れを吸わせる事が可能であり」
旧べえ「グリーフシードは適当に置いておくだけで、魔女として孵化する危険物なんだ」
旧べえ「とは言え一度空になったグリーフシードが孵化するために必要な呪いを、ソウルジェム以外で集めようとしたら」
旧べえ「日本のような豊かな国なら数十年、紛争地帯のような負の感情溢れる環境でも十年以上の歳月が必要だ」
旧べえ「しかも生きているだけで魔力を消耗する関係上、魔法少女はグリーフシードを遅くても一月ペースで消費するし」
旧べえ「大抵の魔法少女は、一年以上生きてはいられない。十年も生きていられたのは数えるほどだ」
旧べえ「だからこれは、不本意な言い方になるけど君達が”知らなくても問題無い”話なんだ。本当にね」
シャル「お得意の嘘じゃないって訳ね」
杏子「……それがどうつながるのさ」
旧べえ「立場が変われば見方も変わる。君達にとっては重要でなくとも、僕達にとっては重要という事だ」
864: 2014/09/24(水) 19:48:31.55 ID:iaPx5EvQ0
旧べえ「実を言えば僕達は全く感情がない訳じゃない……本当に無かったら、そもそも疾患なんて存在しないし、
感情からエネルギーを取り出す技術なんて開発出来る訳がない」
旧べえ「ほんの僅かな感情。自覚出来ない程度だけど他人を恨むし、不快にも思う」
旧べえ「契約が成功すれば喜ぶし、魔法少女が魔女化すれば達成感もある」
旧べえ「僕たちは、感情の有無を行動選択の影響で判別しているだけなんだ」
旧べえ「”感情的行動”をしないのなら感情を持っていない、という具合にね」
旧べえ「宇宙の他の知的生命体も同様だ。感情を持たない、というのは程度の話に過ぎない」
旧べえ「宇宙全体で産まれる呪いの総量は、ハッキリ言って地球の比ではない」
旧べえ「ここでグリーフシードの、周囲の呪いを吸収する性質が役に立つ」
旧べえ「それら宇宙全ての呪いもグリーフシードに吸わせれば、エネルギーとして使えるんだ」
旧べえ「勿論単独では出力不足だけど、幸いにもグリーフシードは」
旧べえ「数をそろえる事が出来る。魔法少女からだけでなく、使い魔からも生まれるからね」
旧べえ「だから、僕達は”全て”のグリーフシードを確保しているんだ。重要な、エネルギー源とするために」
旧べえ「……メリット2が生じたのは、ワルプルギスの夜が出現してからだ」
まどか「ワルプルギスの夜が……?」
旧べえ「ワルプルギスの夜は、他の魔女を吸収し、自らの力にする性質があった……」
シャル「つまり、魔女を吸収するほど強くなる訳ね……お約束っちゃお約束なのかしら」
旧べえ「勿論、それだけなら特別視する理由はない。倒して、確保したグリーフシードを利用するだけだ」
旧べえ「だけど……それ以外の用途を、僕達は見つけてしまった」
ゲルト「用途?」
杏子「電池以外にどんな使い道があるってんだ?」
マミ「……まさか……兵器?」
まどか「え? 兵器って……」
旧べえ「……そのまさかだよ」
まどか「!?」
865: 2014/09/24(水) 19:52:58.98 ID:iaPx5EvQ0
まどか「ど、どういう事!?」
シャル「……グリーフシードを吸収させればさせるほど、ワルプルギスの夜は強くなる」
シャル「こいつ等の科学力を考えると、ちょっとやそっと強くなっても使えないでしょうけど」
シャル「でも、今までに貯め込んだグリーフシードを全て注ぎ込めば」
シャル「十万年以上かけて貯めた、何百万……いえ、数百億にも上るであろうグリーフシードを使えば」
シャル「――――何物にも負けない、最強の魔女が完成する」
疾患QB「その通り。よく出来ました」
疾患QB「しかも呪いによって動くからわざわざエネルギーを用意しなくて良いし」
疾患QB「暴走したとしても僕らは魔力を無効化する技術も持っている。コントロールは容易だ」
疾患QB「兵器として、これ以上ないほど理想的な存在だとは思わないかい?」
まどか「ひ、酷い……みんなを燃料しただけじゃなくて、兵器にまでするなんて……!」
まどか「こんなの、許せない!」
疾患QB「可笑しな事を言うね。人間は、骨の髄までしゃぶり尽くす事こそが資源に対する供養になると思っているんだろう?」
疾患QB「なら、僕のしている事は魔法少女の供養じゃないか」
疾患QB「こんなにも君達に対し理解ある行動を取っているのだから、君達も僕らを理解しようと努力してほしいものだよ」ケタケタ
まどか「こ、の……!」
旧べえ「し、しかし、可笑しいじゃないか!」
旧べえ「無数のグリーフシードは今や、僕達の文明を支える重要なエネルギー源の一つだ!」
旧べえ「宇宙の延命には足りなくとも、文明を保持するためには最早欠かせない!」
旧べえ「全てを終えた後もう一度燃料に出来るとはいえ、使用中は文明の一部機能を停止せざるを得ない筈だ!」
旧べえ「その全てをこうして辺境惑星の攻撃に使用するなんて、常軌を逸している判断じゃないか!」
旧べえ「何故本星はアレの使用許可を出したんだ! 訳が分からない!」
疾患QB「……本当にそう思うかい?」
疾患QB「君にとって妖精は、その程度の存在なのかい?」
旧べえ「……!」
杏子「……どういう意味だ」
866: 2014/09/24(水) 19:55:33.17 ID:iaPx5EvQ0
疾患QB「どのような理論に基づいてかは分からないが、妖精は僕達に精神疾患」
疾患QB「具体的には、感情の肥大化を引き起こす技術を持っている」
疾患QB「合理性によって成り立つ僕達の社会において、感情保有個体の増加は文明崩壊をも起こす危険要素だ」
疾患QB「そして曲がりなりにも知的生命体となってしまった僕達に、最早文明の庇護のない生活は送れない」
疾患QB「文明の後退は、そのまま種としての後退を意味する」
疾患QB「……早い話、妖精は僕達を滅ぼしかねない存在という訳だ」
疾患QB「確かに僕達に感情はない。個体レベルでの生き氏にの概念も理解出来ない」
疾患QB「しかし社会性生物であるがために、種の存続に対しては君達以上に敏感だ」
疾患QB「もう手は抜かない。全力を持って僕達の繁栄の障害となり得る……いや、”障害である”妖精を排除する」
疾患QB「これは、そのための戦争だよ。最終兵器が運用されるのは当然じゃないか」
まどか「戦、争……」
シャル「話が長い。保身のために妖精さんと全力で戦うとだけ言えば十分じゃない」
疾患QB「ふむ、確かにそうだ。それだけ分かってくれれば十分だ」
疾患QB「……さて、同じ事を二度も言うのは癪だが、もう一度尋ねよう」
疾患QB「暁美ほむらと妖精の場所を教えてほしい」
疾患QB「ワルプルギス……元を辿ればワルプルギスの夜には弱点があってね」
疾患QB「あまりにもその出力が強大過ぎるために、吸収量や生成量と、放出量が釣り合わず」
疾患QB「力を使えば使うほど、内包する呪いの量が減ってしまう」
疾患QB「つまり、燃料切れが起こり得るんだ」
疾患QB「ワルプルギスの夜が休眠と覚醒を繰り返していた理由がそこにある訳なんだけど」
疾患QB「ないとは思うけど、妖精とぶつかる前に燃料切れ寸前なんて嫌だからね」
疾患QB「可能なら妖精と暁美ほむらには全力を持ってぶつかりたい」
疾患QB「本音を言うとね、君達如きに余計な魔力を使いたくないのさ」
シャル「答えはNO。アイツの居場所は知らないし、アンタ達にYESと答えるのはもう懲り懲りよ」
杏子「言っとくが、それはあたしらの総意だからあしからず」
マミ「仲間割れは期待しない事ね」
疾患QB「……残念だ」
867: 2014/09/24(水) 19:58:21.27 ID:iaPx5EvQ0
疾患QB「――――ワルプルギスの歴史、出力0.2%。自動反撃は必要ない」
疾患QB「無くても十分だ」
―――― ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!! ――――
まどか「?! う、きゃあ!?」
巨大さやか『な、なななん、なんだこれぇ!?』
WP【■■■■■■■■■!!】
杏子「おいおいマジかよ……さっきの比じゃねぇ魔力だぞ……」
杏子「魔力の放出分だけで、地面が揺れ始めてるじゃねぇか……!」
ゲルト「め、滅茶苦茶です!? こんなのがちょっとでも暴れたら、見滝原どころか地球が滅茶苦茶にされちゃいます!」
シャル「流石インキュベーターが十万年好き勝手やった歴史ね……ウォーリアーの時が難易度easyに思えてきたわ」
巨大さやか『いやぁ、チュートリアルじゃないかなー……或いはトレーニング』
マミ「……キュゥべえに今まで何個グリーフシードを渡したかしらね……」
まどか「私、多分五個ぐらい渡しちゃってます……」
杏子「あたしは好き勝手魔法使ってサイクル早かったからなぁ……五十ぐらいか」
マミ「あら、そんなもの? 私は三年もの間、頻繁に戦っていたから百は使ったわね」
マミ「……そんな訳だから、ここは一番多く献上しちゃった人が責任を取るって事で――――」
シャル「おっと、魔女化した先輩を忘れちゃ困るわね。アンタが百なら、こっちは二百よ」
マミ「っ!」
868: 2014/09/24(水) 19:59:43.48 ID:iaPx5EvQ0
シャル「……何処に逃げても一緒よ。それにあの子達を余所に逃がしたところで、アイツが見逃すとは思えない」
シャル「あの化け物を産んじゃった責任は全員にあるって事で……全員で、やるとしましょう」
シャル「各個撃破されるより、みんなでフォローし合った方がトータルの生存時間は伸びるでしょうし」
マミ「シャルロッテさん……だけど……!」
シャル「別に勝たなくて良いのよ、勝たなくても」
巨大さやか『……ああ、そうだね。勝つ必要はない』
杏子「……時間稼ぎしかあたしらには出来ないし」
ゲルト「時間を稼ぐ事でしか、勝機は見出せない」
マミ「……そう、ね……最初から負けるつもりじゃ駄目よね」
マミ「どんな困難にも、全力で抗わないとね!」
旧べえ「み、みんな……何を言っているんだい!? 早く逃げるんだ!」
旧べえ「アレには絶対敵わない! この宇宙の誰も!」
シャル「そうかも知れない……だけど、そうじゃないかも知れない」
シャル「逃げるなら、とりあえずアイツらがボコボコにされてからにしましょう」
旧べえ「アイツらって……まさか」
杏子「そういう事」
ゲルト「現状の私達が持ちうる、無敵の”戦力”……」
巨大さやか『自称……いや、他称? この世の誰にも勝てない存在』
まどか「……待ってるからね、妖精さん」
まどか「……ほむらちゃん!」
……………
………
…
869: 2014/09/24(水) 20:01:15.58 ID:iaPx5EvQ0
―――― ?? ――――
妖精さん「にんげんさん、ついにかんせいです」
ほむら「……ようやくこの時が来ましたね」
ほむら「効果が現れるのは、今から凡そ八分後」
ほむら「地球全体に行き渡るまでには……原理の詳細が分からないのでなんとも言えませんが」
ほむら「最長で十二時間でしょうか。まぁ、規模が規模だけに十分な早さでしょう」
妖精さん「ひかりのはやさでおっとどけー」
ほむら「あとはのんびり待てばいい、と言いたいところですが……」
妖精さん「あっちのぼくらからつーほーされましたな?」
ほむら「やれやれ、面倒なタイミングでやってきたものです。まぁ、早く来られたらもっと困っちゃいましたけど」
ほむら「しかし、その内何かしらの対抗手段を使ってくる事は予測していましたが」
ほむら「よもやこれほどの物を持っていたとは予想外でした」
ほむら「あと十分もしないで使用不能になる不良品ですけど、十分あれば地球を三度滅ぼせそうですよね、アレ」
妖精さん「どうされますので?」
ほむら「どうもこうも……既に私達は勝っていますからねぇ」
ほむら「ぶっちゃけインキュベーター達が今から私と妖精さんをどうにかこうにか皆頃しにしても結果は覆りませんし」
ほむら「だったら隠れているのが合理的。最適解でしょう」
ほむら「――――が、それでは面白くない」
ほむら「どうせ迎えるエンディング。面白おかしくしなくちゃ勿体ない」
ほむら「それに、あれをやるのなら……スケールの大きい相手の方が楽しそうですからね」
妖精さん「さよかー」
ほむら「それじゃ、参りましょうか」
ほむら「――――世界を面白おかしくしに」
……………
………
…
870: 2014/09/24(水) 20:03:41.13 ID:iaPx5EvQ0
巨大さやか『ぐあああああああああああああああっ!?』ズズーンッ
杏子「さ、さやか様が吹き飛ばされた!? すぐに回復を……」
シャル「駄目! 今は持ち場を離れないで!」
シャル「あなたが離れたら、援護射撃をしている巴さんを誰が守るの!?」
杏子「っ……!」
マミ「シャルロッテさん、気遣いしてくれた上でこう言うのも難だけど……」
WP【……………】ドン、ドドド、ズガン
マミ「ワルプルギスにこっちの攻撃は全然効いてないわ!」
マミ「待機状態で放出される魔力が強過ぎて、それだけでこっちの攻撃が届かない!」
ゲルト「こっちもです! 茨で拘束しようとしてますけど、魔力に阻まれて届きません!」
ゲルト「あれじゃ、まるでバリアです!」
杏子「バリアになるほど濃い魔力って、一体なんの冗談だよ……聞いた事もないぞ」
シャル「さっきからワルプルギスがやってるのは、魔力の放出を一定間隔で行う事だけ」
シャル「尤も、その放出だけでこっちは結構ボロボロになってるんだけど」
シャル「余剰分の放出か、それとも何かの準備かは分からないけど……まともに戦ってないのは確かね」
シャル「ウォーリアーと戦った時も思ったけど、ほんっとシンプルな強さってのが一番厄介っ!」
ゲルト「せめてあの魔力の壁さえ無くなれば……!」
まどか「なら、私がそれを剥ぐ!」
まどか「全力全開! 一点集中させた私の魔法を――――」
まどか「受けてみて!」
――――ドシュッ!!
シャル(魔力を一点に集中させて威力を高めた一撃! あれならごく狭い範囲だけど魔力の壁を吹き飛ばせるかも――――)
疾患QB「おっと、そうはいかないよ」
WR【――――】バッ
シャル「!?」
マミ「わ、ワルプルギスから靄のような腕が出てきて……」
――――ばちんっ!
巨大さやか『まどかの攻撃を、叩き落とした!?』
871: 2014/09/24(水) 20:07:29.52 ID:iaPx5EvQ0
杏子「――――テメェ! 今アイツに何か指示したな!?」
疾患QB「おっと、ちょっと待ってくれ」
疾患QB「確かにさっきの防御は僕が指示したものだけど」
疾患QB「基本的なコントロールは、衛星軌道上の艦が行っている。僕を潰したところで結果は変わらない」
疾患QB「むしろ潰さない方が君達にとって得策だよ?」
疾患QB「ワルプルギスがこの程度の出力しか出さないのは、僕が直接現場の状況を観測し」
疾患QB「この場に暁美ほむらと妖精が居ない事を伝え、出力の調整を行っているからだ」
疾患QB「僕からの報告が途絶えたら、船は正確な状況を把握出来ない。大まかな判断をせざるを得ない」
疾患QB「万が一にも”不意打ち”で倒されないよう、出力を向上させる事になるだろうね」
疾患QB「それは妖精に使えるエネルギーが減る事を意味するから、僕達にとってはマイナスな訳だけど」
疾患QB「現時点で傷一つ与えられない君達の勝機が完全になくなっちゃうんじゃないかな? まぁ、元々ないとは思うけど」
杏子「ぐっ……こ、コイツ……!」
シャル「そんな雑魚に構ってる暇はないわ!」
シャル「どの道、魔力を放出しただけで叩き落とせるって事は直撃でも大したダメージにはならないでしょうし!」
マミ「なら一体どうすれば良いのよ! 鹿目さんの魔法が通じない以上、私達がいくら攻撃しても……!」
旧べえ「――――ああもう! 見てられない!」
マミ「っ!? きゅ、キュゥべえ……?」
旧べえ「時間稼ぎをすると言いながら、殆どアイツにダメージを与えられないとか情けないにもほどがある!」
旧ベえ「おちおちいじけてもいられないじゃないか!」
杏子「テメェに言われたくねぇよ! 大体お前さっきから何も……」
旧べえ「まどか、さやか! 十五秒後に攻撃を開始する!」
旧べえ「僕に合わせてくれ!」
シャル「一体何をす、る、気……!?」
872: 2014/09/24(水) 20:09:33.22 ID:iaPx5EvQ0
巨大さやか『きゅ、キュゥべえから凄い力が……!?』
まどか「わ、私よりも、凄い……!」
旧べえ「……宇宙の寿命を延ばすほどのエネルギー……それが希望と絶望の相転移」
旧べえ「落ちる際に膨大なエネルギーを生じるのなら、逆でも同量のエネルギーが得られるのが物理法則の常」
旧べえ「ワルプルギスの歴史の圧倒的強さを知るが故に落ちた”絶望”から」
旧べえ「君達の諦めない姿を見て駆け上った”希望”の感情……」
旧べえ「その相転移反応によって生じた全エネルギーをぶつける!」
マミ「な、なんて力……!?」
杏子「アイツ、ウォーリアーの時はマジで本気じゃなかったのかよ……!」
旧べえ「全員僕から離れていてくれ! 宇宙の延命すらも可能なエネルギー量だ!」
旧べえ「可能な限り集束させるが、近くに居るだけで原子崩壊すら起きかねない!」
巨大さやか『なんだか分からんけど……兎に角アンタの攻撃に合わせて全力でぶっ放せばいいって事ね!』
まどか「任せて! 今度こそ、本気の本気をお見舞いするから!」
旧べえ「――――今だ!」
873: 2014/09/24(水) 20:10:39.21 ID:iaPx5EvQ0
旧べえ「食らえ! これが、感情エネルギーの濁流だっ!」
巨大さやか『さやかちゃん必殺、全力全開フルパワーの、スペ○ウム玉ああああああああああっ!』
まどか「いっけええええええええええええええええええっ!」
874: 2014/09/24(水) 20:12:06.26 ID:iaPx5EvQ0
――――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
ゲルト「きゃあああああああああああああああああああああああっ!?」
シャル「ひ、光が強過ぎて前が見えな……」
マミ「だけど……!」
マミ「ワルプルギスの辺りから嫌になるぐらい感じていた魔力が、消えたわ!」
杏子「つー事は少なくとも魔力の壁は吹っ飛ばした訳だ!」
シャル「ええ! そうなるわね!」
シャル(勿論、アレはキュゥべえ達の最終兵器。魔力の壁を貫いたぐらいでどうこうなるものじゃないでしょうけど)
シャル(でもそれなりのダメージを与えられれば――――)
まどか「……嘘……だよね……」
875: 2014/09/24(水) 20:14:23.66 ID:iaPx5EvQ0
巨大さやか『……いやぁ、ちょっとは期待していたんだけどなぁ……』
ゲルト「そ、そんな、そんな、だって……」
杏子「冗談キツイなぁ……」
シャル「な、んで……よ」
シャル「なんでワルプルギスの奴、無傷なのよ!?」
マミ「そんな!? 確かにあの攻撃で魔力の層は吹き飛ばされた筈よ!? 今だって魔力は感じられない!」
マミ「今のワルプルギスは鎧が剥がれた、丸裸も同然なのよ!?」
旧べえ「……あらゆる魔女のグリーフシードを取り込んでいるから、もしやと思っていたが……」
旧べえ「ワルプルギスには物理攻撃に耐性がある……!」
旧べえ「それも単純なエネルギー量では突破出来ない、出鱈目な物理耐性だ!」
シャル「なっ……!?」
巨大さやか『物理無効って事!? そんなの反則でしょ!』
疾患QB「ついでに言うと、魔力にも耐性を持っているよ。そういう魔女のグリーフシードも取り込んでいるからね」
疾患QB「まぁ、どちらも完全無効ではなくて99%カットなんだけど」
疾患QB「攻撃するなら物理と魔法以外の手法がオススメだよ。次元干渉系が最も有効かな?」
疾患QB「君達にそんな攻撃手段があれば、だけどね」
シャル「……沙々ちゃんでも起こそうかしらね……洗脳してなんとか……」
杏子「ありゃ魔法の一種だろうが、畜生!」
マミ「そんな……どう、すればいいのよ……」
マミ「魔法も駄目、物理も駄目」
マミ「どうにもならないじゃない!」
旧べえ「ま、まだだ! まだ負けていない!」
旧べえ「無傷だったアイツを見た瞬間、僕は絶望に飲まれた! ならばその相転移反応を利用した攻撃が出来る!」
旧べえ「鎧が剥がれたあの状態なら、さっきよりも大きなダメージを……」
疾患QB「おっと。魔力の壁を破られたし、そろそろ遊んでばかりもいられないね」
疾患QB「本艦、攻撃の方お願いするよ。出力はそのままで良いから」
杏子「!? 攻撃だとテメェ――――」
巨大さやか『杏子ちゃん危ないっ!』
杏子「え――――!?」
876: 2014/09/24(水) 20:17:11.23 ID:iaPx5EvQ0
杏子(ちょ……な、なんでビルが空に浮いて……!?)
杏子(ワルプルギスが魔法で浮かせてんのか!? 一体なんの冗談だよ!)
杏子(だ、駄目だ、あんなのどう避ければ――――)
巨大さやか『うおりゃああああああああああああああっ!』
杏子「さ、さやか様!?(あたしとビルの間に割って入って……)」
――――ズガッ!!
杏子(ビルを片手で受け止めて……!)
巨大さやか『こん、のぉっ!』
――――ゴシャアアアアアアアアアアアッ!!!
杏子(もう片方の拳を振り上げて砕いた!? 滅茶苦茶だけど凄いよさやか様!)
巨大さやか『たくっ! とんでもない攻撃してくるじゃん!』
巨大さやか『だけどいくら高層ビルったって高々100メートルもないコンクリートの塊!』
巨大さやか『他のみんなは兎も角、地球最強モードのあたしにそんな”普通”の攻撃は通じないよ!』
―― ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ――
巨大さやか『あ、でも流石に見滝原中のビルを叩きつけられるのはキッツイかなぁ……』
877: 2014/09/24(水) 20:26:16.11 ID:iaPx5EvQ0
シャル「ちょっとちょっと、あんなの放たれたら逃げ場なんてないわよ!」
巨大さやか『くっ! 仕方ない!』
杏子「さ、さやか様!」
巨大さやか『あたしが全部――――受け止める!!』
――――ドドドドドドドドド!!
マミ「きゃああああああああああああああっ!?」
ゲルト「び、ビルがたくさん落ちてきましたぁ!?」
巨大さやか『ぐ、あ、がっ……こん、のぉっ……!!』
シャル「さ、さやか! 大丈夫!」
巨大さやか『あ、あたしは平気……ちょっと痛いだけ……!』
巨大さやか『でも、何時までも立ってられない……』
巨大さやか『このままだとそのうち衝撃で倒れちゃう! 多分最後まで盾にはなれない!』
巨大さやか『みんな! 悪いけど万一に備えて防御を固めて!』
杏子「わ、分かりました! 全力で結界を展開します!」
杏子「みんな! あたしの傍に来てくれ!」
ゲルト「私はその内側に植物を生やして支えにします!」
マミ「なら、私はその植物にリボンを絡めて補強を――――」
まどか「それじゃ駄目! 攻撃して援護した方が良いです!」
マミ「!? な、何を言ってるの! 今外に出たら危ないわ!」
マミ「みんなで耐えれば……」
まどか「私の魔法は防御に向いてないから、皆さんの援護が出来ません!」
まどか「マミさん達だけの力で、さやかちゃんでも受け止めきれない攻撃を耐えられるんですか!?」
まどか「一発だけじゃなくて、何発も、何十発も!」
マミ「そ、それは――――」
まどか「だから私がさやかちゃんを援護します!」
まどか「そうすれば、さやかちゃんもきっと耐えきれる!」ダッ
マミ「か、鹿目さん!? こっちに戻って!」
まどか「大丈夫! あれぐらいなら、何個来ても壊せます!」
まどか「いっ……けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」バシュンッ!!
杏子「なっ……まどかの奴、一度に何十発も凄い威力の魔力弾を撃って……」
――――ドドドドドドドドドドドン!!
ゲルト「巨大なビルを、一撃で粉砕している……!」
878: 2014/09/24(水) 20:32:35.61 ID:iaPx5EvQ0
巨大さやか『まどかのお陰で攻撃の手が緩んだ……これならなんとか、持ち堪えられるよ!』
旧べえ「流石だね……僕は感情エネルギーという莫大な出力を誇る反面、力を出すのに逐一感情の振れ幅が必要だが」
旧べえ「魔法少女にはそれが必要ない。こういう断続的な攻撃には、魔法少女の力が最適だ」
旧べえ「まどかなら、この攻撃を迎撃出来る……これなら切り抜けられる……!」
ゲルト「……確かに、鹿目さんの言うとおりです。私達だけの防御では」
ゲルト「肉体面で最強であるさやかさんすら転倒させる攻撃を、防ぐ事は叶わなかったでしょう」
杏子「一番のルーキーのくせして、一番状況を見ていたのはアイツか……あたしとした事が、情けない」
マミ「……いえ、これは……!」
シャル「ちっ! 世話の焼ける新人ねっ!」
ゲルト「あ、しゃ、シャルロッテさん!? どうし――――ッ!?」
杏子「ああ、そういう事か……不味いな……」
杏子「ビルが壊れて――――」
まどか「えいっ! えーいっ!」ドドドドドッ
まどか(くっ……本当に見滝原中のビルを持ってきているのか、いくら迎撃しても切りがないよ!)
まどか(ビルを浮かせるなんてとんでもない魔力を必要とするのに、これでもまだ本気じゃないなんて……)
まどか(でもキュゥべえのお陰で魔力は剥がれた。今なら攻撃を直撃させられる!)
まどか(ひたすらビルを壊して、攻撃のチャンスを――――)
――――ゴオオオオオオオオオオオオッ!!
まどか「っと、横からなら反応出来ないと思った!?」
まどか「残念だけど、使ったビルが他のよりも随分と大きいよ!」
まどか「そんな大きいの、見逃す訳ないんだから!」バシュッ
――――ズドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
まどか「けほっけほ……粉塵が……でも粉々に出来た!」
まどか「こっちに飛んできているもう一個のビルも撃ち落として……」
――――ゴオッ
まどか「え」
879: 2014/09/24(水) 20:33:43.40 ID:iaPx5EvQ0
まどか(なんで……なんでさっき壊した筈のビルが無傷でこっちに飛んできて……)
まどか(あ、違う)
まどか(このビル、さっきの奴よりずっと小さい……)
まどか(あの大きなビルの後ろにこの小さい奴を隠してたんだ! 壊した事で出来た粉塵に紛れさせて、私の目を晦ませた!)
まどか(げ、迎撃しないと……で、でももう)
まどか(間に合わ――――)
880: 2014/09/24(水) 20:34:27.79 ID:iaPx5EvQ0
「鹿目さんっ!」
881: 2014/09/24(水) 20:35:27.18 ID:iaPx5EvQ0
まどか「!? シャルロッテさ――――」
まどか(シャルロッテさん、私のすぐ傍まできて)
まどか(それで、私の腕を掴んで……)
シャル「どっ――――りゃあああああああああああああああっ!!」
まどか「な、投げ……うぐっ!」
マミ「か、鹿目さん!」
まどか(シャルロッテさんに皆の近くまで投げ飛ばされた! そう言えば、本来身体強化系の魔法少女だったって言ってたっけ)
まどか(お陰で飛んできたビルの下からは移動出来たけど、で、でも!)
まどか「シャ――――」
シャル「あ、これ無理だわ」
882: 2014/09/24(水) 20:36:54.95 ID:iaPx5EvQ0
グシャアアアアアアアアアアアアアンッ!
旧べえ「ぐぅっ!?」
杏子「な、なんつー衝撃波……何万トンもあるコンクリートの威力、正直嘗めてたわ……」
杏子「こんなの受けたらあたしの結界なんかいくら補強しても関係無くぶち破られていたぞ……!」
ゲルト「そ、それより……」
マミ「シャルロッテさんが、ビルの下敷に……!?」
まどか「あ、あ、ぁ」
まどか「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
まどか「いやああああああああああああああ! しゃ、シャルロッテさんが、シャルロッテさんが、ああああ!」
ゲルト「だ、駄目です! まだ攻撃は続いています! 美樹さんの影に隠れないと……!」
まどか「だって、だって私が、私が!」
マミ「鹿目さんのせいじゃない! あなたがビルを落としてくれていなければ、私達は今頃下敷だった!」
マミ「あなたは悪くない、悪くないから……!」
まどか「嫌、また、また私のせいで……」
まどか「嫌あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
883: 2014/09/24(水) 20:37:39.26 ID:iaPx5EvQ0
「妖精さんアイテム『鏡の国のアリス体験版』~」
884: 2014/09/24(水) 20:38:33.20 ID:iaPx5EvQ0
まどか「え……」
「一見普通の手鏡ですが、中には不思議な不思議な王国が広がっており」
杏子「こ、この呑気で……」
「私達も中に入る事が出来てしまいます」
マミ「緊張感が欠片もなくて」
「と言うか鏡に映った人を手当たり次第中に取り入れてしまう、困った道具なんですよねぇ」
ゲルト「底抜けに明るい声は……!」
「まぁ、お陰で緊急避難アイテムとして使えるのですけどね。本来の用途と全然違いますけど」
巨大さやか『やっと……やっと戻って来たか……』
「ですから……」
旧べえ「――――暁美ほむら!!」
ほむら「シャルロッテさんは無事ですよ、鹿目さん」
885: 2014/09/24(水) 20:40:03.22 ID:iaPx5EvQ0
まどか「ほむら、ちゃん……」
まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃん……!」
マミ「ほ、本当にシャルロッテさんは……」
ほむら「はい、こちらの中に」スッ
ゲルト「あ、手鏡……」
杏子「本当だ。あたしらが映らない代わりに、中にシャルの奴が居るぞ」
シャル『……うん、見事に鏡の中に囚われたわ』
シャル『……マジで氏ぬかと思った……』
ほむら「ご冗談を。妖精さん密度Fの私と暮らしているあなたがこんな些事で氏ぬ訳ないでしょう」
シャル『何処から沸いてくんのよその自信……まぁ、今回は信じてあげましょうか。理不尽なほどのラッキーだったし』
シャル『それで、どうすれば出られるの?』
ほむら「こうして鏡をひっくり返してー」
ほむら「力いっぱい振ります!」ブンブン
シャル『ちょ、ぐえ!? ゆ、揺れがマジで伝わってあだっ!?」
巨大さやか『あ、出てきた』
シャル「いたた……もうちょっと優しくしてくれないものかしら……」
まどか「シャルロッテさああああああああんっ!!」
シャル「わぷっ!? か、鹿目さん!? ちょ、抱き着かないで、苦し……」
まどか「ごめんなさい、ごめんなさい、私……!」
シャル「……ああもう……抱き着くのは私じゃなくてほむらにやってほしいものね」
ほむら「全力で避けますけどね」
シャル「おい」
ほむら「……さて、半端なお遊びはここまでにしてっと」
ほむら「いやぁ、好き勝手やってくれちゃったものですねぇ。見滝原、すっかり壊滅じゃないですか」
ほむら「見渡す限り廃墟だらけ。冒険心がそそられる光景です」
ほむら「インキュベーターであるあなたが、そんな風に思うとは言いませんけど」
886: 2014/09/24(水) 20:41:21.21 ID:iaPx5EvQ0
疾患QB「……ふふ……ついに姿を現したね。暁美ほむら」
疾患QB「君の事だから、この状況をなんらかの方法で観測していた筈だ」
疾患QB「よく、あのワルプルギスの前に姿を現そうと思ったね」
ほむら「そりゃ派手に遊べそうなアスレチックがあれば誰だってやってきますよ」
疾患QB「アレをアスレチック呼ばわりか。奢りなのか自信なのか、今では判別が付かないね」
疾患QB「妖精も近くに居るのかい?」
まどか「えっ、と……(妖精さんは電波があるところだと活動出来ない筈……)」
ほむら「勿論。妖精さん、おいでやすー」
妖精さん「はーい」ポーン
まどか「えっ!? どうし……」
まどか(そうか! 町が滅茶苦茶になったから、電波が何処からも出ていないんだ!)
シャル(これなら妖精さんパワーは100%発揮出来る……)
疾患QB「……僕には見えないけど、そこに居るのかな?」
ほむら「ええ。見えないのは、きっとあなたの魂がこちらにないからでしょう」
疾患QB「ふふふ……そうかい……居るのなら、遠慮はいらない訳だ!」
疾患QB「本艦! 妖精を”確認”した! 出力リミッター限界まで解除だ!」
887: 2014/09/24(水) 20:44:19.12 ID:iaPx5EvQ0
WR【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!】
まどか「ひっ!?」
マミ「こ、これが、わ、ワルプルギスの……!?」
疾患QB「本気ではないよ。本気を出したら、それだけでこの星の環境すらも変えかねない」
疾患QB「精々50%……さっきまでの、ざっと250倍さ」
旧べえ「本気を出したら、確か十分と持たないからね。エネルギー」
疾患QB「……否定はしないよ」
疾患QB「ま、これでも一発攻撃が地表に当たったら……地軸がずれてしまうかも知れないね」
ゲルト「なっ……!?」
ほむら「ちょっとちょっとー、風とかゴミとか凄いじゃないですかー」
ほむら「妖精さんアイテム『静電気バリアー発生下敷き』で予め身体を擦り、埃を寄せ付けないようにしとかなかったら」
ほむら「あの方の姿がろくに見えないところでしたよ」
疾患QB「やれやれ。これでもまだ自信を崩してくれないか。こっちの自信が崩れそうだよ」
ほむら「自信なんてありませんよー」
ほむら「ただちょっと――――わくわくしているだけです」
シャル「……ほむら……?」
疾患QB「わくわく、ね……つまり君にとって、僕達の最終兵器は本気になる必要もない存在という訳だ」
疾患QB「――――嘗めるな、下等動物が」
疾患QB「僕達の力を見くびった事、後悔するが良い!」
WR【■■■■!!!】
シャル「く、黒い魔力の塊が幾つも放たれ……」
シャル(あれ。全然怖くない。物凄い魔力を感じるのに、なんで……)
シャル(ああ、そうか。あまりにも強過ぎて、もう、怯える事も出来ない)
シャル(諦めるという考えが過ぎる前に、心の根っこが折れちゃったんだ)
シャル(だからこうして、逆に冷静でいられる訳ね)
ほむら「ぽーいっと」
シャル(……まぁ、コイツが冷静なのは私、達とは違う理由なんでしょうけど)
888: 2014/09/24(水) 20:58:42.26 ID:iaPx5EvQ0
シャル(というか、一体何を投げて……)
ぽんっ☆
シャル(あ、なんて出てきた。これは――――)
まどか「……タヌキの置物?」
タヌキ【あ―――――――ん】
ゲルト「あ、口を開いて」
タヌキ【すぅ――――――】
杏子「吸い込んで」
タヌキ【ぱくんっ】
巨大さやか『……ワルプルギスの攻撃、全部飲んじゃったよ』
――――ぼいんっ
マミ「……なんか、私の胸が一回り大きくなったみたいなんだけど」
ほむら「妖精さんアイテム『マミサン置物』~」
ほむら「あらゆる攻撃をばくんと食べて吸収!」
ほむら「そのエネルギーを巴先輩の胸の脂肪に変換し送り届けるという代物です!」
マミ「何そのピンポイントでのいじめ!?」
ほむら「いやー、タヌキの置物で何か便利なアイテムを作れないかと思いまして」
ほむら「どうせならマミ繋がりで巴先輩をどうこうしたかったので」
ほむら「あ、ほっとけばそのうち空気みたいに抜けますのでご安心を」
妖精さん「あんしんせっけーですなー」
マミ「何からツッコめば良いのか分からないけど兎に角ふざけんなーっ!」
妖精さん「ぴ――――――――!?」
ほむら(あ、巴先輩の大声で逃げちゃった……まぁ、良いや。あとで集めますし)
疾患QB「ぐ、ぐぎ……まさかこんな方法で攻撃を無効化するとは……!」
ほむら「とりあえず、これで時間的猶予は作れましたね」
シャル「仕掛けるなら今のうちって訳ね」
杏子「それで、どんな手を使うんだ」
まどか「どうやって、あのワルプルギスを倒すつもりなの!?」
889: 2014/09/24(水) 20:59:27.23 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「倒しませんよ?」
890: 2014/09/24(水) 21:01:49.36 ID:iaPx5EvQ0
まどか「……え……」
ほむら「まぁ、倒せないと言うべきかも知れませんけど」
杏子「た、倒せない……?」
ほむら「だってあの方、滅茶苦茶強そうじゃないですかー」
ほむら「妖精さんは誰かを直接虐げるタイプの発明って苦手なんですよ」
ほむら「まぁ、並の相手ならどうにか出来ますけど」
ほむら「ああも出鱈目ではどうにもなりません。倒すのは無理です」
まどか「そ、んな……」
シャル「じゃ、じゃあどうするつもりなの!?」
シャル「妖精さんアイテムでどうにもならないなら、私達に勝ち目なんて……!」
疾患QB「く、くくく……そうさ、最初から勝ち目なんてない」
疾患QB「いくら妖精の力が強大でも、宇宙で最大最強の力を持つ僕達に倒せない訳がないんだよ!」
ほむら「? 何をおっしゃっているんですか?」
ほむら「私はそもそも――――あの方を倒すつもりなんて毛頭ないのですけど」
疾患QB「……何?」
旧べえ「どういう、意味だい……?」
ほむら「どういうも何も……私は魔女さんを助けたいから、このドンパチ騒ぎに参加しているのですよ?」
ほむら「なら目の前の魔女さんも助ける。倒す訳がないでしょう?」
巨大さやか『で、でも、前言ってたじゃんかっ!?』
巨大さやか『妖精さんは魔女の絶望を追い払える、だけど絶望の量が多いなら、その分たくさんの妖精さんが必要になる!』
巨大さやか『まどかの時ですら千人も必要だったんだ! あの魔女じゃ何万人居ても足りないよ!』
旧べえ「それに、あれは魔女と言うよりもグリーフシードの集合体と言うべきだ」
旧べえ「なんらかの方法で絶望を取り除いたとしても、正気と呼べるものがあるとは思えない……!」
ほむら「ああ、成程。道理で眼鏡に表示される意訳が意味不明なものだったのですね」
ほむら「確かに凡そ真っ当な意思は存在しないようです」
旧べえ「なら!」
ほむら「それでも助けてあげたい」
ほむら「……この眼鏡に映る字幕からでも伝わる、誰にぶつけて良いかも分からない呪いから引っ張り出したい」
ほむら「そう思うのは、可笑しな事でしょうか?」
まどか「……ほむらちゃん……」
891: 2014/09/24(水) 21:08:23.58 ID:iaPx5EvQ0
シャル「だ、だけどどうするつもりなの!?」
シャル「妖精さんの科学力でどうにもならないなら、どうすれば……」
ほむら「最後の手段を使います」
シャル「さ、最後の、手段……?」
ほむら「ええ。いざと言う時、とっておき」
ほむら「妖精さんパワーをフルパワーかつ、フル活用する方法です」
ほむら「ああ、先に言っときますけど自爆技じゃないですよ? もっと楽しい事です」
ほむら「ただまぁ、いざやるとなると中々踏ん切りがつかなくて」
ほむら「こういう”きっかけ”が欲しいとは思っていたところなんですよ」
ほむら「――――元に戻れる保証もありませんから、出来れば派手に楽しみたいですしねー」
まどか「!? ほ、ほむらちゃん、何を……」
ほむら「さぁ! ラストステージに相応しい盛り上がりといきましょう!」
ほむら「妖精さん! 八時じゃないけど、全員しゅーごーっ!!」
「よばれた?」「にんげんさんのごうれーだー」「ついついあつまっちゃうよねー」
「ぼくらゆーわくによわいからー」「いわれるがままです?」「そんなえさにつられますが?」
「つられるつられるー」「ふつーつられるー」「だってにんげんさんだもん」「しかたないなー」
「たのしいことはじまります?」「にんげんさん、あいであほーふだから」「あたまよろしいですし?」
「ちょーずのうは」「いじめっこぱわーすごし」「ひかれますー」「あやかりたーい」
ぞろぞろぞろぞろぞろ……
まどか「よ、妖精さんがたくさん……!」
杏子「百人ぐらい来たぞ……」
892: 2014/09/24(水) 21:09:23.67 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「さぁ、妖精さん。もしかしたら最後のお願いです」
ほむら「”私を妖精さんにしてくださいっ!!”」
893: 2014/09/24(水) 21:11:27.20 ID:iaPx5EvQ0
全員「!!!?!?!??」
妖精さん「……にんげんさん、そのおねがい、ほんとによろしい?」
ほむら「ええ。仮に人間に戻れなくとも、後悔はしません」
妖精さん「せっかくにんげんさん、すてきなのに?」
妖精さん「すてきないのち、おもちなのに?」
ほむら「命に、良いも悪いもありません。みんな等しく尊いものですよ」
ほむら「人間だろうと魔女だろうと」
ほむら「妖精さんだろうと」
妖精さん「……ですが、ぼくら、にんげんさんとちがいますです……」
ほむら「飢えや窒息といった氏から無縁で、消えたいと思ったら消えてしまう」
ほむら「確かに私達の知る命では想定出来ない生き様。確かに、我々の命の定義には当て嵌まらないかも知れません」
ほむら「それでも私は思うのです」
ほむら「あなた達はこの世界を……楽しく生きようとし、楽しく生きている」
ほむら「ならそれは、十分に命と呼ぶべきではないかと」
妖精さん「……」
ほむら「卑屈にならないで。あなた達はもう、十分に生きている。命として、私達の傍に立っている」
ほむら「だから、私にもっと……あなた達の事を教えて」
ほむら「あなた達が私達人間の命に憧れるように」
ほむら「私もあなた達の――――素敵な命に憧れているのです」
妖精さん「……!」
ほむら「私は、あなた達のようになりたい」
ほむら「あなた達みたいに、世界の全てを楽しみたい」
ほむら「どうかこのお願い、叶えてはもらえませんか……?」
妖精さん「にんげんさん……」
894: 2014/09/24(水) 21:12:00.47 ID:iaPx5EvQ0
妖精さん「にんげんさんにそこまでいわれたら、がんばるざるえませんな!」
895: 2014/09/24(水) 21:13:24.04 ID:iaPx5EvQ0
妖精さん「そーいんしゅーごーっ!!」
妖精さん達「ぴ――――――――――――――――――――!!」
「どうするどうする?」「やっちゃうやっちゃう」「どうやっちゃう?」
「ぼくらをまぜて」「うすめてうすめて」「きゅーわりぐらいならー」
妖精さん「それではそのほうこうで!」
妖精さん「にんげんさん、ぼくらのなかまいりーっ!!」
妖精さん達「ぴ―――――――――――――――――!!」
巨大さやか『ああ!? 妖精さんがほむら向って走っていって……』
杏子「群がってる……?」
シャル「ち、違う……群がってるんじゃない……!」
シャル「妖精さんが……ほむらの中に”入って”いってる……」
シャル「いえ、溶け合ってるみたい!」
マミ「どういう事!? 何が起きようとしているの!?」
シャル「そんなの分かる訳ないでしょ!」
―――― カッ!! ――――
まどか「うっ!? ほ、ほむらちゃんが光って――――」
ゲルト「ま、眩しくて何も見えません!」
杏子「う、ぐぅぅぅぅ……!」
旧べえ「なんだ!? 何が起きて……いや、この光は一体!?」
疾患QB「……? 光? 君達は何を言って――――」
まどか「う、く……?」
巨大さやか『光が……弱まって、きた……?』
まどか「一体何が起きて……」
まどか「っ!?」
896: 2014/09/24(水) 21:15:14.88 ID:iaPx5EvQ0
――――目を開けた時、私が見たのはほむらちゃんの姿であり、そして、ほむらちゃんではない姿でした。
――――見ると胸が高鳴るあの可愛くて、だけどちょっぴり凛々しい顔はそのまま。
――――スレンダーで、きっと女神よりも美しいに違いないスタイルもそのまま。
――――だけど、変わっている部分も幾つかありました。
――――三つ編みだった髪は解かれ、先にはくるんと癖がついていました。
――――制服はリボンなどで飾られた可愛らしいワンピースになっていました。
――――吸い込まれそうになる綺麗な瞳は、翡翠のような色になっていました。
――――そしてその身体は、ちょっぴり……ぼやけて見えました。
――――そんなほむらちゃんを見て、私はこう思ったのです。
――――妖精みたい、と。
897: 2014/09/24(水) 21:18:13.66 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「……………」
まどか「……ほむら……ちゃん……?」
ほむら「……………」
シャル「ほむら? ど、どうしたの……?」
マミ「まさか妖精さんとその、何かやってたけど失敗して、体調が悪いとか……」
ほむら「……凄い」
巨大さやか『え?』
ほむら「嘘、なにこれ……こんな、ああ……!!」
旧べえ「ど、どうしたんだ暁美ほむら! そんなに取り乱して!」
旧べえ「まさか今更ワルプルギスに当てられて……」
杏子「……いや、よく見ろ。アイツ……」
杏子「アイツ……見ているこっちが楽しくなるぐらい……」
杏子「笑ってる……!」
ほむら「そんな、信じられない!」
ほむら「世界がこんなにも楽しそうだったなんて!」
ほむら「ああ! これならもっと早くお願いしていれば良かった!」
まどか「ほ、ほむらちゃん! どうしたの!?」
ほむら「え? ……ああ、ごめんなさい。ちょっとはしゃいじゃいました」
ほむら「あまりにも世界が賑やかで、つい」
まどか「に、賑やか……?」
ほむら「ええ、とっても賑やかです」
ほむら「こんなにも『イキモノ』が居るなんて、思いもしませんでした!」
ほむら「それに、この身体に宿った力……」
ほむら「予想はしていました。きっと素晴らしいものという予想は」
ほむら「だけどこんなにも素敵なものだったなんて!」
ほむら「この力ならどんな方が相手でも、楽しくなるしかないじゃないですかっ! 知ってましたけど!」
まどか「??」
898: 2014/09/24(水) 21:20:59.38 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「……っと、あんまり遊んでもいられませんね」スッ
巨大さやか『ほむら? なんで眼鏡を取って……』
ほむら「これはもう、必要ありませんから」
ほむら「……さて、準備運動も兼ねて」
ほむら「あの魔女さん達を助けるとしましょうかっ!」テテテッ
シャル「あ、ほむら!」
巨大さやか『スキップ交じりの足取りで行っちゃった……』
疾患QB「――――はっ!? な、何があったんだ……!?」
疾患QB「何故、暁美ほむらの姿が……急に、殆ど見えなくなったんだ?」
まどか「え?」
巨大さやか『ちょっと、アンタ何を言って……』
疾患QB「くっ! まさか妖精の道具を使ったのか! なんとか目視で確認出来るが……」
疾患QB「センサーでは捉えられない! ジャミング系の道具を使ったと見るべきか!」
マミ「え……演技じゃ、ない……?」
ゲルト「みたい、ですね……」
シャル(本当にほむらの姿が見えてない? どういう事?)
シャル(それじゃ、まるで本当にほむらが……)
疾患QB「本艦! 暁美ほむららしきものがワルプルギスに向かっている! 攻撃を――――」
疾患QB「え? ……目標をロスト、した? あ、ああ、そうだ、そうだな。うん」
疾患QB「と、兎に角攻撃してくれ! 僕の現在地点からワルプルギスを直線でつないだ方向に移動している!」
ゲルト「! そうはさせませ――――」
シャル「駄目! 間に合わない!」
WR【■■■■■■■■■!!】
シャル(ワルプルギスが攻撃してきた! ああ、魔力弾の雨が……)
シャル(いくら滅茶苦茶に撃っても、あれだけの魔力が込められていたら爆風でこの辺りも吹き飛ばされる!)
シャル(そうなったら――――)
ほむら「はーい、皆さん駆けっこをしましょー。一番速かった子には、ご褒美上げますよー」
899: 2014/09/24(水) 21:22:54.47 ID:iaPx5EvQ0
ギュゥ―――――――――――ン
シャル「……え……(今、魔力弾が曲がった……?)」
シャル(妖精さんアイテム……じゃない!?)
ほむら「うふふ、皆さん結構素直ですねぇ」
ほむら「ああ、そう言えばゴールを決めてませんでしたけど……ま、いっか♪」
シャル(アイツ、一体何をしたの!?)
マミ「きゅ、キュゥべえ、暁美さんが何をしたか分かる?」
旧べえ「い、いや……分からない……」
旧べえ「何かしらの方法で魔力……いや、エネルギーの軌道を変えたのか……?」
旧べえ「しかし暁美ほむらがエネルギーを発していた様子は――――!?」
マミ「……キュゥべえ?」
旧べえ「ば、馬鹿な……そんな事はあり得ない!」
旧べえ「直接的な干渉なしでエネルギーを、万物の根源を操ったと言うのか!? それが妖精さんの力だと!?」
旧べえ「それが可能なら……そしてその方法が……」
旧べえ「……ふ、は」
旧べえ「ふ、はははははははははははははははははははっ!!」
マミ「キュゥべえ!? ちょっと、どうしたの!?」
旧べえ「これが笑わずにいられるかい!?」
旧べえ「ああ、僕達はなんてものに喧嘩を売ったんだろう! あまりにも滑稽だよ!」
旧べえ「こんなの――――”勝てる訳がない”じゃないか!」
旧べえ「君もそう思わないかい!?」
疾患QB「……………君が何に気付いたのか、或いは夢想したのかは分からないが……」
疾患QB「関係無い!」
疾患QB「ワルプルギスは最強の魔女だ! 妖精の力がどれほどのものだろうと関係ない!」
疾患QB「そうだ……妖精相手に手を抜く方が間違っていたんだ!」
疾患QB「リミッター解除! 全出力を解放し、この星ごと消し飛ばす!」
疾患QB「それなら、如何に妖精といえども終わりだ!」
まどか「!?」
杏子「なっ……なん、だと!?」
900: 2014/09/24(水) 21:25:51.54 ID:iaPx5EvQ0
巨大さやか『ちょ、そ、そんな事したら、もう二度と魔女からエネルギーを取れないんだぞ!?』
疾患QB「知った事か! たかがこんな辺境惑星一つ消えてもなんのデメリットもない!」
疾患QB「君達ほどではないが、感情を持つ生物は他の星でも確認している!」
疾患QB「いくらでも替えは利くんだ! この星に執着する理由はない!」
マミ「なんて事……!」
疾患QB「ふ、ふははははははははははははははは! 僕達の勝利だ!」
疾患QB「ふははははははははははははははははははははははは!」
シャル「……ところで」
シャル「そのリミッター解除って、何時やるの?」
疾患QB「は? 何時も何ももうやって――――」
疾患QB「……!?」
マミ「……あら?」
ゲルト「……全然強い魔力を感じない……」
杏子「と言うか……」
まどか「魔力自体、感じない……?」
901: 2014/09/24(水) 21:27:34.53 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「感じる訳ないですよー。あちらの方々、もう戦うつもりはないみたいですからー」
旧べえ「……随分離れた場所にいるのに、よくこっちの話を聞き取れるものだ」
旧べえ「いや、それすらも妖精さんの力という訳か」
疾患QB「ど、どういう事だ!? 何故ワルプルギスの魔力が停止している!?」
疾患QB「本艦! リミッター解除はどうなった!?」
疾患QB「ああ!? 解除し、フルパワーモードにしている!? 何を言ってるんだ! 現に今……」
疾患QB「……何?」
疾患QB「あらゆる方法で攻撃指示をしているのに……命令が全て、拒否されている……!?」
ほむら「えーっとですねーっ! その理由はーっ……って、遠くから話すのしんどいなぁ……」
ほむら「ここをこうして……」
ほむら【あーあー、皆さん聞こえますかー?】
全員「!?」
まどか「頭の中でほむらちゃんの声が……」
杏子「な、なんだこれ!? テレパシーか!?」
ほむら【魔法じゃないですよ。脳内の電位差を弄って音声を認識させているだけです】
ゲルト「……あの、それってもしかしなくてもイオンチャンネルを掌握しているって事じゃ……」
ほむら【もしかしなくてもその通りです】
ゲルト「……あの、それってもしかしなくても私達、命の手綱を握られているようなものじゃ……」
ほむら【もしかしなくてもその通りです】
ほむら【まぁ、あまり気にしないでください。単にお喋りするために干渉しているだけですし】
902: 2014/09/24(水) 21:29:28.64 ID:iaPx5EvQ0
ほむら【それでですね、あちらの魔女さん……皆さんがワルプルギスと呼んでいるあの方々はもう攻撃してきません。安心してください】
まどか「そ、そう……?」
疾患QB「糞! こっちからの指示も受け付けない! どういう事だ!?」
マミ「……それ、こっちのキュゥべえには教えてあげないの?」
ほむら【あげません。私、結構意地悪ですから】
ほむら【仮に教えても、理解出来ないでしょうし】
まどか「どうやってワルプルギスを止めたの?」
ほむら【別に何も? 向こうがインキュベーターの指示にNOを突きつけただけですよ。説得はしましたけどね】
ゲルト「説得って……」
ほむら【例え魂が燃え尽きようと、そこにある想いは消えない】
ほむら【例え異形に成り果てようと、命への嘱望は変わらない】
ほむら【私はそんな彼女達に方法を提示しただけ。そして彼女達は私の話に興味を持っただけ】
ほむら【私はまだ何もしていませんよ。さっきの魔力弾も、この会話も、魔女さんにも……まだ何も】
シャル「……………」
ほむら【――――さぁ、皆さん見ていてください】
ほむら【今からやる事が本当の】
ほむら【”妖精さんの力”です】
まどか「あ……」
巨大さやか『ほむらの奴、一体何をする気なんだ……?』
シャル「……………」
903: 2014/09/24(水) 21:32:18.36 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「遅くなってすみません。ええ、今からやりましょう」
ほむら「え? 本当に出来るのかだって?」
ほむら「大丈夫。今の私は、妖精さんの全てを理解しています」
ほむら「……世界は考えるものたちで溢れている」
ほむら「機械、電気、酸素や素粒子のような形あるものだけじゃない」
ほむら「電気的な行き来で生じたネットワークそのものにも、感情の振れ幅によって作られたエネルギー……魔力にも」
ほむら「グリーフシードも、心はある」
ほむら「精神が霧散しようと、全く違う呪いを押し込まれようと、魂に刻まれた想いまでは変えられない」
ほむら「命への憧れは、決して消えない」
ほむら「そんな心に”万物に干渉する力”が結びつけばどうなるか?」
ほむら「それがA地球の”妖精さん”。力の顕在化であり、新たに生まれた『命』だった」
ほむら「そして”こちらの妖精さん”はその方法で命を模倣しようとした訳です」
ほむら「そりゃ似たような存在になりますよ。原理的には同じなんですもの」
ほむら「……途中から何を言ってるかよく分からない? それは失礼しました。ちょっと自分の世界に入っちゃって」
ほむら「簡単に言えば、あなた達はやり直せます。生きたいという想いだけは叶えてあげられます」
ほむら「どうですか? お返事を聞かせてください」
WR【……………】
WR【■■■■……】ズズズ
904: 2014/09/24(水) 21:33:56.83 ID:iaPx5EvQ0
まどか「! ワルプルギスが……」
疾患QB「か、勝手に動き出した!? こちらはそんな指示出してないのに!」
マミ「あの巨大なグリーフシードが迫ってくる……」
巨大さやか『本当ならビビっちゃいそうな光景の筈なのに、なんでだろう……』
ゲルト「全然、怖くありません」
旧べえ「それどころかむしろ――――」
シャル「何故かしらね。見守っていたい気分にさせられるわね」
旧べえ「こんな感情は初めてだ……だが、悪くない」
疾患QB「な、何がどうなっているんだ!?」
905: 2014/09/24(水) 21:40:07.35 ID:iaPx5EvQ0
ほむら「分かりました――――さぁ、私の手に触れて」
疾患QB「暁美ほむらが、暁美ほむらがワルプルギスの動きを制御しているのか!?」
ほむら「……本当に、ごめんなさい」
疾患QB「だけど制御系になんのエラーもないのに、どうやって!?」
ほむら「私にはこれが限界。元の精神がないから、”あなた”としてもう一度生まれさせてあげる事は出来ません」
疾患QB「どうやってワルプルギスを支配している!? どうしてコントロールを奪っている!」
ほむら「それでも、この命がとても楽しい生き方を送れる事は保証します」
疾患QB「そ、そこに居るんだ! 攻撃しろ!」
ほむら「苦しさも悲しさも絶望も、全てを塗り潰す虹色の日々を約束します」
疾患QB「どんな攻撃でもいい! その一帯を攻撃するんだ!」
ほむら「だからもう一度こっちに……」
疾患QB「なんで、どうして、どうして……」
ほむら「この眩しい世界に、戻ってきて!」
疾患QB「どうして僕らの言う事を聞かないんだああああああああああああああああっ!!?」
906: 2014/09/24(水) 21:43:36.40 ID:iaPx5EvQ0
――――ほむらの奴が触れた瞬間、ワルプルギスは光の粒へと変わった。
さやかや鹿目さんの攻撃ではどうにもならなかったワルプルギスを、アイツは触っただけで倒してしまった。
……いや、倒してなんかいないのだろう。
ワルプルギスから生まれた光の中にあったのは、グリーフシード達。
そして、妖精さん達だった。
光はどれも空へと向かった。妖精さんだけでなく、グリーフシードも一緒に。
真っ直ぐではなく、迷うようでもなく……スキップするように、天高く駆け上っていった。
アイツは一体『何』をしたのだろうか。私が今目の当たりにしている光景とはなんなのだろうか。
私には真実味のある言葉は何も思いつかない。さっぱり分からない、と言うべきか。
だけど心にふっと浮かんだ言葉が正しいのなら――――きっと、こういう事なのだ。
907: 2014/09/24(水) 21:44:57.04 ID:iaPx5EvQ0
―――― 空に、命が花咲いた ――――
8: 2014/09/29(月) 12:24:47.63 ID:vbkXRYm/0
えぴろーぐ 【わたしたちの、ちきゅう】
9: 2014/09/29(月) 12:26:48.32 ID:vbkXRYm/0
―――― わー きゃー ぴー
妖精さん「わぷー」ぽいん
まどか「きゃっ!?」
杏子「妖精さんとグリーフシードが雨みたいに降ってきた……」
巨大さやか『あははっ。なんか、見ていたら楽しくなってきたよ』
ゲルト「綺麗……」
マミ「ええ、本当に……」
シャル「それで? どうやってワルプルギスを倒したのかしら?」
シャル「説明してくれる?」
ほむら「説明するほどの事はしていませんよ。そもそも倒していませんし」
ほむら「結局のところ、あの方々はまだ生きていたかっただけなんです」
ほむら「普通に生きて、普通に大人になって、普通に恋をして……普通に、家族に看取られながら氏んでいく」
ほむら「それが出来なくなって、出来る人達が羨ましくて、憎くなる」
ほむら「だったら新しい命を差し上げれば、恨みなんか何処かに吹っ飛んじゃうじゃないですか」
ほむら「ただそれだけですよ」
シャル「分かったような、分からないような……」
ほむら「えー……仕方ありませんねぇ。もっとシンプルに言いましょう」
ほむら「所謂転生です。何に、かは皆さんのご想像にお任せしますけどね」
まどか「転生……って……」
マミ「さりげなく神の領域に踏み込んでるじゃない……」
ほむら「大した話ではないんですけどね」
ほむら「全く、今まで妖精さんの謙遜だと思っていましたけど」
ほむら「本当に、大した事はしていなかったんですね」
10: 2014/09/29(月) 12:29:09.80 ID:vbkXRYm/0
シャル「……ところで、妖精さんは兎も角、グリーフシードはどうするつもり?」
ほむら「それは私が保管しておきます」
ほむら「こっちの妖精さんは最大で50万人前後までしか増える事が出来ないようですからね」
ほむら「他の方々は順番待ちをしないといけませんから、私の傍に置いておいた方が良いでしょう」
シャル「……順番?」
まどか「危ないんじゃ……」
ほむら「はは。そんな事ありませんよ」
ほむら「”彼女達”にはもう、絶望なんてありません。あるのは未来への希望だけ」
ほむら「一体何が危険だと言うのですか」
まどか「う、うーん……よく分からないけど、ほむらちゃんがそう言うのなら……」
ほむら「そうそう、”私達”に任せてくれればいいんですよ♪」
疾患QB「……これは……一体、何が……」
ほむら「あ。この人の事すっかり忘れてました」
旧べえ「諸悪の根源なんだけど……」
ほむら「仕方ないじゃないですかぁ。この人、妖精さんの姿が見えなくてあまり絡んでこないから、印象に残らないんですよ」
マミ「そう言えば暁美さんの姿もハッキリとは見えてなかったみたいね……」
旧べえ「積極的にハブしていたのは暁美ほむら自身のような気もするけどね」
まどか「なんか、いまいち実感が湧かないけど、本当に妖精さんになっちゃったの……?」
ほむら「そうですねぇ、九割ぐらいその通り、という感じでしょうか」
ほむら「確かにこの力は妖精さんのものですし、存在の在り方もどちらかと言えば妖精さんのそれですが」
ほむら「あくまで私という人間に妖精さんを混ぜ込んだだけですからね」
ほむら「ハイブリッドとかハーフとかちゃんぽんって感じでしょうか」
まどか「ちゃんぽんって……」
ほむら「まぁ、ほぼ妖精さんって事で大丈夫です」
ほむら「しかしこのままだとあの人にこちらの事見てもらえないんですよねぇ。声も届き辛いし」
ほむら「……ああ、そっか。チャンネルがずれているのか。だから……」
ほむら「キュゥべえさん」
疾患QB「!? な……なん……」
シャル(やけに驚くわね……って、多分ほむらの姿がよく見えるようになったのね)
シャル(……今の私みたいに。さっきまでちょっとぼやけていたのに、今じゃハッキリ見える)
11: 2014/09/29(月) 12:32:22.66 ID:vbkXRYm/0
ほむら「あの魔女さん達と友達になっちゃいましたけど、どうされます?」
ほむら「多分あの魔女さん達は、あなた達の”最強戦力”だったのでしょう?」
ほむら「勿論最強というだけですから、まさか全戦闘機能の半分を占めるようなものではないでしょうけど」
ほむら「しかし何百万もの艦隊を派遣してきても、被害は大きくなるばかりですよ?」
ほむら「私としても無益な戦いは好みませんし、そちらも無駄にエネルギーを使いたくない筈」
ほむら「大人しくこの星から撤退してくれませんかね?」
疾患QB「ぐ、ぅ……!」
疾患QB「……………く」
疾患QB「く、くく……くくくくくく」
巨大さやか『……何が可笑しいの』
疾患QB「可笑しいさ。この星から撤退しろだなんて、随分と上から目線だね」
疾患QB「今回の戦い、そして今までの蓄積データから」
疾患QB「妖精達の弱点を、一つだけ推論する事が出来たからね」
杏子「!? まさか……」
疾患QB「そのまさかさ」
疾患QB「――――妖精達は、長距離の移動にあらゆるネットワークを利用出来るのだろう?」
12: 2014/09/29(月) 12:37:13.79 ID:vbkXRYm/0
全員「……………へー」
疾患QB「なんだその如何にも『え、そうなの?』って言いたげな態度は」
シャル「あ、ごめん。気にしないで続けて」
疾患QB「……じゃあ続けさせてもらおう」
疾患QB「今までの妖精の行動範囲、そして出現パターンから考えると」
疾患QB「妖精は何かしらのネットワーク」
疾患QB「物理的ケーブルに限らず、電子的繋がりさえも利用して移動出来るのだろう」
疾患QB「そうでなければ、衛星軌道上に存在する僕達の母艦に侵入出来るとは思えないからね」
疾患QB「そして今回のワルプルギスのコントロール奪取」
疾患QB「恐らく僕の通信ネットワークから本艦に侵入し」
疾患QB「ワルプルギスのコントロールシステムを支配下に置いた」
疾患QB「違うかい?」
ほむら「違います」
疾患QB「え?」
ほむら「ああ、でも大体合ってるところもありましたよ」
ほむら「確かになんらかのネットワークがないと、妖精さんの移動に制限が掛かるのは事実です」
ほむら「以前あなた達の母艦にお邪魔した時も、通信ネットワークを利用していたみたいですし」
疾患QB「そ、そうだろ、そうだろ」
旧べえ(出鼻を挫かれて焦ってるな、アレ)
マミ(偉そうに話し出した癖に、本題入る前にこけそうだったものね)
疾患QB「それこそが妖精が地球以外の場所に進出出来ない理由だろう」
疾患QB「つまりネットワーク的接続さえなければ、妖精は僕達の本星まで来られない」
疾患QB「なら話は簡単だ。通信機能のない、無人機械による契約システムを配備すればいい」
疾患QB「無人機械では限定的応答しか出来ないから契約の成功率は下がるだろうし」
疾患QB「君達の妨害もあるだろうから成果は著しく下がるだろうが、コストは十分に収益で吸収出来る筈だ」
疾患QB「僕達は今までと変わらず、魔法少女を、魔女を産み出せる」
疾患QB「撤退する必要なんてないね」
まどか「諦めが悪い……!」
ほむら「まぁ、そういう手に出るとは思っていましたけどね」
ほむら「何しろ魔女化って宇宙を延命出来るほど膨大なエネルギーが生じるみたいですし」
ほむら「多分、年一人でも魔女化してくれれば収支はとんとんに持っていけるんじゃないですかね?」
13: 2014/09/29(月) 12:38:31.71 ID:vbkXRYm/0
ほむら「――――時に、今のエネルギー回収量はどうなっていますか?」
ほむら「出来れば直近、ここ一分ぐらいの短期データが良いんですけど」
疾患QB「? 君が何を言いたいのか分からないが……」
ほむら「良いから良いから。具体的な数字を教えてくれなくても良いので」
疾患QB「益々訳が分からないけど、えっと……」
疾患QB「!?」
疾患QB「な、なんだこれは!? どういう……」
マミ「……何があったの?」
疾患QB「僕の方が聞きたいよ! 暁美ほむら! 君は一体、妖精に何をさせたんだ!」
ほむら「んー? 何と言われましても、あなたが何に戸惑っているのか分からないので答えようがないですね」
ほむら「ちゃんと、この場で、詳細に教えてもらわないと」
疾患QB「ふざけるな! 一つしかないだろ!」
疾患QB「世界中の魔法少女のソウルジェムから、濁りが一切消えた事だ!」
まどか「!? そ、ソウルジェムから濁りがって……」
14: 2014/09/29(月) 12:41:19.77 ID:vbkXRYm/0
疾患QB「ああ、君が想像していた通りだったよ暁美ほむら!」
疾患QB「短期データ、少なくともここ一分の感情エネルギー回収量はゼロ!」
疾患QB「しかもソウルジェムの感情反転反応が一つの残らず消失している!」
疾患QB「あと少しで魔女化しそうだったものも、全て!」
巨大さやか『感情反転反応?』
ほむら「多分ソウルジェムの濁り、つまりあとどれぐらいで魔女化しそうなのかを観測したものでしょう」
ほむら「ほら、放出されそうな場所に『網』張ってないと、エネルギーが逃げちゃうじゃないですか」
巨大さやか『ああ、成程』
旧べえ「しかし、君は一体何をしたんだ……?」
旧べえ「感情反転反応が消失したという事は、つまり……」
疾患QB「なんらかの方法で、世界中のソウルジェムを浄化した! それもグリーフシードなしで!」
疾患QB「しかも状況が”改善”する様子がない……まだ一分だけだが、継続性がある……」
疾患QB「これではもう、今存在する全ての魔法少女は魔女にはならない!」
疾患QB「いや、それどころか魔女も正気を取り戻すだろう! 感情反転反応、即ち希望から転落した感情」
疾患QB「絶望が消えるのだからね!」
マミ「魔女が全員……」
杏子「正気に戻る……!?」
巨大さやか『え? つまり、どういう……』
ゲルト「つまり……何時の間にか、何もかも解決していたという事です」
ゲルト「魔法少女の運命どころか、魔女の運命すらもひっくり返った……!」
疾患QB「一体どんなテクノロジーを用いた!? 僕達ですら予兆が観測出来なかったというのに……!」
ほむら「そりゃあ、地球というか私ばかり観測していても予兆は分からないでしょう」
ほむら「ま、斜め上の発想で仮に気付いてもどうにかなったとは思いませんけどね」スッ
シャル(? ほむらの奴、空を指さして……)
シャル(つーても、空にあるのは雲とお日様だけなんだけど……)
15: 2014/09/29(月) 12:42:19.91 ID:vbkXRYm/0
ほむら「妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」
17: 2014/09/29(月) 12:45:23.45 ID:vbkXRYm/0
全員「……………は?」
ほむら「ですから、妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」
ほむら「太陽そのものを改造し、ソウルジェムや魔女さんの絶望を浄化する」
ほむら「総数50万人の妖精さんが半月以上の期間を掛けて開発した」
ほむら「妖精さん史上から見ても最大の発明品です♪」
全員「ええええええええええええええええええええええええええ!?」
杏子「た、た、たたたたたた、太陽!?」
ゲルト「太陽って、あの太陽ですかっ!?」
ほむら「ええ。あの太陽です」
マミ「そ、そんなのどうやったのよ!?」
マミ「太陽の中心温度って確か一千万度以上で、表面温度も5000度あるって……」
ほむら「妖精さんは高温なんかへっちゃらですからねー。余裕です」
疾患QB「し、しかし開発はそうはいかないだろう!? 数千度もあったらどんな物質もプラズマ化して……」
ほむら「そこら辺は水素原子さん達や熱エネルギー達との交渉次第ですね」
ほむら「私が出向く際着ていた防護服は特殊なもので、熱を完璧にシャットアウトしてくれましたが」
ほむら「『こころぽかぽかー』は太陽自体からエネルギーを受け取ってますからね」
ほむら「機械の周りだけ常温核融合にしてもらいました♪」
疾患QB「じょ……!?」
旧べえ「――――ぷ、ぷは、ははははははっ!」
旧べえ「まさかそんな事まで可能とは! いや、原子の反発性を取り除けばなんとでもなるか!」
旧べえ「さしずめ、みんな仲良くしてくださーいとか、結婚式でもやったのかい?」
ほむら「おや? あなたは気付いたようですね。妖精さんの力の本質に」
旧べえ「君の言動と触れずにあらゆる物に干渉する力を見てピンときたよ」
旧べえ「正直、全く理解できないけどね!」
18: 2014/09/29(月) 12:47:39.07 ID:vbkXRYm/0
ほむら「……それで、どうされます?」
ほむら「まだ続けますか? 魔法少女システム」
疾患QB「……………」
ほむら「知ってますよ。あなた達の科学力でも、恒星や木星のようなガス状惑星の開発には着手出来ていない事」
ほむら「対して我々は恒星を弄り回せる」
ほむら「その技術力の差は察してほしいものですが」
ほむら(ま、恒星まで行けたのは、インキュベーターのネットワークの痕跡があったからですけどね……黙秘黙秘っと)
疾患QB「……ああ、そうだね」
疾患QB「ようやく分かったよ……妖精に、僕達の常識は通用しない。対抗する事も出来ない」
疾患QB「なら、刺激しない方が得策だ」
疾患QB「これからは、君達に怯えながら過ごすしかないという訳だ」
疾患QB「……全て、君の思惑通りという事だよ、暁美ほむら」
巨大さやか『って、事は……つまり?』
疾患QB「僕達は地球から撤退するという事さ。今後、もうこの星には関わろうとしないだろうね」
シャル「……!」
まどか「それって……」
マミ「インキュベーターから、地球を取り戻したって事!?」
ゲルト「ほ、本当に勝っちゃった……」
杏子「勝っちゃったよ!」
巨大さやか『あたし達、勝ったんだ!』
「やった――――っ!!」
巨大さやか『勝ったんだ! 勝ったんだーっ!』ズシンズシン
まどか「わわわっ!? もうっ、さやかちゃんはしゃぎ過ぎだよ!」
杏子「あ、あはは! すげぇなっ!」
マミ「もう、魔女と魔法少女が戦う事はない!」
ゲルト「魔法少女も生まれない! 私達の完全勝利です!」
ほむら「……………」
旧べえ「……………」
シャル「どうよインキュベーター! 負け惜しみでも言ってみたら!?」
疾患QB「……そうだね。一つ、言わせてもらうとしよう」
疾患QB「多分あと二百年ほどで、この星の文明は危機を迎えるよ」
19: 2014/09/29(月) 12:53:52.45 ID:vbkXRYm/0
シャル「……は?」
杏子「あん? ……テメェ、どういう意味だ」
疾患QB「別に、大した意味はないよ」
疾患QB「僕達は十万年以上前から君達を観測し、文明に干渉を続けていた」
疾患QB「その結果、君達の文明は適切なタイミングで適切なステージに移っていったというだけ」
疾患QB「……もしかしたら聞いているんじゃないかな?」
疾患QB「この星の文明を育んだのは、魔法少女だって」
シャル「!?」
疾患QB「今この星は、飢餓、エネルギー、経済……あらゆる分野で問題を抱えている」
疾患QB「この状況は僕達が誘導したものだ。不安定な情勢の方が少女達は願いを抱きやすく、同時に絶望もしやすいからね」
疾患QB「そしてこの状況を維持してきたのが魔法少女」
疾患QB「聞いた事ないかい? 石油の埋蔵量って、毎年”増えて”いるって」
疾患QB「勿論技術発展もあるし、新たな産油地を見つけたという事でもあるけど」
疾患QB「大半は本当に”増えている”のさ」
疾患QB「当然だよね。石油という価値のある物を望む子は、いくらでも存在するんだから」
疾患QB「――――さて、ここで問題だ」
疾患QB「もしも、今の人類文明から石油が失われたら……どうなるかな?」
マミ「なっ……!?」
疾患QB「他の分野でもそうさ。ダイヤモンド、鉄、湧水……全て”僕達”が与えた物」
疾患QB「君達は自力で発展したと思っている。だけどどれもが、魔法少女を介し僕達が与えてきたものだ」
疾患QB「宇宙の延命に必要なエネルギーを提供してくれた、そのお礼としてね」
疾患QB「そしてそのお礼を使い、人類は今の文明水準を保っている。七十億体まで繁殖もした」
疾患QB「それに十年以内に環境問題を改善する技術発展を起こす予定だった。君達の繁栄は保障されていたんだ」
疾患QB「でもその契約関係は今日で打ち切り」
疾患QB「おめでとう! 君達は今日から家畜から野生動物にランクアップだ!」
疾患QB「厳しい自然環境と天敵と資源問題に、自力で立ち向かうと良い!」
疾患QB「――――何時までこの愚かな獣が絶滅しないでいられるか、それを観察出来ないのが残念だよ」
杏子「こ、コイツ……!」
20: 2014/09/29(月) 12:56:25.77 ID:vbkXRYm/0
ほむら「……そうですねぇ。確かに愚かかも知れません。傲慢が過ぎるのも、割とそうだと思いますし」
ほむら「でも”我々”から見たら、あなた達も相当な愚か者ですけどね」
疾患QB「……なんだって?」
ほむら「一つ、助言してあげましょう。”先駆者”としての助言です」
ほむら「あなた達の文明は最適化の繰り返しによってそこまで発展した」
ほむら「今では宇宙の隅々にまで版図を広げ、物理法則を捻じ曲げるほどの科学力も手にした」
ほむら「でもそれ、頭打ちになっていませんか?」
ほむら「新たなエネルギーが何処にも見つからない。見つけても時間稼ぎにすらならない」
ほむら「研究中の技術は現在の理論では解決不可能な問題が生じ、先に進めない」
ほむら「あなた達は今、自力では越えられない壁に直面しているのではありませんか?」
ほむら「最適化し尽くしちゃって、どうにもならなくなってませんか?」
疾患QB「……………」
ほむら「最適化は一見進化のようで、袋小路に逃げ込んでいるだけ。待っているのは、細い細い一本道だけ」
ほむら「それは、自ら終わりを目指して突き進んでいるようなもの」
ほむら「あなた方の方法では、宇宙は救えません」
疾患QB「……確かに、現状僕達のテクノロジーは停滞している」
疾患QB「それで? 君には手があるのかい?」
疾患QB「この冷えていく宇宙を救う」
疾患QB「”誰も犠牲にならない”方法なんてものがさ」
ほむら「――――多様性を持ちなさい」
疾患QB「……多様性?」
ほむら「全てと手を取り合い、全てと心を繋ぐ」
ほむら「木々が枝を伸ばすように、行く先を広げていく」
ほむら「中には折れてしまう枝もあるかも知れない。育ちにくい枝もあるかも知れない」
ほむら「だけどその先は、無限に広がる世界がある」
ほむら「それだけが、単一で越えられない壁を越える唯一の術ですよ」
疾患QB「ふん。くだらないね」
疾患QB「僕達だって、同程度の水準に達した他の文明と技術交流は行っている」
疾患QB「それでも壁は越えられないんだ」
疾患QB「多様性でどうにか出来る問題じゃないんだよ」
ほむら「ふふ。分かってませんね。本当に分かってない」
ほむら「だけど今はまだ、あなた達を救えないのも事実」
ほむら「だからこう言うしかありません」
ほむら「宇宙どころか地球を救えるだけの力すらない身ではありますが」
ほむら「何時の日か、必ず全てを救ってみせます」
21: 2014/09/29(月) 13:02:30.17 ID:vbkXRYm/0
疾患QB「ふん。見物だね」
疾患QB「……さて。実は帰還命令を二回ほど無視していてね。このままだと置いていかれそうだ」
疾患QB「僕は帰るから、事の成り行きは見ていられないけど」
疾患QB「それは君に任せるとしようかな」
旧べえ「……………」
疾患QB「それじゃ、”また何時か会える時まで”」
疾患QB「さよならだ」
――――シュンッ!
マミ「! 消え……」
ほむら「あ、ちょっと待って」クイッ
まどか(? ほむらちゃん、何かを掴むような動作を――――)
疾患QB「きゅぶっ!?」べちんっ
まどか「あ、キュゥべえが落ちてきた」
疾患QB「ちょ、何をしたんだ君は!? 今僕は量子変換テレポートで戻ろうとして……」
ほむら「細かい事は気にしない!」
疾患QB「量子化した僕を遠距離から掴んだ挙句実体化させたのがどう細かいんだよ!?」
ほむら「物理的に細かいじゃないですか」
疾患QB「そういうトンチをきかせたつもりって言い方が気に食わない!」
ほむら「ですから細かい事は気にしない」
ほむら「これから母星に帰ろうとしているあなたに、ちょっとしたプレゼントをあげようと思いまして」
疾患QB「はぁ? プレゼント?」
ほむら「はい、どうぞ。今さっき作った私の処O作ですよー」
疾患QB「これは……カイロ?」
ほむら「背中に貼ってみてください」
疾患QB「? こういう感じ――――」
疾患QB「しびばびばびばびびびばばばばばばばばばばーっ!?」ビリリリリ
ほむら「すると全身に超高圧電流が流れます」
疾患QB「ぼ、僕を頃す気かああああああああああああっ!?」
疾患QB「大体なんでカイロから電流が流れるんだよ! 発電機かこれはっ!?」
ほむら「ほら、カイロだと思って使ったらびっくりするじゃないですか。所謂ジョークグッズです」
ほむら「熱を直接電気に変換しているだけですから、お手軽に作れますしね♪」
疾患QB「ただのジョークグッズに何さらりとエネルギーの質を無視したテクノロジーを使っ」
疾患QB「――――!?」
22: 2014/09/29(月) 13:08:39.53 ID:vbkXRYm/0
疾患QB「な……ば、馬鹿な!? 熱エネルギーを電気エネルギーに……」
疾患QB「それもお湯を湧かすなどの行程を経ず、直接変換したのか!?」
ほむら「ふふ。ですからジョークグッズです」
ほむら「どーせやるなら、仕組みも冗談みたいになってないと面白味がないでしょう?」
疾患QB「お、面白味って、そんな、どうやって……」
ほむら「それは宿題です」
疾患QB「……宿題……?」
ほむら「ええ。それはあなた達への宿題です」
ほむら「確かに今はまだ宇宙を救う事は出来ませんけど、せめてその方法ぐらいは示唆しませんとね」
ほむら「頑張って、そのカイロを解析してください」
ほむら「妖精さんテクノロジーを使っていますけど、多分あなた達なら模倣可能な筈」
ほむら「上手くいけばわざわざこんな辺境くんだりまで来なくても良くなりますよ」
疾患QB「……………暁美ほむら、君は……」
疾患QB「いや、なんでもない」
疾患QB「……今度こそ、帰らせてもらうよ」シュンッ
巨大さやか『……また消えた』
杏子「なんだよアイツ、ほむらから、よく分かんないけど道具もらったくせに礼一つなしかよ」
旧べえ「ちなみにあのカイロに使われている技術ってどんなものなんだい?」
ほむら「別に大したものは使ってません。エネルギーの質云々なんて、所詮”こちら側”の言い分ですからね」
ほむら「やり方さえ分かれば、あんなのは簡単にひっくり返せる法則なんです」
旧べえ「そうして解析したデータを元に発電施設なりなんなりを作れ、と。熱力学に真っ向から挑むねぇ……」
旧べえ「でも確かに、熱エネルギーを直接電気や運動エネルギーに変換出来れば」
旧べえ「それは僕らのエネルギー問題が完全に解決する事を意味する」
旧べえ「……君は、エネルギー問題にあえぐ僕らを救おうと言うのかい?」
23: 2014/09/29(月) 13:10:02.60 ID:vbkXRYm/0
ほむら「なんやかんや種族レベルではギブ・アンド・テイクの関係だったのは事実ですし」
ほむら「折角”上手くいっていた”関係をぶっ壊すのなら、代案を出さなきゃただのワガママです」
ほむら「それに宇宙の熱的氏なんて、とんでもない重要問題じゃないですか。ほっといたら私達も氏んじゃいますよ」
ほむら「せめて我々が宇宙に飛び出すまでの時間稼ぎはしてもらいませんと」
旧べえ「宇宙に飛び出すまで、か……そう言えば全てを救うと言っていたね」
旧べえ「あの言葉は、ハッタリではないんだね?」
ほむら「さて、どうでしょうか」
ほむら「”あちら”なら兎も角、こちらでは少々難易度が高そうです」
ほむら「ただまぁ、不可能ではありません。道程も、少しは見えています」
ほむら「難題ではありますが、絵空事ではありませんよ」
ほむら(そう、妖精になっていなければ、言えなかったでしょう)
ほむら(妖精となった事で、空間に刻まれた種族の記憶を読み取れたからこそ)
ほむら(彼等の力の本質を、A地球の歴史を知ったからこそ、”可能”だと言える)
24: 2014/09/29(月) 13:16:49.88 ID:vbkXRYm/0
ほむら(……A地球の妖精は、執念じみた憧れで願いを叶えた)
ほむら(そして彼等は人であろうとするがために、自身が持つ万能の力を外へと捨てるようになった)
ほむら(神々すらも超える力と、人でいようとする心を分離させてしまった)
ほむら(そんな力が万物に宿る”心”と結合した時、何が起きるのか)
ほむら(――――万能の力を持った、一つの命が生まれる。それがA地球の”妖精さん”の正体)
ほむら(重要なのは、その力は本来妖精が持っているものであり、妖精が生きている限りいくらでも湧くもの)
ほむら(どれだけ捨てようと、生きている限り、人でいようとする限り心から溢れ続け)
ほむら(周りのあらゆるものを命の定義に引き上げ続ける)
ほむら(ならば必然妖精が存在する限り、辺りに満ちる力の総量は増え続ける。妖精さんがどんどん産まれていく)
ほむら(そして増えすぎた妖精さんはやがて妖精の周りに留まれなくなり、外へと溢れる)
ほむら(溢れた妖精さんは荒れ果てた世界を楽しく開拓し、『人』の住める世界に変えていく)
ほむら(そこに『人』が定着すれば、そこにある自然物や彼等の作った道具から新たな『思考するもの』達が生まれ)
ほむら(捨てた力と結びつき、新たな命を産み出す――――溢れるほどに)
ほむら(そのサイクルが、人類が衰退して千年に満たない期間で、妖精が数千万人まで繁栄出来た仕組み)
ほむら(今や妖精さんが百億、二百億にまで増え、A地球を覆い尽くすようになった理由)
ほむら(例えどんなに大きな壁が立ち塞がろうと、どんなに強固な壁にぶつかろうと)
ほむら(立ち止まった場所で産まれた”命”が、何時か必ずその壁を打ち砕く)
ほむら(それが『妖精』の力。あらゆる”命”と手を取り合える”彼等”だから出来る事)
ほむら(それじゃあ、地球から妖精さんが溢れたなら? 生まれ続けた妖精さんが、いずれ地球に留めておけなくなったら?)
ほむら(……勿論苦労は多いでしょう。星の外は虚空であり、冷たい世界だから)
ほむら(それでもあらゆる壁を打ち砕ける妖精は、いずれ地球を飛び越え、月を乗り越え、オールトの雲を突き抜け)
ほむら(冷たくて寂しい宇宙の全てを、その向こうにある未知なる世界の全てを)
ほむら(楽しさと、温かさと、命で満たしていく)
ほむら(妖精の繁栄は地球なんかじゃ留まらない。これからも大いに、際限なく発展していき)
ほむら(いずれ”世界”は妖精のものとなる)
ほむら(でも、こちらの妖精さんにその方法は使えない)
25: 2014/09/29(月) 13:20:47.31 ID:vbkXRYm/0
ほむら(こちらの妖精さんは、あくまで力そのものが本体。太古の姿を変えていない)
ほむら(向こうが捨てた力によって生じさせた理論を、本体で行うしかない)
ほむら(それでは力の総量は変わらない。力の結合と剥離を繰り返し、力が巡るだけ)
ほむら(こちらの世界の妖精さんが50万人までしか増えられないのはそれが原因。50万まで増えると力が枯渇してしまう)
ほむら(これでは星を、世界を妖精さんで覆う事は出来ない。虚空を温かさで満たせない)
ほむら(これでは全てを救えない)
ほむら(……だったら別の手法を使うまでの事)
ほむら(そう、彼等は”手を取り合う者”であり、”命の多様性を広げる者”)
ほむら(だから――――)
シャル「……ほむら。アイツら、本当に帰った?」
ほむら「……ええ。地球周辺のネットワークでは、もう彼等の存在は検知出来ません」
ほむら「多少の置き土産はあるようですが、ネットワークが遮断されていますし、廃棄されたものでしょう」
ほむら「あの子が言っていたように、地球から完全に撤退したようです」
シャル「……そう」
旧べえ「つまり僕は完全に見捨てられた訳だ。ま、清々するけどね」
まどか「ようやく、全てが終わったんだね……」
巨大さやか『……だけど……』
シャル「……………」
ほむら「さて、これからが忙しくなりますよ」
全員「え?」
26: 2014/09/29(月) 13:23:08.65 ID:vbkXRYm/0
ゲルト「えっと、暁美さん? それはどういう……」
ほむら「どういうって、もう。インキュベーターの話、ちゃんと聞いてました?」
ほむら「癪ですけど今までインキュベーターの助力によって地球の文明は成り立っていたのですよ?」
ほむら「このままだと人類は遠からず全滅です。何かしら手を打たないとダメじゃないですか」
マミ「それはそうかも知れないけど、でも手を打つって言ったって……」
まどか「ほむらちゃんには何か作戦があるの?」
ほむら「作戦というか、方針程度には。まぁ、なんとかなるでしょう」
まどか「なんとかって……」
まどか「……………そっか、なんとかなるのか」
巨大さやか『なんだろうね、ほむらがなんとかなるって言うのなら』
巨大さやか『きっとなんとかなる。そんな気がしてきたよ』
ゲルト「ええ、本当に。なんとかしちゃうんでしょうね」
マミ「お祭り騒ぎになるまで盛り上げながら」
杏子「理不尽に全てをぶっ壊しながら」
旧べえ「不条理に何もかも巻き込みながら」
シャル「だけどとっても楽しく、ね!」
ほむら「勿論。それだけは保障します」
ほむら「さぁ、皆さん! 張り切っていきましょう!」
ほむら「この世界を、もっと楽しくしに!」
……………
…………
………
……
…
27: 2014/09/29(月) 13:28:22.08 ID:vbkXRYm/0
―――― 一ヶ月後 ――――
シャル「えーっと、蜂蜜とヨーグルトと」
まどか「アーモンドにゼラチン、みかんの缶詰」
さやか「砂糖に牛乳にかぼちゃ……って、あたしの荷物だけやたら重くない!?」
シャル「え、今気付いたの?」
まどか「てっきりさやかちゃん、妖精さんパワーのお陰で力持ちになったから重いの持つのを買って出たのかと……」
さやか「いや否定はしませんけどね!? 実際辛くはないけどさ!」
シャル「なら良いじゃん。適材適所よ」
さやか「ちょっとは労わろうって気はないの? それでも友達?」
シャル「さやかを信用してるのよ」
さやか「空虚な言葉だなオイ……」
まどか「もう、二人ともあまりじゃれ合ってないで、早くほむらちゃんのお家に行こうよ」
まどか「折角ほむらちゃんが私達を信じて送り出してくれたんだから、期待に応えないと!」
シャル「信じて送り出したも何も」
さやか「ただの買い出しなんだけど」
まどか「良いの。こういうのは気分が大事なんだから」
まどか「ほむらちゃんに頼まれて買い物だなんて……まるで、ど、同棲している夫婦みたいだよーっ///」
シャルさや(まるでパシリみたい、とか思ってるのは私だけだろうか……)
28: 2014/09/29(月) 13:32:37.78 ID:vbkXRYm/0
シャル「まぁ、確かに最近暑いし、牛乳とかは早く持っていかないと腐りそうよね」
シャル「建物もないから、直射日光もろ当たりだし」
さやか「ワルプルギスで見滝原壊滅だったからねー。何処も滅茶苦茶。あたしの家も半壊」
まどか「こっちの方はまだ家の形が残ってるだけマシみたいだけどね」
まどか「都心部はそれこそ、跡形もないみたいだし」
シャル「思いっきりビルを投げ飛ばしてたからね。そりゃ跡形もないでしょ」
まどか「復興にどれだけ掛かるかな……」
シャル「まぁ、氏者はほむらのお陰で出てないし、”最先端技術”でのサポートもあるし」
シャル「そんなに時間は必要ないでしょ。一年は必要かもだけど」
さやか「……そんな大惨事でも、ほむらの家は完全無傷だったけどね」
さやか「今更だけど、見滝原の人を全員あの家に詰め込めば万事解決だったんじゃないかなー」
シャル「……咄嗟に無理と言えないあたり、私も大分あの不条理世界に毒されたわね」
まどか「あの家、中がどうなっているのか、未だにほむらちゃん以外把握出来てないもんね」
シャル「最近はアイツ自身把握しきれてない気がしなくもないのよねぇ……」
シャル「っと、そうこうしていたら家が見えてきたわね」
\わいわいがやがや/
まどか「……相変わらず、凄い行列」
29: 2014/09/29(月) 13:37:25.82 ID:vbkXRYm/0
シャル「人だけならただ賑やかなだけなんだけどねー」
さやか「大半が、まぁ、その……」
さやか「怪物だからなぁ」
まどか「しかも普通の人には見えない怪物」
まどか「魔女だもんね」
シャル「魔女と魔法少女が一列に並んで、とあるお家に押し寄せる」
シャル「ほむらが”あんな事”しなければ、絶対見られなかった光景よね」
さやか「……いや、本当にアイツはとんでもない事したよね」
まどか「そうだねー……もう三週間も前の話なのに、昨日の、ううん、今さっき起きた出来事のように覚えてる」
シャル「まさか妖精さんパワーで公共・軍事用・アマチュア用のあらゆるネットワークを乗っ取り」
シャル「全世界に魔女と魔法少女、ついでに妖精さんの事を公表した時には、流石に驚いたわ」
シャル「お陰で今や世界中から魔女や魔法少女がうちにやってくる始末」
シャル「妖精さんパワーで人間に戻りたいって、忙しいったらありゃしないわ」
さやか「一ヶ月前にアイツがいいんちょちゃんに、家に帰っても騒ぎにならないって言った理由がよく分かったよ」
さやか「そりゃ世界中で魔法少女が現実にものになり」
さやか「その魔法少女の末路達が全員正気を取り戻した挙句、人間の姿に戻って表舞台に出てきたんだもん」
さやか「しかもそれを可能にしたのは自称全宇宙最高の科学力を持った妖精さんとそのお友達」
さやか「こんな大騒ぎの中じゃ、行方不明になった女の子が一人家に帰ったなんて事件のうちに入らないよね」
まどか「理解不能な事を一気に捲し立てて、相手がポカンとしているうちに全てを終わらせる」
まどか「ほむらちゃんらしいと言うかなんというか……」
シャル「しかも世界規模で。思い付いてもやらないっつーの普通」
さやか「ま、それを手伝おうとするあたし達も、もう普通側じゃないんだろうけどね」
さやか「この買い物も、魔女や魔法少女を元に戻している妖精さんのモチベ意地のために使われるお菓子の材料だし」
シャル「そうかもね」
30: 2014/09/29(月) 13:39:01.80 ID:vbkXRYm/0
シャル「さて、それじゃそろそろ家に入って――――」
シャル「……ん?」
まどか「? どうしたの?」
シャル「いや、何かしら……気の所為かも知れないけど」
シャル「この列、全然前に進んでないような……」
さやか「ああ、確かに。でもそれは単に一人一人時間がかかって……いや、それはないか」
まどか「魔女を人間に戻す時は別でも、魔法少女を人間に戻す時はほんの数秒で終わる筈だし」
まどか「それに杏子ちゃんやマミさん、ゲルトルートさんも居るから、今まで結構サクサクと進んでいたよね」
まどか「確かに、ちょっと変かも……」
杏子「ちくしょう! 一体何処に行ったんだっ!」バンッ
さやか「うわっ!? 杏子ちゃん!?」
杏子「え、あ、さやか様! すみません、驚かせちゃって」
さやか「いや、それは良いけど……どうしたの?」
杏子「えっと、その」
杏子「ほ、ほむらの奴、見ませんでしたか?」
さやか「ほむら? いや、見てないけど……」
シャル「……まさか、居ないの?」
杏子「……ああ、中々列が進まないと思って部屋を見たら、姿が消えていたんだ」
杏子「しかも妖精さんも一緒に」
31: 2014/09/29(月) 13:41:41.96 ID:vbkXRYm/0
まどか「どういう事……?」
シャル「自分を待っている魔女や魔法少女を前にして、ふらりと何処かに出掛けるなんて考えにくいわね……」
シャル「魔女とか魔法少女に関しては、あまりサボろうとしないし……」
さやか「――――まさか、過激派?」
まどか「え?」
さやか「朝、テレビでやってたんだ」
さやか「妖精さんパワーの凄まじさに脅威を感じた人達が、妖精さん排斥運動ってのをやってたって」
さやか「そんで、なんとかって組織のリーダーが言ってたんだけど」
さやか「妖精が人類に干渉を続けるなら、実力行使も辞さないって……」
まどか「!? じ、実力行使!?」
シャル「……ネットで見た事があるわね。妖精排斥運動過激派」
シャル「人間賛歌を謳う、と言えば聞こえは良いけど、実態は人間至上主義者の集まり」
シャル「彼等にとって人間以外の、例えば自然、あと特定の人種は資源であり利用すべきもの」
シャル「そんな思想を根底から覆す妖精さんの存在は、彼等にとって絶対的な敵らしいわね」
シャル「一応魔女や魔法少女も対象みたいだけど、とりあえずは妖精さんが一番の標的みたいで」
シャル「人間の優秀さを示すために”実力行使”に出るという予想は、確かにあったわ」
まどか「その実力行使って……」
杏子「十中八九テロだな」
杏子「もし連中の仕業なら、ほむらや妖精さんを拉致して」
杏子「観衆の前で公開処刑しようとしている、とかか?」
シャル「思想が思想だけに否定出来ないわね……人間じゃないと認識した相手になら、なんでも出来るのが”人間”だもの」
まどか「そんな……!」
さやか「お、落ち着こうまどか! 言い出しっぺのあたしが言うのもなんだけど、ただの推測で……」
32: 2014/09/29(月) 13:42:34.82 ID:vbkXRYm/0
マミ「た、大変よ佐倉さん!」
ゲルト「大変ですーっ!」
まどか「っ!? ま、マミさん!?」
マミ「あ、鹿目さん! 丁度いいところに!」
マミ「もう、佐倉さんから話は聞いた?」
まどか「え、ええ。ほむらちゃんが居なくなったって」
ゲルト「実は部屋に、こんなメモが残されていたんです」
シャル「メモ?」
さやか「ま、まさか犯行声明……?」
ゲルト「? えっと、これがそのメモなんですけど……」
杏子「……どれどれ……」
33: 2014/09/29(月) 13:43:39.37 ID:vbkXRYm/0
ちょっと疲れたので、妖精さん達を連れて休憩に行ってきます。
一時間ほどで帰ってくるつもりなので、
魔女さん達と適当にお茶会でも開いて楽しんでいてくださいね♪
PS:決して飽きたって訳じゃありません
34: 2014/09/29(月) 13:44:27.64 ID:vbkXRYm/0
シャル「……………」
まどか「……………」
さやか「……………」
杏子「……………」
マミ「……………」
ゲルト「……………」
シャまさ杏「ただのサボりじゃ―――――――――――――んっ!?」
35: 2014/09/29(月) 13:47:14.65 ID:vbkXRYm/0
じゃーん じゃーん じゃー……
ほむら「おっと、鹿目さん達の叫び声。どうやらメモを読んだようですね」
ほむら「魔女さんや魔法少女さんを人間に戻すのは大切な事ですが」
ほむら「『こころぽかぽかー』で絶望を取り払った今、急ぐ必要はなくなりましたからね」
ほむら「適度に休憩を挟まないと♪」
妖精さん「おてがみたべた?」
ほむら「一応あのメモは食べられる素材にしてはみましたけど、食べるかどうかは分かりませんねー」
ほむら「それはそうと、どうですか妖精さん」
ほむら「私お手製の電波遮断スーツの着心地は」
妖精さん「せまいながらもいごこちのよいわがやですな?」
ほむら「スーツはお家にするものじゃないでしょ。それに我が家というより生まれ故郷かと」
妖精さん「じもとのおうえんしたーい」
ほむら「とりあえず、当面はそれで我慢していてください」
ほむら「人間の作った電波は本当に空気を読みませんからね。ウザいったらありゃしない」
ほむら「そのうち、妖精さんに優しい電波に変えてもらいませんと」
ほむら(……いずれ妖精さんと人間が共に生きていくためにも)
ほむら(A地球の妖精が手に入れられなかった”未来”を手にするためにも)
ほむら「っと、人気を避けていたら森に入っちゃいましたね」
ほむら「まぁ、こういう静かな環境の方が気分転換には良いですし、しばらくぼーっと過ごすのも――――」
36: 2014/09/29(月) 13:49:17.53 ID:vbkXRYm/0
――――なにかきた
――――なんかきたきた
――――へんなの、きたきた
妖精さん「ぴーっ!?」ピュン
ほむら「……悪くないと思ったんですけどねぇ。妖精さん、隠れちゃいましたか」
ほむら「そこの草むらに隠れている人、出てらっしゃい」
ほむら「出てこないとこっちに引っ張り出しますよ?」
少女「……………」ガサッ
ほむら(あら、随分と小さな女の子。恰好はなんかボロボロで、みすぼらしいですけど)
ほむら「どうしました? なんか恰好が随分と……」
少女「こ、来ないで!」バッ
ほむら(? 何か宝石みたいなのを取り出して――――って、あれ、ソウルジェムじゃないですか)
ほむら(という事は、魔法少女ですか)
ほむら「落ち着いてください。私は敵じゃありません」
ほむら「ほら、テレビとかで聞いてませんか? 暁美ほむらという名前」
少女「知らない……もう一ヵ月、テレビなんて見てない……」
少女「ソウルジェムが黒くなって、嫌な予感がして誰もいない場所に逃げて」
少女「なのにいきなりソウルジェムが綺麗になって」
少女「魔女を狩ろうとしたら魔法少女っぽいのに妨害されるし」
少女「もう、何がなんだか……」
ほむら(めっちゃタイミング悪い時に『こころぽかぽかー』の効力を受けたんですね……)
37: 2014/09/29(月) 13:51:05.34 ID:vbkXRYm/0
ほむら「うーん、何から説明したものか――――」
――――とっつげきー
ほむら「しゃがみっと」スッ
ヒュンッ
少女「!? な、何? 何なの!?」
「馬鹿な!? 拳銃の弾を避けるなんて!」
「偶然に決まってる! もう一発――――」
ほむら「なんだか知りませんが、つまーれ」ミョンミョンミョン
「!? 弾が詰まった!」
「糞! こうなったら直接仕留める!」
少女「! 木の影から、大人が……男の人……」
ほむら「全く。いきなり発砲だなんて物騒な」
ほむら「あなた達、あれですか? 最近テレビでやってる妖精さんの過激派だかなんだかの人」
ほむら「見たところ外国の方のようですけど、遠路はるばるご苦労な事です」
ほむら「持ち込んだのか購入したのかは知りませんけど、日本で拳銃を手にするのは大変だったでしょう」
男A「……やるぞ」
男B「ああ」チャキ
ほむら「あらあら、こちらを無視してナイフを取り出す。お話したいのに」
ほむら「……ひょっとして、こちらの小さな女の子も殺そうとしている、なんて事はありませんよね?」
少女「え……?」
男A「当然だ」
男B「その宝石……魔法少女の証だな」
男B「人間のためにも、危険な化け物は駆除するだけだ」
少女「え、え……?」
38: 2014/09/29(月) 14:02:38.17 ID:vbkXRYm/0
ほむら「あのー、こんな不毛な戦いはやめませんかねー?」
ほむら「”我々”妖精は人間の皆さんと仲良くしたいと思っています。攻撃的な意思は持ち合わせておりません」
ほむら「事実我々の技術の一部は既に人類側に提供してあり、それはこの見滝原の復興に役立てられる筈です」
ほむら「手を取り合い、共に発展していきたいと思うのですが……」
男A「ふん、お前たちの力など必要ない」
男B「人間の力を嘗めるな。お前達がいなくても、人間は進歩していけるんだからな」
ほむら「……嘗めるなもなにも、絶滅しちゃったくせに。進歩は途中で頭打ちになってたし」
ほむら「自分に出来る事と出来ない事が分からない人って、最後は結局自滅するって知らないんですかね……」
ほむら「ま、私は肉体的にはいくらでも替えが利くので切られても平気ですけど」
ほむら「流石にこんな小さな子を切らせる訳にはいきませんね」
ほむら「ワガママな大人には退場願いましょう」
男A「ふん、道具を作る時間を与えると思って――――!?」
男B「な、なんだ!?」
男A「雑草が、足に絡み付いて……!?」
ほむら「時間は与えられるものではありません。作るものです」
ほむら「えーっと、落ち葉と土を混ぜてー丸めてーこねこねーっと」
ほむら「あとはその辺に落ちていた空き瓶にさらさらっと入れて、シェイクシェイク~」
ほむら「完成! 私お手製妖精さんアイテム『大進化栄養剤』~♪」
ほむら「これを、どばどばーっと地面にたらせばー」
40: 2014/09/29(月) 14:05:49.57 ID:vbkXRYm/0
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
少女「……え、何? 何?」
少女「なんか、地面が揺れて……」
――――ドゴォッ!!
少女「って、じ、地面から大量の根っこがあああああああああああああああっ!?」
男A「な、なんだこりゃああああああああああ!?」
男B「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ほむら「『大進化栄養剤』は浴びた生物の細胞分裂を活性化」
ほむら「突然変異と個体内淘汰を経る事で通常の数十億倍の速度で進化を促し、驚異の生命体を誕生させる」
ほむら「バイオでハザードな事態が起きる事必須の超危険アイテムです♪」
少女「超危険ならなんで使ったのおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。あの男の人達を懲らしめる目的で使っただけですし」
ほむら「流石にそろそろ効き目が切れる筈ですし」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ウワー、ショクブツガー、ネガー
ほむら「……ええ、そろそろ」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ギャー、ナンカクチガハエテ、ヒーッ
ほむら「………………」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ グェーッ、ニゲラレナイー、ギャア
ほむら「……………やば。ちょっと使い過ぎたかも」
少女「使い過ぎたかも、じゃないでしょおおおおおおおおおおおおお!?」
少女「なんかもう色々可笑しいでしょ! 高さ100メートル近くまで育ってるし!」
少女「口とかあるし! 触手がたくさん生えてるし!」
少女「ぶっちゃけビオ○ンテじゃない!」
ほむら「しかも植獣形態の方ですね。ほぼ動物」
少女「何がどう進化したらこうなるの!?」
ほむら「さぁ? 生物の可能性は無限大って事なんでしょう」
ほむら「でもこれ以上進化されると色々不味い気がするので、そろそろ大人しくしてもら」
しゅるるるるるるるっ!
ほむら「うわー、蔓が伸びてきてつかまったー(棒読み)」
少女「ちょ、な、ちょおおおおおおおおおおお!?」
41: 2014/09/29(月) 14:07:19.82 ID:vbkXRYm/0
少女「何自分で生み出した怪物に捕まってんの!? 馬鹿なの!? 氏ぬの!? というか氏亡フラグじゃない!」
ほむら「いやですーしにたくないですーたすけてくださーい」
少女「本当に助けてほしいならもう少し緊張感を持って叫んでよ!?」
少女「大体こんな大きな植物の怪物にどう立ち向かえば良いって言うの!?」
ほむら「あ、これあなた用の武器である伝説の聖剣です。私のハンドメイドですよー」ポイ
少女「ひゃあっ?! 私の傍に投げてきて危な……って、手元にあるならそれで自分を縛ってるの切ってよ!?」
男A「ひぃぃぃぃぃ! たすけてくれぇぇぇぇぇ!?」
男B「誰かああああああっ!」
ほむら「わー、怪植物が町に向けて侵攻を始めましたー……あ、あっちの方が人口多いから、その方が盛り上がりが」
少女「今指示したよね!? もろに指示出したよね!?」
男×2「たすけてくれえええええええええええええっ!!」
少女「五月蝿い! 大の大人が泣き叫ぶなっ!」
ほむら「さぁ、見滝原の危機を救えるのはあなただけです!」
ほむら「今こそ魔法少女から伝説の騎士にランクアップするのですよっ!」
少女「うっがああああああああああああああ!! 分かったわよ! やればいいんでしょ!」
少女「言われた通り魔法少女を止めて――――」
少女「伝説の騎士になって、とりあえずこの植物怪獣もろともアンタもぶった切る!」
ほむら「あ、一応私一時間休憩してる事になってるので、あと三十分ぐらいで片付けてくださいね?」
少女「知るかあああああああああああああああああああああっ!」
42: 2014/09/29(月) 14:08:49.84 ID:vbkXRYm/0
それから見知らぬ魔法少女さんは、巨大怪植物との戦いを始めました。
体格差もあって中々不利だったようですが、途中この怪物の存在に気付いた鹿目さん達が駆けつけて
助太刀してくれたのでなんとかなりました。
捕まっていた男の人達もすっかり私達に平伏したようで、もう過激な事はしないと思います。
あと、その魔法少女さんですが、なんか見滝原の英雄に祭り上げられていました。怪獣を倒した伝説の騎士として。
これから彼女がただの人間に戻るのか、それとも伝説の騎士のままでいるのかは彼女次第。
こっそりソウルジェムを身体に戻しておいたので、魔法少女にはなれないでしょうけどね。
そんなところです。
43: 2014/09/29(月) 14:37:29.83 ID:vbkXRYm/0
魔法少女は本日も、絶賛衰退中。
45: 2014/09/29(月) 14:44:54.20 ID:vbkXRYm/0
このお話はここまで!
ようやく辿り着きました、えぴろーぐ。最終回。
最後の一節、投稿中でも色々言葉を付け足したり削除したりしていたけど、結局一言に落ち着きました。
たぶんこれがいちばんいいとおもいます。
【エンディングについて】
9巻発売前までは、エンディングは「キュゥべえ撤退後人類は衰退しちゃったけど楽しいし、それも悪くないよね?」
という感じでした。はい、人退世界の過去話というつもりで書いていたんです。
んで、9巻で人類と妖精さんの歴史が明かされました。いぇーい。方向転換の理由がこれでござる。
【ほむらの宇宙云々について】
ほむらと言うか、>>1の人退世界の未来予想図という名の妄想。
今は旧人類の遺産で繁栄している妖精ですが、そのうち自分達の足で立ち、進まなければならない日がくる。
それはとっても大変だけど、妖精と妖精さんなら、きっとなんとかしちゃうのだろう。
パイオニアさん達が暗くて寂しくて冷たいと言っていた宇宙が、地球みたいに温かくて面白おかしい世界になったら素敵だなぁ。
そんな、あったらいいなという妄想をそのままぶつけました。
そんなこんなで色々ありましたが、どうにか終わりまで書けました。
途中から書き溜めなしの突貫工事故シナリオの矛盾やいい加減さが生じるなど、初心者にしたって酷い手際の悪さが
目立ったと思いますが、こんな作品でも少しでも面白いと思ってもらえたら幸いです。
もっと感謝の言葉を言いたいけれど、こういう時に言葉が思い付かない自分の文章力の乏しさが泣ける。
なので最後はシンプルに。
今まで読んでいただきありがとうございました。
次回作でお会いする事がありましたら、その時は感想なり叱責なりを書いてやってください。
びくんびくん震えながら意欲を滾らせ、妄想を滾らせようと思います。
それではさよならっ!
まぁ、おまけがあるけどね
【まどマギ×人退】魔法少女は衰退しました【らすとしーずん】
46: 2014/09/29(月) 14:48:18.83 ID:xBB5TELdo
乙乙
本当に面白かったです。
被害が出なくても規模の大きい(しかも誰が得してるのかわからない)ことしてたら反発もあるよね
番外編待ってます
本当に面白かったです。
被害が出なくても規模の大きい(しかも誰が得してるのかわからない)ことしてたら反発もあるよね
番外編待ってます
47: 2014/09/29(月) 15:01:54.58 ID:QERAPs9Ro
乙です



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