1: 2024/07/26(金) 19:00:00 ID:???00
ミーンミンミン…ジージージー…

吟子「はぁ……今日も暑いなぁ。夏、だからだけど……」

ガヤガヤ

「週末の花火大会、楽しみだよねー!」

「本当それ! 私、そのために浴衣買っちゃった!」

吟子「……あ、そっか。今週末、花火大会があるんだっけ」

吟子「……私は…………」


小鈴「──ぎーんこちゃん!」バッ

姫芽「吟子ちゃん~、今いい~?」ヒョコッ

吟子「!? こ、小鈴、姫芽!? え、何、どうしたの……?」

小鈴「吟子ちゃんにお願いがあって、不詳、徒町ここに参上しました!」ビシッ

姫芽「うんうん、吟子ちゃん、あのね~……」

「「週末の花火大会、一緒に行かない?」」

2: 2024/07/26(金) 19:02:02 ID:???00
吟子「! ……花火大会?」

小鈴「うん! 最近、クラスの人もよく話してるよね!」

姫芽「大きな花火が打ち上がる上に、何と、屋台まであると聞いてね~」

吟子「それで……えと、何で私を……?」

小鈴「? お友達と一緒に行きたいって思うのは普通のことだよ?」

吟子「友達……」

姫芽「吟子ちゃんは~、大切なお友達だもんね~」

姫芽「それに、前、配信で吟子ちゃんが『蓮ノ空のみんなで行きたい』って言ってたのも忘れてないよ~」ニッ

吟子「! 配信、見てくれてたんだ」

姫芽「そりゃあ、もちろんですとも~」フフッ

3: 2024/07/26(金) 19:04:02 ID:???00
小鈴「それに、ね! 徒町、この三人で、“夏の思い出”を作りたいんだ!」

小鈴「せっかく同じ部活で、こんなに仲良くなれたんだもん! 思い出を作る、徒町チャレンジ!」グッ

姫芽「うんうん。ほら、私たちの夏だー、ってやつだよ~」

吟子「えっと……」

小鈴「徒町、吟子ちゃんと一緒に行きたいな! ……ダメ、かな?」

4: 2024/07/26(金) 19:06:05 ID:???00
吟子「……そ、そんな頼み方されたら、断れんし……」

小鈴「! それじゃあ……!」

吟子「うん、いいよ……花火大会、一緒に行こ」

小鈴「吟子ちゃん……!」パァァ

姫芽「やった~、吟子ちゃんが仲間に加わった、なんてね」ニコニコ

吟子「二人と一緒の、花火大会……」ボソッ

吟子(なんでだろう……すごく、楽しみかもしれない)

5: 2024/07/26(金) 19:08:02 ID:???00
────

吟子「えっと……集合場所は、ここだったはず……」キョロキョロ

吟子(お友達と行くって、ばあばに伝えたら……押し入れの奥から、お祭り用に仕立てられたという豪勢な浴衣まで貸してもらえて)

吟子「へ、変じゃないかな……なんか、気合い入りすぎてる人みたいやし……」

「あ! 吟子ちゃーん!」

「吟子ちゃん、発見~」

吟子「! 小鈴、姫芽! こんばんは……って」

吟子「二人とも、浴衣なんだね」

6: 2024/07/26(金) 19:10:04 ID:???00
姫芽「そういう吟子ちゃんだって~」

小鈴「うんうん! 吟子ちゃんの浴衣、すっごく綺麗だよ!」

吟子「そ、そう? 変じゃないかな……」

小鈴「変じゃないよ! 吟子ちゃんにとっても似合ってて、可愛い!」

姫芽「マジ雅~って感じで、可愛いよ~吟子ちゃん」

吟子「あ、あんやと……//」テレ

7: 2024/07/26(金) 19:12:03 ID:???00
吟子「えっと、二人だって……浴衣、すごく似合ってると思う」

吟子(小鈴も、姫芽も、二人の雰囲気にピッタリあった浴衣を着ていて……綺麗で、可愛い)

小鈴「本当!? 吟子ちゃんに褒めてもらえるなんて、徒町、すっごく嬉しい!」ニコッ

姫芽「アタシも~。お着物とかに詳しい吟子ちゃんからの称賛コメントなんて、それだけで一気にテンション上がっちゃうよ~」

吟子「ど、どういたしまして……? でいいのかな……」

8: 2024/07/26(金) 19:14:04 ID:???00
吟子「……えっと、それじゃあ……お祭り、見に行こっか」

姫芽「そうだね~。花火大会、探索開始~! お~!」グッ

小鈴「おー!」グッ

吟子「お、おー?」

9: 2024/07/26(金) 19:16:04 ID:???00
────

姫芽「ん~……花火が始まるまでは、まだ結構時間があるみたいだね。何しよっか~」

吟子「えっと……とりあえず、屋台でも見て周る?」

小鈴「徒町も、屋台に行きたい! さっきから美味しそうな匂いが、辺りからしてきて……徒町、お腹が空いてきちゃった……!」

姫芽「お、いいね~。腹が減ってはなんとやら~、ってやつだ」

10: 2024/07/26(金) 19:18:05 ID:???00
吟子「そうだね。……でも屋台の数が多いし、どこから見ればいいか……」

姫芽「たくさんあって迷っちゃうよね~」

小鈴「! それなら、徒町にお任せあれ、だよ!」バッ

吟子「小鈴?」

小鈴「二人のためにも、徒町が美味しそうな屋台をいち早く見つける……徒町チャレンジ! ちぇすとー!」ダッ

吟子「小鈴!? 走ると危ない……って、行っちゃった……」

11: 2024/07/26(金) 19:20:02 ID:???00
姫芽「元気だね~、さすが小鈴ちゃんだ~」

吟子「本当……小鈴は、いつも目の前のことに一直線だよね」

吟子(そんな小鈴の明るさに、私も、はげまされることが多いんだけど)

姫芽「うんうん、そこがまた小鈴ちゃんらしいよね~……ん?」タッタッ

吟子「……姫芽?」

姫芽「お~、良いの発見~♪ 一つくださいな~」

12: 2024/07/26(金) 19:22:05 ID:???00
吟子「姫芽、何か買ったの?」

姫芽「ふっふっふっ~、これを見たまえ~」

吟子「それは……」

姫芽「じゃじゃーん~! るりちゃんせんぱいが、前に配信で好きだって言ってた、チョコバナナ~!」

13: 2024/07/26(金) 19:24:02 ID:???00
姫芽「いや~、あの配信で聞いてからずっと食べたかったんだよね~」

姫芽「最近の配信でるりちゃんせんぱいが言ってた、じゃがバターと焼きそばも手に入れたいところではあるし……そっちも探してみようかな~」ウンウン

吟子「えっと……瑠璃乃先輩と同じものが、姫芽は好きなの?」

姫芽「え? ん~、というか推しの好きなものを食べるのが、オタクとしての習性というか~」

吟子「?? 推しの好きなものを食べる?」

14: 2024/07/26(金) 19:26:03 ID:???00
姫芽「そうそう、推しが食べたものと一緒のものを口にすることも、推し活の一つであって、これがまた楽しいんだよね~」

吟子「そういうものなんだ……」

吟子(推しの好きな食べ物……)

『特技は好き嫌いがないことかな!』

吟子(っ~!? ……/// なんで今、あの先輩のことを考えて……///)

15: 2024/07/26(金) 19:28:01 ID:???00
姫芽「! あれ~、吟子ちゃん、なんだか顔が赤いのでは~?」

吟子「ひ、姫芽!? そ、そんなことないし……」プイッ

姫芽「……花帆せんぱいのこと、考えてたんでしょ~?」

吟子「!?!?」

16: 2024/07/26(金) 19:30:03 ID:???00
吟子「姫芽!? いきなり何言っとるん!?///」

姫芽「そっかそっか~、吟子ちゃん、花帆せんぱいが“推し”だもんね~」

吟子「違っ……! あれは配信のコメントにあったから、それで……」

姫芽「うんうん、そうだね~」ニコニコ

吟子「姫芽ってば! 本当に違くて……」

小鈴「──ねぇねぇ、二人とも! あっちにかき氷の屋台があって……」タッタッ

小鈴「? 吟子ちゃん、顔真っ赤だよ、大丈夫?」

吟子「んん、だ、大丈夫だから……! ほら、その屋台見に行こ!」

17: 2024/07/26(金) 19:32:03 ID:???00
────

小鈴「ここが、そのかき氷の屋台! いろんな味が売ってるんだって!」

姫芽「かき氷……夏、って感じだね~」

吟子「確かに、夏以外じゃあまり食べないものだよね」

小鈴「うん! だからこそこの機会に……徒町、このかき氷でチャレンジに挑みたいと思います!」グッ

18: 2024/07/26(金) 19:34:03 ID:???00
吟子「チャレンジ……かき氷で?」

姫芽「どんなチャレンジなの~、小鈴ちゃん?」


小鈴「今回の徒町チャレンジは、題して── かき氷、早食いチャレンジ、です!」

19: 2024/07/26(金) 19:36:02 ID:???00
────

小鈴「ルールは簡単! かき氷を早く食べること、これが全て!」

姫芽「よーし、アタシも頑張っちゃいますか~」

吟子「……姫芽もやるの?」

姫芽「ゲーム性があるなら、望むところだからね~」ニッ

吟子「…………氷室饅頭のときの二の舞にならないといいけど……」

20: 2024/07/26(金) 19:38:04 ID:???00
小鈴「3、2、1……」

小鈴「──チャレンジ、スタート! ちぇすとー!」

姫芽「がぼー!!」

吟子「絶対、ゆっくり食べた方が美味しいと思うけど……」

小鈴「それでも! これは徒町の、チャレンジ、だから!」シャクシャク

姫芽「がぼー!!」シャクシャク

小鈴「──っ! う……頭が……」キーン

吟子「言わんこっちゃない……」ハァ

21: 2024/07/26(金) 19:40:03 ID:???00
小鈴「うぅ……徒町チャレンジ失敗……ゆっくり食べます……」シャク

吟子「うん、その方がいいと思う……それじゃ、私も食べようかな」シャク

吟子「……! 美味しい……」

小鈴「だよねだよね! 徒町もそう思う!」シャク

22: 2024/07/26(金) 19:42:05 ID:???00
姫芽「んー♪ 美味しかった~」ペロリ

小鈴「あ、姫芽ちゃん、食べ終わっちゃった? ごめんね、徒町、もう少し時間がかかるかも……」

吟子「私も……今食べ始めたところだし……」

姫芽「んーん、気にしなくても大丈夫だよ~。かき氷を食べてる二人のことを見ながら、待ってるから~」ジー

姫芽「……ん~?」

23: 2024/07/26(金) 19:44:02 ID:???00
姫芽「小鈴ちゃん、小鈴ちゃん~」チョンチョン

小鈴「? どうしたの姫芽ちゃん?」

姫芽「ふふっ、小鈴ちゃんの舌、綺麗に染まってるね~」

小鈴「舌? ……あ、本当だ!」

小鈴「見てみて、吟子ちゃん! 徒町の舌、真っ青だよ!」ベー

吟子「そっか、かき氷を食べたから……本当、綺麗な青……」

24: 2024/07/26(金) 19:46:02 ID:???00
姫芽「うんうん、それじゃ、アタシの舌も~」ベー

小鈴「わぁ! ビビッドピンクの色だ!」

姫芽「……ねぇねぇ、吟子ちゃんも見せてよ~」ギュッ

吟子「え? や、やだよ、恥ずかしいし……」プイッ

25: 2024/07/26(金) 19:48:06 ID:???00
姫芽「ん~……でも、吟子ちゃんはアタシたちの舌を見たんだし、吟子ちゃんも舌を見せるのが、道理じゃない~?」

吟子「何その理屈……」

小鈴「せっかくなら、徒町も、吟子ちゃんの舌見たいかも!」

吟子「えぇ……? 何で……?」

姫芽「吟子ちゃん~。よいではないか、よいではないか~」スリスリ

吟子「……そのノリ、別に乗らないからね?」ハァ

姫芽「え~、そんなぁ……」ショボン

26: 2024/07/26(金) 19:50:02 ID:???00
吟子「そ、そんなにガッカリせんても……」

姫芽「だって~……」シュン

吟子「…………ちょっとだけ、なら……」ボソッ

姫芽「……え?」

吟子「そこまで言うなら、少しだけならいい……よ。ほ、ほら!///」ベー

27: 2024/07/26(金) 19:52:01 ID:???00
小鈴「あ! 吟子ちゃんの舌、オレンジ色だ!」

姫芽「ふふ~、吟子ちゃんにこうも照れながら舌を見せられると、背徳感が感じられていいね~」

吟子「な……姫芽、最初からそのつもりで……」

28: 2024/07/26(金) 19:54:07 ID:???00
姫芽「あはは~、やっぱり、吟子ちゃんは可愛いね~」ニヤニヤ

小鈴「うんうん! 恥ずかしがる吟子ちゃんも、可愛い!」

吟子「も、もう! 二人とも揶揄わないで!///」

吟子(二人といると、普段よりも羽目を外しがちで……なんだか調子が狂ってばっかり)ハァ

吟子(でも……)

吟子「……楽しい、な」フフッ

29: 2024/07/26(金) 19:56:02 ID:???00
────

小鈴「──そろそろ、花火の開始時刻かな?」

吟子「そうだね。花火を見られる場所も、なんとか確保できたし……後は待つだけかな」

姫芽「吟子ちゃんが教えてくれたから、混む前に座れてよかった~。ありがと、吟子ちゃん~」ニッ

吟子「べ、別に……昔、家族と何度もこの花火大会に来たことがあったから……それくらい、大したことじゃないって」

小鈴「それでもやはり、吟子ちゃんにはお礼を言わなくては! ありがとう、吟子ちゃん!」ニコッ

吟子「……ど、どういたしまして//」テレッ

30: 2024/07/26(金) 19:58:03 ID:???00
小鈴「……あ! 花火、始まるみたい!」


ヒュー……バーン‼︎

吟子「! 綺麗……」

姫芽「本当だね~……どんなゲームよりも高画質、高フレームだ」ウンウン

小鈴「うわぁ……! 徒町、こんなに綺麗な花火、初めて見たかも……! すごい、すごい!」

吟子「…………」チラッ

吟子(……ふと周りを見渡すと、二人と一緒にいるこの光景が、時間が、なんだか愛おしく感じて)


吟子「……また、みんなで来れたらいいね」

吟子(そんな気持ちをつい、こぼしていた)

31: 2024/07/26(金) 20:00:02 ID:???00
姫芽「──吟子ちゃん」ギュッ

吟子「ひ、姫芽?」

姫芽「来れたら、じゃなくて……絶対、だよ~」

吟子「……え?」

小鈴「そうだよ! 徒町だって、吟子ちゃん、それに姫芽ちゃんと一緒に、来年もその先も一緒にいたいし!」ニコッ

32: 2024/07/26(金) 20:02:02 ID:???00
吟子「い、いいの?」

小鈴「もちろんだよ! 来年も再来年も、この三人で一緒に行こうよ!」

姫芽「うんうん、こういうのは毎年の恒例イベントにしなきゃね~」

吟子「二人とも……」

吟子(花火大会に誘ってくれて、まだ遠い先のことまで約束してくれる)

吟子(こんな素敵な友達ができるなんて……蓮ノ空に来るまで、思いもしなかった)

33: 2024/07/26(金) 20:04:02 ID:???00
姫芽「いや~、最高の夏の思い出、作れたんじゃない~?」フフッ

小鈴「徒町もそう思う! 来年からも、こんな夏を三人で過ごすぞー、ちぇすとー!」グッ

吟子「ふふっ、そうだね」クスッ

吟子(また、こんな夏を……二人と一緒に、過ごしたいな)


おしまい

引用: 【SS】吟子「私たち、104期生の夏」