1:◆v5iNaFrKLk 2015/10/31(土) 09:13:31.33 ID:FLXz5hHmO

夕張 ボーッ

由良「どうしたのよ、ボーッとして」

夕張「……パルサーの四連スロットル付けたいなぁって」

由良「ああ、そう。でもね……」


由良「今戦闘中!」


※注意※

・艦これ×クルマ&バイクのSS

・趣味満載、キャラ崩壊有り

・実在の個人名、団体とは一切関係ありません

作中における公道での競争・暴走行為は違法です。
危険ですので絶対に真似しないでください。


もし良ければお付き合いください。


※一応前スレ
夕張「クルマ買いました!」



艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)

2: 2015/10/31(土) 09:33:13.18 ID:FLXz5hHmO

工厰

夕張「ふむ、こんな感じかしら」

由良「今度は何したのよ」

夕張「足回りの調整しただけよ」

由良「ふーん?」

夕張「もうちょいトラクションが欲しくて、車高は勿論アライメントの見直しからマルチリンクスペーサーとかetc」

由良「もういいもういい、分かった」

夕張「大きな羽根でも着けたらまた違うんだろうけど、今の見た目を崩したくないのよね」

由良「見た目、ねぇ」


夕張の180SX

イ工口ーの後期型。
カーボンボンネットとMA70スープラ用ターボAダクトを装備した以外は純正フルエアロ。
純正流用品や自作パーツを駆使してあちこち手を入れている。
約320馬力を発生。


3: 2015/10/31(土) 09:48:46.44 ID:FLXz5hHmO

由良「で、どうせまた何か企んでいるんでしょ」

夕張「企むなんて人聞きの悪い。あくまでエンジニアの一環として……」

由良「エンジニアじゃなくて艦娘よ、アンタも」

夕張「だってぇ、最近川内がやたら速くなっちゃったし」

由良「アンタらはホントに何がしたいの」

夕張「一応走りの歴では私の方が上だし。負けるわけにいかないじゃない」

由良「そういうことを言っているんじゃないの」

夕張「でも川内のMR2はホントに速いよ?」

由良「聞いてないから」

夕張「やっぱりミッドシップよねぇ……立ち上がりで置いていかれるのよ」

由良「普通に語り始めるな、暴走族」

夕張「あ、でも突っ込みは負けてないよっ」

由良「今のアンタの言動には突っ込み所しかないわよ」

夕張「ワンエイティは所詮スペシャリティカーだからね。加速じゃリーフに負けちゃうし」

由良「それCMの話でしょ」

4: 2015/10/31(土) 10:16:45.80 ID:FLXz5hHmO

某ワインディング

川内「えーっ?もう終わりなの?」

「勘弁してくれ……誰もアンタには敵わないよ」

川内「別に勝負がしたいんじゃなくて、ただ夜戦が楽しめればいいんだけどなぁ」

「………」

川内「ま、いいや。行こっ、江風」

江風「うっす」

バンッ ブォーン

「あれが最近噂のMR2か……」
「スゲー可愛かったな」
「冗談じゃねぇ」


江風「ここいらじゃすっかり敵無しッスね」

川内「うーん……別にマンガじゃないんだからさ。最速になりたいとか、そういうんじゃないんだけどね」

江風「いや、している事は道場破りと変わんないって」

川内「そう?一人で走るのもツマンナイから、一緒に走ってってお願いしただけなのに」

江風「そりゃあんだけ大差つけられたら、相手なんか居なくなるよ」

川内「大体さっ。あんな立派なクルマに乗っておいて、皆全然遅いんだもん」

江風「川内さんが速すぎるんだよ。最近じゃ黒い悪魔なんて呼ばれてるみたいだし」

川内「なにその子供っぽいアダ名」

江風「あとステルス爆撃機とか」

川内「私は軽巡だっての」

江風「そういう意味じゃ無いと思うけど……」

川内「あ~あ。もっとこう緊張感が無いと、夜戦の醍醐味が半減だよ」

江風「醍醐味、ねぇ」

川内「久々に江風が相手になる?」

江風「お断りでーす」

川内「ちぇーっ」


7: 2015/10/31(土) 12:30:08.84 ID:FLXz5hHmO

川内のMR2

ブラックの初期SW20。所謂1型。
シンプルながら機能的なエアロを身に纏う。
純正改ハイフロータービンのブーストアップ仕様。
素性を活かす為、足回りを中心に手を加えている。
最大出力は推定280馬力。


川内「それにしてもツマンナイなぁ。誰か一緒に……って、ヲヲ?」

江風「どうかしたの?」

川内「んん?後ろから速いの来たみたいだよ」

江風「へ?流してるとはいえ、このペースに追いつくもんなの?」

川内「ふーん。面白そうじゃん」

シフトダウン!

江風「車種は?分かります?」

川内「夕張みたいに詳しくないから分かんないよ。でも、ちょっと古そうな感じかな?」

江風「古そうって……ハチロクとか?(笑)」

川内「だからマンガじゃないんだからさぁ」

川・江「………」

江風「……ハチロクじゃね?」

川内「お豆腐屋さん?」

江風「んなバカな」

川内「あっ!これってライトがパカパカしない方だっ!」

江風「パカパカって……ああ、リトラってことか」

川内「ということは、お豆腐屋さんじゃないねっ」

江風「いやいや、ハチロクであることには変わんないって」

川内「よーしっ。そっちがその気なら……って、アレー?」

江風「違う道に行っちゃった……」

川内「何でよ!ンモー」

9: 2015/10/31(土) 13:02:23.23 ID:FLXz5hHmO

夕張「ハチロクに追いつかれた?」

川内「そー」

夕張「で、どうしてそんな不機嫌そうなのよ」

川内「だってさー」

夕張「……負けたの?」

川内「違うよっ。追いつかれたと思ったら、脇道入ってっちゃったの」

夕張「ああ、あそこ分岐してるもんね」

川内「折角楽しめそうだと思ったのにさ。ガッカリだよ」

夕張「しっかし今時ハチロクにねぇ。特徴とか分からない?」

川内「んー……白黒でライトがパカパカしない方」

夕張「つまりレビンね。誰か知ってる人居ないかしら」

川内「軽く流してたとはいえ、余裕で追いついてくるの。主だよきっと」

夕張「主ってそんな釣りゲーじゃないんだから」

川内「そういえば今日提督来た?」

夕張「提督?もう居るハズだけど」

川内「昨日提出する報告書、出すの忘れてた」テヘペロ

夕張「その腹立つ顔する暇あったら、さっさと提出してこい」


15: 2015/10/31(土) 21:02:00.22 ID:0X0ADe5fO

吹雪(今日からこの分署に配属……どうせなら、本元の横須賀が良かったなぁ)

吹雪(ううん!どんな場所でも立派に任務をこなす!頑張らなくっちゃ!)

コンコン

吹雪「本日より市川分署に配属になりました、特型駆逐艦・吹雪です!ご挨拶に伺いましたっ!」

「どうぞ~」

吹雪(女の子の声……?秘書艦かな?)

吹雪「し、失礼しますっ!」ガチャッ

五月雨「ようこそ。横須賀鎮守府・市川分署へ」

五月雨「私は白露型駆逐艦、五月雨です。宜しくお願いします」

吹雪「よ、宜しくお願いしますっ」

「ハッハッハ。吹雪君といったね。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

吹雪「は、ハイッ(何で背中向けてるんだろ……?)」

「この通称・市川鎮守府は君の様な駆逐艦をはじめとする水雷戦隊の構成が主だ。皆良い娘だから心配しなくていい」

五月雨「提督。そろそろ顔を向けられては?」

「おっとそうだった。これはウッカリ」

吹雪(ど、どんな人なんだろう)ゴクッ

クルッ

提督「私が、湊川です」

吹雪「……へっ?」

16: 2015/10/31(土) 21:22:34.75 ID:0X0ADe5fO

吹雪(牛乳瓶の底のようなメガネ……)

吹雪(まるで時代錯誤な伸びきったアフロというかパンチパーマ……)

吹雪(そして何故か軍服ではなく、使い古したウインドブレイカー……)

吹雪(だ、ダセェ!!)

五月雨「湊川提督は、元先生なんですよ」

吹雪「きょ、教師ってことですか?」

提督「オイオイ、それは昔の話だ。今の俺は提督だ」

吹雪(こんな冴えないオッサンが教師って……)

提督「なにわともあれ君の活躍を期待しているよ」

吹雪「は、はい!宜しくお願いしますっ」

提督「うん、元気があっていいね。まずは鎮守府内を案内しよう。五月雨君」

五月雨「はいっ」

吹雪「あ、あの……その前に質問よろしいでしょうか?」

提督「ん?なにかな?」

吹雪「その……机の上に載っているトカゲ?のぬいぐるみは……?」

提督「これかい?これは俺のマスコットだ」

吹雪「ま、マスコット?」

提督「可愛いだろ?それにコイツも『私が、湊川です』と言っているように見えるだろう?」

吹雪(意味わかんねぇ!!)


変な所に配属されてしまった――
吹雪は着任後僅か数分で、これからの生活に不安を覚えるのだった……

19: 2015/11/01(日) 02:21:46.68 ID:VENScCLaO

吹雪「やっぱり施設としては小さいんですね」

五月雨「そうですね。提督が言っていた通り、ココは水雷戦隊が中心で所属する人数も少ないんです」

五月雨「それで、主に湾内を行き来する輸送船等の護衛や警備が主な任務になりますね」

吹雪「ところで五月雨さん」

五月雨「そんな、さん付けなんていいですよぉ。敬語もいいです」

吹雪「でも、先輩に対してそれは……」

五月雨「じゃあ、私も言葉を崩すから。同じ駆逐艦同士、仲良くしよう?」

吹雪「は……じゃなかった。改めて宜しくね、五月雨ちゃん」

五月雨「こちらこそ。吹雪ちゃん」

五月雨「あ、でも最近提督の影響か、たまに敬語が抜けない時もあるけど……それは気にしないで」

吹雪「……提督……」

五月雨「やっぱり、最初はインパクト強いよね(苦笑)」

五月雨「確かにちょっと変わってるけど、真面目で仕事も正確。本部からの評価も結構高いみたいだよ」

吹雪「あんな見た目なのに……」

五月雨「まあまあ。じゃあ各施設の紹介ね。と言っても、規模が小さいだけで基本は一緒……キャアッ」

吹雪「五月雨ちゃん!?大丈夫!?」

五月雨「痛ぁい……何かにつまづいたぁ」

吹雪「これは……」


20: 2015/11/01(日) 03:29:20.23 ID:VENScCLaO

吹雪「……なにこれ?工具?」

五月雨「もしかしてまた……!」

吹雪「ねえ五月雨ちゃん。これって?」

「エンジンを持ち上げる為の小型クレーンよ」

吹雪「へ?エンジン?」

五月雨「もうっ。工具はその辺に散らかさないって、この前言ったばっかりじゃないですか!」

夕張「ゴメンゴメン。さっき届いたばかりで、これから移動しようと思ってたの」

吹雪「あの~……」

夕張「お、貴女が新人ね」

吹雪「あっ……はじめましてっ!特型駆逐艦・吹雪ですっ」

夕張「うんっ、宜しく。私は夕張よ」

吹雪「ところで、エンジンって……」

夕張「そりゃ勿論、クルマのエンジンに決まってるじゃない」

吹雪「……えっ?」

五月雨「あー……吹雪ちゃん。驚かないでね?」

吹雪「え……でも、ココって……工厰、だよね?」

五月雨「そうなの。そうなんだけど……」

オープンッ

夕張「さーて、と。ウマも掛けたしオイル交換しときますかぁ!」

五月雨「今は殆ど、夕張さんのガレージと化しているの」

吹雪「」


やっぱり提督が変だと艦娘も変なんだ……
つくづく、この鎮守府で自分はやって行けるのか……不安で一杯の吹雪であった

29: 2015/11/05(木) 12:27:22.21 ID:oF3XNQr10

食堂

青葉「ども、青葉ですぅ。またお会いできて光栄です」

青葉「現スレ移行に伴い、もしかしたら青葉の出番が無くなるかと思いましたが、こうして出番があって何よりですっ」

川内「誰に向かって言ってるの?」

青葉「前スレこと前世、といったところでしょうか」

川内「前世???」

青葉「それで、ハチロクですか」

夕張「俄かには信じられない話だけどね。どう思う?」

青葉「そうですねぇ。川内さんを打ち負かすような実力者であれば何かしらの情報が入るものですか、心当たりはありませんね」

川内「だから負けてないって」

夕張「寝ぼけて車種を見間違えたんじゃないの?」

川内「でも江風だって見てるんだよ?」

夕張「うーん……江風ちゃんが言うのなら間違いないか」

川内「え、何その反応の違い」

青葉「本当に実在するのであれば、青葉も気になっちゃいますっ」

夕張「確かに気になる存在よね。どんなクルマなのか、見てみたいわ」

青葉「ではでは、ちょっと調べてみましょう。何か分かった際にはお伝えしますね」

川内「うん。お願い」


吹雪(ここの人達って、皆こんな感じなの……?)

ツンツン

吹雪「え?はい?」クルッ

若葉「アウト・ブルース」

スタスタ

吹雪(……何か眩暈がしてきた)

30: 2015/11/05(木) 12:30:04.66 ID:oF3XNQr10

夜・ワインディング

夕張「ココにそのハチロクが居たのね」

川内「そっ。帰ろうとしたら、急に現れたんだ」

由良「……何で私まで……」

川内「まあまあ、いいじゃん。夜は長いんだしさ」

由良「その長い夜を無益に過ごしたくないのだけど」

夕張「そう云えば、そのハチロクって何か特徴とか無かったの?」

川内「ええー?そんなん暗くて分からないよ。別に普通な感じだったと思うよ」

夕張「普通、ねえ」

由良「タヌキか何かに化かされたんじゃない?」

夕張「なにそのファンタジー」

由良「だってハチロクでしょ?」

夕張「そりゃあ30年も前のクルマだから……お化けとかいても不思議じゃないかもしれないけど」

川内「私のMR2も夕張のワンエイティも20年前のクルマだけどね」

由良「大差ないわ」

夕張「日産がシルビアを復活してくれるなら乗り換えるわよ」

31: 2015/11/05(木) 12:33:27.63 ID:oF3XNQr10

由良「どっちにしろ、闇雲に探したところで時間の無駄だと思う」

夕張「ん。それもそうね」

川内「手掛かりも何も無いし」

由良「じゃあ、今日のところはもう……」

川内「聞き込みをしようっ。スミマセーン」

由良「………」ジトッ

夕張「いや、そんな目で見られても……」


「ハチロク?いえ、知らない子ですね」
「それなんてイニD?」
「カエレ!」
「そんなハチロク居るワケないじゃんか!」


川内「ざっと聞いてきたけど、やっぱり誰も知らないみたい」

夕張「今日は不発かしら……」

由良「聞き覚えのある声がしたのは気のせい?」

川内「あーあ。つまんないの」

由良「そのつまらないことに巻き込まれている私の立場はどうなるのよ」

川内「……ドンマイッ☆」

由良「殴る。何が何でも殴る」

夕張「まあまあ」

32: 2015/11/05(木) 12:35:13.83 ID:oF3XNQr10

180SX・車内

由良「ああ、ホントに……無駄な時間だったわ」

夕張「今日は不発だったけど、多分見つかるまで付き合わされるんじゃない?」

由良「勘弁してよ……肌が荒れたらどうするのよ」

夕張「あ、やっぱり気にしてるんだ」

由良「アンタが無頓着過ぎるのよ」

夕張「そうかなぁー?」

由良「ところで、現実的にハチロクがMR2に勝つことって有り得るの?」

夕張「素の状態なら、まず勝負にすらならないわね。確かにハチロクも良いクルマだと思うけど」

由良「もし勝てるとしたら?」

夕張「ドライバーの力量、クルマの完成度、コースに対しての熟練度。これらが相当高次元なら、勝てるかもしれないわ」

由良「でも川内だって決して遅くない、と」

夕張「それこそ豆腐屋が出てきたとか、中身別物のお化けでも無い限り、普通は無理」

由良「中身別物って、例えば?」

夕張「んー。クラフト・トレノとか?」

由良「それ昔のGTマシンでしょ。燃えちゃったヤツ」

夕張「まあ、世の中にはS2000のエンジンに換装したり、シルビアのエンジンと足回りを移植しちゃう人も居るし」

由良「どっちにしろハチロクではないわね、それ」

33: 2015/11/05(木) 12:36:59.21 ID:oF3XNQr10

夕張「さて、このまま帰るのもなんだし、久々に川内を小突いてみますかね」

由良「ちょっと。無茶しないでよ」

夕張「ちょっとだけよ」

由良「やれやれ……」

ピカッピカッ

由良「………」

夕張「………」

由良「何か来たわよ」

夕張「知ってる」

由良「どう思う?」

夕張「一応確認してみようか……」

チラッ

由良「ハチロクね」

夕張「ハチロクだね」

由良「当たり?」

夕張「……じゃない?」

由良「どうするの?」

夕張「とりあえず前に行かせよっか」

由良「………」

夕張「うん。4A-Gの音ね」

由良「やっぱり普通のハチロク?」

夕張「そうね。過給機も付いていなさそう」

由良「……川内、やる気になっちゃってない?」

夕張「仕方ない。着いてってみよっか」

34: 2015/11/05(木) 12:39:58.04 ID:oF3XNQr10

夕張「ん……結構速い」

由良「キツい?」

夕張「何とか着いて行けるかな」

由良「あれ?」

夕張「どうしたの?」

由良「横の所……何か書いてある」

夕張「暗くて分かりづらいなぁ……」

由良「なんか、トカゲっぽくない?」

夕張「トカゲ?アジカンが好きなのかな」

由良「それアンタが好きなだけでしょ。ネタが分かりづらい」

夕張「ちょっと前にリライト以外も歌ってくれって嘆いてたよ」

由良「要らんわ、そんな情報」

夕張「しっかし速いわねホント。川内が振り切れないでいるし」

由良「その割には余裕そうね」

夕張「いや、ホントにしんどい」

由良「……ウインカー出してる」

夕張「そういえば前もココで別れたらしいしね」

由良「あ、行っちゃった」

夕張「……地元の人なのかな」

由良「さあ?」

夕張「たまに異様に速い地元民って居るからね。カリカリにイジったシビックを煽り倒す軽トラとか」

由良「なにそれ怖い」

35: 2015/11/05(木) 12:51:05.75 ID:oF3XNQr10

麓のコンビニ

川内「また逃げられたーっ!!」キーッ

由良「結局何だったのかしら、アレ」

夕張「うーん……確かに速かったわね。ホントに豆腐屋かも」

由良「だとしたらトレノじゃないの?」

夕張「だってココ群馬じゃないし」

川内「豆腐屋でも牛乳屋でも何でもいいよ!」

夕張「見てくれは何の変哲もないハチロクだったわね。3ドアの後期型……」

川内「それじゃあ中身が全然違うとか?」

夕張「ちょっと考えにくいわね。確かにエンジンは結構やってそうだけど、音は4A-Gのメカチューンって感じだったし」

由良「じゃあやっぱりお化けじゃない?」

夕張「だから、チューニング内容は至って普通な……」

由良「そうじゃなくて、幽霊よ幽霊。きっと昔亡くなった走り屋の怨念が……」

夕張「キャーコワーイ」

川内「怨念がおんねんっ!」

由良「……ゴメン、どうかしてたわ」

夕張「いや……気にしない方がいい」

川内「??」


36: 2015/11/05(木) 12:54:37.77 ID:oF3XNQr10

夕張「あと目立った特徴は、サイドに貼られたトカゲのステッカーか……」

川内「トカゲぇ?」

由良「それが唯一の手掛かりかしらね」

川内「トカゲ、ねぇ。そういえば何処かで見たなぁ」

夕張「あ、私も」

由良「鎮守府で見たんじゃない?」

夕張「いや、もっとハッキリと日常的に……」

川内「あ、分かった!提督の部屋だ!」

夕張「ああ、あのぬいぐるみね」

由良「何言ってるの。提督の部屋に置いてあるのはヤモリよ」

夕張「え?あれヤモリだったの」

川内「ヒト○ゲじゃないんだ」

夕張「ヤモリって元々『家守』って書くから、お守り代わりに置いてるんだって」

夕・川「へぇー」

由良「確かに提督もクルマは好きみたいだけど……」

川内「トカゲじゃなくてヤモリだもんね」

夕張「……見た目、大して変わらないじゃない」

由良「兎に角、今日はお仕舞。もう眠いわ」

川内「今度こそ正体が掴めると思ったのにぃ」

夕張「やっぱりアジカンが好きな人なのかなぁ」

由良「だからそれ、アンタが好きなだけでしょ」

川内「消してぇーリライトしてぇー」

由良「川内うるさい」

37: 2015/11/05(木) 12:59:17.49 ID:oF3XNQr10

朝・食堂

夕張「結局あのハチロクは何だったのかしらね」

由良「さあ?その内青葉さんから何か情報が入るでしょ」

青葉「お呼びでしょうか」ニュッ

由良「わっ、ビックリした」

青葉「情報収集には隠密行動が欠かせませんからっ」

由良「忍者かなにかですか?」

夕張「そういえば、例のハチロクについて何か分かった?」

由良「流石に一晩じゃ何も……」

青葉「多少ですが」

由良「あ、分かっちゃうんだ……」

青葉「大した情報ではありませんが、実はこんなモノがありまして」

夕張「なにそれ?DVD?」

青葉「かつてビデオとして販売・レンタルされていた代物を焼き直したものです」

由良「え?そんなものあるの……」

夕張「地方のビデオ屋とか行くと、たまにあったりしたわよ」

由良「世も末ね……」

青葉「この映像のロケ地の一つに、件のハチロクが出没したワインディングが混じっているんですよ」

由良「でもコレ、相当古いものよね?」

青葉「そうですね。20年以上前の映像ですから」

夕張「ふーん……まあ、まずは見てみましょう」

38: 2015/11/05(木) 13:05:39.94 ID:oF3XNQr10

再生

峠・ドリフト~街道の伝説~

夕張「流石に映像に古さが否めないわ」

由良「しかも真昼間じゃない。天下の往来で何してるのよ……」

青葉「調べたところ、このハチロクのドライバーは当時、富士フレッシュマンやミラージュカップで活躍していたそうで」

由良「プロのレーサーってこと?」

青葉「セミプロ、といったところでしょうか。ワークス入りの噂もあったようですが」

夕張 ジーッ

青葉「しかし、このビデオに出演したことで危うくライセンスを剥奪されかけたとか」

由良「そりゃそうよね。白昼堂々違反行為をしているワケだし」

青葉「なにぶん手掛かりになりそうな情報が少なく、ましてや速いハチロクともなると該当しそうな人物が居ないんですよ」

由良「でも20年も前じゃあねぇ……」

夕張「いや、多分同じ人よコレ」

青葉「なんとっ!?」

由良「どうして分かるのよ」

夕張「ホラ、ココ。トカゲのステッカー」

由良「ホントだ……昨日見たのと同じね」

青葉「偶然同じステッカーを貼っているという可能性は?」

夕張「それも有り得るわ。でも他にこんなのわざわざ貼る人が居ると思う?」

由良「まあ、確かに……」

夕張「他の特徴も結構似ているのよね。クルマの仕様は多少違うけど、ラインの取り方なんかも……」

39: 2015/11/05(木) 13:06:59.53 ID:oF3XNQr10

鑑賞から10分経過

夕張「それにしても、見れば見るほど上手いわね」

青葉「今のドリフトとはかなり違うようですが」

夕張「そりゃあ、この20年の間で色々なモノが進化しているもの。この頃なんか、改造そのものがご法度だったろうし」

夕張「それでも、クルマの乗り方は基本的に変わらないわ。この人の場合、特に荷重の掛け方が上手い」

青葉「流石レーサー、といったところでしょうか」

夕張「ええ。一連の動作はゆっくりしているんだけど、スムーズで無駄が無い。良いお手本だわ」

由良「んー……」

青葉「由良さん?どうかしましたか?」

由良「うーん……気のせいかもしれないけど、この人ちょっと提督さんに似ていない?」

夕張「えっ?そう?」

由良「横顔とか、何かそれっぽいのよねぇ……」

夕張「いずれにしよ、まだまだ調べが必要ね」

青葉「そうですね。ですが20年程前の人物なので、何処まで情報が集まるか分かりませんが……あ」

由良「まだ何かあるの?」

青葉「いえ。直接関係は無いのですが、提督のご自宅もこの近辺だったかと」

由良「でも提督は毎日原付スクーターで来ているのよ?ちょっと遠過ぎない?」

青葉「近場に部屋を借りて、そこで寝泊りしているんですよ。週に一回は必ずご自宅に戻り、家族と過ごしていると伺っています」

由良「私前に写真を見せてもらったことがあるわ。奥さん、すっごい美人だった」

青葉「大和撫子を絵に描いたような方でしたね」

夕張「へー」


吹雪(あ、あんな冴えないオッサンに美人の奥さん……!?世の中間違ってる……!)

五月雨「どうしたの?吹雪ちゃん?」

吹雪(木村かっ!?あ○まんが大王の木村かっ!?別に司令官は変Oじゃないけど、見た目的にはノーサンキューだよ!)

吹雪(そもそも!この人達食堂で何してんの!?)

五月雨「吹雪ちゃん?ラーメン伸びちゃうよ?」

40: 2015/11/05(木) 13:21:33.55 ID:oF3XNQr10

執務室

コンコン

夕張「提督、おはようございます」ガチャッ

提督「私が、湊川です。おはよう夕張君」

夕張「今週の装備開発と資材運用の予定表の提出に伺いました」

提督「そうか。ご苦労さま」

提督「……ふむ、確かに。では、この予定通りに進めてくれ」

夕張「了解しました」

夕張(提督に似ているかなぁ……映像が荒いから分からないなぁ)

夕張「……ところで提督、一つ伺ってもよろしいですか?」

提督「答えられる範囲であれば」

夕張「大したことではないのですが、提督が厚木の郊外に居住されていると聞いたものですから」

提督「確かにその通りだ。愛川という片田舎に住んでいるよ」

夕張「ご家族も、そちらに?」

提督「ああ。妻と子供が二人居る。たまにしか会えないのが淋しいよ」

夕張「そうでしたか」

提督「元々俺は長野の出身でね。都会に憧れたりもしたが、やはり故郷のような自然に溢れた土地が好きなんだよ」

夕張「ああ、何となく分かります」

提督「しかし、藪から棒にどうしたんだい?」

夕張「あ、いえ。そう云えば提督のこと、あんまり知らないなーと思って」

提督「成程。自分の上司がどんな人物であるかを把握しておくことも、作戦遂行には重要な要素になるからな」

夕張「そこまで深くは考えていませんけどー……」

41: 2015/11/05(木) 13:27:05.49 ID:oF3XNQr10

工廠

由良「今更だけど、そもそも正体を暴いてどうするのよ」

川内「勿論、夜戦をしてもらうっ!」

夕張「どんなチューニングをしているのか見させてもらう」

由良「アンタらは……」

大井「そこの暇人三人。そろそろ時間じゃないの?」

夕張「あ、大井だ」

川内「ヤッホー大井っち」

大井「その呼び方はやめて」

川内「なんで?北上から呼ばれてるじゃん」

大井「北上さんは別。アンタ達まで真似しなくていいっての」

川内「相変わらずだねぇ」

大井「というか、色々風評被害が凄いのよ。知らない駆逐の子にまで変な目で見られるし……」

夕張「クレイジーサイコレO」ボソッ

大井「あ゙?」

夕張「いえ、何も」

大井「そりゃあ北上さんと離れ離れになったのはちょっと残念だけど、別に依存しているわけじゃないし、そもそも私はノーマルだし……」ブツブツ

由良「というか、私までこのおバカ二人組と一緒にされているのが気になるんだけど」

大井「気が付くと一緒に悪ノリしてるじゃないの。あんまり変わらないわ」

夕張「それよりバカって」

大井「バーカ。夕張も川内もバーカ」

由良「子供か」

五月雨「皆さーん。そろそろ出発ですよー?」

42: 2015/11/05(木) 13:29:39.64 ID:oF3XNQr10

縁側

ホライクワヨー
ヤセンシタイー

瑞鳳「ふぅ……お茶が美味しい」

瑞鳳「最近は大規模作戦(秋イベ)に備えて物資輸送の任務ばかりだから、あんまり出番が無いのよねぇ」

瑞鳳「どうせ暇なら、何かプラモでも作っていようかしら。秋水に景雲……あ、セイバーもあったわね」

瑞鳳「でも、たまには趣向を変えてマシーネンクリーガーとか……オスカル買ったけど、そのままにしてたわ……」

瑞鳳「それにしても、クルマ買ってから夕張と川内は一層元気になった気がするなぁ……」

瑞鳳「うーん……私も何か買おうかな。でも免許取ってから運転って殆どしたことないし……」ゴロン

瑞鳳「こう、プラモデル感覚で遊べるクルマは無いのかしら。いっそ原付でもいいけど……」

瑞鳳「どうせ乗るならマイナーなのがいいかも……」

瑞鳳「んぅー……何か眠い……」

瑞鳳「………」

提督「ん?瑞鳳君、そんな所で寝ていたら風邪を引くよ」

瑞鳳「ふぇ……あ、提督さん。お疲れ様です」

提督「何か考え事かな?」

瑞鳳(そういえば……提督さんの上着ってクルマ関連のモノが多いなぁ)

瑞鳳「今日はレイトンハウスですか」

提督「おっ、知っているのかい?」

瑞鳳「勿論。そのレイトンブルーは今でもインパクトがありますから」

提督「ワッハッハ。確かに目が醒めるような水色だからね」

瑞鳳(提督さん、もしかしてクルマ好きなのかも)

43: 2015/11/05(木) 13:32:26.92 ID:oF3XNQr10

瑞鳳「私もクルマを買おうかと考えていたんだけど……」

提督「オイオイ。君まで夕張君や川内君みたいにヤンチャする気なのか?」

瑞鳳「いえ、まさか。最近ちょっと手持無沙汰なので、今までやらなかったことをしようかなーって」

提督「時に瑞鳳君は、免許は持っているのかい?」

瑞鳳「ああ、提督さんまで私のこと幼く見てるんでしょ。こう見えても一応成人なんですからっ」

提督「スマンスマン。そういうつもりじゃなかったんだ」

瑞鳳「いえ。実はペーパーなんでそこまで胸張れないですけどね」

提督「それで、何か希望はあるのかい?」

瑞鳳「ちょっと古くて、派手じゃないクルマが良いかなぁなんて」

提督「古いクルマ?俺も古いカローラに乗っているが、整備が大変だぞ?」

瑞鳳「そこを含めて楽しみたいんですよ」

提督「それは分かる。今のクルマもいいが、古いクルマも今には無い魅力が詰まっているからな」ウンウン

瑞鳳「何か良いモノありますか?」

提督「俺が若い頃なら、そこらの解体屋から引っ張れたけどなぁ。瑞鳳君が良ければ、知り合いの業者を紹介しよう」

瑞鳳「ホントですか?ありがとう」

提督「なぁに、俺は提督だ。任せなさい」

瑞鳳「ところで、提督さんが乗っている古いカローラってどんなのですか?」

提督「大したことはないよ。もう30年も前のクルマだ」

瑞鳳「30年前というと……ナナイチとか?」

提督「惜しい。その次の型の――」


「ハチロクだ」

55: 2015/11/10(火) 18:17:50.08 ID:Kwy4XklY0

小ネタ チューニング講座 其之一

夕張「夕張のチューニング講座、其之一。まずは、タイヤについて」

夕張「ちゃんと転がすことが重要なの。クルマを支えているのはタイヤだってことを忘れちゃダメよ」


由良「……え?それだけ?」

56: 2015/11/10(火) 18:19:09.57 ID:Kwy4XklY0

川内「あー疲れたぁ」

由良「お風呂入りたいわー」

夕張「クルマいじりたーい」

大井「もう病気だわ」

駆逐艦s「お疲れさまでしたー」

大井「ハイハイ。最近冷えるから、ちゃんと暖かくして寝なさいよー」

夕張「うわー、大井がお姉さんがしてるぅ」

大井「何よ、文句あるの?」

青葉「大井さんは普段はキツそうな態度ですが、実は優しいお姉さんですよぉ」

軽巡s「………」

由良「青葉さん、気配を消して現れるの止めてくれませんか?」

夕張「心臓に悪い……」

川内「え?皆気付いてなかったんだ」

大井「アンタは気付いていたの……?」

青葉「それでですね、新たな情報が入ったのでお伝えしようかと」

大井「青葉さんも出撃してましたよね?ちゃんと仕事したの?」

夕張「それで、何が分かったの?」

青葉「居ましたよ、件のハチロク!」

川内「えっ、マジ!?ドコドコ!?どんなヤツ!?」

由良「すごい喰いつき」

青葉「意外と近くに居ました。ですが……」

夕張「何かあったの?」

青葉「聞いてビックリです。実は司令官でした」

「「「「……へっ?」」」」

57: 2015/11/10(火) 18:20:00.70 ID:Kwy4XklY0

由良「確かにクルマは好きみたいだけど……」

川内「ということは、提督ってレーサーだったの!?」

夕張「提督の前職って教師でしょ?そんなの一言も……」

青葉「ええ。正直驚きました」

大井「ちょっと。あのオッサンがレーサー?」

青葉「俄かには信じられないとは思いますが……裏も取れてます」

夕張「そういえば、古いカローラに乗っているって言ってたわね……」

青葉「当時のレースリザルトに、バッチリ司令官の名前が記載されてました。コレです」

大井「湊川……うわ、ホントだ」

川内「若っ!提督若っ!」

夕張「昔からこの髪型だったのね……」

由良「でもどうしてその事を黙っていたのかしら?」

青葉「本人曰く、別に言いふらすことでもなかったとの事なので……」

川内「でもコレ、表彰台に乗ってんじゃん」

青葉「何より、夕張さんや川内さんに知られると大変そうだと……」

大井「あー……夕張はまだしも、川内は思いっきり喰いつきそうだわ」

由良「確かに」

川内「そ、そんなこと……あるわ、うん」

58: 2015/11/10(火) 18:21:44.45 ID:Kwy4XklY0

青葉「ちなみに今度、瑞鳳さんとお出かけするみたいですよ」

夕張「出掛けるって……デート?」

大井「口リコン?」

由良「瑞鳳さん、一応成人だからね」

大井「つまり合法口リでしょ?」

由良「真顔で何言ってんのよ」

青葉「詳しくは分からないですが、どうやら瑞鳳さんのクルマを選びに司令官の地元に行くようです」

川内「マジ?ヅホもクルマ乗るの?」

夕張「結構機械弄り好きだからね。私も乗り始めたキッカケがそこからだったし」

由良「だとしたら、スゴいマニアックなの選びそうね」

青葉「えーっと……候補になっているのがシャレード、カルタス、ミラージュ、アルトワークス、ヴィヴィオ……」

夕張「待って。何その一昔前のダート車両みたいなラインナップは」

青葉「司令官の知り合いに、そういうのに強い方が居るみたいです」

由良「思っていた以上に濃いわね」

大井「アンタ達の会話が何一つ分からないんだけど」

青葉「それと、かつて司令官が腕を磨いたというコースもあるみたいです。ツーリングがてら、行ってみるのも一興かと」

川内「提督の出身って長野だよね?やっぱり峠?」

青葉「いえいえ、もっと合法的な所です」ニヤリ

59: 2015/11/10(火) 18:22:41.88 ID:Kwy4XklY0

工廠

由良「それにしても驚いたわね、まさかハチロクの正体が提督さんだなんて」

川内「しかもレーサーだよ、レーサー。道理で速いワケだよね」

夕張「そうねー……」カチャカチャ

川内「で、夕張は何してんの?」

夕張「見ての通り、クルマの整備してるのよ」

由良「……え?それ動かすの?」


PS13シルビア

夕張がネットオークションで購入。
後期型のQ'sで、ローダウンサスが組んである以外はほぼノーマル。
元は整備・運転の練習用に使っていた。
何故か余っていた33R純正ホイールが装着されている。
色はパープリッシュ・シルバーツートン。


夕張「提督の地元に行く時に、コレを使おうと思ってね」

川内「何で?ワンエイティで行けばいいじゃん」

夕張「そのコースっていうのがね、ダートコースなのよ」

由良「ダート?」

夕張「そっ。どうせだから、汚れても気にならないコレで走ってみようかなって」

川内「ダートかぁ。面白そうじゃん!」

由良「あ、だから合法的って言っていたのね」

夕張「そういうこと。走る前に講習を受ければ、とりあえず走れるわ」

由良「……でもシルビアでダートって」

夕張「シルビアって意外とラリーに出ていたのよ?240RSだってベースはS110だもの」

60: 2015/11/10(火) 18:24:02.63 ID:Kwy4XklY0

川内「というかさー、夕張の選ぶクルマって地味だよねぇ」

夕張「これは元々練習用だもの。見た目は別に……」

由良「ああ、川内の言いたい事分かるわ。あんまり主張するようなポイントが無いわよね」

川内「でしょ?速そうな雰囲気はあるんだけどさぁ……没個性的っていうの?」

夕張「何処を見てるのよ。ちゃんとワンポイントで緑色も入れて私っぽくしてるでしょ」

川内「……何処に緑があるのさ」

夕張「ホントに気が付かない?ローター見てみなさいよ」

由良「ローター?」

夕張「キャリパー以外ブレーキは基本プロμで統一しているの。ホラ、これで緑色」

川内「そういうのが地味だって言ってるんだけど」


※夕張さんはプロジェクトμ愛用者のようです


川内「風の中のスバルー」

由良「それはプロジェクトXね」

61: 2015/11/10(火) 18:26:01.11 ID:Kwy4XklY0

川内「そういえばちょっと前から気になってたんだけど、あのバイクって誰の?」

夕張「そこのヤツ?青葉のよ」

由良「なんか小さい気がするんだけど、原付?」

夕張「そう。取り回ししやすいので探してたみたいよ」


青葉のKLX125

新車で購入した青葉の愛機。
あちこちに行けるような装備・工夫が盛り沢山らしい。
マフラー以外は殆どノーマル。
カラーはシルバー。


夕張「私もちょっと乗ったけど、結構楽しかったよ」

由良「ちゃんと足着くの?」

夕張「ギリギリね。サスが沈む分、見た目ほど辛くはなかったかな」

川内「でもオフ車って良いなぁ。軽くて振り回しやすそう」

夕張「そうねぇ。私も小さいバイク乗ってみようかなぁ」

由良「原付なら維持も楽そうだものね」

夕張「実は東京モーターショーに出展しているZ125が気になっちゃって」

由良「……あれ、どう見てもライムグリーンになったグロム……」

夕張「それは云わない」

川内「わーい。楽しいー」ブォンブォン

由良「何で勝手に乗ってるのよ」

62: 2015/11/10(火) 18:32:26.35 ID:Kwy4XklY0

小ネタ 夕張のチューニング講座 其之弐

夕張「夕張のチューニング講座、其之弐.次は、エアロについて」

夕張「見た目も大事だけど、カッコつける為だけなら勿体無いわ。それならタイヤとオイル代に回しなさいっ」


由良「ねえ、コレ誰得なの?」

大井「ドヤ顔なのが腹立つわね」

74: 2015/11/12(木) 20:59:35.83 ID:syJwNAGy0

休日

瑞鳳「スミマセン、付き合ってもらっちゃって……」

提督「俺は提督だ。艦娘の要望に応えるのも俺の仕事だよ」

瑞鳳「でもビックリしました。提督のカローラって、レビンだったんですね」

提督「歳を取ってから、もう一度乗りたいと思ったんだ」

瑞鳳「結構イジっているみたいですねぇ」

提督「まあな。現行車種にも負けないぞ」

瑞鳳「エンジンの音が心地良いって感じるのは初めてです」

提督「流石、分かっているな瑞鳳君」

瑞鳳「ところで、今日はどの辺りまで行くんですか?」

提督「知り合いの業者の所だよ。なかなか面白いクルマが入ったというんでな」

瑞鳳「わー、楽しみぃ」

提督「さて、ちょっと飛ばすぞ。しっかり捕まってなさい」

75: 2015/11/12(木) 21:05:43.67 ID:syJwNAGy0

夕張「さて、私達も出発しましょうか」

川内「折角だからNSRで行っちゃおうかなぁ。後ろ狭いし」

夕張「別にいいけど、結構遠いからキツいんじゃないの?」

川内「大丈夫っ。遠出は慣れてるからねっ」


川内のNSR250

88年式の赤テラカラー。
整備する時に面倒だからとアンダーカウルは外している。
キャブやチャンバー、サスも交換してある。
かつての峠仕様を彷彿とさせることから、秘かに夜戦ロケットと呼ばれているとか。


川内「ブッちぎっちゃおっかなぁ」

由良「趣旨が違うわよ」

川内「由良も来ればいいのに」

由良「三人も鎮守府離れちゃったらマズいでしょ。ただでさえ提督さん居ないんだから」

川内「大井っちに任せればいいんじゃないの」

由良「……後で殴られるわよ」

夕張「とりあえず、まずは高速で長野に入って、降りたら休憩ね」

川内「ホイホイ」

夕張「国道沿いに有名なお蕎麦屋さんがあるのよねぇ」ジュルリ

由良「コッチも趣旨を忘れてる……」

夕張「さあ!信州蕎麦巡りっ!」

川内「オーッ……お?」

由良「心配になってきたわ……五月雨ちゃん、宜しくね……」

五月雨「せ、責任重大ですね……」

76: 2015/11/12(木) 21:07:10.48 ID:syJwNAGy0

長野・某蕎麦屋

川内「お、お尻痛ーい……」

夕張「だから言ったじゃないの」ズルズル

五月雨 ←無心で啜る

川内「というか寒い……せめてオーバーパンツ持って来れば良かった……」

夕張「夏用のウェアの時点でダメでしょ」ズルズル

川内「何でNSRってあんなにシート薄いのー……」

夕張「私があげたゲル状座布団はどうしたのよ」テンプラサクサク

川内「使ってるよー……部屋で」

夕張「何の為にあげたと思ってるのよ」

川内「荷重移動する時邪魔なんだよね、アレ」

五月雨 ←ワサビの固まりを食べてしまった

川内「で、これからどうする?」

夕張「とりあえず、ダートコースに行ってみましょう。その為にわざわざシルビアで来たんだから」ズズズッ

川内「りょーうかーい」

夕張「どうでもいいけど、ココまで来てカレー食べるって」

五月雨「蕎麦湯が熱い……」

77: 2015/11/12(木) 21:08:28.50 ID:syJwNAGy0

某クルマ屋

瑞鳳「ココは?」

提督「昔お世話になったショップだ。ちょっと待っていてくれ」

瑞鳳「行っちゃった……」

瑞鳳「ココ……普通のクルマ屋っていうより、チューニングショップよねぇ」

瑞鳳「わぁ、箱スカが置いてある。お店のクルマかなぁ?」

瑞鳳「……って、あれ?」

矢矧「ああ。じゃあ失礼するよ」

瑞鳳「矢矧……さん、だよね?何でこんな所に」

矢矧「フフ、いつ見ても素晴らしいな。胸が高鳴るよ」

瑞鳳「もしかしてあの箱スカって……矢矧さんの?随分渋いのに乗ってるのねぇ」

矢矧「ん?貴女は……」

瑞鳳「え、ああっとコンニチハ。綺麗な箱スカですね」

矢矧「有難う。嬉しいよ」

瑞鳳「あの、私市川所属の軽空母、瑞鳳です。以前合同遠征の際にご一緒しましたよね?」

矢矧「ああ、貴女か。私服だから気付かなかったよ」

瑞鳳(やっぱり私服でも大きいわね……)

矢矧「ん?何かあったか?」

瑞鳳「い、いえっ」アセアセ

提督「待たせたね、瑞鳳君。そちらは?」

瑞鳳「あ、提督さん」

矢矧「提督……?貴方が湊川提督ですか」

提督「いかにも。私が、湊川です」

矢矧「はじめまして。浜松警備府所属、阿賀野型三番艦・矢矧です。お目に掛かれて光栄です」

提督「オイオイ、光栄だなんて大袈裟な。俺は地方のイチ提督に過ぎないよ」

矢矧「いえ、噂はお聞きしています。提督としての手腕は勿論、レーサーとしても」

78: 2015/11/12(木) 21:09:37.53 ID:syJwNAGy0

瑞鳳「レーサー?」

提督「なんだ、知っていたのか」

矢矧「ウチの提督もクルマが好きですから」

提督「そうか、浜松だと長谷川さんが担当だったね」

瑞鳳「えっ、提督さんってレーサーだったの?」

提督「若い頃に少々かじっていただけだよ。ところで、その箱スカは君のかい?」

矢矧「ハイ。乗り始めてから一年程です」


矢矧のGC10スカイライン

四枚ドアのGT-R仕様。バンパーレス。
L28改3LにあえてFCRキャブを装着。
見た目は王道だが、現代的なパーツも奢り差別化を図っている。
カラーは勿論シルバー。


提督「懐かしいな。高橋国光に憧れて水道のホースを着けたりしたもんだ」

瑞鳳「ああ、オイルクーラーの真似ね……」

提督「初めて乗ったのが正にコレだったんだよ。ドリフトの練習もしたけど、なかなか上達しなかった」

矢矧「湊川提督程の方がですか?」

提督「俺にだって下手クソな時はあったさ。サニーに乗り換えてから、本格的にクルマにのめり込んだものだ」

瑞鳳「サニーって、オジサンが乗るクルマじゃないの?」

提督「確かにサニーは当時から大衆車だったが、スポーツグレードはかなり気合の入ったものだったぞ」

矢矧「TS車両搭載のA型エンジンは、OHVヘッドでありながら一万回転近くまで回せたらしいですね」

瑞鳳「い、一万!?スゴーい……」

提督「流石に市販車でそれをやろうとすると骨が折れるけどな」

79: 2015/11/12(木) 21:10:36.70 ID:syJwNAGy0

瑞鳳のメカ講座

瑞鳳「OHVとは、オーバーヘッドバルブ機構の略称よ。日本語では頭上弁式とも言うわ」

瑞鳳「カムシャフトがシリンダの横にあって、プッシュロッドと呼ばれる長い棒を介してロッカーアームを押し上げバルブを開閉させるの」

瑞鳳「断面図的に見ると、ロッカーアームがシーソーみたいな動きをしてるわ」

瑞鳳「ちなみにカムの駆動方法はピストン下にあるクランクの回転を用いているわ。これはどの形式でも同じね」

瑞鳳「で、OHVはそれまでのサイドバルブと比べて燃焼室を小さくすることが出来るとか色々利点があるんだけど、その辺りは省略しますっ」

瑞鳳「じゃあ私が何に驚いたのか。内燃機工について分かる人なら理解できると思うんだけど」

瑞鳳「小排気量のエンジンでパワーを出すには、大雑把に云えばターボを着けるかエンジンを高回転まで回すかになるんだけど」

瑞鳳「高回転化するにあたり、問題になるのがOHVの構造なのよね」

瑞鳳「現在主流となっているOHC……オーバーヘッドカムはカムをバルブ上に置いてほぼ直接駆動させているの」

瑞鳳「これも大雑把な説明だけど、要はプッシュロッドの代わりにチェーンを用いてカムを駆動させているのよね」

瑞鳳「勿論、現在高回転型と呼ばれるエンジンはどれもOHC……それも、吸排気どちらにもカムがあるツインカムよ」

瑞鳳「一方OHVは長いプッシュロッドを経由しているから、高回転になればなるほどバルブの動きが追従出来なくなってしまう」

瑞鳳「直接駆動と棒を使っての駆動……どちらに分があるかは明白よね」

瑞鳳「勿論ロッドを短くすればいいんだけど、燃焼室で発生する熱との兼ね合いもあるからね。限界があるのよ」

瑞鳳「じゃあどうやってその問題をクリアしたのかとか、詳しく説明すると非常に面倒なので、あえて説明しないけど……」

瑞鳳「要するに、かつてTSクラスで使用された日産A型エンジンは驚異的だったということだけ伝わればいいかなっ」

瑞鳳「OHVは今でもアメリカの車両が広く採用しているわ。排気量が大きく、トルクで走らせるアメ車にはOHVの方が都合が良いのかもね」

80: 2015/11/12(木) 21:15:54.89 ID:syJwNAGy0

提督「しかし、君のような若い世代が箱スカとはなぁ」

矢矧「クルマはさほど興味無かったのですが、たまたま街で見かけて……」

提督「一目ぼれか。良い趣味だと思うよ」

瑞鳳「そういえば提督さん、奥で何を話していたの?」

提督「おお、そうだった。実はココにおススメのクルマがあるんだよ」

瑞鳳「ホントッ!?」

提督「ああ。奥に用意してもらってあるので、見に行こう」

矢矧「良ければ、私もご一緒してよろしいですか?」

提督「ここで会ったのも何かの縁だ。構わないよ」

瑞鳳「それで、どんなクルマなんですか?」

提督「一見地味かもしれないが、乗れば楽しい……そんな代物だ」

81: 2015/11/12(木) 21:17:03.52 ID:syJwNAGy0

瑞鳳「コレって……」

提督「うん。やはり今見ても良いモノだな」

矢矧「湊川提督……貴方も大概ですね」

提督「ココで眠らせる位なら、乗ってもらった方がいいだろうと思ってな」

瑞鳳「か、可愛い~!!」


TE27 スプリンタートレノ

皆大好きハチロクのご先祖様。73年式。
ハヤシのホイール、羽根無し、モスグリーンと王道の外見。
車高が落とされているが、それ以外はノーマル。
それにしても、このSSは相変わらず旧車ばっかりだな。


提督「久々に見ると小さいなぁ」

矢矧「しかし、やっぱり埃っぽいですね」

提督「一応動かせるが、しばらく放置されていたからな。長く乗るなら、しっかり修理しないとだな」

瑞鳳「可愛いぃっ」ダキッ

矢矧「私も人の事言えないけど、クルマに乗るだけなら他に選択肢はあるのでは?」

提督「瑞鳳君の場合、メカにも興味があるようだからあえてキャブ車を選んだのだが……」

瑞鳳「コレにしますっ!私、コレに乗る!」

提督「本当にいいのか?旧車に乗るのは思っている以上に大変だぞ?」

瑞鳳「構いません!お願いしますっ!」

提督「ならば、とりあえず一週間乗ってみるといい。それでも気が変わらなかったら、購入としよう」

矢矧「大丈夫なんですか?」

提督「大丈夫だ。話はつけてある」つキー

瑞鳳「はいっ!」

82: 2015/11/12(木) 21:18:34.38 ID:syJwNAGy0

余談

提督「一応他にも候補はあったが、やはり一発目が本命だったか」

矢矧「どんなものがあったんですか?」

提督「シャレードのデトマソ、KPスターレット、マーチターボ、シティ、ランタボ……」

矢矧「どっちにしろ旧車ばっかりなんですね……」

提督「俺的におススメなのは、TA61セリカだった」

矢矧「FRがいいんですか?」

提督「昔からFR主義者だったものだからな」

100: 2015/11/21(土) 11:09:54.95 ID:ccSM+jXq0

一方、ダートコース

川内「ほぉー……」キラキラ

夕張「うん、思っていた以上に良さそうなコースじゃない」

川内「ココ、ホントに走っていいのっ?」

夕張「講習も受けたし、時間内であれば何度でもOKよ」

川内「よっし!じゃあ早速走ろう!ねっ!」

五月雨「あの、走るのはいいと思うんですけど、クルマに汚れや傷が付くのでは……?」

川内「大丈夫。その為のシルビアでしょ」

五月雨「いえ、そうじゃなくて……」

夕張「ああ、壊れるんじゃないかとか、そういう心配?」

五月雨「そうです。こんな所を走って、クルマは大丈夫なのかなって」

夕張「一応対策はしてるよ。ボディの下半分はビニールでテーピングしているわ」

夕張「それと、オイルパンを潰さないようにカバーを付けたの。SRでココをやっちゃうとシャレにならないからね」

五月雨「よく分からないけど、走るのは大丈夫ってことですね」

川内「まずは私からでいいよねっ。楽しみだなぁ」

夕張「いいけど、ぶつけないでよね。私も走りたいし、ココまで自走で来ているんだから」

川内「分かってるって。それに私が普段何乗ってるか分かってるでしょ」

夕張「だからこそよ」


川内、コースイン――

101: 2015/11/21(土) 11:12:13.71 ID:ccSM+jXq0

夕張「さて……大丈夫かしらね」

五月雨「こういう泥だらけの道って、やっぱり難しいんですか?」

夕張「そうね。舗装路と違って滑りやすいから、如何にクルマをコントロール出来るかが重要になるかな」

夕張「だからこそ練習にはもってこいなのよ。ステア、アクセル、ブレーキ……低い速度でも色んなことを要求されるからね」

五月雨「な、なるほど」

夕張「ただ、問題は川内の乗り方なのよねぇ……アイツ、速いことは速いけど殆ど感覚だけで走らせているから」

五月雨「それって何か問題なんですか?」

夕張「いや、大した問題じゃないんだけど……無茶しないか心配で」

五月雨「そうですねぇ……あ、帰ってきましたよ」

夕張「さて、このコーナーをどう抜けていくのか……」

ズザザザザザーーッ

夕張「あーあー……何であんなにクラッチ蹴ってるのよ……」

五月雨「カーブの前からクルマが横向いてるーっ!」

夕張「出口でフラついてるし……危ないなぁ」

五月雨「でも、土を撒き上げて走っているのは迫力がありますねっ」

夕張「確かに、ダートはそれが魅力よね」

102: 2015/11/21(土) 11:13:07.20 ID:ccSM+jXq0

川内「スッゲー面白いっ!」キラキラ

五月雨「お疲れ様です」

川内「このクルマ全然パワーは無いけど、すぐ横向くし楽しいわぁ」

夕張「フッ……ただ横に向けて遊んでいるだけなら、まだまだね」

川内「なにをーっ」

夕張「少しは効率ってもんを考えなさいよ。何でコーナーの途中であんなにクラッチ蹴る必要があるのよ」

川内「だって全然吹けないんだもん」

夕張「いいこと?スリッピ―な路面だからこそ繊細な操作を要求されるの。ドリフトの練習に来たんじゃないんだから」

川内「別に速く走る為の練習に来たワケでもないじゃん」

夕張「わざわざこんな遠くまで来ているんだもの。そういう練習をした方がより実践的だと思わない?」

川内「じゃあその効率的な走りってのを見せてもらおうじゃないの」

夕張「勿論。見てなさいよ」

五月雨「あわわわ……もしかして喧嘩……!?」

川内「あ、殆ど3速で充分だったわ。ヘアピンだけ2速に落とせばいいって感じ」

夕張「ん、りょーかーい。パワーが無い分、やっぱりスピードはのらなそうね」

五月雨「あ、あれ?」

夕張、コースイン――

103: 2015/11/21(土) 11:18:59.82 ID:ccSM+jXq0

川内「やれやれ、夕張はどうも考え方が真面目だなー。五月雨ちゃんもそう思わない?」

五月雨「アハハー……不真面目よりかは良いと思いますけど……」

川内「まあ、そこが夕張らしいっちゃらしいんだけどね。でもどうせなら自分が楽しめた方が最高でしょ?」

五月雨「それはそうですね」

川内「でもゴメンね、私らだけで遊んじゃってて」

五月雨「気にしないでください。私も久々に遠出しましたし、見ているだけでも結構楽しいです」

川内「そう?見ていて楽しいなら乗ったらもっと楽しいよ」

五月雨「え、でも私クルマの運転したことないです」

川内「んー。それなら隅っこの方でちょっと乗ってみようよ。コース走るのはダメだろうけど、広場のトコなら問題ないでしょ」

五月雨「え、えー……」

川内「モノは試しだって。それにもしもの時に五月雨ちゃんが運転しなくちゃいけないって事も考えられるでしょ」

五月雨「た、確かに……」

川内「よし、じゃあ夕張が戻って来たら早速乗ってみよう」

五月雨「あ、音が近くなってきましたね」

川内「あんだけ大口叩いてたんだから、しっかりチェックしておかないとねー」ニヤリ

五月雨「川内さん、顔が悪役っぽいです」


104: 2015/11/21(土) 11:19:59.58 ID:ccSM+jXq0

ヴォンヴォーン

川内「………」

五月雨「………」

川内「なんか、遅くね?」

五月雨「うーん……スピードは川内さんと変わらない気がしますが……」

川内「やろうとしている事は分かるけど、あれで効率的な走りって言われてもなぁ……」

五月雨「川内さんは、思いっきり横に向けてましたもんね」

川内「アレはだいぶ大袈裟だけど、夕張がやろうとしていることもあんまり変わらないよ」

五月雨「そうなんですか?」

川内「私も難しい事は分かんないけどさ。私みたいに大きくドリフトさせると遅い……っていうのは何となく分かるでしょ?」

五月雨「んーと、何となく」

川内「でも実はあれだけ角度をつけていても、大きくハンドルを切ったのは最初だけで、後はちょっと修正にカウンターを当てただけなんだ」

五月雨「えっ、そうなんですか?」

川内「後輪駆動、特にシルビアみたいなFRがそうなんだけど、アクセルの調整をちゃんとやれば綺麗に曲がってくれるのよ」

五月雨「えーっと……つまり……」

川内「夕張がやろうとしているのは、それを突き詰めた感じだね。角度が浅い、グリップに近いドリフトっていうのかな」

五月雨「難しいです……」

川内「口で言うのは簡単だけどね。やろうとしていることは確かに難しいよ」

川内「特に夕張はそういうのに拘ってるしね。私は振り回した方が楽しいけど」

五月雨「ほえー……一口にクルマの運転といっても、様々なんですねぇ」

川内「ま、出来なきゃタダの戯言だよ。速い人なんてごまんと居るワケだしさ」

105: 2015/11/21(土) 11:21:36.46 ID:ccSM+jXq0

夕張「うーん……アクセル開度をもう少し……」ブツブツ

五月雨「お疲れ様です……って、夕張さん?」

夕張「へ?ああ、ゴメンゴメン」

川内「そんなに頭ばっかり使って疲れないのー?」

夕張「アンタが考えなさ過ぎなのよ」

川内「別にプロじゃないんだし、楽しく乗ればいいんじゃない?」

夕張「わ、私はこれでも楽しんでいるわよっ」

五月雨「まあまあ……ところで、お二人共。一旦休憩しませんか?」

夕張「そうね。ドライバーもクーリングしないと」

川内「何かお腹減っちゃったなぁ」

夕張「とりあえず、そこの売店にでも行って……おっ?」

五月雨「どうかしました?」

夕張「ニーナナのトレノだわ。珍しい」

川内「トレノ?」

夕張「そっ。これが初代になるの」

五月雨「小っちゃくて可愛いかも……」

夕張「私的には、可愛いというより渋いと思うんだけどなぁ……オバフェンとか」

川内「ヅホも可愛いとか言いそうだよねぇ」

瑞鳳「私がどうかした?」

川内「アイエエッ!?ズイホウナンデ!?」

瑞鳳「そんなに驚かなくても……」

夕張「でも、本当にどうしてこんな所に……提督と一緒じゃなかったの?」

瑞鳳「提督さんなら、あっちでタバコ吸ってるよ。ところでこのトレノを見てくれ、コイツをどう思う?」

夕張「すごく……ニーナナです」

川内「何言ってんの」

106: 2015/11/21(土) 11:23:58.39 ID:ccSM+jXq0

五月雨「もしかして瑞鳳さんもクルマを買ったんですか?」

瑞鳳「そうなのよ。見た目も可愛いし、色合いも似てるでしょ?」

夕張「モスグリーンと迷彩

川内「そういえば、ここまでどうやって来たのさ」

瑞鳳「え?提督さんのクルマだけど。ホラ、そこのハチロク」

夕張「……あのトカゲのステッカーって……」

川内「あー!あのハチロクじゃん!」

五月雨「あれはトカゲじゃなくてヤモリですよ」

夕・川「!!??」

夕張「えっ!?さみちゃん何か知ってるの!?」ガバッ

五月雨「ふぇっ?まだウチの設備が整っていない頃、何回か乗ったことが……」

川内「なんだよ!それなら教えてくれればいいのに!」

五月雨「え……でもこのクルマ、ハチロクじゃなくてカローラですよね?」キョトン

夕張「ああ、うん。確かにそうだけど……」

五月雨「以前提督のお家にご招待された時も、このクルマで行きましたよ。奥様お手製の水団美味しかったですっ」

川内「うーむ……流石初期艦だね……」

107: 2015/11/21(土) 11:44:24.63 ID:ccSM+jXq0

小ネタ 今日の吹雪ちゃん

皆さんこんにちは。吹雪です。

市川での生活もだいぶ慣れてきました。

先輩の皆さんも良い人ばかりだし、

司令官も見た目はアレだけど、とても誠実な方です。

しかし、やはり気になることがいくつか。

何故か工廠には資材と一緒にタイヤが積まれています。

何の為にあるのでしょうか。浮き輪の代わりでしょうか。

あと、輸送用のドラム缶とオイル用のドラム缶は分けて置いてほしいです。

あまりに重かったので、腹いせにケリを入れましたが痛かったです。

そういえば昨日、夕張さんがボロボロのクルマを見ながらニヤニヤしていました。

ちょっと気持ち悪かったです。


望月「どうしたブッキー。ラーメン伸びるぞ」

吹雪「あ、望月ちゃん……って何そのやたら赤いカレー……」

望月「50倍激辛カレー」

吹雪「うわぁ……」

望月「美味いのになぁ。辛味の中にも深いカレーの味が広がって……」

吹雪「そんなバカ舌用のカレーをレビューされても食べる気起きないよ」


108: 2015/11/21(土) 11:47:56.86 ID:ccSM+jXq0
一旦終了。
プリンツが丙でも出るなら、まだ少し希望がある……かも。

119: 2015/11/24(火) 20:22:05.12 ID:v+kGSTKNo

小ネタ あてにならない予告


川内「離れない……っ」

川内「楽しむ余裕すら無いねコリャ……ちょっとヤバいかも」

夕張「流石華の二水戦、ってとこかしら。あの川内が追い込まれるなんてね」

夕張「……それにしても、MR2vsFCって、今平成何年だっけ?」


「ごめんなさい、川内ちゃん……」

神通「今夜は、勝たせてもらいます」


那珂ちゃん?BGM代わりにどっかのステージで歌ってるんじゃない?
首都高速トライアルみたいに。

112: 2015/11/21(土) 13:17:03.74 ID:VlTkqGOU0

引用: 【艦これ】夕張と180SX