1: 2020/07/19(日) 18:27:11.380 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

男「はい」

JD「こんばんは」

男「君はたしか隣に越してきた……」

JD「あの……肉じゃが作りすぎちゃって……よろしければ……」

男「え、いいの?」

JD「どうぞ」

男「これはおいしそうだ! ありがたくいただくよ!」

6: 2020/07/19(日) 18:31:16.563 ID:vjw85Kp60.net
男「さっそく……」ハムッ

男「うん、このジャガイモ……柔らかくてホクホクしてておいしい」ホフホフ

男「このつゆも……よくダシがきいてる」

男「特にこの肉ときたら……」ハグ…

男「なんというか、彼女の食へのこだわりを感じる一品だな」

男「ごちそうさまでした」

8: 2020/07/19(日) 18:34:05.839 ID:vjw85Kp60.net
男「さっきはどうも」

JD「お味はいかがでした?」

男「とてもおいしかったよ」

JD「本当ですか、よかった!」

男「それじゃまた」

JD「ええ、また」

11: 2020/07/19(日) 18:38:06.347 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

男「はい」

JD「こんばんは」

男「今日はどうしたの?」

JD「また肉じゃがを作りすぎてしまって……」

男「で、おすそわけ? 悪いなぁ、ありがとう」

JD「いえ、ご迷惑でなきゃいいんですが……」

14: 2020/07/19(日) 18:40:38.168 ID:vjw85Kp60.net
男「食器下げに来たよ」

JD「今日はいかがでした?」

男「おいしかったよ」

JD「そうですか、よかった!」

男「独り身なんで、こういう手料理はありがたいよ」

JD「そういってもらえるとほっとします」

18: 2020/07/19(日) 18:43:49.799 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

男「はい」

JD「また作りすぎちゃって……」

男「これはこれは……遠慮なくいただくよ」

男(今日で三日目だ……)

男(まあ、おかげでちょっと食費が浮いて助かるし、全然かまわないんだけど)

20: 2020/07/19(日) 18:46:09.750 ID:vjw85Kp60.net
男(あれから、彼女は毎日肉じゃがを持ってくる)

課長「お、昼休みだ」

課長「みんな、会社の近くに新しい店がオープンしたから、一緒にどうだね」

同僚「あ、行きます行きます!」

OL「あたしもー!」

男「俺も行きます」

24: 2020/07/19(日) 18:49:18.670 ID:vjw85Kp60.net
課長「なかなかおいしいね」モグモグ

同僚「ええ、うまいっす」モグモグ

男「……」

男「みんなはさ、食へのこだわりってある?」

同僚「こだわり? 例えばどういうのだよ?」

男「なんでもいいよ。朝食は抜かないとか、目玉焼きには醤油かソースかとか、皿はこれ使うとか」

同僚「そうだなぁ……」

OL「あたしあるー!」

26: 2020/07/19(日) 18:52:40.724 ID:vjw85Kp60.net
OL「あたし、毎朝ヨーグルト食べてるんだけど」

男「健康によさそうだね」

OL「ヨーグルトの蓋の裏なめちゃう」

同僚「意地きたねぇ~!」

OL「え、そう?」

男「お前は?」

同僚「俺は箸の使い方だな。メチャクチャな握り方してる奴見ると注意したくなっちゃう」

OL「こまか~い!」

同僚「日本人なら箸はちゃんと使わなきゃ」

29: 2020/07/19(日) 18:55:52.215 ID:vjw85Kp60.net
課長「食のこだわりといえば……」

課長「そういえば、昔の美食家にこんな人がいたな」

男「?」

課長「その人は鶏肉が大好きで、ひたすらうまい鶏肉を追求していったんだが」

課長「やがて、ある成分を食べさせたニワトリが一番おいしいんだって結論に達して」

課長「ついには自分でニワトリを飼って、自分で飼料(エサ)まで開発したそうだよ」

同僚「うわ、すげえ……。さすがにそこまでやるのは無理っすねー」

OL「それにそのニワトリがあたしらにとってもおいしいかは分かんないしね」

同僚「味覚は人それぞれだもんなぁ」

男「だけど、その美食家の気持ちも分かる気もしますね」

30: 2020/07/19(日) 18:59:19.112 ID:vjw85Kp60.net
同僚「ううん……まだ早い時間なのに、結構酔っ払っちまった……」

男「ここからお前んちまで帰るの大変だろ。よかったら寄ってけよ」

同僚「いいのか?」

男「野郎の一人暮らしはたまに寂しくなるんだよ」

同僚「おいおい……襲うんじゃねえぞ?」

男「襲うわけないだろ。お前が誰か頃した凶悪犯罪者ってんなら別だがな」

33: 2020/07/19(日) 19:02:10.249 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

JD「今日も作りすぎちゃって……」

男「ああ、いつもどうも」



同僚「誰だよ、今の? なかなか可愛かったけど……」

男「お隣の学生さん。毎日肉じゃが持ってきてくれるんだ」

同僚「毎日? すげー! お前に気があるんじゃねーの?」

男「んなことないだろ……」

34: 2020/07/19(日) 19:05:11.867 ID:vjw85Kp60.net
男「よかったらちょっと食えよ」

同僚「お、悪いな!」

同僚「……」モグッ

同僚「なんだこの肉……?」

同僚「うーん、俺には合わねえわ。ごめん」

男「そうか? まあ、味覚は人それぞれだからしょうがないな」

37: 2020/07/19(日) 19:08:08.362 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

JD「肉じゃがをどうぞ……」

男「ありがとう」



ピンポーン

JD「今日も肉じゃが作りすぎちゃって……」

男「おいしく食べさせてもらうよ」

38: 2020/07/19(日) 19:10:45.315 ID:vjw85Kp60.net
ピンポーン

男(今夜も来たか)

男(今日で……ちょうど一ヶ月目ぐらいかな)

JD「こんばんは」

男「いらっしゃい。今日も肉じゃがを持ってきてくれたの?」

JD「いえ、今日は持ってきてません」

男「あ、これは失礼」

42: 2020/07/19(日) 19:14:08.897 ID:vjw85Kp60.net
男「じゃあ、なんのご用で?」

JD「今日はあなたにごちそうしてもらおうと思いまして」

男「ごちそう? うちに大したものはないんだけど……」

男「あ、もしかして一緒に食事しようってこと?」

JD「そうではなく……私が食べたいのはあなたそのものです」

男「……どういうことだ?」

44: 2020/07/19(日) 19:16:39.070 ID:vjw85Kp60.net
JD「私が人の味に目覚めたのは、中学生の頃……。初めては事故で氏んだクラスメイトでした」

JD「それからというもの、自分なりに研究を重ね……」

JD「やがて、“人の肉を食べた人間の肉は美味い”という結論に達しました」

男「そうか……肉じゃがの肉は、やっぱり人肉だったのか」

JD「ええ、一ヶ月も食べさせたのです。あなたの肉もさぞ美味しくなってることでしょう」

JD「もう……我慢できません!」ギラッ

男「包丁……本気みたいだな」

男「最後に……一つ聞いていいか」

45: 2020/07/19(日) 19:19:24.092 ID:vjw85Kp60.net
男「君が俺に食わせてくれた肉の“主”は、君が自分で頃したのかい?」

JD「その通りです」

JD「殺害後、冷凍保存して少しずつ、肉じゃがにしてたんです」

男「そっか、ありがとう」

ガシッ!

JD「ぐっ!?」

50: 2020/07/19(日) 19:23:24.070 ID:vjw85Kp60.net
男「俺は君から食のこだわりを感じてた……」

男「ある種の親近感も抱いてた……」

JD「ぐ、うう……!」メキメキ…

男「だけど、少し違うのは」

男「君は“人の肉を食べた人間の肉は美味い”という結論に達したようだけど」

男「俺は“人を頃した人間の肉は美味い”という結論に達したんだ」

男「殺人者に出会うなんてこと滅多にないから……本当に感謝してる。ありがとう」

ボキィッ!

ガクッ…

男「これで俺も……久々に美味い人の肉にありつける」

53: 2020/07/19(日) 19:25:38.567 ID:vjw85Kp60.net
男「だけどもし、俺の出した結論が正しいとするなら……」

男「きっと俺の肉もさぞ美味になってることだろうなぁ」









おわり

61: 2020/07/19(日) 19:29:57.493 ID:bH8Qonzf0.net
おつ

引用: 隣人JD「あの……肉じゃが作りすぎちゃって……」男「ありがたくいただくよ!」