173: 2010/12/31(金) 17:07:57.58 ID:cUeiO1s0

     ~とあるホストの頂点踏破~ 
             ナンバーワン   
 
gdgdを少しでも防止の為。作中で細かいところ、小難しいところは割愛してます ググるなり質問してくだし 
表現力がうんkなので地の文使います※かなり多いです 
PC推奨 (AAもあります) 
別作品のキャラもでてきます 
>>1から書いた駄文から読むとちょっとは面白みがでるかもしれません 
途中で注意書きもあります 
にわかが成り行きでやるもんじゃねーな、などと予防線張りまくって序章だけ投下開始
『魔女狩りの王(イノケンティウス)』

174: 2010/12/31(金) 17:10:14.26 ID:cUeiO1s0
ぼんやり目を覚ますとそこは見覚えのある天井だった 
左腕を見ると腕から点滴が伸びている 
静かな部屋に心電図が一定のリズムでBGMの役を成している 
右腕を見ると包帯が巻きつけられていた 
だが腕から先、つまり右手が無かった 
 
記憶が次々と呼び起こされ、急速に意識が覚醒した 
心電図がアップテンポになり、肉体の些細な変化に感知する医療技術の粋を証明する 
 
上条(俺は……生きているのか?) 
 
上体を起こし周りを伺う 
完全に知った部屋だ 
学生の頃何度か世話になった名医の病院だ 
 
上条(生きている、生かされた?) 
 
上条(しかしなぜだ…土御門の言い分なら学園都市が俺を助ける理由がない) 
 
上条は思考する 
まずあの高さから飛び降りたのは間違いない、記憶にもある 
土御門に斬られた右手が証拠だ 
二つ名通り即氏からも生還させるくらいあの医者がすごいのか? 
いやいくらなんでも氏んだ人間を生き返らせることなんて不可能だ 
俺が実は俺じゃない?いや意味わからん。クローン?右手まで取る意味もわからん 
 
思考の結果わからないに至った 
 
確実に言えることは自分はまだ生きている 

175: 2010/12/31(金) 17:11:33.28 ID:cUeiO1s0
ナースコールのボタンを見て上条は考える 
押すべきか… 
押したとしてどうだろう、もし都市の人間に引き渡される…いや、どの道ここに来てる理由がないな 
逃げるか…しかし探されている可能性もある 美琴に連絡が取れればなんとかなりそうなんだが  
 
上条は愛しい女の事を思い出し、連絡手段について考える 
携帯は無い様なので却下、公衆電話か…金がない 
となると病院の電話だ 
 
体に纏わり着く管を外し、自分が履いていた作業靴を履く 服は見当たらない 恐らく処分されたのだろう 
靴には血が付着していて、あの出来事が勘違いでないことを証明していた 
 
上条(外は誰もいないな) 
 
見張りがいないか確認する 
 
上条(このフロアのナースセンターは俺の顔分かりそうだから下に行くか) 
 
顔を隠すように俯き、廊下を早足で抜ける 

176: 2010/12/31(金) 17:14:43.20 ID:cUeiO1s0
意外とあっさり電話は借りれた 
電話番号は覚えている 
以前、美琴から恋人の電話番号くらい覚えておけと言われ、電話番号の書き取りをさせられたからだ 
あの時のやり取りがまさか本当に役に立つとは、と幸せな苦笑いする 
 
番号をプッシュする 
美琴の声が聞きたい、心配してるだろう、早く声を聞かせたい 
しかし 
 
『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』 
 
上条(あれ?間違えたか?) 
 
掛けなおす、同じ結果 
一つ一つ確認して再度掛けなおす、変わらない 
 
上条「なんでだよ!!」 
 
声に出てしまった、驚いた看護婦がこちらを見るが頭を下げて謝る 
 
上条(なぜでない、いや使われていないってなんだよ) 
 
澱みに似た不安が胸をよぎる 
 
上条(会社に掛けるか) 
 
番号案内を通し、事務所に転送してもらう 
 

177: 2010/12/31(金) 17:15:57.65 ID:cUeiO1s0
『はい、とある会社でございます』 
 
上条「あの…開発戦略部の御坂をお願いしたいんですけど」 
 
『御坂ですね、少々お待ちください。…』 
 
『…。申し訳ございません、当社に御坂という社員は登録されておりませんが』 
 
上条「え?御坂ですよ御坂美琴」 
 
『御坂美琴でございますか?』  
 
『学園都市では常盤台中学の御坂美琴さんしかいらっしゃらないと思いますが…』 
 
上条「ですからその御坂美琴ですよ」 
 
『……』 
 
ガチャ 
 
上条「な!?」 
  
再度掛けなおす 
 
『はい、とある事務所で「おい!なんで切ったんだ!」』 
 
上条「何かあったのか?教えてくれよ!!…なぁ!」 
 
『これ以上イタズラをするなら通報します』 
 
上条「ふざけんなよ!!そこで働いてるだろうが!」 
 
『当社では中学生の採用などしておりませんが』 
 
上条「なんだっ…。え?」 
 
『ですから中学生の採用などしておりません!』 
 
ガチャ 
 
思考が止まる 
 
上条(………中学生?美琴が?)
 
受話器を置くと電話のディスプレイに日付が表示された 
土御門に裏切られ、自分がビルから飛び降りたあの日の… 
 
9年前だった 

178: 2010/12/31(金) 17:18:57.05 ID:cUeiO1s0
どうなってる?カレンダーを見てみても9年前 
時計は正常に動いている 
廊下を歩きながら周囲に目を配る 
テレビは昔やってたカナミンとかいうアニメのCMをやっていた 
自販機の型が古い、もちろん売っている品も古い 
 
上条(これはドッキリでせうか?) 
 
学園都市に邪魔者扱いされると 
9年前を再現した世界につれていかれるという突拍子もない妄想まで納得してしまいそうだ 
自室へ戻る、腕が疼きだした 
ベッドに座ると一つの閃きが起きた 
 
上条(……タイムスリップ?) 
 
散々超常現象を見てきた、どんなベクトルでも操る人間、冷蔵庫から何でも取り出してくる人間 
炎の巨人を出す魔術師、瞬間移動するツインテール、愛しいビリビリ女  
 
上条(しかし流石にタイムスリップなんて……あんのか?) 
 
確かめる方法はある 
もう一度電話だ、常盤台に掛ければいい 
そこで答えがでる 
 

179: 2010/12/31(金) 17:20:29.66 ID:cUeiO1s0
幸い時刻は昼時 
いくらお嬢様学校でも昼休みならとりついでくれるだろう 
 
先ほどの手順で転送してもらう 
 
prrr prr 
『はい、常盤台中学校でございます。お手数でございますが、ご用件とお名前をよろしいでしょうか』 
 
上条「あの…そちらの学生の御坂美琴の親類の上条と申します、ちょっと緊急の用事で取り次いでもらいたいんですが」 
 
『親類の方とは?どういった関係に当たる方でしょうか?』 
 
上条「えと…親類っというか………許婚です!」 
 
『え…?、しょ、少々お待ちください』 
  

180: 2010/12/31(金) 17:21:29.95 ID:cUeiO1s0
数分後 
 
『も…ももももしもし?///』 
 
上条「もしもし!?美琴か!?」 
 
この世で最も愛しい人間の声、一度諦め、必氏に会いたいと願った女の声 
上条は涙を滲ませて質問をする 
 
『そっそうだけど!?///』 
 
上条「お前大丈夫なのか?変わった事はないのか?」 
 
『かかか?変わった事!?にゃんにもないよ?///』
 
上条「そうか…よかったぁ…。お前が無事で」 
 
『なに?ど、どうしたのよ』 
 
上条「終わったらあの公園に来てくれよ。話があるから」 
 
『アンタ風邪でもひいたの?声がなんか変よ?///』 
 
上条「いや?ひいてないぞ」 
 
『そ、それならいいけど。いきなり電話してきてビックリするじゃない///』 
 
上条「すまん緊急だったし声が聞きたかったんだ」 
 
『こ、声って…別にいいけど///』 
 
『いきなり。い、い、許婚から電話なんていうから焦るわよ///』 
 
上条「いや、別にいいだろう?照れるなよ」 
 
『て、照れてなんてない!!///』 
 
上条「まぁ、早く会いたいから急いで来てくれよ。俺は今から行って待ってるから」 
 
『え?今から?あ、ぅん。急ぐね?///』 
 
ガチャ 
上条は失念していた。 
嬉しさの余りお互いの立場が違うことに 
今話した美琴は中学生の、まだ上条と付き合う前の純情な美琴だということに 
 
上条「あー早く会いてーなぁ…」

181: 2010/12/31(金) 17:23:18.76 ID:cUeiO1s0
暖かい陽気だが平日昼間の公園は人もまばらだった 
しかし季節は冬 
 
上条「さ…寒い!痛い!」 
 
病院の寝巻きしか着る物がなく、人目を避けて公園が見渡せる茂みに座りつぶやく 
人が見たらトイレを我慢できなくなって、野に放っていると思われてもおかしくない 
 
上条「まじで寒い、痛い!でも美琴に会う為頑張る!」 
 
痛み止めが切れている右腕がジンジンと疼くが、美琴に再開して抱き合う妄想で心を暖めて耐え忍ぶ 
  
目の前を何かが超高速で通り過ぎる 
 
上条「ん?」 
 
目で追えないくらいのスピードだが、間違いなく美琴だった 
 
上条「美琴ぉおおおおおおおおおおお!!!!!」 
 
顔の赤い美琴が振り向き、また超高速で走ってくる 
 
上条と近づく…が、バックステップで距離をとり帯電する 
 
上条「おい!!どうした!!」 
 
美琴「あんた誰よ!」 
 
上条「ああ?俺だよ、当麻だよ!」 
 
美琴「近づくな!!」 
 
電撃が二人の間を薙ぐ 
 
美琴「似てるのは認めるわ、態度なんかもそっくり、顔も似てる、しゃべりも声も似てるわ」 
 
美琴「でもねアイツはアタシの能力じゃ補足できないし、そんな老けてないわよ!!」

182: 2010/12/31(金) 17:25:35.16 ID:cUeiO1s0
上条(ん?美琴がなんか小さい気がする…) 
 
美琴「なんとか言ったらどうなのよ、偽者さん」 
 
上条「待て待て俺は俺だ…ああっ!!!」 
 
上条「お前っ!中学生じゃねーか!!」  
 
恋は盲目とはいうが上条の鈍さの相乗効果で手に負えない 
 
美琴「何言ってんのよ!?」 
 
上条「ああ、待て待て…ちょっとまて!!」 
 
上条は思考する 
そうだ9年前なんだから、美琴はまだ俺と付き合っても無いんだった 
つーことは何だ?抱きついてキスしたらビリビリの刑かよ! …不幸だ
いやいや待て待て、美琴はすでにこの頃から俺の事好きだったはずだ 
ああ…納得 
まだ初心な頃に許婚なんて言われて舞い上がって早退してきたのか、可愛いじゃねーか 
 
上条「お前ほんと可愛いな!」  
 
美琴「ふざけんじゃないわよ!!人をよくも騙してくれたわね!!」 
 
上条「ちょちょちょ待て待て!!!!まって!!」 
 
再度思考する 
あれ?なんだっけ?ああそうか俺偽者扱いだったんだ 
そりゃいきなり高校生が25になってたらビックリだわな 
それに右手が無いんだから能力で感知もできる、ああ納得した 
他人に見えて当然だわ 
 
上条「ああ、ちょっと説明させてもらっていいか?」 
 
愛しい女を目の前に、触れられないもどかしさを感じつつも話し合いを勧める

183: 2010/12/31(金) 17:27:01.18 ID:cUeiO1s0
上条は先ず右手の状態を見せて説明を始めた 
 
自分がこの時代の人間でなく、9年後の未来から来た事、学園都市の未来の事、裏切られ右手を失った事 
二人は愛し合って同棲していた事、別居した経緯、そして今に至るまで 
この時代の上条が知り得ない事も話した 
美琴の体のとある場所のホクロのを言うと顔を真っ赤にして帯電するが、なんとか収める 
ただ都市の美琴を利用する陰謀だけは話さなかった 
右手を狙ってという風に話した、もちろん土御門の名前もださなかった 
時折美琴からも質問がくる、きちんと回答をし、疑念を晴らそうとする  
 
美琴「ふーん、よくできた話ねぇ」 
 
上条「やっぱり信じてもらえないんでせうか」 
 
美琴「どうだろ、わかんないわ」 
 
美琴「ただ言えるのはアンタ病院に戻った方がいいわ」 
 
上条「いや、学園都市から狙われてるかも…」 
 
美琴「都市のお偉いさんに、タイムスリップしてきましたって言ってみなさい?」 
 
美琴「じゃあ証明してみせろ、できないなら嘘をつくな。で終わりよ」 
 
美琴「そもそもアンタが言わなきゃ誰も思いもしないでしょ」 
 
上条「おお、流石美琴せんせーだな」 
 
美琴「な、なによ…///」 
 
反応が逐一上条と同一なので照れてしまう 
少なくとも、もう疑ってはいなかった 
しかし美琴には新たな疑問がでていた 
 
美琴「でも問題があるわ…」 
 
上条「問題?」 
 
美琴「そう、この時代のアンタはどうなっているのか?ってこと」

184: 2010/12/31(金) 17:27:47.60 ID:cUeiO1s0
美琴「つまり、未来からのアンタがいるなら、この時代のアンタはどこにいるのか?」 
 
美琴「仮にこの時代と未来のアンタ両方がこの時代に存在するならどうなってしまうのか?」 
 
上条「すみません、せんせー。わかりません」 
 
美琴「アンタ早いわよ…」 
 
上条「伊達に大学滑ってないぜ!」 
 
美琴「自慢しないの、あとこの時期に滑るいうな!!」 
 
美琴のタイムトラベル論展開中、しばしお待ちを 
当SSのキャラ達は受験生を応援しております  
 
美琴「~~~~~~ってことなのよ」 
 
上条「ううーん、つまりタイムパラドックスに気をつければいいんだな」 
 
美琴「詳しくはアタシも専門じゃないし、まだ中学だから習ってないんだけど」 
 
上条「いやいや、十分スゲーよ。流石上条さんの嫁」 
 
美琴「な、ふ、ふにゃ~///」 
 
上条は付き合った頃の美琴の反応を思い出し、ノスタルジックな気持ちになる 
 
上条「うん…やっぱ美琴は可愛いな」  

185: 2010/12/31(金) 17:29:25.93 ID:cUeiO1s0
上条「タイムパラドックスを起こさない様にするのはどうしたらいいんだ?」 
 
美琴「さっきもいったけど、ありえなかった事、起きてなかった事をやっちゃうことじゃないかな」 
 
美琴「詳しくは専門家に聞いてみるわ」 
 
上条「助かる、じゃあ先ず俺に会ったらまずいな」 
 
上条「俺を見てみたいけどなー。若いんだろうなー」 
 
美琴「そうね一番ありそうで怖いわ」 
 
上条「しばらく病院に引きこもりかな」 
 
美琴「そうね、それがいいと思うわ。この時代のアンタに会うと何が起きるか分からないから」 
 
上条16「何の話だ?ビリビリ」 
 
美琴「だから今のアンタがアイツに会うと…」 
 
美琴は目の前に居る上条とは逆の方向から聞えた上条の声に固まる 
 
上条25「ん?」 
 
美琴「見るなぁぁああああああああああああああああああ!!!」 
 
上条25「おわっ!」 
 
咄嗟に目の前にいる上条25の顔に抱きつく 
上条25の顔面に成長過程のさり気ない膨らみが押し付けられる 
 
上条25「んー!!んー!!!」 
 
上条16「おいおい、何してんだよ!?新しい技ですか?」 
 
美琴「いいからこっち見ないで!!あっち向きなさい!!」 
 
上条16「はぁ?なんでだよ?」 
 
上条25「んー!!んんーー!!」 
 
上条16「っておい!その人ケガしてんじゃねーか!!」 
 
まったくもって空気の読めない上条当麻16 
いや、この場合彼の方が正しいのであるが…

186: 2010/12/31(金) 17:30:32.88 ID:cUeiO1s0
※上条25は大人の方 上条16はおなじみの高校生の方です 慣れるまで我慢してつかーさい 
 
上条16「おいっ!ビリビリ!!やめろ!!」 
 
しがみ付いてる美琴を引き離そうと引っ張る上条16 
顔を見せまいとしがみ付く美琴 
小ぶりとはいえ、胸を押し付けられ呼吸が限界に近く引き離そうとする上条25 
公園のど真ん中で混沌としたやり取りが行われる  
 
上条25「ぶはぁっ!!ゲフォッ!ゴホ!!」 
 
美琴「あわわわわわっ!」 
 
上条16「大丈夫ですか?」 
 
美琴「見るなぁああああああ!!」 
 
ズン メツブシ 
 
上条16「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」 
 
上条16「何すんだお前ええええええええええ!!」 
 
上条25「マジで!!氏ぬかと思ったわ」 
 
ズキズキと痛む目を押さえ訴える上条16 
ゲホゲホと咳き込み、疼く腕を我慢する上条25 
しかしこのお互いの声に… 
 
上条x2「「んん??」」 
 
美琴「あ、ああ…」 
 
 

 
--------------------二人の上条が交差する時物語は始まる------------------- 
 
 

193: 2011/01/01(正月) 12:13:35.76 ID:6wY0kcI0
上条達は考える 
俺の声?いや、え? んん? 
疑問がでるが、先に答えを導いたのは持っている情報の多い上条25だった 
 
上条25(まさか…俺がいるのか!!??) 
 
そう考えれば美琴の急な行動にも合点がいく 
 
上条25(いきなり出会っちまうとは…流石不幸体質x2) 
 
見ればツンツン頭が目を抑えて悶絶している 
 
美琴「なんでも無いわよ、ちょっとあっちに行って目を洗いましょう!?」 
 
美琴が右腕を指し、明後日の方を指さす、恐らく病院に行けというサインだろう 
 
左手で了解の合図、若い二人を遠い目で見る 
何か不安、胸がざわつく 
世界に独り取り残されたような虚無感…… 
 
良く分からない感情を振り切る様に踵を返し病院へと戻る 
 
 

194: 2011/01/01(正月) 12:18:22.27 ID:6wY0kcI0
上条25「やべ…まじで痛い」 
 
自分の病室へと向かう 
 
上条25「あ」 
 
冥土返し「あー、君ダメじゃないか、勝手に出て行っちゃ」 
 
冥土返し「ちょっとこっちきなさい」 
 
上条25(この人ならなんか知ってるんだろうな) 
 
処置室で包帯を取られる、傷口は縫合されてたがさっき暴れたので痛みが半端じゃない 
消毒されてまた包帯を巻かれ、痛み止めの注射を打たれる  
 
冥土「この分だと問題はなさそうだね」 
  
冥土「話をいいかな?」 
 
上条25「はい、俺からもぜひ」 
 
冥土「まぁ、僕からいうけども、…君は誰なんだい?」 
  
いきなり核心を突かれドキッとする  
 

195: 2011/01/01(正月) 12:19:07.74 ID:6wY0kcI0
上条25「えーーっと、……パス1でお願いします」 
 
冥土「3回までで頼むよ、じゃあ次の質問だ、なぜ君は上条当麻君と同じDNAを持ってるんだい?」 
 
一歩詰められた 
 
上条25「……パス2で…」 
 
ふぅっと息を吐く名医 
 
冥土「んじゃ、なんで右手が無くなったんだい?」
 
上条25(これは答えられるな) 
 
上条25「襲われて斬られました」 
 
冥土「ほう…じゃあ、警備員に通報しないといけないね?」 
 
上条25(しまった…) 
 
上条25「いえ!襲われてって言うかですね、なんなんでしょうねぇ!?ハハハ!…パス3でお願いします、ハイ」 
 
冥土「うんー、んじゃなんで病院の前で倒れていたか、覚えているかい?」 
 
上条25「…は?」 
 
冥土「君はこの病院の前で倒れていたんだよ、そして応急処置もしてあった」 
 
上条25「な…?ちょ、ちょっと待ってください?」 
 
上条25は頭をフル回転させた 
ここから落下したビルは数キロ離れている、まぁ時間を飛び越えたんだから場所も移動しても変ではないだろう。原理は知らんが 
問題は応急処置だ、これは誰か第三者がやらないと不可能だ、病院の前でやるか? 
いや、別のとこに俺はいたんだ。それで誰かが処置をして病院の前に置いていった…こう考えると納得だ 
 
自分の時間移動を除いた推測を冥土返しに言う 
 
冥土返し「誰だろうね?心辺りはあるのかい?」 
 
上条25「いえ…、その辺はまったく」 
 
氏にかけの人間を応急処置のみならず、わざわざタイムスリップまでさせて病院の前に放置…都市伝説なんてあまり信じてないが 
そういう一種の神掛かった存在を信じてしまいそうになる   
上条25は冥土返しにする質問を考えながらそう思った 

196: 2011/01/01(正月) 12:21:16.04 ID:6wY0kcI0
上条25「では次、俺が質問していいですか?」 
 
冥土「先にいうが、僕はパスしないからね?」 
 
上条25「ありがとうございます、先ず応急処置はどういったものでしたか?」 
 
冥土「止血はしてあったね、しかし薬品や器具ではなく自然治癒を活性化させたような感じだった」 
 
冥土「傷口は塞いでなかったが、血はほぼ止まっていた」 
 
上条25「ですか…この傷はどのくらいで治りますか?」 
 
冥土「そうだね、そのままなら全治一週間、義手を装着ならもう少しだけ伸びるかな」 
 
冥土「義手なら早めに着けることを勧めるよ」 
 
上条25(義手か…。って金無いぞ俺っ!) 
 
上条25「俺の所持品は!?」 
 
冥土「うーん、君の所持品ね…。僕がした質問に立ち戻ることになってしまうんだけど」 
 
冥土「服装はとあるリフォーム企業の作業着だったが、学園都市はおろか国内で該当する箇所はなかったんだね」 
 
冥土「そして、IDを持っていた。…今から9年後の学園都市で発行と記してあったんだね」 
 
冥土「偽造するのに9年後じゃ意味がない、それにICチップは今の技術よりも格段に進歩してて手が込んでるどころじゃない」 
 
冥土「あとIDの名前とここの病院で登録してたDNA情報…、君………上条当麻くんなんだろう?」 
 
上条25は目を伏せた、もう言い逃れができない 
 
上条25「…ハイ、未来から来たみたいです」   
 
冥土返しが学園都市理事会と繋がりがあるのは有名な話だった

197: 2011/01/01(正月) 12:23:52.79 ID:6wY0kcI0
冥土返しは最初クローンかと思っていたようだ 
上条25は都市が美琴を利用する陰謀論は話さず 
ただ未来で襲われ、右手を持っていかれ、転落したらここにいたことまでを話した 
 
冥土「君は未来でも不思議な環境にいるねぇ…」 
 
冥土「この時代の君が聞いたらまた不幸だと叫ぶよ…?」 
 
そういえばここずっと不幸だと叫ばなくなったな… 
それだけ美琴といた時間が幸せだと感じていたのだろう 
美琴を想うとまた涙が出てきそうになる 
堪えてるつもりでも目の前の冥土返しにはバレバレだった 
 
冥土「君も色々大変な思いをして、成長したんだ。感慨深いものがあるよ」 
 
冥土「行くところが無いだろうからしばらくここにいるといいんだね」 
 
冥土「心配しなくても警備員に通報はしないよ、少なくともその怪我が治るまではね」 
 
冥土「僕の患者なんだ、僕は患者を見捨てたりは絶対しない」 
 
上条25は深々と頭を下げ、感謝をした 

198: 2011/01/01(正月) 12:27:16.87 ID:6wY0kcI0
病室のベッドの上で上条25は窓の外を眺め、今後について考えていた 
現状、美琴は味方になってくれそうだ 
こっちの俺に伝えたいことがあるのに接触できないのは残念だ 
美琴に都市の陰謀を話して伝えてもらうか、いや粛清案がでていたから 美琴が危険になる
手紙…、しかし信じるか? 差出人は未来の自分から、内容は土御門に気をつけろ…なんて 
俺なら信じないし、土御門に聞きに行っちまうな。こっちは手詰まりだ 
じゃあどうする?…金と情報だ。 
タイムスリップなんて現象、科学になくて魔術の方にあるんじゃないのか 
心あたりはあるが、必然的に接触しないといけない人物がいる 
インデックスだ 
10万3000冊の魔導書の中に時間移動の記述があってもおかしくない 
だが…そもそもインデックスさんはこの時代の俺んちにいるんだよな…… 
どうしよう… 
そして金か、これこそIDも無いから借金も仕事もできない 
 
上条25「だめだ!!わかんねぇー!!」  
 
美琴「分からないならせんせーが教えようか?」 
 
上条25「おわっ!ノックくらいしろよ」 
 
美琴「したわよ!返事ないから入ったの!なんか文句あんの!?」 
 
上条25「いえ…ないです」 
 
自分よりも10以上離れた女の子に頭が上がらないのはなぜだろうか… 
 

199: 2011/01/01(正月) 12:28:01.53 ID:6wY0kcI0
美琴「まーいいわ、アンタこれからどうすんの?」 
 
上条25「あぁ、今考えてたんだけど…とりあえず未来に帰る方法を探そうかと思って」 
 
美琴「そうねぇ…。手当たり次第なんか探してみるわ」 
 
美琴「あと、アンタお金無いんじゃないの?」 
 
上条25「……ハイ、無一文デス」 
 
美琴「いつの時代も金欠なのね、いいわ入用なものはおごったげる」 
 
上条25「いや!それはだめだ」 
 
上条25「俺はお前に頼らずに自立するって決めたんだ、お前に甘える訳にはいかねー」 
 
美琴「何よそれ、そんなん未来の話でしょ、そっちでやりなさいよ!」 
 
上条25「いや…、それでもだなー。大の大人が中学生に甘えるのはどうかと思うんだが…」 
 
美琴「こっちでもゴハンおごったりしてるんだから、いいじゃない?アンタはアンタでしょ」 
 
美琴「それにね、力になりたいの!」 
 
若さの溢れる笑顔で美琴に押される上条25  
 
上条25(ああ…年の差関係なく俺は美琴の尻にしかれるんだな…) 
 
運命というものを感じていた 

200: 2011/01/01(正月) 12:30:17.26 ID:6wY0kcI0
上条25は美琴に自分が病院の前で倒れていたことなど、冥土返しに未来からきたことがバレた事を話した 
圧倒的に情報が足りないので、じっくり解決しようと結論に至る 
 
美琴「……なんか飲み物買ってくるわね」 
 
上条25「ああ」 
 
病室の外へ行く美琴 
 
上条25(うーん、しかし…どうするか) 
 
美琴「ちょっ!アンタなにしてんの!!」 
 
上条25「?どうした!?」 
 
上条16「後追って…盗み聞きも嫌だったが、どうしてもお前の行動が気になったんだ」 
 
上条16「俺が…未来の俺がいるんだろ…?」 
  
美琴「いないいないいない、何言ってるのよ!!バカじゃないの!?」 
 
上条25「うげ!?」 
 
布団の中に潜りこむ上条25 
 
上条16「どいてくれ御坂、…ってなんで隠れてんだ?」 
  
美琴「い、いろいろあんのよ!アンタに関係ないからあっち行きなさいよ!!」 
 
上条16「関係ねーって?未来の俺がいるのに俺が関係ねーのが分かんねーよ!!」
 
上条25「おいっ!!美琴にそんな言い方ねーだろ!!美琴は俺たちの事とか色々考えてんだぞっ!!」 
 
布団の中から怒声が響き、黙る学生二人 
 
上条25(しまった…しゃべっちまった) 
 
上条16「なんであんた…、俺?が隠れるのかは知らねーけど…説明してくんねーか?」 
 
上条16「困ってるんなら力になりてーんだけど」 
 
ほんとこいつらは…。と若かりし自分達に感動すら覚えてしまう 
得体の知れない状況に飛び込んでいく、そして切り開こうとする 
大人になって世間だのなんだののシガラミで忘れてた感情だ… 
 
上条25(傍からみたら、こんな素敵な大バカだったんだな俺) 
 
上条25(こりゃ美琴もインデックスも心配するわ)

201: 2011/01/01(正月) 12:32:08.44 ID:6wY0kcI0
上条25「あー、あのだな 小難しい話だから先ず 美琴せんせーの話を聞いてくれ」 
 
布団に潜ったまま美琴に説明させる 
 
------美琴せんせー説明中----- 
未来で付き合ってる事は頬を染めつつ、省きました  
 
上条16「そうか…、なんとなくヤバイってのは分かった」 
 
美琴「はぁ…。もうそれでいいわ」 
 
上条25「せんせー、この段階でパラドックスは起きないんですか?」 
 
美琴「わからないわ、少なくとも歴史に影響を与える程のことじゃないとか?」 
 
美琴「早めに専門家を当たってみるわ」 
 
上条16「頭いい奴ならさっき一方通行がいたけどな、杖と打ち止めの調整だとよ」 
 
上条25「一方通行いんのか、この時代だと小生意気なんだろうな」 
 
美琴「一方通行か…、あんた仲いいんだから聞いてきなさいよ」 
 
上条16「ああ、いいぜ」 
 
上条25「ん?仲いいって?」 
 
上条16「冬前からあいつともつるむ様になっただろ?」 
 
上条16「バイト手伝って、ただ働きしてから」 
 
上条25「なに?…バイト?一方通行と遊ぶ?…なんだそりゃ?」

202: 2011/01/01(正月) 12:33:56.14 ID:6wY0kcI0
上条16「いや…なにって、ステイルが暴れてた時。シティボーイと一緒に戦っただろ?」 
 
上条25「ステイルが?シティ…何? …いや、まったくわからん」 
 
上条16「まさか…すでに未来が変わって?」 
  
美琴「ううん、変わってるのは過去よ?未来から来る前からあった話よ?」 
 
上条25「…ちょっと一方通行を呼んでくれないか?」 
 
上条「わかった」 
 
上条25は状況を整理する 
過去が変わってるってことか? 
俺が体験していない過去を、この時代の俺がしてる 
わかんねーな… 
・ 
・ 
一方「なンだァ?こいつァ?布団にくるまって」 
 
上条16「未来から来た俺だ」 
 
一方「なにィ?ついに脳みそが素敵にキマっちまったンですかァ?」 
 
上条25「いや俺なんだよ」 
 
一方「………アァ?」 

203: 2011/01/01(正月) 12:35:47.70 ID:6wY0kcI0
美琴せんせーの説明中 
上条16と同様の説明 
 
一方「アァ、パラレルだなそりゃ」 
 
上条25「どういうこった?」 
  
シティボーイのクールな説明中 
wikipedia タイムトラベル と内容は変わりません
 
上条25は理解した 
つまり、簡単に言うと別世界ってことか  
 
上条16「つまり簡単に言うと別世界ってことなんだな?」 
 
一方「まァそーなンだが、お前に理解できるたァ思ってねェからそれでいいよ」 
 
上条16「なんだよそれ、大体あってんだろ?」 
  
美琴「はいはい、ちょっと黙ってなさい」 

上条25(よかった喋らなくて…) 
 
上条25「んじゃ俺は隠れることもないし、この世界の歴史が変わるくらい大きく干渉しなければいいってことか」 
 
一方「ンまァそういうこったァ、別にしてもいンだが未来の知識ってなァ色んなところに影響与えちまうだろォからなァ」 
 
美琴「しかしすごいわねー、専門でもないのに、アタシも知らなかったわ」 
 
一方「テメェはまだ中二だろォが、専門じゃねェけど時間を操れねェか試したことあったからなァ」 
 
美琴「恐ろしいこと実験しないでよ」 
 
一方「変えてェ過去ってのがあンだよ……」 
 
美琴「あんた…、気にするなとは言わないけど、背負い過ぎよ」 
 
一方「るせェ…」 
 
上条25が布団からでる 
 
上条16「おお、大人の俺だ」 
 
上条25「よぉ!子供の俺」 
 
その時、病院内でアナウンスが流れる 
 
『変なシャツを着たモヤシ様、お連れ様が一階ロビーでお待ちです、とミサカは上位個体を目の前に伝えます』 
 
一方「あンのクソガキィィイ!!」 

204: 2011/01/01(正月) 12:37:31.12 ID:6wY0kcI0
一方通行が妹達の上位個体を迎えに病室をでる 
その杖をついて歩く第一位と、五体満足のNO.1を重ね、別世界なんだなと確認をする 
 
上条25「ありがとな。一方通行」 
 
一方「うっせェジジイ。シティボーイはクールに去るンだよ」 
 
ピシャっとドアを閉め、カチッ カチッっと杖をつく音が廊下に響いていた
 
上条25(…ああいう態度は変わらないんだな) 
 
上条16「これからどうするんだ?」 
 
上条25「ああ、帰る方法を探す、それと義手だな」 
 
上条16「帰る方法とかあるのか?」 
 
上条25「科学じゃ無理だろうな、魔術をあたるしかない」 
 
上条16「魔術かぁ…。インデックスに聞いてみるか」 
 
上条25「頼むよ」 
 
美琴「義手はアタシが手配するわ」 
 
上条16「いやいや、俺なんだから俺がやるよ」 
 
美琴「アンタ義手が一個いくらするか知ってるの?」 
 
上条16「いや、知らないけど。なんとか生活費切り詰めてでも…」 
 
上条25「無理だろ、すまないが美琴お願いできるか?」 
 
美琴「まかせて!」 
 
美琴がさっそく冥土返しの元へ行く 

205: 2011/01/01(正月) 12:38:35.88 ID:6wY0kcI0
上条16「なぁ!俺のことなんだから俺にさせてくれよ!」 
 
上条25「いや気持ちは分かるんだ、俺なんだから、すげーーー分かるんだ」 
 
上条16「じゃあなんで!」 
 
上条25「現実を見ろ!月末には千切りキャベツを丼ゴハンにのせて、マヨネーズと醤油で腹を膨らませる」 
 
上条25「たまに卵で栄養とろうとすれば、帰りに割れ、奇跡的に残った卵は暴食シスターの餌食になる!」 
 
上条25「こっちの俺も…、あんま変わらないんだろうが!!」 
 
上条16「流石大人の上条さん……。まったく言い返せない………。でも、だからって御坂に頼む事ねーだろ」 
 
上条25「あの子はな…。…!?」 
 
上条25はふと思う 
(俺がここで未来で付き合ってるって言うのはまずいのか?歴史に影響与える?いや待て待て? 
 この時の俺はすでに意識してるはずで、美琴が高校に上がる日に付き合ったんだ 
 いやいや…、一方通行の言うにはここは過去じゃないんだ。似てる世界。別もんだ。 
 そう考えれば…あーわけわかんねー どーにでもなーれ☆ 
 
上条25「あの子はな、詳しくは言えないが、夢は看護婦さんなんだ?」 
 
上条16「えっ…そうなのか?」 
 
上条25「そ、そうだ、だから早めにこういった環境に置いておくといいと思わないか?」 
 
上条16「いや、金の面は解決しないんじゃ?」 
 
上条25(するどいなこいつ、流石俺) 
 
上条25「その辺も大丈夫、大きな声で言えない事情があるが解決するだろう」 
 
上条25「無理だったら、借りにしといてくれ…ハハ」 
 
上条16「そうか、まぁ俺が言うんだからそうなんだろうな」 
 
上条16「インデックスに話してくるよ」 
 
上条25「ああ、頼むよ」 
 
上条25(お人よしすぎだな…9年でこんな変わっちまうのかね人は) 
 
基本的人格は上条25も変わらないのだが、酸いも甘いも噛み分けた年月の差だろう 
そう勝手に解釈をして横になった 
  

206: 2011/01/01(正月) 12:40:08.11 ID:6wY0kcI0
冥土「ちょっといいかい?」 
 
横になってあっちの世界の美琴のことを考えていた時だった 
 
冥土「寝てたのかい?」 
 
上条25「いえ、どうしました?」 
 
冥土「義手の件を聞いてね、ちょっと説明にきたんだよ」 
 
何枚かの資料を見せながら、分かりやすく説明をしてくれる 
1)思考とリンクさせ、今まで通りの反応速度で動かせること 
2)精密作業も可能、骨格は金属だが重くもなく強度も高い 
3)爪は伸びたりはしない 
4)表面の質感は肌に限りなく近い  
5)1)が現時点の技術で製造不可である、しかし超電磁砲の協力があれば製造可能 
6)正規の商品ではないので、失敗しても責任を追及できない 
7)触覚再現率は97% 
 
上条25は真っ先に聞いた 
 
上条25「美琴に危険はないんですか?」 
 
冥土「ないね。彼女のやることは、ある能力使用状態の身体、神経伝達物質の解析と、完成してからの製品の調整、装着してからの微調整だね」 
 
冥土「必要な物は、君のサインと彼女の協力と都市理事会の許可がいるからね」 
 
冥土「彼女は即決だったよ、…理事会は僕から許可をすぐ取り付ける」 
 
冥土「後は君のサインだけなんだね」 
 
上条25「お願いします!!」 
 
冥土「じゃあここにサインを…」 
 
上条25「一つ変更をお願いしたいんですけど、皮膚感を出さなくてもいいんで固く丈夫にしてもらっていいですか?」 
  
冥土「できるけど、なんでだい?」 
 
上条25「ぶん殴りたいやつがいるんです」 
 
黒い感情と共に、裏切った親友の顔が脳裏を過ぎる 

207: 2011/01/01(正月) 12:46:07.84 ID:6wY0kcI0
冥土「まぁ…色々あるのはわかるよ、君の手になるんだからね…考慮しておこう」 
 
冥土「それからお金なんだけど」 
 
上条25「ああ、手持ちがないんで、美琴に借りようかと」 
 
冥土「えっ?いや、こちらが払わないといけないんだね」 
 
上条25「えっ?」 
 
冥土「この技術が確立すれば、身体障害等にも応用が利く。医療の世界は恐ろしい進歩になるんだね」 
 
冥土「例えば歩けない人が、自分の意思で歩ける様になるってことなんだね」 
 
上条25「…え?」 
 
冥土「今までは仮に理事会の許可の取って被験者を募集しても、超電磁砲からの協力許可が取れなかったんだね」 
 
冥土「彼女も過去に色々あって悲惨な体験をしているから、拒んでいたんだろう」 
 
冥土「こちらとしては、許可を取るに至った君に感謝したいくらいだね」 
 
上条25「まじで解決しやがった…」 
 
冥土「ん?」 
 
上条25「い、いえ、なんでもないです」 
 
冥土「君の口座はないから、高校生の君の口座に振り込んでいいかね?」  
 
上条25「ああ、はい、えーっと、いえ、それでいいです」 
 
展開の速さに中々着いていけないが、結果オーライという形だろうか上条25は人事の様に考えていた 
続いて、歩けない人が歩けるようになる、御坂美琴という個体の副産物の偉大さに例の計画にも理解が深まった 
 
上条25(絶対ゆるさねーけどな) 
 

208: 2011/01/01(正月) 12:47:20.12 ID:6wY0kcI0
 
 
 
冥土返しに義手の手続きを要請した後、美琴は風紀委員の177支部へ来ていた 
 
初春「あら美坂さんじゃないですか」 
  
美琴「やっほー、初春さん元気ー?」 
 
初春「はい、白井さんなら見回りに出てますけど、どうしたんですか?」 
 
美琴「ああ、ちょっと初春さんにお願いがあってきたのよ」 
 
初春「私にですかぁ?なんでしょう?」 
 
美琴「ちょっと学園都市の監視映像を…ね!」 
 
美琴は考えた 
アイツはビルから落下したと言っていたが、体にそんな傷はなかった。 
地表に叩きつけられる前にこっちの世界に飛んだことになる 
ならば腕の応急処置をした者、少なくとも運んできた者が病院の前に映るはずである 
 
言われた日時と座標を衛星から捉えた映像が映し出される 
病院の前がばっちり映し出されていた 
 
初春「最近、長時間のハッキングは怖いので早送りしますね」 
 
美琴「ごめんね、変なこと頼んじゃって」 
 
いえいえ、と映像自体に興味が無さそうに初春は早送りをする  
人が数倍速で流れていく、その中で異常な現象が流れた 
 
美琴「!!?止めて!!!」 
 
驚いた初春が映像を止める 
そこには作業着を着た男が病院の前に倒れている 
 
巻き戻してくれる…?微かに震える声で美琴がいう 
巻き戻し映像の倒れた男が消える  
再生をすると、現れる 
また数倍速で流れる  
病院の関係者が出てきて収容されていった…… 

209: 2011/01/01(正月) 12:49:48.75 ID:6wY0kcI0
初春「なんなんですか!?今の!!」 
 
映像に興味を持ってしまった初春が興奮気味に尋ねてくる 
 
美琴「あぁ、なんだろ…。ちょっと待って、アタシもなんなんだか…」 
 
美琴はいくつかの可能性を思案する 
地表衝突前は確実、それは体のダメージを見れば分かる 
何者かに治療されたのは確定的 
映像では病院前に突然現れている 
つまり治療されたあと、テレポーターにでも転移されたのか 
しかしなんで…? 
そんな芸当ができる能力者は多くない、後輩の白井黒子を除けば一人しか浮かばない 
美琴は携帯を取り出し電話をかける 
妹達の上位個体が電話にでる 
 
美琴「ああ、一方通行に替わってもらえる?」 
 
打ち止め『はーい!お姉様からだよ!、ってミサカはミサカは不機嫌なあなたに華麗にバトンタッチしてみる』 
 
一方『あァ?なンか用かァ?クソ超電磁砲』 
 
美琴「あんたとは一回口の利き方について議論したいところね」 
 
一方『ケンカ売りにきたンですかァ?三下が二人いっから困らねェだろォがァ』 
 
美琴「いや、そうじゃなくて。あーもう! 用件を言うわ」 
 
美琴「座標移動は昨日から何をしてたかわかる?」 
 
一方『あン?知らねェよ』 
 
美琴「調べてもらえると嬉しいんだけど」 
 
一方『ジジイの三下に関わることかァ?』 
 
美琴「そうよ、病院前の映像を見たら倒れてるアイツが急に現れたの」 
 
一方『……わかったら知らせるわァ』 
 
美琴「うん、ありがとね。連絡はメールでも構わないわ。アドは打ち止めが知ってるし。一つ借りにしといて」 
 
一方『あァ…?、俺の返済分から引いといてくれやァ…』 
 
美琴「そうしとくわ…」 

210: 2011/01/01(正月) 12:51:06.38 ID:6wY0kcI0
電話を切り、息を吐く。一方通行を妹達は許しても自分はまだ完全に許してはいない 
しかしああも気にしていられると調子が狂ってしまう  
 
初春「御坂さん事件なんですか!?」 
 
鼻息を荒くした初春が御坂に尋ねる 
 
美琴「うん、ちょっと複雑でね…」  
 
何か抱え込んでいるがいい難い様子を察した 
 
初春「私でできることでしたら、何でも言ってください!」 
 
初春「抱えこんじゃったら失敗しちゃいますよ」 
  
初春は興奮を押さえきれずに言う 
 
抱え込むと失敗する、いくつかの事件を一緒に解決したが 
その過程で初春が指摘した失敗が関係者に何度かあった 
 
美琴(歴史から学べって事かしらね) 
 
ふふっと笑い美琴は初春に仕事を依頼する 
その依頼は初春の想像の遥か斜め上だった 
からかわれているのかとも思った 
  
………異世界に行く方法を調べてちょうだい………  
 
だが真剣な顔で常盤台のLEVEL5は確かにそう告げた 
 
 
 
 
 
 

211: 2011/01/01(正月) 12:52:44.83 ID:6wY0kcI0
上条16は自宅へ戻った 
ドアを開けた瞬間に飛び掛る白い影 
禁書目録だ 
 
禁書「と・う・まあああああああああああっ!!」 
 
上条16「おわっいてええええええ!!」 
 
禁書「早く帰るって行ったのに遅いんだよ!」  
 
上条16「いやいや、まてインデックス!これにはマリアナ海溝よりも深~い訳がっ!」 
 
禁書「言い訳はいいんだよ!」  
 
ガブ 
 
上条16「不幸だあああああああああああああ!!」 
 
禁書「おなかへったんだよ」 
 
上条16「へいへい…」 
 
上条16は冷蔵庫の中を見る、キャベツ1/4カットが一つポツンとあるのみ 
体温が急激に下がる感じがした 
 
上条16(しまった…買い物いくはずだったんだ……) 
 
上条16「イ、インデックスさん?」 
 
禁書「なーに?」 
 
上条16「あのー明日外食しませんか?お肉とか食べません?」 
 
禁書「え?お肉!?行くんだよ!!嬉しいんだよ!!」 
 
上条16「だから、その…今日はキャベツマヨご飯で…」 
 
そう言い切る間もなく白い影が牙をむいて飛び掛っていたのだった 

212: 2011/01/01(正月) 12:59:17.27 ID:6wY0kcI0
食事を終えたあと禁書目録に今日あった出来事を相談する 
 
禁書「んー。魔道書の中にそういった記述はあるんだけど」 
 
禁書「実際に成功した、確立された術式っていうのは書いてないんだよ」  
 
禁書「それに異世界といっても目指す地点によって術式も変わってくるみたいなんだよ」 
 
禁書「ごめんねとーま」 
 
上条16「いや、まぁ成功してもこの世界にいないんだしな。いいんだ、でもそういった記述ってどんなもんなんだ?」 
 
禁書「神隠しとか、実行前の計画だけとか、失敗例なんかが多いんだよ」 
 
上条16「神隠しってのは消えたってことか?、その後の事は?」 ※ここでの神隠しは世間一般の意味の神隠しです
 
禁書「記述が途切れてるから、帰って来てないかも」 
 
上条16「それか失敗しちまったか…だな」 
 
禁書「でも術式の方向性はおかしくはないんだよ」 
 
上条16「どういうことだ?」 
 
禁書「同じ世界なら、印と印の間を飛んだりするんだけど、印から何もないところへの転移はあまり例がないんだよ」 
 
禁書「少ない実例だと大体が召喚、つまり呼び出す術の力の流れを逆にしてるんだよ」 
 
上条16「送り込むってことか」 
 
禁書「そう、でもどこに送り込むのかとか、何かの指針がないと次元の狭間を彷徨ってしまうんだよ」 
 
禁書「あとエネルギーだね、一瞬で空間に穴を開けきるくらいの大きな力がないと失敗しちゃうんだよ」

213: 2011/01/01(正月) 13:00:49.31 ID:6wY0kcI0
上条16「その指針ってのはどういったものだ?」 
 
禁書「それがどういった形で、どうするのかは行き先で違うんだよ」 
 
上条16「それが分からないと…だな」 
 
禁書「そこの世界にしか無いものとかじゃないと、別の平行世界の同じところに飛んじゃうかも」 
 
上条16「向こうも学園都市だし、難しいな」 
  
禁書「明日大きいとーまに会わせてもらっていいかな?」 
 
上条16「俺も学校休んでいくから、朝飯食ってからいくか」 
 
禁書「うん!」 
 
 
上条16(そこにしか無いもの…か)

214: 2011/01/01(正月) 13:16:42.29 ID:6wY0kcI0
部屋の寒さで目が覚める 
時刻は深夜2時を回った頃だった 
換気の為少し開けていた窓を閉めて再びベッドへ
ちょっとベッドから出ただけで寒い 
布団の中で丸まって何かできないか考えた 
帰る方法は分かったんだろうか? 
 
上条25は不安に駆られる 
分からなければずっとこのまま、存在が許されない世界で生きなければいけない 
それも氏ぬまでずっと、自分の愛する女の下へ帰れぬまま… 
冷静に考える程不安で堪らない、一変して知ってるが知らない世界に放り込まれた 
物資を持たずに山奥に放置されるよりも恐ろしいことだ 
昨日はドタバタと興奮していたので、そこまで考えなかった  
幸いは顔の知った理解ある支援者がいたことだ。 
離れた学区や、学園都市の外だったらどんな目にあっていただろうか 
不安と恐怖で身が震えてくる 
自分の愛する女を心で強く想い描き、生み出された恐れに必氏で耐える 
 
上条25(最後にあったのは5日前だったな…) 
 
6畳間の安アパートに美琴が遊びにきた時だった 
夕飯を二人で作って、テレビの音声をBGMに酒を飲み、夜中までたっぷり会話した 
風呂に入り、床で交わり果て、お互いが元々一つであったかの様に抱き合って寝た 
 
胸が温かくなる思い出 
だがその幻想から、現実の立ち居地を意識してしまうと気が狂いそうになる 
独りこの異世界で年を取って生き。想いの女の思い出に縋り、自分の存在すら認められてない世界の日陰で惰性に身を任せる 
そんな非生産的な自分と公園で見た若い上条と美琴二人 
取り残される様な感覚が蘇る 
 
 
生き地獄だ…… 
 
夜よりも暗い感情に支配され、何かの意図で生きながらえた事さえ諦めたくなる…。恐ろしくて堪らない……堪らない……  
 
 
上条25は幼い子供が独りの夜に怯える様に震え、眠りについた 
 
 
 
 
 
 

220: 2011/01/02(日) 23:32:30.07 ID:iwgXhy.0
上条16「おはよーす」 
 
上条25「おはよう」 
 
禁書「おはようなんだよ」 
 
上条25「おおインデックス、ちっさいなーお前」 
 
禁書「む、大きいとーまはいきなりひどいんだよ!」 
 
上条25「ハハハっ!許してくれよ、久々にインデックスに会ったんだ。嬉しさの裏返しってことで」 
  
禁書「むー! そっちのインデックスも小さいのかな?」 
  
上条25「あっちのインデックスは数年前に………」 
 
上禁「「えっ……?」」 

上条25「イギリスに帰ったよ、びっくりした?」 
 
禁書「うぅうぅ~~~~~~~!!」 
 
ガブ 
 
上条25「ぎゃああああああああああああああああ」 
 
禁書「からかわないでほしいんだよ!!」 
 
上条25「久しぶりの感触だな…イテテ。あっちのインデックスも元気にしてるよ」 
 
上条16「今のは仕方ないと上条さんは思います、自業自得だ」 
 
美琴「朝っぱら病院で何騒いでんのよ、廊下までまる聞こえよ」 
 
禁書「むっ!短髪がきたんだよ!」 
 
美琴「来ちゃいけないの!?、これでも食べてなさい」 
 
禁書「物で釣ろうなんで短髪は浅ましいんだよ!」 
 
美琴「いらないの?焼きたてのパンよ?」 
 
禁書「あ…、インデックスはまだいらないとは言って無いんだよ?」 
 
美琴「ハイハイ、こっちの甘いのあげるわ」 
 
上条16「ほらインデックスお礼は?」 
 
禁書「ありがとなんだよ」モフモフ 
 
 

221: 2011/01/02(日) 23:34:46.71 ID:iwgXhy.0
4人は状況を説明しあう 
美琴は義手の開発に今日から取り掛かる事 完成は数日も掛からない事 
そして映像の事、あの芸当ができそうな転移能力者、結標淡希にはアリバイがあった事 
初春に些細な手がかりでもいいから、探してもらっている事 
上条16と禁書は逆召喚つまり送り出しという手段の可能性を 
だがそれを成し遂げるには重要なピースが足りない事 
失敗すれば例外なく氏のリスクがある事 
 
上条25は以上のことを踏まえ考える 
義手は思ったより早いな、美琴はやっぱりすごいわ 
映像の件は予想外だ…、いったい誰が… 
初春っていうと、あのサクっと物言う子だっけか…?あっちじゃまだ学生だったな。 
帰還は……やっぱ魔術か、しかしインデックスでも分からない事をどうしたらいいんだ? 
一旦は捨てた命だ…氏ぬのは別に怖くねー 
もっと怖いのは……… 
 
昨晩考えていた事が身を震わせる 
 
上条25(子供の前で情けない…気合をいれろ!上条当麻!) 

222: 2011/01/02(日) 23:36:25.08 ID:iwgXhy.0
美琴「んじゃアタシはちゃちゃと開発してくるわ」 
 
上条16「おう、がんばってな」 
 
上条25「頼りになります」 
 
美琴「あ、義手の話きいた?」  
 
上条25「ああ、ありがとな」 
 
美琴「ふふん、貸し1ね」 
 
上条25「怖いから出来るだけ早く返すよ」 
 
美琴「よろしい、んじゃーねー」 
 
手をフリフリ病室を後にする 
 
上条16「今日はどうするんだ?」 
 
上条25「うむー俺がすることってあんまないんだよな」 
 
上条16「じゃあ昼飯でも食いに行かないか?」 
 
禁書「お肉だね!!」 
 
上条25「何!?、肉だと?それで厳しい月末を戦い抜けるのか?」 
 
上条16「いや、昨日失敗してしまいまして…しかたなく」 
 
禁書「大きいとーまがなんと言おうと今日はお肉なんだよ!」 
 
上条25(こいつのせいか…) 
 
自分も似た経験した事を別世界の自分もしている事に笑みがこぼれる 
 
上条25(あ、着て行く服がねぇ…) 
 
 
 
 
  
 

223: 2011/01/02(日) 23:37:55.29 ID:iwgXhy.0
服を取りに帰った上条16の苦労に感謝しつつ、3人で待ちを歩く 
 
禁書「おっにく!おっにく!おっにっく~♪」 
 
上条25「転移魔術のことイギリス清教にもきいてくれないか?」 
 
上条25「何かわかるかもしれない」 
 
上条16「ああ、ステイルなら明日こっちにくるらしい」 
 
上条25「インデックス大好きだからなあいつは」 
 
上条16「やっぱそうなのか?」 
 
上条25「あっちじゃ少なくとも…な」 
 
スキップしながら前を歩く禁書に上条16が声をかける 
 
上条16「インデックスー、ちょっとATM行ってくるから待っててくれ」 
 
禁書「はーいなんだよ!」 
 
上条25「つらいだろうがこれも試練だ若者よ」 
 
禁書「とーま、月末苦しくならない様に、残しておくんだよ!」 
 
自覚の無い禁書目録の言葉に、上条16はふらふらとコンビニに入っていく 
 
 
 
 

224: 2011/01/02(日) 23:39:29.60 ID:iwgXhy.0
禁書「ねぇねぇ、大きいとーまぁ」 
 
上条25「ん?どーした?」 
 
禁書「あっちのインデックスは幸せにしてるのかな?」 
 
自分が夜の仕事に着いてしばらくした後に、故郷へと帰ったシスターを思い浮かべる 
自分は泣かないから、笑ってお別れをしようといいつつ顔をベチャベチャにして去ったシスターを 
 
上条25「ああ、幸せさ。インデックスの周りにはいいやつが多いからな」 
 
上条25「そいつらに囲まれて幸せに暮らしてるよ」 
 
禁書「そっかぁ、私もいつかとーまとお別れするのかなぁ…」 
 
上条25「それは分からねーよ。あっちはあっち、こっちはこっちだからな」 
 
上条25「全てはインデックスの想いひとつじゃねーかな」 
 
禁書「そうだね…」 
 
上条25は少し後悔した、やはり【未来】の比重が多い分確定事項の様に捉えてしまうのかと 
影響を与えてしまうのはよくない、一方通行の言うことが思い出された 
 
上条25「そう沈むなって、あっちのインデックスは今よりナイスバディだぜ?」 
 
禁書「え!?ホント!?」 
 
上条25「ああ、上条さんは嘘つきませんよ?」 
 
禁書「それが嘘なんだよ!」 
 
上条25「はは、でもナイスバディはほんとだ、17くらいからグングン成長したぞ」 
 
目に希望の明かり灯し自分の体をマジマジと見つめてモジモジしている 
 
上条25(かわいいやつめ、…つかおせーなアイツ)

225: 2011/01/02(日) 23:40:47.69 ID:iwgXhy.0
上条25「どーした?」 
 
上条16「おかしいんだよ、何回やっても…」 
 
上条16「金が多すぎる」 
 
上条16はいつもどうりATMにカードを差込み、残高確認をした 
厳しい現実の数字を見て引き出し取引を押すのが慣習だ 
だが今日は違った、残高の数字が桁違いなのだ 
焦って取引を中断、カードを抜き名義を確認するが、刻まれている名前は上条当麻本人 
何度やっても同じ流れになる 
変な汗がドバドバ流れているところ、今に至る 
だが答えは意外なところからでた 
 
上条25「あ、言うの忘れてた」 
 
上条25説明中 
 
上条16「なんだ…。ついに暴食シスターに食い潰される、不幸な上条さんに神様が贈り物をしてくれたのかと」 
 
はっとして周りを警戒するが、当のシスターは外で待っていた 
 
上条25「現金振込みする神とかいやだなそれ…」 
 
上条16「んじゃこれ全額下ろした方がいいな」 
 
上条25「いや、そんな大金持ち歩きたくねーよ」 
 
上条25「1/10くらいで十分だ」 
 
上条16「そうか、またなんか入用になるだろうからな」 
 
上条25「だな」 
 
義手も無料なので余り使うこともないのだが、まぁ不幸なこっちの自分にあげてもいいなと思いコンビニを後にする 
 

226: 2011/01/02(日) 23:43:55.48 ID:iwgXhy.0
土御門「よーかみやん」 
 
青ピ「ガッコさぼってシスターさんとデートかいなー」 
 
土青「「けしからん」」  
 
赤黒いどろっとした感情が一気に吹き上がる 
他人だと分かってる、でも抑えきれなかった、いや抑える気もなかったのかもしれない 
 
上条25「土御門おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 
 
髪を掴み右肘で顔面を殴打する、一発、二発、三発目は上条16と青ピに取り押さえられる 
押さえられた所を土御門に腹に一発入れられ、喉を掴まれる 
 
上条25「離せええええええ!!!」 
 
土御門「かみやん!なんだこいつは!!」 
 
青ピ「いきなりなにしよるんや」  
 
上条16「どうしたんだよ急に!!土御門!手を離してくれ!」 
 
上条25「離せおらっ!コロしてやるよクソがああああ!!」  
 
禁書目録は目を見開いて急な暴力に驚いていた 
 
上条25「おい俺、こいつを今殺せ!!」 
 
上条16「何言ってんだ!!土御門だぞ!」 
 
青ピ「ちょっと…、この人かみやんにそっくりやで!」  
 
土御門「右手…がない?」 
 
上条25「こいつは!…こいつはなぁっ!!」 
 
上条25は分かってる、自分のいた世界と違うのは。 
この土御門には、まだまったく罪はない 
しかしあの出来事が起こらないとは限らない 
だが行動を自ら起こしてしまった、全部話す決断の時だった 
 


 

227: 2011/01/02(日) 23:49:37.15 ID:iwgXhy.0
上条25は語った 
まず自分が平行世界の未来から来たこと、そして大体上条16の知っている内容を説明する 
さらに自分を裏切った人間が土御門であること、その土御門が右手を切断したこと、その理由、陰謀… 
 
上条16は驚いていた、自分の親友が未来でそんなことをするかもしれない… 
疑いようもない親友だ、しかし上条25もそうだったはず… 
土御門… 
 
土御門「俺からの回答だが、その可能性は無い」 
 
上条25「どうだかねぇ…背中刺す刃さんよぉ…」 
 
疑心暗鬼の塊だった 
両脇は上条16と青ピに押さえられている 
 
土御門「確かにその話は耳にしたことがある、超電磁砲の利用は天井亜雄という男が提唱し、その利益をメリットにごり押ししていた」 
 
土御門「だが数ヶ月前に天井はこの街から消え、同時にそのプランも凍結された」 
 
土御門「疑うなら一方通行にも聞くといい、あいつが絡んだ事件だったからな」 
 
土御門「舞夏に誓ってもいい、俺はまったく関知してない上、計画は微塵も動いてない」 
 
上条16「…俺は信じるぜ」 
 
上条25「お人よしだな…」 
 
上条25「だがそうだったな…土御門元春は義理の妹に嘘はないのはあっちもこっちも同じか」 
 
土御門「そっちの俺も舞夏ラブなんだにゃー?」 
 
上条25「ああ…土御門、悪い!すまなかった」 
 
土御門「理由が理由だにゃー、構わないといいたいが、かなり痛いぜよ」 
 
青ピ「あかん…甘かったわ…」 
 
「「「ん?」」」 
 
青ピ「時をかける女の子もリストに追加しとかなあかんで~!!」 
 
上条25「青ピはいつでもどこでも青ピなんだな…」 
 
 
 

228: 2011/01/02(日) 23:51:17.69 ID:iwgXhy.0
禁書「…ちょっと、いい雰囲気を邪魔して悪いんだけど」 
 
禁書「おなか減ったんだよ……」 
 
上条25「悪いインデックス、…ほんとごめんな」 
 
禁書「いいんだよ、大きいとーまの気持ちも分かるから」 
 
上条16「インデックスが成長してる…」 
 
禁書「とーまはもう少し人の気持ちを分かる様に気を配るといいんだよ」 
 
上条25「お前らも飯まだじゃないのか? よかったら詫びも兼ねて焼肉でもいかないか?」 
 
土御門「ファミレスなら許せんが、焼肉なら仕方ないぜよ」 
 
青ピ「かみやんからの奢りとか断ったら一生ないで~」 
 
上条16「どういう意味だよそれ!」 
 
禁書「なんでもいいから早くいくんだよ!お肉が待ってるんだよ!」 
 
上条25「ああ、腹いっぱい食っていいからな!」 
 
 
 
その後男4人は禁書目録の本気を見ることに…
上条16は叫びながら、ATMへ走る事となった

229: 2011/01/02(日) 23:53:14.85 ID:iwgXhy.0
食後、土御門、青ピと別れ必要なものを買いにいく 
禁書目録はカナミンの新作ゲームのPVに目を輝かせて見ていた 
振り込まれた額が多すぎて使いきれそうにない 
 
上条16「協力者にこれだけ金が入るってことは、御坂はどれだけ貰ってるんだ…?」 
 
上条25「その10倍は貰ってると思うぞ」 
 
別世界の美琴の給料明細を見たことのある上条25が答える 
 
上条16「10バイ…。住む世界が違いすぎる…。どうりであまり金に執着しないわけだ」 
 
上条25「まぁな。…あー」 
 
上条25「…これからもし何か、なんて言えばいいんだろうな」 
 
上条25「俺が偉そうに言えることじゃないんだが。例えばだ、仮に一緒に住むとかなっても頼り切ったらだめだぞ」 
 
上条16「はぁ!?なんで上条さんがビリビリと……、え?」 
 
上条16「まさか、そちらでは上条さんとビリビリが…?」 
 
上条25「あまり言ったらいけないんだろうけど、そうだな。お前もちょっと意識してるんだろ?」 
 
上条16「あー、まぁ…。でもこっちのビリビリは俺の事が嫌いみたいだからな…」  
 
上条16「しょっちゅう顔真っ赤にしてビリビリしてくるし、すぐ怒って追いかけてくるし」 
 
上条25(うっわ…。俺もこんなことほざいてたな、傍からみたら殴りてぇ) 
 
上条25「ま、なるようになるさ…悩め少年」 
 
上条16「なんだよそれ!」 
 
肩をぽんと叩き病院へ向かう 

-----新人の頃は鈍キャラで可愛がられてたが。お前、もう25だぞ気持ち切り替えなきゃタダの無神経なバカだ----- 
 
上条25(やっと意味が分かったわ…成長するってのは難しいね、まったく) 
 
  

 

230: 2011/01/03(月) 00:17:06.26 ID:rIZHTrY0
病室に戻った三人 
荷物を置き一服すると程なく美琴がやってきた 
 
美琴「義手は明日できるわ」 
 
余りの仕事の速さに驚く上条x2 
  
美琴「午前で完成させて製品を持ってくるわ、午後に試着、微調整はすぐ終わるから楽しみにしてなさい」 
  
上条25「ありがとな、こっちでなんかやっとくことあるか?」 
 
美琴「特にはないわね、しっかり寝て体調整えておくことかしら」 
 
美琴「…ってなんかニンニクの臭いしない?」 
 
禁書「大きいとーまの奢りで焼肉いってきたんだよ」 
 
美琴「はぁああ!?アタシが一日頑張ってたのにアンタらは焼肉!?」 
 
上条x2(しゃべるな馬鹿ヤロー!!) 
 

231: 2011/01/03(月) 00:17:39.20 ID:rIZHTrY0
上条25「美琴は誘えなかったからな……。あぁ!!、明日コイツと二人で行ってこいよ!!」 
 
上条25「な?最大功労者の美琴せんせーをハブるのはよくない!うんうん!そうだそうだイッテコイ!」 
 
上条25(我ながら見事な切り替えしだ) 
 
上条16「え??それならまたみんなで行けばいいんじゃ?」 
  
上条25(空気読めよ!!) 

上条25「若いな…。25にもなると二日連続焼肉はキツイのだよ」 
 
禁書「ならインデックスが大きいとーまの分も食べるんだよ!」 
 
上条25「いや、インデックスは明日ステイルがくるだろ」 
 
上条25「俺とステイルと一緒にメシ食いにいこうぜ」 
 
禁書「お肉がいいんだよ!」 
 
上条25「じゃぁお肉もあるところにいこうかねー」 
 
上条16「御坂せんせーはそれでいいんですか?」   
 
美琴「あ、アタシはアンタさえよければ、いってあげてもいいけど…アンタがいきたいって言うんナラネ」 
 
頬を染めてモジモジと必氏にツンツンしている 
しかしこれで気付かないのが上条当麻16 
 
上条16「俺も御坂さえよければ…」 
 
上条25(うわー甘酸っぺぇなおい、他所でやれよ)  
 
上条25「預金好きなだけ使っていいからしっかりエスコートしろよ」 
 
上条16の耳元で囁き、背中をそっと押した 
少年と少女の恋心はこの世界でも結びつき始めていた 
 

 

232: 2011/01/03(月) 00:20:51.25 ID:rIZHTrY0
明日の焼肉デートを妄想し、足取りも軽く美琴は風紀委員177支部へと向かう 
  
美琴「こんちわー」 
 
黒子「あらあらお姉様、なにやらご機嫌がよろしいようで」 
 
美琴「え?そうかな?そんなことないんだけどー?」 
 
顔が緩みっぱなしで否定をするが、食らいついてくる黒子 
 
黒子「は!!この反応はまさか…。類 人 猿!!」 
 
美琴「黒子ぉ?人を類人猿なんて言っちゃだめよー?」 
 
黒子「きいいいいいいい!!その余裕のある対応が黒子の嫉妬に火をつけますの!!」 
 
黒子「こうなったら類似猿の手にかかる前にっ!!」ヌギ  
 
黒子「お姉様の純潔をこの手でっ!!」
 
美琴「やめんか!!」  
 
暴走した黒子が服を脱ぎ飛び掛るがあっさりと撃沈される 
 
初春「こんにちわ御坂さん」 
 
佐天「こんちわー」 
 
美琴「やっほー」 
 
初春「ちょっと待ってください、佐天さんもうちょっと上目使いで」 
 
初春が携帯のカメラで佐天を撮り遊んでいた 
美琴は初春の調査報告を受ける 
その案件自体が非現実的なものなので、返ってきた内容も当然それに伴う回答だった 
魔法陣説、タイムマシーン説 
動力は雷  
移動するにはその世界の思い出等  
   

233: 2011/01/03(月) 00:22:01.85 ID:rIZHTrY0
初春「ちょっと使えそうな文章だけなんで、断片的ですが」 
 
初春「雷っていうのは映画とか漫画で見られる描写みたいですね」 
 
初春「そこを調べたんですが、エネルギー媒体は雷や水素が有力だと思います」 
 
初春「ゲームの設定みたいですが、私にはそれが限界でした」
 
美琴「ううんありがとう初春さん」 
 
「お姉様は黒子と一緒に愛の世界へ旅立つんですの~」 
 
何か世迷いごとが聞えるが、上条16の携帯に結果を送信する 
 
佐天「でもなんでこんなこと調べてるんですか?」 
 
美琴「んー、なんか異世界からきたって人間が帰りたいらしくてね」  
 
佐天「なんですかそれ?wwww」 
 
美琴「まぁオカルトの世界よねー」 
 
佐天「ちょっと危ない電波がでてるんじゃないですか?白井さんみたいに」 
 
適当に話し佐天も笑って聞いているが、映像を見た初春だけは真剣な顔だった 
携帯が鳴りメールの返信が届く 
ひとつの宗教の神やそれに準じるものの力を借りて飛ぶことは不可能と書いてあった 
 
美琴「なんかひとつの宗教じゃ無理なんだって、よく分からないけど」 
 
佐天「本格的ですねーなんか」 
 
佐天「じゃあ色んな宗教を混ぜるといけるってことですかね?」 
 
黒子「日本人は宗教に馴染みがあまりないので、そういう発想もできるのでしょうが」 
 
黒子「外国の方は生活や文化に溶け込んでいるので、嫌悪されるのではないでしょうか?」 
 
初春「ゲームでも異教の神を合体させるのがありましたねー」 
 
初春「批判も多かったとかなんとか」 
 
佐天「悪魔呼ばわりしてるしねー」 
 
美琴「うーん、まぁいいわ」 
 
雑談に切り替わってきたので打ち切る 
風紀委員177支部はその後、悪魔を合体させるRPGの話で盛り上がる
透視能力者のif至高説が小一時間続いたのはまた別のお話 

234: 2011/01/03(月) 00:25:08.04 ID:rIZHTrY0
翌日、天気は快晴 
禁書目録を病院へ送り、学校へと向かう 
 
上条16(今日御坂とデートか…、いやデートっていうかお礼だからな…) 
 
上条16(あんまり御坂も乗り気じゃない感じだしな…)
 
上条16(ああ、もう緊張してきた) 
   
上条16(なんかプレゼントとか買った方がいんだろうか…) 
 
妄想ばかりが加速し、授業が身に入らない 
我に返った時は担任からの休日補習の審判が下った時だった 
 

235: 2011/01/03(月) 00:27:27.79 ID:rIZHTrY0
病室で禁書目録とテレビを見ているとドアがノックされた 
 
ステイル「お邪魔するよ」 
 
上条25「あ、どうも」 
 
禁書「遅いんだよ」 
 
ステイルは禁書に軽く頭を下げ、マジマジと上条25を見る 
 
ステイル「俄かに信じられなかったが、どうやら本当のようだね」 
 
ステイル「幻想頃しも無いのか、なんの取り得もない凡人に成り下がったね」 
 
上条25「凡人は普通にメシ食うけど、俺は不便で堪んねーよ」 
 
フンと鼻を鳴らしステイルは花束を渡す 
 
上条25「意外な贈り物だな、こっちのお前はこういう趣味なのか…」 
 
ステイル「勘違いして欲しくないね、それは来られなかった神裂からだ」 
 
ステイル「まぁ選んだのは僕だけどね」  
 
上条25(神裂か、俺の下らない意地に付き合わせちまったな) 
 
帯刀してホストクラブに来ていた聖人を思い出す 

236: 2011/01/03(月) 00:28:40.90 ID:rIZHTrY0
ステイル「大体は高校生の上条当麻から聞いたんだけど、もう一度事情を説明してもらっていいかな?」 
 
上条25「ああ、お前からの意見もぜひ聞きてぇ」 
 
上条25説明中 
 
ステイル「土御門がね…」 
 
ステイル「まぁ、結論を言おう」 
 
ステイル「上条当麻、君は帰ることができるだろう」 
 
あっさりと言い放つステイルに驚く 
 
上条25「まじか!?」 
 
ステイル「僕を誰だと思っているんだい?この年でルーンを極めた天才だよ」 
 
ステイル「それに今回は禁書目録の知識をふんだんに使える」 
 
ステイル「魔術儀式の構成はそう難しいことじゃないよ」 
 
上条25「お、お前って実はすごい奴なんだな」 
 
ステイル「君はどういう目で僕を見ているんだ?」 
 
上条25は終始禁書目録に振り回されても笑っていられる黒衣の神父を思い出す 
 
ステイル「だが、構成を編み上げるのは簡単だが」 
 
ステイル「術の行使が難関だ」 
 
上条25「どういうことだ?」

237: 2011/01/03(月) 00:33:17.80 ID:rIZHTrY0
ステイル「結論は術式を完成させて説明するよ」 
 
ステイル「理解できるとは思わないけどね」 
 
余計な一言を付け加える 
 
禁書「私の知識をどうするの?見るの?」 
 
ステイル「まさか、君が僕の質問に答えてくれるだけでいいんだ」 
 
ステイル「こっちへくる途中にすでに構想はあるからね」 
 
まさにステイル無双、あれだけ先の見えない状況をいとも簡単に突破する 
上条16の名義で購入した携帯が鳴る 
メモリは6件しか入っていない 
メールだった 
御坂からメール着てた、 
(佐天案)異教の力を混ぜるのはどうだろうか 
ステイルに伝える 

238: 2011/01/03(月) 00:33:44.24 ID:rIZHTrY0
ステイル「ん?そうだよ、いい着眼点だね。魔術師かい?」  
 
上条25「いや、佐天さんって子だな。今はレベル0で悩んでる女の子だよ」 
 
上条25「こっちの佐天さんもすごい才能があると思うんだけどな…」  
 
別世界での学園都市の災厄と呼ばれる佐天涙子を思い浮かべる
 
ステイル「宗教を混ぜるだなんて、日本人の考えだね」 
 
ステイル「そういう特殊な発想は日本人のすごいところでもあるけどね」 
 
ステイル「僕のやろうとしてる事はまさにそれさ」 
 
ステイル「十字教の力だけでは次元の門を開け、君を送り飛ばすことは今の状況じゃ不可能だ」 
 
ステイル「今は暦の時点で悪いからね、半端な魔翌力に焼かれて氏ぬだろう」 
 
ステイル「僕は北欧の魔術にも精通しててね、あちらの神の力を借りる」 
 
ステイル「後はまた説明するよ」 

禁書「じゃあどこか別の場所に行こうか」 
 
ステイル「ああ、そうだね」 
 
上条25「戻ってきたら右手で握手してやるよ」 
 
ステイル「男の手を握るなんて趣味じゃないよ」 

239: 2011/01/03(月) 00:37:46.95 ID:rIZHTrY0
 
 
 
美琴「できたよー」 
 
上条25「おー、どれどれ」 
 
金属ケースを開けると自分の左手よりも若干大きいサイズの右手があった 
手に取る 
皮膚というより鱗のような手触りだった 
 
上条25「ちょっと大きいんだな」 
 
美琴「ああ、そこからまたアンタの左手サイズに合わせて、中の金属に電流送って調整するの」 
 
美琴「先生に丈夫にって注文したんでしょ、質感と触覚はだだ下がりよ」 
 
上条25「こんな質感でも触覚あるのか」 
 
美琴「がんばって34%から52%まで再現したわ」 
 
上条25「おつかれさん、今日はアイツとデートだからゆっくりしてくれよ」 
 
美琴「あ、アンタがあんなこと言うから、アタシが行かないといけないじゃない///」 
 
上条25「あれ?んじゃ断っておきましょうかね、電話電話と…」 
 
美琴「ちょっと!行かないなんて言ってないじゃない!!」 
 
上条25「素直になってくれよ、じゃないと高校生の上条さんは気づかないぞ」 
 
美琴「アンタはどうだったのよ?…その、あっちのアタシと///」 
 
上条25「上条さんはダメ元で告白したんだよ、美琴が高校入学式の時だな」 
 
上条25「なんか環境が変わって離れ離れになるドラマ見た影響でさ」 
 
上条25「このままじゃいけないって覚悟決めたな」 
 
上条25「美琴まで好きでいてくれたなんて気付きもしなかったわ」 
 
美琴「まぁ、善処するわ…///」 
  
上条25「がんばれ恋する乙女」 
 
美琴「うっさい!さっさと行くわよ!///」

240: 2011/01/03(月) 00:40:45.15 ID:rIZHTrY0
手術室に入る前に滅菌を行い、手術着を被る 
看護婦に誘導された部屋にはすでに準備が整っているようだ 
横になり右腕と体を固定され、注射をする。麻酔らしい 
いよいよかという雰囲気に上条25も美琴も緊張してくる 
  
冥土「この拘束は暴れてしまって、失敗しないようにだからね?」 
 
冥土「神経を繋ぐ前にすごい痛みがある、繋いでから調整はそれを上回る痛みがくるんだね」 
 
冥土「軽く麻酔はしたが、ある程度の反応も見ないといけないから我慢してくれよ?」 
 
冥土「では、始めるね」 
 
麻酔のおかげで感覚がない、メスと言ったからには今切開されているんだろう 
美琴はずっと冥土返しの作業をみている
 
冥土「ふー、んじゃ痛いよ?」 
 
美琴と看護婦が体を押さえる 
 
グジュ 
 
上条25「っっっ!!!ァぁああああああああああああああああああああ!!」 
 
痛みで無意識に体が水揚げされた魚の様に跳ねる  
 
冥土「今、君の神経と義手を繋ぐトンネルみたいなものを作ったんだね」 
 
上条25の耳には届いてない 
美琴は動かさない様に、必氏で右腕と肩を押さえている 
 
冥土「では、さらに痛いから我慢してくれるかね」 
 
麻酔をしているのに、腕の先に異物感がはっきり分かる 
ガチンっという装着音がする 
あまり痛みは無かったが…?と気を緩める 
 

241: 2011/01/03(月) 00:41:14.09 ID:rIZHTrY0
冥土「君の出番だよ、慎重にね」 
 
美琴「はい」 
 
美琴の指先から電流が流れる 
気を緩めたあとにこの不意打ち 
 
上条25「ぐぁああああぁぁあああっ!!っつあああぎゃああああっあああああっ!!っああ!!」 
 
右手が高熱で潰される感覚 
熱い、痛い 
右腕を起点として右の首筋まで激痛が走る 
美琴は全神経を集中し、神経を焼かない程度の微弱な電流に意識を巡らせ超精密作業を行っていた 
義手の圧縮、思考神経系と運動神経系の回路接続 
切開した部分から血も漏れるが気にしていられない 
 
 
時間にして数分だったが、上条25と美琴にしてみれば数時間にも感じられた 
手術が終わり義手を外し、後処置を済ませ病室に移送される 
 
移送される上条25を見送り、美琴は術中に感じた違和感について考えた  
上条25に進入した自分の意識を絡めた電流が、ほんの少し、非常に微々たるものだが打ち消された気がした 
手術自体は成功したので、問題は無いのだが… 
いまいちすっきりしないままに、シャワー室へ行く 
 
美琴(今日、肉じゃなくて別のものにして貰おう) 
この後のデートに向けて気持ちを切り替える 

242: 2011/01/03(月) 00:43:36.30 ID:rIZHTrY0
術後、憔悴した上条25は少し睡眠を取り 
太陽が沈みきる頃目が覚める 
 
禁書「大きいとーま気分はどう?」 
 
上条25「あーちょっとだるいけど大丈夫だ」 
 
ステイル「寝てた方がいいんじゃないかい?」 
 
ステイル「歩き回ると体に毒だ」 
 
上条25(なんだこいつの優しさは…) 
 
ステイル「君は体を労われ、代わりに禁書目録は僕が食事に連れていくよ」 
 
上条25(インデックスと二人になりたいだけかよ!!) 
 
はぁっとため息を吐きステイルに頼んだと告げる 
体がキツイのは間違いない 
それにステイルも日本にきたのは自分の為よりも、禁書目録の為だろうし 

243: 2011/01/03(月) 00:45:12.99 ID:rIZHTrY0
 
 

独りの病室にはもう慣れた 
相変わらず夜は恐ろしいが、日々元の世界に帰れる手がかりが増えている 
ベッドの脇にある金属ケースを開ける 
中に手紙が入っていた 
美琴から使い方やメンテの注意事項などが書いていた 
ペンの色を変えどれだけ高性能なのか苦労したのかが大きな文字で書かれている 
驚くことに義手表面は電気を通さず避雷針の役までするそうだ 
幻想頃しがない上条25には大変ありがたい性能だった 
愛する美琴も大人げなくたまにビリビリするので重宝しそうだ  
 
右手義手を手に取り装着する 
金属の接続音がして、首筋まで痛みがくる 
神経が繋がったようだ 
数日ぶりに右手を動かす 
切開した部分に痛みがあるが手の動きは問題ない 
多少人体よりも重い 
ググっと握り拳を作る 
 
上条25(美琴…ありがとうな、絶対帰るからな美琴)  
 
上条25(待ってやがれ…土御門っ!!) 
 
尽力してくれた少女に礼を 
愛する女に誓いを 
そして裏切った親友に黒い感情を… 
 
 
それぞれが想いを胸に学園都市の夜は更けてゆく
 
 
 

248: 2011/01/05(水) 01:35:31.65 ID:k7M/zME0
翌日病室でステイルから説明が行われた 
病室には上条x2 美琴 禁書 ステイル 
禁書目録以外は魔術の知識が無いため、深くは説明しないし質問もするなと前置きがあった 
壁にもたれかかって赤毛の魔術師が語る 
 
ステイル「まず術式は複数の神の力を混ぜる」 
 
ステイル「アステカの神、北欧の神、ローマの神、ギリシアの神」 
 
ステイル「陣を描くのは僕がやるが、ローマとギリシアは異世界の上条当麻。君があるものを持ってるだけでいい」 
 
ステイル「アステカの魔術師と北欧の魔術師が必要だ」 
 
上条16「お前じゃだめなのか?」 
 
ステイル「質問をするなと言ったのが聞こえなかったかい?」 
 
ステイル「僕はこう見えて非常に優秀な魔術師なんだ」 
 
ステイル「自分の力を上げる為なら、異教の魔術も自分の力に取り込む」 
 
ステイル「しかしベースはあくまで、十字教だ。この儀式は信心が必要になる」 
 
ステイル「異教の神と自分の神、どちらに比重があるのは明確」 
 
ステイル「バランスの取れない儀式は失敗、つまりそこの彼の氏だ」 
 
ステイル「神裂の伝手で優秀な北欧の魔術師を呼んでいる」 
 
ステイル「だがアステカの魔術師がいない」 
 
ステイル「魔術師によっては、異教の魔術と組み合わせる儀式を禁忌と思ってる輩もいるしねぇ」 
 
ステイル「まぁそれは置いておこう」 
 
 
 

249: 2011/01/05(水) 01:36:50.25 ID:k7M/zME0
ステイル「先日の話だが、術式の発動に必要なエネルギーが足りない」 
 
ステイル「そこで君だ」 
 
美琴「アタシ?」 
 
ステイル「君の能力の最大出力は10億ボルトだそうだね、どのくらい連続で放出できるんだい?」 
 
美琴「んー?実際計ったことないからなんともだけど、放出だけなら3,4分はいけるかしら?」 
 
ステイル「ふむ、あとで正確に計っててくれるかな?」 
 
ステイル「そしてあのいけ好かない学園都市第一位、あの男を呼んでくれ」 
 
ステイル「科学の雷を陣の上で魔翌力に変換する際に力の流れを安定維持させる」 
 
ステイル「そして問題の指針だ、あっちの世界にしか無いような場所、人、強く印象に残ってる所はないかい?」 
 
ステイル「あっちの世界のこの子だけ、というのは止した方がいい」 
 
ステイル「別の平行世界のこの子の前に出てしまう危険がある」 
 
上条25「…ある!」 
 
上条25は確かに覚えている、自分が店を辞めた日のあの宴 
みんなの顔ひとつ、何を飲み、何を歌い、何を話したか明確に覚えている 
 
ステイル「術式が発動したらそれを強く思い浮かべるんだ」 
 
ステイル「きっとそこに出るさ」 
 
ステイル「その思いの場所が場所の指針、思いの人が時間の指針になるはずだ」 
 

250: 2011/01/05(水) 01:37:56.50 ID:k7M/zME0
ステイル「最後に術式の使用者だ」 
 
ステイル「さっきも言ったけど、信仰のバランスが悪いと失敗してしまう」 
 
ステイル「だから信心が少なく、且つ能力開発を受けていない人間が必要だ」 
 
禁書「こもえにお願いするといいかも」 
 
上条16「小萌先生か…」 
 
上条16「その術式を使うのって危険なのか?」 
 
ステイル「いや…、やることはこちらのタイミングにあわせて詠唱してもらうだけだ」 
 
禁書「小萌は魔術の経験もあるからきっとできるんだよ」 
 
上条25「先生か、信仰心もバランス良く薄そうだな」 
 
上条16「いつやる予定だ?先生に予定聞いとかないと」 
 
ステイル「早ければ2日後の日曜だ、その次は大体28日後になるね」 
 
上条16「急だな…連絡してみる」 
 
ステイル「宛がないのがアステカの魔術師だ」  
 
上条25「アステカの神じゃないとダメなのか?」 
 
ステイル「トラロックという神がいるんだけどね、その神は雨と雷の意味を持つ」 
 
ステイル「科学の雷を魔翌力に変換する際に有効なんだよ」 
 
ステイル「他の雷の神よりも比較的信仰が浅く広い、力を使いやすいんだよ」 
 
上条25「ふーん、よくわかんねーな」 
 
ステイル「もう君たち二人は黙っててくれないか?」
 
禁書目録と同居しててなぜこんなに知識欲がないのか… 
ステイル=マグヌスがイラ立ち煙草に火をつけた 

251: 2011/01/05(水) 01:39:42.77 ID:k7M/zME0
上条16「先生に電話してみる」 
 
上条25「まて、俺がしてみる」 
 
上条16「え?」 
 
上条25「久々に先生とも話してみたいし、予定だけなら気付かねーだろ」 
 
上条16から携帯を借りて発信する 
 
prrr 
 
『はいは~い』 
 
上条25「あ、先生ですか?俺です」 
 
『分かってますよ~』 
 
上条25「先生、急で申し訳ないんですが明後日の予定はあいてますか?」 
 
『明後日ですか~?』 
 
上条25「はい」 
 
『先生、明後日は不真面目な上条ちゃんの補習なのですよ~』 
 
上条25「えっ!?」 
 
『忘れやがったら先生怒りますよ~?』 
 
『ちゃんと出席してくださいね~』 
 
ガチャ 
 
上条25「おい…お前の補習だってよ」 
 
室内の全員から上条16に冷たい視線が向けられる 
 
上条16「ハハ…ふ、不幸だああああああああああああああ!!!」 
 

252: 2011/01/05(水) 01:40:16.90 ID:k7M/zME0
美琴「自業自得よバカ!」 
 
上条25「どーすんだよ」 
 
上条16「直接説得してくる」 
 
禁書「インデックスも行くんだよ!」 
 
ステイル「じゃあ僕も同行しようかな」 
 
美琴「宿題ってやつにしてもらいなさい、それだったら手伝えるわよ?」 
 
上条16「助かるぜ」 
 
ばたばたと三人が出て行く 
 
美琴「ほんと何でああも要領悪いのかしらね」 
 
上条25「…スミマセン」 
 
美琴「あ、ち、違うわよ?アイツがよアイツ」 
 
上条25「ああ…美琴タンのその優しさが痛い」 

253: 2011/01/05(水) 01:42:42.03 ID:k7M/zME0
上条25「美琴ありがとうな」 
 
美琴「ん?なにが?」 
 
上条25「この右手のこともだし、支えてくれて」 
 
美琴「別にいいわよ、そんくらい」 
 
美琴「アンタ一人じゃどうしようもないんだし」 
 
美琴「まったくの他人って訳じゃないじゃない?」 
 
上条25「それでもさ、…ありがとう」  
 
美琴「どーいたしまして」 
 
上条25「こっちの俺は、まだまだ子供で社会にでたら全然頼りないけど」 
 
上条25「甘やかさない程度に支えてやってくれよ」 
 
美琴「…ぅん」 
 
夕暮れの病室、窓から差し込む夕日のせいなのか、それとも… 
美琴の顔が赤らんで見える 
 
美琴「そろそろ寮に帰って早めに寝るわ」 
 
上条25「ああ、お疲れさん」 
 
 
 
 

254: 2011/01/05(水) 01:44:24.71 ID:k7M/zME0
意外な人間が夕食を運んできた 
御坂妹だった 
 
御坂妹「こんばんは、とミサカは初対面として接するべきなのか分からないあなたに声を掛けます」 
 
上条25「うお!、…御坂妹か?」 
 
御坂妹「はい、とミサカは年を取っても今の時代のあなたと変わらないリアクションをとるあなたに辟易します」 
 
上条25「飯持ってきてくれたのか、さんきゅ」 
 
御坂妹「いえ、気にする必要はありません、とミサカは好奇心で様子を見に来た事を隠します」 
 
上条25「隠して無いぞ」 
 
御坂妹「どうぞ、とミサカはあなたに食事を提供しながらなぜかイヌという飼い猫を思い出します」 
 
上条25「ひでーなおい、それもどこかに配るのか?」 
 
御坂妹「いえ、これはミサカの分です、とミサカは自分の食料だと主張します」 
 
上条25「そうか、せっかくだから一緒に食わないか?」 
 
御坂妹「あなたさえ良ければ、とミサカは素直に答えます」 
 
 
 

255: 2011/01/05(水) 01:47:02.86 ID:k7M/zME0
食事を終え横になる上条25 
御坂妹がじっと見つめている 
感情が希薄な為その意図が読めない 
 
上条25「どうした?」 
 
美坂妹「あの、そちらでミサカは何をしていますか?とミサカは自分の将来を聞いてみます」 
 
美坂妹「…御坂妹、先に言っておくけど、確定の未来じゃないし、この世界の未来でもないからな」 
 
一瞬言うか言うまいか躊躇ったが、黙ってるのも不安に感じると思い前置きする 
禁書目録に聞かれた時、【別の世界】よりも【未来】であることにウエイトが置かれて受け止められた為だ 
 
上条25「あっちのお前は元気だ、感情も今より活発になっている」 
  
上条25「たまに俺達の家に泊まりにきたりしてた」 
 
上条25「仕事は都市の役所事務方が表向き、裏で個人の店も持っている」  
 
上条25「そんなとこかな?」 
 
美坂妹「そうですか、とミサカは不安を拭います」 
  
上条25「不安?」 
 
美坂妹「はい、ミサカはお姉様のクローンです。今も調整を受けながら生きながらえているのですが、とミサカは一旦句切ります」 
 
美坂妹「ですが実際どこまで生きていられるのかが…不安だったもので、と胸にあった蟠りをあなたに打ち明けます」  
 
上条25「大丈夫だ、お前らは強いし美琴だっている」 
 
上条25「不安に思うことなんてねーよ」 
 
御坂妹「随分お姉様を信頼していますね、とミサカは軽く嫉妬します」 
 
御坂妹「そちらでもあなたとお姉様の間に付け入る可能性が無いのですね、とミサカは残念がります」 
 
上条25「付け入るも何も…あっちで彼氏いるんだけどお前」 
 
御坂妹「!?、とミサカは絶句します」 
 

256: 2011/01/05(水) 01:47:54.64 ID:k7M/zME0
御坂妹「どういった方でしょうか?、とミサカは心拍数を上げて質問します」 
 
上条25「いや、それは言わねーよ。俺もつい最近知ったし」 
 
美坂妹「そうですか…、とミサカはまだ見ぬ恋人の影に夢を抱きます」 
 
上条25「まぁ、未来なんてひとつじゃないんだ」 
 
上条25「自分のやりたい様に、一生懸命にやればいいさ」 
 
美坂妹「はい、とミサカはあなたと話せてよかったと心から思い返事をします」 
 
御坂妹「では、一夜の過ちが起きる前に自分の病室に帰ります、とミサカはミサカネットワークで仕入れた知識を披露します」 
 
上条25「こらこら…」 
 
上条25「おやすみ、御坂妹」 
 
御坂妹「おやすみなさい、とミサカはあなたのやり取りをネットワークに保存します」

257: 2011/01/05(水) 01:50:01.08 ID:k7M/zME0
朝日がカーテンの隙間から漏れ、そのわずかな眩しさに目を覚ました 
 
上条25(まだ6時か…)  
 
ベッドから起き上がり、右手の具合を見る 
手の動きには問題が無い 
ベッドのパイプを握る、手の触覚が若干鈍って常時痺れがある様な感覚だがいずれ慣れるだろう 
握っている右手に力を入れる 
ギギギっとパイプが潰れていく 
握力は大したものだ 
銃弾も耐えれるらしい 
腕の傷も無理をしなければ痛みはない 
 
床に立ち体を伸ばす 
そのまま軽く柔軟体操 
長い間の不摂生がたたり、筋肉は衰え、柔軟さが無くなったが昼間の仕事になってからだいぶ調子は戻った 
最近は寝たきりだったのでちょっとなまりを感じる 
 
あっちに戻り都市の闇の人間に見つかれば殺されるだろう 
即座に十分な後処理をされ、なにも無かった事になる 
そして学園都市にはいつもの日常が流れる 
 
上条25(そんな都合のいい展開は絶対認めねぇ!!) 
 
ステイルは場所の指針について語っていた 
絶対唯一だと言える指針、おそらく店に飛ぶはず… 
敵地のど真ん中だ 
 
上条25(運よく昼間であって欲しいな…) 
 
己の不幸体質に自重を求め、黙々と肉体を調整する

258: 2011/01/05(水) 01:51:01.44 ID:k7M/zME0
冥土「朝から元気だね?」 
 
上条25「あ、おはようございます」 
 
上条25「帰ってから力及ばずで後悔したくないんで」  
 
冥土「そうかい、まぁまだ傷の手当ても終わってないんだから無理はしないでくれよ?」 
 
上条25「はい、担当医の腕がいいから傷の治りも早いんですよ」
 
冥土「褒めても何もでないよ、というより君の回復力がいつも異常なんだね?」 
 
上条25「入院に慣れてますからね」 
 
冥土「あまり褒められたものじゃないよ?」 
  
上条25「褒めてもなにも出ませんよ?」 
 
冥土「だから褒めてないんだけどね?」

冥土「では検診をしようかね?」  
 
 
 

259: 2011/01/05(水) 01:53:15.99 ID:k7M/zME0
ステイルが禁書目録をつれて病室を訪れる 
今日北欧の魔術師が日本に到着するらしい 
 
上条25「なぁ、魔術師に報酬はいくら払えばいいんだ?」 
 
ステイル「いや、特にいらないと思うけど?なんでだい?」 
 
上条25「いやわざわざ俺の為にきてくれて礼もないのは…と思いまして」 
 
ステイル「随分と自分を高く評価してるね」  
 
上条25「え?」 
 
ステイル「一概には言えないが、誰もが君の為にやってることじゃないよ」 
 
ステイル「僕は禁書目録からの要請だからわざわざイギリスから来たんだ」 
 
禁書目録からのを強調し 
チラッっと禁書目録を見るステイル 
だが肝心のシスターはテレビに釘付けである 
彼の想いが届く日はいつになるのだろうか 
 
ステイル「それに異世界に人間を飛ばすなんて儀式だ」 
 
ステイル「魔術師ならば誰でも興味をもち、参加したいと思うよ」 
 
ステイル「術の方向性は違えど、僕らがやろうとしてる事は大魔術に匹敵する成果をもたらす」 
 
ステイル「参加できるチャンスがあるだけで非常に嬉しいものだ」 
 
上条25「そうなのか…。やっぱ変わってんな、魔術師って」 
 
ステイル「世界中の魔術師が君にだけには言われたくないと思うよ…」 
 

260: 2011/01/05(水) 01:55:00.44 ID:k7M/zME0
ステイルと入れ違いで一方通行が尋ねてきた 
 
一方「よォ、ジジイ」  
 
禁書「あ、白い人なんだよ」 
 
一方「ゲェッ!出やがったなァ」 
 
禁書「むむ!人をバケモノみたいに言うのはヒドイかも!」 
 
一方「るせェ、ちったァ自分の常識外れを自覚しやがれェ!」 
 
打ち止め「ケンカはよくないよ!ってミサカはミサカは二人を仲裁して大人である事をアピール!」 
 
一方「すっこンでろクソガキィ」 
 
上条25「いやお前ら何しにきたんだよ…」 
 
一方「あァ?…ああ、テメェらクールになれ、クールだァ」 
 
一方「なンか帰るスケットで呼ばれたンだがァ…」 
  
上条25「ステイルなら今出て行ったぞ、他の人迎えに行ってる」 
 
一方「マジカヨ…無駄足じゃねーかァ」 
 
打ち止め「ついでだからゴハン食べに行こうよ!ってミサカはミサカは提案してみる」 
 
一方「さっき朝飯食ったばかりじゃねェか」 
 
一方「まぁ出直してくらァ」 
 


261: 2011/01/05(水) 01:56:20.23 ID:k7M/zME0
昼を回り、禁書目録と食事に出かけ病室に戻る 
明日の打ち合わせなどやることが多いので遠出はできない 
もっとも白衣のシスターは不満たらたらだったが 
 
ステイル「いるかい?」 
 
禁書「おかえりー」 
 
ステイル「ただいま、禁書目録」 
 
オッレルス「始めまして、君が遠い世界からきた人か?」 
 
オッレルス「俺はオッレルスだ。こんな貴重な儀式に参加できてうれしいよ」 
 
ステイル「神裂の知り合いの聖人の相方だ、力は相当なものだよ」 
 
オッレルス「成り行きでそうなっただけさ」 
 
ステイル「第一位はまだきてないのか?」 
 
上条25「ああ、さっき来たんだけどな。出直してくるってよ」 
 
ステイル「まぁ上条当麻と第三位の学校が終わってから集合しようか」 
 
 
 

262: 2011/01/05(水) 01:58:56.92 ID:k7M/zME0
一方通行と打ち止めが戻ってくる 
それともう一人 
 
海原「本当に大人の上条さんがいるんですね」 
 
上条25「お前は、海原だったっけ?」 
 
一方「あァ、三下がアステカの魔術師に心辺りねーかってメールしてきたから連れてきたァ」 
 
海原「僕にできることでしたら尽力しますよ」 
  
海原「ところで御坂さんは?」 
 
上条25「こっちの俺も美琴もまだ学校じゃねーかな?」 
 
海原「そうですか、残念ですね」 
 
一方「残念だったなァ、ストーカー」 
 
海原「失礼な!ただ純粋に御坂さんを想うが故の行動です」 
 
一方「ブレねェなお前…」 
 
ステイル「大人数になりそうだから場所を移動しようか」 
 
ステイル「どこか手ごろな場所はないかな?」 
 
打ち止め「ミサカの家においでよ!ってミサカはミサカは元気よく提案してみる!」 
 
一方「はァ!?ざけンな!なんでウチなンだよ!!」 
 
打ち止め「広さも十分だし、会話聞かれることもないよってミサカはミサカはあなたの疑問を解消してみる」 
 
一方「個室サロンでも借りればいいじゃねェか」 
 
打ち止め「ミサカの意見は、だめだったのかな…ってミサカはミサカはしょぼんとしてみる」 
 
一方「チッ!お前ら散らかすンじゃねーぞ!!」 
 
海原「貴方もブレないですね…」 
  
 
ぞろぞろと大人数が移動を始める 
その光景は知るものが見れば恐れ慄く行進である 
 
白衣のシスター、黒衣の神父、右手が義手の男、外人の優男 
変なシャツを着て杖をついた白髪の少年 
その一歩後ろをついて行く少女 
その少女をじっと見つめながら一定の距離を置いて後ろをついてゆく男 
 
知らないものが見れば珍妙な集団にしか見えなかった 

263: 2011/01/05(水) 02:00:25.69 ID:k7M/zME0
夕方前上条16と美琴、月読小萌が到着する 
 
海原「こんにちは御坂さん」 
 
美琴「あ、…こんにちわ」 
 
海原「安心してください御坂さん。僕はもう彼にもあなたにも何かしようとは思っていませんから」 
 
美琴「…うん、ならいいんだけど」 
 
海原「この上条勢力のど真ん中ではどう足掻いてもバッドエンドオンリーですしね」 
  
ステイル「その上条勢力という言い方は止めてくれないかな?」 
 
ステイル「そういった括りで見られるなら、僕はこれ以上関与したくないね」 
 
禁書「ステイル機嫌直して欲しいんだよ」 
 
ステイル「さぁ!君たち早く座ってくれないか?説明を始めたいんだけど」  
 
 
小萌「本当に大人の上条ちゃんなのですね~」 
 
小萌「先生はまだ信じられないのですよ」 
 
オッレルス「先生?」 
 
上条16「えっと、我が校の七不思議にも数えられる合法口リ先生です」 
 
小萌「上条ちゃんその紹介は先生悲しいのですよ」 
 
小萌「因みに先生がここで一番最年長なので敬いまくってくださいね~」 
 
オッレルス「北欧王座並みに説明できない何かだな…これは…」 
 

265: 2011/01/05(水) 02:05:14.90 ID:k7M/zME0
二時間後 
 
ステイル「というわけさ…」 
 
小萌「一字一句間違えずにゆっくり文章を読む」 
 
美琴「フルパワーで電撃をアステカの印に送り込む」 
 
海原「トラロックの印に魔翌力を込め、科学的雷を魔翌力的雷に変換」 
 
オッレルス「トールの印に魔翌力を込め、雷の出力増幅と観測」 
 
一方「変換が終わるまで、両方の雷を陣の上に滞空させ続けて巡回させるだァ?」 
 
オッレルス「変換終了を確認後、ノルニルの印に魔翌力を送る」 
 
一方「中央の三角形が光ったら、少しずつ中央に雷を寄せる」 
 
上条25「車輪が回り始めたら指針を思い浮かべる、時計が動き出したら発動」 
 
禁書「成功をお祈りするんだよ」 
 
上条16「邪魔なので遠くに離れておく…か、はぁ~」 
 
ステイル「僕は指示を送りながら、何かに備えて結界を張っておくからね」 
 
ステイル「因みにその【何か】が起きた場合、例外なく中心にいる大人の上条当麻は氏ぬ」 
 
ステイル「質問はあるかい?」

266: 2011/01/05(水) 02:06:55.88 ID:k7M/zME0
上条16「一方通行は魔術のベクトルは操れないぞ」 
  
ステイル「ん?こないだ少し僕の魔術の流れを変えてなかったかい?」  
 
一方「あれは風で押し返してただけだァ」 
 
一方「まァ、一度食らえば、この天才の頭脳で解析して何とかできるンだがなァ」 
 
上条16「食らったら氏ぬぞお前」 
 
一方「いんや、弱いやつでいい」 
 
一方「公式さえ分かりゃ、後は数字がでかくなるだけだからなァ」 
 
一方「算数のレベルだァ」 
 
ステイル「じゃあここの屋上にいこうか」 
 
ステイル「幻想頃し、君もくるんだ」  
 
上条16「え?俺も?」 
 
ステイル「後処理要員だ」 
 
上条16「へいへい」 
 
上条16、美琴、ステイル、オッレルス、海原、一方通行が屋上へ行く 
 
禁書「こもえ!明日はがんばるんだよ!」 
 
小萌「うーん、簡単なんですけど緊張してしまうのですよー」 
 
上条25「先生、大丈夫ですよ」 
 
上条25「信頼してます」 
 
小萌「上条ちゃん…。…先生頑張っちゃいますね!」 

267: 2011/01/05(水) 02:09:15.83 ID:k7M/zME0
黄泉川「ただいま~じゃんよー」 
 
打ち止め「黄泉川が帰ってきた、ってミサカはミサカはお出迎え」 
 
小萌「黄泉川先生おじゃましてますなのです」 
 
黄泉川「なんだ~?月読先生じゃんよ。みんなで何してるじゃん?」 
 
小萌「えっとー、どう説明したらいんでしょうかねぇ…」 
 
打ち止め、小萌 説明中 
 
 
目に涙を浮かべて上条25の両肩を掴む 
 
黄泉川「少年!苦労したじゃん!!」 
 
黄泉川「今日は上条の送別会じゃんよ!」 
 
禁書「ねぇねぇ。大きいとーま、送別会ってなーに?」 
 
上条25「上条さんが明日帰るから、その為にみんなで見送りしてくれるんだよ」 
 
禁書「そうなんだ」 
 
打ち止め「黄泉川、お買い物行かないと後6人いるんだよ、ってミサカはミサカは食料不足を報告してみる」 
 
黄泉川「大所帯じゃんよ、よし打ち止め買い物いくぞ」 
 
黄泉川「今日は宴会じゃん!」 
 
禁書「インデックスもお買い物お手伝いするんだよ」 
 
上条25「あ、金出しますよ」 
 
黄泉川「メインが金だしちゃダメじゃん」 
 
上条25「ああ、これこっちの俺の金になるから、それにこいつの食費だけでもバカにならないし」 
  
黄泉川「子供の食べる分くらいだすのが大人じゃん!」 
 
黄泉川「気にしないで座ってろ」 
 
上条25「はぁ、すみません…」 
 
小萌「いいんですよ上条ちゃん、甘えちゃってください!」 
 
上条25「ありがとうございます」 
 
上条25(こんな大人に今からでもなれるかな…) 

268: 2011/01/05(水) 02:10:58.34 ID:k7M/zME0
美琴「はぁー疲れたぁ」 
 
海原「…………」 
 
ステイル「あれ禁書目録は?」 
 
上条25「買い物に行ってるよ、なんか送別会してくれるみたいでさ」 
 
上条25「残りの三人は?」 
 
美琴「まだ上でやってるわ」 
 
美琴「海原さんの力はすぐ解析できたみたいだけど」 
 
海原「!!………」 
 
美琴「オッレルスさんのが難しいみたい」 
 
ステイル「彼の力は特殊なんだよ、僕もあんなものは見たことがない」 
 
上条25「どんなもんなんだ?」 
 
ステイル「北欧王座というらしいんだが。とても説明できない、としか言い様がない」 
 
美琴「一方通行もムキになってボロボロよあいつ」 
 
海原「…………」  
 
美琴「すぐ解析されたからってそんな落ち込まないで?…それだけ早く解決したって事なんだからさ」 
 
海原「……御坂さんっ!ありがとうございます!」 
 
pipipi pipipi 
 
海原「失礼、 はい。 え?仕事? いえ…今から送別会なんで… ええっ? じゃあ一方通行も一緒に そんな!!」 
 
海原「………はい、わかりました…」 
 
海原「…シゴトイッテキマス」 
 
ステイル「明日は朝9:00集合なんで頼むよ」 
 
海原「…ハイ」 
 
上条25「よろしく頼むぜ!」 
 
海原は肩を落としたまま、軽く手をあげ答える 
その日の仕事は彼らしくなく荒れていた

269: 2011/01/05(水) 02:15:12.45 ID:k7M/zME0
打ち止め「ただいまーってミサカはミサカは重い荷物を持ってくる」 
 
禁書「打ち止め早く入ってほしいんだよ!」 
 
黄泉川「こらこら慌てるな、転ぶと危ないじゃん」 
 
騒がしく買い物班が帰ってくる 
両手に荷物を持ち、玄関口でお互いせめぎあっていた 
 
美琴「ほら、渡しなさい」 
 
バケツリレーの要領でキッチンまで荷物を運ぶ 
 
一方「なにやってンだお前ら」 
 
一方「早く入れよ邪魔だ」 
 
黄泉川「ちょっと待つじゃんってあんたどーしたじゃん?その顔」 
 
一方「うっせェ、さっさと入りやがれ」 
 
左の頬が腫れていた 
後ろにいる上条16も左の頬が腫れている 
 
打ち止め「あなたたちケンカしたの?ってミサカはミサカは心配してみる」 
 
美琴「なにしてんのよ!?」 
 
上条16「いやケンカとかじゃないから安心してくれ」 
 
オッレルス「実に熱い展開だった…」 
 
美琴「…ならいいんだけどさ」 
 

270: 2011/01/05(水) 02:17:29.11 ID:k7M/zME0
一方「あーうっせー、風呂だ風呂!」 
 
打ち止め「ミサカも一緒に入るー、ってミサカはミサカはお風呂の準備ー」 
 
美琴「は!?ちょっと待ちなさい打ち止め!」 
 
美琴「あんた一方通行と一緒にお風呂入ってるの!?」 
 
打ち止め「そーだよ?ってミサカはミサカはお姉様の驚きにビックリしてみる」 
 
美琴「一方通行!!あんたうちの妹になにしてんのよ!!!」 
 
一方「はァ!?なンもしてねェよ!!」 
 
一方「つーかそのクソガキが勝手に入ってくンだよ!!」 
 
黄泉川「まぁまぁいいじゃんか、打ち止めはまだ小さいんだし」 
 
一方「変な妄想してンじゃねェよ、ムッツリ超電磁砲」 
 
美琴「なっ!ムッツrっ…、とにかく絶対ダメ!!!」 
 
打ち止め「はーいってミサカはミサカはお姉様に怒られてしょんぼり」 
 
オッレルス「色んな事情があるんだなー」 
 
他人事のオッレルスがつぶやく 

271: 2011/01/05(水) 02:19:20.59 ID:k7M/zME0
小萌「じゃあゴハンの準備しましょうか」 
  
小萌「シスターちゃんもお手伝いしてくださいなのです」 
 
禁書「はーいなんだよ」 

上条16「手伝いますよ」 
 
黄泉川「だからメインは座ってろって言ったじゃん」 
 
上条16「いえ…上条さんはこっちの世界の上条さんなんですが…」 
 
黄泉川「あ、すまん。紛らわしいから一緒に座ってろ」 
 
上条16「ハイ」 
 
オッレルス「何かしようか?」 
 
黄泉川「あんた誰じゃんよ?鍋だから特にすることねーじゃん」 
 
黄泉川「座ってろ」 
 
オッレルス「ハイ」 
 
ステイル「禁書目録包丁に気をつけてくれよ?」 
 
黄泉川「あんたも誰じゃんよ、タバコ咥えて台所に入るな」 
 
黄泉川「座ってろ」 
 
ステイル「ハイ」 
 

272: 2011/01/05(水) 02:20:23.64 ID:k7M/zME0
黄泉川「月読先生、燗と冷どっちでいくじゃん?」 
 
小萌「うーん…迷いますねー」 
 
小萌「大人の上条ちゃんはどっちがいいですか?」 
 
上条25「え?冬だし、風情を楽しむのに燗でいいんじゃないでせうか」 
 
黄泉川「お、良い事言うじゃん!」 
 
小萌「ステイルちゃんもそれでいいですか?」 
 
ステイル「僕はお酒は飲まないよ、大体未成年だしね」 
 
小萌「ええ!?意外ですねー」 
 
ステイル「別にいいよ、慣れてるしね」 
 
小萌「んー?何か言おうとしたんですけど、忘れちゃいました」 
 
ステイル「たぶん大した事じゃないよ」 
 
タバコの煙を吐きステイルはキッチンに立っている白いシスターを見つめていた…

273: 2011/01/05(水) 02:22:16.89 ID:k7M/zME0
一方「あがったぞ」プシュ 
 
一方「かァー、風呂上りのコーヒーはうめェ」 
 
黄泉川「一方通行さぼってないで運ぶじゃん」 
 
一方「なーンで俺がやらなきゃならねェンだババァ」 
 
黄泉川「手伝わなきゃお前だけ食わせねーじゃんよ」 
 
一方「勝手にしろ、外で食ってくるわァ」 
  
打ち止め「あなたと一緒に食べたいのに…ってミサカはミサカは涙が…」 
 
一方「チッ!どれ運びゃいいんだクソが」 
 
小萌「そこの飲み物と具材を運んでてほしいのですよ」 
 
一方「なンだこの量は…」  
 
禁書「こもえーゴハン炊けたよ」 
 
小萌「それはゴハンじゃなくてお出しが入ってるのですよ…。シスターちゃん」 
 
禁書「………?」 
 

274: 2011/01/05(水) 02:23:40.98 ID:k7M/zME0
一方「おい、テーブル拭いとけ」ポイ 
 
美琴「はいはい」フキフキ 
 
上条25「一方通行が手伝ってるぞおい」 
 
美琴「全然似合わないわよね」 
 
上条16「いやいや、あいつ結構家庭的なんだぞ」 
 
上条16「前に土御門んちですき焼きした時、舞夏が褒めてた」 
 
上条25「すき焼きのどこで褒めるんだよ」 
 
上条16「なんか肉としらたきを離して入れろって言ってたな」 
 
美琴「ただの鍋奉行じゃない」 
 
上条25「そいえばあいつオッレルスさんの術、操作できたのか?」 
 
上条16「ああ、なんとかできたな」 
 
オッレルス「理解してやったというよりも感覚でやってる感じだな」 
 
オッレルス「しかしすごい才能だ、魔術師なら魔神になれたかもしれない」 
 
上条16「いや、そもそもが神とか信じてなさそうなんだけどあいつ」 
 
美琴「絶対信じてないわね」 
 
一方「おい、コンセントさして保温にしとけ」 
  
美琴「炊飯器?」 
 
卓上に並ぶ炊飯器に疑問の表情を禁じえない一同だった 

275: 2011/01/05(水) 02:25:30.16 ID:k7M/zME0
黄泉川「ほんじゃ、いただくじゃんよ」 
 
オッレルス「俺まで成り行きで参加して悪いな」 
 
上条25「いやいや、明日お世話になるんだし、親睦深めようぜ」 
 
オッレルス「ありがとう」 
 
小萌「上条ちゃん飲んでますか?」 
 
上条25「まぁボチボチと」 
 
小萌「高校生の上条ちゃんも早く大人になって先生と飲みましょうね」 
 
黄泉川「月読先生と飲みにいったら帰れないじゃんよ」 

カパっと蓋の空いた炊飯器が四つ並び、鍋をつつく 
ふと見ると上条16、打ち止め、美琴とならんでいた  
 
上条25「打ち止めこっち来てみ、おもしろいもん見せてやる」 
 
上条25「お箸と茶碗もっておいで」 
 
打ち止め「なになにー?ってミサカはミサカは大人ゾーンへ移動してみる」
 
打ち止め「ちょっとずってもらっていいかな?ってミサカはミサカは割り込んでみたり」 
 
打ち止めに夜の仕事で培った小ネタを披露する 
箸袋で箸置きを作ったり、ふきんで鶴をつくったり 
 
視界の隅で顔を赤くして並ぶ二人を見て、酔いも相まって上条25は幸せな気持ちになっていた

276: 2011/01/05(水) 02:26:44.26 ID:k7M/zME0
 
 
 
それぞれがそれぞれの想いを胸に宴は進む 
 
黄泉川「異世界人と記念撮影しようじゃん!」 
 
 
上条25を中心にデジカメで集合写真を撮る 
  
黄泉川「誰かプリントしてきてじゃーん」 
 
一方「言いだしっぺのお前がしろよ」 

黄泉川「もう酔っ払って無理じゃ~ん」 
 
美琴「明日でよければしてきますよ」 
 
 

277: 2011/01/05(水) 02:28:37.04 ID:k7M/zME0
宴も終わり解散となった 
黄泉川が使い物にならない為、自然と一方通行と打ち止めが中心となり片付けをする 
 
打ち止め「お姉様は寮に帰っちゃうの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」 
 
美琴「黄泉川先生が連絡してくれたから、時間はいいけど無断外泊はちょっとね」 
 
打ち止め「えー?残念…ってミサカはミサカは寂しがってみる」 
 
小萌「御坂ちゃん、先生が寮の方に連絡しましょうか?」 
 
美琴「いいんですか?」 
 
小萌「はい、今から帰るのも危ないので大丈夫ですよー」 
 
美琴「すみません」 
 
上条16「危ないのは襲った方なんですね、わかります」 
 
美琴「なんですって!?」ビリビリ 
  
上条16「なんでもないです、つか人んちでビリビリすんな!」パキィン 

打ち止め「やったー!ってミサカはミサカはこの事をミサカネットワークで妹達に自慢してみる!」 
 
上条16「大人の上条さんは病院帰るのか?」 
 
上条25「ああ、流石に泊まるのはだめだろ。家主寝てるし」 
 
上条16「うちに泊まっていかないか?」 
 
上条25「風呂場で男二人、寄り添って寝るのかよ…」 
 
小萌「シスターちゃんうちで預かりましょうか?」 
 
禁書「こもえのお家にお泊りするんだよ」 
 

278: 2011/01/05(水) 02:31:11.39 ID:k7M/zME0
布団を敷いて横になる 
 
上条25「なぁ、残ってる金だけどさ」 
 
ベッドの上で上条16が返事をする 
 
上条16「うん?」 
 
上条25「関わった人に分配してもらっていいか?」 
 
上条16「いいぜ、俺の金じゃないんだし」 
 
上条25「適当でいいんだけど、遠方から来てくれた人にはちょっと多目に渡してくれ」 
 
上条25「余りはインデックスのゴハン代に使うといいよ」 
 
上条16「助かります」 
 
 
ここ数日いろいろあったなと思い上条25は回想をする 
状況が掴めなくてアタフタしてた初日が嘘の様に、今は進む道がしっかりしている 
ただいくつかの疑問が解消されてはいないのだが… 
右手と右腕の境を見て思い返す 
 
病院の前にいきなり現れた 
治療を受けた後がある 
関与した能力者はいない 
何が原因でこの世界に来たのか… 
 
考えても仕方のないことだと思い、枕に意識を沈める…

279: 2011/01/05(水) 02:34:04.14 ID:k7M/zME0
朝早く起きて病院へ行き、冥土返しに礼を言う 
 
冥土「言い方は悪いけども、もう二度と来ることの無いようにね?」 
 
冥土「すべてが上手くいくことを心から願っているよ?」 
 
上条25は深く頭を下げ、病院を後にする 
 
少し早いが待ち合わせの場所である、小萌の家に行く 
 
 
小萌「おはようなのですー」 
 
上条25「おはようございます先生。あれ、あわきんじゃねーの?」 
 
結標「え?…幻想頃し?」 
 
事情が分かって無い結標淡希はポカンとした表情をしている  
ほとんど面識のない相手からあわきんと呼ばれ呆気にとられる 
 
上条25「ああ、あんま気にしないでくれ」 
 
結標「ええ?なによそれ…」 
 
上条25「おーい、インデックスさーん起きなさーい」 
 
禁書「ぅうん」 
 
禁書「んー。まだ眠いんだよ…」 
 
あれから小萌の晩酌が始まり、結標が帰宅した後も騒がしくてなかなか寝付けなかったのだ 
 
小萌「学生の上条ちゃんはどうしたんです?」  
 
上条25「俺病院にお礼言いに行ったんで早めにでたんですよ」 
 
上条25「出る前はまだ寝てましたけど」 
 
小萌「電話しといた方がいいですよ?上条ちゃん遅刻しちゃいますし」 
 
上条25「……携帯の電源落ちて、アラームが鳴らないってシナリオですかね?ハハ」 
 
pipi 

『お客様のおかけになった電話は、電波の届かないところ…』 
 
pi 
 
上条25「……起こしてきます」 
 

280: 2011/01/05(水) 02:37:00.91 ID:k7M/zME0
上条25が男子寮に行くとまだ寝ていた上条16を叩き起こし準備をさせる 
 
上条16「電源切れてるし、久しぶりのベッドだから気持ちよくて起きれなかった…」 
 
上条25「痛いほど分かるなその気持ち。大丈夫だ…、遅刻で非難されても俺だけは味方だ」 
 
上条25「走るぞ!」 
 
小萌達は現地へ先に行ったので 
必然と車ではなくバスになる 
黄泉川の伝手で手配した 
儀式開始場所である第二学区、警備員訓練所へと走る  

281: 2011/01/05(水) 02:38:49.21 ID:k7M/zME0
上条x2「「すんません遅れました!!」」 
 
ステイル「別にいいよ、大人の君は送られるだけだし、幻想頃しは離れて見送るだけだからね」 
 
上条x2「…ハイ」 
 
儀式の準備は着々と進められていた 
大きな円があり、その中に楕円が描かれ、いたるところに文字が書かれている 
さらにその中に三角形がその中心には歯車が置かれていた 
さながら大きな目の様な図だ 
円の周囲にルーンのカードがびっしりと置かれている 
失敗した場合、暴走するエネルギーを外に出さない為だとか… 
 
ステイル「これを持っていろ」 
 
懐中時計を渡される 
 
ステイル「先日も言ったが、今は止まっている。それが時を刻み始めたら術式はもう発動しているからね」 
 
ステイル「後は君次第だ」 
 
上条25「わかった」 
 
ステイル「準備がもうすぐ終わる、それまで気持ちを落ち着けておくことだね」 
 
 

282: 2011/01/05(水) 02:43:55.13 ID:k7M/zME0
上条16「なぁ……あのさ」 
 
上条16と美琴が話しかけてくる 
二人の表情は何か思いつめている様な 
 
上条16「やっと掴んだ帰る方法だけどさ、成功するとは限らない儀式じゃんか」 
 
上条16「昨日美琴と話したんだけど、考え直してみないか?」 
 
上条25「考え直す?」 
 
上条16「ああ、成功する保障はどこにもねぇ」 
 
上条16「術が発動しても、ちゃんと帰れるか分からねぇ」 
 
上条16「こんな危ない橋渡るよりも、こっちの世界で、…この街で生きたらどうだ?」 
 
上条16「危険な道を突き進むだけじゃなくて、危険が無い方法もあるんじゃないか?」 
 
上条16「俺らも一緒に探すからさ!」 
 
上条25「………」 
 
 
上条25もそのことは考えていた 
術に対する不安、氏の危険 
この世界で生きることに対しての恐怖 
 
学生の上条と美琴はその不安を汲んでくれたのか 
一緒に生きていこうと提案してくれた 
 
だが… 
 
上条25「ありがとうな、そこまで考えてくれて」 
 
上条25「確かに怖くないと言えば嘘になる」 
 
上条25「でもな…俺は決めたんだよ」 
 
上条25「美琴に…、あっちの御坂美琴に会いに戻るって」 
 
上条25「立ちはだかる壁があるなら迂回しねぇ」 
 
上条25「切り開いて絶対帰ってやるってな」 
 
上条25「美琴が待ってるだろうから帰るよ」 
 
上条25「急がないとお仕置きが怖いからな!」 
 
満面の笑みで答えを返した

283: 2011/01/05(水) 02:45:56.15 ID:k7M/zME0
美琴「そう…んじゃもう引き止めるのは野暮ってもんね」 
 
上条16「そうだな」 
 
美琴「ひとつ約束して、あっちのアタシもアンタにすごく逢いたいはずだから」 
 
美琴「絶対帰ってあげて!」 
 
上条25「ああ、もちろんさ」 
 
上条25「…ぷぷっ…しかし…あっちのアタシも…ねぇ」ニヤニヤ 
 
美琴「ふぇ?…ち、違うわよ!?そ、そんな意味じゃないから!!///」 
 
上条16「え…?///」 
 
美琴「もう…バカ!!///」ビリビリ 
 
上条x2「「おわ!!」」パキィン  
 
ステイル「おいおい、今から頑張ってもらうのに余計な力使わないでくれよ?」 
  
上条25(こういったじゃれ合いも久しぶりだな) 
 
上条25(続きはあっちに帰ってからするか) 
 

284: 2011/01/05(水) 02:47:58.68 ID:k7M/zME0
上条25「しかしちゃんと電撃無効化するんだな」 
 
新しい右手の性能に驚きマジマジと見つめる 
 
美琴「あったり前じゃない、この御坂美琴様の特別仕様よ」 
 
美琴「抜かりはないわ!」 
 
説明書きの手紙にかなりの衝撃にも耐えれることも書いていた 
ただし触覚がある為、痛みは伴うが 
 
美琴「あ、そだちょっと右手貸して」  
 
右手を差し出す 
 
美琴「違う違う外してもらっていい?」 
 
言われるがまま外して渡す 
なにやらポケットの中から取り出し、連結部分を開けて中に押し込んでいる 
 
美琴「はい、いいわよ」 
 
ガチンっという音と神経接合に伴う刹那の激痛 
なかなか慣れるものではない 
 
上条25「なにしたんだ?」 
 
美琴「設計図みたいなもんよ」 
 
美琴「あっちのアタシなら見て分かるだろうけど、あればあったで助かるだろうし」 
 
上条25「そっか、さんきゅな」
 
ステイル「そろそろ始めようか」 
 
儀式の準備が終わったようだ 
晴れた空を見上げ、数日間のこの異世界旅行の終わりを感じていた

285: 2011/01/05(水) 02:49:46.01 ID:k7M/zME0
ステイル「第一位、用意はいいかい?」 
 
一方「あァ」 
 
ステイル「一番複雑な作業をやるんだからね、頼むよ」 
 
一方「るせェ、俺を誰だと思ってンだ。てめェはサンバの練習でもしてろや」 
 
ステイル「焼かれたいのかい?」 
 
禁書「もう!ケンカはやめるんだよ!」 
 
打ち止め「あなたの口の悪いのは今に始まった事じゃないけど」 
 
打ち止め「今のはあなたが悪いよ、ってミサカはミサカは柄にもなく緊張しているあなたを叱ってみる」 
 
一方「誰が緊張するってェ?くだらねェことほざいてンじゃねェよ!」 
 
ステイル「まぁいい、さっきのは聞かなかったことにするよ」 
 
一方「チッ!」 

287: 2011/01/05(水) 03:06:54.42 ID:k7M/zME0
 
 
 
ステイル「では、始めようか…」 
 
白衣のシスターが神に祈る 
幼く見える教師が紙を広げ、何度も読んだ文面を確認する 
超電磁砲が深呼吸をし集中力を高める 
学園都市第一位が首の電極のスイッチを入れ、妹達の上位個体が彼の裾をぎゅっと握る 
異世界人が魔方陣の中心に行き、幻想頃しは儀式の妨害しないよう離れる 
アステカの魔術師と魔神になり損ねた男が魔翌力を印に込め始める 
 
上条25(もう後戻りはできねぇ!!) 
 
動かない時計を見つめ覚悟を決める 
 
異世界に転移する…大魔術の儀式が今開始された 
 




---------科学と魔術が交差する時、物語は加速する---------




295: 2011/01/06(木) 08:35:24.64 ID:xt91SPs0
ステイル「では詠唱を始めてくれ」 
 
小萌「はいなのです」 
  
小萌が詠唱を始める 
小さな体からよく通る声が人払いを仕掛けた訓練所広場に響く  
 
ステイル「第三位始めてくれ」 
 
十二分に集中を高めた美琴が放電を開始する 
狙いはトラロックの印 
凄まじい電撃が印上に荒れ狂う 
 
ステイル「第一位、雷を巡回させろ」 
 
一方通行が雷に触れ、操作する  
科学の力と魔術の力 
二つの演算式を同時に解き、雷をトールの印へ誘導する 
 
一方「っっ!!」 
 
印に触れた瞬間に魔術の雷の数値の桁が格段に変わり操作が乱れる 
 
打ち止め「がんばって…!」 
 
届いたのか分からない少女の声、彼の服の裾をぎゅっと掴む 
揺らぎながらでも、なんとか安定に持ち込む 
 
ステイル「そのまま陣上で旋回だ、メビウスの輪をイメージしろ」 
 
随時放たれる雷、さらにトールの印の上で変動する雷 
繋ぎ合わせ力の循環を取り計らう 
  
ステイル「よし、いいぞ…ゆっくりでいい」 
 
輪が完成したこのまま規定値まで増幅させ続け、第二段階になる 

296: 2011/01/06(木) 08:36:09.20 ID:xt91SPs0
苦しい時程、時間は長く感じる 
 
美琴(まだなの…!?) 
 
フルパワーで放出し続けどのくらい時間がたったのだろうか? 
眉間が熱い、しかしここで自分が放出を止めれば儀式は失敗してしまう 
時間にしてまだ2分も経っていないが美琴の限界が近づいてきた 
 
美琴(やばい、演算が…) 
 
美琴(早くして!!お願い!!) 
 

297: 2011/01/06(木) 08:37:38.39 ID:xt91SPs0
オッレルスがブツブツと呟きながら計測をする 
彼の目算ではエネルギー必要量の85%を超えたところだった 
チラっとこの雷の発生源を見ると泣きそうな顔で放出している 
 
オッレルス(限界がきているな…) 
 
ステイルに合図すると彼も確認したようだ 
 
ステイル「第三位、まだいけるのか?」 
 
美琴「大丈夫よ…!」 
 
ステイル「危険になったら幻想頃しを呼ぶ」 
 
美琴「大丈夫って言ってんでしょ!!」 
 
きつい、苦しい、限界… 
 
でも諦めたくない 
 
美琴(限界なんて、自分で決めて…) 
 
美琴(勝手に無理だってあきらめる…) 
 
美琴(そんなのっ!絶対いや!!!!) 
 
美琴「ぁあああああああああああああああ!!!!!!」 
 
ここに来て放電量が更に上がる 
 
一方(っ!!!) 
 
難解な増幅後の雷の維持に集中を傾けていた一方通行に焦りがでる 
 
一方(余計な事してンじゃねェ!) 
 
一方(だがなァ…諦めねェのはいいことだぜ、第三位!!) 
 

298: 2011/01/06(木) 08:39:20.11 ID:xt91SPs0
オッレルス「いいぞ!あと少しだ」 
 
美琴は叫び、放電し続ける 
 
------ 巡りくる景色が今流れてく ------
 
 
美琴「あああああああああああああああぁあああ!!!」 
 
 
------ 手繰り寄せた世界の先 ------ 
 
 
美琴(絶対諦めない!!) 
 
 
------ 降り注ぐシグナルを躰で感じて ------ 
 
 
今までの過酷な運命、関わった事件、悩み、苦しんだ 
心が折れそうになったこともある 
でも今ここにいるのは、それでも美琴自身が仲間と共に諦めることなく乗り越えてきたからだ 
LEVEL1から異例のLEVEL5へ昇格 
常に限界を超えてきた 
 
美琴(今回だってやり遂げてやるんだから!!) 
 
 
美琴「あああああああああああああああああああああああ!!!!!」 
 
 
------ 解き放つ今すべてを ------ 
  
 
 
 

299: 2011/01/06(木) 08:41:18.49 ID:xt91SPs0
オッレルス「届いたぞ!!」  
 
ふっと足から崩れ、座り込む 
頭が割れそうなくらい痛い 
視界もぼやけて、熱い風呂でのぼせた様な感覚だ 
 
美琴「ちょっと張り切りすぎたかしらね…」
 
上条16「御坂!!大丈夫か!?」 
 
離れた位置から上条16が声を掛ける 
駆け寄りたいが幻想頃しで術を打ち消してしまう危険がある為、近寄れない 
もどかしい気持ちになる 
 
美琴は右手を上げて、拳を握る 
 
上条16はどこまでも意地を張り続ける少女に感動した 
 
上条16(いつも俺に勝ちたいとか言うけど、お前には勝てねーよ。御坂) 
  
オッレルスが中央、時の女神達の印に魔翌力を送る 
現在、過去、未来の印が淡い光が灯り、受け入れる準備が整う 

ステイル「第一位、中心の三角の頂点に合わせて圧縮するんだ」 
 
ステイル「…ゆっくりでいいからね」 
 
一方(ごちゃごちゃうるせェ…) 
 
一方通行も先ほどから変動し続ける数値の演算で限界が近づいていた 
 

300: 2011/01/06(木) 08:45:33.68 ID:xt91SPs0
圧縮を試みるが、逆に膨れ上がりそうになる 
 
一方(くそったれ!) 
 
一方(…超電磁砲がここまでやったンだァ) 
 
一方(俺ができませンじゃカッコつかねェだろォが!!) 
 
打ち止め「あなた大丈夫なの!?ってミサカはミサカは…」 
 
一方「あァ!?ちっと黙ってろクソガキィ!」 
 
一方「俺はお前の前じゃ最強で居続けンだよ!!」 
 
本音を隠すゆとりもない程必氏だった 
再び圧縮を試みる、ゆっくり、ゆっくり不可思議な法則が圧縮されていく 
 
一方(よーしこのままだ、落ち着け一方通行) 
 
ステイル「次の詠唱を」 
 
二節目の詠唱が始まり 
頂点に近づいた膨大なエネルギーを印が吸収し始める 
また演算式が変わり、乱れがでる 
 
一方(やべェ!!) 
 
即座に解析を始めるが、追いつかない 
 
エネルギーがほんの僅か漏れる  
 
轟音を立て、数十メートル先の地面に穴を開ける 
漏れた先が中心の上条25や陣を破壊すれば儀式は即座に失敗だ 
 
一方(くっそがァ!!!)
 
ステイルがルーンに魔翌力を送り、防御結界の準備に取り掛かる 
 

301: 2011/01/06(木) 08:46:43.80 ID:xt91SPs0
一方「おい!クソサンバァ!!」 
 
視界の端でステイルが結界を張ろうとしているのを咎める 
 
ステイル「念のための保険さ」 
 
一方「余計なことすンじゃねェ!」 
 
口ではそういうものの解析ができない 
循環を表す綺麗なメビウスの輪だったエネルギーは、時折歪みを見せる 
 
ステイル「ならば集中しろ!僕の準備がいらぬお世話になる様にだ!!」 
 
一方(やってやんよ…クソがァ!) 
 
膨大すぎるエネルギーの為なのか、未だに印が吸いきれていない 
頭が割れそうなくらい響く 
歪みが一層激しくなる 
理解できない力の変動し続ける数値に、約一万人の演算補助を借りても追いつかない 
 
一方(ぐっ!…クソ!押さえきれねェ…) 
 
 

302: 2011/01/06(木) 08:48:13.63 ID:xt91SPs0
さっきよりも激しい膨らみが生じるが 
 
押さえ込まれる 
 
打ち止め「お姉さま!!」 
 
美琴「魔術の雷でもなんとかなるもんねぇ…」  
 
御坂美琴だった 
 
名門常盤台中学が誇る、学園都市第三位【超電磁砲】の異名を持つ電撃使い 
 
一方「邪魔しに…きたのかよおい…」 
 
美琴「後でなんとでも言っていいわ…、アタシも限界近いから早く終わらせましょ…」 

一方「もう勝手にしろォ…」 
 
お互い声に覇気がない、限界が近いのだ
 
------ Just truth in my heart いつだって迷わないよ ------
  
美琴(こんな巨大な力を固定させてるなんて、流石第一位ね…) 
  
------ 消せない想いがあるから ------
 
膨らみが出るが一方通行の処理で戻る 
 
美琴(こいつのやってる事に比べたら、アタシのした事なんて単純作業ね…) 
  
------ 解き明かす真実から瞳を逸らさずに ------
 
圧縮が進む、エネルギーの奔流も不安定で弾けそうにもなるが、美琴がフォローして押し戻す 
 
美琴(こいつとは色々あって、まだ許せるものじゃないけど…) 
  
------ I`ll reach the next stage to realize all ------
 
美琴「もう少しよ!」 
 

美琴(こういうのも悪くないよね…?) 
 

------ 確かな絆信じて ------
 

一方(こういうのも悪かねェなァ…) 

303: 2011/01/06(木) 08:49:50.02 ID:xt91SPs0
 
 
キィィィイイイインン 
 
甲高い音がして全てのエネルギーが印に吸収された 
中央の三角形の陣が先ほどより強い光を放つ 
 
上条25「成功したのか…?」 
 
膨大なエネルギーの中心にいて、視界も悪く、轟音の為状況が掴めなかった様だ 
 
一方通行はどっと座り込む、その彼を打ち止めが抱きしめ泣いていた 
 
美琴は朦朧とした意識の中立ち尽くし、中心に立つ上条25を見ていた 
 
ステイル「念じろ、自分の時代を」 
 
上条25は思い浮かべる 
腐ってたとしか言いようのない自分が洗い流されたあの場所 
初めてあんなに笑い、歌い、酒を飲んだあの場所 
そこに蟠りは無く、仲間達と飲んだ酒 
最高の宴 
 
自分を愛する余り、甘やかしてしまった女 
自分が愛する余り、甘えてしまった女 
お互い依存してしまい、前に進んでなかったのかもしれない 
でも二人で手を取り合ってまた… 
逢いたい、美琴…。お前を抱きしめたい 
最愛の女
 
二つの指針が時空に干渉する 
 

304: 2011/01/06(木) 08:51:33.10 ID:xt91SPs0
上条16「おおーい!!」 
 
離れた場所で高校生の上条が叫ぶ 
 
上条16「俺も!美琴を幸せにするから!!」 
 
上条16「絶対自分の不幸に負けないで!幸せになるから!」 
 
上条16「お前も負けんなよ!!」 
 
強い眼差しで旅立つ異世界人に呼びかける 
本人は素直な気持ちで見送りたいのだろうが 
聞いてる人間が何を思ってるかは表情を見れば分かる 
意識が朦朧としている電撃姫の耳に入ってない様だが… 
 
幸運と運命の女神を象徴する歯車が静かに回り始める 
 
上条25「ああ!絶対負けんなよ!!」 
 
お互い右手を天高く突き上げ誓い合う 
 
「みんなありがとう!!」 
 
キィン! 
 
時が止まった

305: 2011/01/06(木) 08:53:11.20 ID:xt91SPs0
停止した空間 
 
上条25は周りを見渡す 
  
カラカラと乾いた音を立てて歯車が回り続けている 
それ以外はまったくの無音 
誰も動いていない 
上条16を見ている者が多数だ 
その表情は様々 
微笑みと苦笑い、怒りと笑い涙 
一方通行が口を歪めて嬉しそうに笑っているのが印象的だった 
 
キィン!! 
キィン!! 
 
景色が黒く染まり、人が白く浮き上がる 
異様な光景に不安が過ぎる 
渡された時間と時空の神を象徴する時計を見ると時が動いていた 
懐中時計の針が徐々に加速していく 
 
横を見ると、美琴がぼーっした表情でこちらを見ていた 
 
上条25「美琴」 
 
上条25「ありがとう…」  
 
陣を灯す光が爆発的に発光する 
最後に世話になった少女へ礼を言い 
 
 
上条25は時空の壁を越えた 
 

306: 2011/01/06(木) 08:56:33.29 ID:xt91SPs0
水中を高速で泳いでる様な感覚 
圧力を感じる様で、浮いてる様な… 
 
上条は心に思い浮かべ続ける 
念じ続ける、祈り続ける 
 
------ とある日常はparallel world 幾千もの時間に ------

9年後の別次元の学園都市

------ 同じものなどない傑作で織り成す 時空へ ------  
 
あの時の宴、笑いあった場所  

------ 書き殴って 白紙のシナリオにペン先が凍る ------
 
美琴との思い出、氏の間際に瞼を埋め尽くした女の顔
 
美琴のいる景色が一瞬見えた 
公園で虚ろな目で涙を流していた… 
 
------ originality目指せ!どうせこの道を行くんだから ------
 
出口と思わしき光が見える 
 
その先には…土御門 
 
学生の頃の土御門ではなく、店内で座っているホストの土御門 
 
また熱く赤黒い、とても正常とは言えない泥の様な感情が吹き上がる 
 
怒りや嫉妬を超えた、禁忌の行動を伴わせる感情 
 
それを人は殺意という枠組みで呼んでいる 
 
------ 駆け抜けて 大地を蹴って ------
 
上条「土御門おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 
 
新しい右手の義手を硬く握り、振り上げる  
 


307: 2011/01/06(木) 08:57:42.96 ID:xt91SPs0
上条の喪失から数日後 
 
土御門「かみやん、まだなんも連絡ないのかにゃー?」 
 
美琴「…うん」 
 
土御門「…そうか、なにかあったら連絡真っ先にほしいぜよ」 
 
美琴「うん…ありがと」 
 
ガチャ 
 
土御門「かみやん…どこにいったんだ」 
 
店のソファーに深く体を預けつぶやく 
 
「おおおおおおおおおおおおおお!!!」 
 
目の前に男が飛んできた  
 
土御門「っ!!!!!!!」 
 
振り上げたその右手が勢い良く土御門の顔面を打ち抜く 
 
上条「戻ってきたぜえええええええ!!!」 
 
勢いは氏なず、そのままお互い揉み合いになる 
 
土御門「んな!!?か、かみやんか!?」 
 
上条は返事の変わりに馬乗りで何度も拳を叩き込む 
 
土御門「くっ!!」 
 
腰からナイフを取りだす 
 
上条は反射で後ろに跳ぶ 

ぺっと唾を吐き、土御門はふらついた足取りで立ち上がる

308: 2011/01/06(木) 09:00:16.24 ID:xt91SPs0
二人が対峙する 
 
土御門「かみやん…、どこへ行っていた?」 
 
土御門「いや、まずどこから来た!」 
 
今の現れ方はテレポートだと土御門は考えた 
落下した後、捜索と同時にテレポーターの関与を調べた 
全員の身辺調査はもちろん 
レベル3は取調べ、レベル4は尋問、能力的に実行可能性が高い 
白井黒子、結標淡希の両名は自白剤まで投与されたが 
依然として関与が認められなかった為、神隠しという事になった 
目の前でこんな芸当をされては、捜査にどこかにミスがあったのではと思う 
だが上条からの返答はどれにも当てはまらなかった 
 
上条「別世界からだ、今から9年前のな」 
 
土御門「…ふざけるな!!」 
 
上条「ふざけてなんてねぇよ」 
 
土御門「まぁいい、無力化して作業をやり直すだけだ」 
 
これだけの騒ぎを起こしても誰も来ない、店内には誰もいない様だ 
開店前だろうか。 
時間は分からないが、営業中とは違う照明の明るさで判断する 
 
上条「おい、土御門」 
 
土御門を力強い目で見据え、言う 
 
上条「お前、目が濁ってるぞ」 
 
土御門「何を…」 
 
上条「俺は別世界のお前に会った、そこは9年前のお前と同じやつだった」 
 
上条「お前のせいで迷惑掛けちまったがな」 
 
上条「あの頃のお前はどこに行ったんだ!?」

309: 2011/01/06(木) 09:01:54.84 ID:xt91SPs0
土御門「さっきから意味のわからん事を、ヤクでもキメてきたのか?」 
 
上条「今のお前に言っても分からないならいい」 
 
上条が距離を詰める 
 
土御門「頃してやるよ!上条当麻!!」 
 
ナイフを突き出す、半歩移動して避けるが、次の蹴りが上条の腹に入る 
 
上条「ぐっ!」 
 
土御門「お前じゃ俺に勝てないぜ!」 
 
上条「ほざけ!!」 
 
足を掴んで右手に力を入れる、メシっ!っという音が聞こえ土御門がナイフを突き出してくる 
掴んでた足を振り投げ距離をとる 
 
土御門「なんだその右手は…」 
 
足を痛めたのだろう、ヒビくらい入ったかもしれない 
庇いながら距離を詰めてくる 
 
上条「中学生の冬の工作だよ」 
 
土御門からしてみれば意味不明な回答ばかりで苛立つ 
 
土御門「もういい!!」 
 
苛立ちのあまり、ナイフを突き出してくるが、刃を右手で掴む 
 
上条「背中刺す刃さんが前からきちゃダメだろっ!!」 
 
力を込め握り砕く 
  
土御門「!!?」 

刹那、左手で押す 
土御門は驚愕したまま、足を庇いよろめく 
 
上条「俺の新しい右手はちっとばかし痛えぞ!!」 
 
渾身の力で顔面を殴りぬく 
土御門が背中から倒れ、鼻血を吹き出している 
 
上条「立てよ…」 

310: 2011/01/06(木) 09:05:00.59 ID:xt91SPs0
土御門「ゴボっ!」 
 
喉に血液が入ったのか咽ている 
 
上条「なんでお前は変わっちまったんだ?」 
 
上条「俺も腑抜けてたから分からなかったが」 
 
上条「昔の俺達を見て思い出した」 
 
上条「どこで狂っちまったんだ俺達は!!」 
 
土御門「ガキの頃と比べるなよ…」 
 
土御門「いつまでも夢見てないで、現実を見ろ!!」 
 
土御門「社会にでれば金、権力だ!力だ!!」 
 
土御門「頂点を目指さなければ一生底辺で這いずり回る人生だ!!」 
 
土御門「お前も大人だろ!?上条当麻!!」 
 
土御門「この計画は完璧だ、それに乗って上を目指して何が悪い?」 
 
土御門「誘ってきたヤツは先に理事会に入った、時機を見て俺も理事会入りする事になる」 
 
土御門「この若さでだ!!」 
  
土御門「その為なら誰でも犠牲にする。親友であろうと裏切り、贄にする」 

土御門「大人の自覚がない低辺は、ただ俺に食われるだけの肥やしになっていろ!」 
 

311: 2011/01/06(木) 09:06:46.93 ID:xt91SPs0
上条「いいぜ…、おもしれぇよ土御門」 
 
上条「上に登るのがそんなに好きならいいよ、猿みてーに勝手に登れよ」 
   でもなぁ、人間そう上手くいかねーんだよ 
   お前の計画が狂ったみてーにな!!
   あの頃のお前に立ち戻れない、分からない!近くにある当たり前の幸せ見失って! 
   そんまま外道に落ちた挙句!俺を犠牲にしてでも、頂点目指すって言い張るんなら!!」  
 
上条「そ の 身 勝 手 な 幻 想 を ぶ ち 殺 す !!」 
 
 
土御門「その言葉ひとつで収まると思うな!!」 
 
裏切り者が血塗られた右手を振り上げ 
 
上条「うおおおおお!!!」 
 
裏切られた者が血の通わぬ右手を振り上げる 
 
 
 
 
 
---- なぁ土御門…俺達どこで狂ったんだろうな… ----  
 
 
 


312: 2011/01/06(木) 09:08:48.60 ID:xt91SPs0
 
倒れた土御門を見下ろし 
上条は肩で息をしていた 
 
動悸が治まらない 
まだ土御門は生きている 
殺そうと思った 
氏の覚悟をするまで自分を追い詰め 
真の絶望、夜の恐怖、独りの不安を思い知らされた相手だ 
だが、時空の壁を突破する前に吹き上がったあの感情はもう無くなってた 
 
上条(思いっきり殴ってスッキリして、賢者タイムってとこか?) 
 
収まってしまった事に自嘲する 
土御門のやった事は許せることではないが 
しかしどこかで、何処かしら人生の分岐点で枝分かれし、上条が土御門の立場になっていたかもしれない 
平行世界を体験した人間にしか分からない感覚だ 
今回はそれがたまたまこいつだった… 
欲を囁かれ頂点踏破を目指し、身近な幸せを見失った 
 
上条(俺もまだまだ、人の事は言えないがな…) 
 
浜面とのいざこざ、あれも欲に捕らわれていた… 
 
 
土御門「ぐ、…まだいたのか…」 
 
上条「考え事しててな…」 
 
土御門「余裕だな…」 
 
自分がまだ生きているということは上条は生かしておく気だろう 
つくづく甘い男だ…と土御門は目の前に立つ男を見上げて思った 

313: 2011/01/06(木) 09:10:25.71 ID:xt91SPs0
土御門「ここで俺に殺されないか?」 
 
上条「まだ言ってんのか…」 
 
土御門「お前が生きてると知られれば、暗部連中が狙う」 
 
土御門「超電磁砲と接触があれば、超電磁砲も粛清の対象だ」 
 
土御門「それはお前が最も嫌うところだ」 
 
上条「ああ、…俺も身勝手かもしれないけどな」 
 
上条「それでも逢いたいんだ」 
 
上条「あっちの世界の俺と美琴に約束しちまったし」 
 
上条「美琴は俺に逢いたいはずだろうってな」  
 
土御門「なら、もういい…」 
 
土御門「俺はこの計画から下ろされるだろうな」 
 
土御門「だが、謀反を起こすわけにもいかないんで報告はさせてもらう」 
 
上条「お別れ…か」 
 
土御門「本来ならどちらか氏んでるんだ…」 
 
土御門「儲けもんぜよ…」 
 
  
 

 
------ じゃあな親友 ------


------ 元気でな、かみやん ------
 



 
 
上条が裏口から出て行く 
ドアの閉まる音が永遠の別れを告げた 
 
静かな店内、残った土御門が体を起こす 
  
土御門「かみやん、実は俺って嘘つきなんだぜい」 

314: 2011/01/06(木) 09:12:02.68 ID:xt91SPs0
路地から見上げると鈍色の空が広がっていた 
9年前とは違う空気を胸いっぱい吸い込み帰ってきたという実感が沸く 
美琴… 
 
時空転移中一瞬だけ見えた美琴の顔 
場所は第七学区の公園だった 
 
上条(急がねーと!!) 
 
 
上条当麻は力の限り走った 
ここ第十五学区から第七学区までは結構な距離だ 
ここの状況はどうなってるか分からない上、土御門がいつ報告するか分からない 
時間は無いと思った方がいい 
 
大通りに出ると何も変わらない日常が流れていた 
 
とにかく走る 
無人運転のバスに乗り込む 
IDを試しに使ってみたらまだ生きていた 
記録が残ってしまうが構ってる暇はない 
 
バスが目指す先は第七学区とある公園前  

315: 2011/01/06(木) 09:12:50.31 ID:xt91SPs0
御坂美琴は冬の曇天の公園に居た 
自分がまだ学生の頃、上条との思い出の場所だ 
上条が失踪した後、仕事の合間を縫って思い出の場所を徘徊する毎日だった 
ここにいるとふっと目の前に上条が現れて 
心配してた自分がバカらしくなるような笑顔で声を掛けてくる様な気がする 
自分はそんな上条に怒って電撃を放ち、上条は右手でかき消して… 
若い頃のやり取りに縋っている自分にふふっと微笑を浮かべる 
この公園で素直になれなかった事が多数だが、二人が結ばれたのもこの公園だった 
あの時の気持ちが蘇り胸が温かくなる反面、喪失感とせめぎ合い涙が溢れる 
 
 
美琴(どこいっちゃったのよ…あのバカ) 
 
何でも無いような日常の幸せを胸の中で反芻し 
御坂美琴は今日も想いの人を待ち続ける… 
 
上条「美琴おおおおお!!」 
 
美琴(幻聴まで聞こえてくるなんてもう末期ね…。病気だわ) 
  
ため息と同時に振り返る 
 
上条「美琴!!」 
 
目の前にアイツがいた  


316: 2011/01/06(木) 09:13:42.89 ID:xt91SPs0
美琴「と、…っと…ぅ」 
 
声にならない 
幻なんじゃないか 
呼んだら消えるんじゃないか 
触ったら消えるんじゃないか 
嬉しくて嬉しくて涙はでるのに 
怖くて怖くて声がでない 
 
上条「美琴」 
 
抱かれた 
暖かい…当麻の匂いがする 
涙が止まらない 
名前を呼びたいのに喉が詰まる 
 
上条「ごめんな…。美琴逢いたかった」 
 
私も逢いたかったよ当麻 
言いたいのに言えない 
嗚咽ばかり 
しっかり伝えなきゃ 
心配したからって言わなきゃ 
そしてビリビリおしおきしなきゃ 
なのにどうして… 
 
私は愛しい男に抱かれ声を上げて泣いていた 

317: 2011/01/06(木) 09:14:45.25 ID:xt91SPs0
上条「ごめんな」 
 
謝ってばっかりの俺は情け無い男になるんだろう 
絶望に叩き落されて 
身を投げて 
別世界に飛ばされて 
氏ぬ思いで帰ってきた 
やっと愛しい女をこの手で抱くことができた 
 
ごめんな美琴泣かせて 
ごめんな美琴寂しい思いさせて 
ごめんな美琴生きる事諦めて  
 
髪から美琴の匂いがする 
使ってるシャンプーも変わってない 
俺の愛しいビリビリ女 
もう諦めたりしないから 
絶対離さないから 
謝ってばかりじゃなくてこういう事言わないといけないんだろうな 
 
でも出る言葉は謝りの言葉だけだ 
ごめんな美琴 
もう二度とこんな思いはさせないからな 
 

318: 2011/01/06(木) 09:18:05.61 ID:xt91SPs0
 
 
 
 
上条と美琴は何も言わずキスをする 
  
長い口付け 
 
お互い力強く 
 
舌を絡め合い 
 
力強く抱きしめる
 
心の繋がりを確かめあう様に  
 
学園都市の鈍色の空から雪が舞い降りる 
 
頬に冷たい結晶が落ち、一瞬で解け筋を作る 
 
だがすでに二人の目尻からいくつも筋が流れていた 
 
 
---------- なぁ、学生の俺と美琴。俺は今幸せだぞ、これからもずっと ---------- 
  
 
 
 
雪の降るとある公園で二人はもう一度結ばれた 
 
 

325: 2011/01/08(土) 11:48:40.64 ID:YnY1CtI0
マンションを出ると上条が女と話している 
普段なら上条にビリビリの刑だが今は状況が違う 
バッグを地面に置いて帯電する 
 
話している相手が麦野沈利だからだ 
 
麦野「待ちなよ」 
 
右手をひらひらさせて止める 
 
麦野「アンタ達を捕まえにきたんじゃないって」 
 
ここに来た真意が分からない 
 
麦野「私はただの強盗だよ」 
 
ますます分からない 
 
麦野「私達二人は今からこの車を盗むんだ、んで学園都市をドライブする」 
 

326: 2011/01/08(土) 11:49:10.59 ID:YnY1CtI0
美琴「なんで…」 
 
麦野「アンタらに氏なれっと、もう旨い酒が飲めなくなりそうなんだよ」 
 
美琴「あんた達が狙われるわよ!」 
 
麦野「関係ねーよ、ただの強盗だもん」 
 
麦野「だから痛い目見ない内にさっさとケツ振って逃げな」 
 
麦野「因みにうちらの乗ってきた車、もう要らないからどっか捨てといて」 
 
上条「美琴!」 
 
上条が運転席に乗り込み、浜面を見る 
 
上条「浜面、彼女大事にな」 
 
上条の顔を見て浜面は確信した 
 
浜面「…やっと分かってくれたみたいッスね」 
 
上条「偉そうに」  
 
麦野「また酒飲もうなー」 
 
お互い笑って分かれる 
大型のワンボックスが発進する 
その後ろを見送り、元第四位が目を輝かせ言う 
 
麦野「さて、このスーパーカーで都市を走り回ろうぜ」 
 
麦野「カーチェイスだぞ!浜面!!」 
 
浜面「帰りたい…滝壺…」 
  
麦野「さっさとしろォ!!」 
 
浜面「はいはい!!」

327: 2011/01/08(土) 11:50:23.68 ID:YnY1CtI0
都市を走行中ラップトップにメールが来る 
 
送信者は打ち止め 
 
内容は学園都市が手を出せない、または出しにくい地域のリストだった 
恐らく役所勤めの妹達から情報共有でこの事態を知ったのだろう 
非常にありがたかった 
 
その中から有力な候補をピックアップする 
上条が高速を運転している横でいそいそと検証をする 
 
街の隆盛、治安、支配者、文化、宗教あらゆる視点から検証する 
世界最先端の科学を持ち、魔術の世界とも関係する学園都市ですら手の出せない場所 
 
  
検証終了 
タイにある非常に危険な街が最終候補に残った 
 
 
 

その街の名前は【ロアナプラ】と呼ばれている 
 

328: 2011/01/08(土) 11:51:42.30 ID:YnY1CtI0
上条「ロアナプラ?」 
 
美琴「そうタイにある街よ」 
 
打ち止めに結果を送信し、街の残っている自分の資産など後処理をお願いする  
妹達が総力を挙げれば容易いだろう 
 
上条「タイかー、一年中暖かそうだな」 
 
美琴「まぁね、後この街が手を出せないくらい特殊な街だから」 
 
美琴「絶対言動に注意してよ!」 
 
上条「どういう意味でせうか…」 
 
美琴「そこを支配しているのは暴力よ」 
 
美琴「一般人が銃を持つもの当たり前、くすり常習も売春も当たり前」 
 
上条「危険すぎるだろ!」 
 
美琴「今のアタシ達にとっては世界一安全な場所よ…」 
 
上条「……すまん美琴、俺が不甲斐無いばっかりに…」 
 
美琴「やめてよ、アタシは当麻と一緒じゃなきゃ嫌なんだから」 
  
美琴「しかも当麻は悪くないじゃない!」 

上条「美琴…」

329: 2011/01/08(土) 11:52:24.88 ID:YnY1CtI0
美琴「でも、そんな街でも安全に過ごす方法もあるわ」 
 
上条「ん?」 
 
美琴「そこの支配者達にアタシが挨拶すれば…なんとかなるかもね」 
 
いくつかのマフィア勢力が均衡を保ち、暴力的な治安が構築されている 
願うのは平穏、だがひとつ間違えば氏だ  
 
美琴「どの道ここにいても仕方ないわ、行きましょう!」 
 
上条「覚悟決めるしかねーってことか」 
 
車を飛ばし、二人は資材搬入ゲートがある第十一学区を目指す 
 
 

330: 2011/01/08(土) 11:53:10.06 ID:YnY1CtI0
ゲートから数百メートル手前に検問所が見える 
完全に封鎖されている様だ 
 
上条がハンドルを急に切り歩道に乗り上げる 
刹那に轟音が響き路面が捲り上がる 
 
美琴「っ何!?」 
 
上条「なんか嫌な予感がしたんだが…」 
 
外を確認すると黒いスーツを来た男が反対車線に立っていた 
 
一方「おいおいおいおいィ、やっと見つけたってのに、俺に挨拶なしで街を出ようってのかァ?あァ?」 
 
学園都市最強の男 一方通行だった 
 
幻想頃しの無い今、勝率0%の相手だった  
 


331: 2011/01/08(土) 11:54:31.92 ID:YnY1CtI0
美琴「あんたが来るとはね…」 
 
車から降りて美琴が話しかける 
危険な男だ、妹達を一万人頃した男過去もある 
今でこそ打ち止めや妹達から信頼を得ているものの 
美琴はまだこの男を許しきってはいなかった 
 
上条「美琴、逃げろ」 
  
右手を握り締め、美琴の前に立ちはだかり逃走を促す 
 
美琴「嫌よ!!アンタだけ残していけるわけないじゃない!!」 
 
上条「絶対大丈夫だ、俺はお前を守る!そして絶対お前の元に戻る!!」 
 
美琴「当麻…」 
 
一方「すンませーン、盛り上がってる所悪いンですけど…」 
 
一方「別にお前ら頃しに来た訳じゃねェからな」 
 
上琴「「え?」」 

332: 2011/01/08(土) 11:55:53.44 ID:YnY1CtI0
一方「あンま信用ねーみてェだな、まァしょうがねェ…」 
 
一方「指令は受けてっけどよォ」 
 
一方「クソガキがうるせェから見送りだけだァ」  
 
上琴「「え?」」 
 
一方「だから!!俺じゃねーぞ!?クソガキの伝言だからな!!」 
 
一方「元気でやれよ三下ァ」 
 
美琴「あんた…」 
 
一方「そンだけだァ…さっさと行け」 
 
上条「一方通行、ありがとう」 
 
一方「勘違いすンな、そこのオリジナルと妹達にでけえ借り返してるだけだァ…」 
 
一方「辺鄙な場所に行くンだろ?治安ちっと良くしとけや」 
 
一方「クソガキがもう旅行に連れてけってせがンでっからなァ」 
  
一方「まぁ他の平和な観光地ならお断りなンだが」 

一方「悪党が悪党どもの街に行くのはおかしくねェだろ?」 
 
口を歪めてニヤっと笑う 
上条はこっちに戻ってくる前に見た一方通行を思い出した 
 
一方通行が足を路面に叩きつけ検問所を吹き飛ばす 
反対の街の中心部から警備員が大挙して向かってくる 
 
美琴「ありがと、連絡するから遊びにきなさい」 
 
一方「お互い生きてたらな、さっさといけ」 
 
一方「こっちはやることがあンだよ」  
 
最強の男が背を向け歩き出す 
 
二人の車が向かうはゲートへ 

333: 2011/01/08(土) 11:56:58.24 ID:YnY1CtI0
一方通行に崩壊させられた検問所を抜け 
ゲートをくぐる 
ハッキングでロックをこじ開けようと車を止める 
しかし勝手にロックが解除され、ゲートが開く 
 
驚く二人がゲート横のモニターを見ると 
花の静止画に「お幸せに」の文字が映っている 
状況が理解できてない上条に一言 
  
美琴「大丈夫、行きましょ」  
 
電脳世界の守護神に心の中で礼をいい 
学園都市の外へと飛び出した 
 

334: 2011/01/08(土) 11:59:25.51 ID:YnY1CtI0
一方「さァて、さっさとやることやりますかァ」 
 
一方通行は美琴達を追う警備員の隊列の前に立つ 
 
一方「お勤めご苦労さンでーす。残念だけどこの道は今から一方通行なンだよ」 
 
一方「さっさと引き返さねェと氏ンじまうぞォ!!」 
 
この世界の五体満足の最強が吠える 
 
一歩踏めば地割れを起こし車両が沈む 
また一歩踏めば幹線道路が隆起し人が押し流される 
発砲してくるが全てあらぬ方向へ流される 
 
一方「おらおらァ!さっさと下がりやがれェ!!」 
 
ビルが倒壊を始め、クモの子を散らす様に退避する 
 
最強が進む先は第一学区、学園都市の行政を司る統括理事会本部 
 
携帯を触り、電話をする 
 
一方「おい黄泉川!!、第十一学区から第一学区まで住民も警備員も全員非難させろ!!」 
 
一方「イライラしてっから氏人がでンぞォ!!」

335: 2011/01/08(土) 12:01:02.12 ID:YnY1CtI0
統括理事会本部のとある一室で男は激昂していた 
 
天井「まだ片付かないのか!!」 
 
秘書「はい、都市の外に出てしまったという報告は受けていますが」 
 
天井「ぬぅううううう!!警備員を動員してすぐに追え!!空港、国道、駅全て封鎖しろ!」 
 
秘書「警備員は第十一学区からここまでの幹線道路近辺の住民の非難」 
 
秘書「それから都市高速を走り回る車両の追跡に向かっています」 
 
天井「なんだと!?どういう意味だ!」 
 
秘書「なにやら正体不明のテロ組織という報告を受けています」 
 
秘書「人的被害は微々たるものですが、建造物の破壊規模は凄まじいものです」 
 
天井「なんというタイミングだ…土御門はどうした!?」 
 
秘書「彼とは連絡が取れません」 
  
天井「クソったれ!!」 
 
天井「学園都市が最先端で…。私がその上に立っているのに…」
 
天井「幻想頃しまで手に入れて今からという時に…!!」 
 
一方「運勢が尽きたンじゃねェの?」 
 

336: 2011/01/08(土) 12:02:01.11 ID:YnY1CtI0
天井「っっ!!!」 
 
一方「ビビリすぎだろォ?」 
 
天井「何しに来た一方通行、貴様は超電磁砲の追撃だろう!」 
 
一方「おお、追撃ならしてきたぜ?」 
 
天井「頃したのか?」 
 
一方「いンやァ?見送っただけだァ」 
 
天井「ふざけるな!なぜここにきている!!早く追え!!」 
 
一方「なンでここにいるのか教えてやろうか?」 
 
一方「ヒーローが悪者ぶっ倒すってのが王道だろォ?」 
 
天井「きっ貴様!!」 
 
天井「垣根!!」 
 
ソファーで横になっていた垣根帝督が起き上がりこちらを向く 
 
垣根「あん?」 
 
天井「こいつを始末しろ!」 

337: 2011/01/08(土) 12:05:37.57 ID:YnY1CtI0
垣根「よいしょっと」 
 
ソファーから立ち上がりジャケットを羽織る 
ゆっくりと天井と一方通行の間に移動する 
 
垣根「お前一人か?」 
 
一方「ああ」 
 
垣根「んじゃ帰るわ」 
 
天井「おい!!何を言っている!」 
 
天井「反逆者を始末しろ!!」 
 
垣根「んん?なんか勘違いしてね?」 
 
垣根「俺が受けた指令は理事会本部の防衛だぞ」 
 
垣根「クズの護衛じゃねーよ」 
 
天井「なっ…なんだと…!!!」 
 
垣根「んじゃそういう事なんで建てもん壊すなよ? あ、それと俺、今日同伴だからよろしくNO.1」 
 
一方「あァ?ンじゃ俺も同伴だァ」 
 
垣根「んじゃってなんだよお前…」 
 
パンパン 
天井が発砲がするが、銃弾はあらぬ方向へ逸らされる 
 
一方「あ、反射に戻すの忘れてた。運が良かったなお前」 
 
天井「ヒっ!…おいお前でもいい!!ヤツを止めろ!!」 
 
秘書に縋る天井 
その必氏な様に垣根が興味を持った様だ 
 
垣根「おうおう、秘書まで戦わせるつもりだぞあいつ」 
 
気が変わった、とニヤニヤしながらソファーに座る 
 
垣根「クズの末路を見届けて帰ろう」 
 
まるで映画のオマケシーンでも見るかの様な口ぶり

338: 2011/01/08(土) 12:06:48.00 ID:YnY1CtI0
秘書は困惑した顔を一方通行に向けていた 
 
秘書「どうしましょう?」 
 
一方「いいんじゃねェの?もう」 
 
秘書「そうですね…」 
 
秘書の顔が捲れ上がる 
 
海原「ではこの外道に引導を渡しましょう…」 
 
垣根「っ!!!うおおおお!!熱い展開だなおい!!」 
 
垣根の中でオマケシーンからクライマックスに昇華した 
 
天井「だ…誰だお前…?」 
 
海原「ひどいですね、今まで秘書として頑張ってきたのに…」 
 
天井「………誰だ…?」 
 
余りの展開に思考がついてこないらしい 
垣根はその様を見て笑い転げている 
 
一方「お前はやっちゃなンねェとこまで踏み込ンだってこった」 
 

339: 2011/01/08(土) 12:08:39.66 ID:YnY1CtI0
天井は少しだけ把握した、すでに追い詰められていうという所までは 
 
天井「分かった、要求はなんだ?」 
 
天井「金か?地位か?」 
  
天井「今なら交渉の余地があるぞ…そうだ理事会に興味はないか?」 
 
天井「超電磁砲の研究データを元に開発をすれば、また莫大な富が入る!」 
  
天井「まずは技術流出を防ごう!な?」
 
天井「成果を上げれば理事会に入れる!」  
 
天井「私が推薦するぞ!!」 
 
天井「ハハっ!どうだ?一方通行?それにお前たちも!一緒に科学の街の支配者にならないか!?」 
 
垣根の興味は天井の最初の一言で無くなり、代わりに一方通行に興味が向いている
 
一方「学園都市が最先端大いに結構ォ、それで超電磁砲の利用も大いに結構ォ」 
 
一方「俺もガキじゃねェ、奇麗事が大事なのも理解してる」 
 
一方「でもなァ、どンな理由を並べても、それでアイツらが殺されていい理由にはならねェだろうがァ!!」 
 

340: 2011/01/08(土) 12:09:48.66 ID:YnY1CtI0
天井「ヒィっ!うわあああぁああ!!」 
 
一方「逃がすかァ!!!」 
 
咆哮と共に垣根の座るソファーが天井に飛んでいく 
 
垣根「おいいい!!!!」 
 
垣根を乗せたまま天井に激突する 
 
天井「うぐぐ…」 
 
垣根「なにしやがんだてめぇ!!」 
 
一方「メルヘンビームで悪党を成敗したンだよ」 
 
海原「では、後処理は僕がやっておきます」 
 
一方「あァ…好きにしな」 
 
垣根「おい、謝れてめぇ!!」 
 
学園都市NO.1とNO.2が並んで出て行く 
 
 
残された天井と海原 
海原は変身魔術を解き、素顔を晒す 
誰にも見せないその素顔を… 
 
 
エツァリは天井の襟を掴み上げ 
聞きなれない単語と数字を囁いた
そして怯える男に告げる 
  
 
 
-------- あの人の世界を狂わせた罪を贖わせてやる --------  
 

 

341: 2011/01/08(土) 12:12:16.53 ID:YnY1CtI0
雪が降る学園都市 
打ち止めに全て終わった事を連絡し、一緒に食事を取ることになった 
 
一方「お前の同伴って誰?」 
 
垣根「あん?彼女だけど?」 
 
一方「一緒に飯いかね?」 
 
垣根「ええー?なんでお前と!?同じ派閥のやつ誘えよ」 
 
一方「俺も女となんだよ」 
 
垣根「打ち止めちゃんか、まぁいいか」 
 
垣根「さっきのNO.1の勇姿を教えてあげよ」 
 
一方「ヤメロ」 
 
一方通行は薄く積もる雪道の上で身を震わせる 
防寒性の高いジャケットだが、視覚で寒さを感じる人間味のある行動にふっと笑みを浮かべる 
  
一方(三下みてェに上手く説教できねェなァ…、練習するかァ) 
 
 
学園都市最強のNO.1ホストは新たな進化を模索していた 
 
 
 

342: 2011/01/08(土) 12:13:59.49 ID:YnY1CtI0
国道を走行中に逃走ルートを模索する 
現地の業界なども調べ、運び屋を営んでる連中がいた 
金次第で何でも運ぶと書いてある 
 
連絡先にさっそく電話を掛ける 
 
『はい、ラグーン商会ですがー』 
 
覇気の無い男の声がする 
 
美琴「運んでもらいたいものがあるの」 
 
『なんでしょ?』 
 
美琴「人間二人を日本からロアナプラへ」 
 
『なに?…どちらさんですか?』 
 
美琴「訳あって逃亡生活になるのよ、お金は弾むわ」 
 
『あー、ちょっとボスに代わりますー』 
『ダッチ、なんか日本からだよ』 
『何?あいつらなんかやらかしたのか?』 
 
電話越しに会話が聞こえる 
 
『もしもし』 
 
低い男の声だ

343: 2011/01/08(土) 12:15:12.27 ID:YnY1CtI0
上条は運転しながら美琴が英語で交渉しているのを聞いていた 
 
上条(コイツほんとすごいな…) 
 
年収十億は下らないと自慢する自分の恋人に畏敬の念を抱く 
 
thank youという言葉が聞き取れた 
上手くいったのだろうか 
 
美琴「おっけーよ、明日の夜、東京まで迎えに来るって」 
 
そういいながらラップトップを弄っている 
 
上条「そうか、随分早く来てくれるんだな」 
 
美琴「報酬がすごいからに決まってるでしょ」 
 
上条「いくらだよ?」 
 
美琴「百万ドルよ」 
 
ピンとこない上条は計算をする 
 
美琴「今の相場で一億三千万よ」 
 
上条「っええええええ!!」 
 
美琴「まぁホストに通って男に貢ぐよりは価値あるわ」 
 
上条「ぁぅぁぅ」  
 
上条の反応にケラケラと笑う 
 
美琴「冗談よ!…まぁ超危険手当込みだから安いと思うはずよ」 
 
美琴「あっちもこっちもね」 
 
上条「ソーデスカ」  
 
美琴「こうして愛しい男がそばにいてくれるなら、いくらお金積んでも積み足りないわよ」 
 
まだ気にしてる上条に呆れた顔でフォローを入れる
  
国道をひたすら走る 
 
目指すは東京

344: 2011/01/08(土) 12:16:27.68 ID:YnY1CtI0
上条「まっすぐ東京いくのか?」 
 
美琴「そうね、人も多いし。給油してどこかで休みましょ」 
 
上条「そうだな」 
 
上条「そういえばさ、全然追っ手がこないな」 
 
美琴「そうねぇ、アタシも追ってくると思ってたんだけど」 
 
美琴「学園都市に情報封鎖がされてて、電波もネットも全部遮断されてるわ」 
 
上条「ハッキングできないのか?」 
 
美琴「守護神がそうさせてくれないわね」 
 
ゲートのロックを外した都市伝説となっていた存在を思い出す 
 
美琴「心配だけど、ちゃんとシステムが機能してるんだから問題ないでしょ」 
 
上条「お、スタンド発見」 
 
電撃使いが乗るんだからEVにしてくれれば良かったのに 
いや、あの女の性格上、あえてガソリン車にしたのかもしれないと美琴は邪推する 
  

345: 2011/01/08(土) 12:18:28.70 ID:YnY1CtI0
結局、東京には入らず県境で車中泊となった  
後部座席を寝やすい様に回して簡易ベッドを作った  
コンビニ弁当を平らげ 
寒いのでエンジンは掛けたまま二人で横になる  
 
静かな気配 
夜の気配 
病院であんなに震えたのに  
今は怖くない 
状況で言えば今の方がずっと危険で怖いはずなのに 
怖くない  
隣で寝ている女がいるからだろう 
ずっと一緒にいたいと何度も願った女が
 
顔を向けると女はこっちを見ていた 
どうした? 
男が聞く 
ううん、見てただけ 
女が答える 
お互い何も言わずに 
唇を合わせ何度も舌を絡める 
淫靡な音が静かな空間に響く 
女の漏れる吐息 
男のざらついた右手が女の肌を撫でる 
体温の無い血の通わない手 
女は愛惜しそうに手を握る  
 
女が男を受け入れ 
二人の逃亡者が絡み合う 
何度も願った再開 
男の抱きしる腕に力が入る 
逃がすまいと女が爪を立ててしがみ付く 
 
 
 
----------- もう二度と離れない ------------ 
 

346: 2011/01/08(土) 12:20:16.49 ID:YnY1CtI0
東京に着けば街中が混乱していた 
なにやらヤクザ同士の抗争があった様だ 
一般人も巻き込んでかなり大規模だったらしい  
都内を車で回りながら備え付けのテレビを見ていた 
 
美琴「せっかく東京きたんだから、最後の日本を楽しみましょうか」 
 
上条「大丈夫かね、歩き回って」 
 
美琴「道中に襲撃がないんだったら、街でもないわよ」 
 
美琴「あるとしたら海に出てからよ」 
 
逃走するには陸海空どこかを通らねばならない 
空は確実にマークされる上、逃げ場がないから使わないと踏むだろう 
陸なら昨夜の時点で何かあってもいい 
海を使うと思っているだろう、実際その通りだ 
 
一方通行のあの感じなら、高位能力者は追撃に参加しないだろう 
超電磁砲相手に陸だと迎撃される、しかし空、海なら乗っているものさえ沈めればいいのだ 
 
美琴「ま、デートでも楽しみますか」  

347: 2011/01/08(土) 12:21:31.21 ID:YnY1CtI0
午前は朝食を食べ、街を歩く 
どこもかしこも慌しい 
事件現場は騒然としていた 
 
美琴の電話が鳴る 
 
美琴「もしもし? ああ、何この番号? …そうなの うん …うん うん 分かってる ありがと」 
 
美琴「打ち止めからよ。情報規制解除だって、理事会は粛清案可決したそうよ…」 
 
上条「そうか…」 
 
美琴「無断で研究機密を持ち出し、街を破壊したテ口リストだってさ」 
 
上条「街を破壊?」 
 
美琴「一方通行と麦野沈利が暴れたらしいわ」 
 
上条「美琴のせいかよ!?」 
 
美琴「違うわ、追っ手が来なかったんじゃなくて、追っ手が来れなかったのよ」 
 
上条「あいつらに助けられたって事か…」 
 
美琴「天井は消息不明、理事会は特に追及せずに空いた席を埋めるみたいね」 
 
上条「んじゃとっとと逃げますかね」 
 
美琴「そうね…。でもその前に!」 
 
美琴「行きたいとこがあるの!!」 
 
目を輝かせて満面の笑みで提案する 
 
 

348: 2011/01/08(土) 12:23:00.95 ID:YnY1CtI0
美琴「ああー!楽しかったあ!!」 
 
とある遊園地で思いっきり遊んだ後だった 
ネズミがメインのはずだったが、コラボ企画とやらでなぜかゲコ太までいた 
提案した本人も思わぬサプライズだった様で、来ている他の子供よりも興奮していた 
パレード中大声でネズミに負けるなゲコ太ー!!と必氏に呼んでいた時は、上条ですら赤面したくらいだ 
 
上条「そうか、よかったな!」 
 
カエルの帽子を被り、大きめのぬいぐるみを抱いてご満悦の様だ 
上条も半ば無理やりカエルの帽子を被らされている 

電話が鳴る 
 
『ラグーン商会だ、思ったより早く着いた』 
 
『指定の場所に停めてあるから、いつでも来てくれていい』 
 
美琴「わかったわ」 
 
電話を切り深呼吸をする 
 
美琴「もう着いたらしいわ」 
 
上条「……はやいな」 
 
日本との別れ、家族や友人に満足に別れも言って無い 
犯罪者として、今から生きていく 
でも後悔はしていない 
何ものにも変えられないモノを手に入れたのだから

349: 2011/01/08(土) 12:23:53.06 ID:YnY1CtI0
港に行くと一隻エンジンを掛けたままの船が停まっている 
 
美琴「ハロー?」 
 
英語の分からない上条は全面美琴に任せることにした 
 
ダッチ「アンタが依頼した御坂か?」 
 
美琴「そうよ、声がイメージ通りの人で安心したわ」 
 
ダッチ「長居はできないんだが、ウチの船員を二人回収しなきゃならん」 
 
ダッチ「中で待っててくれ」 
 
ダッチ「ベニー、案内してくれ」 

上条はやり取りを眺めて、必氏に聞き取ろうとするがサッパリだった 
 
美琴「いきましょ」 
 
流れを見て問題はないんだろうと判断する 

350: 2011/01/08(土) 12:27:42.92 ID:YnY1CtI0
船室に案内される 
 
ベニー「快適とは言えないが、まぁ好きにくつろいでくれ」 
 
ベニー「飲み物はそこの冷蔵庫に入ってる、好きに飲んでくれていい」 
 
美琴「至れり尽くせりね」 
 
ベニー「そりゃVIPだからさ。船員が帰ってきたからまた後で」 
 
欧米人特有の大げさなスマイルを残し、甲板に上がる 
上条は船室を見渡し、部屋の一角に積まれた木箱に目が止まる 
特に興味を持った訳ではないが、なんとなく開けてみた 
 
上条「っ!」 
 
美琴「ちょっと!何してんの!!勝手に触らないの!」 
  
レヴィ「へい、何やってんだ?」 
 
恐らく遅れてきた船員なのだろう、二挺拳銃を上条と美琴に向けている 
銃を向けられても美琴は別に怖くは無い 
この時怖いと感じたのは目だった 
銃を向ける女のどぶ川の澱みの様な、社会の負の側面を詰め込んだ目 
 

351: 2011/01/08(土) 12:28:49.53 ID:YnY1CtI0
美琴「ごめんなさい、こいつにちゃんt」 
 
上条「おい、足怪我してんじゃねーか!!」 
 
上条が右手で足を指差し、前に一歩でる 
 
バンっと右手に向けて、なんの躊躇いも無く引き金が引かれる 
 
上条「いてっ!」 
 
美琴「ちょっと!あんた!!」 
 
上条「美琴!!」 
 
美琴が帯電するが上条が制する 
 
上条「大丈夫だ、怪我してないから、それより訳してくれ」 
 
上条「俺が甘く考えてた申し訳ないって」 
 
美琴はそのままの通り伝える、もちろん警戒を怠らずに 
 
レヴィは上条の右手を不思議そうに見ていたが 
美琴の言葉を聞き、上条の真っ直ぐな目を見た後、舌打ちをして銃をしまう 
ぼそっと、また平和ボケした日本人かと吐き捨て踵を返す 
 
船室のドアが空き黒人の大男が入ってくる 
 
ダッチ「レヴィ!何の騒ぎだ!?」 
 
レヴィ「何でもねーよ、ボス」 
 
美琴「ダッチ、こっちが悪いの。ごめんなさい」 
 
ダッチ「そうか、…ロックお前も休んでろ、ついでにこの人達の世話をしてやれ」 
 
ロック「…ああ」 
 
日本人が入ってきた  
疲れているのか、落ち込んでいるのかよく分からない表情をしている 
 

352: 2011/01/08(土) 12:30:41.49 ID:YnY1CtI0
ニーが船室に来て、インカムが渡される 
 
ベニー「話は聞いたんだけど、どこまで準備すればいいか分からなくてね」 
 
ロック「準備?」 
 
ベニー「ロックにはまだだったな、この二人は狙われているのさ、世界最先端の科学の街からね」 
 
ベニー「情報得ようとしたけど、理事会?だっけ?あそこのセキュリティが硬くて無理だったよ 
     
ベニー「進入したのはいいけど、すぐ追い出されてしまった」 
 
美琴「入ったの!?」 
 
追い返されたとは言え、学園都市のセキュリティを一時的に突破した事に驚きを禁じえない 
今あの街の電脳世界を掌握している、花飾りの守護神を一瞬でも出し抜いたのだ  
 
ベニー「ああ、追い出されて追いかけられる嵌めになったけどね」 
  
降参だとばかりに腕を広げる 
 
ダッチ『そろそろ出るぞ、日本の領海越えるまで飛ばすからな』 
 
 
ラグーン号が西を目指し冬の海に出る 
 
上条と美琴の握り合っている手にぎゅっと力が入る 
もう後戻りはできない 
 
さようなら生まれた国 
 
さようなら学園都市

353: 2011/01/08(土) 12:33:24.48 ID:YnY1CtI0
ロアナプラ沿岸、長い船旅の終着点 
港へ入る手前の顔の無い仏像、陸路からでは橋に誰の為か分からない首吊り用の縄がぶら下がっている 
それらがこの街の看板替わりだそうだ 
 
美琴「思ったより都会ね」 
 
レヴィ「悪党達が退屈しねぇ様に適度な娯楽はあるぜ」 
 
美琴「それは楽しみね、どっかいいとこ紹介してよ」 
 
レヴィ「あたしは観光案内じゃねーよ、うちのお人よしに聞きな 
     
レヴィ「ああ、あんたの連れの女遊びなら、街歩いてるだけで女が寄ってくるさ」 
 
美琴「と、当麻はそんなとこ行かないもん!」 
 
レヴィ「わかんねーぞぉ?男ってなそんな複雑に考えてねーからなぁ…」 
 
ニヤニヤと笑いながら美琴をからかうレヴィ 
ここまでたどり着くまでのいざこざで多少ではあるが打ち解けたのだろう 
レヴィの悪戯な笑顔を見てベニーは思った 
  

354: 2011/01/08(土) 12:34:44.99 ID:YnY1CtI0
ホテルに到着しすぐに準備を整える 
この街の支配者たちの会合へ参加する為だ 
ただの流れ者ではないのでどういう反応なのかを確認する必要がある 
 
ダッチ「いいか、くれぐれも言葉に気をつけるんだ」  
 
レヴィ「なんかあってもうちらにゃ関係ないからな」 
 
有力なマフィアの頭目達【黄金夜会】の会合 
自分たちの経緯を話し、相互不介入 
つまり都市からアクションがあっても上条と美琴には関与しない 
そっとしておいてくれと言いたいのだ 
 
とあるビルに到着する 
  
美琴「いくわよ…」 
 
上条「ああ」 
 

355: 2011/01/08(土) 12:36:21.58 ID:YnY1CtI0
黄金夜会 
ロシアンマフィアのホテルモスクワ 
チャイニーズマフィアの三合会 
イタリアンマフィアのコーサ・ノストラ 
コロンビア系のマニサレラ・カルテル 
この四つの勢力がお互いに均衡を保ち、牽制しあいこの暴力都市に薄氷の秩序を築いている 
 
そこに飛び行った異邦者二名 
ダッチがホテルモスクワのバラライカに話を付け参加の許可を得たのだ 
 
バラライカ「日本人の移民事業でも始めたの?ダッチ」 
 
ダッチ「勘弁してくれ、ウチのロックだけで手一杯さ姉御」 
 
張「それで話ってなんだい?俺はヒマだからいいけど、他のボス達はお忙しいだろうからな」 
 
固唾を飲み込み口を開く 
 
美琴「アタシ達は静かに暮らしたいの」 
 
美琴は二人の願いを伝える 
 

356: 2011/01/08(土) 12:38:24.90 ID:YnY1CtI0
バラライカ「ふーん、つまりあなた達を捕らえて学園都市に突き出せば交渉できるって事ね」 
 
美琴「そうなれば、全力で抵抗させてもらうわ」 
 
ピクっとバラライカの眉が上がり、眼光が鋭くなる 
 
ダッチ「おい!御坂!」 
 
美琴の実力とバラライカの恐怖を知るダッチが慌てて止める 
 
上条「なんか空気が変わったぞ…大丈夫か?」 
 
美琴は上条の手を握る 
大丈夫のサインらしい 
 
美琴「学園都市と交渉するよりも、いい話も用意してきたわ」 
 
美琴はバッグからメモリースティックを出す 
 
美琴「科学の最先端技術よ、これが日本人二人を住まわせるだけで手に入るわ」 
    
美琴「最初はもちろん小出しにさせてもらうけどね」 
 
上条の右手を見せ続ける 
 
美琴「この右手…わかるかしら?アタシの能力で開発された義手よ」 
 
美琴「このレベルの技術を提供するわ」 
 
バラライカは右手を一瞥するだけだったが 
それ以外のボスはマジマジと上条の右手を見る 
 
上条「ハハっ…そんな見つめられると上条さん恥ずかしいなー…なんちて」 
 
ドスっと美琴の肘が入る 
しゃべるなという事らしい 
 
 

357: 2011/01/08(土) 12:44:59.73 ID:YnY1CtI0
張「ふーん、俺は別にいいと思うぜ…?なんの苦労も無く旨い話だ」 
 
他の二名も張と同意見だった 
その価値は正確には理解していないが 
張がそう判断するならっというのが大きかった 
そもそも捕らえたとしても都市と交渉するのも骨の折れる話だ 
 
張「超能力者とケンカしてケガすんのもバカらしいわ」 
 
しかし一人を除いては 
 
バラライカ「力で奪い取ればいい話だ」 
 
冷徹、冷酷、恫喝、殺意、全ての意味が含まれた視線を二人に向ける 
 
バラライカ「超能力者であろうが24時間遠距離から狙撃されては音を上げるだろう」 
 
バラライカ「軍曹、狙撃班を編成しておけ」 
 
ボリス「はっ」 
 
命令を受けた男はすぐさま連絡を入れる 
ロシアンマフィアの頭目は利益などよりも、自分と相対して勝てる気でいるという事が気に入らなかった 
例えそれで自分が氏ぬことになろうとも、軍人としての魂が許さない、亡き戦友達に顔向けできない 
美琴が上条の手をぎゅっと握り、ギリっと歯をかみ締める 
決裂したという雰囲気が伝わり上条も覚悟を決める 
 

358: 2011/01/08(土) 12:45:58.16 ID:YnY1CtI0
ダッチ「姉御、それはオススメしねぇぞ、その日本人は生身でアンクル・サムの艦隊を沈めたんだ」 
     
ダッチ「やりあうなら、せめて俺らが避難してからにしてくれや」  
 
バラライカ「なに?」 
 
表情が一気に変わった 
 
話にまったく着いて行ってない上条 
その目で見たダッチとレヴィ以外は驚いている 
 
しばしの沈黙の後バラライカが笑い声を上げる 
 
バラライカ「軍に匹敵する戦力だとは聞いていたが、まさかあの傲慢な民主主義者どもを沈めた?」 
      
バラライカ「日本人の小娘が!生身で!?こんな愉快な話はないなぁ?軍曹」 
 
ボリス「そうですな」 
 
クスクスと笑いを堪えながら続ける 
 
バラライカ「いいだろう、御坂。おもしろい話を聞いた。我々もお前たちに関知しないことにする」 
 
バラライカ「いや、なにかあったら頼ってもらってもいい、ボリス軍曹、手配を解除しておけ。帰るぞ」 
 
言い終わるがいなや踵を返し、更に笑い声を高く上げ出て行く 
 
  
どうやら全てが終わったようだ 
 
その場にいた全員が緊張を解きふぅっと息を吐いた   
   

359: 2011/01/08(土) 12:49:03.48 ID:YnY1CtI0
一週間後 
当面の住まいとして、ダッチの手配でマンションを借り、一戸建ての建設に着手する 
今後のことも考慮して地勢、素材、研究設備、非常設備なども拘った結果、要塞の様な図面になってしまった 
上条は構わなかったが、家主は気に入らない様で、ものすごくファンシーな外観に改装される予定だ 
小高い山の上にあるので街までは不便だが喧騒も縁遠く、二人で静かに暮らすには打って付けの場所だった 
上条は目下英会話の勉強中だ 
 
マンションのベランダに立ち美琴が夕闇に染まる海を眺めていた 
 
上条「日本が恋しくなったか?」 
 
美琴「ううん、あー、恋しいっちゃ恋しいけどね。ちょっと考え事してた」 
 
上条「なんだ?美琴せんせーに分からないのか?上条さんに分かることだったら答えるぜ」 
 
美琴「うん、なんでアンタは別次元の世界に行ったんだろう?って考えてた」 
    
美琴「戻ってきたのは分かってるんだけど」 
 
上条「なんだそんなことかよ」 
 

360: 2011/01/08(土) 12:55:14.75 ID:YnY1CtI0
美琴「そんなことって、アンタ分かってるの?」 
 
上条「たぶんだけどな、…この世界を見てる神様達が不幸な上条さんにハッピーになれるチャンスをくれたんだよ」 
  
上条「幻想頃しも無くなったし、神様のご加護が届く様になったんだろ」 
 
昔、10万3000冊の魔導書を記憶しているシスターの言った事を思い出しながら結論付ける 
 
美琴「なによそれ!分かんないわよ…」 
 
上条「俺とお前がこうして並んで、幸せにする」 
   
上条「それでいいじゃねーか」 
 
美琴が呆れ半分顔を赤くして頷く 
上条は笑ってそっと肩を抱く 
 
上条「なぁ美琴」 
 
美琴「うん?」 
 
上条「愛してる」 
 
美琴「うん!」 
 
夕闇の艶やかなコントラストを背景に二人は永遠となる 
 
暴力の街ロアナプラ 
厄介ごとにクビを突っ込む義手の男と一個軍隊に匹敵する戦力を持つ電撃姫 
この二人が住民に知れ渡るのはそう遠くないお話 
因みにとある酒場ではすでに落雷被害に対応するべく避雷針の設置を急いでるとさ 
 
 
 
上条「愛してる」 END 
 

363: 2011/01/08(土) 13:09:38.66 ID:eMYbLdso
おおお。まさかブラクラクロスとは……。
しかも、ヤクザ編かよ。
……ロベルタ再登場編の染まったロックさんじゃなくて良かったw

乙。
……贅沢言うなら後日談が見たいなぁ(チラッ

364: 2011/01/08(土) 13:13:23.35 ID:YnY1CtI0
一応本編が完結となります 
 
後は端折った描写とスピンオフみたいな感じの短編っぽいので補完して終わりです 
明日少し投下 
 
クロスはBLACK LAGOONという作品です 
ロアナプラは暴力が表向き、裏で人間の素敵な部分があり 
学園都市はその逆だなーとか思ったり 
触れた事ない人はほんと意味不明だと思いますが、機会があったらぜひ、絶対おもしろいです 
指先の動きひとつで命が吹き飛ぶ世界、超能力や魔術ではなく現実的な暴力に対して恐怖を学ぶいい作品だと思います 

365: 2011/01/08(土) 16:09:10.66 ID:Ct3LopE0
くそう脅かしやがって乙でした
別世界の後日談も見たいです

引用: 上条「愛してる」