1: 2009/06/26(金) 22:17:50.15 ID:gHVmfgSD0
蒼「あ~参ったなぁ・・・翠星石の家で遊んでいたらすっかり遅くなっちゃった・・・」

蒼「マスターとおばあさん心配してるだろうなぁ・・・」

ビュゥゥゥン

蒼「夜だから人いなくて助かったよ」

ビュゥゥ・・・ウゥゥン・・・

蒼「あ、あれ?どうしたんだ?急に鞄のスピードが・・・うわ!」

どたっ!

蒼「いたたた・・・なんで急に飛ばなくなったんだ・・・?」
薔薇乙女
2: 2009/06/26(金) 22:20:26.78 ID:gHVmfgSD0
蒼「ちょっと疲れたのかな僕・・・公園が近いし休んでいこう」

スクッ ぱんぱん

蒼「ああ~・・・服がちょっとやぶけちゃった・・・」

蒼「鞄・・・鞄・・・と」

がちゃっ

蒼「(あれ?なんか鞄がちっちゃい?)」

蒼「・・・ヘンだな」

たったったっ

3: 2009/06/26(金) 22:24:29.51 ID:gHVmfgSD0
蒼「はぁ・・・はぁ・・・なんか疲れた」

蒼「いつも鞄で飛んでいたから体力落ちちゃったかな・・・」

とすん

蒼「はぁ・・・え?」

バッ!!

蒼「・・・公園のベンチ・・・こんなに低かったっけ・・・?」

ビリッ!!

蒼「!!ふ、服が勝手に破けて・・・!」

蒼「鞄も小さくなって・・・ち、違う!僕が大きくなってる!?」

5: 2009/06/26(金) 22:29:21.20 ID:gHVmfgSD0
蒼「ど、どうしてこんなことに・・・!」

蒼「ま、まさか・・・!」

~回想~

翠『ジュン!つまんねぇです!なんかないですか!?』

ジ『なんかってなんだよ』

翠『くんくんは今時間やってねぇですし、おもしろい映画でも無いですか?』

ジ『映画ねぇ・・・』

蒼『今だったらターミ○ーター4やってるよ』

翠『うーん、そういったアクションものは苦手ですぅ』

蒼『じゃあトランスフォー○ーリベンジ・・・』

翠『だから嫌だって言ってるです』

7: 2009/06/26(金) 22:35:36.71 ID:gHVmfgSD0
蒼『じゃあどういうのがいいのさ』

翠『アニメがいいですぅ』

蒼『アニメは専門外だなぁ』

ジ『映画に興味がないからなぁ』

翠『ぶー・・・あ!あれおもしろそうですぅ!』

ジ『あれ?今テレビでやってるCMか?』

翠『そうです』

蒼『うーん・・・?モン○ターVSエイ○アン?』

翠『人間がデカ人間になったですぅ!』

8: 2009/06/26(金) 22:41:27.56 ID:gHVmfgSD0
ジ『あれでも公開してないぞ』

蒼『7月って書いてあるね』

翠『なんだつまんねーです!』

ジ『真紅みたいに本読んでろよ』

翠『本はつまんねーです!なんか似たようなのねーですか?』

蒼『僕は知らないなぁ・・・でも巨大化するってすごいね』

翠『翠星石たちも巨大化すればエイリアンと戦えるですぅ』

ジ『おまえらすでにエイリアンみたいなもんだろ』

翠『ぬゎんですってぇぇ!?』

蒼『ちょっとひどいなぁジュンくん』

~回想終了~

蒼「・・・まさか、ね・・・」

10: 2009/06/26(金) 22:46:12.53 ID:gHVmfgSD0
蒼「いやいやまさか僕はエイリアンじゃなくて薔薇乙女だよ?」

蒼「なんで巨大化するのさ・・・ははは」

蒼「これはあれだよ、転んだ時に破けた端が広がっただけだよ」

ビリビリィ!!

蒼「・・・」

ガタッ

蒼「お、お父様ぁぁぁぁ!!」

たったったっ!

蒼「ぼ、僕モンスターになっちゃうよぉぉ!!」

12: 2009/06/26(金) 22:49:23.25 ID:gHVmfgSD0
蒼「ど、どうしよう!」

蒼「とりあえず真紅たちに相談しよう!」

たったったっ

蒼「なんか走ってる間も大きくなってきてる気がする・・・」

蒼「だんだん服がきつくなってきた・・・む、胸が圧迫される・・・」

蒼「見えた!ジュンくんの家だ!」

ドンドンドン!!

蒼「あ、開けてよぉぉぉ!!」

ジ『な、なんだ!?』

13: 2009/06/26(金) 22:54:28.41 ID:gHVmfgSD0
ジ『誰だこんな夜に?』

蒼「ぼ、僕だよ!蒼星石だよ!!」

ジ『蒼星石?蒼星石なら僕の部屋の窓から突き破って入ってくるだろ』

蒼「恨んでいるのかい!?そんなことどうでもいいから開けてよ!」

ジ『はぁー・・・わかったよ』

蒼「・・・あ!」

蒼「(今僕の服が極限まで破けているんだった!今開けられたら大変だ!)」

蒼「やっぱり開けちゃダメ!!」

ジ『どっちだよ』

16: 2009/06/26(金) 23:00:56.57 ID:gHVmfgSD0
蒼「えぅー・・・あ、開けてもいいけど見ないでね!」

ジ『は?』

蒼「あ、あのね、巨大化してるの!」

ジ『何が!?』

蒼「僕が!」

ジ『・・・僕の家に入る前に病院に行った方が・・・』

蒼「僕は人形だから病院は診てくれないの!じゃなくて、開けてよ!!」

ジ『全然話の筋が通らないから、一から説明してくれないか?』

蒼「えっとね!僕がモンスターでね!おっきくなって、服がビリッて破けてね!」

ジ『ああもう何興奮してるかわかんないけど、開けるから待ってろ』

20: 2009/06/26(金) 23:05:30.38 ID:gHVmfgSD0
ガチャガチャ キィ・・・

ジ「いったい何興奮してんd」

蒼「だから!僕がおっきくなってね!」

ジ「・・・マジかよ・・・」

蒼「あ!!とうとうジュンくんと同じ目線になった!!」

ジ「その・・・なんだ・・・おまえ・・・いいスタイルしてんな」

蒼「見ないでよエOチ!!」

ドゴンッ!!

ジ「ごふぅ!!か、鞄は凶器だぜ・・・」

ウーォッ ウーォッ ウーォッ ・・・ダンッ!

蒼「ご、ごめん!大丈夫ジュンくん!?」

21: 2009/06/26(金) 23:09:00.35 ID:gHVmfgSD0
紅「ちょっとジュンうるさいわよ!ティガレックスにやられちゃったじゃないの!」

雛「真紅が無駄に大剣振り回すからヒナ吹き飛んでばかりなのー!」

蒼「あ!真紅!助けて!」

紅「蒼星石・・・どうしたの!?」

雛「うゆー、蒼星石おっOい大きいのー」

蒼「おっOいはどうでもいいからさ!助けてよ!」

紅「そうね・・・まずはティガレックスを倒してからよ」

蒼「僕ゲーム以下!?」ガーン

23: 2009/06/26(金) 23:15:20.98 ID:gHVmfgSD0
翠「そんな・・・蒼星石がモンスターだなんて・・・」

蒼「違うって!僕は薔薇乙女だよ!」

紅「ジュンと同じ身長になってるのよ?あ、雛苺早く剥ぎ取りしなさい」

蒼「真紅!真面目に話聞いてよ!」

ジ「今の真紅に真面目さを求めるのは間違っている」

翠「蒼星石、帰る時になんか光線打たれたとか注射されたとかないですか?」

蒼「無いよ。ずっと空飛んでいたんだもん」

ジ「そもそも人形が巨大化するのかよ」

蒼「おっきくなっても、球状関節は健在だよ、ホラ」

ジ「まるでリアルドール・・・はっ!」

翠「なんですかリアルドールって?」

26: 2009/06/26(金) 23:21:02.01 ID:gHVmfgSD0
ジ「これだよ」

カチカチ

翠「オリエント・・・?キャー!!ににに人間!?」

蒼「きれいな人だね。でもなんだか生気を感じられないけど」

ジ「そりゃそうだ。人形だもん」

蒼「えっ!?」

ジ「今の蒼星石みたいな感じ。まあおまえは生きているけどな」

蒼「そ、そんな・・・」

翠「蒼星石!しっかりするですぅ!」

紅「雛苺!早く笛を吹きなさい!」

雛「だったら真紅近づかないで欲しいのー!」

28: 2009/06/26(金) 23:25:40.27 ID:gHVmfgSD0
翠「ジュン!蒼星石が落ち込んでいるです!」

ジ「見りゃわかるよ」

翠「なだめろです!」

ジ「なんで僕が・・・」

蒼「えっぐえっぐ・・・」

紅「泣ーかーしたー泣ーかーしたー」

雛「のーりーにー言ってやろー」

ジ「おまえら黙れよ」

ジ「あ、あのな蒼星石・・・その、今でも十分かわいいぞ?」

蒼「えっ・・・?」

翠「誰が告白しろって言ったですかこのメガネ!!」

ジ「じゃあなんて言えばいいんだよ!!」

31: 2009/06/26(金) 23:30:34.46 ID:gHVmfgSD0
ジ「とにかく、蒼星石がこうなった原因を調べよう」

翠「話題を変えるな!」

ジ「人形については人形師に聞くのが一番だ」

蒼「槐って人かい?なんだか心配だな・・・」

ジ「今日はもう遅いから明日訪ねよう。蒼星石も家へ帰れ」

蒼「あの・・・歩いて帰るの?」

ジ「いつものように鞄に乗って行けばいいだろう」

翠「なんならnのフィールド通っていってもいいですよ」

蒼「その・・・この体になったら力が使えないんだ・・・」

33: 2009/06/26(金) 23:34:33.90 ID:gHVmfgSD0
ジ「じゃあ、歩いて帰れ」

蒼「や、やだよ!」

翠「じゃあ止まっていけですぅ」

ジ「おまえ勝手に・・・」

蒼「ど、どこで?」

ジ「は?」

蒼「どこで寝ればいいのかな・・・」

ジ「・・・隣の部屋から布団持ってくるからそこで寝ればいいよ」

蒼「ありがとうジュンくん」

ジ「いいよいいよ・・・よっこらせ」

蒼「あ、ジュンくん手伝うよ」

スクッ

ジ「な・・・!僕より大きくなってる・・・!」

蒼「うわ・・・ジュンくんが子供みたいだ」

翠「十分子供ですぅ」

35: 2009/06/26(金) 23:39:41.77 ID:gHVmfgSD0
ジ「ほら、ひいたぞ」

蒼「ありがとうジュンくん」

ジ「姉ちゃんと同じくらいの身長だな」

蒼「うん・・・明日にはもっと大きくなってるかも」

ジ「明日には天井から頭が出ていたりしてな、はっはっは」

蒼「・・・」うるうる

ジ「ごめん言い過ぎた」

翠「何とかして元の大きさにするです。これじゃ翠星石がお姉さんに見えないですぅ」

ジ「元から見えないから安心しろ。おやすみ」

翠「ちょっとジュンそこに直れ」

紅「あしたはイャンクック亜種狩るわよ」

雛「別に雛一人でも倒せるのよ。はっきりいって足手まといなのよ」

紅「・・・」

36: 2009/06/26(金) 23:42:09.94 ID:gHVmfgSD0
~深夜~

蒼「すー・・・すー・・・」

ムクッ

蒼「・・・のど乾いた・・・」

てくてく ガチャッ

・・・

バタン

蒼「・・・うー?」

バサッ もぞもぞ

蒼「・・・すー・・・むにゃ・・・」

ぎゅっ

38: 2009/06/26(金) 23:47:16.77 ID:gHVmfgSD0
ジ「・・・んが」

ジ「(あれ、身動きできない)」

もぞもぞ

ジ「え」

ぽゆん

ジ「(え?何?後頭部になんかある)」

ジ「(これ腕?え?蒼星石!?なんで僕のベッドにいるんだよ!)」

ジ「(なんか抱きついてるし!後ろの柔らかいのはおおおおおっぱ!?)」

ジ『おい!起きろ蒼星石!どけ!』

蒼「ぐー・・・」

ジ「(だめだこりゃ。仕方がない、しばらくこの感触を堪能するしかないか・・・)」

ぽゆんぽゆんぽゆんぽゆんぽゆん・・・

39: 2009/06/26(金) 23:51:17.17 ID:gHVmfgSD0
ジ「(しかしなぜ急に蒼星石は巨大化したのだろうか)」

ぽゆんぽゆん

ジ「(人形の急激な成長・・・ローゼンメイデンだからこそ起きうることなのか?)」

ぽゆんぽゆん

ジ「(全く持って不可解な人形だ・・・勝手に動いて勝手に戦って)」

ぽゆんぽゆん

ジ「(それに成長するとなるか・・・人形と言うより人間そのものだな)」

ぽゆんぽゆん

ジ「(人間そのもの・・・ローゼンが目指していたのはアリス・・・まさか・・・な・・・)」

ぽゆんぽゆん

蒼「う~ん・・・Zzz・・・」

40: 2009/06/27(土) 00:00:02.25 ID:tPvFjiOe0
ジ「なんとなくわかったことがある」

翠「それよりどうして今朝蒼星石とジュンが一緒に寝ていたかを詳しく」

ジ「どうせ蒼星石が寝ぼけて僕の布団に入ってきただけだろ」

蒼「う、うん」

翠「はぁ・・・蒼星石もおっちょこちょいですねぇ」

ジ「(まあおかげで今朝から首が筋肉痛だけどな)」

蒼「それでジュンくん、わかったことって?」

ジ「蒼星石が巨大化したことだ。僕なりの解釈なんだけど・・・」

~説明中~

蒼「僕が・・・アリス?」

翠「どどどどうしてですか!?」

ジ「ひとまず、槐の店に行ってみよう」

42: 2009/06/27(土) 00:04:43.17 ID:tPvFjiOe0
ガチャ

白「いらっしゃいませ!おや、桜田くんじゃないか」

ジ「どうも・・・」

白「隣の子は柏葉・・・さんじゃないね?彼女?」

蒼「かっ彼女じゃない・・・です・・・」

白「そ、そっか!ヘンなこと聞いちゃったね!」

白「(どっかで見たことある顔だな・・・)」

ジ「槐さんは?」

白「奥の工房にいるよ。ちょっと待っててね」

44: 2009/06/27(土) 00:08:29.82 ID:tPvFjiOe0
蒼「ぼ、僕はジュンくんの彼女じゃないです!」

ジ「誰もいないよ。そしてそれを連呼されるとちょっと悲しいから」

白「おまたせ、入っていいよ」

ジ「いくぞ蒼星石」

蒼「う、うん」

白「蒼星石ちゃんか・・・何ィィィィィィ!!!」

ジ「ど、どうしました!?」

白「蒼星石!?うそでしょ!?なんで大きくなってんの!?」

蒼「え?え?僕を知ってるの?」

白「ちょっ・・・聞いてないよローゼン!!」

ジ「ローゼン?」

蒼「お父様?」

49: 2009/06/27(土) 00:14:55.35 ID:tPvFjiOe0
白「あ・・・」

ジ「どういうことですか白崎さん」

蒼「なんでお父様の名前を・・・」

白「・・・」

ラ「よくぞ見破った、若きマエストロよ」

ジ「いや勝手にしゃべっただけだろ」

蒼「ラプラスの魔・・・!」

ラ「しかしこうも予想外なことが起きるとは思わなかったぞ」

蒼「予想外?」

ラ「いくらローゼンの作り出した人形とはいえ、本体が大きくなるなんて仕組みはないはず」

ジ「あんた、ローゼンと知り合いなのか?」

ラ「ローちゃんラッちゃんとい言い合う仲」

ジ「嘘だろ」

ラ「嘘ですすいません」

55: 2009/06/27(土) 00:23:04.48 ID:tPvFjiOe0
ラ「まさかローゼン、アレを用いたのか・・・いやまさかな・・・」

ジ「おまえ、何か知ってるのか?」

ラ「・・・少年、私はただの傍観者に過ぎない。傍観者は黙って戦いを見続けるのみ」

蒼「嘘だ!僕らの邪魔をさんざんしてきたくせに!」

ラ「少年、これだけは伝えておくぞ。そのドールはいずれ大事な何かを引き裂く」

ジ「なんだって・・・?」

ラ「その意味を知るとき、すでにアリスゲームの決着は付いていることだろう」

蒼「アリスゲームに・・・決着!?」

ラ「さらば。私は君たちの戦いを楽しみにしているよ」

フッ

ジ「き、消えた・・・」

57: 2009/06/27(土) 00:27:04.12 ID:tPvFjiOe0
蒼「ラプラスの魔・・・いったい何を考えているんだ・・・」

ジ「と、とにかく槐に聞いてみよう。もしかしたら何か知ってるかもしれない」

蒼「そうだね・・・」

ガララ・・・

薔「・・・!」

槐「来るのが遅かったね・・・」

ジ「あなたのお店の店員に絡まれましてね」

槐「・・・そうか、それはすまなかった」

ジ「あなたにお聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」

槐「手短に頼むよ」

63: 2009/06/27(土) 00:35:18.52 ID:tPvFjiOe0
カシャン・・・!

槐「馬鹿な・・・」

ジ「知っていることを教えてください」

槐「・・・こんな技術が現実にあるとは・・・いや、ローゼンなら出来たかもしれない」

蒼「お父様はいったい何を施したんですか僕に!?」

槐「蒼星石、君だけじゃない、他のドールにも同じことが起きうる可能性がある」

蒼「なんだって!?」

槐「人間は成長する。それは当たり前のことだ。でも人工的に作り出したものはそうそう成長しない」

槐「ドールも同じだ。一度作ればその美しさはずっと保たれるかもしれない。だがそれも保存の仕方次第だ」

槐「雨風にさらせばすぐに廃れる。大事にケースにしまえば長生きする」

槐「だが、ローゼンメイデンは戦う人形だ。美しさがずっと保たれることはまず不可能だろう」

槐「ローゼンは錬金術を応用した、戦いながらも美しさを保てるドール作りの研究をしていた」

槐「そして、蒼星石の今を見てわかったが、どうやら完成させていたみたいだ」

66: 2009/06/27(土) 00:40:35.45 ID:tPvFjiOe0
ジ「どんな技術を研究していたんですか?」

槐「人には寿命がある」

槐「この世に生を受け、学び、働き、遊び、そして人生を全うする」

槐「ごく普通のことだ。動物も、虫もそうだ」

槐「君も、思ったことがあるんじゃないか?『不老不氏になりたい』と」

ジ「不老不氏・・・」

槐「アリスゲームについては話を聞いただろう。決着が付くまで戦いが続くと」

槐「その間ローゼンメイデンは何日も、何年も、何十年も何百年も戦い続けた」

槐「いわば不老不氏に近いと思わないかい?」

ジ「!!」

69: 2009/06/27(土) 00:45:22.24 ID:tPvFjiOe0
ジ「じゃあローゼンは不老不氏の研究を!?」

槐「いや、違う。その逆だ」

蒼「え?」

槐「ローゼンは人間のように、歳を取り、生物と同じような生き方をすることこそ、美しいと考えた」

槐「つまりは、ローゼンは『寿命のある人形』の研究をしていたんだよ」

ジ「そ、それじゃ最初の話と全く違うじゃないですか!」

槐「ローゼンは普通に廃れていく人形は美しいと思っていない。無論私もだ」

槐「言っただろう、生物と同じような生き様こそが美しいと」

蒼「・・・つ、つまり、人間に近づくような技術を僕たちに・・・?」

槐「そのようだ。蒼星石、君がこうして大きくなったのも、人間に近くなった所以だろう」

蒼「そ、そんな・・・!」

71: 2009/06/27(土) 00:50:13.22 ID:tPvFjiOe0
ジ「それじゃ、他のローゼンメイデンにも同じようなことが・・・」

槐「起きるかもしれない。しかしなんとも言えない」

槐「いったいなぜ今になって成長をし始めたのか、きっかけがあるはずだ」

蒼「きっかけ・・・」

ジ「思い当たる節は?」

蒼「・・・夢の世界で、お父様に会ったんだ・・・」

槐「ローゼンにか?」

ジ「何か言ったのか?」

蒼「・・・」

74: 2009/06/27(土) 00:57:58.57 ID:tPvFjiOe0
蒼『お父様!どうたのですか!?』

ロ『蒼星石、今、楽しいかい?』

蒼『今?』

ロ『そう、今。おまえ達姉妹と一緒に遊んだり、ミーディアムと過ごしたりするのは、楽しいかい?』

蒼『・・・はい』

ロ『本来おまえ達は今頃アリスゲームをして、アリスを目指している途中のはず』

ロ『なぜ、戦わないのだ?』

蒼『そ、それは・・・!』

ロ『アリスになりたくないのか?』

蒼『なりたい・・・なりたいですけど、僕は姉妹を傷つけることはできません・・・』

79: 2009/06/27(土) 01:01:27.44 ID:tPvFjiOe0
ロ『最初の頃は誰よりも勇んでいたじゃないか』

蒼『はい・・・』

ロ『蒼星石なら誰よりもアリスになれる素質がある』

蒼『で、でも・・・僕はやっぱり、翠星石たちを倒してまで、アリスにはなれない・・・』

ロ『・・・そうか、やはり、私は間違っていたのか・・・』

蒼『お父様?』

ロ『蒼星石、今の仲間達とこれからもともにいたいか?』

蒼『・・・はい!』

ロ『そうか、それがおまえの望みか・・・』

蒼『お父様?どちらへ行かれるのですか?お父様!!』

83: 2009/06/27(土) 01:07:53.97 ID:tPvFjiOe0
蒼「これが、僕が見た夢・・・」

ジ「いつのことだ?」

蒼「一昨日・・・僕の体が大きくなる前の日だよ」

槐「それがきっかけのようだな」

ジ「いつまでも一緒にいたいっていうのに、なんぜ寿命なんか!」

槐「・・・先に旅立つためだろう」

ジ「え?」

槐「ミーディアムが氏んでしまえば、残ったドールが悲しむだろう」

槐「だからあえて、ドールが先に氏んで、あとからミーディアムが追いかける」

槐「まあ、あくまで私の推測だがな・・・」

ジ「そ、そんなわけないだろ!それだとしたら・・・」

蒼「・・・」

ジ「蒼星石のミーディアムは高齢なんだ。だから僕が大人になるより先に・・・」

蒼「やめてよジュンくん!」

ジ「!!・・・ごめん・・・」

88: 2009/06/27(土) 01:12:11.17 ID:tPvFjiOe0
槐「しかし、蒼星石の成長が始まったのは確かだろう」

ジ「どうすれば・・・」

槐「・・・それはわからない」

槐「ただ一つ言えるならば、私は寿命を作ることが幸せではないと思っている」

ジ「・・・槐さん」

槐「私はこれ以上何も言うことはない」

蒼「僕は・・・このまま・・・」

ガタガタ・・・

ジ「蒼星石・・・」

93: 2009/06/27(土) 01:19:23.31 ID:NFjA4mBn0
紅「・・・そう、お父様が、寿命を・・・」

翠「翠星石たちにも、あるですか?」

ジ「槐の推測だと、あるだろうって言ってたけど・・・」

雛「うー・・・ヒナ怖いの」

紅「でも、お父様にしてはおかしな言動な気がするわ」

ジ「おかしい?」

紅「お父様の考えも理解できるわ。でも、なぜ蒼星石だけなの?」

蒼「それは、僕の夢にでてきたから・・・」

紅「戦いを望んでいないのは、私や翠星石、雛苺もそうよ。蒼星石がアリスゲームを破棄したときより前から、私たちはアリスゲームをしていなかったわ」

紅「ならば、最初に聞いてくるのは私たちが道理じゃなくて?」

ジ「ん・・・んん・・・確かに・・・」

95: 2009/06/27(土) 01:24:31.03 ID:NFjA4mBn0
紅「もう一つ、蒼星石に症状が現れた原因があるはずよ」

翠「原因・・・」

蒼「・・・思い当たる節が無いよ」

ジ「蒼星石にあって、他のドールに無いもの・・・?」

雛「・・・あ」

紅「どうしたの雛苺」

雛「うゆー・・・蒼星石、ごめんね?」

蒼「ど、どうしたんだい?」

雛「ジュンが言ってた、『蒼星石のミーディアム』のおじいちゃんのことなのよ」

蒼「マスターが、どうしたんだい?」

97: 2009/06/27(土) 01:27:52.77 ID:NFjA4mBn0
雛「その、蒼星石のミーディアムが一番おじいちゃんなの」

雛「だから、一番先に氏んじゃうかもしれないのよ」

雛「ジュンは、まだ氏なないの」

蒼「・・・うん」

雛「だからね、えっとね・・・」

紅「・・・つまり、私たちドールの中で蒼星石のように成長して、一番氏期が近いのが蒼星石、って言いたいのね?」

雛「うん、そうなの!」

翠「それがなんの関係があるっていうんですか?」

雛「蒼星石が氏んじゃったら、どうなるの?」

98: 2009/06/27(土) 01:30:29.51 ID:NFjA4mBn0
蒼「どうなるって・・・」

紅「人間は氏ぬと、魂・・・私たちでいうローザミスティカが無くなるの」

雛「だから、蒼星石の体は残るの」

蒼「うん・・・?」

紅「・・・!!」

ガタッ!

翠「おわ!!し、真紅いきなり立ち上がってどうしたんですか!?」

紅「・・・雛苺、あなたの言いたいことがわかったわ」

蒼「何か、わかったのかい?」

紅「雪華綺晶ね」

99: 2009/06/27(土) 01:35:49.13 ID:NFjA4mBn0
翠「雪華綺晶・・・?なんであいつが?」

蒼「ま、まさか僕の体を!!」

紅「ええ、一度経験のある雛苺だからわかったのね」

雛「うん・・・」

ジ「歳を取らせて、魂を成仏させて、その体を乗っ取ろうってことか」

翠「で、でもそんなわざわざ面倒なことをしなくても・・・」

紅「蒼星石の戦闘能力の高さは知ってるでしょ?雪華綺晶はそれをねらっているのだわ」

ジ「気の長いことかもしれないが・・・ローゼンを語って蒼星石の心を動かした訳か」

蒼「そんな・・・」

紅「蒼星石、落ち込んでいる場合じゃないのだわ。あなたのミーディアムが危ない!」

100: 2009/06/27(土) 01:39:17.88 ID:NFjA4mBn0
~芝崎時計店~

元「・・・」

カチャカチャ・・・かちっ

元「ふぅ・・・」

キュゥゥゥゥン・・・

雪「・・・」

スッ

雪「・・・」ニタァ

蒼「マスター!!危ない!!」

バッ!! ガシャアァァァン!!

元「な!?そ、蒼星石!?」

104: 2009/06/27(土) 01:43:02.60 ID:NFjA4mBn0
雪「・・・」

蒼「くぅっ・・・」ズキッ

元「蒼星石か!?な、何事だ?」

蒼「マスターは僕の後ろに!」

雪「力も使えなくなった体でどうするつもりなのです?」

蒼「・・・それでも、僕はマスターを守る!!」

雪「あまり邪魔をしないでください。せっかくの身体が傷ついてしまいます」

蒼「やっぱり、君は僕の身体を・・・」

雪「気づかれてしまっては仕方がありません。あなたのミーディアムには早く氏んでもらわねばいけません」

蒼「そうはさせない!!」

紅「蒼星石気をつけて!彼女は鏡面体があればどこへでも出現できるのよ!」

106: 2009/06/27(土) 01:45:38.84 ID:NFjA4mBn0
蒼「真紅、今僕は鏡の中へ入ることは出来ない!」

紅「わかっているわ!雪華綺晶は私たちに任せて、あなたはケガの手当をしなさい!」

蒼「こ、これぐらい平気だよ」

紅「治癒の力も使えないのだから、無茶はしないで!」

蒼「・・・ごめん、真紅・・・頼むよ」

紅「任せなさい」

キュゥゥゥゥン・・・

元「蒼星石・・・ケガ、大丈夫か?」

蒼「大丈夫・・・じゃないかな・・・」

107: 2009/06/27(土) 01:49:47.95 ID:NFjA4mBn0
雪「なぜ邪魔をするのです」

紅「黙りなさい!お父様のふりをしてだましたあなたは許せないわ!」

雪「アリスゲームをしないのが悪いのです」

ヒュッ!

紅「私たちに寿命はいらないわ!たとえミーディアムが倒れたとしても、絆はいつまでもつながっているものよ!」

雪「強がりを・・・」

ドゴォン!!

翠「真紅!助太刀に来たですぅ!」

雪「さあ、始めましょうアリスゲームを」

108: 2009/06/27(土) 01:54:24.70 ID:NFjA4mBn0
蒼「・・・真紅達が戦っている・・・助けないと・・・」

ズキッ

蒼「くっ・・・人ってこんな痛みと闘っているのか・・・僕たちとは大違いだ・・・」

蒼「生き物って、僕たちが思っているよりも強いものなのかもしれない・・・」

元「蒼星石、ワシは、おまえに先立たれるほうが悲しいよ」

蒼「マスター・・・」

元「それはおまえがワシらの子供のように思っているからじゃよ」

元「誰も、親より先に子に氏んで欲しいなんて思う親はおらんよ」

元「おまえの本当の父さんも、そう思っておるよ」

元「生あるものはいつか氏がくる。それは自然の摂理であって、当然のことなんじゃよ」

109: 2009/06/27(土) 01:58:03.14 ID:NFjA4mBn0
元「ワシは、蒼星石を本当の子供のように思っている」

元「じゃから、ワシよりも一生懸命、生きてほしいんじゃ」

蒼「お、おじいさん・・・!」

元「命を自由に延ばしたり縮めたりしたらいかん。きっと、おまえのお父さんが直してくれるよ」

蒼「・・・ありがとう、おじいさん・・・」

元「その代わり、直してもらったらしっかり親孝行するんじゃぞ」

蒼「はい!!」

キィィィィィン・・・・!!

蒼「!!か、鏡が・・・!」

111: 2009/06/27(土) 02:00:32.85 ID:NFjA4mBn0
?『蒼星石、こちらに飛び込むんだ』

蒼「そ、その声は・・・お父様!!」

ロ『私が目を離した好きに、大変なことになったようだ・・・申し訳ない』

元「あんたが、蒼星石のお父さんかい?蒼星石を、頼みますぞ」

ロ『もちろん、私に責任がある。さぁ、蒼星石こっちにおいで・・・』

元「さ、これからが忙しくなるぞい」

蒼「真紅、待っててくれよ!」

113: 2009/06/27(土) 02:03:30.62 ID:NFjA4mBn0
紅「くっ・・・!」

雪「もう終わりですか」

翠「や、やっぱこいつ強えーですぅ・・・」

雪「あなたたちと遊んでいる暇はありません。手早く片付けさせてもらいます」

蒼『そうはさせないよ!!』

雪「何・・・」

ガキィィィン!!!

紅「蒼星石!!」

蒼「遅くなってごめんね!」

翠「も、元に戻ったですか!?」

蒼「さぁ雪華綺晶!お父様に偽った罪、償ってもらうよ!!」

116: 2009/06/27(土) 02:07:52.79 ID:NFjA4mBn0
雪「戦力的にこちらの方が不利・・・作戦は失敗・・・」

スッ・・・

翠「あ!待つですぅ!」

紅「待ちなさい翠星石、彼女はしばらくは攻撃をしてくることはないはずよ」

蒼「追いかけるのはよそう・・・」

紅「ふぅ・・・よかったわね、蒼星石」

蒼「うん、心配かけてごめんね」

翠「やっぱり小さい方が蒼星石って感じがするですぅ」

紅「それにしても蒼星石、どうやって戻ったの?」

蒼「うん、本物のお父様に直してもらったんだ」

紅「本物・・・ね」

119: 2009/06/27(土) 02:11:29.92 ID:NFjA4mBn0
ジ「お、元に戻ったのか」

蒼「うん、今まで迷惑をかけてごめんね?」

ジ「気にするな。迷惑なんていつもこいつらからもらってるから」

翠「ムキー!!どういう意味ですかジュン!?」

蒼「あはは・・・あ、そうだジュンくん、肩たたきしようか?」

ジ「肩たたき?別に僕肩こってないぞ?というか別にお礼なんていいぞ」

蒼「いやそうじゃなくてさ、人間になったとき、いろいろと肩が疲れたから」

ジ「あーそれは胸が大きかったからだろう」

紅「堂々とセクハラ発言するんじゃない!」

ビシィ!!

ジ「痛ぇ!!」

127: 2009/06/27(土) 02:18:48.77 ID:NFjA4mBn0
翠「まーたそうやって手をだすなんて、変Oにもほどがあるですぅ!」

ジ「何を!男はいつもロマンを求める生き物だ!」

翠「意味わかんねーです!!」

紅「蒼星石、人間になってみて、どうだった?」

蒼「・・・僕らよりもずっと強い心をもっていたような気がするよ」

紅「そう・・・ちょっとあこがれるかもしれないわね」

蒼「そう思っていると、僕みたいにやられちゃうよ?」

紅「ふふ、気をつけなくちゃね」

翠「うええーん!!蒼星石ぃ!ジュンがいじめるですぅ!」

蒼「あーはいはい、何があったのかな?」

131: 2009/06/27(土) 02:22:55.36 ID:NFjA4mBn0
蒼『お父様へ。少しの間だけど人間になって、お父様がどんな存在か少しだけわかった気がしました』

蒼『ドールと人間との絆にはない、強さや誇りがありました』

蒼『雪華綺晶の策略とはいえ、少し勉強させてもらった気がします』

蒼『僕たちはこれからもアリスを求めて戦い続けるでしょう』

蒼『寿命がない分、命と接することが多くなり、悲しみを多く抱くでしょう』

蒼『でも僕たちはそれを克服して、将来へと伝えていかなければなりません』

蒼『その心の強さを手に入れたとき、僕たちはアリスになれるかもしれません』


─ 完 ─

引用: 蒼星石「薔薇乙女じゃなくなっちゃった・・・」