91: 2018/02/10(土) 20:06:13.49 ID:erjAFXDH0
異世界人な楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリーズ:○○な楓さん

前回:【モバマス】ネカフェ生活満喫中な楓さん


93: 2018/02/10(土) 20:12:07.94 ID:erjAFXDH0
仕事終わりの帰り道、いつもの公園を通り過ぎて

通り過ぎ……ることができなかった

ベンチに横たわる女性が目に入った、こんな時間に女性がだ

もしかして病気か何かに巻き込まれてしまったのかもしれない、そう思った俺は

「すみません、どうかなさいました?」

俺の声をきくやいなや、女性がむくりと起き上がり

「―――、―――」

聞いたことのない言葉で俺に詰め寄った
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 004 高垣楓
94: 2018/02/10(土) 20:21:17.11 ID:erjAFXDH0
「―――、―――……」

何やら必氏に伝えようとしているみたいだけど

「――、――――!」

悲しいかな、俺にはこの女性が何を言っているかがさっぱりわからない

「――……」

女性の言葉の勢いがなくなっていき、しまいには顔を抑えて泣き出してしまった

「あ、あの……」

もう一度、この女性に声をかけようとすると

ぐうぅ……と大きな音が女性のほうから聞こえた

95: 2018/02/10(土) 20:31:58.83 ID:erjAFXDH0
女性はお腹を抑えながら、俺を見上げる

その表情は恥ずかしさと不安さが入り混じったような、そんな気がした

「もしかして、お腹すいてんの?」

俺が女性を真似して、お腹を抑えながら聞いてみる

女性は俺のジェスチャーで何か察したのだろう、首をぶんぶんと縦に振った

お腹がいっぱいになれば落ち着くし、警戒心も少しは溶けるかもしれない

しかしまぁ、この女性は一体何者なのだろうか

容姿と恰好は日本人みたいだけど、言葉が根本的に違うみたいだ

96: 2018/02/10(土) 20:44:03.28 ID:erjAFXDH0
「おー、すごい食べっぷりだ」

公園に一番近かったのが、居酒屋チェーンの店だったのでそこに入る

それから、白飯とおかずを何品か頼んで様子を見る予定だった……のだが

「――――♪」

空になった茶碗を掲げて女性が何か喋った

これはおかわりってことでいいのだろうか? メニューの白飯を見せるとこくりと頷いた

白飯を頼むついでにおかずも追加で頼んでおくか

唐揚げと卵焼き、これが外れたらショックだが、きっと大丈夫なはずだ

97: 2018/02/10(土) 20:52:49.82 ID:erjAFXDH0
フォークを器用に使い、ほっけの身を上手に食べている

……女性の食べっぷりを見ていると、俺も何だか腹が減ってきた

「すみませーん! 生中と揚げ出し豆腐、それと枝豆ください」

はーいと威勢の良い声が聞こえ、しばらくすると俺が頼んだものが運ばれてきた

「―――?」

フォークの動きをぴたりと止めて、女性が俺の生中のグラスを見つめる

どうやら、女性は黄金色の飲み物が気になるようだ


98: 2018/02/10(土) 21:01:49.63 ID:erjAFXDH0
「飲んでみる?」

グラスを差し出すと、女性は両手でそれを掴み

「―――」

何かを言った後、グラスに口をつけて傾けた

女性の喉がビールを飲み干していくたびにこくこくと動く

おいおい……このままじゃ全部飲み干してしまうんじゃ

「―――!」

女性は空になったグラスをテーブルへ、置くとふぅ、と息を吐いた

99: 2018/02/10(土) 21:05:58.37 ID:erjAFXDH0
「―――、―――」

桜色のなった頬に手を添えて、何か呟いている

「……もう一杯飲む?」

俺がグラスを見せると、女性が頷くと思ったが、女性のきれいな指がメニューにある日本酒を指した

へぇ、本能的にこれも酒だと察したのだろうか

こんな美人さんと酒を飲む機会もないし、今夜は飲んじまうか!

俺は冷とおちょこを二つ頼み、女性にお酌のやり方を教えることにした

100: 2018/02/10(土) 21:28:10.93 ID:erjAFXDH0
ジェスチャーだけだが、意外と何とかなった

ぱっと見は初めてのお酌とは思われまい

「おお、ありがとう。じゃあお返し」

俺のおちょこに丁度いいくらいの量が注がれて、俺がお酌を返す番だ

「おっと……これくらいかな」

「―――」

女性が何か言った後にほほ笑んだ

……やっぱり美人さんだよなぁ、放っておくのも勿体なし……

101: 2018/02/10(土) 21:38:10.36 ID:erjAFXDH0
おちょこを傾け、日本酒を飲んでいる女性に考えを巡らせる

さて、俺はこの女性に恩を売った形になるんだけど

ほうっと息を吐く女性がこちらの視線に気が付いて、首を傾げた

何分言葉がわからないのがネックだよな、変に怪しまれて抵抗されたら俺の身も危ない

これは社会的な意味でだけど。んー、スカウトって形でうちで保護できれば一番いいよなぁ

「ねぇ、うちで保護されてみない?」

試しに行ってみるが、女性は首を傾げたままだ

はぁ……こりゃジェスチャーじゃ説明できないよ

102: 2018/02/10(土) 21:51:16.26 ID:erjAFXDH0
二人でお銚子を四本ほど開けたころ

明日のこともあるし、そろそろお開きにしようかなと思う

最後まで良い考えが浮かばなかったけれど、何とかしてみるしかない

俺はお腹いっぱいであることと、建物で眠ることを何とか体で表現してみる

初めは「なにしてんだこいつ?」みたいな細い目で俺を見ていたが

理解してくれたのか、こくこくと頷いてくれた

こりゃ、もしかしたらもしかするかもしれない

お会計が済んだ俺たちは店から出て、向かい合う

103: 2018/02/10(土) 21:56:53.73 ID:erjAFXDH0
「事務所に行って、仮眠室を使ってもらうよ。オッケー?」

再びジェスチャーをして、これからの行動を教える

「俺は危険な奴じゃないし、他の人間も危険じゃない」

これはジェスチャーできなかったら、とりあえず真剣な面持ちと声で

「嫌なことやわからないことがあったらすぐに教えて。あと、できれば叫ぶのはなしで」

ターザンみたいなジェスチャーで伝わったかな……

「じゃあ行こうか」

事務所の方向へと振り向き、いざという時にスーツの袖をきゅっと摘ままれた

104: 2018/02/10(土) 22:00:44.62 ID:erjAFXDH0
「どうしたの?」

女性は俺のスーツを掴んだまま、申し訳なさそうな顔をしている

「―――」

もじもじとした仕草と、上目遣いがずるい

「―――、――――」

そして、俺に深々とお辞儀をした

……そうか、これはきっと感謝を表しているんだろう

そっかそっか、俺にありがとうって伝いたいんだ

「大丈夫、困ったときはお互い様だから」

お互い様どころか、アイドルの卵が手に入れば御の字だ

「さ、外は寒いから早く行こう」

俺の言葉に女性がにこりとほほ笑み、スーツを掴んだまま後を着いてくる




おしまい

105: 2018/02/10(土) 22:01:24.60 ID:erjAFXDH0
読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです


引用: 【モバマス】楓さんで安価 二軒目