92: 2015/09/26(土) 21:01:09.55 ID:vOOfILff0
こんばんは、>>1です。


  それでは、投下していきます。

93: 2015/09/26(土) 21:07:36.99 ID:vOOfILff0
 全国各地の提督には、それぞれ階級が与えられている。

 階級は、上から順番に元帥・大将・中将・少将・大佐・中佐・新米中佐・少佐・中堅少佐・新米少佐、である。

 これらの階級は、全国の提督及び鎮守府の戦果を統計し、それ相応の階級が与えられる。

 そしてその戦果を統計するのは、当然ながら海軍総司令部の仕事なのである。

 だが、前の司令長官の戯言によって、戦果を統計する部署は解体されてしまった。

 つまり、今戦果を統計しているのは、艦娘なのだ。
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
94: 2015/09/26(土) 21:19:08.76 ID:vOOfILff0
【ワーカホリック艦娘】

 ―11時過ぎ、司令長官執務室―

司令長官「はー……」

提督「どうかしましたか?」

暁「溜息なんてすると、幸せが逃げちゃうわよ?」

司令長官「あ、黎明君に暁ちゃん…。いやね、ちょっと頭の痛い意見文が届いたんだよ」

提督「は?」

暁「どういう意味?司令長官頭痛なの?」

司令長官「ま、読んでみればわかるって」スッ

提督「では、失礼して…」チラッ

暁「?」チラッ


本文要約:この前まで大将だったのに何で今日は少将になっているんだ。お前ら頭おかしい、金よこせ。        深浦第鉢拾鎮守府提督』


提督&暁「」

司令長官「こういうステレオタイプのバカな提督って、いるもんだねぇ」

提督「……暁さん、霧島さんか鳥海さんを呼んできてください。」

暁「霧島先輩か鳥海先輩?」

司令長官「へ?あの2人を?」

提督「それとついでに、第鉢拾鎮守府のデータも持ってきて、と伝えてください」

暁「第鉢鎮守府のデータね、分かったわ!」タタタ

司令長官「ああ、データ課の2人を呼んだのね」

95: 2015/09/26(土) 21:28:46.72 ID:vOOfILff0
 ―数分後、司令長官執務室―

暁「霧島さんも鳥海さんも、手が離せないからって、部屋の前でデータ用紙だけ渡してくれたわ」

提督「やはりあそこは多忙ですからねぇ…」

暁「はい、データ用紙よ」スッ

提督「ありがとうございます。では…」チラッ

司令長官「どう?」

提督「2日前あたりから、深海棲艦の撃破記録が下がっていますね。大方、階級が上がったからと驕り、出撃をしなくなったのでしょう。要するに、

   ただの自業自得です」

司令長官「ああ、やっぱりね」

提督「…ところで、暁さん。あの2人の様子、どうでしたか?」

暁「え?うーん……なんか、少し疲れている感じだったわ。その紙を渡してきた時も…」


 ―数分前・データ課前―

霧島『はい…どうぞ…』スッ

暁『あ、あの…大丈夫?』

霧島『だ、大丈夫大丈夫…。ですから、心配しないで』フルフル


暁「なんか、息が切れてて、手が震えていたけど…」

提督「何でそれを疑問に思わないんですか」

司令長官「データ課って、確か霧島君と鳥海君だけだったっけ?」

提督「はい、データ処理が元々あの2人は得意だったので…それと、彼女たちが自ら志願したので」

暁「そう言えば、私データ課の部屋には入った事が無かったわ…」

提督「では、今から行ってみますか?」

暁「え?いいの?」

提督「私個人として、2人の様子が心配ですので」

司令長官「あの2人…大丈夫かねぇ…」

96: 2015/09/26(土) 21:37:06.79 ID:vOOfILff0
 ―データ課―

提督「霧島さん、鳥海さん。大丈夫ですか?」コンコン

霧島『し、司令…!?ちょ、ちょっと待ってください…!』

鳥海『え、提督!?今、ちょっと大変な事に…!』

提督「何か異常が起こったんですか―」

ガチャッ


どざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ(ドアから大量の書類が流れ出る音)


提督&暁「」

霧島「ああ…片付けようと思ったのに…」

提督「…まさか、部屋の中をきれいにする暇もないとは…。すみません、片付けるの手伝います」

鳥海「い、いえ…大丈夫です。この書類、全部捨てる予定のものでしたので…」

暁「こ、こんにちは…」

霧島「あら、暁さん。また何か御用ですか?」

暁「い、いえ…ちょっと提督が様子を見に行くって言ったから、ついてきただけで…」

霧島「様子?」

提督「先ほどデータを受け取った時、霧島さんの様子がおかしいという事を聞いたのですが…」

霧島「おかしい…?霧島がですか?」

提督「目の隈がひどいですね…もう何連続徹夜ですか」

霧島「そうですね…もう3~4日は徹夜付けですね…」

暁「寝てくださいよ…」

霧島「徹夜も度を超すと、かえって眠気が無くなっちゃうんですよ」

提督「寝てください」

97: 2015/09/26(土) 21:44:15.23 ID:vOOfILff0
鳥海「霧島さんは私よりも働きすぎです。私なんて、2~3日徹夜ですよ」

提督「貴女も休んでください」

暁「ねえ、霧島さん、鳥海さん。部屋の中見せてもらってもいい?」

霧島「へ?ああ、別に構いませんけど…」

鳥海「散らかってますよ?この書類の山から分かる通り…」

暁「………」チラッ

暁「…わっ、机に書類が山積み…」

提督「霧島さんと鳥海さんは、私が司令長官補佐官となる前にも戦果や装備系のデータを統計していましたので、ここでも同じような仕事を、

   してもらっているんです」

鳥海「データとかをまとめるの、好きなんですよね~」

霧島「私は、グラフや表を作るのに魅力を感じて…」

提督「それ、明らかに女性がする会話の内容じゃないですよね」

暁「…あれ?パソコンが無い…」

提督「パソコンは、コンピューターウイルスやフリーズした際の後始末が面倒だからと言う理由で、前の司令長官が廃止しました」

暁「ホントひどいわね…」

霧島「へ?前の司令長官?」

鳥海「嫌ですね~。新日本海軍の司令長官は今の司令長官だけですよね~」

暁「へ?え、ええ~…?」

提督「ああ、心配しないでください。一部の艦娘の自己暗示です」

暁「そ、そうなんだ…。そ、それじゃあこのグラフや表は…」

霧島「私の手書きですよ?」

鳥海「それと、各鎮守府へ送る戦果データも、手書きのものをコピーしたものです」

暁「す、すごい!」

98: 2015/09/26(土) 21:51:55.86 ID:vOOfILff0
提督「まあ、膨大な量の書類を手書きで作成しているので、彼女たちはよく、腱鞘炎になってしまうんです」

暁「腱鞘炎って……艦娘がなることってほとんどないんじゃないかしら…」

鳥海「いえ、でも最近は腱鞘炎になることも少なくなって…」

霧島「それよりも徹夜による睡眠不足を何とかしないとって思うようになって…」

提督「ちゃんと睡眠はとっているんですか?」

霧島「とっていますよ?ちゃんと3時間」

鳥海「あ、すみません霧島さん。私は少し長めの3時間半…」

提督「寝てください。誰か、他の方に代役を頼んで休めばよろしいのでは?」

霧島「まあ、そうする事もたまにあるんですけど…」

鳥海「皆さん、こういったデスクワークにはあまり慣れてないらしくて、引き継ぐ際は大変なんですよね…」

提督「もう少し、皆さんにデータ処理能力を持ってもらう必要がありますね…」

暁「ね、ねぇ…司令官、ちょっと気づいたんだけど…」

提督「はい?」

暁「霧島さんと鳥海さんって、出撃とかしてるの?」

提督「してますよ?彼女たちも艦娘ですので」

暁「よ、よかった…」

提督「ですが、彼女たちが睡眠不足で元気な際しか出撃させていませんし、無傷で帰ってくることはほとんどありません」

暁「だめじゃない!」

霧島「いえ、別に疲れてとかじゃないんです。考え事をしてしまって…」

鳥海「ええ、感じの‶易‶を上手く書く方法を模索したりして…」

暁「出撃中くらいは仕事の話を忘れてよ!あ、出撃も艦娘の仕事か…あーん、もうわかんない!」

霧島「あれ?私達って、出撃の息抜きにデータ処理してるんでしたっけ?」

鳥海「へ?データ処理の息抜きに出撃してるのでは…?」

提督「ああ、どうやらもう2人は手遅れらしい」

99: 2015/09/26(土) 22:04:56.67 ID:vOOfILff0
提督「とにかく、どうしようもなく疲れているのでしたら、相談をしてください。私は貴女たちの上司なのですから」

霧島「そうですね。では、今度からそうします」

鳥海「暁ちゃん、また来たくなったら来てね?」

暁「あ、うん…そうするわ」

パタン

提督「思ったより、ひどいですね」

暁「そうね…あの2人って、結構真面目だと思ったのに…」

提督「あの2人の言う通り、データ処理に長けている艦娘は少ないんです。ですので、あの2人の代わりとなれる艦娘を見つけるのが難しくて、

   2人が休めないんです。各鎮守府の戦況データは、午前3時と午後3時に妖精さんネットワークを通して、ここに報告されますので…。おそらく、

   彼女たちは朝早くから作業を始めて、夜遅くまでデータ処理をしている…」

暁「そう言えば、あの2人を見たのって、朝礼の時ぐらいしか…」

提督「流石に目も当てられませんので、強制休暇を十数日ほど与えていますけど」

暁「あ、さすがに休みはあげてるのね…」

提督「当たり前じゃないですか。ブラック鎮守府じゃないんですから」

暁「…それは別として、霧島さんと鳥海さんって、ちゃんとご飯食べてるのかしら…」

提督「彼女たちの部屋のゴミ箱、栄養ドリンクやジェダーウインダーインゼリーが詰め込まれていましたし、食事もまともに取れていないようです…」

暁「もう、パソコンを買うしかないんじゃないのかしら?そうすれば、少しは負担も減ると思うし…」

提督「いえ、私もそうしようと思ったんですが、彼女たちが『字を書いていないと気が済まない』と言ってきたので、使わなくなったんです」

暁「ワーカホリックも行きすぎな感じが…」

提督「……やはり、パソコンを使わせましょうか。後は、鎮守府の皆さんにデータ処理能力を学習してもらうしか…」


 ―12時過ぎ、食堂―

司令長官「そう言えば、第鉢拾鎮守府の話、どうする?」

提督「あの提督の階級は少佐に落とします」

暁「少将から少佐に落とすって…えげつないわね…」

提督「何言ってるんですか。たった一文字、‶将‶と‶佐‶が変わっただけですよ。特に大差ないです」

霧島「司令にもわかっていただけましたか!字の美しさに!」

鳥海「いやー、字の美しさって分かるといいですよねぇ!昨夜なんかそれで霧島さんと話が盛り上がっちゃって寝るのも忘れて―」

提督&暁&司令長官「寝ろ!!!」


【終わり】

100: 2015/09/26(土) 22:14:22.71 ID:vOOfILff0
【キャラクター紹介】

≪霧島≫

金剛型戦艦四番艦。艦娘No.24(改二はNo.152)。ショートヘアと眼鏡が特徴の頼れるお姉さん。データ処理能力に長けており、前の鎮守府でも、

今の鎮守府でも戦況データの集積、統計業務に励んでいる。しかし、最近は睡眠時間を削ってまで作業をしているため、連続徹夜も頻繁にある。

今ではデータ統計の息抜きに出撃、状態になっている。休日の楽しみ方は、睡眠と金剛型姉妹のお茶会。

好きな言葉は『思い立ったが吉日』。



≪鳥海≫

高雄型重巡洋艦四番艦。艦娘No.62(改二は227)。ロングヘアに眼鏡が特徴の知的なお姉さん。霧島と同じくデータ処理が得意で、霧島とコンビで、

戦況データ集計、統計業務を行っている。霧島は先輩にあたるため、霧島に気を遣うような言動をよくする。高雄型の姉たちとのコミュニケーションも、

欠かさない。出撃する頻度は霧島よりは少し多いが、戦闘時は殴る・蹴るなど意外と暴力的。

好きな言葉は『善は急げ』。

106: 2015/09/27(日) 20:23:31.15 ID:sklVRNz50
 ―9時半過ぎ、駆逐艦寮―

江風「白露の姉貴、ちょっと―」

白露「あ、ゴメン。今提督に書類仕事を任されちゃってて…またあとでね!」

江風「なンだよ…ちぇっ」


 ―10時前、食堂近く―

江風「あ、村雨!手伝ってほしい事が―」

村雨「あ、ごめんね…。今、提督からファイルを探すように言われちゃって…悪いけど、他の人を当たって?」

江風「ええ~……」


江風「おかしい…何で普通の艦娘、しかも駆逐艦がこんな書類仕事ばっかり任されてるんだ?」

107: 2015/09/27(日) 20:32:41.24 ID:sklVRNz50
【そもそもの元凶】

江風「こうなったら…直接提督に訊いてやる」


 ―10時半過ぎ、執務室―

江風「白露の姉貴だけじゃねぇ、見た目子供の駆逐艦まで働かせてるなンて、おかしいじゃねぇか!」

提督「……それに関しては、申し訳ございません。この鎮守府は、提督としての仕事に加えて、司令長官補佐官としての仕事も任せられているんです。

   それゆえ、仕事が多いんです」

江風「司令長官補佐官の仕事なンざ、海軍の連中をこっちに流してくりゃいいだろーが!」

提督「それが、今は雇える状況にないのです」

江風「なンだそりゃ、何か理由でもあンのか?」

提督「それは……言えません」

江風「おいおいおい、そりゃねーだろ!」

提督「理由は……すみませんが、話す事ができません」

江風「チッ…曖昧な言い方ばっかりしやがって…ムカつく!」

提督「……………」

江風「…今度はだんまりかよ。とにかく、だ。どンな理由があるにしろ、駆逐艦の子供を働かせるなンて、間違ってる。言っておくが、これは、

   江風が子供だからって理由じゃねぇぞ。白露の姉貴たちも、疲れてるように見える。それでも働かせてるのが気に食わねぇからだ」

提督「…………駆逐艦の方の仕事を、減らす事にします」

江風「あくまで仕事は続けさせるのか。ああ、もういいや。別の奴に話を聞いてもらうしかねーか。邪魔したな」

提督「…………江風さん」

江風「あン?」

提督「…………申し訳ございません」

江風「…フン」

パタン

108: 2015/09/27(日) 20:38:49.81 ID:sklVRNz50
江風「他の奴って言えば…司令長官ぐらいか」


 ―数分後、司令長官執務室―

コンコン

司令長官「ん?誰かな?」

ガチャ

江風「あたしだ、江風だ」

司令長官「おや、江風君。鎮守府には慣れたかな?」

江風「ああ、だいぶ慣れてきたぜ。ただ、あの提督は気に食わねぇ」

司令長官「ん?黎明君が?いや、おかしいなぁ…」

江風「あン?何が?」

司令長官「彼ほど優秀で、気遣いのできる提督は、そういないと思うけど…まあ、ちょっとおかしい行動をする事もあるけど」

江風「あいつが、優秀で気遣いのできる?そりゃ間違ってンぜ」

司令長官「へ?どうして?」

江風「だってあいつ、かくかくしかじかで、これこれうまうまなンだぜ?」

司令長官「……駆逐艦の子たちを働かせる上に、何でそこまでするのか、その理由も教えてくれない、か」

江風「まったくだぜ。おかしいったらありゃしねぇ。労働基準法とかどうなってンのやら」

司令長官「うーん…黎明君がそこまでする理由、か。そりゃ、儂は知ってるけど……」

江風「あ、話してくれねぇか?」

司令長官「え?うーん…まあ、別に話してもいいかな」

江風「おっ、頼むぜ!」

司令長官「ただ、ちょっと話が長くなっちゃうけど、それでもいいかな?」

江風「なんでもいいぜ、あの提督があそこまで皆を働かせる理由がわからねぇ。それがわかればいいんだ」

司令長官「…それじゃ、話そうかな」

109: 2015/09/27(日) 20:53:42.37 ID:sklVRNz50
司令長官「深海棲艦っていう敵が世界中の海に出現は、今から大体7~8年くらい前かな?」

江風「そンな前から?」

司令長官「うん、まだ江風君が生まれていないころだよ。当時、深海棲艦は人類を襲い、我々人類は対抗する手段もないまま、次第に海から駆逐されて…」

江風「お?最初から艦娘がいたってわけじゃないのか?」

司令長官「そうなんだよ。艦娘の存在が発見されたのは、深海棲艦が出現してから大体1年後の事なんだよ。それで、艦娘の存在を最初に発見したのは、

     前の司令長官…海上自衛隊にいた儂の兄なんだ」

江風「えっ、あンたの兄貴も司令長官だったのか?」

司令長官「そう、儂の兄は初代・新日本海軍司令長官だったんだ」

江風「はぇ~…」

司令長官「兄さんは何て言ったっけな…『太平洋を深海棲艦におびえながら航行していたら、海に佇んでいるのを見つけた』って言ってたかなぁ…」

江風「そンな事が…」

司令長官「で、兄さんはその最初の艦娘と、言葉を交わして、仲間にし、深海棲艦を初めて倒したんだ」

江風「おいおい、何を話したのかは分かんねぇのか?」

司令長官「うん…だって兄さん、『こういう事は1人だけ知っていた方がいい』なんてかっこつけて言うから…」

江風「……ん?」

司令長官「それから、深海棲艦が倒されたことで、その最初に出会った艦娘と兄さんは世界で一躍有名になったのさ」

江風「ほぉ~……」

司令長官「それから、その最初に出会った艦娘の名前は‶吹雪‶だという事が分かり、それ以来、各地で同じ艦娘と言う存在が発見された…。そして、

     海上自衛隊とは別に、深海棲艦に対抗する組織…すなわち新日本海軍が設立されたんだ」

江風「あ、海上自衛隊と新日本海軍の違いってのは何なんだ?」

司令長官「海上自衛隊は、この国を守るのが主な任務であり、この国に仇なす因子を取り締まり、駆逐するのが仕事。一方で新日本海軍っていうのは、

     深海棲艦を倒す事が主な任務であり、他には商船の護衛や資源の輸送…そういうのが主な仕事なんだ。要は、国を守るか、敵と戦うか、

     その違いだね」

江風「ふ~ん……」

110: 2015/09/27(日) 21:03:57.66 ID:sklVRNz50
司令長官「新日本海軍が設立されて、最初の司令長官となったのは、当然ながら兄さんだった」

江風「何で当然なんだ?」

司令長官「艦娘と最初にコンタクトを取れたのは兄さんだったから、経験重視で抜擢されたんだ。ただ……」

江風「ただ?」

司令長官「兄さん、急に世界から有名人と褒めちぎられ、司令長官と言うトップにまで上っちゃったから、少し驕るようになったんだ…」

江風「ああ、堕落したのか」

司令長官「ありていに言えばそうだね。それで、調子に乗って自分のいいように海軍を動かすようになっちゃったんだ」

江風「うわ………」


 ―数年前、海軍総司令部・軍令部―

元司令長官(以下剣真)『どうだい、皆の調子は』

職員『そうですねぇ…。やっぱり、情報ソフトに慣れていない方もいますし…』

剣真『そうか……まあ、海上自衛隊からの横流しの人員と、新卒じゃあ力不足だよなぁ…。あ、そうだ』

職員『何か?』

剣真『ソフトを学習させるのとか、面倒くさいだろ?だったら、パソコンを使わせないで手書きにさせればいいじゃん』

職員『………………………………………………………え?』

剣真『うん、いいじゃん。そうすれば、ウィルス対策のソフトをインストールする金もかからなくて済むし、いいじゃん。よし、決定』

職員『』


 ―工廠―

明石『いえいえ、無理ですって!』

提督『いや、やるんだ。じゃなければお前の給料を無しにするぞ』

明石『…分かりましたよ、やりますよ!やればいいんでしょ?』


江風「明石さん、何頼まれたんだ?」

司令長官「外部の業者に施設関係の事を委託するのが面倒だからって、契約を全部破棄して、その委託するはずだった作業を明石さんに任せた」

江風「…ひっでぇな」

司令長官「極めつけに……」

111: 2015/09/27(日) 21:17:37.45 ID:sklVRNz50
 ―司令長官執務室―

剣真『ん~……』

補佐官『どうかなさったのですか?』

剣真『いや、やっぱり俺の収入が少ないなーと思って』

補佐官『……それは仕方のない事では?総司令部の方々への給与もありますし、それに艦娘の方にもそれなりの給料が与えられておりますし…』

剣真『あ、そうだ』

補佐官『?何か?』


剣真『総司令部の奴らに金払うの面倒だし、俺の給料減っちゃうじゃん。だから、皆クビ』


補佐官『…………………………………………………………は?』

剣真『仕事は皆艦娘の連中に任せればいいじゃん。よっし、採用。じゃあ早速やりますかね』


江風「」

司令長官「兄さんはその案を強行。艦娘以外の総司令部職員は全員クビに…。だからまあ、当然ながら皆から総スカンを食らって、兄さんは、

     逃げるように辞職…。今はどこで何してるかもわからない…。いや、生きてるのかもわからない」

江風「ひっでぇな……」

司令長官「兄さんが辞職したのと同時に、なぜか総司令部にいた艦娘達も蒸発…。新日本海軍総司令部は完全に機能を停止したんだ…」

江風「それで、アンタが新しい司令長官になったってか?」

司令長官「その通り。一応、提督としての適性はあったし、元々儂も海軍だったからね。だから、流れるように司令長官になったんだ」

江風「あれ、司令長官は海軍学校卒業してからすぐ司令長官になったのか?」

司令長官「うん?ああ、そうだね」

江風「じゃあ、その時にクビにした奴らを戻せばよかったじゃねぇか」

司令長官「そうしようと思ったんだけど、クビにした人たちは、完全にすねちゃって、戻る気が無かったんだと…。新しい人員を雇おうにも、

     国側は認めなかった…。『一度全員クビにしたというのに、それをすぐに撤回して新たに人を雇うというのは国民に示しがつかない』って、

     認めなかったんだ」

江風「やっぱり、メンツか……」

司令長官「うん…。それで儂が司令長官になった後で儂の補佐官に、戦果も国内最上位クラスだった黎明提督を指名したんだ」

江風「じゃあ……」

司令長官「うん、黎明君もある意味被害者なんだよ。そりゃ、黎明君を指名した儂も悪い事をしたと思ってる。だから、こんな提案をしたんだ」

112: 2015/09/27(日) 21:30:14.83 ID:sklVRNz50
 ―今から約2年前、司令長官執務室―

司令長官『申し訳ないね…儂の補佐官に指名しちゃって…』

黎明『いえ、私は別に構いませんが』

司令長官『まあ、知ってるとは思うけど…儂の兄がバカみたいな事をしたせいで、この総司令部の補佐官である以上、君には提督としての仕事のほかに、

     総司令部の仕事もしてもらいたいんだ』

黎明『はい、分かっております。そうなるであろうと、思っていました。となると、仕事は私の艦隊の艦娘の方たちにもしてもらう事に?』

司令長官『うん、たぶんそうなるだろうねぇ。人員は圧倒的に足りない…というかいないんだ…。君には苦労をかけちゃうかもしれないけど、どうか、

     よろしく頼む。そこで、せめてものお詫びと言っちゃなんだけど…』

黎明『?』

司令長官『君の望みを、叶えられる限りで叶えてあげよう』

黎明『……なるほど』

司令長官『何が、望みかな?』

黎明『では……』


司令長官「その時彼が答えた言葉は、おそらく今の江風君には想像のつかない言葉だと思うよ」

江風「?」


黎明『私の艦隊の艦娘の方たちの待遇を良くしてはもらえませんか?』

司令長官『うん?』

黎明『個々の設備を見たところ、寝る場所、風呂、食堂…それらの設備はあまり整えられておりません。前の司令長官が、経費を削減するという名目で、

   ここまで質素にしたのでしょう?資料を見る限り、食事のメニューもろくなものがありませんでしたし…」

司令長官『ああ、儂がその時のここを見学した時も、皆やつれていたからね…』

黎明『…私が司令長官の補佐官になると言ったとき、私の艦隊の皆さんは、愚痴は言っていたものの、嫌がらずについてきてくれました。ですので、

   その皆さんに感謝を込めて、彼女たちの生活の場を改善していただきたいんです』

司令長官『君は?君自身は特に何も望まないのかい?』

黎明『はい、私は何も望みません。今以上に大変になるのは、新たに総司令部の仕事をする事になる艦娘の方たちです。私よりも大変になるというのに、

   私が何かを望むというのは、少々おこがましいと思いまして』

司令長官『……分かった。君の願いは、問題なく叶えられると思うよ』

黎明『…ありがとうございます』

113: 2015/09/27(日) 21:41:32.18 ID:sklVRNz50
江風「……………」

司令長官「君は、黎明君の事を気に食わないなんて言っていたけど、彼は君たち艦娘の事をよく考えてくれてる。確かに、駆逐艦の子たちにも、

     仕事を任せちゃってるけど、それでも黎明君の計らいで1人当たりの仕事はかなり少ない方なんだよ。黎明君が自分の仕事に加えて、

     君たちに任せるはずだった仕事もしてくれてるから」

江風「そ、んな……………」

司令長官「…君が別に、黎明君の事をどう思うかは君の自由だよ。ただ、嫌いになるというのなら、黎明君が君たちの事をどんな風に思っているかを、

     よく考えるんだ」

江風「……………」


 ―20時過ぎ、執務室―

提督「しまったな…書類が片付かない…」ガサゴソ

コンコン

江風「…江風だ」

提督「どうぞ、お入りください」

江風「…………………」ガチャ

提督「どうかしましたか?こんな時間に」

江風「………提督」ツカツカツカ

提督「はい?」

江風「……………ごめん、なさい」ダキッ

提督「何が、ですか?」

江風「さっき、提督に、ひどい事を言っちまって…」

提督「ああ、あれですか。別に構いませんよ」

江風「…司令長官から聞いた。提督が、補佐官になるときに、自分の事よりも、江風たち艦娘の生活の場と待遇を改善するように頼んだって」

提督(司令長官…余計な事を…)

江風「そんな事も知らずに…提督の事をあしざまに言っちまって…ほんとにゴメン」

提督「……貴女が、私の事を理解してくれて、素直に頭を下げてくれたのなら、私は別に貴女を責めません」

江風「でも…」

提督「むしろ、ちゃんと私の事を考えて謝罪をしてくれることが嬉しいです」

江風「!」

提督「……では、私は仕事がありますので、そろそろ離れて…」

江風「………江風も、手伝うぜ」ガサッ

提督「……いえ、貴女が手伝う義務は…」

江風「………………」カリカリカリ

提督「………では、少しの間お付き合いいただけますか?」

江風「……もちろん」

江風(司令長官、言ったよな?江風が提督の事をどう思うかは江風の自由だって)チラッ

提督「………………」カリカリカリ


江風(…なら、江風が提督の事を好きになっても、関係ないって事だよな?)


【終わり】

114: 2015/09/27(日) 21:54:38.44 ID:sklVRNz50
【キャラクター紹介】

≪元司令長官/軍乃 剣真(いくさの けんま)≫

新日本海軍の初代司令長官。現在の年齢は50歳。だが、生存しているかは不明。現司令長官である軍乃 盾間の兄。世界で初めて艦娘の存在を発見し、

コンタクトを取った人物。新日本海軍の司令長官に任命されたが、突飛な発想と無茶な理論によって、海軍内外問わずあらゆる人物から総スカンを食らい、

逃げるように辞職して行方不明に。今の艦娘の勤務状態が過酷であることの元凶。本当に嫌っている人は、この人の存在を認めていない。

好きな言葉は『終わり良ければ総て良し』。


≪江風(かわかぜ)≫

白露型駆逐艦九番艦。艦娘No.259。少々荒っぽい口調が特徴の姉御肌(?)な女の子。間違っていると考えれば、提督でも軽・重巡・空母の先輩でも、

意見を真っ向からぶつけるタイプ。しかし、本当は少し寂しがり屋で、泣き言とかも言ったりするし人に抱き付いたりもする。提督の事は着任当初、

気に食わない、ムカつくと思っていたが、司令長官の話と提督の言葉によって、感情が180度回転して、提督を好きになってしまった。

好きな言葉は『順風満帆』。

121: 2015/09/28(月) 21:04:28.91 ID:4LP5Ljpr0
 ―19時過ぎ、食堂―

利根「やっぱり秋はサンマじゃな!これを食わんと秋と言う感じがせんからのう!」パクパク

筑摩「そうですね、姉さん。ですけど、あんまりそんなに急いで食べると―」

利根「むぐっ!?ほ、骨がっ!骨が喉に~…ッ!!」バタバタ

筑摩「やっぱり…姉さん、落ち着いてご飯を掻き込んでください」

利根「むごぅっ!」モグモグ

筑摩「…どうですか?」

利根「……ふぅ、危なく三途の川を渡るところだったぞ…」

筑摩「良かったです。あ、姉さん、頬にご飯粒が」

利根「む?ここか?こっちか?」ペタペタ

筑摩「もう…私が取ります。はい」ヒョイ

利根「お、すまんな。いやぁ~、筑摩はやっぱりいい妹じゃな!」

筑摩「そんな、恐れ多いです…」

利根「いやいや、吾輩自慢の妹じゃ!」

123: 2015/09/28(月) 21:10:47.23 ID:4LP5Ljpr0
【姉妹逆転】

 ―翌日9時、執務室―

提督「筑摩さんは、利根さんの妹と言うよりは姉に見えるんですけど」

筑摩「あら、そうでしょうか?」

提督「昨夜の食事の時と言い、夏の時と言い…」

筑摩「夏?」

提督「今年の夏ですよ、重巡洋艦寮で…」


 ―数か月前、重巡洋艦・休憩室―

提督『ふむ…これで視察は終わりですね』

高雄『特に異常はありませんでしたか?』

提督『はい、問題はありません』


利根『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』ブーン


提督&高雄『』

利根『ふぅむ、扇風機があるとどうしてもこれをしたくて仕方がないのじゃ…』

筑摩『ですけど、あんまり扇風機に当たっていると、風邪をひいてしまいますよ?』

利根『むぅ…しかし、やはり扇風機だけでは暑くて仕方がないの…』

筑摩『今日は、まだ涼しい方ですよ?ですからクーラーも消してるんです…』

利根『筑摩ぁ~…アイス…ラムネ…欲しいぞ…』ダレー

筑摩『もう、仕方ありませんね。少し待っててください』スクッ

124: 2015/09/28(月) 21:22:01.89 ID:4LP5Ljpr0
提督「すぐに甘やかすのはどうかと思いますが」

筑摩「ですけど…姉さんの情けないところなんて見たくありませんし…」

提督「今、貴女の印象って恐らく‶結構甘やかす面倒見のいいお姉さん‶ですよ」

筑摩「あら…私が?それは光栄ですね」クスッ

提督「いやそこ褒めてませんよ。まあ、幼い姉と言うものは他にもいらっしゃいますが…。阿賀野さんとか、球磨さんとか…。後は同い年らしいですけど、

   睦月さんとか…」

筑摩「睦月さんは…比較対象が…」

提督「…まあ、貴女は結構マシな妹に含まれますけど」

筑摩「…それはどういう…」

提督「いえ、正直な話、歪んだ方向に愛情が曲がった妹っていうのは結構いるんです」

筑摩「?」

提督「例えば、扶桑さんが好きすぎるゆえに編成を勝手に変えようとする山城さん、金剛さんが好きすぎるせいで頼んだ物資に紅茶を混ぜる比叡さん…、

   あとは…」

筑摩「ええと…それ以上は…」

提督「ああ、すみません。耳障りでしたか」

筑摩「いえ、そうではなくて、それ以上聞いてしまうと私もそうなってしまいそうで…」

提督「これ以上私の艦隊に狂った妹キャラを増やさないでください」

筑摩「狂ったなんて…」

提督「筑摩さんは、妹キャラでも結構まともな方なんですから、そのままでいてください」

筑摩「そうでしょうか…私はまともですかね?」

提督「ええ、まともですよ。たとえば―」

125: 2015/09/28(月) 21:27:08.14 ID:4LP5Ljpr0
 ―近代化改修時―

筑摩『嬉しい♪利根姉さんに報告しないと…』


 ―中破時―

筑摩『うぅ…こんな無様な姿、姉さんには見せられません…』


 ―攻撃時―

筑摩『姉さんも頑張ってるかな?撃ちます!』


 ―夜戦開始時―

筑摩『突撃します!利根姉さん、見てて!』



提督「」

筑摩「提督?どうかなさったのですか?」

提督「あ、いえ。別に」

提督(どうしよう。思い返してみると結構姉好きな言動が目立つぞこの人…)

提督「まあ、あまり甘やかすのも利根さんのためではないと思いますけど」

筑摩「それはわかってるんですけど…姉さんのだらしない姿を見ると放っておけないというか…」

提督「そんな捨て猫を放っておけないってニュアンスと似たような感じで話されても」

126: 2015/09/28(月) 21:34:14.74 ID:4LP5Ljpr0
提督「ともかく、利根さんをあまり甘やかすと、利根さんのためにもならないということですよ」

筑摩「それは…」

提督「あんなに甘やかしていると、利根さんも筑摩さんに頼りっきりになってしまいますし、自立できなくなってしまいますよ」

筑摩「それに関しては問題ありません」

提督「?」

筑摩「もし姉さんが自立できなくなったのなら、私が面倒を見ますから」ニコッ

提督「」

筑摩「…提督?」

提督「はぁ……この際だから言っておきましょうか」

筑摩「?」

提督「大抵、そういう感情って妹のエゴなことが多いんですよ」

筑摩「」

提督「現に、扶桑さんは山城さんの愛を若干うっとうしいと思っていますし、金剛さんは比叡さんの愛をスルーしています。それが、正しい反応だと、

   私は考えています」

筑摩「そう…ですか…」

提督「あなたのしていることが、本当に利根さんのためになっているかどうか、それをよく考えてください」

筑摩「……分かりました」

提督「…ちなみにですが」

筑摩「?」

提督「この話を山城さんと比叡さんにしたら、2人とも知らん顔でした」

筑摩「あの人らしいですね」

127: 2015/09/28(月) 21:43:42.25 ID:4LP5Ljpr0
 ―21時過ぎ、重巡洋艦・利根&筑摩の部屋―

利根「ふんふんふーん♪」

筑摩「………………」

利根「ふむ?どうした筑摩?そんなしょげた顔をして」

筑摩「……利根姉さん」

利根「なんじゃ?」

筑摩「私は、姉さんにとって鬱陶しいですか?」

利根「な、何を言い出す!」

筑摩「いえ、同じ山城さんや比叡さんたちを見て、思ったんです。もしかして、私が良かれと思って姉さんのためにしていることは、もしかしたら、

   姉さんの自立を邪魔しているのではないかと…」

利根「そんなわけなかろうが!」

筑摩「!」ビクッ

利根「筑摩が吾輩のためにしてくれたことを、鬱陶しいと思ったことなどない!むしろ、吾輩のことを考えてしてくれたのだと考えると、

   うれしいとまで思っとる!」

利根「そりゃ、吾輩も筑摩に頼りっきりになることもある。じゃが、吾輩も自立していないわけではない。ちゃーんと、努力はしておる。そのうえで、

   筑摩を頼りにしておるのじゃ。だから、吾輩のことは心配せんでもよい」

筑摩「……………」ウルウルウル

利根「そして、吾輩が筑摩のことを鬱陶しいと思うことなど、あり得ぬ。なんたって、吾輩の自慢の妹なのじゃ」

筑摩「うっ…うう……」

利根「泣きたいのならば、吾輩の胸で泣くがよい。さあ」

筑摩「うわあああ…姉さあああん……」


 ―翌朝8時過ぎ、食堂―

筑摩「そんなわけで、これからも利根姉さんのお世話を頑張ろうと思います」

提督「イイハナシダッタナー」


【終わり】

128: 2015/09/28(月) 21:49:47.18 ID:4LP5Ljpr0
【キャラクター紹介】

≪筑摩≫

利根型重巡洋艦二番艦。艦娘No.64(改二はNo.189)。ロングヘアが特徴の頼れるけどちょっと怖いお姉さん。利根の妹だが、言動は利根の姉のよう。

利根を甘やかすことが多々あり、どっちが妹なのか分からん状態。しかし、まだ山城や比叡などの歪んだ妹よりは大分マシ。だが、戦闘の腕は確かで、

敵を撃沈する回数も結構多い。利根が自堕落な生活を送るようになったら、世話する気満々。結構姉好きだったという事実。

好きな言葉は『可愛い子には旅をさせよ』。

135: 2015/09/30(水) 21:12:05.53 ID:E3YfaVvn0
 ―15時過ぎ、東部オリョール海・Gマス(敵主力打撃群)―

大井「海の藻屑となりなさいな!」バシュシュ

シューン

ドッゴオオオオオンン

戦艦ル級elite「グオオオオオオオオ……!!」撃沈

大井「やったわ!」グッ

祥鳳「流石…重雷装巡洋艦…」

摩耶「ボスを一撃で撃沈たぁ、すげぇじゃねぇか」

大井「まあ、私の実力ってところかしらね」

136: 2015/09/30(水) 21:21:56.85 ID:E3YfaVvn0
【ノーマルとアブノーマルの】

 ―16時過ぎ、執務室―

大井「……以上で報告は終わりです」

提督「……あの、1つ聞きたいことがあるんですけど」

大井「はい?」

提督「今回の出撃編成に、北上さんは含まれていませんでしたよね?」

大井「ええ、そうです。残念な事に」

提督「おかしい…。大井さんの元気の源・北上さんがいないはずなのに、なぜ大井さんがMVPを取れるのか…」

大井「提督って何気に失礼な事言いますよね…。まあ、私も別に北上さんが全てってわけじゃあないですよ」

提督「…そうでなければ困るんですけどね」

大井「北上さんが全てではないですよ。ちゃんと駆逐艦の子たちの面倒も見ますし、艤装整理も手伝います。北上さんが絡んでいなくても、ね」

提督「本当なんでしょうか?」

大井「嘘だと思うんでしたら、実際に見てみますか?」

提督(ぶっちゃけ、大井さんにその気はなくとも、相手側が怖がっているって事もありそうですし…)


 ―17時過ぎ、駆逐艦寮付近―

皐月「いったたたたたた…すりむいちゃった…」

大井「あら、大丈夫?」

皐月「あ、大井さん…」

大井「ほら、消毒してあげるから休憩室に行きましょ?」

皐月「う、うん。ありがとう…」

137: 2015/09/30(水) 21:31:43.49 ID:E3YfaVvn0
 ―数分後、駆逐艦寮・休憩室―

大井「ちょっと沁みるわよ」チョンチョン

皐月「ひぎぃ…っ…」プルプル

大井「もう…こんなことで泣かないの。はい、終わり」

皐月「あ、ありがとうございます…」

大井「そう言えば聞いたわよ?遠征、大成功したんですって?」

皐月「あ、そうです。はい」

大井「すごいじゃない、もっと胸を張っていいのよ?」

皐月「は、はい!」

大井「それじゃあ、私は行くわ。これからも頑張ってね?」

皐月「ありがとうございます!」


 ―数十分後、工廠―

大井「明石さん、この艤装はこっちでいいんですか?」

明石「あー、はい!そこに置いといてください!」

大井「はーい」ガシャン

明石「いやー…それにしても大井さんが来てくれて助かりました~…。ちょっと修理する艤装が多すぎて人手が不足していたんですよ~…」

大井「あ…そう言えば今日って、南方海域進出作戦に出撃した艦隊があったんでしたっけ…」

明石「ええ、何とか海域は開放できたものの、甚大な被害を受けてしまって、ドックは今パンパンですよ」

大井「高速修復剤は?」

明石「提督、極力使わない主義なんですけど、今回ばかりは使ったらしいです…」

大井「あら……」

明石「まあそれは別として、大井さんが来てくれて助かりました!」

大井「いえいえ、ありがとうございますね」

138: 2015/09/30(水) 21:39:18.47 ID:E3YfaVvn0
 ―19時過ぎ、食堂―

大井「ね?」

提督「驚きました…北上さんが絡んでいないときって、大井さんは至極真面目な人なんですね」

大井「提督の、普段の私の印象って何だったんですか…」

提督「あえて言うと、北上さん中毒を起こして皆に辛く当たる」

大井「嫌ですね~…そんなのデマですよ」

提督「…ああ、ついでですが1つ心得てほしいんですが…」


大井『ちっ…作戦が悪いのよ…』


提督「流石に本人の前で舌打ちは…」

大井「あら、ごめんなさい…」

提督「まあ、私は別に気にしませんが…。上司の前で舌打ちをすると、かえって面倒な事になりますよ?」

大井「上司って、司令長官?あの人はあまり気にしないように見えるけど…」

提督「いえ、前の私の上司です」

大井「…へ?」

提督「…まあ、その話はまたいつか話す事にしましょう。今思い返すと何だか胸糞悪くなりました…」

大井「あら…じゃあまたいつか、その話が聞けることを楽しみにしてますね?」

提督「……私の気分がマシであれば、ね」


【終わり】

139: 2015/09/30(水) 21:44:50.36 ID:E3YfaVvn0
【キャラクター紹介】

≪大井≫

球磨型軽巡洋艦・重雷装巡洋艦四番艦。艦娘No.19(改はNo.97、改二はNo.114)。北上大好きなちょっと危ない系お姉さん。北上が大好き過ぎて、

暴走する様子がよく見受けられるが、ノーマル状態の大井は、かなり面倒見の良い気遣いのできるお姉さん。実際、駆逐艦の子たちや明石からは、

よく頼みごとを任されたり尊敬の念を向けられたりしている。秘書艦としての仕事も、結構真面目にこなす。影の功労者。

好きな言葉は『背水の陣』。

145: 2015/10/01(木) 21:18:17.75 ID:LFxUWuDK0
 ―16時過ぎ、司令長官執務室―

司令長官「この手に寄せる袱紗 朱の色~♪」

提督「司令長官」

司令長官「この目見開いて その顔見れば~♪」

提督「司令長官」バキッ

司令長官「ぐふぅ…いきなり殴らないでよ…」

提督「ちゃんと呼びましたよ。それより、この書類明後日までに確認し、判を押してください」スッ

司令長官「ああ、分かった」

提督「ところで司令長官」

司令長官「うん?なんだい?」

提督「先ほど歌っていた曲は…」

司令長官「ああ、‶加賀岬‶って曲だよ」

提督「加賀岬?」

司令長官「ここの鎮守府じゃないけど、加賀君が歌っている曲。演歌調だけどすごく耳に残るねぇ」

提督「………は?」

司令長官「知らないのかい?ネット上で結構人気が出てるよ?」

提督「……ちょっと、調べます」パタン

146: 2015/10/01(木) 21:24:41.43 ID:LFxUWuDK0
【加賀岬】

 ―翌日9時半過ぎ、司令長官執務室―

提督「特定できました」

司令長官「何が?」

提督「‶加賀岬‶を歌った加賀さんがいる鎮守府、すぐそこの江ノ島第参鎮守府です」

司令長官「ん?別に調べなくてもよかったんじゃ……」

提督「この鎮守府は、我々総司令部の許可なく艦娘を歌手に薦めた上、勝手にネット上に曲をアップロードしたんですよ?十分違反に含まれます」

司令長官「ああ、そう言えばそうだね」キリッ

提督「キリッ、と言いながら司令長官結構ハマりましたよね」

司令長官「うぐっ……と、とにかくそこの鎮守府の提督君には、然るべき厳罰を取らせるべきだね」

提督「そうですね…。その話も含めて、私は今から江ノ島鎮守府へ行ってきます」

司令長官「ああ、だったらだれか随伴を…」

提督「もう決まっていますよ」

司令長官「へ?誰?」

提督「瑞鶴さんです」

司令長官「あっ」


 ―数時間後、道中―

ガタンゴトン

瑞鶴「まったく…あの焼き鳥製造機ったら…勝手に歌手なんかになっちゃって…」

提督「その気持ち、あそこの加賀さんに向かって思う存分言ってやってください」

147: 2015/10/01(木) 21:32:19.29 ID:LFxUWuDK0
 ―数十分後、江ノ島第参鎮守府・応接室―

提督「…………」イライライラ

瑞鶴「…………」イライライラ

コンコン

江ノ島第参鎮守府提督(以下参督)「いやあ、すみません。お待たせいたしました…」

加賀「失礼します」

提督「遅いですよ。お約束した時間を過ぎておりますが」

参督「それに関しては大変申し訳ございません…。アイドル事務所の方からの来客もいらしてまして…」

加賀「大概にしてほしいものね…。あちらの関係者はアポ無しで来るんだから…」

瑞鶴「…ちょっと微笑みながら言ってるとムカつくんだけど…」プルプルプル

提督「それはともかく……」スッ

参督「?」


ラジカセ『おぼろ月夜が綺麗ね♪』


提督「‶加賀岬‶をラジカセで延々無限ループするの、やめてください。新手の宗教か何かですか?」

参督「あ、すみません。耳障りでしたか」

カシン

瑞鶴「耳障りも何も、嫌いな人の声を延々聞かされるなんて、侮辱もんよ」

加賀「私こそ、貴女の曲が出ようものなら、絶対聞く事なんてないわね」

瑞鶴「それこそこっちのセリフよ!私だって、あんたの曲なんて聞いた事ないんだから!」

提督「と言うか、私達は今日その話をするためにここに来たんですけど」

参督「?何か?」

148: 2015/10/01(木) 21:40:38.24 ID:LFxUWuDK0
提督「どういうつもりですか?勝手に加賀さんを演歌歌手デビューさせた上に、ネット上に曲をアップロード…。これらの行為を、

   総司令部の許可なく行う事は違反に当たると、貴方も提督であるならば当然知っているでしょう?」

参督「ああ……それに関しましては……」

加賀「…総司令部の提督…。その話につきましては、私達も被害者と言えるんです」

提督「?」

参督「正直…私たちは騙された…と言ってもよろしいのでしょうか…」

瑞鶴「どういう事よ?」

参督「事の発端は…数か月前です…」


 ―数か月前―

参督「加賀さんに歌手としての素質がある?」

プロデューサー「はい、加賀さんの声には力がこもっておりますし、ぶっきらぼうと言う方もいらっしゃいますが、その言葉の中には、

        加賀さん自身の強い信念がこもっておりまして、それが歌手に向いていると」

加賀「そんな…私が…」

参督「いや、しかし…加賀さんに歌手なんて…」

プロデューサー「いえ、その素質は十分にあります」


 それで、そのプロデューサーさんが、事務所で作成した歌詞を渡してきて、歌ってくださいと言ってきたんだ。

 その強い物言いに、私も加賀さんも押し切れず、一回だけ歌う事にしたんだ…。


プロデューサー「いやあ、素晴らしい!まさしく歌手!どうでしょう?わが社にその才能を預けてみては?」

参督「え、いや…」

149: 2015/10/01(木) 22:00:22.64 ID:LFxUWuDK0
提督「それ、何て事務所でした?」

参督「確か…OCEAN事務所…です」

提督「あそこか…」


[OCEAN事務所]

かつて、総司令部の那珂もスカウトしたアイドル事務所。


参督「あの事務所、なかったことにしますとか言いながら、勝手にネット上に流して…」

加賀「しかし…時すでに遅し…。ネット上に流れた時には、私の美声とビブラートに魅了された方が増えてしまい、熱狂的なファンも増えて…。

   今さらだまされたというのが難しい状況に…」

瑞鶴「何ちょっと自分の事持ち上げてんの?」

提督「それにしても、またあの事務所ですか……」

参督「また、とは?」

提督「うちの鎮守府の那珂さんが、前にそこのプロデューサーにスカウトされたんです。断ったんですが…」

瑞鶴「あの後、結局別の鎮守府の那珂ちゃんがスカウトされて、曲も出たんだよね…」

加賀「あら、自分もスカウトされたかった、って顔ね」

瑞鶴「う、うっさい!そんな顔してないし!」

提督「まあ、とにかく貴方たちにも非が無いわけではありません。そういうスカウトは、きっぱりと断るべきでした。‶海軍の規約に反する‶と、

   言ってもよかったというのに…」

参督「ええ…私も、今になって気づきました…」

提督「この件は、総司令部に持ち帰ります。それと、貴方たちは少し反省してください。被害者と言っていたにもかかわらず、先ほどは少し、

   浮かれたような気分だったでしょう?」

参督「…はい」

加賀「…ええ」

提督「今後は、そういう態度は控えてください」

150: 2015/10/01(木) 22:08:13.41 ID:LFxUWuDK0
 ―15時過ぎ、司令長官執務室―

提督「…と言うのが、真相らしいです」

司令長官「なるほど…あの事務所か…。今回は流石に、起訴しようか」

提督「そうした方がよろしいんでしょうけど…何気に海軍の知名度も上がっていますし…今回は見逃す事にしましょうか…」

司令長官「あれ?でも君って、前に‶○○のファンになって海軍に入ろうと決めました!‶って言う理由で海軍に入るのが嫌だって言ってなかった?」

提督「実は、あの後第参鎮守府の戦果を確認したところ、‶加賀岬‶がリリースされてから、あそこの鎮守府の戦果は徐々にですが上がっているんです。

   加賀さんの言う、‶戦意高揚‶ですね」

司令長官「そうか…じゃあ一概に禁止する、ってのも無理な話か」

提督「ですから、今回は見逃す事にしようかと…」

司令長官「でも、次はないって言いたいんでしょ?」

提督「当然です。次、このような事があれば、この事務所を権力と腕力を持って潰す事にします」

司令長官「うん、それが君らしいよね。…ただ」

提督「ただ?」

司令長官「それでちょっと弊害が…」

提督「?」


 ―17時前、空母寮・休憩室―

加賀「この手に寄せる袱紗 朱の色~♪この目開いて その顔見れば~♪」

司令長官「加賀君が、自分が歌ったわけでもないのに、その曲をいい顔で歌っていて、イメージが崩壊してるんだけど」

提督「…………加賀さんのぶっきらぼうと言うイメージが払しょくされましたし、いいのでは?」

司令長官「なんかね、瑞鶴君が‶加賀さんが、ぶっきらぼうじゃないから接しにくい!‶って言ってきてるんだけど…」

提督「私の知った事ではありませんよ…」

加賀「百万石の 誇りよ加賀岬~♪」


【終わり】

159: 2015/10/03(土) 21:21:59.49 ID:lckFbsMQ0
 各鎮守府では、艦娘と提督にちゃんと休みを与えている。

 深海棲艦を討伐する事はもちろん大事だが、個々人の体調管理も大事である。だが、とある鎮守府は、頑張っていることをアピールしようと、

休み返上で艦娘の運用を繰り返した結果、ブラック鎮守府扱いされた上にその提督は過労氏してしまった。

 そのような事件もあり、各鎮守府では一定期間休みを取らなければ罰則(=ブラック鎮守府扱いで提督クビ&鎮守府解体)が科せられる、

というルールもできてしまった。まるでドイツである。

 そして、休みを取らなければならない、と言うルールは総司令部にも有効である。

160: 2015/10/03(土) 21:32:24.93 ID:lckFbsMQ0
【とある休日の一コマ】

 ―9時過ぎ、司令長官執務室―

司令長官「いやぁ~、休日っていいよねぇ。週休6日とかあればいいのに」

提督「それ、むしろ休みの意味が無くなっていませんか?」

雲龍「それに、休みが多すぎると休みに飽きる、と言う話も聞いた事がありますし…」

司令長官「それでも、書類とかには目を通しておかないといけないんだよねぇ」

提督「総司令部は他の鎮守府と勝手が違いますから、完全に機能をストップさせる、という事はできませんからね。まあ、さすがにデータ課の霧島さんと、

   鳥海さんは休ませています」

司令長官「あの2人の代わりに、誰か入れたの?」

提督「データ収集が得意な夕張さんと大淀さんを代行させています。これで、少しでも霧島さんと鳥海さんの疲れが取れればいいのですが…。っと、

   それより早く書類を片付けてしまいましょう。司令長官も、休みたいのでしょう?」

司令長官「そりゃそうだよ。せっかくの休みの日に休めないなんてブラックだよ」

提督「私も手伝いますので、早く済ませましょうか」

司令長官「うん?君が手伝ってくれるなんて、珍しいねぇ」

提督「そりゃ、私はどこのサボり魔司令長官と違いますからね」

司令長官「うぐっ…ま、まあ早く始めよう。ちなみに、雲龍君は?」

提督「ああ、ここに来る途中、雲龍さんに事情を話したら…」

雲龍「私も、司令長官と提督のお手伝いをさせていただきます」ペコリ

司令長官「そりゃありがたい。じゃあ、悪いけど手伝ってくれるかな?」

雲龍「はい」

161: 2015/10/03(土) 21:40:27.26 ID:lckFbsMQ0
 ―数十分後―

司令長官「あ、黎明君。この書類なんだけど…」

提督「ああ、この書類はこれがこうで…」

雲龍「……」ジー

司令長官「そういうことか、ありがとうね。…ところで、雲龍君?どうかしたの?」

雲龍「あ、いえ…。司令長官は提督の事を名前で呼んでいるのが、なんだかなぁ、と」

司令長官「あれ?そんなに変な事かな?」

提督「まあ、正直な話、私は苗字で呼ばれるのがあまり好きではないんです」

雲龍「?それはまた、どうしてですか?」

提督「私の苗字、‶斑‶じゃないですか?ですから、そう呼ばれると…」


??『待っていたぞォー!!柱間アアアー!!!』


提督「あのキャラクターを連想してしまい、なんだか妙な気分になるんです」

司令長官「知っているアニメキャラクターと同じ名前・苗字だと微妙な気分になるのと同じだね」

雲龍「何となく、分かります…」

提督「まあそれもありますし、司令長官とはもう2年の付き合いになりますからね」

雲龍「あ、提督が司令長官の補佐官に任命されたのって、2年前でしたっけ」

司令長官「正確には、2年前の今日だね」

雲龍「そうだったんですか!?」

提督「ああ、そう言えば今日でしたね。日々の仕事ですっかり忘れてしまいました」

162: 2015/10/03(土) 21:53:56.92 ID:lckFbsMQ0
雲龍「そう言えば…司令長官はなぜ提督を補佐官に指名したのですか?」

司令長官「え?ああ、そうだねぇ…。まあ強いて言うなら、候補の中では一番まともだったから、かな?」

雲龍「候補?」

提督「元々、司令長官の補佐官となる候補は、私を含めて3人だったんです」

雲龍「その3人は…1人は提督で、もう2人は?」

司令長官「雲龍君は実際に会った事はないかもだけど、伊豆鎮守府の瑞理提督と、胎内鎮守府の朱鷺提督だよ」

提督「この2人です」バサッ

雲龍「…あ、朱鷺という方は、女性なのですね」

司令長官「黎明君とその2人は、この国の鎮守府の中で戦果がトップ3だったんだよ。瑞理君が1位、黎明君が2位、朱鷺君が3位」

提督「あんな男が国内1位なんて、世も末です」

雲龍「よ、世も末?」

司令長官(詳しくは言えないんだけど、黎明君、瑞理君の事が大嫌いなんだ)ボソボソ

雲龍(そうだったんですか…)ボソボソ

司令長官「でもまあ、3位の朱鷺君を選んだら、女性優先でどうのこうのと言われそうだからパスし、瑞理君は女たらしな性格がダメだから却下。

     まあ、消去法で黎明君が選ばれたんだよ」

提督「消去法と言うのが納得いきませんでしたが、あのバカより上の立場になれたというのは純粋にうれしいですね」

雲龍「ちなみに、司令長官が今の海軍の司令長官になれた経緯は…」

司令長官「ああ…兄さんのせいだね」

提督「一部の方は知っているかと思いますが、この司令長官・軍乃 盾間が司令長官になれたのは、兄の軍乃 剣真が指名したからです」

雲龍「指名?」

司令長官「兄さんが、総司令部の人員全員クビなんて案を成立させて少ししてからの事だよ…」

163: 2015/10/03(土) 22:11:38.67 ID:lckFbsMQ0
 ―2年ほど前、軍乃邸―

剣真「おう、盾間!ちょっと頼みがある!」

盾間「ちょ、ちょっと兄さん。外のマスコミは何!?」

剣真「いやぁ、ちょっとバカな提案をして実行したらこうなった…ってそんなことはいい。俺、司令長官辞めるから後任にお前が就け!」

盾間「はあ!?何言ってんの!?」

剣真「いやあ、お前海軍養成学校でも好成績だろ!?できる出来る!」

盾間「いや、そういう話じゃなくて…」

剣真「じゃ、任せた!」


司令長官「って感じで、流れるように司令長官にされた」

雲龍「そんな冗談みたいな話が…」

提督「ですけどこれ、あながち冗談でもないんですよね」

司令長官「元々儂は、海軍に入る前は普通の企業で働いていたから海軍の事は海軍養成学校でしか分からなかったから、本当にむちゃくちゃで…。

     あーあ、あの時断っておけばよかった…。儂、司令長官に向いていないし…」

提督「ですけど今は、こうして司令長官の仕事をしっかりとできるようになっているじゃないですか。まあ、私に押し付けてくることもありますが」

司令長官「?」

提督「兄からの無茶ぶりにもしっかりと対応し、増え続けている深海棲艦に対して的確な対応策と作戦の考案、さらに各鎮守府の提督の個性を把握、

   これらの事は、常人にはできないような事ばかりです」

司令長官「…………」

提督「貴方はもう、立派に司令長官としての仕事を務められていますよ」

雲龍「ええ、そうですね」ニコッ

司令長官「黎明君…雲龍君…」

提督「さあ、早く仕事を済ませましょう。夜には、司令長官とどこかへ外食にでも行きましょうか」

司令長官「え?いいの?」

提督「こういう時は、部下が祝いをするものです」

司令長官「いやぁ、助かるねぇ。あ、じゃあ雲龍君も来る?」

雲龍「へ?いえ、私は…」

司令長官「儂の話を聞いたんだし、これも何かの縁って事で」

雲龍「…では、ご一緒させていただきます」

提督「では、今夜の方針も決まりましたし、早いところこの書類を片付けましょう」

司令長官「うん、そうだね」

雲龍「はい」


【終わり】

164: 2015/10/03(土) 22:18:13.71 ID:lckFbsMQ0
【キャラクター紹介】

≪雲龍≫

雲龍型正規空母一番艦。艦娘No.201(改はNo.206)。露出の激しい服が特徴なほんわか系お姉さん。どこかほかの人とズレているところがあるけれど、

根は真面目。着任当時は艦載機を持っていなかったため、艦載機の扱いは初心者レベルだったが、他の空母達の教育の甲斐もあり、今では鎮守府内で、

赤城や加賀に並ぶ腕にまで成長した。提督の秘書艦を務めている期間が他の艦娘に比べて長いが、その理由は不明。その胸は、生物兵器のよう(?)。

好きな言葉は『待てば海路の日和あり』。

170: 2015/10/04(日) 21:00:28.87 ID:UwOiCLCw0
 ―15時過ぎ、空母寮・休憩室―

加賀「………」ズズズ

バァーン

瑞鶴「加賀さん!!」

加賀「あら、そんな血相を変えて…どうかしたのかしら?」

瑞鶴「私のとっておいた間宮羊羹、食べたでしょ!」

加賀「なぜ、そう思うのかしら?何か証拠でも?」

瑞鶴「証拠ならあるわよ。さっき、妖精さんから―」


 ―数分前、空母寮・簡易キッチン―

瑞鶴『あれ…あっれー?』ゴソゴソ

九七艦攻妖精(以下九七妖精)『瑞鶴さん、どうしたんですかー?』

瑞鶴『あ、妖精さん。実はね、冷蔵庫に間宮羊羹取って置いたんだけど…無くなってるのよ…。あっれー?』ゴソゴソ

九七妖精『えー?それって加賀さんにあげたんじゃないんですか?』

瑞鶴『…は?』

九七妖精『さっき、加賀さんが嬉々として羊羹を休憩室に持って行って、その羊羹どうしたんですか、って言ったら「瑞鶴がくれたの」って。

     いやー、普段から嫌い嫌い言ってるのに羊羹あげるなんて、瑞鶴さんもツンデレですねー』

瑞鶴『』


瑞鶴「私そんな事言った覚え何て微塵もないし!何で勝手に食べたりするの!」

加賀「ごめんなさいね、言ってなかったけど、あれ賞味期限が近かったから…」

瑞鶴「買ったのつい昨日で賞味期限までまだ数か月あったはずだけど…」

加賀「五航戦の子なんかに間宮羊羹は会わないと思って」

瑞鶴「こんちきしょーめ!!」

171: 2015/10/04(日) 21:06:35.83 ID:UwOiCLCw0
【因縁】

 ―翌日9時過ぎ、執務室―

瑞鶴「あーっ、もーっ!ホンットーに腹立つったらありゃしない!」

提督「落ち着いてください」

瑞鶴「ねえ聞いてよ提督さん!」

提督「その話でしたらもう何回も聞いています。それより、早く書類整理に取り掛かってくれませんか」

瑞鶴「…ふぅ、ごめんなさい。ちょっと気が立ってたわ。すぐに仕事にかかるわ」

提督「はい」

瑞鶴「………」カリカリ

提督「………」カリカリカリ

瑞鶴「………」ガリガリガリ

提督「………」カリカリカリ

瑞鶴「………」ゴリゴリゴリゴリ

提督「…あの、瑞鶴さん」

瑞鶴「はい?」

提督「筆圧が、ちょっと」

瑞鶴「?あら、紙が破けちゃってるわ…」

提督「まったく…コピーを取るしかありませんね…」ガタッ

瑞鶴「ごめんなさい…」

提督「ちょっと、待っていてください」

172: 2015/10/04(日) 21:16:56.03 ID:UwOiCLCw0
 ―数分後―

提督「では、この書類をやり直してください」

瑞鶴「分かったわ」

提督「それにしても、よくもまあこりもせず小競り合いを…」

瑞鶴「だって…向こうからやってくるんだし…」

提督「私の覚えている限り、喧嘩の理由は、『タ級flagshipを倒すきっかけを作ったのはどっちか』とか、『最後の日替わりランチBセット(天丼)

   はどっちのもの』という下らないものまでありましたけど…」

瑞鶴「よ、よく覚えているじゃない…」

提督「まあ、頻繁に起こっていますし、理由があまりにも下らないというのも手伝って…」

司令長官「黎明君も、人の事言えないんじゃないの?」ガチャ

提督「司令長官、仕事は―」

司令長官「まあそれは置いといて」

提督「置いとくな」ガスッ

司令長官「イタッ…とまあ、ともかく。黎明君には、瑞鶴君と加賀君のいざこざを下らないんて言う資格はないんじゃないの?ってわけ」

瑞鶴「へ?どうして?」

提督「いえ、その話は―」

ジリリリリン

提督「失礼。はい、執務室」ガチャ

提督「ああ、はい。分かりました」ガチャリ

司令長官&瑞鶴「?」

提督「すみません。間宮さんから呼ばれてしまいましたので、少し席をはずします。それまでの間に、瑞鶴さん。仕事はしておいてください」

瑞鶴「あ、はい!」

提督「では」バタン

瑞鶴「…ところで司令長官さん」

司令長官「ん?」

瑞鶴「提督に、私と加賀さんのいざこざを悪く言う資格はないって…」

173: 2015/10/04(日) 21:33:33.90 ID:UwOiCLCw0
司令長官「ああ、あれ?実はね、黎明君も人のこと言えないようないざこざがあるんだよ」

瑞鶴「それって、司令長官と?」

司令長官「いや、儂じゃなくて。伊豆鎮守府の瑞理提督だよ。知ってる?」

瑞鶴「ああ…なんだか、すごい女たらしで提督さんが大嫌いって、浦風ちゃんとかから聞いたかな…」

司令長官「その瑞理提督と黎明君、どうしてあんなにお互いのことが嫌いかわかる?」

瑞鶴「………ううん、分からない」

司令長官「その因縁が、すっごく下らないんだよ」

瑞鶴「……どのくらい?」

司令長官「とにかく、すごくくだらない」

瑞鶴「…私が言うのもなんだけど、私と加賀さんのいざこざも大分下らないもんだと思ってたけど…それよりも?」

司令長官「うん。それよりも」

瑞鶴「……聞かせて?」ニヤリ

司令長官「了解」ニヤリ


 ―約3年前―

 今から3年ぐらい前、黎明君がまだ補佐官になる前のことだったよ。

瑞理「ねえねえ、よければ僕と一緒に付き合わない?」

女提督「いえ、あの…」

 瑞理君は今よりもずっとナンパ性だったんだ。女性の提督を見たら、必ずナンパするくらい。女性提督がいる演習先に赴いたら、絶対にナンパしてた。

 どんだけ飢えてんのよ…。

斑「まったく…女性に現を抜かすとは…海軍としての自覚があるのでしょうか…」

 一方、黎明君はそんなことは全くしないで、提督としての使命を全うしてたよ。

 まあ、あの提督さんなら想像できるわね…。

 それで、この時の提督たちの戦果ランキングは、1位が黎明君、2位が瑞理君だったよ。今とは逆だね。

 あ、そうだったんだ。というか、今は提督さんって戦果が2位なんだ…。

 黎明君には儂の補佐官としての仕事もあるからね。まあ、それは置いといて…。

174: 2015/10/04(日) 21:45:11.39 ID:UwOiCLCw0
瑞理「ふーんだ、モテないからってひがんでんだろ。けけけ」

斑「いいから、演習が終わったのならさっさと帰ってくれませんか。次、その方と演習を行うのは私の艦隊なんですが」

瑞理「ちぇっ。じゃあね~。もし気が変わったら電話してね~」

女提督「たぶん変わりません…」

 硬派な黎明君と、ナンパな瑞理君…。このころから2人はギスギスしてたんだよ。

 まあ、でしょうね…。

 そんな中で、瑞理君がまたいつものように女性提督をナンパしようとしたんだよ。そしたら―


女提督「えー?私どっちかっていうと斑さんのほうがタイプかな~」


 なんてことを女性提督の一人が言ったんだ。

 へ、へー…(提督さんってほかの女性提督の中でも競争率あるんだ…)。

 それが1回だけじゃなくて…。

女提督「女遊びする方よりも、斑提督みたいな硬派な人がいいかな~…」

女提督「私どっちかっていうと黎明さん派だねぇ」

女提督「女癖が激しい人はちょっと…。まあ、斑さん結構タイプかな」

 こんな風に、断られることが何度もあったんだよ。

 あの、話の腰を折るようだけど、今この国に女性提督って何人くらいいるの?

 ああ、今この国には大体100人くらいいて、その半分くらい、だいたい50人弱が女性提督だね。

 そんなにいるんだ!

 で、その中の2~3割が黎明君のほうがタイプだって。

 あっ(察し)


瑞理「ホアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッハッハッハッハッハアアアアアアアアア!!!」


 こんな、スーパーマリオでマリオがMISSするときみたいに瑞理君がガチで発狂した。。

 まあ、わからなくもない、かな。

175: 2015/10/04(日) 21:53:36.58 ID:UwOiCLCw0
 で、瑞理君は黎明君に言ったんだ。

瑞理「なんでお前みたいなみなしご根暗野郎がモテるんだ!」

 え、じゃあ…。

 黎明君は当然キレたよ。

斑「では!私も言わせてもらいますが、貴方は仮にも海軍の一提督でしょう!その提督が、女性を誰彼構わずナンパするとは、

  いかがなものかと思いますが!」

瑞理「これが僕のスタイルなんだ!」

 それからヒートアップ…。


司令長官「で、それ以来2人は完全に敵対するようになったってわけ」

瑞鶴「うん…これは…女性から言わせればくだらないわね」

提督「話したんですか」

司令長官&瑞鶴「うわぁぁぁっ!?」

提督「まあ、私が瑞鶴さんと加賀さんのいざこざを悪く言えないわけは、私もこのようにくだらない理由で争っているからです。ですから、私も、

   とやかく言う筋合いはありません。ですが、これだけは知っておいてください。瑞鶴さん」

瑞鶴「?」

提督「いずれは、あんないざこざをしなければよかったと後悔するものです。ですから、今のうちに謝っておいたほうがいいですよ」

瑞鶴「…………」

提督「今、まだ複雑にこじれていないうちに…」

司令長官「黎明君は?」

提督「私のはもう、自分で言うのもなんですが取り返しがつきませんから」

176: 2015/10/04(日) 22:06:08.80 ID:UwOiCLCw0
 ―20時前、空母寮・休憩室―

瑞鶴「あの、加賀さん…」

加賀「…何かしら?」

瑞鶴「その…今までごめんなさい」

加賀「………何が?」

瑞鶴「今まで、加賀さんにつらく当たっちゃって、ひどいことも言ったりして…。言い訳するようだけど、私じゃなくて加賀さんが悪いってこともあった…

   けど、私もあなたのことを考えないで色々言って…だから、ごめんなさい」

加賀「……………」

瑞鶴「……………」

加賀「…まあ、確かに私も大人げないところがあったわね」

瑞鶴「?」

加賀「もともと、私のほうがあなたの癪に障るようなことをしていたことが多々あったし…」

瑞鶴「へ…」

加賀「私も悪かった…いいえ、私が悪かったわ。ごめんなさい」

瑞鶴「…加賀さん!これからは、友達で…いいかしら?」

加賀「友達……ええ、そうね」ニコッ


司令長官「よかったね、一件落着って感じで」

翔鶴「ええ、そうですね」

赤城「これで、加賀も少しは丸くなると思いますわ」

司令長官「ただ……」


 ―21時過ぎ、執務室―

瑞理『調べたらこの国のほとんどの女の子提督は僕のほうが好きだって言ってた!』

提督「どこ情報ですか!っていうか、海軍の提督のくせして何をまたくだらないことで争っているんですか!」

瑞理『妖精さんネットワークを駆使したんだ!あとこれは僕にとっては譲れない争いでもある!』

提督「海軍のためにある妖精さんの力を何に使っているんですか!だいたい、そんなくだらないことをしている暇があるんでしたら、ほかにもっと、

   やるべき仕事があるでしょうが!」

瑞理『これが僕のやるべき仕事なんだ!』

提督「ですから―!」


司令長官「彼らの関係も、瑞鶴君と加賀君みたいに直ってくれないかなぁ…」


【終わり】

177: 2015/10/04(日) 22:11:17.62 ID:UwOiCLCw0
【キャラクター紹介】

≪瑞理 兆(みずり きざし)≫

中部東海・伊豆第壱拾参鎮守府の提督兼中部東海地方の代表提督。超が付くほどの女好きな提督。本来は、人当たりがよく優しい性格をしている。

斑提督とは、ひょんなことから関係が崩壊して現在も犬猿の仲な状態。だが、その戦略性は司令長官も一目置くほどである。また、その戦略性を活かし、

国内最高の戦果を誇っている。鎮守府の全艦娘とケッコンカッコカリを果たしている。その中でも嫁艦は雪風。

好きな言葉は『据え膳食わぬは男の恥』。

178: 2015/10/04(日) 22:13:27.60 ID:UwOiCLCw0
今日はここまでにします

>>130
  瑞鶴の話、いかがでしたか?


明日は、リクエストにありました初春型の話を書く予定です。

感想・リクエスト等があればお気軽にどうぞ。

それではまた明日。


次回:【艦これ】総司令部の日常【その3】



引用: 【艦これ】総司令部の日常