275: 2015/10/13(火) 21:05:06.89 ID:dYaW2grK0
こんばんは、>>1です。



 

それでは、投下します。

276: 2015/10/13(火) 21:08:00.06 ID:dYaW2grK0
 ―21時過ぎ、執務室―

提督「…よし、今日の仕事は終わり、と」

提督「さて……」チラッ

提督(明日の秘書艦は…吹雪さんか)

提督(……そう言えば、吹雪さんが秘書艦になるのは、久々な気もしますが…)


 ―同時刻、駆逐艦寮・吹雪&白雪の部屋―

吹雪「…ん~んっ。今日の勉強は終わり、っと」

吹雪「さてと……」チラッ

吹雪(明日は、司令官の秘書艦か…)

吹雪(…そう言えば、私が提督の秘書艦になるのって、久々な気が……)

白雪「吹雪ちゃん?」

吹雪「へっ!?何でもないよ!?」

白雪「?」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
277: 2015/10/13(火) 21:13:26.75 ID:dYaW2grK0
【初期艦、秘書艦】

 ―翌日9時過ぎ、執務室―

提督「では、これより数日の間ですが、秘書艦の仕事をよろしくお願いします」

吹雪「は、はい!お願いされました!」ビシッ

提督「では、早速ですみませんが、この書類を片付けてもらいたいのですが…」

吹雪「あ、はい」

提督「私はここで書類を整理していますので、何かありましたら、どうぞ」

吹雪「分かりました」

提督「…………………」カリカリカリ

吹雪「…………………」ガサゴソ

提督「…………………」カリカリカリ

吹雪「…………………」ガサゴソ

提督「…………………」カリカリカリ

吹雪「……………ふふっ」

提督「?」

吹雪「………ふふふふっ」

提督「……毒キノコでも食べましたか?」

吹雪「違いますっ!」

提督「いえ、突然笑いだしたら、誰だって不審に思うでしょうが」

吹雪「え、ええ。確かにそうですけど…」

提督「何かあったのですか?」

278: 2015/10/13(火) 21:24:38.07 ID:dYaW2grK0
吹雪「いえ…なんだかこうして、司令官と2人っきりで執務室で仕事をこなすのって、久しぶりだなぁ~って思って」

提督「ああ……それは確かに、私も思っていましたね」

吹雪「司令官も?」

提督「ええ、昨夜、今日の秘書艦が貴女だという事がわかった時に…」

吹雪「どれぶりですかね?私が秘書艦になったのって…」

提督「そうですね……もう、何か月も前でしょうか。新しい艦娘の方が来てからは、その方に仕事を覚えてもらうために秘書艦に任命してましたし…」

吹雪「でも、こういう事って、長い間付き合っていたコンビが考えそうなことですよね…」

提督「…まあ、貴女は私の初期艦ですし、単純計算で4年以来の付き合いですからね。そう考えるのも当然でしょう」

吹雪「…何か、司令官が最初に鎮守府に着任した時の事を思い出しますね…」

提督「そうですねぇ……あの頃の私は、不安でいっぱいでした…」

吹雪「それは、自分に提督としての仕事が務まるか…と言う意味でですか?」

提督「いえ、それもありますが……」スッ

吹雪「?」

提督「貴女みたいな子供が、本当に深海棲艦に打ち勝つ事ができるのだろうか、と不安に」

吹雪「そういう意味ですかっ!?」

提督「いえ、割と真剣にそう考えていたんですけど…」

吹雪「…ですけど、私ちゃんと深海棲艦倒しましたよね?」

提督「鎮守府近海で、駆逐イ級を倒したあれですか」

吹雪「はい!それで、司令官も見直したでしょう?」

提督「そうですね、ああ、本当に深海棲艦を倒せるんだ、と思いましたね」

吹雪「まあ、あの時は私も駆逐イ級や軽巡ハ級とか、下級の軍艦しか倒せませんでしたけどね…」

提督「いえ、それだけでも十分でした。私が、そして貴女が自信をつけるためには、それだけでも十分ですよ」

279: 2015/10/13(火) 21:35:16.67 ID:dYaW2grK0
吹雪「でも、あの時の司令官…今と比べて全然違いましたね」

提督「?」

吹雪「あの時の司令官、すごい暗い感じでした…」

提督「……………」

吹雪「多分…多分ですけど…司令官が前に勤めていた会社で味わった苦痛が、完全には抜けてなかったんだと、思います。初期艦である私の下には、

   これから従う司令官の来歴が渡されていましたので…」

提督「…あの時は、すみませんでした。貴女に不安を煽るような態度を取ったうえ、分かるはずのない私の愚痴を聞いてもらってしまって…」

吹雪「いえ、私はむしろ良かったです」

提督「は?」

吹雪「…支えがいのある司令官だな、と」

提督「……ふっ、同じ感じで返されましたね」

吹雪「ええ、私なりの復讐です」ニコッ


 ―4年前、浦賀第弐鎮守府・正門―

※この斑提督が補佐官となる前は、浦賀の鎮守府の提督だった。

提督「………ここが、鎮守府」

吹雪「あ、貴方が斑 黎明司令官ですか?」

提督「………はい、私が、この鎮守府で提督として艦娘を指揮する事を任命された、斑です」

吹雪「よ、よろしくお願いいたします。私が、司令官の補佐をいたします、吹雪です」

提督「よろしくお願いいたします」

吹雪(なんだか…暗い感じの人だなぁ……)

提督(……いかん、この人にまで暗い態度を取ってしまっては…あの会社にいた時と同じ……)

提督「…………くっ」

吹雪「?」

280: 2015/10/13(火) 21:43:40.12 ID:dYaW2grK0
 ―数週間後・21時過ぎ、執務室―

吹雪「司令官?」

提督「はい?」

吹雪「…何か、悩みとかがあるのでしたら、遠慮せずに話してくださってもいいんですよ?」

提督「……悩みとは、何の事ですか?」

吹雪「しらばっくれてもダメです。私の目から見ても、司令官は明らかに悩んでいます。それも、おそらく深海棲艦に対するもの…ではないでしょう?」

提督「…………………」

吹雪「私は貴方の秘書艦です。貴方の悩みを聞いて、貴方の中の蟠りを晴らしてあげるのも、私の務めです」

提督「…………………」

吹雪「…………………」ジッ

提督「……貴女みたいな方にまで、見透かされるとは、私もだめですね」

吹雪「…………………」

提督「……少し、私の話を聞いてもらってもよろしいでしょうか?」

吹雪「もちろんです」


 ―数十分後―

提督「………と言うわけです」

吹雪「………なるほど」

提督「………分かりませんよね、会社云々とか上司とか……」

吹雪「それでも、確実に言える事は1つあります」

提督「?」

吹雪「司令官は、両親もいない、友人も少ない…。そのせいで、自分の中で暴れる感情を上手く吐き出す事ができなかったんですよね?今までずっと、

   その心の中のモノを抱え込んでいたんですよね?」

提督「………………」

吹雪「だから、その時の苦い経験を消化できず、そのまま顔に出してしまい、それが司令官の元上司の方に感づかれて、また責められる…。ずっと、

   この繰り返しだったんですよね?」

提督「………………」

281: 2015/10/13(火) 21:51:53.57 ID:dYaW2grK0
吹雪「…でも、今ここで私に話を聞いてもらった事で、司令官の中の蟠りも、少し晴れましたよね?」

提督「……そうですね、幾分か楽になれました」

吹雪「……今まで、その苦痛を、よく耐えてきましたね。私なんかにはとてもできません。同じような経験を私もしたら、きっとどこかで壊れています。

   その苦痛を、司令官は1人で乗り越えてきました」

提督「…………………」ジワッ

吹雪「司令官は、すごい方です………。今、ここには私と司令官しかいません。司令官が大声をあげて泣いても、私しか知りません。ですから、

   これまで溜まっていた司令官の涙、思いっきり流しちゃって大丈夫です」

提督「……………吹雪、さん…」ウルウル

吹雪「よろしければ、私の胸もお貸しします。ですから、今まで溜め込んでいたもの、全部今ここで、洗い流してください」スッ

提督「―――――――――――――――――――――――!!」ダキッ

 その日、鎮守府に1人の男の泣き声が、響いた。



提督「…………………………………」

吹雪「司令官?」

提督「いえ、すみません。あの時の事を思い出してしまって……正直、あの時私はどうかしていたとしか思えないくらい、情けない姿を見せてしまい…」

吹雪「…あの時みたいに司令官が泣いた事、最近ありませんね」

提督「あのぐらいの痛みを味わった後は、特に痛みと感じる事がほとんどなかったですしね」

吹雪「……思えば、あれからもう4年も経っているんですね」

提督「そう考えると、長い月日が流れましたね。そして、貴女は今もここにいる」

吹雪「司令官」

提督「はい?」

吹雪「これからも、よろしくお願いいたします」スッ

提督「…はい、これからもお願いいたしますね」アクシュ


【終わり】

282: 2015/10/13(火) 21:56:04.85 ID:dYaW2grK0
【キャラクター紹介】

≪吹雪≫

吹雪型駆逐艦一番艦。艦娘No.11(改二はNo.226)。斑提督の初期艦で、鎮守府最古参の駆逐艦。性格はいたって真面目で、仕事もてきぱきとこなす。

斑提督が着任した当初は、提督の暗い雰囲気から距離を置こうとしていたが、提督の過去の話を聞いた事で提督に抱いた印象が変わる。そして最終的に、

恋心を抱くようになる。料理、洗濯、裁縫と、家事全般が得意。駆逐艦たちの代表とも言える。

好きな言葉は『一意専心』。

289: 2015/10/15(木) 21:06:23.69 ID:wOK9GAWt0
 ―9時前、執務室―

提督「利根さんが風邪?」

筑摩『はい…朝起きたら、だるくて咳が止まらないらしく…熱を測ってみたところかなり高かったので…』

提督「寒暖差によるものでしょうか……。分かりました、利根さんは本日は休み、夜間の遠征参加も中止という事にします。それと、筑摩さん」

筑摩『はい?』

提督「筑摩さんは、今日1日利根さんの看護と言う感じで?」

筑摩『そう…ですね、はい。そうする予定でした』

提督「では、筑摩さんも本日は休みに、夜間の遠征も不参加という事で」

筑摩『申し訳ございません、提督…』

提督「いえ、お気になさらず。後ほど伺いますが、利根さんにお大事にとお伝えしてください。では」

ガチャン

提督「しかし…資源輸送任務は誰に任せるべきか……」

提督「シフト表で空いてるのは……」

提督「……第7駆逐隊に頼むか」

290: 2015/10/15(木) 21:15:44.53 ID:wOK9GAWt0
【出撃!第七駆逐隊】

 ―9時半ごろ、執務室―

提督「えー、本日の夜間遠征・資源輸送任務ですが、利根さんが風邪をひいたという事で、編成を変更し、貴女たちに遠征を任せたいと思います」

曙「何で私たちなのよ?」

提督「シフト表を確認したところ、貴女たちは本日、出撃・演習の予定等がなく、半ば休日のようなものでしたので…。あ、それとも何か、

   用事とかございましたか?」

朧「いや、そういうわけじゃないよ」

提督「では、申し訳ございませんが…そういう形でお願いいたします。貴女たちは昼は、夜間遠征に備えて休んでください」

潮「あ、あの…利根さんは大丈夫なんでしょうか…?」

提督「利根さんの容態は、それほど大したものじゃなさそうですが…後で一応様子を見に行きます」

漣「あーあ…でも、昼はどうやって過ごそうかな…」

提督「仮眠を取っても構いませんよ?ほとんど自由時間ですし…」

漣「じゃ、仮眠でも取ろうかな?昨日は遅くまでPC観てたし…」

朧「漣…またそんな事して…」

提督「いえ、それはまた漣さんの仕事ですし…」

朧「え?」

提督「まあ、それはまた後日話す事にして、フタマルサンマル(20時30分)にはもう一度執務室に来てくださいね」

潮「は、はい!」

曙「あーあ、クソ提督のせいで私の今日の予定が狂っちゃったじゃない」

漣「で、本音は?」

曙「やった、これで休める……って、何言わせてんの!」

291: 2015/10/15(木) 21:27:48.65 ID:wOK9GAWt0
 ―数十分後、駆逐艦寮・休憩室―

朧「そう言えば漣、提督がさっき、PCを観るのが漣の仕事って言ってたけど、あれってどういう意味?」

漣「あ、あれですか?えーっとですね、漣の仕事と言うのは、インターネット上のサイトで、海軍の機密に触れているような内容の話が無いか、

  巡回して調べる事なんです」

潮「???」

曙「どういう意味?ただのサイト巡回?」

漣「有り体に言えばそうですね。全国の提督には、ブログを開いている人も、自分の鎮守府の話をSSにして書いている人もいます。それで、

  そんな感じのサイトを開いて、海軍の機密に触れているような事項が無いかを調べるのが漣の仕事です」

朧「は~、なるほどねぇ。そんな仕事を…」

潮「た、確かに漣ちゃんって、インターネットのスラング?用語をよくしゃべってるし、適役なんじゃないかな…」

曙「ぶっちゃけ、インターネット見てるだけじゃない?そんなの仕事って言えるのかしら?」

漣「実際、機密書類をブログに張って炎上して、辞職した提督だっているんですよ?」

朧「バカッターじゃない…」

潮「いるんだね…考え無しにそんなことやる人が…」

漣「そんな輩を見つけるのが漣の仕事!はっはぁ!」

朧「わー」パチパチ

曙「……にしても、夜の遠征まで時間が空いちゃったわね……」

潮「私は…寝ようかな……」

朧「私もそうしよっかな」

漣「では、漣はサイト巡回…いや、自分の仕事を全うします」

曙「でも、ちょっとは寝た方がいいわよ?眠くなっちゃうし」

漣「分かってますって。ちょっとしたら寝ますよ」

漣(さらっと仲間…姉妹を気遣う曙…キタコレ!)


 ―数時間後、重巡洋艦寮・利根&筑摩の部屋―

提督「………………………」

利根「昨日はアイスを食べすぎてしまったからのう……爽はやめられん…」

提督「…………利根さん、1カ月アイス禁止で」

利根「なっ…!?後生じゃ!頼む!せめて1週間で…!」

292: 2015/10/15(木) 21:38:32.09 ID:wOK9GAWt0
 ―20時半、執務室―

提督「……で、こちらが資源を運ぶタンカーのルートを示した用紙、さらに私達が報酬としていただく資源のデータです」

曙「…………………」

提督「それと、最近は南西諸島海域で敵艦の会敵率が上がっていますので、十分に気を付けてください」

朧&潮&漣「はい」

曙「…………………」

提督「では、何か質問はございませんか?」

曙「1つあるわ」

提督「はい?」


曙「何で私が旗艦なのよ!?」


提督「いえ、これまでの戦果と、貴女たち第七駆逐隊の中では一番曙さんの練度が高かったので」

曙「でも私、旗艦なんてやったことないし!」

提督「大丈夫です」

曙「何をもって大丈夫なの!?」

提督「貴女がその場でやるべきと思った事を、その場で皆さんに指示すればいいだけです」

曙「むぅ~………分かったわ」

提督「他に何か、ご質問はございますか?」

全員「………………」

提督「…では、フタヒトマルマル(21時00分)には波止場に集合し、出発してください。いいですね、曙さん?」

曙「わ、分かったわ。それと、旗艦を務めるの何て初めてなんだから、あまり、期待しないでもらえると、その…」

提督「もちろんです。初めて旗艦を務められる方が、最初から完璧にできるとはあまり思えませんし…。ですがそれでも期待してますよ。曙さんなら、

   頑張れると信じてますから」

曙「…ええ、任せといて」

293: 2015/10/15(木) 21:47:42.89 ID:wOK9GAWt0
 ―21時過ぎ、鎮守府近海―

ザザザザザザザ

曙「えーっと…向こうの資源国にはフタゴーマルマル(25時00分=1時00分)に着くようにしないとね」

漣「え?それってつまり片道4時間、往復で8時間って事?」

朧「いや、帰りは多分時間がかかるだろうから、大体10時間ぐらいじゃないの?」

潮「それじゃ、帰るの朝になっちゃうね……」

曙「やれやれ…ま、やれるだけの事はやりましょ」


 ―24時前―

ザザザザザザザ

漣「むぅ……流石に眠くなってきた…」

曙「大丈夫?しっかりしなさいよ」

漣「ご心配なく!こんなこともあろうかと、コーラを持ってまいりました!」

朧「それってペプ○?それともコカ・○ーラ?ペ○シは嫌だな…」

漣「コ○・コーラの方ですよ?朧も飲みます?」

朧「もちろん!」

漣「潮は?」

潮「よ、よろしければ…いただきたいです」

漣「オッケーオッケー!飲んじゃっていいよ!」

曙(あれ?)

朧「んぐっ、んぐっ…ぷはぁ。コーラの炭酸が喉で弾けていい感じ…」

潮「はぁぅ……美味しい」

漣「ごくごくっ、ん~!美味しい!」

曙「あ、あれー?」

漣「ご心配なく!曙の分も用意してありますよ!どうぞ!」スッ

曙「あ、ありがと―あれ?空?」

294: 2015/10/15(木) 22:00:15.81 ID:wOK9GAWt0
漣「あ、間違えて曙の分まで飲んじゃった!ごめーん、テヘペロ♪」

曙「…………………………………………………」

漣「ちょ、待って待って!冗談冗談!ちゃんと曙の分もありますって、はい!だから撃たないで!撃たないで!!」

曙「まったく……いただきます」プシュッ

ゴクゴク

曙「………ふぅ」


 ―1時過ぎ、資源国・港―

曙「本日は、私達四人が貴方たちの船団を護衛させていただきます」

船員「ほぉ~…君たちみたいな小さい子も艦娘で戦場で働くのか~…」

朧「いえ、アタシたちは見た目は子供ですけど、実際は大人より力が強いですよ?」

船員「なるほどねぇ~…でもま、見た目だけじゃわからんなぁ」

漣「あ、じゃあ船員さん。漣と腕相撲でも―」

潮「あははは…ごめんなさい、気にしないでください」

船員「?」


 ―4時過ぎ、海上―


曙「なんだ、敵なんていないじゃない」

朧「肩透かしだったね…けど、敵と会わなくてラッキーだったかも」

漣「まったくですよ。会ったら会ったでイヤな事になりますし」

潮「あ、あの…」

曙「ん?どうかした?」

潮「前方の赤い光…なんだろ…」

漣「?ビルの光とか船の光とか?」

曙「いや……あれは……」

朧「?」


曙「雷巡チ級elite…!」


295: 2015/10/15(木) 22:13:34.94 ID:wOK9GAWt0
朧&漣&潮「!」

朧「あーん、会わないでよかったって言った矢先にこれ!?」

漣「ヤバス……タンカーは2隻だから、輪形陣で守れなくはないですけど……」

潮「日の出まではまだ時間があるから空母が来る可能性は低いし……」

曙「夜明けまでには倒さなきゃいけないって事ね…!潮、アンタは船団の護衛を徹底、朧と漣は戦闘準備。一応、タンカーの横についていて、

  私の合図で攻撃できるように準備をしておいて」

朧「了解。ソナーだと潜水艦の反応は無しっと」

漣「電探によると、敵艦は雷巡チ級elite一隻、駆逐ロ級eliteが2隻だけ、はぐれ部隊かな?」

曙「ラッキーね。最低でも3対3じゃない!朧、漣、行くわよ!」

朧「了解!」

漣「キタコレ!」

曙「先攻は私よ、いっけぇ!」バシューン

10cm連装高角砲+61cm四連装(酸素)魚雷カットイン!!

ズッドオオオオン

駆逐ロ級elite「!!!」撃沈

曙「よし!」

朧「油断は禁物よ、曙!次は向こう―!」

雷巡チ級elite「!」バシューン

6inch連装速射砲+21inch魚雷後期型 カットイン!

ボゴオオオン

漣「あぶなす!」中破

曙「漣!?」

漣「やられたらやり返す、倍返しだ!!」ドォン!ドオオン!

10cm連装高角砲 連撃!

ボッゴオオオオオン!!!

雷巡チ級elite「!?」撃沈

漣「Yeah!!」

朧「後はアタシだけって事ね!えーい!」バシュッ

61cm四連装(酸素)魚雷 発射!

296: 2015/10/15(木) 22:24:18.49 ID:wOK9GAWt0
バゴオオオオオン

駆逐ロ級elite「!?」撃沈

曙「よし、全艦撃沈!潮、タンカーの方は無事!?」

潮「は、はい!何とか大丈夫です!」

曙「じゃあ、さっさとこの海域からおさらばしましょう!」

漣「あー……服がボロボロ…なんも言えねぇ…」

朧「大丈夫?それにしても、潮をタンカー護衛に徹底させたのはどうして?」

曙「潮は不測の事態には即座に対応できない性格だから、今回みたいに急に会敵、しかも夜じゃ反応しづらいからね」

潮「そうだったんだ…ごめんなさい」

曙「大丈夫よ。それより、私達が戦っている中でタンカーをよく守ってくれたわね。ありがとう」

潮「う、うん!」

漣(イイハナシダナー)


 ―8時過ぎ、執務室―

提督「なるほど、そんな事が…」

朧「曙の英断で、何とかなったんだよ」

曙「ちょっ、褒めても何も出ないわよ!?」

提督「では、これからは曙さんに旗艦を任せましょうか」

潮「いいと思います」

朧「さんせー」

曙「やめなさいよこのクソ提督!!」


 ―同時刻、入渠ドック―

漣(入渠しながら食べる間宮アイス……圧倒的…っ!圧倒的安らぎ…っ!!)


【終わり】

302: 2015/10/16(金) 21:15:03.53 ID:/ZjRX09A0
 ―6時、軽巡洋艦寮・川内&神通の部屋―

ピピピッ、ピピピッ

神通「…………」ムクッ

ピッ

川内「くか~…くお~……」

神通「……………」シュルッ、パサッ

川内「夜戦~……むにゃむにゃ…」

神通「……………」スッ、バサッ

川内「大勝利~………ぐおおお…」

神通「……探照灯照射まで、3、2、1―」

川内「起きるよ神通!!」ガバッ

303: 2015/10/16(金) 21:22:15.94 ID:/ZjRX09A0
【神通さん】

 ―9時前、執務室―

神通「それでは提督、数日の間ですが、秘書艦として頑張ります」ペコリ

提督「ええ、よろしくお願いいたします」

神通「早速ですが、本日の予定を…」

提督「はい、今日の予定なんですが―」

ペラペラペラペラ

川内「はえ~…なんかやり慣れてる感がすごいね、神通」

提督「そりゃそうですよ。神通さんは、私の艦隊で最初の軽巡洋艦ですから」

川内「え、そうなの?」

神通「ええ、私が最初でしたね、確か……」

提督「神通さんが来たことで、戦闘が幾分か楽になりましたからね……」

川内「ねえねえ、神通が来たときってどうだった?」

提督「どうって言われましても……今と大して印象は変わってないような…」


 ―約4年前、執務室―

神通「軽巡洋艦・神通です。どうか、よろしくお願いいたします」

提督「軽巡洋艦……ですか」

吹雪「駆逐艦の私より、装甲も火力も高い艦です」

提督「なるほど……では、神通さん。この鎮守府の事とかをいろいろ学んでもらうために、少しの間秘書艦をお願いしてもよろしいでしょうか?」

神通「へっ、いえ、そんないきなり……」

提督「大丈夫です。私が教えてあげますので」

神通「で、では…お願いします」

304: 2015/10/16(金) 21:32:50.87 ID:/ZjRX09A0
提督「まあ、最初はおどおどした感じでしたけど、しばらくしたらとても優しい方だという事が分かりました」

川内「あー、まあ確かにそうだねぇ。神通は見た目通りと言うかなんというか、優しいからね。……今朝私の事無理やり起こしたけど」

神通「あれは目覚ましが鳴っても起きなかったからでしょう……」

提督「まあ、訓練の内容によく難癖…いえ、アドバイスを受けましたね」

川内「え?やっぱり?」


 ―神通着任から数日後、執務室―

神通「あの、提督」

提督「はい?」

神通「今日の駆逐艦の子たちの訓練メニューですけど、少し緩めではありませんか?」

提督「緩め、とは?」

神通「いえ、この時間でやる内容が少々少なめですし、その内容もすぐに会得できるようなものばかりです…」

提督「確かにそうですが、駆逐艦の子たちにも相応の体力と言うものがありますし、きちんと学習して覚える事も大切ですから。それを考慮して、

   このメニューにしたんです」

神通「ですけど……」


提督「…と言った感じに」

川内「あー…今と大して変わんないね」

神通「お恥ずかしいです…あの時は、新参者でありながら、口をはさんでしまいまして……」

提督「いえ、新人の目線でものを指摘してくれるというのはありがたいですから」

神通「でも…それで、提督と衝突してしまった事もありますし…」

川内「物理的に?」

提督「比喩表現に決まってるでしょう」

305: 2015/10/16(金) 21:43:50.84 ID:/ZjRX09A0
 ―神通着任から1週間後、執務室―

神通「どうしてわかってくれないんですかっ」

提督「いえ、貴女の言う事も分かりますけど、私は駆逐艦の子たちの事も考えてですね……」

神通「私だって、駆逐艦の子たちの事を考えて言っているんです!少ないメンバーで、いかに深海棲艦と対等以上に戦えるかを…。そして、

   そのためにどう訓練すればいいのかを提案しているんです!」

提督「どれだけ時間を掛けることになろうとも、駆逐艦の子たちが理解できるように教えていくべきだと私は考えているんです」

神通「もう……分かりました、失礼します」

バン

 ―数分後、休憩室―

神通「はぁ……あの提督は、少々甘いです」

吹雪「神通さん?」

神通「あ、吹雪ちゃん……どうしたの?」

吹雪「それは私のセリフです、神通さんの方こそどうかしたのですか?」

神通「?」

吹雪「顔が少し赤いですし…それに、何かイラついているようにも見えますし…」

神通「あ、すみません…。そう見えましたか?」

吹雪「ええ…」

神通「実はですね……」

かくかくしかじか

吹雪「はぁ……訓練のメニューが、緩い、ですか」

神通「新人の私から見ても、緩いようです。もう少し、あの時間であれば何かできると思ったのですが…」

吹雪「……うーん…神通さん」

神通「はい?」

吹雪「これは、私個人の見解なんですけど……」

神通「?」

306: 2015/10/16(金) 21:52:47.65 ID:/ZjRX09A0
吹雪「司令官は、おそらく自分の過去に経験したことを活かして、私達の訓練を緩くしたんだと思います」

神通「……はい?」

吹雪「えっと…詳しくは私の口からは直接言えませんが、司令官は海軍に入る前、働いていた職場で理不尽な目に何度も遭っていたんです。ですから、

   多分そこに思うところがあって、訓練の内容を薄めたんだと思います」

神通「海軍に入る前に?」

吹雪「ええ。司令官、自分の過去の事はあまり話さない主義らしくて……」

神通「……………そうだとしたら…少し、私は言いすぎたかもしれません…」

吹雪「でしたら、早めに謝った方がいいですよ」

神通「ですけど……許していただけるのでしょうか……。提督、厳しそうなお方ですし…」

吹雪「大丈夫です。司令官は、本当は凄く優しい方ですから」

神通「?」


 ―20時過ぎ、執務室前―

神通(結局、謝るのが怖くて夜になっちゃった……)

神通(でも、謝らなければ…)

コンコン

提督『はい?』

神通「私、です。神通です…」

提督「どうぞ、お入りください」

ガチャ

神通「失礼します…」

提督「どうかしましたか?」

神通「……謝りに、伺いました?」

提督「謝る?」

神通「…昼に、提督の作成した駆逐艦の訓練メニューについて、あれこれ難癖をつけた上に、提督に取るべきではない態度を取ってしまって、

   申し訳ございませんでした」

提督「…ああ、あの事ですか」

神通「…………」

307: 2015/10/16(金) 22:05:55.06 ID:/ZjRX09A0
提督「別に、怒ってはいませんよ。むしろ、嬉しく思っております」

神通「へ?」

提督「神通さんは、私の固執した形の訓練メニューについて、意見してくれました。それで、私の気付かないような事にも気づかされました。

   ありがとうございます」

神通「あ、どうも………」

提督「…神通さんは、艦娘になる前の過去の経験から、厳しくしようとしたんですよね?」

神通「…はい」

提督「………世の中には、『過去に自分がされて嫌だったから、相手にも同じことをして鬱憤を晴らす人間』と、『過去に自分がされて嫌だったから、

   相手には同じことをしない人間』の2通りがいます。神通さんは前者に近いですね。貴女の目的は、鬱憤を晴らす事ではありませんし。まあ私は、

   後者ですけど」

神通「あ、もしかしてそれは前の職場での経験、ですか?」

提督「…知っていたんですか」

神通「吹雪ちゃんから、そんな感じの経験をした、と言うのは聞いています」

提督「……確かに、私は過去に理不尽な経験を受けました。ですから、皆にはそのような経験をしてほしくない、と考えて、緩いメニューにしました。

   単なる私のエゴ、と受け取っていただいても構いません」

神通「いえ、そんな事は……」

提督「ただ、かつての私みたいに、心がボロボロになり、人を信じなくなるような事にはならないでほしい、と。それだけは願っています」

神通「……………」

提督「話を変えて、神通さんは今回の一件で意見をしっかりと言える芯の通った人だという事が分かりました」

神通「あ、ありがとうございます」

提督「これからも、私のそばでよろしくお願いいたします」ニコ

神通「!!!////」


神通「………………///////」

川内「神通?どうかしたの?顔紅いよ?」

神通「い、いえ…!!別に、そんな事はありません!」

提督「…まあ、深くは尋ねませんが。それより、書類整理に入りましょう」

神通「は、はい!」

川内「がんばれ~」

神通(思えば……私は、あの時の提督の笑顔を見て、好きになってしまったのですね……)


【終わり】

308: 2015/10/16(金) 22:10:00.84 ID:/ZjRX09A0
【キャラクター紹介】

≪神通≫

川内型軽巡洋艦二番艦。艦娘No.47(改二はNo.159)。物静かな雰囲気とサムライのような改二姿が特徴的な、優しいお姉さん。しかし、訓練の時は鬼。

真面目な性格で、仕事もそつなくこなし、意見は真っ直ぐに言うタイプ。斑提督の鎮守府に最初に着任した軽巡洋艦で、駆逐艦の子たちの訓練メニューが、

緩い事を提督に指摘したが、その過程で提督の過去を知ることになる。そして、提督のある言葉と笑顔によって惚れた。結構一途。

好きな言葉は『質実剛健』。

314: 2015/10/17(土) 21:11:36.26 ID:iwNHuZk+0
 ―16時過ぎ、北海道・小樽第鉢拾伍鎮守府、執務室―

コンコン

小樽鎮守府提督(以下手稲)「はい」

響「失礼するよ、司令官」ガチャ

手稲「おや、お帰り。響」

響「遠征から帰って来たんだ。この時期になると、やっぱり寒くなってきたよ」

手稲「そうか、もうそんな季節になりましたか…。じゃあ、今日の夕飯は鍋にでもしてもらいましょうか」

響「そうだ、司令官に贈り物があるんだよ」

手稲「私に?いったい何かな?」

響「漁港のおじさんから、カニとかタコとか魚介類をもらったんだ」スッ

手稲「え、本当?ちゃんとお礼は言った?」

響「当たり前だろう」

手稲「そうか……そうだ」

響「?」

315: 2015/10/17(土) 21:17:09.81 ID:iwNHuZk+0
【北の国から】

 ―16時半過ぎ、関東・東京第壱鎮守府、執務室―

ジリリリリリン

提督「はい、第壱鎮守府提督です」

手稲『あ、斑提督。お久しぶりです、手稲です』

提督「おや、手稲さん。お久しぶりです。提督会談以来でしょうか」

手稲『そうですねぇ。あの時はお世話になりました』

提督「ところで、何か御用でしょうか?」

手稲『ああ、そうでした。実はですね、魚介類が偶然的に手に入ったんですよ。それも、旬の』

提督「?」

手稲『よろしかったら、視察もかねてウチに食べに来ませんか?』

提督「…正直、視察を望んでいる提督と言うのも珍しいと思いますが…」

手稲『どうしますか?』

提督「…分かりました。そろそろ、そちらの方の鎮守府も視察しなければと思っていたので、ちょうどいい機会です。2~3日後に、そちらへ伺います。

   詳しい日程が決まりましたら、また後日ご連絡します」

手稲『はい。では、また後日』

提督「はい、それでは」

ガチャン

提督「……ふむ、北海道か」


 ―19時過ぎ、食堂―

司令長官「視察なんでしょ?行って来ればいいじゃない」

提督「確かにそうなんですけど、北海道ともなると、日帰りで帰るのは少々難しいんです」

長門「なんだ?旅行にでも行くのか?」

提督「長門さん…。いえ、旅行ではありません。視察ですよ」

316: 2015/10/17(土) 21:24:08.33 ID:iwNHuZk+0
長門「私用ではない、と?ならば、貴様のいない間、鎮守府は私に任せておけ」

提督「…よろしいんですか?」

長門「ああ、ドンと任せておけ」

提督「では、お願いします」

司令長官「でも、北海道か~。もう今の時期になると、海も荒れるし、寒いんでしょ?」

提督「それが問題なんですよ…。船は使えませんし…飛行機しかないですから。それと、同伴させる艦娘の方も、寒さに強ければなりませんし……」

司令長官「寒さに強い艦娘と言えば……」

長門「…響か、阿武隈か…」

司令長官「まあ、そんな感じだよねぇ」

提督「さて…どちらを連れていくか…」


TV『ロシアのメドブェージェフ大統領は、北方領土を視察する旨を日本政府に伝え―』


提督「阿武隈さんにしましょう」

司令長官&長門「それがいいね」


 ―数日後、飛行機内―

阿武隈「提督、怖い!怖い!」

提督「だったら何で窓際の席にしたんですか」

阿武隈「え、だって……空綺麗じゃない」

提督「まったく……」

阿武隈「それより、これから行く鎮守府って、北海道にあるんだよね?」

提督「ええ、北海道の小樽にあります。以前、私の鎮守府に提督会談で来た方ですよ」

阿武隈「そんな事言われても、あたしはその日遠征だったんだもん。分からないよ」

提督「まあ、会ってみた方が早いですからね」

阿武隈「……ところで、言われた通り着替え持ってきたけど…もしかして、お泊り?」

提督「そうですね。そりゃ、北海道へ行って日帰りで帰るのは、難しいですから」

阿武隈(提督と2人っきりで旅行……きゃー!)

317: 2015/10/17(土) 21:31:00.14 ID:iwNHuZk+0
 ―数時間後、小樽駅前―

阿武隈「……寒っ」

提督「やはりこの時期になると、こっちの方は寒くなりますね」

手稲「あ、斑提督」

提督「手稲さん。出迎え、ありがとうございます」

手稲「予定より早かったですね」

提督「飛行機が良くも悪くも早く着いてしまって、1本前の列車に乗ってこれたんです」

手稲「まあ、積もる話はウチの鎮守府で話しましょう。さ、どうぞ」

提督「失礼します」

阿武隈(うわぁ、この提督、車運転できるんだ~)


 ―数分後、鎮守府前―

手稲「さ、着きましたよ」

阿武隈「やっぱり車から降りると、寒い……」

手稲「中に入ったら、お茶でもお出ししましょう」

阿武隈「って、あれ?ドアが二重になってる」

提督「北海道の方では、玄関を二重にして、中に寒い空気が入らないようにしてるんですよ」

阿武隈「へぇ~、そうなんだ……」

手稲「さ、どうぞ中へ」ガラガラ


 ―食堂―

阿武隈「はぁ~…落ち着く~…あったまる~…」

提督「ふぅ。緑茶は美味しいですね」

響「あ、東京の鎮守府の人かい?」

阿武隈「あ…こっちの響ちゃんか。初めまして、阿武隈です」

提督「どうも、斑です」

響「外は結構寒かったかい?」

阿武隈「もう、寒かったよ~…。まだ10月だっていうのに、12度?東京よりも寒いって!」

響「え、12度もあるんだ。今日は結構暖かい日だね」

阿武隈(出たー、北海道人の気温ボケ出たー)

319: 2015/10/17(土) 21:39:24.59 ID:iwNHuZk+0
手稲「お待たせいたしました。さ、参りましょうか」

提督「では、視察させていただきます」

手稲「阿武隈さんはどうしますか?」

阿武隈「あ、あたしも付いていく!」

手稲「では、行きましょう」


 ―廊下―

阿武隈「あれ…?なんか、床があったかい…」

手稲「この鎮守府は、床全体に温水パイプが張り巡らされているんですよ」

阿武隈「???」

提督「入渠ドックや浴場の温水をただ捨てるのではなく、タンクに貯めて、床下のパイプに送っているんです。それで、床が暖かいんですよ」

阿武隈「へぇ……ね、ウチの鎮守府でも―」

提督「これ、北海道の鎮守府でのみ敷設が許されているんですよ」

阿武隈「」ガーン

手稲「まあまあ、東京の冬なんてこちらの冬に比べたらずっと暖かいですって」

阿武隈「ふぇぇ…寒いのは嫌だもん…」


 ―艦娘の寮―

提督「皆さん、静かですね……」コツコツ

手稲「ええ。今日は海も荒れていますから、出撃は控えているんです。おそらく、皆さん寝ているんでしょうね」コツコツ

阿武隈「え、海荒れていたっけ?」

手稲「近海はそれほど問題はないのですが、あまり外の方に行ってしまうと、海が荒れてまともに進めないような状態なんです」

阿武隈「あ、そう言えば冬の海は荒れやすいって、聞いたかも」

手稲「まあ、近海の哨戒のために何人かは待機状態ですが、こういう日は漁師が近海で漁をしてるんです。それの邪魔をしないように、

   出撃は控えているんですよ」

提督「なるほど……」

阿武隈「へぇ~…やっぱり北の方じゃ、勝手が違うんだね…」

320: 2015/10/17(土) 21:45:57.63 ID:iwNHuZk+0


 ―工廠―

ゴゴゴゴゴン

明石「あ、提督…と、司令長官の補佐官さん?お疲れ様でーす!」

手稲「お疲れさま、明石」

駆逐艦たち「こんにちは~!」

手稲「ああ、皆静かだなと思ったら、ここにいたんですか」

明石「いやぁ、ここは冬でも暖かいですからねぇ~」

阿武隈「ふわぁ~…確かに暖かい~……そして油臭い~……」

提督「やはりどこの鎮守府も、同じですね…」

手稲「ははは、まあ工場なんてそんな感じですよ」

明石「失礼だなぁ~。それじゃまるで、私がいつも油臭いって言ってるようじゃないですか~」


 ―入渠ドック―

手稲「おそらく、他の方たちは浴場で風呂に入っているんでしょうね。浴場は24時間開放していますから」

阿武隈「お風呂か…入りたいかも」

手稲「でしたら、後で入っていただいても構いませんよ?」

阿武隈「い、いえいえ!そんな、悪いですって!」

手稲「大丈夫ですよ。貴女も同じ艦娘。艦娘は皆仲間ですから」

阿武隈「…では、お言葉に甘えさせて後ほど……」

提督「私も風呂に入りたかったのですが…」

手稲「では、近くにいい温泉がありますから、そちらに後ほど行ってみますか?」

321: 2015/10/17(土) 21:54:55.78 ID:iwNHuZk+0
 ―19時過ぎ、食堂―

間宮「はーい!今日は、漁師の皆さんのご厚意でいただいた魚介類を使った鍋で~す!」ドサッ

皆「おお~…」

提督「これは、すごいですね…。カニ、エビ、イカ……」

阿武隈「ふわわ……すごい、こんなの、東京の鎮守府じゃ見たことないよ…」

手稲「さあ、暖かいうちに召し上がれ」

提督「では、いただきます」

阿武隈「い、いただきます!」

パクッ

阿武隈「…涙が出るくらい、美味しい…」

提督「さすが、本場は違いますね」

手稲「いかがでしょうか?」

提督「本当に、美味しいですね」

手稲「それと、視察の方は?」

提督「特に問題はありませんでしたね」

手稲「まあ、これから先は出撃も遠征もほとんどできなくなってしまいますし…」

阿武隈「え?」

手稲「さっき、言ったでしょう?冬の海は荒れやすいって。雪もひどくなっていきますし、荒れる度合いもどんどん強くなっていきます。ですから、

   艦娘の出撃も遠征も、困難になっていくんですよ。1カ月に2~3回出撃できればいいくらいで…」

阿武隈「え、そんなに!?」

手稲「それと、鎮守府の雪かきもしなければいけませんし、出撃のできないときは、市場の雪かきなどをして、ボランティアをしています」

提督「まあ、私達総司令部も北国の事情は把握しておりますので、北海道の鎮守府には冬の間は多めに資金援助をしているんです」

阿武隈「はぇ~……北国って、避暑には最適だと思ったけど、冬は大変なんだね…」

手稲「分かっていただいて嬉しいです。…それより、お二方はこれからどうします?」

提督「私達はホテルを取っていますが…」

阿武隈「!!」

手稲「おや、よろしければウチに泊って行っては?」

阿武隈「」

提督「しかし、ホテルのキャンセル料が勿体ないですし…」

手稲「そうですか……分かりました」

阿武隈「」ホッ

※その夜、ホテルでは別にやましい事はありませんでした。


【終わり】

322: 2015/10/17(土) 21:58:50.90 ID:iwNHuZk+0
【キャラクター紹介】

≪手稲 功(ていね いさお)≫

北海道・小樽第鉢拾伍鎮守府提督。そして、北海道地方代表提督。性格は丁寧で物腰が低く、聡明な容姿だがどこかポヤンとした感じである。生まれは、

北海道だが訛ってはいない。雪国育ちであるためか、関東の気温の高さには驚き、北海道の気温の異常な低さには大して驚かない。その優しい性格ゆえに、

鎮守府の皆からは大いに信頼されている。冬の間はほとんど出撃や遠征、演習を行わない。というか行えない。嫁艦は響。

好きな言葉は『蛍雪の功』。

328: 2015/10/18(日) 21:38:29.68 ID:wrWnprCZ0
【衝突】

 ―10時過ぎ、執務室―

提督「最上さんと三隈さんが衝突?」

大淀「はい…先ほど、第一艦隊から入電が入りました…」

提督「会敵してもいないのにですか?」

大淀「はい」

提督「大破?」

大淀「ええ」

提督「撤退させなさい」


 ―数時間後、執務室―

提督「まったく、身内同士で衝突して撤退とは、笑えませんよ」

三隈「申し訳ございません…注意はしていたのですが、気が付いたらモガミンがすぐ近くにいて…」

提督「と言うか、貴女たちって鎮守府の中でもよく衝突するじゃないですか。この前だって…」


 ―数日前、廊下―

三隈「らんらららんらんらん♪」

ドカッ

最上「あたっ!?」ドサッ

三隈「あらっ!?」ドササッ

最上「あたたた…あれ、三隈?」

三隈「まあ…モガミン、お怪我は!?」

最上「いや、大丈夫だけど……」


 ―昨日19時過ぎ、食堂―

三隈「あら、今日は鮭の塩焼きがあるのですね」

最上「ちょっと!?」

三隈「あっ…」

ガッシャーン

329: 2015/10/18(日) 21:45:12.40 ID:wrWnprCZ0
提督「何度目ですか」

三隈「ええっと…まあ、結構ありますわね…」

提督「最上さんも、しょっちゅう三隈さんとぶつかってけがをするようじゃ体が持たないでしょう」

三隈「私もそう思って、何度も注意しているのですが、それでもぶつかってしまうのです…」

提督「……一度、三隈さんと最上さんは行動を別々にした方がいいかもしれませんね」

三隈「えっ!?」

提督「これまでは一応、色々やりやすいように遠征や出撃では同じ艦隊にしてましたけど、こうも同じことが何度も起こってしまうと、

   見直す必要がありますし」

三隈「ま、待ってください!」

ガチャ

最上「あれー?どうかしたの?」

提督「最上さん…それが、三隈さんが何度も最上さんとぶつかってしまう事が、どうも頻発してしまっているので…」

最上「あー、あれ?三隈が勝手にこっちに向かってくるんだよ」

提督「……え?」

三隈「あっ」

最上「さっきの出撃の時だって、ボクはちゃんとまっすぐ進んでいたのに、三隈の方がこっちに向かって曲がって来たんだもん。この前の廊下だって、

   ボクはちゃんと回避行動をとったんだけど、三隈が勝手に寄りかかって…」

提督「……………………」チラッ

三隈「」プイッ

提督「……………………おい」

三隈「てへっ、ですわ☆」


【終わり】

330: 2015/10/18(日) 21:49:04.76 ID:wrWnprCZ0
【キャラクター紹介】

≪三隈≫

最上型重巡洋艦及び航空巡洋艦二番艦。艦娘No.116(改二はNo.117)。どこかのんびりとした雰囲気が特徴の、少し不思議系なお姉さん。最上と仲が良く、

よく行動を一緒にしている。しかし、気が付いたらなぜか衝突してしまっている。実は確信犯。また、変なあだ名をつける事に定評があり、自らの事を、

‶くまりんこ‶と呼んでは皆をドン引きさせる。自慢の主砲をよく別の人に使われるのが少し困っている事。

好きな言葉は『好きこその物の上手なれ』。

335: 2015/10/20(火) 21:21:07.84 ID:KW+yITlv0
 ―9時前、執務室―

提督「では、長門さん。本日私は、別の鎮守府へ視察に行きますので、留守の間は鎮守府の事をよろしくお願いいたします」

長門「分かった、任せておけ」

提督「一応、本日片づけておくべき任務と仕事は、こちらにリストアップしてありますので、こちらを参考にしてください」スッ

長門「よし、確認しておこう」

提督「さらに、演習・出撃の編成はあらかじめ指定しておりますが、何か緊急事態が発生いたしましたら、私に連絡をしてください。そして、

   私が戻ってくるまでの間は、臨機応変な対応を心がけてください」

長門「大丈夫だ、私はビッグセブンだぞ?」

提督「はい、ではよろしくお願いいたしますね」

337: 2015/10/20(火) 21:30:47.69 ID:KW+yITlv0
【ビッグセブンの長門】

 ―十数分後、鎮守府外・歩道―

提督「本日は、大洗第壱拾壱鎮守府へ視察に向かいます」

榛名「はい、分かりました。…ところで、提督」

提督「はい?」

榛名「提督は、視察などで鎮守府を空ける際に、長門さんに提督業を任せておられますよね?」

提督「そうですね…大体は長門さんに任せています」

榛名「なぜ、長門さんに?」

提督「長門さんは、提督業を行う上でのノウハウをほぼ把握しているからですよ」

榛名「ノウハウ?」

提督「はい。彼女が着任した時、私は直感で『この人は真面目で頼りになる』と感じましたので、念のために彼女に提督業のノウハウを教えたのです」

榛名「そのノウハウは、長門さんにだけ?」

提督「いえ、他に加賀さんや妙高さんにも教えましたが、彼女たちは今日休みでしたので」

榛名「陸奥さんは?陸奥さんは、長門さんの妹ですし、同じビッグセブンの1人ですよ?」

提督「ああ、彼女にも教えようとしたんですが……」

榛名「?」

提督「彼女、運が低くてよくドジを踏む上に、私を誘惑してくるので、提督業どころではないと判断してやめました」

榛名「……ああ」


 ―同時刻、執務室―

陸奥「くしゅっ」

長門「ん?どうかしたか、陸奥?風邪か?」

陸奥「いえ……多分、どこかの誰かさんが噂話をしているのかしらね?」

長門「まあいい。それより、そっちの書類を取ってくれないか。そこの、資材のグラフが記載されているヤツだ」

陸奥「分かったわ、提督代理」フフッ

長門「頼んだぞ、秘書艦・陸奥」フッ

338: 2015/10/20(火) 22:17:58.39 ID:KW+yITlv0
※PCが突然Windows10へのアップデートを開始してしまいましたので、別のPCで投下しております。
  IDが違っていると思いますが、ご了承ください。

 ―十数分後、電車内―

ガタン、ゴトン

榛名「しかし、提督が長門さんを一目見て頼りになりそうと感じたのも、わかります」

提督「と言いますと?」

榛名「私も、長門さんがどれだけ頼りになるかというのは、分かっております」

提督「?」

榛名「以前、北方海域全域を長門さんの艦隊で攻略していた時の話なんですけど…」


 ―1年前、北方海域全域・Eマス(深海棲艦北方艦隊中枢)―

ズッドオオオオオオオン

榛名「きゃああああああああああっ!?」大破

長門「榛名!!大丈夫か!?」

榛名「はい……何とか……ですけど、主砲はもう使い物になりませんね…」

ドオオオン

長門「くそう……あと少しで敵を倒せるというのに…」

榛名「申し訳ございません…私が力不足なせいで……」

長門「気にするな、榛名。私の後ろで、じっとしていろ」スクッ

榛名「へ?」

長門「お前は私が、命に代えても守ってやる。それほどの価値があるのだから」フッ

榛名「!!」

長門「行くぞ!哀れな深海棲艦ども!!」ガシャン


榛名「それで、長門さんの奮戦により、無事海域は攻略できました」

提督「あの時の攻略でそんなドラマが……」

榛名「あの時の長門さんの頼もしさといったら、それはもう…」

提督「長門さんが主役で映画が1~2本は作れそうですね」


 ―同時刻、執務室―

長門「であるからして―くしゅっ」

神通「長門さん?風邪でしょうか?」

長門「いや、気にするな。たぶん誰かが噂話をしているのだろう。それより、続けよう。では、神通」

神通「はい」

長門「これより、神通率いる第一艦隊はキス島沖へ出撃。再集結しつつある深海棲艦の残党を討伐し、新勢力発生の可能性を排除するように」

神通「わかりました」

長門「神通、お前の真面目さと堅忍不抜の精神は重々承知している。お前が任務を遂行できると、信じているよ」

神通「…ご期待にこたえられるよう、がんばります!」

339: 2015/10/20(火) 22:29:18.94 ID:KW+yITlv0
 ―電車内―

提督「まあ、長門さんが主人公で映画が作れる、という話はあながち冗談でもないのですけどね」

榛名「?」

提督「知っての通り、長門さんは世界に誇れるビッグセブンの1人です。そして、その異名を名乗るにふさわしい主砲と装甲を備え持っております」

榛名「それは、もう出撃や演習でわかっております」

提督「戦時のかるたの1つにも、長門さんと陸奥さんの句があったらしいですし。まさに、日本の誇りと言える艦ですよ。長門さんは」

榛名「そこまでとは……」

提督「しかし、その最期は悲惨なもので、アメリカの核実験の実験台にされました……。しかし、長門は誰にも看取られることなく、夜にひっそりと、

   沈んだらしいです」

榛名「……………」

提督「最期の一時もまた、切ないものでしたね…。その最期の記憶のせいか、前にアメリカの海軍司令長官が訪問した際に、彼がアメリカ人と分かった途端、

   長門さんは暴走しかけましたから」

榛名「アメリカ……?」コォッ

提督「それは置いといてください。ともかく、長門さんの経歴は映画を作れるにふさわしいもの、というわけです」


 ―同時刻、執務室―

大淀「長門提督代理!遠征艦隊から、南西諸島付近で敵艦隊と会敵、押されているとの入電が…!」

長門「敵の艦隊編成は?」

大淀「ええと……戦艦ル級1、空母ヲ級1、軽空母ヌ級1、重巡リ級2、駆逐ロ級2です…!」

長門「陸奥、確か第二艦隊はまだ未編成状態だったな?」

陸奥「ええ、第二艦隊はまだ誰も配置されていないわ」

長門「では、金剛、瑞鶴、高雄、足柄、夕立、飛鷹を第二艦隊に編成し、ただちに南西諸島海域へ出撃させよう。大淀、遠征艦隊の現在の座標は?」

大淀「ええと、はい。判明しております」

長門「陸奥、さっき言った6人を呼びだすんだ。そして、武装を整えた後でただちに指定した座標へ出撃させる」

陸奥「わかったわ」タタタ

340: 2015/10/20(火) 22:47:34.31 ID:KW+yITlv0
 ―数十分後、駅の外―

提督「長門さんの性格もまた、提督業に向いていました」

榛名「?」

提督「長門さんは常に冷静沈着、艦娘全員の事を信頼しております。それに加えて、私の事も信頼してくれていますから」

榛名「提督のことは、誰もが信頼していると思いますが…」

提督「それはまあ置いといて、冷静沈着という事は、提督に求められる性格といっても過言ではありません。さらに、長門さんはみなさんに対する気遣いも、

   完璧といえます」

榛名「?それは、なぜ?」

提督「たとえば、出撃前には艦隊の方々全員に激励の言葉を掛けてくれます。これはまあ、他の方も実践しているでしょう。ですが、作戦を遂行できず、

   途中で撤退してきたとしても、彼女は決して叱ったり怒鳴り散らしたりはしません。まして、責めるなどという事もしません。事情を聞いた後で、

   優しく、なおかつ力強く諭してくれます。これは、出撃や演習に限らず、普段の雑務でも同じです」

榛名「……………」

提督「長門さんは、私の理想とする上司に一番近いですね」


 ―同時刻、執務室―

長門「…………………」カリカリカリ

司令長官「長門君は本当に気真面目だね。もう朝からずっと連続で仕事をしているでしょ?」

長門「別に、これしきのこと。それに、提督も私の事を信頼してくれている。それに応えなければな」

司令長官「…長門君は、黎明君に信頼されて、悪い気はしない?」

長門「当り前ではないか。提督から大いに信頼されているとは、これほど嬉しい事もない」

司令長官「そうか…」

長門「ただ……私は女性として見られているのか、と最近考えるようになったのだ」

司令長官「?」

長門「確かに提督は、私の事を信頼してくれている。それは嬉しい。だがそれは恐らく、‶長門という提督業のあれこれを知っている頼れる女性‶を、

   信頼しているのだろう。そしてそれは、決して‶長門という女性そのもの‶を信頼しているのではない。そう考えているのだ」

司令長官(………黎明君は、決してそういう認識で長門君を見てはいないと思うけど、それは儂の口からは言えないね)

司令長官「それは……儂の口からは何とも言えないかな」

長門「わかっている。答えにくいような話をして申し訳ない」


 ―数分後、大洗鎮守府付近―

提督「ですが、信頼も度が過ぎると、本人にとってはプレッシャーになってしまいます。当人に対して大いなる信頼を抱きつつも、それを本人には、

   気取られないようにしなければいけませんからね」

榛名「…はい」

341: 2015/10/20(火) 22:56:54.13 ID:KW+yITlv0
提督「…ところで、前に青葉さんが、『長門さんはかわいいもの好き』というデマを流しましたよね?」

榛名「あ…そう言えばそんな事もありましたね…」

提督「あのデマ、合っているとも間違っているとも言えます」

榛名「?」

提督「可愛い物好き、という噂は、私の鎮守府の長門さんは当てはまらないんですよ。この前、食堂で……」


 ―数日前19時過ぎ、食堂―

TV『世界かわいいにゃんこ特集~!』パンパカパーン

提督「……長門さんは、このようなかわいい仔猫とかを見て、どう思いますか?」

長門「む?そうだな……心が安らぐ、癒される、そんな感じだな」


提督「大体こう返してきますから」

榛名「やはり、長門さんは大人な感じがしますね」

提督「艦娘というものは、大体鎮守府の雰囲気に流されて、性格が変化します。私は基本的に、真面目な鎮守府を心がけておりますので、

   長門さんも真面目なままでいられたのでしょう」

榛名「なるほど………」

提督「ですから、鎮守府の雰囲気がたるんでいて、それに流されてしまうと……」


 ―数分後、大洗鎮守府―

長門「くそぉ~♪巻雲はかわいいなぁ~!!」ナデナデナデ

巻雲「ふわぁ……長門さん…苦しいですぅ……」

長門「遠慮するなってぇ~…私の熱い抱擁を受けてみろぉ~♪」ギュウウウウ


提督「あんな感じに骨抜きにされます」

榛名「ウチの長門さんとは大違いですね……」


 ―12時過ぎ、東京鎮守府・食堂―

TV『わんにゃん赤ちゃん動物園~!!』ドンドンパフパフ

司令長官「いやぁ~…やっぱり動物の赤ちゃんって可愛いねぇ~。長門君もそう思わない?」

長門「そうだな……心が温まる、優しい気分になれるな」


【終わり】※一応艦娘は、自分と同じ艦娘がこの世に2人以上存在することを知っています。

342: 2015/10/20(火) 23:01:54.16 ID:KW+yITlv0
【キャラクター紹介】

≪長門≫

長門型戦艦一番艦。艦娘No.1。黒いロングの髪と、筋肉質な体が特徴のお姉さん。世界に誇れるビッグセブンの一員であり、その名にふさわしい主砲、装甲、

戦歴、艦歴を持っている。非常に気真面目で冷静沈着、艦隊の皆に対する気遣いも完璧と、非の打ちようがな無い完璧な性格。ただし、家事は少し不得意。

軍艦・長門の最期が悲惨であったせいか、アメリカが嫌い。提督曰く『理想の上司』。この鎮守府の長門はながもんではない。

好きな言葉は『不撓不屈』。

347: 2015/10/21(水) 21:13:20.57 ID:oWsMoVPs0
 ―10時過ぎ、執務室―

鈴谷「提督ぅ~」ガチャ

提督「どうかしましたか?」

鈴谷「提督宛のお手紙が届いてたよ」スッ

提督「私宛に?直接ですか…。分かりました、ありがとうございます」

鈴谷「じゃ、鈴谷は自分の仕事してるね~」ヒラヒラ

提督「はい。では、早速拝見……」ペラッ

鈴谷「~♪」カリカリ

提督「…………………」

鈴谷「~♪」カリカリ

提督「ふんぬっ!!」バシィ

鈴谷「!?ど、どうしたの!?」

提督「……読んでみればわかります」

鈴谷「?じゃあ、読んでみるね」ペラッ


第伍拾鎮守府提督&鳳翔「私達、結婚しましたので退役します♡」


鈴谷「」

348: 2015/10/21(水) 21:20:42.81 ID:oWsMoVPs0
【結婚は人生の墓場】

鈴谷「え……なにこれ?」

提督「結婚の報告、と」

鈴谷「カッコカリ?い、いやぁ~…カッコカリとはいえ大げさだねぇ~」

提督「ガチの方です。カッコガチ」

鈴谷「」

提督「ご丁寧に、辞表まで同封されていました。まったくもって不愉快です」

鈴谷「…………改めて読んでみよう」


※要約

 やあ、寒くなって来たけど元気?

 まずは報告から。鳳翔さんとケッコンカッコガチしました!

 だから、海軍を退役しますので、後の事はよろしく!

 詳細な事は、同封されている辞表を読んでね♪

 これからも深海棲艦と戦うの頑張って!


鈴谷「うわぁ……」

提督「…私達に深海棲艦との戦いに励むように言っておいて、自分は艦娘と結婚した上退役とは、なんとまあ、いけしゃあしゃあと…」

鈴谷「え、ちなみに辞表受理するの?」

提督「…真面目に書いてあるせいで、無下に却下する事ができないのが、また凄い腹が立ちます……。仕方ありませんが、受理しましょう」

鈴谷「なんなのこの甘々なツーショット写真…」

提督「あからさまに当てつけにしか見えないです」

349: 2015/10/21(水) 21:34:31.15 ID:oWsMoVPs0
鈴谷「と言うか、ケッコンカッコガチってできたんだ……」

提督「知っている人は知っているんです。カッコカリは業務上ですが、カッコカリは正式に、結婚する事になります」

鈴谷「ケッコンカッコガチって、カッコカリとどう違うの?」

提督「ケッコンカッコガチをすると、艦娘としての機能が失われます。つまり、艤装を装備する事、海の上を自在に移動する事ができなくなり、

   通常の人間と同様に、歳を取るようになります」

鈴谷「へぇ……ちなみに、どうやったらカッコガチできるの?」

提督「そう確か、海軍で支給及び酒保で売っている指輪ではない指輪を渡し、プロポーズをした上で夜の営みを行い、本物の婚姻届けにサインをすれば、

   結婚できるらしいです」

鈴谷「なんか……本当に人間らしい結婚だね……」

提督「そりゃ、カッコガチですから」

鈴谷「そんな事ができるんなら、皆すぐにやりそうだけど…」

提督「このケッコンカッコガチができる最大の条件は、練度がケッコンカッコカリ後の最大150…つまり艦娘の最大練度にならなければ行えません」

鈴谷「あ、そうなんだ?」

提督「当たり前でしょう。そんな条件を付けないと、練度が1の艦娘とでもケッコンカッコガチできる事になってしまいますし。艦娘と結婚するために、

   海軍に入るなんて輩も増えてしまいますから」

鈴谷「…その条件って、誰が作ってるの?」

提督「妖精さんです」

鈴谷「妖精さんの力ってスゲー。それより、練度が足りてない状態でケッコンカッコガチしようとするとどうなるの?」

提督「指輪が溶ける、婚姻届けが受理する前に燃やされる…などですね」

鈴谷「えげつない……そもそも、どうしてケッコンカッコカリなんてシステムがあるんだろ…」

提督「…そもそもケッコンカッコカリと言うのは、艦娘及び提督のモチベーションを上げるためのものなんですよ」

鈴谷「?」

提督「男性と女性が一緒の場所にいる以上、恋愛をするなと言うのは少々無理な話です。男性は、女性に興味を持ってしまう性なんですよね。女性には、

   あまり分かるような事ではありませんが……」

鈴谷「いや、何となくならわかるよ」

350: 2015/10/21(水) 21:50:17.52 ID:oWsMoVPs0
提督「鎮守府では、男性は提督、女性は艦娘と言う立ち位置になります。提督はある艦娘を好きになると、ケッコンカッコカリをするためにその艦娘の、

   練度を上げるために尽力し、艦娘の方は提督に振り返ってもらうために女性としての魅力を磨き、さらに戦果を挙げて自分に注目してもらう…。

   この繰り返しによって、鎮守府の戦力は整えられていくんです」

鈴谷「人間の欲望で艦隊が強くなっていくって、なんだか情けないね……」

提督「人間とは大体そんな感じです」

鈴谷「…話が戻っちゃう感じだけど…ケッコンカッコガチっていけない事なの?」

提督「いえ、別に悪い事ではありません。ただ、まだ深海棲艦との戦いは終わっていませんし、何よりさっきの手紙には、深海棲艦との戦のさなかに、

   私情で海軍を退役してしまう事に対しての後ろめたさがまったく見られない事が、とても腹が立つんです」

鈴谷「そう言えば…この手紙、ただ鳳翔さんのどこに惚れてどんな感じで結婚にまでこぎつけたのか、後は甘々なライフの事しか書いてないね…」

提督「この国の中には、ケッコンカッコガチできる状況にあっても、戦争が終わるまではケッコンカッコガチはしないという提督の方々もいます。

   そんな方々が戦争終結後に結婚しようものなら、私は喜んで祝福しますよ」

鈴谷「なるほどね……」

提督「こういう非常識な提督を見ていると、瑞理提督の方がまだマシに見えるんですよね。おかしな話です」

鈴谷「どうして?瑞理提督って、女たらしで提督嫌いだったでしょ?」

提督「確かに、あいつは艦娘全員とケッコンカッコカリする上に女性なら誰彼かまわずナンパするようなスケコマシですけど、前に一度、

   『ケッコンカッコガチは戦争が終わるまではしない』って言っていましたから。そこだけは評価します」

鈴谷「そう言えば……ウチの鎮守府って、まだ一人もケッコンカッコカリしてないよね」

提督「この鎮守府は、総司令部の仕事も兼務しておりますから、出撃などに身を入れる事が難しいんですよ。ですから、なかなか艦娘の練度は、

   上がりにくいんです」

鈴谷「そっか……なんか、色々聞いちゃってゴメンね」

提督「いえ、お気になさらず。では、仕事を続けましょう」

鈴谷「りょーかい!」

提督「……………ケッコン、私も考えるべきか…」ボソッ

鈴谷「!!」


 ―12時過ぎ、食堂―

鈴谷「…って事がさっきあってね~」

陸奥「ふ~ん、結婚ね……」

351: 2015/10/21(水) 21:58:10.81 ID:oWsMoVPs0
鈴谷「一つ思ったけど、なんで結婚って人生の墓場って言われてるんだろうね?」

陸奥「さぁ……分からないわね…。あ、でもこの前、妻子持ちの提督の鎮守府の艦隊と演習したことがあるんだけど、そこの提督がウチの提督と話してたら、

   こうこぼしてたわね」


相手側提督『結婚して子供を持つと、妻の手伝いをしたり、子供の世話をしたりして、自分だけの時間が無くなってしまうんですよね……』

提督『やはり、結婚すると色々大変なのですね…』


陸奥「あれが、墓場と言われる所以かしら?」

鈴谷「ふぅ~ん、プライベートな時間が無くなる、ね」

陸奥「それにしても、ウチの提督ったら全然つれないわね~。私がいくらお色気攻撃しても全く釣れないし…」

鈴谷「何で陸奥さんは提督誘惑してるの?」

陸奥「え?だって彼、可愛いじゃない」

鈴谷「可愛い?鈴谷からすればちょっとおっかないけど真面目でいい人、なんだけど」

陸奥「でもね、時折見せるもの悲しげな表情が可愛いのよ。分かるかしら?」

鈴谷「うーん…分かるっちゃあ分かるけど…」

陸奥「それと、雑誌を読んでたら、こんな記事を見つけたのよね」スッ

鈴谷「?」


雑誌『ガードの硬い男性を誘惑?そんなときはアプローチを!決して無駄ではないはず!』


鈴谷「……真に受けてやったの?」

陸奥「ええ。そしたら、彼、少し態度が丸くなった気がするのよ」

鈴谷(ウソだろマジか)

陸奥「あれ?鈴谷は提督の事、気にならないの?」

鈴谷「……気にならない、と言ったらウソかな」

陸奥「なら、アプローチしないと!早くしないと、誰かに提督を取られちゃうわよ?」

鈴谷「……………………………」

352: 2015/10/21(水) 22:05:56.20 ID:oWsMoVPs0
 ―13時過ぎ、執務室―

陸奥「ねぇ、提督?」

提督「なんでしょうか?」カリカリカリカリ

陸奥「執務室、なんだか暑くないかしら?」

提督「外気が寒くなってきましたから、窓を閉めておかないと寒い空気が入ってしまうんです。それで、部屋の空気がこもっているんでしょう」カリカリカリカリ

陸奥「はぁ、なんだか暑いわねぇ~」(スカートヒラヒラ)

提督「レディーがスカートはためかせるんじゃありません」カリカリカリカリ

陸奥「え~?じゃあ胸元開けるしかないじゃないの~」プチッ

提督「…ふぅ。少し空気もこもってますし、窓を開けますか」ガラッ

ビュウウウウ!!!

陸奥「寒いっ!!やめてッ!寒ううううう…」


 ―14時半過ぎ、執務室―

提督「…………………」カリカリカリカリ

鈴谷「ねぇ、提督~」

提督「なんでしょうか?」カリカリカリカリ

鈴谷「今日鈴谷~、実はノーパンなんだよねぇ~」チラッ、チラッ

提督「そうですか」カリカリカリカリ

鈴谷(あれ?)

鈴谷「なんか、下の方がむずむずするんだなぁ~。これ、何だろね~?」スリスリ

提督「気になるんなら履けばいいじゃないですか」カリカリカリカリ

鈴谷(あっれ~?)

鈴谷「ねぇ、鈴谷のココ、見てみたいと思わない?」スーッ

提督「今ちょっと大事な書類を確かめてるんです。下らない事で話しかけないでください」カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

鈴谷(あれれ~??)

353: 2015/10/21(水) 22:14:13.28 ID:oWsMoVPs0
 ―15時過ぎ、執務室―

陸奥「最近、人肌が恋しい季節になって来たわねぇ~」

提督「そうですねぇ」カリカリカリカリ

陸奥「だからぁ、貴方に抱き付いて暖をとることにするわね♪」ギュッ

提督「私右利きなんです。利き腕に抱き付かないでください」カリカリカリカリ

陸奥「じゃあ左腕ならいいのかしら?」

提督「そんなに人肌が恋しいなら長門さんにでも抱き付けばいいじゃないですか」カリカリカリカリ

陸奥「ちぇっ」


 ―16時過ぎ、執務室―

鈴谷「提督~!書類が届いたよ~!」ガチャ

鈴谷(ふっふっふ~。こうなったらもう実力行使!恥も寒さもかなぐり捨てて、ビキニで執務をする!それで提督のハートもイチコロっしょ♪)

提督「ああ、ご苦労様です。そこの箱に入れておいてください」カリカリカリカリ

鈴谷「あっれ~!?」

提督「?どうしましたか?」カリカリカリカリ

鈴谷「あっれれ~!?」

提督「…………唯一神は?」カリカリカリカリ

鈴谷「アッラー……じゃなくて」

提督「?」カリカリカリカリ

鈴谷「鈴谷、ビキニ着てまで提督の事誘惑してんだよ!?それなのに、提督は何で平静保ってられるの!?」

提督「え、だって―」

ジリリリリリン

提督「はい、執務室です……………………分かりました、すぐに向かいます」

ガチャリ

提督「失礼、明石さんに呼ばれましたので、工廠へ行ってきます」

パタン

鈴谷「…………………えええええ…」

354: 2015/10/21(水) 22:20:27.53 ID:oWsMoVPs0
 ―19時過ぎ、食堂―

鈴谷「……提督のあの態度、何?」

陸奥「いつもの感じよ?」

鈴谷「あれがいつもの態度なんだ……。提督って、すごい朴念仁なの?」

陸奥「あるいはすでに枯れちゃってるか……でも、あれでも態度は結構丸くなってるのよ?」

鈴谷「うーん……直接聞いてみようかな?」


 ―20時半過ぎ、執務室―

提督「そんなわけないでしょう。私にも三大欲求くらいはあります」

鈴谷「でも鈴谷や陸奥さんの誘惑に全く釣られなかったじゃん!」

提督「仕事中だと、全神経が仕事に集中されてしまって、心が完全に仕事モードになり、それ以外の事に関心が行きにくいんですよ」

陸奥「社畜かっ!!この真面目人間!!」

提督「あ、一応鈴谷さんと陸奥さんの誘惑に関しては若干ながら覚えていますけど」

鈴谷「……ご感想は?」

提督「ただ、健気だなぁ、と」

鈴谷「薄っ!反応薄ッ!」

陸奥「でも、私に対しての態度は少し丸くなってたわよね?」

提督「ああ、あれは……。私に対して必氏にアプローチしているというのに、それに何も答えないというのは少し非道と思いまして」

鈴谷&陸奥(ただのお情け!?)


 ―22時過ぎ、重巡洋艦・鈴谷&熊野の部屋―

鈴谷(あれ、今日の子と冷静に思い返すと……鈴谷、はたから見れば凄い恥ずかしい事じゃない!?)


【終わり】

355: 2015/10/21(水) 22:27:20.33 ID:oWsMoVPs0
【キャラクター紹介】

≪鈴谷≫

最上型重巡洋艦及び航空巡洋艦三番艦。艦娘No.124(改は129)。フランクな口調と親しみやすい性格が特徴の女子高生的な女の子。誰とでも分け隔てなく、

接する事ができるため、社交性はピカイチ。とても仲間思いで、戦闘中は仲間をかばう事も躊躇しない。熊野とは仲が良く、最上、三隈とも仲良し。

好きな人を振り向かせるためなら、多少大胆な事もできる。男性経験豊富な感じに振る舞っているが、実は経験ゼロ。いわゆる処OビXチ。

好きな言葉は『日日是好日』。

356: 2015/10/21(水) 22:31:26.07 ID:oWsMoVPs0
今日はここまでにします。

>>311
  鈴谷の話、いかがでしたか?結果的に、陸奥は少ししか出てきませんでしたけど…。

明日は、引き続き>>311さんのリクエストにありました熊野の話を書いていきます。

また、これからのリクエスト消化順番は熊野、電&深雪、ビスマルクの順です。その後の話を、また以下の中からリクエストで取ろうと思います。

①意外な提督の採用基準

②対人恐怖の提督

③憲兵さんについて

どれか読みたいものがございましたら自由にお書きください。

感想・リクエスト等があればお気軽にどうぞ。

それではまた明日。



マインクラフトやってみたいけど、お金とかかかるんだろうからやりづらい…。

無料評価版もやっていいものかわからないし…

357: 2015/10/21(水) 22:46:31.08 ID:4DCOdmg/0
乙でしたー3かな


次回:【艦これ】総司令部の日常【その5】


引用: 【艦これ】総司令部の日常