545: 2015/11/12(木) 21:27:24.64 ID:T4CJMEww0
こんばんは、>>1です。



 

それでは、投下いたします。

546: 2015/11/12(木) 21:30:43.06 ID:T4CJMEww0
 ―16時過ぎ、執務室―

提督「羽黒さん」

羽黒「は、はい?」

提督「明日、いすみ第壱拾鎮守府へ向かいますが、ご一緒しますか?」

羽黒「?なぜ、私を誘ったんですか?」

提督「そこの提督は、前にも少し話した提督がいるんです」

羽黒「前に話た方、ですか?」

提督「ええ、対人恐怖症の提督です」

羽黒「……あ」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)
547: 2015/11/12(木) 21:34:49.39 ID:T4CJMEww0
【対人恐怖、疑心暗鬼】

 ―翌日10時過ぎ、いすみ第壱拾鎮守府正門―

提督「さあ、着きましたよ」

羽黒「対人恐怖なのに、会う事ができるんですか……」

提督「ええ。ある条件が付いてきますが」ピンポーン

羽黒「?」

ガチャリ

『はい』

提督「海軍司令本部の斑です。視察に参りました」

『分かりました、少々お待ちください』

ガチャン

羽黒「今の方が、ここの司令官さんですか?」

提督「はい」

羽黒「なんだか、普通そうですし、会うのを拒むような感じもありませんでしたけど…」

提督「今は、大丈夫なんでしょう」

羽黒「今は?」

ガチャ

扶桑「お待たせいたしました、斑提督」

提督「ありがとうございます。では、入りましょう」

548: 2015/11/12(木) 21:44:27.12 ID:T4CJMEww0
 ―数分後、執務室前―

コンコン

扶桑「提督、斑補佐官がいらっしゃいました」

??『ありがとうございます、では、入ってください』

扶桑「では、どうぞ」ガチャ

提督「失礼します」

羽黒「し、失礼します」

 執務室に入った提督と羽黒の目の先には、こちらに背を向けて座っている男がいた。その男は、くるりと椅子を回してこちらに顔を向ける。しかし…

羽黒「………え?」


 その提督は、顔が見えなかった。首から上が、機械のようなもので覆われていたからである。

 首の部分は、青を基調とした機械で大きく覆われており、喉仏があるあたりにはスピーカーが付いていた。

 そして提督の顔は、白を基調とした機械的なマスクで髪の毛まで覆われている。目の部分に青く光るレンズがはめられていて、顔の下半分には、

弧を描くように透明なアクリル板がはめ込まれている。そのアクリル板の奥に見える提督の口は、少し笑っているようにも見えた。


いすみ鎮守府提督『お久しぶりです、斑提督。そして、そちらの羽黒さんは、初めましてですね』

 その提督の声は、どこか機械じみていて、首を覆っている機械のスピーカーの部分から聞こえていた。

羽黒「は、初めましてっ!羽黒です」

臨憧『私は、いすみ第拾鎮守府の提督、臨憧 夕(りんどう ゆう)と申します。以後、お見知りおきを』

羽黒「は、はい」

 羽黒は、不思議な気分だった。まるで、ロボットと会話しているようだったのだから。

549: 2015/11/12(木) 21:53:24.60 ID:T4CJMEww0
臨憧『それにしても、斑提督とお会いするのは、いつぶりでしょうか』

提督「そうですねぇ……前に、一度司令本部に来た時以来ですかね?」

 提督と、臨憧と名乗る男(?)が話している様子を見て、羽黒は違和感を覚えた。

羽黒「……あれ?」

 そう、この臨憧提督がはめているマスクのアクリル板から覗く唇が、ピクリとも動いていない。提督と話しているのに、ただ唇は笑っているだけだ。

提督「?どうしました?」

羽黒「あの…臨憧司令官って、口が動いてないのに、話せてる…?」

臨憧『ああ、これですか。気にしないでください。私は声帯を潰してしまっているので、口を動かして話す必要が無いんです。私が今話しているのは、

   脳の信号を読み取って、このスピーカーで音声を発しているだけです』

羽黒「声帯が潰れてるって……深海棲艦にやられたんですか?」


臨憧『いえ、これは自分からやった事です』


羽黒「へっ…!?」

提督「………………………」

臨憧『理由は……聞かない方がいいでしょう。聞いたところで、貴女方に私の人生を分かるはずもない』

扶桑「………お茶を、淹れて来ます」

臨憧『ああ、すみませんね、扶桑さん』

パタン

提督「……貴方の性格、やはりまだ直っていないんですね」

臨憧『性格というより、性根でしょうか。治そうとしても、治せないものなんです』

550: 2015/11/12(木) 22:07:00.65 ID:T4CJMEww0
羽黒「司令官……なぜ、この臨憧司令官は、こんな機械を身に着けているんでしょうか…」

提督「…それは、臨憧提督自身の口から聞くといいかもしれませんね」

臨憧『………貴方は、前からそう言う方でしたね』

提督「これが私の主義でもありますので」

臨憧『…最初に言っておきますが、話したところで同情を誘うつもりもありません。それだけは、理解しておいてください』

羽黒「…はい」

臨憧『……私はこれまでの人生で、「人間はそう簡単に信じられるものではない」という事を骨の髄まで思い知らされました』


 臨憧夕の人生は、裏切りと失望の連続でしかなかった。

 親しくなった友人は、簡単に臨憧を裏切り、別の者とつるんで臨憧を蹴落とした。成績が上で、人望もあった臨憧を妬んだその『親友』は、

クラスの連中に偽りの情報を流して臨憧をクラスから孤立させた。それが結果的に、恩師でもある先生から得ていた信頼を失う事にもなった。

 臨憧は、親友などと言うものは信じられないと悟った。


 恋心を抱いた女性は、簡単に他の男と寝るような尻軽だった。甘い言葉で臨憧を誘惑し、臨憧の心に付け入って抱いていた淡い恋心を大いに弄んだ。

その『恋人』の本性に気づく事ができなかった臨憧自身にも非はあると言えるが、臨憧の気持ちを分かっているような事を言っていただけにショックだった。

 臨憧は、恋人などと言うものは偽りでしかないと悟った。


 社会人で先輩と仰いだ人は、自分に過酷な仕事ばかりを任せる外道だった。自分に対して好印象を持たれるような言動を臨憧が入社した時から繰り返し、

確固たる信頼関係を築く事ができたと臨憧が認識してきた頃になり、その男は林道を蹴落とすような言動をし始めた。

 臨憧は、先輩などと言うものはただの上下関係を表す言葉でしかないと悟った。

551: 2015/11/12(木) 22:15:22.39 ID:T4CJMEww0
 その繰り返しの中で、臨憧は最後に悟った。

 人間など、信じられないと。

 両親はそれでも臨憧の味方をしてくれたが、その時の臨憧には、それすらも疑わしいとしか思えなかった。ただ、自分を利用するために味方している、と。

 臨憧は、多くの人間から裏切られたことで心が腐り、自殺を図った。

 包丁を喉に突き立てて氏のうと考えたが、なぜか氏ぬ事ができなかった。


臨憧「…………………ぅ」

 臨憧が目を覚ましたのは、どこかの病室だった。目だけを動かして周りを見ると、部屋には自分しかいないようだった。そして体を起こそうとすると、

首が動かない。それと同時に、首に鋭い激痛が走る。

臨憧「………………ぁ……ぇ……!!」

 そこで気づく。ろくに声も出せない事に。声帯が潰れてしまったのだろう。

臨憧「……………………ぉ………」

 しかし、臨憧はそんな事がどうでもよかった。氏ねなかったことに対して、臨憧は落胆する。そして、ふと窓の外に体を向ける。

 すると……

臨憧「…………!?」

 窓の外に見える木の枝に、何か、小さな人間が見えるではないか。

臨憧「…………な…………ぃ……」

 その小さな人間は、こちらを見てひそひそと何かを言っている。

 その直後、外からバタバタというあわただしい足音が聞こえてきた。臨憧は反射的に病室の入り口を見る。そして、ガラッと扉が開かれた。

医師「目を覚ましたのかね!?」

 その医師と臨憧の目があった瞬間。

臨憧「……………………………」

 臨憧の意識は突然途切れた。

552: 2015/11/12(木) 22:22:55.58 ID:T4CJMEww0
 次に目を覚ますと、意識が途切れたのと同じ時間のように見えたが、日にちは結構進んでいるようだった。

臨憧「…………………」

 臨憧は体を起こす、前に起きた時に比べると、痛みは幾分かは和らいでいた。

 そして、脇の机に置いてある『臨憧 夕殿へ』と書かれている手紙に気づく。

臨憧「………………?」

 臨憧は、その手紙を取って中身を確認する。

 一通り読んだ後で、臨憧はその手紙の内容を理解して……。

臨憧「………………………」ニヤ

 かすかに笑った。



臨憧『その手紙は、特例で海軍学校への入学を許可するものでした』

羽黒「特例?」

提督「基本的に、身体に著しい障害を持つ者は提督として着任できません。臨憧さんは、声帯が潰れて声も発する事ができない上に、人間と肉眼で、

   目を合わせるとアレルギーが発生するような方ですから…しかし」

臨憧『私が病室で見た、木の枝に立っている小さな人間、あれは妖精さんでした』

提督「そして、妖精さんネットワークで海軍総司令部へ臨憧さんの事が伝わり、妖精さんが見えるという事で特例で海軍学校入学が許可された…」

臨憧『その恩恵で、この首の装置と顔のマスクを得る事ができました。言葉を話せないというのは、とても不便ですし、人と顔を合わせられないのも、

   また不便でしたから』

羽黒「……人と顔を合わせられないって……」

553: 2015/11/12(木) 22:34:38.03 ID:T4CJMEww0
臨憧『これまで何人もの人間に裏切られ、だまされてきたことで、私は人間と言うものを信じる事ができなくなってしまいました。そして、対人恐怖症に…。

   私の症状は、肉眼で人の顔を見ると、脳が勝手に意識を途切らせてしまう、と言うものです』

提督「要するに、人の顔を直に見ると気絶する、と言うわけです」

臨憧『この症状は、私が眠っている間に脳のスキャンをされ、発見されたそうです。現代では治療法は存在しません。ですが、海軍学校に入学する事で、

   そのお詫びと言う形でこのマスクと首の装置をいただけたのです』

羽黒「そのマスクにはどんな意味が……」

臨憧『人の顔を見ても失神する事が無いように、脳に特殊な信号とリラックスを与える電波を与えているんです。まあ、この方が過ごしやすいですから』

提督「つまり、今ここでマスクを外せば…」

臨憧『おそらく、失神してしまうでしょう。失神しない可能性は0とも言えませんが。なぜか、信頼できる方に関しては肉眼で顔を見ても失神しません。

   まあ、親ぐらいしかいませんが』

羽黒「……つまり、貴女にとって司令官さんは、信頼できない、と」

臨憧『……はい』

羽黒「そんな、誰も信用できないような方が、どうして提督を……?」

臨憧『私も元々、提督になることに関してはあまり乗り気ではありませんでした。海軍に入ったのも、私のこの不自由な体を補助してくれる機器目当てと、

   何かをしていなければすぐにまた、人を疑いすぐに自頃するような人生を送りそうな気がして』

羽黒「……………」

臨憧『ですが、提督となって艦娘の子たちと接しているうちに、私は少しだけ変わる事ができたような気がしたのです』

羽黒「?」

臨憧『これまで接してきた人間は、私を裏切るような方たちで、腹の内に何をため込んでいるかわからないような人間ばかりでしたが、艦娘は違いました。

   皆、裏表のない感情と言葉で私に接してきてくれて、こんな姿の私にも優しく接してくれている方ばかりでした』

提督「…………ですけど、それで解決したわけじゃないんでしょう?」

554: 2015/11/12(木) 22:45:53.09 ID:T4CJMEww0
臨憧『最初の内は、優しく接してくれている皆さんに対して、私も心を開こうとしたのですが、そこで思い出したのです。これまでに私を裏切った者たちも、

   同じように最初は優しく接して最終的には裏切り蹴落としてきた…。もしかすると、ここの艦娘の方たちも同じなのではないか?そう一度疑い始めると、

   その可能性をぬぐえなくなってしまったんです』

提督&羽黒「………………………」

臨憧『ですから、今この鎮守府にいる艦娘の方々を私は真に信頼しているわけではありません。まあ、本当に信頼している方もいますけど』

提督「……それは、先ほどからお茶を淹れに行ったまま帰ってこない扶桑さんですか?」

臨憧『…………………………人の心を見透かす能力をお持ちですか』

提督「私にはマインドスキャンはできません。あくまで、この前の貴方と扶桑さんのやり取りを見て予測したまでです」

臨憧『ふふっ…………扶桑さんは、今休憩室で待機させています。この私の過去を聞かれて私から離れられても困りますから。必要でしたら、

   呼び戻しましょうか』

提督「いえ、結構です。今回の目的は、あくまでここの視察ですから」

臨憧『ああ、そうでしたね。私の過去を聞かせるために招いたわけではありませんでした。では、早速参りましょう』

提督「お願いします」

羽黒「……………」


 ―数時間後、帰り道―

羽黒「……あのような方も、提督になる事ができるんですね」

提督「提督と言うものは、みな何かしらのトラウマやつらい過去を抱えているものです。みなしごである私や、両親がいない提督もたくさんいますし、

   あの瑞理提督もまた、過去に傷を負っているんです」

羽黒「………あの司令官は、いつか自分の症状を克服できる時が来るんでしょうか……」

提督「彼は一応、あれでも人を信じられるように努力はしているんです。その努力が報われれば、症状は回復するでしょう」

羽黒「……司令官さんは、私達の事を信じてくれているんですか?」

提督「私ですか?もちろんですよ」

羽黒「…そうですか」ニコ


【続く?】

555: 2015/11/12(木) 22:55:05.23 ID:T4CJMEww0
【キャラクター紹介】

≪臨憧 夕(りんどう ゆう)≫

関東・いすみ第壱拾鎮守府提督。年齢は21歳。常にマスクとマフラー型装置を装着している、対人恐怖症(肉眼で信頼できる者以外の顔を見ると気絶)の男性。

子供の時から、親友、恋人、先輩など親しい人間から裏切られて蹴落とされた経験があり、それの積み重ねによって対人恐怖症になる。提督になった事で、

多少回復してきたがそれでもまだ艦娘の事は完全には信用できていない。鎮守府で最も信頼できる艦娘は扶桑。趣味は読書。

好きな言葉は『晴耕雨読』。


[マスク]

臨憧夕が常時顔に装着している装置。臨憧が人の顔を見てもすぐに気絶しないように、脳に特別な電気信号とリラックス効果のある電気信号を送っている。

この装置をつけてずに臨憧が人の顔を見ると、脳が勝手に意識を途絶させてしまう。


[マフラー型装置]

臨憧夕が常時首に装着している装置。自殺未遂によって声帯を潰してしまったために喋れなくなったので、会話をサポートするために海軍が開発した。

脳に取り付けた端子で脳からの信号を受け取り、受け取った信号を人工音声に切り替えてスピーカーから発する。この装置が無ければ臨憧は会話が行えない。

560: 2015/11/14(土) 21:17:33.07 ID:6rwxVxPy0
 ―23時過ぎ、空母寮・祥鳳&瑞鳳の部屋―

瑞鳳「うーんっと……」カチャカチャ

祥鳳「……すー…すー…」

瑞鳳「このパーツを取り付ければ……」カチャリ、カチャリ

祥鳳「……すー…すー…」

瑞鳳「…できたっ!フレーム完成!」

祥鳳「むにゃ……むにゃ……」

瑞鳳「さて、次は色を付けないと…」

561: 2015/11/14(土) 21:23:04.80 ID:6rwxVxPy0
【空に憧れて】

 ―翌日8時過ぎ、食堂―

瑞鳳「うー………」ズズズ

龍驤「どないしたん、瑞鳳?えらい眠そうやな」

祥鳳「また昨日、夜遅くまでプラモを作っていたのよ」

龍驤「また徹夜したんかいな」

瑞鳳「一度作り始めると……途中で終わらせるのがなんか…」

龍驤「今度は何を作ったん?」

瑞鳳「…九七式艦攻(村田隊)……」

龍驤「あんたも好きやなぁ……」

瑞鳳「あ、そう言えば龍驤。この前頼まれてたの、できたよ」

龍驤「お、ホンマか?じゃあ後で、運動場でやってみよ!」

瑞鳳「うん、わかった!」

祥鳳「もう……ほんとに2人とも好きね……」

562: 2015/11/14(土) 21:44:07.10 ID:6rwxVxPy0
 ―10時過ぎ、執務室―

提督「新しい装備の提案、ですか」

赤城「ええ、詳細はそちらを」

提督「…………デコイの艦載機?」

赤城「具体的には、デコイの艦載機を飛ばして敵の目を引き付け、敵がそちらに気を取られているすきに反対方向から艦載機や他の皆さんで攻撃する、

   と言った形です」

提督「…確かに、そうすればいいかもと思いますが…それでしたら、攻撃を終えた艦載機や、運用している艦載機を別個で操れば…」

赤城「…提督、艦載機の運用は、提督が思っているほど簡単ではありません。自分の脳内で指示を構築し、艦載機に乗っている妖精さんへ伝える……。

   言ってしまえば簡単ですが、実際にやるのはとても困難です。艦載機1機ずつに指示を出すのはとても難しいですし……その中の数機の艦載機に、

   『敵を引き付けるように操縦しろ』と指示するのも、難しいんです」

提督「……あれですか。同じ九七式艦攻の妖精さんに、『敵を攻撃しろ』と言う指示と『敵を引き付けろ』と言う指示を同時にするのは難しい、と」

赤城「そういう事です。艦爆も艦攻も艦戦も、敵艦載機と戦ったり敵の艦を沈めたりと、役割はあります。仮に艦爆に敵を引き付ける役割を任せると、

   敵艦を沈められる可能性も低くなってしまいますから……。それならばいっそ…」

提督「初めからデコイ用の艦載機を用意し、そのデコイには初めから『敵を引き付けろ』と指示を出しておけば、後は艦攻などの攻撃用艦載機の運用に、

   意識を集中できるというわけでですか」

赤城「はい」

提督「……分かりました。しかし、この赤城さんの新装備案を承認するにしても、新装備開発担当の夕張さんは、次の大規模作戦に向けての新装備開発で、

   てんてこ舞いですし、明石さんも多忙です…。申し訳ございませんが、この艦載機が実現するのは少し先になってしまいますが……」

赤城「…仕方ありませんね。本来は、大規模作戦に備えて提案するつもりでしたし…」

バルルルルルルルル!!!

提督「?」クルッ

赤城「…窓の外の……天山(六〇一空)の艦載機でしょうか……」

提督「……………………」

563: 2015/11/14(土) 21:49:58.30 ID:6rwxVxPy0
 ―数分後、運動場―

ブーン

龍驤「おー…さすがは瑞鳳やなぁ~……扱いがホンマに上手いわ~」

瑞鳳「え~、それほどでもないって~」


提督「瑞鳳さん、龍驤さん」スタスタ


龍驤「あ、提督」

瑞鳳「て、提督…どうしたんだろ…怒ってるみたい…」

提督「今日、私は艦載機の練習運用を認めた覚えはありませんが」

瑞鳳「へ?」

提督「あれですよ、あれ。天山(六〇一空)。勝手に装備倉庫から持ち出したんですか。でしたら厳重注意を…」

龍驤「あー、ちゃうちゃう!あれ、ニセモンや!」

提督「偽物?」

瑞鳳「ちょっとまってね……よい、しょ」ガチャガチャ

提督(リモコン?)

キイイイイン

瑞鳳「これ、ラジコンなんです」

提督「あ、そうだったんですか」

龍驤「にしても、キミが見間違えるくらい精巧に作られてるんやから、やっぱ瑞鳳はすごいなぁ~」

瑞鳳「それほどでもないよ~」

提督「え、これ瑞鳳さんが作ったんですか?」

564: 2015/11/14(土) 21:58:31.87 ID:6rwxVxPy0
瑞鳳「流石にモーターとリモコンは違うけど、フレームは私が作ったんだよ」

提督「フレームなんて作れるんですか」

瑞鳳「ホビーショップによく売ってるよ?自分で色を塗って組み立てて……」

龍驤「瑞鳳、趣味が艦載機プラモづくりなんやから、部屋がプラモでいっぱいや!でも、瑞鳳の作るプラモって本物そっくりやし…」

提督「………なるほど」

瑞鳳「?どうかしましたの?」

提督「瑞鳳さん、よろしければ、貴女の部屋のプラモデルも見せていただいてもよろしいでしょうか」

瑞鳳「へ、別に構わないけど?」


 ―十数分後、軽空母寮・祥鳳&祥鳳の部屋(祥鳳は演習中)―

提督「…これは、すごい数ですね」

龍驤「お、これは朝話してた、九七式艦攻(村田隊)か?」

瑞鳳「そう、上手くできてる?」

提督「そうですね……本物そっくりです」

瑞鳳「でも、あんまり増えすぎちゃって、祥鳳から『いい加減にして』って言われちゃって…」

提督「でしょうね。部屋の半分が艦載機のプラモとかで埋まってますし」

瑞鳳「それで、他の空母の皆におすそ分けをしてるんだけど、それでも減らなくて…」

龍驤「うちの部屋にもあるで。零式艦上戦闘機が」

提督「…それらすべて、瑞鳳さんが作ったんですか?」

瑞鳳「何度も言うけど、フレームやパーツは市販のを買って、それに自分で色を塗って、それを組み立てて、こんな感じにできるの」

提督「……瑞鳳さん、今後、お仕事を任せる可能性がありますので、お願いします」

瑞鳳「へ?」

565: 2015/11/14(土) 22:10:32.67 ID:6rwxVxPy0
 ―15時過ぎ、工廠―

提督「明石さん、今お時間よろしいでしょうか?」

明石「はい?どうしました?」

提督「1つ、作ってもらいたいものがあるんですが」

明石「何を作ってほしいんです?大きさによって、時間が大体変わりますけど…」

提督「これを…」スッ

明石「これ……九九式艦爆の矢?まさか、開発ですか?」

提督「いえ、この九九式艦爆と同じ大きさの艦載機のフレームとパーツを、作ってもらいたいんですけど」

明石「????」

提督「…要するに、組み立てたらこの九九式艦爆と同じぐらいの大きさになるようなプラモデルのパーツ部分を、作ってもらいたいんです」

明石「あ、あー…えー……はい。分かりました!それぐらいでしたら、ちゃちゃっとできちゃいますから」

提督「ああ、それと材料にはボーキサイトを使ってください」

明石「えっ」


 ―数日後、執務室―

瑞鳳「…これは?」

提督「艦載機プラモデルのパーツです」

瑞鳳「いや、それはわかるんだけど…具体的には…」

提督「赤城さんから、新装備の提案として‶デコイ艦載機‶がありまして、それの試作品と言った感じです。もともと敵の目を引き付けるのが目的ですから、

   通常の艦載機装備と同じように精巧に作る必要はありませんし、さらにプラモデルのようにすれば他の皆さんも手軽に作れるようになります。

   まずは、プラモデル作りが得意な瑞鳳さんに作って運用してもらい、感想を聞かせてもらえればと」

瑞鳳「なるほど…ちなみに材料は何?プラスチックの重さじゃないけど…」

提督「一応、それっぽさは分かるように、ボーキサイトを使っています。しかし、通常の艦載機を開発するより、はるかに資材の量は少なめです」

瑞鳳「ハイブリッドだね…色は?」

提督「貴女のご自由にどうぞ」

567: 2015/11/14(土) 22:17:33.38 ID:6rwxVxPy0
 ―21時過ぎ、空母寮・祥鳳&瑞鳳の部屋―

祥鳳「は~…今日も疲れた…」ガチャ

瑞鳳「………うーん…」

祥鳳「瑞鳳?またプラモデル?」

瑞鳳「ううん、新しい艦載機の試作品のテスト」

祥鳳「へ?」

瑞鳳「色は……敵を引き付けやすい赤にしようかな……」

祥鳳(色!?赤!?)


 ―試験運用後―

提督「いかがでしたか?」

瑞鳳「うーん…やっぱり、普通の艦載機とは違う感じがしたけど、扱いやすいって感じはあったよ」

提督「なるほど……その辺りはまた試行を繰り返さないと…」

バァン

提督&瑞鳳「?」

夕張「提督、新装備の開発にどうして一枚噛ませてくれなかったの!?」

提督「いえ、貴女には次の大規模作戦報酬となる新装備の開発と研究を任せたからですけど」

夕張「どうして、新しい艦載機開発試験何て面白そうなイベントに、参加させてくれないの~……」


【終わり】

568: 2015/11/14(土) 22:22:19.27 ID:6rwxVxPy0
【キャラクター紹介】

≪瑞鳳≫

祥鳳型軽空母二番艦。艦娘No.112(改はNo.113)。栗色の長い髪と、屈託のない明るい笑顔が特徴の優しい女の子。艦載機が大好きで、休日のほとんどを

艦載機のプラモ作成に費やしている。料理が得意で、その中でも得意な料理は卵焼き。その腕は、鳳翔や間宮も認めるほどである。同型艦のはずなのに、

祥鳳より胸が小さい…というか胸が小さい事が悩み。よくつるんでいる龍驤は親友。最近、新しい装備のテストという仕事を提督から任される。

好きな言葉は『青天白日』。

574: 2015/11/15(日) 21:08:41.95 ID:V3DGdNGs0
 ―16時過ぎ、珊瑚諸島沖・Dマス(敵機動部隊本隊)―

ズドオオオン

装甲空母姫「クウ…ッ!」大破

瑞鶴「よっし、あと少しよ!」

装甲空母鬼「フン、馬鹿メ」バシュシュ

キイイイン

翔鶴「まず……っ、全員対空姿勢―」

バババババババ

ドオオオン

翔鶴「きゃあああっ!?」大破

瑞鶴「あっ、翔鶴姉!?」

575: 2015/11/15(日) 21:19:38.13 ID:V3DGdNGs0
【幸運の女神】

 ―17時過ぎ、執務室―

瑞鶴「……装甲空母姫の撃沈には成功。なお、我が艦隊の被害は、飛鷹さんが小破、古鷹さんが中破、翔鶴姉が大破です」

提督「また翔鶴さんが大破ですか……。青葉さん、今のドックの空き状況は?」

青葉「えーっとですね、今は第一ドックと第二ドックは前の出撃で被弾した飛龍さんと長門さんが使用してまして、第三ドックと第四ドックは空いています」

提督「飛龍さんと長門さんの残り入渠時間は?」

青葉「飛龍さんが残り1時間と13分、長門さんが2時間と24分です」

提督「瑞鶴さん、先ほど述べた被弾者の入渠時間は?」

瑞鶴「妖精さんからの報告だと、飛鷹さんが1時間46分、古鷹さんが2時間28分で、翔鶴姉は12時間以上だね」

提督「もう今日は出撃する予定はないが…。翔鶴さんには申し訳ないですが、高速修復剤でを使って回復してもらいましょう。その後第三ドックに飛鷹さん、

   第四ドックに古鷹さんを入居させて下さい。申し訳ございませんが、4時間以上入渠する艦娘に高速修復剤を使うわけにはいきませんから…」

瑞鶴「分かりました」

提督「それと、翔鶴さんは明日の出撃を蒼龍さんに代わってもらいましょう。…それにしても……また翔鶴さんが大破ですか」

瑞鶴「そうなのよ……もう大破しないで帰ってきた日なんてないくらい……」

青葉「青葉の記録だと、最後に大破せずに帰ってきたのは今から1年前ですね。それも、中破」

提督「結局被弾する事には変わらないんですか」

瑞鶴「なにせ、鎮守府正面海域に出撃しても、敵のラッキーパンチでワンパン大破させられたもん」

提督「ラッキーにもほどがあるでしょう」

576: 2015/11/15(日) 21:24:39.43 ID:V3DGdNGs0
瑞鶴「…じゃあ、報告も終わったし、失礼するね」

提督「ええ、お疲れさまでした。詳細な報告書は、明日の夕方まででお願いします」

瑞鶴「りょーかい」

パタン

提督「……翔鶴さんは、日頃から不幸にさいなまれていますからねぇ。出撃でもこれじゃ、心が疲れるでしょうに」

青葉「ホントですねぇ。青葉だったら耐えられません」

提督「それより……気になる事があるんですが」

青葉「なんでしょうか?」

提督「………青葉さん、すみませんが3日間の間、翔鶴さんと瑞鶴さんの生活を監視していただけませんか」

青葉「見返りは?」

提督「新しいカメラと、有給休暇3日でどうでしょう」

青葉「青葉にお任せーっ!」


 ―19時過ぎ、食堂―

瑞鶴「翔鶴姉、あっちのテーブルで食べよ!」

翔鶴「ええ、構いませんよ」

ズルッ

翔鶴「きゃあっ!?」

瑞鶴「翔鶴姉!?」

鳳翔「あ、床に油のぬめりが。掃除のし直しですね」

577: 2015/11/15(日) 21:30:17.52 ID:V3DGdNGs0
 ―20時半過ぎ、浴場―

カポーン

翔鶴「はぁ……出撃した後のお風呂って、気持ちいい…」

瑞鶴「翔鶴姉、背中洗ってあげるよ!」

翔鶴「あら、いいのかしら?じゃあ……」ザバァ

ズルッ

翔鶴「へぶっ!?」ゴチン

瑞鶴「ああっ、翔鶴姉!お湯に沈んでいく!」

蒼龍「あー、湯船で足が滑ったのか…」


 ―22時過ぎ、空母寮・翔鶴&瑞鶴の部屋―

翔鶴「はあ、疲れた…」バサッ

瑞鶴「それじゃ、お休み。翔鶴姉」バサッ

翔鶴「ええ、お休み。瑞鶴」

バキィッ

翔鶴「ぎゃっ!?」ドサッ

瑞鶴「翔鶴姉~!?」

翔鶴「ベットの底が抜けるなんて……現実でもあるのね…」


 ―翌日10時過ぎ、ショッピングモール―

翔鶴「あっ、財布が無い!鞄に穴が…!!」

瑞鶴「ええっ!?それじゃ何も買えないじゃない!」

翔鶴「もういやぁ……」メソメソ

578: 2015/11/15(日) 21:39:13.98 ID:V3DGdNGs0
 ―数日後、執務室―

提督「3日間の間、貴女たちの行動を監視させていただきました」

瑞鶴「は、はあ!?何それ、もろプライバシーの侵害じゃない!」

翔鶴「瑞鶴、少し落ち着いて……」

提督「直接監視してたのは青葉さんです。私は別に何も見ていません」

瑞鶴「じゃあ何のために青葉に監視を…?」

提督「翔鶴さんが普段から運が無い、不幸だと言っている上に、出撃でも被弾率が高いので、少し確かめたいことがあったんです」

瑞鶴&翔鶴「?」

提督「翔鶴さんが不幸になるときは、大体瑞鶴さんが一緒にいるという事です」

翔鶴「なっ…?」

瑞鶴「ちょ、それって私が翔鶴姉の運を吸い取ってるって言い方じゃない!」

提督「……そもそも、艦娘の運と言うのは、まだ未解明な部分が多いんですよ。艦娘のステータスの1つとして‶運‶と言うものがありますけど、それが何か、

   影響を及ぼしているのかどうかもまだ分かっていません。一部の提督は、『被弾率が低い』『攻撃の命中率が高い』『夜戦で強くなる』といった噂が

   横行していますが、それらはまだ実証されていません」

翔鶴「確かに……私や扶桑さんに山城さん、陸奥さんも『運が悪い』って言うだけで…」

提督「分からないゆえに、運がどういうシステムなのかもわかりません。運のいい艦娘と一緒にいると運を吸われるとか、それとは逆に、運の悪い艦娘が

   1艦隊に2人以上いると、逆に運が上がる、とかそういう話も出てきますが。それもまた未解明です」

瑞鶴「そっか……じゃあ、運が高い私が翔鶴姉と一緒にいたから翔鶴姉の運がどんどん悪くなっていくって事か…」

579: 2015/11/15(日) 21:48:22.97 ID:V3DGdNGs0
提督「まあ、私も『運の悪い翔鶴さんと運のいい瑞鶴さんが一緒の艦隊に居たらトントンで運が普通並みになるんじゃ?』と思って一緒の艦隊にしたんですが」

瑞鶴「この提督さん意外とあほだ!?」

提督「まあ、姉妹艦同士の方が色々やりやすいというのもありますし……。そこで、1つ提案があります」

翔鶴&瑞鶴「?」

提督「しばらくの間、翔鶴さんと瑞鶴さんは離れて生活してもらいたい」

瑞鶴「ええっ!?」

提督「これは、先ほど言った‶艦娘の運‶の実態を探るためでもあります。具体的には、翔鶴さんを運の値が平均程度の方ばかりの艦隊に組み込んで、被弾率が

   下がるかどうかを確かめ、なおかつ翔鶴さんが不幸な目に遭う事態が怒らなくなるかどうかを確かめようと」

翔鶴「……分かりました」

瑞鶴「翔鶴姉!?」

翔鶴「期間はどれぐらいでしょうか?」

提督「大体1週間ほどでしょうか」

瑞鶴「ええええ………」

提督「では、寝る時は翔鶴さんは飛龍さんと部屋を代わってください」

翔鶴「分かりました」

瑞鶴「うぇぇ…翔鶴姉……」

提督「………………」


 ―数分後、廊下―

提督「……本当によかったんですか?」

翔鶴「ええ」

提督「一応、今回の‶運の実証‶という事で瑞鶴さんと引き離しましたけど、瑞鶴さんは相当悲しがっていましたよ」

580: 2015/11/15(日) 21:54:00.75 ID:V3DGdNGs0
翔鶴「ですけど、瑞鶴は私に依存しているところが若干ありますし、ここで少し、姉離れをさせた方がいいかと思いまして」

提督「…素直に『私と離れて生活して』と言えないあたり、翔鶴さんも甘いですね」

翔鶴「ええ。自覚しています」


 ―数日後―

飛龍「提督に言われた通り、翔鶴と瑞鶴は引き離して、出撃・演習・食事・入浴・入渠・睡眠を全て別々にさせてみたけど…」

提督「結果はどうでしたか?」

飛龍「うーん…翔鶴は被弾率が下がった感じがしなくもないし、不幸に見舞われることも少なくなったって本人は言ってたけど……」

提督「なるほど…」

飛龍「でも瑞鶴がね…」

提督「?」

飛龍「瑞鶴がなぜか敵への命中率が下がったり、毎日毎日溜息をついてたりして、なんかいつもの瑞鶴じゃないなーって」

提督「………………」


 ―20時過ぎ、中庭―

瑞鶴「………はぁ」

提督「瑞鶴さん」スタスタ

瑞鶴「あ、提督さん……」

提督「どうかしましたか?」

瑞鶴「べ、別になんでも…」プイッ

提督「…明らかに何かある感じでしょう?」

瑞鶴「……聞いてもらえる?」

提督「もちろん」

581: 2015/11/15(日) 22:03:21.87 ID:V3DGdNGs0
瑞鶴「…私が着任したのって、翔鶴姉より後じゃない?」

提督「ええ。先に翔鶴さんが着任してました」

瑞鶴「で、翔鶴姉は運が低くていつも不幸な目に遭って、私は幸運の空母……。それで、翔鶴姉が少しでも不幸な目に遭わないように私が翔鶴姉のそばにいる、

   そう決めた」

提督「………………」

瑞鶴「……でも、この前の提督の説明で、私が翔鶴姉の運を吸っている、って事だったんだと思うと…すごくいやで…」

提督「……あれは、あくまで一説です。本気にしてはいけませんよ」

瑞鶴「うん…そうも思っているけど……。翔鶴姉とはずっと一緒にいたから、こうして別々で生活しているのもなんだかつらいなあ、って」

提督「………………」


 ―翌日9時過ぎ、執務室―

提督「やはり、運に関しては分からずじまいという事で、2人の別居生活は終了とします」

瑞鶴「はぁ~…よかったぁ~…」

翔鶴「私がいなくて寂しかったかしら?」

瑞鶴「そりゃもう…!」

提督「今後は、運の解明にはもう少し他の鎮守府の協力も仰ぐ必要がありますか……」


翔鶴「………また、大破してしまいました…」

瑞鶴「あれれ~…」

提督「…ぶっちゃけ、出撃する度に被弾して帰ってくると、資材を半端なく消費するんで何とかしてもらいたいんですが……」スッ

翔鶴「?」

提督「なぜか最近、翔鶴さんに限っては無いと思いますけど、自らが不幸という事を利用して多少注意や戦闘を怠っている、と私は思うんですが?」ゴゴゴ

翔鶴「ありませぇん!」


【終わり】

582: 2015/11/15(日) 22:07:39.16 ID:V3DGdNGs0
【おまけ】

提督「ちなみに…」

翔鶴&瑞鶴「?」

提督「運の低い方たちが大破で帰ってくることが多いので、冗談で『いっそ、まるゆさんを近代化改修に使ってしまおうか』と言ったら…」

翔鶴&瑞鶴「?」


提督「近くにいた木曾さんに、喉元に刀を突き付けられて『お前が永遠の闇を見る事も辞さないなら、やってもいい』と脅されました」


翔鶴&瑞鶴「」

提督「あの時の木曾さんの目、flagship並みの邪悪な目つきでした」

翔鶴「木曾ちゃん……まるゆちゃんのこと好きすぎでしょう…」

瑞鶴「というか、この提督さんがそんな状況に陥る事自体が驚きなんだけど…」

583: 2015/11/15(日) 22:12:03.99 ID:V3DGdNGs0
【キャラクター紹介】

≪瑞鶴≫

翔鶴型正規空母二番艦。艦娘No.107(改はNo.108、改二はNo.262、改二甲はNo.207)。ツインテールが特徴の、さばっとした性格の親しみやすいお姉さん。

幸運の空母と言われているが、本人は『ただ一生懸命に戦ってきただけ』と言っている。姉の翔鶴とは常に一緒にいるくらい仲良しで、翔鶴が姉として好き。

五航戦をバカにする加賀とは前まで仲が悪かったが、今では和解している。七面鳥(ターキー)は禁句。龍驤、瑞鳳、大鳳とは仲が良い。

好きな言葉は『青天の霹靂』。

589: 2015/11/17(火) 21:00:13.06 ID:JWin6EFx0
 ―3日前、重巡洋艦寮・高雄&愛宕の部屋―

愛宕「うちの提督ったら、釣れないわよね~」

高雄「それ、どういう意味で言ってるのかしら?」

愛宕「いや、ことあるごとにアプローチしてるんだけどぉ、全然反応してくれないのよ~」

高雄「それ自分で言うのって……。それに、反応を示さないのなら、アプローチ止めちゃえばいいじゃない」

愛宕「でもね、理性に耐えているようにも見えて、それがまた可愛いのよ~♪」

高雄(ダメだこの高雄型二番艦)

高雄「もう、そんなにアプローチして提督の反応を見るのが楽しいんだったら、いっそデートにでも誘えばいいじゃない」

愛宕「……………………」

高雄(あら?)

愛宕「それ、いいわね!」

高雄「あ、しまった」

590: 2015/11/17(火) 21:07:47.42 ID:JWin6EFx0
【ショッピングと女】

 ―翌日11時過ぎ、執務室―

提督「…………………」カリカリカリカリ

コンコン

提督「………どうぞ」

愛宕「失礼しま~す」ガチャ

提督「無駄なアプローチでしたら勘弁してください。大規模作戦前で書類が山積してるんですから」

愛宕「聞きましたよ、提督?最近また徹夜が続いているとか」

提督「そうですね……もう徹夜何日目だったか。まあ、理由はさっき言った通り、大規模作戦前だからですよ」

愛宕「気分転換に、出かけましょうよ?」

提督「だめです。外出できるほど余裕がないんですよ」

愛宕「んもう、そんな事ばっかり言って~。私みたいな金髪美人と一緒に出掛けられるのよ~?光栄でしょ?」

提督「それを自分で言うんですか。というかあなたと一緒に出掛けるんですか。ですけどさっき言った通り、大規模作戦前で休めないんですよ」

ガチャ

提督&愛宕「?」

司令長官「そんな事言って、黎明君は全然休まないんでしょ?大規模作戦中はもちろんだけど、大規模作戦が終わった後は後始末が忙しくて休めないとか、

     結局休まないじゃない」

加賀「大規模作戦中に連日徹夜が原因で倒れてもらっては、こちらとしても困るわ」

提督「…………………」

591: 2015/11/17(火) 21:15:25.00 ID:JWin6EFx0
司令長官「大規模作戦は明後日からだし、今日か明日に気分転換に休んだらどう?愛宕君の言う通り、一緒に出掛けるのもよしだし」

加賀「その間の業務は、私が代行しておくから心配はいらないわ」

提督「………………………」

愛宕「ね、提督~?」

提督「…………分かりました、愛宕さんの提案に乗りましょう」

愛宕「やった!」

提督「ただし、出かけるのは明日です。今日はまだ仕事が残っていますので、これだけはやらせていただきます。加賀さん」

加賀「はい」

提督「明日の業務への引継ぎは、今日のフタマルマルマル(20時00分)に、執務室で行いますので、よろしくお願いいたします」

加賀「分かったわ」

愛宕(働き過ぎの提督を休ませるって名目でデートに誘う作戦、大成功~♪)


 ―翌日10時過ぎ、正門―

提督「では、加賀さん、司令長官。留守の間はよろしくお願いいたします」

司令長官「うん、分かった」

加賀「任されたわ。できれば、お土産の1つでも欲しいところね」

提督「考えておきます」

愛宕「じゃ、行ってきま~す♪」


司令長官「愛宕君も、やるようになったねぇ」

加賀「…あの人、前に‶アプローチを断る提督の反応が面白い‶って言って提督にちょっかいをかけてるらしいけれど、彼女提督に対する好意に

   気づいていないんじゃないかしら?」

司令長官「愛宕君、そんな感じあるからねぇ」

592: 2015/11/17(火) 21:22:22.93 ID:JWin6EFx0
提督「で、行き先は?」

愛宕「最近できた話題のショッピングモールよ。電車で1時間ぐらいの場所」


 ―約1時間後、ショッピングモール―

提督「で、何で貴女は自然に腕に抱き付いているんですか」

愛宕「え~、だって人が多いし~」

提督「暑苦しいんですけど、正直」

愛宕(素直じゃないんだから~)

提督「…それにしても、大規模作戦前に鎮守府を空けて、提督代理の加賀さんに仕事を任せてしまって大丈夫だったのだろうか…。いかん不安になって来た…」

愛宕「も~、せっかく楽しいショッピングなのに、仕事の事は忘れましょうよ~」

??「提督~」

提督&愛宕「?」クルッ


夕張「提督、次はあの店に行こ!」

瑞理「任せて~、何でも買ってあげちゃうよ~」


提督「(ゴミ虫を見る目)」

愛宕「あら、あの人って確か第壱拾参鎮守府の提督さんじゃ…」

提督「見なかったことにして行きましょう」

愛宕「挨拶しなくていいのかしら~?」

提督「誰が休日に、好き好んで犬猿の仲の奴と話さなくちゃならないんですか」


夕張「でも、大規模作戦前日に鎮守府を休みにしちゃっていいの?」

瑞理「大丈夫大丈夫。鎮守府が1日休みなったくらいで別に氏ぬわけじゃないんだし、書類がちょっと増えるくらいだから別に問題ないよ~」

593: 2015/11/17(火) 21:29:37.11 ID:JWin6EFx0
提督「ふん」バキィ

瑞理「ぶへぼっ!?」

夕張「!?えっ、提督!?」

愛宕「さっき話したくないって……」

提督「こちとら3日連続徹夜で書類を片付けてる身だというのに、この男の言い分がなんかムカつきました。反省も後悔もしていません」

瑞理「完全に八つ当たりじゃねえかこの冷血提督!」

提督「作戦要領を全て考案して決定するこちらの身にもなって下さい。」

瑞理「まったく……ところで、お前と愛宕ちゃんは何?デート?」

提督「いえ、そういうわけでは」

瑞理「ふーん、やっぱ結局お前も巨O派だったのか。やーい、巨O派のむっつり提督~」

提督「……………いますよねぇ、男女が一緒にいると『お前ら付き合ってんの~』ってバカにしてくる思考回路が子供みたいな男」

瑞理「」ピクッ

提督「女と見れば誰彼見境なく侍らせるろくでなしのスケコマシハーレムクソ野郎に、むっつりとは言われたくありません」

瑞理「………ああ、そっか。お前枯れてんのか」

提督「刻んで魚の餌にしてやろうか」

瑞理「やってみろ、返り討ちにしてやるよ」

愛宕「ハイハイ2人ともストーップ!!」

夕張「ここ公共の場だから!そういういざこざは勘弁して!!」

ザワ・・・ザワ・・・

愛宕「まったくこの2人ときたら……少しは仲良くできないの?」

提督&瑞理「こんな奴と仲良くなれる可能性なんてこれっぽっちもない」

提督&瑞理「……………………………」ギリギリギリギリ

夕張「おお、綺麗にシンクロしたわね」

594: 2015/11/17(火) 21:34:10.31 ID:JWin6EFx0
愛宕「まあまあ2人とも……そうだ、ここで会ったのも何かの縁だし、ここは皆で一緒にショッピングしましょ?ね?」

夕張「そ、そうしよう!ね、提督?」

瑞理「夕張ちゃんがそう言うんなら……仕方ないかな」

提督「…仕方ないですねぇ」

瑞理「まったく、今日は何て日だ。せっかくの休日だというのに、こんな奴と会うなんて」

提督「最強の雪風提督が何言ってるんですか」


 ―数分後、アクセサリー店―

愛宕「色々な種類があるわね~…」

提督「私は男性ですから、こういったもののセンスは分かりかねますが…

夕張「わ~、このリボン可愛い~欲しいな~」キラキラ

瑞理「買ってあげようか?」

夕張「え、いいの?」

提督「ああ、夕張さん。そのリボン、貸していただいてもいいですか?」

夕張「え、あ、はい」スッ

提督「どうも」スタスタ

夕張&瑞理&愛宕「?」

提督「すみません、これ1つ」

店員「はーい。650円になりまーす」

夕張&瑞理&愛宕「!?」

店員「ありがとうございました~」

提督「夕張さん、これどうぞ」

夕張「あ、ありがとうございます…」

595: 2015/11/17(火) 21:49:15.91 ID:JWin6EFx0
瑞理「お前っ!何他人の鎮守府の艦娘たぶらかしてんだ!?」

提督「いえ、こういった時は女性の買いたいものを男性が買ってあげるべきなのでしょう?そのルールに乗っかったわけです。それに、貴女も前に一度、

   私の鎮守府の方をたぶらかしたでしょう」

瑞理「こんの…いけしゃあしゃあと……愛宕ちゃん!」

愛宕「へっ、な、何かしらぁ?」

瑞理「僕が買ってあげるから、何でも欲しいもの言ってみて!」

愛宕「え、ええっ?」

瑞理「あっちの方かな?あっちの方に色々あるから行ってみよう!女の子は男に欲しいものをおねだりしていいって特権があるんだから!」スタスタ

愛宕「ちょ、あれ~?」グイグイ

提督&夕張(何言ってんだかわからない…)

提督「まったくあの男は……」

夕張「あはは…でも、あれがデフォですから…」

提督「…夕張さんも大変でしょう?」

夕張「?何がですか?」

提督「あんな女たらしが提督じゃ、貴女もセクハラされたりするのでは?」

夕張「あー……確かにそういう事もされますけど…」

提督(否定はしないのか)

夕張「あの人は、ちゃんと私達の個性を把握してくれていますし、私達にできない事はやってくれます。そして何より、あの人はとても優しい方です。

   セクハラで工口いところが目立つ提督ですけど、本当は優しい方です」

提督「………………………………」

夕張「斑提督も、少しはあの人と仲良くした方がいいと思いますよ」

提督「……考えておきます」

596: 2015/11/17(火) 21:56:41.20 ID:JWin6EFx0
 ―同時刻―

瑞理「まったくあの男は……」

愛宕「あはは…でも、あれがデフォだから…」

瑞理「…愛宕ちゃんも大変でしょ?」

愛宕「?何がかしら?」

瑞理「あんなドS冷血堅物が提督じゃ、愛宕ちゃんも退屈してるんじゃないの?」

愛宕「あー……確かにそういうところはあるけど…」

瑞理(否定はしないのか)

愛宕「あの人は、ちゃんと私達の個性を把握してくれて、私達にできない事はやってくれているわ。そして何より、あの人はとっても優しい方よ。 ドSで、

   冷血堅物なところが目立つけど、本当は優しい方よ」

瑞理「………………………………」

愛宕「瑞理提督も、少しはあの人と仲良くした方がいいと思うわ」

瑞理「……考えておくよ」


 ―数十分後―

夕張「あ、お帰りなさい~」

提督「愛宕さん、どうでしたか?」

愛宕「結構楽しめたわよ~。話もいろいろ聞いてもらったし」

瑞理「夕張ちゃん、こいつに何かされなかった?」

夕張「ううん、色々話を聞いてもらったから」

提督&瑞理「でも、こいつと仲良くした方がいいって、100%不可能だ」

提督&瑞理「………………………………」フンギイイイイイイイイイイイイイイイイイ

愛宕&夕張(絶対この2人仲が良いでしょ)

597: 2015/11/17(火) 22:07:38.64 ID:JWin6EFx0
 ―14時過ぎ―

ざわ……ざわ…

提督「?何かあったんですか?」

愛宕「なんかぁ、カップルの痴話喧嘩みたい」


『あんたってサイテー!私のほかに彼女が10人もいたなんて!』

『待ってくれ、俺には11人の中から1人を選ぶなんてできなかったんだ!皆、魅力的で可愛かったから…!』

『そんな都合のいい事言って責任逃れしようとするなんて……クズ!下種の極み!!もう知らない!』

『ま、待って、話を聞いてくれ~!!』


夕張「なんか、あの男の人が11股してたみたい」

愛宕「あらあら~…」

提督&瑞理「………………………」

提督「……女性ばかりの鎮守府でも、このような問題が起こりかねないんですよね」

瑞理「……うん、僕の鎮守府でも怒り得るってことだよね」

提督「……このような事が無いよう、お互い気を付けましょう」

瑞理「……そうだね、そうしよう」

愛宕&夕張(共感した!?)


 ―帰り道・列車内―

提督「今日はいい気分転換になりました。誘ってくださってありがとうございます」

愛宕「い、いえいえ、別にいいのよ~?」

提督「明日からの大規模作戦、頑張りましょう」

愛宕「そ、そうね…」

愛宕(2人の仲が少しだけ縮まったのはいいことだけれど、それの原因が女性との交際問題って、女の私からしたら凄い微妙な気持ちなのよね…)


【終わり】

598: 2015/11/17(火) 22:12:10.36 ID:JWin6EFx0
【キャラクター紹介】

≪愛宕≫

高雄型重巡洋艦二番艦。艦娘No.60。大きな胸と艦橋が特徴の、色々ふかふかしているお姉さん。普段は穏やかに振る舞い、ぱんぱかぱーんと開放的に皆と

接している。身体のフカフカは駆逐艦の皆に人気。提督に対してはアプローチを仕掛けているが全く報われない。しかし反応を示さない事についても、

面白がっている。それが好意からくる行動という事に本人は気付いていない。若干太っているようにも見えるが実際はただの着ぶくれ。

好きな言葉は『後は野となれ山となれ』。

605: 2015/11/18(水) 21:33:44.46 ID:ylGlsAM20
 ―20時過ぎ、深海棲艦・本拠地―

装甲空母姫「ツイニ、我ラガ艦隊ニ、人間ノ提督ガ着任スル事トナッタノカ」

港湾棲姫「ハイ……地上世界ニテ、我々ノ提督トナル素質ノアル者ヲ探シ、見ツケタノデス」

装甲空母姫「ソウカ……期待シタイモノダ」

南方棲戦鬼「デハ……早速、ソノ者ヲ迎エル準備ヲスルトシマスカ」

装甲空母姫「無論ダ。快ク、‶我ラノ世界‶へ迎エヨウ」

606: 2015/11/18(水) 21:39:12.06 ID:ylGlsAM20
【深き海で】

 ―翌日12時―

男「………………」

装甲空母姫「ヨウコソ、深海棲艦ノ世界ヘ」

港湾棲姫「我々ハ、アナタノ事ヲ快ク迎エルワ」

南方棲戦鬼「コレカラ我々ハアナタノ駒……。好キナヨウニ使ッテクダサイ」

男(以下深海提督)「……なら、1つだけ質問させてくれ」

装甲空母姫「何カ?」

深海提督「……なんだ、この雰囲気」


レ級「はっはっは!このターキーもーらった!」

北方棲姫「あっ、それほっぽの分!」

泊地水鬼「こらこら……まだいただきますも言ってないのに…」

空母棲姫「ねえ、早く食べちゃわない?私特製のケーキが美味しくなくなっちゃう」


港湾棲姫「?何、とは?」

深海提督「これが人類の敵・深海棲艦の雰囲気か!全然イメージと違うよ!なんだこのほのぼのとした雰囲気!というか、この転校生歓迎会みたいな雰囲気!」

南方棲戦鬼「言っただろう?快く迎えるって」

港湾棲姫「新しく来た人を迎えるために、パーティを開くのは当然でしょう?」

深海提督「……一理あるから反論できないんだよな…」

607: 2015/11/18(水) 21:44:35.27 ID:ylGlsAM20
深海提督「そもそも……お前ら本当に深海棲艦なのか?」

レ級「もぐもぐ……そだよ~。君みたいな元一般人にはなじみが無いかな?」

深海提督「新聞とかでチラッと見たことがある程度だよ……ていうか、俺が元一般人だって事を知ってんの?」

北方棲姫「昨日、こーわんから教えてもらった」

深海提督「………そもそも、昨日ひどい目に遭ったんだぞ?」


 ―昨日、海沿いの道―

男「へー…深海棲艦によって沿岸都市が襲撃…か」

男「………ふん」

ザバァ

男「ん?」クルッ

??「ソノ目……気ニ入ッタ…」

男「なん、お前っ―!?」

ガスッ


深海提督「いきなり誰かが俺を殴ったと思ったら、目覚めたら薄暗い部屋だったんだぞ…」

港湾棲姫「あ、貴方を殴ったの、私…」

深海提督「お前かよ!」

港湾棲姫「ご、ごめんなさい……痛かった?」

深海提督「痛いよそりゃ……殴られただけで気絶するなんて経験、初めてだったからな…」

港湾棲姫「提督の初めて……きゃっ///」

深海提督「何想像してるんだお前」

608: 2015/11/18(水) 21:51:33.56 ID:ylGlsAM20
深海提督「そもそも、なんで俺を深海棲艦の提督に何て仕立て上げるんだ?」

装甲空母姫「そうね……まあ、大きな理由は……」チラッ

深海提督「?」

装甲空母姫「……貴方のその瞳の奥に、何かどす黒い感情が見えたから、かしら」

深海提督「………………」

装甲空母姫「その感情は、そうね……何か、悲しみとか痛みとか、そんな感じの感情が色々混じったようなものね」

深海提督「…………分かったような口を」

泊地水鬼「装甲空母姫さんは、人を見る目がありますから」

南方棲戦鬼「あー、じゃあつまり、装甲空母姫の言ってる事はあたりって事かな?」

深海提督「帰るぞ」ガタッ

港湾棲姫「あーあー、待って待って!」

空母棲姫「帰ろうとしても、無駄よ」

深海提督「なんで」

空母棲姫「ここ、深海2000mよ」

深海提督「まて、その理屈だと俺は水圧で氏んでる事になる!」

空母棲姫「大丈夫よ。この本拠地はそういう物理法則が通用しない造りになってるから」

深海提督「流石は深海棲艦……何でもありって事か」

装甲空母姫「それと、貴方の脳内には特殊な装置が埋め込んである。貴方が我々の支配下から逃れようとした瞬間に、その脳内の装置が作動して、

      貴方の脳を破壊するわ」

深海提督「くっ……いつの間にそんなことを……」

609: 2015/11/18(水) 21:56:41.03 ID:ylGlsAM20
北方棲姫「ねー、それよりターキー、ケーキ!」

レ級「早くしないと私が全部食べちゃうぞ~」

深海提督「…敵陣地のど真ん中で…なんか食欲湧かないな……」

装甲空母姫「あら、もしかして菜食主義者だったかしら?」

港湾棲姫「えっそんな…せっかく丹精込めて作ったのに……」シュン

深海提督「そういう問題じゃねえよ!あーもー、分かった!食うよ!食えばいいんでしょ!」

港湾棲姫「………」パアアア

深海提督「まったく……」パクッ

深海提督「……………うめぇ」

港湾棲姫「!!」パアアアアアア

空母棲姫(あの子分かりやすいわねぇ)

レ級「じゃあこの唐揚げは私のもの!」

泊地水鬼「あっ、レ級ちゃん、ちゃんとサラダも食べてね?」

レ級「えー、野菜きらーい」

南方棲戦鬼「じゃあレ級はサラダを食べるまでケーキ無しな」

レ級「な、なにいい!?」

北方棲姫「じゃあ、レ級の分のケーキもほっぽがもらう!」

港湾棲姫「ええ、いいわよ。たんと食べてね」

レ級「わー、分かった分かった!サラダ下さい食べるから!」


深海提督「………………」

深海提督(……なんだこの………家族みたいな感じは……)

610: 2015/11/18(水) 22:04:00.01 ID:ylGlsAM20
 ―18時過ぎ、執務室―

装甲空母姫「……って感じ、大体わかったかしら?」

深海提督「…大体わかったよ。ただ……」

装甲空母姫「?」

深海提督「お前らが、何で提督を求めてるんだ?お前らは今のままでも十分強いだろう?」

装甲空母姫「そうね……艦娘達は、提督と言う司令官がいるから、新たな戦術を次々学ぶ事ができて強くなれる。そして、提督を信じる事でまた強くなる。

      そして、今の深海棲艦と艦娘の戦力の差は同等かこちらが若干劣るほど……。そこで、よ」

深海提督「?」

装甲空母姫「もし私達に、艦娘と同じく司令官と言う信じられる者がいたら、私達はもっと強くなれるんじゃないか、って思ったの」

深海提督「…つまり、俺はただお前らが強くなるためのダシって事じゃんか。下らない…」

装甲空母姫「そうでもないわ。現に、レ級も北方棲姫も港湾棲姫も、今日会ったばかりの貴方に親しくしてくれたでしょう?」

深海提督「……………」

装甲空母姫「まあ、あれよ。皆、異性が見てくれてると頑張れるじゃない?」

深海提督「俺は男だから女の感情なんざまったくわからん」

装甲空母姫「でも、貴方もここが気に入ったんじゃないかしら?さっきの歓迎会で、貴方は私達に優しい目を向けてくれてたから」

深海提督「…自分でもわからなかったが気づいてたのか」

装甲空母姫「私はこれでも、人を見る目はあるから」

深海提督「泊地水鬼の言った通りか……。まあ、悪くはないかな」

装甲空母姫「なら、しばらくの間はここに居たら?私達を指揮するというのは楽しいだろうし、貴方も退屈しないと思うわよ」

深海提督「……そうだな」


【終わり】

611: 2015/11/18(水) 22:08:22.67 ID:ylGlsAM20
【キャラクター紹介】

≪深海提督≫

深海棲艦本拠地に、提督として着任した男。本名は不明。年齢は27歳。海沿いの道を歩いていたところを、装甲空母姫の命で地上世界近くに来ていた、

港湾棲姫に襲撃され、深海棲艦本拠地に連れてこられる。過去に何らかの経験を持ち、悲しみや痛みなどの様々な負の感情が混ざったような心を持ち、

それが深海提督に選ばれた理由だと、装甲空母姫は言っている。おそらく深海棲艦の提督という事を除けば、本作で一番まともな人かもしれない。

好きな言葉は『深謀遠慮』。

617: 2015/11/19(木) 21:04:59.80 ID:dInqNrEg0
 ―19時過ぎ、食堂―

雷「大規模作戦始まっちゃったわね~…」

浦風「そうじゃのぉ……。皆大規模作戦で忙しそうだもんのぉ」

夕雲「でも、装甲も薄い、火力も低い私達の出番って、そんなにないんじゃないかしらぁ?」

雷「だったらせめて、司令官の手伝いもしたいところなのに、司令官ったら…」


提督『私は大丈夫ですから。皆さんは、今は深海棲艦と戦う事に集中し、皆さんが無事に帰ってこられることを願いましょう』


浦風「あの提督さん、そがぁな事ばっかり言うとるがね…」

夕雲「最近、提督徹夜ばっかりって話よ?」

雷「後で司令官の部屋に行ってみようかしら」

夕雲「そうね、そうしましょう」

618: 2015/11/19(木) 21:12:13.11 ID:dInqNrEg0
【休め提督】

 ―数十分後、執務室―

コンコン

提督『どうぞ』

雷「失礼するわ、司令官!」ガチャ

浦風「テゴに来たよぉ」

夕雲「私達にできる事があったら、何でもおっしゃってくださいね?」


(部屋に所狭しと積まれている紙の束)



雷&浦風&夕雲「」

提督「ああ、下手に動くと、積まれた紙の束が崩れてしまうので、気を付けてください」

雷「な、なんなのよこの紙束の数!」

浦風「紙の家でも作れそうなぐらいの量じゃのぉ」

夕雲「これ、全部読むんですか?」

提督「そっちの半分は二晩寝ずに読んだ方です。そっちの方は、まだ読んでいません」

619: 2015/11/19(木) 21:23:29.23 ID:dInqNrEg0
夕雲「これ、全部大規模作戦の書類…?」

浦風「データ関係の書類なら、記録課の霧島先輩や鳥海先輩の持ち分じゃないん?」

提督「いえ…彼女たちは……」

雷「?」


提督「大規模作戦開始から2日目、各鎮守府から送られてくる膨大な量のデータ処理をした結果、過労で倒れました」


夕雲&浦風&雷「!?」

提督「今はそれぞれの自室で、榛名さんと摩耶さんが看病しています。結果、データ関係の書類も、私が見る事になったんです」

雷「この量を…一人で?」

夕雲「で、でも…夕張さんや大淀さんは?彼女たちもデータ処理が得意でしょ…?」

提督「夕張さんは新装備開発によって疲労がたまっていたので流石に仕事を任せられませんし、大淀さんは各鎮守府への情報伝達と作戦概要説明で、

   手一杯なんですよ」

雷&夕雲&浦風「…………………」

提督「一応、妙高さんとか高雄さんとかにも仕事を頼んでいますが、それでも減らないんです…」

雷&夕雲&浦風「…………………」

提督「さ、貴女たちは早く休んでください。明日になったら、出撃するかもしれませんし、編成の変更で遠征を急遽行う事になるかもしれないですし」

雷&夕雲&浦風「…………………」

621: 2015/11/19(木) 21:32:49.31 ID:dInqNrEg0
 ―浴場―

かっぽーん

雷「…………」

夕雲「ねえ、雷ちゃん」

雷「…何?」

夕雲「…今、貴女が何を考えているか、分かる気がするわ」

雷「……私もよ」

浦風「ウチにも、2人の考えとる事が何となく分かるよ」

雷「………………」

夕雲「………………」

浦風「………………」

3人「司令官/提督/提督さんのお手伝いしよう!」

神通「風呂ぐらい……静に入らせてください……」

3人「あ、ごめんなさい…」


 ―翌日9時過ぎ、執務室―

提督「…………はぁ」

雷「?司令官、どうしたの?」

提督「いえ…第2海域の編成がとてつもなくヘビーで……」

雷「?どうして?」

提督「各鎮守府からの報告だと、海路を固定させられる編成が、神通さん、雪風さん、浜風さん、三日月さん、皐月さんを組み込む編成のようですが……」

雷「え、でも……」

提督「雪風さんも浜風さんも練度が低いですし、三日月さんに限っては最近ここに来たばかりです。これでは、海路固定編成を組む事ができません。よって、

   海路固定を無視した編成にしたのですが、今度は重巡リ級flagshipが夜戦で大盤振る舞い……もう、胃薬が無ければやってられません」ゴクッ

雷「大丈夫…?な、何か私にできる事があったら言ってね?」

提督「……では、1つお願いしたいのですが…」

雷「?」

622: 2015/11/19(木) 21:43:51.39 ID:dInqNrEg0
提督「先ほど第一艦隊が帰投し、編成を若干変えて出撃させようと思うのです。そこで、貴女に参加していただきたい」

雷「ええっ!?私が!?む、無理無理!そんなの無理だって!」

提督「お願いします。私と、この鎮守府を助けると思って、お願いします」

雷「よーっし、やる気出てきたわ!やってやるー!」


 ―数時間後―

雷「ぼっこぼこにされたわよ!うわーん!」

浦風「雷、提督さんの口車にええがぃに乗せられたんじゃのぉ…」

夕雲「じゃあ、次は私が行こうかしら」

雷「た、頼んだわよ…夕雲…!がくっ」

夕雲「はいはい、雷ちゃんはドックへ行きましょうね~」


 ―十数分後、執務室―

夕雲「提督、何か手伝ってほしい事はありますか?」

提督「やっぱり、‶ダメ提督製造機‶達が来る結果になりましたか」

夕雲「ダメ提督製造機って?」クスッ

提督「他の鎮守府では、夕雲さんと雷さん、浦風さんは提督の仕事をほとんどやってしまい提督を甘やかしてしまうから、そう呼ばれているんですよ」

夕雲「あら…それは光栄ですね。ふふっ」

提督「褒めてませんよ……しかしそうですね…では、夕雲さんそっちの書類を取ってくれますか?」

夕雲「これかしら?」グッ

夕雲「お、重い……」フラフラ

623: 2015/11/19(木) 21:50:18.68 ID:dInqNrEg0
提督「あんまり無理して運ぶと…」

夕雲「きゃっ!?」グラッ

ドッシャアアアアアアン

夕雲「きゅ~……」

提督「まあ、そうなりますよね」


 ―15時過ぎ、執務室―

浦風「提督さん、ウチにテゴしてほしい事はある?」

提督「今度は浦風さんですか……しかし、貴女は昨日夜間遠征帰りでしょう?今日は休んでくださって結構ですよ」

浦風「それは嫌じゃ」

提督「何でですか?」

浦風「提督さんが1人で苦しんでいる姿を見たら、おちおち休んでもいられないよ」

提督「………………」

浦風「…どうしたん?」

提督「……疲れているせいか、すごいその言葉が体に染み渡る…泣きそうです」

浦風「苦しかったんじゃのぉ。ええよ、今はウチに甘えても」ダキッ

提督「………では、仕事を手伝ってください」

浦風「任せとき!」


雷「……これは…(入渠中)」

夕雲「と、とんだ伏兵がいたものね……(療養中)」


【終わり】

624: 2015/11/19(木) 21:57:13.06 ID:dInqNrEg0
【キャラクター紹介】

≪浦風≫

陽炎型駆逐艦十一番艦。艦娘No.168。青い髪とやんわりとした広島弁が特徴的な、明るい女の子。陽炎型の中では比較的最近鎮守府に着任してきた。当初、

提督の雰囲気に押されて畏怖に近い感情を抱いていたが、今ではただ優しい提督と認識している。他の陽炎型はもちろん、金剛とも仲が良い。料理が上手で、

特に得意なのは広島焼。しかし磯風の料理の実験台にされるのは勘弁。胸部装甲が駆逐艦離れしている。戦闘好きな一面もある。

好きな言葉は『勝負は時の運』。

625: 2015/11/19(木) 22:01:04.89 ID:dInqNrEg0
今日はここまでにします。

>>517
  ダメ提督製造機たちの話、いかがでしたか?

明日はリクエストにありました五月雨の話を書いていきます。

感想・リクエスト等があればお気軽にどうぞ。

それではまた明日。



E-2はどうしても兵にしなければならなかった。

雪風と浜風はいるけど未改造な上に練度が不十分…三日月と皐月に関しては今は手放してしまっている……。必然的に、ルート固定は不可能…。

しかし、>>1の前にまた立ちはだかるのか!重巡リ級flagship(夜戦)!!

626: 2015/11/19(木) 22:02:27.78 ID:C+s10b2S0
乙―
イベント頑張れ


次回:【艦これ】総司令部の日常【その8】


引用: 【艦これ】総司令部の日常