432: 2009/01/04(日) 17:26:09 ID:Ey4i23j8


「済まない、着付けが遅くなってしまった。」
隊員たちの目が一斉にこちらを向く。 大分待たせてしまったようだ。

「うわぁー! 坂本さん……うわぁー!!」
「しょっ、少佐……そんな。 美しすぎます! あぁ……。」
「えー! 少佐なの? 別人でしょー!?」
「ナデシコって奴だねぇ。 いや凄いわ!」
くすり。 まぁ予想はしていたが。 隊員たちには普段の私との落差が面白いようだ。 私とて撫子。 決める時には決める。
隊員たちもこの日のためにインポートショップで思い思いの振袖を買ってきていた。 中々似合っているじゃないか。

「素敵よ美緒。 言葉が見つからないわ。」
「ありがとうミーナ。 やたら息が荒いが大丈夫か? 待たせて悪かった。 お参りに行こうか。」

「さ。 ネウロイも冬休みに入った事だし。 私たちも羽を伸ばしましょうか!」
発端は数日前に遡る。 ミーナの台詞に宮藤とリーネがぽかんとした顔を見せた。 配属初年度だからな。 無理もなかろう。

「ふ、冬休み……ですか。」
「えぇ。 有史以来の統計で、ネウロイは年末年始に活動休止するの。 これを私たちはネウロイの冬休みと呼んでいるわ。」
「年末年始はお休み……公務員さんなんでしょうか。」
なんともリーネらしい、平和な感想だ。 笑いを噛み頃しながら説明を加える。

「例年ならばネウロイの巣を殲滅する好機なのだが、今年は我々の用意が整わなかった。 よって特別休暇に振り替えようというわけだ。」
「予算を削減されすぎたのが響いてるのよね。 月辺りの予算を削って戦闘が延びたら本末転倒じゃないかしら……ぶつぶつ。」
もっともだ。 まぁ、過ぎた事を悔いても仕方がない。

「あ、あの。 それでしたら、ブリタニアの神宮にお参りに行きませんか?」
私と宮藤が同時にリーネの方を見る。 神宮だと? ブリタニアのか?

「えっと……それって、ブリタニアの神様にお参りに行こうってこと?」
「違うよ芳佳ちゃん。 扶桑の大使がなんていうか凄い人でね。 扶桑の神様を奉るお社を、大使館の横に作っちゃったんだよ。
 非難轟々だったけど取り壊すのもなんだしでそのままになってるの。 私、芳佳ちゃんのキモノ姿とか見てみたいし。」

すっかり忘れていたが、そう言えば聞いた事があるような気がする。 ブリタニアに神宮! 何とも妙な感じだ。
しかし初詣か。 一体最後に行ったのはいつだろう。 ふむ。 郷愁をくすぐられる。
リーネもこう言っている事だし、扶桑への理解を深めてもらう事は損ではなかろう。 ここは一つ、みんなで初詣といこうか!

434: 2009/01/04(日) 17:27:02 ID:Ey4i23j8
「さっ、坂本さん、美人です! 綺麗です!! 素敵です!!! 線もぴちっと揃ってるし、もうケチの付け所がありません!」
「分かった分かった! お前もよく似合っているよ。 もう何回目だ、このやり取り。」
はしゃぎ回る宮藤に苦笑を禁じえない。 宮藤はご母堂に持たせて頂いた振袖を着ていて、さながら瑠璃の珠のようだ。
七五三に浮かれる童女の如き振る舞いに、叱ってやるべきかと思いつつも、ついつい母性にも似た愛情が先に立ってしまう。

「分かりきった事でしてよ豆狸! 綺麗な緑のおぐしを結うかんざし一つとっても、貴女とは格が違うではありませんの!」
「いや、宮藤はかんざしを持っていなかったからな。 これは私のと同じだ。」
「……。 に、似合い方が違うという事ですわ。 そう、着こなしている人と着られている人の違いです!」
「芳佳ちゃんだってすっごく可愛いですよ! それに、いつもとは違ったいい匂い……。」
ふふ。 聡いな。 私も宮藤も、白梅の香水を振りかけてある。
梅の季節には少し早いが、次いつこのような機会があるかも分からないしな。 そうこうしている内に神宮に辿り着いた。

「おぉー、これが扶桑の神宮かぁー!」
「カー!」
「うじゃー!」
シャーリーたちが感嘆をあげる。 私も驚きを隠せない。 もっと道楽者の建立した、安っぽいものかと思っていたが。
神宮の名を許されるだけの事はある。 鳥居があり、狛犬があり、手水舎があり……どれも手入れの行き届いた本格的なものだった。
他国にこんなものを作ってしまうとは恐るべき図々しさだな、しかし……。

「こ、こんなの作っちゃって良かったんですかねぇ……。」
「むしろこれほど巨大なら、建設中に幾らでも気付けたんじゃないかという気になるな……。」
扶桑出身の私たちは恐縮しきりだが、意外にも他の面々はそうでもないようだ。 なにしろ。

「なんですのコレは! 人でごった返してるじゃありませんの!! どこを歩けばよろしいの!!?」
「さ、サーニャがいないゾ! うあぁ!? あんな所まで流されテル!!!」
そう。 ますます驚いた事に、この神宮はとても賑わっていた。 同郷らしき姿もちらほら見えるが、大抵は欧州人だ。

「ブリタニア人には受けが悪かったんですけど。 隣国の人たちには評判良かったんですよね、これ。」
なるほど。 国民性の違いか、はたまた他人事だからか。 禅の心など、東洋の精神論を気に入る欧州人も少なくないらしいしな。

「ふふん。 こりゃ相手にとって不足は無いね。 よーし、ルッキーニ、ハルトマン、エイラ、バルクホルン! 突撃すっぞ!!」
「とつげきぃーーー!!!」
「待ってろサーニャぁぁぁーーー!!!」
「わっ、私を仲間に入れるな! こらエーリカ手を離せぇぇーー……。」
待てお前たち! 待ち合わせ場所くらい決めていけ! 時既に遅く、バルクホルンの叫びは空しく人波へと吸い込まれていった。

435: 2009/01/04(日) 17:27:47 ID:Ey4i23j8
「もう、あの子たちったら。 でも良かった。 ちょっとの間でも、息抜きになってくれて。」
「あぁ。 まぁ、私たちはゆっくり回るか。」
歩き出そうとすると、左手が何かに引っ掛かる。 振り向けば、宮藤が振袖の裾を掴んでいた。

「ご、ごめんなさい。 なんか、こうしてないとサーニャちゃんみたいにはぐれちゃいそうで……。」
くすり。 全く。 なんとも頼りない軍曹どのだ。 おほんと咳払いを一つして叱りつける。

「それでも軍人か、宮藤!? しゃんとしろ、しゃんと! ……ふふ。 ほら。 手を貸せ。」
「えっ? あっ、はい。 …………あっ。」
宮藤の手をきゅっと握る。 生活感の溢れる手だ。 が。 小さい。 私は女にしては手の大きい方だが、それにしても小さい。
最近の成長ぶりに目を細めていたが、考えてみればまだほんの少女だ。 ……仕方ない。 今日くらいは甘やかしてやるとするか。

「あっ、ありがとうございます。 坂本さんの手……なんだか凄く安心できる。 ……ぽっ。」
「そ、そうか。 さぁ! それでは気を取り直して我々も参道を歩くとするか。」
んん。 頬を染めて恥ずかしそうに俯く初々しげな様は、未熟ながらさすが扶桑の撫子。
小生意気にも、一瞬色気を感じてしまった。 照れ臭さを誤魔化すように大きな声を出して己を鼓舞する。

「ね、ねぇ芳佳ちゃん。 少佐はインストラクションがあるし、私が手を繋いでた方が邪魔にならないんじゃないかな?」
「そ、そうですわ宮藤さん。 誰かに手を引かれているより、考えもなく人波めがけて突っ込んでいく方が貴女らしくてよ?」
「もう、二人とも。 変な事を言っては駄目よ? 例え心の中で思っていたとしてもね……。」
なぜだろう。 ミーナたちの士気が低いように感じるが。 年初からこのような事では、先が思いやられるな。

「? これは……矢、よね。 なぜ武器なんて売っているのかしら。 しかも高いわ。 こんなの絶対ネウロイには効かないわよ。」
「こちらはナタかしら? 随分と物騒なんですのね。 その割に木製だなんて、費用をけちってらっしゃいますけど……。」
「とするとこれが盾ですかねぇ……。」
仲見世を冷やかしながら思い思いの事を口にする。 おいおい。 物騒なのはお前たちの発想だ!

「これは破魔矢。 魔除けの道具で家に飾るものだ。 私が買っても飾る所が無いな。 お前の部屋に飾ってくれるか? ミーナ」
「え? えぇ、勿論よ。 一本といわず、十本でも百本でも!」
「そんなに飾ってどうするんだ! お前の部屋が武器庫になってしまうぞ! で、こっちは羽子板。
 飾ってもおけるが、これでスポーツもできる。 帰ったら一勝負してみるか、ペリーヌ? 私が教えてやる。」
「しょ、少佐と一勝負!? 手取り足取りご指導!!?? そ、そんな……わ、私などが相手で宜しいのですか? 少佐。」
「勿論だ。 お前は飲み込みが早いし、何をやらせてもそつが無い。 私も今から楽しみだ。」
「!!! はぅあ……。」
笑いかけると、途端にペリーヌがふらついた。 人ごみに酔ってしまったのだろうか? 無理もない。 ブリタニア神宮は大盛況だった。

436: 2009/01/04(日) 17:28:32 ID:Ey4i23j8
「わーい! でっかーい!!」
「ルッキーニー、そろそろ替わってよー。」
「こっ、こらお前たち、あんまり騒ぐな! 恥ずかしいだろ!」
……。 本殿に来てみれば、ルッキーニとハルトマンがご満悦のていで鈴緒をがらんがらん鳴らしていた。
遠目でもはっきり分かる。 バルクホルンが悲しいほど無力な所まで、はっきりと。

「う、うーん。 あの人たち、相変わらず恐れを知らないですねぇ。」
「本当よ! あの子たちの顔を知ってる人だって少なくないのよ? 私の身にもなってちょうだいよ……うぅ。」
あ、神主が出てきた。 なぜかバルクホルンが滅茶苦茶叱られている。 哀れな……。

「奴らの事はとりあえず忘れよう。 ここではな、賽銭といって、小銭を投げ込んで一年の願いを祈願するんだ。」
「まぁ。 トレビの泉みたいですのね。 ロマンティックですわ。」
「ふっふっふっ。 百聞は一見にしかず! 私がやってみせますから、みんなは見ててください!」
そう言って宮藤は大きく振りかぶって……って、おい! こんな所から投げるんじゃない!

びしっ!!!

宮藤の投げた賽銭は見事に神主の頭にヒットした。 あーあーあー。 ギ口リとこちらを睨み付ける神主。
とっさにしゃがみこむ私たち。 私たちは見つからなかったが、怒り狂った神主にバルクホルンが猛烈にキレられているのが見える。
すまん。 本当にすまんバルクホルン。 宮藤に拳骨を一発くれて、私たちは大人しく前の方に進めるまで待つ事にした。

がらんがらん。 ぱん、ぱん。
(今年こそネウロイを駆逐し、人々が安心して暮らせる世界を作れますように……)

「とまぁ、こんな風にな。 賽銭を入れ、鈴緒を鳴らし、拍手を二回叩いて心中で祈願するわけだ。 是非やってみてくれ。」
「はーい!」

(私たちがネウロイをやっつけて、世界のみんなが幸せに暮らせますように……)
(芳佳ちゃんともっともっと仲良くなれますように……胸がこれ以上大きくなりませんように……)
(坂本少佐が私の事を認めてくださって、できればずっと私の事だけを見てくださいますように……)
(美緒と両思いになりますように……みんなが手の掛からない子になりますように……隊の予算が増えますように……あと美緒が……)

「ミーナ、まだか? もう一分くらい祈願しているが……。」
「い、いえ。 もう済んだわ。 待たせてごめんなさいね。」
ほほほと笑って戻ってくるミーナ。 もちろん神主の前を通る時はみんな揃って目を伏せた。

437: 2009/01/04(日) 17:29:18 ID:Ey4i23j8
「ンンン……見えた! これが大吉ダナ! ……ウッ。 末吉だ……。」
「あんたこういう時は本当に当たらないねー。 ま、あたしは大吉だったからいいけどね~。」
来た時とは別の参道から帰ろうとしたら、シャーリーたちと合流した。 エイラとサーニャも一緒か。 手間が省けて良かった。

「おみくじか。 欧州人でも分かるように、結果の一覧が作ってあるんだな。」
「あたしねー、中吉だったよ、中吉! シャーリーとハルトマン中尉は大吉だって!!!」
「ルッキーニさん、さっきは本殿で騒いでいたわね。 公共の場であんな事しちゃ駄目よ。 フラウにも言わなきゃ。 あの子は?」
ルッキーニが指差した先には……うっ。 物凄く沈んだ空気を漂わせたバルクホルンを、ハルトマンが必氏に慰めていた。

「あたしたちから遅れて出てくる事10分……疲れきった奴の心におみくじがトドメを刺した。 そっとしといてやってください。」
「そ、そうか……。」

「わたし吉!」
「わたしも吉!」
「「 一緒だねーー!! 」」
新人コンビが嬉しそうにはしゃぐ。 私は中吉だった。 ミーナとペリーヌは青い顔をしているので聞かない方がよかろう。

「別におみくじの結果が悪かったからと言って嘆く事はない。 こうやって枝に結んで厄祓いをすればいいわけだ。」
みんなが私を真似て枝におみくじを結ぶ。 さて。 あとは適当に仲見世をブラブラして帰るだけだ。
また宮藤の手をぎゅっと握ると、宮藤が傍目に分かるほど顔を赤らめた。

「ん? すまん。 もう手を繋いでいる必要は無いか? 宮藤。」
「い、いえ! 心の準備をしてなかったから、ちょっとドキッとしただけです。 きょ、今日の坂本さん、本当に綺麗だし……。」
「ふふ。 それとこれとに何の関係があるんだ? さ、行くぞ。 こうしていると、私たちは姉妹のように見えるかもな。
 まぁ、それも悪くない。 宮藤のような妹だったら、な。 私の贔屓目かもしれないが! わっはっはっ!!」
「も、もう、坂本さんったら。」
「いえ。 さすがは少佐! 少佐のご慧眼には感服する事しきりです。 私もまだまだ見習う所だらけです!」
うわっと! 気が付けばバルクホルンが復活していた。 その目には、これまでになく強い仲間意識のようなものが見える気がする。
ま、まぁ、元気になったのならそれに越した事は無いんだが。 その目の輝きはちょっと極端すぎないか? 一体何が……。

「サーニャちゃん、それ何? ネコペンギン……とは違うよね。」
「……ウシペンギン……。 ……エイラが、お年玉だって、買ってくれた……。」
「えー、サーニャだけ特別かよー。 私にもお年玉くれよー。」
「くれよー!!!」
わたわたするエイラを尻目に、私たちは笑って参道を歩き出した。

438: 2009/01/04(日) 17:30:15 ID:Ey4i23j8
帰る前の小休憩にと立ち寄った甘味所で、私は人生最大の危機に直面していた。

は……。 は……。
は ば か り に 行 き た い !!!!!!!

振袖で用を足すのは非常に骨が折れる。 なるべく水分を摂らないようにしていたのだが、限界だ。
このような満天下で粗相をしてしまっては、扶桑の撫子の名折れでは済まない。 自決する以外に祖国に顔向けする術は無い!
私に万が一は許されん。 恥を忍んででも宮藤についてきてもらった方がいいな……。
思うや否や、机の下から手を回し、宮藤の手をぎゅっと握り締める。

「ひゃっ!? えっ、えぇと……誰ですか?」
「唐突にすまん、宮藤。 お前に聞いてもらいたい事がある。 何も言わず、私についてきてほしいんだ。」
「えっ…………。」
瞳にありったけの思いを込めて、真剣に宮藤の瞳を見つめる。 一瞬ぽかんとした後、宮藤の顔が真っ赤に染まった。
恥ずかしげに俯く様を見ると、私の窮状に気付かれてしまったのだろうか。 我ながら情けない。
きっと私の顔も宮藤に負けず劣らず真っ赤になっているだろう。 くぅ……。 だが駄目だ! もう何分も耐えられん!!
はやくこの願いを聞いてもらわねば!!!

「そっ、そんな真剣な顔で……。 いっ、今ですか? 本気なんですか!? わっ、私、心の準備が……。」
「お願いだ、宮藤。 今でなければ駄目なんだ。 お前でなければ駄目なんだ。 二人っきりになりたい。 私と一緒に来てほしい!」
カラーンと音を立てて3つのスプーンが落ちる。 ミーナ、リーネ、ペリーヌ……そんな目で私を見ないでくれ!
自分でも情けないと分かっているんだ!! おぉっ!だとか、そうなの?だとか、気付かなかった!だとか、周りが色めきたっている。
くうぅ。 気付かれてしまおうが何だろうが、もはや恥も外聞も無い。 私は宮藤の手を強引に取って走り出した。
残された者たちの視線を、痛いくらい背中に感じながら……。


「…………ふぅ。」
「お、お手洗だったんですね。 言ってくれれば良かったのに。 きょ、今日一日の感じからして、私てっきり……。」
水を切って、手拭で手を拭く。 すっきりした。 なんと清々しい気分だろう。 ふぅ。
とは言え、宮藤に着付けを直してもらいながら、少しだけ落ち着かない私。 ちらりと見れば、宮藤も同じような感じだ。
恥ずかしい所を見られてしまった。 そう思うと、いつまで経っても顔の火照りが取れなかった。

「すまん。 恥ずかしながら、冷静な判断力が残っていなかった。 上官失格だな、これでは……。」
「そ、そういう意味で言ったんじゃありません! 私、坂本さんの役に立ててとても嬉しかったんです。 本当です!!!」
宮藤……感激だ! 着付もそこそこに、宮藤と私は情熱的に手を握り締めあったまま、熱い涙を流していた。 ……はばかりで。

439: 2009/01/04(日) 17:31:01 ID:Ey4i23j8
「こ、こらペリーヌ、自重しろ! そんなに店内を探し回ったら店に迷惑だろ!」
「店の都合なんてどうでもよろしくてよ! 大切なのは、あの二人に何もないか確認する事ですわ!!」
「ペリーヌさん、駄目ですよぉ! こんなペリーヌさん野放しにしておけないから、仕方なく私もついていきます。 てへっ。」
「そうね。 仕方ないわよね。 ペリーヌさんが心配だもの。 ねーペリーヌさん止まってー。」
「なんでそんな嬉しそうなんだお前ら! なんなんだこの馬力は! うおお!! 私はおみくじなんか信じないぞーーー!!!」

はばかりの入り口に見慣れた顔がずらずら現れる。 あんな退席の仕方だったからな。 心配されて当然か。
うっ! バルクホルンの色が物凄く薄くなっている! す、すまん! 私が心配をかけたばっかりに!!!

「しょ、少佐……。 なななんでその豆狸と手を取り合ってますの?」
「ぴっちりと合ってた線が、着付けが乱れてるように見えるのは気のせいよね……。 気のせいよ……。」
「よ、芳佳ちゃんにとっては涙を流して真っ赤な顔をしてるなんて普通だよね。 あは。 あははは……。」
ペリーヌがキッとこちらを睨み付けてくる。 只事ではない剣幕に後ずさる。

「この豆狸! あ、あなた少佐に何をしたの!!」
「誤解だペリーヌ! 私が宮藤に無理矢理迫ったんだ。 宮藤は何も悪くない!」
「む、無理矢理、迫ったですって……。」
「さ、坂本さんだって悪くありません! 私、嫌じゃありませんでした! ううん。 あんな事、坂本さんじゃなきゃ嫌です!!」
「あ、あんな事!? あんな事って何なの芳佳ちゃん!?」
宮藤! お前、こんな情けない私の事を庇ってくれるのか……。

「宮藤ぃ!!!」
「坂本さん!!!」
感極まってガバッと抱きあう私たち。 くうぅ……熱い、熱すぎる! 仲間っていいなあ!! こうして感動を分かち合えるのだから!!
この情熱ある限り、今年も我らが501は大安泰だ!!! わっはっはっはっ!!!!!!!

ばたーん。 ……ん? ミーナ、リーネ、ペリーヌ。 三人が同時に倒れた。 なんだなんだ。 どうしたんだ?

「……卒倒。 してますね。」
「うーむ。 我らの情熱にあてられてしまったのだろうか。 こ奴らも熱き血潮を持った仲間だからな! わっはっはっ!」
「……………………。」


てんやわんやの騒ぎを何とか収拾させ、なんとか基地に戻ったその夜のこと。 バルクホルンが辞表を提出してきた。
どうしたと言うんだ。 我々は仲間ではなかったのか…………。
                                                       おしまい

引用: ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart16