1: 2017/08/28(月) 21:33:02.378 ID:c/KJXoFE0.net
ガタンゴトン… ガタンゴトン…

男(はぁ~……今日も一日が始まる)

男(会社じゃ課長に毎日のようにいびられ、仕事も成果を出せずリストラ寸前)

男(家じゃ妻にはATM扱い、まだ幼い息子には早くもナメられっぱなし)

男(こんな人生があと何十年も続くなんて、耐えられない……)

男(いっそ、自分の手で終わらせてしまうか)

男(痴漢やって人生終わらせよっと)ナデナデ

女「キャーッ!!!」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

2: 2017/08/28(月) 21:36:48.421 ID:c/KJXoFE0.net
女「いやぁぁぁぁぁっ!」

女「この人、痴漢よーっ! 私のお尻さわったわーっ!」

乗客A「マジかよ!」

乗客B「なんて野郎だ!」

男(ハハ……やってしまった)

男(人生を切り開くのはとてつもなく大変なのに、人生を終わらせるのは簡単なもんだなぁ……)

6: 2017/08/28(月) 21:39:06.435 ID:c/KJXoFE0.net
女「ありが……とう……」





男「!!??」

10: 2017/08/28(月) 21:42:29.466 ID:c/KJXoFE0.net
男「なぜ礼を……!?」

女「私……このとおり、あまり美人じゃないでしょ? スタイルもよくないし……」

男「いや、そんなことないと思うが……」

女「お世辞はいいの。だから、自分にとことん自信がなくなってたの」

女「私なんか痴漢される価値もない女だって落ち込んでたの」

女「だから……今日、痴漢されなかったら、私氏のうとしてたのよ」

男「な、なんだって!?」

13: 2017/08/28(月) 21:46:12.588 ID:c/KJXoFE0.net
女「だけど、あなたが痴漢してくれた」

女「あなたのおかげで……私、生きる勇気をもらえた!」

女「本当に……ありがとう!」

男「いや、私は、その……」



ワァッ!!!

15: 2017/08/28(月) 21:51:06.250 ID:c/KJXoFE0.net
乗客A「すっげえや! 大したもんだよ、アンタ!」

乗客B「へへ……やるじゃねえか! 見直したぜ!」

パチパチパチパチパチパチパチ…

男「あ、ど、どうも……」

男(スタンディングオベーションが始まった)

男(って、いやいやいや! このままじゃまずい! 私は人生を終わらせるために痴漢をしたのに!)

男「お嬢さん、次の駅で降りましょう。私は罪を償わねばならない」

女「はいっ!」

18: 2017/08/28(月) 21:54:48.333 ID:c/KJXoFE0.net
駅――

女「駅員さんを呼んできたわ」

男「どうもありがとう」

男(よし……このまま警察に引き渡されよう)


駅員「ほう……貴様が電車内で女性の尻をさわったという痴漢か」ズンッ


男(で、でかい……! 2メートル以上はあるぞ……!)

男(この場で処刑が始まりそうな雰囲気じゃないか!)

20: 2017/08/28(月) 21:58:11.467 ID:c/KJXoFE0.net
駅員「よくやってくれた!」

男「え!?」

駅員「吾輩が駅員になったのは、こういう痴漢をひっ捕らえる場面に出くわしたかったからだが」

駅員「駅に勤めて10年間、一度もそんな場面に出くわすことはなかった!」

駅員「しかし! 貴様のおかげでやっと夢が叶ったのだ!」

駅員「感謝する……!」ビシッ

男「ど、どうも」ビシッ

23: 2017/08/28(月) 22:00:49.630 ID:c/KJXoFE0.net
駅員「ささ、どうぞ! ソファへおかけ下さい!」

男「は、はぁ」

駅員「お飲み物はお茶? それともコーヒー?」

男「お茶で」

駅員「おーい、玉露お出ししてーっ!」

男「いや、ちょっと待って下さい! 私は痴漢なんですよ!? 犯罪者ですよ!」

男「警察を呼んで下さい!」

駅員「あ、はいはい!」

27: 2017/08/28(月) 22:05:05.418 ID:c/KJXoFE0.net
警官「あなたが痴漢ですか?」

男「そうです」

警官「なんという透き通った目……!」ゴクッ…

警官「本官はこれまで痴漢を1000人以上捕まえてきたが、あなたのような目をした痴漢は初めてです」

男(こっちも自分のこと本官っていうおまわりさん初めて見た)

警官「申し訳ありませんが、連行させてもらいます。決まりなのでね」

男「望むところです」



女「ああっ……待って……!」

駅員「追ってはいけない」ガシッ

駅員「信じるのだ。彼の……無罪を! 疑いは必ず晴れるであろう!」

女「……はい!」

31: 2017/08/28(月) 22:11:14.759 ID:c/KJXoFE0.net
帝王ホテル――

警官「こちらへどうぞ」

男「な、なんですかここ!?」

男「外国のVIPとか御用達のホテルじゃないですか!」

警官「上からの命令でしてね。あなたのことは丁重に扱うよう命じられております」

警官「裁判まではまだ時間があります。裁判までの数日間は、ここでお過ごし下さい」

男「は、はい」

32: 2017/08/28(月) 22:13:49.348 ID:c/KJXoFE0.net
ドサッ…

男「このベッド、ふかふかだぁ~……」

男(あの女性には感謝されたけど、やっぱり裁判沙汰になるんだな)

男(裁判か……どうなるんだろ)

男(刑務所行きか、はたまた執行猶予か。いずれにしろ、私の人生は終わりだな……)

男「ぐぅ……ぐぅ……」

34: 2017/08/28(月) 22:16:35.335 ID:c/KJXoFE0.net
数日後――

警官「裁判の日になりましたので、お迎えにあがりました」

男「あ、どうも」

警官「ホテルはいかがでしたか?」

男「いやぁ~、最高でしたよ」

男「でも、私はビジネスホテルのが落ち着きますね。ここはちょっと広すぎて……」

警官「分かります」

35: 2017/08/28(月) 22:19:33.442 ID:c/KJXoFE0.net
裁判所――

傍聴人A「いよいよ始まるぜ! 裁判がよ!」

傍聴人B「イヤッハーッ!」

傍聴人C「見せてくれーっ! 被告人の絶望の叫びをォォォ!」



裁判長「静粛に」カンッ

裁判長「ではこれより、痴漢の裁判を始める」

裁判長「準備はよろしいか?」


男「はい」

検事「はい」

男(弁護士はつけなかった……自分の力で戦う!)

41: 2017/08/28(月) 22:23:45.317 ID:c/KJXoFE0.net
裁判長「では被告人、前へ!」

男「はい!」ザッ

裁判長「被告人は、電車内で女性の体に触れるという痴漢行為をした! 間違いないか?」

男「間違いありません」

裁判長「どの部位をさわったのだ?」

男「尻です」

裁判長「……で、どうだった?」

男「柔らかかったです」

裁判長「ど、どんな風に?」

男「たとえるなら、良質なゴムボール……程良い弾力が、私を快楽の泉へといざなってくれました」

裁判長「おお……おお……!」

男(さっきから、高速で右腕を動かしてるけど何やってんだこの人?)

裁判長「う”っ!」

44: 2017/08/28(月) 22:26:04.038 ID:c/KJXoFE0.net
裁判長「ふぅ……つまり、犯行を全面的に認めるのだな?」

男「はい」

裁判長「なんという潔さ……!」

裁判長「決まりだな」

男(終わった……これで十三階段か)

裁判長「この被告人を……無罪に処す!!!」

男「は!?」



ワアァッ!!!

48: 2017/08/28(月) 22:30:10.933 ID:c/KJXoFE0.net
傍聴席からも――

「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」

裁判長「フフ……傍聴席の獣どもも喜んでおるわ」





男「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

男「これはおかしい! 検事さん、なにか言ってあげて下さい!」

検事「……」

男「検事さん!? なぜ黙ってるんです!? このままじゃ、私は無罪になっちゃいますよ!」

51: 2017/08/28(月) 22:33:30.055 ID:c/KJXoFE0.net
男「検事ィッ!!!」

検事「!」ビクッ

男「なにを呆けている!」

男「お前の仕事はなんだ!? 被告人の罪を立証するためにここにいるんだろう!?」

検事「それはもちろんだ」

男「じゃあ、なぜ裁判長に反論しない!?」

検事「私にはあなたを有罪にできない理由があるのです」

男「……説明してもらおうか」

検事「実はあなたに痴漢された被害者の女は……私の娘なのです」

男「な……!?」

52: 2017/08/28(月) 22:36:21.314 ID:c/KJXoFE0.net
検事「娘を救ってくれた痴漢を有罪にできようか? 否、できるわけがない!」

検事「よって、あなたは無罪!」


「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」 「無罪!」


裁判長「聞け! この無罪コールを!」

裁判長「“情”は“法”に優先するのだァァァァァ!!!」






男(こんなバカな……世の中、間違ってる!)

53: 2017/08/28(月) 22:40:32.223 ID:c/KJXoFE0.net
男「裁判長!」

裁判長「なにかね?」

男「司法的には私が無罪になるというのは分かりました」

男「しかし、私が痴漢をしたのは紛れもない事実!」

男「社会的制裁は受けねばならないと思います!」

裁判長「よくいった! 君ならば、そういうと思っていたぞ」ニヤッ

男(なに……!?)

裁判長「ちゃんと君の会社の上司を呼んでおるわい。入場せよ!」バッ



ワァッ!!!

55: 2017/08/28(月) 22:43:34.276 ID:c/KJXoFE0.net
課長「……」

男「か、課長……」

課長「す、すまなかったァ!」ガバッ

男「え!?」

課長「いつも私が君をいびっていたばかりに、痴漢をするまで追い詰めてしまって……」

課長「どうか許してくれェェェェェッ!!!」

男「ちょ、やめて下さい! 土下座なんて!」

課長「うわああああああああっ!!!」ガンッ ガンッ ガンッ

男「頭まで打ちつけて! お、落ち着いて!」

57: 2017/08/28(月) 22:46:55.427 ID:c/KJXoFE0.net
社長「申し訳なかった」

男「社長!?」

社長「このたびの件で、我々は君という人材の重要性をつくづく思い知った」

社長「どうか、これからは……我が社の“会長”として、我々を導いてはもらえんか!」

男「なぜ!?」

男「私は犯罪者ですよ? こういう場合、私はクビになると思うんですが……」

社長「そうか……君は我が社を辞めたいのか」

社長「たしかに君はうちの会社のような場所でくすぶってる人材ではないな」

社長「もっと大企業に入れるだろうし、海外でも活躍できるだろう」

男(私、英検準2級なんだけど……)

社長「そういう時のためにも――」

58: 2017/08/28(月) 22:49:12.443 ID:c/KJXoFE0.net
社長「我々は潤沢な退職金を準備している!」


ジャン!!!


社長「10億ある、持ってってくれ!」

男「いや、どこから出てきたんですか、この金!? 会社傾きますよ!?」

社長「心配いらん。このぐらいの退職金を持っていく価値が、君にはある」

60: 2017/08/28(月) 22:52:08.824 ID:c/KJXoFE0.net
裁判長「それと被告人、君の妻と子も来ておるぞ」

男「え!?」


妻「あなた……」

子「パパ……」


男「……!」

男(二人とも……わざわざ傍聴に来てくれてたのか……)

64: 2017/08/28(月) 22:55:06.702 ID:c/KJXoFE0.net
妻「あなた、痴漢したんですってね」

男「……うん」

妻「すごいわ!」

男「へ?」

妻「私、あなたのことなんてつまらない男なんだろうって思ってた! だけど違ったわ!」

妻「あなたがそんなワイルドな人だなんて知らなかった! 見くびってたわ!」

妻「ううん、惚れ直しちゃった! ――抱いて!」ガシッ

男「おいおい、よせよ。こんなところで」

ヒューヒュー! ヒューヒュー!

71: 2017/08/28(月) 22:59:02.479 ID:c/KJXoFE0.net
子「パパ……」

男「!」

子「ぼく……今までパパのこと、バカにしててごめんなさい」

男「……」

子「でも、今日のパパはとてもかっこいいよ!」

子「パパ……大好き!」

男「……息子よ!」ガシッ

73: 2017/08/28(月) 23:03:12.126 ID:c/KJXoFE0.net
裁判長「君の噂を聞いて、各界からさまざまな方が来ておるぞ」

JR職員「ぜひ、あなた専用車両を作らせて下さい!」

ノーベル賞審査員「ぜひ、あなたにノーベル痴漢賞を!」

アメリカ大統領「ぜひ我が国の大統領に!」

宇宙人「銀河連合ノ総帥ニ!」


ワアァァァッ!!!


男(おいおいおい、とんでもないことになってきた! そろそろ止めないと!)

74: 2017/08/28(月) 23:07:48.434 ID:c/KJXoFE0.net
男「ちょ、ちょっと待って下さい!」


シーン…


男「皆さんのお気持ちは嬉しいが、私はあまり多くを望むつもりはありません!」

男「普通に会社に通って、普通に家族と仲良くできれば、それでいいんです!」

男「だから、ここはいったん解散して、なにもかもリセットしませんか?」


はいっ!!!





男(――こうして私の奇妙な数日間は幕を閉じた)

75: 2017/08/28(月) 23:10:37.524 ID:c/KJXoFE0.net
男(結局、私は今までいた会社を平社員のまま勤め続けている)

男(しかし、課長からいびられることはなくなったし、仕事も心なしか順調だ)

男(妻と子も、私を尊敬の眼差しで見るようになった)

男(裁判があった日の夜、勢い余って妻を抱いてしまったので、二人目が産まれる日も近い)



男(痴漢をやったら、人生が始まったのだ――)

77: 2017/08/28(月) 23:13:46.659 ID:c/KJXoFE0.net
事件からしばらくして――



男「……」スタスタ

女「……」スタスタ

男「!」ハッ

女「!」ハッ

男「こ、こんにちは……」

女「お久しぶりです……」

80: 2017/08/28(月) 23:16:24.412 ID:c/KJXoFE0.net
女「あの時はどうも……」

男「いえ……こちらこそ……」

男「ところで、今は……?」

女「今度、結婚するんです。あの時の……駅員の方と」

男「ほう! それはおめでとうございます!」

女「ありがとうございます」

男「……」

女「……」

81: 2017/08/28(月) 23:18:34.358 ID:c/KJXoFE0.net
女「結婚したら、私は家庭に入ります。もうあなたに会うこともないでしょう」

男「……そうでしょうね」

女「だから最後に……もう一度さわっていただけますか? お尻」

男「分かりました」

84: 2017/08/28(月) 23:22:35.609 ID:c/KJXoFE0.net
男「いきますよ……」ナデナデ

女(この感覚……あの時と同じ!)ポロッ…

女「……ありがとうございます」

男「それじゃ、さよなら」スタスタ

女「ええ、さよなら」スタスタ


二人(さようなら……)

二人(私の人生を変えてくれたヒト……)







おわり

85: 2017/08/28(月) 23:25:19.575 ID:81i0QSbEr.net

明るい気分になれたわ

86: 2017/08/28(月) 23:25:22.747 ID:gcLEAba50.net
通報END期待した

引用: 男「痴漢やって人生終わらせよっと」ナデナデ 女「キャーッ!!!」