1: 2014/07/26(土) 19:38:18.06 ID:ER9JoE5x0

――童守小学校――


キーンコーン カーンコーン


美樹「だからさー、ホントなんだって」

美樹「北区に氏の森ってあるでしょ?」

美樹「あそこの森の奥にね、古~~~い井戸があって……」

美樹「黄昏時にその井戸の中を覗いたものは……」


美樹「おぞましい怪物によって異界に引きずりこまれてしまーう! キャーこわ~い!」


郷子「あっそ、作り話にしてもありきたりで面白みがないわね」

美樹「ってホントなんだからー!」

広「で、その噂を確かめに見に行こーって話なのか?」

地獄先生ぬ~べ~ 30周年記念傑作選 1 ガチホラー編 (ジャンプコミックスDIGITAL)

3: 2014/07/26(土) 19:45:19.39 ID:ER9JoE5x0
美樹「その通り! 広珍しく察しがいいじゃない」

広「珍しくってなんだよ?」

郷子「でもあそこの森って確か私有地なんじゃなかった?」

郷子「勝手に入ったら怒られるでしょ」

広「ふーん。じゃ仕方ねーな」

美樹「え、何? もしかしてビビっちゃった?」

広「は? 違えよ」

美樹「そういやあそこって雑木林が広がってるし、案外珍しい虫とかいたりして」

美樹「カブトムシとかー、クワガタとかー、案外高く売れそうなのもいるかも~!」

広「……確かにいろいろいそうだ」

美樹「それにムシムシして暑いからさ、肝試しも兼ねて……なんてどう?」

広「そーだなー」

郷子「あんたバカねー、何カンタンに乗せられてるのよ」

4: 2014/07/26(土) 19:47:19.49 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「おーい、お前たち。何の話をしているんだ?」


郷子「あ、ぬ~べ~」

広「いやさ、森に虫捕りに行こうかって話」

美樹「そうそう!」


ぬ~べ~「そうなのか? だが今日はもう日も暮れるしな」

ぬ~べ~「虫取りは休みの日にでも行って……良い子はさっさと家に帰りなさい」


「「「はーい」」」

5: 2014/07/26(土) 19:50:38.12 ID:ER9JoE5x0

――氏の森――


カァー カァー


広「う~ん、いねえなーカブトムシ」

広「美樹、そういやカブトムシって1本角だっけ、2本角だっけ?」

美樹「え、本気でカブトムシ捕るつもりで来たの?」

郷子「ちょっと、良い子は家に帰るんじゃなかったの?」

美樹「何言ってんの、私達悪い子でしょ?」

郷子「やめなさいよ……変なのに襲われるわよ」

広「しっかしこの森気味悪りいな……その辺にペットの墓がゴロゴロあるし」

美樹「案外人間も埋まってたりしてね」

郷子「だからそういうこと言うの止めなさいって」


広「……お、おい。あれ見ろよ」

6: 2014/07/26(土) 19:53:44.43 ID:ER9JoE5x0
郷子「……嘘、ホントにあった……古井戸……しかも結構大きいし」

広「横に腐った木の板が転がって……あ、これが井戸の蓋だったのか?」

広「ボロボロになって苔がびっしり生えてら……」

郷子「周りは雑草とか蔦とかに覆われて……凄い薄気味悪い」

美樹「これはこれは……お菊さんでも出てきそうな雰囲気ね」

美樹「じゃ、広。早速井戸の中を覗いてみて」

広「! おい、何でオレが覗くんだ」

美樹「何言ってんのよ、男でしょ。それとも何、ぷぷぷ……そんなに怖い?」

広「ッ!」

郷子「やめた方がいいって……今はぬ~べ~もいないし……もし何かあったら」

7: 2014/07/26(土) 19:57:30.54 ID:ER9JoE5x0
広「いーや、見る!」

広「こんなの全然怖かねーし!」

郷子「ちょっと広……」

広「ダイジョブだって。妖怪だろうが何だろうがもう慣れっこだっての!」

広「心配すんなよ郷子、何か出てきたらオレがぶっ飛ばしてやるから」

美樹「さっすがー、よっ男前!」

郷子「もー……ホント……」


広(どうせ何も出てこねーよ……いてもタヌキか野良猫くらいだろ)


美樹「じゃ、広が見終わったら次は私達ってことで」

郷子「……」


広「……ゴクリ」


美樹「……どう、何か見えた?」


広「いや、別に……普通の井戸だぞ。完全に涸れちまってるようだけど」

広「特に何――ってうわぁぁぁあああああああっ!!!」

8: 2014/07/26(土) 20:01:59.09 ID:ER9JoE5x0
美樹「!?」

郷子「どうしたの!?」


広「手だ! 手だ! 何か青白い手に掴まれたっ!!」

広「スゲー力で! 中に引っ張り込む気だ!!!」

郷子「もうホントバカなんだから!!」

郷子「美樹! あんたも広を引っ張るの手伝って! 私だけじゃ踏ん張りきれない!!」


美樹「えー、何その言い方。まるでこの美樹ちゃんが太ってるとでも言いたげね」


広「ますます引っ張る力が強くなってく!!」

郷子「いいから早く手伝え!!」

美樹「分かったわよ――て、何よぉ!? この馬鹿力っ!!」

10: 2014/07/26(土) 20:07:05.72 ID:ER9JoE5x0
ボワァァァァァァァァ


広「!? 何か手が這い出て来た先に! 何だありゃ!」

郷子「だから何なのよ!?」

広「分っかんねーけど!! 変な空間が広がってる!?」

美樹「ダメだわ、これ無理! 私スリムだからもう限界!!」

郷子「全員引っ張り込まれるー!!」


ダッ


ぬ~べ~「お前たちっ!」


「「「うわぁぁきゃぁぁああああああああっ!!!」」」


11: 2014/07/26(土) 20:11:09.83 ID:ER9JoE5x0

――??――


ドスンッ


美樹「痛たたた……って何処よぉ……ここ?」

郷子「い、井戸の中……じゃないわね」

郷子「何だか物凄く……広いみたいだし」

美樹「確かに、井戸の中に落っこちたんだったら……井戸の口が上に見えるはずだもんね」

郷子「……洞窟の中……みたいな」

美樹「出口は見えないけれど。あーあ、困ったことになったわー」

郷子「誰のせいだと思ってるのよ」

美樹「ノコノコついてくる方にも責任はあるんじゃないかしらー」

郷子「いい加減に――」


ぬ~べ~「美樹、郷子! 大丈夫か」

13: 2014/07/26(土) 20:13:51.79 ID:ER9JoE5x0
郷子「あっ、ぬ~べ~!」

美樹「どうしてここに?」

ぬ~べ~「……どうしたもこうしたもないだろ」

ぬ~べ~「お前たちのことだ。また危ない所に勝手に足を踏み入れたんじゃないかと思ってな」

ぬ~べ~「幸い克也達が、お前たち3人が北区の森の方に向かったのを見ていて」

ぬ~べ~「仕事を切り上げて急いで駆け付けたんだよ……」

美樹「さっすがぬ~べ~! 頼りになるわ」

美樹「ついでに克也もたまには役に立つじゃないの」

郷子「本人がいないからってそういう言い方は、……ううん本人の前でも変わらないか」

郷子「――あれ、そういえば広は?」


広「おーい! こっちだよこっち!!」

??「キシシシシシ」

15: 2014/07/26(土) 20:18:10.90 ID:ER9JoE5x0
美樹「あ、あそこ!! 上の方にぶら下がってる……桶? ……から広の顔が見えるわ」

美樹「もしかしてあれ、井戸水を汲むための桶?」

郷子「よく見て、桶の中に別の誰かもいるわよ!」



キスメ「お前たちが落とした氏体はこれかい?」

広「オレは氏体じゃねーよ!!」



郷子「広の奴、あいつに捕まったみたい!」

美樹「ぬ~べ~、あれって」

ぬ~べ~「釣瓶落としだな」

美樹「……それって確か、木の上から落ちてきて人間を襲うってやつ?」

郷子「でも見た感じ子どもじゃない? 私達と……そんなに変わりないくらい」

ぬ~べ~「ああ、見た目は子どもだが……妖怪であることは間違いなさそうだ」

美樹「ついでに郷子と同じくらいぺっちゃんこね、クワバラクワバラ」

郷子「ちょっと! 私と同じくらい何がどうなんだって……?」

17: 2014/07/26(土) 20:24:43.53 ID:ER9JoE5x0
キスメ「人間ひとり連れ去るつもりだったのにねぇ」

キスメ「ヤマメの友釣りみたいになっちゃった……いや、それはアユだったかな」

広「ごちゃごちゃ言ってないで放せよこんにゃろー!」

キスメ「ジタバタするなら首切っちゃうよ?」

広「ひっ」



美樹「ねぇ、あいつ手にカマ持ってるわよ!」

郷子「ぬ~べ~! 早く広を助けないとこのままじゃ……!」

ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「おい、広を……いや、その子を放してやってくれないか?」


キスメ「どうして?」

18: 2014/07/26(土) 20:29:51.20 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「広は、いやここにいる子どもたちは……俺の大事な生徒だからだ」


キスメ「せいと? ああ、じゃあ、お前はせんせぇ?」

キスメ「寺子屋で教えてるの?」



郷子「寺子屋って……」

美樹「例えがやたら古いわね~」

ぬ~べ~「とにかく、お前が広を連れ去ろうとしたのがただのいたずら目的だったとしたら」

ぬ~べ~「俺はこの子達を引き連れて、さっさとここから立ち去る。ここはお前の棲みかなんだろうしな」

ぬ~べ~「それ以上の干渉は一切しない。聞き入れてくれるか?」


広「……ゴクリ」

キスメ「……」

19: 2014/07/26(土) 20:35:31.58 ID:ER9JoE5x0
キスメ「大丈夫、私はこれを殺さない」


ぬ~べ~「!」

美樹「良かったじゃない、話が通じる相手みたいよ」

郷子「だったら、早く広を降ろしてあげて」


キスメ「子どもはねぇ」

キスメ「たんまりと太らせてから喰っちまうのさ」

キスメ「だから今は、殺さない」

広「そっか、それは助かった……て、助かってねぇええっ!?」


美樹「あちゃー、交渉決裂ね」

美樹「ぬ~べ~!!」

ぬ~べ~「そうか、それなら――仕方がないな」

20: 2014/07/26(土) 20:40:58.36 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「『南無大慈大悲球苦救難(なむだいじだいひきゅうぐきゅうなん)

広大霊感(こうだいれいかん)

白衣観世音(びゃくえかんぜおん)』

白衣観音に封ぜられし鬼よ

今こそ――その力を示せ」


キスメ「!」

キスメ「お、鬼ッ!?」


ブチィ……ッ……!!!


美樹「やった! あいつの入ってた桶に繋がってた縄か何かを切っちゃったわよ」

郷子「真っ逆さまに落ちていく!」


広「落ちるー!!」

美樹「オウ!?」

郷子「こっち来るなー!!」


ドスンッ

22: 2014/07/26(土) 20:45:15.82 ID:ER9JoE5x0
広「痛つつ……」

郷子「痛いのはこっちよ! ってドサクサに紛れてドコ触ってんの!!」

広「んだと!? これは不可抗力だろ!」

美樹「いーから早くどいてって」



キスメ「……ッ……」

キスメ「! 桶……私の桶は……どこ……?」

ぬ~べ~「お前が落とした桶は――これか?」


キスメ「……!」

ぬ~べ~「いいか、よく聞け」

ぬ~べ~「妖怪(おまえ)が単にいたずら目的だったら、ここまでしない」

ぬ~べ~「だが、お前が俺の生徒達に危害を加えるというのなら」

ぬ~べ~「俺は心を鬼にする」

ぬ~べ~「この左手に宿りし鬼の力を――躊躇なく使えるように」

ぬ~べ~「そうするために」

キスメ「……ひ……ひぃ」

ぬ~べ~「だから……これに懲りたらもう二度と」


ヒュルルルルルルルルル


広「!? 危ないぬ~べ~!」

美樹「何かがまた上から来るわ!」

郷子「何あれ、太い糸みたいな!!」

23: 2014/07/26(土) 20:51:02.16 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「!」

キスメ「!」


シュルン!


ぬ~べ~(俺への攻撃――じゃない。釣瓶落としを回収した?)

美樹「あっ、あれ見て!」

広「上にでっかい蜘蛛の巣が張ってあるぞ!」

郷子「さっきまでは何もなかったのに! いつの間に」

広「ってやめろよ! 電話線のアレ思い出したじゃねーか!」

郷子「って言わないでよ!? 私も思い出しちゃったじゃない!」


??「私は巣(いえ)を作るのが得意でねぇ。勿論、貴方たちが住めるような建物も一昼夜で作れちゃうよ」

25: 2014/07/26(土) 20:54:38.58 ID:ER9JoE5x0
広「……」

郷子「また女の子なの……」

美樹「今日やたら女妖怪出没してるけど、ぬ~べ~女難の相でも出てるんじゃないの?」

ぬ~べ~「やめてくれ……何だか背筋が寒くなるから」


キスメ「……ヤマメ」

ヤマメ「まったく何やってんだい、あんたは」

ヤマメ「外界(そと)の人間をこっちに引っ張り込んでくるのに飽き足らず……」

ヤマメ「どうやら随分と厄介なモノまで連れてきてしまったようね」


広「……ぬ~べ~の鬼の手のこと言ってんのか?」

郷子「案外美樹のこと言ってるんじゃない?(首が伸びるし)」

美樹「おんどりゃ! 誰が厄介者じゃ!」

ぬ~べ~「3人とも少し黙っていてくれないか」

26: 2014/07/26(土) 21:01:01.98 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「巣から逆さに吊り下がっているお前は十中八九――土蜘蛛のようだな」

ぬ~べ~「『土蜘蛛草紙』という絵巻物には、平安時代の武将源頼光とその郎党が土蜘蛛退治をした様が描かれている」

ぬ~べ~「土蜘蛛はこういったジメついた空間を好み、強靭な糸を張って営巣をするし、粘着質の糸は人を捕えるのにも使う」

ぬ~べ~「ただ、糸を口ではなく手から放つのはなかなかに珍しいが」


ヤマメ「ほほう……貴方はやたら妖怪に明るいようで」

ヤマメ「先生がどうとか言っていたけれど、民俗学者か何かなのかい?」


ぬ~べ~「いや、俺はただの小学校の教師だが」

ぬ~べ~「ひとつだけ普通の教師と違うのは、俺が霊能力を持っているということだ」

ぬ~べ~「日本では唯一の霊能力教師、といったところさ」


ヤマメ「……なるほど。通りでやたら察しがいいわけだ」

ヤマメ「そうなると、もしかして貴方は今自分達が置かれた状況も、ある程度理解できているの?」


ぬ~べ~「まあ――大体な」

28: 2014/07/26(土) 21:07:21.34 ID:ER9JoE5x0
広「?」

郷子「私達が置かれている状況って……どういう意味なの?」

美樹「ぬ~べ~、もったいぶらずにハッキリ言ってよ」

ぬ~べ~「要するにだ。どうやら俺達4人は“神隠し”に遭ってしまったらしい」

ぬ~べ~「さっきの釣瓶落としによってな」

広「神隠しだって?」


スルスルスルスル


ヤマメ「大方間違ってはいないかな」

ヤマメ「貴方達、有名な心霊スポットにでも行ったの?」

ヤマメ「スキマ以外の妖怪が外の人間を引きずり込むには……余程境界が薄くなっている結節点じゃないと」


郷子「って何か言いながら、降りて来たわよ!?」


ヤマメ「安心しなさいな。私はキスメ(あれ)ほど手が早い妖怪じゃないから」


美樹「って言ってるけど……」

広「大丈夫なのか、先生?」

ぬ~べ~「……、こいつは大丈夫だろ」

郷子「えーそんなあっさりと?」

30: 2014/07/26(土) 21:12:38.05 ID:ER9JoE5x0
ヤマメ「おやおや。ちゃんと話が通じる人間で、こちらしてもありがたいね」

ヤマメ「何しろ、鬼の手だなんて……こんな厄介モノを持っている相手に襲いかかるのは、腫れ物に触るようなもの」

ヤマメ「触らぬ神に祟りなし……いや触らぬ鬼だね」

ぬ~べ~「それはいいとしてだ」

ぬ~べ~「ここで面倒事を起こしたくないのなら、俺達をここから追い出す手引きをしてほしい」

ぬ~べ~「この異界に通じる“入口”が存在するということは、当然“出口”も存在するということだろ?」

ヤマメ「まあ、込み入った話は後でゆっくりしてあげるからさ」

ヤマメ「まずはキスメのやつに桶を返してあげてくれないかい?」


キスメ「……」


ヤマメ「これは滅法内気な妖怪でね。宿を取られるとヤドカリみたいに縮こまってしまうのさ」


ぬ~べ~「……。わかった、ほら」

キスメ「……ペコリ」


広「どこが内気なんだよ……オレ普通に襲われたんだぞ」

美樹「まーまー、過ぎたことはもういいじゃないの」

広「何だよ人ごとだと思って!」

美樹「だって人ごとだし」

郷子「はいはい、大人げないわよ……広」

広「何でオレが責められんだ!」

郷子「妖怪が出たらぶっ飛ばすって言ったのはどこの誰だった?」

広「……っ」

31: 2014/07/26(土) 21:19:27.55 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「キスメ……というのか、あの釣瓶落としの名前は。桶を取り返したらもう闇に紛れて行ってしまったが」

ヤマメ「ちなみに私はヤマメだよ。川魚じゃなくてさっき貴方が言った通りの土蜘蛛」

ヤマメ「好んでここに棲みついているかといったら、少し微妙なところもあるけどねぇ」

ぬ~べ~「……まぁとにかく、ヤマメくん。詳しい話を聞かせてもらえるか?」

ヤマメ「うーん、こんなところで立ち話ってのも難だし」

ヤマメ「いい機会だから、私が案内してあげても良いわ――この旧地獄をね」


広「へー……ってここ地獄なのかよぉ!?」

郷子「えっ、じゃあ閻魔大王とかがいるわけ!?」

ヤマメ「よく聞きなって、旧(ふる)い地獄さ――今ではもう本来の地獄としては機能していない」

美樹「ま、とにかくその旧地獄とやらを観光案内してくれるのね。面白そうじゃない!」

ぬ~べ~「美樹は適応力が高いなー」

ぬ~べ~(しかし、かつての地獄だと? 逆に言うならば……現在の地獄は……)



ヤマメ「付け加えるなら――蛇の道は蛇ってやつだ」

ヤマメ「貴方の話し相手は、私では不釣り合いだと思ってね」

ぬ~べ~「……!」

32: 2014/07/26(土) 21:25:41.87 ID:ER9JoE5x0
広「どういう意味だ?」

郷子「ヘビが出てくるから気をつけろってことでしょ?」

美樹「確かにいろんなモノが出てきそうよね。ハイスケールなお化け屋敷って感じ」


ヤマメ「とまあ、そういうことさ。どうだい、ついてくるかい?」

ヤマメ「別にイヤなら無理にとは言わないけど。私は勝手に闇にでも紛れるから」


ぬ~べ~(この妖怪の纏う妖気の感じからして、敵意はなさそうだが)

ぬ~べ~(万一、これが罠だとしたら……広達を危険にさらすことになる)

ぬ~べ~(だが、仮にこのままこの場に残ったとしても)

ぬ~べ~(食糧はおろか水さえも入手できるとは限らない……何しろ未知の環境だ)

ぬ~べ~(そして、この土蜘蛛が言う蛇の道は蛇という言葉の本意は)

33: 2014/07/26(土) 21:32:43.53 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「分かった――案内を頼もう」

ヤマメ「よし来た――それでは、楽しい楽しい地底の旅へ外来人4名様をご案内~」


広「地底って……ここ地下だったのかよ」

美樹「そりゃ地獄なら地下にあるでしょ」

広「でも本当に大丈夫なのか……ついて行って?」

郷子「ぬ~べ~がそう言うんだし……大丈夫なんじゃない?」

美樹「それにしても、今日のぬ~べ~ってやたらマジメな感じよね?」

郷子「うーん、そう言われると……いつものぬ~べ~っぽくないかも」

ぬ~べ~「あのなぁ、もう少し危機感を持て」

ぬ~べ~「それから……お前たちはいつもの俺にどんなイメージを持っているんだ……」

ヤマメ「いつもはどんな感じなの?」

広「んーと。普段はおっちょこちょいなスOベだけど、やる時はやるって感じかな」

ヤマメ「へー、やる時はやるねぇ。一体ナニをやるんだか」

ぬ~べ~「……広、言葉足らずだぞ」


美樹「さーて、地獄の底に埋もれたお宝探しの旅にしゅっぱーつ!」

36: 2014/07/26(土) 21:44:39.47 ID:ER9JoE5x0

――妖怪の山(茨華仙の屋敷)――


華扇「――何かな、この胸騒ぎ」

小町「お、不整脈かい? ようやくあたいが一仕事する時が来たか」


華扇「生憎そっちの方面でお世話になるつもりはないわ」

小町「そうかいそうかい。まあ、あんまりお仕事増やされちゃ……こちらとて身が持たない」

小町「今も邪仙が悪さをしないか監視するのに忙しくて……ああ、肩が凝るなあ」

華扇「監視って……うちに来てお菓子を食べてお茶を飲んで油を売っているだけでしょ?」

小町「うーん、あたいは菓子よりやっぱり旨い酒に美味い肴が一番かな?」

華扇「……貴女の食の好みを聞いているわけじゃないから」

華扇「第一私が邪仙って失礼ね……過去によこしまな行いをしたことも無ければ、これからするつもりもないというのに」

小町「あんたがそう思うんならそうなんだろうけどさ。あんたにとってはね」

38: 2014/07/26(土) 21:49:45.21 ID:ER9JoE5x0
小町「それで、さっきの胸の空騒ぎってやつは?」

華扇「――間欠泉の一件以来、地上に残留した怨霊が、わずかながら活発になっている様子」

華扇「もともとそれらは地底に蔓延(はびこ)っていた怨霊達……」


ヒョイ


野良怨霊「Oh…」


パァンッ


華扇「その怨霊達が妙に敏感になっているのが気になってね。地底に何らかの動きがあったのかな、と」

小町「それだけのことで? わざわざ地底に結びつけるなんてこじつけじゃないのさ」

小町「それより、あたいの目の前で平然と怨霊を握りつぶすのはさすがにやめなよ……」

華扇「これこそ、それだけのこと、で済ませてもいいんじゃないの?」

小町「やれやれ」

40: 2014/07/26(土) 21:52:21.03 ID:ER9JoE5x0
華扇「それよりも貴女、いい加減本業に戻りなさい」

華扇「三途の川の渡し船が欠航続きじゃ、さ迷える魂達も密になり身動きがとれなくなって彷徨うこともできなくなるでしょう?」

華扇「貴女の上司もさぞ気に掛けていることでしょうね」

華扇「まずは自分の職分に対する責任というものをもっと自覚して――」

小町「あーはいはい、もういいから! 説教は映姫様(ボス)だけで十分だよ」

小町「もともと、そろそろお暇するつもりだったのさ。けれど、貴女の監視もあくまで仕事の一環なんでね」

小町「それじゃ、また来るから。今度はこっちが他所へ連れて逝ってもいいんだよ?」

華扇「はいはい、いいからさっさとお行きなさい」


スゥ……


華扇「――さて、地底の方で妙な気配を感じるっていうのは本当なのね?」

ヒョコリ

管狐「コクリ」

42: 2014/07/26(土) 21:56:37.40 ID:ER9JoE5x0
華扇(前に霊夢に憑いて、解放した管狐――わざわざ私を頼ってここまでやってくるとは)

華扇(私達にはまだはっきりとは感じられない小さな“異変”を鋭敏に感じ取ったのかも知れない)

華扇「……少し探りを入れてみましょうか」


ザッ


竜「……」


華扇「鬼が出るか蛇が出るか、何も出てこないのか――あるいは」


44: 2014/07/26(土) 22:03:31.54 ID:ER9JoE5x0

――地底(旧都周辺)――


??「ったく、この世の掃き溜めってのはまさに此処のことだな」


正邪(けれども、さすがにこんなところまで追ってくる輩はいないだろ)

正邪(お尋ね者もラクじゃないな――ほとぼりが冷めるまでしばらく地底を流離っとくか)


??「お! 貴女はもしかして、お尋ね者の天邪鬼さんかな? 噂だけは耳にしているよ」


正邪「あァ? 誰だおま……、え……?」


勇儀「喜びな! お前の仲間の鬼だよ。と言っても、お前は正確には鬼に似て非なるモノか」

正邪(あ……モノホンだ……)


ガシッ

45: 2014/07/26(土) 22:08:22.63 ID:ER9JoE5x0
勇儀「丁度いい。酒盛りしようと思ったんだが今日はモリ(呑み仲間)があつまって無くてね」

勇儀「さっき正体不明の妖怪が珍しく地底に戻っていたから捕まえたが」

勇儀「二人酒ってのも興が足りない」

勇儀「折角だからお前も交えてやるよ。たまには気ごころの知れない者同士呑むのいいだろう」

正邪「あの……、申し訳ありませんがお断りさせてもらってもよろしいでしょうか」

勇儀「よし快諾だね! お前さんは天邪鬼らしく素直だな」

勇儀「鬼の酒盛りに誘われて物怖じしないとは、案外度胸があるじゃないか!」

正邪「……」


ズルズル……


正邪(捕まっちまった……ヤバいやつに……)

46: 2014/07/26(土) 22:11:21.61 ID:ER9JoE5x0

――氏の森――


殺人犯「……おお、こんなところに古井戸があるじゃねーか」

殺人犯「この中に氏体を入れちまえば、わざわざ穴掘って埋めることもねえ」


ドサッ


殺人犯「……よし、これでいい」

殺人犯(……念のために、ちゃんと底まで落ちたか確かめてみるか)


殺人犯(!? ない、嘘だろ……! 確かに下に落ちたはず!?)


ザッ


殺人犯「!? 上から……何か……」


「オマエガオトシタシタイハコレカイ?」「ぎゃぁぁぁぁああああああああああっ!!?」


ブシャァァッ


                      (第1話:地の底の釣瓶落としの巻・終)

47: 2014/07/26(土) 22:24:25.54 ID:fM3arSPz0

この雰囲気好きだわ

48: 2014/07/26(土) 22:25:39.14 ID:CeQHeE60o
乙乙
締め方とかがぬ~べ~っぽくてすごい好き

75: 2014/07/27(日) 23:46:29.09 ID:qR/+qlng0

――童守小学校――


キーンコーン カーンコーン


玉藻「何ですって? 鵺野先生と生徒3人が行方不明になっている……と?」

リツコ「そうなんです……昨日の放課後から連絡が取れなくなっていて」

リツコ「……念のために警察には通報したんですが」


克也「そうなんだよ!」 

克也「あいつらが北区の方に向かってるのを見かけてよ……そん時は気にも留めてなかったんだが」

まこと「その後、念のためにって先生が3人のあとを追って行ったのだ……」

克也「ぬ~べ~がついてったら大丈夫だろうと思って、オレらは日が暮れたら帰ったんだ」

まこと「でもみんな、夜になっても家に帰って来なかったらしくて……」

まこと「ぼくの家にも家族の人が心配して『遊びに来ていないか』って電話があって……」


玉藻「そして――そのまま、現状に至るというわけか」


ヒュゥォォォォ


ゆきめ「鵺野先生が……行方不明っ!?」

76: 2014/07/27(日) 23:50:51.72 ID:qR/+qlng0
リツコ「……ええ」


克也「ああ、そうなんだよ……広達3人も」

まこと「きっと妖怪の仕業なのだ! 悪い妖怪に4人とも連れ去られてしまったのだ!!」


ゆきめ「そんな……」

玉藻(鵺野先生がついているならば、よもや大事はあるまいが……万一ということもあり得る、か)

玉藻「今日の健康診断は中止させてもらいます――いいですね、校長先生」


校長「う、うーん……」


リツコ「……あ、校長先生もいらっしゃったんですね」

ゆきめ「私も探しに行きます!」

ゆきめ「鵺野先生が苦戦するような敵だったら、少しでも戦力があったほうがいいでしょ?」

玉藻「……それはそちらの勝手だ。私が特段口を挟むことではありませんよ」

玉藻「私は私の目的に沿って行動するだけのこと。別に彼らを助けんがために向かうわけではない」

78: 2014/07/27(日) 23:57:05.42 ID:qR/+qlng0
克也「オレも探しに行くッ! あいつらが行方不明じゃいてもたってもいられねぇ!!」

まこと「ぼくも行くのだ!」

玉藻「君たちはダメだ! ――更に生徒を危険に巻き込んでしまったら鵺野先生に顔向けできないからね」

克也「ッ! でもよ……」

ゆきめ「ふたりとも心配しないで。みんなは私達が必ず連れ戻してくる……だから、待っていて」

克也「……畜生、……わかったよ」

まこと「……絶対……なのだ。絶対みんなを連れ戻して……ほしいのら……」

克也「おい、泣くなよ……まこと」


玉藻(――何しろ鵺野先生は私にとって大事な研究対象だ。まだいなくなってもらっては困る)


リツコ「クラスの皆のことは私に任せて。……お願いね」

ゆきめ「――コクリ」

80: 2014/07/27(日) 23:59:28.82 ID:qR/+qlng0

――博麗神社――


霊夢「はー、……相変わらず誰一人参拝客が来ないわね」

萃香「何を言ってんの? 私が今参拝してあげているじゃない?」

霊夢「あんたは参拝客に含まれてないわよ」

霊夢「昼間っから酒を浴びて、お酒臭いからさっさとどっか行って頂戴」

萃香「んー? まあ、言われなくてもそろそろ出かけるつもりだったんだ」

萃香「ちょっと興味深いモノを見つけてねぇ。ちらほら様子見にでも行こうかな」

萃香「それじゃあ――また今度」


サラサラサラ……


霊夢「……」

霊夢「さて、萃香はどっか行ったからいいとして……あんたはいつまでうちに居座るつもり?」

81: 2014/07/28(月) 00:01:30.48 ID:iWjHv62D0
>>79 トリップって何ですか?

82: 2014/07/28(月) 00:03:46.21 ID:iWjHv62D0
貧乏神「……いつまで?」

霊夢「さっさと帰るべき場所に帰ったら?」

貧乏神「オラァ現世でニンゲンに存在忘れ去られただ」

貧乏神「そしてこっち流されて……まったく日蔭者の棲みづらい世の中になってしもたわ」

霊夢「嘘おっしゃい。あんたが忘れ去られるって、外は共産主義に彩られて格差社会が解消されたの?」

霊夢「そんなハナシ、早苗からは聞いてないわ」

貧乏神「……」

霊夢「博麗神社は幻想郷と外の世界とを隔てる境界線上に存在する」

霊夢「――だからどちらの側にも存在しているといえるし、逆に存在していないともいえる」

霊夢「あんたはたまたま外界の博麗神社に潜り込んで、たまたま大結界を通過してこっち側に来てしまったってことじゃないの?」

霊夢「外界に今でも息づく妖怪や神霊の類は、こっちの常識にもそっちの常識にも馴染み得るもんね」

貧乏神「難しいことなぞ分からん。オラァ発想も貧困だでな」


霊夢(それとも、誰かさんが気まぐれでこっちに連れ込んだ? むしろそっちの方があり得るか)

83: 2014/07/28(月) 00:08:53.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「ま、理由はどうあれ私は気にしないけどね」

貧乏神「?」

霊夢「あんたが居ようが居まいが、たいして何も変わらないからよ」

霊夢「もっとも問題を起こすつもりがあるんだったら、容赦なく退治させてもらうけど」

霊夢「ただいるだけなら、問題ないってこと。もともとうちは妖怪神社なんて呼ばれてるし」

霊夢「何なら博麗神社に祀ってあげてもいいわ」

霊夢「この神社、もともと何の神様を祀っていたのか私も良く知らないし」


貧乏神「これまた……食えない巫女さんもおったもんぞ」

貧乏神「そんではいつまでも居座らせてもろうて。この神社の守り神になるがな……フェフェフェ」


霊夢「……え、さすがに今のは冗談よ」

霊夢「こっちだって、いくらなんでも貧乏神を祀ったりしたら商売上がったりだわ」


??「あら、こんなところにいたの?」


霊夢「え? そりゃ居るわよ、ここは私の神社なんだから」

霊夢「それより厄神がうちに何の用? 用が無いならとっとと山に帰ったら」


雛「はい、貧乏神さん。人間達の災厄を引き受けて、貴方に渡しに来たわよ」

貧乏神「おお、ありがたや、ありがたや。ここで使わしてもろう」

雛「そう。役に立てて良かったわ」


霊夢「はーいあんたたち――さっさと表に出なさいな」

85: 2014/07/28(月) 00:11:05.59 ID:iWjHv62D0
――

雛「うう……ひどいじゃない……」

雛「私何もしてないのに……どうして襲われなきゃいけないの」

霊夢「何被害者ヅラしてんのよ。間接的にこっちに迷惑がかかることを自覚しなさいよね」

雛「服がボロボロに破けちゃったわ……どうしてくれるのよ?」

霊夢「いーじゃん、あんたお色気担当ってことで」

霊夢「その格好で帰りなさい」

雛「厄い……厄いわ……」


霊夢「さてと……貧乏神のやつはどこ行っちゃったのかしら」

霊夢「ま、吹っ飛ばしたから守矢神社にでも行ったのかもね」


ツンツン


貧乏神「なーに言っとるだ、まだまだ健在やがな」

貧乏神「代わりはいくらだでおるからの」

霊夢「……ったくしつこいわね」

89: 2014/07/28(月) 00:18:03.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「この際はっきり言っておくわ。うちは賽銭箱の中身は少ないけれど」

霊夢「だからといって生活に苦労しているわけじゃないのよ?」

霊夢「ほら、そっちに守矢神社の分社だって建ってるし。間欠泉の(将来的な)権益だって握ってるし」

霊夢「どちらかというと裕福な方なんだから」

霊夢「あんたがそうそう付け込むスキは――」


パチパチパチパチ……ホカホカ……


霊夢「ん?」


穣子「もう少しでお芋が焼けるわね、お姉ちゃん」

静葉「そうね、いい感じにキツネ色になってきたね」


霊夢「……」

90: 2014/07/28(月) 00:19:50.17 ID:iWjHv62D0
霊夢「ちょっと、そこの野良神ども」


穣子「な!? 人を捉まえていきなり野良神って何よ無礼者!」

静葉「そうよ。折角いい芋が収穫できたから、貴方にも食べさせてあげようかと思って」

静葉「わざわざここの境内までやってきて焼き芋をしているってのに」


霊夢「ごちゃごちゃ言わないでいいからこっちの質問に答えなさい」

霊夢「あんたたち、そこで何を焼いているの……?」


穣子「何って……見ての通りお芋を焼いているのよ?」


霊夢「そうじゃなくて……火種に何を使ったのかって聞いてるのよ?」

91: 2014/07/28(月) 00:22:44.38 ID:iWjHv62D0
静葉「そりゃ、私が落とした落ち葉を敷いて……」

穣子「あ、でもいまいち火の勢いが良くなかったから、神社の中にあった紙束を加えたっけ」

静葉「そうそう、壺の中に入ってた紙束を全部……そう言えばあれ、一円札の束だったかも」


霊夢「……」


穣子「でも、お陰で火の勢いが強くなったもん、別にいいよね」

静葉「あら、そんなことを言ってたら芋がちょっと焦げちゃったわ」

穣子「でも、美味しそうに焼けたみたい!」

静葉「ほら、貧乏巫女も食べる?」


ゴゴゴゴゴ


霊夢「ええ、食べさせてもらうわ――黒コゲに焼き尽くしたあんたたちをね」

92: 2014/07/28(月) 00:26:33.80 ID:iWjHv62D0

――人間の里――


??「油揚げください、いつものやつ」

豆腐屋「はいよ、いつもご贔屓にしてもらってるから1切れサービスしとくね」

藍「あ、これはどうも」


スタスタ


藍(ふふ……あの店のお揚げは絶品だからなぁ)

藍(さて、紫様は“限りなく近くて遠いところ”にバカンス中だから)

藍(しっかりと仕事をこなさないと)

藍(――もっとも、博麗大結界は協力だから余程のことが無い限りは弱まったりしないのよね)

藍(そうだ、ちょっとマヨヒガに寄って行こうか)

藍(お土産ってことで、橙に新しいマタタビを買ってあげよう!)

93: 2014/07/28(月) 00:30:53.39 ID:iWjHv62D0

――氏の森――


ギュォォォオオオオォォォォオオ……


玉藻「――どうやら、ここで間違いないらしい」

玉藻「この古井戸の前で、鵺野先生の気がプツリと途絶えている」

ゆきめ「……井戸の奥に、穴が開いてる! 穴の向こうに……あれは……?」

玉藻「強い妖気を感じますね――どうやら、4人はあの結界の向こう側に取り込まれてしまったらしい」

ゆきめ「でも、これほどの妖気を放っている場所……どうして今まで誰も気づかないで」

玉藻「おそらく、何らかの原因で異空間と人間界を隔てる結界に歪みが発生したんでしょう」

玉藻(それが意図的なものなのか……偶発的なものなのかは定かでないが)

玉藻「だから今まで存在すら気付かなかったものが、あたかも突然現れたかのように認識できるようになった」

ゆきめ「……この結界の向こう側には、一体何が」

94: 2014/07/28(月) 00:34:52.63 ID:iWjHv62D0
玉藻「さあて。どうやら私が人間界に来る前にいた空間とはまったく別物の様子」

玉藻「しかも、これほどの妖気を放つ結界――仮に何者かが意図的に作りだしたものだとしたら」

玉藻「相当の実力を持つ妖怪の仕業に違いない。あの鵺野先生もあっさりと飲みこまれてしまったのだ」

ゆきめ「……」

玉藻「私はこの結界の向こう側へ侵入しますが、あなたはどうします?」

玉藻「結界の向こうに何が待ち構えているか見当もつかない。何かあってもすべて自己責任――」

ゆきめ「行くに決まってます!」

ゆきめ「鵺野先生達がひどい目にあっているかも知れないのに……放っておくことなんてできない!!」

玉藻「――そうですか」


玉藻(――まったく、何故かくも非合理的で無謀な行動に駆り立てられているのか)


ゆきめ(鵺野先生、みんな……! どうか無事で……!!)


シュルルルルルルルンッ



                    (第1.5話:博麗の巫女と貧乏神の巻・終)

95: 2014/07/28(月) 00:48:14.39 ID:iWjHv62D0
【今後の予定(場合によっては変更あり)】



第2話「 旧都に佇む怪力乱神 の巻」(来週末までには更新)



第3話「 片腕の仙人と鬼の手を持つ男 の巻」(再来週末くらい)



最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」(8月中くらい)



※時間軸は指摘にあった通りぬ~べ~側は覇鬼と和解する以前の段階におけるパラレルワールドです

※毎回、何らかの形で鬼の手の出番がありますが……
 ガチガチなバトル展開は多くないかも知れないので、その点で期待外れになったらすみません

96: 2014/07/28(月) 00:49:57.28 ID:X1BPn0eOO
乙です
サブタイ見るにこれからの相手は鬼ばっかなのかな?

97: 2014/07/28(月) 00:50:45.56 ID:AUsXDfC/0

もう最後まで予定決まってるならエタることもなさそうだな、期待してます

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第2話】


引用: ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」