127: 2014/07/30(水) 13:44:05.00 ID:doHbD9dS0

128: 2014/07/30(水) 13:45:22.03 ID:doHbD9dS0

――地底――


コツ……コツ……


ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」

ヤマメ「貴方のその左手も相当厄介だろうよ……幻想郷の連中にとってもね」

ぬ~べ~「しかし、そのスペルカードシステムとやらはなかなか良くできていると思うぞ」

ヤマメ「いやいや、私が考えたわけじゃないんだけどね」

ぬ~べ~「おーい、お前たち――何が出てくるかわからないんだから、ちゃんと離れずについてこいよ」


広「分かってるよー!」

響子「……て、あれ? そういえば美樹は……?」
地獄先生ぬ~べ~ 30周年記念傑作選 1 ガチホラー編 (ジャンプコミックスDIGITAL)
129: 2014/07/30(水) 13:47:40.19 ID:doHbD9dS0
――


シーン……


美樹「う~ん、なかなかピーンとくる反応が無いわね」

??「貴方、そこで何をしているの?」

美樹「何って、これはフーチってやつ」

美樹「ま、占いの一種みたいなので、これを使ってお宝の埋まっそうな場所を探してんの」

??「へぇー、それで何か見つかったの?」

美樹「うーん、まだ何にも」


美樹「……」

??「……」

130: 2014/07/30(水) 13:50:50.94 ID:doHbD9dS0
美樹「え……あんた、誰……」

??「誰なのかしら。いいえ誰でもないわ――私はただの路傍の小石」

??「滅多に見つけてもらえない」

美樹「……い、いま……見えている……じゃない……」

??「貴方は私が見えるのね。だったら私と遊びましょ?」

美樹「あ、遊ぶって……何を? ゲーム? それともドッジボールとか……そういうの……?」


??「楽しい楽しい弾幕ごっこ――はじまりはじまりー!」

??「表象『弾幕パラノイア』」



ポワッ!



美樹「え」

美樹「……キャァァァアアアッ!!」

131: 2014/07/30(水) 13:54:37.90 ID:doHbD9dS0
美樹「何これヤバイ! 氏ぬ! まだあの世は見たくな~い!!」


ダッ!!


ぬ~べ~「美樹ッ!! そこを一歩も動くな!!」


??「今度は誰?」


シュパパパパパパパパパ!!


美樹「ぬ~べ~!!ナニコレ爆弾!? こっち来るー!!」

ぬ~べ~「南無ッ!!」


コォォォォォォ


美樹「これは!」

ぬ~べ~「お前の周りには防御結界を張った――しばらくは持ちこたえられるだろ」

ぬ~べ~(これが弾幕か! 敵の姿は見えないが――とにかくは向かってくるタマを鬼の手で斬る!!)


シュパァァァァァァァン!!!


??「! えぇ、腕一振りで弾幕を弾いちゃったの?」


ぬ~べ~「本体は――そこか! 闇に紛れし物怪よ、その正体を現せ!」


カッ!


こいし「!」


ぬ~べ~「お前か! 美樹に攻撃を仕掛けたやつは」

美樹「私は最初から見えてたけどね! ていうか、また女妖怪!?」

132: 2014/07/30(水) 13:58:56.14 ID:doHbD9dS0
こいし「貴方にも私の姿が見えるの?」

こいし「……うふふ、やっぱり注目を浴びるのも悪くはない気分だわ」


こいし「それじゃ、次行くわよ――本能『イドの解放』」


シュンシュンシュンシュン!!


美樹「アンビリーバボー! ハート型の爆弾が一杯、ステキじゃないの」

ぬ~べ~「自分は安全圏にいるからって、悠長なことを……」


ぬ~べ~(落ち着いて避けていけば――何とか回避はできそうだが)

ぬ~べ~(ここは一気に片付けるか。うまく行くかは五分五分――無数の霊気が充満し、妖怪にとって非常に棲みよいこの環境)

ぬ~べ~(こいつの秘める力も、一段と発揮できるはずだ)


シュポンッ!!


ぬ~べ~「俺の可愛い管狐よ――飛び交う弾幕を吸い取ってしまえ!」


くだ狐「クウ――――ン!!」

133: 2014/07/30(水) 14:01:32.78 ID:doHbD9dS0
ギュォォォォォォォォォォォン!!


こいし「!!」


くだ狐「……ごっくん♪」


ぬ~べ~(よし――どうやら上手く飲み下せたようだな)


こいし「すごーい! 貴方、変わった遊び方をするのね」

こいし「私もペット、持ってるわよ。前にお姉ちゃんに貰ったんだー」


ぬ~べ~「そうか、機会があれば――また見せてもらいたいものだな」


こいし「さあ、もっともっと遊びましょ!」


ぬ~べ~(どうやら、こいつは美樹を襲うつもりだったわけじゃないな)

ぬ~べ~(単純に、見つけてもらって喜んで、遊びのつもりで勝負を吹っ掛けただけ)

ぬ~べ~(頭よりも先に手が動く――無邪気な子どものようだ)

136: 2014/07/30(水) 14:23:10.63 ID:doHbD9dS0


こいし「行くよー」

ぬ~べ~「よし、来い」

ぬ~べ~「お前が遊び疲れるまで――俺が相手になってやる」

ぬ~べ~「もし、先にこちらがバテてしまった場合には――後は頼むぞヤマメくん」

――



134: 2014/07/30(水) 14:11:35.85 ID:doHbD9dS0
――

ヤマメ「はいはい、分かったよ」

美樹「ありがと、土蜘蛛さん……私を安全圏に引っ張りこんでくれて」

美樹(それにしても……管狐ってあんなビジュアルだったんだ……)

郷子「先生が結界を張ってたのに、何でヤマメさんの糸で美樹を回収できたの?」

ヤマメ「――どうも、私がその子を助けることを想定したうえで弾幕が止んだ間に結界の強さを弱めたらしい」

ヤマメ「意外なくらい信用されちゃったもんだ、私もアブナイ妖怪なんだけどさ」

ヤマメ「しかしなかなかデキるねぇ、貴方たちの先生さんは」

広「当然さ。先生はこういう方面だったらホント頼りになんだよ」


ヤマメ(さすがにアレが覚妖怪の“変種”だということまでは考え至っていないだろうけれど)

ヤマメ(その性質については、この短い交戦の中である程度見抜いている様子)

ヤマメ(わざわざ引き連れてきちゃったけど、傍から見ているだけでも結構面白いね――この人間達)

137: 2014/07/30(水) 14:25:12.79 ID:doHbD9dS0

――人間の里(郊外)――


ザワザワ……


妖夢(おかしい……何かしら、このざわつきは)

妖夢(いくら博麗神社に続く獣道が近いとはいえ……普通じゃない)

妖夢(明らかに何か、変調が生じているわ)

妖夢(幽々子様からお買い物を仰せつかって人里まで来たけれど、これは霊夢に会って確かめた方が)


里人A「助けてくれぇぇええええッ!!」


妖夢「!」

138: 2014/07/30(水) 14:26:54.71 ID:doHbD9dS0
ダダダダッ ドテッ


里人A「痛ッ!」

妖夢「! どうした――」

里人A「悪かった……もう二度と……道端に春画雑誌(工口本)なんか捨てねえッ!!」

里人A「だから……命だけはぁッ! 許してくれッ!!」


ダダダダッ


妖夢「おい!! 一体何に追われて――」




??「罪人」

139: 2014/07/30(水) 14:29:48.18 ID:doHbD9dS0
妖夢「誰?」


ギラリ


はたもんば「斬る」

はたもんば「罪人は、首を斬る!」




妖夢「――何者なの、貴方は」

                             (第2話につづく)

161: 2014/08/01(金) 01:03:14.30 ID:Hh5NDJrr0

――地底――


コツ……コツ……


郷子「はぁー、もう足がクタクタだわ……」

広「そーか? じゃ、……背負ってやってもいいぞ」

郷子「な、何よ急に! 別にいいわよ、そんなに疲れてないから」

広「む……何だよ、折角ちょっと親切心でっていうか……」

郷子「いいのいいの! 余計なお世話」

広(んだよまったく……郷子を巻き添えにしちまったのはオレなんだから……ちっとは罪滅ぼしにって思ったのによぉ)

郷子(自分だっていくらサッカーで鍛えてるっていっても疲れてるでしょ……)

郷子(それに私が2人をちゃんと止めていたら……ぬ~べ~にも迷惑かからなかったし)



美樹「いやはや、アツアツ過ぎて妬けますね~あのお2人さ~ん」

ヤマメ「そうだねぇ、気をつけないと“橋”のたもとでまた危ない目に合うよ」

美樹「橋って?」

ヤマメ「ようは地上と地下を結ぶ縦穴のことさ――そこの門番として橋姫がいる」

美樹「ハシヒメ?」

162: 2014/08/01(金) 01:07:26.39 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「橋姫というのはだな、ハァハァ……簡単に言うと橋に宿った心霊をだな……ハアハア」

ぬ~べ~「橋を守る女神として……ゼーゼー……たてまつったもので……」

ぬ~べ~「“嫉妬に狂った女性”や……“愛する人を待ち続ける女性”の象徴でもあり……フー」

ぬ~べ~「そもそも橋ってのは……こちら側と向こう側を隔てる境界と言う意味で……」


美樹「やだ、ぬ~べ~。何ヤラシイこと考えながら説明してんの?」

美樹「しかも女神って……誰のことを想像してるのかしら~」


ぬ~べ~「お前なぁ……こっちはずいぶん体力消耗してるんだぞ……」


ヤマメ「結構な時間付き合わされたもんねぇ」

美樹「でもつまり、また女妖怪が出てくるってことで間違いないわけね」

美樹「……もしかして、このゲンソーキョーってとこ、実は女しかいないの?」

ヤマメ「男もいないことはないけれど……まあ、遭遇しやすさの問題かな」

163: 2014/08/01(金) 01:09:53.77 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「その点を深くは追及しないが……ここに棲む妖怪が“少女”の姿で現出する場合が多いのに理由はあるのか?」

ぬ~べ~「妖怪が本来持っている怖さ、ありのままの姿がすっかり裏側に隠されてしまっているような印象を受ける」

美樹「むー、良く分からん」

ヤマメ「ありのままねぇ」

ヤマメ「それじゃ、試しに私のありのままの姿ってやつを見せてやろうか?」

ヤマメ「この膨らんだ下腹にナニが隠されているのかわかるかい?」

美樹「え、ヒミツ道具とかを隠してんの? 見せて見せて~」

ぬ~べ~「違う違う……たぶん蟲の神秘を見ることになるから止めておけ」

164: 2014/08/01(金) 01:13:06.38 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「ま、今のは軽い冗談だよ」

ヤマメ「至極大雑把に言うならば、ここに棲む妖怪達はすっかり丸くなってしまってるから……かな」

ヤマメ「箱庭の中で妖怪や内側の人間その他が共生するためには、力のあるほうが丸くならないとしょうがないのさ」

ぬ~べ~「ふーむ……言わんとしていることは分かるぞ」

ぬ~べ~「“弾幕ごっこ”という決闘方法も、箱庭を壊さずに維持する上で有効と言えるものな」

美樹「いや、全然わかんないんだけど。だからなんで女の子ばっかになるの?」

ヤマメ「……」

ぬ~べ~「……」

ヤマメ「神も妖怪も幽霊も、つまるところは人間の心の作用によって生れて来るんだ」

ヤマメ「よく言う所の“偶像(アイドル)化”だね」

165: 2014/08/01(金) 01:17:18.90 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「現世の人間が思い描く妖怪達は、怖いものから少女(アイドル)に変化していったからなんじゃない?」

美樹「はーなるほど。要するにぬ~べ~や克也みたいなスOベ連中のせいでここの妖怪が女の子になっちゃったってことか」

美樹「おまけに、みんなペチャパイばっかで張り合い無いわね~!」

ぬ~べ~「妖怪のアイドル化……確かにそういう解釈も可能なのかもな」

ぬ~べ~「だが俺は断じて小児性愛者なんかじゃないぞ……」

ヤマメ「あれ、そうなの? 先生なのに?」




「きゃああああああああっ!!」「おいお前、郷子を放せ!!」

「貴方達に恨みはないけれど、襲う理由ならいくらでも拵えられるわ。見せつけられて妬ましいからよ」




ぬ~べ~「またなのかー……まったく」


ダッ!


美樹「私達に迷惑ばっかかけて、2人とも子どもよねー」

ヤマメ「貴方達、妖怪に付け込まれる才能があると思うよ」


ぬ~べ~(宇治の橋姫の伝承では“嫉妬の鬼”という側面も取り上げられている)

ぬ~べ~(ヤマメくんが言っていた“蛇の道も蛇”とは――もしや橋姫を指して言った言葉なのだろうか?)

166: 2014/08/01(金) 01:21:36.55 ID:Hh5NDJrr0

――無縁塚――


ざわ・・ ざわ・・


てけてけ「足……いるか……」

屠自古「……イラネ」

てけてけ「足いるか?」

屠自古「……ヤルヨ」

てけてけ「……大根」

屠自古「……ア?」


小町「う~ん、自称仙人が怨霊の動きがどうこうっていってたから、一番そういう影響が顕著に出そうなところにやってきたけど」

小町「特に問題はないかな」

布都「うむ、何の問題も無かろうぞ」

布都「我が主も何やらイヤな予感がすると案じておられてな」

布都「とりあえず適当なところに行って、様子を見て、報告して安堵してもらおうと思っての」

167: 2014/08/01(金) 01:30:23.71 ID:Hh5NDJrr0
布都「さてと、屠自古。もう私は帰る」


屠自古「……オウ。アバヨ!」

てけてけ「……」


ポンッ


てけてけ「っ……」

小町「冥土の土産に、お足なんかつけないでいいんだよ」

小町「ここの住人達は、(ほとんど)誰も貴女のことを怖がったりしないし、成仏するのを妨げたりもしない」

小町「外界の者達は、すっかり貴女のことを忘れてしまった――ま、形の上ではそういうことになるからね」

てけてけ「……もう、足を引っ張られることはないのか?」

小町「当然。もう誰も邪魔なんてできやしないさ」

小町「じゃ、逝こっか。輪廻転生――貴女の翻弄された魂を救済する、永い旅への船出だよ」

てけてけ「うん」

168: 2014/08/01(金) 01:34:28.96 ID:Hh5NDJrr0
布都「霊ではなくあくどい妖怪でも現れたならば、一肌脱いでも良かったのだが」

布都「ふふ――昔の血が騒ぐというものよ」

屠自古「……」




屠自古「……ナニモノダ」

怪人A「……」


スゥー




布都「え、何じゃと?」

屠自古「……ヤレヤレ」

173: 2014/08/01(金) 07:06:04.07 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


布都「んー、誰じゃ、おぬしは」

屠自古「……」


怪人A「……」


布都「何とか言ってくれんかのう?」

屠自古「……」


ヒソヒソ


布都「こやつ、何者じゃ? ――人間にも見えるし妖怪にも見えるし亡霊の類にも見えるし」

布都「私のカンで見抜けぬ相手など……初めてだぞ!」

屠自古「……ウソツケ」

174: 2014/08/01(金) 07:08:42.95 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


ヒソヒソ


布都「どうする、とりあえず火でもつけて燃やすか?」

屠自古「……ナンデヤネン」

布都「あまり良からぬ雰囲気を醸し出しているのでな。こういった面妖な輩は早めに叩いた方が」

布都「いな、まずは道教の教えを説いてとりあえず改心させる契機を与えてから潰すか」

布都「宗教家たるもの、一応それらしい手続きを踏んでからの方が――」

屠自古「……オイミロ」


シーン


布都「――む、消えたか」

布都「まあ消えてしまっては仕方あるまい、帰るとしよう」

屠自古「……ホウコクスル?」

175: 2014/08/01(金) 07:13:56.72 ID:Hh5NDJrr0
布都「ふむ」

布都「……この程度の瑣末なこと、わざわざ太子様のお耳に入れるまでも無かろう」

屠自古「……オイミロ」


ザッザッザッザッザッザッザッ


ミサキABCDEFG「「「「「「「……」」」」」」」


シャン…… シャン…… シャン…… シャン……


布都「……」

屠自古「……チョットヤバクネ」

布都「ほほう――修験者の一行か。無縁塚で鍛錬を積むとは見上げた心構え」


スタスタスタスタスタスタ……


布都「おう、貴方達はどちらへ向かうつもりじゃ?」

屠自古「……」

布都「ようし、我らも一行についてゆくぞ――何処に向かっているのか気になるのでな」

屠自古「……ソレデイイノ?」

176: 2014/08/01(金) 07:21:54.08 ID:Hh5NDJrr0

――魔法の森――


ザワザワ……


蓮子(ここは……どこなのだろう)


蓮子(星や月が見えるような時間帯ではない)

蓮子(周囲は見渡す限りの原始林、加えて高温多湿――)

蓮子(ううん、原始林とは言い切れないか、原生林とみなすのが妥当ね)


蓮子「ごほっ……ごほ……」


蓮子(この気管から肺臓を蝕む異様な空気……毒性のあるガスが漂っている? あるいはまさか枯葉剤?)

蓮子(それとも、到るところに生えている茸の胞子がアレルゲンになって……?)

蓮子(この見るに堪えない無数の茸の群生……これは食用になるのかしら)

蓮子(うぐ、何だか視界がぼやけてきた……幻覚作用なんかじゃないよね?)

蓮子(……まるでマジックマッシュルームにでも手を出したような、奇妙な感覚)

177: 2014/08/01(金) 07:23:57.85 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私はXXXX年7月Y日午前Z時00分00秒にメリーと会う約束をして)

蓮子(案の定遅れて、待ちくたびれていたメリーに声を掛けた――)




蓮子「ごめーん……待った、メリー?」


??「かえして・・・」


蓮子「え、……?」




メリーさん「わたしのお人形……手足が……ないの」

メリーさん「かえして……手足を……かえして……」




蓮子(違う……メリーじゃない)

178: 2014/08/01(金) 07:26:21.05 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(全身真っ白な服を着た女の子、手足の無い人形を抱えている)

蓮子(まるで辺り一面暗闇の底から響き渡るかのような……暗く淀んで、そして悲しみ愁いを帯びた声)

蓮子(とてもミステリアスな存在だけれども……同時にそれはとても怖い存在でもある)

蓮子(これは、メリーが見ている夢なのかも知れない――そして、私は今それを幻視している?)

蓮子(それはおかしい――だって今夜はまだ本物のメリーと落合ってないんだから)

蓮子(だとしたら、やはり夢――これは私の夢?)


メリーさん「わたしの……」


蓮子(この女の子と四肢をもがれた人形は、何かの暗示?)

蓮子(女の子と人形の関係――四肢をもがれた人形を弄ぶ女の子?)


メリーさん「わたしの手足……かえして……!」


ブチィっ!!!!


蓮子「あ――」

179: 2014/08/01(金) 07:28:58.87 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(切られた……違う、斬られた? ううん違う、これはもがれたって言うやつだ)

蓮子「いや、それも違う」

蓮子(もがれたと思っていたけれど……もがれていない。やはりこれは夢の中)

蓮子(とするならば、女の子と四肢をもがれた人形はやはりの暗示)

蓮子「私がもがれた人形ということは、その人形である私を弄ぶ女の子は――」


スゥ……


蓮子「女の子が消えた! え、何この手の平のうちの感触――」


人形「かえして」

180: 2014/08/01(金) 07:31:06.41 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「っ!」


ポトッ


蓮子(握っていた。握らされていた……いつの間にか。――私の手に)


人形「……すてたね」


キィィ


人形「……すてたね!」


キィィィィィ


人形「……すてたね!!」


キィィィィィィィィィ


蓮子「ぐ……」

蓮子(どうすればいい? どうすればこの悪しき夢から逃れられるの、ねぇ、メリー)

181: 2014/08/01(金) 07:33:36.23 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私が人形を思わず手放した行為――それを彼女は『捨てた』と表現した。強い憎悪と憤怒の感情を伴って)

蓮子(まずは、この人形を拾い直して――よく調べてみることが先決なの?)


ヒョイ


蓮子「あ……」


??「……この人形には、霊魂がこもっているわ」

アリス「普通の人間は、生ける人形に触れてはいけない。だから貴女の手元にあるべきじゃない」

上海人形「シャンハーイ」


蓮子(――また別の操り人形? そして、この人は……)


人形「……かえ……して……」


ジタバタ


アリス「――ずっと、探していたのね。でも、見つからなかった。ううん、見つかるはずがなかった」

アリス「とても長い時間――あなたにとっては永遠に感じられるように永いときを費やして、ずっと探していたのね」

182: 2014/08/01(金) 07:36:33.60 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「貴女は?」

アリス「ついておいで、近くに私の邸(いえ)があるわ。もしかしたらあなたの力になれるかもしれない」




蓮子「え、私――の―――力、に―――――」

シュルルルルルルルン……シーン……




アリス「あ……ごめんね。人間(あなた)に言ったんじゃなくて」


アリス「――人形(あなた)にね、言ったのよ」

メリーさん「……」


アリス「あたたかい紅茶を淹れてあげる。ゆっくりと、人形(あなた)の気持ちを聞かせて頂戴」


                                        (つづく)

185: 2014/08/01(金) 22:40:18.89 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


ジリ……


妖夢「何者だ――と聞いているでしょう」


はたもんば「許さん」


妖夢(……見たところ、刃物類の……付喪神?)

妖夢(けれど、この妖怪らしさをありありと残す姿――この幻想郷において存在する物怪とは相容れない凄みを持っている)

妖夢(この前起きた異変の鍵になった、打ち出の小槌の影響で突然変異が……?)

妖夢(でも、あの一件は終息したわけで、もう問題ないって霊夢も言ってたわ)

妖夢(だったら、どこからこんなヤツが沸いて……)

妖夢(――外から? 外界から流入してきたというの?)

妖夢(でも、道具自体は結界を無条件ですり抜けることができるのと違って)

妖夢(付喪神になったら容易にはすり抜けられないハズよね?)

186: 2014/08/01(金) 22:45:14.99 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「む!」


タッ……ヒョイ


はたもんば「許さんぞ」


妖夢「この雑誌を捨てたから斬るとか言って……」

妖夢(なになに……『白玉楼の淫美な庭師~禁断の剪定プレイ~』……?)


パラパラ


妖夢「……、……、……な!?」

妖夢「なんだこれはぁー!!!!」


スパーン!


妖夢「あの里人(ケダモノ)めぇ!! 許さん!!」

はたもんば「我ははたもんば、罪人は――」

妖夢「刀の錆にしてくれるわーっ!!!」

187: 2014/08/01(金) 22:51:01.93 ID:Hh5NDJrr0

――アリス邸――


アリス「ふふ。どう、お口に合うかしら?」

メリーさん「……コクリ」

アリス「そう、良かったわ」

メリーさん「……」

アリス「早く本題に入って欲しいのね――」


上海人形「ソウチャーク」

人形「!」


アリス「右手、左手、それから右足――これらはあの人間(女の子)のいた場所の周りに隠されていた」

アリス「あの子の代わりに私の操り人形が回収して来たわ」

アリス「これらは元々貴女が持っていて、貴女が自分で隠したのね?」

メリーさん「……、……」

アリス「そして」


スッ


人形「あ・・・・」


アリス「――これが、人形(あなた)がずっと、本当に探し求めていたもの」

アリス「――貴女の世界から失われた貴女自身(あなたの心の拠り所)なのね」


メリーさん「左足・・・・・・私の・・・私の左足・・・!!」


188: 2014/08/01(金) 22:55:09.35 ID:Hh5NDJrr0
人形「――」


……スゥ


アリス「四肢を取り戻した人形は消えた――貴女が貴女自身を取り戻したことで」

アリス「貴女が自らの遺志を仮託した人形は役割を終えて、貴女の中に戻っていった」

アリス「辛かったのね、苦しかったのね」


めぐみ「・・・・う・・・ひっく・・・・」


アリス「貴女にとっては本当に永い時間だったんだと思う――他の誰からも、貴女自身からも忘れ去られた人形の左足は」

アリス「いつしか私の手元に渡っていた――私が、たまたま人形遣いだったからかもしれないし、そうでもないかもしれない」

アリス「そしてこのもがれた人形の左足を、私はどうしても手放せなかったのよ」

アリス「理由は分からない――でも、いつかこの左足が、本来あるべき場所に帰ってゆく」

アリス「そんな予感がしていたから、ずっと捨てずにしまっておいた」

アリス「そして、今、無事あるべき場所に帰っていった――“お帰りなさい”」


めぐみ「ただいま・・・・」


アリス「さ、もう貴女は何にもこだわる必要はない。私の存在にこだわる必要もない――“お帰りなさい”」


めぐみ「・・・・さようなら。ありがとう」


スゥ


アリス(帰って行った――けれども、これであの子が成仏できたのかどうかは私には分からない)

アリス(強い怨恨や辛苦……それらの負の感情を伴って彼女と一心同体と化していた人形)

アリス(その人形と彼女をつなぐ“糸”を切り落としただけ――彼女の傀儡子としての側面を剥ぎ取り、普通の幽霊に戻したにすぎない)

アリス(それから先のことは、私にはどうしようもない)

アリス(私は氏神でもなければ、幽霊(にんげん)の心に寄り添える人間でもないのだから)

189: 2014/08/01(金) 22:59:15.11 ID:Hh5NDJrr0
アリス「……」

アリス(それにしても、外来人と外来霊が同じ頃合いに幻想入りして、同じ魔法の森で居合わせるなんて)

アリス(偶然にしては出来過ぎよね――おまけに測ったようなタイミングで人間はスキマ送り)

アリス「ったく、あいつが何か企んでるの?」

アリス「――でも、これ以外に目立った兆候はまだ見受けられないし、私があれこれ考えることでもないか」


アリス(――さてと、ティーカップを洗ってきましょう)


スタスタ


上海人形「……」

上海人形「……」


ピョンッ ピョンッ


上海人形「マリサーキヲツケテー」

190: 2014/08/01(金) 23:03:32.82 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


妖夢「魔理沙ー!」

魔理沙「ん、何だ妖夢。また通り魔でもやってんのか?」

妖夢「またって何よ! それよりこの辺りで、顔が卑猥そうな里人を見なかった?」

魔理沙「見てないぜ。というか、どんな顔のやつだよそれ」


ギィィィィ


はたもんば「罪人は、何処だ!!」


魔理沙「わっ! 何だコイツは!」


妖夢「く、あの下劣者め! 私はあちらを探す――はたもんばはそちらを探して!」

はたもんば「よかろう」


ダッ――ストンッ


魔理沙「! 妖夢ー。お前買い物袋落としたぞ。中身も入って……」

魔理沙「ってもう行ったか――仕方ない、ありがたく頂戴するとしよう」




妖夢「て、ちょっと! 返しなさいよ泥棒!」


クルッ


はたもんば「盗人?」

191: 2014/08/01(金) 23:09:02.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「ん? おい妖夢、あのゴッツイ奴が振り返って」


はたもんば「盗人は、首を斬る!!」


ギュィィィィン!!


妖夢「!? 危ない、魔理沙!!」


ガスッ!! ギギギギギギ……


はたもんば「斬る!!」

魔理沙「お、おいおい……いきなり襲ってくるとはよ!」

魔理沙「幻想郷のルールってモンをお前分かってんのか?」


ギギギギギギ……


妖夢(――ミニ八卦炉であの車輪状になった剣を受け止めたか)


はたもんば「……」

魔理沙「八卦炉(こいつ)にはいろんな能力が備わっていて――魔除けにも使えるんだ」

魔理沙「さーて――売られたケンカは掛け値なし、きっちり買い取るからな!」

魔理沙「恋符『マスター」


ピシピシピシッ……

192: 2014/08/01(金) 23:12:22.69 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「んなっ!?」

はたもんば「罪人め、許さんッ!!」




妖夢「八卦炉にヒビがっ! 回避して魔理沙!!」


シュンッ!!


魔理沙「言われなくてもそうするぜ! クソッ、私の宝物によくもキズを……!」


はたもんば「許さんぞォ!!」


魔理沙(とりあえず空中に逃れたが――コイツ、まるで会話が成り立たないな)

魔理沙(妖怪らしさ丸出しってやつだ! スペカなんてハナから理解できてねーだろ!)

魔理沙(第一、私が罪人だと? 何言ってんだコイツ……私はただのシーフなんだぜ!)

魔理沙(――どうして私が首を斬られないといけないんだよ!!)

193: 2014/08/01(金) 23:16:42.60 ID:Hh5NDJrr0
キラーン


妖夢「魔理沙、貴女の箒が! 早く下に降りた方がいい!」

魔理沙「なに、私の箒がどうしたって……痛ッ!」

妖夢「側面が――鋭利な刃物に変化しているわ!」


シュタッ


魔理沙「手が・・・! 手がー・・・!!」

妖夢「ちょっと大袈裟ね……」


はたもんば「罪人、逃してなるものか」


ジリジリ……


魔理沙「あんにゃろ、よくも……やりやがったなッ……! 降りた拍子に帽子も落としちま――」


ギラリ


魔理沙「って何だこりゃ、帽子のつばも刃先になってる!」

195: 2014/08/01(金) 23:23:41.09 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(――今のはたもんばの力、幻想郷流に言うなら“あらゆる物を刃物に変える程度の能力”ってところかしら)

妖夢(――変質者、魔理沙と、たとえ悪事を働いたと言えども問答無用で頃しにかかっている)

妖夢(このまま放置していたら、マズイわ)

妖夢(外界から連れてこられた人間と違って、人里の人間が妖怪に殺され続けたら――)


はたもんば「斬る」


魔理沙「ちっ……今度は油断しねぇぞ」

妖夢「――待って、魔理沙」

妖夢「もともと、はたもんばを魔理沙の前まで引き連れて来たのは私なんだから」


妖夢「私が、こいつの相手をするわ」


ジャリ……


はたもんば「……」

196: 2014/08/01(金) 23:28:44.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「おい待て妖夢! それじゃ私の腹の虫が納ま――」


スゥー


魔理沙「! 誰だ」




??「――赤が好き? ――白が好き?」




魔理沙「は?」


怪人A「それとも――青が好き?」


魔理沙(何なんだよ今日は……ヘンな連中がやたらめったら現れやがって!)

197: 2014/08/01(金) 23:39:41.96 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「この魂魄妖夢、斬れぬものなどあんまり無い! ――尋常に勝負せよ」


はたもんば「我を邪魔立てするか!」


妖夢(――とはいえ、八卦炉にヒビを入れるとは尋常じゃないわ、あの切れ味)

妖夢(考えられる理由は、この妖怪が外界でも力を失っていないから?)

妖夢(本来なら外界で居場所を失い、力を発揮しづらくなった妖怪が流れ着く場である幻想郷)

妖夢(一方で、現世においても外界で力を発揮している外来妖怪なら……相対的な強さが上がるということ)

妖夢(――いや、それは憶測にすぎないし、今は考えていても仕方がない)

妖夢(――ともかくも、今やることは目の前にいる敵を斬ること!)


はたもんば「退け」

妖夢「食らえ! ――断霊剣『成仏得脱斬』」


ブォン!!

199: 2014/08/01(金) 23:44:34.64 ID:Hh5NDJrr0
はたもんば「退けッ」


ギュルギュルギュルギュル!


妖夢「! 弾幕(剣捌き)を斬られたか――」

妖夢(両刀を交差させて舞い上がらせた剣閃の柱――それを意図もあっさりと)

妖夢(やはり、弾幕勝負ではケリをつけられないわ)

妖夢(かくなる上は、体術・妖術を駆使して――直接的な斬撃でこいつを仕留める!!)


はたもんば「退けッッ!」

妖夢(――楼観剣!)


キィ――――ン!!  ズザザザザザザザ!!


はたもんば「ぬぅ!」

妖夢「くッ!」

200: 2014/08/01(金) 23:49:56.22 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(タテに廻る車輪剣を楼観剣の腹で受け止めることができた!)

妖夢(相手の勢いに押されてここまで後退りしてしまったけど――魔理沙(ターゲット)から距離を置くことになり好都合ね)

妖夢(後は押し負けないこと!! 機を見計らって相手の急所を貫く!!)


ミシィ……!


妖夢(! 馬鹿な、一太刀で霊十匹を片せる楼観剣に……亀裂がッ!!)


はたもんば「退けッ!!!」


ギュォォォォォオオオオ!! ――パーンッ


妖夢「しまった! ――車輪剣の回転速度が急激に増して、勢いで楼観剣が弾かれ――」




ブシュァァァァ!!

201: 2014/08/01(金) 23:51:30.58 ID:Hh5NDJrr0
妖/夢――シュルルン!

半霊「ホッ……」




はたもんば「!!」


ザッ


妖夢「――こっちよ」

妖夢「貴女の刃の餌食になる寸前に、半霊と入れ替わったわ」

妖夢「魂符『幽明の苦輪』で私の“みがわり”に仕立て上げて」


ヒュルルル ストンッ


妖夢「宙を舞った楼観剣も私の手元に戻った――少し歯毀れしたけれど、まだまだ十分使えるようね」



はたもんば「……」

202: 2014/08/01(金) 23:57:58.07 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(とはいえ、あの車輪剣に対抗するには――やはり家宝(白楼剣)を使うしかない)


はたもんば「……」


妖夢「私はまだまだ修行の足らぬ未熟者――けれども、お前を倒すためには」

妖夢(私ではあの妖刀(はたもんば)を斬ることなどできない――その迷いを断ち斬れ)

妖夢(これほどまでに罪人を裁き殺めんと執心するこの怪異――その混迷なる精神を断ち斬れ)


はたもんば「おおおッ!!」


ギュォォォォォォォォォォォ


妖夢「私の師である妖忌様に、無様な姿を曝け出すやも知れないという――心の弱さ」

妖夢「私の魂と魄の弱さを、断ち斬れぇ―――――――ッ!!!」




パリィィィィィィィン

203: 2014/08/02(土) 00:02:55.61 ID:gBEcaEdI0
妖夢「……、……った……」


フラリ


はたもんば「見事。我、あるべき場に……帰らん」


シュウウウウン……


妖夢「度し難い敵を、斬ることができました。お祖父様……幽々子……様」


ジャリ……


??「ほら、あんたの大事な買い物袋――ここに置いてくよ」

赤蛮奇「首がどうだこうだって、大騒ぎしてたから……気になって陰から様子を見てたの」

204: 2014/08/02(土) 00:08:50.46 ID:gBEcaEdI0
妖夢「zzzz……」

半霊「zz……」


赤蛮奇(あら、寝てる。今ので相当精神力を費やしたのか?)

赤蛮奇(そして、あのはたもんばとか言う付喪神……元の妖刀の姿に戻った途端、消えてしまった)

赤蛮奇(けれども、それは折れてはいなかった――物理的に斬られたわけじゃない)

赤蛮奇(じゃ、何を斬られてしまったんだ? 私にはよく分からないね)

赤蛮奇(そして消えた先は……たぶん、結界を超えて外の世界へ)

赤蛮奇(でもあれほど強い妖怪なら――普通は大結界に遮られて出入りなどできないはず)

赤蛮奇(何者かが結界に干渉して、異変でも引き起こしてるんじゃないでしょうね?)


赤蛮奇「まー私には関係ないけど」


里人A「助けてくれぇえええッ!! ――生首が空を、飛んでるゥっ!」


ダダダダダダッ


赤蛮奇(え、私のことばれた!? 上手く溶け込んで里に棲んでるってのに!)


ハゲ頭「ぱたぱた、ぱたぱた」


赤蛮奇(え、な……何アレ、は……)

207: 2014/08/02(土) 00:21:46.12 ID:gBEcaEdI0

――??――


メリー「おーい、蓮子。いい加減起きなさいよー」


蓮子「……うう~ん……うん……? はっ!」


蓮子(――夜空が見える。現在時刻午前2時22分22秒、……胡蝶の夢としては少し長かったかも知れない)

蓮子(それにしても、なぜあの女の子は私に対してあの人形を見せたんだろう)

蓮子(いや、私が見たかったのか? 私があの人形を見たかったから、あの女の子が私の夢に現れたのだろうか)

蓮子(でも、夢の現象学の知見からすると――あ、ううん、あれこれと思索を巡らすのは後にしよう)


ガタッ


蓮子「メリー! メリーなのね!! 良かった、メリーはちゃんといてくれたのね」

メリー「何言ってるの……今更? いつも貴女の隣にいるじゃない」

208: 2014/08/02(土) 00:27:23.05 ID:gBEcaEdI0
蓮子「ふふ……ほんのちょっぴり怖い夢を見ていてね。夢と現(うつつ)の境界が曖昧になっていたのよ」

蓮子「……もう少し時間があれば、理論的な解析も可能だったかもしれない」

メリー「ふぅん。――でも時差の引き算がパッとできない蓮子なんだから、そんなことがあってもいいんじゃない?」

蓮子「それとこれはまたベツモノなのよー」

メリー「まあ、それより――早速今夜の秘封倶楽部の活動を始めようじゃないの」

蓮子「そうね。……えーと、今日は何をする予定だったっけ?」

メリー「ほら、あの有名な怪談的都市伝説について調べようって言ってたでしょ。降霊術で呼び出しを試みようと」

蓮子「うん。あれ、それで何を呼びだそうとして――」


メリー「――私、メリーさん。今貴女の眼の前にいるの」


蓮子「きゃぁぁあああああっ!!!」

ギュ

メリー「あらら、何を怖がっているのよ――よしよし」

209: 2014/08/02(土) 00:30:38.00 ID:gBEcaEdI0

――地底――


美樹「嫉妬深い妖怪だったわね……ああイヤだわ、ああいう大人にはなりたくない」

郷子「あ、ありがとう広……私を助けようと、あの妖怪(ひと)に……その、立ち向かってくれて」

広「……最初に言ったろ。何かあったらオレが敵を吹っ飛ばすってよ」

美樹「でも、突っ込んでって吹っ飛ばされたのは広のほうでしょ――ぬ~べ~がすぐ駆け付けなかったら危なかったじゃないの」

広「……う、それは」

ヤマメ「にしてもよく、掠り傷程度で済んだもんだ」




ヤマメ「しかしその手、いろんなことができるねぇ。便利そうで少し羨ましいよ」

ぬ~べ~「いや……確かに色々と使いようはあるが……その代償も大きいからな」

ヤマメ「……、まあ、それはそうだろうね」

ぬ~べ~「……」

210: 2014/08/02(土) 00:34:40.28 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~「――それで、この先にいるんだな」

ぬ~べ~「――俺、いや鬼(こいつ)に面通しさせてみたいって鬼(やつ)が」

ヤマメ「まぁね」

ヤマメ「でも、そんなに気張ることも無いと思うよ」

ヤマメ「おそらく、貴方が想像している鬼(それ)とは相当乖離していると思うから」

ぬ~べ~(確かに……これまでに見て来た幻想郷の妖怪のことを思えば、それはそうかも知れないが)

ぬ~べ~(俺が最も恐れているのは――)


チラリ


ぬ~べ~(その鬼を前にして、コイツが一体どういった反応を見せるのか)

ぬ~べ~(そこのところだ)

212: 2014/08/02(土) 00:40:28.97 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~(それから――やはり餅は餅屋ということだな)

ぬ~べ~(もしその鬼が、コイツを封印する上で……代替できる方法を知っているとしたら)

ぬ~べ~(どうにかして……聞き出したい)

ぬ~べ~(あなたを助け出すためにです――先生)


グッ


ヤマメ(鬼の力を得た代償は、そんなに大きいものかい?)

ヤマメ(いや、それはそうか……何せ、鬼の力なんだから)

ヤマメ(でも、その鬼の力がなければ――いくら霊能力先生といえども、ここまで子どもらを守って来れたとは限らないんだろう?)

ヤマメ(皮肉な話だね)

213: 2014/08/02(土) 00:51:58.48 ID:gBEcaEdI0

――??――


??(博麗神社は倒壊しても、大結界はビクともしなかった


だが、本殿を炎上させることによって、大結界を弱め、局所的なねじれを発生させることに成功した


これで、一時的に境界を超越しやすくなった外界の魑魅魍魎が博麗神社に押し寄せることになった


う~ん、他所からも沸き出てるみたいだけどね



なぜならこの幻想郷(せかい)ほど、連中の力が発揮される場所はないだろうから本能的に引き寄せられちゃうんでしょうね


元来は幻と実体の境界であり、現在は博麗大結界として二重に外界を遮断する結界にあけた風穴――


単に外界で忘れらさられ、“勢力の弱まった妖怪”達だけではない――


未だに文明化の進んだ外界の闇(かたすみ)に潜み、畏怖の対象とされている“残忍な猛者達”も――



今、この瞬間に、結界という見えない壁を乗り越えて幻想郷に押し寄せてこよう!


ならば“幻想郷流の戦い方(おあそび)”の枠に囚われないホンモノの決闘をすることができる!


暇潰しにはもってこいのイベントよね!




――さあ来い、平和(タイクツ)な日常に水を差すナラズモノ達よ


                    私の隙(ヒマ)を――突き崩せ~っ!!)



   


                                    (第2話・旧都に佇む怪力乱神の巻<前編>・終)

214: 2014/08/02(土) 01:08:07.49 ID:8HVKcVQ10

引用: ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」