355: 2014/08/08(金) 00:58:11.96 ID:p6smnOcF0

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第1話】
ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第2話】
ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第3話】
ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第4話】


――人間の里――


カァー……   カァー……  




ミサキABCDE「「「「「・・・・・・・」」」」」


ジリ


妹紅(黄昏時か――昔から逢魔時(おうまがとき)と言われ、昼と夜が移り変わり、魑魅魍魎に出会いやすい時間帯とされる)

妹紅(いわんや夜になれば、いよいよ妖怪が本領を発揮するわ)

妹紅(亡霊は幽霊と違って、その目的を成就するか、自分の肉体が供養されない限り成仏しないという)

妹紅(できれば、彼らの遺志を探って、供養してあげたいところだけれど)

妹紅(話が通じる連中ではないようだし――ここは退治するしかない!)



妹紅「まずは炎で五体の動きを封じる! 不氏鳥フェニ――」


ザッ!!


屠自古「……イタゾ!」

布都「さっきの2人は雷を落としたら成仏しおった! 屠自古、もう一度じゃ!!」

小傘「ちょっと!? こんなところでぶっぱなったら――」




屠自古「ライシ『ガゴウジトルネード』」
地獄先生ぬ~べ~ 30周年記念傑作選 1 ガチホラー編 (ジャンプコミックスDIGITAL)
356: 2014/08/08(金) 01:05:58.72 ID:p6smnOcF0
バリバリバリバリバリバリッ!!!


妹紅「ちょっと!?」


ゴォォォォォオオオオォォォォ!!




「キャァァァァァ!!」

「おい、火事だぞ!!」

「やばい、木造家屋が多いので、火の回りが早くなっているゥ!!」




布都「……あー、囲い込むように放たれた炎に屠自古の弾幕が飛んできて」

布都「火の玉状になって軌道が拡散、里のあちこちに飛び火してしまったか。これは大変じゃな」

屠自古「……アーア」

小傘「あのヤバそうな5人組、今の混乱に乗じて里の中へ散って行ったけど」

小傘「これって……マズいんじゃ」


妹紅「何邪魔してくれたんだキサマらはァ!!」


布都「こうなったら、私の力で鎮火して見せようぞ!」

妹紅「やめて! この流れだと火に油を注ぐ未来しかみえないから!」

布都「むむ……そうか? よし、皆落ち着け! 誰にだって失敗はあるものよ!」

布都「今は、あの連中を追うのが先決じゃ! 人間に襲いかかる気満々だったからの!」

屠自古「……ソウダナ」

妹紅「……そうね。今は言い争っている場合じゃない」

妹紅「そこの唐傘お化けの貴女!」

小傘「は、はい! って私!?」

妹紅「今すぐ近隣の命蓮寺に行って、応援を頼んで頂戴! 人里が緊急事態だからって」

妹紅「私達だけでは火災の鎮火まで手が回らない。あの5人組、分かれて人里を闊歩したら――」

小傘「えー!? でも私もともと関係ないのに! しかもお寺の近くからここまで無理矢理」

妹紅「いいから早く行くのよ!!」


クワッ


小傘「ひぃ!! 分かりました、今すぐ行きます!!」


タッ!

357: 2014/08/08(金) 01:08:42.64 ID:p6smnOcF0

――移動屋台――


ギャーギャー ワーワー


ミスティア「おやぁ……何だか、辺りが騒がしくなってきたね」

小町「喧嘩でもやってんのかな」

美鈴「それより小町さん、早くカマを探さないと、まずいんじゃないですか?」

小町「ふふ、まあ、果報は寝て待てっていうじゃない」

小町「慌てて探すよりも、ゆっくり待っていたら意外と身近なところから出てきたりするものさ」


バキグシャッ!!! 


怪人A「――」


ダダダダッ


魔理沙「もう逃がさねぇぜ!! ――彗星『ブレイジングスター』」


ちゅど~~~~~~~~~~~ん!!

358: 2014/08/08(金) 01:11:19.01 ID:p6smnOcF0
シュ――――――――――


ミスティア「……」

小町「……」

美鈴「……」


魔理沙「クソッ! また避けやがったか!!」

魔理沙(自慢じゃないが、空を飛ぶ早さにゃ結構自信あんのによ! 狭い小路を上手く走り抜けて、あと一歩のところで被弾を回避)

魔理沙(あいつ、無駄に身体能力が高いぞ。おまけにどっかで見たようなカマを振り回して来る!)

魔理沙(追いかけっこをしてるうちに、人里のど真ん中まで来ちまった!)

魔理沙(これ以上、好き勝手させるわけにはいかねぇ!!)


ミスティア「ちょっとアンタ!! うちの店が全壊したんだけどどう責任取ってくれんだよ!!」


魔理沙「ん? 悪い! 今それどころじゃなくてよ――後にしてくれ!!」


ヒュン!!


ミスティア「く……くぅ……ッ……」

359: 2014/08/08(金) 01:14:30.04 ID:p6smnOcF0
美鈴「不幸な出来事がまた起きてしまいましたね……」

小町「って、こりゃ尋常じゃないね――あたいらも様子を見に行こう」

美鈴「そういえば、さっきの仮面の妖しいひと。手に持ってたのは」

小町「ああ、間違いなくあたいのカマだ」

美鈴「そもそもアレって、ただの飾りじゃなかったんですか? その、氏神的なアイテムってことで」

小町「そんなわけないだろう。あれは半人半霊の(楼観)剣や、不良天人の緋想の剣に負けずとも劣らない威力を持ってるんだ」

美鈴「ということは、もし悪い輩に悪用されたら……」

小町「ああ、ヤバイね。そんなことになったら、今度はあたいの首が本当に飛んじまうよ……」


ミスティア「グダグタ言ってないでとっとと行っちまいな!! 私は今ひとりで静かに鳴きたい気分なのよ……」


キィィィ……

360: 2014/08/08(金) 01:17:59.04 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山――


ザザザザザッ


玉藻「フフ、まさか九尾の狐様があの結界の生成に関与していたとはな!」


藍「様呼ばわりされる筋合いはない。私は貴方のことなどまったく知らないからね」


玉藻「確かに、私もあなたを知らない――だから、もう様付けはしないことにしよう」

玉藻「鵺野先生や生徒達の居場所について、早く教えてもらえませんかね?」


藍「知らないっていってるでしょう! 私は今とても忙しいのよ、邪魔しないでくれない?」


玉藻「いいえ、聞き出させてもらいます。この場で逃したら、もうあなたは二度と捉まらないと思うんでね!」


藍「狐のカンっていう意味かしら? その通り、この場を凌いだら敢えてこちらから出向くことはないでしょうね!」


藍「式神『四面楚歌チャーミング』」


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


玉藻(む! ――無数の弾丸か? いや、式神の類を変化(へんげ)させたものだ)

玉藻「はッ!!」


シュキラーン!!

361: 2014/08/08(金) 01:23:24.11 ID:p6smnOcF0
藍「弾幕を強引に斬り裂くか。ここの住人ではないな――境界のゆらぎに乗じて迷い込んだはぐれ狐ということか?」


玉藻「私は迷いこんだわけではない。ちゃんと目的を持ってここに来た」

玉藻「そして、首刺又(これ)は武器としても使えますが、本来こう使うものなんですよ」


グニャ~……スゥ


藍「! 頭部から人間の骸骨が抜き出て――ということは、それを使って人間に化けていたのだな」

藍「そして、お前の真の姿が――それか!」


玉藻「ご名答! あなたは間違いなく強力な妖怪だ――私は人間としての姿ではなく、本来の妖狐として闘わせてもらおう!」


藍「ふふふ。ならば、私も今は“式神”としてではなく、ひとりの“九尾の狐”として闘わせてもらおうか」

藍「もっとも、気持ちとしての問題だけれどね」


玉藻「あなた自身が……式神だと? あなたのような伝説クラスの妖狐が何者かの手下に甘んじていると言うのか」

玉藻「解せない」


藍「甘んじているというわけではない、ひとりの妖狐であるよりも紫様(あのお方)につくほうがいい」

藍「それくらいに、私はあのお方に魅せられ、敬意を払っているというということよ」


玉藻「敬意、……だと」

362: 2014/08/08(金) 01:27:15.29 ID:p6smnOcF0
藍「親愛――と言い換えても差し支えないかも知れないわね」

藍「貴方だって、そういう気持ちは分かるでしょう? ――詳しい事情は分からないけれど」

藍「貴方はヌエノとかいう者のことをとても気に掛けている。だから、ここまでして私に付き纏うわけだ」


玉藻「気に掛けていることと、親愛という言葉は、全く別物でしょう? 私はそういうつもりであなたに突っかかっているわけではない!」


藍「だったら、どういうつもりよ。私があなたと近い種族だから? ……ハッ、そうか!!」




藍「油揚げ(これ)を奪うのが目的なのね!!」

藍「確かに気持ちは分かる! ――私とて、これを前にしては周りが見えなくなってしまうことがあるからな!」




玉藻「……。ふふ、あなたは、たいそう挑発が御得意なようだ!!」


ダッ


玉藻「火輪尾の術・役小角!!」

藍「! 超人『飛翔・役小角』」


ドシュ――――――――ン!!

363: 2014/08/08(金) 01:31:42.19 ID:p6smnOcF0
玉藻「むぉぉッ!!」


藍「そちらの力負けだ。妖狐の力を前面に押し出したところで、まだまだ青二才なのが見てとれる」


玉藻「……この程度で全力だと思ってもらっては困る。ここから本番ですよ」


藍「いいだろう。少しばかりおままごとに付き合ってもいい! ――私の油揚げ、奪えるものなら奪ってみよ!」


玉藻「生憎だが、私は油揚げそのものよりも――稲荷寿司の方を重宝しているのでね」


藍「む、そうか。米も一緒がいいのか」

藍「だったら後で、酒の選り好みに長けた巫女を紹介してもいいわよ!」

藍「旨い酒あるところに美味い米あり、いい寿司が味わえるぞ?」

玉藻「……、考えておきましょう」


カッ!!!

364: 2014/08/08(金) 01:34:49.70 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山(大蝦蟇の池・上空)――


ヒュォォォォォ!


ゆきめ(! すっかり暗くなった山の中腹あたりから火の手が!)

ゆきめ(ということは、もしかして鵺野先生が見つかったという知らせ!?)


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


ゆきめ「わわわ……!」


早苗「ちょっとちょっと! 逃げてばかりじゃなくて貴女も弾幕を使ってくださいよ」

早苗「いかに美しく弾の華を咲かせることができるか。そこが弾幕ごっこの醍醐味でしょ?」


ゆきめ「私知りませんよ、そんなの!」


早苗「まあ、仕方がないですね。そんなにやる気がないのなら、そろそろ打ち止めとしますか」

早苗「すっかり辺りは闇の中――あんまり夕食が遅くなっては私としても困りますんで」

早苗「これで、トドメにしましょう!(勿論、頃すとまでは言ってません)」


ゆきめ「くっ……!!」

ゆきめ(このままだと、鵺野先生と再会する前に、私は)

ゆきめ「そんなのイヤよ!! 私は鵺野先生と結ばれるまで――」

ゆきめ「こんなところで、斃れるわけにはいかない!!」




コォォォォォォォォォォォォ!!




早苗「!! 池の水面を一瞬で氷漬けにっ!?」

365: 2014/08/08(金) 01:37:33.36 ID:p6smnOcF0
ゆきめ「弾幕ってやつ、よくわからないけど――こういう感じでいいんですか?」




パキパキパキパキパキパキ……ズドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!




早苗「水面の氷をつらら状に砕いてこちらに発射! 氷ミサイルですか!?」




ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ




早苗(危ない危ない……下手を打ったら貫かれるところでした!)

早苗「あれ、あの雪女(ひと)は、何処に――」

ゆきめ「おりゃあああッ!!」


ガキーンっ!!


早苗「ッ! 尖った氷を腕に纏わりつかせ、剣のように振りかざすとは!」

ゆきめ「たかが氷と思ってたんでしょうけど、いろんな使い方があるんだから!」

早苗「ていうか、今の闇討ち……ちょっと危ないじゃないですか。御祓い棒で受け止めなかったら私ケガしてましたよ」

ゆきめ「そっちが最初に仕掛けて来たんでしょ!!!」


シュルルルルルルッ!!


ゆきめ「わっ!?」

早苗「ひゃっ!?」

366: 2014/08/08(金) 01:45:21.04 ID:p6smnOcF0
大蝦蟇「ジトー」


ゆきめ「何この大きなカエルは!? 捕まっちゃいましたよ!」

早苗「あ。そういえば、この池の水は神事に使われていて……池を冒涜した者は」

早苗「大蝦蟇(池の主)に懲らしめられて――」

早苗「え……どうして私まで?」


大蝦蟇「ペロペロペロ」


ゆきめ「いやぁ! 唾液で全身ベトベトにぃ!!」

早苗「これってやっぱアレですね!? 何故か服だけが溶けてしまうっていうアレなんですね~!!」




キャアアー!!




――妖怪の山(上空)――




ヒュォォォォォ




文(あ……霊夢さん、……氏んじゃったんですか?)

文(仕方がありませんね……新しい博麗の巫女を早急に用意しないと)

文(巫女の代わりなんて……いくらでもいるんですから)

文(……いくらでもいる?)

文(それは……私の本心なのでしょうか?)

文(そういえば、霊夢さんが博麗の巫女になって以来……随分とあの神社に取材に行く機会が増えましたね)

文(私が今まで過ごしてきた時間に比べれば、……ほんの刹那に過ぎないここ数年なのに)

文(……霊夢さんの代わりになる人なんて……今後……果たして……)


岩天狗「この俺様の実力、見くびり過ぎたようだな」

367: 2014/08/08(金) 01:49:52.81 ID:p6smnOcF0
岩天狗「いったいどんな幻覚に惑わされているのか、わしには分からんが」

岩天狗「こやつが抱いている何らかの不安な考え、それに取りつかれているな!」

岩天狗「“不安の風”と言いたいところを、“不幸の風”と言い間違えちゃったけど……まあいい」


文「――」


岩天狗「だが、幻術にかかりながらも宙に浮いたままでいられるとは……なかなか」

岩天狗「ま、待てよ……今なら、この女天狗に、その……触れたりとかできる……な」

岩天狗「生れてこの方800年、女にはとんと縁がなく……手さえ握ったことなどないこの岩天狗だが」

岩天狗「今なら……いけるぞ! よくよく見ればこいつ……まあまあ顔もいいし……」

岩天狗「手ぐらい……触っても……。い、いや……いっそ、他のところも――」


ヒューン!!


??「はたてちゃんキ―――ック!!!」


ドゴッ!!


岩天狗「グボォォッ!!?」

368: 2014/08/08(金) 01:51:39.76 ID:p6smnOcF0
――妖怪の山(麓)――


ジー


にとり「……」

弥々子「何が見えるっぺ?」

にとり「何なんだろ……とりあえずあっちこっちで楽しそうに遊んでるっぽい光景かな?」

弥々子「見せて見せて!」

にとり「いいけど……この高性能望遠鏡、私が手塩にかけて作ったんだから傷とかつけないでよ?」

弥々子「分かってるっぺ!」


バキッ!


弥々子「ごめん、おら、力加減とか上手くなくてー」

にとり「わ、私の……自信作がぁ……!」

369: 2014/08/08(金) 01:56:38.35 ID:p6smnOcF0

――人間の里――


ワーワー!! ギャーギャー!!


克也「やべーよ……何か周りのフンイキがやばいぜ」


克也「ごめん! 玉藻先生、ゆきめさん!!」

克也「やっぱオレ達……どうしても気になって……放課後、北区に行ったんだ」

克也「そしたら……森の中にスゲーヤバそうな井戸があってよ!」

克也「そこに近づいたら……オレ達……突然、中に吸い込まれちまったんだ!!」

克也「なあ、まこと――この田舎町は一体、どこなんだと思うか!?」


シ―――――――ン


克也「お、おい……まこと!! どこ行った!?」

370: 2014/08/08(金) 01:58:24.04 ID:p6smnOcF0
まこと「ま、迷ってしまったのだ……」

まこと「克也くんは……どこに……」

まこと「それに……ここは一体……どこかの村のようだけれど」

まこと「何だか……」


ザッ


ミサキA「はぐれはおらぬか?」


まこと「ひ!!?」


バッ!!


??「危ない!」

371: 2014/08/08(金) 02:03:00.17 ID:p6smnOcF0
ミサキA「!」


一輪「雲山、後方支援は任せて! ――拳符『天網サンドバッグ』」


グググググ……!


雲山「――」


オラオラオラオラオラオラオラオラ!! オラァーッ!!


ミサキA「~~~ッ!?」


ドガバキグシャ――――――ン!!




まこと「あ……ぁ……」

一輪「大丈夫かい、坊や」

まこと「あ、ありがとうなのだ……知らないお姉さん」


克也「まこと! そこにいたのか!!」

克也「って、お前……何自分だけキレーなお姉さんに抱き上げられてんだよーコノヤロー!」

ミサキA「――ムクリ」

克也「ん? うわああああッ!?」


まこと「か、克也くん……危ないのだ!」

一輪(思ったより復帰が早いわね)


チラリ


雲山「……」

一輪「ええ、そうよね。今夜は長い夜になりそうだ――やれやれ」
                                    (つづく)

395: 2014/08/09(土) 19:04:56.25 ID:1FYVToaA0

●ここまでに登場した主な人物の現在の居場所は以下の通り


<時間帯:夜>


【地底】

○旧都
→ぬ~べ~・広・郷子・美樹、勇儀、ヤマメ他

○旧都へ向け移動中
→華扇




【地上】

○妖怪の山
→上空…文、はたて、岩天狗
→守矢神社…神奈子、ケサランパサラン
→中腹…藍、玉藻
→大蝦蟇の池…早苗、ゆきめ


○人間の里
→中心部…魔理沙、怪人A
    …七人ミサキ(5人)、妹紅&慧音、布都&屠自古、一輪&雲山、克也&まこと
    …小町、美鈴


○博麗神社
→霊夢、貧乏神、その他



【幻想郷のどこか】
→萃香

396: 2014/08/09(土) 19:11:56.18 ID:1FYVToaA0

●藍と玉藻の力関係に関しては>>382さんのコメントのようなスタンスをとっています




●ですが、>>381さんのように不快感を与えてしまった方もおられるようなので、

文献等にあたって調べた上で、場合によっては今後の2人のやり取りを割愛して対応しようと思います。

申し訳ございませんでした。




○今後一週間程度はお盆の行事等で時間が取れないので、続きの更新は8月16、17日くらいということで。

なるべく1週間おきにまとめて投下するつもりです。




○同時進行で分かりづらいとのことなので、次回は「妖怪の山側」と「人間の里側」にはっきり分けて話を進めます。




○と言った感じで、報告するだけで終わっては悪いと思うので、

没ネタ(今後、本編にかかわる予定のない登場人物及び内容)でも投下して一時しのぎをさせてもらおうと思います。

397: 2014/08/09(土) 19:14:31.47 ID:1FYVToaA0

――??――


芳香「……」




バサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッ




青娥「あらあら、また地獄からの使者なのかしら? 大勢でおこしのようで」


??「いつまで!」

??「いつまで!!」

??「いつまで!!!」


ギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャー

398: 2014/08/09(土) 19:16:15.85 ID:1FYVToaA0
青娥「ふふ、血気盛んねぇ。芳香、お相手してあげたら?」


芳香「……」

芳香「いーつーまーでー?」


青娥「……」




以津真天「いつまで!!!!」




青娥「いつまで、……を…………………って?」

青娥「お門違いもはなはだしいわ。こんなに可愛がってあげているというのに」




以津真天「いつまで、いつまで、いつまで!!!!!」




芳香「……」


青娥「うふふふふふふ」

青娥「強いて言うならば――いつまでも、よ」


ギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャー

399: 2014/08/09(土) 19:21:37.29 ID:1FYVToaA0

――冥界――


幽々子「よしよし、ちゃんと仲直りできたわね」


ペコペコペコ


舞首X「……済まぬ」

舞首Y「……否、我が悪かった」

舞首Z「……否、我の方が」


赤蛮奇「まさか、最初の一匹以外は飛頭蛮じゃなくて、別の妖怪だったとは思わなかったよ」


幽々子「舞首っていうのはね、昔お祭りの日の夜にお酒に酔って喧嘩をし出した3人の武士がとうとう刀で斬り合って」

幽々子「すったもんだした挙げ句、斬り落ちた3人の首同士が海に落ちて怨霊となり永遠に争い続けたんですって」


赤蛮奇「ふーん。でも、幻想郷には海はないでしょう? どうして冥界に向かったのかしら」


幽々子「そりゃあ、決まっているじゃない。怨霊って、元を正せば三途の川を渡り損ねた幽霊なんだから」

幽々子「心の片隅では、何とかして彼岸に辿り着いて輪廻転生というレールの上に還りたかったのよ」

400: 2014/08/09(土) 19:24:59.64 ID:1FYVToaA0
幽々子「でも、無理なことなのよね。怨霊は未来永劫幽霊のままの存在として宿命づけられている」

幽々子「だから――ここに連れて来てあげたの。妖夢をわざわざ人里まで迎えに行ったついでにね」


妖夢「zzz」

半霊「zzz」


赤蛮奇「……まだ寝てる。訳があったといえども道端で寝そべっちまうような従者じゃ、貴女も心配のタネがつきないでしょうね」

幽々子「妖夢の心配? 違うわよ、私の夕ご飯が遅くなるのが心配だったのよー」

赤蛮奇「あ、あらそう……」


\ユユコサマー、ゴハンオヨウイ、デキマシター/


幽々子「さて、そろそろうちの幽霊給仕たちが準備してくれたみたいね」

幽々子「貴女も上がっていきなさいな。妖夢が落とした買い物袋、拾ってきてくれたんだし。いいお酒もあるわ」

赤蛮奇「別にいいわ。私は首連中の様子が気になって、ついてきちゃっただけ」


舞首X「酒ッ!」

舞首Y「800年ぶりの酒じゃァ!」

舞首Z「呑まずにはおれんッ!」


赤蛮奇「こいつら……」

幽々子「ね、まだ気になるでしょ?」

401: 2014/08/09(土) 19:28:31.40 ID:1FYVToaA0
幽々子「それにね――貴女がちゃんと見張っていてくれたおかげで、彼らが人間に取り憑くことなくここまで連れてこれた」

幽々子「怨霊の厄介なところは、人間達に取りついて、人間同士で怨み合い争い合い……そして頃し合いをさせること」

幽々子「それは、幻想郷が存続する上で……一番困ることなのよね」

赤蛮奇「……それくらい、私にも分かるよ」

幽々子「ま、そういうことで――折角だからゆっくりしていきなさいな」

幽々子「冥界に来ることなんて、そうそうないでしょう?」

赤蛮奇「……、……そうね。そこの三つ巴がまたいがみ合わないよう、今のところは監視するってことでね」




妖夢「……ふあああ、……ん? ここは――」


舞首「「「酒じゃー!」」」


妖夢「ひぃ、幽霊!! 幽霊は斬るッ!!」

403: 2014/08/09(土) 19:31:16.85 ID:1FYVToaA0
赤蛮奇「そいつらは怨霊よ。そういやあんた、その剣で大量生産してるのよね?」

妖夢「ってここは、うちじゃないの! ……あれ、私は確か人里に行って……それで……」

赤蛮奇「まぁ、いろいろあって一件落着ってことよ」

妖夢「そうなの? って、貴女……誰だっけ?」

幽々子「妖夢ー、話は後でいいから、奥に行っていいお酒を運んで来てちょうだい」

妖夢「え、あ……はい! 承知しました!」


タッ


幽々子(あの一件以来、顕界と冥界を隔てる結界は薄くなり、行き来が容易になった)

幽々子(それは、ひとえに紫が結界を張り直そうとしないからだけれど)

幽々子(さすがに外界と幻想郷を隔てる結界をザルにしちゃったら、ちょっと危ないわよ?)

幽々子(――ねぇ、紫)



シ――――――――――――ン

                                 

                                   (没ネタ・以上)

414: 2014/08/15(金) 00:43:47.73 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――


星「これはひどいね……人里のあちらこちらに火の手が上がっている」

ナズーリン「だがご主人様。考えようによっては、夜半でよかっただろう」

星「確かに火柱がはっきり目視できるから、ピンポイントで消火できそう。そこは不幸中の幸いだわ」

ナズーリン「さて、わざわざ宝船を出してもらったんです」

ナズーリン「雨乞いでもして、恵みの雨でも降らしてくれるかい――唐傘お化けの君」

小傘「え……いや……私、そういうのは」

ナズーリン「大丈夫、もともと君にはあまり期待していないから」

小傘「うう……」

ナズーリン(天候を容易に操れる者がいれば尚更良かったが、この場はいなくとも片を付けられるだろう)




スッ


村紗「溺符『シンカブルヴォーテックス』」




……サアアアアアアアアア




「おおー、恵みの雨! 皆の衆、もう一息よ、鎮火させるのじゃ!」

「あれは……宝船……?」

「もしや毘沙門天様が救いの手を……!」




パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!

415: 2014/08/15(金) 00:47:04.93 ID:Q2CPhraC0
小傘「この調子で行けば、火事の方はすんなり片付けられそうよね」

ナズーリン「確かに。だが、問題は人里に紛れて猛威をふるっているという凶悪妖怪なのだろう?」

星「ええ。鎮火が終わったら私達も加勢を――」

ナズーリン「それは止めた方がいい、ご主人様は例のごとく宝塔を失くしておられる」

星「う……そんなまるで私がいつも宝塔を失くしているような表現は……」

ナズーリン「そしていつものように私が探している中途でこの騒動だ」

ナズーリン「体術が苦手なご主人様が無理に動くのは賢明ではないでしょう?」

星「確かに……」

小傘「そうね。それにお寺の方だって心配よ。山彦が留守番をしてるって言っても、別のヤバい妖怪でも来たら……」

ナズーリン「君、案外お寺のことを気に掛けているんだね。ただ周りをふらついているだけかと思っていたが」

小傘「ま、まあ……」

星「よし――とにかくまずは消火が第一! 私達もここにある柄杓を使って」

ナズーリン「船長の手助けをするとしよう」

小傘「お、おー!」


村紗「ええっと、そちらの柄杓は……全部底が抜けているのですが」

416: 2014/08/15(金) 00:50:45.83 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(路上)――


ザザザザッ


ミサキA「はぐれはおらぬか……!!」


克也「七人ミサキだってぇ!?」

一輪「そうよ。知らない?」

雲山「……」


克也「いや、うーん、どうだろ。元の世界(あっち)でも色んな妖怪に遭ってきたけどさ」

まこと「お姉さん! どうしてさっきのように攻撃しないのだ? このまま逃げてばかりじゃ――」


一輪「あいつが今貴方たち2人に狙いを定めているからよ」

一輪「このまま引きつけておいて、少しでも里の中心から離れようって算段」


克也「な、なるほど、それは名案! ってオレとまことがターゲット!?」


一輪「どうも、生身の人間――それも普通の人間しか狙ってこないみたいなのよね、この連中」

一輪「もともと亡霊だったり、妖怪だったり、人間でも不氏身だったりする相手は都合が悪いらしいの」

一輪「確実に自分の仲間に加えられるという保証がないから、なのかも」


まこと「え? 仲間にって……。あ、あれ? それじゃ、もしかして、お姉さんって……」


一輪「私は妖怪よ、今となっては。こっちの雲山は入道ね」


まこと「!」

克也「マ、マジで!?」


雲山「……」

417: 2014/08/15(金) 00:55:32.40 ID:Q2CPhraC0
クワッ!


ミサキA「お迎えよッ!」

克也「うおっ!!」


スカッ


ミサキA「ッ!」



雲山「……」


ヒョイッ


克也「た、助かったぜ入道さん! 腕が伸びたり縮んだりいろいろ変形するんだな、雲みたいに! って雲なのか」

一輪「さーて、この辺りまで来たら、それほど周囲を気にせずに叩けるかな」

まこと「でも、どうやったらあいつを倒せるのだ……。こんなときにぬ~べ~先生がいたら……」

一輪「ちょっとちょっと~、私じゃ役不足ってことなの? その先生ってのに比べたら」

まこと「そ、そういうわけじゃ! お姉さんはぼくを助けてくれた強い妖怪(ひと)なのだ!」

まこと「ぼくらにも手伝えることがあったら何でも言って欲しいのだ!」

一輪「うん、ありがとうね。その気持ちだけで十分よ」


一輪「こっちは、おとりにでも使おうかな」

克也「え、何なんだこの扱いの差は……」


一輪(でも、あいつに決定打を与えるのは……なかなか難しそうなのよね)

418: 2014/08/15(金) 00:59:10.26 ID:Q2CPhraC0

――


布都「聖童女『大物忌正餐』」


ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

ミサキB「!!」

ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

ミサキB「ッ!!」

ドシューン!


布都「ふふ、流石にこの弾幕に囲まれては、容易に身動きはとれまい」

布都「そして、遁れようとしてもがけばもがくほど、被弾してダメージを蓄積してゆくぞ!」

屠自古「……ダガ」


小町「決定打は与えられていないようだね。考えようによっては、七人ミサキは“不氏身”だからさ」


布都「そこを何とかするために足止めしとるんじゃろうが。お主、勝手に私の船に乗らんでくれるかのー?」


小町「いやー、やっぱり職業柄、小舟に乗ってると仕事モードになって士気が上がるからね」


屠自古「……ダッタラ」


小町「氏神なんだから何とかしろと? ――幽霊相手ならもっと容易いんだがねぇ」

小町「おたくの聖人さんも手に負えなくて困るって地獄の皆が愚痴ってるよ」

小町「おまけにあたいのカマが盗まれちまって……今は自分で戦いづらいんだ。船賃は出すから相乗りさせてくれ」

屠自古「……ッタク」

布都「それ! ――聖少女『太陽神の贄』」


ズゥオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ミサキB「ッ!!?」

ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン

419: 2014/08/15(金) 01:02:33.48 ID:Q2CPhraC0
>>418 訂正:聖少女→聖童女

420: 2014/08/15(金) 01:04:29.91 ID:Q2CPhraC0

――


美鈴「はァ!」


ガスッ!


ミサキC「ッ!」


ズザザザッ!


美鈴「――私は武術の心得がありますから、こういう本格的な闘り合いには向いているのかも知れませんね」

美鈴「貴方のからだから発せられる気を読めば、だいたいの動きは予測できますよ」

ミサキC「他所へ参らんッ!」


タッ


ミサキ?「こっちじゃ!」

ミサキC「!」



ミサキ?「ほう? 儂が仲間だといつから錯覚しておったのじゃ?」

ミサキC「?」


バッ


マミゾウ「お前さんもまだまだ若いのう~。変化『百鬼夜行の門』」


ォオオオオオオオオオオオオ!!

ミサキC「はぐっ!!?」

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ

421: 2014/08/15(金) 01:07:53.57 ID:Q2CPhraC0
美鈴「うわあ……本格的な百鬼夜行ですね。ていうか、こんなとこに鳥居まで建てて大丈夫なんです?」

マミゾウ「なぁに。これも所詮は化かしよ。それよりもお前さんは……確か吸血鬼の館の門番だったと心得ているが」

美鈴「あーいや、成り行きで……。それにしてもあのミサキって亡霊ですが」

美鈴「圧倒的に強いってわけでもないんですけど、なかなかしぶといですね」

マミゾウ「あれは、七人組であっても7人だけというわけではないからのう」

美鈴「? それはどういう意味で」

マミゾウ「津々浦々あらゆる場にて、一定の数で括られて氏んだ者達の亡霊の集団――」

マミゾウ「そやつらの集合体の一部が表象として幻想入りしているとみるのが妥当じゃろうな」

マミゾウ「ただし、自然な幻想入りではないな。儂も、ひとのこと言えんかも知れんが」

美鈴「うーん。要するに一筋縄ではいかない連中なんですね」


マミゾウ(――奴ら5人を一旦落ち着かせるには、里人か、なるべくなら外来人(よそもの)か、生贄を出すのがもっとも簡単じゃろうが)

マミゾウ(――坊主の手前、それは避けるほかあるまいて。あの寺子屋も有効な対処法を練っている最中というし)


バシィ!!


マミ達「ギブ……」


ミサキC「はぐれはおらぬか?」


美鈴「化けの皮がはがされちゃったみたいで……」

マミゾウ「手下たちで時間稼ぎも限界か。さてさて、足止めの続きじゃ」

422: 2014/08/15(金) 01:11:19.81 ID:Q2CPhraC0

――


妹紅「……ふうー」


ミサキD「……はぐれー」

ミサキE「……むかえー」


ムクリ


妹紅「まだ闘るか? 別に私は構わないよ――いくら闘おうとも、私は何も失わないからね」

妹紅「勿論、里人たちの命は、失うわけにはいかないけれど」


妹紅(――慧音は今、七人ミサキの詳しい実態と対応策について資料を収集中)

妹紅(里に散った残りの3人も、道士や命蓮寺の妖怪僧たちがていよく抑えているみたいね)

妹紅(夜が深まったうえに騒ぎが広がって、かえって外を出歩く人間はほとんどいなくなった)

妹紅(火事もことなきを得たようだし。さっきちらと目に入った、あの魔法使いと怪人物の動向は気になるところだけれど――)

423: 2014/08/15(金) 01:16:46.06 ID:Q2CPhraC0

――稗田家――


パラパラッ


慧音「ふむ……」

阿求「七人ミサキの跳梁跋扈とは、なかなか興味深い事態ですね。話が分かる相手だったら取材してみたいかも」

慧音「話の分かる相手だったら、苦労はしないわ。貴女も今、人里(きけんちたい)にいるのだから気をつけた方がいいよ」

阿求「気をつけろって言われても……私にはどうしようも。もし今うちに来たら、貴女が追い返してくれますよね?」

慧音「出来る限りはね。でも、今のところは妹紅達が食い止めているから大丈夫だと思うけれど」

阿求「さて、こちらが七人ミサキに関する詳しい記述になります」

阿求「幻想郷が外界から隔離される以前に編纂された部分にあたるから、妖怪の弱点や対処法といった点に重きが置かれているわ」




<七人ミサキとは――

土佐を始め山陽・南海道に伝わる集団亡霊で、風貌に応じて川ミサキ、山ミサキなどと呼称多数

災害や事故、特に海で溺氏した人間の幽霊で、主に海や川などの水辺に現れるとされる

七人ミサキに運悪く出くわした人間は高熱に見舞われ、氏んでしまうらしい

一人を取り頃すと七人ミサキ内の一人が成仏し、替わって取り殺された者が七人ミサキの一人となる

そのために七人ミサキの人数は常に七人組で、増減することはないといわれている

縦に列を成して移動するのが特徴で、先頭ほど年配者、後ろになるほど新参者のようだ


(中略)


対策は――

○日が暮れた後は外出しないこと。特に女・子どもは狙われやすいので注意

○外出したときは手の親指を隠すように拳を握っていると回避できるとかできないとか

○最悪の場合は、人柱を出して他所へ行ってしまうまでやり過ごそう。犠牲はつきものなのだ……


出典:ういきぺじあ

参考文献:『老圃奇談』『神威怪異奇談』『七人ミサキも●をする』等>




慧音「……ねぇ、これ本当に古い記述なの?」

阿求「細かいことは気にしないで」

424: 2014/08/15(金) 01:25:14.76 ID:Q2CPhraC0
阿求「対策ですが、7人のうち2人が雷にうたれて成仏した結果、残りの5人がはぐれ者を迎える為に動き出したんですよね」

慧音「複数の証言を総合したところ、そうらしいわ」

阿求「やはりここは、人柱を捧げて」

慧音「そうね。仕方がないから、貴女と鈴奈庵の娘にでも生贄になってもらいましょうか」

阿求「いやいや……まだ私、転生の準備はできていませんし」

阿求「それに“はぐれ者”っていうのは、ある集落共同体からはぐれた外部の者という意味にも取れます」

阿求「最悪の場合は、人里の外の人間、広義には幻想郷の外の人間――外来人――を」

慧音「……冗談に決まってるでしょ、私は人間を安易に犠牲にしようとは思わない。たとえ、余所者といってもね」


<この手の亡霊は自分が氏んだという事実を受け入れることができず、いつまでも現世を彷徨い続けることが往々にしてある

自らの氏にざまを再度経験することによって、ようやく現実を受け入れて自主的に成仏を遂げるのだろうか>



慧音(幻想郷における亡霊の認識に従えば、氏体の供養や幽霊返りを経ずに彼らが成仏するとは考えられないのだけど)

慧音(現に2人はあっさり成仏したらしいし、他の5人についても執着を断ちきれば)

慧音(――要はいろんな氏に方を試してみれば、無事成仏できるはず、か)

慧音(でも、こちらは手勢が多いことだし……姑息だけど今は人里の外に追いやる方が得策かな……?)

慧音(いずれにせよ、里人に被害が出る前に収拾しないとね)


慧音「ありがとう、参考になったわ――私は妹紅達と合流するから、貴女は兎も角、外出しないようにね」

阿求「どういたしまして。気をつけるわ、親指を隠してね」

425: 2014/08/15(金) 01:30:30.15 ID:Q2CPhraC0

――霧雨店(屋根の上)――


ガキィン!!!


怪人A「……!」


ギリギリギリ


魔理沙「……何の因果で、実家(ここ)の上で争わないといけねぇんだか、な」

魔理沙(やっぱり、この赤マントが持ってるカマはあのサボタージュ氏神のものじゃねーか)

魔理沙(ってことは、こいつも氏神の仲間? 何かそれっぽく見えないこともないが……違うな)

魔理沙(氏神がこんなに氏神っぽいオーラを出してちゃ、幻想郷には馴染めねーよ!)


ボキィッ!!


魔理沙「くっ!」


シュタッ


魔理沙「使い手が変わっても氏神のカマだな、箒で受け止めるには無理があったか。折れちまったぜ……(もともとは普通の箒だったしな)」

魔理沙(箒なしでも飛べないことはないが……いつも使ってるから、どうも勝手が違うな)

魔理沙(――! あいつがいない!? 見失った? でもほんのさっきまで屋根の上に)

426: 2014/08/15(金) 01:41:19.47 ID:Q2CPhraC0
ヒュンッ


怪人A「……」

魔理沙(な、真上から!? ジャンプして一瞬私の視界から消え――)


ガスッ!!     ――カラーン


魔理沙「ごっ!!?」


ギギギギ……


怪人A「……」

魔理沙(土手っ腹に……風穴だぜ。穴は開いてないけど……結構……効くな)

魔理沙(殴られた拍子に八卦炉下に落としちまったし。キノコ爆弾投げるにせよ、他の魔法を使うにせよ)


メキィィ……


魔理沙(こう……首を絞めつけられてちゃ……身動きが……息が。片手でこの腕力っておかしいだろ……普通)

魔理沙(あーもう、こんなことなら……もうちょい体術とか護身術とかも身につけておけばよかった……)

魔理沙(今日の私……完全にやられ役じゃねーか……こんの野郎ッ)




怪人A「赤が好き――赤が好きと言った子は」


スッ


魔理沙(……ああ、赤って……そういうことか)

魔理沙(また血を見ることになるなあ……そのカマを振り下ろされたら)

魔理沙(いや……もう見てる余裕は……ないかも……知れない)

魔理沙(職業は魔法使いっって言っても――やっぱり私は人間なんだ)

魔理沙(実家の屋根の上で……か? まったく……)




怪人A「ニヤリ」




魔理沙(今、笑いやがった――仮面の下の表情(カオ)は変わんないけど、確かに歪んだ笑い声が聞こえてきた)

魔理沙(コイツ、心底人頃しを楽しんでる? ……殺人鬼かよ)

427: 2014/08/15(金) 01:44:07.46 ID:Q2CPhraC0
怪人A「――」


ブォン!!!


魔理沙(――南無三)




ドゴォォォ―――――!!!


怪人A「グァ!?」


ズザザザザザガシャーン!!




魔理沙「かはっ! ゲホゲホっ……」

魔理沙(何が起きた? あいつが……ぶっ飛ばされて)


ヒュゥゥゥゥ


魔理沙「! ……お前は」


??「やはり、力も方便となるべきときはあります」

428: 2014/08/15(金) 01:48:56.30 ID:Q2CPhraC0
小町「ほら! お前さんの八卦炉(おとしもの)だよ」


ヒュンッ パシッ!


魔理沙「!」

小町「やれやれ、随分手こずってるようじゃないか。まあ、こちとら大事なカマの盗人に今追いついところだけれど」


魔理沙「……お前なら、距離操って何とかできないのか?」


小町「うーん、ま、それは置いといて。相手は遊びじゃなくて本気で頃しにかかってる」

小町「負けず嫌いなあんたには不満かもしれないけれど、ここは助太刀させてもらうよ?」


魔理沙「1人で闘うより大勢でやるほうがいいに決まってる。こんなところで意地を張るほど私は馬鹿じゃない」

魔理沙「自分の血が流れるのも、他人の血が流れるのもまっぴらごめんだ」

魔理沙「こいつは得体が知れない怖さがあるけれど、野放しにはできない」

魔理沙「殺るしかない――ってことだろ、妖怪寺の住職さん」




聖白蓮「私は人妖平等を説いていますが――それはあくまで、弱く虐げられた妖怪が保護し、人間達に一定の譲歩を求めるもの」

聖白蓮「貴方のような、人にも妖怪にも害なす“化物”を相手にするに至っては、ガンガンいかせてもらいますよ」


ゴキィ、ゴキィ


聖白蓮「残念ながら、殲滅することでしか――貴方の仮面の下に隠された心は救済することができそうにないからね」


ユラリ


怪人A「……」

429: 2014/08/15(金) 01:53:47.43 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――




響子「  以  上  で  ー  す  !  !  」





響子「  里  人  の  皆  さ  ん  、 気  を  つ  け  て ー  !  !  」





響子「  防  衛  隊  の  皆  さ  ん  は  、  健  闘  を  祈  り  ま  ー  す  !  !  」




慧音「……、これでさしあたっての対策について周知はできたわね」

小傘「2人が寺に戻った代わりに山彦が応援に来て役に立ったわね、良かったじゃない」

慧音「でもこの船、舵取りがいなくなっても大丈夫なの?」

響子「自動操行なのよ」

430: 2014/08/15(金) 02:02:29.72 ID:Q2CPhraC0

――人間の里(路上)――


まこと「こ、こ、こっちなのだー! こっちにまっすぐ来るのだー!」


ミサキA「ォォオオオ!!」


バッ!


一輪「今よ、伏せて」

まこと「はい!」


ミサキA「!」


スカッ


一輪&雲山「「オラアアア―――ッ!!」」


ドゴ――ッ!!


ミサキ「……ッ」

克也「へいへーい! こっちだぜ!!」

克也「迎えるってんなら迎えてみろよ!! 俺はこっちだ! 井戸のへりに突っ立ってんぞ!!」

ミサキ「……!」


クワッ


克也「来たーッ! 助けて、舟幽霊さん!!」


ゴポゴポゴポゴポ……バシャッ!!


ミサキA「!?」


ガシィ!


村紗「幻想卿には海もありませんし、私はもう悪戯はしても人を遭難させることはやめました」

村紗「ですが、もしもそれが逆に、貴方を救うことになるのかも知れないのならば――敢えて」




ドッポーン!!!    ……シ――――ン




まこと「……ごくり」

克也「ど、どうなんだろ。井戸の奥に引っ張り込まれて溺れた?……けど……成仏したんかな」

雲山「……」

一輪「どうだろうね。あれの外見は山ミサキってやつのようだったし、これが効いたかどうかは」

一輪「って雲山が言ってる」

一輪(でも、ミサキってのは“岬”と通じる。海に関連する伝承が多いし、『川ミサキが山に入ったら山ミサキになる』って説もあるという)

一輪(これが当たりだったら)

431: 2014/08/15(金) 02:06:55.05 ID:Q2CPhraC0
ヒョコリ


村紗「どうやら、無事に成仏されたみたいですよ。あの方は」


まこと「!!」

克也「マジでか!」


村紗「ようやく、長い呪縛から逃れられたようで」

一輪「……そう」


まこと「よかったのだ……怖かったけど、無事に成仏できて」

克也「つまり他の奴らも同じように引きずりこんだらいいってことなんじゃ?」


村紗「それは……どうでしょうかね。私には判りかねますが」

雲山「……」

一輪「いずれにせよ、こっちは片付いたから他の手助けに向かいましょ」

一輪(で、正直この子たちは足手まといなわけだけど)


克也「オレらだって、ちっとは役に立てたんだ! 広達に会えたら自慢しねーとな」

まこと「え、えーと……ぼくたちはおとりになっただけだし」

克也「ってなわけでお姉さま方! 先生を見つけるまではお供させてもらいますッ!!」


一輪「はぁー。あ、うん、分かったから」

村紗「まあ、宝船にご乗船いただくという手もありますから」

432: 2014/08/15(金) 02:08:46.56 ID:Q2CPhraC0
――人間の里(郊外)――




ミサキBCDE「「「「ゼー……ゼー……」」」」




屠自古「……フゥ」

布都「少々時間はかかったが、無事犠牲者を出すことなく、里のはずれまで追い返すことができたか」

妹紅「貴女達が最初に手を出さなかったら、もっと穏便に事を済ませられたでしょうけど、ね」

美鈴「確か5人が暴れ回ってたんですよね? 1人見当たらないようですが」

マミゾウ「坊主や僧侶も動いておるのじゃ。案外、上手く処理できたのやもしれんぞ」


マミゾウ「しっかし、あれだけ水際作戦を展開しておいて、最後はゴリ押しで押し出しとはのう」

布都「一刻も早く里人を危険から遠ざけるのが、我々の一番の目的」

布都「いろんな頃し方を試してみよ、とのお達しだが……やはりここは手っ取り早く」

美鈴「人里から追い出しちゃいましょう!」

屠自古「……サヨナラダ」


妹紅「――それも、姑(しばら)く里には出て来れないような、迷える場にね!」

433: 2014/08/15(金) 02:11:09.81 ID:Q2CPhraC0
??「神宝『サラマンダーシールド』」


ギュルルルルルルルルルルル!!


ミサキBCDE「「「「ッ!!!?」」」」



妹紅「な……貴女まで邪魔しにきたの!? もういい加減にしてよ!!」

輝夜「何を言っているの? 違うわよ、さっき宵闇を斬り裂くような大音声を聞いてね。永遠亭(うち)まで届いたのよ、アレ」

妹紅「え……」

輝夜「こやつらが人里を荒らす無法者なのでしょ? 燃えない衣の盾で捕まえたから、念のためにあんたの炎で囲んで二重に拘束したら?」

妹紅「――そうね」


ゴォォォォォォォォォォォォォ


輝夜「そろそろ、また喧嘩を売りに来るころかなと待っていたんだけれど。丁度いいわ」

輝夜「今はこやつらとも殺り合いましょ? 私達には、いくらでも費やせる時間があるのだから」

妹紅「そうね。勿論、ここじゃなくて――迷いの竹林の中で、殺り合うとしようかしら」


ミサキBCDE「「「「~~~~!」」」」


……ユラユラユラユラ

434: 2014/08/15(金) 02:15:55.26 ID:Q2CPhraC0
屠自古「……」

布都「……まるで竹林の奥に吸い込まれるかのように、行ってしまった。否、永遠に迎えられてしまったとでもいうべきや?」

マミゾウ「何じゃ、あの2人は。夫婦なのかの?」

美鈴「いやー、たぶんいろんな過去があって仲は悪いと思うんですが。実のところはどうなんでしょう、私には判りませんね」

布都「何はともあれ、これでひとまずは安心ということじゃな」

屠自古「……ソウダネ」


美鈴「あの4人は永遠にミサキのまま、いつまでも動かない時間の中に封じ込められるのかも」

マミゾウ「ふーむ、永久に救われぬ、ということかの? じゃが、それも亡霊になった者の末路のひとつよ」

屠自古「……」

布都「救える者は救えても、救えぬ者は最期まで救えぬ……か。認めたくはなくとも、限界は厳然としてそこにある」


布都「さーて、これで仕舞いよ!」

美鈴「普段の弾幕ごっこと違って、たまにはこういう鬼気迫る感じの闘いがあってもいいかも知れませんね」

マミゾウ「それはなんともいえぬが……普段は各々勝手気ままにやってる連中が、今回に限っては種族・宗派を問わず結束しておる」

屠自古「……ウム」

マミゾウ(こういう時に限っておらぬとは、ぬえよ……お前さんは本当に間が悪いな)

美鈴「あれだこれだと異変を起こしていても、幻想郷が本当に一大事となったら――皆困っちゃいますもの」

マミゾウ「そういう意味では、後のちのためにいい教訓になるやも知れんぞ」




               (第2.5話:里人たちを守れ――妖怪大戦争勃発!の巻<中編>・終)

435: 2014/08/15(金) 02:18:26.88 ID:Q2CPhraC0
次回に続きます

ミサキAのくだりは完全にオリ設定ですが、ここまで引っ張っておいて最後があっさりだと
流石に者足らないと思いまして

439: 2014/08/16(土) 20:40:46.68 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(守矢神社)――


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子「守矢神社を人間界から幻想の存在とし、幻想郷で信仰を集める事――それが幻想入りを強行した私の最大の目的」

神奈子「外界の人間は神を捨て、科学崇拝に魂を捧げてしまった現代に至っては」

神奈子「神への信仰心は失われてゆき、やがて……我々の存在自体が露と消えてしまうもの思われた」

神奈子「だからこそ、幻想入りという大きな賭けに出て、そして今日に至る」


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子「エネルギーの技術革命……という手段も確かに長期的に見れば成算はあるが」

神奈子「やはり、河童の労働力を始め様々な者共を従え、上手く扱いながら進めるほかはない」

神奈子「妖怪の山に舞い降りて時も経ち、溶け込んだとはいえども。他の数多の勢力との兼ね合いもあり――なかなか大胆な動きはできない」


神奈子「だからこそ――このケサランパサラン達の力が生きてくるわけだ」


神奈子(我々の乾坤想像も早苗が生み出す奇跡にも、自ずと限界があるし――派手なことをやってしまうとまた異変を起こしたなと騒がれる)

神奈子(まったく、私達が(直接)異変を起こしたことなどないというのに――風評被害もいいところだが)

神奈子(兎にも角にも。我々が実現したいことを、誰からの干渉も受けることなく、恰も自然に達成させること)


神奈子「貴方たちになら、出来るであろう?」


ケサランパサラン達「……」


ポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッ

440: 2014/08/16(土) 20:44:38.28 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(大蝦蟇の池)――


ドロドロ……


大蝦蟇「にやにや」




ゆきめ「こんのヘンタイガエルがー!」


コォォ


ゆきめ「舌先から尻尾の先っちょまで氷漬けにしてやる!」

早苗「ちょっと待って下さい! カエルにはもう尻尾はありませんよ」

ゆきめ「そんなことどーだっていいでしょ!?」

早苗「ええ、そうじゃなくてー! このガマガエルさんは言って見れば神の使いみたいなものなんです」

早苗「攻撃したら、一層バチがあたるというか~」

ゆきめ「だったらどーすりゃいいの! このままコイツに好き勝手にさせるの!?」

ゆきめ「絶対イヤよ私! ヴァージンは鵺野先生に捧げるまで守り通すんだからっ!」


ドロドロ……


早苗「あ、そうだ! いい手がありますよ」

441: 2014/08/16(土) 20:48:04.40 ID:iKuAf9iX0
早苗「ほら、池のほとりに祠が見えるでしょう?」

早苗「あそこに何かお供え物でもしたら、大蝦蟇さんも許してくれるんじゃないでしょうか」

ゆきめ「そうなの? それじゃ、何か早くお供え物でもしてよ!」

早苗「えー、でもいきなりではお供えできるものが――」

早苗「あ、いい考えがあります」

早苗「私達がお供え物になればいいんじゃないでしょうか!」

ゆきめ「なるほどーいい考え! 私達が犠牲になってこいつの怒りを鎮めれば――」

早苗「……」

ゆきめ「……」


大蝦蟇「ペロペロペロペロ」


ゆきめ「ってそれじゃ結局このままヤられちゃうじゃないのー!!」

早苗「誰かー助けに来て下さーい」


ヒョコリ


諏訪子「助けに来たよー」

442: 2014/08/16(土) 20:54:52.18 ID:iKuAf9iX0

――


大蝦蟇「ズルズルズル」

リグル「いやあああああああッ!!?」


ゴポゴポゴポゴポゴポ……




早苗「ふうー、助かりました。諏訪子様」

ゆきめ「あーもうまったく、一時はどうなることかと思ったわ……」

諏訪子「まったくもう、遊ぶのならこんな狭い池の上じゃなくて、せめてうちの湖の上でやっておきなさいよ」


早苗「でも、諏訪子様がちょうどお手頃な蟲(いけにえ)を連れていて良かったー」

早苗「カエルの好物はやはり蟲って相場で決まってますもんね」

ゆきめ「さっきのあれって、虫なの?」

諏訪子「蟲だよ。早苗の帰りが遅いし、神奈子はあの綿毛に夢中で奥に籠っちゃったしで」

諏訪子「夕涼みを兼ねて蛍狩をしてたわけ、もう真夜中だけどね」

443: 2014/08/16(土) 21:04:47.03 ID:iKuAf9iX0
諏訪子「で、こっちの低体温症っぽいのは誰? この山の妖怪ではなさそうだけれど」

早苗「ああ、この妖怪さんはうちの神社に襲来した雪女みたいで――ぬえさんの居場所が知りたいんでしたっけ」

ゆきめ「今度こそちゃんと話を聞いてよね。鵺野先生は今どこに……って!」

ゆきめ「何なの、その“ぬえさん”って呼び方はー!?」

ゆきめ「あんた鵺野先生とどーいう関係なのよ!?」

早苗「どーいうって、まあ……退治する側とされる側の関係かしら?」


アーダコーダ


諏訪子「あーうー……いろいろと誤解が生じているようだから冷静に話し合おう。ね」




パシャッ  ……ドサッ


リグル「ゆ、許さないよ……一生恨んでやる……綿吐を仕込んでやるよ! ……ううぅ」

444: 2014/08/16(土) 21:10:19.42 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(中腹)――


玉藻「参りました――とでも言っておきましょうか? 今はね」

藍「ふ、そんな涼しい表情で言われてもな――だが、賢明な判断だろう」

藍「これ以上闘り合ったところで、あまり有益にはならないことははっきりしたからね。お互いに」

玉藻「ええ。あなたのように分別を弁えた賢明な妖怪が慕う大妖怪(そんざい)によって、この幻想郷(はこにわ)は維持されている。ということでしたね?」

藍「そうよ。紫様(あのおかた)にとって、幻想郷は手塩を掛けて育てた大切な子のようなもの」


藍「幻想郷を守るため、ならば――」

玉藻「手段を選ばないということですか」


玉藻「ですが、それは勿論この異界(せかい)に害をなすような者に対して、なのでしょう?」

藍「そうね。幻想郷では様々な種族が様々な理由を以て“異変”を引き起こす」

藍「だがそれらは大抵の場合、『存在を誇示するために』『気まぐれに』『興味本位で』起こした、という規模の大きなの遊びの側面が強い」

藍「が、時には笑いごとでは済まされないような異変も起きることがある」

445: 2014/08/16(土) 21:22:39.18 ID:iKuAf9iX0
藍「直近では、幻想郷におけるカーストをひっくり返し、下剋上を企てるという異変があったな」

玉藻「レジスタンス、ということです? それはなかなか、捨て置けない事態だったでしょうね」

藍「まあ、その一件は首謀者が小物だったこともあり――博麗の巫女(せんもんか)の妖怪退治であえなく幕を閉じたけれど」

玉藻(妖怪退治の専門家か。それが仮に人間だとしたら、この異界にも鵺野先生と同じ霊能力者が存在するのかも知れないな)


藍(紅霧の一件や春集めの一件も事態としては深刻だったが)

藍「最近特に一大事となったのは――天衣無縫な気紛れによって、幻想郷の博麗神社(かなめ)に要石(じらい)を埋め込まれたとき」

藍「あの時ばかりはあのお方も怒りを露わにし――異変の首謀者にこう言い放ったのよ」

藍「――『美しく残酷なこの大地から往(い)ね!』とね」

玉藻「……」


藍「その地雷は異変解決後、幻想郷の要になる地に刺され埋(うず)められた」

藍「もっとも、埋められているからこそ更なる災厄の発生が封じられているという側面もある」

玉藻「諸刃の剣ということです? 上手く扱うことができれば逆にこの世界を守る要にもなりうると」

藍「そう……も言いきれないかな」

藍(要石(あれ)を扱うことができる者が――他にもいたとしたら、話は別なのだが)

446: 2014/08/16(土) 21:30:45.35 ID:iKuAf9iX0
玉藻「……。ふふ、少し話が脱線しているをお見受けしますね」

玉藻「本来この世界に無関係な私に対して、この世界が孕む数多の問題を説き明かしても、あなたにメリットはないはず」

藍「はは、確かにそうだな。本題に入るとしよう」


藍「異変を起こすリスクを抱えた存在か否か――そういうで観点からみれば、貴方が行方を追っているという外来人らは排除の対象にならないわね」

藍「貴方の言が正しいのならば、だけれど」

玉藻「保証しますよ――鵺野鳴介という人間には鬼の手という危険極まりないモノが備わっているが」

玉藻「それはひとえに守りたい存在を守るために使うというのが、あの人のポリシーらしい」

玉藻「たとえ妖怪であろうとも、話の分かる相手や大切な生徒達に危害を加えようとしない相手には」

玉藻「決して、その力を行使したりしない」


藍「そうかい。で、貴方はそんなヌエノとやらに魅力を感じているわけだな」


玉藻「……言ったでしょう、あくまで研究の対象なのだと」

玉藻「誰かを守りたいがために命懸けで戦い、普段のさまからは信じられないほどの力を発揮する――その力を引き出す何か」

玉藻「力の源と考えられるもの――人間の愛――を解き明かすこと。それが人間界に留まる道を選んだ私の目的なんですよ」


藍「目的といいつつも、もうそれを理解しつつあるんじゃないの?」

藍「貴方、初めて見たときから思っていたけれど……半分人間臭いわよ。数百年も妖狐として生きながら、その人間に出逢った刹那から、貴方は変わりつつある」

藍「近い将来、貴方の妖狐としての生き方は影を潜め、代わって人間としての生き方が主になってくるかも知れないね」


玉藻「私は今、仮の姿としての“玉藻京介”であり真の姿としての“荼吉権現天狐”だ」

玉藻「これは将来に渡って、不変の事実ですよ」

藍「私は今、式神としての“八雲藍”であり、妖狐としての名は……もう忘れてしまったな」


藍「ひとは変わるものだ。それはひとに限らず、妖怪でも、神でも、鬼でさえも同じだろう」

藍「将来のことなど――」

玉藻「――分かりやしない、ということですね」

447: 2014/08/16(土) 21:38:13.43 ID:iKuAf9iX0
ヒュゥゥゥゥゥ


藍「さて、この幻想郷の各地には今まさに異変が生じている。勘のいい貴方ならば当然気がついているわね」

藍「私はこれ以上、のんびりしてはいられない――管理人(じょうし)が戻ってくるまでの間、出来る限りのことをしておかないと」

藍「そして、その中途で――貴方が探し求めている人物に巡り合うことは十分考えられる」


玉藻「だから自分のあとについてくればいいだろう、と? 生憎ですが、ここは遠慮しておきましょう」

藍「おや、断るの? 急いで探し出したいのなら――」

玉藻「ついて行った方がいいと仰せでしょうが、そこまで焦る必要はないと判断したからですよ」

玉藻「貴方の話を聞く限り、鵺野先生達が絶体絶命の危機、なんて状況に陥る可能性は低いと思われるのでね」

玉藻「それに、私は私のやり方で彼らの足取りを追尾することもできる」

玉藻「少々時間はかかるかも知れませんが。何せこの世界には、強い妖気を放つ者が多いようで」


藍「分かった。それでは、気をつけるようにね。くれぐれも、貴方や貴方の“仲間”が異変に首を突っ込んでしまわないように、という意味で」

玉藻「……。ええ、気をつけましょう。もっとも私は、対岸の火事にわざわざ干渉するような愚行はしない」

玉藻「むしろその混乱のお陰で、幻想郷を駆け巡りやすいかもしれないんでね」


藍「狡猾なやつよ――健闘を祈ろう。次に顔を合わせる頃には、異変も大方は片付いているだろうしね」

玉藻「あなたに狡猾と言われたくありませんが。事が済んだら、最東端の神社にて――でしたね」




「それでは」「アディオス」


シュタッ

448: 2014/08/16(土) 21:45:55.66 ID:iKuAf9iX0

――人間の里(上空・雲上の宝船)――


ボゥ……    ボゥ……


克也「うひょー……凄え眺めだな。人里が一望できる」


村紗「本来ならば夜は真っ暗闇で――明かりなど月の光くらいしかありませんが」

村紗「今回は船に鬼火を焚いていますから、まだ見える方でしょう?」


まこと「でも、人里もその周りも……あたり一面真っ暗なのだ」


慧音「怖いかな?」


まこと「う、うん……こんなに全然明かりがないと……」


慧音「でもね、妖怪達にとってはこの闇こそが最良の棲みかになるのよ」

慧音「人間達は日が暮れたら家に帰り、明かりを消して、静かに眠りに入る」

慧音「一方で妖怪たちは黄昏と同時に姿を現し、宵闇の中を活動し」


克也「そんで、丑三つ時……って言うんだっけ。幽霊とかが一番出やすいのは」

まこと「それからだんだん朝が近づくと、幽霊も妖怪も消えてしまうのだ」


慧音「あらあら、十歳やそこらで詳しいのね」


克也「そりゃそうっスよ! ぬ~べ~先生のお陰っていうか、せいでっていうか。こっち方面じゃいろんな目に遭ったし」

まこと「けーね先生も凄く物知りなのだ。もっともっといろんな話を聞かせて欲しいのだー」


慧音「ふふふ、そう言ってくれると先生も嬉しいね」

449: 2014/08/16(土) 21:50:49.15 ID:iKuAf9iX0
慧音「里が落ち着いたら、特別授業でもしてあげようか? ただし、宿題もちゃんと出してあげるよ?」


克也「えー!?」

まこと「宿題は勘弁なのだー!」


慧音「ダメダメ! 宿題をしない子には先生頭をごっつんこしちゃうぞ~!」


コツン


まこと「・・・・・・」

克也「!! 先生、オレもオレもー」


慧音「君はダーメ」


パシャン


村紗「水を掛けられる懲罰というのもありでしょう。あ、これは呪われた水ではありませんからご安心を」


克也「・・・・・・寒くはないんだ・・・けど、冷たさが身にしみるー」




小傘「まったく、人間は怖がらせるべきものなのに……」

響子「貴女は怖がらせようとしても、誰も怖がらないじゃない」

小傘「う……それはもういいでしょ。今の戦況を気にしなきゃ」

響子「あの七人ミサキ達は片が付いたらしいわね。って報告が来たわ」

響子「手伝ってくれた道士達は解散、他のお寺のメンバーは暫く人里に留まって警備に当たるって」

小傘「僧侶たちが見回ってるなら、また何か出てきても大丈夫そうね」

響子「それから、聖と他2名が謎の仮面とまだ闘ってる模様」

小傘「あの面霊気とは関係ないのよね? ……一体ナニモノなのよ」

450: 2014/08/16(土) 21:55:50.87 ID:iKuAf9iX0
まこと「あそこなのだ! 何人かが凄い速さで動いているようだけれど……」

克也「全然見えねーな。暗いのもあるし……これがヤムチャ視点ってやつか……」

村紗「赤いマントに帽子と仮面……あれも妖怪の類なのでしょうか?」

慧音「……」


慧音「あれが“怪人赤マント”だとすれば……比較的新しい都市伝説がルーツになるかな」

まこと「かいじんあかまんとー? 名前からして悪そうなのだー!」

克也「……うる星やつら?」

村紗「?」


慧音「赤マント青マントの話、知っている?」

まこと「うーんと……」

村紗「赤マント青マント……あれ、それって誰かのスペカにあったような気がしますが」

克也「誰かって?」

慧音「文字通り、誰かよ――あの怪人もまさしく正体不明」


慧音(となるとあれは、博麗大結界が成立して後に、外界に蔓延った存在――当時の世相や疑心暗鬼といった様々な事象が遠因となって生れた怪異)

慧音(いにしえから存在する七人ミサキも厄介だったけれど……こっちも一癖二癖ある相手ね)

451: 2014/08/16(土) 22:00:43.99 ID:iKuAf9iX0

――妖怪の山(上空)――




ビュォォォォォォ




岩天狗「痛つつ……何者だ?」


はたて「痛つつ……岩天狗ねぇ、名前負けはしていないようで。滅法硬いじゃないの」


文(……私は割り切らなければ……ならない)

文(将来のこと……それは……今私が考えるべきことじゃない)

文(……私が今考えるべきことは)

文(――今健在な霊夢さんに万一のことが無いように、生温かく見守って差し上げると言ったところですか)

文(――勿論、取材という建前は崩しませんがね!)




文「逆風『人間禁制の道』」


フォォォォォォォォォォォォォォォォォ


岩天狗「むぉ!?」

はたて「文!」

453: 2014/08/16(土) 22:07:13.63 ID:iKuAf9iX0
バサバサッ


文「やれやれ――ちょっとイヤな幻術(ゆめ)を見せられちゃいましたが」

文「かえって、自問自答する良い機会に恵まれた、と考えて感謝しておきましょう」

文「岩天狗さん」


岩天狗「お、おう……」


はたて「ちょっと文!」

文「おや、はたて? 貴方もいたんですか? 珍しいですね、外出だなんて」

はたて「何を暢気なことを言ってるのよ! そこの岩野郎、文にイタズラしようとしてたんだから!!」


岩天狗「な」


文「え、私に?」

はたて「そうよ!」


岩天狗「ち、ちがーう!!」

岩天狗「俺様は……ただ、そこの……女天狗の手を……握ってみたかっただけで」

岩天狗「どうせ元の山に帰ったら……もう……そんな機会はなかなか訪れないかも……って思ってだな……その」


文「……」

はたて「ウソおっしゃい。もっと変なことしようって気持ちが口から筒抜けだったわ!」

文「別にいいですよ? 手ぐらいなら握って差し上げましょう」


岩天狗「……!?」

454: 2014/08/16(土) 22:12:41.11 ID:iKuAf9iX0
はたて「あ、文!?」

文「それで納得して幻想郷(ここ)からお帰りいただけるんなら、こちらとしてもありがたいので。握手券なしで握手してあげますよ」


文(何しろ、まだまだ厄介な外来妖怪が沸き出てくる可能性が十分ありますからね)

文(もう深更ですが、鳥目にも人里が慌ただしくなっているのははっきり判りますし)

文(この天狗さんは言っても妖怪の山を侵略するといったような敵意はないのだから)

文(このまま穏便な形で――)


岩天狗「そ、それは……あ、じゃあ……どーも」


文「ついでにうちの新聞もお渡ししておきますんで後で読んでみてくださいな」


キュキュ……カキカキ


文「更にサービスということで、私のサイン入り勧誘チラシもお付けしますねー、はい書けました」


スッ


文「では、どうぞ~(記者スマイル)」

岩天狗「・・・・・・ゴクリ」


はたて「ダメ――――――――――――――――――ッ!!」

455: 2014/08/16(土) 22:19:12.92 ID:iKuAf9iX0
ドゴッ


岩天狗「ガハッ!!?」


文「ちょ、はたて!?」

はたて「ダメよ文! こんなヤツと握手するなんて、手が穢れるわよ」

はたて「だってコイツ、ドーテイなんだから」


岩天狗「ッ!!?」


はたて「800年も女の子の手さえ握ったコトがないなんて……キャハハハッ」

はたて「幸薄い人生じゃない? それも天狗だから長い長い時間だもんねー」




はたて「あんたなんか、大岩を削って女型の石像(ダッチワイフ)作って――ひとり寂しく自慰ってりゃいいのよ!」




岩天狗「ぁ……あ……ああああっ……!」

岩天狗「貴様らァ……許さんぞォ……!!」

456: 2014/08/16(土) 22:22:27.90 ID:iKuAf9iX0
岩天狗「この岩天狗様をここまで愚弄したことを……後悔させてくれる……!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


はたて「……な、何よ。コイツ……。散々おちょくっちゃったケド……」

はたて「意外と……強そうな雰囲気ね」

文「貴女が彼の苦悶に満ちた心に火を付けたんですよ――残念ながら、もう交渉の余地はありませんね」




岩天狗「食らえ―――ッ!」

岩天狗「天狗必殺奥義――『天神風(あまつかぜ)』!!!」




――カッ




はたて「――」

文「――な」




ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルド―――――――――――――ン!!!




457: 2014/08/16(土) 22:28:05.60 ID:iKuAf9iX0

――魔法の森(玄武の沢)――


にとり(今、山側の上空で爆発的な閃光弾のようなのが炸裂したみたいだけれど……新手の弾幕使いの仕業?)

弥々子「うーむ」

にとり「ん、何?」

弥々子「おめえ、本当にびっくりするほど胸がねぇなあ」

にとり「喧嘩でも売ってるの……?」

にとり「余所者とは言え河童のよしみってことで今日は泊めてあげようかと思ったけど、やっぱ出て――」

弥々子「そんなら、一緒に表へ出るっぺ! 相撲で勝負だっぺ!」


グイ


にとり「ってちょっと!?」

にとり「まったく、あんた外界から来たんでしょ? 相撲のような前時代的なスポーツに興じるよりさ」

にとり「もっと、面白い話とかしてくれない? 私にとってね」

弥々子「面白い話?」

458: 2014/08/16(土) 22:32:00.74 ID:iKuAf9iX0
にとり「例えば、外界の優れた技術とか……お金になりそうな商売の新手法とか……」

にとり「それか、何かいいモノ持って来たりしてないの?」

にとり「向こうでは価値がなくていらないものとかー(ぐへへ、価値の分からない好事家相手に高値で売り捌いてやる!)」

弥々子「……そんなら、これをあげるっぺ。おらに親切にしてくれた感謝の気持ちだっぺ!」


スッ


にとり「これって……」

弥々子「おらの、大好物だ」

にとり「……」

にとり「うん、ありがと。私も好きだよ――キュウリはね」




           (第2.5話:里人たちを守れ――妖怪大戦争勃発!の巻<後編>・終)

459: 2014/08/16(土) 22:35:47.31 ID:iKuAf9iX0


【今後の予定(一部追補)】




第3話「 片腕の仙人と鬼の手を持つ男 の巻」(来週末ごろ)




第4話「 震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼 の巻」(8月中~9月上旬)




最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」(9月中)


エピローグ「 希望の面と絶望の仮面 / 夜回り先生ぬ~べ~と秘封倶楽部の異次元談話 」


469: 2014/08/17(日) 22:38:37.59 ID:jtWrv8ty0




――(予告編)――




○時系列的には《第4話》以降になりますが


前回提示した題名によって今後の展開が大体予想できると思いますので


ここで投下しておきます。




470: 2014/08/17(日) 22:43:43.71 ID:jtWrv8ty0
【丑三つ時】


――幻想郷(上空)――




グラグラグラグラ――――ッ!

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!!

ビシャ―――――――――――――――――――――――ン!!!




??「緋想の剣よ、こやつらの気質を映し出せ。そして弾ける気力(エネルギー)となれ――天変地異を起こすのよ」

??「鬼に金棒だね――」

??「せーの、きゅっとしてー」








ドッカ――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!








フラン「あはは。山の上もあっさり吹っ飛んじゃったわね」

絶鬼「次はどこにケンカを売るつもりだい? そろそろ人里とやらを無に帰したい気分だ」

天子「ダメダメ。もしやるとしたらそこはラスト――簡単に幻想郷が崩れ落ちちゃったら、つまんない」

天子「――よっと」


ヒョイ


要石「――……プカプカ……」


絶鬼「確かにまだまだ序の口だよね。本当の愉しみは最後に取っておくとしよう」


タッ


フラン「気持ちが良い。あの狭くて狭くて退屈で遊び飽きた部屋の中より、外で遊ぶ方が断然いいわね」

471: 2014/08/17(日) 22:45:53.47 ID:jtWrv8ty0
フラン「貴方たちが紅魔館(あのやかた)を粉砕してくれたおかげよ」

絶鬼「そうだね、断然気持ちいいよね――幻想郷(ここ)はぼくたちの遊び道具にぴったりだ」


天子「今度は解決する側に回ろうかと思ったけど。やっぱり黒幕(ヒール)役のほうが思う存分好き勝手やれていいわ」

天子「されど、地上はもうじき陥落する。早く、巫女たち倒しに来ないかなー?」

天子「こう待つのも退屈ね。来ないんなら――ホントにこのまま全て吹っ飛ばしちゃうよ?」


絶鬼「それで、この世界に終焉(フィナーレ)を与えたら、次はどうするの?」

絶鬼「今度は人間界を焦土に変えようか? きみたちの力をもってすれば、外に現界するのも容易いことだろう」

フラン「あーそれ面白そう! 外の世界も見てみたい」


天子「いやいや、外界はまだ早い。まずは――私を見下ろす目障りな月を陥落(お)とすとしよう」


絶鬼「月だって? あんなちっぽけなモノを潰したところで、暇潰しにもならないんじゃないかな?」

フラン「ううん、そんなことないわよ。月の民の連中って、地上の有象無象よりもっともっと強いんだって、本の虫から聞いたことがある」

絶鬼「ふぅん、そういうわけなら。案外面白そうだね」


天子「我ら天地人鬼の“四天王(カルテット)”の力――見せつけてくれようぞ」


絶鬼「ってことだよ。判った、兄さん?」


ゴソゴソ


??「……ん、何か言ったうが?」

472: 2014/08/17(日) 22:48:43.65 ID:jtWrv8ty0
絶鬼「あーうん……とりあえず、破壊し尽くそうって話さ」


天子「あらら、まだ人化が上手くできないの?」


フラン「下が丸出しー! 不格好で無粋だわ」


天子「それでなくても流石に4人で要石(これ)に乗ったら狭いんだから、もっと小さくなってよ」


覇鬼「うー……んなら、こうすればいいうが」

フラン「え?」


ヒョイ


フラン「わー。高い高ーい」

覇鬼「がはは! これでひとり分広くなったー」

絶鬼「あまり変わってないよ。それに、ここは既に十分高度があるよね、雲が掴めるくらいに」


天子「まったく、ふたりとも幼稚ですわねぇ」


ボンッ


覇鬼「……ふ、これでいい、か?」

フラン「低い低~い」

絶鬼「うん、それでカンペキだ。ここの連中は人型ばかりだから、多少の譲歩はしてやってもいいってものさ」


天子「でも、いざとなったら本気出しちゃっていいよ?」


フラン「あの巫女、この界隈じゃ最強ってことになってるもの。お遊びでの話だけどねぇ」

473: 2014/08/17(日) 22:50:41.73 ID:jtWrv8ty0
天子「――ここいらで、指令系統をはっきりさせておこうかな」


チラリ


絶鬼「――それもそうだ」


覇鬼・フラン「「??」」


天子「司令塔は私だ」

天子「この天下(せかい)のことは熟知しているし、何しろ“天地人”―全ては私の掌の中にある」

絶鬼「いいや、司令塔はぼくだ。世話の焼ける兄妹の間に挟まれたおかげで“子ども”の扱いには一日の長がある」

絶鬼「彼ら(ふたり)の能力を最大限に引き出せるかどうかは僕の腕にかかっているといってもいい」

天子「私だ」

絶鬼「ぼくだよ」

天子「何よ。薔薇なんかかざしてカッコつけてるだけの小鬼のクセに」

絶鬼「きみが帽子にくっつけているその桃、天界の桃だか何だか知らないけれど傍から見たら実に滑稽だ」


覇鬼「まーまー、落ち着くうが、絶鬼」

フラン「天子さんも、ケンカは良くないよ」


シャリ


フラン「でも、この桃なかなか美味しいわ」


パクパク


覇鬼「全身にチカラがあふれてくるような気がするうが」

475: 2014/08/17(日) 22:54:31.35 ID:jtWrv8ty0
天子「何か勘違いしているんじゃないの? お前は所詮私によって利用されているだけなのよ?」

絶鬼「勘違いしているのはそっちだよ? きみの能力はつまるところぼくに利用されているだけだと気がつかないの?」

天子「ふんだ。まあいい、その点については爾後はっきりさせるとしよう」

絶鬼「そうだね。まずは地上を支配下においてから、上下関係というものを分からせてあげようじゃないか」


フラン「支配下ね――それをやってのけたらお姉様(アイツ)は一体どんな顔をするのかな」

覇鬼「良く分からんが腕が鳴る! 皆頃しだァ!!」




天子「さーて、小休止(ブレス)はこの辺で終わりにしようかしら」

絶鬼「交響曲第9番――境界の壁崩壊のシンフォニー――の始まりだ」

フラン「ウフフ・・・」

覇鬼「ウガウガ・・・」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




477: 2014/08/17(日) 22:56:37.37 ID:jtWrv8ty0
《EXTRA BOSSES》


< 細胸の不良天人 >

比那名居 天子――TENSHI HINANAWI――


○大地を操る程度の能力(←要石)

○気質を見極める程度の能力(←緋想の剣)

○高い身体能力(←天界の桃)




< 最凶の鬼 >

絶鬼――ZEKKI――


○悪魔の旋律(戦慄)を奏でる程度の能力(仮)




<最狂の吸血鬼 >

フランドール・スカーレット――FLANDRE SCARLET――


○ありとあらゆるものを破壊する程度の能力




< 最強の鬼 >

覇鬼――BAKI――


○ありとあらゆるものを破壊し尽くす程度の能力(仮)




                              (予告編・終)

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」【第5話】

引用: ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」