187: 2012/12/25(火) 17:33:23.96 ID:YYsSShrR0
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その1】
#4『「狩り」に行こう!』
――翌日
魔法少女とその関係者は、昼休み、屋上へと集まった。
まどかがさやかを、ほむらがマミを連れてきた。
仁美は偶然にもクラス委員の呼び出しを重なったためこの場にいない。
マミ「……スタンド?」
まどか「そうなんです。スタンド」
ほむら「魔法少女の魔法とは違う……」
さやか「…………」
さやか「まどかが超能力に目覚めた……って……なんか……」
さやか「いや、でも……何か……うん」
188: 2012/12/25(火) 17:34:01.47 ID:YYsSShrR0
さやか「魔法少女だ魔女だどうこうを見たから……なんか驚きが薄いわ」
ほむら「えぇー……」
まどか「もっと驚いて欲しかったなぁ」
QB「興味深いね」
マミ「あ、キュゥべえ」
まどか「キュゥべえはスタンドのこと知らない?」
ほむら「スタンドという名称は人から聞いたものだから便宜的な物かも知れないけど……」
QB「聞いたことがないね。それこそ、夢だったんじゃないかと言ってしまいそうだ」
さやか「だよねぇ。超能力なんて突拍子なさすぎだよ」
マミ「でも魔法少女やスタンドとやらも……突拍子もないという点では共通の事実ね」
189: 2012/12/25(火) 17:35:04.52 ID:YYsSShrR0
QB「そのスタンドというものがいかなるものなのか、是非見てみたいな」
ほむら「ダメだよ」
QB「……どうしてだい?」
ほむら「スタンドは、見えないの」
QB「見えない?」
まどか「そう。例えば、ほら。今『スタープラチナ』がここにいるよ」
さやか「スター……なんだって?」
まどか「あ、そうそう。わたし、そのスタンドの人をスタープラチナって呼ぶことにしたの」
まどか「話しかけても返事してくれないし……」
ほむら(見えない何かに必氏に話しかける鹿目さんは……言ってはなんだけど……その……痛々しかった)
まどか「スタンドはスタンドを使える人にしか見えないみたい」
190: 2012/12/25(火) 17:36:11.98 ID:YYsSShrR0
マミ「魔法少女とキュゥべえの関係みたいね」
QB「なるほど。それはわかりやすい」
さやか「それで?その超能力はどういう使い方すんの?」
さやか「マミさんみたいにリボンシュルシュルとかするの?」
まどか「よくわかんない」
まどか「スタープラチナは強くて速くて器用ってくらい?」
ほむら「そうだね……遠くの物を持ってくることもできないし」
さやか「……日常生活の上で役にたたなそうだね」
まどか「で、でもっ!お裁縫が得意だよ!それことミシン並!」
さやか「なるほど……すげー羨ましいね」
まどか「うぅ、興味なさそう……」
191: 2012/12/25(火) 17:37:51.66 ID:YYsSShrR0
マミ「……ねぇ、鹿目さん」
まどか「はい」
マミ「鹿目さんならそんなことないだろうけど、一応忠告しておくわね」
まどか「忠告、ですか?」
マミ「スタンドとか、魔法もね、そういう特別な力は悪用してはだめってことよ」
ほむら「…………」
ほむら「鹿目さんに限ってそんなことは……」
マミ「えぇ、わかっているけど、一応」
まどか「はい!わかりました!」
マミ「ん、誇りを持って、恥ずかしくないように使うのよ」
192: 2012/12/25(火) 17:39:32.31 ID:YYsSShrR0
さやか「……あっ、やっべ!時間が……!」
ほむら「時間?……あ」
まどか「急いで戻らなきゃ!」
マミ「あら、そんな慌てなくても……まだ時間はあるわ」
ほむら「時間割が変わって次の授業が体育になったんです。着替えなくっちゃなのです」
マミ「まぁ、それは大変ね」
さやか「それじゃ、行こう。まどか、転校生」
ほむら「巴さんお先に失礼します」
まどか「します」
マミ「えぇ。またね」
193: 2012/12/25(火) 17:40:03.15 ID:YYsSShrR0
マミ「…………」
マミ「……ねぇ、キュゥべえ」
QB「何だい?」
マミ「一つ、頼まれて欲しいことがあるの」
QB「内容によるよ」
マミ「虫の知らせというものかしら……」
マミ「私、佐倉さんのことが気になるの」
QB「……なるほど」
マミ「だからキュゥべえ、風見野に行って、佐倉さんの様子を見てきてほしいの」
QB「ああ、その程度なら構わないよ」
194: 2012/12/25(火) 17:40:43.45 ID:YYsSShrR0
QB「早速行った方がいいかな?」
マミ「できれば今日中に答えが欲しいけど……」
マミ「頼んだ側だし、その辺りあなたの都合に合わせるわ」
QB「わかったよ。マミ」
QB「さて、マミも教室に戻った方がいいんじゃないかい?」
マミ「えぇ、そうね。それじゃあ……キュゥべえもまたね」
QB「うん。それじゃあ」
QB「…………」
QB(……スタンド、か)
195: 2012/12/25(火) 17:43:15.16 ID:YYsSShrR0
――見滝原に隣接する風見野。
その外れに廃教会がある。
そこには、とある一家が暮らしていた。
しかしある日、そこで火災が起きて一人が行方不明、他全員が焼氏したという――。
そこから少し離れた公園のベンチで、一人の童女が座っている。
姉の迎えを待っているかのように、足をプラプラ揺らす。
この童女の名は「千歳ゆま」という。
196: 2012/12/25(火) 17:45:22.01 ID:YYsSShrR0
『ゆまの母親』はとても美しい女性であったけれども、決して良い母親ではなかった。
産後、幼いゆまを置き去りにして彼女はよく夫(ゆまの父親)と夜の街に遊びに出かけた。
寝ていて夜、目を醒ますと両親が家にいない。
1~2歳の子どもにとってそれはどんな恐怖と絶望なのだろう……
ゆまは暗闇の中で泣いても無駄なのでただひたすら震えていただけだった。
しかもこの女は父親の見ていないところでよくゆまを殴りつけた。
「人の煙草を見ただけでビクビクしやがってイラつくガキだわ!」
これは逆だった……煙草に怯えるようになったのは明らかにこの女が原因だった。
197: 2012/12/25(火) 17:46:02.69 ID:YYsSShrR0
そして娘のこうした状況に対し、父親は無関心を貫いていた。
「めし」「フロ」「ネル」以外の言葉を聞いた記憶が、ゆまにはなかった。
ゆまは自分がこの世のカスだと信じるようになり、愛というものを知らずに成長した。
このままではゆまが心のネジ曲がった人間に育っていくことは誰が見ても時間の問題だった。
それどころか15歳になるまで生きていられるのかさえわからなかった。
――しかし、ある事件がきっかけでゆまは救われることになる。
ある日、ゆまは両親に連れられ「いい家庭」を演じる手伝いとして街を歩いていた。
気が付くと、両親が肉塊と化していた。
生きているのか?氏んでいるのか?それさえもわからなかった。
198: 2012/12/25(火) 17:46:36.86 ID:YYsSShrR0
するとそこに、両親を肉塊にした「何か」と戦い、勝利した『少女』がゆまの前に立つ。
ゆまはその少女に何かを言ったらしいが、当の本人はその時の記憶がない。
そしてゆまの言葉を受けた少女は、両親を失ったゆまに控えめな慰めの言葉を与え、続けた。
「あたしについてこい」――ゆまはそれに従った。
少女に同情の気持ちはなかった。
ただゆまに対して亡き妹の影が重なり「一人で生きる術を教えてやろう」と思っただけだった。
少女は『魔法少女』だった。
199: 2012/12/25(火) 17:47:32.53 ID:YYsSShrR0
少女はゆまに食事、銭湯、寝床を嫌な顔一つせずに与え、連れてってくれた。
家そのものはないが、少女との生活にゆまは安らぎを覚えた。
両親から学ぶはずの「人を信じる」という当たり前のことを、ゆまは不器用な他人を通じて知ったのだ。
もうイジけた目つきはしていない……ゆまの心に温かい空気が吹いた。
少女はゆまを「魔法少女の世界に巻き込まない」という厳しい態度をとっていたが……
『救ってくれた恩義』と『役に立たなければという脅迫観念』を抱くゆまの気持ちは止まらなかった。
ゆまの中に生きるための目的が見えたのだ……
こうして「千歳ゆま」は芸能界の大物スターに憧れるよりも……
『魔法少女』に憧れるようになったのだ!
200: 2012/12/25(火) 17:47:59.35 ID:YYsSShrR0
「あの……」
ゆま「……ん?」
ゆまに話しかけたのは、自身と同い年か一つ二つ上くらいの童女だった。
腕に鉄錆色をしたバルーンアートの犬を抱え、小さい手は一枚の紙を握っている。
その指にある装飾品、ゆまはそれと似たような物を見たことがある。
ゆま「ま、魔法少女……!」
童女「あ……魔法少女を知ってるの?そ、それじゃあ……あの」
スッ
童女「こ、これ……」
201: 2012/12/25(火) 17:48:36.41 ID:YYsSShrR0
童女「この『写真』の人、知ってる?」
ゆま「……んーん」
ゆま「知らない……」
童女「……そう」
童女「わたしね、お姉ちゃんとK町の西の方で魔法少女をしていたの」
童女「でも、他の所から来た魔法少女にイジめられて……追い出されちゃったの……」
童女「それでお姉ちゃんが風見野に行くって言って……それっきり帰ってこなくなったんだ……」
ゆま「……」
童女「だから探しに来たの」
202: 2012/12/25(火) 17:49:58.66 ID:YYsSShrR0
童女「ほんとに知らない?チラッとでいいの。見てない?」
童女「写真では被ってないけど、よく変な形の帽子つけてるの」
ゆま「……ううん。知らない」
童女「…………」
童女「……嘘だよ」
童女「あなたは今、嘘をついた」
ゆま「へ?」
童女「お姉ちゃんは風見野の魔法少女に会いに行ってるの!」
童女「だから、会ってるはずだよ!魔法少女なんでしょ!?魔法少女のことを知ってるってことはそうなんでしょ!」
ゆま「ゆ、ゆまは違うよ!」
203: 2012/12/25(火) 17:50:27.11 ID:YYsSShrR0
「……なんだ、やっかましいヤツがいるな」
童女「!」
ゆま「あ……『キョーコ』!」
杏子「……何か訳ありって感じだな」
杏子「こいつは……ゆまは魔法少女じゃない。しかしあたしは魔法少女だ」
童女「魔法少女……!」
杏子「こいつはあたしの知り合い……だから知っている」
杏子「ちょいと面貸しな。二人で話そう……ゆま、もうちょい待ってろ」
ゆま「う、うん……」
童女「…………」
204: 2012/12/25(火) 17:51:59.30 ID:YYsSShrR0
――廃教会前
童女「――と、いうことなの」
杏子「ふーん、姉ちゃん、ねぇ……」
杏子「悪いが、あたしもあんたの姉なんて知らないよ」
童女「そ、そんなはずはない!」
童女「あなたは風見野をテリトリーにとっている……そしてお姉ちゃんは風見野へ行った……」
童女「知らないはずがない!会ってないはずがないの!」
杏子「そうは言ってもなぁ……わからんもんはわからん」
杏子「でも、これだけはわかるぞ」
205: 2012/12/25(火) 17:53:01.88 ID:YYsSShrR0
杏子「あんたの姉はあたしを倒してテリトリーを奪おうとしに来てるはずだってことなんだろ?」
童女「そ、それは……」
杏子「気ぃ落とすな。最近、魔法少女の縄張り争いが激化しているらしいからな……」
杏子「それを悪いこととは言わない。世の中は弱肉強食ってヤツだ」
杏子「まぁそれはいいとして……」
杏子「きっとグリーフシードを手に入れようとして探し回ってるんだろう。妹思いな姉なんだな」
童女「……うん」
杏子「悪いけどさ、本当に、知らないもんは知らないんだ」
童女「で、でも……!」
杏子「わかってる。言いたいことはわかるよ……参ったな」
206: 2012/12/25(火) 17:54:22.91 ID:YYsSShrR0
杏子「……じゃあ、さ、あんた」
童女「……うん」
杏子「あんたには結局、グリーフシードが必要なはずだ」
童女「……うん」
杏子「この廃教会……あたしとさっきのヤツはここをいつもいるわけじゃあないが、拠点にしている」
杏子「拠点と言ってもそんな大げさなもんじゃない。グリーフシードはそこに隠してるだけさ」
童女「……」
杏子「大した量はないが、好きなだけ持ってっていいぞ」
童女「え!?」
杏子「あ、やっぱり二つだけだ。あんた用と消えた姉を見つけた時用。二つだけ持ってってけ」
童女「……いいの?」
杏子「いいんだ。あたしはあんたに敬意を表してやる」
207: 2012/12/25(火) 17:59:22.63 ID:YYsSShrR0
杏子「姉を探して、単身市外へ……」
杏子「それはいい家族愛だと思うぞ」
杏子「……まぁ、なんだ」
杏子「言い方を変えれば、見逃してやるという解釈もできるがね」
童女「うん……」
杏子「まずは入り口から右にある棚の三段目を見てみろ」
童女「…………ありがと」
杏子「何、気にすんな。行ってきな」
童女「……うん!」
208: 2012/12/25(火) 18:00:31.12 ID:YYsSShrR0
杏子「…………」
杏子「……行ったか」
杏子「いい笑顔じゃあないか」
杏子「きっと、いい家庭を持って暮らしてきたんだろうな。ちょっと羨ましい」
杏子「……うーん」
杏子「腹も減ってきたな……」
杏子「これ以上ゆまを待たせるのもとは思うが……致し方ない」
杏子「そんじゃ、ちゃっちゃと『一仕事』いきますかっと」
杏子は童女の後を追い、歩いていった。
209: 2012/12/25(火) 18:02:47.20 ID:YYsSShrR0
マミから指令を受けたキュゥべえは先程、風見野に到着した。
会いに来た人物がよくいる場所。廃教会の中へ、割れた窓から入った。
今、キュゥべえスタンドという概念について考えている。
QB「スタンド……か」
QB「一体何なんだろう」
QB「この僕が視認できないということは、魔法少女のシステムとは全くの別物なのだろうか」
QB「スタンドという能力……」
QB「今……考えられる事象は二つある」
QB「杏子がスタンドというものに翻弄され、既に風見野を追いやられている可能性」
QB「そしてもう一つは……」
210: 2012/12/25(火) 18:03:50.36 ID:YYsSShrR0
「お、キュゥべえじゃあねぇか」
QB「うん?あぁ、杏子。ここにいたんだ」
杏子「まぁな。それより、処理してほしいグリーフシードがあるんだが」
QB「あぁ、もちろんいただくよ」
杏子「丁度良い。ここで待ってろ」
QB「うん?……どうしてだい?」
杏子「いや、何てこともないよ」
QB「……ん?今、奥を歩いてるのは……」
杏子「知り合いか?」
QB「確か……K町だったかな。三ヶ月くらい前に契約した」
QB「彼女は姉妹で魔法少女をしていて、いつも一緒に行動していたはずだ」
211: 2012/12/25(火) 18:05:12.13 ID:YYsSShrR0
QB「それが何故、妹単独で離れた風見野に……」
杏子「あぁ。何でも姉を探しに来たとか」
QB「……いいのかい?」
杏子「何が?」
QB「何がって……君はそこにグリーフシードを置いていただろう?」
杏子「あぁ。あたしに言われた場所になくて、戸惑いながら別のとこ探してるってとこだな」
QB「このままだと彼女に横取りをされるんじゃないかな」
杏子「いいんだよ。これで」
QB「……分け与える、ということかい?」
杏子「そうだな」
QB「少し前の君からは想像できない」
杏子「何かつっかかる言い方だが、いいんだって」
212: 2012/12/25(火) 18:07:05.28 ID:YYsSShrR0
杏子「ちょいと待ってろ」
QB「?」
杏子「家畜も魚もウドっつー植物も、若い内の方が美味いんだ」
QB「何を言って……」
「チューブラー・ベルズッ!」
QB「ん?」
杏子「おっ」
QB「何だい、今の声は……」
杏子「そろそろかねぇ」
QB「?」
「キャアアアアァァァァァァァッ!」
QB「……ッ!」
杏子「よし、来た」
213: 2012/12/25(火) 18:08:43.48 ID:YYsSShrR0
突如、建物の奥から甲高い叫び声が鳴った。
少し離れた位置にいた杏子とキュゥべえにも聞こえるくらいの大きさ。
その声色は明らかに恐怖を感じている。
瞬間、その廃教会に魔女の結界が生じた。
空間が一瞬にして毒々しい色となり、禍々しく歪む。
杏子は何てこともなく、変身し、槍を構えた。
杏子「何だぁ?今の呪文は。チューベラ何だって?今のが辞世の句でよかったのか?」
QB「……何ということだ」
QB「君は今……何を……したんだ?」
杏子「あ?何をって?」
214: 2012/12/25(火) 18:09:58.46 ID:YYsSShrR0
QB「そこの廃教会にある魔法少女が入っていった……」
QB「そして、いきなり魔女が現れた……」
QB「しかも君は……現れることがわかっていたかのような振る舞いじゃあないか」
QB(……いや、現れた、ではない)
QB(今……エネルギーを得た。つまり……魔女が「生まれた」ということ……)
QB(タイミングからして……間違いなく、さっき入って言った魔法少女が……)
QB(たった今絶望して『魔女になった』……!)
杏子「……そりゃ、言うまでもないことだ」
杏子「テリトリーを狙った魔法少女を絶望させて魔女にして……『狩る』んだよ」
215: 2012/12/25(火) 18:11:07.47 ID:YYsSShrR0
QB「!」
QB(絶望……させる?)
QB(杏子……!魔法少女が魔女になることを知っている!)
QB(い、一体どこで知ったんだ……!?)
杏子「最近多いんだよ。テリトリーを侵略しようとする魔法少女、全部返り討ちだがね」
QB「……」
杏子「それよりもてめー。魔法少女が魔女になるだなんて、とんでもないことを隠してやがったな?あ?」
QB「……嘘はついてないよ」
杏子「ふん、まぁいい」
QB「魔法少女が魔女になると知ったからと言って……故意に魔法少女を魔女にするだなんて……」
QB(僕としては嬉しい限りだけど……)
216: 2012/12/25(火) 18:12:20.59 ID:YYsSShrR0
QB「まさか君も『スタンド』を……」
杏子「ほう……」
杏子「知ってたのか」
QB「……まあね。見滝原にも、スタンドを使う魔法少女が襲撃してきたんだ」
杏子「ふーん」
杏子「じゃあさっきのガキもそうだったりしてな。スタンド名か。チューブラー・ベルズってのは」
QB「杏子。君は……」
杏子「そうだ。あたしは『スタンド使い』だ。名前は『シビル・ウォー』」
QB「…………」
杏子「折角だから教えてやろう」
217: 2012/12/25(火) 18:13:13.94 ID:YYsSShrR0
杏子「あたしの能力のヒントは……相手の『罪悪感』だ」
QB「罪悪感?」
杏子「キュゥべえ。あんたはあたしの能力に作用していないようだ」
QB「何だって?」
杏子「つまり、既にスタンド攻撃に巻き込まれてることにすら気付いていなかったってことだ」
杏子「それはつまり、あんたは今まで一度も『罪悪感』を覚えちゃいねーってこった」
杏子「あたしの『シビル・ウォー』は罪悪感と深い関係にある」
QB「それは……まぁ、感情がないからね」
杏子「だろうな。希望だとか抜かしてこっそり魔女の卵孕ませやがって」
QB「希望の代価だよ」
218: 2012/12/25(火) 18:13:57.22 ID:YYsSShrR0
杏子「魔法少女が魔女になるだなんて知った時はびびったけどよォ……」
杏子「ま、要は慣れだな。最近になって魔女になるならそれはそれで仕方ないなって気分になってきた」
杏子「そしてあたしから奪おうと考える愚者を、返り討ちにする」
杏子「いかんせん魔女にした方がやりやすいし……グリーフシードもオイシイ」
杏子「遺体も結界の中に置いときゃ勝手に消えとるからな……合理的さ……へへ」
魔女「NUGAAAABAAAAAHH!」
杏子「おっと、そうだった。こいつも狩らなくちゃな」
杏子「キュゥべえ。こいつを狩るまでテキトーに時間潰して待ってろ」
杏子「終わったらすぐに使用済みグリーフシードくれてやらぁ!」
QB「あ、ああ……」
219: 2012/12/25(火) 18:14:39.88 ID:YYsSShrR0
QB(…………)
QB(感情のない僕でもわかる)
QB(この杏子……何か『おかしい』ぞ)
QB(偽物かもしれない、という意味じゃあない。だがしかし、彼女はそんなことをする性格ではない)
QB(使い魔を逃すとかじゃなく、魔法少女が魔女になることを認識した上で、わざと魔法少女を魔女にするだなんて……)
QB(あり得ない……一体、何があった?)
QB(何が彼女をあんなことを平然とやってのける性格に至らしめたというんだ)
QB(まず考えられるのはスタンドだが……)
QB(この変わり様……まるで『魔女の呪い』じゃないか)
220: 2012/12/25(火) 18:15:38.72 ID:YYsSShrR0
QB(この前まどかとほむらを襲ったというM市の魔法少女もスタンド使いだったらしい)
QB(彼女は争い事を嫌う性格なのに、だ……)
QB(……もし、魔女の口づけか何かを既に受けていたとすれば……?)
QB(……まあ、今のところ特に支障はないか……)
QB(それどころか、エネルギーを得られている。むしろこのままの方がいいかもしれない)
QB(過程はわからないが魔法少女を魔女にする能力か……)
QB(まどかが契約したら紹介するとして……)
QB(さて、果たしてマミに杏子のことをどう報告しておくべきなのだろうか)
221: 2012/12/25(火) 18:19:38.14 ID:YYsSShrR0
QB(流石にそっくりそのまま話すわけにもいかない)
QB(そうしたらきっとマミはここに来る)
QB(今、この杏子をマミと会わすわけにはいかないな……)
QB(さらにまどかがスタンド使いであることを知られるのもよくないだろう)
QB(ほむらがいるとは言え……今、マミ失うのは総合的に見れば損失となるだろう)
QB(テリトリーを狙う魔法少女が増えていると聞いた以上、まどかが契約する前に消される可能性を否定できなくなったからだ)
QB(ただせめて、魔法少女の縄張り争いが激化している、ということは伝えておこう)
QB(見てきたことその全てを話すようには言われていないからね)
226: 2012/12/25(火) 23:04:48.11 ID:YYsSShrR0
#5『AWAKEN――目醒め』
――翌日
仁美「さやかさん。制服にご飯粒がついてますよ」
まどか「あ、本当だ」
さやか「朝ッ!こぼれ落ちた、二粒の米ー」
仁美「取ってください」
さやか「はい」
さやか「……あっ、マミさんだ。おーい、マミさぁーん」
まどか「マミさん。おはようございますっ」
マミ「……あっ、みんな。おはよう」
227: 2012/12/25(火) 23:05:38.68 ID:YYsSShrR0
ほむら「……おはよう、ございます」
マミ「えぇ……暁美さん。おはよう」
まどか「?」
マミ「えっと……そちらの方は?」
仁美「初めまして。私、志筑仁美と申します」
仁美「マミさんのことはさやかさんから常々聞いております」
マミ「そうなの?志筑さんね。よろしく。巴マミです」
仁美「こちらこそですわ」
228: 2012/12/25(火) 23:06:24.85 ID:YYsSShrR0
さやか「ふわ~、それにしても眠たい。もっと寝たいなぁ」
仁美「あら、寝不足ですか?」
さやか「さやかちゃんちょっと夜更かししちゃってさぁ!」
さやか「これじゃ、数学の時間に寝ちゃうかもだよォ~」
まどか「いつも授業中に寝ちゃうのに」
さやか「うぅっ、まどか……言ってくれるじゃあないか」
仁美「それにしても、さやかさんがちゃんと宿題をするなんて珍しいですわね」
さやか「……え?」
仁美「あ、今のは流石に失礼なこと……」
さやか「……宿題?」
229: 2012/12/25(火) 23:07:18.62 ID:YYsSShrR0
まどか「…………」
仁美「……宿題をやって夜更かしをしたんじゃ……?」
さやか「…………」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「へるぷみー」
マミ「……」
ほむら「……」
マミ『暁美さん』
ほむら(テレパシー……)
ほむら『はい、巴さん』
マミ『昨日話したことなんだけど……』
ほむら『……はい』
230: 2012/12/25(火) 23:08:03.59 ID:YYsSShrR0
――
――――
昨晩。
風見野へ行ったキュゥべえはマミに、以下の内容を報告した――。
杏子は取りあえず無事だ。生活も安定している。心配はいらないだろう。
それで、これは杏子から聞いた話だけれど……。
どうやら最近、テリトリーを奪おうとする魔法少女が増えているとの話だ。
僕が杏子に再会した時、杏子はそういった魔法少女と戦っていたようだった。
マミ。警戒するに越したことはないけど、狙われたら迎え討つ姿勢をとらなければならないだろう。
君がそういうことを、魔法少女同士で争うことを望まない性格であることは理解しているつもりだ。
でも、今はそういうことなんだ。
もし君が非暴力の意志を貫こうとすれば、もっと悲惨なことになるかもしれない。
231: 2012/12/25(火) 23:10:00.21 ID:YYsSShrR0
そう報告を受けたマミは、ケータイを手に取り、アドレス帳を開く。
五十音順に表示されるアドレス帳、一番目に表示される相手。
「暁美さん」に、電話をすることにした。
――――
――
ほむら『魔法少女の縄張り争いが激化してる……という話ですね』
マミ『えぇ……』
マミ『それで、私考えたの……』
マミ『もう体験ツアーはやめよう、と』
ほむら『……えぇ、その方がいいと思います』
ほむら『もしも結界内でそういう魔法少女と出会ったら、二人が危ないです』
マミ『残念だけどね……それとね?』
232: 2012/12/25(火) 23:11:13.12 ID:YYsSShrR0
マミ『暁美さんと鹿目さんを襲った魔法少女のことなのだけど……』
ほむら『はい……わかってます。もしかしたら、まだ見滝原にいるかもしれませんね』
マミ『もしそうなったら……鹿目さんと美樹さんが危ないわ』
マミ『だからなるべく、二人に目を離さないようにしないといけない』
ほむら『スタープラチナのいる鹿目さんはまだしも……美樹さんは特に、ですね』
マミ『そうね。でも、暁美さん』
ほむら『はい』
マミ『あの時の魔法少女だけでなくとも、既に、いるかもしれないわ』
マミ『私達以外の魔法少女は……案外近くにいるかもしれない』
マミ『警戒してね』
ほむら『はい、わかりました。二人には私の方から伝え――』
233: 2012/12/25(火) 23:12:43.21 ID:YYsSShrR0
さやか「転校生!」
ほむら『は、はいっ!何ですか美樹さん!』
マミ『暁美さん。それ、テレパシー』
ほむら『あ……』
ほむら「は、はいっ。美樹さん」
さやか「あたしの話聞いてた?」
ほむら「……?」
まどか「さやかちゃん、宿題忘れたから見せて欲しいんだって」
マミ「まぁ、美樹さんったら。自分でやらないと意味ないわよ」
さやか「でもでもぉ~」
234: 2012/12/25(火) 23:13:56.01 ID:YYsSShrR0
ほむら「……何で私に?」
さやか「だって、転校生って意外と頭いいじゃん」
仁美「意外って……その言い方は失礼ですわ」
まどか「ほむらちゃんって頭いいよね」
ほむら「そ、そんなことは……」
マミ「あらあら、謙遜しちゃって」
ほむら「と、巴さぁん」
ほむら(同じ授業を何度も受けてるからであって、特別頭がいいというわけではないのにな……)
235: 2012/12/25(火) 23:15:15.12 ID:YYsSShrR0
――休み時間
さやか「うへぇ……提出に間に合って良かった……」
まどか「お疲れさま。さやかちゃん」
さやか「転校生、ありがとう……命の恩人だよぉ」
ほむら「そ、そんな……」
まどか「でも、さやかちゃん。これっきりだからね」
まどか「ほむらちゃんは頼まれたら断れない性格なんだから」
さやか「はいはーい。現代文の先生かっつーのー。まどかぁー」
まどか「ほむらちゃんも、キッパリ断ってね。さやかちゃんのためにならないよ」
ほむら「あ、うん……」
「やぁ、君達。ちょっといいかな」
236: 2012/12/25(火) 23:15:47.44 ID:YYsSShrR0
まどか「へ?」
「ここって、転校生が来たクラスだよね?今その子いる?」
さやか「ん?」
ほむら「え?えーっと……その……」
「あ、私?」
「私は三年生の『呉キリカ』っていう者なんだけど……」
まどか、ほむら、さやかにとって初めて見る顔。
黒い髪の上級生が話しかけてきた。
呉キリカと名乗る少女はまどかとさやかの間、ほむらの顔を見て尋ねる。
237: 2012/12/25(火) 23:17:38.86 ID:YYsSShrR0
キリカ「例の転校生はいるかい?」
ほむら「あ、あの……」
さやか「えーっと、ですね。先輩?いるも何も……"これ"なんスけど」
ほむら「こ、これって……」
キリカ「あっ、君がそうなのかぁ!何だ、さっさと言ってくれればいいのに」
キリカ「ふーん。君が『暁美ほむら』か……」
まどか「ほむらちゃんのこと知ってるんですか?」
キリカ「ん?あぁ、まぁね。転校生なんて珍しいからさ」
キリカ「転校した時上級生下級生が覗きに来たりしなかった?」
ほむら「え、えっと……その……私に、何か……?」
キリカ「何か?」
238: 2012/12/25(火) 23:18:29.88 ID:YYsSShrR0
キリカ「あぁ。用があるんじゃないのかって?」
キリカ「いいや、別に……好奇心で見に来ただけだよ」
キリカ「やっぱり気になるじゃん。よそのクラス学年と言えど転校生なんて」
まどか「…………」
さやか「まぁわかりますけどねー」
キリカ「あ、カッコイイ指輪してるじゃん」
まどか「あっ」
ほむら「こ、これは……その……」
キリカ「オシャレだねぇ。それはマニキュア?」
さやか「ハ、ハハ。ま、まぁそんなとこっスよ」
239: 2012/12/25(火) 23:19:39.46 ID:YYsSShrR0
キリカ「いやぁ、ほむら。いかにも小動物って感じで可愛いね」
キリカ「まぁ可愛さでいったら私の知り合いも負けていないけどさ」
キリカ「そうか……眼鏡、か。眼鏡もありだね」
まどか「へ?」
キリカ「あ、いや。こっちの話」
ほむら「あ、あのー……」
キリカ「ん?あぁ、ひょっとして迷惑だった?私ィ」
ほむら「い、いやっ、そういうわけじゃ……」
キリカ「大丈夫。すぐに教室戻るさ」
キリカ「折角来たからもうちょい話したいな……ふむ」
240: 2012/12/25(火) 23:23:36.25 ID:YYsSShrR0
キリカ「……あっ、そうだ」
キリカ「ロッキー食べる?」
さやか/ほむら/まどか「……」
キリカ「いらないの?」
キリカ「じゃあ~、君」
さやか「あたし?」
キリカ「うん。試しにそっちの端を持って」
さやか「?」
ポキィッ
キリカ「あっあ~♪君、意地っ張りって言われるでしょ」
241: 2012/12/25(火) 23:25:06.19 ID:YYsSShrR0
まどか「……」
ほむら「……」
さやか「……」
さやか「な、何なんですか?先輩……」
キリカ「『ロッキー占い』だよ。占い信じる?折れた感じで占うんだ」
キリカ「君、意地っ張りじゃない?折角なら多く取ってやろうと欲張って力を込めちゃったから、こうして君の持ち分が短く折れる」
キリカ「無意識的に意地張っちまったんだ。無意識はその人のことが一番よくわかる運命の形……とある人は言う」
キリカ「意地っ張りという性格は自分の考えが正しいものだという思い込みの激しさに繋がる」
キリカ「それは時として周りの空気を乱す。君は周りの人をひっかきまわす性質だ」
キリカ「あ、別に意地っ張り=KYって言ってるんじゃあないよ。一つのものの見方だね」
242: 2012/12/25(火) 23:26:01.68 ID:YYsSShrR0
さやか「おいおいおい……、ロッキー占いだァ?」
さやか「聞いた?まどか、転校生……」
さやか「全然当たってないよなあ~あたしがKYだってさ!?」
まどか「あ、あはは……」
ほむら「…………」
キリカ「まぁ、所詮占いだよ」
キリカ「さて、私は次の時間、移動教室だから退散させてもらうよ」
キリカ「君達と話ができて楽しかったよ。それじゃ」
ほむら「は、はぁ……」
243: 2012/12/25(火) 23:27:37.24 ID:YYsSShrR0
ほむら「…………」
まどか「……な、何だったのかな?」
さやか「へ、変な先輩だったね」
さやか「でも……あんな人三年生にいたっけかなぁ?見覚えがない……」
仁美「あ、あのー……」
まどか「あ、仁美ちゃん。おかえり」
仁美「えぇ。あの、今の三年生の方は……?」
さやか「え?いや、別に……よく知らない人。転校生の顔を拝みたいとかなんとか」
仁美「そうですか……間に入り込めずにまごまごしている内に行ってしまいましたね」
さやか「ありゃ、仁美既に戻ってきてたんだ」
244: 2012/12/25(火) 23:28:17.80 ID:YYsSShrR0
ほむら「志筑さんは……あの方を知ってるんですか?」
仁美「その……委員会で先輩からその話をチラッと聞いたという程度ですが」
まどか「知ってるの?」
仁美「えぇ。その……あまり良い言い方ではありませんが……」
仁美「学校にほとんど来ていないそうで。今の方……呉さん、でしたっけ?」
さやか「不登校……ってヤツ?」
仁美「えぇ。詳しいことは私も分かりませんが……」
さやか「ふぅ~ん……」
245: 2012/12/25(火) 23:29:11.96 ID:YYsSShrR0
さやか「不登校児って割にはさっぱりした人だったね」
さやか「もっとこう、言葉のイメージ的に。」
さやか「根暗そうだとか常に人を見下してそうだとか」
さやか「むしろ手のつけられない暴れん坊だとかさ」
まどか「その言い方は失礼だよ」
ほむら「…………」
ほむら(初めて知った……あんな人がいたなんて)
ほむら(何というか、ちょっと変わった人だったなぁ)
ほむら(……あ、そうだ。縄張り争いが激化してること、二人に話しておかなくちゃ)
246: 2012/12/25(火) 23:29:56.37 ID:YYsSShrR0
――その日の夕方。
バラの木が植えられている庭。
大きな洋館。そこには二人の魔法少女が暮らしている。
ベッドの上の銀色の髪をした少女は、上半身を起こし、紅潮させた頬で、同居人を見つめている。
黒い髪をした少女は真面目な表情で、背筋を伸ばして、今日あったことを報告した。
キリカ「……織莉子の言った通りだった。予知通り」
キリカ「『いた』よ……。二年生だった」
キリカ「あ、いや、疑ってたわけじゃないからね」
織莉子「そう。それで、どうだった?」
247: 2012/12/25(火) 23:31:31.74 ID:YYsSShrR0
キリカ「どうって?強そうとか?」
織莉子「それも含めて、あなたの率直な意見が聞きたいの」
織莉子「彼女を見て、どう思った?」
キリカ「んー……意見って言われても……」
織莉子「何でもいいわよ。小学生が書く道徳教材用ビデオの感想文くらいに簡単なのでいいわ」
キリカ「うーん……そういうヤツ書くの苦手だったクチでさぁ」
キリカ「……正直に言うよ」
織莉子「えぇ。正直に言って頂戴」
キリカ「『アレ』が世界を滅ぼすとは到底思えない」
織莉子「…………」
248: 2012/12/25(火) 23:32:04.59 ID:YYsSShrR0
キリカ「ね、念押しするけど、決して織莉子の予知を疑っているわけじゃあないからね」
織莉子「わかっているわ。でも、『魔女になる』以上……人間の時点を見ても何もわからないわ」
キリカ「いや、まぁそれはそうなんだけどね……」
キリカ「それで……作戦はいつ決行する?」
織莉子「いつでも勝てる?」
キリカ「……こないだ、こっそりと暁美ほむらと巴マミの魔女狩りを偵察した話、しただろう?」
キリカ「『暁美ほむら』は時を止めることができるように見えた。ピンと来たよ。固有魔法が私を似てる」
織莉子「えぇ。聞いたわ。その話」
キリカ「だからごめん。わからない」
キリカ「あの眼鏡っ子のスピードを遅くして不意を突いたとて……時を止められたらその時点でアウトだ」
249: 2012/12/25(火) 23:32:47.59 ID:YYsSShrR0
キリカ「そして『巴マミ』……あの身のこなしはハッキリ言って段違いだね。あと髪がクルクルしてる」
織莉子「そうね。巴マミはベテランの魔法少女だと聞くわ。髪は関係ないでしょうけど」
織莉子「ベテランと言うからには、当然私達よりも経験がある」
キリカ「厳しい……かもね」
織莉子「……さて、果たして……私達で処理しきれるものか」
織莉子「いささか不安な気持ちがないこともない……」
キリカ「でもでも!織莉子がやるっていうなら、私、どんな不利な状況でも……!」
織莉子「ダメよ。確実な手を選ばないと」
織莉子「予知では……まだまだ時間の猶予はある」
織莉子「私達が直接深く干渉しなければその予定が狂うことなし」
織莉子「考える時間も態勢を整える時間も十分ある……」
250: 2012/12/25(火) 23:33:13.45 ID:YYsSShrR0
織莉子「世界を救うことに対して慎重になりすぎるということはないわ」
キリカ「それでもなるべく早くピリオドを打ちたいけれどもね」
織莉子「えぇ……そうね」
織莉子「必ず……必ず、やってみせるわ」
キリカ「うん」
織莉子「彼女を葬り、救世する。それが私の生きる意味……」
キリカ「彼女を『や』って……私達の人生が始まるんだね」
織莉子「えぇ……私と貴女の世界を護るために」
織莉子「『暁美ほむら』を『排除』するッ!」
251: 2012/12/25(火) 23:33:55.06 ID:YYsSShrR0
キリカ「とは言ったものの、未だ特に何もしてないんだけどね」
織莉子「それは言わないで……だって、何から取り組めばいいのかわからないんだもの」
織莉子「さぁ明日から本腰あげて考えようと思った矢先に熱が出ちゃったから……」
キリカ「……ま、まぁ無理しないで。猶予はあるんでしょ?」
織莉子「それはそうだけど……」
キリカ「予知では余地があるんだろう?」
織莉子「そうね」
キリカ「予知では余地が、ね」
織莉子「…………」
織莉子「少し熱がひいたみたい。ありがとう」
キリカ「……な、何かゴメン」
252: 2012/12/25(火) 23:37:02.81 ID:YYsSShrR0
織莉子「……そうねぇ」
織莉子「理由はわからないけど、最近魔法少女同士の縄張り争いが激化していると言うわ」
織莉子「だからキュゥべえの興味を反らせられる……殺人を計画していることは割れることはない」
織莉子「しかし……未契約者ならまだしも、魔法少女を頃すには経験の差が露呈するはずだわ」
織莉子「……引き入れられそうな魔法少女の一人や二人でもいればいいのだけれど」
キリカ「引き入れる……?」
織莉子「縄張りを奪おうとする魔法少女……グリーフシードをちらつかせて交渉すれば乗ってくると思うの」
キリカ「……私じゃ信用できないのかい?イジケーッ」
織莉子「そうじゃないわ。もちろんキリカが私の一番よ。念には念を、ってね」
キリカ「私が一番……えへぇ」
織莉子「何にしても風邪を治してから考えましょうね」
キリカ「うん」
253: 2012/12/25(火) 23:38:05.17 ID:YYsSShrR0
織莉子「それにしても、何で急に体を壊しちゃったのかしら……」
キリカ「さぁ……」
キリカ「こないだの空が真っピンクの結界でついた傷からばい菌が入ったのかも」
織莉子「それならあなたにも似たような傷ついたのに……免疫がないのかしら。私」
キリカ「どうだろう……」
キリカ「免疫といえば、織莉子。お腹空いてない?」
キリカ「食べないと体もっと壊すよ」
織莉子「そうね……まだ夕飯には早いと思うけど」
キリカ「よぉし!ちょっと待ってて!作ってくる!」
バタン
織莉子「あっ、ちょっ……もう。せっかちねぇ……」
254: 2012/12/25(火) 23:39:13.19 ID:YYsSShrR0
織莉子はキリカが戻ってくるまで読書を始めた。
ある一族と一人の男の六世代に渡る因縁の物語。
第一部の三章、その序盤を読み始めた時、キリカがドアを開けた。
キリカ「お待たせ!織莉子!」
織莉子「待っていたわ」
キリカ「ってことではい!織莉子!お粥作ったよ!」
織莉子「まぁ……!」
四十分程かけて、キリカは夕食を作ってきた。
タンポポ畑に軽く雪が降り注がれた景色のようだった。
織莉子「キリカにここまでしてもらうなんて……たまには体調を崩すのもいいかもしれないわね」
キリカ「えへへ」
織莉子「……綺麗な黄色。卵粥ね」
キリカ「卵……あ、うん。まぁ、卵だね」
織莉子「?」
255: 2012/12/25(火) 23:39:58.00 ID:YYsSShrR0
織莉子「……それじゃ、キリカ」
キリカ「ん?何?」
織莉子「そ、その……た、食べさせてくれる?」
キリカ「えっ……」
キリカ「そ、それって……あの、も、もしかして……"あ~ん"ってヤツ?」
織莉子「べ、別にこういう時くらい……いいでしょ?」
キリカ「織莉子……」
キリカ(可愛い……)
キリカ(おお……なんて……なんて可愛いんだろう)
キリカ(私にあ~んを求めてくれている……織莉子が……)
キリカ「織莉子……いつだって甘えてくれてもいいんだよ。むしろ甘えてよ」
256: 2012/12/25(火) 23:40:54.08 ID:YYsSShrR0
織莉子「……ありがとう。それじゃ、食べさせて?」
キリカ「うん。それでは……」
キリカ「あ、あーん」
織莉子「あー……」
パク
織莉子「ん……」
至福の時。
キリカ「どう……かな?」
織莉子「…………」
キリカ「…………」
257: 2012/12/25(火) 23:41:32.58 ID:YYsSShrR0
織莉子「……キリカ」
キリカ「はい」
織莉子「正直に答えて」
キリカ「?」
織莉子「これは何?」
キリカ「何って……?」
織莉子「答えて。これは何?」
キリカ「もしかして……マズかった?」
織莉子「何とも言ってないわ。これは、何粥?この黄色いのは何?」
キリカ「カスタードクリーム」
258: 2012/12/25(火) 23:42:38.05 ID:YYsSShrR0
織莉子「…………」
キリカ「カスタードクリームも手作りだよ?」
織莉子「キリカ。食べてみなさい」
キリカ「え、そ、それって……」
織莉子「いいから。ほら、あーん」
キリカ「か、関節キス……!」
織莉子「なっ……!」
キリカ「では……ゴクリ、い、いただいちゃいます。あ~ん」
織莉子「い、意識しないで頂戴。こっちが恥ずかしいわ……」
キリカ(流しちゃったけどさらっと織莉子が私にあーんしてくれてる。可愛い)
パクッ
キリカ「…………」
織莉子「……どう?」
259: 2012/12/25(火) 23:43:38.49 ID:YYsSShrR0
キリカ「ゥンまあぁ~い!」
キリカ「濃厚なカスタードクリームにお粥の滑らか部分がからみつく美味しさ!」
キリカ「我ながら素晴らしい創作料理だァァ~!私ってば天才!?」
織莉子「…………」
織莉子「……私、キリカとやってける自信がなくなってきたわ」
キリカ「えっ」
織莉子「冗談よ」
キリカ「美味しくなかった?」
織莉子「…………」
キリカ「……と、とにかく!織莉子が寝るまで尽きっきりで看病するからね!」
260: 2012/12/25(火) 23:44:16.72 ID:YYsSShrR0
織莉子「え、えぇ、お願いするわ」
キリカ「任せて!」
織莉子「それじゃあお砂糖を一切使ってないお粥をいただけるかしら」
キリカ「あ、やっぱマズかった……?」
織莉子「…………」
キリカ「沈黙は肯定ととるよ……?」
織莉子「……あなたの今後のために言うけど、カスタード粥は人様に出してはだめよ」
キリカ「はぁい」
その夜、キリカは織莉子の側を離れず看病をし続けたのであった。
267: 2012/12/26(水) 20:51:57.49 ID:Tw1rzQE90
#6『「レクイエム」とでも、呼びましょうか』
――翌朝
織莉子「……んん」
織莉子「朝……」
織莉子「あら、体が軽い……」
織莉子「どうやら熱はひいたようね」
「……コ!……リコー!」
織莉子「ん……何の音かしら」
「オリコー!」
織莉子「……キリカ?」
織莉子「どうしたの?朝からそんな騒いで……」
キリカ「ここ!ここだよ!」
織莉子「え?ここ?」
キリカ「あぁっ!ダメ!ダメ!動かないで!」
織莉子「え?えぇ?」
キリカ「動いたら潰れる!」
織莉子「潰れ……?え?」
268: 2012/12/26(水) 20:54:00.47 ID:Tw1rzQE90
織莉子「まさかキリカ。私が寝ている間に生卵を枕元に置いたとか……イタズラしてないでしょうね?」
キリカ「私がそんなことするわけないだろう!?動かないで!潰れるというか、潰される!」
織莉子「な、何?何なのよ?何が潰れるというの?」
キリカ「……よし、いいよ。そのままゆっくりと……ゆっくり動いてね」
キリカ「うん。織莉子。そんでもって横向いて。横。私の声のする方向に」
織莉子「キリカ。さっきから私に何をさせた……」
織莉子「……い……の?」
キリカ「ヤッホー」
織莉子「……え?」
キリカ「今の私がどういうことになってるか、わかった?」
織莉子「……ふぅ」
キリカ「どう?」
織莉子「……そうね。わかったわ。私、寝ぼけているのね。もう一眠りしようかしら」
キリカ「ゴロンッてしちゃダメ!織莉子!違う!」
269: 2012/12/26(水) 20:54:39.30 ID:Tw1rzQE90
キリカ「目の前に見えているのは現実!マジ!本当のことッ!」
織莉子「そんなことないわ……魔法でもない限りそんなことないもの……すぅ」
キリカ「オオオオオオオオオオリィィィィィィィィィィコオオオオオオォォォォォォォッ!」
キリカ「ORYYYYYYYYYYYYYYY!Cooooooooo!」
織莉子「…………」
キリカ「織莉子!私だってマジに何が起こってるのかわからないんだよ!」
キリカ「私の体が『小さくなった』ッ!」
織莉子「……ゆ、夢じゃなさそうね」
織莉子は舌の先を小臼歯で軽く噛み、痛覚があることを確認した。
その眼前――キリカの全身が映っている。キリカが枕の上に『立っ』ている。
手をパタパタ動かして存在感をアピールしている。
その大きさ、推定15センチ。
身長が約十分の一程になっている同居人がいた。
270: 2012/12/26(水) 20:55:40.38 ID:Tw1rzQE90
織莉子「……落ち着いた?」
キリカ「う、うん……」
キリカはテーブルの上にチョコンと立ち、織莉子を見上げる。
声はほとんど聞き取れないため、テレパシーを用いて会話をする。
織莉子「体が小さくなったのよね」
キリカ「うん」
織莉子「それで、私に潰されると危険を感じて起こした」
キリカ「うんうん」
織莉子「つまり、大きい……もとい、元のサイズの時は私のベッドの中に潜り込んでいたってこと?」
キリカ「……はい」
キリカ「エOチなことはしてないよ」
271: 2012/12/26(水) 20:56:39.47 ID:Tw1rzQE90
織莉子「…………」
織莉子「……まぁ、キリカだからいいけれども」
キリカ「温かくて柔らかくて素晴らしい匂いでした。はい」
キリカ「スー、スー、って寝息が心を安らげさせてくれたよ。うん」
織莉子「聞いてないわ」
織莉子「……それにしても」
キリカ「?」
織莉子「ふむ……」
キリカ「お、織莉子……?」
織莉子「……可愛い」
272: 2012/12/26(水) 20:57:19.68 ID:Tw1rzQE90
キリカ「なっ……!?」
織莉子「すごく可愛い。小さいキリカ可愛いわ」
織莉子「な、撫でてもいいかしら。人差し指で頭を撫でてみてもいいかしらっ」
キリカ「う、うぅ……」
キリカ(織莉子が私をなでなでしたいと言ってくれている……!)
キリカ(織莉子……可愛いよ。うずうずを抑えようとしてるけど全く抑え切れてない君の方が可愛いよ)
キリカ(ああ……嬉しい!だけどっ。嬉しいけどっ。いかんせん恥ずかしいっ!)
キリカ(本来なら「そんなこと言ってる場合じゃあない。私の体を元に戻す方法を考えてよ」とか言う場面だけど……)
織莉子「いけないかしら……?」
キリカ「……ど、どうぞ」
キリカ(織莉子にそんな顔をされて、なでなでされずにはいられない!)
273: 2012/12/26(水) 20:58:44.71 ID:Tw1rzQE90
織莉子「ありがとう。キリカ!」
織莉子「それでは、早速……」
ナデナデ
キリカ「は、はぅ……」
織莉子「どう?指重くない?」
キリカ「大丈夫だよ……優しいね……君は……」
キリカ(は、恥ずかしい……。だが、至福である……ッ!)
キリカ「も、もうちょっと重みをかけてくれていいよ」
織莉子「ありがとう。……これくらい?」
キリカ「……んっ、これ、いい」
274: 2012/12/26(水) 21:00:06.12 ID:Tw1rzQE90
織莉子「まるで小動物……癒されるわ……!」
織莉子「ねぇキリカ。そのまま私の中指にしがみついてみて」
キリカ「こ、こう……?」
ギュッ
織莉子「…………」
キリカ「…………」
織莉子「いい……!」
織莉子「その表情グーよ。キリカ。素晴らしいわ。顔を真っ赤にして中指にしがみつくその様。いいわよ」
織莉子「まるで初恋の人と手を繋ぐ想像をして恥ずかしくなっている少女が枕を抱きしめて自分の気持ちを自分で誤魔化しているかのよう。素晴らしいわ!」
織莉子「胸がキュンと揺れるこの感覚。これが世に言う『萌え』というものなのね……!」
キリカ「お、織莉子にそんな一面があるとは思わなかったな……」
275: 2012/12/26(水) 21:01:31.89 ID:Tw1rzQE90
織莉子「幻滅して嫌いになった?」
キリカ「……大好き」
織莉子「ふふ、子供の頃……金魚とか猫とか飼ってたことあるけどあなたが一番きゃワイイわ」
キリカ「金魚と同列に語られた!?」
織莉子「そんなことはないわ。例え話よ。た・と・え・よ」
織莉子「写真。撮らずにはいられないわ」
織莉子「そういえば子どもの頃に遊んでいたお人形まだあったかしら……」
織莉子「キリカにあのフリフリエプロンドレスを着てもらわないと今夜は安眠できそうにないわ」
織莉子「あぁ、忙しくなるわ」
キリカ「…………」
織莉子「ご、ごめんなさい。悪ノリしてしまったわ」
276: 2012/12/26(水) 21:02:33.11 ID:Tw1rzQE90
織莉子「コホン……それで?これは何という魔法なの?」
キリカ「魔法?いやいや、違うんだよ織莉子」
織莉子「?」
キリカ「私もよくわからない内に小さくなっていたんだよ……」
織莉子「え?」
キリカ「もう一度言うかい?『いつの間にか小さくなっ』てた」
織莉子「てっきり私は、新しい技を開発したはいいけど戻れなくなってしまったのかと思ったのだけれど……」
キリカ「ねぇ、私はどうすればいいかな?」
織莉子「当人がわからないと言うなら私がわかるわけなじゃない……」
織莉子「……もしかしたら魔女の仕業かもしれないわ。何か心当たりは?」
キリカ「ない。起きたら小さくなってた」
277: 2012/12/26(水) 21:03:23.56 ID:Tw1rzQE90
キリカ「足の咬み傷の他に、腕に何か『切り傷』もできてるし……ほら、この腕」
織莉子「ほらと言われても小さくて見えないわ……」
織莉子「まさか、寝ている内に魔女の呪いが……?」
キリカ「どうしよう。こんな体じゃキスしてなんて言えないよ……」
織莉子「別に小さくなったからキスできないなんてことはないわよ」
キリカ「してもいい?」
織莉子「考えておくわ」
織莉子「しかし参ったわね。本当に戻れないと言うのなら……写真撮ってる場合じゃないわね」
キリカ「どうしよう織莉子」
織莉子「キリカ。服を脱ぎなさい」
キリカ「え?」
織莉子「魔女の口づけでもついてるんじゃないかしら。ほら、脱いで」
278: 2012/12/26(水) 21:04:29.98 ID:Tw1rzQE90
キリカ「えっ、ちょ、ま、待ってよ……!」
織莉子「腕に切り傷があると言ったわね。もしかしたら口づけでなくても他にそういう傷がついてるのかも……」
キリカ「ぬ、脱ぐなんて……それも織莉子の前で……恥ずかしいよ……」
織莉子「別にあなたの裸が見たいってわけじゃないのよ。ほら、早く」
クイッ
キリカ「わっ、やっ、やめてっ!人形みたいな感覚で脱がせようとしないで!じ、自分で!自分で脱げるから!」
織莉子「あなたが小さいままだと、救世が……いずれにしても呪いは解かなければならないわ」
キリカ「あン!織莉子!もっと優しく。それはダメ!ダメェん!」
織莉子「ちょっと!変な声出さないで!」
キリカ「ああン!優しくして、優しく!服を脱がさないでッ!感じる!いやぁん、ダメ!」
織莉子「何を感じると言うのよ!」
キリカ「ひゃ、ひゃぁッ!」
スパンッ
279: 2012/12/26(水) 21:05:44.90 ID:Tw1rzQE90
織莉子「……え?」
キリカ「……ん?」
織莉子「…………」
ボタリ、ボタリ
キリカ「な、何の音……?」
織莉子「何が……起こったの……?」
キリカ「え……」
織莉子「指が……」
キリカ「あ……?」
キリカ「ど、どう……して……」
織莉子「一体何が……」
キリカ「織莉子の……織莉子の指が……」
キリカ「『無い』……ッ!?」
280: 2012/12/26(水) 21:07:39.95 ID:Tw1rzQE90
キリカの服をつまんでいた、織莉子の左手人差し指、親指の一部。
それらが無くなった。
『切れ』たのではなく『無くなっ』た。
その跡から鮮血が流れ出る。織莉子は指のあった跡を押さえる。
キリカは織莉子の骨を見てしまった。血でテーブルが汚れてしまった。
織莉子「……!」
キリカ「ま、まさか……私がやったのか!?」
キリカ「わ……私は何も……何もしていない!どうして……!」
キリカ「無意識の内に……斬っちゃったのか!?」
織莉子「何で……指が……」
キリカ「お、織莉子!わ、私は本当に何もしていないんだ!私が織莉子にそんなことするはずがない!」
織莉子「えぇ……わかって……いるわ……」
281: 2012/12/26(水) 21:08:29.60 ID:Tw1rzQE90
織莉子(キリカの爪で斬られたというのであれば……切断された指があるはずだけど……)
織莉子(しかし……それらがない)
織莉子(しかも、本当に断たれたのかはわからないけれど……この断面)
織莉子(断ったという感じじゃあない)
織莉子(そもそも服を脱がせようと少し悪ノリをしてしまったとは言え……)
織莉子(あのキリカが私を攻撃するなんてあり得ない)
織莉子(それは私がよくわかっている)
織莉子(とにかくこの傷は魔法で治療するとして……何が起こったのか、頭の中を整理したい)
織莉子(キリカが小さくなり……私の指が消えた……)
織莉子(その二つに関連性も共通点も見出されない)
282: 2012/12/26(水) 21:10:28.27 ID:Tw1rzQE90
織莉子(と、いうことはこの二つはそれぞれ別の……)
織莉子(別の……何だというの?)
織莉子(魔女か使い魔の仕業……?)
織莉子(それは考えにくい……)
織莉子(キリカから魔女・使い魔の結界に入ったという報告を受けていないし、私も感じていない)
織莉子(あったとしてもついこの間の……空がピンク色な使い魔の結界くらいか……)
織莉子(でも、もしそれが原因ならもっと早くに影響があるはずだ)
織莉子(キリカの身に一体、何が……!)
織莉子(そして、私の指は一体どうし――)
283: 2012/12/26(水) 21:12:48.22 ID:Tw1rzQE90
織莉子「――ハッ!」
織莉子「キ、キリカッ!」
キリカ「えッ?!何ッ?!」
織莉子「その『頭に被っているもの』は何ッ!?」
キリカ「へ?」
織莉子「それは何なのかと聞いているのよッ!」
キリカ「え!?え!?私は何も被ってないよ!?」
織莉子「き、気付いていない!?ちょっと待って……!」
織莉子「ほら、これ!鏡……!」
キリカ「まさかコンパクトミラーを姿見として使う日が来ようとは……」
キリカ「うわァッ!?な、何だこれェ!」
284: 2012/12/26(水) 21:14:48.09 ID:Tw1rzQE90
キリカの頭に『フードのようなもの』が被さっていた。
角の生えた頭蓋骨の上顎の上に、黒い布が被さっているような何か。
その眼窩の位置には、黄玉のような眼球らしき物が埋め込まれている。
キリカ「……な、何だ?この……なんて言うか……」
キリカ「頭蓋骨を頭に乗せてその上から頭巾を覆ったようなヤツは……」
キリカ「取りあえずこんな物被って人前に出れな……」
ガォンッ!
キリカ「うわおゥッ!?」
織莉子「なッ!?」
キリカが姿見に近づくと、それは『削れ』た。
鏡に、コルクの栓を抜いた後のような、くっきりとした円形の穴をあけた。
285: 2012/12/26(水) 21:16:18.97 ID:Tw1rzQE90
キリカ「ああ……!な、何かわからないけどゴメン!高かったでしょこれ!?」
織莉子「鏡のことより自分の心配を……」
キリカ「むッ!?」
織莉子「ん?」
キリカ「何だ『おまえ』はッ!いつの間にいたッ!」
織莉子「ちょ!?な、何!?」
キリカ「織莉子!危ない!後ろだ!」
織莉子「後ろ?」
織莉子「――なッ!?」
織莉子「こ、これは……!」
キリカ「織莉子から離れろー!」
286: 2012/12/26(水) 21:17:43.65 ID:Tw1rzQE90
織莉子の背後に、人型の「何か」がいた。
右人差し指に鋭い爪が生えている、ロボット風デザイン。
よく見ると背後の壁が透けて見える、半透明の像。
左手の親指と人差し指と思われるパーツが欠損している。
しかし、織莉子の指の治療を終えると同時に、欠損していたパーツが元に戻っていった。
織莉子「…………」
キリカ「織莉子!離れてッ!小さい私では対処ができないッ!」
織莉子「あ、なたは……」
キリカ「織莉子!離れろと言うんだ!早く!何かヤバイ!こいつッ!」
織莉子「…………」
キリカ「何故離れないッ!?お、織莉子ォォ――――ッ!」
287: 2012/12/26(水) 21:18:30.12 ID:Tw1rzQE90
キリカは必氏に叫ぶ、
しかし織莉子は黙って背後の『何か』を見つめたまま動かない。
「まさか、体を麻痺させているのか!結界を持たない使い魔が存在するのか!」
とキリカは思った。
織莉子「…………」
キリカ「――あれ?」
キリカ「……え?」
キリカ「なッ?!」
キリカ「お、織莉……子……?」
キリカ「わ、私……私の体が……」
288: 2012/12/26(水) 21:19:56.09 ID:Tw1rzQE90
キリカは自分の目を疑った。
下から見上げていた織莉子の顔が、今は視界の下にある。
小さくなった次は大きくなったのか、とキリカは思った。
しかし、自身の腕の太さと織莉子の首の細さ。その比率は正しい。
デッサンが狂ったようなことはない。
キリカ「も、元の大きさに戻っている……!?」
織莉子「キリカの大きさを『元に戻し』た……」
キリカ「え?え?ええ?」
織莉子「キリカ。落ち着いて聞いて」
キリカ「わ、私にもわかるように説明してよ!」
289: 2012/12/26(水) 21:22:03.59 ID:Tw1rzQE90
織莉子「えぇ。そのつもりよ」
織莉子「いい?これは敵ではない」
キリカ「……もし敵なら既に攻撃してるはずだもんね」
織莉子「あとテーブルから降りなさい」
キリカ「あ、はい」
――
――――
織莉子「――と、いうことだと、私は推測する」
キリカ「えっと……つまり……その……」
キリカ「どゆこと?」
織莉子「そうね……もうちょっと噛み砕いて言うと……」
290: 2012/12/26(水) 21:23:33.18 ID:Tw1rzQE90
織莉子「私達は何やら不思議な能力に目覚めた。恐らく、今朝か昨夜に。魔法とは別物」
織莉子「さっきの騒動、私の指が無くなったのも、あなたが小さくなったのも、それが原因」
織莉子「この像は超能力を絵でイメージ化したようなもの……」
織莉子「世間一般的に超能力はビルを崩したり、光や電気のようなものでパワーの強さを表現するでしょう?
織莉子「今ので言えば、破壊と縮小とでも言おうかしら」
織莉子「これは……それ自体を表現した像」
織莉子「私の能力はこの背中にいる人(人型というだけで人には見えないけど――)が爪で傷つけたものを『小さく』する」
キリカ「私の能力は……このフードっぽいヤツのせいだね」
キリカ「触れたものを消滅というか粉微塵にするにするというか、そんなことしちゃう空間を創造する」
キリカ「『暗黒空間』とでも呼ぼうかな」
織莉子「……まぁ、好きにお呼びなさいな」
291: 2012/12/26(水) 21:25:10.70 ID:Tw1rzQE90
織莉子「考えられる要因は一つ……」
織莉子「いつぞやの結界でついた咬み傷でしょうね。タイミング的にそれで私は高熱を出したわけだし」
キリカ「それ以外にないね」
織莉子「キリカを裸にして確かめたから魔女の口づけでは決してない」
キリカ「お、思い出させないでよ……」
キリカ「でも私は熱出してないんだよね」
織莉子「そればっかりは『個人差がある』としか言いようがないわね」
織莉子「この能力は魔女の呪いではないのかしら……?」
キリカ「魔女の口づけならぬ咬み傷ってとこかな?」
織莉子「かな?って私に聞かれても……私だって理解が超えているもの」
織莉子「まず言えるのは――」
292: 2012/12/26(水) 21:26:01.14 ID:Tw1rzQE90
織莉子はこの能力に関しての意見をまとめた。
①この能力は、魔女の呪いの類と考えられる
②この能力は自身の意志に呼応して操ることができる
③害はない……多分、きっと
④魔法少女に変身するような感覚で、能力のON/OFFを切り替え、体内に「収める」ことができる
⑤肉体が傷つくと能力の像も傷つく(人型なら部位相応。そうでない場合どうなるかは不明)
⑥おそらくその逆も然り
織莉子「――どうかしら?何か意見は」
キリカ「うん。私からは特に異論なし。そんなとこだろうね。……でも収めるって?」
織莉子「だってそうとしか表現しようがないもの」
キリカ「ふーん。魔女の呪いか……じゃあ魔女を倒さないとマズイね」
293: 2012/12/26(水) 21:27:52.25 ID:Tw1rzQE90
織莉子「……そうかしら?」
キリカ「え?マジで言ってるの?」
織莉子「使いこなせば、きっと役に立つわ」
キリカ「そうかなぁ」
織莉子「……何となくだけど、もう一人の自分って感じがしない?」
キリカ「もう一人の自分……?」
織莉子「そう。あのときの魔女がトリガーだとすればほんの数日前になるけれど、まるでずっと前からいたような」
キリカ「わ、私は嫌だよ!」
キリカ「眼帯付けて髑髏被って暗黒空間を操り爪を武器とする黒い魔法少女……」
キリカ「挙げ句の果てに必殺技の名前がヴァンパイアファングゥ~?中二病もいいとこだよ!ファングって牙じゃん!」
織莉子「……それは、『それ』のせいなの?」
294: 2012/12/26(水) 21:29:01.69 ID:Tw1rzQE90
織莉子「まぁそのあたりは己が精神と『共鳴』したとかそういう理屈で」
キリカ「うぅ~ん……」
キリカ「何にしても、何て言えばいいんだろうね?これ」
キリカ「サイコキネシスとかテレポートとか、超能力には名前があるだろう?」
織莉子「それもそうね。……ちょっと『予知』してみるわ」
キリカ「え?何で?」
織莉子「いつかこの能力が理解できることを前提として、予習するのよ」
織莉子「例えるなら推理小説を読む際に終盤の方を先に読んで犯人を確認してから読むかのような」
キリカ「犯人が先に分かっている推理物って……刑事コロンボみたいな?」
織莉子「それとこれは違うわ」
295: 2012/12/26(水) 21:31:32.36 ID:Tw1rzQE90
――
――――
未曾有のスーパーセルにより見滝原のほぼ全域が壊滅した。
災害により住民のほとんどが犠牲となった。
最も被害の大きかった地域では、生存者はたった一名のみ。
瓦礫の山の上で一人俯き跪く、眼鏡をかけた三つ編みの少女。
傍らには一つの遺体が置かれている。顔はわからない。
少女は視線を地面から空に移し、大きく、太く、不格好で、逞しい絶叫をあげた。
少女の魂はドス黒い物に変化する。
そして、背中から黒い光が放たれた。
――――
未曾有のスーパーセルにより見滝原のほぼ全域が壊滅した。
災害により住民のほとんどが犠牲となった。
最も被害の大きかった地域では、生存者はたった一名のみ。
瓦礫の山の上で一人俯き跪く、眼鏡をかけた三つ編みの少女。
傍らには一つの遺体が置かれている。顔はわからない。
少女は視線を地面から空に移し、大きく、太く、不格好で、逞しい絶叫をあげた。
少女の魂はドス黒い物に変化する。
そして、背中から黒い光が放たれた。
296: 2012/12/26(水) 21:33:48.45 ID:Tw1rzQE90
少女の姿を見つけ走り寄ってきた自衛隊員が、ネジの切れた玩具のように突如倒れる。
瓦礫の臭いを嗅ぎ廻っていたシェパードは突然眠りだし、蛾はポトリと地面に落ちる。
似たような光景が、一つの結界を中心に広がっていく。
「二日でこの国全体。一週間でアジア一帯。十日で世界」
「全ての生命の魂が消滅してしまうだろう」
「彼女の素質ではそんな芸当はできない上に、エネルギー回収率が想定値よりも低い……」
「まさか、僕には見えないが『――――』がエネルギーを吸い取って変化したとでも言うのだろうか」
「全く……困ったものだね。『――――』というものは……」
白くて丸い尻尾はそう呟き、瓦礫の隙間に消えた。
――織莉子は、崩壊する世界の前奏曲を見た。
この未来を訪れなくすることが、織莉子の生きる意味。
297: 2012/12/26(水) 21:35:10.21 ID:Tw1rzQE90
――――
――
織莉子「…………」
キリカ「……どう?」
織莉子「予知が……」
キリカ「うん?」
織莉子「予知が変わった……」
キリカ「え?」
織莉子「キリカ……私の予知、覚えてるわよね?」
キリカ「うん。『暁美ほむら』って転校生が『魔女』になって『世界』を滅ぼす」
織莉子「そう……その通りよ。今、私が見たのもそうなっていた。でも……」
織莉子「『一部』違っていた」
キリカ「うん……?ごめん。何を言ってるのか理解できない」
――
織莉子「…………」
キリカ「……どう?」
織莉子「予知が……」
キリカ「うん?」
織莉子「予知が変わった……」
キリカ「え?」
織莉子「キリカ……私の予知、覚えてるわよね?」
キリカ「うん。『暁美ほむら』って転校生が『魔女』になって『世界』を滅ぼす」
織莉子「そう……その通りよ。今、私が見たのもそうなっていた。でも……」
織莉子「『一部』違っていた」
キリカ「うん……?ごめん。何を言ってるのか理解できない」
298: 2012/12/26(水) 21:38:34.75 ID:Tw1rzQE90
織莉子「……疑問に対する答えから言うわ」
織莉子「私達の持っている能力……小さくするのと粉微塵にするのは『スタンド』という名前で、超能力のようなものらしいわ」
キリカ「スタンド」
織莉子「そう。魔法とは違う……精神、あるいは生命のエネルギー。パワーある像(ヴィジョン)……」
織莉子「このスタンドは、スタンドを扱える人間にしか見えないそうよ」
キリカ「しろまるじゃあるまいし……」
織莉子「とにかく『そう』なのよ。魔女の呪いと断定するに足りる物は見えなかったけど」
キリカ「で、そのスタンドと世界を滅ぼす魔女とどう関係するの?」
織莉子「えぇ。話を戻すわ」
織莉子「魔女になった暁美ほむらが世界を滅ぼすという予知……それは今見ても正しい」
織莉子「しかし、前見た時は私はスタンドは見えなかった。その時に視認できない物は予知の映像でも見えないようね」
キリカ「…………それって」
299: 2012/12/26(水) 21:39:38.68 ID:Tw1rzQE90
織莉子「そうよ……私も、まさかとは思った……」
織莉子「暁美ほむらの背後から、私の『これ』と同じように……」
織莉子「黒いプラスチックのような翼だか触手だか、そんな感じの物が浮き出てきたわ」
織莉子「魔女になるにつれて、それは太くなって長くなって本数が増えていった」
織莉子「つまり!魔女になった『暁美ほむらのスタンドが世界を滅ぼす』というのが正確な答えだったのよッ!」
キリカ「な、何だってー!」
織莉子「もっと正確に言えば、『暁美ほむらのスタンド』が魔女になる過程で『世界を滅ぼす存在となる』ということッ!」
キリカ「……パワーアップするってこと?」
織莉子「えぇ……全ての生命を滅ぼしていった」
織莉子「まるで魂を天国に導いていくような……進化と言うより、変化したスタンド」
300: 2012/12/26(水) 21:41:16.48 ID:Tw1rzQE90
織莉子「世界への鎮魂歌……『レクイエム』とでも、呼びましょうか」
キリカ「暁美ほむらの……スタンドがパワーアップして……『レクイエム』になる」
キリカ「暁美ほむらのレクイエムが世界を滅ぼす……!」
織莉子「私にはそう見えた。そして、そう理解した」
織莉子「どちらにしても暁美ほむらの魔女化だけは阻止しなければならない。それはレクイエムを阻止することになる」
織莉子「……レクイエムの発動条件がわからない以上、それを止めるのは難しいものがある」
織莉子「ましてや現段階では私達と同じように、スタンドが使えるかもわからない」
織莉子「仮にまだスタンドに目覚めていないとして……あの使い魔を殲滅するにも時間が経ちすぎて居場所がわからない」
織莉子「私達の時は使い魔が単体で現れた、使い魔の結界だった……既に同じような使い魔が分散されていると考えてもいい」
織莉子「どちらにしても暁美ほむらを抹殺(エリミネート)する以外に道はない」
キリカ「以外も何も、最初からそうするつもりだったけどね」
織莉子「まぁそれはそうだけれども……」
301: 2012/12/26(水) 21:42:12.31 ID:Tw1rzQE90
キリカ「よく考えたらこれってタイムパラドックスってヤツじゃない?」
織莉子「細かいことは気にしないのよ」
織莉子「そんなことより、名前を考えておいてね。キリカ」
キリカ「名前?」
織莉子「そう。いつまでも超能力だスタンドだと呼ぶわけにもいかないわ」
キリカ「この髑髏頭巾に名前をつけろって?」
織莉子「そういうこと言わないの。これから付き合い長いんだろうから」
キリカ「うへぇ……」
キリカ「うーん……」
302: 2012/12/26(水) 21:44:11.80 ID:Tw1rzQE90
キリカ「……ねぇ、織莉子。今日のおやつは?」
織莉子「え?どうしたの?いきなり」
キリカ「おやつはなぁに?」
織莉子「……アイスクリームがあるわ。バニラ味」
織莉子「と言うよりあなたが買ってきたんじゃないの」
キリカ「あれ?そうだっけ?……あぁ、そうだった。パニクってる内にうっかりしちゃってたよ」
織莉子「あなたがつまみ食いしてない限り、そのアイスがおやつになるわね」
キリカ「してないよ……」
キリカ「うん、じゃあこの能力はアイス、いや……『クリーム』って呼ぶよ」
織莉子「『クリーム』……そんな決め方でいいの?」
キリカ「いいんだって」
キリカ「何も子どもや会社の名前を決めるわけじゃないんだ」
303: 2012/12/26(水) 21:46:40.56 ID:Tw1rzQE90
キリカ「こういうネーミングはパパッと決めるのが丁度いい」
キリカ「使ってるうちに定着していくものさ」
織莉子「そういうものかしら?」
キリカ「いいのいいの。見た目がホラーだからせめて名前だけでも可愛くってね」
織莉子「そう」
織莉子「じゃあ、私のスタンドも簡単に決めてしまおうかしら。ふむ……」
織莉子「爪で傷つけるだけで小さくしてしまうから……」
キリカ「スモールライトとかガリバートンネルとか」
織莉子「んー……」
キリカ「まさか織莉子に無視される日が来ようとは」
織莉子「リトル(小さい)……フィート(妙技)」
織莉子「『リトル・フィート』と呼ぶことにするわ」
304: 2012/12/26(水) 21:50:26.49 ID:Tw1rzQE90
キリカ「『リトル・フィート』……織莉子っぽいようなぽくないような」
織莉子「使っているうちに定着していくものでしょ?」
キリカ「ん。それもそうだね」
織莉子「それにしても……」
キリカ「?」
織莉子「私の能力が爪だなんて……面白い偶然じゃない?キリカ」
キリカ「…………うーん」
織莉子「どうしたの?」
キリカ「……ごめん。クリームと織莉子の共通点が全く思いつかないや」
織莉子「キリカ……あなた変な所に拘るのね」
305: 2012/12/26(水) 21:51:58.99 ID:Tw1rzQE90
キリカ「あ、そうだ。織莉子」
織莉子「何?」
キリカ「もう一度私をリトル・フィートしてよ」
織莉子「え?どうして?」
キリカ「そしてアイスを持ってきて!」
織莉子「……あなた、まさか」
キリカ「ねぇ頼むよ!小人になって巨大スウィ~ツを食べるってのが小さい頃の夢だったんだよ!」
キリカ「プリンに抱きつきたいとかジュースの中で泳ぎたいとか思ったもんだよ」
織莉子「そんな腹ぺこキャラみたいなことを……アイスを食べ過ぎると体冷やしてお腹壊すわよ」
キリカ「大丈夫だって。いざって時は魔法という便利なものがあるんだから」
織莉子「そういうのに魔法は……と言いたいところだけど私も昨日の高熱の件があるから強く言えない……」
306: 2012/12/26(水) 21:52:36.38 ID:Tw1rzQE90
キリカ「お願いだ織莉子!巨大おやつは全甘党の夢なんだ!」
織莉子「聞いたことないけど……仕方ないわね。体冷やし過ぎちゃダメよ」
キリカ「わぁい!織莉子大好き!」
織莉子「そうそう。キリカ。今度の休日は予定を空けておいてね」
キリカ「もちろん織莉子以外の誘いは全部断るさ」
織莉子「『風見野』に行くわよ」
キリカ「……風見野?」
織莉子「そこに、会うべき人がいるわ」
キリカ「……そっか」
307: 2012/12/26(水) 21:55:33.71 ID:Tw1rzQE90
今回はここまでです。
スタンドに食べられるという表現が難しい。……という理由でクリームにはフード状になってもらいました。
ダサいと言われてるけどあくまで演出上の感性です。あのデザイン個人的に割と好きです。
ガォンガォン
あと>>258の「間接キス」を「関節キス」と変換ミスしました。こういう間違い恥ずかしい。
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その3】
スタンドに食べられるという表現が難しい。……という理由でクリームにはフード状になってもらいました。
ダサいと言われてるけどあくまで演出上の感性です。あのデザイン個人的に割と好きです。
ガォンガォン
あと>>258の「間接キス」を「関節キス」と変換ミスしました。こういう間違い恥ずかしい。
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その3】
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