509: 2012/12/28(金) 19:49:06.21 ID:w6fA4+mN0
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その1】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その2】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その3】
#10『大丈夫、私達が支えるから』
――翌日
さやかは、病院に来た。
自分の願いの結果を確かめるために。
さやか「喧嘩別れは気まずいけど……」
さやか「大丈夫……落ち着け」
さやか「恭介だって、そういうナーバスな時もあるさ」
さやか「今は、腕だって奇跡的に治って落ち着いてるはず……」
さやか「…………」
さやか「ほむら……恭介と普通に接することができなくなるみたいなこと言ってたけど……」
さやか「意識してみれば……そうかもしれない。何か、恩着せがましい気分というか……」
さやか「……何を言ってるんだろうね。あたしは……実際、恩人なんだから、それがなんだって言うのさ」
さやか「……今日は……顔を見るだけだよ」
510: 2012/12/28(金) 19:49:45.94 ID:w6fA4+mN0
さやか「可愛い女の子だと思った?」
さやか「残念!さやかちゃんでした!」
さやか「やぁ、恭介。元気?」
恭介「あ……さやか。どうしたんだい?」
さやか「ど、どうしたも何も……う、腕……」
恭介「あぁ……うん。実は、そうなんだ」
恭介「腕が治ったんだ」
さやか「も、もう。どうして真っ先に連絡くれなかったのさっ」
恭介「あ、いや……ごめん。なんだか、実感が湧かなくて」
さやか(まぁ、無理もないよね)
511: 2012/12/28(金) 19:54:51.78 ID:w6fA4+mN0
恭介「それに……何というか、気まずくてね」
恭介「さやか……その、ゴメン」
さやか「え?」
恭介「こないだ……さやかにきついこと言って追い出しただろう……?」
恭介「反省してる……」
さやか「あ、あぁ……うん。そのことね……」
さやか「気にしないで!あたしも無神経だったわけだし……」
さやか「いやぁ、本当に奇跡ってあるもんだね!」
恭介「はは……そうだね。絶望的だって言われたのに……」
さやか「ははは、よかったよかった」
恭介「もしかして、なんだけどさ……」
さやか「へ?」
514: 2012/12/28(金) 19:56:28.85 ID:w6fA4+mN0
恭介「こういうことを言うのも、憚れるというか……何だけど」
さやか「…………」
恭介「もしかして……さやか」
さやか「う、うん……?」
恭介「僕の腕が治ったのって……」
さやか「な、何……?」
恭介「僕の『精神が成長』したからそれに呼応したのかも」
さやか「…………」
さやか「……は?」
恭介「そりゃそう反応するよね……自分で精神が成長しただなんて……」
恭介「ねぇ、さやか。ほら『これ』……」
515: 2012/12/28(金) 19:57:52.00 ID:w6fA4+mN0
恭介は動けるようになった腕を、さやかの方へ差し出した。
手の平を見せている。
さやか「これ、って……?」
恭介「……『見える』のかい?」
恭介「見えていないようだね。さやか。手の上に『いる』んだけど」
さやか「…………」
恭介「僕はちょっとした『超能力』のようなものを持っているんだ」
さやか「え……!?」
恭介「いきなり何を言っているんだって思うだろうけど……これは、フィクションの話とかじゃなく、本当なんだ」
恭介「ほら、さやか、これなら見えるかい?」
さやか「へ……!?う、嘘……?!」
516: 2012/12/28(金) 19:58:28.43 ID:w6fA4+mN0
さやかは自分の目を疑った。
ベッド横の机の上に置かれているCDが『浮いて滑って』いる。
その下には何もないが、CDが何かに運ばれているかのようだった。
そしてCDは恭介の体を伝い、腕を通り、手の平に収まった。
CDケースにはセロハンテープが張られている。
恭介「この前は、さやか。折角買ってきてくれたCDを投げつけてごめんよ」
恭介「ケースはこの通り割れちゃったけど、中身は無事だったんだ。いい曲だったよ」
さやか「……スタンドッ!?」
恭介「スタンド?まさか、『これ』を知っているのかい?」
517: 2012/12/28(金) 20:00:43.21 ID:w6fA4+mN0
さやか「あ、う、うん……」
恭介「でも見えていないということは、知ってるだけ、かな」
恭介「ねぇさやか。『悪魔の手の平』という噂を知っているかい?」
恭介「悪魔の手の平……気が付くと、空がピンク色の不思議な住宅地に迷い込んでしまっている……」
恭介「そこではマネキンに襲われそうになるらしいが、無事帰ることができると……不思議な力に目覚めるらしい」
恭介「その力に目覚めると、血縁者も同じような力に目覚めることがあるらしいんだ」
恭介「実は……後からわかったことなんだが、父さんがその中に入ったらしいんだ」
恭介「父さんはその時疲れ気味で……少しぼうっとしていたらしくあまり記憶にないそうだが……」
恭介「父さんはまだその噂と能力を持っていることは知らないが……僕は、目覚めてしまったようだ」
さやか「……スタンドに」
恭介「そう……」
518: 2012/12/28(金) 20:01:22.22 ID:w6fA4+mN0
恭介「気が付けば僕も、スタンド?それを使えるようになっていた」
恭介「僕は個人的に『ハーヴェスト』と呼んでいるよ」
恭介「小さい虫みたいなのがたくさんいて一つなんだ。一匹一匹の力は弱い。何に使えばいいのか今のところ不明」
さやか「…………」
恭介「スタンド。それは……精神と深い繋がりがあるらしくてね」
恭介「それを使いこなせるようになって、僕の精神は成長したんだと思う」
恭介「スタンドが傷つけば使い手も傷がつく。使い手のダメージはスタンドにも反映される」
恭介「だから、スタンドが成長して……腕の断裂した筋がそれに応じて回復した」
恭介「都合の良い考え方だけど……それ意外に考えられない。奇跡でもない限り……」
さやか「…………じゃあ、つ、つまり」
さやか「……恭介は……こう思ってるの?」
519: 2012/12/28(金) 20:02:07.09 ID:w6fA4+mN0
さやか「腕が治ったのは、自分のスタンドのおかげって」
恭介「確証はないよ。ただ、本当にそれしか心当たりがないんだ」
さやか「そ、そんな……」
さやか「納得いかない……!」
恭介「はは、まぁ、そりゃそうだよね……」
さやか(……あれ?)
さやか(あたしは今……何で、納得いかないなんて言ったんだ?)
さやか(あたしの納得できないと恭介の解釈で差があったけど……)
さやか(自分で言って……何を……?)
さやか「…………」
さやか「う、腕……」
恭介「うん?」
520: 2012/12/28(金) 20:03:03.17 ID:w6fA4+mN0
さやか「腕が治って……よかった、ね。うん。何だとしてもさ……ハハ」
恭介「……?」
恭介「まぁ、確かに。日常生活に支障はあっただろうけど……」
さやか「あった『だろう』?」
恭介「失って初めて気付く大切さもあるけど、取り戻して気付く『さも当然』もある」
恭介「今にして思えば『ハーヴェスト』がいれば特に困らなかったかな」
恭介「こうやってハーヴェストがいれば何でもできそうな気がするし」
恭介「もうハーヴェストで文字が書けるようにも箸を持つこともできるようになったんだ」
恭介「……なんて、ちょっと思っちゃったりしてる僕がいるよ」
さやか「……な、何よ、それ……」
恭介「あ……折角お見舞いにきてくれていたさやかに今の表現は過剰が過ぎたね……ごめん」
恭介「さやかには本当に迷惑をかけたよね。CDのプレゼントを拒絶したり、面会を拒否したり……」
恭介「本当にごめん。そして、今までありがとう。さやか」
521: 2012/12/28(金) 20:04:37.16 ID:w6fA4+mN0
さやか「…………」
さやか「ば、バイオリン……」
恭介「ん?」
さやか「そう!バイオリン!あたしは、恭介のバイオリンがまた聴きたくてさぁ!」
恭介「バイオリンを?」
さやか「う、うん。子どもの頃に聴いたコンクール。あの時の音色が忘れられなくてっ!う、嬉しいなぁ~アハハ」
恭介「うーん……」
さやか「……ど、どうしたの?バイオリン」
恭介「今は、バイオリンって気分じゃないかな」
さやか「……は?」
恭介「あ、いや。バイオリンも大事だよ」
522: 2012/12/28(金) 20:06:17.28 ID:w6fA4+mN0
恭介「僕の生き甲斐だからね。ただ今はスタンドの訓練をしたいというか……脚のリハビリもあるからね」
恭介「知ってるかい?学校には既に何人かスタンド使いがいるらしいんだ」
恭介「これからスタンド使いはもっと増えると僕は思うんだ」
恭介「今後を考えるとスタンドは上手く扱えるようにならないとね。今はバイオリンよりもそっちに夢中って感じかな」
恭介「あ、ハーヴェストを使ってバイオリンを弾くっていうのも面白そうだなぁ」
さやか「…………」
恭介「もちろんバイオリンは続けるつもりではあるよ」
さやか「そ、そう……まぁ、うん……なら……いいんだけど……」
恭介「……どうかしたのかい?何だか顔色が悪そうに見えるけど……」
さやか「い、いやいやっ!何でもないよ。あはは……」
恭介「……」
523: 2012/12/28(金) 20:07:16.72 ID:w6fA4+mN0
恭介「あの、さ。さやか……」
さやか「……?」
恭介「その……ちょっと、聞いてほしいことがあるんだけどさ……」
さやか「聞いて欲しいこと?」
恭介「あのさ、折角来てもらったのに、そういうこと聞くのも何だけどさ」
さやか「き、気にしないで。それで……えっと、なに?」
恭介「さやかは……志筑さんと仲が良いだろう」
さやか「……仁美?」
恭介「さやかを追い出したあの日の後……志筑さんが来てくれたんだ」
さやか「…………」
恭介「彼女は……僕の全てを理解してくれたんだ」
恭介「突然現れた群体型スタンド、ハーヴェスト……」
524: 2012/12/28(金) 20:08:32.66 ID:w6fA4+mN0
恭介「自分で言うのもアレだけど、小さい虫みたいなものがわさわさと現れて気持ち悪いだろう?」
恭介「しかし誰にも見えない。僕は怖かったんだ。幻覚が見えるようになったのかって」
恭介「そんな中、志筑さんは僕のことを理解してくれた。彼女もスタンド使いだった」
恭介「僕のハーヴェストが見えていたんだ……能力名はティナー・サックス」
さやか「あぁ……うん」
恭介「彼女は言ってくれたよ……」
恭介「認識することが大事なんだって」
恭介「空気を吸って吐くことのように、鉛筆をベキッとへし折ることと同じように、扱えて当然と思うこと。大切なのは『認識』すること……ってね」
恭介「人間は誰しも不安や恐怖を克服して安心を欲する……」
恭介「不安に押しつぶされそうだった僕の心に……手を差し伸べてくれたんだ」
恭介「安心したんだ……それで、その安心は……その……」
525: 2012/12/28(金) 20:09:06.59 ID:w6fA4+mN0
恭介「照れくさいけど……恋愛感情に置き換わっていたんだ」
さやか「え……れ、恋愛!?」
恭介「もう、さ……正直に言うとだね……」
恭介「僕、志筑さんのことが好きなんだ」
さやか「…………」
恭介「恋愛なんて、今まで考えたことなかったのに……志筑さんのことばかり思い浮かぶ……」
さやか「…………」
恭介「こ、こんな恥ずかしいことを相談できるのはさやかくらいしかいないんだ」
恭介「ああ、精神の成長、スタンド、恋、退院、それと再び弾けるようになったバイオリン」
恭介「清々しい気分だよ……今、僕は青春を感じている」
さやか「…………」
恭介「それで……なんだけどさ、さやか」
526: 2012/12/28(金) 20:09:49.01 ID:w6fA4+mN0
恭介「志筑さんは、誰かと付き合ってたりしていないかな……?」
恭介「好きな人いたりするのか、とか……その、異性のタイプとか……さ、その、それとなく聞いてくれると嬉しいんだけど……」
さやか「…………」
さやか「……そ、そうなんだ」
さやか「あ、あははは……ひ、仁美に目を付けるとはなかなか見る目あるよ。恭介……」
さやか「はは……お、応援、するよ……うん」
さやか「お似合いだと……思う……よ」
恭介「そうかい?ありがとう……と言えばいいのかな。それって……」
さやか「…………」
さやか「恭介……今日は、もう帰るね」
恭介「そうかい?今日はありがとう。わざわざ来てくれて」
さやか「う、ううん……それじゃあ……」
恭介「うん」
さやか「…………」
527: 2012/12/28(金) 20:10:31.86 ID:w6fA4+mN0
――
――――
――喫茶店
仁美「それじゃあ、ミルクセーキを下さい」
仁美「ダブルで」
さやか「…………」
さやか「いやぁびっくりしたよ。仁美がスタンド使いだったなんて」
仁美「えぇ……私も鹿目さんがスタンド使いだっただなんて……」
さやか「そりゃぁ、ねぇ」
さやか「……それで」
さやか「話ってスタンドのこと?」
仁美「…………」
仁美「美樹さん。私は……」
仁美「上条くんのこと、お慕いしておりました」
さやか「え……」
――――
――
528: 2012/12/28(金) 20:11:31.80 ID:w6fA4+mN0
さやか「…………」
さやか「何だよ……」
さやか「何なんだよ……!」
さやか「両思いじゃあねーかよ……ッ!」
さやか「あたしが入る場所なんて……ないじゃん……!」
さやか「もう、『既に』……!」
さやか「…………」
さやか「うぅ……」
さやか「あたし……あたしってヤツは……!」
さやか「あたし……何を考えて……!」
さやか「くそぅ……!」
529: 2012/12/28(金) 20:12:28.66 ID:w6fA4+mN0
――次の日
まどか「あ、おはよう。仁美ちゃん」
仁美「あっ……お、おはようございます」
まどか「いつもの待ち合わせに来なかったけど……委員会のお仕事?」
仁美「え、ああ……はい。まぁ、そんな感じです。すみません」
まどか「?謝ることなんて……」
仁美「それで、その……美樹さんは?」
ほむら「い、いえ……来てませんでしたけど」
仁美「……そうですか」
530: 2012/12/28(金) 20:12:57.17 ID:w6fA4+mN0
ほむら「……何か、あったんですか?」
まどか「?」
仁美「…………」
仁美「実は……その……」
仁美「美樹さんと……ちょっと、その……」
まどか「さやかちゃん、と?」
仁美「ちょっと……言い争ったというか、気まずいというか……」
まどか「さやかちゃんと……」
ほむら「…………」
まどか「?」
仁美「…………」
仁美「実は……その……」
仁美「美樹さんと……ちょっと、その……」
まどか「さやかちゃん、と?」
仁美「ちょっと……言い争ったというか、気まずいというか……」
まどか「さやかちゃんと……」
ほむら「…………」
531: 2012/12/28(金) 20:13:47.98 ID:w6fA4+mN0
ほむら「……ッ!」
瞬間、ほむらの脳に走る電気的衝撃。
ほむらは「嫌な予感」を感じ取った。
ほむら「……鹿目さん」
仁美「暁美さん?」
まどか「どうしたの?ほむらちゃん」
ほむら「ほ、保健室……連れてって、もらえる……?」
まどか「えぇ!?」
仁美「だ、大丈夫ですか?もしかして心臓が……」
ほむら「えっと……さ、さっきから……お、お腹が……」
仁美「さ、さっきからって……どうして言わなかったんですの?」
ほむら「その……言い出しにくくて……」
532: 2012/12/28(金) 20:14:52.43 ID:w6fA4+mN0
ほむら「ほ、保健室……」
まどか「わ、わかった!」
仁美「無理しないで遠慮なく言ってくださればいいのに……」
まどか「えっと、言ってくるね。仁美ちゃん」
仁美「は、はい。先生には言っておきますわ」
まどか「大丈夫?ほむらちゃん……」
ほむら「……ごめんね」
まどか「ん?どうしたの?」
ほむら「ごめんね」
533: 2012/12/28(金) 20:15:27.33 ID:w6fA4+mN0
まどか「ほ、ほむらちゃん?」
ほむら「鹿目さん。私、早退する」
まどか「そんなに痛いの?本当に大丈夫?」
ほむら「……ずる休みしちゃうの」
まどか「えぇッ!?」
ほむら「心臓病のフリをするのも卑怯かなって思って」
まどか「…………」
ほむら「ずる休みは二回目になっちゃう」
まどか「……うん。わかった」
ほむら「保健室の先生いるかな?」
534: 2012/12/28(金) 20:16:16.14 ID:w6fA4+mN0
――教室
女子生徒A「マミりぃん。見て見てぇ」
マミ「何かしら?あとマミりんって何かしら?」
女子生徒A「お祖父ちゃんが再婚することになるんだけどね」
マミ「そうなの?おめで……え?お祖父ちゃん?」
女子生徒A「うんうん。日はまだ決まってないけど、慶事で公欠するつもり」
マミ「そ、そう……」
女子生徒A「でねでね、これ。その人の連れ子の写メェ。きゃわわ」
マミ「……と、いうことは」
女子生徒A「そう。奇妙なことだけど……戸籍上私は叔母ってことになるよ」
女子生徒A「中学生で叔母さんって、何か切ないよ。オバサンだからね」
マミ「そ、そうなの……何だか、大変ね」
女子生徒A「でもでも、私の姪っ子、可愛い」
マミ「そ、そうね……」
マミ(見たところゆまちゃんと同じくらいだけど……再婚相手はいくつなのかしら……)
535: 2012/12/28(金) 20:17:34.34 ID:w6fA4+mN0
『巴さん!巴さん!』
マミ(テレパシー?)
マミ『どうしたの?暁美さん』
ほむら『巴さん!いきなりですみません!』
マミ『あの、暁美さん?何をそんなに焦って……』
ほむら『ゆまちゃんをお借ります!』
マミ『……へ?』
マミ『あの、ゴメン。何を言ってるのかわからないんだけど……』
ほむら『美樹さんを探します!』
マミ『余計に拗れてきたんだけど!?美樹さん何かあったの!?』
536: 2012/12/28(金) 20:18:20.40 ID:w6fA4+mN0
マミ『うーん……』
マミ『……な、なんかわからないけど、わかったわ』
マミ『鹿目さんの時みたいに早退する気ね?』
ほむら『は、はい!』
マミ『ゆまちゃんに合い鍵の場所を教えてあるから……、ちゃんと戸締まりして、鍵絶対に無くさないようにしてね』
ほむら『わかりました!』
女子生徒A「ねぇねぇ、マミりんってば。聞いてるの?」
マミ「え?あ、ごめんなさい」
女子生徒A「いつになるかわからないけど、公欠した日の授業分ノート見せてね」
マミ「ええ、いいけど……」
女子生徒A「巴さん頭いいからねぇ」
マミ(……暁美さん。何をするつもりなのかしら)
537: 2012/12/28(金) 20:18:55.61 ID:w6fA4+mN0
――廃墟の街。
支柱の折れたらせん階段。甲虫色の錆びたポスト。
イチジクのタルトのような空色。紫陽花畑をぶち破った断層。
地面に二次関数グラフと特異点の数学的な落書き。塀に簡易的な天使のイラスト。
最も大きな家の窓から有名な画家をオマージュしたかのようなが絵画が見える。
その家までの道のりは荒廃が特に著しい苦難への道。
断層にあいた穴。顔も服もない輪郭だけの秘密の少女。
黒いマントをつけた人型の使い魔と対峙する少女がそこにいる。
白いマントをつけた青い魔法少女が剣を構えて敵を睨みつける。
538: 2012/12/28(金) 20:19:34.95 ID:w6fA4+mN0
さやか「はぁ……はぁ……」
さやか「その気になれば……『痛み』なんて消せる……!」
さやか「くっ……しかし……」
使い魔「Ura――Agihcimonustatufikebuakum――Awineamo」
さやか「うぉらァッ!」
ザシュッ!
さやか「……くそッ!や、やはり……!」
使い魔「Ihcimoneh"onomurerabarae"etiki――Awustotih」
さやか「数が……多すぎるッ!」
断層に背をつける。背水の陣。
さやかは今、追い込まれている。
539: 2012/12/28(金) 20:20:35.40 ID:w6fA4+mN0
さやかを逃さないかのように黒い影が取り囲む。
少し離れた位置で、引力の魔女――レイミが様子を窺っている。
さやか「ハァ……ハァ……」
さやか「引力の魔女、レイミ……」
さやか「こいつが、スタンドの元凶」
さやか「……許さない」
さやか「やっと……やっと見つけたんだ……」
さやか「必ず……ブチ頃してやる……!」
さやか「おまえさえ……貴様さえいなければ……!」
さやか「あたしは……あたしは……!」
さやか(だが……どうするか)
540: 2012/12/28(金) 20:22:04.23 ID:w6fA4+mN0
さやか(背中は断層。これ以上引き下がれない)
さやか(使い魔の握力は結構強い。数も多い。押さえつけられたら……かなりマズイ)
さやか(だが、動きはそれ程早くない)
さやか(一気に突っ込めばいいだろう)
さやか(問題は魔女だ……)
さやか(あのシルエットみたいな体。何をしてくるかわからないし読めない)
さやか(……だが、とにもかくにも、斬るしかない!)
さやか(あの魔女……見た目は人間っぽいから……胸か、頭を斬る!)
クラウチングスタートの姿勢になったさやかは、剣先を魔女に向けた。
走りだそうとしたその途端。
ズルッ
541: 2012/12/28(金) 20:23:17.68 ID:w6fA4+mN0
さやか「うっ!?」
ドサァッ
明日が滑り、転倒した。
頬を地べたに打ち付けてしまった。
さやか「な……ッ!?」
さやか「な、何……?!」
さやか「足……が……!」
さやか「足から……血!?」
いつの間にか、足から、脹ら脛から血が流れ出ていた。
痛みは無いが出血が激しい。
地面に垂れた血で足が滑ったらしい。
「咬み傷」ができている。
542: 2012/12/28(金) 20:24:46.86 ID:w6fA4+mN0
さやか「どうして……?!い、いつの間に?!」
さやか「……ッ!」
さやか「だ、断層に……血がついてる……?」
さやか「断層の……穴に、血……?」
さやか「ま、まさぁ……この穴か……!?」
さやか「この断層の『穴』があたしを噛んだのかッ!?」
使い魔「Aterabare――Awiihsamatonok」
さやか「く、くそ……ッ!使い魔が……!」
完全に包囲された。
口から流れるように血が垂れる断層の穴。
黒い影で魔女が見えなくなる。
543: 2012/12/28(金) 20:25:16.73 ID:w6fA4+mN0
さやか「もう……ダメだ」
さやか「……『氏ぬ』」
さやか「…………」
さやか(……氏、か)
さやか(そうか。あたし、氏ぬんだ……)
さやか(使い魔に体を押さえつけられて……何をされる?)
さやか「何で……何であたしはここに来ちゃったんだろう」
さやか「どうしてあたし……一人で乗り込もうなんて思っちゃったんだろう」
さやか「意味が分からない……パソコンの魔女倒して、調子に乗っていたのかな……」
さやか「……あたしって……ほんと馬鹿……」
さやか「…………」
さやか「いや、違う……」
544: 2012/12/28(金) 20:26:28.83 ID:w6fA4+mN0
さやか「あたしは馬鹿じゃない」
さやか「あたしは何も悪くない……むしろ、悪いのはスタンドの方だよ……」
さやか「あたしは、恭介のために魔法少女になったのに……戦いの運命に飛び込んだのに……」
さやか「恭介と仁美にスタンドが発現しないで……」
さやか「バイオリンよりも夢中になれることを見つけなければ……」
さやか「それがわかっていれば……あたしは契約しなかったのに!」
さやか「後悔なんてあるはずなかったのに……!」
さやか「パソコンの魔女の時、仁美を助けなきゃよかっただなんてほんの一瞬でも思ってしまったのも……」
さやか「ほむらがもっとちゃんと止めてくれればよかったのになんて思ってしまったのも……」
さやか「スタンドのせいッ!あたしは悪くない!」
さやか「だから……あたしは、あたしは馬鹿じゃない……!」
さやか「あたしは何も悪くない……あたしは何も悪くないッ!」
さやか「あたしは……」
545: 2012/12/28(金) 20:27:33.25 ID:w6fA4+mN0
魔女「――――」
魔女は言葉にもならない声を発した。
それに呼応するように、使い魔はその身を引いた。
さやかと魔女が向かい合う形となる。
使い魔「Aragannennaz――Iihsaratiusagakano」
使い魔「Uranotaseonijuraagaw――Awiihsamatonok」
魔女は腕を伸ばし、さやかに攻撃を仕掛けた。
さやか「あたしは――」
美樹さやかが最期に思うこと……それは仕事中の両親のことではなかった。
両親のことを深く思ってはいた。
しかし最後に浮かんだ本当の気持ちの前に、走馬燈のような形で向き合った。
546: 2012/12/28(金) 20:28:44.56 ID:w6fA4+mN0
さやか(マミさん……勝手なことしてごめんなさい)
さやか(ゆま……あたしが氏んでも悲しまないで)
さやか(まどか……ありがとう。今まで楽しかったよ)
さやか(ほむら……幸せになってほしい。あたしの願いはそれだけだ……)
さやか「……はは、は」
さやか(シケた人生、だった、なぁ……)
ザシュッ!
547: 2012/12/28(金) 20:29:22.85 ID:w6fA4+mN0
「KYAAAAAAAAAAAAAAA!」
ボゴンッ!
さやか「グフッ!?」
さやか「ゲホ、ゲホッ……ゲホ!」
さやか「な、何……?」
少女の影の胸の部分に、『穴』があいた。
向こう側の景色が見える。
さやか「何が起こった……!?何が……!」
さやかの頭は軽いパニック状態に陥った。
魔女は叫び声をあげた。ダメージを受けている。
魔女の攻撃を喰らった。それは事実。胸に痛みがある。
しかし今、目に見えて、自分よりも魔女の方にダメージがある。
使い魔「Atekutuzikowijura――Awiihsamatonok!」
使い魔は魔女を守るかのように、再びさやかを囲んだ。
両腕をつきだし、迫り来る。
548: 2012/12/28(金) 20:31:11.56 ID:w6fA4+mN0
さやか「何が起こったんだ……?」
さやか「胸貫かれたと思ったら……魔女が……?」
さやか「な、何が……何が……一体……?」
さやか「……ま、まさか」
さやか「まさか……あたし……」
さやか「……クッ!」
使い魔「Ihcimonehihs――Abukanomas!」
さやか「く、来るか……!?」
さやか「な、何が起こっているのかわかんないままだけど……」
キュルキュルキュルキュル……
さやか「……ん?」
「ェ~」
さやか「……何じゃこりゃ?」
549: 2012/12/28(金) 20:32:04.16 ID:w6fA4+mN0
「コッチヲミテェ~」
さやか「……戦車?」
鉄塊のような、キャラピラが付いた物体。
錆びかけた鉄が擦れ合うような音と、機会音声のような音声。
戦車のようなそれは、使い魔の群れに向かって速度を微妙にあげ、走り突っ込んでいく。
その速度は親についてくる健康な仔猫のよたよたした走り程度。
「コッチヲミテェ~」
戦車はそのまま使い魔の足にぶつかった。
カチリ
550: 2012/12/28(金) 20:36:59.57 ID:w6fA4+mN0
――轟音をたて、戦車と使い魔群は炎に包まれた。
それは「爆発」した。
さやか「う、うおおおあッ!?」
さやか「な、何ィッ!?」
さやか「どうしたことが……何が起こった!?」
さやか「ば、爆発したッ!」
さやか「使い魔が……ドガーン!って爆発し……」
さやか「……『爆発』だってッ!?」
「魔力を探知して走る『じどーそーじゅー』スタンド!」
551: 2012/12/28(金) 20:38:07.74 ID:w6fA4+mN0
さやか「!」
「キラークイーン第二の爆弾。爆弾戦車『猫車』……さやかを探知した」
「最初は普通に分担して探そうとしたけど、そういうのが使えるって言うもので、使わせていただきました」
さやか「そ、そんな、あんたらは……!」
さやか「ゆま!?ほむら!?」
さやかは、爆弾戦車が走ってきた方向を見た。
細い体と小さい体が、そこにはいた。
ゆま「猫さんッ!」
ズギャンッ!
ゆまの体から飛び出した、精神のエネルギー。
キラークイーンは地面に落ちていた小石を広い、投げた。
552: 2012/12/28(金) 20:39:39.02 ID:w6fA4+mN0
投げ飛ばされた小石は、他の使い魔と衝突する。
瞬間、その使い魔群は爆発した。
ゆま「石ころを爆弾にした!」
ゆま「頑張れ猫さん!」
バンッバンッ!
ほむら「ハンドガンッ!」
盾から取り出した黒光りする拳銃。
小さな爆発――発砲音が響く。
使い魔の頭部を的確に撃つ。
急所を撃ち抜かれた使い魔は強い衝撃を受けてす故障る寸前のラジオのような音をたてる。
マネキンの体と黒いマントは煙のようになって消えていく。
553: 2012/12/28(金) 20:41:03.45 ID:w6fA4+mN0
さやか「……!」
ゆま「大丈夫!?さやか」
さやか「ゆまちゃん……」
ほむら「足、ケガしてる……立てますか?」
さやか「ほむら……」
さやか「ど、どうしてここに……」
ほむら「…………」
ほむら「……サボってきちゃいました」
さやか「ッ!」
ほむら「それで、巴さんからゆまちゃんを借りて探しに来ました」
ゆま「大変だったよ!何度注意してもほむほむの魔力を探知しちゃうんだもん!」
ゆま「ごめんねほむほむ」
ほむら「ううん。これがなかったら美樹さん見つけられなかったよ」
ほむら「いいこいいこ」
ゆま「えへぇ」
554: 2012/12/28(金) 20:42:24.52 ID:w6fA4+mN0
ピンクの空は、水色の空へ。
廃墟の街は、廃ビルのフロアへ。
魔女の結界はその世界を消し去った。
ほむら「……あ」
ゆま「結界が解けちゃったね」
ほむら「おかしいね……魔女もいたはずなんだけど……」
ほむら「私達が来た時には既に逃げちゃってたのかな」
さやか「…………」
さやか「……ねぇ、ほむら」
ほむら「はい?」
さやか「その……ごめん」
555: 2012/12/28(金) 20:43:25.41 ID:w6fA4+mN0
ほむら「へ?」
さやか「あたし……その……」
さやか「契約したこと後悔しちゃった……」
ほむら「……」
さやか「恭介の腕を治すなんてしなきゃよかった……しなくてもよかったって思っちゃった……ぐすっ」
さやか「許せないよ……恭介も、治さなきゃよかったって思ってるあたし自身がさぁ……」
さやか「こんな辛い目に遭うなら……契約なんてしなきゃよかった……!」
さやか「……うぅ……ごめんね……ほむら……ごめん……!」
さやか「折角止めてくれたのに……契約しないでって言ってくれたのに……!」
さやか「結局あたしは、恭介の腕を治した見返りが欲しかっただけだったんだ……」
さやか「あたしは……恭介が好きだった……でも、でも……恭介は仁美が好きだってぇ……」
さやか「う、うあああぁぁぅ……」
556: 2012/12/28(金) 20:44:55.37 ID:w6fA4+mN0
さやか「後悔しちゃったよぉ……魔法少女になっちゃったよぉ……あうぅ……ぐすっエグッ」
さやか「失恋だよォォ~~……!」
ゆま「しつれん……」
ほむら「…………」
ほむら「いえ……美樹さん」
ほむら「結局、私は契約を止められなかったという結果しかありません」
ほむら「私の方こそ、しっかりしていれば……」
さやか「うぅ……ほむら……」
ほむら「巴さんなら、こう言うと思います」
ほむら「『大丈夫、私達が支えるから』……私も、同意見です」
ほむら「だって……その……」
ほむら「と、友達だから……」
さやか「……ほむら」
557: 2012/12/28(金) 20:46:05.90 ID:w6fA4+mN0
さやか「あたし……あたし……!」
ゆま「ねぇ、さやか……」
ゆま「ゆまもね?実は、契約しなきゃよかったって、思ったことあるの」
ゆま「キョーコの役に立ちたいから、スタンドが欲しいって願って、猫さんを発現した……」
ゆま「でも、スタンドを持っちゃったから、ゆまはキョーコに嫌われた……」
ゆま「だから、後悔しちゃった」
ゆま「でもね?ゆま、契約してよかったって今は思ってるよ」
ゆま「こうして、さやかを助けることができたし……」
ゆま「さやか、お姉ちゃん、ほむほむ、まどかお姉ちゃんに出会えたし……」
ゆま「ゆま、今幸せなの。キョーコの嫌いな力を持ったゆまを、受け入れてもらえて……」
ゆま「ゆまは、もう一人ぼっちじゃないの。ひとりぼっちは寂しいもんね」
さやか「ゆまっち……」
ゆま「ゆまっち?」
558: 2012/12/28(金) 20:47:21.90 ID:w6fA4+mN0
さやか「…………」
さやか「……あはは」
ほむら「……な、何かおかしいこと言いましたか?私」
さやか「いやさ……だって、あんたが友達だから、だなんて……」
さやか「えへへ……何だか、おかしくって……あんたの方から、手を差し伸べてくれるだなんて……」
さやか「あたしはあんたを否定して……あんたはあたしに手をあげようとしたのに」
ほむら「……ほむぅ」
さやか「ありがとう。ほむら、ゆま……」
さやか「それと……猫さん?」
ほむら「え……?」
559: 2012/12/28(金) 20:49:03.82 ID:w6fA4+mN0
ゆま「えッ!?」
さやか「こんな顔だったんだね……猫さんって言うからもっとキュートなもんかと思ったけど」
ゆま「み……『見えてる』!さやか……猫さんと目を合わせてる……!」
ほむら「……!」
さやか「うん……」
さやか「あたしも……なの」
さやか「あたしもスタンドが……身に付いたみたい」
さやか「あの壁みたいな断層にさ……穴、あったじゃん」
ほむら「……はい」
さやか「あの穴に噛まれてさ……その直後に、何か変なことが起こったんだ」
ほむら「噛まれた?」
ゆま「変なこと?」
560: 2012/12/28(金) 20:50:30.08 ID:w6fA4+mN0
さやか「あたしにもよくわからないんだ……」
さやか「魔女から攻撃を喰らったと思ったんだ」
さやか「でも、魔女の方が突然苦しんだ」
さやか「何を言ってるのかわからないと思うけど……」
ほむら「……えっと?」
さやか「ダメージが『反射』されたって言えばいいのかな……」
ゆま「反射……?え……?」
ゆま「でもさやかケガして……ん?」
さやか「だからわからなんだよね……実際に攻撃を受けたのに反射した……」
さやか「その辺、研究する必要があるね」
561: 2012/12/28(金) 20:52:17.06 ID:w6fA4+mN0
さやか「とにかく……その時だと思う。スタンドに目覚めたのって」
ほむら「スタンド……」
ゆま「穴『そのもの』が使い魔だったんだね……」
さやか「スタンドの名前……何にしよう」
さやか「恭介じゃないけど……」
さやか「あたしもスタンドを認識して訓練をしなくちゃいけないなぁ……」
さやか「ほむら……」
さやか「『あんたの友達』に負けないくらいにさ……強くなるね」
ほむら「……え」
さやか「ほむらには……もう、辛い思いをさせない」
ほむら「……はい」
562: 2012/12/28(金) 20:55:12.81 ID:w6fA4+mN0
――数日後
杏子が美国邸に世話になり始め、幾日が経過した。
毎日風呂とベッドと美味い飯にありつけるのはとても幸せなことだと、杏子はつくづく思った。
しかし同居人とは特別仲がよくなったということはない。
織莉子とは軽い世間話をする程の関係にはなった。事務的にしている感は否めない。
借りをあまり作りたくないという理由で食器を片付けのを手伝おうにも、食器に触らせてもらえない。
キリカとはいまいち反りが合わない。「折角の二人の世界」に割り込んでしまった感が否めない。
「織莉子の言うことだから仕方ない」という余所余所しい態度が見え隠れして明らかに気を使われている。
暮らしやすいが居辛い。総合的に言えば「少し良い」程度の生活をしている。
564: 2012/12/28(金) 20:55:53.99 ID:w6fA4+mN0
織莉子「ねぇ、佐倉さん。夕食も終えたことで、少しお話があるの」
杏子「……何だ?」
織莉子「共闘するということで、改めて自己紹介をしてみない?」
杏子「あ?なんだよいきなり」
織莉子「いいじゃない。この機会、お互いにとって実に重要な世界よ」
キリカ「流石は織莉子。名案だ」
杏子「……まぁ、構わんが」
織莉子「既に知っていることとは言え念のためおさらいとしてフルネーム」
織莉子「そして『得意な魔法』と『魔法武器』……『スタンドの能力』を言うのよ」
杏子「…………」
杏子「あたしとしては自分の手の内を晒すのは好きでないんだがな」
織莉子「そう。能力を教えるということはスタンドの弱点を教えることにつながる」
織莉子「だから、時期を見たかった」
キリカ「杏子。私と織莉子は互いに能力を知っている。知らないのは君のだけなんだ」
565: 2012/12/28(金) 20:57:26.31 ID:w6fA4+mN0
キリカ「まぁ、私達も具体的に自分の手札を見せてたわけじゃないからね」
杏子「……それも、そうかもしれないが」
杏子(……こいつらの能力。知っておいて損はないだろう)
織莉子「まず私から……」
織莉子「名前は美国織莉子。これは知ってると思うけど、未来予知の固有魔法を有しているわ。魔法武器は水晶玉」
織莉子「スタンドの名前はリトル・フィート」
織莉子「能力は、相手を小さくする能力」
織莉子「自分も小さくなれるわよ」
杏子「なんだそれ。くだらない能力だな」
キリカ「そんなことない!」
杏子「何怒ってんだよ」
566: 2012/12/28(金) 20:59:41.61 ID:w6fA4+mN0
織莉子「まぁまぁ。……これまで試した限りでは人間程度の大きさなら最小で十二分の一くらいのサイズにできるわ」
杏子「それって、つまり……どれくらいだよ」
織莉子「そうね……。その気になれば人間を消しゴムくらいの大きさにできるということよ」
キリカ「小さくなればクッキー一枚でもお腹一杯になれるファンタスティックな能力さ」
杏子「なるほど……スゲー羨ましいな」
織莉子「やってみる?」
杏子「今度な」
キリカ「あ、食べるんだ」
キリカ「そんじゃあ、次は私」
キリカ「私の名前は呉キリカ。相手の動きを遅めるようなことが得意だね。魔法武器は爪」
キリカ「スタンドの名前はクリーム」
567: 2012/12/28(金) 21:00:20.69 ID:w6fA4+mN0
杏子「クリームゥ……へっ、何だか弱そうな名前だな」
織莉子「敵じゃなくてよかったと思うわよ。あなたでは勝てない」
杏子「あ?何だとコノヤローっ。言葉に気をつけろ」
織莉子「本当のことよ」
キリカ「おい。杏子。織莉子にヤローとは何だ。クリームで消し去るよ?」
杏子「消し去る?」
キリカ「それがクリームの能力だ」
キリカ「相手は氏ぬ」
杏子「は?」
織莉子「ざっくばらんに言えば、透明になって移動して、その際に触れたものを粉微塵にする」
杏子「何それ怖い」
568: 2012/12/28(金) 21:01:43.25 ID:w6fA4+mN0
キリカ「まぁそれなりに弱点はあるけどね」
杏子「弱点?」
織莉子「さて、最後はあなたよ。佐倉さん」
杏子「…………」
キリカ「おっと、私達のことを知っといて自分はやっぱいい、だなんてフェアじゃないこと言わないよね?」
杏子「あんたらが勝手に話し出したんだろうが」
織莉子「過程はどうあれ、あなたが協力をすると言った、という真実を忘れてはいけない」
杏子「わぁーったよ……ったく」
杏子「あたしは佐倉杏子。……幻惑の固有魔法だ。魔法武器は槍」
杏子「スタンドの名前はシビル・ウォー」
杏子「シビル・ウォーは特定の結界を作り、その中で幻覚を見せる能力だ」
キリカ「魔法とスタンド被ってんじゃん」
杏子「うるせぇ」
569: 2012/12/28(金) 21:03:13.44 ID:w6fA4+mN0
杏子「で、幻覚の内容は、『相手が捨てたもの』だ。ポイ捨て見捨てる切り捨てる……人は捨てることに罪悪感を覚える」
杏子「……ま、簡単に言ってしまえば罪悪感で心身を押しつぶす能力だ」
織莉子「捨てたもの……ね」
キリカ「わぁお、陰湿~」
杏子「何だとこら」
織莉子(捨てたもの……私はむしろ捨てられた方だと自分では思っているけれども……どうなるかしら)
杏子「まぁ何だ。魔法少女を魔女にするのにうってつけの能力だ」
杏子「実を言うとテリトリーを侵略しに来た魔法少女は全員魔女にしてグリーフシードにしてきた。そういう実績がある」
キリカ「うわぁ……」
織莉子「あら、それはちょっとだけ頼もしい」
キリカ「え?暁美ほむらを魔女にしたらマズイんじゃ……」
織莉子「スタンドを発現される前に魔女にしてしまえばそれはそれで救世の形なのよ」
570: 2012/12/28(金) 21:04:46.48 ID:w6fA4+mN0
キリカ「……さて、これでお互いスッキリしたかな?」
織莉子「そうね。これでいざというとき混乱せずに済むわ」
杏子「…………」
杏子(シビル・ウォーには『二つの弱点』と『隠された能力』があるのだが……)
キリカ「織莉子。紅茶のおかわりちょーだい」
織莉子「お砂糖いくつ?ジャム何杯?」
キリカ「スプーン三杯ずつ」
杏子(この二人には『言わない』)
杏子(あたしが……)
杏子(いつかこの二人を『裏切る』時……あるいはその『逆』の時に見せることになるだろう)
571: 2012/12/28(金) 21:05:23.55 ID:w6fA4+mN0
杏子(あたしの切り札だ)
杏子(最も、弱点の一つは克服したと言っても過言ではないがね)
織莉子「佐倉さんはいるかしら?おかわり」
杏子「いや、あたしはいい」
杏子(……まぁ、お互い様だよな)
杏子(あいつらもあいつらで、あたしに隠している事柄がある)
杏子(こういう場面で言わないということは、あたしを信頼していないことを証明している)
杏子(その辺り、食い下がって聞かなかったのは敢えてだ)
杏子(聞くということは『あんたらを疑ってる』と自分からバラしてるようなもんだからな……)
572: 2012/12/28(金) 21:07:44.60 ID:w6fA4+mN0
織莉子「さて……」
織莉子「見滝原中学校襲撃計画の決行まで、後三日よ」
杏子「それまで結局ろくなことしてねぇけどな」
キリカ「まぁね」
織莉子「……そこで、明日と明後日、二日間かけて、事前準備に取りかかるわ」
織莉子「二日目に事前準備を踏まえて簡単な作戦……私のプランを伝える」
杏子「事前準備……随分とギリギリじゃあないか?」
織莉子「そうね……使いたい道具が道具だからよ」
杏子「使いたい道具?」
織莉子「まぁそれは追々……まず、キリカ」
キリカ「私は何をすればいい?」
573: 2012/12/28(金) 21:09:09.49 ID:w6fA4+mN0
織莉子「学校の見取り図を用意してちょうだい」
キリカ「見取り図?学校の地図ってこと?」
織莉子「えぇ。私と佐倉さんは見滝原中学校のことを知らない」
織莉子「魔法少女とスタンド使い……ターゲットがどの教室にいるのかを把握する必要がある」
キリカ「ふぅーん。オッケー」
織莉子「佐倉さんは何か追加注文とかある?」
キリカ「帰りにお菓子買ってきてとかパシリ的な内容以外なら融通効かすよ」
杏子「……できれば写真とかもあるといい」
キリカ「写真?」
杏子「シビル・ウォーが扱うに丁度良い室内でもあればと思ってな」
キリカ「図書室とか音楽室とか?」
574: 2012/12/28(金) 21:10:33.69 ID:w6fA4+mN0
杏子「シビル・ウォーの特性上、相手を誘い込むことが重要だ。標的のいる教室との位置関係による」
杏子「三階なら三階にあるそういう部屋。四階なら四階だ」
キリカ「うん。わかったよ」
杏子「……で、あたしは何をすればいい」
織莉子「そうね……佐倉さんさえよければ、なのだけど」
織莉子「少しばかり、顔を出してやってほしいのよ」
杏子「……いいのか?わざわざそんなこと」
織莉子「えぇ。どうせ顔知らないでしょ?そんな大したことしなくていいわ」
杏子「何か意味あるのか?それ。顔ぐらい、写真なりなんなりで何とでもなるだろ」
織莉子「注意を惹かせる、ということよ」
杏子「注意?」
575: 2012/12/28(金) 21:11:51.29 ID:w6fA4+mN0
織莉子「明日、予知によると暁美ほむら、鹿目まどか、美樹さやか、三人仲良く帰路に立っている……」
織莉子「そこで三人の前に現れて、力試しだ何だ言って時間を稼いでほしい。人通りは少ないからその辺り気にしなくていい」
織莉子「するとたまたま半径約二、三百メートル内にある書店で参考書を探しにきていた巴マミ、付き添いの千歳ゆまがテレパシーで助けを呼び出され現れる」
織莉子「……魔法少女が集まるということね」
織莉子「その間に、私が行動をする」
杏子(ゆま……か……)
杏子「……ダリィな」
キリカ「別にそこで頃してもいいだろう何て思わないことだ」
織莉子「暁美ほむらが既にスタンド使いである可能性がゼロではない以上、余計なことはしないに限る」
織莉子「あなたが負けたら元も子もない」
杏子「つまりあたしに逃げろと。で、逃げれるのか?あたしは」
織莉子「五人と顔を合わせたら……これを」
コン
576: 2012/12/28(金) 21:12:35.64 ID:w6fA4+mN0
杏子「……グリーフシード?」
織莉子「穢れを計画的に溜め込ませ、孵化するタイミングを予知して調節させた……」
織莉子「言うなれば時限魔女発生装置よ。これをキリカに仕掛けさせておく」
織莉子「魔女の結界に閉じこめて退散なさい。結界に誘い込むのは得意でしょう?」
杏子「……なるほどな」
織莉子「場所は後で地図を用意するとして……明日の予定をまとめると……」
キリカ「私は学校の見取り図と杏子にとっていい感じの部屋を探して、帰り道地図の場所にグリーフシードを仕組むこと」
杏子「……あたしはほむら達を地図の場所で待ち伏せして、マミとゆま、魔女の孵化を待ち、時間を稼ぐ」
織莉子「その通り。二人とも、明日はよろしくお願いね。明日の朝もう一度おさらいするから。佐倉さん。腕時計忘れずにね」
杏子「……なぁ、織莉子」
織莉子「何か質問でも?」
杏子「内容は今のと関係はないんだが……一つ、聞いてみたいことがある。ちょっとした好奇心だ」
577: 2012/12/28(金) 21:14:01.11 ID:w6fA4+mN0
織莉子「何かしら?」
杏子「あんたは……キリカが怖いと感じたことないのか?」
キリカ「へ?」
杏子「キリカのスタンドを聞く限り、使われたらもう手出しができない」
織莉子「……」
杏子「もし裏切ろうと思えば、何もできずに殺されちまうぞ」
キリカ「ッ!」
キリカ「おいッ!杏子ォ!」
杏子「うおッ!?」
キリカはテーブルに膝をつき杏子の胸ぐらを掴んだ。
先程までヘラヘラしていた表情は一変した。
その場の勢いで人を頃してしまいそうな、そういう目だった。
杏子はそれと似たような目を、一度見たことがある。
578: 2012/12/28(金) 21:16:19.05 ID:w6fA4+mN0
キリカ「この私が織莉子を裏切るだとッ!?」
キリカ「どの口が抜かしているんだッ!この小汚いホームレスのクサレ脳みそがッ!」
杏子(こ、こいつ……!)
キリカ「例え仮定の話でもッ!言っていいことッ!と悪いことがあるッ!」
キリカ「二度とそんな口聞けないように声帯ブチ斬ってやろうかッ!ああ!?」
杏子(い、いきなりプッツンしやがった……暗黒空間だって?)
杏子(こいつの心の中の方がバリバリ裂けるドス黒いクレバスだッ!)
キリカ「私と織莉子の愛と絆を侮辱しやがっ――」
織莉子「キリカ!」
キリカ「ッ!」
579: 2012/12/28(金) 21:18:03.00 ID:w6fA4+mN0
キリカ「お、織莉子……」
織莉子「淑女失格だわ。直りなさい」
キリカ「ご、ごめんなさい……」
織莉子「佐倉さんに謝りなさい」
織莉子「……と、言いたいところだけど、佐倉さん。あなたの質問は私に対しても無礼に値するわ」
織莉子「敬意を払いなさい。キリカは、もしこの計画が失敗してレクイエムが生まれてしまった際……最後の希望なのだから」
杏子「…………」
織莉子「しかし、その質問……ごもっともというヤツでもあるわね。やっかいなことに」
キリカ「私が織莉子を裏切るなんてありえないよ!」
織莉子「えぇ。わかっているわ」
織莉子「でも、もしも裏切られるなんてことになれば……」
織莉子「……キリカに裏切られるということは、キリカに嫌われたということ」
580: 2012/12/28(金) 21:18:49.49 ID:w6fA4+mN0
織莉子「……私はキリカを愛している」
キリカ「!」
織莉子「嫌われるくらいならいっそ、キリカに殺されるのも悪くないと思っている……。それが答えよ」
杏子「マジかよ……こいつ……」
キリカ「お、織莉子……!君ってヤツは……!君ってヤツはぁ……!」
キリカ「私も織莉子を愛してるよッ!嫌いになるわけないじゃあないかァ――ッ!」
織莉子「キリカ……!」
キリカ「織莉子……!」
織莉子「キリカァー!」
キリカ「織莉子ォー!」
杏子(……あたしって本当に必要なのか?)
紅茶とクッキーが散乱したテーブル。
目の前で抱擁し合う二人。
疎外感を強く覚えた杏子は、ハァと一息。溜息をついた。
581: 2012/12/28(金) 21:19:26.12 ID:w6fA4+mN0
ドリー・ダガー 本体:美樹さやか
破壊力 A スピード A 射程距離 C
持続力 A 精密動作性 C 成長性 D
魔法武器の剣に取り憑いているスタンド。その性質は「転嫁」
自身へのダメージの「七割」を刀身に映りこんだ相手に『押しつける』能力。
さやかの特化された治癒能力とあらゆるダメージに対する半自動カウンターとの相性は抜群。
悪い結果が訪れても自分に落ち度はないはずだ。という責任転嫁願望から発現。
魔法武器に憑いているため、このスタンドは変身しないと扱えない。
A―超スゴイ B―スゴイ C―人間と同じ D―ニガテ E―超ニガテ
*実在するスタンドとデザイン・能力が多少異なる場合がある
591: 2012/12/29(土) 09:56:02.93 ID:JeiFXyZo0
#11『インタールード(間奏曲)』
――翌日
日が傾きかけ景色が橙色に染まる頃。
杏子は屋台で買った人形焼きを食べながら、壁にもたれかかって、待っていた。
緊張がないこともない。
シビル・ウォーという能力を得てから、杏子は「捨てる」という行為と言葉にも敏感になっている。
自分が「捨てた」存在……ゆまと会うことになるためである。
杏子「……来たか」
杏子は人形焼きを一気に詰め込み、半ば強引に飲み込むことにした。
592: 2012/12/29(土) 09:57:45.87 ID:JeiFXyZo0
まどか「何かお腹空いちゃったなぁ」
さやか「どっかで食べてく?」
まどか「うーん。いいや。今晩はクリームシチューだから」
ほむら「鹿目さんクリームシチュー好きだものね」
まどか「うんっ。だからパパ、いつもたくさん作ってくれてるの」
まどか「……あれ?わたし、ほむらちゃんにクリームシチューが好きってこと話したことあったっけ?」
ほむら「あ」
ほむら「え、えっと……あ、あるよ!前に!わ、忘れちゃったの?」
さやか「何を慌ててるんだ?」
まどか「?」
まどか「……あっ、ほむらちゃん。肩……」
ほむら「え?」
593: 2012/12/29(土) 10:03:05.19 ID:JeiFXyZo0
ほむら「……あ、これは……」
さやか「毛?……ってまたエイミ~の毛かい?ほむら」
ほむら「気付かなかった……じゃあ今日一日中ついてたことに……」
まどか「エイミーにモテモテだね」
ほむら「モ、モテモテって……」
さやか「一体何をどうしたらそこまで懐かれる訳?あたし何て思い切り避けられる」
まどか「さやかちゃんは嫌がってるのに尻尾摘んだりしてちょっかいだすからだよ」
さやか「うっ……だ、だって尻尾可愛いし気持ちいいんだもん」
さやか「あ、猫と言えばゆまちゃんって変身するとネコミミつけるけど……何で?」
ほむら「何でと聞かれても……」
まどか「あれネコミミなのかな?」
さやか「いやぁ、あれはどう見てもネコミ……」
594: 2012/12/29(土) 10:04:54.10 ID:JeiFXyZo0
さやか「……ん?」
まどか「どうしたの?」
さやか「いや、ほら、あそこ……」
ほむら「?」
さやかが指さした先には、人がいた。
赤銅色のポニーテール。緑のパーカー。ホットパンツ。
壁と口に手を当て、床を睨んでいる。
さやか「泣いてんのかな?」
ほむら「……ッ!」
ほむら「あ、あれは……!」
まどか「知ってる人?」
595: 2012/12/29(土) 10:06:00.02 ID:JeiFXyZo0
ほむら「佐倉さん……!?」
さやか「佐倉って……佐倉杏子?」
まどか「そ、その人って……!」
ほむら「いつか見滝原に来るとは思ってたけど……」
さやか「あいつ……か」
まどか「さ、さやかちゃん?」
さやか「あいつが……あいつがゆまちゃんを……!」
さやか「ゆまちゃんを見捨てたヤツッ!」
ダッ
ほむら「美樹さんッ!」
杏子はゆまのスタンド、キラークイーンに恐怖を覚え、突き放した。
それは杏子がスタンド使いであることを示している。
596: 2012/12/29(土) 10:07:45.99 ID:JeiFXyZo0
魔法少女の姿でないとは言え、突っ込むのはあまりにも愚直。
しかし突沸した感情を抑えきれず、さやかは走り出してしまった。
杏子「も、もがが……もごふ……!」
さやか「おい!そこのあんたッ!」
杏子「もが!?」
さやか「佐倉杏子でしょ!あんたは!」
杏子「もむむー!もぐぐ!」
さやか「何を言って……」
さやか「食っとる場合かァ――ッ!」
杏子「…………プハッ!」
597: 2012/12/29(土) 10:08:51.10 ID:JeiFXyZo0
杏子「あ゙ー……やっと飲み込めた」
杏子「いやぁー……やれやれ」
杏子「予想以上に人形焼きのアンコが熱くてよォ……」
杏子「いや、熱いのを知らずに丸飲みするようなアホなことをしたんじゃあない」
杏子「頭の方をチビチビ食べてたからさぁ……」
杏子「腹の方のアンコもいい加減冷めただろうと思ったんだよ……ところがどっこい熱々でさ」
杏子「全く……何が食っとる場合かー、だよ。あんたの都合なんか知るか」
さやか「何をしに見滝原に来たんだ!」
杏子「あぁ、そうだった。気になったんだがよ」
杏子「何であたしの名前がわかった?」
さやか「……ゆまちゃんを迎えに来たのか……?捨てたくせに」
598: 2012/12/29(土) 10:10:52.20 ID:JeiFXyZo0
杏子「……そうか。ゆまか」
杏子「だが百歩譲って名前は知ってても顔は知らないだろ」
杏子「マミにあたしの写真でも見せてもらったのか?」
ほむら「美樹さん!」
杏子「お……」
まどか「さやかちゃん!急に走って……!」
さやか「で、でもまどか……こいつ……!」
ほむら「…………」
ほむら「佐倉さん……」
杏子(こいつがさやか……そっちはまどか……)
杏子(消去法で考えると、こいつが暁美ほむらか?)
599: 2012/12/29(土) 10:13:46.51 ID:JeiFXyZo0
ほむら「……まさか、見滝原を狙って?」
まどか「……ッ!」
杏子「質問を質問で返すな……まぁいい」
杏子「……別に、だぜ」
杏子「強いて言うなら、見滝原の魔法少女ってのはどんな面してんのか見に来たってくらいさ」
さやか「…………」
さやか「何でだよ……」
杏子「ん?」
さやか「何でゆまちゃんを見捨てたんだよ!あんなに優しくていい子なのにッ!」
杏子「ゆまから聞かされてないのか?」
杏子「キラークイーンは危険すぎる。爆発に巻き込まれかねんからだ」
杏子「……だから、あたしは捨てた」
600: 2012/12/29(土) 10:14:46.31 ID:JeiFXyZo0
さやか「だ、だからって……!ゆまちゃんの気持ちを考えたことあんのかッ!」
杏子「他人の気持ちより自分の命のが大切って考えがあるからだ」
杏子「今気付いたけど……あんた、魔法少女」
杏子「そうか……契約したのか」
さやか「…………」
杏子「あんたは……違うようだな」
まどか「…………」
さやか「ぶっ飛ばすッ!」
ほむら「み、美樹さんッ!」
さやかは変身し、剣を構えた。
一方で杏子はうんざりとした顔をしている。
601: 2012/12/29(土) 10:16:08.55 ID:JeiFXyZo0
杏子「あのなぁ……あたしは戦いに来たんじゃあないぜ」
杏子「落ち着けよ」
さやか「ほむら!あんたは下がっていて……」
さやか「あたしはゆまちゃんのことが好きだ。とってもいい子だし、可愛いからな……」
さやか「ゆまちゃんに悲しい思いをさせたヤツがいるというなら、怒りがフツフツわき上がる!」
さやか「その怒り!あたしが先に晴らす権利がある!」
さやか「杏子とやら!このあたしが、あんたを!ゆまちゃんに土下座させてやる!」
杏子「うわ、うぜー……」
まどか「お、落ち着いてさやかちゃん!」
ほむら「美樹さん!あなたも下がって!」
602: 2012/12/29(土) 10:18:02.99 ID:JeiFXyZo0
ほむら「彼女にはあなたの知らない能力がある!経験もある!」
杏子「ふーん。あたしのことをよくご存じって感じだな」
まどか「さ、さやかちゃん……!」
さやか(……確かに、そうさ)
さやか(確かにあたしは魔法少女としてはペーペーさ……)
さやか(だが、あたしには……)
さやか(あたしには無敵の『スタンド』があるッ!)
さやか(あたしの魔法とこの能力さえあれば誰にだって負けるはずがないッ!)
さやか(あたしとこのスタンドのタッグは無敵だッ!)
603: 2012/12/29(土) 10:19:35.36 ID:JeiFXyZo0
さやか「行くぞオイ!」
杏子「…………」
杏子「おいほむら」
さやか「無視すんな!コラァ!」
ほむら「…………」
杏子「こんなのが側にいて喧しいと思わないのか?」
杏子「まぁいい……」
杏子「あんたは次にマミに『助けに来てもらおう』と思う」
ほむら「……!」
「それは……遅かったわね」
杏子「あ?」
604: 2012/12/29(土) 10:21:44.21 ID:JeiFXyZo0
ほむら「巴さん!」
杏子「…………既に、かよ。既に呼んでたのか。くそっ、カッコワリィ……」
まどか「マミさん!それにゆまちゃん!」
さやか「ど、どうしてここに……!?買い物の途中ですか?」
マミ「えぇ。たまたまね……」
ゆま「キョーコ……!」
杏子「……チッ」
杏子(こんなに早いなんて聞いてないぞ……)
マミ「……佐倉さん」
マミ「あなたって人は……あなたは……!」
杏子(だが、まぁいい。これで全員揃った)
605: 2012/12/29(土) 10:22:59.66 ID:JeiFXyZo0
マミ「何をしに、ここに……」
杏子「だから、別に何も……だよ。強いて言えば見滝原の魔法少女の顔を見に来たってところだ」
杏子「…………」
杏子(シビル・ウォーは、屋内に罪悪感を支配する空間を創る能力だ)
杏子(故に、屋外では全くもって役に立たない)
杏子(屋内限定というのが弱点の一つだ)
杏子(……ただし、人は成長する。成長は、弱さを受け入れること、あるいは克服すること)
杏子(封印されていた幻惑の魔法が使えるようになったからな)
杏子(幻惑の魔法で『擬似的な屋内』を創造すれば、それで結界を張ることが可能である)
杏子(弱点の一つは既に克服している!あたしとシビル・ウォーのコンビの方が無敵だ)
606: 2012/12/29(土) 10:26:21.33 ID:JeiFXyZo0
杏子(さらにこの能力には切り札があるからな……)
杏子(まぁ、魔女に対してはクソの役にも立たねぇ切り札だが……)
杏子(マミだろうが織莉キリコンビだろうが、魔法少女相手には必ず勝てる!)
杏子(ここで全員まとめて魔女にしてやろうか)
杏子(あいつらは相手するなと言った)
杏子(余計なことをせずに退散しろと言った……)
杏子(だが、あたしがその気になればやれないこともない……)
杏子(だがしかし……)
607: 2012/12/29(土) 10:27:31.36 ID:JeiFXyZo0
ゆま「キョーコ……!」
杏子「……ゆま」
ゆま「キョーコ……!会いたかったよォ……!」
ゆま「ゆま、信じてたよ……キョーコ、絶対に、絶対に迎え来てくれるって……」
ゆま「キョーコ……色々あったけど、ゆま……今でもキョーコのことが大好きだよ」
ゆま「ゆまね……勉強したの。虎か何かは自分の子を崖から敢えて突き落とすんだって」
ゆま「試練が必要なんだって」
ゆま「キョーコは、敢えてゆまを、突き落としてくれたんでしょ?」
ゆま「ゆまね……キラークイーンの使い方、ちゃんとわかったの。マスターしたの!」
ゆま「ほむほむに、爆発の『のーはう』を教えてもらったの!」
ゆま「だから、もう大丈夫だよ」
608: 2012/12/29(土) 10:30:12.89 ID:JeiFXyZo0
ゆま「キョーコを爆発に巻き込むなんてこと、絶対にないよ!怖くないよ!」
ゆま「キョーコ、お姉ちゃんと一緒に暮らしてたことあるんだよね?!」
ゆま「だ、だったら……ゆま達と三人で……ダメ?お姉ちゃん」
マミ「…………」
ほむら「笑顔で泣いてる……」
まどか「よっぽど……だったんだね」
ゆま「だから……だから……!」
ゆま「ゆま……ゆまは……」
ゆま「キョーコとも一緒にいたい!」
ゆま「一緒に暮らしたいよぉ!キョーコ!」
さやか「……くっ!」
609: 2012/12/29(土) 10:30:52.10 ID:JeiFXyZo0
さやか「こんなに……」
さやか「こんなにゆまちゃんが……あんたに再会できて喜んでいるのに!」
さやか「あんなにゆまちゃんを悲しませたというのに……ッ!」
さやか「あんたは何とも思わないのかッ!」
杏子「…………」
杏子(うぜぇ……)
ゆま「キョーコ……」
マミ「…………」
マミ『佐倉さん。聞こえる?』
杏子(テレパシー……)
610: 2012/12/29(土) 10:32:25.98 ID:JeiFXyZo0
マミ『佐倉さん……あなたはゆまちゃんの額を見たことある?』
マミ『私は一緒にお風呂に入って見たわ』
マミ『ゆまちゃんの額……前髪で見えないけれど、火傷痕があるのよ』
杏子「…………」
マミ『ゆまちゃんは虐待を受けていたのよ』
マミ『美樹さんの怒鳴り声や暁美さんがキレかけた時、必要以上に怯えていた……』
マミ『……今の私は、例え佐倉さんだろうと、ゆまちゃんの恩人であろうと……』
マミ『怒りに身を任してとんでもないことをしでかしかねない』
マミ『だからゆまちゃんには……そんな私を見せられない』
マミ『両親に見捨てられたトラウマをさらに抉ったあなたに対して、冷静でいられる自信がない』
杏子『つまり、帰ってくれってことか』
マミ『飲み込みが早くて助かるわ』
611: 2012/12/29(土) 10:33:21.80 ID:JeiFXyZo0
杏子「……安心しろ。あんたら」
杏子「本当にやりあおうってわけじゃあないんだ」
杏子「強いて言えば、あんたらの顔を見に来たとでも言おうか。ゆまも元気そうで何よりだ」
ゆま「じゃ、じゃあ……」
杏子「何がじゃあなのかはわからんが、あたしはもう帰るつもりだ」
ゆま「そ、そんなぁ……」
杏子「……一つだけ、聞きたい。マミ」
杏子「今も使い魔を全員潰してるのか?」
さやか(……あいつは、使い魔をわざと逃して魔女を増やそうとしているって……言ってたっけ)
マミ「えぇ……全て倒しているわ」
杏子「……そうか。いや、別にどうとも言わないけどさ。今はあんたのテリトリーだからな」
杏子「それじゃあな――」
612: 2012/12/29(土) 10:34:31.55 ID:JeiFXyZo0
ピキンッ
マミ「――ハッ!」
ほむら「こ、この反応は……!」
さやか「『結界』ッ!?」
まどか「えぇ!?こ、ここで!?」
杏子(案外遅かったな)
ほむら「魔女……!」
杏子「この魔女はあんたらの獲物だ……横取りしようなんざガッつきはしない」
杏子「先に帰らせてもらう」
ゆま「あっ、キョーコ……」
ゆま「い、行っちゃやだぁ……!」
杏子「…………」
613: 2012/12/29(土) 10:35:35.43 ID:JeiFXyZo0
杏子「別れの言葉として……あんたらに言っておくことがある」
杏子「聞いたことはあるか?『スタンド使いとスタンド使いは引かれ合う』という格言があるんだ」
杏子「もしかしたら、あたし達とあんたらが出会うのは必然だったのかもしれねぇな……じゃあな」
ほむら「……『達』?」
マミ「さ、佐倉さん!話はまだ半分も……」
さやか「マミさん!……行きましょう」
マミ「くっ……。……暁美さん。鹿目さんと一緒にいて。ほら、行くわよ。ゆまちゃん……」
ほむら「……はい」
ゆま「うぅ……キョーコォ……」
ゆま「むぅ……魔女が出てこなかったらもっとお話できたのに……!」
ゆま「ゆま怒った!『猫さん』ッ!」
さやか「わーっ!やめろ!キラークイーンはまだおさえろ!」
614: 2012/12/29(土) 10:37:12.86 ID:JeiFXyZo0
杏子「…………」
杏子「騒がしいなぁ……」
杏子「だが、余所余所しい同居人と豪邸で暮らすよりも……」
杏子「こう……あぁいう騒がしい方があたしの性に合ってそうではあるかもな」
杏子「……ふむ」
杏子「例の格言の理論で言えば、ゆまとマミが出会っているって時点でマミはスタンド使いだったりすっかもしんねぇ」
杏子「確証はないが……どうせその辺見極めろとは言われなかったからな」
杏子「いつ目覚めたのか?あるいは目覚めるのか?」
杏子「まぁいいさ」
「お疲れさま」
杏子「ん?」
615: 2012/12/29(土) 10:38:39.63 ID:JeiFXyZo0
杏子「織莉子じゃねぇか……何でここに?」
織莉子「下準備よ」
杏子「下準備ィ?」
織莉子「えぇ……『これ』よ」
杏子「ん……?」
杏子「な……こ、これって……!」
織莉子「数日後が楽しみね」
杏子「いや、楽しみでは……」
織莉子「一緒に帰る?」
杏子「適当にブラついて一人で帰る」
織莉子「あら、寄り道はダメよ」
杏子「あんたと一緒に帰ったらキリカが何を言うか」
織莉子「……ごめんなさいね。あの子ヤキモチやきだから」
616: 2012/12/29(土) 10:39:52.76 ID:JeiFXyZo0
Raymea(レイミ)
引力の魔女。その性質は「伝承」
『スタンド』という異世界、別次元の概念この世界に引き入れた。
あるいは創造した、または魂の持つ未知の力を覚醒させたとされる。
その力は必ずや平和と誇りに繋がるものだと信じている。
しかし魔女自身はそのスタンドを持っていない。
Cavenome(カヴェノメ)
引力の魔女の手下。その役割は「発現」
結界内の断層にある穴そのものが使い魔である。
近づいてきた者に、こっそりと歯形を残す。
歯形をつけられた者はスタンドという能力を発現する。
人によっては高熱を伴い、そのまま氏んでしまうこともあるらしい。
Sabbath(サバス)
引力の魔女の手下。その役割は「選別」
結界内を住民のように彷徨う、黒いマントを羽織ったマネキンのような姿。
「スタンド」の素質を見出し、カヴェノメへ誘導する。
レイミに敵意を向ける者、既にスタンドを持つ者は排除する。
則ちスタンドの素質のない者には、さもなくば氏への道。
619: 2012/12/29(土) 20:44:26.91 ID:JeiFXyZo0
#12『クリーム』
――数日後
学校。三年生の教室。
マミは今、英語の授業を受けている。
魔法少女と勉学の両立は、ハッキリ言って難しい。
特にマミは三年生……則ち、受験生である。
魔法少女、家事、勉学、子守り。巴マミは忙しい。
マミ(……眠い)
マミ(昨夜、ゆまちゃんがなかなか寝つかないものだから……)
マミ(あぁ、眠いわ。瞼がストーンと落ちそう……)
マミ(……寝たらダメよ。巴マミ……私は優等生で通ってるんだから……)
マミ(今までだって頑張ってきたじゃない……!)
620: 2012/12/29(土) 20:44:57.27 ID:JeiFXyZo0
教諭「それじゃあ、この文の訳を――」
マミ(仮主語や分詞構文で複雑そうに見えるが……内容自体は簡単)
マミ(単語の意味さえわかれば文章は完成する……)
マミ(Funky……熱狂か、原始だったか……幻想ではないわね)
マミ(確か……原始……そう。"Funky music"は原始の音楽)
マミ(大丈夫……眠気に襲われても……頭は働く……)
教諭「じゃあ、巴さん。直訳でもいいので日本語にして読んでみてください」
マミ「……!」
マミ(……いけるわ!)
621: 2012/12/29(土) 20:45:38.27 ID:JeiFXyZo0
「お姉ちゃんッ!」
マミ「ハイィッ!?」
マミ「……え?」
マミ「……う、嘘……?」
「ハァ……ハァ……!お、お姉ちゃん!」
マミ「ゆ……ゆ……」
マミ「……『ゆまちゃん』ッ!?」
教諭の淡々とした声くらいしか聞こえなかった教室に響く、高い声。
ざわめく教室。
教室にいる全員が声のする方を見る。
そこにいたのは、黄色い球のついたヘアゴムで結われた、ツインテールの童女だった。
頬を紅潮させ、はぁはぁ、と魔女や使い魔との戦いで聞き慣れている……普段通りの息切れ。
622: 2012/12/29(土) 20:47:28.11 ID:JeiFXyZo0
ゆま「お姉ちゃん見っけ!お姉ちゃん!大変なのォッ!」
マミ「ゆまちゃんッ!」
マミ「ど、ど、どど、どうしてここに?!」
ゆま「忍び込んできた!」
マミ「ダ、ダメでしょォッ!お留守番してなさいって言ったでしょ?!」
ゆま「鍵閉めたもん!」
マミ「そうじゃあないッ!」
ゆまはマミを見つけるや否や呆然とする人々を尻目によたよた走る。
そして棒立ちのマミに飛びついた。胸に頭が埋まる。
視線が集中していることにマミは今気が付いた。遅れてゆまも悟った。
マミ「…………」
ゆま「……ゆま、お邪魔した?」
マミ「…………うん」
623: 2012/12/29(土) 20:48:26.57 ID:JeiFXyZo0
マミ「え、えっと……お、お騒がせしました」
マミ「こ、この子は……その……」
マミ「し、親戚の子で……訳あってウチで預かってまして……」
ゆま「千歳ゆまです!お姉ちゃんがお世話になってます!」
マミ「と、とにかく!失礼しますっ!」
ゆま「しつれーしました!」
マミ「き、来なさい!ゆまちゃん!」
ゆま「あぁん!待ってぇ!」
マミ(ああっ!思い切り!思い切り見られてるわ!)
マミ(目立ってしまった……!あまりよろしくない形で目立ってしまった!)
マミ(は、恥ずかしい……!)
624: 2012/12/29(土) 20:49:56.67 ID:JeiFXyZo0
マミ「……もう!ゆまちゃん!」
ゆま「お姉ちゃん……怒っちゃいやぁ」
マミ「学校まで来てあなた……!」
マミ「美樹さんから貰ったゲーム飽きちゃったの?」
ゆま「それよりも聞いて!」
マミ「それよりも、じゃあないでしょ」
ゆま「キョーコが!キョーコがぁ!」
マミ「……佐倉さんがどうしたの?」
ゆま「ここに『いる』って!」
マミ「……ごめんなさい。今、なんて?」
ゆま「キョーコが『ここにいる』って言ってたの!」
625: 2012/12/29(土) 20:51:29.49 ID:JeiFXyZo0
マミ「……なんですって?」
マミ「佐倉さんが……『学校』にいるっていうの!?」
ゆま「うん!」
マミ「ど、どうして……」
ゆま「キョーコがテレパシーで、お姉ちゃんの学校にいるから来いって言って……」
ゆま「ゆまもわかんないの」
マミ「そ、そんな……」
マミ「一体……何をしようと言うの……?」
ゆま「キョーコ……」
マミ「……佐倉さん」
マミ「……一体、一体どうして、そしてどこに……」
626: 2012/12/29(土) 20:52:26.57 ID:JeiFXyZo0
マミ「何か聞かされてない?」
ゆま「んーん。そればっかりはわかんない……」
マミ「うーん……」
マミ「……何やらさっきから下の方が騒がしいわね」
ゆま「うん」
マミ「……え?」
ゆま「お姉ちゃん?」
マミ「こ、これ……!」
ゆま「へ?」
ふと目に入った、移動教室のため今は空室となっている教室。
施錠されて中には入れない……はずである。
627: 2012/12/29(土) 20:53:48.73 ID:JeiFXyZo0
その教室の中央付近に、黒いカーペットのようなものがある。
何かしらの物体であると思ったそれを、よく見てみる。
それは「穴」だった。
床に円形の穴があいている。殆ど歪みのない、綺麗な円。
ゆま「え!?な、何、これ……!?」
マミ「あ、穴……!?どうしてこんな所に……」
『仁美に何をしたッ!?』
マミ「あ、穴から声がッ!」
ゆま「さやかの声だッ!?」
マミ「ここ……真下は暁美さん達の教室……!」
628: 2012/12/29(土) 20:54:30.77 ID:JeiFXyZo0
『貴っ……様ァァァァッ!』
ゆま「さやか……!」
マミ「ま、まさかッ!」
マミ「ゆまちゃん!」
ゆま「うん!」
マミは変身し、手の平から細いリボンを出した。
リボンを鍵穴に通し、開錠する。
ゆまはマミが変身した様子を見て、追って変身した。
二人は教室に侵入し、穴へ走り寄る。
マミ「ゆまちゃん。私に捕まって!」
ガッシ!
ゆま「う、うん!どうするの?!」
マミ「この穴を降りて暁美さん達と合流するわッ!」
629: 2012/12/29(土) 20:55:58.81 ID:JeiFXyZo0
――時を少し遡る。
二年生の教室。
ほむら達は今、英語の授業を受けている。
魔法少女と勉学の両立は非常に難しい。
さやかは特に影響を受けている。
昨日実施された英単語テストは十点満点中二点だった。
一方ほむらは、ループ中同じ内容の授業を何度も受けている。
そのため、難しいことは特にない。
ただし、それ故に油断をしてしまう。
和子「はい。この文の主語である"They"……さて、この"They"は何のことをいってるのでしょうか。あてますよ」
さやか(あたるな……あたるな……!)
まどか(指されたくない……指されたくない……!)
630: 2012/12/29(土) 20:58:49.10 ID:JeiFXyZo0
和子「関係代名詞に注目して、さらに接続詞に注意します」
和子「どれが動詞なのかを見極めなければなりません」
和子「文章そのものは難しそうですね。カンマの多い文は大変です」
和子「……さて?この大変な文の主語である"They"とは何か」
和子「誰にしましょうか、なぁ~……と」
ほむら「…………」
和子「…………」
ほむら「…………」
和子「…………」
ほむら「…………」
和子「……暁美さん」
631: 2012/12/29(土) 21:00:42.71 ID:JeiFXyZo0
和子「……ずいぶんと……まぁ、気持ちよさそうですねぇ」
ほむら「……すぅ」
和子「んっふっふ……随分と可愛い寝顔じゃあないですか」
まどか(ほ、ほむらちゃんが寝てる……!)
さやか(結構優等生な感じのキャラで頑張ってたのに……)
仁美(あー……)
和子「あ、け、み、さ~ん?」
ほむら「…………うにゃ?」
和子「おはようございます」
ほむら「…………あ」
ほむら「……す、すみません」
632: 2012/12/29(土) 21:02:59.16 ID:JeiFXyZo0
和子「お疲れですか?それとも、先生の授業退屈?」
ほむら「い、いえ……その……」
和子「ところで、この"They"の意味、わかる?」
ほむら「え?えっと……前の文の『生産・分配・消費』……?」
和子「は、はい、正解です……」
まどか「おぉ~……流石ほむらちゃん」
さやか「どこか抜けてる秀才……萌えか。これが萌えなのか……!」
仁美「流石……です、わ……ねぇ」
さやか「仁美さっきから何か様子が変だよ。具合悪い?」
仁美「あ、いや……い、いえ……その、大丈夫でしてわよ?」
さやか(動揺してる……やっぱりあたしに気を使ってるのかなぁ……恭介のこと)
さやか(……もういいのに。気にしなくたって)
ガラッ
633: 2012/12/29(土) 21:04:00.05 ID:JeiFXyZo0
「失礼します」
和子「え?」
ほむら「……へ?」
「どうも。こんにちは。先生」
和子「は、はぁ……こんにちは」
「おはようございます。皆様」
和子「えっと……あの、どちら様……でしょうか?」
まどか「な、何……?」
さやか「誰……?」
仁美「…………」
「私……『美国織莉子』と申します。以後お見知り置きを……」
634: 2012/12/29(土) 21:06:56.55 ID:JeiFXyZo0
ざわめく教室の中、織莉子と名乗る少女は、和子に向けて会釈した。
銀色のサイドテール、高質な洋服、ロングスカート。
肩にカバンを提げている。上品な佇まいをしている。
織莉子は辺りを見回した。そしてほむらと目が合う。
織莉子はニコリと微笑んで見せた。ほむらは訳も分からず会釈して返した。
和子「えっと……来校者の方?アポは取ってありますか?」
織莉子「……」
織莉子「どうやら、伝わっておられないようですね……」
和子「私は聞いておりませんが……」
635: 2012/12/29(土) 21:08:11.78 ID:JeiFXyZo0
和子「来校者でしたら、来校者カードを提げてください」
織莉子「来校者カード?」
和子「貰っていないんですか?受付に置いてあるはずですが……」
和子「首から提げれるようになってるので、次からは提げて校内をまわってください」
織莉子「気を付けます」
和子「それで……何か御用ですか?」
織莉子「用?用ですか?」
織莉子「そうですね……」
織莉子「早速で申し訳ないのですが、みなさん」
和子「?」
織莉子「今から我々は、あなた達を『皆頃し』にします」
636: 2012/12/29(土) 21:08:49.70 ID:JeiFXyZo0
ほむら「ッ!?」
まどか「へ?」
さやか「……今、あの人何て言った?」
仁美「……皆頃し、とか何とか」
和子「…………は?」
織莉子「英語の授業中でしたか……では、Massacre(マサクゥル)というものです」
突然現れた謎の少女と、ブッ飛んだ発言。
「三年の巴さんとどっちが胸でかいか」等と呑気に内緒話をしていた男子も、思わず目を見開く。
教室の空気が固まった。静止の世界となる。
637: 2012/12/29(土) 21:09:57.38 ID:JeiFXyZo0
和子は平和な日常でくすみかけていた、教諭の勘が働いた。
織莉子から感じる「嫌な臭い」を察知したのだ。
織莉子「あなたの次のセリフはこう……」
織莉子「みなさん落ち着いて、離れて」
和子「み、みなさんッ!」
和子「落ち着いて!離れてくだ――ハッ!?」
織莉子「不審者に対してはまず距離を置く。妥当ですね。先生」
638: 2012/12/29(土) 21:11:12.91 ID:JeiFXyZo0
和子の大声を皮切りに、ざわめいた教室に悲鳴があがる。
この少女が不審者であるとは誰も思わなかったのだ。
こんな自然な流れで現れるとは思わなかったのだ。
まどか「な、何ッ!?何なのッ!?」
さやか「う、うあおおッ!?」
仁美「こっち!こっち!」
ほむら「――ッ!」
和子「暁美さんも離れてッ!」
織莉子「あらあら、大変なことになってるわね」
639: 2012/12/29(土) 21:12:31.63 ID:JeiFXyZo0
生徒達は教室の端に偏った。
一部の男子は拳を構え精一杯の威嚇をしている。
一部の女子は互いに身を寄せ合って怯えている。
和子は生徒達より一歩前に立つ。ゴクリと唾を飲んだ。
まどか、ほむら、さやか、仁美は四人で固まって、織莉子の様子を窺っている。
ほむら(間違いない……)
ほむら(あの指輪……魔法少女だ!)
ほむら(テリトリーを狙って来たのだろうか……!?)
ほむら(鹿目さんの家に来た魔法少女兼スタンド使いみたいに……ど、どうする!?)
ほむら(まさか……学校に攻め込んでくるだなんて……!)
ほむら(これじゃ、大勢の人を巻き込んでしまう!)
ほむら(あり得ない!)
640: 2012/12/29(土) 21:13:32.33 ID:JeiFXyZo0
さやか『ほむら!どうすんの!?変身する!?』
ほむら(テレパシー……)
ほむら『で、でも……クラスのみんなにバレてしまいます……』
ほむら『それは……色々と不都合があります。変身はマズイかも……』
ほむら『それに、向こうも変身していない!』
ほむら『……でも、もし攻撃を仕掛けようものなら、すぐに変身できるようにしてください!』
さやか『ガッテン!』
織莉子「……何にしても、距離は取るのはいい判断ね」
織莉子「いつだったか、不審者対応訓練で似たようなことをした……」
織莉子「でも、そんなしょうもないことで『私達』から対応できると思って?」
641: 2012/12/29(土) 21:15:08.30 ID:JeiFXyZo0
織莉子は肩に提げた鞄に手を入れ、何やら細くて黒い枝のような物を何本か手に取った。
すると、織莉子はヒョイ、と生徒群に向けて放り投げる。
――瞬間。織莉子の背後に人影。
まどかとさやかと仁美はそれを理解している。
まどか「あッ!」
仁美「あ、あれは……」
さやか「スタンドッ!?」
ほむら「え?」
織莉子「受け身の対応者は必要ない」
642: 2012/12/29(土) 21:16:41.26 ID:JeiFXyZo0
今の動揺の隙に、目の前が薄暗くなった。
織莉子の放った枝一本一本が『大きくなった』のだ。
ガサガサした外面が見る見る目に見えて目立ってくる。
和子「き、きゃああああああ!?」
和子の叫びをトリガーに、教室全体が再び悲鳴に包まれた。
ほむら「こ、これはッ!?」
まどか「す、スタープラチナァッ!」
「オラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
ドガガ ガガガ ガガ ガガガガ
スタープラチナはその拳で目の前の物を殴った。
それはバキバキ音を立てて折れていく。
織莉子が投げた枝が「大木」に変化したのだ。
643: 2012/12/29(土) 21:17:19.79 ID:JeiFXyZo0
仁美「あ、ああぁっ!」
さやか「や、ヤバイ!こいつ!スタンド使いだッ!」
和子「あ……ああ……!?」
「オラァァァオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!」
ほむら(ま、間に合わな――)
バキッベギベギッ
五、六本の大木は、和子の頭上を通り抜け、まどかが殴り砕いた場所が折れた。
『他』の大木はそのまま『生徒達の上』に落ちてきた。
ドブチャッ
弾けるような音とともに悲鳴が途絶えた。
折れた大木の下から、赤い液体が流れ出る。
ほむらとさやかは、たった今変身を終えた。
644: 2012/12/29(土) 21:18:50.04 ID:JeiFXyZo0
スタープラチナは、迫り来る大木を砕き、潰されることを回避した。
しかし、助かったのは本体のまどかと周りにいたさやか、ほむら、仁美だけだった。
織莉子の眼中に入らなかった和子は、顔を真っ青にして、ガタガタ震えていた。
まどか「……う、うぅ!……クッ!」
さやか「そ、そんな……そんな……!」
仁美「…………」
ほむら「ひ、酷い……!ざ……残酷すぎるッ!」
和子「ああ……あああ……!」
和子「そんな……ことって……そんな……!」
和子「みんな……あああ……ああ……!」
和子「ああああ……あああああああっ!」
645: 2012/12/29(土) 21:19:41.52 ID:JeiFXyZo0
和子「よ……よくもッ!」
和子「よくもォォォッ!」
和子「よくも私の生徒達をォォッ!許せないッ!」
枝が巨大化したような大木が頭上を通られ、何も出来ずに生徒の殆どを氏なせてしまった。
和子は泣いた。教諭人生における宝物を壊された。
守れなかった。奪われた。誇りを崩された。
その無力感はすぐさま怒りに変換された。
織莉子に向けて、叫んだ。生徒を怒鳴る時よりもずっと低く荒い。
微塵とも愛が込められていない、怒りと憎悪の叫び声。
しかし……その場にいるはずである対象の姿は、既になかった。
646: 2012/12/29(土) 21:20:47.22 ID:JeiFXyZo0
和子「……え!?」
ほむら「い、いないッ!?」
さやか「ば、馬鹿なッ!今の一瞬で逃げたのか!?」
まどか「い、一体どこへ……」
和子「ど……どこへ行ったの……?」
和子「……いや……待って……!?」
和子「どうして他のクラスは……何も気付いていないの?」
和子「こんな異常事態に……!?どうして……?!」
和子「ま、マズイ!私、パニクっている!」
ほむら「せ、先生……!」
和子「あ、そ、そうだ!ぶ、無事ですか皆さん!?大丈夫!?」
さやか「あたし達は大丈夫です……まどかに助けられた」
647: 2012/12/29(土) 21:22:23.50 ID:JeiFXyZo0
ガォンッ!
「氏」は立て続けに表れる。
日常生活において一度も聞いたことがないような音がした。
削るような、飲み込むような、消すような、壊すような、何とも言えない音。
音のした方を見ると、天井にポッカリと穴があいていた。
不審者がいなくなったと思ったら、今度は天井が『なくなっ』ていた。
和子「ッ?!」
まどか「て、天井がッ!」
ほむら「天井に……円形の……穴?」
仁美「ど、どういうこと、ですの……!?い、一体どんなスタンド……!」
さやか「て、敵は二人いるッ!白いヤツと穴あけたヤツッ!」
648: 2012/12/29(土) 21:23:10.02 ID:JeiFXyZo0
和子「……皆さん!避難してください!」
和子「何が起こっているのか全く見当もつきませんが……」
和子「ここは私が何とかします!皆さんは逃げて!」
仁美「な、何を言って――」
和子「いいから行って!ここは何かヤバ――」
まどか「あッ!?」
さやか「せ、先生ッ!」
ほむら「ッ!?」
和子「……ど、どうしました?」
649: 2012/12/29(土) 21:23:55.36 ID:JeiFXyZo0
まどか達の見た光景。
和子の背後に、黒い魔法少女の姿があった。
まどかと目が合うと、その者はニヤリとその口角をあげた。
まどか「あ……あああ……!」
ほむら「あ、あの人は……!」
和子「……もしかして」
和子「私の後ろに何かいる?」
「私のことかい?」
和子「――ッ!」
和子「ス、スケアリ――」
ガォンッ!
650: 2012/12/29(土) 21:24:28.80 ID:JeiFXyZo0
まどか「……!」
さやか「え……」
仁美「そ、そんな……」
ほむら「う……そ……!」
和子が消えた。
左腕があった場所に、左腕そのものがあった。
そしてゴトッと音をたてて左腕が床に落ちた。
左腕を残して和子の存在が抹消された。
眼帯をつけた黒い魔法少女――キリカが現れた。
髑髏をモチーフにしたかのようなフードを被っている。
キリカは今、和子が最期に立っていた場所。そこに立っている。
和子は、クリームで暗黒空間に飲み込まれてしまったのだった。
651: 2012/12/29(土) 21:25:55.55 ID:JeiFXyZo0
キリカ「早乙女先生は……」
キリカは、その頭に被っていた漆黒色のフードを脱いだ。
そして「粉微塵になって氏んだ」と、淡々とした口調で続けた。
この場に生きている人物――まどか、ほむら、さやか、仁美は、何も言えない。
キリカ「やぁ、久しぶりだねぇ。覚えてる?」
ほむら「あ……あなたは……!」
キリカ「やぁほむら。私はさっきの美少女の仲間だ」
キリカ「私達は君達を頃すよ」
ほむら「う……くっ!」
ほむら(い、今の能力は……なんだ?)
652: 2012/12/29(土) 21:27:57.56 ID:JeiFXyZo0
ほむら(天井に穴をあけて……早乙女先生を頃した……)
ほむら(り、理解できない……いや、したくない)
ほむら(私が想像している事実を認めたくない……)
ほむら(あの能力は……あの能力は……!)
ほむら(触れた物を『消す』ッ!)
ほむら(お、恐ろしい!恐ろしすぎるッ!)
ほむら(今しかない!)
ほむら(彼女を頃すには!今しかない!止めるとかではなく『頃す』しかッ!)
ほむら(ソウルジェムを撃ち『砕く』しかないッ!)
ほむら(ソウルジェムが砕けると魔法少女が氏ぬことは……美樹さんもゆまちゃんも鹿目さんも……巴さんさえまだ知らない)
ほむら(そのことを知られてしまうのは……後のことが思い悩まれるけどやむを得ないッ!)
ほむら(時を止めて、ソウルジェムを撃ち砕――)
ガシッ
653: 2012/12/29(土) 21:29:50.92 ID:JeiFXyZo0
ほむら「え……?」
ほむらの腕が掴まれた。
その力加減は、今までで感じたことがない。
痛いくらいに強い。
腕を掴んでいる者は……緑色の髪をしていた。
仁美「ストップ……ですわ」
ほむら「え!?し、志筑さん!?」
ほむら「う、腕を……」
まどか「ひ、仁美ちゃ……?」
654: 2012/12/29(土) 21:30:49.63 ID:JeiFXyZo0
ほむら(そんな……何故、止める……?)
ほむら(ま、まさか……志筑さん……あなたも!?)
ほむら(あなたが……その、ティナー・サックスとやらを、敵のために使うと言うの!?)
さやか「な、何をし――」
仁美「私の幻覚で周りの教室の様子を隠しているのですわ……」
仁美「……あぁもうこの口調メンドクセー」
まどか「ッ!?」
ほむら「なッ……!?」
仁美「あたしだよ」
ほむら「そ……そんな……さ、さく……」
655: 2012/12/29(土) 21:32:39.26 ID:JeiFXyZo0
仁美「当て身」
ガスッ
ほむら「うっ……!」
まどか「ほむらちゃんッ!」
ガクリ
仁美「これで時間停止は一時しのぎにだが封じ――」
「オラァッ!」
仁美「ウオアッ!?」
ピタァッ
まどか「くっ……う……ほ、ほむらちゃんを盾に……!」
仁美「び、ビックリしたぁっ!何すんだよ!やめろよ!」
さやか「あ、あんたはッ!まさか!そんな!」
仁美だった者は、いつの間にか姿を変えていた。
ウェーブがかった緑の髪は、赤銅色のポニーテールに変わっている。
おっとりした目は鋭い目、見滝原中学校の制服は赤い衣装。
656: 2012/12/29(土) 21:34:10.41 ID:JeiFXyZo0
志筑仁美の姿は佐倉杏子の姿に変わっていた。
杏子「よぉ、また会ったな」
まどか「あ、あなたは……!」
さやか「な、何で杏子が仁美の姿に……!」
さやか「――ハッ!?」
さやか「ひ、仁美は!?仁美をどうしたッ!」
杏子「へぇ、意外と鋭いんだな」
杏子「幻惑魔法で仁美というヤツに化けた。既にな」
杏子「仁美ってヤツと恭介ってヤツは既に頃したぞ」
まどか「えっ……」
さやか「なッ!?」
657: 2012/12/29(土) 21:36:06.67 ID:JeiFXyZo0
杏子「頃した証拠欲しいか?ねぇよそんなもん。遺体を持ってこいとでも言うか?」
まどか「そ、そんな……ひ、仁美ちゃんが……!?上条くんが……!?」
さやか「…………!」
杏子「まぁ、悪く思うな。スタンド使いも処理するって契約なんでね」
杏子「はぁ~あ。あたしも堕ちたもんだな。こんな無意味な殺生を割と平気でやってのけてしまえるだなんて」
杏子「だが、スタンドのおかげで心因的理由で封印されていた幻惑魔法も、こうしてまた使えるようになった」
さやか「貴……様……」
さやか「貴っ……様ァァァァッ!」
杏子「おぉ、怖い怖い……」
ダッ!
さやかは剣を振り回し、怒りに歪んだ表情で杏子に向かって地面を蹴る。
杏子は、気を失ったほむらを抱えているまどかを一瞥し、教室から走って出ていった。
キリカは二人が出ていく様を腕を組んで眺めていた。
658: 2012/12/29(土) 21:37:28.68 ID:JeiFXyZo0
まどか「さ、さやかちゃん!」
まどか「い、行っちゃった……」
まどか(……さやかちゃんを追うか、マミさんと合流するか)
まどか(それも考えなきゃだけど、気になるのは……忽然と姿を消した……美国織莉子って人……)
まどか(……そして、目の前の……)
キリカ「……ん?」
まどか「うぅ……!」
まどか「仁美ちゃん、上条くん、早乙女先生、みんな……」
まどか「酷い……酷いよ……そんなのってないよ……!」
キリカ「あぁ……茶番はもういいかい?」
まどか「この……この……!」
まどか「この、人でなしっ……!」
659: 2012/12/29(土) 21:37:54.30 ID:JeiFXyZo0
まどかは気を失ったほむらを抱えて、目の前の敵に注意を払う。
クラスメート含む二年生のほとんどを頃し忽然と姿を消した白い魔法少女。
担任である早乙女先生を消滅させ、不敵に微笑む黒い魔法少女。
スタープラチナはいつでも強烈な拳の一撃を放てる体勢を構える。
まどか「スタープラチナ!警戒して……!」
キリカ「それが君の能力か……」
キリカ「スタープラチナ……ものスゴイスピードなんだそうだね……」
キリカ「さっきの大木をオラオラ言って防御したんだろう?」
キリカ「あれで三人守り切ったんだ。予想以上という称号を与えよう」
キリカ(時間を遅くしても、それをカバーできる程早かったりするのかな……?)
660: 2012/12/29(土) 21:41:26.22 ID:JeiFXyZo0
キリカ「だがしかし」
キリカ「魔法少女でスタンド使いの私……」
キリカ「ただのスタンド使いの君……」
キリカ「挙げ句に気絶しちゃった情けない人一人抱えてさぁ」
キリカ「どう控えめに見たって私のが有利だよ」
まどか(確かに……そうだ。しかし……逃げ道はない)
まどか(やるしかない……!)
キリカ「個人的に君には恨みはないが……そうなる運命だったとして受け入れなよ」
キリカ「魔女の結界に入ったことあるんだろう?君はあの時既に氏んでいた、ということでさ」
まどか「くッ……!」
「レガーレッ!」
キリカ「魔法少女でスタンド使いの私……」
キリカ「ただのスタンド使いの君……」
キリカ「挙げ句に気絶しちゃった情けない人一人抱えてさぁ」
キリカ「どう控えめに見たって私のが有利だよ」
まどか(確かに……そうだ。しかし……逃げ道はない)
まどか(やるしかない……!)
キリカ「個人的に君には恨みはないが……そうなる運命だったとして受け入れなよ」
キリカ「魔女の結界に入ったことあるんだろう?君はあの時既に氏んでいた、ということでさ」
まどか「くッ……!」
「レガーレッ!」
661: 2012/12/29(土) 21:42:28.30 ID:JeiFXyZo0
シュルッ!
キリカ「うッ!?」
まどか「ッ!?」
ダンッ!
突如、キリカの足下が光った途端、床からリボンが飛び出してきた。
地面から蔦のように生えたリボンはしなりながらキリカを束縛した。
そして、天井の穴から二人、飛び降りてきてまどかとキリカの間に割り込んだ。
キリカ「リ、リボン……!」
まどか「マミさんッ!」
662: 2012/12/29(土) 21:43:53.44 ID:JeiFXyZo0
マミ「大丈夫だった!?鹿目さん!」
ゆま「まどかお姉ちゃん!怪我はない!?」
まどか「え?ゆまちゃん!?何で!?」
ゆま「後で!」
まどか「後でって……」
マミ「あ、暁美さん……!」
まどか「不意を突かれたんです……」
マミ「……気を失っているだけのようね」
ゆま「ほむほむ……」
ゆま「……あっ?」
663: 2012/12/29(土) 21:44:41.60 ID:JeiFXyZo0
ゆまの意識は教室の状況に向いた。
折れた大木の一部が教室に横たわっていた。その下から赤い液体が流れている。
そこから少し離れた位置、天井にあいた穴の真下の位置に左腕が落ちている。
マミ「――ッ!」
ゆま「……うぅ」
マミ「ゆまちゃん!見ちゃダメ!」
マミ「…………なんて、酷いことを……!」
キリカ「くっ……!う、動けない……!不意を突かれた」
マミ「許せない……!」
まどか「気をつけてマミさん!あの人の他に白い魔法少女がさっきまでいたんです!敵は少なくとも三人います!」
まどか「で、でも、白い魔法少女は急にいなくなって……」
664: 2012/12/29(土) 21:45:50.07 ID:JeiFXyZo0
ゆま「まどかお姉ちゃん!さやかは?!」
まどか「さ、さやかちゃんは、その……杏子って魔法少女を追って行っちゃった……」
マミ「……!」
ゆま「キョーコ……!」
マミ「……そう」
マミ「ゆまちゃんは美樹さんを追って!」
ゆま「へ?」
マミ「…………」
ゆま(……さやかはキョーコを追った。ってことは……)
ゆま「……うん!わ、わかった!」
マミ「鹿目さんは、暁美さんを抱えて逃げて」
まどか「……はい!」
ダッ
キリカ「……おいおい、束縛してるからって私をほったらかしで話を進めるんじゃあないぞ」
マミ「あなたの相手は私がするわ……!」
665: 2012/12/29(土) 21:48:03.52 ID:JeiFXyZo0
――廊下
まどかはほむらを背負い、どこへ行くべきか考えながら走った。
力強いスタープラチナのおかげか、ほむらが軽いからか、気を失った人間一人を背負っていることにあまり負担を感じない。
まどか「……なっ!?」
まどかは足を止めた。目の前の光景に、これ以上進む術を失った。
廊下に「木」が敷き詰められている。
それも背の低くて細い木ではなく、あきらかに大木をそのまま押し込められていた。
まるでビーバーの作ったダムを間近で見ているかのようだった。
まどか「うぅ……!ろ、廊下に木が……」
まどか「織莉子って人が放り投げた木の枝が大木に変化したように……」
666: 2012/12/29(土) 21:48:43.43 ID:JeiFXyZo0
まどか「こうやって、大木を廊下に詰め込んでいたんだ……」
まどか「そういうことができる能力なんだ……」
まどか「……敵は三人しかいない。確実に三人」
まどか「四人とかそれ以上いるなら既にわたしと対峙させているし……」
まどか「こうやって逃げ道を塞ぐ意味がない」
まどか「つまり……こういう大木は他にもたくさん用意してあるはずだ……」
まどか「スタープラチナで破壊しながら進むしかない……」
まどか「…………どの教室にも、人がいない」
まどか「そう考えると……」
667: 2012/12/29(土) 21:49:38.03 ID:JeiFXyZo0
まどか「やっぱり……」
まどか「他のクラスの人も……先生達もきっと……」
まどか「だから……あんな騒動があったのに静かだったんだ」
まどか「仁美ちゃんに変装してた杏子って人は……幻影を使うらしいから……」
まどか「多分それで私達も気付かなかったんだ……」
まどか「…………」
まどか「……閉ざされた道は、自分の力で切り開くッ!」
まどか「スタープラチナッ!この木を何とかしてッ!」
「ウオオオオオォォォォォ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
668: 2012/12/29(土) 21:50:51.53 ID:JeiFXyZo0
――教室
マミとキリカは対峙する。
キリカは赤いリボンに束縛されている。
マミは白いマスケット銃の銃口を、キリカの額に向けている。
マミ「……呉さん」
キリカ「おや?私の名前を知っているんだね」
マミ「あなたは越えてはならない一線を越えた。私はあなたを魔女と同類、非人間として見させてもらうわ」
マミ「いえ……あなたも、と言ったほうがよさそうね」
キリカ「君、杏子とは知り合いだったんだってね?」
キリカ「杏子の件については、同情する」
キリカ「彼女も私も、言ってしまえば人頃しさ。既に同類だ」
マミ「……ッ!」
669: 2012/12/29(土) 21:52:20.42 ID:JeiFXyZo0
マミ「……不意打ちで束縛したあなたを撃ち頃すのに、罪悪感なし!」
キリカ「ふーん、そう……」
キリカ「だったらどうしてペチャクチャ喋ってさっさと撃たないんだ?」
キリカ「心理学者じゃあないが、断言出来る。それは君自身が、人を撃ちたくないと思っているからだ」
キリカ「君は怖いんだよ……人を撃つのが」
マミ「…………」
キリカ「…………」
マミ「ファイア(発砲)ッ!」
キリカ「躊躇したなッ!この甘ちゃんめッ!」
ドッギャァ―――z___ン!
670: 2012/12/29(土) 21:53:18.33 ID:JeiFXyZo0
キリカ「時間を遅くしたッ!」
キリカ「これが私の固有魔法!」
キリカ「銃弾もゆっくりさ」
キリカ「私以外が遅くなったということは、その銃撃も簡単に避けられるということ……」
キリカ「さらに、このうざったいリボンを斬るだろ……?」
キリカ「……よし。そんで、君に難なく近づいて……」
キリカ「何とか頑張って君の首を斬り落とす」
キリカ「あっけないな。これが私にプラ――」
ブシャッ
671: 2012/12/29(土) 21:53:44.37 ID:JeiFXyZo0
キリカ「ンッ!?」
ドサッ!
キリカ「ぐへっ!」
突如、ズキリとした痛みを感じ、膝に力が入らなくなった。
立つことができず、転倒する。床に頬を打ちつける。
キリカ「……え?」
キリカ「わ、私……何を……?」
キリカ「足が、痛い……!そして、何で私……倒れて……!?」
キリカ「――ハッ!」
キリカ「う、うおおおッ!?わ、私の『脚』がッ!?」
672: 2012/12/29(土) 21:54:46.21 ID:JeiFXyZo0
キリカの左足膝、白いハイソックスが局所的に赤く染まっている。
膝の関節が砕けたらしく、動きそうにない。
キリカ「う、うぅ……!」
キリカは爪を床に突き刺し、立ち上がる。
松葉杖のように体を支え、マミを見た。
銃撃は一発のみ。銃口は自身が倒れていた位置に向いている。
マスケット銃以外の攻撃をしたようには見えない。
このダメージがマミの『スタンド攻撃』によるものであることはすぐに理解した。
しかし、攻撃された瞬間が見えなかった。
673: 2012/12/29(土) 21:55:53.80 ID:JeiFXyZo0
キリカ(あ……脚をやられてしまった……!)
キリカ(既に、だったのか……恐らく、リボンを巻き付かれたその時に既に……!)
キリカ(ソックスが真っ赤っかで傷は見えないが……)
キリカ(それ程パワーのあるスタンドではない。もしもっと強力なら足は切断されていただろうからね)
キリカ(スタンドでリボンに何か仕掛けを……?)
キリカ(いや、それともスタンドそのものが小さいとか透明とかで、氏角を突いたとか……)
キリカ(むしろこのリボンそのものがスタンドなんじゃあなかろうか?)
キリカ(……まぁ、いい。悔やんでも喰らってしまった結果しかない)
キリカ(それよりも……この足じゃ、マズイ)
キリカ(時間を遅くしても、私自身が自由に動けなければ意味がない……)
キリカ(このまま戦えば!魔力を浪費するだけ!治療に回す程余裕なんかない!)
674: 2012/12/29(土) 21:56:35.79 ID:JeiFXyZo0
キリカ「くぅ……!や、やはり、経験の差が出たのか……?」
キリカ「クゥ……魔法を解除する……」
キリカ「リボンを切断するためだけに時間を遅くしたって感じだよ。これじゃ……」
マミ「――ハッ!」
キリカ「……ハ、ハハハ……ハハ」
マミ「あなた……その傷……」
キリカ「君ィ……やるじゃあないか……」
キリカ「時間を遅くしたのに……脚をやられてしまった……」
キリカ「スタンド攻撃だよね?全く……見えなかったよ……」
マミ「……スタンド」
675: 2012/12/29(土) 21:57:24.37 ID:JeiFXyZo0
マミ「……なるほど」
キリカ「私は一体……何をされたんだ?ん?」
キリカ「どこかに隠れて攻撃したのかな……?ここは教室。机の中や影とか氏角が多いからね……」
キリカ「大穴は実はリボンがスタンドだった、なんて思っちゃったりなんかして」
マミ「……あなたが近接武器ということがわかったからこそ、脚を狙いたいと、強く願ったわ」
マミ「どうやら、私のスタンドは不本意ながら不意打ちが得意なようね」
キリカ「どうやら?……そうか。そういうことか」
キリカ「怒りとかそういうので、たった『今目覚めた』ということか……」
キリカ「はは……参ったね。土壇場で『新しい能力の覚醒』か……」
キリカ「少年漫画とかでよくある『勝ちフラグ』ってヤツじゃあないか」
マミ「…………」
キリカ「だが……私は負けないね」
676: 2012/12/29(土) 21:58:02.02 ID:JeiFXyZo0
マミ「……今のでわかったことがある」
マミ「あなたの武器とそのフードみたいなスタンドは、遠距離から攻撃はできないようね」
キリカ「もしできていたら最初から攻撃していたって言うんだろう?」
マミ「さらに、スタンドと魔法の両立ができない」
キリカ「……ッ!」
マミ「違う?」
キリカ「……ご明察だ。何が決め手でわかったんだ?正解だよ……」
キリカ「どうせバレちまったんだ。先に言っておこう。私のスタンドには弱点がある」
キリカ「強力な能力である代わりに……今使った、時間を遅くする魔法は使えなくなる……」
キリカ「それは……私がその魔法の効果範囲内から『いなくなる』からだ」
マミ「……いなく……なる?」
677: 2012/12/29(土) 21:59:48.87 ID:JeiFXyZo0
キリカ「そう!私のスタンドは『暗黒空間』という概念を創造し、その中に隠れることだッ!」
キリカ「私に触れることは氏を意味する!『クリーム』ッ!」
ガバッ!
キリカは床に刺した爪を消し、片足立ちになり、両手を首の後ろへ向ける。
そして勢いよくフードを被った。髑髏を象った「クリーム」の瞳が妖しく光る。
キリカはそのまま体重を後ろへ傾ける。
後方へ倒れそうになったところ――
マミ「――き、消えたッ!?」
空間の「穴」が背後に生成されていたかのように、その穴に飛び込むように、キリカは姿を消した。
暗黒空間に身を隠したのだ。
678: 2012/12/29(土) 22:02:14.39 ID:JeiFXyZo0
マミ「と、透明化の能力……!?」
マミ「……『触れることは氏を意味する』」
ガォンッ!
マミ「ッ!」
マミ「え……!?」
マミ「つ、机が……『消えた』ッ!」
マミ「あの時の床……もとい、天井と同じッ!」
マミ「マズイ!な、何かマズイ!」
マミは身を翻して左方向へ回避した。
体勢を整えたと同時に、背に向けていた強化ガラスの一部が消えた。
透明な壁に、コルク栓を抜いた後のような、綺麗な切り口の穴があいた。
マミが目の前の光景に驚いていると、突如として廊下にキリカの頭が浮かぶ。
679: 2012/12/29(土) 22:03:13.02 ID:JeiFXyZo0
マミ「こ、これは……!」
キリカ「やはり避けたね……」
キリカ「これが、クリームの能力だ。暗黒空間を創造し、その中に隠れる能力」
キリカ「一々こうやって、暗黒空間から顔を出さないと外の様子が見えないっていう弱点もある」
キリカ「まぁその代わり、中にいる限りは無敵という素晴らしい能力なんだけどさ」
キリカ「気に入らないこともあるんだ。こうやって暗黒空間から顔を出すと端から生首が浮いてるみたいになること」
キリカ「あとクリームのヴィジュアルそのものがあまり好みじゃないこと。まぁ最近はちょーっと愛着沸いてきたよ」
マミ「クッ!」
ガシャァァン!
キリカ「あっ、ちょっと!逃げないでよ!」
マミはマスケット銃の銃身でガラスを殴り破り、廊下へ飛び出す。
キリカは暗黒空間に再び隠れ、マミを追う。
680: 2012/12/29(土) 22:03:41.12 ID:JeiFXyZo0
一定距離移動しては顔を出し、一定距離移動しては顔を出し、その繰り返し。
顔を出した瞬間を狙われないように、覗くタイミングをズラし、座標をズラし、工夫をする。
マミはその様子、後方をチラチラと見ながら走る。
全力ではない。逃げるのではなく、あくまで戦うために走っている。
マミ(……2、3、5、7、11)
マミ(落ち着いて……素数を数えて落ち着くのよ……13、17……)
マミ(素数は1とその数字でしか割れない孤独の数字……私に勇気を与えてくれる……19、23)
マミ(あの能力は、危険すぎる)
マミ(触れたらその時点で……その部分がなくなってしまう)
マミ(相手が悪すぎる。暁美さんなら、顔を出した瞬間に時間を止めれば何とでもなるでしょうけど……)
マミ(いえ、だからこそ、暁美さんが狙われたのよ。幻惑で不意を突いて……)
マミ(私は今、逃げるのではない……)
681: 2012/12/29(土) 22:04:12.38 ID:JeiFXyZo0
ガォン!ガォン!
床、壁、天井が削られていく。
マミは離れ過ぎず近すぎずの速度を保ち移動する。
校内は静かだった。何人の生徒が既に犠牲となっているのか、考えたくもない。
マミ(階段……)
マミ(ここから降りれば誰かしらと合流できる蓋然性が高い……)
マミ「……しかし、私は!私がこのクリームを相手しなければならないッ!」
マミ「むしろ引き離さなければッ!上に行くッ!追ってきなさい!」
マミは階段を駆け上がる。この階層の上は屋上。
キリカは暗黒空間から顔をひょっこりと出し、マミの行方を確認した。
キリカ「へぇ、下りないんだ……フフ……」
キリカ「織莉子の読み通り」
682: 2012/12/29(土) 22:05:36.10 ID:JeiFXyZo0
マミは屋上へ出た。
やたら豪勢な柵で囲まれている、物静かで、晴れた日には爽やかな青空を眺めることができる場所。
魔法少女という秘密を理解してくれている友達との思い入れのある場所。
空は青かった。雲一つない。
マミ「……やれやれ、ね」
マミ「どうしてこんなことになってしまったのやら……」
マミ「……いる」
マミ「私が降りて味方と合流、逃走を敢えてしないで屋上に現れる……よくわかったものね」
友達と談笑しながら昼食を食べていたベンチが無惨な形になっている。
ベンチの残骸の傍らに、ぽっかりと穴があいている。
683: 2012/12/29(土) 22:06:39.27 ID:JeiFXyZo0
マミ「クリーム……既に……」
マミ「既にここにいる」
マミ「…………」
マミ「あなたの能力は、屋上とか見開けた場所がベストフィールド」
マミ「それは……『常に何かを飲み込まなければならない』から!」
マミ「教室では、机や壁を飲み込んでしまう。障害物を飲み込まれるタイミングを読めば、軌道がわかってしまう!」
マミ「故に、ここでは軌道のヒントが見えない。いること自体がわかりにくい……」
マミ「なら……そんな場所に先回りされたら危険極まりない」
マミ「しかし何の問題もないッ!」
マミ「それを理解した上で屋上に、開けた場所に来たッ!」
684: 2012/12/29(土) 22:07:12.15 ID:JeiFXyZo0
マミ「トッカ・バッリエーラ(リボンの結界)ッ!」
マミの手から、赤いリボンが縦横無尽に勢いよく飛び出す。
リボンは柵に結びつき、リボン同士は絡み合い、屋上にあやとりのような景色を作り出す。
マミ「リボンの結界を張った!」
マミ「あなたが飲み込んだ床や机がヒントになったわ」
マミ「クリームは、常に何かを消しながらでないと移動ができない!」
マミ「クリームはこのリボンの結界を……」
マミ「軌跡のヒントを飲み込んで移動する」
マミ「リボンが消える瞬間を追っていけば、それは則ち、あなたが移動した軌跡となるッ!」
マミ「つまり!『軌道』が読めるわ!」
マミ「常にリボンを生成し続けなくちゃいけないという困った要素はあるけどもねッ!」
685: 2012/12/29(土) 22:07:50.67 ID:JeiFXyZo0
リボンの結界は、マミの読み通り穴を空けていく。
リボンは、消える度にゆらりと揺れて再び結び合い、自動修復される。
リボンが消えた瞬間。そこにキリカがいる。
マミ「……そこにいるのね。読めたわ」
マミ「あなたの能力は、隠れている間は外の様子が見えない……」
マミ「もし見えているならもっと正確な先回りができるはずだし……そういう自己申告もした」
マミ「必ず、必ず外の様子を見るために顔を出してくるタイミングがあるッ!」
マミ「見えていない間に逃げられては本末転倒。だから必ず。それもそう長い間隔をあけずに現れるはずッ!」
マミ「そこを狙い撃ってやるわッ!」
ジャキィ
686: 2012/12/29(土) 22:08:36.11 ID:JeiFXyZo0
――暗黒空間内
キリカ(……そろそろ、かな)
キリカ(そろそろ様子を見てみよう)
キリカ(下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法)
キリカ(念のため空中で覗く。たまたま目の前にってなったら困るし)
キリカ(まぁ一番困るのは暗黒空間にいる間に逃げられていることなんだけどね)
キリカ「よっと……」
キリカ「……ん?」
キリカは暗黒空間から上半身を出す。
外は、赤い線が前後上下左右に走っている。
キリカ「な、何だこれ……」
キリカ「ヒモ?」
キリカ「いや……違う」
キリカ「これは……リ……『リボン』……!」
687: 2012/12/29(土) 22:09:15.16 ID:JeiFXyZo0
「そこッ!」
キリカ「ハッ!」
声のする下方を向くと、マミが巨大な大砲を構えていた。
正確には、巨大化したマスケット銃。
銃口はキリカの顔面、その中央を狙っている。
マミ「あなた、覚悟して来てるのよね……」
マミ「人を頃したってことは、殺される覚悟できてるってことよね。私も頃す覚悟は既につけたわ」
キリカ「し、しまっ……!」
キリカ「う、うわあアァァァァァァッ!?」
マミ「ティロ・フィナーレッ!」
ドギャァァ――――z__ンッ!
マミ「勝ったッ!」
688: 2012/12/29(土) 22:10:23.20 ID:JeiFXyZo0
キリカ「…………」
キリカ「いっ……たぁ~……!」
キリカ「痛いなぁ!もうッ!」
マミ「!?」
キリカ「あぁ、チクッとしたぁ……」
キリカは涙目で鼻の頭を抑えてマミを睨みつける。
宙を浮くキリカの上半身はゆっくりと降りてくる。
マミ「え……?」
キリカ「やっぱり読まれちゃったか……クリームの軌道……流石はベテラン。素晴らしい立ち回りだ」
キリカ「よく飲み込みながらでないといけないって特徴に気付いたね」
689: 2012/12/29(土) 22:11:19.67 ID:JeiFXyZo0
マミ「ど、どうして……」
マミ「ティロ・フィナーレの直撃を喰らったのに……!」
マミ「何で効いていないのッ!?」
キリカ「それは自分自身に聞いてみなよ」
マミ「……」
キリカ「無駄に豊満な胸に聞くといい」
マミは自分の手を見た。手首に小さな切り傷がある程度で特に異常なし。
次に銃を見た。異常なし。
空を見た。いつもより広く感じた。リボンの結界が消えている。
ゆっくりと降りてくる敵を見た。みるみるとその姿は大きくなる。
足下にはサッカーボールくらいの大きさの石がある。
マミ「……ん?」
690: 2012/12/29(土) 22:12:26.46 ID:JeiFXyZo0
マミ「な、何……この……石?石よね……」
マミ「何でこんな大きな石が、屋上に……」
マミ「え……?」
マミ「リ、リボンの結界も……なくなっている……」
マミ「嘘……」
『予知通りよ……』
マミ「ッ!?」
『私の予知……「屋上のこの座標であなたはキリカに攻撃する」……』
空の方から声がする。背後を振り返る。
マミの目の前に、靴のつま先があった。
ついさっきまでそんなものはなかった。
691: 2012/12/29(土) 22:13:35.71 ID:JeiFXyZo0
マミは視線を上にあげる。
白いカーテンのような衣装を着た少女がいた。
異常なまでに巨大な少女が、自分を見下している。
少女が影になってよくは見えないが、その傍らに人影――スタンドが見える。
マミ「まさか……まさかそんな……!」
マミ「私の体が……」
マミ「『縮んでいる』ッ!?」
織莉子「…………」
織莉子「リトル・フィート」
織莉子「私の能力……ものを小さくする」
692: 2012/12/29(土) 22:15:35.43 ID:JeiFXyZo0
織莉子「あと、自分自身も小さくなれるわ……」
織莉子「小さくなって『既に』私はあなたの服の中に隠れていた」
織莉子「具体的にはあなたがキリカを縛り付けた時には既に……よ」
織莉子「すごいことよね。飲み込まれるかもしれないのに、あなたの服に隠れるだなんて……」
織莉子「それも、『私もろとも巴マミを飲み込んだりはしない』という『予知』を見たからできら芸当よ……」
織莉子「私が直接干渉しない限り、予知は確実。学校に忍び込んだ時点でそういう予知だった」
織莉子「何をどうしても、あなたは今まで逃げられるという真実」
織莉子「いつからタイマンで戦っていると錯覚していたのかしら」
マミ「……!」
キリカ「そういうことだよ。私は最初から君をクリームで飲み込むつもりはなかったんだ」
キリカ「最も、織莉子がいるとわかっていた以上、むしろうっかり飲み込まないように立ち回ったんだ」
キリカ「折角のティロ何とかも、君自身が小さくなってしまったことで銃が縮んで威力も半減以下……」
マミ「そん……な……!」
693: 2012/12/29(土) 22:16:38.61 ID:JeiFXyZo0
キリカ「リボンも細くなって見えやしないよ」
織莉子「……何はともあれ、よくもキリカの肌に傷をつけたわね」
ガシィッ
マミ「ぐッ!」
屈んだ織莉子は、マミを握った、というより、拾った。
マミは棒立ちすることしかできなかった。
マミ「う、うぅっ……!」
織莉子「さて、あなた、頃す人間は殺される覚悟を持つべきだと言ったわね」
織莉子「あなたもその覚悟をできていると言ったわよね……?」
織莉子「あなたは私のキリカに殺意を向けた」
キリカ「えへぇ……『私の』だなんて……照れるなぁ」
694: 2012/12/29(土) 22:17:13.16 ID:JeiFXyZo0
織莉子「キリカの可愛い顔に傷をつけた。そして、私の目的の邪魔をした……」
織莉子「よって判決は……」
キリカ「氏刑ッ!」
マミ「ッ?!」
織莉子「はい、キリカ。あーん」
マミ(さ、37、41、43、47、53、59、61……)
キリカ「……そのセリフはどうかと思うんだ」
マミ(67!71!73!79!83!89!97!)
マミ「い……」
マミ「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」
ガォンッ
695: 2012/12/29(土) 22:19:25.82 ID:JeiFXyZo0
織莉子はクリームにマミを投げ入れた。絶叫がプツンと途絶える。
マミがこの世界からいなくなってキッカリ三秒後。キリカは暗黒空間を解除した。
そして背筋を伸ばし、大きな欠伸をする。
キリカ「ん~……っとぉ、ふぅ。いっちょあがりだね。次はどうする?」
織莉子「散々干渉したから最早未来はわからないわね」
織莉子「ターゲットは今どこかしら」
キリカ「そっか。うーん。外に逃したりなんかすりゃ、それはとっても面倒なことになるね」
織莉子「そうね……」
織莉子「そのために、小さくした大木を持ち込んでそこら中にバラ撒いては元の大きさに戻す、という策をとってはいるけど……」
キリカ「廊下を塞ぐのも楽じゃないねぇ」
織莉子「……ところで、キリカ。この学校の生徒の中に、スタンド使いは他にもいるかしら?」
キリカ「さあ?」
696: 2012/12/29(土) 22:20:05.81 ID:JeiFXyZo0
織莉子「それはそうよね。区別できたら苦労ないわよね」
キリカ「そもそも皆頃しにしちゃうからできても意味ないし」
織莉子「まぁそれはそうだけれども……さて、暁美ほむらを頃しに行くわよ」
キリカ「そうだね」
キリカ「……ねぇ織莉子。ちょっと時間いいかい?大事なことなんだ。聞いてもいい?」
織莉子「何?」
キリカ「鹿目まどかのことなんだけど……」
織莉子「えぇ」
キリカ「彼女には魔法少女の素質がある。もし、私達を殺せって願われたらどうしようか」
織莉子「…………」
キリカ「もしもだよぉ。もしものこととは言え、絶対にないとは言えないよぉ!」
キリカ「いや、こんなギリギリで聞くのもおかしいとは思うけどさ。今思ったんだ」
織莉子「心配ないわ」
697: 2012/12/29(土) 22:24:18.66 ID:JeiFXyZo0
懐に白い手を入れて、何かを取り出した。
ガラス質で、ストロベリーと書かれたラベルが貼られている。
織莉子「これを見て」
キリカ「……『ビン』?」
キリカ「って織莉子、そのビンどっから出したの?」
織莉子「帽子から」
キリカ「嘘ッ!?」
織莉子「嘘よ」
織莉子「衣装にポケットを作ったわ。リトル・フィートで小さくした物をビンに入れて、さらにポケットに入れ直して持ち運んでるのよ。カバンは机に置きっぱなし」
キリカ「小さくした物……?じゃあ何か入ってるの?このビン……」
織莉子「もっと近くで見てみれば……」
キリカ「んー……?」
キリカ「……あーっ!」
698: 2012/12/29(土) 22:25:15.39 ID:JeiFXyZo0
ラップと輪ゴムで蓋をされたジャムのビンの中に、白い猫のような生き物がいた。
キリカはこいつを知っている。その大きな尻尾と赤い目を知っている。
キリカ「しろまる?!久しぶりじゃあないか!」
QB「ん、ここは……」
QB「マミ達のいる学校じゃないか……いつの間に」
キリカ「こんなところで何してるの?縮んだ?」
QB「わけがわからないよ……」
織莉子「作戦の事前準備として、私が『捕まえて』おいたのよ」
699: 2012/12/29(土) 22:27:22.21 ID:JeiFXyZo0
織莉子「リトル・フィートで小さくしてビンの中に入れて既に監禁している」
織莉子「監禁だなんて柄でもないから内緒にしてたのだけれど」
キリカ「秘密にする必要どっちみちないよ……」
織莉子「とにかく、もしキュゥべえが何かの間違いでビンから抜け出せたとしても……」
織莉子「このサイズならグラウンドを往復するだけでも数時間はかかる。鹿目まどかの所へは行けないわ」
織莉子「テレパシーも距離からして届かない。届いたとしても自分の居場所がわからない」
キリカ「へぇ~」
織莉子「これで鹿目まどかの契約は防げている。ということよ」
織莉子「まぁもちろん……そんなスタンド使い、早く抹頃するに越したことはないのだけれど」
織莉子「スタープラチナ……実際に見てみたけど、予想以上に骨が折れそうだわ」
キリカ「うーん……」
700: 2012/12/29(土) 22:27:58.71 ID:JeiFXyZo0
織莉子「でも、私とキリカがいれば、敵ではない」
織莉子「鹿目まどかはリトル・フィートで小さくして踏みつぶして頃すことにしましょう。クリームで飲み込んでもいいのだけれど」
キリカ「…………」
織莉子「ん?」
キリカ「ね、ねぇ、織莉子……前から気になってたんだけど……」
織莉子「何?」
キリカ「その……キャラ変わった?」
織莉子「キャラ?」
キリカ「あ、いや……やっぱいいや……何でもない」
織莉子「?」
701: 2012/12/29(土) 22:29:03.67 ID:JeiFXyZo0
「ェ~」
キリカ「……うん?今何か言った?」
織莉子「え?」
「テェ~」
織莉子「て?」
キュルキュルキュルキュルキュル
キリカ「え? ……何?何の音?」
「コッチヲ見テェ~~~」
キュルキュルキュルキュルキュルキュル
織莉子「は……?」
キリカ「な、何?これは……」
702: 2012/12/29(土) 22:30:36.51 ID:JeiFXyZo0
キリカ「……『戦車』?」
油の切れた蝶番のような音をたてながら、合成音声のような声を発する物。
足下のそれは、キャタピラのついた鉄塊のような、戦車の玩具のような物。
この玩具の未来を見るまでもなく、織莉子は瞬時に危険な物であることを理解した。
しかし、間に合わなかった。
織莉子「ッ!」
キリカ「お、おりッ……!」
カチリ
キリカ「はうッ!?」
織莉子「ああッ!」
703: 2012/12/29(土) 22:32:01.65 ID:JeiFXyZo0
戦車の玩具が轟音をたてて爆発した。
織莉子は理解した。この爆発は、千歳ゆまの能力。キラークイーンの一部。
理解しても遅かった。
「今ノ爆発ハ魔法少女ダネェ~~~」
これの正体。「魔力」を探知して自動追尾するキラークイーン第二の爆弾。
既にゆまは攻撃を仕掛けていた。今、屋上に追いついた。
その名は「猫車」
ドサッ!
肉を裂き体から血を吹き出すキリカと織莉子は爆風に飛ばされた。
704: 2012/12/29(土) 22:32:56.74 ID:JeiFXyZo0
クリーム 本体:呉キリカ
破壊力 A スピード C 射程距離 E
持続力 C 精密動作性 C 成長性 E
『暗黒空間』という概念を創造・干渉する能力。その性質は「孤立」
フードのような姿をしている。それを被ることで暗黒空間を創る。
その中に隠れることで姿を消し、浮遊して移動ができる。
移動中に触れたものは暗黒空間へ飲み込まれて粉微塵にされる。
暗黒空間の大きさはキリカの身長を直径とした球の範囲。
暗黒空間内外で干渉ができないため、隠れている間はキリカの魔法は作用しない。
孤独感や暗闇のような心底の精神が反映されて発現した。
A―超スゴイ B―スゴイ C―人間と同じ D―ニガテ E―超ニガテ
*実在するスタンドとデザイン・能力が多少異なる場合がある
705: 2012/12/29(土) 22:35:14.66 ID:JeiFXyZo0
今回はここまで
結局何のスタンドかわからないままマミさんガォンされちゃいました。
マミさんのスタンドに期待していた方、申し訳ないです。
ちゃんとそれなりに理由はあるのですが、それはまぁ置いといて。
一方で早乙女先生はスケアリー・モンスターズのスタンド使いでした。
前作で出したからという、ほとんどゲスト出演みたいなノリですが。
結局何のスタンドかわからないままマミさんガォンされちゃいました。
マミさんのスタンドに期待していた方、申し訳ないです。
ちゃんとそれなりに理由はあるのですが、それはまぁ置いといて。
一方で早乙女先生はスケアリー・モンスターズのスタンド使いでした。
前作で出したからという、ほとんどゲスト出演みたいなノリですが。
714: 2012/12/29(土) 23:58:41.15 ID:JeiFXyZo0
さやか(こっ、こっ、こいつ……こっ、こいつがッ!)
さやか(こんなヤツが……!仁美を……恭介を……みんなを……!)
さやか(目の前にいるこの女がッ!あたしの目の前にいるこの女がッ!)
さやか「うおおおおおおあああああァァァァァッ!」
ダッ
杏子「……突っ込んでくるか」
杏子「と、いうことは近距離型のスタンド、といったとこか……?」
杏子「いや、固有武器が剣ということもあるし、そうだと決めつけるのは早いか」
杏子「おっと、危ねェ、ッとォ」
余裕を見せつけて相手の神経を逆撫でするような声を出した。
そのまま杏子は本棚の影に隠れる。
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その5】
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