1: 2013/02/23(土) 00:28:45.30 ID:UXI/hPOR0

この作品はまどマギ×ジョジョのクロスオーバーSSです。

また、前作

織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その1】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その2】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その3】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その4】
織莉子「私達が救世を成し遂……」キリカ「引力、即ち愛!」【その5】

の続編となっております。

前作の設定が引き継がれているので、今作だけを読むと展開が理解できない部分があると思います

前作からかなり期間が空いたこともありますので、結構長い作品ではありますが前作の設定を理解した上で今作をお読みいただければ幸いです


もう誰にも頼らない

2: 2013/02/23(土) 00:29:18.91 ID:UXI/hPOR0




この『物語』は私が歩き出す物語だ




3: 2013/02/23(土) 00:29:54.40 ID:UXI/hPOR0


青春から大人へ……という意味ではなく

未来へという意味で……


私の名前は『暁美ほむら』


最初から最後まで、本当に謎が多い概念

『スタンド』と出会ったことで……


4: 2013/02/23(土) 00:34:20.36 ID:UXI/hPOR0

#16『引力、即ち闘』


深夜。

一人の少女が安らかに眠っている頃、

一人の入院患者は、窓から病室を抜け出した。

『一仕事』を終えた少女は、ある高層建築物の屋上にいた。

我々はこの少女を知っている。いや、このまなざしとこの黒い長髪を知っている。

少女――暁美ほむらはファサ、と髪をかきあげた。

その左手には紫色の宝石が埋めこまれている。


ほむら「…………」

ほむら(まどか……)

ほむら(私は……あなたを守る私になりたい。……そう、誓った)

ほむら(私は、成長できたのかしら……あなたを守れる私に近づけているだろうか?)

5: 2013/02/23(土) 00:34:57.40 ID:UXI/hPOR0

ほむら(……私は、動揺をしてしまった)

ほむら(エイミーを見せつけられて、動揺をしてしまったから負けてしまった)

ほむら(だから、もうそんな心の弱さは捨てたつもりよ)

ほむら(例え、あなた以外の誰かがやむを得ない犠牲となっても……絶対に、動揺しないと誓った)

ほむら(あなた以外の誰が氏のうと、それがゆまちゃんやエイミーであろうと、絶対に……)

ほむら(絶対に必ずや!次こそあなたを守ってみせる!)

ほむら(あなたと交わした約束……必ず果たすッ!)

ほむら「…………」

ほむら「さて、と」

6: 2013/02/23(土) 00:35:32.94 ID:UXI/hPOR0

ほむら「病院に戻る前に、軍の基地とチンケな暴力団事務所からいただいてきた武器……」

ほむら「その整理でもしようかしら」

ほむら「……爆弾は作るべきか?」

ほむら「手榴弾を多量に手に入れた……」

ほむら「わざわざ作る必要はあるだろうか?」

ほむら「……いえ、あって困ることもないでしょう」

ほむら「えっと……」

ほむら「ハンドガン、ショットガン、ライフル銃、マシンガン、手榴弾、ロケットランチャー……」

ほむら「それから……これは――」

ほむら「――痛ッ!?」

7: 2013/02/23(土) 00:36:17.93 ID:UXI/hPOR0

ほむら「な、何……?」

ほむら「指を切った……どうして?」

ほむら「強いて言えばナイフ……」

ほむら「いや、しかし鞘がついている……だから切るような物は……」

ほむら「……え?」

ほむら「何、これ……?」

ほむら「『こんなの』……盾に入れた覚えがない……」

ほむら「いつ、どこでこんなものを……?」

ほむら「一体これは……?」


ほむら「『矢じり』……?」

8: 2013/02/23(土) 00:37:29.94 ID:UXI/hPOR0

――病院


あの夜から数日が経過した。

ほむらは病室のベッドで横になり、じっと天井を眺めた。

やらなければならないことがある時、何も出来ない時間はとても忌々しい。

かと言って、深夜でもないのに『脱走』でもすればバレて問題になる。それは「無駄なこと」だ。

結果的には、この忌々しい時間を黙って過ごすことが、最良で最短な退院への道。


ほむら「…………」

ほむら「今夜あたりね……」

ほむら「ヤツが生まれた時」

ほむら「……引力の魔女レイミ」

9: 2013/02/23(土) 00:37:58.36 ID:UXI/hPOR0

ほむら「現れるとすれば……必ず、葬らなければ」

ほむら「できることなら、生まれる前にはどうにかできれば……」

ほむら「レイミ……か」


『引力の魔女レイミ』

前の時間軸に現れた魔女。

廃墟の街並みのような結界を有し、影のような姿をしている。

引力の魔女の手下……使い魔には二種類いる。

一種は黒いマントを羽織ったマネキンのような姿をしている。

もう一種は黒い円、断層にあいた穴のような姿をしている。

そして、その穴の使い魔に噛まれると『スタンド』という能力が発現するらしい。

12: 2013/02/23(土) 00:51:49.82 ID:UXI/hPOR0

『スタンド』とは――レイミの呪い、その総称。

精神エネルギーが映像化・具象化したものである。

それは特別な能力を有している。

魔法とは別の能力。

そのスタンドという能力に、人々は振り回された。

その結果、前の時間軸は悲惨なこととなった。

ある種の事がらは氏ぬことより恐ろしい。

他者と異なり、優位に立てる能力を得ると、人はつけあがる。

魔法少女の縄張り争いの激化は、それが原因。

スタンドは人を変える。


13: 2013/02/23(土) 01:02:45.63 ID:UXI/hPOR0

前の時間軸、ほむらが「スタンド使い」から聞いた事柄。


スタンドには以下のルール・特徴が存在する。

1:スタンドは「スタンド使い」の意志で動き、あるいは自動的に動く。

2:スタンドはスタンドでしか攻撃できない。

3:スタンドが傷つけば、その「スタンド使い――本体」も部位相応に同じ傷(ダメージ)がつく。

4:「スタンド使い」が氏ねば、その本体のスタンドも消滅する。

5:ソウルジェムは「本体」にカウントされない。

――スタンドがどれだけ傷ついてもダメージのフィードバックはその「肉体」にしか及ばない。

しかし、本体に変化が及ぶ場合(小さくなる・異空間に隠れる等)ソウルジェムは衣服同様に扱われ、その変化に対応する。

ソウルジェムは魔法少女の魂であるから、当然破壊されれば氏ぬ。

スタンドが破壊された場合どうなるかは不明。

14: 2013/02/23(土) 01:07:25.47 ID:UXI/hPOR0

6:スタンド使いには「うまい」「ヘタ」がある。

7:スタンドに目覚めるとその血縁者も覚醒することがある。

――上条恭介は父親がスタンドに目覚め、その影響で発現していたらしい。

8:スタンドは一人につき「一能力」である。

9:スタンドは、その本体によっては、力として成長する場合がある。

10:スタンドはスタンドを使いにしか基本見ることができない。

11:スタンドは本体の性格に影響を与える場合がある。良い方向にも悪い方向にも、どう影響するかは不明。

12:スタンド使いとスタンド使いは「引力」のように引き合わされ出会いやすい。

13:スタンドは『レクイエム』と呼ばれる能力に進化することがあるらしい。原因は不明。

15: 2013/02/23(土) 01:08:35.78 ID:UXI/hPOR0

前の時間軸。

ほむらにはスタンドが目覚める可能性があった。

結果的にはその力は目覚めなかったものの、

それが『美国織莉子』と『呉キリカ』との出会いの要因となった。

織莉子は予知する能力を持つ。

そして『ほむらのスタンドが世界を滅ぼす』という予知をされたのだ。

正確には、ほむらはスタンドに目覚め、魔女化に伴い『レクイエム』へと進化する。

そのレクイエムが世界を滅ぼすということらしい。

美国織莉子と呉キリカは佐倉杏子を味方につけ、ほむらの抹殺に動いた。


――結論として、ほむら達は敗北した。

仲間であったマミもさやかもゆまも、そしてまどかさえも殺されてしまった。

16: 2013/02/23(土) 01:09:08.23 ID:UXI/hPOR0

ほむらと織莉子の決闘の時。

体育館にて、ほむらは織莉子と対峙していた。

ほむらは、自分を狙う理由を尋ね、織莉子の目的を知った。

戸惑いはあったものの、とにかく殺さなければと、

時間を停止してソウルジェムを銃で撃ち砕こうとした。

しかし、織莉子はほむらの時間を止めるタイミングを予知していた。

時間停止を発動する寸前に、織莉子は『囮』を投擲した。

それに動揺したため、時間停止のタイミングが遅れた。

それが敗因である。

17: 2013/02/23(土) 01:10:02.83 ID:UXI/hPOR0

ほむら「……動揺したから」

ほむら「あの時……予知されていたとは言え、やはり勝てたはずだ」

ほむら「あの時、美国織莉子がエイミーを使って動揺を誘わなければ……」

ほむら「私が動揺をせずに、冷静に時間を止めていれば……」

ほむら「美国織莉子を殺せていたし、エイミーも助けられていたはずだ……」

ほむら「……『感傷』のせいだ」

ほむら「だから、もう二度と……」

ほむら「二度とそんな感傷を持たない。冷静を最大の武器とせねば」

ほむら「感傷は心の弱さ……今後、決して……決して、そんなことがないように……」

ほむら「今度こそ、まどかを守る」

18: 2013/02/23(土) 01:10:48.66 ID:UXI/hPOR0

ほむら「……それにしても」

ほむら「一体どこで『こんな物』を拾ったのかしら……」

ほむら「盾に入れた覚えがないだなんて……」


数日前の夜。

ほむらは『調達』した武器を整理していた時。

盾に手を入れた際に指を切ってしまった。

血がすぐに止まったが、切った物が問題だった。

それは『矢じり』だった。

大きさはソウルジェムと同程度。

涙滴型の装飾が施されている。材質は石と思われる。

しかし中が空洞なのか、石にしては軽い。骨董品としては真新しい光沢。

うっかり指を切ってしまう程それは鋭利で、矢じりというより諸刃のようだった。

19: 2013/02/23(土) 01:11:24.59 ID:UXI/hPOR0

ほむら「無意識的に拾っていたということは……」

ほむら「少なくとも大した価値のあるものというわけではないと思う」

ほむら「値打ちのある骨董品とかならちゃんと保管してあるはず」

ほむら「それなら無造作に拾えるものではない……いや、何にしてもそういうものが武器庫に置かれるなんてことがあるわけない」

ほむら「材質は……やっぱり石、か」

ほむら「しかし……尚更、何故、そんなものが盾に入っていたのか」

ほむら「……気味が悪いわね」


今、その矢じりは眼鏡ケースの横に置いてある。

中身の『赤渕眼鏡』は既に髪を結っていた『紫のリボン』と共に捨てた。

眼鏡と同様にこの矢じりを捨てようかとも思ったが、しなかった。

何故しなかったのかはよくわからない。

20: 2013/02/23(土) 01:12:09.68 ID:UXI/hPOR0

コン、コン

ドアをノックする音。

咄嗟に矢じりを眼鏡ケースに入れる。没収されかねない。

矢は空の眼鏡ケースに丁度良い大きさだった。


ほむら「どうぞ……」

看護師「おはよーぅ。暁美ちゃーん」

ほむら「……おはようございます」


看護師が入室する。

彼女とは新しい時間軸になってから「初対面」になる。

「この時間軸の時間」では、眼鏡を外した日から数えて三日前ぶりに会う。

常時妙にテンションが高いのは気になるが「いい人で気のいい方」である。

21: 2013/02/23(土) 01:12:38.48 ID:UXI/hPOR0

看護師「カーテン開けましょうねー。シートも皺があるから引っ張っちゃう」

看護師「あら、暁美ちゃん眼鏡とって髪解いて……イメチェン?」

ほむら「……はい」

看護師「こうして見ると大人っぽいわね。心なしか声のトーンも落ち着いてるし。ベネ」

ほむら「……そうですか」

看護師「…………」

看護師(こ……この子の『面がまえ』……ほんの数日前に会った時こんな目をしている子じゃなかった……)

看護師(まるで十年も修羅場をくぐり抜けて来たような……スゴ味と冷静さと感じる目だわ……)

看護師(……と、まぁそれはさておき)

看護師「検温するわよン」

ほむら「はい」

22: 2013/02/23(土) 01:13:19.98 ID:UXI/hPOR0

看護師「……あれ?あれあれ?」

ほむら「……どうしました?」

看護師「……た、体温計がない」

ほむら「…………」

ほむら(この人は……いい人なんだけどどこか抜けてるのよね……)

看護師「おっかしーなー……確かに日誌と一緒に持ってきたはずなのに……」

看護師「……あ、あった。暁美ちゃん、拾ってくれてたの?」

ほむら「え?」

看護師「体温計。ベッドに落としちゃってたのね。ありがと」

ほむら(……あれ?)

23: 2013/02/23(土) 01:15:01.70 ID:UXI/hPOR0

看護師はほむらの手を指す。

手の平には体温計が確かに置かれていた。

しかし、ほむらには、ベッドの上に落ちたであろうそれを手に取った自覚がない。

そもそもベッドの上に落ちたのであれば音がして気付く。視界に入るはず。


看護師「シートの皺伸ばした時に落としたのかな?まぁいいや。そのまま検温しちゃって」

ほむら「……はい」

ほむら(いつの間に……私……体温計を持って……?)

ほむら(偶然手の平に落ちていたのかしら)


「考え事もしていたし」と、ほむらは気にしないことにした。

考えるべきは、体温計のことではなく引力の魔女のことである。

24: 2013/02/23(土) 01:15:45.81 ID:UXI/hPOR0

――夕方


ほむらは、ある人物に会いたいと思った。

夜ではいけない。夕方、ほむらは病院から抜け出すことにした。

夜以外の場合、どうしても「病室に戻らなければならない時間」というものを考慮しなければならない。

できることならば、外出許可を得て、正式にでかけたいとは思うが、

生憎、自分は症状がやっとよくなってようやく学校に通えるようになった体。

心配性な主治医が外出許可をくれるとは到底思えない。

魔法少女にとって、心臓病――むしろ心臓はあってないがごとく。

それでも、世間体は普通の病気がちの少女なのだ。

故に、抜け出すしかない。それも、特定の時間までに戻って、

ずっと病院の敷地内を歩き回っていたということにしなければならない。

25: 2013/02/23(土) 01:16:34.56 ID:UXI/hPOR0

『……誰にも頼らないだなんて、寂しいこと言わないで』


ほむら「…………」

ほむら「前の時間軸での……『あの人』の言葉」

ほむら「……所詮、そんな言葉は事情を知らない、当たり障りない他人事の慰めの言葉に過ぎない」

ほむら「あなたが錯乱して、私達を殺そうとしたこと……私は忘れない」

ほむら「しかし、私達を助けてくれたこともたくさんあった」

ほむら「まどか以外はいざという時は切り捨てる」

ほむら「そういう、当時の私の中途半端な覚悟」

ほむら「揺らいでいたそれを、あなたは『そっち側』に倒してしまった」

ほむら「…………」

ほむら「……『巴さん』……」

26: 2013/02/23(土) 01:17:45.38 ID:UXI/hPOR0

ほむら「今回からの私は、本当に、いざというとき、あなたでも見捨てる」

ほむら「既に私は『こっち側』にいる」

ほむら「必要以上な馴れ合いは、感傷を生む」

ほむら「前の時間軸……私は感傷のせいで、動揺のせいで負けた」

ほむら「だから、そういう覚悟をした」

ほむら「もう二度とそういうことがないように」

ほむら「…………」

ほむら「だから、敢えてこう言うわ」

ほむら「巴さん。今度こそあなたを『利用』させてください」

27: 2013/02/23(土) 01:18:57.46 ID:UXI/hPOR0

そこはマンション。

ほむらはチャイムを鳴らした。

会いに来たのは魔法少女として先輩である人物。

インターホンから聞き覚えのある声。


『はい、巴です』

ほむら「…………」

マミ『えっと……どちら様、でしょうか……?』

ほむら「……初めまして。私の名前は暁美ほむら」

マミ『…………』

ほむら今度あなたと同じ学校に転校します。二年生」

マミ『え、えーっと……?ちょっと待ってください』

ほむら「はい」

28: 2013/02/23(土) 01:19:33.54 ID:UXI/hPOR0

さやかを美樹さやか。杏子を佐倉杏子。

ほむらは意識して呼び方を変えることにした。

美樹さんや佐倉さん等、少しでも親しげのある呼称は感傷に繋がる。

そう思っていた。

しかし、巴マミは巴さんと千歳ゆまはゆまちゃんと呼ぶつもりでいる。

マミは実際尊敬していたし、ゆまを愛おしく思っていた。

自分から感傷から引き離すために設定した呼び方だが、

何となく申し訳ない気になるため、そのままにしていた。

まだ心に弱さが残っているという反省点が、ほむらにはある。

29: 2013/02/23(土) 01:20:06.54 ID:UXI/hPOR0

ドアが開く。チェーンがかかっているが、ドアの隙間から、

見覚えのある顔が来客の自分を見つめる。


ほむら「……初めまして」

マミ「……えっと……どうも」

マミ「それで……転校生さんが、私に何か……?」

ほむら「あがらせてもらってもいいですか」

マミ「あの、先に用件を……」

マミ「…………」

マミ「……わかった。あがって」


ほむらの指を見て悟ったマミは、来訪者を部屋へ招き入れた。

30: 2013/02/23(土) 01:20:46.02 ID:UXI/hPOR0

ほむらは、マミの家の匂いが好きだった。

訪ねればいつだって「美味しい匂い」が漂っていたため。

焼き菓子の匂いはしないが、先程まで飲んでいたのだろうか上品な紅茶の匂いがした。

ほむらはその匂いを意識しないよう、ひたすらマミに言うべき言葉を脳内で反芻した。


マミ「お茶でも……」

ほむら「いえ、結構。座ってください」

マミ「…………」

ほむら「今の私に時間はあまりありません。単刀直入に言います。私は魔法少女です」

マミ「えぇ。指を見てわかったわ」

ほむら「そして、今回訪ねたのはテリトリーがどうこうという話ではありません」

ほむら「一つ、お願いがあってきました」

マミ「……お願い?」

31: 2013/02/23(土) 01:21:20.14 ID:UXI/hPOR0

ほむら「ある魔女を倒すのに協力してください」

マミ「……え?」

ほむら「『引力の魔女レイミ』……と名付けられていて、私もそう呼んでいます」

マミ「……いんりょく?」

ほむら「今は黙って聞いてください」

マミ「…………」

ほむら「すいません。時間がないんで。……私には仲間がいました」

ほむら「気のいい人もいれば気まずい人もいましたがそれはさておき」

ほむら「私以外の全員が、その魔女の呪いを受けました」

ほむら「そして、結果的には全員、間接的にであれレイミに殺された」

マミ「……ッ!」

32: 2013/02/23(土) 01:22:51.45 ID:UXI/hPOR0

ほむら「引力の魔女、レイミ。ヤツを葬るのに協力してほしい」

ほむら「使い魔一匹、残さず、逃さず殲滅する必要があります」

ほむら「恨みを晴らすという意味でなく、再び『呪い』が訪れないようにという理由」

ほむら「自信がないわけではない。ただ、ちょっとした制約がある。特定の場所に近づいてはいけないといった……」

ほむら「魔女自体はそれ程強くありませんが、その使い魔が問題なんです」

ほむら「まず使い魔は何体いるのかわかりませんし」

ほむら「あなたは実力者で、遠距離からの攻撃ができる」

ほむら「念には念を。あなたに協力を要請したいと思い、ここに来た」

ほむら「以上」

マミ「…………」

33: 2013/02/23(土) 01:23:48.18 ID:UXI/hPOR0

マミ「えっと……あなたの仲間のことは……その」

マミ「お、お悔やみ申し上げるわ」

ほむら「…………」

マミ「それで……あなたの言いたいことをまとめると……」

マミ「私の仲間に」

ほむら「共闘してほしいわけではありません」

ほむら「せめて、レイミとその使い魔を全滅させるのに協力して欲しい。ただ、それだけ」

ほむら「なので、敢えてこういう言い方を使います」

ほむら「あなたを『利用』させてください」

マミ「…………」

34: 2013/02/23(土) 01:24:20.84 ID:UXI/hPOR0

マミ「う、嘘よね。あなた本当は私と仲間に……」

ほむら「食い下がらないでください」

マミ「…………」

マミ「……暁美さん、と言ったわね」

ほむら「はい」

マミ「……私も魔法少女とは言え所詮は中学生」

マミ「目を見ればわかるわだなんて言える程達観した人生は送っていないわ」

マミ「私としても、あなたをいい人か悪い人か判断するにはまだ材料が足りないけど……」

ほむら「……何が言いたいのですか?」

35: 2013/02/23(土) 01:25:19.63 ID:UXI/hPOR0

マミ「ただ、あなたは……」

マミ「玄関の前で私を待っていた時、あなたは一人でそわそわしていた」

マミ「こうして話してる時も落ち着かない様子だったし……」

マミ「まるで職員室に入るのを、先生との二者面談の時の内気な女の子みたいにね」

ほむら「…………」

マミ「不安を押し頃して無理矢理冷酷の仮面を被っている表情をする人に悪い人はいないと思うの」

ほむら「……っ」

マミ「にじみ出てるのよ」

マミ「冷たい態度と申し訳なさそうな落ち着きのない仕草。矛盾しているわ」

ほむら「……そ、そんなハッタリ……やめてください」

36: 2013/02/23(土) 01:26:33.81 ID:UXI/hPOR0

ほむらは髪をかきあげた。

マミはほむらの顔から焦りを感じ取っていた。


マミ「ハッタリ……そうね。私の考えすぎと考える方が自然よね」

マミ「でも……少なくとも私にはそう見えた。少し、無理してるみたい」

マミ「自分を変えようとして思い切り反対のベクトルに突き進もうとしてボロが出てるって感じ」

ほむら「…………」

マミ「まぁ、見ず知らずの人とは言え……私、他の魔法少女と一緒に戦えるの久方ぶりでね」

マミ「一人でない戦いができる、頼ってもらえたのが嬉しい、そんな脳天気な一面もあるの」

ほむら「……必要以上に馴れ合うつもりはありません」

37: 2013/02/23(土) 01:27:34.66 ID:UXI/hPOR0

ほむら「互いにお抜き差しならない危機的状況に陥った時……」

ほむら「私は助けないつもりでいる」

ほむら「残酷な発想とは思うけど、私という人間はいざという時あなたを見捨てます」

ほむら「あくまで、レイミという魔女を葬る協力さえしてくれればいい」

ほむら「それだけは理解してください」

マミ「…………」

ほむら「……いいですか?嫌ならどうぞ言ってください。頼りませんので」

マミ「……わかったわ。協力しましょう」

ほむら「ありがとうございます」

38: 2013/02/23(土) 01:28:03.77 ID:UXI/hPOR0

マミ「それで、私はどうすればいいの?いつその魔女は……」

ほむら「今夜です」

マミ「え、わかるの?」

ほむら「多分、が文頭に付く程度の確率で今夜」

ほむら「場所はここから南南東へ結構な距離のある廃ビルの二階。地図を用意してます」

「それは興味深いね」

マミ「あら?」

ほむら「!」


……不覚にも気が付かなかった。

背後から聞き慣れた憎らしい声。

白いからだと赤い目をしたインキュベーター。

全ての元凶。

39: 2013/02/23(土) 01:28:44.50 ID:UXI/hPOR0

マミ「あ、キュゥべえ。帰ってたのね」

QB「うん。マミ。彼女は?」

マミ「えぇ。暁美ほむらさんって言う魔法少女よ」

QB「やぁ。よろしく」

ほむら「…………」

QB(見たことがないな……契約した覚えもない……)

QB「……ほむらと言ったね。君は魔女が現れる場所と時間を予知できると見受けられるような発言をしたけれど」

ほむら「…………」

マミ「もしかして固有魔法が予知とか?」

ほむら「……似たようなものよ」

40: 2013/02/23(土) 01:29:11.49 ID:UXI/hPOR0

QB「しかし、レイミ……か」

QB「初めて聞く名前だね」

ほむら「この名前は魔法少女の間で言われている便宜上の名前よ」

QB「なるほど。それでも初耳だけどね」

マミ「あ、そうだ。これを聞いとかなくちゃ。その魔女の特徴とかは?」

QB「そうだね。もしかしたらそれでわかるかも」

ほむら「…………」


憎きべき対象がいる分多少の不本意ではあるが、ほむらは話した。

壊れたらせん階段。カブト虫色に錆びたポスト。イチジクの果実のようなダークピンク色をした空。

枯れた紫陽花。二次関数グラフと特異点の落書き。デフォルメされた天使のイラスト。

廃墟の街並み。ウロウロと彷徨う黒いマントを羽織ったようなマネキン。

地面を突き破り隆起した断層。断層にはいくつか穴がある。

引力の魔女レイミ。その結界の特徴を。

41: 2013/02/23(土) 01:30:02.38 ID:UXI/hPOR0

QB「ふむ……」

マミ「どう?キュゥべえ」

QB「……聞いたことがないね。該当する情報がない」

QB「僕や僕の仲間が知る範囲では今君の言った特徴に該当する結界は見たことがない」

マミ「そう……」

ほむら「…………」

ほむら(本当は現れるのではなく、生まれるのだけれど……)

ほむら(そこまで知っているのも変に思われるだろう)

ほむら(魔女が生まれる場所がわかるとなれば、何て言われることか)

ほむら(ここはもう話題を逸らしてしまおう。……そうね)

42: 2013/02/23(土) 01:30:46.45 ID:UXI/hPOR0

ほむら「……ねぇ、キュゥべえ」

QB「何だい?」

ほむら「これが何かわかる?」


眼鏡ケースを取り出し、蓋を開ける。

そこには矢じりが一つ入っている。


マミ「え?何これ?」

マミ「……矢?」

QB「そのようだね」

マミ「っていうか暁美さん。私には聞かなかったのに……」

ほむら「知らないならいい。わかる?」

QB「……うーん」

QB「わからないね。僕は初めて見るよ」

43: 2013/02/23(土) 01:31:27.45 ID:UXI/hPOR0

ほむら(わからないと断言したか……)

ほむら(こいつは嘘はつかない。つまり、本当に知らない)

QB「ただ、少しだけ魔力を感じるよ」

ほむら「……魔力?」

QB「うん。あまり強いものとは言えない」

マミ「魔法で作られたものとか?」

QB「どうだろう。可能な推測としては魔法武器の一部かもしれない」

ほむら「……そう」

QB「君が何故こんなものを持っているのかは計り知れないけど、役に立てなくてごめんよ」

マミ「レイミとかいう魔女もそうだけど、キュゥべえにもそういうジャンルでわからないことがあるのね」

QB「僕はものしり博士ではないからね」

44: 2013/02/23(土) 01:32:31.02 ID:UXI/hPOR0

ほむら「…………」

ほむら(魔法武器の一部……か)

ほむら(一つ、推測ができる)

ほむら(盗みに忍び込んだ……基地か事務所)

ほむら(そこに魔法少女がいたか、既に同じ事をしていて去った後だったか……)

ほむら(それを何故か、無意識の内に拾ってしまっていた)

ほむら(……いまいち根拠に欠けるが、今はそれしかないか?可能性の一つとして脳裏にいれておこう)

ほむら「……それじゃあ、私はこれで」

マミ「あれ?帰っちゃうの?」

45: 2013/02/23(土) 01:33:07.43 ID:UXI/hPOR0

ほむら「今夜、待ってます」

マミ「ねぇ、よかったらその時まで私の家で……」

ほむら「……そんな馴れ馴れしい人間だったんですか?」

マミ「そんなツンツンしちゃってぇ」

マミ「私はわかるわ。あなたは本当は人見知りが激しくて仲がいい人には人懐っこい内気な……」

QB「もう帰っちゃったよ」

マミ「あれ?」

マミ「あ、テーブルにメモが……時間と地図……」

QB「このメモの場所に来いということなんだろうね」

46: 2013/02/23(土) 01:33:45.74 ID:UXI/hPOR0

QB「……ねぇマミ」

マミ「何?」

QB「世の中にはグリーフシードやテリトリーを狙う魔法少女がいると話したことがあるね」

QB「顔見知りならまだしも、見ず知らずの魔法少女にあそこまで馴れ合うような態度をとるのはあまりよくないと思うな」

マミ「それはそうかもしれないけど……何となく、暁美さん。安心感というか……初めて会った気がしないのよね」

マミ「そこんとこ、私にもよくわからないのよ」

QB「…………」

マミ「それに、もしテリトリーを狙う敵だったら既に私をやっているはずよ」

マミ「仮にそうだとしても私は戦いには手慣れている。負けたりなんかしない」

マミ「魔法少女を相手にするのは初めてだけどね」

QB「君がそう言うなら別にいいけど」

47: 2013/02/23(土) 01:34:52.37 ID:UXI/hPOR0

――夜


ほむらはいつもの通り、病室から抜け出した。

前の時間軸では爆弾の材料を調達していたであろう頃合い。

それよりもしばし前。

ほむらは目的地に到着した。

レイミの結界が廃墟の街並みなだけあってか、そこもまた廃ビルだった。

前の時間軸で別の魔女が別の廃ビルにて産まれるが、それはまた別の話。


ほむら「……ここも、途中で工事が中断したのかしら」

ほむら「巴さんはまだ来ていない」

ほむら「確かこの辺りにレイミは生まれた」

48: 2013/02/23(土) 01:35:39.97 ID:UXI/hPOR0

暗がりに目が慣れてきて、廃ビルの様子が月明かり程度でよく見えるようになった。

黒色と灰色だけでできているかのような、無彩色に包まれた空間。


ほむら「大分見えて来たわね……ライトでも持ってくればよかった」

ほむら「結界の入り口はこの辺りだった……」

ほむら「この辺りに孵化前のグリーフシードとか何かしらあると思うのだけれど……」

ほむら「……ん?」

ほむら「え……」

ほむら「こ、この人は……!」

ほむら「どうしてこんなところで……」

49: 2013/02/23(土) 01:36:26.79 ID:UXI/hPOR0

絞った雑巾のようにボロボロな柱の側に『人』がいた。

黄色いカチューシャをした少女が倒れている。

薄いピンク色のマニキュアをして、幽霊のように青白い肌をしていた。

少女の側には、ガラス片のような物と金属の欠片のようなものがある。

目は閉じている。ほむらは少女の首もとに指を当ててみた。脈はない。

出血はしていないが、体には切り傷や打撲痕が複数ある。


ほむら「……『氏んでる』」

ほむら「ソウルジェムが砕かれて……いや、自ら砕いたようにも見えなくもないが……」

ほむら「一体何が……」

ほむら「魔女にやられたのかしら」

ほむら「……い、いや……待って」

50: 2013/02/23(土) 01:37:00.77 ID:UXI/hPOR0

嫌な予感がした。

厳密には嫌ではないが、良い心地ではない。

不気味な胸騒ぎ。


ほむら「まさか……もしかして……」

ほむら「こ、この人が……この人が『魔女レイミ』なんてことは……!?」

ほむら「時系列的にも違和感はないし……」

ほむら「考え過ぎか……?」

ほむら「何にしても……」

ほむら「ここに巴さんがくる」

ほむら「このソウルジェムの破片はどこかに隠すとして……」

ほむら「私が頃したと勘違いされたりしないだろうか」

51: 2013/02/23(土) 01:37:32.82 ID:UXI/hPOR0

マミ「暁美さん!」

ほむら「……巴さん」

マミ「ごめんなさい。遅刻しちゃったわ」

マミ「それで……ええと何だっけ……そう、レイミは?」

マミ「魔女の気配は感じてないし、まだ現れてないわよね」

ほむら「…………」

ほむら「レイミは……既に退散したようです」

ほむら(もしかしたら、産まれなかったという結果しか残っていないのかもしれないが、断定はできない。今はそう言っておこう)

マミ「え?」

ほむら「もう、ここにはいない。ということです」

マミ「あら……」

52: 2013/02/23(土) 01:38:19.24 ID:UXI/hPOR0

マミ「ちょっと残念ね」

ほむら「残念?」

マミ「二人で魔女と戦うの、楽しみにしてた部分もあったのに」

ほむら「…………」

ほむら「そのセリフは、彼女にとって不謹慎かと」

マミ「彼女?」

ほむら「……この人」

マミ「……!」

マミ「こ、この人は……」

ほむら「私が来た時には既に……」

マミ「…………」

54: 2013/02/23(土) 01:39:28.81 ID:UXI/hPOR0

マミ「氏後大分経っているといったところね……」

マミ「学校にいた時間帯かしら。もっと遅くに現れていてくれてれば……」

ほむら「…………」

マミ「彼女は暁美さんの知り合い?」

ほむら「いいえ」

マミ「この辺では見かけないわね」

「彼女は……」

マミ「あっ、キュゥべえ」

ほむら「…………」

QB「M市の方で魔法少女をしていたよ」

55: 2013/02/23(土) 01:40:03.48 ID:UXI/hPOR0

マミ「どうしてここに……」

QB「僕もレイミのことが気になって来たんだ」

マミ「キュゥべえ。この人を知っているの?」

QB「あぁ、知ってはいるよ」

QB「ただ……」

QB「彼女は……他の魔法少女のテリトリーに入るようなことはしない」

QB「何故見滝原にいるのか……」

QB「それに、彼女は相棒といつも一緒に行動していたはずだが……今のところ彼女しか魔法少女の気配は感じない」

マミ「そう……」

QB「何があったのか、彼女のみが知るといったところだね」

56: 2013/02/23(土) 01:40:38.56 ID:UXI/hPOR0

マミ「……遺体が残っただけ、良い方かしら。結界に取り残されなくて」

ほむら「…………」

QB「そうだ。ほむら」

ほむら「何かしら」

QB「君が話してくれた引力の魔女レイミのことだけど……」

ほむら「…………」

QB「気になって調べてみたんだ」

QB「だけど、君の話した特徴を持った結界はやはり確認されていない」

QB「僕の見解からすれば、引力の魔女レイミというものは存在すらしてないということになる」

マミ「存在……しない?」

ほむら(……余計なことを)

ほむら(いつもは我関せずといわんばかりの態度をとるくせにこういう時だけ……)

57: 2013/02/23(土) 01:41:45.81 ID:UXI/hPOR0

マミ「存在しないってどういうこと?暁美さん」

QB「僕も気になるよ。どういうことなんだい?」

ほむら「……もういいでしょ。キュゥべえ」

ほむら「いい加減消えて欲しいのだけれど」

QB「僕は疑問と事実を言ったまでなのに……」

ほむら「あなたは彼女がいつどんな魔女に襲われていたか」

ほむら「それはわかっていない。あなたにはわからない範囲というものがある。嘘つき呼ばわりしないで」

QB「それはたった今のことだか……」

ほむら「いいから失せなさい」

QB「……わけがわからないよ」

58: 2013/02/23(土) 01:43:09.95 ID:UXI/hPOR0

キュゥべえはいつもの調子で不満げを表現し、夜の闇に消えた。

魔法少女二人、一人の遺体。廃墟の静寂が訪れる。


ほむら「…………」

マミ「…………」

マミ「……ねぇ、暁美さん」

ほむら「……何か?」

マミ「あなたの仲間って……その……レイミ?って魔女に殺された、のよね」

ほむら「…………えぇ」

マミ「でも、キュゥべえはあなたが言った魔女は存在しないと言っていたわね」

ほむら「それは、キュゥべえが知らない範囲で」

マミ「誰かが犠牲になった魔女よ。キュゥべえはそういうのをちゃんと把握している」

59: 2013/02/23(土) 01:44:13.14 ID:UXI/hPOR0

マミ「ねぇ……どういう意味?」

マミ「あなたは……私に、レイミという魔女に仲間が殺されたと言った」

マミ「私は、その時のあなたの眼が本当に切なそうに見えたから、人並みの同情をしたわ」

ほむら「……顔に出てましたか」

マミ「でも……何をどうしても、あなたの仲間は……いもしない魔女に殺されたということになってしまう」

ほむら「…………」

マミ「まさかとは思うけど……私に嘘をついたの?」

ほむら「……何が言いたいのですか?」

マミ「何がって……私もうまく言葉にできないんだけど……」

60: 2013/02/23(土) 01:44:56.04 ID:UXI/hPOR0

マミ「えっと……レイミが嘘なら、私が感じたあなたの切なげな目が矛盾点になってしまう」

マミ「だから、戸惑っているのよ。私」

ほむら「……多少、嘘に部類することは言ったかもしれませんが」

マミ「えぇ。やっぱり矛盾しているわよね?」

マミ「暁美さんは……私のこと信用してないわよね」

ほむら「…………」

マミ「……そりゃ、そうよね。だって、形や事実がどうであれ、初対面だし」

マミ「そういう私も、実はあなたに闇討ちをされるかもって疑っていなかったこともない」

マミ「ねぇ。この際ハッキリ言って」

マミ「あなたは私の敵なの?それとも、虚言癖なの?」

61: 2013/02/23(土) 01:46:24.27 ID:UXI/hPOR0


ほむら「…………」

マミ「…………」

ほむら「……信じる信じないは好きにしていただくとして……これだけは教えます」

ほむら「私は未来がわかる」

マミ「…………へ?」

ほむら「言葉通り、です」

ほむら「ある目的があって、私はこの時間軸に来た。前の時間軸ではレイミのせいで仲間が氏んだ」

ほむら「今回はバタフライエフェクトのように何かが影響したのか、異なる展開……レイミはいなかった、あるいはまだ産まれていない」

ほむら「今言えるのはこれだけ」

マミ「……い、いきなり言われても何が何だか……」

62: 2013/02/23(土) 01:47:55.39 ID:UXI/hPOR0

ほむら「信じなくてもいい」

ほむら「適当にあしらわれたと思うならそう解釈していただいても構いません」

マミ「…………」

ほむら「取りあえずまず、レイミのことですが……」

ほむら「もし今後、私が話したものと同じ結界が発生したら、くれぐれも断層の穴には近づかな――」

マミ「……『私』なの?」

ほむら「……へ?」


ほむらは思わず聞き返す。声が裏返ってしまった。

聞き間違えでなければ「私」と言った。

あたかも夕方に話した「氏んだ仲間」と「自分自身」を直結させたような……。

63: 2013/02/23(土) 01:48:36.40 ID:UXI/hPOR0

マミ「氏んだ仲間って……私?」

ほむら「…………」

ほむら「な、何を言って……」

マミ「レイミは、ここ見滝原……私のテリトリーで産まれるのよね。少なくとも」

マミ「つまり、私が戦う蓋然性は高かったということ」

マミ「もしあなたがその『未来とやら』を見た……というよりそこから来たとすれば……」

マミ「その仲間を氏ななかったことにできる」

マミ「レイミが現れるという事実を知っていれば、先回りもできる」

マミ「初対面特有の恭しさがないというか……」

マミ「あなたの態度も、何となく納得ができる」

64: 2013/02/23(土) 01:49:40.01 ID:UXI/hPOR0

マミ「実はあなたが帰った後……キュゥべえがあなたを契約した覚えのないイレギュラーだということを話したわ」

マミ「それ含めて……あなたが未来人とか異世界人だとかっていうなら、辻褄が合うと思うの。そういう魔法もあってもいいと思う」

マミ「予知能力者ならレイミが現れなかったということは起きないと思う。未来から来た、だったら異なる展開もあり得る」

マミ「……どうなの?」

マミ「あなたの言う未来で、レイミの呪いに私はかかったの?それで氏んだの?」

ほむら「…………」

マミ「私としても……ちょっと飛躍しすぎてると思うし……」

マミ「ちょっと、私も私でまだ戸惑っていて……」

マミ「自分でも何を言ってるのかいまいちわからないのだけれど」

ほむら「…………」

65: 2013/02/23(土) 01:50:06.69 ID:UXI/hPOR0

ほむら「意外と鋭いんですね」

マミ「じゃ、じゃあ……」

ほむら「YESともNOとも言いません。好きに解釈してください」

マミ「……言及されたくないのね」

ほむら「…………」

ほむら「まぁ……そうです」

マミ「…………」

ほむら「…………」

マミ「……いいわ」

マミ「来るべき時に、あなたの好きなタイミングで、話してちょうだい」

ほむら「……はい」

66: 2013/02/23(土) 01:51:21.75 ID:UXI/hPOR0

互いに、難しい顔をしている。

ほむらは、隠していた事実に大きく踏み込まれたことに動揺した。

マミは、自分の氏という今遠ざけたいキーワードが浮上したことに戸惑っている。

心の揺れを紛らわすために、マミは遺体に歩み寄る。

そしてその肌に触れた。少しひんやりとした。

マミは遺体に魔力を込める。すると、遺体についた傷や打撲が直った。

服は無傷ながら体が傷だらけという異常性をカバーした。


マミ「……後で通報しておきましょう」

ほむら「……はい」

マミ「心肺停止で亡くなった、といったところかしら」

ほむら「………」

67: 2013/02/23(土) 01:51:51.97 ID:UXI/hPOR0

ほむら「巴さん。一つ言っておきます」

マミ「はい」

ほむら「魔法少女にむやみやたら他人を巻き込まないでください」

マミ「……?」

マミ「……!」

マミ「そ、それって『これからは私がいるからね』って遠回しに――」

マミ「ってあれ?」

マミ「い、いない……いつの間に……」

マミ「もーっ」

68: 2013/02/23(土) 01:52:21.19 ID:UXI/hPOR0

Raymea(レイミ)

引力の魔女。その性質は「伝承」
別の世界からスタンドという概念を引き入れた、
あるいはその概念を創造したとされる魔女。
立ち向かう力は必ず良き未来へと繋がっていくと思い続けている。
使い魔を使って、日々誰かにスタンドという力を伝える。
それがいつかこの世界に平和と誇りを取り戻すものだと信じて。


Sabbath(サバス)

引力の魔女の手下。その役割は「選別」
結界内の廃墟に引きこもる黒いマントを羽織ったマネキンような姿。
結界に迷い込んだ者へ、向かうべき二つの道を与える。
一つは生きて選ばれる者への道。
もう一つは、さもなくば氏への道。


Cavenome(カヴェノメ)

引力の魔女の手下。その役割は「発現」
断層に空いた『穴』そのものがその姿。
Cavenomeに触れた者は、噛みつかれてしまう。
その歯形をつけられた者はスタンドという能力を発現する。
人によっては高熱を伴い、また人によってはスタンドを発現せずに氏ぬ。

69: 2013/02/23(土) 01:55:02.68 ID:UXI/hPOR0

今回はここまで。お疲れさまでした

ジョジョクロス第四作目にして最終作となります。別にだからと言って特別なことはありませんが

前作をご閲覧になった方はお久しぶりです

インフルエンザで倒れてたりデータ飛んで途中から書き直したり筆が乗らなくて別の作品に手を出したりして完成が遅れ、

何かまぁ他にも色々ありましたが、ようやく今日、スレ建てに至りました次第です

地の文は自分に合わないと最近思いましたね。そういうこともあって地の文あるとこないとこのバランスがめちゃくちゃです
その辺は仕様ということで。大変ですねぇ。地の文。それでいて地の文がないと説明が難しいところもあって……

それとリアルの都合で今までのように毎日更新ということはできないかもしれないです。ご了承下さい


ちなみに今作も完結後、スレの余り具合と相談して「質問コーナー」たるものを設ける予定です
もし何か疑問点やよくわかんねーなってとこや、君の意見を聞こう!みたいなこと(このさい全作通して)があればその時にでもお尋ねください

「今答えてくれないとらめぇ」ってな点があればこういう閑話休題レスを使ってなるべく答えていきたいところです
ただし所謂横レスでご質問されると見逃す恐れがあるので、その辺りタイミングを見てくださいませ

なんやかんやで、今回もどうかよろしくお願い致します


一応書いておきますが、特定のキャラを故意に冷遇する意志や自演行為は一切ありません
わざわざそう書くとうさんくさく見えますが、書かないと何も伝わらずに間違ったまま定着してしまいますので簡単に弁明させていただきます
このもどかしさが匿名掲示板の恐ろしさですね。パパウパウパウ!

70: 2013/02/23(土) 01:55:44.31 ID:UXI/hPOR0

冒頭にも書きましたが前作を読んでいることを前提である展開になっているので、
とは言えかなり期間も空きましたし、内容なんて覚えてねーって方もいるかと思います

そこで、前作読む気にならないよって方向けに簡単なあらすじをば


~1レスでわかる前作の出来事~

織莉子「本来なら鹿目まどかを抹頃するポジショニングだけど何故かメガほむを殺るぜー超殺るぜー」キリカ「うぇーい」

ほむら「もう、誰にも頼らない!」マミ「やほー」ほむら「うえぇぇん巴さぁぁぁん」

少女「僕はM市の魔法少女だ!スタンド使いだ!水を熱湯に変えるぞ!でも今日は帰るよ。次の日熱で寝込んでいた鹿目まどかの家に侵略しにきたよ!」

まどか「スタープラチナどーん」少女「うわー何か出た」ほむら「鹿目さんにスタンドが目覚めたー」

ゆま「風見野なう」杏子「シビル・ウォーっていうスタンド持ってるよ。すごいだろ。あたし割と鬼畜になった」

織莉子「キリカハァハァ」キリカ「あっ、らめぇ、いやんっ」織莉子「リトル・フィートすごい」キリカ「クリームすごい」

キリカ「風見野なう」織莉子「私と手を組んで仲間になってよ」杏子「やだ」織莉子「爆氏するぞコラ」杏子「帰れ」

ゆま「契約してスタンド使いになったよ。キラークイーンだよ。爆氏させる能力だよ」杏子「怖い。消えろ」ゆま「うわーん」

マミ「保護した」ゆま「ごろにゃん」さやか「こんな子どもが魔法少女ならあたしも契約してー」

さやか「魔法少女になるわ」QB「ガタッ」ほむら「だめ」さやか「ふざけんなあたし帰る膝の臭いを嗅ぐ陶酔感」ほむら「私ってホント逆ギレ」

まどか「仁美ちゃんが何かするって」仁美「ティナー・サックス!」ほむら「きゃー魔女だー」さやか「契約したぜ」ゆま「ほむほむの気も知らないで勝手に契約するなんて」さやか「アイアムバカ」

杏子「見滝原なう」キリカ「ナカーマ」織莉子「心強いわー、あーかなり心強いわー」杏子「こいつら裏切りそうだからあたしはいつか裏切るつもりでいる」

恭介「ハーヴェスト志筑さんゾッコンラブ」仁美「上条くんスキスキ」さやか「うわーん。契約しなきゃよかったー」

さやか「サノバビXチ魔女レイミ。あたし氏にそうだけど」ゆま「助けに」ほむら「来たよ」さやか「レイミの影響でスタンドが目覚めたよ」

織莉子「下準備下準備」キリカ「スタンドの影響で性格が改変されることがあるって設定ってどの辺から出てきたっけ」

織莉子「大木ポイポイ」クラスメート「」キリカ「クリームガォンガォン」和子「」マミ「スタンドに目覚めたと思った矢先にこれだよ。私は氏んだ」

キラークイーン第二の爆弾「コッチミロー」織莉子「うわー」キリカ「織莉子を庇って私は氏んだ」織莉子「キリカ……私は復讐を誓った。必ずほむほむを抹頃する!」

杏子「シビル・ウォーで捨てた物が襲いかかるよ」さやか「ドリー・ダガーのダメージ反射能力で善戦はしたよ」ゆま「うわーもうやだキラークイーンで自爆する」

さやか「爆発に巻き込まれてあたしは氏んだ」杏子「落ちてきた天井のせいで氏んだ。これが運命」

ほむら「えーっ、実は私が魔女化に伴ってレクイエムというスタンドの進化系みたいなのを発現して世界を滅ぼすという予知を見たから私を抹頃しなくちゃならないですってー」

ほむら「氏ぬわけにはいかないオラー」織莉子「おうコラ猫によるおとり作戦だコラ」ほむら「まけたー。体が小さくなったー」織莉子「生け捕りだー。ほむほむ抹殺」

まどか「そうはいかんざき」織莉子「うおりゃー」まどか「勝った」織莉子「最後ッ屁」まどか「氏んだ」織莉子「氏んだ」ほむら「助かった」

ほむら「スタンドのせいだ。私の精神的弱さのせいだ。そのせいで私は負けたのだ。全滅したのだ。強くなるには、感傷を持ってはならないのだ」

ほむら「パラレルパラレル、クーほむになぁれ」ほむら「なったわ」ほむら「さよならこの時間軸」

まどか「実はわたし契約してました。その願いとは……?」

ほむら「次の時間軸に来たわ。もう必要以上に馴れ合うのはごめんだわ。あと武器をパクったわ」

ほむら「痛い。指切った。何この『矢』……こんなの盾に入れた記憶にないのに」

――今作へ続く


あぁ、我ながらなんてわかりやすいんでしょう。それでは

88: 2013/02/24(日) 23:06:37.41 ID:vaAa/whg0

#17『面会人』


学校


和子「みなさん。おはようございます」

和子「ところで……中沢くん」

和子「あなたは今まで食べたパンの枚数を覚えていますか?」

中沢「どうでもいいんじゃないでしょうか」

和子「そうです!どうでもいいんです!世の価値観の中心は数字、というのも一理あります」

和子「しかしながら!そんなしょうもない数字を気にするような人と付き合ってはいけません!」


仁美「またやってしまったようですわね」

まどか「何があったんだろう……」

さやか「あたしは米派だァー」

和子「と、いうことで転校生です」

89: 2013/02/24(日) 23:08:15.25 ID:vaAa/whg0

ほむら「…………」

仁美「まぁ美人」

まどか「カッコイイね」

さやか「うんうん。イケメンだね」

仁美「女性にいう言葉ではないのでは?」

さやか「イケてるツラ(面)でイケメンなんじゃないの?」

仁美「語源的には間違ってはいませんけど……」

まどか「…………」

さやか「どしたまどか」

まどか「あ、ううん。何でもないよ」

まどか(……?あの人、こっち見てる?)

90: 2013/02/24(日) 23:20:34.14 ID:vaAa/whg0

まどか(うーん……?)

和子「さ、自己紹介して」

まどか「…………」

まどか(うーん……?)

ほむら「暁美です」

まどか(何だろう。暁美さん……)

和子「フルネームでお願いします」

ほむら「……私の名前はほむらです」

まどか(夢の中で会った、ような……)

91: 2013/02/24(日) 23:26:25.20 ID:vaAa/whg0


女子生徒a「部活とかやってた?運動系とか文化系とか……」

ほむら「いえ……」

女子生徒b「なぜだ、その不敵なまなざしの理由は?」

ほむら「別に……」

女子生徒c「君は『引力』を信じるか?人と人の間には『引力』があるということを」

ほむら「……えぇ」

男子生徒a「赤んぼうの魂ってのは、どこからやって来るのだろうか?」

男子生徒b「母親の魂が細胞のように分裂して、成長して来たのが人間の魂なのか?」

ほむら「…………」

ほむら「ちょっと失礼するわ」

女子生徒a「またお話しようねー」

92: 2013/02/24(日) 23:27:10.25 ID:vaAa/whg0

仁美「ミステリアースな方ですわね」

さやか「何でネイティブっぽく言ったの?」

さやか「ところで、まどか。転校生と知り合い?」

まどか「え?ううん。初対面……なんだけど……」

さやか「でも、まどかのこと睨んでなかった?」

まどか「睨んでたっていうか……」

ほむら「鹿目まどかさん」

まどか「ひゃい!」

ほむら「……あなたが保険委員よね。保健室へ連れていってくれる?」

まどか「あ、はい」

93: 2013/02/24(日) 23:27:47.60 ID:vaAa/whg0

さやか「……睨んでたの下り聞かれたかな?」

仁美「さぁ……」

まどか「それじゃ、行ってくるね」

さやか「転校生を独り占めだね」

仁美「保険委員冥利に尽きますわ」

まどか「い、いやぁ、そんな……」

ほむら「…………」

まどか「あ、待ってっ、先行かないでっ」

さやか「行ってらー」

仁美「ですわー」

94: 2013/02/24(日) 23:28:35.02 ID:vaAa/whg0

――廊下


まどか(えーっと……)

まどか(何話そうかな)

まどか(保健室に連れてってって言った割にはわたしより前を歩いて……むしろわたしが案内されてるみたい)

まどか(…………)

まどか(それにしても、何だろう……この既視感というか、もやもやした感じ)

まどか「うーん……」

ほむら「……?どうかしたの?」

まどか「へっ?あ、ううん。何でもない」

ほむら「そう」

95: 2013/02/24(日) 23:30:10.43 ID:vaAa/whg0

まどか「…………」

まどか「あ、あのっ、暁美さん」

ほむら「……ほむらでいいわ」

まどか「あ、うん。ほむらちゃん……」

まどか(……あれ、なんで急にちゃん付けしちゃったんだろ。暁美さんって呼んでたのに……ほむらさんでなくて?)

ほむら「何かしら?」

まどか(……変に思われてはなさそうだし、いっか)

まどか「えっと……その……」

まどか「ほむらってかっこいい名前だよねっ」

まどか「燃え尽きる程あーつくーって感じで」

ほむら「…………」

96: 2013/02/24(日) 23:31:21.43 ID:vaAa/whg0

まどか「あ、あれ……気、悪くしちゃった?ごめんね」

ほむら「…………」

まどか「あっ」

ほむら「……まど――」

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「か?」

まどか「その指の傷……傷跡?どうしたの?」

ほむら「……『傷』?」

まどか「これ」

ほむら「……あぁ……これね」

97: 2013/02/24(日) 23:32:36.72 ID:vaAa/whg0

ほむら(これは……)

ほむら(あの時、あの『石の矢』で切っちゃった痕……)

ほむら(まだ残ってたんだ……結構前のことなのに)

ほむら(確かに今回はほとんど怪我なんてしてないから治癒はしなかったけど……)

ほむら「……包丁、扱ってた時に、ね」

ほむら「大したことではないわ」

まどか「包丁……」

まどか(そういえば、一人暮らししてるって聞いたっけ)

まどか(中学生で一人暮らし……すごいなぁ)

まどか「んー……ちょっと見せて」

98: 2013/02/24(日) 23:34:35.33 ID:vaAa/whg0

ほむら「あ、ちょっ……」

まどか「包丁?それにしては不自然なところをケガしたね」

まどか「ほとんど治っちゃってる。保健室行くついでに絆創膏でもって思ったんだけど」

ほむら「……優しいのね」

まどか「……あ」

ほむら「どうしたの?」

まどか「ほむらちゃんの手……すべすべで気持ちいい……」

ほむら「は?」

まどか「いいなぁ。ほむらちゃんの『手』……とてもなめらかな関節と皮膚をしてる」

まどか「白くって可愛い指だね……。それにほんのり良い匂い。どんな石鹸使ってるの?」

ほむら「…………」

100: 2013/02/24(日) 23:35:07.87 ID:vaAa/whg0

ほむら「……まどか?」

まどか「……あ!」

まどか「ご、ごめんねっ!つい……」

まどか「こんなのおかしいよね……わたし、初対面なのにこんな馴れ馴れしくしちゃって……」

ほむら「べ、別に構わないけど……」

まどか「何でかな……ほむらちゃん、初めて会った気がしなくて……」

まどか「あっ、ご、ごめんね。わたしまた変なこと言っちゃって」

ほむら「…………」

まどか「……う」

まどか(うぅ……もしかして怒っちゃった?話題を何とか……)

101: 2013/02/24(日) 23:36:02.35 ID:vaAa/whg0

まどか「そ、そういえばさっきほむらちゃん何か言いかけてたよねっ。なぁに?」

ほむら「…………」

ほむら「……コホン」

ほむら「まどか」

まどか「はい」

ほむら「あなたは、自分の人生が貴――」


「暁美さーん!」


ほむら「えっ」

まどか「えっ」

102: 2013/02/24(日) 23:37:04.00 ID:vaAa/whg0

「やっと見つけたわ!暁美さん!」

まどか「え、えーと……」

ほむら「と、巴さん……」

まどか「……ほむらちゃんの知り合い?」

マミ「何年何組なのかすら教えてもらってなかったから、探しちゃった」

マミ「そしたら保健室に行ったって言うんだもの、追ってみたら歩いてたってわけ!」

ほむら「……はぁ、そ、そう……ですか」

マミ「あら、もうお友達できたの?意外にやり手ね暁美さん」

まどか「あ、あの、その……」

ほむら「えぇ……まぁ」

103: 2013/02/24(日) 23:37:58.06 ID:vaAa/whg0

マミ「初めまして。私、三年生の巴マミ」

まどか「えっと……わ、わたし、二年生の鹿目まどかです」

マミ「よろしくね」

まどか「は、はぁ……」

ほむら「…………」

マミ「ふふ……」

マミ「……あれ?」

マミ「……もしかしてお邪魔しちゃった?」

ほむら「巴さん」

マミ「はい」

104: 2013/02/24(日) 23:39:28.83 ID:vaAa/whg0

ほむら「私、言いましたよね。必要以上に慣れ合うつもりはないと」

マミ「でもぉ……折角仲良しになったのに」

ほむら「仲良しなんかじゃありません」

ほむら「とにかく、私とあなたはもう無関係です」

マミ「えぇー……」

ほむら「行きましょう。まどか」

まどか「ほむらちゃん……よくわかんないけどその言い方は酷いよ」

マミ「そーよそーよ。私はただ仲良くしたいだけなのに」

ほむら「…………」

ほむら「まどか。ありがとう。もういいわ」

まどか「え?」

105: 2013/02/24(日) 23:40:30.25 ID:vaAa/whg0

ほむら「保健室の場所、思い出したわ。一度すれ違った。後は一人で行ける」

まどか「あっ、ほむらちゃ……」

まどか「行っちゃった」

マミ「…………」

マミ「ごめんなさいね。無愛想な子で」

まどか「…………」

マミ「あの子、どうにもツンツンしちゃって……ツンデレっていうの?」

ほむら『違います』

マミ(はぅっ!?テ、テレパシー……!聞こえていたの!?)

まどか「…………」

まどか「あの……マミさん?」

106: 2013/02/24(日) 23:41:28.80 ID:vaAa/whg0

マミ「あっ、はい。何かしら」

まどか「ほむらちゃんのこと……知ってるんですか?」

まどか「ほむらちゃん、東京から越してきたばかりって聞いてたんですが……」

マミ「知り合いって程でもないけど……一応」

まどか「でしたら……その、ほむらちゃんのこと、教えてくれませんか?」

まどか「わたし……ほむらちゃんと仲良くなりたいんです。もっと知りたいなって思って」

マミ「私だってなりたいし知りたいのだけれど……そうね。今日のお昼、ご一緒しない?」

まどか「いいんですか?」

マミ「えぇ。その間に暁美さんのこと何かわかったら教えてくれる?」

まどか「はいっ」

マミ「ふふ、それじゃ……屋上で待ってるわ」

107: 2013/02/24(日) 23:41:58.28 ID:vaAa/whg0

マミ(暁美さんの友達と仲良くなれば……)

マミ(間接的に暁美さんとも仲良しになれるわね)

マミ(この人を利用してるみたいでちょっともやっとはするけど……)

マミ(とにもかくにも、お昼の約束を交わしたわ)

まどか「わたしの友達も連れてきていいですか?」

マミ「えぇ。もちろん」

マミ「それじゃ、鹿目さん。また後でね」

まどか「はい。マミさんっ」

まどか(いい人そうだなぁ。大人っぽくて美人だし)


108: 2013/02/24(日) 23:42:52.91 ID:vaAa/whg0



まどかが廊下で知り合った先輩のことを二人の友人に話している頃、

保健室にて、ほむらは考え事をしていた。

先日見た魔法少女の遺体。

時期的にも場所的にも、彼女が引力の魔女レイミになりうる魔法少女である蓋然性が高い。

しかし、違う可能性もゼロではない。ありえる以上、その不安がある。


ほむら「巴さんに最低限の注意はしたが……ふむ」

ほむら「…………」

ほむら「いささか不安なところではあるけれども……」

ほむら「少しの間、巴さんにならまどかと美樹さやかを任せても大丈夫か……?」

109: 2013/02/24(日) 23:44:51.97 ID:vaAa/whg0

ほむら「……巴さんなら、か」

ほむら「甘い考えが抜けてないわね……」

ほむら「でも、今は任せるとしかできないわ」

ほむら「それなりに監視はするけど……果たして」


最上なことはまどかを魔法少女関連のことに、関わらせないこと。

しかし、キュゥべえは神出鬼没。いつどこでまどかと接触をするか予測ができない。

『外せない用事』がほむらにあるため、それは無理だと思いほむらは保健室のベッドのシーツを抓った。

常に監視していたいところであるまどかから、一時的に目を離さなければならない。

どうしても見滝原を離れなければならない日がある。

どうしてもまどかと会わせてはいけない人物がいる。

110: 2013/02/24(日) 23:46:16.31 ID:vaAa/whg0


――昼休み


屋上、マミはベンチに座り、空を眺めた。

天気予報によると次の休日は快晴らしい。

少し遠出してお出かけでもしようか、とマミは考えていた。


「マミさんっ」

マミ「鹿目さん。数時間ぶりね」

マミ「えっと、隣の人が鹿目さんのお友達?」

まどか「はいっ」

さやか「えーと、マミさん。あたし、美樹さやかっていいます。初めましてのよろしくっス」

マミ「えぇ、よろしくね」

111: 2013/02/24(日) 23:49:14.20 ID:vaAa/whg0

暁美ほむらという人物を中心に、三人が集まった。

ほむらに避けられていると感じているマミ。

ほむらと仲良くなりたいまどか。

面白そうだからということでついてきたさやか。

仁美は「委員会の仕事」ということでこの場にはいない。


マミ「それで、鹿目さん」

まどか「はい」

マミ「暁美さんについて、何かわかったかしら?」

まどか「あんまりです……」

さやか「何だか、最低限のことは話したからもういいでしょってオーラが出てましてね」

マミ「んー……やっぱり気むずかしい子ね」

112: 2013/02/24(日) 23:50:15.31 ID:vaAa/whg0

さやか「あの……マミさん?」

マミ「何かしら?」

さやか「その……マミさんと転校生って……結局、どういう関係なんですか?」

まどか「わたし、気になります」

マミ「どういう関係、と言われても……」

マミ(うーん……なんて説明しよう。魔法少女仲間だなんて言えないし……)

マミ「暁美さんが来る前、偶然会ってね。それで少しお話をした程度」

さやか「……それで必要以上馴れ合うつもりはないとか言われちゃったんですか?」

マミ「……えぇ、まぁ……うん」

まどか「わ、悪気はないと思いますよ?」

113: 2013/02/24(日) 23:51:14.44 ID:vaAa/whg0

さやか「……なんか、転校生、嫌なヤツって感じ」

マミ「そうかしら」

さやか「だって、普通そんなこと言いますか?」

マミ(色々複雑な事情ありって感じの子だから……)

マミ(それに魔法少女同士でテリトリーの問題がないこともなし……無理もないもの)

まどか「ほむらちゃんはそんな子じゃないと思うよ」

マミ「そうよ。悪い子じゃあないわ。ねぇ」

まどか「ですよね」

さやか「な、なんスかこのあたし空気読めてないこと言ったみたいな流れ」

まどか「別にそんなこと……」

114: 2013/02/24(日) 23:51:54.28 ID:vaAa/whg0

さやか「し、しかし転校生……ますますよくわかんないやつだ」

まどか「ミステリアースな雰囲気だよね」

さやか「何でネイティブっぽく言ったの?あれ、なんかあたし同じ事言った気がする」

マミ「でもね、暁美さん。思ってることが結構態度に出てくるのよ」

まどか「そうなんですか?」

マミ「えぇ。不安な気持ちになってるとそわそわするし」

さやか「へぇーっ」

さやか「やっぱりそういうのってわかるものなんですかねぇ」

まどか「んー……」


「やぁ、珍しい組み合わせだね」

115: 2013/02/24(日) 23:52:43.09 ID:vaAa/whg0

まどか「え?」

さやか「ほえ?」

マミ「あら。キュゥべえ……」

まどか「な……何?これ……」

さやか「……ね、猫?」

マミ「……って、二人とも『見え』てるの!?」

まどか「きゅーべー……」

さやか「見え……?その、み、見えてますけど……」

マミ「……!」

116: 2013/02/24(日) 23:53:32.86 ID:vaAa/whg0

QB「僕はキュゥべえっていうんだ。よろしく。鹿目まどか。美樹さやか」

まどか「え……い、今……」

さやか「しゃ、喋った!?何コレ!?」

マミ「こ、コレって……その……」

マミ「この子は、私の友達よ」

QB「マミとほむらは、魔法少女という共通点がある」


長い耳と大きな尻尾。

白い体と赤い目をした猫のような小動物。

キュゥべえがそこにいた。

マミが二人の素質ある少女と出会ったことは、とても都合の良いことだった。

128: 2013/02/26(火) 21:42:37.38 ID:EhKn1AB60


すてきな青空だった。


こんな日は家でのんびりしたいところだが生憎そんな余裕はない。

私は各駅停車の電車に乗ることにした。

目的地に着くと、駅前のコンビニで五分ばかり雑誌を立ち読みをした。

そして駐輪してある自転車群の隙間を他人にぶつかることのないよう注意しながら商店街へ向かい、

喫茶店に入った。

レイミは『産まれなかった』と考えるのが無難と思える程の調査と日程を経たが、

「安心」のため、時として「実感」が必要になる。

この目で確かめてみなくてはならない。

私はある人物に会うため『M市』へ来た。アポイントメントはとってある。

それは「魔法少女」……首に切り傷のある彼女を、私は忘れもしない。

129: 2013/02/26(火) 21:43:19.07 ID:EhKn1AB60

ほむら「……待たせたかしら?」

少女「……いや、僕もさっき来たところだ」

少女「見滝原の魔法少女さんよ」

ほむら(彼女は……前の時間軸、スタンド使いだった)

ほむら(時期的に言えば、魔女の結界で彼女と初めて会った日に近い)

ほむら(その翌日、私とまどかを襲いに……)

ほむら(もしスタンドが存在しているなら、既に発現しているはずだ)

ほむら(それを確かめなければならない)

少女「よく僕のことがわかったね。初対面なのに。噂になってた?」

ほむら「見滝原のキュゥべえから聞いたのよ」

少女「へ?まぁ……いいけどさ」

130: 2013/02/26(火) 21:44:14.14 ID:EhKn1AB60

この少女のことは……名前すら知らない。

「スタンド使い」か「首に切り傷がある」程度の認識しかない。

ただM市の魔法少女であることしかわからない。

さて……どうやって尋ねようか。


ほむら「……早速だけど、あなたは」

少女「待った。見滝原の」

ほむら「?」

少女「ここはカフェですぜ。何か注文してくれよ。変な目で見られる」

ほむら「……そうね。コーヒーでも頼んでおくわ」

少女「少し飲んでから話そう」

ほむら「……えぇ」

131: 2013/02/26(火) 21:46:08.37 ID:EhKn1AB60

コーヒーとアイスティーが置かれたテーブル。

向かい合う初対面同士、数分間の静寂の後、ほむらは本題へ踏み込む。


ほむら「実に奇妙な質問をするけれど……」

少女「ん」

ほむら「あなたは、何か魔法とは別に……特別な能力を持っているなんてことは?」

少女「……は?」

ほむら「例えば……そう。水を熱湯にするとか」

少女「……?」

少女「即席麺を食うには役立ちそうな能力だが……何を言ってるのかわからない」


前の時間軸、彼女は「水を熱湯に変えるスタンド」を持っていた。

『スタンド』という言葉を使わずに『スタンド使いか否か』を探るには言葉選びが難しい。

132: 2013/02/26(火) 21:47:06.03 ID:EhKn1AB60

引力の魔女レイミの使い魔は、見滝原の外にも広がって活動していたと聞く。

風見野やM市も例外ではない。

万が一、廃ビルで遺体として発見されたあの少女がレイミと無関係とする。

そして既にレイミが生まれていて、広くに活動していたとする。

だとすれば、この少女はある種の指標のつもりだった。

この少女がスタンド使いであれば、レイミの存在を証明する。

そう、考えていた。

しかし、彼女は特に目立った動揺もなければ、

「何を言っているんだ」と言わんばかりの表情を向けている。


ほむら「……いえ、個人的な話よ。関係ないなら……いいわ。失礼な詮索だったわ」

ほむら(彼女はスタンド使いではない……確信した)

133: 2013/02/26(火) 21:49:52.33 ID:EhKn1AB60

ほむら「それはさておき、あなたの方だけど……あなたも私に聞きたいことがあるそうじゃない」

少女「あぁ、そうだね。そのためにキュゥべえに言伝を頼んだんだった」

少女「君が見滝原の魔法少女だと言うもんだから……どうしても聞きたかったんだ」

ほむら「…………」

少女「さて、それは僕の友人のことだ」

少女「彼女も魔法少女なんだけど、とある事情で見滝原に行っていたんだ」

少女「そして『遺体』で発見された……見滝原の魔法少女の君は何か知ってるかい?」

ほむら「あなたの……友人?」

少女「そう。ここの魔法少女が見滝原で亡くなったというからには、見滝原の魔法少女に事情を聞かないわけにはいかない」

少女「正直に言わせていただけば、おまえさんが頃したということも考えられないことではないからな」

ほむら「…………」

134: 2013/02/26(火) 21:51:44.60 ID:EhKn1AB60

少女「写真も持ってきた。彼女に見覚えはあるかい?」

ほむら「…………」

ほむら「……!」

ほむら(この顔は……)

ほむら(間違いない。あの時、レイミが現れるはずだった場所にいた……)


この少女が、ほむらと会う約束に応じたのには、理由がある。

彼女の知り合いの行方を、見滝原の魔法少女に尋ねたかったためである。

写真には、照れくさそうに笑う少女の姿が写っていた。

黄色のカチューシャと白いワンピースが印象的である。


ほむら「……知っているわ」

少女「ふーん……そっか」

135: 2013/02/26(火) 21:53:44.94 ID:EhKn1AB60

少女「で、その様子から見るに……?」

ほむら「……えぇ。私が来たときには既に」

少女「…………」

少女「そう、か……」

少女「……氏んだら氏んだで悲しいが仕方ない」

少女「いいんだ……もしそうならそうだっていう確信がほしかったから」

ほむら「…………」

少女「ちなみに別におまえさんが嘘をついてるだなんだ言うつもりはない」

少女「…………」

136: 2013/02/26(火) 21:55:18.64 ID:EhKn1AB60

少女「そうか……逝ってしまったんだね……」

ほむら「……ご愁傷様」

少女「いや、いいんだ。仕方ないことさ。魔法少女なんてそんなもの……」

少女「おまえさんには迷惑をかけたね……ただ、彼女はテリトリーを奪おうとする意図はなかったということを擁護させてほしい」

少女「そういうことができる人じゃないんだ」

ほむら「わかったわ」

少女「ありがとう」

ほむら「……聞いてもいいかしら?」

少女「何か」

ほむら「もしかして、その少女の魔法武器は『矢』だったりするかしら?」

少女「へ?」

137: 2013/02/26(火) 21:56:00.45 ID:EhKn1AB60

少女「いや、違うよ。何て言えばいいかな……棒?」

ほむら「聞かれても困るのだけれど……」

少女「で、それが何か?」


ほむらは、いつの間にか盾に入っていた得体の知れない石の矢をテーブルに置いた。

少女はそれを手に取りまじまじと見つめる。

キュゥべえの推測によると、魔法武器の一部ではないかとのこと。


ほむら「この矢じりに見覚えはあるかしら」

少女「……これは何?」

ほむら「魔法武器の一部じゃないかって言われているのだけれど」

少女「うーん、知らないねぇ」

少女「そもそも魔法武器がこんな小汚い石の矢なわけがないだろうよ」

ほむら「小汚いって……」

138: 2013/02/26(火) 21:58:11.34 ID:EhKn1AB60

ほむら(知らないか……まぁ、いいだろう)

ほむら(今のところ、レイミの影はないことがわかった。ここにも、見滝原にも)

ほむら(……レイミにはカチューシャのようなものがあった)

ほむら(そして、あの魔法少女もカチューシャをつけていた)

ほむら(美樹さやかの魔女にマントと剣があった。佐倉杏子の魔女は槍を扱っていた)

ほむら(ああいった外見的特徴が引き継がれる例から考えると……)

ほむら(レイミはあの魔法少女。……やはりそう考えるのが妥当、自然)

ほむら(それだけでは根拠に乏しいが……)

ほむら(レイミはもういない。産まれなかった)

ほむら(そういうことにして、レイミのことはもう忘れた方がいいかもしれない)

139: 2013/02/26(火) 21:58:50.50 ID:EhKn1AB60

その後、二人は十分程度他愛ないやりとりをし、

ほむらは千円札をテーブルに置いて簡単な挨拶を残して喫茶店から出ていった。

少女は指を組み、知り合いの氏に自身なりに向き合うことにした。


少女「…………」

少女「まさか……彼女が負けるなんて」

少女「ふむ……これから僕、どうすればいいんだろう」

少女「やれやれ……だ」

少女「何で……見滝原に行ったんだ」

少女「何で……僕を置いて逝ってしまうんだよ……」

少女「…………」

少女「うぅ……クソ……!」

140: 2013/02/26(火) 22:01:33.93 ID:EhKn1AB60

少女「…………」

少女「……ん?」

少女「ありゃ?指が『切れ』てる……?」

少女「この切り傷……カップが欠けていたのか?」

少女「下げられちまった以上確認しようがないが……まぁいっか」

少女「…………」

少女「見滝原、行ってみようかな……」

少女「ひょっとしたら……彼女が見滝原へ行った理由がわかるかも」

少女「そうなるといつ行こうか」

少女「どうせすることないし、彼女の氏を悼むより早速行って行動を起こそう」

少女「葬式もいつやるかわかったもんじゃないからなぁ」

141: 2013/02/26(火) 22:02:24.57 ID:EhKn1AB60

市外まで行った用事は一時間もかからなかった。

今、ほむらは見滝原へ帰る電車に揺られている。

乗客は少ない。

その間、今日の出来事を頭の中で反芻する。


ほむら(水を熱湯に帰るスタンド使いだった魔法少女は……)

ほむら(この時間軸でこの時、スタンド使いではなかった)

ほむら(取りあえず、それが知ることができた)

ほむら(時系列的に考えて……そして、その影響がないということは、そういうことだ)

ほむら(引力の魔女レイミ……本当にいないと考えていいだろう)

142: 2013/02/26(火) 22:04:11.71 ID:EhKn1AB60

ほむら(いや……本当にそう考えていいのだろうか)

ほむら(どうしても不安が残る)

ほむら(スタンドも重要なのは確かだが……)

ほむら(いつまでも……それに気にかけている余裕があるわけでもない)

ほむら(精神衛生上にも……いないと考えて……次に、備えよう)

ほむら(……何だか……今日はとても疲れた)

ほむら(……あの矢じりも……結局わからなかったな)

ほむら(まぁ……そんな……気にしなくても……いい、か……)

ほむら(……今度は……あの二人に……会いに、行こう)

ほむら「…………」

143: 2013/02/26(火) 22:05:05.66 ID:EhKn1AB60

――
――――


『ゃん……』

『ほむらちゃん……』

ん……何?

『ほむらちゃんほむらちゃん』

……まどか?

『ほむらちゃん!』

……まどか!?

まどかの声が聞こえる……!

まどかよね!ここにいるの!?どこ!?

そ、それに、どうしてここに……?

私に顔を見せて!

『や、を……』

144: 2013/02/26(火) 22:05:37.95 ID:EhKn1AB60

え……?何ですって?

『矢を……あの石の矢を』

矢って……あれのこと?

何を言ってるの?あれが何だと言うの?

まどか。私の声聞こえてる?

『大切にしてね』

……何が?

まどか?何を……大切にしろと言うの?

まどか。何を言ってるの?ねぇ、まどか?

まどか!

どこにいるの!?お願い!顔を見せて!

声しか聞こえない!ど、どこにいるの!?

145: 2013/02/26(火) 22:06:08.95 ID:EhKn1AB60

声……?

あれ……そういえば、私の声……出ていない……?

口から声が出てきてない……!

まどかっ!

私の声聞こえてる!?私の言葉を……。

お願い!返事をして!まどかァッ!

私の側にいて!お願いだから……っ!

………………いない、の?

まどかの声が聞こえない……いなくなったの……?

気のせい……?いや、でも、今……確かにまどかの声が確かに……。

そんな……まどかぁ……。

146: 2013/02/26(火) 22:07:35.56 ID:EhKn1AB60

――――
――


ほむら「まどかぁ……」

ほむら「…………」

ほむら「……ん?」

ほむら「…………」

ほむら(……夢?)

ほむら(……夢、か)

ほむら(そっか……夢だったのね)

ほむら(変な夢ね)

147: 2013/02/26(火) 22:08:39.24 ID:EhKn1AB60

ほむら(矢のことを考えていたからか……夢の中にまで出てきたわ……)

ほむら(やれやれだわ……)

ほむら「…………」

ほむら(大切にしてね、か)

ほむら(夢の中とは言え、まどかがそう言ったからには……この矢)

ほむら(……そうね)

ほむら(それ……『お守り』として持っておこうかな)

ほむら(夢の中のまどかに言われたということで……何となく)

ほむら(本当に何となくだけど……縁起がよさそう)

ほむら(……そういえば)

148: 2013/02/26(火) 22:10:03.94 ID:EhKn1AB60

ほむらは、先程はっきりと「まどかぁ……」と口にしていたことを思い出した。

公共の場で、寝言を言ってしまった。

もしかしてドア付近でヒソヒソ話してる二人組の女子高生は自分のことを笑っているのではないか?

そう思うと、ほむらは急に恥ずかしくなった。

次の駅に停車したら降りて車両を移ることにした。それまでにあることを今一度考える。


「次に会うべき人物がいる。しかし『あの二人』は、顔と名前しか知らない」

「どうやって住所を調べ上げたものか」

「キュゥべえを利用すれば簡単だが、あまり関わりたくない上に、不審に思われてしまいかねない」


ほむらは「次の面会人」のことと、お守りにすることにした矢の入れ物について考えた。

降りるべき駅を既に三駅乗り過ごしていたことを気付くのに時間は要さなかった。

149: 2013/02/26(火) 22:10:43.44 ID:EhKn1AB60


――見滝原に隣接する風見野。


その外れに廃教会がある。

そこには、かつてとある一家が暮らしていた。

しかしある日、そこで火災が発生した。

延焼する前に火は消し止められたが、中から遺体が発見された。

この件は新聞にも小さく載ったが、

世間はそのことを忘れかけていた。


廃教会から少し離れた公園のベンチに、少女と童女が座っている。

赤毛の少女は佐倉杏子。その隣の童女は千歳ゆまという。

150: 2013/02/26(火) 22:12:36.58 ID:EhKn1AB60

『ゆまの母親』はとても美しい女性であったけれども、決して良い母親ではなかった。

産後、幼いゆまを置き去りにして彼女はよく夫(ゆまの父親)と夜の街に遊びに出かけた。

寝ていて夜、目を醒ますと両親がいない。家に一人取り残された。

幼い子どもにとってそれはどんな恐怖と絶望なのだろう……。

ゆまは暗闇の中で泣いても無駄なのでただひたすら震えていただけだった。


しかもこの女は父親の見ていないところでよくゆまを殴りつけた。

「人の煙草を見ただけでビクビクしやがってイラつくガキだわ!」

これは逆だった……煙草に怯えるようになったのは明らかにこの女が原因だった。

父親は娘に一切関心を示さなかった。

151: 2013/02/26(火) 22:15:45.20 ID:EhKn1AB60

しかしある日のことだった。

ゆまは気が付くと、自分の両親が足下に肉塊となって転がっていた。

氏んでいるのか?これは本当に人だったのか?それさえもわからなかった。

するとそこに、両親を肉塊にした「何か」と戦い、勝利した『杏子』がゆまの前に立つ。

杏子は「あたしについてこい」と言い――ゆまはそれに従った。

杏子はゆまに対して「一人で生きる術を教えてやろう」と思った。

ゆまは食事、銭湯、寝床を必要最低限与えられ、連れて行ったもらった。

最初は落ち着きのなかったゆまも、今ではすっかり杏子に懐いている。

両親から学ぶはずの「人を信じる」という当たり前のことを、ゆまは不器用な他人を通じて知ったのだ。

もうイジけた目つきはしていない……ゆまの心に温かい空気が吹いた。


こうして「千歳ゆま」は国民的美少女に憧れるよりも『魔法少女』に憧れるようになったのだ。

152: 2013/02/26(火) 22:16:24.40 ID:EhKn1AB60

ゆま「キョーコ。キョーコ」

杏子「あん?」

ゆま「ゆま、お腹空いたなって」

杏子「んー……そうだな。世間一般的に言うおやつの時間ってやつか」

ゆま「何か食べたい」

杏子「そうかい……リンゴでも食うかい?」

ゆま「うん!」

杏子「リンゴを……よっと」


片手に持ったリンゴを、杏子は指で弾いた。

今の一瞬で魔力がリンゴの中を通り、パックリと二等分にした。

153: 2013/02/26(火) 22:17:08.67 ID:EhKn1AB60

ゆま「すごい!手品みたい!」

杏子(いや、魔法だよ……)

ゆま「キョーコカッコイイ」

杏子「んな気持ち悪いこと言うな。やめろよ」

ゆま「キョーコ照れてる?」

杏子「やかましい。とっとと食え」

ゆま「はぁい」

杏子「…………」

ゆま「……?どうしたの?」

杏子「いや、何でもねぇ」

154: 2013/02/26(火) 22:18:10.57 ID:EhKn1AB60

魔法少女にとって、魔法と願いは密接な関係にある。

やり直したいと願えば時間を遡行する能力を得たり、

怪我を治したいと願えば治癒魔法に特化する。

杏子は幻惑の固有魔法を有している。

しかし、それは心因的な理由で、心の奥底に封印されている。

杏子は父親のために願い、魔法少女として戦うことを誓った。

後にマミと出会い、師弟関係にあった時期もあった。

その時の杏子は心が満たされていた。

しかし、杏子は魔法少女になったことを父親に知られてしまった。

父親は娘を拒絶した。彼には娘がそれこそ魔女に見えたのだ。

その結果が、廃教会の火災である。

155: 2013/02/26(火) 22:19:58.14 ID:EhKn1AB60

火災の原因は、父親の無理心中による放火。

杏子は、契約したことを後悔した。

自分のせいで家族も家も失ったのだ。

杏子の心は荒み、杏子はマミから独立し、自分の道を進むことにした

使い魔を敢えて退治せず、人を喰わせて魔女にする。

そういったことを平然とやってのける、全方向に槍を向けるような性格になってしまった。

そういう人間を演じている、という表現が近いのかもしれない。


しかし、杏子は気付いていない。

今、隣にいる、自分を慕ってくれるゆまという存在が、

自分自身の尖った心をやすりで撫でるように、丸くしつつあることを。

161: 2013/02/28(木) 21:07:13.05 ID:b2fpl/D20

#18『地縛の魔女』


放課後。

ほむらは「用事があるから」と言い、

まどかの「一緒に帰らない?」という申し出を断った。

別世界の親友の誘いを断る程大切な用事がある。


ほむらは今、洋館の前にいる。

手入れをされず不格好に伸びたバラの木がそよ風に煽られ揺れている。

ここには二人の魔法少女が暮らしている。

ほむらは一呼吸置いた後、玄関チャイムを押した。

数十秒後、ドアが開く。

来訪者を出迎えたのは、銀色のサイドテールをした少女だった。

162: 2013/02/28(木) 21:08:08.44 ID:b2fpl/D20

「えっと……どちら様?」

ほむら「……『美国織莉子』ね」

織莉子「へ?はぁ……そうですが……」

織莉子(この制服……キリカのクラスメート?)

ほむら「名前と顔しか知らなかったからこの住所を突き止めるのに少し時間はかかったけど、そう難しいことではなかったわ」

ほむら「わざわざそうしたのはキュゥべえに聞くにも怪しまれると思ったからよ」

織莉子「は?いきなり何を……」

織莉子「……あっ」

織莉子(この指輪……魔法少女!?な、何故魔法少女がここに……!?)

織莉子「と……取りあえず、あがってください」

ほむら「えぇ」

163: 2013/02/28(木) 21:12:06.88 ID:b2fpl/D20

キリカ「織莉子ー。何だったの?宅配便か何か?」

キリカ「こないだのしつこいセールスの輩だったら今から追いかけてボコボコに……」

キリカ「……誰?この人」

ほむら「私の名前は暁美ほむら」

織莉子「……だ、そうよ。キリカは知らない?」

キリカ「知らないなぁ……」

ほむら「あなた達と同じ、魔法少女よ」

キリカ「え……!?」

織莉子「……お茶を淹れますわ」

ほむら「その必要はないわ。さぁ、座って」

164: 2013/02/28(木) 21:14:42.42 ID:b2fpl/D20

織莉子「へ?」

キリカ「あ……」

ほむら「……どうしたの?ここはいけなかったかしら」


ほむらは既に着席していた。

ピンと背筋を張り、冷たい目で二人を見つめる。

そしてテーブルを挟んで向かいの席に座るよう手で促した。


ほむら「一応上座は遠慮したつもりだけど」

織莉子「……私の家なんですけれど」

キリカ「随分と態度がでかいね……」

キリカ(……気に入らない。そこは織莉子がいつも座ってる椅子だ)

キリカ(織莉子のお尻を間接的に触れたのは許しがたいなぁ……)

165: 2013/02/28(木) 21:15:51.74 ID:b2fpl/D20

織莉子「…………」

ほむら「…………」

キリカ『いいかい?織莉子』

織莉子(テレパシー……相変わらず良いタイミングだわ。キリカ)

織莉子『構わないわ。立場をわからせてあげなさい』

キリカ『そうこなくっちゃね』

ほむら「早く座りなさい。話ができないわ」

織莉子「……えぇ、そうですね。そうしましょう」

キリカ「じゃあ客人。ゆっくりと話そ――」


ほむら「遅い」


166: 2013/02/28(木) 21:16:55.78 ID:b2fpl/D20

キリカ「……うか?」

織莉子「…………ッ!」

織莉子「き、キリカ……!?」

ほむら「…………」

キリカ「……う、嘘」

キリカ「私は……私はまだ何も……」

織莉子「キリカァッ!」


既に――だった。

キリカが戦闘態勢を取り、時間を遅くしてしまおうとした瞬間だった。

魔法少女に変身する直前、こめかみに鉄の固さと冷たさを感じた。

その正体は拳銃だった。銃口を密着させられている。

凍傷を負いそうな程冷たく感じた。

167: 2013/02/28(木) 21:22:00.18 ID:b2fpl/D20

テーブルを挟んで少しばかりの距離がある。

しかし、謎の来訪者は一瞬の内にキリカの背後に回り込み、

銃口をこめかみに押しつけながら、氷のような目で織莉子を睨んだ。

キリカは魔法少女に変身する隙さえ与えられなかった一方、

来訪者の服装は白と紫のカラーリングをした、魔法少女のそれとなっていた。


ほむら「あなた達のこういった暴挙を予測しないとでも?」

織莉子「……!」

キリカ「う……」


二人が気付かない程一瞬の内に変身し、気付かれずに接近された。

そして同じくどこからともなく銃を取り出し、突きつける。

手慣れている。

魔法少女となって日の浅い織莉子とキリカは、恐怖に近い緊張を覚えた。

168: 2013/02/28(木) 21:23:59.84 ID:b2fpl/D20


ほむら「……あなた達と私とでは経験に差がある」

ほむら「そのまま彼女の脳を床にブチ撒けてもいいのだけれど、私はそのために来たのではない」


ほむらは銃口をキリカのこめかみから離した。

そのままほむらは何事もなかったかのように、再び同じ椅子に着席した。


ほむら「妙なことはしないことね」

ほむら「一度妙なことをしたペナルティとして、魔法少女の姿のまま話させてもらう」

ほむら「当然。あなた達に変身する許可は与えない。異論は認めない」

キリカ「…………」

織莉子「…………」

織莉子(何……この魔法少女……!)

織莉子(何だというの……!)

169: 2013/02/28(木) 21:26:17.62 ID:b2fpl/D20

織莉子(冷凍庫に数時間入れられていた鉄のスプーンで背筋を撫でられたようなこの感覚……!)

織莉子(言葉に言い表せることのできない、具体的な氏の恐怖を感じた……!)

織莉子(予知をして行動を先読みしたいところだけど……)

織莉子(戦闘能力が私よりも上なキリカは変身する暇さえ与えられなかった)

織莉子(変身しなければ予知ができない。変身が完全に封じられている……)

織莉子(瞬間移動の能力か……キリカの時間を遅くする魔法のように、時間を止めたかのような……)

織莉子(そういう能力があるとしか考えられない)

織莉子(少なくとも今の私達では……抵抗すらできない。従うのが得策か)

織莉子「……わかったわ」

キリカ「お、織莉子……」

170: 2013/02/28(木) 21:27:11.61 ID:b2fpl/D20

織莉子「キリカ。座るわよ」

キリカ「あ、う、うん……」

ほむら「やっと話ができるのね」

織莉子「…………」

織莉子「それで?私に話したいこととは何かしら?」

織莉子「内容によっては、力ずくでも出ていってもらうわ」


敬語をやめたのは、せめてもの反骨精神。

できる限りの凄みを見せつけたつもりでいる。

しかし魔法少女を相手に、ただの女子中学生が勝てるはずがない。

馬車に威嚇するカマキリのようだと、織莉子は自分自身で思った。

171: 2013/02/28(木) 21:28:50.68 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

ほむら(この二人は……ハッキリ言って憎い)

ほむら(そのまま頃して遺体を適当な結界に置き去りにしてしまいたいくらいに憎い)

ほむら(しかし……魔法少女である以上、利用できるものはしてみるべきだ。かなりリスクはあるかもしれないが……)

ほむら(スタンドは本体の性格に影響を与える。私が知っているのは、スタンド使いの彼女達のみ)

ほむら(前の時間軸の佐倉杏子が簡単に人頃しができたように……元の性格に残虐性等が付加されていた可能性がある)

ほむら(彼女達の本質が未確定な今、引き入れる余地があるかもしれない)

織莉子「テリトリーのことかしら」

ほむら「予知の件よ」

キリカ「……失礼、もう一度言ってくれるかい?」

ほむら「予知の件」

織莉子「…………」

172: 2013/02/28(木) 21:31:15.34 ID:b2fpl/D20

織莉子「……私はまだ何も話していない」

ほむら「あなたの能力は予知。そして、世界を滅ぼす魔女が現れるという予知を見た。違う?」

ほむら「いえ、現れるでなくて産まれる、と表現すべきかしら」

ほむら「違ったら違うと言ってちょうだい。人間誰しも間違いはあるのだから」

織莉子「…………」

織莉子「え、えぇ……そう……よ。……そうね。産まれるわ。ある少女から」

ほむら「それはどんな人かしら」

織莉子「わからないわ」

ほむら「ならその魔女は……人の上半身と、無数の糸がスカート状に広がったような下半身をしている?」

織莉子「……ッ!」

織莉子「な……何故それを……!」

173: 2013/02/28(木) 21:35:48.00 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

ほむら(もしかしてと思ったが、やはりそうだ)

ほむら(予知能力者ということは……レイミがいなかったらまどかの魔女が予知されているはずという読み。どうやら間違いないらしい)

ほむら(美国織莉子は既に魔女になったまどかを予知で見ている)

ほむら「……私はその少女と知り合いよ」

キリカ「なん……だと……?」

織莉子「…………」

織莉子(何ということ……)

織莉子(私の目的を既に知られているということは……読心能力か……?)

織莉子(魔女の外見を言い当てたということは私の心を読んで……?いや、私達は世界を滅ぼしうる少女を知らない)

織莉子(知らないのにその少女と知り合いだと名乗るだろうか)

174: 2013/02/28(木) 21:37:26.34 ID:b2fpl/D20

織莉子(では、彼女は私と同じタイプ。予知能力の魔法少女か……?)

織莉子(それなら色々辻褄は合うかもしれない)

織莉子(いや、それなら時間停止のような魔法との関連性が……)

織莉子(……もう何でもいいわ。何にしても、彼女は『その知り合いを抹頃することを決して許さない』でしょう)

織莉子(それをさせないために私達を消すつもりか……?いえ、だったら既にやっている)

織莉子(まさかとは思うが私達を味方に引き入れようとでも……?あり得ない話ではないか……)

キリカ「…………」

キリカ「……現段階では私達はその少女とやらがどこのどなたかはわからないけどさ」

キリカ「君は何が言いたいんだ?」

織莉子「……そうね。結論をもう言ってください」

ほむら「彼女を殺させない」

175: 2013/02/28(木) 21:40:25.55 ID:b2fpl/D20

キリカ「…………」

織莉子「……世界が滅びるのに?」

ほむら「滅びないわ。契約させなければいいのだから」

織莉子「魔法少女にさせなければ魔女は産まれない……と」

ほむら「そうね」

織莉子「未来のことなんて、誰にもわからないのよ」

キリカ(……予知能力者の言う言葉じゃあないね)

ほむら「それをさせないことが私の目的」

ほむら「未来は変えられる。あなたが例の少女を狙うのと同じ理屈よ」

織莉子「それは確実な手段を……いえ、今はやめておきましょう」

176: 2013/02/28(木) 21:42:07.05 ID:b2fpl/D20

織莉子「それで……何故、あなたはそのことを。そして私の予知能力のことを知っているの?」

織莉子「あなたが私の能力を知っている以上、フェアでないかと」

ほむら「……私が『未来から来た』からよ」

キリカ「……はぁ?」

ほむら「どうせ証明できるようなネタは今のところ特にないから、信じる信じないはひとまずいいとして……」

ほむら「私の目的は、ある少女を救うこと。そのために時間遡行をしている」

ほむら「そして、それは、例の少女」

織莉子「……して、抹殺以外に何をしようと言うの?」

ほむら「魔女にさせない方法がある」

織莉子「……聞きましょう」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒すこと」

177: 2013/02/28(木) 21:43:00.93 ID:b2fpl/D20

キリカ「……ワルプルギスの夜?」

ほむら「知らないの?」

織莉子「生憎、魔法少女歴は短いので」

ほむら「なら、簡単に説明するわ」


ほむらは説明した。

自分に関する情報を最大限まで隠し、

スーパーセル。崩壊する見滝原。巨大な体。不気味な笑い声。

伝説級の魔女、因縁の相手のことを、知り得た情報を話した。

織莉子はほむらの言葉に対し適当な相槌を打ちながら聞いた。

178: 2013/02/28(木) 21:46:15.43 ID:b2fpl/D20

織莉子「…………」

ほむら「例の少女は、ワルプルギスの夜から救うために契約し、世界を滅ぼす魔女になってしまう」

ほむら「ならばそのワルプルギスを、私達の手で倒せば、契約はない。……という理屈よ」

キリカ「……私達?」

ほむら「そう。私とワルプルギスの夜を討伐するための『協力』を、あなた達に要請する」

ほむら「私はその少女を契約させない。あなたはその少女を魔女にしたくない」

ほむら「利害が一致してると思うのだけれど」

織莉子「…………」

キリカ「…………」

織莉子「何故、ワルプルギスの夜のような魔女を予知で見なかったのか……それは、例の少女がその前に滅ぼしたから……と」

ほむら「えぇ。多分そうなるのでしょうね」

179: 2013/02/28(木) 21:47:00.70 ID:b2fpl/D20

ほむら「あなたが少しでも賢い人間なら、少し考えればわかることだろうけど……」

ほむら「世界を滅ぼす魔女と比較すれば弱いであろう魔女を倒せば、あなたの目的は達成されるというのよ」

キリカ「結局、世界を滅ぼす魔女が絶対に産まれないという可能性は否定できてないじゃんか」

織莉子「そうよ。万が一、その少女がワルプルギスの夜と無関係に契約してしまったら?」

織莉子「世界の命運がかかっているのよ。確実な方法を取るのが当然の選択」

ほむら「ワルプルギスを葬れば、魔法少女の真実を知れば、契約することはまずあり得ないと思ってくれてかまわない」

キリカ「だからそれを信用させてみてよ」

ほむら「証拠なんてものはない」

キリカ「おいおいおいおいおいおいおいおい」

ほむら「何にしても、それを証明することははっきり言って無理よ」

キリカ「だからおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」

キリカ「やっぱり『嘘の話』してるんじゃあないのかァーッ?」

180: 2013/02/28(木) 21:48:31.74 ID:b2fpl/D20

織莉子「…………」

ほむら「殺させないために私がデマカセを言うくらいなら、既にあなた達を頃している」

キリカ「うっ……」

ほむら「……百歩譲りましょう」

ほむら「もし契約をされてしまったのであれば……」

ほむら「彼女のソウルジェムを砕かせる権利をあげるわ」

織莉子「…………」

ほむら(いざという時……契約をしてしまったらとは言え……まどかを殺させることを容認することになる)

ほむら(……自分で言っておいて心が苦しい。しかし、私はその覚悟をしてきた)

ほむら(私の目的はまどかを救う……契約させないこと。契約してしまえば救う価値がないとまでは言わないにしても……)

ほむら(……救うために戦っているのだから命を賭けられても文句は言えない、と割り切ることができれば、どんなに楽なことか)

181: 2013/02/28(木) 21:49:43.27 ID:b2fpl/D20

キリカ「……織莉子」

織莉子「…………」

織莉子「……そうね」

織莉子「元々私達も、現段階ではその少女を捜し出すために……具体的な内容は省くけど色々やろうとしていた」

織莉子「あたかも全てを見透かしているかのような……あなたのような方がいなければもっとスムーズに事が進んだでしょうに……」

キリカ「君がいい人であると信じられたらどれほど素晴らしいことか」

織莉子「ハッキリ言わせてもらえば……」

織莉子「あなたが信頼に値する人間かどうかは判断できない。故にYESとは言えない」

ほむら「そう」

織莉子「どうせすぐに決断できる内容ではないし、時間をちょうだい」

キリカ「話し合いが必要だ」

182: 2013/02/28(木) 21:51:41.93 ID:b2fpl/D20

ほむら「……わかったわ。では、答えは保留ということで」

織莉子「えぇ」

ほむら「その間に私を消そうだなんて考えないことね」

キリカ「そ、それはお互い様だろう?」

ほむら「正しい選択を望むわ」

織莉子「…………」

ほむら「…………」

キリカ「…………」


静寂が訪れる。

この場にいる全員が、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えた。

183: 2013/02/28(木) 21:52:38.89 ID:b2fpl/D20

求めた答えは得られなかったが、決裂したわけではない。

それだけでほむらは安心はしないにしても、少しの不安は解消された。

それが上辺だけの言葉であったとしても。


ほむら「……ところで話は変わるのだけれど」

織莉子「何かしら」

ほむら「美国織莉子。呉キリカ。これに見覚えはあるかしら?」

キリカ「これ?」


ほむらはカバンから眼鏡ケースを取り出し、蓋を開ける。

普段は盾の中に入れているが、織莉子に「このこと」を聞くため、

カバンの中に移し、来訪した。

184: 2013/02/28(木) 21:54:05.06 ID:b2fpl/D20

キリカ「……?」

織莉子「これは……矢じり?」

ほむら「えぇ。そうね。一応お守りのつもりで持っているものよ」

織莉子「お守り……それで、これが何か?」

ほむら「これに見覚えがあるかどうかを聞きたい」

織莉子「……ないわ」

織莉子「骨董品かしら?専門家に聞いてちょうだい」


織莉子はテーブルに置かれた矢じりを手に取り、見つめる。

装飾のデザインは個人的に気に入ったが、

もしその値打ちが千円以上ならまず買うことはないだろう、と思った。

185: 2013/02/28(木) 21:56:38.64 ID:b2fpl/D20

ほむら「私が魔法少女に聞いているのは……これには魔力が纏われているらしい」

キリカ「魔力?」

織莉子「……ということは魔法少女か魔女が関係しているの?」

ほむら「キュゥべえが言うには魔法少女の魔法武器の一部かもしれない、と」

キリカ「魔法武器?え、何。君そんな得体の知れないものをお守りにしてるの」

ほむら「いいでしょ別に」

織莉子「何も悪いとは言ってな――」

織莉子「痛っ!」

キリカ「ッ!?」

ほむら「え?」

ほむら「……あら」

186: 2013/02/28(木) 22:14:34.62 ID:b2fpl/D20

織莉子の指から赤い液体が流れる。

矢じりが織莉子の毛細血管を切ったらしい。

血がテーブルに垂れる。


織莉子「ゆ、指が……」

キリカ「織莉子ォォォ!」

ほむら「ちょっと、気を付けてよ。思いの外鋭利なのよこれ」

織莉子「先に言いなさいよと思ってしまうのでした」

キリカ「救急箱はどこだ絆創膏はどこだ塗り薬はどこだあわあわあわわ……!」

織莉子「落ち着いてキリカ」

キリカ「…………」

187: 2013/02/28(木) 22:15:28.64 ID:b2fpl/D20

織莉子「ん、キリカ?」

キリカ「…………」

ほむら「……?」

織莉子「キリカ、どうしたの?急に黙って」

キリカ「……ねぇ、織莉子。今何時?」

織莉子「へ?」

キリカ「……もしかしてもう夜?」

織莉子「あなた何を言っ……」

ほむら「……え?」

織莉子「な、何……これ……?」


キリカ「外が……『真っ黒』?」



188: 2013/02/28(木) 22:16:38.14 ID:b2fpl/D20

この部屋には、大層立派な窓がある。

窓から見る庭は、手入れがされていなくても十分良い景観である。

青空や夕日がとても美しい。今の時間帯では、空色と橙色の混ざった空が見えるはずである。

しかし、

外の景色から黒以外の色が消えた。消えていた。

窓に黒色をベタ塗りされたかのようだったが、そうではないらしい。

外が真っ黒だった。太陽が消えた。空が、雲が消えた。それどころか庭も道路さえない。

まるで屋敷が丸々『穴の中』に落とされたかのようだった。

しかし室内の光度そのものは変わっていない。

故に、この異常な光景に気付かなかった。


織莉子「な……何?こ、これ……」

ほむら「こ、この異常性……まさか……し、しかし……」

189: 2013/02/28(木) 22:18:36.66 ID:b2fpl/D20


『戸惑ッテイルゾ、頑張ッテ行ッテラッシャイ』


ほむら「……?」

ほむら「今、何か声が聞こえなかった?」

キリカ「え?」

織莉子「……『行ってらっしゃい』と聞こえたわ」

キリカ「え?え?」

織莉子「気を付けて。キリカ。ここは『魔女の結界』よ」

キリカ「う、ほ、本当だ……気配がする」

ほむら(そう……ここは魔女の結界だ)

ほむら(しかし……三人も魔法少女がいるのに……)

ほむら(今やっと、魔女の結界に飲み込まれていたことに気付いたのか?)

190: 2013/02/28(木) 22:21:08.41 ID:b2fpl/D20

空が漆黒である以外、不審な点は見当たらない。

天井の広さから家具の配置まで何も変化がない。

魔法少女の経験でわかる。これは間違いなく魔女、あるいは使い魔の結界である。

しかし、結界の内外が全く同じ景色で、気付かない間に飲み込まれた。

気付かない間に魔女の結界にいる。

そんな体験はかつて魔女の口づけをくらって以来、初めてのことである。


ほむら「結界がこんな形で現れるなんて……」

キリカ「結界には入り口があるもんなんじゃないの……?」

織莉子「まるで空間そのものを飲み込みそのまま結界にしたかのような……」

織莉子「空が暗くなっていた時点で、私達がいた場所は結界になっていた、ということ?」

キリカ「ここを丸々『コピー』したとか……?」

ほむら「何にしても……異常すぎるわ」

191: 2013/02/28(木) 22:22:17.27 ID:b2fpl/D20

ほむら(……まさか)

ほむら(ま、まさかこれは……)

ほむら(……い、いえ、そんなことは……)

ほむら(存在しないはずだ。だから、それはあり得ない)

ほむら(異常なことが起きたら『それ』を疑うのは……悪い癖ね)

ほむら(……幻影を見せる魔女?気配を消せる魔女?)

ほむら(いえ、何にしても、どうにも腑に落ちない)

キリカ「これって、本物?結界の一部?」

織莉子「さぁ……ただ、この空間は丸々私の家そのものに見えるけど……」

織莉子(……壁時計は……10時?確か、16時前後に彼女が来訪した……時計が遡った、あるいは進んだ?)

192: 2013/02/28(木) 22:23:23.47 ID:b2fpl/D20

ほむら「……美国織莉子。呉キリカ」

キリカ「何だい。客人」

織莉子「…………」

ほむら「この結界はあまりにもイレギュラーよ」

ほむら「一時的に共闘をしましょう」

ほむら「うっかり氏んでしまっては私の目的もあなた達の救世もままならない」

キリカ「…………」

織莉子「えぇ……わかったわ」

織莉子「ただし、ひとまずというだけよ。これが終わったら今日はもう出てってもらうわ」

ほむら「えぇ。わかったわ」

193: 2013/02/28(木) 22:24:47.96 ID:b2fpl/D20

ほむらは盾から取り出したショットガンを構え、

周囲を警戒する。

キリカはいつでも時間を遅くする魔法を使えるよう、

精神を落ち着かせる。

織莉子は二人から少し離れ、結界を観察する。

壁時計は異なる時を指している。

もしやと思い、カレンダーの方へ歩み、日付を確認する。


織莉子「…………」

織莉子「……このカレンダー」

織莉子「日付が先月になっている」

194: 2013/02/28(木) 22:26:46.68 ID:b2fpl/D20

ほむら「……先月?」

織莉子「確かに私は『この』先月のページを破り捨てた。私の字のメモがある」

織莉子「……そう思えば、時計も辻褄が合う」

キリカ「織莉子……君が言いたいことって……」

織莉子「そうよ。この結界は私の家の『過去』そのもの。先月の我が家」

ほむら「過去、ですって?」

織莉子「えぇ。これはコピーよ」

織莉子「結界を生じさせたことも悟らせず、過去のこの場所を再現した」

織莉子「人の記憶を読みとっている?こんな魔女がいるとは……」

織莉子「……ん?」

195: 2013/02/28(木) 22:29:38.29 ID:b2fpl/D20

先月のカレンダーに目をやると、十四日の欄に文字が書かれていることに気付く。

その日に予定を書いた記憶はない。そこには筆記体で書かれた外国語。

この結界のヒントではないか、織莉子はカレンダーを注視する。


織莉子「英語……?」

織莉子「これは……小さいけど私の字に、似てる……わね」

織莉子「えっと……」

織莉子「『この落書きを和訳した時』……」

織莉子「『あなたは氏ぬ』……?」

織莉子「…………」

織莉子「何これ。趣味の悪い結か――」



ガォンッ



197: 2013/02/28(木) 22:30:42.58 ID:b2fpl/D20

キリカ「へ……?」

ほむら「な、何……!?」


理解ができなかった。溜息混じりの声を漏らした織莉子。

その刹那に妙な音。壁にコルク栓を抜いたような穴が空いている。


キリカ「おり……こ?」

キリカ「え?何?何が……起こったの?」


見間違えでなければ、たった今、

織莉子の頭が『消え』た。

首から上が『無くなっ』た。

『壁』ごと消えた。

198: 2013/02/28(木) 22:31:52.59 ID:b2fpl/D20

妙な音――。

削るような、飲み込むような、消すような、壊すような、何とも言えない音。

ほむらはかつて、それと全く同じ音を聞いたことがある。

あらゆる命を葬らせる氏の音。


「私の『スタンド』……クリームで織莉子の頭を粉微塵にした」


聞こえてはいけない声が聞こえた。

そして、いてはいけない姿が現れた。

頭に黒いフードを被った『呉キリカ』がいつの間にか、そこにいた。

「ここにいるべきではないキリカ」は、首から上をなくし棒立ちをしていた織莉子の体を抱きかかえる。

そして、織莉子の胸部にあるソウルジェムを皮膚と肉ごと毟り取り、

口の中に放り込み「食べ」た。

織莉子の変身が解ける。たった今、美国織莉子は氏亡した。


199: 2013/02/28(木) 22:34:06.25 ID:b2fpl/D20

何故キリカが二人いるのか。今の一瞬で本当に織莉子が氏んだのか。

夢でも見ているのか。ここはどこなのか。

パニックがほむらの脳内を支配した。横で呆然とするキリカも同じだった。

「キリカの姿」は、流れ出る鮮血を浴びながら、

遺体のスカートを捲り、白い脚を露出させる。


「ふふ……ウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィン」


脚を撫で始めた。踵、脹ら脛、腿。

その手を滑らせた。

白い脚に薄赤色の線が描かれる。

「キリカの姿」は織莉子の遺体からスカートを剥ぎ取り、

下着のゴムを引っ張りながらニヤニヤした表情でこちらを見ている。

200: 2013/02/28(木) 22:36:30.32 ID:b2fpl/D20

何故キリカが二人いるのか。今の一瞬で本当に織莉子が氏んだのか。

夢でも見ているのか。ここはどこなのか。

パニックがほむらの脳内を支配した。横で呆然とするキリカも同じだった。

「キリカの姿」は、流れ出る鮮血を浴びながら、

遺体のスカートを捲り、白い脚を露出させる。


「ふふ……ウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィン」


脚を撫で始めた。踵、脹ら脛、腿。

その手を滑らせた。

白い脚に薄赤色の線が描かれる。

「キリカの姿」は織莉子の遺体からスカートを剥ぎ取り、

下着のゴムを引っ張りながらニヤニヤした表情でこちらを見ている。

201: 2013/02/28(木) 22:37:11.65 ID:b2fpl/D20

「こらッ!」

「うわっ!」

「『食べ物』で遊ばないの!」

「ご、ごめんなさぁい。『同じ』だからつい!」

「この浮気者」


混乱が混乱を呼ぶ。

キリカにゲンコツし怒鳴った存在。

それは、白い衣装、背の高い帽子。

『美国織莉子』がそこにいた。

壁にあいた穴から現れた。

二人の織莉子がそこにいる。

二人のキリカがそこにいる。

202: 2013/02/28(木) 22:38:37.35 ID:b2fpl/D20

ほむら「そ、そんな……え……?」

ほむら「どう、なって……い、一体……え?」

ガシャンッ

思わずショットガンを床に落とす。

隣で無言で棒立ちをしているキリカ。遺体を愛でているキリカ。

首のない織莉子の遺体。腕を組んでいる織莉子。

織莉子とキリカが二人ずついる状況。

「後から来た」織莉子とキリカは、

ほむらと「こっち」のキリカに向けて言った。

203: 2013/02/28(木) 22:41:17.84 ID:b2fpl/D20

「私達は使い魔よ」

「そう!その名は『ジシバリの魔女アーノルド』だよッ!」

「と、我々『使い魔』一同は親しみを持って『母』をそう呼んでいるわ」

ほむら「つ……『使い魔』……!?」

「そう……私達は『アーノルドの使い魔』なんだよ。ところでほむら、イメチェンした?」


自称使い魔の織莉子の姿とキリカの姿は、

不敵な笑みを見せてそう言った。そして続ける。


「だから少しカタコトの外人みたいな呼び方をしてくれると『本物』との区別がついてこっちとしても助かる」

「えぇ。ね?"Kirika"」

「うん。"Oriko"」

Oriko「うふふ」

Kirika「えへへ」

204: 2013/02/28(木) 22:43:30.24 ID:b2fpl/D20

織莉子の姿をした使い魔"Oriko"はそう言った。

キリカの姿をした使い魔"Kirika"はそう言った。

二人……否、二体は『ジシバリの魔女アーノルド』という魔女から産まれたらしい。

使い魔の魔力を感じながら、魔法少女としての魔力の波長も感じる。

使い魔と魔法少女。二つの波を感じる異常な存在。

ほむらは、嫌な予感を覚えた。


Kirika「ちなみにジシバリっていうのは花の名前ね」

ほむら「な……何が……」

Oriko「ふふ……『その節』では世話になったわね。暁美ほむら」

ほむら「何が……起こって……」

Oriko「飲み込みが悪いのね。久しぶり、と言うのよ」


間違いない。ほむらは確信した。

ほむらは、この二体……否、二人に会ったことがある。

205: 2013/02/28(木) 22:45:37.25 ID:b2fpl/D20

Oriko「我々は、あなたが言うところの『前の時間軸』の『概念』よ」

Oriko「私は美国織莉子であり、使い魔である……『過去の時間軸の概念に寄生する』使い魔なのよ」

Kirika「それがアーノルドの『魔女としての能力』であり『スタンド』なのさ」

Kirika「そういうわけで『スタンド使いの私達』がここにいるんだ」

ほむら「ス……『スタンド』……!」

ほむら「魔女の……『スタンド』……!?」

Kirika「トラウマを抉っちゃったかな?」

Oriko「アーノルドのスタンド能力……過去の概念をこの世界に生み出す」

Oriko「そしてアーノルドはそれを使い魔とすることができる」

Kirika「我々は、そのいともたやすく行われるえげつないスタンドを『アンダー・ワールド』と呼んでいる」

Kirika「過去とは、君の見捨てた、記憶している時間軸を言う……それを読みとるのもアーノルドの能力。呼び出すのがスタンド能力」

206: 2013/02/28(木) 22:46:28.92 ID:b2fpl/D20

キリカ「あ……ああ……ああ……」

キリカ「ああ……!あああ……!」


理解を超越した光景に、ようやくキリカの声帯が追いついた。

脳はまだ戸惑っている。

スタンド、時間軸、アンダー・ワールド、アーノルド、理解が追いつかない。

ただ、織莉子が氏んだということだけは理解した。

しかし、大切な存在が氏んで自分が何を思えばいいのかわからない


Kirika「おやおやおやおやおやぁ?」

Oriko「『あなた』がやっと声出せるようになったわね」

Kirika「そうだねぇ」

Oriko「……しましょ?」

Kirika「え?」

207: 2013/02/28(木) 22:48:20.47 ID:b2fpl/D20

Oriko「Kirika……こっち向いて」

Kirika「あぁ、Oriko……この『私』が見てるんだよ……恥ずかしいよ……」

Oriko「ふふ……見せつけちゃえばいいのよ……」

Kirika「あぁ、Oriko……ん」

Oriko「ちゅ……んっ」

Kirika「はむ、んちゅ……うん」

Oriko「ぁふ……んん……ふぅ」


脈絡もなく、使い魔同士は接吻をし始めた。

艶めいた吐息を漏らしながら、見せつけるようにディープ・キスをする。

わざとらしく唾液と空気が混ざる音を結界内を響かせる。

208: 2013/02/28(木) 22:49:20.38 ID:b2fpl/D20


ほむらはどうすればいいのか、パニック状態に陥った。

撃てばいいのか、撃ったとして、目の前の二体はスタンド使い。

勝ち目はあるのか。スタンドは見えない。

キリカをつれて逃げた方がいいのではないか。

逃げるとして、逃げ切れるのか。

この結界がどういう風になっているのかわからない。

いつの間にかに放り込まれていたため、出口がわからない。

下手に動いた方が危険かもしれない。

しかし、逃げた方が得策だというのも事実。

ならここで一人だけ逃げるよりもキリカを連れて行った方がいい。

後に戦力になる可能性がほんの少しでもある以上、その方がいい。

だとしても、今、体が動かない。むしろ動けない。

混乱している。時間を止めていいのかさえも判断できない。

209: 2013/02/28(木) 22:50:55.38 ID:b2fpl/D20

一方、キリカの心は黒い感情に支配された。

自分の姿をした使い魔が、織莉子の姿をした使い魔と接吻をしている。

「自分」が「織莉子」に腰を撫で回されている。

ソウルジェムのある位置に触れられると「自分」はピクリと体を揺らした。

頬を紅潮させる自分。唇からよだれを垂らす自分。

目を潤ませる自分。艶やかな声を出す自分。内股になる自分。

不覚にも羨ましいと思った。

気持ちよさそうだと思った。

温かく柔らかそうと思った。

吐き気を催す。寝取られているような気分だった。

当の織莉子は氏んだというのに。自分が自分なのに。

キリカの脳は今、ほむら以上のパニック状態となっている。

210: 2013/02/28(木) 22:51:40.02 ID:b2fpl/D20

Oriko「んぅ……甘い」

Kirika「ずきゅぅ~ん」


OrikoとKirikaの唇から糸がひかれる。

Orikoは満足げな表情を見せる一方、Kirikaは顔を赤らめモジモジしている。


Oriko「さぁKirika。ここは私がやるからあなたは先に帰りなさい」

Kirika「う、うん……わかった……」

Oriko「『私』は残しておいてね」

Kirika「早く……帰ってきてね?」

Oriko「えぇ」


Kirikaは、織莉子の遺体を抱え、壁にあいた穴を抜けて部屋の奥へ消えた。

キリカは織莉子が遺体ですら、永遠に自分の側から消えてしまったことに気付く。

211: 2013/02/28(木) 22:52:50.22 ID:b2fpl/D20

――プッツン

キリカ「ウガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙アアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

ほむら「ッ!?」

Oriko「ちょっと。私のKirikaと同じ声でそんな不細工な騒音を出さないで」

キリカ「頃してやる!頃す!頃すッ!」

ほむら「く、呉キリカッ!き、危険よ!下がりなさいッ!」


沸き立つ激情に頭の中が真っ白になった。

今のキリカはただ喉が潰れるような声を出してOrikoの方に突っ込んだ。

それしかできない。

時間を遅くすることや相手の行動の推測やほむらの助言は二の次三の次。

爪をデタラメに振り回しながら走ることしか、今のキリカに能がない。

212: 2013/02/28(木) 22:55:41.78 ID:b2fpl/D20

キリカ「ブチ頃してやるゥゥゥゥゥゥァアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!」

Oriko「ふん……」

Oriko「蹙れッ!『リトル・フィート』ッ!」


Orikoは背後から人型の像を出した。

人型のロボット風デザインのエネルギー。

前の時間軸の美国織莉子が有していた能力。

右手に鋭い爪を持つ『スタンド』である。

能力は爪で切りつけたものを『小さくする』能力。

しかし『スタンドはスタンド使いにしか見ることができない』というルールがある。

キリカには、その姿が視認できていない。

213: 2013/02/28(木) 22:56:51.74 ID:b2fpl/D20

キリカにはそのスタンドが見えない上に、

リトル・フィートの攻撃は素速い。

混乱しているほむらが時間を止めるより、

暴走するキリカの爪が体に到達するより、

キリカを切りつけ体を小さくして踏みつぶす方が早い。

キリカの爪がOrikoに届く前に、リトル・フィートの爪が触れそうに――。


グンッ

Oriko「……え?」

Oriko「リ、リトル……フィート?」

214: 2013/02/28(木) 22:58:01.99 ID:b2fpl/D20

突如、リトル・フィートの右腕が『止まっ』た。

右腕を動かすことができない。

リトル・フィートの爪がキリカに届かない。

予想外の出来事。

スタンドを持つ自分が持たざる者に負けるはずがない。

見えない能力に勝ち目はない。見えずにいつの間にかに傷つけられる。

美国織莉子の概念、Orikoには予知するまでもないという油断があった。

それ故、その予想外の出来事に大きな動揺を生んだ。


Oriko「リトル・フィート……!どうして……!?」

Oriko「――ハッ!」

キリカ「ガアアアアアァァァァァァァッ!」

ザグッ!

215: 2013/02/28(木) 22:58:51.90 ID:b2fpl/D20

Oriko「ガハッ……!」

ほむら「あ、あれは……!」

Oriko「な、何……!?」


キリカの爪がOrikoの腹を貫いた。

そして、リトル・フィートの右腕が途中で止まってしまった原因を理解した。

ほむらも『理解』した。

少し離れた位置のドアが揺れている。


Oriko「こ……れ、は……!?」

ほむら「み……える……!」

Oriko「……!」

ほむら「『見える』わ……私……!」

Oriko「な……!?」

216: 2013/02/28(木) 23:00:32.05 ID:b2fpl/D20

ほむら「私にも『見える』……!?り、リトル・フィートが……!」

Oriko「な……!?何……だとぉ……!?」

Oriko「あ、暁美ほむらッ!あ、あなた……まさか……!」

Oriko「ス……スタンドを……ッ!」

Oriko「貴様『スタンドが見える』のか……!?」


ほむらの目の前の光景。腹と口から血を流すOriko。

爪を刺したまま静止したキリカ。

背後にいる、半透明の無機質的な人型の像。

腹に細い穴をあけている。右腕をキリカの方へ伸ばしたまま動かない。


ほむら「スタンドが……『見える』……!」

Oriko「スタンドに目覚めたのか!?いつの間に!?」

Oriko「そんな……!このままでは『レクイエム』が――」

217: 2013/02/28(木) 23:01:51.53 ID:b2fpl/D20

ザシュッ!

キリカは爪を勢いよく引き抜いた。

傷口からゲル状の物体が流れ出す。これが使い魔の血。

キリカはそのまま腹を斬った。


Oriko「がはァ……!」

キリカ「よくも……よくも織莉子を頃したな……」

キリカ「貴様ァァァァァッ!」

キリカ「よくも私に『織莉子の姿』を斬らせたなァァァァッ!」

キリカ「貴様が悪いんだッ!」

キリカ「思い知れッ!思い知れッ!」

Oriko「ガアァァァァッ!ガファ!」

218: 2013/02/28(木) 23:03:00.16 ID:b2fpl/D20

キリカはOrikoを、爪を叩き付け突き刺し爪で抉り分解し断ち掘り出し裂いた。

織莉子の姿をした使い魔は赤色の液体を撒き散らしながら断末魔をあげていた。


キリカ「貴様を頃すだけでは私の怒りがおさまらないッ!」

Oriko「グッ、ゴパ……そ、そんな……!そんなッ!」

キリカ「貴様が悪いんだ!貴様が織莉子と私を侮辱した!侮辱したんだ!」

Oriko「この私が……!スタンド使いであるこの私がッ!」

キリカ「思い知れ!思い知れ!どうだ、思い知れ!思い知ったか!思い知れ!思い知れ!」

Oriko「この私がァァァァァッ!」

キリカ「散ねェェェェェェェッ!」

Orika「OOORRRRRYYYYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAHHHHH!」

219: 2013/02/28(木) 23:04:31.00 ID:b2fpl/D20

ガシャンッ!

ほむらはキリカを止める気はさらさらなかった。

そしてほむらが『自分のスタンド』を理解した時、

ようやくキリカの爪がOrikoのソウルジェムを切り砕いた。

同時に、断末魔が止んだ。

リトル・フィートは塵となり、Orikoは黒い煙のようになり消える。

使い魔は消滅した。

キリカの腕が止まった。


キリカ「ハァ……ハァ……ハァハァ……ハァ……」

ほむら(魔法少女の概念という以上……ソウルジェムが砕けると絶命するのか)

ほむら(肉塊のようになってやっと氏んだのだからそうなのだろう……)

220: 2013/02/28(木) 23:06:32.42 ID:b2fpl/D20

いつの間にか、窓の外は橙色に変わっていた。

壁にあいた穴がなくなっている。床を汚した血の赤は一切ない。

カレンダーと時計は正しい「今」を指している。

結界が解けたらしい。

そのことは冷静さを欠いたキリカでも理解できた。

それは同時に、最愛の人を失った事実を突きつけられたことでもある。


キリカ「……」

キリカ「織莉子……」

キリカ「織莉子がぁ……」

キリカ「私のぉ……織莉子……」

キリカ「う、うあ……ああぁぁ……!ああ……!」

221: 2013/02/28(木) 23:07:20.33 ID:b2fpl/D20

ほむらはキリカのことをよく知らない。

しかし、キリカが織莉子を大事に思っていたことは「初対面」でも理解できた。

キリカの織莉子への思いは、どことなくまどかを思う自分と被った気がした。

時間遡行を始めた初期の頃の自分の目の前でまどか惨殺されたらどうなるか、

それを想像すれば、キリカがどうなるか、ほむらは容易に想像できた。


ほむら(こ、このままでは呉キリカのソウルジェムが……!)

ほむら「……落ち着きなさい」

キリカ「うあ゙あ゙あ゙あああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあッ!」

ほむら「お、落ち着きなさい!」

キリカ「お゙お゙お゙お゙り゙い゙ぃぃぃぃぃごお゙ぉぉぉぉぁぁぁぁぁッ!」

キリカ「あんまりぃぃぃぃだァァァァァ!い゙や゙ア゙ァァァァァァァァァァァ!」

ほむら「…………呉キリカァッ!」

キリカ「ッ!」

222: 2013/02/28(木) 23:07:59.64 ID:b2fpl/D20

パッシィァ!

ほむらはキリカの頬を叩いた。

軽い音が主を無くした屋敷に響いた。

怯んだ隙を突き、ほむらはキリカのソウルジェムにグリーフシードをあてる。

キリカのソウルジェムは腰についているため、自然と抱き寄せるような形になる。

グリーフシードが黒色に染まったのを確認し、ほむらはキリカを解放する。

キリカの絶望を物理的に防ぐのに、新品のグリーフシードを丸々一個使用した。


キリカ「…………」

キリカ「う、うぅぅぅ……ぐっ……くぅ……!」

ほむら「……落ち着いたかしら?」

ほむら「深呼吸をしなさい。こんなところで魔女になったら笑い話にもならないわよ」

キリカ「私にとって……織莉子は……!」

223: 2013/02/28(木) 23:09:24.74 ID:b2fpl/D20

キリカ「私にとって……織莉子はなぁ……!」

ほむら「……大切な人でしょうね」

キリカ「知った風な……」

ほむら「…………」

キリカ「知った風な口を聞くんじゃあないぞッ!」

ほむら「……っ!」

キリカ「勝手なことを抜かすなァッ!」


キリカはほむらの胸ぐらを掴んだ。

浮かべた涙を通した瞳から黒い感情が見える。

その場の勢いで人を頃してしまいそうな、そういう目だった。

ほむらはそれと似たような目をかつて見たことがある。

224: 2013/02/28(木) 23:10:43.23 ID:b2fpl/D20

キリカ「おまえが……来たからだ……!」

キリカ「魔女とか使い魔は人の憎悪や憂鬱とか、そういうのに……『引力』のように引き寄せられる……!」

キリカ「だからッ!」

キリカ「おまえが連れてきたんだッ!」

キリカ「私達は幸せだった!平穏だった!だから要因はおまえにある!それしかあり得ないんだ!」

キリカ「おまえが連れてきたんだ!おまえがァッ!」

ほむら「……使い魔を誘い込むような精神状態でわざわざ訪ねてくると思うの?」

キリカ「そ、それは……と、とにかく使い魔がおまえに引き寄せられた以外考えられないッ!」

キリカ「私と織莉子の姿をしていたのはいまいちわからないが、おまえはそれを知っていた感じだったぞ!」

キリカ「あいつらはおまえを知っていたようだった!」

225: 2013/02/28(木) 23:11:49.02 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

キリカ「ここまできて!暁美ほむら!」

キリカ「おまえ以外の他に何があるってんだよッ!」

キリカ「おまえのせいだ!貴様の!貴様のォッ!」


体重をかけ、ほむらを床に押し倒す。

歯を食いしばり息を荒くして顔を近づけるキリカ。

そのまま手を首にかけ絞めかねない、そういう表情。

しかし、ほむらは一切動揺を見せず冷たい表情をする。

熱された鉄を氷塊をあてられたかのように、キリカの頭は冷めていく。

226: 2013/02/28(木) 23:13:54.51 ID:b2fpl/D20

キリカ「ハァ……ハァ……ハァ……」

ほむら「…………」

キリカ「…………」

キリカ「…………わかってるよ」

ほむら「呉キリカ……」

キリカ「わかってるんだよ……八つ当たりだって」

キリカ「君は何も悪くない……こんなの、誰にも予測はできなかった」

キリカ「これはただの事故だ。わかってるんだよ……」

キリカ「予知できなかった織莉子にも、織莉子をみすみす氏なせてしまった私にも、それなりの落ち度がある」

キリカ「わかってるけど……わかってるけどさぁ……!」

227: 2013/02/28(木) 23:15:54.33 ID:b2fpl/D20

声が震えている。胸ぐらを掴んだ手から力が抜けていく。

ポロポロと、キリカの目から涙が落ちた。

その滴がほむらの顔に落ちる。温かい涙。

そのまま気の済むまで泣かせるのも良いとほむらは思ったが、

キリカの手首にそっと触れることにした。

それを「離せ」という意思表示と読みとったキリカは、それに従った。


ほむら「…………」

キリカ「…………」

キリカ「…………何故なんだ」

ほむら「…………」

228: 2013/02/28(木) 23:17:52.84 ID:b2fpl/D20

キリカ「何故、助けた?」

キリカ「見ず知らずの人間を……君の友達を殺そうと計画していた人間だ」

キリカ「ましてや今、君の首を絞め落とそうとした人間だ」

キリカ「そんな私を……グリーフシードを使ってまで……」

ほむら「……魔女になられたら迷惑だからよ」

キリカ「…………」

キリカ「魔女になっては困る……というのは嘘だろう」

ほむら「……何故、そう思うの」

キリカ「何となくわかるんだ」

キリカ「私は、織莉子を失ってしまった……」

キリカ「今更何を言われたところで私は気にならないだろうし、口外するような相手もいない」

229: 2013/02/28(木) 23:19:04.75 ID:b2fpl/D20

キリカ「話してよ。君のことを……君の目的を」

ほむら「…………」

ほむら「……私は未来から来た」

キリカ「……へぇ」

キリカ「聞かせてくれないか……?話聞いてる間に……少しは悲しみが和らぐかも」

ほむら「……わかったわ」


ほむらは洗いざらい話すことにした。自分の過去を。

親友との誓い。スタンドという能力。

時間遡行の能力。自分自身への誓い。

『まどか』という名前を伏せて話せる範囲で話した。

最初から魔法少女が魔女になるということを知っているキリカになら、話しても大丈夫だと思えた。

230: 2013/02/28(木) 23:19:44.13 ID:b2fpl/D20

――ほむらは思った。


……スタンドを視認することができてしまった。

つまり『スタンド』が私に『発現』してしまったということだ。

レイミには会っていない。それどころか、初見の魔女、使い魔にしか会っていない。

と、いうことは前の時間軸で既に……そして、引き継いでいるのだろう。

スタンド……か。

それを考えるのは後回しにするとして今危惧すべきことは……、

今現れた『過去の織莉子とキリカ』は『使い魔』だったということだ。

使い魔曰く、そしてその魔女、アーノルドとやらはスタンド使いの魔女らしい。

スタンドという概念が存在しないはずなのに何故……?

231: 2013/02/28(木) 23:21:51.50 ID:b2fpl/D20

レイミが何故スタンドという概念を産みだしたのか、そのルーツは不明だが……、

レイミのような、スタンドにまつわる魔女が他にも存在していたということか……。

そして、そのスタンドに目覚めた魔法少女が魔女になったのだろう。

使い魔の言葉を信じるのならば『アンダー・ワールド』はレクイエムではないらしい。

スタンド使いの魔法少女が魔女になれば、必ずレクイエムが目覚めるわけではないのだろうか。

……前の時間軸で予知を見られてしまった私と違って。


正直マズイということだけはわかる。

スタンド使いの魔女。

一方で、スタンド使いになっていた私。

言うまでもなく、私だけでは手に負えない。

利用できるものならしたい。

232: 2013/02/28(木) 23:24:06.25 ID:b2fpl/D20

呉キリカを引き入れることはできないだろうか。

信用できるとは言えないが、果たして……。


ほむら「――これが、私がここにいる理由」

キリカ「…………ふぅん」

キリカ「友達を助けるために、ねぇ……」

キリカ「それでここに来たわけだ。私達がとんでもないことをする可能性があるから……」

ほむら「それもあるわ」

ほむら「……落ち着いたかしら?」

キリカ「あぁ……割と、ね」

233: 2013/02/28(木) 23:25:57.29 ID:b2fpl/D20

キリカ「あまりに大きな物を失って、絶望を物理的に解消されたら……逆に冷静になれた気がする」

ほむら「内心、ワルプルギスの夜の戦力にならないか……利用する価値があるかを見定めていたわ」

キリカ「私を利用するだって?協力を煽ろうってかい?」

キリカ「ハハ……よしてくれ。私にとっての織莉子はさ……君にとってのその友達なんだ」

キリカ「友達になってくれた人物は、病弱な君を救ってくれた」

キリカ「私もだ。私も織莉子に……氏につつあった心を生き返らせてくれたんだ」

キリカ「私は君だ。君の傷は私の傷なんだ」

キリカ「君が友達が氏んだらその時間軸とやらを諦めるように……私にはもうこの世界に生きる気力がない」

ほむら「…………」

キリカ「だから、協力は約束できないね。そんな気になれない」

234: 2013/02/28(木) 23:27:13.05 ID:b2fpl/D20

キリカ「それに……その友達の名前すら教えてくれないだろう?」

キリカ「心のどこかで私が織莉子の遺志を継いでそいつを頃しかねないと考えているからだ」

ほむら「そ、それは……」

キリカ「私の、拒否するという選択は……互いにとって丁度良い」

キリカ「私はもうここにはいられない。どこかへ行くよ」

ほむら「……呉キリカ」

キリカ「取りあえず、助けてくれてありがとう」

キリカ「さようなら。恩人……」


キリカは屋敷を出ていった。

ほむらは追わなかった。

235: 2013/02/28(木) 23:28:11.48 ID:b2fpl/D20

ワルプルギスの夜の戦力として利用するつもりだった。

そのため、氏なれては、魔女になられては困ると思った。

だからグリーフシードを与えた。

しかし、本人にその気がなければ、無理に戦力としない。

来る者は選別するが去る者は追わない。

慰めの言葉も、説得もしない。

できない。


それ以上に、ある感情が心にある。


236: 2013/02/28(木) 23:29:22.84 ID:b2fpl/D20

美国邸を後にして、日が沈もうとしている帰路。

ほむらは、公園に立ち寄り、ベンチに腰を掛けて考えた。


私は織莉子……いや、Orikoのリトル・フィートが見えた。

呉キリカには見えなかったから……リトル・フィートがスタンドそのものであることはやはり間違いないはずだ。

見えたということは……私はスタンド使いだったということに、やはり間違いないんだろう。

何度考えても……都合の良い解釈をしようにも、それは事実だ。

スタンド……か。


ほむら「まさか……私に、スタンドが……」

ほむら「どうしても信じられない……スタンド」

ほむら「この時間軸でまどかを狙っていた美国織莉子……」

ほむら「それは、世界を滅ぼす魔女になるから」

ほむら「そして、前の時間軸では私を抹頃しようとしていた」

ほむら「それは、私もまた、世界を滅ぼすと予知されたからだ」

237: 2013/02/28(木) 23:30:23.28 ID:b2fpl/D20

ほむら「前の時間軸、美国織莉子の予知では……」

ほむら「私はレイミの影響でスタンドに目覚める」

ほむら「そして私の魔女化に伴って、そのスタンドは『レクイエム』という能力に覚醒する」

ほむら「そのレクイエムが世界を滅ぼす……そういう予知だった」

ほむら「私は……そのスタンドを、持ってしまった」

ほむら「つまり私は……万が一、魔女になったら……」

ほむら「…………」

ほむら「…………ああ、何てこと」

ほむら「魔女になるだけならまだしも……そんな……」

238: 2013/02/28(木) 23:31:06.16 ID:b2fpl/D20

ほむらは頭を抱えた。

自分が魔女になることは、何度か想像したことがある。

どんな魔女になるのか。魔女となったら人をどれだけ頃してしまうのか。

魔力切れか絶望してかどっちなのか。どういう感覚なのか。

なったとてすぐに頃してもらえるかどうか。悪い想像は絶えない。

魔法少女としての素質は大したことないためそれ程強くはないだろう。

しかし、今回は違う。話が根本的に違うのだ。

「世界を滅ぼす存在になる」というのは想像を超えている。

『レクイエム』そのものはわからない。

人間は未知を恐れる。

239: 2013/02/28(木) 23:33:23.23 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

ほむら「いや……」

ほむら「今は、恐れている場合ではない」

ほむら「私が、世界を滅ぼしうる存在だと言うのであれ……」

ほむら「それが、何だと言うの」

ほむら「言ってしまえばまどかと同じ立場になっただけじゃない」

ほむら「私は誰に誓った?」

ほむら「自分に誓った」

ほむら「まどかを助けると自分に誓った」

ほむら「そう……望みは捨てない!私はそのために生きている!」

240: 2013/02/28(木) 23:34:55.30 ID:b2fpl/D20

ほむら「この状況を逆手に取るのよ」

ほむら「呪いと言えど、これはスタンド……」

ほむら「スタープラチナやキラークイーンのように……これは『力』となる」

ほむら「アーノルドとかいうスタンド使いの魔女に、スタンド使いの使い魔に対して、スタンドが見えるという点で不利を解消できる」

ほむら「そう。逆よ」

ほむら「これは新しい力。新しい技術」

ほむら「世界を滅ぼしうるからといってどうということはないわ」

ほむら「魔女にならなければいい」

ほむら「……いえ」

ほむら「違うわ。ならなければいい、という安易な考えではない」

241: 2013/02/28(木) 23:35:55.10 ID:b2fpl/D20

ほむら「ワルプルギスを越えた……その時に」

ほむら「まどかを守ったその後に自ら命を絶とう」

ほむら「まどかを契約させずにワルプルギスを越えることさえできれば、まどかとの約束を果たせる」

ほむら「そして、私が氏ぬことでレクイエムは発動することはない」

ほむら「これで……因縁は断ち切れる」

ほむら「…………」

ほむら「そう……それでいい」

ほむら「まどかを救えれば……それで……」

ほむら「これは私のちっぽけな命なぞ超越した『使命』であり『願い』だから」

ほむら「私の氏で完結する……してみせる」

242: 2013/02/28(木) 23:37:38.22 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

ほむら「問題は果たして……『この』スタンド」

ほむら「どのように扱えばいいか……」


自身の指を見る。

細く白い指の先から、半透明の『糸』が垂れている。

そよ風に揺られず静止している、引力に従事する『糸のスタンド』

それは自分の意志で自在に、音もなく素早く動く。

ドアノブに引っかけ、リトル・フィートの指に巻き付き、その動きを止めた糸。

力強く素速い攻撃を放つまどかのスタープラチナや、

人の五感を騙す幻覚を見せる仁美のティナー・サックスと比べると、

このスタンドは「ただの」糸。あまりにもくだらない。

243: 2013/02/28(木) 23:40:35.44 ID:b2fpl/D20

こんな「糸」ごときで何ができるのか。これから考える必要がある。

これを扱えるようにならなければ、勝利はない。

糸は、どこまで自由が認められるのだろうか。糸で網を作り捕縛でもできないだろうか。

いや、できたとしても糸は切れやすいのではないだろうか。切れたら本体にもダメージを受けてしまう。

わざわざ自分の体を割いてまでそんな表面積を増やす意味を感じられない。


「……あら?暁美さん?」

ほむら「……ん」

ほむら「巴さん」

マミ「どうしたの?こんなところで……」

マミ「そろそろ帰った方がいいわよ。今夜は冷えるらしいから」

ほむら「…………」

244: 2013/02/28(木) 23:41:38.54 ID:b2fpl/D20

マミはほむらの沈黙に「必要以上に馴れ合うつもりはない」という言葉を思い出す。

あの全てに冷めたような、寂しい目。

また冷たくあしらわれるのかと思うと、言葉に詰まる。


マミ「あ……」

マミ「ご、ごめんなさい……また、私……」

マミ「……余計なお世話、だったわね」

ほむら「…………」

マミ「それじゃあ……」

ほむら「…………っ」

245: 2013/02/28(木) 23:43:15.39 ID:b2fpl/D20

ガシッ

ほむらには今……自分のスタンドの用途以外にも、

考えなければならないことがある。

ほむらは立ち去ろうとしたマミの手首を掴んだ。


マミ「え……?」

ほむら「……待って」

ほむら「待って、ください……お願い」

マミ「え……?」


狐に摘まれたような表情をするマミ。

その握力は弱々しい声の調子と非力そうな手と反する強さだった。

ほむらはゆっくりと立ち上がり、マミの目を見た。

その目と態度から、マミは不安の感情を感じ取った。

246: 2013/02/28(木) 23:44:17.88 ID:b2fpl/D20

マミ「えっ?あの、あ、暁美さん?」

ほむら「……巴さん」

マミ「……?」

ほむら「…………」

マミ「ど、どうしたの……?」

ほむら「その……」

ほむら「……い、今までの失礼な言動。……すみませんでした」

マミ「……え?」


マミは自分が夢でも見ているのではないかと一瞬錯覚した。

ツンツンした態度に定評のあるあのほむらが、今、目の前で頭を下げて謝罪している。

247: 2013/02/28(木) 23:44:58.26 ID:b2fpl/D20

ほむら「私が……あなたのお気遣いを無下にしたこと」

ほむら「その無礼を……許してください」

マミ「え、えっと……何かよくわからないけど……」

マミ「だ、大丈夫よ?気にしてないから」

マミ「だから……その、ほらっ、頭を上げて」

マミ「……何があったの?」

ほむら「…………」

ほむら「……あなたの力が必要だと、思ったからです」

マミ「私の力が必要……?」

マミ「それは……ちょっと嬉しかったりして」

248: 2013/02/28(木) 23:46:16.69 ID:b2fpl/D20

マミ「それで……何?」

ほむら「巴さん。私には、目的があります」

マミ「目的?」

ほむら「今、ここで言わせていただきますが……キュゥべえには内密にお願いします」

マミ「……ええ。わかったわ」

ほむら「私は、ワルプルギスの夜を倒したい」

マミ「わ、ワルプルギスの夜……!」

マミ「あの伝説級の魔女が……現れるというの……!?」

ほむら「……はい。ここ、見滝原に、近い将来」

マミ「……!」

ほむら「そして、まどかを契約させないことです」

マミ「え、か、鹿目さん?」

249: 2013/02/28(木) 23:47:01.83 ID:b2fpl/D20

ほむら「まどかを契約させずにワルプルギスの夜の撃破、あるいは撃退……」

ほむら「それが、私の目的です」

ほむら「まどかを魔法少女の世界に深入りさせたくないのです」

マミ「…………」

マミ「でも、鹿目さん……割とノリ気だったりして……」

ほむら「ノリ気?」

マミ「魔法少女体験ツアーをしたの。暁美さんが転校した日に鹿目さんと美樹さんと三人でお昼を食べてたら、キュゥべえが来て……」

ほむら「…………」

ほむら(接触されたことを知らなかったわけではない)

ほむら(巴さんならあの二人を任せても大丈夫という……油断とも取れるが、そういう信用があったからだ)

ほむら(……これも感傷、なのだろうか)

250: 2013/02/28(木) 23:48:33.16 ID:b2fpl/D20

マミ「ま、まぁそれはいいとして……」

マミ「素質がある以上、契約する権利もあるわよ?」

ほむら「まどかを契約させずに、ワルプルギスを越える……それが私の全てなんです」

マミ「…………」

ほむら「まどかだけは、絶対に契約させたくない」

ほむら「こんな私に優しくしてくれる……まどかだけは、この世界に踏み込ませてはいけないんです……!」

ほむら「お願いします……今は詳細な理由を言うことはできませんが」

マミ「……………………」

マミ「……未来の話?」

ほむら「…………」

251: 2013/02/28(木) 23:49:42.94 ID:b2fpl/D20

マミ「あなたと初めて会って話をした時……」

マミ「何とかの魔女レイミに、仲間が殺されたと言ったわね」

マミ「だけど、その魔女は存在すらしていない」

マミ「そのことを聞いたらあなた……未来がわかる……そう言ったわね」

マミ「それを信用するわ。ワルプルギスの夜が来るって断言するんだもの」

ほむら「そう、ですか……」

マミ「それじゃあ、あなたの言った、『亡くなった友達』……」

ほむら「…………」

マミ「鹿目さんという名前が出たということは……」

ほむら「…………」

マミ「…………沈黙は肯定ととるわよ」

252: 2013/02/28(木) 23:50:30.87 ID:b2fpl/D20

ほむら「…………」

マミ「…………」

マミ「……わかったわ。魔法少女体験ツアーはもうしない」

マミ「私にも、聞かれたくないことの一つや二つはある。言及しないわ」

ほむら「……お気遣い、ありがとうございます」

マミ「よくてよ」

マミ「……えっと……それで、暁美さん?」

ほむら「?」

マミ「一応、確認しておくけど……」

マミ「……これから私達、共闘関係ね?」

ほむら「…………」

253: 2013/02/28(木) 23:50:56.39 ID:b2fpl/D20

ほむら「……はい」

マミ「ふふ、よろしい」

マミ「じゃあ、暁美さん。一緒にワルプルギスの夜を倒しましょうっ」

ほむら「……はい」

マミ「うんうん」

ほむら「……あと、巴さん」

マミ「ん?」

ほむら「もう一つ、言っておきたいことがあります」

マミ「何かしら?」

ほむら「まどかを契約させずに、無事ワルプルギスの夜を越えたとしてその後は……」

ほむら「……どうか、まどかをよろしくお願いします」

254: 2013/02/28(木) 23:52:31.03 ID:b2fpl/D20

マミ「……へ?よろしくって?」

ほむら「言葉通りです」

マミ「……?」

ほむら(まどかが未契約である上でワルプルギスの夜を越えた後……私は氏ぬ)

ほむら(巴さんには、まどかを契約させないという目的を教えた……そして、理解してくれた)

ほむら(私の遺志を継いでくれるでしょう。……彼女が生き延びれば)

マミ「よくわからないけど……言わずもがなよ」

ほむら「そうですか。……さて、もう一つ、重要なことを話さなければなりません」

マミ「?」

ほむら「今、一人では到底手に負えない状態になっています。だから、あなたを頼ったと言ってもいい」

マミ「……何かしら?」

ほむら「最近、ジシバリの魔女……『アーノルド』と呼ばれる魔女が産まれました」

マミ「アーノルド……魔女なのに男性名なの?」

255: 2013/02/28(木) 23:54:19.08 ID:b2fpl/D20

ほむら「それで……その」

ほむら「そのことについて話したいので……えっと」

マミ「?」

ほむら「巴さんの家……行ってもいいですか?」

マミ「!」

マミ「も、もちろんよっ。歓迎するわ!」


不意にマミの紅茶が飲みたくなった。マミの家の匂いが恋しくなった。

マミに完全に甘えたがっている自分がいる。

マミと共闘関係を結び、安心している自分がいる。

不安の感情を押し殺せなかった。自分の氏を前提とすることが怖くて仕方がなかった。

ほむらは、心の中でささやかながら自己嫌悪をした。

256: 2013/02/28(木) 23:55:40.94 ID:b2fpl/D20

リトル・フィート 本体:Oriko

破壊力-D スピード-B  射程距離-E
持続力-B 精密動作性-C 成長性-C

人差し指に鋭い爪のあるロボット風のデザインをしたスタンド。その性質は「瑣末」
その爪で傷つけられたものは小さくなる。また、自分自身も小さくできる。
縮んでいくスピードは魔力依存。魔力を込めれば込める程早く縮ませる。
OrikoはKirikaを小さくして小動物のように撫でるのが好き。
逆に自身が小さくなってKirikaの指にしがみつくというのも悪くない。

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ

*実在するスタンドとデザイン・能力が多少異なる場合がある



クリーム 本体:Kirika

破壊力-なし スピード-C  射程距離-E
持続力-C 精密動作性-C 成長性-E

「暗黒空間」という概念を創造・干渉する能力。その性質は「孤立」
フードのような姿をしている。それを被ることで暗黒空間を創る。
その中に隠れることで姿を消し、浮遊して移動ができる。
移動中に触れたものは暗黒空間へ飲み込まれて粉微塵にされる。
暗黒空間に隠れている間は何者からの干渉を受けず、Kirikaもまた干渉できない。

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ

*実在するスタンドとデザイン・能力が多少異なる場合がある

257: 2013/02/28(木) 23:59:03.15 ID:b2fpl/D20

今回はここまで。お疲れさまでした。

早速脱落者が現れましたが、それはさておきスタンドの登場です
スタープラチナと深い関係のあるスタンドとある血統と深い関係にあるスタンドですね

あと何か魔女が末恐ろしいことになってますが、魔女とスタンドの共鳴がほにゃらららということで、すごい

まどか「夢の中で会った……」ほむら「私の名前はほむらです」【その2】

引用: まどか「夢の中で会った……」ほむら「私の名前はほむらです」