142: 2018/05/13(日) 02:42:07.97 ID:GyzhkNKc0

最初から:【艦これ】暁が如く【極道】
前回:第九話「のうある鷹はなんとやら? 夕雲組の覚悟」


 第十話
 「嫁菜の如く」



―――陽炎組・本部・昼

ザワザワ…
プップー‼
ワーワー‼


嵐「――なんだぁ? 今日はヤケに人の往来がある気がするなー」

野分「そうね。なんでも、遊園地の料金が半額になったり、有名人とかもくるみたい」

谷風「かぁーっ! 粋だねぇ!」

浜風「……しかし、何故急に?」

舞風「まぁまぁいいじゃん。楽しいのはいいことだよ!」


秋雲「あはは……」

スッ

初風「……秋雲」ボソッ


秋雲「…………っ! ――は、初風の姉貴……」


初風「ちょっと話があるの。……来てもらえる?」ゴゴゴゴ…


秋雲「………………!」ゴクッ

秋雲(――もうバレたのか……。思ってたより早かったな……)

秋雲「……はい。行きます……」


――――――


黒潮「――おぉ、秋雲。急に呼び付けて悪いなぁ」


秋雲「い、いえ……。そ、それで、お話というのは……」


黒潮「それがなぁ、この前話した内通者の事なんよ」


秋雲「………………」


初風「……もう目星はついたの。でも、いま組長の心労を増やすのも嫌でね。……わかるでしょう?」


秋雲「……はい」


黒潮「それで、その目星っていうんがな――」


秋雲「…………っ」ギュッ…






黒潮「萩風……だったんよ」






秋雲「…………えっ、萩風の姉貴?? ど、どうしてっ!?」

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 水雷戦隊クロニクル(1) (角川コミックス・エース)
143: 2018/05/13(日) 02:42:55.77 ID:GyzhkNKc0

初風「気持ちはわかるわ。私だって、最初は信じたくなかったけど……」


黒潮「実はなぁ、うちらは情報の流出先が夕雲組と見て、いろんな角度から様子を見てたんやけど」


黒潮「……この前、一つの通信を傍受したんや」


秋雲「ぼ、傍受……?」


黒潮「それはなぁ、夕雲組の若頭補佐……風雲への通信だったんよ。……残念ながら内容までは把握できんかったけども、おそらくは萩風の声やったと思う」


秋雲「そんな…………」


初風「秋雲、あなたには何か決定的な証拠を掴んでほしいの。萩風もあなた相手だったら気を許すと思うから」


秋雲(萩風の姉貴が風雲の姉貴に……? いったい何がどうなって……。――とりあえず、ここは承諾して様子を見ないと……)


秋雲「わ、わかりました。なんとか、やってみます」


黒潮「すまんなぁ秋雲。よろしく頼むわ……――」



――――――



秋雲「――やっぱり無い……。風雲の姉貴にもらった、あの連絡先の紙が……」

トントン…

秋雲「――っ! ……は、はい!」


萩風「秋雲? ちょっと話があるの」


秋雲「……ちょうどよかった。私も、萩風の姉貴に話があるんだ」


萩風「そう。……じゃあ入るわね」ガチャ…


秋雲「萩風の姉貴……! 風雲の姉貴に連絡したのかっ!?」ガシッ


萩風「えっ!? そ、そうだけど……、なんで知ってるの? 秋雲も連絡を?」


秋雲「違うんだ……。その連絡の事が、もう本部長達にバレてる」


萩風「そんな……!」ハッ…


秋雲「なんでそんな勝手な事をしたんだよっ!」


萩風「……ごめんなさい。――でもっ、秋雲は陽炎組に居ないほうがいいと思ったから……! 結果的に私のせいでこうなってしまったけど、いずれはこうなる。隠しきれるはずがないもの」


秋雲「それならそれでよかったんだ! ……その連絡のせいで、本部長達は萩風の姉貴を内通者だと思ってる!」


萩風「…………っ! ――なら好都合ね。秋雲が逃げやすくなる」


秋雲「馬鹿なこと言うなよッ!」


萩風「実はね、私が今日ここに来たのは、さっき折り返しの連絡があったからなの」


秋雲「えっ……? 風雲の姉貴から……?」


144: 2018/05/13(日) 02:43:34.23 ID:GyzhkNKc0

萩風「えぇ、連絡とは言っても『朝霜を見た時、雲が集まる場所で』っていう謎めいたものだったけれど」


萩風「でも、その話を聞いてわかったの。傍受されてることを知って、暗号を使っているんだ……って」


秋雲「………………」


萩風「きっと明日の朝に、その『場所』に行けば――」


秋雲「……違う。冬じゃないから……」


萩風「え?」


秋雲「明日の朝じゃないんだ――」




秋雲「――今日の……夕方だ」




――――――

――――

――



―――某所・夕方

コソコソ…

萩風「――ほ、本当に夕方でいいの? 『朝霜』って確かに言ってたと思うんだけど……」


秋雲「教えられたんだ。こういう時の言葉に矛盾があれば、別の意味を考えろって」


秋雲「『雲が集まる場所』っていうのは、秋雲と風雲の姉貴の落ち合い場所ってことだと思う」


秋雲「でも『朝霜』は冬の季語で季節外れ。――それと同時に、『夕雲』組の組員の一人だから……」


萩風「なるほど……? ――でも、私も来て大丈夫なのかしら」


秋雲「こうするしかないよ。秋雲は残ってもよかったのかもしれないけど、萩風の姉貴だけじゃ信じてもらえないだろうし……」


萩風「……ご飯、作れなかったから……。みんな、もう気付いてるのかな」


秋雲「どちらにしたって、私たちは戻れない……。――ほら、もうすぐ着くよ」

ガサガサ…

萩風「――えっ……!?」

秋雲「な、なんであんた達がここに……っ!!?」




暁「――よかった、ちゃんと来たわね。秋雲と萩風かしら?」




秋雲「あ、あぁ……。なんで、夕雲組は……?」


雷「夕雲組はいま動くことができないらしくてね、代わりに……って頼まれたのよ」

電「なのですっ!」

145: 2018/05/13(日) 02:47:13.70 ID:GyzhkNKc0


萩風「信じて……いいんですか?」


響「それを決めるのはそっちさ。……さぁ行こう。まだ明るいうちになんとか――」


バンッ‼
バンッ‼
バンッ‼


暁「――ッ!? 探照灯……!?」





陽炎「――……そう。やっぱり、夕雲組と繋がってたのね。……初めまして、暁組の皆さん」





秋雲「く、組長……!!」


黒潮「……イジワルしてすまんなぁ、秋雲。本当はわかってたんよ……。でも、出来ればそうであって欲しくなかった」


初風「悲しいわね……」


秋雲「泳がされたってことか……」


萩風「み、みんなも……」



谷風「なんでこうなっちまったんだい……」

野分「覚悟は……出来てるんだよね」

嵐「まいったな……。こういうのはどーも……」

舞風「もう、ステップ踏めないね……」


雷「陽炎組が勢ぞろいじゃない……」

電「はわ、はわわわわ……」


陽炎「こちらとしては、大人しくしてくれると助かるんだけど……」


響「それは、無理な相談だね」


陽炎「……そうよね」


暁「……私たちも、争いたくはないのよ」


陽炎「ふふっ、おもしろいこと言うじゃない。冗談のつもり?」


暁「いいえ、だから争わないようにするために――」




暁「――こうなることも、予想してたってことよ」




陽炎「…………っ! ――みんな、周りを警戒してっ!!」




146: 2018/05/13(日) 02:48:52.61 ID:GyzhkNKc0

バシュッ‼ バシュッ‼


嵐「――なっ! 照明弾か!?」


卯月「うーちゃんだぴょ~んっ! どんどん撃つっぴょん!」

長月「思い知れっ!」バシュッ‼
菊月「行けっ!」バシュッ‼
三日月「えぇい!」バシュッ‼
望月「いよっ」バシュッ‼


初風「睦月組……っ!!」ギリッ…


暁「――よし、今のうちに逃げるわよ!!」

響「了解っ!」

雷「さぁ、二人も行くわよ!」

電「早くなのですっ!」グイッ

秋雲「あ、あぁ……!」

萩風「は、はいっ!」



陽炎「――浦風、磯風っ! 組員を連れて暁組を追いなさいっ!」

浦風「はいっ!」

磯風「了解!」


暁「うーちゃん! 私たちの目的は戦いじゃないってことを忘れないで!」


卯月「わかってるっぴょん!」

ザザッ

卯月「――頃合いをみて散開するぴょん。戦闘と、捕まることは禁止だぴょ~ん」

「「「「了解」」」」



ピピピッ‼

陽炎「――親潮っ? どうしたの、こっちも忙しいんだけど!」


親潮『すいませんっ! 浜風、時津風と共に夕雲組を見張っていたのですが、一斉に動き出しました!!』


陽炎「くっ……、そりゃ大人しくしてるわけないわよね……っ!」


親潮『ど、どうしましょう!?』


陽炎「親潮たちはそのまま! 戦わないで、気付かれない程度の距離で様子を見て、報告して!」


親潮『了解しました!』

プツッ…


黒潮「組長……どうするん? 夕雲組も関わってるとなれば、うちらの兵力だけじゃ……ちと厳しいかもしれんよ」


陽炎「……いえ、これは私たち陽炎組の問題。他の組に頼るわけにはいかないわ」


陽炎「出来ることを全力でやりましょう――」グッ…


―――CMへ

147: 2018/05/13(日) 02:50:07.40 ID:GyzhkNKc0

―――CM⑩

『メイド喫茶 アガにゃん』


キャルルーン♪

阿賀野「――おかえりなさいっ、提督さんっ♪」ニコッ


日常の生活に、疲れていませんか……?
 そんなあなたにお届けしたい! メイドのパワー!


酒匂「ぴゃんっ♪ 司令……だーい好き!」


ここ『メイド喫茶 アガにゃん』なら、素敵なメイドさんがお出迎え!
 中には少し個性的なメイドさんも……?


能代「オ、オカエリナサイマセッ! テ、テイトク……サマ……」ガチガチ


矢矧「な、なんで私がこんな……っ!」モジモジ…


ツンデレなメイドさんも、ちゃーんと居ますよ!
ぜひ、あなたの癒しになれば!



※『メイド喫茶 アガにゃん』をご利用いただく前に。

・ご利用料金は入場料800円(税抜)+メニュー代金になります。

・ご滞在は基本1時間までとさせていただいています。

・メイドさんと記念撮影(1000円)やゲーム対戦(500円)なんかもできます!(料金はお会計時に追加させていただきます)


・メニュー一覧(表記はすべて税抜です)
かいぼうかんコース  1500円
くちくかんコース   1800円
けいじゅんコース   2000円
じゅうじゅんコース  2300円
せんかんコース    2700円

アガにゃんスペシャルコース
・あがの      7500円
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・やはぎ      6800円
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たくさんのご来店、お待ちしてます!




気になる点や文句があれば、お気軽にお電話を!

TEL:○○○-△△△-□□□
(運営・天龍商会 店長・龍田まで)




153: 2018/05/18(金) 01:15:18.96 ID:icXtthss0

―――CM明け

―――時刻はさかのぼり 暁組・事務所


暁「――さて、だいたいの話はわかったかしら?」


秋月「か、陽炎組を相手に……ですか」

吹雪「本当に大丈夫でしょうか……」

睦月「きっと、みんなで力を合わせれば大丈夫にゃしぃ!」


暁「そうっ! 出来るか出来ないかじゃないの。やるしかないのよっ!」


暁「……それでこれから、私たち暁組が考えた『秋雲絶対救出大作戦』を説明するわ」


電「私たち……というか、全部響ちゃんが考えたのです」


暁「黙りなさい、細かいことはいいのよ。――それじゃ、響。説明よろしく!」グッ?


響「わかった。それじゃ、この作戦の概要と各組のやってもらいたい役割を話すよ――」


――――――


響「――と、そこまで出来ればもうこっちのものさ。……簡単に行けばそれが一番だけど、おそらくは陽炎組が出てくることになる」


響「でも、みんながベストを尽くせば、絶対に出来るはず。……説明は以上だよ」


暁「以上よ! 何か質問はある?」ドヤッ

雷「質問されても、組長は答えられないと思うけど……」ボソッ


睦月「なるほどなるほど……! まかせてよっ、なんとかやってみせるにゃしぃ!」

秋月「これなら確かに……! 私たちでもお役に立てると思います!」

吹雪「ふ、吹雪組の役割はこれですか……? だ、大丈夫かな……」


暁「……よし、大丈夫ねっ! 響、このこと夕雲組にはどう連絡しようかしら」


響「早霜がまた来るらしいから、その時に伝えるよ」


電「ところで、早霜さんは外に出ても大丈夫なのです?」


雷「……まぁでも、事務所の中にだっていつの間にか居たんだもの。気付かれずに動けるのかもしれないわね……」


電「やっぱあの人怖いのです……――」


――――――


―――夕雲組・本部


早霜「――くしゅんっ」


夕雲「早霜さん、大丈夫?」


早霜「フフフ……大丈夫です」


夕雲「……それで、その話は本当なのかしら? まさか、本当にやってくれるだなんて……」


154: 2018/05/18(金) 01:16:02.66 ID:icXtthss0

巻雲「夕雲組長……。なにか心配事でもあるんですか?」


夕雲「……いえ。――ダメね、悪い方向にばかり考えてしまう」フルフル…


風雲「すいません……。私の軽率な行動のせいで――」


長波「おいおい、風雲の姉貴。それは言わないって約束だぜ。遅かれ早かれ秋雲のヤツは救うつもりだったんだし、ちょうどいいじゃん」


高波「な、長波姉さま……。それはちょっと楽観的すぎかも……」


夕雲「なんにしろ、この一本の蜘蛛の糸……。たとえお釈迦様にだって切られるわけにはいきません」


夕雲「私たちも、暁組を信頼して動きましょう。……それで、早霜さん。暁組はどう動くと?」


早霜「それはまだ……。どうやら作戦を立てるようなので、頃合いを見て戻ろうかと」


夕雲「そう……。ごめんなさいね、早霜さんに頼るしかないの」


早霜「フフフ……気にしないでください」


夕雲「――さぁ、皆さん覚悟して。暁組が動いたと同時に、私たちも援護に回るわ。……夕雲組の本気、見せてあげましょう」


「「「「はいっ!」」」」



――――――

――――

――



―――暁組・逃走中

ダダダダ…

暁「――響! 次はどっちっ!?」


響「あっちだ!」



嵐「逃げる道に迷いがない! よく調べてきてるな……!」


浦風「ウチらのシマの中でケリを着けるけんっ!」


谷風「浦風の姉貴っ! 砲は撃ってもいいんですかいっ?」


浦風「……ダメじゃ! 秋雲と萩風に当たる……!」


磯風「慌てなくていい、このシマの事なら私たちのほうが詳しい。野分、先回り出来るか?」


野分「はいっ! ――嵐、舞風っ!」

嵐「おうっ!」

舞風「りょーかい!」




秋雲「ぐっ……! 本当に大丈夫なのかっ!?」

萩風「いいから! 着いていくしかないでしょう!」

155: 2018/05/18(金) 01:16:48.54 ID:icXtthss0


暁「……少し厳しいわねっ! 最初の地点までは後どれくらいかしらっ?」ハァハァ…


電「ま、まだまだなのですっ!」


雷「や、やっぱり、装備持ってきた方がよかったんじゃないっ!?」


暁「ダメよっ! 戦うぐらいなら、身軽になって走った方がいいわっ!」


ガッシャーン?


響「…………っ!! マズい、先回りされてるっ!」


暁「くっ……! イチかバチかで突っ切るわよ!」



野分「――止まれッ!! 秋雲、萩風っ、逃げ切れるわけがないのはわかってるでしょう!」ガチャ?



萩風「……わ、私が囮になりますっ! だからその隙に、秋雲を連れて――」


暁「馬鹿言ってんじゃないわよ! それじゃ意味ないの!」


萩風「で、でもっ! そうしないと皆さんが……!」


暁「ぐっ……!」


ドンガラガッシャーン?


野分「――――ッ!!?」


「いよっし、邪魔するぜぇ!!」

「またそんなに張り切って……。――……失礼しました、暁組の皆さんですね?」


暁「えっ……だ、誰なのよっ!?」


響「……血霧姉妹? 綾波組の……、何故……!?」


狭霧「詳しく説明する時間はありませんが、夕雲組との縁がありまして……」


天霧「あぁもう、まどろっこしいぜっ! いいから、ここはあたし達に任してさっさと行きなっ!」


電「で、でも……!」


暁「……行きましょう! 綾波組のお二人、ありがとう……。でも、出来れば戦わないで欲しいというか――」


狭霧「それも承知しています。今はとにかく、暁組の方々は逃げることに専念してください」ニコッ

天霧「そういうことだっ!」


雷「あ、ありがとうっ!」ダダダ…



浦風「どういうことじゃ……! 綾波組まで出てくるなんてっ!」


磯風「……やってくれるな」



156: 2018/05/18(金) 01:17:42.37 ID:icXtthss0

磯風「――浦風の姉御。……あの二人は私と野分が相手します。谷風、嵐、舞風と暁組を追ってください」


浦風「……わかった。でも、あの二人は相当な実力者と聞くけん、無理はしちゃいかんよ?」


磯風「わかってます……」


浦風「――谷風、嵐、舞風っ! ウチ達は暁組を追いかけるけん!」

谷風「がってんっ!」

ダダダダ…



磯風「……野分、立てるか?」


野分「問題ありません……」


狭霧「……浦風さん達は、仕方がないですね。何とか逃げ切れればいいんですけど……」


天霧「大丈夫さっ! あたし達は出来ることをやるだけ……そうだろ?」


狭霧「……そうですね――」


――――――

――――

――


―――陽炎組・陽炎


陽炎「――綾波組ですって!?」


嵐『はいっ、間違いありません! 磯風の姉貴が残って相手をしています!』


陽炎「……わかったわ。そのまま、暁組を追って」


プツッ…


陽炎「くっ……。そうか……、夕雲組と綾波組はすでに繋がっていたのね……」


黒潮「あはは……。暁組・夕雲組・睦月組・吹雪組・綾波組・秋月組の全部を陽炎組だけで相手にせなあかんのか……」


陽炎「初風っ! 睦月組はもういいわ、磯風の所に行ってあげて!」


初風「わかりましたっ!」ダッ?


陽炎「黒潮、天津風と雪風はどこに居たかしら?」


黒潮「たしか……、本部の守りやったと思うけど」


陽炎「本部の守りはしょうがないわ。ひとまず動いてもらいましょう」ピッ…


陽炎「……天津風、聞こえる?」


天津風『はい、聞こえます』

――――――
――――
――

157: 2018/05/18(金) 01:18:11.38 ID:icXtthss0


―――陽炎組・本部

陽炎『――状況は予断を許さないわ。お願いね』


天津風「はい、わかりました」

プツッ


天津風「……雪風、出かけるわ」


雪風「へっ? 本部に居なくていいんですか?」


天津風「状況が変わったの。すぐに準備して」


雪風「はいっ!」


「その必要はないですよ」


天津風「――誰ッ!?」ガチャ

雪風「ふぇっ!?」


綾波「勝手に上がってしまって申し訳ありません。初めまして、綾波組の組長を務めております、綾波と申します。どうぞよろしくお願いしますね」ニコッ


天津風「う……そでしょ……!? 綾波がここに……っ!?」


敷波「――その物騒なもん下ろしてくんないかなー? 私たちに戦闘の意思はないから」ガチャリ…


天津風「――――っ!!」


天津風(もう一人……!? 若頭の敷波……全然気付けなかった……! なんて私は馬鹿なのっ!!)


天津風「せ、戦闘の意思はない!? 意味が分からないわ、勝手に本部にまで上がり込んでおいて……!!」


綾波「本当です。私たちは夕雲組との縁はありますが、暁組とはありません。……いま、見極めている最中なのです」


天津風「へ、へぇ……。どうでもいいわ、さっさと出てってくれない?」


敷波「……うちの組長に向かって言ってくれるじゃん。……覚悟はできてんの?」


綾波「やめなさい、敷波。天津風さんの言う通りです、私たちは出て行きましょう」


綾波「――ですが、夕雲組のため……。天津風さんと雪風さんを外に出すわけにはいきません。……雪風さんの噂は聞いていますよ。だから私が来たのです」


天津風「……なるほど……ね」


綾波「……では、私たちは失礼します。……また、いつの日か」

ピシャン…


雪風「……こ、怖かったです」


天津風「……そうね、私もよ」


天津風「これで私たちは動けなくなった……。あぁもう、組長になんていえばいいのよ……――」



――――――

158: 2018/05/18(金) 01:18:46.70 ID:icXtthss0


―――陽炎組・陽炎


陽炎「――そう……。いいわ、気にしないで。天津風のせいじゃない」


陽炎「えぇ……。何かあったらすぐに連絡して」

プツッ…


黒潮「……なるほどなぁ。暁組と完璧につながっとるわけじゃないっちゅうことか」


陽炎「えぇ。……でも、流石は綾波だわ。見事にやられた……」ギリッ…


黒潮「さっき、組長が天津風と話してる間に親潮たちから連絡があって、夕雲組に見つかったらしいけどなんとか逃げたらしいわ」


陽炎「……そう」


黒潮「万事休すってとこやろか」ハァ…


陽炎「いいえ、まだよ。……この勝負、暁組を止められれば私たちの勝ちってことになるんだから」


陽炎「……頼んだわよ、浦風達――」


――――――

――――

――



浦風「――おどりゃあっ、待つんじゃッ!」


暁「そう言われて待つ奴はいないわよっ!」


暁「響っ、最初の地点はっ!?」


響「もう少しだっ!」



谷風「……あれぇ? あっちって……」

嵐「大通りの方に向かってる? なにが狙いで……」



電「着いたのです!」

雷「吹雪組っ! お願いっ!」



舞風「……何かおかしくない――?」


パッパー?
ワーワー?
アハハハハハッ?
ドンチャンドンチャン…


浦風「――っ!? 人がこんなに……!? どうして……」




吹雪「――ご、ご協力ありがとうございまーす! ただいま通行止め解除しましたー!」



159: 2018/05/18(金) 01:19:35.10 ID:icXtthss0


―――時刻はさかのぼり 暁組・事務所


吹雪「――ふ、吹雪組は交通整備って……、そんなの……」


響「侮らないでくれ。むしろ、この役割は一番重要だと言っても過言じゃない」


吹雪「……そ、そうなんですか?」


響「あぁ。この役割は人数が多く必要で、何よりも絆が強くないとうまくいかない。……君たち吹雪組が適任なんだ」


吹雪「……わかりました! 吹雪組にお任せください――!」


――――――

――――

――



谷風「――マズいっ! 暁組に距離を離されちまうよっ!」


嵐「クッソーっ! なんで今日に限ってこんな人が多いんだよ!」


舞風「……そっか、遊園地だ……っ!!」ハッ…?


浦風「なるほど……。睦月組はずっと動いてたんやね……!」



暁「あの路地ねっ!!」ダダダ…



浦風「――あそこじゃ! 追うよっ!」


嵐「……ここで捕まえないと本当にマズいっ! もう陽炎組のシマじゃなくなる!」



ザザッ…

初月『――ターゲット、見つけた』


秋月「経路は?」


初月『計画通り』


秋月「了解っ」


秋月「――照月、準備して」


照月「はいっ!」ガチャリ…


初月『ターゲット、目標地点まで5……4……3……2……――』


秋月「――撃って!」


照月「…………っ!」パァンッ?



――――――


160: 2018/05/18(金) 01:20:31.41 ID:icXtthss0

パァン?


浦風「――ッ!! 下がるんじゃ!」バッ?


キュンッ?


谷風「す、スナイパーかいっ!?」


舞風「姉御っ! こっちの道から行きましょう!」


浦風「くっ……!」




秋月「――照月、少し遅いっ! 当てちゃダメ、ビックリさせるだけなんだから!」


照月「ご、ごめんなさい……」シュン…


ザザッ…
初月『ターゲットは予想通り、B地点に向かってる』


秋月「了解。……涼月、準備はできてる?」


涼月『いつでも、大丈夫です……!』




嵐「――随分離されちまった……!」ダダダッ…


パァン?


浦風「またっ!? ――止まって!」


キュインッ?


谷風「動きが読まれてるみてぇだねぇ……!」


浦風「いったいどこから……! ――あれって……!」

ブーン…

浦風「ぐっ……!」パパパンッ?

バァン?



初月『――ドローンを撃墜された』


秋月「そう……。まぁ、十分に時間は稼いだでしょう!」


秋月「……それじゃみんな、空包をこめて!」


秋月「――撃ってっ!」


パァン?パァン?
パァン?
パァン?


ワーワー? ハナビカシラ?
ワー、ハナビダー?
ドコドコ…?

161: 2018/05/18(金) 01:21:16.29 ID:icXtthss0


舞風「――うわぁ! また銃弾がっ!?」


谷風「……でも弾がこないねぇ」


浦風「空砲……!? 祝砲のつもりなんか……!!」ギリッ…


嵐「姉御っ! 追いましょう――!」





磯風「――ちっ! まさかこっちも追いかけっこすることになるとは……!」


天霧「狭霧、少しぐらいやり合ったっていいだろっ!?」


狭霧「ダメです。組長に言われたじゃないですか」


野分「――磯風の姉貴! あの先に追い込めば行き止まりです!」


磯風「わかった……!」

ダダダダッ…

狭霧「――しまった……!!」


天霧「行き止まりかっ!?」


磯風「さて……、観念してもらおうか?」ガチャ…


狭霧「くっ…………!」


狭霧「――…………なんて、ね」


ガチャ?
ガチャリ?


野分「なっ……!?」


朧「残念、罠に嵌まったのはそっちよ」

曙「ざまぁないわね」フンッ

漣「キタコレ!」

潮「お、大人しくしてください……!」


磯風「――ははっ、してやられたな……」

野分「………………っ」グッ?



――――――


浦風「――暁組を見つけるんじゃ!」


谷風「しっかし、こりゃもう……」


嵐「くっそぉ……!!」


舞風「あ、あはは……」


162: 2018/05/18(金) 01:21:42.98 ID:icXtthss0


ピピピ…?

浦風「組長? もう少し待ってくれんじゃろうか! すぐに見つけて……!」


陽炎『……いいえ、だいたいの様子はわかったわ。実はね、磯風達も綾波組に捕まっちゃったみたいなの。初風から連絡があってね』


浦風「そ、そんな…………!!」


陽炎『向こうは、私たちが負けを認めて秋雲達を諦めれば、そのまま解放してくれるらしいわ』


浦風「……組長……っ!! 組長……すいません。ウチが不甲斐ないばっかりに……!」ギリッ…?


陽炎『いいえ、それは違うわ。……これは私のミス。陽炎組という力に甘えて、相手の力を見誤ってしまった』


浦風「………………」


陽炎『……認めましょう。この勝負――』





























陽炎『 私たちの、完敗よ 』





























163: 2018/05/18(金) 01:22:18.06 ID:icXtthss0



萩風「――ねぇ、秋雲?」


秋雲「ん? なにさ、萩風の姉貴」


萩風「……まだ教えてくれない? どうして、情報を流すなんてことをしてたのかって……」


秋雲「………………」


萩風「……まぁいいわ。でも、いつか教えて――」


秋雲「……信じてくれないかもしれないけど、秋雲はさ……。陽炎組が好きなんだ」


萩風「………………」


秋雲「でも、いつからだろうな。陽炎組は自分たちの強さを疑わなくなっちゃってさ。きっと……このままじゃ大変なことになるって思ったんだ」


秋雲「だから、夕雲組に陽炎組を抑えてもらって。そしてあわよくば、夕雲組と陽炎組が手を取り合ってくれたらいいなって……」


秋雲「……私はさ、嫁菜みたいな花でいいんだよ。道端に生えてるような、そんな花でさ」


秋雲「でも……秋雲は……。陽炎組と、夕雲組……。その両方に迷惑かけちゃったのかな……」


萩風「……そんなことないわ。秋雲は十分頑張った。少し、無茶なやり方だったかもしれないし、結果的にだったけども陽炎組は初めて負けを認めた」


萩風「秋雲のやったことは、無駄じゃなかったに違いないわ」


秋雲「……そうかな」


萩風「そうよ……」


秋雲「……そうだと、いいな――」


――――――

――――

――

?

164: 2018/05/18(金) 01:23:58.20 ID:icXtthss0


――

――――

――――――


―――後日 暁組・事務所


トントントン…


暁「――ん? はーい」


ガチャ


夕雲「お邪魔いたします。……お初に、暁さん」


暁「わぁ、夕雲ね! 秋雲と萩風の調子はどう?」


夕雲「何も問題はありません。……今日は、改めてお礼をしに参りました」


暁「気にしなくていいわ。ほら、困ったときはお互いさまっていうじゃない」


夕雲「そういうわけにはいきません。……お約束通り、私たち夕雲組は暁組に絶対の忠誠を――」



暁「――いいわよそんなの。面倒くさいし」



夕雲「えっ……??」


電「そうなのです! 私たちはお友達なのです!」

雷「そうね。やっぱ、そういうのは私たちには向いてないわ」

響「ハラショー」


暁「ほらね。……だから、これからも仲良くしましょ。……それでいいじゃない」ニコッ


夕雲「ふふっ……! あはははっ……! ……この夕雲が、相手の器の大きさを見誤るなんて……」ボソッ


暁「え、なにか言ったかしら?」


夕雲「いいえ……。――暁さん、では友達として……。この恩は絶対に忘れはしません。何かあったら、夕雲組を頼ってくださいね。……約束です」


暁「……えぇっ!」ガシッ?


電「――ところで、夕雲さんが来るって聞いたから、お菓子をいっぱい用意したのです!」


雷「それじゃ、私はお茶を淹れるわね!」


響「ふふふっ、ハラショー」


アハハハハ…?
ワーイワーイ?




 第十話
 「嫁菜の如く」

お わ り

165: 2018/05/18(金) 01:24:35.97 ID:icXtthss0


【次回予告】

デデンデデン♪


海風「白露組若中、海風です」


海風「暁組と陽炎組がぶつかったみたいですね」


海風「村雨さんと夕立さんの若頭補佐達が張り切ってしまって、それを抑えるのが大変でした」


海風「でもその時、時雨の若頭が言ったんです」


海風「すぐにその時はくる……って」


海風「決戦前夜、そんな気がしてなりません」


海風「――次回『暁が如く』第十一話」


海風「『はりきってまいりましょー! 結成、暁水会と陽炎連合』」


海風「任侠桜に仁義の嵐っ!」


海風「……海風組……とか作れないかな……」ボソッ


デデデン♪

?

166: 2018/05/18(金) 01:26:37.74 ID:icXtthss0
あれ? なんで「?」が最後に……。
すいません、無視してください。

167: 2018/05/18(金) 05:53:27.63 ID:dA1yAxXr0
おつ
やっぱ暁組はかわいいなあ! …海風は改白露組で独立か?

第十一話「はりきってまいりましょー! 結成、暁水会と陽炎連合」

引用: 【艦これ】暁が如く【極道】